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特表2024-501208真皮血管収縮下での皮膚病変部のレーザ治療用のレーザ装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】真皮血管収縮下での皮膚病変部のレーザ治療用のレーザ装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/20 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
A61B18/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536556
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-07-21
(86)【国際出願番号】 IB2021000926
(87)【国際公開番号】W WO2022144587
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】1020200189833
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522472925
【氏名又は名称】イルーダ,カンパニー,リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨンハン
(72)【発明者】
【氏名】リ,サン ジュン
(72)【発明者】
【氏名】リ,ジェ ホ
【テーマコード(参考)】
4C026
【Fターム(参考)】
4C026AA04
4C026BB06
4C026BB07
4C026FF59
4C026GG07
(57)【要約】
レーザ装置が、即座に、正確な、及び安定したレーザ療法を提供し得、これは:(i)皮膚の色素沈着症を治療するためにレーザを使用するときに、冷却装置を使用して血管収縮を誘発し且つ血管収縮下で皮膚病変部位のレーザ治療を施して、正常な組織及び毛細血管係蹄へのレーザの照射からの炎症の発生を最小限にすることによって、治療後有害反応、例えば色素沈着過度、紅斑などを最小限にし;(ii)冷却装置を使用することにより実行された部位特有の血管収縮下で、皮膚病変部位の画像を撮って分析することによって病変部位を明確に標的にすることにより、レーザ治療を即座に且つ正確に終えることによって、レーザ治療に関連する有害反応を最小限にし;(iii)冷却方法を使用することによって、光透過部材上での曇りの発生を防止する又は著しく遅延させ;(iv)センサーを使用することによって、光透過部材の皮膚接触面と皮膚病変部との間の完全な接触を保証し;(v)スキャナーを使用してレーザビームの標的を定め;及び(vi)レーザビームを重なり合う方式で照射することによって、皮膚病変部をレーザ照射が完全に網羅することを保証することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
皮膚病変部を治療するための装置であって:
レーザ源;
レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、前記レーザ源からの治療用レーザビームが前記レーザ透過面から前記皮膚接触面へ透過することを可能にする光透過部材;
前記光透過部材の前記皮膚接触面を冷やし、それにより、前記皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、前記治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;
前記冷却ユニットを制御し、前記治療用レーザビームを、前記レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、前記治療部位内の前記皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び
前記光透過部材に取り付けられた加熱器であって、前記制御ユニットは、前記加熱器を制御して、前記光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、加熱器
を含む、装置。
【請求項2】
前記光透過部材は、第1の光透過部分及び第2の光透過部分を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記第1の光透過部分及び前記第2の光透過部分は光学的に透明である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記第1の光透過部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メチルメタクリレート)、又はポリスチレンを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記第2の光透過部分は、石英、サファイア、水晶、ポリ(メチルメタクリレート)、又はポリスチレンを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項6】
さらに、前記第1の光透過部分と前記第2の光透過部分との間に位置するビームスプリッターを含む、請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記冷却ユニットは、熱電素子、冷却空気、冷却ガス、又は冷却液を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記冷却ユニットは、熱電素子及び伝導部材を含む、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記熱電素子は、前記光透過部材の1つの側に取り付けられている、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記熱電素子は、前記光透過部材の1つの側に取り付けられており、且つまた、前記第2の光透過部分に取り付けられている、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
前記伝導部材は、前記熱電素子と発光部材との間に配置される、請求項8に記載の装置。
【請求項12】
前記熱電素子は、互いに接触する熱吸収プレートと放熱プレートとを含む、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記伝導部材は、前記熱電素子の前記熱吸収プレートに取り付けられた伝導ベースを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記伝導部材は、前記熱電素子と発光要素との間に配置された伝導ブリッジを含む、請求項12に記載の装置。
【請求項15】
さらに、前記伝導ベースと前記光透過部分との間に配置された断熱材を含む、請求項13に記載の装置。
【請求項16】
さらに温度センサーを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項17】
前記温度センサーは、前記発光部材の温度を検出し得る、請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記温度センサーは、前記冷却ユニットの温度を検出し得る、請求項16に記載の装置。
【請求項19】
前記温度センサーは、前記治療部位の温度を検出し得る、請求項16に記載の装置。
【請求項20】
前記皮膚病変部は色素性病変部である、請求項1に記載の装置。
【請求項21】
前記皮膚病変部は非色素性病変部である、請求項1に記載の装置。
【請求項22】
さらに、前記皮膚接触面と接触する前記治療部位の画像を得るカメラを含む、請求項1に記載の装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置を使用して、皮膚病変部を治療する方法であって、前記治療用レーザビームを重なり合う方式で照射することを含む、方法。
【請求項24】
前記重なり合う方式は、前記治療用レーザビームのサイズ、重なり合っている割合、前記治療部位の面積、及び前記画像の解像度によって決定される、請求項23に記載の皮膚病変部を治療する方法。
【請求項25】
皮膚病変部を治療するための装置であって:
レーザ源;
レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、前記光透過部材は、前記レーザ源からの治療用レーザビームが前記レーザ透過面から前記皮膚接触面へ透過させることを可能にし、
前記光透過部材は、第1の熱伝達係数を有する第1の光透過ブロックと、第2の熱伝達係数を有する第2の光透過ブロックとを含み、前記第1の光透過ブロック及び前記第2の光透過ブロックは、前記レーザ透過面から前記皮膚接触面まで交互に積み重ねられる、光透過部材;
前記光透過部材の前記皮膚接触面を冷やし、それにより、前記皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、前記治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;及び
前記冷却ユニットを制御し、前記治療用レーザビームを、前記レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、前記治療部位内の前記皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット
を含む、装置。
【請求項26】
さらに、前記光透過部材に取り付けられた加熱器を含み、前記制御ユニットは、前記加熱器を制御して、前記光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、請求項0に記載の装置。
【請求項27】
さらに、前記皮膚接触面と接触する前記治療部位の画像を得るカメラを含む、請求項0に記載の装置。
【請求項28】
前記治療用レーザビームを重なり合う方式で照射することを含む、請求項27に記載の装置を使用して皮膚病変部を治療する方法。
【請求項29】
前記重なり合う方式は、前記治療用レーザビームのサイズ、重なり合っている割合、前記治療部位の面積、及び前記画像の解像度によって決定される、請求項28に記載の皮膚病変部を治療する方法。
【請求項30】
皮膚病変部を治療するための装置であって:
レーザ源;
レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、前記レーザ源からの治療用レーザビームが前記レーザ透過面から前記皮膚接触面へ透過することを可能にする、光透過部材;
前記光透過部材の前記皮膚接触面を冷やし、それにより、前記皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、前記治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;
前記冷却ユニットを制御し、及び前記治療用レーザビームを、前記レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、前記治療部位内の前記皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び
前記皮膚接触面と前記治療部位との間の間隙を検出するセンサー
を含む、装置。
【請求項31】
前記センサーは、前記治療部位のインピーダンスを測定する、請求項0に記載の装置。
【請求項32】
さらに、前記光透過部材に取り付けられた加熱器を含み、前記制御ユニットは、前記加熱器を制御して、前記光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、請求項0に記載の装置。
【請求項33】
さらに、前記皮膚接触面と接触する前記治療部位の画像を得るカメラを含む、請求項0に記載の装置。
【請求項34】
前記治療用レーザビームを重なり合う方式で照射することを含む、請求項33に記載の装置を使用して皮膚病変部を治療する方法。
【請求項35】
前記重なり合う方式は、前記治療用レーザビームのサイズ、重なり合っている割合、前記治療部位の面積、及び前記画像の解像度によって決定される、請求項34に記載の皮膚病変部を治療する方法。
【請求項36】
皮膚病変部を治療するための装置であって:
レーザ源;
レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、前記レーザ源からの治療用レーザビームが前記レーザ透過面から前記皮膚接触面へ透過することを可能にする、光透過部材;
前記光透過部材の前記皮膚接触面を冷やし、それにより、前記皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、前記治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;
前記皮膚接触面と接触する前記治療部位の画像を得るカメラ;
前記冷却ユニットを制御し、及び前記治療用レーザビームを、前記レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、前記治療部位内の前記皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び
前記カメラによって得られた前記画像に基づいて、前記治療部位への前記レーザビームの照射を容易にする、スキャナー
を含む、装置。
【請求項37】
前記スキャナーはガルバノメータースキャナーである、請求項0に記載の装置。
【請求項38】
さらに、前記光透過部材に取り付けられた加熱器を含み、前記制御ユニットは、前記加熱器を制御して、前記光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、請求項0に記載の装置。
【請求項39】
前記治療用レーザビームを重なり合う方式で照射することを含む、請求項0に記載の装置を使用して皮膚病変部を治療する方法。
【請求項40】
前記重なり合う方式は、前記治療用レーザビームのサイズ、重なり合っている割合、前記治療部位の面積、及び前記画像の解像度によって決定される、請求項39に記載の皮膚病変部を治療する方法。
【請求項41】
皮膚病変部を治療するための装置であって:
レーザ源;
導体で形成された導体枠;
前記導体枠の上面にレーザ透過面を形成する第1の窓と、前記導体枠の底面に皮膚接触面を形成する第2の窓と、前記導体枠の内部に密封された光透過ガスとを含む、光透過部材であって;前記レーザ源からの治療用レーザビームが前記レーザ透過面から前記皮膚接触面へ透過することを可能にする、光透過部材;
前記光透過部材の前記皮膚接触面を冷やし、それにより、前記皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、前記治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;
前記冷却ユニットを制御し、及び前記治療用レーザビームを、前記レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、前記治療部位内の前記皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び
前記光透過部材に取り付けられた加熱器であって、前記制御ユニットは、前記加熱器を制御して、前記光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、加熱器
を含む、装置。
【請求項42】
さらに、前記導体枠の内部に位置するビームスプリッターと、前記導体枠の1つの側に位置する第3の窓とを含み、前記ビームスプリッターは、前記第3の窓を経由して前記皮膚病変部の画像をカメラへ送る、請求項0に記載の装置。
【請求項43】
さらに、前記皮膚接触面と接触する前記治療部位の画像を得るカメラを含む、請求項0に記載の装置。
【請求項44】
前記治療用レーザビームを重なり合う方式で照射することを含む、請求項43に記載の装置を使用して皮膚病変部を治療する方法。
【請求項45】
前記重なり合う方式は、前記治療用レーザビームのサイズ、重なり合っている割合、前記治療部位の面積、及び前記画像の解像度によって決定される、請求項44に記載の皮膚病変部を治療する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月31日出願の先行する韓国特許出願第10-2020-0189833号の利益を主張し、その全体を本願明細書に援用する。
【0002】
技術分野
本発明は、皮膚科学レーザ治療のための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
背景
レーザ治療は、様々な血管病変部及び色素性皮膚病変部、入れ墨、及び良性皮膚腫瘍を治療するために皮膚科学において広く使用されてきている。これらの中で、レーザによって最もよく治療される皮膚病変部は、色素性皮膚病変部、例えば脂漏性角化症、肝斑、雀卵斑、日光黒子、メラニン細胞性母斑、及び真皮メラノサイトである。
【0004】
色素性皮膚病変部は、皮膚においてメラニン量が過剰に増加することによって引き起こされる。メラニンは、皮膚の基底層に存在する、メラニン細胞と呼ばれる樹状細胞において生合成される。メラニンの量が過剰である場合、又は正常な状態でメラニンが存在しないロケーションが存在する場合、そのような状態は、皮膚色素性病変部として診断され得る。時々、そのような皮膚色素性病変部は、表皮を増殖若しくは縮小し得るか、又は皮膚のいくつかの要素、例えば真皮の様々な皮膚付属器を病理学的に変え得る。
【0005】
一般的に、皮膚のメラニンの量の過剰な生成は、紫外線への皮膚の曝露又は皮膚の炎症によって引き起こされる。メラニンが過剰に生成されると、又は既に生成されているメラニンが刺激によってケラチノサイトへ移動すると、様々な色素性病変部を生じ得るか、又は前から存在する色素性病変部を悪化させ得る。
【0006】
炎症後色素沈着(PIH:Post-inflammatory hyperpigmentation)は、皮膚への刺激に対する表皮メラニン細胞及び様々な真皮細胞の反応である。存在するメラニンの異常分布又は創部のメラニンの増加の結果生じる。最後には、過剰なメラニンは、炎症部位に生じる過剰な色素沈着過度の原因となる。色素沈着過度の継続時間は、局所又は全身性要因による影響を受け、場合によっては、長期間-数か月から数年続き得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
概要
皮膚病変部を治療するためのレーザ装置は:(i)レーザ源;(ii)レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、レーザ源からの治療用レーザビームがレーザ透過面から皮膚接触面まで透過することを可能にする、光透過部材;(iii)光透過部材の皮膚接触面を冷やし、それにより、皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、治療部位の血管収縮を発生させることを可能にする、冷却ユニット;(iv)冷却ユニットを制御し、及び治療用レーザビームを、レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、治療部位内の皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び(v)光透過部材に取り付けられた加熱器であって、ここで、制御ユニットは、加熱器を制御して、光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、加熱器を含み得る。
【0008】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、皮膚接触面と接触する治療部位の画像を得るカメラを含み得る。
【0009】
いくつかの実施形態では、前記光透過部材は、上面が前記レーザ透過面を形成する第1の光透過部分;及び前記第1の光透過部分の底部に位置し、底面が前記皮膚接触面を形成する第2の光透過部分を含み得、ここで、皮膚接触面を有する前記第2の光透過部分は、前記第1の光透過部分よりも熱伝導率が高い材料を有するように構築される。
【0010】
いくつかの実施形態では、前記冷却ユニットは、熱電素子と、前記熱電素子が一方の側に取り付けられ及びその他方の側は前記第2の光透過部分に取り付けられている伝導部材とを含み得るため、前記熱電素子によって熱を伝導することによって、前記第2の光透過部分を冷却する。
【0011】
いくつかの実施形態では、前記光透過部材は:i)上面によって前記透過面を形成する第1の光透過部分;ii)前記第1の光透過部分の底部に位置して、前記皮膚接触面を形成する第2の光透過部分;及びiii)前記第1の光透過部分と前記第2の光透過部分との間に位置して、前記レーザビームを透過させ、且つ前記皮膚接触面から反射した光を、1つの側へ反射させるビームスプリッターを含み得;及びさらに、前記ビームスプリッターから反射された光から、前記皮膚接触面と接触する治療部位の画像を得るカメラを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、光調整ユニットが、前記光透過部材を透過するレーザビームの標的位置を調整でき、ここで、前記制御ユニットは、前記カメラによって得た画像を分析することによって、皮膚病変部のロケーションを特定し得;標的ロケーションとして、前記特定された皮膚病変部上のロケーションを使用して、前記光調整ユニットを制御でき;及び前記レーザビームを前記標的ロケーションに照射させることができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、前記伝導部材は:熱を伝えるように、前記熱電素子の熱吸収プレートに取り付けられた伝導ベース;及び前記伝導ベースと前記第2の光透過部分との間で熱を伝えることによって前記第2の光透過部分を冷やし、且つ前記伝導ベースと前記第2の光透過部分との間に離間部分を形成する伝導ブリッジを含み得る。
【0014】
いくつかの実施形態では、断熱材が、前記伝導ベースと前記第2の光透過部分との間の離間部分に埋められ得る。
【0015】
いくつかの実施形態では、前記光透過部材は、熱伝達係数が異なる第1の光透過ブロック及び第2の光透過ブロックを、前記レーザ透過面から前記皮膚接触面まで交互に積み重ねて、構成され得る。
【0016】
いくつかの実施形態では、温度維持手段が、さらに、前記光透過部材の温度を設定範囲内に維持するために含まれ得、前記冷却ユニットによる前記光透過部材の曇りを防止するか又は遅延させる。
【0017】
いくつかの実施形態では、前記光透過部材の1つの側に取り付けられた加熱器が、さらに、前記光透過部材の1つの側に含まれ得;及び前記制御ユニットは、前記加熱器を制御して、前記冷却ユニットによる前記光透過部材での曇りを防止し得るか又は遅延させ得る。
【0018】
皮膚病変部を治療するための装置は:(i)レーザ源;(ii)レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、光透過部材は、レーザ源からの治療用レーザビームがレーザ透過面から皮膚接触面へ透過させることを可能にし、光透過部材は、第1の熱伝達係数を有する第1の光透過ブロックと、第2の熱伝達係数を有する第2の光透過ブロックとを含み、第1の光透過ブロック及び第2の光透過ブロックは、レーザ透過面から皮膚接触面まで交互に積み重ねられる、光透過部材;(iii)光透過部材の皮膚接触面を冷やし、それにより、皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;及び(iv)冷却ユニットを制御し、及び治療用レーザビームを、レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、治療部位内の皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニットを含み得る。
【0019】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、光透過部材に取り付けられた加熱器であって、制御ユニットは、加熱器を制御して、光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、加熱器を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、皮膚接触面と接触する治療部位の画像を得るカメラを含み得る。
【0021】
皮膚病変部を治療するためのレーザ装置は:(i)レーザ源;(ii)レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、レーザ源からの治療用レーザビームがレーザ透過面から皮膚接触面へ透過することを可能にする、光透過部材;(iii)光透過部材の皮膚接触面を冷やし、それにより、皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;(iv)冷却ユニットを制御し、及び治療用レーザビームを、レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、治療部位内の皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び(v)皮膚接触面と治療部位との間の間隙を検出するセンサーを含み得る。
【0022】
いくつかの実施形態では、センサーは、治療部位のインピーダンスを測定し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、光透過部材に取り付けられた加熱器を含み得、制御ユニットは、加熱器を制御して、光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる。
【0024】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、皮膚接触面と接触する治療部位の画像を得るカメラを含み得る。
【0025】
皮膚病変部を治療するためのレーザ装置は:(i)レーザ源;(ii)レーザ透過面を形成する上面と、皮膚接触面を形成する底面とを含む、光透過部材であって、レーザ源からの治療用レーザビームがレーザ透過面から皮膚接触面へ透過することを可能にする、光透過部材;(iii)光透過部材の皮膚接触面を冷やし、それにより、皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;(iv)皮膚接触面と接触する治療部位の画像を得るカメラ;(v)冷却ユニットを制御し、及び治療用レーザビームを、レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、治療部位内の皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び(vi)カメラによって得られた画像に基づいて、治療部位へのレーザビームの照射を容易にする、スキャナーを含み得る。
【0026】
いくつかの実施形態では、スキャナーは、ガルバノメータースキャナーとし得る。
【0027】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、光透過部材に取り付けられた加熱器を含み得、制御ユニットは、加熱器を制御して、光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる。
【0028】
皮膚病変部を治療するためのレーザ装置は:(i)レーザ源;(ii)導体で形成された導体枠;(iii)導体枠の上面にレーザ透過面を形成する第1の窓と、導体枠の底面に皮膚接触面を形成する第2の窓と、導体枠の内部に密封された光透過ガスとを含む、光透過部材であって;レーザ源からの治療用レーザビームがレーザ透過面から皮膚接触面へ透過することを可能にする、光透過部材;(iv)光透過部材の皮膚接触面を冷やし、それにより、皮膚接触面を用いて治療部位を冷やすことによって、治療部位の血管収縮を誘発する、冷却ユニット;(v)冷却ユニットを制御し、及び治療用レーザビームを、レーザ源を制御することによって、血管収縮下で、治療部位内の皮膚病変部に照射できるようにする、制御ユニット;及び(vi)光透過部材に取り付けられた加熱器であって、制御ユニットは、加熱器を制御して、光透過部材での曇りを防止するか又は遅延させる、加熱器を含み得る。
【0029】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、導体枠の内部に位置するビームスプリッターと、導体枠の1つの側に位置する第3の窓とを含み得、ビームスプリッターは、第3の窓を経由して皮膚病変部の画像をカメラへ送る。
【0030】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、さらに、皮膚接触面と接触する治療部位の画像を得るカメラを含み得る。
【0031】
いくつかの実施形態では、真皮血管収縮下での皮膚病変部のレーザ治療用のレーザ装置が、冷却装置によって血管収縮を誘発し、正常な組織及び毛細血管係蹄へのレーザの照射の結果としてトリガされる炎症を最小限にし得る;及び血管収縮下で皮膚病変部にレーザ治療を施すことによって、レーザ治療後の副作用、例えば色素沈着過度、紅斑などが最小限にされ得る効果をもたらす。
【0032】
いくつかの実施形態では、本発明は、血管収縮下の特定の皮膚病変部の画像を得て分析することによって、レーザ治療の副作用を最小限にし、並びに特定の病変部を標的にして、即座に且つ正確にレーザ治療を終えることができる効果があり得る。
【0033】
いくつかの実施形態では、本発明は、冷却装置に起因する、光透過部材上での曇りの発生を防止し得る又は著しく遅延させ得、及びそれにより、病変部の画像を安定的に収集する;それゆえ、これは、前記画像を使用して、安定したレーザ治療を施す効果があり得る。
【0034】
レーザ装置を使用して皮膚病変部を治療する方法は、治療用レーザビームを重なり合う方式で照射することを含み得る。いくつかの実施形態では、重なり合う方式は、治療用レーザビームのサイズ、重なり合っている割合、治療部位の面積、及びカメラで得た画像の解像度によって決定され得る。皮膚病変部は、血管収縮下でレーザ光によって治療され得るため、レーザエネルギーに起因する損傷は、重なり合っている部位に対して最小限にされ得る。
【0035】
皮膚病変部を治療する方法は、皮膚表面上で識別された皮膚病変部の境界を越えて、皮膚病変部にレーザ光を照射することを含み得る。皮膚病変部は、血管収縮下でレーザ光によって治療され得るため、レーザエネルギーに起因する損傷は、標的部位に対して最小限にされ得る。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図面の簡単な説明
図1A】レーザ装置の例示的な実施形態の図面である。
図1B図1Aに示すレーザ装置の、側面から見た図面である。
図2】レーザ装置の別の例示的な実施形態の図面である。
図3A】レーザ装置のカメラによって撮られた概略的な画像である。
図3B】撮られた画像がどのように処理及び分析され得るかを示す。
図3C】皮膚病変部位の境界がどのように特定され得るかを示す。
図3D】レーザビームが、皮膚病変部位の境界を特定した後に、境界内のロケーションを標的にして、境界内に複数のビームスポットを形成して、どのように照射され得るかを示す。
図3E】レーザビームが、複数のビームスポット間に、重なり合う方式で照射され得ることを示す。
図3F】レーザ治療後の対処のタイプを示す。
図4】レーザ装置の別の例示的な実施形態の図面である。
図5A】レーザ装置での曇りの問題を解決するための、冷却ユニットの改良型の構造の例示的な実施形態の図面である。
図5B】レーザ装置での曇りの問題を解決するための、冷却ユニットの改良型の構造のさらに別の例示的な実施形態の図面である。
図6A】レーザ装置での曇りの問題を解決するための、冷却ユニットの改良型の構造の例示的な実施形態の図面である。
図6B】レーザ装置での曇りの問題を解決するための、冷却ユニットの改良型の構造のさらに別の例示的な実施形態の図面である。
図7A】レーザ装置の例示的な実施形態の図面である。
図7B図7Aに示すレーザ装置の平面図である。
図7C図7Aに示すレーザ装置の底面図である。
図8】タッチセンサーを実装したレーザ装置のハンドピースの、ある実施形態を示す。
図9A】コンピュータアルゴリズムによって識別された例示的な皮膚病変部を示す。
図8B図9Aと同じ皮膚病変部である、施術者が治療することを目的とする部位の、ある例を示す。
図10】スキャナーを含むハンドピースの例示的な実施形態である。
図11A】ガルバノメータースキャナーを使用して境界に点線で印がつけられている、皮膚病変部の画像である。
図11B】閾値画像処理方法を使用して変換された画像である。
図11C】閾値を調整することによって、ドットでつながれた内側の領域がレーザ照射に指定される、画像である。
図12A】ガルバノメータースキャナーを使用して、皮膚病変部の部位が点線で印がつけられている、カメラで得られた皮膚病変部の画像である。
図12B】色相彩度値を用いた、図12Aと同じ画像を示す。
図12C】均等化されたヒストグラムを使用して、皮膚病変部の部位が埋められている、図12Aと同じ画像を示す。
図13A】ガルバノメータースキャナーによって印がつけられた部位を抽出するために、閾値画像処理方法を使用して変換された、図12Aと同じ画像を示す。
図13B】閾値の色相彩度値を用いた、図13Aと同じ画像を示す。
図13C】ドットでつながれた内側の領域が、閾値の均等化されたヒストグラムによって埋められている、図13Aと同じ画像を示す。
図14】レーザスポットのサイズ次第で、レーザ光が照射されない部位があり得ることを示す。
図15A】重なり合っている割合の値が20%の、例示的な照射パターンを示す。
図15B】重なり合っている割合の値が40%の、例示的な照射パターンを示す。
図15C】重なり合っている割合の値が50%の、例示的な照射パターンを示す。
図16】レーザが、皮膚病変部を取り囲む正常な皮膚部位に照射され得る、例示的な状況を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
詳細な説明
近頃のレーザ技術の進歩ゆえに、皮膚病変部を治療するためのレーザ設備が、様々な方法で開発されている。皮膚病変部は、レーザの高パワーのエネルギーを使用して、皮膚の表皮及び/又は真皮の標的発色団を選択的に破壊するが、レーザエネルギーへの皮膚の曝露の継続時間を短くすることによって、皮膚損傷を最小限にするように、治療され得る。
【0038】
皮膚病変部のためのレーザ治療は、一般的に安全で効果的であると考えられているが、それらは、治療的処置のタイプ次第で、様々な有害反応につながり得る。
【0039】
レーザ治療の直後は、有害反応、例えば水疱、痂皮、細菌感染、及び麻酔軟膏に対する過敏反応が発生し得る。長期にわたる治療後の有害反応、例えば紅斑、色素沈着過度、及び瘢痕も発生し得る。
【0040】
レーザ治療後反応は、皮膚に存在する多数の細胞への損傷によってトリガされる局所的な炎症反応によって引き起こされ得る。真皮乳頭層内に位置し且つ血管内の炎症細胞の移動を生じる損傷した毛細血管係蹄、並びに移動した細胞による継続的な炎症反応は、有害反応、例えば炎症後色素沈着(PIH)及びレーザ後紅斑(PLE)につながり得る。
【0041】
皮膚病変部を治療するときにレーザ治療によって引き起こされた有害反応を少なくするための臨床的に満足のいく方法はなかった。毛細血管係蹄に対する損傷は、レーザ治療と併せて局所麻酔薬又は注入麻酔薬を使用することによって、減少される試みがなされてきたが、これは効果的ではなかった。
【0042】
本明細書では、皮膚病変部を治療するためのレーザ装置、具体的には、様々な色素性及び非色素性皮膚病変部、例えば脂漏性角化症、肝斑、雀卵斑、母斑、血管性皮膚疾患、及び皮膚がんを治療するときに、血管収縮を誘発するために治療部位下で血管を一時的に収縮させ得るレーザ装置が開示されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、冷却装置によって血管収縮を誘発して、正常な皮膚組織及び毛細血管係蹄へのレーザビームの照射によってトリガされる炎症を最小限にし、並びにレーザ治療後有害反応、例えば色素沈着過度及び紅斑を最小限にし得る。
【0044】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は、血管収縮下の特定の皮膚病変部の画像を得て分析することによって、レーザ治療の有害反応を最小限にし得、並びに特定の病変部を標的にすることによって、レーザ治療を即座に且つ正確に終えることができる。
【0045】
レーザの波長が、特定の光の波長を吸収する発色団のみを選択的に破壊するために、レーザ治療用の標的発色団に従って選択され得る-それゆえ、この技術は、選択的光熱融解理論(SPTL:selective photothermolysis)と呼ばれる。しかしながら、実際には、レーザのいずれの波長も、いずれかの標的によって、ある程度まで吸収され得、それにより、皮膚に望ましくない反応を引き起こす。
【0046】
例えば、色素性病変部用のレーザが、標的発色団としてメラニンに当てられるとき、メラニンを産生するメラニン細胞だけでなく、表皮のほとんどを形成するケラチノサイトも、レーザによって損傷され得る。これは、多くのメラニン色素がメラノソームによって表皮の複数の層にわたってケラチノサイトへ絶えず届けられるためである。ケラチノサイトが損傷されると、これらの細胞は炎症性サイトカインを分泌し、且つ様々な有害反応を誘発し得る。
【0047】
様々な条件及び要因、例えばビームの直径、フルエンス、パルス継続時間、及びレーザビームスポットの積み重ね/重なり合い、並びにレーザビーム波長自体の固有の特徴が、SPTLの有効性及び精度に影響を及ぼし得る。
【0048】
従来のレーザ治療では、過大なレーザエネルギーを加えるために、フルエンスが従来のレベルよりも上昇されると、又はレーザビームスポットが互いに重ね合わせられると、皮膚の炎症反応、例えば点状出血及び真皮浮腫が、レーザのタイプに関わらず、出現し得る。従って、様々な有害反応、例えば炎症後色素沈着過度(PIH)、持続性炎症後紅斑(PIE)、瘢痕、及び組織構造上の変形が、レーザ治療後に起こり得る。
【0049】
点状出血及び真皮浮腫に起因する激しい炎症反応は、様々なQスイッチレーザのなかでも、Qスイッチ532nmレーザを用いる場合に、特により顕著とし得る。これは、レーザ光のこの特定の波長が、メラニン色素だけではなくヘモグロビンによっても吸収され得、それにより、他のレーザでは真皮乳頭層の毛細血管係蹄に大きな損傷を通常引き起こさないであろう低いエネルギーレベルでも、重篤な炎症反応を引き起こし得るためである。
【0050】
皮膚治療に使用されるいずれのレーザも、真皮乳頭層にある毛細血管係蹄を、ある程度まで損傷し得る。フルエンスが増大されると、毛細血管係蹄に対する損傷の程度もそれに従って増大する。それゆえ、レーザ照射によって引き起こされる皮膚の有害反応を最小限にしながら所望の治療効果を得るために、毛細血管係蹄を可能な限り保護することが望ましい。
【0051】
毛細血管係蹄を保護するために、レーザに反応する毛細血管係蹄の標的発色団は、毛細血管係蹄の血管の壁ではなく、血管内を動き回る赤血球中のヘモグロビン(酸素化/脱酸素化Hb、「動く発色団」)によるものであることを考慮することが重要である。それゆえ、毛細血管係蹄内を流れる赤血球の量が、レーザ治療時間中に一時的に減少され得る場合、レーザ光に反応する標的発色団の量が減少され得、及び赤血球を介する毛細血管係蹄に対するレーザエネルギーの影響が低減され得る。
【0052】
レーザエネルギーによって引き起こされる毛細血管係蹄に対する損傷を最小限にするために、皮膚病変部位は、レーザ治療の直前及びその最中、人工的に冷却され得る。そのため、自律神経系がすぐに反応して、体温を維持する。その結果、真皮乳頭層の毛細血管係蹄へ血液を届ける前毛細血管括約筋が、一時的に収縮され得、血液が括約筋の浅血管叢にのみ流れることができるようにする。換言すると、皮膚病変部位は、この状態において血管収縮下にある。
【0053】
血管収縮下で赤血球の量が真皮乳頭層の毛細血管係蹄において減少する場合、レーザに反応する標的発色団(すなわちヘモグロビン)は減少し、及び毛細血管係蹄の壁に対する損傷が低減され得る。その結果、血管を通ってその部位に移動する炎症細胞の量が減少され得、これは、レーザ光が照射される部位の炎症反応が著しく低下され得ることを意味する。
【0054】
真皮乳頭層の周りの血管及び組織が、損傷を最小にするために保護され得る場合、通常の創傷治癒過程が、より迅速に誘発され得る。
【0055】
上述した通り、本明細書で開示したレーザ装置は、レーザ治療の直前及びその最中に皮膚病変部の部位が人工的に冷却されるときに、血管が収縮されるように(すなわち「血管収縮下」)、構成され得る。その結果、真皮乳頭層の毛細血管係蹄中の赤血球の量は減少し得、及びレーザビームは、ヘモグロビンの量が治療部位において減少されながら、皮膚病変部を治療するために照射され得る。この装置を使用する治療は、レーザ治療の有害反応、例えば色素沈着過度、熱傷、紅斑、及び瘢痕を減少させ得、且つ治療が難しい皮膚病変部、例えば日光黒子、太田母斑、両側性太田母斑色素斑(bilateral nevus Ota macule)、及び大型の先天性メラニン細胞性母斑を含む、いずれの色素性及び非色素性皮膚病変部にも応用され得る。
【0056】
レーザ治療が血管収縮下に適用される場合、真皮中の皮膚病変部は、色素沈着過度を引き起こしたり又は表皮を損傷したりすることなく、治療され得る。完治に必要な治療回数及び持続時間は、レーザ出力の強度を高めることによって減少され得、従って、素晴らしい治療結果が得られ得る。フルエンスは、従来の強度よりも遥かに高くに増加され得、それにより、重篤な有害反応なく、治療することを可能にする:(i)表皮色素沈着病変部のタイプとして比較的わずかなメラニン色素沈着過度のある淡色の脱色病変部;(ii)クローン増殖に起因する、ごくわずかに厚みのある病変部を備える脂漏性角化症;及び(iii)日光黒子。
【0057】
図1A及び図1Bは、真皮血管収縮下で皮膚病変部を治療するためのレーザ装置の例示的な実施形態を示す。図1Aは、レーザ装置の例示的な実施形態の図面である。図1Bは、側面から見た、図1Aに示すレーザ装置の図面である。
【0058】
図1A及び図1Bに示すように、例示的な実施形態は:レーザ源200、光透過部材300、冷却ユニット400及び500、並びに制御ユニットMを含み得る。レーザ源200は、上述した通り、皮膚病変部、例えば非色素性皮膚病変部及び色素性皮膚病変部を治療するためにレーザを発振させる構成要素である。レーザ源200は、レーザ、例えばルビーレーザ、アレキサンドライトレーザ、及びNd:YAGレーザを含み得る。好ましくは、これは、メラニン色素に起因する、真皮及び表皮中の色素性皮膚病変部の治療のために2つの波長を発振させ得るNd:YAGレーザを含み得る。
【0059】
光透過部材300は、図1A及び図1Bに示すように、レーザビームを上面から底面まで透過させるように案内する構成要素である。光透過部材300は、レーザ透過面315を形成する上面と、皮膚100の病変部110と接触する皮膚接触面325を形成する底面とを含み得る。光透過部材300は、治療用レーザビームをレーザ源200から案内して、レーザ透過面315から皮膚接触面325へ透過させ、病変部110の標的ロケーションにレーザビームスポット(SP)が形成されることを可能にする。
【0060】
光透過部材300は、図1A及び図1Bに示すように、第1の光透過部分310及び第2の透過部分320を含み得、第1の光透過部分310の上面はレーザ透過面315を形成し、及び第2の光透過部分320の底面は皮膚接触面325を形成する。
【0061】
第1の光透過部分310及び第2の光透過部分320は、光を透過し得る光学的に透明な材料、例えば石英、サファイア、水晶、ポリ(メチルメタクリレート)、又はポリスチレンで形成され得る。第1の光透過部分310及び第2の光透過部分320は、互いに異なる材料を含み得る;及び皮膚接触面325を備える第2の光透過部分320は、第1の光透過部分310よりも熱伝導率が高い材料を有し得る。
【0062】
第1の光透過部分310及び第2の光透過部分320は、接着剤、例えばUV接着剤によって互いに接着するように形成され得る。
【0063】
冷却ユニット400及び500は、光透過部材300の皮膚接触面325を冷やし、及び皮膚接触面325を用いて皮膚100の接触部位110を冷やすことによって、皮膚100の接触部位110の真下にある血管を収縮させ得る。
【0064】
様々なタイプの冷却ユニットが、光透過部材300を冷やすために使用され得る。冷却ユニットの非限定的な例は、熱電素子、冷却空気、冷却ガス、又は冷却液を含み得る。好ましくは、図1A及び図1Bに示すように、冷却ユニットは、熱電素子500、及び金属などの熱伝導材料を含む伝導部材400を含み得る。
【0065】
熱電素子500は、互いに接触する熱吸収プレートと放熱プレートとを有する構成要素であり、電気信号によって指示されるように、熱吸収プレートを冷やし、且つ放熱プレートを温める。図1A及び図1Bに示すように、熱電素子500の熱吸収側は、伝導部材400の一方の側に取り付けられ得、及び伝導部材400の他方の側は、第2の光透過部分320に取り付けられる。その結果、第2の光透過部分320は冷やされ得るが、第2の光透過部分320の熱は、熱電素子500が熱を吸収するため、伝導部材400を通して熱電素子500に伝えられる。
【0066】
図1Aに示すように、第2の光透過部分320の皮膚接触面325が皮膚接触部位110と接触している間に、皮膚接触面325が冷やされると、接触部位は冷却部位112となり、及びそれを囲む外縁は、わずかに温度が高い部位114になる。
【0067】
熱電素子500が動作するとき、第2の光透過部分320が冷え、且つ、第2の光透過部分320の皮膚接触面325が冷えるとき、皮膚の冷却部位112が冷え、及び前記冷却部位112の真下の血管が収縮し、その結果、冷えた状態が維持される間中、血流は低下する。この条件下でレーザ治療が施される場合、色素沈着過度及び紅斑などの有害反応は最小限にされ得る。
【0068】
光透過部材300は、第1の光透過部分310と第2の光透過部分320とを接着することによって、構成され得る。皮膚接触面325を形成する第2の光透過部分320は、第1の光透過部分310よりも熱伝導率が高い材料を含み、冷却ユニット400及び500が接続された第2の光透過部分320の皮膚接触面325の冷却を容易にし得る。
【0069】
いくつかの実施形態では、図1A及び図1Bに示すように、レーザ装置は制御ユニットMを含み得、且つ制御ユニットMは、レーザ源200並びに冷却ユニット400及び500に接続されて、それらを制御し得る。
【0070】
光透過部材320の皮膚接触面325が皮膚100と接触している間中、制御ユニットMは、冷却ユニットの熱電素子500を制御することによって皮膚接触面325を冷やし、及びそれと接触する皮膚の接触部位110における冷却部位112の血管を収縮させることを可能にし得る。治療に十分な程度に冷えると、冷えた状態が続く間、血管収縮状態下で治療用レーザビームが皮膚接触部位に照射されるように、レーザ源200が制御される。
【0071】
図1Aに示すように、光透過部材300の皮膚接触面325が皮膚の接触部位110と接触したままである状態で冷却ユニットを使用することによって、皮膚接触面325の冷えた状態を維持する間(血管収縮状態を維持する間)、レーザビームLaは、光透過部材300を通して光を透過させ、皮膚接触面と接触する接触部位110にスポットSPを形成する。従って、皮膚病変部は、血管収縮下でレーザによって治療され得る。
【0072】
光透過部材300の皮膚接触面325が皮膚上の接触部位と接触している間、皮膚の接触部位がどの程度冷やされているかを知ることが可能な場合には、前記皮膚の過冷却からの有害反応も防止され得るか又は最小限にされ得る。
【0073】
これを達成するために、レーザ装置は、冷却ユニットによって冷却が実施されているときに、光透過部材300の皮膚接触面325と接触する皮膚の接触部位110がどの程度冷やされているかを感知するための温度センサー(図示せず)を別に有し得る。
【0074】
いくつかの実施形態では、温度センサーは、皮膚接触部位110の温度を直接感知し得る。いくつかの他の実施形態では、温度センサーは、光透過部材300の温度(例えば、第2の光透過部分320の温度)を測定し、且つその温度情報に基づいて、皮膚接触部位の温度を計算し得る。
【0075】
上述の方法を用いることによって、制御ユニットは、温度センサーから得られた皮膚接触部位の温度情報に基づいて、冷却ユニット、レーザ源などを制御することによって、有害反応なく、血管収縮下でレーザ治療を効果的に実施できるようにする。
【0076】
冷却が、光透過部材300の皮膚接触面325を介して皮膚の接触部位で実施されるとき、冷却時間が非常に長くなる場合、冷却自体からの重篤な有害反応が起こり得る。それゆえ、冷却の継続時間を短くすること、及び病変部のレーザ治療を迅速に実施することが重要である。
【0077】
皮膚病変部を迅速に治療するために、光透過部材300の皮膚接触面325が接触される皮膚接触部位110上の皮膚病変部のロケーションを見つけ、及び皮膚病変部上にスポットを正確に形成するようにレーザビームを案内することが必要である。
【0078】
図2に示すように、レーザ装置は、皮膚病変部の部位の画像を分析することによって、病変部のロケーションを見つけて、その分析に基づいて病変部を標的にし、それにより、レーザ治療を迅速に且つ正確に実施するように構成され得る。
【0079】
いくつかの実施形態では、レーザ装置は:(i)上記の図1A及び図1Bに示した実施形態によるレーザ装置と同じ方法で、レーザ源200、光透過部材300、並びに冷却ユニット400及び500;さらに、(ii)光調整ユニット220、ビームスプリッター350、及びカメラ600;並びに(iii)これらの構成要素を制御する制御ユニットMを含むように構成され得る。
【0080】
この実施形態によるレーザ装置は、上述の図1A及び図1Bに示す実施形態によるレーザ装置と同様に:レーザ源200;レーザ透過面315を形成する上面と、皮膚100の病変部110と接触する皮膚接触面325を形成する底面とを含み、及びレーザ源200からの治療用レーザビームLaを、レーザ透過面315から皮膚接触面325へ透過させるように案内する光透過部材300;並びに光透過部材300の皮膚接触面325を冷やして、皮膚接触面325を用いて皮膚接触部位110を冷やすことによって血管収縮を誘発し得る冷却ユニット400及び500を含み得る。
【0081】
レーザ源200、光透過部材300、並びに冷却ユニット400及び500は、図1A及び図1Bに示す一実施形態によるレーザ装置と実質的に同一とし得る。
【0082】
図2に示すように、光透過部材300は、上面がレーザ透過面315を形成している第1の光透過部分310;及び底面が皮膚接触面325を形成している第2の光透過部分320を含み得、それにより、レーザビームをレーザ透過面315から皮膚接触面325へ透過させ且つ進ませるように案内する。
【0083】
図2に示すように、この実施形態による光透過部材300は、第1の光透過部分310と第2の光透過部分320との間にビームスプリッター350を含み得る;それにより、レーザ透過面315から皮膚接触面325まで進むレーザビームLaを透過し、及び皮膚接触面325が接触している状態で接触部分110から反射される光を1つの側へ反射する。
【0084】
カメラ600は、ビームスプリッター350から反射された光から、皮膚接触面と接触する皮膚接触部位110の画像を撮り得る。
【0085】
カメラ600によって撮られた画像を得るために、自然光を使用するのではなく、別個の専用の照明機器を使用することが好ましい。照明機器が皮膚接触部位に別に設けられる場合、皮膚接触部位から反射された光は、ビームスプリッター350で反射され得、カメラ600が、ビームスプリッター350によって反射された光を受けることによって、接触部位のより鮮明な画像を撮ることを可能にする。換言すると、図2で画像610によって示すような、接触部位の画像を得ることが可能である。
【0086】
いくつかの実施形態では、カメラ600によって撮られた接触部位の画像610は、制御ユニットMへ送られ得る。その後、制御ユニットMは、画像610を分析し、病変部612を特定し、皮膚病変部612のロケーションを特定し、特定された皮膚病変部上のロケーションを標的とするように、光調整ユニット220を制御し、及びレーザビームを標的ロケーション上に照射されるように案内し得る。
【0087】
光調整ユニット220は、レーザ源200から発振されたレーザビームの経路を調整することによって、皮膚接触部位110の標的ロケーション上にビームスポットSPが形成されることを可能にする装置とし得る。いくつかの実施形態では、光調整ユニット220は、ガルバノ(Galbano)ミラーとし得る。
【0088】
カメラ600によって撮った画像610を処理及び分析することによって、制御ユニットMは、皮膚病変部612の部位を検出し、境界を特定し、レーザビームの標的ロケーションの座標情報として、境界内の特定した病変部位の位置座標を計算し、標的ロケーションの座標情報に従って光調整ユニット220を制御し、及びレーザビームLaを、計算された標的ロケーションに照射されるように案内し得、それにより、病変部位を迅速に見つけ、且つ皮膚病変部にレーザ治療を施す。
【0089】
例えば、図3A~3Fに示すステップによって接触部位の画像を分析することによって、皮膚病変部のロケーションを見つけ、及び図2に示す実施形態に従ってレーザ装置のカメラを使用して、皮膚病変部にレーザ治療を施すことが可能である。
【0090】
図3Aは、上述したようなカメラによって撮られた概略的な画像である。撮られた画像は、図3Bに示すように、処理及び分析されて、図3Cに示すように、皮膚病変部位の境界を特定し得る。皮膚病変部位の境界を特定した後、レーザビームは、境界内のロケーションを標的にして照射され、図3Dに示すように、境界内に複数のビームスポットを形成し得る。いくつかの実施形態では、レーザビームは、図3Eに示すように、複数のビームスポット間で重なり合う方式で照射されて、レーザ治療を終え得る。図3Fは、レーザ治療後の対処のタイプを示す。
【0091】
図2に示す実施形態は、レーザビームLaが、光透過部材300のレーザ透過面315からビームスプリッター350を透過された後に、皮膚接触面325に照射され得、及びカメラ600が、光透過部材300の1つの側で、ビームスプリッターによって反射された光から画像を撮り得るように、構成され得る。
【0092】
図4は、レーザ装置が:図1A及び図1Bに示す実施形態によるレーザ装置と同じように、レーザ源200、光透過部材300、冷却ユニット400及び500を含み;且つ、さらに、光調整ユニット220、ビームスプリッター360;及びカメラ600;並びにこれらの構成要素を制御する制御ユニットMを含むように構成され得る、別の実施形態を示す。
【0093】
この実施形態によるレーザ装置は、図4に示すように、カメラ600の光軸AXが、光透過部材300のレーザ透過面315及び皮膚接触面325を透過され、それにより、皮膚接触面325からカメラ600へ反射された光を、ビームスプリッター360及びレーザ透過面315を透過するように案内するように、構成され得る。
【0094】
図2に示す実施形態及び図4に示す実施形態において、レーザビームのロケーションとカメラのロケーションは、互いに交換され得る。
【0095】
図4に示す実施形態では、第1の光透過部分310と第2の透過部分320との間に設けられたビームスプリッター360は、上記の図2に示す実施形態において使用されたビームスプリッター350とは異なる物理的特性を有し得る。図2に示す実施形態のビームスプリッター350の特性は、可視光線を反射させ及びレーザビームを透過させることを可能にし得る。図4に示す実施形態のビームスプリッター360は、レーザビームを反射し、及び可視光を透過し得る。
【0096】
光調整ユニット220は、レーザ源200から発振されたレーザビームの経路を調整し、及びビームスプリッター360による反射を考慮して、標的ロケーションの座標を設定し得る。光調整ユニット220は、ガルバノ(Galbano)ミラーなどの機器を備えて実装され得る。
【0097】
制御ユニットMは、カメラ600がレーザ透過面315を介して撮る皮膚接触部位の画像の予め決められた処理及び分析を行うことによって、皮膚病変部位を検出し得る。制御ユニットMは、境界を特定し、レーザビーム標的ロケーションの座標情報として、境界内の特定された病変部の位置座標を計算し、標的ロケーションについての座標情報に従って光調整ユニット220を制御し、及びレーザビームLaを、計算された標的ロケーションに照射されるように案内し得、それにより、病変部位を迅速に見つけ、且つ病変部位に即座に且つ正確にレーザ治療を施す。
【0098】
図2又は図4に示す実施形態では、冷却ユニット400及び500は光透過部材300を冷やし得るが、一定期間が経過すると、光透過部材の温度が一定温度を下回るため、光透過部材300が曇り得る。
【0099】
光透過部材300の曇りは、特に光透過部材の材料、周囲の温度及び湿度、並びに冷却温度次第で、いつ何時も発生し得る。光透過部材300が曇ると、カメラ600によって撮られた画像の明瞭さが著しく低下し、病変部のロケーションを検出するのを困難にする。
【0100】
例えば、図2に示す実施形態では、カメラは、光透過部材300の1つの側で、ビームスプリッターからの反射光を受けることによって、画像を撮る。そのようなものとして、光透過部材300の横方向の面(lateral surface)の曇りは、撮られた画像の明瞭さに影響を与え得る。図4に示す実施形態では、カメラは、ビームスプリッター360によって透過された光を、光透過部材300のレーザ接触面315で受けることによって、画像を撮り得る。そのようなものとして、光透過部材300のレーザ透過面315の曇りは、撮られた画像の明瞭さに影響を与え得る。
【0101】
図5A及び図5Bは、上述したような光透過部材で発生し得る曇りの問題を解決するための、例示的な実施形態を示す。図5A及び図5Bに示す実施形態は、曇りの問題を解決する要素を除いて、図2に示すレーザ装置と実質的に同一である。図5A及び図5Bに示すレーザ装置での曇りの問題を解決する要素は、図1A及び図1B及び図4に示すものを含め、様々な他の実施形態に応用され得る。
【0102】
図5Aでは、この実施形態によるレーザ冷却ユニットは:熱電素子510及び520、並びに光透過部材の皮膚接触面325の接近した部位を熱伝導によって冷やすための伝導部材412、414、422、及び424を含み得る。
【0103】
図5Aは、光透過部材300の1つの横方向の側(lateral side)及び別の横方向の側にそれぞれ位置する冷却ユニット(熱電素子及び伝導部材)を示し、冷却ユニットのロケーションはそれに限定されない。冷却ユニットは、光透過部材の1つの側にのみ、又は全ての側に取り付けられ得る。
【0104】
伝導部材は:(i)熱を伝導するために、熱電素子510及び520の熱吸収プレートに取り付けられた伝導ベース412及び422;並びに(ii)伝導ベース412と光透過部材300との間で熱を伝導することによって、光透過部材300を冷やすための伝導ブリッジ414及び424を含み得る。
【0105】
伝導ブリッジ414及び424は、伝導ベース412及び422と光透過部材300との間に離間部分415及び425を形成するように設けられ得る。
【0106】
前記離間部分415と425との間の距離は、伝導ブリッジ414と424との間の距離と同じとし得る。好ましくは、離間部分415及び425の縦方向の間隙は、伝導ブリッジ414及び424の長さよりも長いとし得る。換言すると、離間部分415及び425の体積は、伝導ブリッジ414及び424の体積よりも大きくなるように形成されることが好ましい。
【0107】
好ましくは、伝導ブリッジ414及び424を取り付けるためのロケーションは、光透過部材300の皮膚接触面325の近くにあるとし得る。
【0108】
図5Aに示す実施形態では、熱電素子510及び520に取り付けられた伝導ベース412及び422は、伝導ブリッジ414及び424にのみ熱を伝導し得るので、熱は、離間部分415及び425を通して伝導されず、且つ伝導ブリッジ414及び424は、皮膚接触面325の近くに取り付けられる。そのようなものとして、光透過部材での曇りは、皮膚接触面325の冷却の効果を実質的に維持しながら、著しく遅延され得る。
【0109】
上述した通り、熱電素子510及び520が、伝導ブリッジ414及び424を介して光透過部材300に接続されると、光透過部材300上での曇りの発生は、熱電素子510及び520が光透過部材300に直接取り付けられる場合と比較して、より著しく遅延され得る。
【0110】
図5Bに示すように、伝導ベース412及び422と光透過部材300との間の離間部分415及び425は、断熱材417及び427で埋められ得、それにより、光透過部材上での曇りの発生をさらに遅延させる。
【0111】
図6Aは、光透過部材の冷却に起因する曇りがレーザ光透過部材の構造上の特徴によって防止又は遅延され得る、レーザ装置のさらに別の実施形態を示す。
【0112】
図6Aに示す実施形態による、レーザ装置に設けられた光透過部材300aは、図示の通り、2つの異なる熱伝達係数の第1の光透過ブロックSと第2の光透過ブロックQとを、レーザ透過面315aから皮膚接触面325aまで交互に積み重ねることによって、構成され得る。下文で、上述したように第1の光透過ブロックSと第2の光透過ブロックQとを積み重ねることによって構成された光透過部材300aは、「積み重ね型光透過部材」と呼ばれる。
【0113】
いくつかの実施形態では、積み重ね型光透過部材300aの上述の第1の光透過ブロックSは、例えば、サファイア材で形成され得る;及び第2の光透過ブロックQは、例えば、石英材で形成され得る;しかし、第1の光透過ブロックS及び第2の光透過ブロックQは、これらの材料に限定されない。2つの材料が、光透過性質、及び相互に異なる熱伝導率を有する限りでは、材料のいずれ組み合わせも使用され得る。
【0114】
サファイアの熱伝導率は20W/mkであり、及び石英の熱伝導率は1.5W/mkであり、2つの材料間には熱伝導率の有意な差がある。それゆえ、2つのブロック間の熱伝達は、相互に異なる熱伝導率の材料の組み合わせで第1の光透過ブロックS及び第2の光透過ブロックQを構築することによって、並びにブロックを交互に積み重ねることによって、阻止され得る。その結果、積み重ね型光透過部材300aの曇りは、著しく遅延され得る。
【0115】
さらに別の実施形態によるレーザ装置は、光透過部材の温度を設定範囲内に維持して、冷却ユニットに起因する光透過部材上での曇りの発生を防止するか又は遅延させる温度維持手段を含み得る。図6Bは、温度維持手段の例として光透過部材に加熱器が取り付けられる、さらに別の実施形態を示す。
【0116】
図6Bは、光透過部材300の1つの側に加熱器700を取り付けることによって構築されたレーザ装置の実施形態を示す。光透過部材300が冷却ユニットによって冷やされるとき、制御ユニットMは、光透過部材300の温度を感知し得る。ひとたび温度が予め決められたレベルに達すると、加熱器700を制御することによって、光透過部材300上での曇りの発生を防止し得る又は遅延させ得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、図6Bに示すように、光透過部材300のレーザ透過面315での曇りを防止するために、温度センサーTSは、レーザ透過面315の温度を感知するように構成され得、及び加熱器700は、レーザ透過面315の近くに取り付けられ得る。温度センサーTSがレーザ透過面315の温度を感知し、及び制御ユニットMが、感知した温度に基づいて、曇りを防止するために温度を調整する必要があることを決定するとき、光透過部材300の温度は、冷却が進行中である間に、加熱器700を動作させることによって、調整され得る。
【0118】
加熱器700は、熱を発生させるヒーター線の形で実装され得、及びポリイミド加熱器も備えて実装され得る。
【0119】
カメラが光透過部材の横方向の面に位置決めされる場合、光透過部材のカメラが位置決めされている方向にある表面は、曇りがない必要がある。それゆえ、加熱器は、カメラが位置決めされている側の表面の近くに取り付けられ得、それにより、温度制御を可能にする。
【0120】
上述の加熱器を用いる曇りを防止する方法は、上述の光透過部材に加熱器を取り付けることによって、又は積み重ね型光透過部材に加熱器を取り付けることによって、実施され得る。
【0121】
図7A図7B、及び図7Cは、レーザ装置のさらに別の実施形態を示す。図7Bは、図7Aに示すレーザ装置の平面図である。図7Cは、図7Aに示すレーザ装置の底面図である。
【0122】
図7に示す実施形態は、上述の図2又は図4に示す実施形態の主要構成要素である光透過部材の代わりに、「光透過装置800」を含み得る。いくつかの実施形態では、図6Bの加熱器700は、上述したものと同じように、図7Aに示す実施形態において実装され得る。
【0123】
いくつかの実施形態では、図5A及び図5Bで説明したレーザ装置での曇りの問題を解決するための実装例は、図7Aに示す実施形態に応用され得る。
【0124】
図7Aに示すような前記光透過装置800は:導体で形成された導体枠810;導体枠810の内部にしっかり密封された光透過ガス820;導体枠810の上面にレーザ透過面801を形成する第1の窓812;及び導体枠810の底面に皮膚接触面802を形成する第2の窓814を含み得る。
【0125】
従って、治療用のレーザビームLaは、第1の窓812のレーザ透過面801から光透過ガス820を通って第2の窓814の皮膚接触面802へ透過され得る。
【0126】
ここで、ビームスプリッター830は、導体枠810の内部に設けられ得、及び第3の窓816が、導体枠810の1つの側に設けられ得るため、ビームスプリッター830によって反射された、皮膚接触面802からの光は、第3の窓816を経由してカメラ600に到達し得、それにより、皮膚接触面によって接触される皮膚の接触部位の画像を撮ることを可能にする。
【0127】
皮膚接触面802、前記第2の窓814の底面は、皮膚上の接触部位を冷却ユニット500によって直接冷やすために、皮膚100に接触するように構成され得る。好ましくは、第2の窓814は、光を透過させることができるが高い熱伝導率を有する材料で形成され得る。
【0128】
上述の実施形態の場合、冷却ユニット500、例えば、熱電素子が動作するとき、第2の窓814は、導体枠810の熱伝達によって冷やされ得、及び第2の窓814の皮膚接触面802は、皮膚接触部位を冷やし、及び近くの血管の収縮を誘発し得る。カメラ600が、そのような血管収縮下で、第3の窓816及びビームスプリッター830を経由して皮膚病変部位の画像を撮り、皮膚病変部のロケーションを特定し、且つ標的部位を検出するとき、レーザビームは、標的部位に照射されるように案内され得、それにより、血管収縮下でレーザ治療を施す。
【0129】
ここで、導体枠810は、冷却ユニット500によって冷やされ得る。しかしながら、光透過ガス820は、その内部にしっかり密封され得るため、熱伝達は、内部のガスによっては実施できない。そのようなものとして、窓812、814、及び816のそれぞれの曇りは、防止され得るか又は著しく減少若しくは遅延され得る。
【0130】
光透過部材の皮膚接触面902と皮膚病変部903との間が完全には接触していない状態で、レーザ光が照射される場合、レーザは、皮膚接触面902と皮膚病変部903との間の間隙を通って皮膚の望ましくない部位に照射され得、それにより、皮膚を損傷させ得る。図8は、施術者及び患者の安全性を保証するために、光透過部材の皮膚接触面902と皮膚病変部903との間の接触を検出し得るタッチセンサー901を実装した、レーザ装置のハンドピースを示す。
【0131】
いくつかの実施形態では、皮膚接触面902と皮膚病変部903との間の完全な接触が:(i)光透過部材の皮膚接触面902(例えばハンドピース内)を治療部位903と接触させ;(ii)タッチセンサーを使用して治療部位のインピーダンスを測定し;(iii)測定したインピーダンス値次第で、完全に接触したかどうかを決定し;及び(iv)完全に接触したときにのみレーザを照射することによって、保証され得る。この実施形態では、完全に接触していないときには、レーザは照射されない。
【0132】
コンピュータアルゴリズムによって皮膚病変部が識別される場合、コンピュータアルゴリズムで識別された部位(図9Aに示す)と、施術者が治療する予定である部位(図9Bに示す)との間に食い違いがあることがある。皮膚病変部だけでなく、故意ではなくて正常な皮膚にもレーザが照射される場合、正常な皮膚は、様々な有害反応、例えば熱傷、創傷感染、及び色素沈着過度を被り得る。それゆえ、コンピュータアルゴリズムが病変部位を正確に識別できないときには、施術者が手動で照射部位を決定することが有益とし得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、スキャナーが、カメラによって得た画像に基づいて、治療部位へのレーザビームの照射を容易にし得る。いくつかの実施形態では、スキャナーは、ガルバノメータースキャナーとし得る。
【0134】
図10は、スキャナー904、第1の光透過部分905、第2の光透過部分906、熱電冷却モジュール907、及びカメラ908を含むハンドピースの例示的な実施形態を示す。上述したように、第1の光透過部分905及び第2の光透過部分906は、それぞれ光を透過できる材料、例えば、石英、サファイア、水晶、ポリ(メチルメタクリレート)、又はポリスチレンで形成され得る。第1の光透過部分905及び第2の光透過部分906は、互いに異なる材料を含み得る;及び皮膚接触面902を備える第2の光透過部分906は、第1の光透過部分905よりも熱伝導率が高い材料を有し得る。
【0135】
ある実施形態では、カメラ908は、皮膚病変部の特性を分析し、及び皮膚病変部の特性に従って皮膚病変部を治療するようにレーザビームを案内するために、制御ユニットと動作可能に結合され得る。皮膚病変部の特性は、病変部のロケーション、境界、サイズ、厚さ、色、及び色素レベル(すなわち色素の密度又は濃度)を含み得る。いくつかの他の実施形態では、施術者は、照射する部位を手動で選択し、且つそれに、ペンを使用してドットで印をつけ得る(図11A)。
【0136】
カメラによって得られた画像(図12A)が、閾値画像処理方法を使用して変換されて、スキャナーによって印をつけられた部位を抽出する(図13A)。色相彩度値を調整した後、閾値画像処理方法によって変換された画像上のドットは、つながれ得る(図11B)。図12Bは、色相彩度値を用いた、図12Aと同じ画像を示す。図13Bは、閾値の色相彩度値を用いた、図13Aと同じ画像を示す。均等化されたヒストグラムを使用して、ドットでつながれた内部領域が埋められ得、及び閾値を調整することによって、レーザ照射部位が指定され得る(図11C)。最後に、指定された部位は、レーザによって照射され得る。図12Cは、均等化されたヒストグラムを使用して埋められた領域を備える、図12Aと同じ画像を示す。図13Cは、領域が閾値の均等化されたヒストグラムを使用して埋められている、図13Aと同じ画像を示す。
【0137】
識別された標的皮膚病変部にレーザ光を照射するとき、レーザスポットのサイズ次第では、レーザ光が照射されない部位がある場合がある(図14)。皮膚病変部全体にレーザ光が照射されることを保証するために、レーザスポットのサイズ次第で、重なり合っている割合の値が指定され得るため、レーザは、それに従って、重なり合う方式で照射され得る。図15A図15B、及び図15Cは、重なり合っている割合の値がそれぞれ20%、40%、及び50%であるときの、例示的な照射パターンを示す。照射パターンは、レーザスポットのサイズ(mm)、重なり合いの割合の値(%)、治療面積(mm)、及びカメラによって得られた画像の解像度(画素)に従って決定され得る。本明細書で開示したレーザ装置を使用することによって、皮膚病変部は、血管収縮下でレーザ光を用いて治療され得るため、特に重なり合っている領域におけるレーザエネルギーに起因する損傷は、重なり合っている領域に従来よりも高いフルエンスが照射される場合でも、最小限にされ得る。
【0138】
色素性病変部では、色素は、皮膚表面に見えているものよりも、皮膚の表面下では広く分布し得る。そのようなものとして、レーザ光が皮膚表面上で識別された部位に照射される場合、皮膚病変部の全体積を治療するのには十分ではないかもしれない。皮膚表面下の皮膚病変部を完全に治療するために、レーザ光は、皮膚表面上でコンピュータアルゴリズムによって又は施術者によって手動で識別された境界を越えて、皮膚病変部を取り囲む正常な皮膚部位に照射され得る。ある特定の状況では、レーザスポットの中心は皮膚病変部の境界にターゲットされ得るため、レーザスポットの外縁は、皮膚表面上の皮膚病変部の境界を越える(図16)。他の特定の状況では、レーザスポットの中心は、皮膚表面上で識別された皮膚病変部の境界を越えてターゲットされ得る。皮膚病変部は、血管収縮下でレーザ光を用いて治療され得るため、レーザエネルギーに起因する損傷は、治療される部位に対して最小限にされ得る。
【0139】
他の実施形態は、以下の特許請求の範囲内にある。
図1A
図1B
図2
図3A-3F】
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10
図11A-11C】
図12A-12C】
図13A
図13B
図13C
図14
図15A
図15B
図15C
図16
【国際調査報告】