(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】原子力電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
G21H 1/02 20060101AFI20231228BHJP
G21H 1/10 20060101ALI20231228BHJP
G21F 1/08 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
G21H1/02
G21H1/10
G21F1/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536802
(86)(22)【出願日】2021-12-16
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 US2021072958
(87)【国際公開番号】W WO2022133469
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ヘイベル、マイケル、ディー
(72)【発明者】
【氏名】グラー、センク
(57)【要約】
原子力電池の製造方法を提供する。当該方法は、放射線源物質を第1の構成部品内に画定された空洞に挿入して放射線源層を形成するステップを含む。当該第1の構成部品は、当該空洞を画定する第1の電気絶縁体層と、当該第1の電気絶縁体層を覆う位置にある第1のケーシング層とを備える。当該方法は、当該第1のケーシング層を第2の構成部品の第2のケーシング層に接触させて組立体を形成するステップを含む。当該第2の構成部品は、第2の電気絶縁体層と、当該第2の電気絶縁体層と接触する位置にある当該第2のケーシング層とを備える。当該方法は、当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子力電池の製造方法であって、
放射線源物質を第1の構成部品内に画定された空洞に挿入して放射線源層を形成するステップを含み、当該第1の構成部品は、
当該空洞を画定する第1の電気絶縁体層と、
当該第1の電気絶縁体層を覆う位置にあるケーシング層とを備え、
当該方法はさらに、当該第1のケーシング層を第2の構成部品の第2のケーシング層と接触させて組立体を形成するステップを含み、当該第2の構成部品は、
第2の電気絶縁体層と、
当該第2の電気絶縁体層と接触する位置にある当該第2のケーシング層とを備え、
当該方法はさらに、当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップを含むことを特徴とする、原子力電池を製造する方法。
【請求項2】
請求項1の方法であって、
前記放射線源物質がツリウム、ツリウム同位体、ストロンチウム、ストロンチウム同位体、またはそれらの組み合わせからなり、
前記第1および第2のケーシング層がそれぞれ金属または金属合金からなり、
前記第1および第2の電気絶縁体層がそれぞれ金属酸化物からなる、請求項1の方法。
【請求項3】
前記第1および第2のケーシング層が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ベリリウム、またはベリリウム合金からなる、請求項1の方法。
【請求項4】
前記第1および第2の電気絶縁体層がそれぞれ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、またはそれらの組み合わせからなる、請求項1の方法。
【請求項5】
前記放射線源物質が粉末、ワイヤ、またはそれらの組み合わせである、請求項1の方法。
【請求項6】
前記放射線源物質を製造するために親同位体物質に放射線を照射するステップをさらに含む、請求項1の方法。
【請求項7】
スエージ加工により前記組立体の断面寸法を減らし、前記放射線源層と前記第1の電気絶縁体層との間の面接触を増やす、請求項1の方法。
【請求項8】
請求項1の方法であって、
前記第1の構成部品は、
前記第1のケーシング層を覆う位置にある第3の電気絶縁体層と、
当該第3の電気絶縁体層を覆う位置にある第1の放射線遮蔽層とを備え、
前記第2の構成部品は、
前記第2の電気絶縁体層を覆う位置にある第2の放射線遮蔽層を備え、
当該方法は、当該第1の放射線遮蔽層と当該第2の放射線遮蔽層とを溶接して前記組立体内に前記放射線源層を密封するステップをさらに含むことを特徴とする、請求項1の方法。
【請求項9】
請求項8の方法であって、
前記第1の構成部品は、
前記第1のケーシング層と導通する第1の電極と、
前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第1の断熱層とを備え、
前記第2の構成部品は、
前記組立体内の前記放射線源層と導通するように構成された第2の電極を備え、前記放射線源層がベータ線を放出するとき、当該第1の電極と当該第2の電極との間には電位差が存在し、前記第2の構成部品はさらに、
前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第2の断熱層を備えることを特徴とする、請求項8の方法。
【請求項10】
熱エネルギー捕集装置を、前記第1の放射線遮蔽層と物理的に接触するように前記原子力電池に取り付けるステップをさらに含む、請求項8の方法。
【請求項11】
前記第1および第2の放射線遮蔽層がそれぞれ、タングステン、タングステン合金、鉄、鉄合金、ウラン、またはウラン合金からなる、請求項8の方法。
【請求項12】
前記原子力電池が板状または棒状である、請求項1の方法。
【請求項13】
原子力電池の製造方法であって、
第1の構成部品中の親同位体物質に放射線を照射して放射線源層を形成するステップを含み、当該第1の構成部品は、
当該親同位体物質と、
当該親同位体物質を覆う位置にある第1の電気絶縁体層と、
当該第1の電気絶縁体層を覆う位置にあるケーシング層とを備え、
当該方法は、当該放射線源層を備える当該第1の構成部品を、第2の構成部品内に画定された空洞に挿入して部分組立体を形成するステップをさらに含み、当該第2の構成部品は、
当該空洞を画定する第3の電気絶縁体層と、
当該第3の電気絶縁体層を覆う位置にある第1の放射線遮蔽層とを備え、
当該方法は、当該第2の構成部品の当該第1の放射線遮蔽層を当該第3の構成部品の第2の放射線遮蔽層に接触させて組立体を形成するステップをさらに含み、当該第3の構成部品は、
第2の電気絶縁体層と、
前記第2の電気絶縁体層に接触する位置にある第2の放射線遮蔽層を備え、
当該方法はさらに、当該第1の放射線遮蔽層と当該第2の放射線遮蔽層とを溶接するステップと、
当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップを含むことを特徴とする、原子力電池を製造する方法。
【請求項14】
請求項13の方法であって、
前記放射線源層がツリウム、ツリウム同位体、ストロンチウム、ストロンチウム同位体、またはそれらの組み合わせからなり、
前記第1および第2のケーシング層がそれぞれ金属または金属合金からなり、
前記第1および第2の電気絶縁体層がそれぞれ金属酸化物からなり、
前記第1および第2の放射線遮蔽層がそれぞれ、タングステン、タングステン合金、鉄、鉄合金、ウラン、またはウラン合金からなることを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項15】
スエージング加工により、前記第2の組立体の断面寸法を減らし、前記第1のケーシング層と前記第3の電気絶縁体層との間の面接触を増やす、請求項13の方法。
【請求項16】
請求項13の方法であって、
前記第2の構成部品は、
前記組立体内のケーシング層と導通するように構成された第1の電極と、
前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第1の断熱層とを備え、
前記第3の構成部品は、
前記組立体内の前記放射線源層と導通するように構成された第2の電極を備え、前記放射線源層がベータ線を放出するとき、当該第1の電極と当該第2の電極との間には電位差が存在し、前記第3の構成部品はさらに、
前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第2の断熱層を備えることを特徴とする、請求項13の方法。
【請求項17】
熱エネルギー捕集装置を、前記第1の放射線遮蔽層と物理的に接触するように前記原子力電池に取り付けるステップをさらに含む、請求項13の方法。
【請求項18】
前記原子力電池が板状または棒状である、請求項13の方法。
【請求項19】
前記放射線源層を形成するために、前記第1の構成部品が取り外し可能な容器内に配置された状態で、前記第1の構成部品内の前記親同位体物質に放射線を照射する、請求項13の方法。
【請求項20】
前記親同位体物質が原子力発電所の原子炉内で照射される、請求項13の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国特許法第119条(e)の下で、参照によりその全てが本願に組み込まれる2021年12月17日に出願された「METHODSOF MANUFACTURE FOR NUCLEAR BATTERIES」と題する米国特許出願第17/125,356号の利益および優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
放射性同位体熱発電器(RTG)は熱を発生し、その熱を熱電対によって電気に変換する。プルトニウム238は87.7年の望ましい半減期を有し、アルファ線を放出し、プルトニウム238を取り囲む物質中で急速に減速して熱を発生することから、一般的にRTGに利用されてきた。また、プルトニウム238は本質的にガンマ線を発生させず、アルファ線の減速では本質的にガンマ線が発生しないため、プルトニウム238を電源とするRTGを人や放射線に敏感な電子機器の近くで使用するために必要な放射線遮蔽は最小限で済む。しかし、プルトニウム238を利用したRTGの製造には課題がある。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、原子力電池の製造方法を提供する。当該方法は、放射線源物質を第1の構成部品内に画定された空洞に挿入して放射線源層を形成するステップを含む。当該第1の構成部品は、当該空洞を画定する第1の電気絶縁体層と、当該第1の電気絶縁体層を覆う位置にある第1のケーシング層とを備える。当該方法は、当該第1のケーシング層に第2の構成部品の第2のケーシング層を接触させて組立体を形成するステップを含む。当該第2の構成部品は、第2の電気絶縁体層と、当該第2の電気絶縁体層と接触する位置にある当該第2のケーシング層とを備える。当該方法は、当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップを含む。
【0004】
本開示はまた、原子力電池の製造方法を提供する。当該方法は、第1の構成部品中の親同位体物質に放射線を照射して放射線源層を形成するステップを含む。当該第1の構成部品は、当該親同位体物質と、当該親同位体物質を覆う位置にある第1の電気絶縁体層と、当該第1の電気絶縁体層を覆う位置にあるケーシング層とを備える。当該方法は、当該放射線源層を備える当該第1の構成部品を、第2の構成部品内に画定された空洞に挿入して部分組立体(サブアセンブリ)を形成するステップを含む。当該第2の構成部品は、当該空洞を画定する第3の電気絶縁体層と、当該第3の電気絶縁体層を覆う位置にある第1の放射線遮蔽層とを備える。当該方法は、当該第2の構成部品の当該第1の放射線遮蔽層を当該第3の構成部品の第2の放射線遮蔽層に接触させて組立体を形成するステップを含む。当該第3の構成部品は、第2の電気絶縁体層と、当該第2の電気絶縁体層と接触する位置にある当該第2の放射線遮蔽層とを備える。当該方法は、当該第1の放射線遮蔽層と当該第2の放射線遮蔽層とを溶接するステップを含む。当該方法はまた、当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップを含む。
【0005】
本明細書に記載された発明は、本発明の概要に要約された実施例に限定されないことを理解されたい。他の様々な態様が、本願に記載および例示されている。
【図面の簡単な説明】
【0006】
実施例の特徴および利点、ならびにそれらを達成する方法は、添付の図面と併せた以下の実施例の説明を参照することでより明らかになり、実施例の理解が深まるであろう。
【0007】
【
図1】本開示による原子力電池の部分側面断面図である。
【0008】
【
図2】本開示による原子力電池組立体の部分側面分解断面図である。
【0009】
【
図3】本開示による原子力電池の製造方法のフロー図である。
【0010】
【
図4】本開示による原子力電池組立体の部分側面分解断面図である。
【0011】
【
図5】本開示による原子力電池の製造方法のフロー図である。
【0012】
【
図6】取り外し可能な容器に収納された、
図4の原子力電池組立体の第1の構成部品の部分上面断面図である。
【0013】
本願に記載された実施例は、特定の実施例の一形態を示すものであり、かかる実施例は、いかなる様式においても実施例の範囲を限定的に解釈するものでないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本開示の特定の例示的な態様を説明して、本願で開示される組成物および方法の組成、機能、製造、および使用の原理について全体的な理解を提供する。これらの態様の1つまたは複数の実施例を添付の図面に示す。通常の技量を有する当業者であれば、本願に具体的に記載され、添付の図面に示された組成物、物品、および方法は、非限定的な例示的態様であり、本発明の様々な実施例の範囲は、特許請求の範囲によってのみ定義されることを理解するであろう。例示的な一態様に関連して図示または記載された特徴は、他の態様の特徴と組み合わせることができる。そのような改造や変形例は、本発明の範囲に含まれることが意図される。
【0015】
本明細書全体を通して、「様々な実施例(various examples)」、「いくつかの実施例(some examples)」、「1つの実施例(one example)」、「一実施例(an example)」等への言及は、実施例に関連して記載される特定の特徴物、構造、または特性が実施例に含まれることを意味する。したがって、本明細書の全体を通じて所々に見られる「様々な実施例において(in various examples)」、「いくつかの実施例において(in some examples)」、「1つの実施例において(in one example)」、「ある実施例において(in an example)」などの句は、必ずしも全てが同じ実施例を指しているわけではない。さらに、特定の特徴物、構造、または特性は、1つ以上の実施例において任意の適当な様式で組み合わせることができる。したがって、一実施例に関連して図示または記載した特定の特徴物、構造、または特性の全体または一部を、限定することなく、別の実施例または他の実施例の特徴物、構造、または特性と組み合わせることができる。そのような改造や変形例は、本願の実施例の範囲に含まれることが意図される。
【0016】
RTGは一般に、プルトニウム238からのアルファ線の減速によって生成される熱エネルギーのみから電気エネルギーを生成する。しかし、プルトニウム238は燃料として望ましくないことがある。加えて、ベータ線を放出する組成物は、ベータ線が望ましくない制動放射線(例えばガンマ線)を放出する可能性があり、大きな放射線遮蔽層が必要になり望ましくないことがあるため、これまで利用されてこなかった。さらに、RTGの出力密度を高めることが困難であった。そこで本発明者らは、ベータ線からまず熱エネルギーを生成することを必要とせずに、ベータ線放出から直接電気エネルギーを生成すること、RTGの出力密度を増大させること、および/または電気的遮蔽要件を減らすことができる、原子力電池の製造方法を提供する。さまざまな実施例において、原子力電池は、ベータ線から直接電気エネルギーを生成することも、熱エネルギーから電気エネルギーを生成することもできる。さらに、本願で提供される原子力電池の製造方法は、作業員の放射線被曝を減らすことができる。
【0017】
図1は原子力電池100を示す。原子力電池100は、放射線源層102と、第1の電気絶縁体層104と、ケーシング層106と、第1の電極108と、第2の電極110とを備える。いくつかの実施例では、原子力電池100は随意的に、第2の電気絶縁体層112、放射線遮蔽層114、熱エネルギー捕集装置116、および断熱層118を備える。
【0018】
原子力電池100は、電池板、棒、またはその他の形状として構成することができる。様々な実施例において、原子力電池102は、
図1に示すような単一の電池板、または複数の電池板(図示せず)から構成することができる。棒状構成の原子力電池100では、各層102、104、106、112、114、118は、
図1に示すような垂直断面を有することができる。棒の長さを制御することで、所望の量の電力を生成できる。棒形状の場合、所望の出力を達成するのに必要なスペースを最小化するために、らせん状の棒とすることができる。
【0019】
放射線源層102は、ベータ線を放出するように構成可能な組成物からなる。例えば、放射線源層102は、ツリウム、ツリウム同位体、ストロンチウム、ストロンチウム同位体、またはそれらの組み合わせからなることができる。特定の実施例では、放射線源層102はベータ線を放出する放射性同位体からなる。放射線源層102は、板状または棒状とすることができる。放射線源層102は、所望量のベータ線が放出される厚さに製造することができる。例えば、放射線源層102の厚さは1mmとすることができる。放射線源層102の寸法は、必要量の電力が得られる大きさにすることができる。
【0020】
第1の電気絶縁体層104は、放射線源層102を覆う位置にある。例えば、第1の電気絶縁体層104は、放射線源層102に直接接触し、放射線源層102を取り囲むことができる。第1の電気絶縁体層104は、放射線源層102とケーシング層106との間に所望の電気抵抗を得るのに適した組成および厚さに構成することができる。例えば、第1の電気絶縁体層は金属酸化物で構成することができる。様々な実施例において、第1の電気絶縁体層は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、またはそれらの組み合わせからなってよい。
【0021】
ケーシング層106は、第1の電気絶縁体層104を覆う位置にある。例えば、ケーシング層106は、第1の電気絶縁体層104に直接接触し、第1の電気絶縁体層104を取り囲むことができる。ケーシング層106は、ベータ線がケーシング層106を通過するのを阻害する(例えばベータ線を減速させる)ような組成および厚さに構成される。ケーシング層106は、例えば、原子番号が13以下の金属、または原子番号が13以下の金属を主成分とする金属合金などの、金属または金属合金から構成することができる。様々な実施例において、ケーシング層は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ベリリウム、またはベリリウム合金製とすることができる。ケーシング層106が原子番号13以下の金属を含む組成物からなる実施例では、ベータ線のケーシング層106通過が阻害されることに起因する制動放射はあったとしても最小限度に抑えられる。したがって、放射線遮蔽層114のサイズを小さくすることができる。
【0022】
第1の電極108は、放射線源層102と導通している。第1の電極108は、ケーシング層106および放射線遮蔽層114から、さらには原子力電池110内の放射線源層102以外のあらゆる導電層から電気的に絶縁することができる。様々な実施例において、第1の電極108は正極性である。
【0023】
第2の電極110はケーシング層106と導通している。第2の電極110は、放射線遮蔽層114および放射線源層102から電気的に絶縁されている。様々な実施例において、第2の電極110は負極性である。
【0024】
放射線源層102から放出されたベータ線を直接利用することにより、まず熱エネルギーを生成することを必要とせずに、電気エネルギーを生成することができる。例えば、放射線源物質102から放出されたベータ線は、第1の電気絶縁体層104を通過してケーシング層106に到達することができる。ベータ線の通過によって、放射線源層102とケーシング層106との間に電位差が生じる。例えば、ベータ線を構成する電子をケーシング層106に移送することが可能である。
【0025】
第1の電気絶縁体層104は、放射線源物質102とケーシング層106との間に所望の電気抵抗を生じさせると同時に、ベータ線が第1の電気絶縁体層104を通過して電位差が生じるような厚さに構成することができる。このように、第1の電極108と放射線源層102とは導通しており、第2の電極110とケーシング層106とは導通しているため、放射線源層102がベータ線を放出するとき、第1の電極108と第2の電極110との間に電位差が存在する。一般的なRTGで使用されるアルファ線放射体では、固体物質中のアルファ線の飛程が非常に短いため、望ましい電位差を得ることができない。
【0026】
第2の電気絶縁体層112は、ケーシング層106を覆う位置にある。例えば、第2の電気絶縁体層112は、ケーシング層106に直接接触し、ケーシング層106を取り囲むことができる。第2の電気絶縁体層112がケーシング層106と放射線遮蔽層114との間に所望の電気抵抗を生じさせるのに適した組成および厚さを備えることによって、ケーシング層106と放射線源層102との間での電位差の発生が放射線遮蔽層114により妨げられるのを阻止することができる。例えば、第2の電気絶縁体層112は金属酸化物で構成することができる。様々な実施例において、第2の電気絶縁体層112は、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、またはそれらの組み合わせを含むことができる。第2の電気絶縁体層112は熱伝導性であってよい。それにより、ベータ線の通過が阻害されることに伴いケーシング層106で発生した熱を、放射線遮蔽層114に伝えることができる。
【0027】
放射線遮蔽層114は、第2の電気絶縁体層112を覆う位置にある。例えば、放射線遮蔽層114は、第2の電気絶縁体層112に直接接触し、第2の電気絶縁体層112を取り囲むことができる。放射線遮蔽層114は、ガンマ線が放射線遮蔽層114を通過するのを阻害するのに適した組成および厚さに構成することができる。例えば、放射線遮蔽層114は金属または金属合金で構成することができる。様々な実施例において、放射線遮蔽層114は、タングステン、タングステン合金、鉄、鉄合金、ウラン、ウラン合金、またはウラン化合物製とすることができる。放射線遮蔽層114は、ケーシング層106と熱的に連通していてもよい。放射線遮蔽層114がケーシング層106からの追加のベータ線および/または制動放射線の通過を阻害することにより、熱エネルギーが生じ得る。
【0028】
熱エネルギー捕集装置116は、放射線遮蔽層114と物理的に接触しており、放射線遮蔽層114から熱エネルギーを受け取り、熱エネルギーを電気エネルギーに変換するように構成されている。例えば、熱エネルギー捕集装置116は熱電対で構成することができる。様々な実施例において、放射線遮蔽層114からの熱エネルギーは、一般的なRTGで使用される方法で捕集することができる。
【0029】
放射線遮蔽層116は熱エネルギーによって加熱され得るので、放射線遮蔽層114を覆う位置に断熱層118を配置することができ、それによって、原子力電池100からの熱エネルギーの対流損失が低減し、原子力電池100の効率が向上する。例えば、断熱層118は、放射線遮蔽層116に直接接触し、放射線遮蔽層116を取り囲むことができる。断熱層118は、ガラス繊維、シリカ、カーボン、その他の断熱材料、およびそれらの組み合わせを含むことができる。
【0030】
本願で説明するように、原子力電池100は、熱エネルギー捕集装置116を利用して熱エネルギーを電気エネルギーに変換することによって電気エネルギーを生成でき、且つ、放射線源層102からのベータ線放出により直接的に電気エネルギーを生成することもできる。原子力電池100は、原子力電池の体積1立方センチメートル当たり少なくとも0.1ワット(ワット/cm3)を第1の電極108および第2の電極110から出力するように構成することができ、出力は例えば、少なくとも0.5ワット/cm3、少なくとも1ワット/cm3、少なくとも2ワット/cm3、少なくとも10ワット/cm3、または少なくとも50ワット/cm3などであってよい。
【0031】
原子力電池100は、実質的に一定の電源が望まれる様々な用途に使用できる。原子力電池100は、軍用機器のコンピュータや通信機器に電力に給電したり、飛行機や潜水艦などの無人機に給電したりするのに使用可能である。あるいは、電気自動車のような民生用途に使用して車内の冷暖房などの補助機能に給電することで走行距離を伸ばすこともできる。
【0032】
また、無人機に給電することで、通常では実現不可能な条件下でも運転可能になる。原子力電池100は、現在使用されている燃焼機関とは異なり、動力源が空気(例えば酸素)を必要としないため、機体はより高い高度および/またはより低温で走行可能である。
【0033】
図2は、第1の構成部品200aおよび第2の構成部品200bという、少なくとも2つの構成部品(例えばサブアセンブリ)からなる原子力電池組立体200の分解図である。当該第1の構成部品200aは、空洞222を画定する第1の電気絶縁体層204aと、当該第1の電気絶縁体層204aを覆う位置にある第1のケーシング層206aとを備える。当該空洞222は、放射線源物質を受容できる大きさである。例えば、第1の電気絶縁体層204aは、管状にすることによって円筒形の空洞222を画定することができる。あるいは、第1の電気絶縁体層204aは、箱状にすることによって矩形の空洞222を画定することができる。
【0034】
随意的に、第1の構成部品200aは、第1のケーシング層206aを覆う位置にある第2の電気絶縁体層212aと、第2の電気絶縁体層212aを覆う位置にある第1の放射線遮蔽層214aと、第2の電極210と、第1の放射線遮蔽層214aを覆う位置にある第1の断熱層218aとを備えることができる。第2の電極210は、第1のケーシング層206と導通するように構成可能であり、第2の電気絶縁体層212aによって第1の放射線遮蔽層214aから電気的に絶縁することができる。
【0035】
第2の構成部品200b(例えばカバー、封止部品)は、第3の電気絶縁体層214bと第2のケーシング層206bとを備える。随意的に、第2の部品200bは、第2の電気絶縁体層212bを覆う位置にある第2の放射線遮蔽層、第1の電極208、および第1の放射線遮蔽層214bを覆う位置にある第2の断熱層218bを備える。第1の電極208は、組立体200内の放射線源層202と導通するように構成可能である。組み立て後、放射線源層がベータ線を放出するとき、第1の電極208と第2の電極210の間には電位差が存在する。
【0036】
図3は、組立体200から原子力電池を製造する方法のフロー図である。ステップ302に示すように、本方法は、親同位体物質に放射線を照射して放射線源物質を製造するステップを含む。例えば、親同位体物質は、照射によって中性子活性化することができる。例えば、親同位体は、照射によって中性子活性化してツリウム170に変わるツリウム169とすることができる。様々な実施例において、照射は、それぞれが参照により本願に組み込まれる米国特許出願第2016/0012928号、米国特許第10,446,283号、および/または米国特許第10,714,222号に従って行うことができる。特定の実施例では、照射を原子力発電所の原子炉内で行うことができる。
【0037】
ステップ304において、本方法では、第1の構成部品内に画定された空洞222に放射線源物質を挿入して放射線源層202を形成する。例えば、放射線源物質は、第1の構成部品200aの開口部224を通して空洞222に挿入することができる。様々な実施例において、放射線源物質は粉末、ワイヤ、またはそれらの組み合わせである。例えば、放射線源物質は粉末であってもよい。
【0038】
ステップ306において、第1の構成部品200aの第1のケーシング層206aは、第2の構成部品200bの第2のケーシング層206bと接触し、組立体を形成する。様々な実施例において、第1の放射線遮蔽層214aと第2の放射線遮蔽層214bを互いに接触させて、第1の電極208と放射線源層202との間の導通を確立することができる。例えば、第2の構成部品200bと第1の構成部品200aを
図2に示す向きに配置し、互いに近づけて接触するまで移動させることができる。例えば、第2の構成部品200bを第1の構成部品200aに向けて(方向200)、2つの構成部品200a、200bが互いに接触するまで移動させることができる。様々な実施例において、第1の構成部品200aを第2の構成部品200bに向けて移動させることができる。
【0039】
どのように移動させるかに関わらず、ステップ308において、第1の放射線遮蔽層214aと第2の放射線遮蔽層214bをくっ付けて封止することによって、組立体200内に放射線源層202を密封することができる。例えば、第1の放射線遮蔽層214aと第2の放射線遮蔽層214bを、レーザー溶接、摩擦圧接、またはそれらの組み合わせを利用して溶接することができる。様々な実施例において、第2の構成部品200bがねじ山を有し、第1の構成部品200aもねじ山を有することにより、2つの構成部品200a、200bを螺合させてもよい。放射線源層202を組立体200内に密封することにより、環境汚染物質が組立体200内に侵入するのを阻止すると共に、放射線源層が組立体200およびそれをもとに生産される原子力電池の外部に漏出するのを阻止することができる。さらに、第1のケーシング層206aと第2のケーシング層206bとを溶接することもできる。様々な実施例において、ねじ山を利用するようにすれば、例えば、放射線源層202の放射線出力が所望のレベル以下に低下した場合に、放射線源層202を交換することが可能になる。
【0040】
ステップ310では、組立体200をスエージ加工して原子力電池を形成することができる。様々な実施例において、スエージ加工によって組立体200の断面寸法を減らし、放射線源層202と第1の電気絶縁体層204との間の面接触を増やすことにより、放射線源層202から第1のケーシング層206へのベータ粒子の輸送の妨げとなる隙間を最小限に抑えることができる。スエージ加工により、放射線源層202、第1の電気絶縁体層204、および第2の電気絶縁体層212aを確実に所望の密度および厚さにすることができる。様々な実施例において、組立体200は長手軸を有し、スエージ加工では組立体200の長手軸に向かって圧縮を加える。
【0041】
ステップ312では、
図1に示す熱エネルギー捕集装置116のような熱エネルギー捕集装置を、第1の放射線遮蔽層214aに物理的に接触するように原子力電池に取り付けることができる。ステップ312では、第1の電極208と第2の電極210に配線を取り付けることもできる。
【0042】
図4は、第1の構成部品400a、第2の構成部品400b、および第3の構成部品400cという、少なくとも3つの構成部品(例えば部分組立体(サブアセンブリ))からなる原子力電池組立体(アセンブリ)400の分解図である。第1の構成部品400aは、親同位体物質402と、親同位体物質402を覆う位置にある第1の電気絶縁体層404と、第1の電気絶縁体層404を覆う位置にあるケーシング層406とを備える。第1の構成部品400aはまた、親同位体物質402および/またはそれをもとに形成された放射線源層と第1の電極408との間の導通を容易にするように構成された電気接点436を備える。電気接点436は、ケーシング層406から電気的に絶縁することができる。
【0043】
第2の構成部品400bは、空洞426を画定する第2の電気絶縁体層412aと、第3の電気絶縁体層412bを覆う位置にある第1の放射線遮蔽層414aとを備える。随意的に、第2の構成部品400bは、第2の電極410と、第1の放射線遮蔽層414aを覆う位置にある第1の断熱層(
図4には図示せず)とを備える。第2の電極410は、第1の構成部品400aが空洞426に受容されたときに、ケーシング層406と導通するように構成されている。
【0044】
第3の構成部品400cは、第3の電気絶縁体層412bと、電気絶縁体層412bを覆う位置にある第2の放射線遮蔽層414bを備える。随意的に、第3の構成部品400cは、電気接点436と導通するように構成された第2の電極408と、第2の放射線遮蔽層414bを覆う位置にある第2の断熱層(
図4に示さず)とを備える。
【0045】
図5は、組立体400から原子力電池を製造する方法のフロー図である。ステップ502において、親同位体物質402を含む第1の構成部品400aに放射線を照射して放射線源層を形成する。親同位体への照射は、
図3のステップ302と同様に行うことができる。様々な実施例において、第1の構成部品400aを取り外し可能な容器内に配置した状態で、第1の構成部品400aの照射を行うことができる。例えば、
図6に示すように、第1の構成部品400aは円筒形とすることができ、取り外し可能な容器632(例えばシンブル)は、第1の構成部品400aを受容するのに適した円筒形の空洞634を画定することができる。第1の構成部品400aを円筒形の空洞634に入れ、第1の構成部品400aを入れた取り外し可能な容器632を原子炉に入れて、第1の構成部品400aに放射線を照射することができる。次に、第1の構成部品400aを原子炉から取り出し、追加の製造工程に備えることができる。親同位体物質402が第1の構成部品402内にある状態で放射線源層を形成することにより、既成のケーシング層406によって放射線源層を第1の構成部品400a内に封止できるので、その後の製造工程における放射線被曝を抑えることができる。様々な実施例において、親同位体物質402は、ワイヤ、粉末、またはそれらの組み合わせであってよい。例えば、親同位体物質402はワイヤであってもよい。
【0046】
ステップ402での放射を容易にするために、ケーシング層406は、中性子断面積の小さい金属または金属合金から構成することができ、これにより、設けられる放射線源層からのベータ線放出によって生じる電位差を低下させる可能性のある放射性同位体がケーシング内で生成することを回避できる。さらに、ケーシング層406の金属または金属合金は、長時間の中性子線およびガンマ線照射を受けても機械的特性が大きく変化しない金属または金属合金で構成することができる。例えば、ケーシング層406は、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ベリリウム、またはベリリウム合金からなることができる。
【0047】
再び
図5を参照すると、ステップ502での照射後、第1の構成部品400aを第2の構成部品400b内に画定された空洞426に挿入して、サブアセンブリを形成することができる。第2の構成部品400bの第1の放射線遮蔽層414aと第3の構成部品400cの第2の放射線遮蔽層414bとを、ステップ506で互いに接触させて組立体400を形成することができる。第1の放射線遮蔽層414aと第2の放射線遮蔽層414bは、ステップ308の工程と同様に、ステップ508でくっ付けて封止することができる。
【0048】
ステップ510では、組立体400をスエージ加工して原子力電池を形成することができる。様々な実施例において、スエージ加工によって組立体400の断面寸法を減らし、ケーシング層406と第2の電気絶縁体層412aとの間の面接触を増やすことにより、原子力電池の作動中に第1の構成部品400aから放射線遮蔽層414aへの熱伝達を促進することができる。スエージ加工により、放射線源層402、第1の電気絶縁体層404、および第2の電気絶縁体層412aを確実に所望の密度および厚さにすることができる。
【0049】
ステップ512では、
図1に示す熱エネルギー捕集装置116のような熱エネルギー捕集装置を、第1の放射線遮蔽層414aに物理的に接触するように原子力電池に取り付けることができる。ステップ512では、第1の電極408と第2の電極410に配線を取り付けることもできる。
【0050】
本開示による原子力電池の製造方法では、ベータ線に基づく原子力電池を安全かつ効率的に製造することができる。本開示による原子力電池の製造方法は、原子力電池の周囲で最終組立作業を行う作業員の放射線被曝を最小限に抑えることができる。
【0051】
本開示の発明の様々な態様には、以下の付番した項目の態様が含まれるが、これらに限定されるものではない。
[実施例1]原子力電池を製造する方法であって、放射線源物質を第1の構成部品内に画定された空洞に挿入して放射線源層を形成するステップを含み、当該第1の構成部品は、空洞を画定する第1の電気絶縁体層と、当該第1の電気絶縁体層を覆う位置にある第1のケーシング層とを備え、当該方法はさらに、当該第1のケーシング層を第2の構成部品の第2のケーシング層と接触させて組立体を形成するステップを含み、当該第2の構成部品は第2の電気絶縁体層と、当該第2の電気絶縁体層と接触する位置にある当該第2のケーシング層とを備え、当該方法はさらに、当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップを含むことを特徴とする、原子力電池を製造する方法。
[実施例2]前記放射線源物質がツリウム、ツリウム同位体、ストロンチウム、ストロンチウム同位体、またはそれらの組み合わせからなり、前記第1および第2のケーシング層がそれぞれ金属または金属合金からなり、前記第1および第2の電気絶縁体層がそれぞれ金属酸化物からなる、実施例1に記載の方法。
[実施例3]前記第1および第2のケーシング層が、アルミニウム、アルミニウム合金、マグネシウム、マグネシウム合金、ベリリウム、またはベリリウム合金からなる、実施例1~2のいずれか1つに記載の方法。
[実施例4]前記第1および第2の電気絶縁体層がそれぞれ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、ダイヤモンド、またはそれらの組み合わせからなる、実施例1~3のいずれか1つに記載の方法。
[実施例5]前記放射線源物質が、粉末、ワイヤ、またはそれらの組み合わせである、実施例1~4のいずれか1つに記載の方法。
[実施例6]前記放射線源物質を製造するために親同位体物質に放射線を照射するステップをさらに含む、実施例1~5のいずれか1つに記載の方法。
[実施例7]スエージ加工により前記組立体の断面寸法を減らし、前記放射線源層と前記第1の電気絶縁体層との間の面接触を増やす、実施例1~6のいずれか1つに記載の方法。
[実施例8]実施例1~7のいずれか1つに記載の方法であって、前記第1の構成部品は、前記第1のケーシング層を覆う位置にある第3の電気絶縁体層と、当該第3の電気絶縁体層を覆う位置にある第1の放射線遮蔽層とを備え、前記第2の構成部品は、前記第2の電気絶縁体層を覆う位置にある第2の放射線遮蔽層を備え、当該方法は、当該第1の放射線遮蔽層と当該第2の放射線遮蔽層とを溶接して前記組立体内に前記放射線源層を密封するステップをさらに含むことを特徴とする、実施例1~7のいずれか1つに記載の方法。
[実施例9]実施例8に記載の方法であって、前記第1の構成部品は、前記第1のケーシング層と導通する第1の電極と前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第1の断熱層とを備え、前記第2の構成部品は、前記組立体内の前記放射線源層と導通するように構成された第2の電極を備え、前記放射線源層がベータ線を放出するとき、当該第1の電極と当該第2の電極との間には電位差が存在し、前記第2の構成部品はさらに、前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第2の断熱層を備えることを特徴とする、実施例8に記載の方法。
[実施例10]熱エネルギー捕集装置を、前記第1の放射線遮蔽層と物理的に接触するように前記原子力電池に取り付けるステップをさらに含む、実施例8~9のいずれか1つに記載の方法。
[実施例11]前記第1および第2の放射線遮蔽層がそれぞれ、タングステン、タングステン合金、鉄、鉄合金、ウラン、またはウラン合金からなる、実施例8~10のいずれか1つに記載の方法。
[実施例12]前記原子力電池が板状または棒状である、実施例1~11のいずれか1つに記載の方法。
[実施例13]原子力電池を製造する方法であって、第1の構成部品内の親同位体物質に放射線を照射して放射線源層を形成するステップを含み、当該第1の構成部品は、親同位体物質と、当該親同位体物質を覆う位置にある第1の電気絶縁体層と、第当該1の電気絶縁体層を覆う位置にあるケーシング層とを備え、当該方法はさらに、当該放射線源層を含む当該第1の構成部品を第2の構成部品内に画定された空洞に挿入して部分組立体を形成するステップを含み、当該第2の構成部品は、当該空洞を画定する第3の電気絶縁体層と、当該第3の電気絶縁体層を覆う位置にある第1の放射線遮蔽層とを備え、当該方法はさらに、当該第2の構成部品の当該第1の放射線遮蔽層を第3の構成部品の第2の放射線遮蔽層に接触させて組立体を形成するステップを含み、当該第3の構成部品は、第2の電気絶縁体層と、当該第2の電気絶縁体層と接触している当該第2の放射線遮蔽層とを備え、当該方法はさらに、当該第1の放射線遮蔽層と当該第2の放射線遮蔽層とを溶接するステップと、当該組立体をスエージ加工して原子力電池を形成するステップとを含むことを特徴とする、原子力電池を製造する方法。
[実施例14]前記放射線源物質がツリウム、ツリウム同位体、ストロンチウム、ストロンチウム同位体、またはそれらの組み合わせからなり、前記第1および第2のケーシング層がそれぞれ金属または金属合金からなり、前記第1および第2の電気絶縁体層がそれぞれ金属酸化物からなり、前記第1および第2の放射線遮蔽層がそれぞれ、タングステン、タングステン合金、鉄、鉄合金、ウラン、またはウラン合金からなることを特徴とする、実施例13の方法。
[実施例15]スエージング加工により、前記第2の組立体の断面寸法を減らし、前記第1のケーシング層と前記第3の電気絶縁体層との間の面接触を増やす、実施例13~14のいずれか1つに記載の方法。
[実施例16]実施例13~15のいずれか1つに記載の方法であって、前記第2の構成部品は、前記組立体内の前記ケーシング層と導通するように構成された第1の電極と、前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第1の断熱層とを備え、前記第3の構成部品は、前記組立体内の前記放射線源層と導通するように構成された第2の電極を備え、前記放射線源層がベータ線を放出するとき、当該第1の電極と当該第2の電極との間には電位差が存在し、前記第3の構成部品はさらに、前記第1の放射線遮蔽層を覆う位置にある第2の断熱層を備えることを特徴とする、実施例13~15のいずれか1つに記載の方法。
[実施例17]熱エネルギー捕集装置を、前記第1の放射線遮蔽層と物理的に接触するように前記原子力電池に取り付けるステップをさらに含む、実施例13~16のいずれか1つに記載の方法。
[実施例18]前記原子力電池が板状または棒状である、実施例13~17のいずれか1つに記載の方法。
[実施例19]前記放射線源層を形成するために、前記第1の構成部品が取り外し可能な容器内に配置された状態で、前記第1の構成部品内の前記親同位体物質に放射線を照射する、実施例13~18のいずれか1つに記載の方法。
[実施例20]前記親同位体物質が原子力発電所の原子炉内で照射される、実施例12~19のいずれか1つに記載の方法。
【0052】
本明細書では、開示された方法およびシステムを含む本発明の構成、構造、製造、機能、および/または操作に関する理解を提供するために、様々な特徴および特性を説明する。本明細書に記載された本発明の様々な特徴および特性は、そのような特徴および特性が本明細書の中で明示的に組み合わせとして記載されているか否かにかかわらず、任意の適切な方法で組み合わせることができると理解されたい。本発明者および本出願人は、このような特徴および特性の組み合わせが、本明細書に記載された発明の範囲に含まれることを明示的に意図している。したがって、特許請求の範囲は、本明細書に明示的または内在的に記載されている、または明示的または内在的に裏付けられている特徴および特性を、任意の組み合わせで記載するように修正することができる。さらに、本出願人は、先行技術に存在する可能性のある特徴および特性が本明細書に明示的に記載されていない場合であっても、それらの特徴および特性を積極的に権利放棄するように特許請求の範囲を修正する権利を留保する。したがって、そのような修正は、本明細書や特許請求の範囲に新たな事項を追加するものではなく、書面による記載、記載の十分性、および追加事項の要件を満たすものである。
【0053】
添付の特許請求の範囲に関して、当業者であれば、そこに記載された動作は一般的に任意の順序で実行され得ることを理解するであろう。また、様々な動作のフローはシーケンスで示されているが、様々な動作は、図示されている順序とは別の順序で実行されてもよいし、同時に実行されてもよいことが理解されよう。そのような代替の順序付けの例として、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、重複、割り込み、中断、再順序付け、増加的、予備的、追加的、同時、逆、またはその他の順序付けを含んでもよい。さらに、「~に応答する(responsive to)」、「~に関連する(related to)」といった用語や他の過去時制の形容詞は、文脈上他の意味に解釈すべき場合を除き、一般にかかる変化形を除外するように意図するものではない。
【0054】
本明細書に記載された発明は、本明細書に記載された様々な特徴や特性を含むことも、それらの特徴や特性からなることも、本質的にそれらの特徴や特性からなることもできる。「なる、構成されている、備えている(comprise)」の語およびその派生語(「comprises」、「comprising」など)、「有する(have)」の語およびその派生語(「has」、「having」など)、「含む(include)」の語およびその派生語(「includes」、「including」など)、「包有する(contain)」の語およびその派生語(「contains」、「containing」など)は、非限定的な連結動詞である。したがって、単数もしくは複数の特徴および/または特性を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、または「包有する(contains)」方法またはシステムは、かかる単数もしくは複数の特徴および/または特性を有するが、かかる単数もしくは複数の特徴および/または特性のみを有することに限定されない。同様に、単数もしくは複数の特徴および/または特性を「備える(comprises)」、「有する(has)」、「含む(includes)」、または「包有する(contains)」組成物、被膜、またはプロセスの要素は、かかる単数もしくは複数の特徴および/または特性を有するが、かかる単数もしくは複数の特徴および/または特性のみを有することに限定されず、追加の特徴および/または特性を有してもよい。
【0055】
特許請求の範囲を含む本明細書中で使用される文法的冠詞「a」、「an」、および「the」は、特に断りのない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を含むことを意図している。本明細書で使用する冠詞は、冠詞の文法上の目的語(対象物)が1つまたは複数の(すなわち、「少なくとも1つ」)であることを表す。一例として、「構成要素」は、1つまたは複数の構成要素を意味し、したがって、場合によっては複数の構成要素が企図され、記載された組成物、被膜、およびプロセスの実施ではそれらが採用または使用され得る。ただし、「少なくとも1つ」または「1つ以上」という用語を、ある場面で使用し、別の場面で使用しなかった場合、この用語を使用しなかったからといって、文法的冠詞「a」、「an」、「the」の対象が1つに限定されるという解釈にはならないことを理解されたい。さらに、文脈からそうでないことが明らかでない限り、単数形の名詞の用法には複数形が含まれ、複数形の名詞の用法には単数形が含まれる。
【0056】
本明細書では、特に断らない限り、すべての数値パラメータは、すべての場合において「約」という用語によって前置き・修正されていると理解されたい。ここに、数値パラメータは、パラメータの数値を求めるために使用される基礎的な測定技術に特有の変動特性を有している。最低限のこととして、また均等論の適用を特許請求の範囲に限定する意図はないが、本願に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を勘案し、通常の丸め手法を適用して解釈するべきである。
【0057】
本願で記載するあらゆる数値範囲は、記載の範囲に内包されるすべての断片的部分を含むものとする。例えば、「1~10」という範囲は、記載された最小値1と最大値10との間(最小値と最大値を内包)のすべての断片的部分を含む。すなわち、最小値は1以上、最大値は10以下である。また、本願に記載された全ての範囲は、記載された範囲の端点を含むものとする。例えば、「1~10」の範囲には、端点の1と10が含まれる。本明細書に記載されている最大の限度値は、そこに包摂されるすべての下位の限度値を含むことを意図しており、本明細書に記載されている最小の限度値は、そこに包摂されるすべての上位の限度値を含むことを意図している。したがって、出願人は、特許請求の範囲を含む本明細書を修正し、明示的に記載された範囲に包摂される任意の部分的範囲を明示的に記載する権利を有する。そのような範囲はすべて、本明細書に内在的に記載されているものである。
【0058】
本明細書において、特に層に関連して使用される場合、用語「上に(on)」、「上に(onto)」、「上に(over)」、およびその変形(例えば、「上に塗布される(applied over)」、「上に形成される(formed over)」、「上に堆積される(deposited over)」、「上に提供される(provided over)」、「上に位置する(located over)」など)は、基材の表面上に塗布される、形成される、堆積される、提供される、または他の方法により位置することを意味するが、必ずしも基材の表面と接触している必要はない。例えば、基材の上に層が「塗布されている(appliedover)」ということは、塗布された層と基材との間に、同じまたは異なる組成の単数または複数の別の層が存在することを排除するものではない。同様に、第1の層の上に第2の層が「塗布されている(appliedover)」ということは、塗布された第2の層と第1の層との間に、同じまたは異なる組成の単数または複数の別の層が存在することを排除するものではない。
【0059】
本発明の特定の実施例を説明のために上記に示してきたが、添付の特許請求の範囲において定義された本発明から逸脱することなく、本発明の細部に多数の変形例が可能であることは、当業者にとって自明であろう。
【国際調査報告】