(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】置換シクロトリホスファゼン化合物を含むエレクトレット及びそれから得られる物品
(51)【国際特許分類】
C08L 101/00 20060101AFI20231228BHJP
D06M 10/08 20060101ALI20231228BHJP
D06M 10/02 20060101ALI20231228BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20231228BHJP
D04H 3/007 20120101ALI20231228BHJP
C08K 5/5399 20060101ALI20231228BHJP
A61L 31/04 20060101ALI20231228BHJP
A61L 31/06 20060101ALI20231228BHJP
A41D 13/11 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08L101/00
D06M10/08
D06M10/02 D
D04H3/16
D04H3/007
C08K5/5399
A61L31/04 110
A61L31/06
A41D13/11 B
A41D13/11 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536847
(86)(22)【出願日】2021-11-29
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 IB2021061076
(87)【国際公開番号】W WO2022130080
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルプ,ケリー エー.
(72)【発明者】
【氏名】シュルツ,ネイサン イー.
(72)【発明者】
【氏名】デュアン,ダニエル シー.
(72)【発明者】
【氏名】カーク,セス エム.
(72)【発明者】
【氏名】リ,フーミン ビー.
(72)【発明者】
【氏名】セバスチャン,ジョン エム.
【テーマコード(参考)】
3B211
4C081
4J002
4L031
4L047
【Fターム(参考)】
3B211CE02
4C081AC15
4C081CA02
4C081CA03
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4J002AA011
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4L047AA29
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4L047BA08
(57)【要約】
熱可塑性樹脂中の帯電強化添加剤として使用される、少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアの使用が本明細書に記載される。そのような組成物は、濾過用途に使用することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂と、
少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアを含む帯電強化添加剤と、
を含む、組成物。
【請求項2】
前記アミノ-環状炭素基が、アミノ-シクロアルキル基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記アミノ-シクロアルキル基が、5個~8個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を含む、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミノ-環状炭素基が、アミノ-アリール基を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミノ-アリール基が、エーテル、アミン、及びアルキル基のうちの少なくとも1つで任意に置換された、少なくとも1つの芳香環を含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記アミノ-アリール基が、フェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、ホスホロアミノインダン、又はアルキルアミノフェノキシ基のうちの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の組成物。
【請求項7】
前記帯電強化添加剤が、式I:
【化1】
[式中、Lは、NH又はN(R)から選択され、Rは、アルキル基であって、任意に、N又はOから選択される少なくとも1個の鎖状に連結された原子を含み、Xは、環状炭素基を含む]のものである、請求項1~6のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項8】
前記帯電強化添加剤が、式II:
【化2】
[式中、Xは、アミノ基を含む環状炭素基を含む]のものである、請求項1~7のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項9】
前記帯電強化添加剤が、下記のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の組成物。
【化3】
【化4】
【請求項10】
前記帯電強化添加剤が、220℃未満で分解しない、請求項1~9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂が、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、及びポリエステルのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記組成物が、少なくとも0.01重量%~最大5.0重量%の前記帯電強化添加剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
前記組成物が添加剤を更に含み、前記添加剤が、顔料、光安定剤、一次又は二次酸化防止剤、金属不活性化剤、ヒンダードアミン、ヒンダードフェノール、脂肪酸金属塩、亜リン酸トリエステル、リン酸塩、フッ素含有化合物、及び核形成剤のうちの少なくとも1つを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項14】
前記組成物が、第2の帯電強化添加剤を実質的に含まず、任意に、前記第2の帯電強化添加剤がヒンダードアミンである、請求項1~13のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項15】
前記組成物が、半永久的電荷を示す、請求項1~14のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項16】
不織繊維ウェブが、前記熱可塑性樹脂を含む、請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項17】
フィルムが、前記熱可塑性樹脂を含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項18】
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を含む繊維を含む、不織繊維ウェブ。
【請求項19】
請求項18に記載の不織繊維ウェブを含む、医療用物品。
【請求項20】
請求項18に記載の不織繊維ウェブを含む濾過物品であって、任意に、前記濾過物品が呼吸用保護具である、濾過物品。
【請求項21】
前記不織繊維ウェブが、プリーツ加工されている、請求項20に記載の濾過物品。
【請求項22】
エレクトレットを作製する方法であって、
請求項1~15のいずれか一項に記載の組成物を提供することと、
コロナ処理、ハイドロチャージング、摩擦帯電、又はそれらの組み合わせを介して前記組成物を帯電させ、前記エレクトレットを形成することと、を含む、方法。
【請求項23】
少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアの、帯電強化添加剤としての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、置換シクロトリホスファゼン化合物の、不織布繊維ウェブを含むエレクトレットウェブのための帯電強化添加剤(charge-enhancing additive)としての使用及びその用途に関する。
【発明の概要】
【0002】
エレクトレットは、永久的若しくは半永久的な電荷又は双極子分極を有する誘電材料である。エレクトレットは、例えば食品包装用ラップ、空気フィルタ、フィルタ付きマスク(filtering facepiece)、及び呼吸用保護具(respirator)を含む様々なデバイスにおいて、またマイクロホン、ヘッドホンなどの電気音響デバイス、及び静電記録装置における静電要素として有用である。
【0003】
エアロゾル濾過に使用されるマイクロファイバーウェブの性能は、繊維に電荷を付与し、エレクトレット材料を形成することによって改善することができる。特に、エレクトレットは、エアロゾルフィルタにおいて粒子捕捉を強化するのに有効である。マイクロファイバーウェブにおいてエレクトレット材料を形成するための多くの方法が知られている。そのような方法は、例えば、メルトブローン繊維が形成されて、この繊維がダイオリフィスから出てくるとき、その繊維を電子又はイオンなどの帯電粒子と衝突させることを含む。他の方法は、例えば、ウェブが形成された後でコロナ放電によって繊維を帯電させること、又はカーディング及び/若しくはニードルタッキング(摩擦帯電)によって繊維マットに電荷を付与することを含む。更に、濾過によってエレクトレット電荷を強化するのに十分な圧力で、ウォータージェット又は水滴流を不織ウェブに衝突させる方法(ハイドロチャージング)も記載されている。
【0004】
エレクトレット材料に使用するために、様々な帯電強化添加剤が開発されてきた。米国特許第9,815,068号は、熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤を含むエレクトレットウェブを記載しており、帯電強化添加剤は、二価金属含有置換メルカプトベンゾイミダゾレート塩である。米国特許第10,240,269号は、熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤を含むエレクトレットウェブを記載しており、帯電強化添加剤は、縮合芳香族チオ尿素、縮合芳香族尿素化合物、又はそれらの組み合わせである。帯電(change)強化添加剤はまた、ヒンダードアミン光安定剤化合物を含んでもよい。
【0005】
一態様では、本開示は、熱可塑性樹脂中に帯電強化添加剤として置換シクロトリホスファゼンコアを含む組成物を記載する。
【0006】
一実施形態では、本明細書に開示される組成物は、呼吸用保護具などの濾過物品に使用することができる。
【0007】
別の態様では、エレクトレットを作製する方法が記載される。この方法は、(i)熱可塑性樹脂と、(ii)少なくとも3個のアミノ-環状炭素基を有する置換シクロトリホスファゼンコアと、を含む組成物を提供することと、コロナ処理、ハイドロチャージング、摩擦帯電、又はこれらの組み合わせによって組成物を帯電させ、エレクトレットを形成することと、を含む。
【0008】
上記の発明の概要では、各実施形態を説明することは意図されていない。本発明の1つ以上の実施形態の詳細はまた、以下の「発明を実施するための形態」にも記載される。その他の特徴、目的、及び利点は、「発明を実施するための形態」及び「特許請求の範囲」から明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本開示による例示的なコア-シース繊維の概略断面図である。
【0010】
【
図2】本開示による不織繊維ウェブの概略斜視図である。
【0011】
【
図3】本開示の一実施形態による例示的な呼吸用保護具40の概略正面図である。
【0012】
【0013】
明細書及び図面中の参照文字が繰り返して使用されている場合、本開示の同じ又は類似の特徴又は要素を表すことを意図している。当業者は多くの他の修正形態及び実施形態を考案することができ、それらは本開示の範囲及び原理の趣旨に含まれることを理解されたい。図は、縮尺通りに描かれていないことがある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で使用するとき、
用語「a」、「an」、及び「the」は、互換的に使用され、1つ以上を意味し、
「及び/又は」は、記載された事例の一方又は両方が生じ得ることを示すのに用いられ、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)並びに(A又はB)を含む。
【0015】
更に本明細書では、端点による範囲の記載は、この範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。
【0016】
更に本明細書では、「少なくとも1」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)を含む。
【0017】
本明細書で使用する場合、A、B、及びC「のうちの少なくとも1つを含む」は、単独の要素A、単独の要素B、単独の要素C、A及びB、A及びC、B及びC、並びに3つ全ての組み合わせを指す。
【0018】
本開示の組成物は、シクロホスファゼン化合物を含み、これは、熱可塑性樹脂中の帯電強化添加剤として使用される。
【0019】
本明細書に開示される帯電強化添加剤は、少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアである。
【0020】
一実施形態では、アミノ-環状炭素基は、アミノ基及びシクロアルキル基を含む。シクロアルキル基はアルキル鎖で置換されていても置換されていなくてもよい。一実施形態では、アミノ-シクロアルキル基は、例えば、5個、6個、7個、又は8個の炭素原子を含む。
【0021】
一実施形態では、アミノ-環状炭素基は、アミノ基及びアリール基を含む。アリール基を含むアミノ-環状炭素基は、エーテル、アミン、アルキル基、及びそれらの組み合わせを更に含んでもよい。一実施形態では、アミノ-アリール基は、例えば、6個、7個、8個、9個、10個、11個、又は更には12個の炭素原子を含む。例示的なアミノ-アリール基としては、フェニルアミノ基、アルキルフェニルアミノ基、アルコキシフェニルアミノ基、ホスホロアミノインダン(phosphor amino indane)、又はアルキルアミノフェノキシ基が挙げられる。
【0022】
一実施形態では、帯電強化添加剤は、式I:
【化1】
[式中、Lは、NH又はN(R)から選択され、Rは、アルキル基であって、任意に、N(アミノ)又はO(エーテル)から選択される少なくとも1個の鎖状に連結された原子を含み、Xは、5個~6個の環状炭素原子を含む環状炭素基を含む]のものである。一般的な慣行として、シクロトリホスファゼンコアと交差する線は、環のリン原子のいずれかに結合している置換基であり、リン原子の残りは、結合価を満たすために-Hに結合している。
【0023】
他の実施形態では、帯電強化添加剤は、式(II):
【化2】
[式中、Xは、アミノ基及び少なくとも5個~6個の炭素原子を含む環状炭素基を含む]のものである。
【0024】
一実施形態では、帯電強化添加剤は、以下のうちの少なくとも1つである。
【化3】
【化4】
【0025】
少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、市販されている場合があり、又は、例えば、以下の実施例の項に示すように、1,3,5,2,4,6-トリアザトリホスホリン-2,2,4,4,6,6-ヘキサクロリドをフェノール又はアリールアミンで置換することによって合成することができる。概して、シクロトリホスファゼンコアにおいて置換されたアミノ-環状炭素基は、合成により同一である。
【0026】
本明細書に開示される少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、帯電強化添加剤として使用することができる。帯電強化添加剤は、後述する品質係数(QF)を向上させる物質である。
【0027】
好ましくは、帯電強化添加剤として使用される少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、樹脂内での移動を防止するために周囲条件で固体であり、中程度の温度(加工温度など)で分解しない。一実施形態では、帯電強化添加剤は、少なくとも25℃、30℃、40℃,50℃,60℃、80℃又は更には100℃の温度で固体である。一実施形態では、帯電強化添加剤は分解しない。例えば、220℃、235℃、又は更には250℃まで加熱したときに、10℃/分の昇温速度を使用して熱重量分析によって窒素下で測定したときに、著しい重量損失はない(すなわち、損失が5重量%未満、1重量%未満、又は更には0.1重量%未満である)。
【0028】
本明細書に開示される少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、熱可塑性樹脂と共有結合させない必要があり、代わりに熱可塑性樹脂中にブレンドされる。本開示の少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、比較的少量で帯電強化添加剤として有効であり得る。典型的には、少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、熱可塑性樹脂中に、ブレンドの総重量に基づいて最大約10重量%の量で、より典型的には0.01~5重量%の範囲で存在する。いくつかの実施形態では、少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、エレクトレット組成物中に、0.1~3重量%、0.1~2重量%、0.2~1.0重量%、又は0.25~0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0029】
典型的には、本明細書に開示される少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアは、熱可塑性樹脂とブレンドされ、繊維にされる。
【0030】
本開示において有用な熱可塑性樹脂としては、ウェブに形成し帯電させたときに多量のトラップされた静電荷を保持することができる、任意の熱可塑性非導電性ポリマーが挙げられる。典型的には、そのようなポリマー樹脂は、意図される用途の温度で1014Ω-cmを超えるDC(直流)抵抗率を有する。トラップされた電荷を獲得することができるポリマーとしては、ポリプロピレン;ポリエチレン(例えば、HDPE、LDPE、LLDPE、VLDPE;ULDPE、UHMW-PEグレード);ポリ(1-ブテン);ポリ(3-メチルブテン);ポリ(4-メチル-1-ペンテン)などのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル;ポリスチレン;ポリカーボネート;ポリラクチドを含むポリエステル;並びに全フッ素化ポリマー及びコポリマーが挙げられる。好ましくは、熱可塑性樹脂はポリプロピレンを含む。
【0031】
好適な熱可塑性樹脂の例としては、例えば、ポリプロピレン樹脂:Exxon-Mobil Corporation(Irving,TX)から市販されているESCORENE PP 3746G;Total Petrochemicals USA Inc.(Houston,TX)から市販されているTOTAL PP3960、TOTAL PP3860、及びTOTAL PP3868;並びにLyondellBasell Industries,Inc.(Rotterdam,Netherlands)から市販されているMETOCENE MF 650W;並びに三井化学(東京)から市販されているポリ-4-メチル-1-ペンテン樹脂TPX-DX820、TPX-DX470、及びTPX-MX002が挙げられる。
【0032】
熱可塑性樹脂と帯電強化添加剤とのブレンドは、よく知られた方法によって調製することができる。典型的には、帯電強化添加剤と熱可塑性樹脂とのブレンドは、溶融押出技術を使用して加工されるため、バッチプロセスでブレンドを予めブレンドしてペレットを形成してもよく、又は連続プロセスにて押出機中で熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤を混合してもよい。連続プロセスを使用する場合、熱可塑性樹脂及び帯電強化添加剤は、固体として予備混合してもよく、又は押出機に別々に添加して溶融状態で混合してもよい。
【0033】
予備ブレンドされたペレットを形成するために使用できる溶融混合機の例としては、分散混合、分配混合、又は分散混合と分配混合の組み合わせを提供するものが挙げられる。バッチ法の例としては、BRABENDER(例えば、C.W.Brabender Instruments,Inc.;South Hackensack,New Jerseyから市販されているBRABENDER PREP CENTER)又はBANBURY内部混合及びロールミリング装置(例えば、Farrel Co.;Ansonia,Connecticutから入手可能な装置)を使用するものが挙げられる。バッチ混合後、生成した混合物を直ちに急冷し、後で加工するために混合物の融解温度未満で保管してもよい。
【0034】
連続法の例としては、単軸押出、二軸押出、ディスク押出、プランジャー式(reciprocating)単軸押出及びピンバレル単軸押出が挙げられる。連続法は、キャビティトランスファーミキサー(例えば、RAPRA Technology,Ltd.(Shrewsbury,England)から市販されているCTM)及びピン混合要素、静的混合要素などの分配混合要素又は分散混合要素(例えば、MADDOCK混合要素又はSAXTON混合要素から市販されている)の両方の利用を含むことができる。
【0035】
バッチプロセスによって調製される予備ブレンドされたペレットを押出すために使用できる押出機の例としては、連続加工について前述した装置と同じタイプが挙げられる。有用な押出条件は、概して、添加剤なしで樹脂を押出すのに好適なものである。
【0036】
一実施形態では、帯電強化添加剤を含む樹脂は繊維である。繊維は、任意の断面形状、例えば、三角形、正方形、長方形、五角形、六角形、七角形、八角形、星形、楕円形、三葉形、及び四葉形を有してもよい。
【0037】
一実施形態では、繊維は、シースで封入された繊維コアであり、
図1に示されるようないわゆるシース-コア繊維である。
図1において、シース-コア繊維100は、上に配置されたシース層120を有するコア110を含む。図示されていないが、シース層120は、繊維長さに沿って(繊維端部は除外される)同延(coextensive)である。コアは、任意の平均直径を有し得るが、好ましくは1~100ミクロン、より好ましくは5~50ミクロン、及び更により好ましくは10~25ミクロンの範囲である。一実施形態では、シース層は、例えば、少なくとも0.05、0.1、0.2、0.4、0.5、又は更には0.6ミクロン厚、かつ最大0.8、1.0、1.5、2.0、2.5、2.8、又は更には3.0ミクロン厚の平均厚を有する薄い層であり得る。
【0038】
一実施形態では、組成物は、本明細書に開示される置換シクロトリホスファゼンコアに加えて、第2の帯電強化添加剤を含んでもよい。このような第2の帯電強化添加剤は、当該技術分野において公知であり、ヒンダードアミン光安定剤添加剤、トリアジン系添加剤、及びヒンダードフェノール系添加剤が挙げられる。
【0039】
ヒンダードアミン系又はトリアジン系添加剤の具体例としては、BASF,Ludwigshafen,Germanyから商品名「CHIMASSORB 944」で入手可能な(ポリ[[6-(1,1,3,3,-テトラメチルブチル)アミノ]-s-トリアジン-2,4-ジイル][[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ]]);BASFから商品名「TINUVIN 622」で入手可能なコハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン重縮合物;BASFから商品名「TINUVIN 144」で入手可能なジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロネートビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル;BASFから商品名「CHIMASSORB 2020」で入手可能なジブチルアミン-1,3,5-トリアジン-N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル-1,6-ヘキサメチレンジアミン-N-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの重縮合物;BASFから商品名「TINUVIN 1577」で入手可能な2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5-((ヘキシル)オキシ)-フェノール;BASFから商品名「UVINUL T-150」で入手可能な2,4,6-トリアニリノ-p-(カルボ-2’-エチルヘキシル-1’-オキシ)-1,3,5-トリアジンなどのN置換アミノ芳香族化合物、特にトリアミノ置換化合物;及びトリステアリルメラミン(「TSM」)としても知られる2,4,6-トリス-(オクタデシルアミノ)トリアジンが挙げられる。
【0040】
ヒンダードフェノール系添加剤は、末端官能基としてヒドロキシル基を有する。ヒンダードフェノール系添加剤は、特に限定されないが、具体例としては、ペンタエリスリチル-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート](Irganox 1010、BASF製)、オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(Irganox 1076、BASF製)、トリス-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレート(Irganox 3114、BASF製)、3,9-ビス-{2-[3-(3-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-プロピオニルオキシ]-1,1-ジメチルエチル}-2,4,8,10-テトラオキサスピロ-[5,5]ウンデカン(Sumilizer-GA-80、Sumitomo Chemical Co.,Ltd.製)などが挙げられる。
【0041】
トリアジン系帯電強化添加剤としては、トリアジン環中にある窒素原子に加えて少なくとも1個の窒素原子を含有する、熱的に安定な有機トリアジン化合物又はオリゴマーが挙げられ、Rousseauらの米国特許第6,268,495号、同第5,976,208号、同第5,968,635号、同第5,919,847号、及び同第5,908,598号に開示されている。
【0042】
帯電強化添加剤の更なる例は、米国特許出願公開第2011/0137082号(Liら)、米国特許第8,613,795号(Liら)、同第7,390,351号(Leirら)、米国特許第5,057,710号(Nishiuraら)、並びに米国特許第4,652,282号及び同第4,789,504号(両方ともSusumuら)、並びに米国特許第8,790,449(B2)号(Liら)に提供されている。
【0043】
概して、帯電強化添加剤は、N-O-R型配置で窒素原子に結合したエーテル結合基を含むヒンダードアミン化合物(典型的にはNOR-HALSと呼ばれる)を含まない。例示的なNOR-HALSは、参照により本明細書に組み込まれる米国特許第7,947,767号(Chinら)に開示されている。例示的な市販のNOR-HALSとしては、BASFから商品名「TINUVIN NOR371」で入手可能なヒンダードアミンNOR安定剤が挙げられる。一実施形態では、組成物は、NOR-HALSを実質的に含まない(すなわち、0.05重量%未満、又は更には0.01重量%未満を含むか、又は更には含まない)。
【0044】
一実施形態では、組成物は、酸化防止剤、光安定剤、可塑剤、酸中和剤、充填剤、抗菌剤、界面活性剤、ブロッキング防止剤、顔料、プライマー、分散剤、及び他の接着促進剤などの1つ以上の従来の補助剤を含んでもよい。米国特許第7,879,746号(Klunら)(本明細書に参照により組み込まれる)において論じられている抗菌剤及び強化剤を組み込むことは、医療用途に特に有益であり得る。米国特許出願公開第2012/0077886号(Scholzら)(本明細書に参照により組み込まれる)において論じられている界面活性剤を組み込むことは、特定の用途に特に有益であり得る。
【0045】
一実施形態では、添加剤化合物を樹脂に添加して、汚れ除去性又は撥油性などの繊維の表面特性を改変することができる。例えば、繊維をフッ素化する。一実施形態では、フッ素化化合物(例えば、3M Co.,Maplewood,MNからRepellent Polymer Melt Additive PM-870として入手可能なフッ素化化合物)をポリマー樹脂に添加してもよい。別の実施形態では、繊維は、フッ素含有種及び不活性ガスを含む雰囲気中に置き、次いで放電させて繊維の表面の化学的性質を改変することができる。放電は、ACコロナ放電などのプラズマの形態であってもよい。このプラズマフッ素化プロセスにより、ポリマー物品の表面上にフッ素原子が存在するようになる。プラズマフッ素化プロセスは、Jones/Lyonsらの多くの米国特許第6,397,458号、同第6,398,847号、同第6,409,806号、同第6,432,175号、同第6,562,112号、同第6,660,210号及び同第6,808,551号に記載されている。高いフッ素飽和比(fluorosaturation ratio)を有するエレクトレット物品は、Spartzらの米国特許第7,244,291号に記載されており、ヘテロ原子とともに低いフッ素飽和比を有するエレクトレット物品は、Kirkらの米国特許第7,244,292号に記載されている。フッ素化技術を開示する他の公報には以下のものが挙げられる:米国特許第6,419,871号、同第6,238,466号、同第6,214,094号、同第6,213,122号、同第5,908,598号、同第4,557,945号、同第4,508,781号、及び同第4,264,750号;米国特許出願公開第2003/0134515(A1)号及び同第2002/0174869(A1)号;並びに国際公開第01/07144号。
【0046】
概して、本明細書に開示される繊維は、繊維仕上げを含まない。繊維仕上げは、繊維のより容易な/改善された加工を可能にするために、繊維の表面特性を変えるために使用される処理である。一実施形態では、本開示の繊維は、ソルビタン脂肪酸エステル又はポリオキシアルキレンアルキルエステルを実質的に含まない(30重量%未満、20重量%未満、10重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、又は更には0.1重量%未満を含む)。
【0047】
本開示の実施において使用される繊維は、任意の平均繊維直径を有してもよく、連続繊維、ランダム繊維、及び/又はステープル繊維であってもよい。例えば、いくつかの実施形態では、繊維(すなわち、個々の繊維)は、少なくとも5、6、8マイクロメートル、又は更には10マイクロメートル、かつ最大15、18、20、22マイクロメートル、又は更には25マイクロメートルの平均繊維直径を有し得る。
【0048】
一実施形態では、繊維の直径は、顕微鏡法(例えば、光学顕微鏡法又は走査型電子顕微鏡法)によって決定することができ、繊維は、繊維の直径を決定するために、断面にされ、拡大下で見られる。
【0049】
一実施形態では、繊維の直径は、繊維ウェブにわたる圧力降下を測定することによって計算することができる。有効繊維径(EFD)は、C.N.Davies,The Separation of Airborne Dust and Particulates,Institution of Mechanical Engineers,London Proceedings,IB(1952)に記載されるように計算することができる。実際には、繊維厚さは、日常的な実験的変動及びEFDの平均化の性質の結果として、いくつかの実験的変動を示し得る。
【0050】
本明細書に記載される繊維(フィラメント)は、概して、フィラメントを作製するための当技術分野において既知の技術を使用して作製することができる。このような技術としては、湿式紡糸、乾式紡糸、溶融紡糸、メルトブロー、又はゲル紡糸が挙げられる。
【0051】
特に有利なのは溶融紡糸である。溶融紡糸において、ポリマーを加熱し、紡糸口金を通過させて、繊維を冷却時に固化させる。例えば、溶融紡糸プロセスを行って多成分フィラメントを収集することができる。本明細書で使用される用語「溶融紡糸」は、1組のオリフィスから溶融フィラメントを押出し、フィラメントを冷却及び(少なくとも部分的に)固化させてフィラメントを形成することにより形成されるフィラメントを指し、この場合、フィラメントは、フィラメントの冷却及び固化を助けるために空気の空間(移動空気流を含み得る)を通過し、次いで、このように形成された繊維を、繊維を延伸させるために細長化(すなわち、延伸)ユニットを通過させる。
【0052】
メルトブローが押出オリフィスのきわめて近くに配置された空気吹き込みオリフィスにより導入される収束高速空気流への溶融フィラメントの押出を伴うという点で、溶融紡糸はメルトブローと区別することができる。溶融紡糸はまた、電界紡糸が、必要な溶媒溶液から押出すものとして説明され得るという点で、電界紡糸と区別され得る。紡糸口金の改変は、多成分(例えば、コア-シース)繊維をもたらす(例えば、米国特許第4,406,850号(Hills)、同第5,458,972号(Hagen)、同第5,411,693号(Wust)、同第5,618,479号(Lijten)、及び同第5,989,004号(Cook)を参照されたい)。本開示によるフィラメントはまた、フィルムのフィブリル化によって作製することもでき、これは矩形断面を有するフィラメントを提供し得る。
【0053】
ここで
図2を参照すると、例示的な不織繊維ウェブ200は、繊維210と、任意選択の二次繊維220とを含む。繊維210は、2~100ミクロンの平均繊維直径を有し、本開示による置換されたシクロトリホスファゼン化合物を含む。任意選択の二次繊維は、任意の繊維タイプであってもよく、及び/又は任意選択の平均繊維直径を有してもよい。
【0054】
不織繊維ウェブは、例えば、従来のエアレイド、カード、ステッチボンド、スパンボンド、ウェットレイド((湿式)、エアレイド及び/又はメルトブロー手順によって作製することができる。
【0055】
スパンボンド不織繊維ウェブは、溶融紡糸繊維が移動ベルト上に堆積され、そこで繊維間結合を有する不織連続繊維ウェブを形成する周知の従来の方法に従って形成することができる。メルトブロー不織繊維ウェブは、高速ガスが押出された繊維に衝突し、それによってそれらを延伸して薄くした後、それらが回転ドラム上に収集されることを除いて、同様のプロセスによって作製される。メルトブロー繊維ウェブも同様に繊維間結合を有するが、このウェブは概して対応するスパンボンド繊維ウェブの凝集強度を有していない。
【0056】
いくつかの実施形態では、不織ウェブは、繊維のエアレイ加工によって製造することができる。エアレイド不織繊維ウェブは、例えば、Rando Machine Company(Macedon,New York)からRANDO WEBBERとして入手可能なものなどの機器を使用して作製することができる。いくつかの実施形態では、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる、米国特許出願公開第2011/0247839号(Lalouch)に開示されているような重力レイ加工と称される型のエアレイ加工を使用することができる。不織繊維ウェブは、例えば、クロスラップ加工、ステッチボンド加工、ニードルタック加工、水流交絡、ケミカルボンド加工、及び/又はサーマルボンド加工などの技術によって、高密度化及び強化することができる。他の実施形態では、不織ウェブは、エアレイド繊維ウェブではない。
【0057】
本開示による不織繊維ウェブは、別段の指定がない限り、任意の坪量、厚さ、多孔性、及び/又は密度を有し得る。いくつかの実施形態では、不織繊維ウェブは、嵩高な開放不織繊維ウェブである。いくつかの実施形態では、不織繊維ウェブの繊維は、少なくとも3、4、5、10、15、20マイクロメートル、又は25マイクロメートルかつ最大125、100、90、80、75、50、40マイクロメートル、又は更には30マイクロメートルの有効繊維径を有する。
【0058】
一実施形態では、ウェブは、繊維長の分布を含む。一実施形態では、分布は長繊維スタンドを含む。例えば、40、60、100、500ミリメートル、又は更には1000ミリメートルを超える長さを有する繊維である。これらの長繊維ストランドは、理論的には無限の長さであり得るが、典型的には、長さが2000メートル未満、又は更には1000メートル未満である。
【0059】
本開示の繊維及び/又は本開示の繊維を含有する不織繊維ウェブは、形成時に帯電されてもよく、又は形成後に帯電されてもよい。エレクトレット濾過媒体(例えば、不織繊維ウェブ)の場合、媒体は、概して、繊維ウェブが形成された後に帯電される。
【0060】
概して、当技術分野において既知の任意の標準的な帯電方法を使用することができる。例えば、帯電は、摩擦帯電、ハイドロチャージング及びコロナ放電を含む様々な方法で実施することができる。方法の組み合わせもまた使用することができる。上述したように、いくつかの実施形態では、本開示のエレクトレットウェブは、追加の帯電方法を必要とせず、コロナ放電のみ、特にDCコロナ放電によって帯電することができるという望ましい特徴を有する。好適なコロナ放電プロセスの例は、米国再発行特許第30,782号(van Turnhout)、米国再発行特許第31,285号(van Turnhout)、米国再発行特許第32,171号(van Turnhout)、米国特許第4,215,682号(Davisら)、米国特許第4,375,718号(Wadsworthら)、米国特許第5,401,446号(Wadsworthら)、米国特許第4,588,537号(Klaaseら)、米国特許第4,592,815号(Nakao)、米国特許第6,365,088号(Knightら)、英国特許第384,052号(Hansen)、米国特許第5,643,525号(McGintyら)、日本国特許第4,141,679(B2)号(Kawabeら)に記載されている。更なる方法は、M.PaajanenらによってJournal of Physics D:Applied Physics(2001),vol.34,pp.2482-2488、並びにG.M.Sessler及びJ.E.Westによって、Journal of Electrostatics(1975),1,pp.111-123において論じられている。
【0061】
エレクトレットウェブを帯電させるために使用することができる別の技術は、ハイドロチャージングである。ウェブのハイドロチャージングは、繊維に電荷を付与するのに十分な方法で繊維を水と接触させ、その後ウェブを乾燥させることによって実施される。ハイドロチャージングの一例は、ウェブに濾過によってエレクトレット電荷を強化するのに十分な圧力で、ウォータージェット又は水滴流をウェブに当て、次いで、ウェブを乾燥させることを伴う。最適な結果を達成するために必要な圧力は、使用する噴霧器の種類、ウェブを形成する元となるポリマーの種類、ポリマーに加える添加剤の種類及び濃度、ウェブの厚さ及び密度、並びにコロナ表面処理などの前処理がハイドロチャージングの前に行われるか否かに応じて変わる。概ね、約10~500psi(69~3450kPa)の範囲の水圧が好適である。ウォータージェット又は水滴流は、任意の好適な噴霧装置によって提供することができる。有用な噴霧装置の一例は、繊維の水圧交絡に使用される装置である。ハイドロチャージングの好適な方法の例は、米国特許第5,496,507号(Angadjivandら)に記載されている。他の方法は、米国特許第6,824,718号(Eitzmanら)、米国特許第6,743,464号(Insleyら)、米国特許第6,454,986号(Eitzmanら)、米国特許第6,406,657号(Eitzmanら)、及び米国特許第6,375,886号(Angadjivandら)に記載されている。また、ウェブのハイドロチャージングは、米国特許第7,765,698号(Sebastianら)に開示されている方法を用いて実施してもよい。
【0062】
驚くべきことに、少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアを含む組成物がエレクトレット電荷を有し得ることが発見された。エレクトレット電荷とは、少なくとも半永久的電荷が存在することを意味し、「半永久的」とは、電荷が、標準大気条件(22℃、101,300パスカルの大気圧、及び50%相対湿度)下で、有意に測定可能であるのに十分長い期間存在することを意味する。電荷は、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,815,067号(Schultzら)の第18欄第12~42行に記載されているようなX線放電試験によって特徴付けることができる。(摩擦の結果として生成され得るものなどの)直後に消散する静電荷とは異なり、(例えば、不織)ウェブ物品のエレクトレット電荷は、物品の意図された製品寿命にわたって、実質的に維持される半永久的電荷である。したがって、十分な電荷は、使用時並びに製造後少なくとも6ヶ月又は12ヶ月で明らかである。
【0063】
特定の濾過材が事実上静帯電していることを確認するために、電離X線放射線への曝露後にその性能を調べてもよい。文献(Air Filtration by R.C.Brown(Pergamon Press,1993 and”Application of Cavity Theory to the Discharge of Electrostatic Dust Filters by x-Rays”,A.J.WAKER and R.C.BROWN,Applied Radiation and Isotopes,Vol.39,No.7,pp.677-684,1988)に記載されているように、静帯電しているフィルタをX線に曝露した場合、繊維間の気孔中でX線により生成されるイオンが電荷の一部を中和しているので、エアロゾルのフィルタを通る透過は曝露前よりも曝露後の方が多くなる。したがって、一定レベルまで堅調に増加し、その後は照射により更に変化しない、累積X線曝露に対する透過のプロットを得ることができる。この時点で、全ての電荷がフィルタから除去されている。いくつかの実施形態では、(例えば、単一の)繊維ウェブのエレクトレット電荷は、少なくとも50%の透過率%を示すことによって特徴付けられ得る。
【0064】
一実施形態では、本開示の少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアを含む組成物は、難燃性ではない。本明細書で使用される場合、「難燃性」とは、組成物が、本明細書に開示される少なくとも3個のアミノ-環状炭素基で置換されたシクロトリホスファゼンコアなしで作製された同一の組成物よりも耐燃性であることを意味する。材料の難燃性を測定するための多くの試験が知られている。例えば、酸素指数、ASTM D-635(水平)及びU.L.94試験は、ポリマーの燃焼特性を評価するために多くの場合使用される。これらの試験のいずれか1つを使用して、本組成物の難燃性(の欠如)を決定することができる。
【0065】
本開示による繊維は、例えば、不織濾過材、特に不織エレクトレット濾過材の製造において有用である。
【0066】
一実施形態では、本開示の繊維は、フィルタ付きマスクなどの呼吸用保護具の空気フィルタ要素、又は家庭用及び業務用エアコンディショナー、空気清浄機、真空掃除機、医療用送気管フィルタ、ビークル用(vehicles)並びにコンピュータ、コンピュータディスクドライブ及び電子機器などの一般的な機器用のエアコンディショニングシステムなどの濾過物品に含まれ得る。いくつかの実施形態では、濾過物品を呼吸用保護具アセンブリと組み合わせて、人が使用するよう設計された人工呼吸装置を形成する。呼吸用保護具の用途において、濾過物品は、成形された、プリーツ加工された若しくは折りたたまれた半面形の呼吸用保護具、交換可能なカートリッジ若しくはキャニスター、又はプレフィルタの形態であってもよい。本明細書で使用するとき、用語「呼吸用保護具」とは、夾雑物質が装着者の気道に入るのを防止し、及び/又は呼吸中に装着者によって排出される病原体若しくは他の夾雑物質への曝露から他の人若しくは物を保護するために、人の気道上に装着されるシステム又は装置を意味し、濾過フェイスマスクを含むが、これに限定されない。
【0067】
図3及び
図4は、呼吸用保護具の一例である。呼吸用保護具40は、湾曲した半球形状であり得るか、又は所望に応じて他の形状をとり得るマスク本体42を含む(例えば、米国特許第5,307,796号(Kronzerら)及び同第4,827,924号(Japuntich)を参照されたい)。マスク40において、本開示によるエレクトレット不織繊維ウェブ(すなわち、濾過材)200は、カバーウェブ43と内側成形層45との間に挟まれている。成形層45は、マスク本体42に構造を提供し、濾過材200のための支持を提供する。
【0068】
成形層45は、濾過材200のどちらか一方側に配置することができ、例えば、カップ状構成に成形されたサーマルボンド可能繊維の不織ウェブから作製することができる。成形層は、既知の手順に従って成形することができる(例えば、その開示が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,307,796号(Kronzerら)を参照されたい)。成形層は、典型的には、成形型内で加熱されたときに成形層が成形型の形状に適合し、室温に冷却されたときにこの形状を保持するように、より低い融点の材料のシースによって取り囲まれたポリエチレンテレフタレートなどの高融点材料のコアを有する二成分繊維から作製される。フィルタ層などの別の層と一緒にプレスされる場合、低融点シース材料はまた、層を一緒に結合する働きをすることができる。
【0069】
マスク40を装着者の顔にぴったりと保持するために、マスク本体42は、ストラップ52、紐、マスクハーネスなどをマスク本体42に取り付けることができる。マスク40を装着者の鼻の上に所望のフィット関係で保持するように成形することができるように、アルミニウムなどの金属製の柔軟な軟質バンド54をマスク本体42上に設けることができる(例えば、米国特許第5,558,089号(Castiglioneら)を参照されたい)。本開示による呼吸用保護具はまた、追加の層、弁(例えば、米国特許第5,509,436号(Japuntichら)を参照されたい)、成形マスクなどを含んでもよい。本開示によるエレクトレット濾過材を組み込むことができる呼吸用保護具の例としては、米国特許第4,536,440号(Berg)、同第4,827,924号(Japuntich)、同第5,325,892号(Japuntichら)、同第4,807,619号(Dyrudら)、同第4,886,058号(Brostromら)、及び米国再発行特許第35,062号(Brostromら)に記載されているものが挙げられる。
【0070】
濾過性能を評価するために、様々な濾過試験プロトコルを開発した。これらの試験は、ジオクチルフタレート(DOP)などの標準的な曝露用エアロゾルを使用してフィルタウェブのエアロゾル透過[これは、通常、フィルタウェブを透過するエアロゾルのパーセント(%Pen)で表される]を測定すること、及びフィルタウェブ全域での圧力低下(ΔP)を測定することを含む。これらの2つの測定から、品質係数(Quality Factor)(QF)と呼ばれる量を、以下の式によって算出することができる:
QF=-ln(%Pen/100)/ΔP
(式中、lnは自然対数を表す)。より高いQF値は、より良好な濾過性能を示し、QF値の低下は、濾過性能の低下と事実上相関している。これらの値の測定についての詳細は、実施例の項で示す。典型的には、本開示の濾過材は、13.8センチメートル/秒(cm/秒)又は6.9cm/秒の面速度で0.3(mmH2O)-1以上の測定QF値を有する。
【0071】
初期品質係数(Q0)は、以下の実施例に記載されるように、濾過性能試験方法に従って試験される場合、13.8cm/秒又は6.9cm/秒の面速度に対して、典型的には、少なくとも0.2、好ましくは少なくとも0.3、0.4、又は更には0.5である。より好ましくは、初期品質係数は、少なくとも0.6又は0.7である。いくつかの実施形態では、初期品質係数は、少なくとも0.8、少なくとも0.90、少なくとも1.0、又は更には1.0を超える。フィルタウェブの性能を試験するために、フィルタウェブは、室温(例えば、23℃)で特定の時間にわたってX線にさらされ、品質係数が再び測定される。一実施形態では、40分間のX線曝露後の品質係数は、典型的には、初期品質係数の少なくとも50%未満である。
【0072】
ウェブがフィルタとして使用するのに十分な電荷を有するためには、透過率%は、典型的には少なくとも50%である。透過率%が高まるに従って、ウェブの濾過性能も高まる。いくつかの実施形態では、透過率%は、少なくとも55%、60%、又は70%である。好ましい実施形態では、透過率%は、少なくとも75%又は80%である。いくつかの実施形態では、単一のウェブは、少なくとも85%、少なくとも、又は少なくとも95%の透過率%を示す。
【実施例】
【0073】
別段断りのない限り、実施例及び明細書のその他の部分における、全ての部、百分率、比などは、重量によるものであり、実施例で用いた全ての試薬は、総合的な化学物質供給元、例えば、Sigma-Aldrich Company(Saint Louis,Missouri)などから入手した若しくは入手可能なものであるか、又は従来の方法によって合成することができる。
【表1-1】
【表1-2】
【0074】
試験方法
【0075】
熱重量分析(Thermal Gravimetric Analysis、TGA)
【0076】
選択されたホスファゼンの熱安定性を、熱重量分析(TGA)(モデルQ500、TA Instruments,New Castle,DEによる)によって測定した。約5ミリグラム(mg)の乾燥サンプルを、窒素下で約35℃の開始温度から450℃まで10℃/分の速度で加熱した。サンプルを秤量し、5%及び10%の重量損失が生じた温度を表3に報告する。
【0077】
濾過性能試験方法
【0078】
エアロゾル透過率%(%Pen)及び圧力低下(ΔP)についてサンプルを試験し、これらの2つの値から品質係数(QF)を算出した。自動フィルタ試験機AFTモデル8130(TSI,Inc.St.Paul,MNから入手可能)を使用して、曝露用エアロゾルとしてのジオクチルフタレート(DOP)、及びフィルタ全域の圧力低下(ΔP(mmH2O))を測定する圧力変換器を使用して、不織マイクロファイバーウェブの濾過性能(%Pen及びQF)を評価した。DOPエアロゾルは、公称で、50~200mg/m3の上流濃度及び100mg/m3の目標値を有する、単分散の0.33マイクロメートル質量中央径(MMD)であった。エアロゾルは、85又は42.5lpm(リットル/分)(以下の実施例に記載される13.8cm/秒又は6.9cm/秒の面速度)の較正された流量で濾過材のサンプルに通した。これらの試験では、エアロゾルイオナイザーはオフにした。総試験時間は、23秒であった(立ち上がり時間15秒、サンプル時間4秒、及びパージ時間4秒)。較正した光度計を使用して、濾過材の上流と下流の両方で、光散乱によりDOPエアロゾルの濃度を測定した。DOP%Penは、以下のように定義する:%Pen=100×(DOP濃度下流/DOP濃度上流)。各材料について、ウェブ上の異なる箇所で6回の別個の測定を行い、結果を平均して、QF値を決定した。
【0079】
繊維及び不織サンプルの調製
【0080】
工程A-繊維及びウェブの形成:
【0081】
各サンプルについて、表4~表5に示される置換シクロトリホスファゼン化合物を示されるポリプロピレン樹脂(PP-1又はPP-2)と最初に乾式ブレンドすることによって濾過材を形成し、メルトブローン繊維ウェブにした。押出温度は250℃であり、ウェブ特性は以下の通りであった:65g/m2の坪量、5.5%の中実度(solidity)、及び8ミクロンの有効繊維直径。
【0082】
工程B-エレクトレットの調製:
【0083】
メルトブローンウェブの各々を、2つのエレクトレット帯電方法:コロナ帯電又はハイドロチャージングのうちの1つによって帯電させた。これらの方法は、それぞれ、帯電方法C及びHと表示される。
【0084】
帯電方法C-コロナ帯電:
【0085】
接地表面上のウェブに、放電源の長さ1センチメートル当たり約0.01ミリアンペアのコロナ電流でコロナブラシ電源(corona brush source)の下を約3センチメートル/秒の速度で通過させることによって、コロナ帯電を実現した。コロナ電源は、ウェブを載せた接地表面の約3.5センチメートル上に位置していた。コロナ電源は、正のDC電圧によって駆動した。
【0086】
帯電方法H-ハイドロチャージング:
【0087】
5マイクロシーメンス/cm未満の導電性を有する高純度水の微細スプレーを、896キロパスカル(130psig)の圧力及び約1.4リットル/分の流速で動作するノズルから連続的に発生させた。工程Aで調製した選択されたウェブを、多孔質ベルトによって運び、約10センチメートル/秒の速度で水噴霧の中を通過させ、それと同時に、ウェブを通して水を下方から減圧吸引した。各ウェブをハイドロチャージャーに2回通し(各面に順次1回ずつ)、次いで、フィルタ試験の前に一晩にわたって完全に乾燥させた。
【0088】
選択されたシクロトリホスファゼン化合物の合成
【0089】
スキームA.窒素及び酸素誘導体を合成する全般スキーム。
【化5】
【0090】
化合物4の調製:ヘキサ4-エチルアニリンシクロトリホスファゼン(6)の合成。
【0091】
ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(20.0グラム(g)、57.5mmol)の乾燥トルエン(400ミリリットル(mL))及びトリメチルアミン(200mL、1430mmol)中の撹拌溶液に、4-エチルアニリン(85mL、681mmol)を室温で添加した。白色沈殿物の形成は、反応の開始を示した。溶液を一晩にわたって加熱還流した。その後、液体クロマトグラフ/質量分析(LC/MS)による分析のためにアリコートを取り出したところ、ヘキサ置換生成物への完全な変換が示された。混合物を室温に冷却し、濾過し、沈殿物を酢酸エチルですすいだ。溶媒を回転蒸発により減圧下で除去した。次いで、残った粘性油状物を蒸留して、過剰のトリエチルアミン及びアニリンを除去した。残った暗色固体をメタノールで摩砕し、濾過し、メタノールですすぎ、真空オーブン内で乾燥させて、白色固体(28.4g、収率57%)を得た。
【0092】
化合物5の調製:ヘキサアニシジルシクロトリホスファゼン(8)の合成。
【0093】
ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(10.0g、28.7mmol)の乾燥トルエン(200mL)及びトリメチルアミン(100mL、717mmol)中の撹拌溶液に、パラ-アニシジン(42.5mL、345mmol)を室温で添加した。白色沈殿物の形成は、反応の開始を示した。溶液を一晩にわたって加熱還流した。その後、LCMSによる分析のためにアリコートを取り出したところ、ヘキサ置換生成物への完全な変換が示された。混合物を室温に冷却し、濾過し、沈殿物を酢酸エチルですすいだ。溶媒を回転蒸発により減圧下で除去した。次いで、残った粘性油状物を蒸留して、過剰のトリエチルアミン及びアニシジンを除去した。残った暗色固体をメタノールで摩砕し、濾過し、メタノールですすぎ、真空オーブン内で乾燥させて、白色固体(10g、収率40%)を得た。
【0094】
化合物6の調製:ヘキサ4-ジメチルアミノフェノキシシクロトリホスファゼン(9)の合成。
【0095】
ジメチルアミノフェノールを、Seim,K.L.らによってJ.Am.Chem.Soc.2011,133,pages 16970-16976に開示された手順に従って、ただし、水素化ホウ素ナトリウムの代わりに水素化シアノホウ素ナトリウムを使用して、合成した。火炎乾燥した500mLの二つ口フラスコに、NaH(12g、300mmol)を添加した。窒素雰囲気下で、ジオキサン(100mL)を添加した。溶液を0℃に冷却し、4-ジメチルアミノフェノール(31g、226mmol)をジオキサン(50mL)中の溶液として少量ずつゆっくり添加した。溶液は褐色に変化し、これを20分間撹拌した。ヘキサクロロシクロトリホスファゼン(10g、28.7mmol)をジオキサン(50mL)中の溶液として滴下漏斗によって滴下した。添加完了後、氷浴を取り外し、油浴と交換し、凝縮器をフラスコ上に載せ、混合物を一晩還流した(110℃)。LCMSによる分析のためにアリコートを取り出したところ、ヘキサ置換生成物へのほぼ完全な変換を示した。飽和塩化アンモニウム溶液をゆっくり添加して、あらゆる残りのNaHをクエンチした。溶液は暗赤色/褐色であった。混合物をEtOAcで抽出し、合わせた有機層をブラインで洗浄し、乾燥させ(MgSO4)、濃縮して、ピンク色のスラリー中の白色固体を得た。スラリーをMeOHで30分間摩砕し、次いでブフナー漏斗で濾過し、冷MeOHで洗浄し、真空オーブンを使用して乾燥させて、白色固体(14g、収率51%)を得た。
【0096】
様々な化合物の5%重量損失及び10%重量損失が起こる温度を示すTGAの結果を以下の表3に示す。
【表2】
【0097】
ポリプロピレンをブレンドし、メルトブローンウェブにし、上述の繊維及び不織布サンプル調製後に帯電させた化合物を選択する。濾過性能試験方法を用いて、不織布ウェブのQF値を試験した。13.8cm/秒の面速度で試験したサンプルについての結果を表4に示し、表5のサンプルは6.9cm/秒の面速度で試験した。
【表3】
【表4】
【0098】
本発明の予見可能な改変及び変更が、本発明の範囲及び趣旨を逸脱することなく、当業者には明らかとなろう。本発明は、例示目的のために本出願に記載されている実施形態に限定されるものではない。本明細書の記述と、本明細書に述べられる又は参照により組み込まれた任意の文書中の開示との間に何らかの不一致又は矛盾が存在する場合、本明細書の記述が優先される。
【国際調査報告】