(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマーとの混合物からカプロラクタムを得るためのポリアミド6の選択的解重合
(51)【国際特許分類】
C08J 11/16 20060101AFI20231228BHJP
C08L 77/00 20060101ALI20231228BHJP
C08L 75/04 20060101ALI20231228BHJP
D01F 6/60 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08J11/16 ZAB
C08L77/00
C08L75/04
D01F6/60 341C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537192
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-16
(86)【国際出願番号】 EP2021085651
(87)【国際公開番号】W WO2022129022
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521037411
【氏名又は名称】ベーアーエスエフ・エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100133086
【氏名又は名称】堀江 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100163522
【氏名又は名称】黒田 晋平
(72)【発明者】
【氏名】カロリーネ・バイエル
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・リヒター
【テーマコード(参考)】
4F401
4J002
4L035
【Fターム(参考)】
4F401AA24
4F401AA26
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4F401CA68
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4J002GQ05
4L035AA05
4L035BB31
4L035GG01
4L035LC02
(57)【要約】
カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマーとの混合物から、解重合によってカプロラクタムを得る方法であって、混合物の解重合が、0.05重量%~5重量%の塩基の存在下で、250℃~350℃の温度および5~700 mbARの圧力において行われ、カプロラクタムが気体形態で得られる、方法。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマーとの混合物から、解重合によってカプロラクタムを得る方法であって、前記混合物の解重合を、0.05重量%~5重量%の塩基の存在下で、250℃~350℃の温度および5~700mbarの圧力において行い、カプロラクタムが気体形態で得られる、方法。
【請求項2】
前記混合物の解重合を、0.05重量%~3重量%の塩基の存在下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記解重合を270℃~350℃の温度で行う、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記解重合を、8~200mbarの圧力において、好ましくは10~100mbarの圧力において行う、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記解重合時の前記混合物の水分含有量が、5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基が、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩の群から選択される化合物である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
解重合反応器の中で実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマーとの混合物から、解重合によってカプロラクタムを得る方法であって、以下のステップ:
(A)前記混合物を220℃~300℃の温度に加熱して溶融物(S)を得るステップ、
(B)ステップ(A)の前、ステップ(A)の最中、またはステップ(A)の後に塩基を添加するステップ、
(C)前記溶融物(S)を少なくとも1つの解重合反応器に投入するステップ、
(D)前記溶融物(S)を250℃~350℃の温度に加熱して気体状カプロラクタム(C)を得るステップ、
(E)前記解重合反応器から前記気体状カプロラクタムを排出して、残渣を残すステップ
を含む、方法。
【請求項9】
ステップ(C)における前記混合物の水分含有量が、5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ステップ(D)における圧力が、5~700mbar、好ましくは10~100mbarである、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法によって製造されるカプロラクタム。
【請求項12】
ポリカプロラクタムおよび/またはカプロラクタムを含有するコポリマーおよび/またはポリマー混合物を製造するための、請求項11に記載のカプロラクタムの使用。
【請求項13】
繊維、特に織物繊維を製造するための、請求項11に記載のカプロラクタムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマー、特にスパンデックスとの混合物から、解重合によってカプロラクタムを得る方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カプロラクタム含有ポリマーからのカプロラクタムの回収は、特にこれまでになく資源が枯渇している背景に照らして、重要な経済的関心事である。
【0003】
したがって、例えば、米国特許第5,233,021号明細書は、超臨界流体抽出法によるカーペットおよび他の多成分構造物からのポリマー材料のリサイクル法を開示している。
【0004】
また、ポリアミド(ナイロン6)からなるポリマー廃棄物は、高圧下で超加熱蒸気と酸とを使用する方法で切断される(国際公開第96/18613号)。
【0005】
カプロラクタムはまた、塩基の存在下で減圧下において、または水の存在下で、高温での解重合によってポリマー成形材料または熱可塑性成形材料を含む混合物から得ることができる(国際公開第96/18614号)。
【0006】
国際公開第96/18612号は、減圧下でのポリアミド含有出発材料の塩基による解重合法を開示している。得られたカプロラクタムは、真空によってプロセスから取り出され、さらなる使用に供される。
【0007】
これらの方法はいずれも、カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマーとを含む材料を使用しない。
【0008】
しかしながら、繊維製品のリサイクルは、リサイクル産業において重要な問題であり、繊維製品の製造に必要とされる膨大な資源を削減するために、繊維製品製造業者の注目を集めている。
【0009】
ポリアミド繊維(通常、カプロラクタム含有ポリマー(PA6))と、ポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマー、例えばスパンデックスとを含む織物は、製品特性を改善するために多くの衣類および工業用途に使用されている。
【0010】
ポリウレタンブロックコポリマーを製造するために、単純な直鎖状ポリウレタンが、例えばジイソシアネート重付加法によって形成される。例えば、ブチレングリコールとヘキサメチレンジイソシアネートからのポリウレタンの製造は、繊維製造によく適している。エラストマーのポリウレタンブロックコポリマー、すなわちセグメント化ポリウレタンを形成するためには、重付加反応において、グリコールの大部分が、末端OH基を有する長鎖ポリエーテル系またはポリエステル系ジヒドロキシ化合物(マクロジオール)によって置き換えられる。
【0011】
ポリアミド繊維(好ましくはポリアミド6)とポリウレタンブロックコポリマーとから作られた織物は、一般に、ポリアミド繊維含有量に対するスパンデックス含有量が様々であり得る。典型的な含有量は、スパンデックス5~25重量%、ポリアミド95~75重量%である。
【0012】
ポリウレタン含有ポリマー、特にスパンデックスとポリアミドポリマーは、化学特性および製造方法が大きく異なるため、両方のポリマーを含む織物および衣類は、経済的かつ環境を破壊しない形でリサイクルすることが非常に困難である。
【0013】
例えば、国際公開第96/18612号に開示された方法における解重合は、ポリウレタンが熱不安定性を示す温度で行われる。この方法において、PU(ポリウレタン)含有ポリマーとポリアミドとを使用すると、例えばPA6(ポリアミド6)/スパンデックス(ポリウレタンブロックコポリマー)繊維、PA6繊維とスパンデックス繊維との混合物、またはポリウレタン含有ポリマーでコーティングされたPA6繊維を使用すると、得られるカプロラクタムに混入物が入る可能性がある。これは、PU(ポリウレタン)がプロセス条件下で分解し、その分解生成物も同様に真空によって取り出されるからである。
【0014】
したがって、多くの既知の方法は、ポリウレタン含有ポリマー、例えばスパンデックス繊維、またはポリアミド繊維を織物および衣類から分離するための溶媒の使用に基づいている。
【0015】
エラストマー織物からスパンデックスを溶解するために、強極性溶媒、例えばジメチルアセトアミド(DMAc)またはジメチルホルムアミド(DMF)が使用される。これらの溶媒はスパンデックスを溶解し、別途リサイクルするようにポリアミドを未溶解のまま残す。次にギ酸および硫酸がポリアミドを溶解し、それによってリサイクルのためにスパンデックスを分離することができる。
【0016】
Gongら(Textile Research Journal 0(00)1-10)は、例えば、PA6/PU廃棄物の混合物からのPA6およびポリウレタン(PU)のリサイクルを検討した。ポリウレタンを選択的に溶解するために溶媒(DMF)を使用した。濾過により純粋なPA6が得られ、これはその後、さらなる精製ステップの後にリサイクルに供され得る。
【0017】
PA6/スパンデックス廃棄物のリサイクルは、Wangら(Composites Part B 77(2015)232-237)によっても記載されている。開示された方法では、高温において溶媒で洗浄することによってスパンデックスが除去され、その後でPA6をリサイクルすることができる。
【0018】
国際公開第2013/032408号は、PA6とスパンデックスとを含む弾性繊維からポリアミドをリサイクルする方法を開示している。この多段階プロセスは、スパンデックスの一部の制御された熱分解からなり、その後のステップで、分解された部分は適切な溶媒(例えば、エタノール、DMAc、DMF)に溶解される。溶媒を分離することにより、さらなるステップにおいてリサイクルに供され得るポリアミドを得ることが可能になる。
【0019】
しかしながら、すべての公知の方法に共通しているのは、ポリカプロラクトン(PA6)をリサイクルすることができるようになる前に、ポリアミドとポリウレタン化合物との費用のかかる複雑な分離を行わなければならないことである。さらに、これらの溶媒ベースの分離法の大きな欠点は、必要になる溶媒の量と、おそらくはそのことから生じる環境問題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
したがって、本発明の目的は、カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマー、例えばスパンデックスとの混合物からカプロラクタムを得る方法であって、上記の欠点を有さず、混合物の事前の分離なしに、ポリウレタン含有ポリマーを含むこれらの混合物からのカプロラクタムの直接選択的分離を可能にする方法を提供することである。
【0021】
本発明の目的は、特に、溶媒ベースの分離法を完全に回避する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0022】
この目的は、カプロラクタム含有ポリマー及びポリウレタン含有ポリマーの混合物から、0.05重量%~5重量%の塩基の存在下で、250℃~350℃の温度および5~700 mbarの圧力における混合物の解重合によってカプロラクタムを得る方法であって、カプロラクタムが気体形態で得られる方法によって達成された。
【0023】
この目的はさらに、カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマーとの混合物から、解重合によってカプロラクタムを得る方法であって、以下のステップ:
(A)混合物を220℃~300℃の温度に加熱して溶融物を得るステップ、
(B)ステップ(A)の前、その最中、または後に塩基を添加するステップ、
(C)溶融物を少なくとも1つの解重合反応器に投入するステップ、
(D)混合物を250℃~350℃の温度に加熱して気体状カプロラクタムを得るステップ、
(E)解重合反応器から気体状カプロラクタムを排出して残渣を残すステップ
を含む方法によって達成された。
【発明を実施するための形態】
【0024】
この方法は、好ましくは5~700 mbarの圧力において行われる。
【0025】
驚くべきことに、本発明による方法が、ポリアミド6とポリウレタン含有ポリマー、特にスパンデックス(ポリウレタンブロックコポリマー)とを含む混合物からPA6を選択的に解重合することを可能にすることが発見された。得られたカプロラクタムは真空によって分離され、ポリウレタン(PU)の分解生成物が混入しているとしても、わずかである。「わずかである」とは、得られたカプロラクタムが、0重量%~5重量%のポリウレタン(PU)の分解生成物、好ましくは0重量%~3.5重量%、特に好ましくは0重量%~3重量%、極めて特に好ましくは0重量%~1重量%のポリウレタン(PU)の分解生成物を含むことを意味すると理解すべきである。
【0026】
定義:
スパンデックス:「スパンデックス」または「エラスタン」という用語は、ポリエーテル、ポリエステル、および/またはポリカーボネートに対して、少なくとも85重量%のセグメント化ポリウレタンを含むエラストマーのポリウレタンブロックコポリマーを指す。スパンデックスは、剛性セグメントと可撓性セグメントとが交互になっていることによって優れた伸張性および弾性復元力を示すセグメント化ポリマーである。ウレタンは、互いに長手方向にくっつき、二次結合力の確立によって繊維を確実に凝集させる剛性の伸張した部位を形成する。対照的に、ゴム様ポリアルコールブロック(それぞれ約40~50のモノマー単位)は、強く丸められるが、容易に伸張され得る。剛性ブロックと弾性ブロックのこの組み合わせは、非常に高い延伸性を与える。スパンデックスは非常に広く使用されており、その名称で、またはエラスタン(欧州で好まれる)の名称で、または商品名、例えばLycra(Invista)およびELASPAN(Invista)で、エラストマー繊維として販売されている。スパンデックス繊維の典型例は、例えば、米国特許第4,973,647号明細書、欧州特許第0343985号明細書、米国特許第6,639,041号明細書(すべてdu Pont社)、および国際公開第03/010216号に記載されている。
【0027】
本明細書で使用される場合、「エラストマー織物」という用語は、スパンデックス繊維の様々な部位と他の合成繊維の様々な部位とを含むあらゆる所望の織物を指し、「エラストマー衣類」という用語は、スパンデックス繊維の様々な部位と他の合成繊維の様々な部位とを含むあらゆる衣類に関する。
【0028】
「ポリアミド繊維」という用語は、ポリアミド繊維、特にポリアミド6(PA6、すなわちポリカプロラクタム)、コポリマー、それらのあらゆる所望の組み合わせ、または他のポリアミドとのそれらのあらゆる所望の組み合わせを指す。
【0029】
「ブロックコポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるコモノマーAおよびBから作られたコポリマーを指し、これらは、より長い配列またはブロック(例えば、-AAAAAAAAABBBBBBBBBBBB-)の形態である。
【0030】
本発明によるポリウレタンブロックコポリマーは、ポリウレタンの質量分率が少なくとも85%である。
【0031】
本発明との関連において「ポリウレタン含有ポリマー」は、ポリウレタンコポリマー(コポリマー)および/またはポリウレタンブロックコポリマー((セグメント化)ポリウレタンとのコポリマー)を指し、ポリウレタンブロックコポリマーが特に好ましい。
【0032】
ポリアミド、特にPA6(ポリアミド6)とは対照的に、スパンデックスは著しく低い熱安定性を有する。「Recycling of Polyurethane Foams 2018,33頁」は、様々な温度におけるポリウレタンの熱安定性を開示している。PUセグメントの分解は、200~250℃という低い温度で開始する。ポリアミドは、これらの温度範囲内で熱分解を示さない(Pashaeiら;Chemical Industry and Chemical Engineering Quarterly 17(2):141-151)。
【0033】
スパンデックス繊維の低い熱安定性にもかかわらず、本発明による方法は、ポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマーを含む混合物からカプロラクタムを選択的に得ることを可能にする。
【0034】
本発明によれば、カプロラクタムは、カプロラクタム含有ポリマー及びポリウレタン含有ポリマーの混合物から解重合によって得られ、混合物の解重合は、カプロラクタム含有ポリマーの量に基づいて0.05重量%~5重量%の塩基の存在下において、250℃~350℃の温度および5~700 mbarの圧力で行われ、カプロラクタムは気体形態で得られる。
【0035】
その混合物は、混合物中のカプロラクタム含有ポリマーおよびポリウレタン含有ポリマーの質量に基づいて、75重量%~99.9重量%のカプロラクタム含有ポリマーと0.1重量%~25重量%のポリウレタン含有ポリマー、好ましくは75重量%~98重量%のカプロラクタム含有ポリマーと2重量%~25重量%のポリウレタン含有ポリマー、特に好ましくは75重量%~95重量%のカプロラクタム含有ポリマーと5重量%~25重量%のポリウレタン含有ポリマー、極めて特に好ましくは80~95重量%のカプロラクタム含有ポリマーと5重量%~20重量%のポリウレタン含有ポリマー、とりわけ好ましくは80重量%~98重量%のカプロラクタム含有ポリマーと2重量%~20重量%のポリウレタン含有ポリマーとを含む。
【0036】
すべての経済的に意味のあるポリカプロラクタム、例えば、連鎖調節剤として作用するモノもしくはジカルボン酸またはアミン、例えば酢酸、プロピオン酸、安息香酸、C4~C10-アルカンジカルボン酸、例えばアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、およびそれらの混合物、C5~C8-シクロアルカンジカルボン酸、例えばシクロペンタン-1,3-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、およびそれらの混合物、最大2個のスルホン酸基を有し得るベンゼンジカルボン酸およびナフタレンジカルボン酸の存在下で製造されるポリカプロラクタムも、本発明による方法によってカプロラクタムに変換され得る。ここで、これは対応するアルカリ金属塩も含み、それらのカルボン酸基が隣接していないもの、例えばテレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、5-スルホイソフタル酸ならびにそのナトリウム塩およびリチウム塩、ならびにそれらの混合物、ならびに1,4-ピペラジン-ジ(C1~C6-アルカンジカルボン酸)、例えば1,4-ピペラジン二酢酸、1,4-ピペラジンジプロピオン酸、1,4-ピペラジンジブタン酸、1,4-ピペラジンジペンタン酸、1,4-ピペラジンジヘキサン酸であると理解すべきである。
【0037】
対応するコポリアミドは当業者に知られており、例えば国際公開第93/25736号明細書、独国特許出願公開第14 95 198号明細書、および独国特許出願公開第25 58 480号明細書に記載された方法によって製造可能である。
【0038】
解重合は、特に好ましくは、カプロラクタム含有ポリマーの量を基準にして0.05重量%~3重量%の塩基の存在下で行われる。
【0039】
解重合は、極めて特に好ましくは、カプロラクタム含有ポリマーの量を基準にして0.6重量%~2.8重量%の塩基の存在下で行われる。
【0040】
本発明によれば、使用される塩基は、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩、アルカリ金属アルコキシド、アルカリ土類金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、およびアルカリ土類金属炭酸塩、例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ナトリウムメトキシド、炭酸カルシウム、および炭酸マグネシウムからなる群から選択される。
【0041】
塩基は、特に好ましくは、アルカリ金属酸化物、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属炭酸塩の群から選択される化合物であり、好ましくは水酸化カリウムである。
【0042】
本発明によれば、解重合は、少なくとも1つの解重合反応器、好ましくは正確に1つの解重合反応器内で行われる。
【0043】
本発明との関連において、解重合反応器は、混合および/または搬送手段、例えば反応器の長手方向軸に沿って反応器の内部に設けられたスクリューコンベアを有する横型または縦型解重合反応器、例えばニーダー反応器または撹拌タンク反応器を意味すると理解すべきであり、横型ニーダー反応器が特に好ましい。
【0044】
本発明によれば、正確に1つの解重合反応器が存在し得るが、少なくとも2つの解重合反応器を前後に(直列に)配置して使用することが好ましい場合もある。少なくとも2つの解重合反応器を並列に配置して使用することが好ましい場合もある。
【0045】
少なくとも2つの反応器の場合、得られたカプロラクタムを混合することが好ましい。
【0046】
本発明において、解重合時の混合物の水含有量は、混合物全体を基準にして5重量%以下、好ましくは1重量%以下、特に好ましくは0.3重量%以下である場合が特に好ましい。
【0047】
本発明にしたがう方法による解重合は、好ましくは270℃~350℃の温度において行われる。解重合は、特に好ましくは280℃~320℃の温度で行われる。解重合は、5~700 mbarの圧力、好ましくは8~200 mbar、特に好ましくは10~100 mbarの圧力において行われる。
【0048】
各解重合反応器内での滞留時間は、連続プロセスの場合、10~300分、好ましくは20~200分である。
【0049】
さらに特に好ましい実施形態では、カプロラクタム含有ポリマーとポリウレタン含有ポリマー、特にポリウレタンブロックコポリマーとの混合物から、解重合によってカプロラクタムを得る方法は、以下のステップ:
(A)混合物を220℃~300℃の温度に加熱して溶融物(S)を得るステップ、
(B)ステップ(A)の前、ステップ(A)の最中、またはステップ(A)の後に塩基を添加するステップ、
(C)溶融物(S)を少なくとも1つの解重合反応器に投入するステップ、
(D)溶融物(S)を250℃~350℃の温度に加熱して気体状カプロラクタム(C)を得るステップ、
(E)解重合反応器から気体状カプロラクタム(C)を排出して残渣を残すステップ、
を含む。
【0050】
解重合される対応する混合物は、慣用される溶融装置で溶融させられ得る。これは、好ましくは押出機内で、220℃~300℃、好ましくは230℃~290℃の温度において行われて、溶融物(S)を得る。押出機は、例えば、プラスチック加工用の混練押出機、好ましくは二軸押出機である。
【0051】
好ましい実施形態では、塩基は、ステップ(A)のあいだに溶融物(S)に供給される。これは、好ましくは押出機内で行われる。解重合反応器内での添加も可能である。
【0052】
さらに好ましい実施形態では、存在する水は、溶融物(S)を5~700 mbar、好ましくは8~200 mbar、特に好ましくは10~100 mbarの減圧に供することによって解重合の前に溶融物(S)から除去される。
【0053】
これは、押出機および/または解重合反応器内で行われ得る。
【0054】
溶融物(S)は、少なくとも1つの解重合反応器内で250℃~350℃の温度、好ましくは270℃~350℃の温度にされる。280℃~320℃の温度での解重合が特に好ましい。
【0055】
解重合は、5~700 mbarの圧力、好ましくは8~200 mbar、特に好ましくは10~100 mbarの圧力において行われる。
【0056】
解重合中の溶融物(S)の水分含有量は、混合物全体に基づいて5重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。
【0057】
得られたカプロラクタムは、一般に、その少なくとも1つの解重合反応器から連続的に排出される。1より多い解重合反応器を使用する場合、得られたカプロラクタムは、好ましくはすべての反応器から一緒に混合される。
【0058】
本発明に従って得られたカプロラクタムの精製は、慣用される方法によって行われ得る。精製法の例としては、例えば、欧州特許第0670308号明細書に開示されているような酸性または塩基性蒸留が挙げられる。
【0059】
本発明による方法によって得られるカプロラクタムは、85重量%~100重量%、好ましくは90重量%~100重量%、とりわけ好ましくは95重量%~100重量%、特に好ましくは97重量%~100重量%の高純度を有する。本発明による方法によって得られるカプロラクタムは、一般に、90重量%~95重量%の純度を有する。
【0060】
本発明による方法によって得られるカプロラクタムは、0重量%~5重量%、好ましくは0重量%~3.5重量%、特に好ましくは0重量%~3重量%、極めて特に好ましくは0重量%~1重量%の、ポリウレタン(PU)の分解生成物を含む。
【0061】
本発明による方法によって得られるカプロラクタムは、ポリカプロラクタム、または対応するコポリマーおよびポリマー混合物を製造するために再利用され得る。
【0062】
本発明による方法によって得られるカプロラクタムから製造されたこのポリカプロラクタム、または対応するコポリマーおよびポリマー混合物は、有利なことに、自動車用途のための使用、ならびに電気および電子部品用の成形体の製造のための使用に、特に高温範囲においても適している。
【0063】
特定の実施形態は、自動車分野のための構成部品、特にシリンダヘッドカバー、エンジンカバー、給気冷却器のハウジング、給気冷却器のバルブ、吸気管、吸気マニホールド、コネクタ、ギア、ファンインペラ、冷却水タンク、熱交換器のハウジングまたはハウジング部品、冷却液冷却器、給気冷却器、サーモスタット、送水ポンプ、加熱素子、電気移動体用の電池システムの固定部品または構成要素から選択される構成部品の形態の、またはその一部としての成形品の実施形態である。
【0064】
自動車内装における可能性のある用途は、ダッシュボード、ステアリングコラムスイッチ、シート部品、ヘッドレスト、センターコンソール、ギアボックス部品、およびドアモジュールであり、自動車外装における可能性のある用途は、A、B、C、またはDピラーカバー、スポイラー、ドアハンドル、外装ミラー部品、フロントガラスのワイパー部品、フロントガラスのワイパー保護ハウジング、化粧グリル、カバーストリップ、ルーフレール、ウィンドウフレーム、サンルーフフレーム、アンテナカバー、フロントおよびリアライト、エンジンフード、シリンダヘッドカバー、吸気管、フロントガラスのワイパー、ならびに外装車体部品である。
【0065】
さらなる特定の実施形態は、成形体そのもの、または電気的もしくは電子的な受動もしくは能動部品の一部としての、プリント回路基板の、プリント回路基板の一部の、ハウジング構成要素の、フィルムの、またはワイヤの実施形態であり、より具体的には、スイッチの、プラグの、ブッシングの、分配器の、リレーの、抵抗器の、コンデンサの、巻線の、または巻回体の、ランプの、ダイオードの、LEDの、トランジスタの、コネクタの、レギュレータの、集積回路(IC)の、プロセッサの、コントローラの、メモリ素子の、および/またはセンサの形態の、またはその一部としての実施形態である。
【0066】
このポリカプロラクタム、または対応するコポリマーおよびポリマー混合物は、プラグコネクタ、マイクロスイッチ、マイクロボタン、および半導体部品、特に発光ダイオード(LED)のリフレクターハウジングの製造のための鉛フリーはんだ付けにおける使用にさらに特に適している。
【0067】
特定の実施形態は、電気または電子部品用の固定要素、例えば、スペーサ、ボルト、フィレット、押し込みガイド、ねじ、およびナットとしての成形品の実施形態である。
【0068】
ソケット、プラグコネクタ、プラグ、またはブッシングの形態の、またはその一部としての成形体が特に好ましい。成形体は、好ましくは、機械的靱性を必要とする機能要素を含む。このような機能要素の例は、フィルムヒンジ、スナップインフック、およびスプリングトングである。
【0069】
台所および家庭の分野についての本発明のポリアミドの可能性のある用途は、キッチン用機械、例えばフライヤー、衣類用アイロン、ノブ用の部品の製造用であり、また、園芸およびレジャー分野における用途、例えば、灌漑システムまたは園芸用機器およびドアハンドル用の部品である。
【0070】
本発明による方法によって得られるカプロラクタムから製造されたこのポリカプロラクタム、または対応するコポリマーおよびポリマー混合物は、さらに有利なことに、射出成形および押出用途、例えばフィルム押出ならびに繊維およびモノフィラメント製造の分野での使用に適している。包装分野においては、本発明によるポリアミドは、例えば単層もしくは多層インフレーションフィルム、キャストフィルム(単層もしくは多層)、二軸延伸フィルム(BoPA)、ラミネートフィルム、または押出コーティングに使用され得る。典型的な適用分野は、例えば肉、家禽、海産食品、チーズ、またはコーヒーを包装するための包装フィルム、袋、または蓋フィルムとしての食品包装の分野である。他の好ましい適用分野は、シリンジおよび手術器具を包装するための医療用包装、例えば化粧品を包装するための容器、または溶媒含有製品、例えば塗料、コーティング、もしくは植物保護製品用の多層容器である。フィルム押出の分野におけるさらなる可能性のある用途は、農業用フィルム、VARTMフィルム、気泡シート、または一般的な工業用フィルムに見出され得る。
【0071】
このポリカプロラクタム、または対応するコポリマーおよびポリマー混合物は、釣糸、漁網、沖合漁業の釣糸およびロープに使用されるモノフィラメントの製造にも他に優先して適している。モノフィラメントの可能性のある用途としては、とりわけ、テニスの弦(ガット)、クライミングロープ、毛ブラシおよびブラシ、人工芝、3D印刷用フィラメント、草刈機、ジッパー、面ファスナー、および抄紙機のクロージングが挙げられる。
【0072】
繊維製造の分野では、このポリカプロラクタム、または対応するコポリマーおよびポリマーブレンドは、工業用繊維、織物繊維、またはBCFヤーン(カーペット繊維)の製造に他に優先して適している。用途としては、とりわけ、エアバッグ、ロープ、タイヤコード、繊維製品、タイツ、ジャケット、ズボン、カーペットなどの製造のための繊維が挙げられる。
【0073】
さらに適切な用途としては、半製品の押出、したがって棒、シート、およびパイプの製造が挙げられ、そこから一連のさらなる部品が製造され得る。これらとしては、とりわけ、摺動要素、スピンドルナット、チェーンコンベア、すべり軸受、ローラ、ホイール、変速機、ギア、ロール、リングギア、ねじ、および、ばねダンパが挙げられる。
【0074】
他の可能性のある用途としては、例えば、パイプ、ホース、パイプ導管、ケーブル外装、ソケット、スイッチ、ケーブルタイ、ファンホイールなどが挙げられる。
【0075】
したがって、本発明による方法は、ポリアミド6とポリウレタン含有ポリマー、特にスパンデックスとの両方からなる繊維製品のリサイクルを、成分を予め分離することなく、わずか数ステップで可能にする。本発明による方法は、ポリウレタン含有ポリマー、例えば特にスパンデックスの存在下で、ポリマーを分離するための費用のかかる前処理なしに、選択的なポリアミド6の解重合を可能にしてカプロラクタムを与える。得られたカプロラクタムはまた、高純度である。
【0076】
<方法>
カプロラクタムの純度測定のためのGC法
【0077】
【0078】
アジピン酸ジメチル(Sigma Aldrich、99%超)を、カプロラクタムの定量のための内部標準として使用する。純粋なカプロラクタム(BASF純ラクタム、99%)を用いた較正のための一連の試料も調製した。
【0079】
試料の調製:
内部標準(アジピン酸ジメチル、Sigma Aldrich、99%超)20 mgおよびカプロラクタム0.1~0.6 gをイソプロパノール(Fisher Scientific、99.8%超)3~6 mlに溶解する。その溶液をアセトン(BASF、純粋)で1:1に希釈し、室温において30分間放置する。その試料を続いて測定する。
【実施例】
【0080】
<例1(本発明による)>
PA6(ポリアミド6)/ポリウレタンブロックコポリマー混合物の解重合:
80:20のPA6/ポリウレタンブロックコポリマー混合物(INDITEX/Nextilからの繊維製品)(402 g)を2%のKOH(Bernd Kraft、超高純度水酸化カリウムペレット)(8 g)と混合し、TCF 2.5二軸ニーダー(LIST Technology AG,スイス国)中で溶融した。次いで、80~100 mbar(絶対圧)の真空を確立し、300℃の内部温度において、混合物中のPA6を2.5時間にわたって解重合した。その結果生じたカプロラクタムを気体形態で上方に取り出し、次いで74℃で凝縮させた。得られたカプロラクタム溶融物を冷却して、固体のカプロラクタムを得た。290 gのカプロラクタム(出発混合物のPA6含有量を基準にして90%)を得た。その生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は90重量%であった。
【0081】
【0082】
例2は、本発明の実施例と同様に実施した。80:20のPA6/ポリウレタンブロックコポリマー混合物の代わりに、Ultramid B36を使用した。
【0083】
<例3>
二軸混練押出機のなかで、Ultramid B3WG6と、総量を基準にして2%のKOH(Bernd Kraft,超高純度水酸化カリウムペレット)との混合物(10 kgのUltramid B3WG6当たり200 gのKOH)15 kg/hを245℃において溶融し、排出スクリューを備えたCKR 25 C二軸ニーダー反応器(LIST Technology AG,スイス国)に供給した。271℃の温度および35 mbarの絶対真空において、得られたポリアミド6を解重合した(滞留時間約1時間)。形成されたカプロラクタムを気体形態で上方に取り出し、次いで89℃で凝縮させた。得られたカプロラクタム溶融物を冷却して、固体状カプロラクタムを得た。不活性成分、KOH、および残留量のポリアミド6を、排出スクリューを通して、同様に真空下にある回収容器に連続的に搬送した。9.68 kg/hのカプロラクタム(出発混合物のPA6含有量を基準にして94%)を得た。その生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は95~97重量%であった。
【0084】
<実施例4(本発明)>
連続プロセスにおけるPA6(ポリアミド6)/ポリウレタンブロックコポリマー混合物の解重合:
二軸混練押出機のなかで、PA6/スパンデックス混合物(80:20)と、総量を基準にして2%のKOH(Bernd Kraft,超高純度水酸化カリウムペレット)との混合物(10 kgのPA6/スパンデックス当たり200 gのKOH)13 kg/hを245℃において溶融し、排出スクリューを備えたCKR 25 C二軸ニーダー反応器(LIST Technology AG、スイス)に供給した。
【0085】
300℃の温度および60 mbarの絶対真空において、得られたポリアミド6を解重合した(滞留時間約1時間)。形成されたカプロラクタムを気体形態で上方に取り出し、次いで130℃において凝縮させた。得られたカプロラクタム溶融物を冷却して、固体状カプロラクタムを得た。残りの成分、KOH、および残留量のポリアミド6を、排出スクリューを通して、同様に真空下にある回収容器に、ニーダー反応器から連続的に搬送した。9.4 kg/hのカプロラクタム(出発混合物のPA6含有量を基準にして94%)を得た。その生成物をガスクロマトグラフィーで分析したところ、純度は87~88重量%であった。
【国際調査報告】