(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】乳業タイプの加工食品
(51)【国際特許分類】
A23C 9/152 20060101AFI20231228BHJP
A23C 19/08 20060101ALI20231228BHJP
A23C 19/068 20060101ALI20231228BHJP
A23C 19/086 20060101ALI20231228BHJP
A23C 13/12 20060101ALI20231228BHJP
A23C 11/00 20060101ALI20231228BHJP
A23C 9/00 20060101ALI20231228BHJP
A23G 9/40 20060101ALI20231228BHJP
A23L 11/65 20210101ALN20231228BHJP
【FI】
A23C9/152
A23C19/08
A23C19/068
A23C19/086
A23C13/12
A23C11/00
A23C9/00
A23G9/40
A23L11/65
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537912
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-09
(86)【国際出願番号】 EP2021086493
(87)【国際公開番号】W WO2022129525
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2021-07-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523230214
【氏名又は名称】ベー・カー・ジュリーニ・ゲー・エム・ベー・ハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アイフェル,ユーリア
(72)【発明者】
【氏名】ハイル,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】スリチュウォン,サタポルン
(72)【発明者】
【氏名】グラーン,イレーネ
(72)【発明者】
【氏名】ボイト,マクシミリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュポルカ,ラドバン
(72)【発明者】
【氏名】トラベル,ジャン-フランソワ
(72)【発明者】
【氏名】デールバルト,フロレンシオ・サラゴサ
【テーマコード(参考)】
4B001
4B014
4B020
【Fターム(参考)】
4B001AC02
4B001AC05
4B001AC07
4B001AC20
4B001AC21
4B001AC44
4B001AC46
4B001AC99
4B001BC13
4B001EC01
4B001EC04
4B001EC53
4B014GB18
4B014GG11
4B014GG12
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4B020LB18
4B020LC07
4B020LG04
4B020LK03
4B020LK06
4B020LP30
(57)【要約】
本発明は、フィチン酸塩を含む乳業タイプの加工食品であって、4.5~8、好ましくは5~8のpHを有する、乳業タイプの加工食品に関する。乳業タイプの製品は、例えば、酪農チーズ製品、高タンパク質乳飲料、又は植物性のヴィーガンチーズ若しくは飲料であってもよい。フィチン酸として計算されたフィテートの量は、一般的に、最終製品中の約0.05~5重量%であり、以下の特性:乳化、金属イオン封鎖、pH調節、テクスチャ強化、及び風味改良剤のうちの1つ以上をもたらす。フィテートは、食品中のホスフェート添加物の代替として使用されうる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのタンパク質源及びフィチン酸ナトリウム又はカリウム塩を含む、乳業タイプの加工食品であって、4.5~8、好ましくは5~8のpHを有し、少なくとも1つのタンパク質源がミセルタンパク単離物である場合、水以外に少なくとも1種のさらなる成分を含む、乳業タイプの加工食品。
【請求項2】
乳業タイプの製品が、乳製品、好ましくはプロセスチーズ、クリームチーズ、粉末チーズ、クリーム、クリーマー、ソース、乳飲料、高タンパク質乳飲料などの強化乳飲料、ミルク缶、乳製品デザート組成物、インスタントプリン、アイスクリーム、冷菓、UHT乳飲料及び賞味期限が長い乳製品である、請求項1に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項3】
乳業タイプの製品が、植物性のヴィーガン向け疑似乳製品、好ましくは高タンパク質飲料、ヴィーガン飲料、ヴィーガン料理用クリーム及びデザート、並びにヴィーガン代替チーズである、請求項1に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項4】
タンパク質の量が、最終製品中の約2重量%~約25重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項5】
最終製品中の約0.5~3.5重量%の、フィチン酸として計算されたフィチン酸塩をさらに含む約20~60%の固形分を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項6】
0.5~20%のフィチン酸塩、好ましくは1.5~10%、さらにより好ましくは2.5~9重量%の、固体のフィチン酸として計算されたフィチン酸塩をさらに含む約20~60%の固形分を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項7】
飲料であり、最終製品中の約0.05~4重量%、好ましくは約0.1~1重量%の、フィチン酸として計算されたフィチン酸塩をさらに含む約5~27%の固形分を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項8】
飲料であり、固体で計算した場合、約0.15~85重量%、好ましくは0.4~40重量%、さらにより好ましくは約0.4~10重量%の、フィチン酸として計算されたフィチン酸塩をさらに含む、約5~27%の固形分を有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項9】
乳業タイプの加工製品中のフィチン酸として計算されたフィチン酸塩の量が、最終製品中の約0.05~5重量%、好ましくは最終製品中の約0.1~2重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項10】
乳業タイプの加工製品中のフィチン酸として計算されたフィチン酸塩の量が、固体で計算された最終製品中の約0.3~40重量%、好ましくは約0.3~20重量%、さらにより好ましくは0.5~15重量%である、請求項1~4のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項11】
添付資料II及びIIIを含めた規制(EC)No.1333/2008の2020年12月に掲載された欧州のE番号付けの規制による特定の申告を必要とするリン酸塩を含まない、請求項1~10のいずれか一項に記載の乳業タイプの加工製品。
【請求項12】
乳業タイプの製品の調製方法であって、タンパク質含有の食用液体を生成すること、1重量%の水溶液として溶解されたときに5~10のpHを有するフィチン酸塩を添加すること、及び添加して得た混合物を加熱して、4.5~8のpHを有する乳業タイプの加工製品を生成することを含む、方法。
【請求項13】
乳業タイプの製品が、噴霧乾燥に供されて、噴霧乾燥された製品を生成する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
1重量%の水溶液として溶解されたときに5~10、好ましくは6~10のpHを有するフィチン酸塩生成物の、乳業タイプの加工製品の調製における使用であって、以下の特性:乳化、金属イオン封鎖、pH調節、白色度の増加、タンパク質分散の改善、テクスチャ強化、並びに風味及び/又は色の改良のうちの1つ以上をもたらすための、使用。
【請求項15】
フィチン酸が、6つ~1つのホスフェート基を含有しうるミオイノシトールホスフェートの混合物であり、混合物が、全ミオイノシトールホスフェートの量に対して少なくとも50重量%のミオイノシトールヘキサホスフェート及びミオイノシトールペンタホスフェートを含み、ミオイノシトールホスフェートの量に対して10重量%~90重量%のミオイノシトールヘキサホスフェートを含む、請求項12~14のいずれか一項に記載の方法又は使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳業タイプの加工製品、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳業タイプの製品は、ミルク製品を用いて製造される乳製品、並びにさらにはヴィーガン代替チーズ、及びヴィーガンプロテイン飲料などのヴィーガン(完全に植物をベースとした)製品を含む。
【0003】
加工乳製品は、少なくとも1種の乳製品、少なくとも1種の塩、及び一般的には少なくとも1種のさらなる成分で構成される製品である。これらの成分を混合した後又は混合する間、一般的に、加熱工程が適用される。
【0004】
例えばチーズ及び関連製品などの加工乳製品は、ナチュラルチーズ、乳化性塩、及び他の成分(例としては、MPC(乳タンパク濃縮物)など)のブレンドを加熱することによって調製される。モノ、ジ、トリ、若しくはポリホスフェートナトリウム、カリウム、又は他の塩を含有する混合物などの乳化剤は、脂肪及びより親水性のタンパク質富化相への相分離を防止して均一なテクスチャをもたらし、安定性を改善し、最終生成物のpHを制御することも助ける。例として、US5466477は、リン酸ナトリウム溶液を活用してプロセスチーズを調製する方法を開示している。
【0005】
ホスフェートは、チーズ中の主要タンパク質であるカゼインからカルシウムイオンを錯化することによって及びカルシウムを一価又は他のカチオンで置き換えることによって作用しうる。これは、カゼインの溶解度及び解膠又はペプタイゼーション能力を強化し、油を有するより安定性のエマルションの形成につながる。
【0006】
リン酸塩は、加工中の加熱時にタンパク質の析出を防止するための他の乳製品の加工並びに均一なテクスチャの維持並びに色及び香りの維持にも有益である。さらに、リン酸塩は、pH緩衝能にも使用される。
【0007】
乳製品の加熱は、多くの場合、例として無糖練乳又は加糖練乳の製品の製造中の滅菌又は水の除去のために必要とされる。加熱中、乳製品の味及び香りは変わりうるが、それは、さまざまなリン酸塩の添加によって防止することができる。例としては、WO2013/116621は、ホスフェートを含めたデイリーミネラルを添加することによって強化された、香りが改善された乳製品を開示している。
【0008】
カルシウムの錯化によるカゼインカルシウムの析出を防止することによって分散剤として作用するポリホスフェートの能力は、安定化及びUHTタンパク質が豊富な飲料のファウリングの防止のためにも有益である。
【0009】
したがって、食品等級のホスフェートは、プロセスチーズ、チーズソース及びディップ、乳飲料(液体及び乾燥)、発酵乳製品、インスタントプリン及びチーズケーキ、クリームスープ、アイスクリーム、並びにデザートトッピングを含めた広範囲の乳業用途において使用される。
【0010】
例えば、熱処理中にタンパク質の変性を阻害し、再水和時に効率的なタンパク質の分散を可能にするための低温殺菌又は噴霧乾燥に先立って、DSP(リン酸二ナトリウム)が液体乳に添加される。チョコレートミルクは、ココアを懸濁液中で維持するピロリン酸四ナトリウム(TSPP)の存在から恩恵を受けることができる。イチゴフレーバーのミルクの紫変色は、トリリン酸五ナトリウム(STPP)を添加して鉄を結合することによって阻害されうる。DSPは、UHT乳タンパク質の凝固を低減するために使用されうる。長鎖ヘキサメタリン酸六ナトリウム(SHMP)は、UHTミルクの経時的ゲル化(age gelation)を阻害する。バターミルク及びカッテージチーズは、リン酸による直接酸化を介して調製され得、この製品は、培養形態より長い貯蔵寿命を有する。テクスチャライザー(texturiser)としてアルギネートを使用する乳調製品において、ホスフェートは、カルシウム放出及び後続するゲル化を制御する上で有用である。乳成分を含まないクリーマーは、しばしば、粉末クリームが温かい酸性コーヒーに添加されるときにフェザリングを阻害するためのリン酸二カリウム(DKP)を使用する。DSP、TSPP、又はSHMPは、アイスクリームに添加して乳脂肪のチャーニングを防止することができる。
【0011】
ヴィーガン向け乳業タイプ製品において、リン酸塩が、安定剤及び/又はpH緩衝化合物として一般的に使用される。任意選択的にクエン酸又は炭酸ナトリウム、カリウム、マグネシウム、又はカルシウムなどの他の塩と組み合わせた0.1%~0.5%のポリホスフェートの添加は、大豆又はアーモンドをベースとしたプロテイン飲料を安定化するための既知の戦略である。そのため、ヴィーガン向け乳業タイプ製品は、一般的に、「加工されている」とも考えられ、加工工程は、異なる成分の混合、加熱、及び乳化などを要する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5,466,477号明細書
【特許文献2】国際公開第2013/116621号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
リン酸塩が一般的に使用されるが、加工品のすべての特徴が好都合なわけではなく、ある種の特徴にはさらなる改善が目標とされる。例えば、リン酸塩は、乳業タイプ製品に多少の金属味を生じうる。したがって、本発明の目的は、乳業タイプの加工製品の良好な性質を可能にする天然添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
(発明の要旨)
上述した目的の1つ以上は、第1の態様において、少なくとも1つのタンパク源及びフィチン酸のナトリウム又はカリウム塩を含む乳業タイプの加工食品であって、4.5~8、好ましくは5~8のpHを有し、少なくとも1つのタンパク源がミセルタンパク質単離物である場合に、水以外に少なくとも1種のさらなる成分を含む、乳業タイプの加工食品に関する、本発明によって提供される。
【0015】
US2014/135257は、食品中のホスフェート源としてのヌクレオチドの使用を記載している。実験の項に、ミセルカゼイン単離物及び多数のホスフェート化合物の中からフィチン酸ドデカナトリウム塩水和物を使用する比較実験が記載されている。このフィチン酸塩の1wt%溶液は、基準電極を用いて室温で測定した場合に11以上のpHを有する。
【0016】
EPA-1884165は、強化プロセスチーズを記載している。チーズは、ほとんど不溶性の化合物であるフィチン酸マグネシウムで強化される。実施例1は、フィチン酸マグネシウムの使用がテクスチャの問題を生じ、したがって加工問題を生んだことを記載している。
【0017】
US6866877は、炭酸強化乳飲料を記載し、低温殺菌前の炭酸化が細菌増殖を低減することを説明している。強化剤として、他のカルシウム又はマグネシウム塩の中でも、フィチン酸カルシウム又はフィチン酸マグネシウムが使用されうる。この参考文献は、多数のカリウム塩の中でもフィチン酸カリウムを使用する選択肢をさらに記載している。本発明の食品は、飲料の場合、好ましくは炭酸乳飲料ではない。
【0018】
US2011/189373は、低タンパク質又は無タンパク質クリーマーを記載している。参考文献は、クリーマーに添加されうる多数のキレート物質を列挙しており、それらのうちの1つはフィチン酸又は塩でもよい。本発明の食品は(この製品がクリーマーである場合)、好ましくは、(乾燥量基準で)3重量%超、より好ましくは3.3重量%超のタンパク質を含有する。
【0019】
好ましい一実施形態において、乳業タイプの加工製品は、乳成分を含む製品であり、乳製品と呼ばれる。そのような乳製品の例としては、酪農チーズ製品、高タンパク質乳飲料、UHT乳飲料(香料若しくは無香料)、又はソースが挙げられる。
【0020】
別の好ましい実施形態において、乳業タイプの加工製品は、例えば高タンパク質飲料、ヴィーガン飲料、ヴィーガン料理用クリーム及びデザート、並びにヴィーガン代替チーズなどの植物性のヴィーガン製品である。
【0021】
本発明は、さらに、乳業タイプの製品の調製方法であって、タンパク質含有の食用液体を生成する工程、水中に溶解された場合に1重量%のフィチン酸塩生成物として5~10のpHを有するフィチン酸塩生成物を添加する工程、及び混合物を加熱して、4.5~8のpHを有する乳業タイプの加工製品を生成する工程を含む、方法に関する。加工製品のpHは、HCl若しくはクエン酸などの酸又はNaOH、KOH、クエン酸ナトリウムなどの塩基によって必要なpHに調節されうる。5~10のpHを有する1重量%の水溶液は、フィテート酸塩が、平均で約5~約11のナトリウム又はカリウムイオンの水素塩である事実を反映する。
【0022】
本発明の方法は、液体生成物を生成することができるが、最終生成物を噴霧乾燥して、例えば粉乳又は非乳製品クリーマーを得ることもできる。
【0023】
本発明のさらに好ましい実施形態において、フィチン酸として計算した場合に約5~50重量%の量のフィチン酸塩を含むフィチン酸塩溶液が方法において使用される。フィチン酸塩は、Na、K又はこれらの混合物から選択される金属イオンを含む。
【0024】
別の実施形態において、フィチン酸塩は、乾燥粉末(固体)として提供されうる。フィチン酸生成物は、比較的純粋であってもよく、又は他の成分との混合物であってもよい。フィチン酸は、ブラン又は他の穀類の抽出物から得られ、他の抽出成分との混合物中であってもよい。
【0025】
本出願において用いられる場合、フィチン酸という用語は、ミオイノシトールヘキサホスフェートと、6~1つのホスフェート基を含有しうるミオイノシトールホスフェートの混合物との両方を含み、混合物は、全ミオイノシトールホスフェートの量に対して少なくとも50重量%のミオイノシトールヘキサホスフェート及びミオイノシトールペンタホスフェートを含み、ミオイノシトールホスフェートの量に対して10重量%~90重量%のミオイノシトールヘキサホスフェートを含む。本発明によるフィチン酸は、InsPの量に対して、好ましくは25重量%以上のInsP6を含む。
【0026】
好ましい実施形態において、フィチン酸塩は、フィチン酸ドデカナトリウム又はドデカカリウムではないが、(i)水素-フィチン酸カリウム又はナトリウムの混合物、(ii)ヘキサホスフェート、ペンタホスフェート及び低級ホスフェートイノシトールの混合物、又は(iii)(i)及び(ii)の組合せを含む。
【0027】
本発明は、さらに、乳業タイプの加工製品の調製におけるフィチン酸塩生成物の使用に関する。フィチン酸塩は、以下の特性:乳化、金属イオン封鎖、pH調節、白色度の増加、タンパク質分散の増加、テクスチャ強化、並びに香味及び/又は色の改善のうちの1つ以上をもたらすことが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0028】
乳業タイプの加工食品は、タンパク質含有の食用液体、少なくとも1種の添加塩、及び一般的には1種以上のさらなる食用成分を含む食品である。これらの成分の混合後又は混合中、一般的に、加熱工程が適用される。少なくとも1種の添加塩は、本発明によるフィチン酸塩を含む。
【0029】
好適な乳業タイプの加工製品は、乳製品及びヴィーガン製品(完全に植物性の疑似乳製品(dairy like product))を含む。好ましい一実施形態において、乳業タイプの製品は、乳製品である。別の好ましい実施形態において、乳業タイプの製品は、ヴィーガン向けの完全に植物性製品である。
【0030】
加工乳製品は、プロセスチーズ、クリームチーズ、粉末チーズ、発酵乳製品、ディップ、バター、クリーム、クリーマー、ソース、乳飲料、強化乳飲料、高タンパク質乳飲料、缶ミルク、乳製品デザート組成物、インスタントプリン、アイスクリーム、冷菓、UHT乳飲料(香料又は無香料)及び賞味期限が長い乳製品などの製品を含む。
【0031】
加工乳製品がミセルカゼイン単離物を成分として含有する場合、加工乳製品は、水(及びフィテート)以外に少なくとも1種の他の成分を含有する。他の成分としては、無水乳脂肪、クリーム、バター、スキムミルク粉末、脱水クリーム、脱脂粉乳、ホエー、乳清タンパク濃縮物、乳タンパク濃縮物、大豆タンパク濃縮物、エンドウ豆タンパク質、植物油、酢酸、ビネガー、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及び他のpH調節物質、塩化ナトリウム、乳化剤、ヒドロコロイド、着色料、香辛料、香料、甘味料(砂糖又は低カロリー甘味料など)、並びに保存料が挙げられる。
【0032】
加工乳製品がヴィーガン向け乳業タイプの製品である場合、水(及びフィテート)以外に少なくとも1種の他の成分を含有する。他の成分としては、植物由来のタンパク質、植物油、植物性ミルク、大豆、豆類、ヤシ、ピーナッツ、ナッツ類、オートムギ、コメ、種子に由来する成分、酢酸、ビネガー、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム及び他のpH調節物質;塩化ナトリウム、レシチンなどの乳化剤、カラギナン、デンプン及び穀粉(例えば、ジャガイモ又はタピオカ由来の)、ヒドロコロイド(キサンタンガム、寒天など)、ニュートリショナルイースト、香辛料、香料、砂糖、甘味料(砂糖又は低カロリー甘味料など)、保存料及び酵素が挙げられる。
【0033】
プロセスチーズの例としては、これらに限定されないが、プロセスチーズブロック、スライス、スプレッド、ソース、スティック、スナック、及び粉末が挙げられる。
【0034】
プロセスチーズに含まれうるチーズは、これらに限定されないが、チェダー、スイス、コルビー、ウォッシュドカード(washed curd)、酵素修飾及び粒状チーズを含む。プロセスチーズに添加されうる他の成分には、これらに限定されないが、無水乳脂肪、クリーム、バター、スキムミルク粉末、脱水クリーム、脱脂粉乳、カゼイン、ホエー、乳清タンパク濃縮物、乳タンパク濃縮物、水、酢酸、ビネガー、乳酸、クエン酸、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、着色料、香辛料、香料、及び保存料が挙げられる。
【0035】
驚くべきことに、異なる濃度のフィテートを用いて製造されたプロセスチーズの試料は、ホスフェートをベースとする溶融塩組成物を用いて製造された試料より白色を示すことが発見された。さらに、意外なことに、フィテートを用いて製造されたスプレッダブルチーズ試料の味は、対照と比較して、より自然であり、かつ金属味が少ないことが注目された。
【0036】
(高タンパク質)乳飲料の成分は、無水乳脂肪、クリーム、バター、スキムミルク粉末、脱水クリーム、脱脂粉乳、カゼイン、ホエー、乳清タンパク濃縮物、乳タンパク濃縮物、大豆タンパク濃縮物、濃縮及び/又は加水分解及び/又は脱灰されうる乳タンパク質を含む。乳製品の成分は、ラクトースを含まなくてもよい。
【0037】
別の好ましい実施形態において、乳業タイプの加工製品は、植物性のヴィーガン向け高タンパク質飲料、ヴィーガン飲料(非高タンパク質)、ヴィーガン料理用クリーム及びデザート並びにヴィーガン代替チーズである。
【0038】
好ましくは、乳業タイプの加工製品中のタンパク質の量は、最終製品中の約2重量%以上、より好ましくは3重量%以上である。好ましくは、乳業タイプの加工製品中のタンパク質の量は、約25重量%以下、より好ましくは約20重量以下である。好ましくは、乳業タイプの加工製品中のタンパク質の量は、約2~25重量%である。例えば、プロセスチーズは、最大20重量%のタンパク質を含有しうるが、6~8重量%もありうる。一般的に、乳飲料は、約3%以上のタンパク質を含有する。高タンパク質飲料は、一般的に、液体配合物(40g/L以上)に、約3重量%以上、好ましくは約4重量%以上のタンパク質を有する。より好ましくは、タンパク質含有量は、液体ベースで約5重量%以上である。
【0039】
製品が粉末状クリーマーである場合、タンパク質の量は、好ましくは約3.3重量%以上である。
【0040】
本発明の一実施形態において、約20~60%の固形分を有する製品が提供される。そのような製品は、ブロック又はソースのチーズタイプの製品を含む。そのような製品は、約0.5~3.5重量%のフィチン酸塩(酸として)を含んでもよい。固体で、そのような製品は、概して0.5~20%のフィチン酸塩、好ましくは1.5~10%、さらにより好ましくは2.5~9重量%のフィチン酸塩(フィチン酸として)を固体で含む。フィチン酸として約15mmolの量になる1重量%のフィチン酸は、660ダルトンの分子量を有する。
【0041】
本発明の別の好ましい実施形態において、固形分が5~27%の飲料が提供される。そのような製品は、約0.05~4重量%、好ましくは約0.1~1重量%のフィチン酸塩(フィチン酸として)を含んでもよい。固体で、これは、約0.15~85重量%、好ましくは0.4~40重量%、さらにより好ましくは約0.4~10重量%の量であってもよい。
【0042】
好ましくは、乳業タイプの加工製品中のフィチン酸として計算した場合、フィテート(フィチン酸塩)の量は、最終製品中の約0.05~5重量%、好ましくは最終製品中の約0.1~2重量%である。
【0043】
好ましくは、乳業タイプの加工製品中のフィチン酸として計算した場合、フィテート(フィチン酸塩)の量は、固体(すべての水分を除去した状態)で計算された最終製品中の約0.3~40重量%、好ましくは最終製品中の約0.3~20重量%、さらにより好ましくは0.5~15重量%である。
【0044】
比較試飲会において、驚くべきことに、フィテートで製造された飲料は、目立ったプロテインの味が少ないことが観察された。通常、このタイプの飲料に伴うプロテインの味は、消費者の受け入れにおいて問題となる原因となることが多く、その改善が非常に重要である。
【0045】
追加の利点は、フィチン酸塩の使用が、2020年12月に有効化された国内食品規制によるホスフェートに関する具体的な申告を含まない食品のラベルを可能にし、したがって、好ましくは、本発明による乳業タイプの加工製品が、ラベルに食品規制による申告、より具体的には規制(EC)No.1333/2008(添付資料II及びIIIを含む)の2020年12月に掲載された欧州のE番号付けを必要とするリン酸塩を含まないことである。そのため、乳業タイプの加工製品は、好ましくはモノ、ジ、トリ又はポリホスフェートを欠いている。
【0046】
乳製品は、一般的に、4.5~8、好ましくは4.5~7のpHを有する。より好ましくは、乳業タイプの加工製品のpHは約5以上である。
【0047】
本発明による組成物は、フィチン酸塩を含む。そのような塩は、乳化剤、pH調整剤、乳製品及び乳業タイプ製品のテクスチャ及び風味改良剤として作用しうる。pH5~10の溶解されたフィチン酸塩は緩衝能を有するが、その理由は、ホスフェート基の一部がプロトン化され、一部が脱プロトン化されるからである(例えば、Formulation of dynamic buffer capacity for phytic acid Michalowska-Kaczmarczykら、American Journal of Chemistry and Applications2015年;2(1):5~9頁参照)。
【0048】
フィチン酸(CAS83-86-3)は、イノシトール(CAS87-89-8)のヘキサホスフェートであり、多くの穀物の種子を含めた植物組織中で自然発生する。フィチン酸の塩はフィテートと呼ばれ、混合カルシウムマグネシウムフィテートはフィチン(CAS3615-82-5)と呼ばれる。普通のヒトのフィテートの1日の平均摂取量は、スウェーデン及びイタリアの300mg/d未満からグアテマラ、ナイジェリア及びインドの2000mg/d超までさまざまである(N.R.Reddy、第3章、Food Phytates、CRC Press、2002年)。フィテートのいくつかの有益な効果として、腎臓結石の防止又は溶解、血糖及び脂質の低下、酸化防止及び抗がん効果が挙げられる(Schlemmerら、Mol.Nutr.Food Res.2009、53、S330~S375)。
【0049】
フィチン酸塩のいくつかの用途は、食品用途に記載している。例えば、US2020/138064は、調理中に肉の水分保持を強化するための、食肉用途におけるフィチン酸塩の使用を記載している。Graf in JAOCS、第60巻、11号(1983)、1861~1867頁は、フィチン酸のいくつかの態様、例えば穀類中のその存在及び一部の使用を記載している。Leeら、Meat Science、第50巻、3号(1998)、273~283頁は、食肉加工中のフィチン酸の適用を記載している。
【0050】
驚くべきことに、フィチン酸塩は、乳化性塩並びに乳製品のテクスチャ及び風味改良剤として現在使用されているモノ、ジ、トリ、又はポリリン酸塩と同様の特性を示すことが発見された。フィチン酸塩は、液体(溶解された)形態で使用されうるが、そのような部分的に中和されたフィチン酸溶液の乾燥塩も等しく適用可能である。
【0051】
本出願において用いられる場合、フィチン酸という用語は、ミオイノシトールヘキサホスフェートと、6~1つのホスフェート基を含有しうるミオイノシトールホスフェートの混合物との両方を含み、前記混合物は全ミオイノシトールホスフェートの量に対して少なくとも50重量%のミオイノシトールヘキサホスフェート及びミオイノシトールペンタホスフェートを含み、ミオイノシトールホスフェートの量に対して10重量%~約90重量%のミオイノシトールヘキサホスフェートを含む。市販のフィチン酸は、98%超の純粋化合物として入手可能であるが、純度がより低いフィチン酸(ミオイノシトールヘキサキスホスフェート、InsP6)の場合もあり、実際にはヘキサホスフェートのミオイノシトールホスフェート(InsP6)とペンタキス、テトラキス、トリス、ビス及びモノホスフェート(InsP5~InsP1)のうちの1種以上との混合物である。
【0052】
好ましくは、フィチン酸中のInsP6とInsP5の量は、全ミオイノシトールホスフェート(InsP6~InsP1)の量に対して約70重量%以上である。フィチン酸は、好ましくは、InsPの量に対して25重量%のInsP6、好ましくは全InsPの量に対して約35重量%以上のInsP6を含む。
【0053】
好ましい実施形態において、フィテート混合物中のInsP6の量は約90重量%以下である。さらに好ましい実施形態において、InsP6及びInsP5の量は約90重量%以下である。これらの実施形態において、好ましくは、InsP4及びInsP5の量は約40重量%以上である。そのような混合物において、完全なナトリウム及び/又はカリウム塩を有することが好ましいことがあり、すなわち、ホスフェートの水素の数は、1つのイノシトールに対して約0.5以下であり、好ましくは平均で約0.1以下である。
【0054】
各ミオイノシトールホスフェートの量は、LC-MSによって、例えばShodex HILICpak VG-50 2D(2.0mm I.D.×150mm)カラム、及び溶出液としての0.1M炭酸アンモニウム緩衝液(pH10.0)/CH CN=60/40(流量0.2mL/分)を使用し、検出器:ESI-MS(SIMネガティブ)及びカラム温度40℃を用いて決定されうる。
【0055】
フィチン酸塩の水溶液は、フィチン酸を溶解し、塩基を添加することによって調製することができる。pHは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又はこれらの混合物の固体又は水溶液を添加することによって上げられる。好ましい塩基溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、又はこれらの混合物である。部分的に中和されたフィチン酸溶液の乾燥塩は等しく適用可能であり、フィチン酸塩溶液を乾燥することによって調製することができる。
【0056】
本発明の好ましい実施形態において、アルカリ源がフィチン酸溶液に添加されて、pHを約5~約10、好ましくは約6~約10に調節する。アルカリ源は、上述の塩基のいずれかであってよい。
【0057】
pH調節されたフィチン酸溶液は、無水若しくは水和フィチン酸ナトリウム(例えば、CAS14306-25-3(無水))、無水若しくは水和フィチン酸カリウム(例えば、CAS7231-21-2若しくはCAS129832-03-7)、又はこれらの混合物を水中に溶解し、任意選択的に後続して塩酸若しくは硫酸などの無機鉱物強酸又はクエン酸などの有機酸で最終的なpH調節を行うことによっても調製されうる。さらなるpH調節を、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、又はこれらの混合物の固体又は水溶液を使用して行うことができる。そのような部分的に中和されたフィチン酸溶液の乾燥塩も等しく適用できる。
【0058】
フィチン酸又はフィチン酸塩は、比較的純粋な化合物(95%以上の純度)であってもよい。
【0059】
本発明の好ましい実施形態において、フィチン酸は、穀粒又は他の植物成分から、例えば米ブランなどから、他の穀類又は野菜から抽出される。好適な抽出法は、例えば、US2020/138064に記載されている。そのような抽出物中のフィチン酸成分は、5~95重量%、好ましくは10重量%以上、より好ましくは約20重量%以上であってもよい。上限は重要ではないが、より純度の高いフィチン酸は、製造がより高価である。抽出物は、約80重量%以下の純度であってもよい。この項における純度は、他の糖及びその誘導体などの非イノシトールホスフェート、非ホスフェートイノシトール、及び抽出に使用された植物成分由来の他の残りの成分に対するイノシトールホスフェートに関連する。
【0060】
上述するように、フィチン酸は、実質的に純粋InsP6でありうるが、InsP6、InsP5及びそれ以下のInsPの混合物でもあり得、一般的に、5又は6つのリン基を有するミオイノシトールホスフェートの量は、ミオイノシトールホスフェートに対して50重量%以上である。一般的に、InsPに対して、InsP6の量は約10重量%以上であり、好ましくは、InsP6の量は約25重量%以上である。穀粒から抽出されたフィチン酸は、一般的に、ミオイノシトールホスフェートの混合物であり、そのような抽出されたフィチン酸は、天然源に由来するため好ましい。そのような混合物において、InsP6の量は上述するとおりであり、好ましくは約90%以下である。
【0061】
本発明のさらに好ましい実施形態において、フィチン酸として計算した場合に約5~50重量%、より好ましくは10~50重量%の量のフィチン酸塩を含むフィチン酸塩溶液が本方法において使用される。好ましくは、フィチン酸塩は、Na、K又はこれらの混合物から選択される金属イオンを含む。
【0062】
フィチン酸塩は、粉末又は顆粒の形態であってもよい。粉末状フィチン酸塩は、最大で数mm、好ましくは0.01~1mm、さらにより好ましくは0.05~0.5mmのサイズを有しうる。顆粒状フィチン酸塩は、最大で4cmのサイズの多結晶化合物又は非晶質粒子であってもよいが、好ましくは、サイズは約1cmm以下、例えば1mm~1cmである。固体生成物は、他の成分を含みうる。これらの成分は、フィチン酸塩生成物に添加されてもよい、又は抽出プロセスから残留したものでもよい、又は両方であってもよい。
【0063】
本発明のさらなる実施形態において、pH調節されたフィチン酸生成物は、追加の乳化成分、安定化成分、又はテクスチャ強化成分も含有してよく、これらは、例としてはプロセスチーズなどの乳製品の製造に一般的に使用される。これらの追加の成分は、これらに限定されないが、カラギナン、アルギネート、キサンタンガム、イナゴマメ、セルロースガム、デンプン、加工デンプン、及びこれらの混合物を含む。また、フィチン酸塩溶液と組み合わせて、リン酸カルシウムなどのモノ、ジ、又はトリホスフェートを使用することも可能であるが好ましくはない。
【0064】
加工
本発明は、さらに、タンパク質含有の食用液体を生成する工程、フィチン酸塩生成物(フィチン酸の水中1%溶液として溶解されている場合、5~10、好ましくは6~10のpHを有する。)を添加する工程、及び混合物を加熱して、4.5~8、好ましくは5~8のpHを有する乳業タイプの加工製品を生成する工程を含む、乳業タイプ製品の調製方法に関する。pHは、室温で測定される。
【0065】
従来の加工装置及び方法が用いられうる。本発明の方法は、飲料又はクリームなどの液体製品、チーズなどの固体製品を生産するが、最終製品は、例えば、ミルク粉末又はクリーマーを得るために噴霧乾燥されてもよい。
【0066】
本発明は、さらに、1%水溶液として溶解されている場合に5~10、好ましくは6~10のpHを有するフィチン酸塩溶液又は固体の使用であって、乳業タイプの加工製品の調製における、以下の特性:乳化剤、金属イオン封鎖剤、pH調整剤、テクスチャ強化剤、及び風味改良剤のうちの1つ以上を付与するための、使用に関する。
【実施例】
【0067】
フィチン酸(Sigma製の50%市販材料)の1%溶液のpH=pH1.7であり、一方で2%溶液(50%濃度を相殺するため)はpH1.6を有する。ナトリウム塩水和物としてのドデカ-Na-フィテート(約90%の純度)は、1重量%溶液として測定され、11.0のpHを有していた。98%純粋化合物のドデカ-Na-フィテートは、1重量%で11を超えるpHが測定された。したがって、pHは、フィチン酸塩の0.01モル液で決定されうる。
【0068】
比較実験A及び実施例1
プロセス酪農チーズは、一般的に、以下のとおりに調製された:すべての成分が、添加された水の一部と混合され、1500rpmで1分間あらかじめブレンドされた。その後、混合物は、1500~3000rpmで3分以内に80℃まで加熱され、残りの水が添加された。混合物は、3000rpmで蒸気注入法によって85℃まで加熱され、さらに2分間、3000rpmで攪拌された。最後に、混合物は1500rpmで8分間攪拌され、真空が適用され、容器はホットフィルが施されて冷却された。
【0069】
フィチン酸ナトリウム塩溶液は、概して、水中で約35重量%のフィチン酸として使用され、水酸化ナトリウムを用いて約9のpHに調節された。受け取りにおいて、これらのフィチン酸塩溶液は、以下の組成(%は重量%である。)の均一なプロセスチーズの調製において従来の溶融塩(JOHA(登録商標)S9)を置き換えるために使用された。フィチン酸ナトリウムの量は、100%固体のフィチン酸として計算される。分析は、フィチン酸が、90重量%超のヘキサ及びペンタホスフェートを含んでいたことを示した。
【0070】
【0071】
結果:フィテートベースのプロセスチーズは、通常の溶融塩ベースのプロセスチーズと比較した場合、非常に良好な乳化性及び均一性、非常に良好な安定性、白色度及びより強力なテクスチャの固化を示した。フィテートベースのプロセスチーズの30℃での2週間にわたるストレス試験は、良好な安定性を示し、ガスの発生は示さなかった。
【0072】
比較実験B及び実施例2~4
プロセスチーズは、実施例1の一般的な方法の記述にしたがって調製された。標的のpH5.7に達するための必要に応じてNaOH(32%)が使用された。
【0073】
テクスチャの評価では、あらかじめ設定された方法「時間まで保持(hold-until-time)」を使用した、円筒形測定形状を有するテクスチャーアナライザー(TA.XT.plus)が用いられる。
【0074】
【0075】
チーズ試料の乾燥物質の評価は、加工条件の検証の目的にかなう。用いられたプロセスチーズの製造方法の間、製品への蒸気注入で行われうる水投入の差は手動で制御される。乾燥物質の結果は、すべてのチーズ試料中の水分が同等であることを示す。
【0076】
【0077】
フィテートで生成された生成物は、0+1で若干高い初期pHから開始した(これは、加工中、pH調節のためのNaOH溶液の添加を減らすことによって容易に調節することができる。)。すべての試料は、初期値と比較したとき、4℃で21日の貯蔵時間の後、ほぼ同じpHを示し、良好なpH安定性を示した。
【0078】
【0079】
驚くべきことに、異なる濃度のフィテートで製造されたプロセスチーズの試料は、ホスフェートベース溶融塩組成物で製造された試料より白色を示すことが発見された。さらに、意外なことに、フィテートで製造されたスプレッダブルチーズ試料の味は、対照と比較して、よりニュートラルかつ金属味の少ない味であることが注目された。
【0080】
試料のテクスチャは同等である。フィテートの濃度が上がるに従い、試料の粘度は高くなり、それによってチーズのテクスチャが、チーズ製造業者又は消費者の要求を満たすために容易に調節できる。
【0081】
比較実験C及び実施例5
フィテート及びJOHA(登録商標)Tを有するプロセスチーズブロックは、先の実験のとおりに調製された。
【0082】
【0083】
チーズ試料の乾燥物質の評価は、加工条件の検証の目的にかなう。用いられたプロセスチーズの製造方法の間、製品への蒸気注入で行われうる水投入の差は手動で制御される。乾燥物質の結果は、すべてのチーズ試料中の水分が同等であることを示す。
【0084】
他の評価の結果は、次に表に記載される。
【0085】
【0086】
スプレッダブルプロセスチーズのトライアルと同様に、フィテートで製造された製品は、0+1で若干高い初期pHから開始する(これは、加工中、pH調節のためのNaOH溶液の添加を減らすことによって容易に調節できる。)。冷蔵庫内の23日間の貯蔵でpHは若干低下し、例えば、ホスフェートを含有する試料では、pHは0.22低下するのに対し、フィテートを有するチーズブロックのpHは僅か0.09のみ低下する。
【0087】
驚くべきことに、フィテートで製造されたプロセスチーズブロックは、色がより白色かつよりニュートラルであるのに対し、ホスフェートを含有するブロックは、より黄色みを帯びた色を有する。さらに、フィテートチーズブロックの味は、ホスフェートを含有する対照よりニュートラルである。
【0088】
テクスチャの評価は、チーズを1週間貯蔵した後、ホスフェート及びフィテートの両方の試料で粘度が上がり、テクスチャが顕著に固化することを示す。より重要なことは、市販のホスフェートベース溶融塩混合物の粘度及び一般的挙動が、フィテートを使用することによって模倣可能であることである。
【0089】
比較実験D及び実施例6~8
4つの高タンパク質乳飲料が、次の表の構成成分を用いて調製された。
【0090】
【0091】
飲料は、以下のとおりに調製された:粉末状タンパク質がミルク中に分散され、2時間水和された。砂糖が添加され、溶解された後、ホスフェート又はフィテートのいずれかが添加された(フィテートは水溶液として使用され、成分の表の最後の列に示されるように、ホスフェートを有する配合物と同等の量の水が添加された。)。その後、pHは6.8に調節され、飲料は、Armfield製のUHT機器を用い、間接的加熱(141℃、2秒)、上流均一化(150/50バール)及び無菌充填により滅菌された。特に、この加工工程は、安定化物質、すなわち、プロセス安定性:例えば、加熱工程中のファウリングの防止、及び最終製品の安定性をもたらすためのホスフェートを必要とする。
【0092】
以下の表は、4つの飲料の評価を示す。
【0093】
【0094】
貯蔵時間の間のpH低下は、すべての温度条件の間のホスフェート及びフィテートを含有する試料と同等である。貯蔵温度の上昇に伴い、pHはより大きく低下し、そのような飲料のpH低下は一般的な現象である。
【0095】
析出物は、以下のとおりに決定された:ファルコンチューブ中に14gの試料を秤量し、20℃で20分間、4000rpmで遠心分離し、析出物を秤量する。分析は2回実施され、平均値が次の表に記載される。
【0096】
【0097】
比較試飲会において、驚くべきことに、フィテートで製造された飲料は、目立ったプロテインの味が少ないことが観察された。通常、このタイプの飲料に関連するプロテインの味は、消費者の受け入れにおいて問題となる原因となることが多い。したがって、味の改善が確実に有利である。
【0098】
析出物の値の偏差は、測定法の普通の不正確の範囲内にある。加速された析出法からこれまで収集された値から、いずれの試料も、長期の試料の貯蔵中に析出物を生成する傾向はみえない。
【0099】
これらの実施例は、フィテートの使用が、ホスフェートを置き換えられるだけではなく、別法で不安定な飲料に全体的な安定性を与えることができることを示す。
【0100】
実施例9~11及び比較実験E
乳業タイプの大豆プロテイン飲料は、以下の成分を用いて調製された:
【0101】
【0102】
大豆タンパク単離物が水中に分散され、1時間水和された。その後、砂糖が添加されて溶解し、カラギナンが添加された。攪拌がさらに30分間継続された。次いで、ホスフェート又はフィテート溶液のいずれかが添加され、pHがpH7.2に調節された。次に、飲料は、以下のとおりにUHT加工された:上流均一化(70℃、200/50バール)、UHT(141℃、2秒間)、冷却、無菌充填。
【0103】
フィテートを有する飲料は、ホスフェートを有する飲料と実質的に同じ特性(安定性に関して)を示した。味は改善されたと判断され、味見後の金属味は少なかった。
【国際調査報告】