(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】吸入製剤の製造条件を選択する方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20231228BHJP
【FI】
G16H20/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538015
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 US2021064773
(87)【国際公開番号】W WO2022140497
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】500203709
【氏名又は名称】アムジェン インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100161908
【氏名又は名称】藤木 依子
(72)【発明者】
【氏名】ウー,ティアン
(72)【発明者】
【氏名】シュナイダー,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ハラフ,ライアン
(72)【発明者】
【氏名】スマイス,ヒュー
(72)【発明者】
【氏名】ブリュノー,アシュリー
(72)【発明者】
【氏名】ディング,リ
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA25
(57)【要約】
予測モデリングコンピューティングシステムは、プロセッサと、コンピュータ実行可能な命令の組を含むメモリを含み、命令が1つ以上のプロセッサにより実行されると、予測モデリングコンピューティングシステムに、複数の計画パラメータを受信させ、予測粒度中央値を判定させ、予測的2次モデルを識別させ、及び可視化された応答曲面を表示させる。コンピュータ実装された方法は、複数の計画パラメータを受信することと、予測粒度中央値を判定することと、予測的2次モデルを識別することと、可視化された応答表面を表示させることとを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質の粒子加工中に霧化設定を最適化するための予測モデリングコンピューティングシステムであって、
1つ以上のプロセッサと、
コンピュータ実行可能な命令の組を含むメモリと
を含み、前記命令が、前記1つ以上のプロセッサにより実行されると、前記予測モデリングコンピューティングシステムに、
前記メモリの計画生成モジュールにおいて、統計的計画に関する、ユーザーが選択した複数の計画パラメータを受信させ、
前記メモリの適合性評価モジュールにおいて、予測粒度中央値を判定させ、
前記メモリの安定性評価モジュールにおいて、前記統計的計画に対応する統計的実験で評価された1つ以上の応答変数の各々をフィッティングすることにより1つ以上の予測的2次モデルを識別させ、及び
前記メモリの可視化モジュールにおいて、前記1つ以上の予測的2次モデルの各々について、可視化された応答曲面をユーザーのディスプレイ装置に表示させる、
予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項2】
前記メモリが、実行されると、前記予測モデリングコンピューティングシステムに、
前記予測的2次モデルを更に最適化すべく望ましさ関数を適用させる更なる命令
を含む、請求項1に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項3】
前記タンパク質が抗体である、請求項1又は2に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項4】
前記予測的モデリングコンピューティングシステムが、吸入可能なバイオ医薬品粉末を製造するために使用される、請求項1~3のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項5】
前記メモリが、実行されると、前記予測モデリングコンピューティングシステムに、
前記吸入可能なバイオ医薬品粉末を(i)噴霧器、及び(ii)乾燥粉末吸入器の一方又は両方を介して送達させる更なる命令
を含む、請求項4に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項6】
前記評価された応答変数が、
オリゴマー種の量の割合の変化、
Z平均の変化、
2次構造含量の変化、
融解吸熱ピークの変化、又は
予測粒度中央値
のうち1つ以上を含む、請求項1~5のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項7】
前記予測粒度中央値が、各々の液滴サイズ、重量分率、及び乾燥粒度を分析することにより判定される、請求項1~6のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項8】
前記メモリが、実行されると、前記予測モデリングコンピューティングシステムに、
粒子処理分析システムにおいて、霧化設定を制御すべく前記予測的2次モデルを用いて後続の実験を開始させ、及び
前記後続の実験の結果を前記統計的計画に対応する前記統計的実験の結果と比較させる、
更なる命令を含む、請求項1~7のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項9】
前記メモリが、実行されると、前記予測モデリングコンピューティングシステムに、
粒子処理分析システムから、粒子処理方法により生成された実験データであって、前記1つ以上の評価された応答変数に対応する実験データを受信させる
更なる命令を含む、請求項1~8のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項10】
前記メモリが、実行されると、前記予測モデリングコンピューティングシステムに、
粒子処理分析システムから、貯蔵粒子分析方法により生成された実験データであって、前記1つ以上の評価された応答変数に対応する実験データを受信させる
更なる命令を含む、請求項1~9のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項11】
タンパク質の粒子加工処理における最適な製剤霧化設定を判定するコンピュータ実装された方法であって、
予測コンピューティングシステムの計画生成モジュールにおいて、統計的計画に関する、ユーザーが選択した複数の計画パラメータを受信することと、
前記予測コンピューティングシステムの適性評価モジュールにおいて、予測粒度中央値を判定することと、
前記統計的計画に対応する統計的実験で評価された1つ以上の応答変数の各々をフィッティングすることにより1つ以上の予測的2次モデルを識別することと、
前記予測コンピューティングシステムの可視化モジュールにおいて、前記1つ以上の予測的2次モデルの各々について、可視化された応答表面をユーザーのディスプレイ装置に表示させることと
を含む方法。
【請求項12】
望ましさ関数を適用して前記予測的2次モデルを更に最適化すること
を更に含む、請求項11に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項13】
前記タンパク質が抗体である、請求項11又は12に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項14】
前記粒子加工処理が、吸入可能なバイオ医薬品粉末を作成すべく構成されている、請求項11~13のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項15】
前記吸入可能なバイオ医薬品粉末を、(i)噴霧器、及び(ii)乾燥粉末吸入器の一方又は両方を介して送達すること
を更に含む、請求項14に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項16】
前記統計的計画がボックス-ベンケン実験計画であり、前記評価された応答変数が、
オリゴマー種の量の割合の変化、
Z平均の変化、
2次構造含量の変化、
融解吸熱ピークの変化、又は
予測粒度中央値
のうち1つ以上を含む、請求項11~15のいずれか1項に記載の予測モデリングコンピューティングシステム。
【請求項17】
前記予測粒度中央値が、各々の液滴サイズ、重量分率、及び乾燥粒度を分析することにより判定される、請求項11~16のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項18】
粒子処理分析システムにおいて、霧化設定を制御すべく前記予測的2次モデルを用いて後続の実験を開始させることと、
前記後続の実験の結果を前記統計的計画に対応する前記統計的実験の結果と比較させることと
を更に含む、請求項11~17のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項19】
粒子処理分析システムから、粒子処理方法により生成された実験データであって前記1つ以上の評価された応答変数に対応する実験データを受信すること
を更に含む、請求項11~18のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【請求項20】
粒子処理分析システムから、貯蔵粒子分析方法により生成され実験データであって前記1つ以上の評価された応答変数に対応する実験データを受信すること
を更に含む、請求項11~19のいずれか1項に記載のコンピュータ実装された方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月23日出願の米国仮出願第63/130,063号「Methods and Systems for Selecting Conditions for Making Inhalation Formulations」の優先権及び利益を主張するものであり、その開示内容全体を本明細書に明示的に引用している。
【0002】
本開示は一般に、粒子加工において最適な噴霧乾燥処理条件を選択する予測的モデリング方法及びシステムの分野に関し、より具体的には、乾燥粉末吸入用に安定した吸入可能なタンパク質粒子を生成するための最適な噴霧乾燥処理条件を選択する予測的モデリング技術に関する。
【背景技術】
【0003】
現在、タンパク質製剤の治療薬市場が急成長している。例えば、モノクローナル抗体(mAb)の開発及び市場投入が急がれており、2018年~2019年にかけて18種類の新たな抗体が米国食品医薬品局(FDA)により承認されている。しかし、mAbの投与は現在、注射(例:皮下又は静脈内)経路に限定されており、FDAが承認した吸入可能なmAb製品は存在しない。この現状は、既存の粒子加工技術が、mAb等の吸入可能なタンパク質治療薬の開発及び展開に求められる実用面での課題の解決に失敗していることに大部分が起因する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
吸入可能なmAb粉末の商用化には処理及び送達の両面で適正であることが求められる。しかし、従来技術がエアロゾル性能及びタンパク質安定性の両方を実現する吸入可能なmAbの開発に失敗していることが示すように、mAbが複雑且つ不安定であることが吸入を含む代替的な投与経路の開発に大きな障壁となっている。
【0005】
例えば、従来からの努力には、噴霧乾燥及び噴霧凍結乾燥を用いて製造された吸入可能な抗免疫グロブリンE(IgE)mAb粉末のタンパク質安定性に関連する粉末特性(例:結晶化度)の分析が含まれていた。しかし、このような技術は、処理及び製剤条件がmAb構造及び凝集体の形成に及ぼす影響への対処に失敗してきた。他の面の努力として、様々なレベルのマンニトールと組み合わせた噴霧乾燥免疫グロブリンG1(IgG1)の安定性を評価して、少なくとも20~30%のマンニトール含量が安定化能力を有すると判定してきた。しかし、生成された製剤のエアロゾル性能が低いことが露呈された。
【0006】
mAb等のタンパク質治療薬の肺送達は、肺疾患の標的治療の魅力的な選択肢である。肺の深部気道に進入するには、液滴又は粒子(例:送達装置から放出されるもの等)は、3~5μm未満の空気力学的直径を必要とする。しかし、液滴(本明細書において「液滴」は粒子を指すと理解されたい)が肺の深部に到達できる適当な空気力学的直径を有する粒子を生成するために、従来の粒子加工技術で用いられる霧化では負荷誘発処理を用いる必要がある。このような負荷誘発処理は、特に液滴を形成するタンパク質の構造的変化、液滴の結合/凝集、治療活性の喪失、及び/又は免疫原性応答を引き起こす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様において、タンパク質の粒子加工中に霧化設定を最適化するための予測コンピューティングシステムは、1つ以上のプロセッサ、及びコンピュータ実行可能な命令の組を含むメモリを含む。これらの命令は、1つ以上のプロセッサにより実行されると、予測コンピューティングシステムに、メモリの計画生成モジュールにおいて、統計的計画に関する、ユーザーが選択した複数の計画パラメータを受信させることができる。メモリは、実行時に予測コンピューティングシステムに、メモリの適合性評価モジュールにおいて予測粒度中央値を判定させると共に、メモリの安定性評価モジュールにおいて、統計的計画に対応する統計的実験で評価された1つ以上の応答変数の各々をフィッティングすることにより1つ以上の予測的2次モデルを識別させる更なる命令を含み得る。メモリは、実行時にメモリの可視化モジュールにおいて1つ以上の予測的2次モデルの各々について可視化された応答曲面をユーザーのディスプレイ装置に表示させる更なる命令を含み得る。
【0008】
別の実施形態において、タンパク質の粒子加工処理における最適な製剤霧化設定を判定するコンピュータ実装された方法は、予測コンピューティングシステムの計画生成モジュールにおいて、統計的計画に関する、ユーザーが選択した複数の計画パラメータを受信することと、予測コンピューティングシステムの適性評価モジュールにおいて、予測粒度中央値を判定することと、統計的計画に対応する統計的実験で評価された1つ以上の応答変数の各々をフィッティングすることにより1つ以上の予測的2次モデルを識別することと、予測コンピューティングシステムの可視化モジュールにおいて、1つ以上の予測的2次モデルの各々について、可視化された応答表面をユーザーのディスプレイ装置に表示させることとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一実施形態による、乾燥粉末吸入製剤用の安定した吸入可能なタンパク質粒子を生成する最適な噴霧乾燥処理条件を選択する予測的モデリング技術を実行する例示的な予測コンピューティング環境を示す。
【
図2A】一実施形態及びシナリオによる、例示的な粒子処理方法を示す。
【
図2B】一実施形態及びシナリオによる、安定性評価を行う例示的な貯蔵粒子分析方法を示す。
【
図3A】一実施形態及びシナリオによる、予測粒径中央値の例示的な応答曲面の視覚的表現を示す。
【
図3B】一実施形態及びシナリオによる、二量体種の相対面積の増加のβ噴射の増加の例示的な応答曲面の視覚的表現を示す。
【
図3C】一実施形態及びシナリオによる、固体含量、霧化率及び送り供給率パラメータを変化させた場合のβ噴射含量の増加の例示的な応答曲面の視覚的表現を示す。
【
図3D】一実施形態及びシナリオによる、βターン含量の増加の例示的な応答曲面の視覚的表現を示す。
【
図3E】一実施形態及びシナリオによる、無秩序含量の減少の例示的な応答曲面の視覚的表現を示す図である。
【
図4】タンパク質の粒子加工処理における最適な製剤霧化設定を判定する例示的な方法を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書に記述する複数の実施形態は、特に粒子加工における最適な噴霧乾燥処理条件を選択する技術に関し、より具体的には、乾燥粉末吸入製剤用の安定した吸入可能なタンパク質(例:モノクローナル抗体(mAb)等の抗体)粒子の生成に最適な噴霧乾燥処理条件を選択するための予測的モデリング技術に関する。本技術は更に、粒子処理及び貯蔵粒子分析の方法及びシステムを含む。
【0011】
気道へのmAbの直接投与により肺内で薬物が長時間滞留して血流への移行が少なく且つ遅くなることが実験的に分かっている。吸入可能なmAbの薬物動態プロファイルの目標特性は、特に抗体に基づく治療法が有望なアプローチであるSARS-CoV-2の場合に、慢性肺疾患(例:喘息、慢性閉塞性肺疾患、肺癌等)及び急性感染症及び炎症反応を引き起こす疾患の両方の治療に有益と考えられている。
【0012】
しかし、上述のように、mAbを含む治療薬を開発すべく長年にわたり研究開発が行われてきたにも拘わらず、吸入可能なmAbを産業規模で効率的に生産するためにはmAbの作用だけでなく、mAbの処理、貯蔵、及び送達に関する劣化の経路及び機構を完全に理解する必要があるため、依然として困難である。
【0013】
本技術は、液体状態での貯蔵と比較して安定化の利点を含む乾燥した固体状態で生物医薬品の製剤を生成する技術を有利に提供する。安定した粉末状のmAbを製造する能力はいくつかの実用的な利点をもたらす。第1に、吸入に基づく送達の場合、本技術は、本技術を用いて生成された製品(例:凍結乾燥ケーキ)を溶液中で再構成することを含み得る。本技術は、送達システム(例:噴霧器)を介して溶液を送達することを含み得る。別の実施形態において、本技術は、タンパク質(例:mAbs等の抗体)の製剤を、吸入可能な粉末として乾燥粉末吸入器(DPI)に装填することを含み得る。DPIを介した抗体(例:mAbs)の送達が特に有利である。噴霧器と比較して、DPIは可搬性に優れ、外部電源を必要とせず、投与時間が短くて済む。従って、本技術は有利に、患者の遵守性を向上させて投与を簡素化する。
【0014】
本技術は、噴霧乾燥技術及び噴霧凍結乾燥技術の両方を組み合わせて用いられてよく、噴霧乾燥及び噴霧凍結乾燥の粒子加工技術を用いて製造された各々の粉末の堅牢性を比較することを含み得る。比較はDPI製品に典型的な貯蔵条件下での負荷試験を行うことを含み得る。当業者には、噴霧乾燥技術及び噴霧凍結乾燥技術を用いて製造された各々の粉末は対照的な物理化学的特性を有しているため、特にmAbs等の不安定なタンパク質の長期的な安定性が異なり得ることが理解されよう。このように、噴霧乾燥はいくつかの用途で好適な技術であり得る。
【0015】
本技術は、粒子加工処理(霧化、凍結及び乾燥)の各態様の不安定性について調べることにより、mAbを含むがこれに限定されない広範な治療用タンパク質の送達に適した処理及び製剤条件を判定することを含む。いくつかの実施形態において、本技術は、本技術を用いて生じた不安定性を、固体状態のmAb医薬品の製造に従来使用されていた技術である凍結乾燥で生じたベースライン不安定性と比較することができる。いくつかの実施形態及びシナリオにおいてモデルタンパク質として抗ストレプトピジンIgG1が用いられ得る。しかし、当業者には、本技術が、吸入可能なワクティン、他の治療用抗体等を含むがこれらに限定されない他のタンパク質治療薬の開発に適用できることが理解されよう。
【0016】
本発明について、以下の例で更に説明する。例は発明を説明するものに過ぎず、発明の範囲を限定することは一切意図していない。
【0017】
例示的な予測コンピューティング環
図1を参照するに、乾燥粉末吸入製剤用の安定した吸入可能なタンパク質粒子を生成すべく最適な噴霧乾燥処理条件を選択する予測的モデリング技術を実行する例示的な予測モデリングコンピューティング環境100を示す。コンピューティング環境100は、例えば仮想化及び/又はクラウドコンピューティング環境において各々実装され得る1つ以上のコンピュータを含み得る予測コンピューティングシステム102を含む。コンピューティング環境100は更に、粒子処理分析システム104、及び予測コンピューティングシステム102と粒子処理分析システム104を通信可能に結合するネットワーク106を含む。例えば、非限定的に、ネットワーク106は例えば3G又は4Gネットワーク、WiFiネットワーク又は他の無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)、衛星通信ネットワーク、及び/又は地上マイクロ波ネットワーク等、1つ以上の適当な無線ネットワークを含み得る。いくつかの実施形態において、ネットワーク106はまた、イーサネット等の1つ以上の有線ネットワークを含む。
【0018】
予測コンピューティングシステム102は、プロセッサ110及びメモリ112を含み得る。単数形で記述されているが、プロセッサ110は、1つ以上の種類の任意の適当な個数のプロセッサ(例:1つ以上の中央処理装置(CPU)、グラフィック処理装置(GPU)、コア等)を含み得る。メモリ112は、1つ以上の種類のメモリ(例:永続メモリ、ソリッドステートメモリ、ランダムアクセスメモリ(RAM)等)を含み得、1つ以上のモジュール120を保存することができる。1つ以上のモジュール114は、例えば、計画生成モジュール122、実験モジュール124、安定性評価モジュール126及び可視化モジュール128を含み得る。
【0019】
計画生成モジュール122は、プロセッサ110により実行されると、要因計画(例:一般的な全要因計画、2レベル全要因計画、プラケット-バーマン計画等)、応答曲面計画(例:ボックス-ベンケン計画、中心複合計画等)及び/又は無作為化計画(例:ラテンハイパーキューブ計画)等が含まれるがこれらに限定されない1つ以上の統計的計画(すなわち、実験計画、又は「DoE」)を生成、修正及び実行できるコンピュータ実行可能命令を含み得る。計画生成モジュール122を含むコンピュータ実行可能命令は、1つ以上の適当なプログラミング言語(例:C、C++、R、Java、Python、JavaScript、LISP等)で記述され得、列挙された統計的計画を実行するアルゴリズム、及び1つ以上の入出力機器を介して実験計画及びその出力/結果をエンドユーザー(例:技術者、科学者、プログラマ、品質保証試験者、統計学者等)が構築、パラメータ化、評価及び/又は(例:可視化により)解釈するのを支援する追加的な命令を含み得る。
【0020】
いくつかの実施形態において、線形モデルを応答曲面成分にフィッティングさせるRで記述されたrsmパッケージ等、適当なプログラミング言語と組み合わせて利用可能な専用パッケージが計画生成モジュール122に含まれていても、又は計画生成モジュール122からアクセス可能であり得る。計画生成モジュール122は、構成された(すなわちパラメータ化された)統計的計画を実行する1つ以上の実行時モジュール、及び/又はパラメータ化された計画、及び/又は1つ以上の統計的計画の結果をメモリ112又は別の場所(例:電子データベース)に保存する更に別のコンピュータ実行可能命令を含み得る。計画生成モジュール122の設定及び動作について以下に更に詳細に記述する。
【0021】
いくつかの実施形態において、コンピュータアプリケーション(図示せず)が、1つ以上のモジュール120に関連付けられた機能の一部のラッパー又はパッケージを提供することができる。特に、アプリケーションは、機器において実行されると機器が1つ以上のモジュール120を使用可能にする命令を含み得る。具体的には、ユーザーが1つ以上の統計的計画を設定した後で、アプリケーションはこれらの計画をパッケージ化してモバイルコンピューティング機器を含む1つ以上の(潜在的に非常に多くの)他の機器へダウンロード可能にし得る。アプリケーションは例えば、モバイルアプリケーションプログラミング命令及び/又はソフトウェア(例:Android Package Kit(APK)ファイル)を含み得る。
【0022】
実験モジュール124は、実行されると、1つ以上の実験機能を実行するコンピュータ実行可能命令を含み得る。実験機能は、完全に自動化された実験ステップ(例:自動化された粒子処理方法)から、ユーザー(例:研究所技師)が実行した手動実験手順からのデータ受信まで含み得る。実験モジュール124は、実験メタデータ(例:実験シリーズ、タンパク質識別子等)等、粒子処理分析システム104から情報を受信/取得するコンピュータ実行可能命令を含み得る。実験モジュール124は、実験変個数の現在の状態等、粒子処理分析システム104内のデータにアクセスする命令、ならびに粒子処理分析システム104を制御する命令を含み得る。例えば、実験モジュール124は、粒子処理分析システム104の専用なハードウェア又はソフトウェア機能(例:X線粉末回折(XRD)分析)を動作させるための命令を含み得る。一般に、実験モジュール124は、
図2Aに描かれた粒子処理方法200のステップの1つ以上、及び/又は
図2Bに描かれた貯蔵粒子分析方法250のステップの1つ以上を実行するコンピュータ実行可能命令を含む。
【0023】
安定性評価モジュール126は、計画生成モジュール122により判定された複数の応答変数に従い、且つ実験モジュール124により提供された実験データを用いて、変化する霧化条件下で標的タンパク質の安定性を評価するコンピュータ実行可能命令を含む。例えば、安定性評価モジュールは、次式に従い粒度中央値を予測する命令を含み得る。
【数1】
ここで、D
dは予測粒径中央値、D
wは液滴径中央値(例:粒子処理分析システム104が噴霧のレーザー回折分析を用いて得られる)、ρ
Dは粒子の密度、ρ
Wは液滴の密度、C
wは液滴の固形分率、C
dは液滴の固形分率である。
【0024】
具体的には、安定性評価モジュール126は上式をいくつかの実施形態で用いて、吸入可能な噴霧乾燥粒子及び/又は吸入可能な噴霧凍結乾燥粒子の製造における、霧化統計モデル(例:ボックス-ベンケンDoEモデル)で評価された霧化条件の適合性を予測することができる。
【0025】
いくつかの実施形態において、安定性評価モジュール126は、未処理タンパク質の応答変数ではなく霧化統計モデルに関するタンパク質の応答変数の増減を考慮することにより、1つ以上の2次モデルを霧化統計モデルの各別の応答変数にフィッティングする命令を含む。安定性評価モジュール126は、増加のみを考慮する場合に識別の要因における全ての減少をゼロと同等とみなす、及び/又は要因における減少のみを考慮する場合に全ての増加をゼロと同等とみなす命令を含み得る。安定性評価モジュール126は、統計モデルの全ての独立変数を考慮すると共に、命令と、ある個数(例:15)の未処理サンプルの平均応答と、所定の実行における未処理及び処理済みサンプルのペア毎の比較との関係を評価する命令を含み得る。安定性評価モジュール126は、モデルから重要でない項を除去する更なる命令を含み得る。
【0026】
安定性評価モジュール126は、F検定及び不適合度検定に基づいて、所与の統計モデルが予測目的に適しているか否かを判定する更なる命令を含み得る。例えば、安定性評価モジュール126は、F検定が有意(すなわち、P<0.1)であること及び/又は不適合度検定が有意ではない(すなわち、P>0.1)ことを要する命令を含み得る。更に、安定性評価モジュール126は、予測目的に適しているとみなされるこれらのモデルについて、望ましさ関数を用いてモデルを最適化してタンパク質の安定性への影響が限定的である吸入可能な粒子を実現すべく最適な霧化設定を判定し得る。
【数2】
ここで、
【数3】
は、応答(すなわち、予測粒度中央値及びタンパク質の安定性変化)を最小化すべく設定される望ましさ関数、f
r(x)は最適化すべき関数(すなわち、予測的2次モデル、sは調整可能なスケーリング係数、A及びBは各々応答の上限及び下限(例:安定性応答変数の未処理サンプルの標準偏差)を表す。いくつかの実施形態において、既存のソフトウェアパッケージ(例:R望ましさ)を用いて望ましさ最適化を実行し得る。
【0027】
安定性評価モジュール126は、例えば、予測粒径、SEC-HPLC HMWピーク面積対平均未処理制御の増加、βストランド含量対未処理ペア毎制御の増加、βターン含量対未処理ペア毎制御の増加、無秩序含量対未処理ペア毎制御の減少に対応する1つ以上の予測的2次方程式を生成する命令を含み得る。1つ以上の予測的2次方程式は可視化モジュール128を介して(例:応答表面内で)可視化され得る。
【0028】
可視化モジュール128は、安定性評価モジュール126の出力の1つ以上の視覚的表現を生成することができる。例えば、可視化モジュール128は、各2次方程式に対応する1つ以上の応答面を生成するコンピュータ実行可能命令を含み得、応答面は、予測粒度及び霧化後のタンパク質構造変化に影響を及ぼす役割を果たす応答変数の指標を含む。可視化について以下で詳細に議論する。可視化モジュール128はまた、1つ以上の視覚的表現を生成して入出力装置(例:モデリングコンピューティングシステム102の入出力装置、ユーザーのモバイル機器等)に表示させる命令を含み得る。
【0029】
予測コンピューティングシステム102はまた、入力/出力(入出力)装置130を含み得る。入出力装置130は、表示装置及び入力装置を含み、これらは各々、例えばコンピュータビデオディスプレイ及びハードウェア周辺機器(例:キーボード、マウス等)に対応し得る。いくつかの実施形態において、表示装置及び入力装置は、タッチスクリーン等の単一のハードウェア機器と組み合わされていても、又は一体化され得る。一般に、入出力装置130は、(i)モジュール120に入力を提供すること、及び(ii)モジュール120の出力を知覚することの一方又は両方により、モジュール120が提供する機能と1人以上のユーザーが対話できるようにする。
【0030】
予測コンピューティングシステム102は、予測コンピューティングシステム102がネットワーク106を介してネットワークトラフィック(例:インターネットプロトコルパケット)を送受信できるようにするネットワークインターフェース(NIC)140を更に含み得る。予測コンピューティングシステム102はまた、モジュール120及び/又は粒子処理分析システム104の動作に関する情報を保存する電子データベースを含み得る。
【0031】
粒子処理分析システム104は、
図2A、2Bを参照しながら本明細書で議論するように粒子を処理する一連の機能を含む。例えば、粒子処理分析システム104は、1つ以上の製剤の構成/調合、構成/調合された1つ以上の製剤の噴霧、噴霧乾燥及び/又は噴霧凍結乾燥の実行、粉末ブレンドの生成、分光分析の実行等を行うハードウェア及びソフトウェア等を含み得る。粒子処理分析システム104は、粒子処理分析に関するデータを収集し、フォーマット化して、ネットワーク106を介して予測コンピューティングシステム102へ送信する粒子データ収集モジュール(図示せず)を含み得る。
【0032】
当業者には、いくつかの実施形態において、コンピューティング環境100のトポロジーを調整、又は更に簡略化できることが理解されよう。例えば、一実施形態において、予測コンピューティングシステム102及び粒子処理分析システム104は、同一の物理的サーバ機に対応し得る。更に別の実施形態において、予測コンピューティングシステム102(例:計画生成モジュール122)が提供する機能の一部又は全部が、モバイルコンピューティング機器(図示せず)内の環境100のユーザーがアクセスできるアプリケーションとして実装され得る。また更なる複数の実施形態において、粒子処理分析システム104のユーザーはモバイルコンピューティング機器を、モジュール124が可能にする実験を行う間の入出力装置として利用することができる。
【0033】
運用に際して、ユーザーは、例えば、以下に説明するような粒子処理方法を利用することにより、製剤の組成及び/又は調合を準備又は選択することができる。ユーザーは、予測コンピューティングシステム102にアクセスして少なくとも1つの統計的実験を設定する。例えば、ユーザーは、変化する霧化条件下でタンパク質(例:IgG1)の安定性を評価すべく3レベルで3因子を有するボックス-ベンケン実験計画(DoE)を設定する。ユーザーは、統計的実験を確立すべく予測コンピューティングシステム102の入力/出力機能にアクセスすることができる。ユーザーは、吸入可能なバイオ医薬品粉末の粒子加工で遭遇する可能性が高い霧化条件を表す計画空間を選択することができる。例えば、ユーザーは以下のような計画を策定する。
【表1】
【0034】
霧化DoEで評価される応答因子には、例えば、オリゴマー種の量の百分率変化、Z平均の変化、2次構造含量の変化、融解吸熱ピークの変化、及び予測粒度中央値が含まれ得る。応答因子の各々は、後述するような貯蔵粒子分析法を用いて測定することができる。
【0035】
ユーザーは、計画生成モジュール122にアクセスして上表に示すように計画パラメータを設定する。いくつかの実施形態において、ユーザーが実験パラメータを設定し終えて次に進む用意ができたならば、ユーザーは予測コンピューティングシステム102のグラフィカルユーザーインターフェース内の表示を選択して安定性評価モジュール126に、2次モデルを生成させて各応答変数に適合させて、いくつかの実施形態では上述のように追加的な望ましさ関数の最適化が行われるか否かを含めて、2次モデルが予測的であるか否かを判定させることができる。いくつかの実施形態において、ユーザーは、別の表示を選択して可視化モジュール128に、予測可能な望ましいモデルに対応する1つ以上の視覚的表現を生成させて、有利には生成されたモデルの有意性をユーザーが理解するのを支援することができる。当業者には、いくつかのケースではモジュール120が予測モデリングを生成する際にユーザー入力が殆ど又は全く必要ないことが理解されよう。換言すれば、統計モデル/計画パラメータを設定して安定性評価を実行する処理は部分的又は完全に自動化することができる。
【0036】
予測モデルが生成されたならば、ユーザーは、モデルに対応する霧化設定、及びこれらのモデルの安定性に及ぼす影響を試験すべく実験を開始することができる。例えば、サイズ排除クロマトグラフィー及び動的光散乱を用いて霧化の前後でのタンパク質の凝集を評価することができる。
【0037】
ユーザーがアドホックに霧化条件を探索するのではなく、統計的計画を適用できることは有利に、より安定し、且つ正確な予測モデルが得られる。網羅的探索を避けることにより、本技術は、調合量が制限されている場合に用いることができる。網羅的探索を更に避けることにより、有利に時間及び重要リソースを節約することができる。また更に、本技術によりユーザーは、異なる霧化条件(例:IgG1-SD及びIgG1-SFD)に応答する異なるタンパク質の挙動に関して直截的比較を実行して結論を導出できる。
【0038】
例示的な粒子処理方法
例示的な粒子処理方法200を示す
図2Aを参照する。非限定的な例として、粒子処理方法200の1つ以上のステップが
図1の予測コンピューティングシステム102の実験モジュール124により実行され得る。
【0039】
粒子処理方法200は、1つ以上の製剤を構成/調合する(ブロック202)ことを含み得る。いくつかの実施形態において、製剤は、免疫グロブリン製剤(例:IgG1)に対応し得る。例えば、いくつかの実施形態において、タンパク質の安定性及びエアロゾル性能に最適な物理化学的特性を有する好適なIgG1製剤は、タンパク質58.8%、スクロース39.2%、ヒスチジン1.74%、及びポリソルベート80 0.24%を含む粉末組成であり得る。
【0040】
複数の組成/調合された製剤が異なる重量/体積濃度に対応し得る。例えば、第1の製剤は、10%w/vで上述のIgG1組成を用いる液体供給製剤に対応し得る。第2の製剤は5.5%w/v、第3の製剤は1%w/vで調合され得る。製剤の調合は、高いタンパク質安定性と小さな予測幾何学的粒度分布(PSD)の最適なバランスを有する固形分レベルを識別することを含み得る。製剤の最終pHは例えば6.3であり得る。上述の例は説明目的で簡略化されており、製剤は任意の適当な重量/体積濃度で調合され、且つ適当なpHを有する任意の適当な組成を含み得ることを理解されたい。
【0041】
粒子処理方法200は、ブロック202で構成/調合された1つ以上の製剤を霧化する(ブロック204)ことを含み得る。例えば、粒子処理方法202は、0.7mmノズル及び1.5mmノズルキャップを有する二流体空気圧ノズルを用いるIgG1の霧化を含み得、負圧の発生が流量を乱すことを防ぐべくクリーニング針がノズルから取り外される。ブロック204での霧化は、霧化ガスとして圧縮窒素を用いることを含み得る。霧化空気流量は、ノズル出口に配置された流量計を用いて設定され得る。供給流量はシリンジポンプを用いて設定され得る。いくつかの実施形態において、霧化は、ノズルの下方に固定距離で設定された50mLガラスバイアル内へ製剤を霧化することを含み得る。
【0042】
粒子処理方法200は、1つ以上の各々の粉末を生成すべく、噴霧乾燥及び/又は噴霧凍結乾燥を実行する(ブロック206)ことを含み得る。例えば、一実施形態において、粒子処理方法200は、100%に設定された吸引率及び130℃に設定された入口温度を有する脱湿器アタッチメントを備えたBUCHI B-290噴霧ドライヤーを用いて噴霧乾燥を実行し得る。
【0043】
一実施形態において、粒子処理方法200は、液体窒素への噴霧凍結を実行して製剤スラリーを生成することができる。凍結後に、粒子処理方法200は、液体窒素製剤スラリーを、緩く覆われていて予め冷却された棚用凍結乾燥機(例:VirTis BenchTop lyophilizer)に装填された1つ以上のガラスバイアルに注ぐことを含み得る。いくつかの実施形態において、粒子処理方法200は、当業者に馴染みのある公開方法に従い凍結乾燥を実行する。
【0044】
いくつかの実施形態において、粒子処理方法200は、凍結乾燥による噴霧乾燥工程及び噴霧凍結乾燥処理の一方又は両方に関する実験制御を生成することを含み得る。例えば、本例を続けるに、いくつかの実施形態において粒子処理方法200が噴霧凍結乾燥処理と同一の設定を用いてIgG1製剤(例:IgG1-Lyo)を凍結乾燥させ得る。2次乾燥処理の後で、粒子処理方法200は、凍結乾燥チャンバーを窒素ガスで充填し、チャンバー内の圧縮空気を用いてバイアルを完全に閉じ(例:ゴム栓を用いて)、アルミニウムキャップでバイアルを密封することを含み得る。
【0045】
いくつかの実施形態において、粒子処理方法200は、結晶化度及びタンパク質安定性に対する長期的な影響を評価すべく粉末ブレンドを生成することを含み得る。引き続き上述の例において、粒子処理方法200は、調合された噴霧乾燥及び噴霧凍結乾燥粉末と、乾燥粉末吸入賦形剤(例:Lactohale100乳糖一水和物)とを用いてIgG1-乳糖粉末ブレンドを生成することを含み得る。粒子処理方法200は、結果的に得られた10%w/wの製剤をラクトース(5~6%以下のIgG1と同等)とブレンドし、幾何学的希釈処理を用いて粉末を組み合わせ、次いで一定時間(例:2時間)にわたり混合(例:Turbulaミキサーを用いて)、続いてIgG1の場合5%未満の変動係数(%CV)が得られるまで(例:すり鉢とすりこぎで)研磨することを含み得る。
【0046】
粒子処理方法200は、1つ以上の各々の粉末を貯蔵する(ブロック208)ことを含み得る。例えば、引き続き上述の例において、粒子処理方法200は、医薬品規制調和国際会議(ICH)の中間及び加速安定条件の規定に従い、IgG1粉末を25℃/60%RH及び40℃/75%RHで30日間貯蔵することを含み得る。例えば、粒子処理方法200は、IgG1-SD、IgG1-SFD-lac、及びIgG1-SD-lacを目標重量20mgでサイズカプセル(例:#3HPMC吸入グレードカプセル)に、及びより低い密度の粉末に基づいて目標重量5mgでIgG1-SFDに充填することを含み得る。カプセル化に続いて、粒子処理方法200は、カプセルを凍結乾燥機に100mTorrで8時間入れてカプセル化処理中に吸着した水を除去し、乾燥剤無しでホイル袋に密閉したHDPEバイアルにカプセルを入れることを含み得る。粒子処理方法200は、IgG1-Lyo粉末を、乾燥剤付きのホイル袋内のゴム栓付きバイアルに保管することを含み得る。本方法は、更なる制御として、IgG1-Lyoと同様の仕方でバルクIg1-SFD及びIgG1-SD粉末を貯蔵することを含み得る。
【0047】
例示的な貯蔵粒子処理方法
図2Bに、一実施形態による貯蔵粒子分析方法250を示す。貯蔵粒子分析方法250は、粉末の物理化学的特徴抽出、構造完全性(例:IgG1構造完全性)の検査、及び/又は適当な時間後(例:30日後)にベースラインメトリクスと比較したエアロゾル性能分析を実行することを含み得る。
非限定な例として、貯蔵粒子分析方法250は、
図1の予測コンピューティングシステム102の安定性評価モジュール126により実行され得る。
【0048】
貯蔵粒子分析方法250は、
図2のブロック208で貯蔵された粉末の構造及び/又は凝集を分析する(ブロック252)ことを含み得る。例えば、粒子分析方法250は、凝集、2次構造、及び3次構造の変化について、未処理及び処理済みmAb(例:IgG1)を調べることができる。貯蔵粒子分析方法250は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC-HPLC)を用いて、当業者には馴染みのある以前に公開された方法を用いて可溶性凝集体の存在を定量化し得る。貯蔵粒子分析方法250は、様々な分子量のタンパク質を用いたSECの曲線を参照することにより試料中に存在するオリゴマーの種類を判定することができる。いくつかの実施形態において、貯蔵粒子分析方法250は、SECの代替/相補的技術として動的光散乱を用い得る。いくつかの実施形態において、Malvern Zetasizerを用いてサンプル毎にある個数(例:3個)のサイズ測定値を用いて、サンプルに最適な設定を自動的に見出すことができる。
【0049】
貯蔵粒子分析法250は、ブロック252で不溶性凝集体の存在を検出することができる。例えば、貯蔵粒子分析法250は波長340nm~360nm及び690nmで、100mMリン酸ナトリウム及び250mM塩化ナトリウム緩衝液に溶解したIgG1粉末の濁度を測定することができ、粉末は所定の濃度(例:0.6mg/mLタンパク質)に溶解される。
【0050】
霧化実験の場合、貯蔵粒子分析方法250はブロック252で円偏光二色性(CD)分光法を用いて液体状態のタンパク質2次構造の変化を評価することができる。
【0051】
貯蔵粒子分析法250は、ブロック252で示差走査熱量測定(DSC)を用いてタンパク質の3次構造の変化を評価することを含み得る。吸熱ピークの開始及び中間点はソフトウェアを用いて決定され得る。タンパク質の3次構造の変化はまた、サンプルの蛍光発光極大値を観察することにより監視され得る。
【0052】
いくつかの実施形態において、貯蔵粒子分析方法250は、乾燥粉末分散機(例:RODOS)に結合されたレーザー回折ユニットを用いて、ベースラインでの、及び貯蔵後の貯蔵粉末(例:IgG1-SD及びIgG1-SFD)の粒度分布(PSD)を評価する(ブロック254)ことを含み得る。貯蔵粒子分析方法250は、複数のバール分散圧力(例:0.2バール及び4バール)でPSD測定を行うことにより、粉末分散性に対する貯蔵の影響を判定し得る。貯蔵粒子分析方法250は、5%~25%の光学濃度に対応する各プルームにおけるタイムスライスを平均化することにより最終的なPSDを計算することができる。
【0053】
貯蔵粒子分析方法250は、例えば、Zeiss Supra 40VP SEM等の走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、ベースラインで粉末(例:IgG1粉末)の形態を検査することを含み得る。貯蔵粒子分析方法250は、両面カーボンテープを用いてアルミニウムスタブにサンプルを載置して、スパッタコーター(例:Cressingtonスパッタコーター208HR)を用いてアルゴン環境下で15nmの白金/パラジウム(Pt/Pd)をスパッタコーティングすることを含み得る。
【0054】
貯蔵粒子分析方法250は、X線粉末回折(XRD)分析を実行して、粉末結晶性の貯蔵誘導された変化を判定する(ブロック256)ことを含み得る。例えば、貯蔵粒子分析方法250は、40kV及び15mAで生成された放射線源を備えたRiguku MiniFlexIIを用いて、速度1°/分及び刻み幅0.025°で5~45℃から連続モードでサンプルを走査することを含み得る。貯蔵粒子分析方法250は、変調DSCを用いてガラス転移温度の変化を測定することを含み得る。
【0055】
貯蔵粒子分析方法250は、カスケードインパクター(例:次世代インパクター)及び高抵抗DPI(例:RS01単回投与DPI)を用いて、ベースラインでの、及び貯蔵後の粉末(例:IgG1)のエアロゾル性能を評価する(ブロック258)ことを含み得る。
【0056】
貯蔵粒子分析方法250は、凍結乾燥、噴霧乾燥、又は噴霧凍結乾燥のうち二つ以上を用いて製造された粉末間の差異を、ベースラインでの、及び統計的に有意であるための中間及び/又は加速安定性条件で一定の貯蔵期間(例:30日)後に判定する(ブロック260)ことを含み得る。例えば、貯蔵粒子分析方法250は、Tukeyポストホック分析による分散分析(ANOVA)及びアルファ0.05の計算を含み得る。
【0057】
一般に、本技術は、粒子処理方法200の1つ以上のステップ及び/又は貯蔵粒子分析方法250の1つ以上のステップを用いて、計画生成モジュール122により最適であると識別された霧化条件/パラメータを分析することを含み得る。例えば、一実施形態において、粒子処理方法200及び貯蔵粒子分析方法250の1つ以上の各ステップを用いてIgG1の構造及び凝集に対する霧化乾燥及び霧化凍結乾燥の影響を評価することができる。
【0058】
例示的な応答曲面の可視化
図3A~3Eに、望ましい霧化設定を記述する予測的2次方程式に対応する例示的な応答曲面の視覚的表現を示す。上述のように、本技術は、最適な設定の判定に推測又は内挿に依存しない。
【0059】
むしろ、
図3A~3Eに示すような表面応答の可視化は、ユーザーが最適な値を発見するのを支援し得る。従って、ユーザーが全く知らないタンパク質を解析する場合においても、
図3A~3Eに示すような可視化により、タンパク質がパラメータの処理にどの程度敏感であるかにより、タンパク質の安定化が容易又は困難であるかを直ちに判定することができる。このように、本技術の可視化機能は有利に、新規な配合が取り得る挙動に関する迅速且つ直感的な手がかりを研究者に提供する。これにより、プロジェクトを遅延又は中断させる可能性が高い製剤の選択をユーザーが回避すること、又はより適切な製剤の選択することを支援するため、エネルギー及びリソースを節約することができる。
【0060】
当業者には、多くの製剤属性が、過大又は過小な粘度、不充分な表面張力、過剰又は過小なタンパク質負荷等、製剤を不適当にし得ることが理解されよう。応答曲面の可視化は、そのような不適当な化合物/製剤への視覚的案内を提供することにより、コストが生じる誤りをユーザーが回避できるようにする。
【0061】
最適な霧化設定を判定する例示的な方法
タンパク質の粒子加工処理において最適な製剤霧化設定を判定する例示的な方法400を示す
図4を参照する。
【0062】
方法400は、予測コンピューティングシステムの計画生成モジュールにおいて、統計的計画に関する、ユーザーが選択した複数の計画パラメータを受信する(ブロック402)ことを含み得る。例えば、予測コンピューティングシステムの計画生成モジュールは、
図1の予測コンピューティングシステム102の計画生成モジュール122に対応し得る。ユーザーによる選択は、例えば、
図1の入出力装置130に表示されるグラフィカルユーザーインターフェースにより可能にされ得る。ユーザーによる選択は、パラメータを含むボックス-ベンケンDoE実験等の統計的計画を策定する1つ以上の選択を含み得る。パラメータ、又は計画空間はいくつかの実施形態において、吸入可能なバイオ医薬品粉末の粒子加工で典型的に用いられる霧化条件を表すべく選択され得る。統計的計画がボックス-ベンケン実験計画である場合、評価された応答変数は、オリゴマー種の量の割合の変化、Z平均の変化、2次構造含量の変化、融解吸熱ピークの変化、又は予測粒度中央値のうち1つ以上を含み得る。
【0063】
方法400は、予測コンピューティングシステムの適性評価モジュールにおいて、予測粒度中央値を判定する(ブロック404)ことを含み得る。予測コンピューティングシステムの適性評価モジュールは、予測コンピューティングシステム102の適性評価モジュール126に対応し得る。予測粒度中央値は、上述のような方程式を用いて判定され得る。予測粒度中央値は、各々の液滴サイズ、重量分率、及び乾燥粒度を分析することにより判定される。具体的には、各霧化設定の結果得られた液滴サイズはレーザー回折を用いて判定され得て、次式に従い予測粒度中央値の計算に用いられ得る。
【数4】
【0064】
方法400は、統計的計画に対応する統計的実験で評価された1つ以上の応答変数の各々をフィッティングすることにより1つ以上の予測的2次モデルを識別する(ブロック406)ことを含み得る。例えば、2次方程式は、予測粒度中央値、SEC-HPLCダイマー相対ピーク面積対平均未処理制御の増加等にフィッティングされ得る。F検定P値及び適合度検定P値の欠如が各々有意及び非有意であるこれらのフィッティングの結果、所定のモデルが予測的であると識別される。いくつかの実施形態において、予測コンピューティングシステム102は、例えば処理済みタンパク質と未処理タンパク質を比較するため、又は貯蔵粒子データを取得すべく、実験モジュール124及び/又は粒子処理分析システム104を介して実験データにアクセスできる。
【0065】
いくつかのケースにおいて、方法400は、ブロック406で予測的とみなされた2次モデルの予測的性質を更に最適化すべく望ましさ関数を適用することを含み得る。上述のように、最適な霧化条件の判定に用いられる方程式は、以下の通りである。
【数5】
【0066】
方法400は、予測コンピューティングシステムの可視化モジュールにおいて、1つ以上の予測的2次モデルの各々について、応答曲面の視覚的表現をユーザーのディスプレイ装置に表示させる(ブロック408)ことを含み得る。例えば、いくつかの予測的2次方程式が
図3A~3Dに示している。予測コンピューティングシステム102の可視化モジュール128はそのような視覚的表現を予測コンピューティングシステム102の入出力装置130、リモートウェブクライアントのディスプレイ装置、ユーザーのモバイル装置等で生成及び/又は表示させ得る。いくつかの実施形態において、可視化モジュール128は生成された視覚的表現を(例:電子メールを介して保存のためデータベース150等に)送信し得る。
【0067】
一般に、方法400が作用するタンパク質は、非限定的に、抗体(例:モノクローナル抗体)を含む任意の適当なタンパク質であり得る。一般に、方法400の粒子加工処理は吸入可能なバイオ医薬品粉末を作成すべく構成され得、(i)噴霧器、及び(ii)乾燥粉末吸入器の一方又は両方を介して吸入可能なバイオ医薬品粉末を送達すべく構成され得る。
【0068】
いくつかの実施形態において、方法400は、
図1の粒子処理分析システム104等の粒子処理分析システムにおいて、霧化設定を制御すべく予測的2次モデルを用いて後続の実験を開始させることを含み得る。例えば、後続の実験は1つ以上の霧化設定を(例:望ましさ関数の出力に基づいて)変化させ得る。方法400は、後続の実験の結果を統計的計画に対応する統計的実験の結果と比較し得る。
【0069】
いくつかの実施形態において、方法400は、粒子処理分析システムから、粒子処理方法により生成された対応する実験データを受信することを含み得、実験データは1つ以上の評価済み応答変数に対応している。例えば、粒子処理分析システム104は、流量計の流量を記述するデータを予測コンピューティングシステムへ自動的に送信することができる。方法400は更に、貯蔵粒子分析方法により生成された対応する実験データを粒子処理分析システムから受信することを含み得、実験データは1つ以上の評価された応答変数に対応している。例えば、タンパク質の2次構造の変化の評価に用いられる円二色性分光法を記述するデータは、
図1の予測コンピューティングシステム102により受信/取得され得、及び/又は
図1の粒子処理分析システム104により送信され得る。
【0070】
追加検討事項
本明細書で引用した特許、特許出願、出版物等を含む全ての参照文献は、引用によりその全文が本明細書に組み込まれる。
【0071】
また、値の範囲を記述する場合、本開示はその範囲内に見出される個々の値を考慮することを理解されたい。例えば、「約20nm~約200nmの細胞凝集体サイズ」は、40nm、60nm、100nm、及びこれらの値の間の任意の値であり得るが、これらに限定されない。本明細書に記述する範囲はいずれも、その範囲の終点を範囲に含めている。しかし、本明細書はまた、同一範囲の低い方の端点及び/又は高い方の端点を除外する場合も考慮する。
【0072】
また、ある用語が本特許において「本明細書で用いる用語‘____’は本明細書では~意味するものと定義する」又は類似の文言を用いて明示的に定義されていない限り、その用語の意味をその平叙又は通常の意味を超えて明示的又は暗黙的に限定する意図はなく、そのような用語は本特許の任意の章でなされた宣言(請求項の文言を除く)に基づいて範囲が限定されると解釈すべきでないことを理解されたい。これは、本明細書の末尾における請求項に記載する任意の用語が、本明細書において単一の意味で整合するように言及される限り読者を困惑させないよう明快さだけを目的に行われており、そのような請求項の用語が、暗黙的に、又は別途、単一の意味に限定することを意図していない。最後に、請求項の要素が「手段」という単語への言及により定義されず、任意の構造に言及することなく関数が定義されない限り、どの請求項も35U.S.C.§112(f)の適用に基づいて解釈されることを意図していない。本明細書に記述するシステム及び方法は、コンピュータ機能の向上を指向しており、従来方式のコンピュータの機能を向上させるものである。
【0073】
本明細書を通じて、用語「集合」は、別途明示的に定義されない限り、1つ以上の要素を有する集合を意味するが、空集合を意味しないものとする。
【0074】
本明細書を通じて、複数のインスタンスが単一のインスタンスとして説明される構成要素、動作、又は構造を実装することができる。1つ以上の方法の個々の動作は、別々の動作として図示及び説明されているが、個々の動作の1つ以上が同時に実行されてもよく、これらの動作を図示する順序で実行する必要は全くない。構成例で別々の要素として示す構造及び機能は組み合わされた構造又は要素として実装され得る。同様に、単一の要素として示す構造及び機能は別々の要素として実装され得る。これら及び他の変形、変更、追加、及び改良は本明細書の主題の範囲に含まれる。
【0075】
また、特定の実施形態は、本明細書において論理又はある個数のルーティン、サブルーティン、アプリケーション、或いは命令を含むものとして記述されている。これらは、ソフトウェア(非一時的な有形の機械可読媒体に実装された符号)又はハードウェアのいずれかを構成し得る。ハードウェアでは、ルーティン等は、特定の動作を実行可能な有形の装置であり、特定の仕方で構成又は配置され得る。実施形態の例において、1つ以上のコンピュータシステム(例:スタンドアロン、クライアント又はサーバコンピュータシステム)或いはコンピュータシステムの1つ以上のモジュール(例:プロセッサ又はプロセッサのグループ)はソフトウェア(例:アプリケーション又はアプリケーション部分)により本明細書に記述する特定の動作を実行すべく動作するモジュールとして構成され得る。
【0076】
各種の実施形態において、モジュールは機械的又は電子的に実装され得る。従って、用語「モジュール」は、特定の仕方で動作すべく、又は本明細書に記述する特定の動作を実行すべく物理的に構成された、恒久的に構成された(例:有線接続された)、又は一時的に構成(例:プログラム)されたエンティティのいずれにせよ、有形エンティティを包含するものと理解されたい。複数のモジュールが一時的に構成された(例:プログラムされた)実施形態を考慮するに、モジュールの各々は、どの時点においても構成又はインスタンス化されている必要はない。例えば、モジュールがソフトウェアを用いて構成された汎用プロセッサを含む場合、汎用プロセッサは、異なる時点で各々の異なるモジュールとして構成され得る。ソフトウェアは相応に、例えばある時点で識別のモジュールを構成し、異なる時点で異なるモジュールを構成すべくプロセッサを含み得る。
【0077】
モジュールは、他のモジュールに情報を提供すること、又は他のモジュールから情報を受信することができる。従って、上述のモジュールは通信可能に結合されているとみなすことができる。このようなモジュールが複数同時に存在する場合、通信はモジュール同士を接続する信号送信(例:適当な回路及びバスを介して)を通じて実現され得る。複数のモジュールが異なる時期に構成又はインスタンス化される複数の実施形態において、このようなモジュール間の通信は、例えば複数のモジュールがアクセス可能なメモリ構造への情報の保存及び取り出しを通じて実現され得る。例えば、あるモジュールが動作を実行し、動作の出力をモジュールが通信可能に結合されているメモリ機器に保存することができる。次いで、更なるモジュールが、後でメモリ機器にアクセスして保存されている出力を取り出して処理することができる。モジュールはまた、入力又は出力装置との通信を開始してリソース(例:情報の集合)を操作することができる。
【0078】
本明細書に記述する例示的な方法の各種の動作は、少なくとも部分的に、関連動作を実行すべく(例えばソフトウェアにより)一時的に設定された又は恒久的に設定された1つ以上のプロセッサにより実行され得る。一時的又は恒久的に構成されているかに依らず、このようなプロセッサは1つ以上の動作又は機能を実行すべく動作するプロセッサ実装されたモジュールを含み得る。本明細書で言及するモジュールは、いくつかの例示的な実施形態において、プロセッサ実装されたモジュールを含み得る。
【0079】
同様に、本明細書に記述する方法又はルーティンは、少なくとも部分的にプロセッサ実装され得る。例えば、ある方法の動作の少なくとも一部が1つ以上のプロセッサ又はプロセッサ実装されたモジュールにより実行され得る。特定の動作の実行は、単一マシン内に存在するだけでなく、複数のマシンに跨って展開された1つ以上のプロセッサに分散され得る。いくつかの例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサは単一の地理的位置(例:家庭環境、オフィス環境内、又はサーバファーム内)に配置され得る一方、他の実施形態ではプロセッサは複数の位置に分散され得る。
【0080】
動作の特定の性能は、1つ以上のプロセッサの間で分散され、単一のマシン内に存在するだけでなく、多数のマシンにわたり展開される場合がある。いくつかの例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサ実装されたモジュールが単一の地理的位置(例:家庭環境、オフィス環境、又はサーバファーム内)に配置され得る。他の例示的な実施形態において、1つ以上のプロセッサ又はプロセッサ実装されたモジュールが複数の地理的位置に分散され得る。
【0081】
別途明記しない限り、本明細書において「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「判定」、「提示」、「表示」等の用語を用いる議論は、情報を受信、保存、送信、又は表示する1つ以上のメモリ(例:揮発メモリ、不揮発メモリ、又はこれらの組み合わせ)、レジスタ、又は他の機械要素内の物理的(電子的、磁気的又は光学的)な量として表されるデータを操作又は変換する機械(例:コンピュータ)の動作又は処理を指し得る。いくつかの実施形態は、表現「結合された」及び「接続された」をこれらの派生語と共に用いて記述され得る。例えば、いくつかの実施形態は、2個以上の要素が物理的又は電気的に直接接触していることを示すべく「結合された」という用語を用いて記述され得る。しかし、用語「結合された」は2個以上の要素が互いに直接接触していないにも拘わらず、互いに共働又は相互作用することを意味する場合がある。これら複数の実施形態は上述の文脈で限定されない。
【0082】
本明細書で用いる「一実施形態」又は「ある実施形態」への言及は、実施形態に関連して記述された特定の要素、特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれ得ることを意味する。本明細書の様々な場所で「一実施形態において」という語句が出現したとしても必ずしも全てが同一実施形態を指している訳ではない。また、本明細書の実施形態の要素及び構成要素を説明すべく、冠詞「a」又は「an」が使用されている。これは単に便宜的であって、記述の一般的な意味を与えるものに過ぎない。本明細書、及び後続する請求項は、異なる意味であることが明らかでない限り、1つ又は少なくとも1つを含むものとして読解されるべきであり、単数扱いであっても複数も含む。
【0083】
本明細書で用いる用語「含む」、「含む」、「包含する」、「包含している」、「有する」、「有している」又はこれらの任意の変形は、非排他的包含を意味するものとする。例えば、要素のリストを含む処理、方法、物品、又は装置は必ずしもこれらの要素だけに限定されず、明示的に列挙されていないか又はそのような処理、方法、物品、又は装置に固有の他の要素を含み得る。更に、逆であると明示的に宣言されていない限り、「又は」は包含的な「又は」を意味し、排他的な「又は」を意味しない。例えば、条件A又はBは、Aが真(又は存在する)、Bが偽(又は存在しない)、Aが偽(又は存在しない)、Bが真(又は存在する)、及びAとBの両方が真(又は存在する)のうち任意の1つにより満たされる。
【0084】
上の詳細な記述は例示的に過ぎないと解釈すべきであり、全ての可能な実施形態を記述することは不可能でないにせよ非現実的であるため、全ての可能な実施形態を記述していない。現行技術又は本出願の出願日の後で開発された技術のいずれかを用いて多くの代替的な実施形態を実現できよう。本開示を読解したならば当業者には本明細書に開示する原理を通じて本開示のシステム及び方法を実行する更に追加的な代替的構造及び機能設計が理解されよう。従って、特定の実施形態及び応用を図示及び記述してきたが、開示する実施形態は本明細書に開示する構造及び構成要素そのものに限定されないことを理解されたい。当業者には明らかであろう様々な修正、変更及び変形が、添付の請求項に定義された主旨及び範囲から逸脱することなく、本明細書に開示する方法及び装置の構成、動作及び詳細に対し施され得る。
【0085】
任意の特定の実施形態の特定の特徴、構造、又は特性は1つ以上の他の実施形態と任意の適当な仕方且つ任意の適当な組み合わせで組み合わせることができ、他の特徴を相応に使用せずに選択された特徴を用いることを含む。また、特定の応用、状況、又は材料を本発明の本質的な範囲及び主旨に適合させるべく多くの変更がなされ得る。本明細書に記述及び図示する本発明の実施形態の他の変形及び変更は本明細書における教示に照らして可能であり、本発明の趣旨及び範囲の一部と考えられるものと理解されたい。
【0086】
本発明の好適な実施形態について記述してきたが、本発明はこれらに限定されるものではなく、本発明から逸脱することなく変更を加え得ることを理解されたい。本発明の範囲は、添付の請求項により定義され、請求項の意味に含まれる全ての機器は、文字通り又は等価的に包含されるものとする。従って、上述の詳細な説明は限定ではなく例示目的であることを意図しており、本発明の趣旨及び範囲は、全ての等価物を含む以下の請求項により定義されるものとすることを理解されたい。
【国際調査報告】