(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】変性シリコンカーボン負極材料、およびその調製方法と使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20231228BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20231228BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/587
H01M4/36 E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538076
(86)(22)【出願日】2021-04-25
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 CN2021089658
(87)【国際公開番号】W WO2022134414
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】202011538533.7
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517366220
【氏名又は名称】横店集団東磁股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】任海亮
(72)【発明者】
【氏名】王国光
(72)【発明者】
【氏名】▲韓▼▲イー▼▲ヤオ▼
(72)【発明者】
【氏名】夏▲陽▼
(72)【発明者】
【氏名】徐君
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA08
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB07
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA03
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA12
5H050GA27
5H050HA01
5H050HA05
5H050HA14
(57)【要約】
本出願は、変性シリコンカーボン負極材料およびその調製方法と使用を開示している。前記調製方法は、(1)シリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、ソルボサーマル反応を行うステップと、(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップとを含み、リチウムアルコキシド溶液は、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)シリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、ソルボサーマル反応を行うステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、
を含む変性シリコンカーボン負極材料の調製方法であって、
前記リチウムアルコキシド溶液は、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなる、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法。
【請求項2】
前記金属リチウムとアルコール溶剤の固液比は、(0.1~2):1であり、前記固液比の単位がmg/mLである、請求項1に記載の調製方法。
【請求項3】
前記アルコール溶剤は、フッ素含有アルコールである、請求項1または2に記載の調製方法。
【請求項4】
前記フッ素含有アルコールは、2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールまたは1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
好ましくは、2,2,2-トリフルオロエタノールおよび/または2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールである、
請求項3に記載の調製方法。
【請求項5】
前記金属リチウムは、リチウム粉末、リチウムブロックまたはリチウムストリップのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項6】
ステップ(1)におけるシリコンカーボン負極材料の粒径D50は、5~30μmであり、
好ましくは、ステップ(1)におけるシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液の固液比は、(0.01~0.5):1であり、前記固液比の単位がg/mLである、
請求項1~5のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項7】
ステップ(1)におけるソルボサーマル反応の温度は、60~260℃であり、
好ましくは、ステップ(1)におけるソルボサーマル反応の時間は、0.5~72hである、
請求項1~6のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項8】
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールまたは1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
好ましくは、ステップ(2)における乾燥は、真空乾燥であり、
好ましくは、前記真空乾燥の温度は、60~100℃であり、
好ましくは、前記真空乾燥の時間は、10~24hである、
請求項1~7のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項9】
(1)(0.01~0.5):1の固液比でシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、60~260℃の条件下でソルボサーマル反応を0.5~72h行うステップであって、前記固液比の単位がg/mLであり、前記シリコンカーボン負極材料の粒径D50が5~30μmであるステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、60~100℃で10~24h真空乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、
を含む調製方法であって、
前記リチウムアルコキシド溶液が金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなり、金属リチウムとアルコール溶剤の固液比が(0.1~2):1であり、前記固液比の単位がmg/mLであり、
前記アルコール溶剤は、2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールまたは1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、リチウムアルコキシド溶液を調製するためのアルコール溶剤と同様である、
請求項1~8のいずれか一項に記載の調製方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の調製方法により得られる変性シリコンカーボン負極材料。
【請求項11】
請求項10に記載の変性シリコンカーボン負極材料の、リチウムイオン電池の製造における使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、電池の技術分野に属し、負極材料に関し、例えば、変性シリコンカーボン負極材料、およびその調製方法と使用に関する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長く、コストが低いなどの利点を有するため、日常生活で広く使用されている。しかしながら、従来のグラファイト負極は、比容量が低いため、新エネルギー分野の開発要件を満たすことができない。したがって、高比容量の負極材料の開発が極めて重要になっている。
【0003】
現在、リチウム電池の負極材料として最も広く使用されているのは、グラファイトであるが、その理論容量は372mAh/gと低く、高エネルギー密度のニーズを満たすことが困難である。シリコン系負極材料は、理論容量が商用グラファイト負極の10倍以上であり、放電電位が低く、埋蔵量が豊かであるなどの利点を有するため、最も潜在力のあるリチウムイオン電池の負極材料の一つとして考えられている。しかし、シリコンはリチウムイオンのインターカレーション過程において深刻な体積膨張効果を伴い、体積膨張によって活物質が粉化し、さらに集電体や導電剤との接触が失われることで、電池のクーロン効率が低下し、サイクル性能が悪くなり、容量が急速に減衰する。
【0004】
シリコンカーボン負極材料(Si/C負極材料)の場合、シリコンの吸蔵および放出過程における体積効果は、初回クーロン効率が低く、初回不可逆容量が大きく、ハイパワー充放電性能およびサイクル寿命に改良の余地がある。それと同時に、リチウムイオンがグラファイト負極から吸蔵および放出される際に、グラファイト単位胞の体積が約10%膨張および収縮するため、グラファイトには、マトリックスとして、初回充放電効率が低く、サイクル安定性が悪いという問題がある。
【0005】
CN110890538Aでは、(1)シリコン負極材料の表面のヒドロキシル基含有量を測定するステップと、(2)有機化学的変性により、シランカップリング剤をシリコン負極材料の表面にグラフトするステップと、を含む、シリコン系リチウムイオン電池の負極材料の初回クーロン効率を向上させる方法が開示されている。前記方法は、シリコン負極の表面のヒドロキシル基含有量を測定して、特定の含有量の不活性基含有シランカップリング剤とシリコン負極の表面のヒドロキシル基を反応させることにより、シリコン負極の表面のヒドロキシル基を置換して、シリコン負極の初回クーロン効率を向上させる。しかし、前記方法は、操作が複雑であり、商業的実行可能性が低い。
【0006】
CN110429265Aでは、リチウムイオン電池用MEG/Si/C複合負極材料およびその調製方法が開示されている。該複合負極材料は、ナノシリコン粉2~20質量%、界面活性剤1~3質量%、カーボン源10~30質量%、及び残量の微膨張グラファイトを含む。化学的酸化インターカレーションおよび低温熱膨張技術により、膨張グラファイトを調製した後、メカニカルミリングおよび高温炭化法により、リチウムイオン電池用膨張グラファイト/シリコン/カーボン複合負極材料を調製する。しかし、前記調製方法は、実施難易度が高く、制御性が悪く、操作が複雑であり、コストが高く、商業的実行可能性が低い。
【0007】
CN109411717Aでは、可逆容量の高いプレリチウム化負極材料およびその調製方法が開示されている。前記負極材料は、グラファイト系カーボン材料、その上に均一に分布した金属酸化物またはシリコン、および炭酸リチウムを含む。その調製方法は、金属酸化物またはシリコン粉体、炭酸リチウム粉体、グラファイト系カーボン粉体および粉砕助剤を撹拌混合しボールミル粉砕を行うものである。前記負極材料は、炭酸リチウムを添加することにより、負極材料の初回充放電過程における不可逆容量を低下させ、初回クーロン効率を向上させると共に、グラファイト系カーボン材料を添加することにより、反応過程における材料の構造安定性および電極材料の導電性を向上させる。しかし、このような方法は、コストが高く、プロセスが複雑であり、ある程度の危険性が存在するため、実際の実施において多くの困難がある。
【0008】
そのため、簡単で、実施しやすく、効率的なシリコンカーボン負極材料の初回クーロン効率を向上させる方法を提供する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本願は、変性シリコンカーボン負極材料およびその調製方法と使用を提供することを目的とする。前記調製方法は、プロセスが簡単であり、単純なソルボサーマル反応により、シリコンカーボン負極材料の表面のプレリチウム化を実現でき、初回充放電過程の不可逆容量を低下させ、初回クーロン効率を92%以上に向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明の目的を達成するために、本願は、以下の技術案を講じた。
【0011】
本願は、
(1)シリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、ソルボサーマル反応を行うステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、を含む、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供する。
【0012】
前記リチウムアルコキシド溶液は、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなる。
【0013】
本願に係るシリコンカーボン負極材料は、当該分野における通常のシリコンカーボン負極材料(Si/C負極材料)であり、当該分野における通常のSi/C負極材料は、いずれも本願に係る調製方法で変性を行うことに適用する。
【0014】
本願は、金属リチウムとアルコール溶剤を混合して、リチウムアルコキシド溶液を調製した後、ソルボサーマル反応により、シリコンカーボン材料とリチウムアルコキシドを反応させてリチウムシリコン化合物を生成し、シリコンカーボン材料のサイクル過程における不可逆的なリチウム損失を補充しながら、アルコール基官能基がシリコンカーボン表面にSEI膜を形成し、シリコンカーボン材料の安定性を向上させ、シリコンカーボン負極材料の表面のプレリチウム化を実現し、シリコンカーボン負極材料をリチウムイオン電池に使用した場合、初回充放電過程の不可逆容量を低下させ、初回クーロン効率を向上させる。
【0015】
好ましくは、前記金属リチウムは、リチウム粉末、リチウムブロックまたはリチウムストリップのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。典型的であるが非限定的な組合せは、リチウム粉末とリチウムブロックの組合せ、リチウムブロックとリチウムストリップの組合せ、リチウム粉末とリチウムストリップの組合せ、またはリチウム粉末、リチウムブロック及びリチウムストリップの組合せを含む。
【0016】
本願に記載のリチウム粉末、リチウムブロックおよびリチウムストリップは、金属リチウムのサイズに基づいて命名されるものである。本願に係る金属リチウムがリチウム粉末、リチウムブロックまたはリチウムストリップから選ばれるいずれか1種または少なくとも2種の組合せであることは、アルコール溶剤に溶解可能であれば、当該分野におけるいかなる形態の金属リチウムでも、リチウムアルコキシド溶液の調製に使用できることを示す。
【0017】
好ましくは、前記アルコール溶剤は、フッ素含有アルコールである。
【0018】
本願は、フッ素含有アルコールと金属リチウムを混合して、シリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液をソルボサーマル反応させる場合、Si/C負極材料の表面にリチウムシリコン化合物およびフッ素含有リチウム塩化合物を生成することができる。シリコンカーボン材料のサイクル過程における不可逆的なリチウム損失を補充しながら、フッ素含有リチウム塩化合物は、シリコンカーボン負極のリチウムイオン導電率をさらに向上させ、シリコンカーボン材料の電気化学的性能を向上させることができる。
【0019】
好ましくは、前記フッ素含有アルコールは、2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールまたは1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。典型的であるが非限定的な組合せは、2-フルオロエタノールと2,2-ジフルオロエタノールの組合せ、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタールと2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オールの組合せ、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オールと2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールの組合せ、ヘキサフルオロイソプロパノールとヘキサフルオロブタノールの組合せ、パーフルオロブタノールとヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオールの組合せ、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールと1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールの組合せ、2,2,2-トリフルオロエタノールと2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールの組合せ、または2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールおよび1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールの組合せを含み、2,2,2-トリフルオロエタノールおよび/または2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールであることが好ましい。
【0020】
好ましくは、前記金属リチウムとアルコール溶剤の固液比は、(0.1~2):1であり、たとえば、0.1:1、0.3:1、0.5:1、0.8:1、1:1、1.2:1、1.5:1、1.8:1または2:1であってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。前記固液比の単位は、mg/mLである。
【0021】
好ましくは、ステップ(1)におけるシリコンカーボン負極材料の粒径D50は、5~30μmであり、たとえば、5μm、10μm、15μm、20μm、25μmまたは30μmであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。
【0022】
好ましくは、ステップ(1)におけるシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液の固液比は、(0.01~0.5):1であり、たとえば、0.01:1、0.05:1、0.1:1、0.15:1、0.2:1、0.25:1、0.3:1、0.35:1、0.4:1、0.45:1または0.5:1であってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。前記固液比の単位は、g/mLである。
【0023】
好ましくは、ステップ(1)におけるソルボサーマル反応の温度は、60~260℃であり、たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃、100℃、110℃、120℃、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃、200℃、210℃、220℃、230℃、240℃、250℃または260℃であってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。
【0024】
好ましくは、ステップ(1)におけるソルボサーマル反応の時間は、0.5~72hであり、たとえば、0.5h、1h、5h、10h、20h、30h、40h、50h、60h、70hまたは72hであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。
【0025】
好ましくは、ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールまたは1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含む。典型的であるが非限定的な組合せは、2-フルオロエタノールと2,2-ジフルオロエタノールの組合せ、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタールと2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オールの組合せ、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オールと2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールの組合せ、ヘキサフルオロイソプロパノールとヘキサフルオロブタノールの組合せ、パーフルオロブタノールとヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオールの組合せ、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールと1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールの組合せ、2,2,2-トリフルオロエタノールと2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールの組合せ、または2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールおよび1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールの組合せを含む。
【0026】
好ましくは、ステップ(2)における乾燥は、真空乾燥である。
【0027】
好ましくは、前記真空乾燥の温度は、60~100℃であり、たとえば、60℃、70℃、80℃、90℃または100℃であってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。
【0028】
好ましくは、前記真空乾燥の時間は、10~24hであり、たとえば、10h、12h、15h、16h、18h、20h、21hまたは24hであってもよいが、挙げられた数値に限定されず、数値範囲内の他の挙げられていない数値も同様に適用する。
【0029】
本願に係る調製方法の好適な技術案として、前記調製方法は、
(1)(0.01~0.5):1の固液比でシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、60~260℃の条件下でソルボサーマル反応を0.5~72h行うステップであって、前記固液比の単位がg/mLであり、前記シリコンカーボン負極材料の粒径D50が5~30μmであるステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、60~100℃で10~24h真空乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、を含み、
前記リチウムアルコキシド溶液が、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなり、金属リチウムとアルコール溶剤の固液比が(0.1~2):1であり、前記固液比の単位がmg/mLであり、前記アルコール溶剤が、2-フルオロエタノール、2,2-ジフルオロエタノール、トリフルオロアセトアルデヒドヘミエチルアセタール、2,2,2-トリフルオロエタノール、3,3,3-トリフルオロプロパン-1-オール、2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノール、ヘキサフルオロイソプロパノール、ヘキサフルオロブタノール、パーフルオロブタノール、ヘキサフルオロ-2,3-ビス(トリフルオロメチル)-2,3-ブタンジオール、1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールまたは1H,1H,7H-ドデカフルオロ-1-ヘプタノールのうちのいずれか1種または少なくとも2種の組合せを含み、
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤が、リチウムアルコキシド溶液を調製するためのアルコール溶剤と同様である。
【0030】
第2の態様として、本願は、第1の態様に係る調製方法により得られる変性シリコンカーボン負極材料を提供する。
【0031】
第3の態様として、本願は、第2の態様に係る変性シリコンカーボン負極材料の、リチウムイオン電池の製造における使用を提供する。
【発明の効果】
【0032】
従来技術に対して、本願は、以下の有益な効果を有する。
【0033】
本願は、金属リチウムとアルコール系溶剤を反応させることにより、リチウムアルコキシド溶液を生成した後、リチウムアルコキシド溶液とシリコンカーボン粉末を反応させることにより、プレリチウム化を行う。本願でシリコンカーボン粉末を変性処理することにより、その初回クーロン効率を効果的に向上させることができる。また、当該方法は、簡単で、安全で、コストが低いなどの優勢を有し、産業化生産に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、実施例1における変性シリコンカーボン負極材料と比較例1における未変性カーボンシリコン負極材料の充放電曲線図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、具体的な実施形態によって本願の技術案をさらに説明する。当業者であれば、前記実施例は、本願を理解することに役に立つためのものに過ぎず、本願を具体的に限定するためのものと見なすべきではないことを理解すべきである。
【0036】
実施例1
【0037】
本実施例は、
(1)0.2:1の固液比でシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、180℃の条件下でソルボサーマル反応を12h行うステップであって、前記固液比の単位がg/mLであるステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、60℃で24h真空乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、を含む調製方法であって、
前記リチウムアルコキシド溶液が、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなり、金属リチウムとアルコール溶剤の固液比が1:1であり、前記固液比の単位がmg/mLであり、前記アルコール溶剤が2,2,2-トリフルオロエタノールである、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供する。
【0038】
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、リチウムアルコキシド溶液を調製するためのアルコール溶剤と同様である。
【0039】
本実施例におけるシリコンカーボン負極材料は、粒径D50が5μmであり、壱金新エネルギー科学技術有限公司製のHE-600から選ばれる。
【0040】
実施例2
【0041】
本実施例は、
(1)0.01:1の固液比でシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、120℃の条件下でソルボサーマル反応を48h行うステップであって、前記固液比の単位がg/mLであるステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、70℃で20h真空乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、を含む調製方法であって、
前記リチウムアルコキシド溶液が、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなり、金属リチウムとアルコール溶剤の固液比が0.1:1であり、前記固液比の単位がmg/mLであり、前記アルコール溶剤が2,2,2-トリフルオロエタノールである、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供する。
【0042】
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、リチウムアルコキシド溶液を調製するためのアルコール溶剤と同様である。
【0043】
本実施例におけるシリコンカーボン負極材料は、粒径D50が15μmであり、璞泰来製のSi/C composites-600 mAh/gから選ばれる。
【0044】
実施例3
【0045】
本実施例は、
(1)0.5:1の固液比でシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、260℃の条件下でソルボサーマル反応を0.5h行うステップであって、前記固液比の単位がg/mLであるステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、100℃で10h真空乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、を含む調製方法であって、
前記リチウムアルコキシド溶液が、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなり、金属リチウムとアルコール溶剤の固液比が2:1であり、前記固液比の単位がmg/mLであり、前記アルコール溶剤が2,2,2-トリフルオロエタノールである、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供する。
【0046】
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、リチウムアルコキシド溶液を調製するためのアルコール溶剤と同様である。
【0047】
本実施例におけるシリコンカーボン負極材料は、粒径D50が10μmであり、壱金新エネルギー科学技術有限公司製のHE-470から選ばれる。
実施例4
【0048】
本実施例は、
(1)0.2:1の固液比でシリコンカーボン負極材料とリチウムアルコキシド溶液を混合して、60℃の条件下でソルボサーマル反応を72h行うステップであって、前記固液比の単位がg/mLであるステップと、
(2)ステップ(1)におけるソルボサーマル反応により得られた固体粉末をアルコール洗浄し、80℃で16h真空乾燥した後、変性シリコンカーボン負極材料を得るステップと、を含む調製方法であって、
前記リチウムアルコキシド溶液が、金属リチウムとアルコール溶剤を混合してなり、金属リチウムとアルコール溶剤の固液比が0.5:1であり、前記固液比の単位がmg/mLであり、前記アルコール溶剤が2,2,2-トリフルオロエタノールである、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供する。
【0049】
ステップ(2)におけるアルコール洗浄用のアルコール溶剤は、リチウムアルコキシド溶液を調製するためのアルコール溶剤と同様である。
【0050】
本実施例におけるシリコンカーボン負極材料は、粒径D50が30μmであり、璞泰来製のSi/C composites-450 mAh/gから選ばれる。
【0051】
実施例5
【0052】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤が2,2,3,3,3-ペンタフルオロ-1-プロパノールである以外、実施例1と同様である。
【0053】
実施例6
【0054】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤が2-フルオロエタノールである以外、実施例1と同様である。
【0055】
実施例7
【0056】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤が2,2-ジフルオロエタノールである以外、実施例1と同様である。
【0057】
実施例8
【0058】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がヘキサフルオロイソプロパノールである以外、実施例1と同様である。
【0059】
実施例9
【0060】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がヘキサフルオロブタノールである以外、実施例1と同様である。
【0061】
実施例10
【0062】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤が1H,1H,2H,2H-パーフルオロ-1-オクタノールである以外、実施例1と同様である。
【0063】
実施例11
【0064】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がメタノールである以外、実施例1と同様である。
【0065】
実施例12
【0066】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がエタノールである以外、実施例1と同様である。
【0067】
実施例13
【0068】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がn-プロパノールである以外、実施例1と同様である。
【0069】
実施例14
【0070】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がn-ブタノールである以外、実施例1と同様である。
【0071】
実施例15
【0072】
本実施例は、変性シリコンカーボン負極材料の調製方法を提供し、用いられたアルコール溶剤がn-ヘプタノールである以外、実施例1と同様である。
【0073】
比較例1
【0074】
本比較例に係るカーボンシリコン負極材料は、壱金新エネルギー科学技術有限公司製のHE-600であり、粒径D50が5μmである。
【0075】
実施例1~15で得た変性シリコンカーボン負極材料、および比較例1における未変性カーボンシリコン負極材料に対して電気化学的テストを行い、テスト方法は以下の通りである。得られた変性シリコンカーボン負極材料、アセチレンブラック、SBRおよびCMCを、質量比85:5:5:5でスラリーとして混合し、溶剤が水であり、そして、スラリーを銅箔に塗布し作用電極として用い、金属リチウムを対極として用い、電解液が1mol/LのLiPF6/EC+DECであり、セパレータの型番がCelgard 2300であり、半電池として構成する。テスト時の電流密度が50mA/gであり、電圧区間が0.05~2Vである。
【0076】
実施例1で得た変性シリコンカーボン負極材料、および比較例1における未変性カーボンシリコン負極材料の充放電曲線図は、
図1に示すとおりである。
図1から分かるように、実施例1で得た変性シリコンカーボン負極材料で組み立てられた半電池の1サイクル目のクーロン効率は92.5%と高いが、元のシリコンカーボン負極材料で組み立てられた半電池の1サイクル目のクーロン効率はわずか72.1%である。これから分かるように、本願に係る方法は、シリコンカーボン負極材料の1サイクル目のクーロン効率を効果的に向上させることができる。
【0077】
実施例1~15および比較例1で得た1サイクル目のクーロン効率の結果を表1に示す。
【表1】
【0078】
要するに、本願は、金属リチウムとアルコール系溶剤を反応させることにより、リチウムアルコキシド溶液を生成した後、リチウムアルコキシド溶液とシリコンカーボン粉末を反応させることにより、プレリチウム化を行う。本願でシリコンカーボン粉末を変性処理することにより、その初回クーロン効率を効果的に向上させることができる。また、当該方法は、簡単で、安全で、コストが低いなどの優勢を有し、産業化生産に有利である。
【0079】
以上の内容は、本願の具体的な実施形態に過ぎないが、本願の保護範囲はこれに限定されるものではないことを出願人より声明する。
【国際調査報告】