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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】静脈内バクロフェンの投与方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/197 20060101AFI20231228BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 21/02 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A61K31/197
A61K9/08
A61P21/02
A61P29/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538081
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-07
(86)【国際出願番号】 US2021064055
(87)【国際公開番号】W WO2022140181
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/130,503
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517249989
【氏名又は名称】アレイシス、 エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】ALLAYSIS, LLC
【住所又は居所原語表記】2200 North Commerce Parkway, Suite 200, Weston, Florida 33326 United States of America
(71)【出願人】
【識別番号】305023366
【氏名又は名称】リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ ミネソタ
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ギルベルト ディアツ
(72)【発明者】
【氏名】プラサド タタ
(72)【発明者】
【氏名】ダン サイモン アルハデフ
(72)【発明者】
【氏名】アドルフォ エル. ゴメツ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン シュロギー
(72)【発明者】
【氏名】ロバート エル. クリエル
(72)【発明者】
【氏名】リンダ クラッチ
(72)【発明者】
【氏名】ジェームス シー. クロイド
(72)【発明者】
【氏名】リサ コールズ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー シュミット
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076BB17
4C076CC01
4C076CC09
4C076FF68
4C206AA01
4C206AA10
4C206FA45
4C206MA01
4C206MA04
4C206MA37
4C206MA86
4C206NA10
4C206ZA08
4C206ZA21
4C206ZA23
4C206ZA94
(57)【要約】
バクロフェンの経口薬物動態プロファイルを模倣する投与レジメンにおいて、治療に有効な量のバクロフェンを静脈内(IV)投与する方法が開示される。開示された方法は、経口投与と比較して、全身曝露(AUC)及び最大血漿中濃度(Cmax)の両方に対する生物学的同等性基準を満たす。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象にバクロフェンを投与する方法であって、
約180~約240分の期間にわたり、治療に有効な量の経口バクロフェンの約75%~約85%を含む、静脈内バクロフェン輸液を投与することを含む、前記方法。
【請求項2】
前記静脈内バクロフェン輸液が、約2mg/mLの濃度で、バクロフェンの滅菌溶液をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記静脈内バクロフェン輸液が、前記治療に有効な量の経口バクロフェンの約80%を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記治療に有効な量の経口バクロフェンが約20mgである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記期間が約180分である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記投与された静脈内バクロフェン輸液が、AUCにより規定される全身曝露に基づくと、前記治療に有効な量の経口バクロフェンと生物学的に同等である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記投与された静脈内バクロフェン輸液が、最大血漿中濃度(Cmax)に基づくと、前記治療に有効な量の経口バクロフェンと生物学的に同等である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記静脈内バクロフェン輸液を投与することが、約180分の期間にわたり、約16mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記静脈内バクロフェン輸液を投与することが、約180分の期間にわたり、約15mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記静脈内バクロフェン輸液を投与することが、約240分の期間にわたり、約16mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記対象が経口バクロフェンを摂取できないときに、前記静脈内バクロフェン輸液を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
経口投与が再開可能となるまでに、前記静脈内バクロフェン輸液を一時的に投与することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記対象がバクロフェンの髄腔内投与を受けることができないときに、前記静脈内バクロフェン輸液を投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
髄腔内投与が再開可能となるまでに、前記静脈内バクロフェン輸液を一時的に投与することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記静脈内バクロフェン輸液を長期的に投与することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
対象にバクロフェンを投与する方法であって、
約180分の期間にわたり、約80%の治療に有効な量の経口バクロフェンを含む、静脈内バクロフェン輸液を投与することを含む、前記方法。
【請求項17】
約80%の前記治療に有効な量の経口バクロフェンを含む、前記静脈内バクロフェン輸液を投与することが、約16mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記静脈内バクロフェン輸液が、約2mg/mLの濃度で、バクロフェンの滅菌溶液をさらに含む、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記投与された静脈内バクロフェン輸液が、AUCにより規定される全身曝露に基づくと、前記治療に有効な量の経口バクロフェンと生物学的に同等である、請求項16に記載の方法。
【請求項20】
前記投与された静脈内バクロフェン輸液が、最大血漿中濃度(Cmax)に基づくと、前記治療に有効な量の経口バクロフェンと生物学的に同等である、請求項16に記載の方法。
【請求項21】
バクロフェンを含む静脈内流体を対象に投与する方法であって、前記方法が、
前記静脈内流体を前記対象に、特定の期間投与することで、規定された血漿バクロフェン送達プロファイルを達成することを含み、
前記規定された血漿バクロフェン送達プロファイルが、約250~約350ng/mLの最大血漿中バクロフェン濃度を含む、前記方法。
【請求項22】
前記特定の期間が約180~約240分である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記静脈内流体が、約2mg/mLの濃度でバクロフェンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記静脈内流体が、約75%~約85%の治療に有効な量の経口バクロフェンを含む、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記静脈内流体が、約15~約16mgのバクロフェンを含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記静脈内流体を投与することが、約180分の期間にわたり、約16mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
前記静脈内流体を投与することが、約180分の期間にわたり、約15mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
前記静脈内流体を投与することが、約240分の期間にわたり、約16mgのバクロフェンを投与することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記投与された静脈内流体が、AUCにより規定される全身曝露に基づくと、前記治療に有効な量の経口バクロフェンと生物学的に同等である、請求21に記載の方法。
【請求項30】
前記投与された静脈内流体が、最大血漿中バクロフェン濃度(Cmax)に基づくと、前記治療に有効な量の経口バクロフェンと生物学的に同等である、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、2020年12月24日に出願した米国特許仮出願第63/130,503号に基づく優先権を主張するものである。上記に言及された本出願の内容全体は、参照により本明細書に援用されている。
【背景技術】
【0002】
バクロフェン(USP)は、骨格筋弛緩薬及び抗痙縮剤である。バクロフェンは、抑制性神経伝達物質であるγ-アミノ酪酸(GABA)の構造類似体であり、脊髄レベルで、GABAアゴニストとして作用する。バクロフェンは、痙縮の徴候及び症状の緩和に対して、特に、屈筋の痙縮及び付随する疼痛、クローヌス、ならびに、筋固縮の緩和に対して必要とされる。バクロフェン治療は、可逆的痙縮の後に残る機能の回復に役立つことができる。静脈内(IV)バクロフェンは、長期の経口または髄腔内バクロフェン療法が一時的に中断されている入院患者において、経口または髄腔内経路が再度確立されるまで、バクロフェンの血漿濃度を維持するために、短期使用に用いることができる。2020年4月に、FDAは、バクロフェン離脱症候群の予防を目的とした、IVバクロフェンの稀用薬指定を認めた。
【0003】
バクロフェンは白色~オフホワイトの、無臭結晶性粉末である。バクロフェンは僅かに水溶性(2090mg/L)であり、メタノールにはごく僅かに可溶性であり、クロロホルムには不溶性である。バクロフェンの分子式は、C1012ClNOである。バクロフェンの分子量は213.66Daである。バクロフェンの化学名は、4-アミノ-3-[4-クロロフェニル]=ブタン酸(Baclofen Oral Tablets Package Insert, 2015)である。バクロフェンの化学構造は、以下である:
【化1】
【0004】
バクロフェンを使用して、脳性小児麻痺、多発性硬化症、外傷性脳損傷、脊髄損傷、脳卒中、及び神経変性疾患を含む、多数の医学的状態に関連する痙縮を治療する。バクロフェンは、経口錠剤(10mgまたは20mg錠剤)、及び、髄腔内製剤(0.05mg/mL、0.5mg/mL、または2.0mg/mL)として、現在市販されている。くも膜下腔内製剤は、埋め込まれたプログラム可能なポンプと組み合わせて使用され、薬物を一定に注入します。バクロフェンは通常、その治療効果を維持するために、長期的に用いられる。
【0005】
バクロフェンは、いくつかの神経疾患に悩む患者に存在する痙縮を治療するための、治療装置の大切な一部である。個別化された用量範囲で長期的に投与されると、バクロフェンは十分経口吸収され、腎臓で大部分が変化せずに排泄される。しかし、経口または髄腔内治療法の中断が必要となるか、または、意図されないかのいずれかであるときが存在する。経口バクロフェン治療の中断は、介入性の病気、手術、服薬不履行、または、胃腸吸収の悪化が原因で、経口投与経路を維持することができないことにより、引き起こされ得る。後者の例としては、胃腸炎、腸閉塞、または、持続性麻酔後の術後腸閉塞が挙げられる。髄腔内投与に用いられるプログラマブルポンプ及び/またはカテーテルを取り外す、再充填する、または交換するときに、髄腔内バクロフェンの中断が生じ得る。痙縮症状の悪化、または、より深刻な場合、一般的ではないが重篤な離脱症候群をもたらし得るため、バクロフェン治療法の中断は望ましくない。離脱症候群は、以下を含み得る、重篤な症候群である:
- 筋緊張及び痙縮のリバウンドの増加
- 幻覚
- セロトニン症候群
- 癲癇重積症
- 悪性高熱症
- 血漿クレアチンキナーゼの増加、アミノトランスフェラーゼの増加、肝不全及び腎不全、ならびに、場合によっては、汎発性の血管内凝固
- 最終的には、離脱が、横紋筋融解症、多臓器不全、または死をももたらしうる。
【0006】
バクロフェンは、脊髄でGABA受容体に結合することにより、その抗痙縮効果を発揮する。バクロフェン曝露が長くなると、ラットにおいては、GABA結合密度が低下する可能性がある。GABA受容体感度の低下は、バクロフェンが離脱したときに観察される、中枢神経系のCNS興奮性における急速なリバウンドを説明することができる。まとめると、既知のバクロフェンの薬理を考慮すると、バクロフェン濃度の維持、または迅速な交換は、治療における不可欠な目標である。
【0007】
経口及び髄腔内バクロフェンが、痙縮の治療に対して認可されているものの、これらの経路が利用可能でないときに治療法を維持するための、認可された代替剤形は存在しない。バクロフェン治療法の中断を経験する患者は、筋緊張の悪化、他の補助投薬の副作用、経口バクロフェンが再開される際により多くの交換用量が必要となること、及び、管理が困難なバクロフェン離脱症候群の可能性を含む、種々の臨床上の管理問題に直面する。バクロフェン治療法の中断が生じる、または、予想される場合、静脈内バクロフェンを用いるブリッジング治療法の利用可能性が、これらの管理上の問題のリスクを低下させる。バクロフェン中断の結果を治療するという課題は、バクロフェン中断が生じる、または、これが可能性として存在するときに、予防手段を利用する必要性を示している。静脈内バクロフェンは臨床医に、入院患者で速やかに利用可能な、短期間で治療応答を維持する、または達成する剤形をもたらす。
【0008】
現在、バクロフェン離脱症候群の予防または治療に対して、FDAに認可されている薬物療法は存在しない。しかし、突然の中断と関連する、バクロフェン離脱症状に関する警告は、経口及び髄腔内製品のラベルに含まれている。障がいを持つ子どもに対する、ある専門病院での術前準備としては、バクロフェン離脱を避けるために、術前に経口バクロフェンをテーパリング及び中断することが挙げられる。これにより、患者の筋緊張が、他の交換によって不適切に管理されるようになり、多くの場合、短時間で、加えて、周期的な体験の間に加えられるストレス及び不快感により、投薬の鎮静化が増える。経口バクロフェン治療法が中断される場合、経口投与が再び可能となってからできるだけ早く、経口バクロフェンで置き換えることは通常、通常の用量よりも多くを必要とする。離脱症状が続くのであれば、ベンゾジアゼピンも同様に投与される。バクロフェン離脱症候群の診断は多くの場合、患者の複雑な臨床症状が原因で遅れる。
【0009】
バクロフェン離脱症候群に対する、現在の標準ケアは、重篤な続発症を予防せず、また、数少ない症例においては、死をもたらしている。したがって、静脈内バクロフェンなどの予防法を用いて、相当の罹患率及びコストと関連している離脱症状を避けることが理想的である。
【0010】
バクロフェン治療の中断が予想される場合、バクロフェンの静脈内投与などのブリッジング治療法の利用可能性が、バクロフェン離脱のリスクを低下させる可能性がある。バクロフェン離脱の治療の困難さは、バクロフェン離脱の可能性がある場合に、予防手段を用いる必要性を示している。バクロフェンIVは臨床医に、病院で速やかに利用可能であり、患者に投与して、短期間で治療応答を維持することができる剤形をもたらす。
【0011】
経口バクロフェンの定常状態血漿濃度の維持が必要な患者において静脈内バクロフェンが推奨される、主な病院の状況としては、以下が挙げられる:
- 術中の誤嚥リスクが原因となる、全身麻酔が必要な手術の前の断食(経口投薬を含む)、加えて、術後悪心及び嘔吐の可能性;
- 脳性小児麻痺及び他の物理的障がいを持つ患者が、複数の手術、整形術、及び、他の手術を受け、経口バクロフェンを摂取する患者のうちの著しい割合を示す可能背が高い;
- 外傷、脳卒中、または、患者が経口で投薬を受けることができなくなる他の医学的状態が原因で、無意識となっている患者;
- 気管内チューブが原因で、術後に嚥下が困難である;ならびに
- 計画的なバクロフェンポンプ挿入手術を用いる経口バクロフェン治療法の中断。
【0012】
さらに、髄腔内投与に用いられるポンプ及び/またはカテーテルを取り外す、再充填する、または交換するときに、髄腔内バクロフェン治療法の中断が生じ得る。
【0013】
このような状況において、バクロフェン治療法の中断は、痙縮症状のリバウンド、及び、より重篤な離脱症候群に進行する可能性をもたらし得る。患者が経口または髄腔内維持治療法を有するものに匹敵する血漿濃度を得るための用量で投与される、バクロフェンのIV製剤の利用可能性は、経口または髄腔内製剤の治療効果を維持し、経口または髄腔内経路が再度確立可能となるまで、リバウンドまたは離脱の可能性を低下させることが予想される。
【0014】
現在、バクロフェンの経口または髄腔内投与が再開可能となるまで、経口または髄腔内治療法におけるギャップを埋める、確立された方法は存在しない。
【0015】
未治療のままとなる場合、米国において、そのような離脱を予防または治療することが認可された、または、ライセンスが付与された薬剤治療法が存在しないため、経口または髄腔内バクロフェン治療法の中断は、バクロフェン離脱症候群をもたらす可能性がある。したがって、この問題に対応する、安全かつ効果的な治療モダリティの利用可能性が、満たされていない臨床上重要なニーズを呈している。
【発明の概要】
【0016】
バクロフェンの経口薬物動態プロファイルを模倣する投与レジメンにおいて、治療に有効な量のバクロフェンを静脈内(IV)投与する方法が開示される。開示された方法は、経口投与と比較して、全身曝露(AUC)及び最大血漿中濃度(Cmax)の両方に対する生物学的同等性基準を満たす。
【0017】
一実施形態では、対象にバクロフェンを投与する方法は、約180~約240分の期間にわたり、約75%~約85%の治療に有効な量の経口バクロフェンを含む、静脈内バクロフェン輸液を投与することを含む。
【0018】
別の実施形態では、対象にバクロフェンを投与する方法は、約180分の期間にわたり、治療に有効な量の経口バクロフェンの約80%を含む、静脈内バクロフェン輸液を投与することを含む。
【0019】
本開示のこれら及び他の態様及び利点は、後の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から明らかとなろう。本明細書に記載される様々な実施形態の特性うちの1つ、いくつか、または全てを組み合わせて、本発明の他の実施形態を形成し得ることが理解される。
【0020】
本明細書に記載のものと類似または同等の方法及び材料が、本開示の実施または試験において使用され得るものの、適切な方法及び材料を以下に記載する。材料、方法、及び例は、例示に過ぎず、限定的であることは意図されない。本開示の他の特徴は、以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明白である。
【0021】
以下の図は、本発明の特定の態様を示すために含まれ、排他的な実施形態としてみなされてはならない。開示される主題は、本開示の利益を有する当業者に想到されるような、形態及び機能において相当な修正、変更、組み合わせ、及び均等物が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】静脈内(5mg)(円)及び経口(10mg)(三角形)投与の後の、バクロフェンの血漿濃度-時間プロファイルを示す。
図2】経口(10mg)及び静脈内(5mg)投与の後の、バクロフェンの平均薬物動態パラメーターを示す表である。
図3】用量漸増研究における、経口及び静脈内投与の後の、バクロフェンの平均薬物動態パラメーターを示す表である。
図4】コホート3を用いる、用量漸増研究集団における、薬物動態モデルの推定値を示す表である。
図5】コホート2及び3を用いる、用量漸増研究集団における、薬物動態モデルの推定値を示す表である。
図6】観察される(DV)血漿バクロフェン濃度と、予想される血漿バクロフェン濃度を示す(コホート3のみ、Ka=0.8hr-1)(Ka=速度定数)。
図7】観察される(DV)血漿バクロフェン濃度と、予想される血漿バクロフェン濃度を示す(コホート3のみ、Ka=0.6hr-1)。
図8】観察される(DV)血漿バクロフェン濃度と、予想される血漿バクロフェン濃度を示す(コホート2及び3、Ka=0.8hr-1)。
図9】観察される(DV)血漿バクロフェン濃度と、予想される血漿バクロフェン濃度を示す(コホート2及び3、Ka=0.6hr-1)。
図10】コホート3のみを用いて開発した集団モデルを用いた、様々な注入長さに対する生物学的同等性結果をまとめた表である。
図11】コホート2及び3を用いて開発した集団モデルを用いた、様々な注入長さに対する生物学的同等性結果をまとめた表である。
図12】コホート3を用いる、個別の薬物動態モデルの推定を示す表である。
図13】個別の薬物動態モデルの適合を示す。
図14】15mgのIVバクロフェンの、平均濃度-時間プロファイルを示す。
図15】16mgのIVバクロフェンの、平均濃度-時間プロファイルを示す。
図16】ノンコンパートメント分析を用いる、平均薬物動態パラメーターの推定を示す表である。
図17】コホート3の各対象を個別にモデリングした(用量=15mg)ときの、様々な注入長さに対して予想される生物学的同等性を示す表である。
図18】コホート3の各対象を個別にモデリングした(用量=16mg)ときの、様々な注入長さに対して予想される生物学的同等性を示す表である。
図19】20mgのPO、180分にわたり注入した15mgのIV、及び、180~240分にわたり注入した16mgのIVの投与後の、シミュレーションした血漿バクロフェン濃度を示す。
図20】80%のバイオアベイラビリティを推定する、様々な注入レジメン(N=30)に対する、バクロフェン生物学的同等性のシミュレーションを示す表である。
図21】180分にわたる16mgのバクロフェンIV注入(2mg/mL)(治療B)、及び、20mgのバクロフェン錠剤の単回経口投与(治療D)の後の、平均血漿バクロフェン濃度-時間プロファイルを示す。
図22】治療(A、B、C、及びD)による、バクロフェンの平均血漿薬物動態パラメーターをまとめた表である。
図23】バクロフェンの自然対数変換全身曝露の、統計分析を示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
用語及び定義
別途説明されない限り、本明細書で使用するすべての技術的及び科学的用語は、本開示が属する技術分野の当業者に普通に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書での全ての参考文献は、参照により組み込まれている。以下の用語及び略語の説明は、本開示をより良く記載し、本開示を実践する当業者を手引きするために提供される。
【0024】
より正確な説明を期するために、本明細書に示される量的表現の一部は、「約」という用語で修飾されていない。用語「約」を明示的に使用しているか否かに関わらず、本明細書中に示す全ての量は実際の所与の値を指すことを意味し、また、そのような所与の値に対する実験及び/または測定条件による近似値を含む、当業者によって合理的に推論されるそのような所与の値への近似も指すことを意味することを理解されたい。
【0025】
本明細書で使用する場合、「対象」という用語は、治療、観察または試験の対象となっている動物、好ましくは哺乳動物、最も好ましくはヒトを指す。
【0026】
「治療に有効な量」という用語は、本明細書で使用する場合、研究者、獣医、医師、または他の臨床医により求められている、組織系、動物またはヒトにおける、治療される疾患または障害の症状のうちの少なくとも1つの緩和、及び/または、治療される疾患または障害の症状のうちの少なくとも1つの頻度及び/または重篤度の低下を含む、生物学的または医学的応答を誘発する活性化合物または医薬品の量を意味する。
【0027】
臨床薬理学
本開示は、所与のバクロフェン用量の経口薬物動態プロファイルを模倣する投与レジメンにおいて、治療に有効な量のバクロフェンを静脈内投与する様々な方法を提供する。開示された方法は、経口投与と比較して、全身曝露(AUC)及び最大血漿中濃度(Cmax)の両方に対する生物学的同等性基準を満たす。開示した方法は、滅菌バクロフェンIV注射(例えば、2mg/mL)薬剤製品の使用を目的としている。
【0028】
2つのパイロットスタディを行い、バクロフェンの薬物動態、及び、静脈内投与後の安全性を特性決定し、IV及び経口バクロフェンの絶対的なバイオアベイラビリティを調査した。これらの研究は、A Pilot Study Assessing Pharmacokinetics and Tolerability of Oral and Intravenous Baclofen in Healthy Adult Volunteers,Suresh K.Agarwal,Robert L.Kriel,James C.Cloyd,Lisa D.Coles,Lisa A.Scherkenbach,Michael H.Tobin,and Linda E.Krach,Journal of Child Neurology 2014,30(1) 37-41;及び、A Randomized Dose Escalation Study of Intravenous Baclofen in Healthy Volunteers: Clinical Tolerance and Pharmacokinetics,Schmitz NS,Krach LE,Coles LD,Mishra U,Agarwal SK,Cloyd JC,Kriel RL.PM&R,2017,Volume 9(8),743-750に記載されており、これら両方は、完全に本明細書で記載されているかのように、参照により本明細書に組み込まれている。10~60分の、IVバクロフェンのボーラス注入を含む、これら2つの前向き薬物動態研究の結果に基づくと、推定される経口バクロフェンの平均バイオアベイラビリティは、およそ74~85%、または、およそ80%であった。これらの初期研究は、経口及びIVバクロフェン後のAUC(AUC=濃度-時間曲線下面積)の類似性を示したものの、ボーラスIVバクロフェン注入後のCmax(Cmax=最大血漿中濃度)は、経口投与後のCmaxを超過したことを示した。曝露(AUC)及びピーク濃度(Cmax)の両方に対して生物学的同等性基準を満たすためには、注入時間を一層長くする必要があると結論づけた。そのために、モデリング及びシミュレーション研究を行い、AUC及びCmaxの両方に対して、20mgの経口用量と生物学的に同等なIVバクロフェン投与レジメンを予想した。これらのシミュレーションは、ピボット生物学的同等性研究の基礎を形成し、ここでは、バクロフェンIVの3つの異なる投与レジメン(それぞれ、3時間にわたり15mgを注入;3時間にわたり16mgを注入;及び、4時間にわたり16mgを注入)を、単回投与の、20mgの経口錠剤と比較した。これらのIVレジメンのそれぞれは、20mgの経口投与と生物学的に同等であったが、16mg/3時間の用量が最も、生物学的同等性基準を満たした。
【0029】
上述した2つのパイロットスタディの結果を、以下に簡単に記載する:
【0030】
研究1:健常な成人ボランティにおける、経口及び静脈内バクロフェンの両方向クロスオーバー研究
【0031】
本研究の目的は、健常な成人ボランティアにおける低用量に従った経口及びIV投与後のバクロフェン薬物動態を特性決定し、IVバクロフェン製剤の安全性プロファイルを測定することであった。
【0032】
本研究は、断食条件下での、正常で健常な成人ヒト対象における、無作為化非盲検・バランスの取れた2回治療・単回投与クロスオーバーデザインであった。
【0033】
まず、3名の成人ボランティアが、別個の研究日に、3mgのIV、及び、5mgの経口バクロフェン用量(単回)を受けた。研究の薬物投与の初日に、1名の対象にバクロフェンを静脈内投与し、2名の対象にバクロフェンを経口投与した。研究の薬物投与の2日目に、バクロフェンを経口で受けた対象はIV投与を受け、IV投与を受けた個体は経口投与を受けた。臨床耐性を調査し、さらなる対象を研究に入れる前に、最初の3名の対象から、バクロフェンの血漿濃度を測定した。9名のさらなる成人が、別個の日に、5mgのIV及び10mgの経口バクロフェン用量(単回)を受けた。無作為化は、対象全員が、別個の研究日にIV及び経口バクロフェンを受けるが、必ずしも同じ順序でなくてもよいように、1:1の比で生じさせた。合計で12名の対象が、研究の臨床段階を終えた。12名の対象の血漿試料を分析した。しかし、5mgのIV、及び、10mgの経口状態を受けた9名の対象のデータは、薬物動態分析、及び、対象内での変動性の計算のために考慮した。血漿濃度の半分超が、定量限界(BLQ)を下回ることから、3mgのIV/5mgの経口バクロフェンを受けた3名の対象を、薬物動態分析から除外した。したがって、AUCの有意性ある推定は、これらの対象に対しては不可能であった。
【0034】
平均血漿濃度プロファイル、及び、平均薬物動態パラメーターをそれぞれ、図1及び図2に提示する。
【0035】
上で提示した結果(小型試料サイズ、n=9)に基づくと、経口バクロフェンの、推定される平均絶対バイオアベイラビリティは74%であり、このことは、10mg用量のおよそ25%が、吸収されないか、または、薬剤が体循環に到達するまでに初回通過代謝を受けるかのいずれかであることを示している。15分にわたり注入したIV用量では、同様のAUCが得られた。しかし、Cmaxは高く、Tmax(最大血漿中濃度までの時間)は、経口投与よりも短かった。経口投与に取って代わる場合、少ない静脈内バクロフェン用量が必要であることもまた示唆している。曝露(曲線下面積)の、対象間での変動は、静脈内群及び経口群の両方で同様であった(変動係数:18%~24%)。3及び5mgのIVバクロフェンの両方の忍容性が良好であった。集団の平均絶対バイオアベイラビリティ、及び、有害事象プロファイルを正確に測定するためには、試料サイズがより大きい追加の研究が必要であることを、結果は示した。
【0036】
研究2:健常な成人ボランティアにおける、IVバクロフェンの用量漸増研究
【0037】
First in Human研究の完了後に、無作為化クロスオーバー経口/IV用量設計を用い、治験中のバクロフェンIV注射を組み込んで、36名の健常なボランティアにおける、IV及び経口バクロフェンの用量漸増研究を行った。研究の目的は、1)経口及び静脈内バクロフェンの、臨床上関連のある用量の薬物動態を特性決定し、2)経口及び静脈内バクロフェンの安全性プロファイルを測定し、ならびに、3)10及び60分(15mg用量のみ)のバクロフェン注入に対する、生物学的同等性パラメーター(AUC及びCmax)を測定することであった。
【0038】
研究の全般的な設計には、12名の対象での3つのコホートが含まれた。まず、3名の対象を、最低の投与レジメンを受けさせるために無作為化した。3名の対象は、7.5mgのIV注入を受け、続いて、2日間以上のウォッシュアウト期間を受け、この後に、10mgの経口投与が続いた。これら3名の対象がIV用量を認容したことを示したら、残り9名の対象を、投与のために無作為化した。12名の対象がコホート1を終え、7.5mgのIV、及び、10mgの経口投与を受けた。IVバクロフェンの用量は、パイロットスタディで観察されるバイオアベイラビリティの75%を基準にした。コホート2では、12名の異なる対象が、11.5mgのIV、及び、15mgの経口バクロフェンを受けた。コホート3では、別の12名の対象が、20mgの経口、及び、15mgのIVバクロフェンを受けた。対象全員が、合併症を伴わずに15mgのIV投与を完了したら、追加の投与期間をこのコホートに追加し、この期間では、15mgのバクロフェンを60分にわたり、12名の対象に注入した。対象を、全投与の後に24時間、臨床研究施設で観察し、眼振、運動失調、及び鎮静を(修正Sanford Sleepiness Scaleを用いて)調査した。血液試料を、0~24時間で収集した。検証済みの液体クロマトグラフィー-質量分析アッセイを使用して、血漿バクロフェン濃度を測定した。
【0039】
薬物動態データ分析パッケージのPhoenix(Centara)を用いて、薬物動態分析を行った。観察された最大濃度(Cmax)、観察された最大濃度までの時間(Tmax)、濃度-時間曲線下面積(AUC)、クリアランス(CL)、及び、分布容積(V)を含む薬物動態パラメーターを、ノンコンパートメント分析を用いて分析した。静脈内投与後の用量正規化AUCにより、経口投与後の用量正規化AUCを除することで、絶対経口バイオアベイラビリティを計算した。生物学的同等性の探索調査のために、試験用量として60分注入を、及び、参照として経口15mg用量を用いて、幾何平均AUC(0-t)、AUC(0-∞)の90%信頼区間、及びCmax経口/IV比率を測定した。
【0040】
全コホートに対して推定される平均バイオアベイラビリティは、89%であった。しかし、コホート1に対しては、定量限界を上回るバクロフェン濃度限界があったため、コホート2及び3に対するバイオアベイラビリティの推定値(それぞれ、85.8、81.2)が、実際の値をより反映しているものと考える。これらの群に対する平均バイオアベイラビリティを考慮すると、経口用量よりも15~20%少ないIV用量だと、等価な合計の全身曝露が得られる可能性が高い。平均薬物動態パラメーターを、図3にまとめる。
【0041】
合計の全身曝露、AUC0-t、及びAUC0-infを、60分注入における15mgではなく、用量レベル全てにおける10分注入において用いると、バクロフェンIV及び経口バクロフェンの生物学的同等性が示された。しかし、経口バクロフェンに対する、10及び60分のIV注入の平均Cmax比率は、247~281%、及び、135~165%の信頼区間(CI)それぞれにおいて、263%及び149%であり、生物学的に同等ではなかった。
【0042】
安全性の結果:経口及びIVバクロフェン投与の両方の後、穏やかな自然治癒性の副作用が見られた。バクロフェンの既知の薬理学的効果と関連する有害事象には、眼振、運動失調、及び鎮静が含まれた。鎮静に関しては、投与経路または用量に関係なく、対象は全員、10mgの経口投与をした3時間半後に、目覚めるまで20秒かかった1名の個体を除き、目覚めていた。
【0043】
対象は全員、補助なしで歩くことができた。1名の対象は、20mgのバクロフェンを経口投与した後、穏やかな一過性運動失調を経験した。各投与群の12名の対象のうち、2、6、及び6名の対象がそれぞれ、7.5mg、11.5mg、及び15mgの10分注入後に、無症候性眼振を経験した。15mgの60分注入後に、2名の対象が穏やかな一過性運動失調を経験し、2名の対象が眼振を起こした。臨床上関連のあるバクロフェン用量の単回静脈内注射後の副作用は一般的に穏やかであり、経口用量に対するIVの比率は、およそ80~85%であることを、健常なボランティアにおける2名の前向き研究での証拠は示す。
【0044】
結論:健常なボランティアにおける、2つの前向き薬物動態研究の結果に基づき、臨床上関連のあるバクロフェン用量の単回静脈内注射後の副作用は一般的に穏やかであり、経口用量に対するIVの比率は、およそ80~85%であり、曝露は生物学的同等性基準(AUC)を満たすが、ピーク濃度基準(Cmax)は満たさないという結論を出すことができる。
【0045】
曝露及びピーク濃度の両方の生物学的同等性基準を満たすためには、注入時間を長くする必要がある。そのために、モデリング及びシミュレーション研究を行い、適切な注入速度を選択し、経口薬物動態(PK)プロファイルを最も模倣する投与レジメンを同定した。
【0046】
本開示のより良好な理解を促進するために、好ましい、または代表的な実施形態の以下の実施例が与えられる。以下の実施例は、本発明の範囲を制限するか、または定義するために読まれるべきではない。特許請求の範囲内の多数の実施形態が当業者には明らかであろう。したがって、以下の非限定例は、本開示の特定の実施形態を説明するのみである。
【0047】
実施例1-モデリング及びシミュレーション研究
集団モデリングアプローチ
モデル構築
上述の研究2の、コホート2及び3由来の血漿濃度を使用して、IV及びPO投与経路の同時に説明する、2コンパートメントモデルを構築した。コホート3からのデータ、ならびに、コホート2及び3を組み合わせたデータを用いて、集団PKモデルを開発した(図4及び5を参照されたい)。両方の研究集団からのPKパラメーター推定値は同様であったことは、注目に値する。0.6及び0.8hr-1の、固定吸収速度定数(Ka)を有する2つのPKモデルを用いた。これらは、集団薬物動態モデル及び文献からの推定値から測定した。これらのモデルに対する、目視による予想チェックを図6~9に示す。
【0048】
シミュレーション
max及びAUCの注入時間の影響を調査するために、バクロフェン用量範囲研究から測定した集団PKパラメーター推定値を用いて、シミュレーションを行った。上述のモデルを用い、120、150、180、及び210分にわたり注入した、20mgの経口用量、ならびに、15及び16mgのIV用量を用いて、30名の対象のシミュレーション(n=10)を完了した。次に、最大濃度のノンコンパートメント分析を用いて、シミュレーションデータを分析し、最大濃度の生物学的同等性及び曲線下面積を調査した。図10及び11は、それぞれ、16及び15mgの用量を用いたときに、注入速度が生物学的同等性を満たしたシミュレーションが、10回のうち何回あったかをまとめている。
【0049】
個別のモデリングアプローチ
モデル構築
代替アプローチとして、集団モデリングアプローチに記載のIV投与を受けたコホート3の各対象からの血漿濃度を用いて、個別のPKモデルを開発した。PKパラメーターの推定値(図12)は、集団モデルの推定値(図4及び5)と同様であったことは、注目に値する。適合度プロットを図13に示す。
【0050】
シミュレーション
上述のモデルを用い、15及び16mg用量を用いて、各対象に対する様々な注入期間をシミュレーションした。次に、最大濃度のノンコンパートメント分析を用いて、シミュレーションしたIVデータを分析し、IV投与に対する曝露パラメーターを、経口投与に対して計算した曝露パラメーターと比較して、曲線下面積を調査した。平均濃度-時間プロファイルを、図14及び15に示す。生物学的同等性試験の結果を図16にまとめる。
【0051】
上記の集団及び個別モデリングアプローチ、シミュレーションに基づき、及び、これらの結果を仮想クロスオーバー研究に適合し(図17及び18を参照されたい)、ピボット生物学的同等性研究を設計し、15mg及び16mgの用量強度におけるバクロフェンIV注射、ならびに、180または240分にわたる注入からなるレジメンを調査した。
【0052】
ピボット生物学的同等性研究の論拠
バクロフェン注入の用量及び期間を調整する大切な目的は、単回投与のバクロフェンIV注入と、20mgの経口バクロフェン錠剤とでの、生物学的同等性全身曝露(Cmax及びAUC)を達成することであった。まず、IVバクロフェンのヒト及び用量漸増研究の、2つの初期薬物動態分析を考慮すると、45名の対象において、単回投与後の経口バクロフェンの平均バイオアベイラビリティはおよそ86%であり、患者間の変動は広範であった(%Fは、42~132%の範囲)。臨床上関連のある用量(11.5及び15mg)を選択したときは、平均の経口バイオアベイラビリティは、それぞれ80及び85%であった。
【0053】
本研究の設計に関しては、標準的な経口用量(20mg)の、75及び80%(15及び16mg)のIV用量を選択し、この結論は、ヒト研究における、以前の最初の結果と一致した。加えて、注入時間をさらに長くすることで、IV用量と経口用量とでの、Cmaxの所望の類似性が達成されることを、10及び60分注入の結果は示唆した(以下を参照されたい)。
【0054】
結論:静脈内バクロフェンの投与後の、Cmax及びAUCでの、注入期間の効果を評価するためのモデリング及びシミュレーション
バクロフェンのバイオアベイラビリティは患者間で変動し、用量に左右され得ることを、用量-範囲研究の結果は明らかにした。バイオアベイラビリティは、IV投与後の変動性の原因として除外されるため、バクロフェンのIV投与後の全身曝露は、経口投与ほど変動しない。IVバクロフェン補充療法を受ける患者で用量を調整することにより、痙縮リスクの増加をもたらす可能性のある低血漿濃度、または、可能性のあるCNS関連副作用をもたらす高濃度のいずれかから守られる。
【0055】
maxにおける注入時間の影響を調査するために、20mgの経口投与、ならびに、10及び60分にわたり注入する15mgのIV投与の後に観察される、バクロフェンの血漿濃度を用いて、集団薬物動態モデルを開発した。肝臓、肺、及び脳などの、非常に灌流された組織を示す、非常に速い組織分布段階、及び、より長くなった排泄段階とを示す、2コンパートメントモデルにより、バクロフェンの血漿濃度が最も良く説明された。平均分布t1/2は速い(約0.3時間)ことを、モデリング結果は明らかにした。このことは、バクロフェンの血漿濃度の増加は、注入が停止すると短時間となることを示している。集団の平均終端t1/2(β)はおよそ4.2時間であり、これは、ノンコンパートメント分析に基づく値に相当する。84%の平均バイオアベイラビリティ値が推定された。PKモデルを用い、20mgの経口用量、180分にわたり注入した15mgのIV用量、ならびに、180分及び240分にわたり投与した16mgのIV用量注入に対するバクロフェン濃度をシミュレーションした。これにより、バクロフェンCmaxにおける注入時間の影響を測定することができた。シミュレーション結果を図19にまとめている。
【0056】
シミュレーションデータにより、仮想生物学的同等性試験を実施したら、図20に示すように、180及び240分の注入速度が、同様のCmax及びAUCをもたらすことが明らかとなった。これらの結果は、本臨床治験で試験した、180及び240分の選択注入時間に対する裏付けをもたらした。
【0057】
実施例2-臨床生物学的同等性研究
全体の研究設計及び計画
本研究は、断食条件下での、健常な成人ボランティアの商用バクロフェン錠剤(参照製品)と比較しての、バクロフェン注射(試験配合物)の、2部構成・単回投与生物学的同等性研究として設計した。本研究の第1部は、断食条件下での、健常な成人におけるバクロフェン錠剤及びバクロフェン錠剤の、単回投与非盲検・4回治療無作為化クロスオーバー生物学的同等性研究であった。必要な場合、本研究の第2部は、第1部のバクロフェン注射とバクロフェン錠剤の、最も有望な注入間での、単回投与両方向クロス-オーバーとなる予定であった。バクロフェン注入(複数可)とバクロフェン錠剤との間での、生物学的同等性の研究目的は本研究の第1部で示されたため、計画された第2部は行われなかった。
【0058】
対象を無作為化して、無作為化クロスオーバー方式で、以下の4つの治療それぞれを受けるようにした:
-180分にわたり静脈内投与される、15mgのバクロフェン注射
-180分にわたり静脈内投与される、16mgのバクロフェン注射
-240分にわたり静脈内投与される、16mgのバクロフェン注射
-経口投与される20mgのバクロフェン錠剤
【0059】
主要目的
生物学的同等性により明らかとなるとおり、20mgのバクロフェン錠剤の単回投与に匹敵する全身曝露をもたらす、健常な対象におけるバクロフェン注射の用量(注入の量及び速度)を同定すること。
【0060】
副次的目的
健常な成人に異なる速度で注入される、20mgのバクロフェン錠剤と、15mg及び16mgのバクロフェン注射との、単回投与薬物動態及び絶対バイオアベイラビリティを測定すること。
【0061】
輸液として与えられるバクロフェン注射、及び、経口投与されるバクロフェン錠剤の、安全性及び忍容性を評価すること。
【0062】
対照群の選択を含む、研究設計の議論
本研究設計は、単回投与の非盲検・4回治療無作為化クロスオーバーであった。この設計を用いることで、各対象は、自身の対照として機能することができ、別個の対照群が必要とならなくなった。研究設計は、バイオアベイラビリティ及び生物学的同等性研究に対して一般的なものである。
【0063】
各治療の投与は、少なくとも3日のウォッシュアウト期間により間隔を空けた。各用量は、10時間の一晩の断食後に投与された。
【0064】
各研究期間の間、研究薬物の投与前、及び、薬物投与の48時間後までの選択した時間において、6mLの血液試料を入手した。対象がIV注入を受けた研究期間においては、PKサンプリングの時間を、注入の開始に対して計測した。認証されたアキラルバイオ分析法を用いて、血漿薬物動態試料をバクロフェンに対して分析した。適切な薬物動態パラメーターを、ノンコンパートメント法を用いて各製剤に対して計算した。
【0065】
スクリーニング時、及び、研究の終了時/早期終了時に、臨床実験室試験のために血液及び尿を採取した。スクリーニング時、及びチェックイン時に、薬物、アルコール、及びコチニン試験のために尿を採取した。女性対象の尿を、スクリーニング、チェックイン、及び、研究の終了/早期終了時に、妊娠試験のために採取した。
【0066】
32名の対象に、第1部が計画された。研究から抜けた2名の対象を置き換えた。
【0067】
治療
対象に、無作為化して順序立てた方式で、単回用量の各治療を投与した。バクロフェン注射の各用量はIV注入により与えた。バクロフェン錠剤の用量は、240mL(8液量オンス)室温の水で経口投与された。
【0068】
治験製品の同一性
試験製品: バクロフェン注射 2mg/mL
【0069】
治療A、B、及びC:
-治療Aの用量=180分にわたり静脈内投与される、15mgのバクロフェン注射
-治療Bの用量=180分にわたり静脈内投与される、16mgのバクロフェン注射
-治療Cの用量=240分にわたり静脈内投与される、16mgのバクロフェン注射
【0070】
対照製品:治療D:
-バクロフェン錠剤20mg、用量=1×20mgの錠剤
【0071】
本研究で得られた安全性及び薬物動態測定値は全て標準的であり、バイオアベイラビリティ及び生物学的同等性研究で広範に用いられている。
【0072】
血液試料を入手し、各治療後の、バクロフェンの薬物動態プロファイル及び曝露を測定した。
【0073】
バクロフェンの濃度-時間データを、Phoenix(商標) WinNonlin(登録商標)(バージョン6.3, Certara L.P.)に記載のノンコンパートメント法を用いて分析した。薬物動態分析の間の、最初の定量可能濃度の時間までの、定量限界を下回る(BLQ)濃度を、0として扱った。埋め込まれた(2つの定量化可能な濃度間の値)、及び/または、末端BLQ濃度は、「欠落」として扱った。投与時間に対するを、薬物動態分析で用いた。
【0074】
以下の薬物動態パラメーターを決定した:
【表1】
【0075】
血液(血漿)薬物動態の特徴を、治験製品の各投与後に調査した。
【0076】
各バクロフェン注射の治療期間中に、試料を0時間(投与前)、ならびに、注入開始の0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、6.0、7、8、10、12、18、24、30、36、及び48時間後に採取した。
【0077】
バクロフェン錠剤の投与治療期間中に、試料を0時間(投与前)、ならびに、経口投与の0.25、0.5、0.75、1.0、1.5、2.0 3.0、3.5、4.0、5.0、6.0、7、8、10、12、18、24、30、36、及び48時間後に採取した。
【0078】
無作為化して研究に入れたバックアップ対象から入手した投与前血液試料は、投与前採取ウィンドウを超過していた場合がある。
【0079】
投与後12時間まで(この時間を含む)に、予定された時間の±2分以内に採取された血液試料、及び、投与の12時間後に、予定された時間の±2時間以内に採取された血液試料は、偏差とみなさなかった。
【0080】
対象の配置
研究には、合計34名の対象が参加した;これらの対象のうち32名が、研究期間を全て終えた。2名の患者は、以下に記載のとおり、早期に研究を中断した。対象X(19歳の男性)は、第1期間に治療D(バクロフェン錠剤20mg)を受けた後、2日目に同意を撤回したため、PK分析には含まれなかった。対象Y(29歳の女性)は、第1期間に治療B(180分にわたり注入される、バクロフェンIV 16mg)を受けた後3日目に同意を撤回したため、PK分析には含まれなかった。
【0081】
結果
本研究には、臨床有効度調査は行われなかった。有効性の代理物として用いるために薬物動態分析のまとめを行い、これを以下に詳述する。
【0082】
提示される投与レジメンに対する、平均濃度-時間プロファイルを、図21に示す。
【0083】
バクロフェンに対する平均薬物動態パラメーターを図22にまとめる。
【0084】
対数変換した曝露パラメーターのCmax、AUClast、及びAUCinfに対するANOVAの結果、ならびに、生物学的同等性に対して90%の信頼区間をもたらす統計分析を図23に示す。
【0085】
IV注入と比較して、中央Τmaxは、経口錠剤(1.0h)よりも、およそ2.0~3.0時間早く生じた。中央Τmax値は、IV注入を通して同様であり、3.0~4.0時間の範囲であった。平均T1/2は、IV注入及び経口錠剤と同様でり、5.5h~5.8hの範囲であった。
【0086】
平均総全身クリアランス(CLΤ)、及び分布容積(Vz)値は、IV注入を通して同様であった。平均CLΤは、8.8L/h~8.9L/hの範囲であり、平均Vzは69.8L~71.4Lの範囲であった。
【0087】
3つ全てのバクロフェンIV注入(180分にわたり静脈内投与された、15mgのバクロフェン;180分にわたり静脈内投与された、16mgのバクロフェン;及び、240分にわたり静脈内投与された、16mgのバクロフェン)は、20mgのバクロフェン経口錠剤と生物学的に同等であった。したがって、研究は、第1部の後に終えた。
【0088】
さらに、180分にわたり静脈内投与された16mgのバクロフェンは、Cmaxに関しては97.3%(93.7-101.0%)、AUClastに関しては92.1%(89.7-94.6%)、及び、AUCinfに関しては92.2%(89.8-94.6%)の、治療D(20mgの経口錠剤)に対する幾何平均比率(90%信頼区間)を有しており、各臨界パラメーターに対しては、一貫して90%を超える比率を示したため、180分にわたり投与された16mgのバクロフェンを、登録用の投与レジメンとして選択した。
【0089】
示された生物学的同等性に基づき、180分にわたり投与された経口レジメンに対する換算係数0.8が、バクロフェンの経口投与に対する生物学的に同等な置換をもたらす。
【0090】
いくつかの実施形態を、ある程度具体的に上述してきたが、当業者は、本開示の精神から逸脱することなく、開示された実施形態に多数の変更を加えることができる。上記明細書に含まれる、または、添付図面に示される主題は全て、単に例示として解釈されるべきであり、限定を行うものと解釈されるべきではないことが意図される。本教示から逸脱することなく、詳細または構造の変更を加えることができる。前述の明細書、及び、後述の特許請求の範囲は、このような修正及び変形を全て包含することが意図される。
【0091】
参照によって、全体または部分的に本願に組み込まれることが言及される、あらゆる特許、公報、または他の開示資料は、既存の定義、声明、または本開示に記載される他の開示資料と矛盾しない範囲内でのみ本願に組み込まれる。したがって、また必要な範囲まで、本明細書に明確に記載されている開示は、参照により本明細書に組み込まれたいかなる矛盾する資料に対して優先される。参照により本明細書に組み入れられると言及されているが、本明細書に記載されている既存の定義、声明、または他の開示の資料と矛盾する任意の資料、またはその一部は、その組み込まれた資料と既存の開示の資料との間に矛盾が生じない範囲までのみ組み込まれる。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
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図11
図12
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図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
【国際調査報告】