IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オーリガ ポリマーズ,インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-501278押出ブロー成形容器のための改良されたポリエステル組成物
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】押出ブロー成形容器のための改良されたポリエステル組成物
(51)【国際特許分類】
   C08G 63/02 20060101AFI20231228BHJP
   B29C 49/04 20060101ALI20231228BHJP
   B65D 65/00 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08G63/02
B29C49/04
B65D65/00 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538663
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-08-18
(86)【国際出願番号】 US2021064058
(87)【国際公開番号】W WO2022140183
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,305
(32)【優先日】2020-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/288,894
(32)【優先日】2021-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517280834
【氏名又は名称】オーリガ ポリマーズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100205659
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 拓也
(74)【代理人】
【識別番号】100185269
【弁理士】
【氏名又は名称】小菅 一弘
(72)【発明者】
【氏名】スミス ジェイソン アラン
(72)【発明者】
【氏名】キング ジェニファー シャノン
【テーマコード(参考)】
3E086
4F208
4J029
【Fターム(参考)】
3E086AA23
3E086AD01
3E086AD03
3E086AD04
3E086BA15
3E086CA01
3E086CA11
3E086CA35
3E086CA40
3E086DA08
4F208AA24
4F208AA50
4F208AG07
4F208AH55
4F208LA01
4F208LA09
4F208LB01
4F208LG04
4F208LG22
4F208LJ09
4F208LW02
4F208LW22
4F208LW45
4J029AA03
4J029AB01
4J029AC02
4J029AD01
4J029AD06
4J029AE01
4J029BA03
4J029BA04
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029FC08
4J029HA01
4J029HB01
4J029JF471
4J029KE03
(57)【要約】
本発明は、分岐脂肪族グリコールおよび分岐コモノマーを含む押出ブロー成形ボトルのためのポリエステル樹脂に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形容器のためのコポリエステルであって、
(a)ポリエステル組成物中のジカルボン酸残基の総モル%に基づいて95~100モル%のジカルボン酸残基を含む芳香族ジカルボン酸成分と、
(b)グリコール成分であって、
(i)ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて90~98モル%のエチレングリコール残基、および
(ii)以下の式Iによって表される2~10モル%の脂肪族分岐グリコール:
【化1】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
を含む、グリコール成分と、
(c)分岐コモノマーと
を含む、コポリエステル。
【請求項2】
芳香族ジカルボン酸残基が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項3】
前記グリコール成分が、ジエチレングリコールをさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項4】
分岐剤が、コポリエステルに基づいて50~2000μモルの量で存在する、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項5】
前記芳香族ジカルボン酸成分が、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、トランス-4,4’-スチルベンジカルボン酸、複素環ジカルボン酸およびそれらのエステルから選択される1つ以上の変性芳香族ジカルボン酸を最大5モル%までさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項6】
少なくとも約0.90dl/gの固有粘度をさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項7】
着色剤、トナー、染料、離型剤、難燃剤、可塑剤、安定剤、衝撃改質剤、またはそれらの混合物から選択される少なくとも1つの添加剤をさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項8】
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、オクタン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸-ジカルボン酸、ジエチル-ジ-n-プロピルマロネート、ジメチルベンジルマロネート、2,2-ジメチル-マロン酸、および2,3-ジメチルグルタル酸から選択される1つ以上の脂肪族ジカルボン酸を最大5モル%までさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項9】
容器を形成するための押出ブロー成形方法であって、
(a)樹脂を溶融混合するステップであって、前記樹脂が、
(i)ポリエステル組成物中のジカルボン酸残基の総モル%に基づいて95~100モル%のジカルボン酸残基を含む芳香族ジカルボン酸成分と、
(ii)グリコール成分であって、
ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて90~98モル%のエチレングリコール残基、および
以下の式Iによって表される2~10モル%の脂肪族分岐グリコール:
【化2】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
を含む、グリコール成分と、
(iii)分岐コモノマーと
を含む、ステップと、
(b)パリソンを形成するステップと、
(c)前記パリソンを容器の形状にブローするステップと、
(d)スクラップポリマー組成物を除去するステップと
を含む、押出ブロー成形方法。
【請求項10】
芳香族ジカルボン酸残基が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの混合物を含む、請求項9に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項11】
前記グリコール成分が、ジエチレングリコールをさらに含む、請求項9に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項12】
ステップ(a)において、スクラップポリマー組成物を粉砕し、次いで前記樹脂と混合することをさらに含む、請求項9に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項13】
前記樹脂の融点が、235℃~255℃である、請求項9に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項14】
前記容器がボトルである、請求項9に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項15】
コポリエステルを含む押出ブロー成形容器であって、前記コポリエステルが、
(a)ポリエステル組成物中のジカルボン酸残基の総モル%に基づいて95~100モル%のジカルボン酸残基を含む芳香族ジカルボン酸成分と、
(b)グリコール成分であって、
(i)ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて90~98モル%のエチレングリコール残基、および
(ii)以下の式Iによって表される2~10モル%の脂肪族分岐グリコール:
【化3】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
を含む、グリコール成分と、
(c)分岐コモノマーと
を含む、押出ブロー成形容器。
【請求項16】
分岐剤が、コポリエステルに基づいて50~2000μモルの量で存在する、請求項15に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項17】
前記ジカルボン酸残基が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの混合物を含み、前記グリコール残基が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、またはそれらの混合物を含む、請求項15に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項18】
ASTM D 2463-95、手順B、ブルーストン階段法に従って4週間後に試験したとき、160cmを超える落下高さをさらに含む、請求項15に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項19】
前記コポリエステルが、少なくとも約0.90dl/gの固有粘度をさらに含む、請求項15に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項20】
前記容器がボトルである、請求項15に記載の押出ブロー成形容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連特許出願の相互参照
本特許出願は、2020年12月22日に出願され、「Improved Polyester Composition For Extrusion Blow Molded Containers」という発明の名称の同時係属中の米国仮特許出願第63/129,305号、および2021年12月13日に出願され、「Improved Polyester Composition For Extrusion Blow Molded Containers」とう発明の名称の同時係属中の米国仮特許出願第63/288,894号の優先権の利益を主張し、それらの内容は参照により完全に本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、ポリエステルポリマーに関し、より詳細には、透明押出ブロー成形容器のためのポリエチレンテレフタレートコポリエステルに関する。
【背景技術】
【0003】
芳香族ポリエステルは一般に半結晶性であり、低い溶融強度を有する。射出延伸成形プロセス(ISBM)によって、少量の変性コモノマーを含む、ポリエチレンテレフタレート(PET)から作製された容器は、市場で最も一般的な透明容器である。しかしながら、ISBMプロセスは均一な形状に限定されており、取っ手付きボトルを製造することはできない。取っ手は、消費者による取り扱いを容易にするために、大型のボトルおよび容器にとって望ましい特徴である。このような取っ手付きの大型のボトルおよび容器は、押出ブロー成形(EBM)プロセスによって製造できる。
【0004】
典型的なEBMプロセスは以下を含む:a)押出機で樹脂を溶融すること、b)ダイを通して溶融樹脂を押し出して、溶融ポリマーのチューブ(パリソン)を形成すること、c)パリソンの周囲に所望の最終形状を有する金型を固定すること、d)パリソンに空気を吹き込み、押出物を延伸させ、膨張させて金型を満たすこと、e)成形された容器を冷却すること、f)容器を金型から取り出すこと、g)容器から余分なプラスチックを除去すること(バリ取り/フラッシング)。
【0005】
このプロセスで押し出される高温のパリソンは、多くの場合、金型でその周囲を固定される前に、自重で数秒間吊り下げなければならない。この時間の間、押出物は高い溶融強度を備えていなければならず、これは、パリソン内での不均一な分布およびパリソン壁の薄化を引き起こす原因となる、材料の延伸、流動、およびたるみ(垂れ)に抵抗できる特徴である。押し出されたパリソンのたるみ(垂れ)は、パリソンの重量に直接関係しており、それによってより大きく、より重いパリソンほどたるむ(垂れる)傾向が大きくなる。溶融強度は、ゼロせん断速度下でのポリエステル樹脂の粘度、および溶融押出物がダイから出るときの温度に直接関係している。しかしながら、高い溶融強度、またはゼロせん断速度で高い溶融粘度を有する樹脂は、粘度が高すぎるため、ポリマーが劣化して溶融粘度を失う原因となる高温を使用せずに押出機で押し出し、ダイに送り込むことができない。したがって、EBMの最終用途に合わせて調整された最適なポリエステル樹脂は、一般に100~1000s-1である押出プロセスに関連するせん断速度での粘度が、ゼロせん断速度での粘度(すなわち、ずり減粘を示す)より低くなるようなレオロジーを有しなければならない。
【0006】
ISBM飲料容器に使用される典型的なPET樹脂は、それらを処理する必要がある温度で低い溶融強度を生じる、比較的低い固有粘度(IV<0.85dl/g)および高い融点(>245℃)のため、EBMには適していない。
【0007】
EBMプロセスの間、溶融ポリエステルは、冷却しても熱結晶化できず、そうでなければ、曇った容器が製造される。ISBMプロセスとは異なり、EBMプロセスでは、成形された容器から切り取られなければならないバリ(例えば、クランプされた部位)から廃棄物が生成される。EBMプロセスからのこの廃棄物(またはリサイクル材料)は、再押出前に粉砕して未使用樹脂と混合し、乾燥させなければならない。この廃棄物(リグラインド)は、通常、EBM製造プロセスにおける原料の約40~50%を構成する。
【0008】
先行技術は、熱結晶化速度を低下させるために、イソフタル酸(IPA)および1,4-シクロヘキサンジメタノール(CHDM)などのコモノマーを使用することにより、押出ブロー成形に関するこれらの要件を満たしてきた(非特許文献1)。EBMのためのコモノマーとしてCHDMを使用する非晶質コポリエステルは、例えば、特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;特許文献5;特許文献6;特許文献7;および特許文献8に開示されている。コモノマーとしてIPAを使用した非晶質コポリエステルは、例えば、特許文献9に開示されている。
【0009】
より高いせん断速度で溶融粘度を低下させるずり減粘を伴うゼロせん断速度でのより高い溶融強度は、変性コモノマーとしてCHDMまたはIPAを含有するコポリエステルに分岐コモノマー(branching comonomers)を使用することによって達成されている。無水トリメリット酸(TMA)およびペンタエリトリトール(PENTA)などの典型的な分岐コモノマーは、特許文献10および特許文献11に開示されている。現在まで、EBM容器のために設計されたコポリエステル配合物の大部分は本質的に非晶質であり、加工処理ならびに良好な容器の外観および性能の両方の適切なバランスを達成するために分岐コモノマーが使用されている。しかしながら、分岐コモノマーが含まれると、ゲルが生じ、それによりボトルの外観不良が生じる可能性がある(例えば、曇りの増加、光沢の減少など)。加えて、高度な分岐は、ダイにおいてメルトフラクチャーが発生し、容器の表面にまだらの外観が生じる可能性がある。
【0010】
非晶質コポリエステルから作製された容器は、使用済みのPETリサイクルの流れに加えられると、乾燥プロセス中に粘着、凝集、および架橋の問題を引き起こす傾向がある。このため、このようなEBM PET樹脂は、標準的な容器およびボトルのISBMプロセスで使用するための未使用樹脂とのブレンドで使用される使用済みのポリエステルリサイクルの流れでの再利用には適していない。
【0011】
あるいは、少量のIPAまたはCHDMを含有する超高分子量(IV>1.1dl/g)を有する高溶融強度コポリエステル樹脂を使用すると、ある程度のずり減粘を示すため、必要な溶融強度を得ることができる(特許文献12)。これらの超高IVポリエステル樹脂は高温で処理する必要があるため、樹脂が熱的に劣化して容器内の黄色度が増加するだけでなく、EBM処理ウィンドウがより狭くなる。温度が低下するとメルトフラクチャーが発生し、溶融ポリマーをダイに供給するために押出機からの必要な圧力が著しく増加する。加えて、これらの強靭な樹脂は切断するのが難しく、完成した容器からバリをきれいに除去するのがより困難になる。
【0012】
EBM容器についての重要な要件は、液体を入れたまま落としても壊れない性能である(すなわち、充填時に許容できる落下衝撃性能を備えていなければならない)。非晶質ポリエステルが時間とともに劣化することは周知であり、この劣化の影響により、非晶質ポリエステル製の容器は時間が経つにつれて脆くなり(すなわち、耐衝撃性が低下し)、それによって落としたときに壊れやすくなる。
【0013】
PolyClear(登録商標)EBM樹脂(Auriga Polymers Inc.,Spartanburg,SC USA)は、Association of Postconsumer Plastic Recyclers(APR)によって使用済みリサイクルの流れでのリサイクルが承認されている商用樹脂(部分的に結晶性)の1つである。しかしながら、この樹脂は経年劣化によるボトルの落下耐性が不十分である。特許文献13は、充填剤、特にヒュームドシリカの添加により、このIPA変性共分岐コポリエステル樹脂の経年劣化による落下耐性を改善した。
【0014】
段階的縮合化学によって作製されたポリマーは、多量の環状コモノマー(例えば、環状二量体、環状三量体など)を含有する。例えば、イソフタル酸を結晶化遅延剤として使用すると、高融点のオリゴマーが形成され、容器の型だけでなく、押出点における/押出点付近の低温表面にも堆積するという問題がある。これらの堆積は、より頻繁な洗浄および/または下流のプロセッサ/コンバータのダウンタイムを引き起こすため、望ましくない。
【0015】
先行技術の特許のいずれにも、以下の市場ニーズを全て満たすEBMのための組成物が開示されていない。
a)使用済みリサイクルの流れでのリサイクルが承認されていること、ならびに
b)ゼロせん断速度での高い溶融粘度により、たるみ(垂れ)のないパリソンを得ること、ならびに
c)押出機およびダイヘッドにおいてせん断速度での溶融粘度を低くし、押出温度を下げて樹脂の劣化ならびに樹脂の溶融および押出に必要なエネルギーを最小限に抑えること、ならびに
d)押出ブロー成形プロセス中の堆積物の形成を少なくし、洗浄のための機械のダウンタイムを最小限に抑えること、ならびに
e)冷却サイクル中に樹脂の結晶化により容器が曇らないように、結晶化速度を遅くすること。
【0016】
したがって、押出ブロー成形プロセスに対するこれらの要件を全て満たす新規ポリエステル樹脂を発見することが非常に望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】米国特許第4,983,711号
【特許文献2】米国特許第6,740,377号
【特許文献3】米国特許第7,025,925号
【特許文献4】米国特許第7,026,027号
【特許文献5】米国特許第7,915,374号
【特許文献6】米国特許第8,431,068号
【特許文献7】米国特許第8,890,398号
【特許文献8】米国特許出願公開第2011/0081510号
【特許文献9】米国特許第4,182,841号
【特許文献10】米国特許第4,132,707号
【特許文献11】米国特許第4,999,388号
【特許文献12】米国特許第9,399,700号
【特許文献13】米国特許第9,815,964号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Modern Polyesters:Chemistry and Technology of Polyesters and Copolyesters 2003,246-247
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0019】
最も広い意味において、本発明は、
a)式1によって表されるアルキル分岐脂肪族ジオール:
【化1】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
および
b)分岐コモノマー
を含む、コポリエステルを含む押出ブロー成形ボトルのためのポリエステル樹脂に関する。
【0020】
最も広い意味において、本発明は、この組成物からEBMボトルを製造する方法に関する。
【0021】
最も広い意味において、本発明は、この組成物から作製されたEBM容器に関する。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本明細書に記載の範囲は、各範囲の端部の両方の数字およびそれらの間の任意の想定される数字を含み、これは範囲の重要な定義である。
【0023】
ポリエステルEBM樹脂は一般に、溶融強度を増加させ、ずり減粘レオロジー挙動を有する樹脂を得るために、多官能性分岐コモノマーと一緒にポリエステル樹脂の結晶化速度を遅らせるコモノマーを添加することによって調製される。
【0024】
本発明での使用に適したポリエステル組成物は典型的に、
(a)ポリエステル組成物中の二酸残基の総モルパーセントに基づいて、95~100モルパーセントのテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸またはそれらの混合物の残基を含む二酸成分と、
(b)ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モルパーセントに基づいて、90~98モルパーセントのエチレングリコール、ジエチレングリコールまたはそれらの混合物の残基を含むグリコール成分と、
(c)ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モルパーセントに基づいて、2~10モルパーセントの、以下の式I
【化2】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、Rは、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
によって表される脂肪族分岐グリコールを含むグリコール成分と、
(d)分岐コモノマーと
を含む。
【0025】
本明細書で使用される場合、「ポリエステル」という用語は、「コポリエステル」を含むことを意図しており、1つ以上の二官能性カルボン酸および/または多官能性カルボン酸と、1つ以上の二官能性ヒドロキシル化合物および/または多官能性ヒドロキシル化合物、例えば分岐コモノマーとの反応によって調製される合成ポリマーを意味すると理解される。典型的に、二官能性カルボン酸はジカルボン酸であり得、+化合物は、例えば、グリコールおよびジオールなどの二価アルコールであり得る。本明細書で使用される場合、「グリコール」という用語には、ジオール、グリコール、および/または多官能性ヒドロキシル化合物、例えば、分岐コモノマーが含まれるが、これらに限定されない。あるいは、二官能性カルボン酸は、例えば、p-ヒドロキシ安息香酸などのヒドロキシカルボン酸であり得、二官能性ヒドロキシル化合物は、例えば、ヒドロキノン、レゾルシノールまたは他の複素環式ジオール、および例えばイソソルビドなどの2つのヒドロキシル置換基を有する芳香核であり得る。
【0026】
本明細書で使用される場合、「残基」という用語は、対応するモノマーからの重縮合および/またはエステル化反応を介してポリマーに組み込まれる任意の有機構造を意味する。本明細書で使用される場合、「繰り返し単位」という用語は、カルボニルオキシ基を介して結合したジカルボン酸残基およびジオール残基を有する有機構造を意味する。したがって、例えば、ジカルボン酸残基は、ジカルボン酸モノマーもしくはその関連する酸ハロゲン化物、エステル、塩、無水物、および/またはそれらの混合物から誘導され得る。したがって、本明細書で使用される場合、「ジカルボン酸」という用語は、ジカルボン酸、ならびにポリエステルを作製するためにジオールとの反応プロセスにおいて有用である、その関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、および/またはそれらの混合物を含む、ジカルボン酸の任意の誘導体を含むことを意図する。本明細書で使用される場合、「テレフタル酸」という用語は、テレフタル酸自体およびその残基、ならびにその関連する酸ハロゲン化物、エステル、半エステル、塩、半塩、無水物、混合無水物、および/もしくはそれらの混合物、またはポリエステルを作製するためのジオールとの反応プロセスに有用なそれらの残基を含む、テレフタル酸の任意の誘導体を含むことを意図する。
【0027】
本発明で使用されるポリエステルは、典型的に、実質的に等しい割合で反応し、対応する残基としてポリエステルポリマーに組み込まれるジカルボン酸およびジオールから調製され得る。したがって、本発明のポリエステルは、繰り返し単位の総モルが100モル%に等しくなるように、実質的に等しいモル比の酸残基(100モル%)およびグリコール(および/または多官能性ヒドロキシル化合物)残基(100モル%)を含有することができる。したがって、本開示で提供されるモルパーセントは、酸残基の総モル、ジオール残基の総モル、または繰り返し単位の総モルに基づき得る。例えば、総酸残基に基づいて1モル%のイソフタル酸を含有するポリエステルは、そのポリエステルが合計100モル%の酸残基のうち1モル%のイソフタル酸残基を含有することを意味する。したがって、酸残基100モルごとにイソフタル酸残基が1モル存在する。別の例では、合計100モル%のグリコール残基のうち1.5モル%のジエチレングリコールを含有するポリエステルは、グリコール残基100モルごとに1.5モルのジエチレングリコール残基を有する。
【0028】
本発明の他のポリエステルでは、本発明で有用なポリエステルを作製する際に利用されるグリコール成分は、エチレングリコール、ならびにジエチレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、およびそれらの混合物から選択される1つ以上の二官能性グリコールを含み得るか、それらから本質的になり得るか、またはそれらからなり得る。好ましいグリコールは、エチレングリコールである。
【0029】
テレフタル酸および/またはテレフタル酸ジメチルに加えて、本発明で有用なポリエステルのジカルボン酸成分は、最大で5モル%まで、または最大で1モル%までの1つ以上の変性芳香族ジカルボン酸を含み得る。本発明で使用され得る変性芳香族ジカルボン酸の例には、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-、1,5-、2,6-、2,7-ナフタレンジカルボン酸、およびトランス-4,4’-スチルベンジカルボン酸、ならびにそれらのエステルが含まれるが、これらに限定されない。複素環式ジカルボン酸、例えば2,5-フランジカルボン酸も使用できる。好ましい変性芳香族ジカルボン酸は、2,6-ナフタレンジカルボン酸である。
【0030】
本発明に有用なポリエステルのジカルボン酸成分は、最大5モル%まで、または最大1モル%までの、例えば、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、オクタン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸-ジカルボン酸、ジエチル-ジ-n-プロピルマロネート、ジメチルベンジル-マロネート、2,2-ジメチル-マロン酸、および2,3-ジメチルグルタル酸などの、2~16個の炭素原子を含有する1つ以上の脂肪族ジカルボン酸でさらに変性され得る。好ましい脂肪族ジカルボン酸はアジピン酸である。
【0031】
本発明のポリエステルはまた、少なくとも1つの鎖延長剤を含むこともできる。適切な鎖延長剤には、多官能性(二官能性を含むがこれに限定されない)イソシアネート、例えば、エポキシ化ノボラックを含む多官能性エポキシド、およびフェノキシ樹脂が含まれるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、鎖延長剤は、重合プロセスの最後に、または重合プロセスの後に添加され得る。重合プロセスの後に添加される場合、鎖延長剤は、配合によって、または射出成形もしくは押出などの変換プロセスの間の添加によって組み込まれ得る。使用される鎖延長剤の量は、使用される特定のモノマー組成物および所望の物理的特性に応じて変化し得るが、一般に、ポリエステルの総重量に基づいて、約0.1~約5重量%、または約0.1~約2重量%である。
【0032】
加えて、本発明に有用なポリエステル組成物およびポリマーブレンド組成物は、任意の量の少なくとも1つの添加剤、例えば、着色剤、染料、離型剤、難燃剤、可塑剤、UV安定剤、熱安定剤および/またはそれらの反応生成物を含むがこれらに限定されない安定剤、ならびに衝撃改質剤などの一般的な添加剤を、組成物全体の0.01~2.5重量%含むこともできる。当該技術分野で周知であり、本発明に有用な典型的な市販の衝撃改質剤の例には、エチレン/プロピレンターポリマー、アクリル酸メチルおよび/またはメタクリル酸グリシジルを含有するものなどの官能化ポリオレフィン、スチレン系ブロック共重合体衝撃改質剤、ならびに種々のアクリルコア/シェルタイプの衝撃改質剤が含まれるが、これらに限定されない。透明なEBM容器の場合、容器の曇りを防ぐために、これらの添加剤の屈折率はポリエステル組成物の屈折率と厳密に一致させなければならない。このような添加剤の残留物も、ポリエステル組成物の一部として考慮される。
【0033】
加えて、ポリマーを調色する特定の薬剤を溶融物に添加することができる。青みがかったトナーを使用すると、得られるポリエステルポリマー溶融相生成物の黄色度を減らすことができる。このような青味剤には、コバルト塩、青色の無機および有機トナーなどが含まれる。加えて、赤トナーを使用して赤みを調整することもできる。有機トナー、例えば青色および赤色の有機トナーを使用することができる。有機トナーは、プレミックス組成物として供給することができる。プレミックス組成物は赤色および青色の化合物の純粋な混合物であってもよいか、またはその組成物は、ポリエステル原料の1つ、例えば、エチレングリコールに予め溶解またはスラリー化されていてもよい。
【0034】
追加されるトナー成分の総量は、ベースのポリエステルに固有の黄色の量およびトナーの有効性によって異なる。一般に、組み合わされた有機トナー成分の最大で約15ppmまでの濃度および約0.5ppmの最小濃度が使用され、青味添加剤の総量は典型的に約0.5ppm~約10ppmの範囲である。
【0035】
ポリエステルの従来の製造は、バッチ、半連続、または連続プロセスによって達成され得る。典型的なポリエステル化プロセスは、複数の段階から構成され、商業的には2つの一般的な経路のうちの1つで実行される。直接エステル化を利用するプロセスの場合、プロセスの初期段階では、ジカルボン酸を1つ以上のジオールと約200℃~約250℃の温度で反応させて、マクロモノマー構造および小さな縮合分子である水を形成する。この反応は可逆的であるため、水は継続的に除去され、反応が進行して所望の第1段階の生成物が得られる。分岐コモノマーは通常、プロセスのこの段階で添加される。同様に、ジエステル(二酸に対して)を使用する場合、エステル交換プロセスを使用して、ジエステルおよびジオールのエステル基を、酢酸マンガン、酢酸亜鉛、または酢酸コバルトなどの特定の周知の触媒と反応させる。エステル交換反応が完了した後、これらの触媒は、リン酸などのリン化合物で封鎖され、重縮合プロセス中の分解を防ぐ。
【0036】
次に、反応の第2の段階では、マクロモノマー構造(直接エステル化生成物)または交換部分(エステル交換生成物)が重縮合反応を起こしてポリマーを形成する。このプロセスでは、溶融塊の温度を約280℃~300℃の範囲の最終温度まで上昇させ、真空(約150Pa)を適用して過剰なジオールおよび水を除去する。この重合は、必要な/目標の分子量が達成されたとき、および/または機器の設計の最大分子量に達したときに停止させる。ポリエステルはダイを通してストランドに押し出され、クエンチされてペレットに切断される。重縮合反応に一般に使用される触媒は、アンチモン、ゲルマニウム、アルミニウム、チタン、もしくは当業者に公知の他の触媒を含有する化合物、またはそれらの混合物である。使用される特定の添加剤および反応中の導入の時点は当該技術分野で公知であり、本発明の一部を形成するものではない。任意の従来のシステムを利用することができ、当業者は最適な結果を達成するために添加剤を導入するための様々な市販システムの中から選択することができる。ポリエステルペレットは、周知の固相重合処理技術によってさらに高分子量まで重合することができる。
【0037】
テレフタル酸および/またはエチレングリコールは、好ましくは、石油ベースの原料ではなくバイオマス原料に由来する。加えて、使用済みのポリエステル廃棄物から化学的にリサイクルされたテレフタル酸(またはテレフタル酸ジメチル)およびエチレングリコールの使用も、本発明のポリエステルにとって好ましい。本発明のポリエステル樹脂を製造する別の好ましい方法は、使用済みポリエステル廃棄物の解糖の反応生成物から精製されたビス-(ヒドロキシエチル)-テレフタレートを利用し、このモノマーは、好ましくは重縮合段階の前に、重合プロセスに添加することができる。
【0038】
本発明での使用に適したポリエステル組成物は、少なくとも約0.90dl/g、好ましくは少なくとも約1.0dl/g、より好ましくは約0.9~約1.2dl/gの固有粘度を有するものを含む。固有粘度がより低い樹脂は、EBMプロセスには不十分な溶融強度を有するが、固有粘度がより高い樹脂は、押出温度での溶融粘度が高すぎて、その温度を超えると熱劣化および分子量の損失が起こる。
【0039】
分岐脂肪族グリコール
本発明に適した分岐脂肪族グリコールの好ましい例としては、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-エチル-1,3-プロパンジオール、2-ブチル-1,3-プロパンジオール、2,2’-ジメチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、2-エチル-1,4-ブタンジオール、2-ブチル-1,4-ブタンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2,4-ジメチル-1,5-ペンタンジオールまたはそれらの混合物が挙げられる。最も好ましい分岐脂肪族グリコールは、2,2’-ジメチル-1,3-プロパンジオールである。分岐脂肪族グリコールの量は、好ましくは、組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて、約2.0モル%~約10.0モル%、好ましくは約3.0モル%~約7.0モル%の範囲である。分岐脂肪族グリコールの量がより少ないと、金型内で冷却した後に容器が曇ることなくEBMプロセスに使用できるほど十分に結晶化速度が遅くならない。分岐脂肪族グリコールの量がより多くなると、EBMプロセスに必要な高い溶融強度が得られない。
【0040】
分岐コモノマー(branching comonomer)
組成物中に存在する分岐コモノマーは、3つ以上のカルボキシル置換基、ヒドロキシル置換基、またはそれらの組み合わせを有する。分岐モノマーの例としては、トリメリット酸、無水トリメリット酸、ピロメリット酸二無水物、ベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸、トリメチロールプロパン、グリセロール、ソルビトール、1,2,6-ヘキサントリオール、ペンタエリトリトール、クエン酸、酒石酸、3-ヒドロキシグルタル酸、トリメシン酸などの多官能性酸または多官能性アルコールが挙げられるが、これらに限定されない。エトキシル化またはオキシプロピル化トリオールも使用することができる。好ましい実施形態において、分岐モノマー残基は、以下:ペンタエリトリトール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、トリメリット酸、無水トリメリット酸および/またはベンゼン-1,3,5-トリカルボン酸のうちの少なくとも1つから選択される。分岐コモノマーは、コポリエステルに基づいて50~2000μモルの範囲の量で存在することができる。
【0041】
押出ブロー成形
別の態様において、本発明は、押出ブロー成形容器を製造するための方法に関する。押出ブロー成形方法は、当該技術分野で公知の任意のEBM製造方法によって達成され得る。これらに限定されないが、押出ブロー成形製造方法の典型的な説明には、以下が含まれる:1)押出機で樹脂を溶融すること、2)ダイを通して溶融樹脂を押し出して、溶融ポリマーのチューブ(すなわち、パリソン)を形成すること、3)パリソンの周囲に所望の最終形状を有する金型を固定すること、4)パリソンに空気を吹き込み、押出物を延伸させ、膨張させて金型を満たすこと、5)成形された容器を冷却すること、6)容器を金型から取り出すこと、7)容器から余分なプラスチックを除去すること(一般的にバリ取り/フラッシングと呼ばれる)。
【0042】
本明細書で使用される場合、「容器」という用語は、材料が保持または保管される入れ物を意味すると理解される。容器には、ボトル、バッグ、バイアル、チューブ、および瓶が含まれるが、これらに限定されない。これらのタイプの容器の業界での用途には、食品、飲料、化粧品、家庭用または化学用容器、およびパーソナルケア用途が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で使用される場合、「ボトル」という用語は、液体を保管または保持できる樹脂を含む入れ物を意味すると理解される。
【0043】
正確な樹脂配合物は、押し出されると、パリソン内での不均一な材料分布およびパリソン壁の薄化を引き起こす可能性のある延伸および流動、たるみ、またはその他の望ましくない態様に耐えることができる高い溶融強度を有するような溶融物を提供しなければならない。溶融強度は、ゼロせん断速度でのポリエステル樹脂の粘度、および溶融押出物がダイから出るときの温度に直接関係する。しかしながら、高い溶融強度、またはゼロせん断速度での高い溶融粘度を有する樹脂は粘度が高すぎるため、ポリマーが劣化して溶融粘度を損失する原因となる高温を用いずに押出機で押し出し、ダイに送り込むことができない。したがって、EBMの最終用途向けに設計された最適なポリエステル樹脂は、押出プロセスに関連するせん断速度(一般に100~1000s-1)での粘度が、ゼロせん断での粘度よりも低くなるようなレオロジーを有しなければならない(すなわち、ずり減粘を示す)。溶融強度は、ゼロせん断速度でキャピラリーダイを通して樹脂を押し出すメルトインデクサーを使用して測定することができる。一定期間後の押出物の長さ(L)を、同じ期間後の長さ(L)と比較することができる。L/Lの比、溶融強度は、押出物のたるみの尺度を与え、たるみがない場合、この比は1.0になる。この比は、溶融強度が弱くなるにつれて増加し、L2は、押出物が自重を支えることができなくなるにつれて増加する。本発明のEBM樹脂の場合、溶融強度は、2.16kgの荷重下で2.6±0.2g/10分のメルトインデックスに相当する押出温度で測定した場合、約1~約1.6の範囲でなければならない。
【0044】
加えて、EBMプロセス中、溶融ポリエステルは熱結晶化してはならず、そうでなければ、曇った容器が生成される。EBMプロセスでは、例えば、クランプされている成形容器から切り取らなければならないバリから廃棄物が生成される。EBMプロセスからのこの廃棄物は、再押出前に粉砕して未使用樹脂と混合し、乾燥させなければならない。したがって、設計された目的の樹脂は、乾燥中に凝集しないように、低レベルの結晶化度を有し、維持しなければならない。
【0045】
使用済みの透明なポリエステルのリサイクルの流れで使用するためのAPRクリティカルガイダンスプロトコルに合格するためには、本発明のポリエステル樹脂は、半結晶性(すなわち、示差走査熱量測定により検出されるような溶融吸熱を示す)でなければならない。これに関して、EBM樹脂の融点は、235~255℃の範囲内であるべきである。
【0046】
樹脂が満たさなければならない別のパラメータは、4フィート(122cm)の高さから落としたときの液体で満たされたEBM溶液の落下耐性に関連する。このような落下試験の後、容器の破損、裂け、または漏れは10個中1個以下であると予測される。コポリエステルは時間の経過とともに劣化するため、製造から数週間後、例えば4~6週間後に落下耐性を測定することが重要である。
【0047】
試験および調製方法
1.試験方法
a.ポリエステルの固有粘度は、ASTM D 460396に従って測定し、dl/gの単位で報告する。
b.ポリエステルの融点は、ASTM D 3418-03に従って測定したコポリエステルの溶融吸熱のピークとして取得した。試料を10℃/分の速度で30から300℃まで加熱し、5分間保持し、10℃まで急速にクエンチした(およそ320℃/秒の速度で)。次いで、試料を10℃/分で300℃まで加熱し、ピーク溶融吸熱温度を記録した。
c.容器の落下耐性は、ASTM D 2463-95、手順B、ブルーストン階段法(Bruceton Staircase Method)に従って測定した。落下させる前に、容器に1.5リットルの水(23℃)を充填した。容器を時間経過(1日、1週間、2週間、3週間、4週間など)のために23℃、相対湿度50%で保管した。
d.ポリマーの溶融強度は、ASTM D 1238-04c、押出プラストメーターによる熱可塑性物質の溶融流量の標準試験方法を使用して測定した。この測定に使用した温度は、2.16kgの荷重を使用して、2.6±0.2g/10分のポリマーのメルトフローインデックスに相当する温度であった。50秒後の押出物の長さ(L)を測定し、100秒後の全長(L)を測定した。次の50秒で押し出された長さ(L)をLおよびL:
=L-L
から計算し、溶融強度をL/Lとして定義する。
h.ポリマーの多官能性ヒドロキシル分岐コモノマー含有量は、密封反応容器中で、220±5℃で約2時間、水酸化アンモニウム水溶液を用いてポリマーを加水分解することによって決定した。次いで、加水分解生成物の液体部分をガスクロマトグラフィーによって分析した。ガスクロマトグラフィー装置は、Hewlett Packard製のFID Detector(HP5890、HP7673A)であった。水酸化アンモニウムは、Fisher Scientific製の28~30重量%の水酸化アンモニウムであり、試薬グレードであった。
i.ポリマー中の二酸およびDEG(ジエチレングリコール)を含むジオールの含有量は、JOEL ECX-300、300MHz機器を使用して、プロトン核磁気スペクトル(1H MNR)から決定した。一般的な試料調製は次の通りであった。
20mgのポリエステルを、1mLの10:1のクロロホルム-d:TFA-d[Cambridge Isotope Laboratories,Inc.クロロホルム-d(d,98.9%)+0.05%V/V TMS:Cambridge Isotope Laboratories,Inc.トリフルオロ酢酸-d(d,99.5%)]とともに適切な2mLガラス反応容器またはバイアルに入れ、キャップをする。反応容器/バイアルを、100℃の温度で約10分間、または試料が完全に溶媒和するまで加熱ブロック上に置く。次いで、試料を加熱ブロックから取り出し、フード内に置き、室温に平衡化する。次いで、溶媒和試料を標準的なNMRチューブに移し、事前に定義されたNMR実験プロトコルによって分析する。報告されたモノマー含有量を決定するために、得られたスペクトル積分をExcelのマクロで処理した。
【0048】
2.調製方法
a)押出ブロー成形(EBM)ボトル
Glycon DM2ネジを取り付けた90mmのBekum H-155連続EBMマシンを使用して、モデルEBM容器を製造した。これらの容器は、標準的な1.75リットル、重さ110gの長方形の取っ手付きの容器であった。押出温度を245℃~260℃の間で調整して、容器内にポリマーが均一に分布するようにした。コポリエステルは、押出前に50ppm未満の水分レベルになるまで乾燥させた。
b)ポリエステルの調製
重縮合触媒として三酸化アンチモンを用いて、当該技術分野で公知の標準操作手順を使用して、一連のコポリエステルを、精製されたテレフタル酸、イソフタル酸エチレングリコール、分岐脂肪族酸、ペンタエリトリトールから調製した。これらのコポリエステルの非晶質IVは、約0.66~約0.68dl/gの範囲であった。
【0049】
これらの非晶質コポリエステルを、目標IVを達成するために固体状態でさらに重合した。
【実施例
【0050】
実施例で使用したポリエステルの組成および特性を表1に示す。比較例は先行技術のEBMポリエステル樹脂を表す。これらの組成で使用されるモノマーの略語は次の通りである。
PTA 精製テレフタル酸
PIA 精製イソフタル酸
DEG ジエチレングリコール
DPD 2,2’-ジメチル-1,3-プロパンジオール
MPD 2-メチル-1,3-プロパンジオール
Penta ペンタエリトリトール
【0051】
これらの組成に添加される残りのグリコールは、重合中に形成されるエチレングリコールおよびジエチレングリコールである。モノマーの量は、該当する場合には二酸またはグリコールのモルに基づいてモル%として表され、分岐コモノマーはμモルとして表される。
【0052】
【表1】
【0053】
これらの樹脂の溶融強度を表2に示す。
【0054】
【表2】
【0055】
これらの樹脂からボトルを製造し、必要な寸法のボトルを作製するのに必要なプロセス条件を表3に示す。比較例2を実行すると、EBMマシン上により多くのオリゴマーが堆積することが認められた。
【0056】
【表3】
【0057】
本発明の実施例は、より低い温度、溶融圧力、およびモーター負荷で処理することができ、先行技術の比較例1および2よりも広い動作範囲を与えることができた。
【0058】
作りたてのEBMボトルおよび時間が経過したEBMボトルの落下耐性を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】
本発明の実施例の時間が経過したボトルの落下耐性は比較例よりも優れている。
【0061】
一定の5.7モル%のDPD、1.4モル%のDEGおよび85μモルのPentaにおける分子量(IV)の範囲にわたって、時間が経過したボトルの落下性能の感度を決定するために一連の試験を行った。EBM押出条件を表5に示し、作りたてのEBMボトルおよび時間が経過したEBMボトルの落下耐性を表6に示す。
【0062】
【表5】
【0063】
【表6】
【0064】
これらの結果は、超高IVおよび芳香族もしくは脂環式結晶化遅延剤、またはより高含有量の分岐コモノマーを使用する先行技術のEBMレシピと比較して、アルキル分岐脂肪族ジオールから作製されたEBMボトルの落下耐性は、時間経過により劣化しないことを示す。
【0065】
本発明をその特定の実施形態に関連して説明してきたが、上記の説明を考慮すれば、当業者には多くの代替、修正、および変形が自明であることは明らかである。したがって、添付の特許請求の範囲の精神および広い範囲内に含まれる全てのそのような代替、修正、および変形を包含することが意図される。
【手続補正書】
【提出日】2023-08-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
押出成形容器のためのコポリエステルであって、
(a)ポリエステル組成物中のジカルボン酸残基の総モル%に基づいて95~100モル%のジカルボン酸残基を含む芳香族ジカルボン酸成分と、
(b)グリコール成分であって、
(i)ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて90~98モル%のエチレングリコール残基、および
(ii)以下の式Iによって表される2~10モル%の脂肪族分岐グリコール:
【化1】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
を含む、グリコール成分と、
(c)分岐コモノマーと
を含む、コポリエステル。
【請求項2】
芳香族ジカルボン酸残基が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの混合物を含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項3】
分岐剤が、コポリエステルに基づいて50~2000μモルの量で存在する、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項4】
前記芳香族ジカルボン酸成分が、4,4’-ビフェニルジカルボン酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、1,5-ナフタレンジカルボン酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、2,7-ナフタレンジカルボン酸、トランス-4,4’-スチルベンジカルボン酸、複素環ジカルボン酸およびそれらのエステルから選択される1つ以上の変性芳香族ジカルボン酸を最大5モル%までさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項5】
少なくとも約0.90dl/gの固有粘度をさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項6】
マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、オクタン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸-ジカルボン酸、ジエチル-ジ-n-プロピルマロネート、ジメチルベンジルマロネート、2,2-ジメチル-マロン酸、および2,3-ジメチルグルタル酸から選択される1つ以上の脂肪族ジカルボン酸を最大5モル%までさらに含む、請求項1に記載のコポリエステル。
【請求項7】
容器を形成するための押出ブロー成形方法であって、
(a)樹脂を溶融混合するステップであって、前記樹脂が、
(i)ポリエステル組成物中のジカルボン酸残基の総モル%に基づいて95~100モル%のジカルボン酸残基を含む芳香族ジカルボン酸成分と、
(ii)グリコール成分であって、
ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて90~98モル%のエチレングリコール残基、および
以下の式Iによって表される2~10モル%の脂肪族分岐グリコール:
【化2】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
を含む、グリコール成分と、
(iii)分岐コモノマーと
を含む、ステップと、
(b)パリソンを形成するステップと、
(c)前記パリソンを容器の形状にブローするステップと、
(d)スクラップポリマー組成物を除去するステップと
を含む、押出ブロー成形方法。
【請求項8】
芳香族ジカルボン酸残基が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの混合物を含む、請求項に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項9】
前記グリコール成分が、ジエチレングリコールをさらに含む、請求項に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項10】
ステップ(a)において、スクラップポリマー組成物を粉砕し、次いで前記樹脂と混合することをさらに含む、請求項に記載の押出ブロー成形方法。
【請求項11】
コポリエステルを含む押出ブロー成形容器であって、前記コポリエステルが、
(a)ポリエステル組成物中のジカルボン酸残基の総モル%に基づいて95~100モル%のジカルボン酸残基を含む芳香族ジカルボン酸成分と、
(b)グリコール成分であって、
(i)ポリエステル組成物中のグリコール残基の総モル%に基づいて90~98モル%のエチレングリコール残基、および
(ii)以下の式Iによって表される2~10モル%の脂肪族分岐グリコール:
【化3】

(式中、Rは、水素原子または1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基であり、
aおよびbは各々独立して1~2の整数である)
を含む、グリコール成分と、
(c)分岐コモノマーと
を含む、押出ブロー成形容器。
【請求項12】
前記ジカルボン酸残基が、テレフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、またはそれらの混合物を含み、前記グリコール残基が、エチレングリコール、ジエチレングリコール、またはそれらの混合物を含む、請求項11に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項13】
ASTM D 2463-95、手順B、ブルーストン階段法に従って4週間後に試験したとき、160cmを超える落下高さをさらに含む、請求項11に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項14】
前記コポリエステルが、少なくとも約0.90dl/gの固有粘度をさらに含む、請求項11に記載の押出ブロー成形容器。
【請求項15】
前記容器がボトルである、請求項11に記載の押出ブロー成形容器。
【国際調査報告】