(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】真菌バイオマスの生産
(51)【国際特許分類】
C12N 1/14 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
C12N1/14 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538871
(86)(22)【出願日】2021-12-24
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021087661
(87)【国際公開番号】W WO2022136708
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523232713
【氏名又は名称】ムシュラブス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】ティボー ゴダール
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル アレジャンドロ デルガド モンタファー
(72)【発明者】
【氏名】ギード アルバネーゼ
(72)【発明者】
【氏名】マゼン リズク
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA71X
4B065BB26
4B065CA41
4B065CA55
(57)【要約】
本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法並びにそれによって得られる発酵培地と、少なくとも1種の真菌株の深部発酵による真菌バイオマスを生産するための方法並びにそれによって得られる真菌バイオマスと、本発明のインスタント真菌バイオマスを使用することによって得られる真菌ベースの食品と、に関する。好ましくは醸造粕から生産されるインスタント発酵培地は、とりわけ、Pleurotus pulmonariusの深部発酵による真菌バイオマスの生産において特に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種のリグノセルロース材料から真菌発酵培地を生産するための方法であって、前記方法は、
(a)少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出と、
(b)(a)で得られた水性抽出物(複数可)と、真菌培養のための任意選択の少なくとも1種の栄養補充剤との組み合わせと、を含む、方法。
【請求項2】
前記工程(a)は、蒸気による前加水分解の工程と、それに続く液体の水による洗浄工程と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
蒸気による前記前加水分解中に、前記リグノセルロース材料を、100℃超の温度、好ましくは150℃~300℃の温度、より好ましくは160℃~180℃の温度、更により好ましくは約170℃の温度で、最長20分の時間、好ましくは5~15分の時間、より好ましくは7.5~15分の時間、蒸気と接触させる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記リグノセルロース材料は、蒸気による前加水分解後すぐに、好ましくは50℃~100℃の温度、より好ましくは50℃~70℃の温度、更により好ましくは50℃~60℃の温度の液体の水で洗浄される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
(a)は、1.25~220バールの圧力、好ましくは2~220バールの圧力で、90~374℃の温度で、10~200分の時間、水を用いて行われる、
かつ/又は
(a)は、pHが2.0~12.0、好ましくは3.0~10.0、より好ましくは4.0~8.0、最も好ましくは5.0~8.0の水を用いて行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項6】
前記工程(b)の前に、(a)で得られた前記水性抽出物(複数可)を、
i.タンパク質が、好ましくは凝集によって又はCO
2による沈殿によって前記水性抽出物(複数可)から分離され、
ii.任意選択で、iで得られたタンパク質を、好ましくは、特にアルカラーゼ、パパイン、プロテイナーゼK、及びトリプシンから選択されるタンパク質分解酵素を用いることによって、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、加水分解し、
iii.i.の生成物中に存在するC5-多糖が、任意選択でヘミセルラーゼを使用して単糖、特にキシロース及び/又はアラビノースに加水分解され、
iv.工程ii.及び/又は工程iii.の生成物(複数可)が、工程(b)において更に使用されるように、処理する工程を更に含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
(a)は、
(a1)0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが任意選択で補充された水を用いて、90~374℃、好ましくは100~220℃、より好ましくは100~180℃の温度で、10~200分の時間、前記工業副流物及び/又は前記農業副流物を抽出する工程と、
(a2)120~220℃、好ましくは130~200℃の温度で、5~150分の時間、水を用いて前記工業副流物及び/又は前記農業副流物を抽出する工程と、を含み、
好ましくは、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質が、好ましくは凝集によって又はCO
2による沈殿によって単離され、
任意選択で、前記工程(b)の前に、(a1)で得られた前記水性抽出物中に存在するタンパク質を加水分解する工程を更に含み、
任意選択で、前記工程(b)の前に、(a2)で得られた水性抽出物中に存在するC5-多糖を単糖に更に加水分解する工程を更に含み、好ましくは、特にキシラナーゼ、β-グリコシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、及びβ-キシロシダーゼから選択されるヘミセルラーゼが、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(a)で得られた固体リグノセルロース残渣をセルラーゼで酵素加水分解し、加水分解の液体生成物を固体残渣から分離する工程(a’)を更に含み、好ましくは、(a’)は、15~100℃の温度で、かつ/又は3.0~8.0のpHで、かつ/又は10~200時間の時間、行われる、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記リグノセルロース材料は、工業副流物及び/又は農業副流物である、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記工業副流物及び/又は前記農業副流物は、固体副流物である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記固体副流物は、醸造粕、穀物ふすま、綿、綿実殻、バガス、カカオ殻、カカオ、カカオポッド、ヒマワリ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ヤシ油、オリーブからの綿及びオイルプレスケーキ、堅果由来の堅い殻及び殻、草及び葉の廃棄物、木材チップ、コーヒー粉、コーヒー殻、コーヒー銀皮、ナタネ及び/又はダイズパルプ(「おから」)のようなダイズ産業由来の副産物から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記リグノセルロース材料は、醸造粕である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記工程(a)の前に、超臨界CO
2を用いて脂質を抽出し、前記脂質を機械的に分離する工程を更に含む、
かつ/又は
工程(b)の前に、(a)の前記水性抽出物及び/若しくは任意選択で(a’)の前記液体生成物中に存在する、フルフラール及び/若しくはヒドロキシメチルフルフラールなどの毒性化合物を除去する工程を更に含む、
かつ/又は
工程(a’)の固体リグニン残渣を回収する工程を更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項6又は7に従って得られるタンパク質組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法で得られる真菌発酵培地。
【請求項16】
前記培地は、特にアンモニア、尿素、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー及びペプトンから選択される窒素源(複数可)が更に補充されている、請求項15に記載の真菌発酵培地。
【請求項17】
前記培地は、乾燥形態に更に処理される、請求項16又は17に記載の真菌発酵培地。
【請求項18】
C5-多糖は、前記培地中の全糖の少なくとも50%を構成し、好ましくは、C5-多糖は、前記培地中の全糖の少なくとも65%を構成し、より好ましくは、C5-多糖は、前記培地前記培地中の全糖の少なくとも80%を構成する、請求項15~17のいずれか一項に記載の真菌発酵培地。
【請求項19】
少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、前記方法は、
(a)請求項15~18のいずれか一項に記載のpH調整された前記真菌発酵培地を、真菌菌糸体を増殖させるのに好適な発酵槽に提供することと、
(b)真菌菌糸体を培養することと、
(c)前記真菌バイオマスを回収し、濃縮して、2~100%の乾燥真菌バイオマス含量を達成することと、を含み、好ましくは、工程(b)は、15~40℃の温度で、かつ/又は3.0~8.5のpHで、かつ/又は12~240時間の時間、行われる、方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種の真菌株は、食用真菌である、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の真菌株は、Basidiomycota及びAscomycotaから選択される、請求項19又は20に記載の方法。
【請求項22】
前記少なくとも1種の真菌株は、Pezizomycotina及びAgaromycotinaから選択される、請求項19~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1種の真菌株は、Peziomycetes、Agaricomycetes及びSordariomycetesから選択される、請求項19~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記少なくとも1種の真菌株は、Pezizales、Boletales、Cantharellales、Agaricales、Polyporales、Russulales、Auriculariales、Sordoriales及びHypocrealesから選択される、請求項19~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種の真菌株は、Morchellaceae、Tuberaceae,Pleurotaceae、Agaricaceae、Marasmiaceae、Cantharellaceae、Hydnaceae、Boletaceae、Meripilaceae、Polyporaceae、Strophariaceae、Lyophyllaceae、Tricholomataceae、Omphalotaceae、Physalacriaceae、Schizophyllaceae、Sclerodermataceae、Ganodermataceae、Sparassidaceae、Hericiaceae、Bondarzewiaceae、Cordycipitaceae、Auriculariaceae、Sordoriaceae、Nectriaceae及びFistulinaceaeから選択される、請求項19~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記少なくとも1種の真菌株は、P.pulmonarius P.ostreatus、P.citrinopileatus若しくはP.salmoneostramineusであるか、又は前記少なくとも1種の真菌株は、M.esculenta、M.angusteps若しくはM.deliciosaである、請求項19~25のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記少なくとも1種の真菌株は、P.pulmonarius又はP.ostreatusである、請求項19~26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記深部発酵は、バッチプロセス、流加プロセス又は連続プロセスとして操作される、請求項19又は27に記載の方法。
【請求項29】
2種以上の真菌株は、共発酵される、請求項19~28のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
請求項19~29のいずれか一項に記載の方法に従って生産される真菌バイオマス。
【請求項31】
前記真菌株は、Pleurotaceaeから選択され、特に、前記真菌株は、P.pulmonarius P.ostreatus、P.citrinopileatus若しくはP.salmoneostramineusであるか、又は前記少なくとも1種の真菌株は、Morchellaceaeから選択され、特に、前記真菌株は、M.esculenta、M.angusteps若しくはM.deliciosaである、請求項30に記載の真菌バイオマス。
【請求項32】
真菌ベースの食品の生産における、請求項30又は31に記載の真菌バイオマスの使用。
【請求項33】
請求項15に従って回収された前記固体リグニン残渣は、前記真菌ベースの食品の生産において更に使用される、請求項32に記載の使用。
【請求項34】
請求項14に記載のタンパク質組成物は、前記真菌ベースの食品の調製において使用される、請求項32又は33に記載の使用。
【請求項35】
請求項30又は31に記載の真菌バイオマスを使用して調製される真菌ベースの食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料(例えば、工業副流物及び/又は農業副流物)から真菌発酵培地を生産するための方法並びにそれによって得ることができる発酵培地と、少なくとも1種の真菌株の深部発酵による真菌バイオマスを生産するための方法並びにそれによって得ることができる真菌バイオマスと、本発明のインスタント真菌バイオマスを使用することによって得ることができる真菌ベースの食品と、に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、動物からの食品の生産は、その持続不可能性並びに動物福祉についての高まる懸念のために注目を集めている。気候変動に関連して、CO2排出を削減し、動物の苦痛を軽減する目的で、多くの植物ベースの肉代替物が出現した。しかしながら、これらの製品は、現在、3つの主要な単作物(ダイズ、エンドウマメ及びイネ)から生産されており、その栽培は多くの土地及び水分を必要とし、化学薬剤(殺虫剤及び肥料)に大きく依存し、これらの作物から単離されたタンパクのみが食肉代替物の生産に使用されるため、多くの廃棄物を生じる。加えて、これらの単離物は強い苦味を有し、固有のテクスチャを有さず、したがって、食品におけるそれらの使用は、更なる加工工程、並びに香味剤、調質剤、及び/又は着色剤を含むがこれらに限定されない更なる成分の添加を必要とする。したがって、植物性代替物は必ずしも健康ではなく、それらの生産は、伐採、生物多様性の著しい低下、土壌汚染、及び/又は水質汚染などの他の環境問題を引き起こす。
【0003】
発酵プロセスを使用する食品の生産は、これらの欠点のいくつかに対処すると思われる。それは、発酵槽が垂直に拡大され得るので、土地のより良好な使用を可能にし、都市又は農村において局所的に食品の生産を可能にする。更に、それらは、植物タンパク質よりも生成物1キロ当たりより少ない水しか必要とせず、濾過及び処理技術の継続的な開発及び改善により、この水はプロセスにおいて再利用され得る。新規な発酵プロセスを使用する新しい食品としての真菌菌糸体の生産が本明細書において開示され、増殖培地並びに最終生成物は、リグノセルロース材料、例えば、工業副流物及び/又は農業副流物を原料として使用して少なくとも部分的に生産される。その意味で、本明細書に記載されるプロセスは、産業、食品及び農業廃棄物が最小限に低減され、資源が最大限に使用される循環経済を構築する努力に寄与する。従来の植物単離物の生産に対する真菌発酵の別の利点は、得られた原材料-真菌バイオマスに含まれ、これは、天然に、所望の繊維性テクスチャを既に有し、完全タンパク質だけでなく、消費者に健康な製品を提供する食物繊維、ビタミン及び微量栄養素を有するバランスのとれた栄養プロファイルをもたらす。特に、既知の食用キノコからの子実体から単離された菌糸体の使用は、種(例えば、モレル、トリュフ又はボタンキノコ)間で少し変化する、この群に特異的な典型的なキノコ旨味を更にもたらし、成分の非常に短いリストを有する清潔で美味な製品の生産を可能にする。
【0004】
独国特許第10201410884号には、リグノセルロース基質を超臨界流体又は超臨界流体混合物で抽出する工程を含む、リグニンを脱臭するためのプロセスが記載されている。
【0005】
独国特許第102016110653号は、真菌の菌糸体を含む食品/発酵製品に関する。
【0006】
中国特許第101838673(A)号は、コメ蒸留粕を補充した液体発酵培地中でのBasidiomycota科の真菌の発酵を開示している。
【0007】
中国特許第1078872(A)号は、他の成分の中でもとりわけ蒸留残渣を含む発酵培地中での真菌の培養を含む飲料を調製するための方法を開示している。
【0008】
国際公開第2017/208255(A1)号は、蒸留残渣を含む培地中で培養することによる(Ascomycota門の)食用真菌を調製する方法に関する。
【0009】
国際公開第2002090527(A1)号は、食用真菌(例えば、Fusarium種)の調製方法に関する。
【0010】
国際公開第2017/181085(A1)号は、真菌菌糸体を生産するための特定の方法を開示している。
【0011】
国際公開第2019/046480(A1)号は、糸状菌バイオマットを増殖させることによる食用糸状菌製剤の調製に関する。
【0012】
露国特許出願公開第2006/126554号は、蒸留所の蒸留廃液由来の廃棄物に基づく栄養培地上で食物及び飼料バイオマスを生産する方法に関し、これは、パン酵母Saccharomyces cerevisiaeと、例えば、とりわけ、Pleurotus ostreatus、Pleurotus pulmonaiusを含む群から選択される食用担子菌類との連続培養を含む。
【0013】
米国特許第5,846,787号は、セルロース含有材料を処理するためのプロセスを開示している。
【0014】
Papadaki(doi:10.3390/microorganisms7070207)は、ブドウ搾りかすを副流物として使用する固体状態発酵及び半液体発酵による、Pleurotus種(P.pulmonarius及びP.ostreatus)の培養を開示している。
【0015】
Kim Min-Keunら(Korean Journal of Mycology,DOI:10.4489/KJM.2012.40.1.049)は、原料の熱水抽出物を使用するPleurotus eryngiiの菌糸体培養のための最適培地の開発を開示している。記載されたプロセスは、子実体の生産のための固体状態発酵であり、蒸気は使用されない。
【0016】
Platt M.W.ら(Eur.J.Appl.Microbiol.Biotechnol vol.17,pages 140-142,1983)は、Pleurotus ostreatus sp.‘florida’によるわらの分解の増加を開示している。開示されるプロセスは、固体状態発酵である。
【0017】
Beltran-Garcia M.J.ら(Revista de la Socidad Quimica de Mexico,vol 45,pages 77-81,2001)は、トウモロコシ茎からのリグニン分解産物が担子菌キノコ菌糸の放射状成長を顕著に増強することを開示している。
【0018】
文献中国特許第104 446 687(A)号は、tremella aurantialba深部発酵のための特定の液体培養培地を開示している。この文献に開示されている稲わらからの抽出物は、最終培地の4%を超えて含まないことに留意されたい。
【0019】
文献中国特許第108 203 693(A)号は、ある特定のRhizopus oryzae種培養培地を開示している。
【0020】
文献韓国特許第2013/0057507号は、Cordyceps militarisのある特定の培養方法を開示している。
【0021】
文献スペイン特許第2’370’215号は、真菌培養のある特定の手段を開示している。
【0022】
文献米国特許第3,576,720号は、コーヒーベリー廃棄物からトルラ酵母を連続的に生産するためのある特定のプロセスを開示している。
【0023】
Sidana Arushdeepら(Chinese Journal of Biology,vol 2014,pages 1 to 5)は、真菌培養のための潜在的な培地としてサトウキビバガスを開示している。
【0024】
文献米国特許第9,206,446号は、植物バイオマスからの特定の抽出方法を開示している。
【発明の概要】
【0025】
リグノセルロース材料、好ましくは農業廃棄物及び/又は産業廃棄物、本明細書では工業副流物及び/又は農業副流物(複数可)を利用する手段及び方法は、費用効率が高く、より持続可能であるので、特に望ましい。FAO定義による完全タンパク質のアミノ酸組成を反映するアミノ酸組成を有する真菌バイオマス、したがって食品を得ることにつながる方法が更に特に望ましい(www.fao.org、https: //en.wikipedia.org/wiki/Complete_protein)。
【0026】
他の微生物、例えば、細菌による汚染に耐性である真菌バイオマスの生産方法が更に特に望ましい。したがって、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物(複数可)(すなわち、廃棄物)を使用することによって得ることができる、細菌による汚染に耐性の真菌発酵培地が特に望ましい。
【0027】
本発明の目的は、真菌ベースの食品の生産のための改善された手段及び方法、リグノセルロース材料、好ましくは農業副流物及び/又は工業副流物(複数可)からの真菌発酵培地の生産のための方法、並びに真菌ベースの食品の生産において使用するための真菌バイオマスの生産のための方法及び手段を提供することであった。
【0028】
本明細書に記載の課題は、以下に記載され、特許請求の範囲で特徴付けられる実施形態によって解決される。
【0029】
本発明は、以下の実施形態に要約される。
【0030】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、当該方法が、(a)少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出と、(b)(a)で得られた水性抽出物(複数可)と、真菌培養のための任意選択の少なくとも1種の栄養補充剤との組み合わせと、を含む、方法に関する。
【0031】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工程(a)が、蒸気による前加水分解工程と、それに続く液体の水による洗浄工程と、を含む、方法に関する。
【0032】
更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、蒸気による前加水分解中に、リグノセルロース材料を、100℃超の温度、好ましくは150℃~300℃の温度、より好ましくは160℃~180℃の温度、更により好ましくは約170℃の温度で、最長20分の時間、好ましくは5~15分の時間、より好ましくは7.5~15分の時間、蒸気と接触させる、方法に関する。
【0033】
更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、リグノセルロース材料が、蒸気による前加水分解後すぐに、好ましくは50℃~100℃の温度、より好ましくは50℃~70℃の温度、更により好ましくは50℃~60℃の温度の液体の水で洗浄される、方法に関する。
【0034】
更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、(a)が、10~220バールの圧力及び90~374℃の温度で、10~200分の時間、液体の水を用いて行われる、方法に関する。
【0035】
更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、(a)が、pHが2.0~12.0、好ましくは3.0~10.0、より好ましくは4.0~8.0、最も好ましくは5.0~8.0の水を用いて行われる、方法に関する。
【0036】
また更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工程(b)の前に、工程(a)で得られた水性抽出物(複数可)を、
i.タンパク質が、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって、水性抽出物(複数可)から分離され、
ii.任意選択で、iで得られたタンパク質を、好ましくは、特にアルカラーゼ、パパイン、プロテイナーゼK、及びトリプシンから選択されるタンパク質分解酵素を用いることによって、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、加水分解し、
iii.i.の生成物中に存在するC5-多糖が、任意選択でヘミセルラーゼを使用して単糖、特にキシロース及び/又はアラビノースに加水分解され、
iv.工程ii.及び/又は工程iii.の生成物(複数可)が、工程(b)において更に使用されるように、処理する工程を更に含む、方法に関する。
【0037】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、(a)が、
(a1)0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが任意選択で補充された水を用いて、90~374℃、好ましくは100~220℃の温度、より好ましくは110~180℃で、10~200分の時間、工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、
(a2)120~220℃の温度、好ましくは120~190℃で、5~150分の時間、水を用いて工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、を含む、方法に関する。
【0038】
また更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、(a1)において得られた水性抽出物中に存在するタンパク質が、好ましくは凝集によって又はCO2を用いた沈殿によって単離される、方法に関する。
【0039】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工程(b)の前に、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質を加水分解する工程を更に含む、方法に関する。
【0040】
また更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工程(b)の前に、(a2)で得られた水性抽出物中に存在するC5-多糖を、任意選択でヘミセルラーゼを使用して単糖に更に加水分解する工程を更に含む、方法に関する。
【0041】
更に別の特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、特にキシラナーゼ、β-グリコシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、及びβ-キシロシダーゼから選択されるヘミセルラーゼを、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用する、方法に関する。
【0042】
また更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、(a)で得られた固体リグノセルロース残渣をセルラーゼで酵素加水分解し、加水分解の液体生成物を固体残渣から分離する工程(a’)を更に含む、方法に関する。
【0043】
また更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、(a’)が、15~100℃の温度、好ましくは40~80℃の温度で、かつ/又は3.0~8.0のpHで、かつ/又は10~200時間の時間、行われる、方法に関する。
【0044】
また更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工業副流物及び/又は農業副流物が、固体副流物であり、好ましくは固体副流物が、醸造粕、穀物ふすま、綿、綿実殻、バガス、カカオ殻、カカオ、カカオポッド、ヒマワリ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ヤシ油、オリーブからの綿及びオイルプレスケーキ、堅果由来の堅い殻及び殻、草及び葉の廃棄物、木材チップ、コーヒー粉、コーヒー殻、コーヒー銀皮、ダイズパルプ(「おから」)のようなダイズ産業からの副産物及び/又はナタネから選択される、方法に関する。
【0045】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、超臨界CO2を使用して脂質を抽出する工程と、工程(a)の前にその脂質を機械的に分離する工程と、を更に含む、方法に関する。
【0046】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工程(b)の前に、(a)の水性抽出物中及び/又は任意選択で(a’)の液体生成物中に存在するフルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラールなどの毒性化合物を除去する工程を更に含む、方法に関する。
【0047】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、工程(a’)の固体リグニン残渣を回収する工程を更に含む、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に関する。
【0048】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、工程(b)において、本発明に従って得られたタンパク質組成物が更に補充される、方法に関する。
【0049】
更なる実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは本発明の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って得られるタンパク質組成物に関する。
【0050】
更なる実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは本発明の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法において得られる真菌発酵培地に関する。
【0051】
特定の実施形態において、本発明は、特にアンモニア、尿素、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー及びペプトンから選択される窒素源(複数可)、並びに/又は特にグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、ガラクトース、デキストロース、グリセロール及び糖蜜から選択される炭素源(複数可)、並びに/又は微量元素並びに/又はビタミンが更に補充された真菌発酵培地に関する。
【0052】
更なる特定の実施形態において、本発明は、乾燥形態に更に加工された真菌発酵培地に関する。
【0053】
更なる実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、当該方法が、
(a)本発明のpH調整された真菌発酵培地を、真菌菌糸体を増殖させるのに好適な発酵槽に提供することと、
(b)真菌菌糸体を培養することと、
(c)真菌バイオマスを回収し、濃縮し、2~100%の乾燥真菌塊含量を達成することと、を含む、方法に関する。
【0054】
特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、工程(b)が、15~40℃の温度で、かつ/又は3.0~8.5のpHで、かつ/又は12~240時間の時間、行われる、方法に関する。
【0055】
更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、食用真菌である、方法に関する。
【0056】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、Basidiomycota及びAscomycotaから選択される、方法に関する。
【0057】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、Pezizomycotina及びAgaromycotinaから選択される、方法に関する。
【0058】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、Peziomycetes、Agaricomycetes及びSordariomycetesから選択される、方法に関する
【0059】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、Pezizales、Boletales、Cantharellales、Agaricales、Polyporales、Russulales、Auriculariales、Sordoriales及びHypocrealesから選択される、方法に関する。
【0060】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、Morchellaceae、Tuberaceae、Pleurotaceae、Agaricaceae、Marasmiaceae、Cantharellaceae、Hydnaceae、Boletaceae、Meripilaceae、Polyporaceae、Strophariaceae、Lyophyllaceae、Tricholomataceae、Omphalotaceae、Physalacriaceae、Schizophyllaceae、Sclerodermataceae、Ganodermataceae、Sparassidaceae、Hericiaceae、Bondarzewiaceae、Cordycipitaceae、Auriculariaceae、Sordoriaceae、Nectriaceae及びFistulinaceaeから選択される、方法に関する。
【0061】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、P.pulmonarius、P.ostreatus、P.citrinopileatus又はP.salmoneostramineusである、方法に関する。
【0062】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、M.esculenta、M.angusteps又はM.deliciosaである、方法に関する。
【0063】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、少なくとも1種の真菌株が、F.venenatum、N.crassa又はN.intermediaである、方法に関する。
【0064】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、深部発酵が、バッチプロセス、流加プロセス又は連続プロセスとして操作される、方法に関する。
【0065】
また、更なる特定の実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、2種以上の真菌株が、共発酵される、方法に関する。
【0066】
更なる実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法に従って生産される、真菌バイオマスに関する。
【0067】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法に従って生産される真菌バイオマスであって、真菌株が、Pleurotaceaeから選択され、特に真菌株が、P.pulmonarius、P.ostreatus、P.citrinopileatus又はP.salmoneostramineusである、真菌バイオマスに関する。
【0068】
更なる特定の実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法に従って生産された真菌バイオマスであって、真菌株が、Morchellaceaeから選択され、特に真菌株が、M.esculenta、M.angusteps又はM.deliciosaである、真菌バイオマスに関する。
【0069】
更なる実施形態において、本発明は、真菌ベースの食品の生産における本発明の真菌バイオマスの使用に関する。
【0070】
特定の実施形態において、本発明は、真菌ベースの食品の生産における本発明の真菌バイオマスの使用に関し、本発明に従って回収された固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の生産において更に使用される。
【0071】
更なる特定の実施形態において、本発明は、真菌ベースの食品の生産における本発明の真菌バイオマスの使用であって、本発明の少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って回収された固体リグニン残渣が、真菌ベースの食品の生産において更に使用される前に、例えば、ミリング及び/又は粉砕によって更に処理される、使用に関する。
【0072】
更なる特定の実施形態において、本発明は、真菌ベースの食品の生産における本発明の真菌バイオマスの使用であって、本発明の少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って回収されたタンパク質組成物が、真菌ベースの食品の調製において使用される、使用に関する。
【0073】
更なる実施形態において、本発明は、本発明の真菌バイオマスを使用して調製される真菌ベースの食品に関する。
【0074】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の真菌バイオマスを使用して調製される真菌ベースの食品に関し、本発明の少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って回収される固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の調製において使用される。
【0075】
特定の実施形態において、本発明は、本発明の真菌バイオマスを使用して調製される真菌ベースの食品であって、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って回収されるタンパク質組成物が、真菌ベースの食品の調製において使用される、真菌ベースの食品に関する。
【0076】
定義
C5-多糖は、本明細書において、C5-糖を含む多糖として定義される。
【0077】
C5多糖画分は、本明細書において、好ましくは、総糖含量に対するC5-糖の重量/重量比として理解される、少なくとも50%のC5糖(モノマーとして存在してもよく、かつ/又はオリゴ及び/若しくは多糖に含まれてもよい)の含量、より好ましくは少なくとも65%のC5糖の含量として定義される。C5糖又はペントースは、本明細書において、5個の炭素原子を有する糖として理解される。C5多糖画分は、他の糖、特にC6糖(ヘキソースとも呼ばれる6個の炭素原子を有する糖)を、モノマーとして、並びに/又は多糖及び/若しくはオリゴ糖内に含まれて含有し得ることに留意されたい。
【0078】
C5-複合多糖画分は、当該C5-糖の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは80%、更により好ましくは少なくとも90%が多糖及び/又はオリゴ糖の形態である、本明細書で定義されるC5-多糖画分に関する。
【0079】
多糖は、本明細書において、グリコシド結合を介して互いに連結された2つ以上の糖部分を含む分子として理解される。本明細書で使用される場合、好ましくはオリゴ糖は、2~20個の糖部分を有する多糖を指す。好ましくは、多糖は少なくとも21個の糖部分を有する。
【0080】
食品又は飼料製品は、本明細書において、経口摂取に好適な任意の製品、好ましくは食品、飼料、飲料又は食品若しくは飼料のためのサプリメントとして定義される。したがって、食品又は飼料製品は、好ましくは、意図される動物種に許容される味を有するべきである。ヒトが消費するための食品は、好ましくは心地よい味を有する。好ましい味は、例えば、試験パネルによって決定され得る。当業者によって理解されるように、飼料又は食品が意図される動物に依存して、それは異なる形態を有する。
【0081】
本明細書で理解される機能性食品は、単純な栄養を超え、宿主の健康及び/若しくは健康維持を改善する、かつ/又は宿主における病的状態を予防するための少なくとも1種の特定の標的作用を有する任意の食品として定義される。
【0082】
本明細書で理解される菌糸体は、キノコ子実体又は真菌の栄養部分のいずれかから単離された細胞から成長した菌糸の塊(又はバイオマス)を指す。
【0083】
単糖を含む多糖:多糖は、単糖を含むと言われ、当該単糖は、共有結合して当該多糖を形成する。多糖を加水分解すると、当該多糖を遊離形態で形成した単糖が得られる。したがって、多糖の単糖含量は、多糖を加水分解し、個々の単糖の存在を測定することによって決定することができる。多糖の混合物の単糖含量は、混合物全体の単糖含量を決定することによって決定される。
【0084】
本明細書で使用される「ポリペプチド」という用語は、タンパク質、ペプチド及びポリペプチドを包含し、当該タンパク質、ペプチド又はポリペプチドは翻訳後修飾されていてもされていなくてもよい。翻訳後修飾は、例えば、リン酸化、メチル化、グリコシル化であり得る。
【0085】
Roとも呼ばれる苛酷度係数は、本明細書では以下のように定義される。
【0086】
【数1】
式中、t
Rは、プロセスの時間としても理解される保持時間(分で表される)であり、Tは℃で表される温度である。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【
図1】本発明の真菌発酵培地を用いて行った汚染実験の概要を示す。
【
図2】参照培地上及び本発明による培地上でP.pulmonariusのバイオマスを増殖させることによって得られた菌糸体から調製されたミートボールの比較を示す。両方のミートボールのレシピは同一である。唯一の違いは、調製に使用された菌糸体である。
【
図3】1工程熱抽出及び2工程熱抽出後のリグノセルロース材料の比較の図である。左は、1回だけ熱的に処理された場合の酵素加水分解後の材料であり、右は、2回前処理された場合の加水分解された材料である。本発明者らは、2回前処理した材料がより「粉末状」であるのに対して、他のものについては、植物材料の繊維構造が依然として非常に透明であることを明確に見ることができる。2回前処理された材料の色(より暗い)はまた、我々がより多く抽出し、リグニン(非常に暗い)「のみ」が残っていることを示す。
【
図4】本発明の方法に従って醸造粕から得られた培地上で成長させた菌糸体から得られたミートボールと、参照培地から得られたミートボールとを比較する感覚パネルデータを要約するプロットである。
【
図5】熱処理の苛酷度と、得られた抽出物からのタンパク質中のリシン及びアスパラギン酸及びアスパラギンのパーセンテージとの間の関係を示すプロットである。苛酷度は、抽出物中の、したがってその結果得られる培地中の特定のアミノ酸の濃度を設定するために使用することができる。これは、設計された真菌バイオマスの生産のための設計された抽出物の作製を可能にする。
【発明を実施するための形態】
【0088】
一実施形態において、本発明は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に関する。本方法は、(a)少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出;及び(b)(a)で得られた水性抽出物(複数可)と、真菌培養のための任意選択の少なくとも1種の栄養補充剤との組み合わせの工程を含む。
【0089】
少なくとも1種のリグノセルロース材料は、好ましくは、本明細書において、乾燥植物物質を含む材料として定義される。好ましくは、当該リグノセルロース材料は、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを含む。好ましくは、少なくとも1種のリグノセルロース材料は、本明細書で定義される少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物である。更に好ましくは、当該リグノセルロース材料は、好ましくは固体である。
【0090】
リグノセルロース材料の例としては、醸造粕、穀類ブラン、綿、綿実殻、バガス、カカオ殻、カカオ、カカオ鞘、ヒマワリ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ヤシ油、オリーブからの綿及び油圧搾粕、堅果からの殻及び殻、草及び葉の廃棄物、木材チップ、コーヒー粉、コーヒー殻、コーヒー銀皮、ナタネ及びダイズパルプ(「おから」)のようなダイズ産業からの副産物が挙げられる。
【0091】
少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物は、特に限定されず、当業者に公知の任意の工業副流物及び/又は農業副流物であり得る。好ましくは、少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物は、1つの工業副流物及び/又は農業副流物を指す。好ましくは、工業副流物及び/又は農業副流物は固体副流物である。本明細書で定義されるように、固体副流物という用語は、液体として取り扱うことができず、例えば、機械的な力を加えることなく流れることができる液体副流物、例えば、糖蜜又は蒸留残渣とは対照的に、液体として取り扱うことができない、例えば、ポンプ輸送することができない任意の副流物に関する。固体副流物の非限定的な例を以下に示す。更に好ましくは、固体副流物は、醸造粕、穀物ブラン、綿、綿実殻、バガス、カカオ殻、カカオ、カカオポッド、ヒマワリ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ヤシ油、オリーブからの綿及びオイルプレスケーキ、堅果由来の堅い殻及び殻、草及び葉の廃棄物、木材チップ、コーヒー粉、コーヒー殻、コーヒー銀皮、ナタネ及び/又はダイズパルプ(「おから」)のようなダイズ産業由来の副産物から選択される。更により好ましくは、固体副流物は、醸造粕である。
【0092】
少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物は、2種以上のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を指すこともできる。例えば、それは、2種、3種、4種又はそれ以上のリグノセルロース材料、例えば、工業副流物及び/又は農業副流物を指してもよい。好ましくは、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物は、醸造粕を含む。より好ましくは、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物は、醸造粕である。
【0093】
本明細書において、醸造粕は、好ましくは醸造産業の残滓又は副流物として理解される。好ましくは、醸造粕は、すりつぶし工程後に残留し、好ましくは10%~30%の乾物含量を有する材料である。しかしながら、本明細書に記載される乾物含量は、限定することを意味するものではなく、当業者は、乾物含量が、前処理において、例えば、圧縮によって、乾燥によって、又は当業者に公知の他の方法によって増加され得ることを認識している。更に、他の産業に由来する醸造粕(例えば、食品生産の副流物として得られる醸造粕)も、本発明の範囲内で使用することができる。
【0094】
使用される工業副流物及び/又は農業副流物に応じて、異なる特性を有する抽出物及び真菌発酵培地を得ることができることに留意すべきである。
【0095】
本発明者らは、驚くべきことに、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物が、培地の調製において本明細書に記載されるように使用される場合、当該培地上で増殖させたバイオマスを使用して作製された得られる食品の味、栄養プロファイル又は色のいずれかが改善されることを見出した。
【0096】
別の好ましい実施形態において、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物は、カカオ殻である。カカオ殻は、本明細書ではカカオ粉末生産の残滓として理解され、この材料は典型的には乾燥している(すなわち、材料中の少なくとも90%の乾燥質量又は乾燥バイオマス)。それは、カカオ豆を包含する殻を含む。本発明の方法、特に少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産する方法を適用すると、重金属汚染が乾燥粉末を食品用途に適さないものにするという技術的先入観にもかかわらず、カカオ殻を食品生産プロセスにおいて使用することができる。
【0097】
リグノセルロース材料、好ましくは本明細書で使用される工業副流物及び/又は農業副流物は、好ましくは上記で定義された工程(a)に供される前に、好ましくは熱的及び/又は機械的前処理を受けることができる。熱的及び/又は機械的前処理工程の目的は、(a)とも呼ばれる後続の抽出工程(複数可)の効率を高めることである。
【0098】
したがって、機械的前処理において、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物は、細断されるか、又はそうでなければより小さな断片に分解される。この工程は当業者に公知であり、使用される装置及び正確な手順は原料の乾物に基づいて選択される。例えば、ビーズミル、ピンミル、又は原料の粒径の低減をもたらす任意の他の種類の機械的処理が、本発明の方法において有用である。
【0099】
更にしたがって、リグノセルロース材料、好ましくは本明細書で使用される工業副流物及び/又は農業副流物は、100℃超の温度及び1バール超の圧力で蒸気、すなわち水と接触される。この工程は、熱前処理工程又は蒸気による前加水分解とも呼ばれる。
【0100】
好ましくは、リグノセルロース材料、好ましくは本発明に従って本明細書で定義される工業副流物及び/又は農業副流物は、本明細書で先に定義されたように、蒸気による前加水分解を受ける。好ましくは、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物は、100℃を超える温度、好ましくは150℃~300℃の温度、より好ましくは160℃~180℃の温度、更により好ましくは約170℃の温度で、最長20分の時間、好ましくは5~15分の時間、より好ましくは7.5~15分の時間、蒸気と接触される。
【0101】
好ましくは、蒸気による前加水分解の工程は、本発明の真菌発酵培地の生産方法の工程(a)の前に行うことができる。しかしながら、本発明による真菌発酵培地の生産方法の実施形態であって、上記で定義された蒸気による前加水分解が方法の工程(a)に含まれる実施形態も好ましい。
【0102】
任意に、リグノセルロース材料、好ましくは本明細書で使用される工業副流物及び/又は農業副流物は、洗浄、溶媒抽出、溶媒膨潤、粉砕、ミリング、蒸気前処理、爆発蒸気前処理、希酸前処理、熱水前処理、アルカリ前処理、石灰前処理、湿式酸化、湿式爆発、アンモニア繊維爆発、有機溶媒前処理、生物学的前処理、アンモニアパーコレーション、超音波、エレクトロポレーション、マイクロ波、超臨界CO2、超臨界H2O、オゾン、及びガンマ線照射から選択される方法に従って前処理を受けることができる。
【0103】
任意選択で、工程(a)の前に、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物中に存在する水を除去する。この工程は、好ましくは、少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物が醸造粕ではない本発明の方法の実施形態において実施される。このプロセスは当業者に公知であり、例えば、スクリュープレス(又は任意の他の適切なプレス)を使用して副流物をプレスすることによって行うことができる。あるいは、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物は、例えば、流動床乾燥機を使用することによって乾燥されてもよい。対流式オーブンをこの目的のために使用してもよい。好ましくは、本発明の方法において、そのようにして得られた水は廃棄され、本発明の方法において更に使用されない。しかしながら、それは回収され、予め熱前加水分解に付された材料を蒸気で洗浄するために使用され得る。
【0104】
好ましくは、工程(a)の前に、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物は、脂質抽出を受けることができる。リグノセルロース材料からの、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物からの脂質の除去は、当業者に公知の任意の方法に従って行うことができる。好ましくは、脂質は、独国特許第10201410884号に記載されているように、超臨界CO2による抽出によって除去することができる。抽出時に、脂質画分は、固体リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から分離され、これは更に処理される。このようにして得られた脂質画分は、本発明の他の方法において使用することができる。
【0105】
少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法によれば、本方法は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を水性抽出する工程(a)を含む。本明細書において、水性抽出は、好ましくは、液体の水による抽出として理解される。本発明の方法において、温度及び圧力は、好ましくは、ある場合には温度が100℃を超えるにもかかわらず、水が液体状態であるように選択される。当業者は、水の相図に基づいて、この位置が満たされるかどうかを決定することができる。
【0106】
本明細書で理解されるように、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出の工程(a)は、当業者に公知の好適な反応器内で行われる。少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物は、好ましくは5~70%重量/体積(w/v)、好ましくは10~55%(w/v)の固体投入で当該反応器に投入され、水、好ましくは液体の水で処理される。本明細書で理解される固体投入は、乾燥固体副流物(投入された材料)の全反応体積(抽出に使用される水及び少なくとも1種の固体副流物を含む)に対する重量比として定義され、好ましくは百分率として表される。投入される材料の重量は、本明細書では乾燥重量として理解される。本発明において必要とされる固体投入は、投入される材料及び反応器特性に依存する。当業者に理解されるように、投入される材料の量は、好ましくは、反応器内部の撹拌及び熱伝達に影響を及ぼすべきではない。それはまた、回収されなければならない液体抽出物の量並びにその組成に依存する。本明細書で理解されるように、反応器には、好ましくは、乾燥リグノセルロース系バイオマス(乾燥固体副流物とも呼ばれる)を最大55%w/vまで充填することができる。特定の実施形態において、代替的に、反応器は、好ましくは湿ったリグノセルロース系バイオマスで充填され得ることに留意されたい。当業者に公知のように、好ましい投入は、材料、すなわちリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物に依存する。例えば、醸造粕の好ましい投入量は5%~35%、より好ましくは約10~20%であり、カカオ殻の好ましい投入量は40%~50%である。当業者に更に公知のように、好ましい投入は、反応器のタイプ、及び投入される材料(すなわち、副流物のタイプ及びその処理)に依存する。例えば、機械的撹拌を伴う反応器は、磁気撹拌を伴うものよりも高い投入を取り扱うことが可能であり得る。
【0107】
蒸気による前加水分解が行われる場合、反応器には、リグノセルロース材料(例えば、工業副流物及び/又は農業副流物)のみを投入する必要がある。好ましくは、反応器は、上記で定義された好ましい固体投入が、蒸気による前加水分解に続く洗浄工程について計算されるように投入される。本明細書において、蒸気による前加水分解及びそれに続く洗浄工程(液体の水による洗浄)は、好ましくは同じ反応器中で行われることが理解されるべきである。
【0108】
好ましくは、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、2~220バール、より好ましくは10~220バールの圧力である。更により好ましくは、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、10~50バールの圧力である。更により好ましくは、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、40~50バールの圧力である。
【0109】
好ましくは、本明細書で定義される蒸気による前加水分解は、1~20バール、より好ましくは1~10バールの圧力で行われる。リグノセルロース材料が醸造粕である場合、前加水分解のための蒸気の圧力は、好ましくは4~15バールである。
【0110】
好ましくは、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、90~374℃の温度である。より好ましくは、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、100~350℃の温度である。更により好ましくは、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、100~250℃の温度である。
【0111】
抽出が180℃を超える温度で行われる特定の実施形態において、これらの条件下で形成されるフルフラールは、除去される必要があり、当業者に公知の方法に従って除去される。
【0112】
好ましい実施形態において、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、140℃~180℃の温度、及び/又は20~50バール、好ましくは35~50バール、より好ましくは40~50バールの圧力である。好ましくは、抽出は10~60分の時間で行われる。これらの条件は、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物が醸造粕である実施形態に特に適していることに留意されたい。これらの条件下では、フルフラールの生成は観察されないことに更に留意されたい。
【0113】
別の好ましい実施形態において、本明細書に記載の水性抽出工程で使用される水は、100~140℃の温度で、かつ/又は2~25バールの圧力である。好ましくは、抽出は、10~90分の時間で行われる。これらの条件は、少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物が使用済みカカオ殻である実施形態に特に適していることに留意されたい。これらの条件下では、フルフラールの生成は観察されないことに更に留意されたい。
【0114】
本発明の方法において、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出は、好ましくは10~200分の時間で行われる。より好ましくは、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出は、10~120分の時間で行われる。最も好ましくは、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出は、10~60分の時間で行われる。好ましくは、抽出に使用される水は液体形態で維持されるべきである。
【0115】
蒸気による前加水分解と、液体の水を用いて行われる抽出/洗浄工程とを組み合わせた抽出プロセスが特に好ましい。好ましくは、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物は、100℃を超える温度、好ましくは150℃~300℃の温度、より好ましくは160℃~180℃の温度、更により好ましくは約170℃の温度で、最長20分の時間、好ましくは5~15分の時間、より好ましくは7.5~15分の時間、蒸気と接触させられる。その後、そのように処理された固体は、好ましくは50℃~100℃の温度、より好ましくは50℃~70℃の温度、更により好ましくは50℃~60℃の温度で、液体の水で洗浄される。当該プロセスにおいて、好ましくは、単一の抽出物が工程(a)で生産される。好ましくは、当該抽出物は、上記のように、液体の水で洗浄した結果である。好ましくは、本明細書で定義される洗浄工程は、5~60分の時間で行われる。
【0116】
好ましくは、本明細書に記載される工程(a)は、上記のような蒸気による前加水分解、及び上記のような液体の水による洗浄のみを含む。
【0117】
本発明の一実施形態において、蒸気による前加水分解に使用される水は、希酸、例えば、1%w/w以下の当該酸を含んでもよい。0.2又は0.4%w/wのH2SO4の調製物が特に好適である。
【0118】
本発明の特定の実施形態において、工程(a)は、上記のような蒸気による前加水分解、上記のような液体の水による洗浄、及び好ましくはリグノセルロース残渣の更なる処理が行われる場合に行われる蒸気による前加水分解の第2工程を含んでもよい(第2の前加水分解工程の効果については
図3も参照)。
【0119】
本発明によれば、抽出の条件、特に抽出の温度、圧力、及び時間は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物に含まれる糖類の好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、又は少なくとも80%が水性抽出で回収されるように設定される。好ましくは、抽出の時間並びに抽出工程の数は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物中に含有されるC5-多糖の好ましくは少なくとも40%、より好ましくは少なくとも60%が水性抽出物中に回収されるように設定される。当業者によって理解されるように、抽出の時間は、更なる条件、特に適用される反応器(特に、本明細書で論じられるような利用可能な撹拌の文脈において)、並びに材料の特定のタイプ(少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物)に依存し得る。
【0120】
あるいは、抽出の条件、特に抽出の温度、圧力及び時間は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物中に含有されるタンパク質の好ましくは少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%又は少なくとも50%が水性抽出において回収されるように設定される。好ましくは、抽出の時間並びに抽出工程の数は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物に含まれるタンパク質の好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、より好ましくは少なくとも30%が水性抽出物中に回収されるように設定される。
【0121】
好ましくは、本発明によるリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出の工程(a)は、pHが2.0~12.0、好ましくは3.0~10.0、より好ましくは4.0~8.0、更により好ましくは5.0~8.0の水を用いて行われる。本明細書で理解されるpH値は、本明細書に開示されるように、抽出自体が異なる条件下で行われる場合であっても、1.0バールの圧力及び25℃の温度下で測定される。好ましくは、水が少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物と接触させて配置される前に、pHを調整する。本明細書では、本明細書に記載されるように、1%を超える最終濃度までの酸又は塩基の水への添加は、好ましくは回避されるべきであることが更に理解される。
【0122】
少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法において、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出の工程(a)は、2つ以上の抽出工程を含むこともできる。このような状況では、2つ以上の抽出物が生産される。好ましくは、工程(a)は、本明細書において(a1)及び(a2)と呼ばれる2つの抽出工程を含むことができる。好ましくは、工程(a1)が最初に実施され、工程(a2)がその後に実施される。
【0123】
好ましくは、工程(a1)は、90~374℃、より好ましくは100~220℃、更により好ましくは110~180℃の温度で、水を用いてリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を抽出することを含む。好ましくは、工程(a1)は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を、2~220バールの圧力、より好ましくは6~35バールの圧力、更により好ましくは20~35バールの圧力の水を用いて抽出することを含む。工程(a1)は、好ましくは10~200分の時間、より好ましくは10~60分の時間で行われる。好ましくは、本明細書の水には、0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが補充される。
【0124】
工程(a1)で得られた抽出物は、特に水にNaOHが補充されている場合、好ましくはリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から抽出されたタンパク質を含有する。工程(a1)で得られた抽出物は、高タンパク質抽出物と呼ばれることもある。好ましくは、工程(a1)で得られた抽出物中のタンパク質の含有量は、少なくとも5g/Lである。当該抽出物は、当業者に公知の任意の適切な分離技術によって、リグノセルロース材料、好ましくは固体の工業副流物及び/又は農業副流物(抽出後の当該材料の残渣として理解される)から分離される。好ましくは、デカンタ遠心分離機がこの目的のために使用される。固体残渣、すなわちリグノセルロース材料、好ましくは工程(a1)による水性抽出を受けた工業副流物及び/又は農業副流物は、この工程において更に生成される。このような固体生成物は、固体リグノセルロース残渣と呼ぶこともできる。
【0125】
好ましくは、工程(a1)で得られる当該抽出物は、本明細書で定義される(複合体)C5-多糖としてC5-糖を含む。好ましくは、C5糖の少なくとも50%が多糖類の形態であり、より好ましくはC5糖の少なくとも60%が多糖類の形態であり、更により好ましくはC5糖の少なくとも70%が多糖類の形態であり、更により好ましくはC5糖の少なくとも80%が多糖類の形態であり、更により好ましくはC5糖の少なくとも90%が多糖類の形態である。
【0126】
工程(a1)で得られた水性抽出物は、更に処理することができる。任意選択で、工程(a1)で得られた水性抽出物は、当業者に公知の技術によって固体残渣から分離される。任意選択で、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質は、好ましくは分離後に、当業者に公知の技術を使用することによって単離することができる。好ましくは、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質は、凝集によって又はCO2を用いた沈殿によって単離することができる。タンパク質を含む得られた生成物は、当業者に公知の適切な分離技術を使用することによって液体から分離され、本明細書に開示されるように、本発明の方法において更に適用され得る。タンパク質を含む得られた生成物は、本発明の方法に従って得ることができるタンパク質組成物とも呼ばれ得る。本明細書中で理解されるように、得られた生成物はまた、糖及び他の成分を含み得、その組成は、タンパク質に限定されることを意味しない。本明細書に記載のタンパク質の分離後に残った液体は、工程(a)で得られた抽出物として工程(b)で更に使用することができることに留意されたい。
【0127】
あるいは、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法は、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質を工程(b)の前に加水分解する工程を更に含んでもよい。この目的のために、(a1)で得られた抽出物をタンパク質分解酵素(プロテアーゼ、ペプチダーゼ)で更に処理して、アミノ酸及び/又はペプチドを含む抽出物を得る。加水分解の時間は、生成物の所望の組成に依存する。
【0128】
本発明の特定の実施形態において、タンパク質及び/又はアミノ酸及び/又はペプチドを含む得られた固体タンパク質生成物又は抽出物は、過剰な液体を除去し、生成物を長期保存に好適なものにするために、特に蒸発によって濃縮することができ、又は乾燥させることができる(例えば、凍結乾燥させることができる)。
【0129】
工程(a1)による水性抽出を受けた固体残渣、すなわちリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物、好ましくは醸造粕は、好ましくは本明細書で定義される工程(a2)に供される。好ましくは、工程(a2)は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を、120~220℃、より好ましくは130~200℃の温度で、水を用いて抽出することを含む。好ましくは、工程(a2)は、1.25バール~220バールの圧力、好ましくは2~220バールの圧力、より好ましくは6~35バールの圧力、更により好ましくは20~35バールの圧力で、水を用いるリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物の抽出を含む。工程(a1)は、好ましくは5~200分の時間、好ましくは10~200分の時間、より好ましくは10~100分の時間で行われる。
【0130】
本明細書で理解されるように、工程(a2)は、好ましくは、効率的な加水分解のためにセルロース構造を調製するために行われる。
【0131】
工程(a2)で得られた抽出物は、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から抽出されたC5-多糖を含有する。工程(a2)で得られた抽出物は、C5複合多糖画分と呼ばれることもある。好ましくは、当該画分は、本明細書で定義される(複合体)C5-多糖としてC5-糖を含む。好ましくは、C5糖の少なくとも50%が多糖類の形態であり、より好ましくはC5糖の少なくとも60%が多糖類の形態であり、更により好ましくはC5糖の少なくとも70%が多糖類の形態であり、更により好ましくはC5糖の少なくとも80%が多糖類の形態であり、更により好ましくはC5糖の少なくとも90%が多糖類の形態である。当該抽出物は、当業者に公知の任意の好適な分離技術によって、固体リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から(好ましくは抽出プロセス後のその残渣から)分離される。好ましくは、デカンタ遠心分離機がこの目的のために使用される。理解されるように、抽出プロセス後の当該残渣は、典型的には大部分がリグニンからなる。
【0132】
少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法は、任意選択で、工程(b)の前に、(a2)で得られた水性抽出物中に存在するC5-多糖を、任意選択でヘミセルラーゼを用いて単糖に更に加水分解する工程を更に含んでもよい。本明細書に開示されるように、特にキシラナーゼ、β-グリコシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、及びβ-キシロシダーゼから選択されるヘミセルラーゼは、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用される。
【0133】
当業者によって理解されるように、そのように調製された抽出物は、もはやC5-多糖を含まず、C5-糖は、好ましくは加水分解された形態で(好ましくは主に単糖として)存在する。
【0134】
本明細書に開示されるように、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法の工程(a)は、
(a1)任意選択で0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが補充された水を用いて、90~374℃、好ましくは100~220℃、より好ましくは100~180℃の温度で、5~200分の時間、好ましくは10~200分の時間、リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、
(a2)120~220℃、好ましくは130~200℃の温度で、5~150分の時間、水を用いてリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、を含んでもよい。
【0135】
当業者に公知のように、抽出条件はまた、苛酷度係数によって言及され、記載されてもよい。したがって、好ましくは、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法の工程(a)は
(a1)リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を、任意選択で0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが補充された水で抽出する工程であって、好ましくは、抽出の温度及び時間が、0.7~10.4、好ましくは1.0~5.8、より好ましくは1.0~4.7の苛酷度に対応する、工程と、
(a2)リグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物を水で抽出する工程であって、好ましくは、抽出の温度及び時間が、1.3~5.7、好ましくは1.6~5.1の苛酷度に対応する、工程と、を伴ってもよい。
【0136】
本明細書で定義されるように、本発明の方法の工程(a)を2つの工程(a1)及び(a2)として行うことによって、C5-多糖の回収率は、単一工程抽出と比較して改善される。好ましくは、本明細書で定義されるC5-多糖の少なくとも15%が回収される。更に、望ましくないフルフラールの生成が減少する。
【0137】
本発明者らは、本明細書に開示されるように工程(a)を2つの工程(a1)及び(a2)として実施することによって、その後の任意選択の酵素加水分解工程の効率が改善されることを実証した。
図3は、1回及び2回の加熱前処理工程後の材料の比較を示す。
【0138】
特定の実施形態において、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出の工程(a)は、いくつかの工程に分割されてもよい。本発明の方法の工程(a)を構成する各工程は、本明細書に記載されるように実施され得る。抽出の当業者に知られているように、工程(a)を構成する工程の数を増加させることは、抽出の収率の増加をもたらすことができ、これは、本明細書において、好ましくは、プロセスにおける回収された多糖及び/又は回収されたタンパク質のより高い総量として理解される。多糖類の回収率の増加はまた、工程(a’)の酵素処理後に、よりクリーンでより純粋なリグニン生成物をもたらし得る。更に、1つの抽出工程(a)がいくつかの工程に分割される場合、フルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラールを含む毒性物質の生成が著しく低減される。
【0139】
フルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラール及び/又は他の望ましくない化合物の望ましくない存在は、上記のように回避され得る。更に、望ましくないフルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラール及び/又は他の望ましくない化合物は、例えば、ガスストリッピングによって、ヘテロ共沸蒸留によって、又は液液抽出によって除去することができる。任意に、フルフラールを回収し、他の工業用途に使用してもよい。
【0140】
本発明は更に、工程(b)の前に(a)で得られた水性抽出物(複数可)を処理する工程を更に含む、少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に関する。
【0141】
工程(b)の前に(a)で得られた水性抽出物(複数可)を処理する工程は、本明細書で理解されるように任意の工程であり、好ましくは、(a)の水性抽出物からのタンパク質の分離を含み得る。目的に適した、当業者に公知の任意の分離方法を、本発明の方法において使用することができる。好ましくは、当該タンパク質は、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって水性抽出物(複数可)から分離され、好ましくはその後、例えば、デカンタ遠心分離機による機械的分離が行われる。必要に応じて、そのようにして得られたタンパク質は、50%w/w以上のポリペプチド及び/又はアミノ酸を含む溶液として更に調製され得る。更に任意に、そのようにして得られたタンパク質は、好ましくはタンパク質分解酵素、特にアルカラーゼ、パパイン、プロテイナーゼK、及びトリプシンから選択されるものを使用することによって加水分解される。タンパク質分解酵素は、0.01%~5%(w/w)の濃度(本明細書では、本明細書で使用される全ての酵素の総濃度として理解される)及び/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用することができる。加水分解されたタンパク質(複数可)(すなわち、ポリペプチド(複数可)及びアミノ酸)を含有するそのように得られた溶液(複数可)は、任意選択で、本発明の方法の工程(b)において更に使用することができる。
【0142】
好ましくは、本発明による真菌発酵培地を生産するための方法において、タンパク質は、抽出物から、すなわち、当該方法の生成物から分離されない。本発明者らは、本明細書で定義されるタンパク質を窒素源として培地中に保持することが有益であることを見出した。本明細書で理解されるように、タンパク質は、アミノ酸、ペプチド及び/又はタンパク質を含んでもよい。
【0143】
タンパク質を分離すると、このようにして得られた溶液はC5-多糖を含有する。タンパク質分離時に溶液中に存在するC5-多糖(好ましくは複合体形態)は、任意選択で、少なくとも部分的に単糖に加水分解することができる。好ましくは、ヘミセルラーゼがこの目的のために使用される。好ましくは、本明細書に開示されるように、特にキシラナーゼ、β-グリコシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、及びβ-キシロシダーゼから選択されるヘミセルラーゼは、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用される。ここで得られる単糖類としては、キシロース及び/又はアラビノースが挙げられる。このようにして得られた溶液(複数可)は、任意選択で、本発明の方法の工程(b)において更に使用することができる。また、本発明の範囲内に包含されるのは、化学薬剤を使用する加水分解、例えば、好ましくは0.1Mまでの濃度で酸、例えば、HClを使用することによる、又は好ましくは0.1Mまでの濃度で塩基、例えば、NaOHを使用することによる加水分解である。
【0144】
本明細書に開示される工程(a)で得られる抽出物(複数可)に加えて、固体リグノセルロース残渣が抽出の生成物として残る。本発明によれば、(a)で得られた固体リグノセルロース残渣は、本発明の方法において更に使用されてもよく、又は処分されてもよい。したがって、好ましくは、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法は、(a)で得られた固体リグノセルロース系残渣をセルラーゼで酵素加水分解し、加水分解の液体生成物を固体残渣から分離する工程(a’)を更に含むことができる。したがって、リグノセルロース系残渣は、第2の反応器に投入され(好ましくは5~50%w/wの投入量で)、そこでセルラーゼで加水分解される。好ましくは、工程(a’)は、15~100℃の温度で、より好ましくは40~80℃の温度で行われる。好ましくは、工程(a’)は、3.0~8.0のpHで、より好ましくは4.0~7.0のpHで行われる。好ましくは、工程(a’)は、10~200時間の時間で行われる。
【0145】
本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料から、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法は、任意選択で、工程(a’)の固体リグニン残渣を回収する工程を更に含んでもよい。本明細書で定義される固体リグニン残渣(又は固体リグノセルロース残渣)は、当業者に公知の方法を使用することによって、例えば、デカンタ遠心分離機を使用することによって、抽出物から分離され得る。
【0146】
当業者に公知のように、抽出プロセス中に、特に高温での抽出プロセス中に形成される特定の化合物は、真菌発酵培地の性能に有害である。このような化合物としては、フルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラールが挙げられ、まとめて毒性化合物と呼ぶことができる。本明細書に開示されるように、工程(a)を2つ以上の工程として、例えば、工程(a1)及び工程(a2)として実施することによって、本明細書に開示されるように、フルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラールのような毒性化合物の形成を最小化又は回避することができるように、温度を制御し、より低く保つことができる。あるいは、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法は、好ましくは、本発明の方法の工程(b)の前に、(a)の水性抽出物中及び/又は場合により(a’)の液体生成物中に存在する毒性化合物を除去する工程を更に含んでもよい。毒性フルフラールの除去方法は、当業者に公知である。
【0147】
更に、フルフラールのような毒性化合物は揮発性化合物であり、蒸気と共に除去されるので、蒸気による前加水分解の使用は、毒性化合物の生成も減少させることに留意されたい。
【0148】
水性抽出工程(a)(複数可)は、当業者に公知の任意の技術的方法によって行うことができる。例えば、水性抽出工程(又は工程(複数可)のそれぞれ)は、バッチプロセスとして実施することができる。しかしながら、好ましくは、本発明の方法の水性抽出工程(a)(複数可)は、当業者に公知のように、連続的な抽出プロセスとして行われる。好ましい実施形態において、本明細書で定義される液体の水は、C5多糖(好ましくはC5-複合多糖画分)及びタンパク質を含む画分を抽出するために使用され、本明細書で定義される酵素が任意選択で添加されて、多糖を少なくとも部分的に単糖に加水分解する。
【0149】
本明細書において理解されるように、本発明の方法の工程(a)において得ることができる水性抽出物は、C5-多糖(好ましくは複合体形態)及びタンパク質を含む。
【0150】
本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法は、任意選択で、本発明に従って得られた工程(a)の水性抽出物(複数可)が更に補充される工程(b)を更に含む。本発明に従って得られる工程(a)の水性抽出物(複数可)は、窒素源(複数可)、炭素源(複数可)、微量元素(複数可)、ビタミン(複数可)及び/又はタンパク質組成物(複数可)を更に補充することができる。本明細書で定義される窒素源は、好ましくは、アンモニア、尿素、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー及びペプトンから選択される。より好ましくは、窒素源(複数可)は、アンモニア及び/又は尿素である。炭素源(複数可)は、好ましくはグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、ガラクトース、デキストロース、グリセロール、及び糖蜜から選択され、より好ましくは炭素源はグルコースである。本明細書で定義される微量元素(複数可)としては、例えば、鉄(III)塩、銅(II)塩、亜鉛塩、マンガン(II)塩、モリブデン塩及び/又はコバルト(II)塩が挙げられ得る。本明細書で定義されるビタミンとしては、好ましくは、本発明の方法に従って得ることができる培地上での真菌の増殖に有益なビタミン、例えば、葉酸、リボフラビン、パントテン酸又はビオチンが挙げられる。タンパク質組成物は、本発明の(a)の水性抽出物に補充するために更に使用することができる。好ましくは、本発明の方法の(a)の水性抽出物(複数可)から、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって分離されたタンパク質から得られるタンパク質組成物が、好ましくは本発明の方法において使用される。
【0151】
好ましくは、工程(b)によれば、工程(a)の抽出物に更なる炭素源は添加されない。更に好ましくは、工程(b)によれば、工程(a)の抽出物は、好ましくは、上記のような少なくとも1種の窒素源で補充される。
【0152】
好ましくは、工程(a)で得られた抽出物(複数可)は、工程(b)の最終生成物の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、更により好ましくは少なくとも90%を構成する。好ましくは、%値は、工程(a)の抽出物(複数可)及び工程(b)の最終生成物についての水除去後の残留固体のw/w%を指すことが理解されるべきである。
【0153】
本明細書で理解されるように、本発明の方法の工程(b)の生成物は、更に処理されてもよい。任意選択で、工程(b)の生成物中に含有される水を、例えば、噴霧乾燥、ドラム乾燥、ベルト乾燥、又は凍結乾燥によって除去して、乾燥真菌発酵培地を得ることができ、これは、当業者に公知のように、改善された貯蔵時間を有し得る。任意選択で、本発明の真菌発酵培地は、本発明の方法の範囲内で更に滅菌又は低温殺菌されてもよい。任意選択で、本発明の方法に従って得ることができる真菌発酵培地は、例えば、塩(好ましくは、塩化ナトリウム、硝酸ナトリウム、硫酸マグネシウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウム、塩化アンモニウム、リン酸二アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸カリウム、リン酸二ナトリウム、及び/又はリン酸一ナトリウム)、抗生物質、又は水によって更に補充されてもよい。本明細書で使用される水は、好ましくは、媒体中の成分の濃度を最適化するために使用される。
【0154】
更に好ましくは、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法において得ることができる真菌発酵培地のpHは、好ましくは緩衝剤の添加によって所望の値に設定することができる。本明細書において、クエン酸塩緩衝系又はリン酸塩緩衝系が特に有用である。更に、発酵槽において、pHは、適切な量の尿素、NaOH、アンモニア、硫酸、リン酸、又は塩酸の添加によって調整することができる。
【0155】
しかしながら、特定の実施形態において、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法の工程(a)(複数可)の後に得られる真菌発酵培地は、真菌発酵を支持するのに好適であり、更なる工程なしに、好ましくは工程(b)もなしに使用することができることに言及すべきである。
【0156】
したがって、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物からの真菌発酵培地は、好ましくは、工程(b)で定義されるように、固体窒素源(複数可)の添加時に使用される。
【0157】
更なる実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法において得ることができる真菌発酵培地に関する。本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法において得ることができる本発明の真菌発酵培地は、更に任意選択で、窒素源(複数可)、炭素源(複数可)、微量元素(複数可)、ビタミン(複数可)及び/又はタンパク質組成物(複数可)を含んでもよい。本明細書で定義される窒素源は、好ましくは、アンモニア、尿素、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー及びペプトンから選択される。より好ましくは、窒素源(複数可)は、アンモニア及び/又は尿素である。炭素源(複数可)は、好ましくはグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、ガラクトース、デキストロース、グリセロール、及び糖蜜から選択され、より好ましくは炭素源はグルコース又はキシロースである。本明細書で定義される微量元素(複数可)としては、例えば、鉄(III)塩、銅(II)塩、亜鉛塩、マンガン(II)塩、モリブデン塩及び/又はコバルト(II)塩が挙げられ得る。本明細書で定義されるビタミンとしては、好ましくは、本明細書で定義されるような、本発明の方法に従って得ることができる培地上での真菌の増殖に有益なビタミンが挙げられる。
【0158】
好ましくは、本発明の真菌発酵培地は、C5-多糖を含む。好ましくは、C5多糖は、当該培地中の全ての糖の少なくとも50%w/wを構成し、より好ましくは、C5多糖は、当該培地中の全ての糖の少なくとも65%w/wを構成し、更により好ましくは、C5多糖は、当該培地中の全ての糖の少なくとも80%w/wを構成する。これは、好ましくは、任意選択の工程(a’)が実施されていない本発明に従って調製された培地に適用される。
【0159】
本明細書で理解されるように、C5-多糖は、好ましくは、本発明の培地中のC5-糖の主要な形態である。C5-多糖は、好ましくは、当該培地中の全C5-糖の50%超を構成する。本明細書で理解されるように、C5-多糖形態でのC5-糖の存在は、それらを真菌発酵に好適なものにする。
【0160】
特定の実施形態において、C5-多糖は、単糖に加水分解される。好ましくは、任意選択の工程(a’)に従う。そのような場合、真菌発酵培地は、C5-糖を含む。好ましくは、C5-糖は、当該培地中の全ての糖の少なくとも10%w/wを構成し、より好ましくは、C5-糖は、当該培地中の全ての糖の少なくとも20%w/wを構成し、更により好ましくは、C5-糖は、当該培地中の全ての糖の少なくとも30%w/wを構成する。
【0161】
本発明の真菌発酵培地は、任意選択で、本明細書で定義されるように更に処理されてもよい。特に、本発明の範囲内で、本明細書に記載される真菌発酵培地は、乾燥形態に更に加工されてもよい。この目的のために、本発明に従って得ることができる真菌発酵培地中に含有される水を、例えば、噴霧乾燥、ベルト乾燥、ドラム乾燥又は凍結乾燥によって除去して、乾燥真菌発酵培地を得ることができ、これは、当業者に公知のように、改善された貯蔵可能期間を有し得る。任意選択で、本発明の真菌発酵培地は、本発明の方法の範囲内で更に滅菌されてもよい。
【0162】
本明細書に開示される真菌発酵培地は、真菌発酵において使用可能である。したがって、本明細書に開示される真菌発酵培地は、本発明の真菌バイオマスを生産するための方法において使用可能である。したがって、更なる実施形態において、本発明は、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法に関する。
【0163】
少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための当該方法は、以下の工程:
(a)本発明の方法に従って得ることができるpH調整された真菌発酵培地を、真菌菌糸体を増殖させるのに好適な発酵槽に提供する工程と、
(b)真菌菌糸体を培養する工程と、
(c)真菌バイオマスを回収し、濃縮して、2~100%の乾燥真菌バイオマス含有量を達成する工程と、を含む。
【0164】
乾燥真菌バイオマスはまた、細胞を破壊することなく除去することができる過剰な水を除去したときの、乾燥した真菌のバイオマスとして理解される。真菌バイオマス中の乾燥真菌バイオマス含量は、本明細書で定義される乾燥真菌バイオマスの重量と、工程(c)で得られるような、乾燥前の真菌バイオマスとの間の比として定義される。
【0165】
本明細書で理解されるように、深部発酵又は深部真菌発酵は、液体培地中での真菌の培養として定義される。当業者に公知のように、深部真菌発酵の代替法は、固体状態真菌発酵とも呼ばれる表面真菌発酵である。本明細書では溶液又は懸濁液中でpH調整された(下記参照)本発明の真菌発酵培地と理解されるような液体真菌発酵培地は、密閉容器、本明細書では好ましくは発酵槽に入れられ、これは通常、当業者に公知の方法に従って、真菌増殖を妨げ得る生物を死滅させるために滅菌される。本明細書で定義される少なくとも1種の真菌株の接種物が容器(本明細書では好ましくは発酵槽)に導入され、少なくとも好気性真菌の場合、空気が容器に吹き込まれる。容器(本明細書では発酵槽)の内容物は、好ましくは当業者に公知の方法に従って撹拌され、好ましくはその撹拌は、発酵槽設計に組み込むことができる。撹拌は、培地中に存在する栄養素及び酸素を、発酵される物質(本明細書では少なくとも1種の真菌株)と連続的に接触させ、好ましくは、温度及びpHは、真菌に好適なレベルに制御される。特定の時間後、典型的には1~12日後に、とりわけ、発酵のタイプ、真菌、及び正確な発酵条件に応じて、真菌バイオマスを回収することができる。(当業者によって言及されるように、本明細書において与えられるタイミングは、必ずしも連続発酵の場合に適用されなくてもよい)。しかしながら、当業者に公知のように、混合はまた、撹拌以外の他の方法によって達成されてもよく、混合はまた、真菌細胞の形態に影響を及ぼし、かつ真菌細胞を剪断応力に供することをもたらし得る。本明細書で理解されるように、混合の方法は限定することを意味するものではなく、当業者に公知の任意の適用可能な方法が本発明の範囲内に含まれる。
【0166】
少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法の第1の工程において、本発明の方法に従って得ることができるpH調整された真菌発酵培地は、真菌菌糸体を増殖させるのに好適な発酵槽に提供される。好適な発酵槽は、当業者に公知である。例えば、剪断応力を減少させるのに有用な特定の撹拌器を備えた好適な撹拌タンク、又はエアリフト発酵槽は、本発明の範囲内で有用である。真菌発酵培地は、本発明の方法に従って得ることができ、本明細書に開示される培地として理解される。
【0167】
本明細書で理解されるように、真菌発酵培地は、本発明の特定の実施形態において更に滅菌することができる。当業者に公知のように、滅菌は、培地を一定期間、高温に曝露することによって行ってもよい。典型的には、滅菌は、150~200℃の温度で30秒~10分の時間行われる。しかしながら、本明細書に記載の条件は、本発明の範囲を限定することを意味するものではない。
【0168】
本方法の次の工程である工程(b)では、真菌菌糸体を培養する。好ましくは、工程(b)は、15~40℃の温度で行われる。典型的には、プロセス全体を通して一定温度が維持され、これは当業者に公知であるように、特定の真菌株の最適な増殖のために選択され得る。例えば、P.ostreatusの場合、工程(b)は、好ましくは25~30℃の温度で行われる。更に好ましくは、工程(b)は、3.0~8.5のpHで行われる。培地のpHは、本発明の真菌発酵培地を生産するための方法の範囲内で、かつ/又は本発明の真菌バイオマスを生産する方法の工程(a)の範囲内で調整することができる。当業者に理解されるように、pHの選択は、培養される真菌株、又は増殖から除外される潜在的な汚染株に依存し得る。更に好ましくは、工程(b)は、12~240時間の時間行われる。しかしながら、当業者に理解されるように、工程(b)が連続プロセスとして実施される場合、その時間は、好ましくは240時間に限定されない。
【0169】
本明細書で理解されるように、例えば、pH、真菌発酵培地及び/又は温度を含む増殖条件の選択は、真菌菌糸体の増殖、真菌細胞の代謝、及び/又は真菌がペレットとして増殖するか菌糸体として増殖するかに影響を及ぼし得る。
【0170】
本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法の範囲内で、少なくとも1種の真菌株は、食用真菌であることが理解される。食用真菌は、本明細書において、いかなる有害反応も引き起こすことなく、食物として哺乳動物によって、好ましくはヒトによって消費され得る真菌として理解される。有害反応は、本明細書において、食中毒、又は消費を妨げるであろう望ましくない味覚特性として定義される。食用真菌は、本明細書において、その子実体(キノコ)に限定されず、真菌の他の部分、例えば、菌糸体もまた、食用キノコとみなすことができる。
【0171】
本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法において、少なくとも1種の真菌株は、Basidiomycota及びAscomycotaから選択される。
【0172】
本発明によれば、少なくとも1種の真菌株は、Basidiomycotaから選択され得る。好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Agaromycotinaから選択される真菌株であり得るBasidiomycotaから選択され得る。本明細書で定義されるように、Agaromycotinaから選択される真菌株は、Agaricomycetesから選択される真菌株であり得る。好ましくは、Agaricomycetesから選択される真菌株は、Boletales、Cantharellales、Agaricales、Polyporales、Russulales、及びAuricularialesから選択される真菌株であり得る。
【0173】
本明細書で定義されるように、Boletaceaeから選択される真菌株は、好ましくはB.edulisである。
【0174】
特定の実施形態において、Agaricomycetesから選択される真菌株は、Polyporalesから選択される真菌株であり得る。好ましくは、本明細書で定義されるように、Polyporalesから選択される真菌株は、Meripilaceae、Polyporaceae、Ganodermataceae、Sparassidaceaeから選択される真菌株であり得る。
【0175】
本明細書で定義されるように、Meripilaceaeから選択される真菌株は、好ましくはG.frondosaである。本明細書で定義されるように、Polyporaceaeから選択される真菌株は、好ましくはP.umbellatus及びL.sulphureusから選択される。本明細書で定義されるように、Sparassidaceaeから選択される真菌株は、好ましくはS.crispaである。
【0176】
好ましくは、Agaricomycetesから選択される真菌株は、Cantharellalesから選択される真菌株であり得る。更に好ましくは、Cantharellalesから選択される真菌株は、Cantharellaceae及びHydnaceaeから選択される株であり得る。本明細書で定義されるように、Cantharellaceaeから選択される株は、C.cornucopioides又はC.cibarius、好ましくはC.cibariusであり得る。本明細書で更に定義されるように、Hydnaceaeから選択される株は、H.repandumであり得る。
【0177】
あるいは、Agaricomycetesから選択される真菌株は、Boletalesから選択される真菌株であり得る。好ましくは、本明細書で定義されるように、Boletalesから選択される真菌株は、Boletaceae及びSclerodermataceaeから選択される真菌株であり得る。
【0178】
あるいは、Agaricomycetesから選択される真菌株は、Russulalesから選択される真菌株であり得る。更に好ましくは、本明細書で定義されるように、Russulalesから選択される真菌株は、Hericaceae及びBondarzewiaceaeから選択される真菌株であり得る。好ましくは、Russulalesから選択される真菌株は、Hericaceaeから選択される真菌株、好ましくはH.erinaceus及びH.coralloidesから選択される真菌株である。更に好ましくは、Bondarzewiaceaeから選択される真菌株は、B.berkeleyiである。
【0179】
あるいは、Agaricomycetesから選択される真菌株は、Auriculialesから選択される真菌株、より好ましくはAuriculariaceaeから選択される真菌株であり得る。好ましくは、Auriculariaceaeから選択される真菌株は、A.auricula-judaaeである。
【0180】
好ましくは、本発明の方法において、少なくとも1種の真菌株は、Agaricalesから選択される。したがって、Agaricalesから選択される少なくとも1種の真菌株は、Tuberaceae、Pleurotaceae、Agaricaceae、Marasmiaceae、Stropharaceae、Lyophyllaceae、Tricholmataceae、Omphalotaceae、Physalaciaceae、Schizophyllaceae、及びFistulinaceaeから選択され得る。
【0181】
本明細書で定義されるように、Marasmiaceaeから選択される真菌株は、好ましくはL.edodesである。本明細書で更に定義されるように、Strophariaceaeから選択される真菌株は、好ましくはA.aegerita及びH.capnoidesから選択される真菌株である。本明細書で更に定義されるように、Lyophyllaceaeから選択される真菌株は、好ましくはC.Indicaである。本明細書において更に定義されるように、Tricholomataceaeから選択される真菌株は、好ましくはH.tesselatus及びC.nudaから選択される真菌株である。本明細書で更に定義されるように、Omphalotaceaeから選択される真菌株は、好ましくはC.giganteanである。本明細書で更に定義されるように、Physalaciaceaeから選択される真菌株は、好ましくはF.velutipesである。本明細書で更に定義されるように、Schizophyllaceaeから選択される真菌株は、好ましくはS.communeである。本明細書で更に定義されるように、Fistulinaceaeから選択される真菌株は、好ましくはF.hepaticaである。
【0182】
Agaricalesから選択される本発明による少なくとも1種の真菌株は、Tuberaceaeから選択され得る。好ましくは、Tuberaceaeから選択される本発明による真菌株は、T.magnatum、T.estivum、T.uncinatum、T.indicum、T.rufum又はT.melanosporum、より好ましくはT.melanosporum及びT.magnatumである。
【0183】
より好ましくは、Agaricalesから選択される少なくとも1種の真菌株は、Pleurotaceaeから選択される真菌株であり得る。更により好ましくは、本発明の少なくとも1種の真菌株は、P.pulmonarius、P.ostreatus、P.citrinopileatus及びP.salmoneostramineusから選択される真菌株、更により好ましくは、P.pulmonarius又はP.ostreatusから選択される真菌株、最も好ましくはP.pulmonariusから選択される真菌株である。
【0184】
Agariclesから選択される本発明による少なくとも1種の真菌株は、Agaricaceaeから選択され得る。好ましくは、本明細書で定義されるようなAgaricaceaeから選択される真菌株は、A.bisporus又はA.blazei、より好ましくはA.bisporusである。
【0185】
本発明によれば、少なくとも1種の真菌株は、Ascomycotaから選択され得る。好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Pezizomycotinaから選択される真菌株であり得るAscomycotaから選択され得る。本明細書で定義されるように、Pezizomycotinaから選択される真菌株は、Pezizomycetesから選択され得る。好ましくは、本発明の範囲内で、Pezizomycetesから選択される真菌株は、Pezizalesから選択される真菌株であり得る。
【0186】
更に好ましくは、本発明の真菌バイオマスの生産方法において定義される少なくとも1種の真菌株は、Pezizalesから選択され得る。好ましくは、Pezizalesから選択される真菌株は、Morchellaceaeから選択され得る。好ましくは、Morchellaceaeから選択される真菌株は、M.esculenta、M.angusteps又はM.deliciosaである。
【0187】
あるいは、Ascomycotaから選択される少なくとも1種の真菌株は、Sordariomycetesから選択される真菌株であり得る。好ましくは、Sordariomycetesから選択される、本明細書で定義される少なくとも1種の株は、Hypocrealesから選択される真菌株であり得る。更に好ましくは、Hypocrealesから選択される真菌株は、Cordycipitaceaeから選択される真菌株であり得る。更に好ましくは、Cordycipitaceaeから選択される真菌株は、C.militaris及びC.sinensisから選択される真菌株である。あるいは、Hypocrealesから選択される真菌株は、好ましくはNectriaceaeから選択される真菌株であり得る。更に好ましくは、Nectriaceaeから選択される真菌株は、Fusarium株であり得る。別の実施形態において、Sordariomycetesから選択される真菌株は、Sordariaceaeから選択される真菌株であり得る。更に好ましくは、Sordariaceaeから選択される真菌株は、Neurospora株であり得る。
【0188】
本明細書に開示されるように、本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法において、少なくとも1種の真菌株は、Pezizomycotina及びAgaromycotinaから選択され得る。
【0189】
本明細書に更に開示されるように、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための本発明の方法において、少なくとも1種の真菌株は、好ましくは、Peziomycetes、Agaricomycetes及びSordariomycetesから選択される。
【0190】
本明細書に更に開示されるように、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための本発明の方法において、少なくとも1種の真菌株は、好ましくは、Pezizales、Boletales、Cantharellales、Agaricales、Polyporales、Russulales、Auriculariales、Sordoriales及びHypocrealesから選択される。
【0191】
本明細書に更に開示されるように、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための本発明の方法において、少なくとも1種の真菌株は、好ましくは、Morchellaceae、Tuberaceae、Pleurotaceae、Agaricaceae、Marasmiaceae、Cantharellaceae、Hydnaceae、Boletaceae、Meripilaceae、Polyporaceae、Strophariaceae、Lyophyllaceae、Tricholomataceae、Omphalotaceae、Physalacriaceae、Schizophyllaceae、Sclerodermataceae、Ganodermataceae、Sparassidaceae、Hericiaceae、Bondarzewiaceae、Cordycipitaceae、Auriculariaceae、及びFistulinaceaeから選択される。
【0192】
本明細書に更に開示されるように、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための本発明の方法において、少なくとも1種の真菌株は、好ましくは、P.pulmonarius、P.ostreatus、P.citrinopileatus又はP.salmoneostramineus、更により好ましくは、P.pulmonarius又はP.ostreatusである。
【0193】
本明細書に更に開示されるように、少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための本発明の方法において、少なくとも1種の真菌株は、好ましくはM.esculenta、M.angusteps又はM.deliciosaである。
【0194】
本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法は、単一の真菌株の発酵に限定されない。本明細書に記載されるように、2種以上の真菌株が共発酵されることもまた本発明に包含される。共発酵のための株の選択は、それらの適合性に依存し、当業者によって行われ得る。
【0195】
本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法において、深部発酵は、バッチプロセス、流加プロセス又は連続プロセスとして操作され得る。これらの3つの主な発酵方法は、当業者に公知であり、発酵容器からの物質の流出及び発酵容器への物質の流入が異なる。
【0196】
バッチプロセスは、発酵容器への材料の流入がないことを特徴とする。バッチプロセスにおいて、全ての栄養素は、その後のバイオプロセスにおいてそれ以上添加することなく、培養の開始時に提供される。全バイオプロセスの間、ガス、酸及び塩基を除いて追加の栄養素は添加されない。次いで、バイオプロセスは、栄養素が消費されるまで続く。この戦略は、株の特徴付け又は栄養培地の最適化などの迅速な実験に好適である。この便利な方法の欠点は、バイオマス及び生成物の収量が制限されることである。通常、炭素源及び/又は酸素移動が制限因子であるため、微生物は、長時間、対数増殖期にはない。バッチモードで実行されたバイオプロセスの終了後、バイオマス又は培地のみが回収され、所望の生成物を得るために適切に処理される。バイオリアクターの観点から、このプロセスは、洗浄工程及び滅菌工程によって繰り返し中断され、バイオマスは、段階的に単に生産される。
【0197】
流加プロセスでは、基質、栄養素及び他の物質を発酵容器に添加して、とりわけ、可能な培養時間を延長するか、又は収率を増加させることができる。培養中の供給の利点は、それが全体としてより高い生産量を達成することを可能にすることである。特定の増殖条件下では、微生物及び/又は細胞は、絶えず倍加し、したがって対数増殖曲線に従う。したがって、特定の実施形態において、供給速度も同様に対数的に増加され得る。一般に、基質は、例えば、シリコーンチューブを通して、供給ボトルから培養容器にポンプで送り込まれる。使用者は、任意の時間に(線形、対数的、パルス的に)供給を手動で設定するか、又は特定のバイオマス濃度に達したとき若しくは栄養素が枯渇したときなど、特定の条件が満たされたときに栄養素を添加することができる。流加プロセスは、広範囲の制御戦略を提供し、高度に特殊化された用途にもまた好適である。しかしながら、流加プロセスは、処理時間を増加させる可能性があり、毒性副生成物の蓄積による阻害を潜在的にもたらす。
【0198】
好ましくは、本発明の方法において、深部発酵は、連続プロセスとして操作される。バッチ増殖期の後、特定の成分に関して平衡が確立される(定常状態とも呼ばれる)。これらの条件下で、除去されるのと同じ量の新鮮な培養培地を添加する(ケモスタット)。これらのバイオプロセスは、連続培養と呼ばれ、過剰な栄養素が、例えば、酸若しくはエタノールの蓄積又は過剰な加熱に起因する阻害をもたらすであろう場合に特に好適である。この方法の他の利点は、減少した生成物阻害及び改善された時空収率を含む。培地が除去されるとき、細胞が回収され、これが、流入速度及び流出速度が微生物の倍加時間未満でなければならない理由である。あるいは、細胞は、灌流と呼ばれる多種多様な方法で(例えば、スピンフィルタに)保持することができる。連続プロセスにおいて、バイオリアクターの時空収率は、流加プロセスの時空収率と比較して更に改善することができる。しかしながら、長い培養期間はまた、培養物における汚染及び長期変化のリスクを増大させる。本発明の方法では、本明細書で論じるように、本発明の方法の工程(a)で得られる抽出物は、好ましくは重量でC6-多糖よりも多くのC5-多糖を含むので、培地は、好ましくは、例えば、細菌を上回る真菌の増殖を持続させ、したがって、連続発酵法に特に好適である。これは、好ましくは、本発明の方法の工程(a’)が行われない場合である。更に、本発明の方法では、本明細書で論じられるように、本発明の方法の工程(a)で得られる抽出物は、好ましくはC5-多糖を含むので、培地は、好ましくは、例えば、細菌を上回る真菌の増殖を持続させ、したがって連続発酵法に特に好適である。更に、本明細書で理解されるように、C6多糖を含む真菌発酵培地を提供することは、セルラーゼを産生することができる真菌株の増殖を促進することとなり、その真菌株は、C6多糖を炭素源として増殖することができる。最も一般的な3種類の連続培養は、ケモスタット(単一の増殖制限基質の添加速度が細胞増殖を制御する)、タービドスタット(細胞数の間接的測定、すなわち濁度又は光学密度、これは追加のセンサを必要とするが、リアルタイムフィードバックによって駆動され、液体の添加及び除去を制御する)、及び灌流(このタイプの連続バイオプロセシングモードは、バイオリアクター中に細胞を保持すること、又はバイオリアクターに細胞をリサイクルして戻すことのいずれかに基づき、新鮮な培地を提供し、無細胞上清を同じ速度で除去する)である。
【0199】
更なる実施形態において、本発明は、本発明の少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法に従って生産される、真菌バイオマスに関する。好ましくは、真菌バイオマスは、Pleurotaceaeから選択される真菌株の真菌細胞を含み、特に、真菌株は、P.pulmonarius、P.ostreatus、P.citrinopileatus又はP.salmoneostramineusであり、より好ましくはP.pulmonarius又はP.ostreatusを選択した。別の実施形態において、好ましくは、真菌バイオマスは、Morchellaceaeから選択される真菌株の真菌細胞を含み、真菌株は、M.esculenta、M.angusteps又はM.deliciosaである。しかしながら、本発明の真菌バイオマスは、単一の真菌株に限定されない。本明細書に記載されるように、2種以上の真菌株を共発酵させて、本発明の真菌バイオマスを得ることもまた本発明に包含される。共発酵のための株の選択は、それらの適合性に依存し、当業者によって行われ得る。更に、本発明の真菌バイオマスに共に含めるための株の選択は、本明細書に開示されるように、それらの特性及び想定される用途、並びにそれらの増殖速度に依存する。
【0200】
本発明の真菌バイオマスは、好ましくは、10~60%(w/w)のタンパク質含量を有する。本明細書に更に開示されるように、本発明の真菌バイオマスは、好ましくは、20~60%(w/w)の食物繊維含量を有する。
【0201】
更なる実施形態において、本発明は、真菌ベースの食品の生産における本発明の真菌バイオマスの使用に関する。したがって、本発明はまた、本明細書に記載されるように得ることができる、真菌ベースの食品に関する。本発明の真菌ベースの食品は、当業者に公知の任意の形態で調製することができる。例えば、本発明の真菌ベースの食品は、ボール(すなわち、ミートボール代替品)、ダンプリング、ベジタリアンソーセージ、食肉代替品ステーキ、食肉代替品ひき肉製品、サンドウィッチを調製するための食肉代替品製品などの形態をとり得る。
【0202】
本発明者らは、本発明の培地上で増殖させた本発明のバイオマスがより暗く、したがって、参照培地上での増殖から得られるバイオマスのミンチ肉に非常に似ていることを示した(
図2を参照)。本発明者らは、これが特に、本発明の培地が本発明の真菌発酵培地を生産するための方法において得ることができる例示的な場合であり、本明細書に記載の工程(a)が、本明細書で上述した蒸気による前加水分解、及び本明細書で上述した液体の水による洗浄のみを含む場合に当てはまることを示した。本発明者らは更に、これがリグノセルロース材料、例えば、工業副流物及び/又は農業副流物が醸造粕である場合であることを示した。したがって、本発明者らは、得られる食品の味、外観及び/又は栄養プロファイルが、当該培地を調製するための方法に蒸気工程によるリグノセルロース材料の前加水分解を導入することによって影響を受け、更に、使用される特定のリグノセルロース材料に依存し得ることを示した。
【0203】
同様の効果は、カカオ殻を水で抽出して、参照培地又は醸造粕由来の抽出物で得られたものとは異なる抽出物及びバイオマス組成物を得ることも示されている(実施例4並びにその中の表10、表11及び表12を参照)。
【0204】
本発明による食品は、例えば、栄養補給剤であってもよい。栄養補給剤は、液体、又は丸剤、ロゼンジ若しくは錠剤などの固体の形態であり得る。例えば、本発明の栄養補給剤は、タンパク質補給剤及び/又は炭水化物補給剤であってもよい。
【0205】
本明細書で理解される食品は、乳製品、例えば、ヨーグルト、乳飲料及びアイスクリームであってもよい。本明細書で理解される食品はまた、シーフード製品の異なる実施形態、例えば、クラブケーキ、フィッシュケーキ、マグロ、サーモン、又はエビに関してもよい。
【0206】
食品は、テクスチャ化食品又はテクスチャ付与食品であってもよい。したがって、本発明の食品は、新規に合成することができないヒトの1日摂取に必要な全てのアミノ酸を含む。更に、本発明のテクスチャ付与食品は、好ましくは、耐熱性、耐煮沸性であり、調理に好適である。例えば、本発明の真菌ベースの食品は、本明細書に記載のように、肉代替製品であってもよい。好ましくは、肉代替製品は、テクスチャ化食品又はテクスチャ付与食品であることに留意されたい。テクスチャ付与食品の構造は、消費者によるテクスチャ付与食品の受容性を改善することに更に留意されたい。本発明の真菌バイオマスの固有の繊維質テクスチャは、押出成形などの従来のテクスチャ化方法を使用せずにテクスチャ化食品又はテクスチャ付与食品を生産するのに有益であり得ることに更に留意されたい。
【0207】
特定の実施形態において、本発明の方法に従って得ることができる真菌バイオマスを使用して生産される真菌ベースの食品は、本発明の真菌発酵培地の生産のための方法に従って得られる固体リグニン残渣で更に補充される。言い換えれば、本発明の真菌発酵培地の生産方法に従って得られた固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の生産において更に使用される。本発明の真菌発酵培地の生産方法に従って得られた固体リグニン残渣は、本発明の真菌ベースの食品の生産において、食品添加物として、調質剤として、又は芳香担体として使用することができる。特に、本発明は、本発明の真菌ベースの食品中に、0~30%w/wの乾燥固体リグニン残渣の含量まで固体リグニン残渣を含めることを包含する。本明細書で理解されるように、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って得られる固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の生産において更に使用される前に、例えば、ミリング及び/若しくは粉砕によって、又は当業者に公知の他の方法を使用することによって更に処理することができる。したがって、リグニンはまた、更に官能化されてもよい。
【0208】
本発明の真菌ベースの食品は、更に加工され、かつ又は補充されてもよい。例えば、本発明の真菌ベースの食品は、当業者に公知のプロトコルに従って、水、塩、油及び/又はスパイスを更に補充されてもよい。更なる加工はまた、食品の加熱及び高圧処理(特に高圧低温殺菌に有用)、醸造、煮沸、焼成、油揚げ、発酵、及び/又は乾燥を含んでもよい。当業者に公知のように、本発明の食品の貯蔵期限を長くするために防腐剤を添加してもよい。
【0209】
本発明によれば、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って得られるタンパク質組成物は、真菌ベースの食品の調製において更に使用することができる。言い換えれば、本発明の真菌バイオマスを使用して調製された真菌ベースの食品は、本発明の少なくとも1種のリグノセルロース材料、好ましくは工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法に従って得られたタンパク質組成物で更に補充される。
【0210】
本発明の範囲から逸脱することなく、本発明の様々な修正例及び変形例が当業者には明らかであろう。本発明を特定の好ましい実施形態に関連して説明してきたが、特許請求される本発明は、そのような特定の実施形態に過度に限定されるべきではないことを理解されたい。実際に、関連分野の当業者に明らかである、本発明を実施するための記載された様式の種々の改変は、本発明によって包含されることが意図される。
【0211】
以下の実施例は、本発明の単なる例示であり、添付の特許請求の範囲によって定義される本発明の範囲をいかなる方法によっても限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0212】
一般的な実験プロトコル
リグノセルロース材料の熱抽出
熱抽出のために、リグノセルロース材料の乾物量を、3gの材料を用いて水分分析器(160℃で恒量になるまで)で測定した。得られた乾物量に基づいて、必要量の材料を秤量し、その後それを反応器に導入することによって、反応器投入を調整した。次いで、水を添加して反応器をその最終作業容積まで満たし、ゴムシールリングを反応器ハウジングの上部に配置した。次いで、マノメーター及び温度プローブを備えた蓋を密閉して漏れを回避し、次いで、所望の操作圧力に達するまで反応器を窒素で加圧した。その後、所望の温度、圧力、及び保持時間をソフトウェアで設定し、抽出を開始した。実験中、温度及び圧力を常に監視し、調節した。
【0213】
抽出が終了すると、反応器を冷水中に沈めることによって、又はより大きな反応器については冷却ジャケットを使用することによって、反応器を冷却した。温度が30℃未満に低下したら、排気弁をゆっくりと開くことによって反応器を減圧し、圧力が大気圧に達するとすぐに蓋を開けた。連続抽出プロセスの場合、混合物を反応器から抽出した後、熱交換器を使用して冷却した。次いで、固相及び液相(抽出物)を、加圧濾過又はデカンタ型遠心分離機のいずれかによって分離した。次いで、液体抽出物を4℃で短時間保存するか、又は長期保存のために-20℃で凍結させた。残りの処理済み固体リグノセルロース材料を更に酵素加水分解に供して、セルロースからグルコースを回収した。
【0214】
リグノセルロース材料の加水分解
「リグノセルロース材料の熱抽出」の項に記載のように処理した後の回収リグノセルロース材料の乾物量を、水分分析器を使用して決定し(恒量になるまで160℃でインキュベーション)、投入を、熱処理について本明細書に記載のように調整した。次いで、材料を反応容器に投入し、酵素カクテル(Novozymes製のCtec2及びCtec3)を、材料中のセルロース含量に応じて、生産業者のガイドラインに従って添加した。次いで、酵素とセルロース材料との混合物を、60℃の温度及び6.0のpHで10~200時間の時間、インキュベートした。混合物の均質性は、撹拌器によって又はインキュベーター中で容器をインキュベートすることによってのいずれかで確保した。インキュベーション後、反応混合物を、氷浴、反応容器の冷却ジャケット、又は連続プロセスの場合は熱交換器のいずれかを使用して急速に冷却した。最後に、液体画分及び固体画分を加圧濾過又は遠心分離によって分離した。リグニンに富む固体画分を分析前に4℃で保存し、清澄化した液体画分を発酵実験に使用した。
【0215】
糖及びフルフラール含量の分析
C5抽出物、すなわち「リグノセルロース材料の熱抽出」の項に従って得ることができる抽出物については、回収されたC5糖を単糖として定量化することができる分析の前に、試料を塩酸(最終濃度4%w/w)を用いて121℃で60分間加水分解した。加水分解後、抽出物のpHを5.5に設定して、HPLCカラムの損傷を回避した。次に、「リグノセルロース材料の加水分解」の項に従って得ることができるC6抽出物由来の単糖類、及び上述のC5抽出物由来の単糖類を、Metacarb 87Cカラム(300×7.8mm、Varian Inc,Paolo Alto,CA,USA)を固定相として使用し、超純水を移動相として使用するAgilent HPLC 1200システムで測定した。測定は、85℃の温度及び0.6mL min-1のイソクラティックフローで行った。カラム分離後、270nmの波長でUV検出器を使用して測定されたフルフラールの場合を除いて、分析物を屈折率検出器によって検出した。
【0216】
アミノ酸含量の分析
リグノセルロース材料から抽出されたタンパク質のアミノ酸プロファイルは、HPLC測定の前に105℃で24時間、6M HClで抽出物の試料を加水分解することによって決定した。続いて、加水分解物を窒素流下で蒸発させ、200μMのα-アミノブチレートに再懸濁し、後者を内部標準として使用した。調製した試料中のアミノ酸濃度を、固定相として逆相カラムGemini 5μ C18 110 A(150×4.6mm、Phenomenex、Aschaffenburg、Germany)を備えたAgilent 1200 HPLCシステム(Agilent technologies、Waldbronn、Germany)を使用して、蛍光検出によって最終的に測定した。異なるタンパク質構成アミノ酸の分離は、明確に定めたグラジエントプロファイルに従って溶離液A(40mM NaH2PO4、pH7.8)及び溶離液B(45%メタノール、45%アセトニトリル、10%水)を別々に混合して、測定を通して移動相組成を徐々に変化させることに依存した。更に、カラム分離を40℃で1mL min-1の流速で行った。更に、プレカラム(Gemini C18、MAX、RP、4×3mm、Phenomenex、Aschaffenburg、Germany)を使用して、カラム寿命を延ばした。蛍光検出は、o-フタルアルデヒド(o-phtalaldehyde、OPA)及び9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(fluorenylmethyloxycarbonyl、FMOC)によるプレカラム誘導体化並びに励起波長及び発光波長の改変によって達成された(表1)。
【0217】
【0218】
蒸気を用いたリグノセルロースバイオマスの熱前処理及び抽出
操作の前に、反応器は、操作温度に達するまで蒸気で予熱される。予熱段階の間、冷たい反応器と接触する蒸気から生じる凝縮物は、除去されなければならない。
【0219】
材料を秤量し、金属カートリッジ(バッチ処理)又はスクリューフィーダ(連続処理)のいずれかで反応器に投入する。材料は、蒸気を一定に注入しながら所望の滞留時間にわたって前処理され、反応器内部の温度は、圧力制御装置を所望の温度に対応する蒸気圧に設定することによって制御される。連続処理の場合、滞留時間は、スクリューコンベヤ反応器の回転速度で制御される。
【0220】
滞留時間が達成された後、材料は、反応器から取り出して回収され、その重量及び水分含量が記録され、次の処理プロセス(抽出)を更に続ける。
【0221】
抽出は別のユニットで行われ、蒸気で前処理された材料は、特定の固体投入を達成するために所望の比率で温水(約50~60℃)と混合される。液体画分及び固体画分が分離される前に、約20分間、撹拌タンクによって一定の混合が提供される。
【0222】
固液混合物をプレス機にポンプ輸送し、そこで2つの画分を約4バールの一定圧力で分離する。液体加水分解物(C5糖に富む)並びに固体画分(セルロース及びリグニンに富む)は、更なる処理のために回収される。
【0223】
次いで、セルロースをC6糖に変換するために、固体画分を酵素で更に処理することができる。
【0224】
真菌バイオマスの培養
熱抽出後に得られた液体抽出物を増殖培地として直接使用するか、追加の化合物(5.9g/LのK2HPO4、9.0g/LのKH2PO4、12.0・10-2g/LのMgSO4、8.10・10-3のFeCl3、10.10・10-3のCaCl2及び典型的なM9培地による他の微量元素(Miller,1972,Experiments in Molecular Genetics.Cold Spring Harbor,NY:New York Cold Spring Harbor Laboratory)を混合かつ/又は補充するか、のいずれかとした。次いで、得られた混合物を適切な容器に入れ、滅菌した(121℃、20分)。滅菌後、培地を室温まで冷却し、十分に増殖した菌糸体寒天プレートから調製した懸濁液からの胞子又は菌糸体を接種した。次いで、ブロスを30℃の温度で5日間インキュベートした。発酵中に酸及び塩基を用いてpHを調節して、P.pulmonariusの培養株に最適なpH6.5に維持した。その後、バイオマスを遠心分離によって採取し、水で洗浄し、乾物量は、水分分析器を使用して最終的に決定した(160℃で一定重量になるまで)。乾物量を、ブロス体積を使用してバイオマス濃度に変換した。
【0225】
抽出物から生産されたバイオマスとの比較のために使用される参照バイオマスは、グルコースと、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、銅及びカルシウムを含有する微量溶液と、窒素源としての酵母エキスと、からなる参照培地を使用して生産された。リン酸緩衝液を用いて培地のpHを6.5に調整し、フラスコを30℃で5日間インキュベートした。
【0226】
起源が異なる菌糸体を用いて生産されたミートボールの官能評価
ミートボールを菌糸体バイオマスから形成し、平鍋で揚げた。訓練された各パネリストに目隠しをして、標準培地由来の菌糸体及び醸造粕由来の菌糸体のいずれかで調製されたミートボールを連続して与えた。この最初のセッションの間、パネリストらは、2個のミートボールにおいて認識した官能属性を定義した。その後、パネリストらは属性を一緒に議論し、すべてのパネリストがミートボールの同じ味及び香りに関連付けることができる共通の属性を選択して、それらを比較した。次に、第2のセッションを開始し、パネリストは、この場合、選択された属性に従ってミートボールを評価し、各属性について0~5のスコアを付ける必要があった。このセッションを異なる日に繰り返して、データの統計的関連性を増加させ、スコアの平均を計算し、スパイダーウェブ上にプロットした。
【0227】
RGBシステム及び色彩測定器を用いて、ミートボール上の異なる20個の位置で色を決定した。10回の測定に使用した位置は、全てのミートボールについて同じであった。次いで、これらの測定値の平均値を用いて、ミートボールの色を比較した。
【0228】
実施例1-醸造粕からの真菌培養培地の生産
抽出実験は、「リグノセルロース材料の熱抽出」の項に概説される一般的なプロトコルに従って、以下の表2に定義される10個の異なる条件を使用して、醸造粕に対して行われ、バイオマスは、その後、プロトコル「真菌バイオマスの培養」を使用して生産された。
【0229】
【0230】
これらの実験からのC5-多糖画分及びタンパク質画分の回収率、並びに投入された固体副流物当たりのバイオマス生産の収率(比較目的のための標準化)を表3に要約する。糖含量の測定方法は、「糖及びフルフラール含量の分析」に記載されている。
【0231】
【0232】
抽出物を、本明細書の「アミノ酸含量の分析」の項に記載される一般的手順に従ってアミノ酸含量の分析に供した。結果を表4にまとめた。得られた抽出物は、高いメチオニン含量及び高いチロシン含量を特徴とすることに留意されたい。また、アミノ酸組成は、抽出条件に依存するようである。特に、リシン含量は、熱処理の苛酷度の減少と共に増加する傾向があり、一方、アスパラギン酸含量は、反対の傾向に従う傾向がある(
図5)。したがって、異なる処理を適用することは、異なる発酵培地の作製を可能にし、結果として、その後に得られるバイオマスについて異なるタンパク質プロファイルの生産を可能にする。
【0233】
【0234】
【0235】
実施例2-実施例1からの前処理された醸造粕由来のセルロースの加水分解
実施例1の醸造粕(本明細書では醸造粕)の熱抽出後に回収された固体リグノセルロース材料を、「リグノセルロース材料の加水分解」の項に記載の方法に従って処理した。「糖及びフルフラール含量の分析」に記載されるように決定されたC6-多糖画分の回収率、並びにプロトコル「真菌バイオマスの培養」に記載されるように行われたこれらの抽出物を用いた発酵試験から得られたバイオマス(比較目的のために投入された固体%当たりで表される)を表5に要約する。
【0236】
【0237】
実施例3-醸造粕の2工程抽出
抽出実験を、表6に定義されるような4つの異なる2工程プロトコルを使用して、醸造粕に対して行った。工程1の後、4つの異なる工程2、工程2-1、工程2-2、工程2-3及び工程2-4を行った。抽出実験は、「リグノセルロース材料の熱抽出」の項で概説した一般的なプロトコルに従って行った。表6でわかるように、第2の工程(工程2)がより高い温度で実施された2工程プロトコルは、タンパク質のより良好な回収を可能にした(工程2-1及び工程2-2を比較されたい)。得られた抽出物は、高いメチオニン含量を特徴とすることに留意されたい。第2の抽出は、タンパク質回収率を78.5%まで、C5回収率をほぼ100%まで増加させることを可能にし、したがって、表6に列挙されるバイオマス回収率(比較目的のために投入された固体副流物%当たりとして表される)によって示されるように、ほとんどの場合、発酵のための好適な培地を提供することにも留意されたい。
【0238】
【0239】
第1及び第2の熱前処理(工程2-1及び工程2-2のみ)後に得られた抽出物をアミノ酸分析に供し、結果を表7に示す。1工程抽出を用いた実験で観察されたように、タンパク質のアミノ酸プロファイルが抽出条件に依存して変化しており、したがってパラメータを調整することによって微調整することができることがわかる。この特徴は、特定の真菌の増殖のために培地組成を調整するため、及び発酵後に得られるバイオマスの組成を変更するために特に興味深い。特に、本発明者らは、アスパラギン酸/アスパラギン及びリシンについて実施例1と同じ苛酷度と濃度との間の関係を観察した。
【0240】
【0241】
【0242】
実施例4-カカオ殻からの真菌発酵培地の生産
抽出実験は、「リグノセルロース材料の熱抽出」の項に概説される一般的なプロトコルに従って、以下の表8に定義される8つの異なる条件を使用して、カカオ殻に対して行われた。
【0243】
【0244】
糖(C5糖を含む)の回収、並びに比較目的のために投入された固体副流物%当たりとして表される入手可能なバイオマス(上記に含まれる一般的プロトコル「糖及びフルフラール含量の分析」及び「真菌バイオマスの培養」におけるように行われた測定)に関するデータを表9に要約する。更に、表8の条件による熱抽出後に得られた前処理済みリグノセルロース残渣の酵素加水分解を、プロトコル「リグノセルロース材料の加水分解」に従って行い、その後、プロトコル「真菌バイオマスの培養」に従って菌糸体を生産した。抽出されたC6糖を用いたこれらの増殖実験の結果も表9に報告する。
【0245】
【0246】
微量栄養素及び多量栄養素を含む、熱処理後に得られた抽出物上で増殖させた菌糸体から得られたバイオマス組成に関する更なるデータを、それぞれ表10及び表11に示す。このデータは、発酵培地を調製するために使用されるリグノセルロース材料の性質が、生産される菌糸体の最終組成に有意に影響を及ぼし、したがって、異なるリグノセルロース副流物が、異なる食品の開発のための異なるバイオマスの生産を可能にすることを明確に示す。
【0247】
【0248】
【0249】
本明細書に記載のカカオ殻から得られた培地及び実施例1に記載の醸造粕から得られた培地のアミノ酸組成を表12で比較する。培地のアミノ酸組成は、使用されるリグノセルロース材料に依存し得ることが示されている。
【0250】
【0251】
実施例5-オリーブケーキからの真菌発酵培地の生産
抽出実験は、「リグノセルロース材料の熱抽出」の項に概説される一般的なプロトコルに従って、以下の表13に定義される4つの異なる条件を使用してオリーブケーキに対して行われた。
【0252】
【0253】
糖(C5糖を含む)の回収率並びに比較目的のために投入された固体副流物の%当たりとして表される得られるバイオマスに関するデータを表14に要約する。先の実施例と同様に、プロトコル「糖及びフルフラール含量の分析」を使用して糖及びフルフラールを定量し、その後、得られた抽出物に対してプロトコル「真菌バイオマスの培養」を使用して発酵を行った。抽出及び発酵の両方の結果を表14に要約する。加えて、表14はまた、熱的に前処理されたオリーブケーキの酵素的加水分解(プロトコル「リグノセルロース材料の加水分解」)後に得られた加水分解物に対する発酵から得られたバイオマス(比較目的のために投入された固体副流物%当たりで表される)を示す。
【0254】
【0255】
実施例6-汚染試験
培地調製に必要な全ての化学物質は、Carl Roth(Karlsruhe,Germany)、VWR(Darmstadt,Germany)、Merck KgaA(Darmstadt,Germany)又はSigma-Aldrich(Steinheim,Germany)から購入した。
【0256】
寒天プレートの調製のための培地は、表15に従って異なる化合物を秤量し、その後それらを水に溶解することによって調製した。C5抽出物として記載される本発明による培地を、実施例1の条件2のように調製した。C5コンプリート(C5 complete)とは、5.9g/LのK
2HPO
4、9.0g/LのKH
2PO
4、12.0・10
-2g/LのMgSO
4、8.10・10
-3のFeCl
3、及び10.10・10
-3のCaCl
2が更に補充された、本明細書に記載のC5抽出物を指す。次いで、混合物を121℃で20分間オートクレーブ処理し、続いて無菌クリーンベンチ下で無菌的に注ぎ、完全に固化するまで放置した。続いて、LB培地、麦芽エキス、M9古典的培地、C5抽出物及びC5コンプリートで調製したプレートに、37℃で一晩インキュベートしたLB培地中の培養物から得られた100μLの1:1000希釈大腸菌懸濁液を接種した。次いで、プレートを37℃で一晩インキュベートし、翌日に写真撮影した。別の実験では、麦芽エキス、M9古典的培地、C5抽出物及びC5コンプリートを用いて調製したプレートの蓋を除去し、空気汚染に曝露させて、異なる培地での増殖を比較した。その場合、10日後にプレートの写真を撮影した(要約については
図1を参照されたい)。
【0257】
【0258】
実施例7-酸を添加した液体抽出物を用いた醸造粕からの真菌発酵培地の生産
液体の水を使用した抽出実験を、上記の一般的なプロトコルに従って醸造粕に対して行い、0.2%又は0.4%w/wのH2SO4を抽出に使用される水に添加した。実験は、表16に記載した条件に従って行った。
【0259】
【0260】
先の実施例と同様に、プロトコル「糖及びフルフラール含量の分析」を使用して、C5糖の回収及びフルフラール濃度を定量化し、その後、得られた抽出物に対して、プロトコル「真菌バイオマスの培養」を使用して発酵を行った。抽出及び発酵の両方の結果を表17に要約する。
【0261】
【0262】
実施例8:蒸気前加水分解を用いた醸造粕からの真菌発酵培地の生産
プロトコル「蒸気を用いたリグノセルロースバイオマスの熱前処理及び抽出」に記載されているように、蒸気前加水分解による抽出実験を醸造粕に対して行った。前加水分解の実験条件を表18に列挙する。糖及びフルフラール分析(プロトコル「糖及びフルフラール含量の分析」)並びに結果得られた抽出物を用いた発酵(プロトコル「真菌バイオマスの培養」)から得られたバイオマス(比較目的のために投入された固体副流物の%当たりとして表される)の結果を表19に示す。
【0263】
【0264】
【0265】
実施例9-実施例8からの前処理された醸造粕由来のセルロースの加水分解
蒸気前加水分解及び水による回収の後に残った前処理された固体材料を回収し、第2の前加水分解に供し、最後に「」に記載したように酵素的加水分解に供した。試験した条件を表20に列挙する。
【0266】
【0267】
C6糖の回収及び入手可能なバイオマスに関するデータ(上記に含まれる一般的プロトコル「糖及びフルフラール含量の分析」及び「真菌バイオマスの培養」におけるように実施された測定)を表21にまとめる。比較目的のために、それらは実験に使用された固体投入に対して正規化される。
【0268】
【0269】
実施例10.参照ミートボールと比較した実施例8のバイオマスを使用することによって生産されたミートボールの特徴付け。
プロトコル「起源が異なる菌糸体を用いて生産されたミートボールの官能評価」に記載されるように、ミートボールを調製し、評価し、結果を表23及び
図4に要約する。図からわかるように、醸造粕由来のミートボールは、標準的な発酵プロセス由来のそれらの対応物よりも多くのうま味及び土臭(マッシュルーム)として特徴付けられ、副流物由来の抽出物の使用は、標的化された用途のための有意な利点を示す。
【0270】
同様に、得られたミートボールの色及び外観を表23及び
図2に要約し、これは、醸造粕由来の抽出物上で成長させたミートボールが、参照培地を用いた発酵由来の菌糸体を用いて生産されたミートボールよりも食肉に近い有意により暗い色であることを示す。したがって、醸造粕由来の抽出物上で菌糸体を増殖させることは、肉代替製品において使用するためのより良好な味及び外観を提供する驚くべき効果をもたらした。同様の組成の副流物について同様の効果を期待することができ、異なる組成を有する副流物が他の驚くべき効果を確実に生じることが予想される。
【0271】
【0272】
【0273】
実施例11:小麦ふすまからの真菌発酵培地の生産
抽出実験は、以下の表24に定義される4つの異なる条件を使用して、「リグノセルロース材料の熱抽出」の項に概説される一般的プロトコルに従って、小麦ふすまに対して実施した。
【0274】
【0275】
以下の番号付けされた項目に開示されるような本発明の更なる実施形態:
1.少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、当該方法は、
(a)少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出と、
(b)(a)で得られた水性抽出物(複数可)と、真菌培養のための任意選択の少なくとも1種の栄養補充剤との組み合わせと、を含む、方法。
2.(a)は、2~220バールの圧力で、90~374℃の温度で、10~200分の時間、水を用いて行われる、項目1に記載の方法。
3.(a)は、pHが2.0~12.0、好ましくは3.0~10.0、より好ましくは4.0~8.0、最も好ましくは5.0~8.0の水を用いて行われる、項目1又は2に記載の方法。
4.工程(b)の前に、(a)で得られた水性抽出物(複数可)を、
i.タンパク質が、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって水性抽出物(複数可)から分離され、
ii.任意選択で、iで得られたタンパク質を、好ましくは、特にアルカラーゼ、パパイン、プロテイナーゼK、及びトリプシンから選択されるタンパク質分解酵素を用いることによって、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間かけて加水分解し、
iii.i.の生成物中に存在するC5-多糖が、任意選択でヘミセルラーゼを使用して単糖、特にキシロース及び/又はアラビノースに加水分解され
iv.工程ii.及び/又は工程iii.の生成物(複数可)が、工程(b)において更に使用されるように、処理する工程を更に含む、項目1~3のいずれか1つに記載の方法。
5.(a)は
(a1)0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが任意選択で補充された水を用いて、90~374℃、好ましくは100~220℃、より好ましくは100~180℃の温度で、10~200分の時間、工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、
(a2)120~220℃、好ましくは130~200℃の温度で、5~150分の時間、水を用いて工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、を含む、項目1に記載の方法。
6.(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質は、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって単離される、項目5に記載の方法。
7.工程(b)の前に、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質を加水分解する工程を更に含む、項目5又は6に記載の方法。
8.工程(b)の前に、(a2)で得られた水性抽出物中に存在するC5-多糖を、任意選択でヘミセルラーゼを使用して単糖に更に加水分解する工程を更に含む、項目5~7のいずれか1つに記載の方法。
9.特にキシラナーゼ、β-グリコシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、及びβ-キシロシダーゼから選択されるヘミセルラーゼは、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用される、項目8に記載の方法。
10.(a)で得られた固体リグノセルロース残渣をセルラーゼで酵素加水分解し、加水分解の液体生成物を固体残渣から分離する工程(a’)を更に含む、項目1~9のいずれか1つに記載の方法。
11.(a’)は、15~100℃の温度で、かつ/又は3.0~8.0のpHで、かつ/又は10~200時間の時間、行われる、項目10に記載の方法。
12.工業副流物及び/又は農業副流物は、固体副流物であり、好ましくは、固体副流物は、醸造粕、穀物ブラン、綿、綿実殻、バガス、カカオ殻、カカオ、カカオポッド、ヒマワリ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ヤシ油、オリーブからの綿及びオイルプレスケーキ、堅果由来の堅い殻及び殻、草及び葉の廃棄物、木材チップ、コーヒー粉、コーヒー殻、コーヒー銀皮、ナタネ及び/又はダイズパルプ(「おから」)のようなダイズ産業からの副産物から選択される、項目1~11のいずれか1つに記載の方法。
13.工程(a)の前に、超臨界CO2を用いて脂質を抽出し、その脂質を機械的に分離する工程を更に含む、項目1~12のいずれか1つに記載の方法。
14.工程(b)の前に、(a)の水性抽出物中及び/又は任意選択で(a’)の液体生成物中に存在するフルフラール及び/又はヒドロキシメチルフルフラールなどの毒性化合物を除去する工程を更に含む、項目1~13のいずれか1つに記載の方法。
15.工程(a’)の固体リグニン残渣を回収する工程を更に含む、項目1~14のいずれか1つに記載の方法。
16.工程bにおいて、項目4、6又は7に従って得られたタンパク質組成物が更に補充される、項目1~15のいずれか1つに記載の方法。
17.項目4、6又は7に従って得られるタンパク質組成物。
18.項目1~16のいずれか1つに記載の方法で得られる真菌発酵培地。
19.(a)特にアンモニア、尿素、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー及びペプトンから選択される窒素源(複数可)、並びに/又は特にグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、ガラクトース、デキストロース、グリセロール及び糖蜜から選択される炭素源(複数可)、並びに/又は微量元素並びに/又はビタミンが更に補充されている、項目18に記載の真菌発酵培地。
20.乾燥形態に更に処理される、項目18又は19に記載の真菌発酵培地。
21.少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、当該方法は、
(a)項目18~20のいずれか1つに記載のpH調整された真菌発酵培地を、真菌菌糸体を増殖させるのに好適な発酵槽に提供することと、
(b)真菌菌糸体を培養することと、
(c)真菌バイオマスを回収し、濃縮して、2~100%の乾燥真菌バイオマス含量を達成することと、を含む、方法。
22.工程(b)は、15~40℃の温度で、かつ/又は3.0~8.5のpHで、かつ/又は12~240時間の時間、行われる、項目21に記載の方法。
23.少なくとも1種の真菌株は、食用真菌である、項目21又は22に記載の方法。
24.少なくとも1種の真菌株は、Basidiomycota及びAscomycotaから選択される、項目21~23のいずれか1つに記載の方法。
25.少なくとも1種の真菌株は、Pezizomycotina及びAgaromycotinaから選択される、項目21~24のいずれか1つに記載の方法。
26.少なくとも1種の真菌株は、Peziomycetes、Agaricomycetes及びSordariomycetesから選択される、項目21~25のいずれか1つに記載の方法。
27.少なくとも1種の真菌株は、Pezizales、Boletales、Cantharellales、Agaricales、Polyporales、Russulales、Auriculariales、Sordoriales及びHypocrealesから選択される、項目21~26のいずれか1つに記載の方法。
28.少なくとも1種の真菌株は、Morchellaceae、Tuberaceae,Pleurotaceae、Agaricaceae、Marasmiaceae、Cantharellaceae、Hydnaceae、Boletaceae、Meripilaceae、Polyporaceae、Strophariaceae、Lyophyllaceae、Tricholomataceae、Omphalotaceae、Physalacriaceae、Schizophyllaceae、Sclerodermataceae、Ganodermataceae、Sparassidaceae、Hericiaceae、Bondarzewiaceae、Cordycipitaceae、Auriculariaceae、Sordoriaceae、Nectriaceae及びFistulinaceaeから選択される、項目21~27のいずれか1つに記載の方法。
29.少なくとも1種の真菌株は、P.pulmonarius P.ostreatus、P.citrinopileatus若しくはP.salmoneostramineusであるか、又は少なくとも1種の真菌株は、M.esculenta、M.angusteps若しくはM.deliciosaである、項目21~28のいずれか1つに記載の方法。
30.深部発酵は、バッチプロセス、流加プロセス又は連続プロセスとして操作される、項目21~29のいずれか1つに記載の方法。
31.2種以上の真菌株は、共発酵される、項目21~30のいずれか1つに記載の方法。
32.項目21~31のいずれか1つに記載の方法に従って生産される真菌バイオマス。
33.真菌株は、Pleurotaceaeから選択され、特に、真菌株は、P.pulmonarius P.ostreatus、P.citrinopileatus若しくはP.salmoneostramineusであるか、又は少なくとも1種の真菌株は、Morchellaceaeから選択され、特に、真菌株は、M.esculenta、M.angusteps若しくはM.deliciosaである、項目32に記載の真菌バイオマス。
34.真菌ベースの食品の生産における、項目32又は33に記載の真菌バイオマスの使用。
35.項目15に従って回収された固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の生産において更に使用される、項目34に記載の使用。
36.項目15に従って回収された固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の生産において更に使用される前に、ミリング及び/又は粉砕によって更に処理される、項目35に記載の使用。
37.項目17に従って回収されたタンパク質組成物は、真菌ベースの食品の調製において使用される、項目34~36のいずれか1つに記載の使用。
38.項目32又は33に記載の真菌バイオマスを使用して調製される真菌ベースの食品。
39.項目15に従って回収された固体リグニン残渣は、真菌ベースの食品の調製において使用される、項目38に記載の真菌ベースの食品。
40.項目17に従って回収されたタンパク質組成物は、真菌ベースの食品の調製において使用される、項目38又は39に記載の真菌ベースの食品。
【0276】
以下の番号付けされた段落に開示されるような本発明の更なる実施形態:
1.少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物から真菌発酵培地を生産するための方法であって、当該方法は、
(a)少なくとも1種の工業副流物及び/又は農業副流物の水性抽出と、
(b)(a)で得られた水性抽出物(複数可)と、真菌培養のための任意選択の少なくとも1種の栄養補充剤との組み合わせと、を含む、方法。
2.(a)は、2~220バールの圧力で、90~374℃の温度で、10~200分の時間、水を用いて行われる、
かつ/又は
(a)は、pHが2.0~12.0、好ましくは3.0~10.0、より好ましくは4.0~8.0、最も好ましくは5.0~8.0の水を用いて行われる、段落1に記載の方法。
3.工程(b)の前に、(a)で得られた水性抽出物(複数可)を、
i.タンパク質が、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって水性抽出物(複数可)から分離され、
ii.任意選択で、iで得られたタンパク質を、好ましくは、特にアルカラーゼ、パパイン、プロテイナーゼK、及びトリプシンから選択されるタンパク質分解酵素を用いることによって、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、加水分解し、
iii.i.の生成物中に存在するC5-多糖が、任意選択でヘミセルラーゼを使用して単糖、特にキシロース及び/又はアラビノースに加水分解され、
iv.工程ii.及び/又は工程iii.の生成物(複数可)が、工程(b)において更に使用されるように、処理する工程を更に含む、段落1又は2に記載の方法。
4.(a)は
(a1)0.1%~1.0%w/wの濃度のNaOHが任意選択で補充された水を用いて、90~374℃、好ましくは100~220℃、より好ましくは100~180℃の温度で、10~200分の時間、工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、
(a2)120~220℃、好ましくは130~200℃の温度で、5~150分の時間、水を用いて工業副流物及び/又は農業副流物を抽出する工程と、を含み、
好ましくは、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質は、好ましくは凝集によって又はCO2による沈殿によって単離され、
任意選択で、工程(b)の前に、(a1)で得られた水性抽出物中に存在するタンパク質を加水分解する工程を更に含み、
任意選択で、工程(b)の前に、任意選択でヘミセルラーゼを使用して、(a2)で得られた水性抽出物中に存在するC5-多糖を単糖に更に加水分解する工程を更に含み、好ましくは、特にキシラナーゼ、β-グリコシダーゼ、α-アラビノフラノシダーゼ、α-グルクロニダーゼ、及びβ-キシロシダーゼから選択されるヘミセルラーゼは、0.01%~5%(w/w)の濃度で、かつ/又は15~100℃の温度で、かつ/又は0.5~96時間の時間、使用される、段落1に記載の方法。
5.(a)で得られた固体リグノセルロース残渣をセルラーゼで酵素加水分解し、加水分解の液体生成物を固体残渣から分離する工程(a’)を更に含み、好ましくは、(a’)は、15~100℃の温度で、かつ/又は3.0~8.0のpHで、かつ/又は10~200時間の時間、行われる、段落1~4のいずれか1つに記載の方法。
6.工業副流物及び/又は農業副流物は、固体副流物であり、好ましくは、固体副流物は、醸造粕、穀物ブラン、綿、綿実殻、バガス、カカオ殻、カカオ、カカオポッド、ヒマワリ、ピーナッツ、ヘーゼルナッツ、ヤシ油、オリーブからの綿及びオイルプレスケーキ、堅果由来の堅い殻及び殻、草及び葉の廃棄物、木材チップ、コーヒー粉、コーヒー殻、コーヒー銀皮、ナタネ及び/又はダイズパルプ(「おから」)のようなダイズ産業からの副産物から選択される、段落1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.工程(a)の前に、超臨界CO2を用いて脂質を抽出し、その脂質を機械的に分離する工程を更に含む、
かつ/又は
工程(b)の前に、(a)の水性抽出物及び/若しくは任意選択で(a’)の液体生成物中に存在する、フルフラール及び/若しくはヒドロキシメチルフルフラールなどの毒性化合物を除去する工程を更に含む、
かつ/又は
工程(a’)の固体リグニン残渣を回収する工程を更に含む、段落1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.段落3又は4に従って得られるタンパク質組成物。
9.段落1~7のいずれか1つに記載の方法で得られる真菌発酵培地であって、任意選択で、特にアンモニア、尿素、酵母エキス、麦芽エキス、コーンスティープリカー及びペプトンから選択される窒素源(複数可)、及び/又は特にグルコース、フルクトース、スクロース、ラクトース、マルトース、キシロース、ガラクトース、デキストロース、グリセロール及び糖蜜から選択される炭素源(複数可)、及び/又は微量元素及び/又はビタミンが更に補充され、任意選択で乾燥形態に更に処理されている、真菌発酵培地。
10.少なくとも1種の真菌株の深部発酵によって真菌バイオマスを生産するための方法であって、当該方法は、
(a)請求項9に記載のpH調整された真菌発酵培地を、真菌菌糸体を増殖させるのに好適な発酵槽に提供することと、
(b)真菌菌糸体を培養することと、
(c)真菌バイオマスを回収し、濃縮して、2~100%の乾燥真菌バイオマス含量を達成することと、を含み、好ましくは、工程(b)が、15~40℃の温度で、かつ/又は3.0~8.5のpHで、かつ/又は12~240時間の時間、行われる、方法。
11.少なくとも1種の真菌株は、食用真菌であり、好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Basidiomycota及びAscomycotaから選択され、より好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Pezizomycotina及びAgaromycotinaから選択され、更により好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Peziomycetes、Agaricomycetes及びSordariomycetesから選択され、更により好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Pezizales、Boletales、Cantharellales、Agaricales、Polyporales、Russulales、Auriculariales、Sordoriales及びHypocrealesから選択され、更により好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、Morchellaceae、Tuberaceae、Pleurotaceae、Agaricaceae、Marasmiaceae、Cantharellaceae、Hydnaceae、Boletaceae、Meripilaceae、Polyporaceae、Strophariaceae、Lyophyllaceae、Tricholomataceae、Omphalotaceae、Physalacriaceae、Schizophyllaceae、Sclerodermataceae、Ganodermataceae、Sparassidaceae、Hericiaceae、Bondarzewiaceae、Cordycipitaceae、Auriculariaceae、Sordoriaceae、Nectriaceae及びFistulinaceaeから選択され、最も好ましくは、少なくとも1種の真菌株は、P.pulmonarius P.ostreatus、P.citrinopileatus若しくはP.salmoneostramineusであるか、又は少なくとも1種の真菌株は、M.esculenta、M.angusteps若しくはM.deliciosaである、段落10に記載の方法。
12.深部発酵は、バッチプロセス、流加プロセス又は連続プロセスとして操作される、
かつ/又は
2種以上の真菌株が共発酵される、段落10又は11に記載の方法。
13.好ましくは、真菌株は、Pleurotaceaeから選択され、特に、真菌株は、P.pulmonarius P.ostreatus、P.citrinopileatus若しくはP.salmoneostramineusであるか、又は少なくとも1種の真菌株は、Morchellaceaeから選択され、特に、真菌株は、M.esculenta、M.angusteps若しくはM.deliciosaである、段落10~12のいずれか1つに記載の方法に従って生産される真菌バイオマス。
14.真菌ベースの食品の生産における、段落13に記載の真菌バイオマスの使用。
15.段落13に記載の真菌バイオマスを使用して調製される真菌ベースの食品。
【国際調査報告】