(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】安定性が高められたアルロース
(51)【国際特許分類】
A23L 29/30 20160101AFI20231228BHJP
A61K 31/7004 20060101ALI20231228BHJP
A61P 3/10 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
A23L29/30
A61K31/7004
A61P3/10
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539240
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-06-27
(86)【国際出願番号】 KR2021020285
(87)【国際公開番号】W WO2022146078
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0188451
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500578515
【氏名又は名称】サムヤン コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ジェギョン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ゴウン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジウォン
(72)【発明者】
【氏名】パク,チョンジン
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ジョンスク
【テーマコード(参考)】
4B041
4C086
【Fターム(参考)】
4B041LC07
4B041LD08
4B041LE08
4B041LK01
4B041LK10
4B041LP10
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4B041LP25
4C086AA10
4C086EA01
4C086MA01
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4C086MA23
4C086NA03
4C086NA20
4C086ZC35
(57)【要約】
本発明はアルロースシロップの保管安定性を高めるアルロース保管パッケージ、およびアルロースの保管安定性を高める方法に関するものである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器およびアルロースシロップを含むアルロース保管パッケージであって、前記容器容量100%を基準としてアルロースを除いた空の空間の容量が20%以下でアルロースシロップが充填された、アルロース保管パッケージ。
【請求項2】
前記アルロースシロップは、25℃で3週間保管し、次に35℃で7週間保管して合計10週間の保管条件で、保管0週のアルロース含有量(wt%)100重量%を基準として、アルロース含有量が90重量%以上である、請求項1に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項3】
前記容器に窒素充填されたものである、請求項1に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項4】
前記窒素充填は、前記容器の空いた空間またはアルロースシロップ内に窒素ガスを注入したものである、請求項1ないし3に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項5】
前記容器は金属または金属合金材質であり、内部面に形成されたポリマーコート層を含むものである、請求項1ないし4に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項6】
前記容器はスズまたはスズ合金材質であり、容器の内部面に形成されたエポキシフェノール系樹脂のコート層を含むものである、請求項5に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項7】
前記アルロースシロップはシロップの全体固形分含有量100重量%を基準としてアルロースの含有量が5重量%以上である、請求項1ないし6に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項8】
前記アルロースシロップの製造直後のpHが3.8以上である、請求項1ないし7に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項9】
前記アルロースシロップは、果糖基質を用いるアルロース転換反応物に対して活性炭を用いる脱色工程、カルシウム(Ca2+)タイプのイオン交換樹脂で充填されたクロマトグラフィーを用いる高純度分離工程、および前記高純度分離工程で得られたアルロース分画に対するイオン工程を行って得たアルロースシロップである、請求項1ないし8に記載のアルロース保管パッケージ。
【請求項10】
容器およびアルロースシロップを含むアルロース保管パッケージで、前記容器容量100%を基準としてアルロースを除いた空の空間の容量が20%以下でアルロースシロップを充填してアルロースの保管安定性を高める方法。
【請求項11】
前記アルロースシロップは、25℃で3週間保管し、次に35℃で7週間保管して合計10週間の保管条件で、保管0週のアルロース含有量(wt%)100重量%を基準として、アルロース含有量が90重量%以上である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
窒素充填を行うものである、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記容器は金属または金属合金材質であり、内部面に形成されたポリマーコート層を含むものである、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルロースシロップの保管安定性を高めるアルロース保管パッケージ、およびアルロースの保管安定性を高める方法に関する。
【背景技術】
【0002】
アルロース(allulose)は果糖(D-fructose)のエピマーであって、希少糖として知られている機能性糖類の一種であり、砂糖の約60~70%の高い甘味度を示しながらも熱量はほぼゼロカロリーに近いため、糖尿病の予防および改善に効能があると知られている。また、アルロースは溶解性にも優れると知られており、食品への活用が注目されている素材の一つである。
【0003】
最近、生物学的方法によりアルロースを製造する方法は、果糖-含有基質溶液とアルロースエピマー化酵素または前記酵素を生産する菌体と接触してアルロース転換反応を行う。アルロース転換工程に使用される反応原料である果糖含有溶液は、澱粉などの分解から得られるブドウ糖から異性化反応で得られた果糖異性化反応物であり得る。また、前記アルロースを含む反応液をクロマトグラフィーを用いて高純度溶液を作った後、シロップまたは結晶化して製品を生産している。
【0004】
アルロースは結晶性が低くて結晶化しにくいため、アルロースシロップ形態で保管、および流通しており、アルロースシロップは、pH、温度、電気伝導度などの多様な影響因子により保管期間が経過するほど徐々にアルロース含有量が低くなる問題がある。
【0005】
アルロースシロップを長期保管すると、アルロースの含有量が低くなり、アルロースが他の物質に転換または分解される。前記アルロース転換反応物は、例えば、果糖など他の糖類であるか、または一つのHMFのようなFurfural系の物質に転換されたりもする。そこで、アルロースシロップは保管期間の間分解または他の物質に転換されて徐々に含有量が減少する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の一例は、保管安定性が改善されたアルロースシロップを提供することにある。
【0007】
本発明の他の一例は、アルロースシロップの保管安定性が改善されたアルロースシロップと保管容器を含むアルロース保管パッケージに関するものである。
【0008】
本発明の他の一例は、アルロースシロップの保存容器内の空の空間確保、窒素充填および/またはアルロース保存容器の最適化によりアルロースの保管安定性を高める方法に関するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アルロースシロップの保管安定性を高めるアルロース保管パッケージ、およびアルロースの保管安定性を高める方法に関するものである。具体的には、本発明によるアルロースシロップの保管安定性を高める方法は、保管容器内の空いた空間容量を全体保管容器の容量100%を基準として20%以下に調節する方法、アルロース保存容器に窒素を充填する方法、および前記容器はスズまたはスズ合金材質であり、内部面は高分子樹脂のコート層を含んでアルロースシロップと容器材質と直接接触を減少させる方法からなる群より選ばれた一つ以上の方法で行うことができる。
【0010】
本発明により、アルロースシロップの保管安定性を改善して、製造直後から保存、および流通のような保管条件でアルロースの含有量を最大に維持したアルロースシロップを提供する。本明細書におけるアルロースシロップの保管安定性とは、アルロースシロップに含まれたアルロース含有量が製造直後と同一であるか、アルロース含有量の減少を最小化することを意味し、例えば、製造直後または保管0週目のアルロースの固形分含有量(wt%)100重量%を基準として、保管期間の間のアルロース含有量が100重量%に最も近接した含有量を維持し、例えば99.9重量%以上、97重量%以上、95重量%以上、92.5重量%以上または90重量%以上であり得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、アルロースシロップの保管安定性を高めるアルロース保管パッケージ、およびアルロースの保管安定性を高める方法により、アルロースシロップを長期間保管および流通しても、アルロースの分解または他の物質への転換が防止されてアルロース含有量の減少を最小化することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明をより詳しく説明する。
本発明の一例は、保管容器およびアルロースシロップを含むアルロース保管パッケージであって、前記保管容器の容量100%(v/v)を基準としてアルロースを除いた空の空間の容量が20%(v/v)以下でアルロースシロップが充填されたものであり得る。
【0013】
前記保管容器の容量100%(v/v)を基準として、前記空の空間の容量(体積)は、アルロース保管安定性を考慮して、20%以下、17.5%以下、15%以下、12.5%以下、10%以下、7.5%以下、または6%以下であり得、例えば1~20%、1~20%、1~17.5%、1~15%、1~12.5%、1~1~10%、1~7.5%、1~6%、1.5~20%、1.5~17.5%、1.5~15%、1.5~12.5%、1.5~10%、1.5~7.5%、1.5~6%、2~20%、2~17.5%、2~15%、2~12.5%、2~10%、2~7.5%、2~6%、2.5~20%、2.5~17.5%、2.5~15%、2.5~12.5%、2.5~10%、2.5~7.5%、2.5~6%、3~20%、3~17.5%、3~15%、3~12.5%、3~10%、3~7.5%、3~6%、3.5~20%、3.5~17.5%、3.5~15%、3.5~12.5%、3.5~10%、3.5~7.5%、3.5~6%、4~20%、4~17.5%、4~15%、4~12.5%、4~10%、4~7.5%、4~6%、4.5~20%、4.5~17.5%、4.5~15%、4.5~12.5%、4.5~10%、4.5~7.5%、または4.5~6%であり得る。前記空の空間の容量は、アルロース保存安定性を考慮すると少ないほど良いが、保管過程で体積膨張の可能性などを考慮すると適切な範囲に設定することが好ましい。
【0014】
本発明に適用可能なアルロースの保存容器または保管容器は、その内部に保存空間が形成され、上部には保存空間と連結される入口が形成された容器本体を含み、前記容器本体の入口に脱着可能に結合されて前記保存空間を密閉する蓋部材を含む。前記容器の形状または形態は特に制限はない。
【0015】
本発明によるアルロース保管パッケージは、アルロースの保存容器または保管容器の容量(体積)100%を基準としてアルロースを除いた空の空間の容量が20%以下でアルロースシロップが充填された場合、前記アルロースシロップは、25℃で3週間保管し、次に35℃で7週間保管して合計10週間の保管期間で、保存開始時点である保管0週のアルロース含有量(wt%)100重量%を基準として、相対的なアルロース含有量が99.9重量%以上、97重量%以上、95重量%以上、92.5重量%以上または90重量%以上であり得る。
【0016】
本発明の一例によるアルロースシロップの保管容器は、金属、金属合金、またはポリマー材質で製造されたものであり得、金属または金属合金素材である場合の容器の内面はポリマーでコートされてアルロースシロップとの直接接触を最小化することが好ましい。前記容器内面のコーティングは容器内部の全部をコートすることが好ましく、コーティングは1重コーティング、2重または3回以上の多重コーティングを含み、アルロースシロップと金属または金属合金素材の直接接触を最小化するために2回以上の多重コーティングがより好ましい。前記金属または金属合金素材は、食品容器に使用可能な材質であれば特に限定されず、例えば、スズまたはスズ合金であり得る。前記容器内面のコーティング剤は、食品容器に使用可能な物質であれば特に限定されず、例えば、食品容器に使用可能なエポキシフェノール系樹脂であり得、具体的には市販の製品であるcanguard 5K-872(商品名)であり得る。
【0017】
本発明では、アルロースシロップ形態でアルロースを提供できる。例えば、前記アルロースシロップは、固形分含有量を基準として0.1~100重量%のアルロースを含み得、例えば、1~50重量%、3~35重量%、3~25重量%または3~20重量%を含む低純度アルロースシロップであるか、または、70重量%以上、80重量%以上、85重量%以上、90重量%以上、95重量%以上、96重量%以上、97重量%以上、または99重量%以上の含有量で含む高純度アルロースシロップであり得る。
【0018】
前記アルロースシロップの粘度および電気伝導度は多様に設定でき、必要に応じて製造工程で得られるアルロースシロップをそのまま保管容器に注入するか、粘度および/または電気伝導度を調節するための調節剤を添加したり追加工程を行った後に得られるアルロースシロップを保管容器に注入して保管することができる。例えば、前記アルロースシロップの粘度は、温度45℃で2cps~200cpsであり得、電気伝導度は1000μS/cm以下、例えば0.01~1000μS/cm、好ましくは200μS/cm以下、150μS/cm以下、100μS/cm以下、80μS/cm以下、50μS/cm以下、30μS/cm以下、例えば、0.1~200μS/cm、0.1~150μS/cm、0.1~100μS/cm、0.1~0.1~80μS/cm、0.1~50μS/cm,または0.1~30μS/cmであり得る。
【0019】
本発明により保管開始時点におけるアルロースシロップのpHは、3.8以上、5.5以下であり得る。例えば、3.8~5.5以下、3.9~5.5以下、4.0~5.5以下、4.1~5.5以下、4.2~5.5以下、4.3~5.5以下、4.4~5.5以下、4.5~5.5以下、4.6~5.5以下、4.7~5.5以下、4.8~5.5以下であり得る。
【0020】
具体的な一例で、前記アルロースシロップは、生物学的に得られるアルロース含有溶液を、活性炭処理、SMBクロマトグラフィーによる高純度分離、およびイオン精製工程を含む製造方法で得ることができ、選択的に前記精製工程により処理されたアルロースシロップを濃縮する工程をさらに行うことができ、または、前記アルロース含有溶液の活性炭処理工程を行った後に高純度分離を行う前にイオン精製工程をさらに行うことができる。前記活性炭処理工程後に行うイオン精製工程は、高純度分離工程後に行うイオン精製工程と同一であるか、異なってもよく、イオン交換樹脂は特に制限されない。
【0021】
前記生物学的に得られるアルロース含有溶液は、アルロースエピマー化酵素を生産する微生物またはアルロースエピマー化酵素をコードする遺伝子が導入された組換え微生物を培養し、前記アルロースエピマー化酵素を生産する微生物またはこれから得られたアルロースエピマー化酵素を果糖-含有原料と反応して生産することができる。前記アルロースエピマー化酵素は、液状反応または固定化酵素を用いる固相反応で行われることができる。アルロース転換反応の一例は韓国登録特許第10-1318422号公報などに記載されている。
【0022】
前記アルロース含有溶液を、SMBクロマトグラフィー分離を行って、転換反応物よりアルロース含有量が高いアルロース分画と果糖ラフィネートに分離し、前記アルロース分画は、イオン精製工程を行ってアルロースシロップ製品に製造するか、さらに濃縮工程を行って濃縮製品に製造することができる。前記プシコース分画内のプシコースの含有量は、85重量%以上、例えば、85重量%~95%(w/w)以上になるように分離/精製することを含むことができる。
【0023】
本発明の好ましい一例は、容器およびアルロースシロップを含むアルロース保管パッケージであって、前記容器容量100%を基準としてアルロースを除いた空の空間の容量が20%以下でアルロースシロップが充填され、前記容器の空いた空間には窒素充填されたものであり、前記容器はスズまたはスズ合金材質であり、内部面はエポキシフェノール系樹脂のコート層を含むものであり得る。より好ましくは、アルロース保管パッケージは、追加で前記アルロースシロップは保管開始時点でpHが3.8以上~5.5を有することができ、基質を用いるアルロース転換反応物に対して活性炭を用いる脱色工程、およびカルシウム(Ca2+)タイプのイオン交換樹脂で充填されたクロマトグラフィーを用いる高純度分離工程を行って得たアルロース分画を、イオン精製を行ったものであり得る。そこで、前記アルロース保管パッケージに含まれたアルロースシロップは、保管0週目のアルロース含有量(wt%)100重量%を基準として、45℃温度で4週間保管条件でアルロース含有量が90.0%以上または92.5%以上である保管安定性を有するものであり得る。
【実施例】
【0024】
本発明を下記実施例をあげてより詳しく説明するが、本発明の範囲を下記実施例に限定する意図ではない。
【0025】
実施例1: 容器の空の空間容量による安定化試験
固形分70bxおよびアルロース純度97wt/wt%、およびpH4.1を有するアルロースシロップ(液状試料)を、1L容量のポリエチレン材質のサンプル容器に、サンプル容器の全体容量の90%容量で注入した実験群1-1(head space 10%)とサンプル容器の全体容量の10%容量で注入した実験群1-2(head space 90%)を準備した。前記容器のhead space容量は、アルロースシロップの密度と保存容器の容量を考慮して注入するアルロース重量を合わせて行った。
前記準備されたアルロースを満たしたサンプル容器を、温度25℃のincubatorで3週間保管し、変化の推移をはやく見るために3週目まで25℃に保管した後に、3週目に試料を採取した後に、その後3週目から35℃に加速実験のために保管し、4週目からは試料を採取した時点から35℃保管条件のアルロースシロップを分析した。前記保管期間の間に一週間の間隔でアルロース試料を少量採取して水を添加して3bxに希釈して分析試料を製造した。
前記分析試料は、HPLC分析法でアルロース含有量を測定した。具体的なHPLC分析条件は、87C(Biorad HPX-87C、7.8mmΦ×300mm)カラムを用いて温度80℃で、移動相として水100%を0.6ml/min流速で流して行い、RI Detectorを用いて検出した。下記表1にはアルロースの保管温度および保管期間による、実験群1-1(head space 10%)および実験群1-2(head space 90%)のアルロース含有量(wt%)および変化量(wt%)を測定した結果を示す。
【0026】
【0027】
前記表1に示すように、25℃で3週間保管し、次に35℃で7週間保管した全体10週間の保管条件で、保存開始時点である保管0週のアルロース含有量(wt%)100重量%を基準として、実験群1-1(head space 10%)のアルロース含有量は92.37重量%であり、実験群1-2(head space 90%)のアルロース含有量は89.59重量%であって、空の空間10%を有する実験群1-1のアルロース含有量が90%以上で保管安定性に優れることを確認した。
アルロースシロップを含む保管容器の上部の空いた空間(Head space)の容量が大きいほど、アルロース固形分含有量が急激に減少した。このようなアルロース含有量減少の原因は、空の空間の容量が大きいほど容器内部に含まれた空気含有量が高いので、アルロースがより不安定であるためアルロース含有量がより大幅に減少したことを確認した。
【0028】
実施例2: 窒素充填による安定化試験
固形分70bxおよびアルロース純度97wt/wt%、およびpH4.1を有するアルロースシロップ(液状試料)250gを、約250mL容量のポリエチレン材質のサンプル容器に、サンプル容器の全体容量の95%になるように注入した3個のサンプル容器を準備した。したがって、アルロースシロップ保管容器の空いた空間は容器容量の5%であった。
対照群実験は、前記アルロースサンプルが充填されたサンプル容器を大気雰囲気条件で密封して、45℃温度のIncubatorで保管した。
実験群2-1は、前記アルロースサンプルが充填されたサンプル容器のHead space内の空気を窒素に置換した実験群であって、アルロースシロップをサンプル容器に投入した後に容器内に供給ラインを介してhead spaceに窒素(純度99%以上)を2L/minで5分間充填してサンプル容器を密封し、45℃温度のIncubatorで保管した。実験群2-2は、前記アルロースサンプルが充填されたサンプル容器で、アルロースシロップ内部に供給ラインを入れて窒素(純度99%以上)を2L/minで5分間充填してサンプル容器を密封し、45℃温度のIncubatorで保管した。
対照群、実験群2-1および実験群2-2は、保管期間の間、一週間の間隔でアルロース試料を少量採取して、水を添加して3bxに希釈して分析試料を製造した。前記分析試料は、HPLC分析法でアルロース含有量を測定した。具体的なHPLC分析条件は、87C(Biorad HPX-87C、7.8mmΦ×300mm)カラムを用いて、温度80℃で、移動相として水100%を0.6ml/min流速で流して行い、RI Detectorを用いて検出した。下記表2にはアルロースの保管期間による、対照群(head spaceに空気を含む)、実験群2-1(head spaceに窒素注入)および実験群2-1(アルロースシロップ内に窒素注入)のアルロース含有量(wt%)および変化量(wt%)を測定した結果を示す。
【0029】
【0030】
前記表2の実験結果に示すように、3週の保管期間の間窒素充填をしなかった対照群の実験に比べて、窒素充填した実験群2-1および実験群2-2がアルロースの含有量の減少幅が少ないことが確認された。このようなアルロース含有量減少の原因は、大気に含まれた二酸化炭素、酸素などの物質によって、アルロースと反応して含有量減少を招いた。
前記アルロースシロップが充填されたサンプル容器のHead space内に窒素を注入した実験群2-1とアルロースシロップ内に窒素を注入した実験群2-2は、対照群に比べてアルロース含有量の減少幅が低くなり、窒素充填方式による大きな差はないが、アルロースシロップ内に窒素を注入した実験群2-2がアルロースシロップ内の空気を減少させる効果があって好ましいことが確認された。
【0031】
実施例3: 容器の内部材質による安定化試験
20L容量を有するアルロースシロップの保存容器として、円筒状容器の全体内部がcan guard 5K-872(エポキシフェノール系)で二重コーティング処理されたスズ(TIN)材質のカン容器(実験3-1)、容器の内部全体がcanguard 5K-872(エポキシフェノール系)で一重コーティング処理されたTIN材質のカン容器(実験3-2)、円筒状容器の壁面(側面)の内部がcanguard 5K-872(エポキシフェノール系)で一重コーティング処理されたTIN材質のカン容器(実験3-3)、およびポリエチレン材質の容器(実験3-4)を準備した。canguard 5K-872(エポキシフェノール系)は韓国の国内で食品用コーティングが可能な塗料である。
前記準備された4種の保存容器にそれぞれ、固形分70bxおよびアルロース純度97wt/wt%、pH4.1を有するアルロースシロップ20kgを充填して、各保存容器の保存容量100%を基準としてhead space容量が5%になるように埋めた後密封し、窒素充填はせず大気中の45℃温度のIncubatorで10週間保管した。
前記保管期間の間、一週間の間隔でアルロース試料を少量採取して水を添加して3bxに希釈して分析試料を製造した。前記分析試料は、HPLC分析法でアルロース含有量を測定した。具体的なHPLC分析条件は、87C(Biorad HPX-87C、7.8mmΦ×300mm)カラムを用いて、温度80℃で、移動相として水100%を0.6ml/min流速で流して行い、RI Detectorを用いて検出した。
【0032】
【0033】
実験群3-3の側面コーティングおよび実験群3-4のポリエチレン材質容器に比べて、実験群3-1と実験群3-2のような全面コートした容器で含有量の減少幅が少なかった。サンプル容器の全面をコートする場合、TIN材質とアルロースの当たる面積が少なくなるので、アルロース分解による含有量減少に影響が少ないことが確認された。また、全面コーティングの中でも2重コーティング容器(実験群3-1)が1重コーティング容器(実験群3-2)に比べて減少幅が少ないことが確認され、TIN材質に当たる面積が少ないほど含有量の安定性が高まることが確認された。
【国際調査報告】