(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】NCO末端ウレタンプレプロポリマーを含む止血性の組織接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/10 20060101AFI20231228BHJP
C08G 18/42 20060101ALI20231228BHJP
C09J 175/04 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
C08G18/10
C08G18/42 066
C09J175/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539753
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 EP2021087366
(87)【国際公開番号】W WO2022136583
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523238841
【氏名又は名称】ピーターズ サージカル
(71)【出願人】
【識別番号】510073202
【氏名又は名称】セントレ ナショナル デ ラ リシェルシェ サイエンティフィック(セ・エン・エル・エス)
(71)【出願人】
【識別番号】500262120
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ストラスブール
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE STRASBOURG
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】ヴィダル,ヴァレリー
(72)【発明者】
【氏名】ウェンデルズ,ソフィー
(72)【発明者】
【氏名】アヴルー,リュック
【テーマコード(参考)】
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4J034CA04
4J034CA13
4J034DA01
4J034DB04
4J034DB07
4J034DF16
4J034DF24
4J034HA01
4J034HA07
4J034HB12
4J034HC03
4J034HC09
4J034JA42
4J034KA01
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4J034KD02
4J034KE02
4J034RA08
4J040EF041
4J040EF072
4J040EF101
4J040EF262
4J040JA01
4J040JA13
4J040KA16
4J040LA06
4J040MA14
4J040NA02
(57)【要約】
本発明は、少なくともポリオールオリゴマー及びジイソシアネートに基づくNCO末端ウレタンプレポリマーに関し、ポリオールオリゴマーは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)であり、ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される。本発明はまた、そのようなNCO末端ウレタンプレポリマーを調製する方法、及びポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)を調製する方法に関する。本発明はまた、止血性の組織接着剤組成物及び止血性の組織接着剤に関する。本発明はまた、止血性の組織接着剤を調製するためのキットに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリオールオリゴマー及びジイソシアネートに基づくNCO末端ウレタンプレポリマーであって、前記ポリオールオリゴマーは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)であり、前記ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される、NCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項2】
前記オリゴPHA-ジオールは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール(PDO)、1,4-ブタンジオール(BDO)、又はそれらの混合物を含む群において選択される反応性溶媒とのエステル転移反応によって得られる、請求項1に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項3】
前記オリゴPHA-ジオールは、149mgKOH/gから560mgKOH/g、有利には149mgKOH/gから375mgKOH/g、より有利には160mgKOH/gから375mgKOH/g、特に224mgKOH/gから375mgKOH/gの水酸基価を有する、請求項1又は2に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項4】
前記PHAは、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシ吉草酸(P3HV)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオン酸(P3HP)、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸(P4HV)、ポリ-5-ヒドロキシ吉草酸(P5HV)、及びそれらの混合物を含む群から選択され、有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、又はそれらの混合物であり、より有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項5】
前記ジイソシアネートは、ジメリルジイソシアネート(DDI)と、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含む群において選択される第2のジイソシアネートとの混合物であり、含有比率(BDI、PDI、LDI、6-HDI、7-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)は、0.1/99.9から999.1/0.1、有利には20/80から80/20、又は有利には25/75から0.1/99.9である、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項6】
前記第2のジイソシアネートは、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、又はそれらの混合物であり、有利にはヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)である、請求項5に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項7】
前記NCO末端ウレタンプレポリマーは、1から3、有利には2のNCO:OHモル比を有する、請求項1乃至6のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項8】
前記NCO末端ウレタンプレポリマーは、プレポリマーの総重量に対して4から15重量%の遊離-NCO含有量を有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項9】
前記NCO末端ウレタンプレポリマーは、5から120Pa・s、有利には5から60Pa・s、又は有利には70から100Pa・sの粘度を有し、前記粘度は、25°Cの温度において平行板間のせん断粘度によって測定される、請求項1乃至8のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー。
【請求項10】
149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)を調製する方法であって、
(a) 前記PHAの融点以上で反応性溶媒の沸点を下回る温度、特に170°Cから190°Cの温度で、有利には180°Cの温度で、不活性ガス流下で反応性溶媒を加熱するステップであり、前記反応性溶媒は、1,2エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及びそれらの混合物を含む群において選択される、好ましくは1,4-ブタンジオールである、ステップと、
(b) 乾燥PHAを添加して撹拌するステップと、
(c) 触媒を添加することによって反応を開始させるステップと、
(d) 15から240分、有利には100から215分、典型的には205から215分の期間反応させるステップと、
(e) ステップ(d)の後に得られた混合物を沈殿させ且つ洗浄するステップと、
(f) 減圧下における、120°Cから180°C、有利には150°Cから180°C、典型的には140°Cから160°Cの温度での蒸留によって前記オリゴPHA-ジオールを回収するステップと、
を含む方法。
【請求項11】
モル比(反応性溶媒)/(PHA)が、2000から12000、有利には2000から7000、より有利には5000から7000である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記PHAは、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシ吉草酸(P3HV)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオン酸(P3HP)、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸(P4HV)、ポリ-5-ヒドロキシ吉草酸(P5HV)、及びそれらの混合物を含む群から選択され、有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)又はそれらの混合物であり、より有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマーを調製する方法であって、
(a´) ジイソシアネートとポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)とを20°Cから110°Cの温度で撹拌しながら混ぜ合わせるステップであって、前記ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択され、前記オリゴPHA-ジオールは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有する、及び/又は請求項10乃至12のいずれか一項に記載の方法に従って得られる、ステップと、
(b´) 任意選択で、DDIと第2のジイソシアネートとの混合物が使用される場合には、ステップ(a´)において前記DDIを添加し、ステップ(b´)において1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される前記第2のジイソシアネートを液滴で添加するステップと、
(c´) 間接滴定法により遊離-NCO含有量を決定することによって測定される、前記プレポリマーの総重量に対して4から18重量%の遊離-NCO含有量を得るまで反応させるステップと、
(d´) 前記NCO末端ウレタンプレポリマーを回収するステップと、
を含む方法。
【請求項14】
(A)請求項1乃至9のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー、又は請求項13に記載の方法に従って得られるNCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤とを含む止血性の組織接着剤組成物。
【請求項15】
前記鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択され、有利には1,4-ブタンジオールである、請求項14に記載の止血性の組織接着剤組成物。
【請求項16】
前記組成物中のNCO:OHモル比が、1から2であり、有利には1から1.5であり、好ましくは1から1.2である、請求項14又は15に記載の止血性の組織接着剤組成物。
【請求項17】
(A) 請求項1乃至9のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー、又は請求項13に記載の方法によって得られるNCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から有利に選択される、より有利には1,4-ブタンジオールである鎖延長剤とを反応させることによって得られる止血性の組織接着剤。
【請求項18】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のNCO末端ウレタンプレポリマー、又は請求項13に記載の方法に従って得られるNCO末端ウレタンプレポリマーを含む組成物Aと、エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から有利に選択される、より有利には1,4-ブタンジオールである鎖延長剤を含む組成物Bとを含む止血性の組織接着剤を調製するためのキットであって、前記組成物A及びBは、別々に包装され、同時に、順次、又は別々に、非経口投与可能である、キット。
【請求項19】
止血性の組織接着剤を調製するための請求項14乃至16のいずれか一項に記載の止血性の組織接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(A)NCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤とを含む止血性の組織接着剤組成物に関する。本発明はまた、そのようなNCO末端ウレタンプレポリマー及びその調製方法に関する。本発明はまた、止血性の組織接着剤及び止血性の組織接着剤を調製するためのキットに関する。
【背景技術】
【0002】
過去数十年の間に、生分解性の組織接着剤が、主に世界中の外科手術の増加及びゴールドスタンダードである縫合術と比較したその非侵襲性により、医療分野において多くの注目を集めている。
【0003】
外科用接着剤は:(i)止血剤、(ii)接着剤、及び(iii)シーラントの3つの主要なカテゴリーに分けられる。(i)出血制御のために作用する止血剤は、通常、凝固カスケード動態を増加させることになるフィブリン、トロンビン、又は、1つ又は複数の凝固因子等の血液成分を含む。しかし、止血剤は、血液疾患伝播リスクと相まって、低い機械的抵抗性及び組織への接着性を提供する。(ii)接着剤は、組織接着剤の第2のカテゴリーであり、組織を共に強力に接着するのに寄与するか、又は縫合術の補完としてその機械的抵抗性を改善するために使用される。このクラスでは、シアノアクリレートベースの接着剤が、その迅速な硬化時間及び様々なタイプの組織への強力な接着性のためによく知られている。しかし、それらの分解生成物の誘導毒性と共に、シアノアクリレートベースの最終膜は、通常、脆性を示し、可撓性を欠いている。最後に、(iii)「止血性の組織接着剤」とも呼ばれるシーラントは、止血剤と接着剤の間に位置し、中間範囲の接着性及び機械的抵抗性と相まって止血を提供する。これらは主に、血液、他の体液、又はガス漏れに対する物理的なバリアを作成するために使用される。外科用のシーラント及び接着剤は、主に、組織に接触してすぐに硬化することによって凝固する液体、又は、流体を吸収し、標的組織に接着しながら膨張するゲルの形態で存在し、ゲル、粉末、又はドレッシング材等の様々なタイプの止血剤が利用可能である。
【0004】
様々な生体接着剤の要件の中でも、生体適合性、容易な取り扱い、制限された発熱反応と共に速硬化、及び適応性のある機械的特性が、適した材料の鍵である。現在まで、これら全ての基準を満たす理想的な解決策は見つかっていない。
【0005】
ポリウレタン(PU)ベースの接着剤は、その調整可能な物理化学的特性、機械的特性、及び生分解特性のおかげで、この問題における有望な候補として最近現れている。加えて、製剤化の可能性には、バイオベースの構成要素及びその誘導体の使用が含まれる。組織へのPU接着は、通常、遊離-NCO末端基の存在下にあり、この末端基は、例えば、最終的なポリマーを与えるために、組織内の水及びヒドロキシル又はアミノ酸等の周辺官能基と反応する。
【0006】
この点について、Su等(非特許文献1)は、最近、12wt%までのヒマシ油をポリ(エチレングリコール)400g.mol-1(PEG400)及びイソホロンジイソシアネート(IPDI)PU中に組み込むことによって、良好な接着強度及び少ない硬化時間を有する生体接着剤を設計した。フィブリン(2~18kPa)とシアノアクリレート(650kPa)との間に位置する、20~80kPaの中間接着を有する三分岐及び多分岐のNCO末端PUも合成されている(非特許文献2及び非特許文献3)。キシロースも、PEG200/4,4′‐メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)PU構造中に15のポリオールモル%まで組み込むことに成功した(非特許文献4)。
【0007】
それにもかかわらず、過剰な膨張が、いくつかの架橋ネットワークにおける機械的特性及び接着に対する脅威のままである。本発明者等の知る限りでは、少なくとも25wt%のバイオベース成分を含む「バイオベース」の材料を考慮すると、これまでに報告されたバイオベースのPU生体接着剤はわずかである。
【0008】
さらに、迅速な硬化時間は外科用接着剤にとって不可欠な特性であり、遅すぎる硬化時間は流体及び/又は血液の漏出につながり恐れがあり、患者に重度の損傷をさらに引き起こす可能性がある。ほとんどのイソシアネートベースの接着剤は長い硬化時間を示し、通常、完全なNCOの消失には数時間が必要である。
【0009】
従って、様々な種類の手術に適し得る、調整可能な接着性、機械的特性、及び生分解特性を有する組織接着剤として、新しいバイオベースのNCO末端PUプレポリマーを設計する必要がある。迅速な硬化時間を有するNCO末端PUプレポリマーベースの外科用接着剤を設計する必要もある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Q. Su, D. Wei, W. Dai, Y. Zhang, Z. Xia, Designing a castor oil-based polyurethane as bioadhesive, Colloids Surf B Biointerfaces 181 (2019) 740-748
【非特許文献2】A.I. Bochynska, S. Sharifi, T.G. van Tienen, P. Buma, D.W. Grijpma, Development of Tissue Adhesives Based on Amphiphilic Isocyanate-Terminated Trimethylene Carbonate Block Copolymers, Macromolecular Symposia 334(1) (2013) 40-48
【非特許文献3】A.I. Bochynska, T.G. Van Tienen, G. Hannink, P. Buma, D.W. Grijpma, Development of biodegradable hyper-branched tissue adhesives for the repair of meniscus tears, Acta Biomater 32 (2016) 1-9
【非特許文献4】S. Balcioglu, H. Parlakpinar, N. Vardi, E.B. Denkbas, M.G. Karaaslan, S. Gulgen, E. Taslidere, S. Koytepe, B. Ates, Design of Xylose-Based Semisynthetic Polyurethane Tissue Adhesives with Enhanced Bioactivity Properties, ACS Appl Mater Interfaces 8(7) (2016) 4456-66
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)は、異なる構造を有する細菌性ポリエステルの生分解性及びバイオベースのファミリーである。それらの中でも、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(PHB)が最も一般的であり、異なる生物資源からバイオテクノロジーにより容易に得られる。しかし、50年以上前から知られているこの熱可塑性ポリエステルは、乏しい機械的特性、高度の結晶化度、及び低い熱安定性等のいくつかの欠点のために、現在まで非常に限られた用途しか提示していない。この細菌性ポリエステルの価値を決める1つの主要な方法は、新世代のバイオベースポリマーの合成のための制御された構成要素を開発することである。
【0012】
このようにして、本発明者等は、環境に優しい方法(a green way)で反応性溶媒を使用する新しい合成経路から制御された低モル質量を有する、短い直鎖状のPHB-ジオールオリゴマー(オリゴPHB-ジオール)を含む、短い直鎖状のPHA-ジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)の調製に成功した。
【0013】
次に、本発明者等は、高いバイオベース含有量を有する熱可塑性ポリウレタン(TPU)の調製に成功し、従って、様々な種類の手術に適し得る調整可能な接着性、機械的特性、及び生分解特性を有する組織接着剤として、新しいバイオベースのNCO末端PUプレポリマーの設計に成功した。
【課題を解決するための手段】
【0014】
第1の態様において、本発明は、少なくともポリオールオリゴマー及びジイソシアネートに基づくNCO末端ウレタンプレポリマーに関し、ポリオールオリゴマーは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)であり、ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される。
【0015】
第2の態様において、本発明は、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)を調製する方法に関し、当該方法は:
(a) PHAの融点以上で反応性溶媒の沸点を下回る温度、特に170°Cから190°Cの温度で、有利には180°Cの温度で、不活性ガス流下で反応性溶媒を加熱するステップであり、反応性溶媒は、1,2エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及びそれらの混合物を含む群において選択される、好ましくは1,4-ブタンジオールである、ステップ;
(b) 乾燥PHAを添加して撹拌するステップ;
(c) 触媒を添加することによって反応を開始させるステップ;
(d) 15から240分、有利には100から215分、典型的には205から215分の期間反応させるステップ;
(e) ステップ(d)の後に得られた混合物を沈殿させ且つ洗浄するステップ;及び
(f) 減圧下における、120°Cから180°C、有利には150°Cから180°C、典型的には140°Cから160°Cの温度での蒸留によってオリゴPHA-ジオールを回収するステップ;
を含む。
【0016】
第3の態様において、本発明は、本発明のNCO末端ウレタンプレポリマーを調製する方法に関し、当該方法は:
(a′) ジイソシアネートとポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)とを20°Cから110°Cの温度で撹拌しながら混ぜ合わせるステップであって、ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択され、オリゴPHA-ジオールは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有する、及び/又は本発明の第2の態様の方法に従って得られる、ステップ;
(b′) 任意選択で、DDIと第2のジイソシアネートとの混合物が使用される場合には、ステップ(a′)においてDDIを添加し、ステップ(b′)において1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される第2のジイソシアネートを液滴で添加するステップ;
(c′) 間接滴定法により遊離-NCO含有量を決定することによって測定される、プレポリマーの総重量に対して4から18重量%の遊離-NCO含有量を得るまで反応させるステップ;
(d′) NCO末端ウレタンプレポリマーを回収するステップ;
を含む。
【0017】
第4の態様において、本発明は、(A)本発明のNCO末端ウレタンプレポリマー又は本発明の方法に従って得られるNCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤とを含む止血性の組織接着剤組成物に関する。
【0018】
第5の態様において、本発明は、(A)本発明のNCO末端ウレタンプレポリマー又は本発明の方法によって得られるNCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から有利に選択される、より有利には1,4-ブタンジオールである鎖延長剤とを反応させることによって得られる止血性の組織接着剤に関する。
【0019】
本発明の別の態様は、本発明のNCO末端ウレタンプレポリマー又は本発明の方法に従って得られるNCO末端ウレタンプレポリマーを含む組成物Aと、エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から有利に選択される、より有利には1,4-ブタンジオールである鎖延長剤を含む組成物Bとを含む止血性の組織接着剤を調製するためのキットであり、組成物A及びBは、別々に包装され、同時に、順次、又は別々に、非経口投与可能である。
【0020】
本発明の別の態様は、止血性の組織接着剤を調製するための本発明の止血性の組織接着剤組成物の使用である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】複数のパラメータを使用した反応時間に対するオリゴPHB-ジオールM
nの変化を表した図であり:a)DBTLモル当量(0.7(ロンド)、1.5(トライアングル)、2.2(ロザンジュ)、2.9(カレ))、T=180°C、及び6000モル当量BDO(
図1A);b)BDOモル当量(3000(ロンド)、6000(トライアングル)、12000(ロザンジュ)、18000(カレ))、T=180°C、及び2.2モル当量DBTL(
図1B);c)温度(150°C(ロンド)、160°C(トライアングル)、180°C(ロザンジュ))、2.2モル当量DBTL、及び6000モル当量BDO(
図1C);d)短いジオールの長さ(ETG(ロンド)、PDO(トライアングル)、BDO(ロザンジュ))、T=180°C、2.2モル当量DBTL、及び6000モル当量BDO(
図1D)である。
【
図2】CDCl
3中の450g/mol
-1オリゴPHB-ジオールのa)
1H、b)
13C、及びc)
31P NMRスペクトルを表した図である。
【
図3】様々なMnを有するオリゴPHB-ジオールのFTIR-ATR分析の結果を表した図であり、上から下に、Mnが減少するPHBであり:260000g.mol
-1、1000g.mol
-1、450g.mol
-1、及び3000g.mol
-1である。
【
図4】それぞれa)正味の(neat)オリゴPHB-ジオール及びb)DDI-0%からf)DDI-100%のプレポリマーの
1H-NMRスペクトルを表した図である。
【
図5】それぞれ上から下に正味のオリゴPHB-ジオール、DDI-0%からDDI-100%のプレポリマーのFTIR-ATR分析の結果を表した図である。
【
図6】a)DDI-0%、DDI-25%、DDI-50%、DDI-75%、又はDDI-100%でのプレポリマーとBDOとの反応の間、及びb)DDI-50%プレポリマーと異なる鎖延長剤(BDA、ABO、BDO、PDO、及びEtG)との反応の間の遊離NCO基含有量(%)の変化を表した図である。
【
図7】a)BDOと全てのプレポリマー(DDI-0%、DDI-25%、DDI-50%、DDI-75%、又はDDI-100%)に対する筋肉組織への、b)異なる鎖延長剤(BDA、ABO、BDO、PDO、及びEtG)とDDI-50%に対する筋肉組織への、及びc)BDOとDDI-50%に対する異なる基板(新鮮なウシの筋肉、肝臓組織、及びブタの皮膚組織)への2成分組織接着剤の接着性を表した図である。
【
図8】a)BDOと全てのプレポリマー(DDI-0%、DDI-25%、DDI-50%、DDI-75%、又はDDI-100%)の、b)異なる鎖延長剤(BDA、ABO、BDO、PDO、及びEtG)とDDI-50%のモデルTPUの引張特性を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
定義
本発明に関連して、「バイオベースの接着剤」という用語は、少なくとも25wt%のバイオベース成分を含む接着剤を意味する。
【0023】
本発明に関連して、「止血性の組織接着剤組成物」という用語は、NCO末端ウレタンプレポリマー及び鎖延長剤に基づく組成物を意味し、当該組成物は、組織上に塗布され、次に硬化されて止血性の組織接着剤を与えることを意図されている。本発明に関連して、「外科用の止血性の接着剤」とも呼ばれる「止血性の組織接着剤」は、従って、止血性の組織接着剤組成物を組織に塗布し、次に硬化させることによって得られる。
【0024】
本発明に関連して、「ポリオールオリゴマー」という用語は、ヒドロキシル末端官能基を有し且つ1以上のヒドロキシル官能性を有する短いPHAポリマー鎖(オリゴマー)を指す。本発明に関連して、ポリオールオリゴマーのヒドロキシル官能性は2に近く、有利には2である。従って、本願において、「ポリオール」、「ポリオールオリゴマー」、及び「オリゴポリオール」という用語は、それらが同じ実体を指すものとして、交換可能に使用することができる。ポリオールオリゴマーのヒドロキシル官能性が2である場合、「ジオールオリゴマー」及び「オリゴPHA-ジオール」という用語は、それらが同じ実体を指すものとして、交換可能に使用することができる。
【0025】
本発明に関連して、「プレポリマー」という用語は、他の反応性官能基との反応によって後続の重合に関与するのを可能にし得る反応性末端基を有するオリゴマー又はポリマーを意味する。
【0026】
本発明に関連して、「イソシアネート末端ウレタンプレポリマー」とも呼ばれる「NCO末端ウレタンプレポリマー」という用語は、1つ又はいくつかのジイソシアネートと1つ又はいくつかのポリオールとの反応、特にジイソシアネートのイソシアネート基(-NCO)とポリオールのヒドロキシル基(-OH)との反応の結果であり、得られたプレポリマーは-NCO末端である。
【0027】
本発明に関連して、「~に基づくプレポリマー」という用語は、出発成分の混合物及び/又はこのプレポリマーの重合に使用される出発成分間の反応の生成物、好ましくは、このプレポリマーに使用される異なる出発成分間の反応の生成物のみを含むプレポリマーを意味し、出発成分の一部は、プレポリマーの製造プロセスの異なるフェーズの間、特に重合段階の間に、少なくとも部分的に、互いに又はそれらの密接な化学環境と反応することを意図するか又は反応することができる。このように、出発成分は、プレポリマーの重合の間に共に反応することを意図した試薬である。従って、出発成分は、溶媒又は溶媒の混合物、及び/又は、少なくとも1つの触媒及び/又は少なくとも1つの塩及び/又は少なくとも1つの重合開始剤及び/又は少なくとも1つの安定剤等の他の添加剤を任意選択で追加的に含む反応混合物に導入される。
【0028】
本発明に関連して、特にポリウレタンに対するオリゴポリオールに関連して、「ヒドロキシル指数」又は「IOH」とも呼ばれる「水酸基値」という用語は、イソシアネートとの反応に利用可能なヒドロキシル基の量の定量値を定義している。水酸基値は、試料1gに対する水酸化カリウム当量のミリグラム(mgKOH/g)として表される。水酸基値は、以下の基準:DIN53240-2:2007-11(2007)又はASTM E1899-02(2002)に開示されている方法によって決定することができる。
【0029】
本発明に関連して、「平均モル質量」とも呼ばれる「平均分子量」という用語は、分子量分布プロファイルの平均値として定義され、各分子は平均に等しく寄与すると考えられ、「数平均分子量」又は「Mn」とも呼ばれる。本発明において、溶液中のオリゴPHA-ジオール又はプレポリマーの平均モル質量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)としても知られる分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)によって決定することができる。
【0030】
本発明に関連して、「反応性溶媒」という用語は、分子が反応媒体中に過剰に添加されることを意味し、これは、反応温度で液体の形態であり、溶媒として作用するが、標的反応にも積極的に関与する。
【0031】
本発明に関連して、「NCO/OH比」とも呼ばれる「NCO/OHモル比」は、-NCO基を含有する材料(ジイソシアネート)と-OH基を含有する材料(ポリオール)との当量比として定義される。NCO/OHモル比は、イソシアネート末端ポリウレタンプレポリマーの形態及び特性を調節する効率的な方法である。NCO:OHモル比は、(上記の)ヒドロキシル指数(IOH)及び(以下の基準:DIN53185、16945(1994)又はASTM D1638(1985)に開示されている方法によって決定される)NCO指数を決定することによって選ばれる。
【0032】
NCO末端ウレタンプレポリマー
本発明の第1の態様は、少なくともポリオールオリゴマー及びジイソシアネートに基づくNCO末端ウレタンプレポリマーに関し、ポリオールオリゴマーは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)であり、ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される。
【0033】
有利に、オリゴPHA-ジオールは、149mgKOH/gから560mgKOH/g、有利には149mgKOH/gから375mgKOH/g、より有利には160mgKOH/gから375mgKOH/g、特に224mgKOH/gから375mgKOH/gの水酸基価を有する。
【0034】
有利に、オリゴPHA-ジオールは、750g/mol以下の平均分子量を有する。より有利には、オリゴPHA-ジオールは、200g/molから750g/mol、より有利には、300g/molから750g/mol、より有利には、300g/molから700g/mol、より有利には、300g/molから500g/molの平均分子量を有する。
【0035】
本発明のNCO末端ウレタンプレポリマーの1つの特定の特徴は、高い水酸基価、すなわち、149mgKOH/g以上の水酸基価を有する、従って、低い平均分子量、すなわち、750g/mol以下の平均分子量を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)から選択されるポリオールオリゴマーから得られることである。オリゴPHA-ジオールの水酸基価を増加させ、従って、オリゴPHA-ジオールの平均分子量を減少させることによって、オリゴマーの物理的態様は、粉末状固体から粘性液体まで変化する。さらに、オリゴマーの粘度は、モル質量と共に減少した。低い粘度を有するオリゴPHA-ジオールは、環境に優しい化学的なアプローチで、有毒で環境に優しくない有機溶媒の使用を避けるために、バルクプロセスに対する大きな利点を示す。さらに、高い水酸基価、従って、低い平均分子量を有するオリゴPHA-ジオールから得られたNCO末端ウレタンプレポリマーは、調整された特性を有する粘性の液体であるという利点を有する。
【0036】
有利に、オリゴPHA-ジオールは、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA)と、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール(PDO)、1,4-ブタンジオール(BDO)、又はそれらの混合物を含む群において選択される反応性溶媒とのエステル転移反応によって得られる。オリゴPHA-ジオールを得るための具体的な方法は、以下の「オリゴPHA-ジオールを調製する方法」というセクションにおいて開示される。
【0037】
有利に、PHAは、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシ吉草酸(P3HV)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオン酸(P3HP)、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸(P4HV)、ポリ-5-ヒドロキシ吉草酸(P5HV)、及びそれらの混合物を含む群から選択され、有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、又はそれらの混合物であり、より有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)である。
【0038】
有利に、ジイソシアネートは、ジメリルジイソシアネート(DDI)と、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含む群において選択される第2のジイソシアネートとの混合物である。典型的には、そのような混合物において、含有比率(BDI、PDI、LDI、6-HDI、7-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)は、0/100から100/0、有利には25/75から0/100、より有利には50/50から0/100であり、特に含有比率(BDI、PDI、LDI、6-HDI、7-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)は50/50、25/75、0.1/99.9、又は0/100である。有利には、そのような混合物において、含有比率(BDI、PDI、LDI、6-HDI、7-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)は、0.1/99.9から99.9/0、1、好ましくは20/80から80/20、又は好ましくは25/75から0.1/99.9、又は50/50から0.1/99.9である。
【0039】
より有利には、ジイソシアネートは、ジメリルジイソシアネート(DDI)と、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、及びそれらの混合物を含む群において選択される第2のジイソシアネートとの混合物である。典型的には、そのような混合物において、含有比率(PDI、6-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)は、0/100から100/0、有利には25/75から0/100、より有利には50/50から0/100であり、特に、50/50、25/75、0.1/99.9、又は0/100である。有利に、そのような混合物において、含有比率(PDI、6-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)は、0.1/99.9から99.9/0.1、好ましくは20/80から80/20、又は好ましくは25/75から0.1/99.9、又は50/50から0.1/99.9である。典型的には、第2のジイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)であり、含有比率(6-HDI)/(DDI)は、0/100から100/0、有利には25/75から0/100、より有利には50/50から0/100であり、特に、50/50、25/75、0.1/99.9、又は0/100である。有利に、第2のジイソシアネートはヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)であり、含有比率(6-HDI)/(DDI)は、0.1/99.9から99.9/0.1、好ましくは20/80から80/20、又は好ましくは25/75から0.1/99.9、又は50/50から0.1/99.9である。
【0040】
本発明に関連して、ジイソシアネートの混合物の使用、特に、DDIと第2のジイソシアネートとの混合物の使用は、可撓性、機械的強度、物理化学的特性、分解性、生体適合性、止血特性等の組織接着剤の最終的な特性を制御し且つ調整する利点を有する。
【0041】
有利に、NCO末端ウレタンプレポリマーは、1から3、有利には2のNCO:OHモル比を有する。そのようなNCO:OHモル比は、組織接着剤組成物としての使用に適応した粘度、モル質量、硬化時間、及び生体適合性を得るのを可能にする。1未満のNCO:OHモル比は、粘度の増加及び反応性の欠如をもたらし、2を超えるNCO:OHモル比は、遊離ジイソシアネートモノマーの存在のため、高い細胞毒性及び低い生体適合性をもたらす。
【0042】
有利に、ポリオールオリゴマー及びジイソシアネートの含有量は、上記のNCO:OHモル比が得られるように選択される。特に、NCO末端ウレタンプレポリマーは、NCO末端ウレタンプレポリマーの総重量に対して15から50wt%の含有量で先に開示した1つ又はいくつかのポリオールオリゴマー、及び50から85wt%の総含有量で先に開示した1つ又はいくつかのジイソシアネートに基づいている。
【0043】
有利に、NCO末端ウレタンプレポリマーは、プレポリマーの総重量に対して4から18重量%の遊離-NCO含有量を有する。本発明によると、遊離-NCO含有量は、間接滴定法によって決定される。4%未満の遊離-NCO含有量は、不十分な接着特性をもたらし、15を超える遊離-NCO含有量は、遊離ジイソシアネートモノマー及びより高い細胞毒性及びより低い生体適合性をもたらす。
【0044】
有利に、NCO末端ウレタンプレポリマーは、5から120Pa・s、典型的には5から60Pa・s、又は15から120Pa・s、有利には70から100Pa・sの粘度を有し、粘度は、25°Cの温度で測定され、本発明に関連して、粘度は、20mm平行板を装備したTA Instrument Discovery Hybrid Rheometer HR-3を使用して測定された。周波数範囲は10-5から102s-1であり、ギャップは500μmであった。そのような粘度は、組織接着剤組成物としての使用に適応している。より低い粘度は、要するに、高い細胞毒性を有する組成物をもたらし、従って、組織接着剤として使用するには不適切であり、より高い粘度は、注入することができない組成物をもたらす。
【0045】
オリゴPHA-ジオールを調製する方法
本発明の第2の態様は、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)を調製する方法に関し、当該方法は:
(a) PHAの融点以上で反応性溶媒の沸点を下回る温度、特に170°Cから190°Cの温度で、有利には180°Cの温度で、不活性ガス流下で反応性溶媒を加熱するステップであり、反応性溶媒は、1,2エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、及びそれらの混合物を含む群において選択される、好ましくは1,4-ブタンジオールである、ステップ;
(b) 乾燥PHAを添加して撹拌するステップ;
(c) 触媒を添加することによって反応を開始させるステップ;
(d) 15から240分、有利には100から215分、典型的には205から215分の期間反応させるステップ;
(e) ステップ(d)の後に得られた混合物を沈殿させ且つ洗浄するステップ;及び
(f) 減圧下における、120°Cから180°C、有利には150°Cから180°C、典型的には140°Cから160°Cの温度での蒸留によってオリゴPHA-ジオールを回収するステップ;
を含む。
【0046】
有利に、オリゴPHA-ジオールは先に開示した通りであり、特に「NCO末端ウレタンプレポリマー」というセクションにおいて開示した通りである。
【0047】
そのような方法は、1,2-エチレングリコール、1,3-プロパンジオール(PDO)、1,4-ブタンジオール(BDO)、又はそれらの混合物を含む群において選択される反応性溶媒によるポリヒドロキシアルカノエート(PHA)のエステル転移反応を可能にする。
【0048】
本発明によるオリゴPHA-ジオールを調製する方法は、バイオベースの反応性溶媒を使用し、触媒濃度を低下させ、反応時間を短縮するのを可能にする。そのような方法は、従って、当業者が知っている方法よりも環境に優しい。そのような方法は、オリゴPHA-ジオールの分子量を制御し、従って、平均分子量が750g/molよりも低く、水酸基価が149mgKOH/gよりも高いオリゴPHA-ジオールを得るのも可能にする。
【0049】
当該方法のステップ(a)において、反応性溶媒は、PHAの融点以上且つ反応性溶媒の沸点を下回る温度で加熱され、有利には、PHAの分解温度よりも低い温度で加熱される。特に、反応性溶媒は、170°Cから190°Cの温度、有利には180°Cの温度で加熱される。
【0050】
ステップ(a)において、反応性溶媒は、有利には2000から12000モル当量、典型的には3000から12000モル当量の量である。
【0051】
ステップ(b)において、PHAは有利には1モル当量の量である。従って、有利には、モル比(反応性溶媒)/(PHA)は、2000から12000モル当量、典型的には3000から12000、有利には2000から7000、より有利には5000から7000である。
【0052】
有利に、ステップ(b)において、反応性溶媒とPHAとを含む溶液は、PHAが完全に溶解するまで、すなわち、人の目に見える粒子が溶液からなくなるまで撹拌される。
【0053】
ステップ(c)において、PHA溶液が得られると、温度は有利に170°Cから190°Cの反応温度、より有利には180°Cの反応温度に設定される。次に、反応が、適切な量の触媒を添加することによって開始される。有利に、触媒は、ジラウリン酸ジブチルすず(DBTL)、2-エチルヘキサン酸すず(II)、p-トルエンスルホン酸、及びそれらの混合物を含む群から選択され、特にDBTLである。有利に、触媒の含有量は、PHAの総重量に対して、0、3重量%よりも多く、有利には0.3重量%から5重量%、より有利には0.3重量%から1重量%、より有利には0.5重量%から0.75重量%である。本発明の方法は、低用量の触媒が使用されるのを可能にする。
【0054】
ステップ(d)において、反応は、15から240分、有利には100から215分、典型的には205から215分の期間実行される。
【0055】
ステップ(e)において、反応の最後に、反応混合物を沈殿させ、触媒を除去するために、有利には石油エーテルの大量の溶媒で、有利には少なくとも三回洗浄した。次に、溶媒、有利には石油エーテルは、オリゴPHA-ジオールから分離される。残留溶媒、有利には残留石油エーテルは、特に2000rpmで2分間遠心分離機5804(Eppendorf, France)を使用して、混合物から最終的に排除される。
【0056】
ステップ(f)において、オリゴPHA-ジオールは、減圧下で、120から180°C、有利には150°Cから180°C、典型的には140~160°Cの温度での蒸留によって回収される。
【0057】
有利に、当該方法において、PHAは、ポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)、ポリ-3-ヒドロキシ吉草酸(P3HV)、ポリ-3-ヒドロキシプロピオン酸(P3HP)、ポリ-4-ヒドロキシ吉草酸(P4HV)、ポリ-5-ヒドロキシ吉草酸(P5HV)、及びそれらの混合物を含む群から選択され、有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)、ポリ-4-ヒドロキシ酪酸(P4HB)又はそれらの混合物であり、より有利にはポリ-3-ヒドロキシ酪酸(P3HB)である。
【0058】
有利に、そのような方法は、149mgKOH/g以下、有利には149mgKOH/gから560mgKOH/g、有利には149mgKOH/gから375mgKOH/g、より有利には160mgKOH/gから375mgKOH/g、特に224mgKOH/gから375mgKOH/gの水酸基価を有するオリゴPHA-ジオール;従って、750g/mol以下、より有利には200g/molから750g/mol、より有利には300g/molから750g/mol、より有利には300g/molから700g/mol、より有利には300g/molから500g/molの平均分子量を有するオリゴPHA-ジオールが得られるのを可能にする。
【0059】
有利に、そのような方法は、特に20mmの平行板を装備したTA Instrument Discovery Hybrid Rheometer HR-3を使用して、25°Cで、1から31000Pa・s、より有利には1から10000Pa・s、より有利には1から100Pa・sの粘度を有するオリゴPHA-ジオールを得るのを可能にする。周波数範囲は、特に10-5から102s-1であり、ギャップは500μmであった。
【0060】
NCO末端ウレタンプレポリマーを調製する方法
本発明の第3の態様は、本発明のNCO末端ウレタンプレポリマーを調製する方法に関し、当該方法は:
(a′) ジイソシアネートとポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)とを20°Cから110°Cの温度で撹拌しながら混ぜ合わせるステップであって、ジイソシアネートは、1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、ジメリルジイソシアネート(DDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択され、オリゴPHA-ジオールは、149mgKOH/g以上の水酸基価を有する、及び/又は、オリゴPHA-ジオールを調製するための本発明の方法に従って得られる、ステップ;
(b′) 任意選択で、DDIと第2のジイソシアネートとの混合物が使用される場合には、ステップ(a′)においてDDIを添加し、ステップ(b´)において1,4-ブタンジイソシアネート(BDI)、ペンタメチレンジイソシアネート(PDI)、L-リジンジイソシアネート(LDI)、ヘキサメチレンジイソシアネート(6-HDI)、1,7-ヘプタメチレンジイソシアネート(7-HDI)、及びそれらの混合物を含むリストから選択される第2のジイソシアネートを液滴で添加するステップ;
(c′) 間接滴定法により遊離-NCO含有量を決定することによって測定される、プレポリマーの総重量に対して4から18重量%の遊離-NCO含有量を得るまで反応させるステップ;
(d′) NCO末端ウレタンプレポリマーを回収するステップ;
を含む。
【0061】
本発明のNCO末端ウレタンプレポリマーは先に開示した通りであり、特に「NCO末端ウレタンプレポリマー」というセクションにおいて開示した通りである。
【0062】
ポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)及びオリゴPHA-ジオールを調製する方法も先に開示した通りであり、特に「NCO末端ウレタンプレポリマー」及び「オリゴPHA-ジオールを調製する方法」というセクションにおいて開示した通りである。
【0063】
有利に、ステップ(a′)は、60°Cから90°C、より有利には、70°Cから90°C、特に75°Cの温度で実行される。本発明に関連して、ステップ(a′)は、ジイソシアネートを加熱し、次に、撹拌下でオリゴPHA-ジオールを添加することによって実行することもできる。
【0064】
有利に、ジイソシアネート及びオリゴPHA-ジオールの含有量は、1から3、有利には2のNCO:OHモル比が得られるように選択される。特に、各ジイソシアネートの含有量は、有利には、6から85wt%であり、1つ又は複数のジイソシアネートの総含有量は、有利には、50から85wt%であり、オリゴPHA-ジオールの含有量は、有利には、15から50wt%である。
【0065】
ステップ(b′)は、DDIと第2のジイソシアネートとの混合物が使用される場合に実行される(「NCO末端ウレタンプレポリマー」のセクション参照)。そのような実施形態では、各ジイソシアネートの含有量は、含有比率(BDI、PDI、LDI、6-HDI、7-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)が0/100から100/0、有利には25/75から0/100、より有利には50/50から0/100であり、特に50/50、25/75、0.1/99.9、又は0/100であるように選択される。有利に、そのような実施形態では、各ジイソシアネートの含有量は、含有比率(BDI、PDI、LDI、6-HDI、7-HDI、又はそれらの混合物)/(DDI)が0.1/99.9から99.9/0.1、有利には20/80から80/20、又は有利には25/75から0.1/99.9、より有利には50/50から0.1/99.9であり、特に50/50、25/75、又は0.1/99.9であるように選択される。
【0066】
ステップ(c′)は、間接滴定法により遊離-NCO含有量を決定することによって測定される、プレポリマーの総重量に対して4から18重量%の遊離-NCO含有量を得るまで実行される。有利に、ステップ(c′)は、150から180分の期間中に実行される。有利に、ステップ(c′)は、60°Cから90°C、より有利には70°Cから90°C、特に75°Cの温度で実行される。
【0067】
本発明の方法により得られるNCO末端ウレタンプレポリマーは、先に開示した通りであり、特に「NCO末端ウレタンプレポリマー」というセクションにおいて開示した通りである。
【0068】
止血性の組織接着剤組成物及び止血性の組織接着剤
本発明の第4の態様は、(A)本発明のNCO末端ウレタンプレポリマー又は本発明の方法に従って得られるNCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)鎖延長剤とを含む止血性の組織接着剤組成物である。
【0069】
有利に、当該止血性の組織接着剤組成物を調製するための一般的な手順は、古典的な2段階法に基づいている。第一に、本願の前のセクションにおいて記載したように、NCO末端プレポリマーが調製される。正しい遊離NCO含有量(すなわち、間接滴定法により遊離-NCO含有量を決定することによって測定される、プレポリマーの総重量に対して4から18重量%の遊離-NCO含有量)に達した後、鎖延長剤(B)が添加される。
【0070】
有利に、組成物中のNCO:OHモル比は、1から2、有利には1から1.5、好ましくは1から1.2である。
【0071】
有利に、NCO末端プレポリマー(A)及び鎖延長剤(B)の含有量は、上記のNCO:OHモル比が得られるように選択される。特に、NCO末端プレポリマー(A)の含有量は、有利に50から96wt%、より有利に70から96wt%、より有利に85から96wt%であり、鎖延長剤(B)の含有量は、有利に4から50wt%、より有利に4から30wt%、より有利に4から15wt%である。
【0072】
有利に、鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択される。
【0073】
有利に、鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、200から1000g.mol-1の平均モル質量を有するポリエチレングリコール(PEG)、400から1000g.mol-1の平均モル質量を有するポリプロピレングリコール(PPG)、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択され、より有利には1,4-ブタンジオールである。
【0074】
有利に、鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、PEG200(~200g.mol-1)、PEG400(~400g.mol-1)、PEG600(~600g.mol-1)、PPG420(~420g.mol-1)、PPG720(~720g.mol-1)、PPG1000(~1000g.mol-1)、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択され、より有利には1,4-ブタンジオールである。
【0075】
生体組織と接触して硬化した後、本発明の止血性の組織接着剤組成物は、止血性の組織接着剤をもたらすことになる。止血性の組織接着剤は、典型的には、熱可塑性ポリウレタン(TPU)の形態である。
【0076】
従って、本発明はまた、(A)本発明のNCO末端ウレタンプレポリマー又は本発明の方法によって得られるNCO末端ウレタンプレポリマーと、(B)N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から有利に選択される鎖延長剤とを反応させることによって得られる止血性の組織接着剤に関する。
【0077】
有利に、鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、200から1000g.mol-1の平均モル質量を有するポリエチレングリコール(PEG)、400から1000g.mol-1の平均モル質量を有するポリプロピレングリコール(PPG)、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択され、より有利には1,4-ブタンジオールである。
【0078】
有利に、鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、PEG200(~200g.mol-1)、PEG400(~400g.mol-1)、PEG600(~600g.mol-1)、PPG420(~420g.mol-1)、PPG720(~720g.mol-1)、PPG1000(~1000g.mol-1)、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択され、より有利には1,4-ブタンジオールである。
【0079】
これらの態様において、NCO末端ウレタンプレポリマー及びその調製方法は、上記のセクションにおいて開示した通りである。
【0080】
手術では、術中及び術後の出血及び/又はガス漏れを避けるために、速硬化接着剤が不可欠である。従って、本発明の止血性の組織接着剤組成物は、25°Cにおいて1から14000分、より有利には1から800分の硬化時間を有する。
【0081】
キット
本発明の別の態様は、本発明のNCO末端ウレタンプレポリマー又は本発明の方法に従って得られるNCO末端ウレタンプレポリマーを含む組成物Aと、エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から有利に選択される鎖延長剤を含む組成物Bとを含む止血性の組織接着剤を調製するためのキットであり、組成物A及びBは、別々に包装され、同時に、順次、又は別々に、非経口投与可能である。
【0082】
有利に、鎖延長剤(B)は、N-エチルジエタノールアミン、N-ブチルジエタノールアミン、1,4-ブタンジオール、PEG200(~200g.mol-1)、PEG400(~400g.mol-1)、PEG600(~600g.mol-1)、PPG420(~420g.mol-1)、PPG720(~720g.mol-1)、PPG1000(~1000g.mol-1)、1-アミノ-4-ブタノール、及びそれらの混合物を含む群から選択され、より有利には1,4-ブタンジオールである。
【0083】
この態様において、NCO末端ウレタンプレポリマー及びその調製方法は、上記のセクションにおいて開示した通りである。
【0084】
有利に、キットはまた、組成物A及びBの注入手段を含み、この注入手段は、有利には、上記の組成物を注入により投与するための1つ以上のシリンジ及び/又は1つ以上のプレフィル用シリンジ及び/又はダブルチャンバーシリンジ及び/又は1つ以上のカテーテル若しくはマイクロカテーテルである。
【0085】
使用
本発明の別の態様は、止血性の組織接着剤を調製するための本発明の止血性の組織接着剤組成物の使用に関する。止血性の組織接着剤組成物及び止血性の組織接着剤は、上記のセクションにおいて定められている通りである。
【0086】
本発明の別の態様は、本発明のNCO末端ウレタンプレポリマーを調製するための、149mgKOH/g以上の水酸基価を有するポリヒドロキシアルカノエートジオールオリゴマー(オリゴPHA-ジオール)の使用に関する。オリゴPHA-ジオール及びNCO末端ウレタンプレポリマーは、上記のセクションにおいて定められている通りである。
【0087】
実施例
材料
PHB L88(Mn=180000g/mol、D=2.3(SECによる))はBiocycle,Brazilの好意により供給された。IFABOND(登録商標)はPeters Surgicalの好意により供給された。1,4ブタンジオール(BDO、99%)はAlfa Aesarから購入した。ジラウリン酸ジブチルすず(DBTL、95%)、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI、>99%)、ジブチルアミン(>99.5%)、ブロモフェノールブルーはSigma Aldrichから購入した。PHB及びBDOは、使用に先立ち40°Cの真空下でオーブンにおいて一晩乾燥させた。ジメリルジイソシアネート(DDI)は、Cognisの好意により供給された。石油エーテルはVWRから購入した。
【0088】
一般的な方法及び分析
CDCl3中の1H-NMRスペクトルをBruker400MHz分光光度計で実施した。1H‐NMRキャリブレーションはCDCl3化学シフト(δH=7.26ppm)に基づいた。
【0089】
平均モル質量(Mn)、平均質量モル質量(Mw)、及び多分散性(D)を、40°CにてTHF(0.6mL/分)においてWatersからのAcquity APC装置を使用して分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)によって測定した。3つのカラム(Acquity APC XT450Å 2.5lm 4.69150mm、200及び45)を接続した。較正はPS標準を使用して行った。
【0090】
ヒドロキシル指数(IOH)を、DIN53240-2:2007-11(2007)又はASTM E1899-02(2002)に従って得た。
【0091】
遊離NCO含有量を、DIN 53185、16945(1994)又はASTM D1638(1985)を使用した間接滴定法によって得た。
【0092】
オリゴPHA-ジオール及びプレポリマーのせん断粘度を、20mmの平行板を装備したTA Instrument Discovery Hybrid Rheometer HR-3を使用して25°Cで測定した。周波数範囲は1×10-5から100s-1であり、ギャップは500μmであった。
【0093】
FTIR-ATRは、ATRダイヤモンドモジュールを装備したNicolet380分光器で行った。スペクトルは32スキャンで回収した。
【0094】
硬化時間はFTIR-ATRを使用して決定し、ATRダイヤモンドモジュールを有するNicolet380分光器で行った。両成分(プレポリマー-BDO)を25°Cで一晩安定化させ、次に、15秒間混ぜ合わせた。次に、混合物の液滴をATRダイヤモンドモジュール上に置いた。スペクトルを、30秒、2、4、6、8、10、15、20、30分後、並びに1、2、4、及び24時間後に取得した。NCO変換(硬化時間)を、2255cm-1でのNCO末端基ピーク消失後に決定した。次に、残りの遊離NCO含有量を、式2
【0095】
【数1】
に従って、t=0(A(0))におけるNCOピーク面積に対する(A(t))におけるNCOピーク面積を使用して計算した。
【0096】
新鮮なウシの筋肉との接触における接着強度を、改訂ASTM F2255-05(2005)と同様にラップせん断試験によって評価した。約20×10×3mmの組織片を調製した。おおよそ、0.2gの接着剤混合物(BDOと混合したプレポリマー)をスパチュラで約100mm2の組織表面に広げ、次に、処理した組織片のうち2片を100mm2上で接触させ、特定の高い圧力は使用することなく、数秒間良好な接触を確実にするために手動で共にプレスして、相互接着(interadhesion)を確実にした。これらの検体を、組織への接着剤混合物の硬化を可能にするために、相対湿度(RH)100%のオーブン内で24時間室温にて保持した。接着剤の評価を、引張モードのフィルムテンションアクセサリーを装備したTA Instrument Discovery Hybrid Rheometer HR-3で行った。クロスヘッド速度は5mm/minであった。IFABOND(登録商標)を参照として使用した。IFABONDベースの検体を調製するために、数滴の接着剤を組織表面に直接塗布し、2つの処理した組織片を2成分接着剤混合物と同様に共にプレスした。参照試験を、試料調製後1時間以内に行った。各試験した接着剤混合物及びIFABOND(登録商標)について、最小でも5つの実験のセットを実行した。接着剤の結合強度(Rmax(Pa))を、破壊前の最大せん断力(ニュートン)を接着面積(m2)で割ることによって得た。結果が、標準偏差と共に平均値として示されている。
【0097】
10kNのロードセルを装備したInstron5567H(USA)機械を使用して、TPU材料に対して一軸引張試験を実行した。実験は、20mm.min-1の一定のクロスヘッド速度で室温にて測定した。約45×5×1mm3の寸法を有する5つのダンベル型試料のセットを試験した。平均のヤング率、破断引張強度(σmax)、及び破断伸度(εmax)を最終的に決定した。
【実施例1】
【0098】
本発明によるPHB-ジオールオリゴマー(オリゴPHB-ジオール)の合成及び特徴づけ
触媒としてDBTLを用いたバイオベースの反応性溶媒(大部分はBDO)を使用した高いモル質量のPHBのエステル転移反応によって、180°Cで短いオリゴPHB-ジオールを合成した。より環境に優しい方法で機能させるために、以前の研究と比較して減少した触媒濃度を使用した。エステル転移反応はスキーム1において記載されており、パラメータはグラフと共に記載されている。得られた化学構造を、1H NMR及びFTIRによってチェック及び確認した。モル質量DをTHFにおいてSECによって決定した。
【0099】
合成例
1,4ブタンジオール(1,4-BDO)(6000モル当量)をアルゴン流下で180°Cまで加熱し、磁気撹拌した。次に、乾燥PHB(1モル当量)を添加し、混合物をPHBが完全に溶解するまで撹拌した。触媒であるDBTL(2.2モル当量)を180°Cで添加することによって反応を開始させ、冷却によって反応を3時間半後に停止した。石油エーテルによる沈殿及び大量の石油エーテルによる数回の洗浄を実行して、触媒を除去した。次に、捕捉した石油エーテルを、Eppendorf,Franceからの遠心分離機5804を使用して混合物から分離した。最後に、減圧下で、160°Cでの1,4BDO蒸留によって、300g.mol-1のPHB-ジオールオリゴマーを回収した。PHB-ジオールオリゴマーを、使用前に少なくとも12時間、40°Cのオーブンにおいて真空下で乾燥させた。
【0100】
複数のパラメータを使用した他のM
nについては、
図1のグラフにおける反応時間を参照した。見てわかるように、オリゴPHB-ジオールM
nは経時的に減少し、a)DBTLモル当量(T=180°C及び6000モル当量BDO)((
図1A)、b)BDOモル当量(T=180°C及び2.2モル当量DBTL)(
図1B)、c)温度(2.2モル当量DBTL及び6000モル当量BDOを用いる)(
図1C)、d)短いジオールの長さ(T=180°C、2.2モル当量DBTL、及び6000モル当量BDO)(
図1D)である。
【0101】
【化1】
化学的及び物理化学的な特性の分析
1H NMR分析
ヒドロキシ酪酸(HB)単位に対する特徴的な
1H‐NMRシグナルを、-CH(CH
3)-CH
2-CO-、-CH(CH
3)-CH
2-CO-、及び-CH(CH
3)-CH
2-CO-プロトンに対してそれぞれδ=5.29、2.44~2.65、1.29ppmで観察した。オリゴPHB-ジオールの一級ヒドロキシル末端基に対応するピークは、δ=3.67においてHO-CH
2-CH2-プロトンに起因し、二級ヒドロキシル末端基に対応するピークは、δ=4.19ppmにおいてHO‐CH(CH
3)-CH
2-プロトンに起因した。化学シフトδ=5.81及び6.96における小さなピークは、PHBの熱分解及びクロトニル末端基の形成によるビニル末端基の存在に帰属させられ、
図2のボックスにおいて拡大されたものを見ることができる。
【0102】
FTIR-ATR分析
図3は、様々なMnを有するオリゴPHB-ジオールを表した図であり:上から下に、PHBは減少するMnを有し:260000g.mol
-1、1000g.mol
-1、450g.mol
-1、及び3000g.mol
-1である。オリゴPHB-ジオール構造からの特徴的なピークは、3400、1720、1450、1376、1172、及び1054cm
-1において起因し、それぞれO-H分子間伸縮振動、エステル基伸縮振動からのC=O,メチルC-H曲げ振動、O-H曲げ振動、エステル基伸縮からのC-O、及びエステルからのC-O-C伸縮と重ね合わされた末端ヒドロキシルC-O伸縮振動に対応していた。cis二置換C=Cの特徴的な伸縮振動及びその対応するC-H曲げ振動の小さなピークの強度も、それぞれ1655cm
-1及び735cm
-1において見られた。
【0103】
モル質量、IOH、及び粘度の分析
【0104】
【表1】
1000g.mol
-1から高いM
nでは、得られたオリゴPHB-ジオールは固体の形態であり、従って、反応の第2のステップにおいて溶媒なしでプレポリマーに処理することはできない(Debuissy,Pollet, and Aveous, 2017参照)。
【実施例2】
【0105】
本発明によるプレポリマーの合成(オリゴPHB-ジオール300+DDI/HDI)及び特徴づけ
【0106】
【化2】
合成
一連のプレポリマーを、環境に優しいアプローチで触媒なしの一段階バルクプロセスで調製した。そのために、アルゴン流を備えた事前にフレームドライを行った三口底フラスコに、正確な量のDDIを添加した(表2参照)。反応を、機械的撹拌下及び油浴で75°Cに設定した。次に、事前に乾燥させたオリゴPHB-ジオール(実施例1で調製したPHB300)を添加し、続いてHDIを液滴で添加した。正味のHDIベースのプレポリマーの場合、HDIを最初に三口底フラスコに添加し、続いてオリゴPHB-ジオールを添加した。反応を75°Cで進め、その延長を、遊離NCO含有量(%NCO)によって2~3時間モニターして、2のNCO/OHモル比を有するプレポリマーを得た。5つの異なる製剤を調製し、アルゴン下で室温にて保存した。これらを、ジイソシアネート含有量におけるDDIのモル%に従ってDDI-X%と命名し、従って、Xは0から100まで異なる(表2)。
【0107】
【表2】
化学的及び物理化学的な特性の分析
NCO含有量の決定
遊離-NCO含有量を、間接滴定法によって得た。そのために、DBA(乾燥THF中0.2M溶液50mL)を、既知質量(1~2g)のプレポリマーに添加し、2分間反応させた。次に、結果として生じるアミン過剰分を、標準的なHCl0.5M水溶液及び指示薬としてのブロモフェノールブルーを使用して逆滴定した。重量%で与えられているNCO含有量は以下のように計算した:
【0108】
【数2】
式中、Vb(mL)は、ブランク滴定に必要なHCl溶液容量であり、Vs(mL)は試料滴定に必要なHCl溶液容量であり、M(g)はプレポリマー重量である。
【0109】
1H NMR
図4は、それぞれa)正味のオリゴPHB-ジオール及びb)DDI-0%からf)DDI-100%のプレポリマーの
1H-NMRスペクトルを表した図である。それぞれ一級及び二級のOHに隣接するオリゴPHB-ジオールのプロトンからの化学シフトδ=3.67及び4.19ppmのシグナルは、ウレタン結合を形成するためのOH基とNCO基との反応により消失した。δ=3.14ppmの化学シフトはHDI及び/又はDDIからの-CH
2-NH-CO-Oプロトンに帰属させられ、δ=3.29ppmは末端NCO基に隣接するプロトンに帰属させられた。δ=5.29及び2.44~2.65ppmにおけるPHB反復単位の特徴的なシグナルは、それぞれ-CH(CH
3)-CH
2-CO-及び-CH(CH
3)-CH
2-CO-プロトンに起因したが、領域δ=1.57~1.77ppmにおけるピークは、全ての成分から、従ってBDO、オリゴPHB-ジオール、HDI、及びDDI鎖からの-CH
2-プロトンの重ね合わせに対応した。
【0110】
FTIR-ATR分析
図5は、それぞれ上から下に正味のオリゴPHB-ジオール、DDI-0%からDDI-100%のプレポリマーのFTIR-ATR分析の結果を示している。
【0111】
FTIR-ATR分析を使用して、オリゴPHB-ジオールからNCO末端プレポリマーの合成に成功したことを確認した。オリゴPHB-ジオール及び5つのプレポリマーのFTIRスペクトルが
図5において描かれている。オリゴPHB-ジオールとHDI/DDIとの間の重付加を、ウレタン結合からの3329cm
-1でのN-H伸縮バンドの出現と共に、3400cm
-1でのオリゴPHB-ジオールからの広範なO-H伸縮振動の消失によって実証した。NCO末端ポリウレタンプレポリマー構造からの他の特徴的なバンドは、2260、1700、及び1515cm
-1において帰属させられ、それぞれプレポリマー末端NCO官能基からのN=C=O伸縮振動、ウレタンからのC=O伸縮バンド、及びウレタンからのN-H曲げ振動に起因した。
【0112】
プレポリマー製剤においてDDI含有量が(DDI-0%からDDI-100%まで)増加するに従い、2920及び2851cm-1でのCH3及びCH2の非対称伸縮振動、並びに1460cm-1でのCH2曲げ振動は、DDI長脂肪族鎖からの多数のCH2のためにより強くなった。この観察は、表3に示したMnの増加に従った。さらに、DDI含有量の増加で、正味のHDIベースのプレポリマー(DDI‐0%)と比較した場合、2260cm-1において末端NCOバンドが徐々に減少した。この結果は、表3において示されている遊離%NCOの減少に従っている。全体的に、全ての特徴的なウレタンピーク面積強度は、プレポリマー中のDDIの添加により減少し、それぞれ1725cm-1及び1700cm-1におけるオリゴPHB-ジオール及びウレタンからのC=O伸縮バンドが明確に区別できるポイントまで減少した。逆に、DDI-25%及びDDI-0%に対しては、これらのバンドを、鎖におけるより高いウレタン結合含有量の結果として重ね合わせた。
【0113】
粘度特性
【0114】
【実施例3】
【0115】
本発明による止血性の組織接着剤の合成(PHB-ジオールオリゴマー300+DDI/HDI)
組織接着剤は、プレポリマーとBDOとを含む2成分系で構成される。後者は、従来のTPU合成(=止血性の組織接着剤)に関して、混合物の放出のために低い粘度を維持し、且つ最後に鎖延長剤として最終PUモル質量を増加させる反応性溶媒として作用する。
【0116】
特徴づけ
硬化時間
NCO末端プレポリマーの反応性を試験するために、外科用接着剤には迅速な硬化時間が必須であるため、2成分系の硬化時間を評価した。対応する動力学曲線が、
図6a)において表示されている。より具体的には最初の40分における有意に高い動力学は、プレポリマー中のHDI含有量の増加と関連していた。この観察は、複数の現象によるものである:(i)DDI-100%からDDI-0%までのオリゴPHB-ジオール含有量の増加、従って、残留触媒含有量の増加。(ii)最初のプレポリマー%NCO:実際に、最初の%NCOの増加がプレポリマーの硬化時間を減少させることが以前に実証された(Gogoi, Alam, and Khandal, 2014)。従って、HDI含有量の増加は、より高い最初の%NCOによるより高い動力学をもたらす(表3)。最後に、HDI含有量による反応性の増加は(iii)プレポリマーへのDDI構造の影響によって説明することができ:DDIは、長く可撓性の脂肪族グラフト鎖(スキーム2)による高い疎水性を示し、その含有量の増加は、より高いプレポリマーM
n及び粘度をもたらす(表3)。この場合、最初の高い混合物なしで、親水性BDO及び高い含有量のDDIプレポリマーは、粘度のギャップに関連する疎水性/親水性バランスの違いによる相分離を受けることがある。異なる鎖延長剤で、-OH官能基及び水と比較して-NH
2の反応性が高いため、ABOに対する反応の最初の6分及びBDAに対する反応の最初の13分で、遊離-NCOの減少はOH二官能基の鎖延長剤よりも強烈であった(
図6b、拡大された四角)。しかし、これらの時間の後、傾向は逆転し、BDO、PDO、及びEtgによる遊離-NCO官能基の残りの%は、同じ反応時間でABO及びBDAよりも低かった。例えば、2時間で、遊離%NCOは、ABO及びBDAに対して約43%、BDO、PDO、及びEtgに対して約25%であった。
【0117】
筋肉組織上の接着強度
標的生物医学的応用に関連して、異なる系の接着特性をさらに評価した。接着強度を、ASTM F2255-03基準と同様にラップせん断試験を使用して得た。新鮮なウシの筋肉及び肝臓組織、並びにブタの皮膚組織を、全ての製剤を試験するための基板として使用した。結果が
図7において描かれており、よく知られた市販の参照であるIFABONDと比較した全ての製剤に対する接着強度値(R
max(Pa))を表示している。以前の研究で得られた一部の結果(McDermott et al. 2004)及びIFABONDと比較して、BDOを有する異なるプレポリマーに対する値は、正しくは低く、2から11kPaに及ぶ。本発明者等の2成分系では、おそらく高いウレタン結合密度、従って硬化後の組織との物理的相互作用により、HDI含有量の増加が改善された接着強度をもたらした。さらに、DDIベースのシステムでの最初の%NCOが低いと(表3)、接着剤の全体的な接着強度容量が低下する。NH
2等の高い反応性官能基を使用して鎖延長剤を変化させると、筋肉組織への接着性が有意に改善され:平均接着強度は、それぞれBDO及びBDAに対して4590から17770Paまで徐々に増加した。鎖延長剤の鎖長を短くしても、接着性は増加したが、延長ははるかに低かった(Etgに対して最大5600Pa)。
【0118】
TPUモデルポリマーの分析
合成
一連の5つのTPU(止血性の組織接着剤)を、ジイソシアネートとしてHDI及び/又はDDI及び鎖延長剤としてBDOを用いてPHB-ジオールオリゴマーから調製した。TPU調製に対する一般的な手順は、古典的な2段階法に基づいた。最初に、NCO末端プレポリマーを、実施例2において記載したように、2のNCO:OHモル比で異なる比率のHDI及びDDIにオリゴPHB‐ジオールを添加することによって調製した。NCO含有量を決定した後、正確な量の鎖延長剤を添加した(表4参照)。次に、反応物を1分間勢いよく撹拌し、続いてテフロン(登録商標)型に流し込んだ。反応の完了を確実にするために、調製物を80°Cのオーブンにおいて一晩保持した。最後に、TPUを、120°Cのホットプレスで200MPaの圧力で5分間圧縮成形し、続いて2枚の鋼板間で10分間クエンチして1mm厚の膜を得た。
【0119】
【表4】
機械的特性
TPUの機械的挙動を評価し、in situでの最終材料の潜在的な応力誘起を模倣するために、室温での一軸応力ひずみ曲線が
図8において示されている。対応する値が表5において示されている。HDI含有量を増加させると弾性率及び引張強度が有意に増加し、DDI‐0%ではヤング率は174MPaまで増加した。DDI-0%-BDOは、降伏点後の塑性変形領域を有する典型的な熱可塑性高分子挙動を示し、続いて破裂まで応力が増加した。増加したDDI含有量を含有する他の材料は破断時に高い伸度及び低い引張強度を有し、これは、ほとんどの場合通常そうであるように、熱可塑性エラストマー(TPE)の従来の挙動である。破断伸度はDDIの割合と共に増加し、これは、このタイプの材料に対して期待されるように、ヤング率の減少と共に移動性及び柔らかさをもたらす。TPU‐尿素PHB300-ABO及びPHB300-BDAは、PHB300-BDOと比較して、高いヤング率及び破断時の短い伸度を有する、硬く脆いポリマーである。PU-尿素では、尿素中のN-H結合からのより大きな物理的架橋により高い引張強度を達成することは一般的であり、これは、先にDSCによって記載した高いT
g(HS)と相関する。鎖延長剤の長さに関しては、鎖中の炭素数を増加させることにより、より硬いポリマーを得た。実際、PHB300-Etg及びPHB300-BDOに対して、それぞれ0.6から24.4MPaの平均ヤング率を得た。通常、鎖長を長くするとより可撓性のポリマーが得られるが、この傾向は非常に短い鎖では逆転する。ここでは、より短いジオール(2及び3の炭素)の組み込みが、より可撓性の鎖をもたらし、破断伸度は段階的に(Etgで517%まで)増加することが明らかであった。
【0120】
【国際調査報告】