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▶ アイシス メディツィンテクニック ゲーエムベーハーの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】位置決めアーム
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/50 20160101AFI20231228BHJP
【FI】
A61B90/50
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539764
(86)(22)【出願日】2021-12-22
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2021087291
(87)【国際公開番号】W WO2022144273
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】202020107591.8
(32)【優先日】2020-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516064736
【氏名又は名称】アイシス メディツィンテクニック ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】フォーゲル、ミヒャエル
(57)【要約】
本発明は、器具、デバイスまたはツールを位置決めするための位置決めアーム(100)に関し、位置決めアーム(100)は、中央ジョイント(130)によって旋回軸(131)の周りに旋回可能に互いに対し接続されている2つ以上のアーム要素(110,120)を備え、前記アーム要素(110,120)のうちの1つ以上は、前記中央ジョイント(130)とは反対の端部にさらなるジョイント(140,150)を備え、前記位置決めアーム(100)は、前記中央ジョイント(130)および前記1つ以上のさらなるジョイント(140,150)をブロックおよび解放するためのブロックデバイス(132)を備え、前記ブロックデバイス(132)は、前記中央ジョイント(130)に配置されており、前記アーム要素(110,120)上に形成されている1つ以上の伝達デバイス(111,112;121,122)を介して前記さらなるジョイント(140,150)の前記ブロックおよびブロック解放を行い、前記伝達デバイス(111,112;121,122)は1対の挟持アーム(111,112;121,122)によって形成されており、前記1対の挟持アーム(111,112;121,122)は前記アーム要素(110,120)も形成している。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
器具、デバイスまたはツールを位置決めするための位置決めアーム(100)であって、
中央ジョイント(130)によって旋回軸(131)の周りに旋回可能に互いに対し接続されている2つ以上のアーム要素(110,120)を備え、
前記アーム要素(110,120)のうちの1つ以上は、前記中央ジョイント(130)とは反対の端部にさらなるジョイント(140,150)を備え、
前記位置決めアーム(100)は、前記中央ジョイント(130)および前記1つ以上のさらなるジョイント(140,150)をブロックおよび解放するためのブロックデバイス(132)を備え、
前記ブロックデバイス(132)は、前記中央ジョイント(130)に配置されており、前記アーム要素(110,120)に形成されている1つ以上の伝達デバイス(111,112;121,122)を介して前記さらなるジョイント(140,150)の前記ブロックおよびブロック解除を行い、前記伝達デバイス(111,112;121,122)は1対の挟持アーム(111,112;121,122)によって形成されており、前記1対の挟持アーム(111,112;121,122)は前記アーム要素(110,120)も同時に形成している、位置決めアーム(100)。
【請求項2】
両方のアーム要素(110,120)はさらなるジョイント(140;150)を各々備え、前記ブロックデバイス(132)は、前記さらなるジョイント(140;150)に対するそれぞれの伝達デバイス(111,112;121,122)を備える、請求項1に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項3】
前記さらなるジョイント(140;150)は、回転可能なクランプ体(141;151)を備える、請求項1または2に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項4】
前記回転可能なクランプ体(141;151)は、ボール(142;152)として、回転スリーブ(143;153)として、またはその両方として形成されている、請求項3に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項5】
前記挟持アーム(111,112;121,122)は、レバーアーム(1111,1121;1211,1221)および把持アーム(1112,1122;1212,1222)を各々備え、
前記レバーアーム(1111,1121;1211,1221)同士は、前記ブロックデバイス(132)によって、それらの後端同士が前記中央ジョイント(130)の領域において位置合わせされた状態で接続されるように構成されており、
前記把持アーム(1112,1122;1212,1222)は、前記さらなるジョイント(140,150)の一部を形成している、請求項1~4のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項6】
前記ブロックデバイス(132)は作動要素(1322)を備え、前記作動要素(1322)は、前記中央ジョイント(130)の軸方向に変位可能であるとともに作動デバイス(1321,1324,1326)に対し接続されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項7】
前記作動デバイスは、回転ハンドル(1321)によって、偏心器(1325)に対し接続されているクランプハンドル(1324)によって、またはモータ(1326)によって形成されている、請求項6に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項8】
前記さらなるジョイントのうちの1つのジョイント(140)には、手術台への取付に適した締結デバイス(160)が提供され、前記さらなるジョイントのうちの別のジョイント(150)は、異なる器具、デバイスまたはツール(190;191;192;193)を取り付けるのに適したアダプタ(170)への接続用に設計されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項9】
前記挟持アーム(111,112;121,122)は、同一部品として構成されている、請求項1~8のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項10】
前記挟持アーム(111,112;121,122)は、軽金属製、軽金属合金製またはプラスチック材料製である、請求項1~9のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項11】
前記ブロックデバイス(132)は、前記伝達デバイス(111,112;121,122)上に配置されているまたは形成されているラッチ要素(1125,1225)を備える、請求項1~10のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項12】
前記アダプタ(170)は、前記ツール、前記デバイス、または前記器具(190;191;192;193)用のホルダ(180)の相補的に成形されているレセプタクル(181)との連携用の1つ以上の成形体(173)を備える、請求項8~11のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項13】
前記成形体(173)は、前記ホルダ(180)上に配置されているスライダ(184)によって、前記レセプタクル(181)に対し固定されるように構成されている、請求項12に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項14】
前記ブロックデバイス(132)は、前記中央ジョイント(130)および前記さらなるジョイント(140;150)の時間遅延ロックに適しており該時間遅延ロック用に配置されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項15】
前記ブロックデバイス(132)の閉鎖力に対抗する1つ以上のばね要素(134)が、前記中央ジョイント(130)の領域に配置されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項16】
前記アーム要素(110;120)のうちの1つ以上に所定の基本位置への予荷重をかける1つ以上のばね要素(135)が、前記中央ジョイント(130)の領域に配置されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項17】
前記クランプ体(141;151)は、結合ロッドによって、2つの挟持アーム(111,112;121,122)同士を接続する接続ジョイント(113;123)に対し接続されている、請求項3~16のいずれか一項に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項18】
器具またはツールを位置決めするための位置決めアーム(100)であって、
中央ジョイント(130)によって旋回軸(131)の周りに旋回可能に互いに対し接続されている2つ以上のアーム要素(110,120)を備え、
前記アーム要素(110,120)のうちの1つ以上は、前記中央ジョイント(130)とは反対の端部にさらなるジョイント(140,150)を備え、
前記位置決めアーム(100)は、前記中央ジョイント(130)および前記1つ以上のさらなるジョイント(140,150)をブロックおよび解放するためのブロックデバイス(132)を備え、
前記ブロックデバイス(132)は、前記中央ジョイント(130)に配置されており、前記アーム要素(110,120)に形成されている1つ以上の伝達デバイス(111,112;121,122)を介して前記さらなるジョイント(140,150)の前記ブロックおよびブロック解除を行い、
前記さらなるジョイントのうちの1つのジョイント(150)は、異なるツール(190;191;192;193)を締結するのに適したユニバーサルアダプタ(170)に対し接続されるように設計されている、位置決めアーム(100)。
【請求項19】
前記ユニバーサルアダプタ(170)は、前記ツールまたは前記器具(190;191;192;193)用のホルダ(180)の相補的に成形されているレセプタクル(181)との連携用の1つ以上の成形体(173)を備える、請求項18に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項20】
前記成形体(173)は、丸みを帯びた角部および縁部を有する3面プリズムの形態にある、請求項19に記載の位置決めアーム(100)。
【請求項21】
前記成形体(173)および前記レセプタクル(181)は、前記位置決めアーム(100)または前記ツール(190;191;192;193)を少なくとも部分的に取り囲む滅菌ホイル(200)を非破壊的にクランプするように構成されている、請求項19または20に記載の位置決めアーム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、器具、特に医療器具を位置決めするための位置決めアームに関する。しかしながら、本発明に係る位置決めアームは、様々な他の器具、デバイス、またはツールが正確に位置決めされることも可能にする。これらは、例えば、測定器具、モニタ、マイクロフォン、ラウドスピーカ、および照明器具を含んでよい。そうした位置決めアームはまた、実験室において容器および機器を保持するのに理想的に適している。
【背景技術】
【0002】
異なる用途のために、異なる要件を有する多種多様な位置決めアームが、最新技術から知られている。特に、例えば医療器具を位置決めするための位置決めアームの場合、位置決めアームの安定性、信頼性、および操作性に非常に高い要求が課される。したがって、これらの要求を考慮に入れて位置決めシステムをさらに開発および改善するために、従来技術において多くの試みがなされてきた。
【0003】
例えば、本出願人の特許文献1から、回転体または旋回ジョイントと、それにヒンジ結合された2つのアーム要素とを有する位置決めアームが知られている。この場合、2つのアーム要素間の角度は、結合部を介して回転体に取り付けられたラチェットによって固定されるように構成され、結合部には、アームの角度位置を互いに対して所望のスイッチ位置にロックするスイッチが提供される。
【0004】
特許文献1から知られている位置決めアームは、ラチェットのおかげで、比較的小さい力により位置決めアームの回転ジョイントを容易にロックする、すなわちブロックすることが可能であるという利点を提示する。特に、ラチェットを滅菌環境において、例えば滅菌カバーホイルの下において容易に操作することも可能である。これに加えて、ラチェットは、位置決めアームが確実にロックされるように特定の最小トルクが指定されることを可能にする。
【0005】
しかしながら、特許文献1から知られている位置決めアームは、動作が依然としてユーザの技能に依存するという欠点を提示する。したがって、ユーザがラチェットを正しく操作せず、外科処置中にアームが位置ずれした場合、使用中に残留リスクが残る。これに加えて、人間工学または使いやすさは依然として最適ではない。例えば、位置決めアームを位置決めするとき、ユーザは同時に、位置決めアームの端部に器具を保持する必要があり、手術野から目を離さないようにする必要がある。特に、アームをロックするときに比較的大きい力を加える必要があり、ラチェットを回すときの回転運動が他方の手の動きに逆らうことがあるため、そうした同時手順はユーザにとって非常に困難である。位置決めアームは、外科処置の前、間、および後に何度も再位置決めされる必要があるため、すなわち、複数回の開閉が必要とされるため、より速い操作オプションも望ましい。
【0006】
別の位置決めアームが、特許文献2から知られている。この場合、ジョイントをロックするための圧力は、油圧式、空気圧式または機械的に調整可能なピストンおよび/またはリンク機構を介してジョイントに伝達される。これは、高い閉鎖力および比較的複雑な伝達要素を必要とする。
【0007】
周知の3ジョイント支持アームまたは3ジョイントスタンドは、多くの場合非常に繊細であり非常に高い圧縮力および曲げ力に耐える必要がある多数のコンポーネントからなる。これは製造を高価にし、材料の選択において非常に制限される。他の材料では耐えられないため、特に圧力要素/圧力ロッドおよびジョイント(場合によっては特殊コーティングを有する)には、硬質合金または特殊硬化鋼を使用する必要がある。したがって、軽量アルミニウムまたはプラスチック材料の使用(より良好な取り扱いのため、またはMRIスキャナのX線ビームまたは磁場における使用のため)には、よく知られている3ジョイント保持アームまたは3ジョイントスタンドの場合にジョイントにおけるロック圧力の損失およびアームの保持力の損失が常に伴い、耐久性も低下する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第2017/144172号
【特許文献2】米国特許第10687915号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上述の従来技術に基づいて、本発明の目的は、従来技術から知られているシステムの問題および欠点を排除し、それらに対し対応する利点を有する位置決めアームを提供することである。特に、本発明の目的は、人間工学的に有利であり、便利であり、かつ迅速な位置決めアームの操作を可能にする位置決めアームを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この目的は、独立請求項1の主題によって解決される。本発明のさらなる可能な実施形態は、特に従属請求項に示されている。
本発明による解決策は、器具またはツールを位置決めするための位置決めアームであって、旋回軸の周りに旋回可能であるように中央ジョイントによって互いに接続された2つ以上のアーム要素を備える位置決めアームを提供する。それによって、アーム要素のうちの1つ以上は、中央ジョイントの反対にある端部にさらなるジョイントを備える。位置決めアームは、中央ジョイントおよび1つ以上のさらなるジョイントをブロックおよび解放するためのブロックデバイスをさらに備える。ブロックデバイスは、中央ジョイントに配置され、アーム要素上にまたはアーム要素によって形成されている1つ以上の伝達デバイスを介してさらなるジョイントのブロックおよび解放をもたらす。ブロックデバイスを中央ジョイントに配置することにより、作動は、患者の側方上方の人間工学的に好ましい把持領域において行われる。
【0011】
本発明に係る特に単純に構成された頑丈な位置決めアームは、伝達デバイスが1対以上の挟持アームによって、特に好ましくは2対の挟持アームによって形成されていることを特徴とする。挟持アームは、より長いレバーアームと、より短い把持アームとを各々備え、レバーアーム同士は、ブロックデバイスによって、自身の後端が中央ジョイントの領域に位置合わせされた状態で接続可能であり、把持アームはさらなるジョイントの部品を形成している。この実施形態は、ブロックデバイスの閉鎖力に加えて、挟持アームが、より長いレバーアームの端部における力印加点とより短い把持アームにおける力伝達点との間に追加のレバー伝達を提供するため、非常に低い作動力しか必要としない。
【0012】
本発明に係る実施形態は、3つの主要ジョイントを有する関節式アームを作り出し、この関節式アームは、既知の関節式アームとは異なり、追加のガイドを必要とするアーム要素内部の繊細な圧力要素ではなく、アーム要素を直接形成する頑丈な対の挟持部により作用する。
【0013】
好ましくは、両方のアーム要素はさらなるジョイントを各々備え、ブロックデバイスは、いずれの場合も伝達デバイスによってさらなるジョイントに接続される。
位置決めアームは、特に、患者に対する手術中に、医療器具、ツール、または補助具を確実に、すなわち安全かつ正確に位置決めまたは保持するために用いられる。例えば、針、フック、ピンセットまたはマーカーなどの器具またはツールのそうした確実な位置決めは、特に脳神経外科手術または生検処置中に不可欠である。
【0014】
例えば、医療器具を位置決めするために位置決めアームを用いるとき、アーム要素のうちの1つは、さらなるジョイントを介して手術台用の固定デバイスに接続されるように構成される。他のアーム要素は、ユニバーサルアダプタとして特に有利に設計された器具ホルダにさらなるジョイントを介して適宜接続されるように設計することが可能である。手術台用の固定デバイスに代えて、アーム要素のうちの1つの外側端部に、金属表面に固定するための磁気クランプデバイス、または壁もしくはキャリアに一時的もしくは永久に固定するためのねじ込み式フランジプレートが提供されることも可能である。
【0015】
第1の好ましい実施形態によれば、1つ以上のさらなるジョイントは、回転可能なクランプ体を備える。回転可能なクランプ体は、ボールとしてまたは回転スリーブとして設計され、後者は、回転可能なボールの追加の取付に特に有利であり、したがって、任意の所望の回転だけでなく、実質的に任意の所望の旋回角度も可能にする。
【0016】
既知の位置決めアームが多数のアンダーカット、ボア、ブラインドホール、接着などを有する多数の部品を備え、したがって、滅菌処理のために解体することが困難であり、すべての領域においてアクセスすることが困難であるのに対して、2つ以上の挟持アームがそれぞれ同一部品として安価に製造され得る少数の部品からなる単純で堅牢な設計、および組立の容易さは、位置決めアームのすべての部品の安全かつ効率的な滅菌も可能にする。
【0017】
製造するのが単純であり組み立てるのが容易であることに加えて、本発明に係る位置決めアームは、軽量でありながら、高いペイロードであっても非常に確実にミリメートル精度により固定するように構成されているという事実によっても特徴付けられる。用いられる挟持アームはまた、プラスチックから製造するのが非常に容易であるため、挟持アームが形成する位置決めアームは、例えば、管の放射線領域におけるMRI用途において直接使用可能である。
【0018】
ブロックデバイスは、好ましくは、中央ジョイントの軸方向に変位可能であるとともに作動デバイスに接続されている、作動要素を備える。より単純な実施形態では、作動デバイスは、ねじ山に接続された回転ハンドルによって、偏心器に接続されたクランプハンドルによって、または好ましくは電池式電気モータによって形成されることが可能である。ブロックデバイスによるブロックは、好ましくは電気的に行われるが、ジョイントの手動ブロックまたは解放が代替的に可能であってよい。例えば、ブロックデバイスは、ねじ山または偏心器を介して電力なしで動作することが可能である。挟持アームによる伝達デバイスの設計に関連して、力の導入と力の伝達との間において追加の機械的伝達が行われ、これは約1:2~1:10の比率内にあることが可能である。この追加の伝達比により、ブロックデバイスにおいては比較的小さい作動しか必要とされない。モータ駆動の場合にブロックデバイスを動作させるのに必要な電気エネルギーは、好ましくはアキュムレータによって供給される。これは、手術室内の危険の原因となり得るケーブル配線の必要性を排除する。
【0019】
本発明に係る位置決めアームは、優れた手法により課題を解決する。手動作動デバイスおよび電動作動デバイスの両方を用いて、ブロックデバイスは、非常に便利に、容易に、かつ迅速に操作されることが可能である。さらに、動作は、ユーザの利用可能な力から少なくとも実質的に独立しているように設計される。伝達デバイスによる追加の伝達により、位置決めアームは、少量の力であっても常に十分に安定した位置にロックされることが可能であり、手術中に位置ずれすることがない。さらに、ブロックデバイスの小さな動作移動は、非常に速い手術を可能にする。位置決めアームのジョイントの完全なロックは、数秒以内に達成されることが可能である。
【0020】
純粋に機械的または電気的に動作するブロックデバイスの別の利点は、そのコンパクトさである。近年、電気駆動装置において非常に多くの技術開発がなされている。圧縮空気、油圧等により作用する代替的な既知の圧力システム(例えば、冒頭において言及した米国特許第10687915号を参照)は、製造するのに費用がかかり、使用および維持するのに複雑であり、使用される流体のために、本発明によって回避され得る滅菌手術野およびユーザにリスクをもたらす。特に滅菌性に関して、電気駆動装置、すなわち関連する電子機器を含むモータも、現在、滅菌される、特にオートクレーブ処理されることが可能な手法により利用可能であることが有利である。これは、滅菌カバーホイルを用いて作業することが可能でない用途に特に関連する。滅菌性に関して、本発明に係る位置決めアーム全体は、その小数の部品を洗浄のために非常に容易かつ迅速に完全に分解することが可能であり、滅菌後に容易に再組立することも可能であるという事実によって特徴付けられる。
【0021】
特に、個々のジョイントの漸進的な開放は、位置決めアームのすべてのジョイントが不安定に前後に移動する1つの完全に開放された状態のみが存在することを防止するために望ましい場合がある。ブロックデバイス、伝達デバイス、および他のジョイントにおいて用いられるクランプ体の作動経路を適切に調整および調節することによって、ジョイントのうちのどれがブロックデバイスの作動の開始時に最初に完全にロックされ、どれが最後に完全にロックされるかを単純に正確に決定することが可能である。わずかに異なる直径を有するクランプ体を用いることによって、または中央ジョイントの領域にスペーサワッシャを用いることによって、この順序は、必要に応じて後に変更することも可能である。
【0022】
さらなるジョイントは、好ましくは、回転可能なクランプ体を備える。第1の有利な実施形態は、クランプ体としてのボールを有するさらなるジョイントがボールジョイントとして設計されることを提供する。ボールジョイントは、自由に回転可能かつ旋回可能なボールを有するジョイントである。本発明の挟持アームによって形成される伝達デバイスは、例えば、ボールを自身の把持アームの間に直接受け入れるように構成され、把持アームは、好ましくは、自身の端部の内側にトラフのようにわずかに凹状の窪みを有するように形成され、レバーアームが一緒に押し付けられたときにボールを適所にロックする。
【0023】
さらなる有利な実施形態によれば、さらなるジョイントは、例えば、溝またはねじ込みによって、挟持アームの把持アーム上に回転可能に保持され、把持アームが閉じられたときにロックされる、回転スリーブを備える。特に有利には、複数のセグメントからなるスロット付きレセプタクルが、ボールジョイントのボール用の把持アームから離れた端部において回転スリーブにおいて提供され、その結果、把持アームがロックされていないとき、回転スリーブの回転、およびさらに回転スリーブにおけるボールの旋回運動が、追加の自由度を提供する。把持アームがロックされると、回転スリーブの回転が同時に防止され、ボールもまた回転スリーブのセグメントを一緒に押し付けることによってしっかりとロックされる。
【0024】
別の有利な実施形態は、クランプ体が結合ロッドによって2つの挟持アーム同士を接続する接続ジョイント(113;123)に接続されることを提供する。この場合、結合ロッドは、挟持アームがロックされたときに挟持アームの端部にあるトラフ形状の座部に対してクランプ体を引っ張る。
【0025】
本発明の有利なさらなる発展例によれば、電気ブロックデバイスは、中央ジョイントの軸に対して垂直に位置合わせされるとともにベベルギヤ駆動装置またはウォームギヤによってブロックデバイスに接続された出力シャフトを有する電気モータを備える。そうした設計では、利点は、特に高度のコンパクトさにある。電気ブロックデバイスは、スペースを節約するためにアーム要素のうちの1つに配置されることが可能である。通常、大半の用途において、非常に限定された空間のみが利用可能であり、外科医から手術領域への可能な限り最良のアクセスが高い関連性を有する。本発明にも用いられることが可能であるそうしたモータ-ギアボックス配置は、2021年6月22日にPCT/EP2021/067028としても出願された、2020年8月26日の本出願人の先の出願独国特許出願公開第102020122352号明細書に既に記載されており、その内容は、その程度まで、本出願の開示内容の一部をなす。
【0026】
上記の利点のすべては、医療器具を位置決めするための位置決めアームにおいて特に良好に用いられることが可能である。単純な医療装置および器具に代えて、位置決めアームを用いて、適用領域に近い位置に小型ロボットを位置決めすることも可能であり、この場合、穿刺針などの1つ以上の器具のさらなる作動は、好ましくは、いくつかの自由度を有して移動させることが可能であるロボットによって遠隔に行われる。
【0027】
本発明のさらなる特徴、利点および実施形態は、図面に基づく以下の記載から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】中央ジョイントに接続された2つのアーム要素を有する本発明に係る位置決めアームの斜視図。各々が一対の挟持アームによって形成され、各々がさらなる外部にあるジョイントを備え、外部にあるジョイントのクランプ体は、スリーブおよびスリーブに受け入れられたボールを回転させることによって形成されている。
図2】外側ジョイントのクランプ体がボールによって形成され、フックの形態における器具がユニバーサルアダプタ上の外側ジョイントの1つに配置されている、図1の変形例を示す図。
図3】中央ジョイントの領域に中央キャッチ機構を有する図2に示される変形例を示す図。
図4】中央ジョイントの領域に2つの分散キャッチ機構を有する図2に示された変形例を示す図。
図5】回転ハンドルの代わりに偏心器に接続されたクランプハンドルによって中央ジョイントのブロックデバイスを作動させることが可能である図1図4の変形例を示す図。
図6】クランプハンドルが開いた状態の図5に示される変形例を示す図。
図7】回転ハンドルとディスクばねとして設計された2つのばね要素とを有する中央ジョイントを通る長手方向の断面図。
図8】クランプハンドルとコイルばねの形態における中央に配置されたばね要素とを有する図7の変形例を示す図。
図9】2つのアーム要素を形成する4つの並んだ挟持アームを中央ジョイントの側から見た斜視図。
図10図9に示される並んだ挟持アームを他のジョイントの側から見た斜視図。
図11】挟持アームに確実に接続することが可能である別個に形成されたラッチ要素を有する、図9および図10に示される挟持アームの変形例を示す図。
図12】ユニバーサルアダプタから取り外されたフック状ツール用のホルダを有する、図2に示される変形例の下方からの斜視図。
図13図12に示されるユニバーサルアダプタとホルダとの間の接続部の拡大図。
図14図1に示される回転スリーブの拡大図。
図15】異なる器具またはツール用の異なるホルダが、図15において係合されるユニバーサルアダプタと結合され得ることを示す図。
図16】異なる器具またはツール用の異なるホルダが、図15において係合されるユニバーサルアダプタと結合され得ることを示す図。
図17】異なる器具またはツール用の異なるホルダが、図15において係合されるユニバーサルアダプタと結合され得ることを示す図。
図18】中央ジョイントの領域に配置され、アーム要素に弾性的に予荷重をかけるばね要素を有する図1の変形例。ばね要素は、例示的なトーションバーばねとして設計され、中央ジョイントの領域における挟持アームのうちの1つは、これを示すために除去されている。
図19】完全に示された挟持アームと、ユニバーサルアダプタの領域に示された滅菌スリーブまたはホイルとを有する図18に係る変形例を示す図。
図20】中央ジョイントの領域におけるロックデバイスのモータ作動を伴う図4の変形例を示す図。
図21】結合ロッドが、クランプ体に取り付けられるとともに挟持アームの接続ジョイントに取り付けられ、1つの挟持アームが省略されている変形例を示す図。
図22】両方の挟持アームを有する図21に係る変形例を示す図。
図23図21に係る変形例の第1の斜視分解図。
図24図22に係る変形例の第2の斜視分解図。
図25】第1のアーム要素の外側端部にある磁気取付部を有する位置決めアームを示す図。
図26】第1のアーム要素の外側端部に配置されているフランジプレートを有する位置決めアームを示す図。
図27】短くなった挟持アームを有する変形例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
同様の要素は、一般に、同一または同様の参照番号を用いて図中に示される。
図1に示される位置決めアーム100は、第1のアーム要素110と第2のアーム要素120とを備え、第1のアーム要素110と第2のアーム要素120は中央ジョイント130によって互いに対し接続されている。中央ジョイント130から離れた端部において、第1のアーム要素110は、さらなるジョイント140を備え、そのさらなるジョイント140を通じて位置決めアーム100は締結デバイス160に接続可能である。
【0030】
中央ジョイント130から離れた端部において、第2のアーム要素120は、さらなるジョイント150を備え、そのさらなるジョイント150を通じて位置決めアーム100はユニバーサルアダプタ170に接続可能である。
【0031】
第1のアーム要素110は、外側挟持アーム111および内側挟持アーム112によって形成される。外側挟持アーム111および内側挟持アーム112は、例えば、ボルト1131によって形成された接続ジョイント113にて互いに対し接続される。外側挟持アーム111は、中央ジョイント130から始まるレバーアーム1111と、接続ジョイント113とさらなるジョイント140との間の把持アーム1112とを備える。内側挟持アーム112は、中央ジョイント130から始まるレバーアーム1121と、さらなるジョイント140の方向に接続ジョイント113の後ろにある把持アーム1122とを備える。
【0032】
1つ以上の把持部1113が把持アーム1112上に形成され、1つ以上の把持部1123が把持アーム1122上に形成される。把持アーム1112の内側は凹状窪み1114を備え、把持アーム1122の内側は凹状窪み1124を備える。把持アーム1112の把持部1113および把持アーム1122の把持部1123は、図1では回転スリーブ143の形態にあるさらなるジョイント140のクランプ体141を取り囲む。回転スリーブ143は、図14に拡大して示される。回転スリーブ143は、自身の後端からある距離にリング溝1431を備える。回転スリーブは、軸に平行な外側シェルにおいて均等に分配された4つのスリット1433によって4つのセグメント1432へと分割される。スリット1433は、リング溝1431を越えて延びている。回転スリーブ143の前部円形開口部の直径は、セグメント1432をわずかに拡張することによってボール142を回転スリーブ143の内部へと挿入可能であるようになっている。回転スリーブ143の内部は、好ましくは、ボール142に適合された球根形状を含む。
【0033】
ボール142は円筒形の接続片144に接続されている。この接続片は、好ましくは、接続片上に形成された雄ねじ(図示せず)を有し、この雄ねじは、締結デバイス160の適合する雌ねじ(やはり図示せず)へとねじ込むことが可能である。
【0034】
第2のアーム要素120は、外側挟持アーム121および内側挟持アーム122によって形成される。外側挟持アーム121および内側挟持アーム122は、例えば、ボルト1231によって形成される接続ジョイント123において枢動可能に互いに対し接続される。外側挟持アーム121は、中央ジョイント130から始まるレバーアーム1211と、接続ジョイント123とさらなるジョイント150との間の把持アーム1212とを備える。内側挟持アーム122は、中央ジョイント130から始まるレバーアーム1222と、さらなるジョイント150の方向に接続ジョイント123の後ろにある把持アーム1222とを備える。
【0035】
1つ以上の把持部1213が把持アーム1212上に形成され、1つ以上の把持部1223が把持アーム1222上に形成される。把持アーム1212の内側は凹状窪み1214を備え、把持アーム1222の内側は凹状窪み1224を備える。把持アーム1212の把持部1213および把持アーム1222の把持部1223は、図1では回転スリーブ153の形態により構成されているさらなるジョイント150のクランプ本体151を取り囲む。回転スリーブ153は、図14に拡大して示される。回転スリーブ153は、自身の後端からある距離にリング溝1531を備える。回転スリーブ153は、軸に平行な外壁に均等に分配された4つのスリット1533によって4つのセグメント1532へと分割される。スリット1533は、リング溝1531を越えて延びている。回転スリーブ153の前部円形開口部の直径は、セグメント1532をわずかに拡張することによってボール152を回転スリーブ153の内部へと挿入可能であるようになっている。回転スリーブ153の内部は、好ましくは、ボール152に適合された球根形状を含む。
【0036】
ボール152は円筒形の接続片154に接続されている。この接続片は好ましくは雄ねじ(図示せず)を含み、この雄ねじは、ユニバーサルアダプタ170のキャリア171の適合する雌ねじ(やはり図示せず)へとねじ込むことが可能である。
【0037】
図9図11は、4つの挟持アーム111、112、121および122を個々の部品として示す。4つの挟持アーム111、112、121および122は、可能な限り同一部品として製造されることが可能であり、これにより製造および在庫管理が大幅に簡略化されることが、図示から理解される。さらに、挟持アーム111は、中央ジョイント130に面する自身の端部にスルーボアとして形成されたボア1119を備えることが、これらの図から理解される。同様に、挟持アーム112はボア1129を備え、挟持アーム121はボア1219を備え、挟持アーム122はボア1229を備える。
【0038】
挟持アーム111、112、121および122のうちの2つ以上は、ラッチ要素1115、1125、1215および1225を備える。図9および図10では、ラッチ要素1115、1125、1215および1225は、挟持アーム111、112、121および122上に直接形成される。ラッチ要素1115、1125、1215および1225は、それぞれ歯部1116、1126、1216および1226を備える。
【0039】
図11に示される代替実施形態では、歯部1116、1126、1216、および1226が提供されているラッチ要素1115、1125、1215、および1225は、独立したディスク形状のコンポーネントとして設計され、歯部とは反対の面に2つのボルト115を各々備え、挟持アーム111、112、121、および122上の対応する位置ホール114と確実に係合するように構成されている。
【0040】
挟持アーム111、112、121および122はオフセット形状を備え、横方向に延びるボアが、スルーボルトによって接続ジョイント113および123をそれぞれ形成するためにオフセットのほぼ中心に提供されている。横方向に延びるボアのこれらの領域において、矩形の切欠1117、1127、1217および1227が4つの挟持アーム111、112、121および122上に形成されている。これらの切欠は、それぞれの挟持アームのほぼ中心まで延び、組立状態において、挟持アーム111のそれぞれの対が112と係合し、121が122と係合することを可能にする。
【0041】
挟持アーム111、112、121および122は、アルミニウムダイカストまたはプラスチック射出成形のような頑丈な設計による同一部品として安価に製造されることが可能である。
【0042】
中央ジョイント130は、第1のアーム要素110および第2のアーム要素120用の旋回軸131を形成する。中央または中間ジョイント130は、図7に最もよく示されるように、ボア1119、1129、1219および1229を通るねじ切りされたロッド1322によって、外側挟持アーム111および内側挟持アーム112によって挟持式に形成された第1のアーム要素110の後端と、外側挟持アーム121および内側挟持アーム122によって挟持式に形成された第2のアーム要素120の後端とを接続する。
【0043】
各場合において、第2のアーム要素120の外側挟持アーム121、第1のアーム要素110の内側挟持アーム112、第2のアーム要素120の内側挟持アーム122、および第1のアーム要素110の外側挟持アーム111は、下から上へと交互に上下に位置する。ねじ切りされたロッド1322は、その上端において、回転ハンドル1321として、または図5図6、および図8に示されるように、偏心器1325が提供されたクランプハンドル1324として形成された操作要素に対し接続される。
【0044】
ねじ切りされたロッド1322の下端は、図7に示されるように、ナット1323へとねじ込まれるか、または図8に示されるように、ボア1219の領域に形成された外側挟持アーム121の雌ねじへと直接ねじ込まれる。
【0045】
ねじ切りされたロッド1322は、操作要素、すなわち、回転ハンドル1321、クランプハンドル1324または図20に示されるモータ1326、およびナット1323における係留または挟持アーム121の雌ねじと併せて、ブロックデバイス132を形成する。
【0046】
モータ1326は、好ましくは挟持アーム111上に一体に形成されたハウジングに配置されたアキュムレータによって駆動されることが好ましい。操作要素1327は人間工学的に好ましい手法により配置され、ハウジングは、図20に示されるように、位置決めアーム100を所望の位置へと案内するときに、人間工学的に好ましい手法によりハンドルとして用いられることも可能である。
【0047】
操作要素1321、1324または1326を締め付けると、挟持アーム111、112、121および122の端部同士が互いに押し付けられる。わずかに締め付けられただけの状態では、旋回軸131の周りの旋回運動が依然として可能である。一方、操作要素1321、1324または1326が強く締め付けられる場合、アーム要素110および120の互いに対する旋回運動は、中央ジョイント130においてブロックされる。
【0048】
このロックは、ラッチ要素1115、1125、1215および1225のインターロック歯部1116、1126、1216および1226によって強化されることが可能である。ここでは2つの変形例が可能である。図3に示されるように、第1の変形例では、2つのラッチ要素1126および1226の中央係合が可能である。この実施形態は、中央ジョイント130をブロックする前に他のジョイント140および150をブロックすることが所望されるときに好ましい。
【0049】
一方、図4図5図6および図7に示されるように、第2の変形例もまた、2対のラッチ要素1115と1225および1215と1125における分散係合を可能にする。この場合、スペーサスリーブ133の中間位置が有利である。この第2の変形例は、他のジョイント140および150のロックの前に中央ジョイント130のロックが所望される場合に用いられることが好ましい。
【0050】
ブロックデバイス132によって中央ジョイント130をブロックすることによって、他のジョイント140または150も同時にまたはわずかな時間遅延を伴ってブロックされる。挟持端部が挟持アーム111、112、121および122のレバーアーム1111、1121、1211および1221において一緒に押し付けられるとき、第1のアーム要素110の把持アーム1112および1122ならびに第2のアーム要素120の把持アーム1212および1222は同時に一緒に押し付けられる。それによって、それらは、それぞれボール142および152によって、またはそれぞれ回転スリーブ143および153によって形成されるクランプ体141および151をそれぞれ取り囲み、回転スリーブ143および153はそれぞれ、特に有利な変形例によれば、それぞれボール142および152をそれぞれ受け入れるのに適している。
【0051】
異なる直径のボール142または152によって、および/または異なる厚さのスペーサスリーブ133によって、ブロックデバイス132が作動するときに、ジョイント130、140および/または150のうちのどれが最初にロックし、どれが最後にロックするかを非常に正確に設定することが可能である。有利な変形例によれば、例えば、ジョイント140は、位置決めアーム100が要求される使用位置へと大まかに旋回された後に最初にブロックすることが可能である。ブロックデバイス132がさらに締め付けられると、ユニバーサルアダプタ170上に配置された器具190が目標位置へと回転または旋回された後、例えば中央ジョイント130が次にブロックすることが可能であり、さらなるジョイント150が最後にブロックすることができる。いま記載した順序は、一例として理解されるにすぎない。ボール142または152および/または回転スリーブ143または153の直径および/またはスペーサワッシャ133の厚さの対応する調整により、任意の他の順序も可能である。挟持アームのそれぞれの対における把持アームに対するレバーアームの長さ比を変更することによって、それぞれのジョイント130、140または150のロックのタイミングに影響を与えることも可能である。
【0052】
ラッチ要素1115、1125、1215および1225に代えて、図8に示されるように、挟持アーム122上の内側コーン1228において係合する挟持アーム111上の外側コーン1118、および挟持アーム112上の内側コーン1128において係合する挟持アーム121上の外側コーン1218も、中央ジョイント130をブロックする際にブロックデバイス132を支援することが可能である。
【0053】
回転ハンドル1321、クランプハンドル1324またはモータ1326が開かれたときに、中央ジョイント130のブロックデバイス132が容易に開くことを確実にするように、1つ以上のばね要素134が閉鎖力に対抗すると有利である。図8では、ねじ切りされたロッド1322を取り囲む螺旋状圧縮ばねが、この目的のために軸方向ばね要素134としてねじ切りされたロッド1322の中心領域に配置される。図7では、ディスクばねの形態にある2つのばね要素134が、挟持アーム111と122との間、および挟持アーム112と121との間にそれぞれ軸方向に互いに離間して配置され、ねじ切りされたロッド1322を取り囲んでいる。
【0054】
本発明に係る位置決めアーム100の取り扱いは、有利には、図18および図19に示されるように、さらなるばね要素135が提供され、さらなるばね要素135によって第1のアーム要素110および第2のアーム要素120が互いに対して所定の位置に弾性的に予荷重をかけられるという事実によってさらに容易にされる。好都合には、これは、第1のアーム要素110および第2のアーム要素120が180°の角度を囲む伸長位置である。示される実施形態では、さらなるばね要素135は、ねじ切りされたロッド1322を取り囲むトーション脚ばねとして形成され、さらなるばね要素135の端部は、挟持アーム112上の止め具1351または挟持アーム122上の止め具1352に対し固定される。
【0055】
図19に見られるように、締結デバイス160は、回転ハンドル162に接続されたねじ163によってホルダ(図示せず)へとねじ込まれるように構成され、例えば、手術台のサイドレールに締結されることが可能である。ロック歯部164は、位置決めアーム100を定位置に確実に固定することを補助するようにも構成されている。
【0056】
患者側の他端には、ユニバーサルアダプタ170が特に好ましくは第2のジョイント150に隣接して提供され、第2のジョイント150は、例えば接続ピース154をキャリア171へとねじ込むことによって接続ピース154に接続されることが可能である。ユニバーサルアダプタ170は、特に好ましくは3面プリズムのように設計された成形体173を備える。成形体173は、ホルダ180におけるのレセプタクル181に確実に接続されるように構成されており、それによって、成形体173は、ホルダ180上に変位可能に取り付けられたスライダ184が回転ハンドル182によって後方から成形体173に押し付けられるときに、レセプタクル181の2つの傾斜した前側面に対して楔形に押し付けられる。ユニバーサルアダプタ170は、回転ハンドル174が配置されたねじ175によって形成された回転軸172をさらに備えてよい(図19)。キャリア171上のロッキングディスク176および成形体173上のロッキングディスク177は、成形体173がキャリア171に対して微細に回転およびロックされることを可能にし、その結果、成形体173上に着座したホルダ180は、対応して微細に回転され、ツール190とロックされることが可能である。
【0057】
成形体173のプリズムは、鋭利な角部および縁部を有しない。滅菌カバーホイル200(図19参照)がそれらの間に配置される場合、ホイル200は損傷しない。これは、カバーホイル200によって形成される滅菌バリアが破られないことを確実にする。同時に、成形体173のプリズムは、常に良好な、とりわけ確実な形状嵌合(間にカバーホイル200があってもなくても)を可能にし、ユニバーサルアダプタ170に取り付けられた器具190の位置が変化しないことを確実にする。
【0058】
図15図17から理解されるように、ユニバーサルアダプタ170は、多種多様なツールおよび器具190を容易かつ迅速に接続するように用いられるように構成されている。図15では、ツール190はフック191によって形成されている。図16では、ツールホルダ186がホルダ180上に配置され、示される例では、ホルダ180上に、針194を案内するための針ガイド192が取り付けられる。図17では、ホルダ180は、例として、クランプによってホルダ180に固定されることが可能である一対のピンセット195を備える。ホルダ180には、好ましくは、さらなる回転軸185が提供され、その結果、ツール190は、ツールホルダ186に対して回転され、回転ハンドル187によってロックされることが可能である。
【0059】
ユニバーサルアダプタ170は、自身の成形体173によって任意のツール190、191、192、193、194および195用の任意のホルダ180に対し接続可能であるため、それ自身が独立した発明的特徴を表す。結果として、任意のツール190、191、192、193、194、および195を、手術中に必要に応じて複数のそうした位置決めアーム100上に任意に配置し、迅速に交換することが可能である。本発明に係る位置決めアーム100は、好ましくは遠隔操作可能なロボットシステムまたは患者位置決めシステムをユニバーサルアダプタ170に取り付けるのにも適している。ジョイント130、140、150のロックは、ロック状態において非常に安定しているため、ジョイント130、140、150の設定位置が少しも変化することなく、手術台全体をユニバーサルアダプタ170上で上昇させることが可能である。
【0060】
図9図11から理解されるように、本発明に係る位置決めアーム100は、滅菌のための分解が簡単に可能であるように、容易に分解し組み立てることが可能である非常に少数の挟持アーム111、112、121および122を備える。
【0061】
滅菌はまた、位置決めアーム100全体にわたって滅菌カバーホイル200を引くことによって、単純に達成され得る。これは、図19においてさらなるジョイント150の領域にしか示されていない。ユニバーサルアダプタ170は、このカバー200が成形体173とホルダ180におけるレセプタクル181との間に非破壊的にクランプされることを可能にする。
【0062】
図21図24は、挟持アームの別の変形例を示す。この場合、クランプ本体は、部分的に中空のボール1420によって形成される。一端にねじ山1421が提供されており、他端に互いに交差して配置されたスリット1422が提供されている、ボール1420のボアには、ボールヘッド1424を有する結合ロッド1423の一端が取り付けられている。結合ロッド1423のシャフト1426はスロット1422を貫通し、結合ロッド1423は、結合ロッド1423の他端にありボールヘッド1424とは反対にあるベアリングアイ1425によって、接続ジョイント113または接続ジョイントを形成するボルト1131上に支持される。
【0063】
結合ロッド1423がボール1420のボアへと挿入された後、一端にねじ山1441が取り付けられた接続片1440がボール1420のねじ山1421へとねじ込まれる。
挟持アーム111および112が、挟持アーム111および112の端部にある把持部1113の凹部1114(この場合、より平坦である)に対して一緒に押し付けられるとき、ボール1420が結合ロッド1423によって引っ張られ、それによってボール1420の動きが束縛される。把持部1113の歯は、この変形例では、把持部1113、1123、1213、1223の歯がクランプ体141、151またはボール142、152の周りに自身の直径の半分を超えて係合する、最初に記載された変形例よりも短くなるように設計されている。
【0064】
図25は、本発明に係る位置決めアームのさらなる締結オプションを示している。図25では、ジョイント140の接続片144が磁気ホルダ210に接続されており、磁気ホルダ210は、磁気スイッチ212によって作動位置にまたは動作停止に設定されることが可能である。磁気ホルダ210によって、この位置決めアームは、金属表面に非常に容易に固定され、再び解放されることが可能である。
【0065】
図26では、ジョイント140の接続片144がフランジプレート220に接続されており、フランジプレート220は、例えば、ねじによってキャリアまたは壁に取り付けるための複数のボア222を備える。
【0066】
図27は、挟持アーム111、112;121および122が非常に短くコンパクトである位置決めアームの特に小さい実施形態を示す。
【符号の説明】
【0067】
100 位置決めアーム
110 (第1)アーム要素
111 (110の)(外側)挟持アーム
1111 (111の)レバーアーム
1112 (111の)把持アーム
1113 把持部
1114 凹部
1115 ラッチ要素
1116 歯部
1117 切欠
1118 (外側)コーン
1119 ボア
112 (110の)(内側)挟持アーム
1121 (112の)レバーアーム
1122 (112の)把持アーム
1123 把持部
1124 凹部
1125 ラッチ要素
1126 歯部
1127 切欠
1128 (内側)コーン
1129 ボア
113 (111と112の)接続ジョイント
1131 ボルト
114 位置ホール
115 ボルト
120 (第2)アーム要素
121 (120の)(外側)挟持アーム
1211 (121の)レバーアーム
1212 (121の)把持アーム
1213 把持部
1214 凹部
1215 ラッチ要素
1216 歯部
1217 切欠
1218 (外側)コーン
1219 ボア
122 (120の)(内側)挟持アーム
1221 (122の)レバーアーム
1222 (122の)把持アーム
1223 把持部
1224 凹部
1225 ラッチ要素
1226 歯部
1227 切欠
1228 (内側)コーン
1229 ボア
123 (121と122の)接続ジョイント
130 (中央)ジョイント
131 旋回軸
132 ブロックデバイス
1321 回転ハンドル
1322 ねじ切りされたロッド
1323 ナット
1324 クランプハンドル
1325 偏心器
1326 モータ
1327 操作要素
133 スペーサワッシャ
134 (軸方向)ばね要素
135 ばね要素(トーションばね)
140 (さらなる)ジョイント
141 クランプ体
142 ボール
1420 ボール(図21図24における)
1421 ねじ山(1420における)
1422 スリット(1420における)
1423 結合ロッド
1424 ボールヘッド(1423における)
1425 ベアリングアイ(1423における)
1426 (1423の)シャフト
143 回転スリーブ
1431 リング溝
1432 セグメント
1433 スリット
144 接続片
1440 接続片(図21~24における)
1441 ねじ山(1440における)
150 (さらなる)ジョイント
151 クランプ体
152 ボール
153 回転スリーブ
1531 リング溝
1532 セグメント
1533 スリット
154 接続片
160 締結デバイス
162 回転ハンドル
163 ねじ
164 ロック歯部
170 (ユニバーサル)アダプタ
171 キャリア
172 回転軸
173 成形体
174 回転ハンドル
175 ねじ
176 ロッキングディスク(171における)
177 ロッキングディスク(173における)
180 ホルダ
181 レセプタクル
182 回転ハンドル
183 ねじ
184 スライダ
185 回転軸
186 ツールホルダ
187 回転ハンドル
190 ツール、器具
191 フック
192 針ガイド
193 ツールキャリア
194 針
195 ピンセット
200 (滅菌)カバーホイル(スリーブ)
210 磁気ホルダ
212 磁気スイッチ
220 フランジプレート
222 ボア(220における)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
【国際調査報告】