IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッドの特許一覧

特表2024-501362湿式不織布用ポリエステル短繊維、それを含む湿式不織布およびその製造方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】湿式不織布用ポリエステル短繊維、それを含む湿式不織布およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/62 20060101AFI20231228BHJP
   D21H 13/24 20060101ALI20231228BHJP
【FI】
D01F6/62 302A
D01F6/62 301E
D21H13/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023548165
(86)(22)【出願日】2021-10-15
(85)【翻訳文提出日】2023-04-19
(86)【国際出願番号】 KR2021014312
(87)【国際公開番号】W WO2022086062
(87)【国際公開日】2022-04-28
(31)【優先権主張番号】10-2020-0134999
(32)【優先日】2020-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504092127
【氏名又は名称】トーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリア・インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】TORAY ADVANCED MATERIALS KOREA INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】300,3gongdan 2-ro,Gumi-si,Gyeongsangbuk-do 39389 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リー,フィ・ドン
【テーマコード(参考)】
4L035
4L055
【Fターム(参考)】
4L035AA05
4L035BB31
4L035DD19
4L035DD20
4L035FF05
4L035GG01
4L035GG02
4L055AF33
4L055CH02
4L055EA04
4L055EA07
4L055EA16
(57)【要約】
本発明は、チタン系化合物を重合触媒として含んで製造された湿式不織布用ポリエステル短繊維、それを含む湿式不織布に関し、前記ポリエステル短繊維は、欠点の形成が顕著に少ないため、分散性に優れ、これによって、優れた機械的強度を有する湿式不織布およびその製造方法を提供することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊度が0.3~3.0deであり、下記の関係式1によって測定された分散性が10ppm以下であることを特徴とする湿式不織布用ポリエステル短繊維:
[関係式1]

上記関係式1中、未分散繊維の個数は、温度25℃の水1Lに水分率が25重量%である湿式不織布用ポリエステル短繊維を3g投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後、1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【請求項2】
前記ポリエステル短繊維は、重合生成物を紡糸した紡糸物を含み、前記重合生成物は、エステル反応生成物を重合反応させた反応生成物であり、
前記エステル反応生成物は、エステル反応物、熱安定剤および下記の化学式1で表されるチタン系化合物を含む混合物を反応させた反応生成物であることを特徴とする請求項1に記載の湿式不織布用ポリエステル短繊維:
[化学式1]

上記化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基または炭素数3~5の分岐鎖状アルキレン基である。
【請求項3】
前記ポリエステル短繊維は、平均繊維長が3~12mmであることを特徴とする請求項1に記載の湿式不織布用ポリエステル短繊維。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかの一項に記載の湿式不織布用ポリエステル短繊維;およびバインダー短繊維;を含み、
前記バインダー短繊維および前記ポリエステル短繊維を1:1.20~1:1.90の重量比で含むことを特徴とする湿式不織布。
【請求項5】
前記不織布は、MD(Machine direction)引張強度が150~300N/15mmであることを特徴とする請求項4に記載の湿式不織布。
【請求項6】
前記不織布は、MD(Machine direction)引張強度の標準偏差が下記の関係式2を満たすことを特徴とする請求項4に記載の湿式不織布:
[関係式2]

上記関係式2中、Nは、前記不織布を150mm×100mmで切断した試験片をN等分した領域の数であり、N=10であり、lは、第i領域の中央部分のMD引張強度であり、μは、N等分した領域のMD引張強度の平均値であり、
である。
【請求項7】
前記バインダー短繊維は、繊度が0.3~3.0deであり、平均繊維長が3~12mmであることを特徴とする請求項4に記載の湿式不織布。
【請求項8】
湿式不織布用ポリエステル短繊維およびバインダー短繊維を混合して手抄紙を製造する1段階;
前記手抄紙を乾燥させて抄紙を製造する2段階;および
前記抄紙に対して熱および圧力の中から選択されたいずれか1つ以上を加えてカレンダリングを行って湿式不織布を製造する3段階;を含み、
前記ポリエステル短繊維は、酸成分とジオール成分を反応させてエステル反応物を収得する1-1段階;
前記エステル反応物、熱安定剤およびチタン系化合物を含む重合反応物を混合および反応させてポリエステル樹脂を製造する1-2段階;
前記ポリエステル樹脂を紡糸して紡糸物を製造する1-3段階;
前記紡糸物を延伸してポリエステル短繊維を製造する1-4段階;を含んで製造することを特徴とする湿式不織布の製造方法。
【請求項9】
前記重合は、最終温度275~285℃に昇温することを特徴とする請求項8に記載の湿式不織布の製造方法。
【請求項10】
前記チタン系化合物は、前記重合反応物の全重量中、チタン元素を基準にして10~20ppmで含むことを特徴とする請求項8に記載の湿式不織布の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湿式不織布用ポリエステル短繊維およびそれを含む湿式不織布およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエステルは、優れた機械的性質と化学的安定性、高い融点などの特徴を有するので、近年最も広く使用されている合成繊維の素材だけでなく、各種プラスチック製品の材料となる、商業的に非常に重要な高分子物質である。このようなPETの応用範囲を拡張するために多くの研究が行われているが、特に高重合度と低いカルボキシ基含有量を有するPETをより短時間で合成して様々な性質を改善し、生産性を向上させようとする試みが着実に研究されている。
【0003】
なお、前記ポリエステル樹脂は、例えばエステル化反応を経て、溶融重縮合反応を経るが、該重縮合反応には、工業的規模では一般的に大部分がアンチモン化合物またはゲルマニウム化合物が重合触媒として使用されている。ところで、アンチモン化合物を重合触媒として使用して製造されたポリエステル樹脂は、特有の黒色を有するが、アンチモン化合物において指摘されている毒性に基づく安全衛生性、環境に対する配慮などの点から問題があり、また、ゲルマニウム化合物を触媒とするポリエステル樹脂は、透明性や安全衛生性などの観点から適しているが、ゲルマニウム化合物自体が非常に高価であり、経済的に不利なことを避けられないなどの観点から、これらに代わる重縮合触媒の出現が強く要望されている。
【0004】
前記のような問題点を解決するために、従来からアンチモン化合物やゲルマニウム化合物に代わる触媒として多数の化合物が提案されており、その中でも、チタン化合物は、低価であり、安全衛生性なども問題がない点から、様々な種類が提案されている。しかしながら、チタン化合物を重合触媒として使用して製造されたポリエステル樹脂は、特有の黄色みを帯び、また、熱安定性に劣り、例えば重縮合時および溶融成形時などに分解反応由来のアセトアルデヒドを多量で副生するという欠点があった。
【0005】
特に、湿式不織布の場合、浄水器フィルターの構成品またはティーバッグ用途の食品用フィルターに使用されるが、アンチモン触媒を使用して製造されたポリエステル繊維、これから製造された湿式不織布は、飲む水にアンチモンが溶出することがあり、安全衛生上適していない。
【0006】
これに関する一例として、日本国特許公開第2002-194618号には、アンチモン触媒を使用して製造した不織布用繊維を開示している。しかしながら、上述したように、前記不織布が湿式不織布に用いられる場合、安全衛生上適していない問題がある。
【0007】
なお、チタン系化合物を使用して製造されたポリエステル繊維は、紡糸性が良くないため、水への分散時に欠点を形成し、製紙およびフィルター用途の不織布として適していない。
【0008】
また、細繊度のポリエステル繊維の場合、紡糸吐出量が低く、延伸比が高いという特徴を有するので、紡糸性が不良な場合が多くて、それを含む湿式不織布の物性も、不良な問題があり、これに関する研究が急務である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記の問題点を解決するための本発明は、重合触媒としてチタン系化合物を使用して湿式不織布用ポリエステル短繊維を製造し、それを含む湿式不織布およびその製造方法を提供しようとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の湿式不織布用ポリエステル短繊維は、繊度が0.3~3.0de(denier)であってもよい。
【0011】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ポリエステル短繊維は、下記の関係式1によって測定された分散性が10ppm以下であってもよい。
【0012】
[関係式1]
【0013】
前記関係式1中、未分散繊維の個数は、温度25℃の水1Lに水分率が25重量%である湿式不織布用ポリエステル短繊維を3g投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後、1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【0014】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ポリエステル短繊維は、重合生成物を紡糸した紡糸物を含み、前記重合生成物は、エステル反応生成物を重合反応させた反応生成物であり、前記エステル反応生成物は、エステル反応物、熱安定剤および下記の化学式1で表されるチタン系化合物を含む混合物を反応させた反応生成物であってもよい。
【0015】
[化学式1]
【0016】
上記化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基または炭素数3~5の分岐鎖状アルキレン基である。
【0017】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ポリエステル短繊維は、平均繊維長が3~12mmであってもよい。
【0018】
本発明の他の目的において、湿式不織布は、前記湿式不織布用ポリエステル短繊維;およびバインダー短繊維;を含んでもよい。
【0019】
本発明の好ましい一実施形態において、前記不織布は、前記バインダー短繊維および前記ポリエステル短繊維を1:1.20~1:1.90の重量比で含んでもよい。
【0020】
本発明の好ましい一実施形態において、前記不織布は、MD(Machine direction)引張強度が150~300N/15mmであってもよい。
【0021】
本発明の好ましい一実施形態において、前記不織布は、MD(Machine direction)引張強度の標準偏差が下記の関係式2を満たすものであってもよい。
【0022】
[関係式2]
【0023】
上記関係式2中、Nは、前記不織布を150mm×100mmに切断した試験片をN等分した領域の数であり、N=10であり、lは、第i領域の中央部分のMD引張強度であり、μは、N等分した領域のMD引張強度の平均であり、
である。
【0024】
本発明の好ましい一実施形態において、前記バインダー短繊維は、繊度が0.3~3.0deであり、平均繊維長が3~12mmであってもよい。
【0025】
本発明のさらに他の目的において、前記不織布の製造方法は、湿式不織布用ポリエステル短繊維およびバインダー短繊維を混合して手抄紙を製造する1段階;前記手抄紙を乾燥させて抄紙を製造する2段階;および前記抄紙に対して熱および圧力の中から選択されたいずれか1つ以上を加えてカレンダリングを行って湿式不織布を製造する3段階;を含んでもよい。
【0026】
本発明の好ましい一実施形態において、前記ポリエステル短繊維は、酸成分、ジオール成分を反応させてエステル反応物を収得する1-1段階;前記エステル反応物、熱安定剤およびチタン系化合物を含む重合反応物を混合および反応させてポリエステル樹脂を製造する1-2段階;前記ポリエステル樹脂を紡糸して紡糸物を製造する1-3段階;前記紡糸物を延伸してポリエステル短繊維を製造する1-4段階;を含んで製造することができる。
【0027】
本発明の好ましい一実施形態において、前記重合は、最終温度275~285℃に昇温するものであってもよい。
【0028】
本発明の好ましい一実施形態において、前記チタン系化合物は、前記重合反応物の全重量中、チタン元素を基準にして10~20ppmで含んでもよい。
【発明の効果】
【0029】
本発明によってチタン系化合物を重合触媒として含むことによって、紡糸作業性に優れ、分散性が向上した湿式不織布用ポリエステル短繊維を製造することができ、それを含む機械的強度が均一な湿式不織布を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、湿式不織布の製造方法に基づいて本発明をより詳細に説明する。
【0031】
本発明の湿式不織布製造方法は、湿式不織布用ポリエステル短繊維およびバインダー短繊維を混合して手抄紙を製造する1段階;前記手抄紙を乾燥させて抄紙を製造する2段階;および前記抄紙に対して熱および圧力の中から選択されたいずれか1つ以上を加えてカレンダリングを行って湿式不織布を製造する3段階;を含んでもよい。
【0032】
まず、1段階のポリエステル短繊維は、酸成分、ジオール成分を反応させてエステル反応物を収得する1-1段階;前記エステル反応物、熱安定剤およびチタン系化合物を含む重合反応物を混合および反応させてポリエステル樹脂を製造する1-2段階;前記ポリエステル樹脂を紡糸して紡糸物を製造する1-3段階;前記紡糸物を延伸してポリエステル短繊維を製造する1-4段階;を含んで製造することができる。
【0033】
具体的には、1-1段階のエステル反応は、当業界において通常使用されるエステル化反応条件で行うことができ、好ましい一例において、前記エステル反応は、200~260℃下で150~240分間40~80rpmの回転速度で行うことができ、より好ましくは、210~250℃下で180~210分間50~70rpmの回転速度で行うことができる。
【0034】
なお、前記酸成分およびジオール成分を1:1.0~1:1.5のモル比で含んでもよいし、好ましくは、1:1.0~1:1.3のモル比で含んでもよい。もし前記ジオール成分が1.0モル比未満の場合、重合時に酸度が過度に高くなり、副反応を促進することがあり、1.5モル比を超過する場合、重合度が高まらない問題が発生することがある。
【0035】
この際、前記酸性分は、テレフタル酸を含み、その他にも、炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸や、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸および/またはスルホン酸金属塩をさらに含んでもよい。
【0036】
前記炭素数6~14の芳香族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために使用される酸成分として公知されたものを制限なしで使用することができるが、好ましくは、ジメチルテレフタレート、イソフタル酸およびジメチルイソフタレートからなる群から選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0037】
また、炭素数2~14の脂肪族多価カルボン酸は、ポリエステルの製造のために使用される酸成分として公知されたものを制限なしで使用することができるが、これに関する非制限的な例として、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、クエン酸、ピメリン酸 、アゼライン酸、セバシン酸、ノナノ酸、デカン酸、ドデカン酸およびヘキサデカン酸よりなる群から選択されたいずれか1つ以上であってもよい。
【0038】
なお、前記ジオール成分は、エチレングリコールおよび下記の化学式2で表現される成分を含んでもよい。
【0039】
[化学式2]
【0040】
次に、1-2段階の重合は、最終圧力が0.5torrとなるように徐々に減圧しつつ最終温度275~285℃に昇温し、好ましくは、最終温度277~283℃に昇温して行うことができる。
【0041】
もし前記重合の最終昇温温度が275℃未満であるか、285℃を超過する場合、繊維の分散性が過度に高くなり、不織布の引張強度が低くなるだけでなく、不織布の厚さ均一度が不良になる問題が発生することがあり、不織布の表面のタッチ感が不良になる問題が発生することがある。
【0042】
なお、前記熱安定剤は、当業界において使用する一般的な熱安定剤を使用することができ、好ましくは、トリメチルリン酸(trimethylphosphate)、トリエチルリン酸(triethylphostphate)、トリブチルリン酸(tributyl phosphate)、トリブトキシエチルリン酸(Tributoxyethyl phosphate)、トリクレジルリン酸(Tricresyl phosphate)、イソプロピル化トリアリールホスフェート(Triarylphosphate isopropylated)、ヒドロキノンビス-(ジフェニルホスフェート)(Hydroquinone bis-(diphenyl phosphate))の中から選択された1種または2種以上を混合して使用することができる。
【0043】
また、前記熱安定剤は、前記重合反応物の全重量中、リン(P)元素量を基準にして10~30ppmで含んでもよいし、好ましくは、15~25ppmで含んでもよい。
【0044】
なお、前記重合反応物に補色剤をさらに含んでもよい。前記補色剤としてブルーおよびレッド染料を混合したものを使用することができ、前記染料は、肺間質線維化を誘発し、人体発ガン性物質に分類されたコバルト化合物を置き換えたものであり、人体に無害であることを特徴とする。
【0045】
また、前記補色剤は、前記重合反応物に1~10ppmで含んでもよいし、好ましくは、3~7ppmで含んでもよい。
【0046】
なお、前記チタン系化合物は、重合触媒として作用することができ、下記の化学式1で表現されるチタン系化合物であってもよく、好ましくは、下記の化学式1で表現されるチタンキレート系化合物であってもよい。
【0047】
[化学式1]
【0048】
上記化学式1中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基または炭素数3~5の分岐鎖状アルキレン基であってもよく、好ましくは、炭素数1~3の直鎖状アルキレン基または炭素数3~4の分岐鎖状アルキレン基であってもよい。
【0049】
また、上記化学式1で表現されるチタン系化合物は、水分子の存在下でも安定しているので、水が多量で副生するエステル反応前に添加しても、失活せず、その結果、従来より短時間でエステル反応および重縮合反応を行うことができ、着色を抑制することができる。それだけでなく、前記チタン系化合物は、低い重合温度でも重合反応性に優れ、相対的に高い重合度により製造されたポリエステル樹脂の末端にカルボキシ基(-COOH)の発生が減少して、紡糸工程中にオリゴマーおよびモノマーによるノズル表面の汚染を低減させることができ、前記ノズル表面をクリーニングする回数を減らすことができるので、生産収率の向上および不良率減少の効果がある。また、これによって、アセトアルデヒドの含有量を減らした人体親和的なポリマーの製造が可能である。
【0050】
また、前記チタン系化合物は、前記重合反応物の全重量中、チタン元素を基準にして10~20ppmで含んでもよいし、好ましくは、12~18ppmで含んでもよいし、より好ましくは、14~16ppmで含んでもよい。もし10ppm未満の場合には、繊維のb値(b)が過度に高くなり、繊維の染色性および染着率が不良になり、アセトアルデヒド(Acetaldehyde)の発生量が増加して、人体親和的なポリマー製造が不可能になる問題があり得、20ppmを超過する場合には、ポリエステル樹脂の末端にカルボキシ基(COOH)の発生が過度に増加する問題が発生することがある。
【0051】
なお、本発明のポリエステル短繊維を製造するにあたって、補色剤をさらに含んでもよい。前記補色剤は、繊維に紡糸した後に進行される染色工程で染着される染料の色相をより強くて良くするための色調調整のためのものであり、繊維分野において公知となったものを添加することができ、これに関する非制限的な例として原着用染料、顔料、乾染炎料、分散染料、有機顔料などがある。ただし、好ましくは、ブルーおよびレッド染料が混合されたものを使用することができる。これは、補色剤として一般的に使用されるコバルト化合物の場合、人体有害性が大きいため、好ましくないが、ブルーおよびレッド染料を混合した補色剤は、人体に無害であるから好ましい。また、ブルーおよびレッド染料を混合して使用される場合、色調を微細に制御できるという利点がある。前記ブルー染料は、一例としてsolvent blue 104、solvent blue 122、solvent blue 45などが挙げられ、前記レッド染料は、一例としてsolvent red 111、solvent red 179、solvent red 195などが挙げられる。また、前記ブルー染料とレッド染料は、1:1.0~3.0重量比で混合することができ、これによって、目的とする微細な色調の制御に顕著な効果を発現するのに有利である。
【0052】
前記補色剤は、前記重合反応物の全重量を基準にして1~10ppm含んでもよいが、もし1ppm未満で含まれる場合、目的とするレベルの補色特性を達成しにくく、10ppmを超過する場合、L値が減少して透明性が低下し、暗い色を帯びる問題点がありえる。
【0053】
前記ポリエステル樹脂は、固有粘度が0.60~0.80dl/gであってもよく、好ましくは、0.63~0.77dl/gであってもよい。
【0054】
また、前記ポリエステル樹脂は、PHOL方法によって測定されたカルボキシ基の個数が30~40個であってもよく、好ましくは、33~39個であってもよい。
【0055】
次に、1-3段階の紡糸は、紡糸口金(ノズル)を通じて行うことができ、前記紡糸口金は、好ましくは、○型であってもよく、270~300℃下で1,300~1,700mpm(meter per minute)の紡糸速度で行うことができ、好ましくは、275~295℃下で1,400~1,600mpmの紡糸速度で行うことができる。
【0056】
次に、1-4段階の延伸は、2.0~4.0の延伸比で行うことができ、好ましくは、2.5~3.5の延伸比で行うことができる。
【0057】
以上で製造された湿式不織布用ポリエステル短繊維は、湿式不織布のベース繊維であり、湿式不織布の形状、強度などを具現させる繊維であってもよい。
【0058】
また、前記ポリエステル短繊維は、重合生成物を紡糸した紡糸物を含み、前記重合生成物は、エステル反応生成物を重合反応させた反応生成物であり、前記エステル反応生成物は、エステル反応物、熱安定剤およびチタン系化合物を含む混合物を反応させた反応生成物であってもよい。
【0059】
また、前記ポリエステル短繊維は、繊度が0.3~3.0deであってもよく、好ましくは、0.4~1.5deであってもよい。もしポリエステル短繊維の繊度が0.3de未満の場合、紡糸性が不良になる問題が発生することがあり、3.0deを超過する場合、不織布透気度が過度に高くなる問題が発生することがある。
【0060】
また、前記ポリエステル短繊維は、平均繊維長が3~12mmであってもよく、好ましくは、4~6mmであってもよい。もし前記平均繊維長が3mm未満の場合、不織布物性のうち強度が過度に低くなる問題が発生することがあり、12mmを超過する場合、このようなポリエステル短繊維を含む抄紙の欠点の発生が顕著に増加する問題が発生することがある。
【0061】
また、前記ポリエステル短繊維は、下記の関係式1によって測定された分散性が10ppm以下であってもよく、好ましくは、0.1~8.0ppmであってもよく、より好ましくは、1.0~6.0ppmであってもよい。
【0062】
[関係式1]
【0063】
前記未分散繊維の個数は、温度25℃の水1Lに水分率が25重量%であるポリエステル短繊維を3g投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後、1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【0064】
もし関係式1による分散性が10ppmを超過する場合、このようなポリエステル短繊維を含んで製造された湿式不織布は、機械的強度の均一性が低下し、25℃以上の温度である水に分散させる際にひとまとまりになるポリエステル短繊維の個数が顕著に増加し、これを通じて具現された不織布は、触感が低下することがあり、不織布内欠点の増加によって不織布の機械的強度が不良になる恐れがある。なお、抄紙は、目視で観察するとき、外観の美感、触感などが非常に重要であるが、水分酸性が小数点単位で変化する程度にも、その欠点は顕著に増加することができるので、水分酸性の小数点2桁以下の管理は、製品の品質において非常に重要である。
【0065】
前記ポリエステル短繊維とは別個に、前記バインダー短繊維は、前記ポリエステル短繊維と均一に分散した後、ポリエステル短繊維とバインダー短繊維および/またはバインダー短繊維間を熱接合させる繊維であり、それ自体でも湿式不織布の形状の具現および機械的強度を保証する繊維として使用することができる。
【0066】
また、前記バインダー短繊維は、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維の中から選択された1種以上を含んでもよいし、好ましくは、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維であってもよい。
【0067】
なお、前記バインダー短繊維は、酸成分およびジオール成分をエステル反応させてエステル反応物を得る段階;前記エステル反応物を重縮合反応させてポリエステルバインダー樹脂を製造する段階;および前記ポリエステルバインダー樹脂を紡糸させてバインダー短繊維を製造する段階;を含んで製造することができる。
【0068】
これについて具体的に説明すると、まず、前記酸成分は、公知の酸成分であれば、制限なしで使用することができるが、好ましくは、TPA(Terephthalic acid)、IPA(Isophthalic acid)およびAA(Arachidonic acid)の中から選択された1種以上を含んでもよいし、より好ましくは、TPA(Terephthalic acid)、IPA(Isophthalic acid)の中から選択された1種以上を含んでもよい。
【0069】
なお、前記ジオール成分は、公知のジオール成分であれば、制限なしで使用することができるが、好ましくは、EG(Ethylene glycol)、PEG(Poly(ethylene glycol))およびNPG(Neopentyl glycol)の中から選択された1種以上を含んでもよいし、より好ましくは、EG(Ethylene glycol)、PEG(Poly(ethylene glycol)中で選択された1種以上を含んでもよい。
【0070】
なお、前記酸成分およびジオール成分を1:1.0~1:1.5のモル比で含んでもよいし、好ましくは、1:1.0~1:1.3のモル比で含んでもよい。
【0071】
次に、前記重合は、最終圧力が0.5torrとなるように徐々に減圧しつつ、275~285℃まで昇温して行うことができ、好ましくは、277~283℃まで昇温して行うことができる。
【0072】
以上で製造された前記バインダー樹脂は、固有粘度が0.60~0.80dl/gであってもよく、好ましくは、0.63~0.77dl/gであってもよい。
【0073】
次に、前記紡糸は、紡糸口金(ノズル)を通じて行うことができ、前記紡糸口金は、好ましくは、○型であってもよく、270~300℃下で1,700~2,100mpm(meter per minute)の紡糸速度で行うことができ、好ましくは、275~295℃下で1,800~2,000mpmの紡糸速度で行うことができる。
【0074】
以上で製造されたバインダー短繊維は、延伸工程を行わない未延伸糸であってもよい。
【0075】
また、前記バインダー短繊維は、繊度が0.5~3.0deであってもよく、好ましくは、0.8~1.8deであってもよい。
【0076】
また、前記バインダー短繊維は、平均繊維長が3~12mmであってもよく、好ましくは、4~6mmであってもよい。
【0077】
なお、1段階の手抄紙の製造は、上記で製造されたポリエステル短繊維とバインダー短繊維を分散媒に均一に分散させて製造することができ、前記分散媒は、水など公知の分散媒であってもよい。前記分散媒に混合した繊維は、均一混合のためにブレンディング(blending)過程をさらに経ることができ、分散性の向上などのためにpH調整物質、形成補助剤、界面活性剤、消泡剤などのような多様なその他物質をさらに含んでもよい。
【0078】
また、前記手抄紙の製造は、抄紙機を用いて製造することができ、長網抄紙機、環網抄紙機など抄紙機の種類に限定されずに目的に応じて変更して使用することができる。
【0079】
この際、前記バインダー短繊維およびポリエステル短繊維は、1:1.20~1:1.90の重量比で含んでもよいし、好ましくは、1:1.30~1:1.80の重量比で含んでもよいし、より好ましくは、1:1.40~1:1.70の重量比で含んでもよい。もし前記ポリエステル短繊維を1.20重量比未満で含む場合、不織布のタッチが硬くなる問題があり得、1.90重量比を超過して含む場合、不織布の強度が低くなる問題が発生することがある。
【0080】
なお、2段階の乾燥工程前に分散媒の排水過程をさらに経ることができる。
【0081】
また、前記排水過程後に、真空またはその他圧力によって脱水過程をさらに経ることができる。排水、脱水を経た手抄紙に対して乾燥機、オーブン、または紙を乾燥するために当業界において公知となった類似の装置を使用して残余分散媒を蒸発させることによって抄紙を製造することができる。
【0082】
次に、2段階の乾燥は、90~110℃下で行うことができ、好ましくは、95~105℃下で行うことができる。
【0083】
次に、3段階のカレンダリングは、上記で製造された抄紙に対して熱および圧力のうちいずれか1つ以上を加えて行うことができ、前記熱処理は、210~270℃下で行うことができ、好ましくは、220~260℃下で行うことができる。
【0084】
なお、前記カレンダリングする段階前に、予備的に圧縮する段階をさらに経ることができ、前記熱および/または圧力は、ローラーを加熱させて圧力を加えることによって同時に行われることもでき、互いに異なる工程で行われることもできる。ただし、熱処理は、金属ロールまたはその他高温の表面に紙を当接させる方法によるなど任意の加熱方法によることができ、また、赤外線またはオーブン中の高温空気加熱のような通常の方法によって達成することができる。前記加えられる熱は、ポリエステル短繊維およびバインダー短繊維の熱的特性を考慮して定めることができるので、本発明は、これについて特に限定されない。
【0085】
以上で製造された湿式不織布は、MD(Machine direction)引張強度の平均が150~300N/15mmであってもよく、好ましくは、150~200N/15mmであってもよい。
【0086】
また、前記不織布は、短繊維不織布であってもよい。
【0087】
また、前記不織布は、坪量が60~90g/mであってもよく、好ましくは、65~85g/mであってもよい。
【0088】
また、前記不織布は、平均厚さが0.050~0.10mmであり、好ましくは、0.070~0.090mmであってもよい。
【0089】
また、前記不織布は、MD(Machine direction)引張強度の標準偏差が下記の関係式2を満たすことができる。
【0090】
[関係式2]
【0091】
上記関係式2中、σは、標準偏差を意味し、Nは、前記不織布を150mm×100mmに切断した試験片をN等分した領域の数であり、N=10であり、lは、第i領域の中央部分MD引張強度であり、μは、N等分した領域のMD引張強度の平均であり、
である。
【0092】
この際、上記関係式2の値は、好ましくは、0.05~0.8N/mmであってもよい。もし上記関係式2の値が1.0N/15mmを超過する場合、前記不織布の機械的強度が不均一であり、製品への利用が難しい問題が発生することがある。
【0093】
また、前記不織布は、湿式不織布であってもよい。
【0094】
本発明の湿式不織布を所定の形状で含んで製紙およびフィルターを製造することができ、前記フィルターは、好ましくは、逆浸透(reverse osmosis)フィルターであってもよい。
【0095】
下記の実施例に基づいて本発明をより具体的に説明するが、下記の実施例が本発明の範囲を制限するものではなく、これは、本発明の理解を助けるものと解されるべきである。
【0096】
[実施例]
実施例1-1:湿式不織布用ポリエステル短繊維の製造
(1)ポリエステル樹脂の製造
エステル反応槽に酸成分としてテレフタル酸(TPA)100モル%、ジオール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%を投入した後、250℃下で1,140torrの圧力で反応させてエステル反応物を得た。この際、前記酸成分およびジオール成分は、1:1.2のモル比で投入した。
【0097】
次に、前記エステル反応物を重縮合反応器に移送した。
【0098】
次に、前記エステル反応物、熱安定剤およびチタン系化合物を含む重合反応物を混合および重合反応させてポリエステル樹脂を製造した。
【0099】
前記重合反応は、最終圧力0.5torrとなるように徐々に減圧しつつ、最終温度280℃に昇温して行われた。
【0100】
この際、前記熱安定剤は、トリエチルリン酸を前記重合反応物の全重量中、リン元素を基準にして25ppmで含んで製造した。
【0101】
また、前記チタン系化合物として下記の化学式1-1で表される化合物を使用し、重合反応物全重量中、チタン元素を基準にして15ppmとなるように添加し、重合反応物全重量中、300ppmで含む。
【0102】
[化学式1-1]
【0103】
上記化学式1-1中、RおよびRは、それぞれ独立して、炭素数1のアルキル基である。
【0104】
(2)ポリエステル短繊維の製造
前記ポリエステル樹脂を○型の紡糸口金を通じて285℃下で1,500ppmの紡糸速度で紡糸して紡糸物を製造した。
【0105】
次に、前記紡糸物を3.0の延伸比で延伸してポリエステル短繊維を製造した。
【0106】
この際、前記ポリエステル短繊維は、平均繊維長が5mmであり、繊度が1.2deである。
【0107】
実施例1-2~実施例1-9~比較例1-1~比較例1-8:湿式不織布用ポリエステル短繊維の製造
実施例1-1と同じ方法でポリエステル短繊維を製造するものの、重合温度(最終昇温温度)、チタン系化合物の投入量(Ti元素基準)、短繊維の繊度または短繊維の平均繊維長を下記の表1~表3のようにして、実施例1-2~実施例1-9および比較例1-1~比較準備例1-8を実施した。
【0108】
比較例1-9~比較例1-12:湿式不織布用ポリエステル短繊維の製造
実施例1-1と同じ方法でポリエステル短繊維を製造するものの、重合温度(最終昇温温度)、重合触媒の種類または触媒の投入量(Ti元素基準)を下記の表4のようにして、比較例1-9~比較例1-12を実施した。
【0109】
実施例2-1:バインダー短繊維の製造
酸成分としてテレフタル酸(TPA)100モル%およびジオール成分としてエチレングリコール(EG)100モル%をエステル反応槽に投入した後、250℃下で1,140torrの圧力で反応させてエステル反応物を得た。この際、前記酸成分およびジオール成分は、1:1.2のモル比で投入した。
【0110】
次に、前記エステル反応物を重縮合反応器に移送した。
【0111】
次に、前記エステル反応物を最終圧力0.5torrとなるように徐々に減圧しつつ、280℃まで昇温する重縮合反応によりポリエステルバインダー樹脂を製造した。
【0112】
次に、前記ポリエステルバインダー樹脂を○型の紡糸口金を通じて285℃下で1,900ppmの紡糸速度で紡糸してバインダー短繊維を製造した。
【0113】
この際、前記ポリエステルバインダー短繊維は、平均繊維長が5mmであり、繊度が1.2deであった。
【0114】
実験例1:ポリエステル樹脂およびポリエステル短繊維の物性の評価
実施例1-1~実施例1-9および比較準備例1-1~比較準備例1-12で製造されたポリエステル樹脂(中間生成物)および湿式不織布用ポリエステル短繊維を次のような方法で物性評価して、その結果を下記の表1~表4に示した。
【0115】
(1)固有粘度(IV)
ポリエステル樹脂をオルソクロロフェノール(Ortho-Chloro Phenol)溶媒に2.0g/25mlの濃度で110℃下で30分間溶融した後、25℃で30分間恒温して、キャノン(CANON)粘度計が連結された自動粘度測定装置を用いて固有粘度を測定した。
【0116】
(2)カルボキシ基末端基の定量
ポリエステル樹脂のカルボキシ基の個数をPHOLの方法によって測定した。具体的には、20メッシュ(mesh)のサイズに粉砕した重合生成物粉末0.1250gを精密に秤量して試験管に入れ、5mlのベンジルアルコールを加えて超小型撹拌機で撹拌しつつ、約135秒間210℃下で加熱および溶解させた。溶解直後、試験管を25℃の水に6秒間浸漬して急冷させ、10mlのクロロホルムが入っている50mlのビーカーに内容物を注いだ後、さらに5mlのベンジルアルコールを試験管に入れ、60秒間撹拌させて、残っている樹脂溶液を完全にすすいでビーカーに直ちに加え、これを被滴定液として使用した。カルボキシ基の含有量は、フェノールレッド(0.1%ベンジルアルコール溶液)を指示薬にして0.1N水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液を微量注射器(microsyringe、100μlの容量)を用いて中和滴定し、滴定決定値を滴定試薬に対する基礎試験結果によって補正して、下記の関係式3により計算した。
【0117】
[関係式3]
【0118】
ただし、fは、0.1N水酸化ナトリウムベンジルアルコール溶液の濃度係数である。
【0119】
(3)紡糸作業性の評価
紡糸作業性は、ポリエステル短繊維の紡糸加工中にドリップ(口金を通過する繊維ストランドが一部融着したり糸切した後、ストランドが不規則に融着して形成された塊りを意味する)の発生数値をドリップ感知器を用いてカウントし、実施例1-1でのドリップ発生数値を100を基準にして残りの実施例および比較例で発生したドリップ個数を相対的な百分率で表示した。
【0120】
(4)ワイピンググ(Wiping)周期(回数)の測定
ポリエステル短繊維の製造工程で、一日に紡糸口金のワイピング(wiping)が何回行われるかを計算した。ワイピング周期の値が大きくなるほど、紡糸口金に異物が挟まったり汚れていると判断した。
【0121】
(5)b値(b)の測定
【0122】
ポリエステル短繊維を測色機を用いて色相を分析してb値を測定した。測定方法は、分光法を基盤とし、CIE標準光源と標準観測者を用いて色度座標を算出する方法を使用した。
【0123】
(6)分散性の測定
下記の関係式1によって分散性を計算した。
【0124】
[関係式1]
【0125】
前記未分散繊維の個数は、温度25℃の水1Lに水分率が25重量%であるポリエステル短繊維を3gを投入した後、600rpmの条件下で10分間撹拌させた後、1分間放置した後、未分散繊維の個数を測定したものである。
【0126】
この際、分散性が高いほど未分散繊維の個数が多くなると判断して、不良と判断した。
【0127】
【表1】
【0128】
【表2】
【0129】
【表3】
【0130】
【表4】
【0131】
前記表1~表4を参照すると、実施例1-1~実施例1-9は、優れた物性を有することが分かった。一方、最終昇温温度(重合温度)が275℃未満である比較例1-1は、最終昇温温度(重合温度)が275℃である実施例1-2と比較したとき、分散性が10ppmを超過する問題があった。
【0132】
また、最終昇温温度(重合温度)が285℃を超過する比較例1-2は、最終昇温温度(重合温度)が285℃である実施例1-3と比較したとき、樹脂にカルボキシ基が40個以上測定され、汚染が高いことが分かり、繊維の分散性が顕著に高くなっただけでなく、紡糸口金が容易に汚染してワイピング周期が短くなる問題があり、b値(b*)が高くて黄色みを帯びる繊維であることが分かった。
【0133】
また、チタン系化合物のチタン(Ti)元素基準含有量が10ppm未満である比較例1-3は、チタン系化合物のチタン(Ti)元素基準含有量が10ppmである実施例1-4と比較したとき、b値が過度に高くて、不織布の商業的利用が不可能な問題があり、分散性も、10ppmを超過することが分かった。
【0134】
また、チタン系化合物のチタン(Ti)元素基準含有量が20pmを超過する比較例1-4は、チタン系化合物のチタン(Ti)元素基準含有量が20ppmである実施例1-5と比較したとき、樹脂のカルボキシ基が過度に多く測定され、汚染によるワイピング回数が顕著に増加し、分散性が過度に高いことが分かった。
【0135】
また、ポリエステル短繊維の繊度が0.3de未満である比較例1-5は、0.3deである実施例1-6と比較したとき、ワイピング周期が最も頻繁であることが示されたが、これは、過度に微繊化するにつれて発生した問題と予測される。
【0136】
また、チタン系化合物の代わりにアンチモン系触媒を使用した比較例1-9~比較例1-12は、カルボキシ基が過度に多く検出され、b値が高いだけでなく、分散性が過度に高いので、湿式不織布への利用が不可能であることを確認することができた。
【0137】
製造例1:湿式不織布の製造
実施例1-1で製造された湿式不織布用ポリエステル短繊維と実施例2-1で製造されたバインダー短繊維を準備した。
【0138】
次に、前記バインダー短繊維およびポリエステル短繊維を1:1.50重量比で水に分散させた後、水を排水した後、100℃下で乾燥した後、240℃下でカレンダリングして、坪量が75g/mであり、平均厚さが0.08mmである湿式不織布を製造した。
【0139】
製造例2~製造例11および比較製造例1~比較製造例14:湿式不織布の製造
製造例1と同じ方法で湿式不織布を製造するものの、実施例1-2~実施例1-9または比較例1-1~比較例1-12で製造された湿式不織布用ポリエステル短繊維を使用したり、バインダー短繊維およびポリエステル短繊維の重量比を下記の表5~表9のようにして製造例2~製造例11および比較製造例1~比較製造例14を実施した。
【0140】
実験例2:湿式不織布の物性の評価
製造例1~製造例11および比較製造例1~比較製造例14で製造された湿式不織布を150mm×100mmに切断して試験片を製造した。次に、前記試験片を下記のような方法で実験を行い、その結果を下記の表5~表9に示した。
【0141】
(1)MD(Machine direction)引張強度の平均の測定
MD引張強度は、前記試験片を温度25℃で、20mm/minの速度で引張強度試験機(HZ-1007E、MMS)を用いて10回実験を行い、その平均値を平均引張強度とした。
【0142】
(2)MD(Machine direction)引張強度の標準偏差の測定
MD引張強度の標準偏差を下記の関係式2-1によって計算した。
【0143】
[関係式2-1]
【0144】
上記関係式2-1中、σは、標準偏差を意味し、Nは、前記不織布を150mm×100mmに切断した試験片をN等分した領域の数であり、N=10であり、lは、第i領域の中央部分のMD引張強度であり、μは、N等分した領域のMD引張強度の平均であり、
である。
【0145】
(4)表面タッチ感(触感)の評価
手による感触で8人のパネルが官能評価して下記のように相対評価した。(1:非常にやわらかい、2:普通、3:硬いまたは粗い)
【0146】
【表5】
【0147】
【表6】
【0148】
【表7】
【0149】
【表8】
【0150】
【表9】
【0151】
表5~表9を参照すると、製造例1~製造例11は、優れた物性を有する不織布であることが分かった。一方、比較製造例1~比較製造例14は、不織布の引張強度が150N/15mm未満であるか、引張強度の標準偏差が1.0N/15mmを超過したり、不織布表面のタッチ感が不良であることが分かった。
【0152】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明の思想は、本明細書に提示される実施例に制限されず、本発明の思想を理解する当業者は、同じ思想の範囲内で、構成要素の付加、変更、削除、追加などによって他の実施例を容易に提案することができるが、これも、本発明の思想内内に入ると言える。
【国際調査報告】