(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】エネルギーフィルタと、エネルギーフィルタの少なくとも一部に重なるための支持要素とを伴うイオン注入デバイス
(51)【国際特許分類】
H01L 21/265 20060101AFI20231228BHJP
【FI】
H01L21/265 603B
H01L21/265 603Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023561425
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021084474
(87)【国際公開番号】W WO2022128594
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】LU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523231510
【氏名又は名称】エムイー2-ファクトリー・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン・コサト
(72)【発明者】
【氏名】フロリアン・クリッペンドルフ
(57)【要約】
少なくとも1つのフィルタ層(32)を伴うエネルギーフィルタ(25)と、エネルギーフィルタ(25)を支持するための少なくとも1つの支持要素(30)であって、エネルギーフィルタ(25)の少なくとも一部に重なる少なくとも1つの支持要素(30)とを備えるイオン注入デバイス(20)が提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つのフィルタ層(32)を伴うエネルギーフィルタ(25)と、
前記エネルギーフィルタ(25)を支持するための少なくとも1つの支持要素(30)であって、前記エネルギーフィルタ(25)の少なくとも一部に重なる少なくとも1つの支持要素(30)と
を備えるイオン注入デバイス(20)。
【請求項2】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は裏面支持要素である、請求項1に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項3】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は表面支持要素である、請求項1に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項4】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は少なくとも1つの支持層(31)を備える、請求項1から3のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項5】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は第1の高さ(h
supp)を有し、前記エネルギーフィルタ(25)は最大高さ(h
max)を有し、前記少なくとも1つの支持要素(30)の前記第1の高さ(h
supp)は前記エネルギーフィルタ(25)の前記最大高さ(h
max)と少なくとも同じである、請求項1から4のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項6】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は第1の幅(d
supp)を有し、前記エネルギーフィルタ(25)は最小幅(d
min)を有し、前記少なくとも1つの支持要素(30)の前記第1の幅(d
supp)は前記エネルギーフィルタ(25)の前記最小幅(d
min)と少なくとも同じである、請求項1から5のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項7】
前記エネルギーフィルタ(25)の前記最小幅(d
min)は±0.3μm、±0.5μm、または±0.8μmである、請求項6に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの支持要素(30)の前記第1の幅(d
supp)は、前記エネルギーフィルタ(25)の前記最小幅(d
min)より少なくとも10%、20%、または50%大きい、請求項6または7に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項9】
前記少なくとも1つの支持要素(30)の前記第1の幅(d
supp)は、前記エネルギーフィルタ(25)の前記最小幅(d
min)より少なくとも2倍、5倍、または10倍大きい、請求項6または7に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項10】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は炭化ケイ素で作られる、請求項1から9のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項11】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は前記エネルギーフィルタ(25)と同じ材料で作られる、請求項1から10のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項12】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は前記エネルギーフィルタ(25)と異なる材料で作られる、請求項1から10のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項13】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は前記エネルギーフィルタ(25)の最大吸収能力以上の吸収能力を有する、請求項1から12のいずれか一項に記載のイオン注入デバイス(20)。
【請求項14】
第1の配向を伴う第1のエネルギーフィルタ(125)と、
第2の配向を伴う第2のエネルギーフィルタ(225)と、
前記第1および第2のエネルギーフィルタ(125、225)を支持するための少なくとも1つの支持要素(30)であって、前記少なくとも1つの支持要素(30)は、前記第1のエネルギーフィルタ(125)の少なくとも一部および前記第2のエネルギーフィルタ(225)の少なくとも一部に重なり、前記第1のエネルギーフィルタ(125)の前記第1の配向は前記第2のエネルギーフィルタ(225)の前記第2の配向と異なる、少なくとも1つの支持要素(30)と
を備えるイオン注入デバイス(120)。
【請求項15】
前記第1のエネルギーフィルタ(125)および前記第2のエネルギーフィルタ(225)は、正方形の複合配置、長方形の複合配置、六角形の複合配置、または交差網の複合配置のうちの1つで配置される、請求項14に記載のイオン注入デバイス(120)。
【請求項16】
前記少なくとも1つの支持要素(30)は、前記第1のエネルギーフィルタ(125)および前記第2のエネルギーフィルタ(225)の最大吸収能力以上の吸収能力を有する、請求項14または15に記載のイオン注入デバイス(120)。
【請求項17】
イオン注入デバイス(20)を製造するための方法(300)であって、
エネルギーフィルタ(25)に少なくとも1つのフィルタ層(32)を提供するステップ(301)と、
少なくとも1つの支持要素(30)を提供するステップ(302)と、
前記少なくとも1つの支持要素(30)によって前記エネルギーフィルタ(25)を支持するステップ(303)と、
前記少なくとも1つの支持要素(30)によって前記エネルギーフィルタ(25)の少なくとも一部を重ねるステップ(304)と
を含む方法(300)。
【請求項18】
イオン注入デバイス(120)を製造するための方法(400)であって、
第1のエネルギーフィルタ(125)を提供するステップ(401)と、
前記第1のエネルギーフィルタ(125)を第1の配向で配向するステップ(402)と、
第2のエネルギーフィルタ(225)を提供するステップ(403)と、
前記第2のエネルギーフィルタ(225)を、前記第1のエネルギーフィルタ(125)の前記第1の配向と異なる第2の配向で配向するステップ(404)と、
前記少なくとも1つの支持要素(30)によって前記第1および第2のエネルギーフィルタ(125、225)を支持するステップ(405)と、
前記少なくとも1つの支持要素(30)によって前記第1のエネルギーフィルタ(125)の少なくとも一部と前記第2のエネルギーフィルタ(225)の少なくとも一部とを重ねるステップ(406)と
を含む方法(400)。
【請求項19】
請求項1または14に記載のイオン注入デバイス(20、120)を製造するための方法(300、400)の、スクリーン印刷、多層処理、リソグラフィパターン形成処理、およびエッチング処理の順序のうちの1つでの使用。
【請求項20】
イオン注入デバイス(20、120)を製造するための方法(500)であって、
シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを、第1の表面および第2の表面を有する基板材料として提供するステップ(501)であって、埋め込み酸化物(BOX)の厚さが30nmから1.5μmの間の厚さで変化する、ステップ(501)と、
湿式化学水酸化カリウム(KOH)エッチングまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングをマスクするための第1のマスク材料層および第2のマスク材料層を、前記SOIウェーハの前記第1の表面および前記第2の表面に適用するステップ(502)と、
第1および第2のリソグラフィ処理ステップ、ならびに少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、前記第1の表面および前記第2の表面に前記第1のマスク材料層および前記第2のマスク材料層のパターン形成をするステップ(503)と、
前記マスク材料層のパターン形成の後に前記第1の表面および前記第2の表面を洗浄するステップ(504)と、
KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して前記第1の表面または前記第2の表面を第1の湿式化学エッチングするステップ(505)と、
KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して前記第1の表面または前記第2の表面を第2の湿式化学エッチングするステップ(506)と、
エッチングが前記BOX層において止められるように、前記第1の表面および前記第2の表面を湿式化学エッチングするステップ(507)と、
前記BOX層を除去するステップ(508)と、
前記第1の表面および前記第2の表面における前記マスク層を除去するステップ(509)と
を含む方法(500)。
【請求項21】
エッチングを防止するために第1の保護層を前記第1の表面または前記第2の表面に適用するステップを含む、請求項20に記載の方法(500)。
【請求項22】
前記第1の表面または前記第2の表面のエッチングを防止するために第2の保護層を前記第1の表面または前記第2の表面に適用するステップを含む、請求項20または21に記載の方法(500)。
【請求項23】
イオン注入デバイス(20、120)を製造するための方法(600)であって、
体積材料スラブを提供するステップ(601)であって、前記体積材料スラブの厚さは、少なくとも1つの支持要素(30)の高さ(h
supp)のもので少なくともある、ステップ(601)と、
レーザエッチングまたは機械的腐食デバイスにより前記材料を連続的に除去するステップ(602)であって、前記除去は、1ステップごとに数十nmから最大数マイクロメートルまでの増分であり、所与の構造のためにいくつかの除去ステップを伴い、前記連続的な除去は、エネルギーフィルタ構造(25、125、225)および少なくとも1つの支持要素(30)の所定の3Dレイアウトに従って実施される、ステップ(602)と
を含む方法(600)。
【請求項24】
イオン注入デバイス(20、120)を製造するための方法(700)であって、
基板または基層を提供するステップ(701)と、
第1の支持層(31)および第1のフィルタ層(32)を堆積させるステップ(702)と、
レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチングまたは連続的なエッチングのような適切なエッチング技術を使用して、前記第1の支持層(31)および前記第1のフィルタ層(32)のパターン形成をするステップ(703)と、
前記第1の支持層(31)および前記第1のフィルタ層(32)の多重を連続的に堆積させ(702)、パターン形成をする(703)ステップと、
前記基板または前記基層を所望の基板層厚さまたは基層厚さへと除去、研磨、またはエッチングするステップ(704)と
を含む方法(700)。
【請求項25】
イオン注入デバイス(20、120)を製造するための方法(800)であって、
エネルギーフィルタ(25、125、225)、および少なくとも1つの支持要素(30)の分離構造を提供するステップ(801)と、
前記エネルギーフィルタ(25、125、225)と前記少なくとも1つの支持要素(30)との間における永久的で熱機械的に安定な連結を達成するために、ボンディング層または接着層を適用するステップ(802)と
を含む方法(800)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギーフィルタと、エネルギーフィルタに重なる支持要素とを備えるイオン注入デバイスに関する。本発明は、異なる配向を有する第1のエネルギーフィルタおよび第2のエネルギーフィルタと、第1のエネルギーフィルタおよび第2のエネルギーフィルタに重なる支持要素とを備えるイオン注入デバイスにも関する。本発明は、このような注入デバイスを製造するための方法にさらに関する。
【背景技術】
【0002】
イオン注入は、半導体材料または光学材料などの材料におけるドーピングまたは欠陥プロファイルの生成を、数ナノメートルから数十マイクロメートルまでの深さ範囲における所定の深さプロファイルで達成するための方法である。このような半導体材料の例には、限定されることはないが、ケイ素、炭化ケイ素、および窒化ガリウムがある。このような光学材料の例には、限定されることはないが、LiNbO3、ガラス、およびPMMAがある。
【0003】
単一エネルギーイオン照射によって得られるドーピング濃度ピークもしくは欠陥濃度ピークの深さ分布より広い深さ分布を有するイオン注入によって深さプロファイルを生成する必要性、または、1つもしくはいくつかの単純な単一エネルギー注入によっては生成できないドーピング深さプロファイルもしくは欠陥深さプロファイルを生成する必要性がある。ドーピング濃度ピークは、しばしば、ガウス分布によって、または、より正確にはピアソン分布によって、おおよそ表現することができる。しかしながら、特に、いわゆるチャネリング効果が結晶材料に存在する場合、このような分布からの逸脱もある。単一エネルギーイオンビームが微細構造化エネルギーフィルタ要素を通過するときに単一エネルギーイオンビームのエネルギーが変更される構造化エネルギーフィルタを使用して深さプロファイルを生成するための先行技術の方法が、知られている。結果的に生じるエネルギー分布は、標的材料において深さプロファイルイオンの作成をもたらす。これは、例えば、欧州特許0014516B1(Bartko)に記載されている。
【0004】
このようなイオン注入デバイス20の例が
図1に示されており、この例では、イオンビーム10が構造化エネルギーフィルタ25に衝突する。イオンビーム発生源5は、サイクロトロン、高周波線形加速器、静電タンデム加速器、またはシングルエンド静電加速器とすることもできる。他の態様では、イオンビーム発生源5のエネルギーは、0.5MeV/核子から3.0MeV/核子の間、または好ましくは1.0MeV/核子から2.0MeV/核子の間である。ある特定の実施形態では、イオンビーム発生源は、1.3MeV/核子から1.7MeV/核子の間のエネルギーでイオンビーム10を生成する。イオンビーム10の総エネルギーは、1MeVから50MeVの間であり、ある好ましい態様では4MeVから40MeVの間であり、好ましい態様では8MeVから30MeVの間である。イオンビーム10の周波数は、例えば3Hzから500Hzの間といった、1Hzから2kHzの間とでき、ある態様では7Hzから200Hzの間とできる。イオンビーム10は連続イオンビーム10であってもよい。イオンビーム10におけるイオンの例には、限定されることはないが、アルミニウム、窒素、水素、ヘリウム、ホウ素、リン、炭素、ヒ素、およびバナジウムがある。
【0005】
図1において、エネルギーフィルタ25が、右手側における三角形の断面形態を有する膜から作られることが分かるが、この種類の断面形態は本発明の限定ではなく、他の断面形態が使用できる。上方のイオンビーム10-1がエネルギーフィルタ25を通過するのに通る領域25
minが、エネルギーフィルタ25の膜の最小の厚さを有するため、上方のイオンビーム10-1は、エネルギーにおける低減がほとんどなく、エネルギーフィルタ25を通過する。別の言い方をすれば、左手側における上方のイオンビーム10-1のエネルギーがE1である場合、(膜におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす膜の阻止能による小さいエネルギー損失により)上方のイオンビーム10-1のエネルギーは右手側において実質的に同じ値E1を有することになる。
【0006】
一方で、下方のイオンビーム10-2は、エネルギーフィルタ25の膜がその最も厚いところである領域25maxを通過する。左手側における下方のイオンビーム10-2のエネルギーE2は、実質的にエネルギーフィルタ25によって吸収され、したがって、右手側における下方のイオンビーム10-2のエネルギーは低減され、上方のイオンビームのエネルギーより小さく、つまり、E1>E2である。その結果、より大きなエネルギーの上方のイオンビーム10-1が、より小さいエネルギーの下方のイオンビーム10-2に対して、基板材料30においてより大きい深さへ浸透することができることになってしまう。これは、ウェーハの一部である基板材料30において、差異のある深さプロファイルをもたらしてしまう。
【0007】
この深さプロファイルは、
図1の右手側に示されている。実線の矩形の領域は、イオンが深さd1とd2との間の深さで基板材料に浸透することを示している。しかしながら、水平のプロファイルの形は特別な場合であり、これは、例えば、すべてのエネルギーが幾何学的に等しいと見なされる場合で、エネルギーフィルタおよび基板の材料が同じである場合に得られる。ガウス曲線は、エネルギーフィルタ25がなく、d3の深さにおいて最大値を有するおおよその深さプロファイルを示している。イオンビーム10-1のエネルギーの一部がエネルギーフィルタ25において吸収されるため、深さd3が深さd2より大きいことは、理解されるものである。
【0008】
先行技術において、エネルギーフィルタ25の製作について知られているいくつかの原理がある。典型的には、エネルギーフィルタ25は、
図1から知られている三角形の断面パターンなどの所望のパターンを生成するために、エッチングされたエネルギーフィルタ25の表面を伴うバルク材料から作られる。ドイツ特許DE102016106119B4(Csato/Krippendorf)には、異なるイオンビームエネルギー低減特性を有する材料の層から製造されるエネルギーフィルタが記載されている。Csato/Krippendorfの特許出願に記載されているエネルギーフィルタから生じる深さプロファイルは、材料の層の構造にも表面の構造にも依存する。
【0009】
さらなる構造の原理が、本出願者の同時継続出願DE102019120623.5に示されており、エネルギーフィルタは、鉛直の壁によって一体に連結される離間された微細構造化層を備える。
【0010】
エネルギーフィルタ25を通じて吸収され得るイオンビーム10からの最大出力は、3つの因子、すなわち、エネルギーフィルタ25の効果的な冷却機構と、エネルギーフィルタ25が作られる膜の熱機械特性と、エネルギーフィルタ25が作られる材料の選択とに依存する。典型的なイオン注入過程では、出力の約50%がエネルギーフィルタ25において吸収されるが、これは、処理条件およびフィルタ形状に依存して80%まで上昇することができる。
【0011】
エネルギーフィルタの例が
図2に示されており、エネルギーフィルタ25は、フレーム27に搭載された三角形の構造とされた膜から作られる。ある非限定的な例において、エネルギーフィルタ25は、例えば、(最大で200μmまでで、典型的には2μmから20μmの間の厚さの)ケイ素層21とバルクケイ素23(約400μmの厚さ)との間に挟まれる0.2~1μmの厚さなどを有する絶縁層の二酸化ケイ素層22を備えるシリコンオンインシュレータといった、単一品の材料から作ることができる。構造化膜は、例えば、ケイ素から作られるが、炭化ケイ素、他のケイ素もしくは炭素に基づく材料、またはセラミックから作ることもできる。
【0012】
イオンビーム10についての所与のイオン電流のためのイオン注入過程におけるウェーハ処理量を最適化することで、イオンビーム10を効率的に使用するために、エネルギーフィルタ25の膜だけ照射し、膜が所定位置で保持されるフレーム27を照射しないことが好ましい。実際には、フレーム27の少なくとも一部もイオンビーム10によって照射され、そのため加熱することになる可能性がある。実際、フレーム27が完全に照射されることは可能である。エネルギーフィルタ25を形成する膜が加熱されるが、膜が薄いため(つまり、2μmから20μmの間であるが、最大200μmである)、非常に小さい熱伝導率を有する。膜は、大きさが2x2cm2から35x35cm2の間であり、標的のウェーハの大きさに対応する。膜とフレーム27との間にはほとんど熱伝導がない。したがって、モノリシックなフレーム27は膜の冷却に寄与せず、関連する膜のための唯一の冷却機構は、膜からの熱放射である。
【0013】
エネルギーフィルタ25における膜の局所的な加熱が、エネルギーフィルタ25を形成する膜の加熱された部分とフレームとの間の熱応力に加えて生じる。さらに、例えば、ビームの静電気もしくは機械的な走査、または、ビームに対するフィルタの機械的運動によるなど、膜の一部だけにおけるイオンビーム10からのエネルギーの吸収による膜の局所的な加熱も、膜の中に熱応力をもたらし、機械的変形または膜への損傷をもたらす可能性がある。膜の加熱も、非常に短い時間の期間内、つまり、1秒未満で起こり、しばしばミリ秒の程度で起こる。冷却効果は、フィルタの隣接する領域またはより離れた領域が、瞬間的に照射された領域より低い温度を有するため、局所的な瞬間の放射の間または直後に起こる。問題は、熱の均等化を提供するための熱の伝導がほとんどないことである。この非均一な温度の分布が、パルス状イオンビーム10および走査イオンビーム10について特に顕著なことである。これらの温度勾配は、エネルギーフィルタ25の膜が作られる材料の中に、欠陥、および分離相の形成をもたらす可能性があり、材料の予期しない改変さえもたらす可能性がある。
【0014】
以前は、問題は、イオン注入のすべての処理の局面(つまり、照射の前の時間、イオンビームによって膜を加熱する局面(局所的または全体)、実際の照射(局所的または全体)、イオンビームの除去の後の冷却局面(局所的または全体)、および注入処理の終了)において、引っ張り、および亀裂や脆性の増加などによる膜の損傷の関連する危険性が、より頻繁に起こる可能性があることであった。
【0015】
そのため、熱機械的に発生させられる応力、もしくは、混合相および欠陥クラスタの形成に対してより耐性があるように、つまり、亀裂および歪みがより良好に吸収されるように、または、処理の局面の間の同様の問題に対してより耐性があるように、注入デバイスにエネルギーフィルタを提供することが、本発明の目的である。「処理の局面」という前述の用語は、限定されることはないが、照射の前の時間(つまり、これはフィルタの取り扱い、輸送、設置などに主に言及している)、イオンビームによって膜を加熱する局面(局所的または全体)、膜の実際の照射(局所的または全体)、イオンビームの除去の後の冷却局面(局所的または全体)、および注入処理の終了を含む。
【0016】
そのため、エネルギーフィルタの機械的安定性および熱機械的安定性を向上させるために、注入デバイスのエネルギーフィルタを向上させる必要性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】欧州特許第0014516号明細書
【特許文献2】独国特許出願公告第102016106119号明細書
【特許文献3】独国特許出願公開第102019120623号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の第1の態様によれば、少なくとも1つのフィルタ層を伴うエネルギーフィルタと、エネルギーフィルタを支持するための少なくとも1つの支持要素であって、エネルギーフィルタの少なくとも一部に重なる少なくとも1つの支持要素とを備える注入デバイスが提供される。
【0019】
イオン注入デバイスの一態様において、少なくとも1つの支持要素は裏面支持要素である。
【0020】
イオン注入デバイスの一態様において、少なくとも1つの支持要素は表面支持要素である。
【0021】
イオン注入デバイスの他の態様において、少なくとも1つの支持要素は第1の高さを有し、エネルギーフィルタは最大高さを有し、少なくとも1つの支持要素の第1の高さはエネルギーフィルタの最大高さと少なくとも同じである。
【0022】
イオン注入デバイスの一態様において、少なくとも1つの支持要素は第1の幅を有し、エネルギーフィルタは最小幅を有し、少なくとも1つの支持要素の第1の幅はエネルギーフィルタの最小幅と少なくとも同じである。エネルギーフィルタの最小幅は±0.3μm、±0.5μm、または±0.8μmである。少なくとも1つの支持要素の第1の幅は、エネルギーフィルタの最小幅dminより少なくとも10%、20%、または50%大きい。エネルギーフィルタの最小幅dminは、最も厚い位置において、2つの構造的なエネルギーフィルタ要素の間で技術的に必要とされる最小距離に言及している。少なくとも1つの支持要素の第1の幅は、エネルギーフィルタの最小幅dminより少なくとも2倍、5倍、または10倍大きい。
【0023】
イオン注入デバイスの一態様において、少なくとも1つの支持要素は炭化ケイ素で作られる。少なくとも1つの支持要素はまた、エネルギーフィルタと同じ材料から作られてもよい、または、少なくとも1つの支持要素はエネルギーフィルタと異なる材料から作られてもよい。
【0024】
本発明の第2の態様によれば、第1のエネルギーフィルタと、第2のエネルギーフィルタと、少なくとも1つの支持要素とを備える注入デバイスが提供される。第1のエネルギーフィルタは第1の配向を有する。第2のエネルギーフィルタは第2の配向を有する。第1および第2のエネルギーフィルタを支持するための少なくとも1つの支持要素は、第1のエネルギーフィルタの少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタの少なくとも一部に重なり、第1のエネルギーフィルタの第1の配向は第2のエネルギーフィルタの第2の配向と異なる。
【0025】
イオン注入デバイスの一態様において、第1のエネルギーフィルタおよび第2のエネルギーフィルタは、正方形の複合配置、長方形の複合配置、六角形の複合配置、または交差網の複合配置のうちの1つで配置される。
【0026】
イオン注入デバイスの一態様において、少なくとも1つの支持要素はエネルギーフィルタの最大吸収能力以上の吸収能力を有する。完全に透明なエネルギーフィルタの支持要素は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、エネルギーフィルタにおける領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。
【0027】
本発明の第3の態様によれば、イオン注入デバイスを製造するための方法であって、エネルギーフィルタに少なくとも1つのフィルタ層を提供するステップと、少なくとも1つの支持要素を提供するステップと、少なくとも1つの支持要素によってエネルギーフィルタを支持するステップと、少なくとも1つの支持要素によってエネルギーフィルタの少なくとも一部を重ねるステップとを含む方法が提供される。
【0028】
本発明の第4の態様によれば、イオン注入デバイスを製造するための方法であって、第1のエネルギーフィルタを提供するステップと、第1のエネルギーフィルタを第1の配向で配向するステップと、第2のエネルギーフィルタを提供するステップと、第2のエネルギーフィルタを、第1のエネルギーフィルタの第1の配向と異なる第2の配向で配向するステップと、少なくとも1つの支持要素によって第1および第2のエネルギーフィルタを支持するステップと、少なくとも1つの支持要素によってエネルギーフィルタの少なくとも一部を重ねるステップとを含む方法が提供される。
【0029】
さらなる態様において、第3または第4の態様のイオン注入デバイスを製造するための方法が、スクリーン印刷、多層処理、パターン形成処理、およびエッチング処理の順序のうちの1つで使用され得る。
【0030】
本発明の第5の態様によれば、イオン注入デバイスを製造するための方法であって、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを、第1の表面および第2の表面を有する基板材料として提供するステップであって、埋め込み酸化物(BOX)の厚さが30nmから1.5μmの間の厚さで変化する、ステップと、湿式化学水酸化カリウム(KOH)エッチングまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングをマスクするための第1のマスク材料層および第2のマスク材料層を、SOIウェーハの第1の表面および第2の表面に適用するステップと、第1および第2のリソグラフィ処理ステップ、ならびに少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、第1の表面および第2の表面に第1のマスク材料層および第2のマスク材料層のパターン形成をするステップと、マスク材料層のパターン形成の後に第1の表面および第2の表面を洗浄するステップと、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第1の湿式化学エッチングするステップと、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第2の湿式化学エッチングするステップと、エッチングがBOX層において止められるように、第1の表面または第2の表面を湿式化学エッチングをするステップと、BOX層を除去するステップと、第1の表面および第2の表面におけるマスク層を除去するステップとを含む方法が提供される。
【0031】
方法の一態様において、第1の保護層が、エッチングを防止するために第1の表面または第2の表面に適用される。
【0032】
方法の1つのさらなる態様において、第2の保護層が、第1の表面または第2の表面のエッチングを防止するために第1の表面または第2の表面に適用される。
【0033】
本発明の第6の態様によれば、イオン注入デバイスを製造するための方法であって、体積材料スラブを提供するステップであって、体積材料スラブの厚さは、少なくとも1つの支持要素の高さで少なくともある、ステップと、レーザエッチングまたは機械的腐食デバイスにより材料を連続的に除去するステップであって、除去は、1ステップごとに数十nmから最大数マイクロメートルまでの増分であり、所与の構造のためにいくつかの除去ステップを伴い、連続的な除去は、エネルギーフィルタ構造および少なくとも1つの支持要素の所定の3Dレイアウトに従って実施される、ステップとを含む方法が提供される。
【0034】
本発明の第7の態様によれば、イオン注入デバイスを製造するための方法であって、基板または基層を提供するステップと、第1の支持層および第1のフィルタ層を堆積させるステップと、レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチングまたは連続的なエッチングなどの適切なエッチング技術を使用して、第1の支持層および第1のフィルタ層のパターン形成をするステップと、第1の支持層および第1のフィルタ層の多重を連続的に堆積させ、パターン形成をするステップと、基板または基層を所望の基板層厚さまたは基層厚さへと除去、研磨、またはエッチングするステップとを含む方法が提供される。
【0035】
本発明の第8の態様によれば、イオン注入デバイスを製造するための方法であって、エネルギーフィルタ、および少なくとも1つの支持要素の分離構造を提供するステップと、永久的で熱機械的に安定な連結を、エネルギーフィルタと少なくとも1つの支持要素との間で達成するために、ボンディング層または接着層を適用するステップとを含む方法が提供される。
【0036】
ここで、本発明が図に基づいて説明される。図に記載されている本発明の実施形態および態様が単なる例であり、請求の保護の範囲を何らかの形で限定することがないことは、理解されるものである。本発明は、請求項およびそれらの均等によって定められる。本発明のある態様または実施形態の特徴が、本発明の他の実施形態の異なる態様の図と組み合わせることができることは、理解されるものである。本発明は、本開示の一部としてのいくつかの例の以下の詳細な説明を、添付の図面の検討の下で読むとき、より明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】先行技術において知られているようなエネルギーフィルタを伴うイオン注入デバイスの原理の図である。
【
図2】エネルギーフィルタを伴うイオン注入デバイスの構造の図である。
【
図3】エネルギーフィルタと、エネルギーフィルタを支持するための少なくとも1つの支持要素とを伴う、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの断面図である。
【
図4A】少なくとも1つの支持要素が裏面支持要素として設けられている、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの断面図である。
【
図4B】少なくとも1つの支持要素が表面支持要素として設けられている、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの断面図である。
【
図4C】支持要素の第1の高さがエネルギーフィルタの最大高さと少なくとも同じである、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの断面図である。
【
図5A】エネルギーフィルタに対して角度のある配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの少なくとも1つの支持要素の上面図である。
【
図5B】エネルギーフィルタに対して角度のある配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの少なくとも1つの支持要素の上面図である。
【
図5C】エネルギーフィルタに対して角度のある配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの少なくとも1つの支持要素の上面図である。
【
図5D】異なる配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図5E】異なる配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図6A】第1のエネルギーフィルタが第1の配向を有し、第2のエネルギーフィルタが、第1のエネルギーフィルタの第1の配向と異なる第2の配向を有する、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図6B】第1のエネルギーフィルタが第1の配向を有し、第2のエネルギーフィルタが、第1のエネルギーフィルタの第1の配向と異なる第2の配向を有する、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図6C】第1のエネルギーフィルタが第1の配向を有し、第2のエネルギーフィルタが、第1のエネルギーフィルタの第1の配向と異なる第2の配向を有する、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図6D】第1のエネルギーフィルタが第1の配向を有し、第2のエネルギーフィルタが、第1のエネルギーフィルタの第1の配向と異なる第2の配向を有する、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図6E】第1のエネルギーフィルタが第1の配向を有し、第2のエネルギーフィルタが、第1のエネルギーフィルタの第1の配向と異なる第2の配向を有する、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイスの上面図である。
【
図7A】本発明による、注入デバイスを製造するための方法の流れ図である。
【
図7B】本発明による、注入デバイスを製造するための方法の流れ図である。
【
図7C】本発明による、注入デバイスを製造するための方法の流れ図である。
【
図7D】本発明による、注入デバイスを製造するための方法の流れ図である。
【
図7E】本発明による、注入デバイスを製造するための方法の流れ図である。
【
図7F】本発明による、注入デバイスを製造するための方法の流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
ここで、本発明が図面に基づいて説明される。本明細書に記載されている本発明の実施形態および態様が単なる例であり、請求の保護の範囲を何らかの形で限定することがないことは、理解されるものである。本発明は、請求項およびそれらの均等によって定められる。本発明のある態様または実施形態の特徴が、本発明の異なる態様および/または実施形態の特徴と組み合わせることができることは、理解されるものである。本発明の目的は、本開示の目的のための例を用いて、本開示をその例に限定することなく、以下において完全に記載されている。例は、本発明の異なる態様を提起している。本技術の教示を実施するために、組み合わされたこれらの態様のすべてを実施することは必要とされない。むしろ、専門家は、賢明と思われ、対応する用途および実施に必要とされるそれらの態様を選択し組み合わせることになる。
【0039】
図3は、エネルギーフィルタ25と、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部を支持するための少なくとも1つの支持要素30とを伴う、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の断面図を示している。エネルギーフィルタ25は、三角形の断面形態を有する膜から作られるが、この種類の断面形態は本発明の限定ではなく、他の断面形態が使用できる。
【0040】
少なくとも1つの支持要素30は炭化ケイ素で作られるが、支持要素30の材料は本発明の限定ではない。少なくとも1つの支持要素30は、エネルギーフィルタ25と同じ材料、または、エネルギーフィルタ25と異なる材料から作られ得る。ある非限定的な例において、エネルギーフィルタ25は、例えば、(最大で200μmまでで、典型的には2μmから20μmの間の厚さの)ケイ素層とバルクケイ素(約400μm以上の厚さ)との間に挟まれる0.3~1.5μmの厚さを有する絶縁層の二酸化ケイ素層を備えるシリコンオンインシュレータといった、単一品の材料から作ることができる。
【0041】
構造化膜は、例えば、ケイ素から作られるが、炭化ケイ素、もしくは他の炭素に基づく材料、またはセラミックから作ることもできる。エネルギーフィルタ25は、膜の最小厚さを有する層厚さを伴う少なくとも1つのフィルタ層32を有する。
図3において見られるように、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25を支持するように構成され、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なる。少なくとも1つの支持要素30がエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なるとき、エネルギーフィルタ25の機能性は、重なる領域において妨げられる。重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまりエネルギーフィルタ25の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。そのため、重なる支持要素30はエネルギーフィルタ25の少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクし、それによって、注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性が向上させられる。
【0042】
図4Aは、少なくとも1つの支持要素30が裏面支持要素として設けられている、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の断面図を示している。エネルギーフィルタ25は、5つのフィルタ層32を有する三角形の断面の形態を有する膜から、5つのフィルタ層32の各々が膜の最小の厚さを伴う層厚さを有する状態で作られている。フィルタ層の量と、結果的にできる構造の形とは、本発明の限定ではない。
図4Aにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30は複数の支持層31を備える。
図4Aにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30は6つの支持層31を備えるが、層の量は本発明の限定ではない。実際、少なくとも1つの支持要素30は、最大で20枚から30枚の支持層31を備える可能性がある。
図4Aにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25を支持するように構成され、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なる。
図4Bは、少なくとも1つの支持要素30が後支持要素においてではなく表面支持要素として設けられている、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の断面図を示している。
【0043】
支持要素30を含むエネルギーフィルタ25は異なる直径を有する。4インチ(10.2cm)の直径のウェーハについて、フィルタは少なくとも5インチ(12.7cm)の幅で最大5インチ(12.7cm)の高さであり、6インチ(15.2cm)の直径のウェーハについて、フィルタは少なくとも7インチ(17.8cm)の幅で最大7インチ(17.8cm)の高さであり、8インチ(20.3cm)の直径のウェーハについて、最小で9インチ(22.9cm)の幅で最大9インチ(22.9cm)の高さのフィルタであり、12インチ(30.5cm)のウェーハについて、最小で13インチ(33cm)の幅で最大13インチ(33cm)の高さのフィルタである。エネルギーフィルタは、3つの形、すなわち、例えば7インチ(17.8cm)の幅で最大6cmの高さといった長方形、最小で13インチx13インチ(33cmx33cm)といった正方形、7インチ(33cm)の直径といった円形を有し得る。少なくとも1つの支持要素30は、値が技術に依存する厚さを有する。表面支持要素の設計について、支持要素30の厚さはエネルギーフィルタ25と同じである、または、支持要素30の厚さはエネルギーフィルタ25より大きい。裏面支持要素の設計において、支持要素は、100μm未満から数mmまでで好ましくは形成される。
【0044】
図4Cは、支持要素30は第1の高さh
suppを有し、エネルギーフィルタ25は最大高さh
maxを有し、支持要素30の第1の高さh
suppはエネルギーフィルタ25の最大高さh
maxと少なくとも同じである、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の断面図を示している。
図4Cにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25を支持するように構成され、少なくとも1つの支持要素30は、エネルギーフィルタ25の最大高さh
maxと少なくとも同じ高さである支持要素30の第1の高さh
suppを提供することで、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なる。第1の高さh
suppを伴う少なくとも1つの支持要素30がエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なるとき、エネルギーフィルタ25の機能性は、重なる領域において妨げられる。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまりエネルギーフィルタ25の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、第1の高さh
suppを伴う重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、第1の高さh
suppを伴う重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。そのため、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、第1の高さh
suppを伴う重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクする。完全に透明なエネルギーフィルタ25の支持要素30は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素30は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、エネルギーフィルタ25における領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。それによって、注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性が向上させられる。
【0045】
図4Cの断面図においても見られるように、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の支持要素30は、第1の幅d
suppを有し、エネルギーフィルタ25は最小幅d
minを有し、支持要素30の第1の幅d
suppはエネルギーフィルタ25の最小幅d
minと少なくとも同じであり、エネルギーフィルタ25のd
minは、台地状に提供され、エネルギーフィルタ25の技術的に最小の幅である。本発明の一態様において、エネルギーフィルタ25の最小幅d
min(技術的に最小の幅)は±0.3μm、±0.5μm、または±0.8μmであるが、最小幅d
minは本発明の限定ではない。本発明の他の態様において、支持要素30の第1の幅d
suppは、エネルギーフィルタ25の最小幅d
minより少なくとも10%、20%、または50%大きい。具体的には、本発明のなおも他の態様において、支持要素30の第1の幅d
suppは、エネルギーフィルタ25の最小幅d
minより少なくとも2倍、5倍、または10倍大きい。
図4Cにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25を支持するように構成され、少なくとも1つの支持要素30は、支持要素30の第1の幅d
suppに、エネルギーフィルタ25の最小幅d
minと少なくとも同じ幅を提供することで、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なる。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまりエネルギーフィルタ25の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、第1の幅d
suppを伴う少なくとも1つの支持要素30がエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なるとき、エネルギーフィルタ25の機能性は重なる領域において妨げられる。そのため、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、第1の幅d
suppを伴う重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、第1の幅d
suppを伴う重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。そのため、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、第1の幅d
suppを伴う重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクする。完全に透明なエネルギーフィルタ25の支持要素30は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素30は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、エネルギーフィルタ25における領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。それによって、注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性が向上させられる。
【0046】
図4Cにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30は、少なくとも1つの支持要素30の第1の幅d
suppが製造台地状領域d
minより大きくなるように定められる。製造台地状領域d
minは、適用されたエッチングおよびリソグラフィの処理によって決定される。製造台地状領域d
minの典型的な値は、例えば0.3μm、0.5μm、または0.8μmである。エネルギーフィルタ25の透明性を最適化するために、製造台地状領域d
minの値はできるだけ小さくなるように選択される。少なくとも1つの支持要素30はこれらの最小値を越えることで定められ、少なくとも1つの支持要素30がより幅広になるにつれて、エネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性はより高くなる。
【0047】
図5A~
図5Cは、エネルギーフィルタ25に対して支持要素30の角度のある配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の少なくとも1つの支持要素30の上面図を示している。エネルギーフィルタ25に対して支持要素30の角度のある配向を提供することで、イオン注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性がさらに向上させられる。
【0048】
図5Dおよび
図5Eは、異なる配向とされた、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20の上面図を示している。
図5Dにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25を支持するように構成され、少なくとも1つの支持要素30はエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なる。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまりエネルギーフィルタ25の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、少なくとも1つの支持要素30がエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なるとき、エネルギーフィルタ25の機能性は重なる領域において妨げられる。エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。そのため、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、エネルギーフィルタの少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクする。完全に透明なエネルギーフィルタ25の支持要素30は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素30は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、エネルギーフィルタ25における領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。それによって、注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性が向上させられる。
図5Eにおいて見られるように、イオン注入デバイス20は、
図5Dにおいて示されているイオン注入デバイス20と比較して、イオンビーム発生源5(図示されていない)に対して異なる配向を有する。イオンビーム発生源5に対して異なる配向を提供することで、イオン注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性がさらに向上させられる。
【0049】
図6A~
図6Eは、第1のエネルギーフィルタ125が第1の配向を有し、第2のエネルギーフィルタ225が第2の配向を有する、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイス120の上面図である。第2の配向は、第1のエネルギーフィルタ125の第1の配向と異なる。本発明の第2の態様によるイオン注入デバイス120は、第1の配向を有する第1のエネルギーフィルタ125と、第2の配向を有する第2のエネルギーフィルタ225とを備える。イオン注入デバイス120は、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225を支持するための少なくとも1つの支持要素30をさらに備え、少なくとも1つの支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部に重なる。第1のエネルギーフィルタ125の第1の配向は第2のエネルギーフィルタ225の第2の配向と異なる。
【0050】
図6Aにおいて見られるように、イオン注入デバイス120の上面に対する水平方向および鉛直方向の両方における当接する第1のエネルギーフィルタ125と第2のエネルギーフィルタ225との間の弱点が、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225を支持するための少なくとも1つの支持要素30を提供することで解決され、少なくとも1つの支持要素30は第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部と第2のエネルギーフィルタの少なくとも一部とに重なり、第1のエネルギーフィルタ125の第1の配向は第2のエネルギーフィルタ225の第2の配向と異なる。
図6Cおよび
図6Dにおいて見られるように、当接する第1のエネルギーフィルタ125と第2のエネルギーフィルタ225との間の弱点は、機械的と熱機械的との両方で高い安定性を有するイオン注入デバイス120のチェス盤状の配置によって解決され得る。
図6Eにおいて見られるように、当接する第1のエネルギーフィルタ125と第2のエネルギーフィルタ225との間の弱点は、機械的と熱機械的との両方で高い安定性を有するイオン注入デバイス120の蜂の巣状の配置によって解決され得る。
【0051】
本発明の第2の態様によるイオン注入デバイス120の第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225は、三角形の断面形態を有する膜から作られるが、この種類の断面形態は本発明の限定ではなく、他の断面形態が使用できる。本発明の第2の態様によるイオン注入デバイス120の少なくとも1つの支持要素30は炭化ケイ素から作られるが、支持要素30の材料は本発明の限定ではない。少なくとも1つの支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225と同じ材料、または異なる材料から作られ得る。ある非限定的な例において、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225は、例えば、(最大で200μmまでで、典型的には2μmから20μmの間の厚さの)ケイ素層とバルクケイ素(約400μmの厚さ)との間に挟まれる0.2~1μmの厚さなどを有する絶縁層の二酸化ケイ素層を備えるシリコンオンインシュレータといった、単一品の材料から作ることができる。構造化膜は、例えば、ケイ素から作られるが、炭化ケイ素、もしくは他の炭素に基づく材料、またはセラミックから作ることもできる。第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225は、膜の最小厚さを有する層厚さを伴う少なくとも1つのフィルタ層32を有する。
【0052】
図6A~
図6Eにおいて見られるように、少なくとも1つの支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225を支持するように構成され、少なくとも1つの支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部に重なる。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまり第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、少なくとも1つの支持要素30は第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部に重なるとき、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の機能性が、重なる領域において妨げられる。第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。そのため、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクする。完全に透明な第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の支持要素30は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素30は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225における領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。それによって、注入デバイス120の第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の全体の機械的安定性および熱機械的安定性はさらに向上させることができる。
【0053】
図6A~
図6Eにおいて見られるように、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225は、正方形の複合配置、長方形の複合配置、六角形の複合配置、または交差網の複合配置のうちの1つで配置される。それによって、注入デバイス120の第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の機械的安定性および熱機械的安定性は向上させられる。
【0054】
図7A~
図7Eは、本発明による、注入デバイス20、120を製造するための方法の流れ図を示している。
【0055】
本発明の第3の態様によれば、本発明の第1の態様によるイオン注入デバイス20を製造するための方法300が提供される。方法300は、エネルギーフィルタ25に少なくとも1つのフィルタ層32を提供するステップ301と、少なくとも1つの支持要素30を提供するステップ302と、少なくとも1つの支持要素30によってエネルギーフィルタ25を支持するステップ303と、少なくとも1つの支持要素30によってエネルギーフィルタ25の少なくとも一部を重ねるステップ304とを含む。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまりエネルギーフィルタ25の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、少なくとも1つの支持要素30がエネルギーフィルタ25の少なくとも一部に重なるとき、エネルギーフィルタ25の機能性は重なる領域において妨げられる。エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。そのため、エネルギーフィルタ25の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、エネルギーフィルタ25の少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクする。完全に透明なエネルギーフィルタ25の支持要素30は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素30は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、エネルギーフィルタ25における領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。それによって、注入デバイス20のエネルギーフィルタ25の機械的安定性および熱機械的安定性が向上させられる。
【0056】
本発明の第4の態様によれば、本発明の第2の態様によるイオン注入デバイス120を製造するための方法400が提供される。方法は、第1のエネルギーフィルタ125を提供するステップ401と、第1のエネルギーフィルタ125を第1の配向で配向するステップ402と、第2のエネルギーフィルタ225を提供するステップ403と、第2のエネルギーフィルタ225を、第1のエネルギーフィルタ125の第1の配向と異なる第2の配向で配向するステップ404と、少なくとも1つの支持要素30によって第1および第2のエネルギーフィルタ125、225を支持するステップ405と、少なくとも1つの支持要素30によって第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部と第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部とを重ねるステップ406とを含む。支持要素30は、構造要素の最大吸収能力、つまり第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の最大吸収能力以上の吸収能力を有する。第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、少なくとも1つの支持要素30は第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部に重なるとき、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の機能性が、重なる領域において妨げられる。第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部の非活動領域を作り出す。別の言い方をすれば、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、支持要素30におけるイオンビーム10のエネルギーの少なくとも一部の吸収をもたらす。そのため、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の部分的な透明性の場合には、重なる支持要素30は、第1のエネルギーフィルタ125の少なくとも一部および第2のエネルギーフィルタ225の少なくとも一部の機能性を妨害またはマスクしている。完全に透明な第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の支持要素30は、好ましい滑らかな(連続した)プロファイルに、離散したピークを加えることになる。いずれの場合でも、一次エネルギーが十分に高い場合、支持要素30は基板における結果生じる深さプロファイルにも寄与する。この寄与は離散したエネルギーから成り、これは、第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225における領域分割に応じたプロファイルの総量に寄与する。注入デバイス120の第1のエネルギーフィルタ125および第2のエネルギーフィルタ225の全体の機械的安定性および熱機械的安定性はさらに向上させることができる。
【0057】
さらなる態様において、本発明の第3または第4の態様のイオン注入デバイス20、120を製造するための方法300、400が、スクリーン印刷、多層処理、リソグラフィパターン形成処理、およびエッチング処理の順序のうちの1つで使用され得る。
【0058】
本発明の第5の態様によれば、本発明の第1および第2の態様によるイオン注入デバイス20、120を製造するための方法500が、シリコンオンインシュレータ(SOI)ウェーハを、第1の表面および第2の表面を有する基板材料として提供するステップ501であって、埋め込み酸化(BOX)の厚さが30nmから1.5μmの間の厚さで変化する、ステップ501と、湿式化学水酸化カリウム(KOH)エッチングまたは水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングをマスクするための第1のマスク材料層および第2のマスク材料層を、SOIウェーハの第1の表面および第2の表面に適用するステップ502と、第1および第2のリソグラフィ処理ステップ、ならびに少なくとも1つの湿式または乾式のエッチングパターン形成ステップを使用することで、第1の表面および第2の表面に第1のマスク材料層および第2のマスク材料層のパターン形成をするステップ503と、マスク材料層のパターン形成の後に第1の表面および第2の表面を洗浄するステップ504と、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第1の湿式化学エッチングするステップ505と、KOHまたはTMAHのエッチング液を使用して第1の表面または第2の表面を第2の湿式化学エッチングするステップ506と、エッチングがBOX層において止められるように、第1の表面または第2の表面を湿式化学エッチングするステップ507と、BOX層を除去するステップ508と、第1の表面および第2の表面におけるマスク層を除去するステップ509とを含む。
【0059】
方法500の一態様において、第1の保護層が、エッチングを防止するために第1の表面または第2の表面に適用される。方法500の1つのさらなる態様において、第2の保護層が、第1の表面または第2の表面のエッチングを防止するために第1の表面または第2の表面に適用される。
【0060】
方法500の一態様において、典型的なSOI層の厚さは、6μm、10μm、17μm、25μm、50μm、または100μmである。
【0061】
方法500の一態様において、ハードマスク形成の後、保護層が表側に適用され、裏側エッチングが最初に実施される。次に、保護層が除去される。保護層が裏側に堆積させられる。表側のKOHまたはTMAHのエッチングが実施される。すべてのマスク、保護層、およびBOX層が除去される。
【0062】
方法500の一態様において、例えば、ケイ素における最大プロファイル長は16μmとして選択され、SOI層は、16μm+基層つまり300nmから最大1000nmまでとして選択される。標的注入材料がケイ素以外の材料である場合、イオンエネルギーの関数としての阻止能における不一致が考慮される必要があり、必要なSOI層の厚さがそれに応じて変更される必要がある。
【0063】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第1および第2の態様によるイオン注入デバイス20、120を製造するための方法600が、体積材料スラブを提供するステップ601であって、体積材料スラブの厚さは、支持要素30の高さで少なくともある、ステップ601と、レーザエッチングまたは機械的腐食デバイスにより材料を連続的に除去するステップ602であって、除去602は、1ステップごとに数十nmから最大数マイクロメートルまでの増分であり、所与の構造のためにいくつかの除去ステップを伴い、連続的な除去は、エネルギーフィルタ25、125の構造および支持要素30の所定の3Dレイアウトに従って実施される、ステップ602とを含む。
【0064】
方法600の一態様において、適切な大きさ(2x2cmから最大40x40cmまでの円形、正方形、または長方形)の体積材料スラブが提供され、材料スラブの厚さは、少なくとも、hsuppに少なくとも1つの支持要素30の厚さを加えたものである。材料スラブは、ケイ素、炭化ケイ素、ガラス、ガラス状材料、または炭素から作られる。
【0065】
方法600の一態様において、任意選択で、所望の最終厚さへの基層の研磨/エッチングが、要求および/または必要とされる場合に提供され得る。
【0066】
本発明の第7の態様によれば、本発明の第1および第2の態様によるイオン注入デバイス20、120を製造するための方法700が、基板または基層を提供するステップ701と、第1の支持層31および第1のフィルタ層32を堆積させるステップと、レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチングまたは連続的なエッチングなどの適切なエッチング技術を使用して、第1の支持層31および第1のフィルタ層32のパターン形成をするステップ702と、第1の支持層31および第1のフィルタ層32の多重を連続的に堆積させ、パターン形成をするステップと、基板または基層を所望の基板層厚さまたは基層厚さへと除去、研磨、またはエッチングするステップとを含む。
【0067】
方法700の一態様において、適切な大きさ(2x2cmから最大40x40cmまでの円形、正方形、または長方形)の基板または基層が提供される。
【0068】
方法700の一態様において、層は、レーザまたはイオンビームのエッチングデバイスにより、マスクされたエッチング(フォトリソグラフィおよび湿式もしくは乾式エッチング)または連続的なエッチングなどの適切なエッチング技術を使用して、堆積の後にパターン形成される。代替で、層は、例えば、スクリーン印刷、またはモールディングもしくはインプリントのパターン形成処理によって、堆積の間にパターン形成される。堆積された層の厚さは数百nmから数マイクロメートルの間である。製造は、各々の堆積ステップの後、または、複数の堆積ステップの後、焼結ステップを伴ってもよい。層材料は、ケイ素、炭化ケイ素、ガラス、ガラス状材料、または炭素である。層材料は、高密度な材料、または、空所(10%、30%、または50%の空所)を含む材料である。符号32の層材料は、層31のための材料と異なってもよい。堆積した層の厚さは、層32と層31との間で異なってもよい。基板は除去される、または、基板は所望の基層厚さへと研磨/エッチングされる。
【0069】
本発明の第8の態様によれば、本発明の第1およびb第2の態様によるイオン注入デバイス20、120を製造するための方法800が、エネルギーフィルタ25、125、および支持要素30の分離構造を提供するステップ801と、永久的で熱機械的に安定な連結を、エネルギーフィルタ25、125と支持要素30との間で達成するために、ボンディング層または接着層を適用するステップ802とを含む。
【0070】
エネルギーフィルタ25、125には、裏または表において支持要素30が周期的に設けられることが可能である。これらの支持要素30は、例えば、基板ウェーハ材料から形成され、長方形または正方形の格子として設計されるという事実によって、特徴付けられる。表における三角形のエネルギーフィルタ要素25、125の配置は、すべてのトレンチ要素が互いと平行に配置されるように構成される。本発明において、トレンチに成形されたエネルギーフィルタ要素25、125の個々の要素は、「水平」および「鉛直」の両方とされる、または、互いと任意の角度とされる。この方法では、エネルギーフィルタ要素25、125の表面は、互いと任意の所望の方法で配置され得る個々の要素へと分解する。
【符号の説明】
【0071】
1 エネルギーフィルタ組立体
5 イオンビーム発生源
10 イオンビーム
20 イオン注入デバイス
21 ケイ素層
22 二酸化ケイ素層
23 バルクケイ素
25 エネルギーフィルタ
27 フィルタフレーム
26 基板材料
30 支持要素
31 支持層
32 フィルタ層
120 イオン注入デバイス
125 第1のエネルギーフィルタ
225 第2のエネルギーフィルタ
【国際調査報告】