(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】レーストラック上の車両の位置を監視するためのシステム
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20231228BHJP
G06T 7/70 20170101ALI20231228BHJP
【FI】
H04N7/18 K
G06T7/70 A
H04N7/18 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563339
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-22
(86)【国際出願番号】 GB2021053419
(87)【国際公開番号】W WO2022136876
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523241461
【氏名又は名称】フォグルドン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ワード,ジョシュア
(72)【発明者】
【氏名】クンドリック,マトゥス
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス,フィリップ
【テーマコード(参考)】
5C054
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054FC12
5C054FD01
5C054HA05
5L096BA04
5L096CA18
5L096DA03
(57)【要約】
レーストラック上の車両の位置を検出するためにレーストラックの少なくとも1つの領域を監視するためのレーストラック監視システムであって、システムは、使用時にレーストラックに対して所定の位置に固定され、センサアセンブリの視野内のオブジェクトの3次元空間内の位置を表すデータを捕捉するセンサアセンブリと、処理手段とを備え、処理手段が、捕捉されたデータを処理して、車両に対応するオブジェクトを識別し、モデル次元空間において車両のモデルを生成するように構成されており、処理手段が、センサアセンブリの視野内にあるレーストラックの所定の点または領域に対する車両モデルの位置を決定するように構成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーストラック上の車両の位置を検出するために前記レーストラックの少なくとも1つの領域を監視するためのレーストラック監視システムであって、前記システムが、
使用時に前記レーストラックに対して所定の位置に固定され、センサアセンブリの視野内のオブジェクトの3次元空間内の前記位置を表すデータを捕捉するセンサアセンブリと、
処理手段とを備え、
前記処理手段が、前記捕捉されたデータを処理して、車両に対応するオブジェクトを識別し、モデル次元空間において前記車両のモデルを生成するように構成されており、
前記処理手段が、前記センサアセンブリの前記視野内にあるレーストラックの所定の点または領域に対する前記車両モデルの前記位置を決定するように構成されている、
レーストラック監視システム。
【請求項2】
前記所定の点またはエリアが、トラック境界であり、前記処理手段が、前記車両モデルの前記位置から、前記車両または前記車両の一部が境界を越えているかどうかを決定するように適合されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記処理手段が、前記車両または前記車両の一部が前記境界を越えたことを前記モデルが示すとき、アラートを生成するように適合されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記センサアセンブリが、前記車両およびトラックの前記領域を表すデータを捕捉し、前記処理手段が、前記捕捉されたデータから前記トラックのモデルを生成する、請求項1、2、または3に記載のシステム。
【請求項5】
前記センサアセンブリから捕捉された前記データが、前記処理手段によって、前記車両をモデル化し、定義された空間内の前記モデルの相対位置を決定し、このモデルを、前記定義された空間内の前記トラックの前記位置に関する別個の情報と組み合わせて、前記車両の前記位置を決定するために使用される、請求項1、2、または3に記載のシステム。
【請求項6】
前記車両がトラックリミット外にあると決定された場合、前記車両のデジタル画像を捕捉するデジタルカメラを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記センサアセンブリが、データの点群を捕捉するLiDARセンサを備え、各点が、前記センサの視野内の空間内の異なる位置に対応する、請求項1~6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記処理手段が、前記センサアセンブリに局所的に配置され、車両の前記位置を示す信号をセントラルステーションに送信するように構成された送信機をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記センサアセンブリが、レーストラックに沿った位置でポールなどの支持体上に取り付けられる、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
レーストラック上の車両の位置を検出するために前記レーストラックの少なくとも1つの領域を監視する方法であって、
センサアセンブリを使用して、トラックに対する車両の前記位置を表すデータを捕捉することと、
前記取得されたデータから前記車両のモデルを生成することと、
前記モデルを使用して、前記トラックの所定の点またはエリアに対する前記車両の前記位置を決定することと
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レースサーキット上の車両の位置を監視する際に使用するためのシステム、特にトラックリミットの違反の監視に適したシステムの改良に関する。
【背景技術】
【0002】
モーターレースは人気のある娯楽であり、楽しむことができ、極めて競争力のあるものである。モーターレースはまた、危険なスポーツである可能性もあり、ドライバー、およびあらゆる観客またはトラックサイドで働く人たちの安全を確保するために、ほとんどのレーストラックおよびレースイベントでは、サーキットの使用中に実施される厳格なルールセットがある。そのようなルールの1つは、トラックリミットルールであり、トラックマージンリミットと呼ばれることもある。英国では、モータースポーツ協会(MSA)は、トラックのリミットと、ドライバーがリミットに違反した場合に課せられ得る制裁を定義する特定のルールを有する。例えば、ルールでは、車のいずれかの車輪が任意の縁石の外縁を越えるか、または縁石がない白線を越えた場合、ドライバーはトラックを離れたと判断されると述べている。MSAトラックサーキットレーシングガイダンスでは、添付図面の
図1に示されるように、トラックリミット内にあるとみなされるものとそうでないものとを示すために、いくつかの例示的な画像を示している。
図1(a)の車両は、リミットに違反していないとみなされ、
図1(b)の車両は、トラックリミットに違反しているとみなされる。これは、少なくとも1つの車輪がトラック上に留まり、白線を越えていない限り、ドライバーは問題ないとするFIAのような他のレース統括団体によって適用されるものよりも厳しい制限である。。
【0003】
現在、トラックリミットの実施は、主に、各車がコーナーを走行する際に観察することを任務とするマーシャルをトラックの各コーナーに配置することによって達成されている。マーシャルは、リミットに違反した車を観察した場合、これをトラックコントローラまたはレース主催者に報告する。次いで、何らかのペナルティが適切であるかどうかを決定することができる。
【0004】
より十分な資金のあるトラック、および確実に多くの十分な資金のあるモータースポーツシリーズでは、代わりに、電子デバイスが1つ以上のコーナーに設置され得る。これらの電子デバイスは、トラックの側面に埋め込まれてもよく、車両がパッドの上を走ったり横切ったりした場合、電子アラートを発する感圧パッドを含む。これは、車輪のうちのいずれか1つがセンサに当たって違反を示し得るMSAルール下で特にうまく機能するが、より寛大な以前のルール下ではあまりうまく機能しない。これらのセンサは、設置するのに費用がかかり、損傷しやすく、白線を再塗装することによって境界の位置を定期的に移動させることができる柔軟なトラックレイアウトには適していない。MSAルールを実施するためのセンサの位置は、例えば、FIAルールを実施するためには機能しない。
【0005】
圧力パッドの代替として、いくつかのサーキットは、トラックリミットの外側の地面に埋設され、車両に取り付けられたタイミングトランスポンダの存在を検出するタイミングループを設置している。これらは、カートトラックなどの小規模なレース会場で、スタート/フィニッシュラインにおいてトラックに垂直に配置されたとき、計時に広く使用される。好適な手頃なシステムは、Mylaps Zuiderhoutlaan 4, 2012 PJ Haarlem, オランダのMYLAPS TranX140 Systemである。トランスポンダは、車両に固有のIDを含むデジタル信号を常に送信する。車両がトラックに埋め込まれたワイヤのタイミングループを横切ると、タイミングループによって信号が検出される。トラックリミットに対するこの技術の使用は、一般に、フォーミュラ1(登録商標)のようなより良好に資金のあるレースシリーズでの使用にのみ適しており、これは、リミットが実施されるべき各エリアでトラックを掘り起こし、再舗装し、ループから制御タワーから作業することができるトラックまたはレースディレクタに信号を送り返すためのケーブル網を提供する必要があるためである。
【0006】
他の状況では、カメラをコーナーに設置して、通過する車両のビデオを撮影し、コントロールタワーなどの便利な場所でトラックの任意のコーナーを監視することができるオブザーバーにフィードバックすることができる。ビデオの記録は、トラックリミットの違反が発生した後、違反の証拠を提供するために使用され得る。よくある問題は、カメラからの車両の視界が、例えば、トラック上の後続車両または先行車両によって遮られると、鮮明さが不十分である場合があることである。多数のカメラが必要とされ、それでもやはり、違反を検出するために人間による車の分析を必要とする。したがって、トラックの周りにマーシャルを物理的に配置するよりも信頼性は高くない。
【0007】
トラックリミットの違反を正確に検出することは非常に重要である。ほとんどのトラックデイイベントでは、違反に対してペナルティが課せられ、それは、ほとんどの競技レースイベントに当てはまる。トラックデイに、誤ってフラグを立てられた違反により、ドライバーのトラックタイムがいくらか失われる可能性があり、有料の顧客にとってはかなりのいらだちとなる。リミットを間違って施行することで評価が悪いトラックは、ビジネスを失う可能性がある。より悪い場合には、レースが終了した後に誤ってフラグを立てられたトラックリミットの違反に起因してタイムペナルティが課せられると、誰がレースで勝つか、またはレースシーズンで誰が勝ち得るかの決定要因となり得る。FIAフォーミュラ1シリーズのレースのように、公共の関心が高いイベントの場合、誤った決定から失われるおそれのある金額は、膨大になり得る。これらの意思決定に人間が関与するときはいつでも、エラーのリスクが残る。
【0008】
トラックリミットの違反を検出することに加えて、車両がトラック内の目標点にどれだけ近づいているかを決定する能力は、ドライバーのトレーニング、またはレースの視聴者に娯楽統計を提供するのに有用であり得る。エイペックスで完璧なポジションに近づき、ラップごとにそれを繰り返すことができるのは、真のワールドクラスのドライバーの証である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の目的は、レーストラック上の車両の位置を検出するためにレーストラックの少なくとも1つの領域を監視するためのレーストラック監視システムを提供することであり、システムは、
使用時にレーストラックに対して所定の位置に固定され、センサアセンブリの視野内のオブジェクトの3次元空間内の位置を表すデータを捕捉するセンサアセンブリと、
処理手段とを備え、
処理手段が、捕捉されたデータを処理して、車両に対応するオブジェクトを識別し、モデル次元空間において車両のモデルを生成するように構成されており、
処理手段が、センサアセンブリの視野内にあるレーストラックの所定の点または領域に対する車両モデルの位置を決定するように構成されている。
【0010】
最も好ましい構成では、所定の点またはエリアが、トラック境界であり、処理手段が、車両モデルの位置から、車両または車両の一部がトラック外の境界線側にあるかどうかを決定するように適合されている。
【0011】
処理手段が、車両または車両の一部が境界を越えたことをモデルが示すとき、アラートを生成するように適合されている。これは、車両が境界を越えたことを示す値と、任意選択で時間とを有する信号を含み得る。
【0012】
システムは、セントラルステーションにデータを送信する送信機を含み得、セントラルステーションは、信号を受信するように構成された受信機を含み得る。このデータは、アラート信号を含み得る。
【0013】
送信機および受信機は、セルラー電話ネットワークなどのワイヤレスネットワークにわたって動作することができ、または、データが物理的ケーブルまたはファイバを介して送信されるように、ハードワイヤで接続され得る。信号は、光信号または電気信号としてケーブルに沿って送信され得る。
【0014】
センサアセンブリは、車両およびトラックの領域を表すデータを捕捉し、処理手段は、捕捉されたデータからトラックのモデルを生成し得る。
【0015】
あるいは、車両をモデル化し、定義された空間内のモデルの相対位置を決定し、これを、定義された空間内のトラックの位置に関する別個の情報と組み合わせて、車両の位置を決定するために、センサアセンブリから捕捉された情報が使用され得る。
【0016】
システムは、車両がトラックリミット外にあると決定された場合、車両のデジタル画像を捕捉するデジタルカメラを含むことができ、違反が発生した時間の前後の車両の短いビデオクリップを捕捉することができる。画像またはビデオは、電子メモリのエリアに記憶され得る。システムは、捕捉されたデジタル画像を中央位置に送信する送信機を含み得る。この送信機は、処理手段の機能である場合、アラート信号を送信する送信機と同じであってもよい。送信機は、ワイヤレスまたはワイヤード(光ファイバを含む)ネットワークを介して送信することができる。画像およびアラートは、一緒に送信されてもよく、または、例えばタイムスタンプを使用して、それらが関連付けられていることを示すようにタグ付けされてもよい。
【0017】
処理手段は、車両の2次元モデルと、トラックリミットに対する位置とを生成することができる。これは、上方からの車両の鳥瞰図であってもよい。あるいは、処理手段は、例えば、トラック上のユーザ定義点に対応する視点から、車両の3次元モデルを開発してもよい。
【0018】
処理手段は、デジタル信号プロセッサと、電子メモリのエリアと、センサアレイのデータを受信するための少なくとも1つのデータ入力と、リミットの違反が発生した場合にトリガ信号を出力するための少なくとも1つのデータ出力とを備え得る。
【0019】
最も好ましくは、センサアセンブリが、データの点群を捕捉するLiDARセンサを備え、各点が、センサの視野内の空間内の異なる位置に対応する。位置ごとに、その点におけるオブジェクトまでの距離を示す値が生成され得る。これらの値をカラースケールで表現することによって、画像内の色によって近距離オブジェクトおよび遠距離オブジェクトが識別される2次元画像を生成することができる。
【0020】
Lidarセンサは、レーザ光によって放射される光線を使用してオブジェクトが照明される、オブジェクトまでの距離を測定するための周知の技術を使用する。この光は、オブジェクトから反射されてセンサに戻る。反射光の戻り時間を測定することによって、距離を決定することができる。2次元グリッドを横切る点で多くの測定を行うことによって、距離を画像内の色値として符号化することができる2次元画像を生成することができ、画像にXY情報とZ情報の両方を与える。モデルは、適切な画像処理技術によって点群から生成され得る。
【0021】
LiDARセンサは、点の複数の水平行を含むデータセットを生成することができ、各行は、レーストラックの表面より上の既知の高さ、またはトラックからの反射を捕捉するための負の方位角からトラック上の車両からの反射を捕捉する正の方位角までの既知の方位角に対応する。
【0022】
点群、および3Dモデルは、トラック上の(またはトラック外の)車両の相対位置を正確に決定するために、モデル空間において数cm以上、好ましくは1cm以上の解像度を有し得る。
【0023】
LIDARセンサからのデータの点群はまた、例えば、盛り上がった縁石、鮮明な色のコントラストなど、境界が隣接するトラックから物理的に区切られている場合、トラック境界の位置も示す。
【0024】
好適なLIDARセンサアセンブリは、狭い光線を生成するレーザ光源と、ビームが放射される方向を変えることができるスキャナと、光線の反射部分を検出する光検出器と、光検出器からの出力を処理して、捕捉された画像データのセットを生成する処理デバイスとを備え得る。
【0025】
本発明のシステムで使用することもできる代替案では、LIDARセンサアセンブリは、視野全体をカバーする多様なビームが放射され、各々が捕捉されたデータの1つの点を生成する光検出器のグリッドが設けられるフラッシュ型ライダを備えることができる。
【0026】
センサおよび処理手段は、近接して物理的に接続されるようにトラックの側面に配置されてもよい。
【0027】
センサの位置に処理手段を設けることは、モデリングを局所的に行うことを可能にし、リモートステーションに送信されるデータの量を低減する。
【0028】
代替的に、処理手段を中央位置に配置し、トラック側にセンサのみを配置することもできる。
【0029】
センサおよび処理手段が離れている場合、センサから中央処理ユニットに捕捉されたデータを送信する送信機が設けられ、処理ユニットには、受信機を設けられ得る。
【0030】
送信機および受信機は、ワイヤレスで動作してもよく、またはともにハードワイヤードで接続されてもよい。
【0031】
処理手段がセンサアセンブリに局所的に配置されている場合、違反を示す信号を遠隔ステーションに送信するために、または別の方法でトラック上の車両の位置を示すために、送信機を設けることができる。その場合、センサアセンブリから出力される生の捕捉データは、送信される必要がない。
【0032】
センサは、使用位置にあるとき、監視されているトラックの領域と、トラック上、またはトラックの片側もしくは両方の側に向かって離れた場所にある任意の車両とを含むシーンの画像を捕捉する視野を有することができる。
【0033】
例えば、センサは、完全なコーナーの内側に対応するトラックの領域、またはコーナーのエイペックスを含む領域を捕捉し得る。センサは、同じシーン内でコーナーの内側エッジ、または外側エッジ、またはその両方を捕捉することができる。センサは、コーナーへの出口、または入口、またはその両方を捕捉することができる。
【0034】
センサおよび任意選択で処理手段は、トラックの側面に配置されたポールなどの支持体上に取り付けられてもよい。センサアセンブリは、使用中、所定の位置に固定されてもよい。これは、恒久的な設置であっても一時的な設置であってもよく、後者は、トラックリミットが変更されるとき、またはトラックの他のエリアを監視するために、センサアセンブリの視野を簡単に変更することができる。支持体は、センサアセンブリをトラックの片側に保持してもよく、またはセンサアセンブリをトラックの上に保持してもよい。センサアセンブリが、監視されているトラックの領域を明確に見渡せる限り、場所の選択は制限されない。
【0035】
システムは、センサアセンブリに電力を供給するための、バッテリなどの電源と、任意選択で、センサアセンブリと同じ場所に位置する処理手段とを含むことができる。バッテリを含むことで、システムは、可搬性が非常に向上し、主電源が利用可能できないトラック周辺の位置でも使用でき、センサアセンブリまで長い電力ケーブルを引き回す必要がなくなる。
【0036】
システムは、ユーザがトラックリミットを入力することを可能にするユーザインターフェースを含むことができる。これは、タッチスクリーンディスプレイなどのグラフィカルユーザインターフェースであってもよい。それは、パーソナルコンピュータ、またはスマートフォンもしくはタブレットなどのハンドヘルド電子デバイスであり得る。
【0037】
ユーザインターフェースがディスプレイを含む場合、使用中のシステムは、ディスプレイ上にトラックのビューを提示することができ、インターフェースは、ユーザがトラックリミットの輪郭をマークすることを可能にすることができる。マークされると、処理手段は、例えば、画像をLiDARセンサアセンブリから取り込まれた点セットと融合させることによって、3Dモデル空間内のマークされた輪郭の位置を決定することができる。センサアセンブリによって見られるシーンの2Dまたは3D画像がユーザに提示され、ユーザがマークアップすることができるコンピュータプログラム命令が提供されてもよい。タッチスクリーンのマーキングは、スクリーン上を押す指またはスタイラスを使用して行うことができるが、タッチセンシティブスクリーンの有無にかかわらず、本発明の範囲内でマウスまたは他の入力デバイスを使用することができる。
【0038】
システムは、シーンの画像を捕捉するカメラを含むことができ、画像は、センサアセンブリの視野と少なくとも部分的に重複する。したがって、センサアセンブリによって識別される任意の車両が、カメラの視野内に表示される。
【0039】
システムは、トラックリミットの違反が検出されたときにカメラに車両の画像を捕捉させるトリガを含むことができる。これは、特定の車両を識別し、課されたペナルティに対する何らかの控訴において使用するための違反のさらなる証拠を提供するために、レース管理人によって使用されてもよい。
【0040】
システムは、各々がトラックの周りの異なる点に位置する複数のセンサアセンブリを備えてもよい。各々は、分析のために捕捉されたデータセットのそれぞれのストリームを生成し得る。カメラは、各センサアセンブリに関連付けられてもよい。複数のセンサアセンブリを有することにより、対応する数のトラックの点または領域を監視することができる。10個のコーナーを有するレースサーキットの場合、10個のセンサアセンブリが設けられ、各々トラックのそれぞれのコーナーを監視できる位置に配置される。
【0041】
複数のセンサアセンブリがある場合、各々は、それぞれの処理手段に関連付けられ得る。あるいは、すべてのセンサアセンブリは、捕捉されたデータを共有の処理手段に供給することができる。
【0042】
あるいは、システムは、捕捉されたセンサデータを、各センサアセンブリから、モデリングが生成されるリモートステーションにストリーミングすることができる。
【0043】
セントラルステーションは、ポータブルコンピュータまたはラップトップの一部を形成し得る処理ユニットを含み得る。
【0044】
システムは、セントラルステーションにデータを送信する送信機を含むことができ、セントラルステーションは、信号を受信するように構成された受信機を含むことができる。
【0045】
システムは、リアルタイムで送信し、リアルタイムでモデルを生成することができる。車両がトラック上のある点を通過してからモデルが生成されるまでの間には、実行される処理の量および処理ユニットの処理速度に応じて、遅延が存在する可能性がある。ほとんどの場合、わずかな遅延は完全に許容可能であり、レースディレクタは、生成された任意のアラートに基づいて合理的に迅速な決定を行うことができる。
【0046】
トラックリミットに違反したかどうかを決定し、トリガを出力することに加えて、またはその代わりに、システムは、車両がレーストラックの所定の点または領域にどれだけ近づいたかを示す信号を生成することができる。例えば、それは、車両がコーナーのエイペックスにどれくらい接近したかを示し得る。この情報は、ドライバーのトレーニング補助として使用することができ、またはレースを見ている観客に表示することができる。
【0047】
第2の態様によれば、本発明は、レーストラック上の車両の位置を検出するためにレーストラックの少なくとも1つの領域を監視する方法を提供し、方法は、
センサアセンブリを使用して、トラックに対する車両の位置を表すデータを捕捉することと、
取得されたデータから車両のモデルを生成することと、
モデルを使用して、トラックの所定の点またはエリアに対する車両の位置を決定すること
とを含む。
【0048】
センサアセンブリは、適切な支持体を使用して、レーストラックに対して所定の位置に固定されてもよい。
【0049】
本方法は、LIDARシステムから点群としてデータを捕捉することができ、LIDARの視野が車両とレーストラックの領域の両方を含むように配向され得る。
【0050】
次に、単なる例として、添付図面を参照して、および添付図面に示されるように、本発明の2つの実施形態について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【
図1】
図1(a)および
図1(b)。トラックリミットに違反していない車両および違反している車両を示す図である。
【
図2】レーストラック上の車両の位置を監視するためのシステムの第1の実施形態の概要を示す図である。
【
図3】
図2のシステムの遠隔部分のより詳細な概略図である。
【
図4】システムで使用される3D LiDARアセンブリから出力される点群セットから形成される画像の一例を示す図である。
【
図5】
図4のセンサアセンブリによって見られる同じシーンのデジタルカメラからの画像を示す図である。
【
図6】レーストラックの3Dモデル上にオーバーレイされた点群から生成された3Dモデルを示す図である。
【
図7】ユーザがタッチスクリーン上のトラック境界の位置をどのようにマークできるかを示す図である。
【
図8】処理手段が中央部分に設けられ、複数の遠隔部分のセンサアセンブリによって共有される、システムの代替実施形態を示す図である。
【
図9】センサアセンブリにトラックの良好なビューを与える、監視されるべきレーストラックのコーナーまたは他の部分の近くの位置に固定され得るポールによって支持される遠隔部分を示す図である。
【
図10】使用時に
図1または
図8の例示的なシステムによって実行される方法ステップを示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0052】
図2は、4つのコーナーを有する単純なループ形状のレーストラック2に設置された、本発明による第1の例示的なシステム1を示す。システム1は、2つの主要部分、すなわち、監視されるべきレーストラックの一部に隣接して使用中に配置される遠隔部分3と、レースディレクタとともに配置される中央部分4とを有する。この例では、4つの同一の遠隔部分が設けられ、中央部分4は、ワイヤレス通信ネットワークを介して遠隔部分3と通信するように、どこにでも配置することができる。
図1の矢印は、遠隔部分3から中央部分4へのワイヤレスネットワークを介した信号の流れを示す。中央とは、トラックの物理的な中央に位置する必要があるという意味ではない。
【0053】
図3および
図9に示されるように、遠隔部分3は、レーストラックのレベルよりも高い高さのポールなどの支持体6によって支持された耐候性密閉ボックスの形態のハウジング5を備える。ハウジング5は、機器に給電するためのバッテリなどの電源7を含む様々な電子機器を収容する。バッテリは必須ではなく、主電源が離れた位置にある場合、これを使用してデバイスに給電することができる。主電源が提供される場合、遠隔部分は、主電源電圧を電子回路に給電するのに適したより低い電圧に変換するための変圧器を含む電源を含むことができる。
【0054】
この例では、各遠隔部分3は、レーストラック上のコーナーに位置する。システム1は、コーナーを通過する車両8を監視し、説明されるように、トラックリミットの任意の違反について、中央部分を介してレースディレクタにアラートすることができる。
【0055】
図3は、
図2の遠隔部分3を概略的に示す。これは、センサアセンブリ9と、処理手段10と、メモリ11と、ワイヤレス送信機12とを備える。各部は、バッテリ7から電力を受け取る。センサアセンブリ9は、センサアセンブリがハウジングの前のシーンの画像を捕捉するようにハウジングに固定されたLIDARセンサアレイを備える。この例におけるセンサアセンブリの視野は、コーナーの外側のエイペックスを含む。
【0056】
LIDARセンサアレイ9は、単一の光源と、光検出器の2次元グリッドとを備える。光源用のドライバーによって、光源は一連の非常に短い光パルスを放射し、これらの光パルスがレンズによって集束されて広い視野を結像する。第2のレンズは、反射光を捕捉し、アレイの光検出器に焦光する。次いで、各光検出器の値がパルスと同期して読み出され、いわゆる点群のデータから各々構成される一連の画像を生成する。各点は、反射面の3D空間内の位置を表す。
【0057】
使用中、LIDARセンサアレイ9は、
図4に示されるタイプの画像のシーケンスを捕捉し、画像は、好適なLiDARシステムのいくつかの製造業者のうちの1つであるVelodyne社によって製造されたLiDARシステムからのものである。センサアレイは、いくつかの異なる高さで左から右に走査し、各行の高さがシーンの高さを表す行に配置された点のセットを生成する。
図5は、デジタルカメラによって捕捉された同じシーンの対応する画像を示す。画像内の各点は、その点における視野内のオブジェクトの範囲を示す色を有する。図からわかるように、画像は、トラック上の車両の範囲、およびトラック自体の特徴の範囲に関する情報を捕捉する。近いオブジェクトは赤色、遠いものは青色に着色される。
【0058】
処理手段10は、データバスを介して永続メモリのエリアおよびランダムアクセス(RAM)メモリ11のエリアに接続されたデジタル信号プロセッサを備える。プロセッサは、RAMへの読み取り/書き込みアクセスを有し、これにより、プロセッサは、データの処理前および処理中に、センサアレイからのデータをメモリに一時的に記憶することができる。永続メモリは、プロセッサによって読み取ることができ、プロセッサに一連の動作を実行させるプログラム命令を記憶する。
【0059】
図9は、使用時に処理手段によって実行される主要なステップを示す。センサアレイによって捕捉された点群データは、デジタル信号プロセッサの入力に供給され、処理されて、センサアレイによって見られるシーンに存在する車両のモデル(3Dまたは2D鳥瞰図など)を生成する。モデリングは、ある範囲の画像処理技術を使用して、車両の部品に対応する点を識別することができる。1つの適切な技術は、Chunmei Huらによって書かれ、International Archives of the Photogrammetry, Remote sensing and Spatial Information Sciences Journal., Vol. XXXVII, part B5, Beijing 2008に掲載された「Mapping Digital Image texture onto 3D model from LIDAR data」という名称の論文に開示されている。
【0060】
処理手段10は、捕捉された画像に見られる車両8の3Dモデルを生成することに加えて、車両モデルと同じ画像空間内のトラック領域のモデルを生成する。トラック上の車両のモデルの一例が、添付図面の
図6に示される。モデルは、ADASシステムが高速道路上の車線境界を検出するのと同じ方法で、捕捉された点セットのトラック境界を検出することによって生成され得る。例示的な技術は、Takashi Ogawaらによりthe IEEE in January 2006, DOI:10.1109/IVS.2006.1689864に発表された会議論文「Lane Recognition Using on-vehicle LiDAR」に教示されている。もちろん、車両が高速道路に沿って走行するときに変化する車線境界を連続的に識別しなければならない車両搭載システムとは異なり、本発明のシステムは、境界の位置を一度識別し、これをメモリに記憶しさえすればよい。
【0061】
3D車両モデルおよび3Dトラックモデルの2つのモデルを使用して、レーストラック上の車両の位置が処理手段によって決定される。
図7は、車両とトラックの一部のモデルを示す。
【0062】
トラックに対する車両の位置を決定すると、処理手段10は、車両8が任意のトラック境界リミットを侵害したかどうかを決定するように構成される。これは、処理手段が、トラック境界の位置と、また、リミットに違反するには車両が境界をどれだけ越えなければならないかというルールとの両方についての知識を有することを必要とする。
【0063】
遠隔部分は、デジタルカメラ13も含む。これは、カメラ13が、センサの視野に一致する、またはそれに含まれる画像を捕捉するように配置される。
図5は、例示的な捕捉された画像を示す。カメラ13およびセンサアセンブリ9は、実質的に同じ視点から画像を撮影するように、横に並べる、または上下に積み重ねることができる。デジタルカメラ13によって捕捉された画像は、センサアセンブリ9によって見られる任意の車両のモデルを構築するために、デジタル画像プロセッサによって点群データと融合され得る。これは、LIDARで捕捉されたデータのみからモデルを構築することと比較して、より高い精度を提供することができ、特に、LIDARデータ内のトラック位置をカメラ画像と相関させることをより容易にすることができ、そうでなければ、トラックの領域が、隣接するトラックと同一平面上にある色付き線によってマークされる場合、LIDARにとって不可視であり得るので、これは困難である。カメラを使用せずにLIDAR点データからトラック境界を検出するための例示的な技術は、Jiyoung JungらによりJournal of Electronic 2018, 7, 276; doi:10:2290/electronics7110276に「Real time Road Lane detection in Urban Areas Using LiDAR Data」という名称の論文に教示されている。
【0064】
トラック境界位置は、グラフィカルユーザインターフェースまたはディスプレイ14を介してシステムに供給される。これを
図7に示す。これは、この例では、処理手段10がセンサアレイの観点からトラックの画像15を表示するタッチスクリーンを含む。次いで、ユーザは、画像上にトラック境界16の位置をマークすることができる。処理手段10は、マークされた境界をセンサアレイおよび/またはカメラ画像から捕捉されたデータと組み合わせて、3Dモデル空間におけるマークされた境界の位置を決定する。例えばトラック境界線の色など、境界を一意に識別する情報がシステムに利用可能である場合、処理手段がトラック境界を自動的に検出することは本発明の範囲内である。その場合、デジタル信号プロセッサは、画像内のその色の細長い特徴を識別し、これらを可能なトラック境界としてユーザにフラグ付けすることができる。
【0065】
ルールは、グラフィカルユーザインターフェースを介して手動で入力することもできる。例えば、ユーザは、メモリにあらかじめ記憶された1つ以上の異なるルールの間で選択するように求められてもよい。単純なルールは、トラックリミットに違反するには、車両全体がトラック境界を越えなければならないということである。選択されると、処理手段は、トラックリミットの違反についてモデルを分析するときに、それらのルールを適用する。
【0066】
処理手段10は、捕捉された点のセットごとにセンサアレイ9の出力のデジタル信号処理を繰り返し、捕捉されたデータセットに現れる車両8を検出し、いずれかのトラックリミットに違反しているかどうかを決定する。新しいデータセットが生成されるレートは、トラックリミットの任意の短期間の違反が捕捉されることを確実にするのに十分な高さに設定されるべきである。リミットに違反した場合、処理手段10によってアラートが生成される。これは、遠隔部分に関連付けられた送信機12に供給され、中央部分4の受信機に送信される。遠隔部分4で受信された信号は、パーソナルコンピュータ、またはスマートフォンもしくはタブレットなどのハンドヘルド電子デバイス上で実行され得るアプリケーションに供給される。次いで、レースディレクタは、任意の違反にどのように対応するかを決定することができる。
【0067】
リミットに違反したことを示すアラートが生成されると、画像もカメラ13によって捕捉される。これはメモリに記憶され、違反の裏付け証拠として中央部分に送信される。
【0068】
図8に示される変形例では、処理手段が中央部分40に配置される、より単純な形態の遠隔部分30が提供される。遠隔部分でモデルを生成し、分析する代わりに、システムは、中央位置で生成され、分析されるモデルを使用して一日を捕捉することができる。離れた位置における処理手段は、はるかに単純であり得、アラートではなく、中央位置に捕捉された画像データを送信するだけでよい。
図8は、ワイヤレスネットワークを介したその情報の流れを示す。
【0069】
当業者は、本発明が、例示的な実施形態とは異なる多くの方法で実施され得ることを理解するであろう。特に、異なるタイプのセンサを使用して、車両モデルを生成するために使用されるデータを捕捉することができる。例えば、ステレオカメラを使用して、2つの異なる視点から画像データを捕捉することができ、これらを組み合わせて、必要な深度情報を有する画像を生成する。システムは、複数の遠隔部分を含み得、各々がレーストラックの周りの異なる位置に配置され、これらの異なる位置としてトラックリミットの違反を捕捉する。それらは、トラックのコーナー、または直線部分を観察できる場所、実際には、ドライバーがトラックリミットに違反することによって利点を得ることができる場所、またはトラックを離れると安全でない場所であればどこにでも配置され得る。
【国際調査報告】