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特表2024-501385プロトパルボウイルス及びテトラパルボウイルスの組成物及び遺伝子療法のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-11
(54)【発明の名称】プロトパルボウイルス及びテトラパルボウイルスの組成物及び遺伝子療法のための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/35 20060101AFI20231228BHJP
   C12N 7/01 20060101ALI20231228BHJP
   C07K 14/015 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20231228BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/55 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20231228BHJP
   C12P 21/00 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/86 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/866 20060101ALI20231228BHJP
   C12N 15/85 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20231228BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 39/23 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20231228BHJP
   A61K 31/65 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/138 20060101ALI20231228BHJP
   A61K 31/436 20060101ALI20231228BHJP
   C07K 1/22 20060101ALN20231228BHJP
   C07D 498/18 20060101ALN20231228BHJP
【FI】
C12N15/35
C12N7/01 ZNA
C07K14/015
C12N15/113 Z
C12N15/09 100
C12N15/09 110
C12N15/55
C12N15/12
C12N5/10
C12P21/00 C
C12N15/63 Z
C12N15/86 Z
C12N15/866 Z
C12N15/85 Z
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P1/04
A61P17/06
A61P25/00
A61K31/7088
A61K31/713
A61P43/00 111
A61K48/00
A61K39/23
A61K35/76
A61K31/65
A61K31/138
A61K31/436
A61P43/00 121
C07K1/22
C07D498/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563914
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-07-18
(86)【国際出願番号】 US2021065108
(87)【国際公開番号】W WO2022140683
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】63/129,848
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523239491
【氏名又は名称】シンテニー セラピューティクス, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】コティン, ロバート
(72)【発明者】
【氏名】アギーレ, セバスチャン
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4C072
4C084
4C085
4C086
4C087
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AG01
4B064CA19
4B064CC24
4B064CE12
4B064DA01
4B065AA93X
4B065AA94X
4B065AA95X
4B065AB01
4B065BA01
4B065CA44
4C072AA03
4C072BB03
4C072CC01
4C072CC12
4C072DD07
4C072EE09
4C072FF15
4C072GG07
4C072HH01
4C072UU01
4C084AA13
4C084AA17
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA01
4C084ZA68
4C084ZA89
4C084ZA96
4C084ZB15
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085BA75
4C085CC08
4C085CC21
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086DA29
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA01
4C086ZA68
4C086ZA89
4C086ZA96
4C086ZB15
4C086ZC41
4C086ZC75
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087CA20
4C087MA02
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZA01
4C087ZA68
4C087ZA89
4C087ZA96
4C087ZB15
4C087ZC41
4C087ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA23
4C206MA01
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA11
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA01
4C206ZA68
4C206ZA89
4C206ZA96
4C206ZB15
4C206ZC41
4C206ZC75
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA09
4H045CA01
4H045EA20
4H045FA74
(57)【要約】
プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスのキャプシドタンパク質またはそのバリアント、及び異種核酸を含む核酸を有する組換えビリオンが開示される。(1)プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、前記核酸が、異種核酸を含む、前記組換えビリオン。(1)テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、前記核酸が、異種核酸を含む、前記組換えビリオン。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、前記核酸が、異種核酸を含む、前記組換えビリオン。
【請求項2】
(1)テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、前記核酸が、異種核酸を含む、前記組換えビリオン。
【請求項3】
前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである、請求項1に記載の組換えビリオン。
【請求項4】
前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、請求項1または3に記載の組換えビリオン。
【請求項5】
前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである、請求項2に記載の組換えビリオン。
【請求項6】
前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、請求項2または5に記載の組換えビリオン。
【請求項7】
前記テトラパルボウイルスが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである、請求項6に記載の組換えビリオン。
【請求項8】
前記ビリオンが、正二十面体である、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項9】
前記キャプシドタンパク質またはそのバリアントが、構造タンパク質VP1及び/またはVP2を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項10】
VP2がVP1よりも多く存在する、請求項9に記載の組換えビリオン。
【請求項11】
VP1が、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と、少なくとも約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約96%同一、約97%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9または10に記載の組換えビリオン。
【請求項12】
VP2が、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と、少なくとも約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約96%同一、約97%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項13】
前記異種核酸が、標的細胞の核酸配列と少なくとも約60%同一である核酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項14】
前記異種核酸が、哺乳動物の前記核酸と少なくとも約60%同一であり、前記哺乳動物が、好ましくはヒトである、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項15】
前記異種核酸が、プロトパルボウイルスプロモーターまたはテトラパルボウイルスプロモーターに作動可能に連結されていない、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項16】
前記核酸が、少なくとも1つの逆方向末端反復(ITR)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項17】
前記少なくとも1つのITRが、以下を含む、請求項16に記載の組換えビリオン:
(a)ディペンドパルボウイルスITR、
(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、
(c)プロトパルボウイルスITR、または
(d)テトラパルボウイルスITR。
【請求項18】
前記プロトパルボウイルスITRが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される、請求項17に記載の組換えビリオン。
【請求項19】
前記テトラパルボウイルスITRが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される、請求項17に記載の組換えビリオン。
【請求項20】
前記テトラパルボウイルスITRが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される、請求項17または19に記載の組換えビリオン。
【請求項21】
前記核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項22】
前記DNAが、一本鎖または自己相補的二本鎖である、請求項21に記載の組換えビリオン。
【請求項23】
前記核酸が、Repタンパク質依存性複製起点(ori)を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項24】
前記核酸が、任意により2つのITR間に配置される、プロモーターに作動可能に連結された核酸を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項25】
前記プロモーターが、以下から選択される、請求項24に記載の組換えビリオン:
(a)作動可能に連結している前記核酸に対して異種のプロモーター;
(b)前記核酸の組織特異的発現を促進するプロモーター、好ましくは、前記プロモーターが、造血細胞特異的発現または赤血球系統特異的発現を促進する;
(c)前記核酸の構成的発現を促進するプロモーター;及び
(d)任意により、代謝産物、低分子、または化学エンティティに応答して、誘導的に発現されるプロモーター。
【請求項26】
前記プロモーターが、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、Wiskott-Aldrichプロモーター、及びPKLRプロモーターから選択される、請求項24または25に記載の組換えビリオン。
【請求項27】
前記異種核酸が、コーディングRNA及び/またはノンコーディングRNAをコードする、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項28】
コーディングRNAをコードする前記異種核酸が以下を含む、請求項25に記載の組換えビリオン:
(a)タンパク質またはそのフラグメント、好ましくはヒトタンパク質またはそのフラグメントをコードする遺伝子;
(b)ヌクレアーゼ、任意により転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、megaTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);
(c)レポーター、例えばルシフェラーゼまたはGFPをコードする核酸;及び/または
(d)薬剤耐性タンパク質、例えばネオマイシン耐性をコードする核酸。
【請求項29】
コーディングRNAをコードする前記異種核酸が、標的細胞中での発現のためにコドン最適化される、請求項27または28に記載の組換えビリオン。
【請求項30】
前記異種核酸が、(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、アルファヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固因子VIII、凝固因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはそれらのフラグメント(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチド(例えば、VIII SQ、p-VIII)をコードするフラグメント)、及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)から選択されるポリペプチドまたはそれらのフラグメントをコードする遺伝子を含む異種核酸を含む、請求項27~29のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項31】
前記ノンコーディングRNAが、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、及び/またはガイドRNAを含む、請求項27に記載の組換えビリオン。
【請求項32】
前記コーディングRNA、前記タンパク質、または前記ノンコーディングRNAが、標的細胞の内因性遺伝子の発現を増加または回復させる、請求項27~31のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項33】
前記コーディングRNA、前記タンパク質、または前記ノンコーディングRNAが、標的細胞の内因性遺伝子の発現を減少させるまたは消失させる、請求項27~31のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項34】
前記組換えビリオンが、以下をコードする核酸を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組換えビリオン:(a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、及び/または恒常性鉄調節因子(HFE)またはそのフラグメント;(b)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【請求項35】
前記組換えビリオンが、(a)前記形質導入細胞中でのHFE及び/またはヘプシジンの発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中でのDMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態の発現を減少させる、請求項34に記載の組換えビリオン。
【請求項36】
前記組換えビリオンが、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、及び/またはウィルソン病を予防または治療する、請求項34または35に記載の組換えビリオン。
【請求項37】
前記組換えビリオンが、(a)可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Casシステムをコードする核酸;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせを含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項38】
前記組換えビリオンが、(a)前記形質導入細胞中において、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、または可溶型のIL-1β受容体の発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中において、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、またはIL-1β受容体の発現を減少させる、請求項37に記載の組換えビリオン。
【請求項39】
前記組換えビリオンが、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び/または強直性脊椎炎を予防または治療する、請求項37または38に記載の組換えビリオン。
【請求項40】
前記組換えビリオンが、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、ダイニン、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/パーキン、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、及びULK1から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項41】
前記組換えビリオンが、前記形質導入細胞中での前記タンパク質またはそのフラグメントの発現を増加させる、請求項40に記載の組換えビリオン。
【請求項42】
オートファジーを調節する、請求項40または41に記載の組換えビリオン。
【請求項43】
オートファジー関連疾患を予防または治療する、請求項40~42のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項44】
前記オートファジー関連疾患が、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、(アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病から選択される、請求項43に記載の組換えビリオン。
【請求項45】
前記組換えビリオンが、以下をコードする核酸を含む、請求項27~33のいずれか1項に記載の組換えビリオン:(a)CFTRまたはそのフラグメント;(b)CFTRの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)CFTRの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【請求項46】
前記組換えビリオンが、(a)前記形質導入細胞中でのCFTRまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中でのCFTRの内因性変異形態の発現を減少させる、請求項45に記載の組換えビリオン。
【請求項47】
嚢胞性線維症を予防または治療する、請求項45または46に記載の組換えビリオン。
【請求項48】
前記核酸が、ノンコーディングDNAを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項49】
前記ノンコーディングDNAが以下を含む、請求項48に記載の組換えビリオン:
(a)転写調節エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座制御領域、ポリアデニル化シグナル配列)、及び/または
(b)翻訳調節エレメント(例えば、Kozak配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)。
【請求項50】
前記転写調節エレメントが、遺伝子座制御領域であり、任意によりβ-グロビンLCRまたはβ-グロビンLCRのDNase過敏部位(HS)である、請求項49に記載の組換えビリオン。
【請求項51】
前記核酸が、前記標的細胞のゲノムセーフハーバー(GSH)の前記核酸配列と少なくとも約80%同一である核酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項52】
GSHと少なくとも約80%同一である前記核酸配列が、組み込まれる前記核酸の5’及び3’に配置され、それにより相同組換えによる前記標的ゲノム内の特定の遺伝子座への組み込みが可能になる、請求項51に記載の組換えビリオン。
【請求項53】
前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である、請求項51または52に記載の組換えビリオン。
【請求項54】
前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である、請求項53に記載の組換えビリオン。
【請求項55】
前記核酸が、形質導入の際に標的細胞のゲノムに組み込まれる、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項56】
前記核酸が、形質導入の際に標的細胞のゲノムのGSHに組み込まれる、請求項55に記載の組換えビリオン。
【請求項57】
前記核酸が、少なくとも1つの複製タンパク質及びキャプシドタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項58】
前記ビリオンが、自律的に複製している、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項59】
前記ビリオンが、がん細胞もしくは非がん細胞に結合する及び/または形質導入される、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項60】
前記ビリオンが、幹細胞(例えば、造血幹細胞、CD34+幹細胞、CD36+幹細胞、間葉系幹細胞、がん幹細胞)に結合する及び/または形質導入される、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項61】
前記ビリオンが、トランスフェリン受容体(CD71)を発現する細胞に結合する及び/または形質導入される、請求項1、3、4、8~18、または21~60のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項62】
前記組換えビリオンが、造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞(HSC)、クッパー細胞(KC)、肝類洞内皮細胞(LSEC))、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、赤血球前駆細胞、リンパ前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基性風土性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵β細胞、K細胞、L細胞及び/または正染性赤芽球に結合する及び/または形質導入される、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項63】
前記少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントが、イヌパルボウイルス株N(UniProtKB-P12930)または配列番号27のアミノ酸配列に関して1つ以上の変異を有するVP2配列を含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項64】
前記1つ以上の変異が、アミノ酸残基(i)91~95、(ii)297~301、及び/または(iii)320~324を有するVP2の領域にある、請求項63に記載の組換えビリオン。
【請求項65】
前記1つ以上の変異が、置換、欠失、及び/または挿入を含む、請求項63または64に記載の組換えビリオン。
【請求項66】
前記1つ以上の変異が、前記組換えビリオンの内在化に関与する少なくとも1つの細胞受容体に対する前記組換えビリオンの親和性及び/または特異性を改変させ、任意により、前記少なくとも1つの細胞受容体が、トランスフェリン受容体である、請求項63~65のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【請求項67】
前記1つ以上の変異が、以下を改変する、請求項63~66のいずれか1項に記載の組換えビリオン:
a)細胞に対する前記組換えビリオンの向性または親和性;
b)細胞に形質導入する前記組換えビリオンの能力;及び/または
c)前記組換えビリオンが前記細胞を通過してトランスサイトーシスする能力。
【請求項68】
前記少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントが、異種ペプチドタグを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【請求項69】
前記異種ペプチドタグにより、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、またはナノボディを使用したアフィニティー精製が可能になる、請求項68に記載の組換えビリオン。
【請求項70】
前記異種ペプチドタグが、ヘマグルチニン、His(例えば、6X-His)、FLAG、Eタグ、TK15、Strep-tag II、AU1、AU5、Myc、Glu-Glu、KT3、及びIRSから選択されるエピトープ/タグを含む、請求項68または69に記載の組換えビリオン。
【請求項71】
先行請求項のいずれか1項に記載の組換えビリオン、ならびに担体及び/または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項72】
疾患を予防または治療する方法であって、有効量の請求項1~71のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組換えビリオン、または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【請求項73】
疾患を予防または治療する方法であって、
(a)複数の細胞を得ることと、
(b)請求項1~71のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入し、任意により前記形質導入細胞をさらに選択またはスクリーニングすることと;
(c)有効量の前記形質導入細胞を、それを必要とする対象に投与することと、を含む、前記方法。
【請求項74】
前記細胞が、前記対象にとって自家または同種他家である、請求項73に記載の方法。
【請求項75】
請求項72~74のいずれか1項に記載の方法であって、
(a)前記核酸が、タンパク質をコードするか;または
(b)前記核酸が、内因性遺伝子の発現を減少させるか、または消失させる、前記方法。
【請求項76】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、髄腔内、動脈内、心臓内、筋肉内、鼻腔内、肺内、皮膚移植、または経口投与を介して投与される、請求項72~75のいずれか1項に記載の方法。
【請求項77】
前記疾患が、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、腎疾患、がん、ヘモグロビン症、貧血、血友病(例えば、血友病A)、骨髄増殖性障害、凝固障害、鎌状赤血球症、アルファ-サラセミア、ベータ-サラセミア、ファンコニ貧血、家族性肝内胆汁うっ滞、表皮水疱症、ファブリー、ゴーシェ、ニーマンピックA、ニーマンピックB、GM1ガングリオシドーシス、ムコ多糖症(MPS)I(Hurler、Scheie、Hurler/Scheie)、MPS II(Hunter)、MPS VI(Maroteaux-Lamy)、血液癌、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、肝硬変、肝細胞癌、膵炎、糖尿病、心筋症、関節炎、性腺機能低下症、心臓疾患、心臓発作、甲状腺機能低下症、耐糖能異常、関節症、肝線維症、ウィルソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、テイ=サックス病、神経変性疾患、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び強直性脊椎炎、ならびに自己免疫疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、及びウォルマン病から選択される、請求項72~76のいずれか1項に記載の方法。
【請求項78】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、プロトパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントまたはその遺伝子型バリアントを含む、請求項72~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項79】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、以下をコードする核酸を含む、請求項78に記載の方法:(a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、及び/または恒常性鉄調節因子(HFE)またはそのフラグメント;(b)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【請求項80】
前記対象には、以下をコードする核酸を含む前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が投与される、請求項78または79に記載の方法:
a)ヘプシジンまたはそのフラグメントであって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に静脈内投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される、前記ヘプシジンまたはそのフラグメント;
b)HFEまたはそのフラグメントであって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に静脈内投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される、前記HFEまたはそのフラグメント;
c)HFEまたはそのフラグメントであって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記HFEまたはそのフラグメント;
d)HFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に静脈内投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;
e)HFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;
f)DMT-1を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;
g)フェロポーチンを標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;または
h)a)~g)のいずれか2つ以上の組み合わせ。
【請求項81】
前記組み合わせが、b)~e)のいずれか1つのうちの2つ以上を含む、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記組換えビリオンまたは医薬組成物が、a)前記形質導入細胞中におけるHFEまたはそのフラグメント、及び/またはヘプシジンまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/またはb)前記形質導入細胞中におけるDMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態の発現を減少させる、請求項78~81のいずれか1項に記載の方法。
【請求項83】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、及び/またはウィルソン病を予防または治療する、請求項78~82のいずれか1項に記載の方法。
【請求項84】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、以下をコードする核酸を含む、請求項78に記載の方法:(a)可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Casシステムをコードする核酸;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【請求項85】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、(a)前記形質導入細胞中において、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、または可溶型のIL-1β受容体の発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中において、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、またはIL-1β受容体の発現を減少させる、請求項84に記載の方法。
【請求項86】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び/または強直性脊椎炎を予防または治療する、請求項78、84、及び85のいずれか1項に記載の方法。
【請求項87】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物または形質導入細胞が、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、ダイニン、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/パーキン、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、及びULK1から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、請求項78に記載の方法。
【請求項88】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、前記形質導入細胞中で前記タンパク質またはそのフラグメントの発現を増加させる、請求項87に記載の方法。
【請求項89】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、オートファジーを調節する、請求項78、87、及び88のいずれか1項に記載の方法。
【請求項90】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、オートファジー関連疾患を予防または治療する、請求項78及び87~89のいずれか1項に記載の方法。
【請求項91】
前記オートファジー関連疾患が、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、(アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病から選択される、請求項90に記載の方法。
【請求項92】
前記プロトパルボウイルスが、クタウイルスである、請求項78に記載の方法。
【請求項93】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、T細胞、B細胞、及び/またはリンパ前駆細胞を標的とする、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、がんを予防するまたは治療する、請求項78、92、及び93のいずれか1項に記載の方法。
【請求項95】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、及び/またはKIND1をコードする核酸を含む、請求項78または92に記載の方法。
【請求項96】
前記形質導入細胞が、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトである、請求項95に記載の方法。
【請求項97】
前記形質導入細胞を前記対象の皮膚に移植することをさらに含む、請求項95または96に記載の方法。
【請求項98】
前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、表皮水疱症を予防するまたは治療する、請求項95~97のいずれか1項に記載の方法。
【請求項99】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、テトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントまたはその遺伝子型バリアントを含む、請求項72~77のいずれか1項に記載の方法。
【請求項100】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、アルファヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固因子VIII、凝固因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはそれらのフラグメント(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチド(例えば、VIII SQ、p-VIII)をコードするフラグメント)、及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、請求項99に記載の方法。
【請求項101】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、以下に形質導入される、請求項99または100に記載の方法:(a)CD34+幹細胞、任意によりex vivoで形質導入される;(b)間葉系幹細胞、任意によりex vivoで形質導入される;(c)肝臓細胞(例えば、肝細胞)、(d)小腸細胞、及び/または(e)肺細胞。
【請求項102】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝動脈、門脈、または静脈内投与を介して肝臓に送達される、請求項99~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項103】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、経口投与によって小腸に送達される、請求項99~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項104】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、(a)CFTRまたはそのフラグメント;(b)CFTRの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)CFTRの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせをコードする核酸を含む、請求項99~101のいずれか1項に記載の方法。
【請求項105】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、鼻腔内または肺内投与を介して肺に送達される、請求項104に記載の方法。
【請求項106】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、(a)前記形質導入細胞中でCFTRまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中でCFTRの内因性変異形態の発現を減少させる、請求項99~101、104及び105のいずれか1項に記載の方法。
【請求項107】
前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、嚢胞性線維症を予防または治療する、請求項99~101、及び104~106のいずれか1項に記載の方法。
【請求項108】
少なくとも1つの追加量の前記ビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞を再投与することをさらに含む、請求項72~107のいずれか1項に記載の方法。
【請求項109】
前記少なくとも1つの追加量の前記再投与が、前記有効量の前記ビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞の前記投与後の治療の減弱後に行われる、請求項108に記載の方法。
【請求項110】
前記少なくとも1つの追加量が、前記有効量と同じである、請求項108または109に記載の方法。
【請求項111】
前記有効量と比較して、前記少なくとも1つの追加量を増加または減少させることをさらに含む、請求項108または109に記載の方法。
【請求項112】
前記少なくとも1つの追加の量を、内因性遺伝子及び/または前記組換えビリオンの前記核酸の発現に基づいて増加または減少させる、請求項111に記載の方法。
【請求項113】
前記核酸の前記発現を調節する剤を前記対象に投与すること、または前記細胞を前記剤に接触させることをさらに含む、請求項72~112のいずれか1項に記載の方法。
【請求項114】
前記剤が、低分子、代謝産物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチド模倣体、ホルモン、ホルモン類似体、及び光から選択される、請求項113に記載の方法。
【請求項115】
前記剤が、テトラサイクリン、キュメート(cumate)、タモキシフェン、エストロゲン、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、及びリボスイッチから選択される、請求項113または114に記載の方法。
【請求項116】
間隔をおいて、前記剤を1回以上再投与することをさらに含む、請求項72~115のいずれか1項に記載の方法。
【請求項117】
前記剤の前記再投与が、前記核酸の周期的発現をもたらす、請求項116に記載の方法。
【請求項118】
前記間隔間の時間及び/または前記剤の量を、前記核酸から発現した前記タンパク質の血清濃度及び/または半減期に基づいて増加または減少させる、請求項116または117に記載の方法。
【請求項119】
細胞内の(i)遺伝子発現、または(ii)タンパク質の機能及び/または構造を調節する方法であって、前記方法が、前記細胞内の前記遺伝子発現または前記タンパク質の前記機能及び/または構造を調節する核酸を含む、請求項1~71のいずれか1項に記載のビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入することを含む、前記方法。
【請求項120】
前記核酸が、CRISPRiまたはCRISPRa剤をコードする配列を含む、請求項119に記載の方法。
【請求項121】
前記遺伝子発現、または前記タンパク質の前記機能及び/または構造が増加するかまたは回復される、請求項119または120に記載の方法。
【請求項122】
前記遺伝子発現、または前記タンパク質の前記機能及び/または構造が減少するかまたは消失する、請求項119または120に記載の方法。
【請求項123】
異種核酸を細胞内のGSHに組み込む方法であって、
(a)前記標的GSH核酸と少なくとも約80%同一であるドナー核酸配列が5’末端及び3’末端で隣接する異種核酸を含む、請求項1~71のいずれか1項に記載の1つ以上のビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入すること、または
(b)請求項1~71のいずれか1項に記載の1つ以上のビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入することであって、前記ビリオンまたは医薬組成物が、(i)前記標的GSH核酸と少なくとも約80%同一であるドナー核酸配列が5’末端及び3’末端で隣接する異種核酸と、(ii)ヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント、ZFN、TALEN)及び/またはガイドRNAをコードする核酸と、を含み、前記ヌクレアーゼまたは前記ヌクレアーゼ/gRNA複合体が、前記GSHにおいてDNAを切断し、これは、前記ドナー核酸を使用して修復され、それによって異種核酸がGSHにおいて組み込まれる、前記方法。
【請求項124】
(i)前記標的GSH核酸と少なくとも約80%同一であるドナー核酸が隣接する前記異種核酸が、1つのビリオン内に形質導入され、かつ(ii)前記核酸がヌクレアーゼをコードする、及び/または前記gRNAが別のビリオンに形質導入される、請求項123に記載の方法。
【請求項125】
前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である、請求項123または124に記載の方法。
【請求項126】
前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である、請求項123~125のいずれか1項に記載の方法。
【請求項127】
請求項1~70のいずれか1項に記載の組換えビリオンを産生する方法であって、
(1)以下を含む少なくとも1つのベクターを提供することと;
(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列であって、任意により標的細胞における発現のためにプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含む、前記ヌクレオチド配列、
(ii)前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列であって、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記ヌクレオチド配列、
(iii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、
(2)前記少なくとも1つのベクターを昆虫細胞に導入することと;
(3)請求項1~70のいずれか1項に記載の組換えビリオンが産生されるような条件下で、前記昆虫細胞を維持することと、を含む、前記方法。
【請求項128】
2つのベクターが提供される、請求項127に記載の方法であって、
(a)第1のベクターは、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列を含み、
(b)第2のベクターは、
(i)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び
(ii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、前記方法。
【請求項129】
3つのベクターが提供される、請求項127に記載の方法であって、
(a)第1のベクターは、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列を含み、
(b)第2のベクターは、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする遺伝子を含むヌクレオチド配列を含み、及び
(c)第3のベクターは、以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、前記方法。
【請求項130】
昆虫細胞において請求項1~70のいずれか1項に記載の組換えビリオンを産生する方法であって、前記方法が、
(1)昆虫細胞を提供することであって、前記昆虫細胞は、
(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためにプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含む、ヌクレオチド配列、
(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び
(iii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含み、
ここで、(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のうちの少なくとも1つは、前記昆虫細胞ゲノムに安定に組み込まれており、少なくとも1つのベクターが、存在する場合、前記昆虫細胞のゲノムに安定に組み込まれていない(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のヌクレオチド配列の残りの部分を含む、前記提供することと、
(2)前記組換えビリオンが産生されるような条件下で、前記昆虫細胞を維持することと、を含む、前記方法。
【請求項131】
前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである、請求項127~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項132】
前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、請求項127~131のいずれか1項に記載の方法。
【請求項133】
前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである、請求項127~130のいずれか1項に記載の方法。
【請求項134】
前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、請求項127~130、及び133のいずれか1項に記載の方法。
【請求項135】
前記テトラパルボウイルスが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである、請求項127~130、133、及び134のいずれか1項に記載の方法。
【請求項136】
プロトパルボウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、イヌパルボウイルス、ブファウイルス、クタウイルス、またはそれらの遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、請求項127~135のいずれか1項に記載の方法。
【請求項137】
テトラウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、ヒトパルボウイルス4またはその遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、請求項127~135のいずれか1項に記載の方法。
【請求項138】
前記昆虫細胞が、鱗翅目の種に由来する、請求項127~137のいずれか1項に記載の方法。
【請求項139】
前記鱗翅目の種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、請求項138に記載の方法。
【請求項140】
前記昆虫細胞が、Sf9である、請求項127~139のいずれか1項に記載の方法。
【請求項141】
前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクター、ウイルスベクター、またはプラスミドである、請求項127~140のいずれか1項に記載の方法。
【請求項142】
前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクターである、請求項127~141のいずれか1項に記載の方法。
【請求項143】
VP1が、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項127~142のいずれか1項に記載の方法。
【請求項144】
VP2が、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項127~143のいずれか1項に記載の方法。
【請求項145】
前記少なくとも1つのITRが、
(a)ディペンドパルボウイルスITR、
(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、
(c)プロトパルボウイルスITR、及び/または
(d)テトラパルボウイルスITR、を含む、請求項127~144のいずれか1項に記載の方法。
【請求項146】
昆虫細胞における発現のための前記少なくとも1つの発現制御配列が、
(a)プロモーター、及び/または
(b)Kozak様発現制御配列を含む、請求項127~145のいずれか1項に記載の方法。
【請求項147】
前記プロモーターが、
(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、
(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、または
(c)昆虫細胞プロモーターを含む、請求項146に記載の方法。
【請求項148】
前記動物DNAウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、またはAAVである、請求項147に記載の方法。
【請求項149】
前記昆虫ウイルスが、鱗翅目ウイルスまたはバキュロウイルスであり、任意により前記バキュロウイルスが、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体ウイルス(AcMNPV)である、請求項147に記載の方法。
【請求項150】
前記プロモーターが、ポリヘドリン(polh)プロモーターまたは最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである、請求項146~149のいずれか1項に記載の方法。
【請求項151】
AAVの少なくとも1つの複製タンパク質を含む前記ヌクレオチド配列が、Rep52及び/またはRep78をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項127~150のいずれか1項に記載の方法。
【請求項152】
前記AAVが、AAV2である、請求項127~151のいずれか1項に記載の方法。
【請求項153】
少なくとも1つのベクターを含む昆虫細胞であって、
(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び
(iii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、前記昆虫細胞。
【請求項154】
(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のうちの少なくとも1つが、前記昆虫細胞ゲノムに安定して組み込まれる、請求項153に記載の昆虫細胞。
【請求項155】
前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである、請求項153または154に記載の昆虫細胞。
【請求項156】
前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、請求項153~155のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項157】
前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである、請求項153または154に記載の昆虫細胞。
【請求項158】
前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、請求項153、154、及び157のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項159】
前記テトラパルボウイルスが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである、請求項153、154、157、及び158のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項160】
プロトパルボウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、イヌパルボウイルス、ブファウイルス、クタウイルス、またはそれらの遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、請求項153~159のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項161】
テトラウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、ヒトパルボウイルス4またはその遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、請求項153~159のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項162】
前記昆虫細胞が、鱗翅目の種に由来する、請求項153~161のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項163】
前記鱗翅目の種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、請求項162に記載の昆虫細胞。
【請求項164】
前記昆虫細胞が、Sf9である、請求項153~163のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項165】
前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクター、ウイルスベクター、またはプラスミドである、請求項153~164のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項166】
前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクターである、請求項153~165のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項167】
VP1が、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項153~166のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項168】
VP2が、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、請求項153~167のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項169】
前記少なくとも1つのITRが、
(a)ディペンドパルボウイルスITR、
(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、
(c)プロトパルボウイルスITR、及び/または
(d)テトラパルボウイルスITR、を含む、請求項153~168のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項170】
昆虫細胞における発現のための前記少なくとも1つの発現制御配列が、
(a)プロモーター、及び/または
(b)Kozak様発現制御配列を含む、請求項153~169のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項171】
前記プロモーターが、
(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、
(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、または
(c)昆虫細胞プロモーターを含む、請求項170に記載の昆虫細胞。
【請求項172】
前記動物DNAウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、またはAAVである、請求項171に記載の昆虫細胞。
【請求項173】
前記昆虫ウイルスが、鱗翅目ウイルスまたはバキュロウイルスであり、任意により前記バキュロウイルスが、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体ウイルス(AcMNPV)である、請求項171に記載の昆虫細胞。
【請求項174】
前記プロモーターが、ポリヘドリン(polh)プロモーターまたは最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである、請求項170~173のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項175】
AAVの少なくとも1つの複製タンパク質を含む前記ヌクレオチド配列が、Rep52及び/またはRep78をコードするヌクレオチド配列を含む、請求項153~174のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【請求項176】
前記AAVが、AAV2である、請求項153~175のいずれか1項に記載の昆虫細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月23日に出願された米国仮特許出願第63/129,848号の優先権の利益を主張するものであり、参照により、その内容全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
治療用導入遺伝子の効率的な送達は、遺伝子療法を成功させるための前提条件である。遺伝子療法が1970年代初頭に概念化されたとき、哺乳動物ウイルスは、遺伝子「薬物」を送達するための有効なビヒクルとして提唱された。それ以来、ウイルスベクターは、集中的に調査され、遺伝子導入用途で広く使用されている。近年、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、幅広い種類の細胞に形質導入する、血液脳関門を通過する、及びエピソームエレメントとして主に長期的に安定した発現を維持する能力を有することから、遺伝子療法にとって好ましいウイルスベクターとして台頭している。パルボウイルスファミリーの非病原性ディペンドパルボウイルス属に由来するAAVベクターは、ウイルス遺伝子を保持せず、ヒト用途のために開発され、ベクターに関連する重篤な有害事象に関する報告は比較的少ない。
【0003】
しかし、AAVの特定の特性が、遺伝子療法への適用への制限となる。特に、AAVがパッケージングできるのは、5kb未満の治療用DNAのみであり、開発から多くの治療用遺伝子及びアプローチが排除されている。例えば、最も高い発生率を有する重篤な遺伝性疾患、すなわちデュシェンヌ型筋ジストロフィー、血友病A、及び嚢胞性線維症を治療するための治療用遺伝子は、AAVのサイズ制限を超えるため、これらの疾患の治療選択肢としては、AAV媒介遺伝子療法は除外される。さらに、多くのAAV血清型は風土病であると考えられ、その結果、ヒト集団において広範な抗ウイルス免疫が生じ、多くの対象においてAAVの遺伝子導入が複雑になる。AAVへのセロコンバージョンの有病率は、成人で70%以上と推定されている。セロコンバージョンは、典型的には、野生型AAV及びヘルパーウイルス(多くの場合アデノウイルス)による生産的(共)感染により小児期に発生し、ほとんどの霊長類AAVキャプシドに共通のエピトープと交差反応する抗体を生成する。現在、将来の遺伝子療法患者は、中和抗体(nAb)についてスクリーニングされ、nAbが任意に選択された閾値力価を超える場合、AAV遺伝子療法に不適格となり得る。したがって、患者集団の大部分は、AAVによる遺伝子療法から除外される。さらに、AAVの自然な多様性が広大であるが、宿主の向性は、AAV種によって異なり、遺伝子療法のためのいくつかの重要な細胞型及び組織は、標的化できない制限が依然として残ったままである。
【0004】
したがって、制限を克服しながらAAVベクターの有用性を組み込む遺伝子療法のためのウイルス組成物及び方法が大いに必要とされている。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、少なくとも部分的に、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントを含む組換えビリオンが、遺伝子療法のビヒクルとして特に有利であるという発見に基づく。
【0006】
第一に、ビリオンのゲノムサイズが大きいため、プロトパルボウイルス(約4.7kbのAAVと比較して約5.3kb(例えば、イヌパルボウイルス))またはテトラパルボウイルス(約5.3kb)は、AAVよりも少なくとも0.6kb大きい核酸をパッケージングでき、それにより、AAVの容量を超えるサイズの治療用遺伝子(複数可)の送達が可能になる。ビリオンゲノムのサイズがより大きいことにより、所望のゲノム位置での導入遺伝子(複数可)の部位特異的組換えに対応するゲノムセーフハーバー(GSH)配列と共に治療用導入遺伝子(複数可)を送達することも可能になる。このような部位特異的組換えにより、必須遺伝子及びその発現を破壊し得るランダムな組み込みとは対照的に、ゲノムの不活性な位置に導入遺伝子を組み込むことができる。第二に、AAVとは異なり、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスは、AAVほど広まっていない。したがって、例えば治療用遺伝子を含む、プロトパルボウイルスまたはテトラパボウイルスのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンを投与することにより、効率的な遺伝子送達を妨げる広範な抗ウイルス免疫反応を引き起こすことはない。したがって、プロトパルボウイルスまたはテトラパボウイルスのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンは、AAVの比ではない効率で遺伝子送達を達成することができる。第三に、プロトパルボウイルス及びテトラパボウイルスは、特定の組織に対して並でない向性を有する。例えば、プロトパルボウイルスは、造血幹細胞に対する向性を有し、異常ヘモグロビン症、貧血、骨髄増殖性障害、凝固障害、及びがんなどの血液疾患の治療または予防に特に有用である。さらに、プロトパルボウイルスは、トランスフェリン受容体との相互作用を介して、効率的な細胞のトランスサイトーシスが可能になる。したがって、プロトパルボウイルスは、血液脳関門(BBB)を通過し、内皮バリアの後ろに隠れている神経細胞に治療用遺伝子を送達できる。したがって、プロトパルボウイルスのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンは、例えば神経変性疾患または神経筋疾患に罹患している患者のための遺伝子療法の新規手段を提供する。同様に、テトラパルボウイルスは、幹細胞(CD34+幹細胞;間葉系幹細胞)、骨髄、肺、小腸、及び肝臓などの細胞/臓器に対する向性を有する。したがって、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質(複数可)のいずれかを含む組換えビリオンは、広範囲のヒト疾患の治療または予防のために特定の細胞/組織/臓器を標的とすることができる遺伝子療法の新しいモダリティとなる。
【0007】
特定の態様では、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質(またはそのバリアント)を含む組換えビリオン、またはこの組換えビリオンを含む医薬組成物が、本明細書に提供される。標的ゲノム内の特定の部位への異種核酸の組み込みを容易にすることができる相同性アーム(例えば、標的細胞のゲノムDNAと相同性を有する配列)を有する組換えビリオン、及び標的ゲノム内でこの核酸を組み込む方法もまた、本明細書において提供される。いくつかの実施形態では、組み込みは、相同組換えまたは非相同末端結合などの細胞プロセスによって媒介される。いくつかの実施形態では、外因的に導入されたヌクレアーゼ(例えば、ZFN、TALEN、CRISPR/Cas9-gRNA)によって組み込みが開始され、促進される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのキャプシドタンパク質のバリアントは、組換えビリオンの内在化に関与する少なくとも1つの細胞受容体に対する組換えビリオンの親和性及び/または特異性を変化させ、及び/またはアフィニティー精製が可能になる。
【0008】
特定の態様では、本明細書に記載の組換えビリオンを使用して、対象における疾患を予防または治療する方法も本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、組換えビリオンを対象に投与し、それによってin vivoで疾患を予防または治療する。いくつかの実施形態では、方法は、対象から複数の細胞を得ることと、本明細書に記載の組換えビリオンを形質導入することと、有効量の形質導入された細胞を対象に投与することと、を含む。異なる細胞型に対してプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質(複数可)の親和性及び特異性が高いことにより、これらの組換えビリオンは、幅広いヒト疾患のための遺伝子療法に特に有用である。いくつかの実施形態では、方法は、追加量のビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞を再投与することをさらに含む(例えば、弱毒化後の反復投与または較正のため)。
【0009】
いくつかの実施形態では、組換えビリオン及び/または医薬組成物の核酸は、タンパク質、例えば治療用タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、(例えば、RNAi、CRISPRを介して)内因性遺伝子の発現を減少させるかまたは消失させる。
【0010】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、核酸の発現を調節する剤を対象に投与すること、または細胞を上記剤に接触させることをさらに含む、疾患を治療する方法である。いくつかの実施形態では、剤は、低分子、代謝産物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチド模倣体、ホルモン、ホルモン類似体、及び光から選択される。いくつかの実施形態では、剤は、テトラサイクリン、キュメート(cumate)、タモキシフェン、エストロゲン、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、間隔をおいて、剤を1回以上再投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、剤の再投与により、核酸の周期的発現(pulsatile expression)がもたらされる。いくつかの実施形態では、間隔間の時間及び/または剤の量は、核酸から発現したタンパク質の血清濃度及び/または半減期に基づいて増加または減少させる。
【0011】
特定の態様では、本開示は、対象の疾患の治療または予防のための組換えビリオン及び/または医薬組成物の使用を提供する。特定の態様では、本開示は、治療を必要とする対象(例えば、ヒト)を治療するための医薬品を調製するために、本明細書に記載の組換えビリオン及び/または医薬組成物の使用を提供する。
【0012】
特定の態様では、細胞または対象における遺伝子発現を調節する方法であって、本明細書に記載の組換えビリオン及び/または医薬組成物を形質導入することを含む、方法が本明細書に提供される。そのような調節は、健康な対象における発現よりも異常に低い内因性遺伝子の発現を増加または回復させることを含み得る。あるいは、調節は、その発現が健康な対象における発現よりも異常に高い内因性遺伝子の発現を減少させるかまたは消失させることを含み得る。
【0013】
特定の態様において、本明細書において提供されるのは、標的細胞中のタンパク質の機能及び/または構造を調節する方法であって、その機能及び/または構造が、(例えば、変異または異常な遺伝子発現により)野生型タンパク質とは異なる方法である。特定の実施形態では、この調節は、疾患に罹患している対象の細胞における欠損タンパク質の機能及び/または構造を改善及び/または回復させ得る。
【0014】
特定の態様では、本明細書に記載の組換えビリオンを産生するための方法及び組成物が本明細書にさらに提供される。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、ウイルスの構造タンパク質及び非構造タンパク質ならびにビリオンゲノムを発現する一連の遺伝子を導入することによって、哺乳動物細胞において産生される。好ましい実施形態では、組換えビリオンは、昆虫細胞を感染させることによって産生される。特定の実施形態では、ビリオンを産生するために必要な配列を含む核酸(例えば、少なくとも1つのITR配列またはビリオンDNA複製起点を含む核酸、少なくとも1つのウイルス複製タンパク質をコードする核酸、少なくとも1つのキャプシドタンパク質をコードする核酸)は、哺乳動物細胞または昆虫細胞に一過性に導入される。いくつかの実施形態では、この核酸は、哺乳動物または昆虫細胞ゲノム内に組み込まれる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A】AAV ITRの二次構造及びローリングヘアピン複製モデルの概略図を示す。広範な二次構造を形成するAAV ITRの構造を示す。ITRは、2つの構成(フリップ及びフロップ)を得ることができる。
図1B】AAV ITRの二次構造及びローリングヘアピン複製モデルの概略図を示す。ウイルス核酸が複製するローリングヘアピン複製モデルを示す。
図1C】AAV ITRの二次構造及びローリングヘアピン複製モデルの概略図を示す。AAVの異なる血清型に属するITRの例示的な配列のアラインメントを示す。
図2】1つ以上のHS配列が5’末端において隣接するβ-グロビンプロモーターに作動可能に連結されたβ-グロビン遺伝子を含む異種核酸/導入遺伝子構築物を表す概略図を示す。哺乳動物のβ-グロビン遺伝子は、一連の5つのDNase I過敏部位(HS1~HS5)を含む遺伝子座制御領域(LCR)と呼ばれる調節領域によって調節されている。HSは、β-グロビン遺伝子の効率的な発現に必要である。各導入遺伝子構築物は、2つの相同性アーム(5’相同性アームと3’相同性アーム)の間に配置され、相同組換えによる標的細胞ゲノムへの部位特異的組み込みが促進される。
図3】種々のプロモーターを含む異種核酸/導入遺伝子構築物を表す概略図を示す。各プロモーター(例えば、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、W-Aプロモーター、PKLRプロモーター)は、目的の導入遺伝子に作動可能に連結されており、構築物全体が、2つの相同性アーム(5’相同性アームと3’相同性アーム)の間に配置され、相同組換えによる標的細胞ゲノムへの部位特異的組み込みが促進される。
図4】PKLRの赤血球特異的プロモーターの部分的DNA配列を示す。上流の調節ドメインを構成する469bpの領域。ヒト及びラットのPK-Rプロモーター間で保存されているエレメントは点線で示す。PK-R転写開始部位のシトシンは、下線で示す。GATA-1、CAC/Sp1モチーフ、及び上流での270bp領域の調節エレメントPKR-RE1は、四角で囲っている(向きは、矢印により示す)。
図5A-1】本明細書に記載の組換えビリオンによって標的化され得る例示的なmiRNAを示す。エリスロパルボウイルス組換えビリオンは、miRNA配列を含み得る。あるいは、組換えビリオンは、miRNAを不活性化する核酸配列を含み得る。
図5A-2】本明細書に記載の組換えビリオンによって標的化され得る例示的なmiRNAを示す。エリスロパルボウイルス組換えビリオンは、miRNA配列を含み得る。あるいは、組換えビリオンは、miRNAを不活性化する核酸配列を含み得る。
図5B-1】本明細書に記載の組換えビリオンによって標的化され得る例示的なmiRNAを示す。エリスロパルボウイルス組換えビリオンは、miRNA配列を含み得る。あるいは、組換えビリオンは、miRNAを不活性化する核酸配列を含み得る。
図5B-2】本明細書に記載の組換えビリオンによって標的化され得る例示的なmiRNAを示す。エリスロパルボウイルス組換えビリオンは、miRNA配列を含み得る。あるいは、組換えビリオンは、miRNAを不活性化する核酸配列を含み得る。
図6】周期的導入遺伝子発現系を示す。概略図は、発現の負の調節及び正の調節の両方を示す。実施例I(上のパネル)は、ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチドASOまたはAON)が転写後に遺伝子発現を負に調節できることを示す。ASOがない場合には、一次転写産物(左)は、翻訳可能なmRNAにスプライシングされる(上の行)。イントロンの3’末端/エクソン2の5’末端のスプライスアクセプターに相補的なASO(赤線)を付加して、スプライシングを妨ぐ。したがって、ASOの存在下では、イントロンは、転写産物内に残る。このプロセシングを受けていないRNAは、翻訳できないか、または翻訳時に非機能的タンパク質を産生する。実施例II(下のパネル)は、ASOが転写後に遺伝子発現に正の影響を与えることができることを示している。一次転写産物(左)には治療用タンパク質をコードする4つのエクソン:エクソン1、エクソン3、及びエクソン4が含まれ、エクソン2は、ナンセンス変異(複数可)またはフレーム外変異(OOF)のいずれかを含む。このようなエクソン2は、任意の導入遺伝子に操作させ得る。ASOがない場合には、転写産物は、プロセシングを受けて、4つのエクソンを含む成熟mRNAになる(下の行)。すなわち、エクソン2は、ナンセンス変異(複数可)またはOOF変異を含む。したがって、得られたmRNAは、短縮された、または非機能タンパク質に翻訳される。対照的に、ASOの付加により、スプライシングが妨害され、成熟mRNAはエクソン1、エクソン3、及びエクソン4からなる。すなわち、ナンセンス変異(複数可)またはOOF変異を有するエクソン2がスプライシングで、切り出される。したがって、初期状態(ASOがない)では、治療用タンパク質は産生されない。ASOを付加した場合にのみ、治療用タンパク質が産生され、それによって正の調節が行われる。
図7】本開示の組換えビリオンを製造するために必要な構成要素を生成し、特徴付けるためのバキュロウイルス発現ベクター(BEV)系の概略図を示す。
図8図8A及び図8Bは、イヌパルボウイルス(CPV)キャプシドタンパク質が上手く過剰発現したことを示す。図8Aは、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下で、ポリアクリルアミドゲル電気泳動(PAGE)によって分離された、過剰発現したCPVキャプシドタンパク質(VP1及びVP2)を示す。ゲルをクマシーブルーで染色した。レーン1:分子量マーカー。レーン2:過剰発現したCPVキャプシド(細胞画分)。レーン3:過剰発現したCPVキャプシド(上清)。図8Bは、ウエスタンブロット分析を示す。過剰発現したCPV VP2は、抗CPV VP2抗体を使用して検出された。in silico設計を利用して、VPタンパク質の開始コドンを同定した。CPVキャプシドタンパク質の発現は、BEV発現系に首尾よく適応された。過剰発現は、望ましいCPV VP1/VP2化学量論比1:25を達成した。
図9】A~Cは、本開示の組換えビリオンを産生するために必要な追加の試薬の展開及び特徴付けを示す。Aは、ウエスタンブロット分析を示す。過剰発現したAAV2 Repタンパク質(p5(Rep78及びRep68)及びp19(Rep52及びRep40)タンパク質)は、抗AAV Rep抗体を使用して検出した。Rep a、Rep b、及びRep cは、Repタンパク質を発現する細胞の独立したクローンを指す。Bは、AAV2 ITRが隣接するレポーターGFP遺伝子構築物(AAV2 ITR-GFP導入遺伝子)の概略図を示す。機能的組換えビリオンは、ウイルスITR、例えばAAV2 ITRに囲まれた導入遺伝子の効率的な増幅を必要とする。Cは、AAV2 ITR-GFP導入遺伝子の増幅の成功を示し、AAV2 ITR及びRep系コンポーネントの機能性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
特定の態様では、効率的な遺伝子療法を可能にする組換えビリオン、医薬組成物、及び方法が本明細書において提供される。
【0017】
定義
冠詞「a」及び「an」は、本明細書では、冠詞の文法的対象の1つ以上(すなわち、少なくとも1つ)を指すように使用している。例として、「要素(an element)」は、1つの要素または1つを超える要素を意味する。
【0018】
「投与する」という用語は、治療法がその意図された機能を果たすことを可能にする投与経路を含むことを意図する。投与経路の例としては、注射(筋肉内、皮下、静脈内、非経口、腹腔内、髄腔内、鼻腔内、頭蓋内、硝子体内、網膜下など)経路が挙げられる。投与経路には、骨髄への直接注射も含まれる。注射は、ボーラスであってもよく、または持続注入であってもよい。投与の経路に依存して、剤は、その意図された機能を行う能力に悪影響を及ぼし得る自然条件からこの剤を保護するために、選択された材料でコーティングする、またはその中に配置することができる。
【0019】
「遺伝子」という用語は、生物学的機能に関連する任意の核酸を指すために広く使用される。「遺伝子」という用語は、特定のゲノム配列、及びそのゲノム配列によってコードされるcDNAまたはmRNAに適用される。遺伝子は、エンハンサー、プロモーター、及び遺伝子座制御領域、非翻訳領域(UTR)、イントロン、ポリアデニル化シグナル、Kozakモチーフ、TATAボックスまたはTATAレスプロモーター、及び転写後エレメント、例えば、WPREなどの調節エレメントに連結させ得る。
【0020】
「異種」という用語は、当技術分野で認識されており、組換えビリオン中の核酸に関して使用される場合、異種核酸は、少なくとも1つのキャプシドタンパク質が由来するウイルスに対して異種である。
【0021】
「相同組換え」という用語は、当技術分野で認識されており、標的ゲノムへの核酸挿入に関して使用される場合、相同依存性修復を含むことを意図する。
【0022】
2つの核酸分子の核酸配列間の「同一性」は、例えば、Pearson et al.(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:2444(他のプログラムには、GCGプログラムパッケージが含まれる(Devereux,J.,et al.,Nucleic Acids Research 12(I):387(1984)),BLASTP,BLASTN,FASTA Atschul,S.F.,et al.,J Molec Biol 215:403(1990);Guide to Huge Computers,Martin J.Bishop,ed.,Academic Press,San Diego,1994、及びCarillo et al.(1988)SIAM J Applied Math 48:1073)など、デフォルトのパラメータを使用する「FASTA」プログラムなど、既知のコンピュータアルゴリズムを使用して、同一性パーセンテージとして決定され得る。例えば、National Center for Biotechnology InformationのデータベースのBLAST機能を使用して、同一性を確認できる。他の商業的または公的に入手可能なプログラムとしては、DNAStar「MegAlign」プログラム(Madison,Wis.)及びUniversity of Wisconsin Genetics Computer Group(UWG)「Gap」プログラム(Madison Wis.))が挙げられる。
【0023】
「対象」または「患者」という用語は、任意の健康なまたは疾患を有する動物、哺乳動物もしくはヒト、または任意の動物、哺乳動物もしくはヒトを指す。いくつかの実施形態では、対象は、血液疾患に罹患している。本発明の方法の様々な実施形態において、対象は、治療を受けていない。他の実施形態では、対象は、治療を受けている。
【0024】
物質または細胞またはビリオンの「治療有効量」は、好ましくはヒトまたはヒト以外の哺乳動物において、許容可能な利益:リスク比で、治療される患者において医学的に望ましい結果(例えば、臨床的改善)をもたらすことができる量である。
【0025】
「治療する」という用語は、予防的及び/または治療的処置を含む。「予防的または治療的」処置という用語は、当該技術分野で認識されており、これには、本明細書に記載の組成物のうちの1つ以上を対象に投与することを含む。望ましくない状態(例えば、対象の疾患または他の望ましくない状態)の臨床症状の前に投与される場合、治療は、予防的である(すなわち、望ましくない状態の発症から対象を保護する)。一方で、望ましくない状態の発現後に投与される場合、その治療は、治療的である(すなわち、既存の望ましくない状態またはその副作用を軽減、改善、または安定化することを意図している)。
【0026】
組換えビリオン
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、(1)プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、核酸は、異種核酸を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである。
【0028】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される。
【0029】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、(1)テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、核酸は、異種核酸を含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである。
【0031】
いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される。
【0032】
いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである。
【0033】
組換えビリオンは、正二十面体であり得る。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質またはそのバリアントは、構造タンパク質VP1及び/またはVP2を含む。
【0034】
VP2は、VP1より多く存在し得る。例えば、VP2は、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、550%、600%、650%、700%、750%、800%、850%、900%、950%、1000%、1500%、2000%、2500%、3000%、3500%、4000%、4500%、5000%、5500%、6000%、6500%、7000%、7500%、8000%、9000%、または10000%、VP1より多く存在し得る。
【0035】
いくつかの実施形態では、VP1は、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、VP2は、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。
【0037】
特定の態様では、異種核酸を含む組換えビリオンが本明細書に提供され、異種核酸は、標的細胞の核酸配列と、少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、異種核酸は、哺乳動物の核酸と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であり、好ましくは、哺乳動物は、ヒトである。
【0039】
いくつかの実施形態では、異種核酸は、プロトパルボウイルスプロモーターまたはテトラパルボウイルスプロモーターに作動可能に連結されない。
【0040】
いくつかの実施形態では、本開示の組換えビリオンは、少なくとも1つの逆方向末端反復(ITR)を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのITRは、(a)ディペンドパルボウイルスITR、(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、(c)プロトパルボウイルスITR、または(d)テトラパルボウイルスITRを含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスITRは、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される。
【0042】
いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスITRは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される。
【0043】
いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスITRは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される。
【0044】
特定の態様では、核酸を含む組換えビリオンが本明細書に提供され、ここで核酸は、デオキシリボ核酸(DNA)である。いくつかの実施形態では、DNAは、一本鎖または自己相補的二本鎖である。
【0045】
いくつかの実施形態では、核酸は、Repタンパク質依存性複製起点(ori)を含み、それにより、(例えば、ベクター産生のための)上記核酸の複製が可能になる。いくつかの実施形態では、核酸は、任意に2つのITRの間に配置された、プロモーターに作動可能に連結された核酸を含む。
【0046】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、(a)作動可能に連結している核酸に対して異種であるプロモーター;(b)核酸の組織特異的発現を促進するプロモーターであって、好ましくはプロモーターが、造血細胞特異的発現または赤血球系統特異的発現を促進するプロモーター;(c)核酸の構成的発現を促進する、プロモーター;及び(d)任意により代謝産物または低分子または化学エンティティに応答して、誘導的に発現されるプロモーターから選択される。
【0047】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、Wiskott-Aldrichプロモーター、及びPKLRプロモーターから選択される。
【0048】
いくつかの実施形態では、核酸は、ベクター内のプロモーターに作動可能に連結されておらず、代わりに、発現のためにゲノム領域に、異種遺伝子座-例えば、融合タンパク質を産生するために、HDRを利用してアルブミンエクソンに、またはオープンリーディングフレームを回復させるために、相同遺伝子座に、組み込むために相同依存性修復(HDR)に依存する。これらのいずれの場合でも、転写活性を可能にする部位において、細胞ゲノムに組み込まれない限り、ベクターDNAは「サイレント」のままである。
【0049】
本開示の組換えビリオンは、コーディングRNA及び/またはノンコーディングRNAをコードする異種核酸を含み得る。
【0050】
例えば、コーディングRNAは、(a)タンパク質またはそのフラグメント、好ましくはヒトタンパク質またはそのフラグメントをコードする遺伝子;(b)ヌクレアーゼ、任意により転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、megaTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント)をコードする核酸;(c)レポーター、例えばルシフェラーゼまたはGFPをコードする核酸;及び/または(d)薬剤耐性タンパク質、例えばネオマイシン耐性タンパク質をコードする核酸を含み得る。
【0051】
いくつかの実施形態では、コーディングRNAは、標的細胞中での発現のためにコドン最適化される。
【0052】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、アルファヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固因子VIII、凝固因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、CEP290、INS、F8またはそれらのフラグメント(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチド(例えば、VIII SQ、p-VIII)をコードするフラグメント)、及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)から選択されるポリペプチドまたはそれらのフラグメントをコードする遺伝子を含む異種核酸を含む。
【0053】
いくつかの実施形態では、ノンコーディングRNAは、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、及び/またはガイドRNAを含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、コーディングRNA、タンパク質、またはノンコーディングRNAは、標的細胞の内因性遺伝子の発現を増加または回復させる。あるいは、いくつかの実施形態では、コーディングRNA、タンパク質、またはノンコーディングRNAは、標的細胞の内因性遺伝子の発現を減少または消失させる。
【0055】
特定の態様において、本明細書において提供されるのは、以下をコードする核酸を含む組換えビリオンである:(a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、及び/または恒常性鉄調節因子(HFE)またはそのフラグメント;(b)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0056】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、(a)形質導入細胞中でのHFE及び/またはヘプシジンの発現を増加させる;及び/または(b)形質導入細胞中でのDMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態の発現を減少させる。
【0057】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、及び/またはウィルソン病を予防または治療する。
【0058】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、(a)可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Casシステムをコードする核酸;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせを含む組換えビリオンである。
【0059】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、(a)形質導入細胞中において、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、または可溶型のIL-1β受容体の発現を増加させる;及び/または(b)形質導入細胞中において、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、またはIL-1β受容体の発現を減少させる。
【0060】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び/または強直性脊椎炎を予防または治療する。
【0061】
特定の態様では、本明細書では、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、ダイニン、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/パーキン、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、及びULK1から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む組換えビリオンが提供される。
【0062】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、形質導入細胞中での上記タンパク質またはそのフラグメントの発現を増加させる。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、オートファジーを調節する。
【0063】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、オートファジー関連疾患を予防または治療する。いくつかの実施形態では、オートファジー関連疾患は、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、(アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病から選択される。
【0064】
特定の態様において、本明細書において提供されるのは、以下をコードする核酸を含む組換えビリオンである:(a)CFTRまたはそのフラグメント;(b)CFTRの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)CFTRの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0065】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、(a)形質導入細胞中でのCFTRまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/または(b)形質導入細胞中でのCFTRの内因性変異形態の発現を減少させる。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、嚢胞性線維症を予防または治療する。
【0066】
特定の態様では、進行性家族性肝内胆汁うっ滞症の異なる形態に関連する、ATPB1、ATPB11、またはABCB4、またはそのフラグメントをコードする核酸を含む組換えビリオンが本明細書に提供される。
【0067】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、リソソーム蓄積障害に関連するCPS1またはそのフラグメントをコードする核酸を含む組換えビリオンである。
【0068】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、肝臓における銅の過剰な蓄積によって駆動される病状であるウィルソン病関連遺伝子である、ATPB7またはそのフラグメントをコードする核酸を含む組換えビリオンである。
【0069】
特定の態様では、本明細書に提供されるのは、表皮水疱症(EB)に関連する遺伝子である、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、もしくはKIND1、またはそれらのフラグメントをコードする核酸を含む組換えビリオンである。
【0070】
特定の態様では、本明細書において提供されるのは、ノンコーディングDNAを含む組換えビリオンである。いくつかの実施形態では、ノンコーディングDNAは、(a)転写調節エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座制御領域、ポリアデニル化シグナル配列)、及び/または(b)翻訳調節エレメント(例えば、Kozak配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)を含む。いくつかの実施形態では、転写調節エレメントは、遺伝子座制御領域であり、任意によりβ-グロビンLCRまたはβ-グロビンLCRのDNase過敏部位(HS)である。
【0071】
特定の態様では、本明細書に提供されるのは、標的細胞のゲノムセーフハーバー(GSH)の核酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列を含む組換えビリオンである。
【0072】
いくつかの実施形態では、GSHと少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列は、組み込まれる核酸の5’及び3’に配置され、それにより相同組換えによる標的ゲノム内の特定の遺伝子座への組み込みが可能になる。
【0073】
特定の実施形態では、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である。いくつかの実施形態では、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である。
【0074】
いくつかの実施形態では、核酸は、形質導入時に、標的細胞のゲノムに組み込まれる。好ましい実施形態では、核酸は、形質導入時に標的細胞のゲノムのGSHに組み込まれる。いくつかの実施形態は、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である。いくつかの実施形態では、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である。
【0075】
いくつかの実施形態では、核酸は、相同組換え及びその後の外因性ヌクレアーゼによって誘導されるDNA破断形成によって標的ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、TALEN、ZFN、メガヌクレアーゼ、megaTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント)である。
【0076】
本開示の組換えビリオンは、少なくとも1つの複製タンパク質及びキャプシドタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸配列を含む核酸を含み得る。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、自律的に複製している。
【0077】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、がん細胞または非がん細胞に結合する及び/または形質導入される。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、幹細胞(例えば、造血幹細胞、CD34+幹細胞、CD36+幹細胞、間葉系幹細胞、がん幹細胞)に結合する及び/または形質導入される。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、トランスフェリン受容体(CD71)を発現する細胞に結合する及び/または形質導入される。
【0078】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞(HSC)、クッパー細胞(KC)、肝類洞内皮細胞(LSEC))、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、赤血球前駆細胞、リンパ前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基性風土性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵β細胞、K細胞、L細胞及び/または正染性赤芽球に結合する及び/または形質導入される。
【0079】
プロトパルボウイルスキャプシドタンパク質の合理的修飾
プロトパルボウイルスは、標的細胞上に発現するトランスフェリン受容体(TfR)との相互作用を介して細胞に形質導入する。プロトパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス)が様々な種のTfRと相互作用する能力は、VP2タンパク質中に位置する特定のアミノ酸残基に依存する。イヌパルボウイルスの場合、これらの相互作用は、VP2のアミノ酸残基93、300、及び323にマッピングされる(Hueffer,Govindasamy et al.2003、Hueffer,Parker et al.2003)。さらに、VP2の300位は、肉食動物パルボウイルス種のゲノム中で最も可変性の高いアミノ酸であり、これは、宿主範囲の決定に関連する役割を示唆している(Allison,Organtini et al.2016)。トランスフェリン受容体は、翻訳後修飾、特にN結合グリコシル化を受け、末端シアル酸部分を有するアンテナ構造をもたらす。VP2中のこれらの残基は、トランスフェリン受容体のシアル酸と相互作用する。トランスフェリン受容体のシアル酸との相互作用は、ウイルスキャプシドが細胞の頂端から基底側にトランスサイトーシスするために重要である。したがって、VP2(CPV aa90~95、aa299~301及び/または320~325)中に特定の変異を保有するパルボウイルスキャプシドの使用は、宿主範囲及びトランスサイトーシスに対するその能力を合理的に調節するために本明細書で使用される。
【0080】
したがって、特定の態様では、本明細書に記載の組換えビリオンは、野生型VP2及び/または1つ以上の変異を含むVP2を含む組換えウイルス粒子を包含する。好ましい実施形態では、そのような組換えビリオンは、改変された向性、生体内分布、TfR及び/またはTfRを発現する細胞との改変された相互作用、TfRを発現する細胞に形質導入させる改変された能力、及び/または細胞の頂端から基底側への改変されたトランスサイトーシス能力を示す。
【0081】
いくつかの実施形態では、1つ以上のVP2変異を含む組換えビリオンは、第1の標的細胞(例えば、エンテロサイト)に特異的に形質導入されるが、トランスサイトーシスによって上皮バリアを通過して他の組織に到達する能力が低下し、これにより第1の標的細胞内に蓄積する。これにより、最初の標的細胞の標的化及び遺伝子送達が増強される。いくつかの実施形態では、1つ以上のVP2変異を含む組換えビリオンの経口投与により、TfRを発現する腸上皮、例えばエンテロサイトの細胞の優先的な標的化及び遺伝子送達がもたらされ、それによってそれをヘモクロマトーシスなどの疾患のための理想的なウイルスベクターにする(後述)。
【0082】
いくつかの実施形態では、1つ以上のVP2変異を含む組換えビリオンは、第1の標的細胞に特異的に形質導入し、トランスサイトーシスによって上皮バリアを通過して他の組織に到達することができる。好ましい実施形態では、1つ以上のVP2変異を含む組換えビリオンは、上皮バリアを通過するトランスサイトーシスにおいて増強された効率を示す。これにより、血液脳関門を通過することにより、神経系の細胞への標的化及び遺伝子送達が増強される。
【0083】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、イヌパルボウイルスVP2中に1つ以上の変異を含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、バリアントキャプシドタンパク質を含み、バリアントキャプシドは、イヌパルボウイルスN株(UniProtKB-P12930)または配列番号27のアミノ酸配列に関して1つ以上の変異を有するVP2配列を含む。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、配列番号27のアミノ酸残基(i)91~95、(ii)297~301、及び/または(iii)320~324、または他のプロトパルボウイルスのVP2の対応するアミノ酸残基を有するVP2の領域にある。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、置換、欠失、及び/または挿入を含む。
【0085】
いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、組換えビリオンの内在化に関与する少なくとも1つの細胞受容体に対する組換えビリオンの親和性及び/または特異性を改変させ、任意により、少なくとも1つの細胞受容体は、トランスフェリン受容体である。いくつかの実施形態では、1つ以上の変異は、以下を改変する:a)細胞に対する組換えビリオンの向性または親和性、b)細胞に形質導入する組換えビリオンの能力;及び/または
c)組換えビリオンが細胞を通過してトランスサイトーシスする能力。
【0086】
特定の態様では、少なくとも1つのキャプシドタンパク質または異種ペプチドタグを含むそのバリアントを含む組換えビリオンが本明細書でさらに提供される。いくつかの実施形態では、異種ペプチドタグにより、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、またはナノボディを使用したアフィニティー精製が可能になる。いくつかの実施形態では、異種ペプチドタグは、ヘマグルチニン、His(例えば、6X-His)、FLAG、Eタグ、TK15、Strep-tag II、AU1、AU5、Myc、Glu-Glu、KT3、及びIRSから選択されるエピトープ/タグを含む。
【0087】
医薬組成物
特定の態様では、本明細書に記載の組換えビリオン及び担体及び/または希釈剤を含む医薬組成物が本明細書に提供される。本明細書では「薬学的に許容される担体」は、薬剤投与に適合する任意の及びすべての溶媒、分散媒体、抗菌剤及び抗真菌剤、等張性及び吸収遅延剤などを含むことを意図する。薬学的活性物質のためのそのような媒体及び剤の使用は、当技術分野で周知である。任意の従来の媒体または剤が活性化合物と不適合である場合を除いて、組成物におけるそれらの使用が企図される。適合性を判断するために、浸透圧、粘度、及び/またはバリシティなどの様々な関連要因が考慮され得る。補足的活性化合物もまた、組成物中に組み込むことができる。
【0088】
本発明の医薬組成物は、その意図される投与経路に適合するように製剤化される。投与経路の例としては、非経口、例えば、静脈内、皮内、皮下、経口、鼻腔内(例えば、吸入)、経皮、経粘膜、血管内、脳内、非経口、腹腔内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、髄腔内、動脈内、心臓内、筋肉内、肺内、及び直腸内投与が挙げられる。特定の実施形態では、骨髄への直接注射が企図される。非経口、皮内、または皮下適用に使用される溶液または懸濁液としては、次の成分を挙げることができる:滅菌希釈剤、例えば、注射用水、食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒;抗菌剤、例えば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン;抗酸化剤、例えば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウム;キレート剤、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝液、例えば、酢酸塩、クエン酸塩またはリン酸塩、及び張性を調整するための剤、例えば、塩化ナトリウムまたはデキストロース。pHは、塩酸または水酸化ナトリウムなどの酸または塩基で調整させ得る。非経口調製物は、アンプル、使い捨てシリンジ、またはガラス製またはプラスチック製の複数回投与バイアルに封入させ得る。
【0089】
注射使用に好適である医薬組成物としては、滅菌水溶液(水溶性の場合)または分散液、及び滅菌注射液または分散液の即時調製用の滅菌粉剤が挙げられる。例えば、リンゲル液及び乳酸リンゲル液は、IV治療剤を製剤化するためにUSP承認されており、これらの溶液はいくつかの実施形態で使用される。特定の実施形態では、生物活性を保持するための賦形剤及びベクターの適合性は、好適な方法に従って確立される。静脈内投与または骨髄への注射の場合、好適な担体としては、生理食塩水、静菌化注射用蒸留水、Cremophor EL(商標)(BASF,Parsippany,NJ)またはリン酸緩衝生理食塩水(PBS)が挙げられる。すべての場合において、組成物は、滅菌でなければならず、容易に注射できる程度に流体でなければならない。これは、製造及び保管の条件下で安定でなければならず、細菌及び真菌等の微生物の混入作用から保護されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコール等)、及びそれらの好適な混合物を含有する、溶媒または分散媒であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチン等のコーティングの使用によって、分散の場合には必要とされる粒径の維持によって、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の阻害は、本明細書に記載のウイルス組成物の完全性/活性に影響を与えない程度に、様々な抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、組成物中に等張剤、例えば糖類、マンニトール、ソルビトールなどの多価アルコール、塩化ナトリウムを含めることが好ましい。
【0090】
滅菌注射溶液は、必要に応じて、上に列挙した成分のうちの1つまたは組み合わせを含む適切な溶媒に必要量の活性化合物を組み込み、その後ろ過滅菌することによって調製され得る。一般に、分散液は、活性化合物を、基本的な分散媒及び上で列挙されたものからの必要とされる他の成分を含有する滅菌ビヒクル中に組み込むことによって、調製される。
【0091】
吸入による投与の場合、本明細書に記載のウイルス粒子は、適切な噴射剤、例えば二酸化炭素などのガスを含む加圧容器またはディスペンサー、またはネブライザーからエアロゾルスプレーの形態で送達される。
【0092】
全身投与は、経粘膜的手段によるものでもあり得る。経粘膜投与のために、浸透すべき障壁に適切な浸透剤が製剤中に使用される。このような浸透剤は、当技術分野で一般的に知られており、例えば、経粘膜投与の場合、洗浄剤、胆汁酸塩、及びフシジン酸誘導体が含まれる。経粘膜投与は、点鼻スプレーまたは坐剤を使用して行うことができる。
【0093】
プロトパルボウイルス
プロトパルボウイルス種には、ヒトブファウイルス遺伝子型1、2、及び3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、イヌパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、及びオオコウモリブファウイルスが含まれる(International Committee on Taxonomy of Viruses (ICTV)によって指定された命名法については、表1も参照されたい;world wide web talk.ictvonline.org/taxonomy/)。
【0094】
プロトパルボウイルスは、次の固有の特性を考慮すると、遺伝子療法ベクターとして特に興味深い。第一に、ヒトプロトパルボウイルス、ブファウイルス、tusavirus、及びクタウイルスに対する中和抗体は、多くの西側諸国では低い有病率を有する(Vaisanen,Mohanraj et al.2018)。ウイルス特異的抗体の有病率から推測されるヒトプロトパルボウイルスの循環は、中東またはアフリカで50%を超えることが示されているが、欧州諸国及び米国での循環は非常に低く、0%~5%の間で変化する(Vaisanen,Mohanraj et al.2018)。この態様により、プロトパルボウイルスは、40~70%のヒトIgGの有病率を有するAAV由来ベクターと比較して、遺伝子療法にとって特に有望となる。
【0095】
第二に、プロトパルボウイルスは、より大きい核酸分子を内包化して送達する能力を有する。ブファウイルスは、約5.1KbのDNA分子を組み込むことができ、これらのベクター中においてより大きなタンパク質をコードするゲノム、またはシス作用性調節エレメントを含むゲノムの設計及び送達が可能になる(AAVと比較した場合)。一方で、tusavirus及びクタウイルスは、AAV(約4.6Kb)と同様のサイズのゲノムを組み込むことができる。
【0096】
第三に、プロトパルボウイルスは、特定の細胞型/組織/臓器を標的とすることができる。ヒトブファウイルス及びtusavirusは、ヒトの呼吸器及び胃腸(GI)経路(または便)から分離されており、ヒト以外の霊長類で行われた試験では、ブファウイルスが全身感染を誘発し得ることが示唆されている((Vaisanen,Mohanraj et al.2018)。したがって、ブファウイルスは、これらに限定されないが、小腸、肝臓、心臓、肺、脳、及び筋肉など、異なるヒト臓器を標的とする遺伝子療法に使用できる。さらに、パルボウイルス由来のキャプシドは、低いpHレベルまたは胃で見られる生理学的条件などの過酷な環境条件に耐性があり得る。このような耐性により、プロトパルボウイルスのキャプシドタンパク質(複数可)を含む組換えビリオンが、腸幹細胞などの胃腸管の細胞に形質導入するのに好適なものとなる。小腸上皮は、絨毛及び陰窩という2つの基本的な構造で構成されている。絨毛は、エンテロサイト、杯細胞、腸内分泌細胞、タフト細胞、及びmicrofold細胞などの多様な分化細胞群によって形成される機能的吸収ユニットを形成する。各絨毛は、少なくとも6つの陥入、またはリーベルキューン腺小窩によってサポートされている(Clevers 2013)。陰窩は、主にtransit増幅細胞などの未分化細胞によって占められているが、分化した腸内分泌細胞及びパネート細胞も陰窩中に存在する。パネート細胞の間には、陰窩底柱状細胞が挟まれており、自己再生及び、絶えず入れ替わる分化細胞の継続的な置換の両方によって恒常性を維持している。したがって、本開示のプロトパルボウイルスキャプシド(複数可)を含む組換えビリオンにより腸幹細胞を標的とすることは、遺伝性ヘモクロマトーシスまたは炎症性腸疾患など、様々なGI関連合併症を予防または治療する可能性を開く。腸幹細胞中の導入遺伝子を標的とするために、検証済みのゲノムセーフハーバーを使用することは、長期的な発現を提供すること、及び多くの場合ランダムなゲノム挿入に関連するあらゆる分化効果を回避するために非常に有益である。
【0097】
特徴:
プロトパルボウイルス属のメンバーは、単系統性であり、標準的NS1配列同一性基準を共有している。この属は2つの分岐に分かれており、1つ目の分岐は、非常に詳細に研究されているファミリーのファウンダーのメンバーによって占められているが、2つ目の分岐は、予測されたウイルスによって独占的に占められており、そのコード配列は、ウイルス発見アプローチを使用して、野生で近年同定されたものであり、この生物学は、依然として、調査が最小限である。ファウンダープロトパルボウイルスのゲノムは、NS1二本鎖DNA認識部位のモジュラー結合モチーフであるテトラヌクレオチド配列5’-TGGT-3’(またはその補体5’-ACCA-3’)の反復を多く含むため、特徴的であり、一般に(TGGT)2-3として表される(Cotmore et al.,1995)。マウス微小ウイルスのNS1は、TGGTモチーフの様々な間隔のタンデム及び反転したクラスターを認識し、複製型ウイルスDNA全体に分布する様々な配列に結合できるようにする。TGGT/ACCAテトラヌクレオチドクラスターも新しいウイルスのゲノム全体に分散しており、これは、ファウンダーメンバーとの重要な生物学的類似性を示唆している。例えば、ブファウイルス1a(ヒト)(JX027296)の4822 nt配列には、95コピーのACCAまたはTGGTがあり、メラノーマ関連ヒトクタウイルス(KX685945)の4452 nt配列には105の別個のコピーがある。
【0098】
ビリオン
X線再構成は、プロトパルボウイルスキャプシド内の最初の整然とした構造のVP残基が、5倍細孔の基部の粒子内に位置し、それぞれ約180残基及び37残基のVP1及びVP2のN末端が未分解であることを示している(Halder et al.,2013,Agbandje-McKenna et al.,1998,Xie and Chapman 1996)。この未分解配列のC末端領域は、VP1及びVP2の両方に存在する細いグリシンに富む鎖を形成し、マウス微小ウイルス(MVM)バリアントでは、変異VLPは、いくつかのcryoEM再構成で、5倍未満のチャネルのカプシド内に位置する爪のような密度にモデル化される(Subramanian et al.,2017)。しかし、空の粒子ではなく、MVMビリオンのX線構造では、この配列(VP2 G37~G28)の単一コピーからの最初の10アミノ酸は、ほとんどの5倍体円筒形の中心孔を占めるモル以下の密度にモデル化できる。すべてのVP1及びVP2のN末端ペプチドは、空の粒子中に隔離されているが、MVM VP2のN末端のサブセットは、おそらく5倍体円筒形状の拡張を伴う、十分に理解されていないコンフォメーションシフトを介して、ゲノムキャプシド形成の初期段階で、ビリオン表面に露出する(Cotmore and Tattersall 2005a)。これらの外在化したVP2のN末端には、核外輸送シグナルが含まれており(Maroto et al.,2004)、このシグナルは、一部の細胞中で、輸送中立キャプシドを核外輸送可能粒子に効果的に変換する。ビリオンは、感染細胞からこの形態で放出される(Cotmore and Tattersall 2005a)が、細胞外環境及び細胞侵入の両方において、露出したN末端がタンパク質分解切断を受け、約25個のアミノ酸が除去され、VP2が、VP3と呼ばれる形態に変換される。X線構造では、各円筒体を通過する1つよりわずかに少ないポリグリシントラクトが示されるため、約50のMVM VP2末端の約90%が、最終的に表面に露出して切断されることが重要である。切断された、主にVP3のビリオンのX線構造では、このタンパク質分解により、切断されたタンパク質のポリグリシントラクトが、キャプシド内部に引き込まれ得、そこで折り返され、VP2 N末端の新しいクラスターにより円筒体内で置換されながら、残基G30まで伸長する追加の正二十面体の配列をとることがビリオンによって示されている(Govindasamy L,Gurda BL,Halder S,Van Vliet K,McKenna R,Cotmore SF,Tattersall P,Agbandje-McKenna M.2010,未公開の観察)。外在化されたVP2 N末端も重要な構造的役割を果たし、細胞に入る前に円筒体を安定させ、VP1 N末端と最終的にはゲノムの成熟前の曝露を防ぐ(Cotmore and Tattersall 2012)。したがって、プロトパルボウイルス属のメンバーでは、5倍体円筒体が3つの異なるカーゴ形態のポータルとして機能し、1)無傷の粒子への及びそこからのゲノム転座、2)二重層通過前のVP1SRの押し出し、及び3)ゲノムのキャプシド形成に付随する一部のVP2 N末端の初期の外在化を媒介する。これは、これらのポータル機能の1つまたは2つのみに依存する他の多くのパルボウイルス属のウイルスとは明確に対照的である。
【0099】
プロトパルボウイルスビリオンの2つ目の際立った特徴は、X線構造では、キャプシドが正二十面体の配列であるのみでなく、一本鎖DNAゲノムの約11~34%も構造化されており、内部キャプシド表面上の空洞の下に位置する各非対称ユニットにパッチを形成していることである。この整然と構造化されたDNAは、2~3本の短い(8~11nt)の一本鎖で構成され、2つのMg++イオンによって内部でキレート化されたリン酸塩を含む逆ループ構成を採用し、塩基は、特定のアミノ酸側鎖との非共有結合による相互作用を確立するキャプシド殻に向かって外側に向ける(Halder et al.,2013,Agbandje-McKenna et al.,1998,Chapman and Rossmann 1995)。原子間力顕微鏡を使用して、個々のMVM粒子の5倍体、3倍体、及び2倍体の対称軸に沿った剛性を調べ、DNA含有ビリオンではないが、空の粒子では、2倍軸は、ナノインデンテーションによって容易に歪む可能性があり、これは、ゲノムがこの領域のキャプシドの剛性に大きな影響を有することを示している(Carrasco et al.,2006)。キャプシド内相互作用を損なわないが、キャプシドと、結合したDNAパッチとの間の主要な相互作用を破壊する1つのアラニン変異は、空の粒子には影響を有しないが、完全粒子中に見られるゲノムによって強化された2倍体の剛性は無効になった。これは、これらの整然と構造化されたDNA:キャプシド相互作用に主に由来するものであることを示している(Carrasco et al.,2008)。これはおそらく、野生型キャプシドのダイナミクスを確立する上で全長5kbのゲノムが重要であることを示しており、in vitroのアンコーティング試験でも示唆されている(Cotmore et al.,2010)。
【0100】
ゲノムの編成及び複製
プロトパルボウイルスは、約5kbのヘテロテロメアゲノムを有し、左端に約120ntのヘアピンテロメアが隣接し、通常は、1つの配列方向であるが、右端のヘアピンは、約250ntであり、2つの逆向きの相補的配列(「フリップ」及び「フロップ」と呼ばれる)のいずれかとして存在し得る。プロトパルボウイルスゲノムの右端は、ヘアピントランスファーによってヘアピン構造の複製中間体から切り出すことができる。MVMでは、NS1複合体が、(TGGT)2-3結合部位の2つの別のクラスターに結合することを伴い、1つ目は、NS1が切断部位(5’-CTATCA-3’)上に位置し、2つ目は、約120bp離れて、ヘアピン軸にある。切断を生じさせるには、これら2つの部位のNS1複合体が連繋され、宿主HMGBファミリーからDNA曲げタンパク質を動員することによって起点が再度折り返される必要がある。これは、NS1に結合し、介在するGリッチ起点DNA内に、必須の約30bpの二重らせんループを創出する(Cotmore et al.,2000)。対照的に、このウイルスの左端から生成された起点配列は、ヘアピンステム内に重大なTC/GAAミスマッチがあるため、ヘアピン構造内で切断されない。活性起点を創出するには、左側のヘアピンの折り畳みを展開してコピーし、二量体RF内の隣接するゲノムにまたがる塩基対結合領域を形成する必要がある。この領域では、ヘアピンの2つのアームが、対称軸の両側で効率よく分離される。しかし、TCアームのみが活性起点を生じさせる。これは、ジヌクレオチドが、NS1結合部位とパルボウイルス開始因子(PIF、糖質コルチコイド調節エレメント結合タンパク質GMEBとしても知られている)と呼ばれる必須補因子の結合部位との間に位置するスペーサーエレメントとして作用するためである。PIFは、DNAパリンドロームの軸の近くに位置する2つの間隔をあけた5’-ACGT-3’半部位に結合するヘテロ二量体宿主複合体である。活性な起点では、PIFは、TCジヌクレオチドを介してNS1と相互作用し、比較的弱いNS1結合部位への結合を安定化するが、非活性(GAA)アームでのGAAトリヌクレオチドを介した同一の結合部位へのNS1の結合を安定化することはできない(Christensen et al.,2001)。その結果、GAA配列を保有するヘアピン構造または完全二重ヘアピンアーム中の配列は切断されず、これは、隣接するP4プロモーターから転写を駆動するなど、別の役割に利用できる可能性がある(Gu et al.,1995)。左端起点と右端起点との間の切断効率の不一致が大きいことにより、子孫のネガティブセンス一本鎖は、ゲノムの右端から優先的に置換され、その結果、プロトパルボウイルスは、典型的には、主に(約99%)ネガティブセンス子孫ssDNAに置換されてパッケージングされる。
【0101】
この属のウイルスは、マップ単位(mu)4及び38の2つの転写プロモーターと、mu95に対応する1つのポリアデニル化部位を使用して、mRNAの3つの主要なサイズクラスを創出する。これらはすべて、46~48muの除去された短いイントロン配列を有する(Pintel et al.,1983)。MVMでは、このスプライスは、異なる強度の代替ドナー(D1及びD2)及びアクセプター(A1及びA2)を有し、これらは、120ntの領域内に位置するため、潜在的なD2:A1スプライスが、最小限のイントロンサイズの制約によって排除される。したがって、スプライシングにより、異なる化学量論で発現する各mRNAサイズクラスの3つの形態が創出される(Haut and Pintel 1999)。この中央のイントロンのみが除去されたP4から生じる転写産物は、1つの形態のNS1をコードし、その翻訳は、D1の上流で終結する。しかし、一部のP4転写産物では、10~40muの2番目の長いイントロンも切り出され、約25kDaのNS2タンパク質をコードするmRNAが創出される。これらは、NS1とN末端配列の85のアミノ酸を共有するが、その後異なるリーディングフレームにスプライシングされ、最終的に、2つの異なるC末端ヘキサペプチドを付加できる短い中央イントロンに到達する。これにより、約5:1の比率で発現するNS2P及びNS2Yと呼ばれるバリアントが生成される。P38転写は、上流の5’-TGGT-3’反復配列に結合するNS1によって媒介される、NS1のC末端ドメインによって強くトランス活性化される(Christensen et al.,1995,Lorson et al.,1996)。短いイントロンでのオルタナティブスプライシングにより、キャプシドタンパク質の2つのサイズのバリアントが、2つのアクセプター部位間に位置するATGコドンにおいて開始するVP1(約83kDa)と、約1:5の化学量論比で発現され、VP2(約64kDa)は、スプライスの下流で開始する。
【0102】
感染中、新たに合成されたキャプシドタンパク質は、細胞質内で2種類の三量体(VP2のみ及び1xVP1+2xVP2)として集合し、従来とは異なる構造依存性輸送モチーフを使用して、キャプシドアセンブリのために核に輸送される(Lombardo et al.,2000)。しかし、この転座は、S期に限定されており(Gil-Ranedo et al.,2015)、細胞のRaf-1キナーゼによる三量体のリン酸化に依存している(Riolobos et al.,2010)。
【0103】
プロトパルボウイルスによってコードされる補助タンパク質には、主に宿主タンパク質との相互作用によって媒介される複数の機能を有すると考えられるNS2バリアント、及び小さいオルタナティブ翻訳(SAT)タンパク質が含まれる(Zadori et al.,2005)。MVM NS2は、形質転換されたヒト細胞株には必須ではないが、マウス細胞では、存在しない場合には、未知のメカニズムによって感染サイクルの初期に二本鎖DNA増幅が急速に停止する(Naeger et al.,1990,Ruiz et al.,2006)。この初期の欠陥は、比較的低レベルのNS2の発現によって無効にされ得るが、効率的なキャプシドのアセンブリを可能にするために、サイクルの後半で、はるかに高いレベルのNS2が必要とされ(Cotmore et al.,1997)、このことは、その後の子孫DNA一本鎖の蓄積及びビリオン放出の前提条件である。後期キャプシド欠損では、VPタンパク質が発現するが、そのほとんどがキャプシドに集合できず、急速に分解される。これは、おそらく、以下で論ずるとおり、通常の核/細胞質タンパク質輸送における重度の転位に関連する前駆体サブユニットの核転座が不十分であることを反映している。MVM感染中、NS2は、細胞の14-3-3ファミリーのタンパク質(Brockhaus et al.,1996)及び核外輸送因子CRM1(Bodendorf et al.,1999)と結合する。重要なことに、NS2核外輸送シグナル(NES)は、RanGTPの存在とは関係なく、「超生理学的」親和性でCRM1に係合し、このため、細胞質放出に抵抗し得る(Engelsma et al.,2008)。野生型MVM感染の間、CRM1は、核周囲の細胞質中で検出できるが、この再分布は、CRM1をさらに高い親和性で結合させるNS2 NESの近くに点変異を保持する変異ウイルスによる感染で悪化する(Lopez-Bueno et al.,2004)。これらの変異はまた、感染の後期段階の開始を加速させ、これは、NS1及び空のキャプシドを含む、典型的には、核構造の大きな細胞質への蓄積を特徴とし、ここでも、正常な核/細胞質輸送経路の大きな破壊を示唆している。A9線維芽細胞へのトランスフェクション後、野生型MVMiゲノムは、低レベルのNS2を発現するが、これらのゲノムがNS2-NES変異のうちの1つを発現するように操作された場合、結果として生じる低レベルの変異NS2が、野生型レベルのウイルス子孫蓄積を駆動することができ、不十分なNS2を発現する細胞で見られる累積後期感染ブロックは、NS2:CRM1相互作用の化学量論的制限に起因することが確認された(Choi et al.,2005)。同様に、NS2:CRM1結合が増強されるのではなく損なわれる変異ウイルスを用いた試験では、感染時にこの相互作用が、ビリオンの効率的な放出に必要であることが示されている(Eichwald et al.,2002,Miller and Pintel 2002)。
【0104】
2番目のプロトパルボウイルス補助タンパク質であるSATは、キャプシド遺伝子内でコードされ、VP2と同じmRNAから後期に発現する。SATは、感染細胞の小胞体(ER)内に蓄積する(Zadori et al.,2005)。NS2と同様に、ウイルスが、培養物を介して拡散する速度を高めるが、不可逆的なERストレスの誘導を含む別のメカニズムを介して作用し、細胞壊死の増強に関連する(Meszaros et al.,2017b)。SAT及びディペンドパルボウイルスの補助タンパク質であるAAPは両方とも、キャプシド遺伝子中の類似の位置を占め、必須のN末端疎水性ドメインを含んでいるが、これらのタンパク質は、機能的相同性を呈することは知られていない。したがって、プロトパルボウイルスでは、初期のビリオン排出は、細胞溶解の前に発生し、細胞タイプによって異なるVP2シグナルまたはCrm1相互作用によって媒介されるか、細胞壊死の増強に関連してSATによって駆動される、複数のメカニズムによって駆動されることができる特徴的な機能である。輸送中、一部のビリオンは、小胞体中のCOPII小胞に内在化され、ゴルジ体へのゲルゾリン依存性輸送を受けることが知られており、ここでは、おそらく、その後の粒子対感染力の比率を高める他の修飾によって、チロシンリン酸化を受ける(Bar et al.,2008,Bar et al.,2013)。サイクルの初期に放出されると、急速な感染拡散が可能になり、感染した組織からの全体的な子孫の産生が中和抗体の蓄積前に増強され得る。
【0105】
生物学
パルボウイルス科を確立するために使用された元のウイルスの1つであるKilhamラットウイルス(KRV)は、1959年に実験ラット腫瘍の溶解物から単離された(Kilham and Olivier 1959)。次の10年間で、連続した同様の一本鎖DNAウイルスが、移植可能な腫瘍、組織培養細胞株、または他のウイルスの実験室株で発見された。MVMなどの一部は、野生のげっ歯類に感染することが現在知られているウイルスに非常によく似ているが、LuIII(M81888)などの同じ種の他のメンバー(げっ歯類プロトパルボウイルス1)は、自然界に見られるウイルスの遠い組換え体のようである。これらのウイルスは、その間の年月において広く研究され、その科の基本的な特徴及び基礎となる生物学を定義するための重要なモデルシステムとして機能した。げっ歯類では、げっ歯類プロトパルボウイルス1種由来のウイルスは、無症候性のウイルス血症から奇形発生、胎児または新生児の細胞死まで、様々な病状を呈する。これらのウイルスは、正常ヒト細胞に感染できないが、多くの場合、ヒト細胞が発がん性形質転換を受けたときに宿主の制限が緩和され、ウイルスが優先的に腫瘍溶解性になり得、このことから、臨床がんウイルス療法での使用の可能性が示唆される。この目的のために、ウイルスH-1(X01457)を使用して進行性神経膠芽腫を標的とする第I/IIa相臨床試験が最近完了した。この試験では、ウイルスが十分に許容され、このがんに一般的に関連する局所免疫抑制を部分的に破壊し得るエビデンスがもたらされた(Geletneky et al.,2017,Angelova et al.,2017)。
【0106】
一部の細胞では、パルボウイルス感染により、遅延はあるものの顕著な1型IFN放出が引き起こされ、その一方で、外因性IFN-βによる前処理は、ウイルスのライフサイクルを強力に阻害する(Grekova et al.,2010,Mattei et al.,2013)。マウス胚線維芽細胞(MEF)のMVMp感染中、IFN応答は、ミトコンドリア抗ウイルスシグナル伝達タンパク質(MAVS)及びRIG-Iセンシングを伴わず、ウイルスDNA複製を著しく阻害することはなかった(Mattei et al.,2013)が、別の試験では、IFN-ベータ中和抗体で細胞を前処理することにより、感染が増強された(Grekova et al.,2010)。しかし、感染したMEFは、ポリ(I:C)刺激に応答しなくなり、これは、ウイルスが、I型IFNによって誘発される抗ウイルス免疫メカニズムを不活性化できることを示唆している。
【0107】
この属の重要な病原体には、ネコ汎白血球減少症ウイルスとしても知られるネコパルボウイルス(FPV)、及び100年超にわたって存在している密接に関連するミンク及びアライグマのパルボウイルス、1970年代中期にバリアントとして発生し、1978年に世界中に蔓延したイヌパルボウイルス(CPV)が挙げられ、イヌ、オオカミ、及びコヨーテの間で疾患のパンデミックを引き起こしている。これらのバリアントはすべて、単一の種である肉食動物プロトパルボウイルス1に属する。成体動物では、この種のウイルスは、主にリンパ系組織に感染し、白血球減少症またはリンパ球減少症を引き起こし、腸上皮の感染では、結果として、重度の下痢、脱水症、及び発熱が生じる。対照的に、新生児の感染は、運動失調につながる可能性のある子猫またはフェレットの小脳病変、または子犬の心筋炎を特徴とする。疾患は、ワクチン接種によって十分に制御されているが、罹患した同腹児の死亡率は、20~100%の間で変動する((Kailasan et al.,2015a)で概説)。
【0108】
有蹄動物プロトパルボウイルス1種のメンバーであるブタパルボウイルス(PPV)は、世界中のブタの胎児死亡及び不妊症の主因であるが、PPV感染のみでは、非妊娠ブタまたは子豚に疾患を引き起こすことはまれである。しかし、血清検査陰性の妊娠中の雌豚が、妊娠初期の70日間に有毒なPPV株にさらされると、経胎盤感染により、SMEDI(死産、ミイラ化、胚死、及び不妊症)と呼ばれる症候群が引き起こされ得る(Meszaros et al.,2017a)。PPVの弱い病原性及びワクチン株(NADL-2など)が存在し、これらは羊水中に入った場合、致死的ではあるが、病原性株(例えば、Kresse)ほど効率的に胎盤関門を通過しないため、疾患は、まれである。SMEDIを予防するための広範なワクチン接種プログラムが実施されているが、新たに出現した有毒なPPVバリアントの中には、現在のワクチン株への曝露によって生じた抗体によって中和できないものがある(Meszaros et al.,2017a)。PPVとの同時感染は、離乳後多臓器性発育不良症候群(PMWS)の発症におけるブタサーコウイルス2型(PCV-2、ブタサーコウイルス2、サーコウイルス科)の影響を増強することもある。
【0109】
新たに発見されたウイルスのほとんどは、ブファウイルス1a(ヒト)用に確立されたプロトパルボウイルスツリーの新しい枝の種に分離される。このウイルスの2つの遺伝子型、BuV1及びBuV2は、2012年にブルキナファソ及びチュニジアの下痢症の小児の糞便サンプルのウイルスメタゲノム解析で特定された(したがって、「ブファウイルス」という名前が付けられた)(Phan et al.,2012)。3つ目の型BuV3は、後にブータンの小児の下痢便から発見された(Yahiro et al.,2014)。現在までに、BuV DNAは、ブルキナファソ、チュニジア、ブータン、タイ、トルコ、中国、及びフィンランドの小児の下痢、及びフィンランド、オランダ、タイ、及び中国の成人の下痢で検出されているが、非下痢性糞便中には発見されず、これは、因果関係を示唆するものである(Vaisanen et al.,2017)。抗BuV1キャプシドIgGの存在を分析すると、フィンランド及び米国の成人の血清有病率は低かった(約2~4%)が、イラク(約85%)、イラン(約56%)及びケニア(約72%)の成人では、より高い率であることが判明した。(Vaisanen et al.,2018)。
【0110】
クタウイルス(CuV)と呼ばれるブファウイルス枝中2番目のヒトプロトパルボウイルスは、ブラジル及びボツワナの小児からの少数の下痢サンプル、及びこのウイルスの名前の由来となった皮膚T細胞リンパ腫の4つのフランスの皮膚生検(Phan et al.,2016)、及びデンマークの黒色腫患者の悪性皮膚病変(Mollerup et al.,2017)で検出された。ヒト疾患におけるCuVの病因学的意義は、まだ決定されていない。
【0111】
CuVに対するIgGの有病率は、ブファウイルスの上記の同じサンプルシリーズで均一に低く(0~約6%)、CuVがヒト集団全体に広く分布していることが確認された(Vaisanen et al.,2018)。対照的に、チュニジアのヒト糞便サンプルで検出された、まだ分類されていない3番目の新しいプロトパルボウイルスに対するIgG(したがって、tusavirus、TuV)(Phan et al.,2014)は、同じパネルの血清には存在せず、そのDNAは、他の糞便サンプルではまだ検出されていないため(Vaisanen et al.,2017,Vaisanen et al.,2018)、TuVがヒトウイルスであるという証拠はこれまでのところ不十分である。それは、前述のプロトパルボウイルス系統ツリーの元の枝を占めるウイルスと系統発生的に分離する。
【表1】
【0112】
テトラパルボウイルス
テトラパルボウイルス属としては、ヒトパルボウイルス4(PARV4)、ブタパルボウイルス2、ストローオオコウモリパルボウイルス、ヤクパルボウイルス、ブタホコウイルス、及びヒツジホコウイルスが挙げられる。PARV4は、注射薬の使用を介してHIVに感染するリスクのあるヒトの血漿中で最初に検出された(Jones,Kapoor et al.2005)。ゲノムは、約5.3Kbで、AAVより600nt大きく、そのキャプシドは、温度に対して非常に耐性があるため、非常に用途が広く、安定したウイルスベクターになる。PARV4は、特定の地理的地域で風土病だが、他の場所では、薬物を注射するヒト及び複数回の輸血の既往があるヒトなど、HIV、HBV、またはHCV感染患者などの特定の高リスク群に限定されて発見されている。PARV4が、実際に、観察された疾患を引き起こしているのか、それとも非常に曝露された(ウイルス感染の)リスクのある集団で検出された非病原性の日和見ウイルスなのかは依然として不明である。一般集団におけるPARV4の血清有病率は、世界の様々な地域で0%~25%の範囲で変動する(Sharp,Lail et al.2009)。慢性ウイルス感染症患者における抗PARV4抗体の有病率は、世界の様々な地域で15~35%であると報告されているが、他の西側諸国の健康な個体における有病率は、1%未満であることが示されている。英国の献血者のPARV4 IgGスクリーニングでは、霊長類AAV抗原について、観察された血清陽性率よりも有意に低い4.8%の血清陽性率が特定された(Matthews,Sharp et al.2017)。これは、PARV4を遺伝子療法ベクターとして使用することの主な利点の1つを強調するものである。米国などいくつかの西側諸国の集団における中和抗体の血清有病率の低下と、特定の標的組織に対する向性により、これは用途の広い遺伝子療法ベクターになる。PARV4の向性及び潜伏部位は、完全には理解されていないが、説得力のあるデータでは、骨髄、気道、肝臓、及び腸が、潜在的なウイルス複製部位を表し、潜伏または持続的な感染個体のウイルスの貯蔵庫であり得ることが示唆されている。したがって、PARV4は、広範なヒト疾患を予防または治療する目的の遺伝子を送達するのに有用である。
【0113】
ゲノムの編成及び複製
PARV4は、型種である霊長類テトラパルボウイルス1の典型的なウイルスである。この種には、3%未満のアミノ酸配列の相違を有する3つの異なるPARV4遺伝子型(G1 AY622943、G2 DQ873390、及びG3 EU874248)と、チンパンジーに感染するウイルス(HQ113143)が挙げられる。PARV4の現在の知識は、他の場所で詳細に概説している(Qiu et al.,2017, Matthews et al.,2017)。現在欧州及び北米で流行している主な型はG1であるが、G2(PARV5として知られることもある)もこれらの地域で流行しており、1980年代に感染した可能性が高いヒトにおいて最もよく見られ、これは、当時はこれらが主流形態であった可能性があることを示唆している。G2及びG2様形態は、アジア及びブラジルでも流行しているが、G3は、アフリカで見られる主要菌株である。完全ゲノムが利用できないため、PARV4遺伝子発現プロファイルは、そのコード配列を組織培養細胞にトランスフェクトすることによって暫定的に調査されている。DNA複製は、一般にパルボウイルスの転写パターンに影響を与えるため、これらの配列は、最初にアデノ随伴ウイルス5(AAV5)末端ヘアピンの間に挿入され、得られたハイブリッドは、AAV5Rep78及びアデノウイルスヘルパー因子をコードする構築物を用いて、293細胞へのコトランスフェクションによって複製を誘導した(Lou et al.,2012)。NS及びVPタンパク質をそれぞれコードする転写産物を生成する2つのプロモーター、P6及びP38が同定された。NS1と同じフレーム内で開始すると予測されるいくつかのP6転写産物は、別のフレームにスプライシングされ、NS2低タンパク質が生じる可能性があるが、この産物は、検出されなかった。VP2及びNS1をコードするメッセンジャーRNAが観察され、それぞれ約80kDa及び約65kDaの分子量を有するタンパク質が生成されたが、推定されるPLA2ドメインを含む少なくとも261アミノ酸のVP1特異的領域を含む、予測されたVP1コード配列がどのようにアクセスされるかは、依然として不明である。
【0114】
生物学
この属のメンバーの生物学または臨床的意義についてはほとんど知られていない。PARV4ゲノムは、急性感染時に血漿中に検出されているが、多くの場合、ウイルス量は低く(3×104ゲノムコピー/ml未満)、ウイルス血症は、長引くと考えられ、典型的には、1ヶ月から数ヶ月継続する。ウイルスのゲノムは、肝臓及び骨髄のサンプル中でも検出されているが、ウイルスが複製される場所は、依然として不明である。PARV4 DNA陽性またはPARV4 IgG陽性の血漿は、北米及び欧州の一般集団ではまれだが、他の血液媒介性ウイルス、特にヒト免疫不全ウイルス、B型肝炎ウイルスまたはC型肝炎ウイルスを保有する個体、静脈内薬物使用またはプールされたヒト血漿からの血液製剤への依存など、非経口感染の行動的リスク因子を有する個体においては、より高い頻度で生じる(Lahtinen et al.,2011,Sharp et al.,2009)。しかし、アフリカでは、PARV4は風土病であり、その疫学は、非常に異なると考えられ、サハラ以南アフリカ及び南アフリカの一般集団の約30~50%がPARV4 IgGの血清結果陽性を示している。ウイルス血症も高頻度で検出され、例えば、ある研究では、ガーナにおいて、無症候性の若年小児の8.6%がDNA陽性であり(Panning et al.,2010)、アフリカの小児の鼻及び便のサンプル中でウイルスDNAが検出された。これは、この場所での伝播が、食品媒介、呼吸器、または接触媒介経路による可能性が高いことを示唆している。
【0115】
PARV4遺伝子型1及び2は、欧州及び北アフリカで優勢だが、アフリカではG3が主要な形態である。したがって、ウイルス生物学に影響を与える遺伝的差異は、これらの極端な疫学的格差の一因となり得る。あるいは、宿主集団の特性が重要である場合がある。したがって、現在の多くの研究は、ウイルスの感受性及び伝播経路を明らかにすることに向けられている。例えば、循環しているG2ウイルスが、非経口経路/高リスク群のパターンに従うことが予測される可能性があるブラジルの最近の研究では、ヒトT細胞リンパ球向性ウイルス(HTLV)に感染した個体の約6%もPARV4 DNA陽性であることが明らかになったが、これらの同時感染個体の大部分は、非経口伝播経路を示唆する病歴を有さず、これは、さらなる要因または経路がこの場所に関与している可能性が高いことを示唆している(Slavov et al.,2017)。
【0116】
ヒト以外の宿主に感染するテトラパルボウイルスも風土病と考えられる。例えば、カメルーンでサンプルが採取された73匹の野生類人猿群のチンパンジーの63%及びゴリラの18%が、霊長類テトラパルボウイルス1型中のチンパンジーウイルスに対する抗体に対して血清検査陽性であり(Beierwaltes 1991)、4種の有蹄動物(有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4)中のウイルスは、家畜の血清及び組織で一般的に検出された(Lau et al.,2008,Tse et al.,2011)。同様に、コウモリウイルス(翼手目テトラパルボウイルス1種)が、ガーナのストローオオコウモリの血液サンプル及び組織から高濃度で検出された。このウイルスは、脾臓及び腎臓由来のサンプル中に特に豊富に含まれており、これは、これらの臓器がウイルス複製部位であり得ることを示唆している(Canuti et al.,2011)。
【表2】
【0117】
ウイルスの遺伝子バリアント
当業者は、ウイルスの種が遺伝子バリアントのクラスターを含むことを認識している(Van Regenmortel MHV(2000)Virus Taxonomy-Seventh Report of the International Committee on Taxonomy of Viruses)。遺伝的バリアントは、変異(点変異及び異なる長さの挿入-欠失を含む)、超変異、数種類の組換え、及びゲノムセグメントの再集合を含み得る。変異は、すべてのウイルスで観察され、既知の例外はない(Domingo(2019)Virus as Populations 2020:35-71)。組換えも広く行われており、DNAウイルスならびにRNAウイルスについて、その発生がすぐに認められた。ゲノムセグメントの再集合は、有性生殖における染色体交換に近い変異の一種であり、インフルエンザウイルスの進行中の進化によって継続的に証明されるように、セグメント化されたウイルスゲノムの適応アセットである。ウイルスゲノム変異の3つのモードは互換性があり、現在のウイルスでは、再集合体、組換え体、変異体のゲノムが継続的に発生している。
【0118】
したがって、本明細書に記載のウイルスの遺伝子バリアントは、本明細書に記載のポリペプチド、または本明細書に記載のウイルスに属するポリペプチド(例えば、キャプシドタンパク質(VP1、VP2)、NSタンパク質など)を含み得、アミノ酸配列が、本明細書に提示される例示的な配列のアミノ酸配列または本明細書で参照される例示的なウイルスのポリペプチドのアミノ酸配列と少なくとも、約、または30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるか、もしくはこれら以下同一である。
【0119】
ゲノムセーフハーバー(GSH)
ゲノムセーフハーバー(GSH)は、ヒト及びモデル種のゲノムの遺伝子内、遺伝子間、または遺伝子外領域であり、宿主細胞または生物に重大な悪影響を与えることなく、新しく組み込まれたDNAの予測可能な発現に対応することができる。GSHは、イントロンまたはエクソン遺伝子配列、ならびに遺伝子間または遺伝子外配列を含み得る。理論に限定されるものではないが、有用なセーフハーバーは、導入遺伝子にコードされたタンパク質またはノンコーディングRNAの所望のレベルをもたらすのに十分な導入遺伝子の発現を可能にするものとする。また、GSHは、細胞が悪性形質転換しやすくなること、前駆細胞の分化を妨害すること、または正常な細胞機能を大幅に改変することもないものである。何がGSHを偶然の良好な組み込みイベントと区別するかというと、結果の予測可能性であり、これは、GSHの事前の知識及び検証に基づく。
【0120】
本明細書に記載の組換えビリオンのゲノムサイズがより大きいことにより、GSH配列と一緒に治療用導入遺伝子(複数可)を送達することが可能になるが、これは、制限されたゲノムサイズを有するビリオン、例えばAAVでは不可能である。したがって、本開示の組換えビリオンは、例えばAAVと比較して、より大きな導入遺伝子の送達を促進するのみでなく、GSH配列の共送達を可能にすることによって導入遺伝子の安全な送達を促進し、宿主細胞に悪影響を与えることなく、導入遺伝子の予測可能な発現が確実に行われる。導入遺伝子を付加する標的とされた典型的なGSHとしては、(i)アデノ随伴ウイルス部位1(AAVS1)、染色体19上のAAVウイルスDNAの組み込みの天然に存在する非生殖細胞系部位;(ii)ケモカイン(C-Cモチーフ)受容体5(CCR5)遺伝子、HIV-1補助受容体として知られるケモカイン受容体遺伝子;(iii)マウスRosa26遺伝子座のヒトオルソログ、遍在的に発現する導入遺伝子の挿入について、マウス環境において、広く検証されている遺伝子座;及び(iv)マウス細胞中のアルブミンが挙げられる(例えば、米国特許第7,951,925号;同第8,771,985号;同第8,110,379号;及び同第7,951,925号;米国特許公開第2010/0218264号;同第2011/0265198号;同第2013/0137104号;同第2013/0122591号;同第2013/0177983号;同第2013/0177960号;同第2015/0056705号及び同第2015/0159172号を参照のこと;これらはすべて参照により組み込まれる)。さらなるGSHとしては、Kif6、Pax5、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座の核酸をコードするチミジンキナーゼ)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、NUPL2またはその遺伝子間領域、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、RNF38または本明細書に記載のゲノムセーフハーバーの基準を満たす遺伝子座が挙げられる(例えば、WO2019/169233A1、WO2017/079673A1;参照により組み込まれる)。これらのGSHは、本明細書に記載の組換えビリオンと共に使用できるGSHの非限定的な表現を提供する。本開示は、当技術分野で知られている任意のGSHの使用を意図している。
【0121】
いくつかの実施形態では、GSHは、制限されたオフターゲット活性及び最小限の遺伝子毒性のリスクを有するか、または外来DNAの組み込み時に挿入性腫瘍形成を引き起こす安全で標的化された遺伝子送達を可能にする一方で、オフターゲット活性が最小限である高度に特異的なヌクレアーゼにアクセス可能である。
【0122】
いくつかの実施形態では、GSHは、以下の特性のうちの任意の1つ以上を有する:(i)遺伝子転写ユニットの外側にある;(ii)任意の遺伝子の5’末端から5~50キロベース(kb)離れた位置にある;(iii)がん関連遺伝子から5~300kb離れた位置にある;(iv)任意の特定されたマイクロRNAから5~300kb離れた位置にある;(v)超保存領域及び長いノンコーディングRNAの外側にある。いくつかの実施形態では、GSH遺伝子座は、以下の特性のうちの任意の1つ以上を有する:(i)遺伝子転写ユニットの外側にある;(ii)任意の遺伝子の5’末端から50キロベース(kb)を超える位置にある;(iii)がん関連遺伝子から300kbを超える位置にある;(iv)任意の同定されたマイクロRNAから300kbを超える位置にある;(v)超保存領域及び長い非コードRNAの外側にある。形質導入により導入された多能性幹細胞におけるレンチウイルスベクターの組み込みの試験では、5,000を超える組み込み部位の分析により、組み込みの約17%がセーフハーバー中で生じたことが明らかになった。これらのセーフハーバーに組み込まれたベクターは、内因性遺伝子の発現を混乱させることなく、これらの導入遺伝子から治療レベルのβーグロビンを発現することができた。
【0123】
いくつかの実施形態では、GSHは、AAVS1である。AAVS1は、19番染色体上のアデノ随伴ウイルス共通組み込み部位として同定され、19番染色体(位置l9ql3.42)内に位置し、in vitroでAAVに感染した培養ヒト細胞株のゲノム中での野生型AAVの組み込みの繰り返し回復された部位として主に同定された。AAVS1遺伝子座への組み込みは、明確に描写されていない機能を有するタンパク質をコードする遺伝子ホスファターゼ1調節サブユニット12C(PPP1R12C;MBS85としても知られる)を中断する。PPP1R12Cの一方または両方の対立遺伝子を破壊した場合の生物への影響は、現在のところ不明である。AAVS1を標的とする導入遺伝子を保有するヒト及びマウスの多能性幹細胞では、全体的な異常または分化欠損は、観察されなかった。もともと、AAVS1部位へのAAV DNAの組み込みは、Rep依存性であったが、標的対立遺伝子の機能を保存し、非標的細胞中のレベルと同等のレベルで、PPP1R12Cの発現を維持した、標的化に利用できる市販のCRISPR/Cas9試薬がある。AAVS1はまた、iPSCまたはCD34+細胞へのZFN媒介組換えを使用して評価した。
【0124】
最初に特徴付けられたように、AAVS1遺伝子座は、4kb超であり、染色体19ヌクレオチド55,1 13,873~55,1 17,983(ヒトゲノムアセンブリGRCh38/hg38)として同定され、プロテインホスファターゼ1調節サブユニット12CをコードするPPP1R12C遺伝子のエクソン1と重複する。この4kbを超える領域は、G+Cヌクレオチド含有量が非常に豊富であり、特に遺伝子が豊富な19番染色体の遺伝子リッチ領域である(Sadelain et al,Nature Revs Cancer,2012;12;51-58の図1Aを参照)。いくつかの組み込まれたプロモーターは、実際に隣接する遺伝子を活性化またはシス活性化することができるが、異なる組織での結果は、現在は不明である。PPP1R12Cエクソン1の5’非翻訳領域には、既知の配列内に示されたDNA合成の機能的なAAV起点が含まれている(Urcelay et al.1995)。
【0125】
AAVS1 GSHは、潜伏感染したヒト細胞株のAAVプロウイルス構造を、潜伏感染したクローン細胞株(Detroit 6クローン7374 IIID5)から生成された組換えバクテリオファージゲノムライブラリーにより特徴付けることによって同定し(Kotin and Berns 1989)、Kotin et alは、プロウイルスに隣接する非ウイルス細胞DNAを単離し、「左」及び「右」隣接DNAフラグメントのサブセットをプローブとして使用して、独立して誘導された潜伏感染したクローン細胞株のパネルをスクリーニングした。クローン単離株の約70%で、AAV DNAが細胞特異的プローブにより検出された(Kotin et al.1991;Kotin et al.1990)。組み込み前部位の配列分析により、AAV逆方向末端反復の一部とほぼ相同であることが確認された(Kotin、Linden、及びBeerns 1992)。特徴的な中断されたパリンドロームを欠いているが、AAVS1遺伝子座は、AAV ITRに相同なRep結合エレメント及び末端分解部位を保持していた(図1A)。
【0126】
外来DNAの挿入及び発現は、内在性遺伝子の発現を破壊する可能性が高いため、エクソン組み込み部位の選択は非自明であり、おそらく直観に反するものである。明らかに、この遺伝子座へのAAVゲノムの挿入は、細胞の生存率またはiPSC分化に悪影響を与えない(DeKelver et al.2010;Wang et al.2012;Zou et al.2011)。AAVS1遺伝子座は、高度に保存されたPPP1R12C遺伝子の5’UTR内にある。DNA合成のRep依存性最小起点は、ヒト、チンパンジー及びゴリラのPPP1R12C遺伝子の5’UTR内に保存されている。しかし、DNAをAAVS1に組み込むために使用される市販のCRISPR/Cas9試薬は、エクソンではなくPPP1R12Cイントロン1を標的にする。
【0127】
いくつかの実施形態は、GSHは、Kif6、Pax5、コラーゲン、HTRP、HI 1、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、NUPL2の遺伝子間領域、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、及びRNF38のうちのいずれか1つである。
【0128】
いくつかの実施形態では、GSHは、Pax5遺伝子遺伝子(Paired Box5、または「B細胞系統特異的アクチベータータンパク質」、またはBSAPとしても知られる)である。ヒトでは、PAX5は、染色体9の9p13.2に位置し、ヒト、チンパンジー、マカク、マウス、ラット、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、フクロネズミ、カモノハシ、ニワトリ、トカゲ、ツメガエル、C.線虫、ショウジョウバエ、及びゼブラフィッシュなど、多くの脊椎動物種におけるオルソログを有する。PAX5遺伝子は、第9染色体:36,833,275~37,034,185逆鎖(GRCh38:CM00067l.2)またはGRCh37座標で36,833,272~37,034,182に位置する。
【0129】
追加の例示的なGSHを表3A及び表3Bに列挙する。
【表3A】
【表3B-1】
【表3B-2】
【0130】
標的ゲノムへの組み込み
標的ゲノムへの組み込みは、相同組換えまたは非相同末端結合(NHEJ)などの細胞プロセスによって駆動され得る。組み込みはまた、外因的に導入されたヌクレアーゼによって開始及び/または促進され得る。好ましい実施形態では、本明細書に記載の組換えビリオン内にパッケージングされた核酸は、ゲノム内の特定の遺伝子座、例えばGSHに組み込まれる。いくつかの実施形態では、GSHは、所望のレベルの導入遺伝子コードタンパク質またはノンコーディングRNAをもたらすのに十分な導入遺伝子発現を可能にする任意の遺伝子座である。また、GSHは、細胞が悪性転換しやすくなる、または正常な細胞機能を著しく変化させるはずはない。GSHへの部位特異的組み込みは、組み込まれる核酸に対して5’及び3’に配置されたGSHに相同な核酸によって媒介され得る。そのような相同なドナー配列は、所望の遺伝子座での組み込みを可能にする相同依存性修復のための鋳型を提供し得る。
【0131】
好ましい実施形態では、本明細書に記載の組換えビリオンは、標的細胞のゲノムセーフハーバー(GSH)の核酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列を含む核酸を含む。いくつかの実施形態では、GSHと少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である当該核酸は、組み込まれる核酸の5’及び3’(相同性アーム)に配置され、それにより相同組換えによる標的ゲノム内の特定の遺伝子座への(相同性アーム間に位置する核酸の)挿入が可能になる。いくつかの実施形態では、組み込まれる核酸は、本明細書に記載のプロモーターに作動可能に連結された核酸のいずれか1つである。いくつかの実施形態は、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である。いくつかの実施形態では、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である。
【0132】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンの核酸は、形質導入時に、標的細胞のゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、核酸は、GSHまたはEVEに組み込まれる。いくつかの実施形態は、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である。いくつかの実施形態では、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である。いくつかの実施形態では、核酸は、相同組換え、及びその後の外因的に導入されたヌクレアーゼによって誘導されるDNA破断形成によって標的ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、ヌクレアーゼは、TALEN、ZFN、メガヌクレアーゼ、megaTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント)である。いくつかの実施形態では、CRISPRエンドヌクレアーゼは、ガイドRNAと複合体を形成している。
【0133】
特定の態様では、異種核酸を細胞内のGSHに組み込む方法が本明細書に提供され、本方法は、(a)標的GSH核酸と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるドナー核酸配列が5’末端及び3’末端で隣接する異種核酸を含む、本明細書に記載の1つ以上のビリオンを細胞に形質導入することと;または(b)本明細書に記載される1つ以上のビリオンを細胞に形質導入することであって、ビリオンが、(i)標的GSH核酸と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるドナー核酸配列が5’末端及び3’末端で隣接する異種核酸、及び(ii)ヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント、ZFN、TALEN)及び/またはガイドRNAをコードする核酸であって、ヌクレアーゼまたはヌクレアーゼ/gRNA複合体は、GSHにおいてDNA破断を行い(これは、ドナー核酸を使用して修復される)、これにより、GSHにおいて異種核酸を組み込む、核酸、を含む、形質導入することと、を含む。いくつかの実施形態では、(i)標的GSH核酸と少なくと約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるドナー核酸が隣接する異種核酸、及び(ii)ヌクレアーゼをコードする核酸及び/またはgRNAは、別個のビリオンに形質導入される。いくつかの実施形態は、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である。いくつかの実施形態では、GSHは、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である。
【0134】
5’相同性アームと3’相同性アームとの間に位置する核酸の組み込みのために、5’相同性アーム及び3’相同性アームは、GSHを標的とし、相同組換えによるゲノムへの組み込み(例えば、ガイド)を可能にするのに十分な長さである必要がある。正確な位置での組み込みの可能性を高め、相同組換えの確率を高めるために、5’及び3’相同性アームは、十分な数の核酸を含むことができる。いくつかの実施形態では、5’及び3’相同性アームは、少なくとも10塩基対で、5,000塩基対以下、少なくとも50塩基対で、5,000塩基対以下、少なくとも100塩基対で、5,000塩基対以下、少なくとも200塩基対で、5,000塩基対以下、少なくとも250塩基対で、5,000塩基対以下、または少なくとも300塩基対で、5,000塩基対以下を含み得る。いくつかの実施形態では、5’及び3’相同性アームは、約50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、105、110、115、120、125、130、135、140、145、150、155、160、165、170、175、180、185、190、195、200、205、210、215、220、225、230、235、240、245、250、255、260、265、270、275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340、345、350、355、360、365、370、375、380、385、390、395、400、405、410、415、420、425、430、435、440、445、450、455、460、465、470、475、480、485、490、495、または500塩基対を含む。相同性アームの長さ及び組換え頻度に関する詳細な情報は当技術分野で知られており、例えば、Zhang et al.“Efficient precise knock in with a double cut HDR donor after CRISPR/Cas9-mediated double-stranded DNA cleavage”Genome biology 18.1(2017):35を参照、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0135】
5’及び3’相同性アームは、宿主細胞のゲノム中のGSH標的配列と相同である任意の配列であり得る。いくつかの実施形態では、5’及び3’相同性アームは、本明細書に記載のGSHの部分と相同であり得る。さらに、5’及び3’相同性アームは、ノンコーディングヌクレオチド配列またはコーディングヌクレオチド配列であり得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、5’及び/または3’相同性アームは、染色体上の組み込みまたはDNA切断部位のすぐ上流及び/または下流の配列と相同であり得る。あるいは、5’及び/または3’相同性アームは、組み込みまたはDNA切断部位から離れている、例えば組み込み部位またはDNA切断部位から少なくとも1、2、5、10、15、20、25、30、50、75、100、125、150、175、200、225、250、275、300、325、350、375、400、425、450、475、500もしくはそれ以上の塩基対など離れている配列と相同であり得るか、またはDNA切断部位と部分的または完全に重複している(例えば、外因的に導入されたヌクレアーゼによって誘導されたDNA破断であり得る)配列と相同であり得る。いくつかの実施形態では、ヌクレオチド配列の3’相同性アームは、ITRに近位である。
【0137】
遺伝子編集システム
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物を使用して、本明細書に記載の組換えビリオンによって送達された核酸を、標的ゲノム内の任意の特定の遺伝子座(例えば、GSH)に組み込む。いくつかの実施形態では、組み込みは、外因的に導入されたヌクレアーゼによって開始及び/または促進され、ヌクレアーゼによって誘導されたDNA破断は、相同組換えのためのガイドとして相同性アームを使用して修復され、それによって、当該相同性アームが隣接した核酸が標的ゲノムに挿入される。
【0138】
例えば、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)またはTALエフェクタードメインヌクレアーゼ(TALEN)などの部位特異的ヌクレアーゼによって、二本鎖切断(DSB)を創出させ得る。例えば、Urnov et al.(2010)Nature 435(7042):646-51;米国特許第8,586,526号;同第6,534,261号;同第6,599,692号;同第6,503,717号;同第6,689,558号;同第7,067,317号;同第7,262,054号を参照のこと;これらの開示は、参照により組み込まれる。
【0139】
別のヌクレアーゼシステムは、CRISPR/Casシステムとして知られる細菌及び古細菌中に見られる、いわゆる獲得免疫系の使用を伴う。CRISPR/Casシステムは、細菌の40%及び古細菌の90%中に見られ、システムの複雑さが異なる。例えば、米国特許第8,697,359号を参照のこと。CRISPR遺伝子座(クラスター化された規則的に間隔をあけた短い回文反復配列)は、生物のゲノム内の領域であり、外来DNAの短いセグメントが、短い反復回文配列の間に組み込まれている。これらの遺伝子座は転写され、RNA転写産物(「pre-crRNA」)は、短いCRISPR RNA(crRNA)にプロセシングされる。CRISPR/Casシステムには3つのタイプがあり、いずれもこれらのRNA及び「Cas」タンパク質(CRISPR関連)として知られるタンパク質を組み込んでいる。I型及びIII型はいずれもpre-crRNAをプロセシングするCasエンドヌクレアーゼを保有し、完全にプロセシングされてcrRNAになると、crRNAに相補的な核酸を切断できるマルチCasタンパク質複合体が組み立てられる。
【0140】
タイプIIシステムでは、crRNAは、異なるメカニズムを使用して産生され、このメカニズムでは、pre-crRNA中の反復配列に相補的なトランス活性化RNA(tracrRNA)が、Cas9タンパク質またはそのバリアントの存在下で、二本鎖特異的RNase IIIによるプロセシングを引き起こす。その後、Cas9は、成熟crRNAに相補的な標的DNAを切断できるが、Cas9による切断は、crRNAと標的DNAとの間の塩基対形成と、PAM配列(プロトスペーサー隣接モチーフ)と呼ばれるcrRNA中の短いモチーフの存在の両方に依存する(Qi et al(2013)Cell 152:1173を参照)。さらに、tracrRNAは、その3’末端で、crRNAと塩基対を形成するため、存在する必要があり、この結合が、Cas9の活性を引き起こす。
【0141】
Cas9タンパク質には、少なくとも2つのヌクレアーゼドメインがある。1つのヌクレアーゼドメインは、HNHエンドヌクレアーゼと同様であり、もう1つは、Ruvエンドヌクレアーゼドメインに類似している。HNH型ドメインは、crRNAに相補的なDNA鎖の切断に関与していると考えられるが、Ruvドメインは、非相補鎖を切断する。Cas9のバリアントは、オフターゲット活性を低下させるCas9ニッカーゼ変異体(例えば、Ran et al.(2014)Cell 154(6):1380-1389を参照)、nCas、Cas9-D10Aなど、当業者により認識されている。
【0142】
crRNA-tracrRNA複合体の必要性は、crRNAとtracrRNAとのアニーリングによって通常形成されるヘアピンを含む、操作された「シングルガイドRNA」(sgRNA)を使用することで回避できる(Jinek et al(2012)Science 337:816及びCong et al(2013)Sciencexpress/10.1126/science.1231143)を参照)。したがって、外因的に導入されたCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント)及びガイドRNA(例えば、sgRNAまたはgRNA)は、標的細胞のゲノム内の特定の遺伝子座において、DNA破断を誘導することができる。標的化に好適であるシングルガイドRNAまたはガイドRNA(sgRNAまたはgRNA)配列の非限定的な例は、米国出願2015/0056705の表1に示され、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。さらに、sgRNAまたはgRNAは、表3A及び表3Bのものなど、本明細書に記載のGSH遺伝子座の配列を含み得る。
【0143】
いくつかの実施形態では、遺伝子編集核酸配列は、配列特異的ヌクレアーゼ、1つまた以上のガイドRNA(gRNA)、CRISPR/Cas、リボ核タンパク質(RNP)、またはそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される遺伝子編集核酸分子をコードする。いくつかの実施形態では、配列特異的ヌクレアーゼは、TALヌクレアーゼ、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、megaTAL、またはCRISPR/CasシステムのRNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Casタンパク質、例えば、CAS1~9、Csy、Cse、Cpfl、Cmr、Csx、Csf、cpfl、nCASなど)を含む。これらの遺伝子編集システムは、当業者に知られている。例えば、TALENSは、国際特許出願PCT/US2013/038536、及び米国特許公開第2017-0191078-A9に記載されており、その全体が、参照によって本明細書に組み込まれる。CRISPR cas9システムは、当技術分野で知られており、2013年3月に出願された米国特許出願第13/842,859号、及び米国特許第8,697,359号、同第8771,945号、同第8795,965号、同第8,865,406号、同第8,871,445号に記載されている。本明細書に記載の組換えビリオンは、CRISPRiまたはCRISPRa dCas系、nCas、またはCas13系などの不活性化ヌクレアーゼシステムにも有用である。
【0144】
ガイドRNA(gRNA)
一般に、ガイド配列は、標的配列とハイブリダイズし、選択されたゲノム標的配列に対するRNAガイドエンドヌクレアーゼ複合体の配列特異的標的化に向けるために、標的ポリヌクレオチド配列との十分な相補性を有する任意のポリヌクレオチド配列である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、標的配列、及び例えば、リボ核タンパク質(RNP)、例えば、CRISPR/Cas複合体を形成することができるCRISPR関連タンパク質に結合する。
【0145】
いくつかの実施形態では、ガイドRNA(gRNA)配列は、gRNA配列をゲノム内の所望の部位に向けて、ガイド配列とRNAガイドエンドヌクレアーゼとの会合を可能にするcrRNA及び/またはtracrRNA配列に融合させるターゲティング配列を含む。いくつかの実施形態では、ガイド配列とその対応する標的配列との間の相補性の程度は、好適なアラインメントアルゴリズムを使用して最適にアラインされた場合、少なくとも50%、60%、75%、80%、85%、90%、95%、97.5%、99%、またはそれ以上である。最適なアライメントは、配列を整列させるための適切なアルゴリズム、例えば、Smith-Watermanアルゴリズム、Needleman-Wunschアルゴリズムのほか、Burrows-Wheeler Transformに基づくアルゴリズム(例えば、Burrows Wheeler Aligner)、ClustalW、Clustal X、BLAT、Novoalign(Novocraft Technologies,ELAND (Illumina,San Diego,Calif.)、SOAP、及びMaqを使用して、決定可能である。
【0146】
ガイド配列は、任意の標的配列を標的とするように選択できる。いくつかの実施形態では、標的配列は、本明細書に開示されるとおり、細胞のゲノム内またはGSH内の配列である。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、標的DNA配列のいずれかの鎖に相補的であり得る。当業者は、RNAガイドエンドヌクレアーゼによる標的切断の目的のために、ゲノム中において固有である標的配列が、ゲノム中に2回以上生じる標的配列よりも好ましいことを理解する。バイオインフォマティクスソフトウェアを使用して、ガイドRNAのオフターゲット効果を予測し、最小限に抑えることができる(例えば、以下を参照:Naito et al.“CRISPRdirect:software for designing CRISPR/Cas guide RNA with reduced off-target sites”Bioinformatics(2014),epub;Heigwer et al.“E-CRISP:fast CRISPR target site identification”Nat.Methods 11:122-123(2014);Bae et al.“Cas-OFFinder: a fast and versatile algorithm that searches for potential off-target sites of Cas9 RNA-guided endonucleases”Bioinformatics 30(10):1473-1475(2014);Aach et al.“CasFinder:Flexible algorithm for identifying specific Cas9 targets in genomes”BioRxiv(2014))。
【0147】
一般に、「crRNA/tracrRNA融合配列」という用語は、本明細書で使用される場合、固有のターゲティング配列に融合され、ガイドRNA及びRNAガイドエンドヌクレアーゼを含む複合体の形成を可能にするように機能する核酸配列を指す。このような配列は、(i)本明細書に記載の標的配列に対応する「プロトスペーサー」と呼ばれる可変配列、及び(ii)CRISPR反復を含む原核生物中のCRISPR RNA(crRNA)配列をモデルにすることができる。同様に、融合体のtracrRNA(「トランス活性化CRISPR RNA」)部分は、エンドヌクレアーゼ複合体の形成を可能にするために、原核生物中におけるtracrRNA配列と同様の二次構造(例えば、ヘアピン)を含むように設計することができる。いくつかの実施形態では、1つの転写産物は、ポリT配列などの転写終結配列、例えば6つのTヌクレオチドをさらに含む。いくつかの実施形態では、ガイドRNAは、2つのRNA分子を含むことができ、本明細書では「二重ガイドRNA」または「dgRNA」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、dgRNAは、crRNAを含む第1のRNA分子と、tracrRNAを含む第2のRNA分子とを含み得る。第1及び第2のRNA分子は、crRNA上のフラグポールとtracrRNAとの間の塩基対形成を介して、RNA二本鎖を形成し得る。dgRNAを使用する場合、フラグポールの長さに上限はない。
【0148】
他の実施形態では、ガイドRNAは、1つのRNA分子を含むことができ、本明細書では「シングルガイドRNA」または「sgRNA」と呼ばれる。いくつかの実施形態では、sgRNAは、tracrRNAに共有結合により連結したcrRNAを含み得る。いくつかの実施形態では、crRNA及びtracrRNAは、リンカーを介して共有結合により連結され得る。いくつかの実施形態では、sgRNAは、crRNA上のフラグポールとtracrRNAとの間の塩基対合を介してステムループ構造を含むことができる。いくつかの実施形態では、シングルガイドRNAは、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも110、少なくとも120、またはそれ以上のヌクレオチド長(例えば、75~120、75~110、75~100、75~90、75~80、80~120、80~110、80~100、80~90、85~120、85~110、85~100、85~90、90~120、90~110、90~100、100~120、100~120ヌクレオチド長)である。いくつかの実施形態では、目的の核酸をGSH遺伝子座に組み込むための本明細書に記載の核酸ベクター、またはその組成物は、少なくとも1つのgRNAをコードする核酸を含む。例えば、第2のポリヌクレオチド配列は、1gRNA~50gRNA、または1~50までの任意の整数をコードし得る。異なるgRNAをコードするポリヌクレオチド配列の各々は、プロモーターに作動可能に連結することができる。いくつかの実施形態では、異なるgRNAに作動可能に連結されたプロモーターは、同じプロモーターであってもよい。異なるgRNAに作動可能に連結されるプロモーターは、異なるプロモーターであってもよい。プロモーターは、構成的プロモーター、誘導性プロモーター、抑制性プロモーター、または調節性プロモーターであり得る。
【0149】
いくつかの実施形態では、GSH遺伝子座への組み込みのための核酸がCasニッカーゼ(nCas;例えば、Cas9ニッカーゼまたはCas9-D10A)をコードするか、または当該核酸を含む組換えビリオンが、Casニッカーゼ(nCas;例えば、Cas9ニッカーゼまたはCas9-D10A)をコードする核酸を含む別のビリオンと共に投与される。そのようなnCas酵素は、本明細書に記載のGSHとの相同性を含むガイドRNAと併せて使用され、例えば、物理的に拘束された配列を解放するため、またはねじり解放を提供するために使用できることが本明細書で企図される。物理的に拘束された配列の解放は、例えば、ゲノム配列との相互作用のために相同性指向修復(HDR)鋳型相同性アーム(複数可)が露出されるように、ベクターを「ほどく」ことができる。
【0150】
いくつかの実施形態では、ジンクフィンガーヌクレアーゼを使用して、所望の核酸の組み込みを促進するDNA破断を誘導する。本明細書で交換可能に使用される「ジンクフィンガーヌクレアーゼ」または「ZFN」は、完全に組み立てられたときにDNAを切断することができる少なくとも1つのヌクレアーゼまたはヌクレアーゼの一部に効率よく連結された少なくとも1つのジンクフィンガーDNA結合ドメインを含むキメラタンパク質分子を指す。本明細書で使用される「ジンクフィンガー」は、DNA配列を認識して結合するタンパク質構造を指す。ジンクフィンガードメインは、ヒトプロテオームで最も一般的なDNA結合モチーフである。1つのジンクフィンガーには、約30のアミノ酸が含まれており、ドメインは典型的には、塩基対ごとに1つのアミノ酸側鎖の相互作用を介してDNAの3つの連続塩基対に結合することによって機能する。
【0151】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の組み込みのための核酸は、例えばPorro et al.,Promoterless gene targeting without nucleases rescues lethality of a Crigler-Najjar syndrome mouse model,EMBO Molecular Medicine,(2017)に記載されているように、ヌクレアーゼを含まない相同依存性修復系で標的ゲノムに組み込まれる。いくつかの実施形態では、in vivo遺伝子ターゲティングアプローチは、ヌクレアーゼを使用しないドナー配列の挿入に好適である。いくつかの実施形態では、ドナー配列は、プロモーターレスであってもよい。
【0152】
いくつかの実施形態では、制限部位間に位置するヌクレアーゼは、RNAガイドエンドヌクレアーゼであり得る。本明細書で使用される用語「RNAガイドエンドヌクレアーゼ」は、選択された標的DNA配列に相補的な領域を含むRNA分子と複合体を形成するエンドヌクレアーゼを指し、これにより、RNA分子が、選択された配列に結合して、本明細書で同定されるGSH中の選択された標的DNA配列に対してエンドヌクレアーゼ活性を向けるようになる。
【0153】
CRISPR/CASシステム
当該分野で認識され、上記で説明されているように、CRISPR-CAS9システムは、生物の遺伝子配列を改変することができるタンパク質及びリボ核酸(「RNA」)の組み合わせを含む(例えば、米国公開第2014/0170753号を参照)。CRISPR-Cas9は、哺乳動物細胞における非相同末端結合(NHEJ)または相同組換えを介したCas9媒介ゲノム編集のための一連のツールを提供する。当業者は、I型、II型、及びIII型など、複数の既知のCRISPRシステムから選択することができる。いくつかの実施形態では、目的の核酸をGSH遺伝子座に組み込むための本明細書に記載の核酸は、ガイドRNA、tracrRNA、またはCas(例えば、Cas9またはそのバリアント)など、これらのシステムの1つ以上のコンポーネントをコードする配列を含むように設計され得る。特定の実施形態では、1つのプロモーターが、ガイド配列及びtracrRNAの発現を駆動し、別個のプロモーターがCas(例えば、Cas9またはそのバリアント)の発現を駆動する。当業者は、特定のCasヌクレアーゼが、標的核酸配列に隣接するプロトスペーサー隣接モチーフ(PAM)の存在を必要とすることを理解するであろう。
【0154】
Cas(例えば、Cas9またはそのバリアント)を含むRNAガイドヌクレアーゼは、本明細書に記載の組換えビリオンによって送達される核酸の組み込みを開始する及び/または促進するのに好適である。ガイドRNAは、DNAの同じ鎖または相補鎖に向けることができる。
【0155】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法及び組成物は、宿主細胞にCRISPRi(CRISPR干渉)及び/またはCRISPRa(CRISPR活性化)システムを含むことができる、及び/またはこれらのシステムを送達するために使用することができる。CRISPRi及びCRISPRaシステムは、二本鎖破断(DSB)を生成することができない不活性化RNAガイドエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント)を含む。これにより、エンドヌクレアーゼは、ガイドRNAと組み合わせて、ゲノム内の標的配列に特異的に結合し、RNA指向性可逆的転写制御を提供する。
【0156】
したがって、いくつかの実施形態では、目的の核酸をGSH遺伝子座に組み込むための本明細書に記載の核酸組成物及び方法は、不活性化されたエンドヌクレアーゼ、例えば、RNAガイドエンドヌクレアーゼ及び/またはCas9もしくはそのバリアントを含むことができ、不活性化されたエンドヌクレアーゼは、エンドヌクレアーゼ活性を欠いているが、例えば1つ以上のガイドRNA及び/またはsgRNAと組み合わせて、部位特異的方法でDNAに結合する能力を保持している。いくつかの実施形態では、ベクターは、1つ以上のtracrRNA、ガイドRNA、またはsgRNAをさらに含むことができる。いくつかの実施形態では、不活性化エンドヌクレアーゼは、転写活性化ドメインをさらに含むことができる。
【0157】
いくつかの実施形態では、目的の核酸をGSH遺伝子座に組み込むための本明細書に記載の核酸組成物及び方法は、ハイブリッドリコンビナーゼを含むことができる。例えば、Cys2-His2ジンクフィンガーまたはTALエフェクターDNA結合ドメインに融合したセリンリコンビナーゼのリゾルバーゼ/インベルターゼファミリーに由来する活性化触媒ドメインをベースにしたハイブリッドリコンビナーゼは、哺乳動物細胞におけるターゲティング特異性を改善すること、及び優れた部位特異的組み込み率を達成できる任意のクラスの試薬である。好適なハイブリッドリコンビナーゼとしては、Gaj et al.Enhancing the Specificity of Recombinase -Mediated Genome Engineering through Dimer Interface Redesign,Journal of the American Chemical Society,(2014)に記載のものが挙げられる。
【0158】
本明細書に記載のヌクレアーゼは、改変することができ、例えば、配列特異的ヌクレアーゼを設計するように操作することができる(例えば、米国特許第8,021,867号を参照)。ヌクレアーゼは、以下に記載の方法を用いて設計することができる:例えばCerto et al.Nature Methods(2012)9:073-975;米国特許第8,304,222号;同第8,021,867号;同第8,119,381号;同第8,124,369号;同第8,129,134号;同第8,133,697号;同第8,143,015号;同第8,143,016号;同第8,148,098号;または同第8,163,514号、それぞれの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。あるいは、部位特異的な切断特性を有するヌクレアーゼは、市販の技術、例えばPrecision BioSciencesのDirected Nuclease Editor(商標)ゲノム編集技術を使用して得ることができる。
【0159】
MEGATAL
いくつかの実施形態では、本明細書に記載のヌクレアーゼは、megaTALであり得る。MegaTALは、転写活性化因子様(TAL)エフェクタードメイン及びメガヌクレアーゼドメインを含む遺伝子操作された融合タンパク質である。MegaTALは、TALの標的特異性操作の容易さを保持しながら、オフターゲット効果及び全体的な酵素サイズを減少させ、活性を高める。MegaTALの構築及び使用は、例えば、Boissel et al.2014 Nucleic Acids Research 42(4):259l-60l及びBoissel 2015 Methods Mol Biol 1239:171-196に詳細に記載されている。megaTAL媒介遺伝子ノックアウト及び遺伝子編集のためのプロトコールは、当技術分野で公知である。例えば、Sather et al.Science Translational Medicine 2015 7(307):ral56及びBoissel et al.2014 Nucleic Acids Research 42(4):259l-60lを参照されたい。MegaTALは、本明細書に記載の方法及び組成物のいずれにおいても代替エンドヌクレアーゼとして使用することができる。
【0160】
マーカー/レポーター遺伝子
例示的なマーカー遺伝子には、生物発光レポーター遺伝子と同様に、蛍光レポーター遺伝子、例えばGFP、RFPなどのいずれかが含まれるが、これらに限定されない。例示的なマーカー遺伝子としては、これらに限定されないが、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(GST)、セイヨウワサビペルオキシダーゼ(HRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)β-ガラクトシダーゼ、β-グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ、緑色蛍光タンパク質(例えば、GFP、GFP-2、tagGFP、turboGFP、sfGFP、EGFP、Emerald、Azami Green、Monomeric Azami Green、CopGFP、AceGFP、ZsGreenl)、HcRed、DsRed、シアン蛍光タンパク質(CFP)、黄色蛍光タンパク質(例えば、YFP、EYFP、Citrine、Venus YPet、PhiYFP、ZsYellowl)、シアン蛍光タンパク質(例えば、ECFP、Cerulean、CyPet AmCyanl、Midoriishi-Cyan)、赤色蛍光タンパク質(例えば、mKate、mKate2、mPlum、DsRed monomer、mCherry、mRFPl、DsRed-Express、DsRed2、HcRed-Tandem、HcRed 1、AsRed2、eqFP6l 1、mRaspberry、mStrawberry、Jred)、オレンジ色蛍光タンパク質(例えば、mOrange、mKO、Kusabira-Orange、monomeric Kusabira-Orange、mTangerine、tdTomato)及び青色蛍光タンパク質(BFP)を含む自己蛍光タンパク質が挙げられる。
【0161】
マーカー遺伝子には、これらに限定されないが、β-ラクタマーゼ、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、アルカリホスファターゼ、チミジンキナーゼ、緑色蛍光タンパク質(GFP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、ルシフェラーゼ、及び当該分野でよく知られている他のものをコードするDNA配列も挙げられる。レポーター配列は、それらの発現を駆動する調節エレメントと結合すると、酵素、放射線、比色分析、蛍光または他の分光学的アッセイ、蛍光活性化セルソーティングアッセイのほかに、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)などの免疫学的アッセイ、ラジオイムノアッセイ(RIA)及び免疫組織化学など、従来の手段で検出可能なシグナルを提供する。例えば、マーカー配列が、LacZ遺伝子である場合、シグナルを運ぶベクターの存在は、β-ガラクトシダーゼ活性のアッセイによって検出される。いくつかの実施形態では、マーカー遺伝子が緑色蛍光タンパク質またはルシフェラーゼである場合、シグナルを運ぶベクターは、ルミノメーターにおける可視光吸光度または光生成にそれぞれ基づいて比色的に測定され得る。そのようなレポーターは、例えば、核酸の組織特異的ターゲティング能力及び組織特異的プロモーター調節活性を検証するのに有用であり得る。
【0162】
マーカー遺伝子としては、これらに限定されないが、抗生物質耐性(例えば、アンピシリン耐性、ネオマイシン耐性、G418耐性、ピューロマイシン耐性)を媒介するタンパク質をコードする配列、着色タンパク質、蛍光タンパク質、または発光タンパク質(例えば、緑色蛍光タンパク質、増強緑色蛍光タンパク質、赤色蛍光タンパク質、ルシフェラーゼ)をコードする配列、及び細胞代謝を媒介し、その結果細胞成長速度及び/または遺伝子増幅を増強するタンパク質(例えば、ジヒドロ葉酸レダクターゼ)が挙げられる。
【0163】
核酸
ノンコーディングRNA&コーディングRNA
いくつかの実施形態では、目的の核酸は、受容体、毒素、ホルモン、酵素、マーカー遺伝子によってコードされるマーカータンパク質(上記参照)、または細胞表面タンパク質もしくは治療用タンパク質、ペプチドもしくは抗体もしくはそれらのフラグメントをコードする。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるベクター組成物中で使用するための目的の核酸は、細胞内での発現が望まれる任意のポリペプチド、例えば、これに限定されないが、抗体、抗原、酵素、受容体(細胞表面または核)、ホルモン、リンホカイン、サイトカイン、レポーターポリペプチド、成長因子、及び上記のいずれかの機能的フラグメントなどをコードする。
【0164】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えビリオン中で使用するための目的の核酸は、本明細書に記載の疾患のいずれかを含むがこれらに限定されない疾患を有する対象において欠失しているかまたは非機能的であるポリペプチドをコードする。いくつかの実施形態では、疾患は、遺伝性疾患である。
【0165】
いくつかの態様において、本明細書で定義される目的の核酸は、哺乳動物における1つ以上の遺伝的欠陥または機能障害、例えば、哺乳動物におけるポリペプチド欠乏またはポリペプチド過剰(例えば、哺乳動物におけるポリペプチド欠損またはポリペプチド過剰)を予防または治療する、特に細胞及び組織におけるそのようなポリペプチドの欠損に関連する障害のうちの1つ以上を呈しているヒトにおける欠損の重症度または程度を予防する、治療する、または軽減するための方法において使用するための核酸をコードする。この方法は、好ましくは、薬学的に許容される組成物中、本明細書に記載の組換えビリオンにパッケージされた1つ以上の治療用ペプチド、ポリペプチド、siRNA、マイクロRNA、アンチセンスヌクレオチドなどをコードする目的の核酸(例えば、本開示によって記載される核酸)を、そのような障害に罹患している対象の欠損または障害を予防または治療するのに十分な量及び期間で、対象に投与することを含む。
【0166】
したがって、いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるベクター組成物中で使用するための目的の核酸は、哺乳動物対象における疾患の治療または予防に有用な、1つ以上のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードすることができる。
【0167】
本明細書に開示される組成物及び方法中で使用するための例示的な目的の核酸としては、これらに限定されないが、BDNF、CNTF、CSF、EGF、FGF、G-SCF、GM-CSF、ゴナドトロピン、IFN、IFG-1、M-CSF、NGF、PDGF、PEDF、TGF、VEGF、TGF-B2、TNF、プロラクチン、ソマトトロピン、XIAP1、IL-1、IL-2、IL-3、IL-4、IL-5、IL-6、IL-7、IL-8、IL-9、IL-10、IL-10(187A)、ウイルス性IL-10、IL-11、IL-12、IL-13、IL-14、IL-15、IL-16、IL-17、IL-18、VEGF、FGF、SDF-1、コネキシン40、コネキシン43、SCN4a、HIFia、SERCa2a、ADCYl、及びADCY6が挙げられる。
【0168】
いくつかの実施形態では、核酸は、以下からなる群から選択されるコード配列またはそのフラグメントを含み得る:哺乳動物のβグロビン遺伝子(例えば、HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、αヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、B細胞リンパ腫/白血病11A(BCL11A)遺伝子、クルッペル様因子1(KLF1)遺伝子、CCR5遺伝子、CXCR4遺伝子、PPP1R12C(AAVS1)遺伝子、ヒポキサンチンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HPRT)遺伝子、アルブミン遺伝子、第VIII因子遺伝子、第IX因子遺伝子、ロイシンリッチリピートキナーゼ2(LRRK2)遺伝子、ハンチンチン(HTT)遺伝子、ロドプシン(RHO)遺伝子、嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)遺伝子、F8またはその断片(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチドをコードする断片(例えば、VIII SQ、p-VIII))、サーファクタントプロテインB遺伝子(SFTPB)、T細胞受容体アルファ(TRAC)遺伝子、T細胞受容体ベータ(TRBC)遺伝子、プログラム細胞死1(PD1)遺伝子、細胞傷害性Tリンパ球抗原4(CTLA-4)遺伝子、ヒト白血球抗原(HLA)A遺伝子、HLA B遺伝子、HLA C遺伝子、HLA-DPA遺伝子、HLA-DQ遺伝子、HLA-DRA遺伝子、LMP7遺伝子、抗原プロセシングに関連するトランスポーター(TAP)1遺伝子、TAP2遺伝子、タパシン遺伝子(TAPBP)、クラスII主要組織適合性複合体トランスアクチベーター(CUT A)遺伝子、ジストロフィン遺伝子(DMD)、糖質コルチコイド受容体遺伝子(GR)、IL2RG遺伝子、RFX5遺伝子、FAD2遺伝子、FAD3遺伝子、ZP15遺伝子、KASII遺伝子、MDH遺伝子、及び/またはEPSPS遺伝子。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えビリオン中で使用する目的の核酸を使用して、対象において発現が低下している、サイレンシングされている、またはそうでなければ機能不全である遺伝子の発現を回復させることができる。同様に、いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えビリオン中で使用するための目的の核酸は、対象において異常に発現する遺伝子の発現をノックダウンするために使用することもできる。
【0170】
いくつかの実施形態では、機能不全遺伝子は、がんを有する対象においてサイレンシングされた腫瘍抑制因子である。いくつかの実施形態では、機能不全遺伝子は、がんを有する対象において異常に発現するがん遺伝子である。がんに関連する例示的な遺伝子(がん遺伝子及びがん抑制因子)としては、以下が含まれるが、これらに限定されない:AARS、ABCB 1、ABCC4、ABI2、ABL1、ABL2、ACK1、ACP2、ACY1、ADSL、AK1、AKR1C2、AKT1、ALB、ANPEP、ANXAS、ANXA7、AP2Ml、APC、ARHGAPS、ARHGEFS、ARID4A、ASNS、ATF4、ATM、ATPSB、ATPSO、AXL、BARD1、BAX、BCL2、BHLHB2、BLMH、BRAF、BRCA1、BRCA2、BTK、CANX、CAP1、CAPN1、CAPNS1、CAV1、CBFB、CBLB、CCL2、CCND1、CCND2、CCND3、CCNE1、CCTS、CCYR61、CD24、CD44、CD59、CDC20、CDC25、CDC25A、CDC25B、CDC2LS、CDK10、CDK4、CDK5、CDK9、CDKL1、CDKN1A、CDKN1B、CDKN1C、CDKN2A、CDKN2B、CDKN2D、CEBPG、CENPC1、CGRRF1、CHAF1A、CIB1、CKMT1、CLK1、CLK2、CLK3、CLNS1A、CLTC、COL1A1、COL6A3、COX6C、COX7A2、CRAT、CRHR1、CSF1R、CSK、CSNK1G2、CTNNA1、CTNNB1、CTPS、CTSC、CTSD、CUL1、CYR61、DCC、DCN、DDX10、DEK、DHCR7、DHRS2、DHX8、DLG3、DVL1、DVL3、E2F1、E2F3、E2F5、EGFR、EGR1、EIF5、EPHA2、ERBB2、ERBB3、ERBB4、ERCC3、ETV1、ETV3、ETV6、F2R、FASTK、FBN1、FBN2、FES、FGFR1、FGR、FKBP8、FN1、FOS、FOSL1、FOSL2、FOXG1A、FOXO1A、FRAP1、FRZB、FTL、FZD2、FZDS、FZD9、G22P1、GAS6、GCNSL2、GDF1S、GNA13、GNAS、GNB2、GNB2Ll、GPR39、GRB2、GSK3A、GSPT1、GTF21、HDAC1、HDGF、HMMR、HPRT1、HRB、HSPA4、HSPAS、HSPA8、HSPB1、HSPH1、HYAL1、HYOU1、ICAM1、ID1、ID2、IDUA、IER3、IFITM1、IGF1R、IGF2R、IGFBP3、IGFBP4、IGFBPS、IL1B、ILK、ING1、IRF3、ITGA3、ITGA6、ITGB4、JAK1、JARID1A、JUN、JUNB、JUND、K-ALPHA-1、KIT、KITLG、KLK10、KPNA2、KRAS2、KRT18、KRT2A、KRT9、LAMB1、LAMP2、LCK、LCN2、LEP、LITAF、LRPAP1、LTF、LYN、LZTR1、MADH1、MAP2K2、MAP3K8、MAPK12、MAPK13、MAPKAPK3、MAPRE1、MARS、MAS1、MCC、MCM2、MCM4、MDM2、MDM4、MET、MGST1、MICB、MLLT3、MME、MMP1、MMP14、MMP17、MMP2、MNDA、MSH2、MSH6、MT3、MYB、MYBL1、MYBL2、MYC、MYCLI、MYCN、MYD88、MYL9、MYLK、NEO1、NF1、NF2、NFKB I、NFKB2、NFSF7、NID、NINJ1、NMBR、NME1、NME2、NME3、NOTCH 1、NOTCH2、NOTCH4、NPM1、NQO1、NRlD1、NR2Fl、NR2F6、NRAS、NRG1、NSEP1、OSM、PA2G4、PABPC1、PCNA、PCTK1、PCTK2、PCTK3、PDGFA、PDGFB、PDGFRA、PDPK1、PEAl5、PFDN4、PFDN5、PGAM1、PHB、PIK3CA、PIK3CB、PIK3CG、PIM1、PKM2、PKMYT1、PLK2、PPARD、PPARG、PPIH、PPP1CA、PPP2RSA、PRDX2、PRDX4、PRKAR1A、PRKCBP1、PRNP、PRSS15、PSMA1、PTCH、PTEN、PTGS1、PTMA、PTN、PTPRN、RABSA、RAC1、RADSO、RAF1、RALBP1、RAP1A、RARA、RARB、RASGRF1、RB1、RBBP4、RBL2、REA、REL、RELA、RELB、RET、RFC2、RGS19、RHOA、RHOB、RHOC、RHOD、RIPK1、RPN2、RPS6KB 1、RRM1、SARS、SELENBP1、SEMA3C、SEMA4D、SEPP1、SERPINH1、SFN、SFPQ、SFRS7、SHB、SHH、SIAH2、SIVA、SIVA TP53、SKI、SKIL、SLC16A1、SLC1A4、SLC20Al、SMO、SMPD1、SNAI2、SND1、SNRPB2、SOCS1、SOCS3、SOD1、SORT1、SPINT2、SPRY2、SRC、SRPX、STAT1、STAT2、STAT3、STAT5B、STC1、TAF1、TBL3、TBRG4、TCF1、TCF7L2、TFAP2C、TFDP1、TFDP2、TGFA、TGFB1、TGFBR1、TGFBR2、TGFBR3、THBS1、TIE、TIMP1、TIMP3、TJP1、TK1、TLE1、TNF、TNFRSF10A、TNFRSF10B、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFRSF6、TNFSF7、TNK1、TOB1、TP53、TP53BP2、TP5313、TP73、TPBG、TPT1、TRADD、TRAM1、TRRAP、TSG101、TUFM、TXNRD1、TYR03、UBC、UBE2L6、UCHL1、USP7、VDAC1、VEGF、VHL、VIL2、WEE1、WNT1、WNT2、WNT2B、WNT3、WNTSA、WT1、XRCC 1、YES 1、YWHAB、YWHAZ、ZAP70、及びZNF9。
【0171】
いくつかの実施形態では、機能不全遺伝子は、HBBである。いくつかの実施形態では、HBBは、β-グロビン産生を低減または排除する少なくとも1つのナンセンス、フレームシフト、またはスプライシング変異を含む。いくつかの実施形態では、HBBは、HBBのプロモーター領域またはポリアデニル化シグナル中に少なくとも1つの変異を含む。いくつかの実施形態では、HBB変異は、以下のうちの少なくとも1つである:c.17A>T、c.-1360G、c.92+1G>A、c.92+6T>C、c.93-21G>A、c.1180T、c.316-106OG、c.25_26delAA、c.27_28insG、c.92+5G>C、c.1180T、c.l35delC、c.315+lG>A、c.-78A>G、c.52A>T、c.59A>G、c.92+5G>C、c.l24_127delTTCT、c.316-1970T、c.-78A>G、c.52A>T、c.l24_127delTTCT、c.316-197C>T、C.-1380T、c.-79A>G、c.92+5G>C、c.75T>A、c.316-2A>G、及びc.316-2A>C。
【0172】
特定の実施形態では、鎌状赤血球症は、抗鎌状赤血球症活性を含む1つ以上の変異を含むHBBバリアントを導入する遺伝子療法(例えば、幹細胞遺伝子療法)によって改善される。いくつかの実施形態では、HBBバリアントは、二重変異体(βAS2;T87Q及びE22A)であってもよい。他の実施形態では、HBBバリアントは、三重変異βグロビンバリアント(βAS3;T87Q、E22A、及びG16D)であってもよい。β16でのグリシンからアスパラギン酸への修飾は、α鎖への結合に関して鎌状グロビン(βS、HbS)よりも優れた利点を提供する。β22でのグルタミン酸からアラニンへの修飾は、α20ヒスチジンとの軸相互作用を部分的に増強する。これらの修飾により、1つのT87Q修飾バリアントよりも優れた抗鎌状特性が得られ、胎児グロビンに適合する。SCDマウスモデルでは、βAS3を保有するSINレンチウイルスを形質導入する骨髄幹細胞の移植により、赤血球の生理機能及びSCDの臨床症状を逆転させた。したがって、このバリアントは、臨床試験でテストされているところである(識別子番号:NCT02247843)、Cytotherapy(2018)20(7):899-910。
【0173】
いくつかの実施形態では、機能不全遺伝子は、CFTRである。いくつかの実施形態では、CFTRは、ΔF508、R553X、R74W、R668C、S977F、L997F、K1060T、A1067T、R1070Q、R1066H、T3381、R334W、G85E、A46D、I336K、H1054D、M1V、E92K、V520F、H1085R、R560T、L927P、R560S、N1303K、M1101K、L1077P、R1066M、R1066C、L1065P、Y569D、A561E、A559T、S492F、L467P、R347P、S341P、I507del、G1061R、G542X、W1282X、及び2184InsAから選択される変異を含む。
【0174】
いくつかの実施形態では、本明細書で定義される目的の核酸は、がんに関連する遺伝子産物(例えば、がん遺伝子)の発現を阻害する低分子干渉核酸(例えば、shRNA、miRNA)をコードし、がんを予防または治療するために使用され得る。いくつかの実施形態では、本明細書で定義される目的の核酸は、例えば研究目的で、例えばがんを研究するためまたはがんを予防もしくは治療する治療剤を特定するために使用するために、がんに関連する遺伝子産物(またはがんに関連する遺伝子の発現を阻害する機能的RNA)をコードする。
【0175】
当業者はまた、目的の核酸が、タンパク質またはポリペプチドの機能的に同等なバリアントまたは相同体を提供し得る保存的アミノ酸置換をもたらす1つ以上の変異を含み得ることを理解する。さらに、本開示では、ドミナントネガティブ変異を有する、本明細書に記載の組換えビリオン中の目的の核酸が企図される。例えば、目的の核酸は、野生型タンパク質と同じエレメントと相互作用し、それによって野生型タンパク質の機能のいくつかの態様を遮断する変異タンパク質をコードすることができる。
【0176】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えビリオン中の目的の核酸は、miRNAを含む。miRNA及び他の低分子干渉核酸は、標的RNA転写産物の切断/分解または標的メッセンジャーRNA(mRNA)の翻訳抑制を介して、遺伝子発現を調節する。miRNAは、典型的には、19~25の最終非翻訳RNA産物としてネイティブに発現する。miRNAは、標的mRNAの3’非翻訳領域(UTR)との配列特異的相互作用を介して活性を呈する。これらの内因的に発現したmiRNAは、ヘアピン前駆体を形成し、これは、その後プロセシングされて、miRNA二本鎖に、さらに「成熟」一本鎖miRNA分子になる。この成熟miRNAは、成熟miRNAに対する相補性に基づいて、標的mRNAの、例えば、3’UTR領域中において、標的部位を同定する多タンパク質複合体miRISCをガイドする。図5A及び図5Bには、miRNA遺伝子、及びそれらの相同体、または本明細書に記載の核酸によってコードされる低分子干渉核酸の標的(例えば、miRNAスポンジ、アンチセンスオリゴヌクレオチド、TuD RNA)の非限定的リストを開示する。
【0177】
miRNAは、標的とするmRNAの機能を阻害し、その結果、mRNAによってコードされるポリペプチドの発現を阻害する。したがって、miRNAの活性を(部分的または完全に)遮断する(例えば、miRNAをサイレンシングする)ことにより、発現が阻害される(ポリペプチドの抑制を解除する)ポリペプチドの発現を効果的に誘導または回復することができる。いくつかの実施形態では、miRNAのmRNA標的によってコードされるポリペプチドの抑制を解除することは、様々な方法のいずれか1つによって細胞内のmiRNA活性を阻害することにより達成される。例えば、miRNAの活性の遮断は、miRNAに相補的であるかまたは実質的に相補的な低分子干渉核酸(例えば、アンチセンスオリゴヌクレオチド、miRNAスポンジ、TuD RNA)とのハイブリダイゼーションによって達成され得、それによってmiRNAとその標的mRNAとの相互作用を遮断する。本明細書において、miRNAに実質的に相補的な低分子干渉核酸は、miRNAとハイブリダイズし、miRNAの活性を遮断することができるものである。いくつかの実施形態では、miRNAに実質的に相補的な低分子干渉核酸は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、または18塩基以外のすべてにおいて、miRNAに相補的な低分子干渉核酸である。いくつかの実施形態では、miRNAと実質的に相補的な低分子干渉核酸配列は、少なくとも1塩基において、miRNAと相補的な小さい干渉核酸配列である。
【0178】
調節配列
本明細書に開示される組換えビリオンの核酸は、転写または翻訳調節配列、例えば、プロモーター、エンハンサー、インシュレーター、内部リボソーム進入部位、2Aペプチド及び/またはポリアデニル化シグナルをコードする配列も含み得る。
【0179】
いくつかの実施形態では、調節配列は、好適なプロモーター配列を含み、本明細書に記載の目的の核酸などのプロモーター配列に作動可能に連結された遺伝子の転写を指示することができる。実施形態において、エンハンサー配列は、プロモーターの有効性を高めるためにプロモーターの上流に提供される。いくつかの実施形態では、調節配列は、エンハンサー及びプロモーターを含み、第2のヌクレオチド配列は、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列の上流にイントロン配列を含み、イントロンは、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位(複数可)を含み、プロモーターは、ヌクレアーゼをコードするヌクレオチド配列に作動可能に連結されている。
【0180】
本明細書に記載のものなどの好適なプロモーターは、ウイルスに由来することができ、したがってウイルスプロモーターと呼ぶことができ、または原核生物もしくは真核生物などの任意の生物に由来し得る。いくつかの実施形態では、プロモーターは、昆虫細胞または哺乳動物細胞に由来する。好適なプロモーターを使用して、任意のRNAポリメラーゼ(例えば、pol I、pol II、pol III)による発現を駆動することができる。プロモーターの例としては、これらに限定されないが、以下が挙げられる:SV40初期プロモーター、マウス乳癌ウイルス長末端反復(LTR)プロモーター、アデノウイルス主要後期プロモーター(Ad MLP);単純ヘルペスウイルス(HSV)プロモーター、CMV最初期プロモーター領域(CMVIE)などのサイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、ヒトU6小核プロモーター(Miyagishi et al.,Nature Biotechnology 20,497-500(2002))、増強U6プロモーター(例えば、Xia et al.,Nucleic Acids Res.2003 Sep.1;31(17))、ヒトH1プロモーター(H1)など。いくつかの実施形態では、これらのプロモーターは、1つ以上のヌクレアーゼ切断部位を含むように改変される。
【0181】
プロモーターは、発現をさらに増強するため、及び/またはその空間的発現及び/または時間的発現を変化させるために、1つ以上の特異的転写調節配列を含み得る。プロモーターは、遠位のエンハンサーまたはレプレッサエレメントを含んでいてもよく、それは転写開始部位から何千もの塩基対が離れた箇所に位置することができる。プロモーターは、ウイルス、細菌、真菌、植物、昆虫、及び動物などの供給源に由来し得る。プロモーターは、発現が生じる細胞、組織、もしくは器官に関して、または発現が生じる成長段階に関して、または生理的ストレス、病原体、金属イオン、もしくは誘導剤などの外部刺激に応答して、構造的または特異的に遺伝子コンポーネントの発現を制御することができる。プロモーターの代表的な例としては、バクテリオファージT7プロモーター、バクテリオファージT3プロモーター、SP6プロモーター、lacオペレーター-プロモーター、tacプロモーター、SV40後期プロモーター、SV40早期プロモーター、RSV-LTRプロモーター、CMV IEプロモーター、SV40早期プロモーター、またはSV40後期プロモーター、及びCMV IEプロモーター、ならびに以下に列挙するプロモーターが挙げられる。このようなプロモーター及び/またはエンハンサーは、目的の任意の遺伝子、例えば、遺伝子編集分子、ドナー配列、治療用タンパク質などの発現のために使用することができる。例えば、核酸は、DNAエンドヌクレアーゼまたはCRISPR/Cas9ベースのシステムに作動可能に連結されたプロモーターを含み得る。CRISPR/Cas9ベースのシステムまたは部位特異的ヌクレアーゼコード配列に作動可能に連結されたプロモーターは、サルウイルス40(SV40)由来のプロモーター、CAGプロモーター、マウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーター、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)プロモーター、例えば、ウシ免疫不全ウイルス(BIV)長末端反復(LTR)プロモーター、モロニーウイルスプロモーター、トリ白血病ウイルス(ALV)プロモーター、サイトメガロウイルス(CMV)プロモーター、例えば、CMV最初期プロモーター、エプスタイン・バーウイルス(EBV)プロモーター、またはラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーターであり得る。プロモーターはまた、ヒトユビキチンC(hUbC)、ヒトアクチン、ヒトミオシン、ヒトヘモグロビン、ヒト筋肉クレアチン、またはヒトメタロチオネインなどのヒト遺伝子由来のプロモーターであってもよい。プロモーターはまた、天然または合成の肝臓特異的プロモーターなどの組織特異的プロモーターであってもよい。一実施形態では、肝臓への送達は、肝細胞の表面上に存在する低密度リポタンパク質(LDL)受容体を介して肝細胞へのベクターを含む組成物の内因性ApoE特異的ターゲティングを使用して達成することができる。いくつかの実施形態では、調節エレメントの集合体を有するin silicoで設計された合成プロモーターが使用される。これらの合成プロモーターは、天然に存在するものではなく、標的組織中での最適な発現、調節された発現、またはウイルスキャプシド中での調整のために設計されている。
【0182】
いくつかの実施形態では、プロモーターは、(a)核酸に対して異種であるプロモーター;(b)核酸の組織特異的発現を促進するプロモーターであって、好ましくはプロモーターが、造血細胞特異的発現または赤血球系統特異的発現を促進するプロモーター;(c)核酸の構成的発現を促進するプロモーター;及び(d)任意により代謝産物または低分子または化学エンティティに応答して、誘導的に発現されるプロモーターから選択され得る。誘導性プロモーターの例としては、テトラサイクリン、キュメート(cumate)、ラパマイシン、FKCsA、ABA、タモキシフェン、青色光、及びリボスイッチによって調節されるプロモーターが挙げられる。追加の詳細は、例えば、Kallunki et al.(2019)Cells 8:E796で報告されており、これは、参照により、組み込まれる。いくつかの実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、Wiskott-Aldrichプロモーター、及びPKLRプロモーターから選択される。
【0183】
配列
本明細書において、コーディング領域は、アミノ酸残基に翻訳されるコドンを含むヌクレオチド配列の領域を指し、ノンコーディング領域は、アミノ酸に翻訳されないヌクレオチド配列の領域を指す。転写されたノンコーディング配列は、上流(5’-UTR)、下流(3’-UTR)、またはイントロンであり得る。転写されないノンコーディング配列は、エンハンサー及びプロモーターなどのシス作用性調節機能を有し得るか、または、DNA内の官能基を分離するために使用される非転写DNAである「スペーサー」、例えば、ベクターゲノムのサイズを増大させるために使用されるポリリンカーまたは「スタッファー(stuffer)」DNAなどとして作用し得る。
【0184】
相補または相補的とは、2つの核酸鎖の領域間、または同じ核酸鎖の2つの領域間の配列相補性の広い概念を指す。第1の核酸領域のアデニン残基は、残基がチミンまたはウラシルである場合、第1の領域に対して逆平行である第2の核酸領域の残基と特異的な水素結合を形成(「塩基対形成」)できることが知られている。同様に、第1の核酸鎖のシトシン残基は、残基がグアニンである場合、第1の鎖に対して逆平行である第2の核酸鎖の残基と塩基対形成できることが知られている。核酸の第1の領域は、2つの領域が逆平行様式で配置されるときに、第1の領域の少なくとも1つのヌクレオチド残基が、第2の領域の残基と塩基対形成できる場合、同じかまたは異なる核酸の第2の領域と相補的である。いくつかの実施形態では、第1の領域は、第1の部分を含み、第2の領域は、第2の部分を含み、それにより、第1及び第2の部分が、逆平行様式で配置される場合、第1の部分のヌクレオチド残基の少なくとも約50%、好ましくは少なくとも約75%、少なくとも約90%、または少なくとも約95%が、第2の部分中のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。他の実施形態では、第1の部分のすべてのヌクレオチド残基は、第2の部分中のヌクレオチド残基と塩基対形成できる。
【0185】
核酸は、別の核酸配列と機能的な関係に置かれるとき、作動可能に連結されている。例えば、プロモーターまたはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に作動可能に連結される。転写調節配列に関して、作動可能に連結されているとは、連結されているDNA配列が隣接しており、2つのタンパク質コーディング領域を結合する必要がある場合、隣接して読み枠内にあることを意味する。
【0186】
特定のタンパク質のアミノ酸配列と、そのタンパク質をコードできるヌクレオチド配列との間には、(以下に示す)遺伝コードによって定義されているように、既知の明確な対応がある。同様に、特定の核酸のヌクレオチド配列と、遺伝コードによって定義される、その核酸によってコードされるアミノ酸配列との間には、既知の明確な対応関係が存在する。
【0187】
遺伝コード
アラニン(Ala、A) GCA、GCC、GCG、GCT
アルギニン(Arg、R) AGA、ACG、CGA、CGC、CGG、CGT
アスパラギン(Asn、N) AAC、AAT
アスパラギン酸(Asp、D) GAC、GAT
システイン(Cys、C) TGC、TGT
グルタミン酸(Glu、E) GAA、GAG
グルタミン(Gln、Q) CAA、CAG
グリシン(Gly、G) GGA、GGC、GGG、GGT
ヒスチジン(His、H) CAC、CAT
イソロイシン(Ile、I) ATA、ATC、ATT
ロイシン(Leu、L) CTA、CTC、CTG、CTT、TTA、TTG
リジン(Lys、K) AAA、AAG
メチオニン(Met、M) ATG
フェニルアラニン(Phe、F) TTC、TTT
プロリン(Pro、P) CCA、CCC、CCG、CCT
セリン(Ser、S) AGC、AGT、TCA、TCC、TCG、TCT
スレオニン(Thr、T) ACA、ACC、ACG、ACT
トリプトファン(Trp、W) TGG
チロシン(Tyr、Y) TAC、TAT
バリン(Val、V) GTA、GTC、GTG、GTT
終結シグナル(終了) TAA、TAG、TGA
【0188】
遺伝コードの重要かつよく知られている特徴は、その縮重であり、タンパク質の作製に使用されるほとんどのアミノ酸について、複数のコーディングヌクレオチドトリプレットが使用され得る(上図)。したがって、複数の異なるヌクレオチド配列が所与のアミノ酸配列をコードし得る。ミトコンドリア、及び色素体、及び同様の共生オルガネラは、わずかに異なる遺伝コードを有するが、遺伝コードの普遍性により、そのようなヌクレオチド配列は、すべての生物において、同じアミノ酸配列を産生するため、機能的に同等であるとみなされる。すべてのコドンが同様の翻訳効率で利用されるものではないが、希少なコドンは、tRNAプールの制限によりタンパク質産生を低下させ得る。さらに、場合によっては、プリンまたはピリミジンのメチル化バリアントが、所定のヌクレオチド配列中に見られ得る。そのようなメチル化は、トリヌクレオチドコドンと対応するアミノ酸との間のコード関係に影響を与えない。
【0189】
ポリペプチドのアミノ配列を変更する際、アミノ酸のハイドロパシー指数が考慮され得る。タンパク質に相互作用的生物学的機能を付与する際のハイドロパシーアミノ酸指数の重要性は、当技術分野において概して理解されている。アミノ酸の相対的なハイドロパシー特性が、結果として得られるタンパク質の二次構造に寄与し、それがタンパク質と他の分子、例えば酵素、基質、受容体、DNA、抗体、抗原などとの相互作用を定義することと解釈されている。各アミノ酸には、次のように、疎水性及び電荷特性に基づいて、ハイドロパシー指数が割り当てられている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスチン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);スレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタミン酸(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパラギン酸(<RTI3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);及びアルギニン(-4.5)。
【0190】
特定のアミノ酸が類似のハイドロパシー指数またはスコアを有する他のアミノ酸で置換されても、類似の生物学的活性を有するタンパク質が得られ得る、すなわち、生物学的に機能的に同等のタンパク質が得られ得ることは、当技術分野で知られている。
【0191】
したがって、上で概説したように、アミノ酸置換は、一般に、アミノ酸側鎖置換基の相対的な類似性、例えば、それらの疎水性、親水性、電荷、サイズなどに基づく。前述の特徴の様々を考慮に入れる例示的な置換は、当業者に周知であり、アルギニンとリジン;グルタメートとアスパラギン酸;セリンとスレオニン;グルタミンとアスパラギン;ならびにバリン、ロイシン、及びイソロイシンを含む。
【0192】
アミノ酸配列を改変することなく、ポリペプチドをコードする核酸を特定の宿主細胞に対してコドン最適化できることも当技術分野で知られている。コドン最適化は、同義のコドン変更を使用してタンパク質産生を増加させる遺伝子工学的アプローチについて説明している。これが可能なのは、ほとんどのアミノ酸が複数のコドンによってコードされているためである。まれなコドンを高頻度で使用されるコドンに置き換えることにより、タンパク質の発現が増加することが示されている。
【0193】
上記を考慮して、本明細書に記載の核酸(またはその任意の部分)(例えば、治療用核酸)をコードするDNAまたはRNAのヌクレオチド配列を使用して、ポリペプチドのアミノ酸配列を駆動し、遺伝コードを使用して、DNAまたはRNAをアミノ酸配列に翻訳することができる。同様に、ポリペプチドのアミノ酸配列については、ポリペプチドをコードすることができる対応するヌクレオチド配列を、遺伝コードから推定することができる(その冗長性のために、任意の所定のアミノ酸配列に対して複数の核酸配列が産生される)。したがって、ポリペプチドをコードするヌクレオチド配列の本明細書における説明及び/または開示は、ヌクレオチド配列によってコードされるアミノ酸配列の説明及び/または開示も含むとみなされるべきである。同様に、本明細書におけるポリペプチドアミノ酸配列の記載及び/または開示は、そのアミノ酸配列をコードし得るすべての可能なヌクレオチド配列の記載及び/または開示も含むものとみなされるものとする。
【0194】
最後に、本発明において有用な核酸及びポリペプチド分子の核酸及びアミノ酸配列情報は、当技術分野で周知であり、National Center for Biotechnology Information(NCBI)などの公的に利用可能なデータベースで容易に入手可能である。
【0195】
表4:配列表
上記のとおり、当業者は、ウイルス配列の遺伝子型変異を理解する。したがって、本明細書に提示される配列は、典型的な分離株の配列を表す。
【0196】
配列番号1、2、及び3は、AAV ITRの例を表す。
【化1】
*配列番号4は、CPV-N株のVP1及びVP2の両方の配列を含む。配列全体は、VP1に対応するが、VP2配列は、VP2の最初のメチオンを示す太字の「M」で始まる。
【0197】
下線で示す残基は、内在化及びトランスサイトーシスに影響を与える受容体結合ドメインを画定する。これらの領域内の変異は、受容体の相互作用を変化させ、トランスサイトーシスを調節する。
【0198】
VP2のアミノ酸93(太字の「M」から始まる番号)及び隣接残基は、TfR相互作用と宿主範囲に関与する。
【0199】
VP2のアミノ酸300及び隣接残基(太字の「M」から始まる)は、宿主範囲(TfRとの相互作用)に影響を与える。
【0200】
VP2のアミノ酸323及び隣接残基(太字の「M」から始まる)は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。
配列番号5 イヌパルボウイルスVP1アミノ酸配列(GenBank AXQ00350)
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配列番号6 イヌパルボウイルスVP2アミノ酸配列(GenBank CAA86612)
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配列番号7 ネコ汎白血球減少症ウイルス(CTG-VP1-3-Leu-VP2)
【化2】
【0201】
配列番号7は、ネコ汎白血球減少症ウイルスのこの株のVP1及びVP2の両方の配列を含む。配列全体は、VP1に対応するが、VP2配列は、VP2の最初のメチオンを示す太字の「M」で始まる。
配列番号8 ネコ汎白血球減少症ウイルスVP1アミノ酸配列(GenBank AKI88071)
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121 ifinlakkkk agagqvkrdn lapmsdgavq pdggqpavrn eratgsgngs gggggggsgg
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241 lddthvqivt pwslvdanaw gvwfnpgdwq livntmselh lvsfeqeifn vvlktvsesa
301 tqpptkvynn dltaslmval dsnntmpftp aamrsetlgf ypwkptiptp wryyfqwdrt
361 lipshtgtsg tptnvyhgtd pddvqfytie nsvpvhllrt gdefatgtff fdckpcrlth
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661 msrivtysdf wwkgklvfka klrashtwnp iqqmsinvdn qfnyvpnnig amkivyeksq
721 laprkly
配列番号9 ネコ汎白血球減少症ウイルスVP2アミノ酸配列(GenBank ACI31203)
1 msdgavqpdg gqpavrnera tgsgngsggg ggggsggvgi stgtfnnqte fkflengwve
61 itanssrlvh lnmpesenyk rvvvnnmdkt avkgnmaldd ihvqivtpws lvdanawgvw
121 fnpgdwqliv ntmselhlvs feqeifnvvl ktvsesatqp ptkvynndlt aslmvaldsn
181 ntmpftpaam rsetlgfypw kptiptpwry yfqwdrtlip shtgtsgtpt niyhgtdpdd
241 vqfytiensv pvhllrtgde fatgtfffdc kpcrlthtwq tnralglppf lnslpqsega
301 tnfgdigvqq dkrrgvtqmg ntnyiteati mrpaevgysa pyysfeastq gpfktpiaag
361 rggaqtdenq aadgdpryaf grqhgqkttt tgetperfty iahqdtgryp egdwiqninf
421 nlpvtndnvl lptdpiggkt ginytnifnt ygpltalnnv ppvypngqiw dkefdtdlkp
481 rlhvnapfvc qnncpgqlfv kvapnltney dpdasanmsr ivtysdfwwk gklvfkaklr
541 ashtwnpiqq msinvdnqfn yvpsnigamk ivyeksqlap rkly
配列番号10 ブファウイルス(CTG-VP1-3-Leu-VP2)
【化3】
【0202】
配列番号10は、ブファウイルスのこの株のVP1及びVP2の両方の配列を含む。配列全体は、VP1に対応するが、VP2配列は、VP2の最初のメチオンを示す太字の「M」で始まる。
配列番号11 ブファウイルスVP1アミノ酸配列(GenBank AFN44271)
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配列番号12 ブファウイルスVP2アミノ酸配列(GenBank AFN44272)
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301 qqgrniidin gwqwgdrsnp msaatrvsnf higyswpewr ihygsggpai npgapfsqap
361 wstdpqvrlt qgasekaifd ynhgdddpah rdqwwqnnlp mtgqtdwapk nahqtnvsnn
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481 gqllvklapn ytenlqtdgl gnnrivtyat fwwtgklvlk gklrlprqfn lynlpgrprg
541 teakkflpne ighfelpfmp grcmpnyti
配列番号13 Tusavirus(CTG-VP1-3-Leu-VP2)
【化4】
【0203】
配列番号13は、tusavirusのこの株のVP1及びVP2の両方の配列を含む。配列全体は、VP1に対応するが、VP2配列は、VP2の最初のメチオンを示す太字の「M」で始まる。
配列番号14 Tusavirus VP1アミノ酸配列(GenBank AIT18930)
1 mapaarprkg wvppgynylg pgndldagep tnksdaaark hdfaysaylk qgldpywnfn
61 kadekfirdt egatdwggrl ghwifrakkh ilphlkeptl agrkrpapah ifvnlankrk
121 kglptrkdqq kdtldsnaqq pvreadqpdg maasssdsgp sssgggarag gvgvstgdfd
181 nttlwdfhed gtatitcnst rlvhltrpds ldykiiptqn ntavqtvghm mdddnhtqvl
241 tpwslvdcna wgvwlsphdw qhimnigeel ellsleqevf nvtlktatet gppesritmy
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361 qstsiinhss tqsaigqffv ietqlpiall rtgdsyatgg ykfdcnkvnl grhwqttrsl
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481 aidpapptsi psnwgggtpp dtrasshnqq ritynynhgn kdenlnnfsl npnielgsii
541 nqgnflsyeg ngqqinttag vgkngetats dpnlvrympn tygvytavdh qgpvyphgqi
601 wdkqihtdkk pelhclapft cknnppgqmf vriapnltdt fnatptfsei ityadfwwkg
661 tlkmkiklrp phqwniatvl gaavnigdaa rfvpnrlgql efpvingriv pstvy
配列番号15 Tusavirus VP2アミノ酸配列(GenBank AIT18929)
1 maasssdsgp sssgggarag gvgvstgdfd nttlwdfhed gtatitcnst rlvhltrpds
61 ldykiiptqn ntavqtvghm mdddnhtqvl tpwslvdcna wgvwlsphdw qhimnigeel
121 ellsleqevf nvtlktatet gppesritmy nndltavmmi ttdtnnqlpy tpaairsetl
181 gfypwrptvv prwryyfdwd rflsvtsssd qstsiinhss tqsaigqffv ietqlpiall
241 rtgdsyatgg ykfdcnkvnl grhwqttrsl glppkieppt sesalgtinq narlgwrwgi
301 ndvhetnvvr pctagynhpe wfythtlegp aidpapptsi psnwgggtpp dtrasshnqq
361 ritynynhgn kdenlnnfsl npnielgsii nqgnflsyeg ngqqinttag vgkngetats
421 dpnlvrympn tygvytavdh qgpvyphgqi wdkqihtdkk pelhclapft cknnppgqmf
481 vriapnltdt fnatptfsei ityadfwwkg tlkmkiklrp phqwniatvl gaavnigdaa
541 rfvpnrlgql efpvingriv pstvy
配列番号16 クタウイルス(CTG-VP1-3-Leu-VP2)
【化5】
【0204】
配列番号16は、このクタウイルス株のVP1及びVP2の両方の配列を含む。配列全体は、VP1に対応するが、VP2配列は、VP2の最初のメチオンを示す太字の「M」で始まる。
配列番号17 クタウイルスVP1アミノ酸配列(GenBank YP_009508805)
1 mpairkargw vppgynflgp fnqdfnkept npsdnaakqh dleynklinq ghnpywyynk
61 adedfikatd qapdwggkfg nfifrakkhi apelappakk ksktkhsepe fshkhikpgt
121 krgkpfhifv nlarkrarms epandtneqp dnspveqgag qigggggggg sgvghstgdy
181 nnrtefiyhg devtiichst rlvhinmsdr edyiiyetdr gplfpttqdl qgrdtlndsy
241 hakvetpwkl lhanswgcwf spadfqqmit tcrdiapikm hqkienivik tvsktgtget
301 ettnynndlt allqiaqdns nllpwaadnf yidsvgyvpw racklptycy hvdtwntidi
361 nqadtpnqwr eikkgiqwdn iqftpletmi nidllrtgda wesgnynfht kptnlayhwq
421 sqrhtgschp tvaplvergq gtniqsvncw qwgdrnnpss astrvsnihi gysfpewqih
481 ystggpvinp gsafsqapwg sttegtrltq gasekaiydw shgddqpgar etwwqnnqhv
541 tgqtdwapkn ahtselnnnv paathfwkns yhntfspfta vddhgpqypw gaiwgkypdt
601 thkpmmsaha pfllhgppgq lfvklapnyt dtldnggvth privtygtfw wsgqlifkgk
661 lrtprqwnty nlpsldkret mkntvpnevg hfelpympgr clpnytl
配列番号18 クタウイルスVP2アミノ酸配列(GenBank YP_009508807)
1 msepandtne qpdnspveqg agqigggggg ggsgvghstg dynnrtefiy hgdevtiich
61 strlvhinms dredyiiyet drgplfpttq dlqgrdtlnd syhakvetpw kllhanswgc
121 wfspadfqqm ittcrdiapi kmhqkieniv iktvsktgtg etettnynnd ltallqiaqd
181 nsnllpwaad nfyidsvgyv pwracklpty cyhvdtwnti dinqadtpnq wreikkgiqw
241 dniqftplet minidllrtg dawesgnynf htkptnlayh wqsqrhtgsc hptvaplver
301 gqgtniqsvn cwqwgdrnnp ssastrvsni higysfpewq ihystggpvi npgsafsqap
361 wgsttegtrl tqgasekaiy dwshgddqpg aretwwqnnq hvtgqtdwap knahtselnn
421 nvpaathfwk nsyhntfspf tavddhgpqy pwgaiwgkyp dtthkpmmsa hapfllhgpp
481 gqlfvklapn ytdtldnggv thprivtygt fwwsgqlifk gklrtprqwn tynlpsldkr
541 etmkntvpne vghfelpymp grclpnytl
配列番号19 Wuharvパルボウイルス(CTG-VP1-3-Leu-VP2)
【化6】
【0205】
配列番号19は、Wuharvパルボウイルスのこの株のVP1及びVP2の両方の配列を含む。配列全体は、VP1に対応するが、VP2配列は、VP2の最初のメチオンを示す太字の「M」で始まる。
配列番号20 WuharvパルボウイルスVP1アミノ酸配列(GenBank YP_009508803)
1 mliwalfiwl fyfhegtieq lniyhngnsl qllhhssslt gwvppgynyl gpkkfklqkk
61 ptnpsdaaar khdleynkli qqghnpyfyy nhadedfike tnqakdwggk fgnyifrakr
121 alapelappk kksktekgep sysyknikpg tkrgkpfylf vnlakkkrms apaaenndqq
181 pdaaepsvag akatgggggg gsgvghstgs fnnrtefiyh gsevtiicha trhihlnmpd
241 seeykiyetn rgprfptdqt lqgrdtinds yhakvqtpwq llhancwgcw fspadwqqmi
301 ttcrefkveh leqaidnivi ktvtkqgtga eeitqynndl tallqvaedk snlmpwaadn
361 myidsigyvp wrpsklptyc yhvnfwntid inagaqqnqw aevkkgiqwd niqftpienm
421 vdiellrtgd rwdsgpytfy ckpssleyhw qstrhtgsch psttpqaigs vgnnletlna
481 wqwgdrnnps sastrvsnfh igyswpewqf hystggpvvn pgqpfsqapw gsevagtrlt
541 qgasekaiyd wnhgdeehqf retwwqnnen mtgqtnwapk nihqkeltnn vaaqtafwaq
601 gyhntfgpft afddhgaqyp wgaiwgkepn tthkplassh apfmtanppg qifvklapny
661 tdtvdnngns srivtfgtfw wtgklvikak lrtprqwnty qlpslaaret mketvpneig
721 nfeipympgr ampnytl
配列番号21 WuharvパルボウイルスVP2アミノ酸配列(GenBank YP_009508803.1)
1 msapaaennd qqpdaaepsv agakatgggg gggsgvghst gsfnnrtefi yhgsevtiic
61 hatrhihlnm pdseeykiye tnrgprfptd qtlqgrdtin dsyhakvqtp wqllhancwg
121 cwfspadwqq mittcrefkv ehleqaidni viktvtkqgt gaeeitqynn dltallqvae
181 dksnlmpwaa dnmyidsigy vpwrpsklpt ycyhvnfwnt idinagaqqn qwaevkkgiq
241 wdniqftpie nmvdiellrt gdrwdsgpyt fyckpssley hwqstrhtgs chpsttpqai
301 gsvgnnletl nawqwgdrnn pssastrvsn fhigyswpew qfhystggpv vnpgqpfsqa
361 pwgsevagtr ltqgasekai ydwnhgdeeh qfretwwqnn enmtgqtnwa pknihqkelt
421 nnvaaqtafw aqgyhntfgp ftafddhgaq ypwgaiwgke pntthkplas shapfmtanp
481 pgqifvklap nytdtvdnng nssrivtfgt fwwtgklvik aklrtprqwn tyqlpslaar
541 etmketvpne ignfeipymp grampnytl
配列番号22 ヒトパルボウイルス4 VP1アミノ酸配列(GenBank AEE69129)
1 msaadayrpg gklpldelmq rmnraipvgp epsspanrgg gpyqthfaig imyskafqgl
61 lkfanalpae lspvkqlvnq lehyrrktsd trvwyrvyld mtrllisvap pgaanklrqa
121 aagithskap naetlrgivr faaaafvpti enidrffeds ltnfakedld twkqlheqfi
181 klfhppdvgv hlvsdsrdeg adsivepdle rpagggltlp gynyvgpgnp ldsgppqgpv
241 deaakhhder yaemiehgdi pylhghgadr lmnkeleekk rrgdithltd vvvgnairgl
301 wqaketvgdi advqlsqvlp pappssdqqp aysagepsak karigtpees eptlpvqsdt
361 ntmsvepagg gggvkvkaqw iggtsfsdsv vitshtrtsm ladrggyvpv ykpgshvdss
421 qpvmgmktpy syidvnalsa hftprdfqql ldeydeikpk sltiaisaiv ikdvatnqtg
481 tnvsdsasgg itvfaddsyd ypyvlghnqd tlpghlpgen yvlpqygyit rgreidqqns
541 ivaisdhkte lfflehhdae clgtgdhwsh hyefpddlpw rklstpnqtl yarhnpipss
601 rlaimtgvdn dgtavwkrpe gmdvgrlpln yvpgpalmmp tdtqirnttf rdpvaignpa
661 tsdrysvapl vhqpwsvrte ewlanktdys vhnylggvay trrkheesyd kheedrdgrv
721 snpsrvvqid gdlaaphvgh tffvpghtrv tsggtdtvys pklyqepvfp lfpgavwnpn
781 plsydcqiwt kipntechff aqypllggwg vmtpppmifv klrsqpgpps pgahtvpqsn
841 lnqyaifhlh ysmqflvkrr krsrrhnpek papfpttdsg rmpftlansl qdpstpvyev
901 psdqwiarny shll
配列番号23 ヒトパルボウイルス4 VP2アミノ酸配列(GenBank AEE69130)
1 msvepagggg gvkvkaqwig gtsfsdsvvi tshtrtsmla drggyvpvyk pgshvdssqp
61 vmgmktpysy idvnalsahf tprdfqqlld eydeikpksl tiaisaivik dvatnqtgtn
121 vsdsasggit vfaddsydyp yvlghnqdtl pghlpgenyv lpqygyitrg reidqqnsiv
181 aisdhktelf flehhdaecl gtgdhwshhy efpddlpwrk lstpnqtlya rhnpipssrl
241 aimtgvdndg tavwkrpegm dvgrlplnyv pgpalmmptd tqirnttfrd pvaignpats
301 drysvaplvh qpwsvrteew lanktdysvh nylggvaytr rkheesydkh eedrdgrvsn
361 psrvvqidgd laaphvghtf fvpghtrvts ggtdtvyspk lyqepvfplf pgavwnpnpl
421 sydcqiwtki pntechffaq ypllggwgvm tpppmifvkl rsqpgppspg ahtvpqsnln
481 qyaifhlhys mqflvkrrkr srrhnpekpa pfpttdsgrm pftlanslqd pstpvyevps
541dqwiarnysh ll
配列番号24 ヒトパルボウイルス4 NS1アミノ酸配列(GenBank AEE69128.1)
1 mdapawiavl qiptgflsnp anwrdwdglq rprnlladdw pvqelresvp lfdhavnlgy
61 cilqqlfash avtlpcrvkp smflqlepss geenemhyhl vvnqadmvgr ecsnwlrtwk
121 vfmagylvap twtlswnirk trqgrlyqad msfvknyllp klplndcyya wtnidrfeaa
181 vlsvrnrqls gpqgaialpf tdaqpqapaa egvpptmagk gtqrfmdlid wlvengiate
241 krwlsvnkls yrsflgssgg vlqaknalqi akremvlahp llgyltknas tfeesnkvaq
301 lfslngynpv daawyfaawa rgvwpkrrai wlwgpastgk tllaaaianl spsygcvnwt
361 nqnfpfndch cqslvwweeg rmteniveva kavlggapvr ldvknkgsed yiptcviits
421 ngdltvtvdg pvvstqhqea lqtritmfqf qrmvpdglap lpeeevrsff klgeqelnmk
481 gtppeefrvp rnfdkqpmas tsnlpkalca pidedqvqwd seddwfpppt qkrrravqet
541 pprtpseiie fsspspvada ppttpdspge lsltptsvsq ivsapfpeet aerygagdie
601 afwsehvfda dwatrlhicp pggprpyglf wtylwsrefw rfkqsvsrse ahlvnrrfiw
661 aww
【0206】
代表的なGSH配列
配列番号25 PAX5ゲノムセーフハーバー配列
>NG_033894.1:184716-186382 Homo sapiensペアボックス5(PAX5)、染色体9上のRefSeqGene(LRG_1384)
CCCAGCAATGGATCGATGCACGGCTGTCGGGGCCGACAGGCTGACCTTTACTGAGCTCAGGTTTTCATCT
CCCTGTTGGGAGCCCAGGAAGGTCTTGCTGTGGAGAGAGGAACGGTGAGAAGCCTTGGCCTGCGAGGGGG
AGAGGCTTGGCGTGGGTGCAGTGAAGACAGCTTCTGAGAGCTGAAAGCCCTTGGAGGTCACTTATTTCAA
TTTCTTCCAAACACACCACTTTTACAGATGAGAAAACTGAGACTTGGTGAGAAATGACTTGTCCAAGGTC
ACTCTAAGAGGCTTTGACACAGCTCCAGAATCCAGTGTGTGTGTATGTGTGTGTGTACACATCCAACATA
CATACATCTGTATATTATAAATATTATACATATTATTACGTATACATACACAGATACATTATATGCATGT
GTACGTGTATATCGGGAGTGTCTATACATGTGTATTATGAAAGCCTGGCTGTGGCTACGTGTGATGCCGT
GCCTGCGCTCACTCTGGTCGTCAACAGTTTGGTCCCGCAACATCCCGGGTAGCCGCCGATCCCTGAGCCA
CCAGGCATTTCATGCAGTTCTGCAAAGCCATGGAGAGGAGCTGAAGAAACCTCATGGTCCTTTTCAAATC
GTTTCTTCCTCCTCCTCCTCTGCAAAGATTTTCTCTAAGCCCAGTTTGAATCCTTCAGAAACAGAACTTG
GCTGCGAAGTCACTTTGAAAGACTTTCCATATGTTAATTGCAGCCGGCCAAGGTCTGGAGCAGAGGTGGG
AGCCCACCATCTGCAGACGGGGTCGGCCCCCAGTGCGCTCTGCAAATCCCCGTCATCTGGCAGGTGTCGT
TTTGGGTTAATTAAGAGCTATACTGAGCCCGTTTACCTGTCACTTCTGAGAATTTTAGGAAACTTTGACT
TTCTTGCCATCTCTGAGCTTTGAGCGAAGGGGAAGCTGAAAACACCTCTGAATCTGGTGATGTTTCTGCC
TCTGGGATCTCCAGGACAGCTGCATTAAGTGCATCTTATCATAACCCCTTTTTAAACTTTTTATTTTAAT
CAGTGTTCTCTAGTTAGTGCATTGGTTTTTACAGTCACGTCTTCTATATTGGAAGACAGTACTGTTTGGG
GGAAACCCACCATTTGTCTGAAATTTCTTAAGGCTCTGCTTTCTCTCTGTGTCTTTGAGGAAACAGCATA
CATTCCTCTAGCTTTGTTCTGTGTAATGGCTTTGGAGAAACTTTGAATTTGCAGGTCAGGGGCTCTTTCA
CCCATTGGGGTTTGGGGCTGTCAGTGCTAACCTCAGAGCTCTATGTTCATGGAGGGATGACTCAGTTACA
TCCCCAGATAGCTGGGTTCTCGGTTGGTCAATAGGCCCCCTTCTTCAGTATGAGAGAATTTTCTCTCTGT
GCTGTTGACAATGTTCTATTAATATATCTTGGTAGGGGTTTGGGTCACACAGATCTATGCATTTGTCAAA
ACACAGCAATAGCACATTTAAGATTTGTGTGTTTCATTATGTGTAAATTTTGTATCCAAAGAAAAAACTA
GTAAACAAGTAATGAACTTCAGTTAATTGTATGCATGCTGAAGTACTTAGGGGAAAGTGTACTGATGTTT
GCATTTACTTGGAAATGAAATACACATTAAGGTGAAAGAAAGGCTAGAGGGATGAAG
配列番号26 KIF6ゲノムセーフハーバー配列
>NG_054928.1:303712-305348Homo sapiensキネシンファミリーメンバー6(KIF6)、染色体6上のRefSeqGene
AGTGGTGTGATCATGGCTTACTGCAGCCTCAACCTCCCAGATTCAAGTGATCCTCCTGCCTCAGCCTACC
GAGTAGCTGGGACTACAGATGCATGCCATCACGCCTGACTAATTTTACCTTTTGTAGAGATGAGGTCCCT
CTGTGTTGCCAAAGGTGGTCTAGAACTCCTGGGCTCAAATGATCCTCCCCCCTCCCTGGGCCTTCCAAAG
TACTGGGATTACAGGTGTAAGCCAATGCACTCAGCCCCATGTTACTTAATAGAAAGGTTTTTCTTCCCCT
TTTTCCTGCACCCTTTGCTGCTCTCACGGGGAATTTCTAGCATCTCTAAGCTCTGGTCTCCAGTCTGAGG
AAGTTGTGCTGCCTGTATGTGACAAGAGAAATAAGATGTTGGCACATGAATAGGATGTTCGCCCTTTGGT
GAACTAGAGCATGTGAGCCAATTCTTAAGCCAGATTTTTCAGCAGAGAACAATTGCAATTCACAATCACA
TTTTCCAGGCATGACTCATCCCTATAGTATACAATAATATGAAGAGAGGCTGGAAACCCCATGCTTGGCA
AATACCAGTGCCCAGGCACTGCAAGCTTTCTTTTGTGGCAGATTTTTCATACAAACTGAGTCCATCAGTC
TCAGAGTCCCATTCAATAACAAAAGAAGAAATAAATGGGGAGATTAACTGCTATTGGAAATGAAGGTGTT
GAAAATGTAAACTAAACAAAGCAAAGCACCCCTTCACTCAGTTGGATCCTTCTAACATAGAATCAAACAG
CCATCTAAAACCAACAGGAAAACCGGACCGAGGGTGGAGAGAAACCGTGTGGCACCATCAGGAGGTAACT
CCCATGGTGAGGAGGAGTTTCCTGGCTCCCATTAGACTTTCATTTTAACCCTTATGATTTTTCCTTTTTT
TTTTTTTTTTGTATTTACATCTTTTCTGCTGAACTAAAATGATAAACTCTGAGAGCAGAGATTAGATTAG
AATCTTCTCAGCCTCTCCACAATTTTAAAAGCAGTGCTGGCCACAGGAAAAAAAAAAAAAGGTACTCAAA
AAACACTTTTTTTGTTTGTGAATGACAATTTGAAATTGACTTTGAGAAATCTTGGCAGCCAAGAAAATGG
CTGGAGAAGACTTTACAGCTTCCGAGAAGTAGGAGGATGCAGCAGGCTTCTGGAGGGTCAGGGGAGGAGC
TGATCAACTGGAGGCGGGAGAGGGAGGCCATAGTGGGAGAGATGAAACGGGAAAGGAATACTAGCATTTT
TTAAAAAGCATAAGGGGAACAAAGGGTGGATCTTTATTACAATAAAGTGGAGGCAGCCAGGGTACAAGGT
ACAAGTTTATGGAGGAAAAAAATGGCAAAATATAGGCCCAGTCTTCTGTCCTCCTCTCTGACAGGGAAGG
GTATTGGATGTTCACTCTATGAAAAAGCAACATATTAAGTTAGTTGTTCTAGACAAGAAAAGTAGGAAAG
ATATTGTAGGAACCCTTTGCCCTCAAACACATATTGGCCCACCATTCTCAGAAGGCAATCTCAGCTGGCA
TGACAGAGCATCTGGTTGCAGAGGCTCTTGGGGACTGAGTGGCTGCTGAACGAACACCAGCCCCTCTCTT
TGGCCCATGGGTAAAAGCAGCCACTGC
【0207】
追加の代表的なAAV ITR配列
配列番号1、2、及び3と同様に、AAV2 ITRの代表的な配列を本明細書にさらに提供する。
【化7】
B/B’及びC/C’ステムの方向は、5’から3’である:B->B’->C->C’
配列番号29 AAV2 ITR「フリップ」配座異性体核酸配列
【化8】
B/B及びC/C’ステムの方向は、5’から3’である:rB’->rB->rC’->rC 「r」は、B/B’及びC/C’ステムの逆配列を表す。
配列番号30 AAV2 ITR「フロップ」配座異性体核酸配列
【化9】
B/B’及びC/C’ステムの方向は、5’から3’である:C->C’->B->B’
配列番号31 AAV2 ITR「フロップ」配座異性体核酸配列
【化10】
B/B’及びC/C’ステムの方向は、5’から3’である:rC’->rC->rB’->rB。「r」は、B/B’及びC/C’ステムの逆配列を表す。
【0208】
AAV2及び他のAAV血清型のさらなる代表的なITR配列が、当技術分野で知られている。このような配列の例は、少なくとも国際公開WO2017/152149;Lusby et al.(1980)J Virol 34:402-409;Berns(2020)Human Gene Therapy,31:518-523;Samulski et al.(2020)Human Gene Therapy,31:151-162;及びTyson et al.(1990)J theor Biol 144:155-169;に見出すことができ、これらのそれぞれは、参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
機能的AAV ITRは、図1Aに示すとおり、(i)p5 Repタンパク質に対する結合部位、(ii)ニッキング部位(trs)配列、及び(iii)分断されたパリンドローム配列によって形成されるエネルギー的に安定な二次構造を含む核酸配列を含む。
【0210】
当業者であれば、AAV ITR配列が、機能的態様、すなわち、p5 Repタンパク質の結合部位、trs配列、及び分断されたパリンドローム配列によって形成される二次構造を保存しているため、可変であるにもかかわらず機能的に同等であり得ることを理解する。特に、記載した理由により、相補的、逆方向、または逆相補的である機能配列を含むAAV ITR配列は、同等に機能する。
【0211】
プロトパルボウイルス及びテトラパルボウイルスのITR配列
AAV ITRと同様に、機能的プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスITRは、(i)NSタンパク質(Rep)に対する結合部位、(ii)ニッキング部位(trs)配列、及び(iii)分断されたパリンドローム配列によって形成されるエネルギー的に安定な二次構造を含む核酸配列を含む。代表的な配列は、当技術分野で知られている。
【0212】
当業者であれば、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスのITR配列が、機能的態様、すなわち、NSタンパク質の結合部位、trs配列、及び分断されたパリンドローム配列によって形成される二次構造を保存しているため、可変であるにもかかわらず機能的に同等であり得ることを理解する。特に、記載した理由により、相補的、逆方向、または逆相補的である機能配列を含むプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスのITR配列は、同等に機能する。
【0213】
上記には、cDNA、ssDNA、及びRNA核酸分子(例えば、ウリジンで置換されたチミジン)、コードされたタンパク質のオルソログまたはバリアントをコードする核酸分子、ならびに上述の配列番号のいずれかの核酸配列、またはその一部と、それらの全長にわたって少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%、またはそれ以上の同一性を有する核酸配列を含む核酸配列が含まれる。このような核酸分子は、本明細書にさらに記載されるように、全長核酸の機能を有し得る。
【0214】
上記に含まれるのは、タンパク質のオルソログまたはバリアント、ならびに上記のいずれかの配列番号のアミノ酸配列またはその一部と全長にわたって少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.5%またはそれ以上の同一性を有するアミノ酸配列を含むポリペプチド分子である。このようなポリペプチドは、本明細書にさらに記載されるように、全長ポリペプチドの機能を有し得る。
【0215】
周期的遺伝子発現及び調整可能な遺伝子発現
特定の態様では、本開示の組換えビリオン、医薬組成物、及び/または方法は、周期的及び/または調整可能な遺伝子発現を利用する。本明細書で使用されるとおり、調整可能な遺伝子発現は、例えば、低分子またはオリゴヌクレオチド(例えば、それぞれテトラサイクリンまたはアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASOまたはAON))を使用して、導入遺伝子の発現を随意に調整して、導入遺伝子の発現をオンにするまたはオフにすることができる。調整可能な遺伝子発現は、多くの場合、誘導性プロモーターまたは抑制性プロモーターを使用して達成されるが、調整可能な調節には、転写を超えた遺伝子発現の調節が含まれることが意図される。
【0216】
したがって、調整可能な遺伝子発現は、転写、転写後、翻訳、及び/または翻訳後レベルでの一時的調節を包含することを意図する。調整可能な発現は、遺伝子発現の空間的制御と適合する。例えば、導入遺伝子の空間的制御は、導入遺伝子を組織特異的プロモーター下に置き、その後、時間的制御を媒介する発現調節剤(例えば、テトラサイクリンまたはASO)と組み合わせることによって促進させ得る。
【0217】
周期的遺伝子発現とは、一定の間隔で導入遺伝子の産生をオンまたはオフにすることを指す。任意の調整可能な遺伝子発現系を、周期的遺伝子発現に利用することができる。さらに、本明細書では、本明細書に記載の任意の遺伝子発現の調節を周期的遺伝子発現と組み合わせて使用され得ることが企図される。
【0218】
遺伝子療法の成功には、周期的遺伝子発現が重要である。生理的及び長期的なタンパク質発現レベルを得ることは、遺伝子療法の適用において依然として大きな課題である。高レベルでの導入遺伝子発現は、治療後数ヶ月でERストレス及び折り畳まれていないタンパク質応答が誘導され、これが、炎症促進状態及び細胞死につながり、治療の利点が損なわれ得る。周期的導入遺伝子発現戦略(PTES)は、標的細胞を過剰発現ストレスから守ることができ、時間の経過とともに発現が徐々に低下することなく、導入遺伝子の長期発現が可能になる。さらに、周期的及び/または調整可能な発現により、例えば、導入遺伝子によってコードされるタンパク質の産生効率及び/または安定性が改善され得る。
【0219】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるPTESは、試薬が発現をオンにするか、または発現の阻害を解除するまで初期状態がオフである調整可能発現系であり、これにより、患者の特定のニーズを満たすために用量を較正可能であり、これにより、さらに安全で、長期的な利益がもたらされる。周期のタイミングは、目的のタンパク質の初期血清レベル(t0)及び半減期(t1/2)から決定することができる(実施例11を参照)。
【0220】
例示的な調整可能な表現系
テトラサイクリン制御オペレーター系
細菌の調節エレメントであるE.coliのTn10特異的テトラサイクリン耐性オペロンは、遺伝子発現の調節に使用可能である。例えば、この系には、3つの構成例がある:(1)抑制ベースの構成。この構成では、構成プロモーターと目的の遺伝子との間にTetオペレーター(TetO)が挿入され、tetリプレッサー(TetR)がオペレーターに結合することにより、下流の遺伝子発現が抑制される。この系では、テトラサイクリンを添加することにより、TetRとTetOとの結合が破壊され、これにより、TetO依存性の遺伝子発現が引き起こされる。(2)Tet-off構成。タンデムTetO配列は、最小構成プロモーターの上流に位置し、その後に目的の遺伝子のcDNAが続く。ここでは、単純ヘルペスウイルス1型由来の真核生物トランスアクチベーターであるTetR及びVP16(tTA)からなるキメラタンパク質を転写活性化因子に変換し、発現プラスミドをオペレータープラスミドと一緒にトランスフェクトする。したがって、テトラサイクリンを含む細胞を培養することにより、外来遺伝子発現のスイッチがオフになり、テトラサイクリンを除去することにより、オンに切り替わる。(3)Tet-on構成。テトラサイクリンを成長培地に添加したときに、外来遺伝子が発現する。テトラサイクリンは、TetO依存性遺伝子発現の調節に必要な低濃度では哺乳動物細胞に対して無毒であるが、継続的に存在することは望ましくない場合がある。したがって、rtTAと呼ばれる4つのアミノ酸置換を有する変異体tTAが、tTAのランダム突然変異誘発によって発現した。tTAとは異なり、rtTAは、テトラサイクリンの存在下でTetO配列に結合し、それによってサイレント最小プロモーターを活性化する。
【0221】
キュメート(cumate)制御のオペレーター系
キュメート(cumate)制御オペレーターは、Pseudomonas putidaのp-cmt及びp-cymオペロンに由来する。対応するリプレッサーは、プロモーターとp-シメン分解経路の最初の遺伝子の始まりとの間の不完全な反復を認識するN末端DNA結合ドメインを含む。テトラサイクリン制御オペレーター系と同様に、キュメートオペレーター(CuO)及びそのリプレッサー(CymR)は、3つの構成に操作できる:(1)リプレッサー構成、この構成は、構成プロモーターの下流にCuOを配置することによって実現され、CymRがCuOへ結合することにより、下流の遺伝子発現を効率的に抑制する。キュメートを添加することにより、CymRが放出され、それによって下流の遺伝子発現が引き起こされる。(2)活性化因子構成、この構成では、CymRとVP16との融合によりキメラ分子(cTA)が形成される。この構成では、最小のプロモーターが、多量体化オペレーター結合部位(6xCuO)の下流に配置された。(3)逆活性化因子構成、この構成では、ランダム突然変異誘発及びスクリーニングの後、キュメートを添加することにより、CuOに結合するcTA変異体(rcTA)が生成された。この構成では、キュメートの添加により、下流の遺伝子発現が引き起こされた。
【0222】
タンパク質間相互作用ベースキメラ系
1.FKBP12とmTORとの相互作用の制御による標的遺伝子の誘導
ラパマイシン及びその類似体FK506は、サイトゾルタンパク質FKBP12に結合する。この複合体は、mTORにさらに結合し、三部構成(tripartite)複合体を形成する。したがって、FKBP12及びmTORを、それぞれ、ZFHD1のDNA結合ドメイン及びNF-κB p65タンパク質の活性化ドメインと融合させることにより、両方のドメインが架橋され、ラパマイシン依存的に目的の遺伝子の発現が駆動される。FK506及びラパマイシンの免疫抑制効果及び細胞周期阻害効果により、FK506及びシクロスポリンA(タンパク質シクロフィリンと複合体を形成した免疫抑制剤)のヘテロ二量体である新しい合成化合物FKCsAが開発され、毒性または免疫抑制効果のいずれも呈しないことが示された。遺伝子発現を引き起こすには、細胞にFKCsAを追加することにより、Gal4DNA結合ドメイン(Gal4DBD)と融合したFKBP12及びVP16と融合したシクロフィリンをつなぎ、それによって上流の活性化配列(UAS、Gal4DBD結合部位)の下流で目的の遺伝子の発現が活性化される。
【0223】
2.PYL1とABI1との相互作用の制御による標的遺伝子の誘導
アブシジン酸(ABA)によって調節される2つの植物タンパク質間の相互作用は、哺乳動物細胞における遺伝子発現を一時的かつ定量的に調節するために使用される。2つのタンパク質は、PYL1(アブシジン酸受容体)及びABI1(プロテインホスファターゼ2C56)であり、植物におけるストレス応答及び発育決定に必要なABAシグナル伝達経路の重要な役割を果たす。PYL1-ABA-ABI1複合体の結晶構造に従って、PYL1(アミノ酸33~209)及びABI1(アミノ酸126~423)の相互作用する相補的表面をキメラタンパク質構築のために選択した。同様に、Gal4DBDは、ABI1と融合し、VP16はPYL1と融合した。したがって、このABA活性化因子カセット及びUAS駆動レポーターを哺乳動物細胞にトランスフェクトした後、ABAは、レポーターの産生を顕著に誘導した。ラパマイシン系と比較して、ABA系は、2つの魅力的な利点を有する:第一に、ABAは、植物抽出物及び油を含む多くの食品中に存在する。その毒性がないことは、Environmental Protection Agency(EPA)による広範な評価によって裏付けられている。第二に、ABAシグナル伝達経路は、哺乳動物細胞中には存在しないため、ラパマイシン系のように競合する内因性結合タンパク質は存在しない。ABI1による予想外の基質のいかなる触媒作用もさらに回避するために、そのホスファターゼ活性にとって重要な変異をキメラタンパク質に導入した。
【0224】
3.光感受性タンパク質間相互作用による標的遺伝子の誘導
光誘導タンパク質間相互作用を利用して、2つの光スイッチ可能な導入遺伝子系を開発した。最初のものは、真菌類の概日リズムの分子基盤からインスピレーションを得た。Vivid(VVD)は、Neurospora crassa由来の光受容体及びLOV(光-酸素-電圧)ドメインを含むタンパク質であり、青色光の活性化により急速に交換される二量体を形成する。したがって、VVD及びGal4残基1~65からなるキメラタンパク質は、二量体化し、青色光照射下では転写活性化因子になるが、青色光が存在しない場合には、活性二量体は解離する。これは、青色光を利用して、UASの下流のレポーターの発現を時空間的にオン/オフの切り替えができることを意味する。さらに、VVDの突然変異誘発の最適化により、バックグラウンド発現が最小レベルまでさらに減少し、この系の実現可能性がさらに上昇した。別の光スイッチ可能な導入遺伝子系(光活性化可能(PA)-Tet-OFF/ON)は、クリプトクロム2(Cry2)光受容体及びクリプトクロムと相互作用する塩基性ヘリックス-ループ-ヘリックス1(CIB1)からなるArabidopsis thaliana由来の青色光応答性ヘテロ二量体形成を利用する。Cry2のN末端部分にあるフォトリアーゼ相同領域(PHR)は、非共有結合によって、フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)に結合する発色団結合ドメインである。CIB1は、青色光に依存してCry2と相互作用する。したがって、誘導性発現系を作製するために、PHRをp65の転写活性化ドメインと融合し、CIB1をTetRのDNA結合ドメイン、二量体化ドメイン及びテトラサイクリン結合ドメイン(残基1~206)と融合した。したがって、レポーター遺伝子は、青色光照射により、スイッチをオンにすることができるが、スイッチオフは、青色光が不在であるかまたはテトラサイクリンを添加するかの2つのいずれかの方法で達成できる。一方、テトラサイクリン非感受性変異であるH100Yは、純粋に照明に依存するように確立された。同じキメラ構造を適用するが、TetRをrtTAに置き換えることにより、レポーター遺伝子は、青色光照射またはテトラサイクリンのいずれかでスイッチをオンにし、青色光が不在であるかまたはテトラサイクリンを除去することにより、スイッチをオフにすることができる。概して、光スイッチ可能な導入遺伝子系の2つの利点は、他のすべての系を大きく上回る。1つ目は、オンとオフのサイクルが迅速であることである。概日リズムの性質により、上記の2つのタンパク質間相互作用が動的であり、これが、速い応答及び代謝回転につながる。ルシフェラーゼ発現を誘導するには、1~2分間の短い光パルスでも十分であり、1.1時間後にピークに達し、3時間後にバックグラウンドレベルまで低下することが示されている。他の利点は、正確な空間誘導である。制限された領域または細胞集団内の照明は、高度な照明源を使用して実現でき、これにより、特定の細胞または目的の細胞内領域でレポーター発現が選択的に誘導され得る。これらの固有の機能は、今後の細胞間挙動研究を大幅に促進するのみでなく、臨床遺伝子療法に膨大な可能性をもたらす。
【0225】
4.タモキシフェン制御系
タモキシフェン誘導系は、最もよく特徴付けられた「可逆スイッチ」モデルの1つであり、複数の有益な特徴を有する(例えば、Whitfield et al.(2015)Cold Spring Harb Protoc.2015(3):227-234により概説されている)。この系では、哺乳動物のエストロゲン受容体のホルモン結合ドメインが異種調節ドメインとして使用される。リガンドが結合すると、受容体は、その阻害複合体から放出され、融合タンパク質は、機能的になる。例えば、エストロゲン受容体(ER)のリガンド結合ドメイン(LBD)を導入遺伝子と融合させることができ、その産物は、抗エストロゲンタモキシフェンまたはその誘導体4-OHタモキシフェン(4-OH-TAM)によって活性化できるキメラタンパク質である。
【0226】
この系は、ゲノムを改変する調節可能なリコンビナーゼを生成するために、リコンビナーゼと組み合わせて使用されている。例えば、1つまたは2つのプラスミド系を使用して、誘導性遺伝子の発現を達成できる。最初の成功例は、マウスの胚細胞で行われた。2つのプラスミドを一緒にトランスフェクトさせた。1つは、Cre-ER構成的発現プラスミドで、もう1つは、LoxPに隣接した遺伝子トラップ配列とそれに続くβ-ガラクトシダーゼ(LacZ)オープンリーディングフレームを含む。結果として、LacZの発現は、Cre-loxP媒介組換えが引き起こされ、遺伝子トラップ配列が切除された場合にのみ回復させることができた。これらの手段により、未分化胚性幹細胞及び胚様体のみでなく、生後10日のキメラ胎児内の全組織または特定の分化した成体組織内にもレポーター遺伝子を誘導することができた。別の例では、ベビーハムスター腎臓(BHK)細胞中で増強緑色蛍光タンパク質(EGFP)発現を誘導し、プラスミド構築を簡素化するために、LoxP部位に隣接するCre-ER cDNAをホスホグリセリン酸キナーゼ(PGK)プロモーターとEGFPコード配列との間に挿入した。この系では、Cre-ERは、4-OH-TAMなしでEGFPの転写を遮断する遺伝子トラップとして機能する。4-OH-TAMによるリコンビナーゼ活性の開始により、Cre-ERカセットが溶解し、PGKプロモーターによって駆動されるEGFP発現が回復する。内因性ステロイドによる影響を排除するために、主に3つの異なるERが利用される:(1)G525R変異を有するマウスERTM、(2)G521R変異を有するヒトERT、及び(3)3つの変異G400V/M543/L544Aを含むヒトERT2。
【0227】
5.リボスイッチ調節可能発現系
リボスイッチ制御可能発現系は、ハンマーヘッドリボザイム(アプタザイム)と連結した細菌由来RNAアプタマーを利用する。アプタマーは、装置全体の分子センサー及びトランスデューサーとして機能し、リボザイムは、コンフォメーション変化及びmRNA切断によってシグナルに応答する。例えば、グラム陽性菌のアプタザイムは、過剰なグルコサミン-6-リン酸(GlcN6P)を直接感知して、glms遺伝子のmRNAを切断することができ、そのタンパク質産物は、フルクトース-6-リン酸(Fru6P)及びグルタミンをGlcN6Pに変換する酵素である。テトラサイクリン、テオフィリン、グアニンなどに応答するこれらのアプタザイムは、目的の遺伝子をノックダウン及び過剰発現するように操作させた(例えば、Yokobayashi et al.(2019)Curr Opin Chem Biol 52:72-78に概説されるように)。
【0228】
6.ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチド)調節発現系
ASOは、DNAまたはRNAに結合できる。ASOは、RNAレベルで作用してRISC複合体を活性化してmRNAを分解するか、またはシス作用エレメントの認識を妨害する効果的な遺伝子制御を実証している。ASOは、細胞に効率的にトランスフェクトする脂質ナノ粒子として日常的に製剤化される。ASOは、機能獲得(すなわち、ドミナントネガティブ)、転写産物、またはホモ接合性劣性疾患のいずれかの「ノックダウン」用途に使用される。ASOが変異対立遺伝子からの転写産物に特異的ではないドミナントネガティブ変異によって引き起こされる疾患(例えば、ハンチントン病及び他のポリグルタミン伸長(poly-glutamine expansion)疾患)では、ベクター送達導入遺伝子を使用して、外因性ASOとの配列相補性を低下させる代替の同義コドンとの遺伝子置換を用いて、正常な細胞機能の回復が達成され得る。したがって、ASOは、内因性対立遺伝子から転写産物を枯渇させるが、ベクター駆動転写産物は、影響を受けない。
【0229】
図11に示すとおり、ASOは、スプライシングを調節して、遺伝子発現を負または正に制御することができる(Havens and Hastings(2016)Nucleic Acids Research 44:6549-6563)も参照)。図11の実施例Iは、ASO(アンチセンスオリゴヌクレオチドASOまたはAON)が転写後に遺伝子発現を負に調節できることを示す。ASOがない場合には、一次転写産物は、翻訳可能なmRNAにスプライシングされる。イントロンの3’末端/エクソン2の5’末端のスプライスアクセプターに相補的なASO(赤線)を付加して、スプライシングを妨ぐ。したがって、ASOの存在下では、イントロンは、転写産物内に残る。イントロンを含むこのプロセシングを受けていないRNAは、翻訳できないか、または翻訳時に非機能的タンパク質を産生する。
【0230】
図11の実施例IIはまた、ASOが転写後の遺伝子発現にプラスの影響を及ぼし得ることを示している。一次転写産物(左)には治療用タンパク質をコードする4つのエクソン:エクソン1、エクソン3、及びエクソン4が含まれ、エクソン2は、ナンセンス変異(複数可)またはフレーム外変異(OOF)(複数可)のいずれかを含む。このようなエクソン2は、任意の導入遺伝子に操作して含み得る。ASOがない場合には、転写産物は、プロセシングを受けて、4つのエクソンを含む成熟mRNAになる。すなわち、エクソン2には、ナンセンス変異(複数可)またはOOF変異が残る。したがって、得られたmRNAは、短縮された、または非機能タンパク質に翻訳される。対照的に、ASOの付加により、スプライシングが妨害され、成熟mRNAはエクソン1、エクソン3、及びエクソン4からなる。すなわち、ナンセンス変異(複数可)またはOOF変異を有するエクソン2がスプライシングで切り出される。したがって、初期状態(ASOがない)では、治療用タンパク質は産生されない。ASOを付加した場合にのみ、治療用タンパク質が産生され、それによって正の調節が行われる。
【0231】
これらのアプローチにより、構成的に活性な導入遺伝子発現のノックダウン、すなわちデフォルトでのオンが可能になる。いくつかの実施形態では、デフォルトのオン状態が好ましい。他の実施形態では、デフォルトのオフ状態が好ましい。
【0232】
血友病Aの例示的な周期的遺伝子発現
特定の態様では、本明細書で提供される組換えビリオン、医薬組成物、及び方法は、血友病Aに罹患している対象の遺伝子療法のために周期的遺伝子発現を使用する。いくつかの実施形態では、ASO制御発現系を使用して、血友病Aに罹患している対象中の肝細胞にヒト凝固第VIII因子(FVIII)をコードする遺伝子を導入する。いくつかの実施形態では、周期的遺伝子発現(FVIIIをコードする導入遺伝子が特定の間隔でオン及びオフになる)を使用して、産生されるFVIIIの量を調節する(実施例11を参照)。FVIIIまたはその活性フラグメント(例えば、そのBドメイン欠失を有する)をコードする導入遺伝子の送達及び調節、本明細書に記載の組成物及び方法により、未だ解決策のない長年の医学的必要性に対処する。
【0233】
2020年、FDAは、血友病A(HemA)の治療薬としてのバロクトコジーンロクサパルボベク(またはBMN270)のバイオマリン生物製剤ライセンス申請(BLA)を承認しなかった。組換えアデノ随伴ウイルス5型(rAAV5)は、ヒト凝固第VIII因子(FVIII)の遺伝子誘導体をHemA患者の肝臓に送達させた。より高用量では、FVIIIは、生理学的レベル以上のレベルで発現し、患者の循環中に分泌され、治療を受けた患者を効果的に「治癒」させた。しかし、長期的な発現レベルは、3年間の追跡調査中に毎年0.5~0.33減少した。FVIII発現は、臨床的に有益なレベルで維持されているが、FDAは、発現が同じ割合で低下し続ける場合、患者は、血友病表現型に逆戻りするだろうとの懸念を表明した。発現減少パターンについての決定的な説明はない。血友病Bに関する以前の臨床研究では、FIX発現の喪失が主にプロセシングされたAAVキャプシド抗原によって誘発される急性炎症に起因することが確立された。しかし、予防的ステロイド治療は、キャプシド免疫応答を減弱させるかまたは排除させ、現在ではこの治療は、肝臓指向rAAV治療において日常的に行われている。FVIII発現の喪失の原因となるいくつかの考えられる説明が本明細書において企図される。
【0234】
FVIIIは、以前から微生物または真核生物の発現系のいずれかでの産生が困難である組換えタンパク質である。FVIIIの「Bドメイン」欠失型の開発により、オープンリーディングフレームのサイズが縮小し、発現レベルが改善された。しかし、FVIII発現レベルは、他のタンパク質よりも依然として大幅に低かった。これらの低レベルを克服するために、Biomarinは、臨床研究でベクターの用量を増加した。患者は、1kgあたり6E+13個のベクター粒子(ベクターゲノム、またはvgと呼ばれる)により治療された。大型動物モデルに基づくと、少数の肝細胞がrAAV5-FVIIIを取り込み(形質導入され)、細胞あたりのvg数が多い結果、比較的大量のFVIIIを発現する。FVIII発現に対する代謝要求は、肝細胞タンパク質の発現に対する通常の要求を破壊させる可能性がある。FVIIIが、タンパク質の折り畳み及び分泌に通常関与する肝細胞の細胞コンパートメントに集積され得る。FVIIIの産生を生じさせる内皮細胞は、この活性に特化している可能性が高く、高度に調節されたネイティブFVIIIプロモーターの転写制御下で1つのX染色体上の対立遺伝子からFVIIIを産生する。
【0235】
したがって、FVIIIをコードする導入遺伝子の発現が徐々に低下するのを防ぐために、導入遺伝子は、一定の間隔でオンとオフを切り替えて、長期的有効性を達成する。周期のタイミングは、血清レベル及びFVIIIタンパク質の半減期に基づいて決定する(詳細については、実施例11を参照)。血友病Aの予防または治療のためのFVIIIの場合、理想的な状態は、一時的に活性化されるまでオフである。ASOを使用して、一次転写産物中のシス作用エレメントを妨害することにより、マイナス効果またはプラス効果のいずれかを誘発することができ、それにより周期的遺伝子発現の制御に柔軟性がもたらされる。
【0236】
疾患の予防または治療の方法
特定の態様では、本明細書に記載の組換えビリオンまたは医薬組成物を使用して、疾患を予防または治療する方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、本明細書に開示される組換えビリオンは、目的の核酸(例えば、治療用タンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸)を対象に一時的に提供し、例えば、組換えビリオンによって形質導入された核酸は、特定の発現期間後に最終的に喪失する。好ましい実施形態では、組換えビリオンによって形質導入された核酸は、細胞内に安定して組み込まれる。
【0237】
いくつかの実施形態では、疾患を予防または治療する方法であって、有効量の本開示の組換えビリオンまたは医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、核酸は、タンパク質をコードする。いくつかの実施形態では、核酸は、内因性遺伝子の発現を減少させるか、または消失させる。いくつかの実施形態では、疾患を予防または治療する方法が本明細書に提供され、本方法は、(a)遺伝子の発現を増加または回復させる核酸を含む、有効量の本明細書に記載の組換えビリオンを、それを必要とする対象に投与することであって、内因性発現が、健康な対象における発現よりも異常に低い、投与すること、または、(b)遺伝子の発現を減少させるまたは消失させる核酸を含む、有効量の本明細書に記載のビリオンを、それを必要とする対象に投与することであって、内因性発現が、健康な対象における発現よりも異常に高い、投与すること、を含む。
【0238】
いくつかの実施形態では、疾患を予防または治療する方法であって、本方法は、(a)疾患を有する対象から複数の細胞を得ることと、(b)細胞に本明細書に記載のビリオンを形質導入すること、任意により形質導入された細胞をさらに選択またはスクリーニングすることと、(c)有効量の形質導入された細胞を対象に投与することと、を含む方法が本明細書に提供される。いくつかの実施形態では、細胞は、対象にとって自家である。他の実施形態では、細胞は、対象にとって同種他家である。in vitroまたはex vivoで形質導入細胞を調製することには利点がある。まず、患者に投与する前に、標的細胞ゲノム中での導入遺伝子の存在及び位置を検証できるため、これにより、細胞機能への干渉またはオフターゲット効果を回避できる。これにより、GSHを使用することなく、安全性が改善される。第二に、形質導入された細胞は、組換えビリオンなしで、それを必要とする対象に投与することができる。これにより、免疫応答の引き金となる、または組換えビリオンを不活性化する中和抗体を誘導することに関するあらゆる懸念がなくなる。したがって、形質導入された細胞は、いかなる悪影響を及ぼすこともなく、安全に再投与することができるか、またはその用量を設定することができる。
【0239】
いくつかの実施形態では、本開示の少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、髄腔内、動脈内、心臓内、筋肉内、鼻腔内、肺内、皮膚移植、または経口投与を介して投与される。
【0240】
いくつかの実施形態では、疾患は、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、腎疾患、がん、ヘモグロビン症、貧血、血友病、骨髄増殖性障害、凝固障害、鎌状赤血球症、アルファ-サラセミア、ベータ-サラセミア、血友病(例えば、血友病A)、ファンコニ貧血、家族性肝内胆汁うっ滞、表皮水疱症、ファブリー、ゴーシェ、ニーマンピックA、ニーマンピックB、GM1ガングリオシドーシス、ムコ多糖症(MPS)I(Hurler、Scheie、Hurler/Scheie)、MPS II(Hunter)、MPS VI(Maroteaux-Lamy)、血液癌、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、肝硬変、肝細胞癌、膵炎、糖尿病、心筋症、関節炎、性腺機能低下症、心臓疾患、心臓発作、甲状腺機能低下症、耐糖能異常、関節症、肝線維症、ウィルソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、テイ=サックス病、神経変性疾患、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、リソソーム蓄積症、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び強直性脊椎炎、ならびに自己免疫疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、及びウォルマン病から選択される。
【0241】
いくつかの実施形態では、ヘモグロビン症を予防または治療する方法が本明細書に提供され、本方法は、(a)ヘモグロビンサブユニットをコードする核酸を含む、有効量の本明細書に記載のビリオンを、それを必要とする対象に投与すること、または(b)それを必要とする対象から赤血球系列細胞または骨髄細胞を得て、ヘモグロビンサブユニットをコードする核酸を含む本明細書に記載のビリオンを細胞に形質導入し、任意により、形質導入された細胞をさらに選択またはスクリーニングすることと、有効量の細胞を対象に投与することと、を含む。いくつかの実施形態では、ヘモグロビン症は、ベータ-サラセミアまたは鎌状赤血球症である。
【0242】
特定の態様では、プロトパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質もしくはそのバリアントもしくはその遺伝子型バリアントを含む少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物を使用して、疾患を予防または治療する方法が本明細書に提供される。
【0243】
イヌパルボウイルス(CPV)は、最も研究されているプロトパルボウイルス種のうちの1つである。CPVは、野生犬及び飼い犬に感染する。CPVのゲノムサイズは、約5.3kbで、AAVより600bp大きい。CPVは、ゲノムが大きいことにより、AAV由来ベクター中には収容できないヒト細胞での遺伝子導入にとって特に有望である。CPVは、通常ヒトに感染しないため、ヒト集団中には、CPVに対する体液性免疫が既存しない。すなわち、ヒトは、CPVキャプシド抗原に対して血清陰性である。これは、AAVとはまったく対照的である。ヒトは、AAVキャプシド抗原に対して血清陽性であるため、中和AAV抗体の存在により、AAV遺伝子療法について適格である患者の大部分が除外される。したがって、ヒトにおいては、CPV抗原に対する中和抗体が欠如しているため、CPVウイルス粒子、またはCPVまたはそのバリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンは、AAV由来ベクターでは効率的に治療できない様々なヒト遺伝性疾患を予防または治療するための非常に強力な遺伝子療法用途に特に有用となる。CPVは、細胞に侵入するための細胞受容体としてイヌトランスフェリン受容体(TfRまたはCD71)を使用し、このタンパク質は、イヌ宿主細胞の外膜で発現する(Goodman,Lyi et al.2010)。CPVはまた、ヒトTfR対応物と相互作用することができるため、内在化し、ヒト細胞に形質導入される。さらに、上記のように、CPVのVP2キャプシドタンパク質は、標的細胞相互作用の向性及び特異性/親和性、最終的には標的細胞の形質導入の効率を変化させる1つ以上の変異を含むように操作することができる。
【0244】
本明細書に記載のとおり、プロトパルボウイルスは、標的細胞上に発現するトランスフェリン受容体(TfR)との相互作用を介して細胞に形質導入する。TfRまたはCD71は、血液脳関門(BBB)の主要エレメントである脳微小血管内皮細胞(BMVEC)中に発現する(Navone,Marfia et al.2013)。BBBは、可溶性物質及び細胞性物質の両方が血液から脳内へ通過するための主な制限を構成する。CD71は、受容体特異的トランスシストーシスを駆動し、抗体などの巨大分子を脳実質に送達するための代替手段となっている。したがって、プロトパルボウイルス(例えば、CPV)は、CD71の使用を活用して、全身投与を介して脳に移行し、脳細胞に形質導入して、これらに限定されないが、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、及びリソソーム蓄積症など、様々な神経変性疾患及び神経筋疾患を予防または治療することができる。TfRまたはCD71は、分化の初期段階の赤血球前駆細胞及びBリンパ芽球細胞中でも高度に発現する。CD71発現は、リンパ系または赤血球系に分化する前に、前駆細胞におけるCD34発現と一時的に重複する。したがって、プロトパルボウイルス(例えば、CPV)は、幹細胞に形質導入することができ、幹細胞から分化後、T細胞、B細胞、またはNK細胞由来の治療法に使用できる。これらの用途の一部は、がん治療、抗微生物薬、または自己免疫関連の治療法に使用される。HSCが骨髄前駆細胞系統に分化した後、CD71/TfRは、無核赤血球を産生する最終段階の前に、赤血球生成中に、好塩基性風土性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球及び正染性赤芽球で高度に発現し、このため、プロトパルボウイルス(例えば、CPVなど)ベクターは、ヘモグロビン遺伝子の抗鎌状赤血球型を発現することにより、鎌状赤血球症などの非悪性異常ヘモグロビン症の治療または予防に使用できる。
【0245】
特定の態様では、ブファウイルス、クタウイルス、またはtusavirusの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントを含む少なくとも1つの組換えビリオンを使用して、疾患を予防または治療する方法が本明細書に提供される。ブファウイルス、クタウイルス、tusavirus、または上記ウイルスのいずれか1つの少なくとも1つのキャプシドタンパク質もしくはそのバリアントを含む組換えビリオンは、胃腸障害及び他の標的組織に対して広範な用途を有する。例えば、クタウイルスは、皮膚T細胞リンパ腫及び黒色腫患者の皮膚サンプルから単離されており、T細胞及びB細胞に対する向性を示す。このような向性により、クタウイルスは、リンパ前駆細胞における遺伝子導入用途、及びその後の(i)CAR-Tなどの分化T細胞及び関連がん治療法、または(ii)分化B細胞におけるその後の用途、及び侵入する病原体、腫瘍細胞(例えば、腫瘍抗原またはネオアンチゲン)、または慢性自己免疫疾患に対する治療用ヒト抗体を発現させるためのそれらの用途にとって有望のものになる。
【0246】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンは、クタウイルスのキャプシドタンパク質(複数可)またはそのバリアントを含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、T細胞、B細胞、及び/またはリンパ前駆細胞を標的とする。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、がんを予防または治療する。
【0247】
特定の態様では、テトラパルボウイルス、例えば、ヒトパルボウイルス4(PARV4)の少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントを含む少なくとも1つの組換えビリオンを使用して、疾患を予防または治療する方法が本明細書に提供される。テトラパルボウイルス属には、ヒトパルボウイルス4(PARV4)、ブタパルボウイルス2、ストローオオコウモリパルボウイルス、ヤクパルボウイルス、ブタホコウイルス、及びヒツジホコウイルスが含まれる。ヒトパルボウイルス4(PARV4)は、注射薬の使用によりHIVに感染するリスクのあるヒトの血漿中で最初に検出された(Jones,Kapoor et al.2005)。PARV4のゲノムは、約5.3Kbで、AAVよりも900ヌクレオチド大きい。PARV4のキャプシドは、温度に対する耐性が高いため、非常に用途の広く、安定したウイルスベクターとなっている。PARV4は、特定の地理的地域で風土病だが、他の場所では、薬物を注射するヒト(PWID)及び複数回の輸血の既往があるヒトなど、HIV、HBV、またはHCV感染患者などの特定の高リスク群に限定されて発見されている。PARV4が、実際に、観察された疾患を引き起こしているのか、それとも非常に曝露された(ウイルス感染の)リスクのある集団で検出された非病原性の日和見ウイルスなのかは依然として不明である。一般集団におけるPARV4の血清有病率は、世界の様々な地域で0%~25%の範囲で変動する(Sharp,Lail et al.2009)。慢性ウイルス感染症患者における抗PARV4抗体の有病率は、世界の様々な地域で15~35%であると報告されているが、他の西側諸国の健康な個体における有病率は、1%未満であることが示されている。英国の献血者のPARV4 IgGスクリーニングでは、霊長類AAV抗原で、観察された血清陽性率よりも有意に低い4.8%の血清陽性率が特定された(Matthews,Sharp et al.2017)。これは、PARV4を遺伝子療法ベクターとして使用することの主な利点の1つを強調している。米国などいくつかの西側諸国の集団における中和抗体の血清有病率の低下と、特定の標的組織に対する向性により、これは用途の広い遺伝子療法ベクターになる。PARV4の向性及び潜伏部位は、完全には理解されていないが、説得力のあるデータは、骨髄、気道、肝臓、及び腸が、潜在的なウイルス複製部位を表し、潜伏または持続的な感染個体のウイルスの貯蔵庫であり得ることを示唆している。したがって、PARV4ベクターは、血液疾患を含む広範囲のヒト疾患を予防または治療するための治療用遺伝子の送達に特に有用である。
【0248】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、アルファヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固因子VIII、凝固因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、CEP290、INS、F8またはそれらのフラグメント(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチド(例えば、VIII SQ、p-VIII)をコードするフラグメント)、及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む。
【0249】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、以下に形質導入される:(a)CD34+幹細胞、任意によりex vivoで形質導入される;(b)間葉系幹細胞、任意によりex vivoで形質導入される;(c)肝臓細胞、(d)小腸細胞、及び/または(e)肺細胞。
【0250】
例えば、いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルス(例えば、PARV4)の少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンは、CD34+幹細胞中において、ex vivo修飾(例えば、治療用遺伝子及び/または疾患関連変異遺伝子を下方制御する剤の送達)のために使用される。いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルス(例えば、PARV4)の少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンは、間葉系幹細胞中において、ex vivo修飾(例えば、治療用遺伝子及び/または疾患関連変異遺伝子を下方制御する剤の送達)のために使用される。いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルス(例えば、PARV4)の少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンは、好ましくは経口投与を介して小腸に送達される。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、全身静脈内投与を介して肝臓細胞に投与される。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、好ましくは肝動脈または門脈を介して肝臓細胞に投与される。
【0251】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、(a)CFTRまたはそのフラグメント;(b)CFTRの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)CFTRの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせをコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、鼻腔内または肺内投与を介して肺に送達される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、(a)形質導入細胞中でのCFTRまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/または(b)形質導入細胞中でのCFTRの内因性変異形態の発現を減少させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、嚢胞性線維症を予防または治療する。
【0252】
いくつかの実施形態では、疾患を予防または治療する方法は、少なくとも1つの追加量のビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞を再投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加量の再投与は、初期有効量ビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞の投与後の治療の減弱後に行われる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の量は、初期有効量と同じである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加量は、初期有効量より多い。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの追加の量は、初期有効量より少ない。特定の実施形態では、少なくとも1つの追加の量は、内因性遺伝子及び/または組換えビリオンの核酸の発現に基づいて増加または減少させる。内因性遺伝子には、発現が、例えば疾患の診断及び/または予後に指標となるか、またはそれに関連するバイオマーカー遺伝子が含まれる。
【0253】
特定の態様では、疾患を予防または治療する方法は、核酸の発現を調節する剤を対象に投与すること、または細胞を上記剤に接触させることをさらに含む。いくつかの実施形態では、剤は、低分子、代謝産物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチド模倣体、ホルモン、ホルモン類似体、及び光から選択される。いくつかの実施形態では、剤は、テトラサイクリン、キュメート(cumate)、タモキシフェン、エストロゲン、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)から選択される。いくつかの実施形態では、方法は、剤を間隔をおいて1回または複数回再投与することをさらに含む。いくつかの実施形態では、剤の再投与は、核酸の周期的発現(pulsatile expression)をもたらす。いくつかの実施形態では、間隔間の時間及び/または剤の量は、核酸から発現したタンパク質の血清濃度及び/または半減期に基づいて増加または減少する。
【0254】
特定の態様では、細胞内の(i)遺伝子発現、または(ii)タンパク質の機能及び/または構造を調節する方法がさらに本明細書に提供され、この方法は、細胞内の遺伝子発現またはタンパク質の機能及び/または構造を調節する核酸を含む、本明細書に記載のビリオンまたは医薬組成物を細胞に形質導入することを含む。いくつかの実施形態では、そのような核酸は、CRISPRi剤またはCRISPRa剤をコードする配列を含む。いくつかの実施形態では、遺伝子発現、またはタンパク質の機能及び/または構造が増加するかまたは回復する。いくつかの実施形態では、遺伝子発現、またはタンパク質の機能及び/または構造が減少するかまたは消失する。
【0255】
例示的疾患
特定の態様では、本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、様々な疾患の予防及び/または治療に使用され得る。
【0256】
プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオン及び/または医薬組成物は、造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞(HSC)、クッパー細胞(KC)、肝類洞内皮細胞(LSEC))、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、赤血球前駆細胞、リンパ前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、T細胞、B細胞、好塩基性風土性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、及び/または正染性赤芽球の形質導入に有用である。
【0257】
さらに、本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、核酸(例えば、治療用核酸)をin vivo(例えば、ウイルス向性を介して特定の組織を標的として、例えば、対象に直接投与する)ならびにin vitroまたはex vivo(対象から複数の細胞を得て、組換えビリオンを使用して当該細胞に形質導入し、有効数の形質導入細胞を対象に投与する)で送達するのに特に有用である。
【0258】
ヘモクロマトーシス
経口投与されたプロトパルボウイルス遺伝子療法ベクターの生体内分布は、腸上皮におけるTfR媒介トランスサイトーシスによって決定される。遺伝子療法ベクターによる腸上皮バリアの転座により、その生体内分布が拡大し得る。本明細書に記載のプロトパルボウイルスキャプシド(例えば、VP2)の合理的修飾によって、本発明は、腸上皮内において、内腔から固有層へのトランスサイトーシスができないためにエンテロサイトに制限された向性、または主にエンテロサイトを標的とする向性を有するそのような操作されたウイルスベクターの使用を包含する。このような操作されたビリオンを使用する遺伝子療法は、遺伝性ヘモクロマトーシスなどの腸上皮中の遺伝性疾患を予防または治療するための理想的な手段を提供する。
【0259】
遺伝性ヘモクロマトーシス(HH)は、常染色体劣性遺伝病であり、白人において最も有病率の高い遺伝病である(Centers for Disease Control and Preventions;World Wide Web,cdc.gov)。米国では推定100万人が遺伝性ヘモクロマトーシスを有し、これは、嚢胞性線維症及び筋ジストロフィーを合わせた有病率を上回る(Bacon,Powell et al.1999)。HHは、鉄吸収の調節不全を特徴とする。HH患者では、鉄の吸収が不十分であり、身体が過剰に鉄を吸収する。高レベルの細胞内鉄沈着は、遺伝毒性酸素ラジカル及び脂質過酸化の形成を誘導し、炎症促進応答を確立し、複数の臓器に対して慢性的な損傷を引き起こす。この疾患の臨床的特徴は、肝臓、心臓、及び膵臓の実質細胞における鉄の数十年にわたる継続的な蓄積の結果として生じる。最も進行した形態では、HHは、肝硬変、肝細胞癌、糖尿病(diabetes mellitus)、性腺機能低下症、心筋症、関節炎、及び皮膚の色素沈着として現れる。腸絨毛内のエンテロサイトは、腸腔からの鉄の頂端側の取り込みを媒介し、その後、鉄は、細胞から循環へと排出される。頂端二価金属トランスポーター1(DMT1)は、内腔から細胞内に鉄を輸送するが、基底側膜結合トランスポーターであるフェロポーチンは、鉄をエンテロサイトから循環系に輸送する(Ezquer,Nunez et al.2006)。HH患者は、経上皮鉄取り込み量の増加を示し、これが身体内の鉄の蓄積及びその後の慢性合併症(肝硬変、肝細胞癌、膵炎、心筋症、関節炎、及び糖尿病)を引き起こす。
【0260】
遺伝性ヘモクロマトーシスの最も一般的な原因は、染色体6上で特定されるヒト恒常性鉄調節因子(HFE)遺伝子の変異である。HFE中の変異は、HH症例のほぼ90%の原因である。HFE遺伝子は、主要組織適合性複合体MHCクラスI様分子をコードする。HFEは、β2ミクログロブリンに結合し、これによって原形質膜への局在が決定される(Waheed,Parkkila et al.1997)。HHに関連するHFEについて記載されている主な変異は、エクソン4中での1つのヌクレオチドの変化であり、その結果、未プロセシングのHFEタンパク質の282位(C282Y)において、システインのアミノ酸のチロシンへの置換が生じる(Feder,Gnirke et al.1996)。この変異は、ゴルジ体における適切な翻訳後プロセシングに影響を与え、β2-ミクログロブリンとの相互作用、及びその後の細胞膜中への局在を破壊する(Feder,Tsuchihashi et al.1997,Waheed, Parkkila et al.1997)。HFEタンパク質の63位(H63D)において、ヒスチジンがアスパラギン酸部分に置き換わるHFE遺伝子中の第2の変異も報告されている(Gochee,Powell et al.2002)。変異して折り畳まれていないHFEタンパク質は、ER-ゴルジネットワークに蓄積され、折り畳まれていないタンパク質応答(UPR)の活性化を誘導し、したがって、炎症促進プログラム及びその後の疾患の転帰を悪化させる(de Almeida and de Sousa 2008,Liu,Lee et al.2011)。HFEは、腸細胞中で鉄輸入機構及び鉄排出機構の両方の活性を調整し、肝臓におけるヘプシジン遺伝子の転写制御に関与する多タンパク質複合体の一部である。HFE機能の喪失は、鉄の取り込みの負の調節因子であるヘプシジン発現の大幅な減少にも関連する。HFEまたはヘプシジンの欠如により、結果的に食事からの鉄の取り込みが増加し、様々な臓器内に蓄積される。
【0261】
本疾患のもう1つのより重篤な形態は、若年性ヘモクロマトーシス(JH)である。このタイプのヘモクロマトーシスは遺伝し、II型ヘモクロマトーシスと呼ばれる。II型ヘモクロマトーシスは、影響を受けた遺伝子に応じて、IIa型またはIIb型に分類される。IIa型及びIIb型では、早期の鉄過剰症の発症は、30歳未満で生じる。その結果、重度の心臓疾患または心臓発作、甲状腺機能低下症、月経がほとんどもしくはまったくない、または性腺機能低下症が引き起こされる。ヘモクロマトーシスIIa型は、染色体19中のヘプシジン遺伝子中の常染色体劣性変異によって引き起こされる。
【0262】
若年性ヘモクロマトーシスは、典型的には生後10年~30年に起こる重度の鉄過剰症の発症を特徴とする。男性及び女性が同様に罹患する。顕著な臨床的特徴としては、低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、心筋症、耐糖能異常及び糖尿病、関節症、及び肝線維症または肝硬変が挙げられる。肝細胞癌は、時折報告されているが、心臓病変が罹患率及び死亡率の主因である。
【0263】
興味深いことに、この疾患の唯一受け入れられている治療法は古式なもの(medieval)であり、主に赤血球内のヘム分子との非共有結合によって生じる鉄負荷を減少させるための定期的な出血(瀉血)が必要である。現在は、血清フェリチンレベルが、50ng/ml未満低下し、トランスフェリン飽和度が、30%未満の値まで低下するまで(2~3年を要する)最初は、それぞれ200~250mgの鉄を含む1~2単位の血液(500~1000ml)を毎週取り除く。トランスフェリン飽和値を50%未満、血清フェリチンレベルを100ng/ml未満に維持するには、出血はそれほど多くないが、生涯にわたる維持療法が必須である(Wojcik,Speechley et al.2002)。
【0264】
様々な病因によるヘモクロマトーシスに対する1つの治療法は、エンテロサイト中でのsiRNAの使用によるDMT1タンパク質合成の阻害であり、これは腸上皮細胞による頂端の鉄取り込みを顕著に阻害する(Ezquer,Nunez et al.2006)。二価金属輸送体DMT-1は、最近、銅イオンも輸送することが示された(Arredondo et al.,2003)。したがって、DMT-1遺伝子発現の阻害は、細胞からの銅の排出が減少する状態であるウィルソン病において、肝損傷を減少させるのに重要である。HH患者におけるエンテロサイト中での制御されていない鉄の取り込みが減少することにより、いくつかの罹患臓器中での鉄の蓄積が制限される。
【0265】
鉄負荷を制御する別のアプローチは、エンテロサイト中において、フェロポーチン遺伝子の発現を阻害し、基底側の鉄の排出を減少させることである。この場合、吸収された鉄は、エンテロサイト内にのみ蓄積する。さらに、鉄の蓄積は、IRE/IRP機構による頂端DMT-1輸送体遺伝子の発現の減少をもたらし、二重の阻害効果を生み出すこととなる。さらに、蓄積された鉄はいずれも、腸腔へのエンテロサイトの正常な剥がれ落ちによって失う。
【0266】
エンテロサイト内で野生型HFEを発現させるために、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントを含む組換えビリオンを使用することにより、HFE活性を回復させることができ、またDMT-1及びフェロポーチンの発現を積極的に調節することができ、それによって広範な治療効果を持つことになる。DMT-1をサイレンシングするために野生型HFE及びsiRNAを同時発現及び/または同時投与する、本明細書に記載の1つ以上の組換えビリオンを使用する併用戦略も、臨床利益を向上させ得る。
【0267】
ペプチドヘプシジンは、鉄代謝の重要な調節因子である。これは、主に肝臓内で合成され、20~25アミノ酸のペプチドとして分泌される。ヘプシジン遺伝子の変異は、若年性ヘモクロマトーシスの原因となる(Roetto,Papanikolaou et al.2003)。HFEは、肝臓中でのヘプシジンの発現を調節する。ヘプシジンは、細網内皮マクロファージ及び鉄の腸吸収を媒介するエンテロサイトからの鉄の放出を負に制御する(Nemeth,Tuttle et al.2004,Nemeth,Roetto et al.2005,Rivera,Liu et al.2005)。肝臓中でヘプシジンを送達し発現させるための本明細書に記載の組換えビリオンの使用は、身体による鉄の取り込みを減少させ、鉄過剰症に関連する毒性を減少させることができ、それによってすべての形態のヘモクロマトーシスを予防することができる。
【0268】
遺伝性ヘモクロマトーシスの主な特徴のうちの1つは(例えば、機能的なHFEタンパク質の欠如に起因する)、DMT-1、フェロポーチン、及び/またはトランスフェリン受容体(TfR)など、エンテロサイト中での鉄恒常性に関与する因子の上方制御である。上述のように、TfRまたはCD71は、プロトパルボウイルスまたはそのキャプシドタンパク質の少なくとも1つを含む組換えビリオンの形質導入を促進する、プロトパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス)の細胞受容体である。したがって、遺伝性ヘモクロマトーシスに罹患している対象におけるTfRの上方制御は、プロトパルボウイルス(例えば、イヌパルボウイルス)の少なくとも1つキャプシドタンパク質またはそのバリアントを含む組換えビリオンを使用して、エンテロサイト中での鉄恒常性に関与する様々なタンパク質の発現を調節する治療用遺伝子及び/または剤を標的にし、濃縮する絶好の機会を提供する。プロトパルボウイルスまたはそのキャプシドタンパク質の少なくとも1つを含む組換えビリオンのゲノムサイズが大きいことにより、ヘモクロマトーシスを予防または治療するための遺伝子療法のためのより大きな遺伝子及び/または剤をパッケージングする際の柔軟性がさらにもたらされる。
【0269】
特定の態様において、本明細書において提供されるのは、以下をコードする核酸を含む少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞を使用して、疾患を予防または治療する方法である:(a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、及び/または恒常性鉄調節因子(HFE)またはそのフラグメント;(b)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0270】
いくつかの実施形態では、フラグメントは、生物学的活性フラグメントである。
【0271】
いくつかの実施形態では、対象には、以下をコードする核酸を含む少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が投与される:
a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に静脈内投与され、任意により、(i)当該核酸がプロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される;
b)HFEまたはそのフラグメント、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に静脈内投与され、任意により、(i)当該核酸がプロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される;
c)HFEまたはそのフラグメント、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に経口投与され、任意により、(i)当該核酸がプロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物がエンテロサイトに形質導入される;
d)HFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に静脈内投与され、任意により、(i)当該核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される;
e)HFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に経口投与され、任意により、(i)当該核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される;
f)DMT-1を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に経口投与され、任意により、(i)当該核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される;
g)フェロポーチンを標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)、ここで、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が対象に経口投与され、任意により、(i)核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される;または
h)a)~g)のいずれか2つ以上の組み合わせ。
【0272】
いくつかの実施形態では、この方法は、b)~e)のいずれか1つの2つ以上の組み合わせを含む。
【0273】
いくつかの実施形態では、組換えビリオンまたは医薬組成物は、a)形質導入細胞におけるHFEまたはそのフラグメント、及び/またはヘプシジンまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/またはb)形質導入細胞におけるDMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態の発現を減少させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、及び/またはウィルソン病を予防または治療する。
【0274】
炎症性腸疾患(IBD)
炎症性腸疾患(IBD)には、ヒトの消化管の慢性炎症を伴う一連の疾患が含まれる。IBDの最も一般的な形態は、潰瘍性大腸炎及びクローン病である。これらは、慢性的に再発する腸炎症を特徴とする複雑な多因子疾患である。病因は依然としてその多くが不明であるが、最近の研究では、遺伝的要因、環境、微生物叢、及び自己免疫応答が病因の寄与因子であることが示唆されている(Hendrickson,Gokhale et al.2002)。米国では、推定300万人がIBDと診断されており(World Wide Web,cdc.gov/ibd/data-statistics.htm)、毎年70,000人が新たにクローン病または潰瘍性大腸炎と診断されている。現在、これらの疼痛を伴う疾患を治癒させる方法はなく、治療による年間推定医療費は、63億ドルである(Limanskiy,Vyas et al.2019)。IBDに関連する多因子構成要素は、NFkB経路によって活性化される遺伝子によって基本的に媒介される、炎症誘発性プログラムの活性化に集中する。IBDの病理生物学を媒介する、IBD中に誘導される主な炎症誘発性サイトカインは、TNFα、IL-1β、IL-12及びIL-6である。異なるプロトパルボウイルス及びテトラパルボウイルス由来のビリオンの低pHに対する高い耐性、及びこれらのウイルスベクターのヒトエンテロサイトに形質導入する能力を考慮すると、本開示の組換えビリオンは、様々なサイトカインの発現及び/または機能同様に、その後の胃腸上皮バリアの完全性の維持を調節するための新規な治療アプローチを構成する。
【0275】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスもしくはテトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオン、または操作されたキャプシドタンパク質を含むビリオンは、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体の発現に使用される。上記これらの可溶型の受容体は、小腸固有層に分泌され得、そこでリガンド(例えば、炎症誘発性サイトカイン)を特異的に中和する。
【0276】
可溶型の膜結合受容体は、可溶性分泌形態の受容体をコードする遺伝子を送達することによって発現させることができる。例えば、TNFαの17kDa可溶性部分は、TNFα変換酵素(TACE;ADAM-17)による26kDaのII型膜貫通アイソフォームのタンパク質分解的切断後に細胞から放出されることが知られている(Kriegler et al.(1988)Cell53:45-53)。したがって、シグナルペプチド(例えば、IL-2シグナルペプチド;例えば、Ardestani et al.(2013)Cancer Res.73:3938-3950を参照)に融合された17kDa部分(または細胞外ドメインの任意の所望の部分、例えば、拮抗/中和されるリガンドと相互作用する部分)をコードする遺伝子を含む本開示の組換えビリオンは、対象において可溶型のTNFαを発現させるために、それを必要とする対象(例えば、IBDまたは他の炎症性疾患に罹患している対象)にin vivoで送達させ得る。あるいは、自己細胞または同種異系細胞のいずれかに、分泌可溶型の膜タンパク質をコードする遺伝子を含むそのようなビリオンをin vitroまたはex vivoで形質導入することができ、細胞を、それを必要とする対象に移入して、対象を治療することができる。同様の戦略を任意の膜結合タンパク質に使用できる。
【0277】
特定の態様では、以下をコードする核酸を含む少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が本明細書に提供される:(a)可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0278】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、(a)形質導入細胞中において、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、または可溶型のIL-1β受容体の発現を増加させる;及び/または(b)形質導入細胞中において、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、またはIL-1β受容体の発現を減少させる。
【0279】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び/または強直性脊椎炎を予防または治療する。
【0280】
したがって、当該治療用遺伝子及び/または剤を含む本開示の組換えビリオンは、対象における慢性炎症を調節し、T細胞、NK細胞、及び他のエフェクター免疫細胞の活性化を減少させることによって治療効果をもたらし、その後損傷した上皮バリアの修復が可能になる。治療効果は、本明細書で提供される併用戦略によってさらに増強され得る。
【0281】
オートファジー関連疾患
本開示の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、オートファジー-リソソーム経路の重要なコンポーネントを調節するために使用することができる。オートファジーは、分化及び発生、細胞及び組織の恒常性、タンパク質及び細胞小器官の品質管理、代謝、免疫、加齢及び様々な疾患に対する防御において重要な役割を果たす。オートファジーのマクロオートファジー型(以下、オートファジーと称する)は、細胞の生体エネルギー(細胞質成分のリサイクルによる)及び細胞質の品質(タンパク質凝集体、損傷した細胞小器官、脂肪滴、及び細胞内病原体の除去による)を制御する、進化的に保存されたリソソーム分解経路である(Levine,Packer et al.2015)。さらに、リソソーム分解とは独立して、オートファジー機構は、食作用、アポトーシスによる死骸の除去、分泌、エキソサイトーシス、抗原提示、及び炎症性シグナル伝達の調節のプロセス中で展開され得る。幅広い細胞機能の結果として、オートファジー経路は、加齢及び特定のがん、感染症、神経変性疾患、代謝性疾患、炎症性疾患、及び筋肉疾患に対する防御において重要な役割を果たす(Levine,Packer et al.2015)。
【0282】
多くの疾患は、ミスフォールドしたタンパク質凝集体、核酸、及び/またはミトコンドリアなどの損傷した細胞小器官の小片など、望ましくない潜在的に細胞傷害性のある細胞破片の蓄積に関連する。オートファジーは脂質も分解し、脂肪酸の異化利用を可能にし、ガングリオドーシス(gangliodosis)、例えばGM1、テイ=サックス病などの脂肪酸代謝性疾患に重大な影響を及ぼす。リソソーム蓄積障害など、いくつかのまれな常染色体疾患は、蓄積された「細胞のゴミ」の分解の失敗と関連しており、これにより、一般に低レベルではあるが、慢性的な炎症プログラムが開始され、組織損傷及びがんなどの複数の壊滅的な結果がもたらされる。
【0283】
蓄積された細胞質物質は、損傷関連分子パターン(DAMP)として知られ、インフラマソームタンパク質のTLR1~10、cGAS、IFI16、RIG-I、MDA5、NLRPファミリーを含む無数のパターン認識受容体(PRR)のリガンドであると考えられている。外来分子及び自己分子を感知すると、PRRは、自己分泌及び傍分泌能力を備えた複数のシグナル伝達カスケードを誘導し、NFkBシグナル伝達経路、IFN-I経路、IFN-II経路、IFN-III経路、及びAMPK、Beclin-I、PI3K経路を含むオートファジー経路の活性化などの基本的な細胞プロセスを実行する。オートファジープログラムを開始するには、栄養飢餓状態または運動など、様々なイベントが提唱されている。血糖調節薬メトホルミンなどのAMPK活性化剤は、オートファジーを活性化し、実験動物の寿命を延長させることが知られている。オートファジーの活性化における最初の分子イベントは、Atgタンパク質ファミリーなどのタンパク質の集合を引き起こす様々なカスケードイベントによる細胞内、サイトゾルの二重膜構造(オートファゴソーム)の形成である。オートファゴソームは、細胞内に存在するDAMP及び/またはPAMPを包み込み、この現象は膜核形成段階として知られている。オートファジー経路の次のステップは、オートファゴソームの伸長及び閉鎖である。最後に、この成熟して完全に形成されたオートファゴソームは、低pH環境で広範囲に作用するヌクレアーゼ及びプロテアーゼを含むリソソームと融合し、カーゴが可溶性で非毒性構成成分に分解されるオートリソソームを形成し、これにより、DAMPの細胞質存在量が減少する。
【0284】
肝臓、中枢神経系(CNS)、または腸などの特定の組織におけるオートファジーの誘導は、無数の異なる慢性疾患に罹患している患者に大きな利益をもたらす。したがって、本明細書では、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、ダイニン、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/パーキン、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、及びULK1から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物または形質導入細胞が提供される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物は、形質導入細胞中で当該タンパク質またはそのフラグメントの発現を増加させる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、オートファジーを調節する。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、オートファジー関連疾患を予防または治療する。
【0285】
いくつかの実施形態では、オートファジー関連疾患は、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、(アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病から選択される。
【0286】
本明細書で使用する場合、「オートファジー関連疾患」という用語は、オートファジーまたは細胞自己消化の破壊に起因する疾患を指す。オートファジー機能不全は、他の多くの病態及び/または状態の中でも特に、がん、神経変性、微生物感染、及び加齢と関連している。オートファジーは、細胞の保護プロセスとして主要な役割を果たすが、細胞死にも関与する。オートファジーを介して媒介される病状及び/または状態(病状または状態が、患者または治療対象のオートファジーの増加または減少に対応して現れる可能性があり、治療または予防には、患者または対象におけるオートファジーの阻害剤またはアゴニストの投与が必要であることを指す)としては、以下が挙げられる:例えば、がん、例えば、がんの転移、リソソーム蓄積症(以下に論じる)、神経変性(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病;他の運動失調)、免疫応答(T細胞の成熟、B細胞及びT細胞の恒常性、有害な炎症に対抗する)、及び慢性炎症性疾患(オートファジーに欠陥がある場合に過剰なサイトカインを促進し得る)、例えば、炎症性腸疾患、例えば、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病;高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、脂質代謝膵島の機能及び/または構造に影響を与える、過剰なオートファジーは、膵臓b細胞死及び関連する高血糖障害を引き起こし得る、例えば、重度のインスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)及び脂質異常症(例えば、肥満対象に現れる高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、及びトリグリセリドの上昇)及びメタボリックシンドローム、肝疾患(細胞エンティティの過剰オートファジーによる除去-小胞体)、腎疾患(プラークのアポトーシス、糸球体疾患)、心血管疾患(特に虚血、脳卒中、圧力過負荷及び再灌流中の合併症)、筋肉変性及び萎縮、老化の症状(加齢関連症状及び以下の慢性疾患の発症、重症度、または頻度の改善または遅延など:筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、及び関連症状、例えば、中枢及び末梢症状の両方の心臓及び神経症状などの関連症状、例えば、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、うつ病などの精神状態)、脳卒中及び脊髄損傷、動脈硬化、細菌、真菌、細胞及びウイルスなどの感染症(微生物感染、微生物を除去する、微生物産物に対する防御炎症反応を提供する、微生物の成長を増強するために微生物により宿主のオートファジーの適応を制限する、自然免疫を調節する)(感染症に関連する二次的病態または症状を含む)、例えば、AIDS及び結核、発生(赤血球分化など)、胚発生/生殖能力/不妊症(経胎盤での栄養素の供給停止後の胚の着床及び新生児の生存、プログラムされた細胞死中の死んだ細胞の除去)及び加齢(オートファジーの増加は、損傷した細胞小器官または凝集した巨大分子の除去につながり、健康を増進し寿命を延長するが、小児/若年でのオートファジーレベルの増加は、筋肉及び臓器の消耗を引き起こし、加齢/早老症となり得る)。
【0287】
「リソソーム蓄積障害」という用語は、リソソーム蓄積の欠陥から生じる病態または状態を指す。これらの病態または状態は、通常、リソソームが機能不全になったときに生じる。リソソーム蓄積障害は、通常、脂質、糖タンパク質、またはムコ多糖の代謝に必要な酵素の欠乏の結果としてのリソソームの機能不全によって引き起こされる。リソソーム蓄積障害の発生率は、(まとめて)約1:5,000~1:10,000の発生率で生じる。リソソームは、不要な物質を細胞が利用できる物質にプロセシングするため、一般に細胞のリサイクルセンターと呼ばれる。リソソームは、高度に特殊化された酵素を介してこの不要な物質を分解する。リソソーム障害は一般に、特定の酵素が非常に少ない量で存在する場合、またはまとめて欠如している場合に引き起こされる。これが生じると、細胞内に物質が蓄積する。換言すれば、リソソームが正常に機能しない場合、分解及びリサイクルされることが決定している過剰な生成物が細胞内に貯蔵される。リソソーム蓄積障害は、遺伝性疾患であるが、これらは本明細書に記載のオートファジーモジュレーター(オートスタチン)を使用して治療され得る。これらの疾患は、すべて共通の生化学的特徴を共有する。すなわち、すべてのリソソーム疾患は、リソソーム内の物質の異常な蓄積に起因する。リソソーム蓄積症は、主に小児が罹患し、多くの場合、結果として人生の早い段階、その多くは生後数ヶ月または数年以内に死亡する。他の多くの小児が、特定の障害の様々な症状に何年も罹患後、この疾患で死亡する。
【0288】
リソソーム蓄積症の例としては、例えば、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、及びIII型)、GM1ガングリオシドーシス(乳児期、乳児期後期/若年期、及び成人/慢性を含む)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、シャイエ症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン-ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病などが挙げられる。
【0289】
炎症性疾患
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、自己免疫疾患、例えば、慢性炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、マックルウェルズ症候群、関節リウマチ、多発性硬化症、または橋本病;アレルギー疾患、例えば、食物アレルギー、花粉症、または喘息;感染症、例えば、クロストリジウム・ディフィシルによる感染;炎症性疾患、例えば、TNF媒介炎症性疾患(例えば、胃腸管の炎症性疾患、例えば、回腸嚢炎、心臓血管の炎症状態、例えば、アテローム性動脈硬化症、または慢性閉塞性肺疾患などの炎症性肺疾患);を予防または治療する(副作用を部分的または完全に軽減する)ために使用され得;臓器移植または組織拒絶反応が起こり得る他の状況における拒絶反応を抑制するために医薬組成物が使用され得;免疫機能を改善するために医薬組成物が使用され得;または免疫細胞の増殖もしくは機能を抑制するために医薬組成物が使用され得る。
【0290】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、炎症の治療または予防に有用である。特定の実施形態では、身体の任意の組織及び臓器の炎症としては、筋骨格系炎症、血管系炎症、神経炎症、消化器系炎症、眼炎症、生殖系の炎症、及び以下に論じる他の炎症が挙げられる。
【0291】
筋骨格系の免疫障害としては、これらに限定されないが、手、手首、肘、肩、顎、脊椎、首、股関節、膝、足首、及び足の関節などの骨格関節に影響を与える状態、ならびに腱など、筋肉と骨を接続する組織に影響を与える状態が挙げられる。本明細書に記載の方法及び組成物で治療できるそのような免疫障害の例としては、これらに限定されないが、関節炎(例えば、変形性関節症、関節リウマチ、乾癬性関節炎、強直性脊椎炎、急性及び慢性の感染性関節炎、痛風及び偽痛風に関連する関節炎、及び若年性特発性関節炎)、腱炎、滑膜炎、腱滑膜炎、滑液包炎、線維炎(線維筋痛症)、上顆炎、筋炎、及び骨炎(例えば、パジェット病、恥骨骨炎、及び嚢胞性線維性骨炎を含む)が挙げられる。
【0292】
眼免疫障害とは、眼瞼を含む目のあらゆる構造に影響を与える免疫障害を指す。本明細書に記載の方法及び組成物で治療され得る眼免疫障害の例としては、眼瞼炎、眼瞼皮膚弛緩症、結膜炎、涙腺炎、角膜炎、乾性角結膜炎(ドライアイ)、強膜炎、睫毛炎、及びぶどう膜炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0293】
本明細書に記載の方法及び組成物で治療され得る神経系免疫障害の例としては、脳炎、ギラン・バレー症候群、髄膜炎、神経性筋強直症、ナルコレプシー、多発性硬化症、脊髄炎、及び統合失調症が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に記載の方法及び組成物で治療され得る血管系またはリンパ系の炎症の例としては、関節硬化症、関節炎、静脈炎、血管炎、及びリンパ管炎が挙げられるが、これらに限定されない。
【0294】
本明細書に記載される方法及び医薬組成物を用いて治療され得る消化器系免疫障害の例としては、胆管炎、胆嚢炎、腸炎、全腸炎、胃炎、胃腸炎、炎症性腸疾患、回腸炎、及び直腸炎が挙げられるが、これらに限定されない。炎症性腸疾患としては、例えば、当技術分野で認められた一群の関連症状の特定の形態が挙げられる。炎症性腸疾患のいくつかの主要な形態が知られており、クローン病(局所性腸疾患、例えば、不活性型及び活性型)及び潰瘍性大腸炎(例えば、不活性型及び活性型)がこれらの疾患の中で最も一般的である。さらに、炎症性腸疾患としては、過敏性腸症候群、顕微鏡的大腸炎、リンパ球性形質細胞性腸炎(lymphocytic-plasmocytic enteritis)、セリアック病、膠原性大腸炎、リンパ球性大腸炎、及び好酸球性腸炎が含まれる。その他のあまり一般的ではない形態のIBDとしては、分類不能大腸炎、偽膜性大腸炎(壊死性大腸炎)、虚血性炎症性腸疾患、ベーチェット病、サルコイドーシス、強皮症、IBD関連異形成、異形成関連の腫瘤または病変、及び原発性硬化性胆管炎などがある。
【0295】
本明細書に記載の方法及び医薬組成物で治療され得る生殖系免疫障害の例としては、子宮頸管炎、絨毛膜羊膜炎、子宮内膜炎、精巣上体炎、臍炎、卵巣炎、睾丸炎、卵管炎、卵管卵巣膿瘍、尿道炎、膣炎、外陰炎、及び外陰部痛が挙げられるが、これらに限定されない。
【0296】
本明細書に記載の方法及び組成物は、炎症性要素を有する自己免疫状態を予防または治療するために使用することができる。このような症状としては、急性散在性汎発性脱毛(acute disseminated alopecia universalise)、ベーチェット病、シャーガス病、慢性疲労症候群、自律神経失調症、脳脊髄炎、強直性脊椎炎、再生不良性貧血、化膿性汗腺炎、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎、セリアック病、クローン病、1型糖尿病、2型糖尿病、巨細胞性動脈炎、グッドパスチャー症候群、グレーブス病、ギラン・バレー症候群、橋本病、ヘノッホ・シェーライン紫斑病、川崎病、エリテマトーデス、顕微鏡的大腸炎、顕微鏡的多発性動脈炎、混合性結合組織病、マックルウェルズ症候群、多発性硬化症、重症筋無力症、オプソクローヌス・ミオクローヌス症候群、視神経炎、オルド甲状腺炎(ord’s thyroiditis)、天疱瘡、結節性多発動脈炎、多発筋痛、関節リウマチ、ライター症候群、シェーグレン症候群、側頭動脈炎、ウェゲナー肉芽腫症、温式自己免疫性溶血性貧血、間質性膀胱炎、ライム病、限局性強皮症、乾癬、サルコイドーシス、強皮症、潰瘍性大腸炎、及び白斑が挙げられるが、これらに限定されない。
【0297】
本明細書に記載の方法及び組成物は、炎症性要素を有するT細胞媒介性過敏症疾患を予防または治療するために使用することができる。このような症状としては、接触過敏症、接触皮膚炎(ウルシによるものなど)、蕁麻疹、皮膚アレルギー、呼吸器アレルギー(花粉症、アレルギー性鼻炎、イエダニアレルギー)、及びグルテン過敏性腸症(セリアック病)などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0298】
本方法及び医薬組成物で治療され得る他の免疫障害としては、例えば、虫垂炎、皮膚炎、皮膚筋炎、心内膜炎、結合組織炎、歯肉炎、舌炎、肝炎、化膿性汗腺炎、虹彩炎、喉頭炎、乳腺炎、心筋炎、腎炎、耳炎、膵炎、耳下腺炎、心膜炎、腹膜炎、咽頭炎、胸膜炎、肺炎、前立腺炎、腎盂腎炎、及び口内炎、移植拒絶反応(腎臓、肝臓、心臓、肺、膵臓(例、島細胞)、骨髄、角膜、小腸などの臓器に関わる)、皮膚自家移植、皮膚同種移植、及び心臓弁異種移植、血清病、及び移植片対宿主病)、急性膵炎、慢性膵炎、急性呼吸窮迫症候群、Sexary症候群、先天性副腎過形成、非化膿性甲状腺炎、癌に伴う高カルシウム血症、天疱瘡、疱疹状水疱性皮膚炎、重症多形紅斑、剥離性皮膚炎、脂漏性皮膚炎、季節性または通年性アレルギー性鼻炎、気管支喘息、接触皮膚炎、アトピー性皮膚炎、薬物過敏症、アレルギー性結膜炎、角膜炎、眼部帯状疱疹、虹彩炎及び虹彩毛様体炎、脈絡網膜炎、視神経炎、症候性サルコイドーシス、劇症または播種性肺結核の化学療法、成人の特発性血小板減少性紫斑病、成人の続発性血小板減少症、後天性(自己免疫性)溶血性貧血、局所性腸炎、自己免疫性血管炎、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患、固形臓器移植拒絶反応、敗血症が挙げられる。好ましい治療としては、移植拒絶、関節リウマチ、乾癬性関節炎、多発性硬化症、1型糖尿病、喘息、炎症性腸疾患、全身性エリテマトーデス、乾癬、慢性閉塞性肺疾患、及び感染症に伴う炎症(例えば、敗血症)の治療が挙げられる。
【0299】
神経変性疾患及び神経炎症性疾患
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、神経変性疾患及び神経疾患を予防または治療するために使用することができる。特定の実施形態では、神経変性疾患及び/または神経疾患は、パーキンソン病、アルツハイマー病、プリオン病、ハンチントン病、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳性運動失調、脊髄性筋萎縮症、ジストニア、特発性頭蓋内圧亢進症、てんかん、神経系疾患、中枢性神経系疾患、運動障害、多発性硬化症、脳症、末梢神経障害、術後認知機能障害、前頭側頭型認知症、脳卒中、一過性脳虚血発作、血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病、多発性硬化症、プリオン病、ピック病、大脳皮質基底核変性症、パーキンソン病、レビー小体型認知症、進行性核上性麻痺、拳闘家認知症(慢性外傷性脳症)、前頭側頭型認知症、17番染色体に関連するパーキンソン病、Lytico-Bodig病、神経原線維変化型老年期認知症、神経節膠腫、神経節細胞腫、髄膜血管腫症、亜急性硬化性全脳炎、鉛脳症、結節性硬化症、ハラーフォルデン・シュパッツ病、リポフスチン症、嗜銀性顆粒病、及び前頭側頭葉変性症である。
【0300】
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、神経炎症及び/または神経炎症性疾患を予防または治療するために使用することができ、例えば、炎症を緩和する1つ以上のサイトカインをコードする遺伝子を含む核酸を送達するために、本開示の組換えビリオンを使用する。神経炎症性疾患としては、自己免疫疾患、炎症性疾患、神経変性疾患、神経筋疾患、または精神疾患が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法及び組成物は、脳炎症、末梢神経炎症、神経炎症、脊髄炎症、眼炎症、及び/または他の炎症など、中枢神経系の炎症の治療または予防に有用である。
【0301】
本明細書に記載の方法及び組成物で治療され得る神経炎症に関連する障害または神経炎症性障害の例としては、脳炎(脳の炎症)、脳脊髄炎(脳及び脊髄の炎症)、髄膜炎(脳及び脊髄を取り囲む膜の炎症)、ギラン・バレー症候群、神経性筋強直症、ナルコレプシー、多発性硬化症、脊髄炎、統合失調症、急性播種性脳脊髄炎(ADEM)、急性視神経炎(AON)、横断性脊髄炎、視神経脊髄炎(NMO)、アルツハイマー病、パーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭葉認知症、視神経炎、視神経脊髄炎スペクトラム障害(NMOSD)、自己免疫性脳炎、抗NMDA受容体脳炎、ラスムッセン脳炎、小児急性壊死性脳症(ANEC)、オプソクローヌス-ミオクローヌス運動失調症候群、外傷性脳損傷、ハンチントン病、うつ病、不安、片頭痛、重症筋無力症、急性虚血性脳卒中、てんかん、シヌクレイノパチー、前頭側頭型認知症、進行性非流暢性失語症、意味性認知症、うなずき症候群、脳虚血、神経障害性疼痛、自閉症スペクトラム症、線維筋痛症候群、進行性核上性麻痺、皮質基底核変性、全身性エリテマトーデス、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳変性症、脊髄性筋萎縮症、ジストニア、特発性頭蓋内圧亢進症、神経系疾患、中枢神経系疾患、運動障害、脳症、末梢神経障害、または術後認知機能障害が挙げられるが、これらに限定されない。
【0302】
がん
がん、腫瘍、または過剰増殖性疾患は、制御されない増殖、不死性、転移能、急速な成長及び増殖速度、ならびにある特定の特質的な形態学的特徴など、がんを引き起こす細胞の典型的な特質を保有する細胞の存在を指す。がん細胞は、多くの場合、腫瘍の形態であるが、このような細胞は、動物内に単独で存在し得るか、または非腫瘍化がん細胞、例えば、白血病細胞などであり得る。がんとしては、B細胞癌(例えば、多発性骨髄腫、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、濾胞性リンパ腫、慢性リンパ性白血病(CLL)、小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントル細胞リンパ腫(MCL)、辺縁帯リンパ腫、バーキットリンパ腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ヘアリー細胞白血病、原発性中枢神経系(CNS)リンパ腫、原発性眼内リンパ腫、重鎖疾患(例えば、α鎖疾患、γ鎖疾患、及びミュー鎖疾患、良性モノクローナルガンマグロビン症、及び免疫細胞性アミロイドーシス)、T細胞癌(例えば、Tリンパ芽球性リンパ腫/白血病、非ホジキンリンパ腫、末梢性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫(例えば、菌状息肉症、セザリー症候群など))、成人T細胞白血病/リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、節外性ナチュラルキラー/T細胞リンパ腫、腸疾患関連腸管T細胞リンパ腫(EATL)、未分化大細胞型リンパ腫(ALCL)、ホジキンリンパ腫)、黒色腫、乳癌、肺癌、気管支癌、大腸癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、卵巣癌、膀胱癌、脳または中枢神経系の癌、末梢神経系癌、食道癌、子宮頸癌、子宮または子宮内膜癌、口腔または咽頭の癌、肝癌、腎癌、精巣癌、胆道癌、小腸または虫垂癌、唾液腺癌、甲状腺癌、副腎癌、骨肉腫、軟骨肉腫、血液組織の癌などが挙げられるが、これらに限定されない。本発明に包含される方法に適用可能ながんの種類の他の非限定的な例としては、ヒトの肉腫及び癌腫、例えば、線維肉腫、粘液肉腫、脂肪肉腫、軟骨肉腫、骨原性肉腫、脊索腫、血管肉腫、内皮肉腫、リンパ管肉腫、リンパ管内皮肉腫(lymphangioendotheliosarcoma)、滑膜腫、中皮腫、ユーイング腫瘍、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、結腸癌、大腸癌、膵癌、乳癌、卵巣癌、前立腺癌、扁平上皮癌、基底細胞癌、腺癌、汗腺癌、脂腺癌、乳頭癌、乳頭腺癌、嚢胞腺癌、髄様癌、気管支癌、腎細胞癌、肝癌、胆管癌、肝癌、絨毛癌、精上皮腫、胎児性癌、ウィルムス腫瘍、子宮頸癌、骨癌、脳腫瘍、精巣癌、肺癌、小細胞肺癌腫(SCLC)、膀胱癌、上皮癌、神経膠腫、星状細胞腫、髄芽腫、頭蓋咽頭腫、上衣腫、松果体腫、血管芽腫、聴神経腫、希突起膠腫、髄膜腫、神経芽腫、網膜芽腫;白血病、例えば、急性リンパ性白血病及び急性骨髄性白血病(骨髄芽球性、前骨髄球性、骨髄単球性、単球性及び赤白血病);慢性白血病(慢性骨髄性(顆粒球性)白血病及び慢性リンパ性白血病);真性赤血球増加症、リンパ腫(ホジキン病及び非ホジキン病)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、及び重鎖疾患が挙げられる。いくつかの実施形態では、がんは、本質的に上皮性であり、膀胱癌、乳癌、子宮頸癌、結腸癌、婦人科癌、腎癌、喉頭癌、肺癌、口腔癌、頭頸部癌、卵巣癌、膵癌、前立腺癌、または皮膚癌を含むがこれらに限定されない。他の実施形態では、がんは、乳癌、前立腺癌、肺癌、または結腸癌である。さらに他の実施形態では、上皮癌は、非小細胞肺癌、非乳頭腎細胞癌、子宮頸癌、卵巣癌(例えば、漿液性卵巣癌)、または乳癌である。上皮癌は、漿液性癌、類内膜癌、粘液性癌、明細胞癌、ブレンナー癌、または未分化癌を含むがこれらに限定されない他の様々な方法で特徴付けられ得る。
【0303】
家族性肝内胆汁うっ滞
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、家族性肝内胆汁うっ滞(PFIC)(ATPB1、ATPB11、及びABCB4遺伝子中の変異に関連し、それぞれPFIC1型、2型、及び3型を引き起こす遺伝性疾患)を予防または治療するために使用することができる。このまれな常染色体劣性遺伝病は、胆汁分泌経路の破壊を生じさせ、肝臓における管状増殖とガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)の活性の上昇を伴う進行性肝内胆汁うっ滞を特徴とする。ABCB4変異は、この疾患の最も一般的な形態である。ABCB4遺伝子は、染色体7q21.1に位置し、PFIC3の原因に関与する脂質フロッパーゼMDR3タンパク質をコードする。MDR3は、主に肝臓の小管膜において発現し、リン脂質トランスロケーター、すなわちホスファチジルコリン(PC)として機能する。MDR3は、胆汁酸塩の洗浄活性から肝細胞膜を保護する。PFIC3欠損は、胆汁へのホスファチジルコリン(PC)の分泌の減少を特徴とし、胆汁分泌輸送システムが損なわれる(Davit-Spraul,et al.,PMID:20422496)。PC分泌の減少は、肝臓内で毒性を引き起こし、その結果、炎症促進プログラムの活性化及びそれに伴う肝細胞の破壊が生じ、さらに肝内肝硬変に進行する。他の有病率の低い形態の疾患は、ATPB1及びATPB11遺伝子中での変異によって引き起こされ、同様の結果をもたらす。様々な実施形態において、本明細書に記載の組換えビリオンは、遺伝子療法を必要とする対象の細胞、組織、または臓器への直接注射によって、in vivoで投与される。
【0304】
ウィルソン病
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、ウィルソン病(WD)を予防または治療するために使用することができる。WDは、銅を輸送するP型ATPaseをコードするATP7B遺伝子中の変異に関連する、単一遺伝子性の常染色体劣性遺伝の疾患である。ATP7Bは、600を超える病原性バリアントが同定されており、一塩基ミスセンス変異及びナンセンス変異が最も一般的であり、次に挿入/欠失であり、まれにスプライス部位変異である。ATP7Bは、肝臓で最も多く発現するが、腎臓、胎盤、乳腺、脳、及び肺でも見られる。ATPB7の破壊は、細胞内の銅レベルの増加につながる。ヒトの食事による銅の摂取量は、1日あたり約1.5~2.5mgで、銅は、胃及び十二指腸中で吸収され、循環アルブミンに結合して、調節及び排泄のために肝臓に輸送される。抗酸化タンパク質1(ATOX1)は、銅依存性タンパク質間相互作用によって銅をATPB7に送達させる。肝細胞内では、ATP7Bは、トランスゴルジネットワーク(TGN)または細胞質小胞中のいずれかにおいて、2つの重要な機能を果たす。TGN中では、ATP7Bは、6つの銅分子をアポセルロプラスミンにパッケージングすることによってセルロプラスミンを活性化させ、アポセルロプラスミンが血漿中に分泌される。細胞質中では、ATP7Bは、過剰な銅を小胞に隔離し、エキソサイトーシスを介して頂端小管膜を越えて胆汁中に排出する(Bull et al.,1993;Tanzi et al.,1993;Yamaguchi et al.,1999;Cater et al.,2007)。ATP7Bトランスポーターは、銅の合成及び排出の両方において二元的な役割を果たしているため、その機能の欠陥により、銅の蓄積が生じ、酸化ストレス及びフリーラジカルの形成の引き金となり、酸化ストレスとは関係なく、ミトコンドリア機能不全が引き起こされる。複合的効果により、炎症促進状態が誘導され、その後肝臓及び脳組織、さらには他の臓器でも細胞死が引き起こされる。様々な実施形態において、本明細書に記載の組換えビリオンは、遺伝子療法を必要とする対象の細胞、組織、または臓器への直接注射によって、in vivoで投与される。
【0305】
リソソーム蓄積障害
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、リソソーム蓄積症(LSD)を予防または治療するために使用することができる。これらは、酵素欠乏の結果として身体の細胞内に様々な有毒物質が異常に集積することを特徴とする遺伝性代謝性疾患である。本明細書に記載の方法及び組成物は、任意により脳の白質の変化など、複数の臓器に影響を与える重度の高アンモニア血症を主因とする破壊的代謝疾患を特徴とする希少常染色体劣性疾患であるカルバモイルリン酸合成酵素1欠損症(CPS1D)を予防または治療するために使用することができる。CPS1は、ヒトにおける窒素処理の主要な経路である尿素サイクルの最初の律速段階を触媒するため、肝臓の尿素生成において最も重要な役割を果たす。CPS1欠損は、尿素サイクル障害及びアンモニアの蓄積を引き起こす。したがって、CPS1欠損症患者では、顕著な高アンモニア血症及び尿素サイクルの下流での産生の減少が観察され得る。存在量が過剰なアンモニアは、中枢神経系に入り、脳に毒性作用を与え得る。アンモニアの蓄積により、毒性が誘導され、細胞死につながる。様々な実施形態において、本明細書に記載の組換えビリオンは、遺伝子療法を必要とする対象の細胞、組織、または臓器への直接注射によって、in vivoで投与される。
【0306】
表皮水疱症
本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、皮膚の遺伝性疾患を予防または治療するために使用することができる。ヒトの表皮は主に、異なる層状細胞層に組織化されたケラチノサイトで構成されている。表皮基底膜への基底ケラチノサイトの接着は、上皮中間フィラメントネットワークを真皮固定原線維に連結する多タンパク質複合体であるヘミデスモソーム(HD)によって媒介される。ヘミデスモソームは、いくつかの細胞質及び膜貫通タンパク質のクラスター化によって形成される。HD1/プレクチン及び水疱性類天疱瘡抗原1(BP230)を含む細胞質HDプラーク成分は、原形質膜の細胞質表面において細胞骨格のエレメントのリンカーとして機能する。α6β4インテグリン及び水疱性類天疱瘡抗原2(BP180)を含むHDの膜貫通構成要素は、細胞内部を細胞外マトリックスタンパク質に接続する細胞受容体として機能する。ヘミデスモソーム媒介接着は、α6β4インテグリンがラミニン-5へ結合することに依存し、ラミニン5は、それぞれLAMA3、LAMB3、LAMC2として知られる3つの異なる遺伝子によってコードされる、異なるポリペプチド、α3、β3、及びγ2によって形成される主要な基底層成分である。ラミニン-5は、表皮ケラチノサイトの基底表面上のα6β4インテグリンと物理的に相互作用してHD形成を促進するのみでなく、真皮アンカー原線維中のVII型コラーゲンのアミノ末端NC-1ドメインとも相互作用して、基底膜ゾーンの完全性を増強する。皮膚の完全性の維持におけるこれらのタンパク質の関連性は、表皮水疱症(EB)患者中に存在する体細胞変異を同定することによって示されている。様々な遺伝子(例えば、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、及びKIND1)中での少なくとも16の遺伝子変異が、様々なタイプのEBに関連している。ケラチノサイトは、真皮-表皮接合部の維持に関与するタンパク質の合成を担うため、この疾患を予防または治療するための遺伝子療法介入には、これらの細胞の遺伝子改変が必要である。
【0307】
特定の態様では、本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物を使用して、EBなどの様々な皮膚障害のために皮膚の幹細胞を特異的に改変することができる。例えば、クタウイルス由来組換えビリオン(例えば、クタウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオン)を使用して、治療用導入遺伝子を表皮幹細胞に送達することができる。いくつかの実施形態では、表皮幹細胞は、ホロクローン形成細胞である。いくつかの実施形態では、ホロクローン形成細胞は、最大の増殖能力を有するP63陽性ケラチノサイト由来幹細胞であり、したがって上皮幹細胞とみなされる。いくつかの実施形態では、治療用導入遺伝子は、相同組換えによる既知のゲノム位置への安定した組み込みを促進するGSH配列をさらに含む。GSHの使用により、皮膚細胞の分化全体での安定かつ持続的な導入遺伝子の発現が可能になる。いくつかの実施形態では、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトは、本開示の組換えビリオン及び医薬組成物によってex vivoで改変される。いくつかのそのような実施形態では、改変された表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトが、皮膚移植片として皮膚表面に適用される。
【0308】
したがって、特定の態様では、表皮水疱症を予防または治療する方法が本明細書に提供され、少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、及び/またはKIND1をコードする核酸を含む。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、プロトパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、組換えビリオンは、クタウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの組換えビリオンは、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトに形質導入する。いくつかの実施形態では、形質導入された表皮細胞は、幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトである。いくつかの実施形態では、方法は、形質導入細胞を対象の皮膚に移植することをさらに含む。いくつかの実施形態では、本開示の少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞は、表皮水疱症を予防または治療する。
【0309】
血液疾患
特定の態様では、下記の血液疾患に加えて、本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、末梢血管疾患、脳卒中、心臓疾患(例えば、先天性心臓疾患を含む)、糖尿病、インスリン抵抗性、慢性腎不全、アテローム性動脈硬化症、腫瘍成長(例えば、内皮細胞の成長など)、転移、高血圧(例えば、肺動脈高血圧症、他の形態の肺高血圧症)、アテローム性動脈硬化症、再狭窄、C型肝炎、肝硬変、高脂血症、高コレステロール血症、メタボリックシンドローム、腎疾患、炎症、及び静脈血栓症などの疾患の治療または予防に使用することができる。
【0310】
特定の態様では、血液疾患には、以下のいずれか1つが含まれる:ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球症、サラセミア、メトヘモグロビン血症)、貧血(鉄欠乏性貧血、巨赤芽球性貧血、溶血性貧血、骨髄異形成症候群、骨髄線維症、好中球減少症、無顆粒球症、グランツマン血小板無力症、血小板減少症、ウィスコット・アルドリッチ症候群、骨髄増殖性障害(例えば、真性赤血球増加症、赤血球増加症、白血球増加症、血小板増加症)、凝固障害、血液癌、ヘモクロマトーシス、無脾症、脾機能亢進症(例えば、ゴーシェ病)、血球貪食性リンパ組織球症、tempi症候群、及びAIDS。
【0311】
いくつかの実施形態では、例示的な溶血性貧血としては以下が挙げられる:遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円球症、先天性赤血球生成異常性貧血、グルコース-6-リン酸デヒドロゲナーゼ欠損症(G6PD)、ピルビン酸キナーゼ欠損症、自己免疫性溶血性貧血(例えば、特発性貧血、全身性エリテマトーデス(SLE)、エバンス症候群、寒冷凝集素症、発作性の風邪ヘモグロビン尿症、伝染性単核球症)、同種免疫性溶血性貧血(例えば、Rh疾患などの新生児溶血性疾患、新生児ABO溶血性疾患、新生児の抗ケル溶血性疾患、新生児Rh c溶血性疾患、新生児Rh e溶血性疾患)、発作性夜間ヘモグロビン尿症、微小血管障害性溶血性貧血、ファンコニ貧血、ダイアモンド・ブラックファン貧血、及び後天性純赤血球形成不全。
【0312】
いくつかの実施形態では、例示的な凝固障害としては、血小板増加症、播種性血管内凝固症候群、血友病(例えば、血友病A、血友病B、血友病C)、フォン・ウィルブラント病、及び抗リン脂質症候群が挙げられる。
【0313】
いくつかの実施形態では、例示的な血液癌としては、以下が挙げられる:ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、バーキットリンパ腫、未分化大細胞型リンパ腫、脾臓辺縁帯リンパ腫、T細胞リンパ腫(例えば、肝脾T細胞リンパ腫、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、皮膚T細胞リンパ腫)、多発性骨髄腫、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、形質細胞腫、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)、急性巨核芽球性白血病、慢性特発性骨髄線維症、慢性骨髄性白血病(CML)、T細胞前リンパ球性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、慢性好中球性白血病、ヘアリー細胞白血病、T細胞大顆粒リンパ球白血病、AIDS関連リンパ腫、セザリー症候群、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、慢性骨髄増殖性新生物、ランゲルハンス細胞組織球症、骨髄異形成症候群、及び進行性NK細胞白血病。
【0314】
本明細書で使用される場合、ヘモグロビン症には、血液中の異常なヘモグロビン分子の存在を伴うあらゆる障害が含まれる。異常ヘモグロビン症の例としては、ヘモグロビンC疾患、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、及びサラセミアが含まれるが、これらに限定されない。異常なヘモグロビンの組み合わせが血液中に存在する異常ヘモグロビン症(例えば、鎌状赤血球/Hb-C疾患)も含まれる。
【0315】
本明細書で使用される場合、サラセミアは、ヘモグロビンの産生欠陥を特徴とする遺伝性疾患を指す。サラセミアの例としては、α-サラセミア及びβ-サラセミアが挙げられる。β-サラセミアは、ベータグロビン鎖中での変異によって引き起こされ、主要な形態またはマイナーな形態で発生し得る。β-サラセミアの主な形態では、小児は、出生時には正常であるが、生後1年以内に貧血を発症する。軽度のβ-サラセミアは、小さい赤血球を産生し、サラセミアは、グロビン鎖からの遺伝子(複数可)の欠失によって引き起こされ、α-サラセミアは、典型的には、HBA1及びHBA2遺伝子が関与する欠失によって生じる。これらの遺伝子は両方とも、ヘモグロビンの構成要素(サブユニット)であるα-グロビンをコードする。各細胞ゲノムには、HBA1遺伝子の2つコピー、及びHBA2遺伝子の2つコピーが存在する。その結果、α-グロビンを産生する4つの対立遺伝子が存在する。様々なタイプのサラセミアは、これらの対立遺伝子の一部またはすべてが喪失することにより生じる。Hb Bart症候群は、サラセミアの最も重篤な形態であり、4つすべてのα-グロビン対立遺伝子の喪失によって生じる。HbH疾患は、4つのα-グロビン対立遺伝子のうち3つの喪失によって引き起こされる。これら2つの状態では、αグロビンの不足により、細胞が正常なヘモグロビンを生成できなくなる。代わりに、細胞は、ヘモグロビンBart(Hb Bart)またはヘモグロビンH(HbH)と呼ばれる異常形態のヘモグロビンを産生する。これらの異常なヘモグロビン分子は、身体の組織に酸素を効率よく運ぶことができない。正常なヘモグロビンがHb BartまたはHbHに置換されることにより、貧血及びサラセミアに関連する他の深刻な健康問題が引き起こされる。
【0316】
本明細書で使用される鎌状赤血球症とは、グロビン遺伝子の変異に起因し、低酸素条件下で、典型的な両凹型から異常な硬くて鎌状に変化する赤血球を特徴とする常染色体劣性遺伝性血液疾患の一群を指し、これにより、毛細血管を通過できないため、低酸素状態が悪化する。それらは、ペプチドのアミノ酸6位で、グルタミン酸がバリンに置換されているβ-グロビン鎖バリアントをコードするβs遺伝子の存在によって定義され、変異マットを有する第2のβ遺伝子により、臨床表現型を引き起こすHbSが結晶化され得る。鎌状赤血球貧血は、HbSを引き起こす変異がホモ接合性である患者における特定の形態の鎌状赤血球症を指す。鎌状赤血球症の他の一般的形態としては、HbS/β-サラセミア、HbS/HbC、及びHbS/HbDが挙げられる。
【0317】
特定の実施形態では、ヘモグロビンC疾患、ヘモグロビン鎌状赤血球症(SCD)、鎌状赤血球貧血、遺伝性貧血、サラセミア、β-サラセミア、メジャーサラセミア、中間サラセミア、α-サラセミア、及びヘモグロビンH疾患からなる群から選択されるヘモグロビン症を治療、予防、または改善するための方法及び組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、ヘモグロビン症は、β-サラセミアである。いくつかの実施形態では、ヘモグロビン症は、鎌状赤血球貧血である。様々な実施形態において、本明細書に記載の組換えビリオンは、遺伝子療法を必要とする対象の細胞、組織、または器官への直接注射によって、in vivoで投与される。他の様々な実施形態において、細胞には、本明細書に記載される組換えビリオンが、in vitroまたはex vivoにおいて形質導入される。次いで、形質導入された細胞を、例えば本明細書に開示される医薬製剤内で、遺伝子療法を必要とする対象に投与する。
【0318】
上述のとおり、本明細書では、対象におけるヘモグロビン症を予防または治療する方法が提供される。様々な実施形態では、本方法は、有効量の、本明細書に記載の組換えビリオンが形質導入された細胞、または当該形質導入された細胞の集団(例えば、HSC、CD34+もしくはCD36細胞、赤血球系列細胞、胚性幹細胞、またはiPSC)を対象に投与することを含む。治療または予防の場合、投与される量は、所望の臨床効果を生み出すのに有効な量であり得る。有効量は、1回のまたは一連の投与で行われ得る。有効量は、ボーラスまたは連続灌流によって提供され得る。有効量は、1回以上の用量で対象に投与され得る。治療または予防に関して、有効量とは、疾患の進行を緩和する、改善する、安定化する、逆転させるもしくは遅延させる、または他の方法で疾患の病理学的結果を軽減するのに十分な量である。有効量は、一般に、医師によってケースバイケースで決定され、当業者の通常の技術の範囲内である。有効量を達成するための適切な投与量を決定する場合には、典型的には、いくつかの要因が考慮される。これらの要因としては、対象の年齢、性別、及び体重、治療対象の状態、状態の重症度が挙げられる。
【0319】
I型糖尿病
特定の態様では、本明細書に記載の方法、組換えビリオン、及び/または医薬組成物は、I型糖尿病の治療または予防に使用することができる。小腸、特に十二指腸及び空腸中の腸内分泌細胞は、1型糖尿病患者の予防または治療のためのインスリン遺伝子導入戦略の有望な標的である。腸のK細胞及びL細胞は、内腔内の栄養素、特にグルコースに応答するように生来特殊化されている。それらは、血液中にGIP及びGLP-1を分泌することによって応答し、グルコース誘導インスリン応答を増強する。正常な個体では、食事後のGIP、GLP-1、及びインスリンについて得られた動態及び血漿中濃度は、非常に類似しており、1型糖尿病患者におけるGIP及びGLP-1の動態及び血漿濃度も同様である(Vilsboll et al.,2003)。K細胞及びL細胞は、プロインスリンの成熟インスリンへのプロセシングを可能にするPC1/3ペプチダーゼ及びPC2ペプチダーゼを合成する。重要なことに、K細胞及びL細胞は、1型糖尿病患者の免疫系によって、膵臓β細胞と共に破壊されない(Vilsboll et al.,2003)。共通の発生起源であることより、膵臓β細胞、K細胞、及びL細胞は、次の顕著な類似点を示す:(i)プロインスリンからインスリンへの変換に必要なPC1/3及びPC2ペプチダーゼの発現、(ii)GLUT-2グルコーストランスポーターの存在、(iii)ホルモン分泌のグルコース依存性機構(顆粒が、それぞれのホルモンを貯蔵し、容易に分泌できる)(Spooner et al.,1970,Baggio&Drucker 2007)。したがって、1型糖尿病患者の消化管腸内分泌細胞に、(例えば、プレプロインスリンタンパク質またはその転写バリアント、例えばNP_000198.1、NP_001172026.1、NP_001172027.1、及び/またはNP_001278826.1をコードするインスリン遺伝子INSを導入することによって)プレプロインスリン遺伝子を発現する能力が備わっている場合には、食後血糖値の正常化に寄与することが予測される。腸幹細胞は、腸上皮陰窩(gut epithelium krypt)に存在する。これらの細胞は、細胞膜上にトランスフェリン受容体(TfR)を発現するため、イヌまたはネコのパルボウイルス由来ベクターによる形質導入を受けやすくなっている。したがって、本明細書に提示される組換えビリオン及び/または医薬組成物は、GIP調節エレメントによって駆動されるプレプロインスリン遺伝子を組み込むための有望なツールを提供する。さらに、記載されたゲノムのセーフハーバーへの部位特異的組み込みにより、幹細胞をインスリン産生K細胞及びL細胞に安全に分化させ得る。
【0320】
血友病A
血友病Aは、血液が正常に凝固しない遺伝性出血障害である。血友病A型のヒトは、創傷、手術、または歯科処置の後、通常よりも多く出血する。この障害は、重度、中等度、または軽度であり得る。重度の場合は、軽度の創傷後、または創傷がない場合(自然出血)であっても、大量の出血が生じる。関節、筋肉、脳、または臓器への出血は、疼痛及びの他の重篤な合併症を引き起こし得る。軽度の場合は、自然出血はなく、手術または重傷後にのみ診断され得る。血友病Aは、第VIII因子と呼ばれるタンパク質が低レベルであることによって引き起こされる。第VIII因子は、血栓の形成に必要である。この障害は、X連鎖劣性遺伝形式で遺伝し、F8遺伝子中の変化(変異)によって引き起こされる。血友病Aの診断は、臨床症状及び血液中の凝固因子の量を測定するための特定の臨床検査によって行われる。主な予防または治療は、補充療法であり、療法中に凝固第VIII因子を静脈に緩徐に点滴または注射する。血友病Aは、主に男性に発症する。予防または治療により、この障害を有するほとんどのヒトは良好になる。重度の血友病A患者の中には、他の健康状態及びこの疾患の希少な合併症の存在により、寿命が短くなり得る。
【0321】
血友病Aに罹患している患者は、全長第VIII因子(FVIII)またはBドメイン欠失FVIII(例えば、FVIII-SQ、p-VIII、p-VIII-LMW;Sandberg et al.(2001)Thromb Haemost 85:93-100)をコードし、ヒトにおいて治療効果をもたらすのに必要な活性を保持している(Rangarajan et al.(2017)N Engl J Med 377:2519-30)F8導入遺伝子を導入する遺伝子療法の恩恵を受け得る。本開示の組換えビリオン、医薬組成物、及び方法は、部分的には、AAVと比較してより大きな遺伝子をパッケージングする組換えビリオンの能力、低免疫原性、及び周期的遺伝子制御(実施例9及び「周期的遺伝子発現または誘導性遺伝子発現」のセクションを参照)により、血友病A罹患患者において、改善されたウイルスベクター及び予防/治療方法となる。
【0322】
いくつかの実施形態では、治療対象の疾患としては、表5に示されるものから選択される疾患が挙げられる。
【表5】
【0323】
いくつかの実施形態では、本開示の形質導入細胞の1つ以上の投与後、対象の末梢血が採取され、ヘモグロビンレベルが測定される。組換えビリオンまたは組換えビリオンが形質導入された細胞の投与後に、治療上適切なレベルのヘモグロビンが産生される。治療上関連するヘモグロビンレベルは、以下にとって十分なヘモグロビンのレベルである:(1)貧血を改善する、(2)正常なヘモグロビンを含む赤血球を産生する対象の能力を改善または回復させる、(3)対象において、効率的でない赤血球生成を改善または修正する、(4)髄外造血(例えば、脾臓及び肝臓の髄外造血)を改善または修正する、及び/または(S)例えば末梢組織及び臓器中での鉄蓄積を減少させる。ヘモグロビンの治療上関連するレベルは、少なくとも約7g/dL Hb、少なくとも約7.5g/dL Hb、少なくとも約8g/dL Hb、少なくとも約8.5g/dL Hb、少なくとも約9g/dL Hb、少なくとも約9.5g/dL Hb、少なくとも約10g/dL Hb、少なくとも約10.5g/dL Hb、少なくとも約11g/dL Hb、少なくとも約11.5g/dL Hb、少なくとも約12g/dL Hb、少なくとも約12.5g/dL Hb、少なくとも約13g/dL Hb、少なくとも約13.5g/dL Hb、少なくとも約14g/dL Hb、少なくとも約14.5g/dL Hb、または少なくとも約15g/dL Hbであり得る。追加的または代替的に、ヘモグロビンの治療上関連するレベルは、約7g/dL Hb~約7.5g/dL Hb、約7.5g/dL Hb~約8g/dL Hb、約8g/dL Hb~約8.5g/dL Hb、約8.5g/dL Hb~約9g/dL Hb、約9g/dL Hb~約9.5g/dL Hb、約9.5g/dL Hb~約10g/dL Hb、約10g/dL Hb~約10.5g/dL Hb、約10.5g/dL Hb~約1 1g/dL Hb、約1 1g/dL Hb~約1 1.5g/dL Hb、約11.5g/dL Hb~約12g/dL Hb、約12g/dL Hb~約12.5g/dL Hb、約12.5g/dL Hb~約13g/dL Hb、約13g/dL Hb~約13.5g/dL Hb、約13.5g/dL Hb~約14g/dL Hb、約14g/dL Hb~約14.5g/dL Hb、約14.5g/dL Hb~約15g/dL Hb、約7g/dL Hb~約8g/dL Hb、約8g/dL Hb~約9g/dL Hb、約9g/dL Hb~約10g/dL Hb、約10g/dL Hb~約11g/dL Hb、約11g/dL Hb~約12g/dL Hb、約12g/dL Hb~約13g/dL Hb、約13g/dL Hb~約14g/dL Hb、約14g/dL Hb~約15g/dL Hb、約7g/dL Hb~約9g/dL Hb、約9g/dL Hb~約11g/dL Hb、約1 1g/dL Hb~約13g/dL Hb、または約13g/dL Hb~約15g/dL Hbであり得る。特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療上関連するレベルは、対象において少なくとも3日間、少なくとも1週間、少なくとも2週間、少なくとも1ヶ月、少なくとも2ヶ月、少なくとも4ヶ月、少なくとも約6ヶ月間、少なくとも約12ヶ月(または1年)、少なくとも約24ヶ月(または2年)維持される。特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療上関連するレベルは、対象において、最長約6ヶ月間、最長約12ヶ月(または1年)、最長約24ヶ月(または2年間)維持される。特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療上関連したレベルは、対象において約3日間、約1週間、約2週間、約1ヶ月、約2ヶ月、約4ヶ月、約6ヶ月、約12ヶ月(または1年)、約24ヶ月(または2年)維持される。特定の実施形態では、ヘモグロビンの治療上関連するレベルは、対象において、約6ヶ月~約12ヶ月(例えば、約6ヶ月~約8ヶ月、約8ヶ月~約10ヶ月、約10ヶ月~約12ヶ月)、約12ヶ月~約18ヶ月(例えば、約12ヶ月~約14ヶ月、約14ヶ月~約16ヶ月、または約16ヶ月~約18ヶ月)、または約18ヶ月~約24ヶ月(例えば、約18ヶ月~約20ヶ月、約20ヶ月~約22ヶ月、または約22ヶ月~約24ヶ月)維持される。
【0324】
特定の実施形態では、形質導入された細胞は、細胞が投与される対象にとって自家由来である。いくつかの実施形態では、形質導入された細胞は、細胞が投与される対象にとって自家の骨髄または末梢循環中の動員された細胞に由来する。いくつかの実施形態では、形質導入された細胞は、細胞が投与される対象に対して同種他家である。いくつかの実施形態では、形質導入された細胞は、細胞が投与される対象にとって自家である骨髄由来のものである。
【0325】
本開示はまた、対象における白血球(white blood cellまたはleukocyte)と比較して、赤血球(red blood cellまたはerythrocyte)の割合を増加させる方法を提供する。様々な実施形態において、方法は、有効量の本明細書に記載の組換えビリオン、または組換えビリオンにより形質導入された細胞(例えば、HSC、CD34+もしくはCD36細胞、赤血球系列細胞、胚性幹細胞、またはiPSC)を対象に投与することを含み、ここで、対象における造血幹細胞の赤血球子孫細胞の割合が、造血幹細胞の白血球子孫細胞と比較して増加する。
【0326】
投与される形質導入細胞の量は、対象及び/または予防または治療される疾患によって異なるであろう。いくつかの実施形態では、約1x10~約1x10細胞/kg、約1x10~約1x10細胞/kg、約1x10~約1x10細胞/kg、約1x10~約1x10細胞/kg、約1x10~約1x10細胞/kg、または約1x10~約1x1010細胞/kgの本明細書で開示される形質導入細胞が対象に投与される。必要に応じて、対象は、形質導入細胞を複数回投与する必要があり得る。有効量とみなされる量の正確な決定は、特定の対象の体格、年齢、性別、体重、及び状態など、各対象の個別の要因に基づき得る。投与量は、当業者であれば、本開示及び当技術分野の知識から容易に確認することができる。
【0327】
特定の理論に束縛されるものではないが、本明細書に記載の組成物及び方法によってもたらされる重要な利点は、任意の疾患(例えば、ヘモグロビン症、嚢胞性線維症、ヘモクロマトーシス)に罹患している対象を治療する、または対象、例えば、そのような疾患を発症するリスクのある対象における任意の疾患を予防する効率的な方法である。このようなリスクにある対象は、それらが保有する特定の遺伝子変異、及び/または環境的要因もしくは物理的要因(例えば、対象の性別、年齢)によって識別することができる。非常に効率的で安全な遺伝子療法は、本明細書に記載の組成物及び方法(例えば、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を含む組換えビリオン)を使用することによって達成される。例えば、GSHへの核酸(例えば、治療用核酸)の標的組み込みにより、形質導入細胞中での細胞遺伝子の有害な変異、形質転換、またはがん遺伝子活性化の機会を減少させる。さらに、組換えビリオンの特異的向性により、特定の細胞型への標的化が可能になる。
【0328】
組換えビリオンを産生するための組成物及び方法
特定の態様では、本明細書に記載の組換えビリオンを産生する方法が本明細書に提供される。以下に記載するベクターの数は、構造遺伝子及び/または非構造遺伝子を1つ以上のベクターに組み込むことによって統合することができる。特定のプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスのゲノム配列は、構造遺伝子(例えば、VPタンパク質(複数可)をコードする)及び/または非構造遺伝子を含むようにバキュロウイルスゲノムに組み込まれてもよい。
【0329】
特定の態様では、組換えビリオンを産生する方法は、以下を含む:(1)以下を含む少なくとも1つのベクターを提供することと;(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含み、任意により標的細胞における発現のためにプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列、(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1及び/またはVP2をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び(iii)ヌクレオチド配列であって、(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、複製タンパク質、または(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、ヌクレオチド配列、(2)当該少なくとも1つのベクターを昆虫細胞に導入することと;(3)本明細書に記載の組換えビリオンが産生されるような条件下で当該昆虫細胞を維持すること。好ましい実施形態では、ベクターは、昆虫細胞における核酸の発現を促進するプロモーターを含む昆虫細胞適合性ベクターである。
【0330】
いくつかの実施形態では、2つのベクターが提供される:(a)第1のベクターは、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列を含み、(b)第2のベクターは、(i)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1及び/またはVP2をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び(ii)以下を含むヌクレオチド配列:(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、複製タンパク質、または(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む。
【0331】
いくつかの実施形態では、3つのベクターが提供される:(a)第1のベクターは、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列を含み、(b)第2のベクターは、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1及び/またはVP2をコードする遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び(c)第3のベクターは、以下を含むヌクレオチド配列を含む:(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、複製タンパク質、または(C)(A)と(B)の組み合わせ。
【0332】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞において本明細書に記載の組換えビリオンを産生する方法が本明細書に提供され、この方法は、以下を含む:(1)以下を含む昆虫細胞を提供することと:(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含み、任意により標的細胞における発現のためにプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列、(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1及び/またはVP2をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び(iii)以下を含むヌクレオチド配列:(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、複製タンパク質、または(C)(A)と(B)の組み合わせ、任意により、少なくとも1つのベクター、ここで、(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のうちの少なくとも1つは、昆虫細胞ゲノムに安定に組み込まれており、少なくとも1つのベクターが、存在する場合、昆虫細胞のゲノムに安定に組み込まれていない(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のヌクレオチド配列の残りの部分を含む、提供することと、(2)組換えビリオンが産生されるような条件下で、昆虫細胞を維持すること。
【0333】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を有する組換えビリオンを産生する方法が提供され、プロトパルボウイルスは、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである。いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される。
【0334】
いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質を有する組換えビリオンを産生する方法が本明細書に提供され、テトラパルボウイルスが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである。いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びその遺伝子型バリアントから選択される。いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される。
【0335】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質は、イヌパルボウイルス、ブファウイルス、クタウイルス、またはそれらの遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である。
【0336】
いくつかの実施形態では、テトラウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質は、ヒトパルボウイルス4またはその遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である。
【0337】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、鱗翅目の種、例えば、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niに由来する。いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、Sf9である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのベクターは、バキュロウイルスベクター、ウイルスベクター、またはプラスミドである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのベクターは、バキュロウイルスベクターである。いくつかの実施形態では、細胞あたりまたは体積あたりベースでのベクター収量の増加を示す鱗翅目細胞株のサブクローンが使用される。いくつかの実施形態では、NS1、Rep、VP、及び/またはベクターゲノムのコピーが組み込まれた改変鱗翅目細胞株が、単独でまたは組み合わせて使用される。いくつかの実施形態では、昆虫細胞株は、Spodoptera rhabdovirusなどの内因性または汚染性または外来性の昆虫ウイルスを「治癒」させる。
【0338】
いくつかの実施形態では、VP1は、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VP2は、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、構造タンパク質VP1及びVP2を含む。VP2は、VP1より多く存在し得る。
【0339】
いくつかの実施形態では、ITRは、(a)ディペンドパルボウイルスITR、(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、(c)プロトパルボウイルスITR、及び/またはテトラパルボウイルスITRを含む。特定の実施形態では、ITRは、野生型ITRと構造的に類似したRep結合エレメント及びtrsを有する末端パリンドロームである。いくつかの実施形態では、ITRは、AAV1、2、3などに由来する。特定の実施形態では、ITRは、AAV2 RBE及びtrsを有する。いくつかの実施形態では、ITRは、異なるAAVのキメラである。いくつかの実施形態では、ITR及びRepタンパク質は、AAV5に由来する。いくつかの実施形態では、ITRは、合成であり、RBEモチーフ及びtrs GGTTGG、AGTTGG、AGTTGA、RRTTRRから構成される。B/B’及びC/C’ステムからなる末端パリンドロームの典型的なT字型構造は、折り畳み予測に基づいて全体の二次構造を維持する置換及び挿入によって合成的に修飾することもできる(URL(http)unafold.rna.albany.edu/?q=mfold/DNA-Folding-Formにて入手可能)。ITR二次構造の安定性は、ギブスの自由エネルギー、デルタGで表され、値が低いほど、すなわち負の値が大きいほど、安定性が高いことを示す。全長145nt ITRの計算値ΔG=-69.91kcal/mol。B及びCステム:GCCCGGGCAAAGCCCGGGCGTCGGGCGACCTTTGGTCGCCCGは、ΔG=-22.44kcal/molを有する。ΔG=-15kcal/mol~-30kcal/molの構造をもたらす置換及び挿入は、機能的に同等であり、野生型ディペンドパルボウイルスITRと区別されない。
【0340】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列は、(a)プロモーター、及び/または(b)Kozak様発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、または(c)昆虫細胞プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、動物DNAウイルスは、サイトメガロウイルス(CMV)、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、またはAAVである。いくつかの実施形態では、昆虫ウイルスは、鱗翅目ウイルスまたはバキュロウイルスであり、任意によりバキュロウイルスが、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体ウイルス(AcMNPV)である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、ポリヘドリン(polh)または最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである。いくつかの実施形態では、AAV(例えば、AAV2)の少なくとも1つの複製タンパク質を含むヌクレオチド配列は、Rep52及び/またはRep78をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0341】
特定の態様では、以下を含む少なくとも1つのベクターを含む昆虫細胞が本明細書に提供される:(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1及び/またはVP2をコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び(iii)以下を含むヌクレオチド配列:(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、複製タンパク質、または(C)(A)と(B)の組み合わせ。いくつかの実施形態では、ベクターは、昆虫細胞における核酸の発現を促進するプロモーターを含む昆虫細胞適合性ベクターである。いくつかの実施形態では、(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のうちの少なくとも1つは、昆虫細胞ゲノムに安定して組み込まれる。
【0342】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、プロトパルボウイルスキャプシドタンパク質(複数可)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含み、プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである。いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される。いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、テトラパルボウイルスキャプシドタンパク質(複数可)をコードする少なくとも1つの遺伝子を含み、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである。いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される。いくつかの実施形態では、テトラパルボウイルスは、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである。
【0343】
いくつかの実施形態では、プロトパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質は、イヌパルボウイルス、ブファウイルス、クタウイルス、またはそれらの遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である。
【0344】
いくつかの実施形態では、テトラウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質は、ヒトパルボウイルス4またはその遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である。
【0345】
いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、鱗翅目の種、例えば、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niに由来する。いくつかの実施形態では、昆虫細胞は、Sf9である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのベクターは、バキュロウイルスベクター、ウイルスベクター、またはプラスミドである。いくつかの実施形態では、少なくとも1つのベクターは、バキュロウイルスベクターである。
【0346】
いくつかの実施形態では、VP1は、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、VP2は、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、キャプシドタンパク質は、構造タンパク質VP1及びVP2を含む。VP2は、VP1より多く存在し得る。
【0347】
いくつかの実施形態では、ITRは、(a)ディペンドパルボウイルスITR、(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、(c)プロトパルボウイルスITR、及び/または(d)テトラパルボウイルスITRを含む。いくつかの実施形態では、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列は、(a)プロモーター、及び/または(b)Kozak様発現制御配列を含む。いくつかの実施形態では、プロモーターは、(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、または(c)昆虫細胞プロモーターを含む。いくつかの実施形態では、動物DNAウイルスは、サイトメガロウイルス(CMV)、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、またはAAVである。いくつかの実施形態では、昆虫ウイルスは、鱗翅目ウイルスまたはバキュロウイルスであり、任意によりバキュロウイルスが、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体ウイルス(AcMNPV)である。いくつかの実施形態では、プロモーターは、ポリヘドリン(polh)または最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである。いくつかの実施形態では、AAV(例えば、AAV2)の少なくとも1つの複製タンパク質を含むヌクレオチド配列は、Rep52及び/またはRep78をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0348】
本明細書に記載の方法よりも低効率であるが、組換えビリオンは、哺乳動物細胞を使用して産生され得る、例えば、Grieger et al(2016)Mol Ther24:287-297)。
【0349】
例示的な実施形態
本開示の態様はまた、以下のとおり説明することができる:
1.(1)プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、前記核酸が、異種核酸を含む、前記組換えビリオン。
【0350】
2.(1)テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントと;(2)核酸と、を含む、組換えビリオンであって、前記核酸が、異種核酸を含む、前記組換えビリオン。
【0351】
3.前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである、1に記載の組換えビリオン。
【0352】
4.前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、1または3に記載の組換えビリオン。
【0353】
5.前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである、2に記載の組換えビリオン。
【0354】
6.前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、2または5に記載の組換えビリオン。
【0355】
7.前記テトラパルボウイルスが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである、6に記載の組換えビリオン。
【0356】
8.前記ビリオンが、正二十面体である、1~7のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0357】
9.前記キャプシドタンパク質またはそのバリアントが、構造タンパク質VP1及び/またはVP2を含む、1~8のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0358】
10.VP2がVP1よりも多く存在する、9に記載の組換えビリオン。
【0359】
11.VP1が、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と、少なくとも約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約96%同一、約97%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、9または10に記載の組換えビリオン。
【0360】
12.VP2が、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と、少なくとも約60%同一、約70%同一、約80%同一、約90%同一、約95%同一、約96%同一、約97%同一、約98%同一、約99%同一、または100%同一であるアミノ酸配列を含む、9~11のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0361】
13.前記異種核酸が、標的細胞の核酸配列と少なくとも約60%同一である核酸配列を含む、1~12のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0362】
14.前記異種核酸が、哺乳動物の前記核酸と少なくとも約60%同一であり、前記哺乳動物が、好ましくはヒトである、1~13のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0363】
15.前記異種核酸が、プロトパルボウイルスプロモーターまたはテトラパルボウイルスプロモーターに作動可能に連結されていない、1~14のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0364】
16.前記核酸が、少なくとも1つの逆方向末端反復(ITR)を含む、1~15のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0365】
17.前記少なくとも1つのITRが、以下を含む、16に記載の組換えビリオン:
(a)ディペンドパルボウイルスITR、
(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、
(c)プロトパルボウイルスITR、または
(d)テトラパルボウイルスITR。
【0366】
17a.前記少なくとも1つのITRが、AAV2 ITRを含み、前記AAV2 ITRが、「フリップ」配座異性体、「フロップ」配座異性体、またはそれらの組み合わせである、16に記載の組換えビリオン。
【0367】
17b.前記少なくとも1つのITRが、AAV2 ITRを含み、前記AAV2 ITRが、配列番号1~3及び配列番号28~31のいずれか1つに表される核酸配列;またはそれらの相補的、逆方向、または逆相補配列、任意により配列番号28~31のいずれか1つ、またはそれらの相補的、逆方向、または逆相補配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列を含む、16に記載の組換えビリオン。
【0368】
17c.前記少なくとも1つのITRが、2つのAAV2 ITRを含み、前記AAV2 ITRが、配列番号28~31、例えば、以下の任意の組み合わせで表される核酸配列と少なくとも約30%、35%、40%、45%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.2%、99.3%、99.4%、99.5%、99.6%、99.7%、99.8%、99.9%、または100%同一である核酸配列を含む、16に記載の組換えビリオン:
(a)配列番号28(例えば、2つのフリップ配座異性体;またはそれらの相補配列もしくは逆相補配列);
(b)配列番号29(例えば、2つのフリップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(c)配列番号30(例えば、2つのフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(d)配列番号31(例えば、2つのフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(e)配列番号28及び配列番号29(例えば、2つのフリップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(f)配列番号30及び配列番号31(例えば、2つのフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(g)配列番号28及び配列番号30(例えば、フリップ配座異性体及びフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(h)配列番号28及び配列番号31(例えば、フリップ配座異性体及びフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(i)配列番号29及び配列番号30(例えば、フリップ配座異性体及びフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、または逆相補配列);
(j)配列番号29及び配列番号31(例えば、フリップ配座異性体及びフロップ配座異性体、またはそれらの相補的配列、逆配列、または逆相補配列)。
【0369】
18.前記プロトパルボウイルスITRが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される、17に記載の組換えビリオン。
【0370】
19.前記テトラパルボウイルスITRが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される、17に記載の組換えビリオン。
【0371】
20.前記テトラパルボウイルスITRが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、及びそれらの遺伝子型バリアントのITRから選択される、17または19に記載の組換えビリオン。
【0372】
21.前記核酸が、デオキシリボ核酸(DNA)である、1~20のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0373】
22.前記DNAが、一本鎖または自己相補的二本鎖である、21に記載の組換えビリオン。
【0374】
23.前記核酸が、Repタンパク質依存性複製起点(ori)を含む、1~22のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0375】
24.前記核酸が、任意により2つのITR間に配置される、プロモーターに作動可能に連結された核酸を含む、1~23のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0376】
25.前記プロモーターが、以下から選択される、24に記載の組換えビリオン:
(a)作動可能に連結している前記核酸に対して異種のプロモーター;
(b)前記核酸の組織特異的発現を促進するプロモーター、好ましくは、前記プロモーターが、造血細胞特異的発現または赤血球系統特異的発現を促進する;
(c)前記核酸の構成的発現を促進するプロモーター;及び
(d)任意により、代謝産物、低分子、または化学エンティティに応答して、誘導的に発現されるプロモーター。
【0377】
26.前記プロモーターが、CMVプロモーター、β-グロビンプロモーター、CAGプロモーター、AHSPプロモーター、MNDプロモーター、Wiskott-Aldrichプロモーター、及びPKLRプロモーターから選択される、24または25に記載の組換えビリオン。
【0378】
27.前記異種核酸が、コーディングRNA及び/またはノンコーディングRNAをコードする、1~26のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0379】
28.コーディングRNAをコードする前記異種核酸が以下を含む、25に記載の組換えビリオン:
(a)タンパク質またはそのフラグメント、好ましくはヒトタンパク質またはそのフラグメントをコードする遺伝子;
(b)ヌクレアーゼ、任意により転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)、メガヌクレアーゼ、megaTAL、またはCRISPRエンドヌクレアーゼ(例えば、Cas9エンドヌクレアーゼまたはそのバリアント);
(c)レポーター、例えばルシフェラーゼまたはGFPをコードする核酸;及び/または
(d)薬剤耐性タンパク質、例えばネオマイシン耐性をコードする核酸。
【0380】
29.コーディングRNAをコードする前記異種核酸が、標的細胞中での発現のためにコドン最適化される、27または28に記載の組換えビリオン。
【0381】
30.前記異種核酸が、(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、アルファヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固因子VIII、凝固因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはそれらのフラグメント(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチド(例えば、VIII SQ、p-VIII)をコードするフラグメント)、及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)から選択されるポリペプチドまたはそれらのフラグメントをコードする遺伝子を含む異種核酸を含む、27~29のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【0382】
31.前記ノンコーディングRNAが、lncRNA、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA、及び/またはガイドRNAを含む、27に記載の組換えビリオン。
【0383】
32.前記コーディングRNA、前記タンパク質、または前記ノンコーディングRNAが、標的細胞の内因性遺伝子の発現を増加または回復させる、27~31のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【0384】
33.前記コーディングRNA、前記タンパク質、または前記ノンコーディングRNAが、標的細胞の内因性遺伝子の発現を減少させるまたは消失させる、27~31のいずれか1項に記載の組換えビリオン。
【0385】
34.前記組換えビリオンが、以下をコードする核酸を含む、27~33のいずれか1つに記載の組換えビリオン:(a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、及び/または恒常性鉄調節因子(HFE)またはそのフラグメント;(b)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0386】
35.前記組換えビリオンが、(a)前記形質導入細胞中でのHFE及び/またはヘプシジンの発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中でのDMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態の発現を減少させる、34に記載の組換えビリオン。
【0387】
36.前記組換えビリオンが、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、及び/またはウィルソン病を予防または治療する、34または35に記載の組換えビリオン。
【0388】
37.前記組換えビリオンが、(a)可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Casシステムをコードする核酸;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせを含む、27~33のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0389】
38.前記組換えビリオンが、(a)前記形質導入細胞中において、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、または可溶型のIL-1β受容体の発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中において、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、またはIL-1β受容体の発現を減少させる、37に記載の組換えビリオン。
【0390】
39.前記組換えビリオンが、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び/または強直性脊椎炎を予防または治療する、37または38に記載の組換えビリオン。
【0391】
40.前記組換えビリオンが、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、ダイニン、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/パーキン、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、及びULK1から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、27~33のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0392】
41.前記組換えビリオンが、前記形質導入細胞中での前記タンパク質またはそのフラグメントの発現を増加させる、40に記載の組換えビリオン。
【0393】
42.オートファジーを調節する、40または41に記載の組換えビリオン。
【0394】
43.オートファジー関連疾患を予防または治療する、40~42のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0395】
44.前記オートファジー関連疾患が、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、(アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病から選択される、43に記載の組換えビリオン。
【0396】
45.前記組換えビリオンが、以下をコードする核酸を含む、27~33のいずれか1項に記載の組換えビリオン:(a)CFTRまたはそのフラグメント;(b)CFTRの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)CFTRの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0397】
46.前記組換えビリオンが、(a)前記形質導入細胞中でのCFTRまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中でのCFTRの内因性変異形態の発現を減少させる、45に記載の組換えビリオン。
【0398】
47.嚢胞性線維症を予防または治療する、45または46に記載の組換えビリオン。
【0399】
48.前記核酸が、ノンコーディングDNAを含む、1~47のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0400】
49.前記ノンコーディングDNAが以下を含む、48に記載の組換えビリオン:
(a)転写調節エレメント(例えば、エンハンサー、転写終結配列、非翻訳領域(5’または3’UTR)、近位プロモーターエレメント、遺伝子座制御領域、ポリアデニル化シグナル配列)、及び/または
(b)翻訳調節エレメント(例えば、Kozak配列、ウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメント)。
【0401】
50.前記転写調節エレメントが、遺伝子座制御領域であり、任意によりβ-グロビンLCRまたはβ-グロビンLCRのDNase過敏部位(HS)である、49に記載の組換えビリオン。
【0402】
51.前記核酸が、前記標的細胞のゲノムセーフハーバー(GSH)の前記核酸配列と少なくとも約80%同一である核酸配列を含む、1~50のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0403】
52.GSHと少なくとも約80%同一である前記核酸配列が、組み込まれる前記核酸の5’及び3’に配置され、それにより相同組換えによる前記標的ゲノム内の特定の遺伝子座への組み込みが可能になる、51に記載の組換えビリオン。
【0404】
53.前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である、51または52に記載の組換えビリオン。
【0405】
54.前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である、53に記載の組換えビリオン。
【0406】
55.前記核酸が、形質導入の際に標的細胞のゲノムに組み込まれる、1~54のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0407】
56.前記核酸が、形質導入の際に標的細胞のゲノムのGSHに組み込まれる、55に記載の組換えビリオン。
【0408】
57.前記核酸が、少なくとも1つの複製タンパク質及びキャプシドタンパク質またはそのバリアントをコードする核酸配列を含む、1~56のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0409】
58.前記ビリオンが、自律的に複製している、1~57のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0410】
59.前記ビリオンが、がん細胞もしくは非がん細胞に結合する及び/または形質導入される、1~58のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0411】
60.前記ビリオンが、幹細胞(例えば、造血幹細胞、CD34+幹細胞、CD36+幹細胞、間葉系幹細胞、がん幹細胞)に結合する及び/または形質導入される、1~59のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0412】
61.前記ビリオンが、トランスフェリン受容体(CD71)を発現する細胞に結合する及び/または形質導入される、1、3、4、8~18、または21~60のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0413】
62.前記組換えビリオンが、造血細胞、造血前駆細胞、造血幹細胞、赤血球系列細胞、巨核球、赤血球前駆細胞(EPC)、CD34+細胞、CD36+細胞、間葉系幹細胞、神経細胞、腸細胞、腸幹細胞、腸上皮細胞、内皮細胞、肺細胞、エンテロサイト、肝臓細胞(例えば、肝細胞、肝星細胞(HSC)、クッパー細胞(KC)、肝類洞内皮細胞(LSEC))、脳微小血管内皮細胞(BMVEC)、赤血球前駆細胞、リンパ前駆細胞、Bリンパ芽球細胞、B細胞、T細胞、好塩基性風土性バーキットリンパ腫(EBL)、多染性赤芽球、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、ケラチノサイト、膵β細胞、K細胞、L細胞及び/または正染性赤芽球に結合する及び/または形質導入される、1~61のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0414】
63.前記少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントが、イヌパルボウイルス株N(UniProtKB-P12930)または配列番号27のアミノ酸配列に関して1つ以上の変異を有するVP2配列を含む、1~62のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0415】
64.前記1つ以上の変異が、アミノ酸残基(i)91~95、(ii)297~301、及び/または(iii)320~324を有するVP2の領域にある、63に記載の組換えビリオン。
【0416】
65.前記1つ以上の変異が、置換、欠失、及び/または挿入を含む、63または64に記載の組換えビリオン。
【0417】
66.前記1つ以上の変異が、前記組換えビリオンの内在化に関与する少なくとも1つの細胞受容体に対する前記組換えビリオンの親和性及び/または特異性を改変させ、任意により、前記少なくとも1つの細胞受容体が、トランスフェリン受容体である、63~65のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0418】
67.前記1つ以上の変異が、以下を改変する、63~66のいずれか1項に記載の組換えビリオン:
a)細胞に対する前記組換えビリオンの向性または親和性;
b)細胞に形質導入する前記組換えビリオンの能力;及び/または
c)前記組換えビリオンが前記細胞を通過してトランスサイトーシスする能力。
【0419】
68.前記少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントが、異種ペプチドタグを含む、1~67のいずれか1つに記載の組換えビリオン。
【0420】
69.前記異種ペプチドタグにより、抗体、抗体の抗原結合フラグメント、またはナノボディを使用したアフィニティー精製が可能になる、68に記載の組換えビリオン。
【0421】
70.前記異種ペプチドタグが、ヘマグルチニン、His(例えば、6X-His)、FLAG、Eタグ、TK15、Strep-tag II、AU1、AU5、Myc、Glu-Glu、KT3、及びIRSから選択されるエピトープ/タグを含む、68または69に記載の組換えビリオン。
【0422】
71.1~70のいずれか1つに記載の組換えビリオン、ならびに担体及び/または希釈剤を含む医薬組成物。
【0423】
72.疾患を予防または治療する方法であって、有効量の1~71のいずれか1つに記載の少なくとも1つの組換えビリオン、または医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む、前記方法。
【0424】
73.疾患を予防または治療する方法であって、
(a)複数の細胞を得ることと、
(b)1~71のいずれか1項に記載の少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入し、任意により前記形質導入細胞をさらに選択またはスクリーニングすることと;
(c)有効量の前記形質導入細胞を、それを必要とする対象に投与することと、を含む、前記方法。
【0425】
74.前記細胞が、前記対象にとって自家または同種他家である、73に記載の方法。
【0426】
75.72~74のいずれか1つに記載の方法であって、
(a)前記核酸が、タンパク質をコードするか;または
(b)前記核酸が、内因性遺伝子の発現を減少させるか、または消失させる、前記方法。
【0427】
76.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、血管内、脳内、非経口、腹腔内、静脈内、硬膜外、脊髄内、胸骨内、関節内、滑膜内、髄腔内、動脈内、心臓内、筋肉内、鼻腔内、肺内、皮膚移植、または経口投与を介して投与される、72~75のいずれか1つに記載の方法。
【0428】
77.前記疾患が、内皮機能不全、嚢胞性線維症、心血管疾患、腎疾患、がん、ヘモグロビン症、貧血、血友病(例えば、血友病A)、骨髄増殖性障害、凝固障害、鎌状赤血球症、アルファ-サラセミア、ベータ-サラセミア、ファンコニ貧血、家族性肝内胆汁うっ滞、表皮水疱症、ファブリー、ゴーシェ、ニーマンピックA、ニーマンピックB、GM1ガングリオシドーシス、ムコ多糖症(MPS)I(Hurler、Scheie、Hurler/Scheie)、MPS II(Hunter)、MPS VI(Maroteaux-Lamy)、血液癌、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、肝硬変、肝細胞癌、膵炎、糖尿病、心筋症、関節炎、性腺機能低下症、心臓疾患、心臓発作、甲状腺機能低下症、耐糖能異常、関節症、肝線維症、ウィルソン病、潰瘍性大腸炎、クローン病、テイ=サックス病、神経変性疾患、脊髄性筋萎縮症1型、ハンチントン病、カナバン病、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び強直性脊椎炎、ならびに自己免疫疾患、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、及びウォルマン病から選択される、72~76のいずれか1つに記載の方法。
【0429】
78.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、プロトパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントまたはその遺伝子型バリアントを含む、72~77のいずれか1つに記載の方法。
【0430】
79.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、以下をコードする核酸を含む、78に記載の方法:(a)ヘプシジンまたはそのフラグメント、及び/または恒常性鉄調節因子(HFE)またはそのフラグメント;(b)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)DMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0431】
80.前記対象には、以下をコードする核酸を含む前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が投与される、78または79に記載の方法:
a)ヘプシジンまたはそのフラグメントであって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に静脈内投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される、前記ヘプシジンまたはそのフラグメント;
b)HFEまたはそのフラグメントであって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に静脈内投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される、前記HFEまたはそのフラグメント;
c)HFEまたはそのフラグメントであって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記HFEまたはそのフラグメント;
d)HFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に静脈内投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝細胞に形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;
e)HFEの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;
f)DMT-1を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;
g)フェロポーチンを標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA)であって、前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が前記対象に経口投与され、任意により、(i)前記核酸が、プロモーターに作動可能に連結される、及び/または(ii)前記組換えビリオンまたは医薬組成物が、エンテロサイトに形質導入される、前記少なくとも1つのノンコーディングRNA;または
h)a)~g)のいずれか2つ以上の組み合わせ。
【0432】
81.前記組み合わせが、b)~e)のいずれか1つのうちの2つ以上を含む、80に記載の方法。
【0433】
82.前記組換えビリオンまたは医薬組成物が、a)前記形質導入細胞中におけるHFEまたはそのフラグメント、及び/またはヘプシジンまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/またはb)前記形質導入細胞中におけるDMT-1、フェロポーチン、及び/またはHFEの内因性変異形態の発現を減少させる、78~81のいずれか1つに記載の方法。
【0434】
83.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、ヘモクロマトーシス、遺伝性ヘモクロマトーシス、若年性ヘモクロマトーシス、及び/またはウィルソン病を予防または治療する、78~82のいずれか1つに記載の方法。
【0435】
84.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、以下をコードする核酸を含む、78に記載の方法:(a)可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、及び/または可溶型のIL-1β受容体;(b)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、及び/またはIL-1β受容体を標的とするCRISPR/Casシステムをコードする核酸;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせ。
【0436】
85.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、(a)前記形質導入細胞中において、可溶型のTNFα受容体、可溶型のIL-6受容体、可溶型のIL-12受容体、または可溶型のIL-1β受容体の発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中において、TNFα受容体、IL-6受容体、IL-12受容体、またはIL-1β受容体の発現を減少させる、84に記載の方法。
【0437】
86.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、関節リウマチ、炎症性腸疾患、乾癬性関節炎、若年性慢性関節炎、乾癬、及び/または強直性脊椎炎を予防または治療する、78、84、及び85のいずれか1つに記載の方法。
【0438】
87.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物または形質導入細胞が、IRGM、NOD2、ATG2B、ATG9、ATG5、ATG7、ATG16L1、BECN1、EI24/PIG8、TECPR2、WDR45/WIP14、CHMP2B、CHMP4B、ダイニン、EPG5、HspB8、LAMP2、LC3b UVRAG、VCP/p97、ZFYVE26、PARK2/パーキン、PARK6/PINK1、SQSTM1/p62、SMURF、AMPK、及びULK1から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、78に記載の方法。
【0439】
88.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、前記形質導入細胞中で前記タンパク質またはそのフラグメントの発現を増加させる、87に記載の方法。
【0440】
89.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、オートファジーを調節する、78、87、及び88のいずれか1つに記載の方法。
【0441】
90.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、オートファジー関連疾患を予防または治療する、78及び87~89のいずれか1つに記載の方法。
【0442】
91.前記オートファジー関連疾患が、がん、神経変性疾患(例えば、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、運動失調)、炎症性疾患、炎症性腸疾患、クローン病、関節リウマチ、狼瘡、多発性硬化症、慢性閉塞性肺疾患/COPD、肺線維症、嚢胞性線維症、シェーグレン病、高血糖障害、I型糖尿病、II型糖尿病、インスリン抵抗性、高インスリン血症、インスリン抵抗性糖尿病(例えば、Mendenhall症候群、ウェルナー症候群、妖精症、及び脂肪萎縮性糖尿病)、脂質異常症、高脂血症、低密度リポタンパク質(LDL)の上昇、高密度リポタンパク質(HDL)の低下、トリグリセリドの上昇、メタボリックシンドローム、肝疾患、腎疾患、心血管疾患、虚血、脳卒中、再灌流中の合併症、筋肉変性、萎縮、老化の症状(例えば、筋萎縮、虚弱、代謝障害、軽度の炎症、アテローム性動脈硬化症、脳卒中、加齢に伴う認知症及び散発性アルツハイマー病、前癌状態、及びうつ病を含む精神状態)、脊髄損傷、動脈硬化、感染症(例えば、細菌性、真菌性、ウイルス性など)、AIDS、結核、胚子発生異常、不妊症、リソソーム蓄積症、活性化因子欠損症/GM2ガングリオシドーシス、アルファ-マンノシドーシス、(アスパルチルグルコサミン尿、コレステリルエステル蓄積症、慢性ヘキソサミニダーゼA欠損症、シスチノーシス、ダノン病、ファブリー病、ファーバー病、フコシドーシス、ガラクトシアリドーシス、ゴーシェ病(I型、II型、III型)、GM1ガングリオシドーシス、(乳児、後期乳児/若年、成人/慢性)、ハンター症候群(MPS II)、I細胞病/ムコリピドーシスII、乳児遊離シアル酸蓄積症(ISSD)、若年性ヘキソサミニダーゼA欠損症、クラッベ病、リソソーム酸性リパーゼ欠損症、異染性白質ジストロフィー、Hurler症候群、Scheie症候群、Hurler-Scheie症候群、サンフィリッポ症候群、モルキオA型及びB型、マロトー・ラミー、Sly病、ムコリピドーシス、マルチプルスルファターゼ欠損症、ニーマン・ピック病、神経セロイドリポフスチン症、CLN6病、ヤンスキー・ビールショウスキー病、ポンペ病、濃化異骨症、サンドホフ病、シンドラー病、テイ=サックス病、及びウォルマン病から選択される、90に記載の方法。
【0443】
92.前記プロトパルボウイルスが、クタウイルスである、78に記載の方法。
【0444】
93.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、T細胞、B細胞、及び/またはリンパ前駆細胞を標的とする、92に記載の方法。
【0445】
94.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、がんを予防するまたは治療する、78、92、及び93のいずれか1つに記載の方法。
【0446】
95.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、及び/またはKIND1をコードする核酸を含む、78または92に記載の方法。
【0447】
96.前記形質導入細胞が、表皮幹細胞、P63陽性ケラチノサイト由来幹細胞、またはケラチノサイトである、95に記載の方法。
【0448】
97.前記形質導入細胞を前記対象の皮膚に移植することをさらに含む、95または96に記載の方法。
【0449】
98.前記少なくとも1つの組換えビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞が、表皮水疱症を予防するまたは治療する、95~97のいずれか1つに記載の方法。
【0450】
99.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、テトラパルボウイルスの少なくとも1つのキャプシドタンパク質またはそのバリアントまたはその遺伝子型バリアントを含む、72~77のいずれか1つに記載の方法。
【0451】
100.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、ヘモグロビン遺伝子(HBA1、HBA2、HBB、HBG1、HBG2、HBD、HBE1、及び/またはHBZ)、アルファヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)、凝固因子VIII、凝固因子IX、フォン・ヴィレブランド因子、ジストロフィンまたは短縮型ジストロフィン、マイクロジストロフィン、ユートロフィンまたは短縮型ユートロフィン、マイクロユートロフィン、ウシェリン(USH2A)、CEP290、ATPB1、ATPB11、ABCB4、CPS1、ATP7B、KRT5、KRT14、PLEC1、Col7A1、ITGB4、ITGA6、LAMA3、LAMB3、LAMC2、KIND1、INS、F8またはそれらのフラグメント(例えば、Bドメイン欠失ポリペプチド(例えば、VIII SQ、p-VIII)をコードするフラグメント)、及び嚢胞性線維症膜貫通コンダクタンス調節因子(CFTR)から選択されるタンパク質またはそのフラグメントをコードする核酸を含む、99に記載の方法。
【0452】
101.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、以下に形質導入される、99または100に記載の方法:(a)CD34+幹細胞、任意によりex vivoで形質導入される;(b)間葉系幹細胞、任意によりex vivoで形質導入される;(c)肝臓細胞(例えば、肝細胞)、(d)小腸細胞、及び/または(e)肺細胞。
【0453】
102.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、肝動脈、門脈、または静脈内投与を介して肝臓に送達される、99~101のいずれか1つに記載の方法。
【0454】
103.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、経口投与によって小腸に送達される、99~101のいずれか1項に記載の方法。
【0455】
104.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、(a)CFTRまたはそのフラグメント;(b)CFTRの内因性変異形態を標的とする少なくとも1つのノンコーディングRNA(例えば、piRNA、miRNA、shRNA、siRNA、アンチセンスRNA);(c)CFTRの内因性変異形態を標的とするCRISPR/Casシステム;及び/または(d)(a)~(c)に列挙された核酸のいずれか1つの任意の組み合わせをコードする核酸を含む、99~101のいずれか1つに記載の方法。
【0456】
105.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、鼻腔内または肺内投与を介して肺に送達される、104に記載の方法。
【0457】
106.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、(a)前記形質導入細胞中でCFTRまたはそのフラグメントの発現を増加させる;及び/または(b)前記形質導入細胞中でCFTRの内因性変異形態の発現を減少させる、99~101、104及び105のいずれか1項に記載の方法。
【0458】
107.前記少なくとも1つの組換えビリオンまたは医薬組成物が、嚢胞性線維症を予防または治療する、99~101、及び104~106のいずれか1つに記載の方法。
【0459】
108.少なくとも1つの追加量の前記ビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞を再投与することをさらに含む、72~107のいずれか1つに記載の方法。
【0460】
109.前記少なくとも1つの追加量の前記再投与が、前記有効量の前記ビリオン、医薬組成物、または形質導入細胞の前記投与後の治療の減弱後に行われる、108に記載の方法。
【0461】
110.前記少なくとも1つの追加量が、前記有効量と同じである、108または109に記載の方法。
【0462】
111.前記有効量と比較して、前記少なくとも1つの追加量を増加または減少させることをさらに含む、108または109に記載の方法。
【0463】
112.前記少なくとも1つの追加の量を、内因性遺伝子及び/または前記組換えビリオンの前記核酸の発現に基づいて増加または減少させる、111に記載の方法。
【0464】
113.前記核酸の前記発現を調節する剤を前記対象に投与すること、または前記細胞を剤に接触させることをさらに含む、72~112のいずれか1つに記載の方法。
【0465】
114.前記剤が、低分子、代謝産物、オリゴヌクレオチド、リボスイッチ、ペプチド、ペプチド模倣体、ホルモン、ホルモン類似体、及び光から選択される、113に記載の方法。
【0466】
115.前記剤が、テトラサイクリン、キュメート(cumate)、タモキシフェン、エストロゲン、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)、ラパマイシン、FKCsA、青色光、アブシジン酸(ABA)、及びリボスイッチから選択される、113または114に記載の方法。
【0467】
116.間隔をおいて、前記剤を1回以上再投与することをさらに含む、72~115のいずれか1つに記載の方法。
【0468】
117.前記剤の前記再投与が、前記核酸の周期的発現をもたらす、116に記載の方法。
【0469】
118.前記間隔間の時間及び/または前記剤の量を、前記核酸から発現した前記タンパク質の血清濃度及び/または半減期に基づいて増加または減少させる、116または117に記載の方法。
【0470】
119.細胞内の(i)遺伝子発現、または(ii)タンパク質の機能及び/または構造を調節する方法であって、前記方法が、前記細胞内の前記遺伝子発現または前記タンパク質の前記機能及び/または構造を調節する核酸を含む、1~71のいずれか1項に記載のビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入することを含む、前記方法。
【0471】
120.前記核酸が、CRISPRiまたはCRISPRa剤をコードする配列を含む、119に記載の方法。
【0472】
121.前記遺伝子発現、または前記タンパク質の前記機能及び/または構造が増加するかまたは回復される、119または120に記載の方法。
【0473】
122.前記遺伝子発現、または前記タンパク質の前記機能及び/または構造が減少するかまたは消失する、119または120に記載の方法。
【0474】
123.異種核酸を細胞内のGSHに組み込む方法であって、
(a)前記標的GSH核酸と少なくとも約80%同一であるドナー核酸配列が5’末端及び3’末端で隣接する異種核酸を含む、1~71のいずれか1つに記載の1つ以上のビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入すること、または
(b)1~71のいずれか1つに記載の1つ以上のビリオンまたは医薬組成物を前記細胞に形質導入することであって、前記ビリオンまたは医薬組成物が、(i)前記標的GSH核酸と少なくとも約80%同一であるドナー核酸配列が5’末端及び3’末端で隣接する異種核酸と、(ii)ヌクレアーゼ(例えば、Cas9またはそのバリアント、ZFN、TALEN)及び/またはガイドRNAをコードする核酸と、を含み、前記ヌクレアーゼまたは前記ヌクレアーゼ/gRNA複合体が、前記GSHにおいてDNAを切断し、これは、前記ドナー核酸を使用して修復され、それによって異種核酸がGSHにおいて組み込まれる、前記方法。
【0475】
124.(i)前記標的GSH核酸と少なくとも約80%同一であるドナー核酸が隣接する前記異種核酸が、1つのビリオン内に形質導入され、かつ(ii)前記核酸がヌクレアーゼをコードする、及び/または前記gRNAが別のビリオンに形質導入される、123に記載の方法。
【0476】
125.前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、NUPL2の遺伝子間領域、コラーゲン、HTRP、HI 1(HI 1遺伝子座のチミジンキナーゼをコードする核酸)、ベータ-2ミクログロブリン、GAPDH、TCR、RUNX1、KLHL7、mir684、KCNH2、GPNMB、MIR4540、MIR4475、MIR4476、PRL32P21、LOC105376031、LOC105376032、LOC105376030、MELK、EBLN3P、ZCCHC7、またはRNF38である、123または124に記載の方法。
【0477】
126.前記GSHが、AAVS1、ROSA26、CCR5、Kif6、Pax5、またはNUPL2の遺伝子間領域である、123~125のいずれか1つに記載の方法。
【0478】
127.1~70のいずれか1項に記載の組換えビリオンを産生する方法であって、
(1)以下を含む少なくとも1つのベクターを提供することと;
(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列であって、任意により標的細胞における発現のためにプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含む、前記ヌクレオチド配列、
(ii)前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列であって、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記ヌクレオチド配列、
(iii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、
(2)前記少なくとも1つのベクターを昆虫細胞に導入することと;
(3)1~70のいずれか1つに記載の組換えビリオンが産生されるような条件下で、前記昆虫細胞を維持することと、を含む、前記方法。
【0479】
128.2つのベクターが提供される、127に記載の方法であって、
(a)第1のベクターは、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列を含み、
(b)第2のベクターは、
(i)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び
(ii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、前記方法。
【0480】
129.3つのベクターが提供される、127に記載の方法であって、
(a)第1のベクターは、少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためのプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含むヌクレオチド配列を含み、
(b)第2のベクターは、昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする遺伝子を含むヌクレオチド配列を含み、及び
(c)第3のベクターは、以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、前記方法。
【0481】
130.昆虫細胞において、1~70のいずれか1つに記載の組換えビリオンを産生する方法であって、前記方法が、
(1)昆虫細胞を提供することであって、前記昆虫細胞は、
(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列、任意により標的細胞における発現のためにプロモーターに作動可能に連結された異種核酸をさらに含む、ヌクレオチド配列、
(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び
(iii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含み、
ここで、(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のうちの少なくとも1つは、前記昆虫細胞ゲノムに安定に組み込まれており、少なくとも1つのベクターが、存在する場合、前記昆虫細胞のゲノムに安定に組み込まれていない(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のヌクレオチド配列の残りの部分を含む、前記提供することと、
(2)前記組換えビリオンが産生されるような条件下で、前記昆虫細胞を維持することと、を含む、前記方法。
【0482】
131.前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである、127~130のいずれか1つに記載の方法。
【0483】
132.前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、127~131のいずれか1つに記載の方法。
【0484】
133.前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである、127~130のいずれか1つに記載の方法。
【0485】
134.前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、127~130、及び133のいずれか1つに記載の方法。
【0486】
135.前記テトラパルボウイルスが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである、127~130、133、及び134のいずれか1つに記載の方法。
【0487】
136.プロトパルボウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、イヌパルボウイルス、ブファウイルス、クタウイルス、またはそれらの遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、127~135のいずれか1つに記載の方法。
【0488】
137.テトラウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、ヒトパルボウイルス4またはその遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、127~135のいずれか1つに記載の方法。
【0489】
138.前記昆虫細胞が、鱗翅目の種に由来する、127~137のいずれか1つに記載の方法。
【0490】
139.前記鱗翅目の種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、138に記載の方法。
【0491】
140.前記昆虫細胞が、Sf9である、127~139のいずれか1つに記載の方法。
【0492】
141.前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクター、ウイルスベクター、またはプラスミドである、127~140のいずれか1つに記載の方法。
【0493】
142.前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクターである、127~141のいずれか1つに記載の方法。
【0494】
143.VP1が、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、127~142のいずれか1つに記載の方法。
【0495】
144.VP2が、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、127~143のいずれか1つに記載の方法。
【0496】
145.前記少なくとも1つのITRが、
(a)ディペンドパルボウイルスITR、
(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、
(c)プロトパルボウイルスITR、及び/または
(d)テトラパルボウイルスITR、を含む、127~144のいずれか1つに記載の方法。
【0497】
146.昆虫細胞における発現のための前記少なくとも1つの発現制御配列が、
(a)プロモーター、及び/または
(b)Kozak様発現制御配列を含む、127~145のいずれか1つに記載の方法。
【0498】
147.前記プロモーターが、
(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、
(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、または
(c)昆虫細胞プロモーターを含む、146に記載の方法。
【0499】
148.前記動物DNAウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、またはAAVである、147に記載の方法。
【0500】
149.前記昆虫ウイルスが、鱗翅目ウイルスまたはバキュロウイルスであり、任意により前記バキュロウイルスが、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体ウイルス(AcMNPV)である、147に記載の方法。
【0501】
150.前記プロモーターが、ポリヘドリン(polh)プロモーターまたは最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである、146~149のいずれか1つに記載の方法。
【0502】
151.AAVの少なくとも1つの複製タンパク質を含む前記ヌクレオチド配列が、Rep52及び/またはRep78をコードするヌクレオチド配列を含む、127~150のいずれか1つに記載の方法。
【0503】
152.前記AAVが、AAV2である、127~151のいずれか1つに記載の方法。
【0504】
153.少なくとも1つのベクターを含む昆虫細胞であって、
(i)少なくとも1つのITRヌクレオチド配列を含むヌクレオチド配列、
(ii)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結された、前記プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスキャプシドタンパク質VP1、VP2、及び/またはそのバリアントをコードする少なくとも1つの遺伝子を含むヌクレオチド配列、及び
(iii)以下を含むヌクレオチド配列:
(A)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたプロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスの少なくとも1つの複製タンパク質、
(B)AAVの少なくとも1つの複製タンパク質であって、任意により、AAVの前記少なくとも1つの複製タンパク質は、(a)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep52またはRep40コード配列、及び/または(b)昆虫細胞における発現のための少なくとも1つの発現制御配列に作動可能に連結されたRep78またはRep68コード配列を含む、前記複製タンパク質、または
(C)(A)と(B)の組み合わせ、を含む、前記昆虫細胞。
【0505】
154.(i)、(ii)、(iii)(A)、(iii)(B)、及び(iii)(C)のうちの少なくとも1つが、前記昆虫細胞ゲノムに安定して組み込まれる、153に記載の昆虫細胞。
【0506】
155.前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、肉食動物プロトパルボウイルス、肉食動物プロトパルボウイルス1、翼手目プロトパルボウイルス1、真無盲腸目プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス1、霊長類プロトパルボウイルス2、霊長類プロトパルボウイルス3、霊長類プロトパルボウイルス4、げっ歯類プロトパルボウイルス1、げっ歯類プロトパルボウイルス2、げっ歯類プロトパルボウイルス3、有蹄動物プロトパルボウイルス1、及び有蹄動物プロトパルボウイルス2から選択される種のものである、153または154に記載の昆虫細胞。
【0507】
156.前記プロトパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、イヌパルボウイルス、ネコ汎白血球減少症ウイルス、ヒトブファウイルス1、ヒトブファウイルス2、ヒトブファウイルス3、ヒトtusavirus、ヒトクタウイルス、Wuharvパルボウイルス、ブタパルボウイルス、マウス微小ウイルス、オオコウモリブファウイルス、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、153~155のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0508】
157.前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、翼手目テトラパルボウイルス1、霊長類テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス1、有蹄動物テトラパルボウイルス2、有蹄動物テトラパルボウイルス3、及び有蹄動物テトラパルボウイルス4から選択される種のものである、153または154に記載の昆虫細胞。
【0509】
158.前記テトラパルボウイルスまたはその遺伝子型バリアントが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、チンパンジーパルボウイルス4、ストローオオコウモリパルボウイルス、ウシホコウイルス1、ウシホコウイルス2、ブタホコウイルス、ブタcnvirus、ヤクパルボウイルス、ヒツジホコウイルス1、フクロネズミテトラパルボウイルス、げっ歯類テトラパルボウイルス、テトラパルボウイルス種、及びそれらの遺伝子型バリアントから選択される、153、154、及び157のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0510】
159.前記テトラパルボウイルスが、ヒトパルボウイルス4、ヒトパルボウイルス4遺伝子型1、ヒトパルボウイルス4遺伝子型2、ヒトパルボウイルス4遺伝子型3、またはそれらの遺伝子型バリアントである、153、154、157、及び158のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0511】
160.プロトパルボウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、イヌパルボウイルス、ブファウイルス、クタウイルス、またはそれらの遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、153~159のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0512】
161.テトラウイルスの前記少なくとも1つの複製タンパク質が、ヒトパルボウイルス4またはその遺伝子型バリアントのNS-1タンパク質である、153~159のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0513】
162.前記昆虫細胞が、鱗翅目の種に由来する、153~161のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0514】
163.前記鱗翅目の種が、Spodoptera frugiperda、Spodoptera littoralis、Spodoptera exigua、またはTrichoplusia niである、162に記載の昆虫細胞。
【0515】
164.前記昆虫細胞が、Sf9である、153~163のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0516】
165.前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクター、ウイルスベクター、またはプラスミドである、153~164のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0517】
166.前記少なくとも1つのベクターが、バキュロウイルスベクターである、153~165のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0518】
167.VP1が、配列番号4、5、7、8、10、11、13、14、16、17、19、20、及び22から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、153~166のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0519】
168.VP2が、配列番号4、6、7、9、10、12、13、15、16、18、19、21、及び23から選択される配列と少なくとも約60%同一であるアミノ酸配列を含む、153~167のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0520】
169.前記少なくとも1つのITRが、
(a)ディペンドパルボウイルスITR、
(b)AAV ITR、任意によりAAV2 ITR、
(c)プロトパルボウイルスITR、及び/または
(d)テトラパルボウイルスITR、を含む、153~168のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0521】
170.昆虫細胞における発現のための前記少なくとも1つの発現制御配列が、
(a)プロモーター、及び/または
(b)Kozak様発現制御配列を含む、153~169のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0522】
171.前記プロモーターが、
(a)動物DNAウイルスの最初期プロモーター、
(b)昆虫ウイルスの最初期プロモーター、または
(c)昆虫細胞プロモーターを含む、170に記載の昆虫細胞。
【0523】
172.前記動物DNAウイルスが、サイトメガロウイルス(CMV)、プロトパルボウイルス、テトラパルボウイルス、またはAAVである、171に記載の昆虫細胞。
【0524】
173.前記昆虫ウイルスが、鱗翅目ウイルスまたはバキュロウイルスであり、任意により前記バキュロウイルスが、Autographa californicaマルチキャプシド核多角体ウイルス(AcMNPV)である、171に記載の昆虫細胞。
【0525】
174.前記プロモーターが、ポリヘドリン(polh)プロモーターまたは最初期1遺伝子(IE-1)プロモーターである、170~173のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0526】
175.AAVの少なくとも1つの複製タンパク質を含む前記ヌクレオチド配列が、Rep52及び/またはRep78をコードするヌクレオチド配列を含む、153~174のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【0527】
176.前記AAVが、AAV2である、153~175のいずれか1つに記載の昆虫細胞。
【実施例
【0528】
実施例1:イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4キャプシドタンパク質を含む組換えビリオンの構築
組換えビリオンの核酸
ベクターゲノム設計は、逆方向末端反復配列(ITR)、例えば、AAV末端パリンドロームのITR配座異性体及び発現カセットまたは転写カセットから構成される。一般的な発現カセットは、典型的には、エンハンサーエレメント及びプロモーターエレメントとして特徴付けられる調節エレメントからなる。RNAポリメラーゼ複合体によって転写される領域は、シス作用性調節エレメント、例えばTATAボックス、及び5’非翻訳エクソン配列、イントロン配列、翻訳エクソン配列、3’非翻訳領域、ポリアデニル化シグナル配列からなる。転写後エレメントには、翻訳開始のためのKozakモチーフ及びウッドチャック肝炎ウイルス転写後調節エレメントが含まれる。特定のベクターは、商用サービスプロバイダーを使用して化学的に合成され、Escherichia coli内で伝播させるためにプラスミドにライゲート連結させる。プラスミドには、複数のクローニング部位、少なくとも1つの抗生物質耐性遺伝子、プラスミド複製起点、及びバキュロウイルスゲノムへの組換えを促進する配列が最低限含まれている。一般的に使用されるアプローチは次の2つである:1.細菌系、この系では、E.coliが、バキュロウイルスゲノム(バクミド)を保有しており、トランスポザーゼ媒介組換えを使用して、プラスミド遺伝子をバクミドに導入する。組換えバクミドを有するE.coliは、選択培地で調製した寒天プレート上で成長することにより検出可能である。「陽性」コロニーを懸濁培地中で拡大させ、接種後約3日後にバクミドを回収する。次に、Sf9細胞にバクミドをトランスフェクトし、許容昆虫細胞内で感染性の組換えバキュロウイルス粒子を産生する。2.あるいは、ベクターDNAを、インサートに隣接する数百塩基対のバキュロウイルスDNAを有するシャトルプラスミドに挿入する。Sf9細胞にシャトルプラスミド及び線状化バキュロウイルスサブゲノムDNAを同時トランスフェクションすることにより、欠失したバキュロウイルスエレメントが回復され、感染性の組換えバキュロウイルスが産生される。6kb以下のベクターDNAは、バキュロウイルスのゲノム(約135kb)中に存在し、Sf9細胞がパルボウイルスの非構造タンパク質またはRepタンパク質を発現しない限り、バキュロウイルスとして伝播する。次に、Repタンパク質がITRに作用し、ベクターとバキュロウイルスのゲノムを分解し、そこでベクターのゲノムがバキュロウイルスのゲノムを自律的に複製する(図1B)。
【0529】
DNAを構成する核酸
DNAは、一本鎖または自己相補的(すなわち、分子内二本鎖)のいずれであってもよい。図1Bに示すとおり、ベクターDNAのRep媒介複製は、いくつかの中間体を経て進行する。これらの複製中間体は、プロセシングを受けて一本鎖ビリオンゲノムとなるが、産生物の生産力が一本鎖ビリオンゲノムへのプロセシングを上回り得る。この場合、RFm(図1B)として表される分子内二本鎖分子からなる複製中間体が、パルボウイルスのキャプシドにパッケージングされる。自己相補的ベクターゲノムのパッケージングは、機能的なITRの存在にもかかわらず生じる。
【0530】
DNAは、Repタンパク質依存の複製起点(ori)を有し得る。oriは、末端パリンドローム内にあるRep結合エレメント(RBE)からなる。逆方向末端反復(ITR)と呼ばれる末端パリンドロームは、2つの内部パリンドロームを有する全パリンドローム配列からなり得る。ITRは、キャプシド内の複製及びキャプシド形成に必要なシス作用モチーフを有し得る。
【0531】
RBEは、標準GCTCのRep結合エレメントを表す。RBE’は、非標準RBE、ITRクロスアームの先端にある対になっていないTTTを表す。trsは、末端分解部位5’AGTTGG、GGTTGGなどを表す。Rep(Y156)の触媒チロシンは、trsを切断し、切れやすい5’チミジンと共有結合による連結を形成する。trsの変異により、切断効率の低下または喪失となり、結果として自己相補的DNAが生じる。あるいは、自己相補的ビリオンゲノムは、RFmの不完全なプロセシングのキャプシド形成の結果生じる。
【0532】
イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4キャプシドタンパク質を含む組換えビリオンのDNA複製
AAV ITRを利用した複製-パルボウイルスDNA複製は、「ローリングヘアピン」複製と呼ばれる。一本鎖ビリオンDNAとして、ITRは、エネルギー的に安定したT字型構造を形成し(図1A)、宿主細胞DNAポリメラーゼ複合体によるDNA伸長のプライマーとして作用する(図1B)。DNA合成は、リード鎖であり、相補鎖が、ITRを介して共有結合により連結する二本鎖中間体をもたらす進行的プロセスである(図1B)。p5 Repタンパク質の結合は、ローリングサークル複製(RCR)タンパク質に構造的に関連しており、ITRに結合してマルチサブユニット複合体を形成する。Repタンパク質のヘリカーゼ活性によりITRがほどかれ、末端分離部位(5’-GGT|TGA-3’)を有する一本鎖バブルが創出される。チミジン間のホスホジエステル結合は、Repタンパク質触媒チロシン(AAV2=Y156)のヒドロキシル基によって攻撃され、5’-チミジンとチロシン-チミジンジエステルを形成する。細胞のDNAポリメラーゼ複合体は、末端分離部位において新たに創出された3-OHを伸長し、末端配列を鋳型鎖に復元する(図1B)。核タンパク質複合体の分解は、未知のプロセスを介して生じる。
【0533】
AAV ITRまたは同族ITR(例えば、パルボウイルスITR)は、パルボウイルスキャプシドタンパク質(複数可)を含む組換えビリオンを構築するために使用される。
【0534】
イヌパルボウイルス(プロトパルボウイルスの例)またはヒトパルボウイルス4(テトラパルボウイルスの例)の末端リピート及び非構造(NS)タンパク質(複数可)-プロトパルボウイルスまたはテトラパルボウイルスを利用した複製は、AAV DNA複製に類似しているが、末端パリンドロームは、独特であり、複製中間体をプロセシングするための特定のNSタンパク質を必要とする。組換えイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4ベクターゲノムは、導入遺伝子カセットに隣接するイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4末端から構成され得る。NS1依存性ローリングヘアピン複製プロセスは、AAV Rep依存性複製と類似しており、キャプシドにはいずれかの極性の一本鎖ゲノムが含まれている。
【0535】
キャプシド形成
正二十面体ウイルスキャプシドへのDNAのキャプシド形成またはパッケージングは、DNAを限られた容積に圧縮する際の背圧によって生じる反発力に打ち勝つためのエネルギー源を必要とする能動的プロセスである。NS/Repタンパク質のATPase活性は、ガンマリン酸を加水分解することにより、トリヌクレオチドの保存された化学エネルギーを変換する。生成される背圧によって、キャプシドに収容できるDNA長が決定する。すなわち、ATPase/ヘリカーゼの原動力は、例えば12pNまで「押し出す」ことができ、これは4,800個のヌクレオチドがパッケージングされたときに到達され得る。AAV p19 Repタンパク質は、効率的なキャプシド形成に必要な単量体の非進行性ヘリカーゼである。Repとキャプシドとの間の物理的相互作用を裏付けるデータはわずかであるが、背圧を克服するにはパッケージングヘリカーゼ(複数可)とキャプシドの間に安定した相互作用が形成される必要がある。これらの相互作用の性質は不明であるが、核因子が非構造タンパク質とキャプシドとの間の相互作用を安定化させ得るかまたは媒介し得る。系統発生的に関連するプロトパルボウイルス/テトラパルボウイルス及びディペンドパルボウイルスのキャプシドは、配列レベルで分岐しているため、NSタンパク質と異種属のキャプシドと間の相互作用では、効率的なキャプシド形成とならない可能性がある。
【0536】
AAV2遺伝子を含むゲノムのイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4キャプシドへのパッケージングを改善するために、許容細胞内で同族NSタンパク質をAAV Repタンパク質と共発現させる:AAV Rep78及びRep52は、ベクターDNA複製に必要であり、イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4NSタンパク質は、パッケージングに関与する。
【0537】
実施例2:イヌパルボウイルス(CPV)キャプシドタンパク質を含む組換えビリオンの製造に必要なコンポーネントの産生
CPVキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンの製造に必要なコンポーネントは、バキュロウイルス発現ベクター(BEV)系及びSf9細胞を使用して産生した。
【0538】
組換えCPVキャプシドタンパク質は、図7に示すようにBEVを使用して発現させた。過剰発現されたCPVキャプシドタンパク質(VP1及びVP2)は、クマシーブルー染色SDS-PAGE(図8A)及び抗CPV VP2抗体を使用したウエスタンブロット分析(図8B)によって確認した。約80kDa及び62kDaの見かけの分子量を有するバンドが観察され、これは、キャプシドタンパク質、VP1(80.5kDa)及びVP2(64.7kDa)の予測分子量と一致した。64.7kDaバンドのわずかなシフトは、ポリペプチドの電荷特性または疎水性特性、または他の要因によるものであり得る。in silico設計を利用して、VPタンパク質の開始コドンを同定した。CPVキャプシドタンパク質の発現は、BEV発現系に首尾よく適応された。この発現により、VP2がVP1を上回る所望の範囲のCPV VP1/VP2比が達成された。
【0539】
AAV2 ITRが隣接するGFPレポーター遺伝子を有する導入遺伝子構築物を生成した(AAV2 ITR-GFP導入遺伝子;図9B)。BEV系を使用して、AAV2 Repタンパク質を過剰発現させ、それらの同一性及び量をウエスタンブロット分析によって確認した(図9A)。AAV2 ITR-GFP導入遺伝子は、精製されたAAV2 Repタンパク質を使用して増幅に成功し、これにより、AAV2 ITR及びRep系コンポーネントの機能性が実証された。図9Cは、AAV2 ITR-GFP導入遺伝子の増幅の成功を示し、AAV2 ITR及びRep系コンポーネントの機能性を示す。
【0540】
実施例3:イヌパルボウイルスキャプシドタンパク質を含む組換えビリオンのトランスサイトーシスを減少させるためのキャプシドの修飾
受容体媒介トランスサイトーシスは、細胞の内部全体でのカーゴ巨大分子の輸送を媒介する経細胞輸送の一種である。この細胞機構は、脳実質など、他の方法ではアクセスできない組織への生体分子の輸送を媒介するために広く研究されてきた。細胞のトランスサイトーシスを媒介する既知の分子のうちの1つは、トランスフェリン受容体(TfR)である。TfRは、脳血液関門(BBB)及び腸のM細胞で高度に発現する。イヌパルボウイルス(CPV)は、イヌ科トランスフェリン受容体(TfR)を使用して内在化し、標的細胞を感染させる(PMCID:PMC2863798)。CPVは、マウス及びヒトのTfR対応物を認識し、ヒトTfRを発現する宿主細胞内に内在化できることも報告された(PMCID:PMC114880)。
【0541】
カーゴタンパク質またはウイルス粒子がトランスサイトーシスするか、最初に内在化した細胞内に留まる能力は、タンパク質カーゴ/ウイルス粒子とTfRとの相互作用の親和性に依存する(PMCID:PMC6175443、PMCID:PMC3920563)。CPVキャプシドのTfRに対して親和性が高いことにより、ウイルス粒子が初期エンドサイトーシス小胞から、酸性化が上昇した後期エンドソームに導かれ、エンドソーム脱出及びその後ゴルジ体を介して、ウイルスDNAゲノムが送達される核への逆行性輸送が促進され、これにより、細胞間輸送が優先的に回避される。対照的に、CPV粒子とTfRとの相互作用が弱い場合には、トランスサイトーシスが促進され、反対側にカーゴが分泌される。CPV及びFPV VP2タンパク質内の個別のアミノ酸の変化は、キャプシドトランスサイトーシスを調節し、したがって、明確な組織向性を有する新規遺伝子療法ツールがもたらされる。配列番号4または配列番号27中の下線を引いたアミノ酸残基は、内在化及びトランスサイトーシスに影響を与えるVP2の受容体結合ドメインを示す。これらの残基の変異は、受容体の相互作用を変化させ、トランスサイトーシスを調節する。例えば、配列番号4のアミノ酸93及び隣接残基は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。CPV VP2のアミノ酸300及び隣接残基(配列番号4)は、宿主範囲(TfRとの相互作用)に影響を与える。さらに、配列番号4のアミノ酸323及び隣接残基は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。
【0542】
実施例4:推定上の細胞受容体に対するウイルスベクターの親和性及び特異性を高めるためのキャプシド修飾
CPV及びFPV VP2タンパク質内の個別のアミノ酸変化は、細胞受容体であるTfRに対するキャプシド親和性を調節し、それにより、操作された組織向性を有する新規遺伝子療法ツールがもたらされる。配列番号4または配列番号27中の下線を引いたアミノ酸残基は、内在化及びトランスサイトーシスに影響を与える受容体結合ドメインを示す。これらの残基の変異は、受容体の相互作用を変化させ、トランスサイトーシスを調節する。例えば、配列番号4のアミノ酸93及び隣接残基は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。CPV VP2のアミノ酸300及び隣接残基(配列番号4)は、宿主範囲(TfRとの相互作用)に影響を与える。さらに、配列番号4のアミノ酸323及び隣接残基は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。
【0543】
実施例5:イヌパルボウイルスVP2の例示的変異
例示的組換えイヌパルボウイルスVP2が構築され、これは、配列番号4で示されるアミノ酸配列を有する。配列番号4または配列番号27中の下線を引いたアミノ酸残基は、内在化及びトランスサイトーシスに影響を与える受容体結合ドメインを画定する。下線で示す残基中の複数の変異は、受容体相互作用を変化させ、トランスサイトーシスを調節するために作られる(以下の配列番号27、及び表4の配列番号4)。例えば、配列番号27のアミノ酸93及び隣接残基(アミノ酸残基91~95)は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。CPV VP2のアミノ酸300及び隣接残基(アミノ酸残基297~301)(配列番号27)は、宿主範囲(TfRとの相互作用)に影響を与える。さらに、配列番号4のアミノ酸323及び隣接残基(アミノ酸残基320~324)は、TfR相互作用及び宿主範囲に関与する。
配列番号27 イヌパルボウイルス株N VP2
【化11】
【0544】
実施例6:昆虫細胞を使用したイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4組換えビリオンの産生
Sf9細胞を無血清昆虫細胞培養培地(HyCloneSFX-昆虫細胞培養培地)で成長させ、振盪三角フラスコ(Corning)からWaveシングルユースバイオリアクター(GE Healthcare)に移す。細胞密度及び生存率は、Cellometer Autor 2000(Nexelcom)を使用して、毎日測定する。容量は、細胞密度200万~500万細胞/mlを維持するように調整する。最終容量(10L)及び細胞250万個/mlの密度で、バキュロウイルス感染昆虫細胞(BIIC)を1:10,000(v:v)で添加する(凍結保存、100倍濃縮細胞「プラグ」)。高度に希釈されたBIICは、非常に低い感染多重度(MOI)で、Rep-VP-Bac、NS-Bac、及びvg-Bacを放出し、一次感染中に共感染する細胞は事実上ない。しかし、その後の感染サイクルでは、必要なバキュロウイルスがそれぞれ大量に放出され、非常に高いMOIが達成され、これにより、各細胞が多数のウイルス粒子に確実に感染する。細胞は、4日間、または生存率が30%以下に低下するまで培養を維持する。
【0545】
実施例7:イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4組換えビリオンの精製
組換えイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4粒子は、細胞画分及び細胞外画分の両方に分画する。最大数の粒子を回収するために、細胞培養培地を含むバイオマス全体を処理する。細胞内のイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4粒子を放出するには、Triton(登録商標)-X 100をバイオリアクターに添加し、1時間撹拌を継続する。温度を27℃から37℃に上昇させ、その後、撹拌を続けながら、ベンゾナーゼ(EMD Merck)またはターボヌクレアーゼ(Accelagen,Inc.)をバイオリアクターに添加する(2μ/ml)。バイオマスは、段階的デプスフィルターを使用して清澄化させ、フィルター滅菌(0.2μm)し、滅菌バイオプロセスバッグに収集する。組換えイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4粒子は、免疫アフィニティークロマトグラフィー媒体及びQ-セファロース陰イオン交換を使用した連続カラムクロマトグラフィーを使用して回収される。UV吸収、pH、及び導電率を表示し、記録するクロマトグラムを使用して、洗浄及び溶出ステップの完了を判断する。各ステップの相対効率は、ウエスタンブロット分析によって決定され、入力材料(「ロード」)、フロースルー、洗浄、及び溶出のddPCRまたはqPCR分析アリコートによって定量的に決定する。
【0546】
免疫アフィニティークロマトグラフィーでは、ラマ及び他のラクダ科動物種で産生される単一ドメイン免疫グロブリンのVhH領域である「ナノボディ」を使用する。ナノボディを産生するために、抗体プロバイダーは、イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4ウイルス様粒子、すなわちビリオンゲノムを含まずに組み立てられたキャプシドでラマを免疫化する。イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4VLPは、VP-Bacに感染したSf9細胞中で調製され、塩化セシウム等密度勾配を使用して精製され、その後サイズ排除クロマトグラフィー(Superdex 200)を行う。初回免疫(1×)/追加免疫(2×)プロトコールに従って、抗体サービスプロバイダーは、ラマから採血し、末梢血単核球または有核血球から抽出されたmRNAを単離する。保存されたVhH CDR隣接領域(FR1及びFR4)に特異的なプライマーを使用した逆転写により、T7Select 10-3bファージディスプレイライブラリー(EMD-Millipore)の生成に使用されるプラスミドにクローン化されるcDNAが産生される。イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4キャプシドと相互作用するファージを濃縮するために数回のパニング後、ファージクローンをプラークから単離させる。組換えファージを感染させたE.coliをアガロースに混合し、オーバーレイとしてLB寒天プレートに適用する。E.coliは、コンフルエントまで成長させ、溶解した細菌がプレート上にプラークとして現れる「ローン(lawn)」を形成する。イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4に結合するファージを同定するには、寒天プレートの表面にニトロセルロースフィルターを置き、タンパク質をプラークからフィルターに移す。フィルターは、共有結合により連結した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(EZLink Plus Activated Peroxidase Kit,ThermoFisher)で修飾されたイヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4キャプシドと共にインキュベートされ、リン酸緩衝生理食塩水により洗浄する。HRP活性は、発色基質(Novex HRP発色基質、ThermoFisher)または化学発光基質(Pierce ECL Western Blotting Substrate,ThermoFisher)のいずれかを使用して検出できる。ファージ内のcDNAの配列を決定し、細菌発現プラスミドにライゲート連結させ、精製のために6xHisタグと共に発現させる。キレートカラムで精製されたナノボディは、クロマトグラフィー媒体であるNHS活性化Sepharose 4 Fast Flow(GE Healthcare)に共有結合により連結させる。
【0547】
イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4粒子は、結合、洗浄、及びナノボディセファロースカラムからの溶出によって、清澄化されたSf9細胞溶解物から回収される。結合効率は、カラムのロード及びフロースルーのウエスタンブロット法によって決定する。洗浄ステップは、UV280nm吸光度がベースライン(すなわち、ロード前)値に戻ったときに完了したとみなす。pHが酸性になると、ウイルス粒子が放出され、ナノボディセファロース媒体から溶出される。溶出液を50nM Tris-Cl、pH7.2に集めて、溶出媒体を中和させる。
【0548】
イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4ベクター粒子の濃度は、イヌパルボウイルスまたはヒトパルボウイルス4特異的ELISA及びqPCR(充填粒子、すなわちベクターゲノム含有のパーセンテージを推定するために使用できる)を使用して決定する。
【0549】
実施例8:CD34+細胞の精製
開示された方法において使用するためのCD34+細胞は、以下の記事に記載されているような好適な方法に従って精製することができる:Hayakama et al.,Busulfan produces efficient human cell engraftment in NOD/LtSz-scid IL2Rγ null mice,Stem Cells 27(1):175-182(2009);Ochi et al.,Multicolor Staining of Globin Subtypes Reveals Impaired Globin Switching During Erythropoiesis in Human Pluripotent Stem Cells,Stem Cells Translational Medicine 3:792-800(2014);及びMcIntosh et al.,Nonirradiated NOD,B6.SCID Il2rγ-l- KitW4l/W4l(NBSGW)Mice Support Multilineage Engraftment of Human Hematopoietic Cells,Stem Cell Reports 4:171-180(2015)。
【0550】
実施例9:イヌパルボウイルス組換えビリオンを使用した赤血球前駆細胞のin vitroまたはex vivo形質導入
イヌパルボウイルス(CPV)の容量は、野生型ビリオン5.3kbゲノムの約110%であり、長さは、約5,855ntで、そのうち約300ntがITRに必要で、5,555ntが「カーゴ」となる。これは、従来のアデノ随伴ウイルスベクターよりも容量が1kb大きいことを表す。
【0551】
組換えCPV(rCPV)は、赤血球前駆細胞に形質導入させるために使用される。CD71(TfR)に対するCPVの親和性は、治療用導入遺伝子を赤血球前駆細胞に送達するための改善された方法を提供し、その遺伝子置換は、ゲノム編集によって達成され得る。遺伝子型修正細胞における導入遺伝子の発現は、分化した細胞の表現型の救援を促進し、臨床的改善をもたらす。
【0552】
機能獲得突然変異によって引き起こされるヘマグロビン異常症は、常染色体劣性形質として遺伝する。ヘテロ接合性個体は、無症候性であるか、軽度の疾患である傾向があるが、両方の対立遺伝子中に変異を有する個体は、重度の疾患となる。したがって、1つの対立遺伝子を修正または置換することは臨床的に有益である。
【0553】
ベータ-サラセミア及び鎌状赤血球症(SCD)は両方とも、ヘモグロビンベータ(HbB)を発現する遺伝子中の異なる変異によって引き起こされるため、遺伝子置換戦略は、いずれの疾患の患者にとっても有益である。HbB発現カセットを送達するレンチウイルスベクター(LV)を使用したSCDの臨床研究がある。b-グロビンオープンリーディングフレーム(ORF)は、グロビン対立遺伝子座制御領域(LCR)及びb-グロビンプロモーターによって調節される。LVに適合させるために、最小のLCRは、DNAメチル化及びヘテロクロマチンの形成を阻害する3つのDNAse高感受性部位(HS)にマッピングされている。ランダムに組み込まれたLVは、ヘテロクロマチンに組み込まれ、その結果、赤血球前駆細胞(例えば、赤芽球)中でのb-グロビン発現が遮断され、したがって表現型が修正されない可能性がある。
【0554】
LCRエレメントであるHSは、組み込み部位に関係なく、LV DNAの開いたユークロマチン構造を維持する。しかし、最小化のLCRは、b-グロビンORF(441bp及び147コドン)と比較して比較的大きいため、ウイルスベクター送達の選択肢が制限される。
【0555】
HbBカセットをゲノムセーフハーバー(GSH)遺伝子座に挿入する。哺乳動物ゲノムの約45%を構成する移動可能エレメントとは対照的に、遺伝性組み込みパルボウイルスゲノム(または内因性ウイルスエレメント、EVE)は、数百種全体で非常に少数の遺伝子座中に存在する。EVEは、短い時間軸では胚発生、発生、成熟など、地質学的時間軸では進化/種分化に影響を与えることなく、外来DNAの挿入を許容する部位のゲノムマーカーである。おそらく外来DNA挿入の破壊的効果により、1億年にわたって多くの多様な種中に蓄積されたEVE遺伝子座はほとんど存在しない。EVEを保有する非常に多様な系統分類群には多くの種があるにもかかわらず、マウスなどのモデル系におけるGSHとしてのEVEの経験的分析を容易にする、影響を受けるゲノム遺伝子座の数は限られていると考えられる。哺乳動物種間でのEVE遺伝子座の保存により、ヒト及びマウスのゲノム内の相同部位を決定することができる。しかし、すべてのGSHがすべての組織型で長期の安定した発現を支援するとは限らない。RNAseqデータベース及びATACseqデータベースなどのin silico解析を使用することにより、GSH遺伝子座を標的組織中で活発に発現しているサブゲノム領域にマッピングできる。したがって、ベータグロビン症の場合、赤芽球が特に興味深い。
【0556】
赤芽球中でクロマチンを活発に発現する活性クロマチン領域であるGSH遺伝子座を利用することにより、LVが組み込まれたユークロマチン化を確実にするために、LCRエレメントを使用する必要性が回避される。
【0557】
ターゲティングヌクレアーゼによる相同性指向修復(HDR)のプロセスにより、組換えの効率及び特異性が改善される。治療用遺伝子に隣接する「相同性アーム」は、ベクターDNAを標的遺伝子座に向ける。細胞DNA修復経路酵素、またはCRISPR/Cas9ヌクレアーゼなどの人工プロセスによる組換えにより、導入遺伝子がGSHに組み込まれる。
【0558】
b-グロビンプロモーターに加えて、他のプロモーターも、多くの細胞型、またトランスジェニックマウス株での長期の高レベル発現のために使用されている。
【0559】
例えば、ヘモグロビンは、2× HbA鎖及び2× HbB鎖で構成されるヘテロ四量体である。HbBが存在しない場合、HbA鎖は自己会合し、細胞傷害性凝集体を形成する。アルファ-ヘモグロビン安定化タンパク質(AHSP)は、a-グロビンサブユニットの凝集を防ぐために前赤血球中で共発現される。AHSPプロモーターは、赤血球前駆体中非常に活性が高く、十分に特徴付けられている。
【0560】
別の例として、CAGプロモーターエンハンサーは、ニワトリベータグロビンプロモーター、エクソン1、イントロン1、及びエクソン2のスプライスアクセプターに融合されたサイトメガロウイルスエンハンサーから操作された合成プロモーターである。
【0561】
別の例として、MNDプロモーターは、活性造血細胞である。
【0562】
別の例として、Wiskott-Aldrichプロモーターは、造血細胞中で活性である。
【0563】
別の例として、PKLRプロモーターは、造血細胞中で活性である。
【0564】
末梢血幹細胞(PBSC)は、白血球分離によって単離される。
【0565】
Hemofreezeバッグ内の凍結保存された末梢血細胞は、37℃の水浴で急速解凍することにより回収される。これらの解凍した細胞を4℃で4%HSAに懸濁させ、4℃、450gで5分間の遠心分離により2回洗浄する。血小板を、10%HSA上に重層し、4℃、450gで15分間遠心分離することによって2回除去する。赤血球を、Ficoll-Hypaque(FH;1.077g/cm3;Pharmacia Fine Chemicals,Piscataway,NJ,USA)上に重層し、4℃、400gで25分間遠心分離することによって除去する。界面の単核細胞(P1-、FH細胞)を収集し、洗浄溶液で2回洗浄し、4℃で4%HSAに再懸濁させる(MN細胞)。ナイロンファイバーシリンジ(NF-S)を使用して、付着細胞を除去する。5グラムのNFを50mlの使い捨てシリンジに詰める。単核細胞を追加の50mlシリンジに移し、NF-Sに静かに注入し、4℃で5分間インキュベートした。次いで、MN細胞を、NF-Sのプランジャーを通して50mlシリンジに収集し、細胞を50mlのコニカルチューブにプールする。これらのプールされた細胞を、4℃、400gで5分間遠心分離し、4℃で4%HSAに再懸濁させる(NF細胞)。次いで、細胞懸濁液を、製造業者の指示に従って、CD34+選択のために、Isolex磁気細胞分離システム(Isolex 50;Baxter Healthcare,Immunotherapy Division,Newbury,UK)上で直ちにプロセシングする。簡潔に説明すると、細胞を9C5マウス免疫グロブリンG1(IgG1)抗ヒトCD34抗体(10mg/1×108NF細胞)と共に4℃で15分間、ゆっくりとエンドオーバーエンド回転させながらインキュベートする。感作後、細胞を4%HSAで4℃で洗浄し、あらゆる過剰な/未結合の抗体を除去する。次いで、Dynabeads(Oslo,Norway)を、最終ビーズ/細胞比1:10で洗浄し、感作細胞に添加する。4℃で30分間混合後、細胞結合ミクロスフェア及び遊離ミクロスフェアは、磁石(Dynal MPC-1,Dynal,Fort Lee,NJ,USA)を介して壁に付着させ、ミクロスフェアに結合しない遊離細胞はいずれも除去させる。この洗浄手順を、4%HSAを使用して4℃で2回繰り返す。DynabeadsとCD34+細胞との連結は、PR34+幹細胞解放剤によって4℃で30分間切断させる。遊離Dynabeadsは、磁石を介してCD34+細胞から除去される。細胞の回収には、1%ACD-A及び1%HSAを含むD-PBSを25℃で使用する。得られた細胞産物は、フローサイトメトリーによって制御される。
【0566】
実施例10:イヌパルボウイルス組換えビリオンまたはヒトパルボウイルス4組換えビリオンを使用した周期的遺伝子発現
第VIII因子(FVIII)、F8、またはBドメイン欠失ポリペプチドをコードするフラグメントをコードする核酸を含むイヌパルボウイルス組換えビリオンまたはヒトパルボウイルス4は、血友病Aの治療法として肝細胞に形質導入するために使用される。FVIIIは、必須の血液凝固タンパク質であり、抗血友病因子(AHF)としても知られる。ヒトでは、第VIII因子は、F8遺伝子によってコードされている。この遺伝子中の欠陥は、劣性X連鎖凝固障害である血友病Aを引き起こす。第VIII因子は、全身の肝臓の類洞細胞及び肝臓の外側の内皮細胞中で産生される。
【0567】
血友病Aを治療するために、F8遺伝子の発現を増加させる試みがこれまでに行われてきた。例えば、ヒト第VIII因子のアデノウイルス随伴ウイルス(AAV5)ベクター媒介遺伝子導入であるバロクトコジーンロクサパルボベク(BMN270または としても知られる)が、重度の血友病A患者において試験された(ClinicalTrials.gov識別子:NCT02576795;NCT03370913;NCT03392974;NCT03520712)。しかし、FDAは、長期的安全性及び有効性のデータを要求し、2020年に承認を拒否した。投与量の増加に関する懸念を和らげるために、導入遺伝子の徐々に遺伝子発現が生じ得る長期データが必要になり得る。
【0568】
FVIIIは、微生物または真核生物のいずれかの発現系での産生が困難である組換えタンパク質である。「Bドメイン」の欠失の開発により、発現レベルが改善され、オープンリーディングフレームのサイズが減少したが、FVIIIの発現レベルは、他のタンパク質よりも大幅に低かった。これらの低レベルを克服するために、バロクトコジーンロクサパルボベクウイルスベクターの臨床用量を増加させた。患者は、1kgあたり6E+13個のベクター粒子(ベクターゲノム、またはvgと呼ばれる)により治療された。大型動物モデルに基づいて、少数の肝細胞にrAAV5-FVIIIを形質導入させた。細胞あたりのvgの数が多いため、形質導入された細胞は比較的大量のFVIIIを発現する。FVIII発現に対する代謝要求は、肝細胞タンパク質の発現に対する通常の要求を破壊させる可能性がある。FVIIIは、タンパク質の折り畳み及び分泌に通常関与する肝細胞の細胞コンパートメントに集積され得る。FVIIIの産生を生じさせる内皮細胞は、この活性に特化している可能性が高く、高度に調節されたネイティブFVIIIプロモーターの転写制御下で1つのX染色体上の対立遺伝子からFVIIIを産生する。
【0569】
したがって、本明細書では、肝細胞の恒常性の乱れが細胞ストレスを引き起こし、炎症状態を誘導するという仮説が立てられる。代謝及びタンパク質の折り畳み/排出の負荷は、rAAV-FVIIIベクターで使用される高活性な構成プロモーターを使用することによって悪化する。炎症及びサイトカインの産生は、細胞の代謝回転または細胞死を引き起こし得る。
【0570】
この問題を回避し、血友病Aの治療法に対する長年の必要性に取り組むために、イヌパルボウイルス組換えビリオンまたはヒトパルボウイルス4ベクターは、(a)遺伝子F8、または(b)B-ドメインの欠失を有する遺伝子F8を含むように操作させる。イヌパルボウイルス組換えビリオンまたはヒトパルボウイルス4ウイルスベクターが、より大きなゲノムサイズをパッケージングできることにより、臨床試験で現在使用されているrAAV5を上回る利点がもたらされ、AAVベクターでは不可能である全長F8遺伝子のパッケージングが可能になる。さらに、バロクトコジーンロクサパルボベクの臨床試験で使用される高活性な構成プロモーターとは対照的に、イヌパルボウイルス組換えビリオンまたはヒトパルボウイルス4組換えベクターは、誘導性発現系で調製される。
【0571】
誘導性発現系は、試薬が発現をオンにするか発現の阻害を解除するまで、F8遺伝子をデフォルトの転写オフ状態に維持する(例えば、図6を参照)。周期的発現により、肝細胞は、過剰発現ストレスから解放される。周期のタイミング(すなわち、遺伝子発現をオンにするタイミング)は、FVIIIの初期血清レベル(t0)及び半減期(t1/2)から決定できる。t1/2は、9~14日であると推定されるため、14日(2週間)のt1/2が使用され、軽度の血友病は、FVIIIレベルが正常5%以上であると定義される。
【0572】
導入遺伝子発現=150%
5%まで低下するまで68日
ここでは、発現が毎月誘導され、治療レベルのFVIIIが得られる。
【0573】
細胞内のt1/2を延長させる幅広いASO化学反応(アンチセンスオリゴヌクレオチドASOまたはAON)が開発されている。ここでは、比較的短いt1/2のASO化学反応を使用して、ASOが細胞から除去されるにしたがって減少するFVIII発現の周期が得られる。最適なt1/2は、特に、形質導入された細胞数、プロモーター活性、及び転写産物成熟の動態に基づいて経験的に決定される。
【0574】
参照による組み込み
本明細書で述べられるすべての刊行物、特許、及び特許出願は、各々の個々の刊行物、特許、または特許出願が参照によって組み込まれることが具体的かつ個別に示されるかのように、参照によってそれらの全体が本明細書に組み込まれる。矛盾する場合は、本明細書におけるいかなる定義をも含む本出願が優先する。
【0575】
均等物
当業者は、本明細書に記載される本発明の特定の実施形態に対する多くの均等物を認識するか、または定型的な実験のみを使用してそれらを確認することができるであろう。そのような等価物は、以下の特許請求の範囲によって網羅されることが意図される。
参考文献
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図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5A-1】
図5A-2】
図5B-1】
図5B-2】
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-08-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024501385000001.app
【国際調査報告】