(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】多次元組立光熱相変化材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C09K 5/06 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
C09K5/06 L ZAB
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2022513553
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2022-02-25
(86)【国際出願番号】 CN2021136919
(87)【国際公開番号】W WO2023097744
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202111466170.5
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074730
【氏名又は名称】スーヂョウ ユニバーシティー オブ サイエンス アンド テクノロジー
【氏名又は名称原語表記】Suzhou University of Science and Technology
【住所又は居所原語表記】No.99, Xuefu Road,Suzhou, Jiangsu, 215009 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】リー アン
(72)【発明者】
【氏名】ワン グェァ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ユェアン
(72)【発明者】
【氏名】ヂォン ユー
(72)【発明者】
【氏名】ヂャン チンルェイ
(72)【発明者】
【氏名】ファン リンリン
(57)【要約】
本発明は多次元組立光熱相変化材料を開示し、一次元炭素基材、多段構造炭化物及び前記骨格材料に吸着された相変化エネルギー貯蔵材料を含む。本発明光熱変換相変化材料は従来の有機相変化材料の単一余熱エネルギー貯蔵の機能制限問題を効果的に解決する。且つ、独特な多次元組立構造は光路を効果的に増加し、体系の光学損失を低減する。同時に、相変化材料の吸熱特性はそれにエネルギーを貯蔵させると同時に、体系の熱損失を効果的に低減させ、さらに材料の光熱変換効率を向上させる。また、非極性有機相変化芯材のC-H結合と炭素担体非局在化π電子間のC-H・・・π非結合との弱い相互作用を制御することにより、複合相変化材料の相変化エンタルピー値を増大させ、相変化エネルギー貯蔵効率を顕著に向上させる。本方法で製造された複合相変化材料は高い光熱変換効率、高いエネルギー貯蔵密度及び高いサイクル安定性という顕著な利点を有し、広い応用の将来性を有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多次元組立光熱変換相変化材料であって、一次元炭素基材と炭素基材に成長させた多段構造炭化物とを含み、前記多段構造炭化物は前記一次元炭素基材の表面に孔路を形成し、且つ前記孔路に吸着された非極性有機相変化材料を含むことを特徴とする多次元組立光熱変換相変化材料。
【請求項2】
前記一次元炭素基材がSP
2混成Cのπ電子を有し、前記非極性有機相変化材料と分子間の弱い相互作用を形成することを特徴とする請求項1に記載の多次元組立光熱変換相変化材料。
【請求項3】
非極性有機相変化材料がパラフィン系炭化水素、直鎖アルカンのうちの一種又は多種の任意の組み合わせから選択されることを特徴とする請求項1に記載の多次元組立光熱変換相変化材料。
【請求項4】
前記パラフィン系炭化水素の非極性有機相変化材料は、n-デカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカン、n-エイコサン等の直鎖アルカン、及び炭素原子数が約18~30のパラフィン系炭化水素のいずれかを含む請求項3に記載の多次元組立光熱変換相変化材料。
【請求項5】
以下のステップであって、
炭素材料基材上に2D-ZIF骨格をインサイチュ合成し、炭素@2D-ZIF前駆体を得るステップ1と、
ステップ1で製造された炭素@2D-MOF前駆体を不活性雰囲気下(N
2又はAr)で、600~1200℃で2~6時間炭化し、多次元組立構造担体を得るステップ2と、
過剰の非極性有機相変化材料(NP-PCM)をシャーレに入れ、オーブンに入れ、オーブンの温度はNP-PCMの融点より高く、NP-PCMが完全に融解した後、ステップ2で調製された多次元組立構造担体をシャーレに入れ、融解したNP-PCMに担体を全部浸漬し、それをオーブンに入れ続け、1~3時間負荷するステップ3と、
複合材料表面に担持されていないNP-PCMを除去し、多次元組立光熱変換相変化材料を得るステップ4とを含むことを特徴とする請求項1に記載の多次元組立光熱変換相変化材料の製造方法。
【請求項6】
前記ステップ1は具体的には、
一次元炭素基材を活性化した後、可溶性金属塩とイミダゾール系配位子を含む極性溶液に浸漬し、20~200℃で12~48時間反応させ、生成物を除去し、極性溶媒で三回洗浄し、副生成物及び不純物を除去し、60~150℃で4~48時間乾燥させ、炭素@2D-ZIF担体材料を得、可溶性金属塩とイミダゾール系配位子とのモル比は1:2より小さいことを特徴とする請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記可溶性金属塩は、硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄、酢酸鉄、硝酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル及び塩化ニッケル等のうちの一種又は数種を含み、前記イミダゾール系配位子はジメチルイミダゾールであることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記一次元炭素基材の活性化方法は、一次元炭素基材を濃硝酸溶液に入れ、100°Cで3時間加熱した後、清水で中性になるまで繰り返し洗浄し、24時間真空乾燥し、活性化された一次元炭素基材を得、濃硝酸溶液の濃度は8mol/L以上であることを特徴とする請求項6に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナノ複合材料及び複合相変化材料分野に属し、具体的には多次元組立光熱相変化材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
相変化エネルギー貯蔵は相変化材料をキャリアとし、エネルギー貯蔵技術分野で研究された最も広い類である。相変化材料はエネルギー貯蔵密度が大きく、サイクル性に優れ、相変化が発生する過程において材料内部の温度が均一であり、したがって相変化材料はコールドチェーン輸送、建築省エネルギー、太陽エネルギー貯蔵、電子設備、繊維紡績などの分野に広く応用される。しかし相変化材料の動作中に固-気、液-気等の相変化過程が発生するため、固体相、液体相から容器までの体積が大きく変化し、そのため相変化材料がパッケージされにくく且つ漏れやすい。相変化材料が動作中にパッケージされにくく、漏れやすいという問題を解決するために、パッケージ技術を用いて相変化材料をキャリアと複合し、製造された複合相変化エネルギー貯蔵材料は良好な形状を有し、安定性が比較的高い。したがって、固-液相変化材料の実用性と安全性が効果的に保障される。多孔質材料は複合相変化材料の担体とすることができ、一般的に比表面積が大きく、細孔構造が発達し、吸着能力が強く及び熱安定性に優れるという特徴を有する。且つ多孔質材料は一次元、二次元及び三次元構造を有し、異なる蓄熱分野の需要を満たすことができる。したがって、多孔質媒体を支持担体として複合相変化エネルギー貯蔵材料を製造することは好ましい方法である。多孔質基複合定形法は多孔質媒体を担体とし、それ自体が有する毛細管作用力、表面張力及び水素結合作用力等を利用して相変化材料を多孔質媒体の孔路に安定させ、さらに相変化材料の安定性を向上させ、相変化材料の溶融漏れの問題を効果的に解決することができる。しかし、現在の相変化材料には貯蔵伝熱方式が単一であるという問題が普遍的に存在している。
【0003】
光エネルギーは現在最も効果的な再生可能エネルギーとして、無尽蔵に用いられる。しかしながら、光エネルギーの断続的な特性は、弱い光強度及び夜間の使用を制限する。光熱材料を複合相変化材料系に導入し、光熱相変化材料を取得し、エネルギー供給の間欠性問題を効果的に解決することができる。光熱相変化材料は昼間に光熱変換を自発的に行うことができ、夜間に吸収した熱を放出するため、石炭燃焼等の従来の熱供給方式を代替する上で、優れた応用の将来性を有する。同時に、相変化材料の吸発熱特性は材料に一定の温度を維持させ、従来の熱供給方式の熱分布が不均一であるという難題を効果的に改善することができる。光熱材料は昼間に光照射により、分子は低軌道状態から高軌道状態になり、電子を基底状態から励起状態に遷移させ、その後、励起された電子は非放射緩和(non-radiative relaxation)、エネルギー転移又はクエンチング等のプロセスによりエネルギーを基底状態に放出し、プロセス全体では電子遷移により熱の吸収と放出を実現し、続いて太陽エネルギーの光熱変換を実現し補強する。しかしながら、現在の光熱相変化材料には、光熱変換効率が低いという問題が依然として存在している。また、現在複合相変化材料は多孔質担体の閉じ込め効果(confinement effect)により、相変化芯材の潜熱を完全に放出できない。
【発明の概要】
【0004】
一方、本発明は多次元組立光熱相変化材料を提供し、一次元炭素基材、炭素基材に成長させた多段構造炭化物を含み、前記多段構造炭化物は前記一次元炭素基材の表面に孔路を形成し、また、前記孔路に吸着された非極性有機相変化材料(相変化芯材)を含む。前記一次元炭素基材はSP2混成Cのπ電子を有し、前記非極性有機相変化材料と分子間の弱い相互作用を形成する。光熱変換相変化材料は一次元炭素基材、多段構造炭化物と非極性有機相変化芯材との機能組立によって、伝統的な有機相変化材料の単一余熱エネルギー貯蔵の機能制限性問題を有効に解決した。また、光熱相変化材料の独特な多次元組立構造は光路、相変化エネルギー貯蔵材料の吸熱特性を効果的に増加し、材料の光熱変換効率をさらに向上させる。また、非極性有機相変化芯材のC-H結合と一次元炭素材料非局在化π電子間のC-H・・・π非結合との弱い相互作用を制御することにより、複合相変化材料の相変化エンタルピー値を増大させる。
【0005】
本出願に適用可能な非極性有機相変化芯材は、次のものを含む:パラフィン系炭化水素、直鎖アルカンのうちの1種又は多種の任意の組み合わせであり、パラフィン系炭化水素は、n-デカン、n-ドデカン、n-テトラデカン、n-ヘキサデカン、n-オクタデカン等の直鎖アルカン、又は炭素原子数が約18~30のパラフィン系炭化水素であってもよい。
【0006】
一方、本発明は高効率光熱相変化材料の製造方法を提供し、以下のステップを含む:
(1)炭素材料基材上に2D-ZIF骨格をインサイチュ合成し、炭素@2D-ZIF前駆体を得る。
(2)ステップ1で調製された炭素@2D-ZIF前駆体を不活性雰囲気下(N2又はAr )で、600~1200℃で2~6時間炭化し、多次元組立構造担体を得る。
(3)過剰の非極性有機相変化材料(NP-PCM )をシャーレに入れ、オーブンに入れる。オーブンの温度はNP-PCMの融点より高い。NP-PCMが完全に融解した後、ステップ2で調製された多次元組立構造担体をシャーレに入れ、融解したNP-PCMに担体を全部浸漬し、それをオーブンに入れ続け、1~3時間負荷する。負荷終了後、オーブン内の複合材料を取り出し、ろ紙に移す。続いて複合材料をろ紙と共にオーブンに入れ、ろ紙で複合材料表面に担持されていないNP-PCMを吸着し、ろ紙に油汚れがなくなるまで繰り返し操作し、多次元組立光熱変換相変化材料を得る。
【0007】
ある実施過程において、下記方法を用いて炭素@2D-ZIF前駆体材料を合成する:
【0008】
一次元炭素基材を30mLの濃硝酸溶液に入れ、100°Cで3時間 加熱した後、清水で中性になるまで繰り返し洗浄し、24時間真空乾燥し、活性化された一次元炭素基材を得る。活性化された一次元炭素基材を可溶性金属塩とイミダゾール系配位子の極性溶液に浸漬し、20~200 ℃で12~48時間反応させ、生成物を除去し、極性溶媒で三回洗浄し、副生成物及び不純物を除去し、60~150 ℃で4~48時間乾燥させ、炭素@2D-ZIF前駆体材料を得る。そのうち、可溶性金属塩とイミダゾール系配位子とのモル比は1:2より小さく、すなわち可溶性金属塩とイミダゾール系配位子との不飽和配位は、二次元構造イミダゾールエステル骨格構造材料を得る鍵である;
【0009】
本発明に適用する一次元炭素基材は以下を含むがこれらに限定されない:カーボンナノチューブ、カーボンファイバー、カーボンクロス等が挙げられる。
【0010】
本発明の二次元イミダゾールエステル骨格材料の合成に適用する可溶性金属塩は以下を含むがこれらに限定されない:硝酸鉄、塩化鉄、硫酸鉄、酢酸鉄、硝酸コバルト、塩化コバルト、硫酸コバルト、酢酸コバルト、硝酸ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル、塩化ニッケル等のうちの一種又は数種である。イミダゾール配位子は以下を含むがこれらに限定されない:ジメチルイミダゾール。
【0011】
本発明の有益な効果は以下のとおりである:
本発明の利点は下記の通りである。一次元炭素基材、多段構造炭化物と非極性有機相変化材料との機能組立は、材料の優れた光熱変換と記憶機能を実現し、光熱変換効率が高く、相変化エンタルピー値が大きく、サイクル安定性が強いという利点を有し、広い応用の将来性を有する。
【0012】
1) 光熱変換相変化材料は一次元炭素基材、多段構造炭化物と非極性有機相変化芯材との機能組立により、相変化材料の光熱変換及び貯蔵の新機能を実現する;
【0013】
2) 光熱相変化材料の独特な多次元組立構造は光路を効果的に増加し、体系の光学損失を減少し、相変化エネルギー貯蔵材料は蓄熱すると同時に体系の熱損失を低減し、材料の高い光熱変換効率を実現する;
【0014】
3) 非極性有機相変化芯材のC-H結合と炭素担体非局在化π電子間のC-H・・・π非結合との弱い相互作用を制御することにより、複合相変化材料の相変化エンタルピー値を増大させ、複合相変化材料の局在化効果による実際の相変化エンタルピー値が理論エンタルピー値より低いという難題を解決する;
【0015】
4) 本発明の提供する新型複合相変化材料は光熱性能に優れ、相変化エンタルピー値が高く、サイクル安定性に優れ、理想的な省エネルギー排出削減のグリーンエネルギー貯蔵材料である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1で得られた多段構造の担体材料のSEM スペクトルである。
【
図2】
図2は、本発明の実施例1で得られた多段構造の担体材料のXRDスペクトルである。
【
図3】
図3は、本発明の実施例1で得られた多次元組立光熱相変化材料のXRDスペクトルである。
【
図4】
図4は、本発明の実施例1で得られた多次元組立光熱相変化材料のDSCスペクトルである。
【
図5】
図5は、本発明の実施例1で得られた多次元組立光熱相変化材料の300回サイクル後のDSCスペクトルである。
【
図6】
図6は、本発明の実施例1で得られた多次元組立光熱相変化材料の光熱温度変化曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下は具体的な実施形態を参照して本発明の技術的解決手段をさらに説明する。
【0018】
実施例1
(1) 多段構造の担体材料の製造:
【0019】
0.1g炭素繊維布基材を30mLの濃硝酸溶液(8mol/L)に入れ、100°Cで3時間加熱した後、清水で中性になるまで繰り返し洗浄し、24時間真空乾燥し、活性化された炭素繊維布を得た。
【0020】
活性化された炭素繊維を硝酸コバルト六水和物(1.16 g)とジメチルイミダゾール(0.66 g)を含む30mLのメタノール溶液に浸漬し、80°Cで24時間反応させ、メタノール溶媒で生成物を三回洗浄し、副生成物及び不純物を除去し、80°Cで12時間乾燥させ、炭素繊維布@2D-ZIF-Co前駆体を得た。炭素繊維@2D-ZIF-Co前駆体はN2雰囲気下で、1000°Cで3時間炭化し、多段構造担体を得た。
【0021】
(2) 多次元組立光熱相変化材料の製造:
【0022】
オクタデカン2.0gをシャーレに入れ、80℃オーブンに入れた。オクタデカンが完全に融解した後、多段構造担体をシャーレに入れ、融解したオクタデカンに担体を全部浸漬し、続いてそれをオーブンに入れ、2時間負荷し、毛細管作用及び表面張力によって芯材を担体の孔路に吸着させた。負荷終了後、オーブン内の複合材料を取り出し、ろ紙に移した。続いて複合材料をろ紙と共にオーブンに入れ、ろ紙で複合材料表面に担持されていないオクタデカンを吸着し、ろ紙に油汚れがなくなるまで繰り返し操作し、多次元組立光熱相変化材料を得た。
【0023】
図1のSEM画像から観察することができるように、2D炭化物@0D金属クラスターは1D炭素繊維基材上に均一に成長し、多段構造担体の規則的な組立を実現した。
図2のXRD結果から26°に位置する炭素特徴ピーク及び44.2°、51.5°、75.8°に位置するコバルト特徴ピークを観測することができ、
図1のSEM走査電子顕微鏡結果を参照し、本解決手段を採用して多段構造担体材料(1D 炭素繊維@2D炭素シート@3D 金属クラスター)を製造することに成功し、当該多段構造担体は相変化芯材オクタデカンを効果的に吸着することができ、
図3の複合相変化材料のXRD結果から、18.9°、19.4°に位置するオクタデカン特徴ピークを観測することができ、本実験方策を採用して優れた結晶性能を有する複合相変化材料を取得することに成功することを証明した。
図4に示されるDSC試験の結果は、複合相変化材料が、29.3°Cの融解温度、102.5J/g の溶融エンタルピー、25.2°Cの融解温度、102.3J/g の溶融エンタルピーを有することを示す。オクタデカンのC-H結合と多段構造炭素担体非局在化π電子間のC-H・・・π非結合の弱い相互作用とは、複合相変化材料の相変化エンタルピー値を効果的に増大させ、そのため、本解決手段により得られた多次元組立複合相変化材料のエネルギー貯蔵効率は、106.3%に達した。
図5に示される複合相変化材料は、300回サイクル後のDSC試験結果により、複合相変化材料の融解温度は、29.3°Cであり、溶融エンタルピーは、102.8J/gであり、融解温度は、25.2°Cであり、溶融エンタルピーは、102.2J/gであり、サイクル前後の複合相変化材料の相変化温度及び相変化エンタルピーは、いずれも顕著な変化がなく、本解決手段により得られた多次元組立複合相変化材料は、良好なサイクル安定性を有することが確認された。
図6に示される複合相変化材料の光熱性能試験結果により、当該多次元組立複合相変化材料は1Sun(標準太陽光をシミュレーションする)の光強度で、100s以内に75°Cまで昇温し、その光熱貯蔵効率は、82.7%に達した。以上の結果は本発明の製造した多次元組立複合相変化材料が優れた光熱変換、相変化エネルギー貯蔵及びサイクル安定性能を有することを強く証明し、従来の複合相変化材料の吸光能力が低く、結晶挙動が制限され、漏れやすいというコア問題を効果的に解決し、同時に提供した製造方法が簡単で、大規模生産に適する。
【0024】
実施例2
(1) 多段構造の担体材料の製造:
【0025】
0.1 gのカーボンナノチューブ基材を30mLの濃硝酸溶液(8mol/L )に入れ、100°Cで3時間加熱した後、清水で中性になるまで繰り返し洗浄し、24時間真空乾燥し、活性化されたカーボンナノチューブを得た。活性化されたカーボンナノチューブを硝酸ニッケル六水和物(1.16 g)とジメチルイミダゾール(0.66 g)を含む30mLのメタノール溶液に浸漬し、80°Cで24時間反応させ、メタノール溶媒で生成物を三回洗浄し、副生成物及び不純物を除去し、80°Cで12時間乾燥させ、カーボンナノチューブ@2D-ZIF-Ni前駆体材料を得た。カーボンナノチューブ@2D-ZIF-Ni前駆体をN2雰囲気下で、600°Cで3時間炭化し、多段構造担体を得た。
【0026】
(2) 多次元組立光熱相変化材料の製造:
【0027】
パラフィン2.0gをシャーレに入れ、80°Cのオーブンに入れた。オクタデカンが完全に融解した後、多次元組立構造担体をシャーレに入れ、融解したパラフィンに担体を全部浸漬し、続いてそれをオーブンに入れ、2時間負荷した。負荷終了後、オーブン内の複合材料を取り出し、ろ紙に移した。続いて複合材料をろ紙と共にオーブンに入れ、ろ紙で複合材料表面に担持されていないパラフィンを吸着し、ろ紙に油汚れがなくなるまで繰り返し操作し、多次元組立光熱変換相変化材料を得た。
【0028】
試験結果により、該多次元組立光熱相変化材料の相変化エネルギー貯蔵効率は、104.7%に達し、1Sun(標準太陽光をシミュレーションする)の光強度で、100s以内に86°Cまで昇温することができ、光熱変換効率は、81.6%に達した。同時に、300回サイクルした後、相変化温度及び相変化エンタルピー値に顕著な変化がなく、優れた熱サイクル安定性を有する。
【0029】
実施例3
(1) 多段構造の担体材料の製造:
【0030】
0.1gのカーボンナノファイバー基材を30mLの濃硝酸溶液に入れ、100°Cで3時間加熱した後、清水で中性になるまで繰り返し洗浄し、24時間真空乾燥し、活性化されたカーボンナノファイバーを得た。活性化されたカーボンナノファイバーを硝酸クロム九水和物(1.51 g)とジメチルイミダゾール(0.66 g)を含む30mL のメタノール溶液に浸漬し、80°Cで24時間反応させ、メタノール溶媒で生成物を三回洗浄し、副生成物及び不純物を除去し、80°Cで12時間乾燥させ、炭素繊維@2D-ZIF-Cr前駆体を得た。カーボンナノファイバー@2D-ZIF-Cr前駆体をN2雰囲気下で、1200°Cで3時間炭化し、多次元組立構造担体を得た。
【0031】
(2) 多次元組立光熱相変化材料の製造:
【0032】
エイコサン2.0gをシャーレに入れ、80℃のオーブンに入れた。パラフィンが完全に融解した後、多次元組立構造担体をシャーレに入れ、融解したエイコサンに担体を全部浸漬し、続いてそれをオーブンに入れ、2時間負荷した。負荷終了後、オーブン内の複合材料を取り出し、ろ紙に移した。続いて複合材料をろ紙と共にオーブンに入れ、ろ紙で複合材料表面に担持されていないエイコサンを吸着し、ろ紙に油汚れがなくなるまで繰り返し操作し、多次元組立光熱変換相変化材料を得た。
【0033】
試験結果により、当該多次元組立光熱相変化材料の相変化エネルギー貯蔵効率は、105.6%に達し、1Sun(標準太陽光をシミュレーションする)の光強度で、100s以内に81℃まで昇温することができ、光熱変換効率は、80.8%に達した。同時に、300回サイクルした後、相変化温度及び相変化エンタルピー値に顕著な変化がなく、優れた熱サイクル安定性を有する。
【0034】
比較例1
オクタデカン2.0gをシャーレに入れ、80℃オーブンに入れた。オクタデカンが完全に融解した後、実施例1における多段構造担体を担持しない0.1g の炭素繊維布の基材を直接シャーレに入れ、融解したオクタデカンに担体を全部浸漬し、続いてそれをオーブンに入れ、2時間負荷した。負荷終了後、オーブン内の複合材料を取り出し、ろ紙に移した。続いて複合材料をろ紙と共にオーブンに入れ、ろ紙で複合材料表面に担持されていないオクタデカンを吸着し、ろ紙に油汚れがなくなるまで繰り返し操作した。
【0035】
試験結果により、当該多次元組立光熱相変化材料の相変化エネルギー貯蔵効率は、103.5%に達し、1Sun(標準太陽光をシミュレーションする)の光強度で、100s以内に68℃まで昇温することができ、光熱変換効率は、60.9%に達した。同時に、50回サイクルした後、相変化温度及び相変化エンタルピー値が変化した。
【0036】
比較例2
(1) 多段構造の担体材料の製造:
【0037】
シリコンナノ繊維基材0.1 gを30mLの濃硝酸溶液に入れ、100°Cで3時間加熱した後、清水で中性になるまで繰り返し洗浄し、24時間真空乾燥した。
【0038】
硝酸クロム九水和物(1.51 g)とジメチルイミダゾール(0.66 g)を含む30mL のメタノール溶液に浸漬し、80°Cで24時間反応させ、メタノール溶媒で生成物を三回洗浄し、副生成物及び不純物を除去し、80°Cで12時間乾燥させ、シリコンナノ繊維@2D-ZIF-Cr前駆体を得た。シリコンナノ繊維@2D-ZIF-Cr前駆体をN2雰囲気下で、1000℃で3時間炭化し、多次元組立構造担体を得た。
【0039】
(2) 多次元組立光熱相変化材料の製造:
【0040】
エイコサン2.0gをシャーレに入れ、80℃のオーブンに入れた。パラフィンが完全に融解した後、多次元組立構造担体をシャーレに入れ、融解したエイコサンに担体を全部浸漬し、続いてそれをオーブンに入れ、2時間負荷した。負荷終了後、オーブン内の複合材料を取り出し、ろ紙に移した。続いて複合材料をろ紙と共にオーブンに入れ、ろ紙で複合材料表面に担持されていないエイコサンを吸着し、ろ紙に油汚れがなくなるまで繰り返し操作し、多次元組立光熱変換相変化材料を得た。
【0041】
試験結果により、当該多次元組立光熱相変化材料の相変化エネルギー貯蔵効率は、95.2%に達し、1Sun(標準太陽光をシミュレーションする)の光強度で、100s内で72°Cまで昇温することができ、光熱変換効率は、68.7%に達した。同時に、300回サイクルした後、相変化温度及び相変化エンタルピー値が変化した。
【国際調査報告】