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特表2024-501424ベータ-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチド、およびそれをコードするポリヌクレオチド
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ベータ-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチド、およびそれをコードするポリヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/56 20060101AFI20240104BHJP
   C12N 9/24 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C12N15/56
C12N9/24 ZNA
C12N15/63 Z
C12N1/19
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533631
(86)(22)【出願日】2021-12-02
(85)【翻訳文提出日】2023-07-14
(86)【国際出願番号】 EP2021084004
(87)【国際公開番号】W WO2022117743
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】63/120,608
(32)【優先日】2020-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】20213521.6
(32)【優先日】2020-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500034653
【氏名又は名称】ジェンザイム・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【弁理士】
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン・リーソム
(72)【発明者】
【氏名】アヴァ・チャトパディヤエ
(72)【発明者】
【氏名】ヴェルナー・ディットリヒ
(72)【発明者】
【氏名】トーマス・マーティン・ウェンドリッヒ
【テーマコード(参考)】
4B065
【Fターム(参考)】
4B065AA72X
4B065AA88Y
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA01
4B065BC01
4B065CA31
4B065CA44
(57)【要約】
本発明は、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを産生する方法であって、a)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む酵母細胞を用意する工程、b)前記酵母細胞をポリペプチドを産生できる条件下で培養する工程、およびc)工程b)で産生したポリペプチドを取得する工程を含む、方法に関する。本発明はさらに、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む酵母細胞に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを産生する方法であって、
a)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む酵母細胞を用意する工程、
b)前記酵母細胞を、前記ポリペプチドの産生を可能にする条件下で培養する工程、および
c)工程b)で産生された前記ポリペプチドを得る工程を含む、方法。
【請求項2】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも98%同一なアミノ酸配列を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記酵母細胞がサッカロミケス(Saccharomycetaceae)科に属する、請求項1~3記載のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記酵母細胞が、コマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)細胞のようなコマガタエラ(Komagataella)細胞である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、異種性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードする前記ポリヌクレオチドが、前記酵母細胞に対してコドン最適化されている、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号2または17に示される核酸配列を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一なアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
【請求項10】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有する前記ポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項11】
異種性プロモーターに作動可能に連結されている、請求項9に記載のポリヌクレオチド。
【請求項12】
請求項9~11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクターのようなベクター。
【請求項13】
請求項9~11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチド、または請求項12に記載のベクターを含む、酵母細胞。
【請求項14】
サッカロミケス(Saccharomycetaceae)科に属する、請求項13に記載の酵母細胞。
【請求項15】
請求項9~11のいずれか一項に記載のポリヌクレオチドによってコードされる、単離ポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを産生する方法であって、a)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1または16に示すアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む酵母細胞を用意する工程、b)ポリペプチドを産生できる条件で前記酵母細胞を培養する工程、c)工程b)で産生したポリペプチドを取得する工程を含む、方法に関する。本発明はさらに、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド、ならびに前記ポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドに関する。さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含む酵母細胞およびベクターにも関する。
【背景技術】
【0002】
β-ヘキソサミニダーゼ(EC3.2.1.52、本明細書では「b-Hex」と略記)は、N-アセチル-ベータ-ヘキソサミニド中の末端非還元性N-アセチルヘキソサミン残基の加水分解を触媒する酵素である。本酵素は、しばしばN-アセチル-ベータ-グルコサミニダーゼとも称される。N-アセチルグルコシドおよびN-アセチルガラクトシドが基質である。
【0003】
β-ヘキソサミニダーゼは、哺乳類では:アルファ鎖1本、ベータA鎖1本、およびベータB鎖1本からなる三量体(A型)、ベータA鎖2本およびβB鎖2本からなる四量体(B型)、ならびにアルファ鎖2本のホモ二量体(S型)の主要な3つの形態が見出されている。テイ・サックス病およびサンドホフ病等のいくつかの遺伝性障害は、ヒトb-Hex遺伝子の変異に起因することが知られている。
【0004】
グリコシダーゼは数十年前から糖鎖生物学研究のツールとして用いられ、糖タンパク質の成熟におけるその役割が研究されてきた(総説:非特許文献1)。
【0005】
現在、グリカン修飾に用いられているβ-ヘキソサミニダーゼ酵素製剤は、その天然源であるジャックビーン(カナバリア・エンシフォルミス(Canavalia ensiformis))から抽出されている。この酵素の基本的な説明および現在の抽出プロセスのベースは、Liら(非特許文献2)に見出すことができる。この酵素は、例えば、バイオフィルムの酵素的剥離を研究するために使用されている(非特許文献3)。
【0006】
しかし、この現在の抽出プロセスにはいくつかの欠点がある:
ジャックビーンは畑で栽培される植物であるため、天候、土壌等の条件によって再現性が非常に低くなるといったような自然システムの欠点を有する(Li(1970)を参照)。その結果、新たな二次代謝産物が発生する可能性があり、それが次いで産生プロセスに導入されると、最終的に薬剤物質が汚染され、患者の健康に計り知れない影響を及ぼす恐れもある。肥沃度を維持し、植物への損傷を避けるために農薬を使用すると、産物内に残留することがある。培養中、または保存中に土壌、植物、または豆に真菌または他の微生物汚染物質が存在することにより、少量でも非常に高い毒作用をもち得るアフラトキシン等の毒素が産物に混入し得る。
【0007】
B-Hexは、ジャックビーンにあまり多く含まれないタンパク質であり、これは自然条件下では植物がこの酵素を大量に必要としないためである。これは、豆材料の約1U/gという非常に小さな活性でしか存在しないため、抽出し、その後、多数および多量の混入タンパク質から分離、精製する必要がある。この困難な手順は、基質として使用する植物材料の必要性が高くなり、このプロセスを非常に高価なものにしている。
【0008】
1970年代初頭に記述されたb-Hexに関する数少ないデータ(前出のLiらを参照)を除いては、この酵素について知られていることは多くない。特に、タンパク質またはDNAの配列は公開で利用可能ではない。また、この酵素の詳細な構造的特徴も明らかにされていない。
【0009】
Gers-Barlagらは、ダイズからのβ-ヘキソサミニダーゼの単離を記載している(非特許文献4)。特許文献1は、ダイズ由来のβ-ヘキソサミニダーゼの配列を(配列番号162900として)開示している。ダイズβ-ヘキソサミニダーゼの配列は、UniProtを介して評価することもできる(NCBI Reference Sequence:XP_003518662.1に対応するアクセッション番号I1KTU6またはI1JDS6を参照のこと)。
【0010】
特許文献2は、イチゴからヘキソサミニダーゼ酵素を同定したことを記載している。
【0011】
Slamovaらは、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における真菌のb-N-アセチルヘキソサミニダーゼのクローニングおよび高収量発現を記載している(非特許文献5)。
【0012】
Strasserは、シロイヌナズナ属(Arabidopsis)(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana))ゲノムに存在する3つの推定b-Hex配列の異種発現について述べている(非特許文献6)。著者らは、発現にツマジロクサヨトウ(Spodoptera frugiperda)Sf21昆虫細胞系を使用した。また、著者らは、これらの植物酵素は、よく研究されているヒトb-Hex酵素であるHexAおよびHexBと30%程度の非常に限られた相同性しか持たないことも明らかにした。したがって、AkeboshiらがヒトHexAについて記載したメチル栄養酵母オガテア・ミヌタ(Ogataea minuta)における微生物発現が植物酵素に転位性でないことは驚くべきことではない(非特許文献7)。これは、著者らが、O.ミヌタ(minuta)由来の組換えHexAとヒトライソソーム由来のネイティブHexAとの間に、両生物間で異なる翻訳後処理に対応する2つの大きな相違点を記載していることから、特に真実である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許出願公開第2004/0031072号
【特許文献2】中国特許第109 971 736号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Leonard R,Strasser R,Altmann F.Plant glycosidases acting on protein-linked oligosaccharides.Phytochemistry.2009 Feb;70(3):318-24.doi:10.1016/j.phytochem.2009.01.006.Epub 2009 Feb 4.PMID:19200565
【非特許文献2】J.Biol.Chem.1970 245:5153-5160
【非特許文献3】J Med Microbiol.2006 Aug;55(Pt 8):999-1008
【非特許文献4】Phytochemistry,Volume 27,Issue 12,1988,Pages 3739-3741
【非特許文献5】Protein Expr Purif.2012 Mar;82(1):212-7.doi:10.1016/j.pep.2012.01.004.Epub 2012 Jan 11
【非特許文献6】Strasserら、Plant Physiol.2008 Jun;147(2):931
【非特許文献7】Akeboshiら、Appl Environ Microbiol.2007 Aug;73(15):4805-12
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本出願の基礎となる研究に関して、ジャックビーン(カナバリア・エンシフォルミス)から単離されたb-Hex酵素の詳細な分析が、そのタンパク質配列の可能な限り多くを決定するために実施された。これは、プロテアーゼ消化、エドマンシークエンス、およびLC-MS/MS分析を組み合わせることで行い、タンパク質の約40%の配列を網羅することができた(実施例2)。この結果を受けて、データベース検索により、見出された配列に有効に一致するもので利用可能なものがないことを確認することができた。見出された最も近い配列は、ダイズ(Glycine max)由来のb-Hexタンパク質に属することが明らかになった。さらに、ジャックビーンのb-Hex酵素をコードする全長cDNA配列を決定した(実施例3)。データベースで利用可能な配列とのアライメントにより、決定された配列と一致する公知の配列はなく、したがって、検出されたβ-ヘキソサミニダーゼポリペプチドは公知ではないと考えられる。
【0016】
好都合なことに、β-ヘキソサミニダーゼポリペプチドを微生物系、すなわちコマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)(ピキア・パストリスと呼ばれる場合もある)において発現させることが可能であった。生成したコマガタエラ・ファフィ株を含む培養上清は、有意な量のb-Hex活性を示した(実施例4)。100U/mL超の培養が達成できることが示された。さらに、培養上清には、主要な量の混入タンパク質が含まれていなかった。これにより、簡便な再現性のあるタンパク質精製プロセスが可能となる。
【0017】
Swennen(2002)により記載されたクルイベロミセス・ラクティス(Klyveromyces lactis)発現系を第2の例として選択した。生物学的に活性なb-Hexがそれぞれの酵母培養物から見つかったため、b-Hexの組換え発現はこの酵母系でも成功した。
【0018】
ジャックビーン由来のb-Hex酵素は、見出されたDNA配列をタンパク質配列に翻訳することによって予想されるように、単一のポリペプチド鎖で存在しないことが示された。むしろ、2本のポリペプチド鎖が、共有結合せずに互いに会合していることが見出された。この2本の鎖が解離すると、活性が完全に失われる。したがって、同定されたb-Hex酵素が、このような2本の鎖への分裂を再現し、同時にこの2つの鎖が正しい構造で会合していることを確実にするとは予想されなかったので、組換え微生物発現によって活性酵素が得られたことは驚くべきことであった。
【課題を解決するための手段】
【0019】
したがって、本発明は、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを産生する方法であって:
a)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を用意する工程、
b)ポリペプチドの産生を可能にする条件下で前記宿主細胞を培養する工程、および
c)工程b)で生産されたポリペプチドを得る工程を含む、方法を提供する。
【0020】
本発明はさらに、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0021】
さらに本発明に包含されるのは、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる単離ポリペプチドである。
【0022】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。いくつかの実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。
【0023】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチド、本発明のポリペプチドおよび/または本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0024】
いくつかの実施形態において、本発明の宿主細胞は、酵母細胞または動物細胞である。例えば、宿主細胞は、コマガタエラ・ファフィ細胞のような、サッカロミケス(Saccharomycetaceae)科に属する酵母細胞であってもよい。
【0025】
いくつかの実施形態において、本発明のポリペプチドは、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも90%同一、例えば95%または98%同一であるアミノ酸配列を有する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドは、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0026】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号2に示される核酸配列を含む。いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、配列番号17に示される核酸配列を含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本発明のポリヌクレオチドは、異種プロモーターに作動可能に連結される。
【0028】
いくつかの実施形態において、本発明のポリヌクレオチドは、酵母細胞等の宿主細胞に対してコドン最適化されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
定義
上記のように、本発明は、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを産生する方法であって、
a)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞を用意する工程、
b)ポリペプチドの産生を可能にする条件下で前記宿主細胞を培養する工程、および
c)工程b)で産生されたポリペプチドを得る工程を含む、方法に関する。
【0030】
本発明の方法の工程a)において、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む宿主細胞が用意されるものとする。
【0031】
本明細書で使用する「ポリヌクレオチド」という用語は、直鎖状または環状の核酸分子を指す。これは、DNAならびにRNA分子を包含する。ポリヌクレオチドは、単離ポリヌクレオチド(すなわち、その天然の状況から単離された)または遺伝子組換え形態のいずれかとして供されるものとする。本明細書に記載のポリヌクレオチドは、上記で言及したようなポリペプチド、すなわち、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするものとすることを特徴とする。
【0032】
本明細書において、「ポリペプチド」および「タンパク質」という用語は互換的に使用され、ペプチド結合によって互いに連結された重合体状のアミノ酸を指す。
【0033】
本発明の方法によって産生されるポリペプチドは、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するものとする。
【0034】
本明細書において、β-ヘキソサミニダーゼ(EC 3.2.1.52)は、典型的には、N-アセチル-ベータ-ヘキソサミニドの末端非還元性N-アセチルヘキサミン残基の加水分解を触媒することができる酵素を指す。例えば、N-アセチルグルコシド、およびN-アセチルガラクトシドが基質である。ポリペプチドがβ-ヘキソサミニダーゼ活性を有するかどうかを評価するためのアッセイは、当技術分野で知られており、例えば、Li & Li(1970)J Biol Chem 245 5153に記載されており:これらは、以下の基質:p-ニトロフェニルβ-2-アセトアミド-2-デオキシ-p-グルコピラノシドおよびp-ニトロフェニルβ-2-アセトアミド-2-デオキシ-p-ガラクトピラノシドに対してb-ヘキソサミニダーゼ活性を示す。同義語は、β-ヘキソサミニダーゼ、β-(1-2,3,4,6)ヘキソサミニダーゼ;β-アセチルアミノ-デオキシヘキソシダーゼ、N-アセチル-β-D-ヘキソサミニダーゼ;N-アセチル-β-ヘキソアミニダーゼ;β-アセチルヘキソサミニダーゼ、β-D-N-アセチルヘキソサミニダーゼ;β-N-アセチル-D-ヘキソサミニダーゼ、β-N-アセチルグルコサミニダーゼ、N-アセチルヘキソサミニダーゼおよびβ-D-ヘキソサミニダーゼである。
【0035】
いくつかの実施形態において、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドは、ホモ二量体を形成する。
【0036】
いくつかの実施形態において、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドは、異種性ポリヌクレオチドから、すなわち、一過性に、例えば、発現ベクターを用いることによって、または宿主細胞に安定的に導入されたポリヌクレオチドから発現する。本明細書で使用される用語「異種性」は、ポリヌクレオチドが宿主細胞において天然に存在しないことを意味する。したがって、この用語は、異なる生物に由来する修飾もしくは非修飾のポリヌクレオチド、または宿主細胞に由来する修飾ポリヌクレオチドを包含する。異種性ポリヌクレオチドが、宿主細胞での発現を可能にする発現制御配列、または異種性ポリヌクレオチドの発現が宿主細胞の内因性発現制御配列に支配される宿主細胞のゲノム内の遺伝子座での異種性ポリヌクレオチドの統合を可能にする配列を含み得ることは理解されよう。異種性ポリヌクレオチドを導入することにより、トランスジェニック宿主細胞が生成される。
【0037】
β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドの導入は、前記ポリペプチドをコードする異種性ポリヌクレオチドを宿主細胞に導入することにより達成され得る。本明細書における「導入」または「形質転換」という用語は、移入に使用される方法にかかわらず、本明細書に記載のポリヌクレオチドを宿主細胞に移入することを包含する。これには、発現ベクターにおける一過性の導入または宿主細胞のゲノムへの安定的な統合が含まれる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、宿主細胞のゲノムに安定的に導入される。
【0038】
したがって、本発明の方法の工程a)は:
a1)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを宿主細胞に導入する工程;および
a2)前記ポリヌクレオチドから前記ポリペプチドを発現させる工程を含み得る。
【0039】
用語「発現」または「遺伝子発現」は、特定の遺伝子(複数可)または特定の遺伝子構築物の転写を意味する。特に、「発現」または「遺伝子発現」という用語は、遺伝子(複数可)または遺伝的構築物の構造mRNAへの転写と、その後の後者の本明細書におけるポリペプチドへの翻訳を意味する。このプロセスには、DNAの転写および得られたmRNA産物のプロセシングが含まれる。
【0040】
上記のように、本発明のポリヌクレオチドによってコードされるポリペプチドは、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するものとする。さらに、それは、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%または100%同一であるアミノ酸配列を有するものとする。
【0041】
いくつかの実施形態において、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一、例えば少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を有する。
【0042】
いくつかの実施形態において、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドは、配列番号16に示されるアミノ酸配列を含む。
【0043】
配列番号16は、本発明の基礎となる研究において同定されたジャックビーン(カナバリア・エンシフォルミス)β-ヘキソサミニダーゼのアミノ酸配列である。その配列は以下の通りである:
MFLCIPRWFS SPLLILFVIY CALFAPQAAS ATLKSIIEPT ESLTYLWPLP
ADFTSGDETL SVDPALTLSV AGNGGGSSIL RDAFDRYRGI IFKHSSVGFS
LIRKLRERLV SVSAYDIATL KITVHSDNEE LQLGVDETYT LLVPKAKDSY
VAGEVTIEAN TVYGALRGLE TFSQLCSFDY SDKTIKIYKA PWSIQDKPRF
SYRGLLLDTS RHYLPINVIK QIIESMSYAK LNVLHWHIID EESFPLEVPT
YPNLWKGSYT KWERYTVEDA YEIVNFAKMR GINVMAEVDV PGHAESWGAG
YPNLWPSPSC REPLDVSKNF TFDVISGILT DIRKIFPFEL FHLGGDEVNT
DCWTSTSHVK EWLSTQNMTA KDAYEYFVLK AQEIAVSKNW SPVNWEETFN
TFPAKLHKKT VVHNWLGPGV CPKVVAKGFR CIFSNQGVWY LDHLDVPWDE
VYTAEPLEGI EKSSEQELVI GGEVCMWGET ADTSNVQQTI WPRAAAAAER
LWSQRDSTNI TVTALPRLQN FRCLLNKRGV AAAPVKNYYA RRAPSGPGSC
YEQ
【0044】
潜在的なリード配列(aa1~30)の配列には下線が引かれている。本発明の基礎となる研究において、ポリペプチドは、リーダー配列なしで発現された。配列番号1は、リーダー配列を有さないジャックビーン(カナバリア・エンシフォルミス)β-ヘキソサミニダーゼのアミノ酸配列である。したがって、配列番号1は、配列番号16のaa31~553を含む。配列番号1は、以下の通りである:
ATLKSIIEPT ESLTYLWPLP ADFTSGDETL SVDPALTLSV AGNGGGSSIL
RDAFDRYRGI IFKHSSVGFS LIRKLRERLV SVSAYDIATL KITVHSDNEE
LQLGVDETYT LLVPKAKDSY VAGEVTIEAN TVYGALRGLE TFSQLCSFDY
SDKTIKIYKA PWSIQDKPRF SYRGLLLDTS RHYLPINVIK QIIESMSYAK
LNVLHWHIID EESFPLEVPT YPNLWKGSYT KWERYTVEDA YEIVNFAKMR
GINVMAEVDV PGHAESWGAG YPNLWPSPSC REPLDVSKNF TFDVISGILT
DIRKIFPFEL FHLGGDEVNT DCWTSTSHVK EWLSTQNMTA KDAYEYFVLK
AQEIAVSKNW SPVNWEETFN TFPAKLHKKT VVHNWLGPGV CPKVVAKGFR
CIFSNQGVWY LDHLDVPWDE VYTAEPLEGI EKSSEQELVI GGEVCMWGET
ADTSNVQQTI WPRAAAAAER LWSQRDSTNI TVTALPRLQN FRCLLNKRGV
AAAPVKNYYA RRAPSGPGSC YEQ
【0045】
一実施形態において、配列番号1は、N末端においてメチオニン残基(M)をさらに含む。
【0046】
一実施形態において、上記ポリペプチドは、配列番号2に示される核酸配列を含むポリヌクレオチドによってコードされる:
gctactttgaagtccatcatcgagccaactgagtccttgacttacttgtggccattgccagctgactt cacttctggtgacgaaactttgtctgttgacccagctttgactttgtccgttgctggtaatggtggtggttcctccattt tgagagatgctttcgacagatacagaggtattatcttcaagcactcctccgttggattctctttgatcagaaagttgaga gagagattggtttccgtttccgcttacgacattgctactttgaagatcactgttcactccgacaacgaagagttgcagtt gggtgttgacgagacttacactttgttggttccaaaggctaaggactcctacgttgctggtgaggttactatcgaggcta acactgtttacggtgctttgagaggtttggagactttctcccagttgtgttccttcgactactctgacaagactatcaag atttacaaggctccttggtccatccaggacaagccaagattttcctacagaggtttgttgttggacacttccagacacta cttgccaatcaacgttatcaagcagatcatcgagtccatgtcctacgctaagttgaacgttttgcactggcacatcatcg acgaagagtctttcccattggaggttccaacttacccaaacttgtggaagggttcctacactaagtgggagagatacact gttgaggacgcttacgagatcgttaacttcgctaagatgagaggtattaacgttatggctgaggttgacgttccaggtca tgctgaatcttggggtgctggttatccaaatttgtggccatctccatcctgtagagagccattggacgtttccaagaact tcactttcgacgttatctccggaatcttgactgacatcagaaagatattcccattcgagttgttccacttgggaggtgac gaggttaatactgactgttggacttccacttcccacgttaaggaatggttgtccactcagaacatgactgctaaggatgc ttacgaatacttcgttttgaaggctcaagagatcgctgtttctaagaactggtcccctgttaactgggaagagactttca acactttcccagctaagttgcacaagaaaactgttgttcacaactggttgggtccaggtgtttgtccaaaggttgttgct aagggtttcagatgtatcttctccaaccagggtgtttggtacttggaccacttggatgttccttgggacgaggtttacac tgctgaaccattggaaggtatcgagaagtcctctgagcaagagttggttatcggtggtgaagtttgtatgtggggtgaga ctgctgacacttctaacgttcagcagactatctggccaagagccgcagctgctgctgaaagattgtggtcccaaagagac tccactaacatcactgttactgctttgccaagattgcagaacttcagatgtttgttgaacaagagaggtgttgctgctgc tccagttaagaactactacgctagaagagccccatccggtccaggttcttgttacgaacaa
【0047】
配列番号2は、5’末端の開始コドン(ATG)および3’末端の1つまたはそれ以上の終止コドンをさらに含んでもよい。
【0048】
宿主細胞におけるポリペプチドの発現時に、ポリペプチドはさらにプロセシングされてもよい。例えば、ポリペプチドは、2つのサブユニットにプロセシングされてもよく、ここで、第1のサブユニットは、配列番号16のアミノ酸35~100を含み、第2のサブユニットは、配列番号16のアミノ酸110~553を含む。第1のサブユニットの開始点と終了点、および第2のサブユニットの開始点は、わずかに異なっていてもよい。例えば、アミノ酸34~101を含むサブユニットも検出された。
【0049】
さらに、ポリペプチドは、ヘキソシル化および/またはグリコシル化されていてもよい。例えば、第1のサブユニットは、ヘキソシル化されていてもよい。
【0050】
一実施形態では、配列番号16に示す配列を有するポリペプチドは、配列番号17に示す配列を有するポリヌクレオチドによってコードされる。配列は、以下の通りである:
1 ATGTTTCTGT GCATACCCAG ATGGTTCTCT TCACCTCTTC TCATTCTCTT TGTCATTTAC
61 TGTGCCCTCT TTGCTCCTCA AGCTGCTTCT GCCACACTCA AATCTATCAT TGAACCCACT
121 GAGTCCCTCA CATACCTTTG GCCCCTCCCC GCAGACTTCA CTTCAGGCGA TGAAACTCTT
181 TCCGTTGACC CTGCACTTAC CCTCTCTGTC GCCGGCAACG GTGGTGGCTC TTCCATTCTC
241 AGAGATGCAT TTGACCGATA CAGAGGAATC ATATTCAAGC ACAGCAGTGT TGGGTTCAGT
301 CTCATAAGAA AGTTAAGGGA AAGATTGGTG TCTGTTTCTG CCTATGACAT TGCGACATTG
361 AAGATCACTG TCCATTCAGA TAACGAGGAG CTTCAACTTG GAGTGGATGA AACCTATACC
421 TTGCTGGTTC CCAAAGCCAA GGACTCTTAT GTTGCTGGGG AAGTCACAAT TGAGGCAAAC
481 ACTGTTTATG GTGCATTGCG CGGATTAGAG ACATTCAGCC AGTTGTGTTC TTTCGATTAT
541 TCGGATAAAA CAATAAAAAT ATACAAGGCA CCTTGGTCCA TCCAAGATAA ACCTAGATTT
601 TCCTATCGTG GGCTTTTGTT GGACACATCG AGGCACTATT TACCAATTAA CGTAATTAAG
661 CAGATTATTG AATCTATGTC CTATGCTAAA CTTAATGTTC TACATTGGCA CATCATAGAC
721 GAGGAGTCAT TTCCTCTTGA GGTACCTACA TATCCAAACT TGTGGAAAGG TTCATATACA
781 AAGTGGGAAC GTTACACGGT AGAAGACGCA TATGAAATTG TCAACTTCGC CAAAATGAGA
841 GGCATAAATG TGATGGCAGA AGTGGATGTT CCTGGTCATG CAGAATCATG GGGTGCTGGA
901 TATCCCAATC TTTGGCCGTC ACCTTCCTGT AGGGAGCCAC TGGATGTTTC AAAGAATTTT
961 ACTTTTGATG TCATTTCTGG TATCCTGACA GATATAAGAA AGATTTTCCC GTTTGAGCTA
1021 TTTCACTTGG GTGGTGATGA AGTTAATACA GATTGCTGGA CCAGTACTTC TCATGTGAAG
1081 GAATGGCTTT CGACTCAAAA CATGACTGCT AAAGATGCCT ATGAATATTT TGTACTGAAG
1141 GCCCAAGAGA TAGCTGTTTC AAAAAATTGG AGTCCGGTGA ACTGGGAAGA AACCTTCAAT
1201 ACATTTCCAG CAAAGCTCCA TAAGAAAACT GTGGTGCATA ACTGGTTGGG CCCTGGGGTT
1261 TGTCCAAAGG TTGTTGCAAA AGGTTTCAGG TGCATTTTCA GTAATCAGGG TGTCTGGTAT
1321 CTTGACCATC TGGATGTACC TTGGGATGAG GTCTATACTG CTGAGCCACT AGAAGGAATA
1381 GAAAAATCTT CTGAACAAGA GCTTGTAATT GGAGGAGAAG TTTGCATGTG GGGTGAGACA
1441 GCTGATACAT CCAATGTTCA GCAAACAATA TGGCCTAGAG CTGCTGCAGC TGCAGAACGC
1501 TTATGGAGTC AGAGAGATTC TACAAATATT ACTGTAACTG CGTTGCCCCG GTTACAAAAC
1561 TTCAGATGTC TATTGAATAA ACGTGGAGTT GCAGCTGCTC CTGTGAAAAA TTATTATGCT
1621 AGAAGGGCTC CTAGTGGTCC AGGCTCATGT TATGAGCAAT AA。
【0051】
一実施形態では、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ヒト細胞等の宿主細胞に対してコドン最適化されている。例えば、ポリヌクレオチドは、配列18に示される配列を含み得る:
1 GCCACACTGA AGTCCATCAT CGAGCCCACC GAGAGCCTGA CCTACCTGTG GCCTCTGCCC
61 GCCGATTTCA CCAGCGGCGA CGAGACACTG TCCGTGGATC CTGCCCTGAC ACTGAGCGTG
121 GCCGGAAATG GCGGCGGAAG CAGCATCCTG AGAGATGCCT TCGACCGGTA CAGAGGCATC
181 ATCTTCAAGC ACAGCAGCGT GGGCTTCAGC CTGATCCGGA AGCTGCGCGA GAGACTGGTG
241 TCCGTGTCCG CCTACGATAT CGCCACCCTG AAGATCACCG TGCACTCCGA CAACGAGGAA
301 CTGCAGCTGG GCGTGGACGA GACATACACC CTGCTGGTGC CCAAGGCCAA GGACAGCTAT
361 GTGGCCGGCG AAGTGACCAT CGAGGCCAAC ACAGTGTACG GCGCCCTGAG AGGCCTGGAA
421 ACCTTCAGCC AGCTGTGCAG CTTCGACTAC AGCGACAAGA CCATCAAGAT CTACAAGGCC
481 CCTTGGAGCA TCCAGGACAA GCCCCGGTTC AGCTACAGAG GCCTGCTGCT GGACACCAGC
541 AGACACTACC TGCCCATCAA CGTGATCAAG CAGATCATCG AGAGCATGAG CTACGCCAAG
601 CTGAACGTGC TGCACTGGCA CATCATCGAG GAGGAATCCT TCCCACTGGA AGTGCCCACC
661 TACCCCAACC TGTGGAAGGG CAGCTACACC AAGTGGGAGC GGTACACCGT GGAAGATGCC
721 TACGAGATCG TGAACTTCGC CAAGATGCGG GGCATCAATG TGATGGCCGA GGTGGACGTG
781 CCAGGCCACG CTGAATCTTG GGGAGCCGGC TACCCTAATC TGTGGCCCAG CCCCAGCTGT
841 CGCGAACCCC TGGACGTGTC CAAGAACTTC ACCTTCGACG TGATCAGCGG CATCCTGACC
901 GATATCAGAA AGATCTTCCC ATTCGAGCTG TTCCACCTGG GAGGCGACGA AGTGAACACC
961 GACTGCTGGA CCAGCACCAG CCACGTGAAA GAGTGGCTGA GCACCCAGAA CATGACCGCC
1021 AAGGACGCCT ACGAGTACTT CGTGCTGAAG GCCCAGGAAA TCGCCGTGTC TAAGAATTGG
1081 AGCCCCGTGA ACTGGGAGGA AACCTTTAAC ACCTTCCCTG CCAAACTGCA CAAGAAAACC
1141 GTGGTGCACA ATTGGCTGGG CCCTGGCGTG TGCCCTAAGG TGGTGGCCAA GGGCTTCCGC
1201 TGCATATTCA GCAACCAGGG CGTGTGGTAT CTGGACCACC TGGATGTGCC CTGGGACGAG
1261 GTGTACACAG CCGAGCCTCT GGAAGGCATC GAGAAGTCCT CCGAGCAGGA ACTCGTGATC
1321 GGCGGAGAAG TGTGCATGTG GGGCGAGACA GCCGACACCT CCAACGTGCA GCAGACCATC
1381 TGGCCTAGAG CCGCCGCTGC CGCTGAAAGA CTGTGGTCCC AGAGAGACAG CACCAACATC
1441 ACCGTGACCG CCCTGCCCCG GCTGCAGAAC TTTAGATGCC TGCTGAACAA GCGGGGCGTG
1501 GCCGCTGCCC CCGTGAAGAA TTACTATGCC AGAAGGGCCC CCAGCGGCCC TGGCAGCTGT
1561 TATGAACAGT GA
【0052】
配列番号18に示される配列を含むポリヌクレオチドは、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードし、ポリペプチドは、配列番号1に示される配列を有する。
【0053】
参照ポリペプチド配列に関する「パーセント(%)アミノ酸配列同一性」は、配列をアライメントさせ、必要に応じてギャップを導入して最大パーセント配列同一性を達成した後、参照ポリペプチド配列のアミノ酸残基と同一である候補配列のアミノ酸残基のパーセント比率として定義される。いくつかの実施形態では、2つの配列の配列同一性の程度を決定するために、標準的なパラメータが適用される。例えば、同一性の程度は、比較ウィンドウに対して最適にアライメントされた2つの配列を比較することによって決定され、比較ウィンドウ内のアミノ酸配列の断片は、最適なアライメントのために参照配列(付加または欠失を含まない)と比較して付加または欠失(例えば、ギャップまたはオーバーハング)を含んでいてもよい。このパーセント比率は、両方の配列において同一のアミノ酸残基が生じる位置の数を決定して一致した位置の数を得、一致した位置の数を比較ウィンドウにおける位置の総数で割り、結果に100を乗じて配列同一性のパーセント比率を得ることによって算出される。比較のための配列の最適なアライメントは、Smith and Waterman Add APL.Math.2:482 (1981)の局所的な相同性アルゴリズム、Needleman and Wunsch J.Mol.Biol.48:443(1970)の相同性アライメントアルゴリズム、Pearson and Lipman Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)85:2444(1988)の類似性探索法、これらのアルゴリズムのコンピュータによる実装(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group(GCG),575 Science Dr.,Madison,WlのGAP、BESTFIT、BLAST、PASTAおよびTFASTA)、または視覚検査によって実施し得る。いくつかの実施形態では、配列同一性の程度は、配列の全長にわたって決定される。2つの配列が比較のために同定されたことを考慮して、GAPおよびBESTFITは、好ましくは、それらの最適なアライメント、したがって、同一性の程度を決定するために使用される。好ましくは、ギャップウェイトについては5.00、ギャップウェイト長については0.30というデフォルト値が使用される。一実施形態において、2つのアミノ酸配列間のパーセント同一性は、EMBOSSソフトウェアパッケージのneedleプログラムに組み込まれている(EMBOSS:The European Molecular Biology Open Software Suite,Rice,P.,Longden,I.,and Bleasby,A.,Trends in Genetics 16(6),276-277,2000)Needleman and Wunschアルゴリズム(Needleman 1970,J.Mol.Biol.(48):444-453)、BLOSUM62スコア付けマトリクス、およびギャップ開ペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5を用いて決定される。needleプログラムを用いて2つのアミノ酸配列をアライメントさせるために使用されるパラメータの非限定的な例は、EBLOSUM62スコア付けマトリクス、ギャップ開ペナルティ10、およびギャップ拡張ペナルティ0.5を含むデフォルトパラメータである。
【0054】
本明細書で言及されるポリヌクレオチドは、本質的に前述の核酸配列からなっていても、または前述の核酸配列を含んでいてもよい。したがって、それらは、さらなる核酸配列も含むことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、異種性プロモーター等のプロモーターに作動可能に連結される。典型的には、プロモーターは、宿主細胞におけるコード配列セグメントの発現を媒介する調節エレメントを含む。
【0056】
一実施形態では、プロモーターは、構成的プロモーターである。代替の一実施形態では、プロモーターは誘導性プロモーターである。
【0057】
「プロモーター」または「プロモーター配列」は、遺伝子と同じ鎖上の遺伝子の上流に位置し、その遺伝子の転写を可能にするヌクレオチド配列である。プロモーターの後には、遺伝子の転写開始部位が続く。プロモーターは、RNAポリメラーゼによって(必要な転写因子とともに)認識され、転写が開始される。プロモーターの機能的断片または機能的バリアントは、RNAポリメラーゼによって認識可能であり、転写を開始することが可能なヌクレオチド配列である。
【0058】
「活性プロモーター断片」、「活性プロモーターバリアント」、「機能的プロモーター断片」または「機能的プロモーターバリアント」は、プロモーターのヌクレオチド配列の断片またはバリアントを記載し、これは依然としてプロモーター活性を有する。
【0059】
プロモーターは、構成的プロモーターまたは他の細胞調節因子の制御下にあるプロモーターを含む「インデューサー依存性プロモーター」または「インデューサー非依存性プロモーター」であってもよい。
【0060】
当技術分野の当業者は、目的のポリペプチドを発現させるために適切なプロモーターを選択することができる。例えば、目的のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、典型的には、「インデューサー依存性プロモーター」または「インデューサー非依存性プロモーター」に作動可能に連結される。さらに、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、典型的には、構成的プロモーター等の「インデューサー非依存プロモーター」に作動可能に連結される。
【0061】
「インデューサー依存性プロモーター」は、本明細書では、発酵培地に「インデューサー分子」を添加すると、プロモーターが作動可能に連結されている遺伝子の転写を可能にするためにその活性が上昇するプロモーターと理解される。したがって、インデューサー依存性プロモーターの場合、インデューサー分子の存在は、シグナル伝達を介して、プロモーターに作動可能に連結された遺伝子の発現の増加を引き起こす。
【0062】
一実施形態において、プロモーターは、CMVプロモーターである。例えば、HEK-293宿主細胞等の哺乳動物宿主細胞でβ-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを発現させる場合、CMVを使用し得る。
【0063】
他の実施形態では、プロモーターは、Tacプロモーターである。例えば、Tacプロモーターは、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを酵母宿主細胞、例えば本明細書で以下に開示される酵母細胞で発現させる場合に使用し得る。Tac-Promoter(Ptacと略記)は、trpオペロンとlacオペロンからのプロモーターの組合せから産生される、合成産生されるDNAプロモーターである。これは、タンパク質産生に一般的に使用される。
【0064】
一実施形態において、プロモーターは、アルコールオキシダーゼをコードするポリヌクレオチドのプロモーター、例えば、酵母AOX1(アルコールオキシダーゼ1)由来のプロモーターである。
【0065】
用語「作動可能に連結された」は、典型的には、プロモーター配列が目的の遺伝子の転写を開始することができるように、プロモーター配列と目的の遺伝子(すなわち、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド)の間の機能的連結を指す。
【0066】
さらに、本明細書で言及されるポリヌクレオチドは、ターミネーターに作動可能に連結されていてもよい。用語「ターミネーター」は、典型的には、一次転写物の3’プロセシングおよびポリアデニル化ならびに転写の終結をシグナル伝達する転写単位の末端のDNA配列である制御配列を包含する。
【0067】
本明細書で言及するポリヌクレオチドは、分泌リーダーをコードするポリヌクレオチド、すなわち本発明のβ-ヘキソサミニダーゼの培養培地への分泌を可能にする配列にさらに作動可能に連結されていてもよい。
【0068】
本発明の方法の工程a)において用意される宿主細胞は、適切と考えられる任意の宿主細胞であり得る。例えば、細菌細胞、例えば大腸菌細胞、酵母細胞、藻類細胞、または植物細胞からなる群から選択される宿主を挙げることができる。「宿主細胞」という用語は、非ヒト動物細胞等の動物細胞をさらに含む。
【0069】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、真核宿主細胞である。
【0070】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、酵母細胞である。
【0071】
いくつかの実施形態において、酵母細胞は、出芽によって生殖するサッカロミセス目の酵母の科であるサッカロミセス科に属する。いくつかの実施形態において、サッカロミセス科は、以下の属:カンジダ(Candida)属、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属、コマガタエラ(Komagataella)属、クライシア(Kuraishia)属、ラカンケア(Lachancea)属、ナカセオミセス(Nakaseomyces)属、ピキア(Pichia)属、サッカロミセス(Saccharomyces)属、スパタスポラ(Spathaspora)属、テトラピシスポラ(Tetrapisispora)属、ザイゴサッカロミセス(Zygosaccharomyces)属、およびザイゴトルラスポラ(Zygotorulaspora)属を含む。
【0072】
いくつかの実施形態において、酵母細胞は、クルイベロミセス(Kluyveromyces)属に属する。例えば、酵母細胞は、クルイベロミセス・ラクティス(Klyveromyces lactis)細胞であってもよい。
【0073】
いくつかの実施形態において、酵母細胞は、ピキア(Pichia)属に属する。例えば、酵母細胞は、ピキア・パストリス細胞であってもよい。
【0074】
いくつかの実施形態において、酵母細胞は、コマガタエラ(Komagataella)属に属する。例えば、酵母細胞は、コマガタエラ・ファフィ細胞、例えば、コマガタエラ・ファフィ株ATCC 76273の細胞であってもよい。この株に関するより詳細な情報は、UniProtデータベースで見ることができる(Taxon Identifier 981350を参照)。
【0075】
いくつかの実施形態において、宿主細胞は、カナバリア・エンシフォルミス細胞ではない。
【0076】
いくつかの実施形態では、宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。好適な哺乳動物細胞としては、例えば、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、BHK細胞、HeLa細胞、COS細胞、HEK-293等が挙げられるが、これらに限定されない。一実施形態では、HEK-293細胞が使用される。他の実施形態では、CHO細胞が使用される。
【0077】
本発明の方法の工程b)は、産生、すなわちβ-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドの産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することを含む。このような条件は、当技術分野で周知であり、例えば、実施例の項に記載されている。
【0078】
本発明の方法は、工程b)で産生されたポリペプチドを得る工程c)をさらに含み得る。前記ポリペプチドは、当技術分野で公知の方法によって培養培地から得るものとする。
【0079】
本発明はさらに、本発明の方法に関連して上記本明細書で定義されるポリヌクレオチド、すなわち、β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも85%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドに関する。
【0080】
本発明によってさらに包含されるのは、本発明のポリヌクレオチドによってコードされる単離ポリペプチドである。このポリペプチドは、上記で定義されている。単離ポリペプチドは、ヘキソシル化および/またはグリコシル化されていてもよい。
【0081】
本発明はさらに、本発明のポリヌクレオチド、本発明のポリペプチドおよび/または本発明のベクターを含む宿主細胞に関する。
【0082】
さらに、本発明は、本発明のポリヌクレオチドを含むベクターに関する。いくつかの実施形態において、ベクターは、発現ベクターである。
【0083】
「ベクター」という用語は、典型的には、ファージ、プラスミド、ウイルスまたはレトロウイルスベクター、ならびに細菌または酵母の人工染色体等の人工染色体を包含する。さらに、この用語は、ゲノムDNAへの標的化構築物のランダムまたは部位指向性統合を可能にする標的化構築物にも関する。そのような標的構築物は、好ましくは、以下に詳細に説明するように、相同組換えまたは異種組換えのいずれかのために十分な長さのDNAを含む。本発明のポリヌクレオチドを包含するベクターは、好ましくは、宿主における増殖および/または選択のための選択可能マーカーをさらに含む。ベクターは、当技術分野で周知の様々な技術によって宿主細胞に組み込み得る。宿主細胞に導入される場合、ベクターは細胞質に存在しても、またはゲノムに組み込まれてもよい。後者の場合、ベクターは、相同組換えまたは異種挿入を可能にする核酸配列をさらに含み得る。ベクターは、従来の形質転換またはトランスフェクション技術によって原核細胞または真核細胞に導入することができる。用語「形質転換」および「トランスフェクション」、コンジュゲーションおよび形質導入は、現在の文脈で使用される場合、リン酸カルシウム、塩化ルビジウムまたは塩化カルシウム共沈、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポフェクション、自然コンピテンス、炭素ベースのクラスター、化学媒介移入、電気穿孔または粒子砲撃(例えば「遺伝子銃」)を含む、外来核酸(例えばDNA)を宿主細胞に導入するための先行技術の多数のプロセスを含むことを意図する。酵母細胞を含む宿主細胞の形質転換またはトランスフェクションのための適切な方法は、Sambrookら(Molecular Cloning:A Laboratory Manual,2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1989)および他の実験室マニュアル、例えばMethods in Molecular Biology,1995,Vol.44,Agrobacterium protocols,Ed.:Gartland and Davey,Humana Press,Totowa,New Jerseyに記載されている。あるいは、プラスミドベクターは、ヒートショックまたは電気穿孔技術によって導入し得る。
【0084】
いくつかの実施形態では、本明細書で言及されるベクターは、クローニングベクターとして好適である、すなわち、大腸菌または酵母細胞などの微生物系で複製可能である。
【0085】
さらに、本発明のベクターが発現ベクターであることが想定される。このような発現ベクターでは、ポリヌクレオチドは、宿主細胞での発現を可能にする上記のような発現カセットを含む。発現ベクターは、本発明のポリヌクレオチドに加えて、プロモーター(例えば、本明細書の他の箇所に記載されるプロモーター)等のさらなる調節エレメントも含み得る。好ましくは、発現ベクターはまた、遺伝子移入ベクターまたは標的化ベクターである。
【0086】
実施形態一覧
1.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドを産生する方法であって、
a)β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1または16に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む酵母細胞を用意する工程、
b)前記酵母細胞を、ポリペプチドの産生を可能にする条件下で培養する工程、および
c)工程b)で産生されたポリペプチドを得る工程を含む、方法。
2.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも98%同一であるアミノ酸配列を有する、実施形態1に記載の方法。
3.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、実施形態1および2に記載の方法。
4.酵母細胞が、サッカロミケス(Saccharomycetaceae)科に属する、実施形態1~3に記載の方法。
5.酵母細胞が、コマガタエラ・ファフィ(Komagataella phaffii)細胞、例えばコマガタエラ・ファフィ株ATCC 76273の細胞等のコマガタエラ(Komagataella)細胞である、実施形態4に記載の方法。
6.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、異種性プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態1~5のいずれか1つに記載の方法。
7.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチドが、酵母細胞に対してコドン最適化されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載の方法。
8.ポリヌクレオチドが、配列番号2または17に示される核酸配列を含む、実施形態1~7のいずれか1つに記載の方法。
9.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有し、配列番号1に示されるアミノ酸配列と少なくとも95%同一であるアミノ酸配列を有するポリペプチドをコードするポリヌクレオチド。
10.β-ヘキソサミニダーゼ活性を有するポリペプチドが、配列番号1に示されるアミノ酸配列を含む、実施形態9に記載のポリヌクレオチド。
11.ポリヌクレオチドが、異種性プロモーターに作動可能に連結されている、実施形態9に記載のポリヌクレオチド。
12.実施形態9~11のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドを含む、発現ベクターのようなベクター。
13.実施形態9~11のいずれか1つに記載のポリヌクレオチド、または実施形態12に記載のベクターを含む、酵母細胞。
14.酵母細胞が、サッカロミケス科に属する、実施形態13に記載の酵母細胞。
15.酵母細胞がコマガタエラ・ファフィである、実施形態14に記載の酵母細胞。
16.実施形態9~11のいずれか1つに記載のポリヌクレオチドによってコードされる単離ポリペプチド。
【0087】
以下の実施例は、単に本発明を説明するものである。これらは、何ら、保護範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【実施例
【0088】
実施例1:導入
本発明の基礎となる研究において、カナバリア・エンシフォルミス由来のβ-ヘキソサミニダーゼのmRNA配列およびタンパク質配列が決定された。まず、カナバリア・エンシフォルミス植物から抽出されたβ-ヘキソサミニダーゼタンパク質の一部の配列を、分取消化、MS/MSおよびN-末端配列決定により決定した。その後、3’および5’RACE(Rapid amplification of cDNA ends)によりcDNA配列を決定した。
【0089】
NCBIとKEGGのデータベース探索の結果、C.エンシフォルミス(ジャックビーン)の次に配列決定した近縁であるGlycine max(ダイズ)の4つのβ-ヘキソサミニダーゼのmRNA由来の配列が、以下のNCBI IDで得られた:
- 染色体2(1668nt);cDNA XM_003518614.2;タンパク質 XP_003518662.1
- 染色体10(1632nt);cDNA XM_003535730.2;タンパク質 XP_003535778.1
- 染色体18(1698nt);cDNA XM_003552624.2;タンパク質XP_003552672.1
- 染色体20(1641nt);cDNA XM_003555573.2;タンパク質 XP_003555621.1
【0090】
これらの配列は、プライマー設計および解明された配列との比較の基礎となった。
【0091】
実施例2:カナバリア・エンシフォルミス由来β-ヘキソサミニダーゼのタンパク質配列の一部の決定
カナバリア・エンシフォルミスから精製したβ-ヘキソサミニダーゼ(見かけの分子量は約55kDa)をLys-Cで消化し、得られたペプチドをHPLCで分離した。この後、画分を用いてエドマン分解を行った。
【0092】
100μlのβ-ヘキソサミニダーゼ(約77μg)を塩酸グアニジニウム(固体)29mgと共にボルテックスし、最終濃度を約3M GuaHClとした。1.5M Tris/HCI pH8.8 7μlを添加し、直後に再びボルテックスした。ストリップでpHを調べるために3μlを取り出した(約pH8.5)。残りの溶液は、-80℃で20分間変性させ、氷浴で衝撃冷却した。
【0093】
1バイアルのLys-C(5μg、Roche Cat.11047825001)を水50μlを用いて再構成した。この溶液5μl(0.5μg Lys-C)を衝撃冷却した溶液に添加し、再度ボルテックスし、32℃で3時間インキュベートした。95μlをWatersカラム(X-Select CSH C18 2.5μm 2,1x150 mm、カタログ186006727)を使用してフラクションコレクターを備えたAgilent 1200 HPLCに直接注入した。クロマトグラフィー分離の結果、ACN溶媒を約25%含む100~150μlの画分体積で鋭利なピークが得られた。36の画分が収集された(図示せず)。これらは直接MALDI-MSに使用し、ペプチド質量を決定した(例えば、エドマンサイクルの数を推定するため)。
【0094】
得られた画分のいくつかについて、標準的な条件下でApplied Biosystems Procise HTまたはShimadzu PPSQ-33Aシーケンサーのいずれかを使用して、N末端エドマン配列決定によりアミノ酸配列を決定することができた。各画分のサイクル数(=アミノ酸)は、MALDI-MS測定により推定した。
【0095】
画分のエドマン分解により、多数の配列が得られ、これらをClustalWを用いてアライメントした。合計で553個のアミノ酸のうち208個が同定された。de novo配列決定されたペプチドを、以下の実施例3に記載されるように同定された翻訳cDNA配列に重ね合わせた(図示せず)。この結果から、C.エンシフォルミスにおいて正しいcDNA配列が同定されたことが示される。
【0096】
実施例3:カナバリア・エンシフォルミス由来のβ-ヘキソサミニダーゼのcDNA配列の同定
ジャックビーン(C.エンシフォルミス)の種子を濡れた吸水性ティッシュの間でプラスチックトレイに入れ、室温の暗所で約48時間保管した(発芽のため)。その後、発芽した種子をさらに5~6日間、室温の明所で育成した。その後、小さな植物を基質としてバーミキュライト、3~6mmに入れ(深さ2~3cm)、室温で日当たりの良い窓際に置き、乾燥したら水を与えた。
【0097】
C.エンシフォルミスの発芽材料をメスでRNA抽出に使用できる部分に切断し(約200mgの植物材料)、50mlのプラスチックチューブに入れ、液体窒素で急速冷凍した。これを、芽、子葉、胚、および葉組織で行った。前記組織からのRNAの単離は、製造者の指示に従い行った(RNeasy Plant Mini Kit(Qiagen カタログ番号74903))。
【0098】
芽、子葉、胚、および葉それぞれについて、2つの逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。その後、芽、子葉、胚、および葉それぞれについて、2つの逆転写酵素反応のcDNAをプールした。
【0099】
その後、Phusion Hot Start II DNA Polymerase(Thermo Scientific、カタログ番号F-549L)と以下のプライマーを用いて、各cDNAの内部断片をPCRにより増幅した:
JB-01 CTCACCTACCTCTGGCCCCTTCCCGC(配列番号3)
JB-07 TTATTGGTCATAACATGACCCTGGACCAACAGG(配列番号4)
その後、増幅された断片をBig Dye(登録商標)Cycle Sequencing Terminator Kit(Applied Biosystems,USA)と以下のプライマーを用いてDNA配列解析に供した:
JB-01 CTCACCTACCTCTGGCCCCTTCCCGC(配列番号3)
JB-02 GAGGAGCTTCAATTTGGAGTGGATG(配列番号5)
JB-06 ATCAGCTGTCTCACCCCACATGCAAACTTCTC(配列番号6)
JB-07 TTATTGGTCATAACATGACCCTGGACCAACAGG(配列番号4)。
【0100】
約100 ngのPCR断片(または300 ngのプラスミドDNA)と10 pmolのプライマーをBig Dye(登録商標)Cycle Sequencing Terminator Kitで増幅し、DyeEX 2.0 Spin Kitで精製して配列決定した。キットおよび装置は、製造者の説明書に従って使用した。
その後、子葉組織から得たcDNAを用いて、3’RACEおよび5’RACEを行った。
以下のプライマーを使用した。
3’RACE用:
JB-08 AAGTTTGCATGTGGGGTGAGAC(配列番号7)
JB-09 GCAAACAATATGGCCTAGAGCTG(配列番号8)
CDSIII-short ATTCTAGAGGCCGAGGCGGCCGACATGT(配列番号9)
JB-08+CDSIII-shortとJB-09+CDSIII-shortの2つのPCRを行った。PCR断片は、JB-09プライマーを用いて配列決定した。
5’RACE用:
JB-10 AAGAGTCCTTGGCTTTGGGAAC(配列番号10)
Okib57-アダプター 5’-pGTAGGAATTCGGGTTGTAGGGAGGTCGACATTGCC-3’(配列番号11)
JB-01 CTCACCTACCTCTGGCCCCTTCCCGC(配列番号3)
JB-11 TCAATGTCGCAATGTCATAGGC(配列番号12)
JB-12 ATGAGACTGAACCCAACACTGC(配列番号13)
Okib58 5-GGCAATGTCGACCTCCCTACAAC-3’(配列番号14)
Okib59 5’-CTCCCTACAACCCGAATTCCTAC-3’(配列番号15)
【0101】
子葉については、特異的プライマーJB-10を用いて両転写酵素でcDNAを合成した。その後、両cDNAをプールした。Okib57-Adapterを新しく合成したcDNAにライゲーションした。プライマーJB-11とOkib58で1回、プライマーJB-12とOkib59で1回PCRを実施した。得られた断片をPCR-Blunt-ll-TOPOでサブクローニングし、上記のように配列を決定した。
【0102】
要約すると、カナバリア・エンシフォルミス由来のβ-ヘキソサミニダーゼのmRNA配列を得ることに成功した。mRNAは、異なる新鮮な発芽した植物材料から単離することができた。対応するcDNAを配列決定し、見出された配列は、β-ヘキソサミニダーゼ(精製β-ヘキソサミニダーゼ)のタンパク質配列の部分的解明によって確認した。
【0103】
実施例4:同定されたポリペプチドの組換え発現
カナバリア・エンシフォルミス由来のベータ-ヘキソサミニダーゼを、コマガタエラ・ファッフィ株ATCC 76273(CBS 7435とも呼ばれる)のAOX1プロモーターの制御下で組換え発現した。96ディープウェルプレートでのベータ-ヘキソサミニダーゼの組換え発現のために、形質転換プレートから個々のコロニーを選び、最適な培養培地を満たした96ウェルディーププレートの個々のウェルへ入れた。バイオマスを生成するための初期成長段階の後、最適化された液体混合物の添加によりAOX1プロモーターからの発現を誘導し、脱抑制発現が可能になった。最初の接種から合計108時間後、すべてのディープウェルプレートを遠心分離し、すべてのウェルの上清をその後の分析のためにストックマイクロタイタープレートに回収した。
【0104】
発酵スケールでのベータ-ヘキソサミニダーゼの組換え発現は、300mL振盪フラスコ中のYeast/Peptone I Glycerol培地50mLに産生株を接種し、28℃、110rpmで一晩振盪した(前培養1)。前培養物1より、OD600nmが約20になるように前培養物2(2L振盪フラスコ中Yeast/Peptone/Glycerol培地200mL)を接種した。前培養物2を28℃、220rpmで約8時間振盪した。炭素源としてグリセロールを含む400mLの規定培地(pH=5.5)を満たした2L発酵槽に、前培養物2からOD600nmが2.0になるように接種し、初期バッチ段階の培養温度は28℃とした。産生段階開始の1時間前に温度を24℃に下げ、残りのプロセスの間このレベルを維持し、pHは5.0に低下し、このレベルで維持した。酸素飽和度は全プロセスで30%に設定した(カスケード制御:攪拌機、流量、酸素補給)。攪拌は700~1200rpmで行い、流量(空気)は1.0~2.0L min-1を選択した。グリセロール供給バッチは、60%グリセロール溶液を6g/L hで全培養中に供給することにより行った。
【配列表】
2024501424000001.app
【国際調査報告】