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特表2024-501425眼炎症の有害作用を軽減するためのジフルプレドナート
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】眼炎症の有害作用を軽減するためのジフルプレドナート
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/573 20060101AFI20240104BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 27/12 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
A61K31/573
A61P27/02
A61P29/00
A61P27/12
A61K9/08
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533743
(86)(22)【出願日】2021-12-03
(85)【翻訳文提出日】2023-07-27
(86)【国際出願番号】 IB2021061289
(87)【国際公開番号】W WO2022118271
(87)【国際公開日】2022-06-09
(31)【優先権主張番号】202021052718
(32)【優先日】2020-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507310592
【氏名又は名称】サン・ファーマ・アドバンスド・リサーチ・カンパニー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【弁理士】
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【弁理士】
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【弁理士】
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【弁理士】
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【弁理士】
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】コパデ,アジャイ・ジェイシン
(72)【発明者】
【氏名】ハルダー,アリンダム
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB24
4C076CC10
4C076FF11
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA58
4C086NA14
4C086ZA33
(57)【要約】
本発明は、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液であって、ここで、水溶液は、0.02~0.04%w/vのジフルプレドナート及び水性ビヒクルを含み、ここで、水溶液は、油を含まず、ここで、水溶液は、7日間~21日間1日2回対象に投与される、水溶液と、当該水溶液を使用して、眼の炎症性障害に関連する有害作用を軽減することを必要とする対象における眼の炎症性障害に関連する有害作用を軽減する方法と、を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の前房の炎症を軽減する方法であって、眼科手術を受けた対象の眼に、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液を水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度で投与することを含み、
ここで、前記溶液は油を含まず、
ここで、前記溶液は1日2回投与され、
ここで、前記対象はレスキュー治療を受けておらず、そして
ここで、前記治療後、前記対象は、投与15日後の眼科手術後の前房内細胞(anterior chamber cell:ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(visual analog scale:VAS)の疼痛スコア0を有する、
眼の前房の炎症を軽減する方法。
【請求項2】
前記眼科手術が白内障手術である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前房内細胞(ACC)グレード0の達成を必要とする対象においてACCグレード0を達成する方法であって、該方法は、水性ビヒクル中、唯一の有効成分としてジフルプレドナートを0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を前記対象の眼に投与することを含み、
ここで、前記溶液は油を含まず、
ここで、前記溶液は7~21日間1日2回投与され、そして
ここで、前記対象がレスキュー治療を受けていない、
ACCグレード0を達成する方法。
【請求項4】
ACCグレード0の達成を必要とする前記対象が、眼科手術を受けたことがある、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で0の疼痛スコアの達成を必要とする対象においてVASで0の疼痛スコアを達成する方法であって、該方法は、水性ビヒクル中、唯一の有効成分としてジフルプレドナートを0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を前記対象の眼に投与することを含み、
ここで、前記溶液は油を含まず、
ここで、前記溶液は7~21日間1日2回投与され、そして
ここで、前記対象がレスキュー治療を受けていない、
VASで0の疼痛スコアを達成する方法。
【請求項6】
VASで0の疼痛スコアの達成を必要とする前記対象が、眼科手術を受けたことがある、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
眼の炎症性障害の治療方法であって、それを必要とする患者の眼に、水性ビヒクル中ジフルプレドナートを唯一の有効成分として0.02~0.04%w/vの濃度で含む水溶液を投与することを含み、ここで、前記溶液が油を含まず、そしてここで、前記溶液が14日間1日2回投与され、ここで、前記患者がレスキュー治療を受けておらず、前記治療後に、前記患者の前房内細胞グレードが0である、眼の炎症性障害の治療方法。
【請求項8】
前記眼の炎症性障害が、眼科手術に関連する疼痛及び炎症である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記眼科手術が白内障手術である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記ジフルプレドナートが0.04%重量/体積の濃度で存在する、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記方法が、眼科手術後15日目にビジュアル・アナログ・スケールで0の疼痛スコアをもたらす、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
ビジュアル・アナログ・スケールでの前記疼痛スコアが、眼の疼痛及び不快感のスコアリング0~100に基づいて評価される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
眼科手術を受けたことがある対象の眼の前房の炎症の軽減に使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度でジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む、水溶液であって、
ここで、前記溶液は油を含まず、
ここで、前記溶液は1日2回投与され、
ここで、前記対象はレスキュー治療を受けておらず、そして
ここで、前記治療後、前記対象は、投与15日後の眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコア0を有する、
水溶液。
【請求項14】
前記眼科手術が白内障手術である、請求項13に記載の眼の前房の炎症の軽減に使用するための水溶液。
【請求項15】
前房内細胞(ACC)グレード0の達成を必要とする対象においてACCグレード0を達成するのに使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液であって、
ここで、前記溶液は油を含まず、
ここで、前記溶液は7~21日間1日2回投与され、そして
ここで、前記対象がレスキュー治療を受けていない、水溶液。
【請求項16】
ACCグレード0の達成を必要とする前記対象が、眼科手術を受けたことがある、請求項15に記載の眼の前房の炎症の軽減に使用するための水溶液。
【請求項17】
ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で0の疼痛スコアの達成を必要とする対象においてVASで0の疼痛スコアを達成するのに使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液であって、
ここで、前記溶液は油を含まず、
ここで、前記溶液は7~21日間1日2回投与され、そして
ここで、前記対象がレスキュー治療を受けていない、水溶液。
【請求項18】
前記対象が眼科手術を受けたことがある、請求項17に記載の眼の前房の炎症の軽減に使用するための水溶液。
【請求項19】
眼の炎症性障害の治療に使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%w/vの濃度で唯一の有効成分としてジフルプレドナートを含む水溶液であって、ここで、前記溶液が油を含まず、そしてここで、前記溶液が14日間1日2回投与され、ここで、前記患者がレスキュー治療を受けておらず、そして、前記治療後に前記患者の前房内細胞グレードが0である、水溶液。
【請求項20】
前記眼の炎症性障害が眼科手術に関連する疼痛及び炎症である、請求項19に記載の眼の炎症性障害の治療に使用するための水溶液。
【請求項21】
前記眼科手術が白内障手術である、請求項20に記載の眼の炎症性障害の治療に使用するための水溶液。
【請求項22】
前記ジフルプレドナートが0.04%重量/体積の濃度で存在する、請求項19に記載の眼の炎症性障害の治療に使用するための水溶液。
【請求項23】
前記治療が、眼科手術後15日目のビジュアル・アナログ・スケールで0の疼痛スコアをもたらす、請求項19に記載の眼の炎症性障害の治療に使用するための水溶液。
【請求項24】
ビジュアル・アナログ・スケールでの前記疼痛スコアが、眼の疼痛及び不快感のスコアリング0~100に基づいて評価される、請求項23に記載の眼の炎症性障害の治療に使用するための水溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、眼の炎症性障害の有害作用の軽減を必要とする対象において眼の炎症性障害の有害作用を軽減する方法に関し、該方法は、ジフルプレドナートの眼科水溶液を対象の眼に投与することを含む。
【背景技術】
【0002】
ジフルプレドナートは、下記式Iで表される抗炎症性コルチコステロイド薬である。
【0003】
【化1】
【0004】
ステロイド薬であるジフルプレドナートは、水性ビヒクルに実質的に不溶性である。ジフルプレドナートの現在市販されている製剤は、ジフルプレドナートのエマルジョン剤形であり、DUREZOL(登録商標)(Novartis,East Hanover,NJ)の商品名で米国で承認され市販されている。DUREZOL(登録商標)は、ヒマシ油と水との間で乳化された0.05%w/vのジフルプレドナートを含むジフルプレドナートの眼科用エマルジョン製剤である。透明な水溶液ではない。米国特許第6,114,319号明細書(以下、’319特許と称する)は、DUREZOL(登録商標)製品に対する”Orange Book:Approved Drug Products with Therapeutic Equivalence Evaluations”に収載されており、油及び乳化剤を含有するジフルプレドナートのエマルジョン製剤を記載している。DUREZOL(登録商標)エマルジョン製剤は、1日4回投与した場合の眼科手術及び内因性前部ブドウ膜炎に関連する炎症及び疼痛の治療に適応される。エマルジョンは1日に4回注入される必要があるため、患者のノンコンプライアンス及び用量を逃す可能性が高い。ジフルプレドナートの先行技術の製剤は、長期作用を提供しない。更に、DUREZOL(登録商標)に曝露された対象における最も一般的な有害反応(対象の5~10%に生じる)には、かすみ眼、眼刺激、眼痛、頭痛、TOPの増加、虹彩炎、角膜縁及び結膜充血並びに点状角膜炎が含まれることが報告されており、DUREZOL(登録商標)の承認ラベルにも記載されている。したがって、これらの副作用がなく、既存の欠点に対処するジフルプレドナートの製剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第6,114,319号明細書
【発明の概要】
【0006】
本開示は、治療有効濃度のジフルプレドナートと、結晶成長阻害剤と、i)四級アンモニウム化合物及びii)ポリエトキシル化ヒマシ油の混合物を含む薬学的に許容される量の水性ビヒクル中の可溶化剤と、を含む水溶液を提供し、ここで、結晶成長阻害剤はポリビニルアルコール又はその誘導体である。
【0007】
本開示は、別の態様において、眼の炎症性障害を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする人の眼に唯一の有効成分としてジフルプレドナートを約0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、そしてここで、溶液は1日2回投与され、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後に、対象は眼科手術後の前房内細胞(anterior chamber cell:ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(visual analog scale:VAS)の疼痛スコア0を有していた。
【0008】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼の炎症性障害に関連する有害作用の軽減を必要とする対象において眼の炎症性障害に関連する有害作用を軽減する方法を提供し、該方法は、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液を対象の眼に投与することを含み、ここで、水溶液は、0.02~0.04%w/vのジフルプレドナート及び水性ビヒクルを含み、ここで、水溶液は油を含まず、そしてここで、水溶液は、7~21日間にわたって1日2回対象に投与される。
【0009】
いくつかの実施形態では、本開示は、眼の炎症性障害に関連する有害作用の軽減を必要とする対象の集団において眼の炎症性障害に関連する有害作用を軽減する方法を提供し、該方法は、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液を対象の集団の眼に投与することを含み、ここで、水溶液は、0.02~0.04%w/vのジフルプレドナート及び水性ビヒクルを含み、ここで、水溶液は油を含まず、そしてここで、水溶液は、7~21日間にわたって1日2回対象の集団に投与される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で述べる「水溶液」は、水性ビヒクル中のジフルプレドナートの溶液であり、ここでジフルプレドナートは可溶化された形態であり、微粒子若しくはナノ粒子又はミセル形態のいずれかの微粒子形態ではない。
【0011】
本明細書で使用される「結晶成長阻害剤」という用語は、ジフルプレドナートが水性ビヒクルから沈殿又は結晶化するのを防ぐ追加の賦形剤を意味する。ジフルプレドナートの結晶成長の阻害効果についてのスクリーニングは、物理的観察によって、並びに製剤化の直後又は保存時に水溶液の透明度を決定することによって行われ得る。溶液は、90%を超える、例えば95%を超える透過率を示す。眼科溶液に光を透過させる場合、溶液を透過する入射光の割合を「パーセント透過」と呼ぶ。一般に、透過率は約650nmの波長で決定されるが、溶液の透明度を決定するために他の任意の適切な波長が選択されてもよい。本開示の水溶液は、90%を超える、例えば95%を超える、更には99%を超える透過率を示す。水溶液は透明のままであり、2℃~30℃の温度で6ヶ月以上の期間にわたる長期保存後、粒子、結晶又は沈殿物を含まない。
【0012】
本開示の水溶液は油を含まない。本明細書で使用される「油」という用語は、疎水性化合物である油を指す。「油」の例には、ヒマシ油、落花生油、ピーナッツ油、鉱油等のトリグリセリドが含まれるが、これらに限定されない。「油」という用語は、例えばポリエトキシル化ヒマシ油等の親水性実体で油を誘導体化することによって得られる両親媒性化合物又は界面活性剤を含まない。
【0013】
本開示の眼科水溶液は、治療有効濃度のジフルプレドナートと、結晶成長阻害剤と、i)四級アンモニウム化合物及びii)ポリエトキシル化ヒマシ油の混合物を含む薬学的に許容される量の水性ビヒクル中の可溶化剤と、を含み、ここで、結晶成長阻害剤はポリビニルアルコール又はその誘導体である。
【0014】
本開示に従って使用される眼科水溶液は、唯一の治療有効成分としてジフルプレドナートを含む。本明細書で使用される「ジフルプレドナート」という用語は、ジフルプレドナート中のヒドロキシル基が不安定なエステル又はアミドに変換されるジフルプレドナートのプロドラッグを含む。一実施形態において、本開示に係る眼科水溶液は、ポビドンヨード又はその他の有効成分を含まず、常に唯一の有効成分を含有する。ジフルプレドナートの濃度(%重量/体積)は、ジフルプレドナートベースで表される。これは、約0.005~0.07%重量/体積、例えば約0.02~0.045%重量/体積、例えば0.025、0.03、0.035、0.036、0.037、0.038、0.039、0.04、0.041、0.042、若しくは0.043%重量/体積、又は約0.02~0.04%重量/体積の範囲の濃度で存在する。
【0015】
本開示の眼科水溶液は、第四級アンモニウム化合物とポリエトキシル化ヒマシ油との混合物である可溶化剤を含む。個々の可溶化剤、すなわち第四級アンモニウム化合物単独又はポリエトキシル化ヒマシ油単独を使用した場合、ジフルプレドナートを可溶化する試みは成功せず、ジフルプレドナートは、直ちに又は貯蔵時に溶液から沈殿したことが見出された。驚くべきことに、これら2つのカテゴリの可溶化剤の混合物を使用した場合、透明な水溶液が得られ、すなわち、調製時又は保存時にジフルプレドナートの沈殿はなかった。
【0016】
第四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム、塩化ミリスチルガンマピコリニウム、塩化ベンゼトニウム、臭化ベンゾドデシニウム、塩化セタルコニウム、塩化セチルピリジニウム、セトリモニウム、臭化テトラエチルアンモニウム、ポリヘキサメチレンビグアニド、オレイルアミン等から選択されるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、第四級アンモニウム化合物は、塩化ベンザルコニウム及び塩化ミリスチルガンマピコリニウムから選択される。第四級アンモニウム化合物は、例えば0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06又は0.07%重量/体積のような、約0.0002~0.1%重量/体積、例えば約0.002~約0.08%重量/体積の範囲の量で眼科用溶液に使用される。特定の一実施形態によれば、第四級アンモニウム化合物は塩化ベンザルコニウムであり、約0.0002~0.08%重量/体積、例えば約0.0002~0.05%重量/体積、又は約0.005~0.05%重量/体積、例えば約0.01~0.03%重量/体積の範囲の量で眼科水溶液中に存在する。
【0017】
本開示による可溶化剤として使用されるポリエトキシル化ヒマシ油は、ポリオキシルヒマシ油又はポリオキシエチレンヒマシ油等の他の用語でも知られている。Cremophor(登録商標)、Acconon(登録商標)、Arlatone(登録商標)、Eumulgin(登録商標)、Etocas(登録商標)、Jeechem(登録商標)、Hetoxide(登録商標)、Nikkol(登録商標)、及びCroduret(登録商標)等の様々な商品名で販売されている。本開示の眼科水溶液に使用され得るポリエトキシル化ヒマシ油又はポリオキシエチレンヒマシ油誘導体は、”Handbook of Pharmaceutical Excipients”,fifth edition,2006,page 572-578に記載されている。いくつかの実施形態では、本開示の眼科水溶液は、BASF Corp.によって商品名Cremophor(登録商標)ELで市販されているポリオキシル35ヒマシ油、商品名Croduret(登録商標)40又はEtocas(登録商標)40で市販されているポリオキシル40ヒマシ油、商品名Jeechem(登録商標)CA-60で市販されているポリオキシル60ヒマシ油、商品名Jeechem(登録商標)CA-15又はAcconon(登録商標)CA-15で市販されているポリオキシル15ヒマシ油を含む。いくつかの実施形態では、ポリエトキシル化ヒマシ油は、薬学的に許容される量で本開示の眼科水溶液に使用される。いくつかの実施形態では、ポリエトキシル化ヒマシ油の薬学的に許容される量は、約1.0~10.0%重量/体積の範囲である。いくつかの実施形態では、ポリエトキシル化ヒマシ油は、眼科水溶液中に、約1.5~6.0%w/vの範囲の量、例えば溶液の2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、又は5.5%重量/体積等の量で存在する。特定の一実施形態によれば、「ポリエトキシル化ヒマシ油」は、ポリオキシル35ヒマシ油であり、約3.0~6.0%w/vの範囲の薬学的に許容される量で眼科水溶液中に存在する。
【0018】
水溶液中に存在する結晶成長阻害剤は、ポリビニルアルコール又はその誘導体である。結晶成長阻害剤の存在なしでは、ジフルプレドナートは水性ビヒクル中に可溶化された形態で残存せず、放置/貯蔵時に沈殿する。ポリビニルアルコールの誘導体としては、ポリビニルアルコール-ポリエチレングリコールグラフトコポリマー(商品名Kollicoat(登録商標)で販売されている)、ポリ(ビニルアルコールコエチレン)、ポリスチレン-ポリビニルアルコールグラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-ポリビニルピロリドングラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-乳酸グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-カラギーナン-グラフトコポリマー、ポリビニルアルコール-ポリエーテルグラフトコポリマー等及びこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。特定の一実施形態では、結晶成長阻害剤はポリビニルアルコールである。一実施形態では、結晶成長阻害剤は、溶液の約0.1~5.0%重量/体積、例えば約0.5~3.0%重量/体積、例えば0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.2、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8又は2.9%重量/体積の範囲である。別の実施形態では、結晶成長阻害剤の量は、約1~約2%重量/体積の範囲である。
【0019】
本開示の水溶液は、界面活性剤、増粘剤、保存剤、キレート剤、共溶媒、緩衝剤等の他の従来の賦形剤を更に含んでもよい。
【0020】
本開示で使用される界面活性剤は、非イオン性、アニオン性、及びカチオン性界面活性剤の混合物を含む。非イオン性界面活性剤は、ポリエトキシル化ヒマシ油、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル及びポリオキシエチレンオレイルエーテル等のアルキルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル及びポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレンステアレート及びポリオキシエチレンオレエート等のアルキルエステル;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンオレイルアミノエーテル、ポリオキシエチレン大豆アミノエーテル及びポリオキシエチレン牛脂アミノエーテル等のアルキルアミン;ポリオキシエチレンラウリルアミド、ポリオキシエチレンステアリン酸アミド及びポリオキシエチレンオレイン酸アミド等のアルキルアミド類;ポリオキシエチレンナタネ油エーテル等の植物油エーテル;ラウリン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド及びオレイン酸ジエタノールアミド等のアルカノールアミド;並びにポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート等のソルビタンエステルエーテルから選択される。いくつかの実施形態において、界面活性剤は、ポリエトキシル化ヒマシ油である。1つ以上の実施形態において、非イオン性界面活性剤の量は、約1.5~約6.0%重量/体積の範囲である。
【0021】
アニオン性界面活性剤は、アシルサルコシン又はサルコシナートから選択される。
【0022】
本開示によるアシル化アミノ酸は、天然アミノ酸のN-アシル脂肪酸誘導体である。これらは一般に本質的にアニオン性であり、水に可溶である。眼科用溶液に使用されるアシル化アミノ酸は、アシルサルコシン又はサルコシネート、アシルグルタメート、アシルグリシネート、アシルアスパルテート、アシルタウレート、アシルマロネート又はアシルアミノマロネート、それらの塩又はそれらの混合物からなる群から選択されるが、これらに限定されない。一般に、塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、トリエタノールアミン塩等が挙げられる。
【0023】
アシルサルコシン及びそれらの塩は、以下に示す式IIによって表され、
【0024】
【化2】
式中、RはC~C21炭素原子を有する脂肪酸基であり、
Xは、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩、アミン塩、トリエタノールアミン塩等の塩を表す。
【0025】
アシルサルコシンの非限定的な例としては、N-ラウロイルサルコシン、N-オレオイルサルコシン、N-ステアロイルサルコシン、N-ミリストイルサルコシン、N-ココイルサルコシン又はそれらの塩、例えばN-ラウロイルサルコシンナトリウム又はN-ラウロイルサルコシンナトリウム、N-ラウロイルサルコシンカリウム又はN-ラウロイルサルコシンカリウム、N-オレオイルサルコシン酸ナトリウム、N-ステアロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストイルサルコシン酸ナトリウム、N-コイルサルコシン酸ナトリウム、ココイルサルコシン酸アンモニウム、ラウロイルサルコシン酸アンモニウム等、又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0026】
アシルグルタメートの非限定的な例としては、N-ラウロイルグルタメート、N-オレオイルグルタメート、N-ステアロイルグルタメート、N-ミリストイルグルタメート又はその塩、例えばモノ-ナトリウムN-ラウロイルグルタメート、N-ラウロイルグルタミン酸カリウム又はそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。
【0027】
N-アシルグリシネートの非限定的な例としては、N-ラウロイルグリシネート、N-オレオイルグリシネート、N-ステアロイルグリシネート、N-ミリストイルグリシネート又はそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。N-アシルアスパルタートの非限定的な例としては、N-ラウロイルアスパルタート、N-オレオイルアスパルタート、N-ステアロイルアスパルタート、N-ミリストイルアスパルタート又はそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。N-アシルタウレートの非限定的な例としては、N-ラウロイルタウレート、N-オレオイルタウレート、N-ステアロイルタウレート、N-ミリストイルタウレート、N-メチルアシルタウレート又はそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。アシルアミノマロネートの非限定的な例としては、N-ラウロイルアミノマロネート、N-オレオイルアミノマロネート、N-ステアロイルアミノマロネート、N-ミリストイルアミノマロネート又はそれらの塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0028】
いくつかの実施形態では、アシル化アミノ酸は、サルコシン化合物、すなわちN-アシルサルコシン又はその塩、例えばN-ラウロイルサルコシン又はその塩である。特定の実施形態では、アシル化アミノ酸は、以下の式IIIの化合物によって表されるN-ラウロイルサルコシンのナトリウム塩、すなわちN-ラウロイルサルコシンナトリウム又はN-ラウロイルサルコシン酸ナトリウムである。
【0029】
【化3】
【0030】
別の実施形態において、アシル化アミノ酸は、N-ラウロイルグルタメートのナトリウム塩、すなわち、N-ラウロイルグルタメートモノナトリウムである。
【0031】
使用され得る他のアニオン性界面活性剤としては、限定されないが、ラクチレート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルスルファート、ポリオキシエチレンアルキルスルファート、脂肪族α-スルホメチルエステル、α-オレフィンスルホン酸、ラウリル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、n-アシル化ポリペプチドn-ラウリルサルコシン酸ナトリウム及びラウリル硫酸トリエタノールアンモニウムのトリエタノールアミン塩、並びにナフチレンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、アニオン性界面活性剤は、N-ラウロイルサルコシンである。1つ以上の実施形態において、アニオン性界面活性剤の量は、約0.01~0.1%w/v、例えば、約0.03~0.06%w/v、例えば、0.03、0.035、0.04、0.045、0.05、0.055、0.06%w/vの範囲である。
【0033】
カチオン性界面活性剤は、第一級、第二級及び第三級の高度にカチオン化可能な及び第四級アミンから選択される。より特定の実施形態では、カチオン性界面活性剤は、オレイルアミン、ステアリルアミン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム、臭化セチルチリジニウム、臭化ドデシルトリメチルアンモニウム、臭化トリメチルテトラデシルアモニウム、臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウム及びポロキサミン(例えば、Tetronic(商標))又はそれらの混合物から選択される。いくつかの実施形態では、カチオン性界面活性剤は塩化ベンザルコニウムである。1つ以上の実施形態において、カチオン性界面活性剤の量は、約0.002~約0.3%重量/体積の範囲である。
【0034】
いくつかの実施形態では、界面活性剤系は、ポリエトキシル化ヒマシ油、N-ラウロイルサルコシン及び塩化ベンザルコニウムの混合物を含む。非イオン性界面活性剤形態、カチオン性界面活性剤形態及びアニオン性界面活性剤形態の混合物は、水不溶性ジフルプレドナートが可溶化されるミセル系において混合され得る。
【0035】
第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム)又はポリエトキシル化ヒマシ油(Cremophor(登録商標))又はアシル化アミノ(N-ラウロイルサルコシン)等の化合物のいずれも存在しないことは、製剤の可溶化、安定化及び保存効力等の機能的特性を変化させる可能性がある。
【0036】
使用することができる増粘剤には、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、デキストラン、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、デンプン、ヒアルロン酸ナトリウム、カルボポール、ポリビニルピロリドン等、又はそれらの混合物が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、増粘剤はカルボキシメチルセルロースである。適切には、いくつかの実施形態では、水溶液は、高分子量を有するポリカルボフィル及びキトサン等の増粘剤を含有しない。本開示による水溶液の粘度は、一般に、約1cps~2000cps、例えば約2cps~1000cps、約1cps~300cps、又は約2cps~200cpsの範囲である。いくつかの実施形態では、眼科水溶液の粘度は、約2cps~30cpsである。一実施形態では、本開示は、治療有効量のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含み、2cps~200cpsの粘度を有する眼科水溶液であって、1日2回投与した場合に眼の炎症性障害の治療に有効な水溶液を提供する。
【0037】
眼科水溶液は、特に剤形が単回投与ではなく複数回投与である場合、1つ又は複数の保存剤を更に含有してもよい。使用され得る保存剤には、ベンジルアルコール、セトリミド、クロルヘキシジン、クロロブタノール、水銀保存剤、例えば、硝酸フェニル水銀、酢酸フェニル水銀、チメロサール、フェニルエチルアルコール、Polyquad(登録商標)、安定化オキシ-クロロ錯体、安定化過酸化物及びペルボラート等が含まれるが、これらに限定されない。より安全な保存系及び保存効力増強剤、例えばエデト酸二ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン又はそのナトリウム塩、ホウ酸、ボラート、ビグアニド、例えばポリヘキサメチレンビグアニド、ポリオキシアルキレンジアミンビグアニド又はその水溶性塩、1,1’-ヘキサメチレン-ビス-{5-(4-クロロフェニル)-ビグアニド};1,1’-ヘキサメチレン-ビス-{5-(4-フルオロフェニル)-ビグアニド};(N,N”-ビス(2-エチルヘキシル)-3,12-ジイミノ-2,4,11,13-テトラアザテトラデカンジイミドアミン;パラベン(例えば、メチル-プロピル、イソプロピル及びブチル-パラベン)、ピルベート、安定化オキシクロロ化合物、ソルビン酸/ソルビン酸カリウム、金属イオン、過酸化物、アミノ酸、例えばアルギニン、トロメタミン及びそれらの混合物を含むことも可能である。本開示の別の実施形態によれば、眼科水溶液は自己保存性であり得る。
【0038】
一実施形態では、眼科水溶液は、ビグアニド、ホウ酸、N-ラウロイルサルコシン又はそれらの混合物から選択される保存剤を使用する。一実施形態では、眼科水溶液は、約0.001~0.04%w/v、例えば約0.002~0.02%w/v、又は例えば0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01若しくは0.02%w/vの範囲の量のポリヘキサメチレンビグアニドを含む。一実施形態では、眼科水溶液は、約0.05~1.5%w/v、例えば約0.1~1.0%w/v、例えば0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8若しくは0.9%w/v、又は0.4~0.7%w/vの範囲の量のホウ酸を含む。一実施形態では、眼科水溶液は、約0.001~0.5%w/v、例えば0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、009、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4又は0.45%w/v、例えば約0.01~0.1%w/v又は0.02~0.05%w/vの範囲の量のN-ラウロイルサルコシンを含む。特定の一実施形態では、眼科水溶液は、保存剤としてポリヘキサメチレンビグアニド、ホウ酸及びN-ラウロイルサルコシンの混合物を含む。1つの具体的な実施形態において、塩化ベンザルコニウムを単独で使用した場合、溶液は効果的に保存されないことが見出され、これは保存効力試験の結果によって示された。ビグアニドを溶液に添加すると、溶液は効果的に保存されることが判明し、すなわち、溶液は欧州薬局方に規定されている保存効力試験に合格した。
【0039】
使用され得るキレート剤には、エデト酸二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸、エデト酸、エデト酸二ナトリウム二水和物、ジエチレントリアミン五酢酸等が含まれるが、これらに限定されない。好ましいキレート剤は、エチレンジアミン三酢酸又はエデト酸二ナトリウムである。一実施形態では、眼科水溶液は、約0.001~0.5%w/vの範囲の量、例えば0.002、0.003、0.004、0.005、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2、0.25、0.3、0.35、0.4又は0.45%w/v、例えば約0.01~0.1%w/vの量、又は0.03~0.07%w/vの量のエデト酸二ナトリウムを含む。
【0040】
使用され得るpH調整剤及び/又は緩衝剤は、酢酸、酢酸ナトリウム、酒石酸、酒石酸ナトリウム、クエン酸、クエン酸ナトリウム、塩酸、水酸化ナトリウム又はそれらの混合物から選択されるが、これらに限定されない。使用され得る浸透圧/張度調整剤としては、限定されないが、塩化ナトリウム、塩化カリウム、臭化ナトリウム、塩化カルシウム、マンニトール、グリセロール、ソルビトール、プロピレングリコール、デキストロース、スクロース、マンノース等及びそれらの混合物が挙げられる。これらの溶液は、250~375mOsm/kg、又は270~350mOsm/kg、例えば275、280、285、290、295、300、305、310、315、320、325、330、335、340又は345mOsm/kgの重量オスモル濃度を特徴とする。溶液の浸透圧は、浸透圧/張度調整剤の添加によって調整される。
【0041】
使用することができる共溶媒には、グリセロール又はグリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリコフロール等が含まれるが、これらに限定されない。共溶媒、例えばグリセロールは、本開示の眼科水溶液中に、約0.5%w/v~約5.0%w/v、例えば溶液の1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0又は4.5%w/v、例えば約1.0%w/v~約3.0%w/vの範囲の量で存在し得る。
【0042】
本開示の代表的な水溶液は、以下の組成物を含む:
【0043】
【表1】
【0044】
様々な態様によれば、本開示による眼科水溶液は、以下の組成物を含む:
【0045】
【表2】
【0046】
様々な態様によれば、本開示による眼科水溶液は、以下の組成物を含む:
【0047】
【表3】
【0048】
様々な態様によれば、本開示による眼科水溶液は、以下の組成物を含む:
【0049】
【表4】
【0050】
様々な態様による第1の眼科水溶液は、以下の組成物を含む:
【0051】
【表5】
【0052】
様々な態様による第2の眼科水溶液は、以下の組成物を含む:
【0053】
【表6】
【0054】
本開示は、別の態様において、眼の炎症性障害の治療方法を提供し、該方法は、それを必要とする対象の眼に、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として水性ビヒクル中0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、そしてここで、溶液は1日2回投与され、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後、対象は、眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコア0を有していた。
【0055】
眼の炎症性障害は、眼科手術及びブドウ膜炎に関連する疼痛及び炎症の1以上であり得る。特定の態様では、本開示は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする人の眼への1日2回の投与を含み、水溶液は、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含み、ここで、溶液は油を含まない。
【0056】
特に、本開示は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする人の眼への1日2回の投与を含み、水溶液は、水性ビヒクル中、0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含み、ここで、溶液は油を含まず、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後に、対象は眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコア0を有していた。
【0057】
したがって、本開示のいくつかの態様は、前房内細胞(ACC)グレード0の達成を必要とする対象においてACCグレード0を達成する方法を提供し、該方法は、水性ビヒクル中、唯一の有効成分としてジフルプレドナートを0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を対象の眼に投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は7~21日間1日2回投与され、そしてここで、対象がレスキュー治療を受けていない。特定の態様では、それを必要とする対象は眼科手術を受けたことがある。
【0058】
本開示の別の態様では、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で0の疼痛スコアの達成を必要とする対象においてVASで0の疼痛スコアを達成する方法であり、該方法は、水性ビヒクル中、唯一の有効成分としてジフルプレドナートを0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を対象の眼に投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は7~21日間1日2回投与され、そしてここで、対象がレスキュー治療を受けていない。特定の態様では、それを必要とする対象は眼科手術を受けたことがある。
【0059】
特定の実施形態では、本開示は、白内障手術に関連する疼痛及び炎症を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする人の眼への1日2回の投与を含み、水溶液は、水性ビヒクル中、0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含み、ここで、溶液は油を含まず、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後に、対象は眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコア0を有していた。
【0060】
本開示のいくつかの実施形態は、眼の前房の炎症を軽減する方法を含み、眼科手術を受けた対象の眼に、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液を水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度で投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は1日2回投与され、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後、対象は、投与15日後の眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレードが0であり、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコアが0である。特定の態様では、眼科手術は白内障手術である。
【0061】
本開示の別の実施形態は、眼の炎症性障害の治療方法であり、該方法は、それを必要とする患者の眼に、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液を水性ビヒクル中0.02~0.04%w/vの濃度で投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は14日間1日2回投与され、そしてここで、患者がレスキュー治療を受けておらず、治療後に、患者の前房内細胞グレードは0である。特定の態様では、眼の炎症性障害は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症であり、特に白内障手術に関連し得る。他の態様では、ジフルプレドナートは、0.04%重量/体積の濃度で存在する。更に他の態様では、該方法は、眼科手術後15日目にビジュアル・アナログ・スケールで0の疼痛スコアをもたらし、ビジュアル・アナログ・スケールでの疼痛スコアは、眼の疼痛及び不快感のスコアリング0~100に基づいて評価され得る。
【0062】
本開示の別の態様は、眼科手術を受けたことがある対象の眼の前房の炎症の軽減に使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度でジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液に関し、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は1日2回投与され、ここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、そしてここで、治療後、対象は、投与15日後の眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレードが0であり、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコアが0である。特定の態様では、眼の炎症性障害は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症であり、特に白内障手術に関連し得る。
【0063】
本開示の更に別の態様は、前房内細胞(ACC)グレード0の達成を必要とする対象においてACCグレード0を達成するのに使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液に関し、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は7~21日間1日2回投与され、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けていない。特定の態様では、眼の炎症性障害は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症であり、特に白内障手術に関連し得る。
【0064】
本開示の別の態様は、ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で0の疼痛スコアの達成を必要とする対象においてVASで0の疼痛スコアを達成するのに使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%重量/体積の濃度のジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液に関し、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は7~21日間1日2回投与され、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けていない。特定の態様では、眼の炎症性障害は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症であり、特に白内障手術に関連し得る。
【0065】
更に別の態様では、本開示は、眼の炎症性障害の治療に使用するための、水性ビヒクル中に0.02~0.04%w/vの濃度で唯一の有効成分としてジフルプレドナートを含む水溶液に関し、ここで、溶液は油を含まず、ここで、溶液は14日間1日2回投与され、そしてここで、患者はレスキュー治療を受けておらず、治療後に患者の前房内細胞グレードは0である。特定の態様では、眼の炎症性障害は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症であり、特に白内障手術に関連し得る。他の態様では、ジフルプレドナートは、0.04%重量/体積の濃度で存在する。更に他の態様では、方法は、眼科手術後15日目にビジュアル・アナログ・スケールで0の疼痛スコアをもたらし、ビジュアル・アナログ・スケールでの疼痛スコアは、眼の疼痛及び不快感のスコアリング0~100に基づいて評価され得る。
【0066】
一実施形態では、治療の有効性は、前房内細胞(ACC)の生体顕微鏡測定及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)を使用する各訪問時の対象の疼痛レベルの測定によって測定された。
【0067】
いくつかの実施形態では、本開示は、対象の集団における炎症性障害の有害作用を治療する方法を提供する。当業者が理解し得るように、いくつかの実施形態では、単一の対象に対する本明細書に記載の方法の効果は変化し得る。本出願人らは、本明細書に記載の方法が、対象の集団に使用される場合、炎症性障害に関連する有害作用の測定可能で一貫した減少を提供することを見出した。本開示は、眼の炎症性障害に関連する有害作用の軽減を必要とする対象の集団において眼の炎症性障害に関連する有害作用を軽減する方法を提供し、該方法は、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として含む水溶液を対象の集団の眼に投与することを含み、ここで、水溶液は、0.02~0.04%w/vのジフルプレドナート及び水性ビヒクルを含み、ここで、水溶液は油を含まず、そしてここで、水溶液は、7~21日間にわたって1日2回対象の集団に投与される。
【0068】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される開示される方法は、対象、例えばヒト対象、例えば女性ヒト対象又は男性ヒト対象における有害作用を軽減するためのものである。いくつかの実施形態において、対象は、乳児~12歳の対象である。いくつかの実施形態において、対象は、13歳~20歳の対象である。いくつかの実施形態では、対象は、20歳超、例えば20~30歳、30~40歳、40~50歳、又は50歳超である。いくつかの実施形態において、対象の集団はヒト対象の集団である。
【0069】
本明細書に記載の水溶液は、7日間を超えて、10日間を超えて、12日間を超えて、14日間を超えて、又は21日間を超えて1日2回投与され得る。いくつかの実施形態では、有害作用が緩和されるまで水溶液を1日2回投与することができる。いくつかの実施形態では、水溶液は、12~16日間、又は14日間のみ投与される。本開示は、わずか14日間の1日2回の投与が本明細書に記載の有害作用の適切な軽減を提供し得ることを実証する。したがって、いくつかの実施形態では、水溶液を14日間1日2回投与する。
【0070】
様々な投与形態が当技術分野で公知である。本開示は、本明細書に記載の現在の方法が、水溶液のより少ない投与、例えば、より少ない頻度の毎日の投与及び投与時間の短縮の必要性をもたらすことを提供する。いくつかの実施形態では、投与は点眼剤による眼への局所適用によるものである。いくつかの実施形態において、投与は眼への注射によるものである。
【0071】
前房内細胞(ACC):眼の前部の炎症は、血液-水性バリアの破壊を引き起こし、房水の細胞数及びタンパク質濃度の増加をもたらす。細隙灯生体顕微鏡検査による房水の検査は、前眼部炎症の重症度を評価するために使用される主要な方法である。
【0072】
細隙灯生体顕微鏡を、1×1mmの斜めの高強度ビームを用いて16倍の倍率で使用した。スリット照明を、照明のために利用可能な全ての制御においてその最高強度まで上げた。乳頭軸の中央角膜に焦点を合わせ、照明を前房水に保ち、白色細胞を焦点面でのみ計数した。次に、焦点を中央角膜に移動させ、前房水中で焦点を再び合わせて、第2のカウントを決定した。2つの細胞数を合計し、2で割って、平均最終ACC数を決定した。この最終細胞数を以下の記載に従ってグレードに変換した。平均化されたカウントが2等級の間にある場合、より高い等級が選択されるべきである(例えば、2つのカウントが10及び11である場合、10.5の平均はグレード2に入るであろう)。
【0073】
【表7】
【0074】
レスキュー治療:特定の適応症における臨床試験は、対象が治験治療に十分に応答しない場合、レスキュー治療の投与を必要とする。しかし、必要に応じて追加の治療を適用すると治験治療の効果が追加の治療によって混乱する可能性があるため、これらの研究の結果の分析及び解釈に問題が生じる。しかし、依然として、不十分な応答の場合には、単独で又は試験治療と組み合わせて、確立された薬物療法を受ける機会を対象に提供することが必要である。この追加の治療はレスキュー治療と呼ばれる。
【0075】
疼痛スコア:ビジュアル・アナログ・スケール(VAS)によって測定され、これは、可能な限り「痛みがない」及び「痛みが極端」等の極端な限界を定義するエンドポイントを有する直線からなる。対象は、スケールの側面のスライドを動かして記述的な顔の画像と位置合わせすることによって、眼における症状の感覚を不在から極端まで評価するように求められた。スケールを反対側に反転させ、関連する測定値を記録した。スケールは、100mm(10cm)の線(0=無し;100=最大)を使用した。
【0076】
驚くべきことに、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として0.03%重量/体積及び0.04%重量/体積の濃度で有する水溶液の1日2回の投与によって達成される抗炎症効果は、Durezol(登録商標)の商品名で入手可能であり、ジフルプレドナートを0.05%w/vの濃度で有する先行技術のエマルジョン製剤の1日4回の投与によって得られる抗炎症作用と同等であることが見出された。これは、先行技術の組成物が有意な量の油を含み、更にジフルプレドナートを0.05%重量/体積で含有し、0.04%w/vのジフルプレドナートを有する本開示の水溶液(これは1日に2回投与され、眼科水溶液は油を含まない)と比較して1日に4回注入されるので、実際に驚くべきことであり、予想外である。疎水性/油溶性であるジフルプレドナートは油相に留まると考えられ、したがって、水性ベースであり、最も重要なことには油を含まない組成物と比較して、エマルジョン型の組成物においてより良好な有効性を提供すると予想されるので、これは更に驚くべきことである。本発明者らによって見出された結果は、実際には確立された仮説に反する。
【0077】
本開示は、1日2回投与することができる眼の炎症性障害の治療に使用するためのジフルプレドナートの透明な水溶液製剤を提供し、溶液形態は、既存の先行技術の組成物又は市販されている製品と比較してより低い濃度のジフルプレドナートの使用を可能にするという追加の利点を伴う。
【0078】
本開示は、眼の炎症性障害の治療方法の顕著な改善を提供する。懸濁粒子を含まない水溶液の透明な性質、投与頻度の減少、及び薬物濃度の減少した使用の可能性、したがって眼の生物学的利用能の向上により、本方法は、対象のコンプライアンスを向上させるだけでなく、滴下時のかすみ眼、刺激、異物感等の不都合な副作用も回避する。
【0079】
一実施形態では、ジフルプレドナートの眼科水溶液は、対象の影響を受けた眼への1日2回の滴下による、眼科手術に関連する疼痛及び炎症の治療に有用である。別の実施形態では、本開示の眼科水溶液は、対象の罹患眼への1日2回の滴下による、白内障手術に関連する疼痛及び炎症の治療に有用である。
【0080】
本開示による眼科水溶液を投与することによって治療することができる眼の炎症性障害には、眼科手術に関連する疼痛及び炎症、ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、内因性前部ブドウ膜炎、慢性ブドウ膜炎、眼アレルギーに関連する炎症、眼瞼及び球結膜のステロイド応答性炎症状態、アレルギー性結膜炎等の眼球の角膜及び眼球前部、酒さ性ざ瘡、表在性点状角膜炎、並びに帯状疱疹角膜炎が含まれるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本開示による眼科水溶液は、虹彩炎又は前部ブドウ膜炎、虹彩毛様体炎及び脈絡膜炎、又は後部ブドウ膜炎、急性前部ブドウ膜炎、及び慢性ブドウ膜炎としても知られる脈絡網膜炎等の様々な形態のブドウ膜炎の治療に有用である。
【0081】
一実施形態では、本開示は、対象の影響を受けた眼への1日2回の点眼による眼科手術に関連する疼痛及び炎症を治療する方法を提供し、ジフルプレドナートを約0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む眼科水溶液を提供し、ここで、溶液は油を含まず、そしてここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後、対象は、眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコア0を有していた。
【0082】
一実施形態では、本開示は、眼の炎症性障害を治療する方法を提供し、該方法は、それを必要とする人の眼に、ジフルプレドナートを唯一の有効成分として約0.02~0.04%重量/体積の濃度で含む水溶液を投与することを含み、ここで、溶液は油を含まず、そしてここで、溶液は1日2回投与され、更に、水溶液は、結晶成長阻害剤と、第四級アンモニウム化合物及びポリエトキシル化ヒマシ油の混合物を含む薬学的に許容される量の可溶化剤と、を含む。結晶成長阻害剤はポリビニルピロリドン又はその誘導体であり、眼の炎症性障害は、眼科手術に関連する疼痛及び炎症であり、ここで、対象はレスキュー治療を受けておらず、治療後、対象は、眼科手術後の前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の疼痛スコア0を有していた。
【0083】
本開示の眼科水溶液は、ジフルプレドナートの眼バイオアベイラビリティを増強し、したがってその投与頻度を減少させることができる。市販されているジフルプレドナートのエマルジョン製品であるDUREZOL(登録商標)は1日に4回滴下されるのに対して、本開示の水溶液は、所望の治療効果を達成するために1日2回の注入しか必要としない。
【0084】
したがって、1つの実施形態において、本開示は、ジフルプレドナートの眼のバイオアベイラビリティを増強する方法を提供し、該方法は、ジフルプレドナートの眼科水溶液のそれを必要とする人の眼への1日2回の滴下を含む。
【0085】
一実施形態では、本開示は、ジフルプレドナートの眼バイオアベイラビリティを増強する方法を提供し、該方法は、それを必要とする人の眼への1日2回の点眼を含み、眼科水溶液は、水性ビヒクル中の、治療有効濃度のジフルプレドナートと、結晶成長阻害剤と、第四級アンモニウム化合物及びポリエトキシル化ヒマシ油の混合物を含む薬学的に許容される量の可溶化剤と、を含む。
【0086】
本開示の眼科水溶液は、ジフルプレドナートの眼バイオアベイラビリティを向上させ、所望の抗炎症効果を達成するために、市販のエマルジョン製品(DUREZOL(登録商標))に必要な1日4回の反復投与に対して、1日2回投与まで投与頻度を減少させる。
【0087】
[実施例]
本開示は上記で一般的に開示されているが、追加の態様は、以下の例を参照して更に説明及び例示される。しかしながら、実施例は、単に本開示を例示するために提示されており、本開示に対する限定とみなされるべきではない。
【0088】
[実施例1~4]
実施例は、本開示によるジフルプレドナートの眼科水溶液を記載する。
【0089】
表1:ジフルプレドナートの眼科水溶液
【表8】
【0090】
必要量の塩化ベンザルコニウム及びジフルプレドナートを容器に取り、ポリオキシル35ヒマシ油(Cremophor(登録商標))を加えた。ジフルプレドナートを、断続的な超音波処理及びボルテックスによって上記混合物に可溶化して、薬物再濃縮物を形成した。
【0091】
必要量のポリビニルアルコールを70℃~80℃で注射用水に溶解させた。他の成分、すなわちホウ酸、N-ラウリルサルコシン、グリセリン、エデト酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム及び酢酸を注射用水の一部に別々に溶解した。
【0092】
この相をポリビニルアルコール溶液に撹拌しながら添加した。薬物プレ濃縮物を上記混合物に添加し、磁気撹拌器で混合することによって溶解して溶液(i)を得た。実施例4の場合、追加の工程に続き、必要量のポリヘキサメチレンビグアニドを溶液(i)に添加した。実施例3の場合、追加の工程に続き、水の一部と予め混合したカルボキシメチルセルロースを撹拌しながら上記で得られた溶液(i)に添加した。続いて、注射用水を用いて体積補正を行った。溶液を0.2μmフィルターで濾過した。得られたジフルプレドナートの眼科水溶液(実施例1~4)は、約5.0~6.0のpH、約300mOsm/kgの重量オスモル濃度及び約99%の透過率を有していた。実施例1、2及び4の眼科水溶液の粘度は約4~5cpsであり、実施例3の眼科水溶液の粘度は約20cpsであった。
【0093】
製剤の物理化学的安定性を、室温(相対湿度25/40%)及び2~8℃で6ヶ月間貯蔵して試験した。実施例1~4の溶液は透明のままであり、貯蔵時に粒子、結晶又は沈殿物を含まないことが分かった。保存時の透過率は95%超であった。ジフルプレドナートのアッセイでは95~105%w/vの範囲のままであり、既知及び未知の不純物は貯蔵時に実質的に増加せず、不純物の含有量は所望の指定限界未満のままであった。
【0094】
[比較例1~3]
この例は、比較非実施例1、2及び3(本開示による可溶化剤を含まない)並びに本開示による実施例5及び6(四級アンモニウム化合物とポリエトキシル化ヒマシ油との混合物を有する可溶化剤を含む)とのそれらの比較を示す。これらの例は、四級アンモニウム化合物とポリエトキシル化ヒマシ油(Cremophor(登録商標))との混合物の使用の驚くべき効果を例示し、その組合わせは、水性ビヒクル中のジフルプレドナートの効率的な可溶化剤として作用する。
【0095】
表2:可溶化剤の混合物対可溶化剤単独対可溶化剤なしの効果:
【表9】
【0096】
塩化ベンザルコニウムは、眼科用製剤における保存剤として広く使用されている成分である。しかしながら、本発明者らは、本発明において、塩化ベンザルコニウムが、Cremophor(登録商標)のような非イオン性界面活性剤と共に使用される場合、水性系におけるジフルプレドナート分子の可溶化及び安定化に重要な役割を果たすことを見出した。
【0097】
本発明者らは、塩化ベンザルコニウム等の第四級アンモニウム化合物と、ポリエトキシル化ヒマシ油(Cremophor(登録商標))等の非イオン性界面活性剤との組合わせが、水性ビヒクル中で疎水性薬物-ジフルプレドナートを可溶化し、保存安定性の透明な水溶液の形成をもたらし(実施例5及び6)、この溶液は透明なままであり、室温での長期保存(少なくとも6ヶ月)時にジフルプレドナートの沈殿又は結晶化は起こらないことを見出した。
【0098】
本発明者らは、ジフルプレドナートの可溶化には、非イオン性界面活性剤であるCremophor(登録商標)と共に四級アンモニウム化合物の使用が必然的に必要であることを観察した。Cremophor(登録商標)と共に第四級アンモニウム化合物が、水性系におけるジフルプレドナート分子の可溶化及び安定化に重要な役割を果たすことが見出された。主に、2つの成分が一緒に存在する場合、薬物は水性ビヒクルに可溶化される。
【0099】
しかし、第四級アンモニウム化合物(塩化ベンザルコニウム等)又はポリエトキシル化ヒマシ油(Cremophor(登録商標))のいずれか又は両方の非存在下では、水溶液中でのジフルプレドナートの適切な可溶化は起こらず、得られた製剤は、ジフルプレドナートが結晶化したり析出したりするように不安定であった(比較例1~3)。
【0100】
[比較例4~10]
これらの比較例は、水溶液中のジフルプレドナートの可溶化及び安定化に対する様々な結晶成長阻害剤の効果を試験する。
【0101】
ポリビニルアルコールを、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルデンプン、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー等の他の結晶成長阻害剤で置換することによって、ジフルプレドナートの水溶液を調製した。溶液の物理的安定性を室温での保管時に調べた。安定性試験結果と共に試験した定量的製剤の詳細を以下の表3に示す:
【0102】
表3:結晶成長阻害剤の効果
【表10】
【0103】
本開示の発明者らは、驚くべきことに、ポリビニルアルコール又はその誘導体である特定のポリマーのみがジフルプレドナートの水溶液への適切な可溶化を維持し、室温での長期保存時に薬物の結晶化又は沈殿を防止する効率的な結晶成長阻害剤として作用することを発見した。(本開示の実施例1~6)。一方、ポリビニルアルコール以外のポリマー又は界面活性剤を用いた場合(比較例4-9)、表3に示すように、様々な時点で薬物の析出又は結晶化が生じることが分かった。
【0104】
[実施例7]
保存効力試験:実施例4の製剤を、参照によりその全体が本明細書に組み入れられる、European Pharmacopoeia,7.0 Edition,section 5.3.1,Page 505-506に明記されている保存効力試験に従って、抗菌保存の効力について試験した。
【0105】
欧州薬局方に規定された許容基準A及びBによる細菌の保存効力試験の結果を以下の表4に示す:
表4:保存効力試験の結果:
【表11】
【0106】
本開示の水溶液(実施例4)は、欧州薬局方で定められた抗菌保存試験の効力の判定基準A及びBの規定に適合していることが確認された。すなわち、基準Aによる6時間、24時間及び7日並びに基準Bによる24時間、7日間及び28日間での細菌の必要な対数減少が達成された。抗菌保存の有効性の試験は、ビグアニドを含有しない水溶液の別のバッチでも実施され、抗菌保存の有効性は、ビグアニドを有するバッチで観察されたものよりも劣っていることが観察され、ポリヘキサメチレンビグアニドのようなビグアニドの含有は、水溶液の抗菌効果の増強に役立つ。
【0107】
[実施例8]
抗菌効果に対する異なる保存剤の効果
これらの比較例は、ジフルプレドナート水溶液中の異なる保存剤の抗微生物効果を試験する。これらの実施例は、塩化ベンザルコニウム、N-ラウロイルサルコシン及びホウ酸の保存剤混合物の使用の驚くべき効果を説明する。これらの成分の包含を確立するために、保存剤及び保存剤混合物を用いて及び用いずに様々な組成物を調製し、抗菌効力試験について試験した。
【0108】
表5:抗菌効力試験(AET)の結果:
【表12】
【0109】
組成物の水溶液中のホウ酸の存在が、米国薬局方で定義されている抗菌効力試験の許容基準に従って仕様に適合するのに役立つことが観察された。保存剤としてN-ラウロイルサルコシンを単独で使用した場合(実施例2)、バッチは、米国薬局方で定義されている抗菌効力試験並びに欧州薬局方で定義されている基準A及びBの合格基準に適合しなかった。ホウ酸及び塩化ベンザルコニウムが両方とも製剤中に存在する場合(実施例3及び実施例5)、バッチは米国薬局方による抗菌効力試験に準拠した。N-ラウロイルサルコシンを含めると(実施例5)、製剤が欧州薬局方による抗菌活性の基準Bに準拠するのに役立った。
【0110】
以下の表6は、塩化ベンザルコニウム、N-ラウロイルサルコシン、ホウ酸及びポリヘキサメチレンビグアニドを含む保存剤の混合物を含有するバッチの抗菌効果試験の結果を示す。更に、氷酢酸及びEDTAを添加して、製剤の所望の物理化学的特性を満たした。また、塩化ベンザルコニウム、ホウ酸、酢酸ナトリウム及びグリセリンの量を、目標の物理化学的特性を満たすように最適化した。
【0111】
表6:抗菌効力試験(AET)の結果:
【表13】
【0112】
驚くべきことに、塩化ベンザルコニウム、N-ラウロイルサルコシン、ホウ酸及びポリヘキサメチレンビグアニドを含む保存剤の混合物を使用した場合、両方のバッチ(実施例1及び2)が、米国薬局方及び欧州薬局方で定義されている抗菌効力試験の基準Bによる抗菌効力試験基準を通過したことが見出された。したがって、保存剤の混合物の使用は、水溶液の抗菌効果を高めるのに役立つ。
【0113】
[実施例9]
ウシ血清アルブミン誘発慢性ブドウ膜炎モデルにおける動物効力試験-本開示のジフルプレドナート眼科水溶液の効力を、NZWウサギにおけるウシ血清アルブミン誘発慢性ブドウ膜炎モデルにおいて試験し、市販のDurezol(登録商標)製剤と比較した。試験された様々な製剤には、以下が含まれる。
【0114】
・プラセボ、すなわち実施例1と同様であるがジフルプレドナートを有さない製剤ビヒクル。
・0.03%w/vのジフルプレドナートを有する実施例1のジフルプレドナート眼科水溶液。
・0.04%w/vのジフルプレドナートを有する実施例2のジフルプレドナート眼科水溶液。
・参照項目、Durezol(登録商標)-Alconによるジフルプレドナート(0.05%w/v)眼科用エマルジョン製剤。
【0115】
試験は、体重3~5kgのNZWウサギで行った。動物を7つの群に分け、各群に5匹の動物を入れた。7つの群が含まれた-
群1-正常対照群
2群-注射用水(WFI)群
3群-BSA又はウシ血清アルブミン(疾患対照)群
群4-プラセボ群
群5-実施例1群
群6-実施例2群
群7-参照項目(Durezol(登録商標))群
【0116】
0日目に、正常対照群を除く全ての動物を筋肉内経路によりケタミン及びキシラジンで麻酔し、局所麻酔のために各眼にリグノカイン1滴を適用した。0日目に、群3~8では、200μLのBSA(5%)を両眼の硝子体内に注射し、7日目に、動物を、2.5mLのBSA(2%)の耳周辺静脈内注射でチャレンジした。0日目に、WFI対照群(群2)において、200μLの滅菌WFIを上記と同様に硝子体内に注射し、7日目に、2.5mLのWFIを辺縁耳静脈によって静脈内投与した。
【0117】
プラセボ、実施例1の溶液、実施例2の溶液及び参照項目を、BSAによる1時間の静脈内チャレンジの後、7日目にそれぞれの動物群に投与し、その後、投与を研究の27日目まで行った。50μLのプラセボ、実施例1の溶液及び実施例2の溶液を、7日目から27日目までマイクロピペットを用いて各群の動物の両眼に12時間間隔で2回局所滴下した。参照品目50μLを、7日目から27日目までマイクロピペットを用いて各群の動物の両眼に4時間間隔で4回滴下した。正常対照、WFI及びBSA(疾患対照)動物は未治療のままである。14、21及び28日目に、ケタミン及びキシラジンの筋肉内注射を用いて各動物を麻酔した。Zeiss細隙灯を使用して臨床的等級付けについて眼を検査した。ブドウ膜炎の臨床評価には、14、21及び28日目の総臨床スコア(表5に示す0~10ポイント基準)の評価を含めた。ブドウ膜炎の臨床評価には、更に、28日目の房水の総細胞数及び総タンパク質の評価が含まれた。
【0118】
表7:ブドウ膜炎の臨床徴候及びグレード
【表14】
【0119】
観察:14、21及び28日目の総臨床スコア(0~10)の観察;28日目の房水中の総細胞数及び総タンパク質を以下の表8に示す:
【0120】
表8:観察
【表15】
【0121】
慢性ブドウ膜炎に罹患した眼に1日2回滴下されたとき、0.03%w/v~0.04%w/vのジフルプレドナートを有する本開示のジフルプレドナート眼科水溶液(実施例1及び2)は、プラセボと比較して、総臨床スコア、総細胞数及び総タンパク質の有意な阻害を示したことが観察された。特に、水溶液が0.03%w/vのジフルプレドナートを有する実施例1群の場合、平均臨床スコアは、21日目に7.7(プラセボ)から2.9に、及び28日目に8.0(プラセボ)から3.4に有意に低下した。同様に、製剤が0.04%w/vのジフルプレドナートを有する実施例2群の場合、平均臨床スコアは、21日目に7.7(プラセボ)から3.5に、及び28日目に8.0(プラセボ)から3.3に有意に低下した。
【0122】
総臨床スコア、総細胞数及び総タンパク質レベルもまた、BSA(疾患対照)群と比較して、参照項目Durezol(登録商標)によって有意に減弱された。
【0123】
本開示の低濃度(0.03%及び0.04%)ジフルプレドナート眼科水溶液の1日2回の投与によって、14、21及び28日目に観察された臨床スコア値、房水の総細胞数及び総タンパク質含有量は、より高濃度の0.05%w/vエマルジョン製剤Durezol(登録商標)(市販参照品)の1日4回の投与で観察されたものと同等又はより良好であった。
【0124】
[実施例10]
リポ多糖(LPS)誘発急性ブドウ膜炎モデルにおける動物効力試験-本開示のジフルプレドナート眼科水溶液の効力を、雌NZWウサギにおけるリポ多糖(LPS)(内毒素)誘発急性ブドウ膜炎において試験し、市販のデュレゾール(登録商標)製剤と比較した。試験された様々な製剤には、以下が含まれる。
【0125】
・プラセボ:実施例1と同様であるがジフルプレドナートを有さない製剤ビヒクル。
・0.03%w/vのジフルプレドナートを有する実施例1のジフルプレドナート眼科水溶液。
・0.04%w/vのジフルプレドナートを有する実施例2のジフルプレドナート眼科水溶液。
・Durezol(登録商標)ジフルプレドナート(0.05%w/v)眼科用エマルジョン製剤(Alcon製)。
【0126】
試験は、体重3~5kgのNZWウサギで行った。動物を7つの群に分け、各群に5匹の動物を入れた。7つの群が含まれた-
群1-正常対照群
群2-群リン酸緩衝生理食塩水(PBS)群
群3-リポ多糖(LPS疾患対照)群
群4-プラセボ群
群5-実施例1群
群6-実施例2群
群7-参照項目(Durezol(登録商標))群。
【0127】
0日目に、正常対照群を除く全ての動物を筋肉内経路によりケタミン及びキシラジンで麻酔し、局所麻酔のために各眼にリグノカイン1滴を適用した。0日目に、PBS対照群において、20μLの滅菌リン酸緩衝生理食塩水pH約7.4を両眼の硝子体内に注射した。群3~8では、20μLのLPS(100ng)を両眼の硝子体内に注射した。LPS注射の1時間後に、プラセボ、実施例1及び2の溶液及び参照品目を投与し、ここで、50μLのプラセボ及び実施例1及び2の溶液を、マイクロピペットを用いて各群の動物の両眼に12時間間隔で2回局所滴下し、一方、参照項目50μLを、マイクロピペットを用いて各群の動物の両眼に4時間間隔で4回注入した。正常対照、PBS及びLPS(疾患対照)動物は未治療のままである。LPS注射の24時間後、ケタミン及びキシラジンの筋肉内注射を用いて各動物を麻酔した。Zeiss細隙灯を使用して臨床的等級付けについて眼を検査した。
【0128】
ブドウ膜炎の臨床評価には、1日目の総臨床スコア(以下の表7に示す0~5点基準)の評価を含めた。ブドウ膜炎の臨床評価には、更に、1日目の房水の総細胞数及び総タンパク質の評価が含まれた。
【0129】
臨床スコアリング後、適切なシリンジを取り付けた30ゲージ針を使用して各動物から房水を採取した。房水試料を分析まで2~80℃で保存した。各動物の総細胞数及び総タンパク質を計算した。
【0130】
表9:ブドウ膜炎の臨床徴候及びグレード
【表16】
【0131】
観察:総臨床スコア(0~5)の観察;1日目の房水中の総細胞数及び総タンパク質を以下の表10に示す:
【0132】
表10:観察
【表17】
【0133】
急性ブドウ膜炎に罹患した眼に1日2回滴下されたとき、0.03%w/v~0.04%w/vのジフルプレドナートを有する本開示のジフルプレドナート眼科水溶液(実施例1及び2)は、プラセボと比較して、総臨床スコア、総細胞数及び総タンパク質の有意な阻害を示したことが観察された。特に、実施例1群(0.03%w/vジフルプレドナート溶液)の場合、平均臨床スコアは1日目に3.0(プラセボ)から1.0に有意に減少した。同様に、実施例2の群(0.04%w/vのジフルプレドナート溶液)の場合、平均臨床スコアは3.0(プラセボ)から0.7に有意に減少した。
【0134】
総臨床スコア、総細胞数及び総タンパク質レベルもまた、BSA(疾患対照)群と比較して、参照項目Durezol(登録商標)によって有意に減弱された。特に、平均臨床スコアは、1日目に3.0(プラセボ)から0.7に減少した。
【0135】
本開示の低濃度(0.03%w/v及び0.04%w/v)ジフルプレドナート眼科水溶液の1日2回の投与によって1日目に観察された臨床スコア値、房水の総細胞数及び総タンパク質含有量は、より高い強度の0.05%w/vエマルジョン製剤Durezol(登録商標)(市販参照品)の1日4回の投与で観察されたものと同等又はより良好であった。
【0136】
[実施例11]
眼科手術に関連する炎症及び疼痛の治療のためのビヒクルと比較して、1日2回のジフルプレドナート眼科用溶液0.04%の有効性及び安全性を評価するために、無作為化二重盲検並行群多施設試験を行った。
【0137】
この研究では、357人の対象をスクリーニングした。357人のうち、325人の対象が無作為化治療意図(ITT)集団であり、32人の対象が選択/除外基準に不合格であり、スクリーニングの失敗とみなされた。合計26人の対象が無作為化されたが、投薬されなかった。
【0138】
299人の治療対象のうち、154人の対象が試験製品の少なくとも一回の投与を受け、145人の対象が参照製品を受けた。修正された治療意図(mITT)データセットは、白内障手術を受け、少なくとも1用量の治験薬(IP)を投与され、少なくとも1つの術後有効性評価(試験:154及び参照:144)を受けた無作為化された対象を含んだ。Per protocolデータセットには、治療評価に影響を及ぼすであろうプロトコル違反なしに術後15日目の来院で治癒訪問の試験で評価を完了した全てのmITT対象が含まれた(試験:123及び参照:83)。合計232人の対象が試験を完了し、試験群の21人の対象及び参照群の72人の対象が様々な理由により試験を中止した。
【0139】
両方の性別の対象を登録した。試験群では、64人(39.3%)の対象が男性であり、99人(60.7%)が女性であった。平均年齢は68.4歳であった。参照群では、68名(42.0%)の対象が男性であり、94名(58.0%)が女性であり、平均年齢は68.6歳であった。
【0140】
この研究では、240名(73.85名)の対象が白人であり、73名(22.5%)が黒人又はアフリカ系アメリカ人であり、9名(2.8%)がアジア系であり、3名(90.9%)がその他であった。人種は2つの治療群間で等しく分布していた。民族性についても同様の傾向が見られた[ヒスパニック系又はラテン系、85(26.2%)及び非ヒスパニック系又はラテン系239(73.5%)]。
【0141】
一次有効性分析:15日目に前房内細胞(ACC)グレードが0(ゼロ)である対象の割合
15日目の来院時又は15日目の来院前の最後の評価(15日目が完了しなかった場合)でACCグレードが0の対象を、治療に対する応答者とみなした。また、対象が、15日目又は15日目の来院前の最後の評価(15日目が完了していない場合)で0超のACCスコアを有していた場合、その対象は、主要有効性エンドポイント分析において失敗(又は非応答者)とみなされた。更に、0日目と15日目の来院(両端を含む)の間にレスキュー治療を投与された対象は、治療失敗とみなされた。
【0142】
したがって、mITT集団(N=299)を考慮すると、試験群は60.4%の応答者を記録し、参照群は20.8%の応答者を記録した。試験薬に有利な統計学的に有意な結果(p値<0.0001)は、主要な目的が満たされたことを示した。同様の傾向が、Per Protocol(PP)集団で見られた(p値<0.0001)。
【0143】
表11:観察
【表18】
【0144】
15日目に、対象の50%超が0の前房内細胞(ACC)グレードを有することが観察された。
【0145】
重要な副次的有効性評価項目:15日目のビジュアル・アナログ・スケール(VAS)でのスコアが0(ゼロ)である対象の割合
0(ゼロ)のVASスコアを有する対象の割合の比較は、治療意図(ITT)集団とプロトコル当たり(PP)集団の両方について、試験群対参照群に有利な統計学的に有意な結果(p値=0.0006)を示した。したがって、研究の重要な副次的目的が満たされた。
【0146】
表12:観察
【表19】
【0147】
対象の90%超が、15日目にビジュアル・アナログ・スケールで0(ゼロ)の疼痛スコアを有することが観察された。
【0148】
治療時緊急有害事象(TEAE)の概要
合計508のTEAEがあり、参照群では317、試験群では191であった。これらのTEAEは、試験群の対象87名(56.5%)及び参照群の対象96名(66.2%)で発生した。4名の対象(各群2名)のみが重篤なTEAEを経験した。これらはいずれも試験薬に関連していなかった。試験群では12名(7.8%)の対象が薬物関連TEAEを経験し、参照群では25名(17.2%)が薬物関連TEAEを経験した。試験薬は、TEAEのために24人(8.0%)の対象で恒久的に中止された。合計63名の対象が、TEAEのために行われた治療として併用薬を受けた。TEAEは157名(52.5%)の対象で消散したが、45名(15.1%)の対象では、事象は試験終了時に進行中であった。
【0149】
表13:観察
【表20】
【0150】
本発明者らは、眼科手術後の疼痛及び炎症を治療するために対象の眼に1日2回投与された場合、0.04%w/vのジフルプレドナートを有する本開示のジフルプレドナート眼科水溶液が、前房内細胞(ACC)グレード0及びビジュアル・アナログ・スケール(VAS)で疼痛スコア0を対象が有することにつながり、対象はレスキュー治療を受けていないことを見出した。
【国際調査報告】