(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品
(51)【国際特許分類】
C08L 23/10 20060101AFI20240104BHJP
C08L 23/00 20060101ALI20240104BHJP
C08K 5/00 20060101ALI20240104BHJP
C08K 3/22 20060101ALI20240104BHJP
C08K 5/49 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C08L23/10
C08L23/00
C08K5/00
C08K3/22
C08K5/49
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023534659
(86)(22)【出願日】2021-11-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-07
(86)【国際出願番号】 KR2021016855
(87)【国際公開番号】W WO2022145724
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0184261
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520087103
【氏名又は名称】ロッテ ケミカル コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】パク,ジ クウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヨン キョン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ソン エ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジュ スン
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB032
4J002BB122
4J002BB141
4J002DE127
4J002EA048
4J002EC058
4J002ED056
4J002EV226
4J002EW049
4J002FD069
4J002FD136
4J002FD137
4J002FD208
(57)【要約】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂約100重量部;ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂約0.5重量部~約10重量部;融点(Tm)が約100℃~約150℃の臭素化合物約5重量部~約15重量部;アンチモン化合物約1重量部~約8重量部;ラジカル形成剤約0.5重量部~約5重量部;およびリン系熱安定剤約0.2重量部~約5重量部;を含むことを特徴とする。前記熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂約100重量部;
ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂約0.5重量部~約10重量部;
融点(Tm)が約100℃~約150℃の臭素化合物約5重量部~約15重量部;
アンチモン化合物約1重量部~約8重量部;
ラジカル形成剤約0.5重量部~約5重量部;および
リン系熱安定剤約0.2重量部~約5重量部;を含むことを特徴とする、熱可塑性樹脂組成物。
【請求項2】
前記メルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂は、エチレン-プロピレンブロック共重合体を含むことを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレン約20重量%~約60重量%、およびプロピレン約40重量%~約80重量%を含むことを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体約60重量%~約95重量%、およびゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体約5重量%~約40重量%を含むことを特徴とする、請求項2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
前記メルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項6】
前記臭素化合物は、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル)プロパン、オクタブロモビスフェノール-Sの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項7】
前記アンチモン化合物は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項8】
前記ラジカル形成剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,2-ビス(ヒドロキシ-メチル)-1,3-プロパンジオールの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項9】
前記リン系熱安定剤は、オクタデカン-1-オールリン酸、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムの1種以上を含むことを特徴とする、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した0.8mm厚射出試片の難燃度がV-0であることを特徴とする、請求項1乃至9のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項11】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D523によって、60°の角度で測定した3.2mm厚試片の光沢度が約70%~約95%であることを特徴とする、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項12】
前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM E1164によって、色差計で測定した3.2mm厚試片のL値が約90~約98であることを特徴とする、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする、成形品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関する。より具体的には、本発明は、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れる熱可塑性樹脂組成物およびそれにより製造された成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ポリプロピレン樹脂は、軽量性、軟性等に優れるため、自動車、建築材料、電気部品等の分野に幅広く使用される材料である。但し、ポリプロピレン樹脂は、化学的構造上、引火性の物性のため、難燃特性を付与するために各種有機系または無機系難燃剤の併用添加がなされている。
【0003】
ポリプロピレン製品を外装材として使用するためには、製品に高い光沢度が要求され得るが、融点(Tm)が高い難燃剤を適用する場合は、光沢度等が低下するおそれがある。また、融点(Tm)が低い難燃剤を適用する場合は、光沢度の問題は解決されるが、押出し、射出等の加工時に、熱安定性、耐変色性等が低下するおそれがあり、長期間放置時にはブルーミングが発生するおそれがある。
【0004】
これにより、メルト型難燃剤、難燃助剤およびヒドロキシルアミン系熱安定剤等を適用して、難燃性、光沢度(外観特性)、耐変色性等を改善しようとする試みがあったが、このような方法も難燃剤の含量が高いことからブルーミングが発生するおそれがある。
【0005】
よって、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れる熱可塑性樹脂組成物の開発が必要な実情にある。
【0006】
本発明の背景技術は、韓国特許10-0801823号等に開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れた熱可塑性樹脂組成物を提供するためのものである。
【0008】
本発明の別の目的は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成された成形品を提供するためのものである。
【0009】
本発明の前記およびその他の目的は、下記で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
1.本発明の一つの観点は、熱可塑性樹脂組成物に関するものである。前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂約100重量部;ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂約0.5重量部~約10重量部;融点(Tm)が約100℃~約150℃の臭素化合物約5重量部~約15重量部;アンチモン化合物約1重量部~約8重量部;ラジカル形成剤約0.5重量部~約5重量部;およびリン系熱安定剤約0.2重量部~約5重量部;を含むことを特徴とする。
【0011】
2.前記1の具体例において、前記メルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂は、エチレン-プロピレンブロック共重合体を含むことができる。
【0012】
3.前記1または2の具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレン約20重量%~約60重量%、およびプロピレン約40重量%~約80重量%を含むことができる。
【0013】
4.前記1乃至3の具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合体約60重量%~約95重量%、およびゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体約5重量%~約40重量%を含むことができる。
【0014】
5.前記1乃至4の具体例において、前記メルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレンの1種以上を含むことができる。
【0015】
6.前記1乃至5の具体例において、前記臭素化合物は、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル)プロパン、オクタブロモビスフェノール-Sの1種以上を含むことができる。
【0016】
7.前記1乃至6の具体例において、前記アンチモン化合物は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンの1種以上を含むことができる。
【0017】
8.前記1乃至7の具体例において、前記ラジカル形成剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,2-ビス(ヒドロキシ-メチル)-1,3-プロパンジオールの1種以上を含むことができる。
【0018】
9.前記1乃至8の具体例において、前記リン系熱安定剤は、オクタデカン-1-オールリン酸、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムの1種以上を含むことができる。
【0019】
10.前記1乃至9の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した0.8mm厚射出試片の難燃度がV-0になり得る。
【0020】
11.前記1乃至10の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D523によって、60°の角度で測定した3.2mm厚試片の光沢度が約70%~約95%になり得る。
【0021】
12.前記1乃至11の具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM E1164によって、色差計で測定した3.2mm厚試片のL値が約90~約98になり得る。
【0022】
13.本発明の別の観点は成形品に関するものである。前記成形品は、前記1乃至12のいずれかによる熱可塑性樹脂組成物から形成されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれにより形成された成形品を提供する発明の効果を有する。
【発明を実施するための形態】
【0024】
[発明を実施するための最善の形態]
以下、本発明を詳しく説明する。
【0025】
本発明にかかる熱可塑性樹脂組成物は、(A)メルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂;(B)メルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂;(C)融点(Tm)が約100℃~約150℃の臭素化合物;(D)アンチモン化合物;(E)ラジカル形成剤;および(F)リン系熱安定剤;を含む。
【0026】
本明細書において、数値範囲を表す「a~b」は「≧aそして≦b」と定義する。
【0027】
(A)メルトフロー指数(MI)が約5g/10分~約80g/10分のポリプロピレン樹脂
本発明のポリプロピレン樹脂は、熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性、剛性、成形加工性等を向上させることのできるものとして、ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(Melt-flow Index:MI)が約5g/10分~約80g/10分、例えば約5g/10分~約50g/10分のポリプロピレン樹脂を使用することができる。前記ポリプロピレン樹脂のメルトフロー指数(MI)が約5g/10分未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の流動性、難燃性等が低下するおそれがあり、約80g/10分を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐衝撃性、剛性等が低下するおそれがある。
【0028】
具体例において、前記ポリプロピレン樹脂としては、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるエチレン-プロピレンブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)等を使用できる。例えば、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、プロピレン単独重合部分とエチレン-プロピレン共重合部分が反応器内で段階的に重合された樹脂になり得る。
【0029】
具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、エチレン約20重量%~約60重量%、例えば、約30重量%~約50重量%、およびプロピレン約40重量%~約80重量%、例えば約50重量%~約70重量%を含み得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の成形性、耐衝撃性等に優れ得る。
【0030】
具体例において、前記エチレン-プロピレンブロック共重合体は、連続相(マトリックス)のプロピレン単独重合体約60重量%~約95重量%、例えば、約70重量%~約90重量%、および分散相のゴム成分のエチレン-プロピレン共重合体約5重量%~約40重量%、例えば約10重量%~約30重量%を含み得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物の剛性、耐衝撃性等に優れ得る。
【0031】
(B)メルトフロー指数(MI)が約150g/10分~約1,000g/10分のポリオレフィン樹脂
本発明の一具体例にかかるポリオレフィン樹脂は、臭素化合物、アンチモン化合物、ラジカル形成剤、リン系熱安定剤等と一緒に適用して、前記ポリプロピレン樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等を向上させることのできるものとして、ASTM D1238によって、230℃、2.16kgの荷重条件で測定したメルトフロー指数(Melt-flow Index:MI)が約150g/10分~約1,000g/10分、例えば約150g/10分~約500g/10分のポリオレフィン樹脂を使用することができる。前記ポリオレフィン樹脂のメルトフロー指数(MI)が約150g/10分未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の光沢度、難燃性等が低下するおそれがあり、約1,000g/10分を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐衝撃性、剛性等が低下するおそれがある。
【0032】
具体例において、前記ポリオレフィン樹脂は、低密度ポリエチレン(LDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、またはこれらの組合せ等を含むことができる。
【0033】
具体例において、前記ポリオレフィン樹脂は、前記ポリプロピレン樹脂約100重量部に対して、約0.5重量部~約10重量部、例えば約1重量部~約9重量部で含まれ得る。前記ポリオレフィン樹脂の含量が約0.5重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の光沢度、白色度等が低下するおそれがあり、約10重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0034】
(C)融点(Tm)が約100℃~約150℃の臭素化合物
本発明の一具体例にかかる臭素化合物は、前記ポリオレフィン樹脂、アンチモン化合物、ラジカル形成剤、リン系熱安定剤等と一緒に適用して、前記ポリプロピレン樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等を向上させることのできるものとして、融点(Tm)が約100℃~約150℃、例えば約110℃~約140℃の臭素化合物(臭素系難燃剤)を使用することができる。前記臭素化合物の融点(Tm)が約100℃未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の加工性、難燃性等が低下するおそれがあり、約150℃を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性、光沢度および/または白色度等が低下するおそれがある。
【0035】
具体例において、前記臭素化合物は、2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル)プロパン、オクタブロモビスフェノール-S、またはこれらの組合せ等を含むことができる。
【0036】
具体例において、前記臭素化合物は、前記ポリプロピレン樹脂約100重量部に対して、約5重量部~約15重量部、例えば約6重量部~約14重量部で含まれ得る。前記臭素化合物の含量が約5重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性等が低下するおそれがあり、約15重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の耐ブルーミング性、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0037】
(D)アンチモン化合物
本発明の一具体例にかかるアンチモン化合物は、前記ポリオレフィン樹脂、臭素化合物、ラジカル形成剤、リン系熱安定剤等と一緒に適用して、前記ポリプロピレン樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等を向上させることのできるものとして、通常の難燃性熱可塑性樹脂組成物に使用されるアンチモン化合物(アンチモン系難燃助剤)を使用することができる。
【0038】
具体例において、前記アンチモン化合物は、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、またはこれらの組合せ等を含むことができる。
【0039】
具体例において、前記アンチモン化合物は、前記ポリプロピレン樹脂約100重量部に対して、約1重量部~約8重量部、例えば約2重量部~約7重量部で含まれ得る。前記アンチモン化合物の含量が約1重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性等が低下するおそれがあり、約8重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の光沢度、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0040】
具体例において、前記臭素化合物(C)および前記アンチモン化合物(D)の重量比(C:D)は、約1:0.1~約1:1、例えば約1:0.2~約1:0.9になり得る。前記範囲で、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性、耐衝撃性等がより優れ得る。
(E)ラジカル形成剤
本発明の一具体例にかかるラジカル形成剤は、前記ポリオレフィン樹脂、臭素化合物、アンチモン化合物、リン系熱安定剤等と一緒に適用されて、前記ポリプロピレン樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等を向上させることのできるものとして、通常の熱可塑性樹脂組成物に使用されるラジカル形成剤を使用できる。
【0041】
具体例において、前記ラジカル形成剤は、2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン、2,2-ビス(ヒドロキシ-メチル)-1,3-プロパンジオール、またはこれらの組合せ等を含むことができる。
【0042】
具体例において、前記ラジカル形成剤は、前記ポリプロピレン樹脂約100重量部に対して、約0.5重量部~約5重量部、例えば約0.7重量部~約4重量部で含むことができる。前記ラジカル形成剤の含量が約0.5重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性等が低下するおそれがあり、約5重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性、白色度、加工性、耐衝撃性等が低下するおそれがある。
【0043】
(F)リン系熱安定剤
本発明の一具体例にかかるリン系熱安定剤は、前記ポリオレフィン樹脂、臭素化合物、アンチモン化合物、ラジカル形成剤等と一緒に適用されて、前記ポリプロピレン樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物の難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等を向上させることのできるものとして、リン酸(phosphoric acid)を含むリン系熱安定剤を使用できる。
【0044】
具体例において、前記リン系熱安定剤は、オクタデカン-1-オールリン酸(octadecan-1-ol,phosphoric acid)、リン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、またはこれらの組合せ等を含むことができる。
【0045】
具体例において、前記リン系熱安定剤は、前記ポリプロピレン樹脂約100重量部に対して、約0.2重量部~約5重量部、例えば約0.5重量部~約4重量部で含まれ得る。前記リン系熱安定剤の含量が約0.2重量部未満の場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の白色度、耐衝撃性等が低下するおそれがあり、約5重量部を超過する場合は、熱可塑性樹脂組成物(成形品)の難燃性、加工性、剛性等が低下するおそれがある。
【0046】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、通常の熱可塑性樹脂組成物に含まれる添加剤をさらに含むことができる。前記添加剤としては、酸化防止剤、滴下防止剤、滑剤、離型剤、核剤、帯電防止剤、安定剤、顔料、染料、これらの混合物等を例示できるが、これに制限されるのではない。前記添加剤を使用する際、その含量は、前記ポリプロピレン樹脂約100重量部に対して、約0.001重量部~約40重量部、例えば約0.1重量部~約5重量部になり得る。
【0047】
本発明の一具体例にかかる熱可塑性樹脂組成物は、前記構成成分を混合し、通常の二軸押出器を使用して、約120℃~約280℃、例えば約180℃~約220℃で溶融押出したペレット形態になり得る。
【0048】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、UL-94 vertical test方法で測定した0.8mm厚射出試片の難燃度がV-0になり得る。
【0049】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM D523によって、60°の角度で測定した3.2mm厚試片の光沢度が約70%~約95%、例えば約72%~約90%になり得る。
【0050】
具体例において、前記熱可塑性樹脂組成物は、ASTM E1164によって、色差計で測定した3.2mm厚試片のL値が約90~約98、例えば約91~約97になり得る。
【0051】
本発明にかかる成形品は、前記熱可塑性樹脂組成物から形成される。前記抗菌性熱可塑性樹脂組成物は、ペレット形態に製造することができ、製造されたペレットは、射出成形、押出し成形、真空成形、キャスティング成形等の多様な成形方法によって多様な成形品(製品)に製造することができる。このような成形方法は、本発明が属する分野の通常の知識を有する者によってよく知られている。前記成形品は、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れるため、電気電子製品の内/外装材、建築用資材等に有用である。
【0052】
[発明の実施のための形態]
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、このような実施例は、単に説明の目的のためのものであり、本発明を制限するものと解釈してはならない。
【0053】
実施例
実施例および比較例で使用した各成分の仕様は次の通りである。
【0054】
(A)ポリプロピレン樹脂
エチレン-プロピレンブロック共重合体(製造社:ロッテケミカル,製品名:JH-370A,メルトフロー指数(Melt-flow Index:MI):28g/10分)を使用した。
【0055】
(B)ポリオレフィン樹脂
(B1)ポリプロピレン(製造社:ポリミレ,製品名:HP5021,メルトフロー指数(Melt-flow Index:MI):325g/10分)を使用した。
【0056】
(B2)ポリプロピレン(製造社:ロッテケミカル,製品名:JSS-395N,メルトフロー指数(Melt-flow Index:MI):100g/10分)を使用した。
【0057】
(C)臭素化合物
(C1)2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-(2,3-ジブロモプロポキシ)フェニル)プロパン(BDDP,製造社:Shandong Brother SCI.& TECH.,製品名:XZ-6800,融点(Tm):110℃)を使用した。
【0058】
(C2)オクタブロモビスフェノール-S(OBBS,製造社:Danxia Chemical,製品名:DXFR-920,融点(Tm):118℃)を使用した。
【0059】
(C3)デカブロモジフェニルエーテル(DBDPE,製造社:ALBEMARLE,製品名:SAYTEX8010,融点(Tm):352℃)を使用した。
【0060】
(D)アンチモン化合物
三酸化アンチモン(Sb2O3,製造社:イルソンアンチモン,製品名:ANTIS W)を使用した。
【0061】
(E)ラジカル形成剤
2,3-ジメチル-2,3-ジフェニルブタン(製造社:WUXI ZHUFENG FINE CHEMICAL,製品名:Dicumene)を使用した。
【0062】
(F)リン系熱安定剤
オクタデカン-1-オールリン酸(octadecan-1-ol,phosphoric acid,製造社:WELLCHEM,製品名:PAOE)を使用した。
【0063】
実施例1~14および比較例1~17
前記各構成成分を下記表1,2,3および4に記載した含量で添加した後、200℃で押出してペレットを製造した。押出しはL/D=36、直径45mmの二軸押出器を使用し、製造されたペレットは80℃で4時間以上乾燥した後、6oz射出器(成形温度:260℃,金型温度:60℃)で射出して試片を製造した。製造された試片に対して下記の方法で物性を評価し、その結果を下記表1,2,3および4に示した。
【0064】
物性の測定方法
(1)難燃度:UL-94 vertical test方法で0.8mm厚射出試片の難燃度を測定した。
【0065】
(2)光沢度(単位:%):ASTM D523によって、60°の角度で3.2mm厚試片の光沢度を測定した。
【0066】
(3)白色度:ASTM E1164によって、色差計(製造社:KONICA MINOLTA,装置名:CM-3700d)で3.2mm厚試片のL値(L value)を測定した。
【0067】
(4)耐ブルーミング性の評価:100mm×100mm×3.2mmの大きさの試片を70℃で72時間放置した後、試片表面のブルーミング(blooming)現象の発生有無を肉眼で確認した。(○:未発生,×:発生)
【0068】
【0069】
【0070】
【0071】
【0072】
前記結果から、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、難燃性、光沢度、白色度、耐ブルーミング性、これらの物性バランス等に優れることがわかる。
【0073】
本発明のポリオレフィン樹脂を、本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例1)は光沢度等が低下することがわかり、本発明の含量範囲より超過して適用する場合(比較例2)は難燃性等が低下することがわかり、本発明のポリオレフィン樹脂の代わりに、メルトフロー指数(MI)が本発明の範囲未満のポリプロピレン(B2)を適用する場合(比較例3)は光沢度等が低下することがわかり、本発明の臭素化合物を本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例4,5,7)は難燃性等が低下することがわかり、本発明の含量範囲より超過して適用する場合(比較例6,8)は耐ブルーミング性等が低下することがわかり、本発明の臭素化合物の代わりに、融点(Tm)が本発明の範囲を超過したデカブロモジフェニルエーテル(C3)を適用する場合(比較例9,10,11)は、含量によって、難燃性、光沢度および/または白色度等が低下することがわかる。本発明のアンチモン化合物を本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例12)は難燃性等が低下することがわかり、本発明の含量範囲より超過して適用する場合(比較例13)は光沢度等が低下することがわかり、本発明のラジカル形成剤を本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例14)は難燃性等が低下することがわかり、本発明の含量範囲より超過して適用する場合(比較例15)は難燃性、白色度等が低下することがわかる。また、本発明のリン系熱安定剤を本発明の含量範囲未満で適用する場合(比較例16)は白色度等が低下することがわかり、本発明の含量範囲より超過して適用する場合(比較例17)は難燃性等が低下することがわかる。
【0074】
これまで本発明に対して実施例を中心に説明した。本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者は、本発明が本発明の本質的な特性から外れない範囲で変形した形態に具現できることを理解すると考える。そのため、開示した実施例は、限定的な観点ではなく説明的な観点から考慮しなければならない。本発明の範囲は、前述の説明ではなく、特許請求の範囲に表されており、それと同等の範囲内にあるすべての相違点は本発明に含まれるものと解釈しなければならない。
【国際調査報告】