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特表2024-501447シリコン含有膜のエッチング方法及びこれを含む半導体デバイスの製造方法
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  • 特表-シリコン含有膜のエッチング方法及びこれを含む半導体デバイスの製造方法 図1A
  • 特表-シリコン含有膜のエッチング方法及びこれを含む半導体デバイスの製造方法 図1B
  • 特表-シリコン含有膜のエッチング方法及びこれを含む半導体デバイスの製造方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】シリコン含有膜のエッチング方法及びこれを含む半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240104BHJP
   C23F 1/12 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/302 101B
C23F1/12
H01L21/302 301S
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535290
(86)(22)【出願日】2021-11-11
(85)【翻訳文提出日】2023-06-09
(86)【国際出願番号】 KR2021016462
(87)【国際公開番号】W WO2022124604
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171746
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523062062
【氏名又は名称】エスケイ スペシャルティ コンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】519110076
【氏名又は名称】クァンウン ユニバーシティー インダストリーアカデミック コラボレーション ファウンデーション
【氏名又は名称原語表記】KWANGWOON UNIVERSITY INDUSTRY-ACADEMIC COLLABORATION FOUNDATION
【住所又は居所原語表記】20, Gwangun-ro,Nowon-gu, Seoul (KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】クァク ジョンフン
(72)【発明者】
【氏名】クォン ビョンヒャン
(72)【発明者】
【氏名】チョ ヨンジュン
(72)【発明者】
【氏名】クォン キチョン
(72)【発明者】
【氏名】キム ウジェ
【テーマコード(参考)】
4K057
5F004
【Fターム(参考)】
4K057DA13
4K057DA18
4K057DB06
4K057DD01
4K057DE06
4K057DG08
4K057DG15
4K057DN01
5F004AA02
5F004AA16
5F004BA04
5F004BA20
5F004BB13
5F004BB22
5F004BD03
5F004CA02
5F004CA03
5F004DA00
5F004DA01
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5F004DA24
5F004DA26
5F004DB03
5F004DB07
5F004EB08
(57)【要約】
本発明に係るシリコン含有膜のエッチング方法は、エッチング装置の工程チャンバ内に第1シリコン含有膜および第2シリコン含有膜を含む基板を導入するステップと、前記工程チャンバにF3NOを含む少なくとも一つのエッチングガスを供給するステップと、所定の圧力で維持される前記工程チャンバに所定のパワーを印加して前記工程チャンバ内にダイレクトプラズマを生成するステップと、前記ダイレクトプラズマにより活性化されたエッチングガスの活性種(radical)により前記基板上の前記第1シリコン含有膜をエッチングするステップとを含み、前記所定の圧力は、圧力に対する前記第1シリコン含有膜のエッチレートの傾きが圧力に対する前記第2シリコン含有膜のエッチレートの傾きとその符号が異なる所定の範囲内に設定されることを特徴とする。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリコン含有膜のエッチング方法であって、
エッチング装置の工程チャンバ内に第1シリコン含有膜および第2シリコン含有膜を含む基板を導入するステップと、
前記工程チャンバにF3NOを含む少なくとも一つのエッチングガスを供給するステップと、
所定の圧力で維持される前記工程チャンバに所定のパワーを印加して前記工程チャンバ内にダイレクトプラズマを生成するステップと、
前記ダイレクトプラズマにより活性化されたエッチングガスの活性種(radical)により前記基板上の前記第1シリコン含有膜をエッチングするステップとを含み、
前記所定の圧力は、圧力に対する前記第1シリコン含有膜のエッチレートの傾きが圧力に対する前記第2シリコン含有膜のエッチレートの傾きとその符号が異なる所定の範囲内に設定される、
シリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項2】
前記第1シリコン含有膜は、シリコン窒化膜であり、前記第2シリコン含有膜は、シリコン酸化膜である、請求項1に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項3】
前記所定の圧力は、圧力に対するシリコン窒化膜のエッチレートの傾きが正であり、かつ圧力に対するシリコン酸化膜のエッチレートの傾きが負である範囲におけるその中央値より大きい値に設定される、請求項2に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項4】
前記所定の圧力は、1mTorr~10Torrの範囲内である、請求項3に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項5】
前記所定の圧力は、200mTorr以上、270mTorr以下である、請求項4に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項6】
前記所定のパワーは、10W以上、50,000W以下の範囲内である、請求項3に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項7】
前記所定のパワーは、240W以上、320W以下である、請求項5に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項8】
前記エッチング装置は、ダイレクトCCP装置である、請求項1に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項9】
前記エッチングガスは、水素原子を含む制御ガスを更に含む、請求項1に記載のシリコン含有膜のエッチング方法。
【請求項10】
基板上に第1シリコン含有膜および第2シリコン含有膜を含むシリコン含有膜を形成する蒸着ステップと、
請求項1~9のいずれかの一項に記載のエッチング方法を用いてシリコン含有膜をエッチングするエッチングステップとを含む、
半導体デバイスの製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコン含有膜のエッチング方法およびこれを含む半導体デバイスの製造方法に関するもので、特に、F3NOを含むエッチングガスを用いてダイレクトプラズマによりシリコン含有膜をエッチングするエッチング方法およびそのエッチング方法を含む半導体デバイスの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、基板上に半導体デバイスを製造するために、蒸着、エッチング、洗浄などの一連の工程が行われる。これらの工程は、工程チャンバを備えた蒸着装置(例えば、CVD装置)、エッチング装置または洗浄装置で行われる。このうち、エッチング工程は、蒸着工程等により基板上に成膜された薄膜の一部分を選択的に除去することにより所望の形態の超微細構造物を形成する工程である。
【0003】
エッチング工程、特に、ドライエッチング工程では、気相のエッチングガスがエッチング対象である薄膜、例えば、シリコン含有膜と反応して揮発性の強い反応副産物を形成することにより、薄膜の一部分を除去する。エッチングガスとエッチング対象である薄膜との反応性をさらに高めるために、プラズマを活用するプラズマエッチング方法が主に用いられている。プラズマは、エッチングガスを反応性の強い活性種またはラジカルにして薄膜との反応性を増加させる。
【0004】
プラズマを活用したドライエッチングでは、容量性結合プラズマ(Capacitively Coupled Plasma、CCP)技術や誘導性結合プラズマ(Inductively Coupled Plasma、ICP)技術によって具現されるダイレクトプラズマ(Direct Plasma)技術が採用されている。ここで、ダイレクトプラズマ技術またはダイレクトプラズマとは、基板処理空間である工程チャンバ内でプラズマを直接生成する技術またはその生成されたプラズマのことを意味する。また、CCPは、主にプラズマエッチング(Plasma Etching、PE)またはPECVD (Plasma Enhanced Chemical Vapor Deposition)法と反応性イオンエッチング(Reactive Ion Etching:RIE)または反応性イオン蒸着(Reactive Ion Chemical Vapor Deposition)で用いられ、ICPは、遠隔プラズマ(Remote Plasma、RP)とダイレクトICPプラズマ(Helical、TCP、ECR、また、Helicone Plasma Source等を用いる)を生成するのに用いられる。
【0005】
エッチング工程においては、エッチングしようとする膜質に対しては、高いエッチレートを持ち、エッチングを望まない膜質に対しては、低いエッチレートを持つことが好ましが、従来、ダイレクトプラズマを用いたエッチングの場合、エッチング選択比の改善に限界があった。
【0006】
また、エッチング工程で用いられるエッチングガスは、エッチング工程の後に有害なガスを排出せずに地球環境への影響が可能な限り少ないことが求められる。
【0007】
従来エッチングガスとしてCF4、C26、SF6、NF3などパーフルオロ化合物ガスが大量に使われてきた。しかしながら、従来のパーフルオロ化合物エッチングガスは、エッチング工程後に排出される廃ガスの処理が困難であり、これにより大気中に排出する前にこれを許容レベルまで下げるのに大きな処理コストがかかる。また、従来のパーフルオロ化合物エッチングガスは、大気中で寿命の長い安定した化合物であり、地球温暖化指数が非常に高いため、地球温暖化の主要な要因と指摘されている。
【0008】
これにより、地球温暖化指数が低いながらも、シリコン含有膜に対するエッチング性能に優れた代替エッチングガスが求められており、そのうちの一つとして、特許文献1に記載のF3NOが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】韓国登録特許10-2010466 B1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、このような従来技術の問題点を解決するためのものであって、地球温暖化指数が相対的に低くエコフレンドリーなF3NOを含むエッチングガスをダイレクトプラズマにより活性化してシリコン含有膜を高い選択比でエッチングできる方法およびこれを含む半導体デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様に係るシリコン含有膜のエッチング方法は、エッチング装置の工程チャンバ内に第1シリコン含有膜および第2シリコン含有膜を含む基板を導入するステップと、前記工程チャンバにF3NOを含む少なくとも一つのエッチングガスを供給するステップと、所定の圧力で維持される前記工程チャンバに所定のパワーを印加して前記工程チャンバ内にダイレクトプラズマを生成するステップと、前記ダイレクトプラズマにより活性化されたエッチングガスの活性種により前記基板上の前記第1シリコン含有膜をエッチングするステップとを含み、前記所定の圧力は、圧力に対する前記第1シリコン含有膜のエッチレートの傾きが圧力に対する前記第2シリコン含有膜のエッチレートの傾きとその符号が異なる所定の範囲内に設定されることを特徴とする。
【0012】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記第1シリコン含有膜は、シリコン窒化膜であり、前記第2シリコン含有膜は、シリコン酸化膜であることを特徴とする。
【0013】
本発明の他の好ましい実施形態によれば、前記所定の圧力は、圧力に対するシリコン窒化膜のエッチレートの傾きが正であり、かつ圧力に対するシリコン酸化膜のエッチレートの傾きが負である範囲におけるその中央値より大きい値に設定されることを特徴とする。
【0014】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、前記所定の圧力は、1mTorr~10Torrの範囲内であることを特徴とし、より好ましくは、200mTorr~270mTorrであることを特徴とする。
【0015】
本発明のさらに他の好ましい実施形態によれば、前記所定のパワーは、10W以上50,000W以下の範囲内であることを特徴とし、より好ましくは240W以上320W以下であることを特徴とする。
【0016】
本発明の他の態様に係る半導体デバイス製造方法は、基板上に第1シリコン含有膜および第2シリコン含有膜を含むシリコン含有膜を形成する蒸着ステップと、本発明の一態様に係るエッチング方法を用いてシリコン含有膜をエッチングするエッチングステップとを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、環境に優しいF3NOを含むエッチングガスを用いながらも、ダイレクトプラズマ生成時の圧力および印加パワーを調節することにより、シリコン窒化膜等のようなシリコン含有膜を高い選択比でエッチングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1A】本発明の一実施形態に係るエッチング方法を行うためのエッチング装置の模式図である。
図1B】本発明の一実施形態に係るエッチング方法を行うためのエッチング装置の模式図である。
図2】本発明の一実施形態に係るエッチング方法のフローチャートである。
図3】圧力および印加パワーとシリコン酸化膜のエッチレートの関係を示すグラフである。
図4】圧力および印加パワーとシリコン窒化膜のエッチレートの関係を示すグラフである。
図5】圧力および印加パワーとシリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比の関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。図面上の同一の構成要素については同一の参照符号を使用し、これらに対する重複した説明は省略する。
【0020】
図1Aおよび図1Bは、本発明の一実施形態に係るエッチング方法を実施するためのエッチング装置1を示す。
【0021】
エッチング装置1は、ダイレクトプラズマを生成することができる容量結合型プラズマ (Capacitively Coupled Plasma)装置であって、プラズマ放電によってプラズマPがエッチング装置1の工程チャンバ10内に直接生成される。
【0022】
このために、エッチング装置1は、電極の役割を兼ねるシャワーヘッド20およびシャワーヘッド20に連結されたRF電源を含み、RF電源は、RF生成器30およびインピーダンスマッチングネットワーク40(Impedance Matching Network:I.M.N.)を含む。
【0023】
エッチング装置1のシャワーヘッド20は、工程チャンバ10の内部の上部に配置され、エッチングガスや制御ガスを工程チャンバ10内に供給する。
【0024】
RF生成器30はRFパワーを生成し、インピーダンスマッチングネットワーク40はインピーダンスを調節してプラズマを安定化する。
【0025】
図1Aおよび図1Bに示すように、エッチング装置1は、処理対象物である基板Sを保持するステージ50を工程チャンバ10内の下部に備える。エッチング装置1のステージ50は、接地され、接地電極として機能する。ステージ50の内部には熱線510またはヒータ電極などが設けられ、基板Sの温度を調節することができる。また、図1Aおよび図1Bに図示していないが、ステージ50は、エッチング工程の間、基板Sを固定することができる固定手段(例えば、静電チャックなど)を含むことができる。
【0026】
ステージ50が接地された状態で、シャワーヘッド20に所定の大きさのRFパワーを印加すると、シャワーヘッド20とステージ50との間に強い交番電界が生成されてプラズマPが生成される。ダイレクトCCP型のエッチング装置の場合、RF電源のパワーを上げると活性種の濃度が高くなり、エッチレートが大きくなる。
【0027】
プラズマPが発生されると、エッチングガスよりラジカルR、イオン、電子、紫外線等が生成され得る。このようなラジカルRとイオン、電子、紫外線などの成分のうち少なくとも一つがエッチング工程に用いられる。基本的にラジカルRは電気的に中性であり、イオンは電気的に極性を有する。これにより、プラズマPがエッチング工程に用いられる場合、ラジカルRは、エッチング対象を等方性にエッチングする際に用いられ、イオンは、エッチング対象を異方性にエッチングする際に用いられる。
【0028】
図1Aのエッチング装置1は、シャワーヘッド20にRF電源が連結される構成を有するが、エッチング装置1は、これに限定されず、ラジカルRによる化学的エッチングのみでなく、プラズマ内のイオンの物理的な衝突によるエッチングを共に行うために、図1Bに示すように、ステージ50にもRF電源が追加的に連結されてもよい。
【0029】
また、本実施形態のエッチング装置1は、ICP装置がさらに設けられた構成を有していてもよい。この場合、エッチング装置1には、コイルアンテナが配置されてもよく、そのようなコイルアンテナにRF電源が接続されてもよい。また、本実施形態のエッチング装置1は、リモートプラズマ装置が組み合わせられた構成を有してもよい。
【0030】
図2は、本実施形態に係るダイレクトプラズマを用いたエッチング方法のフローチャートである。
【0031】
図2を参照して、本実施形態に係るダイレクトプラズマを用いたエッチング方法は、まず、エッチング装置1の工程チャンバ10内に図示しないゲートバルブを通してシリコン含有膜が形成された基板Sを搬入し、エッチング装置1内のステージ50上に基板Sを載置する(S01)。ここで、基板S上に形成されたシリコン含有膜は、少なくともシリコン窒化膜(SiNx、第1シリコン含有膜)およびシリコン酸化膜(SiO2、第2シリコン含有膜)を含む。ただし、本発明のエッチング方法はこれに限定されず、他のシリコン含有膜(例えば、ポリシリコン、シリサイド膜等)を含んでもよい。
【0032】
次いで、工程チャンバ10内にF3NOを含むエッチングガスをシャワーヘッド20を通じて供給する(S02)。この際、F3NO以外に制御ガス(例えば、H2O、H2、HBr等)をさらに供給してもよい。水素原子を含む制御ガスを混合すると、F3NOのダイレクトプラズマ内に生成される活性種の濃度を調節することができ、これによりエッチング対象であるシリコン含有膜のエッチング選択比を調節することができる。また、物理的衝突によるエッチングを共に行う場合(例えば、反応性イオンエッチング)には、Arのような不活性ガスをさらに供給してもよい。Arを混合すればイオン衝突が増加して物理的エッチングによるエッチング速度および異方性が向上し、Ar+イオンビームがシリコン含有膜のシリコン原子間の結合を破壊してエッチングガスの活性種との反応の活性化エネルギー(activation energy)を下げるので、活性種による化学的エッチングレートも向上させることができる。CF4やNF3のような従来のパーフルオロエッチングガスの場合、Fの活性種の濃度を高めてエッチングレートを上げるためにO2を一緒に混合する場合があるが、本発明のエッチング方法においては、F3NOをメインエッチングガスとして用いるので、O2を別途混合しなくても十分にエッチングレートを増加させることができる。
【0033】
次に、適切な圧力および温度条件下で、エッチング装置1のRF生成器30に適切なパワーを印加することにより、工程チャンバ10内にダイレクトプラズマを生成する(S03)。図3図5を参照して後述するように、本発明の一実施形態に係るエッチング方法においては、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマ生成時に圧力および印加パワーを調節することにより、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を極大化することができる。本発明の実施例においては、エッチングガスとしてF3NOが用いられるので、工程チャンバ10内に生成されたダイレクトプラズマ内にはF、F2、FNO、NO等の活性種が生成される。
【0034】
工程チャンバ10内に生成されたダイレクトプラズマ内の活性種は、ステージ50に載置された基板S上のシリコン含有膜と反応して、エッチング対象であるシリコン含有膜を選択的にエッチングする(S04)。本発明の実施例のエッチング方法によれば、シリコン窒化膜をシリコン酸化膜に対して高い選択比でエッチングすることができる。
【0035】
エッチング工程が完了した基板Sは、工程チャンバ10から搬出されて次の工程に搬送される。
【0036】
以下、図3図5を参照して、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマ生成時の圧力および印加パワーと、シリコン含有膜のエッチレートおよびエッチング選択比の関係について説明する
【0037】
図3は、ダイレクトプラズマ生成ステップS03において、エッチング装置1内に99。99%の純度を有するF3NOを120sccmの流量で流しながらダイレクトプラズマを生成した場合の圧力および印加パワーとシリコン酸化膜(SiO2)のエッチレートとの関係を示すグラフであり、図4は、ダイレクトプラズマ生成ステップS03において、図3の場合と同じ条件下でダイレクトプラズマを生成した場合の圧力および印加パワーとシリコン窒化膜(SiNx)のエッチレートの関係を示すグラフである。
【0038】
図5は、ダイレクトプラズマ生成ステップS03における圧力および印加パワーとシリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比の関係を示す。
【0039】
図3に示すように、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマによるシリコン酸化膜のエッチングにおいて、エッチレートは工程チャンバ10内の圧力に反比例して小さくなる。すなわち、図3において圧力に対するエッチレートのグラフの傾き(接線傾き)は負である。したがって、圧力が高くなるにつれ、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマによるシリコン酸化膜のエッチングレートは低くなる。
【0040】
例えば、ダイレクトプラズマ生成時の印加パワーが240Wの場合、ダイレクトプラズマ生成時の圧力が200mTorrにまで高くなると圧力条件が130mTorrの場合に比べて、シリコン酸化膜のエッチレートは約18%程度減少する。ダイレクトプラズマ生成時の圧力を270mTorrにまで更に高めると、シリコン酸化膜のエッチレートはさらに低くなるが、その傾きの絶対値は小さくなる。
【0041】
3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマ生成時の印加パワーを320Wに上げると、全般的に活性種の濃度が高くなるので、パワーが240Wの場合に比べて全般的にエッチレートが増加するが、ダイレクトプラズマ生成時の圧力が増加するにつれシリコン酸化膜のエッチレートは減少し、従って、圧力に対するエッチレートのグラフの傾きは240Wの場合と同様に負である。
【0042】
一方、図4に示すように、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマによるシリコン窒化膜のエッチングにおいて、シリコン窒化膜のエッチレートは、シリコン酸化膜のエッチレートの挙動とは異なって、ダイレクトプラズマ生成時の圧力に比例して全般的に大きくなる。すなわち、図4において圧力に対するエッチレートのグラフの傾き(接線傾き)は、図3のグラフとは異なって、正である。したがって、ダイレクトプラズマ生成時の圧力が高くなるにつれ、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマによるシリコン窒化膜のエッチレートは高くなる。
【0043】
例えば、ダイレクトプラズマ生成時の印加パワーが240Wの場合、ダイレクトプラズマ生成時の圧力が200mTorrにまで高くなると圧力条件が130mTorrの場合に比べて、シリコン窒化膜のエッチレートは約14%程度増加する。圧力条件を270mTorrにまでさらに高めると、シリコン窒化膜のエッチレートは、200mTorrの場合に比べて、約15%程度さらに増加する。
【0044】
ダイレクトプラズマ生成時の印加パワーを320Wに上げると、シリコン酸化膜のエッチレートの挙動とは異なって、シリコン窒化膜のエッチレート自体は印加パワーが240Wの場合に比べて大きくは変わらない。ただし、印加パワーが240Wの場合と同様にダイレクトプラズマ生成時の圧力が増加するにつれて全般的にシリコン窒化膜のエッチレートは増加し、従って、圧力に対するエッチレートのグラフの傾きは全般的に正である。ただし、圧力が130mTorrから200mTorrに増加する間には、シリコン窒化膜のエッチレートはほとんど変化せず、圧力が270mTorrにまでさらに増加すると、エッチレートが30%ぐらい急激に増加する。
【0045】
NANDやDRAMのような半導体デバイスの製造においては、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を可能な限り大きくしなければならない場合がある。このためには、同じ条件下でシリコン酸化膜のエッチレートをできるだけ低くし、シリコン窒化膜のエッチレートをできるだけ高くしなければならない。
【0046】
図3および図4に示すように、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマによるシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜のエッチングにおいて、シリコン酸化膜およびシリコン窒化膜の圧力/印加パワーに対するエッチレート挙動は互いに異なる。したがって、これを活用して、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマ生成時の圧力および印加パワーを調節することにより、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を大きく向上させることができる。
【0047】
すなわち、図5に示すように、同じ印加パワーの場合、F3NOを含むエッチングガスのダイレクトプラズマ生成時の圧力を高くすることで、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を大きくすることができる。これは、前述したように、130mTorr~270mTorrの圧力範囲内において、圧力に対するシリコン酸化膜のエッチレートのグラフの傾きが負であるのに対し、圧力に対するシリコン窒化膜のエッチレートのグラフの傾きが正であるからである。従って、好ましくは、圧力に対するシリコン窒化膜のエッチレートの傾きがプラスであり、圧力に対するシリコン酸化膜のエッチレートの傾きがマイナスの条件を満たす圧力範囲内で該圧力範囲の中央値(図3および図5では、200mTorr)より大きい値に圧力条件を設定することで、可能な限りエッチング選択比を増加させることができる。
【0048】
ただし、本発明はこれに限定されず、圧力に対するエッチレートのグラフの傾きの符号が同じであっても、圧力に対するシリコン酸化膜およびシリコン窒化膜のエッチレートの傾きの絶対値が互いに異なると、圧力条件を調節することで、シリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を大きくすることができる。例えば、圧力が増加するにつれてシリコン酸化膜のエッチレートが増加する圧力範囲であっても、該圧力範囲において圧力が増加するにつれてシリコン窒化膜のエッチレートがより急峻に増加するならば、該圧力範囲で圧力を可能な限り大きくしてエッチング選択比を大きくすることができる。また、圧力が増加するにつれてシリコン酸化膜のエッチレートが実質的に変わらず、該圧力範囲で圧力が増加するにつれてシリコン窒化膜のエッチレートが増加すれば、このような圧力範囲でも圧力を適切に調節することによって、同様にシリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比を増加させることができる。
【0049】
すなわち、所定の圧力範囲で圧力に応じたシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜のエッチレートの変化率が異なる圧力範囲を見出し、エッチング選択比が極大化するように圧力条件を選択することができる。
【0050】
図3図5では、圧力範囲を130mTorr~270mTorrとして例示し、圧力に対するシリコン窒化膜およびシリコン酸化膜のエッチレートの傾きを考慮して、エッチング選択比を極大化しているが、本発明は、このような例示的な圧力範囲(および印加パワーの範囲)に限定されず、圧力に対するエッチレートの傾きの差が大きい他の圧力範囲でも同様に適用することができる。例えば、圧力範囲は、1mTorr~10Torr範囲内でエッチング選択比を増加させることができる任意の範囲であればよい。
【0051】
一方、同じ圧力条件下でダイレクトプラズマ生成のための印加パワーを増加させるにつれ、シリコン酸化膜はエッチレートが大きく増加するのに対し、シリコン窒化膜は相対的な増加率が小さい。従って、図5から分かるように、同じ圧力条件下では、ダイレクトプラズマ生成のための印加パワーが低いほどシリコン酸化膜に対するシリコン窒化膜のエッチング選択比が増加する。ただし、印加パワーを下げることによりシリコン窒化膜のエッチレートが減少することになるので、印加パワーを調節してエッチング選択比を増加させる場合には、エッチレートが減少しすぎないように印加パワーを決めることが好ましい。図3図5では、印加パワーを240W以上、320W以下の範囲で例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、印加パワーの範囲は、10W以上、50,000W以下の範囲内でエッチング選択比を増加させることができる任意の範囲であればよい
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前述した本発明のエッチング方法を用いて、基板上に半導体デバイスを製造することができる。例えば、本発明の一実施形態に係る半導体デバイスの製造方法は、基板上にシリコン窒化膜(第1シリコン含有膜)およびシリコン酸化膜(第2シリコン含有膜)を含むシリコン含有膜を蒸着する蒸着ステップと、前述した本発明に係るエッチング方法を用いて、シリコン窒化膜をシリコン酸化膜に対して高い選択比でエッチングするステップとを含む。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】