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特表2024-501459緩徐な拡散により化合物を貯蔵及び放出するための生体機能性電極
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】緩徐な拡散により化合物を貯蔵及び放出するための生体機能性電極
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/16 20060101AFI20240104BHJP
   H01M 8/1097 20160101ALI20240104BHJP
   H01M 8/0271 20160101ALI20240104BHJP
   G01N 27/327 20060101ALI20240104BHJP
   G01N 27/416 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01M8/16
H01M8/1097
H01M8/0271
G01N27/327 353R
G01N27/416 321
G01N27/416 336G
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535633
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-01
(86)【国際出願番号】 EP2021084815
(87)【国際公開番号】W WO2022122832
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】20306523.0
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】509025832
【氏名又は名称】サントル ナシオナル ドゥ ラ ルシェルシェ シアンティフィク
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE
(71)【出願人】
【識別番号】513318548
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ・ドゥ・ロレーヌ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE DE LORRAINE
(71)【出願人】
【識別番号】516065504
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ グルノーブル アルプ
(74)【代理人】
【識別番号】100139594
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健次郎
(72)【発明者】
【氏名】コスニエ,セルジュ
(72)【発明者】
【氏名】マクマートリー,ステファン
(72)【発明者】
【氏名】エルマズリア,オマール
(72)【発明者】
【氏名】リアヒ,アンナ
(72)【発明者】
【氏名】ネデレック,ヤニグ
【テーマコード(参考)】
5H126
【Fターム(参考)】
5H126AA02
5H126FF04
5H126JJ04
(57)【要約】
貯蔵フィルム(2)を具備する電極(1)。貯蔵フィルム(2)は、対象化合物が貯蔵される少なくとも1つの包含部(4)を具備する支持体材料の層(3)と、少なくとも1つの包含部を封止する透過性の封着材料の壁体(5)とを備える。貯蔵フィルム(2)は、封着材料の壁体を少なくとも部分的に覆う多孔層(6)をさらに具備し、該多孔層の表面のうち少なくとも一部分は電極の活性表面を構成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極(1)であって:
― 貯蔵フィルム(2)であって、
● 少なくとも1つの包含部(4)を具備する支持体材料の層(3)であって、ここで、前記少なくとも1つの包含部が、
■ 対象化合物を含有し、
■ 前記支持体材料の前記層の中に少なくとも部分的に包み込まれた少なくとも1つの個別のリザーバを構成し、
■ 前記支持体材料の前記層の中に広がる空洞の形態を有する、
前記支持体材料の層(3)と、
● 前記少なくとも1つの包含部を封止する封着材料の壁体(5)であって、ここで、前記対象化合物が制御された方式で、例えば所望の通過又は拡散速度に従って、それを通って移動又は拡散することを可能にすることができる、封着材料の壁体と
を具備する貯蔵フィルム(2)、
― 封着材料の壁体を少なくとも部分的に覆う多孔層(6)であって、多孔層の表面のうち少なくとも一部分は電極の活性表面積を構成する、前記多孔層(6)
を具備する電極(1)。
【請求項2】
前記電極(1)が、前記対象化合物が前記貯蔵フィルム(2)から放出又は遊離される放出表面又は遊離表面と呼ばれる表面(413)を具備し、前記放出表面は、
― 封着材料の前記壁体(5)の表面を少なくとも部分的に含み、
― 前記多孔層(6)に面して位置している、
請求項1に記載の電極(1)。
【請求項3】
前記多孔層(6)が、触媒(8)を具備している、請求項1又は2に記載の電極(1)。
【請求項4】
― 前記封着材料、若しくは前記封着材料及び前記支持体材料が導電性材料であるか、又は
― 前記貯蔵フィルム(2)は絶縁しており、かつ前記多孔層(6)は多孔性の導電性材料(7)及び前記触媒(8)を具備している、
請求項1~3のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項5】
各々が主として前記貯蔵フィルム(2)の厚さ(e)の内部に広がる細長いか又は丸い形状を有する、いくつかの個別の包含部(4)を具備する、請求項1~4のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項6】
前記貯蔵フィルム(2)は、前記少なくとも1つの包含部(4)を少なくとも部分的に包み込む封入材料(9)を具備して、前記封入材料の表面(411)が前記少なくとも1つの包含部(4)の壁部(41)の少なくとも一部分を構成するようになっている、請求項1~5のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項7】
封着材料の前記壁体(5)は多孔性又は半透過性の壁体である、請求項1~6のいずれか1項に記載の電極(1)。
【請求項8】
バッテリー又はセンサにおける、請求項1~7のいずれか1項に記載の電極(1)の使用。
【請求項9】
貯蔵フィルム(2)を具備する電極(1)の製造方法であって、前記貯蔵フィルムは少なくとも1つの包含部(4)を具備し、前記方法は、
― 支持体材料の層(3)に少なくとも1つの空洞(43)を形成するステップと、
― 支持体材料の前記層に前記少なくとも1つの包含部を形成するために、前記少なくとも1つの空洞を封止するように支持体材料の前記層(3)の上に封着材料のフィルム(5)を堆積させるステップであって、封着材料の前記壁体は、対象化合物が制御された方式で、例えば所望の通過速度又は拡散速度に従って、それを通って移動又は拡散することを可能とすることができ、かつ前記少なくとも1つの包含部は、
■ 対象化合物を含有し、
■ 前記支持体材料の前記層の中に少なくとも部分的に包み込まれた少なくとも1つの個別のリザーバを構成し、
■ 前記支持体材料の前記層の中に広がる空洞の形態を有する、ステップと、
― 封着材料の前記フィルム(5)の上に多孔層(6)を形成するステップであって;多孔層の表面のうち少なくとも一部分は電極活性表面積(1)を形成することができる、ステップと
から成るステップを含む方法。
【請求項10】
― 前記少なくとも1つの包含部(4)の形成ステップの前の、下地層の上に支持体材料の前記層(3)を堆積することから成るステップと、
― 封着材料の前記フィルム(5)の前記堆積ステップの後の、前記貯蔵フィルム(2)を得るために前記下地層を溶解することから成るステップと
を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
封着材料の前記フィルム(5)の前記堆積ステップの前に、支持体材料の前記層(3)に形成された前記少なくとも1つの空洞(43)の壁部(41,42)を、封入材料の層(9)で覆うことから成るステップを含む、請求項9又は10に記載の方法。
【請求項12】
前記少なくとも1つの包含部(4)を対象化合物で充填することから成るステップを含む、請求項9~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの空洞(43)を充填するステップは、封着材料の前記フィルム(5)の前記堆積ステップに先立って実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも1つのオクルージョン(4)を充填するステップは、封着材料の前記フィルム(5)の前記堆積ステップの後で、封着材料の壁体(5)を通り抜ける毛細管又は針を使用して前記対象化合物又は前記対象化合物の前駆体を注入することにより実施される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
封着材料の前記壁体(5)に、直径が10nmより大きい1以上の穿孔を作ることから成るステップを含む、請求項9~14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
封着材料の前記フィルム(5)の上に多孔層(6)を形成することから成るステップを含み、前記多孔層の表面のうち少なくとも一部分は前記電極(1)の活性表面積を形成することができる、請求項9~15のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
前記多孔層(6)の前記堆積ステップは、
― 封着材料の前記壁体(5)の少なくとも一部分の上に多孔性の導電性材料(7)を堆積させるサブステップ、次に、
― 前記多孔性の導電性材料の中、及び/又は上、及び/又は下に触媒(8)を固定化するサブステップ
ことから成るサブステップを含み;
前記多孔層は前記多孔性の導電性材料及び前記触媒を具備している、請求項9~16のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体機能性デバイスに関する。本発明は、限定するものではないが特に、(バイオ)センサのような分析用デバイス、(バイオ)バッテリーのような(バイオ)電気化学的デバイス、及び(生物)化学的/生物学的化合物の放出/遊離のためのデバイスの分野に関する。
【従来技術】
【0002】
バイオバッテリーは従来知られており、その作動には例えば添加剤、補助因子又は酵素基質のような(生物)化学物質の添加を必要とする。実際、最新式のバイオバッテリーは、バイオバッテリーが機能しうるように連続的に添加されることになる化合物、例えばアノードで消費される酵素又は微生物の基質を必要とする。
【0003】
バイオレセプター、例えばタンパク性又は酵素型のバイオレセプターを含むバイオセンサも、従来知られている。そのようなバイオセンサの作動はバイオレセプターの活性化又は阻害に基づいている。バイオレセプターの活性化はほとんどの場合は特定の分析物の特異的検出を可能とする一方で、バイオレセプターの阻害はほとんどの場合、阻害剤化合物群の検出を可能とする。
【0004】
化合物、主として医用化合物の、特に生物体における制御された方式での放出/遊離のためのカプセル剤又は丸剤は、従来知られている。カプセル剤の場合、その大多数は大きさが1ミリメートル未満であり、生物体の特異的標的物へと移行するように液体の生体媒質内に直接導入されることが意図されている。
【0005】
本発明の目的は、特に:
― 1以上の化合物を、後に該化合物を遊離させるために貯蔵するための、肉眼で見えるサンプルを提案すること、及び/又は
― 後に放出される予定の1以上の化合物を保存するための、肉眼で見えるサンプルを提案すること、及び/又は
― 肉眼で見えるサンプルであって、該サンプル中に貯蔵された1以上の化合物を適時に一様で連続的かつ制御された方式で遊離させるためのサンプルを提案すること、及び/又は
― 厚さが1ミリメートル未満、好ましくは500ミクロン未満のフィルムの形態の肉眼で見えるサンプルであって、概ね平坦な2つの面には区別があってその表面積は1平方ミリメートルより大きく、好ましくは1平方センチメートルより大きく、該サンプル中に貯蔵された1以上の化合物を一様で連続的かつ制御された方式で遊離させる能力を有するサンプルを提案すること、及び/又は
― 現場で直接使用されるように意図され、かつ機能するためにいかなる外部の化合物若しくは要素の添加も必要としない分析用デバイスを提案すること、及び/又は
― 任意の媒体、例えば生物媒体中で直接使用されるように意図され、かつ機能するために生産品若しくは化合物のいかなる添加も必要としない、(バイオ)バッテリーのための電極、特に(バイオ)アノードを生産すること、及び/又は
― 現場で直接使用されるように意図され、かつ機能するために生産品若しくは化合物のいかなる添加も必要としないバイオセンサ、特に酵素バイオセンサを生産すること
である。
【発明の開示】
【0006】
上記目的のために、電極であって:
― 貯蔵フィルムであって、
●少なくとも1つの包含部を具備する支持体材料の層であって、少なくとも1つの包含部は対象化合物を含有している、層、
●少なくとも1つの包含部を封止する封着材料の壁体であって、対象化合物がそれを通って移動又は拡散することを可能にする能力を有する、壁体
を具備する貯蔵フィルムと、
― 封着材料の壁体を少なくとも部分的に覆う多孔層であって、該多孔層の表面のうち少なくとも一部分は電極の活性表面積を構成する、多孔層と
を具備する電極が提案される。
【0007】
少なくとも1つの包含部は1以上の対象化合物を含むことができる。対象化合物は、液体又は固体、例えば粉末であってよい。
好ましくは、封着材料の壁体は透過性であると考えられている。
好ましくは、封着材料の壁体は、対象化合物が封着材料の壁体を通って移動又は拡散することを可能にすることができる。
【0008】
好ましくは、封着材料の透過性の壁体は、対象化合物が封着材料の壁体を、制御された方式で、例えば所望の通過速度又は拡散速度に従って、通り抜けることを可能にすることができる。
【0009】
少なくとも1つの包含部の壁部は、封着材料の壁体を含んでもよい、すなわち全体的又は部分的に封着材料の壁体で構成されてもよい。
【0010】
少なくとも1つの包含部は、0.1μmより大きい最小フェレー径及び該包含部の直径より小さい最大フェレー径を有することができる。
【0011】
好ましくは、包含部は、支持体材料の層の内部に完全に含まれる。好ましくは、貯蔵フィルムは包含部を包囲するか又は包み込む。
【0012】
好ましくは、支持体材料の層及び封着材料の壁体が共に、ひとまとまりのアセンブリ又は層又はフィルムを形成する。ひとまとまりのアセンブリ又は層又はフィルムは、貯蔵フィルムを構成することができる。
【0013】
該貯蔵フィルムは本発明による生体機能性デバイスとなりうる。
電極は、対象化合物が貯蔵フィルムから放出又は遊離される放出表面又は遊離表面と呼ばれる表面を具備することが可能であり、前記放出表面は、
― 少なくとも部分的に、封着材料の壁体の表面を含み、
― 多孔層に面して位置している。多孔層は、少なくとも部分的に、放出表面を覆うことができる。
【0014】
放出表面は、少なくとも部分的に、貯蔵フィルムの外面のうちの1つ又は表面を含むことができる。貯蔵フィルムの外面のうちの1つ又は表面は、貯蔵フィルムの全表面積の一部分に相当しうる。
【0015】
好ましくは、封着材料の透過性の壁体は、放出表面を通して機能性化合物の遊離又は放出を行うことができる。
【0016】
好ましくは、封着材料の透過性の壁体は、放出表面が所定の媒質と接触している時、好ましくは放出表面が所定の媒質に接触している時にのみ、対象化合物が封着材料の壁体を通過することを可能にすることができる。
【0017】
本出願においては、「透過性の壁体」とは、1以上の分子種が自由拡散して通り抜けることが可能な壁体、フィルム又は材料層であると理解することができる。
【0018】
封着材料の壁体は、
― 対象化合物が通過若しくは拡散することを可能にする封着材料の本来的特性、又は
― 封着材料の中に少なくとも1つの細孔、若しくは少なくとも1つの穿孔が存在すること(封着材料は不透過性である、すなわち本来的には対象化合物が拡散若しくは通過することを可能にする能力はない)
により、透過性であってよい。
【0019】
封着材料の壁体は、さらに、電極をその中に浸漬させるための1以上の所定の媒質に対して、透過性であってよい。
【0020】
好ましくは、封着材料の透過性の壁体は、制御された方式で、例えば所望の放出速度又は遊離速度に従って、放出表面を通した機能性化合物の遊離又は放出を行うことができる。好ましくは、放出又は遊離の速度は、封着材料を通る対象化合物の通過又は拡散の速度に等しい。
【0021】
好ましくは、対象化合物は、放出表面から、放出表面を接触させて配置する予定の媒質の中に、遊離/放出される。
【0022】
多孔層は触媒を具備することができる。
【0023】
触媒は、無機触媒、例えば配位錯体又は配位化合物であってもよいし、有機触媒、例えば酵素触媒であってもよい。
【0024】
本発明によれば:
― 封着材料、若しくは封着材料及び支持体材料は、導電性材料であってよいか、又は
― 貯蔵フィルムは絶縁性であってよく、及び/若しくは多孔層は多孔性の導電性材料と触媒とを具備することができる。
【0025】
電極は、バッテリー又はバイオバッテリーの、例えば生物燃料電池の電極として使用されることを目的としていてもよい。電極は、バイオバッテリーの電極又はバイオセンサの電極として使用されることを目的としていてもよい。
【0026】
触媒は、多孔性の導電性材料の中、及び/又は同材料の上、及び/又は同材料の下に固定化することができる。
多孔層はさらに、触媒が含有された透過性の捕捉材料を具備することもできる。
【0027】
透過性の捕捉材料は、対象化合物が好ましくは制御された方式で通過するのを可能にすることができる。透過性の捕捉材料は、イオン、好ましくは電解質又は電解質を構成することができるイオンが通過することを可能にすることができる。
捕捉材料は電気的絶縁体であってよい。
【0028】
捕捉材料は、電流が捕捉材料内部を通過することを可能にすることができる、レドックスメディエータと呼ばれる酸素還元メディエータを具備することができる。この場合、多孔層は多孔性の導電層となりうる。
【0029】
捕捉材料はゲル及び/又はポリマーであってよい。好ましくは、触媒は捕捉材料の中で固定化される。
【0030】
捕捉材料は、層又はフィルムを形成してもよいし、ナノ粒子及び/又はマイクロ粒子及び/又はマクロ粒子のアセンブリであってもよい。捕捉材料のフィルム又は層は、多孔性の導電性材料の中、及び/又は同材料の上、及び/又は同材料の下に、配置することができる。捕捉材料を形成する粒子のアセンブリは、多孔層の内部に分散されてもよいし、多孔層の一区域に寄せ集められてもよい。
【0031】
少なくとも1つの包含部は、支持体材料の層の中に広がる空洞の形態を有することができる。
【0032】
電極は、主に貯蔵フィルムの厚さ(e)の内側に広がっている各々が細長いか又は丸い形状を有するいくつかの個別の包含部を具備することができる。
【0033】
好ましくは、貯蔵フィルムの厚さ(e)は、主として貯蔵フィルムを多孔層に接続する方向に伸びる。
【0034】
少なくとも1つの包含部は、支持体材料の層の中に少なくとも部分的に包み込まれた、少なくとも1つの個別のリザーバを構成することができる。
【0035】
貯蔵フィルムは、少なくとも1つの包含部を少なくとも部分的に包み込んでいる封入材料を具備して、該封入材料の表面が少なくとも1つの包含部の壁の少なくとも一部分を構成するようになっていてもよい。
【0036】
好ましくは、封入材料はフィルム又は層を構成する。さらに好ましくは、封入材料は包含部を部分的にしか包み込まない。
【0037】
封入材料は支持体材料とは異なる材料で構成されてよい。封入材料は支持体材料と同一であってもよい。
【0038】
封入材料は封着材料と同一であってもよい。好ましくは、支持体材料の層及び封入材料のフィルムはひとまとまりのアセンブリ又は層又はフィルムを形成する。支持体材料の層及び封入材料のフィルムによって形成されたひとまとまりのアセンブリ、層又はフィルムは、支持体材料の層を構成することができる。
【0039】
好ましくは、支持体材料の層、封入材料のフィルム及び封着材料の壁体は、ひとまとまりのアセンブリ又は層又はフィルムを形成する。支持体材料の層、封入材料のフィルム及び封着材料の壁体によって形成されたひとまとまりのアセンブリ、層又はフィルムは、貯蔵フィルムを構成することができる。
【0040】
好ましくは、支持体材料、封入材料及び/又は封着材料は、可撓性及び/又は弾性を有する。
【0041】
好ましくは、支持体材料、封入材料及び/又は封着材料は、ポリマー材料である。
【0042】
封着材料は、支持体材料及び/又は封入材料とは異なっていてよい。
【0043】
封着材料の壁体は、多孔性又は半透過性の壁体であってよい。
【0044】
「多孔質壁」は、少なくとも1つの細孔を具備する層、フィルム又は壁体と理解することができる。細孔は、該細孔が存在する壁体を一方の側から他方の側へと通り抜ける管路又はチャネルであってよい。
【0045】
細孔径又は拡散係数は、所望の対象化合物の放出速度又は遊離速度を得るために調整することができる。対象化合物の放出速度又は遊離速度は、電極を浸漬させるための媒質に応じたものであってよい。
【0046】
封着材料は、多孔性又は透過性又は半透過性であってよい。
【0047】
封着材料は不透過性であってもよく、かつ封着材料の壁体を透過性にするために壁体に配置構成された1以上の細孔を具備することができる。
【0048】
本発明によれば、バッテリー若しくはバイオバッテリーとしての、又はバッテリー若しくはバイオバッテリーにおける、本発明の電極の使用も提案される。
【0049】
本発明によれば、センサ若しくはバイオセンサとしての、又はセンサ若しくはバイオセンサにおける、本発明の電極の使用も提案される。
【0050】
本発明によれば、生体機能性デバイスとしての、又は生体機能性デバイスにおける、本発明の電極の使用も提案される。
【0051】
本発明によれば、貯蔵フィルムを具備する電極であって、前記貯蔵フィルムは少なくとも1つの包含部を具備する、電極の製造方法であって、
― 支持体材料の層の中に少なくとも1つの空洞を形成することから成るステップと、
― 支持体材料の層の中に少なくとも1つの包含部を形成するために、少なくとも1つの空洞を封止するため支持体材料の層の上に封着材料のフィルムを堆積させることから成るステップと、
― 封着材料のフィルムの上に多孔層を形成することから成るステップであって;該多孔層の表面の少なくとも一部分は、該電極の電極活性表面積を形成することができる、ステップと
を含む方法も提案される。
【0052】
好ましくは、多孔層は多孔性の導電性材料及び触媒を具備する。
【0053】
封着材料のフィルムは、支持体材料の層の上に張り付けられてもよい。
【0054】
好ましくは、少なくとも1つの包含部は対象化合物を含む。粉末形態の対象化合物は、電極を液体の媒質に浸すことにより放出又は遊離されることを目的としたものであってよい。粉末形態の対象化合物は、液体形態で貯蔵された対象化合物よりも緩徐に放出されるという利点を有することができる。
【0055】
対象化合物は、制御された方式で、例えば電極が所定の液体に浸漬された時に、放出又は遊離されることが可能である。対象化合物は、電極が所定の液体に浸漬された時に、好ましくは浸漬された時にのみ、放出又は遊離されることが可能である。
少なくとも1つの空洞は、0.1μmより大きい最小フェレー径、及び包含部の直径より小さい最大フェレー径を有する。
【0056】
「封着材料のフィルム」は、支持体材料の層の上に堆積される材料の固体フィルム、固体ストリップ又は固体層と理解することができる。好ましくは、封着材料のフィルムは一体である。
【0057】
好ましくは、各々の空洞は支持体材料の層の内部に含まれる。
【0058】
好ましくは、各々の空洞は封止されるべき単一の開孔部を含んでいる。
【0059】
各々の空洞の各々の開孔部は、封着材料の壁体によって封止することができる。
【0060】
好ましくは、封着材料のフィルムの堆積ステップの後、包含部は、封着材料の壁体を構成する封着材料のフィルムによって封止される。
【0061】
封着材料の壁体は透過性であってもよい。
該方法は、
― 少なくとも1つの包含部の形成ステップの前の、下地層の上に支持体材料の層を堆積させることから成るステップ、
― 封着材料のフィルムの堆積ステップの後の、貯蔵フィルムを得るために下地層を溶解することから成るステップ
を含むことができる。
【0062】
該方法は、封着材料のフィルムの堆積のステップの前に、支持体材料の層の中に形成された少なくとも1つの空洞の壁部を封入材料の層で覆うことから成るステップを含むことができる。
【0063】
少なくとも1つの空洞の壁部は、少なくとも1つの空洞の壁部を覆うステップが実施されない場合、少なくとも1つの包含部の壁部のうち封着材料によって形成された部分を除き、少なくとも1つの包含部の壁部に相当することができる。
【0064】
少なくとも1つの空洞の壁部は、少なくとも1つの空洞の壁部を覆うステップが実施される場合は少なくとも1つの包含部の壁部とは異なっていてよい。この場合、封入材料が少なくとも1つの包含部の壁部を構成することができる。
【0065】
少なくとも1つの空洞の壁部を覆うことから成るステップは、封入材料の層又はフィルムの堆積、好ましくは等方性の堆積を、含むことができる。
【0066】
該方法は、少なくとも1つの包含部を対象化合物で充填することから成るステップを含むことができる。
【0067】
少なくとも1つの空洞を充填するステップは、封着材料のフィルムの堆積ステップの前に実施することができる。
【0068】
堆積ステップの前に充填ステップを実施することは、固体の対象化合物に特に適しているが、液体の対象化合物にも適している可能性がある。
【0069】
少なくとも1つのオクルージョンを充填するステップは、封着材料のフィルムの堆積ステップの後で、封着材料の壁体を通り抜ける毛細管又は針を使用して対象化合物又は対象化合物の前駆体を注入することにより、実施することができる。
【0070】
堆積ステップの後で充填ステップを実施することは、液体の対象化合物に特に適しているが、固体の化合物にも適している可能性がある。
【0071】
堆積ステップの後、該方法は、封止壁の機械的穿孔により、又は超音波処理、化学的処理、光学的処理若しくはプラズマ処理により、封着材料の壁体を透過性にすることから成るステップを含むことができる。
【0072】
該方法は、封着材料の壁体に1以上の穿孔を作ることから成るステップであって;該穿孔の直径は10nmよりも大きいステップを含むことができる。
【0073】
充填ステップは、該充填ステップが封着材料の壁体を通り抜ける毛細管又は針を使用した対象化合物又は対象化合物の前駆体の注入によって実行される場合、穿孔ステップと同時に実施されてもよい。
【0074】
好ましくは、穿孔ステップは、封着材料のフィルムの上に多孔層を形成することから成るステップの前に実施される。
【0075】
穿孔の直径は、封着材料の壁体の厚さに対して垂直な方向に伸びることができる。封着材料の壁体の厚さは、貯蔵フィルムを多孔層に接続する方向に伸びることができる。
【0076】
多孔層の堆積のステップは、
― 封着材料の壁体の少なくとも一部分の上に多孔性の導電性材料を堆積させることから成るサブステップ、次に、
― 多孔性の導電性材料の中、及び/又は上、及び/又は上に、触媒(8)を固定化することから成るサブステップ
を含むことが可能であり、多孔層は多孔性の導電性材料及び触媒を具備する。
【0077】
好ましくは、多孔性の導電性材料は、放出表面の少なくとも一部分、好ましくは全体の上に堆積される。
【0078】
該方法は、捕捉材料の中に触媒を捕捉及び/又は固定化することから成るステップを含むことができる。
【0079】
捕捉材料の中に触媒を捕捉するステップの後で、又は該ステップと同時に、該方法は、触媒を含有する捕捉材料を多孔性の導電性材料の中、及び/又は上、及び/又は下に堆積させることから成るステップを含むことができる。
【0080】
本発明による方法は、本発明による電極の実現に適している。本発明による電極は、好ましくは、本発明による方法によって実現される。好ましくは、本発明による方法は、本発明による電極を実現するように特別に設計されている。よって、本発明による方法のいかなる特性も本発明による電極に組み込むことが可能であり、逆もまた同様である。
【0081】
本発明のその他の利点及び特徴は、全く限定的なものではない実装及び実施形態の詳細な説明を読めば、また以降の添付図面から、明白となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0082】
図1図1A、1B及び1Cは、本発明による生体機能性デバイスを製造する方法のステップの図式表示である。
図2図2A、2B、2C及び2Dは、本発明による生体機能性デバイスを製造する方法のステップの図式表示である。
図3図3A及び3Bは本発明による電極の図式表示である。
図4】本発明による2つの生体機能性デバイスである貯蔵フィルム及び電極について、放出表面を通って遊離したメチレンブルーのモル濃度の変化の推移を時間の関数として示すグラフ。
図5】本発明の電極によるオルトキノンのカテコールへの還元によって生成されたカソード電流の推移を、時間及び溶液中の溶存酸素量の関数として示すグラフ。触媒としてチロシナーゼ及び対象化合物としてカテコールを含む電極が、溶液中の溶存酸素を検出するためのバイオセンサとして使用されている。
図6】本発明の電極によるオルトキノンのカテコールへの還元によって生成されたカソード電流の推移を、時間及び溶液中の安息香酸量の関数として示すグラフ。触媒としてチロシナーゼ及び対象化合物としてカテコールを含む電極が、溶液中の安息香酸を検出するためのバイオセンサとして使用されている。
【実施形態の説明】
【0083】
本明細書中以下に記載される実施形態は全く限定的ではないので、記載された特性のうちの選択物だけを、記載された他の特性とは切り離して(この選択物がこれらの他の特性を含む言い回しの範囲内で切り離されるとしても)特に具備している本発明の変形形態は、特性のうちのこの選択物が技術的利点を付与するか又は本発明を先行技術に対して差別化するのに十分である場合に、考慮することができる。この選択物は、少なくとも1つの、好ましくは機能的な特性を含み、構造上の詳細は伴わないか、又は構造上の詳細の一部のみを、この部分が単独で技術的な利点を与えるか若しくは先行技術に対して本発明を差別化するのに十分である場合に、伴っている。
【0084】
図1及び2を参照すると、生体機能性デバイス1の製造のための方法の実施形態が示されている。図3を参照すると、電極1の実施形態が示されている。貯蔵フィルム(2)の厚さは、典型的には50ミクロン~数センチメートルに含まれる。好ましくは、貯蔵フィルム(2)の厚さは500μm~5mmに含まれる。貯蔵フィルム2は少なくとも1つの包含部4を具備する。
【0085】
図1及び2を参照すると、該方法は、支持体材料の層3の中に少なくとも1つの空洞43を形成することから成るステップを含む。支持体材料はポリマーである。非限定的な例としては、支持体材料は、可撓性(可塑性)又は剛性(非可塑性)の材料、例えばシリコン、酸化亜鉛、窒化アルミニウム、酸化シリコン、酸化アルミニウム、ポリマー、プラスチック材料及び金属などである。好ましくは、支持体材料はポリウレタン(PU)又はポリメタクリル酸メチル(PMMA)である。少なくとも1つの空洞43は、0.05μm~5mm、好ましくは0.1μm~1mmに含まれるフェレー径を有する。
【0086】
該製造方法はさらに、支持体材料の層3の中に少なくとも1つの包含部4を形成するために、少なくとも1つの空洞43を封止するため支持体材料の層3の上に封着材料のフィルム5を堆積させることから成るステップを含む。非限定的な例としては、封着材料はポリウレタン(PU)であり、かつ従って該実施形態によれば不透過性である。封着材料のフィルム5の厚さは典型的には1μm~1cm、好ましくは25μm~400μmに含まれる。封着材料は、金属材料、半導体材料、圧電材料、絶縁材料、並びにエポキシ樹脂及び生体適合性樹脂のようなポリマーから、選択することができる。非限定的な例としては、封着材料は、例えば、PMMA、ポリウレタン、生体適合性ポリマー、金のような金属であってよい。封着材料は、樹脂を溶解するステップの際に使用される溶剤に耐えることができる。
【0087】
該方法は、想定される適用の種類に応じた対象化合物を用いて少なくとも1つの包含部4を充填することから成るステップを含む。少なくとも1つの空洞43を充填するステップは、封着材料のフィルム5の堆積ステップに先立って実施される。充填ステップは、封着材料のフィルム5の堆積ステップに先立ち、対象化合物溶液の中に貯蔵フィルム2を浸漬することから成る。別例として、充填ステップは、封着材料のフィルム5の堆積ステップに先立ち、対象化合物を例えば粉末形態で包含部4に注ぎ入れることから成っていてもよい。
【0088】
該方法は、封着材料の壁体5に1以上の穿孔を作ることから成るステップを含む。実施形態によれば、穿孔は、毛細管又は針を使用して、封着材料の壁体(5)の機械的な穿孔によって作られる。穿孔は10nmより大きい直径を有する。非限定的な例として、穿孔の直径は、想定される用途に応じて、並びに対象化合物の種類及び固体か液体かの状態に応じて、100μmと空洞43のフェレー径との間に含まれる。
【0089】
非限定的な実施形態によれば、該方法は、封着材料のフィルム5の上に多孔層6を形成することから成るステップを含む。多孔層6の厚さは、典型的には400nm~20μmに含まれる。好ましくは、多孔層6の厚さは典型的には1~5μmに含まれる。多孔層6の表面の少なくとも一部分は、電極1の活性表面積を形成することができる。
【0090】
多孔層6の堆積のステップは、多孔性の導電性材料7、実施形態によればカーボンナノチューブ(CNT)7を、封着材料の壁体5の少なくとも一部分に、実施形態によれば封止壁5の全体に、堆積させることから成るステップを含む。CNT7の厚さは、典型的には多孔層6の厚さと同一である。多孔層6の堆積のステップはさらに、触媒8をCNT7の中、及び/又は上に、固定化することから成るステップを含む。したがって多孔層6は、CNT7及び触媒8を具備する。
【0091】
非限定的な実施形態によれば、かつ図2Bを参照すると、該方法は、封着材料のフィルム5の堆積ステップに先立ち、支持体材料の層3に形成された少なくとも1つの空洞43の壁部42を、PUの封入材料の層9で覆うことから成るステップを含む。この場合、封入材料の層9の壁部41は、少なくとも1つの包含部4の壁部41のうち封着材料によって形成された部分412を除き、包含部4の壁部41を構成する。封入材料の層9の厚さは、典型的には10nmより大きく、好ましくは30μmと空洞43のフェレー径の半分との間に含まれる。封入材料は、金属材料、半導体材料、圧電材料、絶縁材料、並びにエポキシ樹脂及び生体適合性樹脂のようなポリマーから選択可能である。好ましくは、封入材料は、樹脂を溶解するステップで使用される溶剤に耐性を有することができる。非限定的な例として、封入材料は、例えば、PMMA、ポリウレタン、生体適合性ポリマー、金のような金属であってよい。
【0092】
図3を参照すると、貯蔵フィルム2及び多孔層6を具備する電極1が記載されている。貯蔵フィルム2は、少なくとも1つの包含部4を含む支持体材料の層3を具備している。少なくとも1つの包含部4は、想定される適用の種類に応じて異なる少なくとも1つの対象化合物を含有する。貯蔵フィルム2はさらに、少なくとも1つの包含部4を封止している透過性の封着材料の壁体5を具備する。透過性の封着材料の壁体5は多孔質壁5である。
【0093】
実施形態によれば、電極1は、上述の方法の実施によって直接得られる。
【0094】
少なくとも1つの包含部4は、支持体材料の層3の中に少なくとも部分的に包み込まれた少なくとも1つの個別のリザーバ4を構成する。
【0095】
実施形態によれば、電極1は、各々が細長い形状を有しており主として貯蔵フィルム2の厚さeの内部に広がる、いくつかの個別の包含部4を具備する。
【0096】
多孔層6は、少なくとも部分的に、実施形態によれば全体的に、封着材料の壁体5を覆っている。多孔層6の表面の少なくとも一部分は、電極1の活性表面積を構成する。
【0097】
実施形態によれば、少なくとも1つの包含部4の壁部41は、少なくとも1つの包含部4の壁部41のうち封着材料によって形成された一部分412を除き、支持体材料の表面である。
【0098】
電極1は、対象化合物が貯蔵フィルム2から遊離される放出表面413を具備する。放出表面413は、少なくとも部分的に、封着材料の壁体5の表面を含む。放出表面413は多孔層6に面して位置している。実施形態によれば、多孔層6に面し、かつ包含部4の壁部41の一部分412を形成している封着材料の壁部41の一部分412の反対側に位置する、封着材料の壁体5の表面は、放出表面413を構成する。
【0099】
非限定的な実施形態によれば、支持体材料は封着材料と同一である。したがって、該実施形態によれば貯蔵フィルム2は絶縁している。
【0100】
多孔層6は、触媒8、実施形態によれば電気触媒8を具備する。多孔層6はさらに、多孔性の導電性材料7、実施形態によればカーボンナノチューブ(CNT)7を具備する。実施形態によれば、CNT7の少なくとも一部分は電極1の活性表面積を構成する。
【0101】
図3Bに示された非限定的な実施形態によれば、貯蔵フィルム2は、少なくとも1つの包含部4を少なくとも部分的に包み込む封入材料9を具備して、該封入材料の表面411が少なくとも1つの包含部4の壁部41のうち少なくとも一部分を構成するようになっている。
【0102】
この場合、少なくとも1つの包含部4の壁部は、少なくとも1つの包含部4の壁部41のうち封着材料によって形成された一部分412を除き、包含部4を包み込んでいる封入材料のフィルム9又は層9の表面である。
【0103】
この非限定的な実施形態によれば、封入材料9はPUである。
【0104】
図4を参照すると、本発明による電極1及び貯蔵フィルム2が浸漬された溶液中の対象化合物のモル濃度の変化を示すグラフが示されている。対象化合物は、貯蔵フィルム2によって溶液中に時間の関数として遊離されるメチレンブルーである。放出の速度及び放出の規則性が、本発明による貯蔵フィルム2及び本発明による電極1について評価された。
【0105】
メチレンブルーは粉末形態で包含部4に貯蔵されている。包含部4を充填するステップは、重力の影響下における、粉末形態のメチレンブルーの包含部4への流入により実施された。穿孔ステップは、各々の包含部4について、典型的には直径100μmの針を使用して、各包含部4の壁部41のうち封着材料によって形成された部分412に、単一の穿孔を作ることにより実施された。穿孔ステップは、光学顕微鏡及び針の機械的誘導システムを使用して行なわれた。
【0106】
電極1に関して、CNT7を堆積させるステップは、本発明による貯蔵フィルム2の封着材料の壁体5の上への、CNT7の溶液(分散液)の堆積によって行なわれた。該溶液は壁体5の上に真空下で120分間放置され、次いですすぎが行われた。CNT7の溶液中のCNT7の濃度は5mg/mlである。溶媒はエチレングリコールである。N,N‐ジメチルホルムアミド(DMF)又はN‐メチルピロリドン(NMP)のような溶媒は、ほとんどのポリマーを、かつ従って本実施形態による貯蔵フィルム2を変性及び損傷させるので、使用禁止とした。貯蔵フィルム2をすすいだ後、CNT7は貯蔵フィルム2に強く付着し、こうして形成された電極1は使用可能な状態である。
【0107】
貯蔵フィルム5は2.5ml量の水溶液に浸漬された。該水溶液中に溶解したメチレンブルーの濃度はUV/可視分光測定法により計測された。図4a及び4bは、水溶液中のメチレンブルーの総濃度の推移を、1リットル当たりのマイクロモル数(μmol/l)で、単位を時(h)とした時間の関数として示している。時間の経過とともに濃度の直線的増大が観察される。これは一定した放出速度を示している。貯蔵フィルム2の放出速度は1.5~4μmol/l/hに含まれる。電極1の放出速度は0.5~0.8μmol/l/hに含まれる。
【0108】
図5及び6を参照すると、図3に示されるような電極のバイオセンサとしての使用が説明されている。本件の実施形態によれば、多孔層6は、CNT7、酵素触媒8のチロシナーゼ8、及び粘土のラポナイトを具備している。電極1の使用の間に徐々に遊離される、包含部4に貯蔵された対象化合物は、カテコールである。充填ステップは、粉末形態のカテコールの、重力の影響下における包含部4の中への流入により実施された。穿孔ステップは、2つの包含部4の各々について、典型的には直径100μmの針を使用して、各包含部4の壁部41のうち封着材料によって形成された部分412に単一の穿孔を作ることにより実施された。
【0109】
実際には、多孔層6の実装の方法は、水性溶媒中におけるラポナイトの分散・剥離を含む。ラポナイトは1mg/mlの質量濃度とする。その後、チロシナーゼ8が10mg/mlの濃度でラポナイト水溶液と混合される。ラポナイト‐チロシナーゼ混合物を含む該溶液はその後、貯蔵フィルム2の封着材料の壁体5の上にCNTフィルム7を具備する電極1の上に堆積される。CNT7は、上記に従って電極1の上に前もって堆積された。堆積されるラポナイト‐チロシナーゼ溶液の量は、およそ300μgのチロシナーゼ8及び30μgのラポナイトがCNT7のフィルム上に存在するような量である。ラポナイト‐チロシナーゼ混合物を含む溶液の堆積の後、次に溶媒すなわち水の蒸発が真空下で実行される。電極1はその後、ラポナイト‐チロシナーゼ混合物を架橋するためにグルタルアルデヒド蒸気下に45分間置かれる。電極1を使用する前に、電極1をリン酸水素塩/リン酸二水素塩緩衝液に20分間浸すことにより、ラポナイトがゲル化される。
【0110】
図5及び6を参照すると、バイオセンサ1として使用された電極により生成されたカソード電流の推移が示されている。実験を行なうために、電極1は、緩衝液と呼ばれるリン酸水素塩/リン酸二水素塩緩衝液に浸漬される。酸素及びカテコールの存在下、チロシナーゼ8は、放出表面413の位置で遊離されたカテコールを酸化してオルトキノンとする。電極1において飽和カロメル電極(SCE)の基準電位に対して-0.2ボルトの電圧をかけることにより、電極1で生成されるカソード電流の発生が分かる。
【0111】
図5を参照すると、電極1を用いて溶液中の溶存酸素の有無を検出する可能性が示されている。事前の較正により、溶液中の溶存酸素の量を定量することも可能である。電極1で生成されたカソード電流は、約20分後におよそ15μアンペア(μA)で安定する。70分後、アルゴンで緩衝液がバブリングされる。これは、緩衝液中の溶存酸素のほとんど全てを除去し、かつ従ってチロシナーゼ8の活性及び従ってチロシナーゼ8によるカテコールの酸化を大幅に低減するかさらには停止させる、という効果を有する。従って、溶存酸素の濃度が低下すると多孔層6の中のオルトキノンの量も低下する。その後、カソード電流は0アンペアに近い値まで減少することが分かる。電流の減少は溶液中の酸素濃度の低下に比例する。これは、電極1で生成されたカソード電流が確かに電極1によるオルトキノンのカテコールへの還元から生じることを実証している。
【0112】
図6を参照すると、電極1を使用して、チロシナーゼ8の阻害剤(ここでは安息香酸)の存在を検出する可能性が示されている。この阻害剤は、汚染物質であってもよい。事前の較正により、溶液中の安息香酸の量を定量することも可能である。電極1で生成されるカソード電流は、約20分後におよそ7.5μAで安定する。65分後、緩衝液中への既知量の安息香酸の9回連続注入が行われる。これはチロシナーゼ8を徐々に阻害する効果を有し、このことから従って安息香酸濃度が増大するとチロシナーゼ8の活性が低下することが分かる。従って多孔層6の中のオルトキノンの量も、安息香酸の濃度が増大すると低下する。安息香酸を1回注入するごとに、電極1で生成されるカソード電流が階段状に減少することが分かる。電流は、安息香酸濃度が0モーラー(M)の、65分時点で実行された最初の注入の前のカソード電流の値である7μAから、合計安息香酸濃度が8.10-4Mの112分時点での3μAまで減少する。電流の減少は溶液中の阻害剤の量に比例する。これは、電極1で生成されたカソード電流が確かに電極1によるオルトキノンのカテコールへの還元から生じることを実証している。
【0113】
よって、ともに組み合わせることが可能な上記実施形態の変形形態において、
― 封着材料は透過性材料である、及び/又は
― 封着材料の壁体5は半透過性の壁体5である、及び/又は
― 封着材料、若しくは封着材料及び支持体材料は、導電性材料である、及び/又は
― 多孔性の導電性材料7の厚さは、触媒8及び多孔性の導電性材料7が同時に堆積される場合は多孔層6の厚さに等しい、及び/又は
― 下地層はポリ酢酸ビニル(PVA)若しくはPMMAである、及び/又は
― 支持体材料は封着材料とは異なる、及び/又は
― 電極1は、各々が丸い形状を有するいくつかの個別の包含部4を具備する、及び/又は
― 方法は、
● 少なくとも1つの包含部4の形成ステップの前の、下地層の上に支持体材料の層3を堆積することから成るステップと、
● 封着材料のフィルム5の堆積ステップの後の、貯蔵フィルム2を得るために下地層を溶解することから成るステップと
を含む、及び/又は
― 少なくとも1つのオクルージョン4を充填するステップは、封着材料のフィルム5の堆積ステップの後で、封着材料の壁体5を通り抜ける毛細管若しくは針を使用して対象化合物若しくは対象化合物の前駆体を注入することにより実施される、及び/又は
― 該方法が封入材料の層9によって空洞43を覆うステップを含まない場合、空洞43の壁部42が包含部4の壁部41を構成する、及び/又は
― 封着材料によって形成された各包含部4の壁部41の一部分412の穿孔は、100μmより大きい直径を有する針によって実行される、及び/又は
― 穿孔ステップは、封着材料の壁体に影響を及ぼしたり作成される細孔の大きさが不正確となったりしないように、局所的なジュール効果を生じない技法によって実施される、及び/又は
― 穿孔ステップは、フェムトレーザー若しくは超音波研削によって実施される。
【0114】
加えて、本発明の様々な特性、形態、変形形態及び実施形態は、それらが両立困難でないか又は相互排他的でない程度に、様々な組み合わせで共に組み合わせることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【国際調査報告】