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特表2024-501461ポリウレタンフォームから原料を回収する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ポリウレタンフォームから原料を回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/24 20060101AFI20240104BHJP
   C07C 211/50 20060101ALI20240104BHJP
   C07C 209/62 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
C07C211/50
C07C209/62
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535639
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2021085405
(87)【国際公開番号】W WO2022128871
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】20213874.9
(32)【優先日】2020-12-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21203752.7
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】シュテッフェンス フリートヘルム
【テーマコード(参考)】
4F401
4H006
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401AD09
4F401CA68
4F401CA75
4F401EA60
4F401EA77
4F401FA01Z
4F401FA02Z
4H006AA02
4H006AC91
4H006BA13
4H006BB61
4H006BC10
4H006BE60
(57)【要約】
本発明は、イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタンフォームを準備する工程であって、ポリウレタンフォームが1つ以上の揮発性付随物質、すなわち酸素、発泡剤、消毒剤及び上記の2つ以上の混合物からなる群より選択される成分Xを含有するセル構造を含み、成分Xが少なくとも酸素を含む、工程(A)と、ポリウレタンフォームを化学分解試薬で化学分解する工程であって、ポリウレタンフォームを化学分解試薬と接触させる前に脱ガスし、少なくとも酸素、好ましくは成分Xの全構成要素、又は形成されたその任意のガス状分解生成物を、960mbar(abs.)以下の圧力及び120℃以下の温度で化学分解装置からガス除去装置を介してガス状で除去して、脱ガスされたポリウレタンフォームを得て、続いて脱ガスされたポリウレタンフォームを触媒の存在下で不活性ガス雰囲気にて化学分解試薬と反応させ、化学分解によって得られた生成物混合物を後処理する、工程(B)と、少なくとも1つのポリオールを得る工程(C)と、任意に、イソシアネート成分のイソシアネートに対応する少なくとも1つのアミンを得る工程(D)とを含む、ポリウレタンフォームから原料を回収する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとし、酸素、発泡剤、消毒剤及び上記の2つ以上の混合物からなる群より選択される成分Xを含むセル構造を有し、成分Xが少なくとも酸素を含むポリウレタンフォームから、該ポリウレタンフォームを化学分解試薬と反応させることによって原料を回収する方法であって、
(A)ポリウレタンフォームを容器内に準備することと、
(B)(i)入口装置、(ii)該入口装置に接続された化学分解反応器、(iii)該化学分解反応器に接続された出口装置、並びに(iv)前記容器内及び/又は前記入口装置内に配置されたガス除去装置を備える化学分解装置において、前記ポリウレタンフォームを化学分解することと、
なお、化学分解は、
(B.I)前記ポリウレタンフォームを前記容器から前記入口装置に導入し、そこから前記化学分解反応器に導入し、そこで該ポリウレタンフォームを前記化学分解試薬と接触させる前に、
(α)少なくとも酸素、好ましくは成分Xの全構成要素又はそのガス状分解生成物を前記化学分解装置から960mbar(abs.)以下の圧力及び120℃以下の温度にて前記ガス除去装置を介してガス状で除去すること、
によって脱ガスし、脱ガスされたポリウレタンフォームを得ること、
(B.II)前記化学分解反応器において、前記脱ガスされたポリウレタンフォームを触媒の存在下で不活性ガス雰囲気にて化学分解試薬と反応させ、生成物混合物を得ること、
(B.III)前記生成物混合物を前記化学分解反応器から前記出口装置を介して排出すること、続いて、
前記生成物混合物を後処理すること、
を含む;
(C)ポリオールを回収することと、
(D)任意に、前記イソシアネート成分からイソシアネートに対応するアミンを回収することと、
を含む、方法。
【請求項2】
(B.I)における前記ポリウレタンフォームの脱ガスを、
(1)第1の工程において、前記ポリウレタンフォームを-20℃~120℃の範囲の第1の温度で0.1mbar(abs.)~100mbar(abs.)の範囲の第1の圧力に曝すことと、
(2)第2の工程において、不活性ガスを供給することにより、前記ポリウレタンフォームを、前記第1の圧力よりも大きく、2.0bar(abs.)以下である第2の圧力に曝すことと、
によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の工程において前記第1の圧力の確立によって潰れることで、前記ポリウレタンフォームを圧縮し、前記第2の工程において前記不活性ガスの供給によって再び拡張する内部柔軟ライニングが前記容器及び/又は前記入口装置に設けられている、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記入口装置が、工程(A)で準備されたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な供給装置と、脱ガスされたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な除去装置とを有する第1のロック領域を少なくとも有し、
ここで、工程(B.I)は、以下の工程:
(B.I.1.a)前記第1のロック領域の除去装置を閉鎖し、ポリウレタンフォームを該第1のロック領域に導入するとともに、該第1のロック領域の供給装置を閉鎖する工程と、
(B.I.2.a)前記第1のロック領域において(B.I)の前記第1の工程を行う工程と、
(B.I.3.a)前記第1のロック領域において前記不活性ガスを供給することにより(B.I)の前記第2の工程を行い、脱ガスされたポリウレタンフォームを得る工程と、
(B.I.4.a)(B.I.3.a)で得られた脱ガスされたポリウレタンフォームを前記化学分解反応器に移送する工程と、
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記入口装置が、前記第1のロック領域に加えて、工程(A)で準備されたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な供給装置と、脱ガスされたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な除去装置とを有する第2のロック領域を有し、
ここで、前記ポリウレタンフォームの第1の部分は、前記脱ガスされたポリウレタンフォームの第1の部分が工程(B.I.3.a)で得られるように、工程(B.I.1.a)において前記第1のロック領域に導入され、工程(B.I)は、以下の工程:
(B.I.1.b)前記第2のロック領域の除去装置を閉鎖し、前記ポリウレタンフォームの第2の部分を該第2のロック領域に導入するとともに、該第2のロック領域の供給装置を閉鎖する工程と、
(B.I.2.b)前記第2のロック領域において(B.I)の前記第1の工程を行う工程と、
(B.I.3.b)前記第2のロック領域において、前記不活性ガスを供給することにより(B.I)の前記第2の工程を行い、前記脱ガスされたポリウレタンフォームの第2の部分を得る工程と、
(B.I.4.b)前記脱ガスされたポリウレタンフォームの第2の部分を前記化学分解反応器に移送する工程と、
を付加的に含み、工程(B.I.1.a)~(B.I.4.a)が工程(B.I.1.b)~(B.I.4.b)と合わせられて、脱ガスされたポリウレタンフォームが、前記化学分解反応器に連続的に移送される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ポリウレタンフォームが、(B.I)の前記第1の工程中に、前記入口装置の第1の部分に配置された機械的粉砕用の装置を通って搬送されて粉砕され、ここで、前記第2の工程は、機械的粉砕後の前記ポリウレタンフォームが、前記入口装置の第1の部分の下流の第2の部分を通って前記第2の圧力下で不活性ガス雰囲気中に搬送されるように行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
前記第2の圧力が1.8bar(abs.)以下である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(B.I)における前記ポリウレタンフォームの脱ガスを、
(1)第1の工程において、前記ポリウレタンフォームを、-20℃~120℃の範囲の第1の温度及び0.1mbar(abs.)~960mbar(abs.)、特に100mbar(abs.)~960mbar(abs.)の範囲の第1の圧力で、前記入口装置内に配置される機械的圧縮用の装置に搬送することと、
なお、前記ガス除去装置は、前記機械的圧縮用の装置の上流にある;
(2)第2の工程において、前記ポリウレタンフォームを、前記機械的圧縮用の装置内にて5bar(abs.)~200bar(abs.)の範囲の第2の圧力で圧縮することと、
によって行う、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ガス除去装置が前記入口装置内に配置される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の工程を-20℃~120℃の範囲の第2の温度で行う、請求項2~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記成分Xが、0℃の温度及び1.000bar(abs.)の圧力で液体である構成要素を(少なくとも)含有し、前記第1の温度が少なくとも16℃である、請求項2~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程(B.II)を140℃~240℃の温度範囲で行う、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記発泡剤がペンタン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ジクロロメタン又は上記の2つ以上の混合物を含み、
前記消毒剤が過酸化水素、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、過酢酸、アルカリ金属次亜塩素酸塩、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール又は上記の2つ以上の混合物を含む、
請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記イソシアネート成分が、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含有し、及び/又は、
前記ポリオール成分が、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、又は上述のポリオールの2つ以上の混合物からなる群より選択されるポリオールを含有する、
請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記化学分解試薬がエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、又は上述のアルコールの2つ以上の混合物を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタンフォームを準備する工程であって、ポリウレタンフォームが1つ以上の揮発性付随物質、すなわち酸素、発泡剤、消毒剤及び上記の付随物質の2つ以上の混合物からなる群より選択される成分Xを含有するセル構造を有し、成分Xが少なくとも酸素を含む、工程(A)と、ポリウレタンフォームを化学分解試薬で化学分解する工程であって、ポリウレタンフォームを化学分解試薬と接触させる前に脱ガスし、少なくとも酸素、好ましくは成分Xの全構成要素、又は形成されている可能性があるその任意のガス状分解生成物を、960mbar(abs.)以下の圧力及び120℃以下の温度で化学分解装置からガス除去装置を介してガス状で除去して、脱ガスされたポリウレタンフォームを得て、続いて脱ガスされたポリウレタンフォームを触媒の存在下で不活性ガス雰囲気にて化学分解試薬と反応させ、化学分解によって得られた生成物混合物を後処理する、工程(B)と、少なくとも1つのポリオールを回収する工程(C)と、任意に、イソシアネート成分のイソシアネートに対応する少なくとも1つのアミンを回収する工程(D)とを含む、ポリウレタンフォームから原料を回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタンフォームは、産業及び日常生活において様々な用途を有する。ポリウレタンフォームは通例、硬質フォーム(例えば断熱材として使用される)と軟質フォーム(例えばクッション付き家具の製造に使用される)とに分けられる。かかる差異にも関わらず、基本ポリウレタン構造が全てのポリウレタンフォームに共通し、これは多官能性イソシアネートとポリオールとの重付加反応によって形成され、例えばジイソシアネートO=C=N-R-N=C=O及びジオールH-O-R’-O-H(ここで、R及びR’は有機基を表す)をベースとするポリウレタンの場合には、
~~~[O-R’-O-(O=C)-HN-R-NH-(C=O)]~~~
として表すことができる。
【0003】
ポリウレタンフォームの大きな経済的成功のために、多量のポリウレタン廃棄物が生じ(例えば古いマットレス又は椅子(seated furniture)から)、これを合理的に使用する必要がある。技術的に実行が最も簡単な再利用方法は焼却であり、放出される燃焼熱が他のプロセス、例えば工業プロセスに利用される。しかしながら、この方法では原料ループを完成させることができない。別の再利用方法は、ポリウレタン廃棄物を機械的に粉砕し、新たな製品の製造に使用する「フィジカルリサイクル」と称される方法である。このリサイクル方法には明確な限界があるため、ポリウレタン結合を再切断することによってポリウレタン製造の基礎となる原料を回収する試み(「ケミカルリサイクル」と称される)がなくなることはない。回収すべきこれらの原料は、主にポリオール(すなわち、上記の例においては、H-O-R’-O-H)を含む。加えて、ウレタン結合の加水分解的切断によってアミンを回収することも可能であり(すなわち、上記の例においては、HN-R-NH)、これを後処理後にホスゲン化し、イソシアネートを形成する(上記の例においては、O=C=N-R-N=C=Oを形成する)ことができる。
【0004】
様々なケミカルリサイクルアプローチがこれまでに開発されている。最も重要な4つは、以下のように簡潔にまとめられる:
1. 水との反応によってアミン及びポリオールが回収され、二酸化炭素が形成される、ウレタンの加水分解。
2. アルコールとの反応によるウレタンのグリコール分解(Glycolysis)。ウレタン基に組み込まれたポリオールが、使用されるアルコールに置き換えられて放出される。このプロセスは、文献中で一般にエステル交換(より正確にはウレタン交換(transurethanization))と称される。使用されるアルコールの正確な性質に関わらず、このケミカルリサイクルの方法は、文献中でグリコール分解と呼ばれており、これは実際にはグリコールのみに適用される用語である。したがって、本発明においては、概してアルコール分解という用語を用いる。グリコール分解に続いて加水分解を行ってもよい。未だ変化していないグリコール分解混合物の存在下で加水分解を行う場合、加水グリコール分解と呼ばれる。
3. アルコール及び水との反応によるウレタン化合物の加水グリコール分解(Hydroglycolysis)。当然ながら最初からアルコール及び水を添加することも可能であり、その場合、上記のグリコール分解及び加水分解のプロセスが並行して進行する。
4. カルボン酸との反応によってアシル尿素化合物を形成する、ウレタン化合物の酸分解。
【0005】
既知のポリウレタンリサイクル方法の概要は、非特許文献1による総説に与えられる。
【0006】
特許文献1は、機械的粉砕と、カルボジイミドを触媒として用いた、不活性ガス雰囲気にて酸化防止剤の存在下、218℃~399℃及び50kPa~150kPaの圧力で3時間~5時間の水及びアルコールとの反応とを含むポリウレタンの化学分解を記載している。
【0007】
特許文献2は、ポリウレタン-ジオール混合物が液相にあるような圧力を少なくとも維持しながら、250℃を超える切断温度で、任意に予熱したジオールを添加し、反応スクリュー内で2分~30分の短い滞留時間の後にグリコール分解物(glycolyzate)混合物を排出し、グリコール分解物混合物を急冷することによるマルチスクリュー機械でのポリウレタンポリマー廃棄物、特にポリウレタンフォーム廃棄物の連続グリコール分解切断の方法を記載している。好ましい実施の形態においては、ポリマー廃棄物とともにスクリュー機械に導入された空気は、有利には僅かに圧力が低下している、搬送方向とは逆の導入漏斗の上流のハウジングの穴を通って逃げることができる。特許文献2は、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する揮発性付随物質、例えば、特に酸素、発泡剤及び/又は消毒剤がハウジングの穴を介して除去されることを開示していない。また、記載されている配置ではこれは予想されず、代わりに、実際には導入の過程でフォーム廃棄物とともに機械に入る空気(フォーム廃棄物の周囲の空気)のみが除去されることが予想される。
【0008】
特許文献3は、加水分解性ポリマー材料の廃棄物を水及び任意に加水分解触媒とともにスクリュー機械に導入し、そこで水とポリマー廃棄物との混合物を、物質及び熱の移動が激しい反応ゾーンにおいて5bar~100barの圧力で100℃~300℃の温度に2分間~100分間曝し、加水分解時に形成される液体-ガス混合物が、スクリュー機械に固定して接続された口金に連続的に搬送され、そこから口金内のスクリュー機械圧力を一定に保つ制御バルブを介してガスが逃げ、口金内の液面を一定に保つ制御バルブを介して液体が逃げる、ポリマー廃棄物の連続加水分解的切断の方法を記載している。好ましい実施の形態においては、ポリマー廃棄物とともに導入された空気は、僅かな真空が適用される、搬送方向でポリマー材料の導入漏斗の上流に位置するハウジングの穴を介して除去される。特許文献3は、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する揮発性付随物質、例えば、特に酸素、発泡剤及び/又は消毒剤がハウジングの穴を介して除去されることを開示していない。また、化学分解試薬(ここでは水)の添加後の本質的に僅かな真空及びフォームの圧縮だけではこれは予想されず、代わりに、ここでは特許文献2の場合と同様、実際には導入の過程でポリマー廃棄物とともにこの機械に入る空気(ポリマー廃棄物の周囲の空気)のみが除去されると仮定する必要がある。
【0009】
特許文献4は、予め70℃を超える温度に加熱したポリエステルの合成からの廃棄物が入った反応器にフォームフレーク、粉砕した軟質フォーム又は細断した材料を導入する、ポリウレタン廃棄物からポリオールを製造する方法を開示している。ポリウレタン廃棄物とポリエステル合成からの廃棄物との混合物を更に加熱し、120℃~250℃の温度で制御された触媒的エステル交換反応によって変換する。好ましい実施の形態においては、ポリウレタン廃棄物を穏やかな窒素流による空気輸送によって導入する。ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する揮発性付随物質、例えば、特に酸素、発泡剤及び/又は消毒剤の除去は、この方法では予想されない。
【0010】
特許文献5は、ポリウレタン廃棄物からポリオールを製造する方法及び該方法を行うための特定の装置を記載している。この場合、特許文献5によると、フォーム中に存在するガスを除去しながら、予め粉砕した軟質フォームを締め付けスクリュー及び絞りリングを介して上方から計量投入する。しかしながら、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する酸素を、化学分解の開始前に減圧を適用することなく、実際に少なくとも本質的に完全に除去し得るかは疑わしい。このことは、潜在的にリサイクルを損ない、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する可能性がある付随物質、例えば発泡剤又は消毒剤(液体形態の場合もある)について、これらが酸素よりも顕著に高いレベルで沸騰するため、さらに当てはまる。
【0011】
特許文献6は、廃棄物から得られたポリウレタンをアルコール分解又は酸分解によって処理する方法及び装置を記載している。これは、初めにポリウレタンを機械的に粉砕して出発物質を得た後、120℃を超える温度にて溶媒で処理することを含む。少なくとも、出発物質の液化をもたらし、200℃未満の反応温度で行われる溶媒処理の開始時に、既に化学的に分解された出発物質の機械的粉砕が継続される。この方法は、特許文献6の記載によると、出発物質が完全に溶解するまで、品質を損なう変色を生じることなく又は未溶解の残留物を残すことなく、より低い温度でより短い処理時間をもたらす。出発物質は、当然ながらポリウレタン結合の少なくとも部分的な反応によって溶解する。
【0012】
この方法を行うための設備は、出口側で反応器に接続された、リザーバ容器からの供給を受けるミキサーを有し、反応器では剪断力を発揮し、両方向に回転することができる剪断要素が出発物質に作用し、これらの剪断要素は、中空の加熱可能なシャフト上に配置され、中空の加熱可能なセクターから構成される反応器シェルによって囲まれる。この反応器は、均一な温度分布、ひいては比較的短い反応時間及び溶解時間が達成され得るように物質への熱移動を改善する。特許文献6は、シグマブレードを有する2つの共回転シャフトを備える加熱可能な混練ミキサーにおいて、溶媒構成要素として後に使用される割合のポリオールと混合しながら出発物質を予め粉砕する実施の形態を開示している。特許文献6によると、これによりポリウレタン粒子表面の溶媒による良好な予備湿潤が達成され、ポリウレタンセル領域に閉じ込められたガスの一部が放出され、有害な酸素含有量が減少し、特に下流の反応ゾーンにおけるその後の機械的応力の結果としてのポリウレタン粒子の凝集が回避され、出発物質の計量性及び熱伝導性が決定的に増大する。大気中の酸素の実質的な除去は、特許文献6によると、設備の同じ部分における混合物のその後の排気、及び/又は標準圧力での保護ガス、例えば窒素のその後のパージによってもたらすことができる。しかしながら、ポリウレタンを湿潤する溶媒(=化学分解試薬)の存在が効果的な脱ガスを妨げることにここで留意すべきである。
【0013】
言及したフィジカルリサイクル(ポリウレタン製品の機械的粉砕及び新たなポリウレタン製品の製造における添加)及びケミカルリサイクル(ウレタン結合の化学的切断によるポリオール、好ましくは更にアミンの回収)のプロセスに加えて、中間的な位置にある「アップサイクリング」にも言及する必要がある。アップサイクリングの場合、ケミカルリサイクルの場合と同様、ポリウレタンに化学変化が生じるが、合成に元々使用されていた原料(ポリオール及びアミン)の回収までは進められず、再利用されるポリウレタンを有用な異なるポリマー製品へと変換することを目的とする。例えば、D. T. Sheppard et al.は、非特許文献2に、架橋ポリウレタンフォームをジクロロメタン中のジラウリン酸ジブチルスズで処理し、続いてそのように処理されたフォームを二軸スクリューミキサー又は二軸スクリュー押出機において空気を除去しながら機械的に処理して、フィルム又は繊維を得ることを記載している。
【0014】
文献中のポリウレタンをリサイクルするプロセスのうち、工業規模で持続的に行われているものはごく僅かであり、多くはパイロット規模にさえ達していない(非特許文献1)。一般的な環境意識の高まり及び工業プロセスを可能な限り持続可能なものとする努力の高まりを考えると、ポリウレタン製品のリサイクルが技術的及び経済的な観点から未だ決して成熟していないことが明らかに示される。フィジカルリサイクルの機会は、明らかに非常に限られている。アップサイクリングは、ポリウレタン製品の実行可能な再利用への道を開くことができ、この点では有効であるが、原料サイクルを閉じることができない。使用されたポリオール、好ましくは更にアミンを回収し、これらを元のポリウレタン製品と同等の品質の新たなポリウレタン製品の製造に使用し得る場合には、ケミカルリサイクルのみがその可能性を与える。この点で、特に回収された生成物の純度に関して課題がある。ポリウレタンフォームの製造に再利用する場合、例えば発泡特性に悪影響を与えないためには、可能な限りアミン不純物を含まないポリオールを回収する必要がある。アミンの回収を更に目的とする場合、これらも当然ながら最大純度で得る必要がある。さらに、経済的なリサイクルプロセスでは、使用した試薬(例えば、使用したアルコール)を可能な限り完全に回収し、再利用(すなわち再循環)することができることを確実にする必要がある。
【0015】
再利用されるポリウレタン製品は、通常は様々な助剤及び添加剤(安定剤、触媒等)を依然として含有しており、これらを経済的に実行可能かつ環境に優しい方法で実際のリサイクル対象製品から分離し、廃棄する必要がある。ポリウレタンフォームの場合、フォームのセル構造内に存在する発泡剤及び酸素についても特に言及する必要がある。製造に関連する理由で存在するこれらの助剤及び添加剤に加えて、実際のケミカルリサイクルに先立つ準備工程により、リサイクルされるポリウレタン製品に更なる外来物質が混入する可能性がある。例えば古いマットレス又は椅子(seating furniture)に由来する、再利用されるポリウレタンフォームを、例えば消毒剤で処理することは一般的である。これらの外来物質は、ケミカルリサイクル及び/又は回収された原料の新たな製造プロセスでのその後の使用を損なう恐れがある。
【0016】
酸素は、特にアミンの酸化反応を引き起こす可能性がある。例えばアルコール分解に使用されるアルコールの引火点を超える動作温度がもたらされることを考えると、安全性の観点からも酸素の存在が問題である。ペンタン等の使用される発泡剤は、化学的に不活性であるが、この特別な理由で蓄積もするため、定期的に製品の損失を伴って排出(パージ)する必要がある。発泡剤の存在は、オフガス負荷を大きくし、オフガスの後処理を困難にすることもある。一般的に使用される或る特定の消毒剤、例えばエタノールは、化学分解時にカルバメートを形成することがあり、その一部は実際の化学分解試薬(通常はグリコール又はグリコール誘導体)のカルバメートよりも切断してアミンを放出することが困難である。カルバメート切断が成功しても、かかるアルコール性消毒剤は、後処理の際に未変換の化学分解試薬に不純物として混入し、その回収が複雑となる可能性がある。他の一般的に使用される消毒剤、例えば過酸化水素又は次亜塩素酸ナトリウムは、分解されて酸素を放出し得る。従来技術では、かかる問題に対して満足のいく解決策は未だ提供されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【特許文献1】中国特許出願公開第106279760号
【特許文献2】独国特許出願公開第3232461号
【特許文献3】独国特許出願公開第2442387号
【特許文献4】独国特許出願公開第19719084号
【特許文献5】独国特許出願公開第102004014165号
【特許文献6】欧州特許出願公開第0031538号
【非特許文献】
【0018】
【非特許文献1】Simon, Borreguero, Lucas and Rodriguez in Waste Management 2018, 76, 147 - 171
【非特許文献2】Reprocessing Postconsumer Polyurethane Foam Using Carbamate Exchange Catalysis and Twin-Screw Extrusion (ACS Cent. Sci. 2020 6 (6), 921-927)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
したがって、ポリウレタンフォームのケミカルリサイクルの分野において更なる改善が必要とされている。特に、実際のケミカルリサイクルの開始前に発泡剤、酸素又は消毒剤等の潜在的に厄介な付随物質をポリウレタンフォームから後続の工程を妨害しない程度にまで実際に可能な限り除去することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0020】
したがって、概説した要件を考慮すると、本発明は、イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとし、酸素、発泡剤、消毒剤及び上記の2つ以上の混合物からなる群より選択される成分Xを含むセル構造を有し、成分Xが少なくとも酸素を含むポリウレタンフォームから、ポリウレタンフォームを化学分解試薬と反応させることによって原料(すなわち、ポリオール及び任意にアミン)を回収する方法であって、
(A)ポリウレタンフォーム1を容器100内に準備することと、
(B)(i)入口装置200、(ii)入口装置に接続された化学分解反応器300、(iii)化学分解反応器に接続された出口装置400、並びに(iv)容器内及び/又は入口装置内に配置されたガス除去装置500を備える化学分解装置において、ポリウレタンフォーム1を化学分解することと、
なお、化学分解は、
(B.I)ポリウレタンフォームを容器から入口装置に導入し、そこから化学分解反応器に導入し、そこでポリウレタンフォームを化学分解試薬と接触させる前に、
(α)少なくとも酸素(すなわち、(i)成分X中に存在する酸素、及び(ii)成分Xの構成要素の分解反応によって形成される任意の酸素)、好ましくは成分Xの全構成要素又はその任意のガス状分解生成物を化学分解装置から960mbar(abs.)以下の圧力及び120℃以下の温度にてガス除去装置を介してガス状で除去すること、
によって脱ガスし、脱ガスされたポリウレタンフォーム2を得ること、
(B.II)化学分解反応器300において、脱ガスされたポリウレタンフォーム2を触媒の存在下で不活性ガス雰囲気にて化学分解試薬4と反応させ、生成物混合物を得ること、
(B.III)生成物混合物を化学分解反応器300から出口装置400を介して排出すること、続いて、
生成物混合物を後処理すること、
を含む;
(C)(少なくとも)ポリオールを(化学分解で得られたポリオール成分又はその分解生成物から)回収することと、
(D)任意に、(少なくとも)イソシアネートに対応するアミンをイソシアネート成分から回収することと、
を含む、方法を提供する。
【0021】
驚くべきことに、初めにポリウレタンフォームを化学分解試薬と接触させる前に、成分Xで定義される揮発性付随物質を本発明に従って除去することが、かかる付随物質の特に慎重な枯渇をもたらし、それにより上で概説した問題を克服するか、又は少なくとも最小限に抑えることが見出された。特に酸素は、最初から存在するか、又は例えば、過酸化水素若しくは次亜塩素酸ナトリウム等の消毒剤の分解の結果としてその場で形成されるかに関わらず、特にアミンの酸化反応を回避する本発明による方法によって首尾よく除去される。これは、表面に又は付着形態で存在する付随物質だけでなく、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する揮発性付随物質も首尾よく除去し得ることが本発明による方法の特徴であるためである。
【0022】
これは、当業者に知られているように、ポリウレタンフォームが、発泡操作における化学的又は化学工学的パラメーターによって影響を与えることができるセル構造(細孔構造とも呼ばれる)を有するためである。ポリウレタンフォームの製造においては、発泡剤が使用され、これは発泡の製造条件下でガス状であり、ラメラを介して互いに接続したフォームセル(フォーム細孔とも呼ばれる)の形成をもたらす。再利用されるポリウレタンは、通常は揮発性であり、潜在的に化学分解を妨害する付随物質を含み、これはセル(すなわち空洞)内だけでなく、ラメラ(例えば、ラメラに消毒剤を充填する場合)にも存在する場合がある。
【0023】
したがって、本発明は、ケミカルリサイクルの開始前、すなわち再利用すべきポリウレタンフォームを初めに化学分解試薬と接触させる前にポリウレタンフォームから揮発性付随物質を除去することに関する。この文脈における揮発性付随物質、すなわち成分Xは、本発明の文脈において酸素、発泡剤、消毒剤又は上記の2つ以上の混合物を意味すると理解され、特に揮発性付随物質(すなわち、成分X又はその構成要素)が、下限圧力p、上限圧力p、下限温度T及び上限温度Tによって定義される圧力範囲及び温度範囲の少なくとも部分領域においてガス状であるか、又は分解してガス状分解生成物を形成する場合、
=0.1mbar(abs.)
=960mbar(abs.)
=-20℃、特に(すなわち、セル構造内に存在する揮発性付随物質が標準条件下(すなわち、0℃の温度及び1.000bar(abs.)の圧力)で液体である場合)、16℃、かつ、
=120℃である。
【0024】
圧力p及びpは、従来のマノメーターによって決定することができる。これは、当然ながら更に下に説明する圧力p1及びp2についても同様に当てはまる。純粋に言語学的な表現では「揮発性付随物質」と記載され得るが、本発明の文脈における成分Xの定義に含まれない更なる化合物の存在は除外されず、かかるポリウレタンフォームを本発明による方法によってリサイクルすることが本発明の範囲から外れるものではないことが理解される。
【0025】
言及した条件は、酸素について満たされる。これは通常、ポリウレタンフォーム製造に用いられる発泡剤(例えばペンタン)についても同様に当てはまる。また、従来の消毒剤の大部分を、言及した条件下で気相又はガス状分解生成物に変換し得るため、ガス除去装置を介して厄介な物質を排出することができる。分解可能な揮発性付随物質の例は、過酸化水素及び次亜塩素酸ナトリウムであり、どちらも分解して特に酸素を形成する傾向があるため、ガス除去装置を介して「ガス状分解生成物」として除去することができる。
【0026】
本発明の専門用語においては、イソシアネートという用語は、ポリウレタン化学と関連して当業者に既知の全てのイソシアネート、例えば、特にトリレンジイソシアネート(TDI;トリレンジアミン(TDA)から調製可能であり、好ましくは調製される)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI;ジフェニルメタン系のジアミン及びポリアミン(MDA)から調製可能であり、好ましくは調製される)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI;ペンタン-1,5-ジアミン(PDA)から調製可能であり、好ましくは調製される)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI;ヘキサメチレン-1,6-ジアミン(HDA)から調製可能であり、好ましくは調製される)、イソホロンジイソシアネート(IPDI;イソホロンジアミン(IPDA)から調製可能であり、好ましくは調製される)、並びにキシリレンジイソシアネート(XDI;キシリレンジアミン(XDA)から調製可能であり、好ましくは調製される)を包含する。「イソシアネート」という表現は、例えば「正に1つのイソシアネート」という表現による別段の明示的な記載がない限り、2種以上の異なるイソシアネート(例えば、MDIとTDIとの混合物)がポリウレタン製品の作製に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。ポリウレタン製品の作製に使用される全てのイソシアネートが、(ポリウレタン製品の)イソシアネート成分と総称される。イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネートを含む。同様に、ポリウレタン製品の作製に使用される全てのポリオールが、(ポリウレタン製品の)ポリオール成分と総称される。ポリオール成分は、少なくとも1つのポリオールを含む。
【0027】
本発明の専門用語において、ポリオールという用語は、ポリウレタン化学に関連して当業者に既知の全てのポリオール、例えば、特にポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール及びポリエーテルカーボネートポリオールを包含する。「ポリオール」という表現は、2種以上の異なるポリオールがポリウレタン製品の製造に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。したがって、例えば「ポリエーテルポリオール」(又は「ポリエステルポリオール」等)に言及する場合、この専門用語は、2種以上の異なるポリエーテルポリオール(又は2種以上の異なるポリエステルポリオール等)がポリウレタン製品の作製に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。
【0028】
本発明の専門用語におけるカルバメートは、工程(B)においてアルコールとの反応によって形成されるウレタンを指している。
【0029】
イソシアネートに対応するアミンとは、ホスゲン化してイソシアネートを生じることができるアミンを指す:R-NH+COCl→R-N=C=O+2HCl。同様に、アミンに対応するニトロ化合物は、還元してアミンを生じることができるニトロ化合物である:R-NO+3H→R-NH+2HO。
【0030】
全ての圧力の数値は、圧力の単位に接尾辞「abs.」を付けることで示される絶対圧力に関するものである(例えば「mbar(abs.)」)。
【0031】
したがって、本発明は、酸素は常に存在するが、セル構造が酸素、(少なくとも)発泡剤、及び/又は(少なくとも)(揮発性)消毒剤(又は分解して揮発性生成物を形成することができるもの)、すなわち言及した揮発性付随物質の1つ、2つ以上又は全てを含有するポリウレタンフォームのリサイクルに関するものである。本発明の専門用語において、「成分X」という表現は、この文脈において存在する全ての揮発性付随物質の総称として使用される。
【0032】
本発明による方法は、少なくとも存在する酸素(任意の起源に由来する)を少なくとも本質的に完全に除去する。好ましくは、成分Xの全構成要素又はそのガス状分解生成物は、少なくとも本質的に完全に除去される。この点で、本発明は、以下で詳細に明らかにする2つの代替解決策を提供する。全てに共通するのは、(B)(I)(α)において、酸素、好ましくは成分Xの全構成要素又はそのガス状分解生成物が、「960mbar(abs.)以下の圧力及び120℃以下の温度にて(・・・)ガス状で除去される」ことである。これは、少なくとも存在する酸素だけでなく、好ましくは発泡剤及び消毒剤も、それらが存在する場合には同様に(言及した揮発性付随物質が全て存在することは必須ではない;例えば、ポリウレタンフォームの消毒が全ての場合で必要とされる訳ではない)、実際の化学分解反応が開始する前にポリウレタンフォームから少なくとも本質的に完全に除去されることを意味する。
【0033】
揮発性付随物質の除去が、大幅な圧力低下に続く圧力上昇によって本質的にもたらされることが第1の代替解決策の特別な特徴である。この目的で、ポリウレタンフォームを、(B.I)において脱ガスを行うために、
(1)第1の工程において、-20℃~120℃の範囲の第1の温度T1で0.1mbar(abs.)~100mbar(abs.)の範囲の第1の圧力p1に曝し(ここで、特に、いずれの場合も酸素のようなガス状では存在しない、(B)(I)(α)で除去すべき成分Xの全構成要素が気相に変換されるか、又は分解してガス状生成物を形成するように第1の圧力を第1の温度に適合させる)、
また、
(2)第2の工程において、不活性ガスを供給することにより、第1の圧力よりも大きく、2.0bar(abs.)以下である第2の圧力p2に曝す。
【0034】
したがって、この文脈における「脱ガスされたポリウレタンフォーム2」は、指定の種類の揮発性付随物質が除去され、不活性ガスで飽和したポリウレタンフォームを指す。
【0035】
揮発性付随物質の除去がポリウレタンフォームの機械的圧縮によって本質的にもたらされる(揮発性付随物質がポリウレタンフォームのセル構造から押し出され、減圧領域に引き込まれる)ことが第2の代替解決策の特別な特徴である。この目的で、ポリウレタンフォームを、(B.I)において脱ガスを行うために、
(1)第1の工程において、-20℃~120℃の範囲の第1の温度T1及び0.1mbar(abs.)~960mbar(abs.)、特に100mbar(abs.)~960mbar(abs.)の範囲の第1の圧力p1で、入口装置内に配置される機械的圧縮用の装置に搬送し(ここで、特に、いずれの場合も酸素のようなガス状ではない、(B)(I)(α)で除去すべき成分Xの全構成要素が気相に変換されるか、又は分解してガス状生成物を形成するように第1の圧力を第1の温度に適合させ、ガス除去装置は機械的圧縮用の装置の上流にある)、
また、
(2)第2の工程において、機械的圧縮用の装置内にて5bar(abs.)~200bar(abs.)の範囲の第2の圧力p2で圧縮する(これにより揮発性構成要素がセル構造から押し出され、機械的圧縮用の装置の上流の入口装置の領域に引き込まれ、その後ガス除去装置を介して除去される)。
【0036】
したがって、この文脈における「脱ガスされたポリウレタンフォーム2」は、指定の種類の揮発性付随物質が除去され、圧縮された(不活性ガス雰囲気で行われる化学分解に圧縮形態で送られる)ポリウレタンフォームを指す。
【0037】
添付の図面は、これら2つの代替解決策を行う具体的な方法を示す。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】例えばポリエチレン製の柔軟ライニングを用いた本発明による方法の第1の代替例(第1の代替解決策)を示す図である。
図2a】ロックシステムを用いた本発明による方法の第2の代替例(第1の代替解決策)を示す図である。
図2b】ロックシステムを用いた本発明による方法の第2の代替例(第1の代替解決策)を示す図である。
図3】機械的粉砕用の装置を用いた本発明による方法の第3の代替例(第1の代替解決策)を示す図である。
図4】機械的圧縮用の装置を用いた本発明による方法の第4の代替例(第2の代替解決策)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
ここで、本発明の様々な考え得る実施形態の概要を続けて示す。
【0040】
第1の代替例に対応し、第1の代替解決策の一部をなす本発明の第1の実施形態においては、第1の工程において第1の圧力の確立によって潰れることで、ポリウレタンフォームを圧縮し、第2の工程において第2の圧力を確立する不活性ガスの供給によって再び拡張する内部柔軟ライニングが容器及び/又は入口装置に設けられている。
【0041】
第1の実施形態の特定の構成であり、第1の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第2の実施形態においては、柔軟ライニングはポリエチレン、ポリプロピレン、アルミニウム、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、又は上述の材料の複合材料のフィルムである。
【0042】
第1の実施形態の特定の構成であり、第1の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第3の実施形態においては、第1及び第2の工程を、特に2回~5回繰り返す。
【0043】
第1の実施形態の特定の構成であり、第1の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第4の実施形態においては、第2の圧力は1.8bar(abs.)以下であり、特に周囲圧力に等しい。
【0044】
第1の実施形態の特定の構成であり、第1の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第5の実施形態においては、第1の温度は0℃~80℃、好ましくは16℃~80℃の範囲である。
【0045】
第1の実施形態の特定の構成であり、第1の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第6の実施形態においては、-20℃~120℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは16℃~80℃の範囲内であり、特に第1の温度に対応する(すなわち、第1の工程から第2の工程への移行時に温度の特定の変更を行わない)、第2の温度T2で第2の工程を行う。
【0046】
第2の代替例に対応し、同様に第1の代替解決策の一部をなす本発明の第7の実施形態においては、入口装置は、工程(A)で準備されたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な供給装置と、脱ガスされたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な除去装置とを有する第1のロック領域(化学分解反応器の上流)を有し、
ここで、工程(B.I)は、以下の工程:
(B.I.1.a)第1のロック領域の除去装置を閉鎖し、ポリウレタンフォームを第1のロック領域に導入するとともに、第1のロック領域の供給装置を閉鎖する工程と、
(B.I.2.a)第1のロック領域において(B.I)の第1の工程を行う工程と、
(B.I.3.a)第1のロック領域において不活性ガスを供給することにより(B.I)の第2の工程を行い、脱ガスされたポリウレタンフォームを得る工程と、
(B.I.4.a)(B.I.3.a)で得られた脱ガスされたポリウレタンフォームを化学分解反応器に移送する工程と、
を含む。
【0047】
第7の実施形態の特定の構成であり、第2の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第8の実施形態においては、入口装置は、第1のロック領域に加えて、工程(A)で準備されたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な供給装置と、脱ガスされたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な除去装置とを有する第2のロック領域を有し、
ここで、ポリウレタンフォームの第1の部分は、脱ガスされたポリウレタンフォームの第1の部分が工程(B.I.3.a)で得られるように、工程(B.I.1.a)において第1のロック領域に導入され、工程(B.I)は、以下の工程:
(B.I.1.b)第2のロック領域の除去装置を閉鎖し、ポリウレタンフォームの第2の部分を第2のロック領域に導入するとともに、第2のロック領域の供給装置を閉鎖する工程と、
(B.I.2.b)第2のロック領域において(B.I)の第1の工程を行う工程と、
(B.I.3.b)第2のロック領域において、不活性ガスを供給することにより(B.I)の第2の工程を行い、脱ガスされたポリウレタンフォームの第2の部分を得る工程と、
(B.I.4.b)脱ガスされたポリウレタンフォームの第2の部分を化学分解反応器に移送する工程と、
を付加的に含み、工程(B.I.1.a)~(B.I.4.a)が工程(B.I.1.b)~(B.I.4.b)と合わせられて、脱ガスされたポリウレタンフォームが、化学分解反応器に連続的に移送される。
【0048】
第7の実施形態の特定の構成であり、第2の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第9の実施形態においては、第1の温度は0℃~80℃、好ましくは16℃~80℃の範囲である。
【0049】
第7の実施形態の特定の構成であり、第2の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第10の実施形態においては、ポリウレタンフォームを初めに化学分解反応器内で化学分解試薬と接触させる。
【0050】
第7の実施形態の特定の構成であり、第2の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第11の実施形態においては、-20℃~120℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは16℃~80℃の範囲内であり、特に第1の温度に対応する(すなわち、第1の工程から第2の工程への移行時に温度の特定の変更を行わない)、第2の温度T2で第2の工程を行う。
【0051】
第7の実施形態の特定の構成であり、第2の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第12の実施形態においては、化学分解反応器内での化学分解試薬の添加のみに限定されるものではないが、ポリウレタンフォームは、第2の工程の後にも第1のロック領域及び/又は第2のロック領域において化学分解試薬と(任意に既に触媒と)接触し、特に湿潤している。
【0052】
第12の実施形態の特定の構成である本発明の第13の実施形態においては、第1のロック領域及び/又は第2のロック領域においてポリウレタンフォームと接触する際の化学分解試薬は、120℃~240℃、特に120℃超~240℃の範囲の温度にある。
【0053】
第7の実施形態の特定の構成であり、第2の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第14の実施形態においては、第2の圧力は1.8bar(abs.)以下であり、特に周囲圧力に等しい。
【0054】
第3の代替例に対応し、同様に第1の代替解決策の一部をなす本発明の第15の実施形態においては、ポリウレタンフォームは、(B.I)の第1の工程中に、入口装置の第1の部分に配置された機械的粉砕用の装置を通って搬送されて粉砕され、ここで、第2の工程は、機械的粉砕後のポリウレタンフォームが、入口装置の第1の部分の下流の第2の部分を通って第2の圧力下で不活性ガス雰囲気中に搬送されるように行われる。
【0055】
第15の実施形態の特定の構成であり、第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第16の実施形態においては、入口装置の第1の部分及び第2の部分におけるポリウレタンフォームの搬送は、
(少なくとも)スクリューシャフト、
(少なくとも)ピストン、
(少なくとも)コンベヤーベルト、
振動、及び/又は、
重力によって行われる。
【0056】
第15の実施形態の特定の構成であり、第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第18の実施形態においては、機械的粉砕用の装置は、カッティングミル、ナイフミル、インパクトカップ(impact cup)及び/又はハンマーミルを含む。
【0057】
第18の実施形態の特定の構成である本発明の第19の実施形態においては、機械的粉砕用の装置は、インパクトカップ及び/又はハンマーミルを含み、ここで、第1の温度は、-20℃~0℃未満の範囲である。
【0058】
第15の実施形態の特定の構成であり、第19の実施形態を除く第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第20の実施形態においては、第1の温度は0℃~80℃、好ましくは16℃~80℃の範囲である。
【0059】
第15の実施形態の特定の構成であり、第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第21の実施形態においては、ポリウレタンフォームを初めに化学分解反応器内で化学分解試薬と接触させる。
【0060】
第15の実施形態の特定の構成であり、第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第22の実施形態においては、-20℃~120℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは16℃~80℃の範囲内であり、特に第1の温度に対応する(すなわち、第1の工程から第2の工程への移行時に温度の特定の変更を行わない)、第2の温度T2で第2の工程を行う。
【0061】
第15の実施形態の特定の構成であり、第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第23の実施形態においては、化学分解反応器内での化学分解試薬の添加のみに限定されるものではないが、ポリウレタンフォームは、第2の工程の後にも入口装置の第2の部分において化学分解試薬と(任意に既に触媒と)接触し、特に湿潤している。
【0062】
第23の実施形態の特定の構成である本発明の第24の実施形態においては、入口装置の第2の部分においてポリウレタンフォームと接触する際の化学分解試薬は、120℃~240℃、特に120℃超~240℃の範囲の温度にある。
【0063】
第15の実施形態の特定の構成であり、第3の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第25の実施形態においては、第2の圧力は1.8bar(abs.)以下であり、特に周囲圧力に等しい。
【0064】
第4の代替例に対応し、第2の代替解決策の特定の構成であり、第4の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第26の実施形態においては、ガス除去装置は、入口装置内に配置される。
【0065】
第26の実施形態の特定の構成であり、第4の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第27の実施形態においては、機械的圧縮用の装置は、押出機(マルチゾーンスクリュー、並びに一軸押出機及び多軸押出機も含む)、ローラー又はピストンを含む。
【0066】
第26の実施形態の特定の構成であり、第4の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第28の実施形態においては、ポリウレタンフォームは、機械的圧縮用の装置を通過した後(すなわち第2の工程後)も入口装置内で化学分解試薬と接触し、特に湿潤している。
【0067】
第28の実施形態の特定の構成である本発明の第29の実施形態においては、入口装置においてポリウレタンフォームと接触する際の化学分解試薬は、120℃~240℃の範囲の温度にある。
【0068】
第26の実施形態の特定の構成であり、第4の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第30の実施形態においては、第1の温度は0℃~80℃、好ましくは16℃~80℃の範囲である。
【0069】
第26の実施形態の特定の構成であり、第4の代替例の他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第31の実施形態においては、-20℃~120℃、好ましくは0℃~80℃、より好ましくは16℃~80℃の範囲内であり、特に第1の温度に対応する(すなわち、第1の工程から第2の工程への移行時に温度の特定の変更を行わない)、第2の温度T2で第2の工程を行う。
【0070】
4つ全ての代替例の実施形態と組み合わせることができる本発明の第32の実施形態においては、工程(B.II)を140℃~240℃、好ましくは160℃~240℃、より好ましくは180℃~220℃の温度範囲で行う。
【0071】
4つ全ての代替例の実施形態と組み合わせることができる本発明の第33の実施形態においては、工程(B.II)を960mbar(abs.)超~1.8bar(abs.)の範囲の圧力、特に周囲圧力で行う。
【0072】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第34の実施形態においては、成分Xは、標準条件下で(すなわち、0℃の温度及び1.000bar(abs.)の圧力で)液体である少なくとも1つの構成要素を含有し、ここで、第1の温度は少なくとも16℃である。
【0073】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第35の実施形態においては、
発泡剤はペンタン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ジクロロメタン、又は上述の発泡剤の2つ以上の混合物を含み(特にこれらであり)、
消毒剤は過酸化水素、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、過酢酸、アルカリ金属次亜塩素酸塩(特に次亜塩素酸ナトリウム)、エタノール、イソプロパノール、1-プロパノール、又は上述の消毒剤の2つ以上の混合物を含む(特にこれらである)。
【0074】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第36の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含有する。イソシアネート成分に関してTDIとMDIとの混合物をベースとするポリウレタンフォームが特に好ましい。イソシアネート成分に関してTDIのみをベースとするポリウレタン製品が非常に特に好ましい。
【0075】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第37の実施形態においては、ポリオール成分はポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、又は上述のポリオールの2つ以上の混合物から選択されるポリオールを含有する。ポリオール成分は、好ましくはポリエーテルポリオールである。より好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである(すなわち、ポリエーテルポリオール以外のポリオールを含有しない;しかし、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が包含され、本実施形態の範囲から外れることはない)。
【0076】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第38の実施形態においては、イソシアネート成分はトリレンジイソシアネート(TDI)、並びにジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI)(特にTDIのみ)を含有し、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを含有する(特にポリエーテルポリオールであり、すなわちポリエーテルポリオール以外の更なるポリオールを含有しないが、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が含まれ、本実施形態の範囲から逸脱しない)。
【0077】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第39の実施形態においては、化学分解試薬はエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、又は上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択されるアルコールを含む。
【0078】
第42の実施形態の特定の構成である本発明の第40の実施形態においては、化学分解試薬は水を含む。
【0079】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第41の実施形態においては、触媒はアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、カルボン酸のアルカリ金属塩(特にアセテート)、カルボン酸のアルカリ土類金属塩(特にアセテート)、ルイス酸(特にジラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸スズ、モノブチルスズオキシド又はチタン酸テトラブチル)、及び/又は有機アミン(特にジエタノールアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)から選択される。
【0080】
4つ全ての代替例の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第42の実施形態においては、ポリウレタンフォームと接触する際の化学分解試薬は、120℃~240℃、特に120℃超~240℃の範囲の温度にある。
【0081】
本発明の上で簡単に概説した実施形態及び考え得る更なる実施形態を、以下でより詳細に明らかにする。別段の記載がないか、又は文脈から明らかに見て取れない限り、本発明の全ての実施形態及び他の構成を所望に応じて互いに組み合わせることができる。
【0082】
ケミカルリサイクル用のポリウレタンフォームの準備
本発明による方法の工程(A)においては、ケミカルリサイクルされるポリウレタンフォームを準備する。
【0083】
ポリウレタンフォームは、原則としてどのような種類であってもよく、特に軟質フォーム及び硬質フォームの両方が有用であり、軟質フォーム(例えば使用済みのマットレス、家具のクッション材、又は自動車のシートからのもの)が好ましい。かかるポリウレタンフォームは、発泡剤を用いて製造される。水発泡フォーム(この場合、その場で加水分解して二酸化炭素を放出する)とは別に、特にペンタンが一般的に使用される発泡剤である。使用済みポリウレタンフォームのリサイクルにおいては、以前は発泡剤として通常使用されていたヒドロクロロフルオロカーボンが使用されていることが考えられる。更に考え得る発泡剤は、ジクロロメタンである。
【0084】
加えて、イソシアネート成分に関して、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、並びに上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートをベースとするポリウレタンフォームが好ましい。イソシアネート成分に関してTDIとMDIとの混合物をベースとするポリウレタンフォームが特に好ましい。イソシアネート成分に関してTDIのみをベースとするポリウレタン製品が非常に特に好ましい。
【0085】
ポリオール成分に関しては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、又は上述のポリオールの2つ以上の混合物からなる群より選択されるポリオールをベースとするポリウレタンフォームが好ましい。ポリオール成分は、好ましくはポリエーテルポリオールである。より好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである(すなわち、ポリエーテルポリオール以外のポリオールを含有しない;しかし、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が包含され、本実施形態の範囲から外れることはない)。
【0086】
最も好ましくは、ポリウレタンフォームは、イソシアネート成分がトリレンジイソシアネート(TDI)、並びにジフェニルメタン系のジイソシアネート及びポリイソシアネート(MDI)、特にTDIのみを含有し、ポリオール成分がポリエーテルポリオールを含有する(特にポリエーテルポリオールであり、すなわちポリエーテルポリオール以外の更なるポリオールを含有しないが、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が含まれ、本実施形態の範囲から逸脱しない)、フォームである。
【0087】
好ましくは、工程(A)は、工程(B.II)におけるウレタン結合の切断のための準備工程を既に含む。これは特に、ポリウレタンフォームの機械的粉砕である。かかる準備工程は、当業者に既知である。例えば非特許文献1を参照されたい。ポリウレタンフォームの特性によっては、粉砕操作を容易にするために機械的粉砕の前にポリウレタンフォームを「凍結」することが有利であり得る。
【0088】
機械的粉砕の前、最中又は後に、ポリウレタンフォームを(水性又はアルコール性)消毒剤で処理してもよい。かかる消毒剤は、好ましくは過酸化水素、二酸化塩素、ホルムアルデヒド、アルカリ金属次亜塩素酸塩(特に次亜塩素酸ナトリウム)及び/又は過酢酸(水性消毒剤)、又はエタノール、イソプロパノール及び/又は1-プロパノール(アルコール性消毒剤)である。特に、かかる消毒処理を行う場合、セル構造内に存在する化合物は標準条件下、すなわち0℃の温度及び1.000bar(abs.)の圧力で液体であるものも含む。この場合、第1の温度の最小値として16℃の値を選択することが好ましい。
【0089】
このようにして準備されたフォームを、最後に入口装置に接続された容器(図中の参照符号100)に移送する。この容器は、当該技術分野で既知の通常の容器、例えば固体用のサイロ又はコンテナを含み得る。
【0090】
上記の準備工程を化学分解側から空間的に離れた部位で行うことも考えられる。その場合、準備されたフォームを更なる輸送のために好適な輸送車両、例えばサイロ車両に充填する。更なる輸送のために、準備されたフォームを付加的に圧縮し、より高い質量対体積比を達成してもよい。化学分解反応器の部位では、フォームを続いて容器に充填する。使用する輸送車両を入口装置に直接接続することも考えられ、この場合、輸送車両は、本発明の専門用語における容器とみなすものとする。
【0091】
ポリウレタンフォームの化学分解
本発明による方法の工程(B)は、工程(A)で準備されたポリウレタンフォームの化学分解を含む。この工程は、
(i)入口装置(図中の参照符号200)と、
(ii)入口装置に接続された化学分解反応器(図中の参照符号300)と、
(iii)化学分解反応器に接続された出口装置(図中の参照符号400)と、
(iv)セル構造内に存在する化合物を除去するための少なくとも1つのガス除去装置(図中の参照符号500)と、
を有する化学分解装置において行われる。
【0092】
工程(B)は、以下の部分工程:(B.I)ポリウレタンフォームを容器から入口装置に導入し、そこから化学分解反応器に導入し、そこでポリウレタンフォームを化学分解試薬と接触させる前に、
(α)少なくとも酸素(すなわち、(i)成分X中に存在する酸素、及び(ii)成分Xの構成要素の分解反応によって形成される任意の酸素)、好ましくは成分Xの全構成要素又はそのガス状分解生成物を化学分解装置から960mbar(abs.)以下の圧力及び120℃以下の温度にてガス除去装置を介してガス状で除去すること、
によって脱ガスし、脱ガスされたポリウレタンフォームを得る工程と、(B.II)化学分解反応器において、脱ガスされたポリウレタンフォームを触媒の存在下で不活性ガス雰囲気にて化学分解試薬と反応させ、(第1の)生成物混合物を得る工程と、(B.III)(第1の)生成物混合物を化学分解反応器から出口装置を介して排出する工程とを含む。
【0093】
工程(B.I)の過程で、ポリウレタンフォームが脱ガスされ、すなわちセル構造内に存在する揮発性付随物質がポリウレタンフォームのセル構造のセル及び/又はラメラから除去され、少なくとも1つのガス出口装置500を介して排出される。これを達成する様々な方法がある。
【0094】
第1の代替解決策の一部をなし、図1に示される工程(B.I)の第1の代替例においては、容器(図1の100)及び/又は入口装置(図1には示していないが、同様に可能である)に、第1の工程において第1の圧力p1を0.1mbar(abs.)~100mbar(abs.)の範囲の値に調整することによって潰れ、それによりポリウレタンフォームを圧縮し、第2の工程において不活性ガス3を供給して第2の圧力p2を確立することで再び拡張する内部柔軟ライニング600が設けられている。第2の圧力は、好ましくは1.8bar(abs.)以下であり、特に周囲圧力に対応する(すなわち、第2の工程は、周囲圧力への拡張を伴う)。この場合及び他の図面における「M」は、モーターを表し、モーター駆動式装置、本例では容器100の入口及び出口を開閉する装置を意味する。
【0095】
図1の左側に、ポリウレタンフォーム1による容器100の充填を示す。容器の下部領域のバルブ110、入口装置200との接続部、及びガス除去装置(500;バルブ510は「閉」位置)は閉じている。
【0096】
第1の工程の実行を図1の中央に示す。容器100の導入口、バルブ110、及び入口装置200との接続部は閉じている。ガス除去装置500を用いて減圧し(バルブ510は「開」位置)、柔軟ライニング600内の圧力をp1まで低下させる。
【0097】
図1の右側に、第2の工程及び第2の工程に続く脱ガスされたポリウレタンフォーム2の入口装置200への搬送を示す。第2の工程において、この時点で開かれたバルブ110を介して不活性ガス3を添加することにより、柔軟ライニング内の圧力をp2まで上昇させる。入口装置との接続部が開いた後、脱ガスされたポリウレタンフォーム2は、入口装置200へと搬送される(すなわち、単に重力下でその中に落下する)。
【0098】
好ましくは、第1の代替例において、第1の工程から第2の工程への移行時に温度の意図的な変更を行わず、工程の温度は-20℃~120℃の範囲となる。好ましくは、第1の工程及び第2の工程の両方を0℃~80℃の範囲の温度で行う。除去すべき化合物が標準条件下で液体である場合(有意な蒸気圧が存在し得ないことを意味する訳ではない)、16℃の下限温度が有用であることが見出されている。このようにして脱ガスされたポリウレタンフォームが工程(B.II)における反応に送られる前に、第1の工程及び第2の工程を特に2回~5回繰り返すことが有利であると見出されている。
【0099】
本代替例に使用される柔軟ライニングは、好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、アルミニウム、ポリ塩化ビニル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、又は上述の材料の複合材料のフィルム/フォイルである。
【0100】
第1の工程における圧力を最大100mbar(abs.)まで低下させることで、柔軟ライニングを潰し、ポリウレタンフォームを圧縮する。これにより揮発性付随物質がフォームのセル構造から押し出され、ガス除去装置を介して排出される。不活性ガス(特に窒素、アルゴン又はヘリウム)を供給することによって第2の圧力を確立した後、脱ガスされたポリウレタンフォームを振動により、機械的に又は空気圧によって、或いは単に重力下で化学分解反応器に搬送することができる。本代替例においては、ポリウレタンフォームが、柔軟ライニングを備える化学分解反応器の領域を離れた後にのみ、化学分解試薬及び触媒を添加する。特に、化学分解試薬及び触媒を化学分解反応器にのみ添加する。好ましくは、特に第1の温度よりも高く、好ましくは120℃~240℃の範囲の温度で化学分解試薬を添加する。
【0101】
同様に第1の代替解決策の一部をなし、図2a、図2bに示される工程(B.I)の第2の代替例においては、入口装置は、工程(A)で準備されたポリウレタンフォーム1用の閉鎖可能な供給装置と、脱ガスされたポリウレタンフォーム2用の閉鎖可能な除去装置とを有する第1のロック領域121(化学分解反応器の上流)を有し、
ここで、工程(B.I)は、以下の工程:
(B.I.1.a)第1のロック領域の除去装置を閉鎖し、ポリウレタンフォームを第1のロック領域に導入するとともに、第1のロック領域の供給装置を閉鎖する工程と、
(B.I.2.a)第1のロック領域において、第1の圧力を0.1mbar(abs.)~100mbar(abs.)の指定範囲の値に調整して(B.I)の第1の工程を行う工程と、
(B.I.3.a)第1のロック領域において、不活性ガスを供給することにより第2の圧力をp1超~2.0bar(abs.)の指定範囲の値に調整して(B.I)の第2の工程を行い、脱ガスされたポリウレタンフォームを得る工程と、
(B.I.4.a)(B.I.3.a)で得られた脱ガスされたポリウレタンフォームを化学分解反応器に移送する工程と、
を含む。
【0102】
本実施形態の最も単純な構成においては、ロック領域は1つのみであり、したがって「第1のロック領域」という表現は、必ずしも複数のロック領域の存在が必須であることを意味する訳ではない。
【0103】
しかしながら、少なくとも2つのロック領域を使用し、交互に操作することで、ポリウレタンフォームを化学分解反応器に連続的に移送する選択肢が広がる。本発明の第2の代替例の本実施形態においては、入口装置は、第1のロック領域に加えて、工程(A)で準備されたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な供給装置と、脱ガスされたポリウレタンフォーム用の閉鎖可能な除去装置とを有する第2のロック領域を有し、
ここで、ポリウレタンフォームの第1の部分は、工程(B.I.1.a)において第1のロック領域に導入され、工程(B.I)は、以下の工程:
(B.I.1.b)第2のロック領域の除去装置を閉鎖し、ポリウレタンフォームの第2の部分を第2のロック領域に導入するとともに、第2のロック領域の供給装置を閉鎖する工程と、
(B.I.2.b)第2のロック領域において、第1の圧力を0.1mbar(abs.)~100mbar(abs.)の指定範囲の値に調整して(B.I)の第1の工程を行う工程と、
(B.I.3.b)第2のロック領域において、不活性ガスを供給することにより第2の圧力をp1超~2.0bar(abs.)の指定範囲の値に調整して(B.I)の第2の工程を行い、脱ガスされたポリウレタンフォームの第2の部分を得る工程と、
(B.I.4.b)脱ガスされたポリウレタンフォームの第2の部分を化学分解反応器に移送する工程と、
を付加的に含み、工程(B.I.1.a)~(B.I.4.a)が工程(B.I.1.b)~(B.I.4.b)と合わせられて、脱ガスされたポリウレタンフォーム2が、化学分解反応器に連続的に移送される。
【0104】
図2aの左半分に、第1のロック領域221と第2のロック領域222とを有するロック220を示す。第2のロック領域222は、第1のロック領域と同じ構成であり、これは図には特に示されていない。第2のロック領域222へのアクセスは閉じている。ポリウレタンフォーム1は、第1のロック領域221に導入されるところである。第1のロック領域221は、下方向に(すなわち化学分解反応器に向かって)閉じている。充填操作が終了した後、図2aの右半分に示すように、第1のロック領域221への入口は閉鎖される。ガス除去装置500に付属するバルブ510が開かれ、圧力の低下によって圧力p1が確立される(第1の工程)。並行して、ポリウレタンフォーム1を第2のロック領域222に導入することができる。第1のロック領域221において圧力p1に達すると、バルブ510が閉鎖され、バルブ210を介した不活性ガス3の添加により圧力p2が確立される(図2bの左半分)。化学分解試薬も同様にバルブ210を介して供給することができる。圧力p2に達すると、バルブ210及び510が閉鎖され、この時点で脱ガスされ、任意に化学分解試薬で湿潤したポリウレタンフォーム2を化学分解反応器に更に搬送することができる(図2bの右半分)。
【0105】
温度及び圧力に関して、第1の代替例について上で行った記述は、第2の代替例にも相応に当てはまる。
【0106】
本代替例においては、化学分解試薬を化学分解反応器内だけでなく、第2の工程の直後(すなわち脱ガス操作が終了した後)、すなわち第1のロック領域及び/又は第2のロック領域内でもポリウレタンフォームに添加することができる。いずれの場合も添加される化学分解試薬は、特に第1の温度よりも高く、好ましくは120℃~240℃の範囲の温度にある。この初期段階で(特に化学分解試薬中の溶液として)触媒を添加することも同様に可能である。第1のロック領域及び/又は第2のロック領域の初期段階で化学分解試薬を添加する場合、ポリウレタンフォームは、好ましくはそれで湿潤している。第1のロック領域及び/又は第2のロック領域の初期段階での化学分解試薬の添加は、当然ながら更なる化学分解試薬及び/又は更なる触媒を化学分解反応器に添加しないことを意味する訳ではない。
【0107】
本代替例においては、ポリウレタンフォームを第1のロック領域又は第2のロック領域に振動により、機械的に又は空気圧によって導入することができる。ロック領域にポリウレタンフォームを充填した後、閉鎖する。真空を適用した後、空気出口バルブを再び閉鎖する。第1の工程における圧力を最大100mbar(abs.)まで低下させることで、揮発性成分をフォームのセル構造から吸い出し、ガス出口装置を介して排出する。不活性ガス(特に窒素、アルゴン又はヘリウム)を供給することにより第2の圧力が確立された後、脱ガスされたポリウレタンフォームを化学分解反応器に搬送することができる。これは、この場合も振動により、機械的に又は空気圧によって、或いは単に重力の結果として達成することができる。第1のロック領域又は第2のロック領域の初期段階でポリウレタンフォームを化学分解試薬と接触させる場合、ポリウレタンフォームの見かけ密度が増大し、その結果として容易に反応器に落下することができる。さらに、ポリウレタンフォームのセル構造が既に化学分解試薬を含有する場合、化学分解反応器内に既に存在する化学分解試薬にポリウレタンフォームを混合することが容易となる。
【0108】
同様に第1の代替解決策の一部をなし、図3に示される工程(B.I)の第3の代替例においては、ポリウレタンフォームは、(B.I)の第1の工程中に、第1の圧力p1を0.1mbar(abs.)~100mbar(abs.)の指定範囲内の値に調整することによって、入口装置の第1の部分201に配置された機械的粉砕用の装置230を通って搬送されて粉砕され、この場合、機械的粉砕後のポリウレタンフォーム11が、第2の圧力下で入口装置の第1の部分の下流の第2の部分202を通って不活性ガス雰囲気(特に窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気)中に搬送されるように第2の工程が行われる。この搬送は、(少なくとも)スクリューシャフト、(少なくとも)ピストン、(少なくとも)コンベヤーベルト、振動及び/又は重力によって行うことができる。
【0109】
機械的粉砕用の装置230は、例えばカッティングミル、ナイフミル、インパクトカップ及び/又はハンマーミルであり得る。インパクトカップ又はハンマーミルの使用は、特にポリウレタンフォームを凍結状態で化学分解装置に導入する場合に好ましい。これは、本発明の第3の代替例の特にこの実施形態が、行うことが好ましいポリウレタンフォームの機械的粉砕を工程(B)に少なくとも部分的に組み込むことを可能にするためである。その場合、更に上に記載される、工程(A)におけるポリウレタンフォームの機械的粉砕を、ポリウレタンフォームを処理しやすい大きさの断片に粗粉砕することに限定するか、或いは完全に省くことができる。
【0110】
ポリウレタンフォームの凍結を伴う上記の実施形態とは別に、温度及び圧力に関し、第1の代替例及び第2の代替例について行った記述は、第3の代替例にも相応に当てはまる。第3の代替例の本実施形態においても、圧力は、好ましくは第1の代替例及び第2の代替例について記載した通りであるが、機械的圧縮は、当然ながら0℃よりも低い温度、特に-20℃まで下げた温度で行われる。
【0111】
第2の代替例と同様、第3の代替例においても、化学分解試薬を化学分解反応器内だけでなく、第2の工程の直後(すなわち脱ガス操作が終了した後)、すなわちここでは入口装置の第2の部分内であってもポリウレタンフォームに添加することが可能である。いずれの場合も添加される化学分解試薬は、特に第1の温度よりも高く、好ましくは120℃~240℃の範囲の温度にある。この初期段階で(特に化学分解試薬中の溶液として)触媒を添加することも同様に可能である。入口装置の第2の部分の初期段階で化学分解試薬を添加する場合、ポリウレタンフォームは、好ましくはそれで湿潤している。入口装置の第2の部分の初期段階での化学分解試薬の添加は、当然ながら更なる化学分解試薬及び/又は更なる触媒を化学分解反応器に添加しないことを意味する訳ではない。
【0112】
その代替例においては、ポリウレタンフォームをコンベヤ、好ましくは可能な限り密閉されたもの、特にスクリューコンベヤによって、100mbar(abs.)以下の圧力下にある機械的粉砕用の装置に導き、ここで、機械的粉砕中に粉砕における圧縮操作により揮発性化合物の大部分が除去される。このようにして粉砕されたポリウレタンフォームを不活性ガス雰囲気下で入口装置の第2の部分に搬送することで、ポリウレタンフォームのセル構造に不活性ガスを充填し、それにより他のガスの侵入から効果的に保護する。場合により、工程(B.I)における機械的粉砕で工程(A)における機械的粉砕を置き換えてもよい。
【0113】
第2の代替解決策を構成し、図4に示される工程(B.I)の第4の代替例においては、ポリウレタンフォームは、第1の工程中に入口装置内に配置された機械的圧縮用の装置240に搬送され、ここで、ポリウレタンフォームは、第2の工程中に上記機械的圧縮用の装置において5bar(abs.)~200bar(abs.)の範囲の第2の圧力p2の値で圧縮される。圧力p2は、マノメーター(機械的圧縮用の装置が配置される入口装置の領域に突出する毛細管に接続される)によって決定することができる。機械的圧縮の前にポリウレタンフォームを不活性化することが好ましいが、必須ではない。このため、第2の工程を経た後、圧力は少なくとも5bar(abs.)であり、工程(B.II)に好ましい圧力よりも高い(この点で、更に下の説明を参照されたい)。工程(B.II)の圧力への拡張は、好ましくは工程(B.I)で処理されたポリウレタンフォームが化学分解反応器に入る際に行われる。化学分解試薬4は、本代替例においては、例えば機械的圧縮用の装置を通過した後(すなわち脱ガス操作が終了した後)、化学分解反応器300に入る前に添加することができる(更なる詳細については更に下を参照されたい)。
【0114】
本代替例においては、ガス除去装置500は、好ましくは入口装置220内に配置される。化学分解反応器300には、化学分解中に形成された反応ガス、例えば特に二酸化炭素を排出するための装置600が配置されていてもよい。
【0115】
好適な機械的圧縮用の装置の例は、押出機(マルチゾーンスクリュー、並びに一軸押出機及び多軸押出機も含む)、ローラー又はピストンである。マルチゾーンスクリューは、螺旋が例えば異なる螺旋巻きの直径又は傾きを有する押出機である。これにより圧縮が促進される。
【0116】
第2の代替例及び第3の代替例と同様、第4の代替例においても、化学分解試薬を化学分解反応器内だけでなく、第2の工程の直後(すなわち脱ガス操作が終了した後)、すなわちここでは機械的圧縮用の装置を通過した後であるが、入口装置内であってもポリウレタンフォームに添加することが可能である。いずれの場合も添加される化学分解試薬は、好ましくは120℃~240℃の範囲、特に120℃超~140℃の範囲の温度にある。しかしながら、第2の代替例及び第3の代替例とは対照的に、この時点ではいかなる触媒も添加しないことが好ましい。入口装置の初期段階で化学分解試薬を添加する場合、ポリウレタンフォームは、好ましくはそれで湿潤している。入口装置の初期段階での化学分解試薬の添加は、当然ながら更なる化学分解試薬及び/又は更なる触媒を化学分解反応器に添加しないことを意味する訳ではない。
【0117】
他の代替例と同様、第2の工程の温度は、好ましくは-20℃~120℃の範囲であり、特に第1の温度に対応する(すなわち、第1の工程から第2の工程への移行時に温度の意図的な変更を行わない)。第1の温度は、好ましくは0℃~80℃の範囲である。これは第2の温度にも当てはまる。除去すべき化合物が標準条件下で液体である場合(有意な蒸気圧を除外する訳ではない)、16℃の下限温度が(どちらの工程においても)有用であることが見出されている。
【0118】
本代替例に使用される機械的圧縮用の装置において、ポリウレタンフォームが圧縮され、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在するガス及び揮発性化合物が押し出される。
【0119】
本発明による方法の工程(B.II)においては、実際のケミカルリサイクルであるウレタン結合の切断を行う(脱ガスが完全である限りにおいて、入口装置の初期段階で反応が部分的に開始され得ないことを意味する訳ではない;工程(B.I)に関する上記の説明を参照されたい)。化学分解は、不活性ガス雰囲気(特に窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気)で行われる。使用する化学分解試薬は、好ましくは不活性ガス飽和によって酸素なしに飽和状態でもある(これを化学分解反応器内で初めて添加するか、又は入口装置の初期段階で添加するかを問わない)。
【0120】
工程(B.II)は、原則として専門家分野で既知の方法のいずれかによって行うことができる。反応を行うために、特に化学分解反応器に化学分解試薬(及び触媒)を部分的に充填する。変換すべきポリウレタンフォームを、この化学分解試薬「浴」中に導入する。ポリウレタンフォームの導入は、液面の上又は下のいずれでも可能である。
【0121】
本工程の好ましい構成は、アルコール分解(通常、文献ではグリコール分解と称される;更に上の2番参照)及び加水アルコール分解(hydroalcoholysis)(通常、文献では加水グリコール分解と称される;更に上の3番参照)である。具体的な構成様式に関わらず、工程(B.II)は140℃~240℃、好ましくは160℃~240℃、より好ましくは180℃~220℃の温度範囲で行われる。工程(B.II)における圧力は、好ましくは960mbar(abs.)超~1.8bar(abs.)であり、特に周囲圧力に等しい(すなわち、工程(B.II)における反応は特に加圧されない)。工程(B.II)における圧力は、化学分解反応器のガス空間において支配的な圧力を意味する。
【0122】
化学分解がアルコール分解として行われる場合、相当な割合の水を添加することなく、化学分解試薬(この場合はアルコール)を添加する。これに関連して、相当な割合の水を添加しないとは、相当な程度の加水アルコール分解をもたらすような量の水を意図的に添加しないことを意味する。これは、例えば工程(B.II)に使用されるアルコールに溶解した形態で、ポリウレタンフォームによって導入されるか、又は触媒の溶媒として使用され得る少量の水の導入を除外するものではない。
【0123】
化学分解が加水アルコール分解として行われる場合、使用する化学分解試薬は、アルコール及び水であり、この場合、これら2つの成分を予め混合してもよいが、その必要はない。特に、初めにアルコールのみ(及び水の多くともごく一部)を添加し、それにポリウレタンフォームを溶解させた後、水(又は残りの水)を添加することも可能である。加水アルコール分解においては、使用する水の全量を一度に添加するのではなく、水が反応で化学的に消費される速度で徐々に添加することが好ましい。
【0124】
化学分解をアルコール分解として行うか、又は加水アルコール分解として行うかに関わらず、化学分解試薬は、好ましくはエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール、又は上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択されるアルコールを含む。ジエチレングリコールが特に好ましい。
【0125】
アルコール分解及び加水アルコール分解が好ましいが、当然ながら加水分解又はアミノ分解等の他の化学分解法を用いることも同様に可能である。
【0126】
工程(B.II)に適した触媒は、特にアルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、カルボン酸のアルカリ金属塩(特にアセテート)、カルボン酸のアルカリ土類金属塩(特にアセテート)、ルイス酸(特にジラウリン酸ジブチルスズ、オクタン酸スズ、モノブチルスズオキシド又はチタン酸テトラブチル)、及び/又は有機アミン(特にジエタノールアミン、1,1,3,3-テトラメチルグアニジン、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデカ-7-エン又は1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン)である。触媒は遅くとも化学分解反応器で添加し、代替的には(上記の説明を参照されたい)、特に化学分解試薬に溶解して、既に入口装置で予め添加していてもよい。
【0127】
工程(B.II)は、専門家分野でかかる目的のために知られている任意の反応器で行うことができる。特に好適な化学分解反応器は、撹拌タンク(撹拌反応器)及び管状反応器である。
【0128】
工程(B.II)は、未変換の化学分解試薬(超化学量論的量で使用されたため)、ポリオール(ポリオール成分に由来し、及び/又は化学分解試薬との反応で分解生成物として新たに形成された)、並びにカルバメート及び/又はアミン(使用する化学分解試薬に応じる)を含有する第1の生成物混合物を生じる。過剰な化学分解試薬は、化学分解をアルコール分解又は加水アルコール分解として行う好ましい実施形態においては、少なくとも化学分解に使用するアルコールを含み、水を含むか又は含まない(化学分解を加水アルコール分解として行う場合)。化学分解を純粋なアルコール分解として行う場合、水が付加的に少量存在していてもよい。上記の説明を参照されたい。
【0129】
この第1の生成物混合物は、工程(B.III)において化学分解反応器から排出された後、更なる後処理(工程(C)、好ましくは工程(C)及び工程(D))に送られる。この目的で使用する排出装置は、特にポンプ等の流体搬送のための専門家分野で既知の装置のいずれであってもよい。
【0130】
ポリオールの回収
本発明による方法の工程(C)において、工程(B)で得られた第1の生成物混合物を後処理してポリオールを得る。この後処理は、原則として従来技術で知られているように達成することができる。好ましくは、第1の生成物混合物を初めに有機溶媒と混合する。様々な考え得る構成がこの目的に利用可能である。
【0131】
化学分解をアルコール分解又は加水アルコール分解として行う好ましい実施形態における工程(C)の考え得る一構成においては、これは、
(C.I)工程(B.III)で得られた第1の生成物混合物を、特に第1の生成物混合物中に存在するいかなる水も事前に除去することなく、工程(B)に使用したアルコールと完全に混和しない有機溶媒(特に脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素、又は上述の有機溶媒の2つ以上の混合物)と合わせるとともに、相を第1のアルコール相と第1の溶媒相とに分離する工程と、
(C.II)第1の溶媒相を後処理して、ポリオールを回収する工程と、
を含む。
【0132】
工程(C.II)は、特に洗浄及び蒸留等の当業者に既知の後処理工程を含む。
【0133】
化学分解をアルコール分解又は加水アルコール分解として行う好ましい実施形態における工程(C)の別の考え得る構成においては、これは、
(C.I)工程(B.III)で得られた第1の生成物混合物を、工程(B)に使用したアルコールと混和する有機溶媒(特にハロゲン置換脂肪族炭化水素、ハロゲン置換脂環式炭化水素、ハロゲン置換芳香族炭化水素、又は上述の有機溶媒の2つ以上の混合物)と混合し、任意に続いて固体構成要素を除去して、第2の生成物混合物を得る工程と、
(C.II)工程(C.I)で得られた第2の生成物混合物を水性洗浄液(第2の生成物混合物中に存在する任意のカーボネートを部分加水分解してアミン及びアルコールを放出する)で洗浄するとともに、相を、
工程(C.I)に使用した有機溶媒及びポリオールを含有する第1の溶媒相と、
水、アルコール、カルバメート及びアミンを含有する第1の水相と、
に分離する工程と、
(C.III)第1の溶媒相を後処理して、ポリオールを得る工程と、
を含む。
【0134】
工程(C.III)も特に洗浄及び蒸留等の当業者に既知の後処理工程を含む。
【0135】
有機溶媒による第1の生成物混合物の抽出は、当然ながら化学分解を純粋な加水分解として行う場合にも行うことができる。
【0136】
アミンの回収
本発明による方法は、好ましくはイソシアネート成分のイソシアネートに対応する少なくとも1つのアミンを回収する工程(D)を含む。後処理のその部分の出発点は、工程(C)で第1の生成物混合物から回収されたアルコール相又は第1の水相である。
【0137】
工程(D)を行う方法は、特に工程(B.II)を行う方法によって決まる。工程(B)をアルコール分解として行う場合、第1のアルコール相又は第1の水相は、通常は依然として工程(D)で加水分解する必要があるカルバメートを相当な割合で含有する。かかる加水分解は、有利には触媒によって行われ、好適な触媒は、化学分解について上述したものと同じである。
【0138】
工程(B.II)を加水アルコール分解として行う場合、プロセスのこの時点で既にカルバメートはもはや存在せず(又は少なくとも問題にならない微量の含有量で存在する)、したがって別の加水分解工程は不要である。
【0139】
これとは無関係に、工程(D)は、ウレタン結合の切断によって得られたアミンを精製するために、特に蒸留等の後処理工程を含む。ここでは、国際公開第2020/260387号及び未公開の国際出願PCT/EP2021/075916号に記載されているように、回収されたアミンのポリウレタンフォームからの単離を、新たなアミンを調製するプロセスに組み込むことが特に有利である。
【0140】
実施例を参照して、本発明を以下でより詳細に明らかにする。
【実施例
【0141】
実施例1(本発明による、第1の代替例):
250gのポリウレタンフレーク(トリレンジイソシアネートベースの軟質フォーム)を軟質ポリエチレン(PE)バッグ(30L)に導入し、これを閉じ、真空ポンプに接続した。真空ポンプを始動することで、PEバッグ内の圧力を10mbar(abs)未満の値にまで低下させた。続いて、窒素を添加することによってPEバッグの内部を周囲圧力まで拡張させた。この操作を更に2回繰り返した。続いて、バッグの出口に酸素プローブを設置した。不活性化したバッグに圧力をかけ、その中に存在するガスを、酸素プローブを通過させて1分間流した。排出空気中の酸素含有量が0.5重量%を超えることはなかった。
【0142】
続いて、不活性化したフォームフレークを用いて、以下のようにグリコール分解を行った。
【0143】
250gのジエチレングリコール及び2.5gのトリネオデカン酸ビスマスを1Lの3つ口丸底フラスコに更に充填し、200℃まで加熱した。続いて、ポリウレタンフレークを添加し、溶解し、更に3時間200℃に維持した。添加及び反応の間に、一定の窒素パージのスイッチを入れた(10NL/時間)。反応時間後に混合物を室温まで冷却した。
【0144】
実施例2(比較実験):
ポリウレタンフレークの化学分解を実施例1と同様に行ったが、本発明による脱ガスは行わなかった。ここでも、計量添加及び反応の間、窒素パージを常に接続していた。
【0145】
実施例2においては、反応混合物の明らかな黒変が見られたが、先に脱ガスしたポリウレタンフォーム(実施例1)は、淡い茶色を示しただけであった。これにより、ポリウレタンフォームのセル構造内に存在する酸素が、グリコール分解中に放出されるトリレンジアミン化合物の酸化を明らかに促進することによる影響が明確に示される。
図1
図2a
図2b
図3
図4
【国際調査報告】