(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】繊維金属積層体構造を有する非空気圧式タイヤ
(51)【国際特許分類】
B60C 7/00 20060101AFI20240104BHJP
B29D 30/02 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B60C7/00 H
B29D30/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023535977
(86)(22)【出願日】2021-12-09
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 US2021072834
(87)【国際公開番号】W WO2022133406
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515168916
【氏名又は名称】ブリヂストン アメリカズ タイヤ オペレーションズ、 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グリーベル,ジェイレッド ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】リマイ,ベンジャミン イー.
(72)【発明者】
【氏名】プロトナー,ブラッドレイ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ネルソン,ブランドン ピー.
【テーマコード(参考)】
3D131
4F215
【Fターム(参考)】
3D131AA30
3D131BB19
3D131BC22
3D131BC31
3D131BC35
3D131BC49
3D131CC03
3D131LA28
4F215AH21
4F215VC08
4F215VD03
4F215VD16
(57)【要約】
【解決手段】 非空気圧式タイヤは、第1の直径を有する下部リングと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リングと、を含む。上部リングは、下部リングと実質的に同軸である。支持構造体は、下部リングを上部リングに接続する。下部リング、上部リング、及び支持構造体のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを有する繊維金属積層体を含む。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非空気圧式タイヤであって、
第1の直径を有する下部リングと、
前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リングであって、前記下部リングと実質的に同軸である、上部リングと、
前記下部リングを前記上部リングに接続する支持構造体と、を備え、
前記下部リング、前記上部リング、及び前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを有する繊維金属積層体を含む、非空気圧式タイヤ。
【請求項2】
前記繊維金属積層体が、少なくとも1つのプライマー層を更に含む、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項3】
前記上部リングに取り付けられた周方向トレッドを更に備え、前記周方向トレッドが、トレッド層と、前記トレッド層と前記上部リングとの間に位置付けられたトレッドバンドと、を含み、前記トレッドバンドが、前記繊維金属積層体から製造されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項4】
前記少なくとも1つの金属箔層が、ステンレス鋼、高強度アルミニウム、ハードコート鋼、及び不動態化鋼のうちの少なくとも1つから形成されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項5】
少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層が、ポリマー、ガラス、炭素、及び金属のうちの少なくとも1つから形成された繊維と、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリレート、及びポリシロキサンのうちの少なくとも1つから形成された樹脂と、を含む、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項6】
前記少なくとも1つのプライマー層が、ゾル-ゲル反応、キレート化プロセス、黄銅コーティングプロセス、及びリン酸亜鉛コーティングプロセスのうちの少なくとも1つから生成されている、請求項2に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項7】
前記下部リング及び前記上部リングの各々が、前記繊維金属積層体を含み、前記少なくとも1つの金属箔層と前記少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とが各々、前記非空気圧式タイヤの実質的に周方向に延在するように配置され、前記非空気圧式タイヤの実質的に径方向に互いの上に構築されるように配向されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項8】
前記支持構造体が、前記繊維金属積層体を含む複数のスポークとして提供され、前記少なくとも1つの金属箔層と前記少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とが各々、前記非空気圧式タイヤの実質的に径方向に延在するように配置され、前記非空気圧式タイヤの実質的に周方向に互いの上に構築されるように配向されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項9】
前記トレッドバンドを製造する前記繊維金属積層体の前記少なくとも1つの金属箔層と前記少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とが各々、前記非空気圧式タイヤの実質的に周方向に延在するように配置され、前記非空気圧式タイヤの実質的に径方向に互いの上に構築されるように配向されている、請求項3に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項10】
非空気圧式タイヤを製造する方法であって、
第1の直径を有する下部リング、前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リング、及び支持構造体を提供する工程と、
前記支持構造体を使用して、前記下部リングを前記上部リングに接続する工程と、を含み、
前記下部リング、前記上部リング、及び前記支持構造体を提供する前記工程が、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを含む繊維金属積層体とともに、前記下部リング、前記上部リング、及び前記支持構造体のうちの少なくとも1つを製造することを含む、方法。
【請求項11】
前記繊維金属積層体が、少なくとも1つのプライマー層を更に含む、請求項10に記載の非空気圧式タイヤを製造する方法。
【請求項12】
周方向トレッドを提供する工程と、前記周方向トレッドを前記上部リングに取り付ける工程と、を更に含み、前記周方向トレッドが、トレッド層と、前記トレッド層と前記上部リングとの間に位置付けられたトレッドバンドと、を含み、前記周方向トレッドを提供する前記工程が、前記繊維金属積層体から前記トレッドバンドを製造することを含む、請求項10に記載の非空気圧式タイヤを製造する方法。
【請求項13】
前記少なくとも1つの金属箔層が、ステンレス鋼、高強度アルミニウム、ハードコート鋼、及び不動態化鋼のうちの少なくとも1つから形成される、請求項10に記載の非空気圧式タイヤを製造する方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層が、ポリマー、ガラス、炭素、及び金属のうちの少なくとも1つから形成された繊維と、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリレート、及びポリシロキサンのうちの少なくとも1つからの樹脂系と、を含む、請求項10に記載の非空気圧式タイヤを製造する方法。
【請求項15】
前記少なくとも1つのプライマー層が、ゾル-ゲル反応、キレート化プロセス、黄銅コーティングプロセス、及びリン酸亜鉛コーティングプロセスのうちの少なくとも1つから生成される、請求項11に記載の非空気圧式タイヤを製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、非空気圧式タイヤに関する。より具体的には、本開示は、繊維金属積層体構造を有する非空気圧式タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤが非膨張状態又は膨張不足状態で走行することを可能にする種々のタイヤの構造が開発されている。非空気圧式タイヤは膨張を必要としないが、「ランフラットタイヤ」は、パンクして部分的又は完全に減圧された後でも、長期間、比較的高速で動作し続けることができる。非空気圧式タイヤは、下部リングを上部リングに接続するスポークなどの支持構造体を含み得る。いくつかの非空気圧式タイヤでは、周方向トレッドが、タイヤの上部リングに取り付けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
非空気圧式タイヤのリング又はスポークに構造補強要素を提供することが知られている。しかしながら、公知の構造補強要素が提供された非空気圧式タイヤは、タイヤの均一性、亀裂伝播、耐疲労性、又は耐衝撃性に関する問題に悩まされる場合がある。
【0004】
一実施形態では、非空気圧式タイヤは、第1の直径を有する下部リングと、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リングと、を含む。上部リングは、下部リングと実質的に同軸である。支持構造体は、下部リングを上部リングに接続する。下部リング、上部リング、及び支持構造体のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを有する繊維金属積層体を含む。
【0005】
別の実施形態では、非空気圧式タイヤを製造する方法は、第1の直径を有する下部リング、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リング、及び支持構造体を提供することを含む。方法は、支持構造体を使用して、下部リングを上部リングに接続することを更に含む。下部リング、上部リング、及び支持構造体を提供する工程は、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを含む繊維金属積層体とともに、下部リング、上部リング、及び支持構造体のうちの少なくとも1つを製造することを含む。
【0006】
更に別の実施形態では、非空気圧式タイヤは、下部リングと、下部リングの上方に配設された周方向トレッドと、を含む。周方向トレッドは、トレッド層及びトレッドバンドを含む。支持構造体は、下部リングをトレッドバンドに相互接続して、周方向トレッドを下部リングに取り付ける。下部リング、トレッドバンド、及び支持構造体のうちの少なくとも1つは、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを有する繊維金属積層体を含む。
【図面の簡単な説明】
【0007】
添付の図面では、以下に提供される詳細な説明とともに、特許請求される本発明の代表的実施形態を説明する構造が例解される。同様の要素は、同一の参照番号で特定される。単一の構成要素として示される要素を、多数の構成要素に置き換えてもよく、多数の構成要素として示される要素を、単一の構成要素に置き換えてもよいことが理解されるべきである。図面は正確な縮尺ではなく、特定の要素の比率が例解のために誇張されている場合がある。
【
図1】
図1は、非空気圧式タイヤの一実施形態の正面図である。
【
図2】
図2は、
図1の非空気圧式タイヤの部分拡大正面図である。
【
図3】
図3は、
図2の3-3に沿った非空気圧式タイヤの断面図である。
【
図4a】
図4aは、
図1の非空気圧式タイヤの様々な部分に使用され得る繊維金属積層体の一実施形態の詳細な断面図である。
【
図5】
図5は、非空気圧式タイヤの別の実施形態の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下は、本明細書において採用される選択用語の定義を含む。定義は、用語の範囲内にあり、及び実装のために使用され得る構成要素の様々な例又は形式を含む。例は、限定を意図するものではない。用語の単数形及び複数形は、いずれも定義の範囲内であり得る。
【0009】
「軸方向の」及び「軸方向に」は、タイヤの回転軸と平行する方向を指す。
【0010】
「周方向の」及び「周方向に」は、軸方向に対して垂直であるトレッドの表面の外周部に沿って延在する方向を指す。
【0011】
「プリプレグ」は、予め含浸された繊維及び部分的に硬化したポリマーマトリックスから作製された複合材料を指す。
【0012】
「径方向の」及び「径方向に」は、タイヤの回転軸に対して垂直である方向を指す。
【0013】
本明細書で使用するとき、「トレッド」は、通常の膨張度及び通常の荷重において、道路又は地面と接触するタイヤの部分を指す。
【0014】
以下の説明で使用される同様の用語によって一般的なタイヤ構成要素が説明されるが、当然のことながら、用語は若干異なる含意を有するため、当業者は、以下の用語のうちのいずれか1つが、一般的なタイヤ構成要素の説明に使用される別の用語と単に交換することができるとは見なさないであろうことを理解されたい。
【0015】
本明細書では、方向は、タイヤの回転軸を基準にして述べられる。「上向きの」及び「上向きに」という用語は、タイヤのトレッドに向かう一般方向を指し、「下向きの」及び「下向きに」は、タイヤの回転軸に向かう一般方向を指す。したがって、「上部の」及び「下部の」又は「頂部の」及び「底部の」など相対的な方向用語が要素に関連して使用されるとき、「上部の」又は「頂部の」要素は、「下部」又は「底部」の要素よりもトレッドに近い位置に離間配置される。加えて、「上」又は「下」など相対的な方向用語が要素に関連して使用されるとき、別の要素の「上」にある要素は、他の要素よりもトレッドに近い。
【0016】
「内側の」及び「内側に」という用語は、タイヤの赤道面に向かう一般方向を指し、「外側の」及び「外側に」は、タイヤの赤道面から離れ、タイヤの側部に向かう一般方向を指す。したがって、「内部」及び「外部」など相対的な方向用語が要素と関連して使用されるとき、「内部」要素は、「外部」要素よりもタイヤの赤道面の近くに離間配置される。
【0017】
図1~
図3は、非空気圧式タイヤ100の一実施形態を例解する。非空気圧式タイヤ100は、第1の直径を有する下部リング130と、第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リング140とを含む。上部リング140は、下部リング130と同軸である。下部リング130は、非空気圧式タイヤ100を車両に取り付けるための車両ハブ(図示せず)と係合することができる。
【0018】
スポーク200は、下部リング130と上部リング140との間に延在し、下部リング130を上部リング140に接続する。例解される実施形態では、スポーク200は、湾曲している。代替的な実施形態では、スポークは、実質的にC字形状であるように、より顕著な曲線を有してもよい。他の代替的な実施形態では、スポークは、任意の所望の形状であり得る。例えば、スポークは、実質的にV字形状又は蛇行形状であってもよい。更に他の代替的な実施形態では、非空気圧式タイヤは、2つ以上の異なる形状のスポークを含んでもよい。例えば、非空気圧式タイヤは、非空気圧式タイヤの周方向に沿ってV字形状スポークと互い違いになるC字形状スポークを含んでもよい。更に別の代替的な実施形態では、スポークは、ウェビング又は他の支持構造体で置き換えられてもよい。
【0019】
周方向トレッド300が、上部リング140に取り付けられる。周方向トレッド300は、トレッド層302と、トレッド層302と上部リング140との間に位置付けられたトレッドバンド304と、を含む。トレッド層302は、ゴム又は他のエラストマー材料から作製されてもよく、溝、リブ、ブロック、ラグ、サイプ、スタッド、又は任意の他の所望の要素などのトレッド要素(図示せず)を含んでもよい。代替的な実施形態では、トレッド層が省略されてもよく、トレッド要素が上部リングに直接形成されてもよい。
【0020】
非空気圧式タイヤ100の他の構成要素は、様々な材料から作製され得る。下部リング130又は上部リング140は、エラストマー材料又は金属から作製され得る。スポーク200もまた、エラストマー材料又は金属で作製され得る。トレッドバンド304は、ゴム、金属(超高強度鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、黄銅、若しくは銅を含むがこれらに限定されない)、ゴム、又はポリマー材料(ポリウレタン、ポリエステル、若しくはポリ塩化ビニルを含むがこれらに限定されない)で作製されてもよい。代替的な実施形態では、下部リング、上部リング、又はトレッドバンドは、任意の所望の材料で作製され得る。所望の性能特徴を有する非空気圧式タイヤを提供するために、特定の構成要素に対して特定の材料を選択することができる。
【0021】
非空気圧式タイヤ100を製造するために使用される材料にかかわらず、下部リング130、上部リング140、スポーク200、又はトレッドバンド304は、繊維金属積層体で補強されてもよい。代替的な実施形態では、繊維金属積層体は、補強材として提供されるのではなく、下部リング、上部リング、スポーク、又はトレッドバンド全体を製造するために使用されてもよい。
図4a及び
図4bは、非空気圧式タイヤ100の構成要素を補強又は製造するために使用され得る繊維金属積層体500の1つの例示的な実施形態を示す。例解される実施形態では、繊維金属積層体500は、金属箔、プライマー、又は繊維及び樹脂の組み合わせとして提供される11の層510~530を含む。
【0022】
繊維金属積層体500が下部リング130、上部リング140、又はトレッドバンド304において使用されるとき、層510~530は、各層が非空気圧式タイヤ100の実質的に周方向に延在するように配置されてもよく、層は、層が非空気圧式タイヤ100の実質的に径方向に互いの上に構築されるように、配向される。下側リング130及び上側リング140における繊維金属積層体500の例示的な配向は、
図2及び
図3において破線で示されている。繊維金属積層体500がスポーク200又は他の支持構造体において使用される場合、各層が非空気圧式タイヤ100の実質的に径方向に延びるように、層を配置することができる。スポーク200における繊維金属積層体500の例示的な配向は、
図2において破線で示されている。この例によれば、層は、層が非空気圧式タイヤ100の実質的に周方向に互いの上に構築されるように配向されてもよい。代替的な実施形態では、層は、任意の所望の配置又は配向を有してもよい。例えば、繊維金属積層体がスポーク又は他の支持構造体に使用される場合、各層が非空気圧式タイヤの実質的に径方向に延在するように、層は配置されてもよく、層が非空気圧式タイヤの実質的に軸方向に互いの上に構築されるように、層は配向される。
【0023】
金属箔として、第1の層510、第5の層518、第7の層522、及び第11の層530が提供される。例示的な一実施形態によれば、金属箔は、ステンレス鋼から形成される。代替的な実施形態では、金属箔は、高強度アルミニウム、硬質被覆鋼、又は不動態化鋼(例えば、アルミニウムシリコン過共晶合金又は炭化物/窒化物被覆を有する4340)から形成されてもよい。
【0024】
第3の層514及び第9の層526は、繊維及び樹脂の組み合わせとして提供される。例示的な一実施形態によれば、繊維及び樹脂の組み合わせは、樹脂系で予め含浸された繊維を含む繊維プリプレグを利用して提供される。代替的な実施形態では、繊維及び樹脂の組み合わせは、プレーン繊維(すなわち、樹脂系で予め含浸されていない)及び樹脂転写プロセスを利用して提供され、それによって、プレーン繊維が金型内に設置され、その後、樹脂が金型内に注入される。繊維プリプレグと比較して、プレーン繊維及び樹脂転写プロセスは、設計の柔軟性の増加を可能にする。しかしながら、繊維プリプレグは、プレーン繊維及び樹脂転写プロセスと比較して、より単純な製造プロセス及び時間の節約を提供する。繊維プリプレグ又はプレーン繊維及び樹脂転写プロセスのいずれかにおいて、繊維は、ポリマー、ガラス、炭素、金属、又は任意の他の所望の繊維若しくは繊維の組み合わせであってもよい。繊維プリプレグ又はプレーン繊維及び樹脂転写プロセスのいずれにおいても、樹脂系は、熱硬化性又は熱可塑性タイプであってもよい。樹脂系の例としては、エポキシ、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリシロキサン、ビニルエステル、ポリエステル、ジシクロペンタジエン若しくはノルボルネンモノマーから誘導された樹脂、又は任意の他の所望の樹脂系若しくは樹脂系の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。ノルボルネンモノマーから誘導された樹脂の具体例としては、MATERIA INC製のProxima Syntatic Thermoset Resins(STR)、High Performance Resins(HPR)、及びAdvanced Composites Resins(ACR)が挙げられる。耐衝撃性改良剤を樹脂に任意選択的に添加して、繊維及び樹脂組み合わせ層の靭性を改善することができる。例示的な一実施形態によれば、耐衝撃性改良剤は、KANEACE(登録商標)によって生成される多層構造ポリマー粒子設計を含む。代替的な実施形態では、任意の所望の耐衝撃性改良剤を使用することができる。
【0025】
第2の層512、第4の層516、第6の層520、第8の層524、及び第10の層528は、プライマーとして提供される。プライマーは、金属箔層と繊維及び樹脂組み合わせ層との間の結合を促進することができる。1つの例示的な実施形態によれば、プライマーは、金属箔の表面上へのゾル-ゲル様式の反応から生成され得る。代替的な実施形態では、プライマーは、キレート化プロセス、黄銅コーティングプロセス、リン酸亜鉛コーティングプロセス、又は任意の他の所望のプロセスから生成され得る。他の代替的な実施形態では、プライマーは、省略され得る。
【0026】
例示的な一実施形態によれば、金属箔層510、518、522、530並びに繊維及び樹脂組み合わせ層514、526の各々の厚さは、0.005~0.100mmであってもよく、金属箔層と繊維及び樹脂組み合わせ層との間の界面の数は、5~50であってもよい。この例示的な実施形態によれば、これらの特性を有する金属の体積分率は、繊維金属積層体500の総体積の15%以下である。代替的な実施形態では、異なる層厚さ、界面数、及び金属の体積分率のパーセンテージが、異なる用途のための非空気圧式タイヤの調整を可能にし得る異なる性能特徴をもたらすように提供されてもよい。
【0027】
下部リング130、上部リング140、スポーク200、又はトレッドバンド304において繊維金属積層体500を使用することにより、非空気圧式タイヤ100の性能及び堅牢性を向上させることができると同時に、非空気圧式タイヤ100の重量を低減することができる。金属箔層510、518、522、530を繊維と樹脂組み合わせ層514、526の間に介在させることにより、非空気圧式タイヤ100の衝撃及び疲労特性を改善することができる。というのは、金属箔層510、518、522、530が、繊維と樹脂組み合わせ層514、526に発生する亀裂を阻止し、非空気圧式タイヤ100全体にわたる亀裂の伝播を防止することができるからだ。異なる金属箔、繊維及び樹脂の組み合わせ、並びにプライマーは、異なる用途のための非空気圧式タイヤの調整を可能にし得る異なる性能特徴をもたらし得る。例えば、非空気圧式タイヤの全体的な強度は、従来、複合強度よりも衝撃性能を優先する繊維及び樹脂組み合わせ層内の特定の方向性繊維層を置き換えることによって改善することができる。具体的には、一例によれば、繊維の方向は、完全に周方向(すなわち、0度)であり、これは、高い強度を提供し、介在させた金属箔層からの利益を得て、衝撃性能を支援することができる。
【0028】
代替的な実施形態では、繊維金属積層体は、より少ない数又はより多い数の層を含んでもよい。加えて、他の代替実施形態では、異なる層は、任意の所望の順序で提供されてもよい。例えば、
図4a及び
図4bに示される実施形態では、第1の層510から始まり、第11の層530に向かって移動して、金属箔、プライマー、繊維及び樹脂の組み合わせ、プライマー、金属箔、プライマー、金属箔、プライマー、繊維及び樹脂の組み合わせ、プライマー、並びに金属箔の層が順に提供される。別の実施形態では、この配列は、金属箔、プライマー、金属箔、プライマー、繊維及び樹脂の組み合わせ、プライマー、繊維及び樹脂の組み合わせ、プライマー、金属箔、プライマー、並びに金属箔の層であってもよい。更に、他の代替的な実施形態では、異なる層の比率は、任意の所望の比率であってもよい。例えば、
図4a及び
図4bに示す実施形態では、4層の金属箔、5層のプライマー、並びに2層の繊維及び樹脂の組み合わせが存在する。別の実施形態では、この比率は、2層の金属箔、5層のプライマー、及び4層の繊維及び樹脂の組み合わせであってもよい。異なる数の層、異なる順序の層、及び異なる比率の層は、異なる用途のための非空気圧式タイヤの調整を可能にし得る異なる性能特徴をもたらし得る。
【0029】
図5は、非空気圧式タイヤ1100の別の例示の実施形態を例解する。
図5の非空気圧式タイヤ1100は、本明細書に記載される相違点を除いて、
図1~
図3の非空気圧式タイヤ100と実質的に同様である。したがって、同様の特徴は、「1000」の値だけ増加した同様の数字によって特定されることになる。
【0030】
非空気圧式タイヤ1100は、下部リング1130及び周方向トレッド1300を含む。周方向トレッド1300は、トレッド層1302及びトレッドバンド1304を含む。
図1~
図3の非空気圧式タイヤ100とは異なり、非空気圧式タイヤ1100は、上部リングを有していない。したがって、周方向トレッド1300は、下部リング1130をトレッドバンド1304に相互接続するスポーク1200又は他の支持構造体によって、下部リング1130に取り付けられる。下部リング1130、スポーク1200、又はトレッドバンド1304は、上述され、かつ
図4a及び
図4bに示される繊維金属積層体500から製造されてもよい。この実施形態によれば、スポーク1200又は他の支持構造体及びトレッドバンド1304が単一の巻き付けプロセスによって一体ユニットとして製造され得るという点で、繊維金属積層体を使用することによって、更なる利点が実現され得る。支持構造体及びトレッドバンドが別々に製造され、その後に接続されることを必要とする既知の製造技術と比較して、一体型スポーク1200及びトレッドバンド1304ユニットは、異なる材料間の弱点及び接合部を排除し、接着接合部を排除することによって、強度を増加し、コストを低減することができる。
【0031】
本明細書又は特許請求の範囲で使用される範囲において、「含む(comprising)」という用語が特許請求項で移行句として用いられる際の解釈と同様に、「含む(includes)」又は「含むこと(including)」という用語が包括的であることが意図される。更に、「又は(or)」という用語が用いられる範囲において(例えば、A又はB)、「A若しくはB、又は両方」を意味することが意図されている。本出願人らが「両方ではなくA又はBのみ」を示すことを意図する場合、「両方ではなくA又はBのみ(only A or B but not both)」という用語が用いられる。したがって、本明細書における「又は」という用語の使用は、排他的ではなく、包括的である。Bryan A.Garner,A Dictionary of Modern Legal Usage 624(2d.Ed.1995)を参照されたい。また、「中(in)」又は「中へ(into)」という用語が、本明細書又は特許請求の範囲において使用される範囲において、「上(on)」又は「上へ(onto)」を追加的に意味することが意図される。更に、「接続する(connect)」という用語が本明細書又は特許請求の範囲において使用される範囲において、「~と直接接続する(directly connected to)」ことだけではなく、別の構成要素を介して接続することなどのように「~と間接的に接続する(indirectly connected to)」ことも同様に意味することが意図される。
【0032】
本出願をその実施形態の記述によって例解し、またその実施形態をかなり詳細に説明してきたが、添付の特許請求の範囲の範囲をこのような詳細に制限するか、又はいかなる形式でも限定することは、出願人らの本意するものではない。追加の利点及び改良が、当業者には容易に明らかとなるであろう。したがって、そのより広い態様における本出願は、図示及び説明される、特定の詳細、代表的な装置及び方法、並びに例示的実施例に限定されるものではない。このため、出願人の一般的な発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細からの逸脱がなされてもよい。
【手続補正書】
【提出日】2023-06-14
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非空気圧式タイヤであって、
第1の直径を有する下部リングと、
前記第1の直径よりも大きい第2の直径を有する上部リングであって、前記下部リングと実質的に同軸である、上部リングと、
前記下部リングを前記上部リングに接続する支持構造体と、を備え、
前記下部リング、前記上部リング、及び前記支持構造体のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つの金属箔層と少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とを有する繊維金属積層体を含む、非空気圧式タイヤ。
【請求項2】
前記繊維金属積層体が、少なくとも1つのプライマー層を更に含む、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項3】
前記上部リングに取り付けられた周方向トレッドを更に備え、前記周方向トレッドが、トレッド層と、前記トレッド層と前記上部リングとの間に位置付けられたトレッドバンドと、を含み、前記トレッドバンドが、前記繊維金属積層体から製造されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項4】
前記下部リング及び前記上部リングの各々が、前記繊維金属積層体を含み、前記少なくとも1つの金属箔層と前記少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とが各々、前記非空気圧式タイヤの実質的に周方向に延在するように配置され、前記非空気圧式タイヤの実質的に径方向に互いの上に構築されるように配向されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【請求項5】
前記支持構造体が、前記繊維金属積層体を含む複数のスポークとして提供され、前記少なくとも1つの金属箔層と前記少なくとも1つの繊維及び樹脂組み合わせ層とが各々、前記非空気圧式タイヤの実質的に径方向に延在するように配置され、前記非空気圧式タイヤの実質的に周方向に互いの上に構築されるように配向されている、請求項1に記載の非空気圧式タイヤ。
【国際調査報告】