(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】心臓組織サンプリング装置
(51)【国際特許分類】
A61B 10/02 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61B10/02 500
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536115
(86)(22)【出願日】2021-12-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-02
(86)【国際出願番号】 IB2021061459
(87)【国際公開番号】W WO2022123458
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523217293
【氏名又は名称】グレイス アンドリュー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グレイス アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】シャープ アレキサンダー
(57)【要約】
本発明の概念によれば、組織サンプリング装置および方法が提供される。様々な実施形態において、組織サンプリング装置および方法は、クライオ生検組織サンプリング装置および方法である。クライオ生検装置は、組織が先端部に付着するように組織を凍結するのに十分な温度に達することが可能な少なくとも1つの先端部を有する静脈内プローブを含む心臓クライオ生検装置であり得る。先端部は、好ましくはプローブの引抜き中に凍結温度に留まり、付着された組織を、その意図された抽出後の目的のために収集することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライオプローブを身体の心室に導入するステップと、
プローブ先端部を組織採取部位に操向するステップと、
前記プローブ先端部を氷点未満の採取温度にし、凍結により心臓組織または細胞が前記プローブ先端部に付着するまで、前記組織採取部位での心臓組織に接触させるステップと、
前記プローブ先端部を氷点以下に保ちながら、前記身体から前記プローブ先端部を引き抜くステップと
を含むことを特徴とする心臓クライオ生検方法。
【請求項2】
請求項1または任意の他の請求項に記載の方法であって、
前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記プローブ先端部の前記温度を氷点よりも高く上昇させて、前記採取された心臓組織または細胞を前記プローブ先端部から解放するステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1または任意の他の請求項に記載の方法であって、
前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記採取された心臓組織または細胞が付着した状態で前記プローブ先端部またはその一部を前記プローブから取り外すステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1または任意の他の請求項に記載の方法であって、
前記クライオプローブが、
近位端および遠位端を有する細長いカテーテルを含み、
前記遠位端が、前記プローブ先端部を備え、
前記近位端が、冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートを備え、
前記方法が、
前記入口ポートを介して前記カテーテルを通して前記プローブ先端部に冷媒を導入し、それにより前記プローブ先端部の前記温度を下げるステップと、
前記出口ポートを介して前記カテーテルシャフトを通して前記冷媒を排気するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4または任意の他の請求項に記載の方法であって、
前記プローブ先端部がマイクロチューブを含み、前記方法が、
前記冷媒を液体冷媒として前記プローブ先端部に注入するステップと、
前記プローブ先端部内の前記冷媒を蒸発させて、前記プローブ先端部温度を下げるステップと、
前記冷媒を冷媒ガスとして前記プローブ先端部から排気するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1、4、5、または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記プローブ内の前記冷媒の流れを制御するプロセッサを備えるコントローラによって前記プローブ先端部の前記温度を制御するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記プローブ先端部が、前記プロセッサに結合された少なくとも1つのセンサを含み、前記方法が、前記プローブ先端部での少なくとも1つの状態を感知するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記プローブ先端部での前記少なくとも1つの状態が、温度および/または組織サンプルの存在であることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサを使用して、前記プローブ先端部、ならびに/または前記プローブ先端部に入るおよび/もしくは前記プローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサを使用して、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサを使用して、光センサを使用して、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサと前記コントローラとの間にフィードバックループを確立して、前記コントローラが前記プローブ先端部温度を監視および調整できるようにするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、氷点以下に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、ユーザインターフェースを介して受信されるユーザ入力が前記コントローラにプローブ先端部温度を氷点よりも高く上昇させるように指示するまで、氷点以下に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項7または任意の他の請求項に記載の方法であって、
前記身体の外部の周囲温度を感知するステップと、
前記身体の外部での前記感知された周囲温度に基づいて前記心室内での前記プローブ先端部温度を設定するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15または任意の他の請求項に記載の方法であって、
前記感知された周囲温度と、前記プローブ先端部が前記身体の外部で氷点以下であるべき持続時間とに基づいて、前記プローブ先端部温度を氷点未満に設定するステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、
前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記プローブ先端部の前記温度を氷点よりも高く上昇させて、前記採取された心臓組織または細胞を前記プローブ先端部から解放するステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、
前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記採取された心臓組織または細胞が付着した状態で前記プローブ先端部またはその一部を前記プローブから取り外すステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、
前記クライオプローブが、
近位端および遠位端を有する細長いカテーテルを含み、
前記遠位端が、前記プローブ先端部を備え、
前記近位端が、冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートを備え、
前記方法が、
前記入口ポートを介して前記カテーテルを通して前記プローブ先端部に冷媒を導入し、それにより前記プローブ先端部の前記温度を下げるステップと、
前記出口ポートを介して前記カテーテルシャフトを通して前記冷媒を排気するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記プローブ先端部がマイクロチューブを含み、前記方法が、
前記冷媒を液体冷媒として前記プローブ先端部に注入するステップと、
前記プローブ先端部内の前記冷媒を蒸発させて、前記プローブ先端部温度を下げるステップと、
前記冷媒を冷媒ガスとして前記プローブ先端部から排気するステップと
を含むことを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1、19、20に記載の方法であって、前記プローブ内の前記冷媒の流れを制御するプロセッサを備えるコントローラによって前記プローブ先端部の前記温度を制御するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、前記プローブ先端部が、前記プロセッサに結合された少なくとも1つのセンサを含み、前記方法が、前記プローブ先端部での少なくとも1つの状態を感知するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記プローブ先端部での前記少なくとも1つの状態が、温度および/または組織サンプルの存在であることを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項22に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサを使用して、前記プローブ先端部、ならびに/または前記プローブ先端部に入るおよび/もしくは前記プローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項22に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサを使用して、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項22に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサを使用して、光センサを使用して、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項27】
請求項22に記載の方法であって、前記少なくとも1つのセンサと前記コントローラとの間にフィードバックループを確立して、前記コントローラが前記プローブ先端部温度を監視および調整できるようにするステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項28】
請求項22に記載の方法であって、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、氷点以下に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項29】
請求項22に記載の方法であって、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、ユーザインターフェースを介して受信されるユーザ入力が前記コントローラに前記プローブ先端部温度を氷点よりも高く上昇させるように指示するまで、氷点以下に維持するステップをさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項30】
請求項22に記載の方法であって、
前記身体の外部の周囲温度を感知するステップと、
前記身体の外部の前記感知された周囲温度に基づいて前記心室内の前記プローブ先端部温度を設定するステップと
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、
前記感知された周囲温度と、前記プローブ先端部が前記身体の外部で氷点以下であるべき持続時間とに基づいて、前記プローブ先端部温度を氷点未満に設定するステップ
をさらに含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
極低温プローブ先端部を有し、血管を通して心室内に導入されるように構成されたクライオプローブと、
前記プローブ先端部を前記心室内の組織採取部位に向けて操向するように構成された操向メカニズムと、
プロセッサを備えるコントローラとを備える心臓クライオ生検装置であって、前記コントローラが、
前記プローブ先端部を氷点以下の温度にし、心臓組織および/または細胞を前記プローブ先端部に付着させ、
前記身体からの前記プローブ先端部の引抜き中に前記プローブ先端部の温度を氷点以下に維持して、前記付着した心臓組織および/または細胞を採取する
ように構成されていることを特徴とする心臓クライオ生検装置。
【請求項33】
請求項32または任意の他の請求項に記載の装置であって、
前記コントローラがさらに、
前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記プローブ先端部の前記温度を氷点よりも高く上昇させて、前記採取された心臓組織または細胞を前記プローブ先端部から解放する
ように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項34】
請求項32または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記プローブ先端部またはその一部が、前記採取された心臓組織または細胞と共に前記プローブから取外し可能であることを特徴とする装置。
【請求項35】
請求項32または任意の他の請求項に記載の装置であって、
前記クライオプローブが、
入口ポートおよび出口ポートを備える近位端と、
前記入口ポートを通して受け取られた液体冷媒を前記プローブ先端部に注入するように構成された少なくとも1つのマイクロチューブと
をさらに含み、
前記プローブ先端部が、前記液体冷媒を受け取り、前記液体冷媒を液体状態から気体状態に移行させて前記プローブ先端部温度を下げるように構成されたチャンバを画定し、
前記プローブが、前記プローブ先端部から前記出口ポートまでのガス排気経路を画定する
ことを特徴とする装置。
【請求項36】
請求項32または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラが、前記プローブ先端部の前記温度を制御するようにさらに構成されていることを特徴とする装置。
【請求項37】
請求項36または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記プローブ先端部が、前記プロセッサに結合され、前記プローブ先端部での少なくとも1つの状態を感知するように構成された少なくとも1つのセンサを含むことを特徴とする装置。
【請求項38】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記プローブ先端部での前記少なくとも1つの状態が、温度および/または組織サンプルの存在であることを特徴とする装置。
【請求項39】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラおよび前記少なくとも1つのセンサが、前記プローブ先端部、ならびに/または前記プローブ先端部に入るおよび/もしくは前記プローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項40】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラおよび前記少なくとも1つのセンサが、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項41】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラおよび前記少なくとも1つのセンサが、光センサを使用して、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項42】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記少なくとも1つのセンサと前記コントローラとの間にフィードバックループをさらに備えて、前記コントローラが前記プローブ先端部温度を監視および調整できるようにすることを特徴とする装置。
【請求項43】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラが、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、氷点以下に維持するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項44】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラが、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、ユーザインターフェースを介して受信されるユーザ入力が前記コントローラにプローブ先端部温度を氷点よりも高く上昇させるように指示するまで、氷点以下に維持するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項45】
請求項37または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラが周囲温度センサを備え、前記コントローラが、前記身体の外部での感知された周囲温度に基づいて前記心室内での前記プローブ先端部温度を設定するようにさらに構成されることを特徴とする装置。
【請求項46】
請求項45または任意の他の請求項に記載の装置であって、前記コントローラが、前記感知された周囲温度と、前記プローブ先端部が前記身体の外部で氷点以下であるべき持続時間とに基づいて、前記プローブ先端部温度を氷点未満に設定するようにさらに構成されていることを特徴とする装置。
【請求項47】
請求項32に記載の装置であって、
前記コントローラが、
前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記プローブ先端部の前記温度を氷点よりも高く上昇させて、前記採取された心臓組織または細胞を前記プローブ先端部から解放する
ようにさらに構成されていることを特徴とする装置。
【請求項48】
請求項32に記載の装置であって、前記プローブ先端部が前記身体から取り出された後、前記プローブ先端部またはその一部が、前記採取された心臓組織または細胞と共に前記プローブから取外し可能であることを特徴とする装置。
【請求項49】
請求項32に記載の装置であって、
前記クライオプローブが、
入口ポートおよび出口ポートを備える近位端と、
前記入口ポートを通して受け取られた液体冷媒を前記プローブ先端部に注入するように構成された少なくとも1つのマイクロチューブと
をさらに含み、
前記プローブ先端部が、前記液体冷媒を受け取り、前記液体冷媒を液体状態から気体状態に移行させて前記プローブ先端部温度を下げるように構成されたチャンバを画定し、
前記プローブが、前記プローブ先端部から前記出口ポートまでのガス排気経路を画定する
ことを特徴とする装置。
【請求項50】
請求項32に記載の装置であって、前記コントローラが、前記プローブ先端部の前記温度を制御するようにさらに構成されていることを特徴とする装置。
【請求項51】
請求項50に記載の装置であって、前記プローブ先端部が、前記プロセッサに結合され、前記プローブ先端部での少なくとも1つの状態を感知するように構成された少なくとも1つのセンサを含むことを特徴とする装置。
【請求項52】
請求項51に記載の装置であって、前記プローブ先端部での前記少なくとも1つの状態が、温度および/または組織サンプルの存在であることを特徴とする装置。
【請求項53】
請求項51に記載の装置であって、前記コントローラおよび前記少なくとも1つのセンサが、前記プローブ先端部、ならびに/または前記プローブ先端部に入るおよび/もしくは前記プローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項54】
請求項51に記載の装置であって、前記コントローラおよび前記少なくとも1つのセンサが、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項55】
請求項51に記載の装置であって、前記コントローラおよび前記少なくとも1つのセンサが、光センサを使用して、前記プローブ先端部に付着した前記心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項56】
請求項51に記載の装置であって、前記少なくとも1つのセンサと前記コントローラとの間にフィードバックループをさらに備えて、前記コントローラが前記プローブ先端部温度を監視および調整できるようにすることを特徴とする装置。
【請求項57】
請求項51に記載の装置であって、前記コントローラが、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、氷点以下に維持するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項58】
請求項51に記載の装置であって、前記コントローラが、前記プローブ先端部温度を、前記身体から出た後、ユーザインターフェースを介して受信されるユーザ入力が前記コントローラにプローブ先端部温度を氷点よりも高く上昇させるように指示するまで、氷点以下に維持するように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項59】
請求項51に記載の装置であって、前記コントローラが周囲温度センサを備え、前記コントローラが、前記身体の外部での感知された周囲温度に基づいて前記心室内での前記プローブ先端部温度を設定するようにさらに構成されることを特徴とする装置。
【請求項60】
請求項59に記載の装置であって、前記コントローラが、前記感知された周囲温度と、前記プローブ先端部が前記身体の外部で氷点以下であるべき持続時間とに基づいて、前記プローブ先端部温度を氷点未満に設定するようにさらに構成されていることを特徴とする装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の概念は、生物における組織サンプリングの分野に関し、特に、生きている哺乳動物における組織サンプリングに有用である。
【背景技術】
【0002】
関連出願の相互参照
本特許出願は、米国特許法に基づき、2020年12月8日に出願された米国仮特許出願第63/122,712号の優先権の利益を主張する。上記米国仮特許出願の全体を本願に引用して援用する。
【0003】
様々な医療診断、治療、および研究の文脈において、検査および分析のために組織をサンプリングできることは特に有用である。例として、循環器分野での組織サンプリングの臨床用途には、限定はしないが、生じ得る拒絶反応を評価するための移植レシピエントの組織の検査、および心臓サルコイド、アミロイドーシス、心筋炎のサブタイプ、心臓内腫瘍などの様々な疾患の診断が含まれる。さらなる例として、組織サンプリングの研究用途は、限定はしないが、トランスクリプトミクス-複数細胞および単一細胞、およびダス(Das)2019-CABG患者での心臓生検→HFpEFのトランスクリプトミクスが含まれる。
【0004】
1972年、Cavesは、右内頸静脈を通して使用できるように今野生検を変形した。この変形により、バイオプトームを経皮的に挿入できるようになったが、バイオプトームヘッドの大きな直径は、大きな(弁のない)シースの使用を必要とし、患者はバイオプトーム挿入または取出し時に出血または空気塞栓の危険にさらされていた。この技法により、経皮的挿入、患者の不快感を最小限に抑える局所麻酔薬の使用、迅速な作業、右心室心尖へのバイオプトームの直接進入、および同じシースを通した繰り返しの出し入れを含む、いくつかの利点が得られた。
【0005】
その後、Cavesは、以前の今野バイオプトームにStanford変形を導入した。Stanford(またはCaves-Shulz)バイオプトームには、カテーテル先端部に取り付けられた合計直径が3mm(9F)の2つの半球状の切断ジョーが含まれていた。ジョーの一方は静止したままであり、他方は、組織を抽出するために使用されるカテーテルの近位端にあるモスキート鉗子の制御下で開閉した。ばね式の調節可能なナットにより、オペレータは、外科手術鉗子の開閉により加えられる力の量を調整することができる。このバイオプトームは再利用可能であったので、毎回の使用後に慎重に洗浄する必要があり、最終的には50回の処置後に工具再調整およびジョーの刃先の研ぎが必要であった。
【0006】
しかし、前述の装置および手法には重大な制限が伴う。例えば、バイオプトームカテーテルの使用は、穿孔などの重大な合併症が発生するリスクが0.54%あった。このリスクは、心室中隔をサンプリングしていないときに増加した。さらに、ジョーは、サンプリングされる組織を押しつぶす傾向があり、肺疾患の診断で肺組織をサンプリングするために使用されている経気管支肺クライオ生検に悪影響を与える可能性がある。この技法は、気管支鏡の作業チャネルを通して、プローブを肺の末梢まで進めることによって実施される。プローブ先端部は、先端部と隣接する肺組織との間で冷凍付着が生じるまで急速に冷却される。組織サンプルは、プローブ先端部を強く引くことによって抽出される。次いで、プローブは、気管支鏡と共に気道から取り出される。
【0007】
クライオ生検は、心臓組織をサンプリングするためには使用されていなかった。気道を通して単純に行うことができない心室内の心臓組織のサンプリングは、肺クライオ生検では生じない問題をもたらす。心臓壁から組織細胞のみを切除できれば特に有益であり、肺壁から引き剥がされた組織の塊の付着および取外しよりも損傷が最小限に抑えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願公開第2013/165915号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2016/066896号明細書
【特許文献3】国際公開第2019/168634号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の概念の一態様によれば、心臓クライオ生検方法は、例えば心臓につながる血管を通してクライオプローブ(または極低温プローブ)を身体の心室に導入するステップと、プローブ先端部を心室内の組織採取部位に操向するステップと、プローブ先端部を氷点未満の採取温度にし、凍結により心臓組織または細胞がその部位からプローブ先端部に付着するまで接触を維持するステップと、プローブ先端部を氷点以下に保ちながら、身体からプローブ先端部を引き抜き、採取された組織を心室から身体外部に輸送するステップとを含む、複数のステップを含む。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部が身体から取り出された後、プローブ先端部の温度を氷点よりも高く上昇させて、採取された心臓組織または細胞を解放するステップをさらに含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部が身体から取り出された後、心臓組織または細胞が付着した状態でプローブ先端部またはその一部をプローブから取り外すステップをさらに含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、クライオプローブは、近位端および遠位端を有する細長いカテーテルを含む。遠位端は、プローブ先端部を備え、近位端は、冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートを備える。本方法は、入口ポートを介してカテーテルを通してプローブ先端部に冷媒を導入し、それによりプローブ先端部の温度を下げるステップと、出口ポートを介してカテーテルシャフトを通して冷媒を排気するステップとをさらに含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部はマイクロチューブを含み、本方法は、冷媒を液体冷媒としてプローブ先端部に注入するステップと、プローブ先端部内の冷媒を蒸発させて、プローブ先端部の温度を下げるステップと、冷媒を冷媒ガスとしてプローブ先端部から排気するステップとを含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロセッサを備えるコントローラによってプローブ先端部の温度を制御するステップをさらに含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部は、プロセッサに結合された少なくとも1つのセンサを含み、本方法は、プローブ先端部、ならびに/またはプローブ先端部に入るおよび/もしくはプローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するステップと、感知された温度に基づいてプローブ先端部温度を調整するステップとをさらに含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部に付着した心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのセンサとコントローラとの間にフィードバックループを確立して、コントローラがプローブ先端部の温度を監視および調整できるようにするステップをさらに含む。
【0018】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓クライオ生検方法が提供される。本方法は、身体の心室内にクライオプローブを導入するステップと、プローブ先端部を組織採取部位に操向するステップと、プローブ先端部を氷点未満の採取温度にし、凍結により心臓組織または細胞がプローブ先端部に付着するまで、組織採取部位での心臓組織に接触させるステップと、プローブ先端部を氷点以下に維持したまま、プローブ先端部を身体から引き抜くステップとを含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部が身体から取り出された後、プローブ先端部の温度を氷点よりも高く上昇させて、採取された心臓組織または細胞をプローブ先端部から解放するステップをさらに含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部が身体から取り出された後、採取された心臓組織または細胞が付着した状態でプローブ先端部またはその一部をプローブから取り外すステップをさらに含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、クライオプローブは、近位端および遠位端を有する細長いカテーテルを含み、遠位端は、プローブ先端部を備え、近位端は、冷媒入口ポートおよび冷媒出口ポートを備える。本方法は、入口ポートを介してカテーテルを通してプローブ先端部に冷媒を導入し、それによりプローブ先端部の温度を下げるステップと、出口ポートを介してカテーテルシャフトを通して冷媒を排気するステップとを含む。
【0022】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部はマイクロチューブを含み、本方法は、冷媒を液体冷媒としてプローブ先端部に注入するステップと、プローブ先端部内の冷媒を蒸発させて、プローブ先端部の温度を下げるステップと、冷媒を冷媒ガスとしてプローブ先端部から排気するステップとを含む。
【0023】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ内の冷媒の流れを制御するプロセッサを備えるコントローラによってプローブ先端部の温度を制御するステップをさらに含む。
【0024】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部が、プロセッサに結合された少なくとも1つのセンサを含み、本方法が、プローブ先端部での少なくとも1つの状態を感知するステップを含む。
【0025】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部での少なくとも1つの状態が、温度および/または組織サンプルの存在である。
【0026】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのセンサを使用して、プローブ先端部、ならびに/またはプローブ先端部に入るおよび/もしくはプローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するステップをさらに含む。
【0027】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのセンサを使用して、プローブ先端部に付着した心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含む。
【0028】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのセンサを使用して、光センサを使用して、プローブ先端部に付着した心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含む。
【0029】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのセンサとコントローラとの間にフィードバックループを確立して、コントローラがプローブ先端部温度を監視および調整できるようにするステップをさらに含む。
【0030】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部温度を、身体から出た後、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、氷点以下に維持するステップをさらに含む。
【0031】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部温度を、身体から出た後、ユーザインターフェースを介して受信されるユーザ入力がコントローラにプローブ先端部温度を氷点よりも高く上昇させるように指示するまで、氷点以下に維持するステップをさらに含む。
【0032】
いくつかの実施形態では、本方法は、身体の外部で周囲温度を感知するステップと、身体の外部での感知された周囲温度に基づいて心室内でのプローブ先端部温度を設定するステップとをさらに含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本方法は、感知された周囲温度と、プローブ先端部が身体の外部で氷点以下であるべき持続時間とに基づいて、プローブ先端部温度を氷点未満に設定するステップをさらに含む。
【0034】
本発明の概念の別の態様によれば、心臓クライオ生検装置またはシステムが提供される。本装置は、極低温プローブ先端部を有し、血管を通して心室内に導入されるように構成されたクライオプローブと、プローブ先端部を心室内の組織採取部位に向けて操向するように構成された操向メカニズムと、プロセッサを備えるコントローラとを備える。コントローラは、プローブ先端部を氷点以下の温度にして、心臓組織および/または細胞をプローブ先端部に付着させ、身体からのプローブ先端部の引抜き中にプローブ先端部の温度を氷点以下に維持して、付着した心臓組織および/または細胞を採取するように構成されている。
【0035】
いくつかの実施形態では、コントローラは、プローブ先端部が身体から取り出された後、プローブ先端部の温度を氷点よりも高く上昇させて、採取された心臓組織または細胞をプローブ先端部から解放するようにさらに構成される。
【0036】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部またはその一部は、プローブ先端部が身体から取り出された後、採取された心臓組織または細胞が付いた状態でプローブから取外し可能である。
【0037】
いくつかの実施形態では、クライオプローブが、入口ポートおよび出口ポートを備える近位端と、入口ポートを通して受け取られた液体冷媒をプローブ先端部に注入するように構成された少なくとも1つのマイクロチューブとをさらに含み、プローブ先端部が、液体冷媒を受け取り、液体冷媒を液体状態から気体状態に移行させてプローブ先端部温度を下げるように構成されたチャンバを画定し、プローブが、プローブ先端部から出口ポートまでのガス排気経路を画定する。
【0038】
いくつかの実施形態では、コントローラが、プローブ先端部の温度を制御するようにさらに構成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部が、プロセッサに結合され、プローブ先端部での少なくとも1つの状態を感知するように構成された少なくとも1つのセンサを含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部での少なくとも1つの状態が、温度および/または組織サンプルの存在である。
【0041】
いくつかの実施形態では、コントローラおよび少なくとも1つのセンサが、プローブ先端部、ならびに/またはプローブ先端部に入るおよび/もしくはプローブ先端部から出る冷媒の温度を感知するように構成されている。
【0042】
いくつかの実施形態では、コントローラおよび少なくとも1つのセンサが、プローブ先端部に付着した心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するように構成されている。
【0043】
いくつかの実施形態では、コントローラおよび少なくとも1つのセンサが、光センサを使用して、プローブ先端部に付着した心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するように構成されている。
【0044】
いくつかの実施形態では、本装置は、少なくとも1つのセンサとコントローラとの間にフィードバックループをさらに備えて、コントローラがプローブ先端部の温度を監視および調整できるようにする。
【0045】
いくつかの実施形態では、コントローラが、プローブ先端部温度を、身体から出た後、少なくとも10秒間、少なくとも30秒間、または少なくとも1分間、氷点以下に維持するように構成されている。
【0046】
いくつかの実施形態では、コントローラが、プローブ先端部温度を、身体から出た後、ユーザインターフェースを介して受信されるユーザ入力がコントローラにプローブ先端部温度を氷点よりも高く上昇させるように指示するまで、氷点以下に維持するように構成されている。
【0047】
いくつかの実施形態では、コントローラが周囲温度センサを備え、コントローラが、身体の外部での感知された周囲温度に基づいて心室内でのプローブ先端部温度を設定するようにさらに構成される。
【0048】
いくつかの実施形態では、コントローラが、感知された周囲温度と、プローブ先端部が身体の外部で氷点以下であるべき持続時間とに基づいて、プローブ先端部温度を氷点未満に設定するようにさらに構成されている。
【0049】
本発明の概念は、添付図面および以下の詳細な説明を考慮すればより明らかになろう。本明細書に示される実施形態は、限定としてではなく例として提供されており、同様の参照番号は同一または同様の要素を表す。図面は必ずしも縮尺通りではなく、本発明の概念の態様を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【
図1】従来技術における内視鏡クライオプローブを示す図である。
【
図2】従来技術における冷凍アブレーションプローブを示す図である。
【
図3】本発明の概念の態様によるクライオ生検組織サンプリング装置を示す図である。
【
図3A】本発明の概念の態様による、組織センサを備えたプローブ先端部の例示的実施形態を示す図である。
【
図4】本発明の概念の態様による心臓クライオ生検方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0051】
本明細書では以下、いくつかの例示的実施形態が示されている添付図面を参照して、本発明の概念の様々な態様をより詳細に述べる。しかし、本発明の概念は多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載される例示的実施形態に限定されるものと解釈すべきではない。
【0052】
本明細書では、様々な要素を述べるために第1、第2などの用語が使用されるが、これらの用語によってそれらの要素が限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、要素の所要の順序を示唆するためではなく、ある要素を別の要素から区別するために使用される。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と呼ぶことができ、同様に第2の要素を第1の要素と呼ぶことができる。本明細書で使用するとき、「および/または」という用語は、関連する列挙された項目のうちの1つ以上のあらゆる組合せを含む。
【0053】
ある要素が別の要素に「ある」または「接続されている」または「結合されている」と言うとき、その要素が別の要素に直接ある、または直接接続されている、または直接結合されていることも、介在する要素が存在することもあることを理解されたい。対照的に、ある要素が別の要素に「直接ある」、「直接接続されている」、または「直接結合されている」と言うとき、介在する要素は存在しない。要素間の関係を述べるために使用される他の単語も同様に解釈すべきである(例えば、「間に」と「間に直接」、「隣接する」と「直接隣接する」など)。
【0054】
本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を述べる目的のものにすぎず、本発明の限定を意図されてはいない。本明細書で使用するとき、単数形は、文脈上明らかに別段の指示がない限り、複数形も含むことが意図される。さらに、「備える」、「備えている」、「含む」、および/または「含んでいる」という用語は、本明細書で使用するとき、記載された特徴、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を指定するが、1つ以上の他の特徴、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除しないことを理解されたい。
【0055】
「下方」、「下」、「下側」、「上方」、「上側」などの空間的に相対的な用語は、例えば図に示されるように、要素および/または特徴と別の要素および/または特徴との関係を述べるために使用されることがある。空間的に相対的な用語は、図に示される向きに加えて、使用中および/または操作中のデバイスの異なる向きを包含することを意図されていることを理解されたい。例えば、図中のデバイスが上下逆さにされた場合、他の要素または特徴の「下方」および/または「下」として記載されていた要素が、他の要素または特徴の「上方」に向けられることになる。デバイスは他の向きにされる(例えば90度または他の向きに回転される)こともあり、本明細書で使用される空間的に相対的な記述はそれに従って解釈される。
【0056】
本明細書では、理想化された例示的実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して、例示的実施形態を述べる。したがって、例えば製造技法および/または公差により、図示の形状からの変形が予想され得る。したがって、例示的実施形態は、本明細書に示される特定の形状に限定されるものとして解釈されるべきではなく、例えば製造における変更または合理的に予見可能な変更により生じる形状のずれを含むものとする。
【0057】
機能的特徴、操作、および/またはステップが本明細書で述べられている限り、または本発明の概念の様々な実施形態に含まれていると理解される限り、そのような機能的特徴、操作、および/またはステップは、機能的ブロック、ユニット、モジュール、操作、および/または方法で具現化することができる。さらに、そのような機能ブロック、ユニット、モジュール、操作、および/または方法がコンピュータプログラムコードを含む限りにおいて、そのようなコンピュータプログラムコードは、少なくとも1つのコンピュータプロセッサによって実行可能な、例えば非一時的なメモリおよび媒体などのコンピュータ可読媒体に記憶することができる。
【0058】
本発明の概念によれば、組織サンプリング装置および方法が提供される。様々な実施形態において、組織サンプリング装置および方法は、クライオ生検組織サンプリング装置および方法である。様々な実施形態において、クライオ生検装置は、心臓クライオ生検(または極低温生検)装置として、心臓組織をサンプリングするために使用することができる。様々な実施形態において、クライオ生検装置は、身体の他の器官または部位、例えば胃、腎臓、肝臓、脾臓、腸、脳、および/または生殖器系から組織をサンプリングするために使用することができる。
【0059】
心臓クライオ生検装置は、心臓組織の比較的粗い塊ではなく、少数の組織細胞であり得る組織細胞のクラスタを切除するために使用することができ、それにより、採取部位での心臓組織への損傷および破壊を最小限に抑えることができる。したがって、サンプリングされた組織(または採取された組織)は、採取部位からの少数の組織細胞を含むことがある。
【0060】
様々な実施形態において、クライオ生検装置は、組織または細胞が先端部に付着するように組織を凍結するのに十分な温度に達することが可能な少なくとも1つのプローブ先端部を有する静脈内プローブを含むことができる。先端部は、好ましくはプローブの引抜き中に凍結温度に留まり、引抜きまたは取外しプロセス全体にわたって、採取部位から少なくとも身体を出る点までまたはそれを越えて、付着された組織サンプルをプローブ先端部に維持することができ、採取されたサンプルをその意図された目的のために収集することができる。いくつかの実施形態では、プローブ先端部の温度は、身体を出る点の後でさえ、例えば臨床医がプローブ先端部の温度を氷点よりも高く上昇させてプローブ先端部から組織サンプルを解放するまで、選択的に氷点未満に維持される。
【0061】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部の温度が周囲室温で直ちに氷点よりも高く上昇しないように、プローブ先端部の温度を十分に低くすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、身体から出るときのプローブ先端部の温度は、プローブ先端部が、出た後に凍結時間(t)にわたって凍結温度よりも高く上昇しないように十分に氷点未満であり得る。いくつかの実施形態では、tは、少なくとも1分、少なくとも30秒、および/または少なくとも10秒である。いくつかの実施形態では、プローブに結合されたコントローラが、身体の外部の周囲温度センサ20を使用して周囲温度を感知し、プローブ先端部が身体から取り出された後に所望の凍結時間tを達成するようにプローブ先端部の温度を調整することができる。
【0062】
冷凍アブレーションプローブは、心臓内の組織をアブレーションして、心臓組織を凍結により死滅させること(細胞死)によって不整脈を治療するために使用されている。細胞死に影響を与えるいくつかの因子として、凍結温度、凍結速度、凍結持続時間、解凍速度、および繰り返しの凍結が挙げられる。細胞死のメカニズムには、直接的な細胞損傷、血管不全、および/または免疫学的影響が含まれる。
【0063】
そのような冷凍アブレーションシステムでは、プローブ先端部を心内膜に接触させて、制御された凍結温度にする。この凍結温度は、不整脈を治療するために所望の組織を死滅させるのに必要な所定の深さまで心臓の内壁の一部を凍結させることを意図されている。治療が完了し、細胞死が発生すると、プローブ先端部は氷点よりも高い温度に戻され、挿入に使用されたカテーテルシースを通してプローブが取り出される。心臓壁組織は、プローブ先端部から収集されない。
【0064】
冷凍アブレーションとは異なり、クライオ生検は、基本的に細胞死を回避することを意図されており、治療療法ではない。本発明の概念によれば、クライオ生検は、その後の分析および検査のために生きている組織細胞のサンプルを切除しようとするものである。冷凍アブレーションとクライオ生検との正反対の目標により、いくらか似たデバイスをそれぞれで使用することができるにせよ、それらの使用方法は大きく異なる。さらに、クライオデバイスのセットアップおよび構成は、異なる目的に使用されるときには異なることがある。例えば、クライオデバイス(またはシステム)は、冷凍アブレーションではなくクライオ生検を達成するために、異なる論理セットおよびコンピュータプログラム命令を実装するコントローラを有することがある。いくつかの実施形態では、冷凍アブレーションシステムと比較したとき、異なるサイズのプローブ先端部、および/またはプローブ先端部に使用される異なる材料など、クライオ生検デバイス(またはシステム)の異なる物理的属性および特性が存在し得る。
【0065】
しかし、いくつかの実施形態では、クライオ生検用の適切な論理を実装する場合、同じクライオデバイスを冷凍アブレーション手順に使用し、次いでクライオ生検手順に使用することができる。例えば、クライオプローブを心臓内に進めて、冷凍アブレーションを実施するために使用することができ、次いでそのプローブを移動させて、アブレーション部位または心臓内の別の部位でクライオ生検を実施するのに使用することができるが、冷凍アブレーションとクライオ生検とは異なる処置である。
【0066】
様々な実施形態において、クライオ生検は、採取部位での湿った心臓組織がプローブ先端部に凍結することによって行われる。様々な実施形態において、カテーテルプローブ先端部を組織に付着させる組織接触面での氷の生成があり得る。サンプリングされた組織を有するカテーテルは、組織サンプルが依然としてプローブ先端部に付着している間に引き抜かれ、プローブ先端部は、引抜き中に凍結温度以下を保つ。
【0067】
図1は、従来技術での内視鏡クライオプローブを示す図である。
図2は、従来技術での冷凍アブレーションプローブを示す図である。
【0068】
クライオ生検に使用することができるクライオプローブの例には、限定はしないが、
図1に示されるような、内視鏡検査に使用される直径1.1mm、1.7mm、1.9mm、2.4mmなどErbeが提供する様々な可撓性のクライオプローブ1、および
図2に示されるような、冷凍アブレーションのためのMedtronicによって提供されるFreezor(商標)2心臓カテーテル4/6/8mmが挙げられる。
【0069】
図3は、本発明の概念の態様によるクライオ生検組織サンプリング装置100を示す図である。この実施形態では、装置100は、クライオプローブ10を体内に導入し、最終的には心臓の内腔に導入するための外側シースを含む。クライオプローブ10は、近位端および遠位端を有する細長いカテーテルを含む。遠位端は、プローブ先端部26を備え、近位端は、冷媒入口ポート18および冷媒出口ポート19を備える。液体冷媒27が、入口ポート18を通してプローブ10に導入される。液体冷媒は、プローブ10内の少なくとも1つのマイクロチューブを通してプローブ先端部26に注入され、プローブ先端部はキャビティを画定し、キャビティ内部で、液体冷媒が蒸発して液体状態から気体状態に冷媒を移行し、それによりプローブ先端部26の温度を下げる。冷媒は、気体として、プローブ10内の経路を通してプローブ先端部から出口ポート19に排気される。出口ポートは、プローブ先端部からの冷媒ガスの排気を助ける真空に接続するように構成された真空ポートでよい。液体冷媒の圧力は、マイクロチューブから出てプローブ先端部に入るときに低下する。プローブ先端部内の圧力の低下は、液体から気体への状態変化を引き起こす。
【0070】
いくつかの実施形態では、クライオプローブ10は、可撓性の9フレンチプローブ12を含む。ハンドル14は、体内でのプローブ10の操向を可能にするレバーコントローラ16を含む。レバーコントローラ16はまた、矢印23で見られるように、ユーザが先端部の湾曲を制御して操縦することを可能にする。プローブ10は、液体冷媒入力ポート18および冷媒出力ポート19を含む。プローブ10は、プローブ遠位端にあるリング電極25を駆動するための電気コネクタ22を含むことができる。電気コネクタ22は、プローブ先端部26での凍結温度の大きさおよび持続時間を制御するため、ならびにプローブシースの外部への抽出によって組織を採取するためのクライオ生検論理を含む、適切に構成されたコントローラ24に結合することができる。装置は、ユーザがコントローラ24を介して装置およびプローブ10と対話できるようにするユーザインターフェース(UI)21を含むことができる。
【0071】
図4は、本発明の概念の態様による心臓クライオ生検方法400の一実施形態のフローチャートである。
図4の方法400は、
図3の装置などを用いて実施することができる。いくつかの実施形態によれば、クライオプローブ10は、シースを通して体内に導入され、最終的には心室に導入される(S30)。プローブ先端部26は、組織採取部位に操向される(S31)。プローブ先端部26は、組織に接触した後、またはその直前に凍結温度にすることができる(S33)。
【0072】
プローブ先端部26の温度は、その部位で組織(または細胞)を採取するのに必要とされる温度の大きさおよび持続時間を決定する採取温度プロファイルに従って制御することができる。プロファイルは、採取中に一定のプローブ先端部温度を有することができ、またはプロセスの様々な部分中に温度が変更され得る、もしくは温度が異なるレベルを有することができる。いくつかの実施形態では、温度は、オペレータまたは事前にプログラムされたコントローラが制御することができる。温度、表面積、心臓壁に対するプローブ先端部の圧力、および持続時間は、採取プロファイルを定義する際に使用されるパラメータであり得て、プローブ先端部で監視および/または制御することができる。しかし、冷凍アブレーションとは異なり、目的は、生細胞を採取することであり、アブレーションを行うための場所で組織を損傷または破壊することではない。
【0073】
プローブ先端部26は、採取中に凍結採取温度に維持されるが、採取部位で採取が完了した後も凍結引抜き温度に維持され、したがって、クライオプローブは、採取された組織サンプルを解凍により解放することなくシースを通して引き抜くことができる(S34)。採取温度と引抜き温度とは同じであっても異なっていてもよいが、様々な実施形態において好ましくは氷点未満である。
【0074】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部26は、
図3Aに示されるように、組織細胞が採取されたかどうかを示す少なくとも1つのセンサ30、例えば光センサを含むことができる。センサ30は、プローブ先端部26の温度に影響を与えるおよび/またはプローブ先端部26の温度を制御するコントローラ24を備えたフィードバックループの一部でよい。例えば、採取が完了したことをセンサが示すとき、オペレータおよび/またはコントローラ24に標示を送信することができる。次いで、オペレータおよび/またはコントローラ24は、プローブ温度を、採取温度と異なる場合には引抜き温度に移行することができ、プローブ10を引き抜くことができる。様々な実施形態において、プローブ先端部26にある採取された組織32が光センサ30を遮断する場合、例えば光がプローブ先端部26内部で反射される場合、組織サンプルが、採取のためにプローブ先端部に付着していると判断される。
【0075】
身体から引き抜かれた後、プローブ先端部26に凍結した組織サンプルを取り外すための様々な手法があり得る。様々な実施形態において、プローブ10がシースおよび身体から外れると、プローブ先端部26の温度は氷点よりも高い温度まで移行されて、採取された組織サンプルをプローブから解放することができる。様々な実施形態において、プローブからの採取された組織サンプルの解放は、組織サンプルまたは組織サンプルからの細胞をプローブ先端部26から取り外すことを含むことができる。他の実施形態では、プローブからの採取された組織サンプルの解放は、組織サンプルが依然として付着された状態でプローブ先端部26またはその一部をプローブ10から取り外すことを含むことができ、組織サンプル32は、プローブ先端部26またはその一部と共に、事前に解凍するのではなくサンプルが依然として凍結された状態で分析のために送ることができる。
【0076】
様々な実施形態において、心臓クライオ生検方法は、身体の心室内にクライオプローブを導入するステップ(S30)と、プローブ先端部26を組織採取部位に操向するステップ(S31)と、プローブ先端部26を氷点未満の採取温度にするステップ(S33)と、凍結により心臓組織または細胞32がプローブ先端部に付着するまで接触を維持するステップ(S34)と、プローブ先端部を氷点以下に維持したまま、プローブ先端部を身体から引き抜くステップ(S35)とを含む。
【0077】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部が身体から取り出された後、プローブ先端部の温度を氷点よりも高く上昇させて、採取された心臓組織または細胞を解放するステップをさらに含むことができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部が身体から取り出された後、心臓組織または細胞が付着した状態のプローブ先端部またはその一部をプローブから取り外すステップをさらに含むことができる。
【0079】
いくつかの実施形態では、クライオプローブ10は、近位端および遠位端を有する細長いカテーテルを含む。遠位端は、プローブ先端部26を備えることができ、近位端は、冷媒入口ポート18および冷媒出口ポート19を備えることができる。本方法は、入口ポート18を介してカテーテルを通してプローブ先端部26に冷媒を導入し、それによりプローブ先端部の温度を下げるステップと、出口ポート19を介してカテーテルシャフトを通して冷媒を排気するステップとを含むことができる。冷媒は、冷媒ガスとして出口ポート19から排出されることがある。
【0080】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部26はマイクロチューブ28を含み、方法400は、冷媒を液体冷媒としてマイクロチューブ28を通してプローブ先端部26に注入するステップと、プローブ先端部26内の冷媒を蒸発させて、プローブ先端部の温度を下げるステップと、冷媒を冷媒ガスとしてプローブ先端部26および出口ポート19から排気するステップとを含む。
【0081】
いくつかの実施形態では、本方法は、プロセッサを備えるコントローラ24によってプローブ先端部26の温度を制御するステップをさらに含むことができる。
【0082】
いくつかの実施形態では、プローブ先端部26は、プロセッサに結合された少なくとも1つのセンサを含み、本方法は、プローブ先端部26の温度、および/またはプローブ先端部26に入るおよび/またはプローブ先端部26から出る冷媒を感知するステップをさらに含む。
【0083】
いくつかの実施形態では、本方法は、プローブ先端部26に付着した心臓組織または細胞の存在および/または不在を感知するステップをさらに含む。
【0084】
いくつかの実施形態では、本方法は、少なくとも1つのセンサとコントローラ24との間にフィードバックループを確立して、コントローラ24がプローブ先端部26の温度を監視および調整できるようにするステップをさらに含む。
【0085】
以上、最良の形態および/または他の好ましい実施形態と考えられるものを述べてきたが、様々な変形を行うことができ、本発明を様々な形態および実施形態で実施することができ、多くの用途に適用することができるが、本明細書ではそのうちのいくつかのみを述べてきたことを理解されたい。添付の特許請求の範囲により、記載された通りのものおよびそのすべての均等物を特許請求することが意図されており、各請求項の範囲内に含まれるすべての変形および変更を含む。
【0086】
明確にするために個別の実施形態の文脈で述べられている本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において組み合わせて提供することもできることを理解されたい。逆に、簡潔にするために単一の実施形態の文脈で述べられる本発明の様々な特徴は、個別に、または任意の適切な部分的組合せで提供することもできる。
【0087】
例えば、請求項のいずれかに記載された特徴のすべて(独立しているか従属しているかに関わらず)は、任意の所与の方法で組み合わせることができることを理解されたい。
【国際調査報告】