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特表2024-501494オシメルチニブまたはその塩を調製するための改良された方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】オシメルチニブまたはその塩を調製するための改良された方法
(51)【国際特許分類】
   C07D 403/04 20060101AFI20240104BHJP
   A61K 31/506 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C07D403/04 CSP
A61K31/506
A61P11/00
A61P35/00
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536537
(86)(22)【出願日】2021-12-13
(85)【翻訳文提出日】2023-07-31
(86)【国際出願番号】 SG2021050785
(87)【国際公開番号】W WO2022132046
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】17/123,556
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513105579
【氏名又は名称】サイノファーム タイワン,リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】ホアン コアン-スン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン チュン-ヤン
(72)【発明者】
【氏名】フー ツン-チョン
【テーマコード(参考)】
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
4C063AA01
4C063BB01
4C063CC29
4C063DD06
4C063EE01
4C086AA03
4C086AA04
4C086BC42
4C086GA06
4C086MA35
4C086MA52
4C086NA20
4C086ZA59
4C086ZB26
4C086ZC41
(57)【要約】
本明細書では、オシメルチニブまたはその塩、特にオシメルチニブメシル酸塩を調製するための改良されたプロセスおよび方法を提供する。改良されたプロセスにより、式(III)の不安定なアニリン中間体を単離する必要がなくなり、直接カップリングして式(II):
のアミド生成物を形成することが可能になる。本発明は、大規模生産に適しており、不安定な中間体の単離を回避し、それによってオシメルチニブまたはそのメシル酸塩を高収率および高純度で提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
【化1】
で表されるオシメルチニブ、またはその塩の製造方法であって、
2a) 式(IV-1):
【化2】
で表される化合物を、第一の溶媒中で水素源および遷移金属触媒と接触させて、式(III):
【化3】
で表される化合物を形成する工程;
2b) 該式(III)の化合物を3-クロロプロピオニルクロリドおよび塩基と反応させて、式(II):
【化4】
で表される化合物を形成する工程;
3) 該式(II)の化合物を式(I)のオシメルチニブに変換する工程;および
4) 場合により、式(I)のオシメルチニブをその塩に変換する工程、
を含み、ここで、式(III)の化合物および式(IV-1)の化合物のそれぞれにおいて、HAは酸付加塩であり;工程2a)および2b)はワンポットで行われる、製造方法。
【請求項2】
前記HAがCHSOHである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記工程2a)における水素源が水素ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記工程2a)における遷移金属触媒は、Ni(0)、Pd(0)、またはPt(0)であり、それぞれは炭素上に存在していてもよい、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記工程2a)における遷移金属触媒は、炭素上のPd(0)である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記工程2a)における第一の溶媒はC1-4アルキルアルコールである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記工程2a)における第一の溶媒はエタノールを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
工程2a)の反応混合物が実質的に水を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
工程2a)が30℃以上の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
工程2a)が約40℃~約50℃の温度で行われる、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程2a)由来の式(III)の化合物が、単離せずに工程2b)で直接使用される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
工程2b)が前記第一の溶媒および水を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記工程2b)における塩基がアルカリ重炭酸塩である、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記工程2b)における塩基がNaHCOである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
工程2b)が10℃以下の温度で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
工程2b)が約0℃~約10℃の温度で行われる、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程4)が存在する場合、式(I)のオシメルチニブをそのメシル酸塩に変換する、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
工程2a)の前に、以下の工程をさらに含む、請求項1に記載の工程:
1) 式(IV):
【化5】
の化合物を第二の溶媒中でHAの酸と接触させて、式(IV-1)の化合物を形成する工程。
【請求項19】
前記HAの酸がCHSOHである;および前記第二の溶媒はC1-4アルキルアルコールである、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
式(I):
【化6】
で表されるオシメルチニブ、またはそのメシル酸塩を製造する方法であって、
1) 式(IV):
【化7】
の化合物をエタノール中でCHSOHと接触させて、式(IV-1a):
【化8】
で表される化合物を形成する工程;
2a) 該式(IV-1a)の化合物をエタノール中で水素ガスおよび炭素上のPd(0)で水素化して、式(III-1a):
【化9】
で表される化合物を形成する工程;
2b) 該式(III-1a)の化合物を、エタノールおよび水中で3-クロロプロピオニルクロリドおよびNaHCOと反応させて、式(II):
【化10】
で表される化合物を形成する工程;
3) 前記式(II)の化合物をアセトニトリル中でトリメチルアミンで処理して、式(I)のオシメルチニブを提供する工程;および
4) 場合により式(I)のオシメルチニブをCHSOHでそのメシル酸塩に変換する工程、
を含み、ここで、工程2a)および2b)はワンポットで行われる、方法。
【請求項21】
式(IV-1a):
【化11】
で表される化合物。
【請求項22】
式(III-1a):
【化12】
で表される化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、その全体があらゆる目的で参照により本明細書に組み込まれる2020年12月16日に出願された米国特許出願第17/123,556号に対する優先権の利益を主張する。
【0002】
連邦政府の支援による研究開発に基づいて行われた発明の権利に関する記載
該当しない。
【0003】
コンパクトディスクで提出された「配列表」、表、またはコンピュータプログラムリスト付録への参照
該当しない。
【背景技術】
【0004】
オシメルチニブ(AZD9291、商品名タグリッソ)は、転移性上皮増殖因子受容体(EGFR)T790M変異陽性非小細胞肺がん(non-small cell lung cancer;NSCLC)に罹患している患者の治療に使用される初の承認薬である。オシメルチニブは、腫瘍奏効率および奏効期間に基づいたFDAの迅速承認プロセスに基づいて、適応される用途(indicated use)で承認された。オシメルチニブはまた、FDA承認検査で検出する必要がある転移性EGFR L858R変異陽性またはエクソン19欠失陽性NSCLCに罹患している患者の一次治療としても使用される。タグリッソは、40mgおよび80mgの錠剤の形で販売されている。各錠剤は、オシメルチニブメシル酸塩47.7mg(オシメルチニブ40mgに相当)またはオシメルチニブメシル酸塩95.4mg(オシメルチニブ 80mgに相当)を含む。タグリッソ錠剤はまた、微結晶セルロース、マンニトール、低置換度ヒドロキシプロピル(hydroxpropyl)セルロース、およびフマル酸ステアリルナトリウムを含む様々な不活性成分も含む。
【0005】
オシメルチニブの合成は、化学構造中に複数の官能基が存在するため、困難であり、コストがかかるものであった。オシメルチニブまたはそのメシル酸塩の調製に関して、2つの主要な合成方法が当該技術分野で報告されている。
【0006】
第一のアプローチは、図1のスキーム1に概説されているように、J.Med.Chem. 2014,57,8249-8267に開示されている。したがって、化合物3の合成には溶媒として2-ペンタノールが必要であり、これは非常に高価である。さらに、化合物3を化合物4に変換するにはマイクロ波加熱も必要であるが、これは大規模な製造作業には適していない。さらに、Fe/塩化アンモニウムによる化合物4のニトロ基の還元は環境に有害であり、生産工場での取り扱いが困難である。最後に、化合物5の塩化アクリロイルによるアミド化は非効率的であり、単離収率は39%と低い。
【0007】
図2のスキーム2に示すように、改良された方法が国際公開第2013/014448 A1号に開示されている。まず、化合物3を化合物4に変換するためのマイクロ波加熱の代わりに、DMAc中でi-PrNEtを使用することで、数百ミリグラムのスケールまで簡単にスケールアップすることができる。さらに、3-クロロプロピオニルクロリドを使用した化合物5のアミド化により化合物6が得られ、その後EtNの存在下で脱離を受けてオシメルチニブが得られる。化合物5からオシメルチニブへの変換は2工程(1工程に対して)が必要であるが、全体の収率は39%から89%に向上する。
【0008】
図3のスキーム3に示すように、化合物4のニトロ基をFe/塩化アンモニウムで還元することから生じる問題に対処するために、水素化による改良された方法が、国際公開第2017/134051 A1号に開示されている。この改良された方法により、反応混合物中に残る鉄ベースの残留物を回避しながら、大規模な生産が可能になった。
【0009】
上記を考慮すると、オシメルチニブまたはその塩、特にオシメルチニブメシル酸塩を、商業的に許容される収率、増加した効率、およびより毒性の低い化学物質で製造するための改良された方法の必要性が依然として存在する。
【発明の概要】
【0010】
第一の態様では、本開示は、式(I):
【0011】
【化1】
【0012】
で表されるオシメルチニブ、またはその塩の製造方法を提供し、該方法は、
2a) 式(IV-1):
【0013】
【化2】
【0014】
で表される化合物を、第一の溶媒中で水素源および遷移金属触媒と接触させて、式(III):
【0015】
【化3】
【0016】
で表される化合物を形成する工程;
2b) 該式(III)の化合物を3-クロロプロピオニルクロリドおよび塩基と反応させて、式(II):
【0017】
【化4】
【0018】
で表される化合物を形成する工程;
3) 該式(II)の化合物を式(I)のオシメルチニブに変換する工程;および
4) 場合により、式(I)のオシメルチニブをその塩に変換する工程、
を含み、
ここで、式(III)の化合物および式(IV-1)の化合物のそれぞれにおいて、HAは酸付加塩である;ならびに工程2a)および2b)はワンポットで行われる。
【0019】
第二の態様では、本開示は、式(I):
【0020】
【化5】
【0021】
で表されるオシメルチニブ、またはそのメシル酸塩の製造方法を提供し、該方法は、
1) 式(IV):
【0022】
【化6】
【0023】
の化合物をエタノール中でCHSOHと接触させて、式(IV-1a):
【0024】
【化7】
【0025】
で表される化合物を形成する工程;
2a) 該式(IV-1a)の化合物をエタノール中で水素ガスおよび炭素上のPd(0)で水素化して、式(III-1a):
【0026】
【化8】
【0027】
で表される化合物を形成する工程;
2b) 該式(III-1a)の化合物を、エタノールおよび水中で3-クロロプロピオニルクロリドおよびNaHCOと反応させて、式(II):
【0028】
【化9】
【0029】
で表される化合物を形成する工程;
3) 上記式(II)の化合物をアセトニトリル中でトリメチルアミンで処理して、式(I)のオシメルチニブを提供する工程;および
4) 場合により式(I)のオシメルチニブをCHSOHでそのメシル酸塩に変換する工程、
を含み、ここで、工程2a)および2b)はワンポットで行われる。
【0030】
第三の態様では、本開示は、式(IV-1a):
【0031】
【化10】
【0032】
で表される化合物を提供する。
【0033】
第四の態様では、本開示は、式(III-1a):
【0034】
【化11】
【0035】
で表される化合物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】J.Med.Chem. 2014,57,8249-8267に開示されているオシメルチニブを調製するための合成スキームを示す。
図2】国際公開第2013/014448 A1号に開示されているオシメルチニブを調製するための合成スキームを示す。
図3】国際公開第2017/134051 A1号に開示されているように、水素化によるニトロジアミン(4)のアニリン(5)への変換を示す。
図4】オシメルチニブまたはそのメシル酸塩を調製するための本開示の一実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
I. 概要
本開示は、オシメルチニブまたはその塩、特にオシメルチニブメシル酸塩を調製するための改良された方法に関する。改良されたプロセスは、オシメルチニブまたはそのメシル酸塩を含有する医薬組成物の開発において使用されるオシメルチニブまたはそのメシル酸塩の製造に有用である。
【0038】
より具体的には、本開示の一実施形態では、図4のスキーム4に示されるように、改良された合成プロセスは、式(IV-1a)のメシル酸塩を水素化して式(III-1a)のメシル酸塩を得、次いでこれをエタノールおよび共溶媒としての水中で直接アミド化に供し、式(III-1a)の不安定な中間体を単離せずに、式(II)のアミド生成物(すなわち、化合物6)を得ることを含む。この2段階ワンポットプロセスにより、式(II)の化合物が高純度かつ優れた収率で得られた。その間、この2段階ワンポットプロセスにより、ワークアップ手順も合理化された。大規模生産において、アミド化、脱離、および塩形成の後、オシメルチニブメシル酸塩は、式(IV)の化合物(すなわち、化合物4)から4つの工程で99.87%の純度および77%の全収率で得られた。
【0039】
オシメルチニブおよびそのメシル酸塩の調製における最も重要な工程は、1)式(IV)の化合物(すなわち、化合物4)または式(IV-a)の化合物のニトロ基の還元;および2)アミド結合を形成して式(II)の化合物(すなわち、化合物6)を形成する工程、である。たとえば国際公開第2013/014448 A1号において、以前に確立されたニトロ基の還元プロトコルでは、化学量論的還元剤として鉄を使用する必要があった。これにより、スケールアップ生産において多量の廃棄物が発生するだけでなく、精製手順も複雑になる。さらに、国際公開第2013/014448 A1号および国際公開第2017/134051 A1号の両方におけるような典型的なプロトコルでは、化合物5の還元アニリン生成物の単離が必要である。しかしながら、このアニリン中間体は、電子が豊富な性質のため、空気中では極めて不安定である。結果として、その分離には特別な管理が必要であるが、残念ながらそれでも収量の減少につながる可能性がある。
【0040】
本発明は、アニリン中間体(化合物5または式(III-1a))を単離する必要性を取り除く。その代わりに、本発明の方法は、直接カップリングにより式(II)のアミド生成物(すなわち、化合物6)を形成することを可能にする。さらに、この系には共溶媒として水が添加されており、生成する不純物の量を減少させるだけでなく、非常に扱いやすい反応条件を提供する。したがって、出発物質として式(IV-1a)のニトロ化合物のメシル酸塩を利用すると、式(IV)(すなわち、化合物4)の対応する遊離型と比較して、化合物の保存においてより良好な安定性が得られる。出願人はまた、驚くべきことに、式(IV-1a)のメシル酸塩の水素化が、水が存在しない適切な有機溶媒中で、不均一条件下で首尾よく実施できることを発見した。結果として、上記のすべての利点を備えたこの2段階ワンポットプロセスは、97.6%の全収率(式(IV-1a)の化合物から式(II)の化合物まで)を提供し、最もよく知られているアプローチに比べて大幅な改善が見られる。
【0041】
II. 定義
「アルキル」とは、示された炭素原子数を有する(すなわち、C1-4は1~4個の炭素を意味する)直鎖または分枝鎖の飽和脂肪族ラジカルを指す。アルキルは、C1-2、C1-3、C1-4、C2-3、C2-4、およびC3-4等の任意の数の炭素を含んでもよい。たとえば、C1-4アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec-ブチル、およびtert-ブチルを含むが、これらに限定されない。
【0042】
「メシル酸塩(Mesylate)」または「メシル酸塩(mesylate salt)」は、メタンスルホン酸(CHSOHまたはMsOHと略される)から形成される塩を指す。
【0043】
「接触させる」とは、少なくとも2つの異なる種を、それらが反応できるように接触させるプロセスを指す。しかしながら、得られる反応生成物は、添加された試薬間の反応から直接、または反応混合物中で生成され得る添加された試薬の1つ以上の中間体から生成され得ることを理解されたい。
【0044】
「水素化」とは、水素(通常はHとして)の付加をもたらす還元反応を指す。有機化合物が水素化されると、水素原子がさらに「飽和」する。この反応には通常、触媒の使用が必要である。
【0045】
「アミド化」とは、アミドの形成をもたらす反応を指す。
【0046】
「触媒」とは、活性化エネルギーを減少させることによって化学反応の速度を高めるが、反応によっては変化しない物質を指す。触媒は均一系または不均一系に分類することができる。均一系触媒とは、分子が反応物質分子と同じ相に分散している触媒である。不均一触媒とは、その分子が反応物質と同じ相にない触媒であり、反応物質は通常、固体触媒の表面に吸着される気体または液体である。本発明において有用な触媒は、均一系触媒および不均一系触媒の両方である。
【0047】
「金属」とは、周期表の金属元素を指し、原子価殻内に中性の金属元素に存在する電子よりも多いまたは少ない電子を有する結果として中性、または正に帯電することができる。本発明において有用な金属は、アルカリ金属および遷移金属を含む。本発明におけるアルカリ金属は、アルカリ金属カチオンも含む。本発明において有用なアルカリ金属カチオンは、Li、Na、K、およびCsを含む。本発明において有用な遷移金属は、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、La、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、およびAcを含む。
【0048】
「遷移金属触媒」とは、中性または正に荷電することができる、本明細書で定義される遷移金属から構成される化合物を指す。
【0049】
「溶媒」とは、溶質を溶解することができる液体等の物質を指す。溶媒は、極性または非極性、プロトン性または非プロトン性のいずれであってもよい。極性溶媒は通常、約5より大きい誘電率もしくは約1.0を超える双極子モーメントを有し、非極性溶媒は約5未満の誘電率もしくは約1.0未満の双極子モーメントを有する。プロトン性溶媒は、ヒドロキシ基またはカルボキシ基等、除去に利用できるプロトンを有することを特徴とする。非プロトン性溶媒にはそのような基がない。代表的な極性プロトン性溶媒は、アルコール(メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等)、酸(ギ酸、酢酸等)、および水を含む。代表的な極性非プロトン性溶媒は、ジクロロメタン、クロロホルム、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、1,4-ジオキサン、アセトン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、およびN-メチルピロリドンを含む。代表的な非極性溶媒は、アルカン(ペンタン、ヘキサン等)、シクロアルカン(シクロペンタン、シクロヘキサン等)、ベンゼン、およびトルエンを含む。他の溶媒も本発明において有用である。
【0050】
「有機溶媒」とは、水溶性有機化合物および水不溶性有機化合物のいずれかまたは両方を溶解することができる、水混和性または非混和性の溶媒を指す。
【0051】
「非プロトン性溶媒」とは、酸性水素を欠く溶媒を指す。したがって、それらは水素結合供与体ではない。非プロトン性溶媒の共通の特徴は、水素結合を受け入れることができる溶媒、酸性水素を有しない溶媒、および塩を溶解する溶媒である。非プロトン性溶媒の例は、N-メチルピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、2-メチルテトラヒドロフラン(MeTHF)、酢酸エチル(EtOAc)、アセトン、ジメチルホルムアミド(DMF)、アセトニトリル(MeCN)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、プロピレンカーボネート(PC)、およびヘキサメチルリン酸アミド(HMPA)を含むが、これらに限定されない。
【0052】
「第一の溶媒」および「第二の溶媒」とは、上記で定義され、かつ本発明の実施形態に記載されている溶媒を指す。溶媒の命名規則は、本明細書に記載のプロセスの工程を明確にする目的のみで使用されており、番号順である必要はない。本明細書に記載の本発明の選択された実施形態では、一部の溶媒が存在しなくてもよい。当業者であれば、本明細書の実施形態および特許請求の範囲における用語の使用の関連で、これらの溶媒の命名規則(たとえば、「第一の溶媒」、「第二の溶媒」)の意味を理解するであろう。
【0053】
「塩基」とは、水を脱プロトン化して水酸化物イオンを生成する官能基を指す。本発明において有用な塩基は、有機塩基および無機塩基を含む。例示的な有機塩基は、本明細書で定義されるアミンを含む。例示的な無機塩基は、本明細書で定義されるように、アルカリ重炭酸塩、アルカリ炭酸塩、アルカリ三塩基性リン酸塩、およびアルカリ二塩基性リン酸塩を含む。本発明において塩基として有用なアミンは、本明細書で定義される第三級アミンを含む。
【0054】
「第三級アミン」は、式N(R)を有する化合物を指し、式中、R基は、とりわけ、アルキル、アリール、ヘテロアルキル、ヘテロアリールであってもよく、または2つのR基が一緒になってN結合ヘテロシクロアルキルを形成してもよい。R基は同じあっても異なっていてもよい。第三級アミンの非限定的な例は、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルアミン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、N-メチルピロリジン、N-メチルモルホリン、ジメチルアニリン、ジエチルアニリン、1,8-ビス(ジメチルアミノ)ナフタレン、キヌクリジン、および1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]-オクタン(1,4-diazabicylo[2.2.2]-octane;DABCO)を含む。
【0055】
「アルカリ重炭酸塩」は、アルカリ金属カチオンと炭酸水素アニオン(HCO )から構成される化合物のクラスを指す。本発明において有用なアルカリ重炭酸塩(Alkali carbonate)は、重炭酸リチウム(LiHCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸カリウム(KHCO)、および重炭酸セシウム(CsHCO)を含む。
【0056】
「アルカリ炭酸塩」は、アルカリ金属カチオンと炭酸アニオン(CO 2-)から構成される化合物のクラスを指す。本発明において有用なアルカリ炭酸塩は、炭酸リチウム(LiCO)、炭酸ナトリウム(NaCO)、炭酸カリウム(KCO)、および炭酸セシウム(CsCO)を含む。
【0057】
「アルカリ三塩基性リン酸塩」とは、アルカリ金属カチオンとリン酸アニオン(PO 3-)から構成される化合物のクラスを指す。本発明において有用なアルカリ三塩基性リン酸塩は、三塩基性リン酸ナトリウム(NaPO)および三塩基性リン酸カリウム(KPO)を含む。
【0058】
「アルカリ二塩基性リン酸塩」とは、アルカリ金属カチオンとリン酸水素アニオン(HPO 2-)から構成される化合物のクラスを指す。本発明において有用なアルカリ二塩基性リン酸塩は、二塩基性リン酸ナトリウム(NaHPO)および二塩基性リン酸カリウム(KHPO)を含む。
【0059】
「単離」とは、(元素または化合物を)それが結合または混合されている物質から純粋な形で分離することを指す。
【0060】
III. 方法
第1の態様では、本開示は、式(I):
【0061】
【化12】
【0062】
で表されるオシメルチニブ、またはその塩の製造方法を提供し、該方法は、
2a) 式(IV-1):
【0063】
【化13】
【0064】
で表される化合物を、第一の溶媒中で水素源および遷移金属触媒と接触させて、式(III):
【0065】
【化14】
【0066】
で表される化合物を形成する工程;
2b) 該式(III)の化合物を3-クロロプロピオニルクロリドおよび塩基と反応させて、式(II):
【0067】
【化15】
【0068】
で表される化合物を形成する工程;
3) 該式(II)の化合物を式(I)のオシメルチニブに変換する工程;および
4) 場合により、式(I)のオシメルチニブをその塩に変換する工程、
を含み、
ここで、式(III)の化合物および式(IV-1)の化合物のそれぞれにおいて、HAは酸付加塩である;ならびに工程2a)および2b)はワンポットで行われる。
【0069】
酸付加塩は、このような化合物の中性形態を、溶媒なしでまたは適切な不活性溶媒中で十分な量の所望の酸と接触させることによって得ることができる。許容される酸付加塩の例は、塩酸、臭化水素酸、硝酸、炭酸、炭酸一水素酸(monohydrogencarbonic acid)、リン酸、リン酸一水素酸(monohydrogenphosphoric acid)、リン酸二水素酸(dihydrogenphosphoric acid)、硫酸、硫酸一水素酸(monohydrogensulfuric acid)、ヨウ化水素酸、もしくは亜リン酸等の無機酸から誘導される塩、ならびに酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、マレイン酸、マロン酸、安息香酸、コハク酸、スベリン酸、フマル酸、乳酸、マンデル酸、フタル酸、ベンゼンスルホン酸、p-トリルスルホン酸(p-tolylsulfonic acid)、クエン酸、酒石酸、メタンスルホン酸等の有機酸から誘導される塩を含む。また、アルギン酸塩等のアミノ酸の塩、およびグルクロン酸またはガラクツロン酸(galactunoric acid)等の有機酸の塩も含まれる。
【0070】
一部の実施形態では、式(III)の化合物および式(IV-1)の化合物のそれぞれにおけるHAは、メタンスルホン酸(CHSOH)である。
【0071】
工程2a)における水素源は、水素ガスであってもよく、インサイツで生成されてもよい。一部の実施形態では、水素源は水素ガスである。工程2a)における遷移金属触媒は、中性の遷移金属(すなわち、電荷がゼロ)から構成されていてもよい。一部の実施形態では、遷移金属触媒は、Ni(0)、Pd(0)、またはPt(0)であり、それぞれは場合により炭素上にある。一部の実施形態では、遷移金属触媒は、炭素上のNi(0)、炭素上のPd(0)、または炭素上のPt(0)である。一部の実施形態では、遷移金属触媒は炭素上のPd(0)を含む。一部の実施形態では、遷移金属触媒は炭素上のPd(0)である。
【0072】
工程2a)における第一の溶媒は、本明細書で定義される任意の適切な有機溶媒であってもよい。一部の実施形態では、第一の溶媒はアルコールである。一部の実施形態では、第一の溶媒は、C1-4アルキルアルコールである。一部の実施形態では、第一の溶媒はエタノールを含む。一部の実施形態では、第一の溶媒はエタノールである。
【0073】
工程2a)の反応は、水の非存在下で行うことができる。一部の実施形態では、工程2a)の反応混合物は実質的に水を含まない。
c一般に、工程2a)の水素化反応は、任意の適切な温度で行うことができる。一部の実施形態では、水素化反応は30℃以上の温度で行われる。一部の実施形態では、水素化反応は約40℃~約50℃の温度で行われる。一部の実施形態では、水素化反応は約45℃の温度で行われる。
【0074】
工程2a)の反応の完了後、遷移金属触媒を濾過によって反応混合物から除去することができる。一部の実施形態では、遷移金属触媒は濾過によって除去される。一部の実施形態では、炭素上のPd(0)は濾過によって除去される。
【0075】
工程2a)からの式(III)の化合物は、単離および/または精製することなく次の工程に直接使用することができる。一部の実施形態では、工程2a)からの式(III)の化合物は、単離せずに工程2b)で直接使用される。一部の実施形態では、工程2a)からの式(III)の化合物は、精製せずに工程2b)で直接使用される。一部の実施形態では、工程2a)からの式(III)の化合物は、単離および精製せずに工程2b)で直接使用される。
【0076】
工程2b)のアミド化反応は、第一の溶媒を含む溶媒中で行うことができる。一部の実施形態では、工程2b)は第一の溶媒を含む。一部の実施形態では、工程2b)は、第一の溶媒および水を含む。一部の実施形態では、工程2b)は、C1-4アルキルアルコールおよび水を含む。一部の実施形態では、工程2b)はエタノールおよび水を含む。
【0077】
工程2b)における塩基は、本明細書で定義されるアミンおよび無機塩基を含む任意の適切な塩基であってもよい。例示的な無機塩基は、本明細書で定義されるように、アルカリ重炭酸塩、アルカリ炭酸塩、アルカリ三塩基性リン酸塩、およびアルカリ二塩基性リン酸塩を含む。一部の実施形態では、塩基はアルカリ重炭酸塩である。一部の実施形態では、塩基は、重炭酸リチウム(LiHCO)、重炭酸ナトリウム(NaHCO)、重炭酸カリウム(KHCO)、および重炭酸セシウム(CsHCO)を含む。一部の実施形態では、塩基は、重炭酸ナトリウム(NaHCO)である。
【0078】
一般に、工程2b)のアミド化反応は、任意の適切な温度で行うことができる。一部の実施形態では、アミド化反応は10℃以下の温度で行われる。一部の実施形態では、アミド化反応は約0℃~約10℃の温度で行われる。
【0079】
一部の実施形態では、工程4)が存在する。一部の実施形態では、この方法は、以下の工程を含む: 4)式(I)のオシメルチニブをそのメシル酸塩に変換する工程。
【0080】
一部の実施形態では、方法は工程2a)の前にさらに以下を含む:
1) 式(IV):
【0081】
【化16】
【0082】
の化合物を第二の溶媒中でHAの酸と接触させて、式(IV-1)の化合物を形成する工程。
【0083】
HAの酸は、酸付加塩を形成するために、上記のような酸であってもよい。一部の実施形態では、HAの酸はメタンスルホン酸(CHSOH)である。
【0084】
工程1)における第二の溶媒は、本明細書で定義される任意の適切な有機溶媒であってもよい。一部の実施形態では、第二の溶媒はアルコールである。一部の実施形態では、第2の溶媒はC1-4アルキルアルコールである。一部の実施形態では、第二の溶媒にはエタノールを含む。一部の実施形態では、第二の溶媒はエタノールである。
【0085】
上記の方法に関して、一部の実施形態では、式(IV-1)の化合物は、式(IV-1a):
【0086】
【化17】
【0087】
で表される化合物である。
【0088】
上記の方法に関して、一部の実施形態では、式(III)の化合物は、式(III-1a):
【0089】
【化18】
【0090】
で表される化合物である。
【0091】
第二の態様では、本開示は、式(I):
【0092】
【化19】
【0093】
で表されるオシメルチニブ、またはその塩の製造方法を提供し、該方法は、
1) 式(IV):
【0094】
【化20】
【0095】
の化合物をエタノール中でCHSOHと接触させて、式(IV-1a):
【0096】
【化21】
【0097】
で表される化合物を形成する工程;
2a) 該式(IV-1a)の化合物をエタノール中で水素ガスおよび炭素上のPd(0)で水素化して、式(III-1a):
【0098】
【化22】
【0099】
で表される化合物を形成する工程;
2b) 該式(III-1a)の化合物を、エタノールおよび水中で3-クロロプロピオニルクロリドおよびNaHCOと反応させて、式(II):
【0100】
【化23】
【0101】
で表される化合物を形成する工程;
3) 該式(II)の化合物をアセトニトリル中でトリメチルアミンで処理して、式(I)のオシメルチニブを提供する工程;および
4) 場合により式(I)のオシメルチニブをCHSOHでそのメシル酸塩に変換する工程、
を含み、ここで、工程2a)および2b)はワンポットで行われる。
【0102】
一部の実施形態では、工程2a)からの式(III-1a)の化合物は、単離せずに工程2b)で直接使用される。一部の実施形態では、工程2a)からの式(III-1a)の化合物は、精製せずに工程2b)で直接使用される。一部の実施形態では、工程2a)からの式(III-1a)の化合物は、単離および精製せずに工程2b)で直接使用される。
【0103】
工程2a)の完了後、一部の実施形態では、炭素上のPd(0)が濾過によって除去される。
【0104】
一部の実施形態では、工程4)が存在する。
【0105】
実施形態の記載では(図4のスキーム4に示すように)完全な合成スキームが提供されるが、当業者であれば、本プロセスの選択された工程が出発物質または中間体の起源に関係なく実行できることを理解するであろう。
【0106】
IV. 化合物
第三の態様では、本開示は、式(IV-1a):
【0107】
【化24】
【0108】
で表される化合物を提供する。
【0109】
第四の態様では、本開示は、式(III-1a):
【0110】
【化25】
【0111】
で表される化合物を提供する。
【0112】
V. 実施例
以下の実施例は、本発明をさらに説明するために提供されるが、本発明を制限するものではない。
【0113】
実施例1: N-(4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-2-ピリミジンアミン(化合物3)の調製
3-(2-クロロ-4-ピリミジニル)-1-メチル-1H-インドール(化合物1)(2.50kg、10.26mol)、4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロアニリン(化合物2)(1.91kg、10.26mol)、メタンスルホン酸(1.18kg、12.28mol)、および1,4-ジオキサン(42.5L)を80℃に加熱し、5時間撹拌した。DIPEA(2.92kg、22.60mol)を添加した。得られた混合物を濾過し、真空下で乾燥させて、N-(4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-2-ピリミジンアミン(化合物3)(3.67kg、収率89.7%)を得た。
【0114】
実施例2:N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミン(IV)(すなわち、化合物4)の調製
N-(4-フルオロ-2-メトキシ-5-ニトロフェニル)-4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)-2-ピリミジンアミン(化合物3)(1.80kg、4.58mol)、N,N,N’-トリメチル-1,2-エタンジアミン(0.61kg、6.00mol)、DIPEA(0.77kg、5.96mol)およびDMAc(12.6L)の混合物を80℃に加熱し、5時間撹拌した。NaOH水溶液を添加した。得られた混合物を濾過し、次いで真空下で乾燥させて、N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミン(IV、化合物4)(2.12kg、収率97.4%)を得た。
【0115】
実施例3:N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミン(IV-1a)の調製
N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミン(IV、化合物4)(2.00kg、4.21mmol)およびEtOH(16.0L)の混合物を45℃に加熱し、MsOH(0.40kg、0.27L)のEtOH(4.0L)溶液を添加した。得られた混合物を室温まで放冷した後、濾過し、次いで真空下で乾燥させて、N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミンメシル酸塩(IV-1a)(2.30kg、収率93.0%)を得た。
【0116】
実施例4:3-クロロ-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)メチルアミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)プロパンアミド(II)(すなわち、化合物6)の調製
N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)-2-ニトロベンゼン-1,4-ジアミンメシル酸塩(IV-1a)(0.210kg、367.4mmol)、10%Pd/C(6.3g)、およびEtOH(1470mL)の混合物をH下、45℃で13時間水素化した。この溶液にHOを添加し、混合物をセライトを通して濾過した。セライト層をEtOH/HOで洗浄し、N1-(2-(ジメチルアミノ)エチル)-5-メトキシ-N1-メチル-N4-(4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ベンゼン-1,2,4-トリアミン(III-1a)溶液を得た。化合物(III-1a)溶液に、冷却条件下、3-クロロプロピオニルクロリド(60.6g、477.6mmol)、アセトン、およびNaHCO水溶液を添加した。得られた混合物を濾過し、真空下で乾燥させて、3-クロロ-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)メチルアミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)プロパンアミド(II、化合物6)(0.212kg、収率97.6%)を得た。
【0117】
実施例5:オシメルチニブの調製
アセトニトリル(940mL)中の3-クロロ-N-(2-((2-(ジメチルアミノ)エチル)メチルアミノ)-4-メトキシ-5-((4-(1-メチル-1H-インドール-3-イル)ピリミジン-2-イル)アミノ)フェニル)プロパンアミド(II、化合物6)(93.96g、163.0mmol)、およびEtN(49.48g、489.0mmol)の混合物を加熱還流し、この温度で撹拌した。反応が完了した後、反応混合物を20~30℃に冷却した。得られた混合物に水を添加した。固体を濾過し、真空下で乾燥させて、オシメルチニブ(75.13g、収率85.80%)を得た。
【0118】
実施例6:オシメルチニブメシル酸塩の調製
オシメルチニブ(10g、20mmol)を、アセトン(103.4mL)および水(10mL)中で50℃でMsOH(1.92g、20.00mmol)と反応させた。固体を濾過により収集し、次いで真空下で乾燥させて、オシメルチニブメシル酸塩(11.46g、収率96%)を得た。
【0119】
上記の発明は、理解を明確にするために例示および実施例によってある程度詳細に記載されているが、当業者であれば、特定の変更および改変が添付の特許請求の範囲内で実施され得ることを理解するであろう。さらに、本明細書に提供される各参考文献は、あたかも各参考文献が個別に参照により組み込まれるのと同じ程度に、その全体が参照により組み込まれる。本出願と本明細書に提供される参考文献との間に矛盾が存在する場合、本出願が優先するものとする。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】