(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】血液からの微生物の濃縮及び同定のためのシステム、方法、及び装置
(51)【国際特許分類】
C12Q 1/6888 20180101AFI20240104BHJP
C12Q 1/04 20060101ALI20240104BHJP
C12Q 1/689 20180101ALI20240104BHJP
C12Q 1/6844 20180101ALI20240104BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20240104BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20240104BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20240104BHJP
【FI】
C12Q1/6888 Z
C12Q1/04
C12Q1/689 Z
C12Q1/6844 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
C12Q1/6813 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536804
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-08-14
(86)【国際出願番号】 US2021063288
(87)【国際公開番号】W WO2022132754
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514118217
【氏名又は名称】バイオファイア・ダイアグノスティクス,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー
(71)【出願人】
【識別番号】502073946
【氏名又は名称】ビオメリュー・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】オット クラウザー, エリザベス メアリー
(72)【発明者】
【氏名】シャウブ, マルタ エリザベス
(72)【発明者】
【氏名】リッチ, エドワード プレストン
(72)【発明者】
【氏名】ハッチ, アンドリュー カーター
(72)【発明者】
【氏名】サッチャー, ステファニー アン
(72)【発明者】
【氏名】ヒル, ライアン ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ロンシック, クリストファー エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウィルソン, マーク エス.
(72)【発明者】
【氏名】ウォルシュ, ジョン ディー.
(72)【発明者】
【氏名】ライリー, カーク エム.
(72)【発明者】
【氏名】ローパー, クラーク エル.
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA01
4B063QA18
4B063QA19
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4B063QX01
(57)【要約】
微生物を含有することが知られる、又は含有し得るサンプルから微生物を単離及び同定するためのシステム、方法、及び装置に関する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物を単離及び同定する方法であって、
(a)前記微生物を含有することが疑われるある体積の血液サンプルを提供するステップと;
(b)前記血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、溶解血液細胞及び非溶解微生物を含むライセートを得ることと;
(c)前記ライセートからの前記微生物を濃縮するステップと;
(d)前記微生物を、前記微生物を同定するのに必要とされる1つ以上の試薬を含む装置に添加することと;
(e)前記血液サンプル中に存在する前記微生物を同定することと、
を含み、
ここで前記微生物が、存在する場合、前記提供された血液サンプルの体積に対して25~100倍の範囲内で濃縮され、
ここで前記微生物が、存在する場合、前記提供された血液サンプル中で<約1CFU/ml~約20CFU/mlの範囲内の濃度を有する、方法。
【請求項2】
ステップ(a)~(c)が、約10~20分の時間範囲内で完了され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(d)及び(e)が、4時間未満、好ましくは、3時間未満、好ましくは、2時間未満、又はより好ましくは、1時間未満の時間範囲内で完了され得る、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記微生物が、血液媒介感染症に関連する細菌又は真菌生物である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記同定が、分子検査、表現型検査、プロテオミクス検査、光学検査、又は培養に基づく検査の1つ以上を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記同定が、前記微生物の特徴を有する1つ以上の核酸を前記微生物から単離するステップと、前記1つ以上の核酸を分析し、前記血液サンプル中に存在する前記微生物を同定するステップと、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記同定が、1つ以上の核酸を増幅し、次に前記1つ以上の増幅された核酸を検出することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の増幅された核酸の前記検出が、dsDNA結合色素、リアルタイムPCR、増幅後核酸融解ステップ、核酸配列決定ステップ、標識DNA結合プローブ、又は非標識プローブの1つ以上の使用を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
同定する前記ステップが、約5~75分の時間範囲内で完了され得る、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
培地中で前記濃縮微生物に対する培養ステップを実施し、前記微生物の濃度を増加させ、次に同定する前記ステップを実施することをさらに含み、ここで前記培養ステップが、4時間以下、3時間以下、又は2時間以下、好ましくは、3時間以下かけて実施される、請求項6~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記ディファレンシャル溶解緩衝液が、前記血液サンプルを前記ディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前、緩衝物質、非イオン界面活性剤、塩、及び約10~11のpH範囲を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記ディファレンシャル溶解緩衝液が、前記血液サンプル及び前記ディファレンシャル溶解緩衝液の混合後、約7.0~8.0のpHを有する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPS、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択され、且つ前記緩衝物質が、好ましくは、CAPSである、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記血液サンプルと混合された前記ディファレンシャル溶解緩衝液の前記pHが、前記緩衝物質のpH緩衝範囲を下回る、約1.5~2.5のpH単位である、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテル、好ましくは、Arlasolve200(別名、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))、BrijO10、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)の1つ以上である、請求項11に記載の方法。
【請求項16】
前記非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記ライセートからの前記微生物の濃縮が、遠心分離を含み、且つ前記濃縮が、溶解された血液画分を含む上清画分から、前記微生物を含むペレット画分を回収することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記ディファレンシャル溶解緩衝液と混合された前記血液サンプルを遠心濃縮器内に配置することと、
前記遠心濃縮器を遠心分離し、前記微生物を前記チャンバー内に配置された前記血液サンプルから濃縮することと;
前記濃縮微生物を、チャンバーの第2の末端の第2の開放部から生じさせる、好ましくは、前記ペレットを前記遠心濃縮器の前記第2の末端からバイアル又はアッセイ装置に無菌的に生じさせることと、
をさらに含み、ここで前記遠心濃縮器が、
第1の末端に開放部及び前記第2の末端にシール部分を有するチャンバーであって、前記シール部分が、前記チャンバーの前記第2の末端で第2の開放部を密封するために設計される、チャンバー;及び
前記チャンバーの内側に少なくとも部分的に可動的に配置されたプランジャーであって、前記シール部分を開放するように作動させるために設計されるプランジャー
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項19】
前記遠心濃縮器が、前記微生物を前記ライセートから分離するための高密度クッション又は物理的なセパレータを含まない、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記血液サンプル及び前記ディファレンシャル溶解緩衝液を第1の容器内で混合し、次に前記ライセートを、前記遠心濃縮器内に前記血液サンプル及び前記ディファレンシャル溶解緩衝液以外の成分を含む、前記遠心濃縮器に移すこと、遠心分離後に前記遠心濃縮器を開放し、上清画分をデカントすること、前記血液サンプルを前記ディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前の培養ステップ、又は前記ライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まない、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記血液サンプルを前記ディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前の培養ステップ、又は前記ライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まない、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記微生物が、濾過技術によって前記ライセートから濃縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項23】
上に濃縮微生物を有するフィルターを、前記血液サンプル中に存在する前記微生物を同定するために設計された培養装置又はアッセイ装置の1つ以上に加えることをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記血液サンプルを前記ディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、前記ライセートを得るステップ、及び前記微生物を前記ライセートから分離するステップが、単一チューブ内で達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項25】
前記ディファレンシャル溶解緩衝液が、前記単一チューブ内に提供される単一緩衝液である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ディファレンシャル溶解緩衝液が、DNase又はプロテアーゼを含まず、且つ前記方法が、外因性DNase又はプロテアーゼを前記単一チューブに添加するステップを含まない、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記ディファレンシャル溶解緩衝液が、EDTA、クエン酸塩、クエン酸デキストロース(ACD) ポリアネトール硫酸ナトリウム(SPS)、ヘパラン、フッ化/シュウ酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤に適合する、請求項1に記載の方法。
【請求項28】
血液からの微生物を濃縮及び同定する方法であって、
(a)前記微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプルを提供することと;
(b)前記血液サンプルを、緩衝物質、非イオン界面活性剤、及び塩を含むディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、前記混合により、溶解血液細胞及び非溶解微生物を含むライセートを得ることと;
(c)前記ライセートからの前記微生物を濃縮することと;
(d)前記血液サンプル中に存在する前記微生物を同定することと、
を含み、ここで前記ディファレンシャル溶解緩衝液と混合された前記血液サンプルが、約7.0~8.0のpHを有し、且つ前記緩衝物質が、約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲を有し、ここで前記微生物が、前記提供された血液サンプルの開始体積に対して25~100倍の範囲内で濃縮され、ここで前記同定が、4時間以下、3時間以下、2時間以下、又は好ましくは、1時間以下で達成される、方法。
【請求項29】
前記同定が、分子検査、表現型検査、プロテオミクス検査、光学検査、又は培養に基づく検査の1つ以上を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記同定が、前記微生物から前記微生物の特徴を有する1つ以上の核酸を単離するステップと、前記1つ以上の核酸を分析し、前記血液サンプル中に存在する前記微生物を同定するステップと、を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテル、好ましくは、Arlasolve200(別名、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))、BrijO10、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)の1つ以上である、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項33】
前記緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項28に記載の方法。
【請求項34】
前記緩衝物質が、CAPSであり、且つCAPSが、約9.7~11.1のpH緩衝範囲及び25℃で約10.4のpKaを有する、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記塩が、塩化ナトリウムである、請求項28に記載の方法。
【請求項36】
前記濃縮の前の血液培養ステップ及び/又は前記ライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップを含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項37】
ステップ(a)~(c)が、約10~20分の時間範囲内で完了される、請求項28に記載の方法。
【請求項38】
前記単離及び分析するステップが、約5~75分の時間範囲内で完了され得る、請求項30に記載の方法。
【請求項39】
前記ライセートを得るための時間が、約2~10分の範囲内、好ましくは約5分である、請求項28に記載の方法。
【請求項40】
前記ライセートを得ることが、前記組み合わせること以外のさらなるステップを含まない、請求項28に記載の方法。
【請求項41】
微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプル;及び
前記血液サンプルと組み合わされるディファレンシャル溶解緩衝液であって、水性媒体、緩衝物質、非イオン界面活性剤、及び塩を含むディファレンシャル溶解緩衝液
を含む組成物であって、約7.0~8.0のpHを有するとともに、前記緩衝物質が、約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲を有し、且つ25℃で約9.5~約10.7の範囲内のpKaを有する、組成物。
【請求項42】
前記非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテル、好ましくは、Arlasolve200(別名、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))、BrijO10、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)の1つ以上である、請求項41に記載の組成物。
【請求項43】
前記非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E9、ポリドセノール(polidocenol))、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項44】
前記緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項41に記載の組成物。
【請求項45】
前記緩衝物質が、約9.7~11.1の前記pH緩衝範囲及び25℃で約10.4の前記pKaを有するCAPSである、請求項44に記載の組成物。
【請求項46】
前記緩衝物質が、約7.0~8.0の前記pHで実質的に正に荷電している、請求項41に記載の組成物。
【請求項47】
DNaseを含まない、請求項41に記載の組成物。
【請求項48】
微生物を含有することが知られる、又は含有し得る前記血液サンプル;
緩衝物質を含む前記ディファレンシャル溶解緩衝液、及び
前記非イオン界面活性剤
から本質的になり、約7.0~8.0の前記pHを有するとともに、前記緩衝物質が、約9.7~11.1の前記有用なpH緩衝範囲及び25℃で約10.4の前記pKaを有するCAPSである、請求項41に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、2020年12月16日に出願された米国仮特許出願第63/126,041号に対する利益及び優先権を主張し、その全体は参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
1.技術分野
本開示の実施形態は、一般に、血液からの直接的な敗血症診断のためのシステム、方法、及び装置に関する。
【背景技術】
【0003】
2.背景
米国、カナダ、及び西欧では、感染症は、人の死亡率の約7%を占める一方で、発展途上地域では、感染症は、人の死亡率の40%超を占める。感染症は、種々の臨床症状を引き起こす。一般的な顕性徴候として、発熱、肺炎、髄膜炎、下痢、及び血液を含む下痢が挙げられる。身体的徴候がいくつかの病原体を示唆し、病原体としてそれら以外が除外される一方で、種々の原因物質の可能性が残り、明確な診断は、種々のアッセイの実施を必要とすることが多い。
【0004】
米国では、血流感染(BSI)及び結果として生じる敗血症性ショック(敗血症(sepsis)、敗血症(septicemia)、菌血症、真菌血症、カンジダ症、カンジダ血症、血液媒介感染症、及び他の関連用語とも称される)は、死亡の主因である。例えば、細菌BSIは、成人における主な死因の11番目であり、幼児では7番目である。カンジダ属(Candida spp.)及び他の真菌もまた、BSIを引き起こし得る。カンジダ属(Candida spp.)の血流感染が高い死亡率(40%)に関連することは、主に血液培養に要求される長い診断時間に寄与する。試験では、適切な抗菌又は抗真菌治療の開始により、死亡率を低下させることができ、そして抗菌薬投与する時間が遅れるごとに、死亡率の有意な増加が認められることが示されている。したがって、早期の検出及び確定診断、並びに適切な抗生物質又は抗真菌薬による迅速な治療が、BSIが疑われる患者の転帰改善のために望まれる。
【0005】
BSIの現在の診断ゴールドスタンダードは、培養下での生物の成長とそれに続く顕微鏡観察、継代培養、及び精製単離物の表現型同定を必要とする。この結果、報告時間は、グラム陽性細菌の場合に36~72時間、グラム陰性細菌の場合に48~96時間、そして真菌感染症の場合に48~120時間に及ぶ。意外にも、真菌BSIに対する治療を受けている患者の約3分の1が、陽性の血液培養による成長を決して示さず、真菌BSIの多くの陽性症例が、単に死後分析に基づいて確定診断される。結果として、医師が、BSIを有することが疑われる患者に対して、培養のための採血直後での広域スペクトル抗生物質又は抗真菌薬のレジメンによって治療を開始することは典型的である。これは理想的でない。試験では、不適切又は無効な抗菌治療薬の投与が、患者の転帰を改善することに役立たず、悩ましいことに、薬剤耐性生物の増加を引き起こすことが見出されており、それと独立に、全体として患者の転帰及び公衆衛生が損なわれることが示されている。
【0006】
診断ゴールドスタンダード(即ち、古典的な微生物学的方法)に対する1つの代替策が、血液からの感染性細菌及び真菌の分子的同定を含む。しかし、BSIにおける全血中に見出される感染性生物の数は、通常低い(血液1mLあたり約1~100コロニー形成単位(cfu/ml)であり、培養で確認される敗血症を有するほとんどの個体において、約1~10cfu/mlが典型的である)。さらに、血液は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のいくつかの阻害剤(例えば、ヘモグロビン及び他の血液タンパク質(例えば、ヒト血清アルブミン)及びゲノムDNA:微生物と同時精製し、標的微生物からの核酸回収及び下流PCRの双方に干渉し得る白血球由来)を含有する。全血中の生物がそのように少ないことやPCR阻害剤の存在により、より大量の全血(例えば、1~20mL)からの濃縮が、臨床的に関連する微生物レベルで感受性を達成するのに望まれるDNA鋳型の品質及び量を得るために求められる。
【0007】
非感染患者が受ける無効な又は不必要な広域スペクトル抗菌薬の投与回数を減らすため、より迅速で正確な分子ベースの診断が緊急に求められている。迅速な診断は、BSIを確かに有する患者へのより調整された有効な抗菌治療薬のタイムリーな投与を可能にし得る。これらの多くの潜在的利点にもかかわらず、試みられている迅速なBSI診断ソリューションの多くは、広く採用されていない。これは、厄介なワークフロー、結果までの時間、及びコストを含む、様々な理由が存在するためである。
【0008】
市販されている1つの製品が、MolYsis(商標)と呼ばれ、それは全血中の無傷な生物からの細菌DNAの選択的単離といった見込みを提供する。MolYsis(商標)Complete5 DNA抽出キット(カタログ番号D-321-100;Molzym GmbH&Co.KG,Bremen,Germany)は、血液因子(赤血球、白血球など)の選択的溶解のためのカオトロピック溶解緩衝液及びゲノムDNAを分解するためのDNaseを含む。微生物細胞は、遠心分離によって回収され、上清は廃棄され、細胞は、異なる緩衝液で数回再懸濁され、再ペレット化され、微生物細胞の化学的溶解が実施され、そして最後に微生物核酸が回収される。全てにおいて、MolYsis(商標)キットは、サンプル調製に約45分、加えて微生物細胞の精製及び溶解にさらに約45分かかる厄介なワークフローを含む。微生物の同定には、MolYsis(商標)キットを用いて回収された核酸を、さらなる時間がかかり、さらなる支出を含むような別のアッセイに入力することが必要である。さらに、MolYsis(商標)キットの使用で成功するには、熟練した専門家を必要とする。オペレーターの技能への依存は、結果の収率及び品質がオペレーターごとに異なるというリスクをもたらす。多くの緩衝液及び手作業のピペッティングステップにより、サンプルの相互汚染のリスクが高まる。
【0009】
全血からBSIを同定するための使用が意図される別の製品が、T2 Biosystems製のT2MR(登録商標)である。T2MR(登録商標)システムは、血液因子の選択的溶解、微生物回収、微生物溶解、微生物由来核酸の回収、及びPCR増幅を含む自動化されたサンプル調製を含む。T2MR(登録商標)システムでは、微生物同定のため、核磁気共鳴(NMR)が用いられる。溶液中の超常磁性NMRナノプローブは、微生物に特異的なDNAに結合し、NMRによって検出可能である凝集体を形成する。微生物核酸の存在によって凝集されるナノプローブは、非凝集ナノプローブからのシグナルと比較してより大きいNMRシグナルを生成する。しかし、T2MR(登録商標)システムは、微生物同定に使用可能である十分な品質のデータを得るためのNMRデータ収集に4~6時間を要する。また、T2MR(登録商標)システムは、高価であり(装置は約$150,000の費用がかかる)、装置のスループットは、データ収集に要する時間に起因し、著しく制限される。さらに、BSIに関連する細菌及び真菌は、別々のT2MR(登録商標)パネルに対して試験される。これは、敗血症の症状を呈している患者であれば、細菌及び真菌の原因を組み入れ/除外するため、細菌及び真菌パネルに対する試験が必要となることを意味する。さらに、細菌及び真菌パネルに対して試験される生物の数は、制限され(それぞれに対して約6匹の生物が試験される)、試験は、薬剤感受性/耐性についての情報を提供しない。
【0010】
本発明は、血液からの直接的なBSIに関連する微生物の同定に関する様々な改善に、簡素化されたワークフロー及びより迅速なサンプル対回答で対処する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、サンプルからの微生物を濃縮し、特徴づけ及び/又は同定するための方法、システム、及び装置を提供する。一実施形態では、微生物は、細菌である。別の実施形態では、微生物は、真菌生物(例えば、酵母又はカビ)である。さらなる実施形態では、微生物は、寄生虫である。方法、システム、及び装置は、血液又は尿又は脳脊髄液などの複合サンプルからの微生物の分離、濃縮、特徴づけ及び/又は同定の場合に、特に有用であってもよい。好ましい態様では、本発明の方法、システム、及び装置は、患者が敗血症であることを迅速に判定するため、全血からの直接的な微生物を濃縮し、特徴づけ及び/又は同定する場合に、使用されてもよい。典型的な敗血症では、血流中の微生物の濃度は低い。例えば、<約1~100cfu/mlであり、<約1~10cfu/mlが典型的である。敗血症であることが疑われる1名又は複数の敗血症患者では、血液中の微生物は、存在する場合、非常に希薄なことから、本明細書に記載の方法を用いずに、血液サンプルから直接的に同定される。さらに、血液は、好適に、全血及び他の複雑なマトリックス(例えば、尿及びCSF)からの微生物の同定及び分析が常に成功するように除去されてもよい、いくつかのPCRの阻害剤(例えば、ヘモグロビン、ヒト血清アルブミン及びゲノムDNA)を含有する。本発明は、サンプル中の非微生物細胞の選択的溶解及び比較的大量(例えば、10~20ml)のサンプルからの微生物の濃縮のための方法、システム、及び装置を提供する。好ましい実施形態では、本明細書に記載の方法、システム、及び装置は、限定はされないが、血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液(differential lysis buffer)を第1の容器内で混合し、次にライセートを、遠心濃縮器内に血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液以外の成分を含む遠心濃縮器に移すこと、遠心分離後、遠心濃縮器を開放し、上清画分をデカントすること、高密度クッション若しくは物理的なセパレータを伴う遠心分離による微生物の回収、(血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、本明細書中の方法に記載される濃縮及び同定ステップで処理すること以外に)血液サンプルを前処理すること、予備分析・培養ステップ、サンプルを継代培養し、サンプル中に存在する微生物を同定するステップ、又は非微生物DNAを選択的に溶解された非微生物細胞から消化するためのDNaseステップなどの装置又はステップの使用を含まない。
【0012】
本明細書に記載の発明は、好適に、記載される微生物を単離及び同定する方法を含んでもよい。当該方法は、好適に、(a)微生物を含有することが疑われるある体積の血液サンプルを提供するステップと;(b)血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、溶解血球及び非溶解微生物を含むライセートを得るステップと;(c)ライセートからの微生物を濃縮するステップと;(d)微生物を同定するために必要とされる1つ以上の試薬を含む装置に微生物を添加するステップと;(e)血液サンプル中に存在する微生物を同定することと、を含んでもよい。当該方法では、微生物は、存在する場合、提供された血液サンプルの体積と比較して25~100倍の範囲内に濃縮され、且つ微生物は、存在する場合、提供された血液サンプル中で、<約1CFU/ml(但し、0より大きい)~約100CFU/mlの範囲内の濃度を有する(例えば、<1CFU/ml 10 約10CFU/ml)。
【0013】
方法ステップ(a)~(c)は、好適に、約10~20分の時間範囲内で完了してもよい。方法ステップd)及び(e)は、好適に、4時間未満、3時間未満、2時間未満、又は1時間未満の時間範囲内で完了してもよい。
【0014】
当該方法における微生物は、好適に、血液媒介感染症に関連する細菌又は真菌生物の1つ以上を含んでもよい。
【0015】
当該方法における同定は、好適に、分子検査、表現型検査、プロテオミクス検査、光学検査、又は培養に基づく検査の1つ以上を含んでもよい。同定は、好適に、微生物の特徴を有する1つ以上の核酸を微生物から単離するステップと、1つ以上の核酸を分析し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するステップと、を含んでもよい。当該方法の一実施形態では、同定は、1つ以上の核酸を増幅し、次に1つ以上の増幅された核酸を検出することをさらに含む。1つ以上の増幅された核酸の検出は、好適に、dsDNA結合色素の1つ以上の使用、リアルタイムPCR、増幅後核酸融解ステップ、核酸配列決定ステップ、標識DNA結合プローブ、又は非標識プローブを含んでもよい。同定するステップは、好適に、約5~75分の時間範囲内で完了してもよい。
【0016】
当該方法は、好適に、培地中の濃縮された微生物に対する培養ステップを実施し、微生物の濃度を増加させ、次に同定するステップを実施することをさらに含んでもよく、ここで培養ステップは、4時間以下、3時間以下、又は2時間以下、1時間以下、30分以下、20分以下、又は10分以下、好ましくは、3時間以下かけて実施される。
【0017】
列挙される方法において使用されるディファレンシャル溶解緩衝液は、好適に、緩衝物質、非イオン界面活性剤、塩、及び血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前の約10~11のpH範囲を含んでもよい。ディファレンシャル溶解緩衝液は、好適に、血液サンプルとディファレンシャル溶解緩衝液との混合後、約7.0~8.0のpHを有し得る。ディファレンシャル溶解緩衝液中で使用される緩衝物質は、好適に、CABS、CAPS、CAPS、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。ディファレンシャル溶解緩衝液中で使用される緩衝物質は、好適に、CAPSであってもよい。血液サンプルと混合されたディファレンシャル溶解緩衝液のpHは、好適に、緩衝物質のpH緩衝範囲を下回る、約1.5~2.5のpH単位であってもよい。ディファレンシャル溶解緩衝液中で使用される非イオン界面活性剤は、好適に、ポリオキシエチレン(POE)エーテル、好ましくは、Arlasolve200(別名、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))、BrijO10、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)の1つ以上であってもよい。ディファレンシャル溶解緩衝液中で使用される非イオン界面活性剤は、好適に、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。血液サンプルと組み合わされるディファレンシャル溶解緩衝液では、(例えば、0.1%~0.5%の範囲内の)洗剤の濃度及び(例えば、7~11の範囲内の)pHは、好適に、ペレット体積を最小化する一方で、サンプル中の血球のディファレンシャル溶解を最大化するように調整されてもよい。好適に、ペレット体積は、約500μL以下、約400μL以下、約300μL以下、約200μL以下、又は約100μL以下であってもよい。好適に、サンプル中の非微生物細胞に対して最大で50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%が、サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせて2~5分以内に溶解され得る。
【0018】
ライセートからの微生物の濃縮は、好適に、遠心分離を含んでもよく、且つ濃縮は、溶解された血液画分を含む上清画分から、微生物を含むペレット画分を回収することをさらに含む。ライセートからの微生物の濃縮は、好適に、ディファレンシャル溶解緩衝液と混合された血液サンプルを遠心濃縮器内に配置することと;遠心濃縮器を遠心分離し、チャンバー内に配置された血液サンプルからの微生物を濃縮することと;濃縮微生物を、チャンバーの第2の末端の第2の開放部から生じさせることと、を含んでもよく、ここで遠心濃縮器は、第1の末端に開放部及び第2の末端にシール部分を有するチャンバーであって、シール部分がチャンバーの第2の末端で第2の開放部を密封するように設計される、チャンバー;及びチャンバーの内側に少なくとも部分的に可動的に配置されたプランジャーであって、シール部分を開放するように作動させるために設計されるプランジャーを含む。チャンバーの第2の末端の第2の開放部からの濃縮微生物の発現は、好適に、ペレットを遠心濃縮器の第2の末端からバイアル又はアッセイ装置に無菌的に生じさせることを含んでもよい。遠心濃縮器は、好適に、微生物をライセートから分離するための高密度クッション又は物理的なセパレータを含まなくてもよい。
【0019】
当該方法は、好適に、血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を第1の容器内で混合し、次にライセートを、遠心濃縮器内に血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液以外の成分を含む遠心濃縮器に移すこと、遠心分離後に遠心濃縮器を開放し、上清画分をデカントすること、血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前の培養ステップ、又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まなくてもよい。当該方法は、好適に、血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前の培養ステップ、又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まなくてもよい。
【0020】
微生物は、好適に、濾過技術によってライセートから濃縮されてもよい。当該方法は、好適に、上に濃縮微生物を有するフィルターを、血液サンプル中に存在する微生物を同定するために設計された培養装置又はアッセイ装置の1つ以上に添加することをさらに含んでもよい。
【0021】
好適に、血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、ライセートを得るステップ、及び微生物をライセートから分離するステップの方法は、単一チューブ内で達成されてもよい。好適に、当該方法において使用されるディファレンシャル溶解緩衝液は、単一チューブ内に提供される単一緩衝液であってもよい。好適に、当該方法において使用されるディファレンシャル溶解緩衝液は、DNase又はプロテアーゼを含まなくてもよく、当該方法は、好適に、外因性DNase又はプロテアーゼを単一チューブに添加するステップを含まなくてもよい。当該方法において使用されるディファレンシャル溶解緩衝液は、好適に、EDTA、クエン酸塩、クエン酸デキストロース(ACD) ポリアネトール硫酸ナトリウム(SPS)、ヘパラン、フッ化/シュウ酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される抗凝固剤に適合し得る。
【0022】
本明細書に記載の発明は、好適に、血液からの微生物を濃縮及び同定する方法を含んでもよい。当該方法は、好適に、(a)微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプルを提供するステップと;(b)血液サンプルを、緩衝物質、非イオン界面活性剤、及び塩を含むディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、混合により、溶解血球及び非溶解微生物を含むライセートを得るステップと;(c)ライセートからの微生物を濃縮するステップと;(d)血液サンプル中に存在する微生物を同定するステップと、を含んでもよく、ここでディファレンシャル溶解緩衝液と混合された血液サンプルは、約7.0~8.0のpHを有し、且つ緩衝物質は、約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲を有し、ここで微生物は、提供された血液サンプルの開始体積に対して25~100倍の範囲内に濃縮され、ここで同定は、4時間以下、3時間以下、2時間以下、又は1時間以下で達成される。
【0023】
同定は、好適に、分子検査、表現型検査、プロテオミクス検査、光学検査、又は培養に基づく検査の1つ以上を含んでもよい。当該方法の同定するステップは、好適に、微生物から微生物の特徴を有する1つ以上の核酸を単離するステップと、1つ以上の核酸を分析し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するステップと、を含んでもよい。
【0024】
当該方法において列挙される非イオン界面活性剤は、好適に、ポリオキシエチレン(POE)エーテル、好ましくは、Arlasolve200(別名、ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))、BrijO10、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)の1つ以上であってもよい。当該方法において列挙される非イオン界面活性剤は、好適に、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、Brij35)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。
【0025】
当該方法において列挙される緩衝物質は、好適に、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されてもよい。当該方法において列挙される緩衝物質は、好適に、CAPSであってもよく、CAPSは、約9.7~11.1のpH緩衝範囲及び25℃で約10.4のpKaを有する。
【0026】
(例えば、0.1%~0.5%の範囲内の)洗剤の濃度及び(例えば、7~11の範囲内の)pHは、好適に、ペレット体積を最小化する一方で、サンプル中の血球のディファレンシャル溶解を最大化するように調整されてもよい。好適に、ペレット体積は、約500μL以下、約400μL以下、約300μL以下、約200μL以下、又は約100μL以下であってもよい。好適に、サンプル中の非微生物細胞に対する最大で50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%が、サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせ2~5分以内に溶解され得る。
【0027】
当該方法において列挙される塩は、好適に、塩化ナトリウムであってもよい。
【0028】
当該方法は、好適に、濃縮の前の血液培養ステップ及び/又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップを含まなくてもよい。
【0029】
当該方法のステップ(a)~(c)は、好適に、約10~20分の時間範囲内で完了してもよい。当該方法の単離及び分析するステップは、好適に、約5~75分の時間範囲内で完了してもよい。ライセートを得るための時間は、好適に、約2~10分、好ましくは、約3~5分の範囲であってもよい。ライセートの生成は、好適に、組み合わせ以外(即ち、血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせ、サンプル中の血球を溶解するのに十分な時間(約2~10分、好ましくは、約3~5分)かけて血液/緩衝液混合物をインキュベートすること以外)の追加的なステップを含まなくてもよい。
【0030】
以下が説明される内容である。
【0031】
A1.微生物を単離及び同定する方法であって、
(a)微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプルを提供することと;
(b)血液サンプルを、あるpHを有するディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、溶解血球及び非溶解微生物を含むライセートを得ることと;
(c)微生物をライセートから分離することと;
(d)微生物を、微生物を同定するために必要とされる1つ以上の試薬を含むアッセイ装置に添加することと;
(e) 血液サンプル中に存在する微生物を同定することと、
を含み、ここで同定が、微生物から、微生物の特徴を有する1つ以上の核酸を単離するステップと、1つ以上の核酸を分析し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するステップとを含む、方法
【0032】
A2.微生物が、血液媒介感染症に関連する細菌又は酵母の1つ以上である、条項A1の方法
【0033】
A3.最初に、患者における敗血症(sepsis)、敗血症性感染、敗血症性ショック、敗血症(septicemia)などの1つ以上の症状を同定し、患者が血液媒介感染症を有することを判定することをさらに含む、条項A1及び/又は条項A2の方法
【0034】
A4.ディファレンシャル溶解緩衝液が、緩衝剤、非イオン界面活性剤、並びに血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合する前の約10~11のpH範囲及び血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合後の約7.0~8.0のpHを含む、条項A1~A3の1つ以上の方法
【0035】
A5.非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテルである、条項A1~A4の1つ以上の方法
【0036】
A6.非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E9、ポリドセノール(polidocenol))、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項A1~A5の1つ以上の方法
【0037】
A7.ライセートからの微生物の分離が、遠心分離ステップを含み、且つ分離が、溶解された血液画分を含む上清画分から、微生物を含むペレット画分を回収することをさらに含む、条項A1~A6の1つ以上の方法
【0038】
A8.
ディファレンシャル溶解緩衝液と混合された血液サンプルを遠心濃縮器内に配置することと、
遠心濃縮器を遠心分離し、チャンバー内に配置された血液サンプルからの微生物をペレット化することと;
プランジャーを押し込み、シール部分を開放し、チャンバーの第2の末端の開放部からペレットを生じさせることと、
をさらに含み、ここで遠心濃縮器が、
第1の末端に開放部及び第2の末端にシール部分を有するチャンバーであって、シール部分がチャンバーの第2の末端で第2の開放部を密封するように設計される、チャンバー;及び
チャンバーの内側に少なくとも部分的に可動的に配置されたプランジャーであって、シールを開放するように作動させるために設計されるプランジャー
を含む、条項A1~A7の1つ以上の方法
【0039】
A9.プランジャーを押し込み、シール部分を開放し、ペレットを生じさせることが、プランジャーをボディの一部と密封係合になるまで押し込むことと、加圧下でシールを開放することによって第2の末端からペレットを排出することと、を含む、条項A1~A8の1つ以上の方法
【0040】
A10.ペレットを、遠心濃縮器の第2の末端からバイアル又は自己完結型アッセイ装置に生じさせることをさらに含む、条項A1~A9の1つ以上の方法
【0041】
A11.遠心濃縮器及びバイアルのそれぞれが、遠心濃縮器の第2の末端をバイアルと共役させるように設計される、条項A1~A10の1つ以上の方法
【0042】
A12.バイアルが、ペレットを自己完結型分子的分析装置に送達するように設計される、条項A1~A11の1つ以上の方法
【0043】
A13.バイアルが、遠心濃縮器の第2の末端からバイアルを脱共役させることなく、ペレットを自己完結型分子的分析装置に送達するように設計される、条項A1~A12の1つ以上の方法
【0044】
A14.遠心濃縮器の第1の末端の開放部が、ディファレンシャル溶解緩衝液と混合されたサンプルを遠心濃縮器に無菌的に充填するように設計された、隔壁、同様に機能的な構造などを含む、条項A1~A13の1つ以上の方法
【0045】
A15.遠心濃縮器が、高密度クッション又は物理的なセパレータを含まない、条項A1~A14の1つ以上の方法
【0046】
A16.血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を第1の容器内で混合し、次にライセートを、遠心濃縮器内に血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液以外の成分を含む遠心濃縮器に移すこと、遠心分離後に遠心濃縮器を開放し、上清画分をデカントすること、血液サンプルを前処理すること、血液培養ステップ、血液サンプル中に存在する微生物を同定するための血液サンプルを継代培養するステップ、又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まない、条項A1~A15の1つ以上の方法
【0047】
A17.血液サンプルを前処理すること、血液培養ステップ、血液サンプルを継代培養し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するステップ、又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まない、条項A1~A16の1つ以上の方法
【0048】
A18.ステップ(a)~(c)が、約10~20分の時間範囲内で完了される、条項A1~A17の1つ以上の方法
【0049】
A19.ステップ(d)及び(e)が、約15~75分の時間範囲内で完了される、条項A1~A18の1つ以上の方法
【0050】
A20.ステップ(a)~(e)が、約25~95分の時間範囲内で完了される.条項A1~A19の1つ以上の方法
【0051】
A21.微生物が、ライセートからフィルターによって分離される、条項A1~A20の1つ以上の方法
【0052】
A22.フィルターを自己完結型アッセイ装置に添加することをさらに含む、条項A1~A21の1つ以上の方法
【0053】
A23.ディファレンシャル溶解緩衝液が、あるpH緩衝範囲を有する緩衝物質を含み、且つ血液サンプルと混合されたディファレンシャル溶解緩衝液のpHが、緩衝物質のpH緩衝範囲外である、条項A1~A22の1つ以上の方法
【0054】
A23.1 緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPS、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項A1~A23の1つ以上の方法
【0055】
A23.2 緩衝物質が、CAPSである、条項A1~A23.1の1つ以上の方法
【0056】
A24.血液サンプルと混合されたディファレンシャル溶解緩衝液のpHが、緩衝物質のpH緩衝範囲を下回る、条項A1~A23.2の1つ以上の方法
【0057】
A25.血液サンプルと混合されたディファレンシャル溶解緩衝液のpHが、緩衝物質のpH緩衝範囲を下回る、約1.5~2.5pH単位である、条項A1~A24の1つ以上の方法
【0058】
A26.ディファレンシャル溶解緩衝液と混合された血液サンプルが、約7.0~8.0のpHを有し、且つ緩衝物質が、約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲及び25℃で約9.5~約10.7の範囲内のpKaを有する、条項A1~A25の1つ以上の方法
【0059】
A27.同定が、1つ以上の核酸を増幅し、次に1つ以上の増幅された核酸を検出することをさらに含む、条項A1~A26の1つ以上の方法
【0060】
A28.1つ以上の増幅された核酸の検出が、核酸融解ステップを含む、条項A1~A27の1つ以上の方法
【0061】
A29.1つ以上の核酸に対する第1段階マルチプレックス増幅を実施し、第1段階増幅産物を得ることと、第2段階増幅ウェルであって、それぞれがサンプル中に存在し得る特異的核酸をさらに増幅するように設計された増幅プライマーセットを有する第2段階増幅ウェルのセットの中で希釈された第1段階増幅産物を分離することと、第2段階増幅ウェル内で第2段階増幅を実施することと、増幅後核酸融解及び融解曲線分析を実施し、血液サンプル中に存在する微生物を同定することと、をさらに含む、条項A1~A28の1つ以上の方法
【0062】
A30.分析が、血液サンプル中に存在する微生物を同定するのに十分な1つ以上の核酸から得られる配列情報を含む配列決定データを作成するための核酸配列決定ステップを含む、条項A1~A29の1つ以上の方法
【0063】
A31.核酸配列決定ステップが、大規模並列又は次世代配列決定技術を含む、条項A1~A30の1つ以上の方法
【0064】
A32.血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、ライセートを得るステップ、及びライセートから微生物を分離するステップが、単一チューブ内で達成される、条項A1~A31の1つ以上の方法
【0065】
A33.ディファレンシャル溶解緩衝液が、単一チューブ内に提供される単一緩衝液である、条項A1~A32の1つ以上の方法
【0066】
A34.ディファレンシャル溶解緩衝液が、DNase又はプロテアーゼを含まず、且つ当該方法が、外因性DNase又はプロテアーゼを単一チューブに添加するステップを含まない、条項A1~A33の1つ以上の方法
【0067】
A35.ディファレンシャル溶解緩衝液が、標準の抗凝固剤、例えば限定はされないが、EDTA、クエン酸塩、ポリアネトール硫酸ナトリウム(SPS)、ヘパラン、フッ化/シュウ酸ナトリウム、及びそれらの組み合わせからなる群から選択されるものに適合する、条項A1~A34の1つ以上の方法
【0068】
B1.微生物を単離及び同定する方法であって、
(a)微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプルを提供することと;
(b)血液サンプルを、緩衝物質及び非イオン界面活性剤を含むディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、混合により、溶解血球及び非溶解微生物を含むライセートを得ることと;
(c)ライセートからの微生物を分離することと;
(d)微生物を、微生物の特徴を有する1つ以上の核酸の増幅及び増幅された1つ以上の核酸の分析を含むアッセイを実施するように設計された自己完結型アッセイ装置に添加し、血液サンプル中に存在する微生物を同定することと、
を含み、ここでディファレンシャル溶解緩衝液と混合された血液サンプルが約7.0~8.0のpHを有し、且つ緩衝物質が約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲を有する、方法
【0069】
B2.増幅前に、アッセイが、微生物の溶解及び微生物からの核酸の回収をさらに含み、ここで回収された核酸が、血液サンプル中に存在する微生物の同定のため、増幅を受ける、条項B1の方法
【0070】
B3.非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテルである、条項B1又はB2の1つ以上の方法
【0071】
B4.非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E9、ポリドセノール)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項B1~B3の1つ以上の方法
【0072】
B5.緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項B1~B4の1つ以上の方法
【0073】
B6.緩衝物質がCAPSであり、且つCAPSが約9.7~11.1のpH緩衝範囲及び25℃で約10.4のpKaを有する、条項B1~B5の1つ以上の方法
【0074】
B7.
遠心濃縮器内で血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせることと、
血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と第1の時間かけて組み合わせ、ライセートを得ることと;
遠心濃縮器を遠心分離し、チャンバー内に配置された血液サンプルからの微生物をペレット化することと;
プランジャーを押し込み、シール部分を開放し、チャンバーの第2の末端の開放部からペレットを生じさせることと、
をさらに含み、ここで遠心濃縮器が、
第1の末端に開放部及び第2の末端にシール部分を有するチャンバーであって、シール部分がチャンバーの第2の末端で第2の開放部を密封するように設計される、チャンバー;及び
チャンバーの内側に少なくとも部分的に可動的に配置されたプランジャーであって、シールを開放するように作動させるために設計されるプランジャー
を含む、条項B1~B6の1つ以上の方法
【0075】
B8.プランジャーを押し込み、シール部分を開放し、ペレットを生じさせることが、プランジャーをボディの一部と密封係合になるまで押し込むことと、加圧下でシールを開放することによって第2の末端からペレットを排出することと、を含む、条項B1~B7の1つ以上の方法
【0076】
B9.ペレットを、任意選択的に、中に配置されたサンプル緩衝液を有する内部体積を有するバイアル体及びバイアル体の底部表面から延伸したカニューレを含むカニューレ処理用バイアルに生じさせることをさらに含み、
バイアル体に延伸しないカニューレが、バイアル体の底部表面に隣接したカニューレの第1の末端と第2の末端とを有し、
バイアル体が、体液をカニューレに入れる前にフィルター処理するように設計されたバイアル体の底部表面の近傍に位置するフィルターをさらに含み、ここでフィルターが、真菌、ウイルス、原虫、及び/又は細菌生物がそこを通過してカニューレに入ることを可能にするのに十分な直径であるが、より大きい微粒子状物質を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する、
条項B1~B8の1つ以上の方法
【0077】
B10.カニューレの第2の末端を自己完結型アッセイ装置の第1ポート内に配置することをさらに含み、ここで自己完結型アッセイ装置の第1ポートが、体液の体積を、バイアル体からカニューレを通って自己完結型アッセイ装置に導くように真空下で提供される、条項B1~B9の1つ以上の方法
【0078】
B11.自己完結型アッセイ装置が、
第1ポートに流体接続された、微生物を溶解するために設計された細胞溶解ゾーン;
細胞溶解ゾーンに流体接続された、微生物から核酸を精製するために設計された核酸調製ゾーン;
核酸調製ゾーンに流体接続された、微生物から精製された核酸の第1段階増幅のために設計された第1段階反応チャンバーを含む第1段階反応ゾーン;並びに
第1段階反応ゾーンに流体接続された、第2段階反応ゾーンであって、第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応チャンバーを含み、各第2段階反応チャンバーが、微生物から精製された生物に特異的な核酸のさらなる増幅のために設計されたプライマー対を含み、第2段階反応ゾーンは、複数の第2段階反応チャンバーの全てで同時発生する熱循環のため、そして増幅後核酸融解及び融解曲線分析を実施し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するために設計された、第2段階反応ゾーン
をさらに含む、条項B1~B10の1つ以上の方法
【0079】
B12.遠心濃縮器及びカニューレ処理用バイアルのバイアル体が、遠心濃縮器をカニューレ処理用バイアルと共役させるため、互いに係合するように設計され、ここでカニューレ処理用バイアルのバイアル体が、第2の末端を包囲するように設計され、それ故、カニューレ処理用バイアルのバイアル体が、チャンバーの第2の末端から発現されたペレットを収集するように設計される、条項B1~B11の1つ以上の方法
【0080】
B13.遠心濃縮器の第2の末端が、第1の係合部分を含み、且つカニューレ処理用バイアルのバイアル体が、遠心濃縮器をカニューレ処理用バイアルと固定的に共役させるための第2の相補的な係合部分を含む、条項B1~B12の1つ以上の方法
【0081】
B14.第1の係合部分及び第2の係合部分が、遠心濃縮器をカニューレ処理用バイアルにスレッド可能に共役させるためのスレッドを含む、条項B1~B13の1つ以上の方法
【0082】
B15.遠心濃縮器及びカニューレ処理用バイアルを、体液の体積を、バイアル体からカニューレを通って自己完結型アッセイ装置に導くため、互いに係合状態にすることと、カニューレ処理用バイアルのカニューレを自己完結型アッセイ装置の第1ポートから除去することと、遠心濃縮器及びカニューレ処理用バイアルを処分することと、をさらに含む、条項B1~B14の1つ以上の方法
【0083】
B16.遠心濃縮器の第1の末端の開放部が、ディファレンシャル溶解緩衝液と混合されたサンプルを遠心濃縮器に無菌的に充填するために設計された隔壁などを含む、条項B1~B15の1つ以上の方法
【0084】
B17.遠心濃縮器が、高密度クッションを含まない、条項B1~B16の1つ以上の方法
【0085】
B18.血液サンプルを前処理すること、血液培養ステップ、血液サンプル中に存在する微生物を同定するため、血液サンプルを継代培養するステップ、又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まない、条項B1~B17の1つ以上の方法
【0086】
B19.ステップ(a)~(c)が、約10~20分の時間範囲内で完了される、条項B1~B18の1つ以上の方法
【0087】
B20.ステップ(d)及び(e)が、約15~75分の時間範囲内で完了される、条項B1~B19の1つ以上の方法
【0088】
B21.ステップ(a)~(e)が、約25~95分の時間範囲内で完了される、条項B1~B20の1つ以上の方法
【0089】
B22.ライセートを得るための第1の時間が、約2~10分の範囲内、好ましくは、約5分である、条項B1~B21の1つ以上の方法
【0090】
B23.ライセートを得ることが、組み合わせ以外の追加的なステップを含まない、条項B1~B22の1つ以上の方法
【0091】
C1.
微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプル;及び
水性媒体、緩衝物質、及び非イオン界面活性剤を含む、血液サンプルと組み合わされるディファレンシャル溶解緩衝液
を含み、約7.0~8.0のpHを有し、ここで緩衝物質が、約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲を有し、且つ25℃で約9.5~約10.7の範囲内のpKaを有する、組成物
【0092】
C2.非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテルである、条項C1の組成物
【0093】
C3.非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E9、ポリドセノール)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項C1又はC2の1つ以上の組成物
【0094】
C4.緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項C1~C3の1つ以上の組成物
【0095】
C5.緩衝物質が、約9.7~11.1のpH緩衝範囲及び25℃で約10.4のpKaを有するCAPSである、条項C1~C4の1つ以上の組成物
【0096】
C6.緩衝物質が、約7.0~8.0のpHで実質的に正に荷電している、条項C1~C5の1つ以上の組成物
【0097】
C7.DNaseを含まない、条項C1~C6の1つ以上の組成物
【0098】
C8.
微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプル;及び
緩衝物質及び非イオン界面活性剤を含むディファレンシャル溶解緩衝液
から本質的になり、約7.0~8.0のpHを有し、ここで緩衝物質が、約9.7~11.1の有用なpH緩衝範囲及び25℃で約10.4のpKaを有するCAPSである、条項C1~C7の1つ以上の組成物
【0099】
D1.
微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプル;及び
緩衝物質及び非イオン界面活性剤を含むディファレンシャル溶解緩衝液
を含む組成物であって、約7.0~8.0のpHを有し、ここで緩衝物質が、約8.6~11.4の有用なpH緩衝範囲及び25℃で約9.5~約10.7の範囲内のpKaを有し、
溶解血球と、存在する場合、非溶解微生物とを含むライセートを含む、組成物;
ライセート中の非溶解微生物をペレット化するために設計された遠心濃縮器であって、
第1の末端に開放部及び第2の末端にシール部分を有するチャンバーであって、シール部分がチャンバーの第2の末端で第2の開放部を密封するように設計される、チャンバー;及び
チャンバーの内側に少なくとも部分的に可動的に配置されたプランジャーであって、シールを開放するように作動させるために設計されるプランジャー
を含む、遠心濃縮器;並びに
遠心濃縮器から微生物ペレットを受けるため、遠心濃縮器の第2の末端と共役させるように設計されたカニューレ処理用バイアルであって、
任意選択的に、その中にサンプル緩衝液を有する内部体積を有するバイアル体、及びバイアル体の底部表面から延伸したカニューレであって、バイアル体の底部表面に隣接するカニューレの第1の末端と、第2の末端とを有し、バイアル体に延伸しない、カニューレを含み;且つ
体液をカニューレに入る前にフィルター処理するように設計されたバイアル体の底部表面の近傍に位置するフィルターをさらに含み、ここでフィルターが、真菌、ウイルス、原虫、及び/又は細菌生物がそこを通過してカニューレに入ることを可能にするのに十分な直径であるが、より大きい微粒子状物質を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する、バイアル体
を含むカニューレ処理用バイアル
を含むシステム
【0100】
D2.遠心濃縮器が、高密度クッションを含まない、条項D1のシステム
【0101】
D3.自己完結型アッセイ装置内へのサンプルの導入のため、カニューレの第2の末端を受けるように設計された第1ポートを有する自己完結型アッセイ装置をさらに含み、ここで自己完結型アッセイ装置の第1ポートが、サンプルの体積を、バイアル体からカニューレを通って自己完結型アッセイ装置に導くように真空下で提供される、条項D1及びD2の1つ以上のシステム
【0102】
D4.自己完結型アッセイ装置が、
第1ポートに流体接続された細胞溶解ゾーンであって、微生物を溶解するために設計された細胞溶解ゾーン;
細胞溶解ゾーンに流体接続された核酸調製ゾーンであって、微生物から核酸を精製するために設計された核酸調製ゾーン;
核酸調製ゾーンに流体接続された第1段階反応ゾーンであって、微生物から精製された核酸の第1段階増幅のために設計された第1段階反応チャンバーを含む第1段階反応ゾーン;並びに
第1段階反応ゾーンに流体接続された第2段階反応ゾーンであって、第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応チャンバーを含み、各第2段階反応チャンバーが、微生物から精製された生物に特異的な核酸のさらなる増幅のために設計されたプライマー対を含み、第2段階反応ゾーンは、複数の第2段階反応チャンバーの全てで同時発生する熱循環のため、そして増幅後核酸融解及び融解曲線分析を実施し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するために設計された、第2段階反応ゾーン
をさらに含む、条項D1~D3の1つ以上のシステム
【0103】
D5.遠心濃縮器及びカニューレ処理用バイアルのバイアル体が、遠心濃縮器をカニューレ処理用バイアルと共役させるため、互いに係合するように設計され、ここでカニューレ処理用バイアルのバイアル体が、第2の末端を包囲するように設計され、それ故、カニューレ処理用バイアルのバイアル体が、チャンバーの第2の末端から発現されたペレットを収集するように設計される、条項D1~D4の1つ以上のシステム
【0104】
D6.遠心濃縮器の第2の末端が、第1の係合部分を含み、且つカニューレ処理用バイアルのバイアル体が、遠心濃縮器をカニューレ処理用バイアルと固定的に共役させるための相補的な第2の係合部分を含む、条項D1~D5の1つ以上のシステム
【0105】
D7.第1の係合部分及び第2の係合部分が、遠心濃縮器をカニューレ処理用バイアルにスレッド可能に共役させるためのスレッドを含む、条項D1~D6の1つ以上のシステム
【0106】
D8.遠心濃縮器の第1の末端の開放部が、ディファレンシャル溶解緩衝液と混合されたサンプルを遠心濃縮器に無菌的に充填するために設計された隔壁などを含む、条項D1~D7の1つ以上のシステム
【0107】
D9.遠心濃縮器が、高密度クッションを含まない、条項D1~D8の1つ以上のシステム
【0108】
D10.ディファレンシャル溶解緩衝液の非イオン界面活性剤が、ポリオキシエチレン(POE)エーテルである、条項D1~D9の1つ以上のシステム
【0109】
D11.ディファレンシャル溶解緩衝液の非イオン界面活性剤が、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10(別名、Brij96/97)、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(C12E9、ポリドセノール)、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項D1~D10の1つ以上のシステム
【0110】
D12.ディファレンシャル溶解緩衝液の緩衝物質が、CABS、CAPS、CAPSO、CHES、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される、条項D1~D11の1つ以上のシステム
【0111】
D13.ディファレンシャル溶解緩衝液の緩衝物質が、CAPSであり、且つCAPSが、約9.7~11.1の有用なpH緩衝範囲及び25℃で約10.4のpKaを有する、条項D1~D12の1つ以上のシステム
【0112】
D14.ディファレンシャル溶解緩衝液の緩衝物質が、約7.0~8.0のpHで実質的に正に荷電している、条項D1~D13の1つ以上のシステム
【0113】
D15.ディファレンシャル溶解緩衝液が、DNaseを含まない、条項D1~D14の1つ以上のシステム
【0114】
E1.微生物を単離及び同定する方法であって、
(a)微生物を含有することが知られる、又は含有し得る血液サンプルを提供することと;
(b)血液サンプルをあるpHを有するディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、溶解血球及び非溶解微生物を含むライセートを得ることと;
(c)ディファレンシャル溶解緩衝液と混合された血液サンプルを遠心濃縮器内に配置することと;
(d)遠心濃縮器を遠心分離し、チャンバー内に配置された血液サンプルからの微生物をペレット化することと;
(e)微生物を同定するために必要とされる1つ以上の試薬を含む自己完結型アッセイ装置に微生物を添加するステップと;
(f)血液サンプル中に存在する微生物を同定することと、
を含み、ここで自己完結型アッセイ装置への微生物の添加が、プランジャーを押し込み、シール部分を開放し、チャンバーの第2の末端の開放部からペレットを生じさせることを含み、ここで同定が、微生物から微生物の特徴を有する1つ以上の核酸を単離するステップと、核酸増幅を実施するステップと、増幅後核酸融解及び融解曲線分析を実施し、血液サンプル中に存在する微生物を同定するステップと、を含み、
ここで遠心濃縮器が、
第1の末端に開放部及び第2の末端にシール部分を有するチャンバーであって、シール部分がチャンバーの第2の末端で第2の開放部を密封するように設計される、チャンバー;及び
チャンバーの内側に少なくとも部分的に可動的に配置されたプランジャーであって、シールを開放するように作動させるために設計されるプランジャー
を含む、方法
【0115】
E2.自己完結型アッセイ装置が、
ある量のペレットを自己完結型アッセイ装置に導くように、真空下で提供される第1ポート;
第1ポートに流体接続された細胞溶解ゾーンであって、微生物を溶解するために設計された細胞溶解ゾーン;
細胞溶解ゾーンに流体接続された核酸調製ゾーンであって、微生物から核酸を精製するために設計された核酸調製ゾーン;
核酸調製ゾーンに流体接続された第1段階反応ゾーンであって、1つ以上の核酸に対する第1段階マルチプレックス増幅を実施するために設計された第1段階反応チャンバーを含む第1段階反応ゾーン;
第1段階反応ゾーンに流体接続された第2段階反応ゾーンであって、第2段階反応ゾーンは複数の第2段階反応チャンバーを含み、各第2段階反応チャンバーが、微生物の1つから精製された特異的な核酸のさらなる増幅のために設計されたプライマー対を含み、第2段階反応ゾーンは、複数の第2段階反応チャンバーの全てで同時発生する熱循環のために設計された、第2段階反応ゾーン
をさらに含み、且つ
第1段階反応ゾーンにおける第1段階マルチプレックス増幅を実施し、第1段階増幅産物を得ることと、第1段階増幅産物を希釈することと、希釈された第1段階増幅産物を複数の第2段階反応チャンバーの中で分離することと、第2段階増幅チャンバー内で第2段階増幅を実施することと、増幅後核酸融解及び第2段階増幅後の融解曲線分析を実施し、血液サンプル中に存在する微生物を同定することと、
をさらに含む、条項E1の方法
【0116】
E3.プランジャーを押し込み、シール部分を開放し、ペレットを生じさせることが、プランジャーをボディの一部と密封係合になるまで押し込むことと、シールを開放することによって加圧下で第2の末端からペレットを排出することと、を含む、条項E1及びE2の1つ以上の方法
【0117】
E4.ペレットを、任意選択的に、その中にサンプル緩衝液を有するカニューレ処理用バイアルであって、内部体積を有するバイアル体及びバイアル体の底部表面から延伸したカニューレを含むカニューレ処理用バイアルに生じさせることをさらに含み、
バイアル体に延伸しないカニューレが、バイアル体の底部表面に隣接したカニューレの第1の末端と第2の末端とを有し、
バイアル体が、体液をカニューレに入る前にフィルター処理するように設計されたバイアル体の底部表面の近傍に位置するフィルターをさらに含み、ここでフィルターが、真菌、ウイルス、原虫、及び/又は細菌生物がそこを通過してカニューレに入ることを可能にするのに十分な直径であるが、より大きい微粒子状物質を捕捉するのに十分に小さい孔径を有する、
条項E1~E3の1つ以上の方法
【0118】
E5.カニューレの第2の末端を自己完結型アッセイ装置の第1ポート内に配置することをさらに含み、ここで自己完結型アッセイ装置の第1ポートが、ある量の体液を、バイアル体からカニューレを通って自己完結型アッセイ装置に導くように真空下で提供される、条項E1~E4の1つ以上の方法
【0119】
E6.ステップ(b)~(d)が、単一チューブ内で実施される、条項E1~E5の1つ以上の方法
【0120】
E7.ディファレンシャル溶解緩衝液が、単一チューブ内に提供される単一緩衝液である、条項E1~E6の1つ以上の方法
【0121】
E8.ディファレンシャル溶解緩衝液が、DNase又はプロテアーゼを含まず、且つ当該方法が、外因性DNase又はプロテアーゼを単一チューブに添加するステップを含まない、条項E1~E7の1つ以上の方法
【0122】
E9.血液サンプルを前処理すること、血液培養ステップ、血液サンプル中に存在する微生物を同定するため、血液サンプルを継代培養するステップ、又はライセート中のゲノムDNAを消化するためのDNaseステップの1つ以上を含まない、条項E1~E8の1つ以上の方法
【0123】
E10.ステップ(a)~(d)が、約10~20分の時間範囲内で完了される、条項E1~E9の1つ以上の方法
【0124】
E11.ステップ(e)及び(f)が、約15~75分の時間範囲内で完了される、条項E1~E10の1つ以上の方法
【0125】
E12.ステップ(a)~(f)が、約25~95分の時間範囲内で完了される、条項E1~E11の1つ以上の方法
【0126】
この概要は、概念の選択を、後に詳細な説明においてさらに説明される簡素化された形式で導入するために提供される。この概要は、特許請求される主題の主な特徴又は必須の特徴を明らかにすることが意図されないばかりか、特許請求される主題の範囲を決定することに寄与するものとして用いられることも意図されない。
【0127】
さらなる特徴及び利点が、以下の説明において記載されることになり、また部分的には説明から明白となり、又は本発明の実施によって認知され得る。特徴及び利点は、特に添付の特許請求の範囲において示される装置及び組み合わせを用いて実現及び取得され得る。これらや他の特徴は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより十分に明白となり、又は後に記載される通り、本発明の実施によって認知され得る。
【図面の簡単な説明】
【0128】
【
図1】自己完結型PCRに有用な可動ポーチを示す。
【
図2】
図1のポーチを含む、
図1のポーチとともに使用するための装置の分解斜視図である。
【
図4】
図2の装置の例示的な一実施形態において使用されるモーターを示す。
【
図5】本明細書に記載のシステム及び装置を用いるディファレンシャル溶解及び遠心分離方法の一実施形態の略図である。
【
図6A】本発明の一実施形態に従う、遠心濃縮器のアイソメトリック図である。
【
図6C】キャップが除かれた
図6Bの場合と同じ遠心濃縮器の図を示す。
【
図6D】遠心濃縮器の別のアイソメトリック図である。
【
図6G】
図6A~6Fの遠心濃縮器のプランジャーのアイソメトリック図である。
【
図7】ディファレンシャル溶解緩衝液を用いるワークフローの例である。
【
図8】ディファレンシャル溶解緩衝液をいくつの他のプロトコルと比較する棒グラフである。
【
図9】ディファレンシャル溶解緩衝液による細胞回収を図示する棒グラフである。
【
図10】例示的なディファレンシャル溶解及び遠心分離方法の場合にヒトゲノムDNAを除去する効果を図示する。
【
図11】ディファレンシャル溶解緩衝液が、微生物細胞を無傷のままにしながら、真核生物宿主細胞を選択的に溶解し得ることを示すデータである。
【
図12】全血からの微生物の回収率及び検出効率についてのワークフローを図示する。
【
図13】
図12に例示される試験ワークフローにおける微生物の平均回収率を図示する。
【
図14】
図12に例示される試験ワークフローにおける微生物の平均接種及び回収を図示する。
【
図15A-C】動物細胞溶解、培養、及び微生物の濃縮のためのフロースルー方法を図示する。
【
図16】微生物の単離及び濃縮のための濾過方法を図示する。
【
図17A-C】細胞をサイズによって分離するために使用可能である異なる濾過構造を模式的に図示する。
【
図18】(18A)多角形、(18B)U字形、及び(18C)蝶形のマイクロピラー形状といったピラーフィルターの異なるタイプを模式的に図示する。
【
図19】緩衝液及び細胞懸濁液の一連のマイクロピラー(micopillars)及びクロスフローを有する構造内での大細胞及び小細胞の分離を模式的に図示する。
【
図20】卵形フィルターユニットに沿った移動による大細胞及び小細胞の濃縮を模式的に図示する。
【
図21】様々なディファレンシャル溶解緩衝液製剤による経時的な血液サンプルの溶解を図示する、吸光度対インキュベーション時間のグラフである。
【
図22】いくつかのタイプの生物及び血液抗凝固剤に対する生物濃度の増加を図示する棒グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0129】
実施形態の例が、添付の図面を参照し、以下に記載される。多くの形態及び実施形態が本開示の精神及び教示から逸脱することなく可能であることから、本開示は、本明細書に記載される実施形態の例に限定するように解釈されるべきでない。むしろ、これら実施形態の例は、本開示が徹底的且つ完全なものになり、また本開示の範囲を当業者に伝えることになるように提供される。図面では、層及び領域のサイズ及び相対的サイズは、明確化のため、誇張されることがある。類似参照番号は、記述全体を通じた類似要素を指す。
【0130】
特に定義されない限り、本明細書で用いられる全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、本開示が関係する当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。一般に使用される辞書で定義されるような用語が、本願及び関連技術と関連したそれらの意味に一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で特に明確に定義されない限り、理想化された又はフォーマルすぎる意味で解釈されるべきでないことはさらに理解されるであろう。本明細書の発明の説明で用いられる用語は、単に特定の実施形態を説明することを目的とし、本発明を限定することが意図されない。本明細書に記載される場合に類似又は相当するいくつかの方法及び材料が本開示の実施において使用することができるが、専ら特定の代表的な材料及び方法が本明細書に記載される。
【0131】
本明細書で言及される全ての出版物、特許出願、特許又は他の参考文献が、それら全体が参照により組み込まれる。用語使用において矛盾が生じる場合、本明細書が優先するものとする。
【0132】
装置、システム、方法などを含む、本開示の様々な態様は、1つ以上の代表的な実施に関連して例示されてもよい。本明細書で用いられるとき、「代表的な」及び「例示的な」という用語は、「例、実例、又は例証として役立つこと」を意味し、必ずしも本明細書で開示される他の実施よりも好ましい又は有利であると解釈されるべきでない。さらに、本開示又は本発明の「実施」又は「実施形態」については、その1つ以上の実施形態の具体的参照を含み、逆もまた然りであり、以下の説明よりはむしろ添付の特許請求の範囲によって示される本発明の範囲を限定することなく、実例を提供することが意図される。
【0133】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いられる通り、単数形「a」、「an」及び「the」が、文脈上他に明示されない限り、複数の参照対象を含むことは認められるであろう。したがって、例えば、「a tile」については、1つ、2つ、又はそれ以上のタイルを含む。同様に、複数の参照対象については、文脈上他に指示又は明示されない限り、単一の参照対象及び/又は複数の参照対象を含むと解釈されるべきである。したがって、「tiles」については、複数のそのようなタイルを必ずしも必要としない。その代わり、結合と別に、1つ以上のタイルが本明細書で企図されることは理解されるであろう。
【0134】
本願全体を通じて使用される通り、「can」及び「may」という用語は、強制的意味(即ち、mustを意味する)ではなく、許容的意味(即ち、~する能力を有するを意味する)で使用される。加えて、「含む(including)」、「有する(having)」、「含む(involving)」、「含む(containing)」、「~によって特徴づけられる」という用語、それらの変形(例えば、「含む(includes)」、「有する(has)」、「含む(involves)」、「含む(contains)」など)、及び類似用語は、特許請求の範囲を含む、本明細書で用いられるとき、包括的であり、且つ/又は制限のないこととし、「含む(comprising)」という用語及びその変形(例えば、「含む(comprise)」及び「含む(comprises)」)と同じ意味を有するものとし、例示的に、追加的な列挙されていない要素又は方法ステップを排除しない。
【0135】
本明細書で用いられるとき、「最上部」、「底部」、「左」、「右」、「上」、「下」、「上部」、「下部」、「内側」、「外側」、「内部(internal)」、「外部(external)」、「内部(interior)」、「外部(exterior)」、「近位」、「遠位」、「前方」、「逆向き」などの方向性及び/又は主観性の用語は、相対的方向及び/又は配向性を示すため、単独で使用することができ、明細書、発明、及び/又は特許請求の範囲を含む、本開示の範囲を特に限定することが意図されなくてもよい。
【0136】
ある要素が、もう一方の要素に「共役される」、「接続される」若しくは「応答性である」、又はもう一方の要素「に対して」と言及されるとき、それは、他方の要素に若しくは他方の要素に対して、直接的に、共役され得る、接続され得る、若しくは応答性であり得る、又は介在要素も存在し得る。それに対し、ある要素が、もう一方の要素に「直接的に共役される」、「直接的に接続される」若しくは「直接的に応答性である」、又はもう一方の要素「に対して直接的に」と言及されるとき、介在要素が存在しないことが理解されるであろう。
【0137】
本発明の概念の実施形態の例が、実施形態の例の理想化された実施形態(及び中間段階の構造)の略図である断面図を参照して、本明細書に記載される。そのようなことから、例えば、製造技術及び/又は許容度の結果としての図面の形状からのバリエーションは、予想されることとなる。したがって、本発明の概念の実施形態の例は、本明細書で図示される領域の特定の形状に限定されると解釈されるべきでないが、例えば、製造に起因する形状における逸脱を含むことになる。したがって、図面で図示される領域は、本質的に模式図であり、それらの形状は、装置のある領域の実際の形状を図示することが意図されず、実施形態の例の範囲を限定することが意図されない。
【0138】
「第1」、「第2」などの用語が、様々な要素を説明するために本明細書で用いられることがあるが、これらの要素が、これらの用語によって限定されるべきではないことは理解されるであろう。これらの用語は、単にある要素を別の要素と区別するために使用される。したがって、「第1」要素であれば、本実施形態の教示内容から逸脱することなく、「第2」要素と称することができる。
【0139】
また、本明細書に記載の様々な実施が、本開示の範囲から逸脱することなく、記載又は開示される任意の他の実施と組み合わせて利用できると理解される。したがって、本開示の特定の実施に従う製品、メンバー、要素、デバイス、装置、システム、方法、プロセス、組成物、及び/又はキットは、本開示の範囲から逸脱することなく、本明細書で開示される他の実施(システム、方法、装置などを含む)に記載の特性、特徴、成分、メンバー、要素、ステップなどを含み(include)、包含し、又はそうでなければ含み(comprise)得る。したがって、1つの実施に関連する具体的特徴については、その実施の中での適用のみに限定されるように解釈されるべきでない。
【0140】
本明細書で用いられる見出しは、単に構造化することを目的とし、説明又は特許請求の範囲の範囲を限定するために用いられることを意味しない。理解を促進するため、可能であれば、類似の参照番号を用いて、図面に共通する類似要素を指定している。さらに、可能であれば、同様の要素の付番が様々な図面で用いられている。さらに、特定要素の代替的な設計は、それぞれ要素番号に付けられた別々の文字を含んでもよい。
【0141】
「約(about)」という用語は、大まかに(roughly)、又はおよそ(around)の範囲内で、ほぼ(approximately)を意味するように本明細書で用いられる。「約(about)」という用語が数値範囲と組み合わせて用いられるとき、それは、記載される数値の上側の境界及び下側の境界に拡張することによってその範囲を修飾する。一般に、「約(about)」という用語は、規定値の5%の変動分の上側の数値及び下側の数値を修飾するように本明細書で用いられる。そのような範囲が表されるとき、別の実施形態は、一方の特定値から、且つ/又は他方の特定値にかけて含む。同様に、特定値は、値が先行する「約(about)」の使用によって近似値として表されるとき、別の実施形態を形成することは理解されるであろう。さらに、当該範囲のそれぞれのエンドポイントが、他方のエンドポイントと関連して、また他方のエンドポイントと独立に、いずれにしても有意であることは理解されるであろう。
【0142】
「又は」という用語は、本明細書で用いられるとき、特定リストの任意の一方のメンバーを意味し、さらにそのリストのメンバーの任意の組み合わせを含む。
【0143】
本明細書で用いられるとき、「微生物」という用語は、限定はされないが、グラム陽性又はグラム陰性細菌、酵母、カビ、及び寄生虫を含む、実験室内で繁殖及びハンドリングが可能である、一般に単細胞である生物を包含することが意図される。本発明のグラム陰性細菌の非限定例としては、以下の属の細菌:シュードモナス(Pseudomonas)、エシェリキア(Escherichia)、サルモネラ(Salmonella)、シゲラ(Shigella)、エンテロバクター(Enterobacter)、クレブシエラ(Klebsiella)、セラチア(Serratia)、プロテウス(Proteus)、カンピロバクター(Campylobacter)、ヘモフィルス(Haemophilus)、モルガネラ(Morganella)、ビブリオ(Vibrio)、エルシニア(Yersinia)、アシネトバクター(Acinetobacter)、ステノトロホモナス(Stenotrophomonas)、ブレブンディモナス(Brevundimonas)、ラルストニア(Ralstonia)、アクロモバクター(Achromobacter)、フソバクテリウム(Fusobacterium)、プレボテラ(Prevotella)、ブランハメラ(Branhamella)、ナイセリア(Neisseria)、バークホルデリア(Burkholderia)、シトロバクター(Citrobacter)、ハフニア(Hafnia)、エドワージエラ(Edwardsiella)、アエロモナス(Aeromonas)、モラクセラ(Moraxella)、ブルセラ(Brucella)、パスツレラ(Pasteurella)、プロビデンシア(Providencia)、及びレジオネラ(Legionella)が挙げられる。本発明のグラム陽性細菌の非限定例としては、以下の属の細菌:腸球菌(Enterococcus)、連鎖球菌(Streptococcus)、ブドウ球菌(Staphylococcus)、バチルス(Bacillus)、パエニバチルス(Paenibacillus)、乳酸桿菌(Lactobacillus)、リステリア(Listeria)、ペプトストレプトコッカス(Peptostreptococcus)、プロピオニバクテリウム(Propionibacterium)、クロストリジウム(Clostridium)、バクテロイデス(Bacteroides)、ガードネレラ(Gardnerella)、コクリア(Kocuria)、ラクトコッカス(Lactococcus)、ロイコノストック(Leuconostoc)、ミクロコッカス(Micrococcus)、マイコバクテリア(Mycobacteria)及びコリネバクテリウム(Corynebacteria)が挙げられる。本発明の酵母及びカビの非限定例としては、以下の属の酵母及びカビ:カンジダ(Candida)、クリプトコッカス(Cryptococcus)、ノカルジア(Nocardia)、アオカビ(Penicillium)、アルテルナリア(Alternaria)、ロドトルラ(Rhodotorula)、アスペルギルス(Aspergillus)、フザリウム(Fusarium)、サッカロマイセス(Saccharomyces)及びトリコスポロン(Trichosporon)が挙げられる。本発明の寄生虫の非限定例としては、以下の属の寄生虫:トリパノソーマ(Trypanosoma)、バベシア(Babesia)、リーシュマニア(Leishmania)、プラスモジウム(Plasmodium)、ウケリア(Wucheria)、糸状虫(Brugia)、オンコセルカ(Onchocerca)、及びネグレリア(Naegleria)が挙げられる。
【0144】
一態様では、本明細書でさらに詳細に記載される通り、サンプル又は増殖培地からの微生物は、分離し、調査することで、サンプル中に存在する微生物を特徴づけ及び/又は同定することができる。本明細書で用いられるとき、「分離する」という用語は、その元の状態から、又は増殖培地若しくは培地から除去、濃縮又はそうでなければ分離されている微生物の任意のサンプルを包含することが意図される。例えば、本発明に従い、微生物は、通常であれば特徴づけ及び/又は同定に干渉し得る非微生物又は非微生物成分から(例えば、別々のサンプルとして)分離されてもよい。当該用語は、遠心分離、濾過、又は当該技術分野で公知の任意の他の分離技術によって混合物から分離されている微生物を含んでもよい。そのようなものとして、分離された微生物サンプルは、元のサンプルより濃縮された、又はそうでなければ元のサンプルから分離された微生物及び/又はその成分の収集物を含んでもよく、微生物の密に詰まった高密度凝集塊から微生物の拡散層に及び得る。微生物から分離された非微生物成分は、非微生物細胞(例えば、血球及び/又は他の組織細胞)及び/又はそれらのいずれかの成分を含んでもよい。一態様では、微生物は、溶解された非微生物細胞及び実質的に無傷の微生物細胞を含むライセート混合物から分離される。
【0145】
いくつかの実施形態では、微生物のサンプルの、その元の状態から、又は成長若しくは培地からの分離は、不完全である。換言すれば、微生物のその元の状態から逸脱した除去、濃縮、又はそうでなければ設定により、微生物のサンプルは、サンプルの他の成分から、又は成長若しくは培地から完全には分離されない。いくつかの場合、サンプルから、又は成長若しくは培地からのデブリが、最少量存在する。例えば、分離されたサンプル中に存在するデブリ又は成長若しくは培地の量は、微生物の同定若しくは特徴づけ、又は微生物のさらなる成長に干渉するのに不十分であり得る。いくつかの実施形態では、分離されたサンプルは、汚染成分から99%純粋であるが、それはまた、95%純粋、90%純粋、80%純粋、70%純粋、60%純粋、50%純粋、又は分離されたサンプル中の微生物の下流同定技術による同定を依然として可能にする最小純度であってもよい。
【0146】
本明細書でさらに詳細に記載されるさらなる別の態様では、サンプル又は成長培地からの微生物は、ペレット化し、調査することで、サンプル中に存在する微生物を特徴づけ及び/又は同定することができる。本明細書で用いられるとき、「ペレット」という用語は、微生物の塊に圧縮又は蓄積されている微生物の任意のサンプルを包含することが意図される。例えば、サンプルからの微生物は、遠心分離、又は当該技術分野における他の公知の方法によって、チューブの底部で塊に圧縮又は蓄積することができる。当該用語は、遠心分離後の、容器の底面及び/又は側面上の微生物(及び/又はその成分)の収集物を含む。本発明に従い、微生物は、通常は特徴づけ及び/又は同定に干渉し得る非微生物又は非微生物成分から(例えば、実質的に精製された微生物ペレットとして)ペレット化され得る。
【0147】
「核酸」という語句は、本明細書で用いられるとき、ワトソン・クリック塩基対合による相補的核酸とのハイブリダイゼーションが可能である、DNA又はRNA又はDNA-RNAハイブリッドの一本鎖又は二本鎖のセンス又はアンチセンスのいずれかの、天然に存在する又は合成のオリゴヌクレオチド又はポリヌクレオチドを指す。本発明の核酸は、ヌクレオチド類似体(例えば、BrdU)、及び非リン酸ジエステルヌクレオシド間結合(例えば、ペプチド核酸(PNA)又はチオジエステル結合)も含み得る。特に、核酸は、限定はされないが、DNA、RNA、mRNA、rRNA、cDNA、gDNA、ssDNA、dsDNA、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0148】
「プローブ」、「プライマー」又は「オリゴヌクレオチド」は、相補的配列を含む第2の核酸分子(「標的」)に塩基対合し得る、規定された配列の一本鎖核酸分子を意味する。得られるハイブリッドの安定性は、長さ、GC含量、及び発生する塩基対合の範囲に依存する。塩基対合の範囲は、プローブと標的分子との間の相補性の程度及びハイブリダイゼーション条件のストリンジェンシーの程度などのパラメータによって影響を受ける。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーの程度は、温度、塩濃度、及びホルムアミドなどの有機分子の濃度などのパラメータによって影響を受け、当業者に公知の方法によって判定される。プローブ、プライマー、及びオリゴヌクレオチドは、当業者に周知の方法によって、放射活性、蛍光、又は非放射活性のいずれかで検出可能に標識されてもよい。dsDNA結合色素を用いて、dsDNAを検出してもよい。「プライマー」がポリメラーゼによって伸長されるように特別に設計される一方で、「プローブ」又は「オリゴヌクレオチド」がそのように設計されても又はされなくてもよいことは理解される。
【0149】
「dsDNA結合色素」は、二本鎖DNAに結合されるとき、一本鎖DNAに結合される、又は溶液中で遊離するときと異なって、通常はより強力に蛍光を発することによって、蛍光を発する色素を意味する。dsDNA結合色素を参照するとき、任意の好適な色素を本明細書で使用してもよく、いくつかの非限定的な例示的色素が、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,387,887号明細書に記載されていることは理解される。当該技術分野で公知の通り、他のシグナルを生成する物質、例示的に、酵素、抗体などが、核酸の増幅及び融解を検出するのに使用されてもよい。
【0150】
「特異的にハイブリダイズする」は、プローブ、プライマー、又はオリゴヌクレオチドが、高ストリンジェンシー条件下で、実質的に相補的な核酸(例えば、サンプル核酸)を認識し、それと物理的に相互作用し(即ち、塩基対合し)、且つ他の核酸と実質的に塩基対を形成しないことを意味する。
【0151】
「高ストリンジェンシー条件」は、典型的に、およそ融解温度(Tm)-5℃(即ち、プローブのTmより5°低い)で行われることを意味する。機能的に、高ストリンジェンシー条件を用いて、少なくとも80%の配列同一性を有する核酸配列が同定される。
【0152】
「溶解粒子」は、サンプル中に存在し得る細胞、ウイルス、胞子、及び他の材料の溶解のための様々な粒子又はビーズを意味する。様々な例では、ジルコニウム(「Zr」)ケイ酸塩又はセラミックビーズが使用されるが、ガラス及び砂溶解粒子を含む、他の溶解粒子が、公知であり、この用語の範囲内に含まれる。「細胞溶解成分」という用語は、当該技術分野で公知の通り、溶解粒子を含んでもよいが、化学溶解のための成分などの他の成分をさらに含んでもよい。
【0153】
PCRが、本明細書中の例において用いられる増幅方法である一方で、プライマーを使用する任意の増幅方法が好適であり得ることが理解される。そのような好適な方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR);鎖置換増幅(SDA);核酸配列ベースの増幅(NASBA);カスケードローリングサークル増幅(CRCA)、DNAのループ介在等温増幅(LAMP);核酸の等温及びキメラプライマー開始増幅(ICAN);標的ベースのヘリカーゼ依存性増幅(HDA);転写介在増幅(TMA)などを含む。したがって、PCRという用語が用いられるとき、他の代替的な増幅方法を含むことが理解されるべきである。分離サイクルを伴わない増幅方法においては、サイクル、倍加時間、又はクロッシングポイント(Cp)における測定がなされる場合、反応時間が用いられてもよく、追加的なPCRサイクルが本明細書に記載の実施形態において加えられる場合、追加的な反応時間が加えられてもよい。したがって、プロトコルが調節される必要があり得ることが理解される。
【0154】
本明細書中の様々な例がヒト標的及びヒト病原体を参照する一方で、これらの例は単に例示的である。本明細書に記載の方法、キット、及び装置を用いて、ヒト、動物、工業、及び環境を含む多種多様なサンプルから多種多様な核酸配列を検出又は配列決定することができる。
【0155】
本明細書で開示される様々な実施形態では、例示的に、単一の閉じたシステム内で、サンプルを、様々な生物学的物質、例示的に、抗原及び核酸配列の存在についてアッセイするための自己完結型核酸分析ポーチが使用される。ポーチ及びポーチとともに使用するための装置を含むそのようなシステムは、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第8,394,608号明細書;及び米国特許第8,895,295号明細書;及び米国特許第10,464,060号明細書により詳細に開示されている。しかし、そのようなポーチが単に例示的であり、本明細書で考察される核酸調製及び増幅反応が、当該技術分野で公知であるような種々の核酸の精製及び増幅システムを用いて、96ウェルプレート、他の形状のプレート、アレイ、カルーセルなどを含む、当該技術分野で公知であるような種々の開いた又は閉じたシステムのサンプル容器のいずれかにおいて実施されてもよいことは理解される。「サンプルウェル」、「増幅ウェル」、「増幅容器」などの用語が本明細書で用いられる一方で、これらの用語は、これらの増幅システムで使用されるような、ウェル、チューブ、及び様々な他の反応容器を包含することを意味する。一実施形態では、ポーチを用いて、複数の病原体についてアッセイされる。ポーチは、例示的に、閉じたシステム内に、サンプルウェルとして使用される1つ以上のブリスターを含んでもよい。例示的に、核酸調製、一次大容量マルチプレックスPCR、一次増幅産物の希釈、及び二次PCRを含み、任意選択的なリアルタイム検出又は融解曲線分析などの増幅後分析で終わる様々なステップが、任意選択的に、使い捨てポーチ内で実施されてもよい。さらに、様々なステップが本発明のポーチ内で実施されてもよい一方で、ステップの1つ以上が特定使用の場合に省略されてもよく、それに従い、ポーチの配置が改変されてもよいことが理解される。本明細書中の多くの実施形態で、第1段階増幅においてマルチプレックス反応が用いられる一方で、これが単に例示的であり、またいくつかの実施形態において、第1段階増幅がシングルプレックスであってもよいことが理解される。1つの例示的な例では、第1段階シングルプレックス増幅は、ハウスキーピング遺伝子を標的にし、第2段階増幅では、同定のため、ハウスキーピング遺伝子の差異が用いられる。したがって、様々な実施形態では、第1段階マルチプレックス増幅が検討される一方で、これが単に例示的であることが理解される。
【0156】
図1は、様々な実施形態において使用してもよく、又は様々な実施形態において再設計してもよい例示的なポーチ510を示す。ポーチ510は、米国特許第8,895,295号明細書の
図15と類似し、類似項目が同様に付番されている。装備品590には、エントリチャネル515a~515lが提供され、それらはまた、試薬リザーバー又は廃棄物リザーバーとして役立つ。例示的に、試薬は、装備品590内で凍結乾燥され、使用前に再水和されてもよい。ブリスター522、544、546、548、564、及び566は、それらの各チャネル514、538、543、552、553、562、及び565とともに、米国特許第8,895,295号明細書の
図15の同じ番号のブリスターと類似する。
図1の第2段階反応ゾーン580は、米国特許第8,895,295号明細書の場合と類似するが、高密度アレイ581の第2段階ウェル582は、やや異なるパターンで配置される。
図1の高密度アレイ581のより円形のパターンは、端のウェルが除去されることで、より均一な第2段階ウェル582の充満をもたらし得る。図示の通り、高密度アレイ581は、102の第2段階ウェル582が提供される。ポーチ510は、FilmArray(登録商標)装置(BioFire Diagnostics,LLC,Salt Lake City,UT)における使用に適する。しかし、ポーチの実施形態が単に例示的であることが理解される。
【0157】
他の容器を使用してもよい一方で、例示的に、ポーチ510は、押出成形、プラズマ蒸着、及び積層を含む、当該技術分野で公知の任意のプロセスによって作製可能である、柔軟性プラスチックフィルム又は他の柔軟性材料、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル、それらの混合物、組み合わせ、及び層の2つの層で形成されてもよい。例えば、各層は、一緒に積層される、単一タイプ又は2つ以上のタイプの材料の1つ以上の層から構成され得る。また、アルミニウム積層を有する金属箔又はプラスチックが使用されてもよい。他のバリア材料は、当該技術分野で公知であり、一緒に密封し、ブリスター及びチャネルを形成することができる。プラスチックフィルムが使用される場合、層は、例示的に、ヒートシーリングによって、一緒に結合されてもよい。例示的に、材料は、低い核酸結合及び低いタンパク質結合能力を有する。
【0158】
蛍光モニタリングを用いる実施形態の場合、吸光度が十分に低いプラスチックフィルム及び有効波長での自家蛍光が好ましい。そのような材料であれば、異なるプラスチック、異なる可塑剤、及び複合比率、並びにフィルムの異なる厚みを試験することによって同定することができる。アルミニウム又は他の箔積層を有するプラスチックの場合、蛍光検出装置によって読み取られることになるポーチの部分は、箔を有しない状態にすることができる。例えば、ポーチ510の第2段階反応ゾーン580の第2段階ウェル582内で蛍光が監視される場合、ウェル582での一方又は両方の層は、箔を有しない状態にされることになる。PCRの例では、厚みが約0.0048インチ(0.1219mm)のポリエステルからなるフィルム積層体(Mylar,DuPont,Wilmington DE)及び厚みが0.001~0.003インチ(0.025~0.076mm)のポリプロピレンフィルムは奏功する。例示的に、ポーチ510は、入射光の約80%~90%を透過させる能力がある透明材料から作製されてもよい。
【0159】
例示的な実施形態では、材料は、ブリスター及びチャネルに対する圧力、例示的に空気圧の適用によってブリスター間を移動させられる。したがって、圧力を用いる実施形態では、ポーチ材料は、例示的に、圧力が所望の効果を有することを可能にするため、十分に柔軟性がある。「柔軟性」という用語は、本明細書で、ポーチの材料の物理的特徴を説明するために用いられる。「柔軟性」という用語は、本明細書で、本明細書で用いられる圧力のレベルによって容易に変形可能であり、クラッキング、破壊、ひび割れなどが生じないことと定義される。例えば、サラン(商標)ラップ及びZiploc(登録商標)バッグなどの薄いプラスチックシート、並びにアルミニウム箔などの薄い金属箔は、柔軟性がある。しかし、柔軟性が必要であるのは、たとえ空気圧を用いる実施形態であっても、ブリスター及びチャネルの特定の領域に限られる。さらに、柔軟性が必要であるのは、ブリスター及びチャネルが容易に変形可能である限り、ブリスター及びチャネルの一側面に限られる。ポーチ510の他の領域は、強固な材料で作製されてもよく、又は強固な材料で強化されてもよい。したがって、「柔軟性ポーチ」又は「柔軟性サンプル容器」などの用語が用いられるとき、柔軟性が必要であるのは、ポーチ又はサンプル容器のいくつかの部分に限られることは理解される。
【0160】
例示的に、プラスチックフィルムがポーチ510に使用されてもよい。金属のシート、例示的にアルミニウム、又は他の好適な材料を、圧延し、又はそうでなければ切断し、ふくらんだ表面のパターンを有する金型を作製してもよい。空気プレス(例示的に、A-5302-PDS,Janesville Tool Inc.,Milton WI)に適合させ、例示的に、195℃の有効温度で調節されるとき、空気プレスは、印刷機のように動作し、金型がフィルムに接触する場所に限り、プラスチックフィルムのシール面を溶解する。同様に、ポーチ510に使用されるプラスチックフィルムは、レーザー切断及び溶接装置を用いて、一緒に切断及び溶接されてもよい。(例示的に、フィルム上にスポットされ、乾燥される)PCRプライマー、抗原結合基質、磁気ビーズ、及びケイ酸ジルコニウムビーズなどの様々な成分は、ポーチ510が形成されるときの様々なブリスターの内側に密封されてもよい。サンプル処理のための試薬は、密封前に、まとめて又は別々に、フィルム上にスポットすることができる。一実施形態では、ヌクレオチド三リン酸(NTP)は、ポリメラーゼ及びプライマーと別々にフィルム上にスポットされ、反応物が水性サンプルによって水和され得るまで、ポリメラーゼの活性が本質的に除去される。水性サンプルが水和前に加熱されている場合、これにより、真のホットスタートPCRのための条件が得られ、高価な化学的ホットスタート成分の必要性が低減又は除去される。別の実施形態では、成分は、粉末又はピル形態で提供されてもよく、最終密封前にブリスター内に配置される。
【0161】
ポーチ510は、米国特許第8,895,295号明細書に記載されたものと類似する様式で使用されてもよい。例示的な一実施形では、試験対象のサンプル(100μl)及び溶解緩衝液(200μl)を含む300μlの混合物が、エントリチャネル515a近傍の装備品590内の注入ポート(図示されない)に注入されてもよく、サンプル混合物は、エントリチャネル515aに導かれてもよい。また、装備品590に隣接したエントリチャネル515lの第2の注入ポート(図示されない)に水が注入されてもよく、水は装備品590内に提供されるチャネル(図示されない)を介して分布され、それにより最大で11の異なる試薬であって、そのそれぞれがエントリチャネル515b~515lで予め乾燥形態で提供された試薬が水和される。サンプル及び水和液(例えば、水又は緩衝液)を注入するための例示的な方法及び装置は、米国特許出願公開第2014-0283945号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているが、これらの方法及び装置が、単に例示的であり、サンプル及び水和液をポーチ510に導入する他の方法が、本開示の範囲内であることが理解される。これらの試薬は、例示的に、凍結乾燥PCR試薬、DNA抽出試薬、洗浄溶液、イムノアッセイ試薬、又は他の化学的実体を含んでもよい。例示的に、試薬は、核酸抽出、第1段階マルチプレックスPCR、マルチプレックス反応の希釈、及び第2段階PCR試薬の調製、並びに対照反応のためである。
図1に示される実施形態では、注入の必要がある全ては、一方の注入ポート内のサンプル溶液及び他方の注入ポート内の水である。注入後、2つの注入ポートは、密封されてもよい。ポーチ510及び装備品590の様々な立体配置に関するさらなる情報については、既に参照により組み込まれた米国特許第8,895,295号明細書を参照されたい。
【0162】
注入後、サンプルは、注入チャネル515aからチャネル514を介して溶解ブリスター522に移されてもよい。溶解ブリスター522は、セラミックビーズ又は他の研磨材要素などのビーズ又は粒子534が提供され、FilmArray(登録商標)装置内に提供される回転ブレード又はパドルを使用し、嵌入を介してボルテックスするために設計される。ケイ酸ジルコニウム(ZS)ビーズ534などの溶解粒子の存在下での、振盪、ボルテックス、超音波処理、及びサンプルの類似処理によるビーズミリングは、ライセートを形成するための有効な方法である。本明細書で用いられるとき、「溶解する」、「溶解すること」及び「ライセート」などの用語が、細胞を破壊することに限定されないが、そのような用語が、ウイルスなどの非細胞性粒子の破壊を含むことが理解される。別の実施形態では、例えば、米国特許出願公開第2019-0344269号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載される、往復性又は交互性のパドルを使用するパドルビーターが、本実施形態における溶解、及び本明細書に記載の他の実施形態における溶解のため、使用されてもよい。
【0163】
図4は、
図2に示される装置800の、支持メンバー802の第1側面811上に取り付けることができるブレード821を含む、ビーズビーティングモーター819を示す。ブレードは、スロット804を通じて延伸し、ポーチ510に接触してもよい。しかし、モーター819が、装置800の他の構造上に取り付けられてもよいことが理解される。例示的な一実施形態では、モーター819は、支持メンバー802上に取り付けられたマブチモーターのRC-280SA-2865 DCモーター(千葉、日本)である。例示的な一実施形態では、モーターは、5,000~25,000rpm、より例示的に、10,000~20,000rpm、またさらにより例示的に、約15,000~18,000rpmで回転する。マブチモーターのモーターの場合、7.2Vが溶解にとって十分なrpmをもたらすことが見出されている。しかし、実際の速度が、ブレード821がポーチ510に影響を及ぼしているとき、ややより遅い場合があることが理解される。使用されるモーター及びパドルに応じて、他の電位及び速度が溶解のために使用されてもよい。任意選択的に、制御された少量の空気が、ブラダー822に隣接する溶解ブリスター522に提供されてもよい。いくつかの実施形態では、1つ以上の少量の空気を隣接ブラダーに部分的に充填することにより、溶解プロセス中、溶解ブリスターの位置決め及び支持が補助されることが見出されている。或いは、別の構造、例示的に、溶解ブリスター522周囲の強固な又はコンプライアントなガスケット又は他の保持構造を用いて、溶解中、ポーチ510を制限することができる。モーター819が、単に例示的であり、サンプルのミリング、振盪、又はボルテックスのため、他の装置を使用してもよいことも理解される。いくつかの実施形態では、化学物質又は熱は、機械的溶解に加えて、又はその代わりに用いてもよい。
【0164】
一旦サンプル材料が十分に溶解されていると、サンプルは、核酸抽出ゾーンに、例示的に、チャネル538、ブリスター544、及びチャネル543を通じて、ブリスター546に移され、そこでサンプルは、シリカコーティング磁気ビーズ533などの核酸結合物質と混合される。或いは、磁気ビーズ533は、例示的に、エントリチャネル515c~515eの1つから提供される液体を用いて再水和され、次にチャネル543を通じて、ブリスター544に、次にチャネル538を通じて、ブリスター522に移されてもよい。混合物は、適切な時間、例示的に、約10秒~約10分かけてインキュベートされてもよい。装置に隣接するブリスター546内部に位置する格納式磁石が、溶液から磁気ビーズ533を捕捉し、ブリスター546の内部表面に対してペレットを形成する。ブリスター522内でインキュベーションが行われる場合、溶液の複数の部分は、捕捉のため、ブリスター546に移される必要があり得る。次に、液体がブリスター546から外部に移され、ブリスター544を通じて、ブリスター522に戻され、そこではそれは廃棄物容器として使用される。注入チャネル515c~515eの1つ以上からの1つ以上の洗浄緩衝液が、ブリスター544及びチャネル543を介してブリスター546に提供される。任意選択的に、磁石は、格納され、磁気ビーズ533は、ビーズをブリスター544及び546からチャネル543を介して前後に移動させることによって洗浄される。一旦磁気ビーズ533が洗浄されると、磁気ビーズ533は、ブリスター546内で磁石の活性化によって再捕捉され、次に洗浄溶液は、ブリスター522に移される。このプロセスは、必要に応じて反復され、溶解緩衝液及びサンプルの残骸を核酸結合磁気ビーズ533から洗浄してもよい。
【0165】
洗浄後、注入チャネル515fに貯蔵された溶出緩衝液が、ブリスター548に移され、磁石は格納される。溶液は、ブリスター546及び548間で、チャネル552を介して循環させることで、ブリスター546内の磁気ビーズ533のペレットを破壊し、捕捉された核酸をビーズから解離させ、溶液にすることができる。磁石が再び活性化されると、磁気ビーズ533がブリスター546内に捕捉され、溶出された核酸溶液が、ブリスター548に移される。
【0166】
注入チャネル515gからの第1段階PCRマスターミックスが、ブリスター548内の核酸サンプルと混合される。任意選択的に、混合物は、混合物を548と564との間にチャネル553を介して強制的に入れることによって混合される。数回の混合サイクル後、溶液はブリスター564内に含まれ、そこで第1段階PCRプライマーのペレットが提供され、少なくとも1つのプライマーセットが各標的に提供され、第1段階マルチプレックスPCRが実施される。RNA標的が存在する場合、逆転写(RT)ステップが、第1段階マルチプレックスPCRの前に又はそれと同時に実施されてもよい。FilmArray(登録商標)装置における第1段階マルチプレックスPCRの温度サイクリングは、例示的に、15~20サイクルの間に実施されるが、増幅の他のレベルが、特定の適用の要件に応じて望ましいことがある。第1段階PCRマスターミックスは、当該技術分野で公知である通り、様々なマスターミックスのいずれであってもよい。1つの実例では、第1段階PCRマスターミックスは、1サイクルあたり20秒以下かかるPCRプロトコルでの使用の場合、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第9,932,634号明細書に開示された化学物質のいずれかであってもよい。
【0167】
第1段階PCRが所望のサイクル数にわたって進行してから、サンプルは、例示的に、サンプルの大部分をブリスター548内に強制的に戻し、ブリスター564内に少量だけ残し、第2段階PCRマスターミックスを注入チャネル515iから添加することによって希釈することができる。或いは、515iからの希釈緩衝液は、ブリスター566に移し、次に液体をブリスター564及び566の間で前後に移動させることによって、ブリスター564内で増幅サンプルと混合することができる。必要に応じて、注入チャネル515j及び515kからの希釈緩衝液を用いて、希釈を数回反復してもよく、又は例示的に配列決定若しくは他のPCR後分析のため、注入チャネル515kを準備し、次に第2段階PCRマスターミックスを、注入チャネル515hから希釈された増幅サンプルの一部若しくは全部に添加してもよい。希釈のレベルが、希釈ステップの数を変更することによって、又は希釈緩衝液、若しくは増幅のための成分、例示的に、特にポリメラーゼ、dNTP、及び好適な緩衝液を含む第2段階PCRマスターミックスと混合する(但し、非PCR増幅方法においては、他の成分が適し得る)前に廃棄されるサンプルの百分率を変更することによって、調節してもよいことが理解される。必要に応じて、サンプル及び第2段階PCRマスターミックスのこの混合物は、第2段階増幅のため、第2段階ウェル582に移す前に、ブリスター564内で予熱されてもよい。そのような予熱は、第2段階PCR混合物中のホットスタート成分(抗体、化学物質、又はそれ以外)の必要性を取り除くことができる。
【0168】
一実施形態では、例示的な第2段階PCRマスターミックスは、不完全であり、プライマー対が欠如しており、102の第2段階ウェル582のそれぞれは、特定のPCRプライマー対が予め充填される。他の実施形態では、当該マスターミックスは、他の成分(例えば、ポリメラーゼ、Mg2+など)が欠如することがあり、欠如している成分は、アレイ内で予め充填されてもよい。必要に応じて、第2段階PCRマスターミックスは、他の反応成分が欠如することがあり、同様に、これらの成分は、第2段階ウェル582内で予め充填されてもよい。各プライマー対は、第1段階PCRプライマー対と類似若しくは同一であってもよく、又は第1段階プライマー対内で入れ子状態であってもよい。サンプルをブリスター564から第2段階ウェル582に移すことで、PCR反応混合物が完全になる。一旦高密度アレイ581が充填されると、個々の第2段階反応物は、当該技術分野で公知の通り、いくつもの手段によって、それらの各第2段階ブリスター内で密封される。高密度アレイ581を、相互汚染を伴わずに、充填し、密封する例示的な方法は、既に参照により組み込まれた、米国特許第8,895,295号明細書中で考察されている。例示的に、高密度アレイ581のウェル582内での様々な反応は、同時に又は個別に、例示的に、1つ以上のペルチェデバイスを用いて熱循環されるが、熱循環のための他の手段が、当該技術分野で公知である。
【0169】
特定の実施形態では、第2段階PCRマスターミックスは、増幅を意味するシグナルを生成するため、dsDNA結合色素LCGreen(登録商標)Plus(BioFire Diagnostics,LLC)を含む。しかし、この色素が、単に例示的であり、当該技術分野で公知の通り、蛍光、放射活性、化学発光、酵素などで標識される他のdsDNA結合色素及びプローブを含む、他のシグナルが使用されてもよいことが理解される。或いは、アレイ581のウェル582は、シグナルがない条件で提供され、結果は、その後の処理を通じて報告されてもよい。
【0170】
ポーチ510内で材料を移動させるために空気圧が用いられるとき、一実施形態において、「ブラダー」が利用されてもよい。ブラダーアセンブリ810であって、その一部が
図2~3で示されるものは、例示的に、圧縮気体源により、複数の可膨張性ブラダー822、844、846、848、864、及び866であって、そのそれぞれが個別に可膨張性であってもよいものを収容するブラダープレート824を含む。ブラダーアセンブリ810が、圧縮ガスを受け、複数回使用され得ることから、ブラダーアセンブリ810は、ポーチより堅い又はより厚い材料から作製されてもよい。或いは、ブラダー822、844、846、848、864、及び866は、ガスケット、シール、バルブ、及びピストンとともにしっかり固定された一連のプレートから形成されてもよい。その他の配置は、本発明の範囲内である。或いは、アレイ又は機械的なアクチュエータ及びシールを使用し、チャネルを密封し、ブリスター間の液体の移動を誘導することができる。本明細書に記載の装置に適応し得る機械的なシール及びアクチュエータのシステムについては、米国特許出願公開第2019-0344269号明細書(その全体は既に参照により組み込まれている)に詳述されている。
【0171】
二次PCR反応の成功は、マルチプレックス第1段階反応によって生成される鋳型に依存している。典型的に、PCRは、高純度のDNAを用いて実施される。フェノール抽出などの方法又は市販のDNA抽出キットは、高純度のDNAを提供する。ポーチ510を通じて処理されたサンプルは、純度がより低い調製を補償するために調節を行う必要があり得る。PCRは、潜在的障壁である、生体サンプルの成分によって阻害され得る。例示的に、ホットスタートPCR、より高い濃度のTaqポリメラーゼ酵素、MgCl2濃度の調節、プライマー濃度の調節、阻害剤に対して抵抗性がある改変酵素の添加、及びアジュバント(DMSO、TMSO、又はグリセロールなど)の添加を任意選択的に用いて、より低い核酸純度を補償することができる。純度の課題が、第1段階増幅で一層の懸念である可能性が高い一方で、同様の調節が、第2段階増幅で同様に提供され得ることが理解される。
【0172】
ポーチ510が装置800内に配置されるとき、ブラダーアセンブリ810は、ポーチ510の一面に対して押圧されることから、特定のブラダーが膨張される場合、ポーチ510内の対応するブリスターから液体が加圧されることになる。ブラダーアセンブリ810は、ポーチ510のブリスターの多くに対応するブラダーに加えて、ポーチ510の様々なチャネルに対応する、ブラダー又は空気圧駆動式ピストンなどの追加的な空気圧式アクチュエータを有してもよい。
図2~3は、ポーチ510のチャネル538、543、553、及び565に対応する、例示的な複数のピストン又はハードシール838、843、852、853、及び865、並びに装備品590への逆流を最小化するシール871、872、873、874を示す。ハードシール838、843、852、853、及び865は、活性化されると、対応するチャネルをピンチオフ及び閉鎖するためのピンチバルブを形成する。液体をポーチ510の特定のブリスター内に拘束するため、ハードシールは、ブリスターにつながるチャネル及びブリスターからのチャネルよりも活性化されることで、アクチュエータは、チャネルをピンチして閉鎖するためのピンチバルブとして機能する。例示的に、異なるブリスター内で2つの体積の液体を混合するため、接続チャネルを密封するピンチバルブアクチュエータが活性化され、ブリスターの上の空気圧式ブラダーが交互に圧縮され、ブリスターを接続するチャネルを通じて液体を前後に加圧し、その中の液体を混合する。ピンチバルブアクチュエータは、様々な形状及びサイズであってもよく、2つ以上のチャネルを同時にピンチオフするように設計されてもよい。空気圧式アクチュエータが本明細書で考察される一方で、線形ステッピングモーター、モーター駆動カム、空気圧力、水力学力又は電磁気力によって駆動される強固なパドル、ローラー、ロッカーアーム、及びいくつかの場合、コックスプリングなどの様々な電気機械的アクチュエータを含む、ポーチに圧力を与える他の方法が企図されることが理解される。さらに、チャネルの軸に正常な圧力を加えることに加えて、チャネルを可逆的又は不可逆的に閉鎖する種々の方法が存在する。これらは、チャネルを通じてバッグをねじること、ヒートシールすること、アクチュエータを回転させること、並びに種々の物理バルブのバタフライバルブ及びボールバルブなどのチャネルへの密封を含む。加えて、小型ペルチェデバイス又は他の温度制御装置を、チャネルに隣接するように配置し、液体を凍結させるのに十分な温度に設定することで、シールを有効に形成することができる。また、
図1の設計が、アクチュエータ要素がブリスター及びチャネルのそれぞれの上に配置されることを特徴とする自動化装置に適応する一方で、アクチュエータが定常性を維持することができ、ポーチ510を、少数のアクチュエータが、サンプル破壊、核酸捕捉、第1及び第2段階PCR、並びにイムノアッセイ及びイムノPCRなどのポーチ510の他の適用のための処理ステーションを含む、処理ステーションのいくつかに使用できるように変更可能であることも企図される。チャネル及びブリスターに対して作用するローラーであれば、ポーチ510がステーション間で翻訳されるような設計において特に有用であることを立証することができる。したがって、空気圧式アクチュエータが本開示の実施形態において使用される一方で、「空気圧式アクチュエータ」という用語が本明細書で用いられるとき、圧力をもたらす他のアクチュエータ及び他の方法が、ポーチ及び装置の設計に応じて使用されてもよいことが理解される。
【0173】
図2に戻ると、各空気圧式アクチュエータは、バルブ899を介して圧縮気体源895に接続される。いくつかのホース878のみが
図2に示される一方で、各空気圧式フィッティングが、ホース878を介して圧縮気体源895に接続されることが理解される。圧縮気体源895は、圧縮機であってもよく、又は代替的に、圧縮気体源895は、二酸化炭素シリンダーなどの圧縮ガスシリンダーであってもよい。圧縮ガスシリンダーは、携帯性が所望される場合、特に有用である。他の圧縮気体源は、本発明の範囲内である。例えば、本明細書に記載のポーチにおける液体移動の制御のため、類似する空気圧式制御が提供されてもよく、又は他のアクチュエータ、サーボなどが提供されてもよい。
【0174】
また、装置のいくつかの他の成分が、圧縮気体源895に接続される。支持メンバー802の第2の側面814上に取り付けられた磁石850は、例示的に、ホース878を介する圧縮気体源895からの気体を用いて配備及び格納されるが、磁石850を移動させる他の方法は、当該技術分野で公知である。磁石850は、支持メンバー802内の陥凹部851に位置する。陥凹部851が、磁石850がポーチ510のブリスター546に接触し得るように、支持メンバー802を通る通路であり得ることが理解される。しかし、支持メンバー802の材料に応じて、磁石850が配備されるとき、磁石850がブリスター546で十分な磁場を提供するのに十分に近く、また磁石850が十分に格納されるとき、磁石850がブリスター546内に存在する任意の磁気ビーズ533に有意に影響しない限り、陥凹部851が支持メンバー802を貫通して伸びる必要がないことが理解される。磁石850の格納について言及がなされる一方で、電磁石が使用されてもよく、電磁石を通じて電気の流れを制御することによって、電磁石の作動及び非作動がなされてもよいことが理解される。したがって、本明細書で磁石の除去又は格納について考察される一方で、これらの用語が、磁場を取り除く他の方法を包含するのに十分に広義であることが理解される。空気圧式接続が、空気圧式ホース又は空気圧式エアマニホールドであり得、それ故、必要とされるホース又はバルブの数が低減され得ることが理解される。同様の磁石及び磁石を作動させるための方法が他の実施形態において使用されてもよいことが理解される。
【0175】
また、空気圧式ピストンアレイ869の様々な空気圧式ピストン868は、圧縮気体源895にホース878を介して接続される。2つのホース878のみが空気圧式ピストン868を圧縮気体源895に接続することが示される一方で、空気圧式ピストン868のそれぞれが圧縮気体源895に接続されることが理解される。12の空気圧式ピストン868が示される。
【0176】
温度制御要素の対が、支持メンバー802の第2の側面814上に取り付けられる。本明細書で用いられるとき、「温度制御要素」という用語は、熱をサンプルに加える、又はサンプルから熱を除去する装置を指す。温度制御要素の実例としては、限定はされないが、ヒーター、クーラー、ペルチェデバイス、抵抗ヒーター、誘導ヒーター、電磁ヒーター、薄膜ヒーター、印刷要素ヒーター、正温度係数ヒーター、及びそれらの組み合わせが挙げられる。温度制御要素は、複数のヒーター、クーラー、ペルチェなどを含んでもよい。一態様では、所与の温度制御要素は、ヒーター又はクーラーの2つ以上のタイプを含んでもよい。例えば、温度制御要素の実例としては、別々の抵抗ヒーターがペルチェの上面及び/又は下面に適用されたペルチェデバイスを挙げてもよい。「ヒーター」という用語が本明細書全体を通じて用いられる一方で、他の温度制御要素を用いて、サンプルの温度を調節してもよいことが理解される。
【0177】
上で考察したように、第1段階ヒーター886は、第1段階PCRにおいてブリスター564の中身を加熱及び冷却するように配置されてもよい。
図2で明らかなように、第2段階ヒーター888は、第2段階PCRにおいてポーチ510のアレイ581の第2段階ブリスターの中身を加熱及び冷却するように配置されてもよい。しかし、これらのヒーターが他の加熱目的であっても使用でき、且つ他のヒーターを特定用途に適するものとして含めてもよいことが理解される。
【0178】
上で考察したように、2つ以上の温度間で熱循環させるペルチェデバイスがPCRに有効である一方で、いくつかの実施形態において、ヒーターを一定温度に維持することが望ましい場合がある。例示的に、サンプル温度を変化させるのに必要な時間を超える、ヒーター温度を変化させるのに必要な時間を排除することによって、これを用いて実行時間を低減することができる。また、はるかにより大きい(より大きい熱質量の)ペルチェデバイスでなく、単により小さいサンプル及びサンプル容器を熱循環させることが必要であることから、そのような準備により、システムの電気的効率を改善することができる。例えば、装置は、例えば、アニーリング、伸長、変性のために設定された温度で、熱循環を達成するためのポーチに対して配置される、複数のヒーター(即ち、2つ以上)を含んでもよい。2つのヒーターは、多くの用途にとって十分であり得る。様々な実施形態では、熱循環を達成するためのヒーターに対して、ヒーターが移動可能であり、ポーチが移動可能であり、又は液体が移動可能である。例示的に、ヒーターは、線状に、環状配置で、又はそれに類似するように配置されてもよい。好適なヒーターのタイプは、第1段階PCRを参照して、上で考察されている。
【0179】
蛍光検出が所望されるとき、光学アレイ890が提供されてもよい。
図2に示される通り、光学アレイ890は、光源898、例示的に、フィルターLED光源、フィルター白色光、又はレーザーイルミネーション、及びカメラ896を含む。カメラ896は、例示的に、複数の光検出器を有し、それぞれがポーチ510内の第2段階ウェル582に対応している。或いは、カメラ896は、第2段階ウェル582の全てを含む画像を取得することができ、画像は、第2段階ウェル582のそれぞれに対応する別々の領域に分割され得る。設計に応じて、光学アレイ890は、固定的であってもよく、又は光学アレイ890は、1つ以上のモーターに取り付けられ、各個別の第2段階ウェル582からシグナルを得るように移動するムーバー上に配置されてもよい。他の配置が可能であることが理解される。第2段階ヒーターにおけるいくつかの実施形態は、ヒーターをポーチ510の
図2に示される側と反対側に提供する。そのような配置は、単に例示的であり、装置内部の空間的制約によって決定されてもよい。第2段階反応ゾーン580が光学的に透明な材料で提供されるという条件で、光検出器及びヒーターは、アレイ581のいずれかの側面に設けられもよい。
【0180】
図示の通り、コンピュータ894は、圧縮気体源895のバルブ899を制御し、それ故、装置800の空気圧式システムの全てを制御する。さらに、他の実施形態では、装置内の空気圧式システムの多くが、機械的アクチュエータ、圧力適用手段などと置き換えられてもよい。コンピュータ894はまた、ヒーター886及び888、並びに光学アレイ890を制御する。これらの部品のそれぞれは、例示的に、ケーブル891を介して、電気的に接続されるが、他の物理又は無線接続は、本発明の範囲内である。コンピュータ894が、装置800内部に収容されてもよく、又は装置800の外部に設けられてもよいことが理解される。さらに、コンピュータ894は、部品の一部又は全部を制御する一体型回路基板を含んでもよく、また、光学アレイからのデータを受信及び表示するため、デスクトップ又はラップトップPCなどの外部コンピュータを含んでもよい。インターフェース、例示的に、温度、サイクル時間などの情報及び変数を入力するためのキーを含む、キーボードインターフェースが提供されてもよい。また、例示的に、ディスプレイ892が提供される。ディスプレイ892は、例えば、LED、LCD、又は他のそのようなディスプレイであってもよい。
【0181】
当該技術分野で公知の他の装置が、密封された柔軟性容器内のPCRについて教示している。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第6,645,758号明細書、米国特許第6,780,617号明細書、及び米国特許第9,586,208号明細書を参照されたい。しかし、例えば、密封されたPCR容器内の細胞溶解は、特に、試験対象のサンプルがバイオハザードを含み得る場合、使いやすさ及び安全性を改善し得る。本明細書で例示される実施形態では、細胞溶解からの廃棄物、並びに全ての他のステップからの廃棄物は、密封ポーチ内に残る。さらに、ポーチの中身をさらなら試験に備えて除去できることが理解される。
【0182】
図2に戻ると、装置800は、ケーシングの壁を形成し得る、又はケーシング内に取り付けられ得る支持メンバー802を含む。装置800はまた、ポーチ510の挿入及び離脱を可能にするため、任意選択的に、支持メンバー802に対して可動である第2の支持メンバー(図示されない)を含んでもよい。例示的に、一旦ポーチ510が装置800に挿入されていると、蓋がポーチ510をカバーしてもよい。別の実施形態では、両方の支持メンバーが固定され、ポーチ510は、他の機械的手段又は空気圧によって定位置に固定されてもよい。
【0183】
実例において、ヒーター886及び888は、支持メンバー802上に取り付けられる。しかし、この配置が単に例示的であり、他の配置が可能であることが理解される。例示的なヒーターは、ブリスター864及び第2段階反応ゾーン580の中身を熱循環させるため、当該技術分野で公知である通り、ペルチェ及び他のブロックヒーター、抵抗ヒーター、電磁ヒーター、及び薄膜ヒーターを含む。ブラダープレート810は、ブラダー822、844、846、848、864、866、ハードシール838、843、852、853、及びシール871、872、873、874とともに、ブラダーアセンブリ808を形成し、それは例示的に、ポーチ510の方へ移動できる可動性の支持構造上に取り付けられてもよく、そこで空気圧式アクチュエータが、ポーチ510と接触状態で配置される。ポーチ510が装置800に挿入され、可能性の支持メンバーが支持メンバー802の方へ移動されるとき、ポーチ510の様々なブリスターは、ブラダーアセンブリ810の様々なブラダー及びアセンブリ808の様々なシールに隣接して配置されることで、空気圧式アクチュエータの作動により、ポーチ510のブリスターの1つ以上から液体を押圧することができ、又はポーチ510の1つ以上のチャネルとともにピンチバルブを形成することができる。ポーチ510のブリスター及びチャネルとアセンブリ808のブラダー及びシールとの間の関係は、
図3により詳細に図示される。
【0184】
サンプル中の微生物の単離、濃縮、特徴づけ、及び/又は同定
本発明は、サンプル中の微生物の単離、濃縮、特徴づけ、及び/又は同定のための方法、システム、及び装置を提供する。一実施形態では、微生物は、細菌である。別の実施形態では、微生物は、真菌生物(例えば、酵母又はカビ)である。さらなる実施形態では、微生物は、寄生虫である。別の実施形態では、微生物は、細菌、酵母、カビ、及び寄生虫からなる群から選択される微生物の組み合わせであってもよい。当該方法、システム、及び装置は、血液、尿、又は脳脊髄液などの複合サンプルからの微生物の分離、特徴づけ及び/又は同定に特に有用であり得る。好ましい態様では、本発明の方法、システム、及び装置は、例えば、患者が敗血性であるか又は敗血症の手前であるかのいずれかを迅速に判定するため、血液から直接得られる微生物を単離、特徴づけ及び/又は同定するために使用されてもよい。
【0185】
本明細書で用いられるとき、「血液から直接得られる」又は「全血から直接得られる」は、血液サンプル中に存在する微生物の存在を判定することに関連して、全血からの微生物を濃縮及び/又は単離し、次に微生物を同定することによって微生物の存在を判定することを意味する。「全血」は、循環システム内で見出すことになるとき、分離又は除去されたその成分を全く有しない血液(例えば、ヒト血液)である。添加された抗凝固剤を有する血液は、やはり一般に、全血と称される。微生物は、好適に、サンプル中の微生物の数を増加させるための予備濃縮及び/又は予備単離の血液培養ステップを用いずに、全血から濃縮及び/又は単離されてもよい。微生物は、好適に、サンプル中の微生物の数を増加させるための短い(例えば、<5時間、<4時間、<3時間、<2時間、又は<1時間)培養ステップ後、血液から濃縮及び/又は単離されてもよい。微生物を濃縮及び/又は単離後、微生物は、好適に、限定はされないが、分子検査(即ち、核酸に基づく検査)、表現型検査、プロテオミクス検査、光学検査、又は培養に基づく検査の1つ以上を含む、いくつかの技術によって同定されてもよい。微生物を濃縮及び/又は単離後、微生物は、好適に、濃縮/単離画分の数を増加させるため、短時間(<5時間、<4時間、<3時間、<2時間、又は<1時間(例えば、3時間))培養されてもよい。しかし、培養は、好適に、本明細書に記載の方法及びシステムにおいて必要でないことがある。例えば、本明細書に記載の方法は、好適に、限定はされないが、典型的に、血液培養中で十分に又は急速に成長することがない偏好性生物、異なる培養条件を必要とし得る好気性及び嫌気性生物、並びに成長及び検出のための異なる培地製剤を必要とし得る生物を含む、目的の全ての細菌及び真菌生物に対して機能し得る。
【0186】
微生物の濃縮サンプル(例えば、遠心分離ペレット)中の微生物の特徴づけ及び/又は同定は、好適に、正確な種の同定を含まなくてもよい。特徴づけは、生物学的粒子の広範なカテゴリー化又は分類、並びに単一種の実際の同定を包含する。本明細書で用いられるとき、「同定」は、微生物が属する科、属、種、及び/又は系統を決定することを意味する。例えば、生体サンプル(例えば、血液、尿、又は脳脊髄液)から単離された微生物を科、属、種、及び/又は系統のレベルまで同定することが挙げられる。
【0187】
本明細書に記載の方法、システム、及び装置は、微生物の特徴づけ及び/又は同定を、先行技術より迅速に可能にし、(例えば、敗血症を有する又は有することが疑われる対象における)より迅速な診断をもたらす。本発明の方法に関与するステップは、微生物の特徴づけ/同定のためにサンプルを得ることから、臨床的に関連する利用可能な情報を得るため、非常に短い時間枠以内に実施することができる。特定の実施形態では、本発明の方法は、約120分未満、例えば、約110分、約100分、約95分、約90分、約85分、約80分、約75分、約70分、約65分、約60分、約55分、約50分、約45分、約40分、約35分、約30分、約25分、約20分、約15分、約10分、約5分、約4分、約3分、約2分、約1分未満以内、又は前記時点の、若しくはそれらの間の、若しくはそれらを包含する任意の範囲以内に実施することができる。好ましい実施形態では、本発明の方法は、約90分未満(例えば、約75分)以内に実施することができる。例えば、全血サンプルが敗血症を有することが疑われる患者から収集される時から感染病原体(存在する場合)の分析及び陽性同定の完了までの経過時間は、多くのシナリオにおいて約90分未満であり得る。より迅速な分子的分析システムが利用可能であるとき、サンプリング応答時間は、大幅に減少し得る。敗血症及び全血が以前の例において用いられる一方で、低力価生物が大量の血液又は他のサンプルタイプから濃縮される場合の他の複合サンプルタイプにおいて、同様の時間が達成可能であり得る。本発明の方法の驚異的な迅速性は、以前の方法を上回る改善を表す。当該方法を用いて、本明細書に記載のような任意の微生物を特徴づけ及び/又は同定することができる。
【0188】
本明細書に記載の方法、システム、及び装置に関連する例示的なワークフローは、単純であり、サンプル、ライセート、及び微生物の操作を最小化する。例えば、サンプルは、微生物の溶解及び単離のため、単一チューブ内でディファレンシャル溶解緩衝液と混合され得る。一実施形態では、微生物は、微生物ペレットをライセートから隔離する様式で単一チューブから回収し、それにより潜在的に感染性のある材料を操作し、且つ/又はサンプルを汚染させるリスクを低減することができる。加えて、本発明の方法を完全に自動化することができ、それにより感染性材料を操作し、且つ/又はサンプルを汚染させるリスクがさらに低減される。
【0189】
図5は、本明細書に記載の方法、システム、及び装置に有用な部品の一実施形態の略図である。例示的な方法は、限られた数の部品、限られた数のステップを含み、またサンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液の接触から約20~75分以内で完了されることで、簡素化されたワークフロー及びより短い結果までの時間を提供することができる。
図5の例示的な方法は、サンプル5000(例えば、全血サンプル、尿サンプル、脳脊髄液サンプル、又は環境サンプル)を得るステップと、ライセートを調製するステップと、ライセートから微生物細胞を回収するステップと、サンプル中の微生物を特徴づけ及び/又は同定するステップと、を含む。一実施形態では、血液サンプルであってもよいサンプル5000は、標準の採血チューブ(例えば、バキュテナーなど)内に、抗凝固剤の存在下又は不在下で提供されてもよい。一実施形態では、サンプル5000中の非微生物細胞の実質的に全て(例えば、>90%)の溶解のため、サンプル5000及びディファレンシャル溶解緩衝液は、組み合わされてもよい。例示的な実施形態では、ライセートは、特別に設計された遠心濃縮器5010内で調製されてもよい。一実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液は、遠心濃縮器5010において提供されてもよく、サンプル中の非微生物細胞の溶解は、単に、サンプル5000を遠心濃縮器5010に添加し、それにより遠心濃縮器5010においてサンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を組み合わせることによって開始されてもよい。別の実施形態では、サンプル5000は、ディファレンシャル溶解緩衝液と混合され、次に遠心濃縮器5010内に配置される、例えば、混合物として遠心濃縮器にピペッティングされる。組み合わせ後、ディファレンシャル溶解緩衝液及びサンプルは、ある期間(例えば、1~5分間)かけて組み合わせることで、ライセートが得られる。一実施形態では、微生物は、遠心分離、濾過などによって、ライセートから回収されてもよい。遠心分離の場合、微生物細胞は、遠心濃縮器5010において、約1,000×g~約20,000×gで約4~10分の範囲内のある期間、遠心濃縮器を遠心分離することによってペレット化されてもよい。例示的な実施形態では、回収された微生物細胞は、遠心濃縮器5010から、サンプル中の微生物を臨床的に関連するレベルで特徴づけ及び/又は同定するために設計された分析装置5020に添加されてもよい。図示の分析装置5020における微生物の特徴づけ及び/又は同定は、迅速に(例えば、約15~60分で)実施することができる。しかし、図示の分析装置は、単に例示的である。例えば、いくつかの実施形態では、微生物は、配列決定(例えば、次世代配列決定)によって、特徴づけ及び/又は同定することができる。
【0190】
サンプル
本明細書に記載の方法及びシステムによって試験されてもよいサンプルは、微生物の存在及び/又は成長が疑われるか又は疑われ得る臨床及び非臨床サンプルの双方、並びに微生物の存在についてルーチン的に又は場合によって試験される材料のサンプルを含んでもよい。利用されるサンプルの量は、当該方法の多用途性及び/又は感受性に起因し、大幅に変化し得る。本明細書に記載の方法及びシステムの1つの利点が、例えば、血液、体液、及び/又は他の不透明な物質などの複合サンプルタイプが、ほとんど又は全く広範囲に及ぶ前処理を伴わないシステムを利用して、直接的に試験され得ることである。
【0191】
「サンプル」は、動物;限定はされないが、ヒト動物を含む、動物からの組織又は臓器;細胞(対象(例えば、ヒト又は非ヒト動物)から直接的に採取される対象内の細胞、又は培養物中の若しくは培養された細胞株からの維持された細胞のいずれか);細胞ライセート(又はライセート画分)又は細胞抽出物;細胞、細胞物質、又はウイルス物質に由来する1つ以上の分子(例えば、ポリペプチド又は核酸)を含有する溶液;又は本明細書に記載のようにアッセイされる、天然に存在しない核酸を含有する溶液を意味する。本明細書に記載の方法及びシステムによって試験されてもよいサンプルは、微生物の存在及び/又は成長が疑われるか又は疑われ得る臨床及び非臨床サンプルの双方、並びに微生物の存在についてルーチン的に又は場合によって試験される材料のサンプルを含んでもよい。試験されてもよい臨床サンプルは、限定はされないが、血液、血清、血漿、血液画分、関節液、尿、精液、唾液、便、脳脊髄液、胃内容物、腟分泌物、組織ホモジネート、骨髄吸引液、骨ホモジネート、痰、吸引液、スワブ及びスワブリンセート(swab rinsates)、他の体液、血液製剤(例えば、血小板、血清、血漿、白血球画分など)、ドナー臓器又は組織サンプルなどを含む、典型的に、臨床又は研究実験室で試験されるサンプルの任意のタイプを含む。培養され、その後に試験されてもよい、一部の検体サンプルは、血液、血清、血漿、血小板、赤血球、白血球、血液画分、関節液、尿、鼻サンプル、精液、唾液、便、脳脊髄液、胃内容物、腟分泌物、組織ホモジネート、骨髄吸引液、骨ホモジネート、痰、吸引液、スワブ及びスワブリンセート、他の体液などを含んでもよい。例えば、いくつかの実施形態において、対象からの血液のようなサンプルに、試験前に、(例えば、1分~4時間の範囲内の)制限された培養ステップを施し、サンプル中の検出可能な微生物のレベルを増加させることは選択肢であってもよい。別の選択肢では、血液のようなサンプルは、微生物の選択的溶解及び回収の前に培養されてもよく、微生物は、溶解及び回収の間に培養されてもよく、又は微生物は、(例えば、生物を液体培地中又は固体プレート上で成長させることによって)選択的に溶解されたサンプルから(例えば、遠心分離によって)回収されたペレットから培養されてもよい。微生物(特に、細菌及び真菌)の培養は、好適に、細胞濃度がより高いとき、より迅速であり得る。回収又は濃縮された微生物からの(例えば、遠心分離ステップから得られたペレットからの)培養は、好適に、血液培養より迅速であり得る。また、好適に、回収又は濃縮された微生物からの培養では、血液中に存在し得る抗生物質及びデフェンシンを除去することができ、またより迅速な成長を促進することができる。
【0192】
本発明は、研究、並びに獣医学及び医学適用における用途が見出される。臨床サンプルを入手可能である好適な対象は、一般に、哺乳動物対象であるが、あらゆる動物であり得る。「哺乳動物」という用語は、本明細書で用いられるとき、限定はされないが、ヒト、非ヒト霊長類、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウマ、ネコ、イヌ、ウサギ、齧歯類(例えば、ラット又はマウス)などを含む。ヒト対象は、新生児、幼児、若年者、成人及び老人対象を含む。サンプルを入手可能である対象は、限定はされないが、哺乳類、鳥類、爬虫類、両生類、及び魚類を含む。
【0193】
試験することができる非臨床サンプルはまた、限定はされないが、食糧、飲料、医薬品、化粧品、水(例えば、飲料水、非飲料水、及び廃水)、海水バラスト、空気、土壌、汚水、植物材料(例えば、種子、葉、茎、根、花、果実)、生物兵器サンプルなどを包含する物質を含む。サンプルはまた、限定はされないが、土壌、大気モニタリングシステムサンプル(例えば、空気フィルター媒体中で捕捉される材料)、表面スワブ、及び媒介動物(例えば、蚊、マダニ、ノミなど)などの環境サンプルを含んでもよい。また、当該方法は、特に、工業的状況における汚染レベル、プロセス制御、品質管理などを監視するためのリアルタイム試験に十分に適する。本発明の好ましい実施形態では、サンプルは、微生物感染を有するか又は有することが疑われる対象(例えば、患者)から得られる。一実施形態では、対象は、敗血症、例えば、菌血症又は真菌血症を有するか又は有することが疑われる。好ましくは、サンプルは、対象から収集された後、直接的に試験される血液サンプルであってもよい。即ち、サンプルは、試験前に、血液培地に添加されておらず、処理又は培養又は希釈されていない全血サンプルである。別の実施形態では、サンプルは、患者の血液のサンプルから成長した血液培養物、例えば、BacT/ALERT(登録商標)血液培養物から得られてもよい。血液培養サンプルは、陽性血液培養物、例えば、微生物の存在を示す血液培養物から得られてもよい。特定の実施形態では、サンプルは、それが陽性に変化後の短時間以内に、例えば、約6時間以内に、例えば、約5時間、約4時間、約3時間、又は約2時間以内に、又は例えば、約55分、約50分、約45分、約40分、約35分、約30分、約25分、約20分、約15分、約10分、約5分、約4分、約3分、約2分、又は約1分といった約60分以内に、陽性血液培養物から採取されてもよい。一実施形態では、サンプルは、微生物が対数期成長にある培養物から採取されてもよい。別の実施形態では、サンプルは、微生物が定常期にある培養物から採取されてもよい。いくつかの実施形態では、全血サンプルは、当該方法の一部として、全血サンプルが患者から採取されて1時間以内に提供されてもよい。さらに別の実施形態では、サンプルは、典型的に、陽性血液培養結果を得るのに必要とされる時間より短い時間(例えば、1分~4時間の範囲内)かけて培養されている血液であってもよく、又はそれを含んでもよい。いくつかの実施形態では、サンプルは、当該方法における使用のため、室温で提供される一方で、他の実施形態では、サンプルは、患者から得られた後、当該方法における使用のために提供される前に冷却される。例えば、サンプルは、患者から得られた後、当該方法を実施することができるまで、冷蔵されてもよい。
【0194】
本発明は、微生物の検出及び同定のため、高い感受性を提供する。例示的に、これは、液体培養のステップ、それに続く微生物を単離するステップ及びそれらを固体又は半固形培地上で成長させるステップ、及び成長するコロニーをサンプリングするステップを最初に経る必要がなく、微生物の検出及び同定を可能にする。したがって、本発明の一実施形態では、サンプルは、液体培養物、又は固体若しくは半固体表面上で成長された微生物(例えば、細菌、酵母、又はカビ)コロニーから得られない。有望なBSIの同定を促進するため、いくつかの実施形態において、当該方法は、サンプルを患者から得た後に培養することなく、サンプルを溶解するステップを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法は、血液サンプルの収集前に抗菌薬で治療されている患者であっても用いることができる。敗血症に一致する症状で入院している患者は、直ぐに抗菌薬が開始されることが多く、その後、敗血症が確定的に組み入れられ、又は除外され得る。そのような治療プロトコルが標準治療に一致する一方で、抗菌薬は、古典的な敗血症診断において使用される血液培養物に干渉し得る。意外にも、さらに本明細書に記載の方法を用いて、無傷の微生物細胞が血液中にまだ存在する場合、抗菌薬治療中の患者における敗血症を診断することができる。
【0195】
サンプルの体積は、本発明の方法の分離ステップが実施された後に分析可能である微生物のペレットを生成するのに十分に大きい必要がある。適切な体積は、サンプルの供給源、サンプル中の予測される微生物のレベル、及び微生物の特徴づけ及び同定に利用される分析方法に依存することになる。例えば、BSIを有する患者からの全血は、典型的に、約1~100cfu/ml(例えば、<1~10cfu/ml)の微生物負荷を有する。一般に、サンプルサイズは、約50ml、約40ml、約30ml、約20ml、約15ml、約10ml、約5ml、約4ml、約3ml、又は約2ml(例えば、約10ml)であり得る。特定の実施形態では、サンプルサイズは、約1ml、例えば、約0.75ml、約0.5ml、又は約0.25mlであり得る。分離がマイクロスケールで実施されるような特定の実施形態では、サンプルサイズは、約200μl未満、例えば、約150μl、約100μl、約50μl、約25μl、約20μl、約15μl、約10μl、又は約5μl未満であり得る。いくつかの実施形態(例えば、サンプルが少数の微生物を含むことが予想されるとき)では、サンプルサイズは、約100ml以上、例えば、約250ml、約500ml、約750ml、又は約1000ml以上であり得る。陽性血液培養物は、1mlあたりより高レベルの微生物を含有することになり、それ故、全血と比較して、より少ない体積の血液培地が使用されてもよい。
【0196】
本明細書中での考察の多くが特に全血に関連する一方で、本明細書に記載の方法、システム、及び装置は、上の「サンプル」の定義の中で記述された通り、他のサンプルタイプに対して使用されてもよい。さらなるサンプルタイプの2つの具体例が、尿及び脳脊髄液(CSF)である。尿及びCSFは、感染の間、白血球(WBC)を含有することが多く、細胞内病原体を宿し得る。これらのWBCは、感染と闘う場合に産生されることがあり、又は、CSFの場合、多数の病原体が、WBC又は他の血液細胞の内側に隠れることによって、脳/脊髄カラムに接近し、次に、血液脳関門を通過することができる。病原体を宿す血液細胞(病原体細胞でない)は、本明細書で開示されるディファレンシャル溶解緩衝液で選択的に溶解することによって、細胞内の病原体を放出することができ、汚染している真核生物宿主DNAを実質的に含まないかもしれない(例えば、汚染している宿主DNAは>95%減少され得る)ペレットに濃縮することができる。加えて、膀胱の上皮細胞は、感染の間、剥離し、病原体を運ぶ細胞を排出し、予防策として感染の拡散を予防することができる。白血球と同様、これらの上皮細胞は、本明細書で開示されるディファレンシャル溶解緩衝液によって溶解することができ、無傷の病原体細胞は、膀胱細胞からの汚染を伴わずに、ペレットに濃縮することができる。
【0197】
本明細書中の他の箇所でより詳細に考察される通り、回収された病原体細胞は、溶解され得て、病原体細胞からの核酸は、分析のため、回収され得る。病原体細胞が、有意な宿主細胞DNA汚染を伴わずに単離されることから、回収された病原体核酸は、病原体を特徴づけ及び/又は同定するための下流分子アッセイに適する。いくつかの実施形態では、病原体細胞は、分子的方法による(例えば、病原体DNA又はRNAのPCR増幅及び増幅産物の同定による)、遺伝子配列決定による(例えば、次世代配列決定技術による)、又は質量分析による病原体の下流の特徴づけ及び/又は同定に使用されてもよい。本明細書に記載の装置及び方法では、病原体シグナルがこれらの方法のいずれかによって識別できるように、宿主細胞成分の多く又は全てを除去することができる。
【0198】
溶解ステップ
サンプルを提供又は入手した後の、本発明の例示的方法における次のステップは、サンプル中に存在し得る非微生物細胞、例えば、血液細胞及び/又は組織細胞又は他の真核生物宿主細胞を溶解することである。いくつかの実施形態では、当該方法は、細胞を選択的に溶解し、微生物のサンプルの他の成分からの分離を可能にすることを含む。微生物の他の成分からの分離により、後の調査ステップの間の干渉が低減される。非微生物細胞がサンプル中に存在することが予想されない、又は調査ステップに干渉することが予想されない場合、溶解ステップは、省略されてもよい。一実施形態では、溶解されるべき細胞は、サンプル中に存在する非微生物細胞であり、サンプル中に存在し得る微生物細胞は、ほとんど又は全く溶解されない。しかし、いくつかの実施形態では、微生物の特定クラスの選択的溶解は、望ましいことがあり、それ故、本明細書に記載の方法に従い、また当該技術分野で周知であるように、実施することができる。例えば、望ましくない微生物のクラスは、選択的に溶解することができ、例えば、酵母が溶解される一方で、細菌は溶解されないか、又はその逆もいえる。別の実施形態では、所望の微生物は、微生物の特定の細胞内成分、例えば、細胞膜又は細胞小器官を分離するため、溶解される。一実施形態では、非微生物細胞の全部が溶解される。他の実施形態では、非微生物細胞の一部、例えば、調査ステップとの干渉を阻止するのに十分な細胞が溶解される。細胞の溶解は、溶解微生物の存在下又は不在下で細胞を選択的に溶解するのに有効であるように、限定はされないが、ディファレンシャル溶解緩衝液の添加、超音波処理、及び/又は浸透圧ショックを含む、当該技術分野で公知の任意の方法によって実施されてもよい。
【0199】
ディファレンシャル溶解緩衝液は、1クラスの細胞、例えば、(例えば、真核細胞膜を可溶化することによって)非微生物細胞及び/又はいくつかの微生物細胞を選択的に溶解でき、且つ別のクラスの細胞、例えば、微生物又は微生物のタイプを溶解できないものである。一実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液は、水性媒体、1つ以上の洗剤、緩衝物質、1つ以上の塩を含み得て、また追加薬剤をさらに含み得る。一実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液は、1つ以上の酵素(例えば、プロテアーゼ)をさらに含んでもよい。一実施形態では、洗剤は、Triton(登録商標)X-100 Triton(登録商標)X-100-R、Triton(登録商標)X-114、NP-40、Igepal(登録商標)CA630、Arlasolve(商標)200、BrijO10(Oleth-10、Brij96V、Brij97、Volpo 10NF、Volpo N10としても公知)(Brijの名称は、Croda International Plcの登録商標である)、CHAPS、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(別名、C12E9、ポリドセノール、Brij35)などの非変性溶解性洗剤であり得る。一実施形態では、洗剤は、非イオン界面活性剤である。好適な非イオン界面活性剤の例としては、限定はされないが、Triton X-114、NP-40、Arlasolve200、BrijO10、オクチルβ-D-グルコピラノシド、サポニン、ノナエチレングリコールモノドデシルエーテル、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好ましい実施形態では、非イオン界面活性剤は、ポリオキシエチエンエーテル(POEエーテル)である。POEエーテルは、細胞膜破壊のために使用されてもよい非イオン界面活性剤のクラスである。POEエーテルは、アルキル鎖、「n」オキシエチレン単位からなる親水性部分、及び末端-OH基からなる。POEエーテルの好適な例としては、限定はされないが、Arlasolve200(ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル))、BrijO10(及び他のBrij洗剤)、及びノナエチレングリコールモノドデシルエーテル(Brij35)が挙げられる。任意選択的に、ドデシル硫酸ナトリウム、N-ラウリルサルコシン、デオキシコール酸ナトリウム、胆汁酸塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、SB3-10、SB3-12、アミドスルホベタイン-14、及びC7BzOなどの変性溶解性洗剤を含めることができる。任意選択的に、Brij98、Brij58、Brij35、Tween(登録商標)80、Tween(登録商標)20、Pluronic(登録商標)L64、Pluronic(登録商標)P84、非洗剤スルホベタイン(NDSB201)、アンフィポール(PMAL-C8)、及びメチル-β-シクロデキストリンなどの可溶化剤を含めることもできる。典型的に、非変性洗剤及び可溶化剤は、それらの臨界ミセル濃度(CMC)より高い濃度で使用される一方で、変性洗剤は、それらのCMCより低い濃度で添加されてもよい。例えば、非変性溶解性洗剤は、約0.010%~約10%、例えば、約0.015%~約1.0%、例えば、約0.05%~約0.5%、例えば、約0.10%~約0.30%の濃度(サンプル希釈後の最終濃度)で使用することができる。ディファレンシャル溶解緩衝液中で使用可能な酵素は、限定はされないが、核酸及び他の膜ファウリング材料を消化する酵素(例えば、プロテイナーゼXXIII、DNase、ノイラミニダーゼ、ポリサッカリダーゼ、Glucanex(登録商標)、及びPectinex(登録商標))を含む。具体的な実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液は、DNaseを含まず、DNaseと組み合わせて使用されない。使用可能な他の添加剤は、限定はされないが、2-メルカプトエタノール(2-Me)又はジチオトレイトール(DTT)などの還元剤、並びにマグネシウム、ピルビン酸、及び保水剤などの安定化剤を含む。
【0200】
ディファレンシャル溶解緩衝液は、所望の細胞を溶解するのに適した任意のpHで緩衝することができ、限定はされないが、サンプルのタイプ、溶解対象の細胞、及び使用される洗剤を含む複数の要素に依存することになる。いくつかの実施形態では、pHは、約2~約13、例えば、約6~約10、例えば、約7~約9、例えば、約7~約8の範囲内であり得る。好適なpH緩衝液は、pHを所望の範囲内で維持する能力がある任意の緩衝液を含んでもよい。いくつかの実施形態では、緩衝液は、それらのpH緩衝範囲外で使用されてもよい。緩衝物質の好適な例は、限定はされないが、約0.005M~約1.0MのCAPS、CAPSO、CHES、CABS、及びそれらの組み合わせを含んでもよい。具体的な例では、ディファレンシャル溶解緩衝液は、下の表1に示される組成物を有する。
【0201】
【0202】
表1に例示される具体的な例では、サンプルは、約30mlのディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わされた、約10mlの全血である。
【0203】
CAPSは、緩衝物質であり;CAPSは、25℃で約10.4のpKa及び約9.7~11.1の典型的な緩衝範囲を有する。ディファレンシャル溶解緩衝液を血液サンプルと組み合わせる前、CAPS緩衝液は、その緩衝範囲内である。しかし、ディファレンシャル溶解緩衝液を血液サンプルと組み合わせた後、この例におけるCAPS緩衝液は、(例えば、約7~8のpHで)十分にその緩衝範囲外である。意外にも、その緩衝範囲外である、ディファレンシャル溶解緩衝液中のCAPS(及び化学的に類似する緩衝液-例えば、CAPSO、CHES、及びCABS)を用いることが、溶解を改善する相乗効果を有し得ることが見出されている。1つの理論に拘束されない限り、CAPSが、非微生物細胞の透過処理を助け、それを溶解するための第2の洗剤のように作用している可能性が考えられる。例えば、約7~8のpH(例えば、7.6~8のpH)で、CAPS緩衝液は、ほぼ完全にプロトン化され、正に荷電することになる。ヘンダーソン・ハッセルバルヒ(Henderson-Hasselbach)式によると、例えば、約7.0~8.0のpH範囲の例で、プロトン化CAPS種対非プロトン化CAPS種の比は、約250:1又はそれ以上となる。約7.0~8.0のpHでのCAPS緩衝液の場合、約250:1又はそれ以上のプロトン化対非プロトン化の比は、それが「実質的に正に荷電している」ことを意味することの例である。細胞膜は、一般に、正味の負電荷を有することから、CAPS緩衝液の正電荷がCAPS分子を細胞の表面に引き付け得ることが理論化される。CAPSは、細胞の透過処理を助けるため、非微生物細胞の疎水膜に挿入し得るフェニル環を有する。CAPSO、CHES、及びCABSは、CAPSと類似する構造を有し、CAPSO、CHES、及びCABS、並びにCAPS、CAPSO、CHES、及びCABSの組み合わせ、並びに類似の緩衝液であれば、類似する結果を提供し得ることが予想される。CAPSOは、25℃で約9.6のpKa及び約8.9~10.3の典型的な緩衝範囲を有し、CHESは、25℃で約9.3のpKa及び約8.6~10の典型的な緩衝範囲を有し、CABSは、25℃で約10.7のpKa及び約10~11.4の典型的な緩衝範囲を有する。CAPSO、CHES、及びCABSの場合、ヘンダーソン・ハッセルバルヒ(Henderson-Hasselbach)式は、約7.0~8.0のpH範囲例で、プロトン化緩衝液種対非プロトン化緩衝液種の比が、約500:1又はそれ以上(即ち、約7.0~8.0のpHでのCABS)、約40:1又はそれ以上(即ち、約7.0~8.0のpHでのCAPSO)、及び20:1又はそれ以上(即ち、約7.0~8.0のpHでのCHES)の範囲内となることを提供する。したがって、約7.0~8.0のpHでのCAPSO、CHES、及びCABSの場合、約40:1又はそれ以上のプロトン化CAPSO対非プロトン化CAPSOの比、約20:1又はそれ以上のプロトン化CHES対非プロトン化CHESの比、及び約500:1又はそれ以上のプロトン化CABS対非プロトン化CABSの比のそれぞれが、それが「実質的に正に荷電している」ことを意味することのさらなる例である。また、当業者は、ディファレンシャル溶解緩衝液中で使用される緩衝物質が、好適に、CAPS、CAPSO、CHES、及びCABSの組み合わせを含んでもよいことを理解するであろう。そのような組み合わせの場合、約20:1又はそれ以上のプロトン化種対非プロトン化種のいずれかの比が、それが「実質的に正に荷電している」ことを意味することのさらなる例である。
【0204】
一実施形態では、サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液は、溶解が生じるのに十分な時間、例えば、約1秒、約2秒、約3秒、約4秒、約5秒、約10秒、約15秒、約20秒、約25秒、約30秒、約40秒、約50秒、若しくは約60秒、又は約2分、約3分、約4分、約5分、約6分、約7分、約8分、約9分、約10分、約15分、若しくは約20分若しくはそれ以上、例えば、約1秒~約20分、約1秒~約5分、又は約1秒~約2分かけて組み合わされる。一実施形態では、サンプル中の非微生物細胞に対する最大50%、60%、70%、80%、90%、95%、97%、98%、99%は、サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせて2~5分以内に溶解され得る。いくつかの実施形態では、サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液は、細胞膜の可溶化が生じるのに十分な時間かけて組み合わされる。血球(即ち、非微生物細胞)の細胞膜の可溶化が、
図21に例示される。室温での血液細胞の溶解の有効性を示すため、いくつかのディファレンシャル溶解緩衝液製剤と組み合わされた全血のOD500吸光度(500nmの波長)が、様々な時点で測定された。時間の関数としての吸光度の低下は、溶解の進行を例示する。0.125%のBrijO10及び50mMのCAPS(○)(即ち、10mlの全血を30mlのディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせた後の洗剤及び緩衝液の濃度)を含有する緩衝液/血液の組み合わせは、おそらくは不十分な洗剤濃度が原因で、溶解には無効であった。試験した他の3つの緩衝液(0.15%BrijO10及び100mM CAPS(△)、0.25%BrijO10及び10mM CAPS(□)、並びに0.25%BrijO10及び50mM CAPS(◇))のそれぞれは、血液細胞の溶解に有効であった。これらの緩衝液/血液の組み合わせにおける吸光度の低下は、溶解が、100mM CAPS緩衝液及び50mM CAPS緩衝液において2分以内で、そして10mM CAPS緩衝液において3分以内で完全であったことを例示する。0.25%BrijO10及び10mM CAPSを含有する緩衝液は、上の表1で例示された緩衝液である。
図21で図示される通り、溶解時間は、ディファレンシャル溶解緩衝液の強度、例えば、洗剤の濃度及び/又は溶液のpHに依存することになる。一般に、より弱い溶解緩衝液が、非微生物細胞を完全に又は部分的に可溶化するため、さらなる時間及びサンプルのより高い希釈度を必要とすることが予想される。ディファレンシャル溶解緩衝液の強度は、サンプル中に存在することが知られる又は存在することが疑われる微生物に基づいて選択され得る。より溶解を受けやすい微生物の場合、弱いディファレンシャル溶解緩衝液を使用することができる。溶解は、約2℃~約45℃、例えば、約15℃~約40℃、例えば、約20℃~約40℃の温度で生じ得る。
【0205】
一実施形態では、シリンジ内で組み合わせが生じるように、ディファレンシャル溶解緩衝液は、シリンジに充填することができ、次にサンプルは、シリンジに吸引することができる。一実施形態では、サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液は、別々のチューブで提供することができ、それらは、一方を他方に注ぐことによって組み合わせすることができる。一実施形態では、組み合わせ及び微生物回収が遠心濃縮器内で行われるように、ディファレンシャル溶解緩衝液は、遠心濃縮器内に提供することができ、サンプルは、遠心濃縮器内に吸引することができる。いくつかの実施形態では、混合は、サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を溶液中で組み合わせることによって行われる。さらなる実施形態では、混合は、組み合わせたサンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を撹拌することを含む。例えば、サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液は、遠心濃縮器内で組み合わせ、遠心濃縮器を傾ける、又は緩やかに振盪することによって混合することができる。別の例では、ビーズビーター又はソニケーターを使用し、組み合わせたサンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を撹拌することができる。
【0206】
いくつかの実施形態では、溶解条件(例えば、組み合わせ及び/又は組み合わせ時間)、並びに分離及び/又は調査ステップは、サンプル中の微生物の一部又は全部を殺傷するのに十分であり得る。本発明の方法は、高度に多用途であり、微生物が単離及び同定が行われる場合に生存可能であることを必要としない。特定の実施形態では、微生物の一部又は全部は、死滅していてもよく、当該方法のステップが実施される前、間、及び/又は後に死滅が生じてもよい。他の実施形態では、微生物の一部又は全部は、分離ステップの結果として生存していてもよく、それにより培養温度(例えば、細菌の場合が約37℃、そして多数の真菌種の場合に約32℃)、適切な培地(例えば、細菌培地又は真菌培地)中での微生物のさらなる培養が可能である。例えば、微生物は、分離ステップ後に生存していてもよく、次に微生物が1つ以上の抗生物質に対して感受性又は抵抗性のいずれであるかを判定するための分離技術に含まれてもよく、好適に、微生物の成長は、ディファレンシャル溶解緩衝液の使用によって影響されなくてもよい。
【0207】
分離ステップ
サンプルが溶解された後、分離ステップを実施し、微生物をサンプルの他の成分から分離し、微生物を、同定及び特徴づけを目的として調査することができるペレットに濃縮することができる。分離は、完全である必要はない、即ち、100%の分離がなされることは求められない。例示的に、微生物のサンプルの他の成分からの分離は、微生物の調査を他の成分からの実質的な干渉を伴わずにできれば十分である。例えば、分離により、少なくとも約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%、若しくは約99%又はそれ以上純粋である微生物ペレットをもたらすことができる。全血からの直接的な微生物同定を潜在的に交絡させる1つの汚染物質が、ヒトゲノムDNAである。一態様例では、本ケースにおける発明者は、本明細書に記載のディファレンシャル溶解緩衝液による全血の処理が、後に微生物がDNase処理を伴わなくても血液ライセートからペレット化されるとき、ヒトゲノムDNAの98%又はそれ以上を除去する能力があることを見出している。
【0208】
一実施形態では、分離は、サンプル(例えば、溶解したサンプル)が遠心濃縮器内に配置され、遠心濃縮器容器が、容器の底部及び/又は側面の微生物ペレット及びサンプル培地中のサンプルの他の成分(例えば、溶解した細胞成分)が上清中に留まる条件下で遠心分離されるような遠心分離ステップによって実施される。この分離により、培地、細胞片、ヒトゲノムDNA、及び/又は(例えば、微生物に特異的な核酸の増幅及び検出による)微生物の調査に干渉し得る他の成分などのサンプル中の材料から微生物が単離される。この分離により、サンプルのバルク体積から微生物が単離され、微生物部分の体積が減少し、微生物が小さい体積(例えば、約200μl)に濃縮される。一実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液は、遠心濃縮器内で提供され、サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液を溶解に十分な時間かけて組み合わせることによって溶解が開始され、次に遠心分離によって微生物の回収がなされる。一実施形態では、遠心濃縮器は、高密度クッション、物理的なセパレータ、又は当該技術分野で公知の類似培地を含まない。意外にも、高密度クッションが、同定又は特徴づけのための分子的技術とともに使用されるとき、汚染デブリからの微生物の十分な分離及び単離を提供するのに必要でないことが見出されている。
【0209】
本発明の一実施形態では、遠心濃縮器は、微生物がチューブの底部で直接的にペレットを形成するように、スインギングバケットローターで遠心分離される。容器は、微生物がペレット化し、且つ/又はサンプルの他の成分から分離されるのに十分な加速で十分な時間かけて遠心分離される。遠心分離の加速は、例示的に、約1,000×g~約20,000×g、例えば、約2,500×g~約15,000×g、例えば、約7,500×g~約12,500×gなどであり得る。遠心分離時間は、例示的に、約30秒~約30分、例えば、約1分~約15分、例えば、約1分~約10分であり得る。遠心分離は、例示的に、約2℃~約45℃、例えば、約15℃~約40℃、例えば、約20℃~約30℃の温度で実施することができる。一実施形態では、遠心濃縮器は、閉鎖部を含み、且つ閉鎖部は、容器に適用され、シールが形成された後、遠心分離される。閉鎖部の存在により、感染性及び/又は有害性であるか又はそのようであり得る微生物をハンドリングすることから生じるリスク、並びにサンプルを汚染するリスクが低減される。本発明の方法の利点の1つが、密封容器(例えば、密閉的に密封された容器)内の微生物を用いて、当該方法のステップ(例えば、溶解、分離、調査、及び/又は同定)のいずれか1つ以上を実施する能力である。本方法は、自動化システムの使用を含んでもよく、それにより、例えば、直接的試験におけるサンプルからの微生物の回収とともに生じる、極めて毒性の高い微生物のハンドリングに関連する健康及び安全上のリスクが回避される。
【0210】
遠心濃縮器は、ディファレンシャル溶解緩衝液及びサンプルを保持するのに十分な体積を有する任意の容器であってもよい。一実施形態では、容器は、遠心ローターに適合し、又はそれに適合され得る。例示的に、容器の体積は、約0.1ml~約100ml、例えば、約50mlであり得る。分離がマイクロスケールでなされる場合、容器の体積は、約2μl~約100μl、例えば、約5μl~約50μlであり得る。一実施形態では、容器は、サンプルを保持するための上位部分で、より幅広い内部直径、及び微生物のペレットが収集される下位部分で、より狭い内部直径を有する。テーパー状の内部直径部分は、上位部分及び下位部分を接続することができる。例示的に、テーパー状の部分は、約20°~約70°、例えば、約30°~約60°の角度を有し得る。一実施形態では、下位の狭い部分は、容器の全高の半分未満、例えば、容器の全高の約40%、約30%、約20%、又は約10%未満である。容器は、取り付けられた閉鎖装置を有し得る、又は閉鎖装置(例えば、キャップ)を受けるように装着することができ、容器を遠心分離前に密封することができる。特定の実施形態では、容器は、微生物ペレットが、手作業又は自動化された様式のいずれかで(技術者が容器内容物に曝露されないように)分離後に容器から容易に回収できるように設計される。例えば、容器は、ペレットを含有し、且つ容器の残りから分離され得る、除去可能な部分又は剥離部分を含み得る。別の実施形態では、容器は、シリンジ若しくは他のサンプリング装置の挿入のため、又はペレットを取り除くための、1つ以上のポート又は透過性表面など、分離後のペレットへの接近を可能にする1つ以上の構造を含む。一実施形態では、容器は、独立型容器、即ち、単一のサンプルを分離するための装置である。他の実施形態では、容器は、複数のサンプルを同時に分離できるように、2つ以上の遠心濃縮器を含む装置の一部である。一実施形態では、装置は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、12、15、20、25、30、36、42、48、60、72、84、96、又はそれ以上の遠心濃縮器を含む。
【0211】
別の実施形態では、分離は、サンプル(例えば、溶解サンプル)が、微生物を保持する孔径を有する選択フィルター又はフィルターセットが装着された装置内に配置される場合の濾過ステップによって実施することができる。濾過の他の例としては、限定はされないが、タンジェンシャルフローフィルトレーションが挙げられ、且つ/又は緩衝液交換により、微生物がサンプルから分離され、サンプルの体積が減少し、そして微生物が濃縮される。本明細書に記載の方法において用いられてもよい濾過技術の好適な例が、
図15~20に図示される。保持された微生物は、好適な緩衝液を、緩やかにフィルターを通過させることによって洗浄されてもよい。次に、洗浄された微生物は、フィルター上で直接的に調査されてもよく、且つ/又はフィルターの表面を直接的にサンプリングすることによって、若しくはフィルターを好適な水性緩衝液で逆流させることによって、調査のために回収されてもよい。
【0212】
一実施形態では、容器は、チューブ、例えば、遠心管であり得る。別の実施形態では、容器は、チップ又はカードであり得る。一実施形態では、発明者は、非微生物細胞の溶解及び微生物細胞の回収を単一チューブ内で実施することを可能にし得る、遠心濃縮器、並びにそれに関連する装置、システム、及び方法を開発している。さらに、微生物ペレットは、上清が単離され、遠心濃縮器の上位部分内に含まれるように、遠心濃縮器から生じさせることができる。具体的に、本明細書に記載の遠心濃縮器、並びにそれに関連する装置、システム、及び方法により、ユーザは、より少ない操作で、単一の遠心分離ステップのみで、微生物をサンプルから分離することができる。また、本明細書に記載の遠心濃縮器、並びにそれに関連する装置、システム、及び方法により、ユーザは、微生物のハンドリングをせずに、サンプルを分離し、試験し、ひいては極めて毒性の高い微生物のハンドリングに関連する健康及び安全上のリスクを回避することができる。
【0213】
図6A~6Fを参照すると、遠心濃縮器5010及び遠心濃縮器の要素の実施形態が図示される。一実施形態では、遠心濃縮器は、遠心分離によるサンプルからの微生物の濃縮のために設計された遠心管である。遠心濃縮器5010は、チューブ体6002、そしてチューブ体6002の近位末端6001に閉鎖キャップ6006を含む。一実施形態では、遠心分離中にチューブを保護するために設計された保護キャップ6004は、チューブ体6002の遠位末端6005に配置されてもよい。一実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液及びサンプル(例えば、全血サンプル)は、キャップ6006を取り外した後、チューブ体6002に添加されてもよく;内容物は、キャップ6006を交換することによって、その中に密封されてもよい。例示的に、遠心濃縮器5010の遠位6005末端及び近位6001末端は、推定上のバイオハザード材料の放出を阻止するため、動作中に密封されるが、以下により詳細に説明される通り、チューブ体6002の遠位末端6005は、ペレット化された微生物の濃縮器からの排出を可能にするように、選択的に開放可能であってもよい。
【0214】
例示的な実施形態では、遠心濃縮器5010は、プランジャー6008を含む。プランジャー6008は、限定はされないが、遠心濃縮器5010の遠位末端又はその近傍で濃縮(例えば、ペレット化)された微生物を収集すること、遠心濃縮器5010の遠位末端6005を開口すること、及びペレット化された微生物を遠心濃縮器5010の遠位末端6005から排出することなどのいくつかの機能を果たすように設計されてもよい。濃縮器の遠位末端6005の開口及び微生物ペレットの排出は、
図6D及び
図6Eに関連して、以下により詳細に考察されることになる。一実施形態では、プランジャー6008は、プランジャー6008の手動操作のために設計された拡大部分6009を含む近位末端6024を有する。例えば、拡大部分6009は、プランジャー6008を作動させ、ペレットを排出するため、ユーザの手の親指、手指、若しくは別の部分、又は機械的装置によって操作されてもよい。例えば、プランジャー6008は、プランジャーを作動させ、ペレットを排出するため、ユーザの親指によって押し込まれてもよい。別の実施形態では、プランジャー6008は、異なる様式で、例えば、ねじ状のスクリュー部分に沿って回転させ、プランジャー6008を下げて、遠心濃縮器を貫通させることによって作動される。例示的な実施形態では、プランジャー6008は、プランジャーを、第1の方向の固定された「上位」位置に保つ、また第2の方向の「プランジ」位置に保つために設計された保持メンバー6026の対を含む。一実施形態では、保持メンバー6026は、キャップ6006上の戻り止め6030の対応する対と相互作用することで、プランジャーを固定された「上位」位置に保つ。例示的な実施形態では、プランジするため、拡大部分6009を把持して使用し、キャップに対してプランジャーをねじることで、保持メンバー6026を通路6032と合わせる。一実施形態では、通路6032は、プランジャー6008を押し込み、微生物ペレットを遠心濃縮器の遠位末端6005から排出することを可能にするように設計される。
【0215】
一実施形態では、遠心濃縮器5010は、本質的に、ディファレンシャル溶解緩衝液及びサンプルを保持するのに十分な任意の体積を有してもよい。一実施形態では、遠心濃縮器5010は、遠心ローターに適合し、又はそれに適合され得る。例示的に、遠心濃縮器5010の体積は、約0.1ml~約100mlであり得る。具体的な実施形態では、遠心濃縮器5010は、標準の50mlのコニカル遠心管に類似する形状及び内部体積を有し、50mlのコニカル遠心管に適合するように設計された遠心ローター(固定された角度及びスイングバケット)に適合性がある。一実施形態では、ディファレンシャル溶解緩衝液6003は、遠心濃縮器5010内に提供される。例えば、任意選択的に、約20~40ml(例えば、約30ml)の本明細書に記載のディファレンシャル溶解緩衝液が、遠心濃縮器5010内に提供されてもよい。遠心濃縮器5010がディファレンシャル溶解緩衝液6003を含んでもよい一方で、例示的に、遠心濃縮器は、ディファレンシャル溶解緩衝液が遠心濃縮器5010内に提供されるか否かにかかわらず、高密度クッションが提供されなくてもよい。一実施形態では、遠心濃縮器5010のキャップ6006は、任意選択的に、サンプル(例えば、全血サンプル)が、閉鎖キャップ6006を取り除く必要がなく、遠心濃縮器5010に添加されることを可能にし得る隔壁6007(例えば、ゴム隔壁)又は類似構造を含んでもよい。これは、ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心濃縮器とともに使用されることが意図されるサンプルの多くが、バイオハザード性及び/又は感染性を有し得ると仮定すれば、特に有用であり得る。いくつかの実施形態では、サンプルは、ディファレンシャル溶解緩衝液と混合され、遠心濃縮器に隔壁6007を通じて無菌的に充填される。これにより、分析前のサンプルの潜在的な汚染が低減される。
【0216】
図6Bは、遠心濃縮器5010の別の図面を示す。
図6Bを考慮して、ペレット収集リザーバー(
図6D中のペレット収集リザーバー6014)をキャップする内部支持キャップ6010を示すため、外部保護キャップ6004は、チューブ体6002の遠位末端から除かれている。外部保護キャップ6004に加えて、内部支持キャップ6010は、チューブ体6002の遠位末端6005を保護し、例えば、特に遠心分離中の貯蔵又は使用におけるチューブからの漏出を阻止することができる。いくつかの実施形態では、支持キャップ6010は、除かれてもよい。また、遠位保護キャップ6004の除去は、特に遠心分離中、チューブ体6002の遠位末端6005を補強及び保護するために含めることができる支持リブ6012を示す。支持リブ6012は、いくつかの実施形態において、取り除かれてもよい。例えば、特別に設計された遠心機バケットインサートは、おそらくは支持リブ6012は取り除かれて、チューブ体6002の遠位部分を支持するように設計されてもよい。
【0217】
図6Cは、閉鎖キャップ6006がチューブ体6002にいかに取り付けられるかを図示するため、閉鎖キャップ6006が除かれること以外では、
図6Bと類似する遠心濃縮器5010の図面を示す。例示的な実施形態では、チューブ体6002の近位末端6001は、閉鎖キャップ6006がチューブ体6002に螺合されることを可能にするスレッド6011を含む。しかし、スレッド6011は、単に例示的である。スレッド6011であれば、同一又は類似機能を果たすため、当該技術分野で知られる任意の構造と交換することができる。例えば、閉鎖キャップ6006であれば、チューブ体6002上又はキャップ6006上のバヨネットマウント、摩擦配置、oリングアセンブリなどによって、チューブ体6002に密封することができる。
【0218】
ここで
図6D~
図6Fを参照すると、チューブ体6002の遠位末端6005の詳細及びプランジャー6008が微生物ペレットをいかにして排出し得るかが図示される。例示的な実施形態では、チューブ体6002の遠位末端6005は、ペレット収集リザーバー6014を含む。参考までに、ペレット収集リザーバー6014は、
図6B及び
図6C中の支持キャップ6010によってカバーされることが示された。本明細書中の他の箇所でより詳細に考察される通り、いくつかの実施形態では、遠心濃縮器5010は、微生物が(固定角遠心ローターの場合に典型的である、側壁上と異なり)チューブの底部でペレット化されるようなスイングバケット遠心機で遠心分離されるように設計される。したがって、サンプル中の非溶解微生物の実質的に全てが、ペレット収集リザーバー6014内でペレット化できる必要がある。一実施形態では、サンプル中の微生物の少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%が、ペレット収集リザーバー6014内でペレット化可能である。一実施形態では、ペレット収集リザーバー6014は、実質的に全ての微生物ペレット(例えば、約500μl、約400μl、約300μl、約200μl、20~200μl、40~150μl、又は約50~100μl以下)を含むように、サイジング及び設計されてもよい。いくつかの実施形態では、チューブ体6002は、微生物をペレット収集リザーバー6014に注ぐために設計された、傾斜のある内部側壁6015を含んでもよい(
図6E及び
図6Fを参照されたい)。
【0219】
いくつかの実施形態では、ペレット収集リザーバー6014は、プランジャー6008の一部がペレット収集リザーバー6014を通じて押し込まれ、微生物ペレットを排出することを可能にするように設計された分離末端6016を含んでもよい。分離末端の好適な例としては、限定はされないが、より薄い成形部分、壊れやすい領域を有するより薄い成形部分、箔キャップなどが挙げられる。
【0220】
図6E及び
図6Fを具体的に参照すると、いかにプランジャー6008がペレットリザーバー6014を貫通し、微生物ペレットをチューブ体6002の遠位末端6005から排出するかの詳細が示される。プランジャー6008及びペレットリザーバー6014は、微生物ペレットが、チューブ体内の使用済みのライセートを単離しながら、ペレットリザーバーから排出され得るように設計される。プランジャー6008は、微生物ペレットを収集するため、またペレットリザーバー6014の末端6016(例えば、固定された箔キャップ、又は壊れやすい分離部分)を貫通させるために設計された、チップ6022を有する遠位部分6030を含む。例示的な実施形態では、チップ6022は、ペレットリザーバー6014の末端6016を貫通できる、鋭いエッジ6023の形状をしたシャベルである。チップ6022が例示的な実施形態においてシャベル形状で示される一方で、他の好適な形状として、限定はされないが、ブレード形状、平滑末端、スパイク末端などが挙げられる。ペレットリザーバー6014の末端が貫通され、微生物ペレットが排出されるとき、使用済みのライセートが漏出し、ペレットを希釈することのないように、使用済みの単離物がチューブ体内に残存することが望ましい。いくつかの実施形態では、使用済みのライセートは、潜在的に感染性又はバイオハザード性の材料を含有することがあり、そういう理由で、使用済みのライセートを含有することは、重要な安全性の特徴である。プランジャー6008の遠位末端6030の近傍に、一実施形態では、ペレットリザーバー6014の内部部分6020と接続されるようにサイジング及び設計された部分6018が存在する。この実施形態では、プランジャー6008の部分6018とペレットリザーバー6014の内部部分6020との間のインターフェースは、チューブ体6002において使用済みのライセートを単離するシールを作成する。また、インターフェースは、微生物ペレットが効率的に収集され、排出されることを保証し得る。6018と6020との間のインターフェースが摩擦適合として示される一方で、部分6018又は部分6020は、例えば、チューブ体6002において使用済みのライセートを単離するシールを作成するためのoリング又は類似構造を含んでもよい。いくつかの実施形態では、プランジャー6008を作動することにより、加圧下で遠心濃縮器の遠位末端からペレットが、分離末端6016を開放することによって排出される。この実施形態では、プランジャーが押し込まれるとき、部分6018とペレットリザーバー6014の内部部分6020との間のインターフェースは、分離末端6016が貫通されるまで、空洞内の圧力増加を引き起こし、結果として、微生物ペレットがペレットリザーバー6014から排出される。これは、圧力により、微生物がペレットリザーバーの側面上に保持されることになる機会が減少することから、微生物のより大規模な回収の原因になり得る。
【0221】
ここで
図6Gを参照すると、プランジャー6008は、単独で示される。プランジャー6008は、本明細書中の別の箇所で考察される、近位末端6024、遠位末端6030、保持メンバー6026、部分6018、及びシャベルチップ6022を含む。プランジャー6008は、一実施形態において、プランジャーが押し込まれるとき、それがチューブ体6002の末端を貫通し、微生物ペレットを排出し得る程度に十分に長い(例えば、チューブ体6002と実質的に同じ長さである)ようにサイジングされた、プランジャーシャフト6028を含む。さらに、シャフトは、任意選択的に、キャップ6006と接続し、キャップとプランジャーとの間のインターフェースを密封するように設計されてもよい、oリング6027又は類似構造を含んでもよい。当然ながら、キャップはまた、oリング6027の代わりに、又はそれに加えて、シーリングメンバーを含んでもよい。遠心濃縮器5010が単に例示的であることが理解される。上で考察された遠心濃縮器5010及びその変形、並びに他の容器は、本明細書で開示される様々な方法とともに用いられてもよい。
【0222】
調査ステップ
一旦微生物がペレット化されていると、ペレットを調査し、ペレット中の微生物を同定し、且つ/又は特徴づけることができる。一実施形態では、調査は、非侵襲的様式で、即ち、ペレットが調査される一方で、遠心濃縮器内に残るように行ってもよい。任意選択的に、分離及び同定プロセス全体を通じて容器の密封性を保つことと、手順の一部又は全部を自動化することと連携して、非侵襲的様式で微生物を同定できることは、汚染性及び/又は感染性サンプルの恒常的なハンドリングを回避し、全プロセスの安全性を大幅に増加させる。
【0223】
別の実施形態では、ペレットは、サンプル中に存在し得る微生物のタイプのそれぞれを個別に同定するために使用可能である、微生物RNA又はDNAの配列を増幅するための分子的技術(例えば、PCR)を用いて調査することができる。一例では、サンプル中に存在し得る、細菌、真菌などの個別タイプのそれぞれについて特徴的である核酸配列が選択されてもよく、フォワード及びリバースプライマーがそれら配列の増幅用に設計されてもよく、ペレット中の微生物が溶解されてもよく、そしてライセート(又はライセートから精製された核酸)がプライマー及び他のPCR試薬(緩衝液、ポリメラーゼなど)と組み合わされてもよく、それにより選択された特徴的な核酸配列は、当該技術分野で周知の手順に従って増幅されてもよい。増幅された核酸を検出及び使用し、サンプル中の1つ以上の微生物の存在を、限定はされないが、当該技術分野で公知である通り、リアルタイム検出又は融解曲線分析などの増幅後分析、蛍光標識、放射活性標識、化学発光標識、酵素標識される他のdsDNA結合色素技術及びプローブなどの当該技術分野で周知の手順に従って同定することができる。一実施形態では、ペレットは、本明細書中の他の箇所で詳述されるFilmArrayシステムを用いて調査することができる。一実施形態では、ペレットは、特別に適応された血液培養同定(BCID)パネルポーチ及びプロトコルを用いて調査することができる。BCIDパネル及びプロトコルは、米国特許第10,053,726号明細書(その全体は参照により本明細書に組み込まれる)に記載されている。しかし、BCIDは、単にアッセイ装置の一例である。当業者は、好適に、例えば、血液から直接的に得られるサンプル中の生物の濃度に好適に適応した感度及び検出限界値を有する、特別に設計されたアッセイを用いて、ペレットを調査することができることを理解するであろう。
【0224】
別の実施形態では、ペレットは、ペレット中に存在する核酸を配列決定することによって調査することができる。特徴的な微生物配列又は全微生物ゲノムの配列決定を用いて、ペレット中の微生物を同定することができる。そのような配列決定は、当該技術分野で公知の多くの配列決定技術の1つ以上に従って実施されてもよい。一実施形態では、配列決定は、サンガー配列決定である。別の好ましい実施形態では、配列決定は、大規模並列又は「次世代」配列決定(NGS)技術を含む。大規模並列/NGS技術では、数十万~数百万のDNA断片が並列に処理され、単一の配列決定の実行における、生成された配列の1塩基あたりの低いコスト、及びギガベース(Gb)からテラベース(Tb)の規模に対するスループットがもたらされる。結果として、大規模並列/NGS技術を用いて、全ゲノムの特徴を低コスト及びハイスループットで定めることができる。
【実施例】
【0225】
実施例1-全血からの直接的な微生物の検出
本明細書に記載のディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心濃縮器は、全血からの直接的な微生物の検出のため、使用することができる。例えば、これを用いて、敗血症を引き起こす微生物を迅速に同定することができ、検出前に血液サンプルを前培養し、疾患を引き起こす生物を増幅するステップを伴わない。しかし、本明細書中の別の箇所で考察の通り、全血からの直接的なそのような検出及び診断が、いくつかの理由で困難であることが判明している。1つとして、BSIにおける全血中に見出される感染性生物の数は、通常低く(血液1mLあたり約1~100コロニー形成単位(cfu/ml)であり、培養で確認された敗血症を有するほとんどの個体において、約1~10cfu/mlが典型的である)、そして血液は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)のいくつかの阻害剤(例えば、微生物と同時精製し、標的微生物からの核酸回収及び下流PCRの双方に干渉し得る、ヘモグロビン及び白血球由来のゲノムDNA)を含有する。
【0226】
全血中の非常に少ない生物及びPCR阻害剤の存在により、より大量の全血(例えば、1~20mL)からの濃縮は、臨床的に関連する微生物レベルでの感度を達成するのに所望されるDNA鋳型の品質及び量を得ることが所望される。一実施形態では、本明細書に記載のディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心濃縮器は、技術者が、非微生物細胞を約1~20mL(例えば、約10ml)の全血に溶解し、約5~20分(例えば、約15分)以内の遠心分離によって、その中の微生物を濃縮することを可能にする。例示的に、サンプルの溶解は、DNaseステップを含まず、遠心濃縮器では、高密度クッションが使用されない。これにより、サンプルの調製が、より迅速でより容易になり、且つ再現性が高まる。
【0227】
本明細書に記載の遠心濃縮器から得られる微生物ペレットは、サンプルを分子アッセイ装置に注入するために使用可能であるサンプルバイアルに直接的に排出することができる。具体的な例では、遠心濃縮器から得られた微生物ペレットは、(米国特許第10,464,060号明細書(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載の)FilmArrayインジェクションバイアル(FAIV)に、次にFilmArrayポーチに直接的に排出することができる。一実施形態では、FAIVを用いて、遠心濃縮器から得られた微生物を、サンプル中の微生物の同定のため、血液培養同定(BCID)パネルポーチに直接的に注入することができる。現在、BCIDパネルアッセイは、実施に約60分かかる。BCIDパネルアッセイ及びプロトコルについては、米国特許第10,053,726号明細書(上記の通り、その全体が組み込まれた)に記載されている。この場合における発明者は、ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心濃縮器をBCIDパネルアッセイ及び特別に改良された装置プロトコルと連携して使用し、約1~10cfu/mlの検出限界、並びに全体で約75分のサンプル調製及び分析時間を達成している。しかし、化学反応及び装置性能がさらに改善されると、分析時間を有意に減少させることができる可能性は高い。
【0228】
ここで
図7を参照すると、サンプル調製ワークフローの例を図示する。第1ステップ700では、血液サンプル及び遠心濃縮器を提供する。一例では、約10mlの体積を有し得る血液サンプルを、標準のバキュテナー内に提供する。一例では、遠心濃縮器は、その中にディファレンシャル溶解緩衝液をある体積(例えば、約30ml)で提供してもよい。
【0229】
第2ステップ702では、表1の血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液は、サンプル中の非微生物細胞の実質的に全て(即ち、血液細胞の全て)を溶解し、ライセートを得るのに十分な時間かけて組み合わせた。例えば、血液サンプル及びディファレンシャル溶解緩衝液は、約1~5分間かけて組み合わせてもよいが、より長い時間又はより短い時間を用いてもよい。例示的に、溶解は、約2℃~約45℃、例えば、約15℃~約40℃、例えば、約30℃~約40℃の温度で行うことができる。一実施形態では、溶解は、室温で行ってもよい。
【0230】
血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と、ライセートを得るのに十分な時間かけて組み合わせた後、ステップ704において、微生物を、存在する場合、遠心分離によってライセートから回収してもよい。本発明の一実施形態では、遠心濃縮器は、微生物がペレットをチューブの側面で直接的に形成するように、スインギングバケットローターで遠心分離してもよい。容器は、微生物がペレット化し、且つ/又はサンプルの他の成分から分離されるように、十分な加速で、そして十分な時間かけて遠心分離する。一実施形態では、遠心分離時間は、約30秒~約30分、例えば、約10~15分であり得る。例示的に、遠心加速は、約1,000×g~約20,000×g、例えば、約3000~10,000×gであり得る。例示的に、遠心分離は、約2℃~約45℃、例えば、約4~8℃の温度で実施することができる。
【0231】
遠心濃縮器が任意選択的な遠位支持キャップを含む場合、ステップ706で例示される通り、支持キャップは、プランジング前に取り除いてもよい。ステップ708~712は、微生物ペレットを遠心濃縮器から排出するためのプロセス例を図示する。ステップ708では、プランジの開始時に、プランジャーの遠位末端は、ペレットリザーバーに移動し、ペレットを上清から単離することができる。このことは、本明細書で既に考察した、
図6Eに図示した。プランジャーがさらにペレットリザーバーに押し込まれると、ペレットリザーバーの分離末端は、穿刺、分離、破砕などを受け得るとともに、ステップ710で図示の通り、ペレットは、排出が開始され得る。ワークフローにおけるステップ712は、ペレットが遠心濃縮器から完全に排出されていることを示す。排出されたペレットは、ペレット中の微生物を特徴づけ、同定するため、当該技術分野で公知のいくつかのアッセイにおいて使用することができる。本明細書で既に考察した通り、PCR分析及び配列決定は、ペレット中の微生物を特徴づけ、同定するために使用可能であるアッセイの2つの非限定例である。
【0232】
714で図示の通り、一実施形態では、遠心濃縮器の遠位末端は、容器に直接的に適合するようにサイジング及び設計してもよい。一実施形態では、容器は、FilmArrayインジェクションバイアル(FAIV)である。そのようなことから、ペレット中の微生物の特徴づけ及び同定のため、ペレットを直接的にFAIVに排出することができ;次にFAIVを用いて、サンプルをFilmArrayアッセイポーチに注入することができる。一実施形態では、ペレットをFAIVに直接的に排出してもよく、そしてFAIVを用いて、微生物をFilmArrayポーチに、FAIVを遠心濃縮器から離すことなく、注入してもよい。FAIVを用いて、サンプルをFilmArrayポーチに充填した後、全アセンブリをバイオハザード廃棄物容器内に処分してもよい。これにより、潜在的に感染性のある生物及び潜在的にバイオハザード性の廃棄物のハンドリングが低減され、汚染のリスクが制限される。
【0233】
一実施形態では、一定分量(例えば、約1ml)の元のサンプルを、ステップ712で排出されたペレットに、ペレットとともにステップ714のバイアルに、又は直接的にペレットとともに分析装置に添加してもよい。本明細書に記載の溶解及び遠心分離方法(及び関連する方法)は、細菌及び酵母のような微生物の濃縮及び検出に十分に適しているが、特にウイルスの検出に適していない。一定分量の元のサンプルをペレットに、そして分析に添加することによって、ウイルスも単離及び検出することができる。
【0234】
本発明の一態様では、方法ステップの一部又は全部は、自動化することができる。方法のステップを自動化することにより、より多数のサンプルをより効率的に試験することが可能になり、有害微生物及び/又は感染性微生物を含有し得るハンドリングサンプルにおけるヒューマンエラーのリスクが低下する。しかし、より重要なことに、自動化により、決定的結果を、昼夜を問わずいつでも遅延なく得ることができる。いくつかの試験では、敗血症を引き起こす生物のより迅速な同定が、患者ケアの改善、入院の短縮化及びより低い全体コストと相関することを示している。
【0235】
ここで
図8を参照すると、ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心分離を用いる、本明細書に記載の方法におけるサンプル調製時間を他の方法と比較する。
図8から明らかであるように、サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせる方法とそれに続く遠心分離方法は、専ら2つのステップ及び全体で約15分の処理時間を含む。これは、この場合に発明者によって試験される他の方法よりも有意に迅速且つ容易である。本文書の導入セクションにおいて考察されるMolYsisの方法は、DNaseステップを含むいくつかの複雑なステップを含み、真核細胞溶解、DNase処理、及び微生物細胞回収だけで約45~50分かかる。微生物細胞の洗浄及び溶解は、さらなるステップ及び緩衝液を必要とする。SuccessfuluseoftheMolYsisシステムの使用の成功には、熟練した専門家が必要である。オペレーターの技能に依存することで、結果の収率及び品質におけるオペレーター間差異のリスクが生じる。多くの緩衝液及びマニュアルピペッティングステップが、サンプルの相互汚染のリスクを増加させる。サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と組み合わせるステップとそれに続く遠心分離は、DNaseステップを含む、それらのステップの多くを必要としないばかりか、洗浄ステップの多くを必要としない。本明細書に記載の方法では、遠心分離後に回収される微生物細胞は、さらなる処理を伴わない、遠心分離後の分子的分析(例えば、PCRアッセイ、DNA配列決定、又は質量分析)に適する。
【0236】
また、
図8は、ディファレンシャル溶解及び遠心分離方法のサンプル調製時間を2つの他のプロトコルと比較する。Y2プロトコルは、プロテアーゼ及びDNase消化ステップと組み合わせたサポニンベースの溶解を用いる手順である。Y2プロトコルは、いくつかの複雑なステップ及びサンプル調製用の約90分を必要とした。Lycoll+DNaseプロトコルは、DNase消化及び遠心分離におけるフィコール密度勾配と組み合わせたサポニンベースの溶解を用いる手順である。Lycollの手順は、良好な生物の収率をもたらし、ゲノムDNAを有効に除去したが、フィコール密度勾配でのライセートの複雑な層形成及び約2時間の処理時間を含んだ。ディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離を用いる、本明細書で特許請求される方法と比較して、Y2プロトコル及びLycoll+DNaseの手順は、双方ともに複雑なステップ及び過剰な時間を含む。同じことが、ディファレンシャル溶解及び遠心分離方法とMolYsisの方法との比較にあてはまる。
【0237】
図9は、サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離で処理することによって達成され得る、1つの実験セットにおける微生物回収を図示する。対照は、添加される緩衝液であり、試験サンプルは、添加される全血である。対照及び試験サンプルは、同じ数の生物とともに添加した。対照では、添加された生物を緩衝液から遠心分離によって回収する能力を試験する一方で、試験サンプルでは、真核細胞(即ち、RBC、白血球、血小板など)の溶解及び添加された微生物細胞のライセートからの遠心分離による回収におけるディファレンシャル溶解緩衝液の有効性を実証する。対照と比較して、この実験において、添加された血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離で処理することを含む方法により、微生物の約86%が全血サンプルから回収され得る。表2に例示の通り、回収率は、他の実験において、90%を超え得る。
【0238】
【0239】
好ましい実施形態では、ディファレンシャル溶解及びその後の遠心分離による微生物の回収率は、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも99%又は100%であり得る。
【0240】
また、血液サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離で処理することにより、ゲノムDNAが効率的に除去され、全てがDNaseステップ又は他の複雑な若しくは時間のかかる処理ステップを含まない。下の表3は、ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心分離で達成された全血からのゲノムDNA除去の程度を、Lycoll及びLycoll+DNaseの方法に対して比較している。全血対照は、溶解された全血サンプルから回収されたゲノムDNAの量を表す。DNAをMagnaPureシステムで精製し、ThermoFisher QuantifilerヒトDNA定量キットを用いて定量化した。
【0241】
【0242】
表3から明らかであるように、ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心分離処理で回収されるゲノムDNAの量は、Lycollの方法より有意に良好であり、Lycoll+DNaseの方法と同等である。ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心分離処理は、Lycoll又はLycoll+DNaseの方法よりも有意に迅速であり、容易であり、そして再現性が高く、ディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心分離処理では、時間のかかるDNaseステップを伴わずに、見事なゲノムDNAの減少が達成される。
【0243】
これは、ディファレンシャル溶解緩衝液での血液の処理後、遠心分離によってペレット化可能な全血材料の存在下での種々の量の酵母対照の増幅におけるクロッシングポイント(Cp)値を比較する、
図10においてやや異なる形で実証する。この場合、ディファレンシャル溶解緩衝液(●アルカリ性)を、Lycollの方法(
*Lycoll)と比較した。ディファレンシャル溶解緩衝液実験の場合、10mLの全血に、1、10、又は100CFU/mLの酵母対照を添加し、次に本明細書に記載のように、ディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離を用いて処理した。得られたペレットをFAIVに移し、FilmArray BCIDポーチでサンプルを実行した。Lycol実験を、10mlの添加した全血をLycollの方法を用いて処理した点を除いて同様に実行した。CFU対照(■)は、種々の量の酵母DNAにおける任意の全血材料の不在下でのCpを表す。異なる酵母のCFU量を、PBSで希釈し、ディファレンシャル溶解緩衝液及びLycollの手順に使用される10mLの添加全血から生物の100%濃度に等しいレベルで、FAIVにピペッティングした(全血中1CFU/mL=10CFU対照をFAIVに)。WB対照(□)は、非濃縮全血である。WB対照の場合、添加全血の200μLを、ディファレンシャル溶解緩衝液及びLycollの手順に使用される10mLの添加全血から生物の100%濃度に等しいレベルで、FAIVにピペッティングし、生物の初期LoD/Cp値を示した後、濃縮プロトコルを行った。
図10において明らかなように、Lycollペレットの存在下での酵母DNAの増幅は、CFU及びWB対照と比較して、約3Cp単位分遅延した。それに対し、ディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離を用いて得られたペレットから、検出可能な阻害は認められなかった。即ち、ディファレンシャル溶解緩衝液から得られたペレットの存在下での酵母DNAの増幅は、CFU及びWB対照と実質的に区別がつかない。Lycollペレット中のCpの増加が、添加酵母生物とともに、ペレット中に濃縮されている高レベルのhgDNAに起因するように思われる。hgDNAは、DNA回収における公知の、磁気シリカビーズとの競合的阻害剤及びPCRの非特異的阻害剤である。表3に示されるデータに基づき、またこれらのデータに基づき、itisconcludedthatディファレンシャル溶解緩衝液から得られたペレットが、ペレット中にそのように多いhgDNAを有せず、結果として、全血対照の場合に、又はマトリックスを全く有しないCFU対照の場合であっても、より類似する酵母DNAのCpを有する。
【0244】
ここで
図11を参照すると、種々の量のCAPS及びBrijO10を有する異なるディファレンシャル溶解緩衝液製剤(LB18-LB21)についてのデータを提示する。溶解緩衝液試験の場合、10mlの全血サンプルに、大腸菌(E.Coli)、腸内細菌、又は酵母を添加し、本明細書に記載の方法に従い、指定のディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心分離処理を用いてサンプルを処理した。
図10に記載の通り、得られたペレットをFAIVに移し、FilmArray BCIDポーチでサンプルを実行した。WB対照は、
図10に記載されたものと同じであった。
図11に提示するデータは、ディファレンシャル溶解緩衝液が、宿主細胞(即ち、RBC、白血球、血小板など)及び宿主細胞の核を効率的に溶解する一方で、微生物細胞を無傷で遠心分離によってペレット化可能な状態にすることを示す。
【0245】
本明細書で開示されるディファレンシャル溶解緩衝液を用いて、サンプル処理は、2つの単純なステップのみを含み、処理時間は、約15分まで低減され得る。他の方法において一般的であるDNaseステップは、核膜の有効な破壊が理由で、除かれてもよい。ディファレンシャル溶解緩衝液及びその後の遠心分離によって得られるペレットの体積は、好適に、<200μLであってもよい。BrijO10及びCAPSは、数秒又は数分以内に血球を完全に溶解した。実施例1で示された通り、この緩衝液は、扱いやすく、それ故、結果は、再現性がより高いことが求められる(
図8)。微生物細胞を全血から迅速に濃縮することができ(
図8)、サンプル中の微生物細胞を高い割合で回収することができ(
図9及び表2)、ヒトゲノムDNAを微生物ペレットから減少させることができ(
図10及び表3)、そして宿主細胞及び宿主細胞の核を有効に溶解する一方で、微生物細胞を無傷で遠心分離によって回収可能な状態にすることができる(
図11)。
【0246】
実施例2-低い添加レベル(<1CFU/mL)での種による微生物回収
先の実施例では、本明細書に記載のディファレンシャル溶解緩衝液及び遠心濃縮器が、血液因子全部の溶解、微生物細胞の回収、次いで微生物の検出に使用可能であることが示された。本実施例は、実施例1に対して発展させ、添加全血から低いレベル(即ち、<1CFU/mL)で微生物を回収し、同定する能力について示す。血流感染(即ち、敗血症)の大部分の症例において、全血中の臨床的に関連する微生物レベルは、<約1CFU/mLから最大で約10CFU/mLに及ぶ。本実施例はまた、種ごとを基本に臨床的に関連するレベルで微生物を回収し、同定する能力について示す。
【0247】
本明細書に記載の血液処理方法から直接的に得られるものは、生物をライセートから回収するため、ペレットを溶解するステップ、遠心分離するステップ、及び排出するステップを有する複雑でないワークフローである。本実施例において、全血サンプルをディファレンシャル溶解緩衝液と混合し、溶解を約5分間進行させておき、ライセートを約3000×gで約30分間遠心分離し、微生物を回収した。本実施例で使用した溶解緩衝液を表4に示す。
【0248】
【0249】
包括的試験パネルは、最も一般的に、血流感染物から単離された細菌及び酵母の12種からの120の生物株を含んだ。収集された生物は、生存度を維持するだけでなく、血液デブリ及び汚染宿主DNAを低下したレベルで有し、成長に基づく分析と分子的分析の双方の様々な下流適用への入力としての潜在的使用を促進する。
【0250】
図12は、この試験で用いられるワークフローを図示する。ステップ(a)及び(b)では、適切な濃度(例えば、約100CFU/ml)の生物ストックは、生物ストックを所望の濃度が得られるまで連続希釈し、蒔くことによって得ることができる。濃度は、保存液を寒天プレート上に蒔き、個々のコロニーをプレート上で成長させることによって検証することができる。例えば、100CFU/mlのストック50μLを蒔く場合、5コロニー/プレートを得る必要がある。ストック生物溶液は、数回希釈して蒔くことで、所望の濃度を得ることができる。ステップ(c)では、ストック生物溶液(例えば、約100CFU/mL)を全血に添加した。
図12に図示の例では、150μLの生物ストックを、30mLの全血に添加した。生物を<1CFU/mLの濃度で添加することが望まれた。
図12に示す例では、標的添加濃度は、0.5CFU/mLであった。以下により詳細に説明する通り、添加は、グラム陰性生物、グラム陽性生物、及び酵母生物の間で変化した。添加全血を3つの10mL画分に分割し、遠心濃縮器内で20mLのLB100緩衝液と組み合わせ、室温で5分間溶解させておいた。ステップ(d)~(f)。
図12に図示する具体的な例では、血液及び溶解緩衝液を、遠心濃縮器のチューブ内で10回反転させ、RTで5分間インキュベートし、約5秒間ボルテックスし、次に3000×gで30分間、スイングバケット遠心ローターで遠心分離した。
【0251】
遠心分離後、遠心濃縮器からのペレットを、500μLのTSB(トリプトソイブロス)に排出し(ステップ(g))、100μLを、5つの寒天プレートのそれぞれに蒔いた(ステップ(h))。プレートを、37℃で24時間インキュベートし(ステップ(i))、5つのプレートからのCFUを添加し、全回収率を得た(ステップ(j))。本実施例において、プレーティング及び培養を生物の検出のために用いる一方で、種々の異なるタイプの検出のため、ワークフローを用いることができた。例えば、限定はされないが、PCR(例えば、本明細書で詳細に考察される通り、FilmArrayシステムによる)、全ゲノム配列決定、又は分子ASTなどの分子検出技術を用いることができた。表現型(例えば、Vitek2 AST)、プロテオミクス(例えば、maldi-TOF、Vitek MSなど)、及び顕微鏡技術を用いて、遠心濃縮器から得られるペレットを調査してもよい。
【0252】
この研究試験の結果を以下にまとめる。
【0253】
グラム陰性、グラム陽性、及び酵母といった全ての生物におけるパーセント回収率を、下の表5に示す。この試験における平均全回収率は、80%であり、それは>70%の標的目標を超えた。
【0254】
【0255】
図13は、生物による回収率の中で、一部可変性が認められたが、全ての生物を回収及び培養できたことを図示する。
図13において明らかなように、肺炎球菌(S.pneumoniae)株の回収率が、この試験において低かった。グラム陽性種の回収率は、肺炎球菌(S.pneumoniae)株が除外されると、95%に上昇し、全回収率が84%に上昇する。さらなる方法の最適化、例えば、pH、接触時間、補充により、この種の回収率が改善され得る。肺炎球菌(S.pneumoniae)株が、溶解緩衝液からの回収後、(他の生物と比較して)生存可能性がより低いことや、生存可能生物に依存しない検出技術(例えば、分子的技術)が検出に使用された場合、それらの見かけ上低い相対回収率が上昇したことも考えられる。
【0256】
全ての生物、グラム陰性、グラム陽性、及び酵母におけるCFUによるパーセント回収率を、下の表6に示す。
【0257】
【0258】
全ての生物における測定された入力接種レベルは、5CFU/10mLの標的よりやや高かった。にもかかわらず、全血から<1CFU/mLの回収及び検出を達成する目標の全てが満たされた。
図14は、生物ごとに基づく表6のデータを展開したものである。
【0259】
表7(下記)は、汚染宿主DNAの減少を示す。
【0260】
【0261】
宿主DNAの平均で99.7%の減少が、排出ペレット中の宿主DNAに対するライセート中の血液10mLの入力DNA濃度から計算された。示される範囲は、15の異なる血液ドナー及び試験日にわたる変動を反映する。
【0262】
包括的な生物のパネルの場合、この試験は、全血からの低い添加レベル(即ち、<1CFU/mL)での回収率を示した。この試験における回収及び検出感度は、従来の血液培養物の感度と同等である(4~8CFU/10mL)。CAPS-Brij溶解緩衝液は、ヒト血球膜、RBC及びWBCを溶解及び可溶化する。CAPS-Brij溶解緩衝液はまた、排出ペレット中の血球細片及びDNAを減少させた。その処理方法により、生存可能な生物が濃縮及び収集され、血液デブリ及び宿主DNAのレベルが有意に低下し、複数の迅速な診断経路にとって潜在的に好適なサンプルが提供される。
【0263】
実施例3-全血の溶解及び回収後の微生物細胞の培養
本実施例において、異なるディファレンシャル溶解緩衝液組成物を、FilmArray BCIDアッセイポーチ内での検出のため、比較した。この比較において、C.アルビカンス(C.albicans)、大腸菌(E.Coli)、及びS.アガラクチア(S.agalactiae)といった3つの生物のみを使用した。この試験では、ACD(抗凝固剤のクエン酸デキストロース)抗凝固剤の血液を使用した。この試験は、(1)本願に記載されるディファレンシャル溶解緩衝液/遠心分離の手順により、細胞を濃縮し、全ての緩衝液組成物及び生物を試験することができること、そして(2)遠心分離後の培養により、血液及び溶解緩衝液から単離された生物の細胞を濃縮し、全ての選択的溶解緩衝液組成物を試験できることを示す。試験される全ての選択的溶解緩衝液は、微生物細胞を無傷及び生存可能な状態にする一方で、血球を溶解することができる。
【0264】
試験される緩衝液を、下の表8に列記する。
【0265】
【0266】
LB20は、表1に列記される緩衝液であり、実施例2に記載の試験において使用した緩衝液である。
【0267】
表9中のデータは、アルカリ溶解/遠心分離方法のクロッシングポイント(Cp)における非濃縮の添加全血に対する改善を示す。Cpの改善は、PCRに干渉する物質(例えば、ヘモグロビン)の除去及びサンプル中の細胞の濃縮に起因する可能性が高い。
【0268】
【0269】
緩衝液LB16、LB19、及びLB20の場合、見かけ上の濃縮は、約8倍であり、LB100における濃縮は、約2.5倍であった。1サイクルのCpの改善は、標的細胞又は鋳型DNAの入力濃度において、約2倍の増加を表し、2サイクルのCpの改善は、約4倍の増加を表し、3サイクルのCpの改善は、約8倍の増加を表す、といった具合である(nサイクルのCpの改善が、標的細胞又は鋳型DNAの入力濃度において、約2n倍の増加を表すといった一般式による)。
【0270】
表10中のデータは、遠心濃縮器から収集されたペレットの培地での3時間の培養をもたらすようなCpの改善を示す。150uLのBHI培養液を、遠心濃縮器からのペレットと混合し、37℃で0時間又は3時間インキュベートした。表10に示されるCpの改善は、3時間の培養において認められた、0時間培養されたサンプルに対するCpの平均低下(即ち、検出までの時間の短縮)を表す。
【0271】
【0272】
細胞の3時間の培養により、LB16からの細胞が、LB19及びLB20の場合に約2倍、約12倍、そしてLB100の場合に約8倍濃縮された。
【0273】
図22は、ACD抗凝固剤の血液及びSPS抗凝固剤の血液から回収された生物における溶解及び遠心分離後の培養を比較する別の実験を図示する。この試験は、C.アルビカンス(C.albicans)、大腸菌(E.Coli)、肺炎桿菌(K.pneumoniae)、S.アガラクチア(S.agalactiae)、及び黄色ブドウ球菌(S.aureus)に対して実施した。LB20での溶解及び遠心分離による細胞の回収の後、150uLのBHI培養液を、遠心濃縮器からのペレットと混合し、37℃で0時間又は3時間インキュベートした。
図22に示されるCpの改善は、3時間の培養において認められた、0時間培養されたサンプルに対するCpの平均低下(即ち、検出までの時間の短縮)を表す。
【0274】
この試験では、ACD血液からの細胞が、3時間又は37℃での培養後に約5.5のCpの改善を示し、SPS血液から回収された細胞が、3時間又は37℃での培養後に約3のCpの改善を示した。大腸菌(E.Coli)及び黄色ブドウ球菌(S.aureus)における改善は、最も劇的であった。細菌よりも緩徐に成長する、C.アルビカンス(C.albicans)は、ACD血液において約1のCpだけ改善し、実際に、SPS血液において性能がややより不良であった。この試験では、肺炎桿菌(K.pneumoniae)について、ACD性能データは得られなかった。この試験では、特定の抗凝固剤が、いくつかの生物における成長及び培養可能性に影響し得ることが例示される。この試験における全ての生物の場合、ACDは、SPSと比較して、成長及び培養可能性に対してあまり有害でないように思われた。
【0275】
実施例3-フロースルー溶解、培養、及び体積減少システム
本明細書で考察される他の装置に加えて、又はそれらと組み合わせて、フロースルーシステムは、細胞溶解、培養、及び体積減少のため、使用することができる。そのようなシステム1500の一例の模式図を
図15に図示する。フロースルーシステム1500は、3つの隣接する緩衝液チャンバー1502、1506、及び1510を含み、それぞれが、第1緩衝液1504、及び第2緩衝液1508、及び第3緩衝液1512を含む。システム1500は、チャネル1514(例えば、緩衝液チャンバー1502、1506、及び1510のそれぞれの中の緩衝液1504、1508、及び1512と接触状態である緩衝液交換膜のチューブ又は開放トラフをさらに含む。一実施形態では、第1緩衝液1504、第2緩衝液1508、及び第3緩衝液1512は、微生物細胞を培養するための選択的溶解緩衝液、培地又は栄養ブロス(例えば、細菌生物、真菌生物を培養するための栄養ブロス、又は細菌及び真菌生物の両方を培養するのに適する培養液)、並びにサンプル体積を減少させるための高張液/培地から構成されてもよい。一実施形態では、システム1500はまた、例えば、選択的溶解、微生物の培養、及び体積減少を増強するため、第1緩衝液1504、第2緩衝液1508、及び第3緩衝液1512の温度を(個別に又はグループとして)調節及び制御することができる温度制御システム(図示されない)を含んでもよい。例えば、選択的溶解は、室温で実施されてもよく、微生物の培養は、32~37℃で実施されてもよく、且つ体積減少は、4℃で実施されてもよい。チャネル1514内に配置されたサンプル(例えば、全血サンプル)を、緩衝液1504、1508、及び1512のそれぞれに任意の所与の順序で、又は2つ以上の緩衝液チャンバーに同時に選択的に曝露させ、例えば、血球溶解、微生物細胞の培養、及びサンプル体積減少/濃縮を達成することができる。
【0276】
一実施形態では、微生物細胞を含む全血サンプル(例えば、敗血症を有することが疑われる対象からの全血サンプル)を、チャネル1514に添加してもよく、それにより血液サンプルを緩衝液1504、1508、及び1512のそれぞれに選択的に曝露させることができる。緩衝液交換膜は、当該技術分野で広く知られている。好適な緩衝液交換膜は、微生物細胞が保持されながら、血球細片、ヘモグロビン、及び血球溶解の他の産物が膜を通じて拡散できるように選択してもよい。例えば、緩衝液交換膜は、透析膜であってもよい。透析膜は、例えば、1キロダルトン(kDa)~約1MDa(即ち、1メガダルトン、又は約1000,000Da)の範囲の異なる分子量カットオフ(MWCO)を有するように、作製し、特徴づける。MWCOの決定は、透析膜の作製中に作られる孔の数及び平均サイズの結果である。MWCOは、典型的に、拡張透析時に膜を通じて有効に拡散することがない標準分子の最小平均分子量を指す。しかし、膜のMWCOが、明確に定義された値でないことを認めることは重要である。膜のMWCOに近い質量を有する分子は、MWCOより有意に小さい分子より遅く膜を通じて拡散することになる。分子が膜を通じて急速に拡散するように、典型的に、それは膜のMWCOの格付けよりも少なくとも20~50倍小さい必要がある。実験室使用における透析チューブは、典型的に、再生セルロース又はセルロースエステルのフィルムで製作される。しかし、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン(PES)、エッチングポリカーボネート、又はコラーゲン製の透析膜も、特定の医療、食品、又は水処理の用途に広範に使用されている。
【0277】
微生物細胞が比較的大きく、細胞片が比較的小さいことから、チャネル1514はまた、濾過膜材料から製作してもよい。細菌及びより大きい細胞を溶液から濾過するように設計された膜材料は、当該技術分野で周知である。例えば、0.25~1μm(例えば、0.5μm)の名目上の孔径を有する濾過膜を使用し、微生物細胞をチャネル1514内に保持することができる一方で、チャネル1514内のサンプルを緩衝液1504、1508、及び1512と急速に交換することを可能にする。
【0278】
図15を参照すると、チャネル1514内に配置されたサンプル(例えば、全血サンプル)は、
図15A中の1516に示す通り、最初にチャンバー1502内の緩衝液1504に曝露させてもよい。次に、
図15B中の1518に示す通り、サンプルを、チャンバー1506内の緩衝液1508に曝露されるように移動させてもよく、次に、
図15C中の1520に示す通り、サンプルを、チャンバー1510内の緩衝液1512に曝露されるように移動させてもよい。
図15A~15Cが、サンプルが一方の緩衝液チャンバーからもう一方に経時的に移動され、サンプルが各緩衝液に順に曝露されることを示す一方で、サンプルが、例えば、緩衝液に2回以上曝露されるように、2つ以上緩衝液に同時に曝露されるように、前後に移動することができることが理解されるであろう。同様に、緩衝液1504、1508、及び1512は、任意の所与の順序で準備されてもよい。表11は、その選択肢の一部を例示する。
【0279】
【0280】
そして、本実施例では、微生物細胞の培養、及びサンプル体積の減少のそれぞれについて、選択的溶解緩衝液、培地、及び溶解のための高張液を用いて考察する一方で、当業者は、これら緩衝液が単に例示的であり、且つ他の緩衝液をシステム1500で使用してもよいことは理解するであろう。同様に、システム1500が3つの緩衝液タンクを含む一方で、これが単に例示的である。システム1500の代替バージョンは、より多い緩衝液又はより少ない緩衝液を含んでもよい。さらに、チャネル1514を線状チャネルとして示す一方で、これは単に例示的である。チャネル1514は、例えば、緩衝液に曝露されるサンプルの表面積を最大化するため、当該技術分野で公知の遠回り流路又は他の修飾を含んでもよい。
【0281】
一実施形態では、高張培地は、サンプル中の微生物を濃縮し、(例えば、PCR技術、全ゲノム配列決定、又は分子AST、表現型技術、プロテオミクス技術、及び顕微鏡技術による)同定を可能にするのに十分であり得る。他の実施形態では、濾過技術を濃度/体積減少に用いてもよい。濾過は、サンプルの選択的溶解緩衝液、培地、及び高張液への曝露の1つ以上の前又は後に実施してもよい。別の実施形態では、遠心分離技術を用いて、サンプル中の微生物を濃縮してもよい。遠心分離は、サンプルの選択的溶解緩衝液、培地、及び高張液への曝露の1つ以上の前又は後に実施してもよい。
【0282】
実施例4-濾過技術
本明細書に記載のいくつかの実施形態では、微生物細胞のそれらの環境からの分離(例えば、細菌及び/又は真菌細胞の全血サンプルからの分離)は、濾過によって実施することができる。濾過技術は、選択された細胞又は細胞サイズを保持する又は通過させるように設計してもよい。例えば、血液細胞(例えば、赤血球、白血球、血小板など)を捕捉してもよい一方で、微生物細胞を通過させてもよく、微生物細胞を捕捉してもよく、又は濾過媒体の組み合わせを用いて、濾過装置の異なる段階で大細胞及び小細胞を選択的に捕捉してもよい。また、ディファレンシャル濾過技術を利用し、より大きい細胞及びより小さい細胞を異なる画分に分離してもよい。例えば、異なる名目上の孔径を有する濾過膜は、選択されたサイズ範囲を有する細胞を通過させ、且つ/又は捕捉するため、積層(又は一連の別々の容器内で使用)してもよい。また、フローサイトメトリーは、細胞をサイズによって選別することができる周知の技術である。細胞はまた、活性濾過技術によって捕捉又は濃縮されてもよい。例えば、大部分の細胞型は、当該技術分野で周知の技術による親和性精製において使用可能である特定の表面因子(例えば、タンパク質)を有する。
【0283】
ディファレンシャル濾過システムの例を、
図16に図示する。敗血症を有することが疑われる対象からの全血サンプルを、微生物細胞のため、最初に全血サンプルを、8~15μm(例えば、10μm)の孔径を有する大きいフィルターを通過させ、白血球(WBC)及び一部の赤血球のような大細胞を濾過除去することによって濃縮してもよい。微生物細胞であれば、第1のフィルターをフロースルーすることになる。一実施形態では、Brij洗剤の半溶解性レベル(例えば、<0.1%)を用いるならば、WBCの外側に付着したあらゆる微生物細胞が放出され、フィルターによって捕捉されるWBC上の微生物細胞の捕捉が減少することを保証することができる。他の洗剤は、好適に、他の半溶解性濃度レベル、即ち、一般に0.1%~1%を有してもよい。より小さい孔径(例えば、5μm)を有する第2のフィルターをタンデムで使用し、より多くのヒト細胞を除去する一方で、濾液中の微生物細胞について濃縮することができる。1μm未満(例えば、0.45μm)の孔径を有する最終フィルターを使用し、全ての微生物細胞を捕捉し、サンプルの体積を有意に低減することができる。フィルターで濃縮された微生物細胞を、同定及び診断(例えば、代謝過程、又は代謝消費、伝導度、pHなどのFilmArray、イメージング、光学的蛍光による分子的同定)のため、直接的に使用することができ、サンプルを培養し(例えば、1~3時間)、サンプル中の微生物細胞の数を増加させることができ、又は本明細書に記載の通り、それらが、動物細胞(例えば、ヒト細胞)をさらに除去するためのアルカリ溶解、遠心分離、及び分子的同定を受けることができる。
【0284】
別の実施形態では、濾過を用いて、ここに記載のアルカリ/Brij緩衝液による選択的溶解(即ち、アルカリ溶解)後、細胞を回収することができる。しかし、濾過前にサンプルの粘度を低減するため、プロテイナーゼK処理が必要であることが見出された。これに関連して、アルカリ/Brij選択的溶解緩衝液を全血に添加し、5分間インキュベートした。5分後、1mLの30単位/mLのプロテイナーゼKを添加し、RTで約5分間インキュベートした。次に、ライセートを、0.45μmのフィルターを通して濾過することができた。先行する実施例と同様、例えば、フィルターで濃縮された微生物細胞を、同定及び診断のため、直接的に使用することができ、それらを培養し(例えば、1~3時間)、サンプル中の微生物細胞の数を高めることができる。
【0285】
上記の従来の濾過技術に加えて、様々なタイプの構造を用いる濾過技術により、サンプル中の特定の細胞型を選択的に濃縮することを用いてもよい。そのような濾過技術は、目的の微生物細胞を血液細胞から濃縮又は単離し、体積及び阻害剤を減少させるため、従来の濾過の代わりに、又は通常の濾過と組み合わせて用いてもよい。そのような濃縮又は単離された微生物細胞は、培養細胞(culture calls)(従来の血液培養と類似するが、サンプル中の微生物細胞が濃縮されることから、より迅速である可能性が高い)、FilmArray同定、又は他の調査技術に従ってもよい。さらなる願望は、細菌細胞が、プロセスを顧客にとってより経済的にすること(例えば、代謝過程、又は代謝消費、伝導度、又はpHのイメージング、光学的蛍光のようなより安価な検査)に寄与する可能性が高いことを確認することである。
【0286】
特定の細胞を濃縮するために使用可能である様々な濾過技術を、
図17~20に図示する。
図17Aは、weirフィルターを図示し、
図17Bは、マイクロピラーフィルターを図示し、そして
図17Cは、クロスフローフィルターを図示する。これらの構造周囲のより大きい細胞及びより小さい細胞のディファレンシャルフローを用いて、より大きい細胞からより小さい細胞を分離することができる。
図18は、ピラーフィルターの異なるタイプ:(18A)多角形、(18B)U字形、及び(18C)蝶形のマイクロピラー形状を模式的に図示する。より大きい細胞は、トラップ構造で固定化される一方、より小さい細胞は、通過する。
図18Bはまた、マイクロピラー(micopillars)が、特定の細胞のマイクロピラー構造の通過を選択的に遅延させるために、構造的特徴(形、ポケットなど)によって形成され得るという概念を模式的に図示する。
【0287】
図17及び
図18がこれらの構造のそれぞれを1セットのみ示す一方で、そのような構造(及び流れ方向)は、連続的に、そして組み合わせで用いて、高レベルの分離を達成することができる。
図19及び
図20は、この原理を図示する。
図19は、緩衝液及び細胞懸濁液の一連のマイクロピラー(micopillars)及びクロスフローを有する構造内での大細胞及び小細胞の分離を図示する。
図19の構造は、決定的な側方変位によって大細胞及び小細胞を分離する。大細胞は、流体チャネルにおけるマイクロポストの改変されたサイズ及び間隔に起因し、流線的に小細胞から離れて移動する。
図20は、卵形フィルターユニットに沿った移動による大細胞及び小細胞の濃縮を模式的に図示する。フィルターユニットは、ギャップより大きい大細胞、及びギャップより小さい小細胞の同時分離を達成する。濾液の剪断層によって誘導される、比較的低い速度でのピラーに沿った回転は、大きい粒子の目詰まりを防止することに役立つ。
図19及び
図20におけるシステムは、1つのシステム内でのライセートの除去、緩衝液交換、及び成長用培地の添加に用いてもよいシステムの例である。即ち、分離を開始するためにライセートを流入させてもよく、ライセートを流出させるために緩衝液を添加してもよく、そして培地を添加してもよい。本明細書に記載の遠心濃縮器に加えて、又はそれの代わりに、好適に、濾過濃縮器、マイクロ流体濃縮器、誘電泳動濃縮器、FACS(蛍光標識細胞分取)、又は他の類似装置を使用してもよい。選択的溶解の利益は、好適に、それが濾過濃縮器機構を簡素化でき、又はそれらがファウリング前により多くの量を処理することを可能にすることであってもよい。
【0288】
化学、濾過、遠心分離、及び同定(例えば、限定はされないが、代謝過程、又は代謝消費、伝導度、又はpHのイメージング、光学的蛍光などの分子同定又は別の技術)の1つ以上を含んでもよいワークフロー。
経路1:アルカリ/Brij緩衝液による選択的溶解、濃縮及び培養のため、ライセートをマイクロ流体チップに移す、検出及び同定のためのFilmArray
1.ヒト細胞をアルカリ/Brij選択的溶解緩衝液によって選択的に溶解する
2.遠心分離、濾過装置、又はマイクロ流体チップ設計の1つ以上による微生物細胞について濃縮する
a.選別技術(能動(例えば、フローサイトメトリー)又は受動(weir濾過、マイクロピラー(micopiller)濾過、又はそれらの組み合わせ)
b.捕捉技術(能動又は受動)
c.濾過技術(通常は受動であるが、能動の可能性がある)
3.成長用培地で流す
a.いくつかの実施形態では、遠心分離、濾過、マイクロ流体分離、又はそれらの組み合わせを、1つのシステム内でのライセートの除去、緩衝液交換、及び成長用培地の添加に用いてもよい
b.いくつかの実施形態では、微生物細胞の陽性検出のためのさらなるセンシング技術が加えられてもよい
i.イメージング
ii.代謝過程、又は代謝消費の光学的蛍光
iii.伝導度
iv.pH
v.マイクロ共振器
vi.誘電泳動
vii.静電容量センシング
viii.SPR
ix.FLIR
4.FilmArray分析、培養、又は他の確証的プロセスのため、マイクロ流体装置から細胞を放出する
経路2:選別/濃縮及び培養の双方、FilmArray、又は検出用の他の確証的プロセスのため、マイクロ流体チップ/選択的濾過を使用する
1.ヒト血液細胞から微生物細胞を選択的に選別する
a.能動選別
i.フローサイトメトリー(蛍光活性化又は光学的検出)
ii.誘電泳動(DEP)選別
iii.空気圧選別
b.受動選別
i.サイズ選別
ii.慣性選別
iii.誘電体トラップ
iv.選択的タンパク質接着プロセス
v.音響トラップ
vi.剪断勾配における粘弾性(又は細胞硬度)選別
2.成長用培地で流す
a.いくつかの実施形態では、遠心分離、濾過、マイクロ流体分離、又はそれらの組み合わせを、1つのシステム内でのライセートの除去、緩衝液交換、及び成長用培地の添加に用いてもよい
b.いくつかの実施形態では、微生物細胞の陽性検出のためのさらなるセンシング技術が加えられてもよい
i.イメージング
ii.代謝過程、又は代謝消費の光学的蛍光
iii.伝導度
iv.pH
v.マイクロ共振器
vi.誘電泳動
vii.静電容量センシング
viii.SPR
ix.FLIR
4.FilmArray分析、培養、又は他の確証的プロセスのため、マイクロ流体装置から細胞を放出する
【0289】
本発明は、他の具体的形態において、その精神又は本質的特徴から逸脱することなく、例示されてもよい。記載される実施形態は、単に例示的であり、限定的でないものとして、あらゆる観点で解釈されるべきである。したがって、本発明の範囲は、前述の説明でなく、添付の特許請求の範囲によって示される。特定の実施形態及び詳細が、本発明を例示する目的で、本明細書及び添付の発明開示に含まれている一方で、本明細書で開示される方法及び装置における様々な変更が、添付の特許請求の範囲内で定義される、本発明の範囲から逸脱せずになされてもよいことは、当業者にとって明らかであろう。特許請求の範囲と同等の意味及び範囲内でなされる全ての変更は、その範囲内に包含されるべきである。
【国際調査報告】