(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】多断面運動管理システム
(51)【国際特許分類】
A61B 8/14 20060101AFI20240104BHJP
A61B 5/33 20210101ALI20240104BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240104BHJP
【FI】
A61B8/14
A61B5/33 100
A61B5/352
A61B5/33 210
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536923
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 IB2021000922
(87)【国際公開番号】W WO2022136925
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520167438
【氏名又は名称】エバメッド・エセアー
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】弁理士法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キャンプス,サスキア
(72)【発明者】
【氏名】グリンゲット,ジェレミー
(72)【発明者】
【氏名】ペリン,ロザリント
(72)【発明者】
【氏名】ガロンナ,アドリアーノ
【テーマコード(参考)】
4C127
4C601
【Fターム(参考)】
4C127AA02
4C127BB05
4C127GG02
4C127KK03
4C127KK05
4C601BB03
4C601DD15
4C601DD27
4C601EE16
4C601FF08
4C601FF11
4C601GA18
4C601GA21
4C601JB16
4C601JC26
4C601JC31
4C601KK24
(57)【要約】
非侵襲的放射線治療の投与を支援するための多断面運動管理システム。開示されるデバイス及び技法は、臨床医がシミュレーション段階の参照状況に関して心臓の位置及び運動を正確にモニタすることを可能にする。加えて、患者の呼吸フェーズ及び解剖学的構造の生じ得るドリフトについての情報が提供される。この情報は、必要に応じて、放射線治療を手動で中断するために臨床医によって使用され得る。情報は、適切なゲーティング信号を治療機械に自動的に且つリアルタイムで提供するためにも使用され得る。開示されるシステムは、患者のセットアップ(照射治療間運動モニタリング)から、処置中の心臓及び呼吸運動モニタリング(照射治療中運動モニタリング)まで、1つのみのデバイスを用いて、典型的な放射線治療ワークフロー中に必要とされる全ての運動態様をカバーするように構成され得る。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部ビーム治療処置中に患者内の心臓の変位を検出する方法であって、
命令と共に有形の非一時的媒体を構成すること
を含み、前記命令は、
(a)多断面撮像プローブを用いて、患者内の拍動している心臓の一連の参照多断面画像を取得することと、
(b)ステップ(a)中、前記参照用の一連の多断面画像のうちの前記参照多断面画像の各々について、前記撮像プローブの参照位置を取得することと、
(c)前記参照用の一連の多断面画像の各参照多断面画像の心位相を識別することと、
(d)前記患者のビーム治療処置中、前記多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得することと、
(e)ステップ(d)中、前記多断面撮像プローブのライブ位置を取得することと、
(f)前記ライブ多断面画像の心位相を識別することと、
(g)前記参照用の一連の多断面画像の対応する参照画像及び前記対応する参照画像と関連する対応する参照位置に対する前記ライブ多断面画像及び前記ライブ位置の剛体レジストレーションを実行することであって、前記対応する参照画像は、前記ライブ多断面画像の前記心位相を表し、前記剛体レジストレーションは、三次元座標系に対する、前記患者の前記ビーム治療処置中の前記拍動している心臓のライブ心臓位置を提供して、前記参照位置に対する前記拍動している心臓のライブ変位を提供する、実行することと
を含む、方法。
【請求項2】
前記構成するステップにおける前記命令は、所定の閾値との前記変位の比較に基づいてステータス状況を生成することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(a)において取得される前記一連の多断面画像は、前記患者が既知の呼吸状態である状態で取得される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記既知の呼吸状態は、前記患者の呼気終末呼吸フェーズである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記有形の非一時的媒体を提供することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(a)及び(d)の前記多断面画像を取得するための多断面撮像プローブを提供することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(b)及び(e)において前記撮像プローブの前記位置を取得するためのプローブ位置特定システムを提供することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記有形の非一時的媒体にアクセスするためのゲーティングコントローラを提供することを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
既知の三次元座標系において心臓構造の位置を特定する方法であって、
多断面撮像プローブ及び三次元空間において前記多断面撮像プローブを追跡するための位置特定システムを提供すること、
命令を有形の非一時的媒体に提供すること
を含み、前記命令は、
患者が既知の呼吸状態であり、心臓が第1の位置にある間、複数の心拍の持続時間にわたって前記多断面撮像プローブを用いて前記心臓の第1の多断面画像のシーケンスを取得することと、
前記第1のシーケンスを取得する前記ステップ中、前記位置特定システムを用いて前記多断面撮像プローブを位置特定して、前記第1の位置における第1の部屋座標の組を定義することと、
前記患者が前記既知の呼吸状態であり、前記心臓が第2の位置にある間、複数の心拍の持続時間にわたって前記多断面撮像プローブを用いて前記心臓の第2の多断面画像のシーケンスを取得することと、
前記第2のシーケンスを取得する前記ステップ中、前記位置特定システムを用いて前記多断面撮像プローブを位置特定して、前記第2の位置における第2の部屋座標の組を定義することと、
前記第1の多断面画像のシーケンスから第1の代表的な多断面画像の組を、且つ前記第2の多断面画像のシーケンスから第2の代表的な多断面画像の組を識別することであって、前記第1の代表的な多断面画像の組及び前記第2の代表的な多断面画像の組は、心臓運動フェーズと呼吸運動フェーズとの既知の組合せに対応する、識別することと、
前記第2の部屋座標の組を前記第1の部屋座標の組とアライメントすることと、
前記アライメントされた第1及び第2の部屋座標の組内の前記第1の代表的な多断面画像の組に対する前記第2の代表的な多断面画像の組の並進変位及び回転変位を定量することと
を含む、方法。
【請求項10】
前記識別するステップにおける心臓運動フェーズと呼吸運動との前記既知の組合せは、前記呼吸運動フェーズの呼気終末と対応する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記命令を提供するステップにおける前記命令は、前記並進変位及び前記回転変位に従って患者サポートを変位させることを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記命令を提供するステップにおける前記命令は、前記第1の多断面画像のシーケンスを取得する前記ステップ中、前記既知の呼吸状態にするために少なくとも1つの心周期にわたって息を止めるように前記患者に指示することを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記命令の前記第1の多断面画像のシーケンスを取得する前記ステップは、前記既知の呼吸状態にするために呼気終末呼吸フェーズで実行される、請求項9に記載の方法。
【請求項14】
治療ビームを有効化及びゲーティングする方法であって、
多断面撮像プローブ及びプローブ位置特定システムをゲーティングコントローラに結合すること
を含み、前記ゲーティングコントローラは、リアルタイムで実行するための命令の組を非一時的コンピュータ可読媒体に含み、前記命令は、
(a)多断面撮像プローブを用いて、患者内の拍動している心臓の一連の参照多断面画像を取得することと、
(b)ステップ(a)中、前記参照用の一連の多断面画像のうちの前記参照多断面画像の各々について、前記撮像プローブの参照位置を取得することと、
(c)前記参照用の一連の多断面画像の各参照多断面画像の心位相を識別することと、
(d)前記患者のビーム治療処置中、前記多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得することと、
(e)ステップ(d)中、前記多断面撮像プローブのライブ位置を取得することと、
(f)前記ライブ多断面画像の心位相を識別することと、
(g)前記参照用の一連の多断面画像の対応する参照画像及び前記対応する参照画像と関連する対応する参照位置に対する前記ライブ多断面画像及び前記ライブ位置の剛体レジストレーションを実行することであって、前記対応する参照画像は、前記ライブ多断面画像の前記心位相を表し、前記剛体レジストレーションは、三次元座標系に対する、前記患者の前記ビーム治療処置中の前記拍動している心臓のライブ心臓位置を提供して、前記参照位置に対する前記拍動している心臓のライブ変位を提供する、実行することと
を含む、方法。
【請求項15】
前記ゲーティングコントローラの前記命令は、所定の閾値との前記変位の比較に基づいてステータス状況を生成することを含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記命令と共に前記非一時的コンピュータ可読媒体を構成することを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
ビーム治療処置のために患者の心臓の変位を推測する方法であって、
(a)多断面撮像プローブを用いて、患者内の拍動している心臓の一連の参照多断面画像を取得することと、
(b)ステップ(a)中、前記参照用の一連の多断面画像のうちの前記参照多断面画像の各々について、前記撮像プローブの参照位置を取得することと、
(c)前記参照用の一連の多断面画像の各参照多断面画像の心位相を識別することと、
(d)前記患者のビーム治療処置中、前記多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得することと、
(e)ステップ(d)中、前記多断面撮像プローブのライブ位置を取得することと、
(f)前記ライブ多断面画像の心位相を識別することと、
(g)前記参照用の一連の多断面画像の対応する参照画像及び前記対応する参照画像と関連する対応する参照位置に対する前記ライブ多断面画像及び前記ライブ位置の剛体レジストレーションを実行することであって、前記対応する参照画像は、前記ライブ多断面画像の前記心位相を表し、前記剛体レジストレーションは、三次元座標系に対する、前記患者の前記ビーム治療処置中の前記拍動している心臓のライブ心臓位置を提供して、前記参照位置に対する前記拍動している心臓のライブ変位を提供する、実行することと
を含む方法。
【請求項18】
所定の閾値との前記変位の比較に基づいてステータス状況を生成することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
参照シミュレーションの実行中に使用するために、前記患者の胸部に前記多断面撮像プローブを固定することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
シミュレーション段階の実行中に使用するために、前記患者の胸部に前記多断面撮像プローブを固定することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項21】
既知の呼吸状態にするために少なくとも1つの心周期にわたって息を止めるように前記患者に指示することを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項22】
既知の呼吸状態は、呼気終末呼吸フェーズである、請求項18に記載の方法。
【請求項23】
前記参照用の一連の多断面画像は、処置プロセスの開始時に取得される、請求項18に記載の方法。
【請求項24】
前記参照用の一連の多断面画像は、処置段階前のシミュレーション段階中に取得される、請求項18に記載の方法。
【請求項25】
患者の胸部に取り付けられた多断面撮像プローブから、呼吸運動から生じる心臓の変位を推測する方法であって、
多断面撮像プローブを提供すること、
命令を有形の非一時的媒体に提供すること
を含み、前記命令は、
前記多断面撮像プローブを用いて、参照用の一連の多断面画像を取得することであって、前記多断面撮像プローブは、患者の胸部に固定される、取得することと、
前記参照用の一連の多断面画像の各多断面画像の心位相を識別することと、
前記患者の照射処置中、前記多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得することであって、前記多断面撮像プローブは、前記患者の前記胸部に固定される、取得することと、
前記ライブ多断面画像の心位相を識別することと、
前記参照用の一連の多断面画像の対応する画像に対する前記ライブ多断面画像の剛体レジストレーションを実行することであって、前記参照用の一連のうちの前記対応する画像は、前記ライブ多断面画像の前記心位相を表す、実行することと
を含む、方法。
【請求項26】
非侵襲的心臓アブレーションのための多断面運動管理システムであって、
プローブ体積内のライブ多断面画像を取得するように構成された多断面撮像プローブであって、前記多断面画像は、非平行である、多断面撮像プローブ、
前記多断面撮像プローブの位置データを取得するように構成されたプローブ位置特定システム、
前記ライブ多断面画像及び前記位置データを同時に受信し、且つ前記多断面画像及び前記位置データの取得時間を確立するように構成された入力/出力(I/O)管理システム、
前記ライブ多断面画像、前記位置データ及び前記取得時間を受信及び処理するように構成されたゲーティングシステムであって、プロセッサを含むゲーティングシステム
を含み、前記プロセッサは、
前記ライブ多断面画像に対応する心位相を識別することと、
時間的に前記ライブ多断面画像に最も近く対応する部屋座標の組を前記位置データから定義することと、
参照多断面画像に対する前記ライブ多断面画像の剛体レジストレーションを実行することであって、前記参照多断面画像は、前記心位相を表す、実行することと
を行うように構成される、多断面運動管理システム。
【請求項27】
心周期データを生成するための心拍検知システムを含み、
前記心拍検知システムは、前記心周期データに基づいてトリガー信号を生成するように構成され、
前記I/O管理システムは、前記多断面画像及び前記位置データと同時に前記トリガー信号を受信し、且つ前記トリガー信号に対応する取得時間を含むトリガー信号情報を生成するように構成され、及び
前記ゲーティングシステムは、心周期の開始を識別するために、前記トリガー信号情報を受信及び処理するように構成される、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項28】
前記ゲーティングシステムは、前記トリガー信号情報を利用して、前記心位相を確認するように構成される、請求項27に記載の多断面運動管理システム。
【請求項29】
前記心拍検知システムは、心電図(ECG)システムであり、及び前記心周期データは、心電信号から生成される、請求項27に記載の多断面運動管理システム。
【請求項30】
前記位置データは、部屋座標系に対するものである、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項31】
前記ライブ多断面画像及び前記参照多断面画像は、同じデータタイプのものである、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項32】
前記位置データは、三次元空間における前記多断面撮像プローブの位置及び向きを特定する、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項33】
前記多断面撮像プローブは、前記多断面画像を同時に取得するように構成される、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項34】
前記多断面撮像プローブは、患者の胸部に取り付けるように構成された形状を含む、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項35】
前記多断面撮像プローブは、両端値を含めて20Hz~50Hzの範囲のレートで前記多断面画像を取得する、請求項26に記載の多断面運動管理システム。
【請求項36】
前記多断面撮像プローブは、多断面超音波プローブであり、及び前記参照多断面画像は、超音波像である、請求項28~35のいずれか一項に記載の多断面運動管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、外部ビーム治療のためのデバイス及び技法に関し、より詳細には、心不整脈の非侵襲的治療に関する。
【0002】
関連出願
本特許出願は、2020年12月23日付けで出願された米国仮特許出願第63/129,694号明細書の利益を主張するものであり、この開示は、全体的に参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
心不整脈は、正常心拍の乱れである。心不整脈は、欧州の一般集団の2パーセント超が罹患しており、集団が年をとるにつれて今後50年間で少なくとも2倍になると予想されている。心不整脈の発生は、心発作及び心臓発作のリスク増大と強く関連している。
【0004】
より具体的には、心不整脈は、心拍動の速度又はリズムに伴う問題である。心臓の拍動が速すぎるか、遅すぎるか又はパターンが不規則である。安静時の正常より速い、成人で1分当たり100を超える心拍動は、頻脈と呼ばれる。遅すぎる、1分当たり60未満の心拍動は、徐脈と呼ばれる。一般的な種類の心不整脈は、心房細動であり、不規則で速い心拍動を生じさせる。心発作の経験、喫煙、先天性心臓疾患及びストレス等の多くの因子が心臓のリズムに影響し得る。幾つかの物質又は薬剤も心不整脈を生じさせる恐れがある。
【0005】
処置は、投薬、アブレーション治療又はペースメーカー若しくは除細動器の移植及び手術等の医療手技を含み得る。心拍が速い場合の投薬には、ベータブロッカー又はプロカインアミド等、正常な心臓リズムを回復しようとする薬剤があり得る。投薬は、特に長期間服用する場合、より重大な副作用があり得る。ペースメーカーは、多くの場合、心拍が遅い場合に使用される。心拍動が不規則な人は、合併症リスクを下げるために抗凝血剤を用いて治療されることが多い。心不整脈からの重篤な症状を有する人は、心臓除細動又は除細動の形態の被制御電気ショックを用いた緊急治療を受け得る。
【0006】
アブレーション治療は、心不整脈の治療に使用されることが多い。アブレーション治療は、カテーテル等の侵襲的器具を用いて特定の心臓組織を焼くか又は凍結させて、これらの特定の組織で乱れている電気信号の伝導を止めることを含む。侵襲的カテーテルアブレーション手順は、手動で実行される外科的介入であり、治効は、使用される技術及び外科医の技能に応じて50%~80%で大きくばらつく。更に、手順には、幾人かの医療スタッフメンバーが関わり得、長時間を要し得、その間、患者は、組織穿孔、静脈狭窄又は血栓発生のような重篤な合併症のリスクに曝される。カテーテルアブレーションにより生じる傷害の性質により、連続時間にわたって繰り返されることが多い手順に繋がり、医療スタッフにとっての複雑性及び患者のリスクが増大する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、非侵襲的アブレーションを介して心臓不整脈を治療する、非侵襲的なデバイスを使用した治療方法が必要とされている。限定されないが、荷電粒子ビーム、光子ビーム、陽子ビーム並びに炭素イオン及びヘリウムイオンを含む外部治療ビームの使用は、非侵襲的技法を心臓アブレーションに提供する。現実世界での患者の身体の運動を考慮に入れた、そのような外部ビーム治療のためのデバイス及び方法の改善は、歓迎されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の種々の実施形態は、患者の心臓の位置に基づいて、外部治療ビームに向けた患者の正確なセットアップ及びビーム送達を可能にする。これは、心臓病の患者のみならず、例えば、心臓が、治療中に追跡すべき危険に曝される臓器であり得る、放射線治療を受けている肺癌患者にも有益であり得る。開示されるデバイス及び技法は、2020年11月11日付けで出願され、Garonnaらに付与され、本願の所有者によって所有される「Cardiac Phase Gating System for Radiation Therapy」という名称の国際特許出願PCT/米国特許出願公開第2020/060054号明細書(「Garonna et al.」)からの拡張である。本開示は、呼吸運動フェーズを識別し、三次元空間における既知の座標系で絶対心臓位置を特定する改良された方法を提供することにより、Gronna et al.から拡張される。本開示の種々の実施形態は、画像にいかなる解剖学的構造ランドマーク(又は基準)のセグメンテーションもなく、心臓を追跡して標的運動フェーズ及び位置を特定する。そのような技法は、MRI像又はCT像と超音波とのコレジストレーション又は融合も必要とせず、それにより異なるモダリティにわたるレジストレーションに関連する不正確性及び実行時間要件を回避する。したがって、本明細書に開示されるデバイス及び技法は、画像処理及び運動測定が完全に自動化され(オペレータ又は臨床医の介入がない)、再現可能であり、従来の運動制御システムよりも高速である点で有利である。
【0009】
幾つかの実施形態では、サロゲートを用いて検出される患者胸部の外部運動が、多断面(非平行)画像を生成する多断面プローブにより検出される心臓の内部運動と組み合わされて、呼吸運動に起因して心臓がどのように動くかがよりよく理解される。外部運動検出と内部運動検出との組合せにより、心臓の画像から呼吸運動パターンを抽出することができる。開示されるデバイス及び技法は、多断面画像とプローブ位置特定システムとの組合せにより、既知の三次元座標系で心臓構造体の位置を特定することが更に可能である。加えて、開示される技法は、画像を使用して、外部ビーム治療中に生じ得る心臓ドリフトを検出し、定量するために十分にロバストである。
【0010】
幾つかの実施形態は、患者の解剖学的構造に応じて異なる胸部位置(特に傍胸骨及び尖部視界窓)からの撮像を可能にすることにより、画質(例えば、超音波)に関してロバスト性を提供する。画像処理方法は、画質ロバスト性を念頭に置いても設計される。これは、低エコー輝度に起因してコントラストのより低い超音波像に繋がる恐れがある、不整脈患者に一般的な高齢又は高BMIを有する患者にとって有益であり得る。
【0011】
本開示の種々の実施形態は、設計の本質的な部分である冗長性を含む。例えば、撮像システムでの心位相認識に失敗した場合でもなお、ECG信号を使用して心位相ゲーティングを行うことができる。別の例では、撮像システムでのそのような失敗の場合、多断面プローブ上の位置特定マーカを利用して外部運動を追跡し、呼吸フェーズゲーティングを可能にし得る。
【0012】
本開示の種々の実施形態は、治療患者と粒子ビームとのアライメントを強化する。標準の臨床実施は、骨解剖学を用いたアライメントを含む。幾つかの実施形態では、この骨解剖学的アライメントは、超音波撮像を用いた心臓アライメントセットアップで補足される。
【0013】
本開示の種々の実施形態は、心臓超音波三次元運動管理のシステム及び方法を提示する。多断面超音波プローブが利用され、外部ビーム治療前及び治療中、三次元で心臓の位置及び運動を正確且つ高速に特定するための専用画像処理方法が開示される。幾つかの実施形態では、心臓位置、長時間治療セッション中の患者の心臓位置ドリフトのモニタリング及び治療中の呼吸運動のモニタリングに基づいて、正確な患者の位置決めを可能にする方法が開示される。
【0014】
開示されるデバイス及び方法は、心不整脈の非侵襲的治療に有益である。しかしながら、その使用は、縦隔領域及び胸部領域(とりわけ乳、肺)における癌治療に有利に適用することもでき、なぜなら、これらの場合、特にペンシルビームスキャン粒子治療の場合、治療精度が心臓の位置及び運動により影響されるためである。実際に、これらの臨床用途では、心臓は、標的ではなく、放射線に関連する重篤な副作用を回避するために臨床医が傷つけたくない重要で繊細な臓器である。
【0015】
開示されるデバイス及び方法は、外部ビーム放射線治療の分野外、例えば放射線学及び介入心臓学で適用することも可能である。放射線学の場合、心臓運動が画質に影響し得(呼吸及び心拍動に起因して)、したがって導出される測定値及び診断に影響を及ぼす可能性がある磁気共鳴撮像(MRI)、計算トモグラフィ(CT)又は他の医療撮像モダリティを使用して、よりよい画質を得る手段を提供することができる。これにより、例えば呼吸運動を制限するための息止めの使用又は強制換気技法の使用を回避することができる。介入心臓学の場合、介入中に心臓運動をモニタする手段を提供することができる。これにより、介入心臓医は、例えば、カテーテルの可視化に使用されるX線像を関心のある特定の心臓又は呼吸状態(運動フェーズ)でのみ取得することができる。これにより、X線撮像のより効率的な使用が可能になり、患者及び医療スタッフの両方に送達される放射線線量及び動作コストが低下する。
【0016】
幾つかの実施形態では、開示されるデバイス及び方法は、Bモード超音波撮像を利用する。しかしながら、他の撮像技法、例えばドップラー、エラストグラフィ、Mモード撮像及び幾つかの他の超音波撮像モダリティも企図される。本開示は、直交面を利用するバイプレーン超音波撮像にも基づくが、当業者は、本開示に鑑みて、撮像技法、例えば直交ではないバイプレーン像、トライプレーン撮像、フルボリュメトリック撮像又は三次元空間での任意の他の多断面超音波撮像ジオメトリをより全般的に組み込み、採用することができる。
【0017】
外部ビーム放射線治療処置(とりわけ放射線治療、陽子治療、炭素イオン治療)を拡張及び実行する従来のシステム及び手順には、特定の欠点がある。今日のシステムにおいて欠点が制限である例には、患者セットアップ、治療中の臓器ドリフト、呼吸運動の考慮及び三次元空間における解剖学的構造の追跡がある。
【0018】
心臓の外部ビーム放射線治療処置での患者位置決めの問題を考える。外部ビーム放射線治療処置の過程を開始する前に、典型的には、患者の計算トモグラフィ(CT)スキャンがいわゆるシミュレーション段階で取得される。続けて、患者固有の治療計画がこのCTスキャンに基づいて設計され、その後、治療段階を開始することができるが、一般に同日ではない。治療段階中、シミュレーション段階中の患者の位置は、処置室で再現されて、治療計画及び治療送達に向けてプログラムされたビームパラメータの有効性を保証する。典型的には、熱可塑性マスク、標準サイズのウェッジ、ウィングボード及び掴み棒等の不動化デバイスが使用されて、胸部処置に向けた患者の位置決めを支援する。この患者セットアップを支援するために現在利用可能な技術には、バイプレーンX線像、コーンビームCT又はCTオンレールがある。処置室での患者アライメントは、骨解剖学的構造(手動及び(半)自動画像レジストレーションの両方を使用する)の一致及びこれらの画像(例えば、トモグラフィ撮像)で十分なコントラストを有する標的に近い任意の軟組織の一致に主に基づく。これらの画像での心臓等の軟組織のコントラストは、典型的には、不十分である。心臓の位置は、骨解剖学的構造と常に十分に相関するわけでもない。加えて、患者の心拍及び呼吸運動は、画質を更に下げる。画質は、関心のあるエリアに一般に存在する金属物(とりわけペースメーカーのリード線、移植された除細動器のリード線)によってもたらされる画像アーチファクトによる影響を受けることもある。したがって、不整脈患者及び胸部患者のセットアップでは、一般的に、取得された画像で利用可能な解剖学的情報が限られており、その結果、医療スタッフメンバーの判断に大きく依存する。
【0019】
心臓ドリフトの現象及び影響も考える。心不整脈の外部ビーム治療処置中、25~40Gyの範囲の放射線線量が単一の治療部分に送達され得る。これは、小さい胸部病変で典型的な定位アブレーション放射線治療線量の少なくとも2~3倍である。加えて、治療中、治療精度への呼吸運動及び心臓運動の影響を軽減するために、特殊な方法が使用され得る。両方の態様(高線量要件及び運動軽減)とも、患者が典型的には背臥位で不動化された状態でのかなり長い治療時間に繋がる。したがって、胸部/腹部における解剖学的構造が緩和し、本明細書で「心臓ドリフト」と呼ばれる標的の経時位置ドリフトに繋がる恐れがある。MR-LINAC等の効率的な治療照射中(intra-fraction)運動管理の方法が出現しつつあるが、処置時間を更にのばすことになる放射線ビーム送達の中断を行わずに、処置中にこのドリフトをモニタする標準的な方法はない。
【0020】
呼吸周期の影響も管理しなければならない。周期性心臓運動は、2つの主な成分により特徴付けられる:心拍(0.5~1.5秒周期)及び呼吸(3~5秒周期)。そのような特徴付けに向けられた従来の研究には、呼吸成分を概説するが、心拍運動の側面に焦点を当てたGaronna et al.が含まれる。呼吸運動モニタリングの場合、外部サロゲートを辿ることにより、心臓との解剖学的構造の内部運動を間接的にモニタするシステムが市販されている。これらのシステムは、肺内及び肺外への空気流(例えば、Elekta AB,Stockholm,Swedenによって供給されるデバイスである能動的呼吸調整器若しくはABCにより利用される等の肺活量計を用いる)又は圧力ベルト(例えば、日本国東京に所在のAnzai Medical Co.,Ltd.により供給されるANZAI BELT(AZ-733VI))、胸部運動の光学的追跡(例えば、米国カリフォルニア州パロアルトに所在のVarian Medical Systems,Inc.により供給されるRGSCシステム)及びX線追跡システム(例えば、独国ミュンヘンに所在のBrainlab AGにより供給されるVERO(登録商標)SBRTにおける追跡システム)等、横隔膜の収縮から生じる腹部/胸部の機械的運動のいずれかに基づく。これらの手法は、サロゲートの運動が解剖学的構造の内部運動、したがって処置標的の挙動とどのように相関するかについて仮定する。この相関が弱い場合、標的呼吸運動のモニタリング精度は、不良になる。ロボット放射線手術システム(例えば、米国カリフォルニア州サニーベールに所在のAccuray Inc.により供給されるCYBERKNIFE(登録商標))は、照射治療中呼吸運動を管理することが可能である。しかしながら、心臓に使用するには、基準クリップを移植する必要がある。
【0021】
特定の解剖学的構造又は関心のある領域の取得された三次元超音波ボリューム上での処置標的の追跡を促進する幾つかの手法が文献に記載されている。臨床で利用可能なシステムの例は、CLARITY(登録商標)及びCLARITY(登録商標)AUTOSCANシステムである(スウェーデンストックホルムにおけるElekta ABにより供給される)。特定の用途では、三次元空間で標的を追跡するには、ボリュメトリック撮像が必要とされる。そのような要件は、例えば、標的が撮像面外に移動し得る場合に生じ、標的の撮像面外への移動は、二次元撮像で必ずしも検出されるわけではなく、それにより誤った追跡に繋がる。しかしながら、三次元超音波ボリューム上の三次元空間における標的の追跡には、幾つかの制限がある:
・既存の商用及び研究等級の三次元超音波システムは、不適切な空間及び時間解像度を有する。
・運動が超音波ボリューム内の標的の運動とよく相関する標的又は標的のサロゲートをときに手動で識別する必要がある。
・三次元超音波撮像技術は、嵩張り高価である。
三次元空間において心臓内部の解剖学的構造を追跡する従来の技術で構成されるシステムは、最良でも以下の性能特性を有すると推定される:
・反応時間(イベントの出現とシステムの最終応答との間の時間)は、約250ミリ秒(ms)である。これは、三次元超音波ボリューム取得、ビーム形成及び超音波デバイスからホストコンピュータへのデータストリーミングの200ms並びにデータ解釈のために50msで構成される。
・標的位置特定の空間不確実性は、約6.5mmであり、これは、絶対部屋座標における超音波画像位置特定での1mm;標的又は標的自体を適宜追跡することができない場合にはサロゲートのセグメンテーション及び追跡精度に2.5mm;標的と標的のサロゲートとの間の運動相関に2mm;及び計画CTスキャンと超音波ボリュームとの間の解剖学的構造可視化差に1mmの組合せである。
そのような性能特性は、100ms以上の反応時間及び3mmの空間精度が予期される心臓の外部放射線治療処置に不適切である。
【0022】
本開示は、今日の特定の制限を解消するハードウェア及びソフトウェア構成要素並びに方法を提示する。加えて、種々の臨床ワークフローも開示される。
【0023】
幾つかの実施形態では、患者にとって潜在的に有害であり得る電離放射線を使用せずに非侵襲的画像取得をリアルタイムで提供する超音波撮像プローブが開示される。加えて、それは、費用効率的であり、典型的には良好な軟組織コントラストを提供し、多くの場合に心臓病患者にとって第1選択の診断ツールである。
【0024】
構造的に、本開示の種々の実施形態は、非侵襲的心臓アブレーションのための多断面運動管理システムを含み、本システムは、プローブ体積内のライブ多断面画像を取得するように構成された多断面撮像プローブであって、多断面画像は、非平行である、多断面撮像プローブと、多断面撮像プローブの位置データを取得するように構成されたプローブ位置特定システムと、ライブ多断面画像及び位置データを同時に受信し、且つ多断面画像及び位置データの取得時間を確立するように構成された入力/出力(I/O)管理システムと、ライブ多断面画像、位置データ及び取得時間を受信及び処理するように構成されたゲーティングシステムとを含む。ゲーティングシステムは、プロセッサを含み、プロセッサは、ライブ多断面画像に対応する心位相を識別することと、時間的にライブ多断面画像に最も近く対応する参照座標の組を位置データから定義することと、参照多断面画像に対するライブ多断面画像の剛体レジストレーションを実行することであって、参照多断面画像は、心位相を表す、実行することとを行うように構成され得る。幾つかの実施形態は、心周期データを生成するための心拍検知システムを含み、心拍検知システムは、心周期データに基づいてトリガー信号を生成するように構成され、I/O管理システムは、多断面画像及び位置データと同時にトリガー信号を受信し、且つトリガー信号に対応する取得時間を含むトリガー信号情報を生成するように構成され、及びゲーティングシステムは、心周期の開始を識別するために、トリガー信号情報を受信及び処理するように構成される。ゲーティングシステムは、トリガー信号情報を利用して、心位相を確認するように構成され得る。幾つかの実施形態では、心拍検知システムは、心電図(ECG)システムであり、及び心周期データは、心電信号から生成される。位置データは、参照座標系に対するものであり得、及び位置データは、三次元空間における多断面撮像プローブの位置及び向きを特定し得る。多断面撮像プローブは、多断面画像を同時に取得するように構成され得、且つ患者の胸部に取り付けるように構成された形状を含み得る。幾つかの実施形態では、多断面撮像プローブは、両端値を含めて20Hz~50Hzの範囲のレートで多断面画像を取得する。幾つかの実施形態では、多断面撮像プローブは、多断面超音波プローブであり、及び参照多断面画像は、超音波像である。
【0025】
本開示の種々の実施形態は、方法であって、(a)多断面撮像プローブを用いて、患者内の拍動している心臓の一連の参照多断面画像を取得することと、(b)ステップ(a)中、参照用の一連の多断面画像のうちの参照多断面画像の各々について、撮像プローブの参照位置を取得することと、(c)参照用の一連の多断面画像の各参照多断面画像の心位相を識別することと、(d)患者のビーム治療処置中、多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得することと、(e)ステップ(d)中、多断面撮像プローブのライブ位置を取得することと、(f)ライブ多断面画像の心位相を識別することと、(g)参照用の一連の多断面画像の対応する参照画像及び対応する参照画像と関連する対応する参照位置に対するライブ多断面画像及びライブ位置の剛体レジストレーションを実行することであって、対応する参照画像は、ライブ多断面画像の心位相を表し、剛体レジストレーションは、三次元座標系に対する、患者のビーム治療処置中の拍動している心臓のライブ心臓位置を提供して、参照位置に対する拍動している心臓のライブ変位を提供する、実行することとを含む方法を具現化する。
【0026】
幾つかの実施形態では、方法は、有形の非一時的媒体に命令として列記されたステップを構成することを含む。構成するステップにおける命令は、所定の閾値との変位の比較に基づいてステータス状況を生成することを含む。方法は、参照シミュレーションの実行中に使用するために、多断面撮像プローブを患者の胸部に固定することも含み得る。幾つかの実施形態では、方法は、シミュレーション段階の実行中に使用するために、多断面撮像プローブを患者の胸部に固定することを含む。方法は、既知の呼吸状態にするために少なくとも1つの心周期にわたって息を止めるように患者に指示することを含み得る。既知の呼吸状態は、呼気終末呼吸フェーズであり得る。参照用の一連の多断面画像は、処置プロセスの開始時に取得され得る。幾つかの実施形態では、参照用の一連の多断面画像は、処置段階前のシミュレーション段階中に取得され得る。
【0027】
幾つかの実施形態では、方法は、多断面撮像プローブ及びプローブ位置特定システムをゲーティングコントローラに結合することを含み、ゲーティングコントローラは、非一時的コンピュータ可読媒体に予め構成された、リアルタイムで実行するための命令の組を含む。ゲーティングコントローラの命令は、所定の閾値との変位の比較に基づいてステータス状況を生成することを含み得る。幾つかの実施形態では、方法は、命令と共に非一時的コンピュータ可読媒体を構成することを含む。
【0028】
本開示の種々の実施形態は、既知の三次元座標系において心臓構造の位置を特定する方法であって、多断面撮像プローブ及び三次元空間において多断面撮像プローブを追跡するための位置特定システムを提供すること、命令を有形の非一時的媒体に提供することを含む方法を含む。命令は、患者が既知の呼吸状態であり、心臓が第1の位置にある間、複数の心拍の持続時間にわたって多断面撮像プローブを用いて心臓の第1の多断面画像のシーケンスを取得することと、第1のシーケンスを取得するステップ中、位置特定システムを用いて多断面撮像プローブを位置特定して、第1の位置における第1の参照座標の組を定義することと、患者が既知の呼吸状態であり、心臓が第2の位置にある間、複数の心拍の持続時間にわたって多断面撮像プローブを用いて心臓の第2の多断面画像のシーケンスを取得することと、第2のシーケンスを取得するステップ中、位置特定システムを用いて多断面撮像プローブを位置特定して、第2の位置における第2の参照座標の組を定義することと、第1の多断面画像のシーケンスから第1の代表的な多断面画像の組を、且つ第2の多断面画像のシーケンスから第2の代表的な多断面画像の組を識別することであって、第1の代表的な多断面画像の組及び第2の代表的な多断面画像の組は、心臓運動フェーズと呼吸運動フェーズとの既知の組合せに対応する、識別することと、第2の参照座標の組を第1の参照座標の組とアライメントすることと、アライメントされた第1及び第2の参照座標の組内の第1の代表的な多断面画像の組に対する第2の代表的な多断面画像の組の並進変位及び回転変位を定量することとを含み得る。幾つかの実施形態では、識別するステップにおける心臓運動フェーズと呼吸運動との既知の組合せは、呼吸運動フェーズの呼気終末と対応する。命令を提供するステップにおける命令は、並進変位及び回転変位に従って患者サポートを変位させることを含む。幾つかの実施形態では、命令を提供するステップにおける命令は、第1の多断面画像のシーケンスを取得するステップ中、既知の呼吸状態にするために少なくとも1つの心周期にわたって息を止めるように患者に指示することを含む。命令の第1の多断面画像のシーケンスを取得するステップは、既知の呼吸状態にするために呼気終末呼吸フェーズで実行され得る。
【0029】
本開示の種々の実施形態は、患者の胸部に取り付けられた多断面撮像プローブから、呼吸運動から生じる心臓の変位を推測する方法であって、多断面撮像プローブを提供すること、命令を有形の非一時的媒体に提供することを含む方法を含む。命令は、多断面撮像プローブを用いて、参照用の一連の多断面画像を取得することであって、多断面撮像プローブは、患者の胸部に固定される、取得することと、参照用の一連の多断面画像の各多断面画像の心位相を識別することと、患者の照射処置中、多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得することであって、多断面撮像プローブは、患者の胸部に固定される、取得することと、ライブ多断面画像の心位相を識別することと、参照用の一連の多断面画像の対応する画像に対するライブ多断面画像の剛体レジストレーションを実行することであって、参照用の一連のうちの対応する画像は、ライブ多断面画像の心位相を表す、実行することとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本開示の一実施形態による、2つの非平行撮像面で多断面画像を取得するための超音波プローブの斜視図である。
【
図2】本開示の一実施形態による、2つの非平行撮像面で多断面画像を取得するための超音波プローブの斜視図である。
【
図3】本開示の一実施形態による非侵襲的心臓アブレーションシステムの簡易化された斜視図である。
【
図4】本開示の一実施形態による
図3の非侵襲的心臓アブレーションシステムの概略図である。
【
図5】本開示の一実施形態による、処置計画を作成するシミュレーション段階を示すワークフロー図である。
【
図6】本開示の一実施形態による、放射線治療を送達する処置段階を示すワークフロー図である。
【
図7】本開示の一実施形態による、シミュレーション段階画像との処置段階画像のアライメントを示す。
【
図8】本開示の一実施形態による、シミュレーション段階画像との処置段階画像のアライメントを示す。
【
図9】本開示の一実施形態による、シミュレーション段階画像との処置段階画像のアライメントを示す。
【
図10】本開示の一実施形態による、ライブ-シミュレーションレジストレーション並びに呼吸周期及び心臓ドリフトの解析のための心臓変位の位置特定特性を示すプロットである。
【
図11】本開示の一実施形態による、
図10の呼吸周期及び心臓ドリフト情報を抽出する方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1及び
図2を参照して、本開示の一実施形態による多断面超音波プローブ50の動作を示す。多断面超音波プローブ50は、2つの非平行撮像面52及び54において画像を取得するように構成される。幾つかの実施形態では、非平行撮像面52及び54は互いに直交し、任意にx-y平面(
図2)及びx-z平面(
図3)と呼ばれる。多断面超音波プローブ50は、走査されて有効プローブ体積56を提供し得るセンサ(図示せず)の二次元アレイを含む。多断面超音波プローブ50は、単一の二次元超音波撮像と同様の解像度特性で多断面画像の各々を撮像し得る。そのような多断面超音波プローブは市販されており、例えば蘭国Eindhovenに所在のKoninklijke Philips Electronics N.V.により提供されるXMATRIX(登録商標)X5-1又はX7-2tアレイトランスデューサが市販されている。
【0032】
幾つかの実施形態では、プローブの設計は、ケース内部の金属構成要素の数を低減するように構成され、それにより例えばCT撮像又はコーンビームCT撮像におけるアーチファクトの出現を低減する。多断面超音波プローブ50は、患者58(
図4)の胸部に位置決めするように適合された形状(図示せず)を有し得る。幾つかの実施形態では、多断面画像は、両端値を含めて少なくとも10~30ヘルツの範囲の画像リフレッシュレートで取得される。幾つかの実施形態では、画像リフレッシュレートは、両端値を含めて10~50ヘルツの範囲である。幾つかの実施形態では、画像リフレッシュレートは、両端値を含めて10~100ヘルツの範囲である。本明細書では、「両端値を含めて」と書かれた範囲は、記載された範囲の端点値を包含する。
【0033】
機能的に、多断面超音波プローブ50は、非平行画像(
図4)の同時又は順次のライブ取得を可能にし、「ライブ」は、リアルタイム取得又は画像モニタリングに十分な準リアルタイム取得として定義される。多断面超音波プローブ50を用いて取得された非平行画像は、有効プローブ56内の三次元空間座標における心臓運動のモニタリングを可能にする。非平行撮像面52及び54は、撮像された解剖学的構造についての三次元における情報を提供する。
【0034】
図3及び
図4を参照して、本開示の一実施形態による非侵襲的心臓アブレーションシステム100を示す。非侵襲的心臓アブレーションシステム100は、治療ビーム放出システム102、患者位置決めシステム104、多断面撮像システム106、プローブ位置特定システム108及び心拍検知システム110を含む。システム106、108及び110は、リアルタイムデータ取得システム又はDAQ112により制御され、これらは、全て入力/出力(I/O)管理システム114の一部である。I/O管理システム114は、ビームゲーティングシステム116とインタフェースして、多断面運動管理システム118を提示する。I/O管理システム114は、非侵襲的心臓アブレーションシステム100の他の構成要素、例えば患者位置決めシステム104とインタフェースするための補助インタフェース120を含むこともできる。
【0035】
I/O管理システム114は、異なる複数のデータストリームからデータセットを同時に取得し、各データセットに対応する取得時間(「タイムスタンプ」)を確立する。幾つかの実施形態では、I/O管理システム114は、3種類のデータを取得するための構成要素を含む:超音波データ、心電図(ECG)データ及び光学位置特定データ。I/O管理システム114は、処置室122内に物理的に配置することができ、幾つかの実施形態では、I/Oキャビネット124内に収容又はI/Oキャビネット124をベースとすることができる。
【0036】
多断面撮像システム106は、心臓を可視化するためにリアルタイム又は準リアルタイムで非平行多断面画像128を生成するために、多断面撮像プローブ126(例えば、多断面超音波プローブ50)に結合される。多断面撮像システム106は、多断面超音波プローブ50、プローブホルダ142及びビーム形成器(図示せず)を含み得る。ビーム形成器は、超音波を患者に送る時限電気信号を生成し、音響波の患者での反射に基づいてプローブ要素からの電気信号を収集し、入力信号を処理して、超音波像を生成する。
【0037】
多断面画像128は、標的領域146を直接解像し得るか、又は他の方法で標的領域146の位置の推測を可能にし得る。多断面撮像プローブ50、126及び/又はプローブホルダ142は、1つ若しくは複数の位置特定マーカ144を含み得るか、又は1つ若しくは複数の位置特定マーカ144が装着され得る。多断面撮像システム106は、近傍粒子ビームからの中性子、陽子及びガンマ線の間接的な放出等のあるレベルの放射線露出に耐えるように構成され得る。代替的に、多断面撮像システム106の幾つかの構成要素(例えば、データプロセッサ)は、リモートであり得るか、アナログ又はデジタル伝送ケーブルを介して伝送される信号であり得る。
【0038】
本開示全体を通して広く行われる、多断面撮像プローブ126として多断面超音波プローブ50を使用することは非限定的である。当業者は、本開示に鑑みて、本明細書に開示される概念が超音波撮像に限定されず、必要な変更を加えて組み込むことができる他の非平行撮像デバイス及び技法を組み込むこともできることを認識するであろう。他の多断面撮像システム106及び付随する多断面撮像プローブ126、例えばX線、MRI及びECGIシステムも非侵襲的心臓アブレーションシステム100に企図される。
【0039】
プローブ位置特定システム108は、位置特定マーカ144を見るように固定された光学システム、例えばカメラ152であり得る。一実施形態では、カメラ152は、スイスPuidouxに所在のAtracsys,SARLから入手可能なFUSIONTRACK(登録商標)500又はカナダWaterlooに所在のNorthern Digital Inc.から入手可能なPOLARIS VEGA(登録商標)XT等の赤外線(IR)カメラである。この種のカメラは、例えば、カメラ152に対するマーカの位置及び回転向きを確立する位置データの形態で、三次元空間において自由度6で赤外線反射マーカ又はLEDマーカを位置特定することができる。代替的に、プローブ位置特定システム108は、電気、磁気又は音響を含む他の原理によって動作し得る。プローブ位置特定システム108は、例えば、レーザ又はサーマルイメージングを使用する表面追跡機能を含むこともできる。
【0040】
幾つかの実施形態では、位置特定マーカ144は、シミュレーション段階200(
図5)中にCT室(図示せず)に及び処置段階300(
図6)中に処置室122に位置する。CT室及び処置室は、非侵襲的心臓アブレーションシステム100の処置アイソセンタ(図示せず)に対する参照ピクセル座標156’、156を生成する共通部屋又は参照座標系154を含み得、参照ピクセル座標156’はシミュレーション段階200を参照し、参照ピクセル座標156は処置段階300を参照する。プローブ位置特定システム108が一致する部屋座標系154における多断面撮像プローブ50、126の位置及び向きを提供するように、専用較正ファントム(図示せず)を用いる較正手順を使用し得る。例えば、Lachaine et al.,“Intrafractional prostate motion management with the Clarity Autoscan system”,Medical physics international,1(2013)により使用されるように、そのような較正ファントムは当技術分野で既知である。
【0041】
心拍検知システム110は、心臓により生成される電気活動を測定する、ECG等の心周期データ158を生成する。心拍検知システム110は、心拍動信号取得をモニタし、トリガー信号を出力し、これはI/O管理システム114により受信される。幾つかの実施形態では、I/O管理システムは、多断面画像128と同時にトリガー信号を受信するように構成される。ECGシステムでは、心電信号の振幅及びRピークトリガーの両方をモニタし得る。ECGシステムは、Rピーク検出時にトリガーパルスを出力し、トリガーパルスはI/Oキャビネットにより受信されタイムスタンプが付される。ECGシステムは、ECCリード間の切替を制御することもできる。
【0042】
DAQ112は、少なくともシステム106、108及び110を制御し、プログラマブル論理コントローラ(PLC)162及び種々のI/Oモジュール164を含み得る。PLC162及びI/Oモジュール164は、開始及び停止のトリガー並びに撮像、心拍動及び位置特定データストリームの正確なタイムスタンプ付与を実行する。
【0043】
治療ビーム放出システム102及び患者位置決めシステム104は任意選択的にI/O管理システム114に結合される。治療ビーム放出システム102は、標的領域146に送達される粒子ビーム170を選択的に生成する粒子エミッタ166及びビームコントローラ168を含み得る。患者位置決めシステム104は、患者サポート172及びポジショナシステム174を含み得る。幾つかの実施形態では、非侵襲的心臓アブレーションシステム100は、同様にI/O管理システム114に結合され得る患者位置確認システム176を含む。患者位置確認システム176は、患者位置を確認するために二重X線又はコーンビーム計算トモグラフィ(CBCT)撮像システムを含み得る。治療ビーム放出システム102、患者位置決めシステム104及び患者位置確認システム176の更なる詳細は、Garonna et al.に見られる。
【0044】
ビームゲーティングシステム116は、ゲーティングコントローラ178に結合されるハードウェア制御及び信号機能を含む。標的運動管理システム118は、ゲーティングコントローラ178とユーザインタフェースするための制御コンソール180を含み得る。制御コンソールは、ユーザ入力及び情報表示を促進するためにグラフィカルユーザインタフェース(GUI)182を含み得る。ゲーティングコントローラ178は、治療ビーム放出システム102、患者位置決めシステム104、多断面撮像システム106から入力を受け取り、且つ/又はそれに出力を送るように動作可能に結合される。ゲーティングコントローラ178は、DAQ112を介してI/O管理システム114とインタフェースし得る。非侵襲的心臓アブレーションシステム100のハードウェア構成要素を制御、調整することに加えて、ゲーティングコントローラは、限定されないが、多断面画像のレジストレーション、心位相の特定(例えば、Garonna et al.に従った)を含め、ビームゲーティングシステム116の求められる種々の計算タスクを記憶、実行するために、コンピュータメモリを含み得る。
【0045】
ビームゲーティングシステム116は、データを処理し、ユーザ及び非侵襲的心臓アブレーションシステム100への更新情報を生成する。ビームゲーティングシステム116は、例えば、グラフィックス処理ユニット(GPU)184を使用して画像、心拍動及び位置特定データストリームをリアルタイム又は準リアルタイムで処理するために使用し得る。代替的に、GPU184は、処置室122に配置され、I/O管理システム114の一部としてI/Oキャビネット124に収容することができる。GPU184は、例えば、多断面画像128及び心周期データ158等のデータを表示するGUI182及び補助ディスプレイモニタ186と通信し得る。ビームゲーティングシステム116は、GUI184を通してオペレータから情報を受け取ることもできる。ビームゲーティングシステム116は、処置室122とは別の制御室188にリモートに配置され得、幾つかの実施形態では、ワークステーションプラットフォーム192に収容されるか又はワークステーションプラットフォーム192をベースとする。
【0046】
ビームゲーティングシステム116は、通信チャネル196を介してビームコントローラ168と通信するインタフェース194を含むこともできる。通信チャネル196はアナログ若しくはデジタルケーブル又は無線チャネルであり得る。ビームゲーティングシステム116は、通信チャネル192を介してゲーティング信号を送信して、粒子エミッタ166を有効化又はゲーティングする。本明細書では、治療ビーム放出システム102を「有効化」することは、粒子ビーム170に患者58を照射させることであり、一方、治療ビーム放出システム102を「ゲーティング」することは、粒子ビーム170が患者58を照射しないようにすることである。より一般に、「ビームゲーティング」という用語は、計画されたように治療ビーム170の送達を一時停止又は再開する信号をビームコントローラ168に送信することを指す。そのような有効化及びゲーティングが達成される方法は、システム固有である。幾つかのシステムは、治療ビーム放出システム102の加速度計をアクティブ化することにより粒子ビーム170を有効化し、加速度計を非アクティブ化することにより粒子ビーム170をゲーティングする。他のシステムは、患者58が照射されないように粒子ビーム170を遮断又は送達することにより、加速度計が粒子エミッタ166をアクティブ化及びゲーティングしたままにする。
【0047】
機能的に、プローブ位置特定システム108は、多断面画像128内の解剖学的構造と位置特定マーカ144を関連付けるために、三次元空間において多断面撮像プローブ50、126を追跡できるようにする。プローブ位置特定システム108は、部屋座標系154における位置特定マーカ144の位置特定及び連続モニタリングを可能にする。
【0048】
プローブ位置特定システム108は、呼吸運動のモニタリングに使用することができる。多断面撮像プローブ50、126及び/又はプローブホルダ142は、位置特定マーカ144を備え、心臓を撮像するために胸部に配置され、呼吸の潮汐運動に従うように適宜位置決めされる。したがって、位置特定マーカ144は、呼吸運動の外部サロゲートとして作用し得る。プローブ位置特定システム108はそれにより、心臓及び標的領域146の近傍の呼吸運動についての外部情報を提供することができる。
【0049】
動作において、多断面運動管理システム118は、治療送達前のシミュレーション段階200(
図5)中及び/又は処置送達が実行される処置段階300(
図6)中、使用することができる。多断面撮像プローブ50、126は、胸骨傍及び尖部視界窓のために、例えば患者58の胸部上にプローブホルダ142を用いて患者58に固定し得る。多断面撮像プローブ50、126は、プローブホルダ142を使用して患者58の胸部上に不動化され、ハンズフリー動作を可能にする。幾つかの実施形態では、多断面超音波プローブ50のビーム形成器の信号処理を利用して、可視化に向けて画像を再構築する。
【0050】
多断面撮像システム106は、経腹腔(横隔膜若しくは肝臓を通る)又は経胸郭(肋骨間)での心臓の連続可視化を提供し得る。多断面撮像プローブ50、126は、非平行であり得、尖部位置又は傍胸骨位置に配置され得、且つ/又は心臓運動により影響される長軸心臓構造又は短軸心臓構造を撮像し得る。
【0051】
非侵襲的心臓アブレーションシステム100は、特定の身体運動周期の所定のフェーズにおいて、粒子ビーム170を標的領域146に送達もする。そのような身体運動周期は呼吸周期及び心臓周期を含み得る。多断面撮像システム106は、リアルタイム撮像からの多断面画像128を標的運動管理システム118に提供する。標的運動管理システム118は、多断面画像128を利用して、例えばGaronna et al.により記載されるように、所定の呼吸及び心位相で粒子ビーム170を送達する。多断面画像128は、同様にゲーティングコントローラ178によって決定され得る粒子ビーム170の求められる性質に関する情報も含み得る。
【0052】
多断面画像128及び心周期データ158は連続して取得され、標的運動管理システム118に更新されることができ、オペレータに情報のライブストリームを提供する。多断面画像128及び心周期データ158は、記憶媒体に記憶され、フェーズ予測プロセスの正確性を査定するために後に解析され、必要に応じて患者58固有のソフトウェアパラメータを採用することもできる。
【0053】
図5を参照して、本開示の一実施形態によるシミュレーション段階200のワークフローを示す。シミュレーション段階200中、処置計画に必要な全てのデータ及び解剖学的情報(例えば、医療画像)が収集され、そこから、患者固有の処置計画が作成される。シミュレーション段階200は、文字「p」で始まる参照文字により
図5に各々示されている一連のプロセスを含み得る。シミュレーション段階200のプロセスは、幾つかの場合、間欠的に実行されるのみでよい位置特定システムの較正プロセス(p210);対象者セットアッププロセス(p220);参照撮像プロセス(p230);計画CTスキャンプロセス(p240);コンタリングプロセス(p250);及び処置計画プロセス(p260)を含み得る。種々のプロセスは、文字「s」で始まる参照文字により
図5に示されている1つ又は複数のステップを含むものとして示される。
【0054】
幾つかの実施形態では、シミュレーション段階200の位置特定較正プロセス(p210)は、CT撮像室で行われ、特に設計された較正ファントムを使用したプローブ位置特定システム108の較正(s211)を含む。較正ファントムステップ(s211)は、後のプロセス及び段階において多断面撮像プローブ50、126を部屋座標系154(例えば、CT撮像室の)において位置特定できるようにする。患者又は対象者セットアッププロセス(p220)が実行され、患者58は腫瘍学的放射線治療手順に従ってCT台に位置決めされる。対象者セットアッププロセス(p220)は、標準不動化及び患者サポートデバイスの使用を含み得る。
【0055】
参照撮像プロセス(p230)が実行され、参照多断面画像が、プローブホルダ142(s234)を使用して患者の胸部に固定された多断面撮像プローブ50、126(s231)を用いて取得される。画像取得中、多断面撮像プローブ50、126は、位置特定マーカ144(s232)を使用してプローブ位置特定システム108により位置特定し得る。このようにして、各参照多断面画像の取得中の多断面撮像プローブ50、126の位置(本明細書では「参照位置」と呼ばれる)は、部屋座標系154(s235)に関して特定することができる。参照撮像プロセスp230において取得された各参照多断面画像の心位相が特定される(s233)。参照多断面画像の取得中、皮膚マーカを患者58の皮膚に配置して(s236)、処置段階300(
図6)における多断面撮像プローブ50、126の再位置決めを支援し得る。幾つかの実施形態では、心周期データ158が、シミュレーション段階中に取得される(s237)。更に、位置特定マーカ144の時間分解位置は、呼吸信号として使用することができる(s238)。
【0056】
幾つかの実施形態では、シミュレーション段階200の計画CTスキャンプロセス(p240)、コンタリングプロセス(p250)及び処置計画プロセス(p260)は、標準の腫瘍学放射線治療手順を実施し得る。計画CTスキャンプロセス(p240)は、四次元(3つの空間次元+時間)コンピュータトモグラフィ(4D-CT)スキャン取得を計画することを含み得る。幾つかの実施形態では、ダミープローブがCT取得計画の取得中に利用されて(s241)、多断面撮像プローブの金属製部品により生成されるCTスキャン上の望ましくないアーチファクトを回避する。ダミープローブは、位置特定マーカ(s242)を使用してプローブ位置特定システム108により位置特定することもできる。追加の心周期データ及び呼吸データを取得することもできる(s244~s247)。4D-CTスキャンでは、呼吸ゲーティング及び心臓ゲーティングの両方を行うことができる。コンタリングプロセス(p250)中、放射線標的がコンタリングされ、一般に、標的領域146近傍の危険に曝されている臓器もコンタリングされる。一例の関連するコンタリングプロセスは、Blanck et al.,“Radiosurgery for ventricular tachycardia:preclinical and clinical evidence and study design for a German multi-center multi-platform feasibility trial(RAVENTA)”,Clin Res Cardiol 109,1319-1332(2020)に見出される。
【0057】
幾つかの実施形態では、計画CTスキャンプロセス(p240)中、2つの心拍動信号が取得される。計画CTスキャンは、典型的には、CTスキャナに直結された第1の心拍検知システムにより取得される心拍動信号#1(s244)からのデータを使用して再構築される。処置送達は、I/O管理システム114の心拍検知システム110によって取得される心拍動信号#2(s245)に基づく。ECGシステムでは、心周期の開始は通常、Rピーク情報を使用して識別されるが、異なるECG供給業者は典型的には、Rピークを識別する各自の方法を有する(例えば、実際のピークの直前又は直後)。したがって、開示される実施形態は、各心拍検知システムのRピーク識別間の相関を確立するために、両方の心拍検知システムから信号を同時に取得することの提供を含む。代替的に、CTスキャナは、それ自体の心拍動信号#1の代わりに、心拍検知システム110からの心拍動信号#2を利用し得るか、又はI/O管理システム114は、それ自体の心拍動信号#2の代わりに、CTスキャナからの心拍動信号#1を利用し得、それにより相関付けの必要性をなくす。
【0058】
同様に、幾つかの実施形態では、2つの呼吸信号RESP#1及びRESP#2を計画CTスキャンプロセス(p240)中に取得し得る。計画CTスキャンは、CT撮像室で利用可能な第1の位置特定システムにより取得され得る、RESP#1(s247)(又は任意の他の呼吸運動サロゲート信号)からのデータを使用して再構築される。処置送達は、I/O管理システム114のプローブ位置特定システム108によって取得され得るRESP#2(s246)に基づく。各位置特定システムは、相関付けを必要とする特殊性を有し得る。例えば、位置特定が複数の光学追跡システムを用いて実行される場合、ある光学追跡システムの態様は、他の光学追跡システムの特性と異なり得る。そのような態様は、追跡される物体に対する光学追跡システムの位置、取得レート、取得待ち時間を含む。したがって、開示される実施形態は、両方の位置特定システムから信号を同時に取得して、各位置特定システムにより検出された呼吸運動間に相関を確立することを含む。代替的に、CT撮像室は、それ自体のRESP#1の代わりに、プローブ位置特定システム108からのRESP#2を利用し得るか、又はI/O管理システム114は、それ自体のRESP#1の代わりに、CT撮像室で使用される位置特定システムからのRESP#1を利用し得、相関付けの必要性をなくす。
【0059】
幾つかの実施形態では、処置計画プロセス(p260)は、処置段階300の3つの入力特性を決定することを含む:(1)部屋座標系154により提供される座標における処置アイソセンタの所望の場所(s261)、(2)処置計画により与えられ、心臓運動に基づいて放射線ビームが有効化又は無効化すべきときを決める心臓ゲーティング窓(s262)、及び(3)処置計画により与えられ、呼吸運動に基づいて放射線ビームが有効化又は無効化すべきときを決める呼吸ゲーティング窓(s263)。更に、処置計画プロセスは、少なくとも1つの参照CTでの標的及び関連する全ての臓器のコンターを生成する。
【0060】
図6を参照して、本開示の一実施形態による処置段階300のワークフローを示す。処置段階300は、周囲の可能な限り多くの正常組織を傷つけないようにしながら、標的に照射線線量を正確に送達することを促進する。処置段階300は、文字「p」で始まる参照文字により
図6に各々が示されている一連のプロセスを含む。プロセスは、幾つかの場合、間欠的に実行されるのみでよい位置特定システムの較正プロセス(p310);対象者セットアッププロセス(p320);多断面プローブセットアッププロセス(p330);骨アライメントプロセス(p340);心臓アライメントプロセス(p350);処置開始プロセス(p360);及びゲーティングプロセス(p370)を含み得る。種々のプロセスは、文字「s」で始まる参照文字により
図6に示されている1つ又は複数のステップを含むものとして示される。
【0061】
幾つかの実施形態では、処置段階300は、ここでも較正ファントム(s311)を使用してプローブ位置特定システム108の較正(p310)で開始される。対象者セットアッププロセス(p320)中、患者58は、シミュレーション段階200と同様に台上に位置決めされる。幾つかの実施形態では、処置室アイソセンタとの皮膚マークの初期アライメントは、例えば、処置室で利用可能なレーザシステムを用いて又は表面撮像システムを用いて対象者セットアッププロセス(p320)中に実行される。多断面撮像プローブ50、126は、プローブホルダ142(s333)を用いて患者58の胸部上に位置決めされ不動化される。多断面撮像プローブ50、126を患者58上の、シミュレーション段階中と同じ位置に位置決めすることを促進するために、皮膚マーク及び位置特定マーカ(s332)からの情報を利用することができる。
【0062】
多断面撮像プローブ50、126が固定された位置にある状態で、患者58は部屋座標系154を使用してアライメントされる。幾つかの実施形態では、骨アライメントプロセス(p340)は、例えば、コーンビームCT(s341)を使用して、骨解剖学的構造に基づいて患者58をアライメントすることを含む。台アライメントステップ(s342)中、アライメントずれは、例えば、CT像、CBCT像又はX線像を用いて識別されるシミュレーション段階200及び処置段階300からの骨解剖学的構造の比較に基づいて計算される。アライメントずれは、患者58をシミュレーション向きとアライメントさせるように、患者ポジショナ174を使用して患者サポート172を走査することによって補正される。幾つかの実施形態では、補正は、患者位置決めシステム104を制御するように、補助インタフェース120の1つを介して多断面運動管理システム118を使用して実行される。
【0063】
心臓アライメントプロセス(p350)中、ライブ多断面画像が取得され、シミュレーション段階200(
図5のp230のs235において)中に取得された参照多断面画像とレジストレーションされる。この剛性レジストレーション(s351)は、一般に「ライブ-シミュレーション」画像レジストレーションと呼ばれ、同じデータ種類の画像間で行われる。例えば、多断面超音波プローブ50を使用する場合、ライブ画像及びシミュレーション画像は両方とも超音波像であり、「超音波間」又は「US間」画像レジストレーションと呼ぶことができる。プロセスは一般に、多断面画像128が超音波像であるか否かに関係なく適用される。幾つかの実施形態では、超音波間画像レジストレーションは、患者セットアップの最終確認として機能する。台微調整ステップ(s353)では、アライメントずれは、多断面画像128を用いて識別されたシミュレーション段階200及び処置段階300からの心臓の軟組織コントラストの比較に基づいて計算される。アライメントずれを補正するために必要な並進及び回転は、任意選択的に多断面運動管理システム118を使用して、ポジショナシステム174を用いて実行される。
【0064】
処置プロセス及びゲーティングプロセス(p360及びp370)の開始時、プローブ位置特定システム108が多断面撮像プローブ50、126を同時に追跡しながら(s372)、ライブ多断面画像がリアルタイム又は準リアルタイムで連続して取得される(s371)。心位相は、参照撮像プロセスp230(s233)において取得された各参照多断面画像においてライブで特定される。ライブ多断面画像に基づいて、4つの異なる出力が生成される:(1)ドリフトモニタリングのための心臓変位情報(p374)、(2)呼吸ゲーティング信号(s375)、(3)心臓ゲーティング信号(s376)(例えば、Garonna et al.に開示される等)、及び(4)治療を要する患者の生理学的変化及び処置の中断を必要とする患者の生理学的変化等の関連する警告及びインターロック(s377)。
【0065】
図7~
図9を参照して、本開示の一実施形態による、部屋座標系154における正しい位置への患者のアライメントを強化する患者セットアップ方法400を示す。患者セットアップ方法は、多断面撮像を使用して心臓アライメントセットアップで骨アライメントセットアップを補足することにより、シミュレーション段階200と同じ位置及び向きで処置段階300において患者58をセットアップすることを支援する。患者セットアップ方法400は、処置段階300の心臓アライメントプロセス(p350)中に達成され得る。方法の態様について以下概説する。
【0066】
シミュレーション段階200において、多断面撮像プローブ50、126の位置特定中(
図5)、シミュレーション段階画像シーケンスSIMが、1つ又は複数の心拍動及び1つ又は複数の呼吸周期の持続時間にわたって取得される。同様に、処置段階300において、多断面撮像プローブ50、126の位置特定中(
図6)、処置段階画像シーケンスTXが、1つ又は複数の心拍動周期及び呼吸周期の持続時間にわたって取得される。
【0067】
SIMシーケンス及びTXシーケンスの両方から、心臓運動フェーズと呼吸運動フェーズとの特定の組合せに属する多断面画像128が抽出され(
図7のステップ400aにおいて)、シミュレーション段階参照ピクセル座標156’及び処置段階参照ピクセル座標156が定義される。例えば、呼気終末呼吸フェーズ及び収縮末期心位相と相関する画像を各シーケンスから抽出することができる。このようにして、心臓運動及び呼吸運動は、SIMシーケンス及びTXシーケンスから抽出された画像で同じ生理学的状態にある。既知の呼吸状態の特定は、ゲーティングコントローラにより実行され得る。そのような既知の呼吸状態は、限定されないが、息留め状況又は呼気終末状況を含む。収縮末期心位相又は他の好ましい心位相の特定もゲーティングコントローラによって特定され得る。
【0068】
粗い剛体レジストレーションがステップ400b(
図8)において実行される。粗い剛体レジストレーションは、SIMシーケンス及びTXシーケンスからの画像402及び402’を重ねる。粗い剛体レジストレーションは、画像取得時の有効プローブ体積56の位置に基づく(
図8のステップ400b)。粗い剛体レジストレーション400bは、SIM画像402及びTX画像402’の内容に関係なく実行される。
【0069】
細かい剛体レジストレーションは、SIM画像402及びTX画像402’の内容に基づいても実行される(
図9のステップ400cにおいて)。粗いレジストレーションと細かいレジストレーションとの組合せは、シミュレーション段階200に対する処置段階300における心臓の並進変位及び回転変位を定量する。したがって、患者セットアップ方法(
図6の処置段階300のプロセスp320、p340及びp350)は、患者58の心臓をシミュレーション段階セットアップに関して正しくアライメントするために、患者58が位置決めされた非侵襲的心臓アブレーションシステム100の患者サポート172を変位させるための並進指示及び回転指示を患者位置決めシステム104に提供し得る(
図6のステップs342及びS353)。粗い剛体レジストレーション及び細かい剛体レジストレーションの基本概念は、Khalil et al.,“An Overview on Image Registration Techniques for Cardiac Diagnosis and Treatment”,Cardiology research and practice,2018(2018)及びChe et al.,“Ultrasound registration:A review”,Methods,115,128-143(2017)に開示されている。
【0070】
上記技法は、処置段階300中、参照ピクセル座標156における心臓の変位又は「ドリフト」をモニタするために使用することもできる。即ち、心臓ドリフトもSIM画像402に関して測定することができる。情報はGUI182で可視化することができ、それにより、オペレータが必要であると見なし得る場合、処置を中断することが可能である。幾つかの実施形態では、処置送達前にオペレータにより与えられる入力に基づいて、例えば心臓が計画標的マージン(運動の不確実性を考慮する)外に長すぎる時間にわたって移動した場合、非侵襲的心臓アブレーションシステム100は、警告及び/又はインターロックを自動的にトリガーし、粒子ビーム170を中断することができる。
【0071】
幾つかの実施形態では、外部情報と内部情報とを組み合わせて、呼吸に起因する心臓の運動をモニタする。多断面撮像プローブ50、126及び患者の胸部上の付随する位置特定マーカ144の配置(
図6のs332、s333)は、上述したように、外部情報を提供する。多断面画像128は、呼吸に起因する心臓の運動についての内部情報を提供する。実際に、多断面画像128は、参照ピクセル座標156における心臓の運動及び多断面撮像プローブ50、126の運動についての情報を含む。
【0072】
外部情報と内部情報の両方の組合せは心臓運動の正確な表現を提供するのに対して、外部情報に依存すると、肺等の周囲の解剖学的構造の移動に基づいて心臓運動を不正確に推測することのみができる。呼吸運動管理のための内部情報と外部情報との組合せは、外部サロゲートにより提供される外部情報に制限されることが多い従来のシステム及び技法からの改良である。
【0073】
図10を参照して、本開示の一実施形態による呼吸運動情報の種々の態様について考察する。多断面画像128は本質的に、多断面撮像プローブ50、126に対する心臓の変位(胸部内部の解剖学的構造の変位から生じる)及び多断面撮像プローブ50、126自体の変位(胸部の拡張及び収縮から生じる)の両方を捕捉する。これらの組み合わされた変位は、剛体レジストレーションプロセスにより多断面画像128から分離し抽出することができる。プローブ位置特定により、2つの寄与を切り離すことができる。レジストレーションプロセスは、心臓変位を特定できるようにする。
【0074】
幾つかの実施形態では、処置開始時(例えば、
図6の処置開始プロセスp360中)、患者が既知の呼吸状態であるとき、患者の拍動している心臓の一連の参照多断面画像が取得される。患者に、例えば息留め状況412に示されるように1つ又は複数の心周期にわたって息を止めるように求めることができる。この息止め又は参照シーケンス412内の各参照多断面画像について、呼吸に起因した運動は、存在せず、心周期データ158に基づいて又はGaronna et al.に記載のように、心位相に関して、心臓運動を原因とした周期的運動を抽出し得る。代替的に、処置の開始時に参照多断面画像を生成する代わりに、シミュレーション段階200中に生成されたSIM画像402(
図5のp230のs235において取得される)を使用し得る。
【0075】
処置段階300中、一連のライブ多断面画像が取得される。対応する心位相の参照多断面画像に対する各ライブ多断面画像の剛体レジストレーションが実行される。例えば、所与のライブ多断面画像の心位相が0.3と識別される場合、そのライブ多断面画像は、0.3と同じ心位相に対応するか、又は0.3と同じ心位相を表す参照多断面画像にレジストレーションされる。この剛体(ライブ-シミュレーション)画像レジストレーションは、
図7~
図9に付随して説明されたTX-SIMレジストレーションのステップと同様であり得、細かいレジストレーション及び粗いレジストレーションを含み得る。
【0076】
処置中、患者は、通常の呼吸状況416中、細かい剛体レジストレーション時間トレース414に示されるように、正常に呼吸することが可能である。画像自体は、取得中のプローブ体積56の空間位置の指示を提供しないため、ライブ-シミュレーション画像の細かいレジストレーション時間トレース414はプローブに対する心臓の変位を示す。通常の呼吸状況416中の位置特定マーカ144の変位を提示する位置特定マーカ時間トレース418も
図10に提示されている。位置特定マーカ時間トレース418は、対照的に、部屋座標に対するプローブ体積の位置変位の指示のみを提供する。通常呼吸416中に取得されるライブ多断面画像は、対応する心位相の参照多断面画像にレジストレーションされる。参照多断面画像とライブ多断面画像の心位相相関により、心臓活動に起因するいかなる相対変位も剛体レジストレーションにより実質的に相殺され、それにより、ライブ-シミュレーション(超音波間)画像の剛体レジストレーション後のいかなる変位指示も主に、多断面撮像プローブ50、126に対する呼吸運動及び/又は心臓ドリフトに起因する。したがって、呼吸に起因した心臓の運動は、剛体レジストレーション時間トレース414と位置特定時間トレース418との間の差から推測することができる。
【0077】
呼吸に起因した心臓運動の推測は完全(粗い及び細かい)レジストレーションによって達成され、これも
図10に示されている。完全レジストレーションの手順は以下である:細かい剛体レジストレーション時間トレース414と位置特定(粗いレジストレーション)時間トレース418との間の差Δが、グラフ410では時間t=30秒に示されている。差Δはレジストレーション時間トレース414を参照してのものであり得、その場合、t=30秒に示されているΔの値は負又は反転される(グラフ410では下向きの矢印で表されている)。時間の関数として差Δの差時間トレース422を提示するサブプロット420も
図10に提供されている。差時間トレース422の周期的態様は、呼吸に起因した心臓の運動を表し、呼吸ゲーティング又は運動モニタリングを目的として呼吸周期の信頼性の高い動的指示を提供する。
【0078】
心臓ドリフトの検出もサブプロット420に示されている。一般に、グラフ410における位置特定時間トレース418に対する細かいレジストレーション時間トレース414の上向きの移行は、心臓ドリフトを示す。心臓ドリフトは、差時間トレース422の下向きの移行によりサブプロット420に示されている。時間トレース414及び422の逆方向の移行の原因は、差Δの大きさ反転である。通常の呼吸フェーズ416の初期呼吸周期にわたり、ゼロである差Δを表す中央値データ線424を確立し得る。動作帯域430は、サブプロット420上の差Δの下限閾値426及び上限閾値428によって区切られる。動作帯域は、非侵襲的心臓アブレーションシステム100が動作することができる差Δの許容可能範囲を表す。差時間トレース422は、出口点432において動作帯域430の下限閾値426を超えて示され、再突入点434において動作帯域430内に戻るものとして示されている。したがって、出口点432と再突入点434との間に動作帯域430の穴436が存在する。
【0079】
幾つかの実施形態では、ビームゲーティングシステム116は、差Δが動作帯域430外である場合、治療ビーム170の送達をゲーティング又は無効化するように構成される。ビームゲーティングシステム116は、差Δが動作帯域430に再び入る場合、治療ビーム170の送達を有効化するように構成することもできる。幾つかの実施形態では、ビームゲーティングシステム116は、穴436が所定の時間量を超える場合のみ、治療ビーム170の送達をゲーティングするように構成される。同様に、ビームゲーティングシステム116は、動作帯域への再突入が所定の時間量を超える場合のみ、治療ビーム170の送達を有効化するように構成される。幾つかの実施形態では、上限及び下限閾値426及び428は、例えば、制御コンソール180を使用してシステムオペレータにより入力される。
【0080】
図10のグラフ410は、例示を目的として含められ、単一の座標に沿った一次元変位データを提示している。本開示に鑑みて、多断面撮像プローブ50、126が三次元での情報を提供し、したがって三次元での変位情報を提供可能なことを当業者は認識するであろう。
【0081】
時間トレース414及び418は、両方とも患者呼吸の結果であるため、同じ時間パターンを有する。したがって、位置特定マーカ時間トレース418は、ライブ-シミュレーション画像レジストレーションへのチェックとして機能する冗長性を提供し得る。ライブ-シミュレーション(例えば、US間)レジストレーションが位置特定マーカ144のモニタリングに失敗する場合、位置特定は、呼吸フェーズを特定するためのバックアップを提供することもできる。加えて、位置特定マーカにより提供される情報は、心臓周囲の解剖学的構造がどのように位置するかを更に理解するために使用することができる追加情報を提供し得る。
【0082】
図11を参照して、本開示の一実施形態による、
図10で考察した呼吸運動の態様に基づいて多断面画像128から呼吸運動情報を抽出する方法を示す。患者内の拍動している心臓の参照多断面画像が、多断面撮像デバイスを用いて取得され(s451);ステップ451の参照多断面画像での撮像プローブの参照位置を同時に取得し(s452);ステップs451の参照多断面画像の心位相を識別し(s453);ステップs451~s453を繰り返して、一連の参照多断面画像並びに対応するプローブ位置及び心位相を取得する(s454)。一連の参照多断面画像は、処置プロセスp460中にアクセスするために、例えばゲーティングコントローラ178のコンピュータ可読記憶媒体に記憶される。
【0083】
処置プロセス460が続けて実行される:患者のビーム治療処置中、多断面撮像プローブを用いてライブ多断面画像を取得し(s466);多断面撮像プローブのライブ位置を同時に取得し(s467);ライブ多断面画像の心位相を識別し(s467);ステップ455において取得された対応する参照画像と関連する、参照用の一連のうちの対応する画像及び対応する参照位置とのライブ多断面画像及びライブ位置の剛体レジストレーションを実行し、対応する参照画像は、ライブ多断面画像の心位相を表す。剛体レジストレーションは、三次元座標系に対する、患者のビーム治療処置中の拍動している心臓のライブ心臓位置を提供して、参照位置に対する拍動している心臓のライブ変位を提供する。幾つかの実施形態では、所定の閾値との上記変位の比較に基づくステータス状況が、ビームゲーティングシステム116による更新のために生成される。ステップs461~s466は、外部ビーム治療処置の持続時間にわたって繰り返される。
【0084】
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される種々の方法のステップは、プリントされた文書、コンパクトディスク又はフラッシュドライブ等の有形の非一時的媒体に提供される命令の形態で提供される。有形の非一時的媒体の非限定的な例には、紙文書並びにコンパクトディスク及び磁気記憶装置(例えば、ハードディスク、フラッシュドライブ、カートリッジ、フロッピードライブ)を含むコンピュータ可読媒体がある。コンピュータ可読媒体は、ローカルであり得るか、又はインターネットを経由してアクセス可能であり得る。命令は、単一の媒体で完了され得るか、又は2つ以上の媒体に分けられ得る。例えば、命令の幾つかは、インターネットを経由して方法のステップの1つ又は複数にアクセスするようにユーザに指示する紙文書に書くことができ、インターネットアクセス可能なステップは1つ又は複数のコンピュータ可読媒体に記憶される。
【0085】
本明細書に開示される追加の図及び方法の各々は、改良されたデバイス並びにその作製方法及び使用方法を提供するために別個に使用され得るか、又は他の特徴及び方法と組み合わせて使用され得る。したがって、本明細書に開示される特徴及び方法の組合せは、最も広い意味で本開示の実施に必ずしも必要であるわけではなく、代わりに代表的で好ましい実施形態を特に説明するためにのみに開示される。
【0086】
本開示を読んだ上で、実施形態に対する種々の変更形態が当業者に明らかであり得る。例えば、当業者は、異なる実施形態で説明された種々の特徴が他の特徴と単独で又は異なる組合せで適宜結合、結合解除及び再結合可能であることを認識するであろう。同様に、上述した種々の特徴の全ては、本開示の範囲又は趣旨への限定ではなく、実施形態例と見なされるべきである。
【0087】
種々の実施形態は、上述した任意の個々の実施形態に示されるよりも少数の特徴を含み得ることを当業者は認識するであろう。本明細書に記載された実施形態は、種々の特徴を組み合わせることができる方法の網羅的な提示であることを意図しない。したがって、実施形態は、特徴の相互に排他的な組合せではなく、むしろ、特許請求の範囲は、当業者に理解されるように、異なる個々の実施形態から選択される異なる個々の特徴の組合せを含むことができる。
【0088】
以下の文献は、全体的に参照により本明細書に援用される:Topolnjak et al.,"Image-guided radiotherapy for left-sided breast cancer patients:geometrical uncertainty of the heart",International Journal of Radiation Oncology*Biology*Physics,82(4),e647-e655(2012);Kincaid Jr et al.,"Investigation of gated cone-beam CT to reduce respiratory motion blurring",Medical physics,40(4),041717(2013);Nankali et al.,"Geometric and dosimetric comparison of four intrafraction motion adaptation strategies for stereotactic liver radiotherapy",Physics in Medicine&Biology,63(14),145010(2018);Fayad et al.,"Correlation of respiratory motion between external patient surface and internal anatomical landmarks",Medical physics,38(6Part1),3157-3164(2011);Robinson et al.,"An evaluation of the Clarity 3D ultrasound system for prostate localization",Journal of applied clinical medical physics,13(4),100-112(2012);De Luca et al.,"The 2014 liver ultrasound tracking benchmark",Physics in Medicine&Biology,60(14),5571(2015);Lachaine et al.,"Intrafractional prostate motion management with the Clarity Autoscan system",Medical physics international,1(2013);Ipsen et al.,"Target tracking accuracy and latency with different 4D ultrasound systems-a robotic phantom study",Current Directions in Biomedical Engineering,6(1)(2020);Queiros et al.,"Fast left ventricle tracking using localized anatomical affine optical flow",International journal for numerical methods in biomedical engineering,33(11),e2871(2017);Roujol et al.,"Characterization of respiratory and cardiac motion from electro-anatomical mapping data for improved fusion of MRI to left ventricular electrograms",PloS one,8(11),e78852(2013);Baker et al.,"Prostate displacement during transabdominal ultrasound image-guided radiotherapy assessed by real-time four-dimensional transperineal monitoring",Acta Oncologica,54(9),1508-1514(2015);Khalil et al.,"An Overview on Image Registration Techniques for Cardiac Diagnosis and Treatment",Cardiology research and practice,2018(2018);Che et al.,"Ultrasound registration:A review",Methods,115,128-143(2017);Hoogeman et al.,"Clinical accuracy of the respiratory tumor tracking system of the cyberknife:assessment by analysis of log files",International Journal of Radiation Oncology*Biology*Physics,74(1),297-303(2009);Depuydt et al.,"Treating patients with real-time tumor tracking using the Vero gimbaled linac system:implementation and first review",Radiotherapy and Oncology,112(3),343-351(2014);Keall et al.,"The management of respiratory motion in radiation oncology report of AAPM Task Group 76a"(2006);Blanck et al.,"Radiosurgery for ventricular tachycardia:preclinical and clinical evidence and study design for a German multi-center multi-platform feasibility trial(RAVENTA)",Clin Res Cardiol 109,1319-1332(2020);Zei et al.,"Ablative Radiotherapy as a Noninvasive Alternative to Catheter Ablation for Cardiac Arrhythmias"Curr Cardiol Rep(2017);van der Ree et al.,"Cardiac Radioablation-a Systematic Review",Heart Rhythm(2020);Graeff et al.,"Noninvasive cardiac arrhythmia ablation with particle beams",Med Phys 45(11)(2018);O'Shea et al.,"Review of ultrasound image guidance in external beam radiotherapy part II:intra-fraction motion management and novel applications",Physics in Medicine&Biology,v61(8)(2016);Fontanarosa et al.,"Review of ultrasound image guidance in external beam radiotherapy:I.Treatment planning and inter-fraction motion management",Physics in Medicine&Biology,v60(3),R77(2015);Bertholet et al.,"Real-time intrafraction motion monitoring in external beam radiotherapy",Physics in Medicine 64(15)(2019);Ipsen,"See what you treat:4d ultrasound imaging for real time motion compensation in the liver",PhD Thesis University of Luebeck(2019);Ipsen et al,"Radiotherapy beyond cancer:Target localization in real-time MRI and treatment planning for cardiac radiosurgery",Med Phys 41(12)(2014);Poon et al.,"Technical Note:Cardiac synchronized volumetric modulated arc therapy for stereotactic arrhythmia radioablation - Proof of principle",Med Phys 47(8)2020。
【0089】
本明細書における文献の参照によるいかなる援用も、本明細書における明確な開示と逆の趣旨が援用されないように制限される。上記文献の参照による援用が、文献に含まれる特許請求の範囲が本明細書での参照により援用されないように更に制限される。上記文献の参照によるいかなる援用も、文献に提供される定義が、明確に本明細書に含まれない限り、本明細書での参照により援用されないように更に制限される。
【0090】
別記される場合を除き、本明細書に含まれる「実施形態」、「開示」、「本開示」、「本開示の実施形態」、「開示される実施形態」等の言及は、認められた先行技術ではない本特許出願の明細書(特許請求の範囲を含む文章及び図)を指す。
【0091】
特許請求の範囲を理解するために、「~するための手段」又は「~するステップ」という特定の用語が各請求項で記載される場合を除き、米国特許法第112条(f)項の規定が行使されるべきではないことが明確に意図される。
【国際調査報告】