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特表2024-501503再生織物材料からのパルプを漂白する方法
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  • 特表-再生織物材料からのパルプを漂白する方法 図1
  • 特表-再生織物材料からのパルプを漂白する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】再生織物材料からのパルプを漂白する方法
(51)【国際特許分類】
   D21C 9/153 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
D21C9/153
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023536955
(86)(22)【出願日】2021-11-08
(85)【翻訳文提出日】2023-08-15
(86)【国際出願番号】 SE2021051110
(87)【国際公開番号】W WO2022139651
(87)【国際公開日】2022-06-30
(31)【優先権主張番号】2051513-6
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515203011
【氏名又は名称】バルメット・アー・ベー
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベンナシュトレーム,マリア
【テーマコード(参考)】
4L055
【Fターム(参考)】
4L055AA11
4L055AC09
4L055AG07
4L055AG08
4L055AG34
4L055BB15
4L055BB18
4L055BB19
4L055BB22
4L055BD10
4L055EA03
4L055EA31
4L055EA32
4L055FA05
(57)【要約】
本発明はセルロースを含む再生織物材料から形成されたパルプの漂白方法に関し、該方法は少なくとも12kg/odtの必要量でオゾンを添加することによるパルプのオゾン漂白(3、13a、13b)を含み、該オゾン漂白(13a、13b)は2つの後続のステップとして実行され、各ステップが、総必要量が少なくとも12kg/odtとなるような必要量でオゾンを添加することを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースを含む再生織物材料から形成されたパルプの漂白方法であって、少なくとも12kg/odtの必要量でオゾンを添加することによりパルプをオゾン漂白(3、13a、13b)することを含み、
該オゾン漂白(13a、13b)は2つの後続のステップとして実行され、各ステップは、総必要量が少なくとも12kg/odtとなるような必要量でオゾンを添加することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記オゾンが、少なくとも15kg/odtの総必要量で添加される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オゾン漂白の前にパルプを前処理すること(2、12)をさらに含み、該前処理が以下を含む、請求項1又は2に記載の方法。
- 少なくとも1種類の酸を添加してパルプのpHを下げること、及び
- 1種以上の添加剤を添加すること。
【請求項4】
前記1種以上の添加剤が、1種以上のキレート剤及び/又はラジカル消去剤を含み得る、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記1種以上の添加剤が、シュウ酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、DTPA、硫酸マグネシウム又は塩化カルシウムを含む群から選択される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記オゾン漂白(3、13a、13b)の後に、前記パルプを過酸化物漂白すること(5、15)をさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記過酸化物漂白(15)の後に、前記パルプを二酸化塩素漂白すること(16)をさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記過酸化物漂白(5、15)の前又はその間に、硫酸マグネシウムのようなラジカル消去剤(4)を添加することをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記パルプが、オゾン漂白(3、13a、13b)の前に、少なくとも30%、好ましくは35~42%の範囲内のコンシステンシーで提供される(1)、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セルロースを含む再生織物材料から形成されるパルプを漂白する方法に関し、この方法は、オゾン漂白を含む。本発明はまた、対応するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、織物材料の再生が関心を集めている。Renewcell社は、セルロースを含む織物材料からセルロースを再生するプロセスを開発した(例えば、WO2018/073177A1号参照)。再生されたセルロースは異なる目的、例えば、ビスコースを製造するために使用することができる。上記刊行物では、再生織物材料の脱色/漂白の必要性が明記され、酸素及びオゾン漂白の組み合わせを使用することが提案されている。
【0003】
木質材料からのセルロースパルプのオゾン漂白は当該技術分野ではよく知られており、ここでは、オゾンは該木質材料に由来するリグニンと反応し、それを分解する。織物材料からパルプを漂白することに関して言えば、オゾン漂白の目的は多少異なり、主にセルロース及び液体(水)からなるパルプに含まれる着色顔料を漂白又は分解することである。しかし、オゾンの使用にもかかわらず、得られたパルプの十分な白色度を達成することは困難であることが証明された。さらに、オゾンの酸化特性はまた、セルロース繊維を攻撃し、得られたパルプの粘度を不十分に低いレベルまで低下させることがある。したがって、再生織物材料からのパルプを漂白/脱色するための改善された方法が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2018/073177号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、背景の節で先に記載した問題の少なくともいくつかを解決又は改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これら及びその他の目的は、本発明により、独立請求項に従った方法によって達成される。
【0007】
本発明によれば、セルロースを含む再生織物材料から形成されるパルプを漂白する方法が提供される。この方法は、少なくとも12kg/odtの全必要量で、又はさらに有利には少なくとも15kg/odtの必要量で、2つの後続のステップでオゾンを添加することにより該パルプをオゾン漂白することを含み、ここで、単位「odt」は、オーブンで乾燥されたトン(1トンは1000kgである)を表す。
【0008】
木質材料からセルロースパルプを漂白/脱リグニンする際には、通常、8kg/odt以下のオゾン必要量が用いられるが、これは、より高い必要量は得られるパルプの白色度を改善しないという知見に基づくものである。オゾン漂白の分野におけるこの従来の慣行に反して、本発明は、12kg/odt又は15kg/odtといった大幅に多い必要量が、漂白されるセルロースパルプが再生織物材料から形成される場合、得られるパルプの白色度を驚くべき程度までさらに改善するという見識に基づいている。実験データは、約65%というISO白色度を有する未漂白パルプが、本発明方法によって定義されるように2つのオゾン漂白ステップを使用するだけで約80%という白色度まで漂白できることを示した。過酸化物漂白ステップ及び/又は二酸化塩素漂白ステップのようなさらなる漂白ステップでオゾン漂白を補足することにより、約90%又はさらに高い満足な最終白色度が得られる。
【0009】
実施形態では、本方法は、前記オゾン漂白の前にパルプを前処理することを含み、前処理は、パルプのpHを低下させるために少なくとも1種の酸を添加すること及び1種以上の添加剤を添加することを含む。1種以上の添加剤は、少なくとも1種の酸と共に、すなわち、同時に添加することができる。あるいは、1種以上の添加剤を、少なくとも1種の酸の前又は後に添加してもよい。少なくとも1種の酸は硫酸を含むことができる。少なくとも1種の酸は、pHを2~3の範囲、好ましくは2~2.5の範囲又は2.5~3の範囲内に低下させるような必要量で添加することができる。1種以上の添加剤は、1種以上のキレート剤及び/又はラジカル消去剤を含み得る。キレート剤は、パルプ中の金属イオンの含有量を減少させることによって、オゾン漂白ステップにおける選択性が改善されるという効果を提供し、この金属イオンは、フリーラジカルへのオゾンの分解を触媒し、次いで、セルロースの分解を引き起こす。ラジカル消去剤は金属イオンを捕捉することにより同様の効果を有する。キレート剤及びラジカル消去剤の使用は、本発明において使用される異常に高いオゾン必要量と共に特に有利であることが判明しており、それがなければ、過剰なセルロース分解を引き起こし、その結果、得られるパルプの粘度が低すぎる可能性がある。1種以上の添加剤は、シュウ酸、酢酸、エチレンジアミン四酢酸、EDTA、ジエチレントリアミン五酢酸、DTPA、硫酸マグネシウム又は塩化カルシウムを含む群から選択することができる。
【0010】
実施形態において、添加剤を1~2kg/odtの必要量で添加することができる。オゾンは、ガス混合物として、例えば、オゾン-空気混合物中のオゾンが8~14重量%となるよう添加することができる。オゾン漂白ステップは、1~10分間、例えば、40~70℃の温度で、例えば、30~42%、好ましくは34~40%のパルプコンシステンシーで実施することができる。
【0011】
実施形態において、本方法は、オゾン漂白の後に、1つ以上のさらなる漂白ステップを含む。例えば、この方法は、パルプのオゾンの後に過酸化水素漂白ステップを含むことができる。この方法は、過酸化物漂白の後に、二酸化塩素漂白ステップをさらに含んでもよい。他の実施形態では、二酸化塩素漂白ステップは、過酸化物漂白ステップの前に行われる。さらに他の実施形態では、二酸化塩素漂白ステップは、オゾン漂白後に、先行する又はその後に続く過酸化物漂白ステップなしで行われる。
【0012】
過酸化物漂白ステップ及びその後の二酸化塩素漂白ステップを含む実施形態では、方法は、好ましくは、過酸化物漂白の前又は間に、硫酸マグネシウムなどのラジカル消去剤を添加することを含む。このようにラジカル消去剤を添加すると、驚くべきことに、二酸化塩素漂白ステップ後の粘度にプラスの効果があることが証明された。より具体的には、ラジカル消去剤は、過酸化物ステップにわたって粘度の(喪失)に大きな影響を及ぼすことは証明されていないが、粘度喪失が実質的に減少するか、又は防止さえされるという意味で二酸化塩素漂白ステップに影響を及ぼす。
【0013】
実施形態において、パルプは、オゾン漂白ステップの前に、少なくとも30%、好ましくは35~42%の範囲内のコンシステンシーを有する。この種のパルプのオゾン漂白は、この場合、多量の液体が、オゾンがパルプの乾燥分(セルロース)に浸透するのを防止し得るので、中程度のコンシステンシーのパルプ上で実施することが困難であることが証明されている。したがって、オゾン漂白ステップに高いコンシステンシー(少なくとも30%、好ましくは35~42%のコンシステンシー)でパルプを提供することが有利である。換言すれば、この方法は、このような高いコンシステンシーでパルプを提供すること、あるいはパルプを低い又は中程度のコンシステンシーで提供し、その後、パルプを、オゾン漂白ステップの前に脱水/増粘ステップに供することを含む。セルロースパルプの脱水/増粘は当技術分野ではよく知られており、ここではこれ以上詳細には記載しない。
【0014】
実施形態において、本方法は、オゾン漂白の前にパルプの酸素漂白を含む。前処理を含む実施形態では、酸素漂白ステップは、前処理ステップの前に実施される。他の実施形態では、本方法は、オゾン漂白後のパルプの酸素漂白を含む。酸素漂白、すなわち、酸素を加えることによる漂白は当技術分野ではよく知られており、ここではこれ以上詳細には記載しない。
【0015】
漂白のための方法は、例えば、オゾン漂白の後、すなわち、さらなる漂白ステップの前に、漂白ステップの間に、通常1回以上の洗浄ステップを含むことが理解される。
【0016】
上記の実施形態の特徴は、これらの特徴の組合せを有する実施形態を形成するために、いずれかの実用的に実現可能な方法で組合せ可能である。さらに、本発明の第1の態様を参照して上記した実施形態の全ての特徴及び利点を、本発明の第2の態様の対応する実施形態に適用することができる。
【0017】
本発明の上記及び他の態様は、ここで、本発明の好適な実施形態を示す添付の図を用いて、より詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による方法の実施形態を示すフローチャートを示す。
図2】本発明による方法の別の実施形態を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の態様による方法の実施形態を示すフローチャートを示す。この方法は、あるコンシステンシー(これは、本発明の実施形態では、少なくとも30%、好ましくは35~42%の範囲内である)でパルプを提供する(1)ことを含む。その後、パルプを前処理(2)し、これは硫酸を加えてパルプのpHを2~3の範囲内に低下させ、添加剤を硫酸と共に、すなわち、硫酸と同時に加えるというサブステップを含む。添加剤はEDTAを含む。前処理されたパルプは、その後、少なくとも12kg/odtの総必要量で、2つの後続のステップにおいてオゾンを添加することによって、オゾン漂白(3)に供される。本発明の一実施形態では、総必要量は少なくとも15kg/odtである。オゾン漂白されたパルプは、その後、任意の過酸化水素漂白ステップ(5)に供される。過酸化物漂白ステップと同時に、又はその直前に、硫酸マグネシウムのようなラジカル消去剤を(4)添加する。過酸化物漂白後、パルプは、任意に二酸化塩素漂白(6)に供される。図1のフローチャートには示されていないが、本方法は、少なくとも1つの洗浄ステップをさらに含み、洗浄ステップは、提供ステップ(1)中、オゾン漂白(3)と過酸化物漂白(5)との間、及び/又は過酸化物漂白(5)と二酸化塩素漂白(6)との間に含まれてもよいことが理解される。上記ステップを実施するための適切な装置は当技術分野でよく知られており、本明細書には記載しない。
【0020】
図2は、本発明の第1の態様による方法の別の実施形態を模式的に示す。この方法は、例えば、WO2018/073177A1号に記載されているような還元条件下で材料を膨潤させることによって、再生織物材料をパルプ化(10)してセルロースパルプを形成することを含む。パルプ化10は、ガス状酸素が(高コンシステンシー)パルプの液相に導入される任意の酸素漂白段階11の前に、形成されたパルプを洗浄することを含むことができる。酸素漂白は、任意に、パルプを脱水すること、及び/又は酸素漂白がアルカリ性条件で行われるようにアルカリ剤を添加することを含む。酸素漂白11は、前処理12の前に形成されたパルプを洗浄することを含むことができる。硫酸を加えてパルプのpHを2~3の範囲内に低下させ、添加剤を硫酸と共に加え、すなわち、硫酸と同時に加えることによってパルプを前処理する(12)。添加物はシュウ酸及び/又はEDTA及び/又は硫酸マグネシウムを含む。前処理は、酸及び添加剤を添加する前に、パルプを低コンシステンシーに希釈することを含んでもよい。添加物は1~2kg/odtの必要量で添加することができる。パルプは、好ましくは、パルプが少なくとも30%、好ましくは35~42%の範囲内のコンシステンシーで、それに提供されるように、第1のオゾン漂白13aの前に脱水/増粘される。第1のオゾン漂白段階の後、パルプは第2のオゾン漂白段階13bに供される。オゾンは、例えば、オゾン-空気混合物中のオゾンが8~16重量%、好ましくは10~12重量%のガス混合物として添加される。オゾン漂白ステップは、40~70℃の温度で1~10分間実施することができる。2つのオゾン漂白段階の総オゾン必要量は、少なくとも12kg/odt又は15kg/odtになる。オゾン漂白パルプは、その後、任意に洗浄段階を介して、過酸化水素漂白段階15に送られる。硫酸マグネシウムのようなラジカル消去剤を、過酸化物漂白段階15において添加する。過酸化物漂白後、パルプは二酸化塩素漂白段階16に供される。任意に、パルプは、過酸化物漂白段階と二酸化塩素漂白段階との間の洗浄段階に供される。
【0021】
上記の説明及び添付の図面は、本発明の非限定的な例であると考えられる。当業者は、いくつかの変更及び修正が本発明の範囲内でなされ得ることを理解する。例えば、得られたパルプの必要とされる白色度に応じて、オゾン漂白ステップの前又は後の漂白ステップの一つ以上を省略してもよい。例えば、(ラジカル消去剤ステップの関連する添加と共に)二酸化塩素漂白ステップを省略してもよいし、過酸化物漂白ステップを省略してもよい。さらに、オゾン漂白は、より少数の、又はそれ以上のサブステップを用いて行うことができる。
図1
図2
【国際調査報告】