(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】電気外科切除器具
(51)【国際特許分類】
A61B 18/14 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537030
(86)(22)【出願日】2021-11-02
(85)【翻訳文提出日】2023-06-22
(86)【国際出願番号】 EP2021080377
(87)【国際公開番号】W WO2022128230
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512008495
【氏名又は名称】クレオ・メディカル・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】CREO MEDICAL LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,クリストファー・ポール
(72)【発明者】
【氏名】ウルリヒ,ジョージ・クリスチャン
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK04
4C160KK19
4C160KK38
4C160KK39
(57)【要約】
本発明は、生体組織を切断、凝固、及び切除するための電気外科切除器具に関する。電気外科切除器具は、第1のジョーと第2のジョーとを備える機器先端を有し、第2のジョーは、閉位置と開位置との間で第1のジョーに対して可動である。第1のジョーは、互いに電気的に絶縁された第1の電極対を備え、第1の電極対は内側電極及び外側電極を備え、第2のジョーは単一電極を備える。第1の電極対は、RF EMエネルギーを送達するための活性電極及び戻り電極として動作可能であり、単一電極は、第1のジョーの内側電極が戻り電極として動作可能な場合、活性電極として動作可能であり、または第1のジョーの内側電極が活性電極として動作可能な場合、戻り電極として動作可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気外科切除器具であって、
高周波(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを搬送するためのエネルギー伝達構造であって、誘電体材料により内側導体が外側導体から分離された同軸伝送線を備える、前記エネルギー伝達構造、
前記エネルギー伝達構造の遠位端に取り付けられた機器先端であって、第1のジョー及び第2のジョーを備える、前記機器先端、を備え、
前記第2のジョーは、前記第1のジョーと前記第2のジョーが互いに並んで静止する閉位置と、前記第2のジョーが生物学的組織を受け入れるための隙間によって前記第1のジョーから間が空けられている開位置との間で、前記第1のジョーに対して可動であり、
前記第1のジョーは、互いに電気的に絶縁された第1の電極対を備え、前記第1の電極対は内側電極及び外側電極を備え、
前記第2のジョーは単一電極を備え、
前記第1の電極対が前記エネルギー伝達構造によって搬送されるRF EMエネルギーを送達するための活性及び戻り電極として動作可能であるように、前記第1の電極対は前記エネルギー伝達構造に結合され、
前記単一電極は、前記エネルギー伝達構造によって搬送されるRF EMエネルギーを送達するために前記エネルギー伝達構造に結合され、前記第1のジョーの前記内側電極が戻り電極として動作可能な場合、前記単一電極が活性電極として動作可能であるか、または前記第1のジョーの前記内側電極が活性電極として動作可能な場合、戻り電極として動作可能であり、
前記機器先端は、前記エネルギー伝達構造によって搬送されるマイクロ波EMエネルギーを放出するためのマイクロ波場放出構造として動作可能である、
前記電気外科切除器具。
【請求項2】
前記第1のジョーは、前記第2のジョーに向いている内面と、前記第2のジョーとは反対側を向く外面とを有する第1の平面誘電体要素を備え、前記内側電極は、前記第1の平面誘電体要素の前記内面に配置され、前記外側電極は、前記第1の平面誘電体要素の前記外面に配置され、
前記第2のジョーは、前記第1のジョーに向いている内面と、前記第1のジョーとは反対側を向く外面とを有する第2の平面誘電体要素を備え、前記単一電極が、
前記第2の平面誘電体要素の前記内面に配置された内側電極か、または
前記第2の平面誘電体要素の前記外面に配置された外側電極のいずれかを備える、
請求項1に記載の電気外科機器。
【請求項3】
前記第1のジョーの前記内側電極は、前記第1の平面誘電体要素の前記内面に形成された第1の導電層を備え、
前記第2のジョーの前記単一電極は、前記第2の平面誘電体要素の前記内面に形成された第2の導電層を備える、
請求項2に記載の電気外科機器。
【請求項4】
前記第1のジョーは、前記第2のジョーの方に向いている内面を有する第3の平面誘電体要素を含み、前記第3の平面誘電体要素は、前記第1のジョーの前記内側電極の内面に配置される、請求項3に記載の電気外科機器。
【請求項5】
前記第2のジョーは、前記第1のジョーの方に向いている内面を有する第4の平面誘電体要素を含み、前記第4の平面誘電体要素は、前記第2のジョーの前記単一電極の内面に配置される、請求項3または請求項4に記載の電気外科機器。
【請求項6】
前記第1のジョーは、前記第1の平面誘電体要素の前記外面に取り付けられ、前記第1の電極対の前記外側電極の少なくとも一部を形成するように配置される第1の導電性シェルをさらに備える、請求項2~5のいずれか一項に記載の電気外科機器。
【請求項7】
前記第2のジョーは、前記第2の平面誘電体要素の前記外面に取り付けられ、前記第2のジョーの前記単一電極の少なくとも一部を形成するように配置される第2の導電性シェルをさらに備える、請求項2に記載の電気外科機器。
【請求項8】
前記第1のジョーの前記外側電極と前記第2のジョーの前記単一電極とが互いに電気的に接続されている、請求項2~7のいずれか一項に記載の電気外科機器。
【請求項9】
前記機器先端が、前記第1のジョーの前記外側電極及び前記第2のジョーの前記単一電極を前記エネルギー伝達構造の前記遠位端に接続するベース構造をさらに備える、請求項8に記載の電気外科機器。
【請求項10】
前記ベース構造が、
前記第1のジョーの前記外側電極を前記エネルギー伝達構造の前記遠位端にしっかりと接続する第1のベース部と、
前記第2のジョーが枢動可能に接続される第2のベース部であって、前記第2のジョーは、前記第2のベース部に対して枢動可能である、前記第2のベース部と、
を含む、請求項9に記載の電気外科機器。
【請求項11】
前記ベース構造が、前記第1のジョーの前記外側電極及び/または前記第2のジョーの前記単一電極を、前記同軸伝送線の遠位端において、前記内側導体及び前記外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続する導電性材料を含む、請求項9または10に記載の電気外科機器。
【請求項12】
前記ベース構造は、前記第1のジョーの前記内側電極が前記同軸伝送線の前記遠位端において、前記内側導体及び前記外側導体のうちの第2の導体に電気的に接続される、請求項11に記載の電気外科機器。
【請求項13】
前記キャビティは誘電体材料を含む、請求項12に記載の電気外科機器。
【請求項14】
前記ベース構造は、前記キャビティ内に誘電体材料を注入するために、前記ベース構造の側壁に形成された開口部を備える、請求項12または13に記載の電気外科機器。
【請求項15】
前記第1のジョーの前記外側電極と前記第2のジョーの前記単一電極は、両方共、前記内側導体と前記外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続され、
前記第1のジョーの前記内側電極は、前記内側導体と前記外側導体のうちの第2の導体に電気的に接続される、請求項2~14のいずれか一項に記載の電気外科機器。
【請求項16】
前記第1の電極対及び前記単一電極は、前記エネルギー伝達構造によって搬送されるマイクロ波EMエネルギーを放出するためのマイクロ波場放出構造として一緒に動作可能である、請求項2~15の一項に記載の電気外科機器。
【請求項17】
電気外科器械であって、
高周波(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを供給する電気外科用発電機、
患者の体内に挿入するための機器コードを有する外科用スコープ装置であって、前記機器コードは、前記外科用スコープ装置を貫いて延びる機器チャネルを有する、前記外科用スコープ装置、及び、
前記外科用スコープ装置の前記機器チャネルを通して挿入される先行請求項のいずれかに記載の電気外科切除器具、
を含む、前記電気外科器械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体組織を切断、凝固、及び切除するための電気外科切除器具に関する。特に、本発明は、生体組織の切断、止血(すなわち、血液の凝固を促進することによる壊れた血管の封止)及び組織切除のために、高周波(RF)エネルギー及び/またはマイクロ波周波数エネルギーを送達することができる電気外科切除器具に関する。
【背景技術】
【0002】
外科的切除は、ヒトまたは動物の体内から器官の部分を除去する手段である。器官は、血管が多い場合がある。組織が切断される(すなわち、分割または離断される)際、小さい血管が損傷されるか、または破裂する。初期の出血に続いて、出血点を塞ぐことを試みて血液が凝血塊に変えられる凝固カスケードが起こる。手術中、患者が失う血液が可能な限り少ないことが望ましく、したがって出血のない切断を実現しようとして、様々な装置が開発されてきた。内視鏡の処置の場合、出血が発生し、血液の流れが術者の視界を遮る可能性があるため、適切に対処されないことはまた、望ましくない。
【0003】
鋭利なブレードの代わりに、RFエネルギーを用いて生体組織を切断することが知られている。RFエネルギーを使用して切断する方法は、電流が組織マトリックスを通過するときに(細胞のイオン含有により補助される)、組織を横切る電子の流れに対するインピーダンスが熱を発生させるという原理を使用して動作する。純粋な正弦波が組織マトリックスに適用されるとき、組織の水分を気化させるのに十分な熱が細胞内で発生する。したがって、細胞の内圧が膨大に上昇して細胞膜では制御できなくなり、その結果、細胞が破裂する。これが広範囲にわたって発生すると、組織が切断されたことが見てとれる。上記の処置は、脂肪の少ない組織ではうまく機能するが、脂肪組織では電子の通過を補助するイオン成分がより少ないため、効率が低くなる。これは、脂肪の蒸発潜熱が水の蒸発潜熱よりもはるかに大きいため、細胞の内容物を蒸発させるのに必要なエネルギーがはるかに大きいことを意味する。
【0004】
RF凝固は、組織に低効率の波形を適用することで作用するものであり、それにより、気化させる代わりに、細胞の内容物が約65℃に加熱され、乾燥により組織の水分を除去し、血管壁のタンパク質を変性させる。この変性は凝固カスケードへの刺激として作用し、そのため凝固が促進される。同時に、その壁のコラーゲンは、棒状からコイルの分子に変性し、血管が収縮してサイズが小さくなり、血餅にアンカーポイントを付し、詰まる領域が小さくなる。しかし、脂肪組織が存在すると、電気的効果が減少するため、RF凝固の効率が低下する。したがって、脂肪性の出血を塞ぐことが非常に難しい場合がある。組織は、きれいで白い縁になるかわりに、黒く焼けたような外観になる。
【0005】
マイクロ波電磁(EM)エネルギーを使用する組織の切除は、生体組織が主に水から構成されているという事実に基づいている。人間の軟器官組織は、通常、水分含有が70%~80%である。水分子には永続的な電気双極子モーメントがあり、これは、分子全体に電荷の不均衡が存在することを意味する。この電荷の不均衡から、分子が回転して電気双極子モーメントを印加電場の極性と整合させる際に、時間により変化する電場の印加によって生成される力に応じて、分子が運動する。マイクロ波周波数では、急速な分子の振動が摩擦の加熱を引き起こし、その結果、熱の形で場のエネルギーが散逸する。これは誘電加熱として知られている。この原理はマイクロ波切除療法において利用され、この療法では、マイクロ波周波数の局所的な電磁界を加えることにより、標的組織中の水分子が急速に加熱され、組織の凝固及び細胞死がもたらされる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
最も一般的には、本発明は、高周波(RF)電磁エネルギー及び/またはマイクロ波EMエネルギーを使用して生体組織の切断及び封止を容易にする複数の操作様式を提供するエネルギー送達構造を有する電気外科切除器具を提供する。特に、本発明は、内視鏡、胃鏡、または気管支鏡などの外科用スコープ装置の機器チャネルを通して器具を挿入可能にするのに十分コンパクトな作動及びエネルギー送達の組み合わせ機構に関する。この装置は、腹腔鏡外科や開腹手術、つまり腹腔を開いて肝葉の無血切除を行うためにも使用できる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、GB2567480で議論されている電気外科切除器具の概念の発展を表すものである。本発明の電気外科切除器具は一対のジョーを備え、第1のジョーは一対の電極を備え、第2のジョーは単一電極を備える(すなわち、第2のジョーには電極が1つだけ存在する)。これにより、電気外科切除器具は、(i)ジョーが閉じているときのRFベースの滑走切断、(ii)RFエネルギー及び加えられた圧力の組み合わせを使用して、ジョーの間に把持された組織に対して実行されるハサミタイプの切断、及び(iii)マイクロ波エネルギー及び加えられた圧力の組み合わせを使用してジョーの間に掴まれた組織に対して実行される凝固または血管封止動作、という3つの相補的な方式に従って動作できるようになる。本発明者らは、本明細書に記載のように切除器具に3つの電極を設けることにより、EMエネルギーを使用して組織を切断及び凝固する器具の能力を向上させることができることを発見した。特に、このような電極の配置により、複数のRF場をジョー全体に確立し得ることができ、その結果、より滑らかでより均一な切断が可能となる。同様に、そのような電極構成は、より均一なマイクロ波場を放射することを可能にすることにより、マイクロ波エネルギーを使用したより効果的な組織の凝固及び切除をもたらし得る。
【0008】
本発明によれば、電気外科切除器具であって、高周波(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを搬送するためのエネルギー伝達構造であって、誘電体材料により内側導体が外側導体から分離された同軸伝送線を備える、エネルギー伝達構造、エネルギー伝達構造の遠位端に取り付けられた機器先端であって、第1のジョー及び第2のジョーを備える、機器先端、を備え、第2のジョーは、第1のジョーと第2のジョーが互いに並んで静止する閉位置と、第2のジョーが生物学的物質を受け入れるための隙間によって第1のジョーから間が空けられている開位置との間で、第1のジョーに対して可動であり、第1のジョーは、互いに電気的に絶縁された第1の電極対を備え、第1の電極対は内側電極及び外側電極を備え、第2のジョーは単一電極を備え、第1の電極対がエネルギー伝達構造によって搬送されるRF EMエネルギーを送達するための活性及び戻り電極として動作可能であるように、第1の電極対はエネルギー伝達構造に結合され、単一電極は、エネルギー伝達構造によって搬送されるRF EMエネルギーを送達するためにエネルギー伝達構造に結合され、第1のジョーの内側電極が戻り電極として動作可能な場合、単一電極が活性電極として動作可能であるか、または第1のジョーの内側電極が活性電極として動作可能な場合、戻り電極として動作可能であり、機器先端は、エネルギー伝達構造によって搬送されるマイクロ波EMエネルギーを放出するためのマイクロ波場放出構造として動作可能である、電気外科切除器具が提供される。疑念を避けるため、「単一電極」とは、第2のジョーが電極を1つだけ備えており、RF及び/またはマイクロ波エネルギーを送達するための他の電極が第2のジョーには設けられていないということである旨を理解されたい。
【0009】
エネルギー伝達構造は、機器先端がシャフトの遠位端から突出するように、シャフト(または外側シース)の内腔に配置され得る。シャフトは、同軸伝送線が挿入できる任意の適切なシャフトであり得る。シャフトは可撓性であってもよく、例えば、曲げること、または治療部位に到達するための他の操縦をすることに適している。可撓性シャフトにより、装置を内視鏡などの外科用スコープ装置で使用できるようにすることができる。他の例で、シャフトは、例えば開腹手術または腹腔鏡で使用するために剛性であることがある。
【0010】
同軸伝送線は、RF EMエネルギーとマイクロ波EMエネルギーの両方を伝達するように適合され得る。あるいは、エネルギー伝達構造は、RF EMエネルギーとマイクロ波EMエネルギーのための異なるルートを備え得る。例えば、マイクロ波EMエネルギーは同軸伝送線を介して送達され得るが、RF EMエネルギーはツイストペア線などを介して送達され得る。同軸伝送線は、可撓性同軸ケーブルの形態であってもよい。
【0011】
第1のジョー及び第2のジョーは、これらが開位置と閉位置との間で互いに対して移動可能であるように、エネルギー伝達構造の遠位端に取り付けられる。ジョー間の様々な種類の相対的な動きを使用することができる。第1のジョーと第2のジョーとの間の相対な動きは、回転運動及び/または並進運動を含むことができる。第1のジョー及び第2のジョーの少なくとも一方は、第1のジョーと第2のジョーとの間の相対な動きを可能にするために、エネルギー伝達構造の遠位端に対して移動可能に取り付けられ得る。いくつかの場合には、第1及び第2のジョーのうちの一方のみがエネルギー伝達構造の遠位端に対して移動可能に取り付けられ得るが、他の場合には、第1及び第2のジョーの両方がエネルギー伝達構造の遠位端に対して移動可能に取り付けられ得る。
【0012】
例として、第1のジョーと第2のジョーは、例えば第1のジョーと第2のジョーとの間の角度の開きを調整できるように、互いに対して枢動可能であり得る。この例は、ハサミ型クロージャに似ている場合がある。第1のジョー及び/または第2のジョーは、エネルギー伝達構造の遠位端に枢動可能に取り付けられ得る。
【0013】
別の例では、組織が間に把持されると第1のジョーと第2のジョーの間の隙間ギャップが均一になることが有益であり得、例えば供給されるエネルギーがジョーの全長に沿って均一になることを確実にする。この例では、第1のジョーと第2のジョーは、それらが互いに対して移動するときに平行を保つように構成され得る。例えば、ジョーが開位置にあるとき第1のジョーと第2のジョーは平行であり得、またスライドして互いを過ぎて閉位置に至るとき第1のジョーと第2のジョーは平行のままであり得る。
【0014】
第1のジョーは第1のブレード要素を備えてもよく、第2のジョーは第2のブレード要素を備えてもよい。次に、ジョーが閉位置にあるとき、第1のブレード要素は第2のブレード要素と並んで置かれることができ、ジョーが開位置にあるとき、第1のブレード要素と第2のブレード要素との間に、生体組織を受け入れるための隙間が存在し得る。
【0015】
第1のブレード要素及び第2のブレード要素は、第1及び第2のジョーが開位置から閉位置に移動するときに、第1及び第2のジョーの間の隙間に配置された組織を切断するように構成され得る。したがって、第1のブレード要素及び第2のブレード要素はそれぞれ、組織を切断するために配置された切断(例えば鋭利な)ブレードを含んでもよい。切断境界面は、ジョーが閉じられたときにジョー間の組織が切断される領域に対応して、第1のジョーと第2のジョーとの間に画定され得る。
【0016】
第1のブレード要素と第2のブレード要素は、第1のジョーと第2のジョーが開位置と閉位置との間で移動するときに、例えば剪断力の適用を通じて組織の機械的切断を行う際に、スライドして互いを過ぎていくように配置され得る。したがって、第1及び第2のブレード要素によって行われる切断は、ハサミタイプの切断機構に似ている場合がある。
【0017】
第1及び/または第2のブレード要素は、1つまたは複数の鋸歯(例えば、歯)状の部分を含んでもよい。鋸歯状の部分は、ジョーの間の隙間に位置する組織を把持して切断することを容易にすることができる。
【0018】
電気外科切除器具は、第1のジョーに対する第2のジョーの動きを制御するためのアクチュエータを備え得る。アクチュエータは、ジョー間の相対的な運動を制御するための任意の適切なタイプのアクチュエータを備えることができる。例として、アクチュエータは、エネルギー伝達構造(例えばシャフトの内側)に沿って延び、ジョーの一方または両方の位置を制御するためにその全長に沿って移動可能な制御ロッドを備え得る。制御ロッドは、第1のジョーと第2のジョーの一方または両方と係合する取り付け機構を有してもよく、これにより、制御ロッドの長手方向の動きが、第1のジョーに対する第2のジョーの動きを引き起こす。取り付け機構は、ジョーの一方または両方に対する押す力及び引く力を伝達するためのフックまたは任意の適切な係合であってもよい。
【0019】
第1の電極対は第1のジョーに配置され、第1の対における第1の電極はRF EMエネルギーの活性電極として機能し、第1の対における第2の電極はRF EMエネルギーの戻り電極として機能する。このようにして、エネルギー伝達構造によって搬送されるRF EMエネルギーは、第1の電極対を介して組織に送達され得る。第1の電極対は、標的組織を切断するために、エネルギー伝達構造からのRF EMエネルギーを用いて、第1のRF切断場を確立することができる。第1の電極対は、第1のジョーの表面に露出され得、その結果、それらは標的組織に接触してRF EMエネルギーを標的組織に送達することができる。
【0020】
単一電極が第2のジョーに配置され、RF EMエネルギーの活性電極または戻り電極として機能し得る。特に、単一電極は、第1のジョーの内側電極が戻り電極として動作可能な場合に活性電極として動作可能であり、または第1のジョーの内側電極が活性電極として動作可能な場合に戻り電極として動作可能である。このようにして、単一にされた電極は、標的組織を切断するために、第1のジョーの第1の電極対と協働して、エネルギー伝達構造からのRF EMエネルギーによって第2のRF切断場を確立することができる。第2のジョーの単一電極は、標的組織に接触してRF EMエネルギーを標的組織に送達できるように、第2のジョーの表面に露出することができる。
【0021】
したがって、RF EMエネルギーがエネルギー伝達構造によって伝達されるとき、第1のRF切断場が第1の電極対によって確立され、第2のRF切断場が、第2のジョーの単一電極と第1の電極対とによって、ジョーの間に確立される。したがって、RF切断は、第1のジョー、また2つのジョーの間でも発生する可能性がある。これにより、組織のより広い領域にわたってRF切断を実行できるようになり、より均一なRF切断を実行できるようになり得る。
【0022】
さらに、3つの電極が、エネルギー伝達構造からマイクロ波EMエネルギーを放出(または放射)するためのマイクロ波場放出構造を画定するように機能する。そのため、エネルギー伝達構造によって搬送されるマイクロ波EMエネルギーが、標的組織を凝固及び/または切除するべく電極から標的組織内に放射され得る。放出されるマイクロ波場(複数可)の特定の形状は、ジョーの電極の配置によって異なる。例えば、両方のジョーの電極は、一緒にマイクロ波場放出構造を形成し、共通のマイクロ波場が両方のジョーにわたって放射されるようにしてもよい。対にした電極を使用してマイクロ波EMエネルギーを放射すると、ジョー全体にわたる放出されるマイクロ波場の均一性と対称性が向上し、マイクロ波EMエネルギーによる組織の治療の有効性が向上し得る。
【0023】
いくつかの実施形態では、第1のジョーは、第2のジョーに向いている内面と、第2のジョーとは反対側を向く外面とを有する第1の平面誘電体要素を備えることができ、第1の電極対は、第1の平面誘電体要素の内面及び外面にそれぞれ配置される内側電極と外側電極とを備えることができ、第2のジョーは、第1のジョーに向いている内面と、第1のジョーとは反対側を向く外面とを有する第2の平面誘電体要素を備えることができる。単一電極は、第2の平面誘電体要素の内面に配置された内側電極、または第2の平面誘電体要素の外面に配置された外側電極のいずれかを備え得る。これにより、ジョーが閉じられたとき、電極が横方向に互いに対して実質的に整列することができる。このことは、ジョーが閉じているとき、広い領域にわたる標的組織の効果的な治療を可能にすることができる。
【0024】
第1の平面誘電体要素及び第2の平面誘電体要素は、互いに実質的に平行であってもよく、例えば、第1の平面誘電体要素の内面によって画定される平面は、第2の平面誘電体要素の内面によって画定される平面に対して実質的に平行であってもよい。第1の平面誘電体要素と第2の平面誘電体要素はそれぞれ、第1のジョーと第2のジョーが互いに対して可動である平面と平行に整列することができる。
【0025】
第1及び第2の平面誘電体要素のそれぞれは、セラミック(例えばアルミナ)などの誘電体(すなわち絶縁)材料片によって形成され得る。本明細書において、「平面」要素に言及することは、その幅及び長さよりも実質的に薄い厚さを有する平坦な材料片を意味する場合がある。各平面誘電体要素は、縦方向に整列した全長の次元、横方向に整列した厚さの次元、及び全長の次元と厚さの次元の両方に直交する幅の次元を有し得る。平面誘電体要素の平面は、全長と幅の次元が存在する平面、すなわち幅の次元に直交する平面である。各平面誘電体要素の内面及び外面は、平面誘電体要素の平面に平行であり得る、すなわちそれらは幅の次元に対して直交し得る。各平面誘電体要素の内面及び外面は、その幅に関して平面誘電体要素の反対側に配置され得る。
【0026】
各ジョーにおいて平面誘電体要素を使用し、その上に電極が配置されると、機器先端の製造が非常に容易になる可能性がある。これは、例えば表面の上に導電性材料を堆積することにより、及び/または表面に導電性要素を取り付けることにより、電極をその内面及び/または外面に容易に形成することができるためである。対照的に、従来技術の切除器具では、ジョーは通常、絶縁材料でコーティングされた導電性材料で作られ、絶縁材料がエッチングで除去されたジョーの領域によって電極が画定される。絶縁材料をエッチングして電極を画定するのは、面倒で時間のかかるプロセスとなる場合がある。さらに、本発明者らは、組織が絶縁材料に付着し、機器先端の洗浄が困難になる可能性があることを見出した。したがって、ジョーで平面誘電体要素を使用すると、機器先端の製造が容易になるだけでなく、組織が機器先端に付着するのを回避することができる。
【0027】
場合によっては、第1の平面誘電体要素が第1のブレード要素を画定することができる。例えば、第1の平面誘電体要素は、ジョーの間に位置する組織に接触し、ジョーが閉じられたときに組織を切断するように構成された刃先を備えることができる。次に、第1の対の内側電極は、第1の平面誘電体要素の刃先またはその近くに形成され得る。
【0028】
同様に、第2の平面誘電体要素は第2のブレード要素を画定し得、例えば、第2の平面誘電体要素は、ジョーの間に位置する組織に接触して切断するように構成された刃先を備え得る。次に、単一電極が内側電極である場合、第2の対の内側電極は、第2の平面誘電体要素の刃先またはその近くに形成され得る。
【0029】
第1の平面誘電体要素が第1のブレード要素を画定し、第2の平面誘電体要素が第2のブレード要素を画定する場合、第1の平面誘電体要素の内面は、ジョーが開位置と閉位置の間で移動するときに第2の平面誘電体要素の内面を横切ってスライドするように配置され得る。
【0030】
第1のジョーにおける第1の電極対の内側電極は、第1の平面誘電体要素の内面に形成された第1の導電層を備えることができ、第2のジョーの単一電極は、第2の平面誘電体要素の内面に形成された第2の導電層を備えることができる。したがって、各内側電極は、それぞれの平面誘電体要素の内面に直接、導電性材料のそれぞれの層によって形成され得る。例えば、導電性材料の層は、任意の適切な堆積技術を使用して堆積することができ、あるいは導電性材料の層は、さもなければ内面に(例えば、接着剤を介して)取り付けることができる。各内側電極の導電層は、金などの任意の適切な導電性材料で形成することができる。もちろん、第2のジョーの単一電極が、代わりに、単一電極が外側電極となるように、第2の平面誘電体要素の外面に形成され得ることも想定される。例えば、第2のジョーの外側電極は、以下に説明するように、第1のジョーの外側電極と実質的に同じ方法で形成することができる。
【0031】
第1の導電層は、長手方向に延在してもよい、すなわち、第1の平面誘電体要素の長さの全部または一部に沿って延在してもよい。同様に、第2の導電層は、長手方向に延在してもよい、すなわち、第2の平面誘電体要素の長さの全部または一部に沿って延在してもよい。
【0032】
好ましくは、第1のジョーは、第2のジョーの方に向いている内面を有する第3の平面誘電体要素を含み得て、第3の平面誘電体要素は、第1のジョーの内側電極の内面に配置される。加えて、または代わりに、第2のジョーは、第1のジョーの方に向く内面を有する第4の平面誘電体要素を含み得て、第4の平面誘電体要素は、第2のジョーの単一電極の内面に配置される。例えば、第3及び/または第4の平面誘電体要素は、内側電極間に絶縁バリアを設ける誘電体コーティングとして適用され得る。例えば、コーティングは、セラミック(例えば、アルミニア)コーティング、ダイヤモンド状コーティング、エナメルコーティング、またはシリコンベースのペイントコーティングであってもよい。このコーティングはさらにパリレンNでコーティングされて、細孔に浸透して絶縁体を防水にする絶縁コーティングをシールする(例えば深さ2~10マイクロメートルの層でコーティングされる)ことができる。あるいは、誘電体コーティングは、熱可塑性ポリマー、例えばポリエーテルまたはケトン(PEEK)などであってもよい。誘電体コーティングは、内側電極が実質的にブレード要素の上面のみで露出することを確実にでき、これによりEMエネルギーが所望の領域に集中することを確実にすることができる。このように第3及び/または第4の誘電体要素を設けることにより、エネルギーが優先的に組織に向けられるように、2つの内側電極間の電気的破壊または放電のリスクを最小限に抑えることを確実にできる。このような配置は、ジョー間の対称性を改善することもでき、これにより、ひいては機器先端によって放出されるRF及びマイクロ波エネルギーの対称性を改善することができる。
【0033】
さらに、場合によっては、第1の電極対の外側電極は、第1の平面誘電体要素の外側表面に形成された第3の導電層を含んでもよい。第3の導電層は、上述した第1及び第2の導電層と同様にして形成することができる。当然、いくつかの例では、第2のジョーの単一電極を同様の方法で形成することができる。
【0034】
したがって、電極を形成するのにいずれのジョーの絶縁層のパターニング及びエッチングも必要なく、それにより機器先端の製造が非常に容易になり得る。
【0035】
第1のジョーは、第1の平面誘電体要素の外面に取り付けられ、第1の電極対の外側電極の少なくとも一部を形成するように配置された第1の導電性シェルをさらに備え得る。したがって、外側電極は、対応する平面誘電体要素の外面に取り付けられた導電性シェルを備えることができる。第1の導電性シェルは、第1のジョーの外面を画定することができる。いくつかの実施形態では、第2のジョーは、同様に、第2の平面誘電体要素の外面に取り付けられ、第2のジョーの単一電極の少なくとも一部を形成するように配置された第2の導電性シェルを備え得る。したがって、導電性シェルまたは各導電性シェルは、外側電極を画定すること、及びそれが取り付けられる平面誘電体要素を保護すること、という二重の目的を果たすことができる。導電性シェルまたは各導電性シェルは、対応する平面誘電体要素の外面に(例えば、接着剤及び/または機械での固定によって)取り付けられる導電性材料片から形成され得る。ステンレス鋼などの任意の適切な導電性材料を導電性シェルに使用することができる。
【0036】
導電性シェルまたは各導電性シェルの表面積は、第1の電極対の内側電極の表面積より大きくてもよい。例えば、導電性シェルは、平面誘電体要素の外面の全部または大部分を覆う比較的厚い導電性材料のブロックから形成され得る一方、内側電極は、第1の平面誘電体要素の内面の比較的薄い導電層として形成され得る。したがって、その導電性シェルまたは各導電性シェルは、内側電極と比較して外側電極の表面積を増加させる機能を果たせる。
【0037】
本発明者らは、異なるサイズを有する間隔をあけた一対の電極を使用して組織のRF切断を行う場合、組織は2つの電極のうちの小さい方の近傍で切断される傾向があることを見出した。したがって、内側電極と比較して大きな表面積を有する導電性シェルを使用すると、内側電極の近くで組織のRF切断が生じるのを確実にすることができる。このことは、RF EMエネルギーを使用して、顎の間に位置する組織で、明確に定められた切断を行うことを可能にし得る。特に、このことは、RF EMエネルギーによって生じる切断が、ブレード要素間の切断境界面またはその近くに位置することを確実にするように機能することができる。
【0038】
有利には、第1のジョーの外側電極と第2のジョーの単一電極は、互いに電気的に結合され得る。これは、先端によって放出されるRF及び/またはマイクロ波EM場の対称性、特に第1のジョーの内側電極、及び第1のジョーと第2のジョーとの間の領域に関する対称性を設けるのに役立ち得る。例えば、第1のジョーの外側電極及び第2のジョーの単一電極は両方共、これらがエネルギー伝達構造を介して電気的に結合されるように、エネルギー伝達構造の共通導体に結合され得る。
【0039】
機器先端は、第1のジョーの外側電極及び第2のジョーの単一電極をエネルギー伝達構造の遠位端に接続するベース構造をさらに備え得る。例えば、ベース構造は、第1のジョーの外側電極をエネルギー伝達構造の遠位端にしっかりと接続する第1のベース部と、第2のジョーが枢動可能に接続される第2のベース部とを含んでもよく、第2のジョーが、第2のベース部に対して枢動可能であるようにする。
【0040】
ベース構造は、エネルギー伝達構造の端部でジョーを支えるための任意の適切な構造であってもよい。ベース構造は、例えば、一端でエネルギー伝達構造の遠位端に固定され、他端で第1及び第2のジョーに接続されるアームを備えることができる。このようなベース構造は、エネルギー伝達構造(典型的に可撓性であり得る)の遠位端を補強し、機器先端への長手方向の力の伝達を容易にするのに貢献し得る。ベース構造は、剛性材料(例えば、ステンレス鋼などの金属)を含んでもよい。
【0041】
第1のジョー及び/または第2のジョーは、第1のジョーと第2のジョーとの間の相対的な動きを可能にするために、ベース構造に移動可能に接続され得る。例えば、第1のジョー及び/または第2のジョーは、ベース構造に枢動可能に接続され得る。
【0042】
場合によっては、第1のベース部は第1の導電性シェルの一部であってもよい、すなわち、第1の導電性シェルはベース構造の一部を形成してもよい。例えば、第1のベース部は、第1のジョーとエネルギー伝達構造の遠位端との間に延びる第1の導電性シェルの一部であり得る。これは、第1のジョーとエネルギー伝達構造の遠位端との間の強固な接続を確保するとともに、第1の対の外側電極とエネルギー伝達構造との間の電気接続を容易にするのに役立ち得る。
【0043】
ベース構造は、第1の導電性シェルを同軸伝送線の遠位端の内側導体及び外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続する導電性材料を含んで(例えば、それで作られて)よい。このようにして、第1の導電性シェルは、ベース構造を介して同軸伝送線の導体に直接接続され得る。例えば、第1のベース部は、第1の導電性シェルを内側導体及び外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続する導電性材料を含んでもよい。
【0044】
加えて、または代わりに、ベース構造は、第2のジョーの単一電極を、同軸伝送線の遠位端の内側導体及び外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続する導電性材料を含んで(例えば、それらで作られて)よい。このようにして、第2のジョーの内側電極は、ベース構造を介して同軸伝送線の導体に直接接続され得る。例えば、第2のベース部は、第2のジョーの内側電極を内側導体及び外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続する導電性材料を含んでもよい。
【0045】
第1の導電性シェルと第2のジョーの単一電極が互いに電気的に結合されている場合、ベース構造は、第1及び第2の導電性シェルのそれぞれを、同軸伝送線の遠位端の内側導体と外側導体のうちの第1の導体に接続する導電性材料を含んで(例えば、それらで作られて)よい。したがって、第1の導電性シェル及び第2のジョーの内側電極は、ベース構造を介して電気的に結合され得る。
【0046】
ベース構造は、第1のジョーの内側電極が同軸伝送線の遠位端の内側導体及び外側導体のうちの第2の導体に電気的に接続されるキャビティを画定することができる。このようにして、ベース構造は、第1のジョーの内側電極と、内側導体及び外側導体のうちの第2の導体との間の電気接続を保護する役割を果たすことができる。ベース構造の導電性材料はまた、キャビティ内部の電気接続に電磁シールドを設ける役割を果たすことができる。キャビティは、ベース構造の内部に画定された空間またはボイドであり得る。
【0047】
キャビティは誘電体材料を含んでもよい。これは、キャビティにおける電気接続が電気的に絶縁されることを確実にすることができ、キャビティ内側の電気接続と周囲のベース構造との間の絶縁破壊を回避するようにする。誘電体材料は、任意の適切な種類の誘電体材料であってよい。例として、熱硬化性プラスチック、シリコーン、エポキシまたは樹脂などの電気ポッティング材料をキャビティにおける誘電体材料として使用することができる。
【0048】
ベース構造は、キャビティの中に誘電体材料を注入するために、ベース構造の側壁に形成された開口部を備え得る。例えば、開口部は、ベース構造の側壁に形成された孔または開口部であってもよい。これにより、エネルギー伝達構造の遠位端で機器先端を組み立てた後、誘電体材料をキャビティの中に注入することが可能になり得る。これにより、機器先端の組み立てが容易になり得る。
【0049】
いくつかの実施形態では、第1のジョーの外側電極と第2のジョーの単一電極は、両方共、内側導体と外側導体のうちの第1の導体に電気的に接続され、第1のジョーの内側電極は、内側導体と外側導体のうちの第2の導体に電気的に接続される。このような電極の構成により、第1のジョーの一対の電極間に第1のRF切断場を確立することができ、第1のジョーの内側導体と第2のジョーの内側導体との間に第2のRF切断場を確立することが可能になり得る。2つのRF場は、ブレード要素間の切断境界面に関して実質的に対称であり得、これにより、ジョーの間に保持された組織の非常に均一な切断がもたらされ得る。さらに、このような電極構成により、実質的に対称的なマイクロ波場がジョー全体に放射され得て、ジョーの周囲にある組織のマイクロ波での切除及び/または凝固が可能になる。
【0050】
有利には、第1の電極対と単一電極は、エネルギー伝達構造によって伝送されるマイクロ波EMエネルギーを放出するためのマイクロ波場放出構造として共に動作可能であり得る。つまり、3つの電極すべてが協力してマイクロ波EMエネルギーを放出することができる。
【0051】
この機器先端は、外科用スコープ装置の機器チャネルの内側に嵌るように寸法決めすることができる。したがって、別の態様では、本発明は、高周波(RF)電磁(EM)エネルギー及びマイクロ波EMエネルギーを供給する電気外科用発電機、患者の体内に挿入するための機器コードを有する外科用スコープ装置であって、機器コードが貫いて延びる機器チャネルを有する外科用スコープ装置、及び、上述のような、外科用スコープ装置の機器チャネルを通して挿入される電気外科切除器具を含む電気外科器械を設ける。
【0052】
この器械は、電気外科切除器具を制御するためのハンドピースを備えていてもよい。ハンドピースは、シャフトの近位端、例えば外科用スコープ装置の外側に取り付けることができる。
【0053】
本明細書では、「外科用スコープ装置」という用語は、侵襲的処置の最中に患者の体内に導入される剛性または可撓性の(例えば、操作可能な)導管である挿入管を備えた任意の外科用装置という意味で使用されてよい。挿入管は、機器チャネルと(例えば、光を伝えて挿入管の遠位端で治療部位を照らす、及び/またはその画像をキャプチャするための)光チャネルとを含み得る。機器チャネルは、侵襲的な外科用器具を受け入れるのに適した直径を有し得る。機器チャネルの直径は5mm以下であってよい。
【0054】
本明細書において、「内部」という用語は、機器チャネル及び/または同軸電送線の中心(例えば、軸)に、半径方向により近いことを意味する。「外部」という用語は、機器チャネル及び/または同軸伝送線の中心(軸)から、半径方向により遠いことを意味する。
【0055】
「導電性」という用語は、本明細書では、文脈上別の意味が示される場合を除き、電気的に導通することを意味するために使用される。
【0056】
本明細書では、「近位」及び「遠位」という用語は、細長い器具の端部を示す。使用時、近位端は、RFエネルギー及び/またはマイクロ波エネルギーを供給するための発電機により近く、一方、遠位端は、発電機からより遠い。
【0057】
本明細書では、「マイクロ波」は、400MHz~100GHzの周波数範囲を示すのに広く使われ得るが、好ましくは1GHz~60GHzの範囲を示す。検討された具体的な周波数は、915MHz、2.45GHz、3.3GHz、5.8GHz、10GHz、14.5GHz、及び24GHzである。対照的に、本明細書は、「高周波」または「RF」を使用して、例えば最大300MHz、好ましくは10kHz~1MHz、最も好ましくは400kHzという、少なくとも3桁低い周波数範囲を示す。
【0058】
本発明は態様及び記載された好ましい特徴の組み合わせを含むが、そのような組み合わせが、明らかに容認できないかまたは明らかに避けられる場合は除く。
【0059】
本発明の原理を示す実施形態及び実験は、ここで添付の図を参照して検討される。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【
図1】本発明の実施形態である電気外科システムの概略図である。
【
図2】本発明の実施形態である電気外科切除器具の斜視図である。
【
図4】
図2の電気外科切除器具の一部を示す概略図である。
【
図5】組み立て前の
図2の電気外科切除器具の部品を示す概略図である。
【
図6】組み立てが完了する前の、
図2の電気外科切除器具の概略図である。
【
図7A】本発明の実施形態である電気外科切除器具と共に使用できる機器シャフトの内容物の斜視図である。
【
図8】本発明の実施形態による電気外科切除器具の機器先端を示す概略図である。
【
図9】本発明のさらなる実施形態による電気外科切除器具の機器先端を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本発明の態様及び実施形態を、添付の図面を参照してここで説明する。さらなる態様及び実施形態は、当業者にとって明白である。本文において言及されるすべての文書は、参照により本明細書に援用される。
【0062】
図1は、本発明の実施形態である電気外科システム100の概略図である。システム100は、機器先端からの高周波(RF)またはマイクロ波電磁(EM)エネルギーを使用して生体組織を治療(例えば切断またはシール)するように構成されている。システム100は、RF及びマイクロ波EMエネルギーを制御可能に供給するための発電機102を含む。この目的のための適切な発電機は、参照により本明細書に組み込まれるWO2012/076844に記載されている。発電機102は、境界面ケーブル104によってハンドピース106に接続されている。ハンドピース106はまた、注射器などの流体送達装置108から流体供給107を受け取るように接続され得るが、これは必須ではない。必要であれば、ハンドピース106は、アクチュエータ109、例えば親指で操作されるスライダまたはプランジャによって動作可能な機器作動機構を収容してもよい。例えば、機器作動機構は、本明細書で論じられるように、切除機器のジョーの開閉を操作するために使用され得る。ハンドピースには他の機構も含まれ得る。例えば、機器先端において針を展開するための針移動機構(ハンドピース上の適切なトリガによって操作可能)を設けることができる。ハンドピース106の機能は、発電機102、流体送達装置108、及び機器作動機構からの入力を、ハンドピース106の遠位端から延びる単一の可撓性シャフト112の中に、必要であり得るいずれかの他の入力と結合することである。
【0063】
可撓性シャフト112は、外科用スコープ装置114の機器(作動)チャネル全体の長さを通して挿入可能である。可撓性シャフト112は、外科用スコープ装置114の機器チャネルを通過し、内視鏡の挿入管の遠位端で(例えば、患者の体内に)突出するような形の機器先端118を有する。機器先端118は、生体組織を掴んで切断するためのブレード要素を有する一対のジョーと、発電機102から伝達されるRFまたはマイクロ波EMエネルギーを送達するように構成されたエネルギー送達構造とを含む。任意選択で、機器先端118はまた、流体送達装置108から搬送される流体を送達するための格納可能な皮下針を含んでもよい。ハンドピース106は、機器先端118のジョーを開閉するための作動機構を含む。ハンドピース106はまた、外科用スコープ装置114の機器チャネルに対して機器先端118を回転させるための回転機構を含んでもよい。
【0064】
機器先端118の構造は、作動チャネルを通過するのに適している最大外径を有するように配置することができる。通常、内視鏡などの外科用スコープ装置の作動チャネルの直径は、4.0mm未満であり、例えば、2.8mm、3.2mm、3.7mm、3.8mmのいずれか1つである。可撓性シャフト112は、これより小さい最大直径、例えば2.65mmを有してもよい。可撓性シャフト112の長さは、1.2m以上、例えば、2m以上であることができる。他の例では、機器先端118は、シャフトが作動チャネルを通るように挿入された後(及び機器コードが患者に導入される前に)、可撓性シャフト112の遠位端に取り付けられ得る。あるいは、可撓性シャフト112は、その近位接続を行う前に、遠位端から作動チャネルに挿入することができる。これらの構成では、遠位端組立体118は、外科用スコープ装置114の作動チャネルよりも大きい寸法を有することが許容され得る。上記のシステムは、機器を患者の体内に入れる1つの方法である。他の技法も可能である。例えば、この機器は、カテーテルを使用して挿入することもできる。
【0065】
本明細書の例は、外科用スコープ装置に関連して示されているが、電気外科切除機器は、開腹手術または腹腔鏡を伴う使用に適した装置において具体化され得ることを理解されたい。
【0066】
図2~6は、本発明の実施形態である電気外科切除器具の機器先端200を示す。機器先端200は、例えば、
図1に関連して上述した機器先端118に対応し得る。
図2は、機器先端200の第1の側を示す、機器先端200の第1の概略斜視図を示し、
図3は、機器先端200の第2の側を示す、機器先端200の第2の概略斜視図を示す。
図4~6は、機器先端200の構造を示す。
【0067】
機器先端200は、同軸ケーブル202(
図4~6に示す)の形態であるエネルギー伝達構造の遠位端に取り付けられる。同軸ケーブル202は、上述の可撓性シャフト112に対応し得る可撓性シャフト204を貫いて延びる。特に、可撓性シャフト204は、同軸ケーブル202が貫いて延びる内腔を画定し、機器先端200が可撓性シャフト204の遠位端から突出する。同軸ケーブル202は、電気外科用発電機(例えば、上述の発電機102)から機器先端200にRF及びマイクロ波EMエネルギーを伝達するように配置されている。
【0068】
機器先端200は、開位置と閉位置との間で互いに対して移動可能な第1のジョー206及び第2のジョー208を有する。具体的には、図示の例では、第1のジョー206は静止している、すなわち同軸ケーブル202の遠位端に対して固定されているが、一方で、第2のジョー208は、第1のジョー208に枢動可能に取り付けられている。第1のジョー206に対する第2のジョー208の動きを制御するために、制御ワイヤ(またはロッド)210の形態のアクチュエータが第2のジョー208に接続される(例えば、
図3及び6を参照)。制御ワイヤ210は、可撓性シャフト204の管腔内部に配置され、第2のジョー208を移動させるために管腔内部で長手方向にスライド可能である。制御ワイヤ210の近位端は、制御ワイヤ210を介して第2のジョー208の動きを制御するように動作可能なハンドピース(例えば、ハンドピース106)に接続され得る。
図2及び3は、開位置にあるジョー206、208を示しており、ジョー206、208の間に組織を受け入れることができる隙間が画定されている。
【0069】
第1のジョー206は第1のブレード要素212を備え、第2のジョー208は第2のブレード要素214を備える。各ブレード要素は、ジョー間の隙間に位置する組織に接触し、ジョーが閉位置に移動したときに組織を切断するように配置された縁部を備え得る。具体的には、第2のブレード要素214は、第2のジョー208が閉位置に向かって移動するときに第1のブレード要素212を横切ってスライドするように配置され、その結果、ジョー206、208の間の隙間に位置する組織に剪断力が加えられる。したがって、ジョー間の隙間に位置する組織は、第2のジョー208を閉位置に向かって枢動させることによって切断することができる。
【0070】
第1のブレード要素212は、第1のジョー206の第1の平面誘電体要素216によって画定され、第2のブレード要素214は、第2のジョー208の第2の平面誘電体要素218によって画定される。特に、第1の平面誘電体要素216は、第2の平面誘電体要素218に向いている内面220を含み、第2のジョー208が第1のジョー206に対して枢動するとき、それを越えて第2の平面誘電体要素218の内面222がスライドし、2つの平面誘電体要素間に剪断運動が生じるようにする。第1及び第2の平面誘電体要素のそれぞれは、セラミック(例えば、アルミナ)または他の適切な電気絶縁材料から作製され得る。第1及び第2の平面誘電体要素はそれぞれ、第2のジョー208が第1のジョー206に対して枢動する平面と平行な平面を画定する。第2の平面誘電体要素218は、第2のブレード要素214の鋸歯状の部分として機能する一対の突起(または歯)223を含む。したがって、突起223は、ジョー間の隙間に位置する組織を掴むように機能し、組織の保持及び/または切断を容易にすることができる。第1の平面誘電体要素216は、第1のブレード要素212の鋸歯状の部分として機能する同様の突起(図示せず)を含んでもよい。
【0071】
機器先端200は、組織にエネルギーを送達するための3つの電極を備え、一方のジョーは一対の電極を備え、他方のジョーは単一電極を備える。図示の実施形態では、第1のジョー206は、第1の平面誘電体要素216の内面220に形成された内側電極224と、第1の平面誘電体要素216の外面に配置された外側電極226とを含む。したがって、第1の平面誘電体要素216は、第1のジョー206の内側電極224と外側電極226とを互いに電気的に絶縁するように機能する。第2のジョー208は、第2の平面誘電体要素218の外面に形成された外側電極228を含む。当然、いくつかの実施形態では、単一電極は、第2のジョー208の内面222に形成されてもよく、第1のジョー206は、第1の平面要素216の内側電極224及び内面220に形成された誘電体コーティングまたは第3の平面誘電体要素を有利に備え得、ジョーが閉じているとき、内側電極224と第2のジョーの単一電極との間に電気的接続が存在しないことを確実にする。しかしながら、第3の誘電体平面要素またはコーティング材料は、内側電極224が第1のジョー206の上面に沿って露出し、
図5に関して以下で説明するように、それからRF及び/またはマイクロ波エネルギーが放出され得ることを確実にするように配置され得る。それによって、このコーティングまたは第3の平面誘電体要素は、第1のジョー206の内側電極224と第2のジョー208の内側電極228を互いに電気的に絶縁するように機能する。しかし、単一電極が外側電極228である場合、第2の平面誘電体要素218は、第1のジョーの内側電極224との電気的接続が存在しないことを確実にするように機能する。
【0072】
第1のジョー206の内側電極224は、第1の平面誘電体要素216の内面220に堆積された導電性材料(例えば、金)の層またはフィルムによって形成される。内側電極224は、この内面220の一部を覆い、第1のブレード要素212(すなわち、第1の平面誘電体要素216)の刃先に沿って延びる。第1のジョー206の外側電極226は、第1の平面誘電体要素216の外面に取り付けられる(例えば、接着される)第1の導電性シェルの形態である。第1の導電性シェルは、第1の平面誘電体要素216の外面全体を覆い、第1の平面誘電体要素216の厚さと同様の厚さを有する導電性材料片である。第1の導電性シェルの外面は、第1のジョー206の外面として機能する。第1の導電性シェルの外面は、第1のジョー206が滑らかな外面を有するように丸くすることができる。導電性シェルは、第1の誘電体要素216に形成された溝と係合するよう形成された突起を備えて、2つの部品間で滑るのを回避し、部品が互いに対して正確に配向されることを確実にすることができる。
【0073】
第2のジョー208の単一電極は、第1のジョー206の内側電極224または外側電極226と同様の方法で形成され得る。例えば、第2のジョー208の単一の内側電極は、第2の平面誘電体要素218の内面222に堆積された導電性材料(例えば、金)の層またはフィルムによって形成されてもよい。これにより、内側電極は内面222の一部を覆い、ジョーが閉じているとき第1のブレード要素と第2のブレードとの間の切断境界面に位置するように、第2のブレード要素214(すなわち、第2の平面誘電体要素218)の刃先に沿って延びる。このような実施形態では、第2のジョー208の外面は、第2の平面誘電体要素218の外面によって形成され、これは第2のジョー208が滑らかな外面を有するように丸くすることができる。あるいは、第2のジョー208の単一電極は、第2の平面誘電体要素218の外面に(例えば)接着されて取り付けられ、第2の平面誘電体要素218の厚さと同様である厚さを有する第2の導電性シェルの形態である外側電極228である。第2のジョー208には他の電極が存在しないため、第2のジョー208は単一電極のジョーとみなされ得る。
【0074】
3つの電極は、同軸ケーブル202の遠位端に電気的に接続されており、その結果、電極は、同軸ケーブル202によって伝達されるRF及びマイクロ波EMエネルギーを送達することができる。電極が同軸ケーブル202に接続される方法については、以下でより詳細に論じる。
【0075】
次に、機器先端200の構造について
図4~6を参照して論じ、これらは機器先端200の組み立ての様々な段階を示す。同軸ケーブル202は、誘電体材料238によって分離される内側導体234及び外側導体236を含む。さらに、同軸ケーブル202は、絶縁材料で作られた外側シース240を含む。第1のジョー206及び第2のジョー208は、ベース構造242を介して同軸ケーブル202の遠位端に取り付けられる。ベース構造242は、第1のジョー206を同軸ケーブル202の遠位端にしっかりと接続する、導電性材料で作られた第1のベース部244を含む。第1のベース部244は、同軸ケーブル202の遠位端と第1の導電性シェル(第1のジョー206の外側電極226を形成する)との間に延びるアームを備える。図示の例では、第1の導電性シェル及び第1のベース部244は、単一の導電性材料片として一体的に形成される。しかしながら、他の例では、これらは互いに接続された別個の部品として形成されてもよい。第1のベース部244は、同軸ケーブル202の遠位端が受け入れられるチャネルを含む第1の取り付け部分246を含む。同軸ケーブル202の外側シース240の長さは、同軸ケーブルの遠位端付近で除去され、その結果、外側導体236が露出する。したがって、外側導体236は、第1の取り付け部分246内のチャネル内の第1のベース部244と電気的に接触している。同軸ケーブル202の遠位端は、適切な導電性エポキシを使用して第1の取り付け部分246のチャネルに固定され得る。その結果、第1の導電性シェル(したがって、第1のジョー206の外側電極226)は、第1のベース部244を介して外側導体236に電気的に接続される。
【0076】
ベース構造242はさらに、第2のジョー208を同軸ケーブル202の遠位端に枢動可能に取り付ける第2のベース部248を備える。第2のベース部248は、第1のベース部244と同じ材料(例えばステンレス鋼)であり得る導電性材料で作られている。第2のベース部248は、第1のベース部244と第2のベース部248が電気的に接触するように、第1のベース部244の第1の取り付け部分246に固定される第2の取り付け部分250を含む。第1の取り付け部分246及び第2の取り付け部分250は、ベース部が互いに固定されるときに互いに係合する相補的な形状の係合面を有する。
図6に示すように、第1のベース部244及び第2のベース部248は、第1及び第2の取り付け部分246、250の周りに嵌合してそれらを共に保持する導電性リング252を介して共に固定される。導電性リング252を第1及び第2の取り付け部分の上の所定の位置に固定するために、導電性リング252の内側に接着剤を注入することができる。ベース構造242を一緒に保持することに加えて、導電性リング252は、マイクロ波エネルギーがジョーの電極に到達する前に放射されるのを防ぐマイクロ波シールドとして機能することができる。
【0077】
第2のベース部248は、第2の取り付け部分250から長手方向に延在し、第2のジョー208が枢動可能に取り付けられるアームを含む。図示の例では、第2のジョー208は、リベット254を介して第2のベース部240に枢動可能に取り付けられている。単一電極は、(導電性材料で作られた)リベット254を介して第2のベース部248と電気的に接触している。したがって、第2のジョー208の単一電極は、リベット254、第2のベース部248、取り付け部分246、及び第1のベース部244で形成される導電経路を介して、同軸ケーブル202の外側導体236に電気的に接続される。したがって、第1のジョー206の外側電極226と第2のジョーの単一電極の両方は、ベース構造242を介して外側導体236に電気的に接続される。
【0078】
第2のベース部248は、制御ワイヤ210が第2のジョー208に接続するために延びる通路(図示せず)を含み得る。第2の導電性シェルは、制御ワイヤ210の遠位端が接続される取り付け部分251を含むことができる。第2の導電性シェルには、第1のジョー206に対する第2のジョー208の開位置と閉位置との間の動きを制限するように機能する制限ピン253(
図5に示す)を設けることもできる。これにより、第2のジョー208の位置を、より正確に制御できるようになり得る。
【0079】
第1のジョー206の内側電極224は、同軸ケーブル202の内側導体234に電気的に接続される。
図4に示すように、第1の平面誘電体要素216は、第1のブレード要素212と同軸ケーブル202の遠位端との間に延びる接続部分256を含む。内側導体234の遠位端は、同軸ケーブル202の遠位端を越えて突出し、それが第1の平面誘電体要素216の接続部分256に位置するようにする。ワイヤ258は、第1の平面誘電体要素の接続部分256に沿って長手方向に延在し、内側電極224を内側導体234の遠位端に電気的に接続する。ワイヤ258は、接続部分256に沿って延在する内側電極224の一部であってもよく、例えば、ワイヤ258及び内側電極224は、第1の平面誘電体要素216の内面220に一緒に堆積され得る。
【0080】
誘電体ブロック264は、ワイヤ258と導電性の第2のベース部248との間の電気的破壊を回避するために、第2のベース部248と第1の平面誘電体要素216との間に取り付けられる。例えば、誘電体ブロック264は、アルミナなどのセラミック材料で作製することができる。誘電体ブロック264は、接着剤を使用して所定の位置に固定することができる。さらに、ベース構造242は、第1のベース部244と第2のベース部248との間にキャビティが形成され、その中で内側導体234がワイヤ258(したがって内側電極224)に電気的に接続されるように形作られる。キャビティは、内側導体234の遠位端とベース構造242との間の電気的破壊の危険性を低減するために、ポッティング材料などの誘電体材料で充填されてもよい。キャビティを誘電体材料で充填することはまた、機器先端200を補強し、第1及び第2のベース部を一緒に保持するのにも役立ち得る。第2のベース部248は、誘電体材料をキャビティの中に注入することができる注入ポートを含むことができる。
【0081】
図4では、明確にするために、内側電極224が露出した状態で、第1のジョー206が示されている。しかしながら、いくつかの実施形態では、ジョーが閉じているときに内側電極224と第2のジョー208の単一の内側電極との間に電気的接続がないことを確実にするために、誘電体コーティング225が第1のジョー206及び内側電極224の内面に適用される。誘電体コーティング材料225は、
図5に示すように、内側電極224が第1のジョー206の上面に沿って露出し、そこからRF及び/またはマイクロ波エネルギーが確実に放射され得るように配置され得る。
【0082】
機器先端200を組み立てるには、
図4に示すように、第1のベース部244及び第1のジョー208をまず組み立て、同軸ケーブル202の遠位端に接続することができる。
図5に示されるように、第2のジョー208は、リベット254を介して第2のベース部248に接続される。次に、誘電体ブロック264を第1の平面誘電体要素216の内面220に配置することができ(
図5に示すように)、その後、第2のベース部248は、第1のベース部244に取り付けられる。次いで、誘電体ポッティング材料が、第1のベース部244と第2のベース部248との間のキャビティの中に注入され得る。次に、導電性リング252を同軸ケーブル202上で、また第1及び第2の取り付け部分246、250の上にスライドさせて、第1及び第2のベース部244、248を一緒に保持することができる。上述したように、接着剤を使用して導電性リング252を第1及び第2の取り付け部分246、250上に固定することができる。次に、制御ワイヤ210を第2のベース部248の通路に通して、第2のジョー208の取り付け部分に接続することができる(
図6に示すように)。最後に、可撓性シャフト204を同軸ケーブル202上に引っ張り、例えば接着剤を使用して導電性リング252に固定することができる。
【0083】
図2~6を参照して説明した実施形態では、ジョーの一方のみが可動である。しかしながら、他の実施形態では、例えばジョーのハサミのような開閉をもたらすために、両方のジョーを同軸ケーブル202の遠位端に移動可能に取り付けることができる。異なる実施形態では、電極への異なる電気接続が使用され得ることにも留意されたい。例えば、いくつかの実施形態では、第1のジョー206の内側電極224を外側導体236に接続するが、第2のジョー208の単一電極及び第1のジョー206の外側電極226を、内側導体に接続することができる。様々な電極の構成が、
図8と9を参照して以下に説明される。
【0084】
図7Aは、機器先端に向かって移動するときの機器シャフト612の切り欠き斜視図である。機器シャフト612は、同軸ケーブル626及び制御ロッド636を搬送するための内腔を画定する外側スリーブ648を備える。この例では、同軸ケーブル626及び制御ロッド636は、長手方向に延びるインサート650に保持される。インサート650は、例えばPEEKなどの変形可能なポリマーまたは同様の機械的特性を有する他のプラスチックから形成される押出部である。
図7Bにおいてより明確に示されるように、インサート650は、その外面の周りに切り取られた一続きのサブルーメン664を有する円筒状要素である。サブルーメン664は、インサート650の外面を突き破って、その周囲に複数の別個の足部662を画定する。サブルーメン664は、同軸ケーブル626または制御ロッド636などの構成要素を搬送するようなサイズにすることができ、またはスリーブ648の管腔に沿って流体が流れるのを可能にする目的で存在させることができる。
【0085】
インサートが密閉されたいずれのサブルーメンを含まないことは、有益である場合がある。完全に密閉されたサブルーメンは、曲がった状態で保管されると変形が残りがちになる可能性がある。このような変形は、使用中にぎくしゃくした動きをもたらし得る。
【0086】
インサート650は、同軸ケーブル626を受け入れるためのサブルーメンを備え得る。この例では、同軸ケーブル626は、誘電体材料656によって外側導体654から分離されている内側導体658を備える。外側導体654は、シャフトがシャフトの屈曲を伴うときインサートと同軸ケーブルとの間の相対的な長手方向の移動を可能にするために、例えばPTFEまたは他の適切な低摩擦材料から形成された保護カバーまたはシース652を順次有し得る。
【0087】
別のサブルーメンは、制御ロッド636が貫通して延びる標準的なPFTEチューブ660を受け入れるように配置され得る(これは、
図3A及び3Bのガイドワイヤチューブ252であり得る)。代替実施形態では、制御ロッド636には、使用前に低摩擦(例えば、PFTE)コーティングを施すことができ、その結果、別個のPFTEチューブは必要ではなくなる。
【0088】
インサートは、同軸ケーブル626及び制御ロッド636とともに取り付けられたときに、スリーブ648の内腔を満たす、すなわち、それの中にぴったりと嵌合するように配置される。これは、インサートが、シャフト612が曲げられている間及び回転している間の同軸ケーブル、制御ロッド、及びスリーブ間の相対的な動きを制限するように機能することを意味する。さらに、スリーブ648を充填することにより、インサートは、スリーブが過度に回転されても潰れて回転を失うのを防止するのに役立つ。インサートは、そのような動きに抵抗する剛性を示す材料から作られることが好ましい。
【0089】
インサートの存在により、機器シャフト612の変形によって引き起こされる制御ロッドの「失われる」移動を、さらに防止することができる。
【0090】
上述の押し出されたインサートは、スリーブの内側に引っかかり、スリーブの軸の周りに制御ロッドを巻き付けるのを妨げるカム状の足部を設ける。これにより、上で説明した移動の損失が減少する。
【0091】
図8及び9は、本発明の実施形態による電気外科切除器具における可能な電極構成を示す概略図である。
【0092】
図8は、第1のジョー902及び第2のジョー904を有する電気外科切除器具の機器先端900の一部の概略断面図を示す。第1及び第2のジョーは、互いに対して移動可能(例えば、枢動可能)であり、各ジョーは、ジョーの間に位置する組織を切断するためのそれぞれのブレード要素を含む。本発明の好ましい実施形態では、
図2に関して上述したように、第1のジョー902は静止式のジョーであってもよく、第2のジョー904は可動式のジョーであってもよい。第1のジョー902は、内側電極906と外側電極908を含み、これらは、誘電体材料要素910によって分離されている。内側電極906は電気外科切除器具の同軸ケーブルの内側導体に電気的に接続されるが、外側電極908は同軸ケーブルの外側導体に電気的に接続される。第2のジョー904は単一電極914を備え、これも同軸ケーブルの外側導体に電気的に接続されている。単一電極914は、内側電極または外側電極のいずれかとして形成することができ、第1のジョーの内側電極または外側電極と同様の方法で設けることができる。
図8及び9に示す概略図において、単一電極914は、第2のジョー904の内側電極としてみなされるが、接続及び放射場の説明は、単一電極が内側電極であっても外側電極であっても実質的に同じであることを理解されたい。
図8~9の「+」及び「-」の記号は、各電極が同軸ケーブルの内側導体と外側導体のどちらに接続されているかを示しており、「+」は電極が内側導体に接続されていることを示し、「-」は電極が外側導体に接続されていることを示す。
【0093】
第1のジョー902の内側電極906と第2のジョー904の内側電極914との間の電気的接続を防止するために、第1のジョー902は、内側電極906の内面に配置された第2の誘電体材料要素912を備える。第2の誘電体材料要素912は、第1の誘電体材料要素910と同じ誘電体材料で作製することができ、例えば、第1のジョー902に取り付けられる平面誘電体要素の形態とすることができる。加えて、または代わりに、一片の誘電体材料が、内側電極914の内面を覆い、内側電極906と内側電極912との間に位置するように、第2のジョー904に設けられてもよい。2つの内側電極間の電気的破壊のリスクを最小限に抑えるには、内側電極のそれぞれを誘電体材料で覆うことが好ましい場合がある。これはまた、ジョー間の対称性を改善することができ、これにより、ひいては機器先端によって放出されるRF及びマイクロ波エネルギーの対称性を改善することができる。
【0094】
図8に示す電極構成では、RF EMエネルギーが同軸ケーブルを介して電極に伝達されるときに、2つのRF切断場が生成され得る。第1のRF切断場は、両方共第1のジョー902のものである内側電極906と外側電極908との間に確立され得、内側電極906は活性電極として機能し、外側電極908はRF EMエネルギーに対する第1の戻り電極として機能する。第2のRF切断場は、第1のジョー902の内側電極906と第2のジョー904の単一の内側電極914との間に確立され得、第1のジョー902の内側電極906は、活性電極として機能し、第2のジョー904の内側電極914は、RF EMエネルギーの第2の戻り電極として機能する。結果として、RF切断場は、第1のジョー902の内側電極906に関して実質的に対称であり得、これにより、組織の均一なRF切断が可能になり得る。
【0095】
マイクロ波EMエネルギーが同軸ケーブルを介してジョー902、904の電極に送達されると、ジョーの周囲にマイクロ波場が確立され得る。特に、電極は、マイクロ波エネルギーを放出するためのマイクロ波場放出構造(またはアンテナ構造)として協働することができる。第1のジョー902の内側電極906は、マイクロ波エネルギーを放出するためのマイクロ波エミッタとして機能する。第2のジョー904の外側電極908及び内側電極914は、放出されたマイクロ波エネルギーを形成する接地導体として機能する。このようなマイクロ波場放出構造は、ジョーの周囲に実質的に対称的なマイクロ波場を放出する結果となり得る。
【0096】
図9は、第1のジョー1002及び第2のジョー1004を有する電気外科切除器具の機器先端1000の一部の概略断面図を示す。第1及び第2のジョーは、互いに対して移動可能(例えば、枢動可能)であり、各ジョーは、ジョーの間に位置する組織を切断するためのそれぞれのブレード要素を含む。本発明の好ましい実施形態では、
図2に関して上述したように、第1のジョー1002は静止式のジョーであってもよく、第2のジョー1004は可動式のジョーであってもよい。第1のジョー1002は、内側電極1006と外側電極1008を含み、これらは、誘電体材料要素1010によって分離されている。内側電極1006は電気外科切除器具の同軸ケーブルの外側導体に電気的に接続されるが、外側電極1008は同軸ケーブルの内側導体に電気的に接続される。第2のジョー1004は単一の内側電極1014を備え、これも同軸ケーブルの内側導体に電気的に接続されている。
【0097】
第1のジョー1002の内側電極1006と第2のジョー1004の内側電極1014との間の電気的接続を防止するために、第1のジョー1002は、内側電極1006の内面に配置された第2の誘電体材料要素1012を備える。第2の誘電体材料要素1012は、第1の誘電体材料要素1010と同じ誘電体材料で作製することができ、例えば、第1のジョー1002に取り付けられる平面誘電体要素の形態とすることができる。加えて、または代わりに、一片の誘電体材料が、内側電極1014の内面を覆い、内側電極1006と内側電極1012との間に位置するように、第2のジョー1004に設けられてもよい。2つの内側電極間の電気的破壊のリスクを確実に最小限に抑えるには、内側電極のそれぞれを誘電体材料で覆うことが好ましい場合がある。これはまた、ジョー間の対称性を改善することができ、これにより、ひいては機器先端によって放出されるRF及びマイクロ波エネルギーの対称性を改善することができる。
【0098】
図9に示す電極構成では、RF EMエネルギーが同軸ケーブルを介して電極に伝達されるときに、2つのRF切断場が生成され得る。第1のRF切断場は、両方共第1のジョー1002のものである内側電極1006と外側電極1008との間に確立され得、外側電極1008は第1の活性電極として機能し、内側電極1006はRF EMエネルギーに対する戻り電極として機能する。第2のRF切断場は、第1のジョー1002の内側電極1006と第2のジョー1004の内側電極1014との間に確立され得、第2のジョー1004の内側電極1014は、第2の活性電極として機能し、第1のジョー1002の内側電極1006は、RF EMエネルギーへの戻り電極として機能する。結果として、RF切断場は、第1のジョー1002の内側電極1006に関して実質的に対称であり得、これにより、組織の均一なRF切断が可能になり得る。
【0099】
マイクロ波EMエネルギーが同軸ケーブルを介してジョー1002、1004の電極に送達されると、ジョーの周囲にマイクロ波場が確立され得る。特に、電極は、マイクロ波エネルギーを放出するためのマイクロ波場放出構造(またはアンテナ構造)として協働することができる。第2のジョー1004の内側電極1014及び第1のジョー1002の外側電極1008は、マイクロ波エネルギーを放出するマイクロ波エミッタとして機能する。第1のジョー1002の内側電極1006は、放出されたマイクロ波エネルギーを形成する接地導体として機能する。このようなマイクロ波場放出構造は、ジョーの周囲に実質的に対称的なマイクロ波場を放出する結果となり得る。
【0100】
上述の説明、もしくは以下の特許請求の範囲、もしくは添付の図面で開示し、その具体的な形態でもしくは開示した機能を行うための手段の形で表した特徴、または開示した結果を得るための方法もしくはプロセスを、必要に応じて、別個に、またはこのような特徴の任意の組み合わせで、本発明をその多様な形態で実現するために利用してもよい。
【0101】
本発明を、上記の例示的な実施形態と併せて説明してきたが、本開示が与えられた場合、多くの均等の修正及び変形が当業者には明らかであろう。したがって、上記の本発明の例示的な実施形態は、例示的であり限定的でないと判断される。記載される実施形態への様々な変更を、本発明の趣旨及び範囲から逸脱せずに行ってもよい。
【0102】
誤解を避けるために、本明細書に提供する理論的な説明は、読者の理解を深めることを目的として提供されている。本発明者らは、これらの理論的説明のいずれにも拘束されることを望むものではない。
【0103】
本明細書で使用される任意のセクションの見出しは構成の目的のみのためであり、記載される対象物の限定として解釈されるべきではない。
【0104】
以下の特許請求の範囲を含む本明細書を通して、文脈が特別に要求しない限り、「含む(comprise)」及び「含む(include)」という単語、ならびに変形、例えば、「含む(comprises)」、「含むこと(comprising)」及び「含むこと(including)」は、明示された構成要素もしくはステップ、または構成要素もしくはステップの群を包含するが、他の構成要素もしくはステップ、または構成要素もしくはステップの群を除外しないことを示唆すると理解される。
【0105】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明確にそうでないと示されない限り、複数の指示物を包含することに留意されたい。範囲は、「約」ある特定の値から及び/または「約」他の特定の値として、本明細書において表現され得る。そのような範囲が表現されるとき、別の実施形態は、1つの特定の値から及び/または他の特定の値までを含む。同様に、値が近似として表現される場合に、先行詞「約」の使用によって、特定の値が別の実施形態を形成することが理解されよう。数値に関連する用語「約」は、任意であり、例えば、±10%を意味する。
【国際調査報告】