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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】3つのミラーを含む結像光学系
(51)【国際特許分類】
   G02B 17/02 20060101AFI20240104BHJP
   G02B 5/08 20060101ALI20240104BHJP
   G03B 19/02 20210101ALI20240104BHJP
   G03B 17/17 20210101ALI20240104BHJP
   G03B 11/04 20210101ALI20240104BHJP
【FI】
G02B17/02
G02B5/08 A
G03B19/02
G03B17/17
G03B11/04 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2023537044
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 FR2021052314
(87)【国際公開番号】W WO2022129770
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】2013568
(32)【優先日】2020-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518023164
【氏名又は名称】オフィス ナショナル デテュード エ ドゥ ルシェルシュ アエロスパシアル
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】デュヴォ,ルイ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥルアール,ギヨーム
【テーマコード(参考)】
2H042
2H054
2H083
2H087
2H101
【Fターム(参考)】
2H042DA01
2H042DA11
2H042DB14
2H042DC08
2H042DC11
2H042DD09
2H054BB02
2H083AA58
2H083DD35
2H087KA01
2H087NA03
2H087NA18
2H087TA05
2H087TA06
2H101FF00
(57)【要約】
3つのミラー(M1、M2、M3)を備える結像光学系(1)は、そうでなければ系のイメージセンサ(2)に到達し得る迷光を遮断するように適合された構成を有し、それと同時に、大きな照射野、高度な開口、および良好な系のコンパクト性を可能にする。系はまた、前記系の光学入口の両側に1つ配置された2つの入口バッフル(11、12)を組み込んでもよい。前記2つの入口バッフルの機能は、取り込まれた各像に有用な入射野から角度的に離れた照射野に由来する光線を遮断することに限定され得る。したがって、2つの入口バッフルは上流における長さを短くすることができ、その結果、系は小さいサイズを有する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1ミラー(M1)と、第2ミラー(M2)と、第3ミラー(M3)とを含む3つのミラーを備えた結像光学系(1)であって、前記系の入射野に位置するシーンから生じる光線が、最初に前記第1ミラーによって、次いで前記第2ミラーによって、次いで前記第3ミラーによって反射されて、前記系の焦点面(FP)内に前記シーンの像を形成するように、前記第1ミラー(M1)、前記第2ミラー(M2)、および前記第3ミラー(M3)が適合および配置され、
前記シーンから生じ、前記像の形成に寄与する光線は、前記第1ミラー(M1)の上流の初期部分と、前記第1ミラーと前記第2ミラー(M2)との間の第1中間光線部分と、前記第2ミラーと前記第3ミラー(M3)との間の第2中間光線部分と、前記第3ミラーと前記焦点面(PF)との間の末端光線部分とに分割され、
前記第1(M1)および第2(M2)ミラーは前記系(1)の近軸光線の前記第2中間部分が前記近軸光線の前記初期部分と交差するように配向され、前記第2および第3ミラー(M3)は前記近軸光線の前記末端部分が前記第2ミラーに対する前記第1ミラーの横方向のずれとは反対の側の前記第2ミラーの側面を通過するように配向され、その結果、前記近軸光線の前記末端部分は前記近軸光線の前記第1中間部分と交差せず、
前記系(1)はさらにイメージセンサ(2)を備え、前記イメージセンサの感光面(S)が前記焦点面(PF)に重ねられ、前記感光面が上流境界(LAM)から下流境界(LAV)に延在するように配置され、前記イメージセンサの前記感光面の前記上流および下流境界は前記近軸光線の前記初期部分への前記上流および下流境界のそれぞれの投影に関係して規定され、かつ、前記近軸光線の前記初期部分における前記近軸光線の伝搬方向に関係して規定され、
前記系(1)は、前記イメージセンサ(2)の前記感光面(S)の上流境界(LAM)が前記第1ミラー(M1)の上流縁部(BAM1)と前記第2ミラー(M2)の上流縁部(BAM2)とを結ぶ直線(D)に対して、あるいは前記第2ミラーを囲むスクリーンの上流縁部に対して、下流にずれ、前記第2ミラーまたは前記第2ミラーを囲む前記スクリーンが前記第1ミラーから前記イメージセンサの前記感光面へと直線的に伝播するであろう光線を遮断するように、前記第2ミラーおよび前記第3ミラーが配向されることを特徴とし、
前記第1ミラー(M1)、前記第2ミラー(M2)のそれぞれの上流縁部(BAM1、BAM2)および下流縁部(BAV1、BAV2)は、前記近軸光線の前記初期部分上への前記第1ミラー、前記第2ミラーのそれぞれの前記上流および下流縁部のそれぞれの投影に関係して規定され、かつ、前記近軸光線の前記初期部分における前記近軸光線の前記伝播方向に関係して規定され、
前記イメージセンサ(2)の前記感光面(S)の前記上流境界(LAM)の前記下流へのずれは、前記近軸光線の前記初期部分に平行であり、前記近軸光線の前記初期部分における前記近軸光線の前記伝播方向へのずれである、結像光学系(1)。
【請求項2】
前記第1ミラー(M1)、前記第2ミラー(M2)、および前記第3ミラー(M3)のうちの少なくとも1つは、自由形状の反射面を有する、請求項1に記載の結像光学系(1)。
【請求項3】
前記第3ミラー(M3)とは反対の、前記イメージセンサ(2)と同じ前記入射野の第1の側において、第1照射野端縁光線の初期部分に重ね合わされる第1入口バッフル(11)を備え、前記第1入口バッフルは、第2照射野端縁光線の末端部分に接続する下流縁部(BAV11)を有する、請求項1または2に記載の結像光学系(1)。
【請求項4】
前記イメージセンサ(2)とは反対の、前記第3ミラー(M3)と同じ前記入射野の第2の側において、第2照射野端縁光線の初期部分に重ね合わされる第2入口バッフル(12)をさらに備え、前記第2入口バッフルは、前記第3ミラーの上流縁部(BAM3)、前記第3ミラーを囲むスクリーン、または前記第3ミラーのための不透明な台に接続される下流縁部(BAV12)を有するか、あるいは、前記第2入口バッフルの前記下流縁部が、前記イメージセンサ(2)の前記感光面(S)の前記上流境界(LAM)と前記第1入口バッフル(11)の前記下流縁部(BAV11)とを結ぶ直線(D)の下流に配置される、請求項3に記載の結像光学系(1)。
【請求項5】
前記第2入口バッフル(12)は、前記第1入口バッフル(11)の前記下流縁部(BAM1)と前記イメージセンサ(2)の前記感光面(S)の前記下流境界(LAV)とを結ぶ直線(D)の上流に位置する上流縁部(BAM12)を有することを特徴とする請求項4に記載の結像光学系(1)。
【請求項6】
前記イメージセンサ(2)の縦寸法が、前記系の第1画角(α)を決定し、
前記系(1)は、前記第1画角(α)が9°以上、好ましくは18°以上であるように適合される請求項1から5の何れか1項に記載の結像光学系(1)。
【請求項7】
前記イメージセンサ(2)はマトリクス配列を有し、前記イメージセンサの横寸法は前記縦寸法に垂直であり、前記系の第2画角を決定し、
前記系(1)は、前記第2画角が12°以上、好ましくは24°以上であるようにさらに適合される、請求項6に記載の結像光学系(1)。
【請求項8】
5未満、好ましくは2未満の開口数Nを有し、前記開口数Nはf/Dに等しく、fは前記系の焦点距離fであり、Dは前記系の入射瞳の寸法である、請求項1から7の何れか1項に記載の結像光学系(1)。
【請求項9】
瞳孔絞りをさらに備え、前記瞳孔絞りは、前記第1ミラー(M1)または前記第3ミラー(M3)、好ましくは前記第3ミラーに位置する、請求項1から8の何れか1項に記載の結像光学系(1)。
【請求項10】
前記第3ミラー(M3)と前記イメージセンサ(2)との間に配置されたスペクトル分離装置(13)と、前記系の焦点面(PF)の像(PF’)に配置された追加のイメージセンサ(2’)とをさらに備え、前記像が前記スペクトル分離装置によって形成される、請求項1から9の何れか1項に記載の結像光学系(1)。
【請求項11】
前記第1(M1)、第2(M2)、および第3(M3)ミラーは、前記系の焦点距離fの値の2~6倍の直径を有する球体内に含まれる、請求項1から10の何れか1項に記載の結像光学系(1)。
【請求項12】
前記第1(M1)、第2(M2)、および第3(M3)ミラーのうちの少なくとも1つが、注入されたポリマー系材料から作られた剛性部分(M2b)と、任意の反射性金属層(M2r)とを備える、請求項1から11の何れか1項に記載の結像光学系(1)。
【請求項13】
請求項1から12の何れか1項に記載の系(1)を含むオプトエレクトロニック撮像装置(100)であって、前記装置は、航空機の誘導装置、サーマルカメラ、視界補助装置、ならびに、監視および探知のためのオプトエレクトロニックポッドから選択される、オプトエレクトロニック撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、3つのミラーを含む結像光学系、およびそのような系を含むオプトエレクトロニック(光電子)撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
3つのミラーを含む結像光学系は、多くの用途に使用されている。特に、これらの系は、望遠タイプの系であってもよく、A.Bauerらによる「Concurrent engineering of a next-generation freeform telescope: optical design」、SPIE、Vol.10998, 2019年5月14日、109980W-1~109980W-8頁は、各々が3つの自由形状のミラーから構成される、いくつかの新しい結像光学系の構成を提案している。結像光学系に関する一般的な課題は特に、それらのサイズ、およびミラーによって形成される像に重畳される迷光の量を低減する可能性である。このような結像光学系のイメージセンサに到達する迷光の量を低減するために、適した方式にて配置された1つ以上のバッフルを使用することが一般的に行われている。しかしながら、これらのバッフルのいくつか、特に最も効率的なバッフルは、系のサイズを著しく増加させる。そのサイズを増大させることに加えて、そのようなバッフルはまた、いくつかの連続する画像において捕捉されるべき大きなシーンを走査するために適合される回転中の結像光学系の回転慣性を増大させる。高い角加速度を有するこれらの系の高速の回転を必要とする結像光学系の1つの応用は、監視および探知のためのオプトエレクトロニックポッドの供給である。オプトエレクトロニックポッドは航空機、例えば、航空機に搭載されたヘリコプターまたは無人機に搭載されるように意図されている。したがって、結像光学系に組み込まれるバッフルを可能な限り小さくしながら、撮影画像において低レベルの迷光を得ることが重要である。
【0003】
図1は、先に引用したA.Bauerらの論文に記載されている構成の1つの図である。このような、全体を参照番号1で示す結像光学系は、M1で示す第1ミラー、M2で示す第2ミラー、およびM3で示す第3ミラーを含む3つのミラーを含むタイプである。これらのミラーは、系の入射野に位置するシーンから発生する光線が最初にミラーM1によって、次にミラーM2によって、次にミラーM3によって反射されて、PFで示される系の焦点面内にシーンの像を形成するように、適合され、配置される。したがって、シーンから発生し、像を形成することに寄与する任意の光線は、ミラーM1の上流の初期部分と、ミラーM1とミラーM2との間の第1中間光線部分と、ミラーM2とミラーM3との間の第2中間光線部分と、ミラーM3と焦点面PFとの間の末端光線部分とに分割される。第2ミラーM2は凸面であってもよく、第3ミラーM3は凹面であってもよい。主ミラーM1の曲率方向は、このミラー上の位置に応じて変化し得る。3つのミラーM1、M2、およびM3は、自由形状の反射面を有する。公知の様式では、自由形状の曲面が回転対称性を有するいかなる表面にも含まれない。
【0004】
本明細書において、上流および下流という用語は、シーンから生じ、焦点面PFにおいて像を形成する光線の伝播方向に対して定義される。さらに、用語「近軸光線(parabasal ray)」または「主光線」はシーンから発生し、系1の入射瞳の中心を通過することによって焦点面PFにおける像に寄与し、系の光軸に対してゼロの角度偏差を有する光線を指すために使用される。図1では、近軸光線は参照RPで、初期部分においては参照RPで、第1および第2中間部分においては参照RPおよびRPで、末端部分においては参照RPで示されている。シーンのうち系1の入射野の境界に位置する要素から発生し、系の入射瞳の端部を通過する光線は、照射野端縁光線と呼ばれる。
【0005】
図1の系では、近軸光線RPの第2中間部分RPが初期部分RPと交差するように、ミラーM1およびM2が配向されている。このミラーM1およびM2の構成をα構成と呼ぶ。さらに、ミラーM2およびM3は、近軸光線RPの末端部分RPがミラーM2に対するミラーM1の横方向のずれとは反対の側のミラーM2の側面を通過するように配向される。この様式において、近軸光線RPの末端部分RPは、光線の第1中間部分RPと交差しない。ミラーM2およびM3のこの構成は、z構成と呼ばれる。したがって、系1は、α-z構成と呼ばれる全体的な光学構成を有する。
【0006】
系1は、さらにイメージセンサ2を備え、このイメージセンサの感光面Sが焦点面PFに重ねられるように配置される。感光面Sは、上流境界LAMから下流境界LAVまで延在している。イメージセンサ2の感光面Sの上流LAMおよび下流LAV境界は、近軸光線RPの初期部分へのこれらの境界のそれぞれの投影に関係して規定され、この初期部分における近軸光線RPの伝播方向に関係して規定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は、イメージセンサに到達する迷光の量を低減した新たな結像光学系を提案することを目的とする。
【0008】
本発明の他の目的は、結像光学系が小型であることである。
【0009】
本発明の他の追加の目的は、結像光学系が大きな入射野を有することができ、および/または大きな入射瞳を有することができることである。
【0010】
本発明のさらに他の目的は、結像光学系を低コストで製造できることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
これらの、あるいは他の目的の少なくとも1つを達成するために、本発明の第1の態様は、上述したタイプの3つのミラーを含む結像光学系を提案する。第2および第3ミラーは、イメージセンサの感光面の上流境界が、第1ミラーの上流縁部と第2ミラーの上流縁部とを結ぶ直線、あるいは、第2ミラーを囲むスクリーンの上流縁部に対して下流にずれるように配向される。このようにして、第2ミラーあるいはそれを囲むスクリーンは、そうでなければ第1ミラーから直接イメージセンサの感光面に直線的に伝播するのであろう光線を遮断する。
【0012】
上述の慣例に従って、第1ミラー、第2ミラーのそれぞれの上流および下流縁部は、それぞれ、近軸光線の初期部分上へのそれらのそれぞれの投影に関係して規定される。また、上流および下流縁部は、この初期部分における近軸光線の伝播方向に規定している。同様に、イメージセンサの感光面の上流境界の下流へのずれは、近軸光線の初期部分に平行である。そして、下流へのずれは、この初期部分における近軸光線の伝播方向へのずれである。
【0013】
したがって、第2ミラーがイメージセンサと第1ミラーとの間に位置する、このような系の構成は、迷光を遮断することを可能にする。そうでなければ、特に、系の光学入口を通って入り、第1ミラーによってイメージセンサに向かって反射される、第1ミラーからから直接伝搬する光線がイメージセンサに到達するだろう。
【0014】
本発明の改良によれば、系は、第1入口バッフルをさらに備えることができる。第1入口バッフルは、第3ミラーとは反対の、イメージセンサと同じ入射野の第1の側において、第1照射野端縁光線の初期部分に重ね合わされる。この場合、この第1入口バッフルは、第2照射野端縁光線の末端部分に接続する下流縁部を有することができる。これらの第2照射野端縁光線は、特に系が3つのミラーに共通の対称面を有するとき、系に入射し、像を形成する第1照射野端縁光線とは反対であってもよい。そのような第1入口バッフルは、そうでなければイメージセンサに向かって直接配向されたその光学入口を通って系に入射する光の一部を遮断する。さらに、この第1入口バッフルはその下流縁部から始まって、この第1入口バッフルの上流縁部が光線を遮断する長さを有することができる。そうでなければ、光線はその光学入口を通って第3ミラーに向かって系に入り、この第3ミラーによってイメージセンサに向かって反射される。
【0015】
本発明の特徴によれば、イメージセンサの感光面の上流境界が第1ミラーおよび第2ミラーのそれぞれの上流縁部を結ぶ直線に対して下流にずれているため、第1入口バッフルは、第1照射野端縁光線の初期部分に平行な短縮された長さを有することができる。したがって、第1入口バッフルを含む系のサイズが低減される。
【0016】
本発明の補足的な改良によれば、系は、第2入口バッフルをさらに備えることができる。第2入口バッフルは、第3ミラーと同じ入射野の、イメージセンサとは反対の第2の側において、第2照射野端縁光線の初期部分に重ね合わされる。次いで、この第2入口バッフルは第3ミラーの上流縁部に、またはこの第3ミラーを囲むスクリーンに、または第3ミラーのための不透明な台に接続される下流縁部を有してもよい。あるいは、第2入口バッフルの下流縁部がイメージセンサの感光面の上流境界を第1入口バッフルの下流縁部に接続する直線の下流に位置してもよい。そのような第2入口バッフルは、そうでなければ光学入口を通って系に入り、イメージセンサに直接向けられる光をさらに低減する。
【0017】
好ましくは、第2入口バッフルが第1入口バッフルの下流縁部をイメージセンサの感光面の下流境界に接続する直線の上流に位置する上流縁部を有することができる。したがって、第1および第2入口バッフルは協働して、そうでなければその光学入口を通って系に入り、イメージセンサに直接向かうか、または第3ミラーに向かうすべての光線を遮断する。
【0018】
また、本発明の特徴により、イメージセンサの感光面の上流境界は第1および第2ミラーのそれぞれの上流縁部を接続する直線に対して下流にずれるため、第2入口バッフルは第2照射野端縁光線の初期部分に平行な長さを減少させることができる。したがって、第2入口バッフルを含む系のサイズも縮小される。
【0019】
本発明の好ましい実施形態では以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つが、単独で、またはそれらのうちのいくつかを組み合わせて、任意に再現されてもよい。
【0020】
-第1ミラー、第2ミラー、および第3ミラーのうちの少なくとも1つは、自由形状の反射面を有していてもよい。
【0021】
-イメージセンサの縦寸法は系の第1画角を決定し、系は、この第1画角が9°(度)以上、好ましくは18°以上であるように適合されてもよい。これにより系の入射野は大きくすることができるが、好ましくは45°未満である。
【0022】
-イメージセンサは、マトリクス配列を有してもよく、この場合、イメージセンサのその縦寸法に垂直である横寸法は、系の第2画角を決定する。この場合、系は、第2画角が12°以上、好ましくは24°以上、好ましくは60°未満であるように適合されてもよい。
【0023】
-系は5未満、好ましくは2未満の開口数値Nを有することができ、開口数値Nはf/Dに等しく、fは系の焦点距離であり、Dは系の入射瞳の寸法である。したがって、開口数の値Nは、系の入射瞳を大きくすることができる。
【0024】
-焦点距離fの値は、100mm以下、好ましくは20mm以下、2mmより大きくてもよい。
【0025】
-イメージセンサは、シーンから発生する光線の波長値において、360nm(ナノメートル)~14μm(マイクロメートル)に及ぶスペクトル間隔の少なくとも一部に感度を有するタイプのものであってもよい。特に、イメージセンサは、ボロメータ型またはマイクロボロメータ型の熱センサであってもよい。
【0026】
-系は第1ミラーまたは第3ミラー、好ましくは第3ミラーに配置される瞳孔絞りをさらに備えてもよい。瞳孔絞りのこれらの2つの位置について、これは、特に、円形、正方形、または長方形の簡単な開口形状を有することができる。さらに、それが第3ミラーに位置する場合、そのサイズはより小さい。有利には、瞳孔絞りは第1ミラーまたは第3ミラーの周縁部によって形成されてもよい。
【0027】
-前記系は、前記第3ミラーと前記イメージセンサとの間に配置されるスペクトル分離装置と、前記系の焦点面の像に配置された追加のイメージセンサとをさらに備えてもよく、前記像が前記スペクトル分離装置によって形成されてもよい。
【0028】
-第1、第2、および第3ミラーは、系の焦点距離fの値の2~6倍の直径を有する球に含まれてもよい。
【0029】
-第1、第2、および第3ミラーのうちの少なくとも1つは、注入されたポリマー系材料で作られた剛性部分と、任意の反射性金属層と、を含んでもよい。
【0030】
最後に、本発明の第2の態様は、上述の第1の態様による系を備えるオプトエレクトロニック撮像装置を提案する。この装置はこれらに限定されないが、航空機の誘導装置、サーマルカメラ、視界補助装置、または、監視および探知のためのオプトエレクトロニックポッドであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下のいくつかの非限定的な実施形態の詳細な説明においてより明確に明らかになるであろう。
図1】本発明以前から知られている結像光学系の光学図である。
図2】本発明に係る結像光学系の光学図である。
図3a図2に対応し、本発明の特徴を示す。
図3b】本発明の他の特徴を示すために図3aに対応する。
図4】本発明の改良のための図2に対応する。
図5図2の系を組み込んだオプトエレクトロニック撮像装置を示す。
【発明を実施するための形態】
【0032】
明確とするために、これらの図に示される要素の寸法は、実際の寸法にも、実際の寸法比にも対応しない。さらに、異なる図に示される同一の参照符号は、同一であるか、または同一の機能を有する要素を示す。図面の平面は示される結像光学系の対称面を構成するが、そのような対称性は本発明に必須ではないとみなされてもよい。実際、各系の3つのミラーは、近軸光線の部分が同一平面上にないように角度を付けることができる。
【0033】
図1図4において、直交座標系x、y、zは、x軸が図の平面に垂直であり、z軸は近軸光線RPの初期部分RPに平行であり、この部分上の光線の伝播方向に配向され、y軸は、焦点面PFに形成される像に寄与する光線の伝播方向と一致するように配向され、これらの光線の末端部分が、正に配向されるy軸上の投影を有するように配向される。図の平面であるy-z平面は、ミラーM1、M2、およびM3の各々の反射面の対称面を含む、系1の対称面であってもよい。上流および下流という用語は、z軸上の光学部品の境界または縁部の投影のそれぞれの位置を比較することによって、このz軸に関して定義される。特に、下流縁部BAV1、BAV2のそれぞれは、上流縁部BAM1、BAM2のそれぞれと、ミラーM1、M2のそれぞれに対し反対の側にある。
【0034】
図1に示す直線DはミラーM1、M2の上流縁部を結び、それぞれBAM1、およびBAM2で示されている。それは、イメージセンサ2が依然としてz軸に関して、この直線Dの上流に少なくとも部分的にずれていることを示す。直線Dとイメージセンサ2との相対位置のために、迷光は、ミラーM1からイメージセンサ2に直接的に伝播することができる。この迷光は、系1の光学入口が向いているシーンから生じ、ミラーM1によってイメージセンサ2に向けて反射され得る。そして、迷光はミラーM2の上流を通過することにより、直接、イメージセンサ2に到達する。図1の参照Rは、この迷光の光線を示す。この迷光の光線Rはその光入射において、系1の光軸に対してわずかな傾斜を有し、ミラーM1によって反射される前にz軸に対してわずかな傾斜を有することを意味する。系1の光学入口に配置された照射野縁部のマスクによるその除去は、このマスクが光学入口の上流方向に大きな長さを有することを必要とする。
【0035】
図2図1と同じタイプであるが、本発明によって修正された系1を示す。また、本発明において、ミラーM2、M3は、イメージセンサ2の感光面Sが直線Dに対して上流に完全にずれるように位置決めされて傾斜している。つまり、感光面Sの上流境界LAMは、直線Dよりも下流に位置している。このようにして、本発明により、迷光はミラーM1からイメージセンサ2に直接的に伝播することができず、光線Rと同様の光線は全て遮断される。明らかに、ミラーM2の上流縁部は、上記ミラーの上流に延びるミラーM2の周縁スクリーンの上流縁部によって直線Dを画定するように置き換えることができる。
【0036】
図2の系1では、ミラーM3が入射瞳を構成する。
【0037】
図2の本発明の実施形態では、図のy-z平面に現れるイメージセンサ2の感光面Sの寸法は、関連する画角が18°に等しくなる寸法である。この説明の全体的な部分では、感光面Sのこの寸法は縦寸法と呼ばれ、関連する画角は第1画角と呼ばれている。この第1画角は、以下にαで示される。
【0038】
イメージセンサ2はマトリクス型であってもよく、その場合、その感光面Sはx軸に平行な別の寸法を有する。この他の寸法は、本明細書の全体的な部分において、感光面Sの横寸法と呼ばれている。図2の実施形態では、イメージセンサ2の感光面Sのこの横寸法が関連する画角のようなものであり、第2画角と呼ばれ、24°に等しい。したがって、図2の系1は、18°×24°という大きな全視野を有している。しかしながら、このような結像光学系の構成により、より大きな視野またはより小さな視野を得ることができる。ここで説明される実施形態によれば、イメージセンサ2の感光面Sが矩形の場合、このイメージセンサは、好ましくはその感光面の最大横寸法が系1の対称面に対して垂直、すなわち図2の面に対して垂直になるように配向される。
【0039】
一例として示される図2の実施形態では、イメージセンサ2がその縦寸法においてそれぞれ12μm(マイクロメートル)の240ピクセルを有し、その横寸法において320ピクセルを有する。系1の焦点距離値fは9mm(ミリメートル)に等しく、その開口数Nは1.5に等しく、6mmの入射瞳サイズに対応する。
【0040】
図3aおよび図3bは、系1の3つのミラーM1、M2、およびM3が、イメージセンサ2と同じく、SPHで示される40mmに等しい直径の球内に含まれることを示しながら、図2と同じ本発明の実施形態を繰り返す。したがって、系1は特にコンパクトであり、航空機の誘導装置、サーマルカメラ、視界補助装置、ならびに、監視および探知のためのオプトエレクトロニックポッドなどのオプトエレクトロニック撮像装置への組み込みに適している。図5は、無人機30に搭載され、系1を組み込んだ、参照符号20によって示される、監視および探知のためのそのようなオプトエレクトロニックポッドを示す。
【0041】
本発明のいくつかの可能な実施形態では、系1の光学部品の一部または全部が一般に3D印刷と呼ばれる3次元印刷によって製造されてもよい。
【0042】
他の可能な実施形態では、系1の光学部品の一部または全部が注入されるポリマー系材料から製造されてもよい。そのような他の実施形態は、特に低いコスト価格を有することができる。さらに、注入によって形成されるミラーM1、M2、およびM3のうちの少なくとも1つは、ミラーのための自己測位システムを用いて直接生成されてもよい。
【0043】
ミラーM1、M2、およびM3の各々は、硬直であり、その反射面の形状を提供する基部と、その表面上に載置された反射金属層とから構成されてもよい。硬直な基部は、中実の3D印刷材料から製造されてもよく、または注入されたポリマーに基づいてもよい。ミラーM2については、このミラーの基部および反射層が図2においてそれぞれ参照番号M2bおよびM2rによって示されている。
【0044】
図3aおよび図3bはさらに、2つの入口バッフルを示す。入口バッフルはさもなければイメージセンサ2に到達し得る迷光の量をさらに低減するために、系1に追加される。参照符号11で示される入口バッフルは、本明細書の全体的な部分では第1入口バッフルと呼ばれ、参照符号12で示される入口バッフルは第2入口バッフルと呼ばれる。系1の光学入口は、参照Oによって示される。入口バッフル11はイメージセンサ2に近い光学入口Oの縁部に位置する。入口バッフル12は、入口バッフル11とは反対側の光学入口Oの縁部に配置される。したがって、入口バッフル12はミラーM3に近い。実際、系1のα-z構成のために、イメージセンサ2はミラーM3とは反対の方向にそれに対して横方向にずらされつつ、光学入口Oの近くまたは非常に近くに配置される。
【0045】
図3aおよび図3bのy-z平面において、系1の入射野は、参照RMおよびRMによって示される2つの照射野端縁光線の間に境界付けられる。したがって、これらの照射野端縁光線RMおよびRMの初期部分はそれらの間に、上述された画角αを形成する。入口バッフル11は、照射野端縁光線RMの初期部分に重ね合わされる。そして、入口バッフル12は、照射野端縁光線RMの初期部分に重ね合わされる。さらに、入口バッフル11は、照射野端縁光線RMの末端部分の下流に延在してもよい。そして、入口バッフル12は、ミラーM3の上流縁部BAM3の下流に延在してもよい。言い換えると、入口バッフル11の下流縁部BAV11は、照射野端縁光線RM2.の末端部分上に位置することができる。そして、入口バッフル12の下流縁部BAV12は、ミラーM3の上流縁部BAM3と結合することができる。図3aおよび図3bのy-z平面の外側では、入口バッフル11および12が好ましくは照射野端縁光線RMおよびRMに近い照射野端縁光線に重ね合わされる。
【0046】
図3aはイメージセンサ2の感光面S上に形成される像への寄与と同様に、系1内の照射野端縁光線RMおよびRMの完全な経路を示す。照射野端縁光線RMは、イメージセンサ2の感光面Sの下流境界LAVにおける像の形成に寄与する。また、照射野端縁光線RMは上流境界LAMにおける像の形成に寄与する。
【0047】
y-z平面において、図3bを参照して、参照符号F0は系1の入射野を示し、参照符号F1およびF2は入射野F0の外部にあるが、それに角度的に近い角度照射野を示す。また、参照符号F3およびF4は、入射野F0に対して、それぞれ照射野F1およびF2の反対の側に角度的に位置する角度照射野を示す。したがって、照射野F1およびF2は、入射野F0に隣接照射野と呼ばれる。そして、照射野F3,F4を、入射野F0に対して非隣接照射野と呼ぶ。
【0048】
隣接照射野F1およびF2から来る、ミラーM1によって、次いでミラーM2によって、最終的にミラーM3によって反射され得る光線はその感光面Sの外側でイメージセンサ2に到達する。原理的には非隣接照射野F3およびF4から生じる光線は3つのミラーを介して、系1内の計画通りの経路を順次たどらない。しかしながら、光線はそれらが非隣接照射野F4から生じる場合にはイメージセンサ2に直接向けられるか、またはそれらが非隣接照射野F3またはミラーから生じる場合にはミラーM3上での反射後にイメージセンサ2に到達するかのいずれかである。
【0049】
α-z構成によって提供されるように、イメージセンサ2を系1の光学入口Oの近くに配置することによって、隣接照射野F1から生じる迷光がミラーM3によってイメージセンサ2に向かって反射されることを防止することが可能になる。したがって、入口バッフル11の機能はミラーM3によってイメージセンサ2に向かって反射され得る非隣接照射野F3から生じる迷光の遮断を含むが、隣接照射野F1から生じミラーM3に向かう迷光の遮断も含まない。これにより、系1の上流の入口バッフル11の長さを短くすることができる。
【0050】
入口バッフル11はまた、イメージセンサ2に向かって配向されている間に非隣接照射野F4から来る光線の一部を遮断し、これは、z軸に対してあまり傾斜していない非隣接照射野F4からの光線を意味する。これらは、実際、入口バッフル11の下流部分によって遮断される。
【0051】
さらに、イメージセンサ2に向かって配向されている間にz軸に対して最も傾斜している非隣接照射野F4の光線は、入口バッフル12によって遮断される。これらの光線を遮断するために、入口バッフル12は、入口バッフル11の下流縁部BAV11とイメージセンサ2の感光面Sの下流境界LAVとを結ぶ直線Dの上流にある上流縁部BAM12を有することができる。しかしながら、ミラーM2がミラーM1とイメージセンサ2との間を直線的に伝播する光線を遮断するという特徴のために、入口バッフル12はそうでなければ、ミラーM1上でイメージセンサ2に向かって反射され、非隣接照射野F4からの傾斜の少ない光線も反射される、隣接照射野F2からの迷光を遮断する必要がない。したがって、系1のα-z構成はイメージセンサ2をその光学的入口Oの近くに配置することによって、入口バッフル12が隣接照射野F2からの光線を遮断することも、非隣接照射野F4からの傾斜の少ない光線を遮断することも必要とせずに、非隣接照射野F4からの最も傾斜した寄生光線のみを入口バッフル12によって遮断されるようにすることを可能にする。したがって、入口バッフル12の上流縁部BAM12は、直線D上に、必ずしも上流を越えて延在することなく配置されることができる。したがって、入口バッフル12は、短い光入口Oの前に延在する長さを意味する上流長さを有することもできる。また、入口バッフル12の下流縁部BAV12はミラーM3の上流縁部BAM3を結ぶ代わりに、入口バッフル11の下流縁部BAV11とイメージセンサ2の感光面Sの上流境界LAMとを結ぶ直線D上に配置すればよい。
【0052】
したがって、2つの入口バッフル11および12の上流の長さが短くなることにより、これらの入口バッフル11および12を含む系1全体は、小さいサイズを有する。
【0053】
図4はやはり図2の発明の実施形態に対応し、系1への追加のイメージセンサの可能な統合を示す。参照符号13は、例えば二色性分離器のようなスペクトル分離装置を示す。装置13は、焦点面PFの像PF’を生成する。次に、追加のイメージセンサ2’は、その感光面が焦点面の像PF’上に重ねられるように配置することができる。一例として、追加のイメージセンサ2’はシリコンベースであり、可視光の範囲に感度を有してもよい。
【0054】
本発明は上記で詳細に説明した実施形態の副次的な態様を変形しつつ再現することができ、引用された利点の少なくともいくつかを依然として保持することができることが理解される。特に、本発明による結像光学系は、上述した用途以外の用途に使用することができる。加えて、言及された任意の数値は例示の目的のみのためであり、特定の用途に応じて変更され得る。当業者は、焦点距離、画角、入射瞳の大きさなどの値を各用途に障害なく適応させる方法を理解するだろう。
図1
図2
図3a
図3b
図4
図5
【国際調査報告】