(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】キシラナーゼ変異体
(51)【国際特許分類】
C12N 9/24 20060101AFI20240104BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240104BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240104BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240104BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240104BHJP
C12P 19/14 20060101ALI20240104BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240104BHJP
C12N 15/56 20060101ALN20240104BHJP
【FI】
C12N9/24 ZNA
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12P19/14 A
C07K19/00
C12N15/56
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538842
(86)(22)【出願日】2021-12-23
(85)【翻訳文提出日】2023-08-21
(86)【国際出願番号】 FI2021050911
(87)【国際公開番号】W WO2022144500
(87)【国際公開日】2022-07-07
(32)【優先日】2020-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521443106
【氏名又は名称】アーベー エンジュメス オサケ ユキチュア
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パロヘイモ、マルヤ
(72)【発明者】
【氏名】ユントゥネン、カリ
(72)【発明者】
【氏名】トゥルネン、オッシ
(72)【発明者】
【氏名】アホラ、ピヒラ
(72)【発明者】
【氏名】タイパルス、パシ
(72)【発明者】
【氏名】ミューラー、エウゲン
(72)【発明者】
【氏名】サヴォライネン、ユッカ
(72)【発明者】
【氏名】ラングフェルダー、キム
(72)【発明者】
【氏名】プラネン、テルヒ
【テーマコード(参考)】
4B064
4B065
4H045
【Fターム(参考)】
4B064AF02
4B064AF04
4B064CA19
4B064CB07
4B064CC24
4B064CD22
4B064DA10
4B065AA05Y
4B065AA70X
4B065AB01
4B065AC14
4B065AC15
4B065BA01
4B065BC01
4B065BD15
4B065CA31
4B065CA41
4B065CA43
4B065CA55
4H045AA10
4H045BA41
4H045CA10
4H045DA89
4H045EA01
4H045EA07
4H045FA74
(57)【要約】
キシラナーゼの変異体ポリペプチド、ならびにその変異体ポリペプチドを含む融合タンパク質および酵素組成物、その変異体ポリペプチドの産生のための組換え宿主細胞、それを使用するための方法およびその使用が開示され、その変異体ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、1~191のアミノ酸領域内の2つのCys残基間に少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する、変異体ポリペプチド。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドであって、前記アミノ酸配列は、
キシラナーゼ活性、
前記1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、および
23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、
を有する、変異体ポリペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、配列番号1のアミノ酸1~191と84%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、より好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上、さらにより好ましくは89%以上、最も好ましくは90%以上100%未満のアミノ酸配列同一性を有する、請求項1に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項3】
前記変異体ポリペプチドが、配列番号1の3位および30位に対応する位置である残基3Cおよび30Cを含み、前記変異体ポリペプチドの前記ジスルフィド架橋が、前記残基3Cと30Cとの間に形成されている、請求項1または2に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項4】
A23、S23もしくはS28、またはA23もしくはS23およびS28に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項5】
H、M、P、S、T、R、WまたはYへの23位のアミノ酸の置換;または
I、L、M、N、P、Q、R、T、V、WまたはYへの28位のアミノ酸の置換;または
それらの任意の組み合わせ
を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項6】
前記変異体ポリペプチドが、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチド。
【請求項7】
請求項1~6に記載の変異体ポリペプチドのアミノ酸配列と、
分泌シグナル配列を提供するアミノ酸配列;
精製を容易にするアミノ酸配列、例えば、アフィニティタグまたはHisタグ;
前記組換えポリペプチドの産生を制御および増強するアミノ酸配列、例えば、キャリアポリペプチド;
プロテアーゼ切断部位をコードするアミノ酸配列;
酵素活性を有するアミノ酸配列;および/または
結合親和性を有する融合タンパク質を提供するアミノ酸配列、例えば、糖質結合部分
のうちの少なくとも1つと
を含む、融合タンパク質。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチドまたは請求項7に記載の融合タンパク質を含む、酵素組成物。
【請求項9】
a.ポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、糖、糖アルコール、多糖、乳酸、ペプチド、界面活性剤またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの安定剤;あるいは有機酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸ならびにそれらの塩および誘導体、安息香酸ナトリウム、ベンゾエート、ヒドロキシベンゾエートおよび誘導体、ホスフェート、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルベート、塩、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの保存剤または緩衝剤;
b.必要に応じて、ホウ酸、ホウ酸誘導体、芳香族ホウ酸エステル、4-ホルミルフェニルボロン酸、フェニルボロン酸誘導体、阻害活性を有するペプチド化合物またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの阻害剤;
c.必要に応じて、メディエーターを伴うかもしくは伴わない、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、クチナーゼ、エステラーゼ、フィターゼ、ヌクレアーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン分解酵素、ペクチン酸リアーゼ、カルボヒドラーゼ、アラビナーゼ、ガラクタナーゼ、キサンタナーゼ、キシログルカナーゼ、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼおよびオキシダーゼ、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの酵素;および
d.必要に応じて、マルトデキストリン、穀粉、塩化ナトリウム、スルフェート、硫酸ナトリウムまたはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの充填剤
をさらに含む、請求項8に記載の酵素組成物。
【請求項10】
液体組成物または固体組成物、例えば、溶液、分散液、ペースト、粉末、細粒、顆粒、コーティングされた顆粒、錠剤、ケーク、結晶、結晶スラリー、ゲルまたはペレットの形態の、請求項8または9に記載の酵素組成物。
【請求項11】
請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチドまたは請求項7に記載の融合タンパク質を含む少なくとも1つの組換えポリペプチドを産生することを可能にする遺伝子エレメントを含む、組換え宿主細胞。
【請求項12】
前記宿主細胞が、
a.子嚢菌門、Pezizomycotina亜門の糸状菌細胞;好ましくは、Sordariomycetes綱またはEurotiomycetes綱、Hypocreomycetidae亜綱またはSordariomycetidae亜綱またはEurotiomycetidae亜綱、Hypocreales目またはSordariales目またはEurotiales目、Hypocreacea科またはNectriacea科またはChaetomiaceae科またはAspergillaceae科、Trichoderma属(Hypocreaの無性世代)またはFusarium属またはAcremonium属またはHumicola属またはThermothelomyces属またはMyceliophthora属またはAspergillus属のメンバーからなる群の糸状菌細胞;
より好ましくは、Trichoderma reesei(Hypocrea jecorina)、T.citrinoviridae、T.longibrachiatum、T.virens、T.harzianum、T.asperellum、T.atroviridae、T.parareesei、Fusarium oxysporum、F.gramineanum、F.pseudograminearum、F.venenatum、Acremonium(Cephalosporium)chrysogenumならびにAspergillus niger、Aspergillus awamori、Aspergillus oryzae、Humicola insolens、Humicola grisea、Thermothelomyces thermophilus、Myceliophthora thermophila、Aspergillus niger、Aspergillus niger var.awamoriおよびAspergillus oryzae種からなる群の糸状菌細胞;
b.細菌細胞、好ましくは、グラム陽性桿菌、例えば、B.subtilis、B.licheniformis、B.megaterium、B.amyloliquefaciens、B.pumilus、グラム陰性細菌、例えば、Escherichia coli、放線菌目、例えば、Streptomyces sp.;および
c.酵母、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Yarrowia lipolytica
からなる群より選択され;
好ましくは、前記宿主細胞は、Trichodermaなどの糸状菌細胞またはバチルスなどのグラム陽性桿菌;最も好ましくは、Trichoderma reeseiまたはBacillus subtilisもしくはB.pumilusもしくはB.licheniformisから選択される、
請求項11に記載の組換え宿主細胞。
【請求項13】
請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチドまたは請求項7に記載の融合タンパク質を作製するための方法であって、
a.請求項11~12のいずれか1項に記載の組換え宿主細胞を、前記組換えポリペプチドの産生を可能にする条件において培養すること;および必要に応じて
b.前記組換えポリペプチドを回収すること
を含む、方法。
【請求項14】
キシラン含有材料を分解または改変するための方法であって、有効量の請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチド、請求項7に記載の融合タンパク質または請求項8~10のいずれか1項に記載の酵素組成物で前記キシラン含有材料を処理することを含む、方法。
【請求項15】
パルプまたはサイレージの加工などの工業プロセスまたは商業用途における、請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチドまたは請求項6に記載の融合タンパク質または請求項8~10のいずれか1項に記載の酵素組成物の使用。
【請求項16】
飼料または食料品の調製における、請求項1~6のいずれか1項に記載の変異体ポリペプチドまたは請求項6に記載の融合タンパク質または請求項8~10のいずれか1項に記載の酵素組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、酵素技術の分野に関する。本開示は、もっぱらではないが特に、様々な化学的環境および熱的環境における改善されたキシラン分解能および安定性を示すキシラナーゼ変異体であって、それによりパルプまたはサイレージの加工、および飼料または食料品の製造などのキシランの分解が望まれる様々な用途において有用となるキシラナーゼ変異体に関する。
【背景技術】
【0002】
この項は、本明細書中に記載されるいかなる手法も技術水準を代表するものであることを自認することなく、有用な背景情報を説明する。
【0003】
植物細胞壁は、主として多糖類、主にセルロース、リグニンおよびヘミセルロースの複雑な混合物からなる。キシランは、植物に由来するほとんどの材料において主要なヘミセルロース成分であり、β-1,4結合型キシロース残基の多糖骨格からなり、アセチル、アラビノシルおよびグルクロノシル置換基を有することが多い。エンド-β-1,4-キシラナーゼ(EC 3.2.1.8)は、直鎖状多糖を分解することによってキシランおよびキシロ-オリゴ糖に作用する酵素であり、より小さなキシロオリゴ糖とキシロース(単糖)との混合物を生じる。
【0004】
キシランを加水分解する工業的に適用可能なキシラナーゼの需要は著しく増加しており、特性が改善された酵素が絶えず必要とされている。高温ならびにアルカリ性pHにおいても高活性かつ安定なキシラナーゼが、多くの工業プロセスにおいて特に望ましい。そのようなプロセスとしては、例えば、パルプの酵素触媒漂白が挙げられ、そこではキシラナーゼが有毒な塩素含有化学物質に代わる単純かつ費用効果の高い代替物として使用される。
【0005】
キシラナーゼは、飼料栄養物利用を改善するのに有益な効果を有するので、動物用飼料の添加物としても有用である。植物ベースの動物用飼料はキシランを含むが、キシランが大量にあると、栄養分の消化、微生物のコロニー形成および家畜の成長を損なう恐れがある。動物用飼料へのキシラナーゼ酵素の添加は、家畜の成長速度の上昇、飼料転換率の上昇および飼料効率の上昇などの有益な効果がある。キシラナーゼによってキシランを可溶化および分解すると、家畜の腸内の粘性が低下し、穀物の胚乳および糊粉層からの栄養分の放出が増加する。また、キシロース単位で構成されている糖オリゴマーであるキシロオリゴ糖(XOS)が、プレバイオティクスとして作用し、家畜動物に種々の健康上の利益を与えることが示唆されている。
【0006】
キシラナーゼが利用される他の工業用途または商業用途は、例えば、サイレージの加工、バイオ燃料生産のためのバイオマス変換、ならびにデンプン、食品、ベーキング(例えば、パンの製造)および飲料(例えば、果汁およびワインの清澄化、またはアルコール発酵)産業である。
【0007】
放線菌は、キシラナーゼを産生することが知られており、その一部は、非常に耐熱性でアルカリ耐性のキシラナーゼ酵素を産生する。好熱性放線菌株は、工業プロセス用のキシラナーゼの有用な供給源である。キシラナーゼポリペプチドは、触媒モジュール(コア)を含み、その多くは、リンカー領域によってコアから隔てられた糖質結合モジュール(CBM)も含む。上記で定義されたモジュール構造を有するキシラン分解酵素は、真菌や細菌、Actinomadura(Nonomuraea)flexuosaを含む放線菌の株などによって産生される(例えば、N.flexuosa Xyn11AおよびXyn10Aは、コア、リンカーおよびCBMからなる)。
【0008】
本開示は、放線菌キシラナーゼの変異体、およびAM24と命名された切断型Actinomadura(Nonomuraea)flexuosa Xyn11キシラナーゼ(AM35とも命名されたNf Xyn11A)の変異体を記載する。AM24キシラナーゼおよびその生成方法は、特許文献1に記載された。AM24は、Actinomadura(Nonomuraea)flexuosa由来の完全長キシラナーゼAM35の切断型キシラナーゼである。AM24は、糖質結合ドメイン(CBM)およびコアとCBMとの間のリンカーの一部が遺伝的に除去されているという点で、完全長キシラナーゼAM35とは異なる。完全長Actinomadura(Nonomuraea)flexuosa Xyn11A(Nf Xyn11A、AM35)キシラナーゼタンパク質も以前に記載されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【0010】
本開示の目的は、キシラナーゼ活性を示すキシラナーゼの変異体であって、工業プロセスでの使用を可能にする性能および安定性を有するキシラナーゼの変異体を提供することである。本開示の別の目的は、工業プロセスで使用される場合に改善された特性を有するキシラナーゼの変異体を提供することである。本開示のさらに別の目的は、キシランの分解または改変のための酵素組成物において使用され得る変異体を提供することである。
【0011】
本願は、添付の独立請求項において定義される発明および下記に開示されるそれらの実施形態に関する。
【0012】
本発明は、親キシラナーゼポリペプチドAM24、またはAM24に相同な別の放線菌キシラナーゼポリペプチドを改変することによるキシラナーゼ変異体の開発に基づく。本発明者らは、驚くべきことに、少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに親キシラナーゼ変異体ポリペプチドの23位もしくは28位に対応する位置または23位および28位の両方に対応する位置にアミノ酸置換を組み込むことによって、親キシラナーゼAM24または親AM24キシラナーゼホモログと比較して、キシラン分解の性能が改善された、すなわち向上した変異体、ならびに安定性が改善された変異体を得ることが可能であることを見出し、そのことを下記の実施例において示す。その性能および安定性は、特に、反応条件が高温を必要とするとき、改善される。キシラナーゼの新規変異体ポリペプチドは、広範囲の工業プロセスにおいて高い性能および安定性を有するので、それらのプロセスにおけるキシランの分解および改変のための酵素組成物に対して改善された特性を提供する。
【0013】
第1の態様によれば、配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドであって、そのアミノ酸配列が、
キシラナーゼ活性、
その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、および
23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、
を有する、変異体ポリペプチドが提供される。
【0014】
本変異体ポリペプチドは、改善された熱安定性、pH安定性および性能、すなわちキシラン分解活性を有するという点で有利であり、これらの特徴は、実施例4および5に記載されているように計測可能である。
【0015】
ある実施形態では、キシラナーゼの本変異体ポリペプチドの機能的フラグメントが提供される。
【0016】
第2の態様によれば、第1の態様の変異体ポリペプチドのアミノ酸配列と、
分泌シグナル配列を提供するアミノ酸配列;
精製を容易にするアミノ酸配列、例えば、アフィニティタグまたはHisタグ;
組換えポリペプチドの産生を制御および増強するアミノ酸配列、例えば、キャリアポリペプチド;
プロテアーゼ切断部位をコードするアミノ酸配列;
酵素活性を有するアミノ酸配列;および/または
結合親和性を有する融合タンパク質を提供するアミノ酸配列、例えば、糖質結合部分
のうちの少なくとも1つと
を含む、融合タンパク質が提供される。
【0017】
第3の態様によれば、第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質を含む酵素組成物が提供される。
【0018】
上記キシラナーゼの変異体は、パルプの漂白プロセスの増進や精製効率の向上などのパルプ処理、ならびに工業的な飼料または食料品製造などのプロセスにおいてキシランを分解するために使用される場合に良好な安定性および比活性を有するため、上記酵素組成物は、そのようなプロセスに特に効果的である。
【0019】
第4の態様によれば、第1の態様の変異体ポリペプチドを含む少なくとも1つの組換えポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質を産生することを可能にする遺伝子エレメントを含む組換え宿主細胞が提供される。
【0020】
本開示に係る変異体ポリペプチドは、その変異体ポリペプチドを、工業用途のための酵素組成物において有用なものとする特性を有する。
【0021】
ある実施形態では、キシラナーゼ活性を有し、本宿主細胞を用いることによって入手可能な、変異体ポリペプチドを含む酵素調製物が提供される。
【0022】
第5の態様によれば、第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質を作製するための方法が提供され、その方法は、
a.第4の態様の組換え宿主細胞を、組換えポリペプチドの産生を可能にする条件において培養すること;および必要に応じて
b.その組換えポリペプチドを回収すること
を含む。
【0023】
上記の方法は、キシラナーゼの変異体ポリペプチド、またはキシラナーゼの変異体ポリペプチドと第2の態様に係る少なくとも1つのアミノ酸配列とを含む融合タンパク質を作製する効率的な方法を提供する。その変異体ポリペプチドは、組換え宿主細胞において産生されるので、所望の様式で最適化、調整および制御できる産生系が提供される。本方法によって産生される変異体ポリペプチドは、構造レベルおよび機能レベルで親キシラナーゼと異なる。
【0024】
第6の態様によれば、キシラン含有材料を分解または改変するための方法が提供され、その方法は、有効量の第1の態様の変異体ポリペプチド、第2の態様の融合タンパク質または第3の態様の酵素組成物で前記キシラン含有材料を処理することを含む。ある実施形態では、その処理は、キシラン含有材料を水性媒質中で変異体ポリペプチド、融合タンパク質または酵素組成物と接触させることを含む。
【0025】
第7の態様によれば、パルプまたはサイレージの加工などの工業プロセスまたは商業用途における、第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質または第3の態様の酵素組成物の使用が提供される。
【0026】
第8の態様によれば、飼料または食料品の調製における、第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質または第3の態様の酵素組成物の使用が提供される。
【0027】
ある実施形態では、パルプの加工における、第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質または第3の態様の酵素組成物の使用、例えば、リグニン除去および/またはセルロース加水分解を促進すること、ならびに精製に対するパルプの感受性を高めることが提供される。
【0028】
ある実施形態では、動物用飼料における第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質または第3の態様の酵素組成物の使用が提供され、その飼料は、必要に応じて、動物に飼料を与えるため、動物の体重増加および飼料効率を改善するために使用される。
【0029】
ある実施形態では、食料品の調製における第1の態様の変異体ポリペプチドまたは第2の態様の融合タンパク質または第3の態様の酵素組成物の使用が提供される。変異体ポリペプチドは、コーヒーの抽出、植物油またはデンプンの加工、植物繊維源からのゴムの除去、ベーキング、生地のコンディショニング、パンの製造および飲料産業(例えば、果汁およびワインの清澄化またはアルコール発酵)において使用され得る。
【0030】
本キシラナーゼの変異体は、安定性の向上を必要とするプロセス条件において、キシランの分解性能が改善されている点で有利である。下記に提供される実施例に示されるように、特許請求されるキシラナーゼの変異体ポリペプチドは、その変異体の起源に応じて、親AM24キシラナーゼまたは親AM24キシラナーゼホモログと比較したとき、改善された性能および安定性を有する。
【0031】
種々の拘束力のない例示的な態様および実施形態を上記で説明してきた。前述の実施形態は、種々の実施態様において利用され得る選択された態様または工程を説明するためにのみ用いられる。いくつかの実施形態は、ある特定の例示的な態様を参照して単に提示され得る。対応する実施形態は、他の例示的な態様にも適用され得ることが認識されるべきである。
【0032】
いくつかの例示的な実施形態が、添付の図面を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1A】
図1Aは、AM24コア配列およびそのホモログの系統樹を示している。この系統樹は、
図1Aおよび1Bの2つに分割されており、矢印が、2つの図面間の接続を表している。blastp検索(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE=Proteins)およびClustal Omega多重配列アラインメントプログラム(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)の系統樹オプションを使用して設計された、AM24コアに最も近い100個のホモログからの系譜。AM24のアミノ酸配列(Nf_Xyn11Aコア、配列番号1のアミノ酸1~191、Leskinen et al., 2005に従ったコア領域)をクエリー配列として用いた。使用されるアルゴリズムパラメータは、実施例2においてより詳細に説明される。
【
図1B】
図1Bは、AM24コア配列およびそのホモログの系統樹を示している。この系統樹は、
図1Aおよび1Bの2つに分割されており、矢印が、2つの図面間の接続を表している。blastp検索(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE=Proteins)およびClustal Omega多重配列アラインメントプログラム(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)の系統樹オプションを使用して設計された、AM24コアに最も近い100個のホモログからの系譜。AM24のアミノ酸配列(Nf_Xyn11Aコア、配列番号1のアミノ酸1~191、Leskinen et al.,2005に従ったコア領域)をクエリー配列として用いた。使用されるアルゴリズムパラメータは、実施例2においてより詳細に説明される。
【
図2】
図2は、AM24のアミノ酸配列と、Trichoderma reeseiでの産生のために選択された近いホモログの成熟推定コア領域とのアラインメントを示している。これらの配列のアラインメントは、Clustal Omega(1.2.4)多重配列アラインメントを使用して行われた。AM24の成熟コア領域は、Leskinen et al.(2005)において公開された情報に基づいて、配列番号1のアミノ酸1~191からなる。
図2のアラインメントは、各縦列において観察された保存の程度を表す以下の記号を表示している:*(アスタリスク)は、単一の完全に保存された残基を有する位置を示している。:(コロン)は、非常に類似した特性の群間で保存を有する位置を示している。.(ピリオド)は、弱く類似した特性の群間で保存を有する位置を示している。
【
図3A】
図3Aは、pH7でのAM24およびその変異体の相対的な熱安定性を示している。キシラナーゼ活性の解析を、5分および60分の反応時間を用いて、70、80、90および96℃の温度で行った。
図3A:5分の反応時間のアッセイの結果。活性値は、5分の反応時間を用いて80℃において解析された対応するキシラナーゼの活性に関するものだった。この活性を100とした。提示されている値は、2つの並行反応からの平均である。AM24は、親キシラナーゼを表し、他のサンプルは、種々のAM24変異体を表している。
【
図3B】
図3Bは、pH7でのAM24およびその変異体の相対的な熱安定性を示している。キシラナーゼ活性の解析を、5分および60分の反応時間を用いて、70、80、90および96℃の温度で行った。
図3B:60分の反応時間のアッセイの結果。活性値は、5分の反応時間を用いて80℃において解析された対応するキシラナーゼの活性に関するものだった。この活性を100とした。提示されている値は、2つの並行反応からの平均である。AM24は、親キシラナーゼを表し、他のサンプルは、種々のAM24変異体を表している。
【
図4A】
図4Aは、pH8および9でのAM24およびその変異体C31-4の相対的な熱安定性を示している。キシラナーゼ活性の解析は、5分の反応時間で70、80、90および96℃において、ならびに60分の反応時間で70および80℃において行われた。
図4A:反応条件pH8、5分の反応。活性値は、5分の反応時間を用いてpH7、80℃において解析された対応するキシラナーゼの活性に関するものだった。この値を100とした。これらの値は、2つの並行反応からの平均である。
【
図4B】
図4Bは、pH8および9でのAM24およびその変異体C31-4の相対的な熱安定性を示している。キシラナーゼ活性の解析は、5分の反応時間で70、80、90および96℃において、ならびに60分の反応時間で70および80℃において行われた。
図4B:反応条件pH8、60分の反応。活性値は、5分の反応時間を用いてpH7、80℃において解析された対応するキシラナーゼの活性に関するものだった。この値を100とした。これらの値は、2つの並行反応からの平均である。
【
図4C】
図4Cは、pH8および9でのAM24およびその変異体C31-4の相対的な熱安定性を示している。キシラナーゼ活性の解析は、5分の反応時間で70、80、90および96℃において、ならびに60分の反応時間で70および80℃において行われた。
図4C:反応条件pH9、5分の反応。活性値は、5分の反応時間を用いてpH7、80℃において解析された対応するキシラナーゼの活性に関するものだった。この値を100とした。これらの値は、2つの並行反応からの平均である。
【
図4D】
図4Dは、pH8および9でのAM24およびその変異体C31-4の相対的な熱安定性を示している。キシラナーゼ活性の解析は、5分の反応時間で70、80、90および96℃において、ならびに60分の反応時間で70および80℃において行われた。
図4D:反応条件pH9、60分の反応。活性値は、5分の反応時間を用いてpH7、80℃において解析された対応するキシラナーゼの活性に関するものだった。この値を100とした。これらの値は、2つの並行反応からの平均である。
【
図5】pH11、90℃において60分間インキュベートした後のAM24およびその変異体C31-4の残留キシラナーゼ活性。サンプル中の元の活性のパーセンテージとしての残留キシラナーゼ活性を、5分の反応時間を用いてpH7、70℃において解析した。結果は、2つの異なる解析、それぞれにおいて2つの並行反応からの結果である。BR、Britton-Robinson緩衝液;NaP、リン酸ナトリウム緩衝液。pH7、70℃において5分間の反応時間を用いてインキュベートする前に解析されたキシラナーゼ活性を100とした。
【0034】
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、アミノ酸配列に置換が導入されたことにより、改善された特性(例えば、改善された熱安定性およびpH安定性)がもたらされた、キシラナーゼの変異体ポリペプチドに関する。
【0036】
本明細書中で使用されるとき、用語「ホモログ」または「キシラナーゼホモログ」とは、ある特定のレベルの生物学的相同性、すなわち、別のDNA、RNAまたはアミノ酸のキシラナーゼ配列と類似性を有するDNA、RNAまたはアミノ酸のキシラナーゼ配列のことを指し、その類似性は、その配列と一致する残基の%として、または配列同一性/類似性の%として表現される。ある実施形態において、キシラナーゼホモログは、AM24キシラナーゼホモログである。
【0037】
用語「キシラン」とは、様々な側鎖を有する繰り返しβ-1,4結合型キシロース残基骨格から構成されるマトリックス多糖類またはヘテロポリマーのことを指す。キシラン多糖類は、置換側鎖に基づいて、O-アセチルグルクロノキシラン(AcGX)、O-アセチルアラビノキシラン(AcAX)、O-アセチルグルクロノアラビノキシラン(AcGAX)およびアラビノグルクロノキシラン(AGX)のクラスに大別され得る。キシラン含有材料は、植物系または植物由来の材料を含む。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、用語「キシラナーゼ」は、キシラン内の(1→4)-β-D-キシロシド結合の内部加水分解を触媒することが知られているエンド-1,4-β-キシラナーゼまたは4-β-D-キシランキシラノヒドロラーゼとして当該分野で公知のものに従って定義されるキシラナーゼ酵素を表す。キシランは、エンド-(1→4)-β-キシラン4-キシラノヒドロラーゼ、エンド-1,4-キシラナーゼ、キシラナーゼ、β-1,4-キシラナーゼ、エンド-1,4-キシラナーゼ、エンド-β-1,4-キシラナーゼ、エンド-1,4-β-D-キシラナーゼ、1,4-β-キシランキシラノヒドロラーゼ、β-キシラナーゼ、β-1,4-キシランキシラノヒドロラーゼ、エンド-1,4-β-キシラナーゼおよびβ-D-キシラナーゼという代替名を有する。キシラナーゼは、酵素命名法に従ってEC 3.2.1.8と分類される。
【0039】
本明細書中で使用されるとき、Nf xyn11Aは、AM35とも命名されている、ファミリー11のキシラナーゼNf Xyn11AをコードするNonomuraea flexuosaキシラナーゼ遺伝子を表す。
【0040】
本明細書中で使用されるとき、AM35は、AM24ポリペプチドに使用される親ポリペプチドである野生型成熟キシラナーゼを表す。成熟AM35タンパク質のアミノ酸は、配列番号97のアミノ酸配列に対応する。
【0041】
本明細書中で使用されるとき、AM24(本明細書中、AM24タンパク質とも呼ばれる)は、本開示に係るAM24変異体ポリペプチドの親ポリペプチドである。AM24は、キシラナーゼAM35(Nf Xyn11A)の切断型をコードする短縮型DNA配列によってコードされる。AM24タンパク質は、触媒モジュール(コア)を含み、糖質結合モジュール(CBM)およびコアとCBMとの間のリンカー領域の部分を欠く。AM24の成熟ポリペプチドのアミノ酸は、アミノ酸D1~L220を含む配列番号1のアミノ酸配列に対応するのに対して、AM24の「成熟コアポリペプチド」は、配列番号1のアミノ酸D1~G191を含む。
【0042】
本明細書中で使用されるとき、用語「変異体」は、1つ以上のヌクレオチド/アミノ酸によって挿入、置換もしくは欠失された、または化学的に修飾された、配列または配列のフラグメント(ヌクレオチドまたはアミノ酸)を意味する。変異体という用語は、いくつかの実施形態では、キシラナーゼの変異体ポリペプチド、キシラナーゼの変異体ポリペプチドを含む融合タンパク質、または組換えキシラナーゼ酵素も含み得る。
【0043】
用語「キシラナーゼ変異体」および「変異体キシラナーゼ」および「キシラナーゼの変異体」は、部位特異的突然変異誘発もしくはランダム突然変異誘発、挿入、置換、欠失、組換えおよび/または親キシラナーゼとアミノ酸配列が異なるキシラナーゼをもたらす他の任意のタンパク質工学法によって得られる任意のキシラナーゼ分子を意味し、その親キシラナーゼは、野生型キシラナーゼまたはキシラナーゼ変異体自体である。本開示に係る用語「野生型キシラナーゼ」、「野生型酵素」、「野生型」または「wt」は、天然に見出されるアミノ酸配列またはそのフラグメントを有するキシラナーゼ酵素を説明する。変異体をコードする遺伝子は、合成され得るか、または遺伝的方法を用いて、例えば、親ポリペプチドをコードするポリヌクレオチド内の1つ以上の定義された部位に1つもしくは1つより多い変異を導入する技術である部位特異的突然変異誘発によって親遺伝子が改変され得る。
【0044】
第1の態様に係るキシラナーゼの「変異体ポリペプチド」という用語は、変異体に与えられた名称、例えば、C31-4または変異体C31-4を使用して呼ばれることもある。
【0045】
本明細書中で使用されるとき、用語「ホモログ変異体」または「ホモログの変異体」とは、対応する遺伝子を合成することによって得られるか、または部位特異的突然変異誘発もしくはランダム突然変異誘発、挿入、置換、欠失、組換えおよび/または親キシラナーゼとアミノ酸配列が異なるAM24キシラナーゼホモログ変異体をもたらす他の任意のタンパク質工学法によって親遺伝子を改変することによって得られる、AM24キシラナーゼホモログ由来の任意の変異体分子のことを指し、その親キシラナーゼホモログは、野生型キシラナーゼまたはキシラナーゼ変異体自体である。ある実施形態において、「XB1のキシラナーゼホモログ変異体」などの表現は、AM24キシラナーゼホモログの変異体のことを指し、そのホモログは、XB1である。
【0046】
本明細書中で使用されるとき、用語「成熟ポリペプチド」は、少なくとも1つのシグナル配列またはシグナルペプチドまたはシグナルペプチドおよび推定されるプロペプチドが切除されている任意のポリペプチドを意味する。例えば、AM24の「成熟ポリペプチド」は、配列番号1のアミノ酸D1~L220を含み、AM24の「成熟コアポリペプチド」は、配列番号1のアミノ酸D1~G191を含む。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、「ペプチド」および「ポリペプチド」は、複数の連続した重合アミノ酸残基を含むアミノ酸配列である。本開示の目的のために、ペプチドは、最大20個のアミノ酸残基を含む分子であり、ポリペプチドは、20個を超えるアミノ酸残基を含む。ペプチドまたはポリペプチドは、修飾アミノ酸残基、コドンによってコードされない天然に存在するアミノ酸残基および天然に存在しないアミノ酸残基を含み得る。本明細書中で使用されるとき、「タンパク質」とは、任意のサイズのペプチドまたはポリペプチドのことを指し得る。タンパク質は、酵素、タンパク質、抗体、膜タンパク質、ペプチドホルモン、制御因子または他の任意のタンパク質であり得る。
【0048】
本明細書中で使用されるとき、「配列同一性」は、最適にアラインメントされた2つの配列の両方に残基が存在する位置の数にわたる、それら2つの配列間のアミノ酸残基の正確な一致のパーセンテージを意味する。一方の配列が、他方の配列の中に対応する残基を有しない残基を有するとき、アライメントプログラムは、アライメント内にギャップを許容し、その位置は、同一性の計算の分母にカウントされない。
【0049】
本明細書中で使用されるとき、アミノ酸配列の「配列アラインメント」は、Sieversら2011によって記載されているようにClustal Omega(1.2.4)多重配列アラインメントプログラム(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)を使用し、デフォルトの設定を使用して配列をアラインメントすることを意味する。
【0050】
別段特定されない限り、ある特定のアミノ酸位置に対するすべての言及は、前記位置における配列番号1のアミノ酸、または配列番号1とアラインメントされたアミノ酸配列の対応する位置に存在するもしくは欠落しているアミノ酸のことを指す。
【0051】
本明細書中で使用されるとき、用語「ジスルフィド架橋」または「ジスルフィド結合」または「SS架橋」は、ポリペプチド内またはタンパク質内のシステイン残基の硫黄原子間に形成される結合のことを指す。ジスルフィド架橋は、天然に存在していてもよいし、天然に存在していなくてもよく、例えば、アミノ酸置換によって導入されてもよい。
【0052】
本明細書中で使用されるとき、用語「対応する位置」または「対応するアミノ酸位置」は、ペアワイズアライメントまたはマルチプルシーケンスアライメントとして類似または同一である特定された領域に従って少なくとも2つのアミノ酸配列をアライメントし、それによって対応するアミノ酸を対にすることを意味する。対応する位置の例が
図2に示されており、同じ縦列に示されているアミノ酸が、対応するアミノ酸である。例えば、1位は、AM24のアミノ酸D1とXB1のQ1とが、対応するアミノ酸である。
【0053】
本明細書中で使用されるとき、「アミノ酸置換」は、その特定の置換位置において元のアミノ酸とは異なるアミノ酸残基によるアミノ酸残基の置換を意味する。用語「アミノ酸置換」は、保存的アミノ酸置換と非保存的アミノ酸置換との両方のことを指すことができ、これは、アミノ酸残基が、その場所の元のアミノ酸残基と類似の側鎖(保存的)または異なる側鎖(非保存的)を有するアミノ酸残基で置き換えられることを意味する。
【0054】
用語「機能的フラグメント」は、ほぼ同じ酵素機能または効果を保持する、キシラナーゼの現在の変異体ポリペプチドのフラグメントまたは一部を意味する。
【0055】
本明細書中で使用される「キシラナーゼ活性」とは、キシラン分解活性のことを指す。本明細書中で使用される分解または改変は、キシラン多糖が、キシラナーゼによってキシロースオリゴ糖またはキシロース二糖に加水分解されることを意味する。本開示に係るポリペプチドのキシラン分解活性は、当該分野で公知の試験手順に従って試験され得る。実施例4および5には、キシラナーゼ活性を測定するための方法の例が提供されている。「キシラナーゼ活性保持」という用語は、特定のプロセス条件に曝露されたとき、キシラナーゼ活性を保持する酵素の能力を意味する。ある実施形態では、キシラナーゼ酵素の活性保持の増加は、同じ条件の親キシラナーゼAM24と比較したとき、キシラナーゼ酵素が特定のプロセス条件においてそのキシラナーゼ活性をより良好に保持することを意味する。
【0056】
ある実施形態において、用語「酵素組成物」は、単一種の微生物から場合によっては単離および精製された酵素発酵産物を意味する。酵素組成物は、通常、微生物によって産生されるいくつかの異なる酵素活性を含む。別の実施形態において、酵素組成物は、単一成分酵素の混合物、好ましくは、従来の組換え手法を用いて細菌種または真菌種から得られる酵素の混合物である。それらの酵素は、微生物の発酵から得られ、場合によっては単離および精製される。混合物中の酵素は、異なる種、好ましくは、真菌種もしくは細菌種に由来し得るか、または微生物が組換えキシラナーゼに加えて他の酵素を同時に産生するとき、それらの産生(例えば組換えキシラナーゼの産生)のために宿主細胞として作用する微生物の発酵産物中に存在する。
【0057】
酵素またはキシラナーゼの安定性の文脈における用語「安定性」は、問題の酵素の活性および機能にとって最適ではないプロセス条件に耐えるおよび/またはそのプロセス条件において機能する酵素の特性を説明するものであり、そのようなプロセス条件は、例えば、高温、高pHもしくは高放射線照射、ある特定の濃度の無機塩もしくは有機溶媒、または例えばプロテアーゼ、安定剤、ビルダー、界面活性剤などを含む特定の反応混合物組成物である。
【0058】
用語「安定性」は、時間に応じた本開示に係るキシラナーゼの安定性、例えば、問題の酵素の活性および機能にとって最適ではないプロセス条件にキシラナーゼを曝露したとき、どの程度の活性が保持されるかを反映する。種々の方法を用いて、キシラナーゼ変異体の安定性が解析される。実施例5に記載されているように、キシラナーゼのアンフォールディング温度を計測することにより、キシラナーゼの熱安定性を評価することができる。また、キシラナーゼの安定性および残留活性は、実施例4および5に記載されているようにパラメータを調整した「活性アッセイ」を用いて計測することができる。用語「安定性」は、高温条件を有するプロセスでの使用中の安定性を含む。
【0059】
本明細書中で使用されるとき、「宿主細胞」は、ポリヌクレオチドを含む核酸コンストラクトまたは発現ベクターによる形質転換、トランスフェクション、形質導入、接合、交差などを受けやすい任意の細胞型を意味する。用語「宿主細胞」は、複製中に生じる変異に起因して同一ではない任意の子孫を包含する。宿主細胞の非限定的な例は、真菌細胞、好ましくは、糸状菌細胞(例えば、TrichodermaまたはTrichoderma reesei、AspergillusまたはAspergillus oryzaeもしくはAspergillus niger、ThermothelomycesまたはThermothelomyces heterothallicaあるいはHumicolaまたはHumicola insolensあるいはFusariumまたはFusarium venenatum)、細菌細胞、好ましくは、グラム陽性桿菌(例えば、Bacillus subtilis、B.licheniformis、B.megaterium、B.amyloliquefaciens、B.pumilus)、グラム陰性菌(例えば、Escherichia coli)、放線菌目(例えば、Streptomyces sp.、Nonomuraea flexuosa)および酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Yarrowia lipolytica)である。
【0060】
用語「プロモーター」は、RNAポリメラーゼの結合および転写の開始を提供するDNA配列を含む遺伝子の一部を表す。プロモーター配列は、必ずしもではないが、一般に、遺伝子の5’非コード領域に見られる。
【0061】
用語「分泌シグナル配列」または「シグナル配列」または「分泌ペプチド」は、より大きなポリペプチドの構成要素または一部であるアミノ酸配列であって、それが産生される宿主細胞の分泌経路を通じてそのより大きなポリペプチドを導くアミノ酸配列のことを指す。分泌シグナル配列は、天然のものであり得るか、または別の供給源から得ることができる。宿主細胞に応じて、より大きなポリペプチドは、分泌経路を通過する間に分泌ペプチドから切断され、それによって分泌ペプチドを欠く成熟ポリペプチドが形成され得る。
【0062】
用語「プロペプチド(propeptide)」または「プロペプチド(pro-peptide)」は、成熟または活性化の間に切断されるタンパク質の一部である。プロペプチドは、一旦切断されると、一般に、独立した生物学的機能を有さなくなる。
【0063】
本明細書中で使用されるとき、用語「ドメイン」および「領域」は、用語「モジュール」と交換可能に使用され得る。
【0064】
用語「触媒ドメイン」または「触媒モジュール」または「コア」は、改変または変更されていてもされていなくてもよいが、その元の活性の少なくとも一部を保持している酵素のドメインを表す。本開示に係るキシラナーゼの変異体ポリペプチドの触媒モジュール領域は、配列番号1のアミノ酸1~191とアラインメントされるアミノ酸に対応する。
【0065】
用語「リンカー」または「スペーサー」は、マルチドメインタンパク質、例えば、触媒ドメインと糖質結合モジュール(CBM)などの結合ドメインとを含む酵素、もしくは他の任意の酵素ハイブリッドのドメイン間、または融合ポリペプチド、例えば、2つのコア酵素を含む融合タンパク質として産生された2つのタンパク質間もしくはポリペプチド間に存在し得る少なくとも2つのアミノ酸を含むポリペプチドを意味する。例えば、触媒ドメインとCBMとの融合タンパク質は、触媒ドメインをコードするDNA配列、リンカーをコードするDNA配列およびCBMをコードするDNA配列を連続的に融合して1つのオープンリーディングフレームにし、このコンストラクトを発現させることによって提供される。
【0066】
以下の略語をアミノ酸に対して使用する。
A Ala アラニン
C Cys システイン
D Asp アスパラギン酸
E Glu グルタミン酸
F Phe フェニルアラニン
G Gly グリシン
H His ヒスチジン
I Ile イソロイシン
K Lys リジン
L Leu ロイシン
M Met メチオニン
N Asn アスパラギン
P Pro プロリン
Q Gln グルタミン
R Arg アルギニン
S Ser セリン
T Thr トレオニン
V Val バリン
W Trp トリプトファン
Y Tyr チロシン
【0067】
置換は、以下の命名法を用いて記載される:タンパク質骨格内のアミノ酸残基;位置;置換アミノ酸残基。この命名法によれば、例えば、23位におけるアラニンからチロシン残基への単一残基の置換は、Ala23TyrまたはA23Yと示される。
【0068】
本明細書中で使用されるとき、用語「~を含む(comprising)」は、「~を含む(including)」、「~を含む(containing)」および「~を包含する(comprehending)」というより広い意味、ならびに「~からなる」および「~のみからなる」というより狭い表現を含む。
【0069】
本明細書中で使用されるとき、「発現」は、転写、翻訳、翻訳後修飾および分泌を含むがこれらに限定されない、宿主細胞におけるポリペプチドの産生に関与する任意の工程を含む。発現に続いて、宿主細胞または発現産物の収集、すなわち回収が行われてもよい。
【0070】
本明細書中で使用されるとき、用語「サイレージ」は、保存されている植物系材料から作製された、かいばまたは動物用飼料の一種である。
【0071】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、キシラナーゼ活性、および配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上、81%以上、82%以上、84%以上、87%以上、90%以上、93%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~191と100%の配列同一性を有しない。ある実施形態において、変異体ポリペプチドのアミノ酸ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸ナンバリングに対応する。代替の実施形態において、変異体ポリペプチドのアミノ酸ナンバリングは、配列番号1のアミノ酸ナンバリングに部分的に対応する。
【0072】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドのアミノ酸配列は、配列番号1のアミノ酸1~191と84%以上、好ましくは85%以上、より好ましくは86%以上、より好ましくは87%以上、より好ましくは88%以上、さらに好ましくは89%以上、最も好ましくは90%以上であるが、100%未満のアミノ酸配列同一性を有する。
【0073】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と84%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0074】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と85%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0075】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と86%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0076】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と87%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0077】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と88%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0078】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と89%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0079】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と90%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0080】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と91%以上、92%以上、93%以上、94%以上または95%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含む変異体ポリペプチドが開示され、そのアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、その1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位にアミノ酸置換、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、を有する。
【0081】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸1~191とも79%以上、好ましくは82%以上、より好ましくは84%以上、さらに好ましくは87%以上、最も好ましくは90%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するアミノ酸配列を含み、配列番号1のアミノ酸31~191に対応する変異体ポリペプチドのアミノ酸は、配列番号1のアミノ酸31~191と90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは99%以上、さらに好ましくは100%以上の配列同一性を有する。
【0082】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、キシラナーゼ活性;配列番号1の23位もしくは28位、または23位および28位、23位および28位に対応する位置のアミノ酸が置換されている配列番号1のアミノ酸1~191;ならびに
1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間にジスルフィド架橋をもたらす少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を有する。
【0083】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、キシラナーゼ活性、および親AM24キシラナーゼポリペプチドの配列番号1のアミノ酸D1~L220と79%以上、81%以上、82%以上、84%以上、87%以上、90%以上、93%以上、95%以上、も96%以上、97%以上、98%以上または99%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、キシラナーゼ活性、および親AM24キシラナーゼポリペプチドの配列番号1のアミノ酸D1~L220と79%未満の配列同一性を有するアミノ酸配列を有する。
【0084】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の3位および30位に対応する位置である残基3Cおよび30Cを含み、変異体ポリペプチドのジスルフィド架橋は、残基3Cと残基30Cとの間に形成される。
【0085】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の3位および30位に対応する位置であるアミノ酸置換T3CまたはT30Cを含み、変異体ポリペプチドの少なくとも1つのジスルフィド架橋は、前記置換残基間に形成される。
【0086】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換の組み合わせ:
T3CとT30CまたはT3CとN30CまたはT3CとE30CまたはT3CとY30CまたはT3CとD30CまたはV3CとT30CまたはV3CとN30CまたはV3CとE30CまたはV3CとY30CまたはV3CとD30CまたはA3CとT30CまたはA3CとN30CまたはA3CとE30CまたはA3CとY30CまたはA3CとD30CまたはP3CとT30CまたはP3CとN30CまたはP3CとE30CまたはP3CとY30CまたはP3CとD30Cを含み、その置換位置は、配列番号1の3位および30位に対応し、その変異体ポリペプチドの少なくとも1つのジスルフィド架橋は、前記2つの置換残基間に形成される。
【0087】
別の実施形態では、変異体ポリペプチドは、その変異体ポリペプチドの1~191アミノ酸領域内のCys残基間にジスルフィド架橋を含み、それらのCys残基の位置は、配列番号1の3位および30位に対応する位置とは異なる。
【0088】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、その変異体ポリペプチドの1~30アミノ酸領域内のCys残基間に少なくとも1つのジスルフィド架橋を含み、そのアミノ酸領域の位置は、配列番号1の1位および30位に対応する。
【0089】
ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有する変異体ポリペプチドのアミノ酸領域内のシステイン残基は、例えば変異体遺伝子合成によって得られ、それによって前記システイン残基間に得られるジスルフィド架橋は、天然に存在しない。ある実施形態において、システイン残基は、親遺伝子の遺伝子改変、例えば、部位特異的突然変異誘発によって得られ、それにより前記システイン残基間に得られるジスルフィド架橋も天然には存在しない。多くのタンパク質工学アプローチあるいは遺伝子合成を用いることにより、アミノ酸鎖の特定の位置にアミノ酸置換を作製して、特定の位置の天然または野生型のアミノ酸を別のアミノ酸残基で置換することが可能になり得る。ある実施形態では、変異体ポリペプチドの1~191アミノ酸領域の少なくとも2つのアミノ酸残基が、システインで置換され、それにより置換基システイン残基の硫黄原子間にジスルフィド結合の形成が可能になる。別の実施形態では、変異体ポリペプチドは、少なくとも2つの代替位置において、変異体ポリペプチドの1~191アミノ酸領域内にジスルフィド架橋の形成を可能にするシステイン残基を含む。さらに別の実施形態では、変異体ポリペプチドは、変異体ポリペプチドの1~191アミノ酸領域に1つより多いジスルフィド架橋の形成を可能にするシステイン残基を含む。
【0090】
ある実施形態において、1~191アミノ酸領域内の少なくとも1つのジスルフィド架橋は、変異体ポリペプチドを安定化し、それにより、ジスルフィド架橋のない変異体AM24と比較して、変異体ポリペプチドのpH安定性および熱安定性を増大させる。
【0091】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、23位もしくは28位、または23位および28位に1以上のアミノ酸置換を含む。
【0092】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、変異体ポリペプチドの1~30アミノ酸領域内のCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに23位もしくは28位、または23位および28位、その位置は配列番号1の1~30位に対応する、に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0093】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、A23、S23もしくはS28、または、A23もしくはS23およびS28に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0094】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、1~191領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに、A23もしくはS28の位置、またはA23およびS28の位置、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0095】
代替の実施形態において、変異体ポリペプチドは、1~191領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに、S23もしくはS28、またはS23およびS28、その位置は配列番号1の23位および28位に対応する、に少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。
【0096】
ある実施形態において、23位もしくは28位、または23位および28位の置換アミノ酸残基は、これらの位置の元のアミノ酸残基と異なる。ある実施形態では、アミノ酸置換基は、H、I、L、M、N、P、Q、R、S、T、V、WまたはYからなる群より選択されるが、但し、その置換基のアミノ酸残基は、その位置における天然に存在するアミノ酸残基とは異なる。
【0097】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、
H、M、P、S、T、R、WもしくはYへの23位のアミノ酸の置換;または
I、L、M、N、P、Q、R、T、V、WもしくはYへの28位のアミノ酸の置換;またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0098】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、
H、M、P、S、T、R、WもしくはYへの23位のアミノ酸の置換;または
I、L、M、N、Q、R、T、V、WもしくはYへの28位のアミノ酸の置換;またはそれらの任意の組み合わせを含む。
【0099】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23H、A23M、A23P、A23S、A23T、A23R、A23WまたはA23Yを含む。
【0100】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換S23H、S23M、S23P、S23T、S23R、S23WまたはS23Yを含む。
【0101】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換S28I、S28L、S28M、S28N、S28P、S28Q、S28R、S28T、S28V、S28WまたはS28Yを含む。
【0102】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換の組み合わせ:
A23HとS28I、A23HとS28L、A23HとS28M、A23HとS28N、A23HとS28P、A23HとS28Q、A23HとS28R、A23HとS28T、A23HとS28V、A23HとS28W、A23HとS28Y、
A23MとS28I、A23MとS28L、A23MとS28M、A23MとS28N、A23MとS28P、A23MとS28Q、A23MとS28R、A23MとS28T、A23MとS28V、A23MとS28W、A23MとS28Y、
A23PとS28I、A23PとS28L、A23PとS28M、A23PとS28N、A23PとS28P、A23PとS28Q、A23PとS28R、A23PとS28T、A23PとS28V、A23PとS28W、A23PとS28Y、
A23SとS28I、A23SとS28L、A23SとS28M、A23SとS28N、A23SとS28P、A23SとS28Q、A23SとS28R、A23SとS28T、A23SとS28V、A23SとS28W、A23SとS28Y、
A23TとS28I、A23TとS28L、A23TとS28M、A23TとS28N、A23TとS28P、A23TとS28Q、A23TとS28R、A23TとS28T、A23TとS28V、A23TとS28W、A23TとS28Y、
A23RとS28I、A23RとS28L、A23RとS28M、A23RとS28N、A23RとS28P、A23RとS28Q、A23RとS28R、A23RとS28T、A23RとS28V、A23RとS28W、A23RとS28Y、
A23WとS28I、A23WとS28L、A23WとS28M、A23WとS28N、A23WとS28P、A23WとS28Q、A23WとS28R、A23WとS28T、A23WとS28V、A23WとS28W、A23WとS28Y、
A23YとS28I、A23YとS28L、A23YとS28M、A23YとS28N、A23YとS28P、A23YとS28Q、A23YとS28R、A23YとS28T、A23YとS28V、A23YとS28W、A23YとS28Y、
S23HとS28I、S23HとS28L、S23HとS28M、S23HとS28N、S23HとS28P、S23HとS28Q、S23HとS28R、S23HとS28T、S23HとS28V、S23HとS28W、S23HとS28Y、
S23MとS28I、S23MとS28L、S23MとS28M、S23MとS28N、S23MとS28P、S23MとS28Q、S23MとS28R、S23MとS28T、S23MとS28V、S23MとS28W、S23MとS28Y、
S23PとS28I、S23PとS28L、S23PとS28M、S23PとS28N、S23PとS28P、S23PとS28Q、S23PとS28R、S23PとS28T、S23PとS28V、S23PとS28W、S23PとS28Y、
S23TとS28I、S23TとS28L、S23TとS28M、S23TとS28N、S23TとS28P、S23TとS28Q、S23TとS28R、S23TとS28T、S23TとS28V、S23TとS28W、S23TとS28Y、
S23RとS28I、S23RとS28L、S23RとS28M、S23RとS28N、S23RとS28P、S23RとS28Q、S23RとS28R、S23RとS28T、S23RとS28V、S23RとS28W、S23RとS28Y、
S23WとS28I、S23WとS28L、S23WとS28M、S23WとS28N、S23WとS28P、S23WとS28Q、S23WとS28R、S23WとS28T、S23WとS28V、S23WとS28W、S23WとS28Y、
S23YとS28I、S23YとS28L、S23YとS28M、S23YとS28N、S23YとS28P、S23YとS28Q、S23YとS28R、S23YとS28T、S23YとS28V、S23YとS28WまたはS23YとS28Yを含む。
【0103】
好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、改善された安定性を高温において有する。
【0104】
好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、改善された熱安定性および/またはpH安定性を高温において有する。
【0105】
好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較して改善された安定性および/または活性を有する。
【0106】
好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較して改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の高温においてより高いキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、pH7以上および70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の温度において、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0107】
好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~30アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された安定性および/または活性を有する。好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~30アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。好ましい実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~30アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の高温においてより高いキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸置換A23SおよびS28Iを、1~30アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、pH7以上、および70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の温度において、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0108】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、ただ1つのアミノ酸置換A23SまたはS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された安定性および/または活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、ただ1つのアミノ酸置換A23SまたはS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、ただ1つのアミノ酸置換A23SまたはS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の高温においてより高いキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、ただ1つのアミノ酸置換A23SまたはS28Iを、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋とともに含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、pH7以上および70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の温度において、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0109】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、23位および/または28位にアミノ酸置換を含み、1~191アミノ酸領域内にジスルフィド架橋を欠き、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された安定性および/または活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、23位および/または28位にアミノ酸置換を含み、1~191アミノ酸領域内にジスルフィド架橋を欠き、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、23位および/または28位にアミノ酸置換を含み、1~191アミノ酸領域内にジスルフィド架橋を欠き、親キシラナーゼAM24と比較したとき、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の高温においてより高いキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、23位および/または28位にアミノ酸置換を含み、1~191アミノ酸領域内にジスルフィド架橋を欠き、親キシラナーゼAM24と比較したとき、pH7以上および70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の温度において、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0110】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸鎖にさらなる置換なしに1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間に少なくとも1つのジスルフィド架橋を含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された安定性および/または活性を有する。そのような変異体は、23位もしくは28位または23位および28位に追加の置換を含む変異体ポリペプチドよりも低い安定性および/または活性を有し得る。ある実施形態において、その変異体は、置換残基T3C、T30Cの間にジスルフィド架橋を含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された安定性および/または活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸鎖にさらなる置換なしに1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間に少なくとも1つのジスルフィド架橋を含み、親キシラナーゼAM24と比較して、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸鎖にさらなる置換なしに1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間に少なくとも1つのジスルフィド架橋を含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上の高温においてより高いキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、アミノ酸鎖にさらなる置換なしに1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間に少なくとも1つのジスルフィド架橋を含み、親キシラナーゼAM24と比較したとき、少なくとも7のpHおよび少なくとも70℃、好ましくは少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも90℃の温度において、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0111】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、キシラナーゼ活性を有し、23位または28位以外の位置に少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含む。ある実施形態において、その少なくとも1つのさらなる置換は、変異体ポリペプチドの安定性および/または活性をさらに改善する。したがって、アミノ酸鎖の23位および/または28位における特許請求される置換は、1~191領域内の2つのCys残基間のジスルフィド架橋とともに、そのまま、または親キシラナーゼAM24の性能および安定性を改善するための追加の置換位置を伴って、使用され得る。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、キシラナーゼ活性を有し、23位または28位以外の位置に少なくとも1つのさらなるアミノ酸置換を含み、その少なくとも1つのさらなる置換は、変異体ポリペプチドの熱安定性および/またはpH安定性および/またはキシラナーゼ活性保持をさらに改善する。したがって、アミノ酸鎖の23位および/または28位における特許請求される置換は、1~191領域内の2つのCys残基間のジスルフィド架橋とともに、そのまま、または親キシラナーゼAM24の性能ならびに熱安定性および/またはpH安定性を改善するための追加の置換位置とともに、使用され得る。
【0112】
ある実施形態において、配列番号1と比較したときの変異体ポリペプチド内の置換の総数は、3~10または4~10である。ある実施形態において、変異体は、3つの置換を有するか、または変異体は、4つの置換を有するか、または変異体は、5つの置換を有するか、または変異体は、6つの置換を有するか、または変異体は、7つの置換を有するか、または変異体は、8つの置換を有するか、または変異体は、9つの置換を有するか、または変異体は、10個の置換を有する。
【0113】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドまたは機能的フラグメントは、19kDa~26kDa、好ましくは、20kDa~25kDaの予測分子量を有し、それは、変異体ポリペプチドのコア領域を構成するアミノ酸を含み、分泌変異体ポリペプチドから切除されるシグナル配列および変異体ポリペプチドの成熟中に切除される推定プロ配列を含まない。予測分子量は、変異体ポリペプチドまたはその機能的フラグメント内の個々のアミノ酸の分子量の合計を計算することによって決定され得る。
【0114】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善された熱安定性およびpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善された熱安定性または改善されたpH安定性を有する。
【0115】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、より高いキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善されたpH依存性キシラナーゼ活性保持および温度依存性キシラナーゼ活性保持を有する。
【0116】
ある実施形態において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、および変異体ポリペプチドの23位もしくは28位または23位および28位のアミノ酸置換により、変異体ポリペプチドの熱安定性および/またはpH安定性が改善される。ある実施形態において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、変異体ポリペプチドの1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋により、変異体ポリペプチドの熱安定性および/またはpH安定性が改善される。
【0117】
ある実施形態において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、変異体ポリペプチドの23位もしくは28位、または23位および28位のアミノ酸置換により、変異体ポリペプチドの熱安定性および/またはpH安定性が改善される。
【0118】
ある実施形態において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、および変異体ポリペプチドの23位もしくは28位、または23位および28位のアミノ酸置換により、変異体ポリペプチドのキシラナーゼ活性保持が改善される。
【0119】
ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、温度が70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、最も好ましくは96℃以上である反応条件において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、改善された安定性および/または活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、温度が70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、最も好ましくは96℃以上である反応条件において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、温度が70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、最も好ましくは96℃以上である反応条件において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、pHが2以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上である反応条件において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、改善された安定性および/または活性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、pHが2以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上である反応条件において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、pHが2以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上である反応条件において、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。ある実施形態において、変異体ポリペプチドは、親キシラナーゼAM24と比較したとき、90℃以上の温度および/または7以上のpHにおいて、改善された熱安定性および/またはpH安定性を有する。
【0120】
外界温度を超える温度において活性を保持するキシラナーゼの提供は、そのような反応条件においてキシラン分解が必要とされる用途にとって有利である。キシラナーゼの高温耐性は、高い比活性および酵素安定性という利点を有する。また、高い反応温度を使用することにより、例えば、コンタミネーションが防止され、基質濃度が高いとき、流体粘度が低下するので物質移動速度が高まる。安定性の高いキシラナーゼを使用することにより、通常使用されるプロセス条件を変更する必要性が低減または回避される。
【0121】
さらに、本開示に係るキシラナーゼは、酸性および/または中性および/またはアルカリ性の条件において、改善された安定性およびキシラナーゼ活性を有し、これは、例えば、アルカリ性または酸性のプロセス条件でのパルプの漂白において有利である。ある実施形態において、本開示に係るキシラナーゼは、酸性および/または中性および/またはアルカリ性の条件において、改善された熱安定性および/もしくはpH安定性ならびに/または改善されたキシラナーゼ活性保持を有し、これは、例えば、アルカリ性または酸性のプロセス条件でのパルプの漂白において有利である。
【0122】
ある実施形態において、キシランの分解または修飾は、キシラナーゼが活性を示す水性環境において行われる。
【0123】
ある実施形態において、キシラナーゼの変異体ポリペプチドは、接近可能なβ-1,4-D-キシロシド結合をランダムに加水分解する。
【0124】
ある実施形態において、第1の態様に係る変異体ポリペプチドの親キシラナーゼは、
図1Aおよび1BのAM24キシラナーゼホモログの1つである。ある実施形態において、配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有するキシラナーゼの変異体ポリペプチドの親は、
図1Aおよび1BのキシラナーゼAM24のホモログのいずれかである。
【0125】
ある実施形態において、第1の態様に係る変異体ポリペプチドは、AM24キシラナーゼホモログの変異体も含み、そのAM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有する。
【0126】
ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1のアミノ酸1~191と79%以上であるが100%未満のアミノ酸配列同一性を有し、AM24キシラナーゼホモログの変異体のアミノ酸配列は、キシラナーゼ活性、1~191アミノ酸領域内の2つのCys残基の間の少なくとも1つのジスルフィド架橋、ならびに配列番号1の23位もしくは28位、または23位および28位、23位および28位に対応する位置におけるアミノ酸置換を有する。
【0127】
ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、親AM24キシラナーゼホモログと比較して、改善された安定性および/またはキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、改善された安定性および/またはキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、親AM24キシラナーゼホモログと比較したとき、改善された熱安定性および/もしくはpH安定性ならびに/または改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したとき、改善された熱安定性および/もしくはpH安定性ならびに/または改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0128】
ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、および/または親AM24キシラナーゼホモログと比較して、温度が70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、最も好ましくは96℃以上である反応条件において、改善された安定性および/またはキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較して、および/または親AM24キシラナーゼホモログと比較して、pHが2以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上である反応条件において、改善された安定性および/またはキシラナーゼ活性を有する。ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したときおよび/または親AM24キシラナーゼホモログと比較したとき、温度が70℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは90℃以上、最も好ましくは少なくとも96℃以上である反応条件において、改善された熱安定性および/もしくはpH安定性ならびに/または改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。ある実施形態において、AM24キシラナーゼホモログの変異体は、配列番号1の配列を有するポリペプチドと比較したときおよび/または親AM24キシラナーゼホモログと比較したとき、pHが2以上、3以上、3.5以上、4以上、4.5以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上または11以上である反応条件において、改善された熱安定性および/もしくはpH安定性ならびに/または改善されたキシラナーゼ活性保持を有する。
【0129】
本開示の第2の態様のある実施形態において、キシラナーゼの本変異体ポリペプチドは、融合タンパク質である組換えポリペプチドの一部である。融合タンパク質は、キシラナーゼの活性に加えて、他の触媒活性または結合活性を有し得る。ある実施形態において、キシラナーゼの変異体ポリペプチドは、リンカーを用いてさらなるペプチドおよび/またはポリペプチドに接続される。
【0130】
ある実施形態において、融合タンパク質は、宿主細胞内外への組換えポリペプチドの移行において有利なシグナル配列を含む。ある実施形態において、シグナル配列は、キャリアポリペプチド配列を含むかまたは含まない。ある実施形態において、融合タンパク質は、糖質結合部分(CBM)をキャリアポリペプチドとして含み、これは必要に応じて、キシラナーゼの変異体ポリペプチドと同じまたは異なる生物に由来する別のタンパク質または酵素のフラグメントである。シグナル配列およびキャリアポリペプチドは、同じ宿主に由来してもよいし、あるいは異なる宿主に由来してもよい。ある実施形態において、融合タンパク質は、同じ宿主細胞に由来するシグナル配列を含み、キシラナーゼ変異体ポリペプチドを含む融合タンパク質が、産生される。ある実施形態において、シグナル配列は、同じ糸状菌宿主に由来し、キシラナーゼ変異体ポリペプチドを含む融合タンパク質が産生される。別の実施形態では、シグナル配列は別の生物に由来する。
【0131】
ある実施形態において、融合タンパク質は、精製を容易にするアミノ酸配列、例えばHisタグまたはポリヒスチジンタグを含み、そのタグは、一続きのヒスチジン残基を含む。
【0132】
ある実施形態において、融合タンパク質は、酵素活性を有するアミノ酸配列を含み、酵素活性を有する前記配列は、キシラナーゼ活性を有する変異体ポリペプチドをコードするアミノ酸配列と同じ配列ではない。
【0133】
ある実施形態において、融合タンパク質は、その融合タンパク質に結合親和性を提供する糖質結合部分のアミノ酸配列を含む。
【0134】
ある実施形態において、酵素組成物は、
a.ポリオール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ヘキシレングリコール、グリセロール、糖、糖アルコール、多糖、乳酸、ペプチド、界面活性剤またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの安定剤;あるいは有機酸、クエン酸、アスコルビン酸、安息香酸ならびにそれらの塩および誘導体、安息香酸ナトリウム、ベンゾエート、ヒドロキシベンゾエートおよび誘導体、リン酸塩、ソルビン酸、ソルビン酸ナトリウム、ソルベート、塩、塩化ナトリウムもしくは塩化カリウム、1,2-ベンゾイソチアゾリン-3-オン(BIT)またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの保存剤または緩衝剤;
b.必要に応じて、ホウ酸、ホウ酸誘導体、芳香族ホウ酸エステル、4-ホルミルフェニルボロン酸、フェニルボロン酸誘導体、阻害活性を有するペプチド化合物またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの阻害剤;
c.必要に応じて、メディエーターを伴うかもしくは伴わない、プロテアーゼ、アミラーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、キシラナーゼ、マンナナーゼ、クチナーゼ、エステラーゼ、フィターゼ、ヌクレアーゼ、ペクチナーゼ、ペクチン分解酵素、ペクチン酸リアーゼ、カルボヒドラーゼ、アラビナーゼ(arabinase)、ガラクタナーゼ、キサンタナーゼ(xanthanase)、キシログルカナーゼ(xyloglucanase)、ラッカーゼ、ペルオキシダーゼおよびオキシダーゼ、またはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの酵素;および
d.必要に応じて、マルトデキストリン、穀粉、塩化ナトリウム、スルフェート、硫酸ナトリウムまたはそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つの充填剤
をさらに含む。
【0135】
成分a~dは、本酵素組成物に改善された特性を提供する。酵素組成物は、成分a~dと適合しており、様々な用途における酵素組成物の適用性を改善する。塩化ナトリウムおよび硫酸ナトリウムなどの塩が、乾燥助剤として機能する。
【0136】
ある実施形態において、キシラナーゼの変異体ポリペプチドおよび追加の酵素を含む酵素組成物は、相乗効果を提供するのに有利である。そのような追加の酵素は、キシラナーゼの変異体ポリペプチドを含む本酵素組成物が、例えば、パルプまたはサイレージの加工および飼料または食料品の調製において使用されるとき、望ましい。パルプまたはサイレージの加工においてキシラナーゼとともに働く特に有利な相乗的酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、フィターゼおよびアミラーゼである。飼料または食料品の調製で働く特に有利な相乗的酵素は、セルラーゼ、ヘミセルラーゼ、フィターゼおよびアミラーゼである。
【0137】
ある実施形態において、酵素組成物は、液体組成物または固体組成物、例えば、溶液、分散液、ペースト、粉末、細粒、顆粒、コーティングされた顆粒、錠剤、ケーク、結晶、結晶スラリー、ゲルまたはペレットの形態で提供される。
【0138】
ある実施形態において、酵素調製物または酵素組成物は、漂白剤、防食剤、ビルダー、再汚染防止剤、蛍光増白剤、染料、色素、香料、腐食剤、研磨剤および保存剤からなる群より選択される他の好適な添加剤をさらに含む。
【0139】
本開示はさらに、キシランを分解するための、本明細書中に開示されるような酵素組成物の使用および使用方法に関する。
【0140】
ある実施形態では、組換え宿主細胞が提供され、その宿主細胞は、
a.子嚢菌門、Pezizomycotina亜門の糸状菌細胞;好ましくは、Sordariomycetes綱またはEurotiomycetes綱、Hypocreomycetidae亜綱またはSordariomycetidae亜綱またはEurotiomycetidae亜綱、Hypocreales目またはSordariales目またはEurotiales目、Hypocreacea科またはNectriacea科またはChaetomiaceae科またはAspergillaceae科、Trichoderma属(Hypocreaの無性世代)またはFusarium属またはAcremonium属またはHumicola属またはThermothelomyces属またはMyceliophthora属またはAspergillus属のメンバーからなる群の糸状菌細胞;
より好ましくは、Trichoderma reesei(Hypocrea jecorina)、T.citrinoviridae、T.longibrachiatum、T.virens、T.harzianum、T.asperellum、T.atroviridae、T.parareesei、Fusarium oxysporum、F.gramineanum、F.pseudograminearum、F.venenatum、Acremonium(Cephalosporium)chrysogenum、Humicola insolens、Humicola grisea、Thermothelomyces thermophilus、Myceliophthora thermophila、Aspergillus niger、Aspergillus niger var.awamoriおよびAspergillus oryzae種からなる群の糸状菌細胞;
b.細菌細胞、好ましくは、グラム陽性桿菌、例えば、B.subtilis、B.licheniformis、B.megaterium、B.amyloliquefaciens、B.pumilus、グラム陰性細菌、例えば、Escherichia coli、放線菌目、例えば、Streptomyces sp.;および
c.c.酵母、例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Yarrowia lipolytica
からなる群より選択され;
好ましくは、その宿主細胞は、Trichodermaなどの糸状菌細胞またはバチルスなどのグラム陽性桿菌;最も好ましくは、Trichoderma reeseiまたはBacillus subtilisもしくはB.pumilusもしくはB.licheniformisから選択される。
【0141】
ある実施形態において、組換え宿主細胞は、糸状菌細胞(例えば、TrichodermaまたはTrichoderma reesei、AspergillusまたはAspergillus oryzaeもしくはAspergillus niger、ThermothelomycesまたはThermothelomyces heterothallicaあるいはHumicolaまたはHumicola insolensあるいはFusariumまたはFusarium venenatum)、細菌細胞、好ましくは、グラム陽性桿菌(例えば、Bacillus subtilis、B.licheniformis、B.megaterium、B.amyloliquefaciens、B.pumilus)、グラム陰性菌(例えば、Escherichia coli)、放線菌目(例えば、Streptomyces sp.、Nonomuraea flexuosa)または酵母(例えば、Saccharomyces cerevisiae、Pichia pastoris、Yarrowia lipolytica)からなる群より選択される。
【0142】
組換え宿主細胞を用いることにより、キシラナーゼの変異体ポリペプチドを産生すること、およびそれをコードするポリヌクレオチドを含めることができる。組換え宿主細胞は、キシラナーゼの変異体ポリペプチドの産生を指示する1つ以上の調節配列に作動可能に連結され得る。組換え宿主細胞は、種々の特性を有するキシラナーゼの変異体の調製においても有用である。例えば、安定性または活性に有益な翻訳後修飾を提供する宿主細胞、または宿主細胞において産生されたキシラナーゼの変異体ポリペプチドの後処理を容易にする宿主細胞を選択することができる。
【0143】
ある実施形態において、宿主細胞は、非病原性である。これは、宿主細胞またはその産物を動物用飼料に使用する場合に特に有利である。
【0144】
第6の態様のある実施形態において、キシラン含有材料は、植物系材料または部分的に植物系の材料である。別の実施形態において、キシラン含有材料は、再生古紙;機械パルプ、ケミカルパルプ、セミケミカルパルプ、クラフトパルプもしくは他の製紙パルプ、木材パルプもしくは非木材パルプ、または発酵精練プロセスに供される繊維;あるいはグアーガムまたはローカストビーンガムを含む材料である。
【0145】
ある実施形態において、キシラナーゼの本変異体ポリペプチドまたは本酵素組成物は、パルプ漂白のようなパルプ加工に使用されて、セルロースの加水分解を促進し、パルプの精製効率を高める。キシラナーゼの本変異体ポリペプチドは、紙パルプからのリグニン放出を促進する際、ならびに塩素系化学物質およびヒドロ亜硫酸ナトリウムなどの有害な漂白剤の使用を低減する際に有用である。
【0146】
ある実施形態において、本開示に係るキシラナーゼの変異体ポリペプチドまたは融合タンパク質または酵素組成物は、バイオマスの処理およびバイオマスの加水分解、ならびに排水の改善において使用される。キシラナーゼの本変異体ポリペプチドの使用は、リグノセルロース原料をリグノセルロース系バイオマスからエタノールなどのバイオ燃料に変換するためにキシラナーゼを使用することができる生物学的燃料の生成において有用である。
【0147】
キシラナーゼの本変異体ポリペプチドまたは本酵素が動物用飼料において使用される実施形態において、動物は、単胃動物または反芻動物である。別の実施形態において、動物は、ブロイラーチキン、産卵用ニワトリ、ブタ、仔ブタ、シチメンチョウ、または魚類などの水産養殖生物である。
【0148】
ある実施形態において、飼料は、動物用飼料であり、穀物および穀類、例えばトウモロコシおよびダイズミール、またはコムギ、オートムギ、オオムギおよび/もしくはイネを含むかまたはそれらからなる。キシラナーゼの本変異体ポリペプチドまたは本酵素が動物用飼料において使用される実施形態において、少なくとも1つのキシラン含有産物または副産物が、その飼料に提供される。キシラナーゼの本変異体ポリペプチドまたは本酵素が使用される飼料は、キシラナーゼの変異体ポリペプチドを含まない飼料と比較して改善された栄養価を有する。本酵素組成物およびキシラナーゼの本変異体ポリペプチドは、飼料中に存在するキシランを分解し、それにより、その飼料を動物にとってより消化しやすくする。特に、本酵素組成物およびキシラナーゼの本変異体ポリペプチドは、飼料中、例えばトウモロコシダイズ含有飼料中に存在するキシランを消化することができ、これは腸内微生物、ひいては動物の能力に対して有益な効果を有する。キシラナーゼの本変異体ポリペプチドまたは本酵素が使用される動物用飼料は、湿潤組成物または乾燥組成物の形態で製剤化され得る。
【0149】
本開示に係る変異体ポリペプチドまたは融合タンパク質または酵素組成物が食品工業プロセスまたは商業用途において使用される実施形態において、前記プロセスまたは用途には、例えば、コーヒー、植物油、キシロース(キシリトールへの変換用)およびデンプンの抽出、植物繊維源からのゴムの除去、ベーキングおよび生地のコンディショナー産業(例えば、パンの製造)、ならびに飲料産業(アルコール発酵)が含まれる。
【0150】
本変異体ポリペプチド、本融合タンパク質および本酵素組成物の使用は、例えば、水不溶性キシランを可溶型に変換して、水の結合性を高めて、生地の硬さを低下させ、体積を増加させるベーキングにおいて有利である。また、本融合タンパク質および本酵素組成物は、豆乳製品の生産量、色、タンパク質含有量および味を改善するので、例えば、豆乳製品の加工および製造において有利である。本変異体ポリペプチド、本融合タンパク質および本酵素組成物を使用することは、果汁およびワインなどの飲料の清澄化プロセスを改善するので、飲料産業において有利である。
【実施例】
【0151】
実施例1.AM24(切断型Nf_Xyn11A)変異体の設計
安定性をさらに改善することを目的として、好熱性AM24キシラナーゼ(配列番号1)から変異体を設計した。AM24は、Nonomuraea flexuosa Xyn11AであるNf_Xyn11Aの切断型に対して用いられる名称である。AM24は、完全長野生型Nf_Xyn11Aのアミノ酸D44~L263を含んでおり、ゆえに完全長野生型Nf_Xyn11Aの糖質結合ドメイン(CBM)およびリンカー領域のほとんどが欠失している(Leskinen et al.,2005;Paloheimo et al.,2007)。
【0152】
上記変異体では、AM24の3位および30位の天然のアミノ酸をシステイン(C)に変更することにより、N末端へのジスルフィド(SS)架橋を構築した。その分子のN末端部分における2つの追加の位置であるアミノ酸位置23および/または28にも変異が入るように設計された。
【0153】
【0154】
実施例2.近いNf Xyn11Aホモログからの変異体の設計
Nf Xyn11A(AM24)コア領域に最も近い相同性を有する配列のblastp(タンパク質-タンパク質BLAST)検索を、非冗長タンパク質配列のNCBIタンパク質データベース(https://blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgi?PAGE=Proteins)から行った。Nf_Xyn11Aコアのアミノ酸配列(Leskinen et al.,2005に従って成熟コア領域を表す、配列番号1からのアミノ酸1~191)をクエリー配列として用いた。アルゴリズムパラメータは、以下のとおりだった:最大標的配列:100;期待閾値:10;ワードサイズ:6;行列BLOSUM62;ギャップコスト:あり:11、伸長:1;組成調整:条件付き組成スコアマトリクス調整。100個のホモログの配列をダウンロードし、Clustal Omega多重配列アラインメント(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)をデフォルト設定で用いてアラインメントした。AM24コア配列に対する配列の最も低い同一性は、79.0%だった。
【0155】
同一性マトリックス(系統樹)を、AM24コアおよびAM24の最も近い100個のホモログから作成した。その系統樹は、ClustalOmegaウェブサイト(https://www.ebi.ac.uk/Tools/msa/clustalo/)のPhylogenetic Treeプログラムを用いて、アラインメントされた配列から作成され、
図1Aおよび
図1Bに示されている。各キシラナーゼ配列に対するデータベースコードが含まれている。アライメントにはデフォルト設定を使用した。
【0156】
100個のAM24キシラナーゼホモログから、Trichoderma reeseiにおいて産生される6つのキシラナーゼを選択した。さらに、それら6つのAM24ホモログの各々から2つの変異体を設計した。作製のために選択したキシラナーゼを表2に示す。上記の6つのアミノ酸配列とAM24配列(配列番号1)とのアラインメントに基づいて、6つのAM24ホモログのアミノ酸配列をN末端および/またはC末端からトリミングして、各キシラナーゼの推定コア領域を表した。産生されるように選択された6つのAM24キシラナーゼホモログのAM24配列とトリミングされた(コア)配列とのアラインメントを
図2に示す。AM24コア配列は、配列番号1のアミノ酸1~191を含む。
【0157】
上述の6つのキシラナーゼの各々のコア配列から、2タイプのAM24キシラナーゼホモログ変異体を設計した。第1のタイプの変異体では、3位および30位の天然のアミノ酸をシステインに変更することによって、キシラナーゼのN末端にSS架橋を付加した。AM24変異体C31-4(実施例1、表1)の設計に使用したのと同じストラテジーを用いて、第2のタイプの変異体を設計した。これらのAM24ホモログ変異体は、SS架橋(3位および30位のC)を含み、さらに、23位および28位のアミノ酸が元々、天然のアミノ酸ではないとき、23位のアミノ酸をセリンに、28位のアミノ酸をイソロイシンに変更した。設計された変異体および作製された変異の詳細を表2に列挙する。
【0158】
【0159】
上記アミノ酸配列(配列番号30、33、36、39、42および45)とAM24コア領域(配列番号1のアミノ酸1~191)との同一性パーセンテージは、79.0~96.3%だった。EMBOSS Needle Pairwise Sequence Alignmentプログラム(https://www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/)をデフォルト設定(行列BLOSUM62、ギャップオープン10、ギャップ伸長0.5、エンドギャップペナルティ偽、エンドギャップオープン10、エンドギャップ伸長0.5)で用いて同一性マトリックスを作成した。同一性パーセントマトリックスを表3に示す。
【0160】
【0161】
実施例3.キシラナーゼおよびキシラナーゼ変異体を産生するための発現カセットおよびプラスミドの構築
AM24は、2つの構築物から発現された。配列番号48の塩基配列は、発現カセットpALK1502(Paloheimo et al.,2007)に含まれているものに対応する。配列番号56では、AM24をコードする遺伝子の内部NruI部位が、サイレンシングされており、また、それらのコドンには他の修飾がほとんどない(さらなる詳細については、配列表を参照のこと)。しかしながら、配列番号48および配列番号56は、同一のアミノ酸配列(配列番号1)をコードする。AM24変異体は、pALK1502を鋳型として使用するPCRおよび制限/ライゲーション法を用いて合成されたか、または合成遺伝子として発注された。AM24ホモログおよびそれらの変異体をコードするすべての遺伝子を合成遺伝子として発注した。発注された合成AM24変異体のアミノ酸置換(すなわち変異)において使用されるコドンは、Trichoderma reeseiのコドン使用頻度に基づいて選択された。AM24ホモログをコードする遺伝子のヌクレオチド配列を、Trichoderma reeseiのコドン使用頻度に従ってコドン最適化した。細菌キシラナーゼの収率を改善するために、成熟キシラナーゼをコードする配列を、発現構築物内のキャリアポリペプチドをコードする配列に融合した。使用されたキャリアは、Paloheimo et al.(2007)においてpALK1502について記載されているように、天然CBHII由来のT.reeseiセロビオヒドロラーゼII(CBHII)CBD(A)およびヒンジ(B)領域だった。Kex2プロテアーゼ切断部位(RDKR)をコードする配列を、キャリアとキシラナーゼをコードする配列との間に挿入した。発現カセットに含まれるキシラナーゼヌクレオチド配列の配列番号を表1および2に列挙する。それらの遺伝子構築物を、T.reesei cbh1(セロビオヒドロラーゼ1)プロモーターを使用して発現させた。T.reesei cbh1またはcbh2ターミネーターのいずれかを使用して、転写を終結させた。Aspergillus nidulansアセトアミダーゼをコードする天然遺伝子または合成遺伝子のいずれかを、形質転換マーカーとして発現構築物に含めた。
【0162】
実施例4.Trichoderma reeseiにおけるキシラナーゼおよびキシラナーゼ変異体の産生
上記キシラナーゼ発現構築物を、発現プラスミドから単離された発現カセットまたは発現プラスミドのいずれかとして、Penttila et al.(1987)およびKarhunen et al.(1993)に記載されているようにT.reeseiプロトプラストに形質転換した。各形質転換から3~20個の形質転換体を拾って、ポテトデキストロース(PD)斜面において胞子形成させた。PD斜面由来の胞子を使用して、振盪フラスコ培養物(50mL体積)に接種した。培養をセルラーゼ誘導培地において7日間行った(30℃、250rpm)。培養を終了した後、サンプルを採取し、真菌の菌糸体を遠心分離(4000rpm、10分)により除去し、培養上清を解析のために収集した。
【0163】
キシラナーゼの産生を、SDS-PAGE解析および活性アッセイを用いて解析した。Bailey et al.(1992)に従ったが反応条件としてpH7(5.3の代わりに)および70℃(50℃の代わりに)を用いて、キシラナーゼ活性を計測した。
【0164】
SDS-PAGEゲルでは、すべてのサンプルにおいて、対応するキシラナーゼおよびキシラナーゼ変異体の予想分子量のタンパク質バンドが認められた。また、すべてのキシラナーゼから、それらのゲルにおいてグリコシル化型も認められた。
【0165】
使用した解析方法を用いて、XB6およびその変異体を除く産生されたすべてのキシラナーゼおよびキシラナーゼ変異体の培養上清からキシラナーゼ活性を計測することができた。XB6およびその変異体の培養上清から計測したとき、キシラナーゼ活性が得られなかったか、または活性が検出レベル未満だった。
【0166】
実施例5.キシラナーゼおよびキシラナーゼ変異体の解析
3つの異なる解析方法を用いて、培養上清中のキシラナーゼおよびキシラナーゼ変異体の安定性を調べた:
1)すべてのキシラナーゼのアンフォールディング温度を、Prometheus NT.48(NanoTemper Technologies GmbH)を用いて解析した。AM24およびAM24変異体の解析を、pHを10に調整した0.2Mグリシン-NaOH緩衝液中に精製キシラナーゼを含むサンプルから行った。サンプルを含む緩衝液のpHは、9.92だった(サンプルのpHは、4.32~4.38の範囲だった)。AM24ホモログおよびそれらの変異体のアンフォールディング温度を培養上清から直接解析した。解析に使用された温度範囲は、20~110℃(加熱速度+1℃/分)だった。さらに、AM24およびAM24変異体のアンフォールディング温度も、200mM酢酸Na緩衝液中、低pH(3.5および4.5)において解析した。
2)Bailey et al.(1992)の活性アッセイの変法を以下の通り用いることによって、選択されたサンプルから熱安定性を解析した:使用した反応時間は、5分および60分であり、反応pHは7であり、反応温度は70、80、90および96℃だった。さらに、AM24およびAM24変異体サンプルから、70、80、90および96℃で5分間の反応時間ならびに70および80℃で60分間の反応時間を使用して、pH 8および9において熱安定性を解析した。
3)AM24およびAM24変異体サンプルをpH11、90℃で60分間インキュベートした後、5分間の反応時間を用いて、pH7、70℃においてそれらのサンプルから残留キシラナーゼ活性を計測した。
【0167】
高pH(緩衝液のpHを10に調整した)でのAM24キシラナーゼのアンフォールディング温度は、84.8℃だった(表4)。NFX23を除くすべてのAM24変異体が、AM24よりも高いアンフォールディング温度を有した。高pHでのAM24変異体のアンフォールディング温度は、87.6 ~104.3℃だった(NFX23の場合、67.5℃)。
【0168】
【0169】
pH3.5において、AM24のアンフォールディング温度は、61.4℃であり、pH 4.5では75.2℃だった。AM24変異体C31-4のアンフォールディング温度は、低pHにおいてAM24のそれよりも明らかに良好であり、pH3.5で84.1℃およびpH4.5で105.2℃だった。この結果は、記載された変異が、広いpH範囲において親キシラナーゼの安定性を改善することを示している。
【0170】
高pH(緩衝液pHを10に調整した)でのAM24ホモログのアンフォールディング温度は、63.6~78.1℃だった(表5)。AM24ホモログの変異体のアンフォールディング温度は、SS架橋を付加したとき、改善された。しかしながら、SS架橋と、23位および/または28位における追加の変異との両方を含めたとき、アンフォールディング温度のさらに高い改善が得られた。対応する親キシラナーゼと比較して、アンフォールディング温度の最も高い上昇は、XB3M2で+26.8℃、XB5M2で+33.5℃だった(表5)。
【0171】
【0172】
AM24およびその変異体の選択されたセット:SS架橋形成変異のみを有する変異体(T3CおよびT30C;AM24-CC)、SS架橋形成変異を有さず、23位および/または28位に変異を有する変異体(AM24-AS、AM24-SI、AM24-AS+SI)、ならびにSS架橋形成システイン変異と組み合わされた23位および/または28位に変異を有する変異体(AM24-CC+AS、AM24-CC+SI、C31-4)の培養上清から熱安定性を解析した。pH7において5分および60分の反応時間を用いて行った解析の結果を、それぞれ
図3Aおよび
図3Bに示す。最高温度(90および/または96℃)では、AM24の熱安定性とその変異体の熱安定性との間に明確な差が検出され、AM24変異体は、AM24よりも熱安定性が高かった。23位または28位の変異は、AM24の熱安定性を改善した。これらの2つの変異を組み合わせると、熱安定性のさらなる改善が得られた。N末端にSS架橋を含めると、AM24の熱安定性の明らかな改善が得られた。しかしながら、23位または28位の変異とSS架橋とを1つの分子において組み合わせると、熱安定性のさらなる改善が検出された。23位と28位の変異の両方をSS架橋と組み合わせたとき、最善の熱安定性が達成された。
【0173】
AM24および変異体C31-4の熱安定性を、5分および60分の反応時間を用いてpH8および9というより高いpH値でさらに解析した。反応温度は、5分のアッセイでは70、80、90および96℃(
図4Aおよび
図4C)であり、60分のアッセイでは70および80℃(
図4Bおよび
図4D)だった。pH8で行われた解析では、5分のアッセイにおけるC31-4の熱安定性は、90および96℃の最高試験温度(
図4A)ならびに80℃での60分のアッセイ(
図4B)におけるAM24の熱安定性よりも明らかに良好だった。pH 9の解析では、5分のアッセイにおけるC31-4の熱安定性は、すべての試験温度(
図4C)および80℃での60分のアッセイ(
図4D)において明らかにより良好だった。
【0174】
行われた第3の熱安定性試験では、サンプルをpH11、90℃で60分間インキュベートした後、AM24およびC31-4培養上清から残留キシラナーゼ活性を計測した。解析は、Britton-Robinsonおよびリン酸Naの2つの緩衝系を用いて行われた。残留キシラナーゼ活性は、pH7、70℃、5分の反応時間を用いて計測された。C31-4は、AM24よりも良好に、過酷な条件に耐えた。Britton-Robinson緩衝液では、元の活性のおよそ20%(サンプルBR/1およびBR/2)およびリン酸Na緩衝液では、およそ26%(サンプルNaP/1およびNaP/2)がC31-4サンプルに残っていたのに対して、AM24サンプルでは元の活性の2~3%しか残っていなかった(
図5)。
【0175】
実施例6.応用研究のためのAM24およびC31-4キシラナーゼの産生
AM24またはC31-4を産生するTrichoderma株を30Lバイオリアクターにおいて培養して、応用試験用の材料を産生した。発酵は、セルラーゼ誘導培地中でのフェドバッチ培養として行われた。発酵が終了した後、菌糸体を濾過工程によって除去し、培養上清を収集し、濃縮した。得られた酵素調製物を漂白試験において使用した。
【0176】
AM24およびC31-4の産生された酵素調製物は、等量の対応するキシラナーゼ酵素を含み、前記酵素調製物中の総タンパク質の半分超が、それぞれのキシラナーゼからなっていた。等量のAM24およびC31-4キシラナーゼを漂白試験において使用した。
【0177】
実施例7.高pHおよび高温でのキシラナーゼ前処理を用いたユーカリクラフトパルプの漂白
短い漂白シーケンスXD0E(X、酵素;D0(Dゼロ)、二酸化塩素(ClO2);E、水酸化ナトリウムでの抽出)を使用して、高温(90℃)でのAM24およびC31-4キシラナーゼによる前処理の漂白効率を比較した。前処理は、pH約8およびpH約10の2つのpH値で行われた。使用したパルプは、カッパー価15.5および白色度38.0ISO%を有するアジアミルからの酸素脱リグニンユーカリクラフトパルプだった。一定のClO2適用量(0.2×カッパー価)を使用した。漂白試験を漂白反応器において行った。アンカー型Kemu反応容器(バッチサイズ0.15~1.0kg、Tmax 90℃、粘稠度25%)をX段階およびE段階で使用し、空気加熱したHellsten反応容器(バッチサイズ0.3~0.8kg、Tmax 85℃、粘稠度12%)をD0段階において使用した。
【0178】
パルプ1トンあたりおよそ2gの総タンパク質を使用した。両方のキシラナーゼ産物が、類似の相対量のキシラナーゼタンパク質を含んでいた(実施例6)。酵素処理時間は、60分だった。
【0179】
酵素段階の後、熱水を添加し、直ちにパルプ懸濁液のpHをpH値2.5~3に調整することによって、酵素を失活させた。E段階後に白色度およびカッパー価を解析した。
【0180】
【0181】
キシラナーゼAM24とC31-4との両方による前処理は、ユーカリパルプの白色度を改善した。pH8においてC31-4で前処理されたパルプは、参照パルプよりも2.8単位高い白色度を有し、AM24で処理されたパルプよりも1.0単位高い白色度を有した。C31-4処理パルプにおけるpH8でのΔカッパーあたりの活性塩素(aCl)の使用量は、AM24処理パルプよりも0.2kg/t低く、ΔBrあたりの活性塩素の使用量は0.07kg/t低く、参照パルプよりもそれぞれ0.28kg/tおよび0.19kg/t低かった(表6)。
【0182】
キシラナーゼ前処理をpH11で行ったとき、AM24処理は、参照パルプと比較して利益をもたらさなかった。しかしながら、C31-4処理パルプは、参照パルプよりも、2.7単位高い白色度を有し、Δカッパーあたりの活性塩素(aCl)使用量は0.09kg/t低く、ΔBrあたりの活性塩素使用量は、0.18kg/t低かった(表6)。
【0183】
検出された白色度(%)の上昇は、有意であり、AM24キシラナーゼ変異体C31-4を、高pHおよび高温におけるパルプおよび他の材料の前処理または処理に使用できることを示している。
【0184】
実施例8.高pHおよび高温でのC31-4を用いた軟材(SW)クラフトパルプの漂白
高温および高pHでの軟材パルプの漂白におけるC31-4の効率を、一定のClO2投入量(0.2×カッパー価)で短い漂白シーケンスXD0E(X、酵素;D0(Dゼロ)、ClO2、二酸化塩素;E、水酸化ナトリウムでの抽出)を使用することによって試験した。漂白試験を、漂白反応容器において全シーケンスで実施した。アンカー型Kemu反応容器(バッチサイズ0.15~1.0kg、Tmax 90℃、粘稠度25%)をX段階およびE段階で使用し、空気加熱したHellsten反応容器(バッチサイズ0.3~0.8kg、Tmax 85℃、粘稠度12%)をD0段階において使用した。
【0185】
試験で使用されたパルプは、以下の特性を有するスカンジナビアミルからの酸素脱リグニンSWクラフトだった:カッパー価25.6、粘度1140ml/gおよび白色度26.8ISO%。C31-4酵素調製物の投与量は、パルプ1トンあたりおよそ2gの総タンパク質だった。種々の漂白段階において使用された条件を、表7~9に記載している。
【0186】
X段階の後、パルプを3回洗浄した。最初の洗浄は、反応温度(90℃)の水を用いて行い、続いて冷水(4℃)で2回洗浄した。洗浄工程の後、遠心分離処理(2600rpm、10秒)を行って水を除去し、約10~15g(オーブン乾燥で計測)のパルプサンプルを解析のために収集した。さらに、パルプ量をよりうまく調整するためにIR乾燥機を使用して、C31-4処理サンプルの乾物分析を行った。パルプサンプルのカッパー価および白色度を解析した。
【0187】
試験の結果を表10に詳細に示す。
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
pH10.5においてC31-4で前処理された軟材クラフトパルプは、参照パルプ(酵素を使用しない)と比較して、同じ5.4%の活性塩素消費量で2.7単位高い補正済み最終白色度を有した。
【0193】
実施例9.中性pHおよび低温でのAM24キシラナーゼと比較したときの、高pHおよび高温でC31-4を使用した軟材(SW)クラフトパルプの漂白
軟材パルプおよび実施例8のような条件を用いた漂白試験を、AM24およびC31-4キシラナーゼを用いて繰り返した。パルプをpH11および60℃で約30分間洗浄した後、その特徴付けおよび実験を行った。洗浄工程の後、パルプのカッパー価は16.7、粘度は1050ml/g、白色度は32.6ISO%だった。両方の酵素(C31-4およびAM24)の投与量は、パルプ1トンあたり2gの総タンパク質だった。キシラナーゼ処理、漂白および抽出の段階において使用した条件を表11~13に記載する。AM24キシラナーゼは、このようなパルプミル条件では不活性であることが知られているが、C31-4変異体は、以前に行われた実験に基づいて、これらの条件(pH10.5/90℃)において機能することができると予想されたので、キシラナーゼ処理段階(X段階)において、これら2つの酵素を、異なるpHおよび温度において適用した。
【0194】
【0195】
【0196】
【0197】
実験の結果を表14に含める。
【0198】
【0199】
pH10.5/90℃においてC31-4で前処理されたスカンジナビア軟材クラフトパルプは、XD0E漂白シーケンス全体を通して同一の条件で、参照パルプ(酵素を使用しない)と比較して2.8単位高い白色度を有した。結果から、C31-4が高pHおよび高温の条件において白色度を改善することが確認された。AM24キシラナーゼは、X段階(pH7/80℃)において、調整された条件ならびにD0段階およびE段階においてC31-4に対して使用されたのと同一条件において、1.2単位の白色度上昇を示した。
【0200】
実施例10.飼料用途における好熱性キシラナーゼ変異体の使用
記載される好熱性キシラナーゼ変異体は、動物、例えば、ブタおよびブロイラーの給餌に使用され得る。それらは、単独で、または他の酵素、例えば、フィターゼおよび/もしくはマンナナーゼと組み合わせて使用され得る。
【0201】
ブロイラーの成長に対する本発明の組換えキシラナーゼ変異体の効果を調べる。組換えキシラナーゼを含む発酵ブロスの限外濾過液を乾燥させ、目標レベルを、単独でまたは商業的に入手可能な他の酵素と組み合わせてペレット化ブロイラー食餌に適用する。キシラナーゼ酵素を含まないコントロール食を与える。食餌は、穀類として、ライムギおよびコムギまたはトウモロコシに基づく。
【0202】
ブロイラーの初期体重は、38~42gである。試験は、5~6週間継続する。各処理は、それぞれ10羽のブロイラーを用いた最低6回の反復からなる。いずれの場合も、食餌を、水分、粗タンパク質、粗繊維、脂肪、灰分および酵素タンパク質について解析する。
【0203】
以下に記載されるように、選択された各キシラナーゼ変異体を用いて試験するために5種の食餌を調製する。処理の基準として、親キシラナーゼを投与する。
1)無補充コントロール(BD)
2)BD+選択されたキシラナーゼ親酵素1~10mg/kg
3)BD+上記の親キシラナーゼの変異体、上記と同じ投与量
3)BD+選択されたキシラナーゼ親酵素1~10mg/kg、1)と比較して異なる投与量
4)BD+上記の親キシラナーゼの変異体、上記と同じ投与量
【0204】
動物の健康状態および死亡を、目視検査によって毎日チェックする。0、14、21および35日目に、体重増加(BW)、飼料摂取量(FI)および飼料転換比(FCR)を計測する。FCRは、同じ期間中の、消費された総飼料を体重増加量で除算したものとして計算される。組換えキシラナーゼ変異体の効果の判定は、対応する野生型キシラナーゼおよび無補充コントロール飼料を与えた動物との比較に基づく。
【0205】
アンフォールディング温度が高いことに起因して、本明細書中に開示されるのと同じ原理を用いて設計されたC31-4キシラナーゼおよび他の好熱性キシラナーゼ変異体は、高い熱安定性が必要とされるすべての用途、例えば、木材パルプおよび非木材パルプの用途ならびにペレット化段階で高温が使用される飼料用途において適している。本明細書中に開示されるキシラナーゼ変異体はまた、問題の酵素の活性および機能にとって最適ではないプロセス条件、例えば、アルカリ性または酸性のpHに耐えるおよび/またはそのプロセス条件において機能するのにも適している。
【0206】
前述の説明は、特定の実施態様および実施形態の非限定的な例として、本発明を実施するために本発明者らによって現在企図されている最良の形式の完全かつ情報価値のある説明を提供してきた。しかしながら、本発明が、前述において提示された実施形態の詳細に限定されず、本発明の特色から逸脱することなく、同等の手段を使用して他の実施形態において、または種々の実施形態の組み合わせで、実施され得ることは、当業者には明らかである。
【0207】
さらに、上記で開示された例示的な実施形態の特徴のいくつかは、他の特徴を対応して使用することなく有利に使用することができる。その結果として、実施形態および態様の任意の適切な組み合わせを形成することができる。本明細書中に開示されるような態様または実施形態の任意の組み合わせは、態様または実施形態に開示されている少なくとも1つの必須でない特徴なしに行うこともできる。
【0208】
添付の特許請求の範囲は、保護の範囲を規定する。明細書または図面に開示されているが特許請求の範囲によって網羅されない任意の方法、プロセス、生成物または装置は、特許請求される発明の実施形態として理解されるべきではないが特許請求される発明を理解するのに有用な例として提供されている。
【0209】
【配列表】
【国際調査報告】