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特表2024-501525負極材料、負極片、当該負極片を含む電気化学装置および電子装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】負極材料、負極片、当該負極片を含む電気化学装置および電子装置
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/48 20100101AFI20240104BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20240104BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20240104BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20240104BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20240104BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20240104BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240104BHJP
   H01M 10/052 20100101ALN20240104BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/13
H01M4/139
H01M10/0566
H01M4/36 E
H01M4/36 C
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538983
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2020140377
(87)【国際公開番号】W WO2022140981
(87)【国際公開日】2022-07-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【弁理士】
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】陳 志煥
(72)【発明者】
【氏名】姜 道義
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AL02
5H029AL11
5H029AL18
5H029AM03
5H029AM05
5H029AM07
5H050AA07
5H050BA17
5H050CB02
5H050CB11
5H050CB29
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA23
5H050EA24
5H050FA16
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA08
5H050HA17
(57)【要約】
本発明は、ケイ素化合物SiOと、第1導電層と、第2導電層とを含み、ここで、xが0.5≦x≦1.5を満たし、前記第1導電層の少なくとも一部が前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在し、前記第1導電層はグラフェンを含み、前記第2導電層はカーボンナノチューブを含む、負極材料を提供する。本発明は、前記第1導電層がカーボンナノチューブを含み、前記第2導電層がグラフェンを含む点で前記負極材料とは異なる負極材料をさらに提供する。また、本発明は、負極片、および当該負極片を含む電気化学装置、並びに当該電気化学装置を含む電子装置を提供する。本発明の負極材料は、グラフェンとカーボンナノチューブの長所を組み合わせることで、高サイクル寿命で低膨張の電気化学装置を得ることができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素化合物SiOと、第1導電層と、第2導電層とを含み、
xが0.5≦x≦1.5を満たし、前記第1導電層の少なくとも一部が前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在し、前記第1導電層はグラフェンを含み、前記第2導電層はカーボンナノチューブを含むことを特徴とする、負極材料。
【請求項2】
ケイ素化合物SiOと、第1導電層と、第2導電層とを含み、
xが0.5≦x≦1.5を満たし、前記第1導電層の少なくとも一部が前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在し、前記第1導電層はカーボンナノチューブを含み、前記第2導電層はグラフェンを含むことを特徴とする、負極材料。
【請求項3】
前記ケイ素化合物の平均粒子径Aμmと前記カーボンナノチューブの平均長さBμmは、0.5*A≦B≦2*π*Aを満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の負極材料。
【請求項4】
前記負極材料の平均粒子径Cμmと前記ケイ素化合物の平均粒子径Aμmは、A≦C≦2Aを満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の負極材料。
【請求項5】
前記ケイ素化合物の平均粒子径Aμmと前記グラフェンの平均シート径Dμmは、0.7*π*A≦n*D≦1.5*π*Aを満たし、nは1つのケイ素化合物粒子の表面におけるグラフェンのシート数であり、2≦n≦20を満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の負極材料。
【請求項6】
前記負極材料は、酸化物MeO層をさらに含み、前記酸化物MeOy層は、
(1)前記酸化物MeO層は、前記ケイ素化合物と前記第1導電層との間に存在することと、
(2)前記酸化物MeO層中のMeは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、CoおよびZrのうち少なくとも1種を含み、yが0.5≦y≦3を満たし、且つ前記酸化物MeO層は炭素材料を含むことと、
(3)前記酸化物MeO層の厚さは0.5nm~100nmであることと、
のうち少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の負極材料。
【請求項7】
前記負極材料は、ポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、
(1)前記ポリマー層の少なくとも一部は、前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在することと、
(2)前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、およびポリアミドイミドのうち少なくとも1種を含むことと、
(3)前記ポリマー層の含有量は、前記負極材料の総重量に基づいて、0.05wt%~10wt%であることと、
(4)前記ポリマー層の厚さは1nm~100nmであることと、
のうち少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の負極材料。
【請求項8】
前記負極材料は、
(1)前記負極材料中のケイ素化合物は、SiO、SiOまたはこれらの組み合わせを含むことと、
(2)前記負極材料は、ナノSi結晶粒子を含み、前記ナノSi結晶粒子のサイズは100nm未満であることと、
(3)前記負極材料中のケイ素化合物の平均粒子径は500nm~30μmであることと、
(4)前記負極材料の平均粒子径は1μm~50μmであることと、
(5)前記負極材料中のグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェンまたはこれらの組み合わせを含むことと、
(6)前記負極材料中のグラフェンの層数は1層~15層であることと、
(7)前記負極材料中のグラフェンの平均シート径は2μm~20μmであることと、
(8)前記負極材料中のカーボンナノチューブの直径は2nm~30nmであり、かつ、前記カーボンナノチューブは50~30000のアスペクト比を有することと、
(9)前記負極材料の総重量に基づいて、前記グラフェンの含有量は1wt%~20wt%であり、前記カーボンナノチューブの含有量は0.1wt%~10wt%であることと、
のうち少なくとも1つを満たすことを特徴とする、請求項1または2に記載の負極材料。
【請求項9】
負極材料であって、請求項1または2に記載の負極材料を含み、炭素材料、バインダー、導電材またはこれらの任意の組み合わせをさらに含み、前記負極材料は、
(1)前記負極材料中の炭素材料は、人工黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、またはこれらの任意の組み合わせを含むことと、
(2)前記負極材料中のバインダーは、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、メチロールセルロースナトリウム、メチロールセルロースカリウム、またはこれらの任意の組み合わせを含むことと、
(3)前記負極材料中の導電材は、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、ナノ炭素繊維、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性グラファイト、グラフェンまたはこれらの任意の組み合わせを含むことと、
のうち少なくとも1つを満たすことを特徴とする、負極材料。
【請求項10】
集電体と、請求項1~9のいずれか1項に記載の負極材料とを含み、前記集電体の少なくとも一方の表面に前記負極材料が塗布されることを特徴とする、負極片。
【請求項11】
前記負極片は、厚さが50μm~200μmであり、片面の圧縮密度が1.2g/cm~2.0g/cmであり、抵抗が0.001Ω~1000Ωであり、好ましくは、前記負極材料と前記集電体との間のピール強度は10N/m超であることを特徴とする、請求項10に記載の負極片。
【請求項12】
正極片と、
請求項10または11に記載の負極片と、
セパレータと、
電解液と、を含むことを特徴とする、電気化学装置。
【請求項13】
請求項12に記載の電気化学装置を含むことを特徴とする、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池技術分野に属し、特にリチウムイオン電池技術分野に関し、具体的には、2種類の負極材料、当該負極材料が塗布された負極片、ならびに当該負極片を含む電気化学装置および電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電池技術、特にリチウムイオン電池技術の革新の重要な方向の1つは、エネルギー密度を継続的に向上させることである。現在主流のグラファイト材料の実際の容量はすでに理論容量(372mAh/g)に近く、エネルギー密度を高める上でボトルネックが存在している。シリコン系負極材料は、その豊富な埋蔵量、超高理論容量(4200mAh/g)、環境に優しいなどの利点があるため、多くの注目と研究を集めている。しかしながら、シリコン系負極材料のサイクル中に存在する体積膨張問題(300%以上)は、シリコン系負極材料の産業化応用のプロセスに深刻な影響を与えている。
【0003】
シリコン材料のサイクル中の大きな体積膨張(120%~300%)と電気伝導性の低下(≦1S/m)によって引き起こされるサイクル減衰が速い(400サイクルの容量維持率が80%未満)などの問題については、主な解決策は次のとおりである。1つ目は、シリコン材料をナノサイズにすることであり、ナノシリコン材料はサイクル中の体積変化が小さく(<300%)、非ナノ材料(粒子径>1μm)と比較して、ナノ材料は膨張後に粉砕しにくく、材料の構造安定性を維持するのに有利である。2つ目は、シリコン負極材料に表面被覆と改質を行うことであり、特に炭素被覆は、材料の電気伝導度を向上させ(炭素被覆後の材料の電気伝導度>100S/m)、膨張(<80%)を緩和することができる。3つ目は、ケイ素含有材料をグラファイトまたはその他の材料(金属または非金属)と混合することであり、グラファイトなどの材料の良好な電気伝導性と展延性を利用して、サイクル中のシリコン材料の体積膨張を大幅に緩和し、システムの電気伝導性を向上させることができる。4つ目は、シリコン負極はバインダーを用いて最適化されることであり、シリコン負極の接着力を高めて、シリコン材料の膨張を抑制する。
【0004】
しかしながら、上記の方法には次のような欠点や問題がある。ナノ材料の比表面積が大きく(100nm未満の材料は、比表面積が100m/gに達することができる)、SEI膜を形成するためにより多くの電解液を消耗し、結果として、初回クーロン効率が低くなる。また、ナノ材料の調製が困難であり、価格が高いである。この一連の特徴は、ナノシリコン材料のさらなる応用を制限している。従来のCVD炭化水素系ガス被覆と固相ピッチ被覆などによる電気伝導性の向上は、明らかではなく、サイクル中の膨張による電気的接触不良を解決することができない。シリコン系負極と電気伝導性の良いグラファイトを簡単に機械的に混合することは混合の均一性を保証することができず、サイクル中のグラファイトとシリコン系粒子の接触を保証するためには、接着力の高いバインダーに依存する必要があり、結果として、レート特性の低下を招く。
【発明の概要】
【0005】
従来技術における上記の問題に対して、本発明は、より良好な電気伝導性を有し、かつ電気化学装置、特にリチウムイオン電池により適するケイ素含有負極材料を2種類提供することを目的の1つとする。本発明はケイ素含有負極材料の成分および外表層を総合的に考慮し、長時間のサイクルと低膨張を有するケイ素含有負極材料を2種類得る。
【0006】
また、本発明は、上記の負極材料を含む負極片、並びに当該負極片を含む電気化学装置および電子装置を提供することをさらなる目的とする。
【0007】
そのため、本発明は、ケイ素化合物SiOと、第1導電層と、第2導電層とを含み、ここで、xが0.5≦x≦1.5を満たし、前記第1導電層の少なくとも一部が前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在し、前記第1導電層はグラフェンを含み、前記第2導電層はカーボンナノチューブを含む、負極材料を提供する。
【0008】
そのため、本発明は、また、ケイ素化合物SiOと、第1導電層と、第2導電層とを含み、ここで、xが0.5≦x≦1.5を満たし、前記第1導電層の少なくとも一部が前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在し、前記第1導電層はカーボンナノチューブを含み、前記第2導電層はグラフェンを含む、負極材料を提供する。
【0009】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、前記第1導電層が前記ケイ素化合物を実質的に被覆し、前記第2導電層が前記第1導電層を実質的に被覆する。
【0010】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、前記ケイ素化合物の平均粒子径Aμmと前記カーボンナノチューブの平均長さBμmは、0.5*A≦B≦2*π*Aを満たす。本発明において、「*」は掛け算を表す。
【0011】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、前記負極材料の平均粒子径Cμmと前記ケイ素化合物の平均粒子径Aμmは、A≦C≦2Aを満たす。
【0012】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、前記ケイ素化合物の平均粒子径Aμmと前記グラフェンの平均シート径Dμmは、0.7*π*A≦n*D≦1.5*π*Aを満たし、ここで、nは1つのケイ素化合物粒子の表面にあるグラフェンのシート数であり、2≦n≦20を満たす。
【0013】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、酸化物MeO層をさらに含み、前記酸化物MeO層は、
(1)前記酸化物MeO層の少なくとも一部は、前記ケイ素化合物と前記第1導電層との間に存在することと、
(2)前記酸化物MeO層中のMeは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、CoおよびZrのうち少なくとも1種を含み、ここで、yが0.5≦y≦3を満たし、前記酸化物MeO層は炭素材料を含むことと、
(3)前記酸化物MeO層の厚さは0.5nm~100nmであることと、
のうち少なくとも1つを満たす。
【0014】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、ポリマー層をさらに含み、前記ポリマー層は、
(1)前記ポリマー層の少なくとも一部は、前記ケイ素化合物と前記第2導電層との間に存在すること、より好ましくは、前記ポリマー層は前記ケイ素化合物を実質的に被覆することと、
(2)前記ポリマー層は、ポリフッ化ビニリデンおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびその誘導体、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびその誘導体、ポリビニルピロリドンおよびその誘導体、ポリアクリル酸およびその誘導体、ポリスチレンブタジエンゴム、ポリアクリルアミド、ポリイミド、およびポリアミドイミドのうち少なくとも1種を含むことと、
(3)前記ポリマー層の含有量は、前記負極材料の総重量に基づいて、0.05wt%~10wt%であることと、
(4)前記ポリマー層の厚さは1nm~100nmであることと、
のうち少なくとも1つを満たす。
【0015】
本発明に記載の負極材料は、好ましくは、
(1)前記負極材料中のケイ素化合物は、SiO、SiOまたはこれらの組み合わせを含むことと、
(2)前記負極材料は、ナノSi結晶粒子を含み、前記ナノSi結晶粒子のサイズは100nm未満であることと、
(3)前記負極材料中のケイ素化合物の平均粒子径は500nm~30μmであることと、
(4)前記負極材料の平均粒子径は1μm~50μmであることと、
(5)前記負極材料中のグラフェンは、酸化グラフェン、還元酸化グラフェンまたはこれらの組み合わせを含むことと、
(6)前記負極材料中のグラフェンの層数は1層~15層であることと、
(7)前記負極材料中のグラフェンの平均シート径は2μm~20μmであることと、
(8)前記負極材料中のカーボンナノチューブの直径は2nm~30nmであり、かつ、前記カーボンナノチューブは50~30000のアスペクト比を有することと、
(9)前記負極材料の総重量に基づいて、前記グラフェンの含有量は1wt%~20wt%であり、前記カーボンナノチューブの含有量は0.1wt%~10wt%であることと、
のうち少なくとも1つを満たす。
【0016】
そのため、本発明は、上記の負極材料を含み、炭素材料、バインダー、導電材またはこれらの任意の組み合わせをさらに含む負極材料を提供する。前記負極材料は、
(1)前記負極材料中の炭素材料は、人工黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせを含み、好ましくは、前記炭素材料は、メソカーボンマイクロビーズ、ソフトカーボン、ハードカーボン、またはこれらの任意の組み合わせを含むことと、
(2)前記負極材料中のバインダーは、ポリアクリル酸エステル、ポリアクリル酸、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフッ化ビニリデン、スチレンブタジエンゴム、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルアルコール、ポリテトラフルオロエチレン、ポリアクリロニトリル、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカリウム、メチロールセルロースナトリウム、メチロールセルロースカリウム、またはこれらの任意の組み合わせを含むことと、
(3)前記負極材料中の導電材は、カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、ナノ炭素繊維、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性グラファイト、グラフェンまたはこれらの任意の組み合わせを含むことと、
のうち少なくとも1つを満たす。
【0017】
そのため、本発明は、集電体と、上記の負極材料とを含み、前記集電体の少なくとも一方の表面に前記負極材料が塗布される、負極片をさらに提供する。
【0018】
本発明に記載の負極片は、好ましくは、厚さは50μm~200μmであり、片面の圧縮密度は1.2g/cm~2.0g/cmであり、抵抗は0.001Ω~1000Ωである。
【0019】
本発明に記載の負極片は、好ましくは、前記負極材料と前記集電体との間のピール強度は10N/m超である。
【0020】
そのため、本発明は、正極片と、上記の負極片と、セパレータと、電解液とを含む電気化学装置をさらに提供する。
【0021】
そのため、本発明は、上記の電気化学装置を含む電子装置をさらに提供する。
【0022】
本発明の有益な効果は以下の通りである。本発明の負極材料において、ケイ素化合物の外にグラフェンとカーボンナノチューブを段階的に塗工することで、2次元長距離のシート状グラフェン導電材と1次元長距離のカーボンナノチューブ導電材のそれぞれの優位性を総合し、電池のサイクル特性を高めるのにより有利である。特に、ケイ素化合物の外にグラフェンを塗工してからカーボンナノチューブを塗工すると、「ちまき」のような構造を形成することができ、電池サイクル中の負極片中のシリコンの膨張を抑制するのにより有利であり、それによって、電池の満充電膨張率をさらに低減することができる。また、上記の負極材料の調製方法は簡単で容易であり、低コストの産業化調製を実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。本発明の実施例は本発明の技術案を前提として実施し、詳細な実施形態と過程を提供するが、本発明の保護範囲は下記の実施例に限定されない。以下の実施例に具体的な条件が明記されていない実験方法は、通常、一般的な条件に従う。
【0024】
いくつかの実施例において、好ましくは、負極片を調製する際に、Cu箔上に負極材料を塗工する時、塗工された厚さは50μm~200μmであり、片面の圧縮密度は1.2g/cm~2.0g/cmである。塗工された厚さと片面の圧縮密度が上記の範囲内にある場合、負極片の抵抗は0.001Ω~1000Ωの範囲内にある。
【0025】
いくつかの実施例において、好ましくは、負極材料は酸化物MeO層を含み、酸化物MeO層の少なくとも一部は、前記ケイ素化合物と前記第1導電層との間に存在する。より好ましくは、前記酸化物MeO層中のMeは、Al、Si、Ti、Mn、V、Cr、CoおよびZrのうち少なくとも1種を含み、ここで、yが0.5≦y≦3を満たし、前記酸化物MeO層は炭素材料を含む。
【0026】
いくつかの実施例において、好ましくは、前記酸化物MeO層の厚さは0.5nm~100nmである。
【0027】
いくつかの実施例において、好ましくは、負極材料中の前記酸化物AlO層の調製プロセスは以下の通りである。
(1)有機溶媒と脱イオン水の存在下で、SiO粉末、ポロゲン(porogen)、酸化物前駆体AlXnを混合溶液とし、
前記混合溶液を乾燥して粉末を得、そして、
前記粉末を250~900℃で0.5~24h焼結して、酸化物AlO層を含有するケイ素化合物SiO粒子を得る;
(2)酸化物AlO層を含有するケイ素化合物SiO粒子、有機溶媒および炭素前駆体を混合して、混合溶液を形成し、
前記混合溶液を乾燥して粉末を得、そして、
前記粉末を700~1400℃で0.5~24h焼結して、酸化物AlO層(炭素を含む)を含有するケイ素化合物SiO粒子を得る;
ここで、炭素前駆体はフェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンの混合物であり、フェノール樹脂とヘキサメチレンテトラミンとの重量比は約12:1~6:1であり、
ここで、SiO粒子と炭素前駆体との重量比は5~20であり、
ここで、有機溶媒は、エタノール、メタノール、n-ヘキサン、N,N-ジメチルホルムアミド、ピロリドン、アセトン、トルエン、イソプロパノール、n-プロパノールのうち少なくとも1種を含み、有機溶媒の体積はSiO粒子の重量の2倍(mL/g)~5倍(mL/g)であり、
ここで、xは0.5<x<1.5を満たし、yは0.5≦y≦3を満たし、
ここで、Xはメトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、ハロゲンのうち少なくとも1種を含み、
ここで、nは1、2、3、または4であり、
ここで、ポロゲンは、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド-ポリプロピレンオキシド-ポリエチレンオキシドトリブロックコポリマー、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムブロミド、およびオクタデシルトリメチルアンモニウムブロミドのうち少なくとも1種を含み、
ここで、SiO粉末と、ポロゲンと、酸化物前駆体AlXnと、脱イオン水との質量比は100:1~4:0.5~10:1.5~30である。
【0028】
一、物性および性能測定
1、粒度測定
50mlの清浄なビーカーに、粉末サンプル0.02gを加え、脱イオン水20mlを加え、さらに1%の界面活性剤を数滴滴下し、粉末を完全に水に分散させ、120Wの超音波洗浄機で5分間超音波処理し、MasterSizer2000を用いて粒度分布を測定した。
【0029】
2、SEM測定
走査電子顕微鏡特性評価は、PhilipsXL-30型電界放出型走査電子顕微鏡により記録し、10kV、10mAの条件下で検出した。
【0030】
3、カーボンナノチューブの長さの測定
カーボンナノチューブ0.01gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを、脱イオン水100gに加え、超音波処理を行って分散させた後、その溶液0.2gを銅箔に塗工し、走査電子顕微鏡を用いて観察し、100本のカーボンナノチューブの長さを測定し、平均値をとり、カーボンナノチューブの平均長さとした。
【0031】
4、グラフェンの平均シート径の測定
グラフェン0.01gとドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1gを、脱イオン水100gに加え、超音波処理を行って分散させた後、その溶液0.2gを銅箔に塗工し、走査電子顕微鏡を用いて観察し、100枚のグラフェンのシート径を測定し、平均値をとり、グラフェンの平均シート径とした。
【0032】
5、グラフェン層数の測定
原子間力顕微鏡を用いてグラフェンを測定し、単層グラフェンの厚さは通常0.4nm~0.7nmであり、AFMの高さ曲線を通じてグラフェンの層数を直接算出した。
【0033】
6、1つのケイ素化合物粒子の表面にあるグラフェンのシート数nの測定
視野内に完全なケイ素化合物粒子が1個だけ存在するように、走査電子顕微鏡の視野内で、表面にグラフェンが存在する1つのケイ素化合物粒子を適切な倍率(10000X~50000X)に拡大した。視野内のケイ素化合物の表面に存在するグラフェンのシート数を数え、ケイ素化合物粒子100個を統計し、グラフェンのシート数をNとすると、1つのケイ素化合物粒子の表面にあるグラフェンのシート数nはN/100*2、すなわちN/50となった。
【0034】
7、電気伝導度の測定
抵抗率測定器(蘇州晶格電子ST-2255A)を用いて、粉末サンプル5gをとり、電子プレス機で5000kg±2kgまで定圧し、15~25sを維持し、サンプルを測定器の電極の間に置き、サンプル高さh(cm)、両端電圧U、電流I、抵抗R(KΩ)、粉末を打錠した後の面積S=3.14cm、式δ=h/(S*R)/1000により、粉末サンプルの電子伝導率を計算し、単位はS/mであった。
【0035】
8、高温サイクル測定
45℃の測定温度で、0.7Cの定電流にて4.4Vまで充電し、定電圧にて0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cにて3.0Vまで放電した。このように得られた容量を初期容量とした。0.7C充電/0.5C放電を行ってサイクル測定を行い、毎回サイクルした容量と初期容量を比して、容量減衰曲線を得た。
【0036】
9、電池の満充電膨張率の測定
スパイラルマイクロメータを用いて半充電時の新品電池の厚さを測定し、400サイクルになった時、スパイラルマイクロメータを用いてさらに満充電状態にある電池の厚さを測定し、初期半充電時の新品電池の厚さと比較することで、この時の満充電電池膨張率が得られた。
【0037】
10、放電レートの測定
25℃で、0.2Cにて3.0Vまで放電し、5分間静置し、0.5Cにて4.4Vまで充電し、定電圧にて0.05Cまで充電した後、5分間静置し、放電レートを調整し、それぞれ0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cにて放電測定を行い、それぞれ放電容量を得、各レートにて得られた容量を0.2Cにて得られた容量と比較し、比を得、当該比を比較して、レート特性を比較した。
【0038】
二、具体的な実施例と比較例
実施例1-1
(一)負極材料の調製
1、商業シリコン酸化物SiO(0.5<x<1.5、DV50=5μm)、導電材1、ポリマー1、および溶媒としての脱イオン水を一定の割合でMSK-SFM-10真空攪拌器に添加し、180min攪拌してスラリーを形成した。ここで、攪拌器の公転回転速度は10r/min~40r/minであり、自転回転速度は1000r/min~1500r/minであった。
2、手順1で得られたスラリーを噴霧乾燥造粒機に移し、スラリーは噴霧乾燥造粒機の遠心回転盤のノズルで微小な液滴を形成した。ここで、遠心回転盤の回転速度は500r/min~5000r/minであった。その後、微小な液滴は噴霧乾燥造粒機内で乾燥と冷却を経て粉末となった。ここで、噴霧乾燥造粒機の入口温度は260℃であり、出口温度は105℃であった。
3、手順2で得られた粉末、導電材2、ポリマー2、および溶媒としての脱イオン水を一定の割合でMSK-SFM-10真空攪拌器に添加し、180min攪拌してスラリーを形成した。ここで、攪拌器の公転回転速度は10r/min~40r/minであり、自転回転速度は1000r/min~1500r/minであった。
4、手順3で得られたスラリーを噴霧乾燥造粒機に移し、スラリーは噴霧乾燥造粒機の遠心回転盤のノズルで微小な液滴を形成した。ここで、遠心回転盤の回転速度は500r/min~5000r/minであった。その後、微小な液滴は噴霧乾燥造粒機内で乾燥と冷却を経て粉末(すなわち負極材料)となった。ここで、噴霧乾燥造粒機の入口温度は260℃であり、出口温度は105℃であった。
以上の手順において、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2の組成と使用量は表1を参照する。
負極材料の粒子径および電気伝導度は表1-1を参照する。
【0039】
(二)負極片の調製
手順(一)で得られた負極材料、導電剤としてのアセチレンブラック、ポリアクリル酸(PAA)を重量比95:1.2:3.8で脱イオン水の溶媒系において十分に攪拌して、均一に混合した後、Cu箔の両面に塗工して、乾燥、冷間プレス、スリットをして、負極片を得た。
上述したCu箔上に負極材料を塗工した時、塗工された厚さは100μmであり、片面の圧縮密度は1.76g/cm~2.0g/cmであった。
【0040】
(三)電解液の調製
乾燥アルゴンカス雰囲気下で、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)を重量比1:1:1で混合した溶媒の溶液に、ヘキサフルオロリン酸リチウム(LiPF)を加えて均一に混合した。ここで、LiPFの濃度は約1.15mol/Lであった。さらに12wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加えて均一に混合して、電解液を得た。
【0041】
(四)リチウムイオン電池の調製
N-メチルピロリドンの溶媒系において、活物質としてのLiCoO、導電性カーボンブラック、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比96.7:1.7:1.6で十分に攪拌して、均一に混合した後、Al箔に塗工して、乾燥、冷間プレスして、正極片を得た。PE多孔質ポリマーフィルムをセパレータとした。正極片、セパレータ、手順(二)で得られた負極片をこの順に積層し、セパレータを正極片と負極片の間に位置させて分離の役割を果たし、それらを巻き取り、電極アセンブリを得た。電極アセンブリを外装に入れ、手順(三)で得られた電解液を注入して封止し、フォーメーション、脱気、ぶち切りなどのプロセスを経て全電池を得た。
得られた電池のサイクル特性および放電レートは表1-2を参照する。
【0042】
実施例1-2~実施例1-3
実施例1ー1との違いは表1を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2の組成と使用量は表1を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表1-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表1-2を参照する。
【0043】
比較例1~比較例2
実施例1ー1との違いは表1を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2の組成と使用量は表1を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表1-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表1-2を参照する。
【0044】
【表1】
【0045】
【表1-1】
【0046】
表1-1からわかるように、シリコン酸化物粒子の外に導電材を塗工した後、その粒子径は増加し、実施例1-1~実施例1-3は商業シリコン酸化物の外に2種類の導電材を塗工したもので、1種類の導電材のみを塗工した比較例1および比較例2と比較して、得られた電極材料の電気伝導度は明らかに向上した。
【0047】
【表1-2】
【0048】
表1-2を参照すると、実施例1-1~1-3と比較例1~2との比較からわかるように、シリコン酸化物粒子の外にグラフェンとカーボンナノチューブを複合塗工した方が、電池のサイクル特性を向上させるのに有利であり、かつ、シリコン酸化物粒子の外にグラフェンを塗工してからカーボンナノチューブを塗工すると、「ちまき」のような構造を形成することができ、電池サイクル中の負極片中のシリコン含有粒子の膨張を抑制するのに有利であり、それによって、電池の満充電膨張率を低減することができる。
【0049】
実施例2-1~実施例2-4
実施例1-1との違いは表2を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表2を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表2-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表2-2を参照する。
【0050】
比較例3~比較例6
実施例1-1との違いは表2を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表2を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表2-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表2-2を参照する。
【0051】
【表2】
【0052】
【表2-1】
【0053】
表2-1からわかるように、シリコン酸化物粒子の導電材の塗工量が増加すると、粒子の凝集が起こり、結果として、負極材料の粒子径Dv50が増加することになる。また、負極材料の電気伝導度は導電材の塗工量の増加に伴って向上するが、導電材の塗工量が一定値まで増加すると、負極材料の電気伝導度の増加の幅が小さくなる。
【0054】
【表2-2】
【0055】
表2-2を参照すると、実施例1-1、実施例2-1~2-4および比較例3~6の比較からわかるように、負極材料中のグラフェンの塗工量の増加は、電池のサイクル特性およびレート特性を向上させるのに有利であるとともに、負極片中のシリコン含有粒子の膨張を抑制し、電池の満充電膨張率を低減することができるが、負極材料のグラフェンの塗工量が多すぎると、特に20wt%を超えると、電解液を多く消耗してしまうとともに、リチウムイオンの伝送を阻害して電池のレート特性およびサイクル特性を悪化させる。また、負極材料のカーボンナノチューブ塗工量の増加は、電池のサイクル特性およびレート特性を向上させるのに有利であるが、負極材料のカーボンナノチューブの塗工量が多すぎると、粒子の凝集が深刻になるため、電池の満充電膨張率を悪化させる。
【0056】
実施例3-1~実施例3-2
実施例1-1との違いは表3を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表3を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表3-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表3-2を参照する。
【0057】
比較例7
実施例1-1との違いは表3を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表3を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表3-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表3-2を参照する。
【0058】
【表3】
【0059】
【表3-1】
【0060】
表3-1を参照すると、実施例1-1、実施例3-1~3-2および比較例7の比較からわかるように、グラフェンの層数が負極材料の粒子径に与える影響は明らかではないが、グラフェンの層数の増加に伴い、負極材料の電気伝導度は明らかに低下する。
【0061】
【表3-2】
表3-2を参照すると、実施例1-1、実施例3-1~3-2および比較例7の比較からわかるように、グラフェンの層数の増加に伴い、電池の電気伝導性が低下し、リチウムイオンの伝送通路が減少するため、電池のサイクル特性およびレート特性が悪化するが、グラフェンの層数が電池の満充電膨張率に与える影響は小さい。
【0062】
実施例4-1~実施例4-2
実施例1-1との違いは表4を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表4を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表4-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表4-2を参照する。
【0063】
比較例8~比較例9
実施例1-1との違いは表4を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表4を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表4-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表4-2を参照する。
【0064】
【表4】
【0065】
【表4-1】
【0066】
表4-1を参照すると、グラフェンのシート径の大きさは負極材料の電気伝導度に与える影響は小さいが、実施例1-1、実施例4-1~4-2および比較例8~9の比較からわかるように、グラフェンのシート径が増大すると、負極材料中の粒子の凝集現象がより深刻である。
【0067】
【表4-2】
【0068】
表4-2を参照すると、実施例1-1、実施例4-1~4-2および比較例8~9の比較からわかるように、グラフェンのシート径の増大は、電極材料中のシリコン含有粒子をグラフェン層の内部に存在させるのに有利であるため、その中のシリコン含有粒子の膨張を抑制し、電池サイクル特性を向上させ、電池の満充電膨張率を低下させるが、電池レート特性は悪化する。グラフェンのシート径が一定値まで増加すると、特に20μmを超えると、その分散性が低下し、電極材料中のシリコン含有粒子に表面修飾を効果的に行うことができなくなり、結果として、電池サイクル特性および満充電膨張率が悪化する。
【0069】
実施例5-1~実施例5-4
実施例1-1との違いは表5を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表5を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表5-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表5-2を参照する。
【0070】
【表5】
【0071】
【表5-1】
【0072】
表5-1を参照すると、実施例1-1および実施例5-1~5-4の比較からわかるように、酸化グラフェンに比べて、負極材料に還元酸化グラフェンを用いた場合、分散効果が悪く、結果として、シリコン酸化物表面に対する修飾効果が悪く、かつ粒子の凝集現象が深刻であるが、負極材料の電気伝導度は向上する。また、単層カーボンナノチューブに比べて、負極材料に多層カーボンナノチューブを用いた場合、負極材料表面の粒子の凝集現象は軽減されるが、負極材料の電気伝導度がある程度低下する。
【0073】
【表5-2】
【0074】
表5-1および5-2を参照すると、実施例1-1および実施例5-1~5-4の比較からわかるように、酸化グラフェンに比べて、還元酸化グラフェンを用いて得られた電極材料の電気伝導性が向上するが、電極材料のイオン伝導性が低下し、結果として、電池のサイクル特性およびレート特性が悪化する。単層カーボンナノチューブに比べて、多層カーボンナノチューブを用いて得られた電極材料の電気伝導性が低下し、結果として、電池のサイクル特性がある程度悪化する。
【0075】
実施例6-1
実施例1-1の手順(一)-1における「商業シリコン酸化物SiO(0.5<x<1.5、DV50=5μm)」を「酸化物層(炭素を含む)を含有するケイ素化合物SiO粒子」に置き換えた以外は、実施例1-1の調製手順と基本的に同じであった。当該酸化物層(炭素を含む)を含有するケイ素化合物SiO粒子の調製過程は以下の通りであった。
(1)商業シリコン酸化物SiO(0.5<x<1.5、DV50=5μm)100g、ポロゲンとしてのポリビニルピロリドン(PVP)2.2g、および酸化物前駆体としてのイソプロパノールアルミニウム[Al(CO)]0.5gを、有機溶媒としてのエタノール300mLと脱イオン水1.5gの存在下で混合溶液とし、
前記混合溶液を乾燥して粉末を得、そして、
粉末を250~900℃で0.5~24h焼結して、酸化物AlO(y=3)層を含有するケイ素化合物SiO粒子を得;
(2)手順(1)で得られた酸化物AlO層を含有するケイ素化合物SiO粒子、有機溶媒としてのエタノール300mL、および炭素前駆体(フェノール樹脂と硬化剤としてのヘキサメチレンテトラミンを約9:1の重量比で混合して得られた)10gを混合して、混合溶液を形成し、
前記混合溶液を乾燥して粉末を得、そして、
前記粉末を700~1400℃で0.5~24h焼結して、酸化物層(炭素を含む)を含有するケイ素化合物SiO粒子を得;
ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表6を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度、並びにAl層の金属含有量および厚さは表6-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表6-2を参照する。
【0076】
【表6】
【0077】
【表6-1】
【0078】
表6-1を参照すると、実施例1-1および実施例6-1の比較からわかるように、シリコン酸化物粒子に金属酸化物Alをさらに塗工した後、負極材料の粒子径および電気伝導度に与える影響は小さい。
【0079】
【表6-2】
【0080】
表6-2を参照すると、実施例1-1および実施例6-1の比較からわかるように、シリコン酸化物粒子の表面に金属酸化物Alを塗工した後、グラフェンおよびカーボンナノチューブの塗工をさらに行うことで、電池のサイクル特性およびレート特性をさらに向上させることができる。
【0081】
実施例7-1~実施例7-6
実施例1-1との違いは表7を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表7を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表7-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表7-2を参照する。
【0082】
比較例10~比較例12
実施例1-1との違いは表7を参照する。ここで、商業シリコン酸化物SiO、導電材1、導電材2、ポリマー1、ポリマー2の組成と使用量は表7を参照し、負極材料の粒子径および電気伝導度は表7-1を参照し、得られた電池のサイクル特性および放電レートは表7-2を参照する。
【0083】
【表7】
【0084】
【表7-1】
【0085】
表7-1を参照すると、実施例1-1、実施例7-1~7-3および比較例10~12の比較からわかるように、負極材料中のポリマー含有量の増加は、負極片中のグラフェンおよびカーボンナノチューブの分散均一性を向上させるのに有利であるが、負極片中の粉末の電気伝導度を悪化させる。表7-1を参照してわかるように、実施例1-1、実施例7-4~7-6の異なる分散剤(CMC/PAA)は、負極片中のグラフェンおよびカーボンナノチューブの分散性にあまり影響を与えない。
【0086】
【表7-2】
【0087】
表7-1および表7-2を参照すると、実施例1-1、実施例7-1~7-3および比較例10~12の比較からわかるように、負極材料中のポリマー含有量の増加により、負極片中のグラフェンおよびカーボンナノチューブの分散均一性が向上し、粒子の凝集が改善され、電池の膨張率が低下するが、レート特性が悪化する。ポリマー含有量が低すぎる(<0.1g)と、負極片中のグラフェンおよびカーボンナノチューブの分散均一性が低下し、粒子の凝集現象が深刻であり、結果として、電池のサイクル特性、膨張特性およびレート特性が著しく悪化する。また、ポリマー含有量が高すぎる(>10g)と、負極片中のグラフェンおよびカーボンナノチューブの分散効果が悪化し、結果として、電池のサイクル特性、膨張特性およびレート特性が著しく悪化する。実施例1-1および実施例7-4~7-6の比較からわかるように、異なるポリマーの種類は電池性能に与える影響が小さい。
【0088】
もちろん、本発明は他にも様々な実施例を有することができる。本発明の主旨および本質から逸脱しない限り、当業者は、本発明に従って様々な対応する変更および変形を行うことができるが、これらの対応する変更および変形はすべて本発明の保護範囲に属すべきである。
【国際調査報告】