(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】負極片、電気化学装置及び電子装置
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20240104BHJP
H01M 4/38 20060101ALI20240104BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240104BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240104BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240104BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240104BHJP
H01G 11/06 20130101ALI20240104BHJP
H01G 11/30 20130101ALI20240104BHJP
H01G 11/38 20130101ALI20240104BHJP
H01G 11/42 20130101ALI20240104BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M4/62 Z
H01M4/36 E
H01G11/06
H01G11/30
H01G11/38
H01G11/42
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023538985
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(85)【翻訳文提出日】2023-06-23
(86)【国際出願番号】 CN2020140363
(87)【国際公開番号】W WO2022140973
(87)【国際公開日】2022-07-07
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513054978
【氏名又は名称】寧徳新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】Ningde Amperex Technology Limited
【住所又は居所原語表記】No.1 Xingang Road, Zhangwan Town, Jiaocheng District, Ningde City, Fujian Province, 352100, People’s Republic of China
(74)【代理人】
【識別番号】100177426
【氏名又は名称】粟野 晴夫
(72)【発明者】
【氏名】陳 志煥
(72)【発明者】
【氏名】姜 道義
【テーマコード(参考)】
5E078
5H050
【Fターム(参考)】
5E078AA01
5E078AB06
5E078BA18
5E078BA30
5E078BA32
5E078BA52
5E078BA53
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
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5H050CB02
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5H050CB07
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA08
5H050EA10
5H050EA23
5H050FA08
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA05
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、負極片、電気化学装置及び電子装置を提供する。負極片は、集電体と、集電体上に位置する活物質層とを含み、活物質層は、シリコン系材料、炭素材料、およびバインダーを含み、活物質層において異なるところに位置して面積が同じである2箇所のケイ素の質量比をそれぞれX1、X2とすると、X2≧X1であり、M=X1/X2とすると、M≧0.7である。活物質層において異なるところに位置して面積が同じである2箇所のリチウムの質量比をそれぞれY1、Y2とすると、Y2≧Y1であり、N=Y1/Y2とすると、N≧0.5である。本願発明の実施形態は、負極片の活物質層におけるケイ素の分散の均一性を改善することにより、リチウムの脱離および挿入の均一性を高めるのに有利であり、サイクル中のシリコン系材料の体積膨張を改善し、電気化学装置のサイクル特性および安全性を向上させる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
集電体と、集電体上に位置する活物質層と、を含み、
前記活物質層は、シリコン系材料、炭素材料、およびバインダーを含み、
異なるところに位置して面積が同じである2箇所の前記活物質層におけるケイ素の質量比をそれぞれX1、X2とすると、X2≧X1であり、M=X1/X2とすると、M≧0.7であり、
異なるところに位置して面積が同じである2箇所の前記活物質層におけるリチウムの質量比をそれぞれY1、Y2とすると、Y2≧Y1であり、N=Y1/Y2とすると、N≧0.5である、負極片。
【請求項2】
前記活物質層における前記シリコン系材料の質量分率は、2%~80%である、請求項1に記載の負極片。
【請求項3】
前記バインダーはリチウム塩を含む、請求項1に記載の負極片。
【請求項4】
前記活物質層における前記バインダーの質量分率は、0.5%~10%である、請求項1に記載の負極片。
【請求項5】
前記シリコン系材料は、Si、SiO
x、SiO
2、SiC、Li
2SiO
5、Li
2SiO
3、Li
4SiO
4、およびシリコン合金のうちの少なくとも1種を含み、
0.6≦x≦1.5であり、
Siの粒子サイズは100nm未満である、請求項1に記載の負極片。
【請求項6】
前記シリコン系材料は、X線回折パターンにおいて、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最大強度値をI
1とし、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最大強度値をI
2とすると、0<I
2/I
1≦1であり、請求項1に記載の負極片。
【請求項7】
前記シリコン系材料の粒子径分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす、請求項1に記載の負極片。
【請求項8】
前記負極片は、
前記シリコン系材料の平均粒子径は500nm~30μmであることと、
前記バインダーは、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリシロキサン、ポリスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリフルオレンのうちの少なくとも1種を含むことと、
異なるところに位置して面積が同じである2箇所の前記活物質層は、800℃内の熱重量分析(TG)の重量減少率をそれぞれZ1、Z2とすると、Z2≧Z1であり、K=Z1/Z2とすると、K≧0.7であることと、
前記活物質層は、導電剤をさらに含み、前記導電剤は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含むことと、
前記活物質層における前記シリコン系材料の質量分率は、2%~40%であることと、
前記炭素材料は黒鉛を含むことと、のうちの少なくとも1つを満たす、請求項1に記載の負極片:
【請求項9】
正極片と、負極片と、正極片と負極片との間に設けられるセパレータと、を含み、
前記負極片は、請求項1~8のいずれか1項に記載の負極片である、電気化学装置。
【請求項10】
請求項9に記載の電気化学装置を含む、電子装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学エネルギー貯蔵分野に関し、特に負極片、電気化学装置及び電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の発展と進歩に伴い、その安全性とサイクル特性に対してますます高い要求が求められている。現在の電気化学装置の改良技術は電気化学装置の安全性とサイクル特性をある程度向上させることができるが、未だに満足されておらず、さらなる改良が期待されている。
【発明の概要】
【0003】
本発明の実施例は、集電体と、集電体上に位置する活物質層とを含む負極片を提供し、ここで、活物質層は、シリコン系材料、炭素材料、およびバインダーを含み、活物質層において異なるところに位置して面積が同じである2箇所のケイ素の質量比をそれぞれX1、X2とすると、X2≧X1であり、M=X1/X2とすると、M≧0.7であり;ここで、活物質層において異なるところに位置して面積が同じである2箇所のリチウムの質量比をそれぞれY1、Y2とすると、Y2≧Y1であり、N=Y1/Y2とすると、N≧0.5である。
【0004】
いくつかの実施例において、活物質層におけるシリコン系材料の質量分率は、2%~80%である。いくつかの実施例において、バインダーはリチウム塩を含む。いくつかの実施例において、活物質層におけるバインダーの質量分率は、0.5%~10%である。いくつかの実施例において、シリコン系材料は、Si、SiOx、SiO2、SiC、Li2SiO5、Li2SiO3、Li4SiO4、およびシリコン合金のうちの少なくとも1種を含み、0.6≦x≦1.5である。いくつかの実施例において、Siの粒子サイズは100nm未満である。いくつかの実施例において、シリコン系材料はX線回折パターンにおいて、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最大強度値をI1とし、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最大強度値をI2とすると、0<I2/I1≦1を満たす。いくつかの実施例において、シリコン系材料の粒子径分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす。いくつかの実施例において、シリコン系材料の平均粒子径は500nm~30μmである。
【0005】
いくつかの実施例において、バインダーは、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリシロキサン、ポリスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリフルオレンのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、前記活物質層において異なるところに位置して面積が同じである2箇所の800℃内の熱重量分析(TG)の重量減少割合をそれぞれZ1、Z2とすると、Z2≧Z1であり、K=Z1/Z2とすると、K≧0.7である。いくつかの実施例において、活物質層は、導電剤をさらに含み、導電剤は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含む。いくつかの実施例において、活物質層におけるシリコン系材料の質量分率は、2%~40%である。いくつかの実施例において、炭素材料は黒鉛を含む。
【0006】
本発明の別の実施例は、正極片と、負極片と、セパレータとを含む電気化学装置を提供し、セパレータは、正極片と負極片との間に設けられる。ここで、負極片は、上記のいずれかの負極片である。本発明の実施例は、さらに、上記の電気化学装置を含む電子装置を提供する。
【0007】
本願発明の実施形態は、負極片の活物質層におけるケイ素の分散の均一性を改善することにより、リチウムの脱離および挿入の均一性を高めるのに有利であり、シリコン系材料のサイクルでの体積膨張を改善し、電気化学装置のサイクル特性および安全性を向上させる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、従来の電気化学装置の電極アセンブリーの概略図を示す。
【
図2】
図2は、いくつかの実施例の負極片の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の実施例は、当業者が本発明をより全面的に理解させられるが、本発明を何ら限定するものではない。
【0010】
電気化学装置のエネルギー密度を改善するために、負極片の活物質層にはシリコン系材料を用いることができる。しかし、シリコン系材料はサイクル中に300%に達するほどの巨大な体積変化があることで、巨大な機械的応力(1Gpaに達することができる)が発生する。これにより、シリコン系材料粒子の粉体化、活物質層と集電体の剥離が発生し、よって電気化学装置のサイクル特性を低下させる。同時に、シリコン系材料の導電性が悪い(粉末電子伝導度<10-7S/cm)ことで、深刻な分極を引き起こし、電気化学装置のサイクル特性をさらに低下させる。シリコン系材料の体積膨張を緩和するために、通常はシリコン系材料と炭素材料(例えば黒鉛)を組み合わせて使用するが、電気化学装置のサイクル特性と安全性のさらなる改良が期待されている。
【0011】
シリコン系材料を含む負極片におけるケイ素の分散の均一性を高めることにより、負極片における電流の分布の均一性を高めることができ、充放電時の各領域の膨張、収縮がより均一になり、分極が低減され、電気化学装置のサイクル特性、レート特性を向上させ、電極アセンブリーの膨張を改善するのに有利である。
【0012】
図1に示すように、従来の電気化学装置の展開断面図が提供される。電気化学装置は、電極アセンブリーを含むことができ、電極アセンブリーは、正極片10と、負極片12と、正極片10と負極片12との間に設けられたセパレータ11とを含む。
【0013】
いくつかの実施例において、
図2に示すように、負極片12は、集電体121と、集電体121上に位置する活物質層122とを含むことができる。
図2において活物質層122が集電体121の片側のみに設けられているように示されているが、これは単なる例示であり、集電体121の両側に活物質層122を設けてもよいことを理解すべきである。いくつかの実施例において、活物質層122は、シリコン系材料、炭素材料、およびバインダーを含む。
【0014】
いくつかの実施例において、活物質層122において異なるところに位置して面積が同じである2箇所のケイ素の質量比をそれぞれX1、X2とすると、X2≧X1であり、M=X1/X2とすると、M≧0.7である。Mが1に近いほど、活物質層122におけるケイ素の分布が均一であり、すなわち、シリコン系材料の分布が均一であることを示す。活物質層12におけるケイ素の分散の均一性を改善することにより、シリコン系材料は炭素材料中により均一に分布することができ、さらに、炭素材料はシリコン系材料の体積膨張による問題をより良く抑制または緩和することができ、また、導電性に優れた炭素材料はシリコン系材料の導電性不良の問題をより良く克服または補償することができるから、サイクル中のシリコン系材料の体積膨張を改善し、電気化学装置のサイクル特性と安全性を向上させる。
【0015】
いくつかの実施例において、活物質層122において異なるところに位置して面積が同じである2箇所のリチウムの質量比をそれぞれY1、Y2とすると、Y2≧Y1であり、N=Y1/Y2とすると、N≧0.5である。Nが大きいほど、またはNが1に近いほど、活物質層122におけるリチウムの分布が均一であり、すなわち、リチウムイオンのサイクル中の挿入および脱離がより均一であることを示し、電気化学装置のサイクル特性と安全性を向上させるのに有利である。また、活物質層122におけるリチウムの分布が均一であることは、活物質層122における材料の分布が比較的均一であることも側面に示す。
【0016】
いくつかの実施例において、活物質層122におけるシリコン系材料の質量分率は、2%~80%である。活物質層122におけるシリコン系材料の質量分率が小さすぎ、例えば、2%未満である場合、電気化学装置のエネルギー密度を向上させるためにシリコン系材料を使用することは、限られた効果しかない。一方、活物質層122におけるシリコン系材料の質量分率が大きすぎ、例えば、80%超である場合、活物質層122は、シリコン系材料の含有量が高すぎるため、大きな体積膨張を引き起こす可能性があり、負極の固体電解質界面(SEI)膜の安定にも不利であり、電解液が過剰に消耗される可能性がある。いくつかの実施例において、活物質層122におけるシリコン系材料の質量分率は、2%~40%である。
【0017】
いくつかの実施例において、活物質層122におけるバインダーはリチウム塩を含む。このように、負極片12中のリチウムの含有量を高めることができ、それによってサイクル中のリチウムの損失を緩和することができ、リチウムを補充する役割を果たし、電気化学装置のサイクル特性を高めることができる。
【0018】
いくつかの実施例において、活物質層122におけるバインダーの質量分率は、0.5%~10%である。活物質層122におけるバインダーの質量分率が小さすぎ、例えば、0.5%未満である場合、材料間の粘着に不利であり、活物質層122と集電体121との間で剥離が生じやすい。活物質層122におけるバインダーの質量分率が大きすぎ、例えば、10%超である場合、電気化学装置のエネルギー密度に悪影響を与える。
【0019】
いくつかの実施例において、シリコン系材料は、Si、SiOx、SiO2、SiC、Li2SiO5、Li2SiO3、Li4SiO4、およびシリコン合金のうちの少なくとも1種を含み、0.6≦x≦1.5である。いくつかの実施例において、Siの粒子サイズは100nm未満である。いくつかの実施例において、活物質層122における炭素材料は黒鉛を含む。いくつかの実施例において、バインダーは、カルボキシメチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリビニルピロリドン、ポリアニリン、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリシロキサン、ポリスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、およびポリフルオレンのうちの少なくとも1種を含む。
【0020】
いくつかの実施例において、シリコン系材料はX線回折パターンにおいて、2θが20.5°~21.5°の範囲にある最大強度値をI1とし、2θが28.0°~29.0°の範囲にある最大強度値をI2とすると、0<I2/I1≦1を満たす。いくつかの実施例において、I2/I1が小さいほど、ケイ素の分散の均一性、リチウムの均一性に与える影響は小さいが、電気化学装置のレート特性、サイクル特性の向上、サイクル膨張の改善に顕著な効果がある。
【0021】
いくつかの実施例において、シリコン系材料の粒子径分布は、0.3≦Dn10/Dv50≦0.6を満たす。Dn10は、累積粒度分布数が10%に達したことに対応する粒径を表し、Dv50は、累積体積分布が50%に達したことに対応する粒径を表す。いくつかの実施例において、シリコン系材料のDn10/Dv50は小さすぎて、ケイ素の分散の均一性が悪い、すなわち、M値が低下し、N値も低下し、電気化学装置のサイクル特性を悪化させる。しかし、小粒子状のシリコン系材料の存在は、電気化学装置のレート特性の向上に有利である。また、Dn10/Dv50が大きすぎると、ケイ素の分散の均一性も悪化するとともに、電気化学装置のサイクル特性、レート特性、サイクル膨張の悪化を引き起こす。
【0022】
いくつかの実施例において、シリコン系材料の平均粒子径は500nm~30μmである。シリコン系材料の平均粒子径が小さすぎ、例えば、500nm未満である場合、シリコン系材料粒子の比面積が大きく、凝集が起こりやすく、より多くの電解液を消耗してSEI膜を形成する。シリコン系材料の平均粒子径が大きすぎ、例えば、500nm超である場合、シリコン系材料粒子の体積膨張が大きくなる。
【0023】
いくつかの実施例において、活物質層122において異なるところに位置して面積が同じである2箇所の800℃内の熱重量分析(TG)の重量減少率をそれぞれZ1、Z2とすると、Z2≧Z1であり、K=Z1/Z2であり、ここで、K≧0.7である。K値が大きいほど、活物質層122におけるバインダーの分布が均一になり、このときのシリコン系材料の分布もより均一になることを示す。
【0024】
いくつかの実施例において、活物質層122は、導電剤をさらに含むことができ、導電剤は、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ、気相成長炭素繊維、導電性カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、導電性黒鉛、およびグラフェンのうちの少なくとも1種を含むことができる。
【0025】
いくつかの実施例において、負極片12の集電体121は、銅箔、ニッケル箔、および炭素系集電体のうちの少なくとも1種を用いることができる。いくつかの実施例において、負極片12の活物質層122の圧縮密度は、1.0g/cm3~1.9g/cm3とすることができる。負極活物質層122の圧縮密度が小さすぎる場合、電気化学装置の体積エネルギー密度が損失する。活物質層122の圧縮密度が大きすぎる場合、リチウムイオンの通過に不利であり、分極が増大し、電気化学特性に影響を与え、電気化学装置の充電中にリチウムが析出しやすい。上記に開示された材料は例示的なものにすぎず、活物質層122は任意の他の適切な材料を使用することができることを理解すべきである。いくつかの実施例において、活物質層122における負極活物質(例えば、シリコン系材料および炭素材料)、導電剤およびバインダーの質量比は、(70~98):(1~15):(1~15)とすることができる。上記は例示に過ぎず、任意の他の適切な質量比を使用することができることを理解すべきである。
【0026】
いくつかの実施例において、本発明の実施例は、また、負極片を調製する方法を提供し、当該方法は、シリコン系材料および炭素材料を第1混合して混合材料を得る工程と、混合材料、導電剤、バインダーおよび溶媒を第2混合して負極スラリーを得る工程と、その後、負電極スラリーを負極集電体に塗布して乾燥し、負極片を得る工程とを含む。いくつかの実施例において、第1混合は、10r/min~100r/minの回転速度で0.5h~2h分散することを含む。第1混合の時間が短すぎると、材料の均一な混合に不利であり、第1混合の時間が長すぎると、製造効率の向上に不利である。いくつかの実施例において、第2混合は、300r/min~2500r/minの回転速度で0.5h~3h分散することを含む。第2混合の時間が短すぎると、材料の均一な混合に不利であり、第2混合の時間が長すぎると、製造効率の向上に不利である。
【0027】
以上のように、本発明の実施例は、電気化学装置を提供した。電気化学装置は、電極アセンブリーを含み、電極アセンブリーは、正極片10と、負極片12と、正極片10と負極片12との間に設けられたセパレータ11とを含む。ここで、負極片12は、上記いずれかの負極片である。
【0028】
いくつかの実施例において、正極片10は、正極集電体と、正極集電体上に位置する正極活物質層とを含む。正極活物質層は、正極集電体の片側または両側に設けられる。いくつかの実施例において、正極集電体はAl箔を用いることができ、もちろん、当技術分野で一般的に使用されている他の正極集電体を用いることもできる。いくつかの実施例において、正極集電体の厚さは、1μm~200μmである。いくつかの実施例において、正極活物質層は、正極集電体の一部のみに塗布することができる。いくつかの実施例において、正極集電体の厚さは、それぞれ独立して10μm~500μmとすることができる。いくつかの実施例において、正極活物質層は正極活物質を含む。いくつかの実施例において、正極活物質は、コバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウム、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム、ニッケルコバルトアルミニウム酸リチウム、およびニッケルマンガン酸リチウムのうちの少なくとも1種を含むことができる。いくつかの実施例において、正極活物質層は、さらに、バインダーと導電剤とを含む。いくつかの実施例において、正極活物質層におけるバインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリヘキサフルオロプロピレンのうちの少なくとも1種を含むことができる。いくつかの実施例において、正極活物質層における導電剤は、導電性カーボンブラック、ケッチェンブラック、フレークグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ、および炭素繊維のうちの少なくとも1種を含むことができる。いくつかの実施例において、活物質層における正極活物質、導電剤およびバインダーの質量比は、(70~98):(1~15):(1~15)とすることができる。上記は例示に過ぎず、正活物質層は、任意の他の適切な材料、厚さ、質量比を使用することができることを理解すべきである。
【0029】
いくつかの実施例において、セパレータ11は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、およびアラミドのうちの少なくとも1つを含む。例えば、ポリエチレンは、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、および超高分子量ポリエチレンから選択される少なくとも1種を含む。特に、ポリエチレンとポリプロピレンは短絡防止に良好な効果があり、ターンオフ効果(Turn-off effect)により電池の安定性を改善することができる。いくつかの実施例において、セパレータの厚さは、約5μm~500μmの範囲内にある。
【0030】
いくつかの実施例において、セパレータの表面は、多孔質層をさらに含むことができ、多孔質層は、セパレータの基材の少なくとも一方の表面に設けられ、多孔質層は、無機粒子およびバインダーを含み、無機粒子は、アルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化チタン(TiO2)、二酸化ハフニウム(HfO2)、酸化スズ(SnO2)、二酸化セリウム(CeO2)、酸化ニッケル(NiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化カルシウム(CaO)、酸化ジルコニウム(ZrO2)、酸化イットリウム(Y2O3)、炭化ケイ素(SiC)、ベーマイト、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、および硫酸バリウムから選択される1種である。いくつかの実施例において、セパレータの孔は、約0.01μm~1μmの範囲の直径を有する。多孔質層のバインダーは、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体、ポリアミド、ポリアクリロニトリル、ポリアクリレート、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリメタクリル酸メチル、ポリテトラフルオロエチレン、およびポリヘキサフルオロプロピレンから選択される少なくとも1種である。セパレータ表面の多孔質層は、セパレータの耐熱性、耐酸化性および電解質浸潤性を向上させ、セパレータと極片との間の接着性を高めることができる。
【0031】
本発明のいくつかの実施例において、電気化学装置の電極アセンブリーは、捲回型電極アセンブリーまたは積層型電極アセンブリーである。
【0032】
いくつかの実施例において、電気化学装置はリチウムイオン電池を含むが、本発明はこれに限定されない。いくつかの実施例において、電気化学装置はさらに電解質を含むことができる。電解質は、ゲル電解質、固体電解質および電解液のうちの1種または多種でありうる。電解液は、リチウム塩および非水溶媒を含む。リチウム塩は、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiClO4、LiB(C6H5)4、LiCH3SO3、LiCF3SO3、LiN(SO2CF3)2、LiC(SO2CF3)3、LiSiF6、LiBOB、およびジフルオロホウ酸リチウムから選択される1種または多種である。例えば、高いイオン伝導率を寄与し、サイクル特性を改善することができるから、リチウム塩としては、LiPF6が選択される。
【0033】
非水溶媒は、カーボネート化合物、カルボキシレート化合物、エーテル化合物、その他の有機溶媒、またはこれらの組み合わせであってもよい。
【0034】
カーボネート化合物は、鎖状カーボネート化合物、環状カーボネート化合物、フルオロカーボネート化合物、またはこれらの組み合わせであってもよい。
鎖状カーボネート化合物の例としては、ジエチルカーボネート(DEC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、エチルメチルカーボネート(MEC)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記環状カーボネート化合物の例としては、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、ビニルエチレンカーボネート(VEC)、およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記フルオロカーボネート化合物の例としては、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、1,2-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1-ジフルオロエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロエチレンカーボネート、1,1,2,2-テトラフルオロエチレンカーボネート、1-フルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、1-フルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,2-ジフルオロ-1-メチルエチレンカーボネート、1,1,2-トリフルオロ-2-メチルエチレンカーボネート、トリフルオロメチルエチレンカーボネート、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0035】
カルボキシレート化合物の例としては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n-プロピル、酢酸tert-ブチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸プロピル、γ-ブチロラクトン、デカラクトン、バレロラクトン、メバロノラクトン、カプロラクトン、ギ酸メチル、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0036】
エーテル化合物の例としては、ジブチルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジエトキシエタン、エトキシメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフラン、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
その他の有機溶媒の例としては、ジメチルスルホキシド、1,2-ジオキソラン、スルホラン、メチルスルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチル-2-ピロリドン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、リン酸トリメチル、リン酸トリエチル、リン酸トリオクチル、およびリン酸エステル、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
本発明のいくつかの実施例において、リチウムイオン電池を例として、正極片、セパレータ、負極片を順に巻回または積層して電極部材を形成した後、例えばアルミニウムプラスチックフィルムに入れて封止し、電解液を注入し、フォーメーションし、封止し、リチウムイオン電池を作製する。次に、調製したリチウムイオン電池に対して性能試験を行う。
【0039】
上述した電気化学装置(例えば、リチウムイオン電池)の製造方法は、本願の実施例にすぎないことを理解すべきである。本発明に開示された内容から逸脱しない上で、当分野でよく用いられる他の方法を採用することができる。
【0040】
本発明の実施例は、さらに、上記の電気化学装置を含む電子装置を提供した。本発明の実施例の電子装置は、特に限定されず、先行技術で既知の任意の電子装置に使用することができる。いくつかの実施例において、前記電子装置は、ノートパソコン、ペン入力型コンピューター、モバイルコンピューター、電子ブックプレーヤー、携帯電話、携帯型ファクシミリ、携帯型コピー機、携帯型プリンター、ステレオヘッドセット、ビデオレコーダー、液晶テレビ、ポータブルクリーナー、携帯型CDプレーヤー、ミニディスク、トランシーバー、電子手帳、電卓、メモリーカード、携帯型テープレコーダー、ラジオ、バックアップ電源、モーター、自動車、オートバイ、アシスト自転車、自転車、照明器具、玩具、ゲーム機、時計、電動工具、閃光灯、カメラ、家庭用大型蓄電池、及びリチウムイオンキャパシタなどを含むことができるが、これらに限定されない。
【0041】
以下に、本発明をより良く説明するために、いくつかの具体的な実施例および比較例を挙げ、ここで、例としてリチウムイオン電池を使用する。
【0042】
実施例1
正極片の調製:正極活物質としてのコバルト酸リチウム、導電剤としての導電性カーボンブラック、バインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を重量比96.7:1.7:1.6の割合でN-メチルピロリドン(NMP)溶液に溶解し、正極スラリーを形成した。正極集電体としてアルミニウム箔を用い、正極スラリーを正極集電体上に塗布し、塗布量は18.37mg/cm2であり、乾燥、冷間圧延、打ち抜きを経て正極片を得た。
【0043】
負極片の調製:シリコン系材料としてのSiO、黒鉛、導電剤である導電性カーボンブラック、およびバインダーであるポリアクリル酸(PAA)を重量比100:900:10:25の割合で脱イオン水に溶解し、活物質層スラリーを形成した。負極集電体として銅箔を用い、負極スラリーを負極集電体上に塗布し、塗布量は9.3mg/cm2であり、乾燥、打ち抜きを経て負極片を得た。
【0044】
セパレータの調製:セパレータ基材は厚さ8μmのポリエチレン(PE)であり、セパレータ基材の両側にそれぞれ2μmのアルミナセラミック層を塗布し、最後にセラミック層を塗布した両側にそれぞれバインダーとしてのポリフッ化ビニリデン(PVDF)を2.5mg塗布し、乾燥した。
【0045】
電解液の調製:含水量が10ppm未満の環境下で、LiPF6を非水有機溶媒(プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC):ジエチルカーボネート(DEC)=1:1:1、重量比)に添加し、LiPF6の濃度を1.15mol/Lとした後、12.5wt%のフルオロエチレンカーボネート(FEC)を加え、均一に混合して電解液を得た。
【0046】
リチウムイオン電池の調製:正極片、セパレータ、負極片を順に重ね、セパレータを正極片と負極片との間に介在させてセパレータとして機能させ、巻回し、電極アセンブリーを得た。電極アセンブリーを外装アルミニウムプラスチックフィルムに入れ、80℃で水分を除去した後、上記電解液を注入して封止し、フォーメーション、脱気、ぶち切りなどのプロセスを経てリチウムイオン電池を得た。
【0047】
実施例と比較例は、実施例1のステップに基づいてパラメータを変更し、具体的に変更されたパラメータは以下の表1に示し、得られたいくつかの結果のパラメータは以下の表2に示す。
【0048】
以下に、本発明の各パラメータの測定方法について説明する。
【0049】
負極片のシリコン含有量の測定:
電極アセンブリーを取り、温度25℃で、0.5Cで満放電状態(コバルト酸リチウムを正極活物質とする場合は3.0Vまで放電し、その他の電気化学系の満放電電圧は当業者が化学系に基づいて選択した結果)に放電し、電極アセンブリーを分解して負極片を取り出して測定を行った。
【0050】
マッフル炉を400℃で予熱し、0.05g~1gの試料を秤量して坩堝中に入れ、さらに1.2g~1.5gの乾燥したKOH試薬を秤量し坩堝中に入れて、坩堝蓋をかぶせて坩堝ホルダに置く。マッフル炉の温度が400℃に上昇したら、坩堝ホルダをマッフル炉に入れ、45min程度溶融させた(液体KOHがサンプルを完全に覆うかどうかを基準とする)。試料の溶融が完了したら、坩堝ホルダを取り出して冷却するとともに、清浄なビーカーで適量の純水を取って電気炉に入れて予備煮沸した。冷却した坩堝と坩堝蓋をニッケルピンセットで清浄な200mlのプラスチックビーカーに挟み込んだ。50ml程度の沸騰水をビーカーに入れ、坩堝蓋と坩堝が沸騰水に完全に濡れ、浸出時間は60min程度維持した。坩堝と坩堝蓋をピンセットで挟み取り、水の出が少ない純水瓶で坩堝の内壁および外壁と坩堝蓋の表面および裏面を2~3回程度洗浄した。試料溶液を中速ろ紙で100mlのポリプロピレン(PP)メスフラスコにろ過し、定容した。定容した溶液を混合したら、ピペットまたはプラスチックピペットを用いて試料溶液1mlを100mlPPメスフラスコに移し、その後100mlに定容した。その後、ICP測定を行った。
【0051】
負極片のリチウム含有量の測定:
電気化学装置を取り、温度25℃で、0.5Cで満放電状態(コバルト酸リチウムを正極活物質とする場合は3.0Vまで放電し、その他の電気化学体系の満放電電圧は、当業者が化学体系に基づいて選択した結果である)に放電し、電極アセンブリーを分解して負極片を取り出して測定を行った。
【0052】
負極片の5つ以上の位置をランダムに取り、面積が同じである小さい丸シートに打ち抜いた。小さい丸シートを分解タンクに入れ、分解試薬を加え、マイクロ波分解器に入れて分解した。分解終了後、蓋を超純水で2~3回洗浄し、洗浄液を分解タンクに注いだ。その後、ICP測定を行った。
【0053】
負極片の熱重量分析(TG):
電気化学装置を取り、温度25℃で、0.5Cで満放電状態(コバルト酸リチウムを正極活物質とする場合は3.0Vまで放電し、その他の電気化学体系の満放電電圧は、当業者が化学体系に基づいて選択した結果である)に放電し、電極アセンブリーを分解して負極片を取り出して測定を行った。
【0054】
負極片の5つ以上の位置をランダムに取り、面積が同じ小さい丸シートに打ち抜いた。小さい丸シートを型番STA449F3-QMS403Cの機器に入れて加熱し、昇温温度が800℃であり、昇温速度が10℃/minであり、保護雰囲気が99.99%純度のN2であった。パージガス流量は60mL/minであり、保護ガス流量は20mL/minであった。昇温過程において、温度上昇に伴って徐々に重量が低下する曲線、すなわち、熱減量曲線が得られた。800℃に昇温すると、その際に減少する重量の割合が負極片の重量減少率である。
【0055】
負極片の電気抵抗の測定:
4プローブ法を用いて極片の電気抵抗率を測定した。4プローブ法測定に用いた機器は精密直流電圧電流源(SB118型)であり、長さ1.5cm*幅1cm*厚さ2mmの銅板4枚が1本の線上に等間隔に固定され、中間にある2枚の銅板の間隔はL(1cm~2cm)であり、銅板を固定する基材は絶縁材料であった。測定時に4枚の銅板の下端面を測定極片に圧着し、両端にある銅板には直流電流Iが流れて、中間にある2枚の銅板での電圧Vを測定し、IとVの値を3回読み取り、IとVの平均値を取り、V/Iは測定所の極片の電気抵抗であった。
【0056】
負極片の剥離強度の測定:
引張力試験機を用いて負極片の接着力を測定した。負極片を15mm×2mmの大きさに裁断し、3M両面テープを通じて負極片をステンレス鋼板に接着し、それを引張力試験機に置いて極片の接着力を測定した。
【0057】
XRD測定:
試料1.0g~2.0gを秤量してガラス試料ホルダの溝に入れ、ガラス板で圧密し、平滑化し、X線回折装置(BRUKER、D8)を用いてJJS K 0131-1996「X線回折分析の一般規則」に従って測定を行い、測定電圧を40kVにし、電流は30mAであり、走査角度範囲は10°~85°であり、走査のステップ幅は0.0167°であり、各ステップ幅で設定された時間は0.24s であり、XRD回折パターンを得、図面から、2θが28.4°にある最大強度値I2および2θが21.0°にある最大強度値I1が得られ、そして、I2/I1の比を算出した。
【0058】
粒度測定:
50mLの洗浄したビーカーに粉末サンプル0.02gを添加し、脱イオン水20mLを添加し、さらに1%の界面活性剤を数滴滴下し、粉末を完全に水に分散させ、120W超音波洗浄機中で5min超音波を行い、MasterSizer 2000を用いて粒度分布を測定した。
【0059】
高温サイクル試験:
測定温度は45℃であり、0.7Cの定電流で4.4Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、5分間静置した後、0.5Cで3.0Vまで放電した。このステップで得られた容量を初期容量とし、0.7C充電/0.5C放電を行ってサイクル測定を行い、各ステップの容量と初期容量を比にして、容量減衰曲線を得た。
【0060】
満充電膨張率測定:
マイクロメータで半充電時の新品電極アセンブリーの厚さを測定し、400サイクルになった時、電池が満充電状態にあり、再度マイクロメータでこの時の電池の厚さを測定し、初期半充電時の新品電極アセンブリーの厚さと比較することで、この時の満充電電池膨張率が得られた。
【0061】
放電レート測定:
25℃で、0.2Cで3.0Vまで放電し、5min静置し、0.5Cで4.4Vまで充電し、定電圧で0.05Cまで充電してから5分間静置し、放電レートを調整し、それぞれ0.2C、0.5C、1C、1.5C、2.0Cで放電測定を行い、それぞれの放電容量が得られ、各レートで得られた容量を0.2Cで得られた容量と比較して比を得、その比を比較することでレート特性を比較した。
【0062】
直流インピーダンス(DCR)測定:
Maccor機を用いて、25℃で電極アセンブリーの実際の容量を測定し(0.7Cの定電流で4.4Vまで充電し、定電圧で0.025Cまで充電し、10分間静置し、0.1Cで3.0Vまで放電し、5分間静置する)、0.1Cで一定の荷電状態(SOC)に放電することにより、1s間の放電をして5msごとに測定し、異なるSOCでのDCR値を算出した。
【0063】
表1および表2は、実施例および比較例の各パラメータおよび評価結果を示す。
【0064】
【0065】
【0066】
実施例1~4を比較することからわかるように、シリコン系材料の質量分率の低下につれて、黒鉛中のシリコン系材料の分散の均一性の向上に有利であり、Mの値が向上する。また、シリコン系材料の質量分率が低下し、負極片中の残留リチウムの含有量が減少し、Nの値が向上する。シリコン系材料の質量分率の増加は電気化学装置のレート特性の向上に有利であるが、シリコン系材料の質量分率が40%以上に増加すると、導電性が不足となり、逆に電気化学装置のレート特性の悪化を引き起こす。また、シリコン系材料の質量分率が増加すると、電気化学装置のサイクル特性と膨張の悪化を引き起こす。
図3~
図5は、実施例1、2および4の負極片の断面図を示す。
【0067】
実施例1、5、6、7を比較することからわかるように、同じ含有量のカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ポリアクリル酸(PAA)およびポリアクリル酸リチウム(PAA-Li)をバインダーとすると、同じ作用効果を示し、シリコン系材料粒子を分散して粘着する役割を果たすことができる。PAA-Liを採用すると、負極片中のLiの含有量が上昇し、Liイオンの拡散速度を向上させ、電気化学装置のレート特性を向上させることができる。
【0068】
実施例1、8、9、10および比較例1を比較することからわかるように、バインダーPAAの含有量の減少は、バインダーの分散効果を高め、電気化学装置のレート特性を高めるのに有利であるが、シリコン系材料の分散効果が悪化し、Liの分布も不均一になり、接着効果が低下し、電気化学装置のサイクル特性および膨張を悪化させる。バインダーであるPAAの含有量の増加に伴い、多すぎるバインダーは分散しにくくなるとともに、シリコン系材料の分散効果が悪化し、Liの分布も不均一になる。多すぎるバインダーは、電気化学装置のレート特性を悪化させるとともに、電気化学装置のサイクル特性と電極アセンブリーの膨張を悪化させる。
【0069】
実施例1、11、12および比較例2を比較することからわかるように、シリコン系材料と黒鉛の混合時間が少なすぎる(1.5h未満)と、シリコン系材料が効果的に分散できず、M、N値が減少し、電気化学装置のレート特性、サイクル特性およびセル膨張の悪化を引き起こし、シリコン系材料と黒鉛の混合時間が1.5h以上になると、シリコン系材料は均一に分散することができ、その後、さらに時間を延長することはM、N値の向上に与える影響が少ない。
図3は実施例1の負極片の断面図を示し、
図6は比較例2の負極片の断面図を示す。実施例1の活物質層の材料の均一性は比較例2よりも優れ、比較例2にはある程度の凝集現象が存在することがわかる。
【0070】
実施例1、13、14および比較例3を比較することからわかるように、バインダーの分散時間を向上させることは、バインダーの分散の均一性の向上(Z値の向上)に有利であると同時に、シリコン系材料の分散の均一性も向上(M値の向上)させ、Liの分散の均一性も向上(N値の向上)させ、電気化学装置のレート特性およびサイクル特性の改善、電極アセンブリーのサイクル膨張の低減に有利である。
【0071】
実施例1、15、16、17および比較例7~12を比較することからわかるように、異なるシリコン系材料に対しては、良好なレート特性、サイクル特性、および低いセル膨張を得るために、シリコン系材料の均一分散とバインダーの均一分散が必要である。異なるタイプの材料では、極片中のLiの含有量の差が大きく、シリコン系材料がSiOまたはリチウム含有SiOの場合、負極片中のLiの含有量が高い。
【0072】
実施例1、18、19および比較例4を比較することからわかるように、I2/I1が小さいほど、シリコン系材料の分散の均一性、Liの均一性に与える影響は小さいが、電気化学装置のレート特性、サイクル特性の向上および電極アセンブリーの膨張の低減に顕著な効果がある。
【0073】
実施例1、20、21および比較例5、6を比較することからわかるように、Dn10/Dv50が小さすぎると、シリコン系材料の分散の均一性が悪くなり(M値が低下)、N値も低下し、電気化学装置のサイクル特性が悪化するが、小粒子状のシリコン系材料の存在は電気化学装置のレート特性を向上させることに有利である。Dn10/Dv50が大きすぎると、シリコン系材料の分散の均一性も悪化するとともに、電気化学装置のサイクル特性、レート特性、セル膨張の悪化も引き起こす。
【0074】
したがって、シリコン系材料とバインダーの分散の均一性(シリコン系材料の分散の均一性は同時にLiの分散の均一性に影響を与える)は、電気化学装置のレート特性、サイクル特性の向上および電極アセンブリーの膨張の低減に顕著な効果がある。
【0075】
以上の説明は、本発明の好適な実施例および使用される技術原理の説明にすぎない。本願に係る開示範囲は、上記の技術的特徴の特定の組み合わせによる技術案に限定されるものではなく、同時に上述の技術的特徴またはその均等な特徴を任意に組み合わせて形成された他の技術案も包含すべきであることを、当業者は理解すべきである。例えば、上記の特徴と本願に開示された同様の機能を有する技術的特徴とを互いに置き換えて形成されたものである。
【国際調査報告】