IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ イスタンブール メディポル ユニベルシテシの特許一覧

特表2024-501538位置変調を用いたジョイントセンシング・通信のためのフレーム構築
<>
  • 特表-位置変調を用いたジョイントセンシング・通信のためのフレーム構築 図1
  • 特表-位置変調を用いたジョイントセンシング・通信のためのフレーム構築 図2
  • 特表-位置変調を用いたジョイントセンシング・通信のためのフレーム構築 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】位置変調を用いたジョイントセンシング・通信のためのフレーム構築
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/88 20060101AFI20240104BHJP
【FI】
G01S13/88
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023539967
(86)(22)【出願日】2021-12-26
(85)【翻訳文提出日】2023-08-25
(86)【国際出願番号】 TR2021051514
(87)【国際公開番号】W WO2022146368
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】2020/22842
(32)【優先日】2020-12-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521277671
【氏名又は名称】イスタンブール メディポル ユニベルシテシ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラフィ-ク、サイラ
(72)【発明者】
【氏名】アルスラン、フセイン
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AB15
5J070AC02
5J070AC06
5J070AC11
5J070AE01
5J070AF03
5J070AK27
5J070AK40
(57)【要約】
レーダーと通信システムのフレーム構築のための方法を提案する。a.ビットスプリッタ(40)によって受信情報ビット(70)を分割する。b.ビットはb1およびb2として分割される。c.b1ビットは、時間軸(b)上のレーダー・シーケンスの位置を定義するために使用される。d.レーダー・シーケンスの位置を特定した後、レーダー・シーケンスは(c)を介してその位置上で送信される。残りのb2ビットはBPSK変調され、(d)を介して残りの位置に送信される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーダーと通信システムのフレーム構築のための方法であって、
a.ビットスプリッタ(40)によって受信情報ビット(70)を分割するステップと、
b.ビットはb1とb2に分割されるステップと、
c.b1ビットは時間軸(b)上のレーダー・シーケンスの位置を定義するために使用されるステップと、
d.前記レーダー・シーケンスの位置を特定した後、前記レーダー・シーケンスは(c)を介してその位置上で送信されるステップと、
e.残りのb2ビットはBPSK変調され、(d)を介して残りの位置に送信されるステップと、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジョイントセンシング・通信システムのフレーム構築方法である。
【0002】
本発明では、受信情報ビットのサブセットが時間軸上のレーダー・センシングに割り当てられる。この情報ビットのサブセットは、デュアル・ファンクション・レーダー通信システムのフレーム構造において、レーダーシーケンスを時間軸上のどこに埋め込むかを決定する。
【背景技術】
【0003】
次世代無線通信は、航空交通管制、自律走行、セキュリティ・アプリケーションなど、センシングと送信の両方の機能を必要とする、高速で高品質な無線アプリケーションを提供する(非特許文献1)。これらの帯域幅を必要とする無線通信アプリケーションは、通常レーダーシステムに割り当てられる搬送波周波数を必要とする。さらに、電気エネルギーや電磁エネルギーを使用する人間活動に起因する電磁波汚染を抑制する必要性もある。これらすべての要因が、科学界にレーダーと通信システムの融合を迫っている。
【0004】
ここ数年、同じような帯域幅を使用するレーダー・センシングと通信システムの共存に関する研究が活発化している。レーダーと通信の共存を可能にするために、さまざまな技術/シナリオが提案されている(非特許文献2)。レーダーシーケンスと通信シーケンスの両方から構成されるフレーム構造は、センシングと通信を同時に行う機能を満たす。
【0005】
従来技術において、「ジョイントレーダー・通信」を実装するためのいくつかの展開メカニズムがある。それらは、共存と共用(非特許文献3)である。共存のシナリオでは、レーダーと通信システムの両方が独立して存在し、同じスペクトルリソースを共有している。しかし、同じ周波数帯域を共有するため、レーダーと通信システムは互いに干渉を引き起こす。したがって、このトポロジーの主な特徴は、受信機で干渉を管理することである(非特許文献3)。
【0006】
共用は、センシングと送信の両方の機能を実行できる単一の波形を構築することに重点を置いている。これは従来はDFRC(Dual-Function Radar Communications)とも呼ばれている。最近の実験では、分数フーリエ変換(FrFT)を使用して、マルチキャリア波形のチャープサブキャリアにおけるデータの重ね合わせが検証された(非特許文献4)。
【0007】
Rad-Com(レーダーによる通信)システムでは、レーダー信号を使ってデータを送信する。従来の方法では、レーダー・チャープに情報を埋め込む。しかし、このようなレーダー中心のJRCシステムでは、いくつかの無線アプリケーションではデータスループットが十分ではない。
【0008】
一方、通信中心レーダーシステム(Com-Rad:Communication centric Radar systems)では、OFDMのような通信波形が効率的な目標検出のために使用されている(非特許文献5)。このコンセプトはパッシブ・レーダーに類似している。しかし、レーダー・センシングにマルチキャリア波形(OFDM)を使用すると、ピーク対平均電力比(PAPR:peak-to-average-power-ratio)が高くなり、高い送信電力が使用された場合に増幅器がうまく動作しなくなるという問題がある。
【0009】
レーダーと通信の共存シナリオでは、両サブシステムは同じスペクトルリソースを共有しながら独立して動作しなければならない。このようなネットワーク設定はコスト効率が悪い。さらに、レーダー信号と通信信号の干渉を受信機で管理する必要がある。このような制約を克服するために、レーダーと通信の間で単一の送信ユニットを共有するデュアル・ファンクション・レーダー通信(DFRC:Dual Function Radar Communication)が使用される。
【0010】
従来の通信信号では、チャネル推定を行うために、送信フレームにプリアンブル、ミッドアンブル、またはポスタンブルとしてパイロット信号が埋め込まれる(非特許文献6)。しかし、これらのパイロットのセンシング能力は、ターゲットのレンジとドップラー推定に関しては限界がある。特に、車両通信のようなアプリケーションでは、高速で移動する車両が互いに通信し、隣接する車両と周囲の環境情報を高データレートで共有する必要があるため、これらのパイロットシンボルは望ましいセンシング性能を提供できなくなる。
【0011】
その結果、上記の課題と既存の解決手段の不十分さから、関連する技術分野での改善が求められていた。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Zheng, Le, et al. Radar and communication coexistence: An overview: A review of recent methods.IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019): 85-99.
【非特許文献2】Mishra, Kumar Vijay, et al.Toward millimeter-wave joint radar communications: A signal processing perspective.IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019): 100-114.
【非特許文献3】Mishra, Kumar Vijay, et al.Toward millimeter-wave joint radar communications: A signal processing perspective.IEEE Signal Processing Magazine 36.5 (2019): 100-114.
【非特許文献4】Gaglione, Domenico, et al.Fractional Fourier based waveform for a joint radar-communication system.2016 IEEE Radar Conference (RadarConf). IEEE, 2016.
【非特許文献5】Sur, Samarendra Nath, et al.OFDM Based RADAR-Communication System Development.Procedia Computer Science 171 (2020): 2252-2260.
【非特許文献6】Arslan, Huseyin, and Gregory E. Bottomley.Channel estimation in narrowband wireless communication systems.Wireless Communications and Mobile Computing 1.2 (2001): 201-219.
【非特許文献7】Mesleh, Raed Y., et al.Spatial modulation.IEEE Transactions on vehicular technology 57.4 (2008): 2228-2241.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、従来技術で使用されている実施形態とは異なり、この分野に新たな視点をもたらす、従来とは異なる技術的特徴を有する方法を提供することを目的とする。
【0014】
本発明の目的は、単一のDFRCフレーム・アーキテクチャを使用して、効率的なセンシングと通信性能を提供することである。
【0015】
本発明のもう一つの目的は、高解像度のセンシングと通信を同時に行うフレームワークを構築することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明では、効率的なターゲット・センシング、チャネル推定、データ伝送が可能なDFRCシステムのための新しいフレームの構築を提案する。その結果、レーダー・シーケンスはセンシングを行うだけでなく、追加情報ビットを伝送し、DFRCシステムのスループットを向上させる。通信にはBPSK(Binary Phase Shift Keying)が使用される。一方、レーダー・センシングには高い相関特性を持つバーカー符号が使用される。
【0017】
本発明では、パイロットの代わりにレーダー・シーケンスが使用される。さらに、これらのレーダー・シーケンスは時間軸上にランダムに配置される。時間軸上のレーダー・シーケンスの位置に組み込まれたこのランダム性は、追加情報ビットを送信するために利用される。したがって、センシング・シーケンスも追加情報ビットを伝送することになり、結果的にデータ・スループットが向上する。
【0018】
さらに、アンテナのインデックスが追加情報ビットを伝送する空間変調の概念(非特許文献7)と同様に、本発明ではレーダー・シーケンスの位置が追加情報ビットを伝送する。従って、レーダー・センシング・シーケンスは、情報伝送の固有の特徴を有し、レーダーと通信間の干渉は著しく低減される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の効果は、以下である。
1.DFRCシステムのフレーム構成に位置変調を導入。
2.情報伝送の拡張。
3.センシング・シーケンスはパイロット・シンボルの機能を活用している(チャネル推定のための追加パイロットは不要)。
4.レーダーと通信シンボル間の干渉の低減。
5.通信シーケンスとレーダー・シーケンスのサンプリング・レートとパワー・レベルが同じであるため、伝送システムに余分な複雑さが生じない。
6.センシング・シンボルの位置がランダムなので安全。
【0020】
本発明の構造的および特徴的な特徴ならびにすべての利点は、以下の図およびこれらの図を参照してなされる詳細な説明からより明らかになるので、評価はこれらの図および詳細な説明を参照してなされるべきである。
【0021】
図面は必ずしも縮尺通りに示されてはおらず、本発明を理解するのに必要でない細部は省略されていることもある。さらに、少なくとも実質的に同一または少なくとも実質的に同一の機能を有する要素には同一の番号を付している。
【0022】
略語の説明
DFRC:デュアル・ファンクション・レーダー通信
OFDM:直交周波数分割多重方式
BPSK:バイナリ位相シフトキーイング
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明のシステムモデルを示す。
図2図2は、デュアル・ファンクション・レーダー通信のためのフレームの構築を示す。
図3図3は、本発明のプロセスを示すブロック図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明の好ましい実施形態は、この詳細な説明において、発明をより良く理解するために説明されるものであり、効果を限定するものではない。
【0025】
本発明は、ジョイントセンシング・通信システムのフレーム構築方法である。
【0026】
システムモデルについて説明する。デュアル・ファンクション・レーダー通信(DFRC:Dual Function Radar Communication)システムは、ジョイント通信・レーダー送信機(10)で構成される。受信機(30)に向けて情報を送信するハイブリッド信号が送信される。情報送信に加え、信号にはレーダー・センシング機能が搭載され、ターゲット(20)に関する情報(距離、角度、速度)を取得する。
【0027】
ハイブリッド信号の構成を図2に示す。b個の情報ビットがあるとする。これらのビットはN個の同じ大きさのグループに分けられる。各グループの最初の2ビットがレーダー信号(50)を埋め込む位置を決める。残りのビットはBPSK信号(60)で変調される。両信号のサンプリング・レートとパワー・レベルは同じであるため、追加の複雑さは必要ない。以上の手順を図3にまとめる。本発明のフレーム構築では、通信のためにシングルキャリア伝送が考慮されている。OFDMのようなマルチキャリア波形も、通信用のフレーム構築に使用できる。
【0028】
バーカー符号はレーダー・シーケンスとして使用される。バーカー符号はレーダー処理において最も有名な位相符号化方式である。これらは、レーダー技術で使用されている。細かい距離分解能や探知距離のために必要なパルス圧縮を行うことができるからである。
【0029】
【数1】
【0030】
完全な自己相関特性により、バーカー符号は距離計算に適している。自己相関関数(a.c.f)は、送信信号の時間遅延情報を抽出するために使用され、そこからターゲットの範囲は、以下の式を利用して計算することができる。
【0031】
【数2】
【0032】
ここで、cは光の速度、tdは送信信号と受信信号の間の時間遅延を示す。レーダー・センシングには、ゴレイ・コンプリメンタリー・コードやチャープなどの他のレーダー・シーケンス/波形も使用できる。
【0033】
レーダー・シーケンスの完全な自己相関特性により、レーダー・シーケンスは受信機(30)で容易に検出することができ、その後、レーダー・シーケンスに異なる位置を割り当てるために使用されるルックアップテーブルに基づいて、情報ビット(70)を抽出することができる。レーダー・シーケンスの検出後、BPSK信号(70)を抽出することができる。
【0034】
上記のDFRC通信の方法は、高速で移動する異なる車両が互いに通信するだけでなく、事故を回避するために近隣車両に関する情報を伝達する車両通信など、5Gの範囲内または5G以降の多くのアプリケーションに適用可能である。
【0035】
さらに言えば、レーダー・シーケンスの正確な位置を時間軸上で予測することは困難であるため、レーダー・シーケンスのランダムな位置はレーダー・センシングにとって安全である。レーダー・シーケンスを異なる搬送波周波数で送信し、そのランダム性を利用して追加情報ビットを送信する。
【0036】
時間軸上のレーダー・シーケンスに特定の位置を割り当てて、各タイムスロットで送信する波形を変更し、その特定の波形に通信ビットを関連付ける方法もある。例えば、最初のタイムスロットで線形周波数変調(LFM:Linear Frequency Modulated)のチャープが送信された場合、01が送信されたことになり、同様に異なる波形の組み合わせで通信ビットを送信する。
【符号の説明】
【0037】
10.レーダー発信機
20.ターゲット
30.受信機
40.ビットスプリッター
50.レーダー信号
60.BPSK信号
70.情報ビット
b1、b2分割ビット
a.ビット分割器(40)によって入力情報ビット(70)を分割する。
b.ビットはb1、b2として分割される。
c.b1ビットは、レーダー・シーケンスの時間軸(b)上の位置を定義するために使用される。
d.レーダー・シーケンスの位置を特定した後、レーダー・シーケンスは(c)を介してその位置上で送信される。
e.残りのb2ビットはBPSK変調され、(d)を介して残りの位置に送信される。
図1
図2
図3
【国際調査報告】