(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ポリエステル系フィルム、その製造方法およびそれを含む膜電極接合体
(51)【国際特許分類】
H01M 8/0284 20160101AFI20240104BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20240104BHJP
C08G 63/199 20060101ALI20240104BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240104BHJP
B29C 55/14 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
H01M8/0284
H01M8/10 101
C08G63/199
C08J5/18 CFD
B29C55/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540206
(86)(22)【出願日】2021-12-17
(85)【翻訳文提出日】2023-06-29
(86)【国際出願番号】 KR2021019301
(87)【国際公開番号】W WO2022164029
(87)【国際公開日】2022-08-04
(31)【優先権主張番号】10-2021-0010962
(32)【優先日】2021-01-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523061191
【氏名又は名称】エスケーマイクロワークス 株式会社
【氏名又は名称原語表記】SK microworks Co., Ltd.
【住所又は居所原語表記】84, Jangan-ro 309beon-gil, Jangan-gu, Suwon-si,Gyeonggi-do, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ホ、ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】イム、ビョンジェ
(72)【発明者】
【氏名】ヨン、ジェウォン
(72)【発明者】
【氏名】ソン、ギヨン
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
4J029
5H126
【Fターム(参考)】
4F071AA45X
4F071AF10Y
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4F071AF21Y
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5H126JJ03
5H126JJ05
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5H126JJ10
(57)【要約】
実現例は、低吸湿性を有するポリエステル系フィルム、その製造方法およびそれを含む膜電極接合体に関するものであって、前記ポリエステル系フィルムは、柔軟性、密着性および耐久性のいずれにも優れており、式1による吸湿率が0.25%以下を満足することにより、優れた耐加水分解性を有するので、燃料電池のサブガスケット用フィルムとして適用され、優れた特性を発揮し得る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含み、
前記ジオールが、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、
前記ジカルボン酸が、70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、
下記式1による吸湿率が0.25%以下である、ポリエステル系フィルム:
[式1]
前記式1において、
Aは、前記フィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥させた後測定したフィルムの重さ(g)であり、Bは、前記の条件で乾燥されたフィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置した後測定したフィルムの重さ(g)である。
【請求項2】
前記ポリエステル系フィルムが、燃料電池のサブガスケット用フィルムである、請求項1に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項3】
前記ジオールが、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を70モル%以上で含む、請求項1に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項4】
前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向のモジュラスが400kgf/mm
2以下であり、前記第1方向に垂直な第2方向のモジュラスが550kgf/mm
2以下である、請求項1に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項5】
前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向の引張強度:前記第1方向に垂直な第2方向の引張強度の比が0.8~1:1である、請求項1に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項6】
前記ポリエステル系フィルムをPCT(Pressure Cooker Test、121℃、1.4気圧、RH100%)により72時間処理した後の伸び維持率が70%以上である、請求項1に記載のポリエステル系フィルム。
【請求項7】
ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、
前記未延伸シートを70℃~100℃にて第1方向に2倍~5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に2倍~5倍延伸して延伸シートを製造する段階と、
前記延伸シートを200℃~260℃にて熱固定する段階と、
熱固定された前記延伸シートを弛緩してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、
前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、
前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、
前記ポリエステル系フィルムの下記式1による吸湿率が0.25%以下である、ポリエステル系フィルムの製造方法:
[式1]
前記式1において、
Aは、前記ポリエステル系フィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥させた後測定したポリエステル系フィルムの重さ(g)であり、Bは、前記の条件で乾燥されたポリエステル系フィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置した後測定したポリエステル系フィルムの重さ(g)である。
【請求項8】
前記第1方向の延伸比(d1)と前記第2方向の延伸比(d2)との比(d1/d2)が0.5~1であり、
前記弛緩段階が、前記第2方向に1%~10%の伸び率で1次弛緩され、前記第1方向に0.5%以上~2%未満の伸び率で2次弛緩される、請求項7に記載のポリエステル系フィルムの製造方法。
【請求項9】
電解質膜と、
前記電解質膜の一面または両面の末端部を取り囲むサブガスケットとを含み、
前記サブガスケットが、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含み、
前記ジオールが、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、
前記ジカルボン酸が、70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、
下記式1による吸湿率が0.25%以下である、膜電極接合体:
[式1]
前記式1において、
Aは、ポリエステル系フィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥させた後測定したポリエステル系フィルムの重さ(g)であり、Bは、前記の条件で乾燥されたポリエステル系フィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置した後測定したポリエステル系フィルムの重さ(g)である。
【請求項10】
前記サブガスケットの引張強度が105MPa以上である、請求項9に記載の膜電極接合体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
実現例は、ポリエステル系フィルム、その製造方法およびそれを含む膜電極接合体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、燃料と酸化剤とを電気化学的に反応させて電気エネルギーを発生させる装置であって、燃料として水素、メタノール、ブタンなどが用いられ、酸化剤として酸素、空気、塩素、二酸化塩素などが用いられる。このような燃料電池は、複数の単位セルを含み、前記単位セルは燃料等を輸送して電気を発生させ得る膜電極接合体(MEA:Membrane Electrode Assembly)を含む。
【0003】
膜電極接合体は、電解質膜(membrane)と、前記電解質膜の両面に位置する電極(アノードおよびカソード)とからなり得るが、前記電解質膜の吸湿性によって膜電極接合体の性能が低下し得る。そこで、電解質膜が外部に露出するのを防止するとともに、燃料等が外部に流出したり、空気等と混ざり合ったりすることを防止するためにガスケットが用いられる。
【0004】
従来、製造が容易で密封特性に優れるという点から、フッ素またはシリコーンがガスケットとして主に使用されてきたが、前記フッ素またはシリコーンガスケットは、燃料などを完璧に遮断するには限界がある。また、フッ素系ガスケットは、高価で成形性が低いという問題がある。したがって、フッ素またはシリコーンガスケットを代替し得るとともに、耐熱性および耐寒性のような耐久性、低吸湿性などの特性にも優れたガスケットの研究が続けられている。
【0005】
一例として、特許文献1は、セパレータ上に直接射出成形し架橋して一体化することにより、気密耐久性を増加させた水素燃料電池用射出成形一体化ガスケットを開示しているが、フッ素系を使用しているため、耐寒性に乏しく高価であるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】韓国公開特許第2014-0036536
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、実現例は、柔軟性、密着性、耐加水分解性、および耐久性のいずれにも優れたポリエステル系フィルム、その製造方法およびそれを含む膜電極接合体を提供することとする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実現例によるポリエステル系フィルムは、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含み、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、下記式1による吸湿率が0.25%以下である。
【0009】
[式1]
前記式1において、
Aは、前記フィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥させた後測定したフィルムの重さ(g)であり、Bは、前記条件で乾燥されたフィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置した後測定したフィルムの重さ(g)である。
【0010】
他の実現例によるポリエステル系フィルムの製造方法は、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、前記未延伸シートを70℃~100℃にて第1方向に2倍~5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に2倍~5倍延伸して延伸シートを製造する段階と、前記延伸シートを200℃~260℃にて熱固定する段階と、前記熱固定されたシートを弛緩してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による吸湿率が0.25%以下である。
【0011】
また他の実現例による膜電極接合体は、電解質膜と、前記電解質膜の一面または両面の末端部を取り囲むサブガスケットとを含み、前記サブガスケットがジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含み、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、前記式1による吸湿率が0.25%以下である。
【発明の効果】
【0012】
実現例によるポリエステル系フィルムは、特定成分および含有量のジオールおよびジカルボン酸が共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含むことにより、柔軟性、密着性および耐久性に優れる。特に、前記ポリエステル系フィルムは、式1による吸湿率が0.25%以下を満足することにより優れた耐加水分解性を有するので、低吸湿性に優れる。
【0013】
したがって、前記ポリエステル系フィルムが燃料電池のサブガスケット用フィルム、特に低吸湿性、耐熱性および耐薬品性が重要である水素燃料電池のサブガスケット用フィルムとして適用されると、燃料電池の性能低下を効果的に防止することができ、安定性および信頼性を向上させ得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、燃料電池の分解図を示すものである。
【
図2】
図2は、一実現例による膜電極接合体の斜視図を示すものである。
【
図3】
図3は、一実現例による膜電極接合体の上面を示すものである。
【
図4】
図4は、
図3における膜電極接合体をX-X'に沿って切断した断面図を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実現例により発明を詳細に説明する。なお、実現例は、以下に開示される内容に限定されるものではなく、発明の要旨が変更されない限り、様々な形態に変形され得る。
【0016】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反する記載がない限り、他の構成要素を除外するのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。
【0017】
本明細書に記載の構成成分の量、反応条件などを示すすべての数字および表現は、特に記載がない限り、全ての場合において「約」という用語で修飾されるものと理解すべきである。
【0018】
本明細書において、第1、第2、1次、2次などの用語は、様々な構成要素を説明するために使用されるものであり、前記構成要素は前記用語によって限定されない。前記用語は、1つの構成要素を他の構成要素と区別する目的でのみ使用される。
【0019】
本明細書において、各フィルムまたは層などが、各フィルムまたは層などの「上(on)」または「下(under)」に形成されるものと記載される場合において、「上(on)」と「下(under)」は、「直接(directly)」または「他の構成要素を介して(indirectly)」形成されるものをすべて含む。
【0020】
図面における各構成要素の大きさは、説明のために誇張されることがあり、実際に適用される大きさとは異なり得る。
【0021】
[ポリエステル系フィルム]
一実現例によるポリエステル系フィルムは、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含み、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、下記式1による吸湿率が0.25%以下である。
【0022】
[式1]
前記式1において、
Aは、前記フィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥させた後測定したフィルムの重さ(g)であり、Bは、前記条件で乾燥されたフィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置した後測定したフィルムの重さ(g)である。
【0023】
図1は、燃料電池の分解図を示すものである。具体的に、燃料電池1は、複数の燃料電池単位セル10を含み、前記燃料電池単位セル10は、膜電極接合体100、セパレータ200およびエンドプレート300を含む。
【0024】
膜電極接合体は、電解質膜と、前記電解質膜の両面に位置する電極(アノードおよびカソード)とからなり得るが、前記電解質膜の吸湿性によって膜電極接合体の性能が低下し得る。
【0025】
燃料電池に用いられるガスケットは、電解質膜が外部に露出するのを防止するとともに、供給される燃料等が外部に流出したり、空気等と混ざり合ったりすることを防止するためのものであり、従来は製作が容易で密封特性に優れるという点から、フッ素またはシリコーンがガスケットとして主に使用されていた。しかしながら、前記フッ素またはシリコーンガスケットは、燃料などを完璧に遮断するのに限界があって、最近はフィルム状のガスケットが適用されている。特に、ポリエチレンナフタレート系フィルムが成形性および耐久性に優れるという点から、ガスケットフィルムとして使用されているが、柔軟性が低いため密着性および気密性の向上に限界がある。
【0026】
一方、燃料として水素を使用し、酸化剤として酸素を使用する水素燃料電池、特に、水素燃料電池を用いる自動車の場合、運転と停止が繰り返され熱が発生して、収縮と膨張が頻繁に発生することとなる。したがって、密閉性は無論のこと、低吸湿性、耐熱性および耐寒性のような耐久性、並びに耐薬品性は、水素燃料電池システムにおいて非常に重要である。
【0027】
実現例によるポリエステル系フィルムは、特定成分および含有量のジオールおよびジカルボン酸が共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含むことにより、柔軟性、密着性および耐久性に優れる。特に、前記ポリエステル系フィルムは、式1による吸湿率が0.25%以下を満足することにより、優れた耐加水分解性を有するので低吸湿性に優れる。したがって、前記ポリエステル系フィルムは、水素燃料電池のガスケット用フィルムとして適用されると、水素燃料電池の性能低下を効果的に防止することができ、安定性および信頼性を向上させ得る。
【0028】
前記ポリエステル系フィルムは、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含む。
【0029】
前記ジオールは、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含む。例えば、前記ジオールは、1,2-シクロヘキサンジメタノール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、または1,4-シクロヘキサンジメタノールを含み、好ましくは1,4-シクロヘキサンジメタノールを含み得る。
【0030】
また、前記ジオールは、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を70モル%以上で含み得る。例えば、前記共重合ポリエステル系樹脂は、前記ジオールの総モル数を基準に、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を72モル%以上、75モル%以上、85モル%以上、88モル%以上、90モル%以上、93モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、99モル%以上、または100モル%で含み得る。
【0031】
前記ジオールが、シクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を前記含有量の範囲で含むことにより、柔軟性、密着性、耐久性、および耐加水分解性を向上させることができ、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールのみからなると、耐熱性および耐加水分解性を最大化し得る。
【0032】
また、前記ジオールは、必要に応じて、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよびジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上を含み得る。例えば、前記共重合ポリエステル系樹脂は、前記ジオールの総モル数を基準に、エチレングリコール、ネオペンチルグリコールおよびジエチレングリコールからなる群より選択される1種以上を、1モル%~30モル%、1モル%~20モル%、1モル%~15モル%、1モル%~10モル%、または1モル%~5モル%で含み得る。
【0033】
前記ジカルボン酸は、70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含む。例えば、前記共重合ポリエステル系樹脂は、前記ジカルボン酸の総モル数を基準に、テレフタル酸を72モル%~99モル%、75モル%~99モル%、80モル%~98モル%、83モル%~98モル%、または85モル%~98モル%で含み、イソフタル酸を1モル%~28モル%、1モル%~25モル%、1モル%~20モル%、2モル%~15モル%、または3モル%~13モル%で含み得る。
【0034】
テレフタル酸およびイソフタル酸の含有量が前記範囲を満足することにより、柔軟性、耐熱性および耐加水分解性を向上させ得る。
【0035】
また、前記共重合ポリエステル系樹脂は、紫外線安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、および不活性粒子からなる群より選択される1種以上の添加剤をさらに含み得る。
【0036】
具体的に、前記紫外線安定剤は、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、およびサリチル酸エステル系化合物からなる群より選択される1種以上であり、前記熱安定剤はヨウ素系化合物であり、前記酸化防止剤は、リン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤、または硫黄系酸化防止剤であり、前記不活性粒子はシリカや炭酸カリウムであり得るが、これに限定されるものではない。
【0037】
前記添加剤の含有量は、前記共重合ポリエステル系樹脂の総重量を基準に、0.5重量%~15重量%、1重量%~13重量%、1.2重量%~12重量%、1.5重量%~10重量%、1.7重量%~8重量%、または1.8重量%~7.5重量%であり得る。
【0038】
実現例によるポリエステル系フィルムは、燃料電池のガスケット用フィルムであり得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムは、燃料電池のサブガスケット用フィルムであり得る。
【0039】
前記ポリエステル系フィルムの前記式1による吸湿率は、0.25%以下であり得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による吸湿率は、0.23%以下、0.2%以下、0.18%以下、0.15%以下、0.13%以下、または0.1%以下であり得る。吸湿率が前記範囲を満足することにより、前記ポリエステル系フィルムの耐加水分解性に優れるので、優れた低吸湿性を有する。
【0040】
また、前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向のモジュラスは400kgf/mm2以下であり、前記第1方向に垂直な第2方向のモジュラスは550kgf/mm2以下であり得る。
【0041】
例えば、前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向のモジュラスは、390kgf/mm2以下、380kgf/mm2以下、350kgf/mm2以下、300kgf/mm2以下、または280kgf/mm2以下であり、150kgf/mm2~400kgf/mm2、170kgf/mm2~380kgf/mm2、200kgf/mm2~350kgf/mm2、220kgf/mm2~300kgf/mm2、または240kgf/mm2~280kgf/mm2であり得る。
【0042】
また、前記ポリエステル系フィルムの前記第1方向に垂直な第2方向のモジュラスは、535kgf/mm2以下、500kgf/mm2以下、450kgf/mm2以下、400kgf/mm2以下、380kgf/mm2以下、350kgf/mm2以下、または330kgf/mm2以下であり、200kgf/mm2~550kgf/mm2、200kgf/mm2~500kgf/mm2、200kgf/mm2~450kgf/mm2、220kgf/mm2380kgf/mm2、220kgf/mm2~350kgf/mm2、240kgf/mm2~330kgf/mm2、または260kgf/mm2~330kgf/mm2であり得る。
【0043】
第1方向および第2方向のモジュラスがそれぞれ前記範囲を満足することにより、耐熱性、耐寒性および耐薬品性のような耐久性に優れる。
【0044】
本明細書において、前記第1方向は、幅方向(TD)または長さ方向(MD)であり得る。具体的に、前記第1方向は長さ方向(MD)であり、前記第1方向に垂直な第2方向は幅方向(TD)であり得る。
【0045】
また、前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向の引張強度:前記第1方向に垂直な第2方向の引張強度の比は、0.8~1:1であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向の引張強度:前記第1方向に垂直な第2方向の引張強度の比は、0.81~1:1、0.8~0.95:1または0.82~0.94:1であり得る。第1方向および第2方向の引張強度の比が前記範囲を満足することにより、耐熱性および耐寒性のような耐久性に優れる。
【0046】
前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向の引張強度は、14kgf/mm2以上であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向の引張強度は、14.1kgf/mm2以上、14.2kgf/mm2以上または14.3kgf/mm2以上であり、14kgf/mm2~20kgf/mm2、14kgf/mm2~18kgf/mm2、14.2kgf/mm2~16kgf/mm2、または14.3kgf/mm2~15.8kgf/mm2であり得る。
【0047】
また、前記ポリエステル系フィルムの面内第1方向に垂直な第2方向の引張強度は、14kgf/mm2以上であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの第2方向の引張強度は、14.5kgf/mm2以上、15kgf/mm2以上、16kgf/mm2以上、または16.5kgf/mm2以上であり、14kgf/mm2~20kgf/mm2、14.5kgf/mm2~20kgf/mm2、15kgf/mm2~20kgf/mm2、16kgf/mm2~20kgf/mm2、16.5kgf/mm2~20kgf/mm2、16.5kgf/mm2~19kgf/mm2、16.5kgf/mm2~18.5kgf/mm2、または17kgf/mm2~18kgf/mm2であり得る。
【0048】
前記ポリエステル系フィルムの伸び維持率は70%以上であり得る。具体的に、前記ポリエステル系フィルムをPCT(Pressure Cooker Test、121℃、1.4気圧、RH100%)により72時間処理した後の伸び維持率は、71%以上、72%以上、80%以上、85%以上、90%以上、93%以上、または95%以上であり得る。伸び維持率が前記範囲を満足することにより、耐熱性および耐寒性のような耐久性に優れる。
【0049】
前記伸び維持率は、ASTM-D882(1997)により測定した破断伸び率を用いて計算した。具体的に、前記PCT前後に50mmのチャック間間隔および300m/分の引張速度で前記ポリエステル系フィルムの第1方向および第2方向のそれぞれについて、5回の破断伸び率を測定しその平均値を得て、下記式Aに従って伸び維持率を計算した。
【0050】
[式A]
前記ポリエステル系フィルムを動的機械分析(Dynamic Mechanical Analysis、DMA)で測定したガラス転移温度(Tg)は、100℃以上であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムを動的機械分析で測定したガラス転移温度(Tg)は、103℃以上、110℃以上、115℃以上、120℃以上、160℃以下、または150℃以下であり、100℃~160℃、105℃~155℃、110℃~150℃、115℃~160℃、115℃~150℃、115℃~140℃、120℃~160℃、120℃~150℃、または115℃~140℃であり得る。
【0051】
また、前記ポリエステル系フィルムを示差走査熱量計(Differential Scanning Calorimetry、DSC)で測定したガラス転移温度(Tg)は85℃以上であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムを示差走査熱量計で測定したガラス転移温度(Tg)は、86℃以上または88℃以上であり、85℃~150℃、85℃~130℃、88℃~120℃、または88℃~115℃であり得る。
【0052】
前記ポリエステル系フィルムを示差走査熱量計(DSC)で測定した溶融点(Tm)は250℃以上であり得る。例えば、前記ポリエステルフィルムを示差走査熱量計で測定した溶融点(Tm)は、253℃以上、255℃以上または260℃以上であり、250℃~300℃、255℃~295、255℃~290℃、260℃~285℃、または263℃~285℃であり得る。
【0053】
また、前記ポリエステル系フィルムの固有粘度(IV)は、0.6dl/g以上であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの固有粘度(IV)は、0.62dl/g以上、0.65dl/g以上、0.68dl/g以上、0.7dl/g以上、または0.75dl/g以上であり得る。
【0054】
前記ポリエステル系フィルムは、150℃の温度にて30分間の熱処理の際、面内第1方向の熱収縮率は3%以下であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムを150℃の温度にて30分間の熱処理の際、面内第1方向の熱収縮率は、2.5%以下、2%以下、1.5%以下、または1.2%以下であり得る。
【0055】
また、前記ポリエステル系フィルムは、150℃の温度にて30分間の熱処理の際、前記第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率は2%以下であり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムを150℃の温度にて30分間の熱処理の際、前記第1方向に垂直な第2方向の熱収縮率は、1.5%以下、1%以下、0.8%以下、0.5%以下、0.3%以下であり得る。
【0056】
具体的に、前記熱収縮率は、前記ポリエステル系フィルムを150℃のオーブンで30分間熱処理した後、常温にて第1方向および前記第1方向に垂直な第2方向のそれぞれの長さ(mm)を測定して得られる。より具体的に、下記式2および式3に従って、MD方向の熱収縮率およびTD方向の熱収縮率を計算し得る。
【0057】
[式2]
[式3]
前記式2および式3において、
T
MDは、MD方向の熱収縮率(%)であり、L
MD1は、初期フィルムのMD方向の長さ(mm)であり、L
MD2は、熱収縮後のMD方向の長さ(mm)であり、
T
TDは、TD方向の熱収縮率(%)であり、L
TD1は、初期フィルムのTD方向の長さ(mm)であり、L
TD2は、熱収縮後のTD方向の長さ(mm)である。
【0058】
前記ポリエステル系フィルムの厚さは10μm~150μmであり得る。例えば、前記ポリエステル系フィルムの厚さは、10μm~145μm、10μm~130μm、15μm~120μm、15μm~100μm、20μm~80μm、または20μm~60μmであり得る。
【0059】
[ポリエステル系フィルムの製造方法]
他の実現例によるポリエステル系フィルムの製造方法は、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する段階と、前記未延伸シートを70℃~100℃にて第1方向に2倍~5倍延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に2倍~5倍延伸して延伸シートを製造する段階と、前記延伸シートを200℃~260℃にて熱固定する段階と、前記熱固定されたシートを弛緩してポリエステル系フィルムを製造する段階とを含み、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、前記ポリエステル系フィルムの前記式1による吸湿率が0.25%以下である。
【0060】
前記ポリエステル系フィルムの製造方法は、延伸および弛緩段階の順序、温度、延伸比および弛緩率を調整することにより、柔軟性、密着性、耐熱性、耐久性、および耐加水分解性のいずれにも優れたポリエステル系フィルムを提供し得る。
【0061】
まず、ジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を溶融押出して未延伸シートを製造する。
【0062】
前記共重合ポリエステル系樹脂に関する説明は前術の通りである。
【0063】
また、前記共重合ポリエステル系樹脂はチップ状であり得る。具体的に、前記ジオール成分と前記ジカルボン酸成分との混合物を、260℃~320℃、270℃~310℃または270℃~295℃にて2時間~8時間、3時間~7時間、または4時間~7時間反応させて、チップ状の共重合ポリエステル系樹脂を製造し得る。
【0064】
前記共重合ポリエステル系樹脂をT-ダイ(T-die)より溶融押出した後、冷却して未延伸シートが得られる。
【0065】
前記溶融押出段階は、Tm+5℃~Tm+70℃、Tm+5℃~Tm+50℃、またはTm+7℃~Tm+35℃の温度にて行われ、前記冷却段階は、Tg-120℃~Tg+20℃、Tg-110℃~Tg+10℃、Tg-105℃~Tg-30℃、Tg-105℃~Tg-50℃、Tg-105℃~Tg-65℃、Tg-105℃~Tg-80℃の温度にて行われ得る。
【0066】
例えば、前記溶融押出温度は、260℃~320℃、270℃~310℃、または270℃~295℃であり、前記冷却温度は、-20℃~100℃、0℃~90℃、5℃~ 75℃、10℃~60℃、10℃~50℃、または15℃~45℃であり得る。溶融押出温度が前記範囲を満足することにより、共重合ポリエステル系樹脂の溶融がスムーズで、かつ、押出物の粘度が適切に維持および制御され得る。
【0067】
その後、前記未延伸シートを70℃~100℃にて第1方向に2倍~5倍延延伸し、前記第1方向に垂直な第2方向に2倍~5倍延伸して、延伸シートを製造する。
【0068】
具体的に、前記未延伸シートを10m/分~110m/分、20m/分~90m/分、または20m/分~70m/分の速度で移送しながら予熱した後、第1方向に1次延伸する。
【0069】
前記予熱段階は、70℃~120℃にて0.01分~1分間行われ得る。例えば、前記予熱温度は、72℃~120℃、75℃~115℃、または80℃~100℃であり、前記予熱時間は、0.02分~1分、0.05分~0.5分、または0.08分~0.2分であり得る。
【0070】
また、前記1次延伸は、75℃~100℃の温度にて2倍~5倍の伸び率で行われ得る。例えば、前記1次延伸段階は、75℃~98℃、75℃~95℃、80℃~95℃、または85℃~93℃の温度にて2倍~4.8倍、2倍~4.5倍、2.5倍 ~4倍、2.5倍~3.5倍、または2.8倍~3.3倍の伸び率で行われ得る。1次延伸の温度および伸び率が前記範囲を満足することにより、耐熱性および耐加水分解性を向上させ得る。
【0071】
他の実現例によると、前記1次延伸の前に前記予熱された未延伸シートから40mm~150mmの位置で遠赤外線ヒーター(radiation heater、R/H)を用いて熱を加える得る。例えば、前記遠赤外線ヒーターは、前記予熱された未延伸シートの一面から、55mm~150mm、70mm~150mm、70mm~100mm、85mm~120mm、または100mm~150mm離れた位置にあり、前記遠赤外線ヒーターは、650℃~800℃、700℃~800℃、または730℃~780℃で熱を加えられる。
【0072】
また、前記1次延伸の後、前記第1方向に垂直な第2方向に2次延伸する。前記2次延伸は、前記予熱温度よりも10℃~30℃以上高い温度にて2倍~5倍の伸び率で行われ得る。例えば、前記2次延伸は、100℃~140℃、110℃~130℃、または120℃~130℃の温度にて2倍~4.8倍、2.5倍~4.5倍、2.5倍~4倍、または2.8倍~4倍の伸び率で行われ得る。
【0073】
前記第1方向の延伸比(d1)と前記第2方向の延伸比(d2)との比(d1/d2)は、0.5~1であり得る。例えば、前記第1方向の延伸比(d1)と前記第2方向の延伸比(d2)との比(d1/d2)は、0.5~0.9または0.6~0.8であり得る。第1方向および第2方向の延伸比が前記範囲を満足することにより、耐加水分解性および低吸湿性を向上させ得る。
【0074】
また、前記2次延伸の前にコーティング段階がさらに行われ得る。具体的に、前記コーティング段階は、ポリエステルフィルムに帯電防止等のような機能性を付与し得る段階として、インラインコーティングにより行われ得るが、これに限定されるものではない。
【0075】
その後、前記延伸シートを200℃~260℃にて熱固定する。
【0076】
具体的に、前記熱固定はアニーリングであり、200℃~260℃にて0.01分~1分間行われ得る。例えば、前記熱固定段階は、205℃~260℃、210℃~255℃、225℃~250℃、238℃~248℃、または238℃~245℃の温度にて、0.01分~0.8分、0.05分~0.5分、0.08分~0.2分、または0.08分~0.15分間行われ得る。熱固定段階の温度および時間が前記範囲を満足することにより、ポリエステル系フィルムの熱収縮率を容易に調整し得る。
【0077】
最後に、前記熱固定されたシートを弛緩してポリエステル系フィルムを製造する。
【0078】
具体的に、前記熱固定されたシートを第1方向または前記第1方向に垂直な第2方向に弛緩し得る。
【0079】
例えば、前記熱固定されたシートを第1方向または前記第1方向に垂直な第2方向に弛緩する場合、前記弛緩段階は、100℃~180℃または110℃~175℃の温度にて、0.5%~5%、0.8%~4%、0.8%~3.5%、または0.8%~3.2%の弛緩率で行われ得る。
【0080】
または、前記熱固定されたシートを第1方向に1次弛緩した後、第2方向に2次弛緩するか、前記熱固定されたシートを第2方向に1次弛緩した後、第1方向に2次弛緩し得る。例えば、前記熱固定されたシートをTD方向に1次弛緩した後、MD方向に2次弛緩し得る。
【0081】
具体的に、前記弛緩段階は、前記第2方向に1%~10%の弛緩率で1次弛緩され、前記第1方向に0.5%以上~2%未満の弛緩率で2次弛緩され得る。具体的に、前記熱固定されたシートを1次弛緩した後に2次弛緩する場合、前記1次弛緩段階は、150℃~200℃の温度にて1%~10%の弛緩率で行われ、前記2次弛緩段階は、110℃~190℃の温度にて、0.5%以上~2%未満の弛緩率で行われ得る。
【0082】
例えば、前記1次弛緩段階は、150℃~190℃、155℃~200℃、160℃~180℃、または165℃~175℃の温度にて、1%~9.5%、1%~9%、1.5%~8%、1.5%~7%、2%~6%、または2%~5%の弛緩率で行われ、前記2次弛緩段階は、110℃~185℃、110℃~180℃、110℃ ~170℃、115℃~150℃、115℃~140℃、または115℃~130℃の温度にて、0.5%以上~2%未満、0.5%~1.95%、0.7%~1.8%、0.85%~1.65%、0.9%~1.6%、0.9%~1.4%、または0.95%~1.2%の弛緩率で行われ得る。
【0083】
1次弛緩段階および2次弛緩段階の温度および弛緩率が前記範囲を満足することにより、耐熱性および耐加水分解性を向上させ得る。
【0084】
また、前記1次弛緩率:前記2次弛緩率の比は、1:0.1~1.0であり得る。例えば、前記1次弛緩率:前記2次弛緩率の比は、1:0.1~0.9、1:0.1~0.8、1:0.2~0.7、または1:0.25~0.65であり得る。前記1次弛緩率および前記2次弛緩率の比が前記範囲を満足することにより、耐熱性および耐加水分解性を最大化し得る。
【0085】
具体的に、前記2次弛緩段階は、2区間以上に分けて行うことができ、前記2次弛緩率は、前記各区間の弛緩率の合計であり得る。例えば、前記2次弛緩段階が4区間に分けて行われ、前記4区間の弛緩率がそれぞれ順次0%、0.5%、0.5%、1%で行われる場合、前記2次弛緩率は2%である。2次弛緩段階を前記のように区間を分けて行うことにより、弛緩率の調製がより容易であり、それによる耐熱性および耐加水分解性を最大化し得る。
【0086】
前記2次弛緩段階においてフィルムの移送速度は、前記1次弛緩段階においてフィルムの移送速度に比べ1%~10%遅くあり得る。例えば、前記2次弛緩段階においてフィルムの移送速度は、前記1次弛緩段階においてフィルムの移送速度に比べて2%~10%または2%~8%遅くあり得る。
【0087】
[膜-電極接合体]
また他の実現例による膜電極接合体は、電解質膜と、前記電解質膜の一面または両面の末端部を取り囲むサブガスケットとを含み、前記サブガスケットがジオールとジカルボン酸とが共重合された共重合ポリエステル系樹脂を含み、前記ジオールがシクロヘキサンジメタノールまたはその誘導体を含み、前記ジカルボン酸が70モル%~99モル%のテレフタル酸および1モル%~30モル%のイソフタル酸を含み、前記式1による吸湿率が0.25%以下である。
【0088】
具体的に、前記サブガスケットは、第1サブガスケットフィルムと第2サブガスケットフィルムとを含み得る。
【0089】
図2は、一実現例による膜電極接合体の斜視図を示すものである。具体的に、電解質膜140、前記電解質膜の両面に位置する第1電極150および第2電極160、前記第1電極の上部に位置する第1サブガスケットフィルム110、並びに前記第2電極の下部に位置する第2サブガスケットフィルム120からなる膜電極接合体100を例示している。
【0090】
図3は、一実現例による膜電極接合体の上面を示すものである。具体的に、
図3は、
図2の膜電極接合体の上面を示すものであり、中央部に位置する第1電極150および前記第1電極を取り囲む第1サブガスケットフィルム110が位置する。
【0091】
図4は、
図3の膜電極接合体をX-X'に沿って切断した断面図を示すものである。具体的に、
図4は、中央部に位置する電解質膜140、前記電解質膜の上部および下部にそれぞれ位置する第1電極150および第2電極160、前記電解質膜の両端の上部に位置する第1サブガスケットフィルム110、前記電解質膜の両端の下部に位置する第2サブガスケットフィルム120、前記第1サブガスケットフィルム110と前記第2サブガスケットフィルム120との間に介在する接着層130からなる膜電極接合体を例示している。
【0092】
実現例による膜電極接合体は、電解質膜の一面または両面の末端部を取り囲むサブガスケットを含むことにより、燃料電池の安定性および信頼性を向上させ得る。具体的に、前記サブガスケットは、前記電解質膜の一面または両面の末端部を取り囲んで密封することにより、燃料などが外部に漏れ出たり、空気などの他の物質と混合したりすることを効果的に防止し得る。また、電解質膜の吸湿性により膜電極接合体の性能が低下することを防止し得る。
【0093】
前記第1サブガスケットフィルムは、前述のポリエステル系フィルムであり得る。具体的に、前記第1サブガスケットフィルムおよび前記第2サブガスケットフィルムは、前述のポリエステル系フィルムであり、その成分および含有量が互いに同一または異なり得る。
【0094】
また、前記第1サブガスケットフィルムの厚さ:前記第2サブガスケットフィルムの厚さの比は、0.5~1.5:1であり得る。例えば、前記第1サブガスケットフィルムの厚さ:前記第2サブガスケットフィルムの厚さの比は、0.5~1.4:1、0.7~1.2:1、または0.9~1.1:1であり得る。
【0095】
前記接着層は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。具体的に、前記接着層は、アクリル系樹脂、シリコーン系樹脂およびウレタン系樹脂からなる群より選択される1種以上を含む樹脂組成物をコーティングして形成され得るが、これに限定されるものではない。
【0096】
また、前記接着層の厚さは5μm~80μmであり得る。例えば、前記接着層の厚さは、5μm~75μm、7μm~70μm、10μm~65μm、15μm~50μm、15μm~45μm、または15μm~30μmであり得る。
【0097】
前記サブガスケットの引張強度は105MPa以上であり得る。例えば、前記サブガスケットの引張強度は、108MPa以上、110MPa以上、115MPa以上、または120MPa以上であり得る。
【0098】
前記電解質膜は、燃料などを輸送したり、空気と直接混合したりしないように隔膜の役割をし得る。前記電解質膜は、パーフルオロスルホン酸系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリフェニレンオキシド系樹脂、ポリエチレンナフタレート系樹脂、ポリエステル系樹脂からなる群より選択される1種以上を含み得る。
【0099】
また、前記第1電極と第2電極とは互いに対向し、互いに同じ面積を有し得る。具体的に、前記第1電極および前記第2電極は、前記電解質膜の中央部において互いに対向して位置し、前記第1電極および前記第2電極は、それぞれ前記電解質膜の一面の60%~90%または65%~95%の面積と接し得る。
【0100】
前記第1電極は、アノード(anode)またはカソード(cathode)であり、前記第2電極はカソードまたはアノードであり得る。具体的に、前記第1電極はアノードであり、前記第2電極はカソードであり得る。
【0101】
また、前記膜電極接合体は、性能を向上させ得る触媒層および気体拡散層(gas diffusion layer)をさらに含み得る。前記触媒層および気体拡散層は、当業界の膜電極接合体に用いられるものであれば特に制限されない。
【0102】
(実施例)
前記内容を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。なお、下記実施例は本発明を例示するためのものであるのみ、実施例の範囲がこれらに限定されるものではない。
【0103】
[共重合ポリエステル系樹脂の製造]
(製造例1-1)
ジオール成分としてシクロヘキサンジメタノール(CHDM)100モル%、並びにジカルボン酸成分としてテレフタル酸(TPA)96モル%およびイソフタル酸(IPA)4モル%を混合し、285℃にて6時間反応させてチップ状の共重合ポリエステル系樹脂を製造した。
【0104】
(製造例1-2~1-6)
各々の構成および含有量を下記表1のように変化させたことを除いて、前記製造例1-1と同様の方法により、チップ状の共重合ポリエステル系樹脂を製造した。
【0105】
【0106】
[ポリエステル系フィルムの製造]
(実施例1)
前記で製造された製造例1-1の共重合ポリエステル系樹脂を押出機に投入して290℃にて溶融押出した後、25℃のキャスティングロールで冷却して未延伸シートを製造した。
【0107】
前記未延伸シートを30m/分の速度で移送しながら92℃で予熱し、前記予熱された未延伸シートを30m/分の速度で移送しながら、前記予熱された未延伸シートから80mmの位置で遠赤外線ヒーター(R/H)により750℃の熱を加えた。
【0108】
その後、前記未延伸シートを90℃にて3.1倍の伸び率でMD方向に1次延伸し、125℃にて3.9倍の伸び率でTD方向に2次延伸した後、240℃にて0.1分間熱固定した。
【0109】
その後、前記熱固定されたシートを170℃の温度および50m/分の移送速度でTD方向に3%の弛緩率で1次弛緩し、120℃の温度および50m/分の移送速度でMD方向に1.0%の弛緩率で2次弛緩して、厚さ25μmのポリエステル系フィルムを製造した。前記MD方向への2次弛緩は4区間に分けて行われ、前記4区間の弛緩率はそれぞれ0%、0%、0.5%、および0.5%であった。
【0110】
(実施例2および比較例1~4)
製造例1-1の代わりに、製造例1-2~1-6の共重合ポリエステル系樹脂を用いて、下記表2のような工程条件で行ったことを除いて、実施例1と同様の方法によりポリエステル系フィルムを製造した。
【0111】
なお、製造例1-6の共重合ポリエステル系樹脂を用いた比較例4の場合、製膜が不可能だったため、フィルムを製造することができなかった。
【0112】
【0113】
(実験例)
(実験例1:ガラス転移温度(Tg)および溶融点(Tm))
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルム(10mg)について、示差走査熱量計(Q2000、製造社:TAインスツルメント)を用いてガラス転移温度(Tg)および溶融点(Tm)を測定した。
【0114】
(実験例2:固有粘度(IV))
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルム(10mg)をそれぞれ100℃のo-クロロフェノール(Ortho-Chlorophenol)に溶解した後、35℃の恒温槽にてオーストバルト(Ostwald)粘度計により試料の落下時間を求めて相対粘度を測定した。得られた相対粘度は、相対粘度-固有粘度換算表に基づいて固有粘度(IV)に変換しており、この際、小数点第3位を四捨五入した値を下記表3に記載した。
【0115】
(実験例3:吸湿性)
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥した後、フィルムの重さ(A)を測定し、前記条件で乾燥されたフィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置してからフィルムの重さ(B)を測定した後、下記式1に従って吸湿率を計算した。
【0116】
[式1]
前記式1において、
Aは、前記フィルムを50℃のオーブンで24時間乾燥させた後測定したフィルムの重さ(g)であり、Bは、前記条件で乾燥されたフィルムを25℃の温度および100%RHの湿度条件で24時間放置した後測定したフィルムの重さ(g)である。
【0117】
(実験例4:伸び維持率)
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルムについて、PCT(Pressure Cooker Test、121℃、1.4気圧、RH100%)で72時間処理したときの伸び維持率を測定した。
【0118】
具体的に、前記PCT前後にASTM-D882(1997)に基づいて、50mmのチャック間間隔および300m/分の引張速度で前記ポリエステル系フィルムの第1方向および第2方向のそれぞれについて5回の破断伸び率を測定しその平均値を得て、下記式Aに従って伸び維持率を計算した。
【0119】
[式A]
(実験例5:モジュラス)
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルムについて、KS B 5521に基づいて、MDおよびTD方向のモジュラスをそれぞれ測定した。
【0120】
(実験例6:熱収縮率)
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルムを縦100mmおよび横100mmに切断し、150℃のオーブンで30分間熱処理した後、常温にてTD方向およびMD方向それぞれの長さ(mm)を測定し、下記式2および式3を用いて熱収縮率を計算した。
【0121】
[式2]
[式3]
前記式2および式3において、
T
MDは、MD方向の熱収縮率(%)であり、L
MD1は、初期フィルムのMD方向の長さ(mm)であり、L
MD2は、熱収縮後のMD方向の長さ(mm)であり、
T
TDは、TD方向の熱収縮率(%)であり、L
TD1は、初期フィルムのTD方向の長さ(mm)であり、L
TD2は、熱収縮後のTD方向の長さ(mm)である。
【0122】
(実験例7:引張強度)
前記実施例1、2、および比較例1~3のフィルムを長さ100mmおよび幅15mmに切断して、ASTM D 882に基づきINSTRON社の万能試験機(4206-001、製造社:UTM)を用いて、チャック間間隔が50mmとなるように装着し、引張速度500mm/分の速度で実験した後、設備に内蔵されたプログラムにより引張強度を測定した。
【0123】
【0124】
【0125】
前記表3および表4に示すように、実施例1および2のポリエステル系フィルムは、比較例1~3のフィルムに比べて耐加水分解性および耐久性のいずれにも優れた結果を示した。
【0126】
具体的に、実施例1および2のポリエステル系フィルムは、固有粘度、吸湿性、伸び維持率、モジュラス、熱収縮率、および引張強度がいずれも好ましい範囲を満足することにより、耐熱性のような耐久性に優れ、耐加水分解性に優れるので、優れた低吸湿性を有する。
【符号の説明】
【0127】
1:燃料電池
10:燃料電池単位セル
100:膜電極接合体
200:セパレータ
300:エンドプレート(end plate)
110:第1サブガスケットフィルム
120:第2サブガスケットフィルム
130:接着層
140:電解質膜
150:第1電極
160:第2電極
【国際調査報告】