(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】デジタルセラピューティクスを用いてうつ病を治療するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/70 20180101AFI20240104BHJP
【FI】
G16H20/70
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540211
(86)(22)【出願日】2022-01-05
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 US2022011328
(87)【国際公開番号】W WO2022150398
(87)【国際公開日】2022-07-14
(32)【優先日】2021-01-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】523241988
【氏名又は名称】オオツカ アメリカ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】OTSUKA AMERICA INC.
【住所又は居所原語表記】One Embarcadero Center Suite 2020 San Francisco, California 94111 US
(71)【出願人】
【識別番号】521170198
【氏名又は名称】クリック セラピューティクス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Click Therapeutics, Inc.
【住所又は居所原語表記】80 White Street, 3rd Floor New York NEW YORK 10013 UNITED STATES
(74)【代理人】
【識別番号】100126572
【氏名又は名称】村越 智史
(72)【発明者】
【氏名】フォーブス,アインスリー
(72)【発明者】
【氏名】ドハーティ,ジョン
(72)【発明者】
【氏名】イアコヴィエッロ,ブライアン
(72)【発明者】
【氏名】カーペンター,ダニエル クリフトン
(72)【発明者】
【氏名】ワード,モニカ ジェーン
【テーマコード(参考)】
5L099
【Fターム(参考)】
5L099AA04
5L099AA15
(57)【要約】
デジタルセラピューティクスを用いてうつ病を治療するシステムおよび方法。デジタルセラピューティクスは、スケジュールに従って記憶課題練習を提供し、別のスケジュールに従って心理療法レッスンを提供するように構成するとしてよい。心理療法レッスンは、感情調節、行動活性化、認知再構築の少なくとも1つを通じて治療的介入を行うように構成されているアニメーション動画を含むとしてよい。上記2つのスケジュールは6週間の治療期間を定めているとしてよい。記憶課題練習は感情顔記憶課題(EFMT)練習を含むとしてよく、心理療法レッスンは認知行動療法(CBT)レッスンを含むとしてよい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の記憶課題練習および複数の心理療法レッスンを含むデジタルセラピューティクスによって気分障害を治療する治療装置であって、前記治療装置は
プロセッサを備え、
当該プロセッサは、
前記デジタルセラピューティクスの実施期間および実施タイミングを規定する治療スケジュールにアクセスし、
前記治療スケジュールの第1の日に、前記複数の記憶課題練習の中から、前記第1の日に実施すべき第1の記憶課題練習を特定し、
前記第1の記憶課題練習に関連付けられている第1の複数の表情画像であって、それぞれが対応する感情を伝えるように構成されている第1の複数の表情画像にアクセスし、
表示装置を介して、前記第1の複数の表情画像を、前記気分障害の治療を受けている患者に順次表示し、
前記第1の複数の表情画像のうち第1の表情画像の感情が、前記第1の複数の表情画像のうち第2の表情画像の感情と一致するかどうかについての入力を提供するように促すプロンプトを前記患者に表示し、
前記第1の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像および前記第2の表情画像のそれぞれの感情が互いに一致するかどうかを示す前記患者の応答を受信し、
前記治療スケジュールの第2の日に、前記複数の心理療法レッスンの中から、前記第2の日に実施される心理療法レッスンを特定し、
過去の1または複数の心理療法レッスンを繰り返す選択肢と共に前記心理療法レッスンを表示する
ようプログラムされている、治療装置。
【請求項2】
前記治療スケジュールは、前記複数の記憶課題練習のための第1の治療スケジュールと、前記心理療法レッスンのための第2の治療スケジュールとを含む、請求項1に記載の治療装置。
【請求項3】
前記第2の日は、前記第1の日の直後の日である、請求項1に記載の治療装置。
【請求項4】
前記第2の日は、前記第1の日の直前の日である、請求項1に記載の治療装置。
【請求項5】
前記治療スケジュールは少なくとも6週間の治療期間を規定する、請求項1に記載の治療装置。
【請求項6】
前記治療スケジュールは、治療期間中にわたって、記憶課題練習および心理療法レッスンを1日毎に交互に行うよう規定する、請求項1に記載の治療装置。
【請求項7】
うつ病を治療する方法であって、
第1のスケジュールに従って記憶課題練習を提供することと、
第2のスケジュールに従って心理療法レッスンを提供することと
を備え、
前記記憶課題練習を提供することは、
うつ病の治療を受けている患者に、第1の複数の表情画像を順次表示することであって、前記第1の複数の表情画像の各々は、対応する感情を伝えるように構成されている、順次表示することと、
前記第1の複数の表情画像のうち第1の表情画像に対応する感情が、前記第1の複数の表情画像のうち第2の表情画像に対応する感情と一致するかどうかを示す入力を提供するように前記患者に促すことと、
前記第1の複数の表情画像のうちの前記第1の表情画像および前記第2の表情画像のそれぞれの感情が互いに一致するかどうかを示す前記患者の応答を受信することとを含み、
前記心理療法レッスンを提供することは、感情調節、行動活性化および認知再構築の少なくとも1つを通じて治療的介入を行うように構成されたアニメーションビデオを前記患者に表示することを含む、
方法。
【請求項8】
前記第1のスケジュールおよび前記第2のスケジュールは、前記記憶課題練習および前記心理療法レッスンをそれぞれ少なくとも週3日提供することを含み、
前記記憶課題練習および前記心理療法レッスンは、曜日毎に交互に提供される、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記心理療法レッスンはそれぞれ、約3分から5分の認知行動療法レッスンを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記心理療法レッスンのうち1または複数が、前記患者が完了すべき活動または課題を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記第2のスケジュールに従って前記心理療法レッスンを提供することは、
6週間の治療期間のうち第1の週に感情調節を通じて治療的介入を行うように構成された第1の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第2の週に行動活性化を通じて治療的介入を行うように構成された第2の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第3の週に認知再構築を通じて治療的介入を提供するように構成された第3の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第4の週に感情調節による治療的介入を行うように構成された第4の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第5の週に行動活性化による治療的介入を行うように構成された第5の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第6の週に認知再構築による治療的介入を行うように構成された第6の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記心理療法レッスンのうち少なくとも1つが、モンゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度またはハミルトンうつ病評価尺度で測定するうつ病の重症度を軽減するように構成されている、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の複数の表情画像は、顔の表情を含み、
前記第1の複数の表情画像のそれぞれの感情は、幸福、心配、怒り、悲しみ、驚き、または嫌悪のうちの少なくとも1つを表すように構成される、
請求項7に記載の方法。
【請求項14】
前記第1のスケジュールに従って前記記憶課題練習を提供することはさらに、
前記患者の応答が正答かどうかに少なくとも部分的に基づいてスコアを決定することを含む、
請求項7に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のスケジュールに従って前記記憶課題練習を提供することはさらに、
前記患者に第2の複数の表情画像を順次表示することであって、前記第2の複数の表情画像のそれぞれは対応する感情を伝えるように構成されている、順次表示することと、
前記第2の複数の表情画像のうち第1の表情画像の感情が、前記第2の複数の表情画像のうち第2の表情画像の感情と一致するか否かを示す入力を提供するように前記患者に促すことと、
を含み、
前記第2の複数の表情画像のうち前記第2の表情画像は、前記第2の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像よりもN枚前の画像である、
請求項14に記載の方法。
【請求項16】
Nの値は、前記第1の複数の表情画像に関する前記患者の応答が正答であったかどうかに少なくとも部分的に基づいて調整されるよう構成されている整数である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第2の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像および前記第2の表情画像はそれぞれ、前記第1の複数の表情画像に関する前記患者の応答が正答であったかどうかに少なくとも部分的に基づいて調整されるように構成されている感情強度が対応付けられている、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のスケジュールおよび前記第2のスケジュールは、6週間の治療期間を規定している、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
うつ病を治療する治療コンテンツをレンダリングする命令を格納するコンピュータ可読媒体であって、前記命令は、複数の処理を実行するべく1または複数の処理デバイスによって実行可能であり、前記複数の処理は、
第1のスケジュールに従って記憶課題練習を提供することと、第2のスケジュールに従って心理療法レッスンを提供することとを含み、前記記憶課題練習を提供することは、
うつ病の治療を受けている患者に、第1の複数の表情画像を順次表示することであって、前記第1の複数の表情画像の各々は、対応する感情を伝えるように構成されている、順次表示することと、
前記第1の複数の表情画像のうち第1の表情画像に対応する感情が、前記第1の複数の表情画像のうち第2の表情画像に対応する感情と一致するかどうかを示す入力を提供するように前記患者に促すことと、
前記第1の複数の表情画像のうちの前記第1の表情画像および前記第2の表情画像のそれぞれの感情が互いに一致するかどうかを示す前記患者の応答を受信することと
を含み、
前記心理療法レッスンを提供することは、感情調節、行動活性化および認知再構築の少なくとも1つを通じて治療的介入を行うように構成されたアニメーションビデオを前記患者に表示することを含む、
コンピュータ可読媒体。
【請求項20】
前記第1のスケジュールおよび前記第2のスケジュールはいずれも、前記記憶課題練習および前記心理療法レッスンをそれぞれ週3日提供することを含み、
前記記憶課題練習および前記心理療法レッスンは、曜日毎に交互に提供される、
請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項21】
前記心理療法レッスンはそれぞれ、約3分から5分の認知行動療法を含む、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項22】
前記心理療法レッスンのうち1または複数が、前記患者が完了すべき活動または課題を含む、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項23】
前記第2のスケジュールに従って前記心理療法レッスンを提供することは、
6週間の治療期間のうち第1の週に感情調節を通じて治療的介入を行うように構成された第1の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第2の週に行動活性化を通じて治療的介入を行うように構成された第2の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第3の週に認知再構築を通じて治療的介入を提供するように構成された第3の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第4の週に感情調節による治療的介入を行うように構成された第4の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第5の週に行動活性化による治療的介入を行うように構成された第5の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、
前記6週間の治療期間のうち第6の週に認知再構築による治療的介入を行うように構成された第6の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることとを含む、
請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項24】
前記心理療法レッスンのうち少なくとも1つが、モンゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度またはハミルトンうつ病評価尺度で測定するうつ病の重症度を軽減するように構成されている、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項25】
前記第1の複数の表情画像は、顔の表情を含み、
前記第1の複数の表情画像のそれぞれの感情は、幸福、心配、怒り、悲しみ、驚き、または嫌悪のうちの1つを表すように構成される、
請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項26】
前記第1のスケジュールに従って前記記憶課題練習を提供することはさらに、前記患者の応答が正答かどうかに少なくとも部分的に基づいてスコアを決定することを含む、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項27】
前記第1のスケジュールに従って前記記憶課題練習を提供することはさらに、
前記患者に第2の複数の表情画像を順次表示することであって、前記第2の複数の表情画像のそれぞれは対応する感情を伝えるように構成されている、順次表示することと、
前記第2の複数の表情画像のうち第1の表情画像の感情が、前記第2の複数の表情画像のうち第2の表情画像の感情と一致するか否かを示す入力を提供するように前記患者に促すことと、
を含み、
前記第2の複数の表情画像のうち前記第2の表情画像は、前記第2の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像よりもN枚前の画像である、
請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項28】
Nの値は、前記第1の複数の表情画像に関する前記患者の応答が正答であったかどうかに少なくとも部分的に基づいて調整されるよう構成されている整数である、請求項27に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項29】
前記第2の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像および前記第2の表情画像はそれぞれ、前記第1の複数の表情画像に関する前記患者の応答が正答であったかどうかに少なくとも部分的に基づいて調整されるように構成されている感情強度が対応付けられている、請求項27に記載のコンピュータ可読媒体。
【請求項30】
前記第1のスケジュールおよび前記第2のスケジュールは6週間の治療期間を規定する、請求項19に記載のコンピュータ可読媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国特許出願第63/176,697号(出願日2021年4月19日)および米国特許出願第63/134,099号(出願日2021年1月5日)に対して米国特許法第119条第(e)項に基づき優先権を主張するものであり、その全内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
気分障害は、精神状態または感情状態が歪んでいるか、または、個人の実際の状況と矛盾している状態に一般的に当てはまる障害である。気分障害を抱えると、重症度にもよるが、仕事でも人付き合いでも上手く出来なくなることがある。気分障害の例としては、大うつ病性障害(MDD)、双極性障害、季節性感情障害、周期性障害、持続性うつ病性障害(ディスチミア)、崩壊性気分調節障害、医学的疾患に関連したうつ病、薬物使用または投薬によって誘発されたうつ病などが挙げられる。
【0003】
MDDを含む気分障害と診断された人は、持続的な抑うつ気分、楽しいことへの興味の減退、罪悪感または無価値感、気力の欠如、集中力の低下、食欲の変化、精神運動興奮、睡眠障害、自殺念慮などがみられる。これらの症状は、人の健康全般に深刻な影響を及ぼす可能性がある。実際、MDDは、障害によって失われる総年数という点で、世界的に障害の主要な原因であると考えられている。いくつかの研究によると、米国におけるうつ病関連の支出は数千億ドルにのぼり、雇用主は直接的に多大な医療費を支払うだけでなく、欠勤、在勤、障害による多大な損失を被っている。うつ病の治療にはいくつかオプションがあるが、治療成績を改善する必要性は常にある。さらに、MDD等の気分障害と診断された患者の多くは、標準的な治療を受けるためにはさまざまな課題があることから適切な治療を受けていない。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の主題には、うつ病、特に大うつ病性障害(MDD)などの気分障害の治療のために、デジタルセラピューティクス(「DTx」)を介して治療コンテンツを提供するシステムおよび方法が含まれる。治療用コンテンツには、記憶課題練習、心理療法レッスン、および/または、その他のコンテンツが含まれるとしてよい。記憶課題練習には、うつ病の治療を受けている患者に2以上の表情画像を順次表示することが含まれるとしてよい。表情画像は、特定の感情を描写するように構成し得る。患者は、表示された表情画像によって描かれたそれぞれの感情が互いに一致するかどうかを判断するよう促されることがある。それぞれの感情が一致するかどうかを示す患者の応答を受け取るとしてよい。
【0005】
心理療法レッスンは、動画(特にアニメーション動画)、音声(歌、語りなど)、触覚コンテンツなどのコンテンツとしてエンコードすることができる。心理療法レッスンの内容は、感情調節(ER)、行動活性化(BA)、認知再構築(CR)の少なくとも1つを通じて治療的介入を行うように構成されるとしてよい。
【0006】
一実施形態によれば、治療コンテンツは治療スケジュールに従って提供する。治療スケジュールでは、治療期間(治療を実施する期間)およびデジタルセラピューティクスのタイミング(いつ提供するか)を定義することができる。例えば、記憶課題練習は、治療スケジュールに従って提供するとしてよい。心理療法レッスンも同様に、治療スケジュールに従って提供するとしてよい。記憶課題練習の治療スケジュールと同じであってもよいし、異なるとしてもよい。言い換えれば、記憶課題練習および心理療法レッスンの両方の期間および/またはタイミングは、一つの治療スケジュールによって定めるとしてもよいし、第1の治療スケジュールが記憶課題練習の第1の期間およびタイミングを定義し、別の第2の治療スケジュールが心理療法レッスンの第2の期間およびタイミングを定義してもよい。
【0007】
記憶課題練習および心理療法レッスンの治療スケジュール(一つのスケジュールであれ、別々のスケジュールであれ)は、例えば6週間の治療期間など、特定の治療期間を定めるとしてよい。
【0008】
1または複数の実施形態において、記憶課題練習は感情顔記憶課題(EFMT)練習を含むとしてよく、心理療法レッスンは認知行動療法(CBT)レッスンを含むとしてよい。EFMT練習およびCBTレッスンはそれぞれ、治療期間中においてさまざまな頻度(週3日、1日毎など)で提供するとしてよい。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】さまざまな実施形態による、うつ病を治療するためのデジタルセラピューティクスの一例のシステム図である。
【0010】
【
図2】さまざまな実施形態による、セラピューティクスを介して治療コンテンツを配信するプロセスの一例である。
【0011】
【
図3A】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【
図3B】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【
図3C】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【
図4A】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【
図4B】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【
図5A】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【
図5B】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスによってレンダリングされた心理療法レッスンの画像の例である。
【0012】
【
図6】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスを利用して治療コンテンツを配信するための治療スケジュールの一例を示す。
【0013】
【
図7】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスを利用して治療コンテンツを配信するシステムの一例を示す図である。
【0014】
【
図8】さまざまな実施形態に係る、デジタルセラピューティクスを利用して治療コンテンツを配信するための1以上の装置のシステム構成要素の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書で開示する主題は概して、デジタルセラピューティクス(DTx)に関する。DTxとは、コンピュータ読み取り可能形式にエンコードされた治療用コンテンツを使用することで気分障害などの障害を治療することを指す。
【0016】
MDDなどの気分障害と診断された人(本明細書では「患者」ともいう)は、負の感情および情動が持続することがある。この症状は、感じ方、考え方、行動に影響を及ぼし、さまざまな感情的および身体的問題を引き起こす可能性がある。仕事、学校、人付き合いおよび/または恋愛など、通常の日常生活に支障をきたすこともある。うつ病の症状は、周期的なエピソードにおいて認められることがあり、エピソードは毎日、毎週、毎月等の間隔で起こり得る。症状は、これらに限定されないが(他に列挙されているものが限定的であることを意味するものではない)、悲壮感または絶望感、怒りの爆発、過敏性、欲求不満、休養または趣味に対する興味の喪失または喜びの喪失、不眠または過度の睡眠を含む睡眠障害、疲労感および気力不足、食欲減退および/または体重減少、食欲増進および/または体重増加、不安、焦燥、または、落ち着きのなさ、思考、会話、または体の動きの鈍化、無価値感または罪悪感、過去の失敗への固執、または、自己非難、思考困難、集中困難、意思決定困難、および/または、記憶困難、頻繁に、または、繰り返し死または自殺を考えてしまう、および/または、原因不明の体の不調を含む。
【0017】
本明細書に開示する実施形態によれば、DTxは、電子コンテンツを配信し、患者と当該電子コンテンツとの間のやり取りを受信し、および/または、患者の気分障害を治療するための他の操作を実行するように、1または複数のコンピュータ装置をプログラムする電子コンテンツおよび/または命令を含むとしてよい。DTxはこのように、1または複数のコンピュータ装置を介するなど、さまざまな方法で患者に配信することができる。1または複数のコンピュータ装置は、アプリケーションサーバー、ユーザーデバイス、および/または、DTxまたはその一部がプログラムされた他の装置を含むとしてよい。
【0018】
特に、本明細書で説明するDTxの機能は、ユーザーデバイス、アプリケーションサーバー、または、治療デバイスおよびアプリケーションサーバーの両方で実行されるとしてよい。ユーザーデバイスは一般的に、臨床医などのユーザーおよび/または患者によって操作される。一部の実施形態では、ユーザーデバイスは、コンピュータプログラム命令でプログラムされた患者のモバイル装置および/または他の装置を含むことができる。一部の実施形態では、ユーザーデバイスは、アプリケーションサーバーによって公開されたアプリケーションプログラミングインターフェース(API)を介して、DTxの一部またはすべての機能にアクセスすることができる。
【0019】
一部の実施形態では、DTxは、特に気分障害を治療するために調整された治療コンテンツをレンダリングして処理するように構成されている。治療コンテンツは、患者ごとに個別に調整するとしてよい。一部の実施形態において、患者に提供される予定の特定の治療コンテンツは、治療コンテンツのデータベースから取得する。患者の経過に応じて、異なる治療コンテンツが選択されて当該患者に提供される。一部の実施形態では、治療コンテンツ、および、治療コンテンツに対して患者が提供するフィードバックは、機密情報である患者の健康データへの不正アクセスを防止するために暗号化されるとしてよい。さらに、治療コンテンツによっては患者がアクセスできない時間帯もある。これによって、特定の患者を対象としている治療コンテンツが適切なタイミングで当該患者に提供されるようになる。
【0020】
治療コンテンツには、視覚、聴覚、触覚、嗅覚の要素を、個別または組み合わせて含めることができる。さらに、治療コンテンツは、患者からの入力や応答を促すインタラクティブ型であってもよい。インタラクティブ型治療コンテンツはさらに、患者が装着した生体センサから生体情報(脈拍、血圧、脈拍-酸素、呼吸数など)を取得する、(コンピュータビジョン処理を使用するなどして)顔の表情をモニタリングして感情認識を行う、(患者が治療コンテンツに集中しているかどうかを判断することなどを目的として)視線追跡を行うなどして、受動的にフィードバックを得ることができる。治療用コンテンツは、予め定められた治療スケジュールに従って患者に送達される(または患者が消化する)ように構成され得る。このスケジュールは「養生レジメン」とも呼ばれ得る。DTxは、患者の医療提供者(HCP)によって処方されるか、および/または「市販薬」として製造されるとしてよい。DTxは、ネットワークサーバー、デスクトップコンピューター、ラップトップ、タブレット、スマートフォン等のコンピューティングデバイスなどの1または複数のコンピューティングデバイス上で実行される、ソフトウェアアプリまたはその他の種類のソフトウェアモジュールとして実装されてもよい。治療コンテンツは、モニター、タッチスクリーン、スピーカー等、コンピューティングデバイスの出力コンポーネントを使用してレンダリングすることができる。
【0021】
DTxの治療コンテンツは、MDD等の気分障害の単独治療として、または抗うつ療法(ADT)等の他種類の治療の補助として提供されるとしてよい。ADTの例を挙げると、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害薬(SNRI)、および、ノルエピネフリン・ドパミン再取り込み阻害薬(NDRI)がある。SSRIには、エスシタロプラム、シタロプラム、フルオキセチン、パロキセチン、セルトラリンなどがある。SNRIには、デュロキセチン、ベンラファキシンER/XR、デスベンラファキシンなどがある。NDRIとしては、ブプロピオンXL/SRがある。
【0022】
うつ病は、患者の神経結合が変化する疾患である。患者には、記憶課題練習と心理療法レッスンとを組み合わせて実施するが、認知制御ネットワークおよび感情処理ネットワークを対象とし、適切な神経結合を回復させるように構成されている。本明細書に記載している技術は、記憶課題練習による神経機能の改善と、改善した神経機能を利用するように患者に働きかけるよう特別にデザインされた心理療法レッスンによる神経機能のさらなる改善とを共に対象とする組み合わせ治療という点で、既存の気分障害治療を改善する。したがって、この組み合わせ療法は、記憶課題練習のみを実施した場合より治療効果が大きい。さらに、DTxによれば、DTxが患者のデバイスに実装される実施形態では、治療デバイスとバックエンドアプリケーションサーバーとの間のリモートネットワーク接続を介して、または、リモートネットワーク接続のないオフラインモードで、治療介入が容易になる。DTxはさらに、あらゆる社会経済的なバックグラウンドの患者へも、従来の気分障害治療を受けることができない患者にも提供することができる。したがって、あらゆる階層の人々が、気分障害が原因となる日々の問題を克服できる可能性がある。
【0023】
図1は、MDDなどの気分障害の治療のための治療コンテンツ102を含むDTx100の一例のシステム図である。治療コンテンツ102は、モバイルアプリケーション、API等のインターフェースを介して患者に提供されるとしてよい。例えば、患者が自分のユーザーデバイスのメモリに保存されたモバイルアプリケーションにアクセスすることで、患者に治療コンテンツ102を与えることができる。モバイルアプリケーションは、ネイティブアプリケーション、ウェブブラウザを通じて実行されるアプリケーション、または、ウェブアプリケーションであってよい。一部の実施形態では、モバイルアプリケーションは、患者のモバイルデバイスを、治療コンテンツ102を含むデータを格納するバックエンドサーバーに接続することができる。治療コンテンツ102のさまざまなコンポーネントは、1または複数の通信ネットワーク(インターネット、イントラネットなど)を介してバックエンドサーバーからモバイルデバイスがアクセスするとしてよい。
【0024】
DTx100の治療コンテンツ102は、記憶課題練習104、心理療法レッスン106、メッセージング108などの1または複数のコンポーネントを含むことがある。記憶課題練習104、心理療法レッスン106および/またはメッセージング108は、治療スケジュールに従って、個別に、または、組み合わせてレンダリングして処理するとしてよい。記憶課題練習104、心理療法レッスン106および/またはメッセージング108は、組み合わせて使用することで、うつ病治療において相乗効果を発揮する組み合わせとなり、従来の気分障害治療を改善し得る(利用可能な人が増え、投薬よりも安価であるなど)。
【0025】
記憶課題練習104は、患者の認知制御障害の原因である可能性のある、患者の過活動感情処理領域と低活動前頭前野領域との間のアンバランスを対象にするとしてよい。記憶課題練習104は、DTx100に関連して患者が実行する対話型デジタルコンテンツおよびタスクにエンコードされている場合がある。したがって、記憶課題練習104は、タスクの実行をユーザーに促し、タスクに関連するユーザーからの入力を受け取るための対話型デジタルコンテンツおよび操作を指すことがある。説明のために、記憶課題練習104を提供するユーザー機器(
図7に示すユーザデバイス710など)に関連付けてメモリタスク練習104を説明する。デジタル対話型コンテンツは、それぞれ視覚的要素含む一連の画像を含むとしてよい。記憶課題練習104はさらに、現在表示されている画像内の視覚的要素が以前に表示された画像内の視覚的要素と一致するかどうかを思い出すよう患者に促す指示を含むとしてよい。一例として、患者のモバイルデバイス上にレンダリングされたユーザーインターフェースを介して、第1の感情を描写する第1の画像が表示され、続いて、第2の感情(第1の感情と同じであってもよいし別であってもよい)を描写する第2の画像が表示され、続いて、第3の感情(第1の感情および/または第2の感情と同じであってもよいし別であってもよい)を描写する第3の画像が表示されるといった具合である。そしてデジタル媒体は、第3の画像が表示された後、第3の画像が第1または第2の画像と同じ(または類似の)感情を描いているかどうかを特定するよう患者に要求するとしてよい。言い換えれば、デジタル媒体は、N番目の画像が(N-M)番目の画像と同じまたは類似の感情を描いているかどうかを判断するよう患者に要求するとしてよい。この形式の記憶課題104は、Nバック記憶課題と呼ばれる。
【0026】
それぞれの画像に含まれる視覚的要素を特定するプロセスが、患者の扁桃体を刺激する可能性がある。現在見ている視覚的要素が以前見たものと同じか異なるかを想起するプロセスは、認知制御能力を行使することによって、患者の前頭前野背外側部を刺激している可能性がある。したがって、記憶課題練習104は、患者の神経機能の特定の部分を強化することによって、機能不全に陥った脳回路の修復および/または神経結合の回復につながる可能性がある。記憶課題練習104は、治療プロセスにおいて介入ステップとしての役割を果たし、機能していな脳回路、または誤作動している脳回路を修復するための認知-情動訓練を行うことができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、記憶課題練習104は、(患者のモバイルデバイスを使用するなどして)患者に与えられ、患者との間で対話を実施するデジタル媒体としてエンコードするとしてよい。例えば、コンピュータプログラム命令でメモリタスクエクササイズ104をエンコードするとしてよく、コンピュータプログラム命令はコンピューティングデバイスによって実行され得る。さまざまなデータにアクセスすることで、さまざまな記憶課題練習が患者に提供され得る。例えば、第1の記憶課題練習を実行する第1のコンピュータプログラム命令を表すデータは、第1の患者のコンピューティングデバイスを介してアクセスすることができ、第2の記憶課題練習を実行する第2のコンピュータプログラム命令を表すデータは、第2の患者のコンピューティングデバイスを介してアクセスすることができる。場合によっては、データは、患者のコンピューティングデバイスに関連するIPアドレス、MACアドレス、および/またはシリアル番号など、患者に固有の識別子に基づいてアクセスすることができる。一部の実施形態では、データは、患者が提供するログイン認証情報(ユーザー名/パスワード、顔認識認証、網膜スキャンなど)に基づいてアクセスすることができる。本明細書で説明するが、記憶課題練習104の「アクセス」、「取得」および/または「提供」は、複数の記憶課題練習104のうち所与の1または複数を実現するコンピュータプログラム命令を含むデータについてのアクセス、取得および/または提供を含み得ることを理解されたい。
【0028】
心理療法レッスン106では、「白か黒か思考」、「自己関連付け」、「取り越し苦労」、「非活動的」、「社会的孤立」といったうつ病の症状を対象とすることがある。心理療法レッスン106では、思考および行動のパターンについて意識的な内省を促し、ある経験に対して異なる行動および経験の解釈を発展させることによって、こうした不適応な思考パターンおよび行動に対処することができる。心理療法レッスン106は、活動または課題を完了するよう患者に促すこともできる。このように、心理療法レッスン106は、機能不全回路の修復および/または記憶課題練習104による神経結合の回復によって得られる新しいスキルを、患者が適切に利用または習得できるように支援するように構成することができる。さらに、患者が心理療法レッスン106を受け、記憶課題練習104を完了することにより、心理療法レッスン106を受講した患者が徐々に、抑うつ感情をより制御できるようになる手助けとなり得る。
【0029】
心理療法レッスン106は、例えば、ビデオ(アニメーションビデオなど)、音声、触覚情報、テキスト情報あるいは他の形態の媒体、または、それらの組み合わせなどのデジタル媒体として患者に提供されるとしてよい。例えば、患者に特定の心理療法のレッスンを伝えるために作成されたビデオを表すビデオデータは、患者のコンピューティングシステムを使用して患者がアクセスすることができる。場合によっては、ビデオデータは、心理療法レッスン106を表すデータのデータベースから選択されることもある。さまざまな心理療法レッスンを表すビデオデータは、所定の心理療法レッスンに対応付けられている特定のパラメータを示すメタデータを含むとしてよい。例えば、特定の心理療法レッスンを描いた所定のビデオには、ビデオに含まれる内容、ビデオの対象受信者、ビデオの長さ、ビデオによって伝えられる感情または一連の感情、ビデオによって紹介される1または複数のスキル等のラベル、またはそれらの組み合わせを示す、1または複数のラベルがタグ付けされる場合がある。一部の実施形態では、DTx100は、患者に次に提供すべき追加の心理療法レッスン106を決定することを目的として、どの心理療法レッスン106を患者が受講したかを判断するために、治療プロセスにおける患者の進行具合をモニタリングするとしてよい。本明細書で説明するように、心理療法レッスン106の「アクセス」、「取得」および/または「提供」は、特定の心理療法レッスンを実施するために患者のコンピューティングデバイスによって実行されるコンピュータプログラム命令を含むデータを提供することを含むとしてよい。
【0030】
メッセージング108は、ショートメッセージサービス(SMS)、マルチメディアメッセージサービス(MMS)、プッシュ通知などを介して実施することができる。メッセージング108は、患者にメッセージを提供することを含み、メッセージは、毎日、毎週、毎月など、定期的に配信され得る。メッセージング108を介して提供されるメッセージは、テキスト、アニメーション、画像、音声、触覚応答等のデジタル媒体、または、それらの組み合わせを含むとしてよい。メッセージング108は、事前に生成された心理療法メッセージのライブラリおよび/または事前に生成された約束(リマインダー)メッセージのライブラリからメッセージを取得することができる。一部の実施形態では、メッセージング108は、人工知能および/または機械学習の技術を利用して、例えばチャットボットを利用して、1または複数のメッセージを動的に生成することを含み得る。一部の実施形態では、メッセージング108は、適切にメッセージの意図を判断するために自然言語処理技術を実装してもよく、判明した意図に基づいてメッセージを選択および/または生成してもよい。
【0031】
メッセージング108は、心理療法レッスン106を補完するために特定のメッセージを選択することができ、患者の心理療法レッスン106の進行度合と同期するようにメッセージを配信することができる。DTx100は、任意の所望の間隔(例えば、1日あたり0~4通のメッセージ)に従ってメッセージを選択して送信するためのロジックを含むことができる。ロジックは、完了した記憶課題練習および/または心理療法レッスンのうち最新のもの、患者が受講予定の記憶課題練習および/または心理療法レッスン、最近の記憶課題練習および/または心理療法レッスンに対する患者の入力、臨床医等のメンタルヘルス関係者からの要望、または他の基準に基づいて、1または複数の特定のメッセージが患者に提供されることを指示するとしてよい。メッセージング108は、患者が1または複数の心理療法レッスン106を受けるためのリンクを生成して提供することを含むとしてよい。これらの心理療法レッスン106は、以前に閲覧した心理療法レッスンであっても、新しい心理療法レッスンであってもよく、受講することで困難な状況に対処する患者の能力を向上させるためのスキルまたは戦略が伝えられる。
【0032】
メッセージング108は、患者が治療スケジュールに沿って記憶課題練習104および心理療法レッスン106を完了するようにリマインダーを提供することを含むことができる。これには、ユーザーが完了すべき特定の記憶課題練習および/または心理療法レッスンを示す通知を患者のモバイルデバイスに提供することが含まれるとしてよい。通知は、表示プロンプト(患者のモバイルデバイスの表示画面に表示される通知メッセージなど)、触覚プロンプト(実行すべきアクションを示すために患者のモバイルデバイスを振動させるなど)、または他の通知タイプであってもよい。メッセージング108はまた、患者の熱心度および意欲をさらに高めるために、記憶課題練習104および/または心理療法レッスン106を完了することの困難度または有用性の情報を提供するように構成されることもある。メッセージング108は、DTx100に関する患者の取り組み、アドヒアランスおよび/または成績、そして、患者(または同様の属性(年齢、特定された性別、教育水準など)の患者)に提供された過去のメッセージなどに基づいて、パーソナライズされたメッセージを提供することができる。
【0033】
一部の実施形態では、メッセージ(またはメッセージを生成するために使用されるメッセージ構成要素)にスコアを付与し、そのスコアに基づいてメッセージをランク付けするように構成されたスコア付与機能を利用して、患者に提供される特定のメッセージを選択するとしてよい。例えば、各メッセージには、患者に対して/患者によって表現されるべき感情を示すラベルを含めることができる。例えば、n個のメッセージ状態があり、それぞれが患者の特定の感情、思考、状態などを指す。スコア付与機能は、患者が受講した(受講予定の)記憶課題練習および/または心理療法レッスンを参照しつつ、患者プロファイルに基づいて患者に提供されるべき最適なメッセージを表すスコアを計算することができる。患者プロファイルは、患者プロファイルベクトル(n次元ベクトルなど)を含むとしてよく、各次元はn個のメッセージ状態のうちの1つを指し、患者プロファイルベクトルの値は、そのメッセージ状態の患者に対する適切度を表す。スコア付与関数は、メッセージを表す1または複数の患者プロファイルベクトルに基づいて、選択すべきメッセージ(最高スコアを有するメッセージなど)を決定するとしてよい。一部の実施形態では、患者プロファイルベクトルの各属性の値は、患者が受講完了した記憶課題演習および/または心理療法レッスン、治療スケジュール中に提供された患者フィードバック、または他の要因に基づいて更新されるとしてよい。
【0034】
図2は、さまざまな実施形態に係る、DTx100の治療コンテンツ102を配信するためのプロセス200の一例を示す。202では、DTx100へのアクセスを提供する。例えば、DTx100は、デスクトップコンピューター、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、モバイルデバイス等のコンピューティングデバイスなどのローカルコンピューティングデバイス用のダウンロード可能なソフトウェアとして利用可能であるとしてよい。ローカルコンピューティングデバイスは、患者または患者のHCPに対応付けられているとしてよい。ローカルコンピューティングデバイスは、DTx100の治療コンテンツ102をレンダリングおよび処理するためのソフトウェアを実行するとしてよい。これに代えて、DTx100は、ネットワークサーバーがホストとなって実行され、ローカルコンピューティングデバイスが有線ネットワークまたは無線ネットワークを介して(例えば、APIを介して)アクセスするとしてもよい。
【0035】
204では、1または複数の記憶課題練習104が提供されるとしてよい。例えば、DTx100のソフトウェアは、ネットワークサーバーまたはローカルコンピューティングデバイスで実行するとしてよい。DTx100用のソフトウェアを実行することで、患者のコンピューティングデバイス(モバイルデバイスなど)を介して記憶課題練習104が患者に提供されるとしてよい。そしてローカルコンピューティングデバイスは、記憶課題練習104をレンダリングまたは表示するとしてよい。これに代えて、治療コンテンツ102を受信する上でネットワーク接続アクセスが必須とならないように、DTx100はローカルコンピューティングデバイスに保存されるとしてもよい。DTx100用のソフトウェアは、患者のコンピューティングデバイスによって実行されると、記憶課題練習104のうち1または複数の記憶課題練習を実現するコンピュータプログラム命令を含むとしてよい。一部の実施形態では、DTx100用のソフトウェアは、治療スケジュールにおける患者の状態を判断するように構成されたロジックを含むとしてよく、患者に提供すべき記憶課題練習を選択するとしてよい。例えば、DTx100用のソフトウェアは、過去に提供された記憶課題練習に基づいて、記憶課題練習を決定するとしてよい。一部の実施形態では、DTx100のソフトウェアは、患者に提供する予定のない記憶課題練習へのアクセスを制限するとしてよい。例えば、全部で10個の記憶課題練習がある場合、所定の治療日/時間において、記憶課題練習のうちの1個を選択し、残りの9個の記憶課題練習は、アクセスまたは他の方法での患者への提供を制限するとしてよい。
【0036】
206において、記憶課題練習104に対応付けられて患者による1または複数の入力を受信し処理するとしてよい。一部の実施形態では、患者は、自分のコンピューティングデバイスを介して入力を行うとしてよい。一例として、患者は、患者のコンピューティングデバイスのディスプレイ画面上にレンダリングされたグラフィカルユーザインターフェース(GUI)を選択することができる。この選択は、タッチスクリーンを介して、音声入力を介して、アイトラッキングを介して、または、他の検出技術を利用して、またはそれらの組み合わせによって検出するとしてよい。さらに、患者は、自分のコンピューティングデバイスに結合された入力デバイスを使用して(コンピュータマウス、ジョイスティック、ウェアラブルデバイスなどを利用して)、選択肢を選ぶとしてよい。コンピューティングデバイスは、ユーザーがタッチスクリーン上の特定の場所に触れたことを示すタッチスクリーン上の特定の場所における静電容量の変化を検出するなど、入力を検出すると、(もしあれば)応答して実行すべきアクションを決定するとしてよい。このアクションは、コンテンツをレンダリングするなど、コンピューティングデバイスが実行可能なアクションであってよい。これに代えて、アクションは、メッセージ/リクエスト(HTMLリクエストなど)をコンピューティングデバイスから別のコンピューティングデバイス、サーバー、または別のコンピューティングコンポーネント、またはそれらの組み合わせに送信するものであってもよい。例えば、患者の入力は、ネットワークを介してネットワークサーバーに送信されるデータ要求に変換されるとしてよい。ネットワークサーバーは、データ要求を受信すると、データを保存したり、データを取得したり、データをコンピューティングデバイスおよび/または別のコンピューティングデバイスに送信したり、アクションを実行するとしてよい。一例として、ネットワークサーバーは、出された要求に基づいて記憶課題練習および/または心理療法レッスンを選択するとしてよく、患者のローカルコンピューティングデバイスによって実行されると、記憶課題練習および/または心理療法レッスンを患者のためにレンダリングするコンピュータプログラム命令を含むデータを提供するとしてよい。
【0037】
208では、記憶課題練習106のうち1または複数の記憶課題練習をレンダリングするとしてよい。ローカルコンピューティングデバイスでレンダリングされる特定の心理療法レッスンは、治療スケジュール、患者および/あるいは患者のHCPからの要求、あるいはその他の基準、またはそれらの組み合わせに基づいて選択するとしてよい。例えば、治療スケジュールは、第1のタイミング(治療初日など)において、第1の心理療法レッスンを選択して第1の心理療法レッスンを含むデータ(患者のために特定のコンテンツをレンダリングするように設計されたコンピュータプログラムなど)を患者のコンピューティングデバイスに提供する一方、第2のタイミング(治療N日目など)において、第2の心理療法レッスンを選択して患者のコンピューティングデバイスに提供することを示すとしてよい。一部の実施形態において、DTx100のソフトウェアは、ネットワークサーバーまたはローカルコンピューティングデバイスで実行するとしてよい。
【0038】
210では、1または複数のメッセージを生成して患者に提示するとしてよい。メッセージは、ネットワークサーバーまたはローカルコンピューティングデバイスで生成するとしてよい。その後、ローカルコンピューティングデバイスのグラフィカルユーザーインターフェースを使用して、メッセージを配信および/または表示させるとしてよい。メッセージは、チャットボット、自然言語処理技術、その他の技術を使用して動的に生成される場合もある。チャットボットは、例えば、さまざまな入力パラメータを有するメッセージを生成するように訓練されたチャットボットの入力パラメータに基づいて、DTx100のメッセージング108に使用されるメッセージを生成して患者に提供するとしてよい。メッセージがあらかじめ生成されてメモリに格納されている場合、特定のメッセージは、208でレンダリングされた心理療法レッスンに対応付けられている入力パラメータ、患者からのフィードバック、HCPによる指示あるいは他の基準、または、それらの組み合わせに基づいて選択されるとしてよい。格納されているメッセージは、それぞれのメッセージによって伝えられる感情、概念、思考、フレーズ、真言、またはその他の認知的メッセージを示すラベルを含むとしてよい。メッセージを求める要求に含まれる入力パラメータ(心理療法レッスンを患者が受講したと判断された後に生成される可能性があるものなど)に基づいて、格納されているメッセージのうち最も適切なメッセージを特定するとしてよく、そのメッセージを患者に提供するとしてよい。例えば、メッセージを表す特徴ベクトルと、メッセージを求める要求を表す特徴ベクトルとに基づいて、類似度スコアを計算するとしてよい(例えば、特徴空間における要求されたメッセージの位置と、格納されている各メッセージの位置との間のユークリッド距離を算出するとしてよい)。
【0039】
一部の実施形態では、記憶課題練習、心理療法レッスンおよび/またはメッセージのレンダリングおよび/または処理は、順番に行うとしてよい(例えば、最初に記憶課題練習、次に心理療法レッスン、次にメッセージとする)。しかし、一部の実施形態では、記憶課題練習、心理療法レッスン、およびメッセージングは、異なる順序で実行するとしてもよい(最初に記憶課題練習、次に心理療法レッスン、次にメッセージ、その次に別のメッセージとする)。DTx100を使用する際は別の順序も可能である。
【0040】
一部の実施形態では、記憶課題練習104、心理療法レッスン106および/またはメッセージング108は、所定の治療スケジュールに従って送達されるとしてよい。治療スケジュールは、HCPが処方するとしてもよいし、または、DTx100の提供者が推奨するとしてもよい。治療スケジュールに従ったDTx100の治療コンテンツ102の送達は、1または複数のうつ病の症状の治療のために臨床的に検証するとしてよい。治療スケジュールのさまざまな態様は、HCPの推奨内容および/またはDTx100を利用している患者の具体的な状況に基づいて調整または変更され得るものと理解されたい。例えば、ある例では、治療スケジュールの期間は6週間である。別の例として、治療スケジュールの期間は4週間とすることもできる。治療スケジュールの具体的な期間は、DTx100の提供者またはHCPが設定することができ、提供する治療の有効性を示す臨床的に裏付けられた証拠に基づいて決まるとしてよい。
【0041】
情動顔記憶課題(EFMT)
【0042】
いくつかの実施形態では、DTx100の記憶課題練習104は、情動顔記憶課題(EFMT)練習を含むとしてよい。DTx100は、コンピュータプログラム命令で実装されており、実行されると、コンピュータプログラム命令により、記憶課題練習104のうち1または複数の記憶課題練習が、患者のコンピューティングデバイスを介して患者に伝達されるとしてよい。EFMT練習は、感情認識およびワーキングメモリーの課題を同時に実施することで、破壊された脳回路の神経結合を修復するように構成されているとしてよい。EFMT練習は、MDD患者において損なわれている可能性のある認知機能を司る脳の2つの部分に同時に働きかけることができる。この練習は、患者の扁桃体(感情を制御する部分など)および/または背外側前頭前皮質(認知を制御する部分など)の活動を誘発し、患者の脳ネットワークの短期的柔軟性に変化をもたらす可能性がある。したがって、EFMT練習は、MDDに対応付けられることが多い認知および感情の欠陥に対応するものであるとしてよい。EFMT練習は、Nバック記憶力課題(例えば、ある感情を表現している人の顔の画像から、その人の感情を特定する)を用いて、感情情報処理に対する認知制御を強化することを目的としている。
【0043】
EFMT練習において、一連の表情画像を患者に順次表示するとしてよい。表情画像とは、特定の感情を描写している画像を指す。例えば、画像は感情(怒り、嫌悪、恐怖、幸福など)を表現している人間の顔を描いているとしてよい。一部の実施形態では、各画像は所定の時間にわたって表示されるとしてよい。所定の時間は、0.1秒~5.0秒など、任意の適切な間隔であってよい。各画像が表示される所定時間は同じとする場合もあるが、一部の画像の表示時間は異なるとしてもよい。画像は、第1の所定時間または第2の所定時間(または他の所定時間)のいずれかにわたって表示されるとしてもよい。一部の実施形態では、一部の画像または全ての画像を表示する時間は、ランダムであり、および/または、設定可能である。例えば、HCPが、患者に対する画像表示時間が短すぎるまたは長すぎると判断して、表示時間を調整するとしてもよい。この調整は、HCPが自分のコンピューティングデバイスに要求を入力し、それが患者のコンピューティングデバイスに時間量を調整する指示を送ることによって行うとしてよい。
【0044】
表情画像はそれぞれ、一連の表情のうち対応する表情を表すとしてよい。一連の表情には、嬉しい、心配だ、怒っている、悲しい、驚いた、うんざりしたなど、さまざまな感情が含まれる。表情画像は、顔を表した画像または顔の画像であり、それぞれ特定の感情を表現している人の顔を描写しているとしてよい。一連の顔画像で描写される感情は、ランダムに表示してもよいし、または、あらかじめ決められた順序で表示してもよい。例えば、「幸せ」という感情を描いた画像の後に「心配」という感情を描いた画像が続き、その後に「怒り」という感情を描いた画像が続き、その後に「悲しみ」という感情を描いた画像が続き、その後に「驚き」という感情を描いた画像が続き、その後に「嫌悪」という感情を描いた画像が続くとしてよい。描かれる表情画像の順序は、EFMT練習を進める中で、および/または、EFMT練習のセッション毎に、変更する、または、繰り返すとしてよい。あらかじめ決められた順序は、MDDの症状を緩和することを目的として、患者の脳の特定の領域に対して刺激を与えたり、働きかけたりするように、および/または、1または複数の化学物質(アセチルコリン、ドーパミン、ノルエピネフリン、グルタミン酸、セロトニン、GABA、グリシン、アスパラギン酸、エピネフリン、一酸化窒素、神経ペプチドなど)を放出するように構成することができる。
【0045】
表情画像は、あらゆる年齢、性別、および/または民族の人間が顔に浮かべる表情を描くとしてよい。表情画像は、グレースケール、カラー、またはそれらの組み合わせでレンダリングするとしてよい。表情画像は、写真、イラストまたはアニメーションのうちどの形態を取るとしてもよい。当業者であれば、上述した種類の画像の代わりに、または、上述した種類の画像に加えて、動画、GIF、音声および/またはその他の形態のコンテンツを使用できるものと認識するであろう。表情画像は、特定の強さの感情(90%の強さ、80%の強さ、70%の強さ、60%の強さ、50%の強さなど)に対応するように構成することができる。表情画像は、感情が強いほど、感情が弱い画像よりも識別しやすいと理解されたい。ある表情画像が描く感情の強さは、HCP等の臨床担当者が事前に決定するとしてよい。例えば、描かれた画像には、患者によって強さの「グレード」が付けられることがあり、このグレードに基づいて特定の表情画像の感情の総合的な強さを計算することがある。所与の表情画像の感情の強さは、特定の強さレベルと分類されている所定の画像と画像とを比較する1または複数のコンピュータビジョン技術を使用して決定することもある。所与の表情画像の埋め込みは、コンピュータビジョンモデルを用いて計算されてもよい。これに応じて、コンピュータビジョンモデルのn次元特徴空間における所与の表情画像の位置と、感情の特定の強さに対応する特徴空間における位置との間の類似度が計算されてもよい。
【0046】
EFMT練習はそれぞれ、修正Nバックワーキングメモリー課題として構成するとしてよい。すなわち、所定枚数の表情画像を表示した後、現在表示されている表情画像で見られる感情が、N枚前の画像(1枚前、2枚前、3枚前、4枚前など)で見られた感情と同じか、異なるかを患者に質問するとしてよい。Nは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、またはそれ以上の任意の整数であってよい。一部の実施形態では、コンピュータプログラム命令は、患者によるコンピューティングデバイスを介した入力/応答が可能になるGUIをレンダリングさせることができる。応答の後、1または複数の表情画像が追加表示され、現在表示されている画像で見られる感情が、N枚前に表示された画像で見られた感情と同じか異なるかを患者に再度問うとしてよい。一部の実施形態では、次に表示される画像は、患者の応答に基づいて一連の可能な表現画像から選択されるとしてよい。応答は、バイナリ応答(イエスまたはノーなど)であってもよい。一部の実施形態では、第3の選択肢(「わからない」や「知らない」など)もあるとしてよい。患者からの回答はそれぞれ、治験(の一部)であってよい。患者には、1ラウンドにおいて任意の適切な数のトライアルを行うように説明するとしてよい。例えば、1ラウンドのトライアルの数は、1回以上、5回以上、10回以上、15回以上、20回以上、25回以上、その他の回数でもよい。説明のために一例を挙げると、1ラウンドに含まれるトライアルの回数は15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25であってよい。EFMT練習はそれぞれ、任意の適切な数のラウンドを含むとしてよい。例えば、所与のEFMT練習におけるラウンドの回数は、1回以上、5回以上、10回以上、15回以上、20回以上、25回以上、その他の回数でもよい。説明のために一例を挙げると、1回のEFMT練習に含まれるラウンドの回数は10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、または20であってよい。
【0047】
一部の実施形態では、患者の応答に関する統計を取得するとしてよい。この統計は、EFMT練習の効果、患者の熱心度、またはその他の治療の態様を決定するために利用するとしてよい。例えば、応答の情報に加え、画像のレンダリングから応答の検出までの時間を得るとしてもよい。時間差が長い(しきい値時間、例えば、2秒、5秒、10秒、30秒等を超えるなど)と判断された場合は、レンダリングされた画像が表現している感情が不明瞭である可能性があり、画像をEFMT練習から削除するか、更新するか、またはその他の方法で画像の治療効果を向上させるように調整する必要があることを示している可能性がある。
【0048】
患者の正答数に基づいて1または複数のスコアを決定するとしてよい。スコアは、1ラウンド中の一部あるいはすべてのトライアル、または、1回の練習における一部あるいはすべてのラウンドを完了した後の患者の正答数を反映するとしてよい。練習において、患者のスコアは、新たに正答(または誤答)が出るたびに変動または調整されるとしてよい。患者の総合スコアは、練習の終了時、および/または、一連の練習の終了時に、練習の進行中に得られた正答数を反映することができる。一部の実施形態では、患者が正解であったか不正解であったかを記憶することに加えて、応答は患者が提供した応答を示すとしてよい。所与のEFMT練習に対する応答を分析して、応答パターン、例外、または、その他の見地から応答を判断する。判断結果は、治療を改善するために利用することができる。例えば、患者が特定の感情(「悲しみ」、「落ち込み」、「怒り」など)で応答した事例の数は、患者の精神状態を示している可能性がある。したがって、HCPが適切な治療を特定し、患者に提供される。
【0049】
現在表示されている画像で観察された感情が、N枚前に表示された画像で観察された感情と同じか異なるかをうまく識別するための難易度は、Nの値が大きくなるにつれて高くなるものと理解されたい。逆に、Nの値が小さくなるにつれて難易度は下がるとしてよい。したがって、Nの値は、EFMT練習または一連のEFMT練習を通して、患者に適切なレベルでやりがいを維持しつつ、患者が前進できるように調整する(増減させる)としてよい。整数であるNは、回答の総数に対する正答の割合に少なくとも部分的に基づいて調整するとしてよい。例えば、Nは、所定のタイミングにおいて正答率(パーセントで表す)が第1のしきい値より大きい場合にはN+1にリセットされ、所定のタイミングにおいて正答率が第2のしきい値より小さい場合にはN-1にリセットされる。正答率が第1のしきい値と第2のしきい値との間にある場合、Nは調整されない。Nは、上記の例では+1または-1で調整しているが、任意の調整係数を用いてよい(2、3、4など)。一部の実施形態では、HCPは、リアルタイムでモニタリングしている結果に基づいて整数Nの調整を行いやすいようになっているとしてよく、整数Nを調整するためにHCPのコンピューティングデバイスを介して指示を送信するとしてもよい。一部の実施形態では、整数NはDTx100が動的に調整するとしてよい。例えば、DTx100は、治療の難易度をリアルタイムでモニタリングすることを含むとしてよく、患者から得られた正答の割合(パーセントで表す)に応じて整数Nを増加(または減少)させるとしてよい。
【0050】
整数Nの値を調整することに代えて、または、これに加えて、現在表示されている画像で観察された感情が、N枚前に表示された画像で観察された感情と同じか異なるかをうまく識別するための難易度は、表情画像で描写する感情の強さを変えることで増減させるとしてもよい。例えば、患者にとっては、50%の強度で表現された幸福の感情は、90%の強度に比べて、識別することはより困難である場合が多い。これは、強度が下がると、描写されている感情に対する確信が低くなるためである。したがって、練習の難易度を上げるために、描かれる表情画像の1または複数については強度を下げるとしてもよい。逆に、練習を容易なものとするべく、描かれる表情画像の1または複数は強度を上げるとしてもよい。
【0051】
一部の実施形態では、画像に重み付けするとしてもよい。例えば、画像を表す画像データは、画像の難易度に対応する重みを含むとしてよい。高い強度の感情を描写する画像の重みを下げ、低い強度の感情を描写する画像の重みを上げるように、さまざまな重みを選択するとしてよい。感情の強度に基づいて画像に重み付けをすることで、正しく識別するのが困難な画像について患者が誤答した点を考慮することができ、最終結果を改善し得る。
【0052】
整数Nおよび/または感情強度は、EFMT練習における任意の適切な期間または段階での患者のスコアに基づいて、調整することができる。例えば、整数Nおよび/または感情強度は、患者が1ラウンドで進むにつれて難易度が変化するように、患者がラウンドに含まれているトライアルの一部を完了した後に調整するとしてよい。整数Nおよび/または感情強度は、患者が次のラウンドに進む際に難易度が変化するように、患者が1ラウンドに含まれているすべてのトライアルを完了した後に調整するとしてもよい。整数Nおよび/または感情強度は、患者が次の練習に移る際に難易度が変化するように、患者が練習に含まれている全てのラウンドを完了した後に調整することができる。一部の実施形態では、HCPが、整数Nおよび/または感情強度を調整するとしてよい。一部の実施形態では、整数Nおよび/または感情強度は、トライアル、ラウンド、および/または記憶課題練習における患者の応答に基づいて、DTx100が自動的に調整するとしてもよい。
【0053】
EFMT練習のその他の例については、米国特許第10,123,737号(発行日:2018年11月13日)および第10,898,131号(発行日:2021年1月26日)、PCT出願第PCT/US15/51791号(出願日:2015年9月23日)、米国特許出願第17/156,195号(出願日:2021年1月22日)、および、米国仮特許出願第62/054,371号(出願日:2014年9月23日)に記載されている。これらはそれぞれ、参照により全体が本明細書に組み込まれる。
【0054】
認知行動療法(CBT)
【0055】
一部の実施形態では、DTx100の心理療法レッスン106は、認知行動療法(CBT)レッスンを含むことができる。CBTレッスンは、抑うつ気分を悪化させる可能性のある行動機能および社会的機能の障害など、EFMT練習では特に対象とされないMDDの他の側面を扱うように構成するとしてよい。CBTレッスンはそれぞれ、アニメーション映像やまたは一部がアニメーション化された映像などの映像、一連の画像、音声、触覚フィードバック、その他のコンテンツ、またはそれらの組み合わせを含むことができる。CBTレッスンの長さは予め決められているとしてよい(約3~5分など)。CBTレッスンの長さを定めることで、CBTレッスンのファイルを電子的に保存して送信することが容易になるように設定するとしてよい。具体的な長さは、患者の集中力を切らすことのない長さで所望の治療効果が得られるように設定するとしてよい。CBTレッスンに含まれる映像の後には、患者が実施すべき課題またはタスクが対応付けられているとしてよい。このため、レッスンは、患者が内面化して行動に移すように構成されるとしてもよい。
【0056】
各CBTレッスンの長さは、効果、受容性、影響を最大化できるよう慎重に設定するとしてよい。レッスンが長くなると、短い場合に比べて、患者によっては全部見終わるのが難しくなる場合がある。しかし、レッスンが短すぎると、MDDに伴う行動機能障害および社会的機能障害に対処する上で効果が得られないことがある。一部の実施形態では、レッスン内容の効果を高めるために、レッスンの長さを調整(延長、短縮など)するとしてよい。
【0057】
心理療法レッスン106はそれぞれ、当該レッスンの効果および影響を最大にするために設定可能な1または複数のパラメータを持つとしてよい。パラメータには、これらに限定されるものではないが、心理療法レッスンの長さ、心理療法レッスンのコンテンツの種類、および/またはコンテンツの特徴が含まれるとしてよい(他に列挙している場合に限定的であることを意味するものではない)。上述したように、心理療法レッスンの長さは、コンテンツを受け取る患者が心理療法レッスンを最初から最後まで受講し、心理療法レッスンの肝を記憶する可能性を最大にするように、選択するとしてよい。一例として、心理療法のレッスンは、2~3分以内に収まるように作成するとしてよい。コンテンツの種類とは、心理療法レッスンをどのような形式で伝えるかを指す。例えば、コンテンツの種類には、アニメーション動画、一部がアニメーションの動画、アニメーションではない動画、一枚または一連の画像、テキストコンテンツ、音声、触覚フィードバックあるいはその他の種類のコンテンツ、またはそれらの組み合わせが含まれるとしてよい。心理療法レッスンのコンテンツの特徴には、コンテンツに用いられる色スペクトル(白黒、カラー、一部の色など)、コンテンツに適用されるエフェクト(ぼかし、回転、エッジの平滑化など)、映像内で描かれるキャラクター/オブジェクトが動く速度(キャラクター/オブジェクトの速度を遅くする、速くするなど)、コンテンツが2D映像/画像コンテンツとして表示されるか、3D映像/画像コンテンツとして表示されるか、コンテンツの複雑さ(コンテンツで使用される単語の水準など)、コンテンツの物語/概念(映像/音声/テキストがストーリーを描写している場合、ストーリーがある感情状態から別の感情状態への旅であるか、別のタイプのストーリーであるかを選択するなど)あるいはその他の特徴、または、それらの組み合わせが含まれる。一例として、特定の患者の現在の感情状態を悪化させないように、特定の単語/フレーズ/画像をその患者に見せることを制限することができる。一部の単語/フレーズ/画像は、使用を全面禁止するか、または、特定の患者に対して使用が制限されることがある(例えば、子どもに適切な画像/用語を使用する。そのような画像/用語は、成人には使用してもよいものであってもよいし、成人には使用しないものであってもよい)。別の例として、特定の単語/フレーズ/画像は、一部またはすべての患者に使用することが適切であると事前に承認されていることがある。さらに別の例として、心理療法レッスンにキャラクターが動く(歩くなど)映像が含まれている場合、キャラクターの移動速度を制御して、患者に適切な感情状態を伝えるとしてよい。例えば、キャラクターが素早く動くと患者は不安な感情を抱くので、心理療法レッスンではキャラクターの動きを控えめにする。
【0058】
一部の実施形態では、心理療法レッスンのパラメータは、治療スケジュールの期間中に調整することができる。例えば、患者がDTx100の治療を進めるにしたがって、患者の改善度合いまたは改善不足を考慮するようにコンテンツを構成するとしてよい。心理療法レッスンに含まれるコンテンツは、各心理療法レッスンの目的が治療スケジュールの期間中に変化するように構成するとしてよい。例えば、患者の治療スケジュールの最初の心理療法レッスンに含まれるコンテンツは、患者に治療を紹介して患者と絆を結ぶ/患者とつながるように構成するとしてよい。場合によっては、心理療法レッスン106は1または複数の「アンカー」レッスンを含むとしてよい。治療スケジュールの中で、アンカーレッスンがいつ行われるかの情報を格納しておくとしてよい。例えば、治療スケジュールで5回置きにアンカーレッスンを行うものとしていても、アンカーレッスンの開催頻度は、変更されるとしてもよいし、調整可能としてもよい。アンカーレッスンは、患者に特定のレッスン/技術/概念を植えつけることが望ましいとしてよい。アンカーレッスンは患者がすぐに参照できるようにして、患者が必要なときにアンカーレッスンを再度参照できるようにすることもできる。一部の実施形態では、アンカーレッスンはクライアントのコンピューティングデバイスにローカルに保存されることがあるが、他の心理療法レッスンはサーバーを介してアクセスするとしてよい。一例として、アンカーレッスンには呼吸法が含まれ、治療にはN日ごとに呼吸法を行うことが含まれるとしてよい。Nは1以上であるとしてよい。
【0059】
各CBTレッスンは、感情調節(ER)、行動活性化(BA)、認知再構築(CR)など、1または複数の心理療法の理念に焦点を当てるとしてもよいし、活用するとしてもよい。それぞれのCBTレッスンに対応付けられている心理療法の理念(ER、BA、および/またはCRなど)は、患者に伝えるターゲットメッセージでさらに後押しすることができる。心理療法の理念は、脳の認知および感情の処理ネットワークを対象として、適切に機能するよう回復させることであるとしてよい。例えば、心理療法レッスンは、機能不全に陥った神経回路を修復するためのレッスンのコンテンツから習得した新しいスキルをサポートするとしてよい。EFMT104が機能不全に陥った神経回路を修復する一方で、心理療法レッスン106が修復された神経回路(および周囲の/関連する神経回路)を強化することができるため、心理療法レッスン106は、EFMTと併用することで、MDDなどのさまざまな気分障害の治療に大きな改善をもたらすことができる。このように、治療プログラムは、身体の機能不全(膝の怪我、肩の怪我、背中の怪我など)を治療するプロセスになぞらえることができる。脳の神経回路を「修復」するEFMTと同様の、身体の損傷部分を「修復」するための外科的介入が含まれ、それに続いて、脳の神経回路および/または周辺/関連神経回路を「強化」する心理療法レッスンと同様の、身体の損傷部分および/または周辺部分を強化するための理学療法-が行われるとしてよい。より詳細に後述するが、治療の効果の維持しやすくするべくさらに介入ステップ(メッセージング108など)を含むとしてもよい。
【0060】
ER理念とは、感情が与える影響を患者が調節あるいは制御する能力、または、感じている感情の程度を患者が調節する能力を指すとしてよい。MDD治療においては、ER理念を活用したレッスンを行うことで、悲しみ、怒り、絶望感などの苦しい感情を患者が経験しても、それらの感情に飲み込まれて、望ましくない方法で反応せずに済むとしてよい。CBTレッスンに含まれるER戦略には、思考および感情に対するマインドフルネス、困難な感情に耐えること、自分を鎮める方法などが含まれるとしてよい。したがって、ERを対象とするCBTレッスンは、患者が体験する可能性のある困難な感情および状況に耐えて克服するためのスキルおよび戦略を患者が得られるように構成するとしてよい。
【0061】
ER理念を採用したCBTレッスンはさらに、この理念を強化する1または複数の異なるターゲットメッセージを配信するように構成するとしてよい。例えば、ERに基づくCBTレッスンは「新たに前へ進む道」を伝えるように構成することができる。これによって、患者は今後に対して期待を持ちやすくなり、治療に対して高い意欲および意識を持ちやすくなるであろう。ERに基づくCBTレッスンは、「マインドフルであること」を伝えるように構成されることがあり、マインドフル呼吸法を含む「マインドフルネス」という考えを患者にもたらすとしてよい。ERに基づくCBTレッスンは、「困難な状況におけるマインドフルネス」を伝えるように構成されるとしてもよい。その結果、患者は困難な状況を認めやすくなり、患者が内心経験している困難な状況と自身の呼吸との間で注意を切り替え易くなるとしてよい。ERに基づくCBTレッスンは、「困難な状況への対処」を伝えるように構成することができるとしてよい。その結果、患者は、負の感情に突然襲われても、または、激しい負の感情を感じても、それに対処する方法を患者が身に着けるか、または、よりよく対処できるようになるとしてよい。ERに基づくCBTレッスンは、「別の行動」を伝えるように構成されるとしてもよい。その結果、患者は、対処困難な感情に関連して発生する有害な行動への衝動を特定して対応できるようになるとしてよい。ERに基づくCBTレッスンは、「リラックス、リペア(修復)、リフューエル(補給)」という考え方を伝えるように構成されることしてもよい。これによって、患者はストレス応答およびリラクゼーション応答について学び、および/または、誘導筋弛緩法(漸進的筋弛緩法(PMR)など、および/またはマインドフルリラクゼーションのためのエクササイズが提供されるとしてよい。
【0062】
BA理念は、1または複数のCBTレッスンにおいて具体的な治療技法として用いられるとしてよい。患者は、抑うつサイクルにおいて、悲しい気分、憂うつな気分、絶望的な気分および/または不安な気分に応じて、日常生活、身体活動および運動、対人活動などの健康的な行動を避けるおよび/またはやめることがある。これでは患者の負の感情状態を悪化させてしまうことになりかねない。BAに基づくCBTレッスンは、このような行動パターンを対象にするとしてよく、健康的な活動および行動に患者が再び参加できるように構成されている「行動への呼びかけ」を患者に提唱するとしてよい。したがって、BAに基づくCBTレッスンによって患者は、身体活動および/または対人活動から引きこもる原因となっている可能性のある負の感情および行動のループを特定して断ち切るためのスキルを得るとしてよい。
【0063】
BA理念を採用したCBTレッスンはさらに、当該な理念を強化する1または複数の異なるターゲットメッセージを配信するように構成するとしてよい。例えば、BAに基づくCBTレッスンは、「もう一度頑張ろう」というメッセージを伝えるように構成することができる。このメッセージによって患者は、うつ病のBAモデルを知り、小さな一歩で惰性の欠如を克服し易くなる可能性がある。BAに基づくCBTレッスンは、「意義のある活動」という考え方を伝えるように構成されるとしてよい。その結果、患者は価値あるものを探すようになり、および/または、有意義な生活領域での活動を予定したりするようになる可能性がある。BAに基づくCBTレッスンは、「良質な睡眠」という考えを伝えるように構成することができるとしてよい。したがって患者は、睡眠障害を克服するためのさまざまな方法を得るとしてよい。BAに基づくCBTレッスンは、「悩みから自由になる」という考え方を伝えるように構成することができるとしてよい。これにより、うつ病および不安を悪化させ得る固執的な考え方を克服するための方法を身につけて、正常な思考に戻ることができる。BAに基づくCBTレッスンは、「避けることをやめる」という考えを伝えるように構成することができるとしてよい。これにより、患者は、小さな一歩を踏み出してさまざまな種類または分野において避けることをやめるための方法を身につけて、正常な思考に戻ることができる。BAに基づくCBTレッスンは、「より有意義な活動」という概念を伝えるように構成することができるとしてよい。このため、患者は、過去に受講したBAに基づくCBTレッスンを再受講して、他の有意義な生活領域における活動を探して予定に入れるようになるとしてよい。
【0064】
CR理念は、CBTレッスンうち1または複数のCBTレッスンにおいて別の治療技法として用いられるとしてよい。患者は、自己、世界、未来に対する否定的な認識を含む「自動思考」に陥っている可能性がある。CRに基づくCBTレッスンは、このような思考が発生したときに正確で妥当であるかどうかを特定して体系的に評価するための認知ツールを患者に提供し、これらの思考に疑義を唱えて、より適切なものへとリフレーミングするように構成することができる。したがって、CRに基づくCBTレッスンにより患者は、認知の歪みおよび/または問題のある思考パターンを特定して適応させるためのスキルを得るとしてよい。
【0065】
CR理念を採用したCBTレッスンはさらに、当該な理念を強化する1または複数の異なるターゲットメッセージを配信するように構成するとしてよい。例えば、CRに基づくCBTレッスンは、「思考のバランスをとる」という考え方を伝えるように構成されるとしてよい。これにより、患者はうつ病の認知モデルおよび認知再構築に対する知識を得ることができる。CRに基づくCBTレッスンは、「オール・オア・ナッシング思考」の概念を伝えるように構成されるとしてよい。これにより患者は、オール・オア・ナッシング思考を特定して克服して、思考および感情のバランスを取ることを学ぶことができる。CRに基づくCBTレッスンは、「自己批判を克服する」という考え方を伝えるように構成されているとしてよい。この結果、患者がその場で自己批判的思考に対処し、および/または、所定のやり方に沿ってセルフコンパッションを実際に試すことができるようになるとしてよい。CRに基づくCBTレッスンは、「否定的な信条への抵抗」という考え方を伝えるように構成されるとしてもよい。その結果、患者は、重要な事柄に関する否定的な信条に関連して発生する有害な行動への衝動を特定して抵抗するスキルが身に着くとしてよい。CRに基づくCBTレッスンは、「柔軟な思考」を伝えるように構成されるとしてよい。特に悲観的または否定的な認知バイアスに関して、認知の柔軟性の欠如を克服するための方法を伝えるとしてよい。CRに基づくCBTレッスンは、「得たものを維持する」という考えを伝えるように構成されるとしてよい。これにより、過去のCBTレッスンから学んだ鍵となるスキルを再確認し、学習内容を維持するための推奨事項を患者に提示するとしてよい。
【0066】
表1には、治療コンテンツ102に組み込む上述したCBTレッスンの要約を示す。
【表1】
【0067】
表1に列挙したCBTレッスンのうち一部は、モンゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度(MADRS)で定義されるうつ病の1または複数の要素を治療または対処するように構成されるとしてよい。MADRSは、精神科医を含むHCPが気分障害に関連するうつ病エピソードの重症度を測定するために用いる問診票である。MADRSには10項目の評価項目があり、うつ病の中核症状を評価するのに用いられる。10項目の評価項目には、明らかな悲しみ、報告された悲しみ、内的緊張、睡眠時間の減少、食欲の低下、集中力の低下、倦怠感、感情移入不能、悲観的思考、自殺念慮などが含まれる。一部の実施形態では、気分障害に関連するうつ病エピソードの重症度を特定および/または分類するために、他の測定基準を使用するとしてもよい。
【0068】
MADRSの各項目は、あらかじめ定義された4段階の尺度(0点、2点、4点、6点など)と3段階の中間尺度(1点、3点、5点など)を用いて評価することができる。例えば、0点の項目は症状がない、または、ほとんどないことを示し、6点の項目は症状が重度または極度であることを示す。2点または4点と評価された項目は、重症度が「全くない」よりは高いが「極度」よりは低いことを示唆している。3段階の中間尺度は、症状が悪化していることを示す。総合MADRSスコアは0~60点の範囲である。一般にMADRSスコアが高いほど、うつ病の重症度が高いことを示している。表2には、表1のCBTレッスンとMADRSの10項目の評価項目それぞれとの対応付けが例示されている。すなわち、患者がA列のCBTレッスンのうち一部を完了することで、それぞれのMADRS項目のスコアが低くなり、その結果、患者のMADRS総合スコアが低下するとしてよい。B列のCBTレッスンはA列の一部を表している。患者がB列のCBTレッスンの一部を完了することで、それぞれのMADRS項目により直接的且つ即時的に影響を与える可能性がある。
【表2】
【0069】
表1に列挙したCBTレッスンのうち一部は、ハミルトンうつ病評価尺度(HDRS)で定義されるうつ病の1または複数の要素を治療または対処するように構成されるとしてよい。HDRSは、うつ病の症状の重症度を測定するために構成されている、臨床医が実施するうつ病評価尺度である。HDRSには、抑うつ気分、罪責感、自殺傾向、入眠障害、熟眠障害、早朝睡眠障害、仕事および活動、精神運動抑制、焦燥、精神的不安、身体的不安、消化器系身体症状(GI)、一般的な身体症状、生殖器症状、心気症、体重減少、および/または病識といった17の評価項目(HAM-D17)が含まれる。
【0070】
HAM-D17の各項目は、所定の尺度(0~2、0~3、0~4など)で評価または採点することができる。例えば、0点と評価された項目は症状がない、または、ほとんどないことを示し、最高スコアは症状が重度または極度であることを示す。それ以外の評価を得た項目は、重症度が「全くない」よりは高いが「極度」よりは低いことを示唆している。HAM-D17の総合スコアは0~53点の範囲で、一般にスコアが高いほどうつ病の重症度が高いことを示す。重症度は、HAM-D17尺度で予め定義された範囲に従って評価される。例えば、総合スコアが0~7点であれば、うつ病ではないことが分かる総合スコアが8~13点であれば、軽度のうつ病レベルである可能性がある。総合スコアが14~18点であれば、軽度から中等度のうつ病である可能性がある。総合スコアが19~22点であれば、中等度から重度のうつ病の可能性がある。総合スコアが23点以上であれば、非常に重度のうつ病である可能性がある。表3には、表1のCBTレッスンとHAMーD17の17項目の評価項目それぞれとの対応付けが例示されている。すなわち、患者がA列のCBTレッスンのうち一部を完了することで、それぞれのHAM-D17の項目のスコアが低くなり、その結果、患者のHAM-D18の総合スコアが低下する可能性がある。B列のCBTレッスンはA列の一部を表している。患者がB列のCBTレッスンの一部を完了することで、それぞれのHAM-17項目により直接的且つ即時的に影響を与える可能性がある。
【表3】
【0071】
図3A-
図3C、
図4A、
図4B、
図5Aおよび
図5Bは、さまざまな実施形態に応じた1または複数のCBTレッスンの治療コンテンツ102内の画像および/または機能の例を示す。一部の実施形態では、上述のように、心理療法レッスン106はアニメーション動画などの動画を含むとしてよい。所定のCBTレッスンの治療コンテンツ102内の画像および機能は、アニメーション動画のフレーム内に表示するとしてよい。一部の実施形態では、心理療法レッスン106はさらに、患者が行う1または複数のタスクおよび/または課題を含むとしてよい。タスクおよび/または課題は、例えば、動画の前、再生中、または後に提供されるとしてよい。一部の実施形態では、動画および/または治療コンテンツは、患者のコンピューティングデバイスを介して患者に提供されるとしてよい。一部の実施形態では、治療コンテンツは、モバイルアプリケーションのユーザーインターフェースを介して患者に提供されるとしてよい。モバイルアプリケーションは、治療コンテンツを患者のコンピューティングデバイスを介してレンダリングさせるためのコンピュータプログラム命令を含むとしてよい。治療コンテンツは、患者のコンピューティングデバイスのメモリにローカルに保存されることもあるが、これに代えて、または、これに加えて、治療コンテンツは、所定の治療コンテンツの一部または全部を保存しているネットワークサーバーを通じてアクセスされることもある。
【0072】
一例として、
図3Aは、心理療法レッスンの動画の第1のフレームを示している。第1のフレームはアイコン310Aを含むとしてよく、このアイコン310Aは、周囲環境320Aの視覚表現におけるエンティティ(物語のキャラクターなど)を表すことがある。アイコン310Aによって表されるエンティティは、気分障害の症状または気分状態に対応付けられているとしてもよい。この例では、気分障害の症状または気分状態は、アイコン310Aが描写するエンティティの表情330Aに反映されているように、悲しみの状態および/または不幸せの状態であるとしてよい。「アイコン」という用語は、本明細書で使用する場合、人型のキャラクターまたは人型ではないオブジェクトなど、一見して生きているように見える実体の視覚的表現を指すことがある。エンティティは、ビデオアニメーションで表示される場合、動く腕、動く脚、動く胴体、動く顔のパーツなど、動く部分があるとしてよい。エンティティの動きは、動画の進行に合わせて調整することができる(例えば、動く特徴の速度が遅くなる)。一部の実施形態では、エンティティの特徴は、当該動画の再生中に、または、1または複数の動画の再生中にわたって変化するとしてもよい。例えば、エンティティおよび/またはシーンの配色は、動画の開始時点から終了時点まで変化するとしてもよい。
【0073】
図3Aから
図3Cに図示した一例の動画では、アイコン310Aが表しているエンティティは、
図3Aにおける環境320Aから
図3Bにおける環境320B、そして、
図3Cにおける環境320Cへと変化するものとして表示されている。例えば、
図3Aのアイコン310Aで描かれているエンティティは、悲しいという気分状態または不幸せの気分状態に対応する表情330Aを浮かべている。アイコン310Aによって表されるエンティティは、環境320Aから環境320Cへ移ると、気分状態が変わり得る(例えば、悲しいから楽しいへと変化)。すなわち、
図3Aのアイコン310Aで表されるエンティティの表情330Aは、
図3Cの表情330Cに変化してもよい。この例では、
図3Aの環境320Aは、暗くて屋内であるとしてよい。しかし、
図3Cの環境320Cは、明るくて屋外であってもよい。アイコン310A、310B、310Cで描かれているエンティティは、環境320Bに描かれた出口ドアを使用して、環境320Aから環境320Cに移行することができる。環境320Aから環境320Cへの移行は、所定の時間内(5秒、7秒、10秒など)に行われることがあり、これは、MDDの1または複数の症状を緩和するように設定されるとしてよい。例えば、環境320Aから320Cへの移行時間は、患者が受けている特定の療法、患者の療法の進行具合、患者からのフィードバック(質問/プロンプトに対する応答などの明示的フィードバック、および/または、生体フィードバック、アイトラッキングなどの1または複数のセンサを介して取り込まれる暗示的フィードバックなど)に基づいて増減させるとしてよい。しかし、本開示は、これらの環境または環境320Aから320Cへのこのような移行に特に限定されるものではなく、環境320Aから環境320Cへのエンティティの移行が伝えているものを同じ意図を実現する別の方法で視覚的に提示することもできる。
【0074】
図4A、
図4B、
図5Aおよび
図5Bに、複数の環境の間で、および、複数の気分状態の間で移行するエンティティのその他の例を示す。例えば、
図4Aは、心理療法レッスンの動画のうちの1フレームを図示しており、環境420Aにおいて表情430A(不幸または落ち込みなど)を表現するエンティティを表すアイコン410Aを含むことができる。
図4Bの心理療法レッスンの動画のうちの1フレームに示されているように、環境420Bに移行すると、エンティティを表すアイコン410Bが表情430B(幸せなど)に移行する。同様に、
図5Aは、心理療法レッスンの動画のうちの1フレームを図示しており、環境520A(例えば、地中の洞窟など)において表情530A(不幸または落ち込みなど)を表現するエンティティを表すアイコン510Aを含むことができる。環境520Bに移行すると(環境520Aの地下から520Bの地上へと上がった山の上など)、
図5Bの心理療法レッスンの動画のうちの1フレームに示されているように、エンティティを表すアイコン510Bが表示され、表情530B(幸福感、自信など)に移行する。これらの移行はそれぞれ、所定の期間において発生するように設定されるとしてよく、および/または、MDDの1または複数の症状を緩和するのに役立つ音声効果を伴うとしてよい。
【0075】
図3Aから
図3C、
図4A、
図4B、
図5Aおよび
図5Bに図示したフレームの例はそれぞれ、単独で、または、1または複数の他のフレームと組み合わせられることで、CBTレッスンで表示され得るアニメーション動画の一部を構成するとしてよい。アニメーション動画は、テキストコンテンツ、画像コンテンツ、動画コンテンツ、音声コンテンツ、または、それらの任意の組み合わせを含むことができる。アニメーション動画は、精神状態または感情状態の変化に対応付けつつ、ある環境から別の環境へと移動するエンティティをグラフィカルに描写することができる。このように移行することで、認知スキルを活用するよう患者をトレーニングするとしてよい。この認知スキルによって、患者は、実生活で同様に感情を移行させることができるようになり得る。アニメーション動画および付随する機能およびグラフィックは、DTx100に対応付けられている治療スケジュールの一環として患者が視聴する場合、精神状態および/または感情状態をより健康的なものにするための患者の脳内での1または複数の化学物質(ドーパミン、セロトニン、エンドルフィンなど)の放出を誘発する可能性がある。
【0076】
治療スケジュール
【0077】
図6は、DTx100を介して治療内容102を送達するための例示的な治療スケジュール600を示す。
図6に示すように、治療スケジュール600は6週間の治療期間であるが、患者の治療応答性に応じて短縮または延長してもよい。治療スケジュール600は、患者のHCPが予め決定するか、または、DTx100の提供者が推奨する。患者は、治療スケジュール600にしたがって毎週、記憶課題練習(EFMTなど)を3回、そして心理療法レッスン(CBTなど)を3回、受講するとしてよい。したがって、6週間の治療期間で、患者は18回のEFMT練習および18回のCBTレッスンを受講することになる。さらに、6週間の治療期間は毎日、メッセージ(SMSメッセージなど)を配信することもできる。当業者であれば、治療スケジュールの具体的な内容は患者によって異なるものであり、治療スケジュール600は一例を示すものであると理解するであろう。治療スケジュールでは、EFMT練習、CBTレッスン、および/または、メッセージを異なる間隔で実施するとしてよい。一部の実施形態では、HCPまたはDTx100の提供者が患者の治療スケジュールを作成するとしてよい。一部の実施形態では、1または複数の事前作成された治療スケジュールを、患者の治療スケジュールとして利用するとしてよい(他の患者と同様の患者特性を有する患者のために生成された治療スケジュールを使用するなど)。または、患者のための新しい治療スケジュールを作成するための基礎として(既存の治療スケジュールの1または複数の側面を修正するなど)利用するとしてよい。
【0078】
治療スケジュール600は、DTx100を介して患者に治療コンテンツ102を送達するように設計されるとしてよい。
図6に示すように、治療スケジュール600は6週間の治療期間であるが、患者の治療応答性に応じて短縮または延長してもよい。治療スケジュール600は、患者のHCPが予め決定するか、または、DTx100の提供者が推奨する。さらに、治療スケジュールは、治療コンテンツを患者に配信する際に調整することができる。例えば、現在の治療スケジュールに1または複数の心理療法レッスンを追加したり、患者にメッセージを提供する頻度を増減したりすることができる。一部の実施形態では、治療スケジュールに含まれる治療コンテンツに関するパラメータは、治療スケジュールの期間中に調整することができる。例えば、配色、単語リスト、コンテンツの種類、キャラクターの移動速度などは、HCPからの入力、患者から提供されるフィードバック、治療の有効性を測定するパフォーマンス指標あるいは他の測定結果に基づいて、または、それらの組み合わせに基づいて調整することができる。
【0079】
患者は、治療スケジュール600にしたがって毎週、記憶課題練習(EFMTなど)を3回、そして心理療法レッスン(CBTなど)を3回、完了するとしてよい。したがって、6週間の治療期間を受講した暁には、患者は18回のEFMT練習および18回のCBTレッスンを受講することになる。18回のEFMT練習は、
図6にEFMT1、EFMT2、EFMT3、EFMT4、EFMT5、EFMT、EFMT6、EFMT7、EFMT8、EFMT9、EFMT10、EFMT11、EFMT12、EFMT13、EFMT14、EFMT15、EFMT16、EFMT17、EFMT18として示されている。18回のCBTレッスンは上記の表1に反映されており、
図6ではCBT1、CBT2、CBT3、CBT4、CBT5、CBT6、CBT7、CBT8、CBT9、CBT10、CBT11、CBT12、CBT13、CBT14、CBT15、CBT16、CBT17、CBT18として示されている。EFMT練習およびCBTレッスンに加えて、治療スケジュール600の6週間の治療期間は毎日、メッセージ(SMSメッセージなど)を配信することもできる。
【0080】
図6には示されていないが、治療コンテンツ102は、抗うつ療法(ADT)などの他の種類の治療を補助するものとして、DTx100が提供するとしてよい。他の種類の治療としては、セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)、セロトニン・ノルエピネフリン再取り込み阻害剤(SNRI)、およびノルエピネフリン・ドパミン再取り込み阻害剤(NDRI)が挙げられるとしてよい。ADTは、患者のHCPが別の治療スケジュールにしたがって処方するとしてよい。
【0081】
治療スケジュール600の例に示すように、EFMT練習およびCBTレッスンは、曜日ごとに交互に受講するとしてよい。例えば、CBTレッスンは月曜日、水曜日、金曜日に、EFMT練習は火曜日、木曜日、土曜日に受講するとしてよい。しかし、治療コンテンツ102は任意の適切な順序でスケジュールを立て得るものと理解されたい。例えば、CBTレッスンは火曜日、木曜日、土曜日に、EFMT練習は月曜日、水曜日、金曜日に受講するとしてもよい。EFMT練習およびCBTレッスンは、同日に複数回を受講するとしてもよい。さらに、
図6に図示する治療スケジュール600ではEFMT練習またはCBTレッスンを日曜日に予定していないが、そのような「オフ」の日は、EFMT練習およびCBTレッスンを曜日毎に交互に実施しつつ、(月曜日から土曜日などの)どの曜日としてもよいものと理解されたい。例えば、CBTレッスンは火曜日、木曜日、土曜日に、EFMT練習は水曜日、金曜日、日曜日に受講するとしてもよく、月曜日を「オフ」の日とする。他の実施形態では、「オフ」の日は、6週間の治療期間において週が変わると変更されるとしてもよい。さらに、いくつかの実施形態では、患者が治療スケジュールの期間中のさまざまな時点で特定の練習および/またはレッスンにアクセスできるようにするとしてもよい。例えば、患者は、ある特定の日に、別の心理療法レッスンが予定されていても、あるいは心理療法レッスンが予定されていなくても、アンカーレッスンにアクセスすることができ、治療スケジュール600のどの時点でもアクセスすることができる。
【0082】
EFMT1からEFMT18のそれぞれの長さは、予め定められている(約30分など)。EFMT1からEFMT18で表示される表情画像は、同じ場合もあれば、練習毎に異なるとしてもよい。さらに、EFMT1からEFMT18で表示される表情画像の感情強度は、同じ場合もあれば、練習毎に異なるとしてもよい。6週間の治療期間において、表情画像および/または表示される表情画像の感情強度を変化させることで、EFMT1からEMT18の難易度を増減させるとしてよい。例えば、EFMT1からEFMT18は、患者の治療が進んであらかじめ決められた正答数に到達すると、(表示される表情画像の感情強度を弱めるなどして)徐々に難易度を上げていくとしてよい。逆に、練習で患者の正答数が所定数に達しなければ、(表示される表情画像の感情強度を強くするなどして)EFMT1からEFMT18に含まれる練習の難易度を下げてもよい。他の実施形態では、難易度は、6週間の治療期間のうち任意のタイミングにおける患者の様子に応じて、治療スケジュール600にわたって変化(例えば、増減の両方向に)し得る。
【0083】
所定のEFMTで使用する複数の異なる画像を選択するために、DTx100は、対応する画像の感情強度を示す強度ラベルに基づいて画像をフィルタリングするとしてよい。例えば、利用可能な一部または全ての表情画像の中から、第1の感情(怒りなど)に関連する画像であって、第1の感情強度未満(感情強度3未満など)を有するものとのラベルが付与された画像を特定するとしてよい。一部の実施形態では、HCPは、スクリプトを入力するか、データベースの検索フィールドに値を入力するか、または別の選択メカニズムを使用して、所定のEFMTおよび/または感情強度に含まれるべき感情を選択するとしてよい。HCPは、検索条件を満たす検索結果のリストを受け取り、EFMTを作成するべく検索結果に含まれる画像の一部または全部を選択するとしてよい。一部の実施形態では、EFMTの作成プロセスを自動化して、画像のフィルタリングおよびその結果の中からの選定が自動的に実行されるとしてもよい。この場合、HCP等、DTx100の提供者は、選択された画像を修正および/またはキュレーションすることが出来るとしてよい。
【0084】
EFMT1からEFMT18の練習の難易度は、表情画像および対応付けられている感情強度を変化させることに加えて、または、それに代えて、患者が何枚前の画像を思い出すべきか、N枚の値を変えることによって調整することができる。すなわち、EFMT1からEFMT18の練習の難易度は、整数Nを大きくすることによって高くなり、整数Nを小さくすることによって低くなるとしてよい。画像の感情および/または感情強度を選択することができる上記の技術と同様に、整数Nの値も、HCPおよび/またはDTx100の提供者が選択/変更することができる。整数Nは、表示される表情画像の感情強度を調整する場合と同様に、治療中の患者の様子に基づいて調整するとしてよい。例えば、整数Nは、患者による正答数が所定のしきい値を超える場合には増加させることができ、正答数が所定のしきい値より低い場合には減少させることができる。整数Nは、整数Nの値をHCPが自分のコンピューティングデバイス上でGUIへ入力することで修正するとしてもよい。これによって、整数Nの値を新しく設定するための命令を作成してDTx100へ送信することができる。したがって、整数Nを利用して、難易度を、治療スケジュール600における所与のタイミングにおける患者の能力に最適なレベルに維持するとしてよい。
【0085】
CBT1からCBT18のそれぞれのレッスンは、長さが予め定められており(約3~5分など)、アニメーション動画が含まれているとしてよい。CBT1からCBT18のレッスンの内容は、治療スケジュール600に含まれるレッスン毎に異なるとしてよい。しかし、以下でさらに説明するが、患者がそれぞれのCBTレッスンを1回または複数回再受講することを、患者自身が選択するとしてもよく、および/または、患者のHCPが推奨するとしてもよい。CBT1からCBT18のレッスンの内容はさまざまだが、CBT1からCBT18のレッスンは、感情調節(ER)、行動活性化(BA)、認知再構築(CR)など特定の心理療法の理念に従って治療で介入するべく、グループ分けするとしてもよい。例えば、上記の表1および
図6に示すように、CBT1からCBT3およびCBT10からCBT12のレッスンは、ERに基づいて治療的介入を行うグループとしてよい。CBT4からCBT6およびCBT13からCBT15のレッスンは、BAに基づいて治療的介入を行うグループとしてよい。CBT7からCBT9およびCBT16からCBT18のレッスンは、CRに基づいて治療的介入を行うグループとしてよい。
【0086】
治療スケジュール600は、ER、BAおよびCRに基づいてCBT1からCBT18のレッスンをグループ分けすることに加えて、患者が治療コンテンツ102を最適なやり方で受け取ることができるようCBT1からCBT18のレッスンをそれぞれの順序で提供するように構成するとしてよい。これによって、治療結果の改善につながる。例えば、
図6に示すように、患者はCBT1からCBT3(ER)のレッスンを第1週目に受講するとしてよい。CBT4からCBT6(BA)のレッスンは、第2週目に受講するとしてよい。CBT7からCBT9(CR)のレッスンは、第3週目に受講するとしてよい。CBT10からCBT12(ER)のレッスンは、第4週目に受講するとしてよい。CBT13からCBT16(BA)のレッスンは、第5週目に受講するとしてよい。CBT16からCBT18(CR)のレッスンは、第6週目に受講するとしてよい。複数のCBTレッスンの選択順序は、選択される特定のEFMT練習との間に関係があるとしてよい。特定の神経回路をEFMT練習で修復し、修復された神経回路をCBTレッスンで強化するという目的がある。治療スケジュール600の特定の構成について説明したが、心理療法レッスンを別の構成にするとしてもよい。
【0087】
したがって、治療スケジュール600は、患者が第1週目にERの理念を学ぶように構成するとしてよい。これにより、患者は、悲しみ、怒り、絶望感などの苦しい感情を、これらの感情に飲み込まれることなく、そして有害な行動をとることなく、感じる方法を学ぶとしてよい。患者は、CBT1からCBT3(ER)のレッスンによって、思考および感情に対するマインドフルネス、困難な感情に耐えること、自分を鎮める方法を習得するとしてよい。
【0088】
治療スケジュール600は、第2週目において、BAの理念を学ぶように構成するとしてよい。つまり、CBT4からCBT6(BA)のレッスンは、健康的な活動または行動を患者が避ける、または、止めるパターンを対象にするとしてよい。CBT4からCBT6(BA)のレッスンでは、患者がそのような活動または行動を再開できるよう手助けするべく設計されているタスクまたは「行動への呼びかけ」を患者が経験するとしてよい。
【0089】
治療スケジュール600は、第3週目において、CRの理念を学ぶように構成するとしてよい。CRでは、自分自身、世間および/または未来に対して否定的な患者の感じ方に焦点を当てるとしてよい。したがって、患者は、CBT7からCBT9(CR)のレッスンにより、そのような否定的な思考を特定して、正確性および妥当性を体系的に評価するための認知ツールを習得するとしてよい。CBT7からCBT9(CR)のレッスンにより患者は、そのような思考に疑いを持ち、より適切なものへとリフレーミングし易くなるとしてよい。
【0090】
治療スケジュール600の第4週目から第6週目には、ER、BA、CRの一連のレッスンが繰り返されるとしてよい。例えば、CBT10からCBT12(ER)のレッスン、CBT13からCBT15(BA)のレッスン、CBT16からCBT18(CR)のレッスンはそれぞれ、第4週目、第5週目、第6週目に受講するとしてよい。ER、BA、CRの理念を繰り返すわけだが、CBT10からCBT12(ER)、CBT13からCBT15(BA)、CBT16からCBT18(CR)の具体的なレッスン内容は、第1週目から第3週目の内容とは異なるとしてもよい。例えば、患者は、治療スケジュール600の第1週目から第3週目へと進むにつれて、ER、BAおよびCRに対応付けられているスキルおよび理念をより上手く実践できるようになるとしてよい。したがって、第4週目から第6週目の間、CBT10からCBT12(ER)、CBT13からCBT15(BA)、CBT16からCBT18(CR)のレッスンは、より高度な方法を学ぶように構成するとしてよい。そのような方法により、それまでの学習内容をさらに深く掘り下げ、および/または、患者のうつ症状を緩和するためのメカニズムおよびスキルをさらに(より高度なものなど)が伝えられるとしてよい。
【0091】
EFMT1からEFMT18の練習および/またはCBT1からCBT18のレッスンを受講することに加えて、DTx100ではさらに、患者が治療スケジュール600においてCBT1からCBT18のレッスンのうち1または複数を選択するオプションメニューが設定されているとしてよい。オプションメニューは、CBT1からCBT18のうち患者が過去に受講したレッスンを再受講できるように構成するとしてよい。これにより、過去の習得内容を深化させ、および/または、患者は学習中の方法およびスキルを習得する機会を再度得るとしてよい。たとえば、患者は、第1週目の月曜日にCBT1のレッスンを終えると、治療スケジュール600の残りの期間中いつでもCBT1のレッスンを再受講することができるとしてよい。しかし、オプションメニューでは、治療スケジュール600に沿って他のレッスンが終了するまで、患者がそれらのレッスンを受けることが出来ない場合がある。よって、オプションメニューでは、例えば、患者は、CBT9のレッスンについて、第3週目の木曜日に終了するまでアクセスする機会が得られないとしてもよい。一部の実施形態では、オプションメニューは、患者のコンピューティングデバイスでレンダリングされるUIによって患者に提示されるとしてよい。
【0092】
治療スケジュール600の一環で、定期的にメッセージを生成して患者に配信するとしてよい。メッセージは、CBT1からCBT18のレッスンで学ぶ理念を深化させるように選択するとしてよく、患者の進行度に合わせるとしてよい。メッセージング108により、任意の所望の間隔(1日あたり0通から4通のメッセージなど)での患者へのメッセージ配信が容易になるとしてよい。メッセージには、EFMT1からEFMT18の練習および/またはCBT1からCBT18のレッスンを完了するよう患者に注意を促す内容も含まれるとしてよい。メッセージはまた、患者のやる気をかき立て、より熱心に取り組ませるべく、EFMT1からEFMT18の練習および/またはCBT1からCBT18のレッスンを完了することが難しいこと、または、役に立つことを理解するように構成されるとしてよい。メッセージング108は、治療スケジュール600における患者の活動、アドヒアランス、および/または結果に基づいてパーソナライズするとしてよい。一部の実施形態では、メッセージは、患者のコンピューティングデバイスで実行されるモバイルアプリケーションのUIでレンダリングされるとしてよい。メッセージは、患者が(DTx100などの)モバイルアプリケーションを起動したタイミングで、さらに、または、それに代えて、特定の時間間隔で表示されるとしてもよい。例えば、メッセージは、毎日一回または複数回、特定の時間に表示されるとしてよい。場合によっては、メッセージの一部あるいは全部、または、メッセージの断片あるいは要約を反映した通知が表示されるとしてもよい(「ポップアップ」など)。
【0093】
システムおよびコンピューティングデバイスの例
【0094】
図7は、さまざまな実施形態に係る、DTx100によりうつ病を治療するシステム700を示す図である。システム700は、ユーザーデバイス710と、アプリケーションサーバー720と、ネットワーク730とを含むとしてよい。ユーザーデバイス710は、アプリケーションサーバー720に対して治療コンテンツ102を求める要求712を出すとしてよい。要求712は、例えば、ユーザーデバイス710のユーザーが、アプリケーションサーバー210(または他のサーバ)がホストしているウェブサイトまたはウェブポータルにアクセスし、治療コンテンツをユーザーデバイス710にダウンロードするよう要求していることを示す情報を含むことができる。例えば、要求712は、MAC識別子、IPアドレス、ユーザー/患者識別子、または患者(ユーザーデバイス710を操作している人など)を識別するために使用される他の識別子を含むとしてよい。ユーザーデバイス710は、本明細書で説明する場合、「コンピューティング装置」とも呼ぶ。ユーザーデバイス710は、治療コンテンツ102を格納しているアプリケーションサーバー720のネットワークロケーションを参照するハイパーリンクを含むSMSメッセージまたは電子メールメッセージなどのメッセージを受信するとしてよい。ユーザーデバイス710は、ユーザーからハイパーリンクの選択を受け付けるとしてよい。ユーザーデバイス710は、ハイパーリンクが選択されることに応答して、ネットワーク730を介して治療コンテンツ102をダウンロードすることを求める要求712を送信するとしてよい。
【0095】
アプリケーションサーバー720は、要求712に応じて、治療コンテンツ102を含むデータ722を提供するとしてよい。データ722を受信すると、ユーザーデバイス710は、ユーザーの現在の1または複数のMDD症状を緩和するように構成されている治療スケジュールに従って、治療コンテンツ102をレンダリングまたは表示するとしてよい。他の実施形態では、治療コンテンツ102は、アプリケーションサーバー720からネットワーク730を介してユーザーデバイス710へとレンダリングされるとしてもよい。
【0096】
図8は、さまざまな実施形態に係る、DTx100を利用してうつ病を治療するデバイスのシステムコンポーネントの一例を示す図である。コンピューティングデバイス800は、さまざまな形態のデジタルコンピュータ、例えば、ラップトップ、デスクトップ、ワークステーション、パーソナルデジタルアシスタント、サーバー、ブレードサーバー、メインフレーム等の適切なコンピュータなどを表すことを目的としている。コンピューティングデバイス650は、さまざまな形態のモバイルデバイス、例えば、パーソナルデジタルアシスタント、携帯電話、スマートフォン等のコンピューティングデバイスを表すことを目的としている。これに加えて、コンピューティングデバイス800または650は、ユニバーサルシリアルバス(USB)フラッシュドライブを含み得る。USBフラッシュドライブには、オペレーティングシステムおよびその他のアプリケーションを保存することができる。USBフラッシュドライブは、ワイヤレストランスミッタまたは他のコンピューティングデバイスのUSBポートに挿入可能なUSBコネクタなどの入出力コンポーネントを含むとしてよい。ここに示した構成要素、構成要素同士の接続および関係、ならびに、構成要素の機能は、あくまで例示に過ぎず、本明細書で説明および/または特許請求する発明の実施態様を限定することを意図したものではない。
【0097】
コンピューティングデバイス800は、プロセッサ602と、メモリ604と、ストレージデバイス606と、メモリ604および高速拡張ポート610に接続されている高速インターフェース608と、低速拡張ポート614およびストレージデバイス606に接続する低速インターフェース612とを含む。構成要素である602、604、606、608、610および612はそれぞれ、さまざまなバスを利用して相互に接続されており、共通のマザーボード上に、または、適切な他の方法で実装するとしてよい。
【0098】
プロセッサ602は、コンピューティングデバイス800で実行するための命令を処理可能である。そのような命令には、高速インターフェース608に結合されているディスプレイ616などの外部入出力デバイスにGUIのグラフィカル情報を表示するための、メモリ604またはストレージデバイス606に記憶されている命令が含まれる。他の実施例では、複数のプロセッサおよび/または複数のバスを、複数のメモリおよび複数の種類のメモリとともに、適宜使用することができる。また、コンピューティングデバイス800の複数のインスタンスを接続し、各デバイスが必要な処理の一部を提供することもできる。サーバーバンク、一群のブレードサーバー、またはマルチプロセッサシステム等が挙げられる。さらに、プロセッサ652は、プロセッサまたは一群のプロセッサの複数のインスタンスを含むとしてよい。
【0099】
メモリ604は、コンピューティングデバイス800内の情報を格納するとしてよい。一部の実施形態では、メモリ604は1または複数の揮発性メモリユニットである。別の実施例では、メモリ604は1または複数の不揮発性メモリユニットである。メモリ604は、磁気ディスクまたは光ディスクなど、別の形態のコンピュータ読み取り可能媒体としてもよい。
【0100】
ストレージデバイス606は、コンピューティングデバイス800用の大容量ストレージを提供可能である。一部の実施形態では、ストレージデバイス606は、コンピュータ読み取り可能な媒体であってもよいし、または、コンピュータ読み取り可能な媒体を含むとしてもよい。コンピュータ読み取り可能な媒体は、フロッピーディスクデバイス、ハードディスクデバイス、光ディスクデバイスあるいはテープデバイス、フラッシュメモリあるいは他の同様の固体メモリデバイス、または、ストレージエリアネットワークまたはその他の構成に含まれるデバイスを含むアレイ型デバイスなどである。コンピュータプログラム製品は、情報担体に具現化させ得る。コンピュータプログラム製品はさらに、実行されることで上述したものと同様の方法を1または複数実施する命令を含むとしてよい。情報担体は、メモリ604、ストレージデバイス606、プロセッサ602上のメモリなど、コンピュータまたは機械が読み取り可能な媒体である。
【0101】
高速インターフェース608は帯域を多く消費するコンピューティングデバイス800用の処理に対応することが可能で、低速インターフェース612は、相対的に消費する帯域が少ない処理を担当するとしてよい。このような機能分担は一例に過ぎない。一部の実施形態では、高速インターフェース608は、グラフィックプロセッサまたはアクセラレータを介してメモリ604、ディスプレイ616に接続されるとしてよく、さらに、さまざまな拡張カード(不図示)を受け付ける高速拡張ポート610に結合されるとしてよい。一部の実施形態では、低速インターフェース612は、ストレージデバイス606および低速拡張ポート614に結合されるとしてよい。USB、ブルートゥース、イーサネットおよび/またはワイヤレスイーサネットなどのさまざまな通信ポートを含み得る低速拡張ポート614は、例えばネットワークアダプタを介して、キーボード、ポインティングデバイス、マイクロフォン/スピーカセット、スキャナ、および/または、スイッチあるいはルータ等のネットワークデバイスなどの1または複数の入出力デバイスに結合することができる。コンピューティングデバイス800は、図示するように、多くの異なる形態で実装し得る。例えば、コンピューティングデバイス800は、標準的なサーバー620として実装するとしてもよいし、または、複数回実装して一群のサーバーとして実装するとしてもよい。コンピューティングデバイス800は、ラックアプリケーションサーバー624の一部として実装することもできる。さらに、コンピューティングデバイス800は、ラップトップコンピュータ622のようなパーソナルコンピュータに実装することができる。あるいは、コンピューティングデバイス800のコンポーネントを、デバイス650などのモバイルデバイス(図示せず)の他のコンポーネントと組み合わせることもできる。このようなデバイスはそれぞれ、コンピューティングデバイス800、650のうち1以上を含むことができる。システム全体は、両者間で通信を行う複数のコンピューティングデバイス800、650で構成することができる。
【0102】
コンピューティングデバイス800は、図示するように、多くの異なる形態で実装し得る。例えば、コンピューティングデバイス800は、標準的なサーバー620として実装するとしてもよいし、または、複数回実装して一群のサーバーとして実装するとしてもよい。コンピューティングデバイス800は、ラックアプリケーションサーバー624の一部として実装することもできる。さらに、コンピューティングデバイス800は、ラップトップコンピュータ622のようなパーソナルコンピュータに実装することができる。あるいは、コンピューティングデバイス800のコンポーネントを、デバイス650などのモバイルデバイス(図示せず)の他のコンポーネントと組み合わせることもできる。このようなデバイスはそれぞれ、コンピューティングデバイス800、650のうち1以上を含むことができる。システム全体は、両者間で通信を行う複数のコンピューティングデバイス800、650で構成することができる。
【0103】
コンピューティングデバイス650は、プロセッサ652、メモリ664、およびディスプレイ654などの入出力デバイス、通信インターフェース666、および送受信機668等の構成要素を含むとしてよい。コンピューティングデバイス650は、ストレージを追加するべく、マイクロドライブなどのストレージデバイスを備えることもできる。構成要素である650、652、664、654、666および668はそれぞれ、さまざまなバスを利用して相互に接続されており、そのうち一部は、共通のマザーボード上に、または、適切な他の方法で実装するとしてよい。本明細書で説明するが、コンピューティングデバイス800、650の特定の構成要素のインスタンスが1つである場合を
図8に図示しているが、これらの構成要素のインスタンスはさらに追加されて実装されることがあり、構成要素のインスタンスを1つとする目的は、構成要素の理解を容易にするためだけであることを理解されたい。
【0104】
プロセッサ652は、メモリ664に格納された命令を含む、コンピューティングデバイス650内の命令を実行することができる。プロセッサ652は、複数の別個に形成されているアナログプロセッサおよびデジタルプロセッサを含む複数のチップで構成されるチップセットとして実装可能である。また、プロセッサ652は、多数あるアーキテクチャのうち任意のもの利用して実装することができる。例えば、プロセッサ652は、CISC(複合命令セットコンピュータ)プロセッサ、RISC(縮小命令セットコンピュータ)プロセッサ、またはMISC(Minimal Instruction Set Computer)プロセッサであってよい。プロセッサ652は、例えば、ユーザーインターフェース、デバイス650によって実行されるアプリケーション、デバイス650が行う無線通信の制御など、デバイス650の他の構成要素の調整を行うことができる。さらに、プロセッサ652は、プロセッサまたは一群のプロセッサの複数のインスタンスを含むとしてよい。
【0105】
プロセッサ652は、ディスプレイ654に結合されている表示インターフェース656および制御インターフェース658を介して、ユーザーと通信することができる。ディスプレイ654は、例えば、TFT(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)ディスプレイまたはOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイ、または他の適切なディスプレイ技術であってよい。表示インターフェース656は、(DTx100の治療コンテンツ102を含むモバイルアプリケーションをレンダリングするUIなどの)グラフィカル情報および他の情報をユーザーに提示するべくディスプレイ654を駆動するための適切な回路を構成するとしてよい。制御インターフェース658は、ユーザーからコマンドを受け取り、プロセッサ652に送信するために変換することができる。さらに、コンピューティングデバイス650と他のデバイスとの間の近距離通信が可能になるように、プロセッサ652と通信する外部インターフェース662を設けるとしてよい。外部インターフェース662は、例えば、ある実施例では有線通信を、他の実施例では無線通信を実現するとしてよく、複数のインターフェースを使用することも可能である。
【0106】
メモリ664は、コンピューティングデバイス650内の情報を格納するとしてよい。メモリ664は、1あるいは複数のコンピュータ読み取り可能な媒体、1あるいは複数の揮発性メモリユニット、または、1あるいは複数の不揮発性メモリユニットのうちの1または複数として実装するとしてよい。拡張メモリ674も設けるとしてよい。拡張メモリ674は、拡張インターフェース672を介してコンピューティングデバイス650に接続されるとしてよい。拡張インターフェース672は、例えばSIMM(Single In Line Memory Module)カードインターフェースを含み得る。このような拡張メモリ674は、コンピューティングデバイス650用に追加で記憶領域を形成するとしてよく、または、コンピューティングデバイス650用のアプリケーションまたは他の情報を格納するとしてもよい。具体的には、拡張メモリ674は、上述のプロセスを実行または補足する命令を含むことができ、さらに、セキュア情報を含むこともできる。したがって、例えば、拡張メモリ674は、コンピューティングデバイス650用のセキュリティモジュールとして設けるとしてよく、コンピューティングデバイス650を安全に使用できるようにするための命令でプログラムすることができる。さらに、SIMMカード上にハッキング不可能に識別情報を配置するなどの方法で、追加情報とともにセキュアなアプリケーションをSIMMカード経由で提供することができる。
【0107】
メモリは、後述するように、例えばフラッシュメモリおよび/またはNVRAMメモリを含むとしてよい。一部の実施形態では、コンピュータプログラム製品は、情報担体に具現化させ得る。コンピュータプログラム製品は、実行されることで上述したものと同様の方法を1または複数実施する命令を含む。情報担体は、メモリ664、拡張メモリ674、またはプロセッサ652上のメモリなどの、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体であり、例えば、送受信機668または外部インターフェース662を介して受信可能である。
【0108】
コンピューティングデバイス650は、通信インターフェース666を介して無線通信することができる。通信インターフェース666は、必要に応じてデジタル信号処理回路を含むとしてよい。通信インターフェース666は、GSM音声通話、SMS、EMS、またはMMSメッセージング、CDMA、TDMA、PDC、WCDMA、CDMA2000、またはGPRSなど、さまざまなモードまたはプロトコルでの通信を実現するとしてよい。このような通信は、例えば、無線周波数送受信機668を介して行うことができる。さらに、ブルートゥース、Wi-Fiなどの送受信機(不図示)を使った近距離通信も可能である。さらに、GPS(全地球測位システム)受信機モジュール670が、ナビゲーションおよび位置に関連する無線データをコンピューティングデバイス650に追加で提供することができ、このデータは、コンピューティングデバイス650上で実行されるアプリケーションが適宜使用する。
【0109】
コンピューティングデバイス650は、音声コーデック660を利用して音声通信を行うこともできる。音声コーデック660は、ユーザーからの音声情報を受信し、使用可能なデジタル情報に変換することができる。音声コーデック660は、同様に、コンピューティングデバイス650のハンドセットに含まれているもの等のスピーカーを通して、ユーザーに聞こえる音声を生成することができる。このような音声は、音声通話からの音を含むとしてよく、音声メッセージ、音楽ファイルなどの録音内容を含むとしてよく、コンピューティングデバイス650上で動作するアプリケーションが生成する音を含むとしてもよい。
【0110】
コンピューティングデバイス650は、図示するように多くの異なる形態で実装し得る。例えば、携帯電話680として実装することができる。また、スマートフォン682、パーソナルデジタルアシスタント、または他の同様のモバイルデバイスの一部として実装することもできる。
【0111】
本明細書で説明するシステムおよび方法のさまざまな実装は、デジタル電子回路、集積回路、特別に設計されたASIC(特定用途向け集積回路)、コンピュータハードウェア、ファームウェア、ソフトウェア、および/またはそのような実装の組み合わせで実現することができる。これらのさまざまな実施例は、特定用途型または汎用型にかかわらず少なくとも1つのプログラマブルプロセッサ、少なくとも1つの入力デバイスおよび少なくとも1つの出力デバイスを含むプログラマブルシステムで実行可能および/または解釈可能な1または複数のコンピュータプログラムにおける実装を含むとしてよい。当該プログラマブルプロセッサは、ストレージシステムからデータおよび命令を受け取り、当該ストレージシステムへデータおよび命令を送信するよう、結合されている。
【0112】
これらのコンピュータプログラム(プログラム、ソフトウェア、ソフトウェアアプリケーションまたはコードとも呼ばれる)は、プログラマブルプロセッサ用の機械命令を含み、高級プロシージャ言語および/またはオブジェクト指向型プログラミング言語、および/またはアセンブリ言語/機械語で実装され得る。本明細書で用いる場合、「機械可読媒体」、「コンピュータ可読媒体」という用語は、任意のコンピュータプログラム製品、装置および/またはデバイス、例えば、磁気ディスク、光ディスク、メモリおよびプログラマブルロジックデバイス(PLD)等を意味する。これらは、機械命令を機械可読信号として受信する機械可読媒体を含むプログラマブルプロセッサに、機械命令および/またはデータを提供するために用いられる。「機械可読信号」という用語は、機械命令および/またはデータをプログラマブルプロセッサに提供するために用いられる任意の信号を意味する。
【0113】
ユーザーとのやり取りを実現するべく、本明細書で説明するシステムおよび技術は、ディスプレイデバイス、例えば、ユーザーに情報を表示する陰極線管(CRT)または液晶ディスプレイ(LCD)モニターと、ユーザーがコンピュータに入力を行うためのキーボードおよびポインティングデバイス、例えば、マウスまたはトラックボール等とを含むコンピュータで実装され得る。ユーザーとのやり取りを実現する上で他の種類のデバイスを利用することもできる。例えば、ユーザーに与えられるフィードバックは、任意の形式の感覚フィードバックであってよく、例えば、視覚フィードバック、聴覚フィードバック、または、触覚フィードバック等である。ユーザーからの入力は、音響入力、音声入力または触覚入力等の任意の形式で受信するとしてよい。
【0114】
本明細書で説明するシステムおよび技術は、データサーバなどのバックエンドコンポーネントを含むコンピューティングシステム、アプリケーションサーバーなどのミドルウェアコンポーネントを含むコンピューティングシステム、または、グラフィカルユーザーインターフェースまたはウェブブラウザを有するクライアントコンピュータなど、本明細書で説明する実施例に係るシステムおよび技術とユーザーとの間でやり取りを成立させるフロントエンドコンポーネントを含むコンピューティングシステム、または、そのようなバックエンドコンポーネント、ミドルウェコンポーネント、またはフロントエンドコンポーネントを任意に組み合わせることで実装することができる。システムの構成要素は、通信ネットワークなど、任意のデジタルデータ通信形式またはデジタルデータ通信媒体で相互に接続することができる。通信ネットワークの例としては、ローカルエリアネットワーク(「LAN」)、ワイドエリアネットワーク(「WAN」)、インターネットなどがある。
【0115】
コンピューティングシステムは、クライアント側およびサーバー側を含むとしてよい。クライアントおよびサーバーは通常、互いに離れた位置にあり、通信ネットワークを介してやり取りするのが普通である。クライアントとサーバーの関係は、それぞれのコンピュータで実行されており、互いにクライアント-サーバー関係にあるコンピュータプログラムによって発生する。
【0116】
実施例1
【0117】
プロトコルタイトル
【0118】
大うつ病性障害(MDD)と診断された成人被験者の補助療法としてのデジタルセラピューティクス(CT-152)の有効性を評価するための多施設共同無作為化比較治験。
【0119】
<CT-152>
【0120】
CT-152は、対話型ソフトウェアベースの認知療法、感情療法、行動療法を提供するデジタルセラピューティクスである。CT-152の構成要素には、感情顔記憶課題(EFMT)、認知行動療法(CBT)に基づく心理療法レッスン、ショートメッセージサービス(SMS)テキストメッセージングが含まれる。EFMTおよび心理療法レッスンは、6週間にわたって週3回行われる。6週間の治療期間中、テキストメッセージが送信される。
【0121】
治験の理論的根拠
【0122】
MDDと診断され、抗うつ薬単独療法(ADT)を受けている被験者を対象とし、十分なサンプルサイズを有する無作為化比較治験において、CT-152を偽薬と比較することにより試験する治験。この治験は、このソフトウェア治療の有効性および安全性に関するデータを提供する治験である。
【0123】
治験の目的およびエンドポイント(評価項目)
【0124】
第一の目的:MDDと診断されADT単剤療法を受けている成人被験者において、CT-152の有効性を偽薬と比較する。
【0125】
有効性のプライマリーエンドポイント(有効性の主要な評価項目):モンゴメリー-アスバーグうつ病評価尺度(MADRS)総スコアにおけるベースラインから第6週目までの変化。効果の持続性については、第6週目、第8週目、第10週目の3回のMADRS評価を行う。CT-152と偽薬とを比較した場合、統計学的に有意となるように、第6週目における臨床的に意義のある最小変化量(MCID)の群間差が1.6~1.9であることを証明することに加え、第8週目および第10週目におけるベースラインからの変化量の点推定値が1.6を超えることにより、持続性を証明する。
【0126】
鍵となる有効性のセカンダリーエンドポイント(鍵となる有効性の副次的な評価項目):全般性不安障害-7(GAD-7)総スコアのベースラインから第6週目までの変化。GAD-7に基づく持続性の場合、第6週目、第8週目、第10週目の3回にわたって評価を行い、偽薬と比較してCT-152の場合に、第8週目および第10週目のGAD-7総スコアのベースラインからの変化量の点推定値において、数値的により大きな改善が見られることを証明する。
【0127】
その他の有効性のエンドポイント(その他の有効性の評価項目):MADRS総スコアのベースラインから第2週目および第4週目までの変化、GAD-7総スコアのベースラインから第2週目および第4週目までの変化、第2週目、第4週目および第6週目におけるMADRS奏効率(ベースラインからの50%以上の減少)、臨床全般改善度(Clinical Global Impressions-Severity (CGI-S))スコアのベースラインから第2週目、第4週目および第6週目までの変化、世界保健機関(WHO)障害評価スケジュール(WHODAS)2.0総スコアのベースラインから第6週目までの変化、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)総スコアのスクリーニングから4週目および6週目までの変化、第2週目、第4週目および第6週目のMADRS部分奏効(ベースラインからのMADRSスコアの減少が30%以上50%未満)、第8週目および第10週目のMADRS奏効率(完全奏効または部分奏効、ベースラインからのMADRS総スコアの減少が30%以上と定義される)。
【0128】
診査エンドポイント(診査評価項目):第2週目、第4週目、第6週目の寛解率(MADRSスコアが10以下、MADRSのベースラインからの減少が50%以上)、被験者および医療従事者(HCP)満足度尺度で測定した満足度、EuroQol 5-Dimension、5-Level(EQ-5D-5L)で測定した健康状態。
【0129】
安全性に関する目的:MDDと診断されADT単剤療法を受けている成人被験者におけるCT-152の安全性を評価する。
【0130】
安全性のエンドポイント(安全性の評価項目):有害事象(AE)、重篤なAE、AEを原因とする治験中止の頻度および重症度。
【0131】
治験デザイン
【0132】
MDDと診断されてうつ病治療のためADT単剤療法を受けている成人被験者を対象としたCT-152の有効性を評価する多施設共同無作為化比較治験。被験者の治験参加期間は最大13週間である。この治験には、最大3週間のスクリーニング期間、6週間の治療期間、4週間の延長期間が含まれる。対象被験者には、第1日目に2種類のデジタルモバイルアプリケーション(CT-152または偽薬)のいずれかが無作為に割り振られる。
【0133】
被験者の期待を抑えるため、本治験の被験者は有効性仮説について盲検化される。対象となる被験者には、a)治験参加期間は最大13週間であり、2つのデジタル治療法のいずれかに無作為に割り付けられること、b)治験の目的は、ADTと2つのデジタルセラピューティクス治療とを併用した場合の有効性を比較することであることが、治験施設のスタッフから通達される。どちらの治療群にも、MDDの改善に役立つ可能性があると公表される。被験者に対してCT-152または偽薬を知らせることはない。被験者に対する治験が終了する際、そして、全ての最終受診手順が完了した後、治験施設のスタッフは被験者に治験の仮説を説明する。つまり、一方のデジタルセラピューティクスがうつ症状の改善により有益であるという仮説があるが、それを確認するための治験が必要であるということである。治験施設のスタッフには、被験者との間でこの話し合いをする際に役に立つようデブリーフィングガイドラインが提供される。
【0134】
治験施設のスタッフは、受診時は毎回、電話または遠隔医療技術を利用したリモート受診のいずれかの方法で、診察手順を実施する。治験責任医師の判断により、スクリーニング受診は対面で行うとしてもよい。治験施設は、安全性の問題/懸念を評価するために必要であれば、いつでも予定外の診察を対面またはリモートで行うとしてもよい。
【0135】
リモート受診は、治験施設スタッフがアクセス可能なポータルを備えたスポンサー指定の遠隔医療プラットフォームを使用して実施され、被験者は、治験への同意を表明し、自己記入式尺度などの治験評価を遂行するために、モバイルアプリケーション(治験用デジタルモバイルアプリケーションとは別)のダウンロードが求められる。
【0136】
被験者は、リモート受診を実施するためのモバイルアプリケーションをダウンロードする前に、登録に同意するよう、本人確認を含む遠隔医療プラットフォーム内での被験者の情報の収集に必要なプライバシーポリシーおよび利用規約に同意するよう求められる。被験者は、連邦規則集(CFR)第11編(21 Code of Federal Regulations Part 11)の電子署名要件を遵守するため、治験同意書に電子署名する前にリモートで本人確認プロセスを完了する必要がある。詳細はサイト運営マニュアルに記載されている。
【0137】
インフォームドコンセントが得られるとスクリーニング期間が始まる。スクリーニング受診で参加基準を満たした被験者は、デジタルモバイルアプリケーションをスマートフォンにダウンロードし、オンボーディングソフトウェアモジュールにアクセスする。デジタルモバイルアプリケーションのダウンロードはコールセンターでサポートするとしてよい。スクリーニング期間中に被験者はソフトウェアに慣れる。被験者が治験を理解しているか、関心を持っているか否かは、オンボーディング要件に対して十分なアドヒアランスがあるか否かで判明する。これは、治験責任医師が被験者に確認し、割り当てられた3週間のスクリーニング期間中に被験者が連続7日間にわたって課題を完了するか否かで評価される。
【0138】
スクリーニング診察後、被験者は以下の条件に基づいて適格か否か判断される。(1)オンボーディングソフトウェアモジュールでの被験者のアドヒアランスおよび成績(3週間のスクリーニング期間のうち連続する7日間に3回のセッション例を完了し、3回目のセッションまでに認知制御課題の難易度が2以上に到達したことと定義)。(2)すべての受入基準を満たし、除外基準を満たさないと治験責任医師が継続して評価すること。
【0139】
対象となる被験者は第1日目に、約50件の治験施設に対して1:1(CT-152または偽薬)で無作為に割り付けられる。一つの治験施設におけるサンプルサイズは、無作為に割り付けられた被験者全体の約15%を上限とする。無作為化は、治験施設ごとに階層する。
【0140】
治療期間中(第1日目の「ベースライン」から第6週目まで)、被験者は第2週目、第4週目、第6週目にリモート受診し、第1週目、第3週目、第5週目には治験施設より電話で連絡を受ける。被験者は、治療期間中、デジタルモバイルアプリケーションの課題を真面目に行うものと期待されている。
【0141】
被験者は、第6週目以降も延長期間中(第7週目から第10週目)は引き続き治験へ参加する。延長期間中も、デジタルモバイルアプリケーションは各グループにインストールされたままとなる。被験者には、既に完了したCT-152または偽薬としての治療(詳細は後述の「治験での治療」の項を参照)の内容を思い出させる簡単なショートメッセージサービス(SMS)メッセージが送られ、ADTが継続される。被験者は、第8週目、第10週目にリモート受診し、第7週目、第9週目には治験施設より電話で連絡を受ける。
【0142】
治験は第10週目に終了する。
【0143】
治療期間中および延長期間中、盲検化され独立した専門家である臨床医が、評価目的以外では被験者と関わりを持たないが、評価担当者として中枢責任者であるベンダーから派遣される。治療割り付けおよびその他の臨床情報は盲検化したまま、リモートで電話によりMontgomery-Asbergうつ病評価尺度(MADRS)の評価および記録を行う。治験施設でのリモート受診とは別に実施することもできるが、評価スケジュールに記載された期間内に実施されなければならない。
【0144】
治療期間中のリモート診察時に、指定された治験施設スタッフがClinical Global Impressions-Severity(CGI-S)尺度を記入する。治験中に実施されるその他の評価には、全般性不安障害-7(GAD-7)、世界保健機関障害評価スケジュール(WHODAS)2.0、Patient Health Questionnaire-9(PHQ-9)、被験者および医療従事者(HCP)満足度尺度、EuroQol 5-Dimension、5-Level(EQ-5D-5L)が含まれる。
【0145】
治験期間中、治験施設スタッフは、Columbia-自殺重症度評価尺度(C-SSRS)を実施し、治療期間にわたって治療セッションに対する被験者のアドヒアランスを観察し、被験者の現在のADTに対するアドヒアランスを確認し、有害事象(AE)および併用薬を評価する。
【0146】
治験母集団
【0147】
治験には、インフォームドコンセントの時点で22~64歳で、現時点でDSM-5(Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition:精神障害の診断と統計マニュアル第5版)の基準に基づきMDDの一次診断が下りており、単発エピソードまたは再発エピソードが見られ、精神病性の特徴を伴わず、MDD with mixed featuresサブタイプの基準を満たさず、ADT単剤療法を受けている男女が参加する。他の精神医学的診断が可能である場合、それらは一次的なもの(MDDよりも高度の苦痛または障害を引き起こしている)とみなしてはならない。
【0148】
主な受入/除外の基準
【0149】
上記の「治験母集団」の項で述べた基準に加え、以下に主な受入基準を定める。
【0150】
被験者は、DSM-5基準により定義され、Mini International Neuropsychiatric Interview(M.I.N.I.)および適切な臨床精神医学的評価の両方により確認された、大うつ病エピソードを現時点で発症している必要がある。
【0151】
スクリーニング時およびベースライン測定の診察時(第1日目)にHamilton Rating Scale for Depression, 17-item (HAM-D17)のスコアが18以上であること。
【0152】
被験者は、現在のエピソードは現状の単剤ADTでは効果不十分であった既往歴が報告されていなければならない。現在のADTによる治療は、用量および期間が適切でなければならない。スクリーニング時に実施されたマサチューセッツ総合病院-抗うつ薬治療応答質問票(MGH-ATRQ)に従って、最低治療用量(またはそれ以上)で少なくとも6週間と定義される。不十分な応答は、MGH-ATRQによるうつ病症状の重症度の減少が50%未満と定義される。さらに、被験者は、ベースライン(第1日目)の最低4週間前から、現在使用している単剤ADTを継続して服用していなければならない。
【0153】
治験参加期間中は現在の用量でADT治療を継続する意思がある被験者。
【0154】
iPhoneオペレーティングシステム(iOS)13.0以上を搭載した iPhone、またはAndroidオペレーティングシステム(OS)9.0以上を搭載したスマートフォンのみを使用し、プロトコルで要件としているようにデジタルモバイルアプリケーションのダウンロードおよび使用に同意する被験者。
【0155】
治験責任医師の見解では、うつ病治療のために治験期間中に追加の薬理学的介入を必要としない被験者。
【0156】
スクリーニング期間中にデジタルモバイルアプリケーションのオンボーディングソフトウェアモジュールを正常に完了した被験者。
【0157】
治験への参加に引き続き同意し、ベースラインの受診時(第1日目)にデジタルモバイルアプリケーションの使用を理解していると判断された被験者。
【0158】
以下に主な除外基準を記載する。
【0159】
現在のエピソードに対してADTの適切な治験を1回以上実施したが応答が不十分と報告された被験者。「適切な治験」とは、MGH-ATRQに従った最低治療用量(またはそれ以上)で少なくとも6週間行うことと定義される。「応答が不十分」は、MGH-ATRQによるうつ病症状の重症度の減少が50%未満と定義される。
【0160】
過去または現在のエピソードに関して、うつ病に対して精神薬理学的増強治療(リチウム、トリヨードサイロニン、抗精神病薬のADTへの追加、複数のADTなど)を受けたことがある被験者。治験責任医師の臨床的見解において、被験者が補強療法に使用される薬剤の治験を十分に受けていなかった場合、これらの被験者は、メディカルモニターによる議論および承認を経ることで参加を検討することができる。
【0161】
精神療法を現在受けている、または、スクリーニングの前の90日間に受けたことのある被験者。
【0162】
過去に一度でも十分な期間(8週間以上)の認知行動療法で効果がなかった被験者。
【0163】
自殺傾向の評価C-SSRS自殺念慮の項目4(具体的な計画を伴わないが行動に移す意図がある程度積極的な自殺念慮)でスクリーニング前の12ヵ月以内またはベースラインの診察時(第1日目)に「はい」と答えた被験者、または、C-SSRS自殺念慮の項目5(具体的に計画および意志がある積極的な自殺念慮)でスクリーニング前の12ヵ月以内またはベースラインの診察時(第1日目)に「はい」と答えた被験者、または、スクリーニング前の24ヵ月以内またはベースラインの診察時(第1日目)に、C-SSRSの自殺行動の5つの項目(実際に自殺を試みた、自殺を試みたが中断した、自殺を試みようとしたが中止した、準備行為、自殺行動)のいずれかに「はい」と答えた被験者、または、治験責任医師が自殺の重大な危険性があると判断した被験者。
【0164】
過去にうつ病を患って電気けいれん療法または神経調節装置(経頭蓋磁気刺激、迷走神経刺激、経頭蓋直流電流刺激など)による治療を受けたことがある被験者。
【0165】
過去にうつ病の治療としてケタミン、エスケタミン、アルケタミンの投与を受けたことがある被験者。
【0166】
現在、メンタルヘルスまたはうつ病のために、コンピュータ、ウェブ、またはスマートフォンのソフトウェアベースのアプリケーションまたは同等のものを使用している被験者。スクリーニング時に使用を中止することに同意した被験者は、治験への参加が許可される。
【0167】
スクリーニング受診前の6ヵ月以内にDSM-5により物質またはアルコール使用障害(ニコチンを除く)と現在診断されている被験者。
【0168】
現時点で大うつ病エピソードが2年以上持続している被験者。
【0169】
既往歴および治験責任医師の判断により、治療抵抗性/難治性を持つと考えられる被験者。
【0170】
統合失調症、統合失調感情障害、その他の精神病性障害、双極I/II型障害の生涯診断、または、M.I.N.I.による評価で、現時点で心的外傷後ストレス障害、パニック障害、強迫性障害。
【0171】
M.I.N.I.による評価で全般性不安障害または社交不安障害を現在抱えており、それらの障害が原発性(MDDよりも高度の苦痛または障害を引き起こしている)と考えられる場合。
【0172】
精神鑑定および/または医療記録から治験責任医師が評価した結果、DSM-5人格障害と診断された被験者。
【0173】
一般的な医学的疾患または神経疾患によるうつ病。
【0174】
小児期に一度だけ熱性けいれんを起こしたが完治した以外のけいれん発作の既往歴。
【0175】
治験中に禁止されている併用療法を必要とする可能性のある被験者。
【0176】
治験での治療、治療の期間、投与方法
【0177】
スクリーニング時に初期受入基準をすべて満たし、除外基準を満たさない被験者は、デジタルモバイルアプリケーションを自分のスマートフォン端末にダウンロードしてインストールし、治験で使用する。最初にデジタルモバイルアプリケーションをダウンロードする際、および、アクセスについては専門コールセンターでサポートするとしてよい。治験責任医師は、3週間のスクリーニング期間中(21日前から1日前)、連続する7日間にオンボーディングソフトウェアモジュールの導入時オンボーディング要件に対する十分なアドヒアランスが見られるか否かで、被験者が治験を理解して関心を持っていることを確認する。
【0178】
オンボーディングソフトウェアモジュールは、認知制御課題のセッションを例示する。被験者が2群(CT-152または偽薬)のいずれかに無作為に割り付けられた後のバイアスを最小限にするため、例示するセッションの内容に治療コンテンツは含まれない。
【0179】
ベースラインの受診時(第1日目)には、オンボーディングソフトウェアモジュールが正常に使用されているかを確認する。CT-152または偽薬は、ベースラインの受診時にデジタルモバイルアプリケーション内でアクセスコードにより起動する。
【0180】
CT-152は、認知情動トレーニング、心理療法レッスン、心理療法メッセージ、熱心度を高めるためのメッセージを特徴とする対話型且つソフトウェアベースの介入を提供する。各治療セッションは、感情顔記憶課題(EFMT)の課題と、心理療法レッスンとから構成される。偽薬と対照する。
【0181】
偽薬は、治療効果を最小限に抑えつつユーザーの関心ととどめておくようにデザインされた認知トレーニングの課題である。各治療セッションは、形状記憶課題(SMT)の課題で構成される。時間および注意力の点でCT-152で行う認知情動トレーニングの課題と一致させた、同様の構造をユーザーに提示する。偽薬に持たせた意図的なプラセボ効果を維持するため、EFMTまたは心理療法の内容は含まない。
【0182】
被験者の治験参加期間は最大13週間である。これには最長3週間のスクリーニング期間が含まれる。オンボーディングアドヒアランス要件により、スクリーニングには最低連続7日間が必要となる。治験責任医師がスクリーニング期間の延長を要請した場合、メディカルモニターと相談して承認されれば、認められるとしてよい。
【0183】
介入は、ベースラインの受診が終われば、ベースライン受診日と同じ日に開始される。被験者は、治療スケジュールに沿って治験を受け、6週間の治療期間(第1日目「ベースライン」から第6週目)にわたって週3回のペースで18回のセッション(約30~45分)を受ける。
【0184】
被験者は、第6週目以降も延長期間中(第7週目から第10週目)は引き続き治験へ参加する。延長期間中も、デジタルモバイルアプリケーションは各グループにインストールされたままとなるが、EFMTおよびSMTは利用できなくなる。CT-152グループではそれまでに受講した心理療法の内容は引き続き任意で参照可能であるが、新たな治療コンテンツは提供されず、治療スケジュールを設定する必要もない。両グループはそれぞれ延長期間中に、CT-152および偽薬の治療を既に受講したことを被験者に思い出させる簡単なSMSメッセージを受信する。
【0185】
専用のコールセンターが、被験者および治験施設をサポートし、デジタルモバイルアプリケーションの初回のダウンロードおよびアクセス、および、治験期間中のデジタルモバイルアプリケーションに関する技術的な問題について対応する。
【0186】
被験者は、デジタルモバイルアプリケーションに関して技術的な質問があればコールセンターに連絡するよう、治験責任医師が指示しなければならない。コールセンターへの電話はすべて、文書化されて処理される。基本的なユーザーの技術的な問題は、コールセンターで解決する。
【0187】
被験者がコールセンターにAEを連絡した場合、コールセンターはその連絡を記録し、フォローアップのために治験施設および治験依頼者または治験依頼者の被指名人にその情報を直ちに提供する。
【0188】
被験者が製品品質苦情(PQC)の可能性または疑いがあるとしてコールセンターに連絡した場合、コールセンターはその電話を記録する。コールセンターが記録したすべての通話記録(チケット)は、PQC分析、追跡、解決策のためにクリックセラピューティクス(Click Therapeutics)社の品質チームに提供する。
【0189】
被験者が、リモート受診または電話連絡の際にPQCの可能性または疑いがあると治験責任医師または被指名人に報告した場合、治験責任医師または被指名人は直ちにコールセンターに連絡し、コールセンターはその通話を記録し、直ちにクリックセラピューティクス社の品質チームにその情報を提供する。
【0190】
通話を追跡することに加え、コールセンターとの通話は品質向上のために録音される場合がある。コールセンターの連絡先および手順は、施設運営マニュアルに詳述されている。
【0191】
治験の評価
【0192】
有効性の評価:MADRS、GAD-7、CGI-S、WHODAS 2.0、PHQ-9。
【0193】
安全性の評価:AE(うつ症状の悪化に関連するAEを含む)およびC-SSRS。
【0194】
スクリーニング/その他被験者およびHCP満足度尺度、EQ-5D-5L、M.I.N.I、HAM-D17、抗うつ薬治療反応質問票、DSM-5によるMDD診断、尿中乱用薬物スクリーニング、妊娠検査、アドヒアランスチェック。
【0195】
統計的方法
【0196】
初期サンプルサイズは、MADRS総スコアのベースラインからの変化において、CT-152+ADTと偽薬+ADTの間に3単位の差を検出するために、共通の標準偏差を9と仮定し、両側α=0.05の水準で85%の検出力で計算する。その結果、サンプルサイズは合計324名(各群162名)となった。「最大の解析対象集団(FAS)」のサンプルにおけるMADRS総スコアの評価可能な評価を得られなかった被験者(全被験者の最大10%と推定される)を補正するため、本治験では合計360人の被験者(各群180人)を無作為化する。
【0197】
治療効果の大きさに関する仮定を適用することには限界があるため、そして、治験の検出力を十分に確保するため、DMCが非盲検中間解析を行う。最終的なサンプルサイズは、DMCの勧告に従って540名(各群270名)まで増やすことが可能である。O’B
rien-Flemingの消費関数を用い、有意水準0.003(両側)をこの中間分析に割り当てている。対応する最終有意水準は0.049(両側)である。
【0198】
有効性のプライマリーエンドポイントに基づいてCT-152+ADTと偽薬+ADTとを比較する統計検定の帰無仮説は、CT-152+ADTを利用した場合のMADRSの変化が偽薬+ADTを利用した場合のMADRSの変化と等しいことである。
【0199】
一次解析は、ベースラインのMADRS総スコアで調整したFASサンプルに基づき、ベースラインから治療中の最終評価(第6週目)までのMADRS総スコアの変化について行う。
【0200】
MADRSの最小臨床重要変化量(MCID)の範囲は1.6~1.9と考えられている。この治験では、有効性のプライマリーエンドポイントに関して治療群間で3ポイントの差を検出する予定である。治療における3ポイントの差はMCIDの範囲を超えている。この治験は、有効性の中間解析で治験が中止されるか、または、最終時点での有効性のプライマリーエンドポイントに基づく統計学的比較のp値が0.049未満であれば、肯定的とみなされる。
【0201】
一次解析では、治療効果の不均一性を評価するため、治療、受診、受診しての治療の相互作用、治療施設を固定効果とした混合モデル反復測定(MMRM)を用いる。鍵となる有効性のセカンダリーエンドポイントおよびその他の有効性のエンドポイントは、一次解析に関して説明したFASに基づいて解析される。
【0202】
鍵となる有効性のセカンダリーエンドポイントに基づいてCT-152+ADTと偽薬+ADTとを比較する統計検定の帰無仮説は、CT-152+ADTを利用した場合のGAD-7総スコアのベースラインから第6週目までの変化が偽薬+ADTを利用した場合のGAD-7総スコアのベースラインから第6週目までの変化と等しいことである。
【0203】
鍵となる有効性のセカンダリーエンドポイントは、一次解析と同じ方法(MMRM)で解析し、共変量としてベースラインのGAD-7総スコアで受診の相互作用項を置き換える。
【0204】
CT-152の効果の持続性は、第6週目、第8週目、第10週目のMADRS総スコアおよびGAD-7総スコアに基づいて評価される。上記の評価では、ベースラインから第8週目および第10週目までの変化は、一次解析で説明したようにMMRMを用いて解析する。
【0205】
有効性データの非盲検中間解析は、無作為化された被験者のうち最初の約180名を対象に実施される。非盲検中間解析は、被験者が第6週目の受診を終了するか、第6週目より前に中止した時点で実施される。
【0206】
非盲検中間解析では有効性に関するプライマリーエンドポイントに基づきCT-152と偽薬との差を検証する。サンプルサイズは、中間解析で決定する条件付検出力のみに基づいて再設定する。Chen、DeMets、Lanが発表した適応的デザイン方法(adaptive designs methodology)は、第1種過誤を拡張させることなく、可能であれば他の外部情報と組み合わせて、治療効果サイズの中間推定値に基づいてサンプルサイズを大きくするために使用される。
【0207】
以下にさまざまな実施形態の例を列挙する。
<実施形態1>うつ病を治療する方法であって、第1のスケジュールに従って記憶課題練習を提供することと、第2のスケジュールに従って心理療法レッスンを提供することとを備え、前記第1のスケジュールおよび前記第2のスケジュールは、6週間の治療期間を規定しており、前記記憶課題練習を提供することは、うつ病の治療を受けている患者に、第1の複数の表情画像を順次表示することであって、前記第1の複数の表情画像の各々は、対応する感情を伝えるように構成されている、順次表示することと、前記第1の複数の表情画像のうち第1の表情画像に対応する感情が、前記第1の複数の表情画像のうち第2の表情画像に対応する感情と一致するかどうかを示す入力を提供するように前記患者に促すことと、前記第1の複数の表情画像のうちの前記第1の表情画像および前記第2の表情画像のそれぞれの感情が互いに一致するかどうかを示す前記患者の応答を受信することとを含み、前記心理療法レッスンを提供することは、感情調節、行動活性化および認知再構築の少なくとも1つを通じて治療的介入を行うように構成されたアニメーションビデオを前記患者に表示することを含む、方法。
<実施形態2>前記第1のスケジュールおよび前記第2のスケジュールは、前記記憶課題練習および前記心理療法レッスンをそれぞれ少なくとも週3日提供することを含み、前記記憶課題練習および前記心理療法レッスンは、曜日毎に交互に提供される、実施形態1に記載の方法。
<実施形態3>前記心理療法レッスンはそれぞれ、約3分から5分の認知行動療法レッスンを含む、実施形態1から2のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態4>前記心理療法レッスンのうち1または複数が、前記患者が完了すべき活動または課題を含む、実施形態1から3のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態5>前記第2のスケジュールに従って前記心理療法レッスンを提供することは、前記6週間の治療期間のうち第1の週に感情調節を通じて治療的介入を行うように構成された第1の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、前記6週間の治療期間のうち第2の週に行動活性化を通じて治療的介入を行うように構成された第2の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、前記6週間の治療期間のうち第3の週に認知再構築を通じて治療的介入を提供するように構成された第3の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、前記6週間の治療期間のうち第4の週に感情調節による治療的介入を行うように構成された第4の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、前記6週間の治療期間のうち第5の週に行動活性化による治療的介入を行うように構成された第5の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることと、前記6週間の治療期間のうち第6の週に認知再構築による治療的介入を行うように構成された第6の複数のアニメーションビデオをレンダリングすることとを含む、実施形態1から4のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態6>前記心理療法レッスンのうち少なくとも1つが、モンゴメリー・アスバーグうつ病評価尺度またはハミルトンうつ病評価尺度で測定するうつ病の重症度を軽減するように構成されている、実施形態1から5のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態7>前記第1の複数の表情画像は、顔の表情を含み、前記第1の複数の表情画像のそれぞれの感情は、幸福、心配、怒り、悲しみ、驚き、または嫌悪のうちの少なくとも1つを表すように構成される、実施形態1から6のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態8>前記第1のスケジュールに従って前記記憶課題練習を提供することはさらに、前記患者の応答が正答かどうかに少なくとも部分的に基づいてスコアを決定することを含む、実施形態1から7のいずれか1つに記載の方法。
<実施形態9>前記第1のスケジュールに従って記憶課題練習を提供することはさらに、前記患者に第2の複数の表情画像を順次表示することであって、前記第2の複数の表情画像のそれぞれは対応する感情を伝えるように構成されている、順次表示することと、前記第2の複数の表情画像のうち第1の表情画像の感情が、前記第2の複数の表情画像のうち第2の表情画像の感情と一致するか否かを示す入力を提供するように前記患者に促すことであって、前記第2の複数の表情画像のうち第2の表情画像は、前記第2の複数の表情画像のうち第1の表情画像よりもN枚前の画像である、促すこととを含む、実施形態8に記載の方法。
<実施形態10>Nの値は、前記第1の複数の表情画像に関する前記患者の応答が正答であったかどうかに少なくとも部分的に基づいて調整されるよう構成されている整数である、実施形態9に記載の方法。
<実施形態11>前記第2の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像および前記第2の表情画像はそれぞれ、前記第1の複数の表情画像に関する前記患者の応答が正答であったかどうかに少なくとも部分的に基づいて調整されるように構成されている感情強度が対応付けられている、実施形態9から10のいずれか一項に記載の方法。
<実施形態12>コンピュータプログラム命令を格納している非一時的コンピュータ可読媒体であって、前記コンピュータプログラム命令がコンピューティングデバイスの1または複数のプロセッサによって実行されると、実施形態1から11のいずれか1つを含む処理が実施される、機械可読媒体。
<実施形態13>コンピュータプログラム命令を記憶しているメモリと、実施形態1から11のいずれか1つを構成する処理を実現するために前記コンピュータプログラム命令を実行するよう構成されている1つまたは複数のプロセッサとを備える、治療装置。
<実施形態14>コンピュータプログラム命令を記憶しているメモリと、実施形態1から11のいずれか1つを構成する処理を実現するために前記コンピュータプログラム命令を実行するように構成されている1または複数のプロセッサとを備える、治療システム。
<実施形態15>複数のユーザーデバイスをさらに備え、前記ユーザーデバイスは前記複数のユーザーデバイスのうちの1つである、実施形態14に記載の治療システム。
<実施形態16> 複数の記憶課題練習および複数の心理療法レッスンを含むデジタルセラピューティクスによって気分障害を治療する治療装置であって、前記治療装置は、前記デジタルセラピューティクスの実施期間および実施タイミングを規定する治療スケジュールにアクセスし、前記治療スケジュールの第1の日に、前記複数の記憶課題練習の中から、前記第1の日に実施すべき第1の記憶課題練習を特定し、前記第1の記憶課題練習に関連付けられている第1の複数の表情画像であって、それぞれが対応する感情を伝えるように構成されている第1の複数の表情画像にアクセスし、表示装置を介して、第1の複数の表情画像を、前記気分障害の治療を受けている患者に順次表示し、前記第1の複数の表情画像のうち第1の表情画像の感情が、前記第1の複数の表情画像のうち第2の表情画像の感情と一致するかどうかについての入力を提供するように促すプロンプトを前記患者に表示し、前記第1の複数の表情画像のうち前記第1の表情画像および前記第2の表情画像のそれぞれの感情が互いに一致するかどうかを示す前記患者の応答を受信し、前記治療スケジュールの第2の日に、前記複数の心理療法レッスンの中から、前記第2の日に実施される心理療法レッスンを特定し、過去の1または複数の心理療法レッスンを繰り返す選択肢と共に前記心理療法レッスンを表示するようにプログラムされたプロセッサを備える、治療装置。治療スケジュールは、ローカルメモリからアクセスしてもよいし、アプリケーションサーバーから送信してもよい。
<実施形態17> 前記治療スケジュールは、前記複数の記憶課題練習のための第1の治療スケジュールと、前記心理療法レッスンのための第2の治療スケジュールとを含む、実施形態16に記載の治療装置。
<実施形態18> 前記第2の日は、前記第1の日の直後の日である、実施形態16に記載の治療装置。
<実施形態19> 前記治療スケジュールは少なくとも6週間の治療期間を規定する、実施形態16に記載の治療装置。
<実施形態20> 前記治療スケジュールは、治療期間中にわたって、記憶課題練習および心理療法レッスンを1日毎に交互に行うよう規定する、実施形態16に記載の治療装置。
【0208】
ブロック図では、図示された構成要素が別々の機能ブロックとして描かれているが、実施形態は、本明細書に記載された機能が図示されたように編成されたシステムに限定されない。各構成要素によって提供される機能は、現在図示されているものとは異なる態様で編成されたソフトウェアまたはハードウェアモジュールによって提供されてもよく、例えば、そのようなソフトウェアまたはハードウェアは、混合、結合、複製、分割、分散(例えば、データセンター内または地理的に)されていてもよく、またはその他の異なる態様で編成されていてもよい。本明細書に記載されている機能は、有形の非一時的な機械可読媒体に格納されたコードを実行する1つ以上のコンピュータの1つ以上のプロセッサによって提供されてもよい。場合によっては、「媒体」という単数形の用語の使用にかかわらず、命令は異なるコンピューティングデバイスに関連付けられた異なるストレージデバイス上に分散され、このとき、例えば、各コンピューティングデバイスが命令の異なるサブセットを持つとしてもよい。これは、本明細書における「媒体」という単数形の用語の使用と矛盾しない実装である。場合によっては、サードパーティのコンテンツ配信ネットワークが、ネットワークを介して伝達される情報の一部または全部をホストしてもよく、その場合、情報(例えば、コンテンツ)が供給される、またはその他の方法で提供されると表現できる範囲において、コンテンツ配信ネットワークから情報を取得する命令を送信することによって、その情報が提供されることがある。
【0209】
読者は、本願がいくつかの個別に有用な技術を説明していることを理解すべきである。出願人はこれらの技術を複数の独立した特許出願に分けるのではなく、1つの文書にまとめているが、これはそれらの技術の主題が関連しているために、出願プロセスの経済性につながるからである。しかし、このような技術の別個の利点や態様を混同してはならない。場合によっては、実施形態は本明細書で指摘した欠陥のすべてに対処しているが、技術は独立して有用であり、いくつかの実施形態はそのような問題の部分集合のみに対処しているか、または本開示を閲覧している当業者には明らかであろう他の言及されていない利点を提供していることを理解すべきである。コストの制約のため、本明細書に開示されているいくつかの技術は、現在は所有権を請求されていない可能性があり、継続出願などの後の出願で、または現在の請求項を補正することで所有権を請求される可能性もある。同様に、紙面の都合上、本文書の「要約」や「発明の概要」のセクションは、そのような技術のすべて、またはそのような技術のすべての態様を包括的に記載しているものとみなすべきではない。
【0210】
詳細な説明および図面は、開示された特定の形態に本技術を限定することを意図したものではなく、逆に、添付の請求項によって定義される本技術の趣旨および範囲内に入るすべての修正、均等物、および代替物を網羅することを意図したものであることを理解すべきである。本技術の様々な態様のさらなる修正および代替の実施形態は、この説明を読めば当業者には明らかであろう。したがって、この説明および図面は、例示としてのみ解釈され、本技術を実施する一般的な方法を当業者に教えることを目的としている。ここに図示および説明されている本技術の形態は、実施形態の例として見なすべきものであることを理解されたい。各種要素および材料を、本明細書に図示および説明されているものに代えて使用してもよく、部品およびプロセスは逆にしてもよいし、省略してもよく、本技術の特定の特徴は独立して利用してもよいが、これらはすべて、本技術に関するこの説明の恩恵を受けた後に当業者に明らかになるであろう。以下の特許請求の範囲に記載された本技術の趣旨と範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された要素に変更を加えることができる。本明細書で使用されている見出しは、整理を目的としたものであり、説明の範囲を限定するために使用することを意図していない。
【0211】
「may」という言葉は、本願で全体にわたって使用しているが、必須の意味(すなわち、必ずしなければならないという意味)ではなく、許容的な意味(すなわち、する可能性があるという意味)で使用されている。「含む(include)」、「含む(including)」、「含む(includes)」などの言葉は、含むがそれに限定されないことを意味する。本願では、単数形の「a」、「an」、「the」は、内容が明示的に別の意味を示していない限り、複数のものを含む。したがって、例えば、「構成要素(an element)」または「構成要素(a element)」への言及は、「一又は複数の(one or more)」のような1つまたは複数の構成要素に対する他の用語およびフレーズの使用にかかわらず、2つ以上の構成要素の組み合わせを含む。「または」という用語は、別の意味が明記されていない限り非排他的であり、すなわち、「および」と「または」の両方を包含する。「X、Yに応じて」、「X、前件際して」、「X、Yならば」、「X、Yの場合に」などの条件関係を表す用語は、前件が必要因果条件である場合、前件が十分因果条件である場合、または、前件が帰結の寄与因果条件である場合等の因果関係を意味する。例えば、「条件Yが得られたときにXの状態が生じる」は、「YのみによってXが生じる」、「YおよびZによってXが生じる」のどちらも意味する。このような条件関係は、前件が発生することで即座に伴う後件に限定されるものではなく、後件によっては遅れて発生することもある。また、条件文では、前件が後件の発生の可能性に関係するように、前件はその後件と結びついている。複数の属性または機能が複数のオブジェクト(例えば、ステップA、B、C、Dを実行する1つ以上のプロセッサ)にマッピングされる記述は、別途指示がない限り、それらの属性または機能のすべてがそれらのオブジェクトのすべてにマッピングされることと、それらの属性または機能のサブセットがそれらの属性または機能のサブセットにマッピングされることの両方を包含する(例えば、すべてのプロセッサがそれぞれステップA~Dを実行する場合と、プロセッサ1がステップAを実行し、プロセッサ2がステップBとステップCの一部を実行し、プロセッサ3がステップCの一部とステップDを実行する場合の両方)。さらに、ある値または行為が別の条件または値に「基づく」という記述は、別段の指示がない限り、その条件または値が唯一の要因である場合と、その条件または値が複数の要因の中の1つの要因である場合の両方を包含する。あるコレクションの「各」インスタンスが何らかの特性を持つという記述は、別段の指示がない限り、より大きなコレクションの他の特性において同一または類似のメンバーがその特性を持たない場合を除外するように読まれるべきではない。すなわち、「各」は必ずしもすべてを意味するわけではない。例えば、「Xを実行した後、Yを実行する」のように明示的に指定されていない限り、記載されている工程の順序に関する制限を請求項に読み取るべきではない。これに対して、「アイテムにXを実行し、XされたアイテムにYを実行する」のように順序の制限を暗示していると不適切に主張される可能性がある記述は、順序を指定するのではなく、請求項を読みやすくする目的で使用される。また、「A、B、およびCのうち少なくともZ個」などの記述(「A、B、またはCのうち少なくともZ個」など)は、列挙された各カテゴリー(A、B、およびC)のうち少なくともZ個を指すものであり、各カテゴリーに少なくともZ個の単位を必要とするものではない。記載内容から明らかなように、本明細書では、「処理」、「コンピューティング」、「計算」、「決定」などの用語を利用した議論は、特に明記しない限り、特別目的のコンピュータまたは同様の特別目的の電子処理/計算装置などの特定の装置の動作またはプロセスに言及していると理解される。「平行」、「垂直/直交」、「正方形」、「円筒形」などの幾何学的構造物に言及して記述された特徴は、その幾何学的構造物の特性を実質的に具現化するアイテムを包含すると解釈されるべきであり、例えば、「平行」な表面に言及すると、実質的に平行な表面が包含されることになる。これらの幾何学的構造物のプラトン的観念からの逸脱の許容範囲は、明細書中の範囲を参照して決定されるべきであり、そのような範囲が記載されていない場合には、使用分野における業界の規範を参照すべきであり、そのような範囲が定義されていない場合には、指定された特徴の製造分野における業界の規範を参照すべきであり、そのような範囲が定義されていない場合には、幾何学的構造物を実質的に具現化する特徴は、その幾何学的構造物の定義属性の15%以内の特徴を含むと解釈されるべきである。特許請求の範囲で使用されている「第1」、「第2」、「第3」、「所定の」などの用語は、区別するため、あるいは識別するために使用されており、連続的または数値的な限定を示すものではない。当該分野での通常の使用方法と同様に、人間にとって顕著な用途を参照して説明されたデータ構造およびフォーマットは、上記のデータ構造またはフォーマットを構成するように、人間が理解可能な形式で提示される必要はない。
例えば、テキストを構成するために、テキストをレンダリングしたり、UnicodeやASCIIでエンコードしたりする必要はなく、画像、地図、データ可視化物を構成するために、画像、地図、データ可視化物をそれぞれ表示およびデコードする必要はなく、音声、音楽、その他の音声を構成するために、音声、音楽、その他の音声をそれぞれスピーカーから発したり、デコードする必要はない。
【0212】
当業者であれば、本発明はさまざまな修正および/または改善を行うことが可能であることを認めるであろう。例えば、上述の種々のコンポーネントの実装はハードウェアデバイス内で実施されるが、これは、ソフトウェアのみによるソリューション、例えば既存のサーバー上のインストールとして実装されてもよい。さらに、本明細書で開示した会話管理技術は、ファームウェア、ファームウェア/ソフトウェアの組み合わせ、ファームウェア/ハードウェアの組み合わせ、またはハードウェア/ファームウェア/ソフトウェアの組み合わせとして実装されてもよい。
【0213】
本発明および/または他の例を構成すると考えられる内容を前述してきたが、さまざまな修正が可能であり、本明細書で開示した主題はさまざまな形態および例で実現され、本発明は多くの用途で応用され、そのうち一部のみを本明細書で説明しているものと理解されたい。以下に記載する請求項は、本発明の真の範囲に含まれるあらゆる応用例、修正例および変形例を特許請求するものとする。
【国際調査報告】