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特表2024-501564硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/22 20060101AFI20240104BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240104BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 9/02 20060101ALI20240104BHJP
   C08K 5/14 20060101ALI20240104BHJP
   H01B 13/00 20060101ALI20240104BHJP
   H01B 1/24 20060101ALN20240104BHJP
【FI】
C08J3/22 CFH
C08L83/04
C08K3/013
C08K3/04
C08K9/02
C08K5/14
H01B13/00 503C
H01B1/24 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540212
(86)(22)【出願日】2021-12-30
(85)【翻訳文提出日】2023-08-28
(86)【国際出願番号】 CN2021143041
(87)【国際公開番号】W WO2022143890
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】PCT/CN2020/141406
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516190747
【氏名又は名称】エルケム・シリコーンズ・シャンハイ・カンパニー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ELKEM SILICONES SHANGHAI CO.,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ティエン・ツァイ
(72)【発明者】
【氏名】ロン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】シン・チアン
【テーマコード(参考)】
4F070
4J002
5G301
【Fターム(参考)】
4F070AA60
4F070AB11
4F070AB24
4F070AC04
4F070AC23
4F070AE01
4F070AE06
4F070FA04
4F070FA17
4F070FB04
4F070FB07
4F070FC03
4J002BD153
4J002CP03W
4J002CP14X
4J002DA018
4J002DA027
4J002DA037
4J002DA077
4J002DA087
4J002DA097
4J002DJ016
4J002DK008
4J002EK039
4J002EK049
4J002EK059
4J002FB077
4J002FD016
4J002FD117
4J002FD149
4J002FD203
4J002FD208
4J002GQ01
5G301DA10
5G301DA18
5G301DA42
5G301DD01
5G301DE01
(57)【要約】
本発明は、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、それから好適に得られる硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物及びプレミックス導電性ペーストに関する。本発明はまた、そのような硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物により得られる硬化導電性シリコーンゴム、並びに特に電磁波シールドにおけるその使用にも関する。本発明はさらに、そのような硬化導電性シリコーンゴムを含む電線及びケーブルに関する。特定の動粘度を有するオルガノポリシロキサンと導電性フィラーの少なくとも一部とを含むプレミックスされた導電性ペーストを最初に製造し、次にプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して混合物を得ることによって、良好な加工性を実現しながら、より高い含有量の導電性フィラーを充填することができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、以下のステップ:
(i)導電性フィラーBの少なくとも一部を、25℃で10,000~200,000mPa・s、好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ること、
(ii)ステップ(i)で得られたプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して、混合物を得ること
を含み、
硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の前記導電性フィラーBの総含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である、方法。
【請求項2】
前記プレミックス導電性ペースト中の前記導電性フィラーBの含有量が、プレミックスされた導電性ペーストの総重量に基づいて、80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記オルガノポリシロキサンCが、一般式(I)で表されるシリコーンオイルである請求項1又は2に記載の製造方法。
【化1】
(式中、
Meはメチル基を表し;
R、R’及びXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、以下を表し:
・1~8個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル基(任意選択で少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素で置換される。アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピルである)、
・5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキル基、
・6~12個の炭素原子を含むアリール基、又は
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分と6~12個の炭素原子を含むアリール部分を持つアラルキル基、
好ましくは、R、R’及びXのすべてはヒドロキシル基及び/又は水素を除くものとし;
n及びmのそれぞれは、100~4,000、好ましくは500~3,000の整数であり得る。)
【請求項4】
前記オルガノポリシロキサンCが、メチルシリコーンオイル、エチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、変性シリコーンオイル又はビニルシリコーンオイルからなる群から選択され、0重量%を超えて1重量%まで、好ましくは0重量%を超えて0.5重量%まで、より好ましくは0重量%を超えて0.2重量%までのビニル含有量を有し、ここで、0重量%を超えて1重量%まで、好ましくは0重量%を超えて0.5重量%まで、より好ましくは0重量%を超えて0.2重量%までのビニル含有量を有するビニルシリコーンオイルが好ましい、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の前記オルガノポリシロキサンCの含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、5重量%~40重量%、好ましくは8重量%~35重量%、より好ましくは10重量%~30重量%である、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記導電性フィラーBが、金属被覆カーボン及び/又はカーボンブラック、好ましくはNi被覆カーボン及び/又はカーボンブラック、より好ましくはNi被覆グラファイト及び/又はカーボンブラックからなる群から選択され、及び/又は、導電性フィラーBは、20μm~200μm、好ましくは30μm~180μm、より好ましくは50μm~150μmの平均粒径を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記オルガノポリシロキサンAは、25℃で600,000mPa・sを超える、好ましくは25℃で1,000,000mPa・sを超える動粘度を有するオルガノポリシロキサンガム、及び/又は25℃における粘稠度が200mm/10~2,000mm/10、好ましくは300mm/10~1,800mm/10、より好ましくは500mm/10~1,500mm/10であるオルガノポリシロキサンガムである、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記オルガノポリシロキサンAは、
25℃で600,000mPa・sを超える、好ましくは25℃で1,000,000mPa・sを超える動粘度を有するオルガノポリシロキサンガム、及び/又は25℃における粘稠度が200mm/10~2,000mm/10、好ましくは300mm/10~1,800mm/10、より好ましくは500mm/10~1,500mm/10であるオルガノポリシロキサンガムである、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA’、及び
少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA”であって、25℃における動粘度が15~50mPa・s、好ましくは20~40mPa・sであり、成分A”の総重量に基づき、ヒドロキシル基含有量が2重量%~12重量%、好ましくは4.5重量%~9.8重量%のオイルである、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA”
を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記オルガノポリシロキサンAの含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
導電性フィラーBの残りの部分を、ステップ(ii)で得られた混合物に、好ましくはバッチ方式で添加するステップ(iii)をさらに含む、請求項1~9のいずれか1一項に記載の方法。
【請求項11】
ステップ(ii)又は(iii)で得られた混合物に、生強度を調整するために生強度調整剤Dを添加するステップ(iv)をさらに含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記生強度調整剤Dの含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、0.1重量%~2.0重量%、好ましくは0.5重量%~1.5重量%、より好ましくは0.8重量%~1.2重量%であり、好ましくは、前記生強度調整剤Dがポリテトラフルオロエチレンである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
ステップ(ii)又は(iii)又は(iv)で得られた混合物に、少なくとも1つの有機過酸化物Eを、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、好ましくは0.5重量%~2重量%、より好ましくは0.8重量%~1.6重量%の量で添加するステップ(v)をさらに含み、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1~6のいずれか1項に記載の方法のステップ(i)で得られるプレミックス導電性ペースト。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか1項に記載の方法により得られる、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項16】
以下を含有することを特徴とする請求項15に記載の硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物:
(a)0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%の少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、及び少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチ;
(b)40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%の導電性フィラーB;
(c)25℃で10,000~200,000mPa・s、好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有する5重量%~40重量%、好ましくは8重量%~35重量%、より好ましくは10重量%~30重量%のオルガノポリシロキサンC;
(d)0重量%~2.0重量%、好ましくは0.1重量%~2.0重量%、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%、最も好ましくは0.8重量%~1.2重量%の生強度調整剤D;
(e)0.5重量%~2重量%、好ましくは0.8重量%~1.6重量%の有機過酸化物E;
ここで、すべての重量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づくものである。
【請求項17】
以下の成分を含むことを特徴とする、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物:
(a)0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%の少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、及び少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチ;
(b)40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%の導電性フィラーB;
(c)25℃で10,000~200,000mPa・s、好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有する5重量%~40重量%、好ましくは8重量%~35重量%、より好ましくは10重量%~30重量%のオルガノポリシロキサンC;
(d)0重量%~2.0重量%、好ましくは0.1重量%~2.0重量%、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%、最も好ましくは0.8重量%~1.2重量%の生強度調整剤D;
(e)0.5重量%~2重量%、好ましくは0.8重量%~1.6重量%の有機過酸化物E;
ここで、すべての重量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づくものである。
【請求項18】
請求項15~17に記載の特に高含有量の導電性フィラーを有する硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を硬化してなる硬化導電性シリコーンゴム。
【請求項19】
請求項18に記載の硬化導電性シリコーンゴムの、エレクトロニクス、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電力、医療、ウェアラブルインテリジェント機器等の分野における電磁波シールド要素としての使用。
【請求項20】
請求項18に記載の硬化導電性シリコーンゴムを含む電線又は電気ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法に関する。本発明は、好ましくはそのような方法により得られる硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物及びプレミックス導電性ペーストにも関する。本発明はさらに、このような硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化導電性シリコーンゴムに関する。本発明はさらに、エレクトロニクス、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電力、医療及びウェアラブルインテリジェントデバイスの分野における電磁シールド要素としての、硬化導電性シリコーンゴムの使用に関する。本発明はさらに、そのような硬化導電性シリコーンゴムを含む電線又は電気ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、エレクトロニクス製品の応用範囲はますます広がっている。電子製品の動作中に、電磁干渉(EMI)と呼ばれる外部環境への干渉が発生することがよくある。このような電磁干渉と電磁放射は、機器の安全かつ信頼性の高い動作と人々の健康にますます悪影響を及ぼす。電磁障害の問題を解決するには、電磁シールドが必要である。最近、電磁波シールド材料が科学研究者の注目を集めている。
【0003】
一般的に使用される電磁波シールド材は導電性シリコーンゴムであり、これは、オルガノポリシロキサンの主成分に導電性フィラーを一定量混合し、架橋で硬化させて電磁波シールド性を有する導電性シリコーンゴムを形成することにより得られる。金属被覆カーボン、特にニッケル被覆カーボンなどの導電性フィラーは、電磁波シールド性に優れており、電磁波シールド分野で広く使用されている。
【0004】
例えば押出成形や圧延などの加工が容易な硬化性オルガノポリシロキサン系を製造するには、導電性フィラーの含有量が非常に重要である。導電性フィラーの含有量が少なすぎると、最終硬化物の導電性が低下し、電磁波シールド性が低下する。導電性フィラーの含有量が多すぎる場合(例えば、60重量%以上)、硬化前の得られたシステムは非常に高い粘度(通常2,000万mPa・s以上)のため、取り扱いや加工が困難になる。これにより、最終硬化物の導電性と機械的特性が比較的低下する可能性がある。この問題は、ベースのオルガノポリシロキサン成分がオルガノポリシロキサンガムのように高粘度である場合にはさらに悪化する。オルガノポリシロキサンガムの粘度は非常に高いため(通常、25℃で600,000mPa・s以上)、導電性フィラーは分散が困難であり、従来技術では添加される導電性フィラーの含有量が制限されていた。
【0005】
導電性フィラーをベースのオルガノポリシロキサン成分に組み込むために様々な試みがなされてきた。これまでのほとんどの製造方法では、他の成分を添加する前に、導電性フィラーをベースのオルガノポリシロキサン成分と一段階で混合する。
【0006】
中国特許出願公開第102276988号は、白金で加硫される単一成分のNi-C充填高導電性シリコーンゴムを製造する方法を開示している。ここで、シリカを含む粘度5000~20000mPa・sのビニル末端ポリジメチルシロキサンは、平均粒径50μm~100μmのニッケル被覆グラファイト粉末167~180部、及び直径7μm~10μm、長さ100μm~200μmのニッケル被覆炭素繊維28~30部を含む導電性フィラーと混合されている。このようにして得られた配合物は、さらなる加工に適している。しかしながら、ベースとなるオルガノポリシロキサン成分は粘度が非常に低いため、押出成形や圧縮成形には適していない。
【0007】
中国特許出願公開第103602072号は、電磁波シールド用の導電性シリコーンゴム及びその製造方法を開示している。使用される導電性フィラーは、銀粒子を含む導電性媒体30~60部と、ニッケル粒子を含む磁性媒体30~60部とからなる。得られた混合物を2本ローラーミルで50℃~150℃の温度で0.5~1.5時間混合する。この方法は、ビニルシリコーンゴムの過酸化物硬化系や付加反応系とは異なる、イソシアネートを架橋剤とするヒドロキシシリコーンゴムに関するものである。
【0008】
中国特許出願公開第105131612号は、電磁シールド用の粘着性導電性シリコーンゴムの製造方法を開示している。導電性フィラーとしては、導電性カーボンブラック、ニッケル被覆グラファイト、ニッケル被覆ガラスビーズ、銀アルミニウム粉末、銀コートガラスビーズなどが50~85部使用される。この混合物は二本ローラーミルで製造され、過酸化物加硫を受ける。自己粘着性と電磁シールド性能の受け入れが強調されているだけである。プロセスの詳細は明らかにされていない。
【0009】
中国特許出願公開第103496228号は、二層又は多層構造を含む電磁波シールドシリコーンゴム及びその製造方法を開示している。使用される導電性フィラーには、質量分率59%~64%のニッケル被覆グラファイト、ニッケル被覆アルミニウム粉末、及びニッケル粉末が含まれる。多層導電性シリコーンゴムの複合構造により、優れた電磁波シールド効果が得られる。ただし、原材料の種類や完成品の導電率などは明らかにされていない。
【0010】
別の中国特許出願公開第107964247号は、カーボンナノチューブとポリ有機ケイ素を1:(0.05~0.20)の比率で含むカーボンナノチューブ混合物を使用するプロセスを開示している。使用したカーボンナノチューブは全てカーボンナノチューブ混合物の形で添加した。このようなワンステップ混合プロセスでは、均一に混合するためにより高い温度とより多くの時間を必要とする場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記からわかるように、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を製造するための従来技術の方法は、加工の点で完全に満足のいくものではない。したがって、従来技術の欠陥を克服するための改良された方法が依然として必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
したがって、本発明の目的は、特に押出成形、カレンダー成形、圧縮成形などの加工性に悪影響を及ぼすことなく、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法を提供することである。これにより、得られた硬化導電性シリコーンゴムは、機械的特性に加えて、優れた導電性、電磁波シールド性を発揮することができる。
【0013】
出願人は、驚くべきことに、本明細書に記載の特定の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと、導電性フィラーBの少なくとも一部とを含むプレミックスされた導電性ペーストを最初に準備して、次に、プレミックスした導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して混合物を得ることにより、良好な加工性を可能にしながら、より高い含有量の導電性フィラーを充填できることを発見した。このようなプレミックスされた導電性ペーストは、導電性フィラーを十分に分散させる機能を有し、これにより、導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の取り扱いの困難さを軽減することができる。
【0014】
第1の態様では、本発明は、特に高含有量の導電性フィラーを有する硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法であって、以下のステップを含む方法に関する:
(i)導電性フィラーBの少なくとも一部を、25℃で1,000mPa・s~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ること、
(ii)ステップ(i)で得られたプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して、混合物を得ること
を含み、
好ましくは、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の導電性フィラーBの総含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
プレミックスされた導電性ペースト
本発明の工程(i)では、導電性フィラーを均一に分散させるために、導電性フィラーBの少なくとも一部を特定の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合してプレミックス導電性ペーストを製造する。
【0016】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のオルガノポリシロキサンCは、25℃で1,000mPa・s~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの動粘度を有する。オルガノポリシロキサンCの動粘度が低すぎると、最終的に得られる混合物が粘着性になりすぎて、取り扱いが困難になる場合がある。オルガノポリシロキサンCの動粘度が高すぎると、導電性フィラーの添加量が多くなり、加工難易度が高くなる。
【0017】
本明細書使用されるすべての粘度は、25℃での「ニュートン」動粘度、すなわち、それ自体既知の方法で、測定された粘度が速度勾配に依存しないほど十分に低いせん断速度勾配で、ブルックフィールド粘度計を用いて測定される動粘度に相当する。
【0018】
本明細書において、上記特定の動粘度を有する「オルガノポリシロキサンC」とは、ケイ素原子と酸素原子が交互に並んだ主鎖を有するポリマーを指し、これらは、その粘度が上記の特定の範囲内にある限り、任意選択で、アルキル(例えば、メチル)及び/又は置換アルキル基などのペンダント基が結合していてもよい。このようなオルガノポリシロキサンCは、ケイ素/酸素(オルガノシロキサン)モノマーの直鎖状、環状もしくは分岐状のポリマー又はオリゴマーであってもよく、任意選択で、炭化水素基(任意選択で置換される)、好ましくはC1~C10の炭化水素基、より好ましくは、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、ビニル、キシリル、トリル及びフェニル基からなる群の中から選択されるものなど、他の官能基を含む。好ましい実施形態によれば、オルガノポリシロキサンCは、SiH基及び/又はヒドロキシル基を含まない。
【0019】
さらに好ましい実施形態において、本明細書で言及される特定の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCは、特にシリコーンオイルであり得、これは、通常、主鎖としてSi-O-Siを有し、室温で液体状態を維持するポリシロキサン化合物を指す。このようなシリコーンオイルは、以下で表される一般式(I)を有し得る。
【化1】
【0020】
上記一般式(I)において、
Meはメチル基を表し;
R、R’及びXは、それぞれ同一であっても異なっていてもよく、互いに独立して、以下を表し:
・1~8個の炭素原子を含む直鎖又は分枝鎖のアルキル基(任意選択で少なくとも1つのハロゲン、好ましくはフッ素で置換される。アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、オクチル及び3,3,3-トリフルオロプロピルである)、
・5~8個の環状炭素原子を含むシクロアルキル基、
・6~12個の炭素原子を含むアリール基、又は
・5~14個の炭素原子を含むアルキル部分と6~12個の炭素原子を含むアリール部分を持つアラルキル基、
好ましくは、R、R’及びXのすべてはヒドロキシル基及び/又は水素を除くものとし;
n及びmのそれぞれは、100~4,000、好ましくは500~3,000の整数であり得る。
【0021】
RとR’の違いにより、シリコーンオイルは直鎖状シリコーンオイルと変性シリコーンオイルの2つのカテゴリーに分類される。直鎖状シリコーンオイルには、非官能性シリコーンオイルとケイ素官能性シリコーンオイルが含まれる。このうち、非官能性シリコーンオイルとは、ケイ素原子上の置換基がすべて不活性炭化水素基であるシリコーンオイルを指し、例えば、ジメチルシリコーンオイル、ジエチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル等が挙げられる。ケイ素官能性シリコーンオイルとは、ケイ素原子の一部に官能基が直接結合したシリコーンオイルのことで、例えばビニルシリコーンオイルなどが挙げられる。
【0022】
さらに、変性シリコーンオイルは、非官能性シリコーンオイル分子のケイ素原子に結合した炭化水素基の一部が炭素官能基又はポリマー鎖で置き換えられるか、又はケイ素ヘテロ鎖が分子内に埋め込まれている、液体ポリマーとみなすことができる。このような変性シリコーンオイルとしては、通常、炭素官能性シリコーンオイル、共重合シリコーンオイル、主鎖変性シリコーンオイルなどが挙げられる。このうち、炭素官能性シリコーンオイルとは、ケイ素原子の一部の置換基が炭素官能基であるシリコーンオイルを指し、例えば、エポキシアルキルシリコーンオイル、メタクリロキシアルキルシリコーンオイル、メルカプトアルキルシリコーンオイル、クロロアルキルシリコーンオイル、シアノアルキルシリコーンオイル等が挙げられる。一方、共重合シリコーンオイルとは、ケイ素原子上に高分子鎖を含むシリコーンオイルを指し、例えば、ポリエーテルシリコーンオイル、長鎖アルキルシリコーンオイル、長鎖アルコキシシリコーンオイル、フルオロアルキルシリコーンオイル等が挙げられる。そして、主鎖変性シリコーンオイルとは、分子の主鎖が、Si-O-Si結合以外に、ある程度のシリコンハイブリッド鎖、例えば、シラザンシリコーンオイル、シリコンアルキレンシリコーンオイル、シリコンアリーレンシリコーンオイルなどを含む、液状の有機高分子を指す。
【0023】
有利には、本明細書で使用されるシリコーンオイルは、メチルシリコーンオイル又はビニルシリコーンオイルであり得る。ビニルシリコーンオイルの場合、ビニル含有量は、ビニルシリコーンオイルの総重量に基づき、0重量%を超えて1重量%まで、好ましくは0重量%を超えて0.5重量%まで、より好ましくは0重量%を超えて0.2重量%までである。
【0024】
さらに好ましい実施形態では、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中のここで記載されるオルガノポリシロキサンCの含有量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、5重量%~40重量%、好ましくは8重量%~35重量%、より好ましくは10重量%~30重量%である。ここで記載されるオルガノポリシロキサンCの含有量が40重量%を超えると、粘着性が高くなり加工が困難となる。
【0025】
さらに好ましい実施形態では、導電性フィラーBの少なくとも一部を、本明細書に記載の特定の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと10~60分間、好ましくは20~40分間、より好ましくは30分間、80℃未満、好ましくは70℃未満、より好ましくは60℃未満の温度で混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ることができる。
【0026】
導電性フィラー
本発明で使用される少なくとも1つの導電性フィラーBは、電気伝導、特に電磁シールドに適した当技術分野で知られている任意の材料、例えばアルミナ、アルミニウム粉、鉄粉、ニッケル粉、銅粉、銀粉、金粉、グラファイト、カーボンブラック、金属被覆カーボンであり得る。
【0027】
好ましい実施形態では、本発明で使用される導電性フィラーBは、1つ以上の金属被覆カーボン及び/又はカーボンブラック、好ましくは金属被覆グラファイト及び/又はカーボンブラック、より好ましくは、Ni被覆グラファイト及び/又はカーボンブラックから構成される。さらに、金属は、銀、銅及び/又はニッケルから選択される。
【0028】
別の好ましい実施形態において、本発明で使用される導電性フィラーBは、20μm~200μm、好ましくは30μm~180μm、より好ましくは50μm~150μmの粒径を有する。
【0029】
別の好ましい実施形態において、本発明で使用される導電性フィラーBの形状は、扁平状、繊維状、球状、又はそれらの組み合わせから選択され、好ましくは扁平状、繊維状、又はそれらの組み合わせである。
【0030】
プレミックス導電性ペースト中の全導電性フィラーBの含有量は、プレミックス導電性ペーストの総重量に基づいて80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下である。
【0031】
硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の導電性フィラーBの総含有量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基き、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である。
【0032】
さらに好ましい実施形態では、本明細書に記載されるすべての導電性フィラーBは、本発明のステップ(i)中に添加してもよく、あるいは、後述するように、導電性フィラーBの一部をステップ(i)中に添加し、導電性フィラーBの残りの部分をステップ(iii)中に添加してもよい。
【0033】
オルガノポリシロキサンマスターバッチ
本発明の工程(ii)で使用されるオルガノポリシロキサンマスターバッチは、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意に少なくとも1つの強化フィラーを含むことができる。オルガノポリシロキサンAは、以下に定義する少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA’及び任意選択の少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA”を含み得る。
【0034】
好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサンA’は、少なくとも2つのC2~C6のアルケニル置換基で置換されたオルガノポリシロキサンガムであり得る。
【0035】
好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサンAは、25℃における粘度が200mm/10~2,000mm/10、好ましくは300mm/10~1,800mm/10、より好ましくは500mm/10~1,500mm/10のオルガノポリシロキサンガムである、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA’から構成される。
【0036】
さらに好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサンガムは、25℃で600,000mPa・sを超える、好ましくは25℃で1,000,000mPa・sを超える動粘度を示し得る。
【0037】
さらに好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサンガムは、オルガノポリシロキサンガムの総重量に基づいて、0.001重量%~8重量%、好ましくは0.01重量%~4.5重量%、より好ましくは0.03重量%~3重量%のアルケニル含有量を有し得る。
【0038】
さらに別の実施形態では、オルガノポリシロキサンガムは、260,000g/モル~1000,000g/モル、好ましくは400,000g/モル~1,000,000g/モル、より好ましくは500,000g/モル~800,000g/モルの重量平均分子量Mwを有し得る。重量平均分子量Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーによりポリスチレンを標準として測定される。
【0039】
さらなる実施形態では、本発明で使用されるオルガノポリシロキサンAは、上で定義したオルガノポリシロキサンガムである少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA’と、25℃で15~50mPa・s、好ましくは25℃で20~40mPa・sの動粘度を有するオイルである、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA”を含む。オルガノポリシロキサンA”は、直鎖状又は分岐状であってもよく、成分A”の総重量に基づき、2重量%~12重量%、好ましくは4.5重量%~9.8重量%のヒドロキシル基含有量を有し得る。
【0040】
本明細書で使用する場合、ガムの粘稠度又は針入度は、標準化された条件下でサンプルに円筒形ヘッドを適用できるPNR12タイプ又は同等のモデルの針入度計を使用して25℃で測定される。ガムの針入度は、校正されたシリンダーが1分間にサンプルに進入する深さを10分の1ミリメートルで表す。これに関しては、ガムのサンプルを直径40mm、高さ60mmのアルミニウム容器に導入する。青銅又は真鍮製の円筒形ヘッドは直径6.35mm、高さ4.76mmで、針入度計に適合する長さ51mm、直径3mmの金属ロッドで担持されている。このロッドには100gの過剰荷重がかけられている。アセンブリの総重量は、円筒部分とそのサポートロッドの4.3gを含めて151.8gである。ガムのサンプルが入った容器を、25±0.5℃にサーモスタット制御された浴に少なくとも30分間置く。測定は製造業者の指示に従って行われる。深さ(V)の値(10分の1ミリメートル単位)と、この深さに到達するまでの時間(t)の値(秒単位)がデバイスに表示される。針入度は60V/tに等しく、1分あたり10分の1ミリメートルで表される。
【0041】
好ましい実施形態では、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAは、以下を含み得る:
(I)式(A1)の少なくとも2つのシロキシル単位:
(Y)a(Z)bSiO(4-(a+b))/2 (A1)
式中、
Yは、少なくとも2つのアルケニル基を有する、2~6個の炭素原子を含む一価の基を表し、
Zは、1~20個の炭素原子を含み、アルケニル基を含まない一価の基を表し、
a及びbは整数を表し、aは1、2又は3、bは0、1又は2、及び(a+b)は1、2又は3である;
(ii)及び、任意選択で、式(A2)の他のシロキシル単位を含み得る:
(Z)cSiO(4-c)/2 (A2)
式中、
Zは上記と同じ意味を持ち、
cは1、2、又は3の整数を表す。
【0042】
本発明によれば、式(A1)におけるオルガノポリシロキサンAの定義に関して、記号aは、好ましくは1又は2、さらにより好ましくは1に等しいことが賢明である。さらに、式(A1)及び式(A2)において、記号Zは、好ましくは、1~8個の炭素原子を含むアルキル基(少なくとも1つのハロゲン原子で置換されていてよい)、及びC6~C10アリール基からなる群から選択される一価の基を表すことができる。Zは、有利には、メチル、エチル、プロピル、3,3,3-トリフルオロプロピル、キシリル、トリル及びフェニルからなる群から選択される一価の基を表すことができる。さらに、式(A1)において、記号Yは、有利には、ビニル、プロペニル、3-ブテニル及び5-ヘキセニルからなる群から選択される基を表すことができる。好ましくは、記号Yはビニルであり、記号Zはメチルである。
【0043】
オルガノポリシロキサンAは、直鎖状であっても分岐状構造であってもよいが、直鎖状構造であることが好ましい。直鎖状オルガノポリシロキサンの場合、本質的に以下から構成できる:
・式(Y)2SiO2/2、(Y)(Z)SiO2/2及び(Z)2SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「D」;及び
・式(Y)3SiO1/2、(Y)2(Z)SiO1/2、(Y)(Z)2SiO1/2及び(Z)3SiO2/2の単位から選択されるシロキシル単位「M」、
・式中、記号Y及びZは上で定義したとおりである。
【0044】
直鎖状オルガノポリシロキサンAの重合度は、2,000~10,000の範囲であることが好ましく、2,000~8,000の範囲であることがより好ましく、2,000~5,000の範囲であることがさらに好ましい。
【0045】
単位「D」の例として、ジメチルシロキシ、メチルフェニルシロキシ、メチルビニルシロキシ、メチルブテニルシロキシ、メチルヘキセニルシロキシ、メチルデセニルシロキシ及びメチルデカジエニルシロキシ基を挙げることができる。
【0046】
単位「M」の例として、トリメチルシロキシ、ジメチルフェニルシロキシ、ジメチルビニルシロキシ及びジメチルヘキセニルシロキシ基を挙げることができる。
【0047】
オルガノポリシロキサンAは、特に直鎖状である場合、好ましくは400,000g/モル~1,000,000g/モル、好ましくは600,000g/モル~900,000g/モルの重量平均分子量Mwを有するポリマーであり得る。
【0048】
本発明で使用するオルガノポリシロキサンAの例としては、以下のものが挙げられる:
・ジメチルビニルシリル末端基を含むポリジメチルシロキサン;
・ジメチルビニルシリル末端基を含むポリ(メチルフェニルシロキサン-コ-ジメチルシロキサン);
・ジメチルビニルシリル末端基を含むポリ(ビニルメチルシロキサン-コ-ジメチルシロキサン);
・トリメチルシリル末端基を含むポリ(ジメチルシロキサン-コ-ビニルメチルシロキサン)。
【0049】
260,000g/モル~1,000,000g/モル、好ましくは600,000g/モル~900,000g/モルの重量平均分子量Mwを有するジメチルビニルシリル末端基を含むポリジメチルシロキサンであるオルガノポリシロキサンAは、特に有利である。特に有利なオルガノポリシロキサンAは、式MViaViのものであり、式中、
・MVi=式:(ビニル)(CH32SiO1/2のシロキシル単位、
・D=式:(CH32SiO2/2のシロキシル単位、
・aは2,000~10,000、好ましくは4,000~6,000の数値である。
【0050】
オルガノポリシロキサンを記述するために、シリコーンの分野で知られている命名法が使用され、シロキシ単位を記述するために次の文字が使用される:M、D、T、及びQ。文字Mは、式(R)3SiO1/2の単官能性単位を表し、ケイ素原子は、この単位を含むポリマー中の1つの酸素原子だけに結合している。文字Dは、ケイ素原子が2つの酸素原子に結合している二官能性単位(R)2SiO2/2を意味する。文字Tは、ケイ素原子が3つの酸素原子に結合している式(R)SiO3/2の三官能性単位を表す。文字Qは、ケイ素原子が4つの酸素原子に結合している式SiO4/2の三官能性単位を表す。M、D、T単位は官能化することができる。次に、特定の基を指定しながら、M、D、及びT単位について言及する。一般に、記号Rは以下からなる群から選択される:直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、例えばメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t-ブチル、n-ペンチル又はn-ヘキシル;C3~C8のシクロアルキル基、例えば、シクロペンチル又はシクロヘキシル;アリール基、例えばフェニル又はナフチル;及びアルキルアリール基、例えば、トリル又はキシリル。
【0051】
好ましくは、オルガノポリシロキサンAは、ジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサン、トリメチル末端ポリジメチルメチルビニルシロキサンから選択され、より好ましくはジメチルビニル末端ポリジメチルシロキサンから選択され得る。
【0052】
一実施形態において、オルガノポリシロキサンAの含有量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%である。本発明で使用するオルガノポリシロキサンAが、前述のオルガノポリシロキサンA’とオルガノポリシロキサンA”とを含む場合、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、オルガノポリシロキサンA’の含有量は、0.1重量%~35重量%、好ましくは1重量%~25重量%、より好ましくは4重量%~15重量%であり、オルガノポリシロキサンA”の含有量は、0重量%~5重量%、好ましくは0.2重量%~2重量%、より好ましくは1重量%~2重量%である。
【0053】
好ましい実施形態では、本発明で使用されるオルガノポリシロキサンマスターバッチは、任意選択で、酸化ケイ素及び/又は珪藻土などの少なくとも1つの強化フィラーを含み得る。酸化ケイ素は一般に、未処理シリカ及び/又はヒュームドシリカ及び/又は沈降シリカから選択される。このようなシリカは、BET法で測定した比表面積が少なくとも20m2/g、好ましくは100m2/g以上、より好ましくは150~300m2/gであり得る。シリカの含有量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、0重量%~15重量%、好ましくは2重量%~10重量%である。
【0054】
これらのシリカは、そのまま、あるいは通常の用途に用いられる有機ケイ素化合物で処理して配合することが好ましい。これらの化合物には以下が含まれる:ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサンなどのメチルオルガノポリシロキサン;ヘキサメチルジシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザンなどのメチルポリシラザン;ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、メチルビニルジクロロシラン、ジメチルビニルクロロシラン等のクロロシラン;及びジメチルジメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、トリメチルメトキシシランなどのアルコキシシラン。
【0055】
好ましい実施形態では、オルガノポリシロキサンマスターバッチは、混合物が形成されるまで、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンAと任意選択の強化フィラーを最初に混合し、次に温度を140~160℃、より好ましくは150℃に上げ、1~3時間、好ましくは2時間維持し、次に得られた混合物を140℃~160℃、より好ましくは150℃で1~2時間、好ましくは0.5時間真空にし、次いで60℃~90℃、より好ましくは80℃に冷却することにより、製造することができる。
【0056】
一実施形態において、本発明の第1の態様による硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、ステップ(ii)で得られた混合物に導電性フィラーBの残りの部分を、好ましくはバッチ方式で添加するステップ(iii)をさらに含む。したがって、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法は、以下のステップを含むことができる:
(i)導電性フィラーBの一部を、25℃で1,000mPa・s~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ること、
(ii)ステップ(i)で得られたプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して、混合物を得ること、
(iii)導電性フィラーBの残りの部分を、ステップ(ii)で得られた混合物に、好ましくはバッチ方式で添加すること;
ここで、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の導電性フィラーの総含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である。
【0057】
使用した成分の含有量は前述の通りである。ステップ(iii)は、一般的なプロセス条件下で実施することができる。
【0058】
出願人は、驚くべきことに、他の成分を添加する前に、導電性フィラーをベースのオルガノポリシロキサン成分と1回だけ混合する従来の方法と比較し、導電性フィラーBのこのような2段階添加により、導電性フィラーBの分散を改善し、加工性を簡素化でき、したがって、機械的特性だけでなく、導電性、電磁波シールド性などの面でも優れた特性を実現できることを発見した。
【0059】
好ましい実施形態において、本発明の第1の態様による硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、ステップ(ii)又は(iii)で得られた混合物に、生強度を調整するために生強度調整剤Dを添加するステップ(iv)をさらに含む。
【0060】
したがって、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法は、以下のステップを含むことができる:
(i)導電性フィラーBの少なくとも一部を、25℃で1,000mPa・s~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ること、
(ii)ステップ(i)で得られたプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して、混合物を得ること、
(iii)任意選択で、導電性フィラーBの残りの部分を、ステップ(ii)で得られた混合物に、好ましくはバッチ方式で添加すること、
(iv)ステップ(ii)又はステップ(iii)で得られた混合物の生強度を調整するために、生強度調整剤Dを添加すること;
ここで、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の導電性フィラーの総含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である。
【0061】
また、生強度調整剤Dの添加量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、0.1重量%~2.0重量%、好ましくは0.5重量%~1.5重量%、より好ましくは0.8重量%~1.2重量%である。好ましくは、生強度調整剤Dは、ポリテトラフルオロエチレン、カーボンナノチューブ及びH3BO3から選択され、典型的には粉末の形態である。粉末は、1μm~50μm、好ましくは5μm~20μmの範囲の粒径を有し得る。より好ましくは、生強度調整剤Dは、粒径12μmのZonyl(商標)MP1000の名称でDuPontから市販されているものなどのポリテトラフルオロエチレンである。使用されるその他の成分の含有量は前述の通りである。
【0062】
プレミックスされた導電性ペーストとオルガノポリシロキサンマスターバッチを混合することによって得られる混合物は、まだ比較的柔らかくて粘着性がある可能性があり、ユーザーによる取り扱いがさらに困難になる可能性があり、ローラーやニーダーなどの機器に付着する可能性があることが判明した。この状況において、出願人は、驚くべきことに、混合物の生強度をさらなる加工に適した程度に調整する生強度調整剤D機能を使用できることを発見した。このような生強度調整剤Dは、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)であり、混合物の生強度を高め、粘着の問題を解決することができる。
【0063】
さらに他の実施形態において、本発明の第1の態様による硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、ステップ(ii)又は(iii)又は(iv)で得られた混合物に、少なくとも1つの有機過酸化物Eを、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、好ましくは5重量%未満の量、好ましくは0.5重量%~2重量%、より好ましくは0.8重量%~1.6重量%の量で添加するステップ(v)をさらに含む。少なくとも1つの有機過酸化物Eの添加量が少なすぎると、加硫が完全に進行しなくなる。添加量が多すぎると過加硫が起こる場合がある。
【0064】
したがって、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法は、以下のステップを含むことができる:
(i)導電性フィラーBの少なくとも一部を、25℃で1,000mPa・s~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ること、
(ii)ステップ(i)で得られたプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して、混合物を得ること、
(iii)任意選択で、導電性フィラーBの残りの部分を、ステップ(ii)で得られた混合物に、好ましくはバッチ方式で添加すること、
(iv)任意選択で、ステップ(ii)又はステップ(iii)で得られた混合物の生強度を調整するために、生強度調整剤Dを添加すること、
(v)ステップ(ii)、(iii)、又は(iv)で得られた混合物に少なくとも1つの有機過酸化物Eを添加すること;
ここで、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の導電性フィラーの総含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である。
【0065】
使用されるその他の成分の含有量は前述の通りである。
【0066】
本発明に用いられる有機過酸化物成分Eは、分解して遊離酸素ラジカルを生成するものであれば特に限定されない。そのまま使用することも、有機溶剤やシリコーンオイルに溶解して使用することもできる。有機過酸化物成分は、例えば以下から選択される少なくとも1種の過酸化物からなる:ジ-t-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ-t-ブチルペルオキシヘキサン、過酸化ベンゾイル、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、モノクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルアセテート、ジクミルペルオキシド、及び2,5-ジメチルヘキサン-2,5-ジペルベンゾエート。
【0067】
好ましい実施形態では、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法は、以下のステップを含むことができる:
(i)導電性フィラーBの一部を、25℃で1,000mPa・s~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有するオルガノポリシロキサンCと混合して、プレミックスされた導電性ペーストを得ること、
(ii)ステップ(i)で得られたプレミックスされた導電性ペーストを、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA及び任意選択で少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチと混合して、混合物を得ること、
(iii)導電性フィラーBの残りの部分を、ステップ(ii)で得られた混合物に、好ましくはバッチ方式で添加すること、
(iv)ステップ(ii)又はステップ(iii)で得られた混合物の生強度を調整するために、生強度調整剤Dを添加すること、
(v)ステップ(ii)、(iii)、又は(iv)で得られた混合物に少なくとも1つの有機過酸化物Eを添加すること;
ここで、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物中の導電性フィラーの総含有量が、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づき、40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%である。
【0068】
使用されるその他の成分の含有量は前述の通りである。
【0069】
他の添加剤
一実施形態では、本発明の有機過酸化物成分の添加前、添加中、又は添加後に、他の添加剤を添加してもよい。このような1つ以上の添加剤は、意図された用途に適した任意の材料であり得、放射線遮蔽剤、フリーラジカル防止剤、接着改質剤、難燃剤添加剤、界面活性剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、チキソトロピー剤、熱安定剤などから選択できる。なお、他のオルガノポリシロキサン、シリコーン樹脂、ポリオルガノシルセスキオキサン、シリコーンゴムパウダー等も使用できる。
【0070】
第2の態様では、本発明は、本発明の第1の態様による方法のステップ(i)で得られるプレミックス導電性ペーストに関する。
【0071】
好ましい実施形態では、本明細書に記載のプレミックス導電性ペーストは、プレミックスされた導電性ペーストの総重量に基づき、80重量%以下、好ましくは75重量%以下、より好ましくは70重量%以下の量で導電性フィラーB、及び、25℃における動粘度が1000~400000mPa・s、好ましくは10000~200000mPa・s、より好ましくは50000~150000mPa・sであるオルガノポリシロキサンCを含むことができる。
【0072】
第3の態様では、本発明は、好ましくは本発明の第1の態様による方法によって得られる、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物に関する。
【0073】
好ましい実施形態では、本発明の第3の硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物は、以下を含み得る:
(a)0.1重量%~40重量%、好ましくは1重量%~30重量%、より好ましくは4重量%~25重量%の少なくとも1つのオルガノポリシロキサンA、及び少なくとも1つの強化フィラーを含むオルガノポリシロキサンマスターバッチ;
(b)40重量%~80重量%、好ましくは50重量%~80重量%、より好ましくは60重量%~80重量%、さらにより好ましくは50重量%~75重量%、さらにより好ましくは60重量%~75重量%、さらにより好ましくは65重量%~70重量%の導電性フィラーB;
(c)25℃で1,000~400,000mPa・s、好ましくは10,000~200,000mPa・s、より好ましくは50,000~150,000mPa・sの範囲の動粘度を有する5重量%~40重量%、好ましくは8重量%~35重量%、より好ましくは10重量%~30重量%のオルガノポリシロキサンC;
(d)0重量%~2.0重量%、好ましくは0.1重量%~2.0重量%、より好ましくは0.5重量%~1.5重量%、最も好ましくは0.8重量%~1.0重量%の生強度調整剤D;
(e)0.5重量%~2重量%、好ましくは0.8重量%~1.6重量%の有機過酸化物E;
ここで、すべての重量は、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の総重量に基づくものである。
【0074】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様に係る、特に導電性フィラーの含有量が高い硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を硬化して得られる硬化導電性シリコーンゴムに関する。
【0075】
硬化導電性シリコーンゴムは、硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物を100℃~200℃、任意選択で100℃~250℃の温度範囲で加熱することにより得られる。
【0076】
第5の態様では、本発明は、本発明の第4の態様による硬化導電性シリコーンゴムのエレクトロニクス、自動車、航空宇宙、高速鉄道、通信、電力、医療、ウェアラブルインテリジェント機器等の分野における電磁波シールド要素としての使用に関する。
【0077】
第6の態様では、本発明は、本発明の第4の態様による硬化導電性シリコーンゴムを含む電線又は電気ケーブルに関する。
【0078】
「電線」とは、エネルギーや情報を伝達するために電気を運ぶ電気工学部品を意味し、単芯又は多芯の電気を伝導する材料を絶縁被覆で囲んだものを指す。電線の内部を「芯」という。
【0079】
「電気ケーブル」とは、エネルギーや情報を伝達するために電気を運ぶための電気工学構成部品を意味し、電気的に分離され、機械的に一体化された複数の導体で構成され、任意選択で外部遮蔽を備える。
【0080】
電気ケーブルは、1つ又は複数の単一導体(通常は銅又はアルミニウムをベースとする)で構成され、これらの単一導体のそれぞれは、絶縁体をベースとした1つ以上の同心層で作られたカバー又は一次絶縁体によって保護されている。この被覆又はこれらの被覆の周囲には(複数の個別の導体を備えたケーブルの場合)、1つ以上の充填要素及び/又は1つ以上の補強要素が、特にガラス繊維及び/又は鉱物繊維に基づいて提供される。次に、1つ又は複数のシースを含む外側シースが存在することが最も多い。複数の単導体を備えた電気ケーブルの場合、単一導体の周囲に配置された充填要素及び/又は補強要素は、単一の導体の周りに配置され(それぞれ一次絶縁が設けられている)、すべての単一導体に対する共通の被覆を構成する。
【0081】
本明細書では特定の実施形態について説明するが、当業者であれば、要素の他の様々な組み合わせが可能であり、一般的な発明の概念に含まれることを認識できる。本発明を以下の実施例によってさらに説明するが、これに限定されるものではない。
【実施例
【0082】
本発明を実施するための具体的な態様
本発明のすべての例で使用した原材料を以下の表1に列挙する。
【0083】
【表1】
【0084】
試験方法
本発明によれば、硬化性導電性ポリオルガノシロキサン組成物を製造した後、下記の試験方法により各製品を評価し、その結果を表5~表7に示す。
【0085】
加工性:表3に記載の全成分をよく撹拌混合した後、得られる混合物の加工のし易さの尺度である。得られた混合物がすべての成分がその中に十分に分散して一体化している場合、それは許容可能な加工性を有するとみなされた。それ以外の場合、すべての成分がまだ個別の状態にある場合は、実用的でないとみなされた。
【0086】
生強度:未硬化状態の硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の強度を指す(業界では一般に「生強度」と呼ばれる)。
【0087】
外観:硬化性導電性オルガノポリシロキサン組成物の表面のシワやクラックの程度を表す。このような組成物は、表3に示す全成分を十分に混合し、得られた混合物を未硬化のまま押出成形することにより得た。
【0088】
2ローラーミルへの粘着:ニーダー又は2個のローラーで混合した際にドラム上に残留物があったかどうかの目安である。記号「+」は残留物の量を示し、記号「/」は残留物の量が多すぎて装置が動作不能であることを示す。
【0089】
密度:硬化導電性シリコーンゴムの密度をISO2781に従って測定した。硬化条件:170℃、10分間。
【0090】
硬度:硬化導電性シリコーンゴムの硬度をASTM D2240に従って測定した。硬化条件:170℃、10分間。
【0091】
引張強度:硬化導電性シリコーンゴムの引張強度をISO R37に従って測定した。硬化条件:170℃、10分。
【0092】
破断点伸び:硬化導電性シリコーンゴムの破断点伸びをISO R37に従って測定した。硬化条件:170℃、10分。
【0093】
引裂強度:硬化導電性シリコーンゴムの引裂強度をASTM D624Aに従って測定した。硬化条件:170℃、10分。
【0094】
体積抵抗率:硬化導電性シリコーンゴムの体積抵抗率は、GB/T1410-2006に従って測定した。試験片は長さ100mm、厚さ2mm、幅10mmであった。
【0095】
電磁シールド効果:硬化導電性シリコーンゴムの電磁シールド効果をGB/T30142-2013に従って測定した。硬化条件:170℃、10分。
【0096】
オルガノポリシロキサンマスターバッチとプレミックス導電性ペーストの製造
本発明の実施例でさらに使用するために、4種類の系を事前に準備した。
・オルガノポリシロキサンマスターバッチ1:
96部のA3、4部のA2、5部のA6をニーダーに加え、15分間混合した。次いで、30部のB1を2~3回に分けて添加し、混合した。すべての材料が加工可能な一体化になった後、温度を150℃に上昇させ、2時間保持した。加熱終了後、混合物を150℃で0.5時間減圧し、80℃まで冷却して取り出し、オルガノポリシロキサンマスターバッチ1を得た。
【0097】
・オルガノポリシロキサンマスターバッチ2:
93部のA3、7部のA2、10部のA6をニーダーに加え、15分間混合した。次いで、32部のB1を4~5回に分けて添加し、混合した。すべての材料が加工可能な一体化になった後、温度を150℃に上昇させ、2時間保持した。加熱終了後、混合物を150℃で0.5時間減圧し、80℃まで冷却して取り出し、オルガノポリシロキサンマスターバッチ2を得た。
【0098】
・オルガノポリシロキサンマスターバッチ3:
82部のA3、18部のA2、13部のA6をニーダーに加え、15分間混合した。次いで、52部のB1を4~5回に分けて添加し、混合した。すべての材料が加工可能な一体化になった後、温度を150℃に上昇させ、2時間保持した。加熱終了後、混合物を150℃で0.5時間減圧し、80℃まで冷却して取り出し、オルガノポリシロキサンマスターバッチ3を得た。
【0099】
・プレミックス導電性ペースト1(C1を70%含む):
プラネタリーミキサーに30部のA1を加え、70部のC1を5~7回に分けて投入した。すべての材料が処理可能な一体化になった後、60℃以下で30分間連続混合した。混合物を取り出し、プレミックスされた導電性ペースト1(C1を70%含む)を得た。
【0100】
・プレミックス導電性ペースト2(C2を70%含む):
プラネタリーミキサーに30部のA1を加え、70部のC2を5~7回に分けて投入した。すべての材料が処理可能な一体化になった後、60℃以下で30分間連続混合した。混合物を取り出し、プレミックスされた導電性ペースト2(C2を70%含む)を得た。
【0101】
・プレミックス導電性ペースト3(C3を含む):
82部のA3、18部のA2をニーダーに加え、10分間混合した。次いで、64部のC3を5~7回に分けて添加し、混合した。すべての材料が処理可能な一体化になった後、60℃以下で2時間連続混合した。混合物を取り出し、プレミックスされた導電性ペースト3(C3を含む)を得た。
【0102】
このように各オルガノポリシロキサンマスターバッチとプレミックスされた導電性ペーストの組成を表2に示す。
【0103】
【表2】
【0104】
本発明による硬化前の比較例及び実施例の製造
比較例1(C1)及び実施例1(E1)も、プレミックス導電性ペースト1の方法により同様に製造した。
【0105】
比較例2(C2)、実施例8(E8)及び実施例11(E11)を製造するために使用した硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、以下の手順に従って製造した。
【0106】
・比較例2:(C2):
40部のオルガノポリシロキサンマスターバッチ1をニーダーに加え、5分間混合した。 次いで、60部のC1を5~7回に分けて添加し、混合した。2時間混合した後では、処理可能な一体化は実現できなかった。
【0107】
・実施例8(E8)の製造に使用した硬化性オルガノポリシロキサン組成物:
46.33部のプレミックスされた導電性ペースト1及び21.1部のオルガノポリシロキサンマスターバッチ3をニーダーに加え、10分間混合した。次いで、32.57部のC1を2回に分けて添加し、混合した。その後、Dを1部仕込み、60℃以下で30分間混合する。混合物を取り出し、実施例8(E8)の製造に用いた硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0108】
・実施例11(E11)の製造に使用した硬化性オルガノポリシロキサン組成物:
42.87部のプレミックスされた導電性ペースト1、22.86部のオルガノポリシロキサンペースト3、及び4.29部のマスターバッチ1をニーダーに加え、15分間混合した。次いで、29.99部のC1を2回に分けて添加し、混合した。その後、Dを1部仕込み、60℃以下で30分間混合した。化合物を取り出して、実施例11(E11)の製造に用いた硬化性オルガノポリシロキサン組成物を得た。
【0109】
実施例2~6(E2~E6)、並びに比較例3及び4(C3及びC4)、実施例7、9~10(E7、E9~E10)を製造するために使用したそれぞれの硬化性オルガノポリシロキサン組成物を、実施例8(E8)の方法により同様に製造した。
【0110】
【表3】
【0111】
硬化した比較例及び本発明に係る実施例の製造
最後に、比較例3、4(C3、C4)、実施例7~11(E7~E11)を製造するために使用した各硬化性オルガノポリシロキサン組成物に0.9部のEを混合し、170℃で10分間硬化させ、硬化導電性シリコーンゴムを得た。
【0112】
【表4】
【0113】
過酸化物を添加する前の硬化性オルガノポリシロキサン組成物の加工性、並びに生強度、外観及び2本ローラーミルへの粘着特性を以下の表5にまとめた。本発明により製造された導電性シリコーンゴムの特性を以下の表6及び表7にまとめた。
【0114】
【表5】
【0115】
上記からわかるように、プレミックス導電性ペーストを製造する場合、本明細書で使用される特定の動粘度を有するジメチルビニルシリル末端ポリジメチルシロキサン中の導電性フィラーの含有量は、80重量%を超えない可能性がある。比較例1(C1)から分かるように、そのような高濃度では、加工可能な一体化をもはや得ることができなかった。ビニルシリコーンオイル中の導電性フィラーの含有量は、本実施例1(E1)に示すように、75重量%以下であることが好ましい。
【0116】
また、比較例2(C2)及び実施例2~3(E2~E3)によると、導電性フィラーの含有量が60wt%を超える場合、加工可能な一体化物は、少なくとも1つのオルガノポリシロキサンガムを、導電性フィラーと本明細書で使用される特定の動粘度を有するオルガノポリシロキサンを含む予め混合された導電性ペーストと混合することによって製造することができる。本発明の製造方法を用いることにより、導電性フィラーの含有量が高くても良好な加工性が得られることが実証された。
【0117】
さらに、PTFE粉末を添加しない場合、実施例2及び3で得られた混合物は粘着性があり、加工しにくいものであった。比較すると、PTFE粉末を特定の量で添加すると、適切な生強度が達成された。このように、フルオロエチレンの存在は生強度の調整に寄与している。
【0118】
【表6】
【0119】
【表7】
【0120】
表6から明らかなように、本発明の実施例はいずれも比較例(C3、C4)に比べて優れた導電率を達成している。一方、本発明の硬化シリコーンゴムは、工業用途に十分な機械的特性も得られた。比較例C3の場合でも、導電性の要件がそれほど高くない用途には依然として有用であり得る。
【0121】
さらに、カーボンブラックをニッケル被覆グラファイトと組み合わせて使用すると、E8対E11からわかるように、コストを削減し、同等の電磁シールド性能で導電率を向上させることができる。調整可能な機械的特性により、本発明の導電性シリコーンゴムは、電子分野のシーリングストリップやガスケットなどの幅広い産業用途に適用可能である。また、導電性フィラーとしてニッケル被覆グラファイトを単独で使用することが、導電性、電磁波シールド性、機械的特性のバランスの点で好ましい。
【0122】
導電性フィラーの粒径に関しては、粒径100μmのE8と粒径50μmのE9の両方で良好な導電性と機械的特性が達成できたことは注目に値する。E8よりもE9のほうが粘着性が高い可能性があるが、シリカとZonyl(商標)MP1000の比率を調整することで改善できる。したがって、ニッケル被覆グラファイトの粒径は20μm~200μmの範囲にすることができる。
【0123】
さらに、一般的な発明概念の範囲は、本明細書に記載される特定の例示的な実施形態に限定されることを意図したものではない。与えられた開示から、当業者は、一般的な発明概念及びそれに付随する利点を理解するだけでなく、開示された方法及び製品に対する明らかな様々な変更及び修正も発見できる。したがって、本明細書で説明及び示唆する一般的な発明概念の精神及び範囲内に入るようなすべての変更及び修正、及びその均等物を網羅することが求められる。
【国際調査報告】