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特表2024-501571スイッチングペプチド、それを含む免疫分析装置及びそれを用いた免疫分析方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】スイッチングペプチド、それを含む免疫分析装置及びそれを用いた免疫分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/533 20060101AFI20240104BHJP
   C07K 7/08 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
G01N33/533
C07K7/08 ZNA
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023540592
(86)(22)【出願日】2022-01-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-30
(86)【国際出願番号】 KR2022000693
(87)【国際公開番号】W WO2022154548
(87)【国際公開日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】10-2021-0005052
(32)【優先日】2021-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519122725
【氏名又は名称】オプトレーン テクノロジーズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】OPTOLANE Technologies Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ピョン,ジェ‐チョル
【テーマコード(参考)】
4H045
【Fターム(参考)】
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA16
4H045BA17
4H045BA56
4H045EA50
4H045FA10
(57)【要約】
光学的ワンステップ免疫分析方法に適用可能なスイッチングペプチドが開示される。スイッチングペプチドは、結合抗体に可逆的に結合することができるペプチド化合物;及びペプチド化合物に結合された蛍光標識物質;を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
結合抗体に可逆的に結合することができるペプチド化合物と、
前記ペプチド化合物に結合された蛍光標識物質と、を含む、スイッチングペプチド。
【請求項2】
前記ペプチド化合物は、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することを特徴とする、請求項1に記載のスイッチングペプチド。
【請求項3】
前記ペプチド化合物は、前記結合抗体の軽鎖または重鎖の第1ないし第4フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)のうち1つ以上と特異的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有することを特徴とする、請求項1に記載のスイッチングペプチド。
【請求項4】
前記ペプチド化合物は、前記軽鎖の第2フレームワーク領域(VL-FR2)のアミノ酸配列と相同性を有する第1アミノ酸配列を有する第1ペプチド化合物と、
前記軽鎖の第3または第4フレームワーク領域(VL-FR3、VL-FR4)のアミノ酸配列と相同性を有する第2アミノ酸配列を有する第2ペプチド化合物と、
前記重鎖の第2フレームワーク領域(VH-FR2)のアミノ酸配列と相同性を有する第3アミノ酸配列を有する第3ペプチド化合物と、
前記重鎖の第3または第4フレームワーク領域(VH-FR3、VH-FR4)のアミノ酸配列と相同性を有する第4アミノ酸配列を有する第4ペプチド化合物と、からなるグループから選択された1つ以上を含むことを特徴とする、請求項3に記載のスイッチングペプチド。
【請求項5】
前記ペプチド化合物は、14~20個のアミノ酸を含むことを特徴とする、請求項4に記載のスイッチングペプチド。
【請求項6】
前記ペプチド化合物は、1650~2500Daの分子量を有することを特徴とする、請求項5に記載のスイッチングペプチド。
【請求項7】
前記蛍光標識物質は、ローダミンとその誘導体、フルオレセインとその誘導体、クマリンとその誘導体、アクリジンとその誘導体、ピレンとその誘導体、エリスロシンとその誘導体、エオシンとその誘導体、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、フルオレセインイソチオシアン酸塩(FITC)、オレゴングリーン、アレックスフルオロ、カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テキサスレッド(スルホローダミン101酸クロリド)、6-カルボキシ-2’,4,7’,7-テトラクロロフルオレセイン(TET)、テトラメチルローダミン-イソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、シアニン系染料、及びチアジカルボシアニン染料からなるグループから選択された1つ以上を含むことを特徴とする、請求項1に記載のスイッチングペプチド。
【請求項8】
検出試料溶液を収容することができる反応空間を備える基板と、
前記反応空間の内部に位置し、前記基板に固定された結合抗体と、
前記結合抗体のFab領域に可逆的に結合したペプチド化合物及び前記ペプチド化合物に結合された蛍光標識物質を備えるスイッチングペプチドと、
前記蛍光標識物質と隣接して配されて、前記蛍光標識物質からの蛍光を消光させる消光物質と、を含む、免疫分析装置。
【請求項9】
検出試料溶液を収容することができる反応空間を備える基板と、
前記反応空間の内部に位置する支持体と、
前記支持体に結合された結合抗体と、
前記結合抗体のFab領域に可逆的に結合したペプチド化合物及び前記ペプチド化合物に結合された蛍光標識物質を備えるスイッチングペプチドと、
前記蛍光標識物質と隣接して配されて、前記蛍光標識物質からの蛍光を消光させる消光物質と、を含む、免疫分析装置。
【請求項10】
前記消光材料は、前記結合抗体のFc領域または前記基板に結合されたことを特徴とする、請求項8に記載の免疫分析装置。
【請求項11】
前記消光材料は、前記結合抗体のFc領域または前記支持体に結合されたことを特徴とする、請求項9に記載の免疫分析装置。
【請求項12】
前記消光材料は、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4-カルボン酸(DABCYL)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼンスルホン酸(DABSYL)、ブラックホールクエンチャー(BHQ)、ブラックベリークエンチャー(BBQ)、ECLIPSEクエンチャー、タイドクエンチャー、炭素ナノ物質、及び二酸化マンガンナノ物質からなるグループから選択された1つ以上を含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の免疫分析装置。
【請求項13】
前記基板の反応空間に収容された前記分析試料溶液に光を照射する光源と、
前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドから発生した蛍光を受容して、これに対するイメージを生成し、前記イメージを分析して、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの量を分析するイメージ分析装置と、をさらに含むことを特徴とする、請求項8または9に記載の免疫分析装置。
【請求項14】
単一グラフェンシートが前記支持体及び前記消光材料として作用することを特徴とする、請求項9に記載の免疫分析装置。
【請求項15】
基板にスイッチングペプチドが結合された結合抗体を固定させるか、前記基板に結合抗体を固定した後、前記スイッチングペプチドを結合抗体に結合させ、
消光材料を前記結合抗体または基板に結合させる第1段階と、
前記結合抗体を検出試料溶液で処理する第2段階と、
前記処理後の検出試料溶液に光を照射した後、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光を通じて前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析する第3段階と、を含み、
前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有するペプチド化合物及びこれに結合され、蛍光を発光する蛍光標識物質を含むことを特徴とする、免疫分析方法。
【請求項16】
支持体にスイッチングペプチドが結合された結合抗体を固定させるか、前記支持体に結合抗体を固定した後、前記スイッチングペプチドを結合抗体に結合させ、前記結合抗体または前記支持体に消光材料を結合させる第1段階と、
前記結合抗体が結合された支持体及び検出試料溶液を基板の反応空間に注入する第2段階と、
前記検出試料溶液に光を照射した後、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光を通じて前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析する第3段階と、を含み、
前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有するペプチド化合物及びこれに結合され、蛍光を発光する蛍光標識物質を含むことを特徴とする、免疫分析方法。
【請求項17】
前記第2段階で、前記検出試料溶液内に前記ターゲット抗原が存在する場合、前記ターゲット抗原が前記結合抗体に結合されれば、前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体と反応した前記ターゲット抗原の量に依存して定量的に前記結合抗体から遊離されることを特徴とする、請求項15または16に記載の免疫分析方法。
【請求項18】
前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光は、前記消光材料によって消光され、
前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光は、外部に放出されることを特徴とする、請求項17に記載の免疫分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫反応を用いてターゲット抗原物質の分析に使われるスイッチングペプチド、それを含む免疫分析装置及びそれを用いた免疫分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオ技術分野において、多様な免疫診断検査または環境モニタリングのようなバイオ検査のために、イムノアッセイ(Immunoassay)が使われている。前記イムノアッセイは、抗原-抗体反応の特異性を用いて特定ターゲット物質の定量分析が可能であり、他の分析方法に比べて高い感度を有するという利点がある。
【0003】
前記イムノアッセイは、癌マーカー、感染性疾患、甲状腺機能、貧血、アレルギー、妊娠、薬物乱用、痛風の診断のような多様な診断に用いられる。前記イムノアッセイを多種の抗原の診断または分析に利用するためには、前記抗原のそれぞれに対して特異的な反応性を有する抗体を調製しなければならない。
【0004】
しかし、このような方法は、最近、急速に多様化されている現代化された疾病または多数の突然変異種を有するウイルスの感知に限界点がある。特に、前記ウイルスの場合、前記ウイルスと特異的結合特性を有する抗体を確保することが不可能な場合も多数ある。
【0005】
また、前記抗原-抗体反応を用いる場合、前記抗体を標識物質と結合させる追加的な段階が要求される。前記標識物質と前記抗体との結合特性が低下する場合、イムノアッセイ分析の精度または信頼度が低下する。
【0006】
前述したような問題点によって、多様な抗体に対して結合することができる多種の標識物質をそれぞれ開発しなければならないという問題もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の一目的は、結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるペプチド化合物と蛍光を発光することができる蛍光標識物質とを備えて光学的ワンステップ免疫分析方法に適用可能なスイッチングペプチドを提供することである。
【0008】
本発明の他の目的は、前記スイッチングペプチドを含む免疫分析装置を提供することである。
【0009】
本発明のさらに他の目的は、前記免疫分析装置を利用した免疫分析方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の実施例によるスイッチングペプチドは、結合抗体に可逆的に結合することができるペプチド化合物;及び前記ペプチド化合物に結合された蛍光標識物質;を含む。
【0011】
一実施例において、前記ペプチド化合物は、前記結合抗体のFab(フラグメント抗原結合:Fragment antigen-binding)領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができる。
【0012】
一実施例において、前記ペプチド化合物は、前記結合抗体の軽鎖または重鎖の第1ないし第4フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)のうち1つ以上と特異的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有しうる。
【0013】
一実施例において、前記ペプチド化合物は、前記軽鎖の第2フレームワーク領域(VL-FR2)のアミノ酸配列と相同性(homology)を有する第1アミノ酸配列を有する第1ペプチド化合物;前記軽鎖の第3または第4フレームワーク領域(VL-FR3、VL-FR4)のアミノ酸配列と相同性を有する第2アミノ酸配列を有する第2ペプチド化合物;前記重鎖の第2フレームワーク領域(VH-FR2)のアミノ酸配列と相同性を有する第3アミノ酸配列を有する第3ペプチド化合物;及び前記重鎖の第3または第4フレームワーク領域(VH-FR3、VH-FR4)のアミノ酸配列と相同性を有する第4アミノ酸配列を有する第4ペプチド化合物;からなるグループから選択された1つ以上を含みうる。
【0014】
一実施例において、前記ペプチド化合物は、14~20個のアミノ酸を含みうる。
【0015】
一実施例において、前記ペプチド化合物は、1650~2500Daの分子量を有しうる。
【0016】
一実施例において、蛍光標識物質は、ローダミンとその誘導体、フルオレセインとその誘導体、クマリンとその誘導体、アクリジンとその誘導体、ピレンとその誘導体、エリスロシンとその誘導体、エオシンとその誘導体、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、フルオレセインイソチオシアン酸塩(fluorescein isothiocyanate、FITC)、オレゴングリーン(oregon green)、アレックスフルオロ、カルボキシフルオレセイン(carboxyfluorescein、FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テキサスレッド(スルホローダミン101酸クロリド:sulforhodamine 101 acid chloride)、6-カルボキシ-2’,4,7’,7-テトラクロロフルオレセイン(TET)、テトラメチルローダミン-イソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、シアニン系染料、及びチアジカルボシアニン染料からなるグループから選択された1つ以上を含みうる。
【0017】
本発明の一実施例による免疫分析装置は、検出試料溶液を収容することができる反応空間を備える基板;前記反応空間の内側に位置し、前記基板に固定された結合抗体;前記結合抗体のFab領域に可逆的に結合したペプチド化合物及び前記ペプチド化合物に結合された蛍光標識物質を備えるスイッチングペプチド;前記蛍光標識物質と隣接して配されて、前記蛍光標識物質からの蛍光を消光させる消光物質;含む。
【0018】
本発明の他の実施例による免疫分析装置は、検出試料溶液を収容することができる反応空間を備える基板;前記反応空間の内部に位置する支持体;前記支持体に結合された結合抗体;前記結合抗体のFab領域に可逆的に結合したペプチド化合物及びペプチド化合物に結合された蛍光標識物質を備えるスイッチングペプチド;前記蛍光標識物質と隣接して配されて、前記蛍光標識物質からの蛍光を消光させる消光物質;含む。
【0019】
一実施例において、前記消光材料は、前記結合抗体のFc領域または前記基板に結合されうる。
【0020】
一実施例において、前記消光材料は、前記結合抗体のFc領域または前記支持体に結合されうる。
【0021】
一実施例において、消光材料は、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4-カルボン酸(DABCYL)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼンスルホン酸(DABSYL)、ブラックホールクエンチャー(blackhole quencher、BHQ)、ブラックベリークエンチャー(blackberry(登録商標) quencher、BBQ)、ECLIPSEクエンチャー、タイドクエンチャー(Tide quencher)、炭素ナノ物質、及び二酸化マンガンナノ物質からなるグループから選択された1つ以上を含みうる。
【0022】
一実施例において、前記免疫分析装置は、前記基板の反応空間に収容された前記分析試料溶液に光を照射する光源;及び前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドから発生した蛍光を受容して、これに対するイメージを生成し、前記イメージを分析して、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの量を分析するイメージ分析装置;をさらに含みうる。
【0023】
一実施例において、単一グラフェンシートが前記支持体及び前記消光材料として作用する。
【0024】
本発明の一実施例による免疫分析方法は、基板にスイッチングペプチドが結合された結合抗体を固定させるか、前記基板に結合抗体を固定した後、前記スイッチングペプチドを結合抗体に結合させ、消光材料を前記結合抗体または基板に結合させる第1段階;前記結合抗体を検出試料溶液で処理する第2段階;前記処理後の検出試料溶液に光を照射した後、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光を通じて前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析する第3段階;を含み、前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有するペプチド化合物及びそれに結合され、蛍光を発光する蛍光標識物質を含む。
【0025】
本発明の他の実施例による免疫分析方法は、支持体にスイッチングペプチドが結合された結合抗体を固定させるか、前記支持体に結合抗体を固定した後、前記スイッチングペプチドを結合抗体に結合させ、前記結合抗体または前記支持体に消光材料を結合させる第1段階;前記結合抗体が結合された支持体及び検出試料溶液を基板の反応空間に注入する第2段階;前記検出試料溶液に光を照射した後、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光を通じて前記検出試料溶液内の標的抗原を定量的に分析する第3段階;を含み、前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有するペプチド化合物及びこれに結合され、蛍光を発光する蛍光標識物質を含む。
【0026】
一実施例において、前記第2段階で、前記検出試料溶液内に前記ターゲット抗原が存在する場合、前記ターゲット抗原が前記結合抗体に結合されれば、前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体と反応した前記ターゲット抗原の量に依存して定量的に前記結合抗体から遊離される。
【0027】
一実施例において、前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光は、前記消光材料によって消光され、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光は、外部に放出される。
【発明の効果】
【0028】
本発明のスイッチングペプチド、それを用いる免疫分析装置及び免疫分析方法によれば、結合抗体の結合されたスイッチングペプチドは、前記結合抗体と反応したターゲット抗原の量に依存して、前記結合抗体から定量的に遊離され、前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質は、消光材料によって蛍光を外部に発生させない一方、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質は、蛍光を外部に発生させるので、従来の免疫分析方法で一般的に要求される未反応抗原を除去するなどの洗浄過程なしにワンステップで検出試料内のターゲット抗原に対する定量分析を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施例によるスイッチングペプチドを説明する図面である。
図2】結合抗体を説明する図面である。
図3A】本発明の免疫分析装置の実施例を説明する図面である。
図3B】本発明の免疫分析装置の実施例を説明する図面である。
図3C図3A及び図3Bに示された免疫分析装置でターゲット抗原を定量分析する方法を説明する図面である。
図4A】L1及びH2ペプチドの間の特異的相互作用、そして、L2及びH1ペプチドの間の特異的相互作用を確認する方法及び測定結果を示す図面である。
図4B】PyMOLソフトウェアを使用して分析されたL1及びH2ペプチドの間の特異的相互作用、そして、L2及びH1ペプチドの間の特異的相互作用を説明する図面である。
図5A】本発明のスイッチングペプチドと結合した抗体コンプレックスの消光現象を分析したグラフである。
図5B】本発明のスイッチングペプチドと結合した抗体コンプレックスの消光現象を分析したグラフである。
図5C】本発明のスイッチングペプチドと結合した抗体コンプレックスの消光現象を分析したグラフである。
図6】マイクロプレート上にそれぞれ分離固定されたヒト、ウサギ、ヤギ及びラットからのIgG、そして、これらと異なるタンパク質(ヒトB型肝炎抗原、C反応性タンパク質、プロテインA、BSA)を蛍光ラベルされた実施例1から合成された4種のペプチド化合物(H1、H2、L1、L2)と反応させた後、マイクロプレートの底面から測定された蛍光強度を示すグラフである。
図7A】実施例1の4種のペプチドがそれぞれ結合された抗体をタンパク質分解酵素(protease)であるパパイン(papain)で処理前及び後の状態を示す模式図である。
図7B】前記パパイン処理後、マイクロプレートの底面(B)及び溶液内(S)から測定された蛍光強度を示すグラフである。
図8A】蛍光ラベルされた実施例1のペプチド化合物を利用した免疫分析方法を説明する模式図である。
図8B図8Aに示された免疫分析方法で測定された抗原の濃度による溶液内及びマイクロプレートの底面での蛍光強度を示すグラフである。
図8C図8Aに示された免疫分析方法で測定された抗原の濃度による溶液内及びマイクロプレートの底面での蛍光強度を示すグラフである。
図9】実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2(Tide-Quencher 2)消光材料が結合された抗HBsAG抗体にHBsAg、Inf A、Inf B(Florida)、Inf B(Tokio)及びPBS試料溶液をそれぞれ反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図10】実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体に多様な濃度のHBsAgをそれぞれ含む検出試料溶液を反応させた後に測定された蛍光強度を示すグラフである。
図11】Protein Aビーズに実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体を結合させ、それを多様な濃度のHBsAg抗原を含む検出試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図12】実施例2のL1、H1、L2及びH2スイッチングペプチドうち1つ及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体にHRP、CRP、HBsAg及びhCG試料溶液をそれぞれ反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図13】TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された抗HBsAG抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それをHBsAg試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図14】TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された抗inf A抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それをインフルエンザA(Influenza A)試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図15】TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された抗SARS-CoV-2抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それをSARS-CoV-2試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図16A】FAMまたはTAMRA蛍光標識物質がラベリングされた4種のスイッチングペプチドが結合された抗Inf抗体をInf-A及びInf-B試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図16B】FAMまたはTAMRA蛍光標識物質がラベリングされた4種のスイッチングペプチドが結合された抗Inf抗体をInf-A及びInf-B試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図16C】FAMまたはTAMRA蛍光標識物質がラベリングされた4種のスイッチングペプチドが結合された抗Inf抗体をInf-A及びInf-B試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図16D】FAMまたはTAMRA蛍光標識物質がラベリングされた4種のスイッチングペプチドが結合された抗Inf抗体をInf-A及びInf-B試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
図17A】結合抗体に対する標的抗原(Inf-A及びInf-B)及び選択されたスイッチングペプチド(L1ペプチド及びH2ペプチド)の結合親和度(K)を測定した結果である。
図17B】結合抗体に対する標的抗原(Inf-A及びInf-B)及び選択されたスイッチングペプチド(L1ペプチド及びH2ペプチド)の結合親和度(K)を測定した結果である。
図17C】結合抗体に対する標的抗原(Inf-A及びInf-B)及び選択されたスイッチングペプチド(L1ペプチド及びH2ペプチド)の結合親和度(K)を測定した結果である。
図18A】本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Aに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
図18B】本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Aに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
図18C】本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Aに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
図19A】本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Bに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
図19B】本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Bに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
図19C】本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Bに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
図20A】本発明のワンステップイムノアッセイ免疫分析装置と市販中であるテストキットとでInf-A及びInf-Bを検出した結果を示した図面である。
図20B】本発明のワンステップイムノアッセイ免疫分析装置と市販中であるテストキットとでInf-A及びInf-Bを検出した結果を示した図面である。
図20C】本発明のワンステップイムノアッセイ免疫分析装置と市販中であるテストキットとでInf-A及びInf-Bを検出した結果を示した図面である。
図20D】本発明のワンステップイムノアッセイ免疫分析装置と市販中であるテストキットとでInf-A及びInf-Bを検出した結果を示した図面である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施例について詳しく説明する。本発明は、多様な変更を加え、さまざまな形態を有しうるので、特定実施例を図面に例示し、本明細書で詳細に説明する。しかし、これは、本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想及び技術範囲に含まれる、あらゆる変更、均等物または代替物を含むものと理解しなければならない。各図面を説明しながら類似の参照符号を類似の構成要素に対して使用した。添付図面において、構造物の寸法は、本発明の明確性を期するために実際よりも拡大して図示したものである。
【0031】
本明細書で使用した用語は、単に特定の実施例を説明するために使われたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は、文脈上、取り立てて明示しない限り、複数の表現を含む。本明細書において、「含む」または「有する」などの用語は、明細書上に記載の特徴、数字、段階、動作、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在するということを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、動作、構成要素またはこれらを組み合わせたものの存在、または付加可能性をあらかじめ排除しないものと理解しなければならない。
【0032】
取り立てての定義がない限り、技術的や科学的な用語を含んで、ここで使われるあらゆる用語は、当業者によって一般的に理解されるものと同じ意味を有している。一般的に使われる辞書に定義されているような用語は、関連技術の文脈上の意味と一致する意味を有すると解釈されなければならず、本明細書で明白に定義しない限り、理想的であるか、過度に形式的な意味として解釈されない。
【0033】
<スイッチングペプチド>
図1は、本発明の実施例によるスイッチングペプチドを説明する図面であり、図2は、結合抗体を説明する図面である。
【0034】
図1及び図2を参照すれば、本発明の実施例によるスイッチングペプチド100は、結合抗体10に可逆的に結合することができるペプチド化合物110及び前記ペプチド化合物110に結合された蛍光標識物質120を含みうる。前記スイッチングペプチド100は、ターゲット抗原と特異的に結合する前記結合抗体10に可逆的に結合することができて、前記ターゲット抗原が前記結合抗体に特異的に結合する場合、定量的に前記結合抗体10から遊離され、その結果、前記結合抗体10から遊離された前記スイッチングペプチド100の蛍光標識物質120を介した酸化還元反応によって、前記ターゲット抗原を含む検査試料の電気化学的特性が変化することができる。
【0035】
前記結合抗体10は、前記ターゲット抗原のエピトープ(epitope)のような特異的な抗原決定基に結合されるか、前記抗原決定基と反応することにより、免疫学的エフェクターメカニズムを誘導することができる化合物である。前記結合抗体は、単一特異性(monospecific)を有しても、多特異性(polyspecific)有しても良い。
【0036】
一実施例において、前記結合抗体10は、抗体、抗体誘導体またはその断片を含みうる。前記結合抗体10は、完全な(intact)免疫グロブリン分子でもあり、これとは異なって、Fab、Fab´、F(ab´)2、Fc、F(v)、N-グリカン構造、パラトープのような完全な抗体の構成部分または前記構成部分のうち少なくとも一部を含むこともある。
【0037】
一実施例において、前記結合抗体は、ヒト抗体、非ヒト抗体またはヒト化された非ヒト抗体である。
【0038】
前記ヒト抗体は、ヒトによって生産された抗体または任意の技術を用いて合成されたアミノ酸配列を保有する合成抗体を含みうる。ヒト抗体のこのような定義は、特に、非ヒト抗原-結合残基を含むヒト化抗体を排除する。前記ヒト抗体は、ファージディスプレイライブラリーを含む当該技術に公知の多様な技術を用いて生成されうる。前記非ヒト抗体は、多様な種の供給源、例えば、げっ歯類、ウサギ、ウシ、ヒツジ、ブタ、イヌ、ヒトを除いた哺乳動物または鳥類から獲得された抗体である。前記非ヒト抗体の「ヒト化された」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含有するキメラ抗体である。一実施例において、前記ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域からの残基が目的特異性、親和度及び/または収容力を有する前述した非ヒト抗体(ドナー抗体)の超可変領域に置き換えられたヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合に、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク残基は、相応する非ヒト残基によって置き換えられる。また、前記ヒト化抗体は、レシピエント抗体またはドナー抗体から見つけられない残基を含みうる。これらの変形は、抗体の性能、例えば、結合親和度を追加精錬するために製造可能である。
【0039】
一実施例において、前記結合抗体10は、前記抗体分子、免疫グロブリン分子、その断片またはこれらのうち1つ以上の集合体である。前記結合抗体10は、前記ターゲット抗原に対する特異的な結合を可能にする独特な構造を有することができ、それぞれの結合抗体10は、2個の同じ構造の軽鎖(light chain)及び2個の同じ構造の重鎖(heavy chain)を含みうる。前記重鎖及び軽鎖は、それぞれ可変領域(variable region)及び不変領域(constant region)を含みうる。前記重鎖と軽鎖との可変領域が結合して抗原結合部位(antigen binding site)を形成しうる。前記結合抗体10は、パパインのようなタンパク質分解酵素によってターゲット抗原が結合する部分は、Fab(抗体結合フラグメント:antibody binding fragment)領域及び結晶化された支柱部分であるFc(フラグメント結晶化能:Fragment crystallizable)領域に分離され、前記抗原結合部位は、前記抗体のFab領域に含まれる。
【0040】
一方、前記重鎖及び軽鎖の可変領域のそれぞれは、超可変領域(hypervariable region;HVR)である3個の相補性決定領域(Complementarity-determining regions、CDRs)及び前記相補性決定領域を構造的に支持する4個のフレームワーク領域(Frame regions、FRs)が交互に配列された構造を有しうる。前記相補性決定領域は、抗体ごとに異なるアミノ酸配列を有して、それぞれの抗原と特異的に結合することができる一方、前記フレームワーク領域は、生物のサブファミリー(Subfamilies)によって保存されたアミノ酸配列を有しており、同じサブファミリーに属する生物の抗体は、同一または類似したアミノ酸配列を有する。
【0041】
以下、説明の便宜上、前記結合抗体10の軽鎖の可変領域において、N末端から順次に離隔して配された4個のフレームワーク領域をそれぞれ第1ないし第4軽鎖フレームワーク領域(VL-FR1、VL-FR2、VL-FR3及びVL-FR4)とし、前記第1ないし第4軽鎖フレームワーク領域(VL-FR1、VL-FR2、VL-FR3及びVL-FR4)の間にそれぞれ位置し、前記N末端から順次に配された3個の相補性決定領域をそれぞれ第1ないし第3軽鎖相補性決定領域(VL-CDR1、VL-CDR2、VL-CDR3)と称する。そして、前記結合抗体10の重鎖の可変領域において、N末端から順次に離隔して配された4個のフレームワーク領域をそれぞれ第1ないし第4重鎖フレームワーク領域(VH-FR1、VH-FR2、VH-FR3及びVH-FR4)とし、前記第1ないし第4重鎖フレームワーク領域(VH-FR1、VH-FR2、VH-FR3及びVH-FR4)の間にそれぞれ位置し、前記N末端から順次に配された3個の相補性決定領域をそれぞれ第1ないし第3重鎖相補性決定領域(VH-CDR1、VH-CDR2、VH-CDR3)と称する。
【0042】
前記ペプチド化合物110は、前記結合抗体10のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有しうる。
【0043】
一実施例において、前記ペプチド化合物110は、前記結合抗体10の軽鎖または重鎖の第1ないし第4フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)のうち1つ以上と特異的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有しうる。例えば、前記ペプチド化合物110は、前記結合抗体10の軽鎖または重鎖の第1ないし第4フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)のうち1つ以上と相同性を有するアミノ酸配列を含み、この場合、前記ペプチド化合物110は、前記軽鎖または重鎖の第1ないし第4フレームワーク領域(FR1、FR2、FR3及びFR4)のうち1つ以上と可逆的に結合することができ、これにより、ターゲット抗原が前記結合抗体10に結合する場合、前記結合抗体10に結合された前記ペプチド化合物10は、前記結合抗体10に結合される抗原の量によって定量的に前記結合抗体10から遊離される。
【0044】
一実施例として、前記ペプチド化合物110は、前記第2軽鎖フレームワーク領域(VL-FR2)のアミノ酸配列と相同性を有する第1アミノ酸配列を有する第1ペプチド化合物(L1)、前記第3または第4軽鎖フレームワーク領域(VL-FR3、VL-FR4)のアミノ酸配列と相同性を有する第2アミノ酸配列を有する第2ペプチド化合物(L2)、前記第2重鎖フレームワーク領域(VH-FR2)のアミノ酸配列と相同性を有する第3アミノ酸配列を有する第3ペプチド化合物(H1)及び前記第3または第4重鎖フレームワーク領域(VH-FR3、VH-FR4)のアミノ酸配列と相同性を有する第4アミノ酸配列を有する第4ペプチド化合物(H2)の中から選択された1つ以上を含みうる。
【0045】
前記結合抗体10の前記第2軽鎖フレームワーク領域(VL-FR2)と前記第3または第4重鎖フレームワーク領域(VH-FR3、VH-FR4)は、互いに隣接して位置して相互作用し、前記第3または第4軽鎖フレームワーク領域(VL-FR3、VL-FR4)と前記第2重鎖フレームワーク領域(VH-FR2)は、互いに隣接して位置して相互作用するので、前記結合抗体10の第2軽鎖フレームワーク領域(VL-FR2)と相同性がある第1アミノ酸配列を有する前記第1ペプチド化合物(L1)は、前記結合抗体10の第3または第4重鎖フレームワーク領域(VH-FR3、VH-FR4)と選択的に相互作用することができ、前記結合抗体10の第3または第4軽鎖フレームワーク領域(VL-FR3、VL-FR4)と相同性を有する第2アミノ酸配列を有する前記第2ペプチド化合物(L2)は、前記結合抗体10の第2重鎖フレームワーク領域(VH-FR2)と選択的に相互作用することができ、前記結合抗体10の第2重鎖フレームワーク領域(VH-FR2)と相同性を有する第3アミノ酸配列を有する前記第3ペプチド化合物(H1)は、前記結合抗体10の第3または第4軽鎖フレームワーク領域(VL-FR3、VL-FR4)と選択的に相互作用することができ、前記結合抗体10の第3または第4重鎖フレームワーク領域(VH-FR3、VH-FR4)と相同性を有する第4アミノ酸配列を有する前記第4ペプチド化合物(H2)は、前記結合抗体10の第2軽鎖フレームワーク領域(VL-FR2)と選択的に相互作用することができる。
【0046】
一実施例において、前記結合抗体10がヒトを含む動物のサブファミリーに属する生物から由来した場合、前記ペプチド化合物110は、約10~25個のアミノ酸を含み、約1600~3000Daの分子量を有しうる。例えば、前記ペプチド化合物110は、約14~20個のアミノ酸を含み、約1650~2500Daの分子量を有しうる。一実施例として、前記第1ないし第4ペプチド化合物(L1、L2、H1、H2)は、下記表1に記載のようなアミノ酸配列を含みうる。
【0047】
【表1】
【0048】
一方、抗体の軽鎖及び重鎖のフレームワーク領域(FR1、FR2、FR3、FR4)は、生物のサブファミリーによって保存されたアミノ酸配列を有するので、前記ペプチド化合物110は、同じサブファミリーに属する他の種の生物から由来した抗体に共通して適用されるので、前記ペプチド化合物110がヤギ、ラット、ウサギなどの抗体から合成された場合であっても、ヒトの抗体に対しても前述したものと同じ作用及び効果を示すことができる。前記蛍光標識物質120は、前記ペプチド化合物110に結合され、蛍光を発光することができる。前記ペプチド化合物110に結合され、蛍光を発光することができるならば、前記蛍光標識物質120は、特に限定されない。例えば、前記蛍光標識物質120は、ローダミンとその誘導体、フルオレセインとその誘導体、クマリンとその誘導体、アクリジンとその誘導体、ピレンとその誘導体、エリスロシンとその誘導体、エオシンとその誘導体、4-アセトアミド-4’-イソチオシアナトスチルベン-2,2’ジスルホン酸、フルオレセインイソチオシアン酸塩(FITC)、オレゴングリーン、アレックスフルオロ、カルボキシフルオレセイン(FAM)、6-カルボキシ-4’,5’-ジクロロ-2’,7’-ジメトキシフルオレセイン(JOE)、カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、6-カルボキシ-2’,4,4’,5’,7,7’-ヘキサクロロフルオレセイン(HEX)、テキサスレッド(スルホローダミン101酸クロリド:sulforhodamine 101 acid chloride)、6-カルボキシ-2’,4,7’,7-テトラクロロフルオレセイン(TET)、テトラメチルローダミン-イソチオシアネート(TRITC)、カルボキシテトラメチルローダミン(TAMRA)、シアニン系染料、チアジカルボシアニン染料などからなる群から選択された1つ以上を含みうる。
【0049】
<免疫分析装置>
図3A及び図3Bは、本発明の免疫分析装置の実施例を説明する図面であり、図3Cは、図3A及び図3Bに示された免疫分析装置でターゲット抗原を定量分析する方法を説明する図面である。
【0050】
図3A及び図3Cを参照すれば、本発明の一実施例による免疫分析装置1000は、分析対象である検出試料溶液を収容することができる反応空間を備える基板1100、前記反応空間の内部に位置し、前記基板1100に固定された結合抗体1200、前記結合抗体1200のFab領域に可逆的に結合されたスイッチングペプチド1300及び前記スイッチングペプチド1300の蛍光標識物質1320と隣接して配されて、前記蛍光標識物質1320からの蛍光を消光させる消光物質1400を含みうる。
【0051】
前記基板1100は、前記検出試料溶液を収容することができる反応空間を備えれば、その構造や形状が、特に制限されない。但し、前記基板1100は、光を透過させることができる透明な材質、例えば、透明高分子材料、ガラス材料、金属酸化物材料などで形成されうる。
【0052】
前記結合抗体1200は、図2を参照して説明した結合抗体10と実質的に同一なので、これについての重複された詳細な説明は省略する。前記結合抗体1200は、前記基板1100の表面に直接結合するか、別途のリンカー化合物を通じて前記基板1100の表面に結合することにより、前記基板1100に固定される。
【0053】
前記スイッチングペプチド1300は、ペプチド化合物1310及び蛍光標識物質1320を含みうる。前記スイッチングペプチド1300は、図1を参照して説明したスイッチングペプチド100と実質的に同一なので、これについての重複された詳細な説明は省略する。
【0054】
前記消光材料1400は、前記スイッチングペプチド1300が前記結合抗体1200に結合した場合に前記蛍光標識物質1320と隣接して配されて、前記蛍光標識物質1320から蛍光エネルギーを吸収して、前記蛍光標識物質1320からの蛍光を消光させることができる。
【0055】
前記結合抗体1200のない陰性検体でも、前記蛍光標識物質1320は、前記消光材料1400によって消光されるので、検体処理前後にも検出抗体で蛍光信号が発生しない。 したがって、前記方式としては固定化抗体を前記スイッチングペプチド1300に結合しないとしても、溶液で均一な免疫分析を行うことができる。
【0056】
また、前記蛍光標識物質1320からの蛍光を消光させることができれば、前記消光材料1400の物質は、特に制限されない。一実施例として、前記消光材料1400は、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼン-4-カルボン酸(DABCYL)、4-(ジメチルアミノ)アゾベンゼンスルホン酸(DABSYL)、ブラックホールクエンチャー(BHQ)、ブラックベリークエンチャー(BBQ)、ECLIPSEクエンチャー、タイドクエンチャーなどからなるグループから選択された1つ以上を含みうる。
【0057】
これと異なる実施例として、前記消光材料1400は、炭素ナノ物質または二酸化マンガンナノ物質を含みうる。前記炭素ナノ物質は、グラフェン及びその誘導体、グラフェンオキシド(NGO)及びその誘導体、還元された酸化グラフェン及びその誘導体、グラフェンオキシドナノコロイド(GON)などから選択された1つ以上を含みうる。前記ナノ物質は、シート状または粒子状である。前記シートは、単一層または複数の層で構成され、前記シートの形態は、平面または曲面を含みうるなど多様な形態で存在することができる。そして、前記粒子の形態は、球状、楕円状、棒状、多角状など多様な形態を含みうる。
【0058】
前記消光材料1400は、前記蛍光標識物質1320との相互作用によって前記蛍光標識物質1320から発生する光または波長の蛍光エネルギーを吸収して、前記蛍光標識物質1320からの蛍光を消光させることができる。
【0059】
一実施例において、前記消光材料1400は、前記結合抗体1200に結合されることにより、前記蛍光標識物質1320と隣接して配置される。例えば、前記消光材料1400は、前記結合抗体1200のFc領域に結合されうる。これと異なる実施例において、前記消光材料1400は、前記基板1100に結合されることにより、前記蛍光標識物質1320と隣接して配置される。
【0060】
本発明の免疫分析装置によれば、図3Cに示したように、前記結合抗体1200と特異的に反応するターゲット抗原を含む検出試料溶液が前記基板1100の反応空間に注入されれば、前記ターゲット抗原は、前記結合抗体1200と反応し、これにより、前記結合抗体1200と反応する前記ターゲット抗原の量に依存して、前記スイッチングペプチド1300が前記結合抗体1200から定量的に遊離される。そして、前記結合抗体1200から遊離されたスイッチングペプチド1300の蛍光標識物質13200は、前記消光材料1400から遠ざかるようになって、これにより生成された蛍光は消光されず、外部に放出され、本発明では、このような蛍光を通じて前記結合抗体1200から遊離されたスイッチングペプチド1300を定量的に分析することにより、前記検出試料溶液に含まれたターゲット抗原に対する定量分析を行うことができる。この場合、未反応ターゲット抗原を除去するなどの洗浄過程が必要ではないので、検出試料溶液を結合抗体と反応させた後、ワンステップでターゲット抗原に対する定量分析を行うことができる。
【0061】
一方、図面に図示されていないが、前記蛍光標識物質1320から蛍光を発生させ、このような蛍光を通じて前記結合抗体1200から遊離されたスイッチングペプチド1300を定量的に分析するために、前記免疫分析装置1000は、前記光源及びイメージ分析装置をさらに含みうる。
【0062】
前記光源は、前記基板1100の反応空間に収容された分析試料溶液に光を照射することができ、前記スイッチングペプチド1300の蛍光標識物質1320は、前記光源から照射された光エネルギーを吸収して蛍光を発生させることができる。一実施例として、前記光源は、可視光線または紫外線領域の短波長光を生成して、前記基板1100の反応空間に収容された分析試料溶液に照射することができる。
【0063】
前記イメージ分析装置は、前記結合抗体1200から遊離されたスイッチングペプチド1300から発生した蛍光を受容して、これに対するイメージを生成することができ、前記イメージを分析して、前記結合抗体1200から遊離されたスイッチングペプチド1300の量を分析することができる。例えば、前記イメージ分析装置は、前記蛍光信号をイメージ化する画像生成部、前記画像生成部から生成されたイメージを処理する画像処理部及び前記イメージ処理部によって処理されたイメージを分析する画像分析部を含みうる。
【0064】
一方、図3B及び図3Cを参照すれば、本発明の他の実施例による免疫分析装置2000は、基板2100、結合抗体2200、スイッチングペプチド2300、消光材料2400及び支持体2500を含む。
【0065】
本実施例の免疫分析装置2000は、前記結合抗体2200が基板2100ではない前記支持体2500に固定されたことを除いては、図3Aを参照して説明した免疫分析装置1000と実質的に同一または類似しているので、以下、重複された詳細な説明は省略する。
【0066】
前記支持体2500は、無機または有機材料で形成された粒子状を有することができ、前記結合抗体2200は、前記支持体2500に結合されうる。そして、前記消光材料2400は、前記結合抗体2200または前記支持体2500に結合されて、前記結合抗体2200に結合されたスイッチングペプチド2300の蛍光標識物質2320に隣接して配置される。
【0067】
一方、図3Bには、前記支持体2500と前記消光材料2400とが互いに異なる独立した構成要素で示されているが、本発明の一実施例では、前記支持体2500として消光材料が適用されて、前記支持体2500と前記消光材料2400とが同じ構成であり、この場合、前記支持体2500としては、例えば、グラフェンのような炭素材料が使われる。
【0068】
本実施例の免疫分析装置によれば、前記結合抗体2200が基板2100ではない前記支持体2500に結合されて溶液内で移動することができるので、図3Aに示された免疫分析装置の長所の以外に追加的に前記結合抗体2200と検出試料溶液内のターゲット抗原との間の反応率を向上させうる。
【0069】
<免疫分析方法>
以下、図3Aに示された免疫分析装置または図3Bに示された免疫分析装置を利用した本発明の実施例による免疫分析方法について詳述する。
【0070】
図3A及び図3Cを参照すれば、本発明の一実施例による免疫分析方法は、基板にスイッチングペプチドが結合された結合抗体を固定させるか、前記基板に結合抗体を固定した後、前記スイッチングペプチドを結合抗体に結合させ、消光材料を前記結合抗体または基板に結合させる第1段階;前記結合抗体を検出試料溶液で処理する第2段階;前記処理後の検出試料溶液に光を照射した後、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光を通じて前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析する第3段階;を含む。
【0071】
前記第1段階において、前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合することができるアミノ酸配列を有するペプチド化合物及びこれに結合され、前記検出試料溶液内で酸化還元が可能な化学的標識物質を含みうる。
【0072】
一実施例として、前記スイッチングペプチド及び結合抗体としては、図1及び図2を参照して説明したスイッチングペプチド100及び結合抗体10が使われるので、これらについての重複された詳細な説明は省略する。
【0073】
一実施例として、前記結合抗体と前記スイッチングペプチドとの場合、まず、前記基板に結合抗体を固定した後、固定された前記結合抗体に前記スイッチングペプチドが結合されても、これとは異なって、前記スイッチングペプチドを前記結合抗体に結合させた後、前記結合抗体を前記基板に固定させることもできる。
【0074】
前記結合抗体を前記基板に固定させる方法は、特に制限されない。例えば、前記結合抗体は、前記基板に直接結合されても、リンカー化合物を通じて前記基板に結合されて固定されてもよい。
【0075】
前記スイッチングペプチドは、前述したように、前記結合抗体のFab領域に選択的に、そして、可逆的に結合されうる。
【0076】
前記消光材料は、前記結合抗体のFc領域または前記基板のうち、反応空間内の表面に結合させることができる。この際、前記消光材料は、前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質と隣接して位置するように前記結合抗体または基板に結合されうる。
【0077】
前記第2段階において、前記基板の反応空間に検出試料溶液を注入することにより、前記結合抗体と前記検出試料溶液内のターゲット抗原を反応させることができる。
【0078】
一実施例として、前記検出試料溶液内に前記結合抗体と特異的に反応するターゲット抗原が存在する場合、前記検出試料溶液を前記反応空間に注入すれば、前記ターゲット抗原が前記結合抗体に結合され、この場合、前記スイッチングペプチドは、前記結合抗体と反応した前記ターゲット抗原の量に依存して定量的に前記結合抗体から遊離される。
【0079】
前記第3段階において、前記基板の反応空間に前記検出試料溶液を注入し、一定時間経過後、前記検出試料溶液に光を照射することができる。この場合、前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生する蛍光は、これと隣接して配された消光材料によって消光されて外部に放出されないのに対して、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生する蛍光は、前記消光材料と空間的に離隔して消光されず、外部に放出される。
【0080】
そして、イメージ分析装置を用いて前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生する蛍光のイメージを生成した後、前記イメージを分析することにより、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドに対する定量分析を行い、これに対する結果から前記検出試料溶液に含まれたターゲット抗原の量を定量的に算出することができる。前記のようなターゲット抗原の量に対する定量分析は、前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドが前記結合抗体と反応するターゲット抗原の量に依存して定量的に前記結合抗体から遊離されるために可能である。
【0081】
一方、図3B及び図3Cを参照すれば、本発明の他の実施例による定量分析方法は、支持体にスイッチングペプチドが結合された結合抗体を固定させるか、前記支持体に結合抗体を固定した後、前記スイッチングペプチドを結合抗体に結合させ、前記結合抗体または前記支持体に消光材料を結合させる第1段階;前記結合抗体が結合された支持体及び検出試料溶液を基板の反応空間に注入する第2段階;前記処理後の検出試料溶液に光を照射した後、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質から発生した蛍光を通じて前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析する第3段階;を含む。
【0082】
前記第1段階において、前記結合抗体は、基板ではない前記支持体に結合され、前記第2段階で、前記支持体に結合された前記結合抗体は、検出試料溶液の内部で流動することができる。一方、それを除いた残りの段階は、図3Aに示された免疫分析装置を利用した免疫分析方法と実質的に同一なので、これについての重複された詳細な説明は省略する。
【0083】
本発明のスイッチングペプチド、それを用いる免疫分析装置及び免疫分析方法によれば、結合抗体の結合されたスイッチングペプチドは、前記結合抗体と反応したターゲット抗原の量に依存して、前記結合抗体から定量的に遊離され、前記結合抗体に結合されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質は、消光材料によって蛍光を外部に発生させるない一方、前記結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質は、蛍光を外部に発生させるので、従来の免疫分析方法で一般的に要求される未反応抗原を除去するなどの洗浄過程なしにワンステップで検出試料内のターゲット抗原に対する定量分析を行うことができる。
【0084】
以下、本発明の具体的な実施例について詳述する。但し、下記の実施例は、本発明の一部の実施形態に過ぎないものであって、本発明の範囲が、下記の実施例に限定されるものではない。
【実施例
【0085】
[実施例1]
表1に記載のような4種のペプチド(H1、H2、L1、L2)を合成した。具体的に、H1ペプチドは、重鎖のFR2領域と相同性があるアミノ酸配列を有するように合成され、H2ペプチドは、重鎖のFR3またはFR4領域と相同性があるアミノ酸配列を有するように合成され、L1ペプチドは、軽鎖のFR2領域と相同性があるアミノ酸配列を有するように合成され、L2ペプチドは、軽鎖のFR3またはFR4領域と相同性があるアミノ酸配列を有するように合成された。
【0086】
ギブス自由エネルギーの変化(△G)は、H1ペプチド化合物に対しては-17.91kcal/mol、H2ペプチドに対しては-17.19kcal/mol、L1ペプチドに対しては15.37kcal/mol、L2ペプチドに対しては-13.05kcal/molであった。
【0087】
[実験例1]
図4Aは、L1及びH2ペプチドの間の特異的相互作用、そして、L2及びH1ペプチドの間の特異的相互作用を確認する方法及び測定結果を示す図面であり、図4Bは、PyMOLソフトウェアを使用して分析されたL1及びH2ペプチドの間の特異的相互作用、そして、L2及びH1ペプチドの間の特異的相互作用を説明する図面である。この際、L1及びL2ペプチドの末端には、第1蛍光標識物質であるFAM(λex=488nm、λem=532nm)が修飾され、H1及びH2ペプチドの末端には、第2蛍光標識物質であるTAMRA(λex=532nm、λem=570nm)が修飾された。一方、第1ペプチド(L1またはL2)は、パリレン-Hのホルミル基とペプチドとのうち、リジン残基(lysine residue)の1次アミン基の間の共有結合を通じてパリレン-Hコーティングされたマイクロプレートに固定され、第2ペプチド(H2またはH1)は、固定された第1ペプチド(L1またはL2)と共に培養されて、これらの間の特異的相互作用が許容された。一方、固定された第1ペプチド(L1またはL2)とこれと共に培養された第2ペプチド(H2またはH1)との間の特異的相互作用は、第2ペプチドに修飾されたTAMRA(λem=570nm)からの緑色蛍光発光を有したFRET効果がマイクロプレートの底面から観察されるか否かによって判別されるというが分かり、第1及び第2ペプチドの間の特異的相互作用が発生する場合、FRET効果がマイクロプレートの底面から観察される。
【0088】
図4Aを参照すれば、L1及びH2ペプチドの間の相互作用は、L1ペプチドの濃度を変化させることによって観察され、FRET強度は、L1ペプチドの濃度の増加と共に増加した。このような結果は、L1とH2ペプチドとの間の特異的相互作用が発生したことを示す。
【0089】
そして、H1とL2ペプチドとの間の相互作用は、H1ペプチドの濃度を変化させることによって観察され、FRET強度は、H1ペプチドの濃度が増加するにつれて増加すると観察された。このような結果も、H1とL2ペプチドとの間の特異的相互作用が発生したことを示す。
【0090】
以上の結果から、L1ペプチドは、重鎖のFR3またはFR4領域(H2ペプチドに対応)に選択的に、そして、可逆的に結合し、L2ペプチドは、重鎖のFR2領域(H1ペプチドに対応)に選択的に、そして、可逆的に結合し、H1ペプチドは、軽鎖のFR3またはFR4領域(L2ペプチドに対応)に選択的に、そして、可逆的に結合し、H2ペプチドは、軽鎖のFR2領域(L1ペプチドに対応)に選択的に、そして、可逆的に結合することが分かる。
【0091】
図4Bを参照すれば、PyMOLを通じてH1-L2ペプチドの間の水素結合及びH2-L1の間の水素結合を分析した結果、H1-L2ペプチドの間の場合、(1)グルタミン(H1ペプチドの残留数9)とチロシン(L2ペプチドの残留数3)との間で3.34Åの長さを有する水素結合及び(2)L2ペプチドからのペプチド結合のカルボニル基とH1ペプチドからのペプチド結合の電子不足水素との間で3.39Åの長さを有する水素結合が見つけら、H2-L1ペプチドの間の場合、(1)アミノ酸の間(相互作用I)、(2)ペプチド結合の間(相互作用II、III)、(3)アミノ酸とペプチド結合との間(相互作用IV)で2.49~3.93Åの長さを有する4個の水素結合が見つけられた。水素結合の数は、H1-L2ペプチドの間の相互作用がH2-L1ペプチドの間の相互作用よりもさらに強いということを示すことに対して、ギブス自由エネルギー変化の類似した値は、IgGに対するペプチド化合物の類似した結合親和度を暗示する。
【0092】
図5Aないし図5Cは、本発明のスイッチングペプチドと結合した抗体コンプレックスの消光現象を分析したグラフである。
【0093】
図5Aは、IgG内のスイッチングペプチドの結合サイトを探すためのコンピュータシミュレーション映像である。図5Aを参照すれば、L1及びL2ペプチドは、IgG(V)重鎖のH2及びH1領域にそれぞれ結合された一方、H1及びH2ペプチドは、それぞれIgG(V)の軽鎖のL2及びL1領域に結合することができる。CABS-dockウェブサーバを使用したコンピュータドッキングシミュレーションを使用して4個のスイッチングペプチドをIgGの抗原結合部位(マウスFab断片、PDB ID=1DQJ)にドッキングした。スイッチングペプチドの結合を分析するために、IgGの結合ポケット、モデル抗体のCDR領域のアミノ酸配列は、参照から持ってきた:VでのCDR1(アミノ酸番号:31-35)、CDR2(アミノ酸番号:50-65)、及びCDR3(アミノ酸番号:95-102)とVでのCDR1(アミノ酸番号:24-34)、CDR2(アミノ酸番号:50-56)及びCDR3(アミノ酸番号:89-97)。
【0094】
コンピュータシミュレーションを通じてスイッチングペプチドと抗体領域との間の相互作用に対するアミノ酸を分析し、これは、図1A及び図1Bを参照して説明したように同一である。また、スイッチングペプチドと抗体領域との間の相互作用に対するアミノ酸からの平均距離は、2.5~3.5Åの範囲と推定された。各スイッチングペプチドとIgGのFv-領域との間の相互作用媒介変数は、表2のように下記に記載した。
【0095】
【表2】
【0096】
消光材料(TQ2、TQ3)で標識された2種の結合抗体に2種の蛍光標識物質(FAM、TAMRA)で標識されたスイッチングペプチドを結合した後、蛍光消光効率を測定した。一般的に、消光材料の標識は、抗体のFc領域で発生すると知られており、IgGの抗原結合断片のサイズは、Vで直径2.5nm以内であると知られている。本発明のIgGの抗原結合ポケット内の4種のスイッチングペプチドの位置は、消光標識物質の位置と比較して大きな差がないと確認された。
【0097】
図5Bは、消光材料で標識する前後のスイッチングペプチドが結合された抗体に対する蛍光信号の強度を示すグラフである。図5Bに示されたように、スイッチングペプチドの蛍光標識物質(FAM、TAMRA)と結合抗体の消光材料(TQ2、TQ3)との組み合わせによって蛍光信号の減少レベルが変わることを確認することができる。下記表3に示されたように、蛍光消光効率(E)は、FAMと結合されたH2ペプチドでTQ2に対して0.33、FAMと結合されたL2ペプチドでTQ2に対して0.43、TAMRAと結合したL1ペプチドでTQ3に対して0.16、TAMRAと結合したH1ペプチドでTQ3に対して0.28である。したがって、FAMと結合されたL2ペプチドがFAMと結合されたH2ペプチドよりもTQ2による蛍光消光効率が高いということが分かり、TAMRAと結合された場合、H1ペプチドがL1ペプチドよりもTQ3に対する蛍光消光効率が高いということを確認することができる。
【0098】
また、表3を再び説明すれば、蛍光標識物質と消光材料との距離は、FAMと結合されたH2ペプチドでTQ2の場合は55.8Å、FAMと結合されたL2ペプチドでTQ2の場合は52.3Å、TAMRAと結合されたL1ペプチドでTQ3までは54.5Å、TAMRAと結合されたH1ペプチドでTQ3までの距離は、47.6Åに表われた。
【0099】
【表3】
【0100】
図6は、マイクロプレート上にそれぞれ分離固定されたヒト、ウサギ、ヤギ及びラットからのIgG、そして、これらと異なるタンパク質(ヒトB型肝炎抗原、C反応性タンパク質、プロテインA、BSA)を蛍光ラベルされた実施例1から合成された4種のペプチド化合物(H1、H2、L1、L2)と反応させた後、マイクロプレートの底面から測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0101】
図6を参照すれば、ヒト、ウサギ、ヤギ及びラットからのIgGのみが著しく高い蛍光強度を示し、他の抗原性タンパク質は、ベースラインレベルの蛍光を示した。このような結果は、実施例1のペプチドが抗体に選択的に結合されることを示す。
【0102】
図7Aは、実施例1の4種のペプチドがそれぞれ結合された抗体をタンパク質分解酵素であるパパインで処理前及び後の状態を示す模式図であり、図7Bは、前記パパイン処理後、マイクロプレートの底面(B)及び溶液内(S)から測定された蛍光強度を示すグラフである。本実験の場合、抗体(ウサギ抗HRP抗体)をマイクロプレート上に固定した後、蛍光ラベルされたスイッチングペプチドで処理して抗体とスイッチングペプチドとの間の結合を誘導し、引き続き、非結合スイッチングペプチドを除去した後、タンパク質分解酵素であるパパインを添加して、前記固定された抗体からFab領域を加水分解した。
【0103】
図7Aを参照すれば、蛍光ラベルされたスイッチングペプチドは、抗体のFab領域に結合されるために、マイクロプレートの底面(B)での蛍光は、パパイン反応以後、減少し、スイッチングペプチドが結合されたFab領域が加水分解されて溶液内部に溶解されるので、溶液内の蛍光は増加されると予想され、このような予想は、図7Bのグラフによって事実であることが立証された。
【0104】
図7Bを参照すれば、4種のスイッチングペプチド(H1、H2、L1、L2)いずれもで、パパイン処理前に比べてパパイン処理後に、マイクロプレートの底面(B)での蛍光は減少し、溶液内(S)での蛍光は増加した。具体的に、マイクロプレートの底面での蛍光強度の場合、H1ペプチドは84.3%、H2ペプチドは58.7%、L1ペプチドは84.8%、L2ペプチドは72.5%減少したと評価された。そして、溶液内での蛍光強度の場合、H1ペプチドは2184%、H2ペプチドは2356%、L1ペプチドは1032%、L2ペプチドは2452%増加したと評価された。
【0105】
以上の結果から、実施例1の4種のスイッチングペプチドは、抗体のFab領域に結合されることが分かる。
【0106】
下記表4は、互いに異なる動物(ウサギ、ラット及びヤギ)からの抗体に対する実施例1の4種のペプチド化合物(H1、H2、L1、L2)の結合特性を評価した結果である。このような結果は、マイクロプレートに固定された抗体に蛍光ラベルされたスイッチングペプチドを結合させた後、未反応スイッチングペプチドを除去し、引き続き、ターゲット抗原(ウサギIgGに対するCRP:CRP for rabbit IgG、マウスIgGに対するhCG:hCG for mouse IgG、ウサギIgGに対するHRP:HRP for rabbit IgG、ヤギIgGに対するHBsAg:HBsAg for goat IgG)をそれぞれ反応させた後に測定された蛍光強度値である。
【0107】
【表4】
【0108】
表4を参照すれば、それぞれの固定された抗体(IgG)は、対応する抗原の処理後、プレートの底面での蛍光強度は減少し、溶液内での蛍光強度は増加すると測定された。具体的に、ウサギからの抗HRP抗体の場合、H1、L1、H2及びL2ペプチドに対してプレートの底面での蛍光強度は、12.3%、12.7%、14.8%及び25.5%ほどそれぞれ減少し、溶液内での蛍光強度は、746%、357%、698%及び597%ほどそれぞれ増加した。ヤギからの抗HBsAG抗体の場合、H1、L1、H2及びL2ペプチドに対してプレートの底面での蛍光強度は、41.1%、48.7%、63.9%、及び35.2%ほどそれぞれ減少し、溶液内での蛍光強度は、410%、638%、412%、及び574%ほどそれぞれ増加した。このような結果は、実施例1から合成された4種のペプチド化合物は、ソース動物の種と無関係に固定された抗体(IgG)に結合できるだけではなく、実施例1の4種のペプチド化合物のそれぞれと抗体の可逆的な結合によって抗原が抗体の結合ポケットに結合された時、抗体から定量的に遊離されることを示す。
【0109】
図8Aは、蛍光ラベルされた実施例1のペプチド化合物を利用した免疫分析方法を説明する模式図であり、図8B及び図8Cは、図8Aに示された免疫分析方法で測定された抗原の濃度による溶液内及びマイクロプレートの底面での蛍光強度を示すグラフである。本実験で、結合抗体としてはマイクロプレートに固定されたウサギからの抗HRP抗体が使われて、抗原としてはHRPが使われた。
【0110】
図8Aないし図8Cを参照すれば、抗原HRPの濃度を0.3から100μMまで変化させながら免疫分析を行った結果、4種のスイッチングペプチド(H1、H2、L1、L2)に対して、抗原(HRP)の濃度と依存して溶液内での蛍光強度が増加することが観察された。
【0111】
H1、H2、L1、及びL2ペプチドの平衡遊離定数は、1.65、3.11、3.29、1.48μMであると評価されたが、各スイッチングペプチドに対する遊離定数の差は、各スイッチングペプチドが各抗原に対して他の検出領域を有することを意味する。HRP抗原の場合、H1ペプチドがHRP濃度領域で最も線形的に反応した。このような結果は、スイッチングペプチドが抗原の結合量によって固定された抗体から遊離され、スイッチングペプチドを使用したワンステップイムノアッセイで溶液内の蛍光強度に基づいて抗原の定量分析が可能であることを示す。
【0112】
一方、図8Cに示したように、4種のスイッチングペプチドいずれもでマイクロプレートの底面での蛍光強度は、抗原の濃度に依存して減少すると表われた。このような結果は、スイッチングペプチドが抗原の量によって抗体から定量的に遊離され、溶液内だけではなく、マイクロプレートの底面での蛍光強度の変化を通じて抗原の定量分析が可能であることを示す。
【0113】
[実施例2]
L1、L2、H1、H2ペプチド化合物のそれぞれの末端にFAM(Fluorescein amidite)蛍光標識物質を結合させて、下記表5に記載のスイッチングペプチドを合成した。
【0114】
【表5】
【0115】
[実験例2]
図9は、実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体にHBsAg、Inf A、Inf B(Florida)、Inf B(Tokio)及びPBS試料溶液をそれぞれ反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0116】
図9を参照すれば、HBsAg抗原に対してのみ高い強度の蛍光が測定され、他の抗原に対しては相対的に低い蛍光強度が測定された。
【0117】
このような結果は、スイッチングペプチドは、結合抗体に結合されたターゲット抗原の量に依存して、前記結合抗体から定量的に遊離され、結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質が主に蛍光を外部に発光したことを示す。
【0118】
図10は、実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体に多様な濃度のHBsAgをそれぞれ含む検出試料溶液を反応させた後に測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0119】
図10を参照すれば、HBsAgの濃度が約50ng/mLから500ng/mLである領域では、蛍光強度がHBsAgの濃度に比例して線形的に増加すると表われた。このような結果は、実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料を適用する場合、ターゲット抗原を定量的に分析することができるということを示す。
【0120】
図11は、Protein Aビーズに実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体を結合させ、それを多様な濃度のHBsAg抗原を含む検出試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0121】
図11を参照すれば、検出試料溶液のHBsAg抗原濃度が増加するにつれて測定された蛍光強度が増加すると表われた。このような結果は、実施例2のH2スイッチングペプチド及びTQ2消光材料をビーズに結合させ、それをターゲット抗原を含む検出試料溶液と反応させた場合、ターゲット抗原を定量的に分析することができるということを示す。
【0122】
図12は、実施例2のL1、H1、L2及びH2スイッチングペプチドうち1つ及びTQ2消光材料が結合された抗HBsAG抗体にHRP、CRP、HBsAg及びhCG試料溶液をそれぞれ反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0123】
図12を参照すれば、L1、H1、L2及びH2スイッチングペプチドいずれもにおいて、HBsAg抗原に対してのみ高い強度の蛍光が測定され、他の抗原に対しては相対的に低い蛍光強度が測定された。但し、H2スイッチングペプチドを適用した場合には、他のスイッチングペプチドを適用した場合に比べて抗原に対する特異性(specificity)が相対的に低いと表われた。
【0124】
このような結果は、スイッチングペプチドは、結合抗体に結合されたターゲット抗原の量に依存して、前記結合抗体から定量的に遊離され、結合抗体から遊離されたスイッチングペプチドの蛍光標識物質が主に蛍光を外部に発光したことを示す。
【0125】
図13は、TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された抗HBsAG抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それをHBsAg試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0126】
図13を参照すれば、HBsAg試料溶液に含まれたHBsAg抗原の濃度が増加するにつれて測定された蛍光強度がほとんど線形的に増加すると表われた。このような結果は、TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された結合抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それを検出試料溶液と反応させる場合、前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析することができるということを示す。
【0127】
図14は、TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された抗inf A抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それをインフルエンザA(Influenza A)試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0128】
図14を参照すれば、インフルエンザA(Influenza A)試料溶液に含まれたインフルエンザA(Influenza A)抗原の濃度が増加するにつれて測定された蛍光強度がほとんど線形的に増加すると表われた。このような結果は、TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された結合抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それを検出試料溶液と反応させる場合、前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析することができるということを示す。
【0129】
図15は、TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された抗SARS-CoV-2抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それをSARS-CoV-2試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0130】
図15を参照すれば、SARS-CoV-2試料溶液に含まれたSARS-CoV-2抗原の濃度が増加するにつれて測定された蛍光強度が増加すると表われた。このような結果は、TAMRA蛍光標識物質がラベリングされたL1スイッチングペプチドが結合された結合抗体をグラフェン消光材料に結合させ、それを検出試料溶液と反応させる場合、前記検出試料溶液内のターゲット抗原を定量的に分析することができるということを示す。
【0131】
図16Aないし図16Dは、FAMまたはTAMRA蛍光標識物質がラベリングされた4種のスイッチングペプチドが結合された抗Inf抗体をInf-A及びInf-B試料溶液と反応させた後、測定された蛍光強度を示すグラフである。
【0132】
図16Aを参照すれば、TAMRAで標識されたL1ペプチド及びH1ペプチドは、蛍光信号の相対的変化がそれぞれ176%及び130%と表われ、FAMで標識されたL2ペプチド及びH2ペプチドは、蛍光信号の相対的変化がそれぞれ225%及び352%と確認された。したがって、Inf-Aに対する結合抗体からスイッチングペプチドの解離は、TAMRAで標識されたL1ペプチド及びFAMで標識されたH2ペプチドで最も高く観察されたので、これらがワンステップイムノアッセイに最適なスイッチングペプチドと蛍光標識物質との結合である。
【0133】
ワンステップイムノアッセイのための最適のスイッチングペプチドの濃度を確認するために、1~100μM範囲のスイッチングペプチドを用いて250μg/mLの濃度で消光材料で標識された抗体を検出した(TAMRAで標識されたL1ペプチドにTQ3で標識された結合抗体、FAMで標識されたH2ペプチドにTQ2で標識された結合抗体)。図16Bに示されたように、結合抗体からの蛍光信号を測定し、スイッチングペプチドの最適濃度は、TQ2またはTQ3で標識された結合抗体に対して約30μMであることを確認することができる。
【0134】
また、Inf-Bに対する実験も進行した。図16Cを参照すれば、TAMRAで標識されたL1ペプチド及びH1ペプチドは、蛍光信号の相対的変化がそれぞれ180%及び145%と表われ、FAMで標識されたL2ペプチド及びH2ペプチドは、蛍光信号の相対的変化がそれぞれ151%及び199%と確認された。したがって、Inf-Bに対する結合抗体からスイッチングペプチドの解離は、FAMで標識されたH2ペプチドで最も高く、4種のスイッチングペプチド中では、TAMRAで標識されたL1ペプチド及びFAMで標識されたH2ペプチドが有用であると表われた。
【0135】
ワンステップイムノアッセイのための最適のスイッチングペプチドの濃度を確認するために、1~100μM範囲のスイッチングペプチドを用いて250μg/mLの濃度で消光材料で標識された抗体を検出した(TAMRAで標識されたL1ペプチドにTQ3で標識された結合抗体、FAMで標識されたH2ペプチドにTQ2で標識された結合抗体)。図16Dに示されたように、結合抗体からの蛍光信号を測定し、スイッチングペプチドの最適濃度は、TQ2またはTQ3で標識された結合抗体に対して約30μMであることを確認することができる。
【0136】
ワンステップイムノアッセイのためには、蛍光標識物質と結合されたスイッチングペプチドが結合抗体に結合した状態で抗原を検出する場合、スイッチングペプチドが結合抗体から直ちに定量的に解離されなければならない。したがって、結合抗体に対する抗原の結合親和度は、スイッチングペプチドとの結合親和度よりも高くなければならない。したがって、実験を通じて結合抗体に対する標的抗原(Inf-A及びInf-B)及び選択されたスイッチングペプチド(L1ペプチド及びH2ペプチド)の結合親和度(KD)を測定して、図17Aないし図17Cに示した。
【0137】
図17Aを参照すれば、SPRバイオセンサーを使用して抗Inf-A及び抗Inf-B結合抗体をAu基板に固定し、基板の空き表面は、BSA溶液で遮断してInf-A及びInf-Bを処理した。
【0138】
図17Bは、図17Aを参照して行われる実験で試料注入前基準線(injection及び奇数番目の矢印)と洗浄後基準線(wash及び偶数番目の矢印)との間の信号差から各試料濃度に対するSPR信号を計算して示したグラフである。図17Bを参照すれば、結合親和度(K)は、Inf-Aに対しては3.6×10-8M、L1ペプチドの場合、1.4×10-5M、及びH2ペプチドの場合、3.7×10-5Mであると推定された。
【0139】
図17Cは、Inf-Bに対する実験結果を示すグラフである。図17Cを参照すれば、結合親和度(K)は、Inf-Bに対しては2.1×10-8M、L1ペプチドの場合、1.4×10-5M、及びH2ペプチドの場合、5.6×10-5Mであると推定された。したがって、結合抗体は、スイッチングペプチドよりはInf-A及びInf-Bに遥かに強い結合度を有することを確認することができ、スイッチングペプチドは、Inf-A及びInf-Bが結合抗体に結合する時、IgG結合ポケットで解離されることが分かる。したがって、本発明のスイッチングペプチド及び免疫分析装置を用いてInf-A及びInf-Bの検出が可能であることを確認することができる。
【0140】
図18Aないし図18Cは、本発明のスイッチングペプチドと結合された結合抗体のInf-Aに対する選択的検出を確認するための実験結果である。
【0141】
図18Aを参照すれば、L1ペプチドと結合された抗Inf-A抗体とH2ペプチドと結合された抗Inf-A抗体とにInf-A、Inf-B、CRP、BSAを処理して比較した結果、Inf-A処理時に、有意味にさらに高い蛍光信号を生成することを確認することができる。したがって、L1ペプチドまたはH2ペプチドと結合した抗体は、Inf-Aの選択的検出に使われる。
【0142】
図18Bで示すように、PBSでL1ペプチドと結合された抗体とH2ペプチドと結合された抗体とに対してInf-Aの濃度による蛍光信号を測定した結果、H2ペプチドと結合された抗Inf-A結合抗体(TQ2で消光)の検出限界(LOD)は、0.02ng/mLであり、L1ペプチドと結合された抗Inf-A結合抗体(TQ1で消光)の検出限界は、0.15ng/mLである。したがって、2種のペプチドと結合された結合抗体は、Inf-A検出時に、類似した反応を有しうる。
【0143】
図18Cは、Inf-Aに対するスイッチングペプチドと結合された抗Inf-A結合抗体の臨界周期数(Ct)を測定した結果である。図18Cを参照すれば、実際サンプル分析は、サンプルマトリックスに熱処理されたInf-Aが含まれたZeptometrizのNATtrolTM Influenza A stockを使用して行われ、実際サンプルは、対照群サンプルマトリックス(NATtrolTM Influenza stock)で連続希釈して行われた。蛍光信号は、全体濃度範囲にわたって定量的に増加すると観察され、H2ペプチドと結合されたFAMで標識された抗Inf-A結合抗体に対する臨界周期数は、35.3と推定され、L1ペプチドと結合され、TAMRAで標識された抗Inf-A結合抗体は、35.8と推定された。このような結果は、2種の結合抗体がInf-A検出に対して類似した反応を有しうるということを示す。
【0144】
また、陰性対照群としてCoV菌株229Eを準備し、同一の2種の結合抗体を用いて分析を行い、この結果、基準線で保持されることを確認することができる。したがって、前記2種の結合抗体を基盤とする免疫分析は、実際サンプルでInf-A検出に用いられる。
【0145】
Inf-Bに対しても、図18Aないし図18Cのような方法で実験を行った結果を図19Aないし図19Cに示した。
【0146】
図19Aを参照すれば、L1ペプチドと結合された抗Inf-B抗体とH2ペプチドと結合された抗Inf-B抗体とにInf-A、Inf-B、CRP、BSAを処理して比較した結果、Inf-B処理時に、有意味にさらに高い蛍光信号を生成することを確認することができる。したがって、L1ペプチドまたはH2ペプチドと結合した抗体は、Inf-Bの選択的検出に使われる。
【0147】
図19Bで示すように、PBSでL1ペプチドと結合された抗体とH2ペプチドと結合された抗体とに対してInf-Bの濃度による蛍光信号を測定した結果、H2ペプチドと結合された抗Inf-B結合抗体(FAMで標識)の検出限界(LOD)は、0.04ng/mLであり、L1ペプチドと結合された抗Inf-B結合抗体(TAMRAで標識)の検出限界は、0.26ng/mLである。したがって、2種のペプチドと結合された結合抗体は、Inf-A検出時に、類似した反応を有しうる。
【0148】
図19Cは、Inf-Bに対するスイッチングペプチドと結合された抗Inf-B結合抗体の臨界周期数(Ct)を測定した結果である。図19Cで示すように、蛍光信号は、全体濃度範囲にわたって定量的に増加すると観察され、H2ペプチドと結合されたFAMで標識された抗Inf-B結合抗体に対する臨界周期数は、34.1(n=3)と推定され、L1ペプチドと結合され、TAMRAで標識された抗Inf-B結合抗体は、34.3(n=3)と推定された。このような結果は、2種の結合抗体がInf-B検出に対して類似した反応を有しうるということを示す。また、陰性対照群であるCoV菌株229Eに対する実験では、基準線が保持されることを確認することができるので、前記2種の結合抗体を基盤とする免疫分析は、実際サンプルでInf-B検出に用いられる。
【0149】
図20Aないし図20Dは、本発明のワンステップイムノアッセイ免疫分析装置と市販中であるテストキットとでInf-A及びInf-Bを検出した結果を示したものである。
【0150】
図20Aを参照すれば、SDバイオセンサー社のRapid kitを利用したLateral flow assayは、1~10ng/mLの濃度範囲で行われ、見掛け検出限界は、テストラインで10nm/mL未満であると推定された。以後、図20Bで示すように、Inf-Aの標準試料に対する蛍光信号結果(側方流動分析:Lateral flow assay)を本発明の免疫分析装置を用いて実験を行った結果(ホモジニアス分析:Homogeneous assay)と比較した。側方流動分析(Lateral flow assay)の検出限界は、546ng/mLと推定され、本発明の免疫分析装置の場合、0.02ng/mLと推定された。したがって、本発明のスイッチングペプチドを利用した免疫分析装置は、既存の速いテストよりも遥かに広い感知範囲でInf-Aを感度よく感知することができる。
【0151】
また、図20Cを参照すれば、Inf-Bに対するRapid kitを利用した側方流動分析(Lateral flow assay)で見掛け検出限界は、テストラインで約102ng/mLと推定され、図20Dで示すように、側方流動分析(Lateral flow assay)の検出限界は、348ng/mLと推定され、本発明の免疫分析装置の場合、0.04ng/mLと推定された。したがって、本発明のスイッチングペプチドを利用した免疫分析装置は、既存の速いテストよりも遥かに広い感知範囲でInf-Bを感度よく感知することができ、本発明のワンステップイムノアッセイ免疫分析方法は、既存の迅速な検査と比較して全体検出範囲でInf-A及びInf-Bに遥かに高感度な検出に用いられる。
【0152】
以上、本発明の望ましい実施例を参照して説明したが、当業者は、下記の特許請求の範囲に記載の本発明の思想及び領域から外れない範囲内で本発明を多様に修正及び変更させることができるということを理解できるであろう。
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C
図16D
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図20D
【手続補正書】
【提出日】2023-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】配列表
【補正方法】追加
【補正の内容】
【配列表】
2024501571000001.app
【国際調査報告】