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特表2024-501581ガレクチン-3に対する抗体及びその使用方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】ガレクチン-3に対する抗体及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20240104BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20240104BHJP
   C07K 16/18 20060101ALI20240104BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 15/12 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 15/62 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20240104BHJP
   A61K 35/17 20150101ALI20240104BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20240104BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20240104BHJP
   A61P 35/04 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
C12N15/63 Z
C07K16/18
C07K16/46
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/12
C12N15/62 Z
A61K39/395 T
A61K47/68
A61K35/17
A61K45/00
A61K48/00
A61K35/76
A61K35/12
A61P35/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558307
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-03
(86)【国際出願番号】 US2021062099
(87)【国際公開番号】W WO2022125482
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,714
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】500213834
【氏名又は名称】メモリアル スローン-ケタリング キャンサー センター
(71)【出願人】
【識別番号】523211051
【氏名又は名称】ティーアールアイ-インスティテューショナル セラピューティクス ディスカバリー インスティテュート インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(74)【代理人】
【識別番号】100154988
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 真知
(72)【発明者】
【氏名】スプリッグス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】タピ ダルマラオ
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ イヴォ シー
(72)【発明者】
【氏名】ホワイト トーマス イー
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C085
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA57X
4B065AA72X
4B065AA90X
4B065AB01
4B065BA02
4B065CA24
4B065CA25
4B065CA44
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA13
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB11
4C085BB36
4C085DD22
4C085EE01
4C087AA01
4C087AA02
4C087AA03
4C087BB37
4C087BB65
4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB26
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA50
4H045BA72
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
本明細書では、ガレクチン-3(LGALS3)炭水化物結合ドメイン(CBD)に特異的に結合する抗体を伴う組成物、方法、及び使用が提供される。また、本明細書では、障害、例えば、がんを管理するか、治療するか、又は予防するための使用及び方法も提供される。
【選択図】図1A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガレクチン-3(LGALS3)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、
前記抗体又はその抗原結合断片が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、
(a)前記VHが、配列番号7を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号8を含むVHCDR2配列と、配列番号9を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又は前記VLが、配列番号2を含むVLCDR1配列と、配列番号3を含むVLCDR2配列と、配列番号4を含むVLCDR3配列と、を含むか、
(b)前記VHが、配列番号19を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号20を含むVHCDR2配列と、配列番号21を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又は前記VLが、配列番号14を含むVLCDR1配列と、配列番号15を含むVLCDR2配列と、配列番号16を含むVLCDR3配列と、を含むか、
(c)前記VHが、配列番号29を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号30を含むVHCDR2配列と、配列番号31を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又は前記VLが、配列番号24を含むVLCDR1配列と、配列番号25を含むVLCDR2配列と、配列番号26を含むVLCDR3配列と、を含むか、
(d)前記VHが、配列番号39を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号40を含むVHCDR2配列と、配列番号41を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又は前記VLが、配列番号34を含むVLCDR1配列と、配列番号35を含むVLCDR2配列と、配列番号36を含むVLCDR3配列と、を含むか、あるいは
(e)前記VHが、配列番号49を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号50を含むVHCDR2配列と、配列番号51を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又は前記VLが、配列番号44を含むVLCDR1配列と、配列番号45を含むVLCDR2配列と、配列番号46を含むVLCDR3配列と、を含む、抗体又はその抗原結合断片。
【請求項2】
前記抗体又は抗原結合断片が、トランスジェニックマウスに免疫付与することによって生成される、請求項1に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項3】
前記VHが、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1又は2に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項4】
前記VLが、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、及び配列番号43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項5】
それぞれ、配列番号6及び配列番号1、配列番号18及び配列番号13、配列番号28及び配列番号23、配列番号38及び配列番号33、並びに配列番号48及び配列番号43からなる群から選択されるVHアミノ酸配列及びVLアミノ酸配列を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項6】
前記抗体又はその抗原結合断片が、ヒト若しくはヒト化重鎖可変ドメイン(VH)及び/又はヒト若しくはヒト化軽鎖可変ドメイン(VL)を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項7】
前記抗体又は抗原結合断片が、ヒト化若しくは完全ヒト抗体、又はその抗原結合断片である、請求項1~6のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項8】
前記抗体が、ヒト由来の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項9】
前記重鎖定常領域が、ガンマ1、ガンマ2、ガンマ3、及びガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有する、請求項8に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項10】
前記軽鎖定常領域が、カッパ及びラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有する、請求項8又は9に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項11】
前記抗体が、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含む免疫グロブリンである、請求項1~10のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項12】
前記免疫グロブリンが、IgGである、請求項11に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項13】
前記抗体又は抗原結合断片が、卵巣腫瘍細胞に対するGal-3-フィコエリスリン(PE)結合を阻害する、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項14】
前記卵巣腫瘍細胞が、OVCAR3細胞である、請求項13に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項15】
前記抗体又はその抗原結合断片が、グリコシル化された細胞表面受容体に対するLGALS3の結合を阻害する、請求項1~14のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項16】
前記抗体又は抗原結合断片が、グリコシル化された成長因子受容体に対するLGALS3の結合を阻害する、請求項1~15のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項17】
前記抗体又は抗原結合断片が、グリコシル化されたムチン-1(MUC1)、ムチン-4(MUC4)、ムチン-16(MUC16)、ジシアロガングリオシド、GD2、上皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、インスリン様成長因子受容体(IGFR)、インテグリン、又はCTLA4のうちの1つ以上に対するLGALS3の結合を阻害する、請求項1~16のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項18】
前記グリコシル化されたMUC16が、Asn1800又はAsn1806でN-グリコシル化されている、請求項17に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項19】
前記抗体又は抗原結合断片が、MUC16のグリコシル化された形態を発現する腫瘍の成長を阻害する、請求項1~18のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項20】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、請求項1~19のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項21】
薬剤にコンジュゲートされた請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片を含む、抗体コンジュゲート。
【請求項22】
前記薬剤が、撮像剤又は細胞傷害性剤である、請求項21に記載の抗体コンジュゲート。
【請求項23】
前記抗体又は抗原結合断片が、二重特異性抗体である、請求項1~22のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項24】
前記二重特異性抗体が、CD3に特異的に結合する、請求項23に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項25】
前記二重特異性抗体が、LGALS3に特異的に結合する免疫グロブリンを含み、前記免疫グロブリンの軽鎖が、CD3に特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)に対してペプチドリンカーを介してコンジュゲートされる、請求項23又は24に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項26】
薬剤にコンジュゲートされた請求項23~25のいずれか一項に記載の二重特異性抗体を含む、二重特異性抗体コンジュゲート。
【請求項27】
前記薬剤が、撮像剤又は細胞傷害性剤である、請求項26に記載の二重特異性抗体コンジュゲート。
【請求項28】
前記抗原結合断片が、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、又はscFvである、請求項1~12のいずれか一項に記載の抗体又は抗原結合断片。
【請求項29】
薬剤にコンジュゲートされた請求項28に記載のscFvを含む、scFvコンジュゲート。
【請求項30】
前記薬剤が、撮像剤又は細胞傷害性剤である、請求項29に記載のscFvコンジュゲート。
【請求項31】
請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、又は請求項28に記載のscFvを含む、キメラ抗原受容体(CAR)。
【請求項32】
請求項31に記載のCARを組換え発現する、T細胞。
【請求項33】
請求項2~27のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項28に記載のscFv、及び/又は請求項31に記載のCARをコードする核酸配列を含む、ポリヌクレオチド。
【請求項34】
前記ポリヌクレオチドが、配列番号5、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号10、配列番号22、配列番号32、配列番号42、若しくは配列番号52のうちのいずれか1つのポリヌクレオチド、又は少なくとも1つのCDR配列をコードするその一部分を含む、請求項33に記載のポリヌクレオチド。
【請求項35】
請求項33又は34に記載のポリヌクレオチドを含むベクターであって、任意選択的に、前記ポリヌクレオチドが、プロモーターに作動可能に連結されている、ベクター。
【請求項36】
請求項33若しくは34に記載のポリヌクレオチド、又は請求項35に記載のベクターを含む、単離された細胞。
【請求項37】
薬学的組成物であって、治療有効量の請求項1~20のいずれか一項に記載の抗体若しくは抗原結合断片、請求項21若しくは22に記載の抗体コンジュゲート、請求項23若しくは24に記載の二重特異性抗体、請求項25~27のいずれか一項に記載の二重特異性抗体コンジュゲート、請求項28に記載のscFv、請求項29若しくは30に記載のscFvコンジュゲート、請求項31に記載のCAR、請求項32に記載のT細胞、請求項33若しくは34に記載のポリヌクレオチド、請求項35に記載のベクター、又は請求項36に記載の細胞と、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物。
【請求項38】
がんを治療することが必要な患者においてそれを行う方法であって、前記患者に、有効量の請求項37に記載の薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項39】
前記がんが、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管、又は原発性腹膜のがんである、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記がんが、転移性がんである、請求項38又は39に記載の方法。
【請求項41】
前記薬学的組成物が、前記患者における転移を阻害する、請求項38~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記患者が、ヒト患者である、請求項38~41のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記方法が、治療有効量の追加の治療薬剤を前記患者に投与することを更に含む、請求項38~42のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2020年12月8日に出願された米国仮特許出願第63/122,714号に対する利益及び優先権を主張するものであり、その全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明の技術は、一般に、ガレクチン-3タンパク質に特異的に結合する免疫グロブリン関連組成物(例えば、抗体又はその抗原結合断片)の調製、及びその使用に関する。特に、本発明の技術は、ガレクチン-3結合抗体の調製、並びにガレクチン-3関連がん、心血管疾患、線維症、及び炎症の検出及び治療におけるそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
ガレクチンは、グリコシル化された細胞表面タンパク質上の特定の複雑な糖を認識する、小さな高度に保存された真核生物タンパク質のファミリーである。ガレクチンは、がん細胞を間質微小環境と連結して、発達、接着、シグナル伝達、浸潤、及び免疫系相互作用を調節するのに不可欠である。ガレクチンは、核、細胞質、及び細胞周囲空間に見出され得る。細胞外ガレクチンは、主にエクソソーム中で放出され、ER又はゴルジからの古典的な分泌はないように見える。ヒトは、少なくとも12種類の異なるガレクチンを有しており、これらは、様々な組織及び発達段階で可変的に発現する。最近の10年間で、ヒトガレクチン、特に、ガレクチン-3(LGALS3)が、微小環境と腫瘍細胞との間の重要な連結を表すことが明らかになった。特に、糖タンパク質及び他の表面グリカンの生物学的機能は、主に、ゴルジに接続した特定の糖鎖に依存し、固有のガレクチン選択性をもたらす。細胞外では、LGALS3は、細胞膜滞留時間、接着、遊走、浸潤、及び血管新生機能の調節に関与している。LGALS3は、他の天然リガンドに結合するが、その最も高い親和性のリガンドは、多くのO-グリカン種及びN-グリカン種を飾り付けるポリ-ラクトサミン鎖中の最も近位のラクトサミン二糖である。LGALS3は、結合及び重合によって、格子を形成し、特に、EGFR、PDGFR、インテグリン及びCTLA4を含む成長因子受容体の位置及び滞留時間を調節する(図1A~1B)。SRC、ERK、AKT、及びFAKなどの下流のシグナル伝達分子の活性化によって、転移及び浸潤に関与する重要な分子の生成が起こる。T細胞の表面で、CTLA4表面濃度は、LGALS3によって安定化され、免疫抑制を引き起こす。LGALS3格子の消失は、複数のがん細胞及び免疫細胞の挙動を阻害する。がんに加えて、過剰のLGALS3はまた、腎疾患、肝線維症、肺線維症、心不全、及び寄生虫疾患に関連している(図2Aを参照されたい)。
【発明の概要】
【0004】
本明細書では、ガレクチン-3(LGALS3)に特異的に結合し、LGALS媒介性障害、例えば、がんを管理又は治療するためのLGALS3の発現及び/又は活性を調節する抗体を伴う組成物、方法、及び使用が提供される。本開示は、ガレクチン-3(LGALS3)ポリペプチドに特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。いくつかの実施形態では、LGALS3ポリペプチドは、配列番号12を含む。
【0005】
一態様では、本開示は、抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)及び軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、(a)VHが、配列番号7、19、29、39、及び49からなる群から選択されるVH-CDR1配列と、配列番号8、20、30、40、及び50からなる群から選択されるVH-CDR2配列と、配列番号9、21、31、41、及び51からなる群から選択されるVH-CDR3配列と、を含み、かつ/又は(b)VLが、配列番号2、14、24、34、及び44からなる群から選択されるVLCDR1配列と、配列番号3、15、25、35、及び45からなる群から選択されるVLCDR2配列と、配列番号4、16、26、36、及び46からなる群から選択されるVLCDR3配列と、を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0006】
一態様では、本開示は、ガレクチン-3(LGALS3)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又はその抗原結合断片が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、(a)VHが、配列番号7を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号8を含むVHCDR2配列と、配列番号9を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号2を含むVLCDR1配列と、配列番号3を含むVLCDR2配列と、配列番号4を含むVLCDR3配列と、を含むか、(b)VHが、配列番号19を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号20を含むVHCDR2配列と、配列番号21を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号14を含むVLCDR1配列と、配列番号15を含むVLCDR2配列と、配列番号16を含むVLCDR3配列と、を含むか、(c)VHが、配列番号29を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号30を含むVHCDR2配列と、配列番号31を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号24を含むVLCDR1配列と、配列番号25を含むVLCDR2配列と、配列番号26を含むVLCDR3配列と、を含むか、(d)VHが、配列番号39を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号40を含むVHCDR2配列と、配列番号41を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号34を含むVLCDR1配列と、配列番号35を含むVLCDR2配列と、配列番号36を含むVLCDR3配列と、を含むか、あるいは(e)VHが、配列番号49を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号50を含むVHCDR2配列と、配列番号51を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号44を含むVLCDR1配列と、配列番号45を含むVLCDR2配列と、配列番号46を含むVLCDR3配列と、を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。抗体又は抗原結合断片は、ヒト若しくはヒト化重鎖可変ドメイン(VH)及び/又はヒト若しくはヒト化軽鎖可変ドメイン(VL)を含み得る。いくつかの実施形態では、VHは、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/又はVLは、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、及び配列番号43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、又はscFvである。
【0007】
追加的に、又は代替的に、特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、それぞれ、配列番号6及び配列番号1、配列番号18及び配列番号13、配列番号28及び配列番号23、配列番号38及び配列番号33、並びに配列番号48及び配列番号43からなる群から選択されるVHアミノ酸配列及びVLアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、ヒト化若しくは完全ヒト抗体、又はその抗原結合断片である。
【0008】
前述の実施形態のいずれかでは、抗体は、ヒト由来の重鎖定常領域及び軽鎖定常領域を含む。本発明の技術の抗体の特定の実施形態では、重鎖定常領域は、ガンマ1、ガンマ2、ガンマ3、及びガンマ4からなる群から選択されるアイソタイプを有し、かつ/又は軽鎖定常領域は、カッパ及びラムダからなる群から選択されるアイソタイプを有する。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、抗体は、2つの同一の重鎖及び2つの同一の軽鎖を含む免疫グロブリンである。特定の実施形態では、免疫グロブリンは、IgGである。いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、一本鎖抗体、又はその抗原結合断片を含む任意の組成物である。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、トランスジェニックマウスに免疫付与することによって生成される。
【0009】
いくつかの実施形態では、本発明の技術の抗体又は抗原結合断片は、腫瘍細胞に対するGal-3-PE結合を阻害する。特定の実施形態では、腫瘍細胞は、卵巣腫瘍細胞(例えば、OVCAR3細胞)である。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、抗体又はその抗原結合断片は、グリコシル化された細胞表面タンパク質(例えば、グリコシル化された細胞表面受容体)に対するLGALS3の結合を阻害する。特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、グリコシル化されたムチン-1(MUC1)、ムチン-4(MUC4)、ムチン-16(MUC16)、ジシアロガングリオシド、GD2、上皮成長因子受容体(EGFR)、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)、インスリン様成長因子受容体(IGFR)、cMET/肝細胞成長因子受容体(HGFR)、インテグリン、又はCTLA4のうちの1つ以上に対するLGALS3の結合を阻害する。いくつかの実施形態では、グリコシル化されたMUC16は、Asn1800又はAsn1806でN-グリコシル化されている。本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のいずれか及び全ての実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、MUC16のグリコシル化された形態を発現する腫瘍の成長を阻害する。
【0010】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片のいずれかにコンジュゲートされる薬剤を含む、抗体コンジュゲートを提供する。薬剤は、撮像剤又は細胞傷害性剤であり得る。いくつかの実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、二重特異性抗体である。特定の実施形態では、二重特異性抗体は、CD3に特異的に結合する。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、二重特異性抗体は、LGALS3に特異的に結合する免疫グロブリンを含み、免疫グロブリンの軽鎖は、CD3に特異的に結合する一本鎖可変断片(scFv)に対してペプチドリンカーを介してコンジュゲートされる。
【0011】
別の態様では、本開示は、本明細書に記載の二重特異性抗体又は抗原結合断片のいずれかにコンジュゲートされる薬剤を含む、二重特異性抗体コンジュゲートを提供する。薬剤は、撮像剤又は細胞傷害性剤であり得る。
【0012】
また、本明細書には、本明細書に記載のscFvのいずれかにコンジュゲートされる薬剤を含む、scFvコンジュゲートが開示される。薬剤は、撮像剤又は細胞傷害性剤であり得る。また、本明細書には、本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片(例えば、scFv)のいずれかを含むキメラ抗原受容体(CAR)、及び上述のCARを組換え発現するT細胞が提供される。
【0013】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の抗体又は抗原結合断片又はCARのいずれかをコードする、組換え核酸配列を提供する。いくつかの実施形態では、組換え核酸配列は、配列番号5、配列番号17、配列番号27、配列番号37、配列番号47、配列番号10、配列番号22、配列番号32、配列番号42、若しくは配列番号52のうちのいずれか1つのポリヌクレオチド、又は少なくとも1つのCDR配列をコードするその一部分を含む。
【0014】
別の態様では、本開示は、本明細書に開示される組換え核酸配列のいずれかを含む、ベクターを提供する。いくつかの実施形態では、組換え核酸配列は、プロモーターに作動可能に連結されている。更に別の態様では、本開示は、本明細書に開示される組換え核酸配列又はベクターのいずれかを含む、単離された細胞を提供する。
【0015】
一態様では、本開示は、治療有効量の本明細書に記載の抗体、抗原結合断片、抗体コンジュゲート、二重特異性抗体若しくは抗体コンジュゲート、scFv、scFvコンジュゲート、CAR、T細胞、組換え核酸配列、ベクター、又は単離された細胞のいずれかと、薬学的に許容される担体と、を含む、薬学的組成物を提供する。
【0016】
別の態様では、本開示は、がんを治療することが必要な患者においてそれを行う方法であって、上述の患者に、有効量の本明細書に開示されるいずれかの薬学的組成物を投与することを含む、方法を提供する。がんは、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管、若しくは原発性腹膜のがん、及び/又は転移性がんであり得る。いくつかの実施形態では、薬学的組成物は、患者における転移を阻害する。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、本方法は、治療有効量の追加の治療薬剤を患者に投与することを更に含む。特定の実施形態では、患者は、ヒト患者である。
【0017】
更に別の態様では、本開示は、生物学的試料におけるLGALS3タンパク質発現レベルを検出するための方法であって、生物学的試料を、本明細書に開示される抗体又は抗原結合断片のいずれかと接触させることと、生物学的試料中のLGALS3タンパク質に対する結合を検出することと、を含む方法を提供する。
【0018】
また、本明細書には、ガレクチン-3関連疾患又は状態(例えば、ガレクチン-3関連がん、心血管疾患、線維症、及び炎症)の検出及び/又は治療のためのキットであって、本発明の技術の少なくとも1つの免疫グロブリン関連組成物(例えば、本明細書に記載される本明細書に記載される抗体、抗原結合断片、抗体コンジュゲート、二重特異性抗体若しくは抗体コンジュゲート、scFv、scFvコンジュゲート、CAR、T細胞、組換え核酸配列、ベクター、又は単離された細胞のいずれか)と、使用のための説明書と、を含むキットが開示される。特定の実施形態では、免疫グロブリン関連組成物は、1つ以上の検出可能な標識に連結される。一実施形態では、1つ以上の検出可能な標識は、放射性標識、蛍光性標識、又は発色性標識を含む。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の免疫グロブリン関連組成物に特異的に結合する二次抗体を更に含む。いくつかの実施形態では、二次抗体は、放射性標識、蛍光性標識、又は発色性標識からなる群から選択される少なくとも1つの検出可能な標識に連結される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1A】シグナル伝達受容体、例えば、EGFR及びインテグリンとの接触を介してシグナル伝達分子に細胞表面がん分子、例えば、卵巣がん中のMUC16を連結するための五量体を形成する細胞外ガレクチン-3(LGALS3)の構造及び活性を示す。SRC、ERK、AKT、及びFAKなどの下流のシグナル伝達分子の活性化によって、次いで、転移及び浸潤のための重要な分子の生成が起こる。
図1B】LGALS3炭水化物結合ドメインに結合する抗体阻害剤が、LGALS3表面複合体を破壊して、細胞表面受容体を不安定化することによって、「外部から内部への」シグナル伝達の活性化をどのようにして遮断するかを示す。
図2A】ガレクチン3のインビトロ及びインビボでの実験的機能、並びに提供される抗体を用いた治療についての潜在的な遮断抗体の効果を示す。
図2B】LGALS3炭水化物結合ドメイン(CBD)の一次構造を示す。LGALS3 CBDは、5個のサブドメインに分割され、各々が単一の糖残基に結合し、従来からA B C D及びEと標識されている。この図では、高度に保存されたアミノ酸には、下線が引かれており、一方で、ドメインC、D及びEは、四角に囲まれた領域に示されている。特に、R186(*)は、LGALS3の機能にとって重要である。LGALS3 CBD配列は、マウスガレクチン-3と高度に相同であるが、GAL1、GAL7、及びGAL9とは異なる。これらのファミリーメンバーの各々は、同様の糖結合ドメインを有するが、LGALS3は、重合ドメインを有する唯一のレクチンである。
図3A-3B】OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合についてのアッセイの開発及び最適化を示す。図3Aは、示された数のOVCAR3細胞に対する、示された濃度のPE標識されたGal-3(Gal-3-PE)の結合を示す。Mirrorball(登録商標)フローサイトメーターによって検出される場合のGal-3-PEに対して結合したOVCAR3細胞の数をプロットする。図3Bは、示された数のMOLT-4細胞に対する、示された濃度のPE標識されたGal-3タンパク質(Gal-3-PE)の結合を示す。Mirrorball(登録商標)フローサイトメーターによって検出される場合のGal-3-PEに対して結合したMOLT-4細胞の数をプロットする。
図4】OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の結合を阻害する抗体を選択するための二次機能スクリーニングの例示的な結果を示す。OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を測定するための反応を、PBS(陰性対照)、又は一次結合スクリーニングにおいて選択されたハイブリドーマクローンの上清からの濃縮(抗体の粗精製)によって得られた示された抗体の存在下で設定した。Mirrorball(登録商標)レーザスキャニングフローサイトメーターによって測定される場合の結合の程度をプロットした。二次スクリーニングは、5種類の抗体が、後にOVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を遮断したことを示した。クローン14D11は、このアッセイでは、OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合を遮断しなかった。
図5A-5B】示された抗体の種交差反応性を示す。ELISAを使用して、マウスGal-3(図5A)又はヒトGal-3(図5B)に対する結合を検出した。各クローンについてのOD450値を示す。示されるように、クローン39F02、38E05、及び46H02は、マウスGal-3に結合したが、クローン20F08及び12H07は、マウスGal-3に結合しなかった。
図6A-6D】精製された抗Gal-3抗体ヒットによるOVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の遮断の用量応答を示す。OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を測定するための反応を、PBS(陰性対照)の存在下、又は示された抗体の濃度を増加させつつ、設定した。精製された抗体を、結合反応に使用した。同一の配列を有する抗体クローン20F08及び12H07(図6A)、46H02(図6B)、これも同一の配列を有するクローン38E05及び39F02(図6C)、並びに14D11.2D3(図6D)による、OVCAR3に対するGal-3-PE結合の阻害の程度に対する抗体濃度の効果を示す。これらのデータは、3つの抗体(46H02、20F08、12H07)が、Gal-3結合OVCAR3細胞の用量依存的遮断を示すことを示した。
図7A-7B】表面プラズモン共鳴(SPR)によって決定される場合のヒトGal-3に対するモノクローナル抗体(mAb)46H02(図7A)、及び20F08(図7B)の結合動態を示す。線グラフは、示された濃度のmAb添加時の時間(秒)の関数としての共鳴単位(RU、表面の分析物結合能力の変化を反映する)の変化を示す。これらのデータは、mAb46H02及び20F08が、それぞれ10nM及び44nMのKDでヒトGal-3に結合することを示した。
図8】示された抗体の軽鎖種の決定を示す。示されたmAbの軽鎖の種を、抗マウスカッパ、抗マウスラムダ、抗ヒトカッパ、及び抗ヒトラムダ抗体を使用して、ELISAによって決定した。そのデータは、46H02が、完全ヒトF(ab)2を有しており、一方で、他のヒットが、ヒトHC及びマウスLCを有することを示した。
図9A-9C】表面プラズモン共鳴(SPR)によるmAb46H02及び14D11.2D2についてのエピトープビニングアッセイの結果を示す。図9Aは、本明細書で使用されるプレミックスエピトープビニングアッセイ戦略を示す。この戦略では、試験抗体(分析物)は、表面上に固定化され、リガンドは、分析物の上を流れ、結合は、SPRによって検出される。リガンドは、抗原のみ、又は第2の抗体と複合体化された抗原のプレミックス溶液であった。試験抗体(分析物)と複合体化された抗原のプレミックス溶液を、遮断反応を示す陽性対照として使用した。示されるように、抗原のみは、抗原に対する分析物の結合を示す特徴的なSPRプロファイル(左パネル)を生成する。リガンドが、第2の抗体と複合体化された抗原のプレミックス溶液であるときに、第2の抗体が抗原上の別個のエピトープに結合する場合、抗原に対する分析物の結合を示すSPRプロファイルが得られる(中央パネル)。陽性対照のSPRプロファイルは、結合を示さず、試験抗体(分析物)と複合体化された抗原が、分析物の結合を遮断することを示している(右パネル)。図9Bは、分析物としてmAb2D3を使用し、リガンドとしてGal-3、Gal-3+2D3複合体、又はGal-3+46H02複合体を使用するプレミックスエピトープビニングアッセイを示す。図9Cは、分析物としてmAb46H02を使用し、リガンドとしてGal-3、Gal-3+2D3複合体、又はGal-3+46H02複合体を使用するプレミックスエピトープビニングアッセイを示す。これらのデータは、mAb46H02及び14D11が、互いに競合せず、したがって、別個のエピトープに結合することを示す。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示は、本出願に記載される特定の実施形態の観点で限定されるものではなく、本開示の個々の態様の単一の例示として意図される。本開示の様々な実施形態の全ては本明細書に記載されない。当業者には明らかであるように、本開示の多くの修正及び変形は、その精神及び範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書に列挙されるものに加えて、本開示の範囲内の機能的に等価な方法及び装置は、前述の説明から当業者には明白であろう。かかる修正及び変形は、添付の特許請求の範囲内に入ることを意図する。本開示は、そのような特許請求の範囲が権利を有する均等物の全範囲とともに、添付の特許請求の範囲の条件によってのみ制限されるべきである。
【0021】
本開示は、特定の用途、方法、試薬、化合物、組成物、又は生体系に限定されず、これらは、もちろん変化し得ることが理解されるべきである。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、限定することが意図されないことも理解されるべきである。
【0022】
加えて、本開示の特徴又は態様がマーカッシュ群の観点から記載される場合、当業者は、本開示が、それによってマーカッシュ群のいずれかの個々のメンバー又はメンバーのサブグループの観点からも記載されることを認識するであろう。
【0023】
当業者によって理解されるであろうように、いずれか又は全ての目的のために、特に書面による説明を提供するという観点から、本明細書に開示される全ての範囲はまた、いずれか及び全ての可能な部分範囲並びにそれらの部分範囲の組み合わせを包含する。いずれかの列挙された範囲は、同じ範囲が少なくとも等しい半分、3分の1、4分の1、5分の1、10分の1などに分解されることを十分に説明し、それを可能にするものとして容易に認識することができる。非限定的な例として、本明細書で考察される各範囲は、下位3分の1、中位3分の1、及び上位3分の1などに容易に分解することができる。また当業者によって理解されるように、「最大」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」などの全ての言語は、列挙された数を含み、上記で考察されるように部分範囲にその後分解することができる範囲を指す。最後に、当業者によって理解されるであろうように、範囲は、各個々のメンバーを含む。よって、例えば、1~3個の細胞を有する群は、1、2、又は3個の細胞を有する群を指す。同様に、1~5個の細胞を有する群は、1、2、3、4、又は5個の細胞を有する群を指し、同じように続く。
【0024】
定義
他の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が属する技術分野の当業者によって一般的に理解される意味を有する。以下の参考文献は、本発明の技術で使用される用語の多くの一般的な定義を当業者に提供する。Singleton et al.,Dictionary of Microbiology and Molecular Biology(2nd ed.1994)、The Cambridge Dictionary of Science and Technology(Walker ed.,1988)、The Glossary of Genetics,5th Ed.,R.Rieger et al.(編集),Springer Verlag(1991)、及びHale&Marham,The Harper Collins Dictionary of Biology(1991)。本明細書で使用される場合、以下の用語は、特に明記しない限り、以下にそれらに帰属する意味を有する。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、本開示を限定することは意図されていない。
【0025】
本明細書で使用される場合、単数形の「a」、「an」及び「the」は、文脈により明らかにそうではないと指示されない限り、複数形も同様に含むことが意図される。
【0026】
本明細書で使用される場合、数値又は数値範囲を修飾するために使用される場合、「約」という用語は、その値又は範囲より5%~10%上及び5%~10%下の変動が、その引用された値又は範囲の意図された意味の範囲内に留まることを示す。
【0027】
本明細書で使用される場合、対象に対する薬剤の「投与」という用語は、その意図された機能を発揮するために対象に薬剤を導入又は送達する任意の経路を含む。投与は、限定されないが、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、及び本明細書に記載の他の好適な経路を含む、任意の好適な経路によって行われ得る。投与には、自己投与及び他者による投与が含まれる。
【0028】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び天然に存在しないアミノ酸、並びに天然に存在するアミノ酸と同様の方法で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然にコードされるアミノ酸は、20個の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)、並びにピロリジン及びセレノシステインである。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造(すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びR基、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムに結合するα炭素)を有する薬剤を指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)、又は修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。いくつかの実施形態では、ポリペプチドを形成するアミノ酸は、D形態である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドを形成するアミノ酸は、L形態である。いくつかの実施形態では、ポリペプチドを形成する第1の複数のアミノ酸は、D形態であり、第2の複数のアミノ酸は、L形態である。
【0029】
アミノ酸は、それらの一般的に知られている3文字の記号によって、又はIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨される1文字の記号のいずれかによって、本明細書で言及される。ヌクレオチドは、同様に、それらの一般的に受け入れられている1文字コードによって言及される。
【0030】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で相互に置き換え可能に使用される。その用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、並びに1つ以上のアミノ酸残基が天然に存在しないアミノ酸、例えば、アミノ酸類似体であるアミノ酸ポリマーに適用される。その用語は、全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基は、共有結合性ペプチド結合によって連結される。
【0031】
本明細書で使用される場合、「対照」は、比較目的のために実験で使用される代替試料である。対照は、「陽性」又は「陰性」であり得る。例えば、実験の目的が、特定の種類の疾患に対する治療のための治療薬剤の有効性の相関関係を決定することである場合、陽性対照(所望の治療効果を示すことが知られている組成物)及び陰性対照(療法を受けないか、又はプラセボを受ける対象若しくは試料)が典型的に使用される。
【0032】
本明細書で使用される場合、「有効量」又は「治療有効量」という用語は、所望の治療効果を達成するのに十分な薬剤の量を指す。療法用途の文脈では、対象に投与される治療用ペプチドの量は、感染の種類及び重症度、並びに一般的な健康、年齢、性別、体重及び薬物に対する耐容性などの個体の特徴に依存し得る。疾患の程度、重症度及び種類にも依存する可能性がある。当業者は、これらの因子及び他の因子に応じて適切な投薬量を決定することができるであろう。
【0033】
本明細書で使用される場合、「発現」という用語は、ポリヌクレオチドがmRNAに転写されるプロセス、及び/又は転写されたmRNAがその後にペプチド、ポリペプチド、若しくはタンパク質へと翻訳されるプロセスを指す。ポリヌクレオチドがゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核生物細胞におけるmRNAのスプライシングを含み得る。遺伝子の発現レベルは、細胞又は組織試料中のmRNA又はタンパク質の量を測定することによって決定することができる。一態様では、1つの試料からの遺伝子の発現レベルを、対照又は参照試料からのその遺伝子の発現レベルと直接的に比較することができる。別の態様では、1つの試料からの遺伝子の発現レベルを、本明細書に開示される組成物の投与後の同じ試料からのその遺伝子の発現レベルと直接的に比較することができる。「発現」という用語はまた、以下の事象のうちの1つ以上を指す。(1)細胞内でのDNA配列からのRNAテンプレートの生成(例えば、転写による)、(2)細胞内でのRNA転写産物の処理(例えば、スプライシング、編集、5’キャップ形成、及び/又は3’末端形成による)、(3)細胞内でのポリペプチド又はタンパク質へのRNA配列の翻訳、(4)細胞内でのポリペプチド又はタンパク質の翻訳後修飾、(5)細胞表面上のポリペプチド又はタンパク質の提示、並びに(6)細胞からのポリペプチド又はタンパク質の分泌又は提示又は放出。
【0034】
「リンカー」という用語は、2つの配列を接続するか、又は連結する、例えば、2つのポリペプチドドメインを連結する、合成配列(例えば、アミノ酸配列)を指す。いくつかの実施形態では、リンカーは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、又は10個のアミノ酸配列を含有する。
【0035】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の抗体分子だけではなく、免疫原結合能力を保持する抗体分子の断片も意味する。そのような断片も、当該技術分野で周知であり、通常、インビトロ及びインビボの両方で使用される。したがって、本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、無傷の免疫グロブリン分子だけでなく、周知の活性断片F(ab’)2、及びFabも意味する。F(ab’)2、及び無傷の抗体のFc断片を欠くFab断片は、循環からより迅速に排泄され、無傷の抗体の非特異的組織結合が、より少なくなる場合がある(Wahl et al.,J.Nucl.Med.24:316-325(1983))。本発明の技術の抗体は、天然の抗体全体、モノクローナル抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、ラクダ化抗体、多重特異性抗体、二重特異性抗体、キメラ抗体、Fab、Fab’、一本鎖V領域断片(scFv)、単一ドメイン抗体(例えば、ナノボディ及び単一ドメインラクダ抗体)、VNAR断片、二重特異性T細胞エンゲージャー(BiTE)抗体、ミニボディ、ジスルフィド連結Fv(dsFv)、及び抗イディオタイプ(抗Id)抗体、イントラボディ、融合ポリペプチド、上のいずれかの従来のものではない抗体及び抗原結合断片を含む。特に、抗体としては、免疫グロブリン分子、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な断片、すなわち、抗原結合部位を含有する分子が挙げられる。免疫グロブリン分子は、任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgGl、IgG2、IgG3、IgG4、IgAl、及びIgA2)、又はサブクラスのものであり得る。
【0036】
特定の実施形態では、抗体は、ジスルフィド結合によって相互に接続された少なくとも2つの重(H)鎖及び2つの軽(L)鎖を含む糖タンパク質である。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではVHと略される)及び重鎖定常(CH)領域で構成される。重鎖定常領域は、CH1、CH2及びCH3の3つのドメインで構成される。各軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと略される)及び軽鎖定常CL領域で構成される。軽鎖定常領域は、1つのドメインCLで構成される。VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存されている領域とともに散在した、相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変性の領域に更に細分化することができる。各々のVH及びVLは、アミノ酸末端からカルボキシ末端まで、以下の順序FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4で整列した3個のCDR及び4個のFRで構成される。重鎖及び軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫系の様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)、及び古典的な補体系の第1の構成成分(Cl q)を含む、宿主組織又は因子に対する免疫グロブリンの結合を媒介し得る。本明細書で相互に置き換え可能に使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、「抗原結合断片」、又は「抗原結合領域」という用語は、抗原に結合し、抗体に抗原特異性を付与する抗体の領域又は部分を指し、抗原結合タンパク質の断片、例えば、抗体は、抗原(例えば、ペプチド/HLA複合体)に特異的に結合する能力を保持する抗体の1つ以上の断片を含む。抗体の抗原結合機能は、全長抗体の断片によって発揮され得ることが示されている。抗体の「抗体断片」という用語に包含される抗原結合部分の例としては、VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価断片であるFab断片、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結される2つのFab断片を含む二価断片であるF(ab)2断片、VH及びCHIドメインからなるFd断片、抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、VHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,Nature341:544-546(1989))、並びに単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
【0037】
抗体及び抗体断片は、哺乳動物(例えば、ヒト、非ヒト霊長類、ヤギ、モルモット、ハムスター、ウマ、マウス、ラット、ウサギ、及びヒツジ)、又は非哺乳動物である抗体生成動物(例えば、ニワトリ、アヒル、ガチョウ、ヘビ、有尾両生類)に完全に、又は部分的に由来し得る。抗体及び抗体断片は、動物において生成されてもよく、又は動物の外側で、例えば、酵母若しくはファージから(例えば、単一抗体若しくは抗体断片として、又は抗体ライブラリの一部として)生成されてもよい。
【0038】
更に、Fv断片の2つのドメインVL及びVHが、別々の遺伝子によってコードされているが、これらを、VL及びVH領域が対形成して一価分子を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、組換え方法を使用して接続することができる。これらは、一本鎖Fv(scFv)として知られており、例えば、Bird et al.,Science242:423-426(1988)、及びHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.85:5879-5883(1988)を参照されたい。これらの抗体断片は、当業者に既知の従来の技術を使用して得られ、断片は、無傷の抗体と同じ方法で、有用性についてスクリーニングされる。
【0039】
「単離された抗体」又は「単離された抗原結合タンパク質」は、その天然環境の構成成分から特定され、分離され、かつ/又は回収されたものである。「合成抗体」又は「組換え抗体」は、一般に、組換え技術を使用して、又は当業者に既知のペプチド合成技術を使用して生成される。
【0040】
本明細書で使用される場合、「一本鎖可変断片」又は「scFv」という用語は、VH:VLヘテロ二量体を形成するように共有結合される免疫グロブリン(例えば、マウス又はヒト)の重鎖(VH)及び軽鎖(VL)の可変領域の融合タンパク質である。重鎖(VH)及び軽鎖(VL)は、直接的に接続されるか、又はペプチドをコードするリンカー(例えば、約10、15、20、25個のアミノ酸)によって接続されるかのいずれかであり、VHのN末端をVLのC末端に接続するか、又はVHのC末端をVLのN末端に接続する。リンカーは通常、可撓性のためにグリシンが豊富であり、溶解性のためにセリン又はトレオニンが豊富である。リンカーは、細胞外抗原結合ドメインの重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を連結し得る。
【0041】
定常領域の除去及びリンカーの導入にもかかわらず、scFvタンパク質は、元の免疫グロブリンの特異性を保持する。一本鎖Fvポリペプチド抗体は、Hustonら(Proc.Nat.Acad.Sci.USA,85:5879-5883(1988))によって記載されるように、VH及びVLをコードする配列を含む核酸から発現することができる。また、米国特許第5,091,513号、同第5,132,405号、及び同第4,956,778号、並びに米国特許公開第2005/0196754号及び同第2005/0196754号を参照されたい。阻害活性を有するアンタゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Zhao et al.,Hybridoma(Larchmt)27(6):455-51(2008)、Peter et al.,J Cachexia Sarcopenia Muscle(2012)、Shieh et al.,J Imunol183(4):2277-85(2009)、Giomarelli et al.,Thromb Haemost97(6):955-63(2007)、Fife eta.,J Clin Invst116(8):2252-61(2006)、Brocks et al.,Immunotechnology3(3):173-84(1997)、Moosmayer et al.,Ther Immunol2(10):31-40(1995)を参照されたい。刺激活性を有するアゴニスト性scFvが記載されている(例えば、Peter et al.,J Biol Chem25278(38):36740-7(2003)、Xie et al.,Nat Biotech15(8):768-71(1997)、Ledbetter et al.,Crit Rev Immunol17(5-6):427-55(1997)、Ho et al.,Bio Chim Biophys Acta1638(3):257-66(2003)を参照されたい)。
【0042】
本明細書で使用される場合、「F(ab)」は、抗原に結合するが、一価であり、Fc部分を有しない抗体構造の断片を指し、例えば、酵素パパインによって消化される抗体は、2つのF(ab)断片及びFc断片(重(H)鎖定常領域、抗原に結合しないFc領域)を生成する。
【0043】
本明細書で使用される場合、「F(ab)2」は、全IgG抗体のペプシン消化によって生成される抗体断片を指し、この断片は、2つの抗原結合(ab’)(二価)領域を有し、各(ab1)領域は、抗原を結合するためにS-S結合によって連結されるH鎖の一部及び軽(L)鎖の2つの別個のアミノ酸鎖を含み、残りのH鎖部分が、一緒に連結される。「F(ab’)2」断片は、2つの個々のFab’断片に分けることができる。
【0044】
本明細書で使用される場合、「CDR」は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖の超可変領域である抗体の相補性決定領域アミノ酸配列として定義される。例えば、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,4th U.S.Department of Health and Human Services,National Institutes of Health(1987)を参照されたい。一般に、抗体は、可変領域中に3つの重鎖及び3つの軽鎖のCDR又はCDR領域を含む。CDRは、抗原又はエピトープに対する抗体の結合のための接触残基の大部分を提供する。特定の実施形態では、CDR領域は、Kabatシステムを使用して描写される(Kabat,E.A.,et al.Sequences of Proteins of Immunological Interest,Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242(1991))。
【0045】
本明細書で使用される場合、「定常領域」又は「定常ドメイン」という用語は、相互に置き換え可能であり、当該技術分野で一般的なその意味を有する。定常領域は、抗原に対する抗体の結合に直接的には関与しないが、様々なエフェクター機能、例えば、Fc受容体との相互作用を示すことができる、抗体部分、例えば、軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシル末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は、一般に、免疫グロブリン可変ドメインと比較して、より保存されたアミノ酸配列を有する。
【0046】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」は、当該技術分野における用語であり、抗体が特異的に結合することができる抗原の局在化された領域を指すことができる。エピトープは、例えば、ポリペプチドの連続アミノ酸(直鎖若しくは分枝鎖のエピトープ)であってもよく、又はエピトープは、例えば、1つのポリペプチド又は複数のポリペプチドの2つ以上の不連続の領域が合わさっていてもよい(立体配座、非線形、不連続、又は非連続型エピトープ)。
【0047】
本明細書で使用される場合、「リガンド」という用語は、受容体に結合する分子を指す。いくつかの実施形態では、リガンドは、別の細胞上の受容体に結合し、細胞間の認識及び/又は相互作用を可能にする。
【0048】
本明細書で使用される場合、「親和性」という用語は、結合強度の尺度を意味する。理論に拘束されないが、親和性は、抗体を組み合わせた部位と抗原決定基との間の立体化学的適合性の近さ、それらの間の接触領域の大きさ、並びに帯電基及び疎水性基の分布に依存する。親和性はまた、可逆的複合体(例えば、一価又は多価のいずれか)の形成後の抗原-抗体結合の強度を指す、「アビディティ」という用語を含む。親和性を計算するための結合実験の使用を含む、抗原に対する抗体の親和性を計算するための方法は、当該技術分野で既知である。機能的アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)における抗体活性は、抗体親和性も反映する。抗体及び親和性は、表現型によって特性決定され、機能的アッセイ(例えば、フローサイトメトリーアッセイ)を使用して比較することができる。本明細書に開示される主題において有用な核酸分子としては、ポリペプチド又はその断片をコードする任意の核酸分子が挙げられる。特定の実施形態では、本明細書に開示される主題において有用な核酸分子は、抗体又はその抗原結合部分をコードする核酸分子を含む。かかる核酸分子は、内因性核酸配列と100%同一である必要はないが、典型的には実質的な同一性を示す。内因性配列に対して「実質的な相同性」又は「実質的な同一性」を有するポリヌクレオチドは、典型的には、二本鎖核酸分子の少なくとも1つの鎖とハイブリダイズすることができる。「ハイブリダイズする」とは、様々なストリンジェンシー条件下で、相補的ポリヌクレオチド配列(例えば、本明細書に記載の遺伝子)、又はその一部分の間で二本鎖分子を形成する対を意味する。(例えば、Wahl,G.M.and S.L.Berger,Methods Enzymol.152:399(1987)、Kimmel,A.R.Methods Enzymol.152:507(1987)を参照されたい)。
【0049】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する」及び「特異的に認識する」という用語は、抗体の文脈において類似の用語であり、当業者によって理解されるように、抗原結合部位を介して抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)に結合し、抗体又は抗原結合断片と他の抗原との交差反応性を除外しない、抗体又はその抗原結合断片を指す。
【0050】
「実質的に相同な」又は「実質的に同一の」という用語は、参照アミノ酸配列(例えば、本明細書に記載のアミノ酸配列のうちのいずれか1つ)又は核酸配列(例えば、本明細書に記載の核酸配列のうちのいずれか1つ)に対して少なくとも50%以上の相同性又は同一性を示すポリペプチド又は核酸分子を意味する。例えば、かかる配列は、アミノ酸レベル又は核酸において、比較のために使用される配列(例えば、野生型又は天然の配列)に対して少なくとも約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約95%、又は約99%相同であるか、又は同一である。いくつかの実施形態では、実質的に相同又は実質的に同一のポリペプチドは、比較のために使用される配列と比較して、1つ以上のアミノ酸アミノ酸の置換、挿入、又は欠失を含有する。いくつかの実施形態では、実質的に相同又は実質的に同一のポリペプチドは、相同な配列を置き換えるためのD-アミノ酸及びレトロインベルソアミノを含む1つ以上の非天然アミノ酸又はアミノ酸類似体を含有する。
【0051】
配列相同性又は配列同一性は、典型的には、配列分析ソフトウェア(例えば、Sequence Analysis Software Package of the Genetics Computer Group、University of Wisconsin Biotechnology Center、1710 University Avenue,Madison,Wis.53705、BLAST、BESTFIT、GAP、又はPILEUP/PRETTYBOXプログラム)を使用して測定される。そのようなソフトウェアは、様々な置換、欠失、及び/又は他の修飾に対して相同性の程度を割り当てることによって、同一又は類似の配列を一致させる。同一性の程度を決定するための例示的なアプローチでは、BLASTプログラムが使用されてもよく、e-3~e-100の確率スコアは、密接に関連する配列を示している。
【0052】
本明細書で使用される場合、「類似体」という用語は、参照ポリペプチド又は核酸分子の機能を有する構造的に関連するポリペプチド又は核酸分子を指す。
【0053】
本明細書で使用される場合、「保存的配列修飾」という用語は、アミノ酸配列を含む本明細書に開示される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の結合特徴に有意に影響しないか、又は変化させないアミノ酸修飾を指す。保存的修飾は、アミノ酸置換、付加、及び欠失を含み得る。修飾は、部位特異的変異誘発及びPCRによる変異誘発などの当該技術分野で既知の標準的な技術によって、本明細書に開示される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片のヒトscFvに導入することができる。アミノ酸は、電荷及び極性などの物理化学的特性に従って、グループに分類することができる。保存的アミノ酸置換は、アミノ酸残基が同じグループ内のアミノ酸で置き換えられたものである。例えば、アミノ酸は、電荷によって分類することができ、正に帯電したアミノ酸としては、リジン、アルギニン、ヒスチジンが挙げられ、負に帯電したアミノ酸としては、アスパラギン酸、グルタミン酸が挙げられ、中性電荷のアミノ酸としては、アラニン、アスパラギン、システイン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリンが挙げられる。加えて、アミノ酸は、極性によって分類することができ、極性アミノ酸としては、アルギニン(塩基性極性)、アスパラギン、アスパラギン酸(酸性極性)、グルタミン酸(酸性極性)、グルタミン、ヒスチジン(塩基性極性)、リジン(塩基性極性)、セリン、トレオニン、及びチロシンが挙げられ、非極性アミノ酸としては、アラニン、システイン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、トリプトファン、及びバリンが挙げられる。したがって、CDR領域内の1つ以上のアミノ酸残基を、同じグループからの他のアミノ酸残基と置き換えることができ、改変された抗体を、本明細書に記載の機能的アッセイを使用して、保持された機能(すなわち、上の(c)~(l)に示される機能)について試験することができる。特定の実施形態では、指定された配列又はCDR領域内の1つ以下、2つ以下、3つ以下、4つ以下、5つ以下の残基が改変される。
【0054】
本明細書で使用される場合、「異種核酸分子又はポリペプチド」という用語は、細胞、又は細胞から得られた試料中に通常は存在しない、核酸分子(例えば、cDNA、DNA、若しくはRNA分子)、又はポリペプチドを指す。この核酸は、別の生物由来であってもよく、又は例えば、細胞若しくは試料において通常は発現しないmRNA分子であってもよい。
【0055】
本明細書で使用される場合、「調節する」という用語は、正又は負の変化を指す。例示的な調節としては、約1%、約2%、約5%、約10%、約25%、約50%、約75%、又は約100%の変化が挙げられる。
【0056】
本明細書で使用される場合、「増加する」という用語は、限定されないが、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、又は約100%の正方向の変化を含む、少なくとも約5%の正方向の変化を指す。
【0057】
本明細書で使用される場合、「減少する」という用語は、限定されないが、約5%、約10%、約25%、約30%、約50%、約75%、又は約100%の負方向の変化を含む、少なくとも約5%の負方向の変化を指す。
【0058】
本明細書で使用される場合、「単離された」ポリヌクレオチド又は核酸分子は、核酸分子の天然源(例えば、マウス又はヒト)に存在する他の核酸分子から分離されたものである。更に、「単離された」核酸分子、例えば、cDNA分子は、組換え技術によって生成される場合、他の細胞物質、若しくは培養培地を実質的に含んでいなくてもよく、又は化学合成される場合、化学前駆体若しくは他の化学物質を実質的に含んでいなくてもよい。例えば、「実質的に含まない」という言語は、他の材料、例えば、細胞物質、培養培地、他の核酸分子、化学前駆体、及び/又は他の化学物質を約15%、10%、5%、2%)、1%)、0.5%)、又は0.1%)より少なく有するポリヌクレオチド又は核酸分子の調製物を含む。
【0059】
本明細書で使用される場合、「単離された細胞」という用語は、細胞に天然に伴う分子及び/又は細胞構成成分から分離される細胞を指す。
【0060】
「有効量」(又は「治療有効量」)は、治療時に有益又は所望の臨床結果をもたらすのに十分な量である。有効量は、1回以上の用量で対象に投与され得る。治療の観点から、有効量は、疾患(例えば、新生物)の進行を緩和するか、改善するか、安定化するか、逆行させるか、又は遅らせる、あるいは疾患(例えば、新生物)の病理学的結果をその他の方法で減少させるのに十分な量である。有効量は、一般に、症例ごとに医師によって決定され、当業者の技能の範囲内である。いくつかの因子は、典型的には、有効量を達成するために適切な投薬量を決定する際に考慮される。これらの因子としては、対象の年齢、性別、及び体重、治療される状態、状態の重症度、並びに投与される操作された免疫細胞の形態及び有効濃度が挙げられる。
【0061】
本明細書で使用される場合、「新生物」という用語は、細胞若しくは組織の病的な増殖、及びその後の他の組織若しくは器官への遊走又は浸潤を特徴とする疾患を指す。新生物の成長は、典型的には、制御不能であり、かつ進行性であり、正常細胞の増殖を誘発しないか、又はその休止を引き起こす条件下で起こる。新生物は、限定されないが、膀胱、結腸、骨、脳、乳房、軟骨、グリア、食道、卵管、胆嚢、心臓、腸、腎臓、肝臓、肺、リンパ節、神経組織、卵巣、胸膜、膵臓、前立腺、骨格筋、皮膚、脊髄、脾臓、胃、精巣、胸腺、甲状腺、気管、尿路、尿管、尿道、子宮、及び膣、又はそれらの組織若しくは細胞型からなる群から選択される器官を含む、様々な細胞型、組織、又は器官に罹患し得る。新生物としては、がん、例えば、肉腫、がん腫、又は形質細胞腫(形質細胞の悪性腫瘍)などが挙げられる。
【0062】
本明細書で使用される場合、「治療する」又は「治療」という用語は、治療される個体又は細胞の疾患経過を変更しようとする試みにおける臨床介入を指し、予防のために、又は臨床病理学の経過中のいずれかで実施することができる。治療の治療効果としては、限定されないが、疾患の発生若しくは再発を予防すること、症状の緩和、疾患の任意の直接的若しくは間接的な病理学的結果の軽減、転移を予防すること、疾患進行の速度を低減すること、疾患状態の改善若しくは緩和、並びに寛解又は改善された予後が挙げられる。疾患又は障害の進行を予防することによって、治療は、罹患したか、若しくは診断した対象、又は障害を有する疑いがある対象において、障害に起因する悪化を予防することができるだけではなく、治療は、障害のリスクがある対象、若しくは障害を有する疑いがある対象において、障害の発症又は障害の症状を予防することができる。
【0063】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、限定されないが、ヒト、非ヒト霊長類、げっ歯類など(例えば、特定の治療の需要者であるか、又は細胞の採取元である)を含む、任意の動物(例えば、哺乳動物)を指す。
【0064】
概要
ガレクチン-3(LGALS3)は、多くの細胞から分泌されるβ-ガラクトシド結合タンパク質であるが、このタンパク質は、小胞体及びゴルジ区画への移行、並びに古典的な分泌経路への侵入のためのシグナル配列を欠いている。LGALS3は、細胞の細胞内及び細胞外の位置において見出され、細胞成長、細胞接着、及び細胞間相互作用などの多面的な生物学的機能を有する。その局在化及び翻訳後修飾、例えば、切断及びリン酸化に応じて、抗アポトーシス活性又はアポトーシス促進活性を示し得る。ガレクチン-3の切断は、血管新生能及びアポトーシス耐性に関与することが報告された。ガレクチン-3のリン酸化は、その糖結合能力を調節する。
【0065】
人工的に合成されたキメラLGALS3を使用した卵巣がんにおける本願発明者らによる予備的研究は、LGALS3が、卵巣がんの成長、拡散及び浸潤特性の重要な役割を果たすことを確立している(参照によりその全体が組み込まれる、Rao,et al.(2017)ACS Chem.Biol.12(8):2085-2096)。この研究は、LGALS3のノックダウンshRNA抑制、及び天然の低親和性LGALS3炭水化物結合ドメインを抗体可変領域と置き換えたキメラ抗体の両方を利用した。ノックダウン実験では、卵巣がんムチンMUC16/CA125のがん遺伝子活性化効果には、LGALS3の腫瘍発現が必要であることが示された。LGALS3ノックダウン細胞をヌードマウスに移植すると、成長が非常に限定され、このことは、インビボでの腫瘍成長のためのLGALS3の不可欠な役割を確認するものである。更に、LGALS3による成長/浸潤の増強が細胞外であることが示された。浸潤研究では、卵巣がん細胞のMatrigel浸潤が、LGALS3に依存することが示された。Fc骨格に連結されるLGALS3の非修飾炭水化物結合ドメインの融合タンパク質を含む低親和性キメラ抗体は、LGALS3機能を遮断し、Matrigelゲル浸潤を防止することができるが、一方で、ガレクチン-1についてのキメラ遮断抗体は、有効ではなかった。加えて、低親和性のキメラ抗LGALS3遮断抗体の導入は、マウスにおける異種移植片のインビボ成長を減少させる。これらのキメラ抗体は、LGALS3ノックアウトの報告された最小限の効果と一致して、宿主マウスに対して顕著な有害作用を有していなかった(Wright et al.,(2017)J Leukoc Biol101(3):717-726。
【0066】
本明細書には、LGALS3に対する阻害性の高親和性抗体を単離するための免疫付与戦略が記載される。LGALS3炭水化物結合ドメイン(CBD)の一次配列を図2Bに示す。四角には、CBDのC、D、及びEドメインが示されており、これらはラクトサミン結合にとって重要である。高度に保存されたアミノ酸には、下線が引かれている。R186(*)は、GAL3の機能にとって重要である。GAL3CBD配列は、マウスガレクチン-3と高度に相同であるが、GAL1、GAL7、及びGAL9とは異なる。これらのファミリーメンバーの各々は、同様の糖結合ドメインを有するが、LGALS3は、重合ドメインを有する唯一のレクチンである。本明細書の例に記載されるように、LGALS3CBDに対する抗体を生成するために、マウスを、LGALS3を含有するペプチド及び/又は融合構築物、又は配列番号53のアミノ酸配列を含むその一部分で免疫付与した。抗LGALS3抗体を、LGALS3を含有するペプチド及び/又は融合構築物、又はその一部分を使用してスクリーニングした。単離された抗体は、天然のヒトLGALS3及びマウスホモログLgal3に結合する。
【0067】
例示的な実施形態では、抗Gal3抗体は、キメラ抗体遺伝子を発現する遺伝子改変動物を用いて生成される。例えば、例示的な実施形態では、本明細書で提供される抗Gal3抗体は、AlivaMab(登録商標)Mouse Kappaマウス及び/又はAlivaMab(登録商標)Mouse Lambdaマウス(本明細書ではそれぞれ相互に置き換え可能に、AlivaMab(登録商標)Kappa Mice及びAlivaMab(登録商標)Lambda Miceとも称される)を使用して生成される。AlivaMab(登録商標)Kappa Miceによって生成される抗体は、キメラ免疫グロブリン重(IgH)鎖及びヒト免疫グロブリンカッパ(κ)軽鎖を含む。AlivaMab(登録商標)Lambda Miceによって生成される抗体は、キメラIgH鎖及びヒト免疫グロブリンラムダ(λ)軽鎖を含む。AlivaMab(登録商標)Mouse抗体のキメラIgH鎖は、ヒト可変重鎖(VH)ドメインを含むヒト可変領域、ヒト多様性重鎖(DH)ドメイン及びヒト接続重鎖(JH)ドメイン、ヒト定常重鎖1(CH1)ドメイン、ヒト上側ヒンジ領域(上側ヒンジ領域を天然に欠いている、Cμを除く)、マウス中央ヒンジ領域、マウスCH2ドメイン、及びマウスCH3ドメインを含む。例示的な実施形態では、図8に示されるように、AlivaMab(登録商標)Mouseは、(1)完全ヒト可変重鎖ドメイン(VH)及びヒト軽鎖ドメイン(VL)を含む抗体と、(2)ヒト可変重鎖ドメイン(VH)及びマウス軽鎖ドメイン(VL)の混合物を含む抗体との混合物を生成する。例示的な実施形態では、ヒット(例えば、抗Gal3抗体)の特定は、ELISAを使用して行われる。例示的な実施形態では、濃縮されたクローンの特定は、OVCAR3に対するGal-3-PE結合の阻害を測定するためのアッセイを使用して行われる(図4)。例示的な実施形態では、完全ヒト可変重鎖ドメイン(VH)及びヒト軽鎖ドメイン(VL)を含む抗体の特定は、ELISAを使用して行われる。更なる例示的な実施形態では、AlivaMab(登録商標)Mouseから特定される抗体のVH及び/又はVL領域を使用して、本明細書に記載の追加の構築物を作成する。更なる例示的な実施形態では、AlivaMab(登録商標)Mouseから特定される抗体のVH及び/又はVL領域のCDRを使用して、本明細書に記載の追加の構築物を作成する。
【0068】
様々な研究により、腫瘍生物学及び炎症におけるLGALS3の役割が示されてきた。LGALS3標的化の効果及び予測される結果の部分的なリストを図2Aに示す。予測される効果の多くは、がん治療において有益であると予想される。LGALS3の効果は多方面にわたるが、ノックアウトマウスモデルのLGALS3の完全な消失でさえ、ほぼ正常な発達と一致しており、いくつかの免疫抑制効果は、TNF阻害剤と実質的に異なるものではない。これらの研究に基づいて、本明細書で提供される抗体は、限定されないが、がん及び炎症を含む、LGALS3媒介性疾患及び状態の治療に有用な療法薬であると予想される。
【0069】
抗体及びその抗原結合断片、及びそのような抗体又は断片を含むポリペプチド、例えば、融合タンパク質、コンジュゲート、及び/又はキメラ抗原受容体、並びにそれらを発現する細胞が提供される。抗体及び断片の中には、LGALS3タンパク質のエピトープに特異的に結合するものがある。そのような抗体は、本明細書において「抗LGALS3抗体」と称される。
【0070】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、がんを阻害するか、又は治療する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、腫瘍細胞の浸潤及び成長を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、腫瘍血管新生を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、転移を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、転移性腫瘍の成長を阻害する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、がん関連シグナル伝達分子、例えば、AKT又はERKの活性化を阻害する。
【0071】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、LGALS3によるT細胞アポトーシスの誘導を阻害する。
【0072】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、T細胞の免疫抑制を阻害する。
【0073】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、心血管疾患を阻害するか、又は治療する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、心不全、冠状動脈性心疾患、又は心筋梗塞を阻害するか、又は治療する。
【0074】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、肺線維症を阻害するか、又は治療する。
【0075】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、腎疾患を阻害するか、又は治療する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、糸球体腎炎を阻害するか、又は治療する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその抗原結合断片は、腎臓細胞がん腫を阻害するか、又は治療する。
【0076】
また、本明細書には、このような抗体をコードする、核酸配列(例えば、相補的DNA(cDNA))、及びその抗原結合断片、重鎖、又は軽鎖を含むポリヌクレオチド(例えば、単離されたポリヌクレオチド)が提供される。更に、このような抗体をコードする、核酸配列(例えば、相補的DNA(cDNA))、及びその抗原結合断片、重鎖、又は軽鎖を含むポリヌクレオチド(例えば、単離されたポリヌクレオチド)を含む、ベクター(例えば、発現ベクター)及び細胞(例えば、単離された細胞、又はエクスビボ細胞)が提供される。また、このような抗体、その抗原結合断片、重鎖、軽鎖、ベクター、及び細胞を作製する方法も提供される。他の態様では、本明細書には、がんの治療又は管理などの本明細書に記載の特定の状態又は障害を治療又は管理するための抗LGALS3抗体のための方法及び使用が提供される。関連組成物(例えば、薬学的組成物)、キット、及び診断方法もまた提供される。
【0077】
本明細書で使用される場合、「LGALS3」、「LGALS3ポリペプチド」、「LGALS3ペプチド」、「Gal-3」、「Gal-3ポリペプチドは、」、又は「Gal-3ペプチド」という用語は、β-ガラクトシドに結合するガレクチン-3、並びにその機能的相同体及び断片を指すために本明細書で相互に置き換え可能に使用される。GenBank(商標)アクセッション番号NM_002306.4(配列番号11)は、例示的なヒトLGALS3核酸配列を提供する。GenBank(商標)アクセッション番号NP_002297.2(配列番号12)は、例示的なヒトLGALS3アミノ酸配列を提供する。
【0078】
抗LGALS3抗体
抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片としては、例えば、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、組換え生成された抗体、単一特異性抗体、多重特異性抗体(二重特異性抗体を含む)、ヒト抗体、ヒト化抗体、キメラ抗体、免疫グロブリン、合成抗体、2つの重鎖及び2つの軽鎖分子を含む四量体抗体、抗体軽鎖単量体、抗体重鎖単量体、抗体軽鎖二量体、抗体重鎖二量体、抗体軽鎖-抗体重鎖対、イントラボディ、単一ドメイン抗体、一価抗体、一本鎖抗体、又は一本鎖可変断片(scFv)、ラクダ抗体、アフィボディ、並びにジスルフィド連結Fv(dsFv)、又はそれらの断片を挙げることができる。そのような抗体は、当該技術分野で既知の方法によって作製することができる。
【0079】
多重特異性抗体又はその断片とは、異なる構造を有する少なくとも2つの標的、例えば、2つの異なる抗原、同じ抗原上の2つの異なるエピトープ、又はハプテン及び抗原若しくはエピトープに対して同時に結合することができる抗体又はその断片を指す。一方の特異性は、例えば、B細胞、T細胞、骨髄、血漿、又はマスト細胞の抗原又はエピトープ、例えば、CD3に対するものであり得る。別の特異性は、同じ又は異なる細胞型上の異なる抗原、例えば、LGALS3に対するものであり得る。多重特異性の多価抗体は、1つより多い結合部位を有し、結合部位が異なる特異性を有し(例えば、二重特異性ダイアボディ)、1つの結合部位が1つの抗原と反応し、他の結合部位が別の抗原と反応する。
【0080】
二重特異性抗体は、異なる構造を有する2つの標的に対して同時に結合することができる抗体である。二重特異性抗体(bsAb)及び二重特異性抗体断片(bsFab)は、第1の標的、例えば、LGALS3に特異的に結合する少なくとも1つのアームと、第2の標的、例えば、CD3に特異的に結合する少なくとも1つの他のアームと、を有する。種々の二重特異性融合タンパク質は、分子工学を使用して生成され得る。一形態では、二重特異性融合タンパク質は、二価であり、例えば、(i)1つの抗原に対する単一結合部位を有するscFv、及び(ii)第2の抗原に対する単一結合部位を有する抗体又はFab断片からなる。別の形態では、二重特異性融合タンパク質は、四価であり、例えば、1つの抗原のための2つの結合部位及び第2の抗原のための2つの同一のscFvを有するIgGからなる。例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる、国際公開第2011/1160119号を参照されたい。
【0081】
二重特異性モノクローナル抗体を生成するための最近の方法は、より一般的な免疫グロブリンアイソタイプよりもより強く架橋するように、追加のシステイン残基を有する操作された組換えモノクローナル抗体の使用を含む。例えば、FitzGerald et al.,Protein Eng.10(10):1221-1225,1997を参照されたい。別のアプローチは、必要な二重特異性を有する2つ以上の異なる一本鎖抗体又は抗体断片セグメントを連結する組換え融合タンパク質を操作することである。例えば、Coloma et al.,Nature Biotech.15:159-163,1997を参照されたい。種々の二重特異性融合タンパク質は、分子工学を使用して生成され得る。
【0082】
2つ以上の異なる一本鎖抗体又は抗体断片を連結する二重特異性融合タンパク質を、同様の方法で生成することができる。組換え方法を使用して、種々の融合タンパク質を生成することができる。特定の態様では、可撓性リンカーは、scFv(例えば、CD3を標的とするscFv)を、モノクローナル抗体(例えば、本明細書に記載の抗LGALS3抗体)の軽鎖の定常領域に接続する。scFvに対する重鎖Fcのフレーム内接続に必要な適切なリンカー配列は、PCR反応によって、VL及びVカッパドメインに導入される。次いで、scFvをコードするDNA断片を、CHIドメインをコードするDNA配列を含有するステージングベクターにライゲーションする。得られた構築物を切除し、抗体(例えば、抗LGALS3抗体)のVH領域をコードするDNA配列を含有するベクターにライゲーションする。得られたベクターを使用して、二重特異性融合タンパク質の発現のための哺乳動物細胞などの好適な宿主細胞をトランスフェクトすることができる。
【0083】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体及びその断片を使用して、ダイアボディとも呼ばれる機能的な二重特異性一本鎖抗体(bscAb)を調製することもでき、組換え方法を使用して、哺乳動物細胞中で生成することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれる、Mack et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U.S.A.,92:7021-7025,1995を参照されたい。例えば、bscAbは、組換え方法を使用して、グリシン-セリンリンカーを介して2つの一本鎖Fv断片を接続することによって生成することができる。目的の2つの抗体のVL及びVHドメインは、当該技術分野で既知の標準的なPCR方法を使用して単離される。二重特異性一本鎖抗体及び二重特異性融合タンパク質は、本発明の技術の範囲内に含まれる。
【0084】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、scFvを指す。scFvは、当該技術分野で認識されている用語である。scFvは、免疫グロブリンの重(VH)鎖及び軽(VL)鎖の可変領域の融合タンパク質を含み、融合タンパク質は、免疫グロブリン全体と同じ抗原特異性を保持している。VHは、ペプチドリンカーを介してVLに融合される。特定の実施形態では、ペプチドリンカーは、5~25、5~15、10~20、10~15、又は15~25アミノ酸残基長である。特定の実施形態では、scFvペプチドリンカーは、当業者に公知のペプチドリンカーに好適な1つ以上の特徴を示す。特定の実施形態では、scFvペプチドリンカーは、scFvペプチドリンカーの溶解性を可能にするアミノ酸、例えば、セリン及びトレオニンを含む。特定の実施形態では、scFvペプチドリンカーは、scFvペプチドリンカーの可撓性を可能にするアミノ酸、例えば、グリシンを含む。特定の実施形態では、scFvペプチドリンカーは、VHのN末端をVLのC末端に接続する。特定の実施形態では、scFvペプチドリンカーは、VHのC末端をVLのN末端に接続し得る。
【0085】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、キメラ抗原受容体(CAR)を指す。CARは、当該技術分野で認識されている用語である。CARは、腫瘍関連抗原(例えば、LGALS3)を標的とし得る。本明細書に提供されるCARは、典型的には、LGALS3グリコシル化に由来するscFvで構成される。
【0086】
抗体、膜貫通ドメイン(いくつかの実施形態では、T細胞共刺激分子由来の膜貫通ドメイン(例えば、CD28、CD8、CD38、OX-40、又は4-1BB由来の膜貫通ドメイン)である)、及び一次シグナル伝達ドメイン、例えば、T細胞受容体(TCR)ゼータ(ζ)鎖細胞質シグナル伝達ドメイン。いくつかの実施形態では、CARは、細胞外スペーサーを含む、1つ以上のスペーサー又はリンカーなどの1つ以上の追加の領域又はドメイン、例えば、抗体又は他の細胞表面分子に由来するもの、例えば、抗体CH2、CH3、及び/若しくはヒンジ領域のうちの1つ以上を含有するスペーサー、又はCD28分子若しくはCD8分子に由来するスペーサー、又は他のスペーサーを更に含む。また、本明細書には、そのようなCARを発現するように操作された細胞、例えば、T細胞、例えば、そのようなCARを組換え発現するものが提供される。CARを発現するT細胞は、LGALS3を発現する腫瘍の認識時に、好ましくは、そのような腫瘍の細胞のT細胞活性化、増殖、及び/又は溶解を誘導する。
【0087】
抗LGALS3抗体は、免疫グロブリン分子の任意の型(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY)、任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、若しくはIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a若しくはIgG2b)のものであり得る。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG抗体、又はそのクラス若しくはサブクラスである。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG1抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG2抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG2a抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG2b抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG3抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG4抗体である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、抗体の型の混合物、又はサブクラスの混合物である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗体は、IgG2a抗体とIgG2b抗体との混合物である。具体的な実施形態では、抗体は、げっ歯類モノクローナル抗体のヒト化形態である。
【0088】
抗LGALS3抗体の抗原結合断片は、抗LGALS3抗体に抗原に対するその特異性を付与するアミノ酸残基(例えば、相補性決定領域(CDR))を含む抗LGALS3抗体のFab断片、F(ab’)2断片、又は一部分であり得る。抗LGALS3抗体は、げっ歯類(例えば、マウス、ラット、又はハムスター)及びヒトなどの任意の動物種に由来し得る。
【0089】
本明細書で使用される場合、「可変領域」又は「可変ドメイン」という用語は、相互に置き換え可能に使用され、当該技術分野において一般的である。可変領域は、典型的には、抗体の一部分、一般に、軽鎖若しくは重鎖の一部分、典型的には、成熟重鎖中のアミノ末端の約110~120個のアミノ酸及び成熟軽鎖中のアミノ末端の約90~100個のアミノ酸を指し、抗体間で配列が大きく異なり、特定の抗体のその特定の抗原についての結合及び特異性において使用される。配列の変動性は、相補性決定領域(CDR)と呼ばれるこれらの領域に集中しており、一方で、可変ドメイン中のより高度に保存された領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。CDRは、FRに隣接している。一般に、CDR及びFRの空間配向は、N末端からC末端方向に、以下FR1-CDR1-FR2-CDR2-FR3-CDR3-FR4となる。任意の特定の機構又は理論に拘束されることを望むものではないが、軽鎖及び重鎖のCDRが、主に、抗体と抗原との相互作用及び特異性に関与すると考えられる。特定の実施形態では、可変領域は、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)可変領域である。特定の実施形態では、可変領域は、ヒト可変領域である。特定の実施形態では、可変領域は、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)CDRと、ヒトフレームワーク領域(FR)と、を含む。特定の実施形態では、可変領域は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。特定の実施形態では、可変領域は、げっ歯類又はマウスCDRと、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)と、を含む。
【0090】
CDRは、Kabat、Chothia、及びIMGT、並びに例示的な定義を含む、当該技術分野における様々な方法で定義される。Kabatの定義は、配列変動性に基づいている(Kabat,Elvin A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.Bethesda:National Institutes of Health,1983)。Kabat番号付けシステムに関して、(i)VHCDR1は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置31~35に存在し、任意選択的にアミノ酸位置35の後の1個又は2個の追加のアミノ酸を含んでいてもよく(Kabat番号付けスキームにおいて35A及び35Bと称される)、(ii)VHCDR2は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置50~65に存在し、かつ(iii)VHCDR2は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置95~102に存在する(Kabat,Elvin A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.Bethesda:National Institutes of Health,1983)。Kabat番号付けシステムに関して、(i)VLCDR1は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置24~34に存在し、(ii)VLCDR2は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置50~56に存在し、かつ(iii)VLCDR3は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置89~97に存在する(Kabat,Elvin A.et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest.Bethesda:National Institutes of Health,1983)。当業者に周知のように、Kabat番号付けシステムを使用すると、抗体可変ドメインの実際の直鎖アミノ酸配列は、FR及び/又はCDRの短縮又は延長に起因して、より少ないアミノ酸又は追加のアミノ酸を含有する場合があり、したがって、アミノ酸のKabat番号は、その直鎖アミノ酸の番号と必ずしも同じではない。
【0091】
Chothiaの定義は、構造的ループ領域の位置に基づく(Chothia et al.(1987)J Mol Biol196:901-917、及び米国特許第7,709,226号)。「ChothiaCDR」という用語及び同様の用語は、当該技術分野において認識され、Chothia and Lesk(1987)J.Mol.Biol.196:901-917の方法に従って決定されるような抗体CDR配列を指し、本明細書で「ChothiaCDR」と呼ばれる(また、例えば、米国特許第7,709,226号、及びMartin,A.,“Protein Sequence and Structure Analysis of Antibody Variable Domains,”in Antibody Engineering,Kontermann and Diibel編集,Chapter31,pp.422-439,Springer-Verlag,Berlin(2001)も参照されたい)。Chothia番号付けシステムに関して、VH領域中のアミノ酸残基を番号付けするKabat番号付けシステムを使用して、(i)VHCDR1は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置26~32に存在し、(ii)VHCDR2は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置53~55に存在し、かつ(iii)VHCDR3は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置96~101に存在する。具体的な実施形態では、Chothia番号付けシステムに関して、VH領域中のアミノ酸残基を番号付けするKabat番号付けシステムを使用して、(i)VHCDR1は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置26~32又は34に存在し、(ii)VHCDR2は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置52~56に存在し(一実施形態では、CDR2は、位置52A~56にあり、52Aは、位置52の後にある)、かつ(iii)VHCDR3は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置95~102に存在する(一実施形態では、96~100の番号の位置にアミノ酸が存在しない)。Chothia番号付けシステムに関して、VL領域中のアミノ酸残基を番号付けするKabat番号付けシステムを使用して、(i)VLCDR1は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置26~33に存在し、(ii)VLCDR2は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置50~52に存在し、かつ(iii)VLCDR3は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置91~96に存在する。具体的な実施形態では、Chothia番号付けシステムに関して、VL領域中のアミノ酸残基を番号付けするKabat番号付けシステムを使用して、(i)VLCDR1は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置24~34に存在し、(ii)VLCDR2は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置50~56に存在し、かつ(iii)VLCDR3は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置89~97に存在する(一実施形態では、96~100の番号の位置にアミノ酸が存在しない)。これらのChothia CDR位置は、抗体に応じて変化してもよく、当該技術分野で既知の方法に従って決定され得る。
【0092】
IMGTの定義は、EVIGTからのものである(”IMGT(登録商標)、国際的なImMunoGeneTics情報システム(登録商標)ウェブサイトimgt.org、設立者及び管理者:Marie-Paule Lefranc,Montpellier,France、例えば、その両方が参照によりその全体が組み込まれる、Lefranc,M.-P.,1999,The Immunologist,7:132-136、及びLefranc,M.-P.et al.,1999,Nucleic Acids Res.,27:209-212を参照されたい)。IMGT番号付けシステムに関して、(i)VHCDR1は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置25~35に存在し、(ii)VHCDR2は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置51~57に存在し、かつ(iii)VHCDR2は、典型的には、重鎖のアミノ酸位置93~102に存在する。IMGT番号付けシステムに関して、(i)VLCDR1は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置27~32に存在し、(ii)VLCDR2は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置50~52に存在し、かつ(iii)VLCDR3は、典型的には、軽鎖のアミノ酸位置89~97に存在する。
【0093】
LGALS3抗体の配列及び構造
特定の実施形態では、本明細書には、例えば、表6に示されるような、本明細書で提供される抗LGALS3抗体のいずれかのVHCDRを含む、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVHCDR1を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVHCDR2を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVHCDR3を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVHCDRのうちの1つ、2つ、又は3つ全てを含む。
【0094】
特定の実施形態では、本明細書には、例えば、表6に示されるような、本明細書で提供される抗LGALS3抗体のいずれかのVLCDRを含む、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVLCDR1を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVLCDR2を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVLCDR3を含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6における抗LGALS3抗体のVLCDRのうちの1つ、2つ、又は3つ全てを含む。
【0095】
一態様では、本開示は、抗体又はその抗原結合断片であって、重鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VH)及び軽鎖免疫グロブリン可変ドメイン(VL)を含み、(a)VHが、配列番号7、19、29、39、及び49からなる群から選択されるVH-CDR1配列と、配列番号8、20、30、40、及び50からなる群から選択されるVH-CDR2配列と、配列番号9、21、31、41、及び51からなる群から選択されるVH-CDR3配列と、を含み、かつ/又は(b)VLが、配列番号2、14、24、34、及び44からなる群から選択されるVLCDR1配列と、配列番号3、15、25、35、及び45からなる群から選択されるVLCDR2配列と、配列番号4、16、26、36、及び46からなる群から選択されるVLCDR3配列と、を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0096】
一態様では、本開示は、ガレクチン-3(LGALS3)に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片であって、抗体又はその抗原結合断片が、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、(a)VHが、配列番号7を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号8を含むVHCDR2配列と、配列番号9を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号2を含むVLCDR1配列と、配列番号3を含むVLCDR2配列と、配列番号4を含むVLCDR3配列と、を含むか、(b)VHが、配列番号19を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号20を含むVHCDR2配列と、配列番号21を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号14を含むVLCDR1配列と、配列番号15を含むVLCDR2配列と、配列番号16を含むVLCDR3配列と、を含むか、(c)VHが、配列番号29を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号30を含むVHCDR2配列と、配列番号31を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号24を含むVLCDR1配列と、配列番号25を含むVLCDR2配列と、配列番号26を含むVLCDR3配列と、を含むか、(d)VHが、配列番号39を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号40を含むVHCDR2配列と、配列番号41を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号34を含むVLCDR1配列と、配列番号35を含むVLCDR2配列と、配列番号36を含むVLCDR3配列と、を含むか、あるいは(e)VHが、配列番号49を含むVH相補性決定領域(CDR)1配列と、配列番号50を含むVHCDR2配列と、配列番号51を含むVHCDR3配列と、を含み、かつ/又はVLが、配列番号44を含むVLCDR1配列と、配列番号45を含むVLCDR2配列と、配列番号46を含むVLCDR3配列と、を含む、抗体又はその抗原結合断片を提供する。
【0097】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、及び配列番号48からなる群から選択されるVH領域を含む。
【0098】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、及び配列番号43からなる群から選択されるVL領域を含む。
【0099】
いくつかの実施形態では、VHは、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、及び配列番号48からなる群から選択されるアミノ酸配列を含み、かつ/又はVLは、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、及び配列番号43からなる群から選択されるアミノ酸配列を含む。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、抗原結合断片は、Fab、F(ab’)2、Fab’、Fv、又はscFvである。
【0100】
追加的に、又は代替的に、特定の実施形態では、抗体又は抗原結合断片は、それぞれ、配列番号6及び配列番号1、配列番号18及び配列番号13、配列番号28及び配列番号23、配列番号38及び配列番号33、並びに配列番号48及び配列番号43からなる群から選択されるVHアミノ酸配列及びVLアミノ酸配列を含む。
【0101】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVH領域を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に示される抗LGALS3抗体のVL領域を含む。
【0102】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、そのVHドメインのみ、若しくはそのVLドメインのみによって、又はその3つのVHCDRのみによって、又はその3つのVLCDRのみによって記載され得る。例えば、ヒト軽鎖又は重鎖ライブラリから、それぞれ相補的な軽鎖又は重鎖を特定することによって、元の抗体の親和性と同程度に高いか、又はそれより高い親和性を有するヒト化抗体バリアントが得られる、マウス抗avP3抗体のヒト化を記載する、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるRader C et al.(1998)PNAS95:8910-8915を参照されたい。また、特定のVHドメイン(又はVLドメイン)を使用して、相補的可変ドメインについてのライブラリをスクリーニングすることによって、特定の抗原に結合する抗体を生成する方法を記載する、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるClackson T et al.,(1991)Nature352:624-628を参照されたい。また、特定のVHドメインを使用し、相補的なVLドメインについてライブラリ(例えば、ヒトVLライブラリ)をスクリーニングすることによるものであり、次いで、選択されたVLドメインを使用して、追加の相補的な(例えばヒト)VHドメインの選択を導くことができる、特定の抗原に結合する抗体を生成する方法を記載する、参照によりその全体が本明細書に組み込まれるKim and Hong(2007)J Microbiol45:572-577を参照されたい。
【0103】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、ヒト化抗体、例えば、げっ歯類抗体のヒト化形態であり得る。ヒト化抗体は、限定されないが、CDR-グラフティング(欧州特許第239,400号、国際公開第91/09967号、及び米国特許第5,225,539号、同第5,530、101号、及び同第5,585,089号)、鎖シャッフリング(米国特許第5,565,332号)、ベニアリング(veneering)又はリサーフェシング(resurfacing)(欧州特許第592,106号及び同第519,596号、Padlan(1991)Molecular Immunology28(4/5):489-498、Studnicka et al.(1994)Protein Engineering7(6):805-814、及びRoguska et al.(1994)PNAS91:969-973)、並びに例えば、米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、WO9317105、Sandhu(1994)Gene150(2):409-10、Pedersen et al.(1994)J.Mol.Biol.235(3):959-73、Couto et al.(1995)Cancer Res.55(8):1717-22、Roguska et al.(1996)Protein Eng.9(10):895 904、Baca et al.(1997)J.Biol.Chem.272(16):10678-84、Couto et al.(1995)Cancer Res.55(23Supp):5973s-5977s、Caldas et al.(2000)Protein Eng.13(5):353-60、Morea et al.(2000)Methods20(3):267-79、及びTan et al.(2002)J.Immunol.169:1119-25に開示される技術を含め、当該技術分野において既知の様々な技術を使用して生成することができる。各々が参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許公開第2005/0042664Al号(2005年2月24日)も参照されたい。
【0104】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、複合ヒト抗体である。複合ヒト抗体は、例えば、T細胞エピトープを回避する方法で複数のヒト抗体可変領域配列の断片から可変領域配列を設計することによって生成され、それによって、得られる抗体の免疫原性を最小限に抑えることができる(例えば、Baker et al.(2010)Self Nonself l(4):314-322、Bryson et al.(2010)BioDrugs24(l):l-8、及びJones et al.(2009)Methods Mol Biol.525:405-23を参照されたい)。かかる抗体は、ヒト定常領域配列、例えば、ヒト軽鎖及び/又は重鎖定常領域を含み得る。
【0105】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、脱免疫化抗体であり得る。脱免疫化抗体は、T細胞エピトープが除去された抗体である。脱免疫化抗体を作製するための方法が記載されている。例えば、Jones et al.Methods Mol Biol.2009;525:405-23,xiv、及びDe Groot et al.(2006)Cell.Immunol.244:148-153)を参照されたい。
【0106】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、表6に開示される抗体のいずれかの3個のVHCDR及び3個のVLCDR(すなわち、VHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3)と、ヒト由来フレームワーク領域と、ヒト由来定常領域とを含むヒト化免疫グロブリンである。ヒトフレームワーク領域の非限定的な例は、当該技術分野に記載されており、例えば、Kabat et al.(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest Fifth Edition,U.S.Department of Health and Human Services,NIH Publication No.91-3242)を参照されたい。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、ヒトフレームワーク領域であるか、又はヒトフレームワーク領域に由来する、フレームワーク領域(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメインのフレームワーク領域)を含む。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域であるか、又は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域に由来する、フレームワーク領域(例えば、VLドメイン及び/又はVHドメインのフレームワーク領域)を含む。例えば、抗原特異的非ヒト抗体からのCDR、典型的には、げっ歯類(例えば、マウス又はラット)由来のCDRは、相同ヒト又は非ヒト霊長類(例えば、旧世界類人猿、例えば、Pan troglodytes、Pan paniscus、又はGorilla、Pan troglodytes、旧世界サル、例えば、Macaca属由来のサル、又はカニクイザルMacaca cynomolgus)にグラフティングされる。非ヒト霊長類フレームワーク配列は、米国特許出願公開第2005/0208625号に記載されている。
【0107】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片のVH領域中のVHCDR1、VHCDR2、及び/若しくはVHCDR3の位置、並びに/又はVL領域中のVLCDR1、VLCDR2、及び/若しくはVLCDR3の位置は、炭水化物結合ドメインを含有するLGALS3又はその一部分に対する特異的な結合が維持される限り(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%まで)、1、2、3、4、5、6個、又はそれより多くのアミノ酸位置だけ変動し得る。
【0108】
別の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片のVH領域中のVHCDR1、VHCDR2、及び/若しくはVHCDR3の長さ、並びに/又はVL領域中のVLCDR1、VLCDR2、及び/若しくはVLCDR3の長さは、炭水化物結合ドメインを含有するLGALS3又はその一部分に対する特異的な結合が維持される限り(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%まで)、1、2、3、4、5、6個、又はそれより多くのアミノ酸だけ変動し得る(例えば、それより長くてもよく、又は短くてもよい)。
【0109】
別の実施形態では、本明細書に記載のVHCDR1、VHCDR2、VHCDR3、VLCDR1、VLCDR2、及び/又はVLCDR3のアミノ末端及び/又はカルボキシ末端は、炭水化物結合ドメインを含有するLGALS3又はその一部分に対する特異的な結合が維持される限り(例えば、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%まで)、本明細書に記載のCDRのうちの1つ以上と比較して、1、2、3、4、5、6個、又はそれより多くのアミノ酸だけ伸長されてもよく、又は短縮されてもよい。
【0110】
当該技術分野で既知の任意の方法を使用して、LGALS3に対する特異的な結合が維持されるかどうかを確認することができる(例えば、ELISA結合アッセイ、SPR分析、又はFACS分析)。
【0111】
具体的な態様では、本明細書には、抗体の重鎖及び/又は軽鎖、例えば、重鎖のみ、軽鎖のみ、又は重鎖及び軽鎖の両方を含む、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0112】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖を含み、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、表6に列挙される抗体のうちのいずれか1つのVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、重鎖の定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖を含み、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9;それぞれ、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21;それぞれ、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31;それぞれ、配列番号39、配列番号40、及び配列番号41;又はそれぞれ、配列番号49、配列番号50、及び配列番号51のアミノ酸配列を有するVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、重鎖の定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。
【0113】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖を含み、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、又は配列番号48のアミノ酸配列を含み、重鎖の定常領域は、ヒト重鎖定常領域である。ヒト定常領域配列の非限定的な例は、当該技術分野で説明されており、例えば、上記のKabat EA et al.(1991)を参照されたい。
【0114】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖であり得る。別の具体的な実施形態では、記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の重鎖は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖を含み、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、表6に列挙される抗体のうちのいずれか1つのVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、重鎖の定常領域は、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖である。
【0115】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖を含み、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9;それぞれ、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21;それぞれ、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31;それぞれ、配列番号39、配列番号40、及び配列番号41;又はそれぞれ、配列番号49、配列番号50、及び配列番号51のアミノ酸配列を有するVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含み、重鎖の定常領域は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖である。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、重鎖を含み、重鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、又は配列番号48のアミノ酸配列を含み、重鎖の定常領域は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖である。
【0116】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖を含み、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、表6に列挙される抗体のうちのいずれか1つのVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含み、軽鎖の定常領域は、ヒト軽鎖定常領域である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖を含み、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4;それぞれ、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16;それぞれ、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26;それぞれ、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36;又はそれぞれ、配列番号44、配列番号45、及び配列番号46のアミノ酸配列を有するVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含み、軽鎖の定常領域は、ヒト軽鎖定常領域である。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖を含み、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、又は配列番号43のアミノ酸配列を含み、軽鎖の定常領域は、ヒト軽鎖定常領域である。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の軽鎖は、カッパ軽鎖である。別の具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の軽鎖は、ラムダ軽鎖である。更に別の具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の軽鎖は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖を含み、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、表6に列挙される抗体のうちのいずれか1つのVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含み、軽鎖の定常領域は、カッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖定常領域である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖を含み、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、それぞれ、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4;それぞれ、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16;それぞれ、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26;それぞれ、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36;又はそれぞれ、配列番号44、配列番号45、及び配列番号46のアミノ酸配列を有するVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含み、軽鎖の定常領域は、カッパ又はラムダ軽鎖定常領域である。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、軽鎖を含み、軽鎖の可変領域のアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、又は配列番号43のアミノ酸配列を含み、軽鎖の定常領域は、カッパ又はラムダ軽鎖定常領域である。
【0118】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子、又はヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子において見出される型のものである。別の具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載のいずれかのアミノ酸配列を含むVH及びVLを含み、定常領域は、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子において見出される型、免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2b)のものである。特定の実施形態では、定常領域は、ヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA、若しくはIgY免疫グロブリン分子において見出される型、ヒト免疫グロブリン分子の任意のクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又は任意のサブクラス(例えば、IgG2a及びIgG2)のものである。
【0119】
特定の実施形態では、抗体のエピトープは、例えば、NMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISAアッセイ、質量分析(例えば、MALDI質量分析)と組み合わせた水素/重水素交換、アレイベースオリゴペプチドスキャニングアッセイ、及び/又は変異誘発マッピング(例えば、部位特異的変異誘発マッピング)によって決定することができる。X線結晶学の場合、結晶化は、当該技術分野で既知の方法のいずれかを使用して達成することができる(例えば、Giege R et al.(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr50(Pt4):339-350、McPherson A(1990)Eur J Biochem189:1-23、Chayen NE(1997)Structure5:1269-1274、McPherson A(1976)J Biol Chem251:6300-6303)。抗体:抗原結晶は、周知のX線回折技術を使用して研究することができ、X-PLOR(Yale University,1992,Molecular Simulations,Inc.によって配布、例えば、Meth Enzymol(1985)volumes114&115,編集Wyckoff HW et al.,、米国特許出願第2004/0014194号を参照されたい)、及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr49(Pt1):37-60、Bricogne G(1997)Meth Enzymol276A:361-423,編集Carter CW、Roversi P et al.(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr56(Pt10):1316-1323)などのコンピュータソフトウェアを使用して精密化することができる。変異誘発マッピング研究は、当業者に既知の任意の方法を使用して達成することができる。アラニンスキャニング変異誘発技術を含む、変異誘発技術の説明については、例えば、Champe M et al.(1995)及びCunningham BC&Wells JA(1989)を参照されたい。加えて、同じ又は重複するエピトープを認識し、それに結合する抗体は、例えば、ある抗体が、標的抗原に対する別の抗体の結合を遮断する能力を示すことによって、イムノアッセイなどの通常の技術を使用して特定することができる(例えば、競合結合アッセイ)。競合結合アッセイを使用して、2つの抗体がエピトープに対して類似した結合特異性を有するかどうかを決定することもできる。競合結合は、試験中の免疫グロブリンが、共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を阻害するアッセイにおいて決定することができる。多くの種類の競合結合アッセイ、例えば、固相の直接的又は間接的なラジオイムノアッセイ(RIA)、固相の直接的又は間接的な酵素イムノアッセイ(EIA)、サンドイッチ競合アッセイ(Stahli C et al.(1983)Methods Enzymol9:242-253を参照されたい)、固相の直接的なビオチン-アビジンEIA(Kirkland TN et al.(1986)J Immunol137:3614-9を参照されたい)、固相の直接的な標識化アッセイ、固相の直接的な標識化サンドイッチアッセイ(Harlow E&Lane D,(1988)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Pressを参照されたい)、1-125標識を使用する固相の直接的な標識RIA(Morel GA et al.(1988)Mol Immunol25(1):7-15を参照されたい)、固相の直接的なビオチン-アビジンEIA(Cheung RC et al.(1990)Virology176:546-52)、及び直接的な標識化RIAが知られている。(Moldenhauer G et al.(1990)Scand J Immunol32:77-82)。典型的には、そのようなアッセイは、これらのうちのいずれか、標識されていない試験免疫グロブリン及び標識された参照免疫グロブリンかを含む固体表面又は細胞に結合した精製された抗原の使用を伴う。競合阻害は、試験免疫グロブリンの存在下で固体表面又は細胞に結合した標識の量を決定することによって測定することができる。通常、試験免疫グロブリンは、過剰に存在する。通常、競合抗体が過剰に存在する場合、共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を、少なくとも50~55%、55~60%、60~65%、65~70%)70~75%)、又はそれより多く阻害するだろう。競合結合アッセイは、標識された抗原又は標識された抗体のいずれかを使用して、多数の異なる形式で構成することができる。このアッセイの一般的な態様では、抗原を、96ウェルプレート上に固定化する。次いで、標識されていない抗体が、抗原に対する標識された抗体の結合を遮断する能力を、放射性標識又は酵素標識を使用して測定する。更なる詳細については、例えば、Wagener C et al.(1983)J Immunol130:2308-2315、Wagener C et al.(1984)J Immunol Methods68:269-274、Kuroki M et al.(1990)Cancer Res50:4872-4879、Kuroki M et al.(1992)Immunol Invest21:523-538、Kuroki M et al.(1992)Hybridoma11:391-407and Antibodies:A Laboratory Manual,Ed Harlow E&Lane D editors supra,386-389を参照されたい。
【0120】
特定の態様では、競合結合アッセイを使用して、2つの抗体が、競合ELISAアッセイなどの競合結合アッセイにおいて、同一又は立体的に重複するエピトープを認識する場合に、抗体が(例えば、用量依存性の様式で)別の抗体によって競合的に遮断されるかどうか、例えば、抗体が、参照抗体と同じエピトープ、又は重複するエピトープに本質的に結合するかどうかを決定することができ、このアッセイは、標識された抗原又は標識された抗体のいずれかを使用して、あらゆる数の異なる形式で構成することができる。特定の実施形態では、抗体を、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片との競合結合アッセイにおいて試験することができる。
【0121】
別の態様では、本明細書には、当業者に既知のアッセイを使用して決定されるか、又は本明細書に記載のアッセイを使用して決定される(例えば、ELISA)場合に、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片とのLGALS3に対する結合と(例えば、用量依存性の様式で)競合しない抗体が提供される。別の態様では、本明細書には、当業者に既知のアッセイを使用して決定されるか、又は本明細書に記載のアッセイを使用して決定される(例えば、ELISA)場合に、LGALS3に対する結合から、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を(例えば、用量依存性の様式で)競合的に阻害しない抗体が提供される。
【0122】
特定の実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片がLGALS3に対する結合について自己競合するのと同じ程度まで結合するために本明細書に記載の抗体と競合する抗体が提供される。特定の実施形態では、本明細書には、LGALS3に対する結合について本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片と競合し、競合が、80%を超える(例えば、85%、90%、95%、又は98%、又は80%~85%、80%~90%、85%~90%、又は85%~95%)エピトープに対する第1の抗体の結合の減少として示される、第1の抗体が提供される。具体的な態様では、本明細書には、表6に記載されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及び/若しくはVHCDR3を含むVH、並びに/又は表6に記載されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及び/若しくはVLCDR3を含むVLを含む抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片と、LGALS3に対する特異的な結合に対して(例えば、用量依存性の様式で)競合する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。具体的な態様では、本明細書には、表6に記載されるアミノ酸配列を有するVHドメイン、及び/又は表6に記載されるVLを含む抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片と、LGALS3に対する特異的な結合に対して(例えば、用量依存性の様式で)競合する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0123】
具体的な態様では、本明細書には、表6に記載されるアミノ酸配列を含むVHCDR1、VHCDR2、及び/若しくはVHCDR3を含むVH、並びに/又は表6に記載されるアミノ酸配列を含むVLCDR1、VLCDR2、及び/若しくはVLCDR3を含むVLを含む抗体の同じエピトープ又は重複するエピトープに結合する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。具体的な態様では、本明細書には、表6に記載されるアミノ酸配列を有するVHドメイン、及び/又は表6に記載されるVLを含む抗体の同じエピトープ又は重複するエピトープに結合する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が提供される。
【0124】
当業者に既知であるか、又は本明細書に記載されるアッセイ(例えば、X線結晶学、ELISAアッセイ、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイ)を使用して、2つの抗体が同じエピトープに結合するかどうかを決定することができる。親和性は、限定されないが、平衡解離定数(KD)、及び平衡会合定数(KA)を含む、当該技術分野で既知のいくつかの方法で測定され、かつ/又は表すことができる。KDは、バイオレイヤー干渉法などの当業者に既知の技術によって決定することができる。
【0125】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が結合するエピトープは、免疫原として使用され、抗体を生成する。いくつかの実施形態では、LGALS3の炭水化物結合ドメインの全て又は一部分を含む。
【0126】
抗LGALS3抗体の機能特徴
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約0.5×10-3/秒、1×10-3/秒、1.5×10-3/秒、2×10-3/秒、2.5×10-3/秒、3×10-3/秒、4×10-3/秒、5×10-3/秒、6×10-3/秒、7×10-3/秒、8×10-3/秒、9×10-3/秒、l×10-4/秒、2×10-4/秒、3×10-4/秒、4×10-4/秒、5×10-4/秒、6×10-4/秒、7×10-4/秒、又は8×10-4/秒以下のkdでLGALS3に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約0.5×10-3/秒~8×10-4/秒のkdでLGALS3に結合する。
【0127】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも又は約2.5×104/秒、3×104/秒、3.5×104/秒、4×104/秒、4.5×104/秒、5×104/秒、5.5×104/秒、6×104/秒、6.5×104/秒、7×104/秒、7.5×104/秒、8×104/秒、9x104/秒、又は9×105/秒のkaでLGALS3に結合する。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、少なくとも又は約2.5×104/秒~9×105/秒のkaでLGALS3に結合する。
【0128】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約1000nM、500nM、100nM、50nM、25nM、20nM、15nM、10nM、5nM、4nM、3nM、2nM、1nM、0.5nM、0.1nM、又は0.05nM以下のKDでLGALS3に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約1nM~約1000nMのKDでLGALS3に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約1nM~約100nMのKDでLGALS3に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約5nM~約50nMのKDでLGALS3に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、約5nM~約20nMのKDでLGALS3に結合する。
【0129】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、アイソタイプ対照抗体がLGALS3に結合するよりも少なくとも10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、250、500、又は1000倍大きく、LGALS3に結合する。アイソタイプ対照抗体は、標的に対する特異性を欠いているが、一次抗体(例えば、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片)のクラス及び型と一致する抗体を指す、当該技術分野で認識される用語である。アイソタイプ対照は、特異的な抗体シグナルから非特異的なバックグラウンドシグナルを区別するのに役立つ陰性対照として使用される。
【0130】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、天然リガンド結合と比較して、100~1,000倍増加した親和性でLGALS3に結合する。
【0131】
がん細胞に対するGal-3-PE結合の抗LGALS3抗体又は抗原結合断片媒介性阻害を決定するためのアッセイは、当業者に既知である。例えば、OVCAR3細胞は、ATCC、Manassas,VAから購入することができる。PE標識されたGal-3(Gal-3-PE)は、Abcam、Cambridge,MAから購入することができる。OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の阻害についてのアッセイは、以下のように行うことができる。簡潔に述べると、培養したSKOV3細胞をトリプシン処理し、培養培地で洗浄した。500、1000、又は2000個の細胞を、24ウェルプレートにプレーティングし、37℃、5%CO2加湿インキュベータで成長させた。インキュベートした後、細胞を、様々な濃度のGal-3-PE及び試験抗体とともにインキュベートした。OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を検出した。図3Aのものなどの標準曲線を使用して、阻害の程度を計算した。
【0132】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、モック処置マウスと比較して、本明細書に記載されているか、又は当業者に公知の方法によって評価される場合に、がん細胞に対するGal-3-PE結合を少なくとも約5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、98%、99%、又は100%まで阻害する。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、モック処置マウスと比較して、本明細書に記載されているか、又は当業者に公知の方法によって評価される場合に、がん細胞に対するGal-3-PE結合を少なくとも約25%又は35%)、任意選択的に約75%まで阻害する。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、モック処置がん細胞と比較して、本明細書に記載されているか、又は当業者に公知の方法によって評価される場合に、がん細胞に対するGal-3-PE結合を少なくとも約1倍、1.2倍、1.3倍、1.4倍、1.5倍、2倍、2.5倍、3倍、3.5倍、4倍、4.5倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、又は100倍阻害する。モック処置がん細胞は、例えば、リン酸緩衝生理食塩水又は対照(例えば、抗IgG抗体)で処理され得る。
【0133】
抗体コンジュゲート
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、別の分子、例えば、有機部分、検出可能な標識、及び/又は同位体にコンジュゲートされる。
【0134】
特定の実施形態では、本明細書には、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片のコンジュゲートであって、上述の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が、1つ以上の薬剤、例えば、撮像剤又は細胞傷害性剤にコンジュゲートされるものが提供される。また、本明細書では、二重特異性抗体コンジュゲートであって、上述の二重特異性抗体が、1つ以上の薬剤、例えば、撮像剤又は細胞傷害性剤にコンジュゲートされるものが提供される。また、本明細書では、抗体重鎖コンジュゲートであって、上述の抗体重鎖が、1つ以上の薬剤、例えば、撮像剤又は細胞傷害性剤にコンジュゲートされるものが提供される。また、本明細書では、抗体軽鎖コンジュゲートであって、上述の抗体軽鎖が、1つ以上の薬剤、例えば、撮像剤又は細胞傷害性剤にコンジュゲートされるものが提供される。また、本明細書では、融合タンパク質コンジュゲートであって、上述の融合タンパク質が、薬剤、例えば、撮像剤又は細胞傷害性剤にコンジュゲートされるものが提供される。特定の実施形態では、薬剤は、共有結合的又は非共有結合的にコンジュゲートされる。特定の実施形態では、撮像剤は、検出可能な標識、例えば、発色性、酵素、放射性同位体、同位体、蛍光性、毒性、化学発光性、核磁気共鳴造影剤、又は他の標識である。
【0135】
好適な発色性標識の非限定的な例としては、ジアミノベンジジン及び4-ヒドロキシアゾ-ベンゼン-2-カルボン酸が挙げられる。
【0136】
好適な酵素標識の非限定的な例としては、リンゴ酸デヒドロゲナーゼ、スタフィロコッカルヌクレアーゼ、デルタ-5-ステロイドイソメラーゼ、酵母-アルコールデヒドロゲナーゼ、アルファ-グリセロールホスフェートデヒドロゲナーゼ、トリオースホスフェートイソメラーゼ、ペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、アスパラギナーゼ、グルコースオキシダーゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、リボヌクレアーゼ、ウレアーゼ、カタラーゼ、グルコース-6-ホスフェートデヒドロゲナーゼ、グルコアミラーゼ、及びアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。
【0137】
好適な放射性同位体標識の非限定的な例としては、3H、111In、125I、131I、32P、35S、14C、51Cr、57To、58Co、59Fe、75Se、152Eu、90Y、67Cu、217Ci、211At、212Pb、47Sc、223Ra、224Ra、89Zr、177Lu、及び109Pdが挙げられる。特定の実施形態では、111Inは、肝臓における125I又は131I標識された抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の脱ハロゲン化の問題を回避するため、インビボイメージングに使用される。加えて、111Inは、イメージングのためのより好ましいガンマ放出エネルギーを有する(Perkins et al.(1985)Eur.J.Nucl.Med.70:296-301、Carasquillo et ah,(1987)J.Nucl.Med.25:281-287)。例えば、l-(P-イソチオシアナトベンジル)-DPTAでモノクローナル抗体に連結された111Inは、非腫瘍組織、特に肝臓にはほとんど取り込まれず、したがって、腫瘍局在化の特異性を増強する(Esteban et al.,(1987)J.Nucl.Med.28:861-870)。
【0138】
好適な非放射性同位体標識の非限定的な例としては、157Gd、55Mn、162Dy、52Tr、及び56Feが挙げられる。
【0139】
好適な蛍光性標識の非限定的な例としては、152Eu標識、フルオレセイン標識、イソチオシアネート標識、ローダミン標識、フィコエリスリン標識、フィコシアニン標識、アロフィコシアニン標識、緑色蛍光タンパク質(GFP)標識、o-フタアルデヒド(phthaldehyde)標識、及びフルオレスカミン標識が挙げられる。
【0140】
化学発光性標識の非限定的な例としては、ルミノール標識、イソルミノール標識、芳香族アクリジニウムエステル標識、イミダゾール標識、アクリジニウム塩標識、シュウ酸エステル標識、ルシフェリン標識、ルシフェラーゼ標識、及びエクオリン標識が挙げられる。
【0141】
核磁気共鳴造影剤の非限定的な例としては、Gd、Mn、及び鉄などの重金属核が挙げられる。
【0142】
上述の標識を上述の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、及び融合タンパク質にコンジュゲートするための当業者に既知の技術は、例えば、Kennedy et al.(1976)Clin.Chm.Acta70:1-31、及びSchurs et al.(1977)Clin.Chm.Acta81:1-40に記載されている。後者で言及されるカップリング技術は、グルタルアルデヒド法、過ヨウ素酸塩法、ジマレイミド法、m-マレイミドベンジル-N-ヒドロキシ-スクシンイミドエステル法であり、これらの方法は全て、参照により本明細書に組み込まれる。
【0143】
細胞傷害性剤の非限定的な例としては、細胞増殖抑制性剤又は細胞破壊剤、放射性金属イオン、例えば、アルファ放射体、及び毒素、例えば、シュードモナス外毒素、アブリン、コレラ毒素、リシンA、及びジフテリア毒素が挙げられる。
【0144】
特定の実施形態では、薬剤は、診断剤である。診断剤は、抗原を含有する細胞の位置決めをすることによって疾患を診断又は検出するのに有用な薬剤である。有用な診断剤としては、限定されないが、放射性同位体、色素(ビオチン-ストレプトアビジン複合体を含むものなど)、造影剤、蛍光性化合物又は分子、及び磁気共鳴イメージング(MRI)のための増強剤(例えば、常磁性イオン)が挙げられる。米国特許第6,331,175号は、MRI技術及びMRI増強剤にコンジュゲートされた抗体の調製を記載しており、参照によりその全体が組み込まれる。いくつかの実施形態では、診断剤は、放射性同位体、磁気共鳴イメージングにおける使用のための増強剤、及び蛍光性化合物からなる群から選択される。抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片に放射性金属又は常磁性イオンを組み込むために、イオンに結合するための多数のキレート基が接続している長いテール部を有する試薬と反応させることが必要な場合がある。かかるテール部は、ポリリジン、多糖、又はペンダント基を有し、これがキレート基、例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、ポルフィリン、ポリアミン、クラウンエーテル、ビス-チオセミカルバゾン、ポリオキシムなどのこの目的に有用であることが知られている基に結合することができる、他の誘導体化された鎖若しくは誘導体化可能な鎖などのポリマーであり得る。キレート剤を、標準的な化学物質を使用して抗体に連結する。キレート剤は、通常、免疫反応性の消失が最小限であり、凝集及び/又は他の内部架橋が最小限であり、分子に対する結合の形成を可能にする基によって、抗体に連結され、抗体にキレート剤をコンジュゲートするためのより一般的ではない方法及び試薬は、1989年4月25日に登録された「Antibody Conjugates」という名称のHawthorneに対する米国特許第4,824,659号に開示されており、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。特に有用な金属-キレートの組み合わせとしては、2-ベンジル-DTPA、並びにそのモノメチル及びシクロヘキシル類似体が挙げられ、これらは放射線イメージングのための診断同位体とともに使用される。同じキレート剤は、マンガン、鉄及びガドリニウムなどの非放射性金属と複合体化される場合に、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片とともに使用されると、MRIに有用である。NOTA、DOTA、及びTETAなどの大環状キレート剤は、様々な金属及び放射性金属、最も特定的には、それぞれ、ガリウム、イットリウム、及び銅の放射性核種とともに使用する場合に有用である。かかる金属-キレート剤複合体は、目的の金属に対して環の大きさを調整することによって非常に安定にすることができる。RAITについての223Raなどの安定に結合する核種のために目的とする大環状ポリエーテルなどの他の環型キレート剤が本明細書に包含される。
【0145】
特定の実施形態では、薬剤は、有機薬剤である。このような有機薬剤は、改善された薬物動態特性(例えば、インビボ血清半減期の増加)を有するコンジュゲートを生成することができる。有機部分は、親水性ポリマー基、脂肪酸基、又は脂肪酸エステル基であり得る。本明細書で使用される場合、「脂肪酸」という用語は、モノカルボン酸及びジカルボン酸を包含する。本明細書で使用される場合、「親水性ポリマー基」は、オクタンよりも水に可溶性である有機ポリマー、例えば、ポリリジンを指す。本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を修飾するのに好適な親水性ポリマーは、直鎖又は分枝鎖であってもよく、例えば、ポリアルカングリコール(例えば、ポリエチレングリコール、(PEG)、モノメトキシ-ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール)、炭水化物(例えば、デキストラン、セルロース、オリゴ糖、及び多糖)、親水性アミノ酸のポリマー(例えば、ポリリジン、ポリアルギニン、及びポリアスパルテート)、ポリアルカンオキシド(例えば、ポリエチレンオキシド及びポリプロピレンオキシド)、並びにポリビニルピロリドンを含む。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、又は融合タンパク質を修飾する親水性ポリマーは、別個の分子エンティティとして約800~約150,000ダルトンの分子量を有する。例えば、PEG5000及びPEG20,000(添え字は、ダルトンでのポリマーの平均分子量である)を使用することができる。親水性ポリマー基は、1~約6個のアルキル、脂肪酸、又は脂肪酸エステル基で置換され得る。脂肪酸又は脂肪酸エステル基で置換される親水性ポリマーは、適切な方法を用いることによって調製することができる。例えば、アミン基を含むポリマーを、脂肪酸又は脂肪酸エステルのカルボキシレートに連結することができ、脂肪酸又は脂肪酸エステル上の活性化されたカルボキシレート(例えば、N,N-カルボニルジイミダゾールで活性化された)を、ポリマー上のヒドロキシル基に連結することができる。
【0146】
本明細書で提供される抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、又は融合タンパク質を修飾するのに好適な脂肪酸及び脂肪酸エステルは、飽和であってもよく、又は1つ以上の不飽和単位を含有し得る。本明細書で提供される抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、又は融合タンパク質を修飾するのに好適である脂肪酸としては、例えば、n-ドデカノエート、n-テトラデカノエート、n-オクタデカノエート、n-エイコサノエート、n-ドコサノエート、n-トリアコンタノエート、n-テトラコンタノエート、シス-デルタ-9-オクタデカノエート、全てシス-デルタ-5,8,l1,14-エイコサテトラノエート、オクタン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、ドコサン二酸などが挙げられる。好適な脂肪酸エステルとしては、直鎖又は分枝鎖の低級アルキル基を含むジカルボン酸のモノエステルが挙げられる。低級アルキル基は、1~約12個、好ましくは、1~約6個の炭素原子を含み得る。
【0147】
本明細書で提供されるコンジュゲートは、好適な方法を使用して、例えば、1つ以上の修飾剤との反応によって調製することができる。本明細書で使用される場合、「活性化基」は、適切な条件下で、第2の化学基と反応し、それによって、修飾剤と第2の化学基との間の共有結合を形成することができる化学部分又は官能基である。例えば、アミン反応性活性化基として、例えば、トシレート、メシレート、ハロ(クロロ、ブロモ、フルオロ、ヨード)、N-ヒドロキシスクシンイミジルエステル(NHS)などの求電子性基が挙げられる。チオールと反応し得る活性化基として、例えば、マレイミド、ヨードアセチル、アクリロールイル、ピリジルジスルフィド、5-チオール-2-ニトロ安息香酸チオール(TNB-チオール)などが挙げられる。アルデヒド官能基を、アミン又はヒドラジン含有分子に連結することができ、アジド基を、三価リン基と反応させ、ホスホラミデート又はホスホリミド結合を形成することができる。分子に活性化基を導入するための好適な方法は、当該技術分野で既知である(例えば、Hernanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,Calif.(1996)を参照されたい)。活性化基は、有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、脂肪酸エステル)に対して直接的に、又はリンカー部分、例えば、二価C1~C12基を介して結合してもよく、1個以上の炭素原子が、酸素、窒素、又は硫黄などのヘテロ原子と置き換わっていてもよい。好適なリンカー部分として、例えば、テトラエチレングリコール、(CH23、及びNHが挙げられる。リンカー部分を含む修飾剤は、例えば、モノ-Boc-アルキルジアミン(例えば、モノ-Boc-エチレンジアミン又はモノ-Boc-ジアミノヘキサン)を、l-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)の存在下で脂肪酸と反応させて、遊離アミンと脂肪酸カルボキシレートとの間にアミド結合を形成することによって生成することができる。Boc保護基を、トリフルオロ酢酸(TFA)で処理することによって生成物から除去して、一級アミンを露出させることができ、これを示されるように別のカルボキシレートとカップリングさせることができるか、又は無水マレイン酸と反応させ、得られた生成物が環化して、脂肪酸の活性化されたマレイミド誘導体を生成させることができる。(例えば、その教示全体が参照により本明細書に組み込まれる、Thompson,et al.,WO92/16221を参照されたい。)
【0148】
「修飾剤」は、活性化基を含む好適な有機基(例えば、親水性ポリマー、脂肪酸、及び脂肪酸エステル)を指すことができる。例えば、有機部分は、アミン反応性修飾剤、例えば、PEGのN-ヒドロキシスクシンイミドエステルを用いることによって、非部位特異的な方法で抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片に結合することができる。修飾された抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、又は融合タンパク質のジスルフィド結合(例えば、鎖内ジスルフィド結合)を還元することによっても調製することができる。次いで、還元された抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、二重特異性抗体、抗体重鎖、抗体軽鎖、又は融合タンパク質を、チオール反応性修飾剤と反応させ、本明細書で提供されるコンジュゲートを生成することができる。本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の特定の部位に結合する有機部分を含むコンジュゲートは、好適な方法、例えば、逆タンパク質分解(Fisch et al.(1992)Bioconjugate Chem.,3:147-153、Werlen et al.(1994)Bioconjugate Chem.,5:41 1-417、Kumaran et al.(1997)Protein Sci.6(10):2233-2241、Itoh et al.(1996)Bioorg.Chem.,24(1):59-68、Capellas et al.(1997)Biotechnol.Bioeng.56(4):456-463)、及びHermanson,G.T.,Bioconjugate Techniques,Academic Press:San Diego,Calif.(1996)に記載の方法を使用して、調製することができる。
【0149】
抗体生成
抗体の生成及びスクリーニング
別の態様では、本明細書には、抗LGALS3抗体又は抗原結合断片を生成する方法が提供される。本明細書に記載の抗体又はその抗原結合断片は、抗体の合成のための当該技術分野で既知の任意の方法によって、例えば、化学合成によって、又は組換え発現技術によって、生成することができる。本明細書に記載の方法は、別段の指示がない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び修飾、核酸ハイブリダイゼーション、並びに当該技術分野内の関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、例えば、本明細書で引用される参考文献に記載されており、文献で完全に説明されている。例えば、Maniatis T et al.(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Sambrook J et al.(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Sambrook J et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、Ausubel FM et al.Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987及び年1回の更新)、Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(1987及び年1回の更新)Gait(編集)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press、Eckstein(編集)(1991)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,IRL Press、Birren B et al.(編集)(1999)Genome Analysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0150】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、例えば、合成、DNA配列の遺伝子操作を介する作成を伴う任意の手段によって調製されるか、発現されるか、作成されるか、又は単離される抗体(例えば、組換え抗体)である。特定の実施形態では、かかる抗体は、インビボで動物又は哺乳動物(例えば、ヒト)の抗体生殖細胞系列レパートリー内に天然には存在しないDNA配列によってコードされる配列を含む。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、LGALS3の炭水化物結合ドメイン又はその一部分を使用することを含む方法によって作製される。例えば、本明細書に記載の抗体をどのように生成するかについての例示的な方法の詳細な記載については、実施例1~2を参照されたい。
【0151】
特定の態様では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体は、以下を含む免疫原性ペプチドを使用して生成される。
ADNFSLHDALSGSGNPNPQGWPGAWGNQPAGAGGYPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPSSGQPSATGAYPATGPYGAPAGPLIVPYNLPLPGGVVPRMLITILGTVKPNANRIALDFQRGNDVAFHFNPRFNENNRRVIVCNTKLDNNWGREERQSVFPFESGKPFKIQVLVEPDHFKVAVNDAHLLQYNHRVKKLNEISKLGISGDIDLTSASYTMI(配列番号53)。
【0152】
特定の態様では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体は、ヒトIgG1重鎖のFc領域(CH2及びCH3ドメイン)並びにヒンジ領域に連結されるLGALS3のアミノ酸117~224を含むFc融合タンパク質を含む免疫原性ペプチドを使用して生成される。LGALS3のアミノ酸117~224は、以下のアミノ酸配列によって表される。
PYNLPLPGGVVPRMLITILGTVKPNANRIALDFQRGNDVAFHFNPRFNENNRRVIVCNTKLDNNWGREERQSVFPFESGKPFKIQVLVEPDHFKVAVNDAHLLQYNHRVKKLNEISKLGISGDIDLTS(配列番号54)。
【0153】
いくつかの実施形態では、LGALS3のアミノ酸117~224は、以下の例示的なヌクレオチド配列によってコードされ得る。
CCTTATAACCTGCCTTTGCCTGGGGGAGTGGTGCCTCGCATGCTGATAACAATTCTGGGCACGGTGAAGCCCAATGCAAACAGAATTGCTTTAGATTTCCAAAGAGGGAATGATGTTGCCTTCCACTTTAACCCACGCTTCAATGAGAACAACAGGAGAGTCATTGTTTGCAATACAAAGCTGGATAATAACTGGGGAAGGGAAGAAAGACAGTCGGTTTTCCCATTTGAAAGTGGGAAACCATTCAAAATACAAGTACTGGTTGAACCTGACCACTTCAAGGTTGCAGTGAATGATGCTCACTTGTTGCAGTACAATCATCGGGTTAAAAAACTCAATGAAATCAGCAAACTGGGAATTTCTGGTGACATAGACCTCACCAGT(配列番号55)。
【0154】
特定の実施形態では、免疫原性ペプチドは、免疫原性担体タンパク質にコンジュゲートされる。ほとんどの場合に、小さい抗原(例えば、短いペプチド又は小さいハプテン)は、抗体の生成を誘発するのに十分なほど複雑ではない。免疫原性担体タンパク質は、それらの大きいサイズ及び複雑な構造のために、コンジュゲートされる小さい抗原に免疫原性を付与し、小さい抗原及び免疫原性担体タンパク質の上のエピトープに対して生成される抗体を得てもよい。したがって、小さい抗原は、抗体の成功した生成のための免疫応答を強化するために、常に免疫原性担体タンパク質と化学的にコンジュゲートされる。一般的に使用される免疫原性担体タンパク質としては、限定されないが、キーホールリンペットヘモシアニン(KLH)、Concholepas concholepasヘモシアニン(CCH)、ウシ血清アルブミン(BSA)、及びオボアルブミン(OVA)が挙げられる。具体的な実施形態では、免疫原性ペプチドは、KLHにコンジュゲートされる。KLHは、節足動物及び軟体動物において見出される、ヘモシアニンと呼ばれる非ヘムタンパク質の群に属する銅含有ポリペプチドである。KLHは、キーホールリンペット(Megathura crenulata)から単離される。哺乳動物からのその進化的距離、高分子量、複雑な構造、及びコンジュゲート化のための標的として一級アミンを提供する数百のリジン基を含有する大きな表面のために、KLHは、哺乳動物において、きわめて免疫原性であり、かつ効果的な担体タンパク質である。
【0155】
特定の実施形態では、免疫原性ペプチドは、10~60アミノ酸残基長である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、10~30アミノ酸残基長である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、15~25アミノ酸残基長である。いくつかの実施形態では、免疫原性ペプチドは、15~20アミノ酸残基長である。具体的な実施形態では、免疫原性ペプチドは、15~18アミノ酸残基長である。
【0156】
特定の実施形態では、免疫原性ペプチドは、LGALS3CBDドメインの少なくとも10個のアミノ酸部分を含む。特定の実施形態では、免疫原性ペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列の少なくとも10個のアミノ酸部分を含む。特定の他の実施形態では、免疫原性ペプチドは、配列番号53のアミノ酸配列の少なくとも15、20、25、又は30個のアミノ酸部分を含む。具体的な実施形態では、免疫原性ペプチドは、配列番号53の15~30個の連続アミノ酸残基からなる。
【0157】
別の態様では、本明細書には、LGALS3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を生成する方法であって、対象に、上述の免疫原性ペプチドで免疫付与することを含む、方法が提供される。本明細書に記載の方法に従って免疫付与される対象は、限定されないが、ヤギ、ヒツジ、ロバ、ニワトリ、モルモット、ラット、ウサギ、又はマウスであり得る。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って免疫付与される対象は、ラット、ウサギ、又はマウスである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って免疫付与される対象は、AlivaMab(登録商標)Mouseプラットフォーム(Ablexis)である。具体的な実施形態では、本明細書に記載の方法に従って免疫付与される対象は、マウスである。いくつかの実施形態では、本明細書に記載の方法に従って免疫付与される対象は、様々な免疫グロブリン鎖のキメラ形態を発現するトランスジェニックマウスである。いくつかの実施形態では、トランスジェニックマウスは、マウス定常領域に連結されるヒト可変領域を発現する。(例えば、各々が参照によりその全体が組み込まれる、米国特許第8502018号、同第9580491号、米国特許公開第2017/0218090号、同第2016/0222093号、及び同第2013/0167256号を参照されたい。また、AlivaMab(登録商標)Mouseプラットフォーム(Ablexis)も参照されたい)。
【0158】
対象の免疫付与は、当該技術分野で既知の任意の方法によって、例えば、免疫原性ペプチド及びアジュバントを対象に投与することによって、実施することができる。
【0159】
別の態様では、本明細書には、本明細書に記載の免疫原性ペプチドを調製する方法もまた提供される。特定の実施形態では、免疫原性ペプチドを調製する方法は、ペプチド部分を合成することを含む。免疫原性ペプチドのペプチド部分は、当該技術分野で既知の任意の方法によって、例えば、Fmoc固相ペプチド合成によって、合成することができる。
【0160】
本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を生成するための方法は、例えば、化学合成によって、生体源からの精製によって、又は例えば、哺乳動物細胞又はトランスジェニック調製物に由来するものを含む、組換え発現技術によって、当該技術分野の当業者に既知である。本明細書に記載の方法は、別段の指示がない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び修飾、核酸ハイブリダイゼーション、並びに当該技術分野内の関連分野における従来の技術を用いる。これらの技術は、例えば、本明細書で引用される参考文献に記載されており、文献で完全に説明されている。例えば、Maniatis et al.(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Sambrook et al.(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press、Sambrook et al.(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons(1987及び年1回の更新)、Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(1987及び年1回の更新)Gait(編集)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press、Eckstein(編集)(1991)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,IRL Press、Birren et al.(編集)(1999)Genome Analysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Pressを参照されたい。
【0161】
本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を生成するための様々な方法が、当該技術分野に存在する。例えば、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、組換えDNA方法、例えば、米国特許第4,816,567号に記載の方法によって作製され得る。本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードする1つ以上のDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖、又はヒト、ヒト化、又は他の供給源からのそのような鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することができるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)容易に単離され、配列決定され得る。単離されたら、DNAを、発現ベクター内に配置することができ、次いで、他の方法では免疫グロブリンタンパク質を産生しないNSO細胞、サルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、酵母細胞、藻類細胞、卵、又は骨髄腫細胞などの宿主細胞に形質転換され、組換え宿主細胞において、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の合成を得る。DNAはまた、例えば、相同ヒト配列の代わりに所望の種のヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのためのコード配列を置き換えることによって(米国特許第4,816,567号、Morrison et al.(上記))、又は免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのためのコード配列の全て又は一部を共有結合することによって、修飾することができる。そのような非免疫グロブリンポリペプチドを、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の定常ドメインに置換し得る。特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするDNAは、少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを使用しても調製され、その乳においてそのような抗体を生成するトランスジェニック動物又は哺乳動物、例えば、ヤギ、ウシ、ウマ、ヒツジなどを提供することができる。かかる動物を、既知の方法を使用して提供することができる。例えば、限定されないが、各々が参照により全体的に本明細書に組み込まれる、米国特許第5,827,690号、同第5,849,992号、同第4,873,316号、同第5,849,992号、同第5,994,616号、同第5,565,362号、同第5,304,489号を参照されたい。
【0162】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、追加的に、本明細書で提供される少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを使用して調製され、そのような抗体を産生するトランスジェニック植物及び培養された植物細胞(例えば、限定されないが、タバコ及びトウモロコシ)、植物部分、又はそれらから培養された細胞中の特定の部分又はバリアントを提供することができる。非限定的な例として、組換えタンパク質を発現するトランスジェニックタバコ葉は、例えば、誘導性プロモーターを使用して、大量の組換えタンパク質を提供するために首尾よく使用されてきた。例えば、Cramer et al.(1999)Curr.Top.Microbol.Immunol.240:95-118(1999)、及びその中に引用される参考文献を参照されたい。また、トランスジェニックトウモロコシは、他の組換え系で産生されたもの、又は天然源から精製されたものと同等の生物学的活性を有し、商業的生産レベルで哺乳動物タンパク質を発現させるために使用されてきた。例えば、Hood et al.(1999)Adv.Exp.Med.Biol.464:127-147、及びその中に引用される参考文献を参照されたい。抗体はまた、タバコ種子及びジャガイモ塊茎を含む、抗体断片、例えば、scFvを含むトランスジェニック植物種子から大量に生成されている。例えば、Conrad et al.(1998)Plant Mol.Biol.38:101-109、及びその中に引用される参考文献を参照されたい。したがって、既知の方法に従って、トランスジェニック植物を使用して抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を生成することもできる。また、例えば、Fischer et al.(1999)Biotechnol.Appl.Biochem.30:99-108、Ma et al.(1995)Trends Biotechnol.13:522-7、Ma et al,(1995)Plant Physiol.109:341-6、Whitelam et al.(1994)Biochem Soc.Trans.22:940-944、及びその中に引用される参考文献を参照されたい。上の参考文献のそれぞれは、参照により本明細書に全体的に組み込まれる。
【0163】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、本明細書で提供される少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを使用して調製され、かかる抗LGALS3抗体又は抗原結合断片を産生する細菌を提供することができる。非限定的な例として、組換えタンパク質を発現するE.coliは、大量の組換えタンパク質を提供するために首尾よく使用されてきた。例えば、Verma et al.(1998)216(1-2):165-181、及びその中に引用される参考文献を参照されたい。
【0164】
多重特異性(例えば、二重特異性抗体)を作製するための方法が記載されており、例えば、米国特許第7,951,917号、同第7,183,076号、同第8,227,577号、同第5,837,242号、同第5,989,830号、同第5,869,620号、同第6,132,992号、及び同第8,586,713号を参照されたい。
【0165】
特定の実施形態では、本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、二重特異性抗体の生成に利用される。二重特異性抗体は、2つのハイブリドーマを融合して、2つの結合部位を有するハイブリッド免疫グロブリン分子を作成することによって、作製することができる。二重特異性抗体は、T細胞に対して腫瘍の動きを制限するだけではなく、T細胞上のCD3を架橋し、活性化カスケードを開始する。このようにして、T細胞受容体ベースの細胞傷害性は、MHC制限を回避する所望の腫瘍標的にリダイレクトされる。抗CD3抗LGALS3二重特異性結合分子によってポリクローナル活性化T細胞(ATC)をアーミングし、抗LGALS3抗体の標的特異性と、T細胞の非MHCで制限されたパーフォリン/グランザイム媒介性細胞傷害性とを組み合わせる。二重特異性結合分子BsAb又はBiTEは、患者に注入する前に、エクスビボで増殖させた活性化T細胞をアーミングすることができる。この戦略は、あらゆるATCを特定のCTLに変換する(Thakur and Lum(2010)Curr Opin Mol Ther12,340-349、Grabert et al.(2006)Clin Cancer Res12,569-576)。
【0166】
二重特異性結合分子は、抗LGALS3抗体で構成されていてもよく、抗LGALS3抗体は、免疫グロブリンであり、免疫グロブリンの各軽鎖は、融合タンパク質であり、融合タンパク質は、CD3を標的とするscFvに対してペプチドリンカーを介して連結される免疫グロブリン軽鎖である。CH2ドメイン中のN297A変異によって、FcR又はClq結合を生じないグリコシル化が起こる。
【0167】
本明細書で提供される抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を利用して、CARを生成し得る。CARは、最も一般的に、一本鎖可変断片長抗体(scFv)、例えば、所与の腫瘍関連抗原及び/又はそのバリアントを標的とするモノクローナル抗体に由来するもの、膜貫通ドメイン(例えば、CD8、CD28、OX-40、及び4-1BBなどの共刺激分子などのT細胞表面分子に由来する膜貫通ドメイン)、TCR複合体のシグナル伝達部分、例えば、TCRゼータ(ζ)鎖の細胞内ドメイン及び/又は追加の部分、例えば、その細胞質シグナル伝達ドメインで構成される。
【0168】
具体的な実施形態では、本明細書に記載のモノクローナル抗LGALS3抗体の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域は、モノクローナル抗LGALS3抗体を生成するハイブリドーマ細胞株から単離される。例えば、RNAは、ハイブリドーマ細胞株から抽出され、cDNAは、逆転写PCRによってRNAから生成される。VH及びVL鎖可変領域は、そのような可変領域に特異的なプライマーを利用する標準的なPCRによってクローニングされる。得られたVH及びVL断片を、シャトルベクター、例えば、TopoTA PCR 2.1クローニングベクター(Invitrogen)にサブクローニングし、配列決定する。VH及びVL断片は、その後、(Gly4Ser)3スペーサードメイン(配列番号56)にライゲーションされ、抗LGALS3抗体scFvを生成し、重複PCRによって、ヒトCD8リーダーペプチド(CD8L)に融合される(CD8L-抗LGALS3抗体scFv)(例えば、Maher et al.(2002)Nat Biotechnol20(l):70-5及びGong et al.(1999)Neoplasia1(2):123-7を参照されたい)。CD8L-抗LGALS3抗体scFvのコード領域は、ヒトCD8ヒンジ及び膜貫通ドメインに融合されるか、又は代替的に、CD28膜貫通及び細胞質シグナル伝達ドメインに融合され、T細胞受容体0)3-ζシグナル伝達ドメインに融合される(例えば、Maher et al.(2002)Nat Biotechnol20(l):70-5、Brentjens et al.(2003)Nat Med9(3):279-86、及びBrentjens et al.(2007)Clin Cancer Res13(18Pt l):5426-35を参照されたい)。
【0169】
また、本明細書には、本明細書に記載のCARを発現するT細胞も提供される。CARを発現するT細胞の生成のための方法は、当該技術分野で既知である。例えば、CAR構築物を、改変MMLVレトロウイルスベクターSFG(例えば、Riviere et al.(1995)Proc Natl Acad Sci USA92(15):6733-7を参照されたい)、又は他の好適なレトロウイルスベクターにサブクローニングし得る。いくつかの実施形態では、レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクター、例えば、HIV系ベクターである。形質導入されたgpg29線維芽細胞に由来するVSV-G擬似型レトロウイルス上清を使用して、安定なPG13テナガザル白血病ウイルス(GaLV)エンベロープ擬似型レトロウイルスを産生する細胞株を構築することができる(例えば、Gong et al.(1999)Neoplasia1(2):123-7を参照されたい)。単離された健康なドナーの末梢血単核細胞(PBMC)を、2μg/mlのフィトヘムアグルチニン(PHA)(Sigma.St.Louis,MO)で活性化し、レトロネクチンコーティングされた非組織培養プレート上でレトロウイルスによる形質導入し(Quintas-Cardama A,et al.(2007)Hum Gene Ther18(12):1253-60)、CARを組換え発現するT細胞を生成することができる。T細胞内へのCARの遺伝子移入は、FACSによって評価することができる。
【0170】
単一ドメイン抗体、例えば、軽鎖を欠く抗体は、当該技術分野で周知の方法によって生成することができる。例えば、各々が参照によりその全体が組み込まれる、Riechmann and Muyldermans(1999)J Immunol231:25-38、Nuttall SD et al.(2000)Curr Pharm Biotechnol1(3):253-263、Muyldermans S,(2001)J Biotechnol74(4):277-302、米国特許第6,005,079号、及び国際公開第94/04678号、同第94/25591号、及び同第01/44301号を参照されたい。
【0171】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、本明細書に記載の抗LGALS3抗体として同じエピトープ又は重複するエピトープに結合し、ヒト抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、LGALS3に対する結合から、本明細書に記載の抗体のうちのいずれかを(例えば、用量依存性の様式で)競合的に遮断し、ヒト抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片である。
【0172】
ヒト抗体は、当該技術分野で既知の任意の方法を使用して生成することができる。例えば、機能的内因性免疫グロブリンを発現することができないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現することができるトランスジェニックマウスを使用することができる。特に、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は、無作為に、又は相同組換えによってマウス胚性幹細胞に導入され得る。代替的に、ヒト可変領域、定常領域、及び多様性領域を、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子に加えて、マウス胚性幹細胞に導入することができる。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は、相同組換えによるヒト免疫グロブリン遺伝子座の導入と別々に、又は同時に、非機能性にすることができる。特に、JH領域のホモ接合性欠失は、内因性抗体生成を防止する。修飾された胚性幹細胞を増殖させ、胚盤胞にマイクロインジェクションして、キメラマウスを生成する。次いで、キメラマウスを繁殖させて、ヒト抗体を発現するホモ接合性子孫を生成する。トランスジェニックマウスは、選択された抗原、例えば、抗原の全て又は一部分で、通常の様式で免疫付与される。抗原に対して指向するモノクローナル抗体は、従来のハイブリドーマ技術を使用して免疫付与されたトランスジェニックマウスから得ることができる。トランスジェニックマウスが保有するヒト免疫グロブリン導入遺伝子は、B細胞分化中に再配列し、その後、クラススイッチ及び体細胞変異を受ける。したがって、かかる技術を使用して、治療上有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を生成することが可能である。ヒト抗体を生成するためのこの技術の概要については、例えば、Lonberg and Huszar(1995)Int Rev Immunol13:65-93を参照されたい。ヒト抗体及びヒトモノクローナル抗体を生成するためのこの技術、並びにそのような抗体を生成するためのプロトコルの詳細な説明については、例えば、国際公開第98/24893号、同第96/34096号、及び同第96/33735号、並びに米国特許第5,413,923号、同第5,625、126号、同第5,633,425号、同第5,569,825号、同第5,661,016号、同第5,545,806号、同第5,814,318号、及び同第5,939,598号を参照されたい。ヒト抗体を生成することができるマウスの例としては、Xenomouse(商標)(Abgenix,Inc.、米国特許第6,075,181号及び同第6,150,184号)、HuAb-Mouse(商標)(Mederex,Inc./Gen Pharm、米国特許第5,545,806号及び同第5,569,825号)、Trans Chromo Mouse(商標)(Kirin)、並びにKM Mouse(商標)(Medarex/Kirin)が挙げられる。
【0173】
LGALS3に特異的に結合するヒト抗体は、ヒト免疫グロブリン配列に由来する抗体ライブラリを使用して、上述のファージディスプレイ法を含む当該技術分野で既知の様々な方法によって作製することができる。また、米国特許第4,444,887号、同第4,716,111号、及び同第5,885,793号、並びに国際公開第98/46645号、同第98/50433号、同第98/24893号、同第98/16654号、同第96/34096号、同第96/33735号、及び同第91/10741号を参照されたい。
【0174】
いくつかの実施形態では、ヒト抗体は、マウス-ヒトハイブリドーマを使用して生成され得る。例えば、エプスタインバーウイルス(EBV)で形質転換されたヒト末梢血リンパ球を、マウス骨髄腫細胞と融合させて、ヒトモノクローナル抗体を分泌するマウス-ヒトハイブリドーマを生成することができ、これらのマウス-ヒトハイブリドーマをスクリーニングして、標的抗原に特異的に結合するヒトモノクローナル抗体を分泌するものを決定することができる。そのような方法は既知であり、当該技術分野に記載されており、例えば、Shinmoto H et al.(2004)Cytotechnology46:19-23、Naganawa Y et al.(2005)Human Antibodies14:27-31を参照されたい。
【0175】
LGALS3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を生成する例示的な方法、並びにLGALS3に特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片をスクリーニングし、選択する方法を、実施例2に記載している。例示的な実施形態では、ハイブリドーマによって分泌されるモノクローナル抗体を、LGALS3炭水化物結合ドメインペプチド(CBD)、全長LSGAL3タンパク質に対する結合についてスクリーニングする。いくつかの実施形態では、重合ドメインを含有するLGALS3N末端を、対照として使用する。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、ヒトGal3(又はガレクチンファミリーの他のメンバー、例えば、LGAL1、LGAL7、LGAL8、及びLGAL9に対して、更にスクリーニングする。いくつかの実施形態では、モノクローナル抗体を、好適ながん細胞に対するヒトGal-3の結合の阻害についての機能的アッセイを使用することによって、更にスクリーニングする。
【0176】
本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が生成されたら、免疫グロブリン分子の精製のための当該技術分野で知られている任意の方法によって、例えば、クロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和性によって、特に、タンパク質Aの後の特異的抗原についての親和性、及びサイジングカラムクロマトグラフィーによって)、遠心分離、溶解性の差によって、又はタンパク質の精製のための任意の他の標準的な技術によって、精製することができる。更に、精製を容易にするために、本明細書に記載の抗体を、本明細書に記載されるか、又は当該技術分野で既知の異種ポリペプチド配列に融合し得る。
【0177】
具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、単離されるか、又は精製される。一般に、単離された抗体は、その単離された抗体とは異なる抗原特異性を有する他の抗体を実質的に含まない抗体である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の調製物は、細胞物質及び/又は化学前駆体を実質的に含まない。「細胞物質を実質的に含まない」という言語は、抗体が、単離されるか、若しくは組換え産生される細胞の細胞構成成分から分離される、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の調製物を含む。したがって、細胞物質を実質的に含まない抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、異種タンパク質(本明細書では「混入タンパク質」とも称される)及び/又は抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片のバリアント、例えば、抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片の異なる翻訳後修飾形態、又は抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片の他の異なる態様(例えば、抗体断片)を(乾燥重量で)約30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%、又は0.1%より少なく有する抗体の調製物を含む。抗体が組換え産生される場合、これも一般に、培養培地を実質的に含まず、すなわち、培養培地は、タンパク質調製物の体積の約20%、10%、2%、1%、0.5%、又は0.1%未満を表す。抗体が化学合成によって生成される場合、一般に、化学前駆体又は他の化学物質を実質的に含まず、すなわち、タンパク質の合成に関与する化学前駆体又は他の化学物質から分離される。したがって、抗体のそのような調製物は、目的の抗体以外の化学前駆体又は化合物を(乾燥重量で)約30%、20%、10%、又は5%未満有する。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗体は、単離されるか、又は精製される。
【0178】
ポリヌクレオチド
特定の実施形態では、本明細書には、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供される。また、本明細書には、そのようなポリヌクレオチドを含むベクターも提供される。また、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の抗原をコードするポリヌクレオチドも提供される。また、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドに対してストリンジェントな条件下で、又はより低ストリンジェンシーなハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチドが提供される。
【0179】
「精製された」という言語は、他の材料、例えば、細胞物質、培養培地、他の核酸分子、化学前駆体、及び/又は他の化学物質を約15%、10%、5%、2%、1%、0.5%、又は0.1%より少なく(特に、10%より少なく))有するポリヌクレオチド又は核酸分子の調製物を含む。具体的な実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸分子は、単離されるか、又は精製される。
【0180】
本明細書で提供される核酸分子は、RNAの形態、例えば、mRNA、hnRNA、tRNA、若しくは任意の他の形態、又は限定されないが、cDNA、及びクローニングによって得られるか、若しくは、合成的に生成されるゲノムDNAを含むDNAの形態、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。DNAは、三本鎖、二本鎖若しくは一本鎖、又はそれらの任意の組み合わせであり得る。DNA若しくはRNAの少なくとも1つの鎖の任意の部分は、センス鎖としても知られるコード鎖であり得るか、又はアンチセンス鎖とも称される非コード鎖であり得る。
【0181】
特定の実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供される。特定の態様では、本明細書には、ポリヌクレオチドであって、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含み、LGALS3に特異的に結合し、本明細書に記載のアミノ酸配列、並びにLGALS3に対する結合について、そのような抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片と競合するか、又はそのような抗体と同じエピトープに結合する抗体を含む、ポリヌクレオチドも提供される。
【0182】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、当該技術分野で知られる任意の方法によって得ることができる。例えば、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列が既知である場合、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、化学合成されたオリゴヌクレオチドから組み立てられることができてもよく(例えば、Kutmeier et al.(1994)BioTechniques17:242に記載されるように)、簡潔に述べると、抗体をコードする配列の部分を含有する重複するオリゴヌクレオチドの合成、これらのオリゴヌクレオチドのアニーリング及びライゲーション、次いで、PCRによるライゲーションされたオリゴヌクレオチドの増幅を伴う。
【0183】
代替的に、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドは、好適な供給源からの核酸から生成することができる。特定の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸を含有するクローンが利用可能ではないが、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の配列が既知である場合、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードする核酸は、化学合成されてもよく、又は配列の3’及び5’末端にハイブリダイズする合成プライマーを用いたPCR増幅によって、又は例えば抗体をコードするcDNAライブラリからのcDNAクローンを特定するために特定の遺伝子配列に特異的なオリゴヌクレオチドプローブを用いたクローニングによって、好適な供給源(例えば、抗体cDNAライブラリ、又はそれらから生成されるcDNAライブラリ、又は核酸、好ましくはそれらから単離されるポリA+RNA、抗体を発現する任意の組織若しくは細胞、例えば、本明細書で提供される抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片を発現するように選択されるハイブリドーマ細胞)から得られてもよい。次いで、PCRによって生成された増幅された核酸を、当該技術分野で周知の任意の方法を使用して、複製可能なクローニングベクターにクローニングしてもよい。そのような実施形態では、そのような抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするポリヌクレオチドを、ヌクレオチド配列の操作のための当該技術分野で周知の方法、例えば、組換えDNA技術、部位特異的変異誘発、PCRなど(例えば、両方とも参照によりその全体が組み込まれる、Sambrook et al.(19900Molecular Cloning,A Laboratory Manual,2d Ed.,Cold Spring Harbor Laboratory,Cold Spring Harbor,N.Y.、及びAusubel et al.,編集(1998)Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley&Sons,N.Y.に記載される技術)を使用して操作し、異なるアミノ酸配列を有する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を生成し、例えば、アミノ酸の置換、欠失、及び/又は挿入を作成することができる。例えば、かかる操作を実施して、コードされたアミノ酸を脱グリコシル化するか、又は抗体がClq、Fc受容体に結合する能力を破壊するか、又は補体系を活性化することができる。
【0184】
本明細書で提供される単離された核酸分子としては、任意選択的に、1つ以上のイントロン、例えば、限定されないが、少なくとも1つの重鎖又は軽鎖のCDR1、CDR2及び/又はCDR3として、少なくとも1つの相補性決定領域(CDR)の少なくとも1つの特定された部分とともに、オープンリーディングフレーム(ORF)を含む、核酸分子;抗LGALS3抗体のためのコード配列又は可変領域を含む核酸分子;並びに上述のものとは実質的に異なるが、遺伝子コードの縮重に起因して、依然として本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む、核酸分子が挙げられ得る。
【0185】
また、本明細書には、本明細書に記載のポリヌクレオチドに対して選択的なハイブリダイゼーション条件下でハイブリダイズする単離された核酸が提供される。したがって、この実施形態のポリヌクレオチドは、そのようなポリヌクレオチドを含む核酸を単離し、検出し、かつ/又は定量化するために使用することができる。例えば、本明細書で提供されるポリヌクレオチドを使用して、寄託されたライブラリ中の部分長又は全長のクローンを特定し、単離するか、又は増幅させることができる。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、ヒト若しくは哺乳動物核酸ライブラリから単離されるか、又は他の方法でヒト若しくは哺乳動物核酸ライブラリからのcDNAに相補的なゲノム又はcDNA配列である。
【0186】
核酸は、好都合には、本明細書で提供されるポリヌクレオチドに加えて、配列を含み得る。例えば、1つ以上のエンドヌクレアーゼ制限部位を含むマルチクローニング部位を核酸に挿入して、ポリヌクレオチドの単離を補助することができる。加えて、翻訳可能な配列を挿入して、本明細書で提供される翻訳されたポリヌクレオチドの単離を補助することができる。例えば、ヘキサ-ヒスチジンマーカー配列(配列番号57)は、本明細書で提供されるポリペプチドを精製するための好都合な手段を提供する。本明細書で提供される核酸(コード配列を除く)は、任意選択的に、本明細書で提供されるポリヌクレオチドのクローニング及び/又は発現のためのベクター、アダプター、又はリンカーである。
【0187】
また、追加の配列を、かかるクローニング及び/又は発現配列に付加して、クローニング及び/又は発現におけるそれらの機能を最適化し、ポリヌクレオチドの単離を補助し、又は細胞へのポリヌクレオチドの導入を改善することもできる。クローニングベクター、発現ベクター、アダプター、及びリンカーの使用は、当該技術分野で周知である。(例えば、Ausubel(上記)、又はSambrook(上記)を参照されたい)。
【0188】
具体的な実施形態では、通常の組換えDNA技術を使用して、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片のCDRのうちの1つ以上を、既知のフレームワーク領域内に挿入することができる。フレームワーク領域は、天然に存在するか、又はコンセンサスフレームワーク領域、好ましくはヒトフレームワーク領域であり得る(例えば、ヒトフレームワーク領域のリストについては、Chothia et al.,(1998)J.Mol.Biol.278:457-479を参照されたい)。いくつかの実施形態では、フレームワーク領域及びCDRの組み合わせによって生成されるポリヌクレオチドは、LGALS3に特異的に結合する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードする。1つ以上のアミノ酸置換が、フレームワーク領域内で行われてもよく、好ましくは、アミノ酸置換は、抗体のその抗原に対する結合を改善する。追加的に、そのような方法を使用して、鎖内ジスルフィド結合に関与する1つ以上の可変領域システイン残基のアミノ酸置換又は欠失を行い、1つ以上の鎖内ジスルフィド結合を欠く抗体分子を生成することができる。ポリヌクレオチドに対する他の改変は、本明細書及び当該技術分野の範囲内で提供される。
【0189】
特定の実施形態では、単離又は精製された核酸分子、又はその断片は、別の核酸分子と連結すると、融合タンパク質をコードし得る。融合タンパク質の生成は、当業者の技術常識の範囲内であり、制限酵素又は組換えクローニング技術の使用を伴ってもよい(例えば、Gateway(商標)(Invitrogen)を参照されたい)。米国特許第5,314,995号も参照されたい。
【0190】
特定の実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、ベクター(例えば、発現ベクター)の形態である。特定の態様では、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又はLGALS3に特異的に結合するその抗原結合断片(例えば、可変軽鎖領域及び/又は可変重鎖領域)を含むポリヌクレオチド、並びにベクター、例えば、宿主細胞(例えば、E.coli及び哺乳動物細胞)におけるそれらの効率的な発現のためのそのようなポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。いくつかの実施形態では、ポリヌクレオチドは、単離されるか、又は精製される。
【0191】
特定の態様では、本明細書には、ポリヌクレオチドであって、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含み、本明細書に記載のアミノ酸配列、並びにLGALS3に対する結合について、(例えば、用量依存性の様式で)そのような抗体と競合するか、又はそのような抗体のエピトープと同じ若しくは重複するエピトープに結合する抗体を含む、ポリヌクレオチドが提供される。
【0192】
特定の態様では、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の軽鎖又は重鎖をコードする核酸配列を含むポリヌクレオチドが提供される。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のVHCDRを含む重鎖をコードするヌクレオチド配列を含み得る(例えば、表6を参照されたい)。ポリヌクレオチドは、本明細書に記載のVLCDRを含む軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含み得る(例えば、表6を参照されたい)。
【0193】
特定の実施形態では、本明細書には、ポリヌクレオチドであって、3つのVHCDRを含み、例えば、表6に記載されるVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3を含有する抗LGALS3抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、抗体が、LGALS3に特異的に結合する、ポリヌクレオチドが提供される。具体的な実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、46H02抗体(すなわち、それぞれ、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9)、12H07抗体(すなわち、それぞれ、配列番号19、配列番号20、及び配列番号21)、20F08抗体(すなわち、それぞれ、配列番号29、配列番号30、及び配列番号31)、38E05抗体(すなわち、それぞれ、配列番号39、配列番号40、及び配列番号41)、又は39F02抗体(すなわち、それぞれ、配列番号49、配列番号50、及び配列番号51)のVHCDR1、VHCDR2、及びVHCDR3をコードし、抗体は、LGALS3に特異的に結合する。特定の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列(例えば、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、又は配列番号48)を含む重鎖可変領域を含む本明細書に記載の抗LGALS3抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、抗体は、LGALS3に特異的に結合する。
【0194】
特定の実施形態では、本明細書には、ポリヌクレオチドであって、3つのVLCDRを含み、例えば、表6に記載されるVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3を含有する抗LGALS3抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、抗体が、LGALS3に特異的に結合する、ポリヌクレオチドが提供される。具体的な実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、46H02抗体(すなわち、それぞれ、配列番号2、配列番号3、及び配列番号4)、12H07抗体(すなわち、それぞれ、配列番号14、配列番号15、及び配列番号16)、20F08抗体(すなわち、それぞれ、配列番号24、配列番号25、及び配列番号26)、38E05抗体(すなわち、それぞれ、配列番号34、配列番号35、及び配列番号36)、又は39F02抗体(すなわち、それぞれ、配列番号44、配列番号45、及び配列番号46)のVLCDR1、VLCDR2、及びVLCDR3をコードし、抗体は、LGALS3に特異的に結合する。特定の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、又は配列番号43)を含む軽鎖可変領域を含む本明細書に記載の抗LGALS3抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、抗体は、LGALS3に特異的に結合する。
【0195】
特定の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、本明細書に記載のアミノ酸配列(例えば、配列番号6、配列番号18、配列番号28、配列番号38、又は配列番号48)を含む重鎖可変領域と、本明細書に記載のアミノ酸配列(例えば、配列番号1、配列番号13、配列番号23、配列番号33、又は配列番号43)を含む軽鎖可変領域とを含む本明細書に記載の抗LGALS3抗体をコードするヌクレオチド配列を含み、抗体は、LGALS3に特異的に結合する。
【0196】
具体的な態様では、本明細書には、軽鎖及び重鎖、例えば、別個の軽鎖及び重鎖を含む抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチドが提供される。重鎖に関して、具体的な実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、アルファ(a)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)、又はミュー(μ)重鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。軽鎖に関して、具体的な実施形態では、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、カッパ(κ)又はラムダ(λ)軽鎖をコードするヌクレオチド配列を含む。
【0197】
細胞及びベクター
特定の実施形態では、本明細書には、1つ以上の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を(例えば、組換え)発現する細胞(例えば、単離された細胞、又はエクスビボ細胞)が提供される。また、本明細書には、宿主細胞、好ましくは哺乳動物細胞における組換え発現のために、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含むベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。また、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を組換え発現させるためのそのようなベクター又はヌクレオチド配列を含む細胞(例えば、単離された細胞、又はエクスビボ細胞)が提供される。また、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を生成するための方法であって、そのような抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を細胞(例えば、単離された細胞、又はエクスビボ細胞)から発現させることを含む、方法が提供される。
【0198】
ベクター(例えば、発現ベクター)は、細胞(例えば、エクスビボ細胞)中で発現される遺伝子を含むDNA分子である。典型的には、遺伝子発現は、構成的プロモーター若しくは誘導性プロモーター、組織特異的調節エレメント及びエンハンサーを含む特定の調節エレメントの制御下に配置される。そのような遺伝子は、調節エレメント、例えば、プロモーターに「作動可能に連結される」と言われる。組換え宿主は、クローニングベクター又は発現ベクターのいずれかを含有する任意の原核細胞又は真核細胞であり得る。この用語はまた、宿主細胞の染色体若しくはゲノム、又は宿主細胞(例えば、エクスビボ細胞)の細胞にクローニングされた遺伝子を含有するように遺伝子操作された原核細胞又は真核細胞、及びトランスジェニック動物も含む。一実施形態では、プロモーターは、CMVプロモーターである。
【0199】
特定の実施形態では、本明細書には、本明細書に記載される1つ以上のポリヌクレオチドを含むベクターが提供される。特定の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドを、好適なベクターにクローニングすることができ、これを使用して、好適な宿主を形質転換又はトランスフェクトすることができる。そのようなベクターを構築するためのベクター及び方法は、当該技術分野の当業者に既知であり、一般的な技術参照文献に記載されている(一般に、”Recombinant DNA Part D,”Methods in Enzymology,Vol.153,Wu and Grossman編集,Academic Press(1987)を参照されたい)。特定の実施形態では、ベクターは、必要に応じて、ベクターがDNAであるか、又はRNAであるかを考慮に入れつつ、ベクターが導入される宿主の種類(例えば、細菌、真菌、植物、昆虫、又は哺乳動物)に特異的である、調節配列、例えば、転写及び翻訳の開始コドン及び終止コドンを含む。特定の実施形態では、ベクターは、宿主の属に特異的である調節配列を含む。特定の実施形態では、ベクターは、宿主の種に特異的である調節配列を含む。特定の実施形態では、ベクターは、形質転換又はトランスフェクトされた宿主の選択を可能にする1つ以上のマーカー遺伝子を含む。マーカー遺伝子の非限定的な例としては、殺生物剤耐性、例えば、抗生物質、重金属などに対する耐性、原栄養性を提供するための栄養要求性宿主における相補性などが挙げられる。特定の実施形態では、ベクターは、アンピシリン及びハイグロマイシ選択可能マーカーを含む。
【0200】
特定の実施形態では、発現ベクターは、本明細書に記載のポリヌクレオチドに作動可能に連結される天然のプロモーター又は規範的なプロモーターを含み得る。例えば、強い、弱い、誘導性、組織特異的、及び発達特異的なプロモーターの選択は、当業者の範囲内である。同様に、上述のように、核酸分子又はその断片をプロモーターと組み合わせることもまた、当該技術分野の範囲内である。
【0201】
好適なベクターの非限定的な例としては、伝播若しくは増殖のために、又は発現のために、又はその両方のために設計されたものが挙げられる。例えば、クローニングベクターは、pUCシリーズ、pBluescriptシリーズ(Stratagene、LaJolla,Calif)、pETシリーズ(Novagen、Madison,Wis.)、pGEXシリーズ(Pharmacia Biotech、Uppsala,Sweden)、及びpEXシリーズ(Clontech、Palo Alto,Calif)からなる群から選択され得る。バクテリオファージベクター、例えば、ラムダ-GTIO、ラムダ-GTl1、ラムダ-ZapII(Stratagene)、ラムダ-EMBL4、及びラムダ-NMl149も使用することができる。植物発現ベクターの非限定的な例としては、pBIl10、pBI101.2、pBI101.3、pBI121、及びpBIN19(Clontech)が挙げられる。動物発現ベクターの非限定的な例としては、pEUK-Cl、pMAM、及びpMAMneo(Clontech)が挙げられる。TOPOクローニングシステム(Invitrogen、Carlsbad,Calif.)を、製造業者の推奨に従って使用することもできる。
【0202】
特定の実施形態では、ベクターは、哺乳動物ベクターである。特定の実施形態では、哺乳動物ベクターは、mRNA、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードする配列の転写の開始を媒介する少なくとも1つのプロモーターエレメントと、転写の終結及び転写産物のポリアデニル化に必要なシグナルと、を含有する。特定の実施形態では、哺乳動物ベクターは、追加のエレメント、例えば、RNAスプライシングのためのドナー部位及びアクセプター部位に隣接するエンハンサー、コザック配列、及び介在配列を含有する。特定の実施形態では、例えば、SV40由来の初期及び後期プロモーター、レトロウイルス、例えば、RSV、HTLVI、HIVI由来の長い末端反復(LTRS)、並びにサイトメガロウイルス(CMV)の初期プロモーターを用い、非常に効率的な転写を達成することができる。しかしながら、細胞エレメントも使用することができる(例えば、ヒトアクチンプロモーター)。哺乳動物発現ベクターの非限定的な例としては、pIRESlneo、pRetro-Off、pRetro-On、PLXSN、又はpLNCX(Clonetech Labs、Palo Alto,Calif)、pcDNA3.1(+/-)、pcDNA/Zeo(+/-)、又はpcDNA3.1/Hygro(+/-)(Invitrogen)、PSVL及びPMSG(Pharmacia、Uppsala,Sweden)、pRSVcat(ATCC37152)、pSV2dhfr(ATCC37146)、及びpBC12MI(ATCC67109)などのベクターが挙げられる。そのような哺乳動物ベクターと組み合わせて使用することができる哺乳動物宿主細胞の非限定的な例としては、ヒトHela293、H9及びJurkat細胞、マウスNIH3T3及びC127細胞、Cos1、Cos7、及びCV1、ウズラQCl-3細胞、マウスL細胞、及びチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞が挙げられる。
【0203】
特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクター、例えば、レトロウイルスベクター、パルボウイルスベースのベクター、例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)ベースのベクター、AAV-アデノウイルスキメラベクター、及びアデノウイルスベースのベクター、並びにレンチウイルスベクター、例えば、単純ヘルペス(HSV)ベースのベクターである。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、ウイルス複製を欠損させるように操作される。特定の実施形態では、ウイルスベクターは、宿主に対する毒性を除外するように操作される。これらのウイルスベクターは、例えば、Sambrook et al.,Molecular Cloning,a Laboratory Manual,2d edition,Cold Spring Harbor Press,Cold Spring Harbor,N.Y.(1989)、及びAusubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Associates and John Wiley&Sons,New York,N.Y.(1994)に記載される標準的な組換えDNA技術を使用して調製することができる。
【0204】
特定の実施形態では、本明細書に記載のベクター又はポリヌクレオチドは、従来の技術によって細胞(例えば、エクスビボ細胞)に移入することができ、得られた細胞を、従来の技術によって培養して、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を生成することができる。したがって、本明細書には、宿主細胞におけるそのような配列の発現のためにプロモーターに作動可能に連結された、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片、その重鎖若しくは軽鎖、又はその軽鎖融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む細胞が提供される。特定の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結される重鎖をコードするベクター、及びプロモーターに作動可能に連結される軽鎖をコードするベクターは、抗LGALS3抗体全体の発現のために、細胞中で共発現され得る。特定の実施形態では、プロモーターに作動可能に連結される重鎖をコードするベクター、及びプロモーターに作動可能に連結される軽鎖融合ポリペプチドをコードするベクターは、二重特異性結合分子全体の発現のために、細胞中で共発現され得る。特定の実施形態では、細胞は、プロモーターに作動可能に連結される本明細書に記載の抗LGALS3抗体の重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。特定の実施形態では、細胞は、プロモーターに作動可能に連結される本明細書に記載の二重特異性結合分子の重鎖及び軽鎖融合ポリペプチドの両方をコードするポリヌクレオチドを含むベクターを含む。特定の実施形態では、細胞は、プロモーターに作動可能に連結される重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクター、及びプロモーターに作動可能に連結される軽鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターといった2つの異なるベクターを含む。特定の実施形態では、細胞は、プロモーターに作動可能に連結される重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクター、及びプロモーターに作動可能に連結される軽鎖融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターの2つの異なるベクターを含む。特定の実施形態では、第1の細胞は、本明細書に記載の抗LGALS3抗体の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを含み、第2の細胞は、本明細書に記載の抗LGALS3抗体の軽鎖ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。特定の実施形態では、本明細書には、そのような第1の細胞及びそのような第2の細胞を含む細胞の混合物が提供される。特定の実施形態では、第1の細胞は、本明細書に記載の二重特異性結合分子の重鎖をコードするポリヌクレオチドを含む第1のベクターを含み、第2の細胞は、本明細書に記載の二重特異性結合分子の軽鎖融合ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを含む第2のベクターを含む。特定の実施形態では、本明細書には、そのような第1の細胞及びそのような第2の細胞を含む細胞の混合物が提供される。特定の実施形態では、細胞は、ポリヌクレオチドが細胞によって効率的に転写され、かつ翻訳されるように、ベクター又は複数のベクターを発現する。
【0205】
いくつかの実施形態では、細胞は、ベクターを発現し、その結果、ポリヌクレオチド、又はその断片は、細胞によって両方とも転写され、効率的に翻訳される。
【0206】
特定の実施形態では、細胞は、宿主中に存在し、宿主は、動物、例えば、哺乳動物であり得る。細胞の例としては、限定されないが、ヒト細胞、ヒト細胞株、E.coli(例えば、E.coli TB-1、TG-2、DH5a、XL-Blue MRF(Stratagene)、SA2821、及びY1090)、B.subtilis、P.aerugenosa、S.cerevisiae、N.crassa、昆虫細胞(例えば、Sf9、Ea4)、並びに以下に記載される他のものが挙げられる。特定の実施形態では、細胞は、CHO細胞である。別の特定の実施形態では、細胞は、CHO-S細胞である。
【0207】
特定の実施形態では、本明細書に記載のポリヌクレオチドは、ポリヌクレオチドを細胞に導入することによって、染色体に組み込まれたポリヌクレオチドを含む安定した細胞株において発現させることができる。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、エレクトロポレーションによって細胞に導入される。特定の実施形態では、ポリヌクレオチドは、例えば、ポリヌクレオチドを含むベクターを細胞内にトランスフェクションすることによって、細胞に導入される。特定の実施形態では、トランスフェクトされた細胞の特定及び単離を可能にするために、ベクターを、DHFR、GPT、ネオマイシン、又はハイグロマイシンなどの選択可能マーカーと共トランスフェクトする。特定の実施形態では、トランスフェクトされたポリヌクレオチドを増幅させ、大量のコードされた抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を発現させることもできる。例えば、DHFR(ジヒドロ葉酸レダクターゼ)マーカーを利用して、目的のポリヌクレオチドの数百又は数千ものコピーを保有する細胞株を開発することができる。選択マーカーの別の例は、酵素グルタミンシンターゼ(GS)である(Murphy,et al.,Biochem.J.227:277-279(1991)、Bebbington,et al.,Bio/Technology10:169-175)。これらのマーカーを使用して、細胞を選択培地中で成長させ、最も高い耐性を有する細胞を選択する。これらの細胞株は、染色体に組み込まれた増幅された遺伝子を含有する。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)及びNSO細胞は、多くの場合、抗体の生成に使用される。
【0208】
いくつかの実施形態では、ベクターは、(i)第1のプロモーターに作動可能に連結される、LGALS3に結合する免疫グロブリン軽鎖をコードする第1のポリヌクレオチド配列と、(ii)第2のプロモーターに作動可能に連結される、LGALS3に結合する免疫グロブリン重鎖をコードする第2のポリヌクレオチドと、を含む。特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0209】
いくつかの実施形態では、ベクターは、(i)ペプチドリンカーを介して、scFvに融合される免疫グロブリン軽鎖を含む軽鎖融合ポリペプチドをコードし、軽鎖がLGALS3に結合し、scFvがCD3に結合し、第1のプロモーターに作動可能に連結される、第1のポリヌクレオチド配列と、(ii)第2のプロモーターに作動可能に連結されるLGALS3に結合する免疫グロブリン重鎖をコードする第2のポリヌクレオチドと、を含む。特定の実施形態では、ベクターは、ウイルスベクターである。
【0210】
薬学的組成物
特定の実施形態では、本明細書には、薬学的に有効量の1つ以上の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む組成物(例えば、薬学的組成物)及びキットが提供される。特定の実施形態では、薬学的組成物は、本明細書に記載の抗体、その抗原結合断片、及び/又はCARを組換え発現する免疫細胞、例えば、T細胞を含む。組成物を、個々の単一単位剤形の調製に使用することができる。本明細書で提供される組成物は、非経口、皮下、筋肉内、静脈内、関節内、気管支内、腹腔内、嚢内、軟骨内、腔内(intracavitary)、腔内(intracelial)、脳内、脳室内、Ommaya内、眼内、硝子体内、結腸内、頸管内、胃内、肝内、心筋内、骨内、骨盤内、心膜内、腹腔内、胸膜内、前立腺内、肺内、直腸内、腎内、網膜内、脊髄内、滑膜内、胸腔内、子宮内、膀胱内、ボーラス、膣、直腸、口腔、舌下、鼻腔内、髄腔内、脳室内、脳実質内、又は経皮投与のために製剤化され得る。
【0211】
特定の実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む組成物が提供される。特定の実施形態では、本明細書には、細胞を含む組成物であって、細胞が、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物が提供される。特定の実施形態では、本明細書には、ベクターを含む組成物であって、ベクターが、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物が提供される。特定の実施形態では、本明細書には、細胞を含む組成物であって、細胞がベクターを含み、ベクターが、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をコードするヌクレオチド配列を含む1つ以上のポリヌクレオチドを含む、組成物が提供される。
【0212】
特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、安定な製剤又は保存された製剤である。特定の実施形態では、安定な製剤は、生理食塩水又は選択された塩とともにリン酸緩衝剤を含む。特定の実施形態では、記載される組成物は、薬学的用途又は獣医学的用途に好適な多用途の保存された製剤である。特定の実施形態では、本明細書に記載の組成物は、防腐剤を含む。防腐剤は、当業者には既知である。防腐剤の非限定的な例としては、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、フェニル水銀硝酸塩、フェノキシエタノール、ホルムアルデヒド、クロロブタノール、塩化マグネシウム(例えば、六水和物)、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、並びにデヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、又は水性希釈剤中のそれらの混合物が挙げられる。任意の好適な濃度又は混合物、例えば、0.001~5%、又はその中の任意の範囲若しくは値、例えば、限定されないが、0.001、0.003、0.005、0.009、0.01、0.02、0.03、0.05、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.3、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9%、又はその中の任意の範囲若しくは値を、当該技術分野で知られているように使用することができる。非限定的な例としては、防腐剤なし、0.1~2%のm-クレゾール(例えば、0.2、0.3.0.4、0.5、0.9、1.0%)、0.1~3%のベンジルアルコール(例えば、0.5、0.9、1.1、1.5、1.9、2.0、2.5%)、0.001~0.5%のチメロサール(例えば、0.005、0.01)、0.001~2.0%のフェノール(例えば、0.05、0.25、0.28、0.5、0.9、1.0%)、0.0005~1.0%のアルキルパラベン(例えば、0.00075、0.0009、0.001、0.002、0.005、0.0075、0.009、0.01、0.02、0.05、0.075、0.09、0.1、0.2、0.3、0.5、0.75、0.9、1.0%)などが挙げられる。
【0213】
本明細書で提供される組成物を、長期間にわたって、例えば、単回投与から1週間~1年以上の期間にわたって、対象に送達することが望ましい場合がある。様々な徐放性、デポー、又はインプラント剤形を利用することができる。例えば、剤形は、体液中で低い程度の溶解性を有する化合物の薬学的に許容される非毒性塩、例えば、(a)リン酸、硫酸、クエン酸、酒石酸、タンニン酸、パモ酸、アルギン酸、ポリグルタミン酸、ナフタレンモノ若しくはジスルホン酸、ポリガラクツロン酸などの多塩基酸との酸付加塩、(b)亜鉛、カルシウム、ビスマス、バリウム、マグネシウム、アルミニウム、銅、コバルト、ニッケル、カドミウムなどの多価金属イオンとの塩、又は例えば、N,N’-ジベンジル-エチレンジアミン若しくはエチレンジアミンから形成される有機カチオンとの塩、あるいは(c)(a)と(b)の組み合わせ、例えば、タンニン酸亜鉛塩を含有し得る。加えて、本明細書で提供される組成物、好ましくは、すぐ上に記載したような比較的不溶性の塩は、注射に適した、例えば、ゴマ油を含むゲル、例えば、モノステアリン酸アルミニウムゲルで製剤化され得る。特に特定の塩は、亜鉛塩、タンニン酸亜鉛塩、パモ酸塩などである。注射のための別の種類の徐放性デポー製剤は、例えば、米国特許第3,773,919号に記載されるような、ゆっくりと分解し、非毒性で非抗原性のポリマー、例えば、ポリ乳酸/ポリグリコール酸ポリマー中に封入するために分散された化合物又は塩を含有し得る。化合物、又は好ましくは、上述のような比較的不溶性の塩は、特に動物に使用するために、コレステロールマトリックスシラスティックペレットで製剤化することもできる。追加の徐放性、デポー、又はインプラント組成物、例えば、気体又は液体リポソームは、文献において既知である(米国特許第5,770,222号、及び“Sustained and Controlled Release Drug Delivery Systems”,J.R.Robinson ed.,Marcel Dekker,Inc.,N.Y.,1978)。
【0214】
本明細書に提供される少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の組成物の範囲は、湿潤/乾燥系である場合、再構成時に約1.0マイクログラム/ml~約1000mg/mlの濃度を与える量を含むが、それより低い濃度及び高い濃度も操作可能であり、意図される送達ビヒクルに依存し、例えば、溶液製剤は、経皮パッチ、肺、経粘膜、又は浸透若しくはマイクロポンプ法とは異なるだろう。
【0215】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、任意の好適な補助物質、例えば、限定されないが、希釈剤、結合剤、安定化剤、緩衝剤、塩、親油性溶媒、防腐剤、アジュバントなどのうちの少なくとも1つを含む。特定の実施形態では、薬学的に許容される補助物質は、特定のものである。このような滅菌溶液の非限定的な例及び調製する方法は、当該技術分野で周知であり、例えば、限定されないが、Gennaro,Ed.,Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition,Mack Publishing Co.(Easton,Pa.)1990である。
【0216】
本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の投与様式、溶解性、及び/又は安定性に好適な薬学的に許容される担体を、日常的に選択することができる。
【0217】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、1つ以上の薬学的賦形剤及び/又は添加剤を含有する。薬学的賦形剤及び添加剤の非限定的な例は、タンパク質、ペプチド、アミノ酸、脂質、並びに炭水化物(例えば、単糖、二糖、三糖、四糖、及びオリゴ糖を含む糖、アルジトール、アルドン酸、エステル化糖などの誘導体化糖、及び多糖又は糖ポリマー)であり、これらは、単独で、又は組み合わせて存在してもよく、単独で、又は組み合わせて1~99.99重量%又は体積%を含む。タンパク質賦形剤の非限定的な例としては、ヒト血清アルブミン(HSA)などの血清アルブミン、組換えヒトアルブミン(rHA)、ゼラチン、カゼインなどが挙げられる。緩衝能においても機能し得るアミノ酸/抗体構成成分の非限定的な例としては、アラニン、グリシン、アルギニン、ベタイン、ヒスチジン、グルタミン酸、アスパラギン酸、システイン、リジン、ロイシン、イソロイシン、バリン、メチオニン、フェニルアラニン、アスパルテームなどが挙げられる。特定の実施形態では、アミノ酸は、グリシンである。炭水化物賦形剤の非限定的な例としては、フルクトース、マルトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボースなどの単糖類、ラクトース、スクロース、トレハロース、セロビオースなどの二糖類、ラフィノース、メレジトース、マルトデキストリン、デキストラン、デンプンなどの多糖類、及びマンニトール、キシリトール、マルチトール、ラクチトール、キシリトール、ソルビトール(グルシトール)、ミオイノシトールなどのアルジトールが挙げられる。特定の実施形態では、炭水化物賦形剤は、マンニトール、トレハロース、又はラフィノースである。
【0218】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、1つ以上の緩衝剤又はpH調整剤を含み、典型的には、緩衝剤は、有機酸又は塩基から調製される塩である。緩衝剤の非限定的な例としては、クエン酸、アスコルビン酸、グルコン酸、炭酸、酒石酸、コハク酸、酢酸、又はフタル酸の塩などの有機酸塩、Tris、トロメタミン塩酸塩、又はリン酸緩衝剤が挙げられる。特定の実施形態では、緩衝剤は、クエン酸塩などの有機酸塩である。他の賦形剤、例えば、等張性剤、緩衝剤、酸化防止剤、防腐剤エンハンサーは、任意選択的に、好ましくは、希釈剤に添加され得る。グリセリンなどの等張性剤は、一般に、既知の濃度で使用される。生理学的に耐容性のある緩衝剤を添加して、改善されたpH制御を提供することが好ましい。組成物は、例えば、約pH4~約pH10、約pH5~約pH9の特定的な範囲、及び約6.0~約8.0の最も特定的な範囲などの幅広い範囲のpHを網羅することができる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される組成物は、約6.8~約7.8のpHを有する。好ましい緩衝剤としては、リン酸緩衝剤、最も好ましくはリン酸ナトリウム、特にリン酸緩衝食塩水(PBS)が挙げられる。
【0219】
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、1つ以上のポリマー賦形剤/添加剤、例えば、ポリビニルピロリドン、フィコール(ポリマー糖)、デキストレート(例えば、シクロデキストリン、例えば、2-ヒドロキシプロピル-ベータ-シクロデキストリン)、ポリエチレングリコール、香味剤、抗菌剤、甘味料、酸化防止剤、帯電防止剤、界面活性剤(例えば、「TWEEN20」及び「TWEEN80」などのポリソルベート)、脂質(例えば、リン脂質、脂肪酸)、ステロイド(例えば、コレステロール)、及び/又はキレート剤(例えば、EDTA)を含む。
【0220】
他の添加剤、例えば、Tween20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)、Tween40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、Tween80(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレート)、Pluronic F68(ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックコポリマー)、及びPEG(ポリエチレングリコール)、又はポリソルベート20若しくは80若しくはポロキサマー184若しくは188、Pluronic(登録商標)ポリオールなどの非イオン性界面活性剤、他のブロックコポリマーなどの薬学的に許容される可溶化剤、並びにEDTA及びEGTAなどのキレート剤を、任意選択的に、凝集を減少させるために、組成物に添加することができる。これらの添加剤は、組成物を投与するためにポンプ又はプラスチック容器を使用する場合に特に有用である。薬学的に許容される界面活性剤の存在は、タンパク質が凝集する傾向を緩和する。
【0221】
本明細書で提供される組成物において使用するのに好適な追加の薬学的賦形剤及び/又は添加剤は、当業者に既知であり、例えば、“Remington:The Science&Practice of Pharmacy”,19.sup.th ed.,Williams&Williams,(1995)、及び“Physician’s Desk Reference”,52nd ed.,Medical Economics,Montvale,N.J.(1998)に言及されており、これらは参照により完全に本明細書に組み込まれる。特定の特定の実施形態では、担体又は賦形剤材料は、炭水化物(例えば、糖及びアルジトール)並びに緩衝剤(例えば、クエン酸塩)又はポリマー剤である。
【0222】
いくつかの実施形態では、水性希釈剤は、任意選択的に、薬学的に許容される防腐剤を更に含む。例示的な防腐剤としては、フェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から選択されるものが挙げられる。組成物中で使用される防腐剤の濃度は、抗菌効果をもたらすのに十分な濃度である。そのような濃度は、選択された防腐剤に依存し、当業者によって容易に決定される。
【0223】
本明細書で提供される組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片、並びにフェノール、m-クレゾール、p-クレゾール、o-クレゾール、クロロクレゾール、ベンジルアルコール、アルキルパラベン(メチル、エチル、プロピル、ブチルなど)、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、デヒドロ酢酸ナトリウム及びチメロサール、又はそれらの混合物からなる群から選択される防腐剤を、水性希釈剤中で混合することを含むプロセスによって調製することができる。水性希釈剤中で本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片及び防腐剤を混合することは、従来の溶解及び混合手順を使用して行われる。好適な組成物を調製するために、例えば、緩衝溶液中の測定された量の本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を、所望の濃度で本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片及び防腐剤を提供するのに十分な量で、緩衝溶液中の所望の防腐剤と合わせる。本明細書で提供される組成物は、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片、及び選択された緩衝剤、好ましくは、塩若しくは選択された塩を含有するリン酸緩衝剤を混合することを含むプロセスによって調製することができる。水性希釈剤中で本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片及び緩衝剤を混合することは、従来の溶解及び混合手順を使用して行われる。好適な組成物を調製するために、例えば、水又は緩衝剤中の測定された量の本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を、所望の濃度でタンパク質及び緩衝剤を提供するのに十分な量で、水中の所望の緩衝剤と合わせる。これらのプロセスの変形は、当業者によって認識されるであろう。例えば、構成成分が添加される順序、追加の添加剤が使用されるかどうか、組成物が調製される温度及びpHは、使用される濃度及び投与手段について最適化することができる全ての因子である。
【0224】
非経口製剤
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、非経口の注射可能な投与のために製剤化される。本明細書で使用される場合、「非経口」という用語は、静脈内、血管内、筋肉内、皮内、皮下、及び眼内を含む。非経口投与のために、組成物を、薬学的に許容される非経口ビヒクルと会合させて、溶液、懸濁液、エマルション、又は凍結乾燥した粉末として製剤化することができ、又は別個に提供することができる。そのようなビヒクルの非限定的な例は、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、グリセロール、エタノール、及び1~10%のヒト血清アルブミンである。リポソーム、及び固定油などの非水性ビヒクルも使用することができる。ビヒクル又は凍結乾燥した粉末は、等張性を維持する添加剤(例えば、塩化ナトリウム、マンニトール)及び化学安定性を維持する添加剤(例えば、緩衝剤及び防腐剤)を含有し得る。製剤は、既知又は好適な技術によって滅菌される。
【0225】
好適な薬学的担体は、この分野における標準的な参考文献であるRemington’s Pharmaceutical Sciences,A.Osolの最新版に記載されている。
【0226】
非経口投与のための製剤は、一般的な賦形剤として、滅菌水又は生理食塩水、ポリエチレングリコールなどのポリアルキレングリコール、植物由来の油、水素化ナフタレンなどを含有し得る。注射のための水性又は油性懸濁液は、既知の方法に従って、適切な乳化剤又は保湿剤及び懸濁剤を使用することによって調製することができる。注射のための薬剤は、非毒性の非経口投与可能な希釈剤、例えば、水溶液、又は溶媒中の滅菌注射溶液若しくは懸濁液であり得る。使用可能なビヒクル又は溶媒として、水、リンゲル溶液、等張生理食塩水などが許容される。通常の溶媒又は懸濁溶媒として、滅菌不揮発性油を使用することができる。これらの目的のために、天然若しくは合成若しくは半合成の脂肪族油若しくは脂肪酸、天然若しくは合成若しくは半合成のモノグリセリド若しくはジグリセリド若しくはトリグリセリドを含む、任意の種類の不揮発性油及び脂肪酸を使用することができる。親(Parental)投与は、当該技術分野で既知であり、限定されないが、従来の注射手段、米国特許第5,851,198号に記載されるような気体加圧ニードルレス注射デバイス、及び参照により完全に本明細書に組み込まれる米国特許第5,839,446号に記載されるようなレーザ穿孔デバイスが含まれる。
【0227】
肺製剤
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む組成物は、肺投与のために製剤化される。肺投与のために、組成物は、肺の下気道又は副鼻腔に到達するのに有効な粒径で送達される。
【0228】
肺投与のための組成物は、吸入による治療薬剤の投与のための当該技術分野で既知の様々な吸入又は鼻デバイスのいずれかによって送達され得る。患者の副鼻腔又は肺胞にエアロゾル化した製剤を堆積させることができるこれらのデバイスには、計量用量吸入器、ネブライザ、乾燥粉末発生器、噴霧器などが含まれる。本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の肺投与又は鼻投与を行わせるのに好適な他のデバイスも、当該技術分野で既知である。かかるデバイスは全て、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片をエアロゾルで分配するための投与に好適な製剤を使用する。このようなエアロゾルは、溶液(水性及び非水性の両方)又は固体粒子のいずれかで構成されていてもよい。Ventolin(登録商標)計量用量吸入器などの計量用量吸入器は、典型的には、噴射気体を使用し、吸入中に作動を必要とする(例えば、WO94/16970、WO98/35888を参照されたい)。Turbuhaler(商標)(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、Inhale Therapeuticsによって上市されているデバイスなどの乾燥粉末吸入器は、例を挙げると、混合粉末(米国特許第4,668,218号Astra、EP237507Astra、WO97/25086Glaxo、WO94/08552Dura、米国特許第5,458,135号Inhale、WO94/06498Fisons、参照により本明細書に完全に組み込まれる)の呼気による作動を使用する。
【0229】
Ultravent(登録商標)ネブライザ(Mallinckrodt)、及びAcorn II(登録商標)ネブライザ(Marquest Medical Products)(米国特許第5,404,871号Aradigm、WO97/22376)(上の参照文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる)などのネブライザは、溶液からエアロゾルを生成し、一方で、計量用量吸入器、乾燥粉末吸入器などは、小さな粒子のエアロゾルを生成する。市販の吸入デバイスのこのような例は、非限定的な例であり、範囲を限定することを意図するものではない。
【0230】
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含むスプレーは、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の懸濁液又は溶液を加圧下で強制的にノズルを通させることによって生成することができる。ノズルのサイズ及び構成、印加される圧力、及び液体の送り速度を選択して、所望の出力及び粒径を達成することができる。エレクトロスプレーは、例えば、キャピラリー又はノズルフィードと組み合わせた電界によって作り出すことができる。有利には、噴霧器によって送達される本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む組成物の粒子は、約10μm未満、例えば、約1μm~約5μm、例えば、約2μm~約3μmの範囲の粒径を有する。
【0231】
噴霧器とともに使用するのに適した本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む組成物の製剤は、典型的には、溶液1ml当たり約0.1mg~約100mg、又はmg/gm、又はその中の任意の範囲若しくは値、例えば、限定されないが、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、40、45、50、60、70、80、90、又は100mg/ml又はmg/gmの濃度での水溶液で、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む。製剤は、賦形剤、緩衝液、等張性剤、防腐剤、界面活性剤などの薬剤、好ましくは亜鉛を含み得る。製剤はまた、緩衝剤、還元剤、バルクタンパク質、又は炭水化物など、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の組成物の安定化のための賦形剤又は薬剤を含み得る。そのような組成物の製剤化に有用なバルクタンパク質としては、アルブミン、プロタミンなどが挙げられる。抗体組成物タンパク質の製剤化に有用な典型的な炭水化物としては、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコースなどが挙げられる。組成物はまた、界面活性剤を含んでいてもよく、エアロゾルを形成する際の溶液の霧化によって引き起こされる組成物の表面で誘導される凝集を減少させるか、又は防止することができる。ポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール、並びにポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルなどの様々な従来の界面活性剤を用いることができる。量は、一般に、製剤の0.001重量%~14重量%の範囲である。好ましい界面活性剤は、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート80、ポリソルベート20などである。
【0232】
特定の実施形態では、組成物は、ネブライザ、例えば、ジェットネブライザ、又は超音波ネブライザなどを介して投与される。典型的には、ジェットネブライザでは、圧縮された空気源を使用して、オリフィスを通る高速空気ジェットを生成する。気体がノズルを超えて膨脹するにつれて、低圧領域が生成され、液体容器に接続された毛細管を通って、抗体組成物タンパク質の溶液を引っ張り出す。毛細管からの液体の流れは、管を出るときに不安定なフィラメント及び液滴に剪断され、エアロゾルを生成する。所与のジェットネブライザからの所望の性能特徴を達成するために、様々な構成、流量、及びバッフル型を使用することができる。超音波ネブライザでは、高周波電気エネルギーを使用して、典型的には圧電トランスデューサを使用して、振動機械エネルギーを生成する。このエネルギーは、直接的に、又は連結流体を介してのいずれかで、抗体組成物タンパク質の製剤に伝達され、抗体組成物タンパク質を含むエアロゾルを生成する。有利なことに、ネブライザによって送達される抗体組成物タンパク質の粒子は、約10um未満、好ましくは約1um~約5um、最も好ましくは約2um~約3umの範囲の粒径を有する。
【0233】
特定の実施形態では、組成物は、計量用量吸入器(MDI)を介して投与され、噴射剤、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片、及び任意の賦形剤又は他の添加剤が、液化圧縮気体を含む混合物として、キャニスターに含まれる。
【0234】
計量バルブの作動により、ダイ混合物をエアロゾルとして放出し、エアロゾルは、好ましくは、約10um未満、好ましくは約1um~約5um、最も好ましくは約2um~約3umの粒径範囲の粒子を含有する。所望のエアロゾル粒径は、ジェットミル混合、スプレー乾燥、臨界点凝縮などを含む当業者に既知の様々な方法によって生成される抗体組成物タンパク質の製剤を使用することによって得ることができる。好ましい計量用量吸入器としては、3M又はGlaxoによって製造され、ヒドロフルオロカーボン噴射剤を使用するものが挙げられる。
【0235】
計量用量吸入デバイスとともに使用するための本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の製剤は、一般に、例えば、界面活性剤で補助しつつ噴射剤に懸濁された、非水性媒体中の懸濁液としての少なくとも1つの抗IL-6抗体を含有する微細に分割された粉末を含む。噴射剤は、この目的のために用いられる任意の従来の材料、例えば、トリクロロフルオロメタン、ジクロロジフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタノール、及び1,1,1,2-テトラフルオロエタン、HFA-134a(ヒドロフルオロアルカン-134a)、HFA-227(ヒドロフルオロアルカン-227)などを含む、クロロフルオロカーボン、ヒドロクロロフルオロカーボン、ヒドロフルオロカーボン、又は炭化水素であり得る。いくつかの実施形態では、噴射剤は、ヒドロフルオロカーボンである。界面活性剤は、活性薬剤を化学分解から保護するなどのために、噴射剤中の懸濁液としての本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を安定化するように選択することができる。好適な界面活性剤としては、ソルビタントリオレエート、ダイズレシチン、オレイン酸などが挙げられる。場合によっては、溶液エアロゾルは、特に、エタノールなどの溶媒を使用する。
【0236】
タンパク質の製剤化のための当該技術分野で既知の追加の薬剤もまた、製剤に含まれ得る。
【0237】
経口製剤
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、経口投与のために製剤化される。特定の実施形態では、経口投与のために、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を投与する組成物及び方法は、腸壁の透過性を人工的に増加させるための、例えばレゾルシノール、及びポリオキシエチレンオレイルエーテル及びn-ヘキサデシルポリエチレンエーテルなどの非イオン性界面活性剤などのアジュバントの共投与、並びに酵素分解を阻害するための、例えば膵臓トリプシン阻害剤、ジイソプロピルフルオロホスフェート(DFF)及びトラシロールなどの酵素阻害剤の共投与に依存する。経口投与のための固体型剤形の活性構成要素化合物を、スクロース、ラクトース、セルロース、マンニトール、トレハロース、ラフィノース、マルチトール、デキストラン、デンプン、寒天、アルギネート、キチン、キトサン、ペクチン、トラガカントゴム、アラビアゴム、ゼラチン、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、合成又は半合成ポリマー、及びグリセリドを含む少なくとも1つの添加剤と混合することができる。これらの剤形はまた、例えば、不活性希釈剤、ステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤、パラベン、ソルビン酸、アスコルビン酸、アルファ-トコフェロールなどの防腐剤、システインなどの酸化防止剤、崩壊剤、結合剤、増粘剤、緩衝剤、甘味剤、香味剤、芳香剤などの他の種類の添加剤を含有し得る。
【0238】
特定の実施形態では、経口投与のための錠剤及び丸剤は、腸溶性コーティング調製物へと更に加工することができる。特定の実施形態では、経口投与のための液体調製物としては、例えば、医学的使用が許容されるエマルション、シロップ、エリキシル、懸濁液、及び溶液調製物が挙げられる。これらの調製物は、当該分野で通常使用される不活性希釈剤、例えば、水を含有し得る。リポソーム調製物は、例えば、インスリン及びヘパリンについて記載されるように(米国特許第4,239,754号)、経口投与調製物に利用され得る。加えて、混合アミノ酸(プロテノイド)の人工ポリマーの微粒子は、例えば、米国特許第4,925,673号に記載されるように、医薬品の経口投与に利用することができる。更に、担体化合物、例えば、米国特許第5,879,681号及び米国特許第5,871,753号に記載されるものは、生物学的に活性な薬剤の経口投与に使用される。
【0239】
粘膜製剤
特定の実施形態では、本発明で提供される組成物は、粘膜表面を介する吸収のために製剤化される。特定の実施形態では、粘膜表面を介した吸収のために、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を投与する組成物及び方法は、複数のサブミクロン粒子、粘膜付着性高分子、生体活性ペプチド、及び水性連続相を含むエマルションを含み、エマルション粒子の粘膜付着を達成することによって、粘膜表面を介する吸収を促進する(米国特許第5,514,670号)。本明細書で提供されるエマルションの適用に好適な粘液表面として、例えば、角膜、結膜、口腔、舌下、鼻、膣、肺、胃、腸、及び直腸の投与経路が挙げられ得る。膣又は直腸投与のための製剤、例えば坐剤は、賦形剤、例えば、ポリアルキレングリコール、ワセリン、ココアバターなどを含有し得る。鼻腔内投与のための製剤は、固体であってもよく、賦形剤として、例えばラクトースを含有してもよく、又は点鼻薬の水性若しくは油性の溶液であってもよい。口腔投与のために、賦形剤としては、例えば、糖、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、アルファ化デンプンなどが挙げられる(米国特許第5,849,695号)。
【0240】
経皮製剤
特定の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、経皮投与のために製剤化される。特定の実施形態では、経皮投与のために、組成物は、例えば、リポソーム又はポリマーナノ粒子、マイクロ粒子、マイクロカプセル、又は微粒子(別段の記載がない限り、まとめてマイクロ粒子と称される)などの送達デバイスに封入された、本明細書に記載の少なくとも1つの抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む。経皮投与のために、ポリ乳酸、ポリグリコール酸などのポリヒドロキシ酸、及びそれらのコポリマー、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物、及びポリホスファゼンなどの合成ポリマー、並びにコラーゲン、ポリアミノ酸、アルブミン、及び他のタンパク質、アルギネート及び他の多糖などの天然ポリマー、及びこれらの組み合わせから作製されるマイクロ粒子を含む、いくつかの好適なデバイスが知られている(米国特許第5,814,599号)。
【0241】
キット
また、本明細書には、ガレクチン-3関連疾患又は状態(例えば、ガレクチン-3関連がん、心血管疾患、線維症、リウマチ性疾患、及び炎症)の検出及び/又は治療のためのキットであって、本発明の技術の少なくとも1つの免疫グロブリン関連組成物(例えば、本明細書に記載される本明細書に記載される抗体、抗原結合断片、抗体コンジュゲート、二重特異性抗体若しくは抗体コンジュゲート、scFv、scFvコンジュゲート、CAR、T細胞、組換え核酸配列、ベクター、又は単離された細胞のいずれか)と、使用のための説明書と、を含むキットが開示される。特定の実施形態では、免疫グロブリン関連組成物は、1つ以上の検出可能な標識に連結される。一実施形態では、1つ以上の検出可能な標識は、放射性標識、蛍光性標識、又は発色性標識を含む。追加的に、又は代替的に、いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の免疫グロブリン関連組成物に特異的に結合する二次抗体を更に含む。いくつかの実施形態では、二次抗体は、放射性標識、蛍光性標識、又は発色性標識からなる群から選択される少なくとも1つの検出可能な標識に連結される。
【0242】
具体的な実施形態では、本明細書には、薬学的パック又はキットであって、本明細書に記載の薬学的組成物の成分のうちの1つ以上、例えば、本明細書に記載の1つ以上の抗体又はその抗原結合断片で満たされた1つ以上の容器を含む、薬学的パック又はキットが提供される。いくつかの実施形態では、キットは、本明細書に記載の薬学的組成物と、予防薬剤又は治療薬剤と、を含有する。
【0243】
任意選択的に、そのような容器に関連付けられるのは、医薬品又は生物学的製品の製造、使用、又は販売を規制する政府機関によって規定される形式の通知、剤形、及び/又はその使用のための説明書であり得る。特定の実施形態では、キットに含まれる説明書は、薬学的組成物の投与のための投薬量及び/又は投薬レジメンに関するガイダンスを提供する。
【0244】
薬学的包装材料の例としては、限定されないが、ブリスターパック、ボトル、パケット、小袋、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、並びに選択された薬学的組成物及び意図される投与及び治療の態様に好適な任意の包装材料が挙げられる。
【0245】
本明細書で提供されるキットは、活性成分を投与するために使用されるデバイスを更に含み得る。かかるデバイスの例としては、限定されないが、シリンジ、無針シリンジ、ドリップバッグ、パッチ、及び吸入器が挙げられる。
【0246】
本明細書で提供されるキットは、成分を投与するために使用することが可能な薬学的に許容されるビヒクルを更に含み得る。例えば、成分が、非経口投与のために再構成されなければならない固形形態で提供される場合、キットは、成分を溶解して、非経口投与に好適な粒子を含まない滅菌溶液を形成することができるか、又は経口投与のための懸濁液として再構成することができる好適なビヒクルの密封容器を含み得る。薬学的に許容されるビヒクルの例としては、限定されないが、水性ビヒクル(限定されないが、注射用水USP、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、デキストロース注射液、デキストロース及び塩化ナトリウム
【0247】
注射液、及び乳酸リンゲル注射液を含む)、水混和性ビヒクル(限定されないが、エチルアルコール、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコールを含む)、並びに非水性ビヒクル(限定されないが、トウモロコシ油、綿実油、ピーナッツ油、ゴマ油、オレイン酸エチル、ミリスチン酸イソプロピル、及び安息香酸ベンジルを含む)が挙げられる。
【0248】
使用及び方法
治療的使用及び方法
特定の実施形態では、本明細書には、LGALS3関連疾患又は状態を治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、方法が提供される。例示的なLGALS3関連疾患又は状態としては、限定されないが、がん、腫瘍転移、腫瘍血管新生、心不全、肺線維症、腎臓の糸球体疾患、炎症性疾患、及びリウマチ性疾患が挙げられる。
【0249】
具体的な実施形態では、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、1つ以上の追加の治療薬剤と組み合わせて投与される。いくつかの実施形態では、1つ以上の追加の治療薬剤は、LGALS3関連疾患又は状態の1つ以上の症状を阻害するか、又は治療する。
【0250】
特定の実施形態では、本明細書には、対象におけるがん、特に、対象におけるLGALS3陽性がんを治療するための方法であって、それを必要とする対象に、治療有効量の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を投与することを含む、方法が提供される。具体的な実施形態では、LGALS3陽性がんは、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、原発性腹膜がん、又はLGALS3を発現する任意の他の組織のがんである。
【0251】
特定の種の対象における抗LGALS3抗体又はその断片の使用のために、その特定の種のLGALS3に結合する抗LGALS3抗体又はその断片が使用される。例えば、ヒトを治療するために、ヒトLGALS3に結合する抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が使用される。具体的な実施形態では、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、免疫グロブリンである。
【0252】
加えて、特定の種の対象における抗LGALS3抗体又はその断片の使用のために、抗LGALS3抗体、特定の実施形態では、抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片の定常領域は、その特定の種に由来する。例えば、ヒトを治療するために、抗LGALS3抗体又はその断片は、免疫グロブリンである抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含んでいてもよく、免疫グロブリンは、ヒト定常領域を含む。具体的な実施形態では、対象は、ヒトである。
【0253】
具体的な実施形態では、治療は、検出可能であるか、又は検出不可能であるかにかかわらず、限定されないが、症状の緩和、疾患の程度の軽減、疾患の状態の安定化(すなわち、悪化しない)、疾患進行を遅延させるか、若しくは遅らせること、疾患状態の改善若しくは緩和、及び寛解(部分的であるか、若しくは完全なものであるかにかかわらず)を含む、有益又は所望の臨床結果を達成することであり得る。具体的な実施形態では、「治療」は、治療を受けていない場合の予想生存期間と比較して、生存期間を延長することもできる。具体的な実施形態では、がん(例えば、卵巣がん、肺がん、膵臓がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、若しくは原発性腹膜がん、又はLGALS3を発現する任意の他の組織のがん)を有する対象への本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又は本明細書に記載の薬学的組成物の投与は、以下の効果のうちの少なくとも1つ、2つ、3つ、4つ、又はそれより多くを達成する。(i)がんの1つ以上の症状の重症度の減少若しくは改善、(ii)がんに関連する1つ以上の症状の持続時間の減少、(iii)がんに関連する症状の再発の予防、(iv)対象の入院の減少、(v)入院の長さの減少、(vi)対象の生存率の増加、(vii)別の療法の治療効果の増強若しくは改善、(viii)がんに関連する1つ以上の症状の発症若しくは発生の阻害、(ix)がんに関連する症状の数の減少、(x)当技術分野で周知の方法によって評価されるような生活の質の改善、(x)腫瘍の再発の阻害、(xi)腫瘍及び/若しくはそれに関連する1つ以上の症状の逆行、(xii)腫瘍及び/若しくはそれに関連する1つ以上の症状の進行の阻害、(xiii)腫瘍の成長の減少、(xiv)腫瘍サイズ(例えば、体積若しくは直径)の低減、(xv)新しく形成される腫瘍の形成の減少、(xvi)原発性、局所的、及び/若しくは転移性腫瘍の予防、根絶、除去、若しくは制御、(xvii)転移の数若しくはサイズの低減、(xviii)死亡率の減少、(xix)無再発生存期間の増加、(xx)磁気共鳴イメージング(MRI)、ダイナミックコントラスト増強MRI(DCE-MRI)、X線、及びコンピュータ断層撮影(CT)スキャン、若しくは陽電子放出断層撮影(PET)スキャンなどの当業者に利用可能な従来の方法によって測定される場合に、腫瘍のサイズが維持され、腫瘍が増加しないか、若しくは標準的な療法を行った後の腫瘍の増加を下回る増加、並びに/又は(xxi)患者における寛解の長さの増加。治療は、前述のうちの1つ以上を達成することであり得る。
【0254】
診断的使用
特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を診断目的に使用し、本明細書に記載の状態(例えば、LGALS3陽性がん細胞を伴う状態)を検出するか、診断するか、又はモニタリングすることができる。特定の実施形態では、診断目的において使用するための抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片が標識される。
【0255】
特定の実施形態では、本明細書には、本明細書に記載の状態の検出のための方法であって、(a)本明細書に記載の1つ以上の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を使用して、対象の細胞又は組織試料においてLGALS3又はその断片の発現をアッセイすることと、(b)LGALS3又はその断片発現のレベルを、対照レベル、例えば、(例えば、本明細書に記載の状態を有していない対象から、又はその状態の発症前の同じ患者からの)正常組織試料におけるレベルと比較することによって、LGALS3又はその断片発現の対照レベルと比較することと、を含み、LGALS3又はその断片発現のアッセイされたレベルにおける増加又は低減が、本明細書に記載の状態の指標である、方法が提供される。
【0256】
本明細書に記載の抗体を使用して、本明細書に記載されているか、又は当業者に公知の古典的な免疫組織学的方法を使用して、生物学的試料におけるLGALS3又はその断片のレベルをアッセイすることができる(例えば、Jalkanen et al.,1985,J.Cell.Biol.101:976-985、及びJalkanen et al.(1987)J.Cell.Biol.105:3087-3096を参照されたい)。タンパク質遺伝子発現を検出するのに有用な他の抗体ベースの方法としては、イムノアッセイ、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)及びラジオイムノアッセイ(RIA)が挙げられる。好適な抗体アッセイ標識は、当該技術分野において既知であり、酵素標識、例えば、グルコースオキシダーゼ;放射性同位体、例えば、ヨウ素(125I、121I)、炭素(14C)、硫黄(35S)、トリチウム(3H)、インジウム(121In)、及びテクネチウム(99Tc);発光性標識、例えば、ルミノール;並びに蛍光性標識、例えば、フルオレセイン及びローダミン、及びビオチンが挙げられる。
【0257】
特定の実施形態では、本明細書に記載の状態(例えば、LGALS3陽性がん)のモニタリングは、初期診断後の一定期間にわたって、診断するための方法を繰り返すことによって行われる。
【0258】
標識された分子の存在は、インビボスキャニングのための当該技術分野で既知の方法を使用して、対象において検出することができる。当業者は、特定の標識を検出するための適切な方法を決定することができるであろう。本開示の診断方法で使用することができる方法及びデバイスとしては、限定されないが、コンピュータ断層撮影法(CT)、位置放出断層撮影(position emission tomography)(PET)、磁気共鳴イメージング(MRI)、及びソノグラフィーなどの全身スキャンが挙げられる。
【0259】
用量及びレジメン
本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又は組成物、又は抗体若しくはその抗原結合断片を発現する細胞を、様々な経路によって対象に送達し得る。これらの経路としては、限定されないが、非経口、鼻腔内、気管内、経口、皮内、局所、筋肉内、腹腔内、経皮、静脈内、腫瘍内、結膜、及び皮下経路が挙げられる。肺投与はまた、例えば、吸入器又はネブライザの使用、及びスプレーとして使用するためのエアロゾル化剤を用いた製剤によっても用いることができる。一実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又は組成物は、対象に非経口投与される。具体的な実施形態では、上述の非経口投与は、静脈内、筋肉内、又は皮下である。
【0260】
ある状態の治療及び/又は予防に有効であろう抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又は組成物の量は、疾患の性質に依存し、標準的な臨床技術によって決定することができる。
【0261】
組成物中で使用される正確な用量は、投与経路、及びがんの種類にも依存し、医師の判断及び各対象の状況に従って決定されるべきである。例えば、有効用量はまた、投与手段、標的部位、患者の生理学的状態(年齢、体重、及び健康を含む)、患者がヒトであるか、若しくは動物であるか、投与される他の医薬、又は治療が予防的であるか、若しくは治療的であるかに応じて変化し得る。治療投薬量は、安全性及び有効性を最適化するために最適に滴定される。
【0262】
特定の実施形態では、最適投薬量範囲を特定するのに役立つように、インビトロアッセイが使用される。有効用量は、インビトロ又は動物モデル試験系から導出される用量応答曲線から外挿することができる。
【0263】
抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片について、投薬量は、患者の体重の約0.0001~100mg/kg、より通常は0.01~15mg/kgの範囲であり得る。例えば、投薬量は、70kgの患者について、1mg/kg体重、10mg/kg体重、又は1~10mg/kgの範囲、又は言い換えると、それぞれ、70mg若しくは700mg、又は70~700mgの範囲であり得る。一般に、ヒト抗体は、外来ポリペプチドに対する免疫応答に起因して、他の種由来の抗体よりもヒト体内での半減期が長い。したがって、低い投薬量のヒト抗体及び低い頻度の投与が多くの場合可能である。
【0264】
特定の実施形態では、例えば、抗体若しくはその抗原結合断片、又はCARを発現する操作された細胞の投与において、対象は、対象に約100万~約1000億個の細胞の範囲、例えば、100万~約500億個の細胞(例えば、約500万個の細胞、約2500万個の細胞、約5億個の細胞、約10億個の細胞、約50億個の細胞、約200億個の細胞、約300億個の細胞、約400億個の細胞、又は上の値のいずれか2つによって定義される範囲)、例えば、約1000万~約1000億個の細胞(例えば、約2000万個の細胞、約3000万個の細胞、約4000万個の細胞、約6000万個の細胞、約7000万個の細胞、約8000万個の細胞、約9000万個の細胞、約100億個の細胞、約250億個の細胞、約500億個の細胞、約750億個の細胞、約900億個の細胞、又は上の値のいずれか2つによって定義される範囲)、いくつかの場合では、約1億個の細胞~約500億個の細胞(例えば、約1億2000万個の細胞、約2億5000万個の細胞、約3億5000万個の細胞、約4億5000万個の細胞、約6億5000万個の細胞、約8億万個の細胞、約9億個の細胞、約30億個の細胞、約300億個の細胞、約450億個の細胞)、又はこれらの範囲の間の任意の値で投与される。いくつかの実施形態では、全細胞の用量及び/又は細胞の個々の部分集団の用量は、104若しくは約104~109若しくは約109個の細胞/キログラム(kg)体重、例えば、105~106個の細胞/kg体重の範囲内、例えば、1×105若しくは約1×105個の細胞/kg、1.5×105若しくは約1.5×105個の細胞/kg、2×105若しくは約2×105個の細胞/kg、又は1×106若しくは約1×106個の細胞/kg、2×106若しくは約2×106個の細胞/kg、5×106若しくは約5×106個の細胞/kg、又は10×106若しくは約10×106個の細胞/kg体重である。例えば、いくつかの実施形態では、細胞は、104若しくは約104~109若しくは約109個のT細胞/キログラム(kg)体重、例えば、105~107個のT細胞/kg体重で、又はそれらの特定の誤差範囲内で投与される。
【0265】
抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片は、複数回で投与され得る。1回の投薬間の間隔は、例えば、1週間、2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、6ヶ月、1年、又は2年であり得る。
【0266】
併用療法
具体的な実施形態では、対象におけるがん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、又は原発性腹膜がん)を治療するための本明細書に提供される方法は、それを必要とする対象に、本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を含む薬学的組成物を投与することを含み、対象に1つ以上の追加の治療薬剤を投与することを更に含む。具体的な実施形態では、追加の治療薬剤は、対象におけるがん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、及び原発性腹膜がん)を治療するためのものである。具体的な実施形態では、追加の治療薬剤は、本明細書に記載の本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片による治療の任意の副作用を治療するためのものである。
【0267】
具体的な実施形態では、追加の薬剤は、卵巣がんを治療するために使用される薬剤である。具体的な実施形態では、追加の薬剤は、膵臓がんを治療するために使用される薬剤である。具体的な実施形態では、追加の薬剤は、肺がんを治療するために使用される薬剤である。具体的な実施形態では、追加の薬剤は、乳がんを治療するために使用される薬剤である。具体的な実施形態では、追加の薬剤は、卵管がんを治療するために使用される薬剤である。具体的な実施形態では、追加の薬剤は、子宮(例えば、子宮内膜)がんを治療するために使用される薬剤である。具体的な実施形態では、追加の薬剤は、原発性腹膜がんを治療するために使用される薬剤である。
【0268】
本明細書に記載の本明細書に記載の抗LGALS3抗体又はその抗原結合断片を、追加の治療薬剤と同時に、又は連続的に(その前及び/又は後に)投与し得る。抗体又はその抗原結合断片、及び追加の治療薬剤は、同じ組成物又は異なる組成物で投与されてもよく、また、同じ投与経路又は異なる投与経路で投与されてもよい。第1の療法(本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又は追加の治療薬剤である)を、がん(例えば、卵巣がん、膵臓がん、肺がん、乳がん、卵管がん、子宮(例えば、子宮内膜)がん、及び原発性腹膜がん)を有する対象への第2の療法(本明細書に記載の本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片、又は追加の治療薬剤)の投与の前(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、若しくは12週間前)に、投与と同時に、又は投与の後(例えば、5分、15分、30分、45分、1時間、2時間、4時間、6時間、12時間、24時間、48時間、72時間、96時間、1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、8週間、若しくは12週間後)に、投与してもよい。特定の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片と組み合わせて対象に投与される追加の治療薬剤は、同じ組成物(薬学的組成物)で投与される。他の実施形態では、本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片と組み合わせて対象に投与される追加の治療薬剤は、本明細書に記載の抗LGALS3抗体若しくはその抗原結合断片とは異なる組成物で対象に投与される(例えば、2つ以上の薬学的組成物が使用される)。
【0269】
患者集団
本明細書で提供される方法に従って治療される対象は、げっ歯類、ネコ、イヌ、ウマ、ウシ、ブタ、サル、霊長類、又はヒトなどの任意の哺乳動物であり得る。特定の実施形態では、対象は、ヒトである。別の特定の実施形態では、対象は、イヌである。本明細書で使用される場合、「対象」及び「患者」という用語は、相互に置き換え可能に使用される。
【0270】
特定の実施形態では、本明細書で提供される方法に従って治療される対象は、限定されないが、卵巣、肺、膵臓、乳房、子宮、卵管、若しくは原発性腹膜のがん、又はLGALS3を発現する任意の他の組織のがんを含む、LGALS3陽性がんを有すると診断されている。
【0271】
以下の実施例は、限定ではなく、例示として提供される。
【実施例
【0272】
実施例1.AlivaMab(登録商標)Mouseを用いた抗ガレクチン-3ハイブリドーマの生成
Ablexis AlivaMab(登録商標)Mouseにおいて抗体を生成するために使用されるGal-3免疫原のアミノ酸配列は、以下である。
ADNFSLHDALSGSGNPNPQGWPGAWGNQPAGAGGYPGASYPGAYPGQAPPGAYPGQAPPGAYPGAPGAYPGAPAPGVYPGPPSGPGAYPSSGQPSATGAYPATGPYGAPAGPLIVPYNLPLPGGVVPRMLITILGTVKPNANRIALDFQRGNDVAFHFNPRFNENNRRVIVCNTKLDNNWGREERQSVFPFESGKPFKIQVLVEPDHFKVAVNDAHLLQYNHRVKKLNEISKLGISGDIDLTSASYTMI(配列番号53)
【0273】
AlivaMab(登録商標)Mouseにおいて抗Gal-3抗体を誘発するために、抗原提示を増強するか、又はTヘルパー細胞を刺激するための複数耐性破壊戦略を使用した。動物の血清中の力価が高レベルに達したら、いくつかのマウス由来の脾細胞を融合物に使用して、ハイブリドーマを生成した。
【0274】
実施例2.ハイブリドーマのスクリーニング
一次スクリーニングとして、ヒトGal-3を使用したELISAを使用した。Gal-3に特異的な10種類の濃縮されたクローンを得た。
【0275】
がん細胞に対するGal-3-PE結合についてのアッセイを、二次スクリーニングとして開発した。huGal-3(Abcam ab89487)を、製造業者の指示に従って、PE(Innova Biosciences)で標識した。OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合についてのアッセイを、以下のように実施した。培養したSKOV3細胞をトリプシン処理し、培養培地で洗浄した。500個、1000個、又は2000個の細胞を、様々な濃度のGal-3-PEとともにインキュベートした。示された数のOVCAR3細胞を、示された量のGal-3-PEとともに96ウェルプレートにピペッティングし、暗所で2時間、ベンチ上でインキュベートした後、Mirrorball(登録商標)デバイス(TTP Labtech)で読み取った。OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を、Mirrorball(登録商標)フローサイトメーターを使用して検出した。図3Aに示されるように、OVCAR3細胞は、Gal-3-PEに対する用量依存的結合を示した。同様に、MOLT-4もまた、図3Bに示されるように、Gal-3-PEに対する用量依存的結合を示した。
【0276】
上述の結合アッセイを、以下のようにOVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の阻害についてのアッセイに変換した。OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を測定するための結合反応を、PBS(陰性対照)、又は一次結合スクリーニングにおいて選択されたクローンからの濃縮(粗精製)によって得られる示された抗体の存在下で設定した。結合の程度をフローサイトメトリーによって測定し、プロットした。図4に示されるように、5種類の抗体(12H7、20F08、38E05、39F02、及び46H02)は、OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を遮断した。クローン14D11(別名14D11.2D3)は、このアッセイにおいてOVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合を遮断しなかったため、陰性対照として機能する。
【0277】
実施例3.抗体の特性決定
得られた抗体の種交差反応性を決定するために、ヒトGal-3又はマウスGal-3に対する結合を、ELISAを使用して検出した。図5A~5Bに示されるように、クローン39F02、38E05、及び46H02は、マウスGal-3に結合したが、クローン20F08及び12H07は、マウスGal-3に結合しなかった。
【0278】
次に、クローンに対して、OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の遮断の用量応答の決定を行った。OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の阻害についてのアッセイを、存在する抗体の濃度を増加させつつ、実施した。OVCAR3細胞に対するGal-3-PEの結合を測定するための結合反応を、PBS(陰性対照)の存在下、又は精製された抗体の量を増加させつつ、設定した。図6Aに示されるように、クローン20F08及び12H07は、OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の遮断の非常に良く似た用量応答を示した。興味深いことに、20F08及び12H07は、同一の配列を有することが見出された。図6Bに示されるように、クローン46H02は、OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の遮断の独特の用量応答を示した。クローン38E05及び39F02は、これも同一の配列を有するが、図6Cに示されるように、OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合の遮断の非常に良く似た用量応答を示した。クローン14D11は、このアッセイでは、OVCAR3細胞に対するGal-3-PE結合を遮断しなかった(図6D)。
【0279】
次いで、クローン46H02及び20F08に対して、これらの抗体の濃度を増加させつつ存在させた状態で、表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した結合パラメータの決定を行った。図7A~7Bに示されるように、モノクローナル抗体(mAb)46H02(図7A)、及び20F08(図7B)は、ヒトGal-3に対する特徴的な結合動態を示した。これらのデータは、mAb46H02及び20F08が、それぞれ10nM及び44nMのKDでヒトGal-3に結合したことを示す。
【0280】
ここで使用される第1世代のAlivaMab(登録商標)Mouse(Ablexis)は、ヒト重鎖及び軽鎖を有する抗体、又はヒト重鎖及びマウス軽鎖を有するハイブリッド抗体の混合物を生成するため、クローン12H07、20F08、38E05、39F02、及び46H02に対して、抗マウスカッパ、抗マウスラムダ、抗ヒトカッパ、及び抗ヒトラムダ抗体を使用したELISAによる軽鎖種決定を行った。図8に示されるように、46H02は、完全ヒトF(ab)2を有しており、一方で、他のヒットが、ヒトHC及びマウスLCを有する。
【0281】
46H02及び14D11.2D3が、Gal-3上の重複するエピトープに結合するかどうかを分析するために、プレミックスエピトープビニングアッセイ戦略を使用して、エピトープビニングアッセイを行った(図9A)。この戦略では、試験抗体(分析物)は、捕捉表面上に固定化され、リガンドは、分析物の上を流れ、結合は、SPRによって検出される。リガンドは、抗原のみ、又は第2の抗体と複合体化された抗原のプレミックス溶液のいずれかである。示されるように、抗原のみは、抗原に対する分析物の結合を示す特徴的なSPRプロファイル(左パネル)を生成する。リガンドが、第2の抗体と複合体化された抗原のプレミックス溶液であるときに、第2の抗体が抗原上の別個のエピトープに結合する場合、抗原に対する分析物の結合を示すSPRプロファイルが得られる(中央パネル)。第2の抗体が、分析物の結合を遮断する場合、SPRプロファイルは、結合を示さず、第2の抗体が分析物の結合を遮断することを示す(右パネル)。分析物の結合を遮断する第2の抗体を模倣する対照として、試験抗体(分析物)自体を使用した。図9Bに示されるように、mAb2D3を分析物として使用すると、Gal-3+14D11.2D3複合体は、結合を完全に阻害した。対照的に、Gal-3、又はGal-3+46H02複合体は、結合を阻害しなかった(図9B)。同様に、図9Cに示されるように、mAb46H02を分析物として使用すると、Gal-3+46H02複合体は、結合を完全に阻害した。対照的に、Gal-3、又はGal-3+14D11.2D3複合体は、結合を阻害しなかった(図9C)。したがって、mAb46H02及び14D11は、互いに競合せず、したがって、別個のエピトープに結合する。
【表1】















【0282】
本明細書において引用される全ての刊行物、特許及び特許出願は、それぞれの個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されているかのように、参照により本明細書に組み込まれる。前述の本発明の技術は、理解の明確化のために例示及び例によってある程度詳細に説明されているが、本技術の教示に照らして、添付の特許請求の範囲の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の変更及び修正を行うことができることは、当業者には容易に明らかとなるであろう。
図1A
図1B
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6A
図6B
図6C
図6D
図7A
図7B
図8
図9A
図9B
図9C
【配列表】
2024501581000001.app
【国際調査報告】