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特表2024-501582新生血管形成(neovascularization)を伴う病的状態の処置のための、IDO1依存性血管形成細胞を利用する方法及び組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】新生血管形成(neovascularization)を伴う病的状態の処置のための、IDO1依存性血管形成細胞を利用する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20240104BHJP
   A61P 27/02 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20240104BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/405 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/4245 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/4188 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/198 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/4164 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/4045 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/713 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/19 20060101ALI20240104BHJP
   A61K 31/438 20060101ALI20240104BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20240104BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20240104BHJP
【FI】
A61K45/00
A61P27/02
A61P9/10
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K31/405
A61K31/4245
A61K31/4188
A61K31/198
A61K31/4164
A61K31/4045
A61K31/713
A61K31/19
A61K31/438
C07K16/28 ZNA
C12N15/113 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558308
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 US2021062217
(87)【国際公開番号】W WO2022125553
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】63/122,121
(32)【優先日】2020-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519344682
【氏名又は名称】ランケナウ・インスティテュート・フォー・メディカル・リサーチ
(71)【出願人】
【識別番号】523214627
【氏名又は名称】デュエット セラピューティクス,インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(72)【発明者】
【氏名】ミュラー,アレクサンダー,ジェー.
(72)【発明者】
【氏名】モンダル,アルピタ
(72)【発明者】
【氏名】デイ,ソウビック
(72)【発明者】
【氏名】トムリンソン,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】ローリー-クリントップ,リサ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4C206
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA17
4C084MA52
4C084MA57
4C084MA58
4C084MA65
4C084MA66
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA33
4C084ZC41
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C085BB31
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4C085GG02
4C085GG06
4C085GG08
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC13
4C086BC14
4C086BC38
4C086BC71
4C086CB03
4C086CB22
4C086EA16
4C086MA01
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA17
4C086MA52
4C086MA57
4C086MA58
4C086MA65
4C086MA66
4C086NA05
4C086NA14
4C086ZA33
4C086ZC41
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA13
4C206FA53
4C206MA14
4C206MA72
4C206MA77
4C206MA78
4C206MA85
4C206MA86
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZA33
4C206ZC41
4C206ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA21
4H045EA28
4H045FA74
(57)【要約】
【解決すべき課題】
本発明は、対象における網膜症を処置する、又は病的新生血管形成(neovascularization)を阻害するための、組成物及び方法である。
【課題の解決手段】
一態様において、該方法は、対象の眼において、IDO依存性血管形成細胞(IDVCs)を除去又は阻害することを含む。IDVCsを除去又は阻害する方法は、IDO1及び統合応答ノードを阻害することを含む、種々の方法が記述される。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における網膜症を処置するか、又は病的新生血管形成(neovascularization)を阻害する方法であって、対象の眼におけるIDO依存性血管新生細胞(IDVCs)を除去するか、又は阻害することを含む、方法。
【請求項2】
前記IDVCsが、新生血管形成(neovascularization)における役割を有するものとして機能的に特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
新生血管形成(neovascularization)の確立及び維持が、IDVCs内のIDO1(インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ-1)の誘導を必要とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
IDVC活性の阻害が、IDO1の阻害によって達成される、請求項1~3の何れか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記IDVCsが、前記IDVCsの細胞表面マーカーに対する抗体を使用して阻害又は除去される、請求項1~4の何れか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記細胞表面マーカーが、
CD33、
CD11b、
CD15、及び
CD66
から選択される、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記細胞表面マーカーが、
CD274(PDL1)、
MHCクラスII、
CD4、
CD31(PECAM-1)、
CD202B(TIE2)、
CD205(DEC-205)、
Siglec 8、及び
EMR1
から選択される、請求項5に記載の方法
【請求項8】
IDVCsにおける統合ストレス応答(ISR: Integrated Stress Response)を遮断又は阻害することを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
眼組織における統合ストレス応答(ISR)を遮断又は阻害することを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
網膜又は脈絡膜における統合ストレス応答(ISR)を遮断又は阻害することを含む、請求項1~7の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
ISRパスウェイノードの発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害することを含む、請求項8~10の何れか一項記載の方法。
【請求項12】
以下を含む請求項11に記載の方法:
(a) GCN2(general control nonderepressible 2)の発現、誘導、活性又はシグナル伝達の遮断又は阻害と、
及び/又は、
(b) ATF4(activating transcription factor 4)の発現、誘導、活性又はシグナル伝達の遮断又は阻害と、
及び/又は、
(c) CHOP(C/EBP homologous protein/Ddit3 DNA-damage inducible transcript 3)の発現、誘導、活性又はシグナル伝達を遮断又は阻害すること。
【請求項13】
IL-6を遮断又は阻害することをさらに含む、請求項1~12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
対象における、網膜症を処置するか、又は病的新生血管形成(neovascularization)を阻害する方法であって、統合ストレス応答の下流のシグナル伝達分子を遮断又は阻害することを含む、方法。
【請求項15】
前記シグナル伝達分子が、サイトカインである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記サイトカインが、IL-6である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
任意の形態の血管内皮増殖因子(VEGF)の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することをさらに含む、請求項1~16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
VEGF阻害剤が、単独の処置剤として投与されるよりも少ない頻度で投与される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
インドールアミン 2,3-ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達の阻害剤を組み合わせて投与することをさらに含む、前記請求項1~18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記IDVCsが、前記眼の網膜に局在する、前記請求項1~19の何れか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記IDVCsが、前記眼の脈絡膜に局在する、前記請求項1~19の何れか一項に記載の方法。
【請求項22】
処置剤の投与ルートが、経口投与、静脈内注射、鼻腔内投与、舌下投与、硝子体内注射、眼内注射、デポー製剤(遅延作用製剤ともいう)若しくはデバイスを介する投与、又は点眼剤を介する投与を含む、前記請求項1~21の何れか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記IDO-1のブロッカー又は阻害剤が、以下の少なくとも1を含む前記請求項1~22の何れか一項に記載の方法:
i.
1-メチル-D-トリプトファン(インドキシモド)、
1-メチル-L-トリプトファン、
1-メチル-D-トリプトファン及び1-メチル-L-トリプトファンのラセミ混合物、
エパカドスタット、
ナボキシモド(GDC-0919)、及び
NLG802、
又はその塩、エナンチオマー若しくはプロドラッグ;
ii.
1-R-D-トリプトファン又は1-R-L-トリプトファン(式中、RはC1-C12アルキル);
iii.
メチルチオヒダントイン-DL-トリプトファン(MTH-Trp)、
β-(3β)-DL-アラニン、
β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-DL-アラニン、
6-ニトロ-L-トリプトファン、
インドール3-カルビノール、
3,3'-ジインドリルメタン、
エピガロカテキン ガレート、
5-Br-4-Cl-インドキシル1,3-ジアセテート、
9-ビニルカルバゾール、
アセメタシン、
5-ブロモ-DL-トリプトファン、
5-ブロモインドキシル ジアセテート、
ナフトキノン系、
S-アリル-ブラシニン、
S-ベンジル-ブラシニン、
5-ブロモ-ブラシニン、
フェニルイミダゾール系、
4-フェニルイミダゾール、
エキシグアミンA、及び
NSC401366;又は
iv.
BMS-986205/ONO-7701、
PF-06840003/EOS200271、
MK-7162/IOM2983、
LY3381916、
KHK2455、
HTI-1090/SHR9146、
DN1406131、
RG70099、
Roxyl-WL、
TPST-8844、
ピルビン酸エチル、
Amg-1若しくはDX-03-12、又は
その塩、エナンチオマー若しくはプロドラッグ若しくは任意の処置上有効な製剤。
【請求項24】
前記VEGF阻害剤が、以下の1つ以上を含む、請求項17又は18に記載の使用:
ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、
ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、
アフリベルセプト(Eylea(登録商標))、
ブロルシズマブ(Boevu(登録商標))、
ペガプタニブ(Macugen(登録商標))、
アビシパル ペゴル、
ラニビズマブ バイオシミラーFYB201、PF582、SB11、及びXlucane、
アフリベルセプト バイオシミラーMYL-1701P/M-710、又は
コンベルセプト、
ファリシマブ/RG7716(二重特異性抗体VEGF-A + Ang-2)、
OPT-302(VEGF-C/'trap')、
KS301(Kodiak Sciences抗VEGFポリマー結合生物製剤)、
KS501(Kodiak Sciences抗VEGFトラップ+抗IL6抗体融合)。
【請求項25】
前記ISRパスウェイノードが、前記ISRパスウェイノードの翻訳又は転写を阻害する小分子によって阻害される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項26】
前記ISRパスウェイノードが、当該ISRパスウェイノードの翻訳又は転写を阻害する生物学的分子によって阻害される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項27】
前記生物学的分子が、抗体又はそのフラグメントである、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記ISRパスウェイノードが、当該ISRパスウェイノードの翻訳又は転写を阻害する核酸分子によって阻害される、請求項11又は12の何れか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記核酸分子が、siRNA又はshRNAである、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
GCN2阻害剤を投与することを含む、前記請求項1~29の何れか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記GCN2阻害剤が、
GCN2-IN-1(A-92)、
GCN2iA、
GZD824、
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジン骨格(scaffold)に基づく阻害剤
から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
CHOP阻害剤を投与することを含む、前記請求項1~31の何れか一項に記載の方法。
【請求項33】
ATF4阻害剤を投与することを含む、前記請求項1~32の何れか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記ATF4阻害剤が、
ウルソール酸(ursolic acid)、
トマチジン、
GSK2606414、及び
TRIB3
から選択される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ISRパスウェイ遮断薬が、
GSK-2606414,
RPT-GCN2i,
AMG-PERK44及び
trans-ISRIB
から選択される、請求項25に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新生血管形成を伴う病的状態の処置のための、IDO1依存性血管形成細胞を利用する方法及び組成物に関する。
(関連出願の相互参照)
本出願は2020年12月7日に出願された米国仮出願第63/122,121号の優先権を主張し、その開示全体が参照により本明細書に組み込まれる。
(電子形式で提出された資料の参照による組入)
参照によりその全体が本明細書に組み込まれるのは、2021年12月7日に作成され、4,212バイトのサイズを有するSEQLIST.txtという名前のテキストファイルとしてEFS-Webを介して提出された配列表である。
【背景技術】
【0002】
新血管形成(new blood vessel formation)の厳密に調節されたプロセスである、血管形成(angiogenesis)は、器官形成のために発生的に必要であるが、雌性生殖周期及び創傷治癒を除いて、正常な成人組織では、まれである。対照的に、病理学上の血管形成(angiogenesis)は、調節不全の新生血管形成(neovascularization)によって特徴付けられ、特定の段階を超えて増殖するために宿主からの血液供給を必要とする腫瘍の展開を含む様々な疾患に関係する(1)。
腫瘍血管形成(tumor angiogenesis)は、創傷治癒の生理学的プロセスを破壊する局所炎症環境との相互作用を通して誘発される(2)。炎症性腫瘍微小環境の1つの顕著な特徴は、集合的にMDSCs(骨髄由来サプレッサー細胞: myeloid-derived suppressor cells)と呼ばれる、未成熟骨髄細胞の不均一な集合組合せの存在である(3)。
MDSCsの顕著な免疫抑制能力に加えて、その血管形成(angiogenesis)を促進する能力は、現在、決定的な特徴とみなされており、MDSCsは、腫瘍新生血管形成(tumor neovascularization)の重要なドライバーであると考えられている(4)。
【0003】
IFNγ及びIL6は、それぞれ血管形成(angiogenesis)の抑制又は促進に関して拮抗的に機能すると思われる2つの重要な炎症性サイトカインである(5、6)。これらの明らかに拮抗的な活性の生物学的効果は不明であるが、最近の遺伝的データは、トリプトファン異化酵素IDO1(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1)を、局所IFNγに応答することによって新生血管形成(neovascularization)を維持し、IL6産生の増加についてのシグナル伝達によってその抗血管形成活性を相殺する、重要な調節ノードとして関連付けている(7)。
IDO1を誘導するIFNγの能力は、広範に特徴付けられている(8)が、IDO1とIL6との間の調節的関係は、IDO1がIL6誘導に正の又は負の影響を及ぼすことが見出されている、明らかに矛盾する以前に発表された知見によって複雑になり、十分に理解されていない(9~12)。
IL6誘導の正のドライバーであるIDO1に関してさえ、少なくとも2つの異なるシグナル伝達パスウェイが関与している。
一部の研究では、IDO1によるIL6の誘導が、IDO1を介したトリプトファン枯渇によるGCN2(一般的なコントロール非抑制性2:general control nonderepressible 2)セリンキナーゼの活性化に続くISR(統合ストレス応答)パスウェイを介したシグナル伝達に起因しているとされている(11)が、他の研究ではIDO1が開始する内因性AHRリガンドキヌレニンの産生に応答するAHR(アリール炭化水素受容体)シグナル伝達に関与しているとされている(13)。
これらの不一致の1つの可能な説明は、環境、すなわち、IDO1が発現される関連する細胞型である。IDO1発現は、MDSCs並びにDCs(樹状細胞)、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞、内皮細胞、間葉系間質細胞及び線維芽細胞を含む、様々な免疫細胞及び非免疫細胞において報告されている(14)。
遺伝的証拠は、新生血管形成(neovascularization)を促進するためにIDO1に必要とされる下流エフェクターとしてIL6を強く示唆しているが、新生血管形成(neovascularization)の環境においてIDO1が発現される細胞型はまだ同定されていないので、IDO1からIL6への結合に関与する基礎となるシグナル伝達パスウェイもまだ解明されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が提供するのは、一態様において、対象における網膜症を処置するか、又は病的新生血管形成(neovascularization)を阻害する方法である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この方法は、対象の眼におけるIDO依存性血管形成細胞(IDVCs: IDO-dependent vascularizing cells)を除去又は阻害することを含む。
IDVCsは、新生血管形成(neovascularization)において、IDVCs内でのIDO1の誘導の必要性の確立及び維持において役割を有するものとして機能的に特徴付けられる。一実施態様では、IDVC活性の阻害は、IDO1の阻害によって達成される。
別の実施態様では、IDVCsは、IDVCの細胞表面マーカーに対する抗体、又は抗体薬物コンジュゲート(ADC)を使用して阻害又は除去される。
別の実施態様では、IDVCsは、IDVCsにおける統合ストレス応答(ISR)をブロック又は阻害することによって阻害又は除去される。
【0006】
一つの実施態様では、該方法は、
(a)GCN2(general control nonderepressible 2)の発現、誘導、活性又はシグナル伝達を遮断又は阻害すること;及び/又は、
(b)ATF4(activating transcription factor 4)の発現、誘導、活性又はシグナル伝達を遮断又は阻害すること;及び/又は、
(c)CHOP(C/EBP homologous protein/Ddit3 DNA-damage inducible transcript 3)の発現、誘導、活性又はシグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。
【0007】
別の態様では、該方法は、統合ストレス応答の下流でシグナル伝達分子を遮断又は阻害することを含む。
【0008】
一実施態様では、シグナル伝達分子はサイトカインである。別の実施態様では、サイトカインはIL-6である。
【0009】
本明細書に記載の方法の別の実施態様では、該方法は、任意の形態の血管内皮増殖因子(VEGF)の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することをさらに含む。
別の実施態様では、該方法は、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達の阻害剤を投与することをさらに含む。
【0010】
投与のためのキット並びに他の態様及び利点を含む処置を含む処置組成物は、以下の詳細な説明に記載されている。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1-1】図1A~1Dは、4T1肺転移増殖、新生血管形成(neovascularization)及びIL6上昇を制限する際のIDO1のGCN2フェノコピー喪失を示す。(図1A)WT、IdoT-/-、及びGcn2 -/-マウスへの同所性4T1乳房腫瘍細胞生着の5週間後の転移性量(metastatic burden)を可視化するための、インディア・インクによる肺の染色。 (図IB)IxlO44T1細胞の同所性移植後のWT、IdoT-/-、及びGcn2-/-マウスのコホート(N7マウス/群)についてのKaplan-Meier生存曲線であり、有意性を2群ログランク検定により評価した。
図1-2】同上(図1C)WT、IdoT-/-、及びGcn2-/-マウスから5~6週間での4T1肺転移内の免疫蛍光染色された血管(抗CAVl; Cy3)及び核(DAPI)の共焦点画像。スケールバー=100μm。 (図ID)同所性4T1乳房腫瘍細胞生着の5~6週間後のWT、IdoT-/-、及びGcn2-/-マウスからの肺転移内の新生血管密度の定量的評価(N = 3マウス/群)。WTコントロール群とIdoT-/-及びGcn2 -/-群(真っ直ぐな棒に沿って示される)との間の有意性を、ダネットの多重比較検定を用いた一方向ANOVAによって決定し、IDO1 -/-及びGcn2 -/-群(括弧内に示される)の間の有意性をmeans ± SEMとしてグラフ化し、一方向の対応のないスチューデントのt検定によって決定した。
図2-1】図2A~2Cは、AHRシグナル伝達ではなくISRの阻害が同様に、インビトロでのIDO1活性の阻害として、IL6発現の誘導を遮断することを実証する。(図2A)IDO1阻害剤(Epacadostat;左カラム)、ISR阻害剤(ISRIB;中カラム)及びAHR阻害剤(BAY-218;右欄)処置がIDO1活性に及ぼす影響を評価するために、IFNγ+LPS処置U937及びHL60細胞の上清中のキヌレニンレベルを分光光度法に基づいて測定した。IFNγ+LPS誘導のないコントロールと比較した倍率誘導を、平均± SEMとしてグラフ化する(N = 3試験/状態:trials/condition)。
図2-2】同上(図2B-2C)U937及びHL60細胞における未処置のベースラインレベルに対するIl6、Atf4、Chop及びCyp1a1遺伝子発現のIFNγ+LPS媒介誘導(行による)のqPCRベースの評価、並びにIDO1阻害剤(Epacadostat;左の列)、ISR阻害剤(ISRIB;中央の列)、及びAHR阻害剤(BAY-218;右の列)処置の、これらの遺伝子のそれぞれの誘導に対する影響。IFNγ+LPS誘導のないコントロールと比較した倍率誘導を、平均± SEMとしてグラフ化する(N = 3試験s/状態)。異なる阻害剤処置の効果の統計的有意性を、両側スチューデントt検定によって決定した。阻害剤処置による阻害率も、各グラフの上部に記されている。
図2-3】同上
図3-1】図3A~3Gは、酸素誘発性網膜症におけるISRシグナル伝達の遮断が血管新生及びIL6誘導を制限するが、IDO1は上昇したままであることを実証する。(図3A)OIR及び正常酸素状態後の網膜扁平上皮における血管系の蛍光顕微鏡検査。(図3B-図3D)全網膜面積(N≧6眼s/群)にわたる(図3B)新生血管面積のP17で評価されたWT、Ido1-/-及びGcn2-/-OIRコホートからの眼(図3B)。(図3C)プールされた硝子体液中に存在するIL6(40眼s/プール;N≧2プールs/群)、 (図3D)プールされた硝子体液中に存在するキヌレニン(40眼s/プール;N≧2プールs/群)。(図3B-3D)ストレートバー:WTを他の群と比較するダネット検定によるANOVA。
図3-2】同上(図3E) Gcn2、Atf4、Chop、Ahrを標的とするsiRNAを眼内に注射したWT OIRコホート、又は全網膜面積(N > 眼s/群)にわたる新生血管面積についてt検定で評価した非標的コントロール。 (図3F、3G)血管(B4-Alexa 488-イソレクチン)及びIDO1(CY3)について染色した網膜フラットマウント(図3B及び3E)の共焦点画像。スケールバー= 50μm。
図4-1】(図4A-4E)4T1転移及びOIRにおけるGr1陽性免疫細胞集団へのIDO1発現の局在を実証する。以下のために染色された共焦点画像:(図4A)WT、IDO1-/-、及びGcn2-/-からのIDO1(Cy3)及び血管(antiCAV1; FITC)(スケールバー=20μm) (図4B)WTマウスからの原発腫瘍及び脾臓と比較された、WT及びIDO1-/-マウスからのIDO1(Cy3)及びCD45(FITC)(スケールバー=50μm)、(図4C) WT及びIDO1-/-マウスからのIDO1(Cy3)及びCr1又はCD11b(Alexa 488)、(スケールバー=50μm)。
図4-2】同上(図4D)WT OIR誘発新生児からのIDO1(Cy3)及びCD45又はGr1(FITC)について染色した網膜フラットマウント。 (スケールバー=10μm)。 (図.4E)α-Gr1とアイソタイプコントロール抗体を注射したWT OIR誘発新生児(N≧ 眼s/群)との間の総数網膜面積に対する新生血管面積のt検定による比較。
図5-1】図5A-5Fは、Gr1+ CD11blo亜集団が、IDO1の発現を介して新生血管形成(neovascularization)を促進することを実証する。 (図5A) CD11blo(P3)及びCD11bhi(P4)細胞の分離のためのゲーティング(gating)を示す(全ゲーティングスキームについては図12を参照)、4T1転移負荷肺から単離された、CD45+磁気ビーズ選択、Gr1+ゲート化(gated)免疫細胞のフローサイトメトリープロット。
図5-2】同上 (図5B)単離されたCD45+ Gr1+ CD11blo及びCD45+ Gr1+ CD11bhi細胞の共焦点画像:スライドに接着させ、IDO1(Cy3)、CD11b(Alexa 488)及び核(DAPI)について染色した。スケールバー=50μm。 (図5C図5E)血管(抗CAV1; Cy3)及び核(DAPI)について染色された共焦点画像と対になったマトリゲル写真。マトリゲルプラグを、PBS単独で、又は、以下から得られそしてWTマウスに移植された、1.5x106 Gr1+ CD11blo若しくはGr1+ CD11bhi細胞と共に、組み込まれた:(図5C)WTマウス若しくはIdo1-/-マウスから得られ、そして、WTマウスへ移植、又は(図5E)WTマウスから得られ、最後の3日間にわたって、ビヒクル若しくは50mg/kgエパカドスタットb.i.d.を与えたWTマウスに移植。スケールバー=100μm。(図5D, 5F)図5C及び5E(N ≧ 5 プラグs/状態)の画像に対応する新生血管密度定量。ストレートバー:他の基と比較したPBSについてのダネット検定によるANOVA。ブラケット:選択された対に対するSidakテストを伴うANOVA。
図5-3】図5D~5E 同上
図5-4】図5F 同上
図6-1】図6A-6Fは、新生血管形成(neovascularization)を促進するために、Gr1+ CD11blo細胞は、IL6及びGCN2の両方を必要とし、IDO1を誘導することによってIFNγを打ち消すことを示す。(図6A、6E)血管(抗CAV1; Cy3)及び核(DAPI)について染色された共焦点画像と対になったマトリゲルプラグ写真。マトリゲルプラグが、PBS単独で、又は、以下から得た1.5x106 Gr1+ CD11blo若しくはGR1+ CD11bhi細胞とともに、組み込まれた:(図6A)Il6-/-若しくはGcn2-/-マウスから得、WTマウスに移植、又は(図6E)WT若しくはIdo1-/-マウスから得、Ifng-/-マウスに移植。スケール=100μm。 (図6B、6F)図6A及び図6Eの画像に対応する新生血管密度の定量的評価(N≧3プラグs/状態)。ストレートバー:他のグループと比較したPBSについてのダネット検定によるANOVA。ブラケット:選択された対に対するSidakの試験を伴うANOVA。(図6C、6D)WT及びIfng-/-マウスから得られた共焦点画像: (図6C)血管(B4-Alexa 488イソレクチン)及びIDO1(Cy3)について染色された網膜OIRフラットマウント、又は(図6D)血管(抗CAV1: FITC)及びIDO1(Cy3)についての4T1肺転移。スケール=(図6C)50μm又は(図6D)10μm。
図6-2】図6B~6D同上
図6-3】図6E~6F同上
図7-1】図7A-7Eは、新生血管形成(neovascularization)を促進するGr1+ CD11blo細胞の自家蛍光亜集団が、高いCD11c及びアシアロ-GM1によって特徴付けられるIDO1依存性サブセットを含むことを示す。(図7A)IDO1(Cy3)及び核(DAPI)を染色した4T1肺転移からのGr1+ CD11blo細胞の自家蛍光高(AFhi)及び低(AFlo)サブセットの共焦点画像。スケール=100μm。 (図7B)血管(抗CAV1; Cy3)及びDAPIについて染色した共焦点画像(スケール=100μm)と対になったマトリゲルプラグ写真。マトリゲルプラグは、WTマウスから単離され、WTマウスに移植された1.5x106 AFhi又はAFlo細胞に組み込まれた。(図7C)Gr1+ CD11bloゲーティングに続くプロット:(左)488/530強度でのゲーティング、及び(右)CD11c-PE(Y軸)及びアシアロ-GM1-APC強度(x軸)強度でのその後のゲーティング。(図7D) CD1chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロ-GM1lo細胞は、図7Cに示されるように単離され、以下で染色された:(左パネル) 共焦点画像化についてはIDO1(Cy3)及びDAPI(スケール=50μm)、又は(右パネル)光学顕微鏡についてはギムザ(スケール=20μm)で。 (図7E) PBS単独又は以下から得られ移植された5x104 CD11chi アシアロ-GM1hi(hi/hi)又はCD11clo アシアロ-GM1lo(lo/lo)細胞と共に組み込まれたマトリゲルプラグにおける新生血管密度の定量的評価:(左)WT又はIDO1-/-マウスから得られ、WTマウスに移植された、又は、 (右)WT、IDO1-/-、Il61-/-、又はGcn2-/-マウスから得られ、WT又はIfng-/-マウスの何れかに移植された(N ≧プラグs/条件)。WT及びIDO1-/-~WT群は、比較目的のために両方のパネルに含まれる。ストレートバー:(左)PBS又は(右)WTを他の群と比較するためのダネット検定によるANOVA。ブラケット:選択された対に対するSidakの検査を伴うANOVA。
図7-2】図7D ~7E同上
図8図8A~8Bは、トランスジェニックマウス株の検証を示す。(図8A)遺伝子型解析。この研究で利用された4つのトランスジェニックマウス株のそれぞれから得られた精製ゲノムDNA及び野生型コントロールを、標的遺伝子の機能的破壊をもたらす遺伝子変化のそれぞれを検出するように設計されたプライマー対を用いたPCRによって、アッセイした(表1~3を参照されたい)。各組の解析に使用されるプライマーは、各ゲル画像の上部に示され、PCR産物がロードされた順序は側面に列挙される。各トランスジェニック染色のバンドパターンの変化は、各プライマーセットの予測と一致する。 (図8B)サイトカイン分析。(左)Il6-/-及び(右)Ifng-/-系統マウス及び対応するWTコントロールからの肺ホモジネートを、25μgのLPSの鼻腔内点滴注入の24時間後に、以前に記載されたように(Smith, 2012, 引用文献9)、サイトカインビーズアレイイムノアッセイに基づく分析(BD Biosciences)によって、IL6及びIFNγレベルについてそれぞれ評価した。ミィーンズ± SEM(N= 4マウス)を対数目盛にプロットするが、これはWTから得られた数値とノックアウト動物との間の差が大きいためである。
図9図9は、原発性4T1腫瘍が、WT、Ido1-/-及びGcn2-/-マウスにおいて同等の増殖速度を示す。雌WT、Ido1-/-及びGcn2-/-マウスが、それぞれ、1×1044T1細胞の同所性移植片を受けた(N = 5腫瘍)。生着後11日目に、触知可能な腫瘍塊が明らかになった時点で、キャリパー測定を隔週で行い、原発腫瘍体積を計算した。データは、ミィーンズ± SEMとしてプロットされる。
図10図10は、種々の阻害剤処置に応答した細胞生存率の評価を示す。IFNγ+LPSで誘導され、IDO1阻害剤Epacadostat、ISR阻害剤ISRIB又はAHR阻害剤BAY-218(上から下)の何れかで処理されたU937及びHL60細胞の生存率を、LDI Cell CountEZ TPSアッセイキットを使用して評価した。様々な処置群の細胞生存率を、対応する組の未処置コントロール細胞に正規化することによって決定し、平均± SEM(N = 3ウェルs/状態)としてグラフ化した。薬理学的に誘導された細胞死の陽性コントロールとして、プロテアソーム阻害剤ボルテゾミブ(BTZ、20nM)を用いて、各群の追加の細胞セットを処理した。
図11図11は、酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおけるIdo1喪失と比較したGcn2喪失の新生血管形成(neovascularization)に対する影響を可視化するための網膜フラットマウント画像の比較を示す。正常な網膜新生血管形成(neovascularization)の実施例として、(上段)OIRを誘導するためにP7-P12から高酸素に曝露されたWT新生児、又は一定の正常酸素状態下で維持されたWT新生児、(下段)OIRを誘導するためにP7-P12から高酸素に曝露されたIdo1-/-及びGcn2-/-新生児から、P17で得られた網膜フラットマウントにおける血管の代表的な画像。
図12図12は、表面マーカーGr-1及びCD11bを用いた血管促進の評価のためのフローサイトメトリーによる細胞の単離を示す。蛍光活性化細胞選別を用いて、マトリゲルプラグへの組み込みのために、4T1肺転移からIDO1+として同定された細胞集団を濃縮した。使用される逐次ゲーティングのプロットを、左から右に示す:(P1)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)上でのゲーティング、(P2)Gr-1+細胞を選択するためのPerCP-Cy5強度上でのゲーティング、(P3及びP4)CD11blo及びCD11bhi細胞をそれぞれ選択するためのFITC強度上でのゲーティング。P3ゲートとP4ゲートとの間のギャップは、2つの選別された集団間の交差コンタミネーションの可能性を低減するために含まれた。
図13-1】図13A-13Bは、FACSに基づくGr1+ CD11blo細胞の高度に自家蛍光性の亜集団の同定及び単離を示す。 (図13A)自家蛍光陽性細胞を単離するために使用される連続ゲーティングのプロットを、左から右に示す:(P1)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)上でのゲーティング、(P2)Gr1+細胞を選択するためのPerCP-Cy5強度上でのゲーティング、(P3)CD11blo細胞を選択するためのPE-Cy7強度上でのゲーティング、及び(P4,5)AFhi(自家蛍光-高、P4)及びAFlo(自家蛍光-低、P5)細胞集団を選択するための488/530 nM励起/発光チャネル上でのゲーティング。(図13B)異なるチャネルでの自家蛍光の検出。Gr1+ CD11blo細胞の連続ゲーティング(左から右へのプロット1~3)に続いて、5つの異なる励起/発光波長における自家蛍光プロファイルをプロット4~8に示す。
図13-2】同上
図14-1】図14A-14Bは、Ido1発現細胞集団のマーカーとしてのCD11c及びアシアロGM1の同定を示す。 (図14A)フローサイトメトリーによるGr1+ CD11blo AFhi集団上の細胞表面マーカーのパネルの評価。F480、B220、CD3ε、CD11c、アシアロ-GM1、Siglec-F、CD31、IFNGR1(CD119)、MHC-II及びPDL1(CD274)に対する抗体を、633/660(Alexa647)又は633/780(APC-Cy7)チャネルの何れかでの検出に使用した。各グラフ上の青色の線は、赤色の線によって示されるベースラインに対する各抗体関連シグナルを表すヒストグラムを示す。(図14B)Gr1+ CD11blo AFhi集団におけるCD11c及びアシアロ-GM1表面マーカーの同時評価。使用される逐次ゲーティングのプロットは、左から右に示される:(P1)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)におけるゲーティング、(P2)Gr1+細胞について選択するためのPerCP-Cy5強度におけるゲーティング、(P3)CD11blo細胞について選択するためのPE-Cy7強度におけるゲーティング、(P4)AFhi細胞について選択するための488/530強度におけるゲーティング、(P5、6) CD11chi アシアロ-GM1hi(右上)及びCD11clo アシアロ-GM1lo(左下)細胞について選択するための、CD11c-PE強度(X軸)及びアシアロ-GM1-APC強度(Y軸) におけるゲーティング。
図14-2】同上
図15-1】図15A-15Dは、AFhi集団内のCD11chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロ-GM1lo細胞の新生血管形成能の比較を示す。(図15A、15C) 血管(抗CAV1; Cy3)及び核(DAPI)について染色した共焦点画像と対にしたマトリゲルプラグ写真。マトリゲルプラグは、PBS単独で、又は、以下から得られ移植された、5x104 CD11chi アシアロ-GM1hi若しくはCD11clo アシアロ-GM1lo細胞と共に組み込まれた:(図15A)WTマウス又はIdo1-/-マウスから得られ、WTマウスに移植された、又は(図15C)Il6-/-若しくはGcn2-/-マウスからえられ、WTマウスに移植された。スケール=100μm。(図15B)マウスへの皮下移植後9日目に切除したマトリゲルプラグの写真画像。プラグは、WTマウスから単離され、WTマウスに移植された、CD11chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロGM1lo細胞の、3倍連続希釈物(左に示す)を、組み込んだ。(図15D)図15Cの画像に対応する血管新生密度の定量的評価(N≧2プラグs/状態)。ストレートバー:他のグループと比較されるPBSについてのダネットの検査を伴うANOVA。ブラケット:選択された対についてのシダック試験によるANOVA。
図15-2】同上
図15-3】同上
図16-1】図16A~16Bは、Ido1-/-、Il6-/-及びGcn2-/-マウス由来のCD11chi アシアロ-GM1hi IDVCsは、宿主IFNγに依存する、新生血管形成(neovascularization)をサポートする能力の障害を示す。(図16A)CD11chi アシアロ-GM1hi細胞を組み込んだマトリゲルプラグの写真画像(左)であり、各マトリゲルプラグから切り出した切片の共焦点画像(右)と対にしてマウスへの皮下移植の9日後に切除され、血管(抗CAV1; Cy3)及び核(DAPI)について染色された。上から下まで、行は、WT及びIfng-/-マウスに導入されたマトリゲルプラグを示す。左から右に、カラムは、WT、Ido1-/-、Il6-/-及びGcn2-/-マウスから得られた細胞が組み込まれたマトリゲルプラグを示す。スケールバー=100μm。これらの画像は、図7Eに示される新生血管密度の定量的評価に関連する。(図16B)異なるトランスジェニックマウス株から単離されたCD11chi アシアロ-GM1hi細胞におけるIDO1の検出。単離されたCD11chi アシアロ-GM1hi細胞の共焦点画像をスライドに接着させ、二次Cy3結合抗体(第1スライド)又は抗IDO1(Cy3)及び核(DAPI)の何れかで染色した。スケールバー=50μm。細胞が単離されたトランスジェニックマウス株(WT、Ido1-/-、Gcn2-/-、Il6-/-、Ifng-/-)を各画像の上部に列挙する。
図16-2】同上
図17-1】図17A-17Bは、IDVCを同定及び単離するために使用される抗体を用いて得られた蛍光シグナルのフローサイトメトリーに基づく検証を示す。 (図17A)蛍光は、4T1肺転移からの、IDVCに関するCD11c及びアシアロ-GM1検出の1つの確認を差し引く。CD11chi アシアロ-GM1hi IDVCsを同定し、単離するために用いた連続ゲーティング戦略からのプロットを、左から右に示す:(P1)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)におけるゲーティング、(P2)Gr1+集団を選択するためのPerCP-Cy5強度(X軸)におけるゲーティング、(P3)CD11blo集団を選択するためのPE-Cy7強度(X軸)におけるゲーティング、(P4)AFhi集団を選択するための488/530nm励起/発光チャネルにおけるゲーティング、及び(P5、6) CD11chi アシアロ-GM1hiとCD11clo アシアロ-GM1lo集団を分離するための、PE強度(Y軸)及びAlexa647強度(X軸)に関するゲーティング。(上段)存在する全ての抗体、(中段)抗CD11c抗体を含まない、(下段)抗アシアロ-GM1抗体を含まない。(図17B)蛍光から、4T1肺転移からのIDVCs上のCD45検出の1つの確認を差し引く。以下のように変更された、CD11chi アシアロGM1hi IDVCsを同定及び単離するために使用される逐次ゲーティング戦略からのプロット:(P1)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)上でのゲーティング、(P2)APC-Cy7強度(X軸)上でゲーティングしてCD45+集団を選択すること、(P3)パシフィック青色強度(X軸)上でゲーティングしてGr-1+集団を選択すること、(P4)PE-Cy7強度(X軸)上でゲーティングしてCD11blo集団を選択すること、(P5)488/530nm励起/発光チャネル上でゲーティングしてAFhi集団を選択すること、及び(P6、7) CD11chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロ-GM1lo集団分離するために、PE強度(Y軸)及びAlexa647強度(X軸)上でゲーティング。(上段)存在する全ての抗体、(下段)抗CD45抗体は含まれなかった。
図17-2】同上
図18-1】図18A-18Cは、IDVCのCD11blo状態の検証を示す。(図18A)蛍光から、4T1肺転移からのCD11chi アシアロ-GM1hi AFhi IDVCのCD11b染色の1つの評価を差し引いた。CD11chi アシアロ-GM1hi CD1blo IDVCを同定するために使用された変更逐次ゲーティング戦略からのプロットを、左から右に示す:(P1)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)上のゲーティング、(P2)PE強度(Y軸)上のゲーティング、及びCD11chi アシアロ-GM1hi細胞を選択するためのAlexa647強度(X軸)、(P3、4)488/530nm励起/発光チャネル(X軸)上のゲーティング、及びAFhi CD11chi及びAFhi CD11blo細胞を分離するためのPE-Cy7強度(Y軸)。(上段)存在する全ての抗体、(下段)抗CD11b抗体は含まれなかった。右端の列は、前の列からのオーバーレイを示し、CD11b非染色集団に対するP3及びP4ゲート集団の両方のPE-Cy7強度の(上)シフト、及びP3及びP4ゲート集団とCD11b非染色集団との間の488/530自家蛍光の(下)オーバーラップを実証する。(図18B)FACSは、図18Aに示すように単離されたAFhi CD11chi及びAFhi CD11blo細胞を選別し、スライドに接着させ、共焦点イメージングのためにIDO1(Cy3)及びDAPIについて染色した(スケールバー=50μm)。(図18C)各マトリゲルプラグから切断し、血管(抗CAV1; Cy3)及び核(DAPI)について染色した凍結切片の共焦点画像(右)と対になったWTマウスへの皮下移植の9日後に切除したマトリゲルプラグの写真画像(左)。上から下までの行は、AFhi CD11chi又はAFhi CD11blo細胞に組み込まれたマトリゲルプラグの実施例を示す。
図18-2】同上
図19-1】図19A-19Cは、MDSCと比較したIDVCのGr-1、Ly6C及びLy6G状態のフローサイトメトリーに基づく評価。図19Aは、以下のように、4T1肺転移から従来のMDSC及びIDVCの両方を同定するために使用される分岐型ゲーティング戦略の代表的な例である:(P1上)前方散乱(X軸)及び側方散乱(Y軸)、続いて、(P2左)パシフィックブルー強度(X軸)及びPE-Cy7強度(Y軸)の何れかをゲートして、CD45hi CD11b hi集団(MDSC)を選択するか、又は(P2右)パシフィックブルー強度(X軸)をゲートして、CD45+集団を選択するか、(P3)PE強度(X軸)及びAlexa647強度(Y軸)をゲートして、CD11c hi アシアロ-GM1 hi集団を選択するか、及び(P4) AFhi CD11blo集団を選択するために488/530nm励起/発光チャネル(X軸)及びPE-Cy7強度(Y軸) をゲートする。下の3つの列は、ストレプトアビジン-APC-Cy7単独(赤色ヒストグラム)と比較して、ビオチン結合抗Gr-1、抗Ly6C又は抗Ly6G抗体(青色ヒストグラム)の何れかで標識された3つの独立サンプルからのMDSC(図19B)及びIDVC(図19C)集団におけるストレプトアビジン-APC-Cy7蛍光染色強度を示す。
図19-2】同上
図19-3】同上
図20-1】図20A-20Fは、IDO1がNos2の誘導を抑制することにより、IFNg媒介性新生血管退縮を防ぐことを示す。 (図20A)IDO1の喪失から生じる肺転移生存利益は、IFNγの同時喪失によって排除される。1×104 4T1細胞(N≧17マウス)の同所性移植後のWT、Ido1-/-、Ifng-/-及びIfng-/-Ido1-/-マウスのコホートのKaplan-Meier生存曲線(有意性は2群ログランク検定により評価)。(図20B)IDO1の喪失に起因する肺転移性転移症の生存利益は、NOS2の同時喪失によって同様に排除される。1×104 4T1細胞(N≧9マウス)の同所性生着後のWT、Ido1-/-、Nos2-/-及びNos2-/-Ido1-/-マウスのコホートについてのKaplan-Meier生存曲線(有意性は2群ログランク検定により評価)。(図20C)IDVCs欠如IDO1は、Nos2-/-マウスにおいて新生血管形成(neovascularization)を誘発する能力を回復する。各マトリゲルプラグから切り出され、血管(抗CAV1; Cy3)について染色された切片の共焦点画像(右)と対にして表示される、WT又はIdo1-/-マウスから得られ、WT又はNos2-/-マウスへの皮下移植後9日目に切除されたCD11chiアシアロ-GM1hi細胞が組み込まれたマトリゲルプラグの写真画像(左)。スケールバー=100μM。(図20D)(左) C(N ≧ 2プラグs/状態)におけるNos2-/-マウスからの画像に対応する新生血管密度の定量的評価を平均± SEMとしてプロットし、スチューデントt検定により統計的有意性について評価した。(右) 比較のために、図7からのWT及びIfng-/-マウスからのマトリゲルプラグにおける新生血管密度の定量的評価を含めた。****, P < 0.0001; ns、有意ではない。(図20E)IDO1の喪失は、肺転移内のNOS2発現の上昇をもたらす。WT、Ido1-/-、Nos2-/-及びIfng-/-マウスからのNOS2(FITC、緑色)について染色した4T1肺転移からの共焦点画像。(図20F)IDO1阻害は同様に、肺転移内のNOS2上昇を誘発する。ビヒクル又は3日間の50mg/kgのエパカドスタットb.i.d.の何れかを経口投与したWTマウスからのNOS2(FITC、緑色)及び核(DAPI、青色)について染色した4T1肺転移からの共焦点画像。上部パネルの点線の白い線は、対応する下部パネルに示される拡大領域を描写する。
図20-2】同上
図20-3】同上
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書に記載の組成物及び方法は、網膜におけるIDVCsの本発明者らの同定を基にする。IDVCsにおけるIDO1の誘導は、新生血管形成(neovascularization)の確立及び維持をサポートするIDVCsの能力の中心である統合ストレス応答(ISR)活性化をもたらす。
【0013】
免疫抑制に加えて、MDSCs(骨髄由来サプレッサー細胞)も腫瘍血管形成(angiogenesis)をサポートすることが一般に認められている。最近、トリプトファン異化酵素IDO1(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)は、炎症性サイトカインIFNγ(インターフェロン-γ)とIL6(インターロイキン6)との間の重要な調節ノードとしての位置付けを通して、新生血管形成(neovascularization)の促進に関与していることが報告されている。
しかし、IDO1が発現する細胞型は、これまで報告されていない。Gr-1+ MDSCsの不均一な広がり(heterogeneous expanse)内で、インビボで新生血管形成(neovascularization)を誘発する能力は、主に、高度に自家蛍光性のCD11blo細胞の少数のサブセットと関連することが、本願発明において報告される。
IDO1発現は、これらの細胞におけるIDO1活性が新生血管形成(neovascularization)を促進する際に果たす主要な役割のために、これらの細胞の別個のCD11c、アシアロ-GM1二重陽性亜集団〔ここではIDVCs(IDO1依存性血管形成細胞:IDO1-dependent vascularization cells)と称される〕にさらに限定される。
機構的には、IDVCsにおけるIDO1の誘導が、これらの細胞内の統合ストレス応答のGCN2媒介活性化を介したIL6の産生のためのシグナル伝達による宿主IFNγの抗血管形成効果に対する負のフィードバック抑制(constraint)を提供する。
これらの知見は、IDO1が、炎症環境とどのように相互作用して新生血管形成(neovascularization)を促進するかについての基本的な分子及び細胞の洞察を明らかにする。
【0014】
I. 組成物の成分及び方法
本明細書で記述される組成物及び方法の説明において、種々の構成要素は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるものと同じ意味を有する技術用語及び科学用語を使用することによって、及び公開されたテキストを参照することによって定義することができる。
そのようなテキストは、本出願で使用される用語の多くに対する一般的なガイドを当業者に提供する。本明細書に含まれる定義は、本明細書の構成要素及び組成物を説明する際の明確さのために提供され、特許請求される本発明を限定することを意図しない。
【0015】
A. 対象
「患者」又は「対象」又は「個体」は、本明細書で使用される場合、ヒト、家畜動物又は農業用動物、家庭用動物又はペット、及び通常は治験に使用される動物を含む哺乳動物を意味する。
一実施態様では、これらの方法及び組成物の対象はヒトである。
一実施態様では、対象は眼疾患を有する。
別の実施態様では、対象が眼疾患を有し、任意の療法でまだ処置されていない。
別の実施態様では、対象が眼疾患を有し、従来の方法論、例えば、血管内皮増殖因子(VEGF)阻害剤の眼内投与で処置されるが、処置に最適に、又は十分な処置的利益を達成するのに十分な様式で応答しない。
別の実施態様では、前記眼疾患を有する対象がVEGF阻害剤又は遮断剤の投与を受けているが、VEGF阻害剤又は遮断剤単独療法の投与時に他の患者において観察された所望の処置的最大応答を達成していない。
【0016】
B. 眼疾患
用語「眼疾患」とは、眼の障害又は疾患を意味する。
一実施態様では眼疾患が新生血管形成(neovascularization)、すなわち、眼の組織若しくは部分における新たな若しくは異常な血管形成を特徴とし、又は過剰な血管形成は眼の組織若しくは部分である。
一実施態様では、眼障害は網膜症である。
特定の実施態様では、眼疾患が異常な/変型の血管形成を特徴とする。
特定の実施態様では、眼疾患が眼内新生血管形成(neovascularization)を特徴とする。眼内新生血管形成(neovascularization)は、視神経乳頭、虹彩、網膜、脈絡膜、角膜、及び/又は硝子体液の血管新生であってもよいが、これらに限定されない。
眼疾患の例としては限定されないが、緑内障、パンヌ ス(角膜血管増殖)、翼状片、黄斑浮腫、黄斑変性(例えば、加齢黄斑変性)、網膜症(例えば、糖尿病性網膜症、血管網膜症、未熟児網膜症)、糖尿病性網膜虚血、糖尿病性黄斑浮腫、網膜変性、水晶体後線維増殖症、角膜移植片新生血管形成(neovascularization)、中心網膜静脈閉塞、病的近視、ブドウ膜炎、眼の炎症性疾患、及び増殖性硝子体網膜症が挙げられる。
特定の実施態様では、眼疾患が網膜症(例えば、未熟児網膜症、糖尿病性網膜症(例えば、増殖性糖尿病性網膜症)及び黄斑変性(例えば、乾性又は湿性黄斑変性)からなる群から選択される。
さらに別の実施態様では、眼の疾患又は障害が黄斑ジストロフィー(例えば、シュタルガルト病、ビテリフォルム黄斑ジストロフィー(VTM)、ノースカロライナ黄斑ジストロフィー、又はベスト病)である。
【0017】
加齢黄斑変性症(AMD)は、黄斑の変性疾患であり、多くの場合、進行性視力喪失をもたらす。それは、乾性(非新生血管:non-neovascular)又は湿潤(新生血管:neovascular)の何れかと診断される。
疾患進行の速度は、個体間で異なり得、複数の危険因子と関連している。
早期AMDには、ドルーゼン等の臨床徴候、及び網膜色素上皮の異常が含まれる。
後期AMDは、新生血管(湿潤又は滲出性としても知られる)又は非新生血管(萎縮性、乾性、又は非滲出性として知られる)であり得る。
後期非新生血管AMDは、黄斑の地理的萎縮(GA)の発症及び中心視力の喪失を特徴とし、重度及び永続的な視力障害及び法的盲につながる〔例えば、Mitchell, P. et al.(2018)を参照されたい〕。
加齢黄斑変性症は、Lancet, 392(10153), 1147-1159参照により、ここに本明細書の記載に盛り込まれる。
後期新生血管AMDは、中心視力の喪失を伴う浮腫及び網膜剥離の発症を特徴とし、重度かつ永続的な視力障害及び法的盲につながる。
【0018】
C. IDO依存性血管形成細胞(IDVCs)
本明細書には、IDO1依存性血管形成細胞(IDVCs)と称される、新たに単離された細胞型が記載される。
この新規免疫細胞サブタイプは、不均一Gr-1+ MDSC集団内からマウスにおいて単離され、新生血管形成(neovascularization)を誘発し、IDO1によって活性化されるIL6のISR駆動産生を介してIFNγの存在下でこれらの新規血管を維持するその能力によって、MDSCsの大部分と機能的に区別可能である。
【0019】
免疫抑制に加えて、MDSCs(骨髄由来サプレッサー細胞)も腫瘍血管形成をサポートすることが一般に認められている。
最近、トリプトファン異化酵素IDO1(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)は、炎症性サイトカインIFNγ(インターフェロン-γ)とIL6(インターロイキン6)との間の重要な調節ノードとしての位置付けを通して、新生血管形成(neovascularization)の促進に関与していることが報告されている。
本明細書に記載されるように、Gr-1+ MDSCsの不均一な広がり内で、インビボで新生血管形成(neovascularization)を誘発する能力は、主に、高度に自家蛍光性のCD11blo細胞の少数のサブセットと関連している。
IDO1発現は、これらの細胞におけるIDO1活性が新生血管形成(neovascularization)を促進する際に果たす主要な役割のために、ここではIDVCsと称される、これらの細胞の別個のCD11c、アシアロ-GM1二重陽性亜集団にさらに限定される。
機構的には、IDVCsにおけるIDO1の誘導がこれらの細胞内の統合ストレス応答のGCN2媒介活性化を介したIL6の産生のためのシグナル伝達によるホストIFNγの抗血管形成効果に対する負のフィードバック抑制(constraint)を提供する。
一実施態様では、IDVCsが眼の網膜に局在する。
別の実施態様では、IDVCs が眼の脈絡膜に局在する。
別の実施態様では、IDVCsが眼の網膜及び脈絡膜に局在する。
【0020】
IDVC細胞におけるIDO1の誘導は、新生血管形成(neovascularization)の確立及び維持をサポートするIDVCsの能力の中心であるISR(統合ストレス応答(ISR: Integrated Stress Response))活性化をもたらす。
IDVCsは、細胞表面上の、高レベルのCD45、CD11c、アシアロ-GM1及びGr-1、並びに低レベルのCD11bを検出するための抗体を使用するフローサイトメトリーによって、マウスからほぼ均一に単離することができ、これらは、それらの比較的高レベルの内因性自家蛍光(autofluorescence)と相まって(カップル化されて)いる。
【0021】
IDVCsは、サイトカインIFNγ(インターフェロン-γ)を含むサイトカインに応答する白血球又は別の細胞型であり、IDO1を誘導することによって、新生血管形成(neovascularization)において役割を有すると機能的に特徴付けられ、その確立及び維持にはIDVCs内のIDO1の誘導が必要である。
IDVCとしての細胞の特徴付けは、細胞を単離し、マウスの皮膚の下に移植されるマトリゲルプラグにそれらを組み込むことを含み得る。数日後、移植部位を血管の存在について評価する。
【0022】
一実施態様では、IDVCsが以下の表現型:CD11b+CD14-CD15+又はCD11b+CD14-CD66b+によって特徴付けられる。
あるいは、非常に少ないCD15+細胞がCD11b-であるので、CD33骨髄性マーカーをCD11bの代わりに使用することができる。
別の実施態様では、IDVCsが以下の表現型:Lin-HLA-DR-/loCD33+又はLin-HLA-DR-/loCD11b+CD14-CD15+CD33+によって特徴付けられる。
一実施態様では、以下の細胞表面マーカーの1つ又は複数がIDVCs上に局在する: CD11c、CD274(PDL1)、MHCクラスII、CD4、CD31(PECAM-1)、CD202B(TIE2)、CD205(DEC-205)、Siglec 8、又はEMR1。
【0023】
D. 統合ストレス応答(ISR)パスウェイノード(nodes:節)
統合ストレス応答(ISR)は、様々な生理学的刺激及び病理学的状態に応答して活性化される、真核細胞において誘導可能なユビキタスシグナル伝達パスウェイである。
そのような刺激は、一般に、細胞外因性因子及びストレス因子、例えば、低酸素、アミノ酸欠乏、グルコース欠乏、及びウイルス感染を含む。
加えて、小胞体(ER)ストレス等の細胞内ストレスは、小胞体内の折り畳まれていないタンパク質の蓄積によって引き起こされ、ISRを活性化することもできる。
さらに、癌生物学の文脈において、ISRは、癌遺伝子活性化によって誘発され得る。
【0024】
本明細書に記載されるように、ISRは、それを通してIDO1が網膜症における病理学的新生血管形成(neovascularization)を促進するように作用する生物学的に関連するシグナル伝達パスウェイであることが示される。
GCN2、CHOP、及びATF4等の重要なISRノードの阻害は、網膜症の動物モデル、すなわち酸素誘発網膜症(OIR)マウスモデルにおいて新生血管形成(neovascularization)を減少させることが示された。
本明細書で使用される場合、「ISRノード」という用語は、ストレス活性化eIF2αキナーゼによって開始されるシグナル伝達パスウェイに沿った任意の要素(component)を指す。
特定の実施態様では、ISRノードは、GCN2、CHOP、及び/又はATF4を指す。
【0025】
一般制御非抑制性2(general control nonderepressible 2:GCN2)は、アミノ酸ホメオスタシスのマスターレギュレーターキナーゼであり、アミノ酸欠乏下の腫瘍微小環境における癌生存に重要である。
GCN2は、又、ヒトにおいて、真核生物翻訳開始因子2-αキナーゼ4(EIF2AK4)、eIF-2-αキナーゼGCN2、及びGCN2様タンパク質として指定され、EIF2AK4遺伝子によってコードされる。
GCN2は、低アミノ酸利用能に応答して真核生物翻訳開始因子2(EIF2S1/eIF-2-α)のαサブユニットをリン酸化する代謝ストレス感知タンパク質キナーゼである。
hGCN2の配列は、当技術分野で公知であり、例えば、UniProtKB-Q9P2K8に見出すことができる。
【0026】
C/EBP相同タンパク質(CHOP)は、成長停止及びDNA損傷誘導性タンパク質153(GADD153)としても知られ、CCAAT/エンハンサー結合タンパク質(C/EBP)ファミリーに属する。
CHOPは、他のC/EBPメンバーと二量体化し、それらのDNA結合及びトランス活性化特性を変化させる。
それは、小胞体ストレス又はDNA損傷後に成長停止及びアポトーシスを誘導する。
hCHOPの配列は、当技術分野で公知であり、例えば、UniProtKB-P35638に見出すことができる。
【0027】
活性化転写因子4(ATF4)は、cAMP応答エレメント(CRE)(コンセンサス:5'-GTGACGT[AC][AG]-3')に結合し、正常な代謝及び酸化還元プロセスの調節因子として、並びに統合ストレス応答(ISR)中のマスター転写因子としての両方として作用する転写因子である(PubMed:1847461、PubMed:16682973、PubMed:31444471、PubMed:32132707)。
ATF4は、ISRのコアエフェクターであり、小胞体(ER)ストレス、アミノ酸飢餓、ミトコンドリアストレス又は酸化ストレス等の様々なストレスへの適応に必要とされる。
hATF4の配列は、当技術分野で公知であり、例えば、UniProtKB-P18848に見出すことができる。
【0028】
E. IDO1
インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO1)は、トリプトファンのキヌレニンへの変換の第一段階を触媒するトリプトファン異化酵素である。
IDO1は、肝臓におけるトリプトファンの代謝プロセシングとは無関係に必須アミノ酸トリプトファンを異化する肝外酵素である。
眼障害の処置のためのIDO1単独療法は、国際公開第2016/100851号パンフレットに記載されており、米国特許第10535035をも参照されたい。これらは、 参照により本明細書に組み込まれる。IDO1は、本明細書においてIDOと呼ばれることがある。
【0029】
F. VEGFとVEGFR
「VEGF」は、血管形成又は血管形成プロセスを誘導する血管内皮増殖因子(vascular endothelial growth factor)を指す。本明細書で使用される場合、「VEGF」という用語は、例えば、VEGF121、VEGF165及びVEGF189を含むVEGF-A/VPF遺伝子の選択的スプライシングによって生じるVEGF〔血管透過性因子(VPF)及びVEGF-Aとしても知られる〕の様々なサブタイプ又はアイソフォームを含む。
さらに、本明細書で使用される場合、用語「VEGF」は、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D及びVEGF-Eを含み、これらは、同族VEFG受容体(すなわち、VEGFR)を介して作用して、血管形成又は血管形成プロセスを誘導する。
「VEGF」という用語は、VEGFR-1(Flt-1)、VEGFR-2(KDR/Flk-1)、又はVEGFR-3(FLT-4)等のVEGF受容体に結合する増殖因子のクラスの任意のメンバーを含む。
「VEGF」という用語は、「VEGF」ポリペプチド又は「VEGF」をコードする遺伝子若しくは核酸を指すために使用することができる。参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2019/0380187号を参照されたい。
【0030】
G. 阻害剤、遮断剤、アンタゴニスト
一般的な用語「ブロッカー」、「阻害剤」、又は「アンタゴニスト」は、標的分子又は標的細胞、例えば、本明細書で使用される場合、IDVCs、ISRノード、IDO1、又はVEGFの活性又は産生を、部分的に又は完全に阻害する薬剤を意味する。
特定の実施態様では、これらの用語は、標的分子の遺伝子発現レベル、mRNAレベル、タンパク質レベル又はタンパク質活性を低下させることができる組成物又は化合物又は薬剤を指す。
アンタゴニストの例示的な形態としては、例えば、タンパク質、ポリペプチド、ペプチド(環状ペプチド等)、抗体又は抗体断片、ペプチド模倣物、核酸分子、アンチセンス分子、リボザイム、アプタマー、RNAi分子、及び有機小分子が挙げられる。
アンタゴニスト阻害の実例となる非限定的な機構には、リガンド合成及び/又は安定性の抑制(例えば、リガンド遺伝子/核酸を標的とするアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物の使用)、リガンドのその同族受容体への結合の遮断(例えば、抗リガンドアプタマー、抗体又は可溶性、デコイ同族受容体の使用)、受容体合成及び/又は安定性の抑制(例えば、リガンド受容体遺伝子/核酸を標的とするアンチセンス、リボザイム又はRNAi組成物の使用)、受容体のその同族受容体への結合の遮断(例えば、受容体抗体の使用)、その同族リガンドによる受容体の活性化の遮断(例えば、受容体チロシンキナーゼ阻害剤の使用)、天然基質の結合を阻止する、すなわち阻害する分子の酵素結合の結果としての酵素の活性部位の遮断、又は活性若しくは結合の何れかに結合する阻害剤分子の相互作用が含まれる タンパク質の生物学的活性を調節するために、タンパク質の部位、又はタンパク質上のアロステリック部位を介する。
さらに、ブロッカー又は阻害剤は、標的分子を直接的又は間接的に阻害し得る。
【0031】
I.塩類
本明細書に記載される組成物は、又、本明細書に記載される特定のIDVC、ISRノード、IDO、又はVEGF阻害剤化合物の全ての塩を含む。
本明細書で使用される場合、「塩」は、開示される化合物の誘導体を指し、親化合物は、既存の酸又は塩基部分をその塩形態に変換することによって修飾される。
塩の例としては、アミン等の塩基性残基の鉱酸(HCl、HBr、H2SO4等)又は有機酸(酢酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸等)塩;カルボン酸等の酸性残基のアルカリ(Li、Na、K、Mg、Ca等)又は有機(トリアルキルアンモニウム等)塩等が挙げられるが、これらに限定されない。
本明細書に記載又は参照される化合物の塩は、従来の化学的方法によって、塩基性又は酸性部分を含有する親化合物から合成することができる。
一般に、そのような塩は遊離酸又は塩基形態のこれらの化合物を、化学量論量の適切な塩基又は酸と、水中又は有機溶媒中で、又はその2つの混合物中で反応させることによって調製することができ、一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノール、又はアセトニトリル(ACN)等の非水性媒体が好ましい。
【0032】
本明細書に記載されるか、又は参照により組み込まれる化合物の「薬学的に許容される塩」は、例えば、非毒性の無機酸又は有機酸から形成される親化合物の従来の非毒性塩で上記の「塩」のサブセット(部分集合)を含む。
適切な塩のリストはRemington's Pharmaceutical Sciences, 17th ed., Mack Publishing Company, Easton, Pa, 1985, p.1418及びJournal of Pharmaceutical Science, 66, 2(1977)に見出され、これらの各々はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
「薬学的に許容される」という語句は、適正な医学的判断の範囲内で、過度の毒性、刺激、アレルギー反応、又は他の問題若しくは合併症を伴わずに、合理的な利益/リスク比に相応して、ヒト及び動物の組織と接触して使用するのに適した化合物、材料、組成物、及び/又は剤形を指すために本明細書で使用される。
【0034】
ii. プロドラッグ
「プロドラッグ」という用語は、投与後に、元々の薬理学的に活性成分な分子又は化合物、例えば、活性成分IDO阻害剤(例えば、国際公開第2019/051198号を参照されたい)、VEGF又はVEGFR阻害剤又はアンタゴニスト、ISRノードアンタゴニスト又は阻害剤に、代謝される(すなわち、体内で変換される)化合物又は分子又は薬剤を意味する。
プロドラッグは、完全ではないにしても、典型的には、例えば、内因性酵素又は他の化学物質及び/又は状態の作用によって、体内又は細胞内等の活性形態(すなわち、薬物)に変換又は代謝される薬理学的に不活性な形態である。
活性分子を直接投与する代わりに、対応するプロドラッグを使用して、組成物/活性分子が吸収され、分配され、代謝され、及び/又は排泄される方法を改善する。
プロドラッグは、多くの場合、バイオアベイラビリティを改善するように、又は薬物がその意図される標的ではない細胞又はプロセスとどのように選択的に相互作用するかを改善するように設計される。これは、活性分子又は薬物の有害な又は意図しない望ましくない又は重篤な副作用を低減する。
【0035】
iii. バイオシミラー
「バイオシミラー」は、生物学的生成物であり、一般に、大型で複雑な分子である。それは、生体から生成され、参照生成物(例えば、既にFDAに認可されている生物学的薬物)と高度に類似する一貫した品質を保証する。FDA承認を受けたバイオシミラーは、純度、安全性、分子構造及び生物活性、又は効力において、参照薬物と臨床的に意味のある差異を有してはならない。
【0036】
iv. 抗体及びフラグメント
「抗体」又は「抗体分子」という用語は、特異的抗原に結合する、抗体及びそのフラグメントを含む、任意のペプチド又はタンパク質である。本明細書中で使用される場合、抗体又は抗体分子は、インタクトな免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分、及び免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分の融合体を意図する。
【0037】
抗体は、天然に存在する抗体であってもよく、又は合成若しくは修飾抗体(例えば、組換えにより生成された抗体;キメラ抗体;二重特異性抗体;ヒト化抗体;ラクダ科動物抗体等)であってもよい。抗体は、少なくとも1つの精製タグを含み得る。特定の実施態様では、フレームワーク抗体は抗体フラグメントである。
用語「抗体フラグメント」は、抗原結合フラグメント又はその単鎖である抗体の一部を含む。抗体断片は、合成又は遺伝子操作されたポリペプチドであり得る。抗体の用語「抗原結合部分」内に包含される結合フラグメントの実施例としては、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCH1ドメインからなる一価フラグメント;(ii)F(ab')2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを含む二価フラグメント;(iii)VH及びCH1ドメインからなるFdフラグメント;(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント;(v)VHドメインからなるdAbフラグメント;及び(vi)単離された相補性決定領域(CDR)が挙げられる。
さらに、Fvフラグメントの2つのドメイン、VL及びVHは別々の遺伝子によってコードされるが、組換え法を用いて、VL及びVH領域が対合して一価分子〔一本鎖Fv(scFv)として知られる〕を形成する単一のタンパク質鎖として作製されることを可能にする合成リンカーによって、それらを連結することができる。そのような一本鎖抗体は、又、抗体の用語「抗原結合断片」内に包含されることが意図される。
これらの抗体フラグメントは、当業者に公知の従来技術を用いて得られ、フラグメントは抗体全体と同じ様式で有用性についてスクリーニングすることができる。抗体フラグメントは、限定されるものではないが、単一ドメイン(Dab;例えば、単一可変軽鎖又は重鎖ドメイン)、Fab、Fab'、F(ab')2、及びF(v)を含む免疫グロブリンフラグメント;並びに、限定されるものではないが、scFv、scFv2、scFv-Fc、ミニボディ、ダイアボディ、トリアボディ、及びテトラボディを含むこれらの免疫グロブリンフラグメントの融合体(例えば、リンカーを介する)を含む免疫グロブリンフラグメントを含む。
抗体は、又、少なくとも1つの抗体又は抗体断片を含むタンパク質(例えば、融合タンパク質)であってもよい。
【0038】
本発明の方法において有用な抗体は、好ましくは「免疫学的に特異的」であり、これは目的のタンパク質又は化合物の1つ又は複数のエピトープに結合するが、抗原性生物学的分子の混合集団を含有する試料中の他の分子を実質的に認識及び結合しない、タンパク質/ポリペプチド、特に、抗体を指す。
【0039】
本発明の抗体は、さらに修飾され得る。例えば、抗体は、ヒト化されていてもよい。特定の実施態様では、抗体(又はその一部)が抗体又は抗体断片構築物の骨格に挿入される。例えば、本発明の抗体の可変軽鎖ドメイン及び/又は可変重鎖ドメインは、別の抗体構築物に挿入され得る。抗体を組換え産生するための方法は、当技術分野において周知である。実際、特定の抗体及び抗体断片構築物のための市販のベクターが利用可能である。
【0040】
本発明の抗体は、又、他の成分にコンジュゲート/連結され得る。例えば、抗体は、少なくとも1つの細胞透過性ペプチド、検出可能な薬剤、造影剤、又は造影剤に作動可能に連結(例えば、共有結合、場合によりリンカーを介して)され得る。本発明の抗体は、又、少なくとも1つの精製タグ(例えば、Hisタグ)を含み得る。特定の実施態様では、抗体が細胞透過性ペプチドにコンジュゲートされる。
【0041】
v. アプタマー
「アプタマー」という用語は、標的に対して阻害効果を有するペプチド又は核酸を指す。
アプタマーによる標的の阻害は、標的との結合によって、標的を触媒的に変化させることによって、標的又は標的の機能的活性を修飾する方法で標的と反応させることによって、自殺阻害剤のように標的にイオン的又は共有結合的に結合させることによって、又は標的と別の分子との間の反応を促進することによって起こり得る。
アプタマーは、ペプチド、リボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオチド、他の核酸、又は異なるタイプの核酸の混合物であり得る。アプタマーは、本明細書においてさらに詳細に記載されるように、1つ以上の修飾アミノ酸、塩基、糖、ポリエチレングリコールスペーサー又はリン酸骨格単位を含むことができる。
【0042】
vi. RNAとDNA
「RNA干渉」、「RNAi」、「miRNA」、「shRNA」、「siRNA」及び「siRNA」という用語は、目的の遺伝子(特に、目的の遺伝子のメッセンジャーRNA)と相同である1つ又は複数の二本鎖RNAを標的細胞に導入することによって、遺伝子又は遺伝子産物の発現が減少する任意の方法を指す。
遺伝子治療は、多くの広く知られた治験用ベクター、組換えウイルス及びCRISPR技術を介して、修飾RNA又は修飾DNAを細胞に導入することによるものであり、遺伝子治療は、組換え技術を用いたRNA又はDNAの操作及び/又は疾患の処置も、又、可能である
修飾されたRNA又は修飾されたDNAを介して、IDO/TDOパスウェイ及び遺伝子産物並びにVEGFパスウェイ及び遺伝子産物の効果的な阻害を送達して、本明細書に記載の併用療法での結果を達成する際に使用される。このような遺伝子操作は、又、とりわけ、CRISPR((Clustered Regularly Interspaced Short Palindromic Repeats:クラスター化規則的間隔短いパリンドロミックリピート)及びTALEN(transcription activator-like effector genome modification:転写活性化因子様エフェクターゲノム修飾)等の遺伝子編集技術を用いることができる。
例えば、教科書Engineering, and Medicine.2017. Human Genome Editing: Science, Ethics, and Governance. Washington, DC: the National Academies Press. https://doi.org/10.17226/24623を参照されたい。このような方法の詳細について、本明細書に参考として組み込まれる。
【0043】
vii. 小分子
「小分子」という用語は、医薬に適用される場合、一般に、約900ダルトン未満の比較的低分子量を有する、生物学的プロセスに影響を及ぼす、非生物学的有機化合物を指す。
小分子薬物は、容易に同定可能な構造を有し、高信頼性で合成的に複製することができる。一実施態様では、小分子が、550ダルトン未満の分子量を有し、分子がヒト消化器系の細胞内吸収能力と適合する可能性を増加させる。
小分子薬物は、錠剤として経口投与されることが多い。小分子薬物という用語は、それらを生物学的薬物と対比させるために使用され、生物学的薬物は、ペプチド、タンパク質、及び組換えタンパク質融合体等の比較的大きな分子であることが多く、生体を使用して産生されることが多い。
【0044】
viii. IDO1の特異的阻害剤
語句「IDO1の発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物」は、IDO1を直接標的とする小分子酵素阻害剤、又はその塩、エナンチオマー若しくはプロドラッグを含むが、これらに限定されない。
そのような組成物の別の実施態様は、IDO1及び他のトリプトファン異化酵素、又はその塩、エナンチオマー若しくはプロドラッグの作用を阻害するために、IDO1(GCN2、CHOP10、及び/又はATF4等のISRノードを含む)の上流又は下流の1つ又は複数の標的を、それらのそれぞれのパスウェイにおいて遮断又は阻害する小分子を含む。
別の実施態様では、IDO1阻害剤組成物は、トリプトファンの存在を模倣する分子を含む。
さらに別の実施態様では、IDO阻害剤を含有する組成物は、IDO1の翻訳又は転写を阻害する核酸分子、例えばsiRNA又はshRNAを含む。
別の実施態様では、IDO1阻害剤組成物は、IDO1に結合し、その活性を阻害するタンパク質処置薬を含む。そのようなタンパク質処置薬は、抗IDO1抗体又はその結合断片を含むことができる。
【0045】
より具体的には、IDO1の発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物は以下の化合物又はプロドラッグ、塩、及び/又は、それらの処置的に有効な製剤形態である:
インドキシモド(1-メチル-D-トリプトファン、1MT、NLG-8189)、
1-メチル-L-トリプトファン、
1-メチル-D-トリプトファン及び1-メチル-L-トリプトファンのラセミ混合物
エパカドスタット(INCB024360; Incyte; Wilmington, DE; Liu et al.(2010)Blood 115(17):3520-3530; Koblish et al.(2010) Mol. Cancer Ther., 9(2):489-498)、
ナボキシモド(Navoximod)(NLG-919, GDC-0919, RG6078; Lumos Pharma/NewLink Genetics/Genentech)、
インドキシモド プロドラッグNLG802、
BMS-986205/ONO-7701(F001287, Hunt et al., AACR 2017, Abstract 4964)、
PF-06840003/ EOS200271(EOS, Wythes et al, SITC 2016, Abstract 253)、
式、1-R-D-トリプトファン又は1-R-L-トリプトファン(式中、RはC1-C12アルキル)の化合物;
MK-7162/IOM2983(メルク社製)、
LY3381916(リリー)、
KHK2455(協和発酵キリン)、
HTI-1090/SHR9146(Hengrui Therapeutics, Inc)、
DN1406131(De Novo Pharmatech)、
RG70099(Roche/CuraDev)、
Roxyl-WL (Xu et al. J Enzyme Inhib Med Chem.2018; 33(1): 1089-94.)、
TPST-8844(Tempest Therapeutics)、
ピルビン酸エチル、
AMG-1(Amgen)、Smith JR et alに記載, Novel indoleamine 2,3-dioxygenase-1 inhibitors from a multistep in silico screen, Bioorganic & Medicinal Chemistry, 20(3): 1354-13631 February 2012、ここに引用して組み込まれる;
メチルチオヒダントイン-DL-トリプトファン(MTH-Trp)、
β-(3β)-DL-アラニン、
β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-DL-アラニン、
6-ニトロ-L-トリプトファン、
インドール3-カルビノール、
3,3'-ジインドリルメタン、
エピガロカテキン ガレート、
5-Br-4-Cl-インドキシル1,3-ジアセテート、
9-ビニルカルバゾール、アセメタシン、
5-ブロモ-DL-トリプトファン、
5-ブロモインドキシルジアセテート、
ナフトキノン系、
S-アリルブラシニン、
S-ベンジルブラシニン、
5-ブロモブラシニン、
フェニルイミダゾール系、
4-フェニルイミダゾール、
エキシグアミンA
NSC401366、
βラパコン(3,4-ジヒドロ-2,2-ジメチル-2H-ナフトール[1,2-b]ピラン-5,6-ジオン、Flick et al.(2013) Int. J. Tryp. Res.6:35-45) (ARQ 761; ArQule,現在メルク所有);
DX-03-12及びWen, H. et alに記載の他の化合物 (Design and Synthesis of Indoleamine 2,3-Dioxygenase 1 Inhibitors and Evaluation of Their Use as Anti-Tumor Agents, Molecules 2019, 24, 2124; doi:10.3390/molecules -24112124, 引用により組み込まれる);
WO2014/186035及び米国特許出願公開第2018/030026号(Curadev)に記載の化合物;及び/又は
WO2014/081689及び米国特許第9,499,497号(Vertex Pharmaceuticals)に記載されている化合物。
【0046】
さらに他の適切な阻害剤は、Wang, X-X et alに記載される( Recent advances in discovery of indoleamine 2,3-dioxygenase 1(IDO1)inhibitors, MedChemComm, and grouped as tryptophan derivatives, inhibitors with a imidazole, 1,2,3-triazole or tetrazole scaffold, inhibitors with quinone or iminoquinone, N-hydroxyamidines)。.
【0047】
小分子IDO1阻害剤のさらに他の例は、限定されないが、PCT/US2014/022680(例えば、イミダゾイソインドールに関連する三環式化合物)、PCT/US2012/033245(例えば、縮合イミダゾール誘導体)、PCT/US2010/054289(例えば、イミダゾール誘導体)、PCT/US2009/041609(例えば、式I-VIIIの化合物)、PCT/US2008/057032(例えば、ナフトキノン誘導体)、PCT/US2008/085167(例えば、式I-XLIVの化合物)、PCT/US2006/42137(例えば、式Iの化合物)、PCT/US2006/0179837(例えば、式Iの化合物)、PCT/US2004/005155〔例えば、フェニル-TH-DL-trp(3-(N-フェニルチオヒダントイン)-インドール)、プロペニル-TH-DL-trp(3-(N-アリルチオヒダントイン)-インドール)、及びmethyl-TH-DL-trp (3- (N-methyl-thiohydantoin)-indole) 〕、PCT/US2004/005154(例えば、式I若しくはIIの化合物)、米国特許第7,705,022号(例えば、式Iの化合物)、米国特許第8,008,281 (例えば、フェニル-TH-DL-trp(3-(N-フェニルチオヒダントイン)-インドール)、プロペニル-TH-DL-trp(3-(N-アリルチオヒダントイン)-インドール)、及びメチル-TH-DL-trp(3-(N-メチルチオヒダントイン)-インドール)、米国特許第7,714,139号(例えば、式I又はIIの化合物)、米国特許出願公開第20140066625号(例えば、縮合イミダゾール誘導体;式I又はIIの化合物)、米国特許出願公開番号20130177590号(例えば、N-ヒドロキシアミジノ複素環;式I-IIIの化合物)、米国特許出願公開第20140023663号 (例えば、 1,2,5-oxadiazoles; 式Iの化合物)、米国特許出願公開第20080146624号(例えば、アミジン;式I又はIIの化合物)、米国特許出願公開第20080119491号(例えば、アミジノ複素環;式I-IVの化合物)、米国特許出願公開第20080182882号(例えば、 N-hydroxyamidino heterocycles; 式Iの化合物)、米国特許出願公開第20080214546 号(例えば、 N-hydroxyamidino heterocycles; 式Iの化合物)、米国特許出願公開第20060258719号 (式Iの化合物), Banerjee等(2008)Oncogene 27:2851-2857(例えば、brassinin derivatives;)、及びKumar等(2008) J. Med.Chem., 51:1706-1718(例えば、フェニルイミダゾール誘導体)。
特定の実施態様では、IDO1阻害剤は、プロドラッグである(例えば、米国特許出願公開第20170022157号及び米国仮出願第62/555,726号を参照されたい)。全ての参考文献は、特にその中に提供されるIDO1阻害剤について、参照により本明細書に組み込まれる。
【0048】
特定の実施態様では、IDO1誘導阻害剤は、ピルビン酸エチル (Muller, et al.(2010)Cancer Res.70:1845-1853)又はグリベック(imatinib, Balachandran et al.(2011) Nat. Med.17: 1094-1100を参照)である。
特定の実施態様では、IDO1パスウェイ阻害剤(例えば、下流シグナル伝達パスウェイの阻害剤)は、1-メチルトリプトファン、特に1-メチルD-トリプトファン(インドキシモド、NLG-8189; 1-メチル-D-トリプトファン; NewLink Genetics)であり、その塩及びプロドラッグ(米国特許出願公開第20170022157号)又はそれを含むラセミ混合物である。
【0049】
IDO1発現のさらなる阻害剤としては、制限するものではないが、以下の阻害剤を含む;
JAK/STAT (例えば、JAK、STAT3、STAT1)〔Du et al.(2000)J. Interferon Cytokine Res., 20:133-142, Muller et al.(2005)Nature Med., 11:312-319);Yu et al. (2014) J. Immunol., 193:2574-2586〕 ,
NFκB (Muller et al. (2005) Nature Med., 11:312-319; Muller et al. (2010) Cancer Res., 70:1845-1853)、
KIT(Balachandran et al.(2011)Nature Med., 17:1094-1100)、
MET(Rutella et al.(2006)Blood 108:218-227; Giannoni et al.(2014)Haematologica 99:1078-1087)、
RAS/RAF/MEK(Liu(2010)Blood 115:3520-3530)、
アリール炭化水素受容体(AHR)(Bessede et al.(2014)Nature 511:184-190; Litzenburger et al.(2014)Oncotarget 5:1038- 1051)、又は、
血管内皮増殖因子受容体(vascular endothelial growth factor receptor)(VEGFR)(Marti et al.(2014)Mem Inst Oswaldo Cruz 109:70-79)。
特定の実施態様では、阻害剤は、VEGFRの阻害剤ではない。
【0050】
さらに他のIDO阻害剤、その塩又はプロドラッグは、参照により本明細書に組み込まれる以下の米国特許に記載されている:
米国特許第10,501,458号:インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤としての置換二環式縮合環化合物;
米国特許第10,494,360号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤;
米国特許第10,472,336号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーター;
米国特許第10,436,785号: 抗インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ1抗体及びその診断的使用;
米国特許第10,399,933号:癌の処置のためのインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤;
米国特許第10,399,932号:癌の処置のためのインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤;
米国特許第10,369,137号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第10,358,427号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーター;
米国特許第10,336,731号:インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤としての置換1H-インドール-2-カルボキサミド化合物;
米国特許第10,329,297号:インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害のための化合物;
米国特許第10,323,004号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤及びそれらの使用方法;
米国特許第10,287,252号:トリプトファン-2,3-ジオキシゲナーゼ又はインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤;
米国特許第10,280,163号:インドールアミン及び/又はトリプトファン2,3-ジオキシゲナーゼとしての5若しくは8-置換イミダゾ[1,5-a]ピリジン;
米国特許第10,280,157号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の合成方法;
米国特許第10,239,894号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤;
米国特許第10,208,002号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーター及びその使用方法;
米国特許10,034,864号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第9,873,688号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の合成方法;
米国特許9,789,094号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第9,771,370号:インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害のための化合物;
米国特許第9,675,571号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)の阻害剤;
米国特許第9,499,497号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤として有用な化合物;
米国特許第9,463,239号: インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤の、他の処置様式と組み合わせた使用;
米国特許第9,433,666号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼに基づく免疫療法;
米国特許第9,321,755号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ阻害剤の合成方法;
米国特許第9,320,732号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第9,073,875号: インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤として有用な化合物;
米国特許第8,993,605号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第8,951,536号: インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーターとしてのN-ヒドロキシアミジノ複素環;
米国特許第8,846,726号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーター及びその使用方法;
米国特許第8,822,511号及び第8,796,319号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第8,580,844号: 他の処置様式と組み合わせたインドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤の使用
米国特許第8,507,541号、第8,450,351号及び第8,377,976号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーターとしてのN-ヒドロキシアミジノ複素環;
米国特許第8,436,151号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-2抗体;
米国特許第8,372,870号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーター及び癌を処置するためのその使用方法;
米国特許第8,088,803号: インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤としての1,2,5-オキサジアゾール;
米国特許第8,058,416号: インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ-2をコードする核酸分子;
米国特許第8,034,953号: インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼのモジュレーター及びその使用方法;
米国特許第7,799,776号:インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)阻害剤;
米国特許第7,598,287号: インドールアミン-2,3-ジオキシゲナーゼの阻害剤の、他の処置様式と組み合わせた使用。
さらに別の実施態様では、IDO阻害剤がIDO標的化ペプチドベースのワクチンである(Iversen et al.(2014) Clin. Cancer Res., 20:221-32を参照)。
【0051】
ix. ISRノードの特異的阻害剤
GCN2阻害剤としては、限定されないが、以下を包含する:
GCN2-IN-1(A-92)(Medchemexpress)、
GCN2iA (Nakamura et al, Inhibition of GCN2 sensitizes ASNS-low cancer cells to asparaginase by disrupting the amino acid response, PNAS, epub July 30, 2018 115 (33) E7776-E7785),これらは藤本等によっても記述される(Identification of Novel, Potent, and Orally Available GCN2 Inhibitors with Type I Half Binding Mode, ACS Med Chem Lett.2019 Oct 10; 10(10): 1498-1503, epub Sept 2019)、
GZD824 (Kato et al, GZD824 inhibits GCN2 and sensitizes cancer cells to amino acid starvation stress, Molecular Pharmacology, 98(6) (October 8, 2020)),
トリアゾロ[4,5-d]ピリミジンスキャフォールドにもとずく阻害剤 ; Lough等によって記述される(Triazolo[4,5-d]pyrimidines as Validated General Control Nonderepressible 2 (GCN2) Protein Kinase Inhibitors Reduce Growth of Leukemia Cells, Volume 16, September 2018, Pages 350-360)、
GCN2阻害剤; RAPT therapeutics によって試験中 (例えば、GCN2i-282, GCN2i-490, FLX-GCN2i-A, FLX-GCN2i-B) (Marshall et al, Targeting the Stress Response Kinase GCN2 to Restore Immunity And Decrease Tumor Cell Survival SITC 2019) 。
他のGCN2阻害剤としては、以下の一般式(Rapt Therapeutics)を有するものを含む、米国特許出願公開第20190375753号に開示されているものが挙げられる:
【0052】
【化1】
これらの文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0053】
CHOP阻害剤には、Klarら(Abstract 3275:癌の免疫療法を改善するためのLNAplusTMアンチセンスオリゴヌクレオチドによるERストレス因子C/EBP相同蛋白質(Chop)の阻害、DOI: 10.1158/1538-7445.AM2019-3275、2019年7月発表) に記載されているオリゴヌクレオチド及びISRIB等が含まれるが、これらに限定されない。
【0054】
ATF4阻害剤としては、ウルソール酸、トマチジン、及びその誘導体、Ebert等〔Identification and Small Molecule Inhibition of a Activating Transcription Facto4(ATF4)依存性パスウェイの、年齢関連骨格筋肉弱性及びアトロフィーへの誘導、J Biol Chem.2015 Oct 16; 290(42): 25497-25511〕、GSK2606414、及びTRIB3が挙げられるが、これらに限定されない。
他のATF4阻害剤は、Ratanによる「ATF4阻害剤及び神経保護、修復、再生、及び可塑性のためのそれらの使用」と題された米国特許出願公開第9,034,299号、Ratan及びKaruppagounderによる「Prolylhydroxylase/atf4阻害剤及び神経細胞傷害又は死滅を処置するための使用方法」と題された米国特許出願公開第20160317526号、並びにAxtenらによる「Chemical Compounds」と題されたWO2017/212423号に開示されている化合物を含む。これらの文献の各々は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0055】
ISRノード阻害剤は、さらに、ISRノードの遺伝子、遺伝子産物、又は転写物に結合し、その活性、発現、又は翻訳を遮断又は低減する核酸分子を含む。ISRノード阻害剤の実施例としては、siRNA、shRNA、及びアンチセンスオリゴヌクレオチド(ASO)が挙げられる。
【0056】
x. VEGF及びVEGFRの特異的阻害剤
語句「VEGFのサブタイプ若しくはアイソフォーム又はVEGF受容体(VEGFR)のサブフォームの1つ又は複数の発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物」は、1つ又は複数のVEGFRへのその結合を含むVEGF活性を中和、遮断、阻害、抑止、低減、又は妨害することができる任意のVEGFアンタゴニストを含むが、これらに限定されない組成物を指す。
そのような阻害剤又はアンタゴニストの中には、VEGFアイソタイプA~Fのエピトープ又はそのVEGF結合フラグメントに向けられた抗VEGF抗体又は抗体フラグメント、人工単鎖抗体フラグメント、又はVEGFアイソタイプに結合するためにVEGF受容体を模倣する分子、又は受容体シグナル伝達を妨害する薬物がある。
例えば、VEGFアンタゴニストは、限定されないが、抗VEGF抗体、VEGFトラップ、抗VEGFR抗体、VEGFR阻害剤、サリドマイド、DI 14-Notch阻害剤、抗チューブリン血管破壊剤(VDA)、アンジオポエチン-Tie2阻害剤、一酸化窒素シンターゼ(NOS)阻害剤、又はカチオン性ポリアミノ酸デンドリマーであり得る。
本明細書で使用される場合、「VEGFトラップ」という用語は、VEGFに優先的に結合することによってVEGFシグナル伝達パスウェイを遮断し、それによってその同族受容体へのその結合を阻害するデコイVEGF受容体を指す。
一実施態様では、VEGFトラップは、第2のタンパク質に融合された、VEGF受容体の1つ以上の細胞外ドメイン、又はそのような細胞外ドメインの一部を含む組換え融合タンパク質である。例えば、VEGF受容体細胞外ドメインは、免疫グロブリンのFc断片等のFcアイソフォームに融合され得る。
一実施態様では、VEGFトラップがヒトIgG1のFc部分に融合され、硝子体内投与のための等浸透圧溶液として製剤化されたヒトVEGF受容体1及び2細胞外ドメインの部分からなる組換え融合タンパク質で商標名EYLEA(登録商標)ドラッグ(Regeneron)である。
別の実施態様では、VEGFトラップは、OPT-302(Opthea; Dugel, Pravin U. et al.,新生血管加齢性黄斑変性眼科網膜に対する血管内皮増殖因子C及びDのOPT-302阻害の第1相試験、DOI: https://doi.org/10.1016/j.oret.2019.10.008) であり、すなわち、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)のFcフラグメントに融合されたVEGFR-3の細胞外ドメインの免疫グロブリン様ドメイン1~3を含む融合蛋白質である。さらに他のトラップは、他の受容体ドメイン及び他のFcアイソフォームを含む。
【0057】
特定の実施態様では、VEGF阻害剤の特定の例として、ラパマイシン、エベロリムス、テムセロリムス、低分子量ヘパリン、SPARC(オステオネクチン)ペプチド、ベバシズマブ、ラニビズマブ、ラムシルマブ、アフリベルセプト、インターロイキン17(IL-17)、DC101、スニチニブ、ソラフェニブ、パゾパニブ、AMG706、セジラニブ、バネタニブ、ニンテダニブ(vargatef)、ブリバニブ、XL-184、アキシチニブ、チボザニブ、サリドマイド、ラナリドマイド、DMXAA、ナドロパリン、2,5-ジメチルセレコキシブ、シクロホスファミド、HBC、及びタスキニモドが挙げられるが、これらに限定されない。
【0058】
ある特定の実施態様では、VEGF阻害剤又はアンタゴニストは、以下を含む;
ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アフリベルセプト(Eylea(登録商標))、ブロルシズマブ(Boevu(登録商標))、ペガプタニブ(Macugen(登録商標))、アビシパルペゴル(例えば、(参照 Moisseiev, E., Loewenstein, A. Abicipar pegol-a novel anti-VEGF therapy with a long duration of action. Eye (2019).

ラニビズマブバイオシミラーFYB201(Bioeq GMBH, Munich, GE)、PF582(Pfenex Inc.)、SB11(Samsung Bioepis Co. Ltd)、及びXlucane(Xbrane Biopharma)、アフリベルセプトバイオシミラーMYL-1701P/M-710(Momenta Pharmaceuticals, Inc.)、又は
コンベルセプト(Liu K等; PHOENIX study group. Conbercept for treatment of neovascular age-related macular degeneration: Results of the Randomized phase 3 PHOENIX study. Am J Ophthalmol.2019;197:156-167); ファリシマブ/RG7716 (二重特異性抗体VEGF-A + Ang-2) (Mojunder, MI 等, The Mechanism of the Bispecific Antibody Faricimab Retinal Physician, Volume: 16, March 2019, 32- 35)、
OPT-302 (VEGF-C/'trap') (参照 上記Dugel)、
KS-301(抗VEGFポリマー結合生物製剤) (Kodiak Sciences; Wykoff CC. Extended durability in exudative retinal diseases using the novel intravitreal anti-VEGF antibody biopolymer conjugate KSI-301: Results from the Phase 1b study in patients with AMD, DME and RVO. Presented at American Academy of Ophthalmology Subspecialty Day Retina 2019;October 11, 2019; San Francisco, CA.)、
KS-501(抗VEGFトラップ+抗IL6抗体融合) (Kodiak Sciences; 参照 https://www.prnewswire.com/news-releases/kodiak-sciences-announces-emerging-durability-data-from-ongoing-phase-1b-study-of-ksi-301-in-wet-amd-patients-at- the-retina-society-annual-meeting-300918262)。
【0059】
いくつかの実施態様において、組合せにおいて有用なVEGFアンタゴニストは、以下を含み米国特許出願公開第20190381087号に記載されるものから選択される;ラニビズマブ(カリフォルニア州サンフランシスコのジェネンテックの登録商標名Lucentis登録商標で市販;重鎖及び軽鎖可変領域配列については、米国特許第7,060,269号の図1参照)、ベバシズマブ〔Avastin(登録商標)(Genentech, San Francisco, CA)の商標で市販されている:重鎖及び軽鎖可変領域配列については、米国特許第6,054,297号の図1参照〕、アフリベルセプト〔Eylea(登録商標)(Regeneron, Tarrytown, N.Y.) 〕、KH902 VEGF受容体-Fc融合タンパク質(Zhang 等.(2008)Mol Vis.14:37-49参照)、2C3抗体(米国特許第6,342,221号、Column 8, lines 48-67, Column 9, lines 1-21)、ORA102 (available from Ora Bio, Ltd.)、 ペガタニブpegaptanib (例えば、pegaptanib sodium;商品名 Macugen登録商標:Valeant Pharmaceuticals, Bridgewater, N.J.; 米国特許第6,051,698号の図1参照)、ベバシラニブbevasiranib (参照 Dejneka等(2008) Mol Vis.14:997-1005)、SIRNA-027 (Shen 等 (2006) Gene Ther.13:225-34)、 デクルシンdecursin (参照 米国特許第6,525,089号 (Column 3, lines 5-16))、デクルシノールdecursinol (参照Ahn 等 (1997) Planta Med.63:360-1)、ピクロポドフィリン picropodophyllin (参照 Economou (2008) Investigative Ophthalmology & Visual Science.49:2620-6)、グッグルステロンguggulsterone (参照 Kim 等 (2008) Oncol. Rep.20:1321-7)、 PLG101 (参照 Ahmadi and Lim (2008) Expert Opin Pharmacother.9:3045-52)、PLG201 (参照 Ahmadi and Lim (2008))、エイコサノイドeicosanoid LXA4 (参照 Baker 等 (2009) J Immun.182:3819-26)、PTK787 (商品名 Vitalanib登録商標; 参照 Barakat and Kaiser (2009) Expert Opin Investig Drugs 18:637-46)、パゾパニブpazopanib (参照 Takahashi 等 (2009) Arch Ophthalmol.127:494-9)、アキシチニブaxitinib (参照 Hu-Lowe 等 (2008) Clin Cancer Res.14:7272-83)、 CDDO-Me (参照 Sogno 等(2009) Recent Results Cancer Res.181:209-12)、CDDO-Imm (参照 Sogno 等(2009))、 シコニンshikonin (参照 Hisa 等 (1998) Anticancer Res.18:783-90)、 β-ハイドロキシイソバレリルシコニンbeta-hydroxyisovaleryl shikonin (参照 Hisa 等(1998))、 ガングリオシドganglioside GM3 (Chung 等(2009) Glycobio.19:229-39)、DC101 antibody(抗体) (参照 米国特許第6,448,077号, Column 2, lines 61-65)、 Mab25 antibody (抗体)(参照 米国特許第6,448,077号, Column 2, lines 61-65)、 Mab73 antibody(抗体) (参照 米国特許第6,448,077号, Column 2, lines 61-65)、 4A5 antibody(抗体) (参照 米国特許第6,383,484号, Column 12, lines 50-54)、4E10 antibody(抗体)(参照 米国特許第6,383,484号, Column 10, lines 66-67, Column 11, lines 1-2)、 5F12 antibody(抗体) (参照 米国特許第6,383,484号, Column 10, lines 62-65)、 VA01 antibody(抗体) (参照 米国特許第5,730,977号, Column 6, lines 26-30)、 BL2 antibody(抗体) (米国特許第5,730,977号, Column 6, lines 30-32)、VEGF-related protein (VEGF-関連タンパク質)(参照 米国特許第6,451,764号, FIG.1)、sFLT01 (参照 Pechan 等. (2009) Gene Ther.16:10-6)、sFLT02 (参照 Pechan 等. (2009))、Peptide B3(ペプチドB3) (参照 Lacal 等 (2008) Eur J Cancer 44:1914-21)、TG100801 (参照 Palanki 等(2008) J Med Chem.51:1546-59)、ソラフェニブsorafenib (商品名Nexavar登録商標; 参照 Kernt 等(2008) Acta Ophthalmol. 86:456-8)、 G6-31 antibody (抗体)(参照 Crawford 等(2009) Cancer Cell 15:21-34)、ESBA1008 (参照 米国特許第8,349,322号)、チボザニブtivozanib (参照 米国特許第6,821,987)。以上のそのすべてが参照により本明細書に組み込まれる; Campas 等. (2009) Drugs Fut 2009, 34(10): 793),又は、これらの薬学的に許容される塩又はプロドラッグ。
【0060】
別の実施態様では、VEGFアンタゴニストは、エピトープVEGF-A若しくはVEGF-Bに結合する抗体若しくは抗体断片、又は上記で引用され、全て参照により組み込まれる、エピトープの任意の部分である。
一実施態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGFのエピトープの1つ又は複数に結合する抗体又は抗体断片である。
別の実施態様では、VEGFアンタゴニストは、VEGF-A、VEGF-B、VEGF-C、VEGF-D、又はVEGF-Eのエピトープ等のVEGFのエピトープに結合する抗体又は抗体断片である。
いくつかの実施態様において、VEGFアンタゴニストはVEGF及びVEGFRの結合が阻害されるように、VEGFのエピトープに結合する。
一実施態様では、エピトープは、エピトープが折り畳まれたVEGF分子の表面に露出されるように、提示されるVEGFの三次元構造の成分を包含する。
一実施態様では、エピトープは、VEGF由来の直鎖アミノ酸配列である。
【0061】
いくつかの実施態様において、VEGFに対する阻害抗体は、当該技術分野、例えば米国特許に記載されているものであり公知である;
米国特許第6,524,583号、第6,451,764号(VRP抗体)、
米国特許第6,448,077号、第 6,416,758号, 第6,403,088号(VEGF-Cへ)、
米国特許第6,383,484号(VEGF-Dへ)、
米国特許第6,342,221号(抗VEGF抗体)、
米国特許第6,342,219号、第 6,331,301号 (VEGF-B抗体)及び
米国特許第5,730,977号、及び
WO96/30046、WO 97/44453、及びWO 98/45331。
(これらの内容は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0062】
他の非抗体VEGFアンタゴニストには、VEGFアンタゴニスト活性を有する抗体模倣物(例えば、Affibody(登録商標)分子、アフィリン、アフィチン、アンチカリン、アビマー、クニッツドメインペプチド、及びモノボディ)が含まれる。
これには、それが、VEGF-Aに結合し、VEGFR-2に結合するのを防ぐ、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質が含まれる。
一例は、AGN 150998(DARPin(登録商標)としても知られるMP0112である。
さらに他の実施態様では、WO2010/060748及びWO2011/135067により詳細に記載されているように、VEGF-Aに結合し、VEGFR-2への結合を妨げる、アンキリン反復ドメインを含む組換え結合タンパク質が有用である。
さらに他の実施態様では、VEGFアンタゴニスト活性を有する特異的抗体模倣物が、40 kDペグ化アンチカリンPRS-050及びモノボディアンジオセプト(CT-322)である。
【0063】
前述の非抗体VEGFアンタゴニストは、それらの薬物動態学的特性又はバイオアベイラビリティをさらに改善するために修飾され得る。
例えば、非抗体VEGFアンタゴニストは、そのインビボ半減期を延長するために化学的に修飾(例えば、ペグ化)され得る。
あるいは、又は、それに加えて、VEGFアンタゴニストが由来する天然タンパク質のタンパク質配列中に天然に存在しない、グリコシル化又はさらなるグリコシル化部位の付加によって、修飾することができる。
現在前臨床開発中の別の非抗体VEGFアンタゴニストイムノアドヘシンは、VEGFR2/KDR由来の細胞外リガンド結合ドメイン3及び4、並びにVEGFR1/Flt-1由来のドメイン2を含有する、VEGFトラップに類似する、組換えヒト可溶性VEGF受容体融合タンパク質である;これらのドメインは、ヒトIgG Fcタンパク質断片に融合される(Li 等., 2011 Molecular Vision 17:797-803)。
このアンタゴニストは、アイソフォームVEGF-A、VEGF-B及びVEGF-Cに結合する。分子は、2つの異なる生産プロセスを用いて調製され、最終タンパク質上に異なるグリコシル化パターンをもたらす。2つのグリコフォームは、KH902(conbercept)及びKH906と称される。融合タンパク質は、二量体として存在し得る。
この融合タンパク質及び関連分子は、米国特許出願公開第2010/0215655号にさらに特徴付けられている。適切なVEGF又はVEGFr阻害剤又はアンタゴニストの開示についての上記の全ての記述内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0064】
xi. IL-6の特異的阻害剤
インターロイキン6(IL-6)は、B細胞刺激因子2(BSF2)又はインターフェロンβ2とも呼ばれるサイトカインである。IL-6は、Bリンパ球系列の細胞の活性化に関与する分化因子であり、様々な細胞の機能に影響を及ぼす多機能性サイトカインである。
種々IL-6阻害剤が、当技術分野で公知であり、これらに限定されないが、MH166、SK2、MR16-1、PM-1抗体、AUK12-20抗体、AUK64-7抗体、AUK146-15抗体、及びトシリズマブを含むIL6受容体抗体が挙げられる。
抗IL-6抗体、抗IL-6受容体抗体、抗gp130抗体、IL-6変異体、可溶性IL-6受容体変異体、並びにIL-6又はIL-6受容体の部分ペプチド及び類似の活性を示す低分子量化合物を含む、IL-6阻害剤の投与による脈絡膜新生血管形成(neovascularization)を処置する方法は米国特許第8771686B2号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
H. 有効量、投与ルート及び関連定義
化合物又は医薬組成物の「処置(治療ともいう)有効量」は、特定の障害又は疾患の症状を予防、阻害、処置、又は軽減するのに有効な量を指す。例えば、「処置(治療ともいう)的有効量」は、眼障害を有する処置された対象の眼における異常な血管形成又は浮腫を低減するのに十分な量を指し得る。
【0066】
「薬学的に許容される賦形剤又は担体」は、本発明の活性薬剤が一緒に投与される希釈剤、アジュバント、賦形剤、補助剤、又はビヒクルを指すが、これらに限定されない。
薬学的に許容される担体は、連邦若しくは州政府の規制当局によって承認されたもの、又は動物、より具体的にはヒト、における使用のための米国薬局方又は他の一般的に認識されている薬局方に列挙されたものであり、水及び油等の無菌液体、例えば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油等の石油、動物、植物又は合成起源のものを含む油であり得る。
水又は生理食塩水溶液、並びにデキストロース及びグリセロール水溶液は、好ましくは、特に注射用溶液のための担体として使用される。
適切な薬学的担体は、以下に記述される:E.W. Martin(Mack Publishing Co., Easton, PA)による“レミントンの薬学的サイエンス; Gennaro, A. R., Remington: The Science and Practice of Pharmacy, (Lippincott, Williams and Wilkins); Liberman, 等., Eds., pharmaceutical Dosage Forms, Marcel Decker, New York, N.Y.;及びKibbe, 等., Eds., Handbook of Pharmaceutical Excipients, American Pharmaceutical Association, Washington。
【0067】
本明細書で使用される場合、用語「処置treatment(治療、ともいう)」は対象に利益を与える、すなわち、眼の疾患、障害、又は状態の1つ又は複数の症状又は態様の、発症を緩和、遅延、重症度若しくは発生率の低減、又は予防をもたらすことができる、使用される任意の方法を指す。
本発明の目的のために、処置は、症状の発症前、発症中、及び/又は発症後に投与することができる。
特定の実施態様において、処置は、対象が従来の処置を受けた後に行われる。
いくつかの実施態様では、用語「処置することtreating(治療すること、ともいう)」が状態の進行を抑止すること、実質的に阻害すること、遅延させること、又は逆転させること、状態の臨床的又は審美的症状を実質的に改善すること、又は状態の臨床的又は審美的症状の出現を実質的に防止すること、又は疾患に起因する1つ又は複数の症状の重症度及び/又は頻度を低下させることを含む。
【0068】
本明細書で使用される場合、「予防する」という用語は、状態を発症するリスクがある対象において、対象が状態を発症する可能性が低下することをもたらす、対象への予防的処置を指す。
【0069】
用語「処置レジメン(治療レジメンともいう)」は、本明細書で使用される場合、1つ以上の処置剤の投与における特定の順序、タイミング、持続時間、ルート及び間隔を指す。
一実施態様では、処置レジメンは、対象特異的である。
別の実施態様では、処置レジメンは、疾患特異的である。
別の実施態様では、処置レジメンは、対象が処置に応答することにつれて変化する。
別の実施態様では、処置レジメンは、特定の処置マイルストーンが満たされるまで固定される。
【0070】
一実施態様では、本明細書に記載の方法は、対象における病的新生血管形成(neovascularization)を阻害することを含む。
本方法は、一実施態様では対象の網膜におけるIDVCを除去又は阻害することを含む。
別の実施態様では、本方法は、ISRノードの発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物の投与を含む。
一実施態様では、ISRノードは、GCN2、CHOP、及びATF4から選択される。
【0071】
さらに他の実施態様では、本明細書に記載の方法は、ISRノードの発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物と、VEGFのサブタイプ若しくはアイソフォーム、又はVEGFRのサブタイプ若しくはアイソフォームのうちの1つ以上の発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物との組み合わせを投与することを含み、処置レジメンは投与される組成物の1つ以上の用量を含む。
【0072】
本明細書で使用される「処置効果(治療効果ともいう)」又は「処置利益(治療利益ともいう)」とは、疾患系の重症度の改善又は軽減を意味する。
「有効量」は、適切な投与過程の後に処置利益又は処置効果を提供するのに十分な組成物の量を意味する。
【0073】
少なくとも1つのIDO阻害剤、VEGF若しくはVEGFR阻害剤、又はISRノード阻害剤(例えば、GCN2、CHOP又はATF4)を含む組成物の「有効量」は、本方法における使用のために選択される阻害剤/アンタゴニストに応じて変化することが理解されるべきである。
用量に関して、「小分子」薬物は、典型的にはmg/kgベースではなく固定用量で投薬されることが理解されるべきである。
注射用ものでは、医師又は看護師がバイアルからのシリンジにこの量を充填することによって、計算された量を注射することができる。対照的に、錠剤及びいくつかの生物製剤は、固定された剤形で提供される。小分子を用いたいくつかの用量範囲の検討は、mg/kgを使用するが、本明細書の教示に基づいて、他の用量を当業者が使用することができる。
一実施態様では組成物の阻害剤の有効量としては約0.001~約25mg/kg対象体重が挙げられるが、これらに限定されない。一実施態様では、有効量の範囲は、
0.001~0.01mg/kg体重である。別の実施態様において、有効量の範囲は、
0.001~0.1mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.001~1mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.001~10mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.001~20mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.01~25mg/kg体重である。別の実施態様において、有効量の範囲は、
0.01~0.1mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.01~1mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.01~10mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0.01~20mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0. 1~25mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
0. 1~1mg/kg体重である。別の実施態様において、有効量の範囲は、
0. 1~10mg/kg体重である。別の実施態様において、有効量の範囲は、
0. 1~20mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
1~25mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
1~5mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
1~10mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
10~20mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
20~30mg/kg体重である。別の実施態様において、有効量の範囲は、
30~40mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
40~50mg/kg体重である。別の実施態様では、有効量の範囲は、
1~50mg/kg体重である。これらの範囲内にある、さらに他の用量が有用であると予想される。
【0074】
VEGFのサブタイプ若しくはアイソフォーム、又はVEGFRのサブタイプ若しくはアイソフォームの1つ以上の発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害する組成物の「有効量」は、組成物が少なくとも1つのVEGF又はVEGFR阻害剤を含む場合に達成され、処置効果を達成するのに適した量で対象に投与される。
これらの量は、選択される特異的阻害剤及び投与ルートに基づいて異なり得る。
少なくとも1つのVEGF又はVEGFRアンタゴニスト又はブロッカーを含む組成物のための「有効量」は、本方法における使用のために選択される阻害剤/アンタゴニストに応じて変動し得る。
VEGF阻害剤が小分子である場合、VEGF阻害剤は上記の少なくとも1つのISRノード阻害剤(例えば、GCN2、CHOP又はATF4)阻害剤を含む組成物について上記と同じ用量で送達され得る。
VEGFアンタゴニストが、タンパク質、例えば、抗体、抗体断片又は組換えタンパク質又はペプチドである場合、有効量はVEGF単独療法について承認されている量、すなわち、0.01~25mg抗体/注射(注入ともいう)と同様であり得る。
一実施態様では、有効量は、
0.01~10mg抗体/注射である。別の実施態様では、有効量は、
0.01~1mg抗体/注射である。別の実施態様では、有効量は、
0.01~0.10mg抗体/注射である。別の実施態様では、有効量は、
0.2、0.5、0.8、1.0、1.2、1.4、1.6、1.8、2.0、2.2、2.4、2.6、2.8、3.0mg抗体/注射を超える(0.2, 0.5, 0.8, 1.0, 1.2, 1.4, 1.6, 1.8, 2.0, 2.2, 2.4, 2.6, 2.8, 3.0 up to more than mg antibody/injection)量である。
【0075】
これらの範囲内にあるさらに他の用量が有用であると予想される。
一実施態様では、特定の患者への投与に適した組成物の用量及び投与方法が患者の年齢、性別、体重、一般的な医学的状態、並びに組成物が共同で投与されているその特定の状態及び重症度を考慮して、医師によって決定され得る。
医師は、又、薬剤の投与ルート、薬剤(複数可)を組み合わせることができる医薬担体、及び薬剤の生物学的活性を考慮することができる。
【0076】
「投与」又は「投与ルート」は、選択された阻害剤又は組成物に適切であり、有効量を対象に送達することができる任意の公知の投与ルートを含む。
本明細書に記載の方法の一実施態様では、組成物の投与ルートは同じである。
別の実施態様では、組成物が互いに異なるルートによって投与される。
本発明の方法において有用な投与ルートには、経口、非経口、静脈内、鼻腔内、舌下、眼内注射、硝子体内注射、デポー製剤又はデバイスを介する、点眼剤を介する、吸入による1つ又は複数が含まれる。
一実施態様では、阻害剤が経口投与されてもよく、又は潜在的に硝子体内に別の阻害剤と同時に投与されてもよく、又は潜在的に別の阻害剤処置剤と同じ装置(シリンジ若しくはデポー装置)で併用されてもよく、又は点眼薬を介して、鼻腔内若しくは舌下投与されてもよい。
【0077】
明細書を通して、語句「含む(comprise)」、「含む(comprises)」、及び「含む(comprising)」は、排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。「からなる(consist)」、「からなる(consisting)」、及びその変形は、包括的ではなく排他的に解釈されるべきである。本明細書における様々な実施態様は、「含む」用語を使用して提示されるが、様々な状況下では関連する実施態様は、又、「からなる」又は「から本質的になる」言語を使用して説明されることを理解されたい。
【0078】
用語「a」又は「an」は、1つ又は複数のバイオマーカーを意味し、例えば、「バイオマーカー」は、1つ又は複数のバイオマーカーを表すと理解される。したがって、用語「a」(又は「an」)、「1つ又は複数」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書において互換的に使用される。
本明細書で使用するとき、「約」という語は別段の指定がない限り、与えられた基準から10%の変動を意味する。
【0079】
II. 医薬製剤
本明細書に記載の組成物は、少なくとも1つの担体(例えば、薬学的に許容される担体)を含む単一の組成物中に含有され得る。
あるいは、薬剤が少なくとも1つの担体を含む別々に投与されてもよい(例えば、別々の組成物で投与されてもよい)。
組成物を含む医薬製剤は、水、緩衝生理食塩水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコール等)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、油、洗剤、懸濁化剤、又はそれらの適切な混合物等の許容される媒体との投与のために都合よく製剤化され得る。
選択された媒体中の薬剤の濃度は変動させることができ、媒体は、医薬製剤の所望の投与ルートに基づいて選択することができる。
任意の従来の媒体又は薬剤が、投与される阻害剤又は組成物と不適合である場合を除いて、医薬製剤におけるその使用が考慮される。
【0080】
特定の実施態様において、2つ以上の組成物が投与される場合、組成物は、連続的に及び/又は同時に投与され得る。例えば、ISRノード阻害剤を含有する組成物は、抗VEGF阻害剤又はアンタゴニストを含有する組成物の前、後、及び/又は同時に投与することができる。
組成物が同時に投与されない場合、組成物は2つ以上の組成物が相乗的に、相加的に、又は対象における処置利益を達成するような様式で作用することができるように、十分に近い時間に投与されるべきである。
【0081】
適切な医薬製剤の選択は、選択される投与方法に依存する。
例えば、組成物は、眼又は眼の特定の組織への直接注射によって投与することができる。この場合、医薬製剤は、眼送達に適合する媒体中に分散された薬剤を含む。
薬剤は、又、血流中への静脈内注射によって、又は皮下、筋肉内又は腹腔内注射によって、非経口的に投与され得る。非経口注射用の医薬製剤は、当技術分野で公知である。非経口注射が、抗体を投与するための方法として選択される場合、生物学的効果を発揮するのに十分な量の分子がそれらの標的細胞に到達することを確実にするためのステップが取られなければならない。
薬剤、又はそれらが送達される医薬製剤、の親油性は、分子がそれらの標的位置により良く到達することができるように増加され得る。
【0082】
本明細書に記載の阻害剤/アンタゴニストを活性成分として医薬担体と緊密に混合して含有する薬学的組成物は、従来の薬学的配合技術に従って調製することができる。
担体は、投与に望ましい調製物の形態に応じて、多種多様な形態をとることができる。経口剤形での薬剤の調製において、経口液体製剤(例えば、懸濁剤、エリキシル剤及び溶液等)の場合には、例えば、水、ポリエチレングリコール、油、アルコール、香味剤、防腐剤、着色剤等;又は経口固体製剤(例えば、粉末、カプセル及び錠剤等)の場合には、デンプン、糖、希釈剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤等の担体等の、通常の薬学的媒体の何れかが使用されうる。
投与が容易であるため、錠剤及びカプセル剤が最も有利な経口投与単位形態を表し、この場合、固体医薬担体が当然に使用される。
必要に応じて、錠剤は、標準的な技術によって糖衣又は腸溶コーティングされてもよい。
非経口組成物の場合、担体は通常、滅菌水を含むが、例えば、溶解性を助けるため、又は保存目的のために、他の成分が含まれてもよい。注射用懸濁液も調製することができ、その場合、適切な液体担体、懸濁剤等を使用することができる。
【0083】
本発明の医薬製剤は、投与の容易さ及び投与量の均一性のために、投薬単位形態で製剤化され得る。
本明細書で使用される投薬単位形態は、処置を受けている患者に適した医薬製剤の物理的に別個の単位を指す。各投薬量は、選択された医薬担体と関連して所望の効果を生じるように計算された量の活性成分を含有すべきである。
適切な投薬単位を決定するための手順は、当業者に周知である。投薬単位は、患者の体重に基づいて、比例して増加又は減少され得る。特定の病理学的状態の緩和のための適切な濃度は当技術分野で知られているように、用量濃度曲線計算によって決定され得る。
【0084】
本発明によれば、本発明の組成物の投与のための適切な投薬単位は、動物モデルにおける活性処置阻害剤の毒性を評価することによって決定され得る。
組み合わせたものを含む上記の阻害剤の様々な濃度を、眼疾患のマウスモデル(例えば、酸素誘発性網膜症(OIR))に投与することができ、最小及び最大用量は、処置の結果としての血管形成又は浮腫及び副作用の有意な減少の結果に基づいて決定することができる。
適切な投薬単位は、又、眼障害の処置のための他の標準的な薬物と組み合わせた阻害剤組成物の有効性を評価することによって決定され得る。
阻害剤の投薬単位は個々に、又は選択された症状を有する各眼の処置と組み合わせて決定することができる。
【0085】
本発明の併用阻害剤を含む組成物は、病理学的症状が軽減又は緩和されるまで、適切な間隔で、例えば、少なくとも1日2回以上投与され得、その後、用量は維持レベルまで低減され得る。特定の場合における適切な間隔は、通常、患者の状態に依存する。
【0086】
III. 特異的方法及び組成物
本明細書で提供される方法は、IDVCsの本発明者らによる同定、及び眼疾患に関連する病的新生血管形成(neovascularization)におけるそれらの役割に関する。
一実施態様では、本明細書で提供されるのは、対象における網膜症を処置する、又は病的新生血管形成(neovascularization)を阻害する方法であり、この方法は対象の眼におけるIDO(インドールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ)依存性血管形成細胞(IDVCs)の活性を除去又は阻害することを含む。
IDVCsは、新生血管形成(neovascularization)において役割を有するものとして機能的に特徴付けられ、その確立及び維持はIDVCs内でのIDO1(indoleamine 2,3-dioxygenase 1)の誘導を必要とする。
【0087】
一実施態様では、IDVCsは、IDO1の活性を阻害することによって阻害される。IDO1阻害剤は、本明細書に記載されている。
別の実施態様では、IDVCsは、IDVCsの細胞表面マーカーに対する抗体を介して阻害される。
一実施態様では、抗体が、ADC又は抗体薬物コンジュゲートである。
細胞表面マーカーは、IDVCsを別の非標的化細胞集団から区別する任意のものから選択され得る。例えば、一実施態様では、細胞表面マーカーは、CD33、CD11b、CD15、及びCD66から選択される。
【0088】
別の実施態様では、本方法は、眼の組織(例えば、網膜又は脈絡膜)内のIDVC細胞における統合ストレス応答(ISR)を遮断又は阻害することを含む。
本発明者らは、GCN2、CHOP、及びATF4等の重要なISRノードの阻害がOIR(酸素誘発性網膜症)マウスモデルにおいて新生血管形成(neovascularization)を低減することを示した。
したがって、一実施態様では、本方法は、ISRパスウェイノードの発現、誘導、活性、及び/又はシグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。
ISRパスウェイノードの阻害剤は、前記ISRパスウェイノードの翻訳又は転写を阻害する小分子、生物学的分子、及び核酸分子を含む。これらの分子は、当技術分野で公知のもの、又は、今後発見されるべきものであり得る。非限定的な例を本明細書に記載する。
【0089】
一実施態様では、当該方法は、GCN2の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。
一実施態様では、当該方法は、ATF4の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。
一実施態様では、当該方法は、CHOPの発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することを含む。
一態様では、当該方法は、IL-6を遮断又は阻害することをさらに含む。
【0090】
一実施態様では、当該方法は、有効量のGCN2-IN-1(A-92)を投与することを含む。
別の実施態様では、当該方法は、有効量のGCN2iAを投与することを含む。
別の実施態様では、当該方法は、有効量のGZD824を投与することを含む。
別の実施態様において、当該方法は、Lough 等〔検証されたGeneral Control Nonderepressible 2 (GCN2)蛋白質キナーゼ阻害剤としてのトリアゾロ[4,5-d]ピリミジンは、白血病細胞の増殖を減ずる、Vol.16、2018年9月、350~360ページ〕によって記述されるトリアゾロ[4,5-d]ピリミジンスキャフォールド(骨格:scaffold)に基づく阻害剤の有効量の投与の開示を含む。
【0091】
別の実施態様では、この方法は、Klarら(Abstract 3275:LNAplusTMアンチセンスオリゴヌクレオチドによるERストレス因子C/EBP相同タンパク質(Chop)の阻害、DOI: 10.1158/1538-7445.AM2019-3275、2019年7月発行)によって記載されているもののような有効量のオリゴヌクレオチドを投与して、癌の免疫療法を改善することを含む。
別の実施態様では、本方法は、有効量のISRIBを投与することを含む。
【0092】
別の実施態様では、本方法は、有効量のウルソール酸を投与することを含む。
別の実施態様では、本方法は、有効量のトマチジンを投与することを含む。
別の実施態様では、本方法は、有効量のGSK2606414を投与することを含む。
別の実施態様では、本方法は、有効量のTRIB3を投与することを含む。
【0093】
別の態様では、対象における網膜症を処置するか、又は病的新生血管形成(neovascularization)を阻害する方法が提供される。この方法は、統合ストレス応答の下流のシグナル伝達分子を遮断又は阻害することを含む。ISRの下流において、ある種のシグナル伝達分子は公知であり、サイトカインIL-6を含む。
【0094】
当該方法の別の実施態様は、任意の形態の血管内皮増殖因子(VEGF)の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することをさらに含む。
一実施態様では、VEGF阻害剤は、ラニビズマブ(Lucentis(登録商標))、ベバシズマブ(Avastin(登録商標))、アフリベルセプト(Eylea(登録商標))、ブロルシズマブ (Boevu(登録商標))、ペガプタニブ(Macugen(登録商標))、アビシパル ぺゴル、ラニビズマブバイオシミラーFYB201、PF582、SB11、及びXlucane、アフリベルセプトバイオシミラーMYL-1701P/M-710、又はコンベルセプト、ファリシマブ/RG7716(二重特異性抗体VEGF-A + Ang-2)、OPT-302(VEGF-C/D「トラップ」:(VEGF-C/'trap'))、KS301(抗VEGFポリマー結合生物製剤) (Kodiak Sciences), KS501(抗VEGFトラップ+抗IL6抗体融合) (Kodiak Sciences - anti-VEGF trap plus anti-IL6 Antibody Fusion)のうちの1つ以上を含む。
【0095】
当該方法の別の実施態様は、インドールアミン2,3ジオキシゲナーゼ-1(IDO1)の任意の形態の発現、誘導、活性、又はシグナル伝達を遮断又は阻害することをさらに含む。
一実施態様では、IDO-1のブロッカー又は阻害剤は、以下の少なくとも1を含む:
1-メチル-D-トリプトファン(インドキシモド)、 1-メチル-L-トリプトファン、1-メチル-D-トリプトファンと1-メチル-L-トリプトファンのラセミ混合物、エパカドスタット、ナボキシモド(GDC-919)、及びNLG802、又は、それらの塩、エナンチオマー若しくはプロドラッグ;
1-R-D-トリプトファン又は1-R-L-トリプトファン(式中、RはC1-C12アルキル);
メチルチオヒダントイン-DL-トリプトファン(MTH-Trp)、β-(3β)-DL-アラニン、β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-DL-アラニン、6-ニトロ-L-トリプトファン、インドール3-カルビノール、3,3'-ジインドリルメタン、エピガロカテキンガレート、5-Br-4-Cl-インドキシル1,3-ジアセテート、9-ビニルカルバゾール、アセメタシン、5-ブロモ-DL-トリプトファン、5-ブロモインドキシルジアセテート、ナフトキノン系 、S-アリルブラシニン、S-ベンジルブラシニン、5-ブロモブラシニン、フェニルイミダゾール系、4-フェニルイミダゾール、エキシグアミンA、及びNSC401366;又は
BMS-986205/ONO-7701、PF-06840003/EOS200271、MK-7162/IOM2983、LY3381916、KHK2455、HTI-1090/SHR9146、DN1406131、RG70099、Roxyl-WL、TPST-8844、ピルビン酸エチル、Amg-1若しくはDX-03-12、又はその塩、エナンチオマー若しくはプロドラッグ若しくは任意の処置上有効な製剤。
【0096】
別の実施態様では、ISRパスウェイ遮断薬は、GSK-2606414、RPT-GCN2i、AMG-PERK44、及びトランス-ISRIBから選択される。
【0097】
特定の併用療法が本明細書において提供される。
例えば、一実施態様では、ISRノード阻害剤が、IL-6阻害剤と共に投与される。
別の実施態様において、ISRノード阻害剤は、VEGF阻害剤と共に投与される。
この併用療法処置方法によれば、対象は、1つ又は複数の有利な処置又は処置利益を受ける。これらの中には、単剤の投与と比較して増強される処置効果又は処置利益がある。別の利点は、相乗的な処置効果又は処置利益をもたらすである。併用療法のさらに別の利点は、投与される組成物の1つ又は複数の改善された耐容性である。
【0098】
特定の実施態様では、本明細書に記載の組成物は、統合処置レジメンで投与される。
組成物に含まれる化合物(すなわち、本明細書で同定されるISRノード、IL-6、IDO、VEGF/VEGFR等の阻害剤)の選択に基づいて、投与ルートは同じであってもよく、及び/又は2つの組成物は、単一製剤で投与されてもよい。
特定の実施態様において、本明細書に記載の組成物は、連続的に投与される。
特定の実施態様において、本明細書に記載の組成物は、同時に投与される。
特定の実施態様では、組成物の投与ルートは同じである。
特定の実施態様では、組成物の投与ルートは異なる。特定の実施態様では、投与ルートが経口投与、静脈内注射、鼻腔内投与、舌下投与、硝子体内注射、眼内注射、デポー製剤若しくはデバイスを介する投与、又は点眼剤を介する投与である少なくとも1つのルートを含む。
【0099】
併用療法の別の利点は、阻害剤の併用投与は、単剤使用のために承認された用量よりも低い任意の1つの投与された阻害剤の用量の使用を可能にすることである。
あるいは、阻害剤の併用投与は、単剤使用のために承認された用量よりも低い、2つ以上の投与された阻害剤の投与量を使用する。
さらに別の利点は、本明細書に記載される化合物の同時投与が単独で投与される任意の1つの組成物で達成される処置効果又は処置利益の持続時間を増強することである。
例えば、1つの実施態様において、併用療法は、VEGF阻害剤又はアンタゴニストが単独の処置剤として投与されるよりも少なくとも5%~少なくとも20%少ない頻度を含む処置レジメンにおいて、VEGF阻害剤又はアンタゴニストが、眼内注射によって投与されることを可能にする。
別の実施態様において、併用療法は、VEGF阻害剤又はアンタゴニストが、VEGF阻害剤又はアンタゴニストが単独の処置剤として投与される場合よりも少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、最高20%又はそれより少ない頻度である処置レジメンにおいて、眼内注射によって投与されることを可能にする。
【0100】
一実施態様では、IDVCsは、眼の網膜に局在する。別の実施態様では、IDVCsは、眼の脈絡膜に局在する。
さらに別の実施態様では、本発明の方法は、活性処置阻害剤若しくはアンタゴニストが、網膜に浸透し、眼の組織に分配され、前記対象の血清中の濃度よりも高い眼濃度を達成する組成物の使用を提供する。
【0101】
上記の方法の何れかにおいて、1つ以上の組成物は、薬学的に許容される賦形剤又は担体をさらに含む。組成物の何れかのための製剤は、活性阻害剤又は薬剤の選択並びに投与ルート及び投与量に応じて設計することができる。
【0102】
IV. キット
本発明は、又、例えば、処置有効量のISRノード阻害剤を含む医薬組成物を含有する1つ以上の容器を含む、本明細書で言及される眼の疾患又は障害の処置又は予防に有用な医薬キット、又は所望の処置レジメンに従った投与に有用な医薬キットを含む。
そのようなキットは、所望であれば、当業者に容易に明らかであるように、例えば、1つ又は複数の薬学的に許容される担体を有する容器、追加の容器等の、1つ又は複数の様々な従来の医薬キット成分をさらに含むことができる。
添付文書又はラベルの何れかとして、投与される成分の量、投与のためのガイドライン、及び/又は成分を混合するためのガイドラインを示す指示もキットに含めることができる。
【0103】
これらの方法の使用による処置改善の尺度は、視力の評価、網膜液及び/又は血管漏出の測定、並びに処置の投与による副作用の低減によって決定することができる。これらの有効性試験を可能にする成分もキットに含めることができる。
【0104】
以下の実施例は、本発明の様々な実施態様を例示するために提供される。実施例は、決して本発明を限定するものではない。
【実施例
【0105】
実施例1-材料及び方法
トランスジェニックマウス株:
BALB/c株バックグラウンド上のコンジェニックIdo1ヌル欠損(Ido1-/-)マウスは、A. Mellorによって提供された。WT BALB/cマウス及びBALB/c株バックグラウンド上のコンジェニックIfng及びIl6ヌル欠損マウスを、Jackson Laboratoryから入手した。
D. Ron (15)によって129svev(Taconic)株バックグラウンド上に樹立された、Gcn2ヌル欠損マウスを、A. Mellorから得て、コンジェニックBALB/c株を得るために自家で10世代間戻し交配した。遺伝子型タイピングは、トランスジェニック対立遺伝子と野生型対立遺伝子を区別するためにデザインされた特定のプライマーセット(表1-3)を用いて行った(図8A)。
表1: siRNAのリスト* WT BALB/cマウス
【表1】
*配列番号1~8は、降順にリスト化された。
表2:DNAプライマーのリスト*
【表2】
*配列番号9~20は、降順にリスト化された。
表3:インビボsiRNA
【表3】
【0106】
Ido1-/-系統マウスにおけるIDO1タンパク質発現の欠如は、以前に検証されている(9,16)。Il6-/-株におけるIl6誘導の欠如及びIfng-/-株におけるIFN-γ誘導は、25μgのLPSの鼻腔注入後24時間で肺生検をアッセイすることによって確認された(図8B)。マウスを含む全ての研究は、Lankenau Institute for Medical Research IACUCによって承認され、AAALACガイドラインに準拠した。
【0107】
4T1腫瘍細胞転移:
原発性同所性(正所性ともいう)4T1マウス癌腫の、50μlの無血清培地中の1×104細胞を、8週齢の雌BALB/cマウスの乳房脂肪体に注射することによって確立し、その後、肺に転移した。
肺転移負荷を、15%インディア インク染料(1x PBS及び1滴の水酸化アンモニウムで再構成)で肺を膨張させることによって可視化し、洗浄し、Fekete溶液〔40mlの氷酢酸、32mlの(37%)ホルマリン、700mlの(100%)エタノールストックをddH2Oで再構成して1リットルにした〕中で漂白した。
免疫組織化学分析のために、4T1転移を有する肺を50% OCTで膨張させ、OCTブロック中で凍結し、続いてCryoJaneテープ転写システムを用いて4μm切片化した。抗体及び染色試薬を表4に列挙する。
表4:抗体のリスト
【表4】
【0108】
ウサギ抗Caveolin1ポリクローナル抗体を用いた免疫蛍光染色により、肺転移病変における血管系の分析を行った。転移性ノード内の血管密度を、40X対物レンズ及び1.0個の卵形を有するZeiss倒立顕微鏡上でマウス肺当たり複数の電界を獲得することによって定量化した。フィールド当たりの陽性のCAV1シグナルに対応するピクセル密度をAdobe Photoshopで決定し、次いでこれらの値を平均して、マウス当たりの全体の平均値を決定した。
4T1肺転移ノードにおける蛋白質発現を調べるために、スライドを40μg/mLヤギ抗マウスIgG-Fab(H+L)(Jackson ImmunoResearch)でブロックし、続いて10%正常ヤギ血清(Jackson ImmunoResearch)でブロックし、α‐IDO1(クローン4B7)、α‐CAV1、α‐CD45(FITC複合体)、α‐Gr‐1又はα‐CD11b(ビオチン化)抗体で免疫染色した。
スライドを洗浄し、ヤギ抗マウス二次抗体(Cy3コンジュゲート)とインキュベートしてIDO1を検出し、ヤギ抗ウサギ二次抗体(FITC又はCy3コンジュゲート)でCAV1を検出し、ヤギ抗ラット(FITCコンジュゲート)でGr-1を検出し、ストレプトアビジン(Alexa 488コンジュゲート)でCD11bを検出した。
その後、スライドを、Prolong Gold with DAPI(Life Technologies;カタログ番号P36935)を用いてマウントし、共焦点顕微鏡(Nikon Eclipse Ti)下で、60X対物レンズを用いて、NIS要素ARソフトウェアを用いて画像化した。
【0109】
酸素誘発性網膜症:
新生血管形成(neovascularization)のOIRモデルを、記載されたように実施した(17)。新生児マウスを、分娩後7日目から12日目(P7-P12)まで、75%酸素(OxyCycler)を含むチャンバーに収容した。新生児をP12でチャンバーから取り出し、その後、新生児における新生血管形成(neovascularization)が、そのピークレベルに達する5日間(P17)、正常酸素状態で維持した。網膜新生血管形成(neovascularization)の定量化は、表4に列挙された抗体及び試薬を用いて、以前に報告されたものと同じ共焦点顕微鏡分析法(7)によって実施した。
眼を固定し(4%パラホルムアルデヒド及びメタノール)、単離した網膜をイソレクチンB4-Alexa488で染色し、平らに取り付けた。指定されるところで、網膜におけるさらなるIDO1染色を、イソレクチンB4-Alexa488染色後に行った。網膜を、40μg/mLヤギ抗マウスIgG-Fab(H+L)(Jackson ImmunoResearch)、続いて10%正常ヤギ血清(Jackson ImmunoResearch)中でブロックした。抗マウスIDO1、α-CD45α(FITC結合体化)及びα-Gr-1(FITC結合体化)を4℃で一晩インキュベートした。網膜を洗浄し、ヤギ抗マウス二次抗体(Cy3コンジュゲート)とインキュベートしてIDO1を検出し、次いでフラットマウントした。共焦点顕微鏡(Nikon Eclipse Ti)イメージングを、NIS要素ARソフトウェアを用いて20倍対物レンズで行った。
【0110】
硝子体内注射:
OIR研究におけるsiRNA及び抗体処置の局所送達を、硝子体内注射によって行った。注射前に、局所麻酔薬アルカイン(0.5%塩酸プロパラカイン点眼液)を眼瞼に適用した。眼が、2.5μlのガラスシリンジに取り付けた33ゲージ針を用いて、PBS中1μlのsiRNA又は抗体を、解剖顕微鏡下で角膜を通して硝子体液中に注射された。
siRNA(siGcn2、siAtf4、siChop及びsiAhr;表1~3)については、P14で単回注射を投与し、標的siRNAを片眼に注射し、非標的コントロールsiRNAを対側眼に注射した。
抗Gr-1抗体(BioXCell)については、P14で単回注射を投与し、実験抗体を片眼に注射し、アイソタイプコントロール抗体を対側眼に注射した。
全ての検討は、網膜新生血管形成(neovascularization)に対する影響の評価のためにP17で終了し、上記のように共焦点顕微鏡分析によって定量化した。
【0111】
細胞培養:
4T1(マウス乳癌; ATCCカタログ番号CRL-2539)及びU937(ヒト組織球性リンパ腫; ATCCカタログ番号CRL-1593.2)細胞株を、ペニシリン、ストレプトマイシン、10% FBS及び55μM βメルカプタエタノールを補充したDMEM中で培養した。
HL60(ヒト前骨髄球性白血病; ATCC Cat# CCL-240)細胞株を、10%FCS+55μM βメルカプタエタノール、2mMグルタマックス(Life Technologies)、及び50μg/mlゲンタマイシンを添加したIMDM培地中で維持した。陰性IMPACT I病原体試験結果(RADIL)は、マウスにおけるその使用の前に4T1細胞株について得られた。
U937又はHL60細胞株に対してマイコプラズマ検査は行わなかった。4T1腫瘍生着研究のために、元のストックバイアルからの細胞を増殖させ、直ちに凍結させ、各実験を、細胞を凍結から直接取り出して行った。
インビトロ実験はU937を用いて実施し、HL60細胞は継代6以下に維持した。U937及びHL60細胞(2x106)を、IFNγ(100ng/mL; ThermoFisher Scientific、カタログ番号PHC4031)及びLPS(100ng/mL; E. coli K-235;カタログ番号L2018)とともに、IDO1阻害剤Epacadostat(1μM +0.01% DMSO; Chemietekカタログ番号CT-EPAC)、統合ストレス応答阻害剤ISRIB(1μM +0.01% DMSO; Sigma-Aldrichカタログ番号SML843)、AHR阻害剤BAY-218(1μM +0.01% DMSO; Selleckchemカタログ番号2162982)又は0. 01% DMSOビヒクル単独の何れかと共に刺激した。
24時間で、遺伝子発現のqPCRに基づく分析のために、処理した細胞からmRNAを調製し、IDO1酵素活性を評価するために、細胞培養培地をキヌレニンのレベルについて分析した。
【0112】
生存率アッセイ:
U937及びHL60細胞における細胞生存率を、製造業者のプロトコールに従って、LDI Cell CountEZ TM毒性、増殖及び生存(TPS)アッセイキット(LDI1201(商標))によって測定した。両方の細胞株を、96ウェルプレートの1万細胞/ウェルの密度で、10% FBSを含む100μlのDMEM培地中に播種した。アッセイ群は遺伝子発現分析に従い、未処理細胞、並びにEpacadostat、ISRIB、及びBAY-218を伴う又は伴わないIFNγ+LPS刺激を含んだ。
ボルテゾミブ(20 nM; LC Laboratories、カタログ番号B-1408)を、細胞アポトーシスを誘導するための陽性コントロールとして使用した。
処理した細胞を、加湿CO2インキュベーター中、37℃で24時間インキュベートした。次いで、TPSアッセイを、マイクロタイタープレートリーダーにおいて412nmでの吸光度を読み取ることによって評価される細胞生存率で実施した。
【0113】
キヌレニンアッセイ:
U937及びHL60細胞上清中のキヌレニンのレベルを、Ehrlich試薬(p-ジメチルアミノベンズアルデヒド)を用いて測定した。
処置後、上清を回収し、V底96ウェルプレートに移し、40μLの50%(w/V)トリクロロ酢酸(TCA; LabChem)と混合して、任意のタンパク質を沈殿させた。次いで、プレートを65℃で30分間インキュベートし、続いて1250×gで10分間遠心分離した。遠心分離後、100μLの清澄化した上清を新しい平底96ウェルプレートに移し、酢酸中の2%(w/v)Ehrlich試薬と等量で混合した。
得られた反応物を、Synergy HTマイクロタイタープレートリーダー(Bio-Tek)を用いて490nmで測定した。OIRプロセスを受けたマウスの眼から硝子体液を採取した。キヌレニンのレベルは、IDK(登録商標)キヌレニンELISAキット(Immundiagnostik AG, Bensheim, Germany)を用いて、製造業者のプロトコールに従って測定した。
さらに、キヌレニンのレベルは(18)に記載されるように、エレクトロスプレーイオン化液体クロマトグラフィー/タンデム質量分析(LC/MS-MS)に連結された高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって確認された。
【0114】
IL6測定:
OIRモデルからのIL6のレベルを測定するために、新生児網膜からの硝子体液を、眼の採取の直後に収集した。アッセイ希釈試料に対する硝子体液の1:4希釈比で、BD BiosciencesマウスサイトカインビーズアレイIL6キットを用いてサイトカインレベルについて分析した。
試料は、製造業者のガイドラインに従って調製した。FACS Canto IIフローサイトメーター(BD Biosciences)及びFACSDIVAソフトウェア(BD Biosciences)を使用して試料を読み取り、FCAPアレイソフトウェアを使用して濃度を得た。サイトカイン濃度は、サイトカインビーズアレイキット中の製造業者(BD Biosciences)によって提供される標準曲線と比較することによって計算した。
【0115】
定量リアルタイムPCR分析:
Trizol (Life Technologies)試薬を製造業者のプロトコールに従って用い、組織培養細胞から全細胞RNAを調製した。cDNAは、Transcription First Strand cDNA合成キット(Applied biosystems;カタログ番号4368814)を用いて調製した。定量的PCR(QPCR)反応を、Eppendorf Realplex 4 Mastercycler QPCR装置を有するFast Start Universal SYBR Green Mix(Roche Applied Science)を用いて行った。Atf4、Chop Il6及びCyp1a1に特異的なプライマーで検出されたmRNA発現レベル(表1~3)を、18S mRNAレベルに正規化し、δ-δサイクル閾値法を用いて処置群間の差異を分析した。
【0116】
セルソート:
Gr-1+CD11blo及びGr-1+CD11bhi細胞を分析し、フローサイトメトリーセルソーター(BD FACSAria III)を用いて、表4に列挙した抗体及び染色試薬を用いて選別した。
4T1注射後、4.5週間(WTについては、Ifng-/-)~5.5週間(Ido1-/-、Il6-/-、Gcn2-/-)で、腫瘍担持肺を採取し、続いて、製造業者のガイドラインに従ってゲントレMACS組織解離剤(Miltenyi Biotec)を用いて解離させ、続いてRBC溶解を行い、Trustain FcxTM(抗マウスCD16/32)(Biolegend; Cat#101320)でブロックした。
解離した肺から、細胞を抗CD45、抗CD11b及び抗Gr-1抗体について染色し、次いで、FACS Aria IIIフローサイトメーター(BD Biosciences)を使用して、Gr-1+ CD11blo及びGr-1+CD11bhi集団についてさらに選別した。
Gr-1+ CD11bloゲート集団からの自家蛍光高(AFhi)及び低(AFlo)細胞の集団を選別し、495/519nm励起及び発光チャネルを使用する共焦点顕微鏡によって自家蛍光のレベルを確認した。
高い若しくは低い合同CD11c及びアシアロ-GM1発現(CD11chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロ-GM1lo)を持つGr-1+ CD11blo AFhiゲート集団 からの細胞を分析するために、さらなる選別も行った。
異なる選別された細胞集団におけるIDO1発現レベルを評価するために、5万個の細胞を、Shandon Cytospin 3を用いて800rpmでスライド上に遠心分離した。
スライドを一晩乾燥させ、-20℃にてアセトンで固定し、IDO1(クローン4B7)について免疫染色し、続いて共焦点顕微鏡(Nikon Eclipse Ti)によって画像化した。CD11chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロ-GM1lo細胞の細胞形態を、製造業者のプロトコールに従って、Differential Quick Staining kit(Modified Giemsa, Electron Microscopy Sciences Cat# 26096-25)によって染色することによって決定した。
【0117】
Matrigel Plug検査:
4T1肺転移から単離された選択免疫細胞集団のインビボ新生血管形成(neovascularization)能力を評価するために、5x104~2x106選別細胞を、蛍光活性化細胞選別(BD FACSAria III)によってRPMI +10% FCS中に単離し(対応する図の説明に示されるように)、氷上に置いた。
選別の直後に、単離された免疫細胞集団を250μlのPBS中に懸濁し、インビボ注射のために氷上のプラグ当たり250μlのマトリゲル(Corning(登録商標)カタログ番号356237)と合わせた。21ゲージの針を有する氷冷シリンジを使用して、レシピエントマウスの背側領域に皮下注射することによってプラグを確立した。
IDO1阻害関連を検討のために、マウスに、100μlのビヒクル(3% N、N-ジメチルアセトアミド、10% 1-ヒドロキシプロピル-βシクロデキストリン)中の50mg/kgのエパカドスタットを、マトリゲルプラグの注射後6日目に始まる72時間、経口強制経口b.i.d.によって投与した。注射後9日後、マトリゲルプラグを採取し、追加の10xマクロレンズアタッチメント(モーメント)を有する2xレンズを使用して、Samsung Galaxy S6又はiPhone登録商標 Xの何れかで画像を記録した。
血管の定量化のために、マトリゲルプラグをOCT中でブロックし、テープ転写法(4≧プラグ当たりのセクションs)を用いて凍結切片化した。切片化に続いて、カベオリン1についてウサギ抗マウスを用いた蛍光染色によって新生血管形成(neovascularization)を可視化し、上記のようにAdobe Photoshopを用いて定量的に分析した。
統計解析:
統計分析及びグラフ化は、Prism 7(GraphPad Software Inc.)を用いて行った。散布図をmeans± SEMで示し、統計的有意性を、対応のない両側スチューデントt検定によって、又はダネット若しくはシダックの多重比較検定(それぞれの図の説明に示されているように)の何れかによる一方向ANOVAによって決定した。
Kaplan-Meier生存曲線の有意性は、2群ログランク検定によって決定した。P値の範囲は以下のように示される: ****; P < 0.0001; ***; P < 0.01; **; P < 0.01;*; P < 0.05: ns; 有意ではない。
【0118】
実施例2: 結果
GCN2の遺伝的喪失は、IDO1喪失及びIL6喪失の両方の抗新生血管効果を(フェノコピー)複製する:
【0119】
GCN2(IDO1によるトリプトファンの異化を含むアミノ酸欠損に応答して活性化されるセリンキナーゼ)は、ISRに供給される4つの哺乳動物キナーゼのうちの1であり、これはIL6発現の調節に関連しているが、調節効果が正であるか陰性であるかについては矛盾する報告がある(11,12,19)。
このシグナル伝達パスウェイの生物学的関連性を、IDO1及びIL6の両方によって共有される新生血管形成(neovascularization)に対するIFNγ依存性効果を架橋する(結びつける)可能な機構的リンクとして調べるために(7)、本発明者らは、両方のGcn2対立遺伝子の標的破壊を有するGcn2-/-マウスにおいて検討を行った。
転移性4T1腫瘍でチャレンジされた表現型Gcn2-/-マウスは、Ido1-/-マウスに似ており、WTマウスと同様の原発腫瘍増殖速度を示したが(図9)、肺における転移負荷を著しく減少させた(図1A)。
この転移差は、Ido1-/-マウスに似て、Gcn2-/-マウスがWTマウスと比較して示す有意な生存優位性と関連していた(図1B)。Gcn2-/-マウスからの4T1肺転移の免疫蛍光染色は、Ido1-/-マウスで観察されたものに匹敵する血管密度の有意な低下の証拠を明らかにした(図1C及び図1D)。
これらのデータは、GCN2がこの転移性状況において腫瘍増殖、新生血管形成(neovascularization)及びIL6誘導を促進するためにIDO1に必要であるという仮説と一致する。
【0120】
IL6を誘導する統合ストレス応答パスウェイを介するIDO1シグナル:
IDO1媒介トリプトファン異化は、トリプトファン枯渇に応答したISRシグナル伝達及び内因性リガンドキヌレニンの産生を介するAHRシグナル伝達の活性化をもたらし得る。
IDO1活性とIL6誘導との間の観察された関連がこれらの2つの下流シグナル伝達パスウェイの何れかを介して関連しているかどうかを直接検討するために、本発明者らは、単離細胞培養物における両方のパスウェイの阻害の影響を調べた。
本発明者らは、U937及びHL60細胞の両方におけるIFNγ+LPS媒介性のIDO1活性の誘導が、対応するIL6の増加を伴い、両方が、IDO1酵素阻害剤MTH-Trpで遮断され得ることを以前に示した(9)。
本検討では、異なるIDO1阻害剤、Epacadostatを使用し、細胞によって産生されるキヌレニンの80~90%を遮断し(図2A)、IL6遺伝子発現の≧ 99%の減少をもたらし(図2B~2C)、IDO1活性とIL6誘導との間の関連をさらに裏付けた。
IDO1の下流のシグナル伝達パスウェイの活性化状態を評価するために、本発明者らは、同様に、ISR及びAHR活性化時に誘導される遺伝子を評価した。
CHOP (C/EBP相同蛋白質/Ddit3 DNA損傷誘導性転写産物3)とATF4(転写活性化因子4)は、ISR活性化時に誘導される2つの下流シグナル伝達要素である(20)が一方、CYP1A1(チトクロームP450、ファミリー1、サブファミリーa、ポリペプチド1)は、AHRの下流標的遺伝子である(21)。
qPCR分析は、IDO1誘導後のCHOP、ATF4、及びCYP1A1メッセージのレベルの上昇を明らかにし、3つすべてがEpacadostat処置によって効果的に遮断された(図2B-2C)。
どのIDO1シグナル伝達パスウェイが、IL6発現の制御に関与するかを調べるために、ISRシグナル伝達を遮断する阻害剤ISRIB(22)及びAHRシグナル伝達を遮断するBAY-218(23)を使用した。
予想通り、ISRIBは、CHOPとATF4の両方の誘導を遮断したが、CYP1A1は遮断せず、BAY-218はCYP1A1の誘導を遮断したが、CHOP又はATF4は遮断せず(図2B-2C)、どちらも生成されたキヌレニンのレベルに有意な影響を及ぼさなかった(図2A)。
IL6遺伝子発現は、ISRIBによって効果的に遮断されたが、BAY-218は有意な効果を示さず(図2B-2C)、IL6誘導が、ISRを介するシグナル伝達によって制御され、AHRを介さないことを示している。ISRIB、Epacadostat、BAY-218のいずれも、観察された影響を説明するために用いた濃度では、細胞生存率に十分な影響を及ぼさなかった(図10)。
まとめると、これらのデータは、ISRシグナル伝達がIDO1活性をIL6の誘導に接続する下流調節リンクであることをサポートすると論じられる。
【0121】
ISRシグナル伝達は、IDO1の下流で作用して、酸素誘発性網膜症のマウスモデルにおける新生血管形成(neovascularization)を促進する:
【0122】
IDO1が新生血管形成(neovascularization)に及ぼす影響を、腫瘍発生と免疫逃避に及ぼす他の影響とは別に検討するために、著者らは、以前、腫瘍(17)に見られるものと同様に、再現性良く定量的に異常な血管を形成するマウスOIR(酸素誘発網膜症)モデル(7)を用いた(図3A及び図11)。
OIRモデルにおいて、IDO1は、IFNγに対抗し、IL6をフェノコピーする様式で新生血管形成(neovascularization)を促進するために重要である(7)。
この生物学的状況におけるISRシグナル伝達の関連性を評価するために、OIR関連新生血管形成(neovascularization)をGcn2-/-マウスにおいて評価した。
Ido1-/-マウスにおける本発明者らの観察と同様に、新生血管形成(neovascularization)は、GCN2を欠くマウスにおいて有意に減少することが見出された(図3B)。
この効果は、Gcn2-/-及びIdo1-/-マウスの硝子体液中のIL6レベルの減少と一致した(図3C)。しかしながら、Ido1-/-マウスとは異なり、Gcn2-/-マウスは、硝子体液中のキヌレニンレベルの有意な低下を示さず、これらの動物においてIDO1活性が影響を受けないことを示した(図3D)。
【0123】
OIR関連新生血管形成(neovascularization)の促進におけるISRシグナル伝達の役割についてのさらなる証拠は、Ido1及びVegfaを首尾よく標的化するために以前に使用されたアプローチでこのパスウェイの重要なシグナル伝達成分を標的化するために、眼に特異的に指向されたsiRNAを使用する研究から得られた(7)。
生殖細胞系ノックアウトデータと一致して、Gcn2のsiRNA媒介標的化は、OIR関連新生血管形成(neovascularization)を有意に減少させた(図3E)。同様に、ISRシグナル伝達成分Atf4又はChopをこの様式で標的化することは、対側眼に注射された非標的化コントロールsiRNAと比較して、同様のOIR関連新生血管形成(neovascularization)の減少をもたらした。
対照的に、この代替のIDO1シグナル伝達パスウェイを妨害するようにAhrに対するsiRNAを使用して、OIR関連新生血管形成(neovascularization)の減少は観察されなかった。
代わりに、Ahrターゲティングは、新生血管形成(neovascularization)の比較的小さいが有意な増加と関連し(図3E)、AHRシグナル伝達がU937及びHL60細胞ベースのアッセイにおけるAHR阻害を伴うIl6発現の増加傾向と一致して、この文脈において、わずかな逆調節効果を発揮し得ることを示唆した。
【0124】
血管の免疫蛍光染色と併せて、網膜全マウント(スライド)もIDO1について染色した。IDO1発現は、新生血管房sと密接に関連する細胞においてのみ検出された(図3F)。
IDO1染色は、OIRマウス網膜における新生血管領域の外側、又は一定の正常酸素状態で維持されたマウスの網膜全体にわたって観察されなかった(データは示さず)。Ido1-/-OIRマウス網膜由来の新生血管房においてIDO1の陽性染色は検出されず、抗IDO1抗体染色の特異性が確認された(図3F)。
対照的に、IDO1陽性染色細胞は、Ido1-/-マウスで観察されたものに匹敵する血管新生レベルの低下を示すにもかかわらず、Gcn2-/-マウス由来のOIR網膜で検出可能であった(図3F)。
この観察はIDO1の下流のISRシグナル伝達パスウェイの重要なシグナル伝達成分として作用するGCN2と一致し、Ido1-/-マウス網膜において観察されるIDO1陽性染色の欠如が、新生血管形成(neovascularization)の減少の偽の結果であり得るという懸念に対して論じている。
同様に、IDO1発現は、Gcn2、Chop及びAtf4並びにAhrに対するsiRNAで処置されたマウスのOIR網膜において検出された(図3G)。
まとめると、これらのデータは、ISRは、IDO1がOIRにおける病理学的新生血管形成(neovascularization)を促進するように作用する、生物学的に関連するシグナル伝達パスウェイであることと一致する。
【0125】
Gr-1+ CD11blo免疫細胞集団におけるIDO1の発現:
IDO1についての4T1肺転移の染色はOIR網膜と同様に、IDO1+細胞が、WT宿主において確立された4T1転移における血管と関連することを明らかにした(図4A) 。
重要なことに、IDO1染色の証拠は、Ido1-/-宿主において確立された4T1転移において観察されず(図4A)、IDO1に対する抗体の特異度、並びにWT Ido1対立遺伝子の保持にもかかわらず、この設定において移植された4T1腫瘍細胞によるIDO1発現の欠如の両方を確認した。
一方、IDO1+細胞はGcn2-/-宿主において確立された4T1転移において観察されたが、これらの腫瘍において観察された新生血管形成(neovascularization)の有意な減少にもかかわらず(図4A)、再度、IDO1の下流で作用するGCN2と一致した。
【0126】
IDO1陽性細胞は、OIR及び4T1肺転移モデルの両方において新生血管形成(neovascularization)の領域と密接に関連していたが、IDO1の染色は、血管を同定するために使用された内皮細胞マーカーの染色と直接重複しないようであった。
代わりに、WTから得られたがIdo1-/-宿主からは得られなかった4T1転移性病変において検出されたIDO1染色は、共通白血球マーカーCD45を発現する細胞のサブセットと重複した(図4B)。
対照的に、原発性4T1腫瘍又はWTマウス由来の対応する脾臓に存在するCD45+細胞において、IDO1発現は検出されなかった(図4B)。
4T1腫瘍は、主にG-又はPMN-MDSCと呼ばれる顆粒球多形核サブセットからなるMDSC(24)の大規模な増殖を誘発する(25)。4T1転移におけるIDO1発現免疫細胞集団のさらなる分析は、IDO1陽性がMDSCを同定するために一般的に使用される分化マーカーであるGr-1を発現する細胞のサブセットと共局在するが、他の一般的に使用されるMDSCマーカーであるCD11bとは共局在しないことを明らかにした(図4C)。
4T1転移と同様に、OIRマウスの網膜におけるIDO1発現細胞は、CD45+及びGr-1+の両方であると同定された(図4D)。
これらの染色データと一致して、Gr-1+細胞の抗体媒介性枯渇はアイソタイプ抗体処置コントロール群と比較して、OIR関連新生血管形成(neovascularization)の有意な減少をもたらし(図4E)、これらは、IDO1が、新生血管形成(neovascularization)を促進する生物学的に関連する細胞であることを意味する。
【0127】
Gr-1+ CD11blo細胞のIDO1発現亜集団は、新生血管形成(neovascularization)を促進するその能力において、従来のMDSCと機能的に異なる:
【0128】
フローサイトメトリーによって分析した場合、4T1転移を有する肺から単離されたCD45+細胞の大部分は、Gr-1及びCD11bの両方について陽性であった。これらの検討で使用された抗IDO1抗体が、フローサイトメトリーによってIDO1発現細胞と非発現細胞とを直接的に適切に識別することができないため、解離した4T1肺転移からのGr-1+細胞を、顕微鏡分析のためのそれらのCD11b発現レベルに基づいて分離した(図5A及び図12)。
免疫蛍光染色は、総数CD45+ Gr-1+集団の < 5%を含むCD11blo細胞画分内で、IDO1+細胞は、高度に濃縮されたが、大多数のCD45+ Gr-1+ CD11bhi集団においてIDO1発現の証拠は検出されなかった。
IDO1発現亜集団が、新生血管形成(neovascularization)を機能的に促進することができるかどうかを評価するために、WT宿主において確立された4T1肺転移から単離された選別されたGr-1+ CD11blo細胞をマトリゲルと混合し、ナイーブWTマウスに皮下移植した。
比較のために、従来のMDSCを表すGr-1+ CD11bhi細胞を、マトリゲル移植のために同様に単離した。
マトリゲルプラグを9日後に切除したところ、IDO1を発現するCD11blo細胞を組み込んだプラグが内部で高度に血管形成されていることが視覚的に明らかであったが、IDO1を発現しないCD11bhi細胞を有するプラグはそうではなかった(図5C)。
【0129】
染色切片の免疫蛍光分析は、CD11bloプラグとCD11bhiプラグとの間の平均血管密度の > 10倍の差異を確認した(図5C、D)。この結果は、CD11blo集団が新生血管形成(neovascularization)を独立して促進することができ、これらの細胞を従来のCD11bhi MDSCから機能的に区別することができることを示す。
対照的に、Ido1-/-CD11blo細胞を組み込んだマトリゲルプラグ(Ido1-/-マウスにおいて確立された4T1転移から単離された)は、血管浸潤の最小の証拠を示し(図5C)、これは、免疫蛍光によって、対応するCD11bhi細胞を組み込んだプラグとは定量的に識別不能であり、いかなる細胞も組み込んでいないマトリゲルプラグよりもわずかに上昇しただけであった(図5C、D)。
これらの結果は、IDO1発現が新生血管形成(neovascularization)を促進するGr-1+ CD11blo細胞の能力に関連するだけでなく、その能力にとって重要であることを示す。
【0130】
IDO1の阻害は、単離されたGr-1+ CD11blo細胞によって誘発される新生血管形成(neovascularization)を減少させる:
【0131】
CD45+ Gr-1+ CD11blo細胞が新生血管形成(neovascularization)を促進することを可能にする際のIDO1酵素活性の役割を直接試験するために、WTマウスにおいて、WT Gr-1+ CD11blo又はGr-1+ CD11bhi細胞を組み込んだマトリゲルプラグを6日間確立し、その後、マウスをIDO1阻害剤エパカドスタットで3日間処置した。
免疫蛍光染色による切除マトリゲルプラグの評価は、エパカドスタット処置がCD11blo細胞によって促進される新生血管形成(neovascularization)の程度を、CD11bhi細胞とは定量的に識別不能なレベルまで減少させることを明らかにした(図5E、F)。
エパカドスタット処置が確立された4T1転移内の血管形成を逆転させるという我々の以前の知見(7)と一致して、これらの結果は、進行中のIDO1活性がGr-1+ CD11lo細胞駆動性新生血管形成(neovascularization)を単に開始するだけでなく維持するために必要であることを実証する。
【0132】
単離されたGr-1+ CD11blo細胞による新生血管形成(neovascularization)は、IL6及びGCN2を必要:
【0133】
4T1肺転移及びOIRモデルの両方からの結果は、新生血管形成(neovascularization)を促進するIDO1の能力は、ISRの活性化を介して増強されるIL6の下流誘導に依存することが示された。
この関連は、単離されたGr-1+ CD11blo細胞にも当てはまるかどうかを評価するために、IL6及びGCN2の喪失を遺伝的に評価した。
Il6-/-又はGcn2-/-マウスの何れかから単離されたGr-1+ CD11blo細胞を組み込んだマトリゲルプラグは、血管浸潤の最小の証拠を示した(図6A、B)。
これらの結果は、IL6及びGCN2の両方が、IDO1発現Gr-1+ CD11blo細胞が細胞レベルでのこのIDO1駆動シグナル伝達パスウェイのインビボでの固有の関連性と一致して、新生血管形成(neovascularization)を促進するために必要であることを確認する。
【0134】
ホストIFNγの除去は、新生血管形成(neovascularization)を促進するIDO1欠損Gr-1+ CD11blo細胞の能力を回復させる:
【0135】
IFNγは、IDO1発現の主要な誘導物質であるが、抗血管新生活性も発揮する。マウスにおけるIFNγ発現の排除が新生血管形成(neovascularization)の決定因子としてIDO1を重要でないものにしたという我々の以前の発見(7)は、IDO1の誘導がIFNγの抗血管形成効果を制御する逆調節フィードバック機構として作用し得るという仮説を導いた。
この仮説を明示的に検証するために、本発明者らは、IFNγを遺伝的に欠くマウスを用いた検討を行った。
OIR網膜及び4T1転移における新生血管領域の評価は、Ifng-/-マウス由来の検体におけるIDO1陽性染色の欠如を明らかにし(図6C、D)、これらの設定におけるIDO1発現の誘導には、IFNγが必要であることを示し、IDO1が下流の逆調節エレメントとして機能するという仮説と一致する。
【0136】
新生血管形成(neovascularization)におけるIdo1の役割が、外因性IFNγの存在に依存するかどうかを直接評価するために、WTマウスに導入した場合に新生血管形成(neovascularization)を効果的に誘発することができなかった、Ido1-/-マウスから単離されたGr-1+ CD11blo細胞をIfng-/-マウスに導入した。
この文脈において、Ido1-/-細胞の導入は、WTマウス由来のCD11blo細胞を組み込んだプラグに匹敵する血管密度を有する高度に血管形成したマトリゲルプラグをもたらした(図6E、F)。
一方、Gr-1+ CD11bhi細胞は、WT又はIdo1-/-マウスに由来するかどうかにかかわらず、Ifng-/-マウスにおける新生血管形成(neovascularization)を効果的に促進することができないままであった(図6E、F)。
これらのデータは、Gr-1+ CD11blo細胞におけるIDO1発現が新生血管形成(neovascularization)自体を促進するそれらの機能的能力を決定するものではなく、むしろ、局所IFNγの抗血管形成効果から誘発された新生血管系を保護するために重要であるという結論をサポートする。
【0137】
IDO1+血管新生亜集団は、高レベルの自家蛍光並びにCD11c及びアシアロ-GM1の表面発現を特徴とする:
【0138】
Gr-1+ CD11blo条件の中で、さらなるフローサイトメトリー及び蛍光顕微鏡分析は、IDO1発現が高度の自家蛍光によって識別可能な細胞のサブセットと関連することを明らかにした (図7A及び図13A)。
Gr-1+ CD11blo集団を、高及び低自家蛍光(AFhi及びAFlo)に基づいて分離した場合、マトリゲルプラグ内の新生血管形成(neovascularization)を促進する能力は、高自家蛍光シグナルで分離した(図7B)。
自家蛍光シグナルは、3つの励起/発光チャネル488/530、450/407及び488/585で特に強かったが、633/660及び633/780チャネルでは弱かった(図13B)。
【0139】
より弱い自家蛍光チャネルを用いて、異なる細胞表面マーカーを検出するための一連の抗体をAFhi細胞集団で評価した。
CD11c及びアシアロ-GM1に対するこのパネルからの2つの抗体は、バックグラウンドを超える強い蛍光強度シフトを有する明確にマークされた別個の亜集団を示した(図14A)。
これらの2つのマーカーを調べると、AFhi集団は、CD11chi アシアロ-GM1hi及びCD11clo アシアロ-GM1lo細胞の2つの優勢なグループに分岐した(図7C及び図14B)。
IDO1発現は、形態学的により不均一であったCD11clo アシアロ-GM1lo集団とは対照的に、形態学的に均一な集団として現れたCD11chi アシアロ-GM1hi集団とほぼ排他的に分離した(図7D)。
我々の以前の組織染色データと一致して、IDO1発現は、Ido1-/-又はIfng-/-マウスから単離されたCD11chi アシアロ-GM1hi細胞において観察されなかったが、Il6-/-及びGcn2-/-マウスからの細胞において保持された(図14C)。
CD11chi アシアロ-GM1hi細胞集団におけるCD11c及びアシアロ-GM1並びにCD45に対する陽性は、これらの細胞に固有の高いバックグラウンド自家蛍光に起因しないことが確認され(図15)、これらのマーカーとIDO1発現細胞集団との関連性が実証された。
【0140】
予想外に、WT細胞をWTレシピエントに移すと、CD11chi アシアロ-GM1hi (IDO1+)及びCD11clo アシアロ-GM1lo (IDO1-)集団の両方が、マトリゲルアッセイにおいて新生血管形成(neovascularization)を促進することができた(図7E及び図16A)。
この活性に対してプラグ内に取り込まれた細胞の数を減らすことは、CD11chi アシアロ-GM1hiとCD11clo アシアロ-GM1lo集団との間で血管密度の対応する減少があまりにも類似しており、この説明に対応するために、CD11clo アシアロ-GM1lo集団内に存在するIDO1+細胞の小さな残存集団に起因すると論じられた(図16B)。
代わりに、Ido1-/-ドナーからWTレシピエントへの細胞を用いてマトリゲルアッセイを実施することにより、このように分離した場合、CD11clo アシアロ-GM1lo集団は、もはや新生血管形成(neovascularization)を促進するためにIDO1を必要とせず、一方、CD11chi アシアロ-GMhi集団は、IDO1依存性のままであることが明らかになった(図7E及び図16A)。
同様に、CD11clo アシアロ-GM1lo集団は、GCN2及びIL6の両方の必要性を失ったが、CD11chi アシアロ-GMhi集団はそうではなかった(図16C、D)。
これらのデータは新生血管形成(neovascularization)を促進するAFhi細胞のより大きな集団の一部であるIDO1+細胞と一致するが、これらの新たに形成された血管のIFNγ依存性排除を誘発する能力によって区別可能であり、ひいてはIDO1を誘導するそれらの付随する能力によって抑制される。
Ido1-/-、Il6-/-及びGcn2/マウス由来のCD11chi アシアロ-GMhiドナー細胞にホストIFNγが存在し、新生血管形成(neovascularization)を促進する能力の障害を示すという要件は、Ifng-/-レシピエントを用いたマトリゲルアッセイを実施することによって確認された(図7E及び図17)。
IDVC (IDO1依存性血管形成細胞)集団の最初の同定のためにCD11c及びアシアロ-GM1マーカーを利用することは、それらのCD11b及びGr-1状態のさらなる特徴付けを可能にした。
CD11bは、低いが存在しないと決定され(図18)、一方、複合マーカーGr1のレベルは、その成分分子、Ly6C及びLy6Gと共に、全て中間レベルで存在することが見出され(図19)、従来のMDSCからIDVC表面マーカープロファイルをさらに区別した(表5)。
表5:IDVC集団と大多数のPMN-MDSC集団との間の表面マーカー比較
【表5】
【0141】
実施例3:考察
IDO1がT細胞応答を抑制する能力についての研究から得られた詳細な洞察とは対照的に(26)、炎症性新生血管形成(neovascularization)の不可欠なメディエーターとしてのIDO1の役割についての症例は、これまで非常に概念的であった(7)。
本発明では、IDO1生物学のこれまで認識されていなかったこの態様の分子的及び細胞的基礎を解明した。免疫蛍光顕微鏡法による新生血管形成(neovascularization)領域に関連するIDO1発現細胞の検出は、IDO1の誘導を介してIFNγの抗血管形成活性に対抗し、新しい血管のインビボ形成を促進することができる従来のMDSCとは区別可能であるが、存在する免疫細胞の独特のサブセットの同定をもたらした。
これらの細胞におけるIDO1誘導が、IFNγを相殺する方法の検討は、GCN2によって開始され、新生血管形成(neovascularization)を促進するために必要とされるIL6の誘導をもたらすISRパスウェイを通して増殖されるシグナル伝達の下流の関与を描写している。
全体として、これらの知見は、IDO1生物学のこの新規な側面への基本的な新たな洞察を明らかにする。
トリプトファンの分解を開始することによって、IDO1はトリプトファンの枯渇及び異化産物の産生の両方を介して潜在的にシグナル伝達することができ、これらの2つの可能なシグナル伝達機構のうちのどちらが最も関連するかについての議論が進行中である(27,28)。
生物学的証拠は、異化産物キヌレニンに応答したAHRを介するシグナル伝達、及びトリプトファン枯渇に応答したGCN2を介するシグナル伝達について報告されている(15,29)。新生血管形成(neovascularization)に対するIDO1の影響に関して、本発明者らのデータは、トリプトファン枯渇の側に明らかに当てはまる。
GCN2、CHOP及びATF4を含む、インビボでのISRの重要な成分を標的とすると、全ての表現型は、IDO1又はIL6の何れかの喪失が新生血管形成(neovascularization)に及ぼす影響を有する。重要なことに、ISRの主要成分を破壊することはIDO1を除去することに表現型的に匹敵したが、IDO1の発現及び活性は上昇したままであった。
免疫調節のメカニズムに関する議論において、トリプトファン枯渇仮説に対する原理的な反対の1つは、トリプトファンの全身レベルがIDO1発現DCにとって、枯渇に基づく作用メカニズムを介してT細胞機能に外因的に影響を及ぼすには高すぎることであった(30)。
しかしながら、IDO1の新生血管形成(neovascularization)に対する影響の場合、この懸念は、インビトロ及びインビボの両方で、IFNγにより誘導されるIDO1媒介性トリプトファン異化の誘導がISRパスウェイ活性化及び下流IL6誘導を開始するために細胞内で本質的に作用するという証拠によって、より重要になる。
4T1腫瘍を有するマウスにおいて生じるMDSCの大規模な拡大を考慮すると、MDSC及び好中球の系統マーカーであるGr-1が4T1転移におけるIDO1発現と重複するという本発明者らの測定は、これらのIDO1発現細胞が従来のMDSCであり得るという最初の仮定をもたらした。
しかしながら、M-MDSC及びM-MDSCの両方の他の特徴的な系統マーカーである、IDO1発現とCD11bとの間の重複の欠如は、現在定義されているMDSCの大部分から、IDO1+細胞(この研究ではIDO1依存性血管形成細胞又はIDVCsと呼ばれる)を差別化させた(31)。
その後、高度の固有の自家蛍光が、IDO1+細胞集団に関連する定義的な物理的特徴として同定され、これはIDO1+細胞のさらなる微細化を可能にしたが、フローサイトメトリーに基づく特徴付けのためのさらなる合併症も提示した。
最も低い自家蛍光シグナルを有するチャネルを利用して、IDO1発現細胞は、典型的にはそれぞれ樹状細胞及びナチュラルキラー細胞を同定するために使用される2つの細胞表面マーカー、CD11c及びアシアロ-GM1、と、ほぼ均一にさらに描写された。
両方のAFhi細胞集団がマトリゲルアッセイにおいて新生血管形成(neovascularization)を誘発することができたが、CD11chi アシアロGM1hiサブセットのみがIDO1又は下流成分GCN2及びIL6を必要とした。
単離されたCD11clo アシアロ-GM1lo細胞は、マトリゲル新生血管形成(neovascularization)を効果的に促進するためにIDO1をもはや必要としないが、CD11clo アシアロ-GM1lo及びCD11chi アシアロ-GM1hi細胞の混合集団はこの文脈において、IDO1発現CD11chi アシアロ-GM1hi集団がIFNγ媒介性抗血管形成応答に対抗するだけでなく、それを誘発することにも関与することを示唆した。
【0142】
従来のGr-1+ CD11bhi MDSCのより広い集団における検出可能なIDO1発現の欠如は、我々の以前の知見と一致する(9)が、MDSCにおけるIDO1発現の公表された証拠も報告されている。
マウスMDSCの場合、証拠は一般に、PCR又はウェスタンブロット分析による細胞集団内の発現分析から構成されている(32~34)。
個々の細胞レベルでのIDO1発現を調べないことによって、このような研究は、ここで同定されたIDVCによる従来のMDSC集団のコンタミネーションによって誤解されるリスクを有する。
又、IDO1発現を検出するための市販の抗体の多くは、偽陽性結果をもたらし得る特異性を欠いているという懸念もあり(35)、これは検証のために生殖系列ノックアウト株を用いてマウス組織中のIDO1を特異的に認識する抗体の開発によって、本検討において取り組まれた課題である(36)。
したがって、IDO1の発現の上昇が従来定義されたマウスMDSCにおいて起こるという広範な概念は、より決定的な証拠が提供され得るまで、懐疑的に見るべきである。
【0143】
機能的には、血管形成を促進する能力は、現在、従来のMDSCの決定的な特徴の1つ(4)であるが、しかし、本発明者らのデータは、この帰属の再評価も必要であり得ることを示唆する。
本発明で同定されたAFhi細胞の少数の亜集団は生着したマトリゲルプラグ内の新生血管形成(neovascularization)を促進するのに非常に有効であったが、従来のMDSCは、比較すると、全く有効ではなかった。
これは、従来のMDSCに一般的に帰される血管新生促進活性(proangiogenic activity)というのは、AFhi細胞のこのマイナーなサブセットに限定され得るという可能性を提起する。
例えば、マトリゲルプラグアッセイを用いて行われた研究は、単離されたMDSCと血管新生活性とを明らかに関連づけている。
しかしながら、MDSCがそれらのGr-1+(又はLy6C/Ly6G)状態(37)のみに基づいて単離された場合、Gr-1+ CD11blo AFhi細胞による不注意なコンタミネーションの可能性が明らかに存在する。
MDSCがそれらの組み合わされたGr-1+ CD11b+状態(38)に基づいて単離された場合でさえ、CD11blo AFhi細胞による交差コンタミネーションは、CD11bカットオフ値の不十分なストリンジェンシー又は非特異的自家蛍光に対する不注意なゲーティングのため、依然として問題となり得る。
これらの知見に基づいて、従来のMDSCの血管新生活性の注意深い再評価は、明らかに必要である。
これらの検討から、IDO1は、単にIDVCをMDSCと区別するマーカーではなく、むしろ新生血管形成(neovascularization)を促進するためにこれらの細胞に機能的に必要とされることが明らかである。
しかし、IDO1は、VEGFのような新しい血管の形成を直接促進する血管新生因子ではない。
むしろ、本発明者らの結果は、IDVCにおけるIDO1の主要な役割は、IFNγの抗血管新生効果を打ち消すことであることを実証した。機構的には、IFNγがその抗血管新生効果をどのように発揮するかは十分に理解されていないままである。
最近の研究は、内皮細胞におけるIFNGRの標的化された欠失は、血管系を保護するのに十分であるが(39)、内皮細胞におけるD114 (デルタ様リガンド4)/Notchシグナル伝達のダウンレギュレーションは、内皮細胞におけるIFNGRの標的化された欠失がこのプロセスに関与する(40)ことを実証している。
これらのデータは、機構を解明するための見込みのあるキーは、IFNγに対抗するIDVCによって産生されたIL6の観察された能力にあり得ることを示唆する。
IL6はVEGF非依存性機構を介して新しい血管形成を刺激することが実証されているが(41)、本発明者らのデータは、IDVCによるIL6の産生が血管形成の直接的プロモーターとしてよりもIFNγの抗新生血管活性のチェックとしてより関連することを示唆している。
さらに、本発明は、新生血管形成(neovascularization)に焦点を当てているが、IL6は機能的に抑制的なMDSCを誘発することにも関与している多面発現性サイトカインである(42)。
我々の以前の研究は、4T1腫瘍を有するIdo1-/-マウスから得られたMDSCがIL6を異所的に発現する改変腫瘍細胞の移植によって回復され得る抑制活性の減少を示すことを示した(9)。
IDVCによるIL6のIDO1依存性産生が新生血管形成(neovascularization)の促進と併せて、MDSCの完全な抑制能力の発達にも寄与し得るかどうかを検討するために、今後の研究が必要である。
【0144】
遺伝学的研究は炎症性新生血管形成(neovascularization)におけるIDO1の不可欠な役割を実証しているが、エパカドスタットを用いたさらなる研究はIDO1阻害剤が一旦開始されると新生血管形成(neovascularization)プロセスを逆転することが可能であり、血管完全性の維持におけるIDO1の継続的な役割と一致することを示すことによって、この概念をさらに拡張する。
VEGF標的化剤を用いた抗血管形成療法の課題の1つは、獲得耐性の発生である。この点に関して、MDSCの動員及びIL6シグナル伝達の両方が、患者におけるVEGF指向性抗体療法の失敗に関与している(43,44)。
これらの観察は、VEGF抗体療法に対する獲得耐性に寄与する、本研究で同定されたマウスIDVCと同等のヒトの存在と一致する。
【0145】
本明細書を通して引用されるウェブサイト及び他の刊行物を含む、各及びすべての特許、特許出願、及び刊行物は、参照により本明細書に組み込まれる。
特定の実施態様を参照して本発明を説明してきたが、本発明の趣旨から逸脱することなく変更を行うことができることが理解されよう。
このような変更は、添付の特許請求の範囲の範囲内にあるものとする。
【0146】
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【配列表】
2024501582000001.app
【国際調査報告】