(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】電気航空機における配電のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B64D 47/00 20060101AFI20240104BHJP
B64D 27/24 20240101ALI20240104BHJP
B64C 29/00 20060101ALI20240104BHJP
【FI】
B64D47/00
B64D27/24
B64C29/00 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023558665
(86)(22)【出願日】2021-12-07
(85)【翻訳文提出日】2023-08-04
(86)【国際出願番号】 US2021072776
(87)【国際公開番号】W WO2022126098
(87)【国際公開日】2022-06-16
(32)【優先日】2020-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523211109
【氏名又は名称】アーチャー アヴィエーション,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】メラック,ジョン
(57)【要約】
電気航空機配電システムは、少なくとも第1の負荷と、第1のバッテリーパックを少なくとも第2のバッテリーパックに並列に接続する共通バスとに接続された第1のバッテリーパックと、第1のバッテリーパックと第1の負荷との間に電気的に接続され、第1の閾値電流を上回る電流に応答して第1の負荷を第1のバッテリーパックから切断するように構成された第1の電気部品であって、第1の閾値電流において第1の切断時間を有する第1の電気部品と、第1のバッテリーパックと共通バスとの間に電気的に接続され、第2の閾値電流を上回る電流に応答して第1のバッテリーパックを共通バスから切断するように構成された第2の電気部品であって、第2の閾値電流において第1の切断時間よりも長い第2の切断時間を有する第2の電気部品と、を含む。
【選択図】
図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気航空機用の配電システムであって、
第1のバッテリーパックであって、少なくとも第1の負荷と、前記第1のバッテリーパックを少なくとも第2のバッテリーパックに並列に接続する共通バスとに接続された前記第1のバッテリーパックと、
前記第1のバッテリーパックと前記第1の負荷との間に電気的に接続され、第1の閾値電流を上回る電流に応答して前記第1の負荷を前記第1のバッテリーパックから切断するように構成された第1の電気部品であって、前記第1の閾値電流において第1の切断時間を有する前記第1の電気部品と、
前記第1のバッテリーパックと前記共通バスとの間に電気的に接続され、第2の閾値電流を上回る電流に応答して前記第1のバッテリーパックを前記共通バスから切断するように構成された第2の電気部品であって、前記第2の閾値電流において前記第1の切断時間よりも長い第2の切断時間を有する前記第2の電気部品と、を含む前記配電システム。
【請求項2】
前記第1の閾値電流は前記第2の閾値電流よりも小さい請求項1に記載の配電システム。
【請求項3】
前記第1のバッテリーパックは第2の負荷に電気的に接続され、第3の電気部品が、前記第1のバッテリーパックと前記第2の負荷との間に電気的に接続され、第3の閾値電流において第3の切断時間を有し、前記第3の切断時間は前記第2の切断時間よりも短い、請求項1または請求項2に記載の配電システム。
【請求項4】
前記第3の切断時間は前記第1の切断時間と等しい請求項3に記載の配電システム。
【請求項5】
前記第2のバッテリーパックは少なくとも第2の負荷に接続され、第3の電気部品が、前記第2のバッテリーパックと前記第2の負荷との間に電気的に接続され、第3の閾値電流を上回る電流に応答して前記第2の負荷を前記第2のバッテリーパックから切断するように構成され、前記第3の電気部品は前記第3の閾値電流において第3の切断時間を有し、第4の電気部品が、前記第1のバッテリーパックと前記共通バスとの間に電気的に接続され、第4の閾値電流を上回る電流に応答して前記第2のバッテリーパックを前記共通バスから切断するように構成され、前記第4の電気部品は、前記第4の閾値電流において前記第3の切断時間よりも長い第4の切断時間を有する、先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項6】
前記第1の電気部品及び前記第2の電気部品のうちの少なくとも一方はヒューズである先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項7】
前記ヒューズは、爆発性ヒューズ、温度ヒューズ、または磁気ヒューズである請求項6に記載の配電システム。
【請求項8】
前記共通バスは、前記第1バッテリーパック及び前記第2のバッテリーパックの正極端子を接続する先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項9】
前記第1のバッテリーパックから前記第1の負荷まで、及び前記第1のバッテリーパックから前記共通バスまでの電気回路には何らダイオードが無い、先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項10】
前記第1の負荷は電気推進ユニットである先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項11】
前記電気推進ユニットはプロペラを含む請求項10に記載の配電システム。
【請求項12】
前記第1のバッテリーパックは、直列、並列、または直列及び並列の組み合わせに配置された複数のバッテリーを含む、先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項13】
前記第1のバッテリーパックは、100ボルト超を生成するように構成されている先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項14】
前記第1の負荷の電力は少なくとも10キロワットである先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項15】
前記第1のバッテリーパックを前記第1の負荷または前記共通バスから選択的に切断するための第3の電気部品を含む先行請求項のいずれか1項に記載の配電システム。
【請求項16】
前記第3の電気部品は、前記第1のバッテリーパックと前記第1の電気部品または前記第2の電気部品との間に電気的に配置される請求項15に記載の配電システム。
【請求項17】
前記請求項1に記載の配電システムを含む電気航空機。
【請求項18】
前記航空機は有人である請求項17に記載の航空機。
【請求項19】
前記航空機は垂直離着陸機である請求項17または請求項18に記載の航空機。
【請求項20】
電気航空機において電力を分配するための方法であって、第1のバッテリーパックから第1の負荷に電力を供給することを含み、前記第1のバッテリーパックは、前記第1のバッテリーパックを少なくとも第2のバッテリーパックに並列に接続する共通バスに接続され、第1の電気部品が、前記第1のバッテリーパックと前記第1の負荷との間に電気的に接続され、第1の閾値を上回る電流に応答して前記第1の負荷を前記第1のバッテリーパックから切断するように構成され、第2の電気部品が、前記第1のバッテリーパックと前記共通バスとの間に電気的に接続され、第2の閾値を上回る電流に応答して前記第1のバッテリーパックを前記共通バスから切断するように構成され、前記第2の閾値は前記第1の閾値よりも高い、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、米国出願第17/115,119号(2020年12月8日に出願)に対する優先権及びその利益を主張する。なおこの文献の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本発明の分野は全般的に、電気航空機に関し、より具体的には、電気航空機のための配電に関する。
【背景技術】
【0003】
バッテリー技術における進歩により、軽量の電気航空機への電力供給に適したバッテリー電力密度が可能になった。電気航空機、特に旅客機用の電力システムは、安全であると同時に軽量かつ効率的の両方である必要がある。安全性への配慮は、しばしば軽量化及び高効率の目標と対立する可能性がある。たとえば、従来の配電システムでは、単一障害点が存在しないことを保証するために、配電システム内に複数のバッテリーパック及び冗長性を用いることが多いが、この冗長性によって非効率が増し、重量が加わる。安全性と航空機の重量及び効率の懸念とのバランスを取ると、電気航空機のデザインに対して課題が生じる。
【発明の概要】
【0004】
種々の実施形態によれば、電気航空機用の配電システムは、第1のバッテリーパックを含み、第1のバッテリーパックは、負荷に電力供給するために負荷に接続され、第2のバッテリーパックと負荷を共有するために共通バスを介して第2のバッテリーパックに接続されている。ヒューズなどの第1の電気切断装置が、第1のバッテリーパックと負荷との間に電気的に配置され、第2の電気切断装置が、第1のバッテリーパックと共通バスとの間に電気的に配置される。第1の電気切断装置は、その定格電流における開放時間が第2の電気切断装置よりも短いことなどにより、第2の電気切断装置よりも速く動作する。第1のバッテリーパックから第1の負荷までの電気回路において過電流障害事象が起きた場合、第1の切断装置は第1のバッテリーパックと負荷との間の接続を切断するが、第2の切断装置は、そのより遅い動作構成などに起因して切断しない。こうして、第1のバッテリーを、負荷における障害またはバッテリーと負荷との間の分配における障害から保護できる一方で、その電力を第2のバッテリーパックと共有し続けることができる。共通バス上で過電流障害事象が起きた場合、第2の切断装置は、第1のバッテリーパックを共通バスから切断することによって第1のバッテリーパックを保護して、第1のバッテリーパックが負荷に電力を供給し続けられるようにする。共通バスに電気切断装置を設けることによって、共通バスが単一障害点にならないことを保証しながら、電力をバッテリー間で共有することができる。
【0005】
種々の実施形態によれば、電気航空機用の配電システムは、少なくとも第1の負荷と、第1のバッテリーパックを少なくとも第2のバッテリーパックに並列に接続する共通バスとに接続された第1のバッテリーパックと、第1のバッテリーパックと第1の負荷との間に電気的に接続され、第1の閾値電流を上回る電流に応答して第1の負荷を第1のバッテリーパックから切断するように構成された第1の電気部品であって、第1の閾値電流において第1の切断時間を有する第1の電気部品と、第1のバッテリーパックと共通バスとの間に電気的に接続され、第2の閾値電流を上回る電流に応答して第1のバッテリーパックを共通バスから切断するように構成された第2の電気部品であって、第2の閾値電流において第1の切断時間よりも長い第2の切断時間を有する第2の電気部品と、を含む。
【0006】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の閾値電流は第2の閾値電流より小さくてもよい。
【0007】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックを第2の負荷に電気的に接続してもよく、第3の電気部品は、第1のバッテリーパックと第2の負荷との間に電気的に接続して、第3の閾値電流において第3の切断時間を有していてもよく、第3の切断時間は第2の切断時間より短くてもよい。
【0008】
これらの実施形態のいずれにおいても、第3の切断時間は第1の切断時間と等しくてもよい。
【0009】
これらの実施形態のいずれにおいても、第2のバッテリーパックを少なくとも第2の負荷に接続してもよく、第3の電気部品を、第2のバッテリーパックと第2の負荷との間に電気的に接続して、第3の閾値電流を上回る電流に応答して第2の負荷を第2のバッテリーパックから切断するように構成してもよく、第3の電気部品は第3の閾値電流において第3の切断時間を有していてもよく、第4の電気部品を、第1のバッテリーパックと共通バスとの間に電気的に接続して、第4の閾値電流を上回る電流に応答して第2のバッテリーパックを共通バスから切断するように構成してもよく、第4の電気部品は、第4の閾値電流において第3の切断時間よりも長い第4の切断時間を有していてもよい。
【0010】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の電気部品及び第2の電気部品のうちの少なくとも一方はヒューズであってもよい。
【0011】
これらの実施形態のいずれにおいても、ヒューズは、爆発性ヒューズ、温度ヒューズ、または磁気ヒューズであってもよい。
【0012】
これらの実施形態のいずれにおいても、共通バスは、第1及び第2のバッテリーパックの正極端子を接続してもよい。
【0013】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックから第1の負荷まで、及び第1のバッテリーパックから共通バスまでの電気回路には何らダイオードが無くてもよい。
【0014】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の負荷は電気推進ユニットであってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、電気推進ユニットはプロペラを含んでいてもよい。
【0015】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックは、直列、並列、または直列及び並列の組み合わせに配置された複数のバッテリーを含んでいてもよい。
【0016】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックは、100ボルト超を生成するように構成してもよい。
【0017】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の負荷の電力は少なくとも10キロワットであってもよい。
【0018】
これらの実施形態のいずれにおいても、システムは、第1のバッテリーパックを第1の負荷または共通バスから選択的に切断するための第3の電気部品を含んでいてもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、第3の電気部品を、第1のバッテリーパックと第1の電気部品または第2の電気部品との間に電気的に配置することができる。
【0019】
種々の実施形態によれば、電気航空機が前述の配電システムを含むことができる。これらの実施形態のいずれにおいても、航空機は有人であってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、航空機は垂直離着陸機であってもよい。
【0020】
種々の実施形態によれば、電気航空機において電力を分配するための方法であって、第1のバッテリーパックから第1の負荷に電力を供給することを含み、第1のバッテリーパックは、第1のバッテリーパックを少なくとも第2のバッテリーパックに並列に接続する共通バスに接続され、第1の電気部品が、第1のバッテリーパックと第1の負荷との間に電気的に接続され、第1の閾値を上回る電流に応答して第1の負荷を第1のバッテリーパックから切断するように構成され、第2の電気部品が、第1のバッテリーパックと共通バスとの間に電気的に接続され、第2の閾値を上回る電流に応答して第1のバッテリーパックを共通バスから切断するように構成され、第2の閾値は第1の閾値よりも高い。
【0021】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の閾値電流は第2の閾値電流より小さくてもよい。
【0022】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックを第2の負荷に電気的に接続してもよく、第3の電気部品は、第1のバッテリーパックと第2の負荷との間に電気的に接続して、第3の閾値電流において第3の切断時間を有していてもよく、第3の切断時間は第2の切断時間より短くてもよい。
【0023】
これらの実施形態のいずれにおいても、第3の切断時間は第1の切断時間と等しくてもよい。
【0024】
これらの実施形態のいずれにおいても、第2のバッテリーパックを少なくとも第2の負荷に接続してもよく、第3の電気部品を、第2のバッテリーパックと第2の負荷との間に電気的に接続して、第3の閾値電流を上回る電流に応答して第2の負荷を第2のバッテリーパックから切断するように構成してもよく、第3の電気部品は第3の閾値電流において第3の切断時間を有していてもよく、第4の電気部品を、第1のバッテリーパックと共通バスとの間に電気的に接続して、第4の閾値電流を上回る電流に応答して第2のバッテリーパックを共通バスから切断するように構成してもよく、第4の電気部品は、第4の閾値電流において第3の切断時間よりも長い第4の切断時間を有していてもよい。
【0025】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の電気部品及び第2の電気部品のうちの少なくとも一方はヒューズであってもよい。
【0026】
これらの実施形態のいずれにおいても、ヒューズは、爆発性ヒューズ、温度ヒューズ、または磁気ヒューズであってもよい。
【0027】
これらの実施形態のいずれにおいても、共通バスは、第1及び第2のバッテリーパックの正極端子を接続してもよい。
【0028】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックから第1の負荷まで、及び第1のバッテリーパックから共通バスまでの電気回路には何らダイオードが無くてもよい。
【0029】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の負荷は電気推進ユニットであってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、電気推進ユニットはプロペラを含んでいてもよい。
【0030】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックは、直列、並列、または直列及び並列の組み合わせに配置された複数のバッテリーを含んでいてもよい。
【0031】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1のバッテリーパックは、100ボルト超を生成するように構成してもよい。
【0032】
これらの実施形態のいずれにおいても、第1の負荷の電力は少なくとも10キロワットであってもよい。
【0033】
これらの実施形態のいずれにおいても、本方法はさらに、第1のバッテリーパックを第1の負荷または共通バスから選択的に切断する第3の電気部品を含んでいてもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、第3の電気部品を、第1のバッテリーパックと第1の電気部品または第2の電気部品との間に電気的に配置することができる。
【0034】
種々の実施形態によれば、本方法を電気航空機によって行ってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、航空機は有人であってもよい。これらの実施形態のいずれにおいても、航空機は垂直離着陸機であってもよい。
【0035】
次に本発明を、添付図面を参照して、単に一例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1A】種々の実施形態による、前方飛行構成にあるVTOL航空機を示す図である。
【
図1B】種々の実施形態による、離着陸構成にあるVTOL航空機を示す図である。
【
図2A】種々の実施形態による、複数のバッテリーパックが共通バスに着脱可能に接続された航空機の電気推進ユニットに電力供給するための配電アーキテクチャを例示する図である。
【
図2B】種々の実施形態による、複数のバッテリーパックが共通バスに着脱可能に接続された航空機の電気推進ユニットに電力供給するための配電アーキテクチャを例示する図である。
【
図2C】種々の実施形態による、2組のバッテリーパックが2つの共通バスに着脱可能に接続された航空機の電気推進ユニットに電力供給するための配電アーキテクチャを例示する図である。
【
図3】種々の実施形態による、2つのバッテリーパックを互いに、及び対応する電気推進ユニット対に接続する回路網のブロック図である。
【
図4】種々の実施形態による、2つのバッテリーパックを互いに、及び対応する電気推進ユニット対に接続し、随意の接触器を含む回路網のブロック図である。
【
図5】種々の実施形態による、2つのバッテリーパックを互いに、及び対応する電気推進ユニット対に接続し、随意の接触器及び随意の充電回路網を含む種々の回路網のブロック図である。
【
図6】種々の実施形態による、2つのバッテリーパックを互いに、及び対応する電気推進ユニット対に接続し、随意の接触器及び随意の充電回路網を含む種々の回路網のブロック図である。
【
図7】種々の実施形態による、2つのバッテリーパックを互いに、及び対応する電気推進ユニット対に接続し、随意の接触器及び随意の充電回路網を含む種々の回路網のブロック図である。
【
図8】種々の実施形態による、2つのバッテリーパックを互いに、及び対応する電気推進ユニット対に接続し、随意の接触器及び随意の充電回路網を含む種々の回路網のブロック図である。
【
図9】種々の実施形態による、2つの部分モータを含む電気推進ユニットへの配電の一部のブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
種々の実施形態によれば、電気航空機における配電のためのシステム及び方法は、それぞれが異なる配電バスを用いて負荷の異なる部分に接続された複数のバッテリーパックを用いて航空機の複数の負荷に電力供給することを含む。たとえば、第1のバッテリーパックは、第1の配電バスを用いて負荷の第1の部分に接続され、第2のバッテリーパックは、第2の配電バスを用いて負荷の第2の部分に接続される。バッテリーパックの少なくとも一部は、共通バスを介して互いに電気的に接続され、その結果、接続されたバッテリーパック間で負荷を共有することができる。バッテリーからその接続された負荷までの回路における過電流障害事象からバッテリーを保護するために、ヒューズなどの第1の電気切断装置が、バッテリーとその接続された負荷との間に電気的に配置される。共通バスに関わる過電流障害事象からバッテリーを保護するために、第2の電気切断装置がバッテリーと共通バスとの間に電気的に配置される。第1の電気切断装置は第2の切断装置よりも速く動作するため、負荷における過電流事象によってバッテリーが共通バスから切断されることはなく、バッテリーが1つ以上のさらなるバッテリーと相互接続され続けられることが保証される。バッテリーを相互接続することで負荷を共有できるため、バッテリーの小型化、したがって軽量化というデザイン上の利点が得られ、一方で、電気切断装置を組み合わせることによって、単一障害点が存在しないことが保証される。種々の実施形態によれば、これは、ダイオードを使用せずに、及び/または冗長バスを使用せずに達成できるため、軽量化が得られる。
【0038】
種々の実施形態によれば、複数の負荷は電気推進ユニット(EPU)を含む。種々の実施形態によれば、EPUは、垂直離着陸中及びホバリング中などに航空機に揚力を与えるように構成され、巡航中に作動停止させることができるロータと、航空機に揚力を与え、前方飛行のために前方に傾いて航空機に前方推力を与えることができるプロップローターとを含む。揚力は、航空機の1つ以上の翼によって与えられる。種々の実施形態によれば、各バッテリーパックは1つのEPUに電力供給する。種々の実施形態によれば、各バッテリーパックは複数のEPUに電力供給する。種々の実施形態によれば、各バッテリーパックは、少なくとも1つのロータの少なくとも一部及び少なくとも1つのプロップローターの少なくとも一部に電力供給するため、前方飛行中にバッテリーパックまたはその配電バスが使用不能になった場合に、少なくとも1つのプロップローターの少なくとも一部からの出力のみが失われる。失われたバッテリーパックによって電力供給されていた他のEPU(複数可)(ロータ(複数可))は前方出力には寄与しないため、それらが失われても前方飛行には影響しない。残りのプロップローター部分(他のバッテリーパックによって電力供給される部分)は、操縦翼面の調整及び/または失われたプロップローター部分を補う残りのプロップローター部分からの出力の調整によって、動作を続けることができる。こうして、前方飛行に対するバッテリーパックの損失の影響を最小限に抑えることができる一方で、それでもダイオード及び/または冗長な配電バスに付随する重量の増加を伴わずに耐障害性が得られる。種々の実施形態によれば、各バッテリーパックは、(ロータの一部に加えて)1つのプロップローターに相当する電力を供給するので、バッテリーパックの損失に起因する前方飛行に対する前方出力損失は、1つのプロップローターからの出力に相当するのみである。
【0039】
種々の実施形態によれば、単一の共通バスが、EPUに電力供給するすべてのバッテリーパックを相互接続する。種々の実施形態によれば、第1の組のバッテリーパックが第1の共通バスを介して相互接続され、第2の組のバッテリーパックが第2の共通バスを介して相互接続される。種々の実施形態によれば、第1の組のバッテリーパックは、第2の組のバッテリーパックとタイプ及び/または数が異なる。種々の実施形態によれば、第1の組のバッテリーパックはロータに電力供給し、第2の組のバッテリーパックはプロップローターに電力供給する。
【0040】
種々の実施形態によれば、航空機は電動垂直離着陸(VTOLまたはeVTOL)航空機である。これは、垂直方向に離着陸して、ホバリングすることができ、滑走路を必要とする航空機を用いた場合よりも旅行者をその目的地近くまで運ぶ能力がある。種々の実施形態によれば、航空機は固定翼eVTOLである。
【0041】
種々の実施形態によれば、所与のバッテリーパックによって駆動されるEPUを、バッテリーパックに障害が生じた場合にEPUへの電力損失によって生じる不安定化の影響を減らすように選択する。EPUの集合の1つ以上の対称軸の両端に配置されるEPUに、同じバッテリーパックによって電力供給して、バッテリーパックによって駆動されるEPUへの電力損失によって生じ得るロール、ピッチ、またはヨーモーメントを減らすことができる。たとえば、航空機の長手軸の両端の同じ相対位置にあるEPUを、第1のバッテリーパックによって駆動してもよく、そのため、バッテリーパックのうちの1つに障害が生じた場合でも、残りのEPUが与える推力は依然として長手軸に関して一様であるため、生じるロールモーメントは最小である。同様に、いくつかの実施形態では、EPUを翼の組の前方及び後方に配置して、翼の両側及び長手軸の両端のEPUに同じバッテリーパックによって電力供給してもよい。
【0042】
種々の実施形態によれば、バッテリーパックによって電力供給されるEPUの部分は、単一のEPUモータの一部を含むことができ、EPUモータの一部が第1のバッテリーパックによって電力供給され、EPUモータの他の部分が第2のバッテリーパックによって電力供給される。たとえば、EPUは、航空機に推力を与えるために複数のブレードを駆動するために通常動作中に同時に動作することができる2つのハーフモータを含んでいてもよく、ハーフモータの一方があるバッテリーパックによって駆動され、他方のハーフモータが別のバッテリーパックによって駆動される。バッテリーパックの1つに障害が生じた場合でも、EPUは依然として半分の出力で動作する。所与のバッテリーパックは、異なるEPUの部分モータに電力供給することができるため、バッテリーパックの損失の影響は、低減された出力で動作し続ける複数のEPU間で共有される。
【0043】
本開示及び実施形態の以下の説明では、添付図面を参照する。添付図面では、実例として、実施可能な特定の実施形態を示す。本開示の範囲から逸脱することなく、他の実施形態及び例を実施することができ、変更が行えることを理解されたい。
【0044】
加えて、以下の説明で用いる単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別の意味が示される場合を除き、複数形も含むことが意図されることも理解されたい。また、用語「及び/または」は、本明細書で用いる場合、関連付けられた列挙される物品のうちの1つ以上のありとあらゆる可能な組み合わせを指し、包含することも理解されたい。さらに、用語「含む(includes)」、「含む(including)」、「含む(comprises)」、及び/または「含む(comprising)」は、本明細書で用いる場合、述べた特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/またはユニットの存在を明示するが、1つ以上の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、コンポーネント、ユニット、及び/またはそのグループの存在または追加を排除しないことも理解されたい。
【0045】
本明細書で用いる場合、用語「プロップローター」は、プロペラのピッチを変えることによって垂直揚力及び前方推進に対する推力を与えることができる可変ピッチプロペラを指す。
【0046】
本明細書で用いる場合、用語「バッテリーパック」は、電気的に接続されたバッテリー(すなわち、バッテリーセル)の任意の組み合わせを意味し、直列、並列、または直列及び並列の組み合わせに配置された複数のバッテリーを含むことができる。
【0047】
図1A及び1Bに、種々の実施形態による、巡航構成及び垂直離着陸構成のVTOL航空機100をそれぞれ例示する。種々の実施形態によるVTOL航空機の典型的な実施形態は、米国特許出願第16/878,380号、発明の名称「Vertical Take-Off and Landing Aircraft」(2020年5月19日に出願)に記載されている。なおこの文献の全体の内容は参照により本明細書に組み込まれている。
【0048】
航空機100は、胴体102、胴体102に取り付けられた翼104、及び胴体102の後部に取り付けられた1つ以上の後部安定装置106を含む。航空機100は、複数のロータ112及び複数のプロップローター114(本明細書では集合的にEPUと言う)を含む。EPU(112、114)は全般的に、ファン(複数のブレード)を駆動する電動モータと、モータを制御またはモータに電力供給するためのモータコントローラとを含む。
図4に関して以下でさらに述べるように、EPUは、独立して一緒にファンを駆動することができ、複数の別個のモータコントローラによって制御することができる複数の部分モータを含むことができる。
【0049】
ロータ112は翼104に取り付けられて、垂直離着陸に対する揚力を与えるように構成されている。プロップローター114は、翼104に取り付けられ、
図1Bに示すような垂直離着陸及びホバリングに必要な揚力の一部を与える揚力構成と、
図1Aに示すような水平飛行のために航空機100に前方推力を与える推進構成との間で、傾斜可能である。本明細書で用いる場合、プロップローター揚力構成は、プロップローター推力が航空機に主に揚力を与えている任意のプロップローター方位を指し、プロップローター推進構成は、プロップローター推力が航空機に主に前方推力を与えている任意のプロップローター方位を指す。
【0050】
種々の実施形態によれば、ロータ112は、揚力のみを与えるように構成され、すべての推進力はプロップローターによって与えられる。したがって、ロータ112は固定位置にあってもよい。離着陸中、プロップローター114は、さらなる揚力を与えるためにその推力が下方に向けられる揚力構成に傾けられる。
【0051】
前方飛行に対して、プロップローター114は、その揚力構成からその推進構成に傾く。言い換えれば、プロップローター114のピッチは、垂直離着陸中及びホバリング中に揚力を与えるためにプロップローター推力が下方に向けられるピッチから、航空機100に前方推力を与えるためにプロップローター推力が後方に向けられるピッチに変更される。プロップローターは、航空機100の前方方向に垂直な軸線118の周りに傾き。航空機100が完全な前方飛行であるとき、揚力を翼104によって完全に与えて、ロータ112を停止してもよい。ロータ112のブレード120を、航空機の巡航に対する低抗力位置にロックしてもよい。いくつかの実施形態では、ロータ112はそれぞれ、
図1Aに例示するように一方のブレードが他方のブレードのすぐ正面にある最小抗力位置で巡航するようにロックされた2つのブレード120を有する。いくつかの実施形態では、ロータ112は、2つを超えるブレードを有する。いくつかの実施形態では、プロップローター114は、ロータ112よりも多いブレード116を有する。たとえば、
図1A及び1Bに例示するように、ロータ112はそれぞれ、2つのブレードを含んでいてもよく、プロップローター114はそれぞれ、5つのブレードを含んでいてもよい。種々の実施形態によれば、プロップローター114は2~5のブレードを有することができる。
【0052】
種々の実施形態によれば、航空機は、胴体102の各側にただ1つの翼104(または航空機全体にわたって延びる単一の翼)を含み、ロータ112の少なくとも一部は翼104の後方に配置され、プロップローター114の少なくとも一部は翼104の前方に配置される。いくつかの実施形態では、ロータ112はすべて、翼104の後方に配置され、プロップローターはすべて、翼104の前方に配置される。いくつかの実施形態によれば、すべてのロータ112及びプロップローター114は翼に取り付けられる。すなわち、胴体に取り付けられるロータもプロップローターもない。種々の実施形態によれば、ロータ112はすべて、翼104の後方に配置され、プロップローター114はすべて、翼104の前方に配置される。いくつかの実施形態によれば、すべてのロータ112及びプロップローター114は翼端109の内側に配置される。
【0053】
種々の実施形態によれば、ロータ112及びプロップローター114は、ブーム122によって翼104に取り付けられる。ブーム122は、翼104の真下、翼の上に取り付けてもよく、及び/または翼形内に組み込んでもよい。種々の実施形態によれば、1つのロータ112及び1つのプロップローター114が各ブーム122に取り付けられる。ロータ112をブーム122の後端部に取り付けてもよく、プロップローター114をブーム122の前端部に取り付けてもよい。いくつかの実施形態では、ロータ112はブーム122上の固定位置に取り付けられる。いくつかの実施形態では、プロップローター114は、ヒンジ124を介してブーム122の前端部に取り付けられる。プロップローター114のブーム122への取り付けを、その推進構成にあるときにプロップローター114がブーム122の本体と位置合わせされて、前方飛行に対する抗力を最小限にするブーム122の前端部の連続的な延長部分を形成するように行ってもよい。
【0054】
種々の実施形態によれば、航空機100は、航空機100の各側にただ1つの翼、または航空機にわたって延びる単一の翼を含んでいてもよい。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの翼104は、胴体102の上側に取り付けられた高翼である。いくつかの実施形態によれば、翼は、フラップ及び/またはエルロンなどの操縦翼面を含む。いくつかの実施形態によれば、翼は、前方飛行中の抗力を減らすために湾曲した翼端109を有することができる。
【0055】
いくつかの実施形態によれば、後部安定装置106は、1つ以上の舵、1つ以上のエレベータ、及び/または1つ以上の複合舵エレベータなどの操縦翼面を含む。翼(複数可)は任意の好適なデザインを有していてもよい。いくつかの実施形態では、翼は、たとえば
図1Aの実施形態に示すように、テーパのついた前縁123を有していてもよい。いくつかの実施形態では、翼は、テーパのついた後縁を有する。
【0056】
図2Aに、種々の実施形態による、航空機100のEPU(112、114)に電力供給するための配電アーキテクチャを例示する。
図1A~2Aでは、種々の実施形態による航空機の翼104に取り付けられた12のEPUS(
図2Aでは番号1~12)を例示しているが、4、6、8、10、14、18、20、またはそれ以上を含む任意の好適な数のEPUを有することができる。EPUは、複数のバッテリーパック200によって電力供給される。
図2Aに例示した実施形態では、6つのバッテリーパック200があり、番号1~6が付けられている。各バッテリーパック200は、EPUの一部のみに電力供給する。例示した実施形態では、各バッテリーパック200は2つのEPUに電力供給する。
図2Aに例示する実施形態によるバッテリーパック及びEPUのグループ化を、
図2Bに列挙する。バッテリーパック1はEPU1及び12に電力供給し、バッテリーパック2はEPU2及び11に電力供給する等。各バッテリーパック200は、EPUのその対応する部分に、専用の配電バス、たとえば、バッテリーパック1をEPU1及びEPU12に接続するバス202、及びバッテリーパック2をEPU2及びEPU11に接続するバス204を介して接続される。したがって、1つのバッテリーパック1の配電バス202は、バッテリーパック2の配電バス204に電気的に接続されていない。
【0057】
種々の実施形態によれば、バッテリーパック200は、バッテリーパック200がそれぞれ着脱可能に接続される共通バス206を介して相互接続される。共通バス206を通して、バッテリーパックは負荷を共有することができ、これにより、所与のバッテリーパックの必要な最大電力が減る。最大電力要件が減ることは、バッテリーの小型化を意味することができ、軽量化が実現され、及び/またはバッテリーがより低電力で高エネルギーのセルを用いることで、航続距離が増すことを意味する。以下でさらに説明するように、ヒューズなどの電気切断装置が、各バッテリーパックと共通バスとの間に設けられているため、共通バスに関わる過電流障害が生じた場合に、バッテリーパックは電気切断装置によって共通バスから引き離されることによって保護され、それらが直接接続されているEPUに電力を供給し続けることができる。また、種々の実施形態によれば、1つバッテリーパックまたはその配電において電気的障害が生じても、他のEPU及びバッテリーパックの動作の障害は引き起こさない。障害が発生したバッテリーパックまたは配電によって電力供給されているEPUのみが影響を受ける。したがって、航空機の電力供給において単一障害点はない。
【0058】
種々の実施形態によれば、所与のバッテリーパックによって電力供給される特定のEPUを、バッテリーパックに障害が生じた場合にEPUへの電力損失によって生じる不安定化の影響を減らすように選択してもよい。種々の実施形態によれば、EPUの集合の1つ以上の対称軸の両端に配置されるEPUに、同じバッテリーパックによって電力供給して、バッテリーパックによって駆動されるEPUへの電力損失によって生じ得るロール、ピッチ、またはヨーモーメントを減らすことができる。たとえば、航空機100の長手軸280の両端の同じ相対位置にあるEPUを、第1のバッテリーパックによって駆動してもよく、そのため、バッテリーパックのうちの1つに障害が生じた場合でも、残りのEPUが与える推力は長手軸に関して一様なままであるため、生じるロールモーメントは最小である。同様に、いくつかの実施形態では、EPUの組を一対の翼の前縁の少なくとも部分的に前方に配置し、EPUの組を一対の翼の後縁の少なくとも部分的に後方に配置し、翼の両側及び長手軸の両端のEPU280に同じバッテリーパックによって電力供給して、バッテリーパックに障害が生じた場合(
図2Aに示すような)でも、生じるロール及びピッチモーメントは最小となるようにしてもよい。
【0059】
種々の実施形態によれば、各バッテリーパック200は、少なくとも1つのプロップローター114の少なくとも一部及び少なくとも1つのロータ112の少なくとも一部に電力供給する。
図2Aの実施形態では、両側の位置にあるロータ及びプロップローターは、同じバッテリーパック200によって駆動される。したがって、航空機の胴体102の左側にある最も外側のプロップローター114(
図2AにおけるEPU1)は、胴体102の右側にある最も外側のロータ112(EPU12)と同じバッテリーパック(
図2Aにおけるバッテリーパック1)によって電力供給される。同様に、最も外側のEPUの他の対(
図2AにおけるEPU6及びEPU7)は、同じバッテリーパック(バッテリーパック6)によって電力供給される。グループ化は、正反対の位置にあるEPUに限定する必要はない。たとえば、EPU1は、EPU12ではなくEPU11とグループ化してもよい。
【0060】
所与のバッテリーパックによって電力供給されるEPUの数は、2つより大きくすることができる。たとえば、いくつかの実施形態では、バッテリーパック当たりのEPUの数は、EPUの総数の3、4、5、6、または他の任意の好適な部分とすることができる。種々の実施形態によれば、各グループ内に異なる数のEPUが存在することができる。たとえば、あるグループは2つのEPU(バッテリーパックによって駆動される2つのEPU)を有することができ、一方で、他のグループは4つのEPU(異なるバッテリーパックによって駆動される4つのEPU)を有することができる。バッテリーパックの数はわずか2つとすることができる。種々の実施形態では、バッテリーパックの数は、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、またはそれ以上である。
【0061】
図2Cに、バッテリーパックが互いに分離された組に配置されている実施形態を例示する。バッテリーパックの第1の組230(例示した実施形態ではバッテリーパック1~6)は、第1の共通バス232を介して相互接続され、バッテリーパックの第2の組234(例示した実施形態ではバッテリーパック7~12)は、第2の共通バス236を介して相互接続される。第1及び第2の共通バス232及び236は互いに電気絶縁されており、バッテリーパックの第1の組230とバッテリーパックの第2の組234との間に電気接続はない。
【0062】
種々の実施形態によれば、バッテリーパックの第1の組230の各バッテリーパックはプロップローター114に電力供給し、バッテリーパックの第2の組234の各バッテリーパックはロータ112に電力供給する。いくつかの実施形態によれば、プロップローター114及びロータ112の電力要件(たとえば、ピーク電力及び/または飛行中の電力)は異なっていてもよく、第1及び第2の組のバッテリーパックは、プロップローター114及びロータ112の電力需要の差に基づいて、異なるタイプ及び/またはサイズであってもよい。たとえば、いくつかの実施形態では、プロップローター114を垂直飛行及び水平飛行中に用いてもよく、一方で、ロータ112を垂直飛行中にのみ用いてもよい。したがって、飛行中にプロップローター114によって要求される総電力は、飛行中にロータ112によって要求される総電力より大きい場合があり、この差に対応するために、第1の組230のバッテリーパックを第2の組234のバッテリーパックより大きくすることができる。
【0063】
図3は、電気航空機の配電システム300の少なくとも一部のブロック図である。2つのバッテリーパック300及び350を示しており、各バッテリーパックは2つの負荷に接続されるように構成されている。しかし、例示した実施形態は単なる典型であり、任意の数のバッテリーパックを用いてもよいこと、前述したような任意の数のEPU及び/またはEPUの任意の数の部分などの任意の数の負荷に接続できることを、理解されたい。例示した実施形態では、バッテリーパック300は一対のEPU302、304に電気的に接続されている。EPU302は、たとえば
図2AのEPU1とすることができ、EPU304は、たとえば
図2AのEPU12とすることができる。バッテリーパック300は、配電バス306を介してEPU302、304に接続される。第1の負荷電気切断装置308を第1のバッテリーパック300とEPU302との間に電気的に配置して、EPU302または電気切断装置308の下流の配電バス306の一部に関連する過電流障害事象(たとえば、接地故障)が起きた場合に、第1のバッテリーパック300をEPU302から切断してもよい。第2の負荷電気切断装置310を第1のバッテリーパック300とEPU304との間に電気的に配置して、EPU304または電気切断装置310の下流の配電バス306の一部に関連する過電流障害事象が起きた場合に、第1のバッテリーパック300をEPU304から切断してもよい。
【0064】
第1のバッテリーパック300は共通バス314に電気的に接続され、共通バス314には第2のバッテリーパック350も電気的に接続されている。共通バス314を通して、電力を、第1及び第2のバッテリーパック300及び350(ならびに共通バス314に接続され得る任意の他のバッテリーパック)間で共有することができる。これにより、たとえば、第1及び第2のバッテリーパック300、350の両方からEPU302及び/またはEPU304に、電力を供給することができ得る。
【0065】
第1の共通バス電気切断装置312が、第1のバッテリーパック300と共通バス314との間に電気的に配置され、過電流障害事象が起きた場合に、第1のバッテリーパック300を共通バス314から切断する。これにより、第1のバッテリーパック300を、共通バス314に関連する過電流障害事象(たとえば、共通バス314に関わる接地故障、または共通バス314に接続されたバッテリーパックに関わる障害である可能性がある)から保護することができる。また第1の共通バス切断装置312は、バッテリーパック300自体に関わる過電流障害事象から共通バス314を保護することもできる。
【0066】
種々の実施形態によれば、第1の共通バス電気切断装置312は、第1及び第2の負荷電気切断装置308及び310よりも動作が遅い。たとえば、いくつかの実施形態では、共通バス電気切断装置312は、その定格電流閾値において、第1及び第2の負荷電気切断装置308及び310のそれぞれよりも遅い切断時間(当該技術分野では開放時間またはクリア時間とも言う)を有し得る。切断時間が異なるため、配電バス306、EPU302、及び/またはEPU304上で過電流障害が生じて、第1及び/または第2の切断装置308、310においてその定格電流を上回る電流スパイク、及び共通バス電気切断装置312においてその定格電流を上回る電流スパイクが生じると、第1及び/または第2の負荷電気切断装置308及び310はバッテリーパック300を保護するが、バッテリーパック300は共通バス314に接続されたままである。なぜならば、第1の共通バス電気切断装置312は、第1及び/または第2の負荷電気切断装置308及び310よりも動作が遅いため、切断されていないからである。いくつかの実施形態では、負荷切断装置308、310の一方または両方は、切断閾値電流が共通バス切断装置312よりも低い。たとえば、1つ以上の負荷切断装置は、300アンペアの切断閾値で、その切断閾値電流において140msの切断時間であり得るが、共通バスヒューズは、500アンペアの切断閾値で、その切断閾値電流において360msの切断時間であり得る。いくつかの実施形態では、負荷切断装置は、共通バス切断装置312と同じ切断閾値を有する。たとえば、負荷及び共通バス切断装置は500アンペアの切断閾値を有することができ、負荷切断装置は閾値電流において140msの切断時間を有し、共通バス切断装置は閾値電流において300msの切断時間を有する。
【0067】
種々の実施形態によれば、第2のバッテリーパック350を、配電バス356を介してEPU352及び354に接続することができる。第3及び第4の負荷電気切断装置358及び360を、第2のバッテリーパック350とEPU352及び354との間に電気的に配置して、第1のバッテリーパック300とEPU302及び304とに関して前述したように、過電流障害中であっても第2のバッテリーパックをEPUから切断してもよい。第2の共通バス電気切断装置362を、第2のバッテリーパック350と共通バス314との間に電気的に配置することができる。第2の共通バス電気切断装置362は、第1の共通バス切断装置312と第1及び第2の負荷電気切断装置308及び310とに関して前述したように、第3及び第4の負荷電気切断装置358及び360のそれぞれよりも動作を遅くすることができる。
【0068】
種々の実施形態によれば、各バッテリーパックを共通バス314から切断することができる共通バス電気切断装置312及び362は、同じ切断電流閾値及び/またはその切断電流閾値において同じ切断時間を有する。いくつかの実施形態では、第1の共通バス電気切断装置312は、第2の共通バス電気切断装置362とは異なる切断閾値及び/または開放時間を有する。いくつかの実施形態では、負荷電気切断装置308及び310の切断電流閾値及び/または開放時間は、たとえばEPU302及び304の負荷要求が異なるために、互いに異なる。いくつかの実施形態では、負荷電気切断装置308及び310の一方または両方の切断電流閾値及び/または開放時間は、負荷電気切断装置358及び360の一方または両方の切断電流閾値及び/または開放時間と同じである。
【0069】
電気切断装置308、310、312、358、360、及び362のそれぞれは、過電流障害事象が起きた場合に回路を遮断するための任意の好適な電気部品とすることができる。たとえば、電気切断装置のうちの1つ以上は、電流検出器に動作可能に結合されたヒューズ、ブレーカー、またはスイッチである。いくつかの実施形態によれば、電気切断装置308、310、312、358、360のそれぞれはヒューズである。いくつかの実施形態によれば、電気切断装置は、任意の好適なタイプのヒューズ、またはヒューズのタイプの組み合わせとすることができる。たとえば、電気切断装置308、310、312、358、360のうちの1つ以上は、爆発性ヒューズ、温度ヒューズ、または磁気ヒューズである。いくつかの実施形態によれば、共通バス電気切断装置は第1のタイプの電気切断装置であり、負荷電気切断装置は第1のタイプとは異なる第2のタイプの電気切断装置である。たとえば、負荷電気切断装置308及び310は爆発性ヒューズであってもよく、共通バス電気切断装置312は温度ヒューズであってもよい。
【0070】
種々の実施形態によれば、負荷電気切断装置308、310、358、及び360のうちの1つ以上の切断電流閾値は、少なくとも50アンペア、少なくとも100アンペア、少なくとも200アンペア、少なくとも300アンペア、または少なくとも500アンペアである。種々の実施形態によれば、負荷電気切断装置308、310、358、及び360のうちの1つ以上の切断電流閾値は、少なくとも50アンペア、少なくとも100アンペア、少なくとも200アンペア、少なくとも300アンペア、または少なくとも500アンペアである。種々の実施形態によれば、共通バス電気切断装置312、362のうちの1つ以上の切断電流閾値は、少なくとも100アンペア、少なくとも200アンペア、少なくとも300アンペア、少なくとも400アンペア、少なくとも500アンペア、少なくとも600アンペア、または少なくとも1000アンペアである。いくつかの実施形態によれば、共通バス電気切断装置のうちの1つ以上の切断電流閾値は、負荷電気切断装置のうちの1つ以上の切断電流閾値よりも少なくとも10%高い、少なくとも20%高い、少なくとも30%より高い、少なくとも50%高い、少なくとも66%高い、少なくとも75%高い、または少なくとも100%高い。種々の実施形態によれば、負荷及び/または共通バス電気切断装置のうちの1つ以上のその定格電流閾値における開放時間は、1秒以下、500ms以下、400ms以下、300ms以下、200ms以下、100ms以下、50ms以下、または10ms以下である。種々の実施形態によれば、1つ以上の負荷切断装置のその定格閾値電流における開放時間を、共通バス切断装置のその定格閾値電流における開放時間と比べて、少なくとも100倍速い、少なくとも50倍速い、少なくとも10倍速い、少なくとも5倍速い、または少なくとも2倍速い値とすることができる。
【0071】
いくつかの実施形態によれば、バッテリーパック300、350の負極端子320、370は、共通の負バス316に電気的に接続される。いくつかの実施形態によれば、共通バス314は、バッテリーパック300、350の正極端子318、368に電気的に接続される。種々の実施形態によれば、配電システム300には、バッテリー300、350間の充電の流れを制御するダイオードが無い。種々の実施形態によれば、これにより、配電システム300を、ダイオードを含むシステムと比べてより効率的にすることができ、軽量化が得られる。
【0072】
種々の実施形態によれば、配電システム300は、たとえばバッテリー充電中に、及び/または航空機がパワーダウンした後に配電システムを安全モードにするために、配電システム300の1つ以上の部分を選択的に電気的に切断するための1つ以上の接触器を含む。
図4~8に、種々の実施形態による種々の接触器配置を例示する。
図4では、接触器402が、第1のバッテリーパック300と第1及び第2の負荷電気切断装置308、310との間に電気的に配置される。接触器404を、随意に、第1のバッテリーパック300と第1の共通バス電気切断装置312との間に電気的に配置してもよい。接触器406を、随意に、第1のバッテリーパック300と共通の負バス316との間に電気的に配置してもよい。同様の接点配置を、第2のバッテリーパック350に対して用いることができ、簡略にするために別個に説明しない(後述する変形に同じことが適用される)。
【0073】
図5では、接触器502が、第1の負荷電気切断装置308とEPU302との間に電気的に配置され、第2の接触器504が、第2の負荷電気切断装置310とEPU304との間に電気的に配置される。第3の接触器506を、随意に、第1のバッテリーパック300と共通の負バス316との間に電気的に配置してもよい。
図5に、種々の実施形態によるバッテリーパック300及び350を充電するための充電回路550を例示する。充電器ポート552を、充電するために外部充電器を配電システムに接続するために用いることができる。充電器ポート552を、共通バス314及び共通の負バス316に接続してもよい。充電器接触器554及び充電器ヒューズ556を、充電器ポート552と共通バス314との間に配置してもよい。
図6の実施形態は、充電器接触器554の代わりに接触器602を共通バス電気切断装置312とバッテリーパック300との間に設けることを除いて、
図5のものと同様である。
【0074】
図7に、バッテリーパック、負荷、及び充電回路の配置に対する最小数の接触器を有する実施形態を例示する。接触器702が、バッテリーパック300をEPU302、304及び共通バス314の両方から切断するために、バッテリーパック300の正極端子318に配置される。随意の接触器704を、バッテリーパック300の負極端子320に配置することができる。
図8に例示する変形は、充電回路850が共通バス314ではなくバッテリーパック300に直接接続されることを除いて、
図7のものと同様である。充電器ポート852は充電器バス860につながることができる。バッテリーパック300を、バッテリーパック300と充電器バス860との間に電気的に配置された充電器ヒューズ854及び充電器接触器856を用いて、充電器バス860に接続してもよい。
【0075】
いくつかの実施形態では、EPUまたはEPUの少なくとも一部は、異なるバッテリーパックによってそれぞれ独立に電力供給される複数のモータ段を含み、そのため、1つのバッテリーパックに障害が生じた場合でも、EPUの一部のみが電力供給されず、EPUは低減した出力レベルで動作を続けることができる。
図9は、2つの部分モータ902A及び902Bを含むEPU900への配電の一部のブロック図である。EPU900は、
図1Aのロータ112などのロータ、または
図1Aのプロップローター114などのプロップローターとすることができる。2つの部分モータ902A及び902Bは、独立に動作してシャフト906を介してファンブレード904を駆動することができ、同時に動作してより高い出力でファンブレード904を駆動することができる。部分モータ902A及び902Bは、それらの独自のモータコントローラ908A及び908Bによって、それぞれ駆動される。部分モータ902A及びモータコントローラ908Aは、配電バス960を介してバッテリーパック950によって電力供給され、一方で、部分モータ902B及びモータコントローラ908Bは、配電バス962を介してバッテリーパック952によって電力供給される。バッテリーパック950及び952は、共通バス910を介して互いに電気的に接続されている。共通バス910は、前述した原理により、共通バス電気切断装置912及び916を介してバッテリーパック950、952のそれぞれから取り外し可能であり、共通バス910で過電流障害事象が起きた場合に、部分モータ902A、モータコントローラ908A、分配バス960、及びバッテリーパック950は、部分モータ902B、モータコントローラ908B、分配バス962、及びバッテリーパック952から電気的に絶縁される。したがって、共通バス910及び/または第1の部分モータ902Aに影響を及ぼす電気故障は、第2の部分モータ902Bには影響を及ぼさず、逆もまた同様である。したがって、共通バス910及び/またはバッテリーパック950もしくは952のうちの一方に障害が生じた場合でも、EPU900は、出力が低下しているにもかかわらず動作を続けることができる。さらに、前述した原理により、負荷電気切断装置914、918は、対応するバッテリーパック950、952を、関連する部分モータ、モータコントローラ、及び配電バスにおける過電流障害から保護する。
【0076】
種々の実施形態によれば、バッテリーパックは、対向して配置されているEPUの部分モータを駆動することができる。たとえば、
図2Aを見ると、第1のバッテリーパック1は、EPU1の第1の部分モータ、EPU12の第1の部分モータ、EPU6の第1の部分モータ、及びEPU7の第1の部分モータに電力供給することができる。したがって、バッテリーパック1の障害が生じた場合に、飛行機の両側の同じ相対位置にあるロータ及びプロップローターの両方が、その最大の利用可能な電力の少なくとも半分を失うが、それでもなお動作する。
【0077】
EPUに電力供給するためのバッテリーパックを、胴体及び/または翼を含む、航空機の任意の好適な場所に配置することができる。EPUの数及び出力を、所望の性能パラメータ(たとえば、目標ペイロード、対気速度、及び高度)に応じて選択することができる。種々の実施形態によれば、EPUのうちの1つ以上の最大電力定格は、500キロワット以下、好ましくは200キロワット以下、より好ましくは150キロワット以下である。いくつかの実施形態によれば、EPUのうちの1つ以上の最大電力定格は、少なくとも10キロワット、好ましくは少なくとも20キロワット、より好ましくは少なくとも50キロワットである。航空機は、同数のロータ及びプロップローターを有することも、より多数のプロップローターを有することも、またはより多数のロータを有することもできる。
【0078】
種々の実施形態によれば、各バッテリーパックは、最大蓄積エネルギーが少なくとも1キロワット時、または好ましくは少なくとも10キロワット時、及び/または最大蓄積エネルギーが最大で200キロワット時、好ましくは最大で100キロワット時、好ましくは最大で75キロワット時、より好ましくは最大で50キロワット時となるように構成されている。種々の実施形態によれば、バッテリーパックは、その総最大蓄積エネルギーが少なくとも1キロワット時、または好ましくは少なくとも10キロワット時、及び/またはその最大蓄積エネルギーが最大で200キロワット時、好ましくは最大で100キロワット時、好ましくは最大で75キロワット時、またはより好ましくは最大で50キロワット時となるように構成されている。種々の実施形態によれば、満充電時のバッテリーパックの少なくとも一部は、電圧として少なくとも100ボルト、少なくとも500ボルト、または少なくとも1000ボルトをもたらす。種々の実施形態によれば、満充電時のバッテリーパックの少なくとも一部は、最大で2000ボルト、最大で1500ボルト、最大で1000ボルト、または最大で500ボルトをもたらす。いくつかの実施形態によれば、公称最大電圧は500~1000ボルト、好ましくは600~800ボルト、またはより好ましくは650~750ボルトである。
【0079】
種々の実施形態によれば、EPUのサイズは、前述した原理により、バッテリーパック障害に起因するEPUの一部の損失に対応するように取られている。たとえば、2つのEPUを駆動するバッテリーパックにおける障害により2つのEPUが失われた場合、残りのEPU及び関連するバッテリーパックは、EPUが無効になった結果失われた推力を少なくとも部分的に補うさらなる推力を与えるのに十分なサイズであってもよい。
【0080】
前述した原理による航空機は、少なくとも1人、最大で10人、好ましくは最大で6人、より好ましくは最大で4人を運ぶように構成することができる。いくつかの実施形態によれば、航空機は、操縦されるように構成され、操縦制御装置を含む。いくつかの実施形態では、航空機は、何ら機内パイロットなしで、1人以上の乗客の有無にかかわらず自律的に動作するように構成されている。
【0081】
いくつかの実施形態によれば、航空機は、地上最大3,000フィートの高度において最大150マイル/時の巡航速度で75マイルまで最大6人(たとえば、パイロット及び最大で5人の乗客)を運ぶように構成されている。いくつかの実施形態では、航空機は、1人のパイロットと4人の乗客などの5人用に構成されている。種々の実施形態によれば、1回のバッテリー充電での最大航続距離は、25マイル、50マイル、75マイル、100マイル、または200マイルである。
【0082】
種々の実施形態によれば、ロータ112及び/またはプロップローター114は、航空機によって発生する騒音の量を減らすために、比較的低い先端速度を有するように構成されている。いくつかの実施形態では、ローターブレードの先端速度は、ホバリングにおいて約0.4マッハである。種々の実施形態によれば、ロータ及び/またはプロップローターブレードの直径は、1~5メートルの範囲、好ましくは1.5~2メートルの範囲である。
【0083】
種々の実施形態によれば、翼幅は10~20メートルの範囲、好ましくは15~16メートルの範囲である。種々の実施形態によれば、航空機の長さは、3~20メートルの範囲、好ましくは5~15メートルの範囲、より好ましくは6~10メートルの範囲である。
【0084】
種々の実施形態によれば、航空機は、プロップローターを揚力構成に位置決めし、ロータ及びプロップローターによって与えられる複合揚力を介して航空機に必要な揚力を与えることによって、離着陸中に操作される。種々の実施形態によれば、垂直離着陸及び/またはホバリング中に、プロップローターをすべてのプロップローターにわたって同じにするかまたは異なるプロップローターに対して異ならせることができる所定の揚力構成に、維持することができる。種々の実施形態によれば、必要な安定性及び/または操縦を得るために、プロップローターの少なくとも一部の傾きを離着陸及び/またはホバリング中に能動的に調整することができる。いくつかの実施形態によれば、少なくとも1つのプロップローターの傾きは、離陸、着陸、及び/またはホバリング中に飛行制御装置によって能動的に制御されて、ヨーモーメントを生成する。
【0085】
種々の実施形態によれば、各ロータ及び/または各プロップローターは、種々の動作上自由度に従って飛行制御装置により個別に制御することができる。種々の実施形態によれば、ロータの唯一の自由度はロータの回転速度である。いくつかの実施形態では、ロータのブレードの迎え角を集合的に調整することができ、さらなる自由度が得られる。種々の実施形態によれば、プロップローターの少なくとも一部の自由度は、プロップローターの回転速度、ブレードの総迎え角、及びプロップローターの傾きの程度を含む。種々の実施形態によれば、これらの自由度のうちのいずれも、適切な安定性及び操縦を得るために、離着陸中に飛行制御装置によって(自律的にまたはパイロットコマンドに応答して)能動的に制御することができる。
【0086】
航空機が前方飛行を始めるのに十分な高度に達したら、プロップローターは、その推力が揚力及び推力の組み合わせを与えるように、その推進構成に向かって前方に傾き始めるが、プロップローターがその推進構成に向かってさらに傾くにつれて揚力の割合は減少する。ロータは、プロップローターが前方に傾いてロータベースの揚力を与え続ける期間の少なくとも一部の間、動作中のままとすることができる。前方対気速度が十分に高く、航空機の高度を維持するのに十分な揚力が翼によって得られた後の任意の時点で、ロータを作動停止することができる。前述したように、ローターブレードを低抗力位置にロックすることができる。
【0087】
巡航中、ロータは作動停止したままである。翼及び/または後部安定装置の操縦翼面は、従来の方法で航空機の操縦及び安定性のために用いることができる。いくつかの実施形態によれば、前方飛行中にバッテリーパックが失われて、失われたバッテリーパックによって電力供給されていたプロップローターの部分によって与えられる出力が失われた場合、航空機は、操縦翼面を使用すること及び/またはプロップローターの影響を受けない部分からの出力を調整することを介して、補償することができる。
【0088】
いくつかの実施形態によれば、さらなる安定性及び/または操縦性制御を得るために、プロップローターの少なくとも一部の傾きを能動的に制御することができる。いくつかの実施形態では、プロップローターの少なくとも一部の傾きを、離着陸及び/またはホバリング中に能動的に制御する。いくつかの実施形態では、プロップローターの傾きを、巡航中に固定する(すなわち、変化しない)。いくつかの実施形態によれば、必要に応じてヨーモーメントを得るために、最も外側のプロップローターの傾きを、垂直離着陸及び/またはホバリング中に能動的かつ独立に制御することができる。
【0089】
種々の実施形態によれば、EPU(ロータ及びプロップローター)に、本明細書に記載の配電アーキテクチャに従って電力供給することができる。たとえば、航空機に電力供給するための方法は、航空機の少なくとも1つの翼に取り付けられ、少なくとも1つの翼の前縁の少なくとも部分的に前方に配置された第1の複数の電気推進ユニットに、第1のバッテリーパックによって電力供給することを、第1のバッテリーパックを、第1の複数の電気推進ユニットの第1の電気推進ユニットの少なくとも一部と、第2の複数の電気推進ユニットの第1の電気推進ユニットの少なくとも一部とに電気的に接続する第1の電力バスを介して行うことを含む。本方法はまた、少なくとも1つの翼に取り付けられ、少なくとも1つの翼の後縁の少なくとも部分的に後方に配置された第2の複数の電気推進ユニットに、第2のバッテリーパックによって電力供給することを、第2のバッテリーパックを、第1の複数の電気推進ユニットの第2の電気推進ユニットの少なくとも一部と、第2の複数の電気推進ユニットの第2の電気推進ユニットの少なくとも一部とに電気的に接続する第2の電力バスを介して行うことであって、第2の電力バスは第1の電力バスから電気絶縁されている、行うことを含む。
【0090】
種々の実施形態によれば、航空機に電力供給するための方法は、第1のロータの少なくとも一部と第1のプロップローターの少なくとも一部とに、第1のバッテリーパックによって電力供給することを、第1のバッテリーパックを第1のロータの少なくとも一部と第1のプロップローターの少なくとも一部とに電気的に接続する第1の電力バスを介して行うことを含む。本方法はまた、第2のロータの少なくとも一部と第2のプロップローターの少なくとも一部とに、第2のバッテリーパックによって電力供給することを、第2のバッテリーパックを第2のロータの少なくとも一部と第2のプロップローターの少なくとも一部とに電気的に接続する第2の電力バスを介して行うことであって、第2の電力バスは第1の電力バスから電気絶縁されている、行うことを含む。
【0091】
種々の実施形態によれば、垂直離陸または着陸、ホバリング、または前方飛行中などの飛行中に、バッテリーパックまたはそのバッテリーパックに対する配電に障害が生じた場合、そのバッテリーパックによって電力供給されるEPUのみが無効になる。残りのEPU(無効になったバッテリーパックから電気絶縁された他のバッテリーパックによって電力供給されるもの)は、動作し続ける。種々の実施形態によれば、影響を受けていないEPUのうちの少なくとも一部の出力を、無効になったEPUの推力の損失を補償するために増加させてもよい。
【0092】
種々の実施形態によれば、バッテリーパックは同じEPUの異なるモータ部分に電力供給して、バッテリーパックのうちの1つまたはその配電が失われた場合に、影響を受けたEPUが低減された出力で動作し続けられるようにする。種々の実施形態によれば、無効になったモータ部分からの推力の損失を補償するために、影響を受けていないモータ部分の出力を増加させることができ、及び/または影響を受けていないEPUの出力を増加させることができる。
【0093】
説明を目的とした前述の説明は、特定の実施形態を参照して説明している。しかし、前述の例示的な説明は、網羅的であることも、本発明を開示した正確な形態に限定することも意図していない。前述の教示を考慮して、多くの変更及び変形が可能である。実施形態は、技術の原理及びその実際の応用を最も良く説明するために選択され説明されている。これにより、当業者は、考えられる特定の用途に適した種々の変更を伴って技術及び種々の実施形態を最適に利用することができる。
【0094】
本開示及び例は、添付の図を参照して十分に説明されているが、種々の変形及び変更が当業者には明らかであることに注意されたい。このような変形及び変更は、特許請求の範囲によって規定される開示及び例の範囲内に含まれると理解すべきである。最後に、本出願において参照された特許及び刊行物の全開示は、参照により本明細書に組み込まれている。
【国際調査報告】