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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-12
(54)【発明の名称】3Dオーバープリント装置及び方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 64/124 20170101AFI20240104BHJP
   B29C 64/241 20170101ALI20240104BHJP
   B29C 64/264 20170101ALI20240104BHJP
   B29C 64/295 20170101ALI20240104BHJP
   B29C 64/386 20170101ALI20240104BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240104BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240104BHJP
   B33Y 40/10 20200101ALI20240104BHJP
   B33Y 50/02 20150101ALI20240104BHJP
【FI】
B29C64/124
B29C64/241
B29C64/264
B29C64/295
B29C64/386
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y40/10
B33Y50/02
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023563791
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-26
(86)【国際出願番号】 KR2021019003
(87)【国際公開番号】W WO2022145815
(87)【国際公開日】2022-07-07
(31)【優先権主張番号】10-2020-0187784
(32)【優先日】2020-12-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523243502
【氏名又は名称】クヴェ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ジン ス
(72)【発明者】
【氏名】カン,テ ミン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AD07
4F213AP13
4F213AR14
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL12
4F213WL35
4F213WL43
4F213WL45
4F213WL52
4F213WL53
4F213WL67
4F213WL73
4F213WL76
4F213WL85
4F213WL87
(57)【要約】
既存構造物上に三次元形状をオーバープリント(over-printing)する3Dオーバープリント装置であって、光硬化性物質を収容している水槽と、既存構造物を固定し、前記水槽内で上下に1段階ずつ移動させることが可能な駆動部と、前記既存構造物に接し、上部に露出している光硬化性物質の表面に向かって前記光硬化性物質の表面の上部からUV光を複数の方向から同時に投写して、前記光硬化性物質の表面の硬化すべき領域を光硬化させるプロジェクタと鏡構造体を有する光学部と、を含み、前記光学部は、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、それを変換して前記プロジェクタで同時に投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体で反射されて複数の方向から投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように作動する、3Dオーバープリント装置を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
既存構造物上に3次元形状をオーバープリント(over-printing)する3Dオーバープリント装置であって、
光硬化性物質を収容している水槽と、
既存構造物を固定し、前記水槽内で上下に1段階ずつ移動させることが可能な駆動部と、
前記既存構造物に接し、上部に露出している光硬化性物質の表面に向かって前記光硬化性物質の表面の上部からUV光を複数の方向から同時に投写して、前記光硬化性物質の表面の硬化すべき領域を光硬化させるプロジェクタと鏡構造体を有する光学部と、を含み、
前記光学部は、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、それを変換して前記プロジェクタで同時に投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体で反射されて複数の方向から投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように作動する、3Dオーバープリント装置。
【請求項2】
前記光学部は、1つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体と、を含む、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項3】
前記光学部は、2つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体と、を含む、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項4】
前記光学部は、1つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体と、を含む、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項5】
前記光学部は、2つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体と、を含む、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項6】
前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面領域を加熱して粘度を下げるための加熱手段をさらに含む、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項7】
前記駆動部は、前記既存構造物を上下移動及び左右傾動可能に駆動することができる、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項8】
前記水槽に収容されている光硬化性物質の水位を自動的に調節するための水位センサをさらに含む、請求項1に記載の3Dオーバープリント装置。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の3Dオーバープリント装置を用いて既存構造物上に3次元形状をオーバープリントする3Dオーバープリント方法であって、
オーバープリントが必要な既存構造物を光硬化性物質の収容されている水槽内に位置させる段階と、
前記既存構造物を水槽内に段階別に下降させながら、上部に露出している前記光硬化性物質の層を順次光硬化させるトップダウン方式で前記既存構造物上にオーバープリントする積層段階と、を含み、
前記積層段階は、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、それを変換して前記プロジェクタに投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体で反射されて複数の方向から投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように光硬化する段階を、前記既存構造物を段階別に下降させながら順次行う積層段階である、3Dオーバープリント方法。
【請求項10】
前記積層段階は、
各積層段階ごとに既存構造物上にオーバープリントされるべき領域のスライス画像を生成する段階と、
投写される方向を複数の方向に分割して各方向別の画像領域を定め、前記スライス画像を各分割領域に該当する画像に分割する段階と、
鏡による画像の反転と画像の歪みなどを考慮して、各分割画像を変換して1つの投写画像に組み合わせる段階と、
組み合わせられた投写画像をプロジェクタにロードして投写する段階と、
各鏡面で反射された分割画像がオーバープリント領域の各分割面に投写されて、硬化させようとする形状が作られる段階と、を含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【請求項11】
前記積層段階は、1つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体とを用いて、プロジェクタから投写した光が鏡面で反射されて光硬化性物質の表面に投写される方向に応じて画像を分割する段階を含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【請求項12】
前記積層段階は、2つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体とを用いて、プロジェクタから投写した光が鏡面で反射されて光硬化性物質の表面に投写される方向に応じて画像を分割する段階と、を含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【請求項13】
前記積層段階は、1つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体とを用いて、投写される方向を8つの方向に分割する段階を含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【請求項14】
前記積層段階は、2つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体とを用いて、投写される方向を10つの方向に分割する段階を含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【請求項15】
前記積層段階は、前記既存構造物を段階別に下降させることにより、新たに硬化すべき層を形成するときに光硬化性物質の粘度を下げるように光硬化性物質の表面領域を加熱する段階をさらに含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【請求項16】
前記積層段階は、前記既存構造物を段階別に下降させることにより、新たに硬化すべき層を形成するときに前記既存構造物の上昇、下降及び左右方向への傾動動作を混合した方式で前記既存構造物を駆動する段階をさらに含む、請求項9に記載の3Dオーバープリント方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、既存構造物上に三次元形状をオーバープリント(over-printing)する3Dオーバープリント装置及び方法に係り、より詳細には、鏡を用いて、分割された画像を複数の方向からUV硬化性物質の表面に同時に投写して光硬化させる方式の3Dオーバープリント装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高分子物質、又は高分子物質が添加された材料を用いて、既存構造物上に新しい形状を出力するためのオーバープリント(over-printing)方式の3Dプリント装置及び方法が提案されている。
【0003】
その中でも、本出願人によって出願された先行特許1(韓国特許第10-2106102号公報)には、光硬化性物質に完全に浸かっている既存構造物の上に光硬化性物質入りの水槽の外部で1つのプロジェクタを回転させながら様々な方向から順次UV光画像を投写するか、或いは複数のプロジェクタを用いて同時に複数の方向からUV光画像を投写して、光硬化性物質の内部でUV光が重なり合っている領域に光エネルギーが増加して光硬化が起こる方式を用いる3Dオーバープリント装置及び方法が開示されている。
【0004】
しかし、このような方法は、レジンなどの光硬化材料が不透明であるか或いは吸収率が高い場合、UV光が、既存構造物が完全に浸かっているレジンの内部まで透過することができないため適用できないという限界がある。
【0005】
かかる問題を解決するために、不透明レジンの場合は、UV光により光硬化を起こしうる領域は、レジンの表面であるので、レジンの表面で光硬化が起こる既存のSLA、Vat photopolymerization(光重合)方式を考慮することができる。その中でも、Vat光重合方法は、図1に概略的に示すように、UV画像をレジン水槽の下の透明窓に投写するボトムアップ(Bottom-up)方式と、水槽の上からレジンの表面に投写するトップダウン(top-down)方式があり、両方式とも、既存構造物なしで新しい構造物を直接形成するのに適した方法である。
【0006】
なぜなら、ボトムアップ(Bottom-up)方式の場合、光硬化が受け面とレジン水槽の底面との間隔を密着状態で一段階ずつ上昇させながら、レジン容器の底面と接する部分のレジンを光硬化させる方式であるので、既存構造物があれば、両面を密着させたり両面間の間隔を調節したりすることができないため出力が不可能であり、トップダウン方式の場合、図2に概略的に示すように、光硬化がレジンの上部表面で起こるが、既存構造物があれば、構造物の形状やUV光の照射方向によって影領域が発生して正しく出力することができないという問題があるためである。
【0007】
したがって、同種又は異種の材質で製造される既存構造物上に同種又は異種材質の形状体を容易にオーバープリントして製造することができる装置及び方法に関する画期的な研究が依然として求められる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、かかる従来技術における問題点を解決するためになされたもので、その目的は、一つのプロジェクタから投写されるUV光の部分領域を、複数の鏡を用いてそれぞれの投写方向を反転させて複数の方向から既存構造物上に同時に投写するように光学部を構成することにより、既存構造物の形状や投写方向による影領域発生問題を解消するようにする3Dオーバープリント装置及び方法を提供することにある。
【0009】
また、本発明の他の目的は、水槽に収容された光硬化性物質の表面領域を順次光硬化させることにより、不透明である或いは光吸収率の高い光硬化性物質でも既存構造物上に3次元形状をオーバープリントすることができる3Dオーバープリント装置及び方法を提供することにある。
【0010】
本発明が解決しようとする課題は、上述した技術的課題に限定されず、上述していない別の技術的課題は、以降の記載から本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に明確に理解できるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の目的を達成するために、本発明の一実施形態による既存構造物上に3次元形状をオーバープリント(over-printing)する3Dオーバープリント装置は、既存構造物上に3次元形状をオーバープリントする3Dオーバープリント装置であって、光硬化性物質を収容している水槽と、既存構造物を固定し、前記水槽内で上下に1段階ずつ移動させることができる駆動部と、前記既存構造物に接し、上部に露出している光硬化性物質の表面に向かって前記光硬化性物質の表面の上部からUV光を複数の方向から同時に投写して、前記光硬化性物質の表面の硬化すべき領域を光硬化させるプロジェクタと鏡構造体を有する光学部と、を含み、前記光学部は、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、それを変換して前記プロジェクタで同時に投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体で反射されて複数の方向から投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように作動する。
【0012】
前記実施形態において、前記光学部は、1つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体と、を含むことが好ましい。
【0013】
また、前記実施形態において、前記光学部は、2つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体と、を含むことが好ましい。
【0014】
また、前記実施形態において、前記光学部は、1つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体と、を含むことが好ましい。
【0015】
また、前記実施形態において、前記光学部は、2つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体と、を含むことが好ましい。
【0016】
また、前記実施形態において、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面領域を加熱して粘度を下げるための加熱手段をさらに含むことが好ましい。
【0017】
また、前記実施形態において、前記駆動部は、前記既存構造物を上下移動及び左右傾動可能に駆動することができることが好ましい。
【0018】
また、前記実施形態において、前記水槽に収容されている光硬化性物質の水位を自動的に調節するための水位センサをさらに含むことが好ましい。
【0019】
一方、本発明の一実施形態による既存構造物上に3次元形状をオーバープリントする3Dオーバープリント方法は、上述したような3Dオーバープリント装置を用いて既存構造物上に3次元形状をオーバープリントする方法であって、オーバープリントが必要な既存構造物を、光硬化性物質が収容されている水槽内に位置させる段階と、前記既存構造物を水槽内に段階別に下降させながら、上部に露出している前記光硬化性物質の層を順次光硬化させるトップダウン方式で前記既存構造物上にオーバープリントする積層段階と、を含み、前記積層段階は、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、それを変換して前記プロジェクタに投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体で反射されて複数の方向から投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように光硬化する段階を、前記既存構造物を段階別に下降させながら順次行う積層段階である。
【0020】
前記実施形態において、前記積層段階は、各積層段階ごとに、既存構造物上に、オーバープリントされるべき領域のスライス画像を生成する段階と、投写される方向を複数の方向に分割して各方向別の画像領域を定め、前記スライス画像を各分割領域に該当する画像に分割する段階と、鏡による画像の反転や画像の歪みなどを考慮して、各分割画像を変換して1つの投写画像に組み合わせる段階と、組み合わせられた投写画像をプロジェクタにロードして投写する段階と、各鏡面で反射された分割画像がオーバープリント領域の各分割面に投写されて、硬化させようとする形状が作られる段階と、を含むことが好ましい。
【0021】
また、前記実施形態において、前記積層段階は、1つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体とを用いて、プロジェクタから投写した光が鏡面で反射されて光硬化性材料の表面に投写される方向に応じて画像を分割する段階を含むことが好ましい。
【0022】
また、前記実施形態において、前記積層段階は、2つのプロジェクタと、互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を有する鏡構造体とを用いて、プロジェクタから投写した光が鏡面で反射されて光硬化性材料の表面に投写される方向に応じて画像を分割する段階を含むことが好ましい。
【0023】
また、前記実施形態において、前記積層段階は、1つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体とを用いて、投写される方向を8つの方向に分割する段階を含むことが好ましい。
【0024】
また、前記実施形態において、前記積層段階は、2つのプロジェクタと、4つの鏡を有する鏡構造体とを用いて、投写される方向を10つの方向に分割する段階を含むことが好ましい。
【0025】
また、前記実施形態において、前記積層段階は、前記既存構造物を段階別に下降させることにより、新たに硬化すべき層を形成するときに光硬化性物質の粘度を下げるように光硬化性物質の表面領域を加熱する段階をさらに含むことが好ましい。
【0026】
また、前記実施形態において、前記積層段階は、前記既存構造物を段階別に下降させることにより、新たに硬化すべき層を形成するときに前記既存構造物の上昇、下降及び左右方向への傾動動作を混合した方式で前記既存構造物を駆動する段階をさらに含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0027】
上述した構成を有する本発明による既存構造物上に三次元形状をオーバープリントする3Dオーバープリント装置を用いると、既存構造物の複雑な形状や投写方向による影領域発生問題を事前に防止するとともに、既存構造物上に3次元形状を簡単にオーバープリントすることができる。
【0028】
また、本発明は、水槽に収容されている光硬化性物質の表面領域を順次光硬化させることにより、不透明である或いは光吸収率の高い光硬化性物質でも既存構造物上に三次元形状をオーバープリントすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】トップダウン方式とボトムアップ方式の作動原理を示す概略説明図である。
図2】トップダウン方式でオーバープリントする場合の影領域発生問題を示す概略説明図である。
図3】影領域発生問題を改善することが可能な方案の例を概略的に示す説明図である。
図4】本発明に適用可能な鏡を用いて画像を分割投写するオーバープリント方式の概略説明図である。
図5】プロジェクタと鏡の組み合わせ配置方式の例を示す説明図である。
図6】画像分割領域と投写方向の概念図である。
図7】本発明の一実施形態による3Dオーバープリント装置の概略斜視図である。
図8】UV光の入射角による影領域発生差を示す説明図である。
図9】プロジェクタのオフセットによるプロジェクタと鏡の配置例を示す例示的説明図である。
図10】水槽の上部に加熱機構を取り付ける方法を示す説明図である。
図11】出力物受け台の駆動手順の例示図である。
図12】本発明の一実施形態によるオーバープリント方法を説明する例示図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
まず、上述した従来のトップダウン方式によるオーバープリントの際に発生する影領域発生問題を解決するための方法として、複数の方向から投写することが考えられる。例えば、図3に概略的に示すように、1つのプロジェクタを既存構造物の周りに回転させながら、全方向から各方向の硬化形状に合う画像を投写するか、或いは複数のプロジェクタを互いに異なる方向に設置して複数の方向から各方向の硬化形状に合うそれぞれの画像を同時に投写することができる。
【0031】
しかし、1つのプロジェクタを回転させる方式は、光学系又は既存構造物と光硬化レジン入りの水槽を360度回転させる駆動機構を備えなければならないので、機構部の構成が複雑になり、表面の一層を光硬化させるために必要な時間が回転時間ほど長くなる。そして、複数のプロジェクタを設置する方法は、プロジェクタの大きさのために設置可能なプロジェクタの数の限界があるので、同時に投写可能な方向の数が制限され、構成するプロジェクタの数だけ全体システムの大きさが大きくなり、構成が複雑になり、コストが増加する。したがって、システムの大きさが大きすぎたり複雑すぎたりすることなく、小さなコストで同時に複数の方向から光を同時に投写して360度回転が不要になって出力時間を短縮させることができるシステムの開発が必要である。
【0032】
このような状況に鑑みて、本発明者らは、上述した影領域問題を改善するために、複数の方向からの投写を複数の鏡を用いて実現する方法を考案した。例えば、図4に概略的に示すように、1つのプロジェクタから投写されるUV光の部分領域を2つ以上の鏡を用いてそれぞれの投写方向を反転させ、複数の方向から既存構造物の上に同時に投写されるようにプロジェクタと鏡を配置する方案である。
【0033】
プロジェクタと鏡の組み合わせ方法は、図5に例示的に示すように、1つのプロジェクタと互いに垂直又は平行な2つ、3つ又は4つの鏡を使用するか、或いは2つのプロジェクタと互いに垂直又は平行な2つ以上の鏡を使用するか、或いは各プロジェクタに3つの鏡を使用するか、或いは2つのプロジェクタと4つの鏡を使用することで構成することができる。
【0034】
このうち、1つのプロジェクタと4つの鏡を使用する場合を例として説明すると、4つの鏡面で反射されてすぐにレジン面に投写される4方向と、隣接する鏡面で連続して2回反射されてレジン面に投写されるコーナー部の4方向、合計8方向に領域を分割することができ、この場合の画像分割領域と投写方向の概念図は、図6の通りである。
【0035】
また、2つのプロジェクタと4つの鏡を使用する場合には、各プロジェクタごとに近い側の3つの鏡面で反射されてすぐにレジン面に投写される3方向と、隣接する鏡面で連続して2回反射されてレジン面に投写されるコーナー部分の2方向など、5方向ずつ、合計10方向に領域を分割することができる。
【0036】
プロジェクタのオフセットがゼロに近い場合、投写画像の上下左右方向に入射角が大きいため、4面に鏡を配置して反射させると、各鏡4方向と鏡が直交するコーナー4方向から画像の中心方向に向かう8方向の入射角が大きい投写光を得ることができる。
【0037】
しかし、より大きな入射角を得るために、オフセットが100%程度と大きいプロジェクタを使用する場合、投写画像の左右方向と上方向の3方向には大きい入射角を得ることができるが、下方向には入射角が0に近づくほど小さくなるため、1つのプロジェクタに左/右/上の3面に鏡を配置して、鏡面3方向と鏡同士の間のコーナー2方向から中心に向かう5方向の入射角が大きい投写ビームを得ることができる。上述した1つのプロジェクタと3面鏡の組み合わせは、下方向から入射する投写光のない非対称な構造なので、同じ1つのプロジェクタと3面鏡の組み合わせをもう1つ対称的に配置すると、2つのプロジェクタからそれぞれ5方向、合計10方向から対称的に入射する投写光を得ることができる。
【0038】
光硬化性レジンの表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、これを変換してプロジェクタに投写すると、各分割画像がそれぞれ鏡で反射されて複数の方向からレジンの表面に投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるようにするのである。
【0039】
以下では、上述した原理を実現するための本発明の一実施形態による3Dオーバープリント装置について詳細に説明する。
【0040】
本発明の一実施形態による3Dオーバープリント装置は、図7に概略的に示すように、既存構造物上に光硬化性高分子物質をUV光照射で選択的に硬化させるために光硬化性物質が収容されている水槽10と、既存構造物を固定し、水槽内で上下に1段階ずつ移動させることが可能な駆動部20と、UV光を複数の方向から同時に投写することができるようにプロジェクタと鏡構造体を有する光学部30と、を含み、以下では、各構成要素の設置及び作動方式について説明する。
【0041】
まず、前記各構成要素を支持するために、底面のベースプレートと、そこから上向きに延びる本体フレーム60と、を備える。この本体フレーム60の内、外部にそれぞれの構成要素が固定的に又は駆動可能に設置される。
【0042】
前記水槽部10は、光硬化性レジンの収容される上部が開放された水槽12と、前記水槽12の内外に供給又は排出されるレジンを貯蔵するためのレジン供給タンク14及びレジン排出タンク16を含み、前記レジン供給タンク14及びレジン排出タンク16は、それぞれ水槽12の上下方向に配置され、レジンの流れを制御することが可能な開閉弁を備えた配管を介してそれぞれ水槽12に連結設置される。
【0043】
また、前記水槽12内のレジンの水位を自動的に調節するための構成を含むことが好ましい。これは、前記水槽12の上部又は側面に設置される水位センサ18と、前記水位センサ18からの測定信号に応じて前記開閉弁を適切に開閉制御するための制御部と、を含む。
【0044】
前記駆動部20は、既存構造物及び出力物を支持する構造物受け台を有する構造物ホルダ22と、前記構造物ホルダ22を段階別に上下移動させることが可能な駆動機構と、を含む。また、前記水槽12を支持する水槽受け台24を上下移動させることが可能な駆動機構をさらに含むことができる。前記駆動機構は、前記本体フレーム60内に配置設置できる。
【0045】
前記光学部30は、前記水槽12の上部に配置され、前記本体フレーム60の上端部に水平に取り付けられたプロジェクタ32と、前記プロジェクタ32からレンズ34を介して投写された画像を垂直下方に反射させるフォールドミラー(fold mirror)36と、前記フォールドミラー36の下方に配置された鏡構造体38と、を含むことができる。
【0046】
前記水槽12に収容されているレジンの表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、これを変換して前記プロジェクタ32で投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体38の複数の鏡によって反射されて複数の方向からレジンの表面に投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように作動するのである。
【0047】
このとき、前記プロジェクタ32と鏡構造体38は、図5及び図6に示された例示的な実現例を参照して、光照射方向と既存構造物の形状に応じて発生する影により、光硬化しない領域が生じることを効率よく改善するために、1つのプロジェクタと複数の鏡との組み合わせ、又は複数のプロジェクタと複数の鏡との組み合わせから構成して適切に配置設置できる。
【0048】
前記プロジェクタ32は、前記水槽12に収容されている光硬化性物質に、硬化に必要な光源を提供するための構成要素であって、デジタル光処理プロジェクタ(DLP projector)又は他の画像生成光学システムのうちのいずれかを使用することができる。光硬化性物質に向かって1D又は2Dの光学画像又はプロジェクションを作ることができれば、いかなる方式の光学システムでも構わない。
【0049】
一方、前記プロジェクタによって投写されるUV光の入射角が大きければ、既存構造物の傾斜部分の上に影発生なしでオーバープリントすることが可能であるので、プロジェクタの投写距離比(throw ratio)が小さいもの(できる限り1.0以下)が好ましい(図8参照)。
【0050】
また、図9に概略的に示すように、プロジェクタのオフセットが0%に近い場合、プロジェクション方向が対称に近いので、1つのプロジェクタと複数の鏡で構成し、オフセットが100%以上のように大きい場合は、入射角が非対称的、すなわち一端は入射角が大きいが、反対側は0に近いため(垂直入射)、各プロジェクタの投写光の入射角が大きい側に鏡を配置し、このようなプロジェクタを複数個用いて最終的に対称的な投写光分布を形成することが好ましい。
【0051】
トップダウン方式で段階別積層のために前記構造物ホルダ22を下降させて新しいレジン層が出力層上に覆われるとき、レジンの粘度が高ければレジンがうまく流れないため、新しい層が均一に形成され難く、多くの時間がかかることがある。レジンの流れが円滑であって、短時間内に新しい層が形成されるようにレジンの表面温度を昇温させて粘度を下げるための加熱機構50をレジン水槽12の上縁に沿って水槽12の上部又は側面に設置することが好ましい(図10参照)。
【0052】
また、新しいレジン層がうまく形成されるように加熱機構50と共に、又は独立して活用することができるように、前記構造物ホルダの構造物受け台を駆動するときに上下移動だけでなく、左右方向への傾動(tilt)ができるように構成することが好ましい。図11にこのような構造物受け台の駆動手順を例示した。
【0053】
以下では、上述のように構成された本発明の一実施形態による既存構造物上に3次元形状をオーバープリントする3Dオーバープリント装置を用いてオーバープリントする方法の一実施形態について詳細に説明する。
【0054】
本発明の一実施形態による3Dオーバープリント方法は、オーバープリントが必要な既存構造物を光硬化性物質入りの水槽内に位置させる段階と、前記既存構造物を水槽内に段階別に下降させながら、上部に露出している前記光硬化性物質の層を順次光硬化させるトップダウン方式で前記既存構造物上にオーバープリントする積層段階と、を含む。
【0055】
まず、光硬化性レジン入りの水槽10内で段階別に上下方向に移動可能な構造物ホルダ22に、オーバープリントが必要な既存構造物を位置させる。
【0056】
外部表面の少なくとも一部の上に同種又は異種材質のオーバープリントを必要とする既存構造物は、凹状又は凸状の形状が組み合わせられた様々な形状の構造物であってもよく、透明、或いは金属のように不透明な材質で製作されたものであってもよい。
【0057】
前記既存構造物は、現在まで知られている様々な方法で製造可能であり、その表面は、その上に光硬化接着又は結合される物質との接合力を増加させるために、予め表面を粗く製作することが好ましく、その手段として、化学的エッチング、サンドブラスト加工(sand blasting)、レーザー表面処理などの様々な方法を使用することができる。
【0058】
前記既存構造物は、前記構造物ホルダ22の構造物受け台に揺れることなく位置するように固定される必要があり、必要に応じて様々な方式の固定手段が適宜使用できる。
【0059】
前記光硬化性レジンは、透明なレジンであってもよく、不透明なレジンであってもよい。
【0060】
前記積層段階は、前記水槽に収容されている光硬化性物質の表面の硬化すべき形状画像を投写方向に応じて複数の領域に分割し、これを変換して前記プロジェクタによって投写すると、各分割画像がそれぞれ前記鏡構造体で反射されて複数の方向から投写されて組み合わせられた画像が、硬化させようとする形状となるように光硬化される段階を、前記既存構造物を段階別に下降させながら順次進行する積層段階である。
【0061】
このようなオーバープリント積層段階を、図12に例示した説明図を参照してより詳細に説明する。図12には、上下左右の4方向に突出した断面形状を有する既存構造物上に黄色で表示した断面星形の3次元形状をオーバープリントする場合を例としている。
【0062】
まず、(1)各積層段階ごとに、既存構造物上に、オーバープリントされるべき領域のスライス画像をモデリングとスライシング(slicing)プログラムを用いて生成する。現在まで知られている様々なプログラムを使用することができる。
【0063】
次に、(2)鏡構造体の各鏡面で反射されて投写される方向を複数の方向、例えば2方向~10方向に分割して各方向別の画像領域を定め、スライス画像を各分割領域に該当する画像に分割する。図12では、8方向に分割した例である。
【0064】
次に、(3)鏡による画像の反転と画像の歪みなどを考慮して、各分割画像を変換して1つの投写画像に組み合わせる。2つ以上のプロジェクタを使用する場合には、各プロジェクタごとに画像の分割、変換、及び投写画像の組み合わせ段階を経ればよい。
【0065】
次に、(4)このように組み合わせられた投写画像を各プロジェクタにロードして投写する。すると、(5)各鏡面で反射された分割画像がレジン表面の既存構造物の方向(中心)に集まってオーバープリント領域の各分割面に投写されて全体形状が作られる。
【0066】
このために、図5に例示的に示したプロジェクタと、複数の鏡を有する鏡構造体との配置状態の中から適切な配置例を選択して使用すればよい。投写方向を8方向に分割する場合には、1つのプロジェクタと4つの鏡を有する光学部を構成し、投写方向を10方向に分割する場合には、2つのプロジェクタと4つの鏡を有する光学部を構成することが好ましい。
【0067】
上述のように一層の積層が完了すると、既存構造物を水槽内に一段階下降させることにより、出力層上に新たなレジン層を形成し、再び積層段階を繰り返し行う。
【0068】
このとき、前記積層段階は、前記既存構造物を水槽内に段階別に下降させることにより、新たに硬化すべきレジン層を形成するときにレジンの粘度を下げて迅速かつ安定にレジンの流れを誘導するために、レジンの表面領域を加熱する段階をさらに含むことができる。前記加熱する段階における加熱は、前記水槽の上端縁部の上部又は外側部に配置された加熱手段によって行われることが好ましい。
【0069】
また、前記積層段階は、前記既存構造物を水槽内に段階別に下降させることにより、新たに硬化すべきレジン層を形成するときにレジン内への前記既の存構造物の上昇、下降及び左右方向への傾動動作を混合した方式で、前記既存構造物を駆動する駆動段階をさらに含むことができる。例えば、図11に示すように、既存構造物を左方向への傾動、下降、上昇、右方向への傾動、下降の順に連続駆動することにより、新たなレジン層の形成を円滑に誘導することができる。このような既存構造物の駆動段階は、上述したレジン表面領域の加熱段階と同時に、又は独立して行われることができる。
【0070】
上述した積層段階を最終的なオーバープリント形状が完了するまで繰り返し行えばよい。その後には、水槽から既存構造物上にオーバープリントされた最終出力物を取り出した後、仕上げ処理を行う。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】