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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/04 20060101AFI20240105BHJP
   C09J 175/12 20060101ALI20240105BHJP
   C09J 5/04 20060101ALI20240105BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20240105BHJP
   C08G 18/65 20060101ALI20240105BHJP
   B32B 7/12 20060101ALI20240105BHJP
   B32B 27/40 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
C09J175/04
C09J175/12
C09J5/04
C08G18/66
C08G18/65 023
B32B7/12
B32B27/40
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023526067
(86)(22)【出願日】2020-11-03
(85)【翻訳文提出日】2023-04-27
(86)【国際出願番号】 CN2020126211
(87)【国際公開番号】W WO2022094768
(87)【国際公開日】2022-05-12
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590002035
【氏名又は名称】ローム アンド ハース カンパニー
【氏名又は名称原語表記】ROHM AND HAAS COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(72)【発明者】
【氏名】ハブロット、エロディ
(72)【発明者】
【氏名】バイ、チェンイェン
(72)【発明者】
【氏名】ウー、ジエ
(72)【発明者】
【氏名】シュミット、トルシュテン
(72)【発明者】
【氏名】ズパンチッチ、ジョセフ ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ヴィンチ、ダニエーレ
(72)【発明者】
【氏名】フラスコーニ、マルコ
【テーマコード(参考)】
4F100
4J034
4J040
【Fターム(参考)】
4F100AB00
4F100AB00A
4F100AB00C
4F100AB10
4F100AB10A
4F100AB10C
4F100AB33
4F100AB33A
4F100AB33C
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK01C
4F100AK42
4F100AK42A
4F100AK42C
4F100AK51
4F100AK51B
4F100AK54
4F100AK54B
4F100AT00A
4F100AT00C
4F100BA03
4F100BA07
4F100CB00
4F100CB00B
4F100JL11
4F100JL11B
4J034BA07
4J034BA08
4J034CA04
4J034CB03
4J034CC01
4J034CD01
4J034DA01
4J034DB03
4J034DF01
4J034DG00
4J034HA01
4J034HA11
4J034JA01
4J034JA32
4J034JA33
4J034RA05
4J034RA08
4J040EF051
4J040EF111
4J040EF131
4J040EF281
4J040EF282
4J040JA13
4J040KA16
4J040LA05
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA08
4J040PA26
(57)【要約】
二成分無溶剤積層用接着剤組成物であって、(A)少なくとも1つのイソシアネートを含む少なくとも1種のイソシアネート成分と、(B)(Bi)少なくとも1種のアミン開始ポリオール;(Bii)少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオール;及び(Biii)少なくとも1種のポリエステルポリオールを含む、少なくとも1種のポリオール成分とを含む、二成分無溶剤積層用接着剤組成物;上記無溶剤積層用接着剤組成物の調製プロセス;及び上記無溶剤積層用接着剤組成物を用いて作製された積層構造体。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二成分無溶剤積層用接着剤組成物であって、
(A)少なくとも1つのイソシアネートを含む少なくとも1種のイソシアネート成分と、
(B)
(Bi)少なくとも1種のアミン開始ポリオール;
(Bii)少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオール;及び
(Biii)少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含む少なくとも1種のポリオール成分とを含む、二成分無溶剤積層用接着剤組成物。
【請求項2】
前記少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオールが、脂肪族ポリカルボン酸及びポリオールから誘導される化合物であり;前記アミン開始ポリオールが構造(I)の化学構造を有し;
【化1】

前記少なくとも1種のポリエーテルポリオールが、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブチレンオキシド系ポリオール及びそれらの共重合体、並びにそれらの混合物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載の二成分無溶剤積層用接着剤組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種のアミン開始ポリオールの濃度が6重量パーセント~40重量パーセントであり;前記少なくとも一種の脂肪族ポリエステルポリオールの濃度が10重量パーセント~30重量パーセントであり;前記少なくとも一種のポリエーテルポリオールの濃度が40重量パーセント~60重量パーセントである、請求項1に記載の二成分無溶剤積層用接着剤組成物。
【請求項4】
二成分無溶剤積層用接着剤組成物であって、A:Bの比が100:100~100:80である、請求項1に記載の二成分無溶剤積層用接着剤組成物。
【請求項5】
二成分無溶剤積層用接着剤組成物の製作プロセスであって
(A)少なくとも1つのイソシアネートを含む少なくとも1種のイソシアネート成分と、
(B)
(Bi)少なくとも1種のアミン開始ポリオール;
(Bii)少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオール;及び
(Biii)少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含むポリオール組成物を含む少なくとも1種のポリオール成分とを混合するステップを含む、製作プロセス。
【請求項6】
多層積層フィルム複合構造体であって、
(a)少なくとも1つの第1の基材層と、
(b)少なくとも1つの第2の基材層と、
(c)前記第1の基材層と前記第2の基材層との間に配置された、請求項1に記載の接着剤組成物の層;とを備え、前記接着剤が硬化されて、前記第1の基材層が前記第2の基材層に結合する、多層積層フィルム複合構造体。
【請求項7】
請求項6に記載の多層積層構造体の製造プロセスであって、
(I)少なくとも第1の基材を提供するステップと、
(II)少なくとも第2の基材を提供するステップと、
(III)請求項1に記載の無溶剤積層用接着剤組成物を提供するステップと、
(IV)前記第1の基材の一方の表面の少なくとも一部に前記少なくとも1種のイソシアネート成分の第1の層を塗布して、前記第1の基材上に配置された前記少なくとも1種のイソシアネート成分のフィルム層を形成するステップと;
(V)前記第2の基材の一方の表面の少なくとも一部に前記少なくとも1種のポリオール成分のコーティング層を塗布して、前記第2の基材上に配置された前記ポリオール成分のフィルム層を形成するステップと、
(VI)前記第1の基材の表面上の少なくとも1種のイソシアネート成分の層を、前記第2の基材の表面上の少なくとも1種のポリオール成分のコーティング層と接触させて、前記第1の基材及び前記第2の基材の間に少なくとも1種のイソシアネート成分及びポリオール成分を含む複合接着剤配合層を形成し、層状の積層構造体を形成するステップと、
(VII)前記第1の基材と前記第2の基材との間の接着剤配合物を硬化させ、前記硬化した接着剤層を介して前記第1の基材を前記第2の基材に付着させて、結合した多層積層構造体を形成するステップと、を含む、製造プロセス。
【請求項8】
請求項1に記載の二成分無溶剤積層用接着剤組成物を含む積層構造体。
【請求項9】
ポリマーバリア基材又は金属/金属化基材を更に含む、請求項8に記載の積層構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二成分無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物、及び二成分無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物を使用して製造された積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤組成物は、多種多様な目的に有用である。例えば、接着剤組成物は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド、金属、メタライズ、紙、又はセロハンなどの基材を一緒に結合させて、複合フィルム、すなわち、積層体を形成するために使用される。異なる最終使用用途における接着剤の使用は概ね知られている。例えば、接着剤は、包装産業において、特に食品包装のために使用されるフィルム/フィルム及びフィルム/箔積層体の製造に使用することができる。積層用途で使用される接着剤、すなわち「積層用接着剤」は、全般に、溶剤系、水系、及び無溶剤の3つのカテゴリに分類することができる。接着剤の性能は、カテゴリによって、また接着剤が適用される用途によって変わる。
【0003】
無溶剤積層用接着剤は、有機溶剤又は水性担体のいずれも用いずに、最大100パーセントの固形分を塗布することができる。塗布時に有機溶剤又は水を接着剤から乾燥する必要がないため、これらの接着剤は高いライン速度で稼働させることができ、迅速な接着用途を必要とする用途において好ましい。溶媒系及び水系の積層用接着剤は、接着剤の塗布後に溶剤又は水が効果的に乾燥し、積層構造体から除去することのできる速度によって限定される。環境、健康、及び安全の理由から、積層用接着剤は、好ましくは水性又は無溶剤である。
【0004】
無溶剤積層用接着剤のカテゴリには多くの種類がある。1つの特定の種類には、予備混合された二成分ポリウレタン系積層用接着剤が含まれる。典型的には、二成分ポリウレタン系積層用接着剤は、イソシアネート含有プレポリマー及び/又はポリイソシアネートを含む第1の構成成分と、ポリオールを含む第2の構成成分と、を含む。プレポリマーは、過剰のイソシアネートと、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を含有するポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールとの反応によって得ることができる。第2の成分は、1分子当たり2個以上のヒドロキシル基で開始されるポリエーテルポリオール及び/又はポリエステルポリオールを含む。2つの成分は、所定の比で組み合わされるか、又は「予備混合」され、その後、第1の基材(「キャリアウェブ」)に塗布される。次いで、第1の基材を第2の基材と合わせて、積層構造体を形成する。
【0005】
追加の基材層を構造体に追加し、各連続する基材の間に接着剤組成物の追加の層を配置することができる。次いで、接着剤を室温又は高温のいずれかで硬化させ、それによって基材を一緒に結合させる。
【0006】
積層構造体の更なる加工は接着剤の硬化速度に依存する。接着剤の硬化速度は、積層された基材間の機械的結合が更なる加工を可能にするのに十分であり、積層加工が適用可能な規制(例えば、食品接触規制)に準拠するのにかかる時間によって示される。硬化速度が遅いと、変換効率が低下する。予備混合された二成分無溶剤積層用接着剤は、従来の溶剤含有接着剤と比較して、弱い初期結合及び遅い硬化速度を示す。加工産業における全般的な傾向は、積層用接着剤をより速く硬化させる方向にある。より速い硬化は、コンバータの作業効率を改善する。具体的には、完成品を倉庫から迅速に移動させることで、直前の注文(例えば、小売販促キャンペーン)を処理するための生産能力と柔軟性とを増大させる。動作効率を向上させるために、既存の接着剤組成物よりも遥かに高い反応性を有する接着剤組成物を使用して積層体を形成すべきである。しかしながら、このような接着剤組成物は、金属基材及び/又はメタライズ基材を含む積層構造体で使用される場合、限界を実証した。比較的高いライン速度(例えば、250メートル/分[m/分]を超える速度)では、生成された積層体中に欠陥が、視覚的に観察され得る。欠陥は、特に、積層プロセス中の濡れ性不良及び空気混入に起因する。
【0007】
したがって、改善された接合強度、より速い硬化速度、並びに金属基材及び/又はメタライズ基材への強化された接着性を有する二成分無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物が望ましい。
【0008】
更に、従来の積層装置を使用して行われるように、接着剤配合物の2つの成分を予備混合し、接着剤配合物混合物全体を、キャリアウェブを第2の基材と接触させる前に、キャリアウェブ上に塗布する必要なく、調製される接着剤配合物を提供することが望ましい。予備混合を回避するために、例えば、第1のフィルムの表面上に第1の接着剤成分を塗布し、第2のフィルムの表面上に第2の接着剤成分(第1の接着剤成分とは別々に)を塗布することによって、2つの別個の接着剤成分として2つの接着剤成分を2つの別個のフィルム基材に塗布し、2つの基材を一緒にすることが知られている。第1の接着剤成分は第2の接着剤成分と反応性であるため、2つのフィルム上の2つの成分が互いに接触すると、結合した2つの反応物は、反応して反応した接着剤配合物を介して2つのフィルムを互いに結合する反応性接着剤配合物を形成する。
【0009】
一般に、ある特定の積層装置(例えば、ワンショットラミネータ)を利用する「ワンショット積層」プロセスを使用して、接着剤配合物の2つの別個の成分を含む2つのフィルムを一緒にして積層体を形成する工程を実行する。典型的には、ワンショットラミネータは、塗布工程を実行するために高いライン速度(例えば、200m/分以上)で動作する。しかしながら、以前から知られている二成分無溶剤ポリウレタン系積層用接着剤組成物をワンショット積層プロセス/装置で使用する場合の欠点としては、例えば、金属接着性の不良、耐薬品性/製品性の不良、ポットライフの短さ、及び相分離による安定性の不良が挙げられる。
【0010】
したがって、従来から知られている無溶剤接着剤配合物の上記の欠点、制限、及び欠陥を克服する多層積層体を製造するために、ワンショット積層プロセス/装置で使用するのに適した二成分無溶媒ポリウレタン系積層用接着剤組成物を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0011】
本発明の一実施形態は、二成分無溶剤積層用接着剤組成物であって、(A)少なくとも1つのイソシアネートを含む少なくとも1種のイソシアネート成分と、(B)(Bi)少なくとも1種のアミン開始ポリオール;(Bii)少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオール;及び(Biii)少なくとも1種のポリエーテルポリオールを含む少なくとも1種のポリオール成分とを含む、二成分無溶剤積層用接着剤組成物に関する。
【0012】
本発明の別の実施形態は、上記無溶剤積層用接着剤組成物の調製プロセスに関する。
【0013】
本発明の更に別の実施形態としては、上記の無溶剤積層用接着剤組成物を用いて製作された積層構造体;及び上記積層構造体の製造プロセスが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
接着剤の技術分野では、2液型(すなわち、2成分)接着剤系又は接着剤組成物は、イソシアネート成分(本明細書では「成分A」)を含む第1の反応物(又は第1の部分)と、ポリオール成分(本明細書では「成分B」)を含む第2の反応物(又は第2の部分)とを含む。成分A及び成分Bを組み合わせるか又は混合することにより、二液反応混合物接着剤組成物が形成される。1つの広範な実施形態では、本発明は、少なくとも1種のイソシアネート成分である成分Aと、少なくとも1種のポリオール成分である成分Bとを含む積層体を製造するための二成分無溶剤積層用接着剤組成物(本明細書では「SLAC」と略記する)に関する。
【0015】
本発明のSLACは、金属又は金属化基材を含む積層構造体での使用に特に適している。SLACは、金属及び/又は金属化基材を含む積層構造体で使用される場合、既存の2成分無溶剤接着剤組成物と比較して硬化速度が速い。SLACは、反応性が高く、硬化速度が速いため、SLACは、理想的には典型的な既存の接着剤塗布装置での使用には適していない。これは、2つの成分が非常に迅速に反応し、接着剤がゲル化し、基材に塗布するのに不適当なためである。このため、SLACは、先行技術のプロセスで典型的に行われているようにイソシアネート及びポリオール成分を予め混合してキャリアウェブ上に塗布するのではなく、2つの異なる基材上に別々に塗布されるように配合されている。
【0016】
特に、SLACは、イソシアネート成分である成分Aを第1の基材の表面に均一に塗布することができ、ポリオール成分である成分Bを第2の基材の表面に塗布することができるように配合される。次いで、第1の基材の表面を第2の基材の表面に接触させて、2つの成分を混合し、反応させて、それによって、積層体を形成する。次いで、接着剤組成物は、硬化可能である。
【0017】
イソシアネート成分
本発明のイソシアネート成分(NCO成分)である成分Aとしては、例えば、イソシアネートモノマー、イソシアネートプレポリマー、ポリイソシアネート、又はそれらの混合物を含むポリウレタン接着剤組成物を形成する技術分野で知られている従来のイソシアネート化合物のいずれかが挙げられる。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、イソシアネートプレポリマー、及びそれらの2つ以上の組み合わせを挙げることができる。本明細書で使用される場合、「ポリイソシアネート」は、2つ以上のイソシアネート基を含む任意の化合物である。「脂肪族ポリイソシアネート」は、芳香族環を全く含有しないポリイソシアネートである。「脂環式ポリイソシアネート」は、化学鎖が環状構造を有する脂肪族ポリイソシアネートのサブセットである。「芳香族ポリイソシアネート」は、1つ以上の芳香族環を含有するポリイソシアネートである。
【0018】
本発明で有用な適切な脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートの例としては、限定されないが、シクロヘキサンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、エチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロピルシクロヘキサンジイソシアネート、メチルジエチルシクロヘキサンジイソシアネート、プロパンジイソシアネート、ブタンジイソシアネート、ペンタンジイソシアネート、ヘキサンジイソシアネート、ヘプタンジイソシアネート、オクタンジイソシアネート、ノナンジイソシアネート、ノナントリイソシアネート、例えば4-イソシアナトメチル-1,8-オクタンジイソシアネート(TIN)、デカンジ-及びトリイソシアネート、ウンデカンジ-及びトリイソシアネート、並びにドデカンジ-及びトリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)、2-メチルペンタンジイソシアネート(MPDI)、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート/及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMDI)、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,4-又は1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン(HXDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、並びにそれらの2つ以上の二量体、三量体、誘導体混合物が挙げられる。本発明で有用な適切な脂肪族ポリイソシアネート及び脂環式ポリイソシアネートとしては、例えば、XDI系ポリイソシアネート、HXDI系ポリイソシアネート、XDIイソシアヌレート、HDI系ポリイソシアネート、H12MDI系ポリイソシアネート、IPDI系ポリイソシアネート、及びそれらの2つ以上の混合物も挙げられる。
【0019】
好ましい一実施形態では、本発明で有用な脂肪族イソシアネート成分としては、例えば、XDI系ポリイソシアネート、HDI系ポリイソシアネート及びそれらの混合物が挙げられる。
【0020】
本発明で有用な脂肪族イソシアネート成分の市販品のいくつかの例としては、例えば、The Covestro Companyから入手可能なDesmodur(登録商標)N3200及びDesmodur(登録商標)N3300、及びそれらの混合物が挙げられる。
【0021】
本発明において成分Aとして有用な芳香族イソシアネート成分としては、例えば、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート;1,5-ナフチレンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート(2,6-TDI)、2,4-トルエンジイソシアネート(2,4-TDI)、2,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’-MDI)、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’-MDI)、3,3’-ジメチル-4,4’-ビフェニルジイソシアネート(TODI)及びその異性体;ポリマーイソシアネート、及びこれらの2種以上の混合物を含むがこれらに限定されない、1種以上のポリイソシアネート化合物を挙げることができる。
【0022】
本発明で有用な市販の芳香族イソシアネート成分のいくつかの例としては、例えば、The Dow Chemical Companyから入手可能なISONATE(商標)125M、ISONATE(商標)50OP、及びISONATE(商標)143L;The Covestro Companyから入手可能なDESMODUR(登録商標)E 2200/76、及びこれらの混合物を挙げることができる。本発明の芳香族イソシアネート成分が示す有利な特性の1つとしては、例えば、迅速に硬化することができる接着剤を提供することが挙げられる。
【0023】
また、本開示による成分Aとしての使用に適したイソシアネート化合物としては、例えば、イソシアネートプレポリマーが挙げられる。「イソシアネートプレポリマー」は、一実施形態では2.0を超える(>)、別の実施形態では3.0~10.0、更に別の実施形態では4.0~7.0の化学量論比(NCO/OH)での(a)ポリイソシアネート成分と(b)ポリオール成分との反応生成物である。
【0024】
ポリイソシアネート、成分(a)は、例えば、上記の芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環式ポリイソシアネート、及びそれらの混合物から選択される。ポリイソシアネートと反応して「ポリウレタンプレポリマー」としても知られるイソシアネートプレポリマーを形成することができる適切なポリオール成分である、成分(b)としては、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、及びチオ基を有する化合物が挙げられる。本発明で有用なイソシアネートプレポリマーを形成するためにポリイソシアネート成分と反応することができるポリオール成分としては、例えば、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリアクリレート、ポリカーボネートポリオール、天然油系ポリオール、及びそれらの2つ以上の混合物が挙げられる。
【0025】
本発明で有用なイソシアネートプレポリマーを形成するためにポリイソシアネートと反応し得るポリオール成分はまた、イソシアネート反応性成分のヒドロキシル価及びヒドロキシル基官能価によって特徴付けることができる。「ヒドロキシル価」、「OH#」又は「ヒドロキシル値」は、化学物質中の遊離ヒドロキシル基の含有量の指標である。ヒドロキシル価は、遊離ヒドロキシル基を含有する1グラムの化学物質のアセチル化で取り込まれた酢酸を中和するために必要な水酸化カリウム(KOH)のミリグラム数である。ヒドロキシル価(OHN)は、通常、化学物質のグラム当たりの水酸化カリウムのミリグラム(mg KOH/g)として表される。ヒドロキシル価は、DIN 53240に従って決定される。
【0026】
「ヒドロキシル基官能価」は、化合物の1分子中に存在するヒドロキシル基の数である。ヒドロキシル基官能価は、ASTM D4274-16に従って測定され、結果は、一実施形態では1以上、別の実施形態では1~6の整数として報告される。いくつかの実施形態では、ポリオール成分の平均ヒドロキシル基官能価は、例えば、一実施形態では1.0~6.0、別の実施形態では1.8~4.0、更に別の実施形態では2.0~3.0であり得る。
【0027】
本発明の成分Aなどのイソシアネート基を有する化合物は、化合物の総重量を基準とするイソシアネート基(NCO)の重量パーセンテージによって特徴付けることもできる。イソシアネート基の重量パーセンテージは、「NCO%」と称され、ASTM D2572-97に従って測定される。例えば、成分AのNCO含有量は、一実施形態では7%以上であり;他の実施形態では10%以上である。なお別の実施形態では、成分(a)のNCO含有量は、30%以下であり、更に別の実施形態では25%以下である。
【0028】
本発明による使用に適した追加のイソシアネート含有化合物としては、4-メチル-シクロヘキサン1,3-ジイソシアネート;2-ブチル-2-エチルペンタメチレンジイソシアネート;3(4)-イソシアナトメチル-1-メチルシクロヘキシルイソシアネート;2-イソシアナトプロピルシクロヘキシルイソシアネート;2,4’-メチレンビス(シクロヘキシル)ジイソシアネート;1,4-ジイソシアナト-4-メチル-ペンタン、及びそれらの2種以上の混合物が挙げられるが、これに限定されない。
【0029】
いくつかの実施形態では、上記イソシアネート化合物の1つ以上を、所定量で、成分Aの成分に、又は成分Bの成分に、又は成分A及び成分Bの両方に添加することができる。
【0030】
ポリオール成分
本発明において、成分Bは、(Bi)少なくとも1種のアミン開始ポリオール;(Bii)少なくとも1種の脂肪族ポリエステルポリオール;及び(Biii)少なくとも1種のポリエーテルポリオール;並びに必要に応じて他の任意の成分又は添加剤の組み合わせ、混合物又はブレンドを含むポリオール成分である。(Bi)~(Biii)の濃度は、ワンショット積層プロセスで処理することができ、良好な接着外観を有する積層体、すなわち、高い(例えば、200m/分超)積層ライン速度で気泡及びオレンジ色の剥離などの欠陥のない積層体を製造し得る接着剤組成物を製造する程度に十分に高い。本発明のSLACがこれまでに知られている無溶媒接着剤系に対して有する他の利点としては、例えば、(1)良好な接着性能、及び(2)速硬化性が挙げられる。また、本発明のSLACは、積層体から製作される包装体に好適に付与される特性である耐熱性及び耐薬品性が良好な多層積層体を製作するためのワンショット積層プロセスに有用である。
【0031】
ポリオール成分中にアミン開始ポリオールを含めることによって、既存の二成分無溶剤接着剤組成物に使用される従来のポリオールよりも高い反応性及び速い硬化が提供される。アミン開始ポリオールは、第1級ヒドロキシル基及び少なくとも1種の第3級アミンを組み込む主鎖を含む。いくつかの実施形態では、ポリオール成分は、非アミン開始ポリオールである別のタイプのポリオールを含むこともできる。各ポリオールタイプは、1種のポリオールを含んでいてもよい。あるいは、各ポリオールタイプは、異なる種類のポリオールの混合物を含み得る。いくつかの実施形態では、1種のポリオールタイプは1種類のポリオールであってもよく、他方のポリオールタイプは異なる種類のポリオールの混合物であってもよい。
【0032】
アミン開始ポリオールは、第1級ヒドロキシル基及び少なくとも1種の第3級アミンを組み込む主鎖を含む。本発明による使用に適したアミン開始ポリオールは、1種以上のアミン開始剤を1種以上のアルキレンオキシドでアルコキシル化することによって製作される。
【0033】
いくつかの実施形態では、アミン開始ポリオールは、構造(I)の化学構造:
【0034】
【化1】

(式中、R、R及びRは、それぞれ独立して有機基である。)を有する。例えば、それぞれ独立してC~C直鎖又は分岐アルキル基であってもよく、それぞれ独立してエーテル基及びヒドロキシル基を含んでいてもよく、それぞれ独立して第3級アミン及び第2級アミンを含むことができる。
【0035】
アミン開始ポリオールは、一実施形態では2~12、別の実施形態では3~10、更に別の実施形態では4~8の官能価を含む。ポリオール成分に関して使用される場合、「官能価」は、1分子当たりのイソシアネート反応部位の数を指す。更に、アミン開始ポリオールは、一実施形態では5~1,830、別の実施形態では20~100、更に別の実施形態では31~40のヒドロキシル価を含む。ポリオール成分に関して使用される場合、「ヒドロキシル価」は、反応に利用可能な反応性ヒドロキシル基の量の尺度である。この数は、湿式分析法で決定され、試料1グラム中に見られるヒドロキシル基に相当する水酸化カリウムのミリグラム数として報告される。ヒドロキシル価を決定するために最も一般的に使用される方法は、ASTMD4274Dに記載されている。更に、アミン開始ポリオールは、摂氏25度(℃)での粘度が、一実施形態では500ミリパスカル秒(mPa-s)~20,000mPa-s、別の実施形態では1,000mPa-s~15,000mPa-s、更に別の実施形態では1,500mPa-s~10,000mPa-sである。
【0036】
ポリオール成分中のアミン開始ポリオールの量は、ポリオール成分の重量、成分B(すなわち、ポリオール成分の総重量)に基づく重量により、一実施形態では少なくとも2重量%、別の実施形態では少なくとも4重量%、更に別の実施形態では少なくとも6重量%である。接着剤組成物中の少なくとも1種のアミン開始ポリオールの量は、ポリオール成分の重量に基づく重量により、成分B中のポリオール成分の総重量に基づいて、一実施形態では60重量%を超えず、別の実施形態では50重量%を超えず、更に別の実施形態では40重量%を超えない。
【0037】
本発明のSLACに有用な脂肪族ポリエステルポリオール化合物、成分(Bii)は、例えば、脂肪族ポリカルボン酸及びポリオールから誘導されるポリエステルポリオールを含むことができる。一実施形態では、ポリオール共反応物成分(成分B)における使用に適したポリエステルポリオール化合物は、例えば、4,000g/mol以下の数平均分子量(M)を有するポリエステルポリオールから選択することができる。更に、適切なポリエステルポリオールは、1.8以上3以下(すなわち、1.8≦f≦3)のOH官能価(f)及び30mgKOH/g~200mgKOH/gのOH価を有することができる。本明細書で使用される場合、「OH価」又は「OH#」は、1グラムのポリオール中のヒドロキシル含有量に相当するミリグラムの水酸化カリウムを特徴とする。
【0038】
別の実施形態では、SLACでの使用に適したポリエステルポリオール化合物としては、例えば、ジオールの重縮合物、また、場合によりポリオール(例えば、トリオール、テトラオール)、及びそれらの混合物、並びに脂肪族ジカルボン酸、並びにそれらの混合物を挙げることができる。別の実施形態では、ポリエステルポリオール化合物は、脂肪族ジカルボン酸、それらの対応する無水物、又は低級アルコールの対応するエステルから誘導することもできる。
【0039】
本発明で有用な適切なジオールとしては、エチレングリコール;ブチレングリコール;ジエチレングリコール;1,2-プロパンジオール;1,3-プロパンジオール;1,3-ブタンジオール;1,4-ブタンジオール;1,6-ヘキサンジオール;2-メチル-1,3-プロパンジオール;ネオペンチルグリコール、及びそれらの混合物を挙げることができるが、これに限定されない。一実施形態では、>2のOH官能価を有するポリエステルポリオールを達成するために、3又は>3のOH官能価を有するポリオールを、任意選択的に、接着剤組成物(例えば、トリメチロールプロパン、グリセロール、エリトリトール、又はペンタエリスリトール)中に含めることができる。
【0040】
本発明で有用な適切な脂肪族ジカルボン酸としては、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、トリメリット酸、及びそれらの混合物を挙げることができるが、これらに限定されない。このような酸の無水物もまた、使用され得る。更に、安息香酸及びヘキサンカルボン酸などのモノカルボン酸は、最小限にすべきであるか、又は本発明の組成物から除外すべきである。
【0041】
ポリオール成分である、成分B中の脂肪族ポリエステルポリオール化合物、成分(Bii)の量は、ポリオール成分である、成分Bに基づいて一実施形態では、通常、5重量%~50重量%;別の実施形態では、ポリオール成分、成分Bに基づいて、8重量%~40重量%;更に別の実施形態では、10重量%~30重量%であることができる。
【0042】
一般に、ポリエステルポリオール化合物のMは、一実施形態では400g/mol超、別の実施形態では500g/mol超、更に別の実施形態では600g/mol超、更に別の実施形態では800g/mol超であることができる。また、ポリエステルポリオール化合物のMは、一実施形態では3,000g/mol未満、別の実施形態では2,500g/mol未満;更に別の実施形態では2,000g/mol未満であることができる。
【0043】
本発明で有用なポリエーテルポリオール成分である、成分(Biii)としては、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリブチレンオキシド系ポリオール、及びそれらの共重合体、並びにそれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。一般に、ポリエーテルポリオールは、一実施形態では1,500g/mol未満、別の実施形態では1,000g/mol未満、更に別の実施形態では50g/mol~1,500g/molのMを有する。別の実施形態では、ポリエーテルポリオールは、150g/mol~1,500g/molのM及び2.0~6.0の官能価を有する。
【0044】
本発明で有用な好適なポリプロピレングリコールの例としては、例えば、プロピレンオキシド、エチレンオキシドに基づくポリオール、又はそれらと、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール、スクロース、グリセリン、及び/又はそれらの混合物から選択される開始剤との混合物が挙げられるが、それらに限定されない。例えば、ポリプロピレングリコールとしては、The Dow Chemical Companyから入手可能なVORANOL(商標);BASF社から入手可能なPLURACOL(商標);Lonzaから入手可能なPOLY-G(商標)、POLY-L(商標)、及びPOLY-Q(商標);及びCovestroから入手可能なACCLAIM(商標);並びにそれらの混合物を挙げることができる。好ましい一実施形態では、2~6の間の官能価及び150g/molから1,500g/molのMを有するポリプロピレングリコールが使用される。
【0045】
本発明において有用な適切なポリテトラメチレンエーテルグリコールの例としては、例えば、BASFCompanyから入手可能なPOLYTHF(商標);Invistaから入手可能なTERTHANE(商標);Mitsubishiから入手可能なPTMG(商標);及びDairenから入手可能なPTG(商標);並びにこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましい一実施形態では、2~6の官能価及び250g/mol~1,500g/molのMを有するポリテトラメチレンエーテルグリコールが使用される。
【0046】
本発明で有用な好適なポリブチレンオキシド系ポリオールの例としては、例えば、ポリブチレンオキシドホモポリマーポリオール、ポリブチレンオキシド-ポリプロピレンオキシドコポリマーポリオール、及びポリブチレンオキシド-ポリエチレンオキシドコポリマーポリオール;並びにそれらの混合物が挙げられるが、それらに限定されない。好ましい一実施形態では、2.0~6.0の官能価及び150g/mol~1,500g/molのMnを有するポリブチレンオキシド系ポリオールが使用される。
【0047】
他の実施形態では、本発明で有用なポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、トリイソプロパノールアミン、ネオペンチルグリコール;及びそれらの混合物を含むがそれらに限定されない、例えば低分子量グリコールが挙げられるが、それらに限定されない。
【0048】
一般に、本発明で使用されるポリエーテルポリオールである成分(Biii)の量は、ポリオール成分である、成分B中の全成分に基づいて、一実施形態では20重量%~80重量%、別の実施形態では30重量%~70重量%、更に別の実施形態では40重量%~60重量%である。
【0049】
いくつかの実施形態では、成分(Bi)~(Biii)に加えて、任意の数の他の異なるポリオールを、接着剤組成物中に、例えばポリオール成分中に含有させてもよい。成分(Bi)~(Biii)とは異なる他のポリオールの例としては、非アミン開始ポリオール、他のポリエステルポリオール、他のポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリオレフィンポリオール、天然油ポリオール、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、他のポリオールは、使用される場合、ASTMD2196の方法によって測定される場合、25℃での粘度は、例えば、一実施形態では30mPa-s~40,000mPa-s、別の実施形態では50mPa-s~30,000mPa-s、更に別の実施形態では70mPa-s~20,000mPa-sである。好ましい一実施形態では、他のポリオールは、使用される場合、ASTMD2196の方法によって測定される場合、25℃で100mPa-s~10,000mPa-sの粘度を有する。
【0050】
接着剤組成物中の他のポリオールの量は、使用される場合、一実施形態では少なくとも0重量%、別の実施形態では少なくとも5重量%、更に別の実施形態では少なくとも10重量%である。接着剤組成物中の他のポリオールの量は、使用される場合、ポリオール成分である成分B中の全成分に基づいて、一実施形態では40重量%を超えず、別の実施形態では30重量%を超えず、更に別の実施形態では20重量%を超えない。
【0051】
いくつかの実施形態では、1種以上の上記ポリオール化合物を、所定量で、成分Aの成分に、又は成分Bの成分に、又は成分Aと成分Bの両方に添加することができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、添加剤を本発明のSLACに含有することができる。そのような添加剤の例としては、粘着付与剤、可塑剤、レオロジー調整剤、接着促進剤、酸化防止剤、充填剤、着色剤、界面活性剤、溶剤、及びそれらの2つ以上の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
接着剤の形成
1つの広範な実施形態では、本発明のSLACは、少なくとも1種のイソシアネート成分である成分A;少なくとも1種のポリオール成分である成分B;及び必要に応じて任意の成分又は添加剤を混合することにより調製される。一般に、本発明の反応性接着剤組成物を形成する成分A及びBの「結合」ステップは、高いライン速度(例えば、200m/分以上)で動作するワンショット積層プロセス中に行われる。ワンショット積層プロセスでは、プロセスステップを使用して、成分Aを含有する第1のフィルムを成分Bを含有する第2のフィルムと接触させて、2つの成分(共反応物)が一緒になって、第1のフィルムと第2のフィルムとの間に介在する均一で均質な反応性SLACが形成される。
【0054】
2つの成分(共反応物)が互いに接触すると、第1のフィルムと第2のフィルムとの間に介在する反応性SLACが形成される。次いで、上記のプロセスに従って作製して得られたSLACを使用して積層体を調製し、次いでこれを使用して積層体物品又は製品を作製する。本発明のCR成分を含むSLACをワンショット積層プロセスを使用して積層体を形成した場合のいくつかの有利な特性としては、例えば、(1)積層体の「スリットする時間」は、積層後、例えば2時間(時間)(これは、一般的な従来の目的の接着剤が使用される場合の2~3日より短い時間である)に短縮することができること;(2)積層体の「送達までの時間」は、例えば2日間(一般的な従来の目的の接着剤を使用する場合の5~7日間より短い時間)に短縮することができることが挙げられる。
【0055】
積層体形成
広範な実施形態では、本発明の積層構造体は、少なくとも2つのフィルム層基材が、2つの基材の間に形成された接着剤層によって互いに接着又は結合した組み合わせを含み、接着剤層は、本発明のSLACを使用することによって形成される。例えば、積層構造体は、(a)第1のフィルム基材と;(b)第2のフィルム基材と、(c)層(a)及び(b)を結合するための上述のSLACの層と、を含む。必要に応じて、1つ以上の他の任意のフィルム基材を使用して、多層積層構造体を製造することができる。
【0056】
本発明において、積層構造体は、接着剤の2種の別個の成分を2つの別個のフィルム基材に塗布することによって製造され、例えば、成分Aが第1のフィルム基材に塗布され、成分Bが第2のフィルム基材に塗布される。その後、2つのフィルム基材を合わせ、2つの部品を互いに接触させてSLACを形成する。
【0057】
SLACのイソシアネート成分及びポリオール成分は別々に配合され、積層構造体を形成することが所望されるまで保存されることが企図される。好ましい一実施形態では、イソシアネート成分及びポリオール成分は25℃で液体状態である。成分が25℃で固形であっても、必要に応じて加熱して液体状態にしてもよい。接着剤組成物のポットライフが硬化プロセスから切り離されるので、成分は無期限に別々に貯蔵することができる。
【0058】
SLACを含む積層体は、接着剤組成物のイソシアネート成分及びポリオール成分を2つの異なる基材、例えば2つのフィルムに別々に塗布することによって形成することができる。本明細書で使用される場合、「フィルム」は、1つの寸法が0.5ミリメートル(mm)以下であり、他の2つの寸法が両方とも1センチメートル(cm)以上である任意の構造体である。「ポリマーフィルム」は、ポリマー又はポリマーの混合物から作製されるフィルムである。ポリマーフィルムの組成は、典型的には、1種以上のポリマーが80重量%以上である。
【0059】
例えば、イソシアネート成分の層は、第1の基材の表面に塗布される。一般的な一実施形態では、第一の基材上のイソシアネート成分の層の厚さは0.5ミクロン(μm)~1.5μmである。ポリオール成分の層は、第2の基材の表面に塗布される。一般的な一実施形態では、第二の基材上のポリオール成分の層の厚さは0.5μm~1.5μmである。各基材に適用される層の厚さを制御することによって、成分の比を制御することができる。いくつかの実施形態では、最終的なSLAC中のイソシアネート成分及びポリオール成分の混合比は、一実施形態では100:100、別の実施形態では100:90、更に別の実施形態では100:80であることができる。本発明のSLACは、従来の接着剤よりも寛容であり、ある程度のコーティング重量誤差(例えば、最大約10%のコーティング重量誤差)に対応することができる。
【0060】
次いで、第1の基材及び第2の基材の表面は、ニップローラーなどの第1の基材及び第2の基材に外圧を加えるための装置に通される。イソシアネート成分及びポリオール成分が一緒に接合されると、硬化性接着剤混合物層が形成される。第1及び第2の基材の表面を合わせる場合、硬化性接着剤混合層の厚さは、一実施形態では1μm~5μmである。第1及び第2の基材を一緒にして、成分が互いに接触すると、イソシアネート成分とポリオール成分とが混合し反応し始める。これは、硬化プロセスの始まりを示している。
【0061】
更なる混合及び反応は、第1の基材及び第2の基材が様々な他のローラーに通され、最終的に巻直しローラーに通されるときに達成される。基材は各々、各ローラーを横切って他の基材よりも長いか又は短い経路をとるため、第1の基材及び第2の基材がローラーを通るときに、更なる混合及び反応が起こる。このようにして、2つの基材は、互いに移動し、それぞれの基材上の成分を混合する。適用装置におけるそのようなローラーの配置は、当該技術分野において一般に知られている。次いで、硬化性混合物は、硬化するか又は硬化させられる。
【0062】
好ましい実施形態では、多層積層構造体の製造プロセスは、例えば、(I)少なくとも1つの第1のフィルム基材を提供するステップと;(II)少なくとも1つの第2のフィルム基材を提供するステップと;(III)別々の成分として、SLACのイソシアネート成分である成分A及びポリオール成分である成分Bを提供するステップと;(IV)前記少なくとも1つの第1のフィルム基材の内面の少なくとも一部に前記SLACのイソシアネート成分を塗布して、前記少なくとも1つの第1のフィルム基材の内面上に前記イソシアネート成分のコーティング層を形成するステップと;(V)本発明のSLACのポリオール成分を少なくとも1つの第2のフィルム基材の内面の少なくとも一部に塗布して、少なくとも1つの第2のフィルム基材の内面にポリオール成分のコーティング層を形成するステップと;(VI)前記少なくとも1つの第1のフィルム基材の内面の前記イソシアネート成分のコーティング層が前記少なくとも1つの第2のフィルム基材の内面の前記ポリオール成分のコーティング層と接触するように前記第1のフィルム基材及び前記第2のフィルム基材を一緒にして、前記第1の基材と前記第2の基材との間に前記SLACの結合接着剤層を形成し、未硬化多層積層構造体を形成するステップと;(VII)前記第1の基材と前記第2の基材との間に配置された前記SLACを硬化させて、前記第1の基材と前記第2の基材とを互いに結合させ、硬化した結合多層積層構造体を形成するステップとを含む。
【0063】
上記プロセスの塗布ステップ(IV)は、イソシアネート成分が塗布されていない第1のフィルム基材の外側又は外側の面を介して、第1のフィルム基材の内側又は内側の面など、第1のフィルム基材の片面の少なくとも一部にSLACのイソシアネート成分を塗布することにより、室温で行うことができる。また、上記プロセスの塗布ステップ(V)は、ポリオール成分が塗布されていない第2のフィルム基材の外側又は外側の面が第2のフィルム基材の内側又は内側の面など、第2のフィルム基材の片面の少なくとも一部にSLACのポリオール成分を塗布することにより行うことができる。次いで、上記プロセスのステップ(VI)に従って、第1のフィルム基材の内側面を第2のフィルム基材の内側面に接触させて、第1及び第2の基材層の間に配置されたSLACの層を形成し、層状の積層構造体を形成する。ステップ(VII)は、第1及び第2の基材が互いに接合されて硬化多層積層構造体を形成するように、ステップ(VI)の層状の積層構造体をSLAC層を硬化させるのに十分な温度に加熱することを含む。
【0064】
SLACの成分の成分の塗布ステップ(IV)及び(V)は、接着剤組成物又は配合物をフィルム及び基材に適用する技術分野で知られている従来の手段によって行うことができる。
【0065】
上記プロセスのステップ(VI)では、第1のフィルム基材上にコーティングされたSLACのイソシアネート成分を、第2のフィルム層上にコーティングされたSLACのポリオール成分と接触させて、イソシアネート成分とポリオール成分が互いに混合し、第1の基材と第2の基材との間にSLACの層を形成し、未硬化多層積層構造体を形成する。
【0066】
少なくとも第1のフィルム基材と少なくとも第2のフィルム基材とが互いに接触される上記のプロセスの接触ステップ(VI)の後、上記のプロセスのステップ(VII)に従って、2つの基材の間に配置されたSLAC層が硬化される。SLACの硬化により、第1のフィルム基材と第2のフィルム基材との間の結合がもたらされ、硬化多層積層体が形成される。
【0067】
積層構造体における好適な基材は、ポリエチレン系フィルム、ポリアミド系フィルム、及びエチレンビニルアルコール系フィルムが挙げられるが、これらに限定されないポリマーバリアフィルムなどのフィルムを含む。いくつかのフィルムは、任意選択で、接着剤組成物と接触し得るインクで画像が印刷される表面を有する。基材は積層されて積層構造体を形成し、本発明の接着剤組成物は、基材の1つ以上を互いに接着する。
【0068】
積層構造体
本発明のSLACの利点の1つは、得られたSLACを使用して、従来公知の接着剤配合物の制限を受けずに、SLACを使用して様々な種類のフィルムを積層することによって多層フィルムを製造するのが容易にできることである。例えば、SLACは、様々なプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔、並びに他の金属化及びバリア積層構造体を積層するために使用し、食品、医薬品、洗剤などの包装材料に有用な複合フィルムを製造することができる。例えば、本発明のSLACは、多層積層構造体を製造するために使用され、それは次に、パウチ、サシェ、スタンドアップパウチ、又は他のバッグ部材もしくは容器、特に食品を包装するために使用される容器などの製品又は物品を製造することができる。
【0069】
一実施形態では、積層構造体は、(a)第1のフィルム基材と;(b)第2のフィルム基材(a)と;(c)第1のフィルム基材と前記第2のフィルム基材との間に介在し、フィルム基材(a)及び(b)を結合するSLACの層とを含む。積層構造体における適切な基材としては、ポリマーフィルム、金属箔、及び金属被覆(金属化)ポリマーフィルムが挙げられる。適切なポリマーバリアフィルムとしては、ポリエチレン系フィルム、ポリアミド系フィルム、及びエチレンビニルアルコール系フィルムが挙げられるが、これらに限定されない。いくつかのフィルムは、任意選択で、接着剤組成物と接触し得るインクで画像が印刷される表面を有する。本開示による接着剤組成物が1つ以上の基材を一緒に接着している状態で、基材を積層させ積層構造体を形成する。
【実施例
【0070】
以下の実施例は、本発明を更に詳細に説明するために提示されるが、特許請求の範囲の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。別途指示されない限り、全ての部及びパーセンテージは、重量による。
【0071】
本発明の実施例(Inv.Ex.)及び比較例(Comp.Ex.)において使用される様々な材料を表Iで説明する。
【0072】
【表1】
【0073】
ポリオール成分B
本明細書で「本発明のポリオール成分」(「IPC」)と呼ばれる本発明のSLACに使用される共反応物である成分Bは、表IIに記載の成分に従って調製した。BESTER(商標)101、ISONAT(商標)M125及びVORANOL(商標)CP755を反応器に投入し、次いで、反応器の内容物を加熱しながら撹拌(混合)した。反応器内の温度を70~80℃の温度で2時間保持した。2時間後、反応器中の得られた混合物を40℃まで冷却し、次いで、IP9001、VORANOL(商標)CP450及びSPECFLEX ACTIVE(商標)2306を反応器に投入した。反応器中の得られた混合物を30分間撹拌し、30分後、得られた混合物はIPCを形成した。生成されたIPCは、25℃で、136のOH価及び14,000mPa-sの粘度を有する。
【0074】
【表2】
【0075】
積層基材
本明細書の実施例に記載されるように製造される積層体は、以下のフィルム基材のうちの1つ以上を用いて作製される:(1)印刷されていない12μmのPET(PET);(2)9μmのアルミ箔(Al);(3)32%のエチレンコモノマー(PE-EVOH)を含む5μmのEVOH層を有する50μmのエチルビニルアルコール、又は15μmのポリアミド(OPA)と共押出ししたポリエチレンを含むバリアポリマーフィルム。
【0076】
バリアフィルムは、積層体を製造するために組み立てられ、バリアフィルムは、2つの主要なカテゴリ:(1)金属化積層体:Al/PET(印刷されていない、完全に印刷された、又は印刷された窓)及び(2)ポリマーバリア積層体:PE-EVOH/PET及びPE-EVOH/OPAに整理することができる。
【0077】
表IIIに記載の積層体を、以下の基材:(1)アルミ箔/PET、(2)PET/PE-EVOH、及び(3)OPA/PE-EVOHを使用して調製した。
【0078】
比較実施例A~E
表IIIに記載される比較実施例A(基準)及び比較実施例Cの積層体を調製するのに使用される基準接着剤配合物は共反応剤としてCR001を含み;比較実施例B、D及びEの積層体を製造するのに使用される接着剤配合物は共反応剤としてCR002を使用する。CR001及びCR002を使用する比較実施例A、B、C、D及びEは芳香族ポリエステルポリオールを含むが、脂肪族ポリエステルポリオールを含まない接着剤配合物。比較実施例B,D及びEの積層体を製造するのに使用される接着剤配合物は、芳香族ポリエステルポリオールに加え、シリコン系添加剤を含み;比較実施例B、D及びEの接着剤配合物はワンショット積層プロセスで接着剤配合物が使用される直前に再分散させる必要がある。
【0079】
実施例1~5
本発明の実施例1~5の積層体を製造するのに使用されるSLACは共反応剤としてIPCを使用し;SLACにシリコン系添加剤を添加せず;SLACを再分散する必要がない。
【0080】
積層体形成
表IIIは、上記の表I及び表IIに記載の接着剤成分を使用して調製された積層体を記載する。表IIIに記載の接着剤系を含む積層構造体は、以下の機械パラメータを有するNordmeccanica DUPLEX ONE-SHOT(商標)ラミネータで調製される:ドージングギャップでの45℃の温度;塗布ロール温度55℃;ニップロールの温度:55℃;ニップ圧2.5ニュートン(N);1.5Nの積層圧力;160Nの巻き戻し張力;ニップロールでの硬度90ショア。表IIIに示すように、積層OH部分(例えば、第1の基材)にOH成分(すなわち、ポリオール成分)を塗布し、積層NCO部分(例えば、第2の基材)にNCO成分(すなわち、イソシアネート成分)を塗布した後、2つのコーティングされた基材を合わせて積層する。2つのコーティングされた基材は、ニッピングステーションで積層体を形成するために一緒にされる。各積層体のコート重量は、約1.0グラム/平方メートル(g/m)に維持される。計量温度、塗布温度、ニップ温度はそれぞれ50℃、50℃、及び65℃である。
【0081】
積層速度
ワンショット積層プロセス及びラミネータによって製造された積層体の外観を、積層体の製造後に目視で検査した。積層体が気泡又はオレンジ色の剥離などの視覚的欠陥を示さない場合、積層構造体の、ワンショットラミネータの速度モニタ読み取り値に記録された最高積層速度を決定した。本発明の共反応物IPCを使用して製造された積層体は、良好な光学特性を示した。
【0082】
表IIIは、共反応物CR 001又はCR 002を含有する様々な接着剤配合物から製造された他の積層体の積層速度と比較した、IPCを含有する本発明のSLACから製造された積層体の積層速度の結果を記載する。
【0083】
【表3】
【0084】
金属化積層体、すなわち無印刷、全面印刷、印刷窓)、及びポリマーバリア積層体、すなわちPE-EVOH/PET、PE-EVOH/OPAは、比較実施例A及びBの接着剤系を使用すると、欠陥が生じるため、積層速度に制限があった。発生する欠陥は、積層構造体の各タイプごとに異なる性質のものであり、以下のように説明することができる:金属化積層構造体の場合:より高い積層ライン速度で観察される欠陥の2つの主な原因は、濡れ不良と空気混入である;ポリマーバリア積層構造体では、濡れ不良、空気巻き込み、及びCOの生成が、観察される欠陥の3つの主な原因である(より低い積層速度でも)。
【0085】
CR002共反応剤を含む接着剤システムは、比較実施例B、D及びEの接着剤配合物において安定でないシリコン系添加剤の使用を含み、そのため、比較実施例B、D及びEの接着剤配合物は、製剤を積層プロセスで使用する直前に製剤を再分散させることを必要とする。
【0086】
表IIIに記載されるように、共反応物IPCを含有する本発明のSLACを使用して製造された積層体により、本発明の無溶媒積層体接着剤配合物中の消泡剤、湿潤剤又は他の添加剤を使用することなく、金属化フィルム及び高バリアフィルム上での積層速度の改善が可能である。
【国際調査報告】