(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】マイクロ波誘導加熱装置及びこれを用いた積層セラミックキャパシターの高速同時焼結方法
(51)【国際特許分類】
H01G 4/30 20060101AFI20240105BHJP
H05B 6/80 20060101ALI20240105BHJP
H01G 13/00 20130101ALI20240105BHJP
【FI】
H01G4/30 311Z
H05B6/80 Z
H01G4/30 517
H01G13/00 391E
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023533761
(86)(22)【出願日】2021-11-16
(85)【翻訳文提出日】2023-06-01
(86)【国際出願番号】 KR2021016700
(87)【国際公開番号】W WO2022124612
(87)【国際公開日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0171385
(32)【優先日】2020-12-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0155768
(32)【優先日】2021-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514219031
【氏名又は名称】コリア エレクトロテクノロジー リサーチ インスティテュート
【氏名又は名称原語表記】Korea Electrotechnology Research Institute
【住所又は居所原語表記】12,Jeongiui-gil,Seongsag-gu Changwon-si Gyeongsangnam-do 51543(KR)
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、テホ
(72)【発明者】
【氏名】シン、チ ウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン、ソン チョン
【テーマコード(参考)】
3K090
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
3K090AA15
3K090AB13
3K090BB12
3K090EB14
5E001AB03
5E001AH09
5E082AA01
5E082AB03
5E082LL01
5E082LL02
5E082MM07
(57)【要約】
本発明は、マイクロ波誘導加熱装置を用いた積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法に関するものであり、前記マイクロ波誘導加熱装置の透明管に一つ以上の積層セラミックキャパシター(MLCC)を装入する段階;前記マイクロ波誘導加熱装置の透明管内部を低真空状態又は不活性ガス状態に造成する段階;前記マイクロ波誘導加熱装置を用いて、あらかじめ定められた加熱速度で常温から前記積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体焼結温度まで高速昇温させる段階;及び、前記誘電体焼結温度を一定時間維持した後、前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を自然冷却させる段階を含む。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロ波誘導加熱装置を用いた積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法であって、
前記マイクロ波誘導加熱装置の透明管に一つ以上の積層セラミックキャパシター(MLCC)を装入する段階と、
前記マイクロ波誘導加熱装置の透明管内部を低真空状態又は不活性ガス状態に造成する段階と、
前記マイクロ波誘導加熱装置を用いて、あらかじめ定められた加熱速度で常温から前記積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体焼結温度まで高速昇温させる段階と、
前記誘電体焼結温度を一定時間維持した後、前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を自然冷却させる段階と、を含む積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項2】
前記低真空状態の圧力は、0.1トール(Torr)以下であることを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項3】
前記加熱速度は、5℃/s~200℃/sの範囲内で決定されることを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項4】
前記一定時間は、1秒から10分までの範囲から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項5】
前記積層セラミックキャパシター(MLCC)の内部電極層酸化がなされる温度以上で留まる時間を10分以内にすることを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項6】
前記自然冷却させる段階は、
前記誘電体焼結温度を一定時間維持した後、あらかじめ定められた加熱速度で最高焼結温度まで昇温させる段階と、
前記最高焼結温度で一定時間維持した後、前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を自然冷却させる段階と、を含むことを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項7】
前記装入する段階は、
前記透明管を用いて前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を移動させ、その加熱部位が前記マイクロ波誘導加熱装置の誘電体共振器から所定の距離を置いて位置するようにローディングすることを特徴とする、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項8】
前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を前記透明管に一列に連続装入し、前記装入された積層セラミックキャパシター(MLCC)を移動させながら焼結する段階をさらに含む、請求項1に記載の積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法。
【請求項9】
マイクロ波が入力されるマイクロ波入力部と、
前記マイクロ波入力部に結合し、前記マイクロ波を伝達するマイクロ波カプラーと、
一つ以上の伝導性素材を挿入するための貫通孔を備え、前記マイクロ波カプラーから伝達されたマイクロ波に基づいて共振モードの電磁気場パターンを生成して前記伝導性素材を誘導加熱する誘電体共振器と、
前記誘電体共振器を取り囲むように配置され、前記マイクロ波の外部漏れを遮断するマイクロ波遮断容器と、
前記誘電体共振器の貫通孔に配置された伝導性素材の温度を測定する温度センサーと、を含むマイクロ波誘導加熱装置。
【請求項10】
前記マイクロ波遮断容器の一領域に配置され、前記温度センサーから照射される赤外線を前記伝導性素材の方向にガイドする温度測定ポートをさらに含む、請求項9に記載のマイクロ波誘導加熱装置。
【請求項11】
前記誘電体共振器の貫通孔に挿入されるように形成され、前記伝導性素材を収容するための空間を備える透明管をさらに含む、請求項9に記載のマイクロ波誘導加熱装置。
【請求項12】
前記透明管は、MLCC焼結待機環境を造成することを特徴とする、請求項11に記載のマイクロ波誘導加熱装置。
【請求項13】
前記透明管は、耐熱性に優れたクォーツ(quartz)材質で形成されることを特徴とする、請求項11に記載のマイクロ波誘導加熱装置。
【請求項14】
前記マイクロ波カプラーと前記誘電体共振器との結合定数(coupling coefficient)に基づいて、前記マイクロ波カプラーと前記誘電体共振器との間の離隔距離を調節し、前記マイクロ波カプラーから前記誘電体共振器に伝達されるマイクロ波の量を調節する制御装置をさらに含む、請求項9に記載のマイクロ波誘導加熱装置。
【請求項15】
前記制御装置は、前記マイクロ波遮断容器と前記誘電体共振器との間の離隔距離を調節し、前記誘電体共振器の共振モード時にマイクロ波の共振周波数を調整することを特徴とする、請求項14に記載のマイクロ波誘導加熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層セラミックキャパシター(MLCC)を製造する工程に関し、より具体的には、マイクロ波誘導加熱装置を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)を高速で同時焼結させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波(Microwave)は、極超短波とも呼ばれる電磁気波の一種で、波長が1mm~1mであり、周波数は300MHz~300GHzに該当する電磁気波である。マイクロ波は2次世界大戦中にレーダー用に開発されて利用されたし、その後、通信機器などに幅広く用いられている。特に、携帯電話又は無線LAN(LAN)などでその活用が増大している。1946年にレーダー開発途中に偶然に、マイクロ波が食品を急速に加熱させる現象が発見され、これが電子レンジの発明にもつながった。マイクロ波加熱技術は、家庭用の他、産業用の加熱方法としても開発されて適用されてきた。1980年代中盤にマイクロ波加熱は化学分析、すなわち、アッシング(ashing)、エクストラクション(extraction)、ダイジェスチョン(digestion)などに適用され始めたし、1986年にはマイクロ波加熱を用いて化学合成を試み、在来式の加熱方法に比べて約1000倍も速く反応が起きることを報告した。1990年代にはマイクロ波化学装置メーカーで開発した製品が技術的に発展しながら広く普及された。
【0003】
マイクロ波による発熱メカニズムの一つとして、双極子偏極(dipolar polarization)発熱メカニズムは、極性分子から熱が発生するプロセスで、誘電加熱(dielectric heating)の原理である。適切な周波数で振動する電場下で極性分子が電場の方向及び位相に合わせようとする際に、分子間の力によって極性分子が抵抗を受けて電場に追従できなくなることによって分子の無作為運動が誘発され、これは熱の発生につながる。このような発熱メカニズムは、水や有機溶媒、酸化物などを効果的に加熱させることができる。
【0004】
マイクロ波による発熱メカニズムのもう一つとして、電気抵抗(electric resistance)発熱メカニズムは、電流に対する抵抗によって熱が発生する原理である。振動する電場は伝導体内の電子やイオンの振動を起こして電流を生成させ、この電流が内部抵抗によって熱を発生させる。この発熱原理は、電場によって発生する電流の流れによるものであり、伝導加熱(conduction heating)ということができる。このマイクロ波伝導加熱は、水や有機溶媒のような極性分子を有する誘電体でない伝導性素材にマイクロ波電場が加えられる時に発生し得る。しかし、マイクロ波共振器内に伝導性素材が存在すると、素材の伝導度値、サイズ又は形状などによって共振器内の電磁気場分布に非常に大きい影響を与えることになる。伝導度が非常に良い金属類の素材は大部分のマイクロ波を反射させるため、ほとんど加熱されない他、尖っていたり薄い形態を有する場合には、電場が集中する現象によって放電が起きやすく、素材が損傷してしまう。黒鉛のように高くない伝導度を有する伝導性素材は、ある程度加熱が可能であるが、サイズ又は形態によって放電の危険性を有するため、高い出力で高温加熱しようとする場合には同様、放電損傷の危険性がある。
【0005】
金属のような伝導性素材を加熱する道具として既存の誘導加熱(induction heating)技術は、通常、数十kHzの周波数を有する電流が流れるコイルを巻いて磁場を作ると近くの金属に誘導電流を発生させ、加熱させることができる。特に、金属が磁性を有していると、ヒステリシス損失によってさらに効果的に加熱させることができる。この誘導加熱は、産業において金属の熱処理や高温融解炉などで広範囲に活用されており、家庭でも調理器具として広く普及されて活用されている。誘導加熱において金属表面に発生させる誘導電流の浸透深さは、金属の伝導度と密接な相関関係を有するが、周波数が高いほど低い浸透深さを示す。通常、誘導加熱の使用周波数は、最大で数百kHz程度であるので、金属に対する誘導電流の浸透深さは、約1mm前後の値を有し、よって、調理器具のようにミリメートルレベルの厚さを有する素材を加熱するのに適している。ただし、1μmレベル以下の薄い伝導性素材は、数十~数百kHzレベルの周波数を有する誘導電流の浸透深さより遥かに薄いため、磁場は伝導性素材に誘導電流をほとんど生成させずに透過してしまい、加熱させることができない。既存のマイクロ波加熱の電気抵抗発熱メカニズムによって1μmレベル以下の薄い伝導性素材(すなわち、伝導性薄膜)を加熱しようとする場合に、伝導性薄膜の末端で集中する電場によって放電が起きやすくなり、事実上、使用不可能である。
【0006】
このような問題を解決するために提案されたマイクロ波誘導加熱技術は、電子レンジなどに使用されるマイクロ波帯域の磁場を用いて伝導性素材を加熱する新規の誘導加熱技術である。電子レンジなどに用いられるマイクロ波の金属表面に対する誘導電流の浸透深さは約1umレベルであり、よって、数マイクロメートル以下又はナノメートルレベルの非常に薄い薄膜を加熱するのに適した技術である。マイクロ波誘導加熱技術は、熱が必要な伝導性薄膜のみを選択的に直接加熱できる他にも、電気エネルギーから熱エネルギーに転換させる効率が約70%レベルと高いため、熱エネルギーの浪費無しで非常に高い効率で速く加熱できる技術である。
【0007】
一方、積層セラミックキャパシター(Multi-Layer Ceramic Capacitor,MLCC)は伝導性素材の一つで、携帯電話、個人用PC、ノートパソコン、ディスプレイ装置などのような電子機器において受動部品の約60%を占めている代表的な受動素子である。前記MLCCは、集積回路(IC)などのような能動素子の電源供給回路においてノイズを分離する機能(decoupling)、信号のDC成分を除去する機能、信号の平坦化機能などのような様々な役割を担うことができ、代表的な能動素子である半導体に劣らない程度の重要な受動素子である。前記MLCCは、電気が通じないセラミック誘電体層と電気が通じる内部電極層(例えば、Ni電極層)を交互に積層してなる。
【0008】
現在、MLCC製造工程のうち、誘電体の緻密化がなされる焼結工程は、最高1200℃以上の高温で約18時間以上の長時間で行われるので、MLCCの性能レベルと品質を完成する上で非常に重要な工程である。電極素材であるニッケル(Ni)は約800℃以上で焼結が始まるのに対し、誘電体は約1200℃以上で焼結が始まるため、誘電体が焼結される1200℃の高温ではニッケル(Ni)酸化を防止することが非常に重要である。このため、酸素分圧が約10-12レベルである還元雰囲気で電極と誘電体を同時に焼結する。ところが、還元雰囲気の高温焼結は、酸化物誘電体に酸素欠陥(oxygen vacancy)を招き、これは、ニッケル(Ni)電極と誘電体との境界面にショットキー接合(Schottky junction)を形成させて電流漏れが発生し、絶縁抵抗低下(insulation resistance degradation)が進みながら、結局としてはMLCC素子の信頼性問題につながる。しかも、長時間の誘電体高温焼結は、ニッケル(Ni)が誘電体層に拡散する問題、誘電体粒(grain)の成長問題、揮発性ドーパント(dopant)導入困難の問題などのような多い工程上の不具合を招く。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、前述した問題及び他の問題を解決することを目的とする。さらに他の目的は、マイクロ波帯域の磁場を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体層と内部電極層を高速で同時焼結できるマイクロ波誘導加熱装置を提供することにある。
【0010】
さらに他の目的は、あらかじめ定められた形状の誘電体共振器を有するマイクロ波誘導加熱装置を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)を高速で同時焼結できる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の又は他の目的を達成するために、本発明の一側面によれば、マイクロ波誘導加熱装置の透明管に一つ以上の積層セラミックキャパシター(MLCC)を装入する段階;前記マイクロ波誘導加熱装置の透明管内部を低真空状態又は不活性ガス状態に造成する段階;前記マイクロ波誘導加熱装置を用いて、あらかじめ定められた加熱速度で、常温から前記積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体焼結温度まで高速昇温させる段階;及び、前記誘電体焼結温度を一定時間維持した後、前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を自然冷却させる段階を含む、マイクロ波誘導加熱装置を用いた積層セラミックキャパシター高速同時焼結方法を提供する。
【0012】
本発明の他の側面によれば、マイクロ波が入力されるマイクロ波入力部;前記マイクロ波入力部に結合して前記マイクロ波を伝達するマイクロ波カプラー;一つ以上の伝導性素材を挿入するための貫通孔を備え、前記マイクロ波カプラーから伝達されたマイクロ波に基づいて共振モードの電磁気場パターンを生成して前記伝導性素材を誘導加熱する誘電体共振器;前記誘電体共振器を取り囲むように配置され、前記マイクロ波の外部漏れを遮断するマイクロ波遮断容器;及び、前記誘電体共振器の貫通孔に配置された伝導性素材の温度を測定する温度センサーを含むマイクロ波誘導加熱装置を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施例に係るマイクロ波誘導加熱装置及びこれを用いた積層セラミックキャパシター(MLCC)の高速同時焼結方法の効果について説明すると、次の通りである。
【0014】
本発明の実施例のうち少なくとも一つによれば、マイクロ波誘導加熱装置を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)の高温同時焼結を非常に短時間で行うことによって、従来の高温加熱炉(furnace)で長時間行われながら発生する誘電体還元、電極酸化、電極連結損失(discontinuity)などの問題を最小化させることができ、より高い性能及び耐久性を有する積層セラミックキャパシター(MLCC)を製造できるという長所がある。
【0015】
但し、本発明の実施例に係るマイクロ波誘導加熱装置及びこれを用いた積層セラミックキャパシター(MLCC)の高速同時焼結方法が達成できる効果は、以上に言及したものに限定されず、言及していない別の効果は、以下の記載から、本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者に明確に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
本発明に関する理解を助けるために詳細な説明の一部として含まれる添付図面は、本発明に対する実施例を提供し、詳細な説明と共に本発明の技術的思想を説明する。
【0017】
【
図1】本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器における電場パターン及び磁場パターンを説明するために参照される図である。
【
図2】本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器が伝導性素材で取り囲まれている場合に、当該誘電体共振器における電磁気場パターン変化と表面誘導電流を説明するために参照される図である。
【
図3】本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器が伝導性素材で取り囲まれている場合に、マイクロ波誘導加熱が可能な伝導性素材の位置を説明するために参照される図である。
【
図4】本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器の中心軸上に配置された伝導性素材の加熱を説明するために参照される図である。
【
図5】本発明の一実施例に係るマイクロ波誘導加熱装置を説明する図である。
【
図6】マイクロ波誘導加熱装置を用いてMLCCの電極層を誘導加熱する原理を説明するために参照される図である。
【
図7】マイクロ波誘導加熱装置を用いたMLCCの高速同時焼結方法を説明するフローチャートである。
【
図8】マイクロ波誘導加熱によるMLCCの高速同時焼結工程を説明するために参照される図である。
【
図9】マイクロ波誘導加熱によるMLCCの高速同時焼結工程を説明するために参照される図である。
【
図10】マイクロ波誘導加熱によるMLCCの大量焼結工程を説明するために参照される図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では添付の図面を参照して本発明について詳しく説明する。このとき、各図において同一の構成要素は可能な限り同一の符号で示す。また、既に公知された機能及び/又は構成に関する詳細な説明は省略する。以下に開示される内容は、様々な実施例に係る動作を理解する上で必要な部分を重点的に説明し、その説明の要旨を曖昧にし得る要素に関する説明は省略する。また、図面の一部の構成要素は、誇張されたり、省略されたり、又は概略的に示されてよい。各構成要素の大きさは、実際の大きさを全的に反映するものでなく、したがって、各図に描かれた構成要素の相対的な大きさや間隔によって、ここに記載される内容が限定されることはない。
【0019】
本発明の実施例を説明するとき、本発明に係る公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を却って曖昧にさせ得ると判断される場合にはその詳細な説明を省略する。そして、後述される用語は、本発明での機能を考慮して定義された用語で、それらは使用者、運用者の意図又は慣例などによって変わってよい。したがって、その定義は、本明細書全般にわたる内容に基づいて下されるべきである。詳細な説明で使われる用語は、単に本発明の実施例を記述するためのもので、決して制限的であってはならない。特に断らない限り、単数形態の表現は複数形態の意味を含む。本説明において、「含む」又は「備える」のような表現は、いずれかの特性、数字、段階、動作、要素、それらの一部又は組合せを表すためのものであり、記述された以外の一つ又はそれ以上の他の特性、数字、段階、動作、要素、それらの一部又は組合せの存在又は可能性を排除するように解釈されてはならない。
【0020】
本発明は、マイクロ波帯域の磁場を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体層と内部電極層を高速で同時焼結できるマイクロ波誘導加熱装置を提案する。また、本発明は、あらかじめ定められた形状の誘電体共振器を有するマイクロ波誘導加熱装置を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)を高速で同時焼結できる方法を提案する。
【0021】
以下、本明細書では、マイクロ波を用いた誘導加熱の対象となる伝導性薄膜及び微細ワイヤー、伝導性繊維、薄膜電極を有するチップ素子(chip device)などを総称して伝導性素材という。
【0022】
ディスプレイ、半導体素子、太陽電池、積層セラミックキャパシター(MLCC)などのような先端素子はいずれも薄膜形態の電極を有している。それらの素子は、製造工程過程において高温の熱処理によって必要な性能の素材を作らなければならないが、既存の加熱方式は、長い熱処理時間がかかるため、生産性が低く、多いエネルギー費用が消耗されるか、基板の加熱温度限界によって十分に高い温度での熱処理が不可能な場合が多い。このような薄膜形態の伝導性素材を選択的に高速で加熱できれば、既存工程を超える生産性及び素子性能を得ることができる。
【0023】
以下では、本発明の様々な実施例について、図面を参照して詳細に説明する。
【0024】
図1は、本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器における電場パターン及び磁場パターンを説明するために参照される図である。
【0025】
マイクロ波誘導加熱装置を構成する要素のうち、マイクロ波誘導加熱を具現するための最も核心的な要素は、誘電体共振器である。誘電体共振器は、通常、誘電定数(dielectric constant)値が3以上であり、損失正接(loss tangent)値が0.0005以下である誘電体を使用する。
【0026】
図1に示すように、誘電体共振器10が形成する基本共振モードの電磁気場パターンは、誘電体共振器10の中心軸を基準にして回転する電場パターン(左図)と、前記中心軸に沿って出て外郭に回って出て行き、再び中心軸に戻ってくる磁場パターン(右図)で構成される。このような誘電体共振器10の電場パターンは、中心軸における値が0になり、誘電体共振器10の外郭へと一定距離以上離れると0に近接して殆どなくなる。マイクロ波誘導加熱を具現するとき、誘電体共振器10の電磁気場形成パターンにおいて最も重要な事実は、電場は主に誘電体共振器10内で回転するループの形態で存在し、磁場は中心軸から出てきて外郭に広がって回り、再び中心軸に帰ってくるループの形態で存在するという点である。
【0027】
図2は、本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器が伝導性素材で取り囲まれている場合に、当該誘電体共振器における電磁気場パターン変化と表面誘導電流を説明するために参照される図である。
【0028】
図2に示すように、誘電体共振器20が伝導性素材21で取り囲まれている場合に、マイクロ波の電磁気場パターンは内部空間に圧縮された形態に変形される。このとき、電磁気場の一般的な境界条件によって、伝導性素材21がある面に垂直な方向の電場と、伝導性素材21がある面に並ぶ方向の磁場のみが存在し得る。結局、誘電体共振器20を伝導性素材21で取り囲む場合に、伝導性素材21では電場は存在しなく、伝導性素材21の表面に並ぶ磁場のみが存在し、その磁場によって伝導性素材21の表面に誘導電流22が発生する。このようなパターンの電磁気場は、伝導性素材21が電場による放電の危険に露出されず、磁場によってのみ誘導加熱されるようにすることができる。
【0029】
図3は、本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器が伝導性素材で取り囲まれている場合に、マイクロ波誘導加熱が可能な伝導性素材の位置を説明するために参照される図である。
【0030】
図3に示すように、誘電体共振器30が直方体状の伝導性素材(又は、伝導性薄膜)31で取り囲まれている場合に、マイクロ波誘導加熱が可能な伝導性素材31の位置は、誘電体共振器30の上下面及び側面の外郭に位置している伝導性素材31の全表面である。このような伝導性素材31の全ての位置で同時に加熱がなされてよく、いずれか一側の面でのみ加熱し、他側の面は加熱に使用しなくてもよい。
【0031】
図4は、本発明に係るマイクロ波誘導加熱を具現するための誘電体共振器の中心軸上に配置された伝導性素材の加熱を説明するために参照される図である。
【0032】
誘電体共振器40の中心軸は、外郭と同様に電場が存在しないとともに、強い磁場が存在する領域である。したがって、
図4の(a)に示すように、誘電体共振器40の中心軸に置かれた1μm又はそれ以下(又は、面抵抗0.1Ω/m
2以上になるようにする厚さ)の金属又は伝導性薄膜、微細ワイヤー、伝導性繊維、ナノ薄膜などのような伝導性素材41を効果的に加熱することができる。また、
図4の(b)に示すように、誘電体共振器40の中心軸に置かれた薄膜電極を有するチップ素子形態の伝導性素材42を効果的に加熱することができる。
【0033】
本発明に係る誘電体共振器は、上述したような原理に基づいて、マイクロ波誘導加熱の対象となる素材(すなわち、加熱対象素材)をマイクロ波帯域の磁場で加熱する。例えば、誘電体共振器の上面側、下面側、側面側、又は貫通孔の中心軸に配置された加熱対象素材をマイクロ波帯域の磁場で誘導加熱する。誘電体共振器は、円柱や六角柱形、球形、丸い角形、対称性のない所定の任意形態、中心に貫通孔がある形態、一つの共振器を垂直又は水平に分割して所定の距離だけ離隔するように配列した形態、又は複数の共振器を組み合わせた形態などで形成されてよい。以下、本実施例では、中心に貫通孔が形成された誘電体共振器を取り上げて説明する。
【0034】
一方、加熱対象素材は、1μm厚以下の金属又は伝導性薄膜、微細ワイヤー、伝導性繊維、伝導性酸化物、炭素ナノチューブ、グラフィンのようなナノ薄膜、薄膜電極を有するチップ素子(chip device)などの、マイクロメートルレベル以下の伝導性素材を含む。加熱対象素材は、平面、球面や曲面、円筒面、又はそれらの組合せの形態など、様々な形態であってよい。以下、本実施例では、マイクロ波誘導加熱の対象となる素材が積層セラミックキャパシター(MLCC)であるとして説明する。
【0035】
図5は、本発明の一実施例に係るマイクロ波誘導加熱装置を説明する図であり、
図6は、マイクロ波誘導加熱装置を用いてMLCCの電極層を誘導加熱する原理を説明するために参照される図である。
【0036】
図5及び
図6を参照すると、本発明の一実施例に係るマイクロ波誘導加熱装置100は、マイクロ波入力部110、マイクロ波カプラー120、誘電体共振器130、マイクロ波遮断容器140、温度測定ポート150、温度センサー160及び透明管170を含んでよい。一方、図示してはいないが、前記マイクロ波誘導加熱装置100は、上述した構成要素110~170の動作全般を制御するための制御装置をさらに含んでよい。
【0037】
マイクロ入力部110は、マイクロ波遮断容器140の一領域に配置され、外部のマイクロ波を前記マイクロ波遮断容器140の内部に入力する機能を担う。
【0038】
マイクロ波入力部110は、同軸導波管の形態であってよい。例えば、マイクロ波入力部110は、マイクロ波遮断容器140の一領域に結合する同軸導波管の形態であってよい。マイクロ波入力部110は、四角又は円形導波管の形態で使用されてよい。マイクロ波入力部110の形態は、マイクロ波カプラー120の形態によって決定されることが好ましい。
【0039】
マイクロ波カプラー120は、マイクロ波入力部110と結合し、前記マイクロ波入力部110から受信したマイクロ波を誘電体共振器130に伝達する機能を担う。
【0040】
マイクロ波カプラー120は、誘電体共振器130から所定距離だけ離隔して配置されるループ(loop)形状の金属であるか、或いは棒状の金属であってよく、必ずしもこれに限定されない。前記マイクロ波カプラー120は、マイクロ波入力部110の長手方向に垂直な方向に配置されるか、或いはマイクロ波入力部110の長手方向に水平な方向に配置されてよい。
【0041】
マイクロ波カプラー120は、誘電体共振器130との結合定数(coupling coefficient)に基づいて、制御装置(図示せず)の制御命令によって誘電体共振器130との離隔距離を調節し(例えば、カプラー端部が所定のガイドに沿って移動可能)、前記誘電体共振器130に伝達されるマイクロ波の量を調節することができる。
【0042】
誘電体共振器130は、マイクロ波誘導加熱を具現するための電磁気場パターンを生成し、加熱対象素子(すなわち、積層セラミックキャパシター(MLCC)200に誘導電流を発生させる機能を担う。このとき、前記誘電体共振器130は、基本共振モードでの電場パターン及び磁場パターンを生成することができる。
【0043】
誘電体共振器130の全体的な形状は、円筒、直方体、立方体などの柱状に形成されてよい。また、誘電体共振器130は、積層セラミックキャパシター(MLCC)200が実装された透明管170を収容するための貫通孔が中央部分に配置される形態で形成されてよい。このような誘電体共振器130の中心軸は、外郭と同様に電場が存在しないとともに、強くて均一な磁場が存在する領域である。したがって、誘電体共振器130の中心軸方向に形成されたマイクロ波帯域の磁場を用いて、誘電体共振器130の貫通孔に配置された積層セラミックキャパシター(MLCC)200を均一に加熱させることができる。
【0044】
マイクロ波遮断容器140は、誘電体共振器130を取り囲むように配置され、マイクロ波の外部漏れを遮断する機能を担う。また、マイクロ波遮断容器140は、制御装置の制御命令によって、誘電体共振器130との離隔距離を調整し(例えば、側壁の一部/全部が所定のガイドに沿って移動可能)、誘電体共振器130の共振モード時に電磁気場の共振周波数を調整する機能を有し得る。
【0045】
マイクロ波遮断容器140の全体的な形状は、円筒、直方体、立方体などの柱状に形成されてよい。また、マイクロ波遮断容器140は金属材質で形成されてよい。マイクロ波遮断容器140は、誘電体共振器130の製作精度の限界によって発生する共振周波数の誤差又は供給されるマイクロ波の周波数変化に対処できる道具として用いることができる。
【0046】
マイクロ波遮断容器140は、マイクロ波入力部110が結合する第1開口部と、透明管170と結合する第2開口部と、温度測定ポート150と結合する第3開口部を含んでよい。このとき、前記第1~第3開口部は、マイクロ波漏洩が発生しないように遮断周波数(cutoff frequency)設計に基づいて製造されてよい。これにより、前記第1~第3開口部は、特定周波数のマイクロ波を通過できなくするチョークキャビティ(choke cavity)形の開口部であってよい。
【0047】
温度測定ポート150は、マイクロ波遮断容器140の一領域に配置され、温度センサー160から照射される赤外線を積層セラミックキャパシター(MLCC)200の方向にガイドする機能を担う。
【0048】
温度センサー160は、温度測定ポート150の隣接領域に設置され、赤外線(IR)を用いて積層セラミックキャパシター(MLCC)200の温度を測定する機能を担う。
【0049】
透明管170は、一種のローダー(loader)で、積層セラミックキャパシター(MLCC)200を移動させ、その加熱部位が誘電体共振器130から所定の距離を置いて位置するようにローディング(loading)したり、又は誘導加熱の終わった積層セラミックキャパシター(MLCC)200を、加熱位置から除去されるようにアンローディング(unloading)する機能を担う。また、透明管170は、積層セラミックキャパシター(MLCC)200を収容するための空間を備え、MLCC焼結待機環境を造成及び保持する機能を担う。
【0050】
透明管170は、マイクロ波遮断容器140の一領域に挿入されたり、或いはマイクロ波遮断容器140から除去されるように形成されてよい。透明管170は、誘電体共振器130の中心部に形成された貫通孔を横切るように配置されてよい。透明管170は、耐熱性に優れたクォーツ(quartz)材質で構成されてよく、必ずしもこれに限定されない。
【0051】
積層セラミックキャパシター(MLCC)200は、透明管170を通じて外部から装入されてよい。また、積層セラミックキャパシター(MLCC)200は、1300℃以上の高温に加熱されるため、アルミナなどのように、高温によく耐えるとともにマイクロ波を吸収しない素材でホルダー(holder)を作って積層セラミックキャパシター(MLCC)200を装入し移送させる用途に用いることができる。
【0052】
マイクロ波誘導加熱装置100は、マイクロ波帯域の磁場を用いて伝導性素材に誘導電流を発生させ、それによる抵抗熱で当該伝導性素材を加熱する。例えば、
図6に示すように、積層セラミックキャパシター(MLCC)200にマイクロ波磁場610を印加すると、ニッケル(Ni)金属からなる内部電極層250に、回転する誘導電流620を発生させて加熱することができる。一般的な積層セラミックキャパシターの内部電極層の厚さは1μm以下であるので、マイクロ波誘導加熱方式で非常に効果的に加熱することができ、内部電極層間の誘電体層の厚さは数μm以下であるので、誘電体層が直接加熱されなくても、内部電極層で発生した熱はほぼ同時に誘電体層に伝導されてほぼ同一の温度となる。
【0053】
以上詳述したように、本発明の一実施例に係るマイクロ波誘導加熱装置は、マイクロ波帯域の磁場を用いて、誘電体共振器の貫通孔に配置された積層セラミックキャパシター(MLCC)の内部電極層を選択的に加熱することができる。また、マイクロ波誘導加熱装置は、マイクロ波帯域の磁場を用いて、積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体層と内部電極層を高速で同時焼結することができる。
【0054】
既存の加熱炉(furnace)を用いる長時間の焼結工程において、積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体は通常、1200℃程度で焼結(焼成)される。これに対し、本発明に係るマイクロ波誘導加熱方式の焼結工程では、積層セラミックキャパシター(MLCC)を速く焼結させるために、最高1300℃以上の温度まで昇温させる。マイクロ波誘導加熱による積層セラミックキャパシター(MLCC)の焼結工程は、次のように行われてよい。
【0055】
図7は、マイクロ波誘導加熱装置を用いたMLCCの高速同時焼結方法を説明するフローチャートであり、
図8は、マイクロ波誘導加熱によるMLCCの高速同時焼結工程を説明するために参照される図である。以下、本実施例で説明する同時焼結工程は、積層セラミックキャパシター(MLCC)の製造工程のうち、バインダーバーンアウト(Binder burnout)工程後に実施される工程を意味する。
【0056】
図7及び
図8を参照すると、あらかじめ定められた形状の誘電体共振器を有するマイクロ波誘導加熱装置を備える(S710)。このとき、前記マイクロ波誘導加熱装置は、積層セラミックキャパシター(MLCC)を収容するための透明管を含んでよい。前記透明管は一種のローダー(loader)で、積層セラミックキャパシター(MLCC)を移動させてその加熱部位が誘電体共振器から所定の距離を置いて位置するようにローディングしたり、又は誘導加熱の終わった積層セラミックキャパシター(MLCC)を、加熱位置から除去されるようにアンローディングする機能を担う。
【0057】
マイクロ波誘導加熱装置の透明管に積層セラミックキャパシター(MLCC)を装入する(S720)。ここで、前記積層セラミックキャパシター(MLCC)を構成する複数の誘電体層及び複数の内部電極層は粒子状態であってよい。
【0058】
マイクロ波誘導加熱装置の透明管内部を低真空状態又は不活性ガス状態に造成する(S730)。ここで、前記低真空状態の圧力は、0.1トール(Torr)以下であってよい。
【0059】
その後、マイクロ波誘導加熱装置を用いて、あらかじめ定められた加熱速度(又は、昇温速度)で常温から積層セラミックキャパシター(MLCC)の誘電体層焼結が始まる温度(すなわち、誘電体焼結開始温度、例えば、1200℃)まで速く昇温させる(S740)。ここで、前記あらかじめ定められた加熱速度は、5℃/s~200℃/sの範囲内で適切に選択されてよく、必ずしもこれに限定されない。
【0060】
積層セラミックキャパシター(MLCC)の加熱速度を制約するものは、残留バインダーがガス化しながらできる圧力によるクラック(crack)の発生であるが、初期加熱速度を一定速度以下に制御することにより、クラックの発生を防止することができる。積層セラミックキャパシター(MLCC)の内部電極層は、誘電体層の焼結温度よりも低い約800℃程度で焼結が始まって収縮が起きるが、誘電体層よりも先に内部電極層の収縮が起きることによって発生する電極連結損失の問題を最小化するためには、極力速く誘電体焼結温度まで昇温することが重要である。
【0061】
積層セラミックキャパシター(MLCC)の温度が誘電体焼結開始温度に到達すれば、マイクロ波誘導加熱装置を用いて前記誘電体焼結開始温度を一定時間維持する(S750)。ここで、誘電体焼結開始温度が一定に維持された時間は1秒~10分までの範囲のから適宜選択されてよく、必ずしもこれに限定されない。誘電体層の焼結が始まる温度になってからは、MLCC全体が均一に安定して焼結できるように制御することが重要であり、よって、一定時間の間に温度を維持するとMLCC内部の温度偏差を最小化することができる。
【0062】
最後に、誘電体焼結開始温度で一定時間維持した後、マイクロ波誘導加熱を中止し、積層セラミックキャパシター(MLCC)を自然冷却させる(S760)。本実施例では、積層セラミックキャパシター(MLCC)の内部電極層酸化がなされる約800℃以上の温度で留まる時間(T)を10分以内にすることが好ましい。
【0063】
一方、他の実施例として、
図9に示すように、積層セラミックキャパシター(MLCC)の温度が誘電体焼結開始温度に到達すれば、前記誘電体焼結開始温度を一定時間維持した後、あらかじめ定められた加熱速度で最高焼結温度(例えば、1300℃)まで昇温させることができる。その後、最高焼結温度で一定時間維持した後にマイクロ波誘導加熱を中止し、積層セラミックキャパシター(MLCC)を自然冷却させることができる。最高焼結温度では、熱が発生する内部電極層から最も離れたMLCCの縁部分の誘電体層まで完全に焼結される。
【0064】
MLCCチップが停止した状態ではマイクロ波の出力を制御して加熱温度を制御することができる。しかし、積層セラミックキャパシター(MLCC)を大量焼結工程で行わなければならない場合には、
図10に示すように、積層セラミックキャパシター(MLCC)を一列に連続装入して誘電体共振器に入りながら加熱が始まり、積層セラミックキャパシター(MLCC)を移動させながら前記積層セラミックキャパシター(MLCC)の温度を常温から誘電体焼結温度まで高速で上昇させ、誘電体共振器の終わり部分では温度センサーで積層セラミックキャパシター(MLCC)の温度をモニターしながら正確に一定温度を維持できるようにマイクロ波出力を制御し、積層セラミックキャパシター(MLCC)が誘電体共振器を離れながら自然冷却されるようにし得る。
【0065】
本発明の実施例に係るマイクロ波誘導加熱による積層セラミックキャパシター(MLCC)の高速同時焼結方法は、既存の高温加熱炉(furnace)で18時間以上行われながら発生する誘電体還元、電極酸化、電極連結損失(discontinuity)の問題などを最小化させ、より高い性能及び耐久性を有する積層セラミックキャパシター(MLCC)を製造することができる。例えば、電場用積層セラミックキャパシター(MLCC)をマイクロ波誘導加熱技術によって1分以内に焼結工程を行った場合に、内部電極層の連結度(continuity)が99%以上とほぼ完壁な状態を示し、外部電極による静電(capacitance)測定では誘電正接(dissipation factor)の値が28%レベルに減少する性能向上を示した。また、非常に短い時間に積層セラミックキャパシター(MLCC)のみを高温加熱するので、既存加熱炉(furnace)に比べて遥かに少ないエネルギー使用だけでも焼結工程を行うことができ、装置の占める空間も遥かに小さいので、大型空間を確保しなければならない既存方式に比べて関連費用の消耗が著しく少ない。
【0066】
以上では、本発明が具体的な構成要素などのような特定事項、及び限定された実施例及び図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、本発明の属する分野における通常の知識を有する者であれば、本発明の本質的な特性から逸脱しない範囲で様々な修正及び変形が可能であろう。したがって、本発明の思想は、説明された実施例によって限定されてはならず、後述する特許請求の範囲の他、この特許請求の範囲と均等又は等価の変形がある全ての技術思想は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈されるべきであろう。
【国際調査報告】