(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】プログラミング可能な光ファイバ遅延線
(51)【国際特許分類】
G01S 7/40 20060101AFI20240105BHJP
G01S 13/931 20200101ALN20240105BHJP
【FI】
G01S7/40 195
G01S7/40 186
G01S13/931
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536063
(86)(22)【出願日】2021-12-14
(85)【翻訳文提出日】2023-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2021085628
(87)【国際公開番号】W WO2022129005
(87)【国際公開日】2022-06-23
(32)【優先日】2020-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】506012213
【氏名又は名称】ディスペース ゲー・エム・ベー・ハー
【氏名又は名称原語表記】dSPACE GmbH
【住所又は居所原語表記】Rathenaustr.26,D-33102 Paderborn, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ワトキンズ
【テーマコード(参考)】
5J070
【Fターム(参考)】
5J070AC02
5J070AC06
(57)【要約】
電磁波に基づく周囲センサのための、空間距離をシミュレートするためのプログラミング可能な光ファイバ遅延線であって、プログラミング可能な光ファイバ遅延線は、少なくとも3つの光切替スイッチを有し、これらの切替スイッチは、複数の光ファイバ区分によって相互に接続されており、これにより、複数の異なる遅延値を有する1つの一貫した遅延線が形成されており、これらの複数の異なる遅延値は、切替スイッチのスイッチ位置に依存しており、第1の切替スイッチの1つの端子は、少なくとも1つの第2の切替スイッチを迂回しながら第3の切替スイッチに接続されている、プログラミング可能な光ファイバ遅延線。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁波に基づく周囲センサ(SEN)のための、空間距離をシミュレートするためのプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)であって、前記プログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)は、少なくとも3つの光切替スイッチを有し、
第1の光ファイバ遅延要素(A)は、第1の切替スイッチ(FS1)の第1の端子を第2の切替スイッチ(FS2)の第1の端子に接続し、
第2の光ファイバ遅延要素(B)は、前記第2の切替スイッチ(FS2)の第2の端子を第3の切替スイッチ(FS3)の第1の端子に接続し、
第3の光ファイバ遅延要素(C)は、前記第3の切替スイッチ(FS3)が前記第2の切替スイッチ(FS2)を迂回しながら前記第1の切替スイッチ(FS1)に接続されるように、前記第3の切替スイッチ(FS3)の第2の端子を前記第1の切替スイッチ(FS1)の第2の端子に接続し、
前記第1の切替スイッチ(FS1)の第3の端子は、前記第2の切替スイッチ(FS2)の第3の端子に接続されており、
前記第2の切替スイッチ(FS2)の第4の端子は、前記第3の切替スイッチ(FS3)の第3の端子に接続されており、
前記第1の切替スイッチ(FS1)の第4の端子および前記第3の切替スイッチ(FS3)の第4の端子は、前記遅延線の入力ポートまたは出力ポート(Port1,Port2)として構成されており、
これにより、光信号を入射/出射させるための信号インターフェース(Port1,Port2)同士の間に、複数の異なる遅延値を有する1つの一貫した遅延線が形成されており、前記遅延値は、前記切替スイッチのスイッチ位置によって与えられている、
プログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項2】
前記光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3)は、複数のスイッチング状態を有し、
前記遅延線の遅延値は、前記光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3)をコンピュータ支援によって駆動することによって設定可能であり、
前記光切替スイッチの駆動により、複数の可能なスイッチング状態のうちの1つをそれぞれセットすることができる、
請求項1記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項3】
前記光ファイバ遅延要素(A,B,C)は、規定された長さを有し、
前記長さを選択することによって、設定可能な前記遅延値の増分に影響を与えることができる、
請求項1または2記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項4】
前記光ファイバ遅延要素(A,B,C)は、それぞれ異なる長さを有する、
請求項1から3までのいずれか1項記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項5】
前記プログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)は、第1の列の光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7)と、第2の列の光切替スイッチ(FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)と、を含み、
前記第1の列の切替スイッチ(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7)は、それぞれ2つの光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7)の第1の端子同士を光遅延要素(A,B,C,D,E,F)によって相互に接続し、かつそれぞれ2つの光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7)の第2の端子同士を接続することにより、端子対を接続することによってそれぞれ整列させられており、
前記第2の列の切替スイッチ(FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)は、それぞれ2つの光切替スイッチ(FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)の第1の端子同士を光遅延要素(G,H,I,J,K,L,M,N)によって相互に接続し、かつそれぞれ2つの光切替スイッチ(FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)の第2の端子同士を接続することにより、端子対を接続することによってそれぞれ整列させられており、
前記遅延線(DEL)は、分配器切替スイッチ(FS17)を有し、前記分配器切替スイッチ(FS17)の第1の端子は、前記第2の列の光切替スイッチ(FS16)の第3の端子に接続されており、
前記分配器切替スイッチ(FS17)の第2の端子は、前記第1の列の光切替スイッチが前記第2の列(FS2)を迂回しながら前記分配器切替スイッチ(FS17)に接続可能となるように、前記第1の列(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7)のブレークアウトスイッチとして与えられた光切替スイッチ(FS7)の第3の端子に接続されており、
前記第1の列の光切替スイッチ(FS7)の第4の端子が、前記第2の列の光切替スイッチ(FS8)の第3の端子に接続されていることにより、前記光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7)の前記第1の列は、前記光切替スイッチ(FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)の前記第2の列に接続されており、
前記第1の列の光切替スイッチ(FS1)の第3の端子および前記分配器切替スイッチ(FS17)の第3の端子は、光信号を入射/出射させるための信号インターフェース(Port1,Port2)として構成されている、
請求項1から4までのいずれか1項記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項6】
前記遅延線(DEL)の第1の動作モードでは、前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)の前記第3の端子が前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)の前記第1の端子または前記第2の端子に接続されるように、前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)のスイッチング状態をセットすることにより、光信号が前記第2の列の光切替スイッチ(FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)を迂回しながら前記遅延線(DEL)を導通可能となるように、前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)が駆動されている、
請求項5記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項7】
前記遅延線(DEL)の第2の動作モードでは、前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)の前記第4の端子が前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)の前記第1の端子または前記第2の端子に接続されるように、前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)のスイッチング状態をセットすることにより、光信号が前記第1の列および前記第2の列の光切替スイッチ(FS1,FS2,FS3,FS4,FS5,FS6,FS7,FS8,FS9,FS10,FS11,FS12,FS13,FS14,FS15,FS16)を導通可能となるように、前記ブレークアウト切替スイッチ(FS7)が駆動されている、
請求項6記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項8】
前記光ファイバ遅延要素(A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,N)のうちの少なくとも2つは、同じ長さを有する、
請求項1から7までのいずれか1項記載のプログラミング可能な光ファイバ遅延線(DEL)。
【請求項9】
電磁波に基づく周囲センサ(SEN)をテストするためのターゲットシミュレータ(RTS)であって、
前記ターゲットシミュレータ(RTS)は、請求項1から8までのいずれか1項記載の光ファイバ遅延線(DEL)を含み、さらに、少なくとも1つのシミュレータ受信要素(SIM_ANT)と、少なくとも1つのシミュレータ放射要素(SIM_ANT)と、コンピュータシステム(COM)と、を含み、
前記光ファイバ遅延線(DEL)は、一方の側では前記シミュレータ受信要素(SIM_ANT)に接続されており、他方の側では前記シミュレータ放射要素(SIM_ANT)に接続されており、
前記周囲センサの走査信号(SSEN)は、周囲センサ受信要素(S_ANT)によって受信可能であり、前記ターゲットシミュレータは、前記走査信号(SSEN)または周波数変調された走査信号(SSEN’)を前記光ファイバ遅延線(DEL)によって遅延させるように構成されており、前記コンピュータシステム(COM)によって前記切替スイッチのスイッチング状態と、ひいては前記光ファイバ遅延線(DEL)の遅延値と、に影響を与えることができ、
前記ターゲットシミュレータ(RTS)は、遅延させられた前記走査信号(SSIM)を前記シミュレータ放射要素(SIM_ANT)によって前記周囲センサ受信要素(S_ANT)に送信するように構成されている、
ターゲットシミュレータ(RTS)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラミング可能な光ファイバ遅延線と、プログラミング可能な光ファイバ遅延線を備えたターゲットシミュレータと、に関する。
【背景技術】
【0002】
周囲センサとは、送信信号を放射するための少なくとも1つのセンサ放射要素と、反射信号を受信するためのセンサ受信要素とを備えた電子制御装置である。この場合、この周囲センサは、走査原理に即して電磁波によって動作し、すなわち、この周囲センサは、電磁的な送信信号を送出し、周囲オブジェクトにおいて反射された反射信号を記録し、この反射信号から周囲オブジェクトの距離および/または速度とさらなる特性とに関する推測を引き出す。これらのセンサは、主としてレーダセンサであるが、ライダセンサをテストすることも完全に可能である。レーダセンサとライダセンサとは、基本的に、使用される電磁放射の周波数の点で異なっているだけである。
【0003】
上位概念による周囲センサは、例えば、緊急制動(AEB-Automatic Emergency Brake)、距離制御(ACC-Adaptive Cruise Control)、および車線変更支援(LCS-Lane Change Support)のために車両周囲から測定データを取得するために使用される。安全性に関連するこれらの自動制御機能は、車両操縦に適時に介入して衝突を回避するために、例えば交通参加者のような接近する障害物または車両周囲にある定置のオブジェクトの位置および速度に関するリアルタイムの情報を必要とする。
【0004】
典型的な周囲センサは、1つまたは複数の放射・受信要素、すなわち、例えばレーダアンテナと、検出されたレーダ信号を測定および評価するためのロジックと、車両の他の制御装置へのインターフェースと、を含む。レーダ装置は、無線周波数範囲内の適切な電磁波(ここでは送信信号)を自身の周囲の所定の方向に送出し、反射されたエコー信号(ここでは反射信号)を待機する。
【0005】
この種類のセンサは、テストのために比較的手間がかかる。従来技術から、制御装置のテストの分野で近年使用されているようなテストベンチが公知である。この種類のテストベンチは、例えば自動車の制御装置をテストするために使用される。この場合、制御装置は、仮想的な周囲オブジェクトが含まれているシミュレートされた周囲シーンに曝され、その反応が評価される。一般的なテスト状況は、周囲センサの製造ラインの最後における機能テストおよび較正タスクでもある。このテスト状況においてできるだけ現実に即した状況を実現するために、センサ制御機器がテスト状況と「本物の」測定状況とを区別することができなくなるように、センサ制御機器を現実のセンサ信号によって刺激することが求められている。この場合、シミュレートされた信号の精度に対する要求は、高くなっている。
【0006】
このために、リアルタイム可能なシミュレータシステムによってシミュレートされた周囲シーンが計算され、このシミュレートされた周囲シーンから、ターゲットシミュレータによって物理的な信号が生成され、テストされるべき制御装置は、この物理的な信号に曝される。このような物理的なエコー信号を送出するためのトリガは、制御装置から送出された送信信号がテストベンチ側で受信されることである。
【0007】
テストされるべき周囲センサが、受信されたシミュレートされたエコー信号に基づいて所望の測定結果を達成するためには、エコー信号に、例えばドップラーシフトのような他のパラメータの他に時間的な遅延を加えなければならない。周囲センサの距離測定は、伝搬時間原理に基づいており、周囲センサは、放射から反射信号の検出までの信号伝搬時間を測定し、この信号伝搬時間から、検出されたオブジェクトの距離を計算する。
【0008】
したがって、周囲センサをテストするために使用されるターゲットシミュレータの1つの機能は、周囲センサによって放射された走査信号を遅延させることである。このために、種々異なる技術を使用することができ、特に有利な技術は、光ファイバ遅延線における光ファイバ線路による延長された信号経路によって遅延させることである。
【0009】
このような遅延線は、例えば国際公開第93/07508号から公知である。距離をシミュレートするために信号を遅延させるための種々異なる解決手段における典型的な困難は、できるだけ小さい最小のシミュレート可能な距離を規則的に提供すること、大きいシミュレート可能な総距離を提供すること、および両方の終端点の間でシミュレート可能な距離の、小さい刻みの分解能を提供することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、従来技術を発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題は、請求項1の特徴を有するプログラミング可能な光ファイバ遅延線と、請求項9の特徴を有するターゲットシミュレータと、によって解決される。
【0012】
本発明のさらなる有利な実施形態は、従属請求項の対象である。
【0013】
本発明による光ファイバ遅延線は、相前後して接続された複数の光切替スイッチを有する。この場合、光切替スイッチとは、一般的に、光信号を入射させるための4つの端子を有する2×2スイッチとして理解されるべきであり、これらの端子は、スイッチの上方および下方に対になって配置されている。この場合、そのような光切替スイッチは、最大で5つの異なるスイッチング状態を有し、すなわち、上方の端子同士または下方の端子同士がそれぞれ一続きに接続されている(「バー状態」)か、または上方の端子と下方の端子とが交差状でそれぞれ交番的に2つの向き(左上から右下へ、またはその逆の向き)で接続されていて、最後の2つのバリエーションの交差状の接続が同時に実現されている(「クロス状態」)。この場合、「上方」および「下方」という用語が、鏡像対称のトポロジーを説明するために任意に選択されていることに留意すべきである。したがって、これらの表現は、スイッチが地表に対してどのように配置されているかには関係がない。同様に、切替スイッチの他のバリエーションも使用可能であり、上に挙げた全てのスイッチング状態を使用する必要はないことにも留意すべきである。
【0014】
光切替スイッチの上述した端子は、脚部または「ピグテール」とも称される。これらの端子は、光信号をスイッチに入射させることができる光結合要素を備えた光ファイバ線路の短片を含む。これらの脚部の長さは、光遅延線の総遅延に寄与し、ひいては最小限に加えることができる遅延を増大させるという点で、本発明にとって重要な役割を果たす。したがって、このような構造の最適化目的は、常に、遅延を最小限に設定しながら全長をできるだけ短く抑えることである。したがって、この設定において遅延線に配置されているスイッチの個数を、最小化することが求められている。
【0015】
ここで、遅延線は、相前後して接続された複数の光切替スイッチから構成されている。これらのスイッチは、簡単に言えば1つの列を形成する。隣り合って位置する脚部は、列の一方の側で、例えば下方または上方の側で、相互に直接的に接続される。ここでの「下方/上方」という表現は、上述した定義に対応する。列のそれぞれ他方の側は、所定の長さの光ファイバ遅延要素によって相互に接続されている。
【0016】
ここで、この列に位置する外側の光切替スイッチは、遅延線の入力部または出力部を形成している。第1の切替スイッチを、第2の切替スイッチを迂回しながら第3の切替スイッチに接続することを、所定の長さの遅延要素によって実施することができるか、または直接的に端子同士を接続することによって実施することもできる。この方式の利点は、このように迂回することによってスイッチの総数を削減することができること、または少なくとも、シミュレート可能な最小遅延を小さくすることができることである。
【0017】
ここで、遅延線の機能方式は、光切替スイッチのスイッチング状態をセットすることによって遅延長さの種々の組み合わせを設定可能にすることである。この場合、これらのスイッチング状態は、コンピュータシステムによってセットされ、このコンピュータシステムは、適切なデータ接続部を介して光切替スイッチに接続されており、切替スイッチのスイッチング状態に影響を与えることができる。
【0018】
遅延線を設計する際には、種々異なるスイッチング状態をスイッチングすることにより、所望の最小遅延値から最大遅延値まで所望の種々異なる遅延値が設定可能となるように、光ファイバ遅延要素の長さが規定される。この場合、使用されるスイッチの個数により、遅延増分の数は確かに増大するが、遅延線によっていずれにせよ存在する遅延の大きさも増大するということに留意すべきである。
【0019】
本実施形態では、第1のスイッチは、第2のスイッチを迂回しながら所定の長さを有する遅延要素によって第3のスイッチに接続される。この場合、1つまたは複数のスイッチを迂回することができる。
【0020】
好ましい実施形態では、光ファイバ遅延要素を遅延線の中に接続すること、または遅延線から出して切断することにより、プログラミング可能な遅延線の遅延値を設定することが可能であり、この場合、光切替スイッチは、コンピュータ支援によって駆動され、光切替スイッチの所望のスイッチング状態をセットすることが可能である。
【0021】
好ましい実施形態では、遅延値の所望の増分を設定することが可能となるように、プログラミング可能な光ファイバ遅延線の長さを選択することによって、プログラミング可能な光ファイバ遅延線の設定可能な遅延値が所期のように規定される。
【0022】
電磁波に基づく周囲センサのための、空間距離をシミュレートするための光ファイバ遅延線の1つの実施形態では、光ファイバ遅延線は、少なくとも3つの光切替スイッチを有し、これらの切替スイッチは、複数の光ファイバ区分によって相互に接続されており、これにより、複数の異なる遅延値を有する1つの一貫した遅延線が形成されており、これらの複数の異なる遅延値は、切替スイッチのスイッチ位置に依存しており、第1の切替スイッチの1つの端子は、少なくとも1つの第2の切替スイッチを迂回しながら第3の切替スイッチに接続されている。
【0023】
本実施形態の利点は、最小遅延を設定する際に、切替スイッチの個数を、従来技術における通常の個数よりも少なく抑えることができることである。
【0024】
本発明の好ましい実施形態によれば、プログラミング可能な光ファイバ遅延線は、第1の集合の光ファイバ遅延要素を有し、それぞれ1つの光ファイバ遅延要素が、それぞれ2つの切替スイッチを相互に接続する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態によれば、光遅延線は、第1の列の光切替スイッチと、第2の列の光切替スイッチと、から構成されている。この場合、1つのスイッチがブレークアウトスイッチの機能を引き受けており、分配器切替スイッチが設けられている。ブレークアウトスイッチおよび分配器切替スイッチも、全ての他のスイッチと同様に、光切替スイッチである。ブレークアウトスイッチおよび分配器切替スイッチは、第1の列および第2の列の全てのスイッチを信号が通過するように、または第1の個数の切替スイッチだけを信号が通過するように、光ファイバ遅延線に接続されている。このことにより、多数の異なる遅延値をスイッチングすることができ、それでもなお最小の総遅延、すなわちプログラミング可能な光ファイバ遅延線の最小遅延値が達成されるという利点がもたらされる。従来技術から、N個の異なる遅延要素を備えた遅延線に対してN+1個の切替スイッチを使用する必要があり、その場合、これら全ての切替スイッチが最小可能遅延に寄与しているということが知られている。本発明の利点は、ブレークアウトスイッチまでの切替スイッチだけが最小遅延に寄与する一方で、遅延線は、全体として格段により多数の切替スイッチを有すること、すなわち、第1の個数の切替スイッチと第2の個数の切替スイッチとを一緒に有することである。
【0026】
この場合、遅延線の中断部の位置の選択は、遅延線の正確な構成に依存している。このために、設定可能な遅延値の刻み幅に関してどのような要求が課されているのかを考慮する必要がある。ここから、端子同士を直接的に相互に接続している接続部(「ピグテール」)の長さに基づいて、ブレークアウトスイッチの統計的に最適な位置が判明する。
【0027】
この場合、プログラミング可能な光ファイバ遅延線は、第1の列の光切替スイッチと、第2の列の光切替スイッチと、を有する。第1の列の切替スイッチは、それぞれ2つの光切替スイッチの2つの端子同士を光遅延要素によって相互に接続することにより、端子対を接続することによってそれぞれ整列させられている。追加的に、これらの光切替スイッチのそれぞれ2つのさらなる端子が、例えば各自のピグテールの接続部を介してできるだけ直接的に接続されている。同じことが第2の列にも当てはまり、すなわち、第2の列の切替スイッチも、それぞれ2つの光切替スイッチの第1の端子同士を光遅延要素によって相互に接続し、かつそれぞれ2つの光切替スイッチの第2の端子同士を接続することにより、端子対を接続することによってそれぞれ整列させられている。
【0028】
この場合、遅延線は、第1の列にも第2の列にも分類されていない分配器切替スイッチを有する。この場合、分配器切替スイッチの第1の端子は、第2の列の光切替スイッチの第3の端子に接続されており、分配器切替スイッチの第2の端子は、第1の列の光切替スイッチが第2の列を迂回しながら分配器切替スイッチに接続可能となるように、第1の列のブレークアウトスイッチとして与えられた光切替スイッチの第3の端子に接続されている。すなわち、換言すれば、分配器切替スイッチは、両方の列に接続されている。
【0029】
さらに、第1の列の光切替スイッチの第4の端子が、第2の列の光切替スイッチの第3の端子に接続されていることにより、光切替スイッチの第1の列は、光切替スイッチの第2の列に接続されており、第1の列の光切替スイッチの第3の端子および分配器切替スイッチの第3の端子とは、光信号を入射/出射させるための信号インターフェースとして構成されている。
【0030】
本発明の好ましい実施形態によれば、複数の光ファイバ遅延要素のうちの、同じ長さを有する2つの光ファイバ遅延要素が選択される。この方式は、光ファイバ区分の製造が、所望の刻み幅の範囲内にある不正確さを受けているという認識に基づいている。同じ長さを有する2つの遅延要素を選択することは、最大遅延に関して課された要求が、スイッチの個数および選択される遅延要素によって達成することができる要求よりも小さい場合に有用であり得る。目的は、切替スイッチの複数のスイッチング状態の組み合わせによって、同じ設定された総遅延を達成することである。その場合、比較的大きな遅延の範囲内で2つの遅延要素を複製することにより、刻み幅の精度とシミュレートされた距離の精度とに関する所望の要求が満たされるように、遅延線を使用前に較正することが可能となる。このために、遅延線によって可能となる全ての組み合わせが設定されて、テスト信号が印加され、順次に測定される。この場合、テスト信号は、外部の装置によって生成および測定される。その後、測定結果が遅延の大きさに応じて選別され、選択された(正確な)遅延を設定することが可能となるように、遅延線がプログラミングされる。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によれば、遅延線は、ターゲットシミュレータにおいて使用される。極めて一般的には、テストされるべき周囲センサは、レーダ距離センサ、超音波センサ、またはライダセンサであってよい。ターゲットシミュレータは、適切なシミュレータ放射・受信要素を有する。レーダ距離センサの場合には、これら2つの要素が、シミュレータ側のレーダアンテナによって与えられている。さらに、テストされるべき周囲センサによって放射されてシミュレータ受信要素によって受信された走査信号を中間周波数へとダウンコンバートするダウンコンバージョンミキサと、電気的な中間周波数信号を光信号に変換するためのフォトカプラと、が設けられている。この信号を、本発明の遅延線に入射させることができ、光切替スイッチのプログラミング制御された設定によって、この信号に所望の遅延を加えることができる。さらに、遅延させられた信号を電気的な中間周波数信号に変換することができるさらなるフォトカプラが設けられている。さらに、オプションとして、信号を減衰または増幅することができる増幅器を設けることができる。このようなコンポーネントの利点は、より現実に即したエコー信号を生成することができることである。したがって、例えば、離れて位置するオブジェクトは、通常、より近傍に位置するオブジェクトよりも弱いエコー信号によって検出される。すなわち、増幅/減衰コンポーネントを用いることにより、シミュレートされたエコー信号をより現実に即するように生成することができる。さらに、テストされるべき周囲センサに対する相対速度をシミュレートするためにドップラー周波数を信号に印加するように構成されたドップラー発生器を設けることができる。さらに、信号を中間周波数からRF周波数へとアップコンバートし、シミュレータ放射要素によって放射するために提供するアップコンバージョンミキサが設けられている。ここに記載したコンポーネントの順序は、必ずしもそのように遵守されなければならないわけではなく、他の組み合わせも同様に考えられる。ドップラー発生器とアップコンバージョンミキサとを1つのコンポーネントにおいて実現してもよい。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、ターゲットシミュレータは、自己テスト機能を有する。この場合、ターゲットシミュレータは、テスト信号生成コンポーネントを有し、このテスト信号生成コンポーネントは、テスト信号を生成して、ターゲットシミュレータの内部の信号経路における所定の箇所で(例えば、電気信号を光信号に変換するフォトカプラにおいて、またはダウンコンバージョンミキサにおいて)入射させるように構成されている。テスト信号は、例えばレーザまたは電気信号源であってよい。さらに、テスト信号を測定して、このテスト信号の信号伝搬時間を特定する信号検出コンポーネントが設けられている。この測定は、信号経路における種々異なる箇所で、例えば、光信号を電気信号に変換するフォトカプラにおいて、またはアップコンバージョンミキサにおいて実施可能である。自己テスト機能の利点は、ターゲットシミュレータの使用時に、遅延線によって提供される遅延値が所望の値であるかどうかをいつでも確認することができることである。装置の動作中、シミュレートされたエコー信号を歪曲する可能性のある内部コンポーネントの変化が、時間に伴って生じる可能性がある。とりわけ、生産経路の最後のテスト(“End of line”テスト)では、シミュレーション信号の高い精度および信頼性が重要な役割を果たす。なぜなら、周囲センサは、基本的に、セーフティクリティカルな機能を有しているからである。テスト信号を、ターゲットシミュレータの信号経路における種々異なる箇所で供給および測定することが可能であることにより、テスト品質を不変に維持するフレキシブルかつ時間経済的な手段が提供される。
【0033】
本発明の好ましい実施形態では、ターゲットシミュレータは、テストベンチ構造に組み込まれている。ターゲットシミュレータは、ターゲットシミュレータのシミュレータ放射要素を、テストされるべき周囲センサによって知覚される風景内における所定の位置へと移動させ、これらの位置から出発して、テストされるべき周囲センサによってエコー信号を知覚することができるようにするための手段をさらに含む。このことは、テストされるべき周囲センサを、静止配置されたシミュレータ放射要素に対して相対的に移動/回転させることにより保証可能であるが、静止配置されたテストされるべき周囲センサに対して相対的にシミュレータ放射要素を移動させることによっても、または風景内に配置された複数のシミュレータ放射要素を駆動することによっても保証可能である。
【0034】
以下、本発明を、図面を参照しながらより詳細に説明する。図面では、同種の部分に同一の参照符号を付してある。図示の実施形態は、非常に概略的に示されており、すなわち、距離ならびに横方向および縦方向の広がりは、縮尺通りではなく、別段の記載がない限り、相互に導出可能な幾何学的な関係も有していない。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図2】3つの遅延段を備えたプログラミング可能な遅延線の、本発明による第1の実施形態の概略図である
【
図3】14個の遅延段を備えたプログラミング可能な遅延線の、本発明による第2の実施形態の概略図である。
【
図4】14個の遅延段を備えたプログラミング可能な遅延線の、本発明による第3の実施形態の概略図である。
【
図5】本発明によるターゲットシミュレータを備えたシミュレータ装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
図1は、従来技術から公知であるような光ファイバ遅延線を示す。光ファイバ遅延線は、隣り合って配置されている4つの光切替スイッチSW1,SW2,SW3,SW4を含む。隣り合って位置する下方の端子は、それぞれ相互に接続されており、その一方で、隣り合って位置する上方の端子は、接続片「遅延A,遅延Bおよび遅延C」を介して接続されている。信号は、Port1またはPort2を介して遅延線に入射可能である。
図1A~
図1Hには、それぞれ異なるスイッチング状態が示されている。8つの異なる遅延段と、4つの切替スイッチによって生成される最小の総遅延「最小遅延」と、が得られる。
【0037】
図2は、ここでは3つの切替スイッチFS1,FS2,FS3(3ビット)を備えた、それぞれ異なるスイッチング状態を有する本発明による遅延線の概略図を示す。隣り合って位置するスイッチは、これらのスイッチの下方の端子では相互に接続されており、これらのスイッチの上方の端子では、所定の長さを有する光ファイバ遅延要素A,Bによって接続されている。遅延線において上方の外側に位置する端子は、遅延要素Cによって切替スイッチFS2を迂回しながら相互に接続されている。
図2A~
図2Eは、3つの切替スイッチFS1,FS2,FS3の5つの異なる設定可能なスイッチング状態を示す。それぞれのスイッチング状態に応じて、入力ポートPort1,Port2のうちの1つを介して入射させられた信号が、設定された程度の分だけ遅延させられる。
図2Aでは、全てのスイッチが、下方の「バー状態」にあり、すなわち、下方の端子間の接続部が一続きに接続されている。
図2Aの設定では、遅延線は、最小可能遅延を提供し、この最小可能遅延は、
図1の例において説明したように4つのスイッチから得られるのではなく、本実施形態では3つのスイッチから得られる。さらなるスイッチング状態は、「クロス状態」を有するスイッチング状態を含み、すなわち、一方または両方の端子対が、交差状で一続きに接続されている。
図2Bおよび
図2Cは、単純な「クロス状態」および「バー状態」の接続方式を有する2つのスイッチを示す。これらのスイッチは、それぞれ最小遅延に、遅延要素A(
図2B)または遅延要素B(
図2C)による遅延を加えたものを提供する。このことは、それぞれ
図2Bの「最小遅延+A」と、
図2Cの「最小遅延+B」と、によって表されており、それ以降の図面でも、類似したマーキングが実施されている。
図2Eには、本例における最大可能遅延が示されており、
図2Eでは、スイッチが、端子対をそれぞれ交差状で一続きに接続している。総遅延は、ここでは、信号が3つのスイッチを2回通過するので2倍の最小遅延と、所定の長さを有する光ファイバ遅延要素A,B,Cによる遅延と、を含む。種々異なる遅延要素の長さの選択は、その遅延線が使用されるべき用途に依存している。それぞれの用途に応じて(例えば、シミュレートされるべき周囲状況が、テストされるべき周囲センサの近接領域にあるオブジェクトを主として有する場合には)、小さい絶対値を有する遅延がますます望ましい場合がある。これとは逆に、最小遅延を設定することができるが、それでもなお、例えば長距離レーダのように広範囲の射程範囲を有する周囲センサをテストするために大きな最大遅延を設定することができることが望ましい場合がある。ここで例を挙げておくと、最小遅延が1メートルである場合、それぞれの遅延要素に対して以下の値:A=5メートル、B=49メートル、C=100メートルが選択される。これにより、1メートル、6メートル、50メートル、56メートル、156メートルの種々異なる設定可能な総遅延が得られる。遅延要素AとBとを組み合わせることによって得られる遅延(ここでは56メートル)は、AおよびBを選択することによって得られるが、これ以上の修正ができないことに留意すべきである。寄生と称されるこの遅延とは対照的に、本例では、遅延要素の長さを選択することによって全ての他の遅延値に影響を与えることが可能である。
【0038】
図3には、本発明によるさらなる実施例が含まれており、本実施例は、ここでは14個の光ファイバ遅延要素A,B,C,D,E,F,G,H,I,J,K,L,M,Nと、合計17個の切替スイッチFS1~FS17と、を備えた遅延線を有する(14ビット)。本例では、遅延線が2つの部分に分割されており、一方の部分は、スイッチFS1~FS7および遅延要素A~Fを有し、他方の部分は、スイッチFS8~FS16および遅延要素G~Nと、切替スイッチFS17と、を有する。両方の部分の、隣り合って位置するスイッチは、それぞれ
図2に関して既述したように、これらのスイッチの下方を向いた端子を介して相互に接続されており、かつこれらのスイッチの上方を向いた端子を介して遅延要素によって相互に接続されている。切替スイッチFS7により、遅延線の次の部分への移行が開始される。ここでは、切替スイッチFS7の下方の端子が、遅延線の第2の部分を迂回しながら切替スイッチFS17に接続されており、その一方で、上方の端子は、切替スイッチFS8の下方の端子に接続されている。スイッチFS1,FS8,FS16およびFS17の必要でない端子は、ここでは開成されたままである。本例では、14個の光ファイバ遅延要素に基づく遅延線により、合計40960通りの異なる組み合わせが可能となる。遅延線を2つの部分に分割することにより、最小遅延を設定する場合、15個の切替スイッチではなく7つの切替スイッチがこの最小遅延に寄与することとなる。
【0039】
図4は、
図3において既述した遅延線の本発明による例を示す。
図4は、入射点FIBER RXおよびFIBER TX(先行する図面における参照符号Port1およびPort2に相当する)をさらに示し、遅延させられるべき信号は、これらの入射点FIBER RXおよびFIBER TXを介して遅延線に入射させられるか、または再出射させられる。これらの表現は、ここでは、例えばレーダ受信アンテナのようなシミュレータ受信要素によって受信された(遅延させられるべき)信号が入射点FIBER RXによって受信され、入射点または出射点FIBER TXによって出射させられて、シミュレータ放射要素によって再放射されるということを示す。切替スイッチ同士の間の接続は、種々異なる種類の線を用いて示されており、すなわち、破線は、所定の長さを有する光ファイバ遅延要素を示し、点線および実線は、切替スイッチの端子同士の相互の接続を示す。
【0040】
遅延線において遅延させられるべき信号が順次に通過する切替スイッチFS1~FS7は、
図3に関して既述したように隣り合って配置されている。切替スイッチFS1とFS2との間の接続要素T1の長さ、および、切替スイッチFS2とFS3との間の接続要素T2の長さは、遅延線の開始部にある遅延要素D1,D2,D3の長さに合わせて、最小可能遅延を維持しながら遅延値と遅延値との間に一定の刻み幅が得られるように選択されている。このことにより、刻み幅を、遅延要素の長さよりも小さくすることが可能となる。例として以下の値を挙げておくと、刻み幅が2.5cmである場合には、D1=12.5cm、D2=15cmおよびD3=10cmが選択される。その場合、このことからT1=10cmおよびT2=10cmを選択しなければならないことが分かる。
【0041】
切替スイッチFS8~FS16は、ここでは上下に織り込まれて配置されている。遅延線の内部で相前後して連続する切替スイッチは、遅延線のこの部分では隣り合って位置していない。この配置は、FS7とFS17との間の接続をできるだけ短く抑えるために選択される。
【0042】
図5は、センサ放射・受信要素S_ANTを有するテストされるべき周囲センサSENを備えたシミュレータ装置の概略図を示す。周囲センサSENは、ここではRF範囲内の周波数で動作するレーダ距離測定器である。周囲センサSENは、シミュレータの外部における動作中に、周囲センサSENとオブジェクトとの間の距離を、信号の総伝搬時間から特定する。信号の総伝搬時間には、とりわけ、オブジェクトまでの走査信号SSENの伝搬時間と、オブジェクトにおいて反射されたエコー信号SSENが周囲センサに戻されるまでの伝搬時間と、が寄与する。
【0043】
さらに、
図5の概略図は、ターゲットシミュレータRTSを含み、このターゲットシミュレータRTSは、シミュレータ放射・受信要素SIM_ANTと、RF信号を中間周波数へとダウンコンバートするために適したダウンコンバージョンミキサMIX1と、フォトカプラOPT1と、本発明による遅延線と、増幅器/減衰器AMPと、ドップラー発生器DOPP(オプションとして、ドップラー周波数を印加するための装置)と、RF信号をアップコンバートするために適したアップコンバージョンミキサMIX2と、を含む。オプションとして、ドップラー発生器DOPPとアップコンバージョンミキサMIX2とを1つのコンポーネントとして実現してもよい。
【0044】
シミュレータ装置RTSにおいて、受信器は、電磁波SSENの形態の、距離測定器SENから放射された走査信号SSENを、シミュレータアンテナSIM_ANTを介して受信し、ダウンコンバージョンミキサMIX1によって中間周波数へとダウンコンバートし、このダウンコンバートされた(電気)信号を、フォトカプラOPT1によって光信号に(例えば、赤外線範囲内の周波数に)変換し、遅延線DELに入射させるように構成されている。さらに、シミュレーション装置RTSは、遅延させられた信号をフォトカプラOPT2によって電気信号に変換するように構成されており、この電気信号は、増幅器/減衰器AMPにおいて所望の出力まで増幅または減衰させられる。その後、結果として得られた信号にドップラー周波数を印加することができ、この信号を、アップコンバージョンミキサMIX2によって元のRF周波数へとアップコンバートし、シミュレータアンテナSIM_ANTによって放射することができる。
【0045】
さらに、周囲シミュレーションを実行するコンピュータシステムCOMが設けられており、このコンピュータシステムCOMは、遅延線DELと、遅延線の内部に存在する光切替スイッチと、を駆動し、シミュレーションによって指定された遅延を設定するように構成されている。その場合、この遅延は、シミュレートされた仮想のオブジェクトからテストされるべき周囲センサSENまでの相対的な距離に相当する。
【国際調査報告】