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特表2024-501637塩基配列決定用の核酸サンプルの調製
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】塩基配列決定用の核酸サンプルの調製
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20240105BHJP
   C12N 15/10 20060101ALI20240105BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20240105BHJP
   C40B 40/06 20060101ALN20240105BHJP
【FI】
C12N15/09 Z ZNA
C12N15/10 Z
C12N15/11 Z
C40B40/06
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023536459
(86)(22)【出願日】2021-12-18
(85)【翻訳文提出日】2023-07-19
(86)【国際出願番号】 US2021064248
(87)【国際公開番号】W WO2022133335
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,566
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522105894
【氏名又は名称】グレイル エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100174001
【弁理士】
【氏名又は名称】結城 仁美
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ラーソン
(72)【発明者】
【氏名】カーティス トム
(72)【発明者】
【氏名】サラ スチュアート
(72)【発明者】
【氏名】イーチィ チョウ
(57)【要約】
塩基配列決定のための調製において、無細胞核酸断片を含む核酸を増幅する組成物および方法が提供される。構造[T]-[PS1]-[L]-[PS2]または[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を有する環状化核酸鋳型を作製する方法が提供され、ここで、(a)Tは標的核酸であり、T’は標的核酸に対する相補体であり、(b)PS1およびPS2は、それぞれ、核酸プライマー領域であり、(c)Lはプライマー伸長反応を終端させる有機分子を有するリンカーであり、構造はその5’末端をその3’末端に結合することによって環状化される。PS1に相補的なプライマーをPS1に結合させ、PS2に相補的なプライマーをPS2に結合させ、プライマー伸長反応によって標的配列をコピーすることによって、環状化鋳型中の標的配列を増幅する。ライゲーションステップ数を減少させることができるという利点があり、これによって、クリーンアップステップ数を減少させ、また、全体的なライブラリー変換効率の改善をもたらすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造[T]-[PS1]-[L]-[PS2]を有する環状化核酸鋳型であって、(a)Tは、標的核酸配列であり、(b)PS1およびPS2の各々は、核酸プライマー領域であり、(c)Lは、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーであり、(d)前記構造は、当該構造の5’末端を当該構造の3’末端に結合させることによって環状化されている、環状化核酸鋳型。
【請求項2】
構造[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を有する環状化核酸鋳型であって、(a)T’は、標的核酸配列の相補体であり、(b)PS1およびPS2の各々は、核酸プライマー領域であり、(c)Lは、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーであり、(d)前記構造は、当該構造の5’末端を当該構造の3’末端に結合させることによって環状化されている、環状化核酸鋳型。
【請求項3】
標的配列を増幅する方法であって、(a)請求項1または2のいずれかに記載の環状化鋳型を提供することと、(b)PS1に対して相補的なプライマーを、PS1に結合させ、PS2に対して相補的なプライマーを、PS2に結合させることと、(c)ポリメラ-ゼを使用するプライマー伸長反応によって前記標的配列をコピーすることとを含む、方法。
【請求項4】
環状化鋳型を作製する方法であって、(a)一本鎖標的核酸断片のサンプルを提供することと、(b)構造[PS]-[L]-[PS](PSは核酸プライマー領域であり、Lはプライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーである)を有する断片を前記標的核酸断片の各々にライゲーションまたはコピーすることと、(c)環状化することとを含む、方法。
【請求項5】
構造[T]-[PS1]-[L]-[PS2]を有する環状化鋳型を作製する方法であって、(a)PS1およびPS2の各々が核酸プライマー領域であり、Lがプライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーである、[PS1]-[L]-[PS2]鎖を提供することと、(b)[T]核酸を提供することと、(c)[PS1]-[L]-[PS2]鎖を[T]鎖にライゲーションして、[T]-[PS1]-[L]-[PS2]鎖を作製することと、(d)[T]-[PS1]-[L]-[PS2]鎖を環状化して、環状化[T]-[PS1]-[L]-[PS2]を作製することとを含む、方法。
【請求項6】
構造[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を有する環状化鋳型を作製する方法であって、(a)[T]鎖を提供することと、(b)PS1およびPS2の各々が核酸プライマー領域であり、Lがプライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーである、[PS1]-[L]-[PS2]鎖を提供することと、(c)[T]鎖の3’末端に、[PS1]-[L]-[PS2]鎖の[PS2]に対して相補的なプライマー領域[PS2’]鎖をライゲーションすることと、(d)[PS1]-[L]-[PS2]鎖をライゲーションされた[T]-[PS2’]にアニーリングすることと、(d)[PS1]-[L]-[PS2]鎖をポリメラ-ゼを用いたプライマー伸長反応により伸長して、[T’]は[T]鎖の相補体である[PS1]-[L]-[PS2]-[PS2]-[T’]鎖を生成することと、(e)[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]鎖を環状化して、環状化[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を生成することとを含む、方法。
【請求項7】
構造[PS1]-[L]-[PS2]を有する一本鎖核酸であって、PSIおよびPS2は、それぞれ、核酸プライマー領域であり、Lが、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーである、一本鎖核酸。
【請求項8】
(a)ブロックされた3’末端を有する、5’リン酸化一本鎖プライマー領域オリゴヌクレオチド、および
(b)構造[PS1]-[L]-[PS2]を有する一本鎖核酸において、PS1およびPS2は、それぞれ、核酸プライマー領域であり、Lは、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーであり、[PS2]は、ブロックされた3’末端を有する前記プライマー領域オリゴヌクレオチドに相補的である、一本鎖核酸
を含む、キット。
【請求項9】
Lが、ポリアルキレングリコールを含む、請求項1~8のいずれかに記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項10】
Lが、ポリエチレングリコールを含む、請求項1~8のいずれかに記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項11】
Lが、リン酸基で終端されたポリアルキレングリコールを含む、請求項1~8のいずれかに記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項12】
Lが、リン酸基で終端されたポリエチレングリコールを含む、請求項1~8のいずれかに記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項13】
Lには、ポリアルキレングリコール、リン酸基で終端されたポリアルキレングリコール、ポリエチレングリコール、リン酸基で終端されたポリエチレングリコール、ホスホンアミダイト、グリコール、1’,2’-ジデオキシリボース、またはリン酸基で終端されたトリエチレングリコール、またはそれらの任意の組み合わせのうち、1つまたは複数が挿入されている、請求項1~8のいずれかに記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項14】
前記複数の挿入の部位が、1つまたは複数の介在オリゴヌクレオチドを介して接続される、請求項13に記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項15】
前記1つまたは複数の介在オリゴヌクレオチドの長さが、2ヌクレオチド長~100ヌクレオチド長の範囲である、請求項14に記載の環状鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項16】
Lが、介在オリゴヌクレオチドを介してライゲーションされたリン酸基で終端された前記ポリエチレングリコールの挿入部位を2つ含む、請求項14に記載の環状鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項17】
前記介在オリゴヌクレオチドの長さが、6ヌクレオチド長以上である、請求項16に記載の環状化鋳型、方法、核酸、またはキット。
【請求項18】
前記標的が、シトシンが修飾または変換された一本鎖DNA分子を含む、請求項1~6および請求項9~17のいずれか一項に記載の環状化鋳型または方法。
【請求項19】
前記シトシンが、ウラシルに変換されている、請求項18に記載の環状鋳型または方法。
【請求項20】
PS1に対して相補的な前記プライマーが、5’~3’[ADAPT]-[IND]-[SEQ-PRIMER]-[TARG-PRIMER]を含み、[ADAPT]は、アダプターであり、[IND]は、一意のサンプル識別子配列であり、[SEQ-PRIMER]は、塩基配列決定プライマーであり、[TARG-PRIMER]は、環状化[T]-[PS]-[L]-[PS]または[PS]-[L]-[PS]-[T’]鋳型中の標的核酸配列に相補的な標的プライマーであり、およびPS2に相補的な前記プライマーが、5’~3’[ADAPT]-[IND]-[SEQ-PRIMER]-[TARG-PRIMER]を含み、[ADAPT]は、アダプターであり、[IND]は、一意のサンプル識別子配列であり、[SEQ-PRIMER]は、塩基配列決定プライマーであり、[TARG-PRIMER]は、環状化[T]-[PS]-[L]-[PS]または[PS]-[L]-[PS]-[T’]鋳型中の標的核酸配列に相補的な標的プライマーである、請求項3の方法。
【請求項21】
前記標的が、断片化DNAを含む、請求項1~20のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
前記断片化DNAが、無細胞核酸(cfNA)である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記無細胞核酸が、無細胞DNA(cfDNA)である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記無細胞核酸が、体液または他の体物質から得られる、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
前記無細胞核酸が、健康細胞に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記無細胞核酸が、疾患細胞に由来する、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記疾患細胞が、癌細胞である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記断片化DNAが、ゲノムの1つまたは複数のサブセット、全ゲノム、複数のゲノム、または複数のゲノムの1つまたは複数のサブセットを表す、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記標的核酸または前記標的鎖の供給源が、生物有機体由来のサンプルまたは環境サンプル由来のサンプルである、請求項1~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記サンプルが、複数の供給源、複数の対象、または複数の供給源と複数の対象とからプールされた複数のサンプルを含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記生物有機体が、ヒトまたは他の動物である、請求項29に記載の方法。
【請求項32】
前記生物有機体由来のサンプルが、組織、細胞、体液、または細胞外体物質である、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記体液または前記細胞外体物質が、全血、血液画分、血清、血漿、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記体液または前記細胞外体物質が、房水、腹水、胆汁、脳脊髄液、乳糜、胃液、腸液、リンパ液、膵液、心嚢液、腹膜液、胸膜液、唾液、脊髄液、痰、便もしくは他の腸排液、汗、涙、尿、またはそれらの任意の組み合わせを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
前記生物有機体が、疾患を有することが既知であるか、または疾患を有することが疑われる対象である、請求項31に記載の方法。
【請求項36】
前記疾患が癌である、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記生物有機体が、疾患を有することが既知でないか、または疾患を有することが疑われない対象である、請求項31に記載の方法。
【請求項38】
前記疾患が癌である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記生物有機体由来のサンプルが、腫瘍由来のサンプルまたは疑わしい腫瘍由来のサンプルである、請求項29に記載の方法。
【請求項40】
前記生物有機体由来のサンプルが、癌組織であるか、または癌組織であると疑われる組織サンプルである、請求項29に記載の方法。
【請求項41】
前記組織サンプルが、I期、II期、III期、またはIV期の癌である、請求項40に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2020年12月18日に出願された米国仮特許出願第63/127,566号の優先権の利益を主張し、その開示は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の主題は、塩基配列決定用の核酸サンプルを調製するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
DNA中のシトシンのメチル化は、様々な疾患および状態についてのますます重要な診断マーカーである。例えば、DNAメチル化プロファイリングは、癌の検出、診断、および/または特性評価のための診断ツールとして使用されている。これらの分析は、多くの場合、体液からの断片化DNA(cfDNA)を使用する。メチル化塩基を同定するための塩基配列決定は、典型的には、非メチル化シトシンがウラシルに変換され、続いて塩基配列決定アダプターが添加される変換ステップを含む。塩基配列決定アダプターの添加は、典型的には2つのライゲーションステップを含み、これは、変換効率を低下させ、さらなるクリーンアップステップを追加する。そのようなアプローチは、全体的なライブラリー変換効率を低下させる。
【0004】
したがって、当技術分野において、DNAライブラリーの調製を単純化し、効率を改善するプロセスが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示の主題は、様々な実施形態における環状化された鋳型を作製する方法を対象とし、方法は(a)一本鎖核酸断片のサンプルを提供することと、(b)構造[PS]-[L]-[PS](PSはプライマー領域であり、Lはリンカーである)を有する断片を核酸断片の各々にライゲーションまたはコピーすることと、(c)環状化すること、および/またはそのような態様もしくは本明細書に開示される他の態様の任意の1つもしくは組み合わせを含む。
【0006】
いくつかの態様において、開示される主題は、構造[T]-[PS1]-[L]-[PS2]を有する環状化核酸鋳型を含み、(a)Tは、標的核酸配列であり、(b)PS1およびPS2の各々は、核酸プライマー領域であり、(c)Lは、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーであり、例えば、リンカーLは、PS1およびPS2をライゲーションし、プライマー伸長反応において重合を終端させる有機分子を含み、ならびに(d)構造は、当該構造の5’末端を当該構造の3’末端に結合させることによって環状化されている、および/またはそのような態様もしくは本明細書において開示される他の態様の任意の1つもしくは組み合わせである。
【0007】
様々な実施形態において、開示される主題は、構造[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を有する環状化核酸鋳型を含み、ここで、(a)T’は、標的核酸配列の相補体であり、(b)PS1およびPS2の各々は、核酸プライマー領域であり、(c)Lは、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーであり、(d)構造は、当該構造の5’末端を当該構造の3’末端に結合させることによって環状化されている、および/またはそのような態様もしくは本明細書に開示される他の態様の任意の1つもしくは組み合わせである。
【0008】
いくつかの態様において、本開示は、標的配列を増幅する方法に関し、方法は、(a)環状化鋳型を提供することと、(b)PS1に対して相補的なプライマーを、PS1に結合させ、PS2に対して相補的なプライマーを、PS2に結合させることと、(c)ポリメラーゼを使用するプライマー伸長反応によって標的配列をコピーすること、および/または本明細書に開示されるそのようなステップもしくは他の態様の任意の1つもしくは組み合わせを含む。
【0009】
様々な例において、本開示は、構造[T]-[PS1]-[L]-[PS2]を有する環状化鋳型を作製する方法に関し、方法は、(a)[PS1]-[L]-[PS2]鎖を提供することと、(b)[T]鎖を提供することと、(c)[T]-[PS1]-[L]-[PS2]鎖を[T]鎖にライゲーションして、[T]-[PS1]-[L]-[PS2]鎖を作製することと、(d)[T]-[PS1]-[L]-[PS2]鎖を環状化して、環状化[T]-[PS1]-[L]-[PS2]を作製すること、および/または本明細書に開示されるそのようなステップもしくは他の態様の任意の1つもしくは組合せを含む方法(方法、環状化鋳型アプローチ#1-New)を含む。いくつかの例において、本開示は、構造[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を有する環状化鋳型を作製する方法に関し、方法は、(a)[T]鎖を提供することと、(b)[PS1]-[L]-[PS2]鎖を提供することと、(c)[T]鎖の3’末端に、[PS1]-[L]-[PS2]鎖の[PS2]に対して相補的な[PS2’]鎖をライゲーションすることと、(d)[PS1]-[L]-[PS2]鎖をライゲーションされた[T]-[PS2’]にアニーリングすることと、(d)[PS1]-[L]-[PS2]鎖をポリメラ-ゼを用いたプライマー伸長反応により伸長して、[T’]は[T]鎖の相補体である[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]鎖を生成することと、(e)[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]鎖を環状化して、環状化[PS1]-[L]-[PS2]-[T’]を生成することとを含む方法を含む。
【0010】
いくつかの実施形態において、本開示は、構造[PS1]-[L]-[PS2]を有する一本鎖核酸に関し、PS1およびPS2の各々は、核酸プライマー領域であり、Lは、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーである。
【0011】
いくつかの態様において、本開示は、(a)ブロックされた3’末端を有する、5’リン酸化一本鎖プライマー領域オリゴヌクレオチド、および(b)構造[PS1]-[L]-[PS2]を有する一本鎖核酸において、PS1およびPS2は、それぞれ、核酸プライマー領域であり、Lは、[PS1]および[PS2]をライゲーションし、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含むリンカーであり、[PS2]は、ブロックされた3’末端を有するプライマー領域オリゴヌクレオチドに相補的である、一本鎖核酸を含むキットに関する。
【0012】
いくつかの実施形態において、リンカーは、ポリアルキレングリコールリンカー、ポリエチレングリコールリンカー、リン酸基で終端されたポリアルキレングリコールリンカー、またはリン酸基で終端されたポリエチレングリコールリンカーを含む。
【0013】
様々な実施形態において、標的核酸配列[T]は、シトシンが修飾または変換された一本鎖DNA分子を含む。他の実施形態において、標的核酸配列[T]は、シトシンがウラシルに変換されている一本鎖DNA分子を含む。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1A】構造[T]-[PS]-[L]-[PS]または[PS]-[L]-[PS]-[T’]であって、リンカー[L]は2つのプライマー領域[PS]成分を結合し、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含み、[PS]成分は、標的配列[T]または標的配列[T’]の相補体にライゲーションされる、構造を有する、環状化された一本鎖DNA(ssDNA)を示す図である。
図1B】開示された主題の[PS1]-[L]-[PS2]鎖であって、第1のアダプター[PS1]、第2のアダプター[PS2]、およびリンカー[L]を含み、当該リンカー[L]が、プライマー伸長反応を終端させる有機分子を含み、第1のアダプターの3’末端を第2のアダプターの5’末端にリンクしている、[PS1]-[L]-[PS2]鎖を示す図である。
図1C】5’末端で標的鎖の3’末端に結合された図1Bの[PS1]-[L]-[PS2]鎖を含む、開示された主題の線状[T]-[PS1]-[L]-[PS2]鎖を示す図である。
図1D】標的鎖[T’]の相補体の5’末端に3’末端で結合された図1Bの[PS1]-[L]-[PS2]鎖を含む、開示された主題の線状[PS1]-[L]-[PS2]-[T]鎖を示す図である。
図2A】プライマー領域ライゲーション、図1Bの[PS1]-[L]-[PS2]102のプライマー伸長、および増幅を含む、開示される主題の方法を示す図である。
図2B】プライマー領域ライゲーション、図1Bの[PS1]-[L]-[PS2]102のプライマー伸長、および増幅を含む、開示される主題の方法を示す図である。
図3図2AのステップC、ステップD、およびステップEにおけるプライマー領域ライゲーションおよびプライマー伸長反応を、図1Bの[PS1]-[L]-[PS2]102の標的鎖への直接ライゲーションに置き換えた、代替的な実施形態を示す図である。
図4】[PS1]-[L]-[PS2]鎖102伸長プライマー(「Circ伸長プライマー」として示す)またはcfDNAが環状化されていない従来の伸長プライマー(「GrailMethylSeq」として示す)およびcfDNAが2つのクリ-ンアップステップのうちの1つのみを受けている、いずれかを使用する増幅法において調製されるcfDNAの比較を示す、高感度NGS断片アナライザーによるランチャートのグラフである。
図5】Circ伸長プライマーを使用する環状化アプローチによって調製されたメチル化ライブラリーの高感度NGS断片アナライザーによるランチャートのグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書において、以下の用語は次のような意味で用いられる。
【0016】
「増幅」は、DNA鎖をコピーして相補鎖を生成することを意味する。増幅は、熱的に媒介されてもよく、または等温であってもよい。増幅は、例えば、プライマー伸長反応においてポリメラーゼを使用して標的鎖をコピーすることにより行ってもよい。
【0017】
「体液」は、全血、循環血液、血液画分、血清、または血漿、房水、腹水、胆汁、脳脊髄液、乳糜、胃液、腸液、リンパ液、膵液、心膜液、腹膜液、胸膜液、唾液、髄液、痰、便もしくは他の腸排液、汗、涙、および/または尿を含むがこれらに限定されない、DNAを含む任意の体液を意味する。
【0018】
「cfNA」は、細胞外核酸を意味し、「cfDNA」は、体液中に見出される細胞外DNAを意味する。
【0019】
「インプットサンプル」は、断片化DNAの処理済みサンプルを指す。「インプットサンプル」という用語を使用して、対象から得られた生物学的サンプルを指す「サンプル」と区別する。生物学的対象からのサンプルは、例えば、サンプルからcfDNAを精製すること、および/または必要に応じてサンプルを断片化することによって、インプットサンプルを処理して調製される。断片化DNAおよびcfDNAは、本明細書において、「標的核酸」、「標的DNA」、「標的鎖」、または「標的」と称する。しかしながら、開示される主題の一態様において、インプットサンプルおよびサンプルは同じであってもよく、すなわち、本方法は「汚れたサンプル」または「精製されていないサンプル」とともに使用されてもよいことに留意されたい。
【0020】
「標的疾患」は、アッセイまたは試験が実施される疾患、状態、または標的を意味し、例えば、標的疾患は、一般に、癌、特定の種類の癌、特定の癌の種類、特定の癌の病期、上記の組み合わせ、またはメチル化解析が有益な情報を生じ得る任意の他の疾患もしくは状態、または疾患の状態の組み合わせであり得る。
【0021】
本明細書を通して、出願人は、式[X]-[y]-[z]-[…]を用いて、様々な構造、例えば、プライマー領域[PS]、標的核酸[T]、標的核酸に対する相補体[T’]、リンカー[L]、およびアダプター[A]を含む[T]-[PS]-[L]-[PS]および[PS]-[L]-[PS]-[T’]を説明する。これらの式は、記載された構造の構成要素を限定することを意図していないこと、例えば、1つまたは複数の追加の構成要素を含むことができることが理解されるであろう。例えば、[T]-[PS]-[L]-[PS]または[PS]-[L]-[PS]-[T’]において、当該構造のいずれかの端部に、または[PS]と[T/T’]との間に、[PS]と[L]との間に、またはこれらの任意の組合せにおいて、1つまたは複数の追加の成分を含めることができる。
【0022】
説明
様々な態様において、開示される主題は、塩基配列決定のための断片化DNAライブラリーを調製する方法、組成物、試薬およびキットを提供する。この方法は、増幅反応において使用することができる環状化ssDNA鋳型を利用して、線状コピーを生成する。線状コピーは、ライブラリー調製ワークフローにおける他のステップに、および/または分析ステップ、例えば、標的の配列を決定するプロセスに進んでもよい。開示される主題は、ライゲーションステップ数を減少させることができるという利点を有し、これによって、クリーンアップステップ数を減少させ、また、全体的なライブラリー変換効率の改善をもたらすことができる。
【0023】
図1Aは、構造[T]-[PS]-[L]-[PS]または[PS]-[L]-[PS]-[T’]を有する環状化ssDNA100を示す。当該構造において、標的配列[T]にライゲーションされるか、または標的配列[T’]に対する相補体にライゲーションされる2つの[PS]成分に伸長反応を終端させる有機分子プライマーを含むリンカー120がライゲーションする。環状化ssDNA100は、標的105に対する標的/相補体、標的の3’末端または5’末端における第1のプライマー領域110、標的105の他端における第2のプライマー領域115、およびリンカー120を含む。
【0024】
リンカー120は、核酸鎖の3’末端を別の核酸鎖の5’末端に結合する様々なプライマー伸長反応を終端させる有機分子のいずれかを含み得る。リンカー120は、プライマー伸長反応において重合を終了させる。例えば、一態様において、リンカーがリン酸基で終端されたポリアルキレングリコ-ル分子を含む。一実施形態において、リンカーは、リン酸基で終端されたポリエチレングリコ-ル分子を含む。ポリエチレングリコール部分は、例えば、2~20個のポリエチレングリコ-ル単位を有し得る。一例において、リンカーは、Integrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能なヘキサエチレングリコールリンカーであるInt Spacer 18(ISpl8)を含む。
【化1】
【0025】
一実施形態において、リンカーは、ホスホンアミダイト分子を含む。ホスホンアミダイト分子は、例えば、2~20個の炭素原子を有し得る。一態様において、リンカーは、Integrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能な3炭素ホスホンアミダイト分子を含む。
【化2】
【0026】
実施形態の一バージョンにおいて、リンカーは、グリコール分子を含む。グリコール分子は例えば、2~20個の炭素原子を有し得る。一例において、リンカーは、Integrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能な6炭素グリコール分子を含む。
【化3】
【0027】
いくつかのバージョンにおいて、リンカーは、1つまたは複数の1’、2’-ジデオキシリボース分子または類似の脱塩基分子を含む。1’,2’-ジデオキシリボース分子は例えば、2~20個の1’,2’-ジデオキシリボ-ス単位を有し得る。一態様において、リンカーは、Integrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能な1’、2’-ジデオキシリボース分子を含む。
【化4】
【0028】
様々な実施形態において、リンカーは、リン酸基で終端されたトリエチレングリコ-ル分子を含む。一例において、リンカーがIntegrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能なトリエチレングリコール分子を含む。
【化5】
【0029】
一態様において、リンカー120は、プライマー伸長反応を終端させる複数の有機分子の挿入を含む。一例において、リンカー120は、異なる有機分子であって、核酸鎖の3’末端を別の核酸鎖の5’末端にライゲーションし、プライマー伸長反応において重合を終了させる、異なる有機分子の組み合わせの複数の挿入を含む。非限定的な例において、リンカー120は、ポリアルキレングリコール分子、リン酸基で終端されたポリアルキレングリコール分子、ポリエチレングリコール分子、リン酸基で終端されたポリエチレングリコール分子、ホスホンアミダイト分子、グリコール分子、1’、2’-ジデオキシリボース分子、またはリン酸基で終端されたトリエチレングリコール分子の1つまたは組み合わせの複数の挿入を含んでもよい。
【0030】
いくつかの変形例において、リンカー120は、1つまたは複数の介在オリゴヌクレオチドであって、核酸鎖の3’末端を別の核酸鎖の5’末端にライゲーションし、プライマー伸長反応において重合を終了させる有機分子の複数の挿入を接続する、1つまたは複数の介在オリゴヌクレオチドをさらに含む。非限定的な例として、一態様において、リンカー120は、介在オリゴヌクレオチドの5’末端にその3’末端で接合したInt Spacer 18(ISpl8)分子である。当該介在オリゴヌクレオチドは、第2のInt Spacer 18(ISpl8)分子の5’末端にその3’末端で結合している。1つまたは複数の介在オリゴヌクレオチドの長さは、2ヌクレオチド長~100ヌクレオチド長、3ヌクレオチド長~20ヌクレオチド長、または4ヌクレオチド長~10ヌクレオチド長の範囲であり得る。一例において、介在オリゴヌクレオチドの長さは6ヌクレオチド以上である。
【0031】
図1Bは、開示された主題の[PS]-[L]-[PS]鎖102を示す図であり、これは、第1のアダプター110、第2のアダプター115、およびリンカー120を含み、当該リンカー120が、アダプター110の3’末端をアダプター115の5’末端にリンクしている。鎖102は、本明細書において、Circ伸長プライマーまたは伸長プライマーとも称され得る。本明細書で使用される場合、アダプターという用語は、他のDNA、cfDNA、またはRNA分子の端部にライゲーションされ得る一本鎖または二本鎖オリゴヌクレオチドを指す。アダプターは、塩基配列決定においてプライマー領域を提供することができる。
【0032】
開示される主題の[PS]-[L]-[PS]鎖102は、当業者に既知の任意の方法を用いて生成することができる。1つの非限定的な例において、関心の5’DMT(ジメトキシトリチル)保護オリゴヌクレオチド(N1)は、3’位で、5ミクロンの制御された細孔ガラスビ-ズ(CPG)またはポリスチレン(PS)ビーズに結合され得る。そのようなN1オリゴヌクレオチドの非限定的な例としては、DMT-dT-CPG(Sigma-Aldrich,Inc.、ミズーリ州、セントルイス)が挙げられる。次いで、ジメトキシトリチル基は、トリクロロ酢酸(TCA)を用いて脱保護され、5’反応性ヒドロキシル基を残すことができる。次に、CPG結合オリゴヌクレオチドを、極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリルで30秒間洗浄することができる。
【0033】
次に、5’-DMT保護Int Spacer 18分子を、N1の5’露出水酸基と反応させることができる。この反応において、N1の露出した5’-ヒドロキシルとInt Spacer 18の3’-リン酸基との間で縮合を起こすことができ、これは共有結合を形成し得る。続いて、生成物を、極性非プロトン性溶媒、例えばアセトニトリルを用いて30秒間洗浄することができる。次に、標準的なTCA方法を用いて、Int Spacer 18の5’末端から5’-DMT基を除去することができ、反応性の5’-ヒドロキシル基を残すことができる。
【0034】
次いで、5’-DMT保護ヌクレオチド(N2)をCPG-3’dT5’3’Int Spacer 18-OH5’鎖と反応させることができ、ここで「OH」は露出した反応性5’-ヒドロキシル基であり得る。Int Spacer 18の5’-ヒドロキシル基は、縮合反応においてN2 5’-DMT-保護ヌクレオチドの3’-ヒドロキシル基と反応することができ、N2ヌクレオチドの3’炭素でリンカーと共有結合を形成することができる。この縮合反応により、CPG-3’N15’3’Linker5’-N2鎖を生成することができる。続いて、上記のステップをN2ヌクレオチドの5’-DMT脱保護から開始し、所望の[PS]-L-[PS]鎖102が達成されるまで、繰り返すことができる。
【0035】
開示された主題の方法は、[PS]-[L]-[PS]鎖102を利用して、環状化された[T]-[PS]-[L]-[PS]を生成する。[PS]-[L]-[PS]鎖102は、5’プライマー領域110および3’プライマー領域115の両方を標的核酸105に導入する。[PS]-[L]-[PS]鎖102は、[PS]成分をライゲーションするリンカー分子を含む。[PS]-[L]-[PS]鎖102は、標的核酸105の3’または5’末端にライゲーションされ得る。例えば、[PS]-[L]-[PS]鎖102は、ライゲーションによって、またはポリメラ-ゼを使用するプライマー鎖伸長によって、標的105にライゲーションされ得る。
【0036】
図1Cは、5’末端で標的105の3’末端に結合された、開示された主題の[PS]-[L]-[PS]鎖102を含む、開示された主題の線状[T]-[PS]-[L]-[PS]鎖103を示す図である。[T]-[PS]-[L]-[PS]鎖103は、環状化されて、図1Aに示される環状化ssDNA100を形成することができる。
【0037】
3’末端で標的105[T’]に対する相補体の5’末端に結合した、開示された主題の[PS]-[L]-[PS]鎖102を含む図1Dは、開示された主題の線状[PS]-[L]-[PS]-[T’]鎖104を示す図である。[PS]-[L]-[PS]-[T’]鎖104は、環状化されて、図1Aに示される環状化ssDNA100を形成することができる。
【0038】
方法
図2Aおよび図2Bは、開示された主題の方法を示す。
【0039】
ステップAにおいて、二鎖インプット核酸断片205は、変換を受け、鎖は変性され、未修飾シトシンはウラシルに変換される。ステップAは、変性され、変換された一本鎖DNA断片210を生じる。
【0040】
ステップBにおいて、断片210の末端は、ライゲーション用に調製される。例えば、T4ポリヌクレオチドキナ-ゼ(T4PNK)を用いて、ATPのγ-リン酸の5’末端への転移を触媒し、一本鎖断片210から3’リン酸を除去して、断片215を得る。
【0041】
ステップCにおいて、プライマー領域鎖220を断片215の3’末端にライゲーションして、[T]-[PS]鎖225を得る。プライマー領域鎖220を、ブロックされた3’末端を有する5’リン酸化一本鎖として導入してもよい。プライマー領域鎖220の3’末端をブロックして、様々な修飾因子を利用することができる。いくつかのそのような修飾因子は、Integrated DNA Technologies社、アイオワ州コーラルビルから入手可能である。一態様において、ブロッカーは、以下の構造を有し、Integrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能な3’アミノ修飾因子である、3AmM0である。
【化6】
【0042】
ライゲーションは、特定の実施形態において、例えば、CIRCLIGASE(以下でより詳細に論じる)を使用して、酵素的に媒介され得る。ステップDのための[T]-[PS]鎖225を調製して、クリ-ンアップすることが含まれてもよい。
【0043】
ステップDにおいて、[PS]-[L]-[PS]鎖102(図2Aにおいて230として示される)が導入される。[PS]-[L]-[PS]鎖230は、リンカー120によって分離されたプライマー領域232aおよび232bを含む。プライマー領域232aはこのことにおいてプライマーとして作用し、[T]-[PS]鎖225上の相補的プライマー領域にアニーリングする。アニーリングされると、[PS]-[L]-[PS]鎖230は、ポリメラーゼを使用するプライマー伸長反応を介して伸長され、[PS]-[L]-[PS]-[T’]鎖235を生じ得る(図2Bを参照)。
【0044】
ステップEにおいて、クリーンアップステップは、任意に、亜硫酸水素処理鋳型の減成を含み、ここで、亜硫酸水素変換法が例えば、USER(ウラシル特異的切除試薬)酵素(ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs,Inc.)、マサチューセッツ州イプスウィッチから入手可能)を用いて、非メチル化シトシンをウラシルに変換するために利用される。開示される主題の一態様において、ステップEにおけるプライマー伸長は、線形増幅を使用して行われ、元の鋳型を希釈して元の鋳型の減成を不要にすることが期待され得る。
【0045】
ステップFにおいて、[PS]-[L]-[PS]-[T’]鎖235を環状化し、環状化[PS]-[L]-[PS]-[T’]鋳型240を得る。環状化は、様々な技術を使用して達成することができる。一態様において、環状化は、CIRCLIGASE ssDNAリガ-ゼまたはCIRCLIGASE II ssDNAリガーゼ(以下でより詳細に論じる)などのssDNAリガ-ゼを使用して達成される。CIRCLIGASE ssDNAリガーゼまたはCIRCLIGASE II ssDNAリガーゼを用いる環状化反応は、ssDNA5’-リン酸基および3’-水酸基を利用して、DNAを環状化する。
【0046】
ステップGにおいて、フォワードプライマー245およびリバースプライマー250をアニーリングして環状化[PS]-[L]-[PS]-[T’]鋳型240にし、プライマー伸長反応を用いて線状化[A]-[T]-[A]アンプリコン255を生成する。フォーワードプライマー245およびリバースプライマー250は、塩基配列決定ステップなどの下流側ワークフローステップに有用な各種アダプター要素を含むことができる。
【0047】
プライマーは、好ましくはIlluminaシーケンサーと共に使用するためのプライマーなどの、塩基配列決定プライマーである。
【0048】
一例において、フォワ-ドプライマー245が以下の構造、5’~3’を有する。
[ADAPT]-[IND]-[SEQ-PRIMER]-[TARG-PRIMER]
[ADAPT]は、IlluminaP5アダプター、5’ AAT GAT ACG GCG ACC ACC GA 3’(配列番号1)などのアダプターであり、
[IND]は、Illuminai7インデックスなどの一意のサンプル識別子配列であり、
[SEQ-PRIMER]は、Illumina SBS12プライマーACA CTC TTC TT CCC TAC ACG ACG CTC TTC CGA TCT(配列番号2)などの塩基配列決定プライマーであり、
[TARG-PRIMER]は、環状化[PS]-[L]-[PS]-[T’]鋳型240中の標的核酸配列に対して相補的な標的プライマーである。
【0049】
一例において、リバ-スプライマー250が以下の構造、5’~3’を有する。
[ADAPT]-[IND]-[SEQ-PRIMER]-[TARG-PRIMER]
[ADAPT]は、Illumina P7アダプター、5’ CAA GCA GAA GAC GGC ATA CGA 3(配列番号3)などのアダプターであり、
[IND]は、Illumina i5インデックスなどの一意のサンプル識別子配列であり、
[SEQ-PRIMER]は、Illumina SBS3プライマー、GTG ACT GGA GTT CAG ACG TGT GCT CTT CCG ATC T(配列番号4)などの塩基配列決定プライマーであり、
[TARG-PRIMER]は、環状化[PS]-[L]-[PS]-[T’]鋳型240中の標的配列に相補的な標的プライマーである。
【0050】
ステップHにおいて、線状化された[A]-[T]-[A]アンプリコン255はクリ-ンアップされ、例えば、塩基配列決定のための分析のために調製される。
【0051】
図3は、ステップC、ステップDおよびステップEにおけるプライマー領域ライゲーションおよびプライマー伸長反応を、[PS1]-L-[PS2]鎖102のステップC’およびステップD’として図3に示される標的鎖へ直接ライゲーションされるライゲーション処理に置き換えた、代替の実施形態を図示する。したがって、図3に記載される方法は、一態様において、以下の順序:ステップA、B、C’、D’、F、G、H、で行うことができ、ここで、ステップA、B、F、G、およびHは上記の通りであり、ステップC’およびD’は以下の通りである。
【0052】
ステップC’において、[PS]-[L]-[PS]102(図3において310として示される)を導入し、標的断片215の3’末端にライゲーションさせて、[T]-[PS]-[L]-[PS]鎖315を得る。一本鎖ライゲーションは、CIRCLIGASE酵素(以下でより詳細に論じる)などの酵素によって媒介され得る。
【0053】
ステップD’において、[T]-[PS]-[L]-[PS]鎖315のアダプター部分は例えば、TP4 PNK(ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs,Inc.)マサチューセッツ州イプスウィッチ)などの酵素を用いて脱リン酸化することができ、脱リン酸化された鎖320を生成する。T4 PNKは、亜硫酸水素塩で変換されたssDNA断片の3’-OH末端を残すことによって、ステップFにおけるライゲーションによって環状化のための断片末端を調製する。ステップD’はまた、ステップFにおける環状化に移る前の脱リン酸化酵素の熱不活性化を含み得る。ステップFにおける[PS]-[L]-[PS]-[T’]235鎖の環状化について上述したように、[T]-[PS]-[L]-[PS]鎖315は、ステップFにおいて同様に環状化され、環状化[T]-[PS]-[L]-[PS]鋳型240を生じる。鋳型240は、環状化[PS]-[L]-[PS]-[T’]235鎖および[T]-[PS]-[L]-[PS]鎖315の両方を表す。
【0054】
開示される主題の様々な実施形態の実験結果は実施例1に記載され、図4および図5に示される。図4は、図2Aおよび図2Bによる増幅方法で調製されたcfDNAの比較を示す高感度NGS断片アナライザーによるランチャートのグラフであり、[PS1]-[L]-[PS2]鎖102を伸長プライマー(「Circ伸長プライマー」と称される)またはcfDNAが2つのクリ-ンアップステップのうちの1つのみを受けたcfDNAが環状化されていない従来の伸長プライマー(「GrailMethylSeq」と称される)のいずれかとして使用した。図5は、Circ伸長プライマー[PS1]-[L]-[PS2]鎖102を使用する、図2Aおよび図2Bによる環状化アプロ-チによって調製されたメチル化ライブラリーの高感度NGS断片アナライザーによるランチャートのグラフである。
【0055】
インプットサンプル
開示される主題の方法において、インプットサンプルは断片化DNAを含む。断片化DNAは、各種実験室技術を用いて断片化され得る。断片化DNAは天然に断片化されていてもよく、例えば、cfDNAである。断片化DNAは、全ゲノム、または複数のゲノムもしくは複数のゲノムのサブセットさえも含む、ゲノムの任意のサブセットを表すことができる。
【0056】
サンプルの供給源は、DNAの任意の供給源であり得る。例えば、サンプル源は、生物有機体または環境サンプルであってもよい。供給源が生物有機体である場合、供給源は、組織、細胞、流体、または他の物質であり得る。サンプルは、新鮮であってもよく、または保存されてもよい。好ましくは、対象がヒトまたは他の動物である。サンプルまたはインプットサンプルは、開示される主題の一態様において複数の供給源および/または複数の対象からプールされ得る。
【0057】
開示される主題の一態様において、サンプルは、特定の疾患を有することがわかっているか、または有することが疑われる対象に由来する。開示される主題の一態様において、サンプルは、特定の疾患を有することが知られていないか、または有することが疑われる対象(例えば、研究における対照群または疾患のスクリーニングを受けている対象)に由来する。
【0058】
開示される主題の1つのバージョンにおいて、サンプルは、癌を有することが知られているか、または癌を有することが疑われる対象に由来する。開示される主題の一態様において、サンプルは、癌を有することが知られていないか、または癌を有することが疑われる対象(例えば、研究における対照群または癌のスクリーニングを受けている対象)に由来する。
【0059】
開示される主題のいくつかの実施形態において、サンプルが腫瘍または疑わしい腫瘍に由来する。開示される主題の一態様において、サンプルは、癌組織であり得るか、または癌組織であることが疑われる組織サンプルである。開示される主題の一態様において、サンプルはI期、II期、III期、またはIV期の癌であり得る組織サンプルである。
【0060】
開示される主題の一態様において、サンプルは、体液または細胞外体物質である。開示される主題のいくつかのバ-ジョンにおいて、体液または細胞外体物質が全血、血液画分、血清、および血漿からなる群から選択される。開示される主題の一態様において、体液または細胞外体物質が房水、腹水、胆汁、脳脊髄液、乳糜、胃液、腸液、リンパ液、膵液、心嚢液、腹水、胸膜液、唾液、脊髄液、痰、便または他の腸排液、汗、涙、および/または尿から選択される。
【0061】
開示される主題の一変形例によれば、インプットサンプルは、体液または他の体物質から得られるcfNAまたはcfDNAである。開示される主題の一態様において、cfNAまたはcfDNAは、健康細胞に由来する。開示される主題の一態様において、cfNAまたはcfDNAは、癌細胞などの疾患細胞に由来する。
【0062】
環状化とssDNAライゲーション
上記のように、開示される主題の方法の特定のステップにおいて、核酸鎖が環状化される(図2Bに示されるステップFを参照)。開示される主題の方法の特定のステップにおいて、一本鎖核酸鎖が環状化される。他のステップにおいて、ssDNA分子をライゲーションする。
【0063】
一実施形態において、T4 DNAリガーゼを使用して、一本鎖DNAを環状化することができる。ライゲーション反応は例えば、「標準」T4 DNAリガ-ゼ反応、またはAn,R.ら,Nucleic Acids Research(2017年)45(15):el39によって記載されているように分子間重合を防止し、分子内環状化を促進するように設計された標準反応の修飾バージョンであることができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。ライゲーション反応は例えば、Thermo Scientific(ペンシルベニア州ピッツバーグ)から入手可能なT4 DNAリガーゼおよびT4 DNAリガーゼバッファーを用いて実施することができる。
【0064】
一例において、1μM線状一本鎖DNA、IX T4 DNAリガーゼバッファー(10mM Mg2+、500μM ATP、10mMジチオスレイトール(DTT)、および40mM TRIs-HCL)、「スプリント」DNA(2μM、長さ12ヌクレオチド)、および5U T4 DNAリガーゼを使用して、標準的なT4 DNAリガーゼ反応(20 μL)を実施することができる。ライゲーション反応は20℃で12時間行うことができ、反応混合物を65℃で10分間加熱することによって反応を終了させる。
【0065】
一例において、0.05X(0.5mM Mg2+、25μM ATP、0.5mM DTT、および2mM TRIs-HCL)に希釈されたT4 DNAリガーゼバッファーを使用して、標準反応の修飾を実施することができる。
【0066】
別の実施例において、0.05Xに希釈したT4 DNAリガーゼバッファー(0.5mM Mg2+、25 μM ATP、0.5mM DTT、および2mM TRIs-HCL)を用いて標準反応の修飾を行い、所定の時間隔でライゲーション反応に線状一本鎖DNAを段階的に添加してもよい。
【0067】
1つの態様において、DNAは、DNA鎖の5’末端をリン酸基で修飾して、それを同じ鎖の3’末端に環状化できるようにすることによって環状化され得る。足場鎖は例えば、95℃~25℃で4時間アニーリングし、続いて、66mM TRIs-HCL(PH 7.6)、6.6mM MgC12、10mMジチオスレイトール(DTT)、0.1mM ATPおよび3.3μM Na432P2O7を有するTEバッファー中でT4 DNAリガーゼ(10μL、350U/μL)を使用して2つの末端をライゲーションし、続いてアルコール浴装置中で16℃で16時間インキュベ-ションすることによって、両端を一緒にライゲーションするスプリント鎖によって、その2つの末端を一緒にライゲーションするように折り畳まれ得る。T4-DNA/リガーゼは、65℃で10分間熱変性させた後、氷浴中で5分間めっき浴することができる。
【0068】
一実施形態において、T4 RNAリガーゼを使用して、一本鎖DNAを環状化することができる。一例において、一本鎖DNAはT4 RNAリガーゼ、反応バッファー、およびThermo Scientific(Thermo Fisher Scientific,マサチューセッツ州、ウォルサム)から入手可能なウシ血清アルブミン(BSA)を使用するライゲーション反応において、製造業者の推奨プロトコルに従って環状化することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0069】
別の実施例において、TS2126 RNAリガーゼ1はBlondalら、Nucleic Acids Res.(2005年)33(1):135-142に記載されているように、ATP依存的な方法で、分子内一本鎖DNAライゲーション(環状化)を触媒するために使用することができ、これはその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0070】
CIRCLIGASE ssDNAリガーゼは、5’-リン酸基および3’-水酸基の両方を有する一本鎖DNA(ssDNA)基質の分子内ライゲーション(すなわち、環状化)を触媒する熱安定性ATP依存性リガーゼである。CIRCLIGASE II ssDNAリガーゼはssDNA鋳型の分子内ライゲーション(すなわち、環状化)を触媒するATP非依存性の非触媒性熱安定性リガーゼである。両方の酵素は、Lucigen Corp.(ウィスコンシン州、ミドルトン)から入手可能である。CIRCLIGASE ssDNAリガーゼキットまたはCIRCLIGASE II ssDNAリガーゼキット(EPICENTRE Biotechnologies,ウィスコンシン州、マディソン、Lucigen Corp.、ウィスコンシン州、ミドルトンから入手可能)を使用して、製造業者の推奨プロトコルに従って一本鎖DNAを環状化することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。LUcIGeN CORP、CIRCLIGASE ssDNAリガーゼ(MA222E-CIRCLIGASE ssDNAリガーゼ、2019年3月)およびCIRCLIGASE II ssDNAリガーゼ(MA298E-CIRCLIGASE II ssDNAリガーゼ、2019年7月)のマニュアルは、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0071】
一実施形態において、CIRCLIGASEを使用して、一本鎖DNAを環状化することができる。一例において、CIRCLIGASE ssDNAリガーゼキット(EPICENTRE Biotechnologies,ウィスコンシン州、マディソン、Lucigen Corp.,ウィスコンシン州、ミドルトンから入手可能)を使用して、製造業者の推奨プロトコルに従って一本鎖DNAを環状化することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一例において、ライゲーション反応が10pmolの一本鎖DNA、2μLのCIRcLIGase 10X反応バッファー、1μLの1mM ATP、1μLの50mM MNC12、1μLのCIRcLIGase ssDNA LIGase(100U)を用いて実施して、20μLの全反応体積を得ることができる。ライゲーション反応を60℃で1時間インキュベートし、反応混合物を80℃で10分間加熱することによって反応を停止させて、リガーゼを不活性化することができる。
【0072】
別の実施例において、CIRCLIGASE II ssDNAリガ-ゼキット(EPICENTRE Biotechnologies,ウィスコンシン州、マディソン、Lucigen Corp.,ウィスコンシン州、ミドルトンから入手可能)を使用して、製造業者の推奨プロトコルに従って一本鎖DNAを環状化することができ、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。一例において、ライゲーション反応が10pmolの一本鎖DNA、2μLのCIRCLIGASE II 10X反応バッファー、1μLの50MM MNC12、4μLの5Mベタイン(任意選択)、1μLのCIRCLIGASE II ssDNAリガーゼ(100U)を用いて実施して、20μLの全反応体積を得ることができる。ライゲーション反応を60℃で1時間インキュベートし、反応混合物を80℃で10分間加熱することによって反応を停止させて、リガーゼを不活性化することができる。
【0073】
別の実施例において、DNAを4.5μLの環状化混合物(5μL中の最終堆積:1X CIRCLIGASEバッファー、50μM ATP、および2.5mM MnCl)に再懸濁し、0.5μL CIRCLIGASEを添加することによって、DNAを環状化することができる。環状化は60℃で1時間、1時間行うことができ、反応混合物を80℃で10分間加熱することによって反応を終了させ、リガーゼを不活性化する。
【0074】
CIRCLIGASE ssDNAリガーゼおよびCIRCLIGASE II ssDNAリガ-ゼも、例えば、図2AのことCおよび図3のことC’に関して示されるように、線状ssDNA分子をライゲーションするために有用である。任意の公知のプロトコルを使用することができる。例示的な実施例は、Gansauge,ら、Single-stranded DNA library preparation from highly degraded DNA using T4 DNA ligase,Nucleic Acids Res.2017 Jun 2;45(10):e79により提供され、開示は、ssDNAライゲーションの方法に関するその教示のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0075】
ウラシルの変換
上記のように、開示される主題の方法の特定のステップにおいて、非メチル化シトシンは、ウラシルに変換され得る。
【0076】
この目的のために、様々なキットが市販されている。例としては、EPIMARK亜硫酸水素塩変換キット(ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs,Inc.)マサチューセッツ州イプスウィッチ)、ACTIVEMOTIF亜硫酸水素塩変換キット(Active Motif,Inc.,カリフォルニア州、カールスバッド)、EPITECT亜硫酸水素塩キット(QIAGEN Ltd.,ドイツ、ヒルデン)EZ DNA Methylation-Lightning Kit(Zymo Research Corp.,カリフォルニア州、アーバイン)、NEBNEXT Enzymatic Methyl-seq(EM-SEQ)(ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs,Inc.)マサチューセッツ州イプスウィッチ)が挙げられる。これらのキットの製品文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0077】
一態様において、DNA断片を変性させ、亜硫酸水素塩で処理する。変性および亜硫酸水素塩処理ことは、単一の反応であってもよく、または連続反応で行われてもよい。亜硫酸水素塩処理は、非メチル化シトシンを亜硫酸塩で修飾する。変換後、DNAを脱アミノ化してウラシルに変換することができる。例えば、DNAを脱塩し、アルカリ性PHでインキュベートして、脱アミノ化し、ウラシルに変換することができる。
【0078】
開示される主題の一態様において、DNA断片は、約0.3Mの最終濃度のNaOHを使用して変性され、約2M(約5~6の間のPH)の最終濃度の亜硫酸水素ナトリウムまたはメタ重亜硫酸ナトリウムで、55℃で4~16時間処理され得る。変換後、DNAを脱塩し、その後、DNAをアルカリ性PHで室温でインキュベートすることにより脱スルホン化することができる。
【0079】
開示される主題の別の態様において、非メチル化シトシンのウラシルへの変換が酵素技術を利用する。例えば、ある種のシトシンデアミナーゼは、一本鎖DNAにおいてシトシン塩基をウラシルに脱アミノ化することが知られている。
【0080】
開示される主題の別の態様において、シトシンデアミナ-ゼはAPOBECである。APOBECはまた、5mCおよび5hmCを脱アミノ化するので、5mCおよび5hmCを検出するために、これらの方法は、5mCおよび/または5hmCの脱アミノ化をブロックするための技術を使用する。例えば、EM-SEQ(ニュー・イングランド・バイオラボ社(New England Biolabs,Inc.)マサチューセッツ州イプスウィッチ)TET2および酸化促進剤を使用して、5mCおよび5hmCを修飾して、APOBECの基質ではない形成にすることができる。TET2酵素は5mCを5caCに変換し、酸化エンハンサ-は5hmCを5ghmCに変換する。NEBNEXT Enzymatic Methyl-seq(EM-SEQ)製品の文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0081】
開示される主題の別の態様において、5hmCが5mCとは別に識別され得るように選択的に変換される。例えば、APOBEC共役エピジェネティックシークエンシング(ACE-seq)は、5hmCを検出するために酵素変換に依存する。この方法において、T4-BGTは5hmCを5ghmCにグルコシル化し、APOBEC3Aによる脱アミノ化から保護する。シトシンおよび5mCはAPOBEC3Aによって脱アミノ化され、チミンとして塩基配列決定される。
【0082】
開示される主題の別の態様において、5mCと5hmCとを区別するために、酸化的亜硫酸水素塩シークエンシング(oxBS)が使用される。酸化試薬過ルテニウム酸カリウムは5hmCを5-ホルミルシトシン(5fC)に変換し、その後の亜硫酸水素ナトリウム処理は、5fCをウラシルに脱アミノ化する。5mCは変化しないままであり、したがってこの方法を用いて同定することができる。
【0083】
開示される主題の別の態様において、断片化DNAがグルコシル化によって5hmCを保護するT4-BGTで処理される。次いで、酵素mTET1を使用して、5mCを5hmCに酸化し、T4-BGTは、修飾グルコース部分(6-N3-グルコース)を使用して、新たに形成された5HMCを標識する。
【0084】
鎖変性
開示される主題の一態様において、鎖が変換反応を行う前に変性される。変性は例えば、高温、例えば、約98℃でのインキュベーション、および/または水酸化ナトリウムなどの塩基への曝露によって達成され得る。
【0085】
クリーンアップ
開示される主題の方法は、後続のステップのための反応物を調製するための様々な段階でのクリーンアップステップから利益を得ることができる。一例において、ビーズベースのクリーンアッププロトコル、例えば、SPRIクリーンアッププロトコルが実行される。
【0086】
以下の実施例は、限定としてではなく、例示として提示するものである。
【実施例
【0087】
実施例1
有機リンカー(「Circ伸長プライマー」とも呼ばれる)を含有する一本鎖核酸分子を設計し、メチル化ライブラリーを調製するための環状化および伸長アプローチにおける使用のために試験した。以下の実験手順は、増幅前にDNAが環状化されるcfDNAから次世代シーケンシング(NGS)標的化メチル化ライブラリーを作製するためのアプローチを記載する。この環状化メチル-seqライブラリー調製ワークフロー設計を図2Aおよび図2Bに示す。
【0088】
Circ_伸長プライマー設計
以下のCirc_伸長プライマー(図1Bの鎖102)は、/5Phos/CGACAGGTTCAGAGTTCCTACAGGTCCGACGATC/iSp18/CACTCA/iSp18/GTGACTGGAGTTCAGACGTGTGCTCTTCCGATCT-3’OHを使用した。この伸長プライマーにおいて、分子iSp18/CACTCA/iSp18部分は、図1Bに示すリンカー120である。用語「iSp18」は、Integrated DNA Technologies社(アイオワ州コーラルビル)から入手可能なヘキサ-エチレングリコール分子であるInt Spacer18を示す。
【0089】
インプットサンプル
無細胞DNA(cfDNA)が、全血の血漿画分内に存在する。
【0090】
ウラシルの変換
EZ DNA METHYLATION-LIGHTNING Kit Manual Version 1.0.4(Zymo Research Corp.、カリフォルニア州、アーバイン)を使用して、cfDNA中の非メチル化シトシンをウラシルに変換した。Advanced Analytical Technologies High Sensitivity NGS Fragment Analysis Kit(1bp-6000bp)User Guide for DNF-474-0500 and DNF-474-1000を用いて、キャピラリー電気泳動により断片を分析した。
【0091】
NGSライブラリーの精製
NGSライブラリーを、ライブラリー構築中および塩基配列決定前に、固相可逆的固定化(SPRI)を用いて精製した。この方法は、ポリエチレングリコ-ル(PEG)および塩の存在下でDNAに可逆的に結合するカルボキシル被覆磁性粒子/ビーズに依存する。
【0092】
試薬・材料
使用した試薬および材料を以下の表に示す。
【0093】
【表1】
【0094】
ポリエチレングリコール(PEG)調製
PEGの42%(最終濃度)調製物を、1000μLのPEG(50%)を190.5μLのULTRAPURE DNase/RNase-Free Waterと組み合わせることによって調製した。
【0095】
ライブラリー調製オリゴヌクレオチド試薬
実験に使用したオリゴヌクレオチドを低EDTA TEバッファーに溶解し、以下の表に示す。
【0096】
【表2】
【0097】
一般的手順
全ての反応混合物は、酵素を添加する前にパルスボルテックスによって混合した。酵素添加後の混合は第一アダプターのライゲーションのセクション(反応が20%のPEG-4000を含有し、適切な混合のためにボルテックスが必要である場合)を除いて、チュ-ブの穏やかなフリックと、その後のクイックスピンによってのみ行った。低結合ピペットチップを、プロトコル全体を通して使用した。
【0098】
亜硫酸水素塩変換調製
使用前に96mLの100%エタノールを24mLのM-Washバッファー濃縮物(D5031)に加えた。ZYMOSPIN ICカラムをチェックして、使用前にカラムまたはマトリックスに目に見える損傷がないことを確認した。Lightning Conversion Reagentをボルテックスにより混合し、急速に遠心分離した。
【0099】
亜硫酸水素塩変換
合計25ngのインプットcfDNAを0.2mLのPCRストリップチューブに入れた。必要に応じて、ヌクレアーゼを含まない水でサンプル容量を20μLに調製した。130μLのLightning Conversion ReagentをDNAサンプルに添加した。ボルテックスによって混合し、次いで、チューブのキャップまたは側面に液滴が存在しないことを確実にするために短時間遠心分離する。サーモサイクラー上でEZライトニングプログラムを開始した。温度が90℃に達したら、チューブを慎重にサーモサイクラーに入れた。サイクルプログラムは、98℃8分、54℃60分、4℃保持とした。
【0100】
カラムクリーンアップ
ZYMO-SPIN ICカラムを、提供された収集チューブにセットアップした。600μLのM結合バッファーをカラムに加えた。DNAチューブをサーモサイクラーから慎重に取り出した。サンプルを、M-結合バッファーを含有するZYMO-SPIN ICカラムにロードした。上下にピペットで混ぜる。フルスピード(>10,000xg)で30秒間遠心分離する。フロースルーを廃棄した。100μLのM-洗浄バッファーをカラムに添加し、30秒間全速で遠心分離した。フロースルーを廃棄した。200μLのL-脱スルホン化バッファーをカラムに添加し、室温で20分間静置した。その後、30秒間、全速力で遠心分離した。フロースルーを廃棄し、新しい回収チューブに変更した。200μLのM-洗浄バッファーをカラムに添加した。カラムを全速で30秒間遠心分離した。別の200μLのM-洗浄バッファーをカラムに添加し、30秒間、全速力で遠心分離した。カラムを新しい収集チューブに入れ、30秒間全速力で遠心分離した。カラムを1.5mLのEppendorf Lo-結合チューブに入れ、2μLのM-溶出バッファーをカラムマトリックスに直接添加し、次いで室温で5分間インキュベートした。DNAを溶出するために、30秒間、フルスピ-ドで遠心分離した。
【0101】
脱リン・熱変性
11μLの亜硫酸水素塩処理DNAを0.2MLのストリップチューブに移し、氷上のチューブに次反応試薬混合物をセットアップした。
【0102】
【表3】
【0103】
6μLのマスターミックスを亜硫酸水素塩処理DNAに添加し、穏やかにフリックすることによって混合し、次いで、クイックスピンした。チューブを、予め加熱した蓋(105℃)を備えたサーモサイクラー中で、37℃で10分間、95℃で2分間インキュベートし、次いで、速やかに氷水浴に移し、1分間静置した。クイックスピン後、第1アダプターのライゲーションに進む。
【0104】
第1アダプターのライゲーション
精製したGMSアダプター1を氷上で解凍した。以下の反応試薬を設定し、ボルテックスで混合した。
【0105】
【表4】
【0106】
23μLのマスタ-ミックスを17μLの脱リン酸化DNAに加えた。短時間のボルテックスと速いスピンで混合する。チューブを、予め加熱した蓋(105℃)を備えたサーモサイクラー中、58℃で1時間インキュベートした。
【0107】
ssDNA SPRI精製:(SPRI 1)
以下の手順を実施した。
1.希釈SPRI調製:
【0108】
【表5】

2.83μLの希釈したSPRIビーズを40μLのライゲーションしたDNAに加える。上下にピペットで混合する。
3.室温で20分間インキュベートする。
4.速やかにスピンさせた後、チューブを磁気スタンド上に5分間置く。ビーズに触れることなく上清を廃棄する。
5.80%の新鮮なエタノール200μLで2回洗浄する。
6.クイックスピン後、20μLピペットを用いて残留エタノールを除去する。磁気スタンド上のペレットを3分間空気乾燥させる。
7.磁気スタンドからチューブを取り外す。24μLのRSBを加え、混合し、次いでRTで2分間インキュベートする。速やかにスピンさせた後、チューブを磁気スタンド上に5分間置く。
8.24μLを「線形増幅」反応に移す。
【0109】
線形増幅
線状増幅反応を設定し、以下のように行った。
【0110】
【表6】
【0111】
予め加熱した蓋(105℃)を付けたサーモサイクラーでチューブをインキュベートする。
1サイクル:98℃×30秒
20サイクル:
98℃、10秒間
62℃、30秒間
72℃、30秒間
1サイクル:72℃、10分間
2 4℃保持
【0112】
ssDNA double SPRI精製:(SPRI2)
以下のプロトコ-ルに従った。
1.IX SPRI精製のためのSPRI PEG混合物を調製する。
【0113】
【表7】

2.増幅したDNA50μLに77μLを加える。上下にピペットで混合する。室温で20分間インキュベートする。
3.速やかにスピンさせた後、チューブを磁気スタンド上に5分間置く。上清を捨てる。
4.80%のエタノ-ル200μLで2回洗浄する。
5.クイックスピン後、20μLピペットを用いて残留エタノールを除去する。磁気スタンド上のペレットを3分間空気乾燥させる。
6.磁気スタンドからチューブを取り外す。50μLのRSB混合を加える。室温で2分間インキュベートする。
7.速やかにスピンさせた後、チューブを磁気スタンド上に5分間置く。
8.50μLを0.9X SPRI精製用の新しいチュ-ブに移す。
9.0.9X SPRI精製のためのSPRI PEG混合物を調製する。
【0114】
【表8】

10.増幅したDNA 50μLに70μLを加える。上下にピペットで混合する。室温で20分間インキュベートする。
11.速やかにスピンさせた後、チュ-ブを磁気スタンド上に5分間置く。上清を捨てる。
12.80%のエタノール200μLで2回洗浄する。
13.クイックスピン後、ピペット20μLを用いて残留エタノールを除去する。磁気スタンド上のペレットを3分間空気乾燥させる。
14.磁気スタンドからチューブを取り外す。26μLのRSB混合を加える。室温で2分間インキュベートする。
15.速やかにスピンさせた後、チューブを磁気スタンド上に5分間置く。
16.25μLを「変性および環状化」反応に移す。
【0115】
変性および環状化
以下の手順に従った。
1.95℃で2分間予熱した蓋(105℃)を備えたサーモサイクラーで加熱することにより、ssDNAを脱色する。
2.すぐに氷水浴に移し、1分間静置する。
3.氷上での次の反応を設定する。
【0116】
【表9】

4.静かに混合した後、急速にスピンさせる。最終容量は31μLである。
5.予め加熱した蓋(105℃)を付けたサーモサイクラーでチューブをインキュベートする。
60℃、60分間。
80℃、10分間。
4°C
【0117】
ライブラリーの増幅とインデックス作成
以下の手順に従った。氷上で以下の反応を設定した。
【0118】
【表10】

1.静かに混合した後、急速にスピンさせる。最終容量は81μLである。
2.予め加熱した蓋(105℃)でサーモサイクラー中でインキュベートする。
1サイクル:98℃、45秒。
14サイクル:
98℃、15秒間。
60℃30秒。
72℃、30秒。
1サイクル:72℃、1分間。
4°C
【0119】
増幅ライブラリーSPRIビーズのクリーンアップ(SPRI4)
以下の手順に従った。
1.114μLのSPRIビーズを加える。(1.4X)上下にピペットで混合する。
2.室温で10分間インキュベートする。速やかにスピンさせた後、チューブを磁気スタンド上に5分間置く。上清を除去し、廃棄する。
3.80%のエタノール200μLで2回洗浄する。
4.クイックスピン後、20μLピペットを用いて残留エタノールを除去する。磁気スタンド上のペレットを3分間空気乾燥させる。
5.試験管に23μLのRSBを加える。混合し、室温で2分間インキュベートする。
素早くスピンさせ、チューブを磁気スタンド上に5分間、6分間置く。20μLを新しい試験管に移す。これはメチル化ライブラリーである。
【0120】
ライブラリーQC
以下の手順に従った。
1.1:100ライブラリー希釈液を調製し、高感度NGSキットを用いて断片アナライザー上に2μLのライブラリーを加える。
2.ライブラリーの量を定量するには、175~5,000bpの範囲を選択する。
【0121】
結果
図4は、上述した増幅実験においてCirc伸長プライマーを用いた結果を示すグラフである。増幅方法においてDNAが環状化されていない従来の伸長プライマー(「GrailMethylSeq」と称される)の代わりに、環状化伸長プライマーを使用した。最初の1X SPRIクリーンアップの後、GrailMethylSeq伸長プライマーを用いて調製したDNAと比較するために、DNAを高感度NGS断片アナライザーで実行した。
【0122】
図5は、Circ伸長プライマーを用いて本明細書に記載の環状化アプローチによって調製されたメチル化ライブラリーDNAを示すグラフである。ライブラリーDNAを1:100に希釈し、高感度NGS断片アナライザーで実行し、結果を図5に示す。
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図3
図4
図5
【配列表】
2024501637000001.app
【国際調査報告】