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特表2024-501649縺れを解いた特徴表現視域を使用した、画像の柔軟なノイズ除去方法及びシステム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】縺れを解いた特徴表現視域を使用した、画像の柔軟なノイズ除去方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20240105BHJP
   A61B 6/46 20240101ALI20240105BHJP
【FI】
A61B6/03 360J
A61B6/03 360Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537005
(86)(22)【出願日】2021-12-10
(85)【翻訳文提出日】2023-07-06
(86)【国際出願番号】 EP2021085120
(87)【国際公開番号】W WO2022128758
(87)【国際公開日】2022-06-23
(31)【優先権主張番号】63/127,424
(32)【優先日】2020-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ワン シン
(72)【発明者】
【氏名】リウ サイフェン
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093AA26
4C093CA06
4C093FD03
4C093FF03
4C093FF16
4C093FF18
4C093FF33
4C093FF41
(57)【要約】
画像のノイズを除去するシステム及び方法が、提供される。標準画像モジュールは、標準画像から標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴を生成し、標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴から標準画像を再構成するよう構成される。低品質画像モジュールは、低品質画像から低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴を生成し、低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴から低品質画像を再構成するよう構成される。1)再構成標準画像と標準画像との比較、及び2)再構成低品質画像と低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、損失評価基準を計算する、損失計算モジュールが提供される。標準画像モジュールに低品質解剖学的構造特徴を供給すると、標準画像モジュールは、再構成標準転移画像を出力する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
医用画像のノイズを除去するシステムであって、前記システムが、
標準画像から標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴を生成し、前記標準解剖学的構造特徴及び前記標準ノイズ特徴から前記標準画像を再構成する、標準画像モジュールと、
低品質画像から低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴を生成し、前記低品質解剖学的構造特徴及び前記低品質ノイズ特徴から前記低品質画像を再構成する、低品質画像モジュールと、
1)前記再構成標準画像と前記標準画像との比較、及び2)前記再構成低品質画像と前記低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、損失評価基準を計算する、損失計算モジュールと、
を有し、前記損失評価基準が、機械学習を使用して前記標準画像モジュール及び前記低品質画像モジュールを調整するための、損失関数に組み入れられ、前記標準画像モジュールに前記低品質解剖学的構造特徴を供給すると、前記標準画像モジュールが、前記低品質解剖学的構造特徴、及び前記低品質ノイズ特徴によって表されるノイズレベルよりも低いノイズレベルを含む、再構成標準転移画像を出力する、システム。
【請求項2】
前記標準画像モジュールが、標準解剖学的構造符号化器、標準ノイズ符号化器、及び標準生成器を有し、前記標準画像を受信すると、前記標準解剖学的構造符号化器が、前記標準解剖学的構造特徴を出力し、前記標準ノイズ符号化器が、前記標準ノイズ特徴を出力し、前記標準生成器が、前記標準解剖学的構造特徴及び前記標準ノイズ特徴から、前記標準画像を再構成し、
前記低品質画像モジュールが、低品質解剖学的構造符号化器、低品質ノイズ符号化器、及び低品質生成器を備え、前記低品質画像を受信すると、前記低品質解剖学的構造符号化器が、前記低品質解剖学的構造特徴を出力し、前記低品質ノイズ符号化器が、前記低品質ノイズ特徴を出力し、前記低品質生成器が、前記低品質解剖学的構造特徴及び前記低品質ノイズ特徴から、前記低品質画像を再構成し、
前記損失計算モジュールが、前記再構成標準画像と前記標準画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記標準生成器の損失評価基準を計算し、
前記損失計算モジュールが、前記再構成低品質画像と前記低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記低品質生成器の損失評価基準を計算し、
前記損失計算モジュールが、前記標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて、前記標準解剖学的構造符号化器の損失評価基準を計算し、
前記損失計算モジュールが、前記標準解剖学的構造符号化器の前記出力との比較に基づいて、前記低品質解剖学的構造符号化器の損失評価基準を計算する、
請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記低品質解剖学的構造符号化器の前記損失評価基準が、敵対的損失評価基準である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
セグメンテーションネットワークをさらに備え、前記再構成標準画像のセグメンテーションマスクが、前記標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて評価される、請求項1に記載のシステム。
【請求項5】
低品質生成器に前記標準解剖学的構造特徴を供給すると、前記低品質生成器が、再構成低品質転移画像を出力し、前記低品質転移画像が、前記標準解剖学的構造特徴、及び前記標準ノイズ特徴によって表されるノイズレベルよりも高いノイズレベルを含み、前記低品質転移画像のセグメンテーションマスクが、前記標準画像に関する前記セグメンテーションラベルとの比較に基づいて評価される、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記標準転移画像の損失評価基準が、前記標準画像再構成物との比較に基づいて評価され、前記標準転移画像の前記損失評価基準が、敵対的損失評価基準である、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記標準画像モジュールと前記低品質画像モジュールとが、同時に訓練される、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記標準画像モジュールが、前記低品質画像モジュールの訓練前に訓練され、前記標準画像モジュールの訓練時に創り出された変数の値が、前記低品質画像モジュールの訓練の際には一定に保たれる、請求項1に記載のシステム。
【請求項9】
前記標準画像モジュール及び前記低品質画像モジュールを訓練した後、前記システムが、標準解剖学的構造符号化器、標準ノイズ符号化器、及び低品質解剖学的構造符号化器について、一定の値に保ちながら、標準生成器をさらに訓練する、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記標準解剖学的構造特徴及び前記低品質解剖学的構造特徴が、それぞれ、単一の解剖学的構造体に対応する、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
医用画像のノイズを除去する方法であって、前記方法が、
標準画像モジュールによって、標準画像から、標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴を生成するステップと、
前記標準画像モジュールによって、前記標準解剖学的構造特徴及び前記標準ノイズ特徴から、前記標準画像を再構成するステップと、
低品質画像モジュールによって、低品質画像から、低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴を生成するステップと、
前記低品質画像モジュールによって、前記低品質解剖学的構造特徴及び前記低品質ノイズ特徴から、前記低品質画像を再構成するステップと、
損失計算モジュールによって、1)前記再構成標準画像と前記標準画像との比較、及び2)前記再構成低品質画像と前記低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、損失評価基準を計算するステップと
を有し、前記損失評価基準が、機械学習を使用して前記標準画像モジュール及び前記低品質画像モジュールを調整するための、損失関数に組み入れられ、前記標準画像モジュールに前記低品質解剖学的構造特徴を供給すると、前記標準画像モジュールが、前記低品質解剖学的構造特徴、及び前記低品質ノイズ特徴によって表されるノイズレベルよりも低いノイズレベルを含む、再構成標準転移画像を出力する、方法。
【請求項12】
前記標準画像モジュールが、標準解剖学的構造符号化器、標準ノイズ符号化器、及び標準生成器を有し、前記標準画像を受信すると、前記標準解剖学的構造符号化器が、前記標準解剖学的構造特徴を出力し、前記標準ノイズ符号化器が、前記標準ノイズ特徴を出力し、前記標準生成器が、前記標準解剖学的構造特徴及び前記標準ノイズ特徴から、前記標準画像を再構成し、
前記低品質画像モジュールが、低品質解剖学的構造符号化器、低品質ノイズ符号化器、及び低品質生成器を有し、前記低品質画像を受信すると、前記低品質解剖学的構造符号化器が、前記低品質解剖学的構造特徴を出力し、前記低品質ノイズ符号化器が、前記低品質ノイズ特徴を出力し、前記低品質生成器が、前記低品質解剖学的構造特徴及び前記低品質ノイズ特徴から、前記低品質画像を再構成し、
前記損失計算モジュールが、前記再構成標準画像と前記標準画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記標準生成器の損失評価基準を計算し、
前記損失計算モジュールが、前記再構成低品質画像と前記低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、前記低品質生成器の損失評価基準を計算し、
前記損失計算モジュールが、前記標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて、前記標準解剖学的構造符号化器の損失評価基準を計算し、
前記損失計算モジュールが、前記標準解剖学的構造符号化器の前記出力との比較に基づいて、前記低品質解剖学的構造符号化器の損失評価基準を計算する、
請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記低品質解剖学的構造符号化器の前記損失評価基準が、敵対的損失評価基準である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
セグメンテーションネットワークにおいて、前記再構成標準画像のセグメンテーションマスクを生成するステップと、前記セグメンテーションマスクを、前記標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて評価するステップとをさらに有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
低品質生成器に前記標準解剖学的構造特徴を供給すると、前記低品質生成器が、再構成低品質転移画像を出力し、前記低品質転移画像が、前記標準解剖学的構造特徴、及び前記標準ノイズ特徴によって表されるノイズレベルよりも高いノイズレベルを含み、前記低品質転移画像のセグメンテーションマスクが、前記標準画像に関する前記セグメンテーションラベルとの比較に基づいて評価される、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記標準転移画像の損失評価基準が、前記標準画像再構成物との比較に基づいて評価され、前記標準転移画像の前記損失評価基準が、敵対的損失評価基準である、請求項11に記載の方法。
【請求項17】
前記標準画像モジュールと前記低品質画像モジュールとが、同時に訓練される、請求項11に記載の方法。
【請求項18】
前記標準画像モジュールが、前記低品質画像モジュールの訓練前に訓練され、前記標準画像モジュールの訓練時に創り出された変数の値が、前記低品質画像モジュールの訓練の際には一定に保たれる、請求項11に記載の方法。
【請求項19】
前記標準画像モジュール及び前記低品質画像モジュールを訓練した後、前記方法が、標準解剖学的構造符号化器、標準ノイズ符号化器、及び低品質解剖学的構造符号化器について、一定の値に保ちながら、標準生成器をさらに訓練する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記標準解剖学的構造特徴及び前記低品質解剖学的構造特徴が、それぞれ、単一の解剖学的構造体に対応する、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本開示は、概ね、縺れを解いた特徴表現を用いたドメインに依存しない学習を使用して、低線量画像のノイズを除去するための、柔軟な解決策を提供する、ニューラルネットワークモデルを訓練及び調整するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[0002] 従来、大部分の撮像モダリティでは、取得の物理的過程又は再構成に影響があり、最終画像にノイズなどのアーチファクトが生じる。ニューラルネットワークモデルなどのノイズ除去アルゴリズムを訓練するために、ノイズのある画像サンプルとノイズのない画像サンプルとの対がニューラルネットワークモデルに提示され、ネットワークは、ノイズのある画像のノイズを除去し、対応するノイズのないグランドテュルース画像(ground truth image)を回復することによって、コスト関数を最小化しようとする。
【0003】
[0003] しかし、画像を取得するのに使用されるパラメータのどんな変化でも、対応する画像のアーチファクトの形状又は量が変化する。したがって、標準画像のノイズ除去に使用されるノイズ除去モデルは、コンピュータ断層撮影(CT)スキャンに関して放射線量が低減されるなど、様々な取得パラメータを使用して取得された画像に適用する場合、より効果が低下する。
【0004】
[0004] 現代の医療行為におけるCTスキャンの使用の増加により、それに伴う必要な放射線量に対する懸念が生じており、線量の低減が臨床上の目標となっている。ただし、放射線量を下げると、再構成画像のノイズ及び他のアーチファクトが大幅に増加する傾向があり、診断情報が損なわれる。低線量CTスキャンのノイズを低減し、それにより高品質の画像に変換するために、膨大な取組みが行われてきた。
【0005】
[0005] 画像ノイズ除去に関して、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の使用を含む、機械学習技法が研究されてきた。しかし、既存の方法は通常、特定のノイズレベルに合うように調整され、対応するCNNの訓練に使用される訓練セットが対象としていないノイズレベルまでは、良好に汎用化することができない。
【0006】
[0006] CTの撮像では、キロボルトピーク(kVp)、ミリアンペア秒(mA秒)、スライス厚、及び患者のサイズを含む、複数の要因がすべて、再構成画像のノイズレベルに影響を与える。これらの撮像パラメータのうちのいずれかを変更した結果、それによって相異なるノイズレベル又は相異なるアーチファクトのプロファイルが生じ、したがって従来は、かかる別の撮像パラメータで取得された画像のノイズを除去するのに、相異なるモデルが必要であった。これにより、実際のノイズ除去におけるCNNベースの方法の適用可能性は、制限されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007] したがって、対応する方法の訓練セットで使用された撮像パラメータとは相異なる撮像パラメータで取得された画像の、ノイズを除去できる方法が必要である。さらに、訓練セットの画像よりも低い放射線量で取得されたCT画像を含む、様々なノイズレベルの画像のノイズを除去するために使用できる、単一の訓練されたモデルが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008] 医用画像のノイズを除去する、システム及び方法が提供される。一実施形態では、標準画像モジュールは、標準画像から標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴を生成し、標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴から標準画像を再構成するよう構成される。低品質画像モジュールは、同様に、低品質画像から低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴を生成し、低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴から低品質画像を再構成するよう構成される。
【0009】
[0009] システム及び方法が訓練できるような損失計算モジュールが提供される。損失計算モジュールは、通常、1)再構成標準画像と標準画像との比較、及び2)再構成低品質画像と低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、損失評価基準を計算する。
【0010】
[0010] 損失計算モジュールで計算される損失評価基準は、機械学習を使用して標準画像モジュール及び低品質画像モジュールを調整するための、損失関数に組み入れられる。標準画像モジュールに低品質解剖学的構造特徴を供給すると、標準画像モジュールは、低品質解剖学的構造特徴、及び低品質ノイズ特徴によって表されるノイズレベルよりも低いノイズレベルを含む、再構成標準転移画像(transfer image)を出力する。
【0011】
[0011] いくつかの実施形態では、標準画像モジュールは、標準解剖学的構造符号化器、標準ノイズ符号化器、及び標準生成器を有し、標準画像を受信すると、標準解剖学的構造符号化器が、標準解剖学的構造特徴を出力し、標準ノイズ符号化器が、標準ノイズ特徴を出力し、標準生成器が、標準解剖学的構造特徴及び標準ノイズ特徴から、標準画像を再構成する。
【0012】
[0012] いくつかのかかる実施形態では、低品質画像モジュールは同様に、低品質解剖学的構造符号化器、低品質ノイズ符号化器、及び低品質生成器を有し、低品質画像を受信すると、低品質解剖学的構造符号化器が、低品質解剖学的構造特徴を出力し、低品質ノイズ符号化器が、低品質ノイズ特徴を出力し、低品質生成器が、低品質解剖学的構造特徴及び低品質ノイズ特徴から、低品質画像を再構成する。
【0013】
[0013] いくつかのかかる実施形態では、損失計算モジュールは、再構成標準画像と標準画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、標準生成器の損失評価基準を計算する。損失計算モジュールは、同様に、再構成低品質画像と低品質画像との比較に少なくとも部分的に基づいて、低品質生成器の損失評価基準を計算する。
【0014】
[0014] 損失計算モジュールはさらに、標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて、標準解剖学的構造符号化器の損失評価基準を計算し、損失計算モジュールはさらに、標準解剖学的構造符号化器の出力との比較に基づいて、低品質解剖学的構造符号化器の損失評価基準を計算する。
【0015】
[0015] いくつかの実施形態では、低品質解剖学的構造符号化器の損失評価基準は、敵対的損失評価基準である。
【0016】
[0016] いくつかの実施形態では、説明されている方法を実施するシステムは、セグメンテーションネットワークをさらに備え、再構成標準画像のセグメンテーションマスクは、標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて評価される。
【0017】
[0017] いくつかのかかる実施形態では、低品質生成器に標準解剖学的構造特徴を供給すると、低品質生成器が、再構成低品質転移画像を出力し、低品質転移画像は、標準解剖学的構造特徴、及び標準ノイズ特徴によって表されるノイズレベルよりも高いノイズレベルを含む。低品質転移画像のセグメンテーションマスクは、次いで、標準画像に関するセグメンテーションラベルとの比較に基づいて評価される。
【0018】
[0018] いくつかの実施形態では、標準転移画像の損失評価基準は、標準画像再構成との比較に基づいて評価され、標準転移画像の損失評価基準は、敵対的損失評価基準である。
【0019】
[0019] いくつかの実施形態では、標準画像モジュールと低品質画像モジュールとが、同時に訓練される。
【0020】
[0020] 他の実施形態では、標準画像モジュールが、低品質画像モジュールの訓練前に訓練され、標準画像モジュールの訓練時に創り出された変数の値は、低品質画像モジュールの訓練の際には一定に保たれる。いくつかのかかる実施形態では、標準画像モジュール及び低品質画像モジュールの訓練後、システムは、標準解剖学的構造符号化器、標準ノイズ符号化器、及び低品質解剖学的構造符号化器について、一定の値に保ちながら、標準生成器をさらに訓練する。
【0021】
[0021] いくつかの実施形態では、標準解剖学的構造特徴及び低品質解剖学的構造特徴は、それぞれ、単一の解剖学的構造体に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】[0022] 本開示の一実施形態による、システムの概略図である。
図2】[0023] 本開示の一実施形態による、撮像デバイスを示す図である。
図3】[0024] 本開示の一実施形態で使用する、訓練パイプラインの図である。
図4A】[0025] 図3の訓練パイプラインで使用される、例示的な訓練方法を示す図である。
図4B図3の訓練パイプラインで使用される、例示的な訓練方法を示す図である。
図4C図3の訓練パイプラインで使用される、例示的な訓練方法を示す図である。
図5】[0026] 図3の訓練パイプラインを使用して訓練されたモデルの、画像のノイズを除去するための使用法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[0027] 本開示の原理に従った例示的な実施形態の説明は、記述された全説明のうちの一部とみなされるべき、添付図面と一緒に読まれることを意図している。本明細書で開示されている、開示の実施形態の説明において、方向又は向きへのどんな言及も、単に説明上の便宜を目的とするものであり、決して本開示の範囲を限定することを意図するものではない。「下側の」、「上側の」、「水平の」、「垂直の」、「より上に」、「より下に」、「上へ」、「下へ」、「上部」、及び「底部」などの相対的な用語ばかりでなく、その派生語(例えば、「水平に」、「下方へ」、「上方へ」など)も、そのとき説明されている、又は議論中の図面に示された、向きを指すものと解釈されたい。これらの相対的な用語は、ただ単に説明の便宜上のものであり、そのように明示的に示されていない限り、装置を、特定の向きで構成又は動作させる必要はない。「取り付けられた」、「付着された」、「接続された」、「結合された」、「相互接続された」などの用語は、特に明記されていない限り、構造体が、直接的又は介在する構造体を介して間接的に、相互に固定されるか又は取り付けられる関係ばかりでなく、可動の又は強固な取付け又は関係の両方も指す。さらに、本開示の特徴及び利点は、例示された実施形態を参照して例示されている。本開示は、したがって、単独で又は特徴の他の組合せで存在する、特徴のいくつかの可能性のある非限定的な組合せを例示した、かかる例示的な実施形態に特に限定されるべきではない。本開示の範囲は、本明細書に添付の特許請求の範囲によって定義される。
【0024】
[0028] この開示は、現在考えられる、本開示を実施する最良の、1つ又は複数のモードについて説明している。この説明は、限定的な意味で理解されることを意図するものではなく、添付図面を参照することによって、単に例示を目的として提示される本開示の一例を提供し、本開示の利点及び構成を当業者に知らせるものである。図面の様々な図において、同様の参照符号は、同様の又は類似の部分を表している。
【0025】
[0029] 開示されている実施形態は、本明細書の革新的な教示の多くの有利な使用法の例にすぎないことに、留意することが重要である。本出願の明細書でなされた記述は、概して、様々に特許請求された開示のうちのいずれかを、必ずしも制限するものではない。さらに、いくつかの記述は、いくつかの本発明の特徴に当てはまるが、他の特徴には当てはまらない場合がある。概して、別段の指示がない限り、一般性を失うことなく、単数の要素は複数であってもよく、その逆も同様である。
【0026】
[0030] 一般に、医用画像のノイズを除去するために、画像のノイズを除去するアルゴリズム又はモデルを使用する画像プロセッサは、対応する画像に存在すると予想される、ノイズのレベル及び形態に基づく。予想されるノイズのこのレベル及び形態は、通常、画像の取得に使用される様々なパラメータに基づく。
【0027】
[0031] コンピュータ断層撮影(CT)ベースの医用撮像に関しては、例えば、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の形態をとる機械学習アルゴリズムなど、様々な画像プロセッサを使用して画像を処理する。こうした画像プロセッサは、機械学習アルゴリズムの場合、特定のノイズレベルを有する、対応する様々な解剖学的領域及び構造体について訓練される。画像のノイズレベルは、この場合、キロボルトピーク(kVp)、ミリアンペア秒(mA秒)、スライス厚、及び患者のサイズを含む、複数の要因の関数である。
【0028】
[0032] CNNなどのノイズ除去画像プロセッサは、この場合、予想されるノイズレベルに基づき、また標準化された放射線量を含む、標準化されたパラメータに基づいて形成されるが、本明細書で開示されるシステム及び方法は、低い放射線量など、様々な取得パラメータを使用して取得された画像に、かかるモデルを効果的に当てはめる。
【0029】
[0033] 以下の考察は、CTベースの医用撮像の実施態様に特有のものあるが、同様のシステム及び方法が、磁気共鳴撮像(MRI)又は陽電子放射断層撮影(PET)など、他の撮像モダリティに関しても使用される。
【0030】
[0034] 図1は、本開示の一実施形態による、システム100の概略図である。システム100は通常、図示のように、処理デバイス110及び撮像デバイス120を備える。
【0031】
[0035] 処理デバイス110は、受信した画像に処理ルーチンを適用する。処理デバイス110は、メモリ113及びプロセッサ回路111を備える。メモリ113は、複数の命令を記憶する。プロセッサ回路111は、メモリ113に結合され、命令を実行するよう構成される。メモリ113に記憶される命令は、処理ルーチンばかりでなく、画像を処理するための様々な畳み込みニューラルネットワークなど、複数の機械学習アルゴリズムに関連するデータを含む。
【0032】
[0036] 処理デバイス110は、入力部115及び出力部117をさらに備える。入力部115は、撮像デバイス120から、画像などの情報を受信する。出力部117は、ユーザ又はユーザインタフェースデバイスに、情報を出力する。出力部117は、モニタ又はディスプレイを備える。
【0033】
[0037] いくつかの実施形態では、処理デバイス110は、撮像デバイス120と直接係わっている。代替実施形態では、処理デバイス110は、撮像デバイス120とは別個のものであるため、入力部115にあるネットワーク又は他のインタフェースを介して、処理する画像を受信する。
【0034】
[0038] いくつかの実施形態では、撮像デバイス120は、画像データ処理デバイスと、対象物(例えば、患者)をスキャンするとCT投影データを生成する、スペクトル又は従来のCTスキャンユニットとを備える。
【0035】
[0039] 図2は、本開示の一実施形態による、例示的な撮像デバイスを示している。CT撮像デバイスが図示されており、以下はCT画像に関する考察であるが、同様の方法が、他の撮像デバイスに関しても適用され、こうした方法が適用される画像が、多種多様なやり方で取得されることが理解されよう。
【0036】
[0040] 本開示の実施形態による撮像デバイスでは、CTスキャンユニットは、CT投影データを生成するために、対象物の複数のアキシャルスキャン及び/又はヘリカルスキャンを実行するよう適合されている。本開示の実施形態による撮像デバイスでは、CTスキャンユニットは、エネルギー分解型光子計数画像検出器(energy-resolving photon counting image detector)を備える。CTスキャンユニットは、投影データを取得するときに対象物を横切る放射線を放出する、放射線源を備える。
【0037】
[0041] 本開示の実施形態による撮像デバイスでは、CTスキャンユニットは、さらに、プライマリスキャンとは異なるスカウトスキャンを実行し、これにより、画像は相異なるが同じ目的物を含む、スカウトスキャン及びプライマリスキャンに伴う別個の画像を生成する。
【0038】
[0042] CTスキャンユニット200、例えば、コンピュータ断層撮影(CT)スキャナは、図2に示されている例では、固定ガントリ202と、固定ガントリ202によって回転可能に支持されている、回転ガントリ204とを備える。回転ガントリ204は、投影データを取得するときに、長手方向軸を中心にして対象物の検査領域206の周りを回転する。CTスキャンユニット200は、検査領域206内で患者を支持する支持体207を備え、撮像プロセスの際に、患者に検査領域を通過させるよう構成される。
【0039】
[0043] CTスキャンユニット200は、回転ガントリ204によって支持され、回転ガントリ204と共に回転するよう構成された、X線管などの放射線源208を備える。放射線源208は、アノード及びカソードを備える。アノードとカソードとの間に印加される線源の電圧が、カソードからアノードへ電子を加速する。電子の流れは、検査領域206を横切る放射線を生成するための、カソードからアノードへの電流の流れを可能にする。
【0040】
[0044] CTスキャンユニット200は、検出器210を備える。検出器210は、放射線源208に対して検査領域206の反対側で、ある角度をなす円弧を区画する。検出器210は、直接変換検出器のピクセルなどの、ピクセルの1次元又は2次元アレイを備える。検出器210は、検査領域を横切る放射線を検出し、放射線のエネルギーを示す信号を生成するよう適合されている。
【0041】
[0045] CTスキャンユニット200は、生成器211及び213をさらに備える。生成器211は、検出器210からの信号に基づいて、断層撮影投影データ209を生成する。生成器213は、断層撮影投影データ209を受信し、断層撮影投影データ209に基づいて、対象物の生画像を生成する。
【0042】
[0046] 図3は、本開示の一実施形態で使用する、訓練パイプラインの概略図である。訓練パイプライン300は通常、処理デバイス110によって実施され、対応する方法は、メモリ113に記憶された命令に基づいて、プロセッサ回路111によって実施される。メモリ113は、訓練パイプライン300、又は訓練パイプラインで生成されたデータを利用する、モデルの実施態様など、ノイズ除去方法を実施するのに必要なデータを記憶する、データベース構造体をさらに有する。いくつかの実施形態では、データベースは、外部に記憶され、処理デバイス110によって、ネットワークインタフェースを介してアクセスされる。
【0043】
[0047] 訓練パイプライン300で実施される方法は、縺れを解いた特徴表現を用いたドメインに依存しない学習を使用する、低線量CT画像のノイズを除去するための、CNNなどの学習アルゴリズムを訓練するステップを有する。
【0044】
[0048] ドメイン適応は、ソースドメインDに属するソースラベル付きデータセットなどの所与のデータセットから、特定の既知のターゲットドメインDに属するターゲットラベルなしデータセットへ、知識を転移することと、定義することができる。ドメインに依存しない学習は、サンプルごとにどのドメインに属しているか注釈づけする、どんなドメインラベルもなく、ターゲットラベルなしデータセットとソースデータセットとの両方が、複数のドメインからのデータで構成できる(例えば、ターゲットドメインでは{Dt1,Dt2,...,Dtn}、及びソースドメインでは{Ds1,Ds2,...,Dsn})ことを除いて、同様のやり方で定義される。ドメインに依存しない学習は、コンテンツからスタイルの縺れを解く、縺れを解いた特徴表現学習を使用することによって、実現される。
【0045】
[0049] 訓練パイプライン300は、したがって、パイプラインによって処理されるCT画像について、ノイズ特徴nから解剖学的構造特徴aの縺れを解き、解剖学的構造特徴及びノイズ特徴を使用して、基礎となる画像を再構成することができる。放射線科医は、モデルのノイズ除去性能を評価するとき、2種類の品質、すなわち構造忠実度(structural fidelity)及び画像ノイズ抑制について画像を採点する。構造忠実度は、視野内の解剖学的構造を正確に描写する画像の能力であり、画像ノイズは、画像上に不規則なパターンとして現れ、画質を低下させる。低品質画像から解剖学的構造特徴を抽出し、解剖学的構造特徴を、より高品質の画像に特有の、低いノイズレベルと組み合わせることにより、説明された訓練パイプラインで生成されたモデルは、両方の指標で高い採点を得る画像を提供する。
【0046】
[0050] 訓練パイプライン300は、図示のように、標準画像モジュール310及び低品質画像モジュール320を有する。標準画像モジュール310は、標準解剖学的構造符号化器E CT330、標準ノイズ符号化器E CT340、及び標準生成器GCT350を有する。図2のCTスキャンユニット200であるか、又は画像データベースである、標準画像供給源360は、次いで、標準画像370を標準画像モジュール310に供給する。標準画像370は、受信されると、標準解剖学的構造符号化器330及び標準ノイズ符号化器340に供給される。
【0047】
[0051] 標準解剖学的構造符号化器330は、次いで、標準解剖学的構造特徴aCT380を出力し、標準ノイズ符号化器340は、標準ノイズ特徴nCT390を出力する。標準ノイズ特徴390と標準解剖学的構造特徴380との両方が、次いで、供給された標準解剖学的構造特徴380及び標準ノイズ特徴390から、標準画像XCT CT370’を再構成できる、標準生成器350に供給される。標準画像モジュール310は、したがって、標準画像370を構成要素の特徴380、390に分解し、次いで、これらの構成要素の特徴から、標準画像370’を再構成することができる。
【0048】
[0052] 低品質画像モジュール320は、標準画像モジュール310に関して論じられた構成要素と並列に、構成要素を有する。低品質画像モジュール320は、したがって、低品質解剖学的構造符号化器E LDCT430、低品質ノイズ符号化器E LDCT440、及び低品質生成器GLDCT450を有する。低品質画像供給源460は、次いで、低品質画像470を低品質画像モジュール320に供給する。低品質画像供給源460は、図2のCTスキャンユニット200であり、ここで、画質が低下するように、上記で論じられたパラメータが再設定される。低品質画像供給源は、例えば、低線量CTスキャン(LDCT)画像を生じる、標準画像370の取得に比べて低減された放射線量に基づく。別法として、低品質画像供給源460は、画像データベースであってもよい。低品質画像470は、受信されると、低品質解剖学的構造符号化器430及び低品質ノイズ符号化器440に供給される。
【0049】
[0053] 低品質解剖学的構造符号化器は、次いで、低品質解剖学的構造特徴aLDCT480を出力し、低品質ノイズ符号化器440は、低品質ノイズ特徴nLDCT490を出力する。低品質ノイズ特徴490と低品質解剖学的構造特徴440との両方が、次いで、供給された低品質解剖学的構造特徴480及び低品質ノイズ特徴490から、低品質画像XLDCT LDCT470’を再構成できる、低品質生成器450に供給される。低品質画像モジュール320は、したがって、低品質画像470を構成要素の特徴480、490に分解し、次いで、これらの構成要素の特徴から、低品質画像470’を再構成することができる。
【0050】
[0054] 標準画像モジュール310及び低品質画像モジュール320を訓練するときに、様々な損失関数を計算するために、損失計算モジュール500が設けられる。したがって、標準生成器350の損失評価基準は、標準画像370と再構成標準画像370’との比較に少なくとも部分的に基づく。かかる損失評価基準は、標準生成器350の再構成損失510であり、訓練の際に、標準生成器によって生成された再構成物370’が確実に、元々供給された対応する標準画像370どおりになるようにするために、使用される。
【0051】
[0055] 低品質生成器450の損失評価基準は、同様に、低品質画像470と、低品質生成器450によって生成された、再構成低品質画像470’との比較に少なくとも部分的に基づく。損失評価基準はやはり、低品質生成器450の再構成損失520であり、訓練の際に、低品質生成器からの再構成物470’が確実に、元々供給された対応する低品質画像470どおりになるようにするために、使用される。
【0052】
[0056] 解剖学的構造符号化器330、430もまた、損失計算モジュール500によって評価される。標準解剖学的構造符号化器330の損失評価基準は、標準解剖学的構造特徴380と、対応する標準画像370について生成されたセグメンテーションラベル540との比較に基づいて、評価される。かかるセグメンテーションラベルは、標準画像370が取得されるときに手作業で生成されるか、又はデータベースから読み出される。かかる損失評価基準は、セグメンテーション損失530である。
【0053】
[0057] 低品質解剖学的構造符号化器430の損失評価基準は、低品質解剖学的構造特徴480と、標準解剖学的構造符号化器330によって生成された標準解剖学的構造特徴380との比較に基づいて、評価される。この比較については、下記でより詳細に論じられるが、図4A図4Cの訓練方法に関して、かかる損失評価基準は通常、敵対的損失550であろう。
【0054】
[0058] 解剖学的構造符号化器330、340を評価するために、損失計算モジュール500には、対応する解剖学的構造特徴380、480に関するセグメンテーションマスクM CT570a及びM LDCT570bをそれぞれ作成する、セグメンテーションネットワーク560が設けられる。標準解剖学的構造特徴480に関するセグメンテーションマスク570aは、次いで、セグメンテーションラベル540と比較され、低品質解剖学的構造特徴480に関するセグメンテーションマスク570bは、次いで、標準解剖学的構造特徴380に関するセグメンテーションマスク570aと比較される。
【0055】
[0059] 損失評価基準は、機械学習を使用して、それぞれの生成器350、450、及び解剖学的構造符号化器330、430を調整するために、損失関数に組み入れられる。したがって、発生器350、450に関する再構成損失510、520をそれぞれ使用して、対応するモジュールの出力を決定する変数を調節することにより、発生器のそれぞれのパイプラインの性能を高めることができる。これは、標準的な機械学習技法を実施することによって、又は図4A図4Cを参照して下記で論じられる、例示的な訓練方法を実施することによって、行われる。
【0056】
[0060] いくつかの実施形態では、損失計算モジュールはさらに、追加の損失評価基準を生成する。かかる損失評価基準には、標準生成器350によって生成された標準画像370’を再構成するための、セグメンテーション損失580が含まれる。したがって、セグメンテーションネットワーク590が、再構成画像370’に適用されて、セグメンテーションマスクMCT CT600を生成し、次いで、セグメンテーションマスクMCT CTが、対応する画像370に関するセグメンテーションラベル540に基づいて評価される。セグメンテーション損失580は、訓練パイプライン500で使用される、あらゆる訓練プロセスで考慮される。
【0057】
[0061] 図示のように、標準解剖学的構造符号化器330から出力された解剖学的構造特徴380と、低品質生成器450との間が接続され、同様に、低品質解剖学的構造符号化器430から出力された解剖学的構造特徴480と、標準生成器350との間が接続されている。生成器350は、標準解剖学的構造符号化器330から標準解剖学的構造特徴380が供給されると、標準解剖学的構造特徴、及び標準ノイズ符号化器340によって生成された標準ノイズ特徴390に基づいて、再構成標準画像370’を出力する。その一方、標準生成器350は、低品質解剖学的構造符号化器430によって生成された低品質解剖学的構造特徴480が供給されると、再構成標準転移画像XLDCT CT470’’を出力する。
【0058】
[0062] 再構成標準転写画像470’’には、低品質解剖学的構造特徴480、及び低品質ノイズ特徴490によって表されるノイズレベルよりも低いノイズレベルが含まれる。再構成標準転写画像は、生成器350によって、低品質解剖学的構造特徴480、及び標準ノイズ特徴符号化器340によって生成されたノイズ特徴390に基づいて構成される。かかるノイズ特徴390は、転移画像の場合、例えば、訓練の際に対応する標準画像370から生成された、標準ノイズ特徴の平均である。
【0059】
[0063] 同様に、低品質生成器450を使用して、転移画像が生成される。生成器350は、したがって、低品質生成器450に標準解剖学的構造符号化器330から標準解剖学的構造特徴380が供給されると、再構成低品質転移画像XCT LDCT370’’を出力する。再構成低品質転移画像370’’には、標準解剖学的構造特徴380、及び低品質ノイズ特徴490に基づくノイズレベルが含まれる。
【0060】
[0064] 訓練パイプライン500を使用して実施される、どんなモデルの品質もさらに高めるために、転移画像370’’、470’’を使用して、追加の損失評価基準が生成される。再構成標準品質転移画像470’’は、したがって、転移画像を標準生成器350から出力された再構成画像370’と比較する、敵対的損失610を使って評価される。
【0061】
[0065] 再構成低品質転移画像370’’は、同様に、損失評価基準を使用して評価される。低品質転移画像370’’は、標準解剖学的構造特徴380を含むので、訓練パイプライン300は通常、対応するセグメンテーションラベル540にアクセスできるであろう。低品質転移画像370’’に関する損失評価基準は、したがって、セグメンテーション損失620であり、セグメンテーションネットワーク630は、適切なセグメンテーションマスクMCT LDCT640を生成する。
【0062】
[0066] いくつかの実施形態では、セグメンテーションネットワーク560、590、630自体は、結果として得られたセグメンテーションマスク570a、580、620とセグメンテーションラベル540との比較結果である、セグメンテーション損失530、580、620に基づいて評価されることに、さらに留意されたい。
【0063】
[0067] いくつかの実施形態では、訓練パイプライン300全体が、同時に訓練される。したがって、標準画像モジュール310と低品質画像モジュール320との両方に、それぞれのモジュールを訓練する目的で、様々な画像が供給されることになる。訓練パイプラインは、ネットワークが改善されると、損失評価基準、解剖学的構造特徴、及び再構成画像に基づいて、転移画像470’’、370’’を生成するよう命令され、転移画像は、次いで、並行して評価されることになる。
【0064】
[0068] いくつかの実施形態では、対照的に、訓練パイプライン300が、図4A図4Cを参照して下記で詳細に論じられるように、順に訓練される。
【0065】
[0069] 説明されている訓練パイプライン300は、転移画像470’’を生成するモデルを生成するために使用され、転移画像470’’は、この場合、前の低品質画像470のノイズを除去するために使用することができる。訓練パイプライン300は、様々な撮像パラメータを使用して取得された多種多様な元画像から解剖学的構造特徴を転移するための、モジュールを作成するのに使用される。例えば、相異なる量の放射線を使用して取得された画像を転移するために、相異なる符号化器が訓練される。
【0066】
[0070] さらに、訓練パイプライン300を使用して作成された同じモデルが、異なる解剖学的構造特徴にわたって使用されるが、いくつかの実施形態では、パイプラインを使用して訓練されたモデルの使用は、特定の解剖学的構造体に限定される。低品質画像470は、標準画像370と同じ患者又は同じ器官の画像ではないが、この場合、別の画像の同じ解剖学的構造体に関係するであろう。モデルは、例えば、頭部、腹部、又は特定の器官の画像に関して訓練される。
【0067】
[0071] 図4A図4Cは、図3の訓練パイプライン300で使用される、例示的な訓練方法を示している。
【0068】
[0072] いくつかの実施形態では、図4Aに示されているように、標準画像モジュール310は、低品質画像モジュール320を訓練する前に訓練される。かかる実施形態では、図4Bに示されているように、低品質画像モジュール320を訓練するときに、標準画像符号化器330、340に組み込まれた変数、標準生成器350の変数、及び標準解剖学的構造特徴380に関連するセグメンテーションネットワーク560の変数を含む、標準画像モジュールに関連する変数は、一定に保たれる。
【0069】
[0073] かかる実施形態では、訓練パイプライン300は、標準画像モジュール310及び低品質画像モジュール320を別々に訓練した後、次いで、標準解剖学的構造符号化器330、標準ノイズ符号化器340、及び低品質解剖学的構造符号化器430に関する値を保持しながら、標準生成器350をさらに訓練する。
【0070】
[0074] したがって、特許請求の範囲に記載された方法を使用してモデルを訓練するときに、この開示によるパイプライン300の訓練を実施する方法は、最初に標準画像モジュール310を準備する。標準画像モジュール310は、標準画像370から標準解剖学的構造特徴380を抽出する標準解剖学的構造符号化器330と、標準画像から標準ノイズ特徴390を抽出する標準ノイズ符号化器340とを有する。
【0071】
[0075] 標準画像モジュール310は、標準解剖学的構造特徴380及び標準ノイズ特徴390から再構成標準画像370’を生成する、標準生成器350も有する。
【0072】
[0076] この方法は、次いで、低品質画像モジュール320を準備する。低品質画像モジュール320は、低品質画像470から低品質解剖学的構造特徴480を抽出する低品質解剖学的構造符号化器430と、低品質画像から低品質ノイズ特徴490を抽出する低品質ノイズ符号化器440とを有する。
【0073】
[0077] 低品質画像モジュール410は、低品質解剖学的構造特徴480及び低品質準ノイズ特徴490から再構成低品質画像470’を生成する、低品質生成器450も有する。
【0074】
[0078] 標準画像モジュール310は、次いで、標準画像モジュールで複数の標準画像370を受信することにより、訓練される。標準画像は、CTスキャンユニット200であるか、又は別法として画像のデータベースである、画像供給源360から受信されることになる。システムは、次いで、受信した標準画像370ごとに、標準画像生成器350から出力された再構成標準画像370’を、対応する標準画像と比較し、標準再構成損失評価基準を抽出する。次いで、標準画像モジュール310の変数が、かかる損失評価基準に基づいて更新されることにより、標準符号化器330、340、及び標準生成器350が調整される。
【0075】
[0079] この方法は、標準画像モジュール310をまだ訓練している間に、セグメンテーションネットワーク560で、標準解剖学的構造符号化器330によって各標準画像370から抽出された標準解剖学的構造特徴380に対応する、セグメンテーションマスク570aを生成する。標準画像370ごとのセグメンテーションマスク570aは、次いで、対応する標準画像370に関連するセグメンテーションラベル540と比較され、標準解剖学的損失評価基準530が生成される。次いで、標準解剖学的構造符号化器330の少なくとも1つの変数が、標準解剖学的損失評価基準に基づいて更新される。
【0076】
[0080] 図4Aに示されているように、こうした初期の訓練ステップは、低品質画像モジュール320とは無関係に、標準画像370に関連する訓練パイプライン300の一部で実行される。標準符号化器330、340、及び標準生成器350に使用されるモデルを改善するため、訓練のこの最初の部分の際に、追加の訓練要素が実施される。例えば、再構成標準画像370’が、追加のセグメンテーションネットワーク590に提出され、セグメンテーションマスク600が生成され、次いで、セグメンテーションマスク600が、対応する画像370に関する既知のセグメンテーションラベル540と比較されることにより、追加のセグメンテーション損失評価基準が生成される。
【0077】
[0081] 標準画像モジュール510が訓練され、受入れ可能な結果をもたらした後、図4Bに示されているように、低品質画像モジュール320が訓練される。そのため、複数の低品質画像470が、低品質画像モジュール320で、画像供給源460から受信される。上記で論じられたように、画像供給源は、CTスキャンユニット200若しくは画像データベース、又はこれらの何らかの組合せである。
【0078】
[0082] システムは、次いで、受信した低品質画像470ごとに、低品質画像生成器450から出力された再構成低品質画像470’を、対応する低品質画像と比較し、低品質再構成損失520を抽出する。次いで、標準画像モジュール310の変数が一定に保たれる一方で、低品質画像モジュール320の変数が、損失評価基準に基づいて更新されることにより、低品質符号化器430、440、及び低品質生成器450が調整される。
【0079】
[0083] 標準画像モジュール310を訓練するときに、最初に訓練されるセグメンテーションネットワーク560は、低品質画像モジュール320を訓練するときには、同様に、一定に保たれる。セグメンテーションネットワーク560は、次いで、低品質解剖学的構造符号化器430によって各低品質画像470から抽出された、低品質解剖学的構造特徴480に対応する、セグメンテーションマスク570bを生成するために使用される。セグメンテーションマスク570bは、次いで、敵対的損失評価基準を生成するために、標準画像モジュール310によって以前に生成されたセグメンテーションマスク570aのうちの少なくとも1つ、通常はセグメンテーションマスク570aの平均と比較される。
【0080】
[0084] 敵対的損失評価基準は、次いで、低品質解剖学的構造符号化器430の少なくとも1つの変数を更新するために使用される。
【0081】
[0085] 低品質画像モジュール320がこのように訓練されると、低品質解剖学的構造符号化器430によって生成された低品質解剖学的構造特徴480は、次いで、標準画像モジュール310の標準生成器350に供給される。標準生成器350は、次いで、低品質解剖学的構造特徴480、及び標準品質ノイズ特徴390のうちの少なくとも1つ、場合によっては標準品質ノイズ特徴390の平均に基づいて、再構成標準転移画像470’’を出力する。
【0082】
[0086] 再構成標準伝達画像470’’は、次いで、敵対的損失610を生成するために、再構成標準転移画像470’’を、標準画像再構成物370’又は複数のかかる再構成物の平均と比較することにより、評価される。標準生成器350は一定に保たれ、したがって敵対的損失評価基準に基づいた調整は行われないが、低品質解剖学的構造符号化器430は、敵対的損失評価基準に基づいてさらに調整される。
【0083】
[0087] さらに、上記で論じられたように、低品質生成器450を使用して、再構成低品質転移画像370’’が生成される。かかる転移画像370’’は、標準画像モジュール320によって生成された標準解剖学的構造特徴380に基づき、セグメンテーションネットワーク630によって解析され、対応するセグメンテーションマップ640を生成し、次いで、セグメンテーションマップ640がセグメンテーションラベル540に対して評価され、セグメンテーション損失620を生成することができる。セグメンテーション損失評価基準は、次いで、低品質モジュール320をさらに調整するために使用されることがある。
【0084】
[0088] いくつかの実施形態では、説明された訓練パイプライン300で作成されたモデルは、次いで、ノイズ除去され得る標準転移画像470’’を作成するために使用される。図4Cに示されるような他の実施形態では、訓練パイプラインは、次いで、さらに訓練される。図示のように、関連する符号化器330、340、及び430は、標準生成器350がさらに調整される間、一定に保たれる。訓練は、追加の再構成標準転移画像470’’を作成することによって行われ、追加の再構成標準転移画像470’’は、次いで、1つ又は複数の標準再構成物370’と比較され、追加の敵対的損失データ610を生成することができ、追加の敵対的損失データは、次いで、標準生成器350をさらに調整するために使用することができる。
【0085】
[0089] このように、説明された訓練パイプライン300を訓練することにより、ドメインに依存しない解剖学的構造の組込み、及び解剖学的構造の保存を促す、設計における複数のチェックが存在する。
【0086】
[0090] 図5は、画像のノイズを除去するために、図3の訓練パイプライン330を使用して訓練されたモデルの、使用法を示している。画像のノイズを除去する際、モデルは最初に、低品質解剖学的構造符号化器430を使用して、低品質画像470からの低線量での解剖学的構造のデータを、低品質解剖学的構造特徴480へ符号化する。低品質解剖学的構造特徴480は、次いで、標準ノイズ特徴390又はかかるノイズ特徴の平均と共に、標準生成器350に供給され、再構成標準転移画像470’’が生成される。
【0087】
[0091] この訓練パイプライン300を使用して、低線量CT又は他の低品質画像から、別のノイズレベルを有する複数の通常線量CT画像又は標準画像への変換を、訓練することができる。CT画像の場合、このノイズレベルは、通常線量のCTデータの全体の平均、又は例えば、フィルタ補正逆投影法(filtered back projection)又は逐次近似法(iterative reconstruction)などの特定のアルゴリズムで再構成された、特定の特性を有するCTデータ群の平均を表すことができる。訓練されたCTノイズ符号化器E CT330は、こうしたノイズ特徴を取得するために、訓練セットにおける通常線量CT画像370のすべて又はサブセットに使用され、通常線量CT画像をCTノイズ特徴390へ符号化する。次いで、それ自体の代表的なCTノイズ特徴、nCT1、nCT2などを取得するために、各群の中でCTノイズ特徴の平均を取り、CTノイズ特徴のそれぞれは、次いで、上記で論じられた平均ノイズ特徴390として使用することができる。ユーザは、低線量CTデータのノイズを除去するために、特定の必要性に基づいて、予め定義されたCTノイズ特徴390から選択することができる。訓練パイプライン300はまた、ユーザが、連続的にCTノイズを調節できるように、様々な群から抽出されたCTノイズ特徴の補間も実施する。
【0088】
[0092] 本明細書で説明された方法は、CTスキャン画像に関して説明されているが、様々な医用撮像技術を含む、様々な撮像技術が企図されており、多種多様な撮像技術を使用して生成される画像が、本明細書で説明された方法を使用して、効果的にノイズ除去できることが理解されよう。
【0089】
[0093] 本開示による方法は、コンピュータで実施される方法としてコンピュータ上で、専用ハードウェアで、又は両方の組合せで実施される。本開示による方法の実行可能コードは、コンピュータプログラム製品に記憶される。コンピュータプログラム製品の例には、メモリデバイス、光記憶デバイス、集積回路、サーバ、オンラインソフトウェアなどが含まれる。コンピュータプログラム製品には、プログラム製品がコンピュータで実行されるときに、本開示による方法を実行するための、コンピュータ可読媒体に記憶された非一時的なプログラムコードが、含まれることが好ましい。一実施形態では、コンピュータプログラムには、コンピュータプログラムがコンピュータで実行されるときに、本開示による方法のすべてのステップを実行するよう適合された、コンピュータプログラムコードが含まれる。コンピュータプログラムは、コンピュータ可読媒体上で具現化される。
【0090】
[0094] 本開示は、いくつかの説明された実施形態に関して、ある程度詳細に、ある程度の特殊性を含んで説明されてきたが、かかるどんな詳細、実施形態、又はどんな特定の実施形態にも、限定されることを意図しておらず、従来技術を考慮して、特許請求の範囲に可能な限り広範な解釈を与え、それにより本開示の意図する範囲を効果的に包含するように、添付のかかる特許請求の範囲を参照して解釈されるべきである。
【0091】
[0095] 本明細書に列挙されるすべての例及び条件付きの言葉は、本開示の原理及び本発明者が技術をさらに進めることに貢献する概念を読者が理解するのを助ける、教育上の目的を意図しており、かかる具体的に列挙された例及び条件を限定しないものと解釈されるべきである。さらに、本開示の原理、態様、及び実施形態、並びに本開示の特定の例を列挙する、本明細書のすべての記載は、本開示の構造的均等物と機能的均等物との両方を、包含することを意図している。さらに、かかる均等物は、現在知られている同等物と、将来開発される同等物、すなわち、構造にかかわらず同じ機能を実行する、開発される任意の要素との両方を含むことを意図している。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図4C
図5
【国際調査報告】