(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-15
(54)【発明の名称】急性呼吸窮迫症候群を治療又は防止するための方法
(51)【国際特許分類】
A61K 45/00 20060101AFI20240105BHJP
A61K 31/664 20060101ALI20240105BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20240105BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20240105BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20240105BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20240105BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240105BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20240105BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240105BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240105BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20240105BHJP
C12N 15/13 20060101ALI20240105BHJP
【FI】
A61K45/00
A61K31/664
A61P11/00
A61P31/00
A61P31/14
A61P31/12
A61P29/00
A61P17/02
A61P43/00 111
A61P43/00 121
A61K39/395 N
A61K39/395 D
C07K16/28 ZNA
C12N15/13
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2023537991
(86)(22)【出願日】2021-12-20
(85)【翻訳文提出日】2023-06-21
(86)【国際出願番号】 AU2021051521
(87)【国際公開番号】W WO2022133519
(87)【国際公開日】2022-06-30
(32)【優先日】2020-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2021-10-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521239819
【氏名又は名称】シーエスエル イノベーション プロプライアタリー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(72)【発明者】
【氏名】キャサリン メアリー オークザレク
(72)【発明者】
【氏名】イアン キース キャンベル
(72)【発明者】
【氏名】カロリーナ クルステブスキー
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン ボジノブスキー
(72)【発明者】
【氏名】エンジェル フランシスコ ロペズ
(72)【発明者】
【氏名】デーモン ジョン テュームズ
【テーマコード(参考)】
4C084
4C085
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C084AA17
4C084MA02
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZA591
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4C085AA13
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4C085BB11
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4C085BB42
4C085BB43
4C085CC01
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA38
4C086MA02
4C086MA04
4C086NA05
4C086ZA59
4C086ZB33
4C086ZC41
4C086ZC75
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA76
4H045EA29
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物を使用して、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療又は防止する方法に関する。本開示はまた、ARDSの治療又は防止における使用のための化合物、及びARDSの治療又は防止のための薬の製造におけるそのような化合物の使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象の急性呼吸器症候群(ARDS)を防止又は治療するための方法であって、前記対象に、CD131に結合しインターロイキン(IL)3、IL-5、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)によるシグナル伝達を中和する化合物を投与することを含む、方法。
【請求項2】
前記ARDSが、
a)感染、
b)異物の吸入又は吸引、
c)身体的外傷、及び
d)炎症性疾患のうちの1つ以上に関連する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ARDSが、ウイルス感染に関連する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ARDSが、コロナウイルス感染に関連する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ARDSが、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-COV)感染に関連する、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ARDSが、SARS-CoV-2感染に関連する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ARDSが、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)に関連する、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記対象が、間質性肺炎を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する前記化合物の投与が、
a)前記対象の血液中の好中球の量、
b)前記対象の血液中の単球の量、
c)前記対象の肺における好中球蓄積、
d)前記対象の肺におけるマクロファージ蓄積、
e)前記対象の肺の炎症、
f)前記対象の肺の浮腫、
g)前記対象の肺におけるネトーシス、
h)前記対象の肺の気管支肺胞液中のミエロペルオキシダーゼ活性、
i)前記対象の肺の気管支肺胞液中のタンパク質の量、
j)前記対象の肺の気管支肺胞液中のdsDNAの量、及び
k)前記対象の肺損傷スコアのうちの1つ以上若しくは全てを低減する又はこれらのうちの1つ以上若しくは全ての増加を防止する、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する前記化合物の投与が、前記対象の血中酸素百分率の減少を防止する、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する前記化合物が、
a)TF-1細胞のGM-CSF誘導増殖を少なくとも100nMのIC50で、かつ/又は
b)TF-1細胞のIL-5誘導増殖を少なくとも100nMのIC50で、かつ/又は
c)TF-1細胞のIL-3誘導増殖を少なくとも100nMのIC50で、阻害する、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する前記化合物が、CD131に結合する抗原結合部位を含むタンパク質である、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
配列番号5に記載の配列を含むポリペプチドに対する前記タンパク質のK
Dが、前記ポリペプチドが固体表面上に固定化され、前記K
Dが表面プラズモン共鳴によって決定される場合、約10nM以下である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する前記化合物が、Fvを含むタンパク質である、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記タンパク質が、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、又は
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)Fab、
(vii)F(ab’)
2、
(viii)Fv、
(ix)抗体、Fc、又は重鎖定常ドメイン(C
H)2及び/若しくはC
H3の定常領域に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
(x)アルブミン若しくはその機能的断片若しくは変異体、又はアルブミンに結合するタンパク質に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、あるいは
(xi)抗体、を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記タンパク質が、単一ドメイン抗体(sdAb)である、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項17】
前記タンパク質が、抗体可変領域を含み、前記抗体可変領域が、CD131に結合し、CD131への、配列番号6に記載の配列を含む重鎖可変領域(V
H)、及び配列番号18に記載の配列を含む軽鎖可変領域(V
L)を含む抗体9A2-VR24.29の結合を競合的に阻害する、請求項12~15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記抗原結合部位が、CD131の部位2内のエピトープに結合する、請求項12~167のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記抗原結合部位が、2つのCD131ポリペプチドの二量体化の際に形成されたエピトープに結合する、請求項12~18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記抗原結合部位が、CD131ポリペプチドのドメイン1内の残基及び別のCD131ポリペプチドのドメイン4内の残基に結合する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記CD131のドメイン1内の残基が、配列番号1の101~107の領域内の残基を含み、かつ/又は前記CD131のドメイン4内の残基が、配列番号1の364~367の領域内の残基を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記タンパク質が、抗体可変領域を含み、前記抗体可変領域が、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVH、及び配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLを含む、請求項12~15又は17~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記タンパク質が、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVH、及び配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLを含む、請求項12~15又は17~22のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記タンパク質が、配列番号8に記載のアミノ酸配列を含む重鎖、及び配列番号9に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖を含む、請求項12~15又は17~23のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記CD131に結合する化合物が、標準治療療法と組み合わせて投与される、請求項1~24のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記標準治療療法が、
a)腹臥位、
b)流体管理、
c)一酸化窒素の投与、
d)神経筋遮断剤の投与、
e)人工換気、
f)体外膜型酸素供給、及び
g)抗ウイルス剤又は抗生物質の投与のうちの1つ以上又は全てを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記標準治療療法が、レムデシビルの投与を含む、請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願データ
本出願は、2020年12月21日に出願された「Methods for treating or preventing acute respiratory distress syndrome」と題された豪国特許出願公開第2020/904755、及び2021年10月20日に出願された「Methods for treating or preventing acute respiratory distress syndrome」と題された豪国特許出願公開第2021/903362号の優先権を主張する。両方の出願の全体の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、電子形態の配列表とともに出願される。配列表の全内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
本開示は、急性呼吸窮迫症候群を治療又は防止する方法に関する。
【背景技術】
【0004】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)は、いくつかの全身性障害及び肺への直接損傷の、しばしば生命を脅かす重症な合併症である。ARDSは、主に多臓器不全の結果として、高い死亡率に関連する。流体が、肺の肺胞において蓄積して、血流に達する酸素が少なくなり、これにより、臓器が機能するために必要な酸素が臓器から奪われたときに、ARDSは、発生する。ARDSの症状は、重症な息切れ、努力性の異常に急速な呼吸、低血圧、並びに混乱及び極度な疲労を含み、これらは、通常、本来の疾患又は外傷の数時間から数日後以内に発症する。
【0005】
医療技術における数十年にわたる研究及び進歩にもかかわらず、ARDS関連死亡率は、依然として高く、ARDSの臨床経過を有効に改善する薬理学的療法がない。例えば、大きい治験において失敗した薬物候補は、少なくとも、グルココルチコイド、アルプロスタジル、界面活性剤、ケトコナゾール、N-アセチルシステイン、プロシステイン、リソフィリン、及び部位不活性化組換え因子VIIaを含む。現在の標準治療は、支持療法、例えば、酸素供給、機械的換気、流体管理、及び腹臥位に制限されている。
【0006】
したがって、ARDSを治療及び防止するための新しい介入の必要性が依然としてある。
【発明の概要】
【0007】
本発明を成す際に、本発明者らは、CD131(β共通受容体)を、ARDSにおける薬理学的介入のための潜在的標的として同定した。本発明者らは、CD131に結合しインターロイキン(IL)3、IL-5、及び顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)のシグナル伝達を阻害する抗体が、ARDSの動物モデルにおいて、肺炎症のいくつかの尺度を低減することに成功したことを見出した。これらの知見は、CD131に結合しかつ/又はIL-3、IL-5、及びGM-CSFのシグナル伝達を阻害する化合物を投与することによって、対象のARDSを治療又は防止する方法のための基礎を提供する。
【0008】
したがって、一例では、本開示は、対象のARDSを治療又は防止するための方法であって、対象に、IL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する1つ以上の化合物を投与することを含む、方法を提供する。同様に、本開示は、対象のARDSの治療又は防止における使用のための、IL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する1つ以上の化合物を提供する。本開示はまた、ARDSを治療又は防止するための薬の製造における、IL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する1つ以上の化合物の使用を提供する。
【0009】
一例では、化合物は、
IL-5、
IL-3、
GM-CSF、
IL-5受容体α(IL-5Rα)、
IL-3受容体α(IL-3Rα)、及び
GM-CSF受容体α(GM-CSFRα)のうちの1つ以上に結合する。
【0010】
例えば、方法は、IL-3に結合しIL-3によるシグナル伝達を中和する化合物、例えば、抗体、及びGM-CSFに結合しGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物、例えば、抗体、及びIL-5に結合しIL-5によるシグナル伝達を中和する化合物、例えば、抗体を投与することを含み得る。同様に、方法は、IL-3Rαに結合しIL-3によるシグナル伝達を中和する化合物、例えば、抗体、及びGM-CSFRαに結合しGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物、例えば、抗体、及びIL-5Rαに結合しIL-5によるシグナル伝達を中和する化合物、例えば、抗体を投与することを含み得る。あるいは、方法は、化合物の組み合わせを投与することであって、当該化合物のうちの1つ以上が、前述のサイトカインのうちの1つ以上に結合し、当該化合物のうちの1つ以上が、前述の受容体のうちの1つ以上に結合する、化合物の組み合わせを投与することを含み得る。
【0011】
別の例では、方法は、多重特異性化合物、例えば、抗体を投与することを含む。例えば、多重特異性化合物は、三重特異性であり、IL-3又はIL-3Rαに結合し、IL-3によるシグナル伝達を阻害し、GM-CSF又はGM-CSFRαに結合し、GM-CSFによるシグナル伝達を阻害し、IL-5又はIL-5Rαに結合し、IL-5によるシグナル伝達を阻害する。
【0012】
別の例では、方法は、二重特異性分子、例えば、抗体、及び単一特異性化合物、例えば、抗体を投与することを含む。例えば、二重特異性分子は、IL-3又はIL-3Rαに結合し、IL-3によるシグナル伝達を阻害し、GM-CSF又はGM-CSFRαに結合し、GM-CSFによるシグナル伝達を阻害する。この場合、単一特異性化合物は、IL-5又はIL-5Rαに結合し、IL-5によるシグナル伝達を阻害する。化合物の他の組み合わせは、当業者には明らかである。
【0013】
別の例では、本開示は、対象のARDSを防止又は治療するための方法であって、対象に、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0014】
本開示はまた、対象のARDSの治療又は防止における使用のための、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物を、対象に提供する。本開示はまた、対象のARDSを治療又は防止するための薬の製造における、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物の使用を提供する。
【0015】
CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFシグナル伝達を阻害する化合物は、任意の基礎状態に関連するARDSを治療又は防止するために、本開示の方法により使用され得る。いくつかの例では、ARDSは、
a)感染、
b)異物の吸入又は吸引、
c)身体的外傷、及び
d)炎症性疾患のうちの1つ以上に関連する。
【0016】
一例では、ARDSは、ウイルス感染に関連する。一例では、ARDSは、細菌感染に関連する。一例では、ARDSは、真菌感染に関連する。一例では、ARDSは、敗血症に関連する。
【0017】
一例では、ARDSは、コロナウイルス感染に関連する。
【0018】
一例では、ARDSは、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-COV)感染に関連する。一例では、ARDSは、SARS-CoV-2感染に関連する。したがって、いくつかの例では、対象は、コロナウイルス疾患2019(COVID-19)を有する。特に、重症COVID-19は、しばしば、ARDSをもたらす。本開示の方法は、重症COVID-19対象のARDSを治療又は防止するために使用され得る。したがって、いくつかの例では、対象は、重症COVID-19を有する。
【0019】
いくつかの例では、ARDSは、異物の吸入又は吸引に関連する。例えば、高濃度の煙又は化学煙霧を呼吸することは、誤嚥又は溺水エピソードがもたらし得るように、ARDSをもたらし得る。
【0020】
いくつかの例では、ARDSは、重症肺炎に関連する。肺炎の重症例は通常、肺の全ての5つの葉に影響し、ARDSをもたらし得る。したがって、いくつかの例では、対象は、間質性肺炎を有する。
【0021】
いくつかの例では、ARDSは、身体的外傷に関連する。例えば、頭部、胸部、及び他の重症損傷は、ARDSをもたらし得る。転倒又は自動車衝突などの事故は、肺又は呼吸を制御する脳の一部分を直接損傷し得、それによって、ARDSをもたらす。いくつかの例では、ARDSは、肺損傷に関連する。いくつかの例では、ARDSは、脳損傷に関連する。いくつかの例では、ARDSは、熱傷損傷に関連する。
【0022】
いくつかの例では、ARDSは、心臓手術などの手術に関連する。例えば、治療されている対象は、心臓手術、例えば、心肺バイパス手術を受けたことがある又は受けることになる。
【0023】
いくつかの例では、ARDSは、炎症性疾患に関連する。例えば、膵炎は、他の重症炎症性疾患がもたらし得るように、ARDSをもたらし得る。いくつかの例では、ARDSは、輸血に関連する。
【0024】
いくつかの例では、対象は、ARDSを有する。
【0025】
いくつかの例では、対象は、ARDSのベルリン定義を満たす。したがって、いくつかの例では、対象は、
a)臨床的発作又は初期呼吸器症状の1週間以内のARDSの発症、
b)少なくとも5cmの持続的気道陽圧(CPAP)又は終末呼気陽圧(PEEP)において、300mmHg以下の動脈血酸素分圧対吸入酸素濃度の比(PaO2/FiO2比)によって判定された場合、急性低酸素性呼吸不全、
c)胸部X線写真における両側性陰影が、浸出液、硬化、又は無気肺によって完全に説明されないこと、及び
d)呼吸不全が、心不全又は流体過剰によって完全に説明されないことを有する。
【0026】
本開示の方法のいくつかの例では、ARDSは、軽症ARDSである。いくつかの例では、ARDSは、中等症ARDSである。いくつかの例では、ARDSは、重症ARDSである。ARDSの重症度は、ベルリン定義に従って、
(i)軽症ARDS:少なくとも5cmのCPAP又はPEEPにおいて、200~300mmHgのPaO2/FiO2、
(ii)中等症ARDS:少なくとも5cmのPEEPにおいて、100~200mmHgのPaO2/FiO2、及び
(iii)重症ARDS:少なくとも5cmのPEEPにおいて、100mmHg以下のPaO2/FiO2として分類され得る。
【0027】
有利には、本開示の方法は、既存のARDSの治療に加えて、ARDSの発症を防止するために使用され得る。したがって、いくつかの例では、対象は、ARDSを有さない。
【0028】
いくつかの例では、対象は、ARDSを発症するリスクがある。ARDSを発症するリスクがある対象を同定する方法は、当業者に既知であり、本明細書に記載される方法を含む。
【0029】
いくつかの例では、対象は、
a)1分当たり30回超の呼吸の呼吸頻度、
b)室内空気において93%以下の酸素飽和度(SpO2)、
c)300mmHg未満の動脈血酸素分圧対吸入酸素濃度の比(PaO2/FiO2)、
d)218未満のSpO2/FiO2比、及び
e)50%超の量のX線写真肺浸潤のうちの1つ以上又は全てを有する。
【0030】
いくつかの例では、上記の基準は、対象がARDSを発症するリスクがあるかどうかを評価するために使用され得る。
【0031】
いくつかの例では、対象は、CD131に結合する化合物を投与する時点で、高流量酸素療法(HFOT)又は非侵襲的換気(NIV)を受け取っていない。
【0032】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、ARDSの1つ以上の症状の重症度を低減する又はこれらの発症を防止するのに十分な量で投与される。
【0033】
一例では、CD131に結合する化合物は、気管内挿管又は気管内挿管前の死を防止するのに十分な量で投与される。気管内挿管は、チューブ、すなわち気管内チューブを、対象の口を介して気道中に挿入して、これにより、対象を、機械的換気装置に配置することができるプロセスである。したがって、本開示の方法は加えて、ARDSを有する対象の機械的換気を防止又は低減する方法であって、対象に、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物を投与することを含む、方法を提供する。
【0034】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、
a)換気装置なしでの対象の生存日数を増加させること、
b)対象の入院期間(LOS)を減少させること、
c)8点National Institute of Allergy and Infectious Disease(NIAID)順序尺度で評価された場合、対象の臨床状態を改善すること、
d)持続的気道陽圧(CPAP)又はバイレベル気道陽圧(BiPAP)の使用を低減又は防止すること、
e)高流量鼻カニューレ(HFNC)の使用を低減又は防止すること、
f)体外膜型酸素供給(ECMO)の使用を低減又は防止すること、及び
g)対象の連続的臓器不全評価(SOFA)スコアを低減する又はこの増加を防止することのうちの1つ以上又は全てを達成するのに十分な量で投与される。
【0035】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、対象の肺における炎症を低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。一例では、CD131に結合する化合物は、肺機能を増強するのに十分な量で投与される。
【0036】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物の投与は、
a)対象の血液中の好中球の量、
b)対象の血液中の単球の量、
c)対象の肺における好中球蓄積、
d)対象の肺におけるマクロファージ蓄積、
e)対象の肺の炎症、
f)対象の肺の浮腫、
g)対象の肺におけるネトーシス、
h)対象の肺の気管支肺胞液(BALF)中のミエロペルオキシダーゼ活性、
i)対象の肺のBALF中のタンパク質の量、
j)対象の肺のBALF中のdsDNAの量、及び
k)対象の肺損傷スコアのうちの1つ以上若しくは全てを低減する又はこれらのうちの1つ以上若しくは全ての増加を防止する。
【0037】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物の投与は、対象の肺におけるマクロファージ蓄積を低減する又はこの増加を防止する。例えば、マクロファージは、肺胞マクロファージ、単球由来の滲出性マクロファージ、及び/又は血中単球である。
【0038】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物の投与は、対象の肺における好酸球蓄積を低減する又はこの増加を防止する。
【0039】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、対象のBALF中の総細胞計数及び/若しくは総タンパク質を低減する又はこれらの増加を防止するのに十分な量で投与される。いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、対象のBALF中に存在する好中球のレベルを低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。
【0040】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、対象のBALF中の好中球エラスターゼ及び/又はミエロペルオキシダーゼ活性のレベルを低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。
【0041】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、G-CSF、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)、D-ダイマー、好中球エラスターゼ、AGE可溶性受容体(sRAGE)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、インターロイキン1β(IL-1β)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)のうちのいずれか1つ以上若しくは全てのレベルを低減する又はこれらのうちのいずれか1つ以上若しくは全てのレベルの増加を防止するのに十分な量で投与される。これらのバイオマーカーは、治療の効力を評価するために又はARDSを発症するリスクがある対象の同定を支援するために、使用され得る。
【0042】
いくつかの例では、上記のタンパク質のレベルは、対象の肺において低減される又は対象の肺において増加することが防止される。いくつかの例では、上記のタンパク質のレベルは、対象の血液中で低減される又は対象の血液中で増加することが防止される。
【0043】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、C-Cモチーフケモカインリガンド2(CCL2)、CCL24、及びIL-1αのうちのいずれか1つ以上若しくは全てのレベルを低減する又はこれらのうちのいずれか1つ以上若しくは全てのレベルの増加を防止するのに十分な量で投与される。
【0044】
いくつかの例では、上記のタンパク質のレベルは、対象の肺において低減される又は対象の肺において増加することが防止される。いくつかの例では、上記のタンパク質のレベルは、対象の血液中で低減される又は対象の血液中で増加することが防止される。
【0045】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、対象のケモカイン遺伝子発現のレベルを低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。例えば、CD131に結合する化合物は、対象の単球/マクロファージケモカインCcl2遺伝子及び/又は好酸球ケモカインCc124遺伝子の発現のレベルを低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。
【0046】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、対象の炎症性サイトカイン遺伝子の発現のレベルを低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。例えば、CD131に結合する化合物は、対象の炎症性サイトカインIl1α遺伝子の発現のレベルを低減する又はこの増加を防止するのに十分な量で投与される。
【0047】
いくつかの例では、上記の遺伝子の発現のレベルは、対象の肺において低減される又は対象の肺において増加することが防止される。いくつかの例では、上記の遺伝子の発現のレベルは、対象の血液細胞中で低減される又は対象の血液細胞中で増加することが防止される。
【0048】
更に、「低減する」及び「の増加を防止する」という用語は、CD131に結合する化合物の投与前の対象における量又は対応する対照対象における量のいずれかに対して、上記で列挙される項目のうちのいずれかのより低い量を指すために、本明細書で使用されることが、当業者には理解されよう。例えば、対照対象は、CD131に結合する化合物ではなく、プラセボ及び/又は標準治療療法を受け取る対象であり得る。
【0049】
いくつかの例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物は、対象の血中酸素百分率の減少を防止する。
【0050】
いくつかの例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物は、化合物が投与されていない対象において観察される血中酸素百分率の減少と比較して、対象の血中酸素百分率の減少を低減する。
【0051】
一例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物が投与された対象の血中酸素百分率は、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物が投与されていない対象の血中酸素百分率よりも、少なくとも約5%、又は約6%、又は約7%、又は約8%、又は約9%、又は約10%、又は約11%、又は約12%、又は約13%、又は約14%、又は約15%高い。
【0052】
一例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物が投与された対象の血中酸素百分率は、約85%、又は約86%、又は約87%、又は約88%、又は約89%、又は約90%、又は約91%、又は約92%、又は約93%、又は約94%、約95%、又は約96%、又は約97%、又は約98%、又は約99%、又は約100%である。
【0053】
一例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物が投与された対象の血中酸素百分率は、約90%である。
【0054】
一例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物が投与された対象の血中酸素百分率は、約92%である。
【0055】
前述のもののそれぞれを評価するための方法は、当該技術分野で既知であり、かつ/又は本明細書に記載される。
【0056】
いくつかの例では、上記で列挙される項目の量の低減若しくはこの増加の防止、又は血中酸素百分率の減少の防止は、CD131に結合する化合物の最初の投与の30日以内に評価される。いくつかの例では、上記で列挙される項目の量の低減又はこの増加の防止は、CD131に結合する化合物の最初の投与の1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、14、17、21、24、又は28日後に評価される。
【0057】
一例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物は、対象の血中ヘモグロビン(HGB)レベルの増加を防止する。
【0058】
いくつかの例では、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物は、化合物が投与されていない対象において観察される血中ヘモグロビン(HGB)のレベルの増加と比較して、対象の血中HGBのレベルの増加を低減する。
【0059】
一例では、CD131に結合する化合物は、TF-1細胞のGM-CSF誘導増殖を少なくとも600nM又は500nMのIC50で、阻害する。例えば、IC50は、少なくとも約400nMである。例えば、IC50は、少なくとも約300nM又は200nM又は100nMである。例えば、IC50は、少なくとも約50nMである。例えば、IC50は、少なくとも約10nM又は5nM又は1nMである。一例では、IC50は、少なくとも約1nMである。例えば、IC50は、少なくとも約0.9nM又は0.8nM又は0.6nMである。一例では、IC50は、少なくとも約0.5nMである。一例では、IC50は、少なくとも約0.4nMである。一例では、IC50は、少なくとも約0.3nMである。
【0060】
一例では、CD131に結合する化合物は、TF-1細胞のIL-5誘導増殖を少なくとも600nM又は500nMのIC50で、阻害する。例えば、IC50は、少なくとも約400nMである。例えば、IC50は、少なくとも約300nM又は200nM又は100nMである。例えば、IC50は、少なくとも約50nMである。例えば、IC50は、少なくとも約10nM又は5nM又は1nMである。一例では、IC50は、少なくとも約5nMである。例えば、IC50は、少なくとも約4nMである。一例では、IC50は、少なくとも約4.5nM又は少なくとも約4.6nM又は少なくとも約4.7nMである。一例では、IC50は、少なくとも約4.6nMである。
【0061】
一例では、CD131に結合する化合物は、TF-1細胞のIL-3誘導増殖を少なくとも600nM又は500nMのIC50で、阻害する。例えば、IC50は、少なくとも約400nMである。例えば、IC50は、少なくとも約300nM又は200nM又は100nMである。例えば、IC50は、少なくとも約50nMである。例えば、IC50は、少なくとも約10nM又は5nM又は1nMである。一例では、IC50は、少なくとも約1nMである。例えば、IC50は、少なくとも約0.9nM又は0.8nM又は0.6nMである。一例では、IC50は、少なくとも約0.5nMである。一例では、IC50は、少なくとも約0.2nM又は少なくとも約0.1nMである。一例では、IC50は、少なくとも約0.15nMである。
【0062】
IC50を判定するための方法は、本明細書に記載され、関連する増殖因子(GM-CSF、IL-3、及び/又はIL-5)を添加する前に、TF-1細胞(例えば、約1×104個のTF-1細胞)を、CD131に結合する化合物の存在下で(例えば、少なくとも約3分間又は1時間、例えば、約30分間)培養することと、細胞を(例えば、少なくとも約48時間、又は少なくとも約72時間、又は少なくとも約96時間、例えば、約72時間)更に培養することと、次いで、細胞増殖を判定することと、を含む。細胞増殖は、3[H]-チミジンの存在下で約6時間細胞を増殖させ、3[H]-チミジンの組み込みを判定することによって、例えば、液体シンチレーションカウントによって判定することができる。CD131に結合する化合物の様々な濃度における増殖を判定することによって、IC50を決定することができる。
【0063】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、
a)TF-1細胞のGM-CSF誘導増殖を少なくとも100nMのIC50で、かつ/又は
b)TF-1細胞のIL-5誘導増殖を少なくとも100nMのIC50で、かつ/又は
c)TF-1細胞のIL-3誘導増殖を少なくとも100nMのIC50で、阻害する。
【0064】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、
a)TF-1細胞のGM-CSF誘導増殖を少なくとも50nMのIC50で、かつ/又は
b)TF-1細胞のIL-5誘導増殖を少なくとも50nMのIC50で、かつ/又は
c)TF-1細胞のIL-3誘導増殖を少なくとも50nMのIC50で、阻害する。
【0065】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、
a)TF-1細胞のGM-CSF誘導増殖を少なくとも10nMのIC50で、かつ/又は
b)TF-1細胞のIL-5誘導増殖を少なくとも10nMのIC50で、かつ/又は
c)TF-1細胞のIL-3誘導増殖を少なくとも10nMのIC50で、阻害する。
【0066】
一例では、CD131に結合する化合物は、IL-3及び/又はGM-CSF誘導STAT-5シグナル伝達を低減又は防止する。
【0067】
一例では、CD131に結合する化合物は、約20nM以下のIC50で、IL-3誘導STAT-5シグナル伝達を低減又は防止する。一例では、pStat-5 IC50 IL-3は、約10nM以下、又は約9nM以下、又は約8nM以下である。一例では、pStat-5 IC50 IL-3は、約7.5nM以下、例えば7.3nMである。
【0068】
一例では、CD131に結合する化合物は、約60nM以下のIC50で、GM-CSF誘導STAT-5シグナル伝達を低減又は防止する。一例では、pStat-5 IC50 GM-CSFは、約50nM以下、又は約45nM以下、又は約40nM以下である。一例では、CD131に結合する化合物は、約40nM以下のIC50で、GM-CSF誘導STAT-5シグナル伝達を低減又は防止する。
【0069】
例えば、化合物は、IL-3及び/又はGM-CSFの存在下で、インターフェロン調節因子1(irf1)応答エレメントの制御下でβ-ラクタマーゼレポーター遺伝子を含む細胞(例えば、TF-1細胞)に接触させることができる。細胞をまた、好適な基質(例えば、CCF2又はCCF4などの負に帯電した蛍光β-ラクタマーゼ基質)と接触させ、シグナルの変化(例えば、蛍光)を判定する。陽性対照(すなわち、タンパク質又は抗体の非存在下でIL-3及び/又はGM-CSFと接触した細胞)におけるシグナルの変化の減少は、化合物がIL-3及び/又はGM-CSF誘導STAT-5シグナル伝達を低減又は防止することを示す。
【0070】
一例では、CD131に結合する化合物は、以下の活性のうちの1つ以上を有する:
(i)好中球細胞サイズのGM-CSF誘導増加を低減若しくは阻害することによって判定される、GM-CSFによる単離されたヒト好中球の活性化を低減若しくは阻害すること、
(ii)ヒト好塩基球によるIL-3誘導IL-8分泌を低減若しくは阻害すること、
(iii)IL-3媒介性生存若しくは形質細胞様樹状細胞(pDC)を低減若しくは予防すること、
(iv)フローサイトメトリーによって評価された前方散乱の変化を評価することによって判定される、IL-5によるヒト末梢血好酸球の活性化を低減若しくは防止すること、
(v)IL-5及び/若しくはGM-CSF及び/若しくはIL-3の存在下でのヒト末梢血好酸球の生存を低下させるか若しくは防止することと、
(vi)ヒト肥満細胞からのIL-3誘導腫瘍壊死因子(TNF)αの放出を低減若しくは防止すること、
(vii)ヒト肥満細胞からのIL-3誘導IL-13放出を低減若しくは防止すること、
(viii)IL-3及び/若しくはIL-5及び/若しくはGM-CSFによるヒト肥満細胞からのIgE媒介性IL-8放出の増強を低減若しくは防止すること、
(ix)幹細胞因子(SCF)、GM-CSF、IL-3及びIL-5の存在下で培養したCD34+ヒト骨髄細胞によるコロニー形成単位-顆粒球-マクロファージ(CFU-GM)の形成を低減若しくは防止すること、
(x)ヒト鼻ポリープ症のマウス異種移植片モデルにおけるポリープのサイズ若しくは重量を減少させること、並びに/又は
(xi)ヒト鼻ポリープ症のマウス異種移植片モデルにおけるポリープ中のB細胞の数を減少させること。
【0071】
一例では、CD131に結合する化合物は、エリスロポエチン、IL-6、IL-4又は幹細胞因子のうちの1つ以上に応答して、TF-1細胞の増殖を実質的又は有意に阻害しない。CD131に結合して、サイトカイン又は増殖因子に関してTF-1細胞の増殖を阻害する化合物の能力を判定するための方法が本明細書に記載され、本開示の本実施例に容易に適応可能である。
【0072】
いくつかの例では、本開示において有用な化合物は、抗原結合部位を含むタンパク質、例えば、抗体の抗原結合部位又は単一ドメイン抗体を含むタンパク質である。例えば、化合物は、抗体又はその抗原結合ドメインである。
【0073】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、CD131に結合する抗原結合部位を含むタンパク質である。いくつかの例では、抗原結合部位は、抗体又は単一ドメイン抗体の抗原結合部位である。いくつかの例では、抗原結合部位は、1つ以上のCDRを含む。
【0074】
本明細書における、CD131に「結合する」化合物若しくはタンパク質又は抗体への言及は、CD131に「特異的に結合する(binds specifically)」又は「特異的に結合する(specifically binds to)」化合物若しくはタンパク質又は抗体の文字どおりの支持体を提供する。
【0075】
一例では、配列番号5に記載の配列を含むポリペプチドに対するタンパク質のKDは、ポリペプチドが固体表面上に固定化され、KDが表面プラズモン共鳴によって判定されたとき、約10nM以下である。
【0076】
一例では、KDは、10nM以下、例えば、5nM以下若しくは4nM以下、又は3nM以下若しくは2nM以下である。一例では、KDは、1nM以下である。一例では、KDは、0.9nM以下又は0.7nM以下又は0.8nM以下又は0.7nM以下又は0.6nM以下である。一例では、KDは、0.5nM以下である。一例では、KDは、0.4nM以下である。一例では、KDは、0.3nM以下である。一例では、KDは、0.2nM以下である。
【0077】
一例では、抗原結合部位を含むタンパク質は、例えば、標識及び非標識タンパク質又は抗体を用いた競合アッセイを使用して、約10nM以下のKDでCD131を発現する細胞(例えば、好中球、好酸球、又はTF-1細胞)に結合する。一例では、KDは、5nM以下若しくは4nM以下、又は3nM以下若しくは2nM以下である。一例では、KDは、1nM以下である。一例では、KDは、0.9nM以下又は0.7nM以下又は0.8nM以下又は0.7nM以下又は0.6nM以下である。
【0078】
一例では、KDは、好中球に関して約300nM以下である。
【0079】
一例では、KDは、好酸球に関して約700nM以下である。
【0080】
一例では、KDは、TF-1細胞に関して約400nM以下である。
【0081】
一例では、抗原結合部位を含むタンパク質は、1つ以上の抗体可変領域を含むタンパク質である。一例では、タンパク質は、重鎖可変領域(VH)を含む。一例では、タンパク質は、軽鎖可変領域(VL)を含む。一例では、タンパク質は、VH及びVLを含む。いくつかの例では、VH及びVLは、同じポリペプチド鎖内にある。他の例では、VH及びVLは、別個のポリペプチド鎖内にある。
【0082】
いくつかの例では、タンパク質は単一ドメイン抗体(sdAb)である。
【0083】
いくつかの例では、タンパク質はFvを含む。
いくつかの例では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、又は
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)Fab、
(vii)F(ab’)2、
(viii)Fv、
(ix)抗体、Fc、又は重鎖定常ドメイン(CH)2及び/若しくはCH3の定常領域に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
(x)アルブミン若しくはその機能的断片若しくは変異体、又はアルブミンに結合するタンパク質に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、あるいは
(xi)抗体を含む。
【0084】
いくつかの例では、タンパク質は、
(i)一本鎖Fv断片(scFv)、
(ii)二量体scFv(di-scFv)、又は
(iii)ダイアボディ、
(iv)トリアボディ、
(v)テトラボディ、
(vi)Fab、
(vii)F(ab’)2、
(viii)Fv、
(ix)抗体、Fc、又は重鎖定常ドメイン(CH)2及び/若しくはCH3の定常領域に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、
(x)アルブミン、その機能的断片若しくは変異体、又はアルブミンに結合するタンパク質(例えば、抗体又はその抗原結合断片)に連結された(i)~(viii)のうちの1つ、あるいは
(xi)抗体、からなる群から選択される。
【0085】
一例で、タンパク質は、Fc領域を含む。
【0086】
一例では、タンパク質は、タンパク質の半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。一例では、抗体は、胎児性Fc受容体FcRn)に対するFc領域の親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFc領域を含む。
【0087】
一例では、タンパク質は、抗体、例えば、モノクローナル抗体である。一例では、抗体は、裸抗体である。
【0088】
一例では、タンパク質(又は抗体)は、キメラ、非免疫化、ヒト化、ヒト又は霊長類化である。
【0089】
一例では、タンパク質又は抗体は、ヒトである。
【0090】
例示的な抗体としては、WO2017/088028に記載される9A2-VR24.29(また、「CSL311」とも称される)、及びSun et al.(1999)Blood94:1943-1951に記載されるBION-1が挙げられる。
【0091】
一例では、タンパク質は、ヒト定常領域、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4定常領域、又はそれらの混合物などのIgG定常領域を含む。VH及びVLを含むタンパク質の場合、VHは、重鎖定常領域に連結され得、VLは、軽鎖定常領域に連結され得る。
【0092】
全抗体の重鎖定常領域(又は定常領域若しくはCH3を含むタンパク質)のC末端リジンは、例えば、タンパク質若しくは抗体の産生若しくは精製中に、又は重鎖をコードする核酸を組換えて操作することによって除去され得る。したがって、全抗体(又はCD131結合化合物)は、全てのC末端リジン残基が除去された集団、C末端リジン残基が除去されていない集団、及び/又はC末端リジン残基を含むか又は含まないタンパク質の混合物を有する集団を含み得る。いくつかの例では、集団は、重鎖定常領域のうちの1つにおいてC末端リジン残基が除去されるタンパク質を更に含んでもよい。同様に、全抗体の組成物は、C末端リジン残基を含むか又は含まない抗体集団の同一又は類似の混合物を含んでもよい。
【0093】
一例では、タンパク質は組成物中にある。例えば、組成物は、本明細書に記載の抗原結合部位又は抗体を含むタンパク質を含む。一例では、組成物は、タンパク質又は抗体の1つ以上の変異体を更に含む。例えば、コードされたC末端リジン残基を欠く変異体、脱アミド変異体及び/又はグリコシル化変異体及び/又はピログルタミン酸塩を含む変異体、例えば、タンパク質のN末端にある変異体及び/又はN末端残基を欠く変異体、例えば、抗体又はV領域におけるN末端グルタミン及び/又は分泌シグナルの全部若しくは一部を含む変異体を含む。コードされたアスパラギン残基の脱アミド変異体は、イソアスパラギン酸、及びアスパラギン酸アイソフォームが生成されるか、又は隣接するアミノ酸残基を伴うスクシンアミドをもたらし得る。コードされたグルタミン残基の脱アミド変異体は、グルタミン酸をもたらし得る。そのような配列と変異体との不均一な混合物を含む組成物は、特定のアミノ酸配列が参照されるときに含まれることが意図される。
【0094】
一例では、本明細書に記載のタンパク質又は抗体は、IgG4抗体の定常領域又はIgG4抗体の安定化定常領域を含む。一例では、タンパク質又は抗体は、241位にプロリンを有するIgG4定常領域を含む(Kabatの番号付けシステムによる(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,1987and/or1991))。
【0095】
一例では、重鎖定常領域は、配列番号16に記載の配列を含む。一例では、タンパク質、又はタンパク質を含む組成物は、C末端リジン残基を含むか又は含まない、完全に又は部分的に配列の混合物を含む、安定化重鎖定常領域を含む重鎖定常領域を含む。
【0096】
いくつかの例では、タンパク質は、CD131に結合し、配列番号6に記載の配列を含むVHと配列番号7に記載の配列を含むVLとを含む抗体9A2-VR24.29のCD131への結合を競合的に阻害する抗体可変領域を含む。
【0097】
いくつかの例では、タンパク質は、CD131に結合し、配列番号6に記載の配列を含むVHと配列番号18に記載の配列を含むVLとを含む抗体9A2-VR24.29のCD131への結合を競合的に阻害する抗体可変領域を含む。
【0098】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に記載の配列を含むVH、及び配列番号7に記載の配列を含むVLを含む、CD131に対する抗体9A2-VR24.29と、CD131内の同じ又は重複エピトープに結合する。
【0099】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に記載の配列を含むVH、及び配列番号18に記載の配列を含むVLを含む、CD131に対する抗体9A2-VR24.29と、CD131内の同じ又は重複エピトープに結合する。
【0100】
いくつかの例では、抗原結合部位は、CD131の部位2内のエピトープに結合する。この点に関して、当業者は、CD131の部位2が、二量体を形成する2つのCD131ポリペプチドからの残基で構成され、例えば、部位2は、1つのCD131ポリペプチドのドメイン1のループA-B及びE-F内の残基、並びに別のCD131ポリペプチドのループB-C及びF-G内の残基を含むことを認識するであろう。
【0101】
いくつかの例では、抗原結合部位は、2つのCD131ポリペプチドの二量体化の際に形成されたエピトープに結合する。
【0102】
いくつかの例では、抗原結合部位は、CD131ポリペプチドのドメイン1内の残基及び別のCD131ポリペプチドのドメイン4内の残基に結合する。一例では、CD131のドメイン1内の残基は、配列番号1の101~107の領域内の残基を含み、かつ/又はCD131のドメイン4内の残基は、配列番号1の364~367の領域内の残基を含む。
【0103】
いくつかの例では、タンパク質は、
a)配列番号1の39、101、102、104、105、106、及び107位の1つ以上又は全てに対応する1つのCD131ポリペプチド鎖内のアミノ酸と、
b)配列番号1の364、365、366、367、420、及び421位の1つ以上又は全てに対応する別のCD131ポリペプチド鎖内のアミノ酸と、を含むエピトープに結合する。
【0104】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVHと、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLとを含む、抗体可変領域を含む。
【0105】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVHの3つのCDRを含むVHと、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLの3つのCDRを含むVLとを含む、抗体可変領域を含む。
【0106】
いくつかの例では、タンパク質は、
a)配列番号8に記載のアミノ酸配列又は配列番号8に対して1、2、若しくは3個以下のアミノ酸置換を有する配列を含むか又はそれからなるHCDR1、配列番号9に記載のアミノ酸配列又は配列番号9に対して1、2、若しくは3個以下のアミノ酸置換を有する配列を含むか又はそれからなるHCDR2、及び配列番号10に記載のアミノ酸配列又は配列番号10に対して1、2、若しくは3個以下のアミノ酸置換を有する配列を含むか又はそれからなるHCDR3を含むVHと、
b)配列番号11に記載のアミノ酸配列又は配列番号11に対して1、2、若しくは3個以下のアミノ酸置換を有する配列を含むか又はそれからなるLCDR1、配列番号12に記載のアミノ酸配列又は配列番号12に対して1、2、若しくは3個以下のアミノ酸置換を有する配列を含むか又はそれからなるLCDR2、及び配列番号13に記載のアミノ酸配列又は配列番号13に対して1、2、若しくは3個以下のアミノ酸置換を有する配列を含むか又はそれからなるLCDR3を含むVLと、を含む。
【0107】
いくつかの例では、タンパク質は、
a)配列番号8に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるHCDR1、配列番号9に記載のアミノ酸配列含むか又はそれからなるHCDR2、及び配列番号10に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるHCDR3を含むVHと、
b)配列番号11に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるLCDR1、配列番号12に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるLCDR2、及び配列番号13に記載のアミノ酸配列を含むか又はそれからなるLCDR3を含むVLと、を含む。
【0108】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHと、配列番号7に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0109】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVHと、配列番号18に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0110】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号7に記載のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0111】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号6に記載のアミノ酸配列を含むVHと、配列番号18に記載のアミノ酸配列を含むVLとを含む。
【0112】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号14に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号15に対して少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、又は少なくとも95%の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0113】
いくつかの例では、タンパク質は、配列番号14に記載のアミノ酸配列を含む重鎖と、配列番号15に記載のアミノ酸配列を含む軽鎖とを含む。
【0114】
一例では、CD131に結合する化合物は、別の療法と組み合わせて投与される。
【0115】
一例では、他の療法は、抗炎症化合物の投与を含む。一例では、他の療法は、免疫調節剤又は免疫抑制剤の投与を含む。
【0116】
いくつかの例では、他の療法は、抗原結合部位を含むタンパク質の投与を含む。いくつかの例では、抗原結合部位を含むタンパク質は、抗体である。
【0117】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、細胞と組み合わせて投与される。いくつかの例では、細胞は、幹細胞、例えば、間葉系幹細胞である。
【0118】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、遺伝子療法と組み合わせて投与される。
【0119】
一例では、CD131に結合する化合物は、他の療法と同時に投与される。一例では、CD131に結合する化合物は、他の療法前に投与される。一例では、CD131に結合する化合物は、他の療法後に投与される。
【0120】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、標準治療療法と組み合わせて投与される。標準治療療法は、ARDSの基礎原因のための標準治療療法であってもよく、又はARDS自体のための標準治療療法であってもよい。
【0121】
いくつかの例では、標準治療療法は、
a)腹臥位、
b)流体管理、
c)一酸化窒素の投与、
d)神経筋遮断剤の投与、
e)人工換気、
f)体外膜型酸素供給、及び
g)抗ウイルス剤又は抗生物質の投与のうちの1つ以上又は全てを含む。
【0122】
一例では、標準治療療法は、抗ウイルス剤の投与を含む。一例では、標準治療療法は、レムデシビルの投与を含む。一例では、標準治療療法は、
a)ヒドロキシクロロキン、
b)クロロキン、
c)ロピナビル、
d)リトナビル、
e)アジスロマイシン、
f)インターフェロンベータ、
g)アナキンラ、
h)トシリズマブ、
i)サリルマブ、
j)デキサメタゾン、
k)アスピリン、
l)ロサルタン、
m)シンバスタチン、及び
n)バリシチニブのうちの1つ以上の投与を含む。
【0123】
一例では、対象は、ヒトである。一例では、対象は、成人、例えば18歳を超える成人である。一例では、対象は、小児、例えば、18歳未満の小児である。一例では、対象は、18歳~90歳である。一例では、対象は、50~80歳である。
【0124】
一例では、対象は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)を有さない。一例では、対象は、喘息を有さない。
【0125】
配列表の鍵
配列番号1:ホモサピエンスCD131のアミノ酸配列
配列番号2:ホモサピエンスIL-3受容体αのアミノ酸配列
配列番号3:ホモサピエンスGM-CSF受容体のアミノ酸配列
配列番号4:ホモサピエンスIL-5受容体のアミノ酸配列
配列番号5:C末端6×Hisタグを含む可溶性ホモサピエンスCD131のアミノ酸配列
配列番号6:9A2-VR24.29のVHのアミノ酸配列
配列番号7:9A2-VR24.29のVLのアミノ酸配列
配列番号8:9A2-VR24.29のHCDR1のアミノ酸配列
配列番号9:9A2-VR24.29のHCDR2のアミノ酸配列
配列番号10:9A2-VR24.29のHCDR3のアミノ酸配列
配列番号11:9A2-VR24.29のLCDR1のアミノ酸配列
配列番号12:9A2-VR24.29のLCDR2のアミノ酸配列
配列番号13:9A2-VR24.29のLCDR3のアミノ酸配列
配列番号14:9A2-VR24.29の重鎖のアミノ酸配列
配列番号15:9A2-VR24.29の軽鎖のアミノ酸配列
配列番号16:安定化IgG4重鎖定常領域のアミノ酸配列
配列番号17:カッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列
配列番号18:9A2-VR24.29のVLのアミノ酸配列
【図面の簡単な説明】
【0126】
【
図1】キメラモノクローナル抗体が予防的に投与されたマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球、好中球、及びマクロファージについての、積層カラム内の(A)細胞数及び(B)1ml当たりの細胞分画(平均+/-SEM)の一連のグラフ表示である。実施例1に記載される3μgのLPS又はPBSでの挿管の24時間前に、マウスに、50mg/kgのキメラモノクローナル抗体(キメラmAb)が静脈内投与されたか、又はアイソタイプ対照(BM4)が投与された。マウスのBALFが、分析のために、挿管の24時間後に収集された。キメラmAb群とBM4群との間の細胞数の有意差が、観察された(通常の一元配置ANOVAダネット多重比較試験)(P=0.0004);n=3(PBS)、6(BM4_LPS)、及び6(キメラmAb_LPS)。
【
図2】実施例1に記載されるキメラモノクローナル抗体が治療的に投与されたマウスの気管支肺胞洗浄液(BALF)中のリンパ球、好中球、及びマクロファージについての、積層カラム内の(A)細胞数及び(B)1ml当たりの細胞分画(平均+/-SEM)の一連のグラフ表示である。3μgのLPS又はPBSでの挿管の6時間後に、マウスに、50mg/kgのキメラモノクローナル抗体(キメラmAb)が静脈内投与されたか、又はアイソタイプ対照(BM4)が投与された。マウスのBALFが、分析のために、挿管の24時間後に収集された。キメラmAb群とBM4群との間の細胞数の有意差が、観察された(通常の一元配置ANOVAダネット多重比較試験)(P=0.0013);n=3(PBS)、5(BM4_LPS)、及び6(キメラmAb_LPS)。
【
図3】実施例2に記載されるアイソタイプ対照モノクローナル抗体(アイソタイプ対照mAb)と比較して、キメラモノクローナル抗体(キメラmAb)による、FDCP1細胞の(A)GM-CSF誘導増殖及び(B)IL-3誘導増殖の阻害を示す一連のグラフ表示である。
【
図4】実施例3に記載されるARDSのマウスモデルにおける肺白血球数及び肺損傷のマーカーを示す一連のグラフ表示である。(A)LPS-ISO又はCSL311が投与されたhβcTgマウスの体重減少百分率、LPS-ISO又はCSL311が投与されたマウスの(B)血中顆粒球数、(C)血中単球数、及び(D)気管支肺胞洗浄液(BALF)中好中球数のグラフ。(E)LPS-ISO又はCSL311が投与されたhβcTgマウスからの肺の免疫組織化学的染色(H&E)された切片。LPS-ISO又はCSL311が投与されたhβcTgマウスの(F)肺切片のH&E染色に基づく肺損傷スコア、(G)肺MPO活性、及び(H)BALFタンパク質を示すグラフ表示。N=6~7、*<0.05、ANOVA対LPS-ISO群。
【
図5】実施例3に記載されるARDSのマウスモデルにおけるネトーシスを示す一連のグラフ表示である。(A)LPS-ISO又はCSL311が投与されたhβcTgマウスの肺切片の免疫組織化学的染色。MPO(緑色)及びヒストンH3(赤色)は、MPO及びヒストンH3の共局在に基づいて、ネトーシスの領域を同定した。LPS-ISO又はCSL311が投与されたhβcTgマウスのBALF中の(B)MPO活性、(C)dsDNA、(D)MPO活性、(E)dsDNAを定量するグラフ表示。N=6~7、*<0.05、ANOVA対LPS-ISO群。
【
図6】実施例3に記載されるARDSのマウスモデルにおける血中酸素の百分率を示すグラフである。PBS(及びLPSなし)、LPS-ISO、又はLPS-CSL311が投与されたhβcTgマウスの血中酸素が判定された。データは、%酸素飽和度+/-SEMとして表され、LPS-ISO群及びLPS-CSL311群を比較する統計分析は、二元配置ANOVA及びボンフェローニ事後試験を多重比較のために使用して、行われた。***は、p<0.001を示し、**は、p<0.01を示し、*は、p<0.05を示す。1群当たりn=5のマウス。
【
図7】βcサイトカイン及びβc受容体が、IAV感染hβcTgマウスにおいて過剰発現されることを示す一連のグラフ表示である。hβcTgマウスに、IAV(10
4PFU、HKx31株)を感染させ、hβcTgマウスは、感染後3日目及び6日目に選別された。βcサイトカイン(A)Gm-csf、(B)Il3、(C)Il5、及びβc受容体(D)CSF2RBについての遺伝子発現が、肺組織において、RTqPCRによって分析された。n=6;データは、平均±SEである;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 一元配置ANOVA。
【
図8】CSL311が、IAV感染hβcTgマウスにおいて、ウイルス排除を損なうことなく、肺炎症及び損傷を低減することを示す一連のグラフ表示である。CSL311又はアイソタイプ対照(ISO)が、IAV感染hβcTgマウスに、感染後4日目に投与された。7日目に、IAVは、(A)体重減少を誘導したが、これは、CSL311治療によって有意に改善されなかった。(B)肺ウイルス負荷が、RTqPCRによって、ウイルスPA遺伝子において測定され、差は、CSL311治療されたIAV感染マウスとISO治療されたIAV感染マウスとの間に検出されなかった。IAV感染によって誘導された(C)血中単球、(D)血中好中球、及び(E)血中ヘモグロビン(HGB)の高いレベルが、CSL311によって有意に低減された。また、(F)BAL好中球及び(G)BALマクロファージが、CSL311治療で低減された。n=6;データは、中央値±四分位範囲であるウイルス負荷を除いて、平均±SEである;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 マンホイットニーU試験であるウイルス負荷を除いて、一元配置ANOVA。
【
図9】CSL311が、IAV感染hβcTgマウスにおいて、肺骨髄細胞を遮断し、NK細胞及びT細胞を保つことを示す一連のグラフ表示である。(A)骨髄細胞のためのゲーティング戦略を使用するフローサイトメトリー分析は、肺(B)好中球、(C)肺胞マクロファージ(AM)、(D)滲出性マクロファージ(EM)、(E)単球、及び(F)好酸球が、hβcTgマウスにおいて、IAV感染後6日目に高く増加し、CSL311治療で有意に低減されたことを明らかにした。(G)リンパ系細胞を描写するためのゲーティング戦略を使用するフローサイトメトリー分析は、肺(H)NK細胞、(I)NKT細胞、及び(J)制御性T細胞(Treg)が、IAV感染後に増加し、CSL311治療によって影響されなかったことを実証した。(K)肺CD4細胞及び(L)肺におけるCD8細胞数は、全ての群にわたって異ならなかった;n=6;データは、平均±SEである;*p<0.05、**p<0.01、***p<0.001 一元配置ANOVA。
【
図10】CSL311が、IAV感染hβcTgマウスにおいて、肺サイトカインストームを減弱し、インターフェロン発現を保つことを示す一連のグラフ表示である。好中球ケモカイン(A)Cxcl1、単球/マクロファージケモカイン(B)Ccl2、好酸球ケモカイン(C)Ccl24、T細胞/NK細胞ケモカイン(D)Cxcl10の発現が、RTqPCRによって、IAV感染マウスの肺において検出され、CSL311は、Ccl2及びCcl24レベルを有意に低下させた。また、炎症促進性遺伝子(E)Il1a及び(F)Il6の発現が、IAV感染マウスにおいて増加し、CSL311治療は、Il1aを有意に低減したが、Il6発現を低減しなかった。また、(G)I型インターフェロン(Ifnb)、(H)II型インターフェロン(Ifng)、及び(I)III型インターフェロン(Ifnl2/3)が、IAV感染マウスの肺において、CSL311治療によって有意に変化しない様式で著しく誘導された;n=6;*p<0.05、データは、平均±SEである;**p<0.01、***p<0.001 一元配置ANOVA。
【発明を実施するための形態】
【0127】
全般
本明細書全体を通して、特に別段の定めがない限り、又は文脈が別段の定めがない限り、単一のステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群への言及は、それらのステップ、物質の組成物、ステップの群、又は物質の組成物の群のうちの1つ及び複数(すなわち、1つ以上)を包含するようにとられなければならない。
【0128】
当業者は、本開示が、具体的に記載されるもの以外の変形及び修正の影響を受けやすいことを理解するであろう。本開示は、そのような全ての変形及び修正を含むことが理解されるべきである。本開示はまた、本明細書で個別に又は集合的に言及又は示される全ての工程、特徴、組成物及び化合物、並びに上述の工程又は特徴のいずれか及び全ての組み合わせ又は任意の2つ以上を含む。
【0129】
本開示は、例示のみを目的とする本明細書に記載の特定の実施例によって範囲が限定されるべきではない。機能的に等価な生成物、組成物、及び方法は、本開示の範囲内であることは明らかである。
【0130】
本明細書における本開示の任意の例は、特に明記しない限り、本開示の任意の他の例に準用するものとする。
【0131】
特に明確に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有すると解釈されるものとする(例えば、免疫学、免疫組織化学、タンパク質化学、及び生化学)。
【0132】
別段の指示がない限り、本開示で利用される組換えタンパク質、細胞培養、及び免疫学的技術は、当業者に周知の標準的な手順である。そのような技法は、J.Perbal,A Practical Guide to Molecular Cloning,John Wiley and Sons(1984),J.Sambrook et al.Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory Press(1989),T.A.Brown(editor),Essential Molecular Biology:A Practical Approach,Volumes1and2,IRL Press(1991),D.M.Glover and B.D.Hames(editors),DNA Cloning:A Practical Approach,Volumes1-4,IRL Press(1995and1996),and F.M.Ausubel et al.(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む),Ed Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbour Laboratory,(1988)、及びJ.E.Coligan et al.(editors)Current Protocols in Immunology,John Wiley&Sons(現在までの全ての更新を含む)などのソースにおいて文献全体を通して記載され説明されている。
【0133】
本明細書の可変領域及びその一部分、免疫グロブリン、抗体及びその断片の記載及び定義は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991、Bork et al.,J Mol.Biol.242,309-320,1994、Chothia and LeskJ.Mol Biol.196:901-917,1987、Chothia et al.Nature342,877-883,1989、並びに/又は又はAl-Lazikani et al.,J Mol Biol273,927-948,1997における考察によって、更に明確にされ得る。
【0134】
「及び/又は」という用語、例えば、「X及び/又はY」は、「X及びY」又は「X又はY」のいずれかを意味すると理解されなければならず、両方の意味又はいずれかの意味を明示的に支持すると解釈されるべきである。
【0135】
本明細書全体を通して、「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」若しくは「含むこと(comprising)」などの変化形は、定められた要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の包含を意味するが、任意の他の要素、整数若しくはステップ、又は要素、整数若しくはステップの群の除外を意味するものではないことが理解されるであろう。
【0136】
選択した定義
命名のみを目的として、限定を目的とせず、ヒトCD131(pre-CD131)の例示的な配列は、NCBI参照配列:NP_000386.1及びNCBI Genbank登録番号P32927に記載される(また配列番号1に記載される)。成熟ヒトCD131の配列は、配列番号1のアミノ酸1~16を欠く。アミノ酸の位置は、多くの場合、pre-CD131を参照して本明細書で言及される。成熟CD131中の位置は、シグナル配列(配列番号1の場合、アミノ酸1~16)を考慮することによって容易に判定される。他の種由来のCD131の配列は、本明細書及び/又は公的に入手可能なデータベース内で提供される配列を使用して決定することができ、かつ/又は標準的な技術を使用して決定することができる(例えば、Ausubel et al.,(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までの全ての更新を含む)又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されるように)。ヒトCD131への言及は、hCD131と略され得る。可溶性CD131への言及は、CD131の細胞外領域、例えば、配列番号1のアミノ酸17~438を含むポリペプチドを指す。
【0137】
本明細書におけるCD131への言及は、CD131(例えば、hCD131)に結合し、シグナル伝達を誘導する能力を保持する、CD131の天然形態及びその変異型を含む。CD131は、「CSF2RB」及び「サイトカイン受容体共通サブユニットβ」及び「β(ベータ)共通受容体」(「βCR」又は「βc」と略される)としても知られている。
【0138】
本開示によって企図される「化合物」は、天然化合物、化学的小分子化合物、又は生体化合物又は巨大分子を含む様々な形態のいずれかをとることができる。例示的な化合物には、抗体又は抗体の抗原結合断片、核酸、ポリペプチド、ペプチド、及び小分子を含むタンパク質が含まれる。
【0139】
本明細書で使用される場合、「疾患」又は「状態」という用語は、正常な機能の破壊又は干渉を指し、任意の特定の状態、疾患又は障害に限定されるものではない。
【0140】
本明細書で使用される場合、「治療すること」、「治療する」又は「治療」という用語は、指定された疾患又は状態の少なくとも1つの症状を軽減、予防、又は除去するために、本明細書に記載される化合物を投与することを含む。
【0141】
本明細書で使用される場合、「予防すること(preventing)」、「予防する(prevent)」、又は「予防(prevention)」という用語は、本明細書に記載の化合物を投与して、それによって、例えば、その症状が対象において完全に発症する前に、状態の少なくとも1つの症状の発症を停止又は阻害することを含む。
【0142】
本明細書で使用される場合、用語「対象」は、ヒト、例えば哺乳類を含む任意の動物を意味すると解釈される。例示的な対象として、ヒト及び非ヒト霊長類が挙げられるが、これらに限定されない。一例では、対象は、ヒトである。
【0143】
「タンパク質」という用語は、単一のポリペプチド鎖、すなわち、ペプチド結合によって連結された一連の連続したアミノ酸、又は互いに共有結合又は非共有結合で連結された一連のポリペプチド鎖(すなわち、ポリペプチド複合体)を含むと解釈されなければならない。例えば、一連のポリペプチド鎖は、好適な化学的結合又はジスルフィド結合を使用して共有結合することができる。非共有結合の例としては、水素結合、イオン結合、ファンデルワールス力、及び疎水性相互作用が挙げられる。いくつかの例では、タンパク質は融合タンパク質である。本明細書で使用される場合、「融合タンパク質」は、それらが単一のタンパク質を産生する単一の単位として翻訳されるように結合された少なくとも2つのドメインを含むタンパク質である。
【0144】
用語「ポリペプチド」又は「ポリペプチド鎖」は、前項から、ペプチド結合によって連結された一連の連続アミノ酸を意味すると理解される。
【0145】
「単離されたタンパク質」又は「単離されたポリペプチド」という用語は、その起源又は誘導の供給源に基づいて、その天然状態でそれに付随する天然に関連する成分に関連付けられておらず、同じ供給源からの他のタンパク質を実質的に含まないタンパク質又はポリペプチドである。タンパク質は、当該技術分野で知られているタンパク質精製技法を使用して、天然に関連する成分を実質的に含まないか、又は単離によって実質的に精製され得る。「実質的に精製された」とは、タンパク質が、汚染物質を実質的に含まないこと、例えば、汚染物質を少なくとも約70%又は75%又は80%又は85%又は90%又は95%又は96%又は97%又は98%又は99%含まないことを意味する。
【0146】
「組換え」という用語は、人工遺伝子組換えの産物を意味すると理解されなければならない。したがって、抗体抗原結合ドメインを含む組換えタンパク質の関連では、この用語は、B細胞成熟中に発生する天然組換え産物である、対象の体内に天然に存在する抗体を包含しない。しかしながら、かかる抗体が単離される場合、それは、抗体抗原結合ドメインを含む単離されたタンパク質とみなされるべきである。同様に、タンパク質をコードする核酸を単離し、組換え手段を使用して発現する場合、得られるタンパク質は、抗体抗原結合ドメインを含む組換えタンパク質である。組換えタンパク質はまた、例えば、それが発現する細胞、組織又は対象内にあるときに、人工組換え手段によって発現されるタンパク質を包含する。
【0147】
本明細書で使用される場合、「抗原結合部位」という用語は、抗原に結合又は特異的に結合することができるタンパク質によって形成される構造を意味すると解釈される。抗原結合部位は、一連の連続したアミノ酸、又は単一のポリペプチド鎖内のアミノ酸である必要はない。例えば、2つの異なるポリペプチド鎖から産生されるFvでは、抗原結合部位は、抗原と相互作用するVL及びVHの一連のアミノ酸で構成され、これらは、一般的にはあるが、必ずしも各可変領域の1つ以上のCDRに存在するとは限らない。いくつかの例では、抗原結合部位は、VH若しくはVL又はFvであるか、あるいはVH若しくはVL又はFvを含む。いくつかの例では、抗原結合部位は、抗体の1つ以上のCDRを含む。
【0148】
当業者は、「抗体」が、複数のポリペプチド鎖からなる可変領域、例えば、VLを含むポリペプチド及びVHを含むポリペプチドを含むタンパク質であると一般的に考えられることを認識するであろう。抗体はまた、一般に、定常ドメインを含み、そのうちのいくつかは、重鎖の場合、定常断片又は断片結晶性(Fc)を含む定常領域に配置することができる。VH及びVLは相互作用して、1つ又はいくつかの密接に関連する抗原に特異的に結合することができる抗原結合領域を含むFvを形成する。一般に、哺乳類由来の軽鎖は、κ軽鎖又はλ軽鎖のいずれかであり、哺乳類由来の重鎖は、α、δ、ε、γ、又はμである。抗体は、任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA、及びIgY)、クラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)、又はサブクラスであり得る。「抗体」という用語はまた、ヒト化抗体、霊長類化抗体、ヒト抗体及びキメラ抗体を包含する。
【0149】
用語「完全長抗体」、「インタクト抗体」又は「全抗体」は、抗体の抗原結合断片とは対照的に、実質的にインタクトな形態の抗体を指すために互換的に使用される。具体的には、全抗体には、Fc領域を含む重鎖及び軽鎖を有するものが含まれる。定常ドメインは、野生型配列定常ドメイン(例えば、ヒト野生型配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。
【0150】
本明細書で使用される場合、「可変領域」は、抗原に特異的に結合することが可能であり、相補性決定領域(CDR)のアミノ酸配列、すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3、並びにフレームワーク領域(FR)を含む、本明細書で定義される抗体の軽鎖及び/又は重鎖の部分を指す。例示的な可変領域は、3つ又は4つのFR(例えば、FR1、FR2、FR3、及び任意選択的にFR4)を、3つのCDRとともに含む。IgNARに由来するタンパク質の場合、タンパク質はCDR2を欠くことがある。VHは、重鎖の可変領域を指す。VLは、軽鎖の可変領域を指す。
【0151】
本明細書で使用される場合、用語「相補性決定領域」(同義語CDR;すなわち、CDRl、CDR2、及びCDR3)は、抗原結合に必要な抗体可変領域のアミノ酸残基を指す。各可変領域は、典型的には、CDRl、CDR2、及びCDR3として特定された3つのCDR領域を有する。CDR及びFRに割り当てられたアミノ酸位置は、Kabat Sequences of Proteins of Immunological Interest,National Institutes of Health,Bethesda,Md.,1987及び1991、あるいは本開示の実行における他の番号付けシステム、例えば、Chothia and LeskJ.Mol Biol.196:901-917,1987、Chothia et al.Nature342,877-883,1989、及び/若しくはAl-Lazikani et al.,J Mol Biol273:927-948,1997の正規番号付けシステム、Lefranc et al.,Devel.And Compar.Immunol.,27:55-77,2003のIMGT番号付けシステム、又はHonnegher and Plukthun J.Mol.Biol.,309:657-670,2001のAHO番号付けシステムに従って定義され得る。例えば、Kabatの番号付けシステムによれば、VHフレームワーク領域(FR)及びCDRは、残基1~30(FRl)、31~35(CDR1)、36~49(FR2)、50~65(CDR2)、66~94(FR3)、95~102(CDR3)、及び103~113(FR4)のように配置される。Kabatの番号付けシステムによれば、VLFR及びCDRは、残基1~23(FRl)、24~34(CDR1)、35~49(FR2)、50~56(CDR2)、57~88(FR3)、89~97(CDR3)、及び98~107(FR4)のように配置される。本開示は、Kabat番号付けシステムによって定義されるFR及びCDRに限定されないが、上記で論じられたものを含む全ての番号付けシステムを含む。一例では、本明細書におけるCDR(又はFR)への言及は、Kabat付番システムによるこれらの領域に関するものである。
【0152】
「フレームワーク領域」(FR)は、CDR残基以外の可変領域残基である。
【0153】
本明細書で使用される場合、用語「Fv」は、複数のポリペプチド又は単一のポリペプチドからなるかどうかにかかわらず、VL及びVHが会合し、抗原結合部位を有する複合体を形成し、すなわち、抗原に特異的に結合することができる任意のタンパク質を意味すると解釈される。抗原結合部位を形成するVH及びVLは、単一ポリペプチド鎖内又は異なるポリペプチド鎖内にあり得る。更に、本開示のFv(並びに本開示の任意のタンパク質)は、同じ抗原に結合しても結合しなくてもよい複数の抗原結合部位を有してもよい。この用語は、抗体に直接由来する断片、並びに組換え手段を使用して産生されるそのような断片に対応するタンパク質を包含するものと理解されるべきである。いくつかの例では、VHは、重鎖定常ドメイン(CH)1に連結されておらず、及び/又はVLは、軽鎖定常ドメイン(CL)には連結されていない。ポリペプチド又はタンパク質を含有する例示的なFvは、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)断片、scFv、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ若しくは高次複合体、又は定常領域若しくはそのドメイン、例えば、CH2若しくはCH3ドメイン、例えば、ミニボディに連結された前述のいずれかを含む。「Fab断片」は、免疫グロブリンの一価の抗原結合断片からなり、抗体全体を酵素パパインで消化することによって産生し、インタクトな軽鎖及び重鎖の一部からなる断片を産生し、又は組換え手段を用いて産生し得る。抗体の「Fab’断片」は、抗体全体をペプシンで処理し、続いて還元して、インタクトな軽鎖と、VH及び単一の定常ドメインを含む重鎖の一部とからなる分子を得ることによって得ることができる。2つのFab’断片が、この様式で処置された抗体ごとに得られる。Fab’断片は、組換え手段によっても産生することができる。抗体の「F(ab’)2断片」は、2つのジスルフィド結合によって一緒に保持される2つのFab’断片の二量体からなり、後続の還元なしに、抗体分子全体を酵素ペプシンで処理することによって得られる。「Fab2」断片は、例えば、ロイシンジッパー又はCH3ドメインを使用して連結された2つのFab断片を含む組換え断片である。「一本鎖Fv」又は「scFv」は、抗体の可変領域断片(Fv)を含有する組換え分子であり、軽鎖の可変領域及び重鎖の可変領域は、好適な可撓性ポリペプチドリンカーによって共有結合されている。
【0154】
本明細書で使用される場合、化合物又はその抗原結合部位と抗原との相互作用に関して「結合する」という用語は、相互作用が、抗原上の特定の構造(例えば、抗原決定基又はエピトープ)の存在に依存することを意味する。例えば、抗体は、一般的にタンパク質ではなく、特定のタンパク質構造を認識して結合する。抗体がエピトープ「A」に結合する場合、「A」と標識されたタンパク質を含有する反応において、エピトープ「A」(又は遊離の、非標識の「A」)を含有する分子の存在は、抗体に結合した標識された「A」の量を減少させる。
【0155】
本明細書で使用される場合、「特異的に結合する(specifically binds)」又は「特異的に結合する(binds specifically)」という用語は、本開示の化合物が、代替の抗原又は細胞と同じものを発現する特定の抗原又は細胞とより頻繁に、より迅速に、より長期間及び/又はより高い親和性で反応又は会合することを意味すると解釈されるべきである。例えば、化合物は、他のサイトカイン受容体又は多反応性天然抗体(すなわち、ヒトに天然に見出される様々な抗原に結合することが知られている天然に存在する抗体)によって一般的に認識される抗原に対して結合するよりも、実質的に高い親和性(例えば、20倍又は40倍又は60倍又は80倍から100倍又は150倍又は200倍)でCD131に結合する。一般に、必ずしもそうではないが、結合への言及は、特異的結合を意味し、各用語は、他の用語に対して明示的な支持を提供するものと理解されなければならない。
【0156】
タンパク質又は抗体は、別のポリペプチドについてタンパク質又は抗体のKDよりも小さい解離定数(KD)でそのポリペプチドに結合する場合、ポリペプチドに「優先的に結合する」と考えられ得る。一例では、タンパク質又は抗体は、別のポリペプチドについて、タンパク質又は抗体のKDよりも少なくとも約20倍又は40倍又は60倍又は80倍又は100倍又は120倍又は140倍又は160倍多い親和性(すなわち、KD)でポリペプチドに結合する場合、ポリペプチドに優先的に結合するとみなされる。
【0157】
明確化の目的のために、及び本明細書の例示的な主題に基づいて当業者に明白であろうように、本明細書における「親和性」への言及は、タンパク質又は抗体のKDへの言及である。
【0158】
明確化の目的で、かつ本明細書の記載に基づいて当業者には明らかであるように、「XnM以下のKD」への言及は、KDの数値が、XnMに等しい、又はより低い数値であることを意味すると理解される。当業者には理解されるように、KDのより低い数値は、より高い(すなわち、より強い)親和性に対応し、すなわち、2nMの親和性は、3nMの親和性よりも強い。
【0159】
「少なくとも約~のIC50」は、IC50が、列挙された値以上(すなわち、IC50が低いときに列挙された数値)であること、すなわち、2nMのIC50が、3nMのIC50よりも大きいことを意味すると理解されるであろう。別の言い方をすると、この用語は、「X以下のIC50」であり得、ここで、Xは、本明細書に列挙される値である。
【0160】
本明細書で使用される場合、用語「エピトープ」(同義語「抗原決定基」)は、抗体の抗原結合部位を含むタンパク質が結合するCD131の領域を意味すると理解されなければならない。この用語は、必ずしもタンパク質が接触する特定の残基又は構造に限定されない。例えば、この用語は、タンパク質及び/又は5~10個又は2~5個又は1~3個のアミノ酸が接触する領域を含む。いくつかの例では、エピトープは、CD131が折り畳まれたときに互いに近くに配置される一連の不連続なアミノ酸、すなわち、「立体構造エピトープ(conformational epitope)」を含む。当業者はまた、用語「エピトープ」がペプチド又はポリペプチドに限定されないことを認識するであろう。例えば、用語「エピトープ」は、糖側鎖、ホスホリル側鎖、又はスルホニル側鎖などの分子の化学的に活性な表面分類を含み、特定の例では、特定の三次元構造特性、及び/又は特異的電荷特性を有し得る。
【0161】
「競合的に阻害する」という用語は、本開示のタンパク質(又はその抗原結合部位)が、列挙された抗体又はタンパク質のCD131への結合を低減又は防止することを意味すると理解されなければならない。これは、タンパク質(又は抗原結合部位)及び同じ又は重複するエピトープへの抗体結合によるものであり得る。上記から、タンパク質が抗体の結合を完全に阻害する必要はなく、むしろ、統計的に有意な量、例えば、少なくとも約10%又は20%又は30%又は40%又は50%又は60%又は70%又は80%又は90%又は95%だけ結合を減少させる必要があることが明らかになる。好ましくは、タンパク質は、抗体の結合を少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、より好ましくは少なくとも約70%、なおより好ましくは少なくとも約75%、更により好ましくは少なくとも約80%又は85%、更により好ましくは少なくとも約90%低下させる。結合の競合的阻害を判定するための方法は、当該技術分野で既知である、及び/又は本明細書に記載される。例えば、抗体は、タンパク質の存在下又は非存在下のいずれかで、CD131に曝露される。タンパク質の不在下よりもタンパク質の存在下で結合する抗体が少ない場合、タンパク質は、抗体の結合を競合的に阻害すると考えられる。一例では、競合的阻害は、立体障害によるものではない。
【0162】
2つのエピトープの文脈における「重複」とは、1つのエピトープに結合するタンパク質(又はその抗原結合部位)が他のエピトープに結合するタンパク質(又は抗原結合部位)の結合を競合的に阻害することを可能にするのに十分な数のアミノ酸残基を2つのエピトープが共有することを意味するものとする。例えば、「重複」エピトープは、少なくとも1又は2又は3又は4又は5又は6又は7又は8又は9又は20個のアミノ酸を共有する。
【0163】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
本開示は、例えば、対象の急性呼吸窮迫症候群(ARDS)を治療又は防止するための方法を提供する。
【0164】
ARDSは、両側性肺浸潤、重症低酸素血症、及び非心原性肺水腫によって特徴付けられる、生命を脅かす状態である。ARDSは、重症肺損傷及び30~50%の起因する死亡率をもたらす。今のところ、有効な薬理学的療法がない。(インフルエンザ及びコロナウイルス感染を含む)敗血症及び肺炎などの感染病因は、ARDSの主な原因である。したがって、これらの基礎疾患又は障害(例えば、感染)の治療がまた、本開示の方法と組み合わせて企図される。
【0165】
組織学的に、ヒトにおけるARDSは、肺における重症急性炎症反応と、好中球性肺胞炎とによって特徴付けられる。内毒素(リポ多糖、LPS)などの微生物病原体からの炎症刺激は、肺炎症を誘導するための当該微生物病原体の能力について十分に認識されており、全身及び気管内の両方でのLPSの実験的投与は、本明細書に記載されるように、ARDSの動物モデルにおいて肺炎症を誘導するために使用されている。LPSは、Toll様受容体4(TLR4)を介して作用して、炎症性サイトカイン及びケモカインの発現を増加させ、白血球接着分子を上方制御して、内皮細胞活性化をもたらす。
【0166】
ARDSの生理学的特徴は、肺胞毛細管膜関門の破壊(すなわち、肺血管漏出)であり、これは、非心原性肺水腫の発症をもたらし、非心原性肺水腫において、タンパク質性滲出液が、肺胞空間にあふれ、ガス交換を損ない、呼吸不全を誘発する。肺胞上皮及び内皮細胞損傷及び/又は死の両方が、ARDSの発病に関与している。ARDSは、集中治療室(ICU)における長期機械的換気の重要な誘因であり続け、ARDS関連死亡率は、最適なICU支持治療にもかかわらず、依然として30~50%と高い。
【0167】
ARDSは、2012年に専門家の委員会(American Thoracic Society及びSociety of Critical Care Medicineによって支持されたEuropean Society of Intensive Care Medicineの主導)によって、ベルリン定義として定義された。現在、関連死亡率増加(それぞれ、27%;95%CI、24%~30%;32%;95%CI、29%~34%;及び45%;95%CI、42%~48%;P<0.001)、及び生存者における機械的換気の中央値持続時間増加(それぞれ、5日;四分位[IQR]、2~11;7日;IQR、4~14;及び9日;IQR、5~17;P<0.001)での、軽症、中等症、及び重症の3つの段階がある。定義は、生理学的情報を含有する、4つの多施設臨床データセットからの4188人のARDSを有する患者、及び3つの単一施設データセットからの269人のARDSを有する患者の患者レベルメタ分析を使用して、経験的に評価された。
【0168】
ベルリンの定義によれば、ARDSは、
(1)臨床的発作又は呼吸器症状の発症の1週間以内の症状、
(2)少なくとも5cmの持続的気道陽圧(CPAP)又は終末呼気陽圧(PEEP)において、300mmHg以下のPaO2/FiO2比であって、PaO2が、動脈血酸素分圧であり、FiO2が、吸入酸素濃度である、300mmHg以下のPaO2/FiO2比によって判定された場合、急性低酸素性呼吸不全、
(3)肺X線写真における両側性陰影が、浸出液、硬化、又は無気肺によって完全に説明されないこと、及び
(4)浮腫/呼吸不全が、心不全又は流体過剰によって完全に説明されないことによって定義される。
【0169】
本開示の方法の一例では、対象は、ARDSについての上記のベルリン基準を満たす。他の例では、対象は、ARDSについてのベルリン基準を依然として満たしていなくてもよいが、ARDSを発症するリスクがあるとして同定される。そのような対象に、ARDSの発症を防止するために、CD131に結合する化合物が投与され得る。
【0170】
本明細書で使用される場合、「リスクがある」という用語は、対象が、正常な個体と比較して、ARDSを発症する確率が増加していることを意味する。対象は、当該技術分野で既知のいずれかの方法を使用して、ARDSを発症するリスクがあるとして同定され得る。例えば、対象が、ARDSの共通基礎原因(例えば、敗血症、肺炎、外傷など)を有し、呼吸器症状、例えば、速い呼吸及び/又は息切れを有する場合、当該対象は、ARDSを発症するリスクがあると同定され得る。ARDSを発症するリスクがある対象を同定するのに好適な他の方法は、例えば、WO2018/204509、Luo et al.,2017,J Thorac Dis9,3979-3995、de Haro et al.,2013,Annals of Intensive Care3,11、Iriyama et al.,2020,Journal of Intensive Care8,7、Gajic et al.,2011,Am J Respir Crit Care Med183,462-470、及びYadav et al.,2017,Am J Respir Crit Care Med195,725-736に記載されている方法を含む。
【0171】
ARDSの重症度は、
(1)軽症ARDS:200~300mmHgのPaO2/FiO2、
(2)中等症ARDS:100~200mmHgのPaO2/FiO2、及び
(3)重症ARDS:100mmHg以下のPaO2/FiO2として分類され得る。
【0172】
本開示の方法のいくつかの例では、ARDSは、軽症ARDSである。いくつかの例では、ARDSは、中等症ARDSである。いくつかの例では、ARDSは、重症ARDSである。
【0173】
本開示の方法は、ARDSの全ての原因に適する。ARDSの最も共通する原因は、敗血症、有害物質の吸引、肺炎、重症外傷(両側性肺挫傷、長骨折後の脂肪塞栓症、重症外傷又は熱傷の数日後に発症する敗血症、及び広範囲な外傷性組織損傷)、大量輸血、輸血関連急性肺損傷、肺及び造血幹細胞移植、他の急性炎症性疾患、薬物及びアルコール、並びに肺サーファクタントタンパク質B(SP-B)遺伝子における変異などの遺伝的決定因子である。
【0174】
より最近では、ARDSは、重症コロナウイルス疾患2019(COVID-19)、すなわち、SARS-CoV-2(重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2)感染からのウイルス性肺炎に起因することが示されている。本開示の方法は、重症COVID-19を患っている対象のARDSを治療又は防止するために使用され得る。したがって、いくつかの例では、本開示は、対象のCOVID-19を治療する方法であって、対象に、CD131に結合しIL-3、IL-5、及びGM-CSFによるシグナル伝達を中和する化合物を投与することを含む、方法を提供する。。COVID-19の共通症状は、発熱、咳、疲労、息切れ、並びに嗅覚及び味覚の喪失を含む。症例の大部分は、軽症症状をもたらすが、いくつかは、ARDSに進行する。過去における他のコロナウイルス感染は、SARS及びMERSを引き起こしており、SARS及びMERSもまた、ARDSをもたらし得る。SARS-CoV-2感染は、例えば、特定のPCR試験を使用する、鼻咽頭分泌物中のウイルスRNAの陽性検出によって、確認され得る。COVID-19病は、一貫した臨床歴、疫学的接触、及び陽性SARS-CoV-2試験によって確認され得る。COVID-19感染が確認された対象が、上記のベルリンARDS診断基準を満たすときに、COVID-19に関連するARDSは、診断され得る。
【0175】
抗体
一例では、任意の例による本明細書に記載の化合物は、抗体の抗原結合部位を含むタンパク質である。いくつかの例では、化合物は、抗体である。
【0176】
抗体を生成するための方法は、当該技術分野で既知であり、及び/又はHarlow and Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)に記載されている。一般に、そのような方法では、任意選択で任意の好適又は所望の担体、アジュバント、又は薬学的に許容される賦形剤で製剤化されたCD131又はその領域(例えば、細胞外ドメイン)若しくはその免疫原性断片若しくはエピトープ、又はそれを発現及び表示する細胞(すなわち、免疫原)が、非ヒト動物、例えば、マウス、ニワトリ、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ウマ、ヤギ、又はブタに投与される。免疫原は、鼻腔内、筋肉内、皮下、静脈内、皮内、腹腔内、又は他の既知の経路によって投与し得る。
【0177】
モノクローナル抗体は、本開示によって企図される抗体の1つの例示的形態である。用語「モノクローナル抗体」又は「mAb」は、同じ抗原(複数可)に、例えば、抗原内の同じエピトープに結合することができる均一抗体集団を指す。この用語は、抗体の供給源又はそれが作製される方法に関して限定されることを意図するものではない。
【0178】
mAbの産生には、例えば、US4196265又はHarlow及びLane(1988)(上記)に例示される手順など、いくつかの既知の技法のうちのいずれか1つを使用してよい。
【0179】
あるいは、ABL-MYC技術(NeoClone、Madison WI53713,USA)が、(例えば、Largaespada et al,J.Immunol.Methods.197:85-95,1996に記載されるように)MAbを分泌する細胞株を産生するために使用される。
【0180】
抗体はまた、例えば、US6300064及び/又はUS5885793に記載されるように、ディスプレイライブラリ、例えば、ファージディスプレイライブラリをスクリーニングすることによって、産生又は単離され得る。例えば、本発明者らは、ファージディスプレイライブラリから完全ヒト抗体を単離した。
【0181】
本開示の抗体は、合成抗体であってもよい。例えば、抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体、ヒト抗体、又は脱免疫化抗体である。
【0182】
一例では、本明細書に記載の抗体は、キメラ抗体である。「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/又は軽鎖の一部が、特定の種(例えば、マウスなどのネズミ)に由来するか、又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか又は相同である一方で、鎖の残りの部分は、別の種(例えば、ヒトなどの霊長類)に由来するか、又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配列と同一であるか又は相同である抗体を指す。キメラ抗体の作製方法は、例えば、US4816567及びUS5807715に記載されている。
【0183】
本開示の抗体は、ヒト化抗体であっても、ヒト抗体であってもよい。
【0184】
「ヒト化抗体」という用語は、非ヒト種由来の抗体に由来する抗原結合部位又は可変領域を有し、ヒト抗体の構造及び/又は配列に基づいて残りの抗体構造を有するキメラ抗体のサブクラスを指すと理解されなければならない。ヒト化抗体において、抗原結合部位は、一般に、ヒト抗体の可変領域内の適切なFRに接合された非ヒト抗体からの相補性決定領域(CDR)、及びヒト抗体からの残りの領域を含む。抗原結合部位は、野生型(すなわち、非ヒト抗体のものと同一である)であってもよく、1つ以上のアミノ酸置換によって改変されてもよい。場合によっては、ヒト抗体のFR残基は、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。
【0185】
非ヒト抗体又はその部分(例えば、可変領域)をヒト化するための方法は、当該技術分野において既知である。ヒト化は、US5225539、又はUS5585089の方法に従って行うことができる。抗体をヒト化するための他の方法は、除外されないものとする。
【0186】
本明細書で使用される「ヒト抗体」という用語は、可変領域(例えば、VH、VL)、及びヒト、例えば、ヒト生殖細胞又は体細胞に見出される配列に由来するか、又はそれに対応する任意選択で一定の領域を有する抗体を指す。
【0187】
例示的なヒト抗体は本明細書に記載されており、WO2017/088028に記載される9A2-VR24.29(また、「CSL311」とも称される)、及びSun et al.(1999)Blood94:1943-1951に記載されるBION-1、並びに/又はその可変領域を含むタンパク質若しくはその誘導体が挙げられる。これらのヒト抗体は、非ヒト抗体と比較して、ヒトにおける免疫原性の低下という利点を提供する。
【0188】
一例では、抗体は、多重特異性抗体である。例えば、CD131に結合する化合物は、CD131に結合する抗原結合部位と、異なる抗原に結合する更なる抗原結合部位とを含むタンパク質であり得る。したがって、いくつかの例では、抗体は二重特異性抗体である。
【0189】
抗体結合ドメイン含有タンパク質
単一ドメイン抗体
いくつかの例では、本開示の化合物は、単一ドメイン抗体(「ドメイン抗体」又は「dAb」又は「ナノボディ」という用語と互換的に使用される)であるか、又はそれを含むタンパク質である。単一ドメイン抗体は、単一のモノマー可変抗体ドメインからなる抗体断片である。抗体全体と同様に、これは特定の抗原に選択的に結合することができる。わずか12~15kDaの分子量で、単一ドメイン抗体は、2本の重タンパク質鎖及び2本の軽鎖からなる一般的な抗体(150~160kDa)よりもはるかに小さく、Fab断片(約50kDa、1本の軽鎖と半分の重鎖)及び単鎖可変断片(約25kDa、2つの可変ドメイン、1つは軽鎖から、もう1つは重鎖から)よりも更に小さい。ある特定の例では、単一ドメイン抗体は、ヒト単一ドメイン抗体である(Domantis,Inc.、Waltham,MA;例えば、US6248516を参照されたい)。
【0190】
いくつかの例では、単一ドメイン抗体は、VHH断片である。VHH断片は、以下に記載のラクダ科重鎖抗体の可変ドメイン(VH)からなる。
【0191】
いくつかの例では、単一ドメイン抗体は、VNAR断片である。VNAR断片は、以下に記載の、軟骨魚類由来の重鎖抗体の可変ドメイン(VH)からなる。
【0192】
ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ
いくつかの例では、本開示のタンパク質は、WO98/044001及び/又はWO94/007921に記載されるものなどの、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ若しくはより高次元のタンパク質複合体であるか、又はそれらを含む。
【0193】
一本鎖Fv(scFv)
当業者は、scFvが、単一のポリペプチド鎖内のVH及びVL領域、並びにVH及びVLの間のポリペプチドリンカーを含み、これにより、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にすること(すなわち、単一のポリペプチド鎖のVH及びVLが互いに会合してFvを形成すること)を認識するであろう。例えば、リンカーは、12個を超えるアミノ酸残基を含み、(Gly4Ser)3は、scFvにとってより好ましいリンカーの1つである。
【0194】
重鎖抗体
重鎖抗体は、重鎖を含むが、軽鎖を含まない限り、他の多くの形態の抗体と構造的に異なる。したがって、これらの抗体は、「重鎖のみ抗体」とも称される。重鎖抗体は、例えば、ラクダ科及び軟骨魚類(IgNARとも呼ばれる)に見出される。
【0195】
ラクダ科及びその可変領域由来の重鎖抗体及びそれらの産生及び/又は単離及び/又は使用方法の一般的な説明は、とりわけ、以下の参考文献WO94/04678、WO97/49805及びWO97/49805に見出される。
【0196】
軟骨魚類及びその可変領域由来の重鎖抗体並びにそれらの産生方法及び/又は単離方法及び/又は使用方法の一般的な説明は、とりわけ、WO2005/118629に見出される。
【0197】
他の抗体及び抗体断片
本開示は、他の抗体及び抗体断片、例えば、
(i)US5,731,168に記載の「鍵及び穴」二重特異性タンパク質、
(ii)例えば、US4,676,980に記載のヘテロ共役タンパク質、
(iii)例えば、US4,676,980に記載の化学架橋剤を使用して産生されるヘテロ共役タンパク質、及び
(iv)Fab3(例えば、EP19930302894に記載されているような)。
【0198】
V様タンパク質
本開示の化合物の例は、T細胞受容体である。T細胞受容体は、抗体のFvモジュールと同様の構造に結合する2つのVドメインを有する。Novotny et al.,Proc Natl Acad Sci USA88:8646-8650,1991は、T細胞受容体の2つのVドメイン(α及びβと称される)が、どのように融合され、一本鎖ポリペプチドとして発現され得るか、更に、抗体scFvに直接類似する疎水性を低減するために表面残基をどのように変化させるかを記載している。2つのV-α及びV-βドメインを含む一本鎖T細胞受容体又は多量体T細胞受容体の産生を記載する他の刊行物としては、WO1999/045110又はWO2011/107595が挙げられる。
【0199】
抗原結合ドメインを含む他の非抗体タンパク質としては、一般に単量体であるV様ドメインを有するタンパク質が挙げられる。かかるV様ドメインを含むタンパク質の例としては、CTLA-4、CD28、及びICOSが挙げられる。かかるV様ドメインを含むタンパク質の更なる開示は、WO1999/045110に含まれる。
【0200】
アドネクチン
一例では、本開示の化合物は、アドネクチンである。アドネクチンは、ループ領域が抗原結合を付与するように変更されるヒトフィブロネクチンの第10のフィブロネクチンIII型(10Fn3)ドメインに基づく。例えば、10Fn3ドメインのβサンドイッチの一端にある3つのループを操作して、アドネクチンが抗原を特異的に認識できるようにすることができる。更なる詳細については、US2008/0139791又はWO2005/056764を参照されたい。
【0201】
アンチカリン
更なる例では、本開示の化合物は、アンチカリンである。アンチカリンは、ステロイド、ビリン、レチノイド及び脂質などの小さな疎水性分子を輸送する細胞外タンパク質のファミリーであるリポカリンに由来する。リポカリンは、抗原に結合するように操作することができる円錐構造の開放端に複数のループを有する剛性βシート二次構造を有する。そのような操作されたリポカリンは、アンチカリンとして知られている。アンチカリンの更なる説明については、US7250297B1又はUS2007/0224633を参照されたい。
【0202】
アフィボディ
更なる例では、本開示の化合物は、アフィボディである。アフィボディは、抗原に結合するように操作され得る黄色ブドウ球菌のプロテインAのZドメイン(抗原結合ドメイン)に由来する足場である。Zドメインは、約58個のアミノ酸の3ヘリカルバンドルからなる。ライブラリは、表面残基のランダム化によって生成されてきた。詳細については、EP1641818を参照されたい。
【0203】
アビマー
更なる例では、本開示の化合物は、アビマーである。アビマーは、Aドメイン足場ファミリーに由来するマルチドメインタンパク質である。約35個のアミノ酸の天然ドメインは、定義されたジスルフィド結合構造を採用する。多様性は、Aドメインファミリーによって示される自然変動のシャッフルによって生成される。詳細については、WO2002/088171を参照されたい。
【0204】
DARPin
更なる例では、本開示の化合物は、設計されたアンキリンリピートタンパク質(DARPin)である。DARPinは、細胞骨格への一体膜タンパク質の結合を媒介するタンパク質のファミリーであるアンキリンに由来する。単一のアンキリン反復は、2つのαヘリックスとβターンからなる33残基モチーフである。それらは、第1のαヘリックス及び各反復のβターン内の残基をランダム化することによって、異なる標的抗原に結合するように操作することができる。それらの結合界面は、モジュールの数を増やすことによって増加させることができる(親和性成熟の方法)。詳細については、US20040132028を参照されたい。
【0205】
脱免疫化タンパク質
本開示はまた、脱免疫化抗体又はタンパク質を企図する。脱免疫化抗体及びタンパク質は、1つ以上のエピトープ、例えば、B細胞エピトープ又は除去された(すなわち、変異した)T細胞エピトープを有し、それによって、哺乳動物が抗体又はタンパク質に対する免疫応答を上昇させる可能性を低下させる。脱免疫化抗体及びタンパク質を産生するための方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、WO2000/34317、WO2004/108158及びWO2004/064724に記載されている。
【0206】
好適な変異を導入し、得られたタンパク質を発現及びアッセイするための方法は、本明細書の説明に基づいて当業者には明白であろう。
【0207】
タンパク質への突然変異
本開示はまた、本開示のタンパク質の変異型を企図する。例えば、かかる変異タンパク質は、本明細書に記載される配列と比較して、1つ以上の保存的アミノ酸置換を含む。いくつかの例では、タンパク質は、30個以下又は20個以下又は10個以下、例えば、9個又は8個又は7個又は6個又は5個又は4個又は3個又は2個の保存的アミノ酸置換を含む。「保存的アミノ酸置換」は、アミノ酸残基が、類似の側鎖及び/又は親水性及び/又は親水性を有するアミノ酸残基で置き換えられるものである。
【0208】
一例では、突然変異タンパク質は、天然に存在するタンパク質と比較して、1個又は2個又は3個又は4個又は5個又は6個の保存的アミノ酸変化のみを有するか、又はそれ以下である。保存的アミノ酸変化の詳細を以下に提供する。当業者は、例えば、本明細書の開示から認識するであろうように、そのようなわずかな変化は、タンパク質の活性を改変しないように合理的に予測され得る。
【0209】
類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、塩基性側鎖(例えば、リジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアニン、トリプトファン、ヒスチジン)を含み、当該技術分野において定義されている。
【0210】
本開示はまた、本開示のタンパク質、例えば、CDR3などのCDRにおける非保存的アミノ酸変化(例えば、置換)を企図する。一例では、タンパク質は、例えば、CDR3中、例えばCDR3中に、6個未満又は5個未満又は4個未満又は3個未満又は2個未満又は1個未満の非保存的アミノ酸置換を含む。
【0211】
本開示はまた、本明細書に記載の配列と比較した1つ以上の挿入又は欠失を企図する。いくつかの例では、タンパク質は、10個以下、例えば、9個又は8個又は7個又は6個又は5個又は4個又は3個又は2個の挿入及び/又は欠失を含む。
【0212】
定常領域
本開示は、抗体の定常領域を含む、本明細書に記載のタンパク質及び/又は抗体を包含する。これには、Fcに融合された抗体の抗原結合断片が含まれる。
【0213】
本開示のタンパク質の産生に有用な定常領域の配列は、いくつかの異なる供給源から入手することができる。いくつかの例では、タンパク質の定常領域又はその一部は、ヒト抗体に由来する。定常領域又はその一部は、IgM、IgG、IgD、IgA、及びIgEを含む任意の抗体クラス、並びにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4を含む任意の抗体アイソタイプに由来し得る。一例では、定常領域は、ヒトアイソタイプIgG4又は安定化IgG4定常領域である。
【0214】
一例では、定常領域のFc領域は、例えば、天然又は野生型ヒトIgG1又はIgG3 Fc領域と比較して、エフェクター機能を誘導する能力が低下している。一例では、エフェクター機能は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)及び/又は抗体依存性細胞媒介性食作用(ADCP)及び/又は補体依存性細胞傷害性(CDC)である。タンパク質を含有するFc領域のエフェクター機能のレベルを評価するための方法は、当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される。
【0215】
一例では、Fc領域は、IgG4 Fc領域(すなわち、IgG4定常領域からの)、例えば、ヒトIgG4 Fc領域である。好適なIgG4 Fc領域の配列は、当業者には明白であり、かつ/又は公的に入手可能なデータベースにおいて入手可能であろう(例えば、国立バイオテクノロジー情報センター(National Center for Biotechnology Information)から入手可能であろう)。
【0216】
一例では、定常領域は、安定化IgG4定常領域である。「安定化IgG4定常領域」という用語は、Fabアーム交換、又はFabアーム交換若しくは半抗体の形成を受ける傾向、又は半抗体を形成する傾向を低減するように改変されたIgG4定常領域を意味すると理解されるであろう。「Fabアーム交換」とは、ヒトIgG4のタンパク質修飾の種類を指し、ここで、IgG4重鎖及び結合軽鎖(半分分子)は、別のIgG4分子からの重軽鎖対に交換される。したがって、IgG4分子は、(二重特異性分子をもたらす)2つの異なる抗原を認識する2つの異なるFabアームを獲得し得る。Fabアーム交換は、インビボで天然に生じ、精製された血液細胞又は還元されたグルタチオン等の還元剤によってインビトロで誘導され得る。「半抗体」は、IgG4抗体が解離して、各々が単一の重鎖及び単一の軽鎖を含む2つの分子を形成するときに形成される。
【0217】
一例では、安定化IgG4定常領域は、Kabatのシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,1987and/or1991)に従うヒンジ領域の241位にプロリンを含む。この位置は、EU番号付けシステム(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest Washington DC United States Department of Health and Human Services,2001及びEdelman et al.,Proc.Natl.Acad.USA,63,78-85,1969)に従うヒンジ領域の228位に対応する。ヒトIgG4において、この残基は、一般に、セリンである。プロリンに対するセリンの置換の後、IgG4ヒンジ領域は、配列CPPCを含む。この点において、当業者は、「ヒンジ領域」が、抗体の2つのFabアームに可動性を付与するFc及びFab領域を連結する抗体重鎖定常領域のプロリンが豊富な部分であることを認識するであろう。ヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド結合に関与するシステイン残基を含む。これは、一般に、Kabatの番号付けシステムに従って、ヒトIgG1のGlu226からPro243まで伸張させることとして定義される。他のIgGアイソタイプのヒンジ領域は、重鎖間ジスルフィド(S-S)結合を形成する第1及び最後のシステイン残基を同じ位置に配置することによって、IgG1配列と整列され得る(例えば、WO2010/080538を参照されたい)。
【0218】
安定化IgG4抗体の更なる例は、ヒトIgG4の重鎖定常領域における409位のアルギニン(EU番号付けシステムによる)が、リジン、スレオニン、メチオニン、又はロイシン(例えば、WO2006/033386に記載される)で置換される抗体である。定常領域のFc領域は、追加的又は代替的に、アラニン、バリン、グリシン、イソロイシン、及びロイシンからなる群から選択される残基を、405に対応する位置(EU番号付けシステムによる)に含むことができる。任意選択で、ヒンジ領域は、位置241にプロリン(すなわち、CPPC配列)を含む(上記のように)。
【0219】
別の例では、Fc領域は、低減されたエフェクター機能を有するように改変された領域、すなわち、「非免疫刺激性Fc領域」である。例えば、Fc領域は、268、309、330、及び331からなる群から選択される1つ以上の位置での置換を含むIgG1 Fc領域である。別の例では、Fc領域は、以下の変更、E233P、L234V、L235A、及びG236の欠失のうちの1つ以上、並びに/又は以下の変更、A327G、A330S、及びP331Sのうちの1つ以上を含むIgG1 Fc領域である(Armour et al.,Eur J Immunol.29:2613-2624,1999、Shields et al.,J BiolChem.276(9):6591-604,2001)。非免疫刺激性Fc領域の追加の例は、例えば、Dall’Acqua et al.,J Immunol.177:1129-1138 2006、及び/又はHezareh J Virol;75:12161-12168,2001)に記載されている。
【0220】
別の例では、Fc領域は、例えば、IgG4抗体由来の少なくとも1つのCH2ドメイン及びIgG1抗体由来の少なくとも1つのCH3ドメインを含むキメラFc領域であり、Fc領域は、240、262、264、266、297、299、307、309、323、399、409及び427(EU番号付け)からなる群から選択される1つ以上のアミノ酸位置での置換を含む(例えば、WO2010/085682に記載される)。例示的な置換としては、240F、262L、264T、266F、297Q、299A、299K、307P、309K、309M、309P、323F、399S、及び427Fが挙げられる。
【0221】
追加の改変
本開示はまた、本開示の抗体又はタンパク質への追加の改変を企図する。
【0222】
例えば、抗体は、タンパク質の半減期を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含む。例えば、抗体は、胎児性Fc受容体FcRn)に対するFc領域の親和性を増加させる1つ以上のアミノ酸置換を含むFc領域を含む。例えば、Fc領域は、エンドソームにおけるFc/FcRn結合を容易にするために、より低いpH、例えば、約pH6.0でのFcRnに対する親和性を増加させた。一例では、Fc領域は、約pH7.4でのその親和性と比較して、約pH6でのFcRnに対する親和性を増加させており、これは細胞リサイクル後の血液中へのFcの再放出を促進する。これらのアミノ酸置換は、血液からのクリアランスを減少させることによって、タンパク質の半減期を延長するのに有用である。
【0223】
例示的なアミノ酸置換としては、EU番号付けシステムによるT250Q及び/又はM428L若しくはT252A、T254S及びT266F又はM252Y、S254T及びT256E又はH433K及びN434Fが挙げられる。追加の又は代替のアミノ酸置換は、例えば、US2007/0135620又はUS7083784に記載されている。
【0224】
タンパク質は、融合タンパク質であり得る。したがって、一例では、タンパク質は、アルブミン、その機能的断片又は変異型を更に含む。一例では、アルブミン、その機能的断片又は変異型は、ヒト血清アルブミンなどの血清アルブミンである。一例では、アルブミン、その機能的断片又は変異型は、1つ以上のアミノ酸置換、欠失、又は挿入、例えば、5個以下、4個以下、3個以下、2個以下、又は1個以下の置換を含む。本開示での使用に好適なアミノ酸置換は、当業者には明らかであり、天然に存在する置換及び例えば、WO2011/051489、WO2014/072481、WO2011/103076、WO2012/112188、WO2013/075066、WO2015/063611及びWO2014/179657に記載されるものなどの操作された置換を含む。
【0225】
一例では、本開示のタンパク質は、可溶性補体受容体又はその機能的断片若しくは変異型を更に含む。一例では、タンパク質は更に補体阻害剤を含む。
【0226】
タンパク質産生
一例では、任意の例に従う本明細書に記載のタンパク質は、タンパク質を産生するのに十分な条件下で、例えば、本明細書に記載されるように、かつ/又は当該技術分野において既知であるように、ハイブリドーマを培養することによって産生される。
【0227】
組換え発現
別の例では、任意の例による本明細書に記載されるタンパク質は、組換えである。
【0228】
組換えタンパク質の場合、それをコードする核酸を発現構築物又はベクターにクローニングすることができ、その後、大腸菌細胞、酵母細胞、昆虫細胞、又は哺乳動物細胞、例えばサルCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、ヒト胚性腎臓(HEK)細胞、又はそれ以外の場合にはタンパク質を産生しない骨髄腫細胞などの宿主細胞にトランスフェクトする。タンパク質を発現するために使用される例示的な細胞は、CHO細胞、骨髄腫細胞又はHEK細胞である。これらの目的を達成するための分子クローニング技術が当該技術分野において既知であり、例えば、Ausubel et al.,(editors),Current Protocols in Molecular Biology,Greene Pub.Associates and Wiley-Interscience(1988、現在までに更新されたものを含む)又はSambrook et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)に記載されている。多種多様なクローニング及びインビトロ増幅方法は、組換え核酸の構築に好適である。組換え抗体の産生方法もまた当該技術分野で既知であり、例えば、US4816567又はUS5530101を参照されたい。
【0229】
単離後、核酸は、更なるクローニング(DNAの増幅)のために、又は無細胞系若しくは細胞内での発現のために、発現構築物若しくは発現ベクター中のプロモーターに作動可能に連結された挿入される。
【0230】
本明細書で使用する場合、「プロモーター」という用語は、その最も広い文脈でとられるべきであり、核酸の発現を、例えば、発達及び/又は外部刺激に応答して、又は組織特異的な様式で変化させる追加の調節エレメント(例えば、上流活性化配列、転写因子結合部位、エンハンサー及びサイレンサー)を伴うか伴わない、正確な転写開始に必要なTATAボックス又は開始剤エレメントを含む、ゲノム遺伝子の転写調節配列を含む。本文脈において、「プロモーター」という用語は、それが作動可能に連結した核酸の発現を付与、活性化又は増強する組換え、合成若しくは融合核酸、又は誘導体を説明するためにも使用される。例示的なプロモーターは、1つ以上の特定の調節エレメントの追加のコピーを含有して、発現を更に増強し、及び/又は前記核酸の空間的発現及び/又は時間的発現を変化させることができる。
【0231】
本明細書で使用される場合、用語「に作動可能に連結される」は、核酸の発現がプロモーターによって制御されるように、核酸に対してプロモーターを配置することを意味する。
【0232】
細胞内で発現するための多くのベクターが利用可能である。ベクター成分には、一般に、シグナル配列、タンパク質をコードする配列(例えば、本明細書に提供される情報に由来する)、エンハンサーエレメント、プロモーター、及び転写終結配列のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。当業者は、タンパク質を発現させるための好適な配列を認識するであろう。例示的なシグナル配列としては、原核分泌シグナル(例えば、pelB、アルカリホスファターゼ、ペニシリナーゼ、Ipp、又は熱安定性エンテロトキシンII)、酵母分泌シグナル(例えば、インバーターゼリーダー、α因子リーダー、又は酸ホスファターゼリーダー)、又は哺乳動物分泌シグナル(例えば、単純ヘルペスgDシグナル)が挙げられる。
【0233】
哺乳類細胞において活性な例示的なプロモーターとしては、サイトメガロウイルス最初期プロモーター(CMV-IE)、ヒト伸長因子1-αプロモーター(EF1)、小核RNAプロモーター(U1a及びU1b)、α-ミオシン重鎖プロモーター、シミアンウイルス40プロモーター(SV40)、ラウス肉腫ウイルスプロモーター(RSV)、アデノウイルス主要後期プロモーター、β-アクチンプロモーター、CMVエンハンサー/β-アクチンプロモーター又は免疫グロブリンプロモーター若しくはその活性断片を含むハイブリッド調節エレメントが挙げられる。有用な哺乳類宿主細胞株の例は、SV40(COS-7、ATCC CRL1651)によって形質転換されたサル腎臓CV1株、ヒト胚性腎臓株(浮遊培養中での成長のためにサブクローニングされた293又は293細胞、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL10)、又はチャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO)である。
【0234】
例えば、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)、サッカロマイセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)、及びシゾサッカロミセス・ポンベ(S.pombe)を含む群から選択される酵母細胞などの酵母細胞における発現に好適な典型的なプロモーターとしては、ADH1プロモーター、GAL1プロモーター、GAL4プロモーター、CUP1プロモーター、PHO5プロモーター、nmtプロモーター、RPR1プロモーター、又はTEF1プロモーターが挙げられるが、これらに限定されない。
【0235】
発現のために単離された核酸又はそれを含む発現構築物を細胞に導入するための手段は、当業者に既知である。所与の細胞に使用される技術は、既知の成功した技術に依存する。組換えDNAを細胞内に導入するための手段としては、とりわけ、マイクロインジェクション、DEAE-デキストランによって媒介されるトランスフェクション、リポソームによって媒介されるトランスフェクション(例えば、リポフェクタミン(Gibco、MD,USA)及び/又はセルフェクチン(Gibco、MD,USA)を使用することによって)、PEG媒介性DNA取り込み、エレクトロポレーション、並びにDNAコーティングされたタングステン又は金粒子(Agracetus Inc.、WI,USA)を使用することによってなどの微粒子衝突が挙げられる。
【0236】
タンパク質を産生するために使用される宿主細胞は、使用される細胞型に応じて、様々な培地中で培養され得る。Ham’s Fl0(Sigma)、Minimal Essential Medium((MEM)、(Sigma)、RPMl-1640(Sigma)、及びDulbecco’s Modified Eagle’s Medium((DMEM)、Sigma)などの市販の培地は、哺乳類細胞の培養に好適である。本明細書で考察される他の細胞型を培養するための培地は、当該技術分野で既知である。
【0237】
タンパク質の単離
タンパク質を単離するための方法は、当該技術分野において既知であり、かつ/又は本明細書に記載される。
【0238】
タンパク質が培地中に分泌される場合、かかる発現系からの上清は、まず、市販のタンパク質濃度フィルター、例えば、アミコン又はミリポアペリコン限外濾過ユニットを使用して濃縮され得る。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が、タンパク質分解を阻害するための前述のステップのうちのいずれかに含まれ得、抗生物質が、外来性混入物の増殖を防止するために含まれ得る。あるいは又は加えて、上清は、例えば、連続遠心分離を使用して、タンパク質を発現する細胞から濾過及び/又は分離され得る。
【0239】
細胞から調製されたタンパク質は、例えば、イオン交換、ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー、疎水性相互作用クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析、親和性クロマトグラフィー(例えば、プロテインA親和性クロマトグラフィー又はプロテインGクロマトグラフィー)、又は前述のもののいずれかの組み合わせを使用して、精製され得る。これらの方法は、当該技術分野で既知であり、例えば、WO1999/57134又はEd Harlow and David Lane(editors)Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,(1988)に記載されている。
【0240】
当業者はまた、タンパク質が、精製又は検出を容易にするためのタグ、例えば、ポリヒスチジンタグ、例えば、ヘキサヒスチジンタグ、インフルエンザウイルスヘマグルチニン(HA)タグ、サルウイルス5(V5)タグ、フラッグタグ、又はグルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)タグを含むように修飾することができることを認識するであろう。得られたタンパク質を、親和性精製などの当該技術分野で既知の方法を使用して精製する。例えば、ヘキサ-hisタグを含むタンパク質は、タンパク質を含む試料を、固体又は半固体支持体上に固定化されたヘキサ-hisタグに特異的に結合するニッケル-ニトリロ三酢酸(Ni-NTA)と接触させ、試料を洗浄して非結合タンパク質を除去し、その後、結合タンパク質を溶出することによって精製される。代替的に、又は加えて、タグに結合するリガンド又は抗体が、親和性精製方法で使用される。
【0241】
CD131に結合する核酸化合物
一例では、CD131に結合する化合物は、核酸アプタマー(適応性オリゴマー)である。アプタマーは、特定の標的分子、例えば、タンパク質又は小分子、例えば、CD131に結合する能力を提供する二次及び/又は三次構造を形成することができる一本鎖オリゴヌクレオチド又はオリゴヌクレオチド類似体である。したがって、アプタマーは、抗体に対するオリゴヌクレオチド類似体である。一般に、アプタマーは、約15~約100ヌクレオチド、例えば、約15~約40ヌクレオチド、例えば、約20~約40ヌクレオチドを含み、なぜなら、これらの範囲内にある長さのオリゴヌクレオチドは、従来の技術によって調製することができるからである。
【0242】
アプタマーは、アプタマーのライブラリから単離され得るか、又はアプタマーのライブラリから同定され得る。アプタマーライブラリは、例えば、ランダムオリゴヌクレオチドをベクター(又はRNAアプタマーの場合には発現ベクター)にクローニングすることによって産生され、ランダム配列は、PCRプライマーの結合部位を提供する既知の配列に隣接する。所望の生物活性を提供する(例えば、CD131に特異的に結合する)アプタマーが選択される。活性が増加したアプタマーは、例えば、SELEX(指数関数的増加によるリガンドの系統的展開)を使用して選択される。アプタマーライブラリの作製及び/又はスクリーニングのための好適な方法は、例えば、Elloington and Szostak,Nature346:818-22,1990、US5270163、及び/又はUS5475096に記載されている。
【0243】
化合物のアッセイ活性
CD131への結合
タンパク質(例えば、CD131)への候補化合物の結合を評価するための方法は、例えば、Scopesに(Protein purification:principles and practice,Third Edition,Springer Verlag,1994)に記載されているように、当該技術分野で既知である。そのような方法は、一般に、タンパク質を標識し、固定化された化合物と接触させることを伴う。非特異的結合タンパク質を除去するために洗浄した後、標識の量、及び結果として、結合タンパク質が検出される。当然ながら、タンパク質は固定化され、化合物は標識されることができる。パンニングタイプアッセイもまた、使用され得る。あるいは又は加えて、表面プラズモン共鳴アッセイが、使用され得る。結合のレベルは、バイオセンサーを使用して好都合に判定することもできる。
【0244】
任意選択で、CD131の化合物又はそのエピトープの解離定数(Kd)を決定する。CD131に結合する化合物の「Kd」又は「Kd値」は、一例では、放射性標識又は蛍光標識CD131結合アッセイによって測定される。このアッセイは、非標識CD131の滴定シリーズの存在下で、化合物を最小濃度の標識CD131で平衡化させる。非結合CD131を除去するために洗浄した後、標識の量が判定され、これは、タンパク質のKdを示す。
【0245】
別の例によれば、Kd又はKd値は、例えば、固定化CD131又はその領域を有するBIAcore表面プラズモン共鳴(BIAcore,Inc.、Piscataway,NJ)を使用して、表面プラズモン共鳴アッセイを使用することによって測定される。
【0246】
エピトープマッピング
別の例では、本明細書に記載されるタンパク質によって結合されるエピトープがマッピングされる。エピトープマッピング方法は、当業者には明らかである。例えば、目的のエピトープを含むCD131配列又はその領域にまたがる一連の重複ペプチド、例えば、10~15個のアミノ酸を含むペプチドが作製される。次いで、タンパク質は、それぞれのペプチドに接触し、タンパク質が結合するペプチドが、判定される。これは、タンパク質が結合するエピトープを含むペプチドの判定を可能にする。タンパク質が、複数の非連続ペプチドに結合している場合、タンパク質は、立体構造エピトープに結合し得る。
【0247】
代替的に、又は加えて、CD131内のアミノ酸残基は、例えば、アラニンスキャン突然変異誘発によって突然変異され、タンパク質結合を低減又は防止する突然変異を判定する。タンパク質の結合を低減又は防止するいずれかの変異が、タンパク質が結合したエピトープ中にある可能性がある。
【0248】
更なる方法は本明細書に例示され、本開示の固定化タンパク質にCD131又はその領域を結合させ、得られる複合体をプロテアーゼで消化することを含む。次いで、固定化タンパク質に依然として結合したペプチドは、単離され、例えば、質量分析を使用して、分析されて、ペプチドの配列が、判定される。
【0249】
更なる方法は、CD131又はその領域の水素を重水素に変換し、得られたタンパク質を本開示の固定化タンパク質に結合することを含む。次いで、重水素を水素に変換し、CD131又はその領域を単離し、酵素で消化し、例えば、質量分析を用いて、本明細書に記載のタンパク質の結合によって水素への変換から保護されていたであろう重水素を含むそれらの領域を特定するために分析する。
【0250】
代替的に、タンパク質が結合するエピトープは、X線結晶構造解析によって判定することができる。例えば、タンパク質とCD131との間に複合体が形成され、次いで結晶化される。次いで、得られた結晶をX線回折分析に供して、複合体中のアミノ酸の原子座標を決定する。エピトープは、X線回折から決定された原子座標に従って、タンパク質と接触するCD131中のアミノ酸を含む。
【0251】
競合的結合の判定
抗体9A2-VR24.29の結合を競合的に阻害するタンパク質を決定するためのアッセイは、当業者には明白であろう。例えば、9A2-VR24.29は、検出可能な標識、例えば、蛍光標識又は放射性標識にコンジュゲートされる。次いで、標識された抗体及び試験タンパク質を混合し、CD131又はその領域(例えば、配列番号1又は5を含むポリペプチド)又はそれを発現する細胞と接触させる。次いで、標識された9A2-VR24.29のレベルを判定し、標識された抗体がタンパク質の非存在下でCD131、領域又は細胞と接触させられたときに判定されたレベルと比較する。標識された9A2-VR24.29のレベルが、タンパク質の不在下と比較して試験タンパク質の存在下で低下する場合、タンパク質は、9A2-VR24.29のCD131への結合を競合的に阻害すると考えられる。
【0252】
任意選択で、試験タンパク質は、9A2-VR24.29に異なる標識にコンジュゲートされる。この代替標識は、CD131又はその領域若しくは細胞への試験タンパク質の結合のレベルの検出を可能にする。
【0253】
別の例では、タンパク質は、CD131又はその領域(例えば、配列番号1又は5を含むポリペプチド)、又はCD131、領域若しくは細胞を9A2-VR24.29と接触させる前に、それを発現する細胞に結合することが許される。タンパク質の非存在下と比較して、タンパク質の存在下での結合した9A2-VR24.29の量の減少は、タンパク質が、CD131への9A2-VR24.29の結合を競合的に阻害することを示す。相互アッセイは、標識されたタンパク質を使用して行うこともでき、最初に9A2-VR24.29がCD131に結合することを可能にする。この場合、9A2-VR24.29の不在下と比較して、9A2-VR24.29の存在下でCD131に結合した標識タンパク質の減少した量は、タンパク質が、9A2-VR24.29のCD131への結合を競合的に阻害することを示す。
【0254】
前述のアッセイのうちのいずれも、例えば、本明細書に記載されるように、CD131及び/又は配列番号1又は5の変異型及び/又は9A2-VR24.29が結合するCD131のリガンド結合領域を用いて実行することができる。
【0255】
中和の判定
一例では、CD131に結合する化合物は、IL-3、IL-5、及び/又はGM-CSFのCD131を含む受容体(例えば、それぞれ、IL-3R、IL-5R、及び/又はGM-CSF-R)への結合を低減又は防止する。これらのアッセイは、標識されたIL-3/IL-5/GM-CSF及び/又は標識された化合物を使用して、競合的結合アッセイとして行うことができる。例えば、関連する受容体を発現する細胞を、CD131結合化合物の存在下又は非存在下でIL-3/IL-5/GM-CSFと接触させ、結合標識の量を検出する。化合物の非存在下と比較して、CD131結合化合物の存在下での結合標識の量の減少は、化合物が、CD131を含む受容体へのIL-3/IL-5/GM-CSFの結合を低減又は防止することを示す。化合物の複数の濃度を試験することによって、IC50を決定することができる。すなわち、CD131又はEC50を含む受容体に結合するIL-3/IL-5/GM-CSFの量を減少させる化合物の濃度、すなわち、化合物によって達成されるIL-3/IL-5/GM-CSFのCD131への結合の最大阻害の50%を達成するタンパク質の濃度を判定することができる。
【0256】
更なる例では、CD131結合化合物は、白血病細胞株TF-1のIL-3/IL-5/GM-CSF媒介性増殖を低減又は防止する。例えば、TF-1細胞は、増殖を停止するのに十分な時間(例えば、24~48時間)、IL-3/IL-5/GM-CSFなしで培養される。次いで、細胞を、IL-3/IL-5/GM-CSF及び様々な濃度のCD131結合化合物の存在下で培養する。対照細胞は、化合物(陽性対照)又はIL-3/IL-5/GM-CSF(陰性対照)と接触しない。細胞増殖は、次いで、標準的な技法、例えば、3H-チミジンの組み込みを使用して評価される。IL-3の存在下で細胞増殖を陽性対照未満のレベルに減少又は防止するCD131結合化合物は、IL-3シグナル伝達を中和すると考えられる。複数の濃度のCD131結合化合物を試験することによって、IC50を決定する。
【0257】
別の例では、CD131結合化合物は、STAT-5活性化を阻害又は防止する。例えば、IL-3及び/又はGM-CSFの存在下でインターフェロン調節因子1(irf1)応答エレメントの制御下にあるβ-ラクタマーゼレポーター遺伝子を含む細胞(例えば、TF-1細胞)。好適な細胞は、Life Technologies Corporationから入手可能である。細胞をまた、好適な基質(例えば、CCF2又はCCF4などの負に帯電した蛍光β-ラクタマーゼ基質)と接触させ、シグナルの変化(例えば、蛍光)を判定する。陽性対照(すなわち、化合物の非存在下でIL-3及び/又はGM-CSFと接触した細胞)におけるシグナルの変化の低減は、化合物が、IL-3及び/又はGM-CSF誘導STAT-5シグナル伝達を低減又は防止することを示す。
【0258】
更なる例では、本開示のCD131結合化合物は、免疫細胞である。例えば、CD131結合化合物は、好中球細胞サイズのGM-CSF誘導増加を低減又は阻害することによって判定される、GM-CSFによる単離されたヒト好中球の活性化を低減又は阻害する。例えば、好中球(例えば、約1×105細胞)を、CD-131結合タンパク質及びGM-CSFの存在下で好適な時間(例えば、約24時間)培養する。次いで、細胞を固定し(例えば、ホルムアルデヒドで)、フローサイトメトリーを使用して前方散乱について分析する。
【0259】
一例では、CD131結合化合物は、ヒト好塩基球によるIL-3誘導IL-8分泌を低減又は阻害する。例えば、好塩基球(例えば、約1×105細胞)を、CD131結合化合物及びIL-3の存在下で、好適な時間(例えば、24時間)培養する。IL-8分泌は、次いで、例えば、例えば、R&D Systemsから入手可能であるように、ELISAを使用して評価される。
【0260】
更なる例では、CD131結合化合物は、IL-3媒介性生存又はpDCを低減又は予防する。例えば、pDCを、CD131結合化合物及びIL-3の存在下で、好適な時間(例えば、24時間)培養する。次いで、細胞生存を、例えば、LonzaからのViaLight Plus Kitなどの標準的な方法を使用して評価する。
【0261】
更なる例では、CD131結合化合物は、フローサイトメトリーによって評価された前方散乱の変化を評価することによって判定される、IL-5によるヒト末梢血好酸球の活性化を低減又は防止する。例えば、好酸球(例えば、約1×105細胞)を、CD131結合化合物及びIL-5の存在下で、好適な時間(例えば、約24時間)培養する。次いで、細胞を固定し(例えば、ホルムアルデヒドで)、フローサイトメトリーを使用して前方散乱における変化について評価する。
【0262】
更なる例では、本開示のCD131結合化合物は、IL-5及び/又はGM-CSF及び/又はIL-3の存在下でのヒト末梢血好酸球の生存を低下させるか又は防止する。例えば、好酸球(例えば、約1×104細胞)を、CD131結合化合物及びIL-5及び/又はGM-CSF及び/又はIL-3の存在下で、好適な時間(例えば、約5日間)、並びに標準方法(例えば、LonzaからのViaLight Plus Kit)を使用して評価された細胞数の存在下で培養する。
【0263】
なおも更なる例では、本開示のCD131結合化合物は、ヒト肥満細胞からのIL-3誘導TNFα放出を低減又は防止する。例えば、ヒト培養肥満細胞(例えば、10週齢の末梢血由来細胞)は、CD131結合化合物及びIL-3の存在下で培養される。次いで、TNFα分泌のレベルを、例えば、ELISAによって評価する。
【0264】
更なる例では、本開示のCD131結合化合物は、ヒト肥満細胞からのIL-3誘導IL-13放出を低減又は防止する。例えば、ヒト培養肥満細胞(例えば、10週齢の末梢血由来細胞)は、CD131結合化合物及びIL-3の存在下で培養される。次いで、IL-13分泌のレベルを、例えば、ELISAによって評価する。
【0265】
更なる例では、本開示のCD131結合化合物は、IL-3及び/又はIL-5及び/又はGM-CSFによるヒト肥満細胞からのIgE媒介性IL-8放出の増強を低減又は防止する。例えば、ヒト培養肥満細胞(例えば、10週齢の末梢血由来細胞)は、CD131結合化合物及びIL-3/IL-5/GM-CSFの存在下で培養される(例えば、約48時間)。次いで、細胞を、IgE(例えば、ヒト骨髄腫IgE)とともに、好適な時間(例えば、約24時間)培養し、IL-8分泌を、例えばELISAによって評価する。
【0266】
更なる例では、CD131結合化合物は、SCF、GM-CSF、IL-3、及びIL-5の存在下で培養されたCD34+ヒト骨髄細胞(又は臍帯血細胞)によるCFU-GMの形成を低減又は防止する。例えば、CD34+細胞(例えば、約1×103細胞)を、CD131結合化合物の存在下で(例えば、ウシのウシ血清アルブミン、SCF、GM-CSF、IL-3、及びIL-5を補充したメチルセルロース(例えば、1%メチルセルロース)上で)培養する。細胞を好適な時間(例えば、約16日間)培養し、その後に形成されたコロニーの数を列挙する。
【0267】
更なる例では、CD131結合化合物は、炎症性気道疾患又は鼻ポリープ症に罹患している対象からの痰又は鼻ポリープ組織からの免疫細胞(例えば、好酸球)の生存を低下させるか、又は死を誘導する。例えば、免疫細胞は、IL-3及び/又はIL-5及び/又はGM-CSF及びタンパク質又は抗体の存在下で培養される。次いで、標準的な方法を用いて、例えば、アネキシン-V発現を検出することによって、例えば、蛍光活性化細胞選別を用いて、細胞死を評価する。
【0268】
別の例では、CD131結合化合物は、好塩基球からのIL-3媒介性ヒスタミン放出を低減又は防止する。例えば、好塩基球を含む低密度白血球を、IgE、IL-3、及び様々な濃度の抗体又は抗原結合断片とインキュベートする。対照細胞は、免疫グロブリン(陽性対照)又はIL-3(陰性対照)を含まない。次いで、放出されたヒスタミンのレベルを、標準的な技法、例えば、RIAを使用して評価する。IL-3シグナル伝達を中和するために、陽性対照よりも低いレベルにヒスタミン放出のレベルを低下させるCD131結合化合物が考えられる。一例では、減少のレベルは、タンパク質濃度と相関する。IL-3媒介性ヒスタミン放出を評価するための例示的な方法は、例えば、Lopez et al.,J.Cell.Physiol.,145:69,1990に記載されている。
【0269】
IL-3シグナル伝達中和を評価するための別のアッセイは、CD131結合化合物が内皮細胞に対するIL-3媒介作用を低減又は防止するか否かを判定することを含む。例えば、ヒト臍静脈内皮細胞(HUVEC)は、IL-3(任意選択で、IFN-γを用いて)及び様々な濃度のCD131結合化合物の存在下で培養される。次いで、分泌されたIL-6の量を、例えば、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して評価する。対照培養物は、CD131結合化合物(陽性対照)又はIL-3(陰性対照)を含まない。IL-3の存在下でIL-6産生を陽性対照未満のレベルに減少又は防止するCD131結合化合物は、IL-3シグナル伝達を中和すると考えられる。
【0270】
本開示では、GM-CSF、IL-5又はIL-3シグナル伝達の中和を評価するための他の方法が企図される。
【0271】
エフェクター機能の判定
本明細書で考察されるように、いくつかのCD131結合化合物は、エフェクター機能が低減されているか、又はエフェクター機能(又はエフェクター機能が強化されている)を有する。ADCC活性を評価する方法は当該技術分野において既知である。
【0272】
一例では、ADCC活性のレベルは、51Cr放出アッセイ、ユーロピウム放出アッセイ、又は35S放出アッセイを使用して評価される。これらのアッセイの各々において、CD131を発現する細胞を、列挙された化合物のうちの1つ以上とともに、かつ化合物が細胞に取り込まれるのに十分な条件下で培養する。35S放出アッセイの場合、CD131を発現する細胞を、35S標識メチオニン及び/又はシステインで、標識アミノ酸が新たに合成されたタンパク質に組み込まれるのに十分な時間培養することができる。次いで、細胞を、CD131結合化合物の存在下又は非存在下、並びに免疫エフェクター細胞、例えば、末梢血単核細胞(PBMC)及び/又はNK細胞の存在下で培養する。細胞培養培地中の51Cr、ユーロピウム放出アッセイ、及び/又は35S放出の量が、次いで検出され、CD131結合化合物の非存在下と比較して、CD131結合化合物の存在におけるほとんど又は全くの変化は、タンパク質が、エフェクター機能又は増強されたエフェクター機能を示すCD131結合化合物の非存在下と比較して(又はIgG1 Fc領域を含むCD131結合化合物の存在下と比較して増加して)、低減されたエフェクター機能及び増加した量を有することを示す。タンパク質によって誘導されたADCCのレベルを評価するためのアッセイを開示する例示的な刊行物には、Hellstrom,et al.Proc.Natl Acad.Sci.USA83:7059-7063,1986、及びBruggemann,et al.,J.Exp.Med.166:1351-1361,1987が挙げられる。
【0273】
タンパク質によって誘導されるADCCのレベルを評価するための他のアッセイとしては、フローサイトメトリーのためのACTI(商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(CellTechnology,Inc.CA,USA)又はCytoTox96(登録商標)非放射性細胞傷害性アッセイ(Promega、WI,USA)が挙げられる。
【0274】
C1q結合アッセイを実施して、CD131結合化合物がC1qに結合することができ、CDCを誘導し得ることを確認してもよい。補体活性化を評価するために、CDCアッセイが実行され得る(例えば、Gazzano-Santoro et al,J.Immunol.Methods202:163,1996を参照されたい)。
【0275】
半減期の決定
本開示によって包含されるいくつかのタンパク質は、改善された半減期を有し、例えば、非改変タンパク質と比較して、その半減期を延長するように修飾される。改善された半減期を有するタンパク質を決定するための方法は、当業者には明白であろう。
【0276】
本開示のタンパク質の半減期は、例えば、インビボ薬物動態研究によって、Kim et al,Eur J of Immunol24:542,1994に記載される方法に従って測定することができる。この方法によれば、放射性標識タンパク質をマウスに静脈内注射し、その血漿濃度を、時間の関数として、例えば注射後3分~72時間で定期的に測定する。代替的に、又は追加的に、他の種、例えば、カニクイザル及びヒトを使用することができ、並びに/又は放射標識されていないタンパク質を注入し、その後、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)を使用して検出することができる。このようにして得られるクリアランス曲線は、二相性、すなわち、α相及びβ相であるべきである。タンパク質のインビボ半減期の決定のために、β相におけるクリアランス率を計算し、野生型又は非改変タンパク質のクリアランス率と比較する。
【0277】
タンパク質の胎児性Fc受容体(FcRn)への結合の相対的親和性はまた、その相対的なインビボ半減期を示すことができる(例えば、Kim et al,Eur J Immunol24:2429,1994を参照されたい)。
【0278】
治療有効性
CD131に結合する化合物の治療有効性は、化合物を投与されていない対象と比較して、化合物を投与された対象における疾患又は症状の重症度を比較することによって評価することができる。代替的に、又は追加的に、候補化合物の治療有効性は、動物モデルで評価することができる。
【0279】
気管内リポ多糖(LPS)誘導肺炎症は、周知であり詳細に記載された、ARDSについての動物モデルである(例えば、Matute-Bello et al.,2011,Am.J.Respir.Cell Mol.Biol.44,725-738、Orfanos et al.,2004,Intensive Care Med.30,1702-1714、Tsushima et al.,2009,Intern.Med.48,621-630を参照されたい)。
【0280】
ARDSのLPS誘導動物モデルにおいて、候補化合物は、好適な対照(すなわち、プラセボ)に対して、動物の肺における炎症の程度を測定することによって、効力について評価され得る。肺における炎症は、気管支肺胞洗浄(BAL)からの細胞計数、並びにBALF及び肺実質ホモジネート中の総タンパク質又は炎症促進性サイトカインのレベルを測定することによって、評価され得る。また、肺におけるLPS誘導透過性(すなわち、急性肺損傷の程度)が測定され得る。
【0281】
C57BL/6マウスにおけるインフルエンザAウイルス(IAV)肺感染は、hACE2トランスジェニックマウスにおけるSARS-COV-2感染の免疫病理学的特徴を、大きく再現することができる(例えば、Winkler ES et al.,2020,Nat Immunol21(11):1327-1335を参照されたい)。
【0282】
一例では、治療効力は、IAV誘導ウイルス性肺炎動物モデルにおいて評価され得る。例えば、過剰炎症及びウイルス性肺炎を引き起こすIAVモデル。IAVウイルス性肺炎モデルにおいて、候補化合物は、好適な対照(すなわち、プラセボ)に対して、動物の肺における炎症の程度を測定することによって、効力について評価され得る。肺における炎症は、BALからの細胞計数、並びにBALF及び肺実質ホモジネート中の総タンパク質又は炎症促進性サイトカインのレベルを測定することによって、評価され得る。
【0283】
いくつかの例では、化合物の治療効力を評価することは、対象におけるバイオマーカーの発現のレベルを検出及び/又は定量することを含む。ARDSの治療の効力を評価するのに好適なバイオマーカーは、G-CSF、プラスミノーゲン活性化因子阻害因子-1(PAI-1)、D-ダイマー、好中球エラスターゼ、AGE可溶性受容体(sRAGE)、インターフェロンガンマ(IFN-γ)、インターロイキン1β(IL-1β)、IL-2、IL-4、IL-6、IL-8、IL-10、IL-12p70、IL-13、及び腫瘍壊死因子α(TNF-α)を含む。
【0284】
バイオマーカーを検出及び/又は定量することは、当該技術分野で既知のいずれかの方法によって、実行され得る。例えば、一例では、バイオマーカーのレベルは、質量分析を使用して評価される。質量分析は、例えば、超高性能液体クロマトグラフィー(UPLC)、高性能液体クロマトグラフィー(HPLC)、ガスクロマトグラフィー(GC)、ガスクロマトグラフィー/質量分析(GC/MS)、及びUPLCと合わせて、実行され得る。バイオマーカーのレベルを評価する他の方法は、生物学的方法、例えば、ELISAアッセイ、ウエスタンブロット、及び多重免疫アッセイなどを含むが、これらに限定されない。他の技法は、定量アレイ、PCR、ノーザンブロット分析の使用を含み得る。成分又は因子のレベルを判定するために、成分全体、例えば、全長タンパク質又はRNA転写物全体が、存在する又は完全に配列決定される必要はない。換言すれば、例えば、分析されているタンパク質の断片のレベルを判定することは、分析されているバイオマーカーのレベルが増加又は減少していると結論又は評価するのに十分であり得る。同様に、例えば、アレイ又はブロットが、成分レベルを判定するために使用される場合、検出可能なシグナルの存在/非存在/強度は、バイオマーカーのレベルを評価するのに十分であり得る。
【0285】
バイオマーカーのレベルを評価するために、試料は、対象から採取され得る。試料は、バイオマーカープロファイルの成分のレベルをアッセイする前に、処理されてもよく又は処理されなくてもよい。例えば、全血は、個体から採取され得、血液試料は、血漿又は血清を血液から単離するために、処理され得る、例えば、遠心分離され得る。試料は、処理又は分析前に、貯蔵されてもよく又は貯蔵されなくてもよく、例えば、試料を凍結させてもよく又は凍結させなくてもよい。
【0286】
本発明の方法において試験され得る生物学的試料は、全血、血清、血漿、気管吸引液、BALF、尿、唾液、又は他の体液(便、涙液、滑液、痰)、呼気、例えば、凝縮された呼気、又はそれらからの抽出物若しくは精製物、又はそれらの希釈物を含む。生物学的試料はまた、生存する対象からの又は死後に採取された組織ホモジネート、組織切片、及び生検検体を含む。試料は、調製され得、例えば、必要に応じて、希釈又は濃縮され得、通常の様式で貯蔵され得る。
【0287】
組成物
いくつかの例では、本明細書に記載のCD131結合化合物は、経口、非経口、吸入スプレーによる、吸着、吸収、局所、直腸、経鼻、経口、膣、脳室内、従来の無毒の薬学的に許容される担体を含有する投与製剤中に埋め込まれたリザーバを介して、又は任意の他の好都合な投与形態によって投与され得る。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、腹腔内、くも膜下腔内、心室内、胸骨内、ポリップ内、並びに頭蓋内注射又は輸注技術を含む。
【0288】
CD131結合化合物を、対象に投与するための好適な形態(例えば、医薬組成物)に調製するための方法は、当該技術分野において既知であり、例えば、Remington’s Pharmaceutical Sciences(18th ed.,Mack Publishing Co.,Easton,Pa.,1990)及びU.S.Pharmacopeia:National Formulary(Mack Publishing Company,Easton,Pa.,1984)に記載される方法などが挙げられる。
【0289】
本開示の医薬組成物は、非経口投与、例えば、静脈内投与、又は臓器若しくは関節の体腔若しくは管腔への投与に特に有用である。投与用組成物は、一般に、薬学的に許容される担体、例えば水性担体中に溶解したCD131結合化合物の溶液を含む。様々な水性担体、例えば、緩衝生理食塩水などを使用することができる。組成物は、pH調整剤及び緩衝剤、毒性調整剤などの生理学的条件、例えば、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、乳酸ナトリウムなどを近似するために必要に応じて、薬学的に許容される補助物質を含有し得る。これらの製剤中の本開示のCD131結合化合物の濃度は、広範囲に変化し得、主に、選択される特定の投与様式及び患者のニーズに応じて、流体体積、粘度、体重などに基づいて選択される。例示的な担体として、水、食塩水、リンゲル液、デキストロース溶液、及び5%ヒト血清アルブミンが挙げられる。混合油及びエチルオレイン酸などの非水ビヒクルも使用し得る。リポソームはまた、担体として使用してもよい。ビヒクルは、等張性及び化学的安定性を向上させる少量の添加剤、例えば、緩衝剤及び防腐剤を含有し得る。
【0290】
製剤化に際して、本開示のCD131結合化合物は、投薬製剤に適合する方法で、治療/予防的に有効な量で投与される。製剤は、上述の注射用溶液の種類などの様々な剤形で容易に投与されるが、他の薬学的に許容される形態、例えば、経口投与のための錠剤、丸剤、カプセル剤又は他の固体、坐剤、ペッサリー、鼻液又はスプレー、エアロゾル、吸入剤、リポソーム形態なども企図される。医薬「徐放」カプセル又は組成物も使用してもよい。徐放製剤は、一般に、長期間にわたって一定の薬物レベルを与えるように設計されており、本開示のCD131結合化合物を送達するために使用され得る。
【0291】
WO2002/080967には、呼吸器状態の治療のための抗体を含むエアロゾル化組成物を投与するための組成物及び方法が記載されており、これらは、本開示の方法による化合物の投与にも好適である。
【0292】
併用療法
一例では、本開示の化合物は、ARDSを治療又は防止するのに有用な別の療法と組み合わせて、併用若しくは追加の治療ステップ又は治療製剤の追加の成分のいずれかとして、投与される。
【0293】
いくつかの例では、他の療法は、ARDSを治療又は防止するために一般的に使用される療法である。本開示の方法と組み合わせての、ARDSのための企図される療法は、肺炎症の減少、中隔浮腫の減少、肺胞及び/若しくは内皮炎症の減少、ARDSの基礎原因の治療、並びに/又はARDSの別の症状の緩和を含む治療を含む。他の療法は、化合物、細胞、若しくは他の分子の投与を含み得、かつ/又は他の療法は、物理的若しくは機械的形態の療法、例えば、人工換気及び腹臥位を含み得る。
【0294】
いくつかの例では、他の療法は、腹臥位、流体管理、酸素供給、(高頻度振動換気を含むが、これに限定されない、より新しいモードの機械的換気を含む)人工換気、グルココルチコイド、界面活性剤、吸入一酸化窒素、抗酸化剤、プロテアーゼ阻害剤、組換えヒト活性化タンパク質C、β2アゴニスト、リソフィリン、スタチン、吸入ヘパリン、利尿剤、鎮静剤、鎮痛剤、筋弛緩剤、抗ウイルス剤、抗生物質、吸入プロスタサイクリン、吸入合成プロスタサイクリン類似体、ケトコナゾール、アルプロスタジル、ケラチノサイト増殖因子、ベータアゴニスト、TS因子7aに対するヒトmAb、インターフェロン受容体アゴニスト、インスリン、パーフルオロカーボン、ブデソニド、組換えヒトACE、組換えヒトCC10タンパク質、組織プラスミノーゲン活性化因子、ヒト間葉系幹細胞、又は食事療法を含む。併用療法の他の例では、他の療法は、グルココルチコイド、例えば、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、トリアムシノロンアセトニドブデソニド及びベクロメタゾン;ベータアゴニスト、例えば、アルブテロールなど;リソフィリン;ロスバスタチン、吸入ヘパリン;吸入一酸化窒素;組換えヒト活性化タンパク質C;NSAIDS、例えば、イブプロフェンなど;ナプロキセン及びアセトアミノフェン;ベシル酸シサトラクリウム;プロシステイン;アセチルシステイン;吸引プロスタサイクリン;キロセトナゾール;アルプロスタジル;ケラチノサイト増殖因子;TS因子7aに対するヒトmAb;インスリン;パーフルオロカーボン;組換えヒトACE;組換えヒトCC10タンパク質;組織プラスミノーゲン活性化因子;ヒト間葉系幹細胞;又は食事療法、例えば、オメガ3脂肪酸、抗酸化剤、及びγ-リノレン酸と等カロリー食物との組み合わせ、並びに体外膜型酸素供給(ECMO)を含む。
【0295】
NSAIDSは、アスピリン、アセトアミノフェン、ジフルニサール、サルサレート、イブプロフェン、デキシブプロフェン、ナプロキセン、フェノプロフェン、ケトプロフェン、デクスケトプロフェン、フルルビプロフェン、オキサプロジン、ロキソプロフェン、インドメタシン、トルメチン、スリンダク、エトドラック、ケトロラック、ナブメトン、ジクロフェナク、ピロキシカム、メロキシカム、テノキシカム、ドロキシカム、ロルノキシカム、イソキシカム、メフェナム酸、メクロフェナム酸、フルフェナム酸、トルフェナム酸、セレコキシブ、パレコキシブ、エトリコキシブ、ルミラコキシブ、及びフィロコキシブを含むが、これらに限定されない。
【0296】
鎮痛剤は、NSAIDS及びオピオイド(麻薬)を含むが、これらに限定されない。オピオイドは、デキストロプロポキシフェン、コデイン、トラマドール、タペンタドール、アニレリジン、アルファプロジン、ペチジン、ヒドコドン、モルヒネ、オキシコドン、メタドン、ジアモルフィン、ヒドロモルホン、オキシモルホン、レボルファノール、7-ヒドロキシミトラギニン、ブプレノルフィン、フェンタニル、スフェンタニル、ブロマドール、エトルフィン、ジヒドロエトルフィン、及びカルフェンタニルを含むが、これらに限定されない。
【0297】
グルココルチコイドは、ヒドロコルチゾン、コルチゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、デキサメタゾン、ベタメタゾン、トリアムシノロン、ベクロメタゾン、又はフルドロコルチゾンを含むが、これらに限定されない。
【0298】
いくつかの例では、他の療法は、標準治療療法である。ARDSを治療又は防止するために一般的に使用される標準治療療法は、基礎状態(例えば、感染)の治療、機械的又は非侵襲的換気、輸血及び血行動態療法、腹臥位、日和見感染の治療、栄養法、並びに薬理学的療法を含む。例えば、Faculty of Intensive Care Medicine(FICM)及びIntensive Care Society(ICS)は最近、ARDSを有する成人患者のための標準治療療法についてのガイドラインを発表した(Griffiths et al.,2019,BMJ Open Resp Res6:e000420)。機械的換気が必要とされる場合、低い一回換気量(6ml/理想体重kg未満)及び気道内圧(30cmH2O未満の定常圧)の使用が推奨された。中等症/重症ARDS(150mmHg以下のPaO2/FiO2比)を有する患者について、1日当たり少なくとも12時間の腹臥位が推奨された。保守的流体管理戦略の使用が、全ての患者について示唆されたが、高い終末呼気陽圧を有する機械的換気、及び神経筋遮断剤シサトラクリウムの48時間の使用が、それぞれ、動脈血酸素分圧対吸入酸素濃度(PaO2/FiO2)比が、200mmHg以下及び150mmHg以下であるARDSを有する患者について示唆された。体外膜型酸素供給が、保護的機械的換気の補助として、非常に重症なARDSを有する患者について示唆された。本開示の方法は、ARDSの治療又は防止のための上記の療法のうちのいずれかと組み合わせて、実行され得る。
【0299】
いくつかの例では、他の療法は、ARDSの基礎原因を治療するために使用される療法である。例えば、一例では、他の療法は、(例えば、ARDSの基礎原因が、感染である場合)抗ウイルス剤又は抗生物質の投与を含む。一例では、他の療法は、レムデシビルの投与を含む。
【0300】
一例では、CD131に結合する化合物は、他の療法と同時に投与される。一例では、CD131に結合する化合物は、他の療法前に投与される。一例では、CD131に結合する化合物は、他の療法後に投与される。
【0301】
いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、細胞と組み合わせて投与される。いくつかの例では、細胞は、幹細胞、例えば、間葉系幹細胞である。いくつかの例では、CD131に結合する化合物は、遺伝子療法と組み合わせて投与される。
【0302】
投与量及び投与時期
本開示のCD131結合化合物の好適な投与量は、特定のCD131結合化合物、治療されるべき状態、及び/又は治療される対象に応じて変化する。例えば、準最適投与量から開始し、最適又は有用な投与量を決定するために投与量を漸増的に修正することによって、好適な投与量を決定することは、熟練した医師の能力の範囲内である。代替的に、治療/予防のための適切な投与量を決定するために、細胞培養アッセイ又は動物研究からのデータを使用し、好適な用量は、毒性がほとんど又はまったくない活性化合物のED50を含む循環濃度の範囲内にある。投与量は、用いられる投与形態及び利用される投与経路に応じて、この範囲内で変化し得る。治療/予防有効用量は、初期に、細胞培養アッセイから推定され得る。用量は、細胞培養において決定されるIC50(すなわち、症状の最大阻害の半分を達成する化合物の濃度又は量)を含む循環血漿濃度範囲を達成するために、動物モデルにおいて製剤化されてもよい。そのような情報を使用して、ヒトにおいて有用な用量をより正確に決定することができる。血漿中のレベルは、例えば、高性能液体クロマトグラフィーによって測定され得る。
【0303】
いくつかの例では、本開示の方法は、予防又は治療有効量の本明細書に記載のタンパク質を投与することを含む。
【0304】
「治療有効量」という用語は、治療を必要とする対象に投与されると、対象の予後及び/又は状態を改善し、かつ/又は本明細書に記載の臨床状態の1つ以上の症状を、その状態の臨床診断又は臨床的特徴として観察され、受け入れられるレベルよりも低いレベルまで低減又は阻害する量である。対象に投与される量は、一般的な健康、他の疾患、年齢、性別、遺伝子型、及び体重などの、治療される状態の特定の特性、治療される状態の種類及び段階、投与方法、及び対象の特性に依存する。当業者であれば、これら及び他の因子に応じて適切な用量を決定することができるであろう。したがって、この用語は、本開示を特定の量、例えば、タンパク質の重量又は量に限定するものではなく、本開示は、対象において記載された結果を達成するのに十分な量のCD131結合化合物を包含する。
【0305】
本明細書で使用される場合、「予防有効量」という用語は、臨床状態の1つ以上の検出可能な症状の発症を予防又は阻害又は遅延させるのに十分な量のタンパク質を意味すると解釈される。当業者は、そのような量が、例えば、投与される特定のC131結合タンパク質及び/又は特定の対象及び/又は状態の種類若しくは重症度若しくは状態のレベル及び/又は状態に対する素因(遺伝的又はその他の場合)に応じて変化することを認識するであろう。したがって、この用語は、本開示を特定の量、例えば、CD131結合化合物の重量又は量に限定するものではなく、本開示は、対象において記載された結果を達成するのに十分な量のC131結合タンパク質を包含する。
【0306】
本明細書に記載のCD131結合化合物のインビボ投与について、通常の投薬量は、1日当たり固体の体重の約10ng/kg~約100mg/kg又はそれ以上であってもよい。治療する疾患又は障害の重症度に応じて、数日間以上にわたって繰り返し投与する場合、症状の所望の抑制が達成されるまで治療を維持することができる。
【0307】
いくつかの例では、CD131結合化合物は、約1mg/kg~約30mg/kg、例えば約1mg/kg~約10mg/kg、又は約1mg/kg若しくは約2mg/kg若しくは5mg/kgの初期(又は負荷)用量で投与される。次いで、CD131結合化合物は、約0.01mg/kg~約2mg/kg、例えば、約0.05mg/kg~約1mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約1mg/kg、例えば、約0.1mg/kg又は0.5mg/kg又は1mg/kgの低い維持用量で投与され得る。維持用量は、7~30日ごと、例えば、10~15日ごと、例えば、10日又は11日又は12日又は13日又は14日又は15日ごとに投与されてもよい。
【0308】
いくつかの例では、CD131結合化合物は、約0.01mg/kg~約50mg/kg、例えば、約0.05mg/kg~約30mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約20mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約10mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約2mg/kgの用量で投与され得る。例えば、CD131結合化合物は、約0.01mg/kg~約5mg/kg、例えば、約0.1mg/kg~約2mg/kg、例えば、約0.2mg/kg又は0.3mg/kg又は0.5mg/kg又は1mg/kg又は1.5mg/kgの用量で(例えば、より高い負荷用量又はより低い維持用量なしで)投与される。いくつかの例では、多数の用量が、例えば、7~30日ごと、例えば、10~22日ごと、例えば、10~15日ごと、例えば、10日又は11日又は12日又は13日又は14日又は15日又は16日又は17日又は18日又は19日又は20日又は21日又は22日ごとに投与される。例えば、CD131結合化合物は、7日ごと、又は14日ごと、又は21日ごとに投与される。
【0309】
いくつかの例では、治療を開始する時点で、哺乳動物に、連続7日以内、又は連続6日以内、又は連続5日以内、又は連続4日以内でCD131結合化合物を投与する。
【0310】
治療に適切に応答しない哺乳動物の場合、1週間に複数回投与してもよい。代替的に、又は加えて、増加する用量が投与され得る。
【0311】
別の例では、有害反応を経験している哺乳類の場合、初期(又は負荷)用量は、1週間に数日にわたって、又は多数の連続した日にわたって分割され得る。
【0312】
本開示の方法によるCD131結合化合物の投与は、例えば、レシピエントの生理学的状態、投与の目的が治療的又は予防的であるかどうか、及び当業者に既知の他の要因に応じて、連続的又は断続的であり得る。CD131結合化合物の投与は、事前に選択された期間にわたって本質的に連続的であってもよく、又は一連の間隔をあけた用量であってもよく、例えば、状態の発症中又は発症後のいずれかであってもよい。
【0313】
キット
本開示の別の例は、上記のような、ARDSの治療又は防止に有用な化合物を収容するキットを提供する。
【0314】
一例では、キットは、(a)本明細書に記載されるような、CD131に結合する化合物を、任意選択で、薬学的に許容される担体又は希釈剤中に含む容器と、(b)対象のARDSの効果を治療、防止、又は低減するための説明書を有する添付文書と、を含む。
【0315】
本開示のこの例によれば、添付文書は、容器の上にある、又は容器に伴う。好適な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジなどを含む。容器は、ガラス又はプラスチックなどの様々な材料から形成され得る。容器は、ARDSを治療又は防止するのに有効である組成物を保持又は収容し、滅菌アクセスポートを有し得る(例えば、容器は、皮下注射針によって貫通可能なストッパーを有する静脈内溶液バッグ又はバイアルであり得る)。組成物中の少なくとも1つの活性剤は、CD131に結合する化合物である。標識又は添付文書は、組成物が、治療に適する対象、例えば、ARDSを発症している又はARDSを発症するリスクがある対象に投与されることを示し、組成物及び任意の他の薬の投与量及び間隔に関する特定のガイダンスが、提供される。キットは、薬学的に許容される希釈剤緩衝液、例えば、注射用静菌水(BWFI)、リン酸緩衝生理食塩水、リンガー溶液、及び/又はデキストロース溶液を含む追加の容器を更に含んでもよい。キットは、他の緩衝液、希釈剤、フィルター、針、及び注射器を含む、商業的及び使用者の観点から望ましい他の材料を更に含み得る。
【0316】
本開示は、以下の非限定的な実施例を含む。
【実施例】
【0317】
実施例1:抗CD131/βc及びβIL3キメラモノクローナル抗体は、肺における好中球及びマクロファージ蓄積を低減する
抗体
「キメラmAb」は、キメラマウスモノクローナル抗体であり、キメラマウスモノクローナル抗体は、ラットFab領域を含み、ラットFab領域は、マウスCD131/βc及びβIL3サイトカイン受容体サブユニットの細胞外領域を認識し、これらの受容体及びマウスIgG1 Fcを介するシグナル伝達を阻害する。アイソタイプ対照抗体を、比較のために使用した(muBM4-muGIK RP3204又は「BM4」)。
【0318】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)モデル
野生型(8~12週齢のc57BL/6マウス)のマウスを使用した。マウスコロニーを、Animal Resources Centre(ARC)(Canning Vale,Western Australia,Australia)から得た。豪国のNational Health and Medical Research Councilの倫理ガイドラインに準拠して実行された実験のために使用された8週齢~12週齢の雌マウス。
【0319】
ARDSモデル:マウスを、麻酔し、口及び気管中への、50mlのハミルトン注射器に取り付けられたカニューレを使用する、肺中への3μgのEscherichia coli LPS(LPS;0111:B4、Sigma-Aldrich)の気管内(i.t.)設置によって、挿管した。マウスを、ペントバルビタールの致死的注射によって、LPS挿管の24時間後に終了させた。
【0320】
ARDSモデルにおける評価:ARDSモデルにおけるキメラmAbの予防的及び治療的投与の効果を評価するために、マウスに、LPSの挿管の24時間前(予防的)又は6時間後(治療的)のいずれかに、50mg/kgのキメラmAb又はBM4を静脈内(i.v.)投与した。気管支肺胞洗浄液(BALF)を、20Gのカテーテルで気管にカニューレ挿入することによって得た。両方の肺を、0.9~1.1ml/マウスのBALFの平均リターンで、3回洗浄した(それぞれのアリコートについて0.4mlのPBS)。
【0321】
BALFの細胞分析
BALF中の総細胞数を、血球計測器で計数することによって判定した。分画を、Geimsa(Sigma)で固定及び染色された集細胞遠心分離調製物(cytosine4、Thermo Scientific)によって行った。分画は、細胞を、好中球、マクロファージ、又はリンパ球として分類するための標準的な形態学的基準を使用して、200個の細胞の計数に基づいた。計数を、治療群を目隠しされた単一の観察者によって実行した。
【0322】
BALF中の細胞数の有意な低減が、キメラmAbが予防的又は治療的に投与されたARDSモデルにおいて、BM4群と比較して、観察された(
図1A及び2A)。この低減は、キメラmAbの予防的又は治療的投与後にBALF中で観察されたマクロファージ及び好中球の低減と相関する(
図1B及び2B)。
【0323】
実施例2:抗CD131/βc及びβIL3キメラモノクローナル抗体は、FDCP1細胞のGM-CSF及びIL-3誘導増殖を阻害する
FDCP1マウス骨髄由来細胞株を、10%のウシ胎仔血清(FCS)中で、3時間、mIL-3が欠乏した状態にし、実施例1で使用されたようなアイソタイプ対照モノクローナル抗体(アイソタイプ対照mAb)又はキメラモノクローナル抗体(キメラmAb)のいずれかの用量応答において、200μlのRPMI/10%FCS中に、1×104細胞/ウェルの密度で蒔いた。アイソタイプ対照mAb又はキメラmAbでの1時間の事前インキュベーション後に、mIL3(0.54ng/ml)又はmGM-CSF(0.022ng/ml)のED50用量を、それぞれのウェルに添加した。
【0324】
増殖を、mIL3又はmGM-CSFでのインキュベーションの48時間後に測定した。FDCP1細胞を、37℃/5%CO2で、20μl/ウェルのCell Titre96 Aqueous One Solution(Promega)中で1時間インキュベートした。490nm~690nmでの光学密度(OD)読み取りを実行し、データをPrismに補完した。
【0325】
図3は、キメラmAbが、用量に依存した様式で、GM-CSF及びIL-3シグナル伝達を阻害することによって、FDCP1細胞の増殖を低減することを実証する。
【0326】
実施例3:CSL311は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)のhβcTgマウスモデルにおいて、細胞炎症を低減し、組織病態を低減し、血中酸素を増加させる
抗体
CSL311(ahu9A2-G4pK-VR24-29)は、ヒトβc(CD131)ホモ二量体の共通サイトカイン結合部位(部位2)を標的とするヒト抗体である。重鎖アミノ酸配列は配列番号14に提供され、軽鎖アミノ酸配列は配列番号15に提供される。ヒトIgG4(chBM4-G4pK)アイソタイプ対照抗体を、比較のために使用した。
【0327】
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)モデル
ARDSの治療のためのCSL311の治療可能性を確立するために、肺白血球数及び肺損傷のマーカーを、ヒトβc受容体を発現するトランスジェニックマウスモデルにおいて検査した。「hβcTg」と称されるトランスジェニックマウスは、(i)ヒトβc受容体導入遺伝子、及び(ii)両方の内因性ベータサブユニット(βc-/-/βIL-3
-/-)についてのノックアウトについてのホモ接合であった。ARDSを、hβcTgマウスにおいて、10μgのEscherichia coli LPS(LPS;026:B6、Sigma-Aldrich)を24時間鼻腔内滴下することによって誘導した。マウスを、LPS曝露の3時間前に、静脈内CSL311(50mg/kg)又はアイソタイプ対照mAbで治療した。
【0328】
LPSの直接肺滴下は、LPSに曝露されたhβcTgマウスにおいて、有意な体重低減をもらたし、これは、CSL311の投与で有意に低減された(
図4A)。LPS曝露は、hβcTgマウスにおいて、血中好中球及び単球数を著しく増加させ、これは、CSL311投与で、対照レベルまで低減された(
図4B及び4C)。好中球は、LPS曝露に応答して、気管支肺胞洗浄(BAL)気道区画中に移動し、これは、CSL311投与で、約70%有意に低減された(
図4D)。肺炎症の組織学的スコアは、CSL311が、hβcTgマウスにおいて、急性LPS曝露によって引き起こされた肺損傷を有意に低減したことを明らかにした(
図4E及び4F)。また、ピーク肺ミエオロペルオキシダーゼ(MPO)レベルが、肺組織白血球浸潤の著しい低減と一致して、有意に減少した(
図4G)。加えて、BALF中の総タンパク質レベルを定量化することによって評価された場合、CSL311は、LPS曝露によって引き起こされたピーク浮腫を有意に低減した(
図4H)。
【0329】
ネトパチック(NETopathic)組織損傷に関連する好中球細胞外トラップ(NET)が、急性損傷又は感染に応答して放出されることが、hβcTgマウスの急性LPS曝露で観察された(
図5A)。
図5Aは、MPO及びシトルリン化ヒストンH3に対する抗体での、LPS曝露hβcTgマウスの肺組織切片の染色を示す。NET形成が、hβcTgマウスにおいて、より高い用量のLPS曝露(10μg)で有意に増加した(
図5A)。また、ピークMPO及びdsDNAレベルをLPS曝露(10μg)の24時間後に示したLPS曝露hβcTgマウスのBALF中で、NETを定量化した(
図5B及び5C)。ピークMPO及びdsDNAレベルは、hβcTgマウスのLPS曝露前のCSL311の投与で有意に低減された(
図5D及び5E)。
【0330】
CSL311が、ARDSに応答して、肺機能を維持するのを支援することができるかどうかを判定するために、血中酸素を、hβcTgマウスにおいて検査した。ARDSを、hβcTgマウスにおいて、20μLの5μg/mLのLPSの鼻腔内滴下によって誘導した。マウスを、LPS曝露の30分前に、静脈内CSL311(50mg/kg)又はアイソタイプ対照mAb(50mg/kg)で治療した。鼻腔内PBSで治療されたマウスを使用して、LPS曝露の不在下での血中酸素を判定した。血中酸素の百分率を、MouseSTAT(登録商標)Jr.Pulse Oximeter&Heart Rate Monitor(Kent Scientific)を使用して、LPS又はPBS投与の16時間、48時間、及び72時間後に監視した。
【0331】
hβcTgマウスへのLPS投与は、血中酸素の急性的低減をもたらし、これは、約16時間でピークに達し、その後、解消し始めた(
図6、LPS-ISO群)。CSL311の投与は、アイソタイプ対照抗体と比較して、16時間、48時間、及び72時間でのLPS誘導血中酸素低減に対して、hβcTgマウスを有意に保護した(
図6)。合わせて、これらのデータは、ARDSの治療及び防止のためにβc受容体(CD131)を標的とする有効性を実証した。
【0332】
実施例4:CSL311は、ウイルス性肺炎の前臨床マウスモデルにおいて、免疫病理及び過剰炎症を低減する
ウイルス性肺炎モデル
ウイルス性肺炎を、トランスジェニックhβcTgマウスにおいて誘導した。簡潔には、hβcTgマウスに、軽いイソフルラン麻酔下で、インフルエンザAウイルス(IAV、HKx31、H3N2株、104PFU)を鼻腔内感染させた。
【0333】
hβcTgマウスにおいて、肺組織におけるGm-csf発現は、IAV感染の早期(3日目)中に有意に増加し、6日目に低下した(
図7A)。対照的に、Il3及びIl5発現は、後日の6日目の時点でピークに達した(
図7B及び7C)。βc受容体転写物(CSF2RB)の発現は、急性ウイルス感染中のβc受容体発現炎症細胞の持続性組織浸潤と一致して、IAV感染後3日目及び6日目の両方で有意に増加した(
図7D)。
【0334】
IAV感染の4日後に、マウスを、単回用量のCSL311(50mg/kg)又はアイソタイプ対照mAb(50mg/kg)で、静脈内注射を介して治療した。6日目に、IAV感染マウスは、体重の有意な低減を示し、これは、CSL311治療によって変化しなかった(
図8A)。肺ウイルス負荷を、RTqPCRによって、ウイルスポリメラーゼAサブユニット(PA)遺伝子において判定し、高レベルのウイルスRNAを、IAV感染マウスにおいて検出した。レベルは、CSL311治療マウスにおいて同一であった(
図8B)。IAV感染によって誘導された血中顆粒球増加及び単球増加は、CSL311治療でのβc受容体遮断によって有意に低減された(
図8C及び8D)。加えて、IAV誘導低酸素血症に二次的である可能性がある、血中ヘモグロビン(HGB)のレベルの増加は、CSL311治療によって完全に防止された(
図8E)。気管支肺胞洗浄(BAL)区画中の好中球(
図8F)及びマクロファージ(
図8G)数は、IAV感染マウスにおいて著しく増加し、CSL311は、これらの骨髄細胞集団の両方を有意に低減した。加えて、IAV感染は、生理食塩水治療マウスからの肺がピンク色であったこととは対照的に、プラム色である暗い肺葉の出現によって特徴付けられるように、肺葉全体にわたる著しい出血を引き起こした。CSL311治療は、肺葉全体にわたる出血領域の低減に関連する。
【0335】
IAV感染hβcTgマウスのCSL311治療後の肺の免疫学的変化を更に特徴付けるために、骨髄細胞(
図9A)及びリンパ系細胞(
図9G)を、フローサイトメトリーによって分析した。簡潔には、BAL後に、肺の上葉を、細かく刻み、Liberase(商標)(Sigma、US)中で、37℃で、一定に振盪しながら消化した。消化された組織を25Gの針に通し、次いで、40μmのセルストレーナに通すことによって、単一細胞懸濁液を調製した。肺細胞をペレット状にし、赤血球をACK溶解緩衝液で溶解させた。次いで、CD16/CD32抗体での遮断後に、細胞を、FITC-CD45、PE-Siglec F、APC-F4/80、eFluor450-CD11b、PE/Cy7-CD11c、PerCp/eFluor710-Ly6G、及びLIVE/DEAD(商標)Fixable Yellow Dead Cell Stainを含有する骨髄細胞抗体カクテル、又はAPC/eFluor780-CD45、PerCP/Cyanine5.5-CD3e、PE/Cy7-NK-1.1(BD、US)、PE-CD8a(BioLegend、US)、PE/eFluor610-CD4、Alexa Fluor488-FOXP3(BioLegend、US)、及びLIVE/DEAD(商標)Fixable Violet Dead Cell Stainを含有するリンパ系細胞抗体カクテルで、23、26、27先に記載されるように染色した。Foxp3/Transcription Factor Staining Buffer Setを、Foxp3染色前の細胞透過処理のために使用した。染色後に、細胞を、BD FACSAriaにおける分析の前に、IC Fixation Bufferで固定した。
【0336】
肺好中球(
図9B)及びマクロファージ(
図9C~E)は、血液及びBAL中で観察された変化と一致して、CSL311治療後のIAV感染マウスにおいて有意に低減された。マクロファージ数の低減は、肺胞マクロファージ(AM、
図9C)の標準化、並びに肺に動員された、単球由来の滲出性マクロファージ(EM、
図9D)及び血中単球(
図9E)の抑制に起因した。また、IAV感染マウスにおいて増加することが以前に報告されている肺好酸球数が、IAV感染hβcTgマウスにおいて増加し、CSL311でのβc受容体拮抗作用が、この応答を著しく低減した(
図9F)。骨髄細胞とは対照的に、ウイルス感染に対する重要な保護を付与するリンパ球サブセットは、βcサイトカインに直接応答しない。ナチュラルキラー(NK)細胞(
図9H)及びNKT細胞(
図9I)の著しい増殖が、IAV感染後6日目に観察され、これは、CSL311治療によって有意に変化しなかった。免疫抑制性制御性T(Treg)細胞が、CSL311治療によって影響されない様式で、IAV感染によって増加した(
図9J)。肺CD4及びCD8+T細胞は、IAV感染後6日目に増加せず、CSL311治療は、肺CD4及びCD8+T細胞のそれぞれの数を更に変化させなかった(
図9K及び9L)。
【0337】
分子レベルでは、好中球ケモカインCxcl1遺伝子、単球/マクロファージケモカインCcl2遺伝子、及び好酸球ケモカインCc124遺伝子の肺発現が、IAV感染マウスにおいて有意に増加した(
図10A~C)。CSL311治療は、Cxcl1遺伝子発現を低減しなかったが、Ccl2及びCcl24遺伝子発現を有意に低減した。これらの低減は、CSL311治療によって低減される、IAV感染中のCCL2及びCCL24の主要な細胞源である肺マクロファージと一致する。Cxcl10及びCxcl1遺伝子発現のレベルは、CSL311処理によって変化しない様式で、IAV感染マウスにおいて増加した(
図10D)。Cxcl1及びCxcl10は、βc拮抗作用についての標的でない線維芽細胞及び内皮細胞を含む様々な細胞型によって産生され得る。炎症性サイトカインIl1αの遺伝子発現は、IAV感染マウスの肺において増加し、βc受容体遮断は、Il1α遺伝子レベルを完全に標準化した(
図10E)。IL-1Rシグナル伝達は、好中球接着分子の発現を制御することができ、IL-1αの低減は、肺における好中球炎症の低減に寄与し得る。また、IL6遺伝子発現は、IAV感染マウスにおいて増加し、IL6遺伝子発現のレベルは、CSL311治療マウスにおいて低減されなかった(
図10F)。インターフェロンは、抗ウイルス防御の最前線を構築するが、全ての3つの型のインターフェロンは、IAV感染肺において上方制御された(
図10G-I)。II型インターフェロン(Ifng)遺伝子発現レベルは、細胞源(NK/NKT細胞及び細胞傷害性T細胞)が、CSL311治療によって変化しなかったことと一致して、CSL311治療によって変化しなかった。また、I型(Ifnb)及びIII型インターフェロン(Ifnl2/3)のIAV誘導遺伝子発現は、CSL311治療マウス(
図10G及びI)において保たれ、これは、Ifnb及びIfnl2/3の細胞源(形質細胞様樹状細胞(pDC)及び肺上皮)が、βc受容体拮抗作用の背景において機能的に有能であることを示唆する。
【配列表】
【国際調査報告】